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2000/10/25 第150回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第6号
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2000/10/25 第150回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第150回国会 法務委員会 第6号

#1
第150回国会 法務委員会 第6号
平成十二年十月二十五日(水曜日)
    午前十時三十二分開議
 出席委員
   委員長 長勢 甚遠君
   理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君
   理事 山本 有二君 理事 横内 正明君
   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君
   理事 漆原 良夫君 理事 藤島 正之君
      岩屋  毅君    加藤 紘一君
      後藤田正純君    左藤  章君
      笹川  堯君    武部  勤君
      林 省之介君    平沢 勝栄君
      水野 賢一君    森岡 正宏君
      渡辺 喜美君    枝野 幸男君
      日野 市朗君    肥田美代子君
      平岡 秀夫君    水島 広子君
      山内  功君    山花 郁夫君
      上田  勇君    木島日出夫君
      保坂 展人君    上川 陽子君
    …………………………………
   議員           麻生 太郎君
   議員           杉浦 正健君
   議員           谷垣 禎一君
   議員           漆原 良夫君
   議員           高木 陽介君
   議員           松浪健四郎君
   法務大臣         保岡 興治君
   法務政務次官       上田  勇君
   文部政務次官       鈴木 恒夫君
   郵政政務次官       佐田玄一郎君
   最高裁判所事務総局家庭局
   長            安倍 嘉人君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   法務委員会専門員     井上 隆久君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十五日
 辞任         補欠選任
  河村 建夫君     林 省之介君
  肥田美代子君     水島 広子君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     水野 賢一君
  水島 広子君     肥田美代子君
同日
 辞任         補欠選任
  水野 賢一君     河村 建夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 少年法等の一部を改正する法律案(麻生太郎君外五名提出、衆法第三号)

    午前十時三十二分開議
     ――――◇―――――
#2
○長勢委員長 これより会議を開きます。
 麻生太郎君外五名提出、少年法等の一部を改正する法律案及びこれに対する佐々木秀典君外三名提出の修正案を一括して議題といたします。
 お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
#4
○長勢委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
#6
○長勢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田佳彦君。
#7
○野田(佳)委員 皆さんおはようございます。民主党の野田佳彦でございます。
 私は、しばらく国会の方を、三年八カ月ほど休んでおりましたので、四年ぶりの委員会の質疑になります。時間配分等ちょっと心配なんですけれども、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 昨日来の質疑をお聞きしていまして、提案者の皆さんにおかれましても、また野党から質問に立たれた皆さんも含めまして、少年犯罪に対して少年法さえ改正をすればそれで済むものではないという認識においては、これはもう皆さん一致をされているようでありますが、それを含めて、では少年法をなぜ改正しなければいけないか、この点について、ちょっと私なりの考えをまずお示ししたいと思います。
 どんな法律でも、成立当初に比べて四十年、五十年たつとやはり時代と合わない部分が出てくるだろう。例えば人間だって、生きていて四十年、五十年たって人間ドックに行ってみればいろいろと不都合が出てくるのと同じように、法的にもそういう不備が出てきたときには、やはり現状に合わせて改正をしていくということは、これは大いにあり得ることだろうというふうに思っています。
 少年法も昭和二十四年の一月一日に施行をされて、そのころの時代背景を考えてみると、私なんかはうかがい知れませんけれども、戦災孤児たちが両親と死別をしたり離別をしたりして、生きていくために、あるいは食べていくために犯罪に走らざるを得なかったという大変不幸な時代状況があったと思います。
 ただ、そのころから半世紀以上経過をして、今日のせつなの海におぼれたような犯罪であるとか、愉快犯のような犯罪であるとか、あるいは説明のつかないような犯罪であるとかというものを見るにつけ、やはり現状に合わせた少年法の改正というのはいかにあるべきか、これは本当に慎重にそれぞれの立場を超えて審議していかなければならないというふうに思っています。
 そんなような立場で幾つか質疑を行いたいと思いますけれども、まず、与党案の柱になっている部分で、私は評価できるものも随分あるというふうに思っているんです。
 例えば、被害者への配慮の問題です。さきに廃案になった閣法よりはやはり随分と前進をしているというふうに思いますし、被害者等による記録の閲覧及び謄写を可能としている、被害者等による申し出による意見の聴取、あるいは少年審判の結果等の通知、こういう問題は、被害者への配慮としてこれは一定の前進だというふうに思います。
 また、保護処分終了後における救済手続の整備をしていること、これもやはりその少年にリターンマッチを可能にさせるような措置として評価をしたいというふうに思います。
 また、保護者の責任の明確化。少年犯罪の背景として、どうしても家庭の問題、保護者の問題と深くかかわりがあることは相当にあるだろうというふうに思います。私も、随分昔なんですけれども、問題行動を起こしたお子さんと両親が呼ばれてカウンセリングをしているところをマジックミラー越しに見たことがあるんですけれども、そのときはもう明らかに家庭崩壊がビジュアルにわかるんですね。お母さんは大体ドアの方を向いている、お父さんは窓の方を向いている、お子さんは真ん中に立っている。ベクトルが全部違うというぐらい、そういう御家庭からいろいろな問題行動が起こるだろうなということはやはり予想がつきました。そうした意味からも、保護者について責任を明確化するというのも一定の前進だというふうに私は思っております。
 そういう意味で、これはむしろ民主党の修正案の提案者の方に御意見をお伺いしたいと思いますが、被害者への配慮、保護処分終了後における救済手続の整備、保護者の責任の明確化、これらについては民主党は修正案で特に修正を加えておりませんけれども、この点については積極的に賛成をしているというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
#8
○佐々木(秀)委員 野田委員の御質問に対して、このたび私たち民主党として修正案を提出しておりますので、提案者の一人としてお答えを申し上げたいと思います。
 被害者に対する配慮、これは従来のというか現行の少年法では欠けている点だと承知をしております。このことについては、いわゆる成人の犯罪の場合でも、刑法だとか刑事訴訟法においても配慮の規定というのが確かに設けられていないということがしばしば指摘をされておりました。そういう点で、さきの閣法で被害者に対する少年審判の結果の通知等の規定が設けられておりましたこと、今回の与党提案がそれよりもさらに踏み込んで被害者への配慮規定を置いたということについては、私どもとしても評価すべきものだと考えております。
 何といっても、我が国の場合には被害者に対する配慮というのがさまざまな点で欠けておったことは事実でございまして、犯罪被害者に対し一定の給付金を給付するという法律ができているにはいますけれども、この給付金の金額も非常に少ない、また、その給付についても非常に手続が煩雑である、そうした点での配慮が非常に足りない、それから、その他の面においても全く配慮がなされていないということはつとに言われていたことであります。
 そこで、私どもも、修正案をつくるに当たりましては、与党のこの提案及びさきの閣法なども含めて検討いたしました。率直なところ、評価はしますけれども、今野田議員お話しのように、積極的に評価をしているのか、積極的に賛成しているのかと言われると、基本的には賛成だけれども、まだ足りない面が多々あると私どもは心得ております。
 しかし、それでは修正案の中にどの部分をどの程度盛り込むかということについては、党内議論がいろいろございまして、残念ながらこの短期間でその結論を得るに至りませんでした。そこで、私どもの修正案の中には、被害者に対する条項についての修正というところまでは残念ながら至らなかったわけでありますけれども、しかし、やはりこの点はこれからさらによいものにしていく必要があるのではなかろうかと私どもは思っております。
 被害者への事案の通知、一定の制限つきでありますが、これは何といっても加害者が少年であるという点はどうしても配慮しなければなりませんけれども、これまでの被害者の方々の御意見を聞き、あるいは、残念ながらこの間の参考人質疑のときには私ども野党は出なかったわけですけれども、二人の少年犯罪被害者の方々の御意見も、希望するところは、やはり事案の真相を知りたい、なぜこういう犯罪が起きたのかということをしっかりと知りたい。加害者を厳重に処罰しろというよりも、むしろそういう事案の真相を知りたいという御希望が非常に強いことも私どもは伺えておりますので、そういう点での配慮がもう少し突っ込んでできないものか。
 それから、今委員からもお話がありましたような、加害少年と被害者ないしは亡くなった事件の場合にはその遺族の方々との話し合いのようなことが制度的にできないものだろうか。これもなかなか難しい問題はあるようですけれども、そういうことについてももう一つ突っ込んだ措置が必要ではなかろうかと思っております。
 それから、総じて、少年事件であると成年事件であるとにかかわらず、被害者に対する抜本的な対策のための法案がどうしても必要だろう。そういうことで、今私ども民主党は犯罪被害者救済あるいは権利救済の基本法を実は協議しておりまして、これを近く成案化するということも用意をしております。
 そのことを申し上げ、どうかみんなでこの点についてはさらに考えて、よい制度あるいはよい法律をつくるために努力をしようじゃないかということを申し上げて、答弁としたいと思います。
#9
○野田(佳)委員 一定の評価をするけれども、特に被害者への配慮についてはまだまだ煮詰まっていないところがあって悔いが残るというお話だと思いますが、それを踏まえて、少年犯罪、成年犯罪、両方にかかわることでありますけれども、犯罪被害者基本法を制定したいというお話をお伺いしました。基本的にはぜひそういう形で、犯罪被害者やその遺族の皆さんの願いというものができるだけかなうことのできる、そんなような措置というものを一日も早く国会を挙げて実現しなければならない、私自身もこのように思います。
 二つ目の質問を一緒にくくって言っていただいたので、次の質問に行きますけれども、与党案では、少年事件の処分等のあり方の見直しにおいて、刑事処分を可能とする年齢を十六歳以上から十四歳以上に引き下げるという項目があります。言ってみれば十四歳、十五歳も逆送可能ということなんですけれども、修正案の方を拝見いたしますと、刑事処分可能年齢の引き下げについては少年法の理念を生かした修正をしているように思われます。この点についての御説明をお願いしたいと思います。
#10
○平岡委員 お答え申し上げます。
 民主党の修正案におきましては、少年法の基本的な考え方というものがまず少年の健全な育成を期すということにあるということを踏まえまして、ただ、最近におけるいろいろな犯罪事件を見ますといろいろな犯罪事件があるというようなことで、そうしたものに適切に対応する必要もある、そういった状況も生じているというふうなことで、刑事処分可能年齢の引き下げはいたしますけれども、いろいろな配慮をしていかなければならない。
 与党案におきましては、ただ単に年齢区分を撤廃するということだけで行われておりますけれども、特に十四歳、十五歳という少年におきましては、まだまだ可塑性の高い年齢でございます。そういうことを踏まえまして、修正案におきましては、二十条の第一項のところにただし書きという形で、送致のときに十六歳に満たない少年の事件につきましては、当然のことながらこれも家庭裁判所における調査を行いますけれども、その結果として、罪質が重大であり、さらに、「かつ、」ということでございますけれども、「刑事処分以外の措置によつては矯正の目的を達することが著しく困難であると認められる場合でなければ、これを検察官に送致することはできない。」という形で、法文上の歯どめをしておるところでございます。
 さらに、こうした十四歳、十五歳の少年につきましては、いろいろな審判の過程におきましても、家庭裁判所の裁判官に対して説明する能力という面においては乏しいということであろうかと思います。十四歳、十五歳の少年は防御能力に極めて乏しいというふうに認められますものですから、我が民主党の法案におきましては、二十条に三項を設けまして、こうした十六歳未満の少年について検察官送致の決定をするという場合には、「少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならない。」ということで、少年の防御能力を補完するという措置を講じているところでございます。
#11
○野田(佳)委員 年齢の引き下げはある程度可能性を開くということでありますけれども、かなり歯どめをかけた措置をするということだと承りました。生命にかかわるような罪を犯した年少の少年でも、基本的には教育そして更生が十分可能であるということを信じて、そして大人が責任を放棄しない、その中でもどうしてもやはり逆送せざるを得ないようなケースもあり得るだろう、そのような措置なんだろうというふうに思います。
 次は、十六歳未満の受刑者の処遇についてのお尋ねをさせていただきたいと思います。
 これは与党案の提案者にお伺いをしたいと思うのですが、与党案では、懲役または禁錮の言い渡しを受けた少年は、十六歳に達するまで少年院に収容することができるという規定がございます。受刑者を少年院という教育の場で処遇することが妥当かどうか、ちょっと私は疑問がございました。
 昨日、与党の皆さんが視察をされた調査報告書をちょうだいしました。これを見ますと、多摩少年院と川越少年刑務所を視察されているわけでして、現場をよく見てこられたのだと思います。私は資料だけでちょっと恐縮なんですけれども、例えば多摩少年院、どういう人たちが収容されているか。いろいろなケースがありますが、「過去の失敗・挫折などから、強い劣等感を抱いた、自己イメージの低い少年が多い。」と書いてあります。そして集団生活を送る。「入院して三週目には集団寮に転寮し、集団生活を始める。」と書いてあります。寮生活を送りながら、寮生同士が助言し合って成長を促すグループワークなどの活動も行う。出院準備期になりますと、より開放的な空間に移りまして、農作業や園芸作業や環境美化作業等々、いろいろな野外訓練をしていくわけです。矯正教育の構造は「閉鎖から開放へ」、要は少年院に入っている通常の院生たちはだんだん閉鎖から開放へと。
 その中において、十四歳、十五歳で受刑者である子供たちが入った場合には、みんなが開放に向かっていって、しかも場合によっては進学を希望している人もいる、あるいは、何らかの職業につくことも考えている人もいる。希望を持って出院をしている人たちがいる一方で、十六歳になったらまた少年刑務所に入らざるを得ない。まさにこれは、少年たちに対する教育効果というのはかなり減殺をされてしまうし、現場においてもかなりの混乱を来すようなイメージを私は持ったのですけれども、この点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
#12
○麻生議員 少年院というものの現場に、入られたかどうかは別にして、現場に行かれた方はおわかりになることだと思うのですが、基本的には今も十四歳、十五歳で少年院にいる人はいるわけですから、そういった意味では、これまで処遇してきた実績というのは、預かっている側の少年院なり鑑別所なり、そういったところで皆それぞれ経験があるというのがまず一点です。
 それから二つ目は、やはり基本的には十四歳はまだ義務教育年齢のときですから、当然のこととして、そこで義務教育の授業等々、矯正教育を含めていろいろするのは当然なのですが、開放に向かうというお言葉がありましたけれども、それは、罪がそれだけ重たいわけですから、私どもとしては、その罪は、片っ方は開放になるのだ、それは罪が軽かったのであって、片方は人様を故意にあやめるとか強姦によって死に至らしめるとか、状況としては、罪の重さは違うと思いますね。
 そういった意味では、その罪の自覚もしていただかないといかぬし、私どもとしては、片っ方は開放に向かって、片っ方はさらに少年刑務所に上がるということについて教育効果はいかがなものかということを言われる点もわからないわけではありませんが、同時にその人たちは、犯した罪の重さを改めてその場で知っていただかなければいかぬ。私どもは、それは当然のことだと思うのです。その子供が矯正教育の結果、さらにその罪の重さを改めて感じて、それによって、少年刑務所に入っていった後も立派に刑を務めてもらって、結果として更生していくということが可能なのであって、違いがあるからそこで差別が起きるとかいうような話とは少し違うのではないかというのが私どもの見解であります。
#13
○野田(佳)委員 違いがあるから差別という意味合いで申し上げたのではなくて、私、少年院には入ったことはありませんけれども、罪質の違う子供たち、少年たちが混在することによって、お互いへのマイナス影響を心配したということであります。
 一方で、民主党案の方は、十六歳未満の受刑者の処遇を「少年刑務所において、所定の作業に代えて、必要な教育を授けるものとする」という改正をしているわけでありますけれども、これはまた少年刑務所もそれなりの心配、懸念もあると私は思っているのです。刑の執行を目的とする施設で、義務教育年齢、十四、五歳の少年たちの教育を受ける権利を本当に確保できるかどうか。
 確かに松本の少年刑務所あたりではそういうことを実際にやっているようでありますけれども、言ってみれば、与党案でいくと、もっと十四、五歳の子供たちが入ってくる可能性が出てくるような法案の改正であります。そうしますと、例えば入れ墨をした暴力団のお兄さんたちがいるようなところで、非常に悪弊に染まるような可能性も出てくるという中で、果たして可塑的な少年たちを処遇することが本当に妥当かどうかという心配もあると思いますけれども、これは、民主党の修正案はどのような考えを持っているのでしょうか。
#14
○平岡委員 お答え申し上げます。
 少年刑務所におきます教育については、もし必要であれば、詳しくは法務省の方にも聞いていただければと思いますけれども、先ほど委員が質問の際にも触れられましたように、現在も松本刑務所におきまして、桐分校という形で義務教育に相当する教育が実施されているというふうに承っております。当然のことながら、今十四歳、十五歳のお子さんたちはいないわけでございまして、実際上も、少年ではない、義務教育を終えていないけれどももう既に成人に達しているといった方々もここで教育を受けているということであろうと思います。
 今回、例えば十四、十五歳の子供がこうした少年刑務所の中で義務教育を受けるというような場合には、それはそれなりのいろいろな配慮を行った上で、いろいろな方々との分離を行う、あるいは、似たような年齢の子供たちだけを集めて教育を行うといったような当然の配慮も必要だろうというふうに思っております。
 今、刑務所において教育を行うということの根拠となっておりますのは、監獄法の第三十条で、「十八歳未満ノ受刑者ニハ教育ヲ施ス可シ」という形のものがございまして、これに基づいてやっているというふうに理解しておりますけれども、刑務所の中において未成年の子供に対して教育を行うということが既に法律的にも用意されているということでございます。
 そして、これも我々野党としては非常に残念なことではあったのですけれども、与党を中心として、せんだって少年院と少年刑務所の視察が行われました。川越少年刑務所に視察団が行きましたときに、この報告書に質疑応答の場面がございます。この中に、こういうくだりがございます。これは川越少年刑務所で行われた問答でございますけれども、「改正法案が成立すると、十四歳、十五歳の少年が実刑判決を受けて懲役、禁錮の執行を受けることになるが、その場合に問題はあるか。」という問いに対して、少年刑務所の方の答えとしては、「十四歳、十五歳は義務教育年齢であるが、現在でも松本少年刑務所のように中学校の課程を設置している施設もあり、処遇は出来るものと考えている。」というようなことをお答えになっているということでございます。
 今までなかった制度を直ちに少年刑務所の中に取り込むということなので、今ある制度を前提としてそこに無理やりはめ込むという形のものは確かにいろいろ問題があろうかと思いますけれども、十四歳、十五歳というまだ可塑性に富む少年であります。一応民主党の案では、保護処分によっては矯正をすることが著しく困難と認められるものについてのみ刑事処分をするための検察官への送致を認めるということになっておりますので、矯正という点においてはなかなか難しい少年たちであろうと思いますけれども、そうした少年たちの可塑性ということも考えた教育を刑務所の中においても行っていただくということになろうかと思います。
 一言言わせていただきますと、与党案の場合ですと、先ほど委員が御指摘になったような、教育を終わった後に社会に出ていく、あるいは学校に戻っていく少年と、そして刑務所にまた戻っていくという少年とが混在してしまう、これもいろいろな配慮をしなければならないのかもしれませんけれども、混在をして教育を受けるというようなことは必ずしも適当ではないのではないか、さまざまな問題を起こすのではないかというような点を踏まえて民主党の修正案とさせていただいておるところでございます。
#15
○野田(佳)委員 次に、原則逆送の問題に触れていきたいというふうに思います。
 十六歳以上の少年の重罪事件について原則逆送という与党案でありますけれども、これまで例外的に逆送をされてきた長年にわたる家庭裁判所の判断に大きな変更をもたらすということになる。原則と例外の逆転という表現がきのうの質疑の中にもありましたが、ということは、長年の家裁の判断に重大な誤りがあったという認識が多分前提にあるのだろうというふうに私は思います。昨日の杉浦先生のお話の中にも、例えば、佐賀のバスジャック事件の問題についてのお話がありました。恐らく、そういう事例を踏まえて、長年の家裁の判断にやはり疑問を持っているから原則と例外の逆転という措置が生まれてくるのだろうと私は思うのです。
 私は、たまたま大阪弁護士会子どもの権利委員会というところがまとめている資料をちょっと拝見させていただく機会がございました。これは、家庭裁判月報に少年保護事件審判例が掲載され始めた昭和二十八年から平成九年、これは神戸の須磨事件が発生するまででありますけれども、この間の重大事件、殺人、殺人未遂、強盗殺人、強姦殺人、傷害致死などの少年の故意による被害者死亡事件に関する多数の審判例を集めた資料でありまして、それらの犯行態様とか事件の特性を要約したものであります。これがすべての事件を網羅しているわけではありませんけれども、家庭裁判月報という極めて信頼性の高い公刊物に掲載をされた内容で、その時代時代を的確に映している事例をまとめた内容と思っているのです。これをずらっと見ていっても、それほど大きな誤りというか、大体妥当な審判を下しているような気がしてなりません。
 これは、件数としてはわずか百二十九件ほどでありますけれども、例えば、これは昭和五十年、高松で起こった事件ですね。十七歳の女子、戸籍上の実の父を木割りおので頭部を二回殴打した上、ストッキングで頸部を絞め殺害。これは、その背景として見ると、日ごろから執拗に肉体関係を強いてきた父を殺害したということであって、このケースは中等少年院送致になっています。あるいは、祖父をダイバーナイフで刺し、肺動脈傷によって死亡させたという殺人の場合は、やはり精神的に問題があって、医療少年院送致となっている。あるいは、暴力団の組員であった少年が殺害を起こしている。これはかなり大胆、悪質であって、情状の余地のないような内容だったみたいですが、これは検察官送致になっている。
 どれを見ても、検察官送致、医療少年院送致、それぞれ妥当な結論を出しているようなものが多い。中には、よく調べてみればおかしな事例もあるのかもしれませんが、私は、原則と例外を逆転させるほどの大きな問題がこれまでの家裁の長年の蓄積にあったとは思えないのです。
 この点については、与党案提案者のお考えはいかがでしょうか。
#16
○麻生議員 今の少年法によって行われております家裁の逆送等々に関していろいろどうだという御意見なのだと思いますが、そういった意味で、基本的には、今の法の建前に立てば、別に運用がおかしかったというわけではないと思っております。
 ただ、逆送率が低いという点に関しましては、平成六年からの資料ですけれども、大体年間三十万件ぐらい、いろいろ、逮捕等々の事件、これは交通違反も含まれます。そういった中で、凶悪犯と言われるものが約二千前後、千五百から二千ということだと思います。最近、一千三百、一千六百、二千三百、二千五百とこの四年間ずっとふえてきているのですが、その中にあって、いわゆる殺人というものは、去年でいきますと凶悪犯の中で七十二件。それも、四十件、四十一件、七十一件とだんだんふえてきているのですが、その七十一件のうち、実質逆送になっておりますものが十三件であります。これは平成十年の数字ですけれども、殺人で逆送になった人は二割ということになります。その前の年は九%、ことしが二〇%ぐらいになってきているのですが、基本的には、逆送になっておりますものは、二千五百の凶悪犯の間で三%が逆送になっております。その前の年、平成九年が二・四、平成八年が三・五。大体三%前後のものが逆送になっておるというのが実態の数字です。
 そういったことを考えますと、先ほどのように状況をいろいろ個別個別に言われますと、それは個別によって全部違います。自分がいじめられたのに対して異常な勢いでいじめ返した結果死んでしまったとかいう例と、確実に金を恐喝する目的でおどしたあげく殺したものと、強姦の結果殺したものと、それは大分状況は違うとは思いますけれども、少なくとも被害者が過剰防衛というような形で人を殺すということに至った例と、明らかに自己の目的を達成するために他人の人命を、人様の命をあやめるという話とはこれは全然基本的に違う。死んだ結果が同じ殺人であっても違うと思います。また、今殺人のみに限りますけれども、植物人間に相手をおとしめた場合には殺人とはならない、単なる傷害ということになるのですが、植物人間でも家族にとってはほとんど死んだも同然ということになるのだと思います。
 そういった条件、いろいろ例があるとは思いますが、少なくとも故意の犯罪行為、自分で殺すとか、明らかな目的を持って自己の目的達成のために殺人というような例の場合は原則として検察官に対して逆送するというのは、私どもとしてみれば、これは当然のことなんではないのか。
 今いろいろな例を言われましたけれども、その中では、私どもから言わせていただければ、故意の殺人にもかかわらずなかなか逆送されていないという例は、これはいかがなものか。何となくしばらくしたら出てきてしまう。家族の人にしてみれば、殺された方にしてみれば、その人が町を歩いている、あれ、もう出てきたの、何で、内容は全然教えてもらえないというのがこれまでですから。
 そういった意味では、今回のこの十六歳以上の少年の重大犯罪についてもという点につきましては、原則逆送というといかにもと言われるかもしれませんが、これは基本的にはその本人に十分に自覚をしてもらうために大変大切な措置だ、私どもはさように理解をして提案をさせていただきました。
#17
○杉浦議員 原則逆送を導入すべしという議論は自民党の少年法対策小委員会の議論の中から出てまいったものであります。家裁の運用が間違っているとかそういうことではないわけでありますが、戦後五十年、家庭裁判所を中心にして機能してきた司法システムが、一言で申しますと、現在のような少年の問題、犯罪の傾向に十分対応し切れていないんじゃないかというのが、非常に激しい議論があったのですが、その全体の中の基調だったと思います。
 具体的には、被害者の方々がきょう傍聴にお見えになっていますが、被害者の方々で声を大にして言っておられる方々のほとんどがお子さんを死に至らしめられた方々であります。事件の内容を知りたい。家裁の審理は、保護処分になる場合には密室の中でよくわからない、何をやっているかわからない。それに対しても、そういう事件は、一口に言って凶悪事件は逆送すれば公開法廷になるじゃないか。傍聴もできる、場合によっては証人にも立つだろう、少なくともトランスペアレントになるんだ、そういう趣旨での原則逆送論もあったわけでございます。
 現在の少年法の規定でも逆送はできるわけですね。しかも、逆送して刑事裁判の結果、刑事処分が相当でないという場合には、五十五条で保護処分相当の場合には家裁へ戻せるという規定があるにもかかわらず、過去五十年ほとんど適用された例がない。つまり、家庭裁判所は、実刑相当というふうに判断された分しか凶悪事件については移送していない、そういう積み重ねがあるわけです。それに対して、それでいいのかという、これは自民党でも非常に激しい議論をしましたが、出てまいったことでございます。被害者の御不満にも、逆送されればかなりの部分おこたえできるのではないかということがございます。
 それから、自民党の議論の中でありましたのは、司法システムの中で、警察官、検察官の対応が非常に弱いんじゃないか、特に教育現場からはそういう声が聞こえてくるわけであります。人手が足りない、十分対応してくれない、そういう不満があるわけであります、父兄もそうでありますが。
 この必要的逆送という措置をとることによりまして、凶悪事件が起こった場合に、対応する警察官、警察の対応がまずきちっとしなきゃならない。検察官もそうであります、逆送されることを前提にして捜査しなきゃならないということで、この部分の対応をきちっとすべきじゃないか、そのためにもやはり必要的逆送という制度を入れた方がいいじゃないかという議論があったわけでございます。
 私への前回の質問に対して、必要的逆送以外の部分の逆送もふえることを期待しているというような、ちょっと誤解を与えるような趣旨の発言をいたしましたが、要するに、司法システム全体が、警察官から始まって検察官、家庭裁判所、そういった全体がほんの一握りの凶悪犯罪に走った少年に対してきちっと対応する、結果として、数字としては逆送されるケースがふえることを私どもといいますか提案者は期待しておる次第であります。
#18
○野田(佳)委員 私は、原則逆送で、少年の犯罪を裁く際に公開になることがすべてよしとは必ずしも思っていませんで、これはやはり限定的に考えていくべき筋のものだろうと思っております。その意味で、今ちょうど図らずも杉浦議員から先にお話がありましたけれども、原則逆送をきちんとやれば、そのほかの罪の類型においてもきちっと移送してくれるようになるのではないかと期待をしていますという言葉をさきの法務委員会で述べられていまして、これなどは本当に絞り込みを十分しないままの拡大解釈になっていくというような懸念を強く持っています。今御本人がその件についてのお話を既にされましたので、これについてはもう触れませんけれども。
 一方で民主党案は、十六歳以上の少年の重罪事件については逆送できる場合を限定しています。その修正の背景について御説明をいただきたいと思います。
#19
○平岡委員 お答え申し上げます。
 現在の少年法におきましては、第三条におきまして、少年事件については家裁が審判を行うということで、家裁が少年事件について第一義的な責任を負うという立場に立っているということを明らかにしているわけであります。こうした考え方に立って、今回の改正案におきましても、どんな事件であれまずはやはり家庭裁判所がちゃんと調査をするということは確保されていなければならないというふうに思っております。
 与党案をちょっと拝見いたしますと、必ずしもそこのところが明確には、調査があるのかないのかわからないような書きぶりになっています。少年法の第八条等を見ますと、やはり与党案で原則送致と呼ばれているようなものについても家庭裁判所の調査というものはあるんではないかというふうに推測はしておるわけでございますけれども、我々としては、先ほど来から申し上げていますように、まず家庭裁判所がきちんとした調査を行った上でその少年に対する処分を判断していくべきであるというふうに考えております。
 そういう意味で、我が民主党案におきましては、十六歳以上の少年の重罪事件たりといえども、まずは調査を行うんだということを明らかにさせていただいているわけでございます。そして、そうはいっても、いろいろな事件の中で、殺人の故意があるというような特に凶悪な犯罪の場合については、これに対する対応というものがどうあるべきかということを考えましたときに、調査を尽くしてみても保護処分が適当とは言い切れないといったようなケースについては検察官送致の道も開いていくということで、検察官送致の範囲をある程度拡大していくということが適当ではないかという判断に立って今回の修正案に及んでいるわけでございます。
#20
○野田(佳)委員 次に、事実認定手続の関連に移っていきますが、与党案では、検察官及び弁護士たる付添人が関与した審理を導入するという御提案があります。私は、これは少年審判の教育福祉的機能を後退させるようなこともあり得る、法律家同士のメンツをかけた争い、そこに少年が疎外感を感じたり、あるいは難しい法律用語が飛び交う中で必要以上に重圧感を感じたりということもあるのではないかという懸念を持っています。
 私自身、この法務委員会は初めて入って、言ってみれば専門外なんです。与野党ともに法曹界御出身の方がいらっしゃって、暗号のような、外国語のような言葉が飛び交って、ついていくのが大変だと思っておるんですが、その中で、提案者の麻生先生が登場されると、大変わかりやすい御説明で、とても共感を得ています。意見の異なることもありますが、大変親近感を感じています。
 というようなことを踏まえて、私は必要以上に法律家同士の争いになる懸念を持っているんですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
#21
○谷垣議員 できるだけ符牒を使わないで御答弁をしようと思うんですが、今、野田委員が抱かれたような懸念は、やはり刑事裁判の法廷を基本的にイメージしておられると思うんですね。そこでは、裁判官がいて、一方で被告人とそれの弁護人がいる。それで、それぞれが攻撃、防御といいますか、権利として持って、異議を唱えたり激しく対立し合う。現実の法廷はそれほど激しいかどうかは別として、少なくともテレビなんかに映る法廷シーンというのはそういうことが非常に多いわけですので、そのようなことをイメージしておられるんだろうと思うんですね。
 そういうふうになってしまうということは、これは少年法の審判の上ではあってはならないことだと思います。ですから、これは対等な当事者が権利を持ってぶつかり合っていくという場ではなくて、あくまで家裁の裁判官の主導といいますか主宰のもとに、出席している検察官もあるいは付き添いの弁護人も協力していく、こういう構造になっている。
 したがって、私は実は少年審判はほとんど経験がないんですが、きのうの御答弁でも杉浦提案者が、自分が少年審判に付添人で行った場合も、裁判官から、ちょっとあなたは外へ出ていってくれ、じかに少年と話してみたいからというようなことがあったとおっしゃっておりましたけれども、少年法のもとでは、そういう裁判官の主宰のもとに、融通という言葉を使うとちょっとよくないかもしれませんが、刑事裁判のようないわばリジッドな形とは違うものをイメージしているわけでありまして、今度二十二条の三項に、審判は裁判長が指揮をする、こういうことになっておりますが、それももちろん裁判官が少年法の全体のそういう仕組み、システムというものを十分頭に入れた上で、今おっしゃったような法律家同士のメンツとなるようなことは許さないという形で運用していく、こういうことであろうと思います。
 わかりやすい説明は、後、麻生さんがなさいます。
#22
○野田(佳)委員 今の御説明もとてもわかりやすいんですけれども、谷垣先生のようなソフトイメージの方が検察官なり弁護士さんなりという形でやっていただければ確かに和やかな雰囲気の審判にはなると思うんですが、ただ、やはりそれぞれのプロであって、残念ながら闘うさがというのも持っているんじゃないかなと思っていまして、裁判官の方の指揮というのはとても重要な意味を持つと思います。
 だんだん時間がなくなってきましたので急いで行きます。
 裁定合議制についてですけれども、これは裁判官と少年が一対一で向かい合う中で生まれてくる信頼関係が損なわれるんではないかなという懸念を私は持っています。複数の裁判官が参画をすることによって、例えばレフトとサードとショートがお見合いしてポテンヒットになってしまうとか、何か責任の分散体制になるような懸念も持つのですが、この点については与党案の提案者はどうお考えでしょうか。
#23
○麻生議員 たしか、昨日肥田先生の御質問のときにお答えしたような記憶がありますが、三人の裁判官というのは、一人と違って三人になると、ポテンヒットになっちゃうんじゃないかとか、いろいろ責任が分散するんではないかという御懸念だと思います。
 私は、それなりに御意見としてはわからないことはないのですが、しかし、この三人による裁判の合議制というのは随分長い歴史があるものでして、家庭裁判所で従来一人だったというだけのことであって、裁判所としてはずっと合議制というのを結構やってきておりますので、結構定着した制度だった、まずそれが大前提だと思っております。
 それから、三人になると、いろいろまだほかにも、責任が分散すると同時に、例えば、就職試験でごろっとおじさんたちに取り囲まれてにらみつけられて、新入社員の方は、おうなんて言われると言いたいことも言えなくなっちゃうというので、何となく恐縮して、固まって口がきけなくなるということになって、少年の方の気持ちがという点も、これは、いろいろ心配すれば、いろいろ言っていけば幾つも出てくるんだ、野田先生御懸念のとおりだと思います。
 同時に、裁判官もやはり顔の造作のできふできもいろいろありますので、並べてここに三人、元弁護士というのが、山本有二とか結構危なそうな顔をした人もいらっしゃいますけれども、谷垣さんのような優しい顔をした人がそこに座っていると、例えば山本有二裁判官には、全くこいつだけは口もきかないという態度でいくかもしれませんが、谷垣さんには、口を開いて何となくしゃべろうという気になられる。
 それはいいことばかりではない、ただし、逆に悪いことばかりでもないのではないかということで、一人で判断をするというのはなかなか迷うところが多いというのは当然のことですので、そういった意味ではある程度年齢も、経験のある裁判官と、若い裁判官、中高年、いろいろ分けてありますので、少年になるべく近い年齢とかいう方に心を開く少年もいれば、何となくおじいちゃんのイメージで年寄りの方に心を開く人もいれば、いろいろ各ケースによって違うんだとは思います。 そういった意味で、長い歴史という点と、私どもから見ますと、一人でやるには荷が重過ぎるというようなことをみんなで合議してやっていくということの方がより適正な審判が下せるのではないかというのが、私どもがこの合議制を取り入れた背景です。
#24
○野田(佳)委員 大変わかりやすい、何か顔が浮かぶ例えで、ありがとうございます。
 次は、検察官による抗告受理の申し立てなんですが、これは実態として抗告権と同じようになってしまう気がするのですが、この辺の御説明をお願いします。
#25
○麻生議員 抗告受理制度というのは、これは抗告権を認めているというわけではないのです、基本的には。高等裁判所において抗告を受理するかしないかというのは裁判所の側が判断をすることになっておりますので、検察官の方も、一審というか家庭裁判所で出た判断に対して、これはいわゆる罪が重いとか軽いとかいうことで抗告ということはできない。事実認定がおかしいのではないかというようなことで、事実認定が間違っているがゆえに、結果として罪の重さも変わるというようなことが検察側として判断されたときにおいてのみ抗告ということが認められている。
 それを認めるか認めないかはまた高等裁判所の方ですし、実際にその検察官の抗告を受理するしないも、家庭裁判所が決めて二週間以内にそれを返答するということになっておりますので、そういった意味では、抗告権が出されたからといって改めて一から全部審理し直すというわけではないという点もひとつ御理解をいただいておければと思います。一方的に、何となくそれによって妙に引き延ばされたりするというようなことではないと理解をいたしております。
#26
○野田(佳)委員 私は、家庭裁判所の事実認定というのは、裁判官が少年の自白調書などの捜査記録をあらかじめ読んでいるわけであって、刑事裁判以上に少年に不利益な審判構造を維持して、さらに検察官の審判出席を認めて、さらに不服申し立て権を認めていくというと、どうも適正手続という観点から問題があるのではないかなという懸念を持ったわけであります。
 そこで、民主党案の事実認定手続についてお尋ねをしたいのですが、ほかの裁判官による対審構造を基本としていますが、この点について御説明をお願いします。
#27
○平岡委員 お答え申し上げます。
 この少年審判におきます事実認定手続ということについては、これは被害者の方々も言っておられたわけでございますけれども、真実が何であったのかということをまず知りたい。あるいは、そうした正確な事実認定に基づいて、少年に対する反省を促す、あるいは少年の更生への意欲を本当の意味でわき立たす。そうした意味で、正確な事実認定というものがやはりすべての始まりであろうというふうなことを、被害者の方々も含めて皆さん言っておられるわけでございます。
 そういう点について見ますと、与党案のような形でやったのでは本当の意味での真実の発見ということは難しいのではないか。真実の発見という点についていえば刑事裁判手続というものが非常に大きな参考になるということでありまして、これまでの長い歴史の中で、真実を見出すためにはどういう手続が必要なのかという観点から、裁判官の予断の排除、あるいはさまざまな証拠法則の採用、こうしたものがあってこそ本当に真実というものにより近いもの、あるいは真実そのものがわかってくるということであろうということから、基本的には、この民主党案では、そうしたさまざまな刑事手続における原則というものをできる限り盛り込むという形で今回の規定を設けたわけでございます。
 それともう一つは、与党案では、検察官の抗告申し立てというものが事実認定に対して行われているのか、あるいは最後に行われる処分に対して行われているのか、これは法文上ははっきりしているわけなんですけれども、実態面としてはなかなか判断がつきにくいような場面が、実質的には処分に対して抗告を申し立てることが認められるような形にもなっていると思いますけれども、その点、民主党案におきましては、事実認定は事実認定として完結をする、そして、その事実認定についてのいろいろな問題点がある場合には検察官の抗告も認めるというような形で、事実認定は事実認定として完結し、そしてそれに基づいたさまざまな処分の決定については裁判官が行っていくというふうに分離をしているわけでございます。
#28
○野田(佳)委員 少年法の適用年齢の見直しについてお尋ねをしようと思ったのですが、昨日同様の質疑があって、今与党においては引き続き検討というお話がありましたので、これは質問はいたしません。
 一方で、民主党の方では、十八歳成人法案の提出を準備されているということでありますが、この概要について御説明をいただきたいと思います。
#29
○枝野委員 お答えを申し上げます。
 民主党では従来から、特に選挙権年齢、被選挙権年齢を中心にして、現在二十歳という成人年齢が適正かどうかということについて議論をしておりました。そうした中で、今の社会情勢から考えますと、あるいは諸外国との対比を考えましても、十八歳をもって成人とし、選挙権、そして我が党では被選挙権も含めてもいいんじゃないかという議論もしておりますが、そういう議論が従来ございました。それに加えまして、近時の、一部ではありますけれども大変凶悪な少年犯罪という状況の中で、少年法の適用年齢がいいのかどうかという議論も沸き上がってきました。
 我々は、選挙権という権利を大人として認める以上、義務、責任の方も大人として認めるということは当然の議論として含まれておりましたので、この際、選挙権年齢、少年法の適用年齢、そして当然のことながら、あわせて民法での成人年齢、あわせて十八歳を成人とするという法案を用意いたしております。きょうあすじゅうには提出をできるのではないかというふうに思っておりますので、その節には、よろしく御理解をお願い申し上げます。
#30
○野田(佳)委員 久しぶりの質疑だったので、かなりさびがついていたみたいで、時間配分がちょっと慌ただしくなりまして、法務大臣、最後までお待たせしまして、本当に御無礼をいたしました。
 これまで、与党案についてと、そして民主党提出の修正案についてお聞きをいただいていると思いますが、総括して、民主党修正案についてどのような御所見をお持ちでしょうか。よろしくお願いします。
#31
○保岡国務大臣 民主党所属議員提出の修正案、もう本当に、お取りまとめになられた御努力には心から敬意を表しますし、また、昨日からの御議論を聞いていて、やはり与野党でこういう問題はよく議論を尽くしていかなきゃいけないな、そういう印象を非常に強く持ちました。
 しかし、例えば少年審判の事実認定手続に当たって、少年の身柄をかなり長期間勾留できる制度になっております。こういったことや、少年審判に刑事訴訟手続に準じた事実認定手続を導入しようとされている工夫があるわけですが、こういったことは、先ほど来与党の提案者からいろいろ比較をして御説明や御意見もありましたが、事件の早期処理、それから形式的にならないように柔軟に対応できる少年事件の特性、あるいは少年の保護の観点などから、私としては問題があるところもあるんじゃないかというふうに感じました次第でございます。
#32
○野田(佳)委員 このように、せっかく与党案の審議が進んで、また、ようやく修正案についての審議が始まったというところでございますので、いろいろと与党、野党の考え方の違いを精査をしながら、より多くの国民の皆さんに納得をしていただける少年法というものをつくり出していくという姿勢が必要だろうと思いますので、改めて、これから慎重な審議を引き続きやっていただきたいというふうに思います。
 では、最後の質問になりますけれども、法務大臣におかれましては、これもきのうの何人かの方からの御質問にお答えがあったんですが、十月十日の法務委員会で、この少年法の改正に絡んで、憲法改正や教育基本法の見直しに言及をされています。私自身は、憲法論ももっと大いにやってしかるべきだと思っています。民主党は一応論憲という立場でありますが、私はかなり改正に近い立場を持っている者であります。
 その意味で、せっかく憲法論を持ち出すならば、やはり具体的にここが何が問題で、そしてこれをどう改正すべきだというのがあって初めて、具体に入って初めて憲法論が進むわけです。議院内閣制を改めて首相公選を実現しよう、だから憲法改正であるとか、環境権とかプライバシーとかという新しい人権概念が抜け落ちているからそれを入れようとかという具体の話があって憲法改正の話は本来は進むべきであって、漠然と改憲、護憲、論憲という区分けは意味がないと思っているんです。
 その意味では、大臣のお話がどうしてもちょっとわかりにくいのは、政治家個人としての見解と言いながら踏み込んだ具体のお話がない。今の憲法のどこに問題があって、そしてどうしたいのかというイメージが出てこない。森内閣の一員だから具体的には言えないとおっしゃるんですね。だったら、この少年法の改正論議であえて憲法に触れる必要は全くなかったんじゃないかという疑問を持っているんです。その辺、改めてお伺いをしたいと思います。
#33
○保岡国務大臣 いろいろ私も、憲法改正については閣僚として慎重に発言をしなきゃならないということを皆さんからも御指摘を受けましたので。
 私としては、少年非行犯罪は社会の鏡という側面がある、しかも少年法という重要な対応を柱とはしていますけれども、その他幅広く深く議論をする必要がある。
 そういう観点からすると、やはり社会の戦後のありようというものを基本的に、根本的には考えなきゃならないという認識を持って、先ほどもお話し申し上げましたように、権利や自由、平等、これは非常に大事だ、そういう憲法の基本原則は非常に重要で、とうといものであって、そういうことも大事であるが、その反面、権利や自由というものについては義務や責任、全体と個の関係、社会性、こういった社会におけるルール、規範意識というものに関連する議論を尽くすべきだ、そういうものをもっとしっかりしないと、この国は将来においていい社会にならないんではないか、その辺はやはり憲法、論憲として十分議論を尽くしていくべきだ、そういう政治家としての考え方を申し上げたつもりでございます。
#34
○野田(佳)委員 その点について大いに議論をしたかったのですが、終了となりましたので、質問を終わります。どうもありがとうございました。
#35
○長勢委員長 山内功君。
#36
○山内(功)委員 民主党の山内功と申します。
 廃案になりました政府案では、十六歳以上の原則逆送はしない、現行法のままであったと思います。だから、かわりに検察官の関与を導入した。ところが、与党案は十六歳以上の原則逆送を盛り込み、重大事件については刑事裁判にかけられるのですから、そもそも検察官の関与は必要なかったはずです。
 内容の是非はともかくとしまして、この点について政府案と与党案は拙速に、十分な議論もなく作成された感じがするんですが、どうでしょうか。
#37
○麻生議員 この点が足りぬのではないかという御意見があろうかとは思いますけれども、自由民主党なり与党三党といたしましては、かなりの時間、内容をいろいろ勉強させていただいた上でこういった形にさせていただいておりますので、拙速というような感じではない。
 私も、先ほど野田先生から御指摘ありましたように、法務委員会などというものに出てきて、わからぬ単語を使われて、たまに頭が痛くなるなと思いながら、この一連の与党プロジェクトチームの中も、これは弁護士関係の方が多いものですから、使われる単語は結構難しい単語が多かったので、それなりに随分勉強もさせていただきましたけれども、参考人等々、いろいろ勉強をさせていただいた上での結果でありまして、ぱっぱというような感じのやっつけ仕事のようなイメージではなかったと思っております。
#38
○山内(功)委員 原則逆送の要件として「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」という要件がございますが、この中には傷害致死、逮捕監禁致死、遺棄致死も入るわけですか。
#39
○谷垣議員 入ります。
#40
○山内(功)委員 同意堕胎致死、それから自殺関与罪、これも入るんでしょうか。
#41
○谷垣議員 今お挙げになった中で、自殺関与罪は入らないと思います。
#42
○山内(功)委員 同意殺人罪はどうですか。
#43
○谷垣議員 入ると思います。
#44
○山内(功)委員 殺人未遂罪でも、ほぼ脳死の状態にまで被害者を陥らせても未遂罪ですが、それでも死刑や無期の適用があるわけです。それに比べると、例えば同意堕胎致死とか、この法定刑は五年以下と低いですし、同意殺人についても自殺関与罪と同じところの条文に書かれているにもかかわらず、与党の中でもこれは入れる、これは入れないという議論がある。
 構成要件というのはどういう事実が犯罪になるのかということをもう少しきちんと決めていないといけない。例えば殺人に限る、そういうような構成要件にする、そういう考えはないでしょうか。
#45
○谷垣議員 私どもの案は、まず一つは、生命をあやめたというその結果の重大性に着目しております。しかし、単に生命をあやめたという、いわゆる過失致死罪というようなものを取り上げておりませんのは、やはり、故意である犯罪行為をして結果として人の死に至らしめたという重大性に着目しようとしたわけでございまして、その点については、今山内委員が御指摘になるような境界のあいまい性というのはないと私は思っております。
 したがいまして、今故意の殺人罪だけに絞るつもりはないかというお問いかけですけれども、実態を見てみますと、殺人の故意の認定というところにもかかってくると思いますが、例えば大勢の少年が被害者を取り囲んで素手で殴りつけて結果的に死に至らしめてしまった、こういうようなことを仮に想定してみますと、事実こういうような案件は少年事件にはしばしばあるのだと思いますが、凶器に牛刀を使っているとかあるいは日本刀を使っているということになれば殺人の故意は極めて実務的にも認定しやすいと思いますけれども、素手で大勢で殴りつけて死に至らしめたというようなことは、仮に故意があるかどうか、内心的な事実ですから、なかなか認定しがたい場合があるのではないかなと私は思います。そういうような事件を全部例外にしてしまっていいのかどうかなという判断が私どもにございまして、今の私どもの案のような規定の仕方になっているわけでございます。
#46
○山内(功)委員 最高裁の方にお聞きします。
 廃案になりました政府案では、観護措置期間が十二週間となっておりました。この十二週間という期間の設定については、四週間から十二週間に期間を延ばすことについては最高裁の御意向もあったと聞いているのですが、どうでしょうか。
#47
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 さきに提出された内閣提出法案に至る経過といたしましては、その前提として法制審議会での議論がございまして、その法制審議会に私ども委員として参加した機会におきまして、観護措置期間についての延長の必要があるという実務の要請等を意見として申し上げたことがございました。
 以上でございます。
#48
○山内(功)委員 山形マット死事件では、三十週間ぐらい審理にかかっております。綾瀬事件では十八週間。これらは当然、観護措置期間が過ぎますと在宅になって審理が続けられたということなんですが、そうしますと、例えば一方では、共犯にある少年たちが口裏を合わせるのじゃないか、真実の追求という点ではそういう危惧がある。そういう観点からしますと、与党案の最長八週間ということでも不足であるというふうに最高裁は思われないですか。
#49
○安倍最高裁判所長官代理者 事案にはいろいろ多様な事案があると思われます。その意味において、その審理のために要する期間についても多様性があろうかと思います。そういった観点から、今回の提出された法案におきましては、観護措置期間を八週間まで延長することを容認するというお考えに立っているものと理解しているわけでございますが、この法案が実現した場合には、それ相応の審理の充実化に資することは間違いないと考えている次第でございます。
 ただ、事案においては、八週間以内においても十分な審理が尽くせない場合もあることはあるだろうというふうに考えている次第でございます。
#50
○谷垣議員 先ほど委員の御質問の中で、これが原則的逆送の場合に当たるかどうかといろいろな罪名を挙げてお尋ねになりました。私、ちょっとあのとき、刑法二百二条の条文をよく見ないでお答えしてしまったのですが、今見てみましたら、自殺関与それから同意殺人、いずれも要件に該当する、このように答弁を訂正させていただきたいと思います。
#51
○山内(功)委員 そうでしょう。だから、構成要件が不明確なんですよ。
 与党案では、観護措置期間をどういう根拠で八週間とされたのですか。
#52
○麻生議員 先ほど最高裁から御答弁申し上げましたように、十二週間という政府原案というのがあったのですが、これは与党の中でもいろいろ意見の分かれたところでした。
 先ほどの山形のマット死事件の話ですけれども、少年の供述が後からどんどん変わったりいろいろして、話が随分込み入って、単独犯じゃない場合、複数犯の場合はなかなか取り調べに――御存じのように、そちらも弁護士をしておられたのでおわかりだと思いますが、少年であるとたびたびずれるわけです。そういったこともあって、かなりの時間を要するというケースもあり得るので、十二週間という説も、いろいろ言われた方も多かったのです。
 しかし、現状は四週間、それを一挙に三倍というと一学期丸々なくなってしまう、時間的にはそういうことになりますので、そういった意味では、御意見もいろいろありますので、今の段階としては八週間、四週間の場合は少なくとも倍という時間でまずはやらせていただいてみて、これでもどうしても足りないという事件がいっぱい多く出てきた場合は、その段階において改めてもう一回再検討するということも考えにゃいかぬかなということで、これはなかなか意見の調整が難しかったところでありますけれども、最終的に八週間で合意したというのが背景です。
#53
○山内(功)委員 例えば、八週間とした場合でも、四週間目に少年が否認に転じる場合もございます。そうしますと、残されたのはあとの四週間しかない。つまり、現行法と同じ期間しかない。しかも、八週間目に付添人弁護士を選定したり、あるいは記録の閲覧、謄写、弁護方針の決定、そういうことからしますと、それは八週間でも足りないということにもなるのじゃないのでしょうか。
#54
○麻生議員 決してそういったケースがないわけではないと思います。
#55
○山内(功)委員 つまり、私は、先ほど最高裁の方が言われましたように、審理を充実すればいいということならば現行法の四週間で十分対応できることだと思いますし、例えば司法改革でこれから毎年弁護士が三千人ぐらいの規模でふえていく。今まで日程が入らないのはいわば弁護士の責任だった部分もあるので、そういうことからしますと、弁護士の増員ということになれば、それでまた対応できる部分もあると思うんです。
 ですから、八週間というのが明確な根拠じゃなくて、十二週と四週の真ん中をとったのだというような議論ならば、その部分についてはもう少し慎重な御議論も必要じゃないかと思っております。
 次に行きます。検察官関与の点についてお話しさせてください。
 今、裁定合議事件をとりますと、五坪ぐらいの審判廷に、裁判官三人、検事一人、付添人、書記官、調査官、廷吏、少年、少年の保護者、計十人入ります。こういう雰囲気の中で和やかな審理というのが、提案者としてちょっと想像できますでしょうか。
#56
○麻生議員 御指摘の点、もっともだと思います。事実、あの部屋は極めて狭いということで、また審理が行われる場所に仮に傍聴人が入ろうといったって、そこは壁しかないようなところなので、弁護士をしておられるのでよく御存じのとおりなんです。そういった意味では、場所のスペースに関しては多々問題があるという御意見は結構出た意見でありました。これは正直なところです。
 したがって、被害者側の保護者、いわゆる両親等々をその席に立ち会わせるという意見についても、それは場所的に無理という、余りにも加害者と被害者の家族の距離が近過ぎる等々の話も出たところでもありますので、言われた点に関しましては、場所の狭さにつきましては、これはいわゆるハードの面からいえばいろいろ問題があるという御指摘は正しいと思っております。
 しかし、現実問題としては、それが今の現実でありますので、極めて難しいとは思いますけれども、その中で裁判官の主宰のもとに少年法の趣旨にのっとった裁判が行われるように、裁判所が主宰者として、第一条に外れることのないように裁判を執行していかねばならぬという能力が問われることにもなろうかと思います。
 場所をいきなり広くしろと言われても、全国それほど場所が今すぐあるわけではありませんので、現実問題からいうと、すぐにそれをと言われてもなかなか難しいと思いますが、場所がある程度問題がある点は御指摘のとおりだと思っております。
#57
○山内(功)委員 そもそも、検察官が刑事手続ではなくて保護手続の中に関与をするということについて、検察官をどういう存在として家裁の審理に関与させようと考えておられるんですか。
#58
○漆原議員 それは審判の協力者という格好で、今も少年法では、弁護士の付添人も審判の協力者という立場で少年審判に関与しているわけでございますが、同じ立場で、裁判官の主宰をする審判の協力者という観点で関与する、こういうことでございます。
#59
○山内(功)委員 審判への検察官の関与の要件としましては、否認事件でなくても検事が関与できるということになっておりますね。そうしますと、否認事件でない事件について検事が関与するということは、量刑についてにらみをきかすという立場で関与されるということになるんでしょうか。
#60
○谷垣議員 先ほど漆原さんが御答弁されましたように、あくまで審判に対する協力者でありまして、にらみをきかすというような立場で参加するのでないことは明らかでございます。
#61
○山内(功)委員 例えば、否認事件の場合には、検察官は否認している少年を弾劾するために証人申請をして、そしてその場合には、主尋問は検察官がするわけですか。
#62
○谷垣議員 これは、二十二条三項に書いてございますように、職権主義的な構造をとっておりますので、あくまで裁判長がその判断をして指揮をしていく、こういうことだろうと思います。
#63
○山内(功)委員 裁判長が指揮をして、まず検察官、主尋問しなさいということになれば、まさにそれは対審構造になると思います。そうしますと、先ほど野田議員が言いましたとおり、真実を追求するために、検事と弁護士が職業観をもろに発揮して、少年の前で、十人のいる小さな部屋で自分の職業生命をかけて、法律用語を闘わせてシロかクロかを厳しく尋問する、それが少年の保護手続の中で与党の提案者の皆さんがイメージされている審判の姿ですか。
#64
○麻生議員 基本的には、少年法の第一条というところを正しく理解されている人がその席に入ってこられるはずであります。これがまず第一点。
 二つ目、今言われましたような点、検察官と弁護人がわんわん法律用語を闘わせるというような状況になったときに、少年法二十二条の三項というところで、裁判官が裁判を主宰するという点が書いてあります。今でもそういったときに、弁護人がついたときには、裁判官の命令で、弁護人、そういったような話はここでしないで外に出てというようなことはやられておるのです。裁判官が主宰するというのを第二十二条の三項でつけ加えているのはそういう背景でありますので、今申し上げたような状況が起こらないためにつくらせていただいたというように御理解いただいて、私どもとしては、なるべくそういった状況が起きないようにするために配慮したというように御理解いただければと思っております。
#65
○漆原議員 今の質問で、審判の証人調べ、少年本人の尋問、どんなふうなイメージをされているかという御質問ですが、検察官が関与された場合には、必要な証人調べが行われます。この場合は、刑事訴訟のように主尋問は検察官からということには必ずしもならない。裁判所が主導的にまず尋問を始めて、そして検察官が補充的に尋問を行うということも、最終的には裁判官の判断ですが、私はそういう場合も十分あるだろうし、またその方が望ましいのではないかなと考えております。
 また、少年本人の尋問もなされると思いますけれども、これも同様な格好になろうと思います。
 これらの証拠調べは、あくまでも非行事実の認定に資するために、その必要な限度で行われるということでございまして、事実認定について検察官が意見を述べることがあると思われますが、少年の処分に対して検察官があれこれという意見を述べることはないというふうに承知しております。
 以上でございます。
#66
○山内(功)委員 私がこの質問をするということは、昨日聞いておりますと、検察官は被害者の立場を代弁する資格で出るというような答弁をされるものですから、それは違うんじゃないのと思うんですよ。やはり公益の代表者で法の適正な適用を行っていく、そのために検察官が出ていただきたいんで、被害者側の立場に立って少年を詰問するというようなイメージは、それは保護手続としては合致しないと私は思っております。
#67
○麻生議員 基本的な御理解はそれでよろしいんだと思います。私どもそういった理解をいたしております。
#68
○山内(功)委員 抗告受理申し立て権について少しお伺いします。
 まず、基本的な概念として、「決定に影響を及ぼす法令の違反」とはどういう場合を指すんでしょうか。
#69
○谷垣議員 抗告受理申し立ての要件は、「決定に影響を及ぼす法令の違反」というふうに書いてございますが、これは刑法とかそのほか実体法の適用の誤り、それから事実認定に関する審判手続の法令違反、この二つを意味しているわけでございます。
 それから、「決定に影響を及ぼす」というのは、もしそういう違反がなかったら最終的な結論が変わるであろうというような場合を意味しているということでございます。
 それで、もうちょっと敷衍いたしますと、実体法の適用の誤りとしては、例えば、事実を正しく認定しながらこれを適用する法令を誤ったような場合が考え得ると思いますし、またもう一つの、事実認定に関する審判手続の法令違反というようなものは、例えば、今回私どもが出しております改正案が通りました後、改正後の制度のもとにおいて、検察官の関与を決定しながら、弁護士である付添人を少年に付さずに審判を行ったような場合が例として考え得るだろうと思います。
#70
○山内(功)委員 今の答弁を前提といたしますと、まさか、原則逆送をしなかったから重大な法令違反ということで抗告を申し立てるということはないわけですね。
#71
○谷垣議員 昨日も御答弁を申し上げたんですが、そのことでもって今の抗告申し立ての要件に当たるというわけではありません。
#72
○山内(功)委員 では、次の要件であります「重大な事実の誤認」というのはどういう場合を指して法文化されたものでしょうか。
#73
○谷垣議員 「重大な事実の誤認」、これは、事実の誤認は事実認定の誤りでありますが、重大なというのは、そういう誤認がなかったならば最終的な結論が変わるであろう場合、こういうふうに定義できると思います。
#74
○山内(功)委員 杉浦議員にお聞きしたいと思います。
 十月十日の発言についてでございますが、検察官が関与するという場合には、一つは事実認定の問題もあります、それからもう一つは、佐賀の十七歳の事件、だれもおかしいといって訴える手段がない、だから抗告申し立て権を認めるべきだという言い方になっていると思うんですが、この発言自体について、杉浦議員の方で釈明される点はございませんでしょうか。
#75
○杉浦議員 昨日、平岡議員の御質問にもお答えしたところでありますけれども、佐賀のあのバスジャック事件につきましては、地元へ帰りますと、なぜあのような事件を逆送しなかったんですかという質問もいろいろな方からお受けいたしますし、私としても、決定に重大な影響を及ぼす事実誤認の疑いがあるんじゃないかと強い疑いを個人的に持っておるものですから、それを背景にしてああいう発言になったわけでございます。
 どういう場合に法令違反となるか、重大な事実誤認はどうかというような点については、谷垣議員の御答弁のとおりでございます。
#76
○山内(功)委員 私は、提案者がここで答弁されることは、その立法について提案者としての見解を述べる、それがこの場だと思っております。一政治家としての意見は、やはり提案理由を私たちが聞く場で述べられるべき問題じゃないと私は思います。
 そうしますと、杉浦議員の御見解でも、医療少年院送致が低いから少年刑務所行きを目指して抗告受理の申し立てをするということは、この与党案でもないんですか。
#77
○杉浦議員 私が法務大臣であれば個々の事件に触れて言うことはなかったと思いますが、議員の立場で提案者になっておりますので、一政治家として個々の事件についての私見に触れたわけでありますが、いろいろな方から御注意を受けておりまして、今後はそういうことをしないようにと思っております。
 もちろん、医療少年院送致という決定が不満、不服ということで抗告受理の申し立てができないというのは、谷垣先生の御答弁のとおり明らかなことであります。
#78
○山内(功)委員 抗告受理の申し立てをした場合に、原審である家庭裁判所の処分については、執行停止の効力はあるんですか、ないんですか。
#79
○谷垣議員 ありません。
#80
○山内(功)委員 そうしますと、例えば、家庭裁判所の判断で不処分で外に出ていた少年について抗告受理が受け付けられて、抗告審で逆送、少年刑務所、そういう判断が出たら、またその少年については少年刑務所行きになるわけですか。
#81
○谷垣議員 それはおっしゃるとおりだと思います。
#82
○山内(功)委員 それでは、家庭裁判所で少年院送致という決定が出て、抗告審がちょっと延びたから少年院の満期が来た、そういう少年についても、抗告審で逆送、少年刑務所行きというのが出れば、その子供に対しても新たなそういう処分が下されるのですか。
#83
○谷垣議員 今おっしゃったとおりだと思います。
#84
○山内(功)委員 執行停止の効力を付与することがいいのかどうかについては私も定見を持ちませんが、今のような事例は酷だとは思われないですか。
#85
○麻生議員 これは、山内先生、見解の相違なんだと思うのです。酷か酷じゃないかというところは見解の分かれるところだと思いますが、少なくとも事実誤認に基づいて抗告ということで、罪の重さ軽さで抗告できるわけではありませんので、事実誤認ということになって、検察官によってもう一回裁判ということになって、それで事実が正確にはっきりさせられた場合は、その罪に服するというのは当然なことなのであって、それは子供にとってきついと言われることになるかもしれませんが、それは犯した罪がそれだけ重かったというように理解しないと、なかなかこの種の話は難しいのじゃないかと私どもは思います。
#86
○山内(功)委員 言うまでもございませんが、少年審判の手続としては、非行事実の認定手続と処遇の決定手続の二つがございます。問題は、今の職権主義的な構造の中でこの二つをともに行おうとすることから無理も出てくる場面もあるのじゃないかと思います。
 確かに、今の家裁の非行事実の認定能力に対して、国民の不満やいら立ちは多分大きいとは私も思います。まして、被害者の方でしたらそれ以上でしょう。与党案は、その不満やいら立ちをバックに、検察官を登場させたり逆送をふやそうという考えのように聞こえます。しかし、それによって、与党案によって失うものがもしあれば、それもまた大きな損失じゃないでしょうか。
 要は、冤罪をつくり出してはいけないし、犯罪の隠ぺいを許してもいけない。それには、いかにしてフェアに真実を追求していけるのかという視点が重要だと思っています。被害者の方も国民も、まずその真実の追求を望んでいると思っています。
 そのためにも、非行事実の認定に限って対審構造を導入し、ここに検察官と弁護士も加わってフェアに真実を追求することが一つの方法として求められているのではないかと考えますが、民主党の修正案提案者より、この点についての見解と、修正案が与党案、政府案に比べてもこれほどいい案だというようなこと、お話をお伺いしたいと思います。
 修正案の提案者、お願いします。
#87
○平岡委員 お答えいたします。
 先ほどの与党案の御答弁の中に抗告の申し立ての話が出ましたけれども、私がその法文をちょっと見てみますと、あくまでも事実認定に関して抗告の申し立てができるという形になっているにもかかわらず、抗告審に行ったときに、決定の内容についてまでも抗告裁判所が判断をするというような形になるというのは、法律の構成としていかがなものかなということを若干感じました。
 ということは、我々の民主党案でまいりますと、検察官が関与する形で行われる事実認定手続というのは、あくまでも事実が何であったのかということをはっきりさせるためのものであって、裁判官がその事実認定に基づいて行った決定に対して行うものではないということをはっきりとさせた手続として、我が案の方がすぐれているのではないかというふうにまず思っております。
 さらに加えまして、当初から御説明申し上げていますように、被害者の方々を含めて、こうした少年事件について一番言われているのは、やはり真実をはっきりさせてほしい、そうした真実に基づいてこそ初めて少年の本当の意味での反省もあり、そして更生への意欲もわいてくるものであるということでございまして、真実を発見するのにどうした手続が適しているのか、そうした観点から見た場合には、裁判官の予断の排除あるいは証拠法則に基づいた手続をとるということが最も適しているのではないか、そういう考え方に基づいて民主党案を提案させていただいているところでございます。
#88
○漆原議員 先ほど委員から抗告のことについてお話がありましたので少しつけ加えさせていただきますが、少年法の三十四条で、抗告をしても当然には執行の効力は停止しない、これは少年が抗告しても同じでございまして、検察官抗告受理も同じでございます。
 ただし、先ほどいろいろな事例を申されましたが、この条文のただし書きにおいて柔軟に適応できるという条文になっておりますので、このただし書きにおいて適宜柔軟な措置がとられるというふうに考えております。
 以上でございます。
#89
○山内(功)委員 大臣や法務省の方には、わざわざお越しいただきましてありがとうございました。ちょっと質疑の時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#90
○長勢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
#91
○長勢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、谷垣禎一君から発言の申し出がありますので、これを許します。谷垣禎一君。
#92
○谷垣議員 先ほど、山内委員の、抗告があった場合、高裁でいろいろ判断が出たような場合に、執行停止や何かのいろいろな関係があって、処遇はどうなるのかという御質問に対しまして、私の御答弁申し上げた中に若干舌足らずなところがございました。
 一つは、先ほど漆原委員がおっしゃいましたように、三十四条によって、原則は執行停止の効力はないけれども、ある一定の要件のもとで執行停止が行えるということがございます。
 それからもう一つ、すべて少年事件の判断は家裁で全部行う、最終的な結論は家裁で出す、こういう仕組みになっておりまして、高裁の場合に、抗告が出ましても、破棄をすることがあっても自分で判断することはない、家裁に差し戻す、こういうことになっております。その場合にも二週間以内に抗告をしなければいけないわけですが、今までの実務の扱いも、少年事件は最優先で高裁で判断するということをやっていたようでございますが、そういう仕組みのもとで行われるということを補足させていただきたいと思います。
#93
○長勢委員長 質疑を続行いたします。水島広子君。
#94
○水島委員 この少年法が制定された当初に比べますと、凶悪犯罪も含めまして少年犯罪は格段に減少しているわけですけれども、一九九六年以来、少しずつ増加の傾向にございます。まず、この原因をどのように考えていらっしゃるか、法務大臣にお伺いしたいと思います。
#95
○保岡国務大臣 少年刑法犯全体の検挙人員の推移を見ますと、少年法が制定された昭和二十年代、昭和二十六年をピークに十万人台から十六万人台で推移していましたけれども、その後二度のピークを経て、最近は、水島委員御指摘のとおり、平成七年を境に増加の傾向に転じて、二十万人を超えて推移しておるところでございます。
 少年による殺人、強盗、放火及び強姦という凶悪犯の検挙人員も、平成七年を境に増加の傾向に転じて二千人を大きく超えており、また近時、少年による凶悪重大事犯が相次いでいることは憂慮すべき事態であると考えています。
 こうした少年による犯罪の増加、悪化の原因については、少年非行には家庭、学校、社会環境など多くの要因があって、これらが複雑に絡み合っている上、個々の事案にもまた特有の事情もございますために一概に申し上げることは困難でございますけれども、最近の少年の特質としては、規範意識が低下している、対人関係が希薄化している、抑制力の不足や短絡的な行動傾向が指摘されておりまして、これらもその一因として指摘できると思います。
#96
○水島委員 今、規範意識の低下ですとか対人関係の希薄化ですとか、そのようなことをおっしゃられて、それが少年犯罪の増加の要因というお答えであったわけですけれども、子供たちがそういうふうになっているという原因をどのように分析していらっしゃるかということをお伺いしたいと思います。
#97
○保岡国務大臣 それは、先ほど申し上げたように、いろいろ要因が絡み合って、複雑に関係し合って醸成する社会の背景もあれば、また直接的には、よく一番問題にされるのは家庭のあり方に原因がかなりあると。それだけじゃなくて、やはり学校教育とか、先ほど申し上げたように、いろいろな少年を取り巻く身近な環境の中からいろいろ少年の問題が発生することが見られる、こういうことだろうと思っております。
#98
○水島委員 先ほどからお答えが複雑とかいろいろとか、そのような表現ばかりでございますが、それでは具体的に家庭や教育にどのような問題点があるのか。複雑な要因が絡み合っていると言っているだけでは、ではどういう対応が必要であるかということが導き出されないと思いますので、具体的に幾つかお答えいただければと思います。
#99
○保岡国務大臣 ここで私が少年非行犯罪の要因をきれいに体系立てて申し上げるということはなかなか難しいので大まかに言っておりますが、私個人として、特に法務省としてということではなくて、個人として、少年法の改正に絡んでいろいろ経験してきてみましたことから考えると、やはり私は、家庭においてのしつけとか、家庭における親の成熟度、規範意識、つい忙しいとかいうことになって子供を放置しているようなところがないかとか、あるいは、逆に何かを期待して非常に厳しいことを言って、子供の考えやまた意見というものをよく聞くということができていないのではないかとか、一般的に最近は豊かになっていますから、そういういろいろ親子の関係、こういったことなどが家庭における要因の一つの大きな問題じゃないかと思っております。
 また、学校においては先生と子供の関係、先生の資質にもよりましょうけれども、権威が非常に低下している。あるいは、先生自身、子供の状況を把握するための、心理学的なあるいはケア的な、多少なりともそういうカウンセリングのできるような資質とか、そういうものまでこれからは非常に大事にしていかなきゃならない点ではないかと思いますし、そういったあらゆる対応というものが総合的に整ってきて初めて少年法改正の趣旨も生きて、少年非行犯罪というものが減っていく傾向になるのではないかと思います。
#100
○水島委員 最後の部分についてこれから質問を続けさせていただきたいんですが、その前にちょっと、先ほど、豊かになっているので、親が忙しいからといって子供を放置したり、また過剰な期待をしたりする、そういうお答えだったんですけれども、豊かさとそういったこととの関係というのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#101
○保岡国務大臣 豊かな家庭からも少年非行犯罪が起こるということで、したがって、家庭が貧しいから、その困難さから、困窮さから犯罪を起こす要因というものが非常に大きかった戦後の一時期と違って、社会が豊かになっても非行、犯罪が起こるところにやはり問題があるのではないかという背景を申し上げたのであって、それが直接犯罪に結びつくということを、あるいは親のしつけの足りなさに結びついているとか、子供の意見を聞かないことに直ちに豊かさが結びついていると申し上げたつもりはありません。
#102
○水島委員 後ほど議事録をごらんいただくと、多分先ほどはそんな文脈で語られていたと思いますけれども、ただ大臣の真意が今のようであるということがわかりまして安心いたしました。
 そして、先ほど、このような家庭環境とか教育の環境が整ってくれば少年法の改正の趣旨が生かされるというようなお答えでありましたけれども、そうすると、今回の少年法改正というものは、先ほどおっしゃっていたような家庭ですとか教育現場ですとか、そういうところへの直接の影響や効果はないというふうにお考えということでよろしいんでしょうか。
#103
○保岡国務大臣 少年非行犯罪ということは、いろいろな要因が重なって、長い少年の育成の歴史とか家庭環境とか学校環境とか、いろいろなことが重なってきて発生していると思うのですよ。社会のいろいろな変容ぶりの中にその要因が見られるとか。あるいは、社会全体の、私は強く感じますけれども、自浄力とか自浄作用とか、あるいはみんなで注意し合ってそういう非行事件が起こらないようにする、そういう社会の力というんでしょうか、蘇生力、こういったものなども含めて、幅広く少年非行事件というものは深く検討していく必要がある。
 そういう背景をしっかりとらえた上で、また一方、少年法の改正も重要な対応の柱だ、そういうふうに認識しているということでございます。
#104
○水島委員 そうしますと、大臣は今回のこの少年法の改正には犯罪を抑止する効果を期待されているということでしょうか。
#105
○保岡国務大臣 そういう一つの要素になり得る、そう思っております。
#106
○水島委員 法律を改正してそれに何らかの効果を期待する以上はその根拠となるデータがあるのではないかと思いますが、そういうデータをお持ちでしたらお示しいただければと思います。
#107
○保岡国務大臣 データといいますけれども、そういうものを何か……。
 いろいろ総合的、体系的なしっかりした調査の結果、何をやればどういう効果がある、どういう要因がどういう効果を発揮するというようなデータはないんですよ。ただ、少年の矯正施設においていろいろな工夫をやっておりますね。そういった工夫がなされた後、再犯率、再入所率がどうであるかというようなことを、一定の期間の出所者を限定してその人たちの出所後の犯罪を犯したかどうかなどの調査によって、それをやる前と後とでは随分違う結果になったねというような、矯正施設における不断の努力の中の対応とその効果についてのそれなりの推測をしているデータはあったかと思うのです。
#108
○水島委員 この後お伺いしようと思っていたところに行ってくださったので、ちょっとそちらに進ませていただきます。
 そうしますと、今大臣がおっしゃっていたことは、例えばアメリカにはアミティという民間の犯罪者更生組織がございまして、その報告によりますと、普通の受刑者が出所後二年以内に再犯で再入所する割合が六三%であったのに対して、アミティのプログラムに参加して心理学的ケアを受けた人の再受刑率は二六%であった。同じようなデータをアミティはほかにも持っておりますけれども、恐らくこのようなデータのことをおっしゃったのではないかと思いますが、これはあくまでもグループワークの中で、心のいやし、自分が今までどのような生い立ちで育ってきて、どのような目に遭ってきたことが自分が犯した犯罪につながってきたか、そのようなことをきちんとみんなで確認し合える場を持って初めてその効果が出ているという、そのような場でございます。
 今大臣がみずからおっしゃったので、そのような知識は恐らくお持ちだったのだとは思いますけれども、このデータを踏まえまして、更生システムのあり方、またこれは少年院ではなく少年刑務所でも私は同じだと思いますけれども、今後日本の刑務所内でこのようなプログラムをしっかりと導入していくようなお考えはおありでしょうか。
#109
○保岡国務大臣 私が申し上げたのは、御指摘のあったアミティについてもいろいろ、これはアメリカの、一九八〇年代のアリゾナ州で設立された民間の更生施設を経営する非営利団体で、もともとはアルコールや薬物依存症のためにつくられた。しかし、現在はアリゾナ州とカリフォルニア州において受刑者や出所者の改善更生のためのプログラムを運営している。これで、こういう施設に入って教育改善をした人とそうでない人との比較もあることは承知しています。
 私がさっき申し上げたのは、それだけじゃなくて、我が国において、例えば川越少年刑務所における職業訓練修了者で昭和六十二年度に出所した者の出所年から三年以内の再入率は一八・九%、訓練を受けなかった者は三〇・七%。そういった例はほかにも挙げればあるのですが、そういう日本における矯正施設における関係者の研究、努力の結果も出ているということを申し上げたわけでございます。
 それから、今の御質問にもありましたが、それはもうもちろん心理学、教育学、あらゆる専門的な知見を活用して創意工夫をして、矯正処遇のより一層の充実を図っていくことは大切なことだ、そう思っております。
#110
○水島委員 そうしますと、また先ほどの質問に戻りますが、今回の少年法改正に犯罪抑止効果を大臣は期待されているかどうかという質問にもう一度ちょっと、中でどのような更生システムを行うかという、そちらの話ではなくて、今回の少年法改正に絞って、もう一度お答えいただければと思います。
#111
○保岡国務大臣 今度の少年法改正に犯罪の抑止力があるか、その点をどう考えているかという御質問ですか。
 その点については、一つは、少年にも、社会の一員ですから、ルールを犯した場合、特に重大な結果を犯した場合にはそれ相応の刑罰、処罰、けじめというものがあるんだということをわかってもらうということはとても大切なことで、そういうことに工夫がされている。
 それは、少年非行犯罪に対応する選択の幅を広げて、そしてケースによってはそういう厳罰もあるんだということを改正の内容としている点。
 それから、犯罪事実をしっかりと把握して、うそを言ったまま審判が終わらない。うそを言えば通るものだというような少年の甘い考えにつなげないためにも、また被害者の人権、気持ち、配慮ということから考えても、事案を正確にきちっと認定することはとても大切なことで、今申し上げた処遇あるいは被害者の気持ちにこたえていくためにも、やはり事実の認定の適正な手続というのは今度の少年法改正の重要なテーマになって、これも犯罪抑止の一つの効果を期待するものだと思います。
#112
○水島委員 今のお答えからも、結局のところ、大臣が少年法改正に犯罪抑止効果を期待しているか、またその根拠となるデータはお持ちでないということが私には理解できたと思います。
 本当に質問時間が限られておりますので、あと簡単に質問を続けさせていただきますが、できましたら、御質問したことにだけお答えいただければと思います。
 次に、今まで少年犯罪の加害者の中では、人を殺してみたかったなどとコメントするような人もおりまして、また、ビデオやゲームソフトや雑誌などと少年犯罪の関係を指摘する声も多いわけですけれども、この点についてどうお考えか、また、それに関する研究データをお持ちかどうか。
 また、今、業界の自主規制が十分な効果を示しているとは思われない状況にございますけれども、この点について法制化する必要があるかどうか、どうお考えかを教えていただければと思います。
#113
○保岡国務大臣 御指摘のような意見があることは承知しております。しかし、それも一つの見方とは思いますが、先ほど申し上げたように、少年の非行に至る背景は、もう極めて多くの要因があるわけですね。
 それは、少年が生まれてから犯罪を犯すまでの長い期間それを取り巻くすべての環境、広がる社会の問題など非常に広い意味でございます。そういうようなことで、一概にこれが原因で、それの因果関係をどう把握するかということは、簡単には言えないと思うのですよ。これはやはり科学的な知見を駆使して総合的に研究すべきところで研究する。
 例えば、家庭裁判所で、最近起こった重大凶悪事件について記録に基づいた研究をいろいろやってみよう、その中に、もしゲームソフトやビデオ、そういったものを見た少年がいて、それが大きな要因だとすれば、そこでそれがどういうことで犯罪につながるのかを研究する機会にもなります。また、文部省で、厚生省と協力して少年問題の総合的な研究を関係者と一緒にする、そういう中でも当然取り上げられて検討がなされるものと思います。
#114
○水島委員 ということは、今データをお持ちでないようですので、そのための研究推進の責任も大臣はお持ちだと思いますので、ぜひこれから積極的に各省庁と提携して研究を進めていただければと思います。
 そして、最後になりますが、犯罪を犯す少年は、自分が他人に認められていないという感覚を持っていたり、また他人との関係がうまくつくれないというような感覚を持っていると言われております。健全な自尊心とコミュニケーション能力がないということは一般の子供たちにも見られつつある現象でありまして、また普通の子供たちでさえ、自分も凶悪犯罪を犯すかもしれないというようなことを答えているアンケート結果もございます。
 昨日、法務委員会におきまして、法案提出者の麻生議員が、一部の特殊な少年たちのために普通の子供たちが犠牲になっているというような趣旨の言い方をしておられまして、普通の子供たちの心がだんだんと病んできている現状を考えますと、少年犯罪をそのようにとらえている方がこの改正法案の提出者であるということに、私は大きな不安を感じております。
 子供たちの自尊心とコミュニケーション能力の低下の原因と対策をどう考えるか、最後に大臣にお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
#115
○保岡国務大臣 先ほど言われたように、自己中心的で忍耐力が欠けているとか、人間関係が希薄で少年が孤立しているとか、面接時などの対応では比較的素直なんですけれども実行が伴わないとか、親が子供の生活を十分に把握していない、自分たちの都合を優先して子供との深いかかわりを持とうとしない、子供のわがままを許している。
 あるいは、この種の少年の保護観察に当たっては、社会福祉施設における社会奉仕活動に参加させたり、社会への適応を促進するための指導を行ったり、必要に応じて少年と家族との関係修復を図るための家族に対する援助を行ったり、いろいろな角度から、こういった問題については、矯正の施設においても、また学校との連携、その他関係機関との連携においてもいろいろ手を尽くして、少年非行犯罪に対して適切な対応ができるように努力をしているところでございます。
 結局は、人と人とのつながりにおいて、少年たちに自分が必要とされているというような実感を持たせる、そして大人が自分の成長過程において必要だったいろいろなこと、経験したことをよく話してあげるとか、そんないろいろな工夫を尽くしていく、そういうことにやはり少年は期待をしているんだと思いますし、少年の問題を克服する一つの手だてがあるのではないかと思います。
#116
○水島委員 大人が自分の経験を教えることも大切かもしれませんけれども、やはり自尊心そしてコミュニケーション能力をきちんと高めるためには、何といっても子供たちの意見を頭で考えて言わせる、そしてそれをまず大人たちが聞いていくという環境づくりが大切であるということはもう専門的にもほぼ確立されたことであると思いますので、ぜひそういう観点も踏まえて今後の対策、またいろいろととおっしゃっておりますけれども、そのいろいろの一つ一つをぜひ表に見えるような形で対策を私たちに示していっていただけますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#117
○長勢委員長 日野市朗君。
#118
○日野委員 私も人の子の親でございまして、子供を育てている過程でいろいろ悩みながらやってまいりました。また、自分の子供のみならず、友人それからPTA活動だとか町内会活動なんかもやってみて、本当に今は難しい時代になっているなというふうに思います。
 我々と今の子供たちの価値観との間にどうも埋めがたいギャップがある。これは、時代の移り変わりもありましょうし、それからいろいろな文化の変遷もありましょうし、難しいところなんでございますが、やはり少年法というのはそういう子供たちに対する一つの規範をつくっていくものでありますから、私はこの少年法というのは非常に大事に考えなければならないことだと思っております。単に、こういう行為があったらこういう不利益を科しますよというような考え方だけでは、これはどうもうまくいかないのですね。
 さっきから議論を聞いていますと、専門家が専門用語を使うのは余り評判がよくないようでありますが、私もできるだけ平易にお話をしたいというふうには思いますが、やはり必要なときには専門用語も使わざるを得ないということでございまして、私も私の考え方をお話ししたいと思います。
 まず、刑法を勉強するとき、イの一番に出てくるのが主観主義と客観主義の論争であります。教育刑なのか応報刑なのか、ここいらはその内容を説明せずにそのまま使わせていただきますが、私は、現在まで一般刑法については応報刑の理論がずっと先行していたと思います。しかし少年法は、これは教育刑ということでずっと貫かれてきているんだ、こう私は思うのです。
 そこのところに非常に大きなギャップがあって、少年が何か重大犯罪を犯す、そういう事例が積み重なる。そういうことになりますと、これは応報的な考え方がずっと出てくるわけです。やはりこういうことをやった子供にはちゃんと刑罰を科さねばならない、そして、これだけのことをやった子供にはそれにふさわしい不利益が科されなければならない、こういう考え方というのは、これはわからないではありません。世の中一般が、そういうふうにいろいろな力学が働いて動いていくということは、私はある意味では当然のことだと思う。しかし、我々がそういう動きに流されていいものであろうかという思いは、一方に常にあるわけでありますし、そのことを私どもは大事に考えていかなければならない、こう思うのです。
 そうすると、今度の少年法の改正というのは、かなり応報刑に傾いた、今までの少年法の流れを大きく変えることになる。小さな手直しではない、根本的な法律の精神にさかのぼったところに迫る改正であるというふうに私は思います。
 私は、本来であればこのような法律改正は、このような少年の現状、日本における大人たちの社会の現状、それから文化の変遷、こういったものをとらえて、そしてきちんとこれから少年をどのように取り扱っていくのか、これから日本の将来を担っていく少年たちをどのように取り扱っていくのかということでは、非常に大きな政策課題なんですね。日本の国の根幹に迫る政策課題であると私は思う。
 私は、本当はこれはきちんと法制審議会などの意見も聞き、いろいろなところの意見をさらに聞いて、そして、森内閣のこの部分に関する政策を明言するという形で閣法で出すのが至当である、そうであるべきだ、こう思います。しかし、これは自民党、公明党それから保守党、この自公保という形で議員立法として提案をされた。このようなことに対して大臣はどうお考えになるか。それから提出者はどうお考えになるか、御意見を伺いたいと思います。
#119
○保岡国務大臣 昨年政府が国会に提出した少年法改正案はことしの六月に廃案になったわけでございますけれども、一方、当委員会で少年非行問題に関する決議がなされて、それを踏まえた形で与党三党においてさまざまな角度から精力的に御議論を重ねられて、少年法改正法案が議員提案として提出されることになったわけでございます。
 その際、与党の立場から、さきの政府提出の法案の内容を考慮して、年齢問題などとあわせて、これを取り込んだ法案を提出されることになりましたことから、その御判断に従って、閣法としては提出しないというふうに政府としていたしたところでございます。
#120
○麻生議員 そういうお気持ちではないと思いますけれども、議員立法は大した法律じゃなくて、閣法の方が立派な法律ととられるような言い方をされるように聞こえないでもありませんので、今年の五月の法務委員会で、「少年に関する処遇の在り方等を含め幅広く早急に検討すること。」というのを受けまして早急にやらせていただいたというのが私どもの立場でありまして、そういった意味では、議員立法として、与党三党の間の協議でいろいろ、結果こういったことができたことは大変よかったと、自分なりにはそう思っております。
#121
○杉浦議員 簡明にお答えさせていただきます。
 委員が申されたような、教育刑か応報刑かという点で今度の改正案が大きく教育刑から応報刑に振れた、そういう意味では、全く基本的な変更だというふうには私ども考えておりません。
 今度の案は、実質的には廃案になりました少年法改正案を基礎といたしまして、それに相当手は加えております。委員の御指摘の法制審にかけるべきかどうかという抜本的変更については、年齢引き下げの点が一番だろうと思うわけでありますが、これらを含めまして与党三党で検討したわけでありますが、法務省の方で、年齢問題については、恐らく私どもの推測では、法制審での議論よりもむしろこれは高度の政治マターだから、国民から選ばれた議員間の議論で変更すべきかどうかを決めた方がより民意にも合致するし、時代の流れにも合致するということで、むしろ議員提案でやっていただきたいというようなお話もございましたので、議員提案というふうに準備させていただいた次第でございます。
#122
○日野委員 先ほど私も言いましたが、これは大きな政策変更であって、将来の少年をどのように処遇していくかということにかかわってくる問題でして、私は、これは内閣として今後の施政方針の中で強く打ち出されるべき事柄であるというふうに思います。
 少年法をめぐってはいろいろな議論がありました。選挙前にもいろいろな議論を随分重ねてきたところでありますが、どういうわけか選挙の前は閣法で出された少年法改正案は審議されることなく廃案になってしまった。それから急遽、選挙を控えて、総選挙前の五月になって与党側から、年齢引き下げ、それから原則逆送、ここのところはかなりきついです、こういったかなりきつい部分を盛り込んだ法案の準備がなされていったわけでありますが、私は、やはり選挙というのは世論をちゃんと意識しながらやらなくちゃいかぬということはよく知っています。ですから、世論に敏感でなければならないけれども、同時に、拙速であってはならないという考え方も持つわけですね。年齢の問題、それから原則逆送、こういう大きな制度の変更というのはもっと慎重に論議をすべき事項である、私はこういうふうに思っています。
 ある新聞なんかでは、これは選挙目当てじゃないか、こう言うわけですね。そこのところ、どうですか、ちょっとだけ。選挙目当てじゃなかったか、こういう声もあるわけで、ひとつ答えてください。
#123
○杉浦議員 廃案になりました少年法改正案が衆議院に提出されましたのは、たしか私が法務委員長になる直前でしたか、なってからでしたか、ちょっと定かじゃありませんが、私が法務委員長のときには既に継続をしておったわけであります。そのころから自民党には少年法問題小委員会が設置されまして、少年法改正案の内容について議論が始まっておりました。
 個人的な意見を申し上げて恐縮なんですが、私は、廃案になりました案を見まして、年齢問題が入っていない、これは現下の社会全体からの要請にこたえ得る内容ではないというふうに考えておりましたし、機会あるごとに、それは自民党の委員会においても申させていただいてまいったところであります。
 原則逆送の点、御指摘がありましたが、この点は自民党の小委員会の中でつとに問題になっておったテーマの一つでございます。ですから、自民党としてはにわかに出てきたという問題ではございません。原則逆送の問題は、現在の少年法の構造の中で、刑事処分相当は逆送するとなっており、刑事裁判した結果、保護処分相当と刑事裁判所が認めた場合は家裁に移送するという五十五条の規定が現実にあるにもかかわらず、実際問題として逆送率が低いとか、殺人事件でも二〇%から三〇%しか逆送されないという現実に対しまして、そのほかの凶悪事件、殺人、強盗、強姦、致死傷が絡んだ事件ですが、家庭裁判所を中心とする司法システムの対応が少し甘過ぎるんではないかという批判が自民党の委員会の中では非常に強かったわけでございます。
 この五十年の家庭裁判所の運用の中で、一たん刑事裁判を受けて保護処分相当の場合はまた戻ってくるという構造が予定されているにもかかわらず、それがうまく活用されていないといいますか機能していないという現実についての批判、それを踏まえまして、それでは家裁を中心とする、あるいは警察官、検察官というのがこの少年事件の前面にはあるわけでありますけれども、そういった司法システム全体でもう少し根本的に対応を変えてもらいたいという自民党、後には三党になるわけですが、議員の皆様方の議論の結晶といたしまして、逆送に関する原則と例外を逆転するという考えが生まれてきたわけでございます。
 ですから、構造自体を根本的に変えるというものではない。むしろ、ある見方からすれば、現在の少年法が予想しているその逆送、さらに移送というのを、事案に応じて、あるいは時代の変化に応じて、少年犯罪のある意味の凶悪化に対応してきちっと司法システム全体が機能するように手直しをしたんだというふうに私個人としては理解しておるところでございます。
#124
○日野委員 今のお話を聞いていますと、そういう議論はあったんだ、こういうことはよくわかります。我々もそういう議論はずっとやっておりました。しかし、私は、今までの家裁の人たちというのは、裁判官というのはかなりいい仕事をやっていたと思うのですよ。きょうは午前中、野田さんでしたか、いろいろなケースについてコメントを加えながら、そのケースそれぞれについての評価をやっておられたのですが、あれなんか、やはりかなりいい仕事をやっておられたということをよく示しているんだと思うのです。
 実は、私はやはり教育刑主義者でありまして、応報刑主義者じゃないのです。そのような目から見ると、やはり少年を教育する、保護していくという観点から見るならば、きちんとしたそれぞれの少年とその行動に対する評価をしてみて、そこで結論を出していく。これを逆送するのか、それとも保護措置をとっていくのか、これはその裁判官に任せるというのは非常に妥当なやり方なのであって、逆送率が低いということでもっと逆送をしてやっていこうというのは、まさに今までの少年法のあり方とはかなり違ってきたなというふうに感ぜざるを得ないところであります。
 「カリカック一家の系譜」という本があります。これは刑法を習うときは大体皆さん一応はその概要であろうとも目を通すのではないかと思いますが、北軍の兵隊さんが南部に攻め込んだときに売春婦との間で子供をつくるのですね。それから自分が、北部で自分の奥さんと子供をつくる。それがきちんと追跡をされていきまして、片っ方、南部で売春婦との間でできた子供たちというのは非常に犯罪者的な傾向が強い。犯罪者であるとか、また売春婦になるとか、そういうのが非常に強く出ている。一方、北部で自分の奥さんとの間にできた子供はみんなすばらしい社会のリーダーになっているという、これは非常に科学的な分析の結果があります。
 私は、そういう科学的な物の考え方、科学的な分析、そういうものに従って家庭裁判所が処分をどう決めるかというのは、これは非常に合理的であると思います。でありますから、一方的に、ああいう子供たちがこういう犯罪を犯しながら保護処分になるのはけしからぬではないかという考え方というのは、これは一方に偏した考え方だ、そういうふうに私は思っているわけですね。このことをやっていたら時間が何ぼあっても足りませんから、では次に移ります。
 この法改正で少年事件が減少するかどうかということについては、否定的な意見がほとんどでありましょう。じゃ、本当に少年犯罪を減少させる、まあなくなるということはないでしょうが、減少させるためには、何らかの措置がなければならない。その措置をどのように考えておられるか。これは法務省それから与党提出者に伺います。
#125
○保岡国務大臣 少年法の改正がなされた後も、改正少年法の運用状況や今後の少年による犯罪情勢等を見ながら、非行少年の更生、社会への復帰のための施策等については、幅広い観点から施策を進めるように努力していきたいと思います。
#126
○漆原議員 大先輩の日野先生にお答え申し上げますが、もうずっと議論されておりますように、少年の非行問題は少年法の改正だけではない、今後とも、次代を担う少年の責任感と自立心が醸成されて、その健全育成を図っていかなきゃならぬ、こう思っております。
 そのためには、文化、家庭、地域、学校などにおける少年の教育のあり方とか、あるいは児童福祉、精神医療、ケアなど、青少年の健全育成、非行防止、非行少年の更生そして社会復帰、そういうためのいろいろな施策が幅広い観点から議論されて、真剣な検討がされていく必要があるだろうというふうに考えております。
 以上でございます。
#127
○日野委員 法務大臣、さっき水島議員に対して、少年事件というのはいろいろ絡み合っていて、自分はその専門家ではないがということを言われながら、幾つか挙げられた。その中で、やはりどういうことをこれから法務省ではやっていきたいのだと。この少年法の運用の結果を見てなんという今のお話では、これはちょっと一つのビジョンに欠けるな。もっと、法務省としてどういうビジョンを持ってやっていくのでございますと。
 私が今も言ったように、きちんとした教育を少年たちに施していって、そして少年が再犯を起こさないように、そしてほかの少年たちもまたそういう非行に走らないようにというような、一つの方針がこう変わるわけなんだから、全部が変わるとは言いませんよ、大きく変わるわけだから、どのようなビジョンを今あなたとしては持っているのか、ちょっと言ってくださいな。
#128
○保岡国務大臣 言葉が足りなかったかもしれませんけれども、もちろん、先生が一つの大きなテーマにされている処遇における教育効果というものをこれからも重視する対応を求められての御発言だと思います。
 これから確かに、検察庁でまず少年事件をどうやって取り扱って適正な処理をするかという点においても、今度の少年法に関連して国会で貴重な議論を受けていろいろ工夫も必要でしょうし、また少年の福祉を害する事犯についてどう厳正に対処していくかという、捜査のあり方も一つの対応の仕方であろうと思いますし、矯正保護機能の充実強化という点においていろいろな角度から、教育効果、再犯にならないように、健全な社会人として更生していけるようにいろいろな手だてを尽くしていくことにさらに努力をしていく。
 私は、いろいろな対応を見ていて、日本の場合はそれなりに関係者がよく努力してきていると思います。いろいろ少年事犯が凶悪化したり、低年齢化したりしていることは、一つの大きな社会の背景があったり、総合的に取り組む。その中で、我々が所管している関係当局においても、また他の関係省庁ともいい連携をしていくことがこれを機会に進められればということで、先ほどのような答弁をした次第でございます。
#129
○日野委員 私も、刑罰による威嚇というのが犯罪を抑えるということを否定するものじゃありません。刑罰による威嚇も必要なことは必要です。ただ、それが根本的な解決になっているかということについてもちゃんと考えてみなくちゃいかぬだろうと思うんですね。とすれば、現在の少年をめぐるいろいろな状況、それから少年自身の心身の状況、状態、こういったものもきちんと見て、そして、その少年が犯罪に走らないように、非行に走らないようにするという、その根本的な原因に迫る一つの施策がとられなければならないだろうと私は思うんですね。
 先ほど漆原さんからいろいろお話がありました。与党の説明としてはあんなところなんだろうと思いますが、では一方、我々いろいろ議論をしてきた中に、現在の少年の精神的な弱さといいますか、体は発達しているけれども精神面が発達できないでいる、そんなふうなことも我々考えているんです。民主党の方で少年法の修正案を出しておられますが、この点についてはどのような見方をしておられますか。
#130
○佐々木(秀)委員 私どもとしては、今回の与党の改正案、これは前回通常国会で出された閣法を下敷きにしているわけですけれども、閣法から見られるのは、やはり保護主義から刑罰主義への傾向の度合いを深めるという点がどうしても払拭できないと思うんですね。しかし、私どもとしては、その対象となる子供たちの置かれている状況などを考えると、やはり保護主義という少年法の基本理念というのは、これはやはり維持されなければならないし、今後も大事にされるべきものだ。今までも議論がありますように、応報的な観点からだけでは子供たちの非行だとか犯罪というものをなくすることはできない、そう考えています。
 確かに、起こってしまった事件、そして、それによってとうとい命を奪われた、あるいは命を失われないまでも心身に大きな傷害を負う、そういう犯罪の加害者になった少年というのは出ているわけであります。その被害者の気持ちからすると、大人にやられたのであっても、子供にやられたのであっても被害者の気持ちとしては変わるところはない、どっちも被害者なんだということはそうだろうと思います。
 しかし、私たちが考えなければならないのは、本当にそのことは残念だし、被害者の方々は本当にお気の毒だと思いますけれども、しかし、例えばその起こったことというのは既に起こったことで、それをもとに戻すということにはならない。本当に残念だけれども、失われた命は戻らない。それから、犯罪によって傷ついた体や心を治すには相当なエネルギーや時間がかかるということも考える。したがって、加害した少年に、規範意識ということを法務大臣は盛んに言われますけれども、自分のやった行為がどんなものだったかということを認識させ、そして、やった行為の償いの気持ちを持たせるということは必要なことだろうと思いますけれども、そのことは心からのおわびにつながっていかなければならないだろうと思います。
 ただ、償いというような面で、大人に科しているような刑罰を子供にも科すということで被害者の気持ちはおさまるものではないし、それによって問題が解決するわけでもない。むしろ子供たちは、仮にそういうような事件を起こしたとしても、その刑罰として死刑にするということはできないわけですから、そうだとすると、今後も、仮にそれが無期というような刑になったとしても、ずっと長く生きていく。その生きていく子供たちをどうするのかということから考えていかなければならないだろうし、また、そうした犯罪に走らせないような努力、あるいはそこまでいかない軽微な犯罪を犯した子供たちを将来の犯罪予備軍にしないような努力ということが私は必要だろうと思っております。
 いずれにしても、今の子供たちというのは私たちの子供のときから見ると、きのうも申し上げましたけれども、いろいろな面で恵まれているけれども、実は本当の意味では幸せじゃないんじゃないだろうか。物があり余っている、情報がはんらんしている、選択肢が多いということは、あるいは自分で選択し、自分で考えて自分で決めるというようなことに欠けるような状況に置かれている。
 その中で、自分は何なのかということについてもしっかり把握できない。だからこそそういう子供たちは、自分の気持ちをぶつけ、その気持ちを真摯に聞いてもらえるような人間関係というのをどこかで求めているんだろうと私は思います。それが友達であったりあるいは家族であったりするにもかかわらず、なかなかその関係がうまくいかない。特に、家庭にあって親たちとのコミュニケーションがうまくいかない、あるいは、友達をつくろうと思ってもうまくいかないというようなところにあるんだろうと思います。私は、やはりそういうことについては、大人たちがまずその子供たちが幼児のうちからのいろいろな、さまざまな手だてを講じる、地域的にもそうだと思います。
 私は、選挙の前だったと思いますけれども、ある地元で、目の不自由な方々ばかりの老人ホームをお訪ねいたしました。そのときに、ちょうど地元のある小学校の子供たちが先生と一緒に何十人か来ておりまして、そこに入っておられる障害者のお年寄りと何人かずつのグループで話をしているんですね。それは、そのお年寄りの話を聞くと同時に、子供たちもそれについてまた自分たちの考えを述べる、そして絵をかいたりするというような時間を過ごして、これぞ教育だ、こういうことがどこでも行われるべきだと私は考えておりました。そういう中から犯罪に走るというようなことは絶対に出てこないと私は思うんですね。そういうようなことをやはりさまざまなところで考えていく必要があるのではないだろうか。
 やはり私たち、それと大人は何といってもまず自分たちの姿勢を正すということをしなければならないと思うんですね。子供たちの犯罪で異常なものが目立つと言われるけれども、きのうも申し上げたように、大人の犯罪の中でかつて考えられなかったような異常なことが起こっているわけですから、これをどうするのかということを本当に真剣に考えなければいけない、そこから始めるべきだと私は思っております。
#131
○日野委員 答弁はできるだけ簡単にひとつお願いをいたします。
 昔、教育学のある教科書で、有名な人が書いた本ですが、子供を悪く育てるのは簡単だ、欲しがるものをみんな与えればいいと言っていたわけです。今すっかり日本というのは豊かな社会になりまして、子供たちは何でも欲しいものが手に入る。あの教科書は正しいのかななんて私は今思い出しているんです。ある国の外交官の方とお話をしました、これは先進国で、豊かな国。うちの国も同じだ、こう言っておりましたが、非常に教えられるところがあると思います。
 ところで、非行に走る、少年犯罪を犯す、こういうことについては、やはり教育のあり方というのが非常に大事なことはもう言うまでもありません。文部省、簡単に言ってくださいよ、これからこういった日本では非常に大変な問題になっている少年の教育をどのようにしていくつもりなのか。
 それからもう一つ、活字のマスコミ、これについては文部省もいろいろなかかわりを持っているわけですが、マスコミの刊行物の中にも大分ひどいものがありますね。こういうものについてどういうふうに考えておられるか、ちょっと聞かせてください。
#132
○鈴木(恒)政務次官 文部省の総括政務次官でございますが、お答えをさせていただきます。
 先生の今の御質問を伺っておりまして、子供を悪くするには欲しがるものを何でも与えればいいと古い人が言っていたとおっしゃいましたが、実は、同じせりふを今文部省が親に配っております家庭教育ノートの中に書いてございまして、つまり、そういう普遍性を持った言葉なんだろうと思っております。
 子供の教育をどうやって立て直して子供を犯罪へ追い立てるのを防ぐかというテーマは、実は本当に複雑、複合的なテーマだと思います。
 例えば、先生もう釈迦に説法かもわかりませんけれども、我々が育ちましたころは、DDTなどがありましたが、化学物質なんというものはそんなにはやっておりませんでした。今、実は十万種地上に使われております。このうち、安全性が確認されているのは二万種と言われておりまして、例えば環境ホルモンの影響などで子供が切れるんだという説をなす人もおりまして、こうした化学物質の問題でありますとか、すさまじい情報化でありますとか、それからもちろん少子化でありますとか、さまざまな要素が絡み合っておりますので、一言で何をどうしていいか。
 少年法の改正も、私は、そういう多面的な教育改革の一つとして、文部省の立場からはとらえさせていただいております。スクールカウンセラーを平成十三年度から五年計画で各校に置くとか、それから、これまで手をつけておりませんでした、問題を起こす子供に対して少し学校が処理をできないか、問題を起こされた、いじめられた子供ではなしに、いじめる子供を少し排除できないかという検討もしようではないかとか、教員の採用方法を少し工夫しておりますとか、中高一貫教育でありますとか、さまざまトライアルをしているところでございます。
 もちろん、これまで余り介入しておりませんでしたけれども、家庭のあり方。ブレアが、やりたいことは三つある、教育、教育、教育と言ったのは御存じのとおりですけれども、私個人の意見を申し上げますと、教育の一番の原点は家庭、家庭、家庭だと言いたいくらいに実は思っておりますので、心のノートなどというものも文部省は来年度から用意をしたいと思っております。
 一言で申し上げれば、家庭も社会も学校も地域も与党も野党も全部まとめて、宝である子供たちの教育のために、やれるものからやっていく段階に来た、こう考えております。
 それから、メディアの問題でございますけれども、私も十五年新聞記者をしておりました。言論の自由との関係がいつも問題になります。しかし、個人的に申し上げれば、今のマスメディアの、少なくとも社会倫理に関する感性は麻痺しているとしか言いようがないと思っておりまして、これが子供にどれほどの悪影響を与えているかということを、やはりマスコミ、報道に携わる方々には、ぜひもう一度自省の念を持っていただきたいと考えております。言論の自由は守らねばなりません。しかし、それが子供たちをどれほど悪い方向に持っていくか。あくまでも自律の世界のことと私は思いますけれども、猛省を促したい気持ちでございます。
 以上でございます。
#133
○日野委員 では、ちょっと郵政省に伺います。
 特にテレビの俗悪番組なんというのは、実は私も余りテレビを見る方ではないんですが、この間見ました。私は、見ていてこっちが赤面する、そういう思いだった。具体的な特定は避けますけれども、あんな番組は、セックスだとか暴力ざたとか、そんなもののらち外だ。見ている人間を堕落させる、ばかにしちゃう、そんな番組が横行しているんですね。
 私も、今鈴木文部政務次官が言ったように、やはり表現の自由というのは最大限に守るべきだと思うのですよ。しかし、それを守るためにはあんな番組をつくっちゃいかぬというふうに私は思っているのです。そのほかに、インターネットもあります。それは、セックスの場面ならセックスの場面で納得はいくのですね。それなんかもう問題にならないほどばかばかしい。よくこんなものをつくるなと思う。それから、きゃあきゃあ言いながら、それを笑いながら見ている人も大分いるのでしょうね、子供たちも。
 これは、実質的な規制ということが常に問題になっているのだが、郵政省としてはこのようなテレビ番組なんかについてどのようにお考えか、ちょっと聞きたい。個々のテレビ番組については郵政省は一切物を言わないということは私もよく知っております。そういうことを前提にしながら、ちょっと話をしてください。
#134
○佐田政務次官 日野先生に釈迦に説法でありますけれども、仰せのとおりでありまして、特に放送の場合は青少年の皆さん方の価値観や人生観の形成に非常に大きな影響を与える。そういう観点からも、確かに今文部政務次官の方からもありましたように、憲法で保障されております表現の自由やら、そしてまた放送事業者の自律を基本とする放送法の理念にのっとりというふうな考え方があるわけでありますけれども、基本的には、先生言われているとおり、自主的な取り組みが基本ということであるわけであります。
 これに従いまして郵政省の方としてどういうことをやってきたかというと、青少年と放送に関する専門家会合等を開催いたしまして、各機関における自主的な青少年対策の取りまとめを支援しているところでありまして、この会合におきまして、やはり自主的にやるといっても民放連であるとかNHKでありますけれども、この中で、国民から番組に関する意見を聴取しまして、その審議結果を公表すること等を役割とする第三者機関、これは放送と青少年に関する委員会というのですけれども、これも機能をさせたというところであります。
 そしてまた、この懇談会の中で、青少年向けの放送番組の充実やら、また青少年に配慮する時間帯、具体的には五時から九時まででありますけれども、そういう時間帯に放送するものをしっかりと管理していくとか、申し合わせであるとか、そういうことをやらせていただいておるところであります。
 それとまた、同じく非常に番組が多いわけでありまして、そういう多種多様なメディア情報の中から取捨選択してうまく活用していく能力を身につける、ちょっと複雑なのでありますけれども、今、実験的にメディア・リテラシーに関する調査研究会を開催しまして、これからそういう教材等もつくっていきたい、かように思っております。
 基本が、先生もよく御存じのとおり自主規制ということもありまして、できる限りのことを郵政省としては、これは大事なことでありますからやっていきたい、かように思っております。
#135
○日野委員 これ以上立ち入った論議は今のこの場ではちょっとやれないと思います。しかし、私は、マスメディアにも厳重に注文をつけたい。こんなことをやっていたら、みずから表現の自由を壊していくことになりますよということを、私はマスメディアには特に厳重に注文をつけたいですね。こっちは、表現の自由ということで彼らを守るという立場で常にいるわけだけれども、あんな番組を見せられたら、これはどうなる、そういう心配もあります。
 では、ちょっとこの話ばかりしていると、もう時間がなくなってきましたので、原則逆送について聞きます。
 何かきのうの提案者側のお話を聞いていると、第二十条の二項、「前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。」ということで逆送を決めているわけですね。そして、ただし書きがある。このただし書きと本文との整合性がどうもとれないのだな。これは原則逆送だと言っておきながら、「ただし、」調査の結果云々のときは「刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」一体これはどう読めばいいのか。これは、法律家としては大いに迷うところだと思うのです。しかも、きのうの答弁によると、このただし書きがあるから大体はそっちでやることになるのでしょうというような答弁をしておられた。ここをちょっと、整合性について説明をしてください。
#136
○漆原議員 これは二十条との対比でできておるものですから、二十条について若干説明して。
 二十条は、死刑、懲役、禁錮に当たる場合は、刑事処分を相当とする場合は送致しなければならない。原則的には保護処分をとろう、これこれの場合は送致するのだという、原則保護主義、例外として逆送、こういう構成ですね。
 二項は、そのうち、故意の犯罪行為によって死亡させた、それから十六歳以上の少年、この二つの要件を備えた場合は原則的に逆送します。ただし、この条件を備えた場合でも、例えば見張りだとか、いろいろな形態が考えられます。そういう場合は、刑事処分以外の措置を相当と認めるときはこの限りでないということで、保護主義を例外として入れた、こういうことでございます。
 したがって、先生がおっしゃるように、整合性がないというふうには考えません。私は、整合性のとれた条文に一項、二項ともなっておるというふうに考えておるところでございます。
#137
○日野委員 ただし書きというのは、こうこうこういう場合ということで、この場合はまた別ですよ、こうやるのだが、この第二項の本文とただし書きというのはそういう形になっていないと私は思うのですよ。こういう場合は原則として逆送です、「ただし、」「調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、」ずっと並べてあるわけですね。これは本文だろうと同じことではないですか。もう既にそれは調査をするわけですから、そうすれば原則としてこれは逆送でございます、こうなるわけで、ここではこのただし書きと本文との間に優劣はない。どうですか。
#138
○漆原議員 これは二項のことを申し上げますが、いずれにしても、逆送する場合でもしない場合でも調査するわけでございまして、この範疇に属するものは原則として逆送するのですよと決めたのが二項でございます。ただ、その中でも、事案によっては、動機、態様だとか、いろいろな犯罪の加担の方法によっては、場合によっては逆送以外の方法をとることが相当であると認めるケースがあるであろう、その範疇に属する場合は、本来原則は逆送なのだけれども、具体的な事例によっては例外として保護処分に付する、こういう条文の構成にしてあるわけでございます。
#139
○日野委員 私は納得いきません。
 そして特に、こういう規定の仕方になってしまうと、家裁の方で、ははあなるほど、これは殺人事件だ、そして故意でやっているな、十六歳以上だ、これはもう最初から逆送してしまえ、こういう取り扱いに当然なるだろうと思いますね。特に、現在の裁判官の心情から見て、こういう場合に、ただし書きにこういうのがあるから、これは殺人犯で十六歳以上だけれどもまあこれは逆送しないでおくかなんということはちょっと考えにくい、私はこう思いますよ。
 今までこの点については論じられてきたことだから、これ以上さらに深くやる時間もないので、もう一つ聞いておきたいことがありますから、別の論点に移ります。私は、この点の整合性に非常に危惧を持つ。それと同時に、裁判所の実務がどうなっていくかということについて非常に強い危惧を持っているということをお話ししておきたいと思います。
 それから、事実の認定の問題です。事実の認定については審判の中でやるけれども、事実について争いがあるときは、事実認定は一つの別の小宇宙といいますか、審判の中の一つの特殊な部分として事実認定の問題があるわけですね。
 私は、事実認定というのは、やはりかなり強い客観性を持って、客観的な妥当性、これが納得されるようでなくてはいかぬと思う。納得されるかどうか。例えば少年が、事実認定の場にいるわけですから、おれはそうではないという主張をしているのに異なってしまった、その手続や何かも自分ではわけがわからないうちにやられてしまったというようなことでは、少年事件では特に事実認定の誤りというのは非常に耐えがたいものだろうと私は思うのです。
 そこでまず、事実認定を担保するために何が必要かというと、やはり事実認定をする裁判官の予断排除、これはもう絶対の要件だろうと思いますね。それからもう一つ、やはりいろいろあるだろうけれども、私は、対審構造だとか公開制、こういったものが事実認定の正しさというものを担保するために必要だと思います。
 この点についてはどうですか、与党の考えを言ってください。それから、あとは民主党の方もこの点についてどう考えているか。時間がありませんので……。
#140
○漆原議員 今先生がおっしゃった予断排除だとか対審構造という点については、民主党の方から今修正案が出されて、事実認定裁判所という新しいお考えを提示されていることはよく存じ上げておりますが、私どもはこう考えます。
 少年法は、まず、少年の早期の保護育成を達成するために、家庭裁判所が審判を主宰して、柔軟かつ非定型的な職権主義、こういう構造を採用しているというふうに考えております。そして、このような柔軟かつ非定型的な手続の特質を生かしながら、的確に関係証拠が調べられて、適切な事実が認定されることになっておるというふうに思います。そして、少年審判がそのような手続によって効果的に行われるというふうに思っております。
 これに対して、今先生がおっしゃったような予断排除あるいは事実認定裁判所、こういう対審構造、刑事裁判のような形式が重視される定型的なやり方というのは、先ほど冒頭に申しましたような少年の早期の保護育成、こういう観点から、少年審判の手続としてはなじまないのではないかなということで私どもは採用しなかった、こういう経緯でございます。
#141
○日野委員 今のお答えの中で納得いかないのは、裁判官はもう既に一件書類を見ている。その人が、さらに検察官の立ち会い、それから付添人の立ち会いでやりとりをしたものを見て決定するということになるわけでしょう。これは客観的に見て、裁判官が到底中立の裁判官ではあり得ない、こういうふうになりませんか。この点をひとつ答えてください。
#142
○漆原議員 今の点に関しては、少年法改正の法制審議会でも大分論点となったところというふうに聞いておりますが、なぜ現在の少年法がそういう手続をとらないで、記録を全部裁判所に送致して審判の前に全部見てしまうという構造をとったのかという、ここにさかのぼって考えていかなければならないと思うんです。
 やはりこれは、国家が親がわりになって少年を保護育成していく、そしてできるだけ早く少年をその審判の手続から解放してあげる、こういうふうな要請で、今刑事裁判手続でとられているような伝聞証拠排除の法則だとかいうふうなことはとらなかったんだというふうに理解しております。
#143
○佐々木(秀)委員 私どもは、事実認定手続のことを考えますと、日野先生御指摘のように、今の与党案では問題がある、刑事訴訟法上の証拠原則が適用されないというのはやはり問題があるだろうと思っております。
 ですから、予断だとかあるいは伝聞証拠の問題ですとか、こういうことについてはやはりきちんとしなければならないということで、それに、担当する裁判官も、事実認定の裁判官は従前の記録を見ている裁判官とは別な裁判官にしよう、それから、先ほども質疑がありましたけれども、裁定合議制はやらない、やはり一人の裁判官でじっくりやった方がよかろう、それからまた、そのために事実認定の裁判機構を家庭裁判所の中につくるということを言っているわけでありまして、先生の御懸念に合うようなといいますか、それを払拭できるような修正案をつくったつもりでございます。
#144
○日野委員 やろうとすればあと一時間か二時間欲しいところなんですが、もう時間がなくなっちゃった。
 それで、ちょっと記録というか速記録にあらわれた点について、麻生さんの佐々木秀典議員に対する答弁で、「少なくとも人の命を、いわゆる過剰防衛とか過失によってあやめたのではなくて、故意に、意図的に、確信犯として人を殺すということは、」という記述があります。それから、これは平岡委員に対する答弁で、「おもしろいからとか、また、人を殺す経験がしてみたかったなどというような確信犯のようなところもありますが、」となっていて、実はここで、故意で人を殺すという、殺人とかほかにもありますが、生死の結果がもたらされるというような、故意でという場合、社会の経験が少ない子供たちが未必的な認識、未必的な故意で罪を犯した場合、これは成人と同じように扱えるのかどうかということについて、私は非常に強い疑問を持っています。麻生さんの答えでは、確信犯という言葉を二回にわたって使っている。これは、故意の内容を制限するという意図をお持ちなのかどうか。
#145
○麻生議員 殺人という内容がなかなか一概に、人を殺したという結果だけの話をよくされますけれども、いわゆるいじめられていた子供が切れて、殴り返して相手を殺した、死に至らしめたという殺人の内容と、隣の住人から疑われたということをもって、長いつき合いの隣人を、仕返ししてやると明らかな殺人の意図を持って、一家、三人だか四人だかを殺害に至ったという話とは、同じ殺人でもかなり内容が違うのではないか。
 明らかに殺そうと思った意図でやっているのと、少なくともけんかしている真っ最中に殴ったら打ちどころが悪くて死んだという例と一緒にできるであろうかというところは、子供だからといって、明らかに殺そうと思って、意図を持ってやっているわけですから、そういった殺人と間違ってやった殺人とを一緒にするのはいかがなものかというのが私どもの申し上げた本意です。
 そこで、裁判になるに至って、その点をいろいろしんしゃくする、考える、配慮するというのが裁判官の与えられた責務だろうと思いますので、そういった意味では、確信犯というのは、故意に、明らかに殺そうという殺意を持って殺したのと偶然で起きたそれとは明確に区別されてしかるべきだというのが私どもの申し上げたかった本意です。
#146
○漆原議員 未必の故意という専門用語が出てきたものですから。
 二十条二項の「故意の犯罪行為」という中には、未必の故意を含むというふうに考えております。
#147
○日野委員 私、揚げ足をとるようで悪いんだけれども、よく立法者の意思はどうだったということで議事録を点検することがあるんです。そのとき、ここに確信犯という言葉が二度にわたって出てくるということになりますと、これは未必性のある故意などは除かれるんだ、そういう誤解を与えたらいかぬと思って、私の親切心から聞きました。
 それから、もう一点だけ聞かせてください。
 きのう、杉浦さんがバスジャック事件の決定を見てという話をしました。いや、決定を見たにしては随分詳しい内容をしゃべったなと思って、決定要旨を見たら、これまた実に詳しい要旨なんですな。これは本文じゃないかなと私は思っているんですが、要旨は要旨でいいでしょう。ただ、こんなに詳しい要旨を出すということは、現行少年法の建前からいっていいのかどうか、ちょっと私は疑問に思いました。
 これによりますと、少年の病歴だとか生きている環境とか、これは実に詳細だ、これが本文だといったっておかしくない。こういうのを出されるのは現行少年法の建前からいかがなものかと思いますので、一言御説明お願いします。
#148
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 少年手続につきましては、原則的な非公開、秘密性の原則があるわけでございまして、そういった意味においては、審判の内容が公にされることは当然予定されていないというのが本則であるわけでございます。
 しかしながら、他方におきまして、少年保護事件につきましても、社会的に注目度の高い事件におきましては、国民から見ますと身近な深刻な問題であるということから、その非行の背景、メカニズムを知りたい、そしてさらにそれを地域社会における少年の健全育成の方策にどう生かせばいいかを考えたい、こういう要請が強くなることもあることも確かだろうと思うわけでございます。こういった観点から、情報開示の要請が強い場合が最近多いように思われます。
 こういった状況の中で、家庭裁判所といたしまして、個々の事案を見ながら、当該事案の少年の健全育成の観点からの配慮の必要性と情報を求める社会のニーズといったものを比較考量しながら、その必要と認められる範囲において決定要旨を作成して提供する場合があるというのが最近の運用であると承知しているところでございます。個々の事案における決定要旨の詳細の度合いについては、個々の裁判所の判断によるものというふうに理解しているところでございます。
 以上でございます。
#149
○日野委員 時間が参りましたので終わりますが、あと二時間ぐらい下さい。
#150
○長勢委員長 次回は、来る二十七日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十九分散会

ソース: 国立国会図書館
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