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2000/11/07 第150回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第150回国会 本会議 第10号
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2000/11/07 第150回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第150回国会 本会議 第10号

#1
第150回国会 本会議 第10号
平成十二年十一月七日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成十二年十一月七日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案(内閣提出)及びヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案(近藤昭一君外三名提出)の趣旨説明及び質疑

    午後一時三分開議
#2
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案(内閣提出)及びヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案(近藤昭一君外三名提出)の趣旨説明
#3
○議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案及び近藤昭一君外三名提出、ヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣大島理森君。
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
#4
○国務大臣(大島理森君) ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 近年の生命に関する科学技術の著しい発展に伴い、生命科学をどこまで人間に適用することが許されるのかという新たな問題が生じています。平成九年二月、英国において、哺乳類で初めて羊の成体の体細胞の核移植により、クローン羊が誕生したとの発表がありました。これにより、人についても、成体の体細胞の核移植によるクローン個体を誕生させること、すなわち人に対するクローン技術の適用が現実の問題として懸念されることとなり、同年六月のデンバー・サミットにおきまして、これを禁止するとの首脳宣言が採択されました。
 このような動きを受けて、我が国においては、同年九月、総理の指示により科学技術会議に生命倫理委員会が設置され、自然科学系の研究者だけではなく、法学者、宗教学者、言論人等国民各般の多様な意見を代表する委員により、この問題について精力的に議論が行われてまいりました。
 この間、委員会の取りまとめに対し、広く国民からの意見公募なども行われました。その結果、昨年十二月に、人クローン個体の産生は、人の尊厳等を侵害するものとして、罰則を伴う法律により禁止するべきとの最終的な結論を取りまとめ、公表いたしました。
 また、クローン技術と同等もしくはそれ以上の重大な影響を人の尊厳に与える可能性があるものとして、ヒトの細胞と動物の細胞を融合または集合させる技術、これを特定融合・集合技術と呼びますが、この技術により生じた胚から、人と動物のいずれであるかが明らかでない個体がつくり出される可能性があることなども、生命倫理委員会において指摘されております。
 本法律案は、このような生命倫理委員会での検討の結果を踏まえ、また、この研究分野における国際的動向をも勘案し、人クローン個体等の産生を禁止するとともに、クローン技術等により作成される特定胚と呼ぶさまざまの胚の適正な取り扱いを確保するための措置等を講ずるものであります。
 なお、本法律案は、さきの通常国会に提出いたしましたが、残念ながら十分な審議時間が確保できず、審議未了、廃案となりました。しかしながら、その後のクローン技術の一層の進展等により、人クローン個体等の産生の危険性がますます高まっており、本法案を早期に成立させる必要があることから、本臨時国会に再度提出したものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、本法案を制定する目的であります。
 本法案は、クローン技術等が、その用いられ方いかんによっては人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を与える可能性があることにかんがみ、クローン技術等を規制し、社会及び国民生活と調和のとれた科学技術の発展を期することを目的としております。
 第二に、人クローン個体等の産生を禁止することであります。
 具体的には、クローン技術または特定融合・集合技術により作成される胚を人または動物の胎内へ移植した場合、特定の人と同一の遺伝子構造を有する人もしくは人と動物のいずれであるかが明らかでない個体をつくり出すおそれがあり、そのような胚を人または動物の胎内へ移植することを禁止することとしております。
 第三に、クローン技術等により作成される特定胚の適正な取り扱いの確保のための措置であります。
 文部科学大臣は、特定胚の作成、譲り受けまたは輸入及びこれらの行為後の取り扱いの適正を確保するため、総合科学技術会議の意見を聞いて、その取り扱いに関する指針を作成、公表しなければならないものとし、特定胚を取り扱おうとする者は、この指針に従って行うとともに、一定の事項を文部科学大臣に届け出なければならないものとしております。
 また、この届け出をした者は、文部科学大臣がその届け出を受理した日から六十日を経過した後でなければ、その届け出に係る特定胚の取り扱いをしてはならないものとし、文部科学大臣は、届け出をした者の特定胚の取り扱いが指針に適合しないと認めるときは、届け出をした者に対し、当該特定胚の取り扱い計画の変更、取り扱いの中止その他必要な措置をとるべきことを命ずることができるものとしております。
 さらに、文部科学大臣は、届け出をした者に対し必要な事項について報告を求め、またはその職員に、事務所等に立ち入り、必要な物件を検査させ、もしくは関係者に質問させることができることとしております。
 第四に、届け出をした者は、特定胚の取り扱いについての一定の事項に関する記録を作成し、保存するとともに、特定胚に係る個人情報の漏えいの防止等必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとしております。
 第五に、禁止行為に違反してクローン技術または特定融合・集合技術により作成された胚を人または動物の胎内に移植した者等に対しては、懲役等の罰則を設けることとしております。
 第六に、この法律の施行後五年以内に、クローン技術等を取り巻く状況の変化等を勘案して特定胚に係る制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしております。
 以上が、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(綿貫民輔君) 提出者山谷えり子君。
    〔山谷えり子君登壇〕
#6
○山谷えり子君 私は、ただいま議題となりましたヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案について、民主党・無所属クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 さきの第百四十七回国会におきまして、政府は、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案を提出しました。しかし、ヒト胚という科学技術の発展、生殖医療、そして生命倫理にまでかかわる深遠なテーマを扱いながら、政府案は技術面のみに突出しており、多くの問題点があると民主党は指摘してきました。
 政府は、この国会に若干の手直しをして同趣旨の法案を提出してきましたが、その本質は、前回のものと変わるものではありません。大まかに言って、政府案には四つの問題点があると考えます。
 第一に、政府案は、行政の裁量でつくる指針にゆだねる部分が大きく、かえってクローン研究を促進するとも懸念されています。
 第二に、政府案は、ヒト胚の保護、生殖医療との関連等を欠いた法案であります。ヒトクローン禁止の単独法案は、世界でもまれなものです。
 第三に、政府案は、余剰胚が野方図に作成、利用されている現状を放任し、これらの問題についての対策を盛り込んでいません。
 第四に、政府案を策定するに当たって、生命倫理全般にまたがる問題を考えていかなければならないにもかかわらず、科学技術庁主導の縦割り論議のプロセスに問題があります。議論が十分に尽くされていなかったと伺っています。
 国内外の世論にこたえるため、私たちも、クローン人間などの生成を禁止するために早急に法整備を行うべきだと考えております。同時に、クローン技術等の有用性にも着目し、一定の歯どめを講じつつも、科学的合理性及び必要性のあるものについては研究を認めていく立場であります。
 こうした視点に加え、生命倫理の尊重、科学の暴走への歯どめなどを重視する立場から、ヒト胚の作成等の規制、生殖補助医療及び生殖補助医学研究に関する法整備への道筋の確立をも含めた包括的な法案を提出することといたしました。生命とは何か、人間とは何か、国民の皆様に大いに議論していただきたいと、法案を提出いたします。
 以下に、政府案との相違点にも若干触れつつ、ヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案の概要を、各章ごとに申し上げます。
 第一章は、総則を定めています。
 法律の目的は、人の生命の萌芽であるヒト胚の人為による作成、利用が、人の尊厳の保持、人の生命、身体の安全の確保に重大な影響を及ぼすおそれがあり、また、人の属性を有する胚が、人の尊厳の保持、人の生命、身体の安全の確保に重大な影響を及ぼす個体の人為による生成をもたらすおそれがあるため、ヒト胚の作成、利用について必要な規制を行い、人の属性を有する胚の人または動物の胎内への移植を禁止するほか、その他必要な規制を行うことにより、人の尊厳の保持並びに人の生命及び身体の安全の確保を図ることとしています。
 さらに、胚、配偶子、卵子、ヒト胚、人の属性を有する胚、余剰胚、ヒト胚性幹細胞等について定義を行っています。
 基本的理念は、人の生命の萌芽たるヒト胚は、みだりにこれを作成、利用してはならないこと、ヒト胚の取り扱いに当たっては、人の尊厳を侵すことがないよう特に誠実かつ慎重に行うべきこと、人の属性を有する胚の作成、利用は、その胚からの個体の生成につながるものであってはならないことを明記しています。
 第二章は、ヒト胚の作成等に係る規制を規定しています。
 生殖補助医療または生殖補助医療に係る医学研究を除いて、何人も人の胎外においてヒト胚を作成してはならないこととしています。利用についても同様の制限を課しています。
 余剰胚を生殖補助医学研究以外に使用しようとする者は、文部科学大臣の許可を受けなければならないこととしています。その際、文部科学大臣に、厚生労働大臣、審査委員会等からの意見聴取義務を課しています。
 許可の基準等は、使用目的がヒト胚性幹細胞の樹立に係る研究であって、ヒト胚を使用することが当該研究において科学的な合理性及び必要性を有するものと認められるもの、使用及び使用後の取り扱いが指針に適合するものであることとし、その指針は、文部科学大臣が総合科学技術会議等の意見を聞いて定めることとしています。
 第三章は、人の属性を有する胚の作成等に係る規制であります。
 何人も、人の属性を有する胚を人または動物の胎内へ移植してはならないこと等の規定を定めています。
 人の属性を有する胚の作成、使用は、文部科学大臣の許可を受けなければならないこととしています。特定胚の取り扱いを単なる届け出制としている政府案とは大きく異なります。
 許可の基準等は、作成、使用の目的が、人の属性を有する胚を作成し、または使用する方法以外の方法では行うことのできない研究であって、人の属性を有する胚を作成し、または使用することが当該研究において科学的な合理性及び必要性を有するものと認められるものであることなどを定めています。人の属性を有する胚についても、指針を定めることとしています。
 第四章は、人の配偶子等の提供に関する規制であります。
 ヒト胚または人の属性を有する胚の作成、使用の際の人の配偶子等の提供者の同意、財産上の利益の供与の禁止、提供者の個人情報の保護などに関する規定を定めています。
 第五章は、ヒト胚等の作成及び利用に関する審査委員会についてであります。
 文部科学省にヒト胚等の作成及び利用に関する審査委員会を置くこととし、学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、十一人の委員を選ぶこととします。
 第六章は雑則であり、政府が、毎年、この法律の施行の状況を国会に報告しなければならないこと等を定めています。
 第七章は、罰則について定めています。
 人の属性を有する胚を人や動物の胎内に移植した場合、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すること、また生殖補助医療及び生殖補助医学研究以外に人の胎外においてヒト胚を作成した場合等、五年以下の懲役もしくは五百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科することなど、詳細に罰則を定めています。
 最後に、附則について御説明申し上げます。
 この法律は、公布の日から起算して六カ月を経過した日から施行することとしています。
 さらに、「政府は、この法律の施行後三年以内に、総合科学技術会議における検討を踏まえ、生殖補助医療及び生殖補助医学研究におけるヒト胚の作成及び利用の規制について法制上の措置その他必要な措置を講ずる」旨を明記いたしました。換言すれば、三年以内に、欧州諸国等に並ぶ生殖補助医療、生殖補助医学研究に関する法制度を整備するための道筋をしっかり確立したものと自負しています。
 なお、本案施行に要する経費は平年度約二千三百万円を見込んでいます。
 以上が、法案の概要であります。
 熱心な御審議をいただきまして、議員各位の御賛同をいただき、私どもの法案を今国会中に成立させることをお願い申し上げて、趣旨説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案(内閣提出)及びヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案(近藤昭一君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑
#7
○議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。平野博文君。
    〔平野博文君登壇〕
#8
○平野博文君 民主党・無所属クラブの平野博文です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました衆法のヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案に対しましては民主党・無所属クラブの提出者に、政府提出のヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案に対しましては関係大臣に質問をいたします。
 初めに、二法案の基本的な理念についてお伺いをいたします。
 一九九七年二月に、英国のエディンバラ郊外にあるロスリン研究所の研究グループが体細胞クローン羊ドリーの作成に成功したと発表し、世界に大きな衝撃を与えました。哺乳類の、既に成体となった個体の体細胞から、遺伝的に同一な個体、クローン個体を作成することに成功したことにより、人間のクローン個体作成の可能性が取りざたされ、波紋が広がったわけであります。
 これを契機として、一九九七年、デンバー・サミットでは、体細胞核移植で人を作成することを禁止するために、適切な国内措置と緊密な国際協力が必要であるとし、ヒトのクローン個体の産生を禁止するために各国が適切なそれぞれの措置をとることがうたわれました。
 これを受け、我が国でも、ヒトクローン規制の検討に入り、今日に至ったものと理解をいたしております。
 ヒトクローンの作成についてどう思うか、科学技術庁がことしの三月にまとめた生命倫理に関するアンケート調査の結果によれば、九〇%以上の人がクローン作成に否定的な態度をとられています。私も、ヒトのクローンを作成することは許されないと考えています。しかし、これを法規制するに当たっては、明確な理由が必要とされるのは当然であります。
 新しい生命は、男女両性のかかわり合いの中で、偶然の遺伝子の組み合わせによって誕生するものであります。ある特定の遺伝子を持った人間のコピーを意図的に作成しようとすることは、こうした自然の摂理を無視するものであり、家族観、宗教観、さらには結婚観の混乱につながるなど、社会的に多くの問題を生じるものであります。
 また、私は何よりも、ヒトのクローンを作成することは、人は生まれながらにして一人一人かけがえのない存在として尊重されなければならないという、人間の尊厳の根幹、憲法上の理念を揺るがすことになると考えています。この点、ヒトクローンについて規制すべきと考える根拠をいずこに置いておられるのか、科学技術庁長官の御見解を伺いたいと思います。
 また、民主党案も、クローン人間の禁止に賛成の立場であり、その根拠は今申し述べたものと同様の見解に立つと思われますが、にもかかわらず、なぜ独自の法案を提出されておられるのか、その背景をお聞かせ願いたい。
 それでは、個別の課題につきまして具体的に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、ヒト胚、政府案の言うヒト受精胚の作成、利用に係る規制の必要について伺います。
 民主党案では、ヒト胚は生命の萌芽であるがゆえにみだりに作成、利用してはいけないこと、その取り扱いに当たっては、人の尊厳を侵すことがないように誠実かつ慎重に行うべきことを基本理念と定め、ヒト胚の規制を盛り込んでおられますが、ヒト胚を生命の萌芽と位置づけた論拠を詳しく御説明いただきたい。
 思うに、クローン人間といえども同じ人間であり、万一誕生してしまったら個人として尊重されなければならないことは論をまちません。したがって、ヒト胚が人の生命の萌芽として尊重されるべきであるなら、クローン胚もヒト胚同様、人の生命の萌芽として尊重されなければなりません。
 とするならば、このクローン胚の規制の問題は、ヒト胚の規制にかかわる問題をも必然的に含むことに相なります。民主党案がヒト胚について規制を盛り込まれたのも、同様の考え方に立つものと理解をいたしております。科学技術会議生命倫理委員会の議論におきましても、ヒト胚について同様に生命の萌芽との見解が出され、規制のあり方でもヒト胚の扱いを含めた議論がなされたと伺っています。
 しかしながら、政府案ではヒト胚の扱いに全く触れておられません。なぜ一体として考えるべきヒト胚の規制を含めておられないのか、長官の御答弁を求めます。
 次に、不妊治療、すなわち生殖医療とのかかわりについてお伺いをいたします。
 クローン技術は、新たな人の生命を生み出す技術であります。不妊に悩まれる方には、他人の血のまじらない子を産める画期的な新技術として期待される方もおられると伺っています。また、クローン技術で使われる精子、卵子、ヒト胚などは、生殖医療によってもたらされます。
 生命の始まりをどう考えるか、人間は生命の誕生にどこまで手を加えていいのか、ヒト胚などをどう取り扱うのか、本来、クローン技術の規制は生殖医療技術の規制の中で考えるべき問題であります。ほとんど規制らしい規制のない米国を除き、イギリス、フランス、ドイツなど、欧米の国々もこうした形をとっています。
 政府案では生殖医療について全く触れられておりませんが、近いうちに生殖医療を含めたきちんとした法規制をとるおつもりがおありなのか、答弁を求めたいと思います。
 民主党案でも、生殖医療及び生殖医学研究については法律の規制の対象外にされています。ただ、附則で、法律の施行後三年以内に法制上の措置その他必要な措置を講ずるものとも明記されておりますが、これは欧州諸国のような生殖医療についての厳格な法制度をつくるものと解釈してよろしいのか、お尋ねをしたいと思います。
 さらに、最新の医療技術とのかかわりについて伺います。
 クローン技術は、また新たな医療の可能性を開くものとしても期待されています。具体例としては、人間の臓器を持った例えば豚をつくり、その臓器を移植手術に用いることもできるかもしれません。しかし、それは人間の尊厳を侵さないのか、あるいは豚固有のウイルスが人間に感染しないかなど多くの不確定要素があり、現段階でこのような不確定なものに規制をかけるのは当然であるとも考えます。民主党案は、このケースではどのような法規制をされているのでしょうか。政府案との違いにもお触れをいただき、御説明をいただくよう求めます。
 また、このところ、万能細胞とも呼ばれる胚性幹細胞、ES細胞について、先を争って研究が進められています。患者の体細胞からクローン技術を使ってES細胞を取り出し、拒絶反応のない移植用臓器を生成できる可能性があるとされています。今最も注目されている研究分野の一つであり、今日のクローン技術を考える上でES細胞の研究は切り離すことはできません。
 ただ、ES細胞をつくる過程では、生命の萌芽であるヒト胚やクローン胚を壊し、生命としての可能性を奪わなくてはなりません。したがって、ES細胞の研究は、クローンやヒト胚の規制の中で一定のルールを設ける必要があります。このようなES細胞研究についてどのように位置づけておられるのか、民主党、政府、双方に答弁を求めます。
 このように、クローン技術は人の生命の始まりにかかわる技術であり、生殖医療そしてヒト胚の扱いなどと密接にかかわりがあります。また、ES細胞など新たな技術的可能性が次々と誕生している分野でもあります。
 今、生命科学分野においては、クローン技術のごく狭い分野に限ることなく、統一した理念のもとに生命倫理全般にわたる包括的な法規制が求められているのではないでしょうか。
 政府案は、包括的規制はもちろん、このようなヒト胚、生殖医療、ES細胞の規制について何も触れておられず、中途半端との印象をぬぐえませんが、その理由について政府の見解を求めます。
 最後に、我が国の科学技術振興の観点から申し上げます。
 我が国は、科学技術創造立国を目指すものであり、五年前にこのことを立法をもって定めたところでもあります。二十一世紀の我が国を展望するとき、情報通信とともに生命科学の発展が重要であることは疑うところがありません。また、生命科学の研究開発で諸外国の後塵を拝することは、単に経済的な損失のみならず、議論のある研究を他国に任せることになり、フリーライダーとの批判を免れないものでもあります。しかし、残念ながら、我が国は最近ではゲノムの解析などでも出おくれる結果となっています。
 我が国の研究者の能力は、決して諸外国に劣るものではないと確信をしています。しかし、我が国の生命科学や医療の分野の研究開発は諸外国におくれがちであります。ペースメーカーなど医療器具に見られるように、産業化もおくれる傾向にあります。これらは、我が国の研究者、企業が、社会の反応に対して極めて良識があり、ルールが定まっていないこの分野で社会的合意のない行動に出ることをためらっておられるからではないでしょうか。
 したがいまして、今後、我が国の生命科学の発展を考えるとき、研究者や企業が研究開発に打ち込めるように、国民的な合意のもとに生命科学研究全般を包括するルールを速やかにつくる必要があると考えます。
 技術の急速な進歩がある中で、生命科学技術に対する国民の不安も大きくなっています。しっかりと人間の尊厳、生命の尊厳の保たれる規制を先んじて設ける必要があります。
 また、そのときに、専門家と関係省庁のつくるガイドラインという国民に見えない形でつくられた規制では、後日、問題を起こしたときに、国民の間に不信感が生じるのではないでしょうか。人の生命の尊厳そのものにかかわるこのような問題は、国会において慎重に議論し、まず法律の形で合意形成をすべきではないでしょうか。政府の答弁を求めます。
 最後、結びに、十六世紀のフランスの作家フランソワ・ラブレーは、良心なき知識は人間の魂を滅ぼすとの言葉を残していますが、科学の発展は、人類に大きな幸福をもたらす反面、対応を間違えば災禍をもたらす可能性も有しています。二十一世紀をすばらしい時代とするためにも、人間の尊厳を軽んじた技術、科学の発展には一定の歯どめをかけていく必要があります。
 今、改めて人間と科学技術の関係を根本から問い直し、新しい時代に向けた科学技術政策の哲学、理念を確立することが政治に課せられた責務であることを確信して、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
#9
○国務大臣(大島理森君) 平野議員にお答えを申し上げます。
 ヒトクローン規制の根拠についての御質問ですが、クローン人間の産生は、存在する人と同じ遺伝子を持つ人を生み出し、両親の介在がない無性生殖が行われることを意味しております。御承知のことと思いますが、このことは、人間の道具化、そして人の尊厳の保持や人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を及ぼすおそれがある。そういう絶対に許されないことでありますし、これがヒトクローンを規制する根拠でありますし、私どもの考え方の基本でございます。
 次に、政府案について、ヒト胚の取り扱いを含まない理由についての御質問がございました。
 無性生殖による人クローン個体等については個体産生を禁止すべきとの国民的合意が存在しております。しかし、ヒト胚は有性生殖によってできるものであり、その取り扱いについては同一に論ずべきものではないと認識しております。現時点におきまして、ヒト胚の取り扱いを法規制すべきとの国民的合意がいまだ形成されておりませんので、早急に対応すべき人クローン個体等の規制とは切り離して議論し、対応していくべきもの、このように考えております。
 生殖医療の規制についての御質問でございますが、人クローン個体の産生を規制するのは、先ほどから申し上げておりましたように、人間の尊厳に著しく反すること等によるためでありまして、生殖医療の規制の一環で論じられるべきものではない、私どもはこのように認識しております。生殖医療につきましては、厚生省の審議会におきまして検討されており、その結果を踏まえながら必要な対応をすべきもの、このように考えております。
 ヒトES細胞の研究についての御質問でございますが、ヒトES細胞は、それだけでは重大な社会的弊害の生ずるヒトクローン等の個体とはなりません。また、ヒトES細胞の研究は、平野議員もお話しされていましたように、進展がまことに著しく、柔軟な対応が望ましいもの、このように考えておるところでございます。このため、ヒトES細胞の研究は、科学技術会議の審議を踏まえながら、ガイドラインを作成し、そのもとで進めることが適当、このように結論づけられたところであり、政府案では法的な規制を行うこととはなっておりません。
 政府案がヒト胚、生殖医療、ES細胞の規制に触れていない理由についての御質問ですが、政府案は、無性生殖であるクローン人間の産生が人の尊厳の保持等に重大な影響を与える可能性があるため、早急に法的規制が必要であるとの認識で作成されました。有性生殖であります生殖医療等の規制のあり方、あるいはES細胞の取り扱い方については別の観点で扱うべき問題であり、クローン人間の産生禁止とはまた別の課題であると考えております。
 最後に、人の生命や尊厳にかかわる問題についてはまさに国会で法律として合意形成すべきとの御質問がありましたが、政府としては、生命倫理の問題については、国民各界各層の意見をくみ上げ、十分な検討を行うことが必要であると考えております。その結果、法規制が必要との国民的な合意が形成された問題については、順次法案を作成して、国会に提出し、御審議をお願いすることが適当であると考えております。政府が今国会に提出しましたクローン技術規制法案は、まさにこの方針に従ったものであります。
 以上でございます。(拍手)
    〔近藤昭一君登壇〕
#10
○近藤昭一君 平野議員にお答えいたします。
 民主党の独自案を提出するに至った背景についての御質問でありますが、基本的には私どもの趣旨説明で述べさせていただいたとおりであります。ただ、趣旨説明では申し上げ足りなかった部分を中心に補足をいたしたいと思います。
 民主党案にあって政府案で欠落している施策の最も大きな柱は、ヒト胚そのものへの規制であります。我が国の法体系の中では、生殖医療などの過程で発生する余剰胚について全く規制の網がかかっておらず、こうした不安を招くような状況を是正することは焦眉の急であるとの結論に達しました。
 政府案は、人クローン胚など人為的につくった胚だけを管理すればよいとの枠組みになっています。いわば下流の部分だけを対象とした法案であり、もととなる余剰胚についての取り扱い、すなわち上流の部分がすっぽり抜け落ちております。
 政府案で言う特定胚につきましても、一部は母胎への移植禁止を法律で規定し、一部は指針で規制するという矛盾に満ちた内容になっております。特定胚の作成、利用も届け出制であり、厳しい許可制とする民主党案と大きく異なっております。
 政府案の原案のまま成立させることは問題があり、ヒト胚についての規制を定め、クローン胚など人属性胚についても実効ある規制をするためには、別の法律をつくらざるを得ないとの結論に達した次第であります。
 ヒト胚を生命の萌芽と位置づけた論拠を示してほしいとのお尋ねにお答えいたします。
 科学技術会議の委託で行われました生命倫理に関する世論調査によれば、いつの時点から人として絶対に侵してはならない存在と考えるかという質問に対しては、受精の瞬間からと回答した方が一番多く、約三割を占めております。また、ヒトの受精卵の研究利用の是非につきましても、約四割が厳しい条件のもとでならよい、約二割が研究利用は認められないと回答しております。日本国民は、受精に始まるヒトの発生初期段階を、絶対に侵してはならない人の尊厳の源として考え、受精卵の研究利用全般に厳しい条件をつけることを望んでいると考えます。
 こうした世論調査の結果も踏まえ、私たちは、ヒト胚を、生命そのものではないかもしれないが、生命になり得る可能性を有したものであり、すなわち生命の萌芽であると位置づけ、それにふさわしい取り扱いをするための法規制をつくることとなったわけであります。
 ただ、ドイツの胚保護法では、ヒト胚を扱う研究は一切禁止されております。受精の瞬間から生命として扱われるべきだという思想に立脚しておるわけでありますが、我が国の場合は、そこまでのコンセンサスは形成されていないと考えておるわけであります。(拍手)
    〔城島正光君登壇〕
#11
○城島正光君 平野議員にお答えいたします。
 欧州各国のように、生殖医療について厳正な法制度をつくるのかという御質問でありますけれども、御指摘のとおり、法律の施行後三年以内に、生殖補助医療及び生殖補助医学研究におけるヒト胚の作成及び利用の規制について法制上の措置その他必要な措置を講ずる旨を明記いたしました。生殖医療等におけるヒト胚の作成、利用についての法規制を定めるに当たっても、この法律を見直すだけでは対処できないものと考えております。
 国際社会全体の中で考えれば、クローンを禁止する法律をつくっていない国の方がはるかに多いと言えるわけであります。クローンを法律で禁止している国はすべて、生殖医療全般を管理する法律の中でそれを定めているわけであります。
 まずは、今回提出している法案を成立させ、次の段階として、国民的議論を喚起しつつ、諸外国の動向も踏まえて、我が国においても、生殖医療を管理する法体系を確立して、その中で、ヒト胚、人属性胚についての規制を行う姿に移行していくべきものだと考えております。
 次に、人間の臓器を持った豚などを生成することをどのように規制するかとの御質問でありますけれども、民主党の法案では、人属性胚の中の、動物の胚に、その胚と一体となって分裂成長することが可能なヒトの細胞を結合させることにより作成される胚に関連するケースだというふうに言えると思います。
 私たちの法案では、この種の胚を動物または人間の胎内に移植することを法律でしっかりと禁じております。他方、政府案では、このケースは動物性集合胚と定義しておりますけれども、胎内への移植は、法律では禁止せず、行政が恣意的につくる指針で禁止する予定と伺っております。
 この種の胚そのものの作成、利用は、民主党案では許可制、政府案では届け出制となっており、この点でも大きな相違点がございます。
 以上です。(拍手)
    〔樽床伸二君登壇〕
#12
○樽床伸二君 平野議員の質問に対してお答えをいたします。
 ES細胞についての御質問でありますが、まず、この法案は、法律そのもの、特に単語そのものが大変難解であります。専門家でなければなかなか理解できない、そのような法案であることは、これは言うまでもありません。しかも、その専門家の間においてすらなかなか結論が出ない、こういう問題であるわけであります。それゆえに、政治のリーダーシップが必要である、このように我々は考えるところであります。
 クローン人間は恐ろしい、クローン人間は怖い、反対であるということ、この一般論につきましては広く国民の皆様方の意思はほぼ統一していると考えられます。しかしながら、その問題を深く考えていけばいくほど、先ほど御質問にありましたES細胞のことについて無視できない、このように私どもは考えているところであります。
 それゆえに、広く議論を国内に起こし、その中で政治のリーダーシップが問われているという視点に立って、私どもは、この法案の中にES細胞のことについて盛り込んだ次第であります。
 特に、ES細胞を除くクローン技術のみの規制でありますと、科学技術の発展、進歩への人類の強い欲望の中で、人類の何十万年という進化の歴史が、わずか十年、いや理論的には一年で進行してしまうということも完全否定できるものではありません。そのことは、この地球上に生きているすべての人類の存亡にかかわる、そのような広い視点に立つものであることを強く申し上げておきたいと思います。
 そのような観点があるにもかかわらず、政府案ではES細胞については一切触れられておりません。しかし、私どもは、ES細胞については、先ほど平野議員の御質問にもありましたとおり、非常に大きな関心を持っております。なぜならば、少し専門的にはなりますが、ES細胞は、神経、筋肉、血液、骨、軟骨、こういったものにとどまらず、胃、膵臓、肝臓、腎臓まであらゆるすべての細胞に分化する可能性があり、今後の最先端科学の分野であると認識しているからであります。しかし、それゆえに、厳格な一定のルールづくりが緊急の課題と考えているわけであります。
 それゆえ、まず私どもは、文部科学大臣の許可を受けることを定めております。そして、その許可基準には、ヒトES細胞の樹立に係る研究であって、しかも、民主党の言うところのヒト胚、政府案でいうとヒト受精胚でありますが、これを使用することが当該研究において科学的な合理性及び必要性を有するもの、そういうことと厳しい基準を設けているところであります。
 いずれにいたしましても、私どもはヒト胚、政府案で言うヒト受精胚についての厳格なルールづくりをすべての前提とし、その中でES細胞を考えているということを申し上げておきたいと思います。つまり、民主党案では、基準にかなうものは研究を認めるとのめり張りのある規制となっていることを最後に申しつけておきます。
 以上です。(拍手)
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#13
○議長(綿貫民輔君) 斉藤鉄夫君。
    〔斉藤鉄夫君登壇〕
#14
○斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫です。
 私は、自由民主党、公明党、保守党を代表いたしまして、議題となっておりますヒトクローン規制の政府提出案及び民主党案について質問をいたします。
 ことし六月のヒトゲノムの解読宣言に象徴されますように、最近の生命科学の発展はまさに目を見張るものがあります。これまでの手法では治せなかった病気も、遺伝子情報を使った技術で克服していくことも今や夢ではありません。
 一方、生命科学を初めとする科学技術が我々の生活、社会に大きな影響力を持てば持つほど、その負の側面も大きなものがございます。これを認識して適切に対応し、人間、社会と科学技術の調和を図らねばなりません。その端的な例がクローン技術、既に存在している個体と全く同じ遺伝子を持つ個体をつくる、つまり生命のコピーをつくるクローン技術だと思います。
 平成九年にクローン羊ドリーの誕生が報告されました。その後、このクローン技術を使ってクローン牛などが次々とつくられてきております。今やクローン人間、つまり人間のコピーをつくり出すことは時間の問題であろうと多くの科学者が認めております。クローン技術そのものは人類に利益をもたらす技術であったとしても、人間のコピーを許してはなりません。仮にクローン人間が誕生するようなことになれば、人類の歴史始まって以来の非常に衝撃的なことになると私は受けとめております。特に、最近ではクローン人間づくり着手を公言する団体まで出てまいりました。したがって、クローン人間を絶対あってはならないものとして、その誕生を未然にまた確実に防止するよう直ちに規制すべきものと考えます。
 国際的にも、クローン人間を禁止すべきとの考えは共通です。ユネスコ、WHOやサミットの場において、クローン人間禁止の決議などがなされています。我が国でも、科学技術会議の場で、各界各層の専門家の参加を得て、二年以上にわたり公開のもとで種々の議論を重ねてまいりました。また、国民に対するアンケート調査も行われました。その結果、クローン人間は法的に禁止すべきという国民的なコンセンサスが確認され、これを受けてさきの通常国会に政府案が提出されました。
 我々は、一刻も早くこの法律を成立させなければならないと主張いたしましたが、残念ながら、もう少し検討期間が欲しいとの民主党の御意見もあって、審議されることなく廃案になりました。その民主党も、今国会には対案を提出されておられます。この国会でヒトクローン技術の規制法案をぜひ成立させたいとの思いは我々と同じであると考えますが、提案者の御見解を伺います。
 さて、なぜクローン人間が許されないのか。私たちの生命は、父と母のそれぞれから半分ずつ遺伝子をもらって、全く新しい遺伝子を持った新しい生命として生まれます。これが有性生殖です。父母からの遺伝子のもらい方は、同じお父さんお母さんであっても、その組み合わせは無数にあるそうです。その無数にある組み合わせの中から、偶然と言っていいんでしょうか、一つの組み合わせの遺伝子が選ばれ、新しい生命が生まれてまいります。
 どんな遺伝子を持った子供が生まれてくるかわからない、これは親から見れば不安ですけれども、この予測のつかない多様性にこそ、生命がこの地球上で何億年も生き延びてきた強さの源泉があると思います。この大きな宇宙の中で、ほかにないたった一つの遺伝子、設計図を持って生まれてきたこと、生命の唯一性、尊厳性の源泉もまさにここにあるのではないでしょうか。
 クローン人間は、これをすべて否定します。クローン人間をつくることは、既に存在している人間と同じ遺伝子を持つ人間を、男女両性のかかわり合いなくコピーする無性生殖です。お父さんもお母さんもありません。コピーの原紙があるだけです。これは、人間社会のあり方を根本から変えてしまいます。つまり、クローン人間が許されない論理的根拠は、まさにこの無性生殖であるという一点に行き着くと私は思っております。
 政府案は、この無性生殖によって人間をつくることの反人間性に焦点を絞り、その禁止を法律で定めたものです。これに対して民主党案は、規制の対象を、男女のかかわり合いによってできるヒトの受精卵、受精胚、つまり有性生殖の範囲にまで広げております。わかりやすく言えば、民主党案は、クローン人間の問題も体外受精の問題も同じ人の生命の誕生につながる、したがって同じ法律で規制しようというものです。
 確かに、生命の萌芽であるヒト受精胚、ヒト受精卵について、これを大切に取り扱わなければならないことはよく理解できます。しかし、体外受精、ヒト受精卵、ヒト受精胚の問題はあくまでも有性生殖の議論です。同じヒト胚を扱っているとはいえ、決して許されない無性生殖のクローン人間と有性生殖のヒト受精卵を同一のフィールドで扱うのは論理的に飛躍があるのではないかと考えますが、民主党提出者のお考えをお聞きします。(拍手)
 クローン人間をつくってはならない、このことは、さきにも申し上げたとおり、国民のコンセンサスであることは明確であります。ところが、体外受精の問題について、国民の合意がどこにあるのか明確ではないというのが現状です。
 今や年間一万人以上の赤ちゃんが体外受精で生まれているという現実があります。産科婦人科学会など生殖医療の現場の意見、不妊で悩まれている方々の意見、学術界、宗教界の意見など、多様な考え方があります。体外受精によって作成された受精卵、受精胚を生命の萌芽として大事にしようという考え方は多くの国民が共有しますが、その規制をどのようにすべきかについては、国民のコンセンサスを得るべく多方面からの議論が必要とされているところです。
 政府の生命倫理委員会では、この体外受精卵、ヒト受精卵についてはさまざまな議論があり、コンセンサスを得られているという状況ではないので、どのような規制とすべきか、法律にするのかガイドラインがよいのか、まだ結論を得る段階になく、引き続き議論が必要とされているものであります。したがって、この体外受精の問題についてのコンセンサスを得てからクローンについても規制するというのでは、結果的にヒトクローン規制をおくらせて、クローン人間の誕生につながりかねないと考えますが、この点についての民主党提案者のお考えをお尋ねいたします。
 以上、政府案と民主党案の根本的な違いに的を絞って議論をしてまいりましたが、この点について科学技術庁長官のお考えをお聞きいたします。
 また、長官に、クローン人間が及ぼす社会的影響をどのように認識し、法規制の重要性、緊急性をどのようにお考えでしょうか、お聞きいたします。
 また、民主党案にある有性生殖により得られたヒト受精卵、ヒト受精胚の取り扱いに関する規制についてどのような考え方でおられるのか。今回の政府提出案では、なぜヒト受精卵、ヒト受精胚の規制を行わないのか、行わないとすれば今後何らかの対応をお考えなのかどうか、お聞きいたします。
 また、クローン人間をつくろうという試みに対する罰則について、さきの通常国会に提出された法案では五年以下の懲役となっておりましたが、本法案では十年以下の懲役に引き上げられました。その理由について伺います。
 クローン技術については、医療技術への適用など人類の利益につながる側面もあります。このような生命科学の研究の推進と規制とをどう調和させるかは大変難しい問題ですが、どのようにお考えになっているか。
 この四点についての答弁を求め、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔樽床伸二君登壇〕
#15
○樽床伸二君 斉藤議員にお答えをいたします。
 今国会でクローン技術の規制法案を成立させたいとの思いは与党と同じくするのではないか、このような御質問でありますが、民主党も、クローン人間などの生成を禁止するために、早急に法整備を行うべきものと考えております。
 しかしながら、政府案は、先ほども申し上げましたようにクローン技術のみを規制し、そもそも、ヒト胚、ヒト受精胚そのものに対する規制、あるいは生殖医療全般への関連などを欠いており、多くの問題点を有していると私どもは指摘してまいりました。
 例えばでありますが、生殖医療の現場で発生する余剰胚について、現状においては日本産科婦人科学会によるガイドラインがありますが、法律で規制されてはおりません。患者へのインフォームド・コンセントが行われずに、医師の勝手な判断により、余剰胚を患者が知らない間に廃棄、または不妊治療研究に利用されるなどなどの事態が発生する危険がございます。国民から見て、余剰胚の扱いがまことに不透明、不明確であるという不安の声も上がっております。
 このような現状をかんがみましても、人の生命の萌芽であるヒト胚が、科学的な合理性及び有用性を持たない研究に利用されないように、適正な取り扱いを確保することは急務であると考えているわけであります。(拍手)
 そこで、生命倫理の尊重、科学の暴走への歯どめなどを重視する立場から、政府案を原案のまま成立させることにはまことに大きな問題があり、ヒト胚の作成などの規制、生殖補助医療及び生殖補助医学研究に関する法整備への道筋の確立も含めた、包括的な法案を私ども民主党は提出することといたした次第でございます。
 以上です。(拍手)
    〔城島正光君登壇〕
#16
○城島正光君 斉藤鉄夫議員にお答えいたします。
 クローン人間とヒト受精卵を同一のフィールドで扱うのは論理的に飛躍があるのではないかとの御質問にお答えしたいと思います。
 まず初めに確認させていただくことは、無性生殖によって人間をつくることであるクローンだけではなく、人と動物の受精卵や核をまぜ合わせるいわゆるキメラとかあるいはハイブリッドについても、その個体の産生を政府案、民主党案ともに禁止していると思います。したがいまして、無性生殖以外のものを法律の対象としているのは政府案も民主党案も変わりはないと言えると思います。
 こういった規制に加えて、私たちの法案においては、ヒト胚そのものの取り扱いについて定めております。その理由としては、科学技術会議生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会報告書にもあるとおり、ヒト胚も人の生命の萌芽として、明確な基準もないまま研究材料に使われては、人の生命の尊厳を損ない、人の生命の物化、軽視につながるおそれがあるからであります。
 したがって、ヒト胚及び人属性胚の双方とも、その取り扱いによっては、人の尊厳の保持そして安全の確保に重大な影響を及ぼすものであることに変わりはなく、また、双方に関連する配偶子等の提供に関しても一元的なルールを確立することが、論理的に見ても、また国際的に見ても妥当であると考えるわけであります。
 こうした視点から、ヒト胚、人属性胚を包含する法規制が必要と判断し、かかる法案を提出した次第であります。(拍手)
    〔近藤昭一君登壇〕
#17
○近藤昭一君 斉藤議員にお答えをいたします。
 政府の生命倫理委員会では、体外受精卵、ヒト受精卵の扱いはまだ議論は尽くされておらず、結論を得る段階には至っていないのではないかとのお尋ねでありますが、アンケート調査でもわかりますように、少なからぬ国民が、受精卵の段階から適正な規制をすべきだと考えていると受けとめております。ただ、斉藤議員御指摘のとおり、不妊治療などの生殖医療のあり方につきましては、厚生科学審議会で完全な結論が出るまでにはもう少し時間がかかると聞いております。
 そこで、こういった状況を踏まえ、民主党案でも、まずクローン人間等をつくることを規制をした上で、生殖医療及びその研究については早急に議論を行い、三年以内に必要な規制を行っていくとしておるわけであります。
 また、これとは別に、生殖医療の結果生じた胚で生殖医療に用いられなかった胚、すなわち余剰胚でございますが、これにつきましては、厚生科学審議会において、生殖医療目的での第三者への提供を条件つきで認める方向で議論が進んでおるわけであります。
 また、科学技術会議生命倫理委員会でも、本年三月に、余剰胚のES細胞研究への提供を認める決定を既にいたしております。同委員会のヒト胚研究小委員会での報告書においても、どのような場合にヒト胚を用いた研究が認められるのかについては述べておるわけであります。
 つまり、このように、ヒト胚、特に余剰胚の取り扱い、規制については、既に幾つか結論が出され、議論はかなりのところまで進んでいると言えると思います。
 そのような状況を受けて、民主党案では、ヒト胚、特に余剰胚の研究についての規制を行い、一部法規制が必要と考え、法案を提出しておるわけであります。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣大島理森君登壇〕
#18
○国務大臣(大島理森君) お答えを申し上げます。
 政府案と民主党案の根本的な相違についての御質問がありましたが、斉藤議員が御指摘されたとおりでございまして、我々は、無性生殖による人クローン個体等を規制しているのに対し、民主党案は、それに加え、有性生殖で得られるヒト受精卵、ヒト受精胚についても規制を加えているところが根本的な相違であります。
 政府としては、有性生殖によるヒト受精胚の取り扱いは、無性生殖による人クローン個体の産生等とは別の問題と認識しておるところでございますし、一番最初に民主党案さんの原案的なものをお伺いしたものよりは、かなり政府案に近くなってきたのかなという思いはいたします。
 法規制の重要性、緊急性に関する御質問ですが、クローン人間の産生は、存在する人と同じ遺伝子を持つ人を生み出す、両親が介在しない無性生殖が行われることを意味します。このことは、人間の道具化になるなど、人間の尊厳の保持や社会秩序の維持等に重大な影響を及ぼすおそれがあり、絶対に許されないことであります。この点は、国内外で明確な合意が存在しております。
 さらに、技術の一層の進展などによりクローン人間の産生の危険性は高まっており、先生御指摘のように、クロネイドという団体がインターネットを通じて、いろいろなパブリシティーあるいは宣伝をやっている。あるいは、デンバーのサミットでも共通の認識になっている。
 そういうふうな社会状況を考えたときに、早急に法的な規制によって確実な防止措置を講ずることが必要である、このように思っているところでございます。
 ヒト受精胚の規制についての御質問ですが、有性生殖により得られるヒト受精胚をめぐる問題と、無性生殖によるクローン個体の産生とは同一に論ずるべきではないとの認識は一緒でございます。そういうふうな意味で、今後、ヒト受精胚については、総合科学技術会議の場などで審議、検討すべきものと考えております。
 それから罰則でございますが、なぜ五年から十年に引き上げたのか。まさに、このことにつきましては、クローン人間作成の反社会性というものを、与党の皆様方の御議論あるいは世論、そういうものを踏まえて十分に反映した法定刑にすべきと御指摘をちょうだいしました。その上で罰則を引き上げることといたした次第でございます。
 最後に、生命科学の研究の推進と規制の調和についての御質問でございますが、医療等の発展に資するプラスの面を適切にやはり評価をしていきながら、生命倫理の問題を生ずるような負の側面については適切な規制を行うことが必要であると思っております。したがって、今回の政府案では、人の尊厳等に重大な影響を与えている人クローン個体等の産生については法律で明確に禁止しており、他方、そこまで至らない場合においては、重要な研究が阻害されないような、技術の急速な進展に対応可能な柔軟な規制を行うことが肝要ではないか、このように思っております。
 以上でございます。(拍手)
#19
○議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#20
○議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        国務大臣    大島 理森君
 出席政務次官
        科学技術政務次官  渡海紀三朗君
ソース: 国立国会図書館
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