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2000/09/26 第150回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第150回国会 本会議 第3号
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2000/09/26 第150回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第150回国会 本会議 第3号

#1
第150回国会 本会議 第3号
平成十二年九月二十六日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  平成十二年九月二十六日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

    午後二時三分開議
#2
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
#3
○議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。佐藤公治君。
    〔佐藤公治君登壇〕
#4
○佐藤公治君 私は、自由党を代表して、森総理大臣の所信表明演説に対し質問をいたします。若輩者ではございますが、よろしくお願い申し上げます。
 まず、質問に先立ち、さきの三宅島の噴火、東海集中豪雨でお亡くなりになられました方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げますとともに、被災地の皆様方には、心よりお見舞いを申し上げます。
 また、今なお支援、救済活動に御尽力しておられます関係各位の御努力に深い敬意を表し、政府におかれましては、引き続き万全の措置を講じていただきたく、お願いいたします。
 今シドニーでは、世界のスポーツの祭典オリンピックが華々しく開催されており、最近明るいニュースが少ない中、世界トップレベルの選手の競技に日本じゅうが久々に沸いております。中でも日本選手団の活躍は目覚ましく、応援する私たちに感動と勇気を与え、そして、苦しくても最後までやり遂げることのとうとさを改めて教えてくれております。選手の皆様には、最後までの御活躍と御健闘を心よりお祈り申し上げます。(拍手)
 さて、今の日本の社会情勢に目を向けますと、政治家の腐敗、官僚の不祥事といった綱紀のゆがみは日本全体にまで及んでおります。かつて水と安全はただのように思われていた我が国において、少年による殺人、保険金目当ての殺人、親が子をせっかん死させるなど、考えられない事件が頻発し、暴行、窃盗、ストーカーなどの事件は日常茶飯事となっております。日本は何かおかしい国になってしまったのではないかという不安が、国民の間に広がっております。
 これらはすべて、近代化、経済発展という大義名分のもと、戦後政治が置き去りにしてきた教育や地域共同体などの崩壊が原因であり、その代償は余りに大きかったと言わざるを得ません。物質的な繁栄の中で人生観や価値観を軽んじてきた結果、日本人は心の座標軸を失い、それが我が国の衰退の原因であります。
 自由党は、二十世紀が終わろうとする今こそ、日本人と日本のあり方を問い直さなければならないと考えております。それは、我が国固有の歴史、伝統、文化への意識を再生させること、そして、人が人として生きていく上での原点である共同体、家族のきずなを確かめ合うこと、その上で、人として、してよいことと悪いことを見きわめることが、本当の意味において個人個人の自立を促していくことにつながるのであります。
 総理は、所信表明演説において、IT革命、IT戦略、日本型IT社会など、ITという言葉を全部で二十数回もお使いになりましたが、野方図にITばかり推進するのでは、日本の社会をいたずらに混乱させることになりかねません。また、IT革命が進行すればするほど、グローバル化が進めば進むほど大切になるのは、日本人一人一人のアイデンティティーの確立であります。
 ITを使う人間自身のモラルの確立、市場原理の徹底などの経済構造改革の推進、IT導入に伴う国際的な貧富の格差に関する外交姿勢など、我が国のあり方の根幹部分を整えることがまず重要であると考えますが、総理の御所見をお聞かせください。
 経済問題について質問いたします。
 自由党は、経済運営について、平成十二年度の景気刺激型予算を編成し、十三年度以降は、民需主導の自律的成長軌道に復帰するのを確認するまで、景気、財政中立型予算を組むべきと主張しておりますが、我が国経済は、累次の財政支出により下支えをされてはいるものの、抜本的な構造改革がなされていない以上、本格的な回復軌道には復帰することはありません。補正予算であれ本予算であれ、中長期的な展望を持ち、その上で、今すぐに講じなければならない方策は何かを示すべきであります。つまり、経済、行政、税制を抜本的に見直しして構造改革を断行することであります。
 政府は、補正予算の編成を示唆しながら、現段階では提出しておりません。補正予算の重点が従来どおりの公共事業の積み増しを主眼に置いているのなら、公共事業の見直しを進めようとしている動きとは全く整合性を欠いたものであり、支離滅裂であります。(拍手)
 我々は、従来型の公共事業の積み増しという偏ったものではなく、行政改革による経費削減を柱とする所得税、住民税の恒久減税を直ちに行うべきであると考えます。国、地方の介入行政を減らし、経費を一割、約十五兆円の削減を行い、行革減税の財源とするべきであります。公から民へ、中央から地方への理念に基づき、権限を縮小し、地方に移譲して、スリムで効率的な政府を構築して歳出を削減すれば、行革減税の財源とすることが可能となります。
 具体的には、国の事業補助金を廃止して、公共事業一括交付金として地方自治体に交付し、国が箇所づけをするのではなく、地方が自主的に、真に必要な事業が効率よく行われるようにすべきであります。また、身近なことはすべて地方に任せるためにも、その受け皿となる地方自治体の体力を高めるため、現在約三千数百ある地方自治体を三百程度の市に再編しなければなりません。
 減税は、景気対策になるだけではありません。官が民から金を吸い上げ、使い道を決めるのではなく、国民がみずからの才覚と自己責任で金の使い道を決めることができるよう、制度改革を実施すべきであります。これによって、自由で創造性あふれる自立した社会と国家づくりの端緒となると考えます。
 また、国、地方の仕事減らしは、規制の撤廃にほかなりません。事後チェック型行政を基調とする経済構造改革につなげることができ、民間の自由な発想と努力によって、真に日本経済を支えることが可能となります。財政再建は、歳出削減と、たくましくよみがえった日本経済から得られる税収増によってなし遂げるべきであります。
 平成八年の橋本内閣では、財政再建路線として、財政赤字の削減、つまり約九兆円の負担増を強いました。しかし、結果として翌年度の単年度赤字は逆に前年比二倍に膨れ上がりました。行わなければならないのは、橋本内閣のように国民増税で財政赤字を削減するのではなく、行政改革による財政支出の削減であります。
 これが、自由党の主張する経済、財政立て直しの具体策であります。(拍手)
 日本は、世界一の債権国であり、個人金融資産は約一千三百兆円と言われ、市場から見れば類を見ない国であります。であるにもかかわらず、国債が格下げされたり、不良債権額が厳しい評価を受けているのは、そごう問題に代表されるような政府・与党の恣意的な企業への介入や、金融再生法に見られるような市場ルールを無視して丸抱えで金融機関や借り手を救済するシステムへの疑問、中長期的な経済政策について明確なビジョンを示すことができない日本政府を信用していないことのあらわれであり、まことに屈辱的であります。
 経済は信用、信頼の上に成り立つものであり、その信頼なしで国の経済は全く成り立ちません。今必要なことは、政策運営について明確なビジョンを示して、他国からの、そして日本国民からの信頼を回復することであります。
 従来の発想にとらわれない大胆な提言が必要と考えますが、総理の、経済の回復、構造改革、財政健全化のビジョンについて、日本の将来のために今講じなければならないことは何であるとお考えか、総理の御見解をお伺いいたします。
 次に、社会保障制度についてであります。
 自由党は、現行の社会保険制度の破綻は明らかである、国民生活のセーフティーネットを確立するためには、消費税を基礎年金、高齢者医療、介護以外に使わないようにして、負担の公平化と社会保障の財政基盤を強化するべきであると主張してまいりました。
 介護制度については、自由党は、介護は必要だが保険制度では無理であると一貫して主張し、昨年十月、介護保険制度がはらむ数々の問題点を解決するため、保険料を半年間凍結し、その間に制度全体を見直すことで合意いたしたのであります。しかるに、自民、公明、保守三党はその後見直しを行わず、先送り、手つかずの状況であります。
 凍結されていた六十五歳以上の方々の介護保険料の徴収が十月から始まりますが、介護制度が不透明で理解されていないために、保険料の通知を行った途端に質問や苦情が殺到しているのが現状です。また、自治体では、実際に保険料を徴収することの難しさやちゅうちょを指摘しているほか、一般財源を利用して保険料徴収を穴埋めする動きも見られます。自由党がかねてよりの指摘をしてきたとおり、数々の矛盾が噴き出しているのであります。老人医療、基礎年金にしても、給付と負担があいまいで複雑な保険制度の中では、国民からの信頼を得ることはできません。
 政府は、介護制度の現状についてどのように認識し、自治体の意見に対し、どのような見直しや指導を行うつもりでしょうか。また、社会保障の将来ビジョンについて、あくまでも、基礎的社会保障を破綻しかねない社会保険方式にこだわるのですか。総理のお考えをお伺いいたします。
 次に、農業問題について一言お聞きします。
 食料は、国民が生活を営む上で最も重要な基礎的物資であり、食料の安定供給を確保することは、国が国民に対して行う最低限度の責務でありますが、我が国の食料自給率は先進国中類を見ないほど低い数値であり、不測の事態に際しては対応不可能になります。
 政府は来年度の減反面積を三年ぶりに拡大する方針と言われておりますが、相変わらずの場当たり農政であると言わざるを得ません。豊作になるたび米価は安くなり、減反地域は拡大する。農外収入で機械を買わなければ農業が続けられない。農村の働き手は減少し、将来展望に期待が持てない。このままでは農業は壊滅的に立ち行かなくなってしまうのではないかと農家の皆さんは不安におびえております。
 食料安全保障の見地から、国際的にも立ち行き自立した農業を確立する抜本的な対策を講ずるべきであると考えます。また、農業構造改善事業を見直すべきであると考えますが、総理のお考えをお聞きします。
 次に、政治改革に関連してお尋ねします。
 私は、政治改革を断行するためには、国会に若い声を反映させ、新しい意見と新しい力を導入することが必要であると考えます。この際、単刀直入にお伺いします。選挙権を十八歳に引き下げることを検討すべきと考えますが、総理の御見解をお伺いします。(拍手)
 まず、いわゆるあっせん利得罪に関する法案についてお聞きします。
 これに関しては、以前より、自由党の入札干渉罪を初めとして、自民党を除く各党が議員立法でさまざまな法案を提出してまいりましたが、自民党の反対により、委員会審議すらできない状況が続いてまいりました。
 今回、野党四党が共同して地位利用収賄罪を提出し、また、世論の強い後押しもあったことから自民党もようやく重い腰を上げ、与党案を作成し、今国会に提出しました。しかし、与党案は、禁止される口きき行為を、公共事業の入札などの契約と交通違反に伴う処分など行政処分に関することに限定するなど抜け道を多くつくっており、制度が骨抜きになるおそれがあります。
 そもそも与党案は、野党案と相打ちにして廃案にしようという与党側の思惑によるものだと言われております。総理、あなたは、このあっせん利得に関する法案を本気で今国会で成立させる決意なのでしょうか。まさか与野党対決法案にして廃案にする腹づもりなのではないと思いますが、総理のお考えをお聞きします。
 次に、外交・安全保障問題についてお尋ねいたします。
 まず、最大の二国間関係である日米関係についてであります。
 先般、日米両国の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会、2プラス2が開催され、日米ガイドラインに基づく日米調整メカニズムが動き出しました。ガイドライン関連法が施行されてから一年以上も経過してようやく2プラス2を開催したことに、政府の対応の緩慢さを指摘しなければなりません。
 また、自自公連立時代に結論が出なかった船舶検査の問題について、与党が法案を提出する予定と聞いておりますが、国連決議に基づくならば周辺事態に限定する必要はないとしていた自由党の主張を改めようとされているのか、保守党党首としての扇国務大臣にお尋ねいたします。
 次に、対北朝鮮政策についてお伺いします。
 先月末に、十回目の日朝国交正常化交渉が行われました。南北首脳会談や中ロ両国との首脳会談など積極外交を進めている北朝鮮が新たな対応を進めてくるのか注目されましたが、日本人拉致問題やミサイル問題など、すべての分野で北朝鮮の姿勢は従来と変わるものではありませんでした。
 米支援が人道問題なら、拉致問題の先送りは人道問題であると同時に国家主権の侵害問題であり、正常な国家関係を持つに当たってこれをまず解決することが必要不可欠であると考えますが、森総理の御見解をお示しください。(拍手)
 対ロシア政策についてお伺いします。
 先般、日ロ首脳会談が開催されました。首脳同士の会談にもかかわらず、その内容が平和条約交渉を継続していくことを確認したにとどまったことは、まことに遺憾であります。
 しかも、総理が先日の報道番組で、首脳会談に二島返還の妥協案を用意して臨んだと述べたことは言語道断であります。東京宣言やクラスノヤルスク合意に基づく交渉にロシア側が消極的であるときに、日本側がみずからその基盤を掘り崩すような場外発言を言う必要があるのでしょうか。総理の発言は、戦後営々として国民的に続けてきた四島返還の運動に対する裏切りであり、ロシア政府に誤ったシグナルを送ることになりかねません。
 残された三カ月余り、東京宣言やクラスノヤルスク合意などこれまでの合意を尊重しつつ、今世紀中の領土問題解決と平和条約の締結に向け真剣に努力すべきであると考えますが、総理の御決意をお聞かせください。
 次に、国連改革についてお伺いします。
 今日、国際社会は一層多様化、複雑化しており、国連の機能強化の重要性も増してきております。アナン国連事務総長は、国連の再生を目指し、常任理事国の拡大を中心とした安保理改革を掲げております。
 我が国が安保理常任理事国となるためには、国連のすべての平和活動に関与し、参加していく意志と実力を備えなければ、その責任を果たすことはできません。PKFの凍結解除すらできない我が国に果たしてその資格があるのでしょうか。
 河野外務大臣は、この十三日に行われた第五十五回国連総会の一般討論演説で、安保理改革が実現するならば、常任理事国として一層の役割を果たしたいと胸を張ってお述べになりましたが、そうであるならば、自由党が主張するように、あらゆる国連の平和活動に参加できるように法整備を図るべきであると考えます。総理の御所見をお聞かせいただきたいのであります。
 この際、我が国議会制民主主義の危機ともいうべき与党三党の暴挙について申し上げます。
 これは、まさに国民から厳しい批判を受けた自民党久世前金融再生委員長の党費立てかえ問題、すなわち、議席を金で買うという自民党の金権体質を隠し、さらに与党側に有利に選挙制度を改変するという党利党略に基づくものにほかなりません。
 そもそも、参議院選挙制度の改革については、参議院各派代表懇談会のもと、昨年六月に設置された参議院選挙制度改革に関する協議会で協議を重ねて、その結果、比例代表選挙区については現行の拘束名簿比例代表制を維持することを前提とする、抜本的改革案については参議院の役割とあり方を踏まえつつ引き続き協議する等の趣旨が報告書に明記され、その結論をもとに協議を続けてきたはずであります。
 また、参議院の自民党と自由党の間では、当面は現行制度は変更しない、非拘束名簿比例代表制は問題や欠陥が多いということで合意していたのであります。
 さらに、次期参議院選挙まで十カ月余りしかないこの時期に、なぜ急に選挙制度の抜本的改革案が与党内からわき起こってきたのでしょうか。今なぜ早急に参議院比例代表区の選挙制度を改変する必要があるのか。発表された与党の要綱の内容は違憲の疑いがあるという重大な問題もあります。なぜこのような暴挙をあなたは傍観しているのか、自民党総裁としての総理の御所見をお伺いします。
 さらに、小沢、小渕両党首の政策合意に衆参両院の定数削減が含まれていたにもかかわらず、当時の扇自由党参議院議員会長と自民党の青木幹事長が、参議院議長のもとでの各党協議によって進めるべきであろうとして、合意事項を凍結し、参議院議長のもとで各党協議が行われ、結論が出たという経緯があります。
 扇国務大臣にお尋ねいたしますが、あなたは政治家としてこの合意を誠実に守る責任があるのではありませんか。そうでなければ、政治家としてあるまじき、信義にもとる行為でありませんか。お答えください。
 以上、私が指摘したさまざまな問題を解決していく上での根本にある問題として、また、二十世紀を締めくくるに当たり我々政治家が真剣に取り組まなければならない大きな課題として、憲法問題についてお伺いいたします。
 自由党は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法の三原則を発展させつつ、「日本人の心と誇りを取り戻す」「自己中心的社会から、規律ある自由に基づく開かれた社会に改める」「経済の活力を回復し、だれもが生き甲斐をもって暮らせる社会をつくる」「地球の平和と環境に自ら進んで貢献する」という指針に沿って、二十一世紀を担う新しい憲法をつくり、それに基づいて、政治、行政、地方自治、司法、経済等のシステムを抜本的に改革すること、そのためにも憲法改正手続の整備を行うよう主張しております。
 この我が党の主張に対する森総理の御所見をお伺いいたしたい。
 最後に、自由党は、本音と建前を使い分けることなく、二十一世紀を実際に生きる私を初めとする若い世代が責任を持って新しい国家づくりに邁進し、義務と責任を踏まえた自立した個人がみずからの才覚で自由に活動できる社会づくりを目指してまいります。我々自由党は、失うことを恐れない若い力に可能性を求め、次の二十一世紀をつくりたい。
 これが自由党の主張する日本一新であり、若輩者の私が登壇させていただいた理由でもあります。先輩諸氏、同僚諸賢の御指導をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(森喜朗君) 佐藤公治君の演説を伺いました。
 余計なことかもしれませんが、佐藤君のお父さんと私は同期生でありまして、昭和四十四年初当選いたしましたときは、ちょうどまだあなたが十歳であります。こうしてここで演説されるのを伺って、綿貫議長もそうですし、党首の小沢一郎さんもそうでありますし、みんな同期生でありましたが、立派に成長されましたことを大変感無量で伺いました。
 どうぞ、これからまじめに、また、お父さんが果たし得なかった道をしっかり励んでいただきたいということを心から期待いたしたいと思います。(拍手)
 日本と日本人のあり方に関連してお尋ねをいただきました。
 戦後、日本は高度成長をなし遂げてまいりましたが、確かに、バブルの崩壊、その後の厳しい経済状況の中で、経済構造改革が急務となっております。一方、物質的な豊かさを達成する過程で、命の尊厳、他人への思いやり、地域の文化や伝統など、いわば心の大切さを見失いがちであったと思います。
 私は、二十一世紀には、経済の活力を高めながら、同時に、物質一辺倒ではなく、家庭や地域社会の中で培われていた心の豊かさについていま一度考えることが必要であると思っております。
 IT化の進展によってますます国境の意味が希薄になるとともに、各種情報の伝播のスピードは格段に上昇いたしておりますが、私は、こうした時代においては、我が国は、世界に開かれた国であると同時に、日本や日本人らしさを大切にする社会であることが重要であると考えております。だからこそ、教育は人づくりであって、全人教育に少し軸足をこれから置いていかなければならない、そういう教育改革を私は願っているわけであります。
 私は、こうした思いを抱きながら、かねてから、安心して夢を持って暮らせる国家、心豊かな美しい国家、世界から信頼される国家というものを、目指すべき日本の姿としてお示ししてきましたが、社会のモラルを重んじ、持てる者と持たざる者との格差の拡大などに対処していくと同時に、経済構造改革を進めていくことは、こうした国家を実現していくために大変重要なことであると考えております。
 経済の回復ビジョンについてお尋ねがございました。
 政府・与党の迅速にして大胆な経済政策によって、我が国経済は緩やかながら改善をいたしております。しかしながら、雇用情勢はいまだ厳しく、消費も一進一退の状況にあり、企業の倒産件数も高水準になっております。もう一押しが必要な状況にあると考えております。
 こうした観点から、まずは、経済を自律的な回復軌道に乗せるために、景気回復に軸足を置いた経済財政運営を行っていくこととし、新たな経済対策の策定と補正予算の編成を進めてまいる決意であります。
 その際、その回復軌道を単なる短期循環における回復にとどめることではなくて、長期循環や歴史的転換の波の新たな盛り上がりにつなげていくことが重要であると考えます。
 このため、経済対策におきまして、四つの分野を軸とした日本新生プランの具体化策等を中心に盛り込み、我が国の経済を新時代にふさわしい構造に改革し、二十一世紀における新たな発展を確実にしたい、このように考えている次第でございます。
 構造改革についてお尋ねがありました。
 我が国の将来のためには、グローバル化、情報化、高齢化、環境対応などの大きな時代の変化に対応し、民間の経済活動が自由濶達に行われるような環境を整備することが重要であると思います。
 このため、企業経営のダイナミズムを確保するための制度改革の推進、多様な雇用形態を踏まえた労働市場の創出、創造的技術開発のための環境整備などの思い切った経済構造改革に取り組むことが不可欠であります。
 こうした観点から、具体的には、IT革命の推進に全力で取り組むとともに、産業新生会議における議論を踏まえ、企業法制の見直しや企業年金、資金調達、雇用システムのあり方等について検討を加え、年内に経済構造改革の具体的な行動計画を取りまとめることといたしております。
 財政健全化についてのお尋ねがありました。
 我が国の財政は厳しい状況にあり、財政構造改革は必ずなし遂げなければならない課題でありますが、まずは、経済を自律的な回復軌道に乗せるため、景気回復に軸足を置いた経済財政運営を行っていくことといたしております。
 同時に、財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げるための準備を今から始めるという観点から、財政の透明性の確保を図り、効率化と質的改善を進めながら、我が国の景気回復をより確かなものとして、その上で、税制のあり方、社会保障のあり方、さらに中央と地方の関係まで幅広く取り組んでまいりたいと考えております。
 介護保険についてお尋ねがありました。
 全般的には、サービス利用者の増加や提供量の拡大といった期待された効果もあらわれているところです。しかし一方で、改善すべき課題も指摘されており、また、この十月からは高齢者の方々から保険料の徴収も開始されるという状況にあります。
 こうしたことを踏まえ、現在、与党の介護保険に関するプロジェクトチームにおいて介護保険の見直しの検討が行われており、その結果も踏まえ、政府において適切に対応し、介護保険をよりよい制度に育てていきたいと考えております。
 社会保障の将来ビジョンについてのお尋ねでありますが、社会保障は、人々が生活のさまざまなリスクに直面したときに社会全体で支え合うという重要な仕組みであります。この社会保障の費用を賄うに当たって、個人の自立を基礎に置く我が国においては、国民みずからがあらかじめ老後の生活や病気などのリスクに備えるという考え方に基本を置くべきであると考えております。
 したがって、国民みずからが共同で費用を出し合い、給付と負担の関係がより明確な社会保険方式を基本に、これに必要な国庫負担等の税負担を組み合わせるとともに、一定の利用者の御負担もお願いしながら、財源の確保に努めていかなければならないと考えております。
 これまで社会保障は、皆年金、皆保険制度などにより国民生活の安定に寄与してまいりましたが、今後、社会保障を賄うための費用の増大が見込まれており、引き続き、制度の長期的な安定を図るため、世代間の公平やシステムの効率性などにも配慮しつつ、社会保障の改革を進めてまいりたいと考えております。
 食料安全保障の見地からの自立した農業の確立に関するお尋ねでありますが、不測の事態においても国民に対する食料の安定供給の確保を図るためには、我が国農業の体質強化を図っていくことが重要であります。このため、食料・農業・農村基本計画に即し、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担うよう生産規模を調整するとともに、経営規模の拡大を図るほか、技術開発の推進等、各般の施策を推進してまいります。
 また、農業構造改善事業につきましては、事業手続の透明化等を図りつつ、抜本的な見直しを行い、本年度から、地域農業の担い手となる農業経営の育成を目的とする経営構造対策事業を実施しているところであります。
 選挙権年齢の引き下げにつきましては、民法上の成人年齢や刑事法での取り扱いなど、法律体系全般との関連も十分に考慮しながら検討すべき事柄であると考えております。いずれにいたしましても、選挙権年齢のあり方につきましては、選挙の基本にかかわる問題であり、まずは各党会派で十分御議論をいただきたいと考えます。
 与党提出のあっせん利得罪処罰法案につきましての御質問ですが、与党案は、与党三党間において、法制化に向け、大変熱心に御議論いただき、まとめていただいたものであります。その内容につきまして、私はかねがねから申し上げておりました、構成要件を明確にし、かつ国民の要望を幅広く行政に反映させるという政治の役割にも配意するという点を十分に考慮されたものであると考えております。
 私はこの問題について、政治に対する国民の信頼を高めるためにも、十分に御議論の上、ぜひとも今国会中に成立させられることを期待していると繰り返し表明をいたしており、議員御指摘のような考えがないことが明らかでございます。
 拉致容疑問題についてでありますが、政府としては、我が国国民の生命と安全にかかわる重要な問題であると認識しており、先般の日朝国交正常化交渉第十回本会談においても、この問題は国交正常化のためには避けて通れないことを先方に明確に指摘をいたしております。
 今後も、国交正常化交渉その他の日朝間の対話の場でもこの問題の解決に向けて粘り強く取り組んでいく方針であります。
 平和条約交渉についてでありますが、さきの日ロ首脳会談において、クラスノヤルスク合意の実現のための努力を引き続き継続すること、また、今日までに達成された両国間のすべての諸合意に依拠しつつ、四島帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべく交渉を継続することで一致いたしました。
 政府としては、この成果を踏まえつつ、引き続き全力を尽くす考えであります。
 国連の平和活動に関する法整備についてのお尋ねでありますが、政府としては、我が国自身の平和と安全を維持するのみならず、国連を中心とする国際平和のための努力に対し憲法の枠内で貢献することが必要であると考えており、このような観点から、今後の国会の御審議等を踏まえつつ検討してまいりたいと考えております。
 参議院選挙制度改革に関してのお尋ねがありました。
 参議院選挙制度につきましては、昭和五十七年に現行の拘束名簿式比例代表選挙が導入された後から、制度改革についてさまざまな議論が行われてきたと承知いたしております。選挙制度というものはどんなものでも一長一短があり、現行の拘束名簿方式は、政党主体の選挙を目指すものでありますが、一方で、有権者がどの候補者を当選させたいのかという意思表示ができず、候補者の顔が見えずに選挙に対する関心が高まりにくいという問題点がかねてから指摘されております。
 参議院選挙制度改革につきましては、国民が政治に関心を持ち、また政治が国民から信頼されるような選挙制度を目指し、与党内で議論が進められていると承知しておりますが、今後各党会派の間で精力的に議論していただきたいと思います。
 憲法改正及びその手続の整備についてお尋ねいただきました。
 憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであり、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。
 一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しており、憲法が法理的に永久不変のものとは考えておりません。また、憲法をめぐる議論が行われていること自体は何ら制約されるべきものでないということも言うまでもありません。しかしながら、国の基本法である憲法の改正については、世論の成熟を見定めるなど、慎重な配慮を要するものであると考えております。
 憲法に関する問題につきましては、広範かつ総合的に調査を行うため、第百四十七回国会から衆参両議院に憲法調査会が設置され、将来の我が国の基本的あり方を見据えて、幅広く熱心な議論が行われていることであり、これを十分に見守ってまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣扇千景君登壇〕
#6
○国務大臣(扇千景君) 佐藤公治さんの御質問を拝聴しまして、お元気で、そして私的なことで失礼ですけれども、私の長男と同じ大学で、同窓でございましたので、若輩者と言わないで、今やあなたの時代ですから、ぜひ二十一世紀の政治家として頑張っていただきたいことを冒頭に申し上げておきます。
 さて、私に対しまして、保守党の党首として、船舶調査の問題及び参議院選挙制度の問題に関して御質問をいただきました。
 船舶検査活動に関しましては、国連決議に基づくことは周辺事態に限定する必要はないとした自由党時代の主張を改めるのかという質問でございました。
 国連決議等の国際法規によるならば船舶検査を周辺事態に限定する必要のないことは御指摘のとおりでございます。しかし、与党三党としては、今日の国民のコンセンサス、国益などを考慮し、政策判断として、船舶検査活動は周辺事態確保法における周辺事態に際し行うことが妥当であると合意したものでございます。
 今日の国連の事態を考えれば、国連決議万能の考え方にはいささか問題があり、国民のコンセンサス、ひいては国益に基づいて判断していくことが大切であろうかと存じます。
 自自公連立当時、出る、出るといったあの連立の不安定さから考えれば、今の自由民主党、公明党、保守党は、より強固な連立となり、お互いの意見を交換し、真に国民の政策を決定していることを御確認いただきたいと存じます。
 また、次に参議院制度改革について、自民党と自由党との政策合意に衆参両院の選挙制度改革を行うとの合意があったのに、私と当時の青木自民党幹事長がこの合意を凍結し、各党協議を進めたのは、合意を踏みにじる、政治家にもとる行為であるとの御指摘がございました。
 御指摘の自民、自由両党首の合意は、平成十年十一月十九日に行われました。ここでは、衆議院、参議院とも当面、議員定数を五十ずつ削減することを目標として両党で協議を行い、次の通常国会において公選法の改正を行うとの合意に達し、これを受けて両党の専門家による協議の結果、衆議院については比例代表定数を五十人削減することで合意に達し、参議院の議員定数削減については、現在、議長のもとで各会派が協議しているため、その独自性を尊重するとの合意に達したのでございます。
 委員御指摘の、自民党と自由党との政策合意に衆参両院の選挙制度改革を行うとの合意があった、また、この合意を凍結し各党協議を進めたという指摘は、全く誤っているどころか、各党協議を行うことは両党の合意そのものでございました。
 各会派協議の状況については、当時、自由党の常任幹事会において、私から常に報告し、承認も得ておりました。そのときに籍を持たれていなかった委員が御承知ないのは当然ですけれども、また、参議院の独自性の問題でもあり、委員の御指摘は、事実を故意にねじ曲げ、政治家として私の信用をおとしめようというのか、それとも、事実関係を全く知らずに質問したのか、いずれにしても心外であり、言語道断であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(綿貫民輔君) 穀田恵二君。
    〔穀田恵二君登壇〕
#8
○穀田恵二君 私は、日本共産党を代表し、森総理に質問します。
 質問に先立って、北海道有珠山の噴火、三宅島の噴火と神津島近海などでの地震活動、東海地方を中心とした豪雨など、ことしに入ってから日本列島各地で災害が相次いで発生しており、これらの災害により犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
 さて、今国会は、日本国憲法のもと、国会が主権者である国民の代表機関となって百五十回目、節目の国会であり、二十世紀最後の国会です。
 総理、あなたも次の世紀への備えを強調されました。しかし、山積する課題の危機的状況をどのように解決し、どういう形で二十一世紀を迎えるのか、全く見えてきませんでした。
 総理、日本と国民の置かれている状況をしっかり見据え、国民こそ主人公の立場に立って、今日の行き詰まった政治を打開し、国民の生活と安全を確保する、これこそが今政治が果たすべき責任と役割であります。
 まず初めに、災害対策について質問します。
 有珠山では、三月三十一日の噴火開始以来半年がたっても、なお多くの方々が避難生活を余儀なくされています。三宅島では全島民の避難という事態になり、東京都内などでのなれない避難生活を強いられ、子供たちの多くは秋川高校での集団生活を続けています。
 東海地方の豪雨災害では、九名の方々が犠牲となられ、愛知県では、住宅の損壊が二百六十九棟、床上浸水は二万八千棟を超えるという大災害となりました。
 被災者の支援で痛感するのは、できるだけの支援ではだめだということです。融資だけでは生活再建はできません。地震、噴火、水害などで被災し、個人の力ではどうしようもない困難に直面した人々にあらゆる支援の手を差し伸べる、ここにこそ政治の最低限の役割と責任があります。
 忘れもしません。未曾有の大災害となった一九九五年一月十七日の阪神・淡路大震災、私は、その直後の予算委員会で、復興に当たっては被災者の生活再建を柱とすること、そのために個人補償を中心とした公的支援の実施を提案しました。
 阪神・淡路大震災の復旧復興対策に十兆円を超える国費を投じ、高速道路や鉄道などはいち早く再建しましたが、肝心の被災者の生活と営業の再建は立ちおくれ、今なおもとの町にさえ戻れず、二重ローンや災害融資の返済に多くの被災者が苦しんでいるのが実態です。災害で家を失い、収入の道を断たれた被災者が自立するためには、住宅や店舗の再建を含む生活や営業の基盤の回復への公的支援、個人補償がどうしても必要です。
 災害列島日本の現実を見るにつけ、公的支援、個人補償制度を実現することは、まさに政治の責任ではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 次に、暮らしを支える社会保障と雇用の問題です。
 この二十世紀は、社会保障を権利として確立した世紀です。日本国憲法は、国民の生存権を保障し、社会保障の向上と増進を国の義務として求めていますが、私は、この憲法を暮らしに生かすことが大切だと考えています。
 社会保障の現状に不安を感じている国民が今ほど多いときはありません。
 読売新聞の世論調査によると、国民の四人に三人が老後の生活に不安を感じ、その理由として、生活費が足りなくなる、五四・五%、十分な介護が受けられない、四六・一%、寝たきりや痴呆になる、二九・七%を挙げています。しかも、生活に不安を感じる人が昨年よりも六ポイントもふえて、同紙の調査開始以来最高の数値となっています。
 老後の不安を増幅させている介護保険について質問します。
 介護保険が始まって半年、総理はおおむね順調に実施されていると言いますが、その実態を見ると、利用料の負担が重いために必要なサービスが受けられないお年寄りが続出しています。厚生省が公表した各自治体の介護利用者のアンケート結果によると、利用料が高くなったと答えた方が六割から七割に上り、日経新聞のケアマネジャー調査でも、限度額の六割以下しかサービスを利用しない事例が七〇%にも上っています。
 介護保険ができたために今までの介護が受けられないという介護の社会化に逆行するこうした事態を、総理はどう認識しているのですか、率直な答弁を求めます。
 ところが、政府は、この十月から、六十五歳以上のお年寄りからも介護保険料を新たに徴収しようとしています。
 保険料徴収通知が届けられた途端、私の地元の京都市では、わずか三週間の間に一万一千件もの問い合わせが殺到し、市税が減免されているのになぜ保険料を払わないといけないのかという苦情がそのうちの半数以上を占めています。介護サービスの利用料が払えず、認定してもらっただけになっているのに、それでも保険料を払うのか、本人の承諾なしで年金から天引きすることなど許せないといった声が次々と寄せられています。
 お年寄りの保険料徴収が始まれば、たとえ当面一年間は半額の保険料であっても、低所得者には二重の打撃となります。このままでは、必要なサービスをさらに縮小せざるを得なくなることは明白ではありませんか。
 そこで、緊急措置として、在宅介護の利用料については、最小限の措置として、政府の特別対策である訪問介護利用料の三%への軽減措置を、新規のサービス利用者も含めて、訪問看護、デイケア、訪問入浴などすべての在宅サービスに拡大すること、保険料は住民税非課税の高齢者、低所得者からは徴収しない措置をとること、このことを直ちに実行すべきではありませんか。
 また、深刻な事態のもとで、少なくない地方自治体が独自の保険料免除措置を行おうとしています。これは当然のことです。政府はこれを応援すべきものです。
 政府が、一律免除は適当でないなどとして低所得高齢者への減免をやめるよう自治体を指導するなどは、やり方が逆さまであり、断じて認められるものではありません。答弁を求めます。
 健康保険制度の問題です。
 政府は、今国会に法案を提出し、七十歳以上の高齢者の医療費患者負担を来年一月から原則一割に引き上げようとしています。
 この政府の計画が実施されたらどうなるでしょう。ある医療機関の試算によると、小脳出血で二週間入院した場合、現行制度では二万七千四百四十円の負担だったものが四万八千百二十円となり、一・七倍もの患者負担増になります。
 また、ぜんそくで通院しているお年寄りは、一割負担になれば、病院に行くまで幾らかかるかわからないし、安心して治療が受けられなくなります、病気になったら見捨てられてしまうようで本当に心配ですと話していました。
 高齢者にとって、介護の利用料負担に加え、保険料の徴収と重なり、医療保険の負担増はトリプルパンチとなり、この上どう負担せよというのかとの怨嗟の声が広がっています。
 しかも、お年寄りの負担をふやす一方で、国庫負担は月額百四十億円も減らす。やり方が逆さまではありませんか。このような計画はやめるべきであります。
 医療費の国庫負担率は、一九八〇年度の三〇・四%から、一九九七年度には二四・四%へと六ポイントも減らされています。九七年度で、金額に換算すれば一兆七千億円にもなるのです。
 高齢者、国民の負担をふやすのではなく、国庫負担を抜本的に引き上げてこそ政治の責任と役割を果たすことができるのであり、医療の改革を言うなら、健康保険改悪法案を撤回した上で、高過ぎる薬価や医療機器の価格構造にメスを入れることが先決ではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
 次に、雇用問題です。
 雇用危機を解決するためには、日本共産党が提案している解雇規制法の制定と、違法なサービス残業を根絶する措置をとることが緊急に必要です。
 労働省が昨年から始めた紛争解決援助制度の実績を見ると、五一・二%が解雇に関するものです。出向や退職勧奨、雇いどめなど解雇に類するものを含めると、実に七二・四%に達しています。直接、行政機関に救済を求めているというのが実態であります。だからこそ、政府も、個別紛争処理のための新たな制度を検討しているのではありませんか。
 解雇問題について、労使の話し合いに任せるという政府のこれまでの言い分は、もはや通用しません。今こそ解雇規制法の制定を真剣に検討すべきではありませんか。答弁を求めます。
 青年の雇用問題も重要です。
 いわゆるフリーターの青年は、労働省の調査でも百五十万人を超えています。二十一世紀を担う青年がその職業生活を順調にスタートできないという現状は、我が国の将来にとっても重大な問題です。彼らが希望を持って職業生活に踏み出していくために、安定した雇用と労働時間の短縮は不可欠の課題です。同時に、新卒未就職者に対する職業訓練の実施とその間の生活保障などの対策を講ずべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
 急増するパート労働者を初めとする非正規労働者対策も急がれています。
 これらの労働者は、圧倒的に無権利の状態に置かれています。賃金は限りなく最低賃金に張りつき、ボーナスも退職金もない、一千万人にも及ぶパート労働者のうち、雇用保険制度に加入しているのはわずかに七十四万人余りにすぎず、国の制度からも排除されているのです。
 先日、ディズニーランドで、社会保険に加入させないまま働かせていたアルバイトの青年労働者に、さかのぼって保険料が請求され、大問題となりましたが、こうした事態は広く蔓延し、このことが年金や健康保険の財政基盤をも掘り崩す結果になっています。
 既に国際的には、ILO百七十五号条約やEU各国のパート法制に見られるように、こうしたパート差別をなくすための賃金の時間比例原則とその他の処遇の平等という規範が確立しています。
 しかし、我が国のパート労働法は、肝心の賃金についても時間比例原則すら明確にしていないという極めて不十分なものです。今こそ、国際水準に立った抜本的なパート労働法の拡充と強化が求められていると思いますが、答弁を求めます。(拍手)
 次に、補正予算の問題です。
 総理がやろうとしているのは、結局、景気対策と称して相も変わらず公共事業中心の大型の補正予算の編成ではありませんか。ITなど看板を新たにしても、その内実は、関西国際空港二期工事、中部国際空港整備など、大型プロジェクトの投資が中心です。
 九二年八月の宮澤内閣の総合経済対策以来十一回、事業規模で百二十五兆円、うち公共事業に七十一兆円もつぎ込んできました。しかし、こうしたゼネコン奉仕型公共事業が、借金の山を築いただけで景気回復に役立たず、国民の暮らしを改善するものではありませんでした。
 マスコミの社説でも、まず規模ありきが一九九〇年代以降の補正予算の習性になってきた、このことがいかに多くのむだな事業と政府の借金を重ねてきたことか、もうそろそろ冷静にこれまでの総合対策を振り返ってもいいころであるとずばり指摘しています。
 国債をさらに増発しての大型補正予算の編成は、景気回復に役立たないどころか、国債価格の暴落、長期金利の上昇などを引き起こし、金融市場と国民経済に深刻な混乱をもたらす危険性を指摘せざるを得ません。
 総理、こうしたやり方を根本的に転換すべきではありませんか。
 政府・与党は、二百三十三事業、二兆八千億円の公共事業の見直しを発表しました。しかし、年額に直すと二から三千億円程度で、総額五十兆円という公共事業費のわずか〇・五%にすぎません。それどころか、公共事業上積みの補正予算まで編成するのでは、見直しどころか拡大ではありませんか。
 総理の言う公共事業のビッグバン的見直しというのはこういうことなのですか。これでは、むだな公共事業をやめよという国民の批判に逆行するのではありませんか。
 この際、年間五十兆円、総額六百三十兆円使い切りの公共投資基本計画を根本から見直すべきであります。明確な答弁を求めます。
 九九年度は、一兆円を超える剰余金が出ることが確定しています。その半分は、財政法第六条に基づき国債の償還に充て、残りを緊急に必要な国民の暮らしを支える予算に充てるべきです。
 四つの柱を提案します。
 第一は、災害被災者への支援です。
 この間の地震、噴火や水害などで被害を受けた被災者に、生活、仕事の確保や災害前の借金返済の負担軽減など、きめ細かな対策を直ちに実施すべきです。同時に、被災者生活再建支援法に基づく支援金支給は、対象を抜本的に拡大し、支給限度額を大幅に引き上げるなど、国の責任で真に実効ある制度にすべきです。また、阪神・淡路大震災被災者に対する災害融資や二重ローンの負担軽減対策にも緊急に支援を講ずるべきです。
 第二は、高齢者からの介護保険の利用料や保険料の減免措置をつくることです。
 第三は、お年寄りの医療費負担をこれ以上重くする健康保険法改悪をやめること。
 第四は、失業者のつなぎ就労確保などの雇用対策を初め、中小企業や農家経営の安定対策を充実することです。
 緊急地域雇用特別交付金制度、これについては、二年半で二千億円にすぎない予算をせめて倍増することが必要です。
 そして、委託中心のやり方を自治体が直接実施できるように改めること、最長六カ月という雇用期間の規制を外すこと、雇用保険の受給期間を超えた失業者を対象とすることなどの改善を直ちに行うことです。
 こうした対策こそ、今必要な最小限の施策であり、今年度中に必要な経費は約五千億円程度です。政府にその意思さえあれば、実現可能な措置です。国債の発行などは全く不要です。
 こうしてこそ、日本経済の再建と財政再建に向けた第一歩が開けるのではありませんか。答弁を求めます。
 次に、参議院選挙制度を根本から変える非拘束名簿式の導入問題です。
 第一に、与党三党が導入しようとしている非拘束名簿式なるものが有権者の投票意思を全く愚弄するものだということです。
 非拘束名簿式の制度としての最大の問題点は、有権者が個人名を書いて投票した票をその候補者の所属政党への投票と読みかえて、これによって、有権者がある候補を当選させようとして投票した票が政党の得票に集計され、自分が入れたつもりのない候補者の得票となることです。
 これはまさに票の横流しではありませんか。票の横流しを制度化するなどというのは、民意の正確な議席への反映という選挙制度の基本に背くものであり、断じて容認できません。与党は、このような法案の提出を中止すべきです。
 第二に、そのやり方がおよそ議会制民主主義のルールを根本から踏みにじっている点です。
 選挙制度は、国会の土俵づくりであり、国民主権と議会制民主主義の根幹にかかわる問題です。その制度の変更は、議会を構成するすべての会派で十分に協議を尽くして、合意に基づき進めるべきものです。総理、あなたはそう思わないのですか。
 参議院のすべての会派で構成された参議院選挙制度改革協議会が、当面は現行制度を維持すること、つまり非拘束名簿式の導入はしないことを決め、参議院議長も参加し、参議院全体の合意として確認しました。
 にもかかわらず、その合意を一方的にほごにして、全党でやらないとしていた現行制度の改変を持ち出してくる。これは、議会運営の最低限のルールさえ踏みにじる重大なルール破りではありませんか。見解を求めます。(拍手)
 次に、総理はあっせん利得処罰法案を今国会中に成立させると答弁しました。問題は、実効ある法律を成立させることです。
 あっせん利得罪は、いわゆる族議員などが官庁や役所に圧力をかけ、予算や補助金、税制、行政指導などに口ききをし、その報酬としてわいろを受け取ることをやめさせようというものです。
 この問題は、現行刑法で汚職犯罪を立件する上で障害になっている職務権限やあっせんを依頼したという請託を外して、実効ある法律をつくろうというのが出発点でした。その立場で提案したのが野党共同案です。
 ところが、与党案は、野党案より厳しいものにするなどと言いながら、どうして請託や権限を犯罪の構成要件に盛り込み、さらには、対象範囲を契約と行政処分に限定したのですか。これで、どうして実効ある法律になりますか。抜け穴だらけのざる法ではありませんか。
 また、本年四月から、政治家個人への企業・団体献金が禁止になりましたが、その後も、政党支部を通じた抜け道献金は一層横行し、政党助成金との二重取りに国民の不信が募っているのであります。
 総理、本当に国民の信頼を高めるには、この際、政治腐敗の根源である企業・団体献金を完全に禁止し、政党助成制度を撤廃するべきではありませんか。答弁を求めます。
 選挙制度に関連して、永住外国人の地方参政権についてもお聞きします。
 永住外国人の地方参政権は、地方自治、住民自治の場に永住外国人をその担い手として迎え、日本国民と等しく参加する政治を実現しようとするものであり、我が国の民主政治の発展につながるものだと考えます。
 ところが、政府は、一貫して与党間での協議任せの姿勢をとってきました。この問題は、日韓首脳会談の議題となってきた問題でもあります。政府としての責任ある態度を明らかにすべきであります。答弁を求めます。
 最後に、日本外交のあり方です。
 私は、京都の立命館大学に学びました。侵略戦争を反省し、若き学徒の出陣の過ちを繰り返さないという反戦平和のわだつみ像を仰ぎ見て政治を志しました。わだつみの悲劇を繰り返すまい、これが私の政治信条です。その立場から、二十一世紀の日本外交について三つのことを提案します。
 第一は、軍事同盟中心、軍事対応一本やりを平和的な話し合いの外交路線に転換し、侵略戦争と植民地支配の反省を明確にして、真にアジアの一員としての外交を進めることです。
 今、アジアで平和への力強い流れが起きています。朝鮮半島をめぐってはさまざまな曲折がありましたが、南北首脳会談の歴史的成功は、朝鮮半島問題の平和的解決のみならず、東アジアの平和と安全にとっても極めて大きな意義を持つものであります。
 ところが、この平和への動きの中で、日本政府がこの間やってきたことは、戦争法、ガイドライン法を初めとする自衛隊の海外派兵体制の強化など、軍事対応一本やりでした。これは、アジアの国々を危険視した政策そのものではありませんか。加えて、森総理の神の国発言や侵略戦争肯定の発言が、どんなにアジア諸国の信頼を失ったことでしょうか。
 総理、二十一世紀をアジアの世紀にすると言うなら、二十世紀最後のこの国会で、総理自身が、日本が行った侵略戦争と植民地支配への真摯な反省を内外に明らかにすべきであります。責任ある答弁を求めます。
 これは、日本の歴史的責任の問題であり、北朝鮮との国交正常化交渉を前向きに実らせるかぎでもあります。そして、アメリカ追従外交をやめ、アジアの平和の流れに貢献する外交に転換する、この道こそが、日本が選択すべき二十一世紀の外交だと考えます。
 第二に、二十一世紀を核廃絶の時代とするためのイニシアチブをとる外交であります。
 総理は、国連ミレニアムサミットで、今春のNPT再検討会議で確認された全面的核廃絶に向けての明確な約束を大きな一歩と評価しました。問題は、日本政府が一日も早い全面的核廃絶に向けてイニシアチブをとるかどうかであります。
 国連に加盟してからの四十四年間の日本外交は、一日も早い核廃絶をという国民の願いに反し、アメリカに追随し、究極的廃絶の立場に立って期限を切っての核廃絶決議に棄権し続けてきました。今、非同盟諸国や新アジェンダ連合がアメリカなどの核兵器保有国に対して強力な交渉を行うなど、核兵器廃絶への力強い流れが起きているもとで、唯一の原爆被爆国日本が、率先して期限を切った核廃絶のための交渉開始を求め、その先頭に立つべきではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)
 第三に、日本国憲法の平和主義を日本外交の中心に据える問題です。
 日本国憲法の打ち立てた恒久平和主義の原則は、第二次世界大戦への反省から出発して、戦争の違法化という二十世紀の世界史の大きな流れの中で、最も先駆的な到達点を示すものであり、世界に誇るべき原則であります。
 今二十一世紀に向けて、アジアと世界でわき起こりつつある平和への力強い流れの中で、憲法第九条の値打ちがいよいよ光り輝くものとなっております。
 この日本国憲法の平和主義を中心にした日本外交を進めることが、日本が世界の平和に貢献し、国際社会で名誉ある地位を占める道であります。
 以上、日本国憲法の先駆的原則を生かす政治こそが二十一世紀の日本をつくる道だということを申し上げ、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(森喜朗君) 公的支援、個人補償制度を実現することが政治の責任ではないかとのお尋ねがございました。
 災害により住宅などの財産に損害を受けた方に対しましては、長期、低利の融資等の各種施策を講じているところでございます。また、被災者生活再建支援法が共産党を除く六党の共同提案により成立し、昨年四月から施行されたところであります。今後とも、関係公共団体等と連携をとりながら、被災者支援のため万全の対応を期してまいる所存であります。
 介護保険の利用料負担に関する御質問でありますが、これまで自治体から報告を受けたところでは、利用料の負担が重いためサービスの利用を抑えている例は少なく、むしろ介護保険の導入によりサービス利用者の増加や提供量の拡大といった効果があらわれております。利用者にも費用の一部について御負担をいただきながらサービスを受けていただくという、制度の基本的な仕組みについて御理解をいただくことが重要であると考えます。
 十月からの保険料徴収は低所得者にとって二重の打撃となるのではないかとの御指摘でありますが、介護保険制度におきましては、低所得の方に大きな負担とならないよう、利用料について月々の負担上限額を一般の方より低い額とし、また、保険料についても課税状況に応じて低く設定するなど必要な配慮を行っているところであります。
 低所得者対策についての具体的なお尋ねでありますが、介護保険制度は国民皆で支え合う制度であり、六十五歳以上の高齢者の方からも、負担能力に配慮しつつ一定の保険料や利用料を御負担いただくことといたしております。
 また、訪問介護に係る利用料の軽減措置については、制度施行前からの利用者の多くが利用料がゼロであったことを踏まえた経過的な措置であり、施行前から一定の負担をいただいていた他のサービスについては、原則どおり一割の負担を求めることといたしております。
 一部の地方自治体が独自に行おうとしている保険料減免についてのお尋ねですが、介護保険制度は介護を国民皆で支え合おうという制度であり、一般財源を用いて一律に低所得者の方の保険料を減免することは、こうした制度の趣旨とは必ずしも合致しないものと考えます。保険料負担の意義や必要性について、自治体に対して引き続き周知を図り、理解を求めてまいります。
 健康保険法等の改正案についてのお尋ねでありますが、今回の高齢者の定率一割負担の導入は、医療費に対するコスト意識を喚起するなどの目的から行うものであります。これは、お年寄りに無理のない範囲で現行制度とほぼ同水準の御負担をお願いするものでありまして、国庫負担減らしを目的とするものではございません。今回の改正は、二十一世紀における安定的な医療保険制度を築くための抜本改革に向けた第一歩であり、早期にその実現を図ってまいりたいと考えております。
 国庫負担を抜本的に引き上げるべきとのお尋ねでありますが、医療保険の財政は、保険料、公費負担、患者一部負担により賄われており、いずれも国民に御負担をいただいております。
 現在、社会保障全体に関し、社会保障構造のあり方に関する有識者会議において御議論をいただいているほか、平成十四年度に向け高齢者医療制度等について見直しを進めております。国庫負担を含む医療保険の財源のあり方につきましても、これらの検討結果を踏まえ、対処してまいります。
 薬価や医療機器の価格についてのお尋ねがございましたが、今年度の薬価改定等におきまして、薬価差や内外価格差の縮小を図る観点から、価格ルールの見直しや価格決定手続の透明化を図るなどの措置を講じたところであり、今後とも、引き続きこうした改革にも取り組んでまいります。
 解雇、サービス残業の規制についてのお尋ねがありました。
 解雇については、裁判例の考え方を踏まえ、労使間で十分に話し合われるべき問題であり、一律に規制することは適切ではないと考えております。
 サービス残業は、労働基準法違反であり、政府としては、労働基準法及び時間外労働の限度基準の趣旨の徹底を図るとともに、的確な指導を行っているところであり、引き続きその解消に努めてまいります。
 青年の雇用と労働時間についてのお尋ねがありました。
 職業生活に第一歩を踏み出す青年が安定して働くことができるよう雇用対策に万全を期すとともに、豊かでゆとりある職業生活を実現するため、労働時間短縮に積極的に取り組んでおります。また、学卒未就職者に対しては、職業訓練やきめ細かな職業相談等の就職支援対策を講じることにより、一日も早い就職の実現に向けて努めているところであります。
 なお、学卒未就職者に対する生活保障については、雇用対策としては困難であると考えております。
 パートタイム労働法の拡充についてのお尋ねがありました。
 パートタイム労働法は、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保、教育訓練の実施などを通じ、その能力の有効な発揮等を図るものであり、今後とも、同法に基づき通常の労働者との均衡を考慮した処遇の確保に努めてまいります。
 なお、パートタイム労働にかかわる賃金の時間比例原則については、賃金決定のシステムが我が国とヨーロッパ諸国では相当に異なっていることから、直ちに導入を図ることは困難であると考えます。
 補正予算についてのお尋ねがございました。
 政府・与党の迅速にして大胆な経済政策によって、我が国経済は緩やかながら改善をいたしております。しかしながら、雇用情勢はいまだ厳しく、消費は一進一退の状況にあり、企業の倒産件数も高水準になっています。いわば我が国経済は、まさに正念場でありまして、もう一押しが必要な状況にあると考えており、こうした観点から補正予算を編成することといたしております。
 その際、我が国の経済を新時代にふさわしい構造に改革し、二十一世紀における新たなる発展を確実にすることが現下の最大の課題であることから、IT革命の推進、環境問題への対応、高齢化対応、都市基盤整備の重要四分野を軸とした日本新生プランの具体化策等を中心に盛り込むことといたしております。これらの施策により、我が国経済の再構築を進めるとともに、民需中心の自律的回復に向けた動きをより確かなものとしてまいりたいと考えております。
 補正予算と公共事業の見直しについてのお尋ねがありました。
 今般の補正予算により追加される公共事業につきましては、規模については、我が国経済を民需中心の自律的回復軌道、過程に乗せていくために必要最小限度のものにとどめるとともに、その内容についても、IT革命の推進等の重要四分野を中心とした日本新生プランの具体的施策を中心とした喫緊の政策課題に絞り込むことといたしております。
 他方、公共事業については、先般、与党政策責任者会議において二百三十三事業の中止を前提とする抜本的な見直しに関する三党合意を取りまとめていただきましたが、政府としましても、この三党合意を重く受けとめまして、そこに示された諸課題について積極的な検討を行い、公共事業の見直しに取り組んでいくことといたしております。
 具体的には、十三年度予算編成に向けて、計画・既着工事業の抜本的見直し、政策課題に対応した予算の重点化、事業評価の厳格な適用、コスト縮減等による効率性、透明性の向上を行い、真に国民のためになるよう公共事業を抜本的に見直し、再構築するという考え方で取り組んでまいりたいと考えております。
 公共投資基本計画についてのお尋ねがありました。
 本計画は、社会資本整備を実施していくための指針でありますが、本格的な少子高齢社会の到来を間近に控え、国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するためには、人口構成を考えると現在のうちに本計画の考え方に沿って社会資本の着実な整備を推進していく必要があることから、本計画を見直す必要はないと考えております。
 地震、噴火や水害などの被災者にきめ細かな対策を直ちに実施すべきとのお尋ねがありました。
 被災者への支援につきましては、災害の実態に応じて、災害救助法の適用、雇用調整助成金の支給、緊急地域雇用特別交付金事業の実施、中小企業者の事業維持のための政府系中小企業金融機関における災害復旧貸し付けの取り扱いの実施等、被災者の生活、雇用、営業の維持に関する対策を直ちに実施いたしているところであります。今後とも引き続き、被災者に対するきめ細かな対策に全力を傾注する所存であります。
 被災者生活再建支援法の抜本的な改正についてのお尋ねがありました。
 支援法は、共産党を除く六党の共同提案により成立し、昨年四月から運用を開始したところであり、まずは現行制度を円滑かつ適切に運用し、実績を積み重ねることが重要であると認識いたしております。
 阪神・淡路大震災被災者に対する災害融資や二重ローンの負担軽減対策にも緊急に支援策を講じるべきではないかとのお尋ねがありました。
 阪神・淡路大震災の被災者に対する災害融資につきましては、災害援護資金貸付金の償還について法令の弾力的な運用を図るなど、被災者の状況に合わせ適切に処置してきているところであります。
 次に、二重ローンの問題につきましては、民間金融機関においては、被災者の個々の事情を踏まえ、住宅資金等新規の低利融資や既往資金の条件変更等の御相談に応じてきているものと理解をいたしております。また、住宅金融公庫におきましても、災害復興住宅融資や既存債務の返済条件の緩和について特別措置を講じているところであります。
 政府としては、これらの措置を今後とも適切に運用し、被災者の生活支援対策などきめ細かな支援策を引き続き行ってまいる所存であります。
 臨時的な就業機会の確保などの雇用対策及び中小企業経営改善対策についてお尋ねがありました。
 政府としては、雇用情勢が好転するまでの臨時的な雇用機会を確保するため、緊急地域雇用特別交付金事業を平成十三年度末までの事業として実施するほか、中小企業金融対策に万全を期すとともに、IT化等に伴う経営環境の変化に中小企業が対応できるように、研修の実施等、多様なニーズに対応したきめ細かな対策を講じてまいります。
 緊急地域雇用特別交付金事業についてのお尋ねがありました。
 本事業は、二千億円の基金を原資として、民間企業による臨時的な雇用機会を確保するための事業であり、本事業を含めた国、地方公共団体の施策は、三十万人強の雇用創出という目標に向け、着実に効果を上げているものと認識しております。なお、雇用保険の受給期間を超えた方についても本事業の対象といたしておりますが、今後とも引き続き、本事業の着実な実施に努めてまいります。
 剰余金の活用と補正予算の編成についてお尋ねがありました。
 政府としては、景気回復に軸足を置きつつ、我が国の経済を新時代にふさわしい構造に改革し、二十一世紀における新たな発展を確実にするとの考え方のもと、平成十二年度補正予算を編成することといたしております。その際、安易に国債発行に頼ることのできない厳しい財政事情を十分に考慮し、国債の追加発行を極力抑制するため、御指摘の平成十一年度剰余金を活用することを検討しているところであります。
 参議院選挙制度の改正に関するお尋ねがございましたが、非拘束名簿式は、候補者個人を選択することにより選挙人の関心が高まることなどが期待できるものであり、第八次選挙制度審議会の答申においても提案をされているものと承知いたしております。
 参議院選挙制度改革につきましては、国民が政治に関心を持ち、また、政治が国民から信頼されるような選挙制度を目指し、各党各会派の間で精力的に議論していただきたいと考えております。
 次に、選挙制度改正は、議会を構成するすべての会派で十分協議を尽くし、合意に基づき進めるべきとの御意見をいただきました。
 言うまでもなく、選挙制度改正は、議会政治の根幹にかかわる問題でありますので、各党各会派にいろいろなお考えがある中で、精力的に議論していただきたいと考えております。
 さらに、参議院選挙制度改革に関する協議会における合意に関するお尋ねがありましたが、この協議会において、昨年六月から、各党会派により参議院議員の選挙制度改革について熱心な議論が行われていることは承知をいたしております。その議論の中においても、現行の拘束名簿式比例代表制の問題点などが指摘されており、本年二月に取りまとめられた協議会の報告書においても、参議院のあるべき役割に適合した選挙制度の改革の検討が必要であるというのは一致した意見であったとされたものと承知をいたしております。
 そこで、国民に対し責任を負うべき与党として、来年の通常選挙を控え、参議院選挙制度の改革をこれ以上先延ばしはせず、これに正面から取り組まなければならないと判断したものと承知しております。いずれにせよ、参議院選挙制度改革につきましては、各党各会派の間で精力的に議論していただきたいと思います。
 与党提出のあっせん利得罪処罰法についての御質問をいただきました。
 与党三党間において法制化に向け大変熱心に御議論をいただき、与党案としてまとめていただきました。法制化に当たって、私は、構成要件を明確にし、かつ国民の要望を幅広く行政に反映させるという政治の役割にも配慮するという必要があると繰り返し申し上げてまいりました。与党案においては、こうした論点を十分踏まえ、構成要件や対象行為等を定められたものと承知しており、さきの臨時国会に提出された野党案に比べ、構成要件を明確にしつつ、処罰対象を大幅に拡大しているものと承知いたしております。
 政治に対する国民の信頼を高めるためにも、十分御議論の上、ぜひとも今国会中に成立させられることを期待いたしております。
 企業・団体献金、政党助成金を廃止すべきとの御指摘がありました。
 私は、政治資金制度は、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念に沿ったものであるべきであると考えておりまして、こうした理念を踏まえ、既に本年から政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されたところであります。
 一方で、政党に対する企業・団体献金につきましては、最高裁判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を持つことは認められており、これをおよそ悪と決めつける論拠は乏しいと考えております。
 また、政党助成金は、政治改革について議論を積み重ねた結果成立を見ました政党助成法に基づき、政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただこうというものであり、政党の政治活動の健全な発達を促進し、民主政治の健全な発展に寄与するものであると考えております。
 政治資金は民主主義に必要なコストであり、また、国民の政治参加の一つの方途でもあり、こうした観点も踏まえ、各党各会派において議論していただきたいと考えております。
 永住外国人に対する地方参政権付与法案についてお尋ねがありました。
 この問題につきましては、既に国会に二法案が提出されておりますが、我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題であり、さまざまな意見があり、真剣な論議が行われているところでありますことから、国会等での御議論を進めていただきたいと考えております。政府といたしましては、そうした御議論の結果を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えております。
 我が国政府の歴史に関する基本認識についてのお尋ねでありますが、一九九五年の内閣総理大臣談話にあるとおり、我が国は、遠くない過去の一時期、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジアの諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、そのことについて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明しております。こうした政府の認識は、現内閣におきましても不変であります。
 期限を区切った核廃絶についてのお尋ねでありますが、あらかじめ期限を付して核廃絶を実現しようとする考え方は、その時点での国際安全保障環境がどのような状況になっているかを顧みることのない非現実的なものであり、実際には、これを主張する人々の意図に反し、いたずらに核兵器国と非核兵器国の対立を助長しかねず、結局は、核軍縮に関する話し合いの進展を妨げるおそれがあると考えます。
 我が国は、今春のNPT運用検討会議で合意された、将来に向けた核軍縮の現実的措置の実施に向け、新たな核廃絶決議案を国連総会に提出する予定であり、この分野において率先してリーダーシップを発揮してまいりたいと考えます。
 日本国憲法の平和主義を中心とした外交を進めるべきとの御指摘でありますが、我が国は従来から、日本国憲法のもと専守防衛に徹し、他国にも脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念を掲げ、世界の平和と安定のために積極的に努力をしてまいりました。私としても、かかる方針のもと、さきの所信表明演説に述べたとおり、二十一世紀をより平和な世紀とするため、国際社会の主要な一員として、積極的かつ創造的な外交を展開してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
#10
○副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。
    〔土井たか子君登壇〕
#11
○土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、森内閣総理大臣の所信表明演説に対して質問をいたします。
 初めに、この夏の三宅島雄山の噴火や東海地方の集中豪雨によりまして被害を受け、今も避難生活を余儀なくされている方々に心からのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧と生活の再建がなされますよう願っております。
 政府と国会は、被災された方々への物心両面の支援を可能な限り速やかに行うべきであります。
 さて、二十一世紀を目前にした今世紀最後の国会であります。しかし、新しい時代の幕あけがすぐそこまで迫っているというのに、私たちには、今どれだけの明るい希望や展望があると言えるでしょうか。
 森総理は、所信表明の中で、初めにIT革命について述べ、次いで教育改革に話を移し、さらに社会保障や公共事業の見直しに言及されました。
 IT革命と教育改革と経済政策は、一体として論じなければならない課題であります。二十一世紀、グローバリズムとIT革命が、より急速に、より深く、広く進展していくことは間違いありません。これまでの社会のシステムが根底から変わってしまう大激動の中に、すべての人々がいや応なく巻き込まれることになります。国民的な取り組みが必要なことは言をまちません。
 グローバリズムやIT革命は、明るい面ばかりではありません。そこには、一たび引き起こされると破滅的な結果をもたらす巨大なリスクが生まれます。また、これまでにも増した格差が、国と国との間に、階層と階層の間に、あるいは個人と個人の間に生ずるかもしれません。また、一人一人の人格や家族、あるいは企業や地域社会に与える影響には、なおはかりがたいものがあると言われています。一言で言うなら、世界はより不安定になりかねないのです。
 グローバリズムやIT革命の可能性を追求しながら、一方でこうした危険を回避していくためにはどうしたらいいのか。教育しかないというのが世界の先進的な国々の共通の考えです。今、ヨーロッパでもアメリカでも、政治家たちのスローガンは教育、教育、教育であります。そして、言葉だけではなく、実際、教育に巨額の投資が行われたり、行われようとしているのです。
 ここでいう教育は、子供たちへの学校教育だけではなくて、既に働いている社会人に対する再教育も含んでおります。中には、一年に及ぶ再教育の期間、家族の生活費を保障し、より学びやすい環境をつくっている国もあります。非常に大規模な国民再教育の運動が世界あちこちで起き始めているのです。申し上げておきますが、それはIT講習券などというけち臭い規模のものではありません。
 日本に今必要なのは、大胆な発想の転換であり、未来の構想であり、その構想に沿った政策の実行であります。森総理の所信表明には、目新しい用語がたくさんちりばめられているだけで、未来の構想らしきものは見えてきません。所信表明の信ずるところが見えないのです。これでは議論をすることはできません。
 従来から指摘されてきたように、これまで日本は余りにも公共事業にお金を使い過ぎました。人に投ぜられるべきお金が、むだな道路や橋や空港、ダム、干拓などにむなしく費やされてきたのです。愚かなお金の使い方だと言わねばなりません。
 ようやく与党は公共事業の見直しを言い始めたようですが、余りにも小規模であり、その見直し基準もあいまいで、抜本的な改革とはとても言えません。来年度の公共事業費も変わらないとすれば、見直しとは言えないでしょう。お金の使い方を誤ったという反省や発想の転換はどこにもないようであります。この変わらない政治とそのやる気のなさこそが、日本社会を覆う希望のなさ、展望のなさの源であることを私は指摘せざるを得ないのです。
 IT革命で日本はどう変わると総理はお考えですか。所信表明では伺えなかったこの問題を、改めてお聞きします。(拍手)
 関連して、総理が力を入れておられるという教育改革についてお尋ねいたします。
 九月二十二日に教育改革国民会議の中間報告が出されました。私は、この教育改革国民会議という審議機関自体についても、その論議の過程についても、また中間報告に対しても、まことに懐疑的であります。
 前回の代表質問でも申し上げましたが、教育改革国民会議は小渕前総理の私的諮問機関として出発しました。二十六人の委員は前総理によって選ばれた恣意的なメンバーであって、その選ばれた基準すら私たちには明らかではありません。出てきた報告を読めば、家族や子供に対する上からの押しつけ、強制、威嚇が目立ちます。強制や威嚇で子供が育つでしょうか。提案されたことを実行したらどのような効果がもたらされるのか、研究や調査の裏づけがなければ、それは国民会議委員の思いつきであり、独断にすぎません。
 中でも最も理解に苦しむのは、奉仕活動の義務化であります。ボランティア活動は、自発的な意思に基づいてこそ、そこから多くのものを学ぶことができるのではありませんか。自発性に基づくからこそボランティアであり、自発性に基づかない強制的な労役は苦役にすぎません。「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」という憲法の基本的な決まりさえ問題とならないのでしょうか。それとも、一部で言われ始めているように、満十八歳の国民すべて一年間の強制労働とは、徴兵制の準備なのでしょうか。
 教育基本法の見直しは、今回の教育改革国民会議の報告には明確に盛り込まれませんでしたけれども、森総理はその抜本改定に意欲を示されていると聞きます。
 総理は、教育基本法の精神をどうとらえておられるのか。「平和的な国家及び社会の形成者として、」「個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた」という、公共への責任と個人の尊重にきちんと目配りした「教育の目的」をうたった基本法をどう変えようとなさるのか、さっぱりわかりません。はっきりさせてお答えいただきたいのです。基本法の精神を殺してしまうおつもりでしょうか。日本を再び戦前に引き戻すおつもりでしょうか。
 「ルールブック勝手に添削する与党」、これは先週新聞に出ていた川柳の一つです。「ルールブック勝手に添削する与党」。与党による参議院選挙制度改革案の本質をこれほどよく示しているものはないと私は思いました。選挙制度は、国民の正当な代表を選ぶ民主主義の最も大切な仕組みであります。公正で平等な制度が保障されなければ、国民の意思が正確に反映されず、議会はその代表としての正当性を失います。
 この与野党共通のルールブックともいうべき選挙制度を、与党は自分たちの都合のよいように勝手に変えようとしているのです。もとはといえば、久世前金融再生委員長が、候補者名簿の上位に名前を載せるために党員を無理やりに水増しし、その党費として企業から多額のお金をもらっていたことがはっきりした事件がこの問題の出発点でした。さらに、背景には、拘束名簿式では、上位に名を載せられればそれだけで支持団体が選挙運動を熱心に行わないから、制度を変えて最後までフルに動かそうという思惑があるとも伝えられています。
 何のことはない、どれもこれも自民党の内部事情ではありませんか。自民党の中で規律をしっかりと確立しさえすれば解決する問題です。それを、あたかも選挙制度が悪かったかのようにすりかえようとする、余りの党利党略、余りの御都合主義と言わなければなりません。(拍手)
 今、選挙制度で手をつけなければならないとすれば、九月六日、最高裁では違憲判断にはならなかったものの、三分の一の裁判官が反対意見をつけた一票の価値の不均等の是正ではありませんか。
 今、国民が求めていることは選挙区選挙の定数の抜本是正であり、定数削減や非拘束名簿式への変更ではありません。民主主義の根幹にかかわる重要な課題である選挙制度について、参議院は、これまで議長のもとの各派協議会で意見の一致に努力してこられたと伺っています。各派協議会の議論の経緯を無視し、与党だけで強行するとすれば、通常国会冒頭の衆議院における暴挙の二の舞であり、良識の府参議院の名が泣くでしょう。数の政治でなく理の政治をと言われる参議院は、まことに大事な存在だと私は思います。
 この臨時国会では、来年夏に控えている次期参議院選挙について、現行制度を前提として、逆転区の解消を行うための十分な話し合いを尽くすことです。総理はどうお考えになりますか。
 また、今取りざたされている定住外国人への地方選挙権についてお伺いいたします。
 与党には、反対派に配慮して、選挙権付与の対象を強制連行された人やその子孫に限るとの考えも出ているようです。この問題は、まず、韓国の金大統領に要請されたから行うというような問題ではありません。日本の近代史を振り返るならば、日本自身のこととして答えを出すべき問題であることがわかるはずですし、また、未来を展望すれば、それこそグローバリゼーションの中でいかに外国人と共生し、日本を開かれた社会にしていくかという問題であることがわかります。
 どうやって強制連行者とその子孫を見分けるというのでしょうか。外国人も、地域社会にあってはともに経済を支え、安全を守り、生活を支え合うパートナーです。ある年限、日本に滞在し、日本社会に生きる責任を分かち合う意思が確かめられる永住外国人には地方選挙権を認めるべきだと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。(拍手)
 あっせん利得罪について、森総理は、政治倫理の一層の確立を図るためと述べられました。こういう言葉を聞きますと、国会はこの十年、一体何をしてきたのだろうかと考え込まざるを得ないのです。政治改革の必要性が訴えられたのは、リクルート事件や金丸事件などがきっかけでした。政治倫理の確立を期すといって、選挙制度が変えられ、政治資金規正法の改正も行われました。しかし、一向に政治倫理が確立しないのはなぜでしょうか。
 それは、施策が行われると同時に、その抜け穴が直ちに準備されたからです。今回も既に幾つかの抜け穴が準備されています。例えば、犯罪の構成要件として、請託を受けることが入っている。これまで現行刑法に定められたあっせん収賄罪がほとんど適用されてこなかったのは、犯罪要件にこの請託が入っているからだと言われます。現実には、請託は密室で行われるために、その立証は非常に困難だからです。
 この抜け穴を防ごうとする法案なのに、なぜまた同じ抜け穴を残すのか。真剣に政治家と行政のゆがんだ関係を正そうとしているとはとても思えません。
 そもそも、あっせん利得行為の禁止は、第二次橋本内閣当時の佐藤孝行議員入閣問題を契機に社民党が提起したものであり、その後、我が党の閣外協力与党解消の原因の一つにもなった重要なテーマです。当時、自民党の中には、支持者に頼まれて役所に口をきくことは政治家本来の仕事である、政治家はあっせんする動物だなどと言われている方があって、愕然としたものです。
 問題は、そこで受け取るわいろが問題なのではありませんか。そのわいろを、政治資金規正法に従った寄附とすれば適法であるとして、いわばあっせん利得保護法ともいうべき法案を主張されたのが自民党でした。この案をみじんも変えることはできない、譲歩はできないと、我が党の法案に対して協議を打ち切られたことから比べると、今回は大変な進歩とも見えますけれども、しかし、決して前進と言えるものではない、当然の内容にすぎません。
 この間、中尾元建設大臣の逮捕を初め、政治の腐敗は後を絶ちません。与党の皆さんも、むしろ今日まであっせん利得罪の法制化を先延ばししてきた責任を痛感すべきであると思います。
 まして、あっせん利得罪と引きかえに、政治資金規正法における寄附行為の公開基準を五万円から二十四万円に緩めようとするなど、言語道断であります。政治家とお金の関係をできるだけ透明にすることは、一部の利益のために政治がゆがめられ、全体の利益が損なわれることを防ぐために絶対必要な措置だからです。政治資金規正法の政治献金の公開基準を緩和して自民党内の不満を和らげようという方策などは、国民が政治に不信感を抱く大きな理由となりましょう。森総理はどうお考えになりますか。
 私たちは、今回、与野党の議論を国民の皆さんの前にわかりやすく展開していくため、与党案との違いを鮮明にして、より強化、充実させた内容の対案を提示しています。みじんも譲歩はできないという与党の以前のような姿勢ではなく、よりよい内容、実効性のあるあっせん利得罪の法制化を実現することが国民の期待にこたえる道であると考えます。総理の決意はいかがですか。
 政党助成金の導入とともに一度は約束された政党への企業・団体献金の禁止は、今なお実行に移されておりません。なぜ、やれること、約束したことをやろうとしないのか、これも国民が政治に不信感を抱く大きな理由です。森総理はどうお考えになりますか。
 先ほど、こういう問題に対しては、国民から信頼される政治のためにということをこの演壇でおっしゃいました。しかし、いつも、この問題についてお尋ねをしますと、お答えの中には、ぜひ結論を出していただきたいとか、議論を皆さんで進めていただきたいとかいうふうな人任せの言い方をされるわけです。ただいまもそうなんです。
 自民党の総裁としての指導力が総理にはあるはずでありまして、それを発揮した御答弁を総理の言葉できょうはここで聞かせていただきたいと私は思います。(拍手)
 この臨時国会の補正予算に対する国民各層からの要不要論議の高まりは、これまでとは異なるものがあります。これは、二兎を追う者は一兎も得ずといって公共事業一本やりの自公保政権の経済財政政策では、結局は、ゼネコンにお金が流れても国民生活を潤すものにはならない。しかも、ふえ続ける借金は増税と子供や孫に対する後世への負担を増大させるばかりという国民の疑問が、日々現実のものとなっているからにほかなりません。
 補正予算をまず法制度面から言うならば、予算編成の基本原則は総合予算主義であり、唯一この原則から外れて補正予算を編成し得るのは、財政法の第二十九条に規定している場合だけであります。これを本年度に当てはめれば、有珠山、三宅島、東海地域を中心とする災害対策がありますけれども、これとても現時点では予備費で対応できるはずであって、財政法の規定する経費の不足あるいは緊急な経費支出には該当いたしません。
 伝えられる補正予算の内容からすれば、いずれも来年度予算を前倒ししたにすぎません。本来、補正予算は、当初予算では予期できなかった歳出を賄うものです。財政法から見ても、また政策的観点からしても、今回補正予算を編成するべき理由は全くありません。それどころか、十二カ月プラスアルファ予算を恒常化する補正予算編成は、法制度の基本を崩すとともに、財政再建とも相反するものであることは明らかであります。総理の御見解をお聞きします。
 また、補正予算を組むに当たって、昨年度には一兆円の決算剰余金が生じ、今年度税収の自然増分を主として充てて、不足分を建設国債の発行で賄う方針を示しています。一般会計の剰余金は、その半分以上を国債の償還財源に充てることが財政法の第六条で決まっています。この措置を総理はどうなさるおつもりですか。なぜ所信表明演説とともに財政演説が行われなかったんでしょうか。補正予算を組むなら、国会召集前に責任を持って編成すべきではありませんか。その点についてもお聞かせください。
 最後に、アジアとの関係について伺います。
 六月の歴史的な南北朝鮮首脳会談以降、朝鮮半島では、和解と協力、そして統一に向けた動きが着実に進められています。シドニー・オリンピックの入場行進で掲げられた統一の旗は感動的であり、会場は総立ちで拍手を送りました。南北で分断された鉄道をつなぐ作業も開始されたようです。
 この東北アジア地域が平和で安全で豊かな地域となるためには、これまで敵対していたすべての関係を信頼と協力の関係に変えていかなければなりません。最も握手が困難だと思われていた南北朝鮮が握手した後、この地域で関係を築いていないのは、日本と北朝鮮、アメリカと北朝鮮ということになります。このうちアメリカは、九四年にジュネーブ枠組み合意を結んでいますし、四者会談やミサイル協議など、さまざまなパイプで北朝鮮と対話できる安定した関係を持っています。そうすると、残っているのは日本と北朝鮮の関係ということになります。
 考えてみれば、旧植民地として苦しみを与えた国と五十年以上も植民地支配の清算をしてこなかったということは、冷戦という事情があったとはいえ、異常なことです。かつては、韓国が日朝交渉の進展を警戒し、アメリカも核疑惑問題などで日本を牽制していました。しかし、その条件は今、完全にさま変わりしています。金大中政権は、むしろ日朝関係の改善と国交樹立を積極的に支持し、歓迎しています。アメリカも、日本が動くことを待っています。
 森総理は、訪朝した経験を持つ日本で初めての総理大臣であります。この二十二日、韓国の金大中大統領が来日された折、公式外交ルートの接触とともに、首脳同士の直接の対話ルートを使うことが両国の関係改善に役立つと思うと進言されたと伝えられておりますが、総理の御所見はいかがですか。
 また、金大中大統領は、南北統一事業に対する日本の経済支援を要請されました。韓国政府のある要人は、今ほど南北そろって日本の支援を熱望しているときはないと述べておられます。朝鮮半島分断の悲劇は日本の植民地であったことに起因することを思えば、統一事業への協力は義務とさえ言えるかもしれません。総理、いかがでしょうか。
 私は、この夏、韓国に飛んで金大中大統領と会談し、また、モンゴルに飛んでエンフバヤル首相と会談してきました。そこで、私ども社会民主党が提唱する北東アジア非核地帯設置への努力と、この地域での協調的安全保障機構の創設について話したのですが、認識は完全に一致しました。特に、非核地帯設置については国会決議も私たちにはあります。総理の御所見を伺いたいと存じます。
 この秋にはピョンヤンにも北京にも飛ぶつもりですが、どこでも感じるのは、アジア地域は今、平和、和解、協力に向かう絶好のチャンスの中にあるということです。日本はこのチャンスを逃してはならないと思います。
 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(森喜朗君) IT革命で日本はどう変わるのかというお尋ねがありました。
 IT革命という歴史的な機会と正面から取り組み、我々が目指すべき日本型IT社会とは、すべての国民がデジタル情報を基盤とした情報、知識を共有し、自由に情報を交換することが可能な社会であると考えております。
 このため、ハードウエアである施設、ソフトウエアである技能、中身たるコンテンツの三本柱をしっかりと打ち立てて、だれもが家庭でインターネットを容易に利用でき、その楽しさと有用性を実感できる社会を構築するとともに、ニュービジネスの創出と既存産業の活性化を通じて、より質の高い経済社会の実現を目指してまいります。
 また、日本型IT社会が真に豊かな国民生活の実現と我が国経済の競争力強化につながるためには、IT革命による情報弱者が生じないようにすることへの配慮はもとより、社会人の再教育も含め、広い意味での人への投資が不可欠であるということは言うまでもありません。
 奉仕活動についての御意見がございましたが、学校における課外活動などの教育活動や社会体験を通じて児童生徒に奉仕の精神を養い、将来奉仕活動等に参加する意欲や態度を培うことは、社会性や豊かな人間性をはぐくむ観点から極めて有意義であると考えております。奉仕活動を具体的にどう推進していくかにつきましては、児童生徒の発達段階や各学校及び地域の実態を踏まえて検討してまいる所存であります。
 教育基本法についてのお尋ねでありますが、教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、命を大切にし他人を思いやる心など、人間性豊かで創造性に富む立派な人間をはぐくむ教育を実現するためには、制定以来半世紀を経た教育基本法の抜本的な見直しなど、教育の根本にさかのぼった改革を進めていく必要があると考えております。
 このため、教育改革国民会議においては、例えば我が国の文化や伝統を尊重する気持ちを養う観点や生涯学習時代を迎える観点、あるいは教育において家庭や地域が果たすべき役割といった観点を初め、さまざまな観点から議論を行っていただいているところでありますが、先般の中間報告におきましては、教育基本法は必要に応じて改正されてしかるべきであり、幅広い視点からの国民的な議論が必要であるとの提言がなされたところであります。
 私としては、教育基本法の見直しについては、今後、教育改革国民会議の最終報告を受けて、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと考えております。
 参議院選挙制度に関してのお尋ねがございました。
 参議院選挙制度については、昭和五十七年に現行の拘束名簿式比例代表選挙が導入された後も、選挙制度についてさまざまな議論が行われてきたと承知しております。たびたび申し上げて失礼でございますが、選挙制度というのはどんなものでも一長一短があり、現行の拘束名簿方式は、政党主体の選挙を目指すものでありますが、一方で、有権者がどの候補者を当選させたいのかという意思表示ができず、候補者の顔が見えずに選挙に対する関心が高まりにくいという問題点も指摘されております。
 また、二院制における参議院に期待されている役割として、衆議院と異なる選挙制度によって、国民の多元的な意思をよりよく国会に反映することにあると言われておりますが、衆議院の比例代表制が導入され、定着したことにより、その役割が十分果たされていないとの指摘もあります。
 また、いわゆる逆転区の問題については、現在与党で議論されている案では、参議院議員の定数を削減することにあわせ、その解消を図るものとなっていると承知をしております。
 参議院選挙制度改革につきましては、国民が政治に関心を持ち、また政治が国民から信頼されるような選挙制度を目指し、また二院制における参議院の意義について考慮しながら、今後各党会派の間でも精力的に議論をしていただきたいと考えます。
 永住外国人に対する地方参政権付与法案に関し、その対象についてお尋ねがございました。
 この問題は、我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題であります。党内におきましてもさまざまな意見があり、今真剣な議論が行われているところであります。ただいま申し上げたような状況の中では、総理・総裁として、その議論の内容について意見を申し上げるべきではないと存じております。引き続き党とも緊密な連絡をとりつつ、国会等での議論の行方に十分注意を払っていきたいと考えております。
 政治資金の公開基準についてお尋ねがありました。
 現実に政治家が政策を立案し、国民にその政策を訴え、支持を得ていくためにはある程度の資金が必要であり、政治資金は民主主義に必要なコストであります。また、政治資金は、選挙で特定の政党や候補者に投票することと同様に、国民の政治参加の方途でもあると考えられます。
 政治資金のあり方につきましては、各党各会派において御議論いただくべき問題でありますが、私としては、その透明性を確保すると同時に、国民の皆さんが、民主主義に必要なコストである政治資金を、みずからの政治参加という積極的な意義を込めて負担していただくためにはどのような制度が適当なのかという観点も大切であると考えております。
 与党提出のあっせん利得罪処罰法案についての御質問をいただきました。
 与党三党間において法制化に向け大変御熱心に御議論いただき、与党案としてまとめていただきました。
 法制化に当たって、私は、構成要件を明確にし、かつ、国民の要望を幅広く行政に反映させるという政治の役割にも配慮する必要があると繰り返し申し上げてまいりました。
 与党案においては、こうした論点を十分踏まえ、構成要件や対象行為等を定められたものと承知しており、さきの臨時国会に提出された野党案に比べ、構成要件を明確にしつつ、処罰対象を大幅に拡大しているものと承知しております。政治に対する国民の信頼を高めるためにも、十分に御議論の上、ぜひとも今国会中に成立させられることを期待いたしております。
 企業・団体献金に関してのお尋ねがありました。
 政治家個人に対する企業・団体献金は、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念を踏まえ、既に今年から政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されたところであります。
 一方で、政党に対する企業・団体献金につきましては、最高裁判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を持つことは認められており、これをおよそ悪と決めつける論拠は乏しいと考えております。
 また、政治献金の窓口の一本化については、政党の組織運営に関する自主性の確保との関係を十分考慮する必要があると考えます。
 いずれにいたしましても、政治資金のあり方につきましては、民主主義のコストをどのように国民に負担していただくという観点から、各党各会派において御議論いただくべきものだと考えます。
 補正予算の編成事由についてお尋ねがありました。
 平成十二年度当初予算は、その編成時点における諸情勢を勘案し、経済運営に万全を期して編成したところであります。
 しかしながら、その後の我が国経済は、緩やかながら改善しているものの、現時点においてはまだ万全とは言えず、もう一押しが必要な状況にあるとの判断から補正予算を編成することとしたところであり、財政法に反するとの御指摘は当たらないと考えます。また、補正予算編成を恒常化するものでないことを御理解いただきたいと考えます。
 補正予算の財源については、安易に国債発行に頼ることのできない厳しい財政事情を十分に考慮し、歳出歳入の見直し、平成十一年度の剰余金の活用などにより、国債の追加発行を極力抑制するよう努めているところであります。
 決算剰余金の取り扱い、財政構造改革及び財政演説についてのお尋ねがありました。
 決算剰余金の取り扱いについては、安易に国債発行に頼ることのできない厳しい財政状況のもと、国債発行額を極力抑制するとの観点から、補正予算において特例的に十一年度決算剰余金を活用することを検討しているものであり、御理解をいただきたいと考えております。
 財政構造改革については、我が国の財政は厳しい状況にあり、必ずなし遂げなければならない課題でありますが、まずは、経済を自律的な回復軌道に乗せるために、景気回復に軸足を置いた経済財政運営を行っていくことといたしております。経済が自律的回復軌道に乗る前には、性急に財政再建を優先させれば、景気回復を危うくさせることにもなりかねません。
 同時に、財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げるための準備を今から始めるとの観点から、財政の透明性の確保を図り、効率化と質的改善を進めながら、我が国の景気回復をより確かなものとしたその上で、たびたび申し上げておりますが、税制のあり方や社会保障のあり方、さらには中央と地方との関係まで幅広く取り組んでまいりたいと考えております。
 なお、財政演説につきましては、私は、この国会の開会に当たりまして、当面する諸問題につき所信を申し述べたところでありますが、この中で、新たに策定する経済対策を踏まえた補正予算の編成を行うと申し上げました。補正予算を今国会に提出する際には、財政演説を行うこととしたいと考えております。
 日朝会談についてのお尋ねであります。
 現時点におきまして具体的に検討している状況にはありませんが、金大中大統領からの御示唆もあり、対北朝鮮政策を展開していくに当たって、金正日総書記との意思疎通を効果的に行っていくことが極めて重要だと考えております。何が最も効果的な方法であるか、引き続きよく検討していく考えであります。その中で、種々準備が整えば、日朝の首脳が会うことも考えられます。
 北東アジア非核地帯構想についてのお尋ねでございますが、一般的に、非核地帯は、適切な条件が満たされるのであれば、核拡散の防止等の目的に資するものがあると考えます。しかしながら、北東アジアにおいては、依然不透明な要素や緊張関係が存在していること、現実には核戦力を含む大規模な軍事力が存在すること等により、非核地帯構想の実現のための現実的な環境はまだ整っていないのではないか、このように考えております。
 北東アジアにおける協調的安全保障機構の創設についてのお尋ねもございました。
 政府としては、北東アジアの平和と安定の確保という観点から、日米安全保障体制を堅持しつつ、域内諸国間の信頼醸成も促進するため、二国間及びARF等の多国間のさまざまなレベルでの対話を促進すべく努力いたしております。また、我が国はかねてから、日、米、中、ロ、韓国、北朝鮮の六者が参画した対話の場の設定を提案してきているところでもございます。政府としては、北東アジアの平和と安定のため、今後ともこのような努力を継続していく考えでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○副議長(渡部恒三君) 井上喜一君。
    〔井上喜一君登壇〕
#14
○井上喜一君 私は、保守党を代表しまして、森総理の所信表明に関連して、重点を絞って質問をいたします。
 質問に先立ち、三宅島を中心とした伊豆諸島、有珠山、東海地方など、火山の噴火や群発地震、集中豪雨等の災害により亡くなられた方々に対し、心からの御冥福をお祈りいたしますとともに、長期にわたって不自由な生活を余儀なくされております住民の皆様方に対し、心からお見舞いを申し上げます。政府に対しましては、補正予算等により、被災地の復興、住民の生活支援に万全を尽くされるよう強く望みます。
 総理は、所信表明におきまして、「この国会を、二十一世紀の日本新生の礎を築く重要な国会にしたい」と述べられております。そのためにこそ、私は、二十一世紀日本を切り開く新しい憲法の制定を訴えます。
 言うまでもなく、憲法は、国のあり方そのものであり、国づくりの基本であります。現憲法が、我が国に自由と民主主義を定着させ、戦後の日本の発展に大きく寄与してきたことは紛れもない事実であります。しかし、制定以来五十有余年を経過し、我が国を取り巻く状況が大きく変化をいたしました結果、現実との乖離が目立ってきております。また、国民の精神的混迷も深まってきていると思います。現行憲法の基本理念であります基本的人権、平和主義、国際協調主義を発展させ、日本人としてのアイデンティティーを取り戻すためにも、新たな視点に立った憲法の見直しが必要であります。
 真の改革の出発点は、国民参加のもと、新しい日本の目標と国のあり方を定める新しい憲法の制定にあると考えます。それこそ、二十世紀と二十一世紀のかけ橋の中で政治を担うこととなった我々の歴史的使命であり、責任であります。総理の御見解をお伺いいたします。
 次は、経済対策についてであります。
 我が国経済は、緩やかに改善していると言われておりますが、今なお、確固たる自律回復の軌道に乗るには至っておりません。このような状況において大切なことは、目先の現象に左右されることなく、長期的視点に立った政策の一貫性であり、経済再建なくして財政再建なしというみずからの路線に揺るぎない自信を持つことであります。そして、そのための政策を果断に実行することであります。情報技術、環境、高齢化といった将来を考えた事業を中心とした補正予算の編成を初め、積極的な経済対策を講ずべきであります。総理の見解を伺います。
 景気対策には、財政政策と金融政策が相互に調整され、政策目標を達成していかなければなりません。最近の日銀の動きは、ややもすればその独立性を主張することに力点が置かれ過ぎているのではないか、総理の率直なお考えを伺います。
 中小企業対策については、特に信用保証制度について申し上げます。
 中小企業に対する特別信用保証制度は、一昨年創設され、中小企業の倒産防止と景気の緩やかな回復に大きな役割を果たしてまいりました。この特別信用保証制度は、来年三月末に期限切れを迎えますが、私は、モラルハザードの防止に配慮しつつ、この制度の持つ長所が生かされるよう万全の対策を講じられるよう政府に望むものであります。あわせて総理の見解を伺います。
 次は、公共投資の見直しと首都移転の問題であります。
 我が国が二十一世紀においても経済、社会の活力を維持し、国民が安心して生活できるようにするためには、社会資本の計画的整備が不可欠であると考えます。しかし、その推進に当たっては、事業の優先度を明確にするとともに、事業の一層の透明化、効率化を進めることも当然であります。
 このような視点から、与党三党は、既存の公共事業をすべて見直し、二百三十三の事業、残事業費二兆八千億円の原則中止を初め、公共事業の長期計画の見直し、事業の地方移管、補助金から地方一括交付制度への改革など制度改革を含め、公共事業についての提言をまとめ、政府に勧告いたしました。総理も所信において公共事業ビッグバンともいうべき抜本的見直しを表明されております。ぜひ与党三党の提言実現に向け全力を尽くされるよう強く望みます。
 これに関連し、首都移転の問題であります。
 首都機能の移転は、今から十年前の平成二年の国会決議により検討が開始をされました。首都機能の移転の目的は、政治行政改革の推進、一極集中の是正、大地震対策等にありました。他面、新首都の建設費は十二兆三千億円、公的負担は四兆四千億円という試算も発表されております。首都機能移転の目的はそれなりに評価しつつも、今日の国、地方の経済財政状況を考えますとき、震災対策は政府の危機管理の一環として別途検討する必要がありますが、このような膨大な費用を要する事業を行うことが果たして適当でありましょうか。
 保守党は、このような視点から、首都機能の移転について、一たんこれを白紙に戻し、今日の時点に立って改めて見直すことを提案するものであります。政府の危機管理対策を含めて、総理の見解を伺います。
 次に、教育についてお伺いをいたします。
 私は、教育は学校の専売とは考えておりません。家庭や地域社会の教育に果たす役割の大きさにもかかわらず、学校教育の役割を過小評価することはできません。学校教育が、人間教育、学力両面において問題が深刻になってきていると考えております。倫理観の希薄化、学力の低下、共同体の一員としての自覚の欠如など、広く指摘されているところであります。
 私は、教育基本法の抜本的見直しを通じ、これらの問題に取り組んでいかなければならないと考えます。教育改革国民会議の提唱する教育振興基本計画の策定も、教育基本法の中に取り入れるべきであります。国づくりの基本は教育にあります。教育基本法はその根幹をなすものであり、教育基本法の見直しなくして教育改革はなく、総理の言われる日本の新生もありません。総理の見解を伺います。
 最後に、社会保障制度改革について一言申し上げます。
 総理は、所信において「我が国の社会保障の基本は社会保険方式に置くべきである」と述べられております。超高齢社会に突入しつつある我が国において、現在の社会保険方式では給付の切り下げや保険料の引き上げは避けられず、長期的にこれをそのまま維持することは不可能と考えます。
 基礎年金、高齢者医療、介護については、いわゆる基礎的社会保障と言えるものでありますが、公的負担をふやしていく努力をしていくことが与党の合意であると認識をいたしております。総理の御見解を伺います。
 政治とは、元来ウエットな要素を持つものであります。利害が激しく対立するときには、時として足して二で割るという手法や問題を先送りすることもあります。しかし、経済や社会が急速に変化をする今日、改革を必要とする問題は山積しており、これまでのような手法に頼ることは許されません。総理の所信表明にありますように、今後とも全力を挙げて諸課題に取り組まれることを期待し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(森喜朗君) 新しい憲法の制定についてお尋ねをいただきました。
 憲法の基本理念であります民主主義、平和主義及び基本的な人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであり、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。
 一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しており、憲法が法理的に永久不変のものとは考えておりません。また、憲法をめぐる議論が行われること自体は何ら制約されるべきものでないということは言うまでもありません。しかしながら、国の基本法である憲法の改正については、世論の成熟を見定めるなど、慎重な配慮を要するものであると考えております。
 憲法に関する問題につきましては、広範かつ総合的に調査を行うため、第百四十七回国会から衆参両議院に憲法調査会が設置されたわけでありますので、将来の我が国の基本的あり方を見据えて、幅広く熱心に議論が行われているところであり、これを政府としては十分見守ってまいりたいと考えております。
 経済対策及び補正予算についてのお尋ねであります。
 政府・与党の迅速にして大胆な経済政策によって、我が国経済は緩やかながら改善しております。しかしながら、雇用情勢はいまだ厳しく、消費は一進一退の状況にあり、企業の倒産件数も高水準になっております。
 たびたび申し上げますが、我が国経済は、私から言わせれば七合目から八合目に達しておりますが、まさにそういう意味では正念場であって、もう一押しが必要な状況にある、このように考えております。
 こうした観点から、まずは、経済を自律的な回復軌道に乗せるために、景気回復に軸足を置いた経済財政運営を行っていくこととし、新たな経済対策の策定と補正予算の編成を進めてまいる決意であります。
 その際、我が国の経済を新時代にふさわしい新しい構造に改革していかなければなりません。二十一世紀における新たなる発展を確実にすることが現下の最大の課題であるという観点から、IT革命の推進、環境問題への対応、高齢化対応、都市基盤整備の重要四分野を軸として、日本新生プランの具体化策を中心に盛り込むことといたしております。これらの施策によって、我が国経済の再構築を進めるとともに、民需中心の自律的回復に向けた動きをより確かなものにしてまいりたい、こう考えております。
 最近の金融政策についてお尋ねがありました。
 金融政策は日本銀行の所管事項であり、諸般の状況を総合的に勘案しつつ御判断されているものと考えております。
 ただ、井上議員も御指摘のように、金融政策は経済政策の一環をなすことから、金融政策が政府の経済政策の基本方針と整合的なものであるよう、日本銀行は常に政府と連携を密にし、十分な意思疎通を図ることが必要だと思います。
 なお、日本銀行によれば、ゼロ金利政策を解除後も適切かつ機動的な金融政策運営を継続するとしており、政府としても、今後とも双方の十分な意思疎通を図りながら経済運営を進めてまいりたいと考えております。
 特別保証制度の期限到来につきまして御指摘がありました。
 政府としても、中小企業をめぐる金融情勢がいまだ厳しい中で特別保証制度の期限が来年三月に到来することを踏まえ、一般信用保証制度の拡充や、大型倒産、災害等のセーフティーネットに係る対応策を講じてまいりたいと考えております。こうした措置を通じ、モラルハザードの防止に配慮しつつ、事業に対して前向きに取り組む中小企業者を強力に支援してまいります。
 公共事業に関する与党三党合意の実現に向けた決意についてお尋ねがありました。
 政府としては、この三党合意を重く受けとめておりまして、抜本的に見直すこととされました二百三十三事業について厳しく洗い直すとともに、公共工事の入札、契約手続の透明性と競争性の向上等を図るため、法律の今国会への提出を予定するなど、三党合意に示された諸課題について積極的な取り組みを進めてきております。これまでのこの見直し案につきまして、与党三党、なかんずく井上議員には、その中心になってお取りまとめをいただきましたことに心から敬意を表したいと思います。
 今後とも、十三年度予算編成等に向けまして、政府、与党一体となって、公共事業ビッグバンともいうべき抜本的な見直しを進め、二十一世紀にふさわしい、真に国民のためになる公共事業を実現すべく取り組んでまいりますので、引き続きまた御研さんをいただくようにお願いをいたしたいと存じます。
 首都機能移転についてお尋ねがありました。
 この問題につきましては、今後、国会等の移転に関する法律に基づき、審議会の答申を踏まえ、国会において、社会経済情勢の諸事情等に配慮しつつ、大局的な観点から検討いただけるものと考えております。政府も、国会の審議が円滑に進められるよう積極的に協力していくとともに、国民に幅広く議論を喚起してまいります。
 なお、危機管理は常に国政の第一の要諦であり、起こり得るあらゆる事態を想定し、情報収集機能の強化、関係閣僚の緊急参集体制の整備等、その充実に努めてきたところであります。今後とも、危機管理体制の維持に万全を期してまいる所存であります。
 教育基本法についてのお尋ねでありますが、私は、二十一世紀の日本を支える子供たちが人間性豊かで創造性に富む立派な人間として成長することこそが、心の豊かな美しい国家の礎であると考えております。このため、教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、体育、徳育、知育のバランスのとれた全人教育を推進するべく、制定以来半世紀を経た教育基本法の抜本的な見直しなど、教育の根本にさかのぼった改革を進めていくことが必要であると考えております。
 先般の教育改革国民会議の中間報告においては、教育基本法は必要に応じて改正されてしかるべきであり、幅広い視点からの国民的な議論が必要であるとの提言がなされております。私としては、教育基本法の見直しについては、今後、教育改革国民会議の最終報告を受けて中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで、成果を得てまいりたいと考えております。
 社会保障についてお尋ねがありました。
 今後増大が見込まれる社会保障の財源については、社会保険方式を基本に、これに必要な国庫負担等の税負担を組み合わせるとともに、一定の利用者の御負担もお願いしながら、その確保に努めていかなければならないと考えております。
 現在、有識者会議におきまして、このような財源の問題も含め、社会保障全体のあり方について御議論いただいておりますが、早期に考え方を取りまとめ、広く国民的な議論を喚起し、社会保障の改革を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
#16
○副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#17
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  森  喜朗君
        法務大臣    保岡 興治君
        外務大臣    河野 洋平君
        大蔵大臣    宮澤 喜一君
        文部大臣    大島 理森君
        厚生大臣    津島 雄二君
        農林水産大臣  谷  洋一君
        通商産業大臣  平沼 赳夫君
        運輸大臣    森田  一君
        郵政大臣    平林 鴻三君
        労働大臣    吉川 芳男君
        建設大臣    扇  千景君
        自治大臣    西田  司君
        国務大臣    相沢 英之君
        国務大臣    川口 順子君
        国務大臣    堺屋 太一君
        国務大臣    続  訓弘君
        国務大臣    虎島 和夫君
        国務大臣    中川 秀直君
 出席政府特別補佐人
        内閣法制局長官 津野  修君
ソース: 国立国会図書館
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