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2000/10/05 第150回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第150回国会 本会議 第5号
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2000/10/05 第150回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第150回国会 本会議 第5号

#1
第150回国会 本会議 第5号
平成十二年十月五日(木曜日)
    ―――――――――――――
  平成十二年十月五日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案(亀井善之君外十七名提出)及び公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案(菅直人君外十二名提出)の趣旨説明
 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案(亀井善之君外十七名提出)の趣旨説明に対する質疑

    午後一時三分開議
#2
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案(亀井善之君外十七名提出)及び公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案(菅直人君外十二名提出)の趣旨説明
#3
○議長(綿貫民輔君) この際、亀井善之君外十七名提出、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案及び菅直人君外十二名提出、公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。提出者亀井善之君。
    〔亀井善之君登壇〕
#4
○亀井善之君 ただいま議題となりました自由民主党、公明党並びに保守党の三党共同提案の、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案につきまして、趣旨とその内容の概要を御説明申し上げます。
 今日、世界の情勢が歴史的な転換を遂げようとしている新しい時代の中で、対外的にも国内的にも、恒久的な平和と繁栄の道筋をつける節目のときを迎えています。この変革期に、我々は、確固たる将来見通しのもと、後世のため、国の正しい進路を定める歴史的責務を負っていることを深く自覚しなければなりません。そして、戦後の混乱期にまさる熱意を持って、日本の明るい未来づくりの事業に的確に対応できる体制を一刻も早くつくり上げていかなければなりません。
 将来に目を移すとき、政治はその性格を、内外の課題に国全体の視点から的確、機敏に対処する政治主導の総合政策立案型に転換しなければなりません。また、一層の地方分権を図って、陳情行政の行き過ぎを解決し、地方の創意工夫を尊重することは、今後の我が国の経済、文化、社会の新しい飛躍を期す上で極めて大きな力になると確信しております。
 翻って、我が国の政治を謙虚に振り返れば、国民の政治不信や政治離れは依然として根強いものがあります。国民の信頼と負託にこたえることが政治の原点です。国民の信頼を得られなければ、政治は成り立ちません。また、国民が期待する政策を創造できなければ、政治はその意義を失います。
 我々三党は、最近の一連の不祥事に端を発する深刻な政治不信を重大に受けとめ、同時に、今日の歴史的変革期に世界に通用する内外政策を樹立する方途について、徹底した議論を重ねております。その結実の一つが、今回提案する法律案であります。
 また、もとより議会制民主主義のもとにおいては、政党、政治団体や政治家の活動を通じて国民の政治的意思が形成され、政治が遂行されており、この政治活動の自由は極めて重要な憲法上の権利であります。その意味で、政治活動のあり方は、議会制民主主義の健全な発展にかかわる重要な問題であると認識しております。
 我々は、このような認識に立ち、いわゆるあっせん利得の課題について、政治家としての使命感に燃えながら、昼夜を分かたぬ真摯かつ精緻な議論を積み重ね、基本的考え方を共有することができました。その主な考え方を御説明いたします。
 一つは、主権者たる国民の厳粛な信託によって選出された公職にある者は、国民全体の利益のために奉仕、行動する責務を負っていることを強く自覚し、みずからの政治活動を厳しく律する必要があるとの決意のもと、本法律を定めることにより、公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性を保持し、これによって国民の信頼を得ることを目的としたことです。したがって、本法律案の罪は、公務員の職務自体の性質に着目し構成されている刑法のわいろ罪とはその趣旨を異にするものであります。
 二つ目は、刑法のあっせん収賄罪が対象とするあっせん行為は公務員に職務上不正の行為をさせるものに限定されているのに対し、本法律案の罪が対象とするあっせん行為は公務員の職務上の不正な行為に限らず広く公務員に適正な職務行為をさせるもの一般をも対象としており、あっせん収賄罪に比べて広い範囲を対象とするものであります。したがって、本法律案の罪の対象となるあっせん行為自体を明確にする必要があることです。
 三つ目は、地方議会の議員及び長も、地域住民全体の利益を図るために行動することを期待されており、国会議員と同様、その政治に関与する公務員の活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する地域住民の信頼を得る必要があることから処罰の対象としたことです。また、公設秘書についても、公務員として国会議員の政治活動を補佐する者として、国会議員の権限に基づく影響力を行使し得る立場にあることから処罰の対象に加えたことです。
 四つ目は、国または地方公共団体が二分の一以上を出資している法人は、国または地方公共団体に準ずるものと言うことができ、当該法人の役職員も、公務員に準ずる者と言うことができます。したがって、公職にある者が当該法人に係る一定のあっせん行為を行いその報酬を得ることは、国または地方公共団体に係る一定のあっせん行為を行いその報酬を得た場合と同様に、当該公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を害することとなります。そこで、この場合についても処罰することとしたことであります。
 五つ目は、本法律案の罪は、適正な職務行為に係るあっせん行為にまで対象を広げていることや、政治活動の意義の重要性を正しく評価すること等から、その適用に当たっては、政治活動を不当に妨げることのないように運用に留意しなければならないとの規定を設けることとしたことです。
 六つ目は、本法律の趣旨、内容等を国民に正しく理解していただく必要があることや、地方議会の議員及び長等を処罰の対象としていることから、一定の期間を置いて周知徹底させる必要があることであります。
 これらの基本的考え方をもって、我々三党はあっせん利得処罰法案をまとめ提出する必要があるとの結論に達したものであります。
 以上、本法律案をまとめ提出するに至った考え方について申し上げました。
 次に、この法律案の内容の概要につきまして御説明申し上げます。
 まず第一に、公職者あっせん利得に関する事項であります。
 その一は、衆議院議員、参議院議員または地方公共団体の議会の議員もしくは長、すなわち公職にある者が、国もしくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約または特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、またはさせないようにあっせんをすること、またはしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、公職者あっせん利得罪として処罰するものとし、その法定刑を三年以下の懲役としております。
 その二は、公職にある者が、国または地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関して、当該法人の役員または職員に対し、今述べたことと同様のあっせん行為の報酬として財産上の利益を収受した場合も同様に処罰するものとしております。
 第二に、議員秘書あっせん利得に関する事項であります。
 その一は、衆議院議員または参議院議員の秘書、いわゆる国会議員の公設秘書が、国もしくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約または特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、当該議員の権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、またはさせないようにあっせんをすること、またはしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、議員秘書あっせん利得罪として処罰するものとし、その法定刑を二年以下の懲役としております。
 その二は、公設秘書が、国または地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関して、当該法人の役員または職員に対し、今述べたことと同様のあっせん行為の報酬として財産上の利益を収受した場合も同様に処罰するものとしております。
 第三に、没収及び追徴に関する事項であります。
 第一及び第二の場合において、犯人が収受した財産上の利益は没収するものとしております。その全部または一部を没収することができないときは、その価額を追徴するものといたしております。
 第四に、利益供与罪に関する事項であります。
 これまでは財産上の利益を収受した側の行為を規定するものであるのに対し、これは、第一または第二に係る財産上の利益を供与した側の行為を規定するものであり、当該財産上の利益を供与した者を利益供与罪として処罰するものとし、その法定刑を一年以下の懲役または二百五十万円以下の罰金といたしております。
 第五に、国外犯に関する事項であります。
 日本国外において本法のあっせん利得罪を犯した公職にある者や公設秘書にも本法を適用することを規定したものであります。したがって、公職にある者や公設秘書が国外において請託を受け、本法に規定するあっせん行為の報酬として財産上の利益を収受した場合にも、本法の罪による処罰の対象とすることとしております。
 第六に、適用上の注意に関する事項であります。
 本法の適用に当たっては、公職にある者の重要な政治活動である民意を反映させる行為等が不当に制約されることのないよう、公職にある者の政治活動を不当に妨げることのないように留意しなければならないと規定しております。
 第七に、施行期日に関する事項であります。
 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行するものとしております。
 第八に、公職選挙法の一部改正に関する事項であります。
 公職者あっせん利得罪により実刑に処せられた場合は、選挙権を実刑期間とその後の五年間、被選挙権を実刑期間とその後の十年間、停止するものとしております。また、執行猶予の場合には、その執行猶予期間、公民権を停止するものといたしております。
 第九に、その他所要の規定を整備することとしております。
 以上が、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案の趣旨及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(綿貫民輔君) 次に、菅直人君外十二名提出の法律案について、趣旨の説明を求めるのでありますが、提出者が出席されておりません。
     ――――◇―――――
 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案(亀井善之君外十七名提出)の趣旨説明に対する質疑
#6
○議長(綿貫民輔君) この際、ただいまの趣旨の説明に対する質疑を行います。質疑の通告があります。順次これを許します。柳澤伯夫君。
    〔柳澤伯夫君登壇〕
#7
○柳澤伯夫君 私は、自由民主党を代表いたしまして、与党共同提案の公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案につきまして、質疑を行うものであります。
 今回のあっせん利得処罰法案は、後に詳しく申し上げますように、今国会の重要法案の一つでありまして、野党案も国会に提出されているのであります。しかるに、一昨日の本会議に続きまして、本日も野党の諸君が欠席という暴挙に出ております。私は、質疑に先立ちましてこのことを強く指弾し、野党諸君の猛省を促しておきたい、このように思います。(拍手)
 さて、平成の時代に入りましてから今日まで十年余りの間に、我が国はさまざまな改革を進めてまいりました。政治改革への着手に始まり、行政改革、地方分権への改革、税制・金融システム改革が進み、今後におきましても、教育改革、司法制度改革が日程に上っております。
 申すまでもなく、これらの改革の背景には、中央集権的行政機構を中核として、実に効果的かつ効率的に稼働してきた我が国の戦後体制が、近時ようやく壁に突き当たり、国民が多くの面で閉塞感を持つに至ったという時代認識がありました。そして、我々は、政治主導の確立と市場原理の活用によってこれまでの体制を変革し、我が国を閉塞状況から解放しようとしたのであります。
 もちろん、これらの改革については、今後着手するものは言うに及ばず、すべて事が成ったと言うわけにはまいりません。改革は広範にわたり、かつ未経験の手法を取り入れた分野が多かっただけに、我々は、改革後の体制、システムの運行に目を凝らし、改革が所期の成果を十全に上げられるよう、必要な手直しを怠ってはならないのであります。
 このような見地に立つとき、政治に求められる改革は、他に比して格別重要だということに気づくのであります。政治の改革は、政治自体の閉塞を打破するだけでなく、他の諸分野の改革を政治主導で進めるだけのリーダーシップを準備するものでなければならないからであります。言いかえれば、政治は、国民の目から見て、諸方面の改革が政治主導で進められることを納得できるだけの高い信任が与えられるものでなければならないのであります。
 今回、そのような政治改革の努力の一環として、いわゆるあっせん利得に係る法案が提出されました。今回のこの法案は、我が国の政治改革の過程の中で果たしてどのような意義を有するものと考えられるか、与党提出の法案ではありますが、まず、この点、総理の御見解を承りたいと存じます。
 さて、本法案において第一に明確にしなければならないのは、対象とされる行為及び利得を処罰することによって保護される法益は何かという点であります。
 主権者たる国民から国政、地方行政に関する機能を信託されて公職の地位にある我々、いわゆる政治公務員は、申すまでもなく、全体の奉仕者であり、全体の利益の実現を目指して活動をすることを本旨としているものであります。ただ、現実の活動においては、各方面からいわゆる陳情を受け、適宜これを行政当局につなぐことも日常少なからず行われているのが実態であります。
 今回の法案では、このような行為を行うとき、その見返りとして個人的に財産上の利益を受けることがあれば、それをもってその行為及び利得が違法性を持つとされるのであります。
 このように、本法案における罪は、あくまでも政治公務員の活動のあり方に着目して構成されており、その保護法益は、政治公務員の政治活動の廉潔性とこれに対する国民の信頼であると考えますが、この点につきまして、提案者の御見解を伺いたいと思います。
 また、これとは別に、保護法益として、政治公務員から働きかけを受けた公務員の公務の公正性に対する国民の信頼という点まで含めて考える向きがあります。しかし、もしここまで考えるとすれば、政治公務員が働きかけをし、また、それを受けること自体を違法としないと、一貫性が欠けることになると思われます。この点、提案者の御感想を伺いたいと思います。
 次に、本法案においては、第三者利得が明示的には処罰の対象として規定されておりません。これは、主としてあっせん収賄罪において、第三者へわいろが提供された場合でも、それが実質的に本人への提供と認められる場合には、本人への提供として処罰されるとの解釈が確立している、そのため、あえて明文をもって規定しなくても法益は十分保護できるとされたものと考えますが、この点について提案者の御説明を伺いたいと存じます。
 第三は、政治活動の自由への配慮の点であります。
 先ほど申しましたとおり、我々の政治活動においては、陳情の受け付けとその取り次ぎが日常少なからず行われております。ここには、議院内閣制のもとでは立法権と行政権が完全に分離されているわけではないことの影響がありましょうし、また、実際問題として、我々は立法活動において陳情を貴重な情報として活用しているところでもあります。
 他方、我々の政治活動には費用がかかり、その一部は寄附金に頼らざるを得ないのが現実であり、このため、我々は政治資金規正法にのっとり、政治資金を収受しているわけであります。
 さて、この陳情の処理と政治資金の収受とが相互にいささかの関係もなく行われていれば問題は全くないわけでありますが、善意で同一人との間で二つの行為を行うことすら考えられないわけではないことも事実でありましょう。
 二つの事柄がそのように同一人をめぐって往々起きがちな状況にあるだけに、今回、法案では、何が処罰され、何が処罰されないかのいわゆる犯罪構成要件が明確に規定されることが極めて重要となるのであります。それとともに、その適用に当たっても、政治公務員の政治活動が無用に制約されることのないように、格別に配慮することも必要であろうと考えます。
 この点について、提案者がどのように考えられ、どのように法文上配慮されたかの御説明を改めてお願いいたしたいと存じます。
 私は、今回の法案に期待されることは、次に尽きると思います。陳情を取り次いだ見返りとして実質的に個人的な利得となるものを得ることは、厳正に処罰されなければならない。同時に、政治資金規正法にのっとって通常の水準で行われている寄附が、陳情の取り次ぎがあったからといって、突然違法とされるような事態は確実に排除されなければならない。以上であります。
 冒頭申し上げましたとおり、政治は、歴史的な改革を主導するという大事業を前にして、他の時期にまして国民の信頼に値するものでなければならなくなってまいりました。政治は、そのためには廉潔と活力の双方を兼ね備えなければならないのであります。
 本法案の今国会での成立に対する御協力を重ねてお訴え申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(森喜朗君) 与党提出のあっせん利得処罰法案が政治改革の過程の中で有する意義についてお尋ねがございました。
 政治倫理の一層の確立のため、与党三党間におかれまして、あっせん利得罪の法制化に向けて大変御熱心に御議論をいただき、与党案としておまとめをいただきました。
 私は、繰り返し、議論を引っ張る形で、法制化に当たっては構成要件を明確にし、かつ国民の要望を幅広く行政に反映させるという政治の役割にも配意する必要があると申し上げてまいりました。与党においては、私の思いをしっかり受けとめ、こうした論点を十分踏まえ、構成要件や対象行為等を明確に定め、実効性の確保に努められたものと承知いたしております。
 政治倫理の一層の確立のためには、まず何よりも政治家一人一人の自覚が大切であると考えるところ、政治家の廉潔性を疑わせる事件が後を絶たず、遺憾ながら国民の政治不信が深まっているのが現実であります。
 こうした中、与党三党間において真摯な議論を重ね、法案をまとめ上げられましたことにつきましては、政治の自浄能力を示し、国民の政治への信頼回復に寄与する大きな意義を有するものと考えます。
 野党も法案を提出されていることから、所信表明においても述べましたけれども、十分に国会において御議論の上、ぜひとも今国会中に成立させられることを期待いたしております。(拍手)
    〔尾身幸次君登壇〕
#9
○尾身幸次君 柳澤議員の御質問にお答え申し上げます。
 最初に、与党案の保護法益についての見解いかんという御質問でございます。
 与党三党で共同提案しておりますあっせん利得処罰法案は、政治公務員の政治活動の廉潔性、清廉潔白性を保持し、これによって国民の政治に対する信頼を高めることを目的に政治公務員の行為に一定の枠をはめたものであり、これに反した場合には厳しいペナルティーを科し、その実効性を担保しようとするものであります。
 したがいまして、与党案の保護法益は、柳澤議員御指摘のとおり、政治公務員の政治活動の廉潔性とこれに対する国民の信頼であります。
 他方、刑法のあっせん収賄罪に関する保護法益は、あっせんする公務員の廉潔性及びあっせんされた公務員の公務の公正並びにこれに対する国民の信頼であるとされております。与党案では、あっせんを受けた公務員の公務の公正性を保護法益にしているものではありませんので、本法案の中ではあっせんを受けた公務員の行為を問題にしているものではないことを申し上げ、感想にかえさせていただきます。
 次に、第三者供与の処罰規定を置かなくても法益は保護されると考えたと思うが、見解いかんという御質問でございます。
 現在のあっせん収賄罪におきましても第三者供与は処罰の対象とされておりませんので、それとのバランスもあり、本法案においても第三者供与は処罰の対象としておりません。
 なお、現在のあっせん収賄の場合と同様、外形的には本人以外の者が本法案所定のあっせん行為との間に対価性があると認められる財産上の利益を受け取ったとされる場合でも、当該財産上の利益に対して本人が事実上の支配力、実質的処分権を有するものと認定できる場合には、本人が収受したものとして本人に本法案所定の罪が成立する可能性はあり、第三者供与の規定がないとしても不都合はなく、本法案の法益は十分保護されるものと考えております。ここで言う実質上の支配力の有無は、具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題であります。
 次に、保護法益についてでありますが、政治資金規正法の保護法益は、政治資金の流れの透明性を確保するものであり、本法案の保護法益とは異にしていることを一言申し上げておきます。
 政治献金につきましては、社会通念上常識の範囲内の政治献金であれば、あっせん行為の報酬と認めることは困難であり、これを受けても本法案の罪の適用対象とはならないものであります。しかしながら、政治献金の名をかりて、あっせん行為の報酬である財産上の利益を実質的に本人が収受したと認められる場合には、本法案の罪が成立し得るのであります。
 次に、与党案は政治活動の自由への配慮についてどのように考え、どのように法文上措置したかという御質問であります。
 与党案は、先ほど申し上げましたが、政治に携わる公務員の政治活動の廉潔性、清廉潔白性を保持し、これによって国民の政治に対する信頼を高めることを目的に政治公務員の行為に一定の枠をはめたものであり、これに反した場合には厳しいペナルティーを科し、その実効性を担保しようとするものであります。
 また、刑法のあっせん収賄罪が対象とするあっせん行為が、公務員に職務上不正な行為をさせるものに限定しているのに対し、本法案の罪が対象とするあっせん行為は、公務員の職務上不正な行為に限らず広く公務員に適正な職務行為をさせるものまで対象としており、あっせん収賄罪に比べ広い範囲を対象とするものであります。この意味におきまして、従来のあっせん収賄罪の土俵の枠を一歩踏み出したものであり、諸外国にも余り例のない構成となっているものであります。
 一般に、政治に携わる政治公務員は、国民や住民の意見や要望を踏まえて、通常の政治活動の一環として他の公務員等に対して働きかけを行う場合がございます。与党案は、このような政治公務員が行う政治活動と密接な関係があるあっせん行為により利得を得ることを処罰しようとするものであります。
 したがって、処罰の対象となる構成要件を明確に規定する必要があり、罪の対象となるあっせん行為による利得自体を明らかにするとともに、政治公務員の通常の政治活動の展開、政治資金規正法に基づいて行われる浄財の確保や行政権の行使の適否に関する調査など、民主主義社会において保障されている政治活動の自由が不当に妨げられることのないように細心の注意を払ったところであります。
 もとより、議会制民主主義のもとにおいては、政治活動の自由は極めて重要な憲法上の権利であり、政治活動の意義の重要性を正しく評価する観点から、与党案の第六条におきまして「この法律の適用に当たっては、公職にある者の政治活動を不当に妨げることのないように留意しなければならない」との規定を設けているのであります。議員のおっしゃる配慮は十分になされているものと考えております。
 与党案は、このようなあっせん行為による利得の禁止と政治活動の自由とのバランスを考慮しつつ、政治公務員の行為に一定の枠をはめ、国民の負託と信頼にこたえていくことを目的として提出したものであります。いわば、政治公務員の政治活動の廉潔性、清廉潔白性の確保と政治活動の自由の保障との双方の調和を図って組み立てられているものであると言っても過言ではありません。
 なお、政治献金につきましては、社会通念上常識の範囲内での政治献金であれば、あっせん行為の報酬と認めることは困難であり、これを受けても本法案の罪の適用対象とはならないものであります。
 しかしながら、政治献金の名をかりてあっせん行為の報酬である財産上の利益を実質的に本人が収受したと認められる場合には、本法案の罪が成立し得ることを念のために申し上げておきます。
 私どもといたしましては、この歴史的に大きな意義を有するこの法案をぜひとも成立させていただき、政治浄化を図り、政治に対する国民の皆様の信頼を高めたいと考えております。
 皆様の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(綿貫民輔君) 河上覃雄君。
    〔河上覃雄君登壇〕
#11
○河上覃雄君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました亀井善之君以下十七名提出の公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案について、関係大臣及び提案者に質問を行うものであります。
 質問に入る前に、今国会の最重要法案であるあっせん利得罪処罰法案の質疑に当たり、野党案に対する質問を準備してまいりましたが、残念ながら質問することができなくなりました。
 本日の本会議は、野党からの要求に基づき、議院運営委員会の協議を経、与野党の合意を前提に開催されたものであり、与党に瑕疵は全くないものであります。しかも、野党は、本法案を今回の最重要法案と位置づけ、さきの国会及び今国会に野党案を提出しておきながら本会議をボイコットしたことは、まさに議会ルールを無視する愚挙であり、審議を拒否するものであることを申し上げ、質問に入ります。(拍手)
 思えば、この百年、我が国はまさに栄光と挫折を経験し、その中で、国民には筆舌に尽くしがたい思いをもたらした世紀でもありました。この間、幾多の政治家がこの壇上に立ち、我が国の経世のありようを議論し、論戦を繰り広げてまいりました。しかし、結果として今世紀の日本の政治が招いた功罪を思うとき、今、政治家がもう一度その原点に立ち返り、真摯に反省をするとともに、来るべき二十一世紀は何としても国民の負託にこたえる政治を実現しなければならないと改めて強く考えるものであります。
 さて、戦後の政治史を振り返ると、数多くの政治腐敗と政治汚職の事件が続発してまいりました。政治家と金をめぐる事件は、古くは造船疑獄、ロッキード事件、撚糸工連事件、リクルート事件、佐川急便事件など、国会議員が関与し、立件された主な重大事件だけでも三十一件を数えます。
 このような時代にあって、昭和三十九年に結党した我が党は、その立党の精神を、大衆福祉の実現とともに、もう一つの柱として清潔な政治の実現を掲げて出発をいたしました。この間、新進党への参加などさまざまな変化はあったものの、結党以来三十五年間、一貫して政治の浄化を訴え、その実現に向けてひたむきな努力を重ねてまいりました。
 そして、昨年十月、連立与党の一翼を担うこととなった私どもは、本年一月から施行された政治家個人への企業・団体献金の禁止について、主導的な役割を果たしながらその実現に寄与してまいりました。さらに今回、あっせんに伴い利得を得る行為を封じ、政治腐敗の防止を図るための本法案を与党の議員立法として提案できたことはまことに意義深いものであり、公明党の一員として万感の思いを持つものであります。また、自社さ政権が崩壊した理由の一つに、企業・団体献金の禁止、あっせん利得罪があったことを思えば、現政権が果たした意義は極めて大きいと思うのであります。
 そこでまず、本法案が我が国の政治にもたらす歴史的な意義についてどのようにお考えか、総理にお伺いいたします。
 以下、具体的な諸点について、法務大臣及び提案者に伺います。
 初めに、犯罪の主体について伺います。
 かつての野党案は、犯罪の主体を国会議員だけに限定しておりましたが、与党案では、国会議員のほか、地方議員、首長、国会議員の公設秘書まで広く犯罪主体を拡張しており、この点で与党案がすぐれていることは一目瞭然であります。反面、与党案では私設秘書を処罰の対象としないことから、野党から抜け道などとの批判がなされています。私設秘書のあっせん行為を処罰の対象としなかった理由について、与党提案者に伺います。
 次に、請託について伺います。
 与党案では請託を要件としていますが、請託を要件とすることによって立件が困難になり、実効性を失うのではないかと懸念されています。請託を要件とした理由について、与党提案者に伺います。
 さらに、刑事当局にお伺いいたします。
 巷間、請託の立証は困難であるとの指摘がありますが、この点について法務大臣の意見をお伺いいたします。あわせて、過去五年間、請託を要件とする受託収賄罪及びあっせん収賄罪の起訴人数について報告を求めるものであります。
 次に、処罰の対象となるあっせん行為の対象範囲について伺います。
 野党案は対象範囲を特定せず、与党案では対象行為の範囲が狭過ぎるとの批判がなされています。しかし、国民の声を政府や政策に反映することは、政党や政治家の本来的な政治活動の一環であります。処罰されるべき行為と本来の政治活動の境界があいまいであれば、正当公平な政治活動を萎縮させ、積極的な政策実現の遂行に支障を来すおそれがあります。与党案が、あっせん行為の対象を国及び地方公共団体が締結する契約と特定の者に対する行政庁の処分に限定した理由について、与党提案者に伺います。
 さらに、第三者供与の処罰規定について伺います。
 与党案が第三者供与の処罰規定を置かなかったことをもって、抜け道と批判する人がおります。なぜ第三者供与の処罰規定を置かなかったのか、与党提案者に伺います。あわせて、本人以外の者への財産上の利益の供与が本人への財産上の利益の供与と評価できるのはどのような場合か、資金管理団体、政党支部、私設秘書との関連についての観点から、法務大臣並びに与党提案者にお伺いいたします。
 最後に、野党提出法案について伺います。
 本年七月の臨時国会で提出された野党案では、犯罪の主体を国会議員に限定し、国会議員の秘書はおろか、公設秘書さえもその対象としていなかったのであります。その後、犯罪の主体を、国会議員のみならず、地方議員、首長及び国会議員の公設秘書までを対象とした与党案が今国会に提出されるや、野党は、いとも簡単に従来の法案を撤回し、与党案をベースに、改めて出し直したのであります。
 私は、このような野党の安易な姿勢はまさに信念なき便宜主義のそしりを免れないものと確信するものであります。(拍手)
 このような野党の安易な姿勢について与党提案者の感想を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(森喜朗君) 与党提出のあっせん利得罪処罰法案が我が国の政治にもたらす歴史的な意義について御質問をいただきました。
 政治倫理の一層の確立のため、与党三党間において、あっせん利得罪の法制化に向け大変御熱心に御議論をいただき、与党案をおまとめいただきました。
 政治倫理の一層の確立のためには、まず何よりも政治家一人一人の自覚が大切であると考えるところ、御指摘の、政治家と金をめぐる事件が絶無とならず、遺憾ながら国民の政治不信が深まっているのが現実であります。
 こうした中、前国会から私も、今国会中に成立させるべきであるとの認識を示してまいりましたが、与党三党間において、国民の要望を行政に反映させる政治の役割との関係など難しい問題に対しましても、真摯な議論を重ねられ、法案をまとめ上げられましたことに対しまして敬意を表するとともに、その意義を大きく評価するものでございます。
 野党もせっかく法案を提出されていることから、政治に対する国民の信頼を高めるためにも、十分に国会において御議論の上、ぜひとも今国会中に成立させられることを期待いたしております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣保岡興治君登壇〕
#13
○国務大臣(保岡興治君) 河上議員にお答え申し上げます。
 本法律案につきましては、与党三党間において、構成要件の明確性の観点を含め、さまざまな角度から慎重かつ十分な議論を尽くして作成されたものであると承知いたしております。
 まず、請託の立証は困難であるか否かについてお尋ねがございました。
 請託を要件とすると立証事項がふえることは確かではございますが、そもそも、一般に立証の難易は具体的事案における証拠関係に左右されるものであり、請託という要件が存在することによって直ちに立証が困難になるか否かは一概に論ずることのできない問題であります。
 なお、刑法のわいろ罪においても請託を要件としている例は多く、次に申し上げますとおり、それらの罪で立件されている事件数は少なくないところでございます。
 また、受託収賄罪等の起訴人数についてお尋ねがありました。
 お尋ねの人員につきまして、平成七年から同十一年までの五年間に、受託収賄罪で起訴された人員は九十四名であり、あっせん収賄罪で起訴された人員は三十四名であります。
 次に、本人以外の者への財産上の利益の供与が本人への財産上の利益の供与と評価できる場合についてお尋ねがありました。
 与党から御提出の本法律案における取り扱いにつきましてはお答え申し上げる立場にはございませんけれども、刑法のあっせん収賄罪が設けられました際の国会審議におきまして、政府委員から、外形上公務員本人以外の者がわいろを受け取ったとされる場合でありましても、公務員本人が当該わいろに対して事実上の支配力ないし実質的処分権を有しているものと認められる場合には、公務員本人が当該わいろを収受したと言える旨の答弁がなされており、実際にもそのように運用されているものと承知いたしております。
 このことは、資金管理団体や公務員が代表を務める政党支部、あるいは公務員の私設秘書が外形上わいろを受け取ったとされる場合についても同様であると承知しております。
 なお、その判断は、個々の事案における具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題であると考えております。(拍手)
    〔漆原良夫君登壇〕
#14
○漆原良夫君 河上議員にお答え申し上げます。
 まず、私設秘書を処罰の対象としなかったのはなぜかというお尋ねでございます。
 本罪は、政治に関与する公務員の活動の廉潔性、清廉潔白性と、これに対する国民の信頼を保護しようとするものであります。したがって、処罰の範囲を公務員ではなくて一私人にすぎない私設秘書までに拡大することは不適当と考えたことでございます。
 また、刑法のあっせん収賄罪は、公務員に職務上不正な行為をさせた場合に成立する犯罪でございますが、本罪は、公務員に正当な職務上の行為をさせた場合でも犯罪として成立するものであります。したがって、同じあっせん行為であっても、犯情としては明らかに本罪の方が軽いということになります。
 ところで、刑法のあっせん収賄罪では、私設秘書を処罰の対象にしておりません。犯情の重い刑法のあっせん収賄罪においてすら処罰の対象とされていない私設秘書を、より犯情の軽い本罪において処罰の対象とすることはバランスを欠く結果になってしまいます。このような観点から、本罪では私設秘書を処罰の対象としなかったのであります。
 なお、私設秘書のあっせん行為について国会議員の指示があった場合には、その議員本人にあっせん利得罪が成立することは当然のことでございます。
 次に、請託を要件とした理由についてお尋ねがございました。
 一般に、あっせんは請託を受けてなされるのが通常の形態であろうと思います。政治公務員が他の公務員に何かを働きかける場合には、だれかに何かを頼まれてその人のためにいわゆるあっせんをする場合、あるいは国民や住民の声を吸い上げて通常の政治活動として働きかけを行う場合があろうと思いますが、請託を要件としなければこの両者の区別が不明瞭となり、処罰の対象があいまいに広がってしまうおそれがございます。そこで、処罰対象の範囲の明瞭性を期するため、請託を受けてなされるあっせんに限定をしたということでございます。
 さらに、刑法のあっせん収賄罪でも「請託を受け」ということが要件としてあり、同罪とのバランスも考慮して、請託を要件としたものでございます。
 続いて、あっせん行為の対象を国及び地方公共団体が締結する契約と特定の者に対する行政庁の処分に限定したことについてお尋ねがございました。
 政治公務員は、本来、国民、地域住民全体の利益を図るために行動することが期待されているところでございます。しかし、契約や処分の段階でのあっせん行為は、国民、地域住民の利益を図るというよりは、むしろ当該契約の相手方や処分の対象者等、特定の者の利益を図るという性格が顕著でございます。そのようなあっせん行為を行って報酬を得る行為は、政治公務員の政治活動の廉潔性とこれに対する国民の信頼を失う度合いが強いため、これを処罰することにしたわけでございます。
 一方、これに当たらない行政計画、予算案作成等に関するあっせんについては、行政計画や予算案に民意を反映させるということは、政治活動として公職者等に期待されているところでもあります。したがって、政治活動の自由を保障する観点も踏まえて、処罰の対象としなかったということでございます。
 次に、第三者供与の処罰規定を置かなかった理由、そして、本人以外の者への財産上の利益の供与が本人への財産上の利益の供与と評価できる場合はどのような場合かというお尋ねがございました。
 刑法上のあっせん収賄罪においても、第三者供与は処罰の対象とされておりません。それとのバランス論もあり、本罪においても第三者供与は処罰の対象としなかったわけでございます。
 なお、先ほど法務大臣から、刑法のあっせん収賄罪において、本人が財産上の利益を収受したものと評価できる場合についての御答弁がございましたが、我々が提案をしておりますあっせん利得罪におきましても、これと同様に、外形的には本人以外の者が本法案所定のあっせん行為との間に対価性が認められる財産上の利益を受け取ったとされる場合であっても、当該財産上の利益に対して本人が事実上の支配力、実質的処分権と申しますが、支配力を有するものと認定できる場合には、本人が収受したものとして本人に本法案所定の罪が成立する可能性があるのでございます。したがって、第三者供与の規定がないとしても、何も不都合はないというふうに考えております。
 例えば、政治資金団体や公職にある本人が支部長を務める政党支部についても、当該金銭等を公職にある者本人が自己の意思のままに支出できる等の場合においては、形式上これらの団体が受け入れたとされる場合においても、本人が収受したものとして評価し認定し得るものでございます。
 また、私設秘書についても同様でございます。外形上私設秘書が受け取ったとされる場合であっても、私設秘書に当該金銭等についての実質的な処分権がなく、かつ、公職にある者本人が自己の意のままに支出等できる場合には、本人が収受したものとして認定することができるのでございます。
 最後に、野党案提出の経緯についての感想を求められました。
 議員は、野党案提出の経緯について、このような野党の安易な姿勢はまさに信念なき便宜主義のそしりを免れないと強く糾弾されておるところでございますが、私も河上議員と全く同感であると申し上げて、私の答弁とさせていただきます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(綿貫民輔君) 松浪健四郎君。
    〔松浪健四郎君登壇〕
#16
○松浪健四郎君 松浪健四郎でございます。
 私は、保守党を代表して、ただいま議題となっております公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案、いわゆるあっせん利得法案に関連し、野党の要求によりわざわざ御出席いただきました森総理並びに提出者の皆さんに質問をいたします。
 森総理は、所信表明演説において「この国会を、二十一世紀の日本新生の礎を築く重要な国会にしたい」と述べられました。私どもも全く同感であります。二十一世紀を目前に控えた今日、我が国は、国家的目標を見失いつつある状況の中で、経済的にも精神的にも行き詰まりの状況に陥っています。かかる現状を克服し、二十一世紀の新しい日本を創造することは、今日、政治家としての責務を担うことになった我々政治家の歴史的使命であると私は考えます。
 我々は、国民全体の奉仕者として、国家国民の行く末を真剣に論議し、二十一世紀日本の新しい国家目標を提示し、国民が一丸となってその実現に向け邁進できるようリードをしていく責任がございます。
 我々に求められているものは、歴史を切り開き、勇気を持って改革を断行するという大きな政治の実現であります。所属する組織や一部の支持者の利益を図るという小さな政治であってはなりません。
 しかし、小さな政治の横行によって、腐敗、汚職事件が後を絶たないのも、政治の歴史がこれを証明するとおりであります。そのたびに制度改革が行われてまいりましたが、問題を解決するには至っておりません。
 問題は、小さな政治に目を奪われルールを逸脱した一部の政治家のため、絶えず制度改革が繰り返され、いたずらに捜査当局の政治介入を容易にし、結果として、国のため、国民のため真剣に日夜奔走している多くの政治家の政治活動まで萎縮させてしまうという危惧であります。制度改革により政治家本来の活動まで萎縮させてしまったのでは、まさに本末転倒であり、政治家はその歴史的使命を果たすことはできません。総理の言われる日本新生もできません。私は、その危惧を野党提出のあっせん利得罪法案に抱くものであります。
 政治家の職務とその活動、政治倫理の確立の問題について、総理の御所見をまずもってお伺いいたします。
 次は、法案の具体的内容に関し質問させていただきます。
 あっせん利得罪法案について、今国会に提出されております与党案と野党案には、大きく言って五つの違いがございます。処罰対象に私設秘書を加えるか否か、政治家への請託を構成要件とするか否か、報酬の要件として財産上の利益とするかわいろとするか、あっせん行為の対象として国等の契約や行政庁の処分に限定するか制限なしとするか、第三者供与処罰規定を明記するか否か、この五点であります。
 第一点の私設秘書の点で、与党案は、私設秘書は公務員ではない上、国会議員との関係の程度はさまざまであり、一律に処罰の対象とすることは不適当であるとして、これを除外しております。一方、野党案では、私設秘書が政治家本人の口ききや献金の窓口とするなど抜け穴に利用されるとして、処罰の対象に加えております。私も、勝手に私設秘書と名乗り行動する者がないとは言い切れず、これを一律に処罰の対象とすることには無理があり、私設秘書を処罰対象に含めなかった与党案は当然だと考えます。
 第二点は、構成要件としての請託の有無について、与党案では、刑法のあっせん収賄罪との整合性から請託を構成要件にしているのに対し、野党案は、立証が困難として請託の有無を構成要件としておりません。立証が困難であるという理由で、政治家の政治生命を左右するあっせん利得罪の適用の有無を公務員や捜査当局などの判断にゆだねることは、法治国家にあるまじき行為であり、検察ファッショに道を開きかねません。この点からして、野党案は断じて認めることはできないのであります。
 第三点は、報酬の要件として、与党案は財産上の利益に限定しているのに対し、野党案では刑法のあっせん収賄罪同様、わいろを要件としております。刑法のあっせん収賄罪が、公務員に対し不正な行為をさせることによって処罰の対象になるのに対し、今回の与党案は、その立法趣旨が、政治に対する国民の信頼を確保するため、政治家の政治活動のルールを定めるための法案であることから、法案が前提としているあっせん行為は、公務員に正当な行為をさせた場合でもその対象となることを考慮し、財産上の利益に限定したものと考えます。まことに妥当な考えでございます。
 第四点は、あっせん行為の対象の問題でありますが、与党案は、売買、貸借その他の契約または特定の者に対する行政庁の処分に関する職務上の行為というように、範囲が限定的であり、また明確であります。これに対し野党案は、職務に関する行為全般とし、制限を設けておりません。この点についても、政治家の政治活動のルールとして今回法案を提出した与党案の立法趣旨及び捜査当局の裁量にゆだねる危険性などから、与党案は妥当なものと考えねばなりません。
 第五点は、第三者処罰規定を明記するか否かの問題でありますが、与党案はこれを明記していないのに対し、野党案ではこれを明記しております。与党の考え方は、刑法のあっせん収賄罪においても第三者供与は処罰の対象とされておらず、正当な行為を行わせてもあっせん利得罪に問われる法案の考え方からして、刑罰体系上妥当であります。
 以上、五点について申し上げました。提出者としてつけ加えることがあればお答え願いたいと思います。
 最後に、政治倫理の確立は、すぐれて政治家個人の自覚の問題でありますが、制度的には、金権腐敗、利益誘導政治の土壌を改めることが不可欠でございます。
 衆議院に小選挙区制が導入され、国民に、政党の政策に基づく選択を可能にし、政権交代を可能にする道が開かれました。我々は、これをさらに充実発展させ、各政党が政策によって競い合い、国民の選択を迫る体制を強化するとともに、行政に多大な裁量権を与えている補助金、許認可権限等を大幅に整理縮小することが不可欠であります。この意味において、政府に対し抜本的行政改革の継続的断行を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(森喜朗君) 冒頭、松浪議員から、二十一世紀の新しい日本を創造するため大切な国会であるという御指摘をいただきました。その国会で、政治が国民から信頼をしっかりとつなぎとめるためにもこのあっせん利得罪の法制化をやらなければならない、そうした御指摘をいただいたわけでありますが、まさに三党で御議論をいただいてこの国会に御提出をいただきましたことに対して、心から敬意を表したいと思います。
 法制化に当たりまして、私は、国民の要望を幅広く行政に反映させるという政治の役割にも配慮する必要があるということを繰り返し申し上げてまいりました。これは、法制によってこうした役割を阻害することがあってはならないとの趣旨で申し上げてきたところであり、その点は議員と認識を一にするところであります。
 政治倫理の一層の確立のためには、まず何よりも政治家一人一人の自覚が大切であると考えますが、議員御指摘のとおり、一部政治家のルール逸脱が見られることはまことに遺憾であります。こうした中、与党三党間において、法制化に向け大変御熱心に御議論をいただきました。政治に対する国民の信頼を高めるためにも、十分に御議論の上、ぜひともこの国会に成立をしていただくことを期待いたしております。
 また、法制化のほか、私は、来年一月の中央省庁再編にあわせ、行政の公正性、公平性を図るという観点から、閣僚などの規律の策定を既に指示しているところでございますが、各党におかれましても、この政治倫理の問題についていろいろの面から御議論をいただきたいと考えております。(拍手)
    〔小池百合子君登壇〕
#18
○小池百合子君 松浪議員から、処罰対象に私設秘書を加えるか否か、政治家への請託を構成要件とするか否か、報酬の要件として財産上の利益とするかわいろとするか、あっせん行為の対象として国等の契約や行政庁の処分に限定するか制限なしとするか、第三者供与処罰規定を明記するか否か、以上五点、与党案といわゆる野党案の相違について述べられました。
 結論として与党案がよりすぐれているとの御指摘をいただき、提出者の一人として非常に心強く思った次第でございます。
 これらの的確な御指摘、自問自答に、提出者としてつけ加えることはほとんどございませんが、政治に対する国民の信頼を一層高めるため、刑法のあっせん収賄罪とは別に、政治家が自主的にその行為に一定の枠をはめようという我々の案に対し、野党案の考えは、刑法のあっせん収賄罪の拡大で、捜査、司法当局の裁量にゆだね、とにかく罰しさえすればよいという基本的姿勢の違いからくるものと考えております。(拍手)
#19
○議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#20
○議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  森  喜朗君
        法務大臣    保岡 興治君
ソース: 国立国会図書館
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