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1950/11/28 第9回国会 参議院 参議院会議録情報 第009回国会 本会議 第5号
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1950/11/28 第9回国会 参議院

参議院会議録情報 第009回国会 本会議 第5号

#1
第009回国会 本会議 第5号
昭和二十五年十一月二十八日(火曜日)
   午前十時九分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和二十五年十一月二十八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ―――――――――――――
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。羽生三七君。
   〔羽生三七君登壇、拍手〕
#4
○羽生三七君 私は社会党を代表いたしまして、昨日の吉田首相の施政方針に対して質疑を行い、以て首相並びに関係大臣の所見を質したいと存じます。
 我が日本民族の待望する講和が、いつどのような形式で、又どのような條件で開かれるか、そして、それが日本民族の将来にどのような影響を與えるであろうかということは、隣国朝鮮の動乱の帰趨と相待つて我々国民の深い関心事であることは言うまでもございません。講和に対する我々の基本的態度については今日まで幾多の機会に明らかにしたところでありますし、又今日もその方針に何ら変るところはございません。従つて私はここまで再び基本的な原則問題について論議を鬪わそうとは思いませんが、併し尚この機会に明らかにしなければならない幾つかの問題が存在しております。
 先ずその第一点として次のことを伺います。日本の講和方式についてアメリカの当局は極東委員会関係国全部を含めての会議を考えられており、ソヴイエトのマリク代表とも話合いを進めておるということは周知の通りでございます。極東委員会関係国のすべてでありますから、言うまでもなくソヴイエトも含まれておるわけで、これは明白な全面講和方式であり、アメリカの動きはそれを目指しての努力であると言うことができると思うのであります。然るに吉田内閣の外務省においては、いわゆる外交白書なるものを発表いたしまして、そのうちで、二つの世界の分裂は決定的であり、その間に中間の道はあり得ないことを論証せんとして、明白な單独講和論を表明しておるのであります。アメリカすらが局面の打開に苦慮し、心胆を砕いて愼重な道を選んでいるとき、日本自身がこのような独善的意思表示を行い、そうして戰争の危機を招くような道をみずから選んでおることは、不謹愼且つ危険な外交方針と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)言うまでもなくこれは吉田外務大臣の所管である外務省の外交白書であります。吉田首相がこれを御存じない筈はないと思います。首相はどのように考えておられますか。又この考え方をそのまま容認されるのでございますか。先ず第一にこの点を明確にして頂きたいと存じます。
 第二点は講和の時期に関連しての問題であります。今日講和問題については、明春早々開かれるであろうという早期講和説と、まだ先に延びるであろうという見方とございますが、若し仮にこの早期講和というような情勢の起つた場合、日本国民の意思はどのような形で述べ得られるのでありますか。又首相は国民の声を議会を通じてなり聞かれようとする意思を持つておられるのでありますか。若しこの早期講和説が実際にその通りに実現することになりますならば、その時期はもろ長い先のことではございません。もう直ぐ先のことではございませんか。その場合、首相はどのような手続で国民の声を聞かれるのか。首相御自身勿論構想を持つておられることと思いますので、この機会にそれを明瞭にして頂きたいと思います。
 占領下における外交問題の取扱は極めて困難ではありますが、併しこの民族の運命を左右するような重大なる問題が、いつも、そしていつまでも吉田首相の胸三寸にあるというようなことが、際限なく許されてよい筈はないのでございます。独裁政権下においてならとにかく、今日の時代においては問題は公明であるべきものと確信をいたします。いわゆる超党派外交はそれぞれの理由によつて一応破綻をいたしましたが、それにつけても思い出すのはダレス氏の最近の著書であります。氏はその本の中でアメリカの両党外交について論ぜられておりますが、外交の責任を持つ政府としては、国会並びに反対党の意見をあの程度に尊重する謙虚にして公明な態度が必要であると確信をいたすのでございます。
 次に国際情勢について、特にアジアの動きについて首相がどのような見解を持つておられるか、お尋ねをしたいと存じます。我々は隣国朝鮮の動乱を限りなく不幸な事態と考えております。そしてそれが一日も速かに終結し、平和的な解決の方向へ向うことを心の底から希望をいたしております。特に我々の希望が許されまするならば、中国がこの問題に対して慎重な道を選んで呉れることであります。中国は曾て日本が侵したことのある国でありますが、恐らく今日まで何千年内乱の絶え間のなかつた国でございましよう。併し今日それは一応統一されました。我々はその統一の主体がどのような政権であるということはこの際これを問題の外に置きます。今日世界の中にこの中国を侵そうなどと考えておる国は絶無でありましよう。そうだといたしますならば、中国自身が危険な道を選ばない限り、恐らく中国は半永久的に平和を維持することが不可能ではございません。そうして中国自身がこの平和の道を選んで呉れるならば、アジアにおける平和の可能性は一層増大することと確信いたします。そしてそれは又世界平和に、貢献するところ大なるものがあると思うのであります。仏領印度支那やチベツトに起つておる事態を見逃すものではございませんが、併し何といつても朝鮮動乱に対する中国の態度が決定的であろうと思います。インドのネール首相も困難な條件の中が同様に平和への道を探し求めております。恐らくこのことは世界の民主主義国家共通の希望であろうと存じます。アメリカにおいても、トルーマン大統領、アチソン長官も重ねてこの問題に対する意思表示をされておりますし、昨日の外電はイギリスも又これに対して積極的な態度をとるもののように報じております。こういう情勢の中で必要なことは、日本自身も、たとえ今日まだ講和前でありましても、それ相当に必要な努力が拂われなければならないということでございます。然るに外交白書等で二つの世界の分裂を正当化するような議論が行われておるということは、我々の誠に遺憾とするところでございます。この国際情勢の認識につきまして、吉田首相はどのようにお考えになつておるか、伺いたいと存じます。
 尚この機会に一言附加えて申したいことがございますが、それは我々が外交方針について、或る立場をとる場合、相手国の世界観の如何に左右されてはならぬということであります。我々が世界観としてデモクラシーの立場をとる場合でありましても、外交自身は絶対に現実的條件の上に立たねばならないということであります。そして今一つ、仮定と見通しの上に立つて……実はこの仮定という言葉は吉田首相がしばしば好んで用いられる言葉でありますが、この仮定と見通しの上から或る一定の結論を導き出して、その結論を問題の出発点にしてはならないということであります。
 以上が講和問題と国際情勢の認識に対する私のお尋ねであります。(拍手)
 次に政府の財政経済政策についてお尋ねいたします。
 政府今回の補正予算の編成が意外に遅れたのは、朝鮮動乱以後の国際情勢並びに国内情勢の転換についての諸條件が見落されまして、ドツジ氏の先般の来朝を機会にそれが再検討を余儀なくされたのではないかと思います。すでに周知のごとく、アメリカにおきましては軍事費の総額は約四百億ドルに達するであろうと見られ、このため赤字公債の発行額は二百億ドルに達するであろうと言われております。又イギリスにおきましても、アトリー首相は去る九月二十六億ポンドに上る国防三ヶ年計画の審議を求めております。この外フランスその他の西欧諸国においても同様な状態を起つております。このようにインフレの要因をはらむ世界情勢の中で、更に朝鮮動乱による特需が起つております。このような状態の下においては、誰に指摘されるまでもなく、十分な警戒と必要な処置がとられねばならなかつたでありましよう。それにも拘わらずそういう要因を見落しまして、補正予算の編成にかかつたのは、明らかに政府の政治的失態を示すものであると言うことができるのであります。(拍手)
 さて、先の昭和二十四年度予算並びに二十五年度予算に現われました政府の財政方針は、言うまでもなく財政の均衡に重点が置かれ、特に通貨の安定対策に主要な地位を與えておると思います。そうしてこの通貨の安定或いは予算上のバランスという問題に関する限り、それは形式上ではありましても一応の成果を収めたと言えぬこともありません。終戰後のインフレーシヨンの進行は何らかの形で阻止されねばならず、このための必要性は恐らく何人と雖も異論がないところでありましよう。そうして、それは確かに一応の収束を見るに至つたわけであります。併し国民生活の上においては、一方に資本の専制を増大し、他方に失業と低賃金に苦しむ勤労者、資金難に悩む中小企業者、低米価とシエーレに脅威を感ずる農民大衆というように、著しいアンバランスを招来しておることもこれ又現実の姿でございます。このような状態の下における我が国の経済政策は、国民大衆のすべてが合理的な生活水準を以て生活し得るに足る生産力を持つた自立経済の達成に目標が置かれなければならんと存ずるのであります。何故ならば、我が日本経済は、進行するインフレーシヨンを抑え、一応の均衡財政を確立はいたしましたが、日本経済の実体は二十年前の満洲事変当時と殆んど変つていないということでございます。言うまでもなく、満洲事変以来の二十年間、我が国経済の主要な基盤は軍需産業でありまして、この上に立つ政府需要がその主なるものであつたのでありますから、敗戦後の日本経済はそれだけをマイナスしたものがその実体となるわけであります。この意味から考えますというと、我が国経済の基盤そのものは二十年前と比べて何らの変化も発展もいたしておりません。それどころか、敗戰で朝鮮、台湾、樺太、満洲を失い、更に一千三百万人近くの増加した人口を抱えておるのがその実態でございます。
 我が国の工業生産力が戦前の水準に接近したと言いましても、実はこの所が問題の出発点に過ぎない。曾て低賃金による商品ダンピングによつて、そのときどきの経済を切り抜け、そうして問題を太平洋戦争に持ち越した脆弱な日本経済の実体が、今日いろいろな装いはしておりますけれども、実際にほ産業構造においては、それと殆んど変らない姿で、又国民生活においては、それよりも著しく低い形において再現されようとしておるのが日本経済の今日の実体でございます。例えば東京銀行協会の調査によりますると、昭和六年を一〇〇とする指数におきまして昭和二十五年度の予算は一五〇になつております。これに対して国民所得は八八であり、国民一人当りの収入は六九になつております。
 私が今申上げましたように、政府は一方において通貨の安定と超均衡予算を、他方において古い自由主義経済とこの原則に基く価格の自働的調整作用によつて日本経済の再建復興を企図いたしておるのでありますが、このような原則の下で我が国の経済自立が達成されるとお考えになるのは非常な間違いでございます。我が国が真に自立経済を確立するためには、明確な計画性が樹立され、この計画を裏付ける予算的処置が逐年その発展の度合に応じて実施されて行かなければ、真の意味における日本経済の復興と自立は困難であると考えます。我々がここで言う日本経済の計画性というのは、小手先の統制を意味するものではございません。例えば電源の開発、或いは農業生産力の拡大、或いは国内資源の総合的開発、或いは産業の近代化、雇用の拡大等に関する国家的計画性を指すものであります。そういう場合においても、個人の創意や或いは努力の企業活動における地位は当然高く評価されてよいわけでございます。政府はそういう意味で産業の合理化や資本の蓄積を行い、日本経済の国際経済への鞘寄せに努力しておると言われるでしようが、併しそれが抵抗の最も弱い部面に犠牲を負わせることによつてのみ途行されるという今日の形では駄目でございます。又資本の蓄積と言いましても、国民的資本の蓄積ということでありまして、大企業家だけの資本の蓄積では困ります。(拍手)この資本の蓄積はドツジ氏や政府の最も強調される点でございますが、我々は農民が再生産の基礎を作ることも、或いは又国民大衆が明日の生産へのエネルギーを蓄積することも、又資本蓄積の重要な一環であるとの理解の上に立つておるのであります。この資本蓄積に関する偏向は税制体系の上にも現われておりまして、なかんずく地方税の住民税についてもこれが強く言い得られると考えております。又日本の企業者の或る方面における一つの傾向即ち資本の蓄積ということが、設備の改善或いは新機械の導入等、再生産のために必要な資本の蓄積として理解されず、スペキユレーシヨンに浪費されまして、又朝鮮事変以後この傾向が一層顯著になつておることは大いに反省を要し、これに対し政府も指導上の重大な責任があると考えております。この資本の蓄積という問題も、結局のところ、我が国の工業生産力の問題となつて参りますが、我が国重工業の基本的な弱点の一つば、銑鉄及び鉄鋼価格の割高、従つてその国際的競争力の脆弱性にございます。
 政府は、石炭、鉄鋼関係等の補給金を廃止しましたが、それによる影響をどの程度にカーバーされるか。即ち補給金廃止後の措置といたしまして、これに代る他の何らかの産業助成政策をお考えになつておられるのか。この点を明らかにして欲しいと考えております。尚、この問題を発表されて参りますというと、結局、中国との貿易問題に深い関係を有することになりますが、それは別といたしまして、とにかくこの古い自由主義経済政策で日本経済の自立が完全に達成されるとお考えになつておるのでありますのか。この問題を周東安本長官にお尋ねしたいと考えております。
 次に貿易問題についてお尋ねいたします。政府の施政方針によりますと輸出振興の問題が強調されておりますが、我々はこれについて單に輸出額の増大だけで問題が解決するとは考えておりません。朝鮮動乱後の一般蔵出の増大の外に、いわゆる特需の発注があり、我が国貿易のバランスは著しく好転をして参りました。そして又これがデフレ恐慌に悩む我が国経済に相当の活気を與えましたことも又事実でございます。併しながら特需や輸出によつて取得しました外貨は直ちに輸入に使用されずに、先程申しましたように、世界的なインフレにより外貨の価値が非常に低落しておるときに空しく死蔵されておつたわけであります。このことは最近の貿易状態が明瞭にこれを示しております。元来、特需や輸出は生産力の低い我が国にとりましては一種の飢餓輸出の性格を持つておるのでありまして、政府の強調する資本の蓄積は、そのために拡大再生産の基礎を持たない單なる貨幣の蓄積に終りつつあるのであります。従つて、このような状態の下で、今やローガン方式は全く不可能なものと言わなければなりません。而も東南アジアの貿易は、最近の不安定な政情の故に極めて安全性の乏しいものとなつております。このような清勢の下において、政府は今後如何なる貿易対策を以て臨まれるのでありますか。それは單に輸出銀行等を設けるという処置だけで解決できる性質のものではないと考えております。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これにつきまして詳細なる構想を横尾通産大臣にお伺いしたいと存じております。
 次に池田大蔵大臣にお尋ねいたします。今回の補正予算を見まするに、これを貫いておりまする考え方は、依然として従来の方針と何ら変るところがないように見受けられます。我々は先にも申しましたように、名目上の財政の均衡を維持するだけではなく、必要なことは国民が合理的な生活を営み得るに足る條件を作ることであると確信いたしております。今回の方針を見まするに、依然として超均衡予算の性格がその主要な骨格となつております。例えば一般会計からの外国為替特別会計への繰入れ、或いは輸出金融公庫への出資金にいたしましても、当然この種の費目につきましては、その趣旨から考えましても、又現在の見返資金或いは預金部資金の遊休状態から見ましても、当然見返資金から賄うべきものでございまして、一般会計から支出すべき性質のものではないと考えております。オーバー・ローンに悩む今日の市中銀行の現状から見まして、国家資金を基礎とする長期金融機関を設けますることは、我々のとくに主張し来たつたところでありますけれども、一般会計からするいわゆるインベントリー・フアイナンスは、直接税に対する国民の負担を加重し、国内の有効需要を減少せしめ、又国民生活を圧迫することになります。政府は今回の補正予算におきまして六十四億の減税をしたと称しておりますけれども、その半面には六十八億の租税の収入増を見込んであるようであります。これは実質的には何ら減税を行なつていないことを暴露する以外の何ものでもないと考えております。(拍手)例えばぺース・アツプの財源難をかこつ政府が、このようなインベントリー・フアイナンスの経費につきましては一夜にして百億の歳出を決定するのでありますが、(拍手)若し明年度予算につきましても同様な処置がとられますならば、大衆生活の窮乏はいよいよ激化するものと言わなければなりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)これについてどのように大蔵大臣はお考えになつておるでありましようか。
 尚この際、見返資金、預金部資金の運用方策についてお尋ねいたします。大蔵大臣御承知の通り、見返資金は本年九月末現在で八百三十億、預金部資金におきましては同じく九月末現在で二百二十六億程度それぞれ遊休状態になつております。これを活用することなく一般会計からするインベントリー・ファイナンスを行いまして、而も市中銀行のオーバー・ローンを解消しようというのでありますから、このしわは当然中小企業に寄せられることになりまして、金詰りを通じて、いわゆる生産の発展は期し得られないのであります。補正予算の中に若干の中小企業関係費目が計上されておりますけれども、この程度では絶対問題の解決にはなりません。政府は預金部資金の活用といたしまして金融債の引受を考慮しておるようでありますが、これは巨大産業資本家が利用するだけでありまして、預金部資金本来の性質である零細な預貯金にふさわしい農林、漁業、中小企業への利用を軽視する結果になりはしないか。この種資金の運用についてどのような方式をお考えになつておりますか。大蔵大臣の御説明をお願いしたいと思います。
 次に公務員の給與改善問題についてお尋ねいたします。この問題に関する政府今回の予算処置を見ますると、これは我々が主張いたしまするところの給與ベースとは非常な隔たりを持つております。我々が先にも申しましたように、一方においては資本家による貨幣の蓄積とスペキユレーシヨンが行われておる半面に、今日の勤労大衆は著しい低賃金と失業の脅威にさらされております。而も朝鮮動乱以後、物価の上昇は著しく、更に地方税、電気ガス税、或いは借地料、借家料等の値上りは家計に著しい影響を與えておるのでありますが、更に又食糧補給金の取扱如何ではこの傾向を一層助長することになると存じます。例えば総理庁統計局によりまする調査によりますならば、昭和二十三年一月から十二月までを一〇〇とする消費者物価指数は、本年九月におきまして全国平均で一三〇余になつております。このような状態にある公務員の給與べースは、今回程度の改善ではどうにもなるものではないのであります。而も地域給その他の制約から実質賃金がそれだけ増加したことにはならないのであります。政府はなぜ人事院の再度に亘ら勧告を無視して千円程度という姑息な途を選んだのか。その理由は言うまでもなく財源ということでありましよう。併し我々は財源はあると確信いたしております。尚又今日若干のべース改訂を行い それによつて若干の有効需要が起りましても、それがインフレの再現になるというようなことは断じて考えられません。インフレの要因は、先程も申しますように、むしろ外に存在しておるのであります。今日国民が物を買う金に苦しんでおるということは、原料高で製品安であるというこの市場の現象を見るならば誠に明瞭であると考えております。政府はこの際、人事院の勧告通り八千五十八円べースを即時実施して、年末手当一ヶ月分を支給すべく最善の努力をなすべきものであると考えますが、これに対する政府の所見を質したいと存じます。我々がこれを強く要求するゆえんのものは、政府に適当な物価対策がなく、実質上の、実質上であります、実質上のべース・アツプにはならないからであります。
 尚、政府は今回の給與ベース改善の主要な目的を国家公務員のみに限定しておりますが、給與改善は当然地方公務員にも国みずから保障すべきものであると考えております。これを全部地方自治体の手に委ねたのでは、地方財政に一層の重圧を加えまして、地域ごとに著しいアンバランスが起つて来る。更に一方においては地方公務員法を準備しまして、他方においては給與改善は地方自治体委せということでは、地方自治確立のための第一歩が踏み出されておる今日、政府みずからその基礎を破壊することになりばしないかと考えております。(拍手)これについて政府はどのようにお考えになつておりますか。御所見を承わりたいと思います。
 次に失業対策について労働大臣にお伺いいたします。先に私が申述べましたように、通貨の安定と超均衡予算を建前とする政府の財政経済政策の結果、朝鮮動乱による一部特需部門を除きますならば、失業者の数はおびただしい数に及んでおります。労働省の統計によりますならば、本年六月末現在いわゆる顯在失業者は四十七万人でありますし、失業保険に関係しておる面ですら八月は四十四万人を越しております。これに潜在失業者を合しますならばその数は実に厖大なものになると考えられます。我が国のように厖大な過剰人口を擁する国におきましては、できるだけ雇用量の増大が企図されなければならぬと考えますが、そのためには、公共事業或いは緊急失業対策事業等の外、失業保険等、社会保障制度一般の確立が強く要請されるのであります。この失業の現状と、これに対する政府の方針につきまして労働大臣の御答弁をお願いいたします。
 次に警察予備隊の性格並びにその経費支弁の方法についてお尋ねいたします。先の新聞報道によりまするならば、警察予備隊の任務は国内治安の確保にあつて、軍隊的性質を有するものではないとの官房長官談話がありましたが、若しそれが事実でございますならば、世上の疑惑を一掃いたします意味からも、この機会に政府の真意を明確に披瀝する必要があると存じます。尚この経費支弁は現在どのようになつており、更に又今後どのような取扱をされるのか、併せてこの機会に御説明を求めたいと思います。(「法務総裁いないじやないか」と呼ぶ者あり)
 次に政府の農業政策について廣川農林大臣にお尋ねいたします。今回の臨時国会は、先に我が党が救農国会としてその開会を要求したものでありますし、又政府におきましても、廣川農林大臣は就任当時で張り切つておられたせいもありましてか、これを興農国会として開会すると大いに見栄を切られた問題の国会であります。(拍手)ところが供出報奨物資値下り補償費並びに農業共済保険費若干の計上の外に、これを興農と呼称するというような跡はどこにも見当らないのでありまして、これは誠に我々の遺憾とするところでございます。廣川農相はこれで興農の実が挙るとお考えになつておるのでございましようか。併し私がお尋ねしたい点は、単にこのような当面の予算的処置だけのことではないのでありまして、日本農業に対する政府の根本的な方針に関して、その所見を伺いたいと考えております。先ずこの問題の第一点といたしましては、政府は日本農業の将来についてどのようなあり方をお考えになつておりますか。我々といたしましては、日本経済の自立体制の一環といたしまして、日本農業の生産構造をより高度なものにしなければ、真の意味における日本の自立経済の基礎は確立されないと考えております。我々がここに言う自立経済或いは日本農業の生産構造の強化ということは、アウタルキー的な或いは狭隘で閉鎖的な性質を意味するものではないのであります。その反対に、むしろこの面の、即ち農業の生産構造を高めることによりまして、食糧の輸入費も節約し、或いは食糧の輸入補給金も不要なものといたしまして、我が国に必要な工業原料の輸入費を補填し、以て工業生産力をも高めるとの前提に立つておるのであります。そして又一方において、この農業生産力の増大によりまして、農業経営者個々の生活水準をも高めなければならんという立場に立つております。若しこのような前提に立ちまするならば、それを実現するに必要な処置が、即ち財政的な裏付けがなければならぬと存じますが、政府は食糧輸入は見返りとなる工業生産力の増大という方式で賄い、農業に関しましてば根本的な政策が必要でないとお考えになつておるのかどうか。先ずその点を明確にすべきであると考えております。我々は日本工業の発展という見地からも農業生産構造の拡大と高度化を必要としておることは、只今も申した通りでありますが、例えば昭和二十五年度予算に含まれる外国食糧の輸入総額は約九百億に達しております。尚、食糧輸入補給金の総額は四百六十五億に及んでおります。若し日本の農業生産力の発展によりまして、これらの経費の何割かを節約する、或いは軽減することができまするならば、それだけ工業原料の輸入力は増大することになり、この意味で我々の言う自給力の増大ということが狭隘なアウタルキー的性質を意味するものではないということが明瞭になると存じます。
 今一つの意味は、この農業生産力の拡大によりまして農業経営者の地位を高めるということでございます。日本の農家は、今日まで零細な耕地と古い封建的な経営方式とを以て、尚、農産物の低価格政策によつて、極めて低い水準の生活をして参りました。そうして曾ての時代においては、この農家の貧困な生活が、実は都市の労働者に対して産業予備軍的な存在となり、労働階級の低賃金を招来したものでありまして、このような状態の中に商品ダンピングの條件が存在していたのであります。従つて農業者の地位を高めることは、日本の民主化を達成するための欠くべからざる條件であると確信をいたしております。私は今曾ての時代においてという言葉を用いましたが、実は今日再び同じような條件が生長しつつあるのであります。例えば大蔵省の発行によりまする昭和二十五年度予算の説明書によりまするならば、昭和二十四年の国民所得の総計は三兆三百三十億のうち農林水産業の占める所得は八百六十一億でありますが、昭和二十五年におきましては、国民総所得は三兆二千五百二十億と増大しておるのに、逆に農林水産業の所得におきましては八百八億と著しい減少を示しておるのであります。このような状態にある農業生産者の地位を防衛することは、我が国の経済自立化を達成するために必要欠くべからざる條件でございます。(拍手)周知のように、アメリカにおけるプラナン・プランも、この農業生産者の收入を維持確保するために作られておるのでございます。併しこの仕事を個々の農業者の努力にだけ期待するようなことでは十分ではございません。そのためには国家資本の投下こそが農業生産力を高める最大の途であると考えております。国家が責任ある農業政策を確立いたしまして、その政策の下に、或いは土地改良に、或いは農業技術の発展向上に、或いは又適地経営の確立のために、そうして更に又適正なる農産物価格の支持のために、十分なる財政的裏付けを行い、我が国農業の近代化、高度化を図ることが、刻下の急務であると確信をいたしております。而もこれは割に合わない投資ではございません。先になつて必ずはね返つて来るところのこれは国民的資本の蓄積でございます。現政府にこの基本的な農業政策の欠けているということは、我々の大いに遺憾とするところでございます。これについてどのようにお考えになつておりますか。農林大臣の御所見をお尋ねいたします。
 次に、この問題に関する第二点は食糧統制の問題に関してであります。政府はかねて食糧の統制撤廃を準備していたようでありますが、これ又ドツジ氏の指摘するところとなりまして、再び統制延期と相成つたことは周知の通りであります。これは食糧政策に対する現政府の驚くべき無定見を示すものであると考えております。(拍手)この問題において考慮されねばならぬ諸点は、第一に年間三百数十万トンの輸入によつて支えられておる我が国の食糧事情から若し統制を撤廃した場合、価格の上にどのような変動が現われるか、又食生活の上に地域的なアンバランスが起らないか、これらのことは十分検討しなければならない問題でございます。曾て食糧が自由販売であつた時代は、朝鮮、台湾、南方などの米が幾らでも輸入され、いわゆる持越量は純粹に米であつた時代であります。今日で、輸入食糧の大部分は麦類でありますから、統制を撤廃した場合には、価格や国民の食生活の上にアンバランスの起る危険性は極めて多いのあでありまして、この食糧の統制問題に私は十分なる検討が行われなければならないと考えております。第二に食糧の輸ス補給金の問題であります。これについては大蔵省は削減又は廃止を考慮しておるようでありますが、これが削減又は廃止された場合は、国民生活に、性に消費者階級に與える影響について、どのようにお考えになつておりますか。ベース・アツプが特に申訳的な状態にある今日、この問題の取扱について大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
 尚これと関連した問題として肥料の輸出問題があります。政府はかねて関係当局の覚書によりまして、窒素肥料の台湾向け輸出に関し、その可能性について検討した模様でありますが、これについては通産、農林、安本三当局の間で種々折衝が行われたと聞いております。この問題の発表展如何は農業経営の上に相当な影響がありますし、今日においてすら補給金の削減で肥料価格は上つております。若し過度の輸出となりますかならば、一層の肥料の値上りを招来して、或いは農家経済に重大な影響を與える。併し又一方、台湾やアジア諸地域で必要とする程度の肥料すら輸出できないようなことで日本の工業生産力が発展する筈はない。従つて化学肥料の生産対策については、国家として十分積極的な考慮が拂わなければなりませんが、これに対してどのような対策をお持ちになつておりますか、通産大臣の答弁を求めます。
 尚この外、米価の問題或いは農業用電力の問題、その他種々沢山農業政策に関する問題はございますが、時間が迫りましたので、私は最後の結論をいたしたいと考えております。
 最後に、私は民主主義の擁護と国会の権威保持について一言したいと存じております。
 第一に民主主義の問題についてでありますが、政府最近の施策を見ますると、我々は随所にフアシズムの復活の傾向と民主主義の危機というものを強く感ずるのであります。例えば政府並びに資本家によつて強行せられておりまする最近のレツド・パージの問題にいたしましても、或いは公務員の政治活動の制限の問題にいたしましても、若しそれが必要な限界を越しまするならば、民主主義に重大な暗影を投ずるものと言わなければなりません。現に政府のこの種の政策に便乗する一部資本家は、明らかにこれを人員整理の機会として利用しております。今や正常なる労働運動すらが窒息せしめられようとしているというのが今日の現状ということができると思います。このような便乗整理について労働大臣はどのようにお考えになつておりますか。且つそれにつきまして、どのような処置をおとりになろうとしておるのでありますか。これをお尋ねいたします。この問題について我々は次のように考えております。我々はもとより破壊活動を断じて容認するものではございません。たとえそれが右であれをであれ同様であります。而して我々自身は確乎として平和的立場に立つております。併し権力の行使以外に問題解決の途がないでございましようか。問題解決の途は外にも存在しておるのであります。
 今日デフレ恐慌による失業者の数は極めて厖大なものでありますが、政府の経済政策がよろしきを得ますならば、且つ失業対策或いは社会保障制度等が十分に確立せられますならば、この種の社会不安を大幅に一掃することは不可能ではありません。問題は或る種の宣伝に機会を與えるような條件を拂拭することであります。若しそういう方法がとられますならば、国内治安上の不安を警察予備隊でカバーするというようなことは断じて起り得ないのでございます。時間がないので結論をいたしますが、今日このような危険なフアシズム復活の危険性が観取せられ、又民主主義の危機が内在しておるのであります。深刻危険な国際情勢と相待つて、今後このような危険は一層濃化することも考えられますので、この際必要なことは、このフアシズムの復活に口実を與えるようなそういう政策は断乎として拒否されなければならないということでございます。(拍手)そうして正当なる民主主義は断乎として護られなければならぬということであります。
 第二は国会の自主権の問題についてでございます。今回の電力再編成問題につきましては、参議院今回の紛糾の責任は我々は挙げて政府にあると考えております。(拍手)我々はもとよりここでマツカーサー元帥の書簡を云々しておるのでございません。問題は次の諸点にあるのであります。即ち第一は、このような重大な書簡が公表せられないこと、第二は、このような書簡を発せざるを得ざらしめるに至つたこの政府の政治力の問題でございます。その第三点は、議会開会中であり、且つ衆議院において絶対多数の與党を有する政府が、これを国会の審議に委ねず、敢てポツダム政令という途を選んだということであります。これら一連の事態を見るときに、これは明白に国会の審議権をみずから放棄するものであり且つ政党政治の基礎を危くするものと言わなければなりません。幸いにして我が参議院におきましては、自由党を除く各派の熱意と良識の下に、昨日国会審議権尊重に関する決議案が可決されたことは、国会自主権の擁護と憲法政治の確立のために誠に御同慶に堪えないところであります。
 今や講和会議を目前に控えまして、我が民族の独立と国権の回復が日程に上りつつある今日、政府のかくのごとき非自主的にして且つ非立憲的な態度は断乎として拒否されなければならぬと存じます。(拍手)吉田首相はしばしば愛国心の涵養ということを言われるのでありますが、我々も又この敗戦の相国を愛しております。併しそれは日本を今日の事態に至らしめた古い時代を正当化することではなく、飽くまで民族の独立と国権の回復を通じまして民主的な新生日本を作り上げて行くことであると確信をいたして止まないものであります。私の一般質問はこれを以て終りといたします。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 御指摘になつた外交白書なるものは、「朝鮮動乱と我々の立場」という小冊子をお指しになつたと思いますが、これは朝鮮動乱に際して世界の現実の情勢を国民に分り易く解釈しようとして出したのであつて、(「違う」と呼ぶ者あり)七月頃に出したものであります。(「やめて頂戴」と呼ぶ者あり)而してこの世界、現在が二つの世界に分れておるということは現実の事実であります。避くべからざるものではない。現に現われておることであります。であるとして書いて、どこが悪いかということを言わざるを得ないのであります。又(「しつかり聞きなさい」と呼ぶ者あり)この状態が、この世界の現状が自然講和條約に影響するということも、これは当然のことであります。而していわゆる全面講和のお話でありますが、これは今日までしばしば私は述べておるのであります。できれば誠に結構である。できなければいたし方がない。(笑声)故に多数講和と言わざるを得ない。のみならず、若し諸君が全面講和ができなければ講和は日本としては反対であるというようにとられるのならば、日本に対して好意を寄する民主主義の国家をして甚だしく失望せしむるものであろうと思います。(拍手)講和條約は先方であつて……私は甚だ潰憾に思うところであります。国民の声をどうして聞くか。国民の戸ば絶えず聞かんと欲しておることは、私がしばしば申すところであります。講和に関しては国民として自由にその要望を発表するがいい。又世界をして聞かしむるがいいということは、私は絶えず申しておつて、政府としてはこの声を圧迫したことは一度もないのであります。(「圧迫はしない恐怖をしておる」と呼ぶ者あり)而してどうして国民の声が出るかと言えば、国会を通じ、或いは輿論を通じ、或いは国民の各種の行動によつて、日本の国民の要望は自然に発露するようにいたしたいものであると私は考えておつて、曾てこれを抑圧したことはないのであります。(拍手)又隣国の動静如何ということでありますが、朝鮮、中国等についてのお話は私も同感であります。どうか早く朝鮮に安定が帰するように、又中国としては民主主義に同調するように、又世界の平和に協力するように希望することは同感であります。併しながら将来はどうであるか、外交は占いではないのであります。故に事実によつて立論するより仕方がないのであります。今日我が国としては列国の動静等については何ら知る機会がないのであります。機関がないのであります。公けの機関はないのであります。ただ外国の電報その他によつて一斑を知るだけの話で、その新聞等の情報によつて、新聞等の記事によつて仮定をし若しくは断定をするということは、政府としてはいたすことができないのであります。(「怪しからん」と呼ぶ者あり)何が怪しからん。(笑声、拍手)
 その他の国会の審議権というお話でありますが、(「黙つて聞け」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)昨日も電力再編成に関する御議論でありまするが、この議論に対しては、私から申せば、この再編成案は第七国会にすでに提出せられて、そうしてこれが持越されたと言いますか、未完了に終つて、そうして今日に至つた。今日としては(「遅らしたのは誰だ」と呼ぶ者あり)遅らしたのは政府自身であるかどうかということは………第七国会にすでに提案して諸君の御協賛を願つたのであるが、併しながらそれが行われずに、今日に至つて再編成いたさなければならぬ時期に追い詰められたことは、昨日運営委員会において私が二回に亘つて述べたところであります。これは政府自身の怠慢であるか、或いは国会がこれを議了しなかつた結果であるか、これは国民が判断するであろうと思います。(拍手、「政府の責任ではないか」「政府は無能だ」「政府の無能と国民は判断する」「分つたかと呼ぶ者あり、その他発言する者多し
   〔国務大臣横尾龍君登壇、拍手〕
   〔「しつかりやれよ」「余りいじめるなよ」と呼ぶ者あり、笑声〕
#6
○国務大臣(横尾龍君) お答えいたします。輸出は我が国経済の本質から言つてもますます増進すべきものと考えます。そのためには輸出金庫の設立を早く進めて行きたいと思います。(「駄目だ」と呼ぶ者あり)輸出に対し、輸入は不振のようでありますけれども、これは対日援助物資輸入が減つておりますので、一般的には輸入は増しているのでございます。外貨の余裕ができましたので、長期予算等の実施と相待ちまして、極力輸入の増進に努力いたしたいと思います。つきましては、近々通商官以下の係官を関係各国に派遣いたしまして、海外の経済事情等についてよくその実情を把握して、輸入買付け等に資することにいたしたいと思います。
 それから肥料の点でありますが、肥料は申すまでもなく国内の需要を確保することが第一であります。それと共に先刻お話の通り輸出することも必要かと思いますので、(「しつかりしろ」「しつかりしつかり」と呼ぶ者あり)そのために現在電力等の確保をいたしまして、且つ又見返資金の特別の考慮を拂つて、急速に増産をいたし、そして内外の、国内内外の(「国内内外の」と呼ぶ者あり、笑声)需要に満たしたいと考えるのであります。(拍手)
   〔国務大臣他出勇人君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。今回の補正予算に朝鮮動乱の経済界に及ぼす影響を見込んでいなかつのは手落ちではないかというお話でございます。この点は御承知の通りに、予算を編成いたしますのには二ヶ月乃至三ヶ月を要するのであります。で、予算編成方針を七月の初めに決めまして、各省から出して貰つたのが八月の終りでございます。朝鮮の動乱は、七月や八月の初めにその結果の影響が見込まれるのではございません。従いまして当初骨格予算として朝鮮動乱のない場合を考えたのであります。而して予算の審議の途中で影響を見ながら織込んで出したのでありまして、こうすることが当然のやり方であつたと考えるのであります。(拍手)
 次にインベントリー・フアイナンスにつきまして御議論がございましたが、お話の通りに今世界の状況は、軍需資材の需要増大、軍備の拡張予算等によりまして、相当物価高の様相が顯著であるのであります。アメリカにおいても増税案を出しております。イギリスもアメリカの要請という話でございまするが、国民所得税の一〇%くらいまで軍事費を出す。減税をいたしました西ドイツも増税の止むなきに至るような情勢であることはお話の通であります。この際に及んで日本が減税をするということは逆行のように見えまするが、今、日本の置かれた国民負担の状況から見まして、私はどうしても減税しなきやならん。併し減税すると同時に、片一方には資本の蓄積が必要であります。資本の蓄積が必要だ。民間におけると同様に政府においても資本の蓄積をして行く必要があるのであります。私が減税をせずに資本の蓄積を、インベントリーをやつたならば、非難を受けてもその非難は甘んじて受けますが、一方には七百億の減税をするのでありますから、これに向つて資本の蓄積のために、而も借金してインフレの要因を政府が作るよりも、インフレの要因を作らぬようにすることが、将来の財政計画をやつて行く上の大蔵大臣として当然の責務であると思うのであります。(指手)而も百億円のインベントリー・フアイナンスは……昨年度における借金等により、本年度におきましては極力輸出を増進いたします。そうして今年度におきましては、できるだけ少いインベントリー・フアイナンスをしようというのであります。輸出入の状況も、朝鮮事変が起りますまでは輸出が非常に振わなかつた。先の議会では、政府は何をしているのか、輸出が振わないじやないか、こういう御議論があつたのでありますが、五月頃から非常に振つて参りました。而も輸出が振つて行つたのみならず、別に特需として数千万ドルのいわゆる貿易外の收入がどんどん入つた。こういうことからドルが溜つたのであります。そこで、このドルが溜つたのを、できるだけ早く使つて輸入をしようとして焦つているのでありますが、大体におきまして第三・四半期並びに第四・四半期におきましては、輸出よりも輸入の方がうんと多くなる傾向であるのであります。十月、十一月は輸入の方が多くなる。かくして努力いたしましても尚且つ通貨増発の原因になりますので、百億円のインベエントリー・フアイナンスをやつたのであります。増收を見込んで減税をしなかつたとおつしやいますが、今度の補正予算案を御覧になりましたら自然増收が出るのは当然だ。会社の收益状況を御覧になりましても、労働賃金の現況を見ましても、自然増收が出るのは当然である。これは増税じやありません。酒の値を下げる、減税をした、これは増税じやありません。收入は同じように見込んでも、一升の酒は安くなつているのであります。同じ所得者が減税によつて非常に負担が軽くなるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)この点はよく御覧おきを願いたいのであります。両、輸出銀行に対しましては、一般会計から出すのは不当じやないか。これは見返資金からも出しますし、一般会計からも出します。こういう金を民間からの借入にするよりも、減税をした後において、資本の蓄積の意味から一般会計から出すのであります。これは健全な財政のやり方であると考えております。
 次に、見返資金、預金部資金を遊ばしているじやないかというお話でございます。この点は一部当つております。金を預けて遊ばせているのではありません。食糧証券等を以ちまして運用はしている、併しそれが直接に民間に出て行かないということの非難であろうと思います。この点は或る程度御指摘の通りでありますので、政府は先般来関係方面と折衝いたしまして、中小企業に出す金を三倍にする、或いは私企業に出す金を多くしたり、これは又今後におきましても私企業に相当思い切つた融資の方法を最近のうちにおいて決めたいと考えておるのであります。又出しますにつきましても、殊に預金部なんかの金融債引受につきましては、決して普通のやり方ではいたしません。この預金部の資金が農村から集まり、中小企業者の方の預金から出ておるのでありますから、金融債を引受けるにいたしましても、先ず第一に農林中金の金融債を引受ける、或いは商工中金の金融債を引受けるというような心構えであるのであります。(「忘れるな」と呼ぶ者あり)
 次に給與の引上げについてでございまするが、これは財政演説で申上げた通りに、大体人事院の勧告の線によつて行つておるのであります。人事院の勧告は八千五十八円でございまするが、昨年の九月下旬を基準といたしておりますので、八千四百数十円になると思います。我々の案は八千円程度に相成るのであります。而うして来年は半月分の絹與を、年末手当を出すのでありまするが、人事院の八千五十八円と、そしてあとから出ました一ヶ月分の給與と、こういう二つの勧告がありまするが、八千五十八円と一ヶ月分の年末賞典との関係はまだ人事院はこれを審かにしておりませんが、我々は八千円程度の給與に半月分の年末賞與を考えておるのであります。かくして大体において人事院の勧告に従つてできるだけ努力したと私は言えると思うのであります。
 次に、地方公務員の給與引上げに関して政府はどう考えているか――御存じの通りに、これは平衡交付金で賄えという御議論がございまするが、平衡交付金というものは財政需要と財政收入とを勘案してやるのであります。私は国の財政も御覧の通りでありますので、地方におきましてもできるだけ財政需要を少くし、財政收入を拡大するように御努力願つて、地方公務員の給與引上げは地方で賄つて行つて頂きたいと考えておるのであります。政府におきまして余裕がありますれば地方交付金を殖やすのに吝かでございません。併しこれも我々といたしましては、政府もなかなかむづかしい。だから地方でできるだけ歳出を減らして收入を多くして頂きたいという念願を持つておるのであります。
 尚、法務総裁にお聞きになりました警察予備隊の費用はどこから賄つておるか――これは今年当初予定しておりました一般会計の債務償還費から約二百億円を出すことにいたしておるのであります。現に支出いたしております。来年度は一般会計から警察予備隊の経費を予算に計上いたします。
 最後に、食糧補給金を大蔵省は廃止するという考えがあるかというお話でございまするが、これは財政演説で申上げましたように、来年度は輸入食糧に対してだけ補給金を出すことにいたしております。廃止するとかいう考えは持つておりません。併しこれは外国の米麦の値段が下り、国内の米麦の値段が上つたら、補給金というものは当然要らなくなるのであります。で、大蔵省でどうこう言うことはございません。外国の麦の値段、日本の米麦の値段とで決まることであるのであります。今年度におきましては当初四百五十億円の食糧補給金を見込んでおりましたが、その中から、この前申上げましたように、外国の麦の値下り、国内のパリテイの上昇によりますので、百三十五億円の今年度の節約でございます。補給金二百六十億円の減額のうち、百三十五億円が主食の補給金の減額に相成つております。(拍手)
   〔国務大臣保利茂君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(保利茂君) お答えをいたします。最初に失業の関係でございますが、先ず常備関係の失業者を中心とする只今の状況は、前国会で御報告いたしました当時と大体において大差はないのでございます。即ち内閣総理府の労働力調査、その調べによりますと、常備関係におきまするいわゆる完全失業者は、昨年は大体月平均が三十八万というものを示しておりますが、今年は概ね四十万台を推移して参つております。併しながらこれは十分に事態を的確に捕捉したとも申されませんし、私は日本のすべての勤労者の動態が、先般行われました国勢調査の結果を待ちまするならば、やや的確に全体の実態を捕捉することができるであろうと存じます。従いまして失業対策の根本の検討は、この国勢調査の結果を待つていたすことが最も妥当であろうと存ずるのであります。ただ労働省で取扱つておりまする職業安定所の窓口を通じて見ますところによりますと、今年の六月頃、いわゆる人を求める求人の数が十四万台でありましたのが、輸出の振興或いは朝鮮動乱等の影響を受けまして、逐月増加をいたして参りまして、六月十四万台でありましたのが、九月には二十二万台の求人の数字を示しております。それに対しまして、就職の関係も六月には六万台でございましたのが、九月には十二万台というようになつておりまして、即ち常備関係におきましても、漸次雇傭の改善がこの数字の上に現われていることをはつきり認めるのでございます。今後も昭和二十三年の年末以来漸次減少して参りましたいわゆる常傭関係の労務者が、この趨勢を辿つて、今後のいわゆる輸出の伸長、特需の要請による生産拡大、さような趨勢の下に改善の足取りを続けて行くであろう、かように期待をいたしておるのであります。荷、日雇労務者の関係につきましては、前国会における本院の御決議の御趣旨にも副いまして、就労日数の改善のために全力を挙げました結果、一時非常に悪うございました六月頃、一五・三という全国平均の日数でございましたが、九月には十八日強という数字を示し、十二月には十九日の線を超えるという結果を示しておるようなことでございます。もとよりこの日雇労務者の扱いにつきましては、全体諸般の情勢から鑑みまして、私共最も愼重に対処いたし、更に改善に努力いたすつもりでありますが、本国会に補正をお願いしております予算が成立いたしまするならば、来年の三月までは凡そ全国平均十九日乃至二十日の就労は確保し得るのではないかということを思つております。
 次にいわゆるレツド・パージに関しましては、私は無論今回民間に行われましたいわゆるレツド・パージは、経営者の責任において行われていることでございますけれども、政府の考えといたしましては、自立経済を達成いたして参ります上に、いわゆる労働法を尊重し、その労働法を基調としたその上に立つての産業労働界の秩序の確立と申しまするか、労働関係の安定は最も大事なことと存ずるのであります。そういう意味合いからいたしまして、皆様も御承知のように、一部にいわゆる企業破壊の挙に出でないとも知れない、企業内部における危険有害の分子をその企業から排除するという意味において、今回のいわゆるレッド・パージは行われたものと了解いたしておるのでありますが、この過程におきまして、御指摘のようにいわゆる行き過ぎの解雇、整理、これに便乗するところの整理が行われて、そうして諸般の法律問題その他の紛糾を起すことは最も注意を要することと存じまして、私共といたしましては、十分関係者に御注意と留意をお願いをいたして参り、特に便乗解雇につきましてはさような事態が行われませんように細心の注意を拂つて参つたのでございますが、今回のいわゆるレツド・パージで一万余名の解雇が行われておるのでございますけれども、かかる解雇が比較的平穏裡に推移いたしましたあとを顧みましても、今回の措置に対して経営者の方々が如何に愼重なる態度をとられたか、同時に又今回の解雇に対して、労働組合の大勢も、多くの方々も今回の解雇の性格をよく理解して頂いた結果、私は極めて平穏裡に推移したのであろう。従いまして、或いは例外的な事実があるかも知れませんけれども、概ね御指摘のような便乗解雇という事例は私はなかつたかと思うのでございます。無論さような例外的な事実がございますものにつきましては、事実に即して解決をやつて行きますし、又中労委或いは地労委の正当な活動、判断を期待いたしている次第でございます。又今回のこの措置がいやしくも我が国の健全なる労働組合運動を阻害するというようなことは、断じて私共の企図しないところでございます。(拍手)
   〔国務大臣廣川弘禪君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(廣川弘禪君) 羽生君の質問にお答えいたします。
 救農と申し、興農と申し、どつちにいたしましても、これば農民のために考えることであるのでありまして、農民のための政治を中心に考えて国会をやりたいということには変りはないのであります。ここで申上げたいことは、政府がしばしば申上げておる通り、今度の補正予算は、十五ヶ月の一環としての補正予算であるということをたびたび申上げておりまするので、この補正予算に農村関係のものが少いとしても、決して御悲観なさらずに、(笑声)来年度の予算においては十分盛つてあるつもりでありますから、さよう御承知を願いたいと思います。(拍手)
 次に、只今御質問の第一点でありました日本農業の生産拡大のための問題がありましたが、これは全く我々は同感であるのでありまして、日本の自立経済の一環といたしましての農業政策、即ち農業政策の根本とでも申しましようか、いわゆる日本の生産の自給度の確立を基底といたしましての農業の発展、これは全く同様であるのであります。さような意味からいたしまして、我々といたしましては、農業の生産力の拡大を図りまして、現にすでに一割増産の目標を立てて、農民諸君は生産に協力して、真剣に取組んで貰つておるのであります。(拍手)ただこれに対しまする政府の裏付けの問題のようでありましたが、これは来年度予算に十分織込んで、決して空念仏にならぬようにやつておる考えでおります。尚又それのみならず、長期資金、今までできなかつた長期資金の構想も実現でき得るような見通しに立つておるのであります。又その裏付けといたしまして、今まで各内閣においてできなかつた米価の引上げ等も、今次におきましては必ずこれを成し遂げるようにいたしたいと思うのでありまして、今まで我々を低米価と言つて笑つておつたが、我々は高米価をここで確立しよう、こう考えておるのであります。(笑声、拍手)それから又さようにいたしまして農村の振興を図り、外国から入つて来る輸入を抑えて、そうして日本の富を増したいということは、その通りであります。そのような方向で進んでおるようなわけであります。而もその生産力が増したものに対しましては、先程も申上げました農産物の価格維持を図りまして、そうして農民生活の安定を図つて行きたい、こういうことでありまするので、あなたの御指摘の通りに我々の政府は今やつておる最中であるのであります。(笑声)
 それから次は肥料の問題でありますが、これは先程通産大臣からお話もありましたが、通産大臣のおつしやる通り、国内の自給をさして、そうして余つたものはどしどしこれを出して行くという方向には間違いないのであります。(「いい加減のことを言うな」と呼ぶ者あり)
 それから食糧輸入補給金の問題、先程大蔵大臣からお述べがありましたが、来年度はこれは置くようにいたしまして、消費者大衆に迷惑をかけないというような方向で参りたいと思うのであります。
 又食糧の統制の問題でございまするが、我が党は自由経済を基底としてやつておりまするので、目標を自由と持つて行くために漸次この統制を外す考えであるのであります。而もこれを社会に不安を起さないように、漸次麦から始めて、そうして最後に米まで持つて行くような考えを持つておるのでありまして、決して無力針ではないのであります。立派な方針を立てて、(笑声)而もこの麦を最高限度に買入れるという方針でやつておるのでありまして、(拍手)何ら農民又消費者大衆に不安を與えずに、而も立派に、先程あなたのおつしやられた通りの日本農業の生産拡大とか、農民生活の安定のためにやつておることを御承知願いたいと思います。(拍手と
#10
○議長(佐藤尚武君) 周東国務大臣は後刻出席の際答弁される趣きであります。岡本愛祐君。
    ―――――――――――――
   〔岡本愛祐君登壇、拍手〕
#11
○岡本愛祐君 緑風会を代表いたしまして吉田内閣総理大臣以下関係国務大臣に質問いたします。
 先ず最初に講和問題についてお尋ねいたします。現在日本国民が挙つて待望しておるものは講和條約の締結である。日本はポツダム宣言を受諾して以来、同宣言を忠実に履行して来たのである。終戦以来すでに五年以上の歳月を経過して、尚、講和條約の締結を見るに至らないことは、その原因が主として日本側にあるのではなく、複雑な国際関係にあるのであつて、日本国民にとり頗る遺憾とするところである。而してこの重大問題の解決が遷延するために、我が国民が一方には不自然な現状に慣れ、卑屈な気風を助長する虞があり、他方には徒らに反占領軍思想が醸成され、拡大する傾向が生ずるのであつて、この点、政府も国民も大いに戒しめなくてはならないのである。申すまでもなく講和條約の締結は、日本を完全なる自主独立の国家として立ち有らせ、国際関係の一員として世界の平和に協力し得る地位を回復することを眼目としなければならないと信ずる。万一にも日本を永久に他国の属国化するような結果となり、百年瞬を瑠むの悔いを残すことがあつては、大変である。又将来日本の国土を足場として積極的に戰争が行われ、日本を戦場化し、国民を再び塗炭の苦しみに陷れるような事態を生ずることは、極力避くべきである。政府は従来敗戰国にとつて講和條件は要求すべきものではなく、單に與えられたものに過ぎないと言い、連合国の我が国に対する講和問題につき拱手傍観しておるようである。併し敗戦国と雖も、あらゆる努力を傾注して、我が国の民主主義平和国家、文化国家としての復興と安定につき、よりよい條件を得るように努力すべきではないか。すでに十月二十六日には、ダレス米国国務長官顧問が対日講和問題に関しマリク・ソ連邦国連代表と会談し、手渡したアメリカ側の講和條約の覚書なるものが報道され、そのうちには国連加入、領土の帰属、安全保障、通商的取決め、賠償等の諸問題を含んでおるようである。講和條約は勿論憲法に基き国会の批准を要する次第であるから、吉田総理大臣は未だ発生していない仮定の問題には答えられないとか、領土、国連加入、安全保障などについては、現在の日本では答弁する地位にないとかいうような遁辞を以て、講和問題、講和條件に関する答弁を回避せずに、予め研究用意しておる筈の日本側の態度なり意向なりを差支えなき限りにおいて国民の代表たる国会に明らかにし、この大問題に関して国会の意向を問い、国内態勢を整えるべきである。又重要なる情報、これに関する政府の所信等については、要すれば秘密会を要求して進んで両院の外交委員会に諮るべきではないか。この点どうお考えになるか。然らずして国会がその意見を述べる機会を得ないうちに列国の間に講和條件が決定されるに至るならば、国会は批准を拒絶することがあり得ることを政府は篤と考えなければならない。以上の考慮を前提といたしまして、私はこの際総理大臣に次のことをお尋ねいたしたい。
 先ずいわゆる講和の受入体制としては政府ば如何なる用意を有しておるのであるか。それは如何なる條件のものでも唯々諾々これを承諾するというていのものであるか。それとも受諾できるものは受諾し、然らざるものに対しては明白にノーという毅然たる態度をとるというのであるか。私は国家百年の計をなすこの決定的重大問題については、日本国民も重大関心を持つて理解しなければならぬと同時に、政府当路者においても余程しつかりして貰わなければならないと考えておるのである。
 次に講和について常に問題となるのは、日本の安全を如何にして図るかという重大問題である。日本が憲法を以て軍備を徹底的に全廃したためにこの極めて困難なる問題に直面したのであるが、この点について総理大臣は日本の現在並びに将来の事態を考慮に入れて、最も賢明な且つ合理的な案として如何に考えられるか。米国の対日講和條約の覚書には、「講和後日本地域の国際的平和と安全の維持は、少くとも日本がみずからの軍隊を保有するまで、日米両国及びその他の諸国を加えた双方の協力責務とする」とあるのである。
 次に、北鮮軍の韓国侵入に端を発して、現在朝鮮において展開されつつある事態には、日本国民として深く考えさせられるものがある。いわゆる東亜の安定勢力として日本自体がしつかりしていなければならないことを、日本自身も又連合国側も痛感するところであると私は信じます。思うに、独立国として国防に治安に軍隊を有しない国ば世界中どこにもない。最近日本が軍備を持つことは日本の希望に任せるという趣旨のことがしばしば伝えられておる。この点について総理大臣は如何お考えになるか。
 次に、最近の新聞紙の伝えるところによれば、ソ連の新聞はマツカーサー元帥と日本政府とが米軍三個師団が引続き三十ヶ年間日本を占領すること等の軍事協定を結ぶ交渉を秘密のうちに行なつておると大々的に報じておるということである。国民の代表たる国会に諮らずして、政府が独断の下にかかる重大事の交渉に当る筈はないと信ずるが、その真偽はどうであるか。以上について吉田総理大臣のお答えを得たい。
 第二に、国内治安の維持と警察制度の改正についてお尋ねいたします。
 官公庁や民間基幹産業のレツド、パージ以後、我が国の物情は従前にも増して険悪の相をはらんでおる。国民が一面にはスポーツや映画を楽しみ、七五三を祝つておるのを見ると、我が国の治安状態は甚だ良好のようであるが、他面には険しい暗流が流れておるのである。集団暴行事件、強盗殺人事件は日常茶飯事となつて来た。又いわゆる赤色デルタ地帯内における左翼労組運動の激化、地域人民鬪争の訓練的実践、朝鮮今青年行動隊の組織、国際青年総蹶起計画等の噂が流布されておる。而も十月二十八日附各新聞は、中共からの確報によれば、ソ連はシベリア抑留の日本人捕虜十万を再武装させ、満鮮国境に送り、更に十万の抑留日本人にも武装を施し、千島列島に送り、北海道に侵入させ、ソ連式の日本人民民主共和国を樹立する準備を進めておると言われる、と報じておる。これらの報道の中には想像に出たものもあるであろう。又誇大に過ぎておるものもあるであろう。併しこれらは我が国の治安状況が裏面的には甚だ険悪なものがあることを示しておるのである。然らば政府は全国的に起る集団破壊行動がありとしても、我が国の自身の力によつて万全を期する用意があるのかどうか。それとも将来永く連合軍の駐屯に依存せんとするのであるか。この点を特に総理大臣から承わつておきたい。
 過般マツカーサー元帥の書簡に基いて、国内の治安確保のため警察予備隊制度が創設せられたのであるが、何の故にかその整備が余りにも遅れておる、本年中の出動には間に合わないというではないか。その原因はどこにあるのか。又僅か定員七万五千人程度で、この治安状況に対して十分と思つておるのかどのか。法務総裁にお伺いいたしたい。
 次に、警察法に基く現行の警察制度の欠陷はすでに余すところなく露呈しておる。而も警察予備隊制度ができた今日では、警察法を速かに改正して、治安の確保についてできるだけの強化態勢を整えることが必要である。現行の国家地方警察及び自治体警察の制度を根本的に改革することは、或いは早急にはできないかも知れぬ。目下検討中の国と都道府県と市町村との間の行政事務の再配分との関係を睨み合すべき必要があるかも知れない。併し少くとも自治体警察相互間にも、又自治体警察から国家地方警察に対しても、合法的に共助応援ができ、正当な職権行使が認められるようにし、又今回行われた新国勢調査の結果に基いて人口が急激に増加した地域又は特殊の事情がある市町村に対し自治体警察吏員を増員するため、定員の配分調整の途を講ずるよう法的措置をするということは、政府の決心次第で直ちにもできることと信ずるのである。尚、治安状況甚だ険悪で、集団暴行、凶悪犯罪が日々続出している折柄、公共の安全のために身命を賭して日夜警備に当つている警察官吏の優遇について手抜かりはないか。政府は如何なる用意を有しているのであるか。これらの諸点について大橋法務総裁にお尋ねいたします。
 第三に、青少年の犯罪の激増と政府の具体的の対策についてお尋ねいたします。
 戰後青少年の犯罪や破廉恥な行動が激増して来た。その原因は、享楽第一主義と従来の道徳の軽視、風俗習慣の蔑視と教育の欠陷、社会秩序の混乱等に帰せらるべきである。戰後の社会では、世人はもとより教育者までも自由主義を履き違え、民主主義に戸惑いして、方向を見失つてしまつたのである。政府当局も茫然自失して善悪の標準すら青少年に指示する自信を失い、社会の規律、新道徳、正義感の涵養を怠つていたのである。而して今や青少年の犯罪は一般犯罪の増加を遙かに上廻つて増加しているのであつて、本年上半期の青少年犯罪の検挙件数は七万六千名を超え、昨年の上半期と比較して二四%の増加であり、全検挙者の四分の一は青少年であると言う。又青少年の暴行等の粗暴犯は六八%の増、風俗犯、即ち堕胎、猥褻、強姦等は実に一五四%の増加である。殊に風俗犯について最も甚だしい最近の事例は、埼玉県浦和市附近の某々村及び岩手県某市に起つた婦女に対する集団暴行事件である。浦和市郊外某々二ヶ村に起つた事件のごときは、警察署に送致した事犯は八十七件、外に告訴期間が切れた等のため送致できなかつたものが四十五件もあるのである。送致した被疑者は五十七名、いずれも年齢十六歳乃至二十七歳の青少年であり、その被害者は実に五十一名、年齢十六歳乃至二十三歳、全部未婚の女性である。中には一人で三十一名の男に輪姦されたという驚くべき事実があり、悪質な花柳病を感染させられた者も数名ある。かかる事件が発生した原因は、これらの農村には健全なる娯楽がないため、青少年の間には夜遊びの悪習があり、殊に戦後各種の卑猥な雑誌が耽読され、これらに刺戟され風俗犯を敢行する者が多く出たのである。これらは極端な事例であろうが、戦後、性道徳の欠如と、猥褻な文書、映画、演劇等を放任したため、青少年の不良化が多かれ少なかれ各地に彌漫し、風俗犯を激増しつつあることは、誠に国家社会にとり一大事と言われなければならない。私は昨春以来、卑猥極まる文書、殊にたやすく手に入る雑誌、新聞類で、刑法上の猥褻罪となるべきものを厳重に取締るべきことを政府当局に要望して来たのであるが、依然として取締が手ぬるいのは甚だ遺憾である。政府はこれら猥褻文書等の公然の頒布販売を従来通り放任して、間接に性道徳の頽廃、風俗犯を奨励するつもりであるかどうか、承わりたい。これら市町村において、市町村当局、青年団、PTAの間に不良化防止の真剣な対策を考究しつつあるのは喜ぶべきである。遅蒔きながら吉田総理大臣は施政演説で国民の精神的方面の作興を述べられ、又天野文部大臣は過般道徳教育の尊重と修身復活の意見を発表されたのであるが、説教や意見よりも具体的施策が必要である。従来政府の青少年不良化防止に関する施策が貧困そのものであることは誠に遺憾である、これら青少年不良化防止に対し、総理大臣、法務総裁、文部大臣、厚生大臣は具体的対策を持つておられるかどうか、承わりたい。
 最後に補正予算と地方財政の確立についてお伺いいたします。
 第八臨時国会の施政方針において吉田総理大臣は、地方税改正法案の意図するところとして、地方財源の強化拡充を通じて我が国民主化の根幹たる地方自治及び財政の確立に資せんとするものであると言つておられる。これは地方財政の確立は地方自治の確立であり、民主政治を培うものであるとの認識を表明したものであり、私は現内閣の地方財政強化の施策に大いに期待したのである。然るに今回提出された二十五年度補正予算案には、地方財政平衡交付金の増額は僅かに三十五億に止まるのである。これでは総理大臣及び池田大蔵大臣が地方財政の実情に甘して認識を誤まつておるのであるか、或いは誠意を欠いておるものと考えざるを得ないのである。政府は、昭和二十五度における地方税の増額約四百億と平衡交付金千五十億とによつて地方財政を確立すると揚言して来たのであるが、その後相次ぐ大風水害と、当初の財政計画に予定しなかつた賃金ベースの引上げ、年末手当の支給、法令の改正による地方の義務的負担の増加、政府の補正予算に伴う支出増等によつて、地方財政需要の増加額は総計三百億円前後となるのである。それで、地方財政委員会はこの需要の増加に対処し、地方財源として、地方財政費の節約四十億、平衡交付金の増額八十三億、地方債発行額の増加百九十五億を以つて措置することを要望したのでおるが、大蔵省側は原則として、すべてを自治体側の冗費の節約、自然増収心その他で賄い得るものとし、その理由として、一、国庫の歳出が最近毎年時減少しておるのに引きかえ、地方財政の総額が年々膨脹しつつあるのは不当であること、二、地方財政に節約の余地即ち冗費が甚だ多いこと、三、殊にシヤウプ勧告によつて昭和二十五年度において地方財政支出額を千億増額したことは多きに過ぎたのであり、不当に五百億の過剰財源を與えたものであること等を指摘したのである。先程大蔵大臣も羽生君の質問に対し、地方財政需要額の増加はできるだけ地方の財源で賄えという意味の答弁をなされた。私は冗費は勿論それが少額であつても是認しない。地方公共団体は節約の余地ある限り支出を緊縮すべきであると信じます。而して大蔵大臣は昭和二十六年度においても地方税は約三百億の減税が可能であるとしておられるようである。私共はできるだけの減税を図つて重税に苦しむ国民の負担を軽減しなければならないと固く信じている。地方財政の確立を妨げないで三百億の減税できるのであれば、私はもとより大賛成である。併し單にその理由が以上のような論拠に出ているものであれば、大蔵大臣は地方財政の実情に暗いのであるか或いは根本的の誤解があると思うのである。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 地方財政の総額は、戦前は軍事費等を除いた国の予算に対しては一・五倍以上であつたのであり、現在は漸く一・一倍である。而もその中に新たに地方公共団体の負担となつた六・三制、自治体警察等の費用が加わつているのである。政府側の終戦処理費、価格調整費のごとき一般行政費に関係のない経費の減少によつて、国の財政が減少するからといつて、それで地方財政を律することは誤解も甚だしいと思うのである。又地方側の職員費の膨脹、特に人員数の増加、給與の高いこと等を指摘するのは、地方側が法律等に基いて多数の職員の増加を政府から一方的に義務付けられ強制せられているという地方の実情に暗いものであり、給與は実際のところ大多数の自治体において国の公務員より低いのが実情である。況んや地方公共団体には不当に五百億余の冗費があるから、自己財源によつて二十五年度の止むを得ざる増加所要経費を支弁し得るとし、又その故に二十六年度において三百億の減税をなし得る余地がある、こういうふうに大蔵大臣が主張するのであればそれは結局吉田内閣は、過般の新地方税法によつて、地方財政にとり不用で且つ有害な約四百億の増税を断行して、無用に住民を塗炭の苦しみに陷れたのであるという結論になり、吉田内閣の責任は甚だ重大であると思うのである。(拍手)吉田総理大臣、池田大蔵大臣は果してそのように信じておられるのであるかどうか。明白に御答弁をお願いいたします。
 政府は当初閣議決定において補正予算には平衡交付金の増額を全く計上しなかつたのであるが、世論のやかましくなるに及んで、今回僅かに三十五億円、即ち地方財政委員会の要望した約三分の一を計上した。果してこれで地方財政を収拾する見通しが立つているのであるか。これは岡野国務大臣にお尋ねいたします。
 政府はなぜ地方公共団体の財政の確立について、親心を以て適切な財政措置を講ずることを躊躇するのであるか。先に参議院の地方行政委員会においてい政府與党たる自由党といわず、野党といわず、全員一致で以て平衡交付金の大幅の増加、増額等の要望事項を議決して、政府の善処を求めたではないか。それはどう処置せられたのであるか。
 以上の諸点につきまして、総理大臣、大蔵大臣、岡野国務大臣に御答弁をお願いいたします。殊に大蔵大臣は地方行政委員会におきまして、たびたび出席を要求したにも拘からず、渉外関係等に籍口されまして一度も出席がなかつたのでありますから、特に懇切に満足の行く答弁をお願いいたします。以上を以て質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 講和條約、講和問題について若し不利な或いは満足の行かなかつた場合に、これを自主的に拒否し得るかというお話でありますが、これは日本は無條件降伏をいたした今日でありまするから、講和会議において堂々論議をし、若しくは講和條約決定後において、或いは講和会議に列国の講和條件を日本において日本側としてこれを拒否することができるかということは、これはできないのであります。併しながら講和條約が永遠の平和を期する以上は、日本国民の要望若しくは希望に反した内容を含むことはあり得ないと私は確信いたします。のみならず今日連合国殊にアメリカにおいては、早期講和をアメリカが率先してこれを主張するのみならず、成るべく日本の希望を採り入れて、日本の国民の期待に反しないような内容の條約を拵えたいという熱意があることを、私は確信いたすのであります。又新聞その他においても始終その現われは出ておると私は思うのでありますが、決して日本国民の利益に反し若しくは希望に反するような内容を持つ講和條約を拵えることについて、熱意を持つと言うのはおかしいけれども、そういうようなことのあり得ることは私は信じないのであります。又そういうことのないように希望せざるを得ないのであります。(拍手)併しながらそのここに至らしむるのには、これは国際的に又国内的に、いわゆる受入態勢と申すか、連合国をして、殊に主要なる列国をして日本の意思を了解せしむるように時々刻々努力をいたすべきものである。故に私は講和條約に至るまでの毎日が即ち講和会議であるのである、国民としては、日本の国民の精神或いは政策の向うところを明瞭に了解せしめて、日本は終始民主主義に徹底いたす考えである、平和主義に徹底いたす考えである、よつて以て世界の平和を増進し繁栄を増進することに国を挙げて邁進しつつあるのであるというこの気持を、この精神を徹底せしめるということが、即ち今日我々が受入態勢と申すか、講和準備としていたすべきところである。これは常に申しておるところであります。従つて又私は国民の世論或いは国民の希望の発言について、これを阻止しようとか抑制しようとかいうことは曾て試みたことはないのみならず、自由なる発言を要望してやまないのであります。ただ私がときに御質問に対して諸君の要望せらるるような言明を避ける、これは避けることが当局者として必要であり、又日本の有利なる講和を導くためには、当局者として私が国民の世論を指導するがごとく国民の世論を作つて講和態勢を左右しようとするような人為的のことをせずに、国民の自然の意思の現われによつて、世論の現われの向うところによつて、講和態勢を導くというようにいたすべきものと考えておりまするから、たとえ私が多少の意見があつても、ときにこれを差控えることはいたし方がないのであります。決して答弁を回避しようとする底意があつていたしておるのではないのであります。
 又今日、対外関係と申すか、客観情勢から申しますれば、先程も申した通り、今日、民主主義と共産主義と申しますか、この対立、争いは争うべからざる事実であります。この事実において、この現状において日本が民主主義に徹底する。平和主義に徹底する。で、この国を成るべく早く独立国とし、又国際団体の一員たらしめて、世界の平和運動或いは繁栄運動に、文化運動に協力せしむるようにしたほうがいいと、民主主義国をして考えしむることが、講和態勢なり早期講和を招来するゆえんであると考えるのであります。故にこの点については国民諸君挙げて協力せられることを切望してやまないのであります。決して私は国民の輿論を、発言を、自由なる発言を阻止する考えは毛頭ないのであります。又マツカーサー元帥と我が国との間に秘密軍事協定を交渉しておるというソ連の新聞は全然嘘であります。全然虚構な事実であります。何らかくのごとき事実は毛頭ございません。少くとも私はかかる交渉をいたしたことはないのであります。政府としては勿論のことであります。
 次には日本の安全保障、保持の問題でありますが、差当りの問題といたして、現状におきまして、警察予備隊もすでに設けられて、これだけの力及び警察力を以て現在の治安に対してはこれを保持する二とは決してむずかしいことではないと思う。又何ら危険も感じられないのでありますが、先程御指摘になつたように、アチソン氏が日本の国が国連に加入を許されるまでの安全保障として、安全のために、連合国と申しますか、米国軍等が日本の安全に対して十分協力するという言明は多分あつたことであろうと思いますが、私は公式の照会なり通知を受けておりませんから、ただ新聞の発表するところを信ずるだけでありますが、多分そのことがあつたろうと思います。で、然らば将来において日本が再軍備するかどうかということには、私が絶えず申しまする通り、現在においてはかかる考えは私は持つておらないのであります。尚、重ねて申しまするが、講和條約の内容は今日まだ発表されておらないのであります。アメリカ政府として各国の意向を、講和に対する各国の意向を探るために、或る七ヶ條の條件を提示して云々ということも聞いておりますが、日本政府としては承知しておらないのみならず、これは講和條約の直ちに内容をなすものではないのであります。故にその未だ発表せられない、又は公式に公表せられない講和條約の内容について、政府として、又私として、とやかく議論することは早計に失するのみならず、将来において害があると考えますから、この点については、私は所見といえども申述べることを差控えます。その他の問題については関係大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊の整備につきましてはできるだけ速かに完了いたしまするよう努力をいたしておるのでありまするが、すでに七万四千余の身心共に優秀なる隊員の募集を終りまして、現在幹部要員の募集中でございます。この人員の編成につきましては、差当り一月中旬には終了いたす見込を持つておるのであります。而してこれら隊員の訓練につきましては、すでに第一次訓練を終りまして、今年中には各隊とも第二次訓練に入ることになつておるのでございます。
 次に警察制度の問題といたしまして、国家地方警察並びに自治警察の相互援助、或いは自治警察相互の援助、或いは又自治警察の人員の再配置等の点について御指摘があつたのでございまするが、私共はいずれも今日その必要を痛感いたしておるのであります。ただ併しこれらは警察制度の全般的の改善の問題と非常に関係がありまするので、他の問題と一括いたしまして現在鋭意研究いたしておる次第でございます。又警察官の待遇改善につきましても政府といたしましては常に努力をいたしております。
 最後に青少年の犯罪、特に風俗犯等の増加の傾向につきましては、私共も誠に遺憾に堪えない次第に存ずるのでございます。これが対策といたしましては、單に取締の面からのみではなく、文教の振興、社会風俗の改善等にも待つところが少くないと存ずるのでありまするが、取締面といたしましては、犯罪をする少年或いは犯罪の虞れのある少年を成るべく早期に発見いたし、これを関係機関に通知、通告いたしまして、それぞれ適切な措置をとることが必要でございまして、これがためには、警察、検察等の機関の陣容を整備いたし、遺憾なきを期して鋭意努力をいたしておるのでございます。明年一月一日より満二十歳以下の青少年に対しまして、全面的に少年法を適用することと相成つたのでありますが、現在の青少年の犯罪の状況に鑑みまして、裁判所に対しましては、この新法の運用上治安の維持に欠くるところのないように強く要望をいたしておるのでございます。尚、青少年の健全な保護育成のためには、やはり一般の協力が必要であり、殊に悪影響を與えるところの文書その他不良な社会環境をできるだけ除去するということが最も必要でございますので、取締面からいたしましても努力をいたしておるのみならず、今後におきましても引続き努力いたしたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(天野貞祐君) 青少年の不良化ということにつきましては、只今おつしやいましたように、私も非常に遺憾なことだと思い、日本の将来に対しても非常に心配でならないことだと考えております。それにつきましては、内閣のほうに中央青少年問題対策審議会というものがありますが、その審議会によつて得ました成果を、これを実行するため、文部省内にも書少年教護分科審議会というものを作りまして、そこで、どういうふうにしてやるかということを研究いたし、そして学校教育と社会教育と協力して、そして、この不良化の防止ということを考えております。で、例えば学校に関しましては、子供を個人的に指導するとか、又、長期欠席をしておる子供、又就学しない者、そういう者を厳密に調査いたしまして、そうしてその子供達を教育的に指導するというようなことを考えると同時に、又社会的にはPTAとか婦人団体というものの力を借りまして、そういう子供の父兄の指導に当るとか、或いは又この文化財の方面の影響に鑑みまして、映画とか或いは紙芝居とか書籍とか、そういうものの改良ということを奨励援助するとか、又、青少年の指導者講習会というものを催しまして、その指導者を育成して、その指導者を中心にした諸団体が、できるだけ健全な思想を持ち、又公共に奉仕するというような考えを抱くようにこれを指導するとか、そういうさまざまな対策をいたしております。けれども併しこの不良化ということの根抵をたずねますと、やはりこれは社会にあるのであつて、だから国民がすべて経済的な安定を持つて社会が安定するということが重大であると共に、又国民が思想的に安定するということが又非常な重大なことだと私は考えております。そういう考えにつきまして私の考えますことは、従来日本には本当の意味で個人とか人格とかいう自覚が十分に発達していない。その発達していないところへ持つて来て、戦争中全体主義というようなものが力を得て、個人とか人格とかいうようなことを抑圧してしまつた。それでありますから、戦後にはその反動として、非常に強くただ個人的な慾望とか、個人的なわがままとか、そういうようなものだけを主張して国家とか社会とかいうものを更に知らない。そういう自覚がないということが起つて来たのであります。でありますから、私はこの際そういう不健全な思想を矯めて、本当の意味における国家思想、本当の意味における世界と国家の関係を自覚するというようなことをさせたいと思つておるわけであります。私が最近国家観念を養うというようなことに対して(「簡単簡単」と呼ぶ者あり)世間では何か古い国家主義を主張するように言う人がありますが、私も思想界の末席に連なる者として、そういうような考えは毛頭持つておりません。本当の意味において国民に国家観念を持たせ、責任のある国民として生きて行くというようにして、社会を健康にしようと思つております。それが即ち又青少年の不良化防止ということに重大な貢献をすることを期待しておるものであります。お答えいたします。(拍手)、「吉田内閣の政策が悪いからじやないか」「民生が安定していないじやないか、それをはつきりしろ」「民生はどこに安定しているか、してないからこういうことになるんじやないか」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣黒川武雄君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(黒川武雄君) 只今御質疑のありました青少年不良化防止問題につきましては、過般内閣に青少年問題協議会が設置され、関係各省の緊密な連繋の下に対策を進めております。厚生省といたしましては、兒童厚生施設、兒童相談所等の整備、生活扶助教育扶助の支給、児童文化財の推薦等に努めて下良化防止に努めますと共に、不良化した者の補導保護につきましては、教護院、精神薄弱兒施設等の施設運営を強化いたしつつあるのでございます。尚、兒童福祉司その他関係職員の指導訓練に力をいたしまして、所期の効果を攻めるよう努力しておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(池田勇人君) 地方財政平衡交付金につきましての御質問でございましたのでありまするが、私は補正予算を編成いたしますに当りまして、先ず第一に地方の財政状況を検討する必要があると考えまして、去る七月の中旬に大蔵省より二十四年度の地方財政の状況の調査を御報告願うことに各府県知事に出したのであります。その後、調査がなかなかまとまりません。八月の末に予算を締切るときに十八府県が集まつたような状態であります。その後におきまして昭和二十五年度の各府県の財政状況がどうであろうかということを調査したのでありまするが、これも分りません。従いまして平衡交付金をどういうふうにしていいか非常に迷つたのでありまするが、大体の状況は、府県が財政牧人において可なり困難であり、市村町よりも府県が苦しいということが分つたのであります。従いまして府県費負担のほうで何とか考えようというので当初予算に盛つたのが、小学校即ち義務教育費の職員のペース・アツプの半額分と、そうして昨年家出しました小学校の先生等に対しまする半ヶ月分給與の七億二千七百万円、これを組んでおつたのであります。その後、各府県当局の話も承わりますし、又財政委員会の調査も見まして、大体今年度におきましては地方の歳出の増は、起債の増加と、私が当初考えておりました平衡交付金の増額、今少しく殖やそうという方針の下に検討いたしまして三十五億円と出したのであります。三十五億円の根拠は別の機会に申上げまするが、大体において起債で賄う以外の方法として地方財政委員会から大蔵省へお持ちになりましたのは百七十三億であつたのであります。これは一ヶ月分の年末賞與という計算で行つております。又経費の節約は大体七百九十九億円の物件費、人件費の五%、三十九億数千万円、こういうような恰好になつておるのでありまするが、私の所では一ヶ月分の給與は半ヶ月分になりましたし、又災害救助費は外の予算で出しますし、又平衡交付金決定後の法令に基きます給與も計算し、又今回の補正予算によりまして当然地方にかかつて来る分も計算いたしまして、大体三十五億円程度を増額すれば賄つて行けるのじやないかという考えになつたのであります。勿論平衡交付金の増額は我々もいたしたいのでありますが、何分にも御承知の通りの国の財政の状況でもありますし、文地方のほうにおきましてできるだけ収入を早期に確保して頂くならば、即ち税牧人を早く取つて頂くようになりますれば、そうして又片一方で、できるだけ節約をして頂けるならば、何とかやつて行けるのじやないかと考えておるのであります。而して只今大蔵大臣は地方税の三百億円の減税を公約……公約ではございません、三百億円の減税をするというふうなことでございましたが、私は地方財政につきましてどうこうと言つたことはないのでございます。尚、地方費に五百億円の冗費がある、要らない金があるというふうなことは、私は考えたこともございません。とにかく中央にいたしましても地方にいたしましても、国民の利害休戚に非常に影響するのでありまするから、中央地方一体となつて財政の切盛りをして行かなければならぬというのが私の念願であるのであります。(拍手)
   〔国務大臣岡野清豪君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(岡野清豪君) 岡本議員の御質問にお答え申上げます。
 平衡交付金の問題につきましては只今大蔵大臣が申述べました通りでございます。地方といたしましては八十三億の平衡交付金の要求に対して、四割二分三厘に当ります三十五億を今度交付されるということになつた次第であります。これは中央の財政事情から止むを得ないことと存じます。先般皆様方の御協賛を得ましてできました地方税法も、まだその徴税が或いは十分とは言えないというような情勢にもあると存じますから、今後ますます徴税に力を入れて税牧人を図り、同時に歳出の節減並びに或いは繰延べによるようなことも始末をしまして、この地方財政を切盛りして行きたい、こう存じます。お答え申上げます。(拍手)
#18
○議長(佐藤尚武君) 議事の都合により午後一時半まで休憩いたします。
   午後零時十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十五分開議
#19
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。小川久義君。
   〔小川久義君登壇、拍手〕
#20
○小川久義君 国民民主党を代表して政府の施政方針に対して質問いたします。私は過去第五、第六、第七国会の三回に亘つて質問をいたしたのでありますが、その様子から考えまして、理論を抜きにいたしまして、率直に具体的な問題に対してお伺いいたしたいと思います。
 先ず、先程廣川農林大臣がおつしやいましたが、この臨時国会は健全なる農政を確立して日本再建の基盤を築くべきである。従つて我々は救農国会と呼び、政府又興農国会と称していたのであるが、蓋をはぐつて見ると、補正予算にも提出予定の法案にもその何物もない。誠に遺憾である。政府は独断的に経済は安定したと言つているが、そうではない。(「本当だ」と呼ぶ者あり)現今の農村の実情がお分りにならないのではないかと思う。(「分らない」と呼ぶ者あり)長らくの農村軽視の施政のために今や農村は疲弊のどん底に陷れらている。(「そうだ」と呼ぶ者あり)加うるに相次ぐ風水害、浪害等のため、農地又は農業施設などの被害は極めて甚大である。而して農産物の被害による収入激減と不当なる重税のため、農耕に欠くべからざる牛馬を手離し、甚だしきはかわいい娘さえも金に換えている涙ぐましい実情が分らないのであるか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)又中小企業者や一般勤労大衆が如何に惨めな窮状に追い込められているか。寒空を控えて金融の確立と適正なる給與の制定を叫び続けているのが分らないか。これらを救う何ものも見当らない。ただ一部あるとしても誠に不満足なものである。この点に対して首相並びに関係大臣は如何ようにお考えであるかを承りたい。
 次に主要食糧の統制について伺いたい。御承知の通り我が国においては年年少くとも二千万石の食糧が不足である。然るに政府は何ら施すところもなく、来年度からは麦類の統制を解き、延いては米の統制をも廃するがごとき状況にあることは極めて危険なことである。少くとも食糧の自給自足の態勢を確立して然る後考慮すべきだと思うが、御所信を承りたい。併せて一割増産の具体的な方策も承りたい。
 次に農業協同組合の育成強化について伺います。この問題は申すまでもなく十六原則に明記されておるところであるが、何ら育成強化の途が立てられていない。却つて弱体化に導かれつつあることは、これ又遺憾である。主食の取扱手数料、保管料を見ても、物資の値上り、労賃の上昇に逆行して極度に引下げ、農協自体の経営すら窮地に陷れておる。又現在の農協は殆んど多額の赤字に悩んでおるが、この赤字は、曾て過れる国策の犠牲になつた旧農業会の赤字を背負い込んだものが多数である。この赤字は当然国家が補填すべきである。農協の育成強化に対して具体的な方針と赤字補填について、政府の所信を承わりたい。
 次に農村金融について伺いたいと思います。農業は特殊な業体であつて、金融の途が必要になつたのは、農産物の価格が安くて農家の收支が相伴わないからである。特に政府買入の米麦の価格が適正でなかつたからであると思う。従つて政府は責任を以て速かに農地を担保とする長期で而も低利の金融の途を立てるべきであると思う。かよに申上げると、農地は担保力がないとお考えになるかも知れませんが、相続税、固定資産税においては、すでに一反歩数万円に見積つて徴税されている。この実情から見ても速かに再生産に事欠かないよう金融の確立を実施されたい。併せて最近伝えられておる農漁業の長期資金に対する公庫の代案がありましたら詳細にお示し願いたい。
 次に米価について伺います。米価はいつ決めるか、如何程かを承わりたい。言うまでもなく物価は生産費に利潤を加えて決めるものであり、又物の売買はその値段によつて決まることは言うまでもない。然るに米は国が買入れる。国家という絶対な力を以て生産費を無視して勝手なときに、勝手な値段を決めておる。法律を以て殆んど強制的に売らせることは極めて不当であると思う。物に早場地帯ではすでに八月から供出しておるが、政府は一方的に暫定価格と称して内拂いをしておる。その価格は昨年よりも安い、その暫定価格と確定価格とは相当の差があると思う。その差額には政府の貸付金の利息と同額の金利を支拂うことが当然であると思うが、併せて政府の所見を伺いたい。
 次に農業中小企業に対する課税について伺います。国民の大多数は重税に悩んでおることは言うまでもない事実であるが、特に農業と中小企業、中小商工業については殆んど一方的に過大な收益の査定をして、更正決定による課税をされておるところに矛盾と無理があると思う。この更正決定に対して審議会のような機関を作つて民主的に実態を究めて決定するというお考えがないかどうかを承わりたい。一例を申上げると、私の村に米三十一石二斗を出した農家で、米の代金九万三千六百円、外にきしたる收益もないにも拘らず十六万五千円の更正決定書が来て泣いておる者がある。このような者が各所にあまたあることは御存じだと思う。又収益の数倍に当る更正決定を受けて破産に瀕している中小企業者や中小商工業者が数え切れない程ある厳然たる事実を十分把握して頂きたい。大蔵大臣が減税に対して並々ならん御苦労をしておいでになることは結構なことでありますが、適正なる課税と対しても一層の御努力を願いたい。この是正に対しての所信を承わりたい。
 次に災害補償法の改正について伺いたい。現行の同法によれば、災害があればある程支拂保険金に不足が生じて、農業共済組合連合会などが事業費の不足のため借金とその利息によつて倒壊の寸前にあるが、政府はこの不足の全額を補うよう同法の改正をすることが当然でみると思うが、所信を承わりたい。
 次に公共事業費並びに災害対策について伺います。政府は二十五年度予算に関し、総合予算の均衡を確保し、経済安定を堅持することを第一の狙いとしているが、一方経済の再建を促進するための建設的支出において相当大幅な増額が計上されており、二十五年度は経済再建への第一歩を踏み出すこととなつていると謳い、更に公共事業費について、特に二十五年度中に発生する災害に備えて百億円を留保した外、一般事業においても治水事業に重点を置いたと称しているのであるが、その成果は如何ようになつておるか承わりたい。政府の説明によれば二十五年度初頭において、二十三年以前の災害の復旧に要する額七百億、二十四年度発生の災害復旧に要する額約九百億、計千六百億円、この千六百億円の復旧を要する額に対して、政府は二十五年度三百七十億を計上し、更に二十五年度発生の災害に備えるため百億を充てたのであつたが、二十五年度四月以来発生した災害は、土木災害の査定額のみですでに五百八十八億に達しているのである。殊にジエーン台風による工場被害、或いはキジア台風による農業被害等を考慮に入れるとき、(「頑張つて、力を入れてやれ」と呼ぶ者あり)有形無形の被害は驚くべき巨額に達するのである。かくのごとき事態に対して政府は如何なる考えを持つておられるか。補正予算の四十一億を以て事態を糊塗せられんとするがごときは甚だ遺憾である。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)巷間災害予算は取り易い、改修予算は取りにくいと言われておる。特に維持費に至つては、道路以外は国庫補助の途すら開いていない状態である。この取り易さに便乗して災害復旧の根本策を考えずに、糊塗策に終つているのではないかと危惧されるのである。又根本策として治水に重点を置いていると称されているが、果してどうであるかを承わりたい。我が国は水力発電が豊かであると称しているのであるが、その水力発電が危機に見舞われかかつていることを政府は御存じであるか。日発の水力発電所において台風被害の復旧費がその維持費に比して年々増大しつつある事実、停電電力量のうち台風時の停電が非常に大きい数字を示している事実、更に砂防工事をやらぬためダムの埋没の甚だしい状態等を考慮するときは、正に我が国の水力発電は非常に憂慮すべき状態にあると考えられるのである。政府は二十五年度初頭、経済再建を促進するための建設的支出を増大し、経済再建への一歩を踏み出す、と称したのであるが、私は正に事態は逆であると思う。これについて政府の所信を承わりたい。殊に一言したいことは、建設省所管のみの二十四年度までの災害の復旧は四九%しか完成せず、五百億円未完成である。又本年は三四%の約百八十億円余しかできていない。未完成は実に三百六十億円である。両方合せて八百六十億円である。然るに大蔵大臣が関係省の要求に対し余りにも重圧を加えて、災害復旧と罹災者の救済を考えておいでにならんのではないかと思う。特に大蔵大臣の所信を承りたい。
 最後に、すでに羽生君からお尋ねがありましたが、重ねて給與について承りたい。政府は漸くにして給與の改訂を実施に移そうとしているが、まだ不足であると思う。又この改正に伴うて地方公務員にも及ぶ措置をとるべきであると思うが、その点を承りたい。而も上に厚く下に薄いようである。適当に調和を図る必要があると思うが、如何なる調整をお考えであるか。基準ベース以下に対して課税しているときは矛盾であると思う。少くとも基準ペースは最低賃金である。最低保障をすべき金である。それに税金をかければ食えないのは当然である。従つて基準べース以下に対しては税金を賦課しないことが適当であると思うが、関係大臣の所信を承りたい。問、地域給に対しては何か変動があると聞くが、一例を申上げると、五分減らすという話である。僅かの給料を上げて地域給は五分減されて、実質的に手に入る金ば左程の金じやなくなる。かような点に対して具体的に承りたい。又裁判官と裁判所職員はこの改訂に際して他の一般職の給與と均衡が取れんように聞くが、その実態を詳細にお示し願いたいのであります。これを以て私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(吉田茂君) お尋ねの問題につきましては、主管大臣から御答弁いたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
   〔国務大臣廣川弘禪君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(廣川弘禪君) お答え申上げます。
 農村の收入の低下いたしておることは事実でございます。それがために我我といたしましては、来年度予算、補正予算等を通じましてこの対策を練つておるところであるのでございます。一割増産の具体的なことを言えということでありますが、この農業は單にここに取上げて、一つ一つ分解して行つて端的にこれを取上げてお話申上げることができませんので、すべての問題に関連いたしまするのでございます。でありまするから、政府といたしましては農地の改良から始まりまして、治山、治水、種籾の改良、あらゆる方面に亘つて一割増産のこの裏付をいたすようにいたしておるような次第であるのでございます。而もこの一割増産を通じて農家の所得の増加を図るように心掛けておるようなわけであります。
 次は、農業協同組合の育成に関してのお尋ねでありましたが、農業協同組合が非常に難関に直面いたしておることは、これは我々もよく承知いたしておるのであります。そこで私達といたしましては、この農業協同組合を本当に監察いたし、又監査いたしましてこの基礎資料を作りまして、でき得れば……でなく来通常国会には農業協同組合育成に関する法律案を提出いたしまして、金利の面或いはその他について十分育成して参りたいと思う次第であります。農業会から引受けました資産の固定いたしておるものをさようにいたしまして、これを融通化するように努めて参りたいと思つておる次第ございます。
 次は、農村金融の問題でありまするが、これは先程も申上げました通り、農村の金融は終戰以来殆んど顧られなくなつておるのでありますが、戰前におきましては勧業銀行、或いはその前には農工銀行等の特殊な銀行等がございまして、農村金融に非常に貢献いたしておつたのでありますが、終戰後におきましてはそれが閉されまして、而も市中銀行にも相手にされなかつたのであります。そこで我々といたしましては、今回来国会におきましてはこの農村の長期金融を是非実現する考えでありまして、案もほぼでき上つておりまするが、まだ発表の域に達していないのであります。又中短と申しましようか、中期、短期資金につきましては、農林中央金庫をこれを改組いたしまして、そしてもつと農村の金融に貢献するようにいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
 それから次は米価のことでございまするが、米価は今までは全く御指摘の通り非常に安かつたということは我々も認めるのであります。併し今回から我々はこの米価について相当考えまして、相当幅をつけて上げたいと考えておるのであります。価格の決定は今明日中にでき得ると私は承知いたしております。米の買入価格の差額についてのお尋ねでございまするが、農林中金を通しての買入れのものにつきましては御説のような処置が講ぜられておるのでありますが、日銀を通してやつておる分につきましては、日銀が資金の運用を行い得ない関係上、遡及振替が実施し得ないような関係になつておるのが実情でございます。私の答弁はこれだけであります。(拍手)
   〔国務大臣他出勇人君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(池田勇人君) 農協の問題、農林、水産の金融の問題につきましては廣川農林大臣よりお答えした通りであります。
 次は課税の不公平の問題がございましたが、これは課税に不公平があつては相成らんので、我々はできるだけの課税をいたしておるのであります。更正決定の問題は、申告が間違つておつたり或いは申告がない場合に更正決定をいたしておるのであります。課税漏れのないように、又課税に無理が行かないように従来も努めておりましたが、今後も一層努力いたしたいと考えております。尚、農業方面につきましては、特に農業団体と連絡をいたしまして、無理の行かないように、割に外よりも適切に行つていると私は承知いたしております。
 次に農業再保険のことでございまするが、当初十億円見込んでおりましたのが、本年の麦の災害等によりまして、補正予算で八億八千七百万円を計上いたしております。従いまして本年度の農業災害再保険につきましてはこれで支拂い得ると思います。来年度におきましては、或る程度の増加を初めからして行きたい、こう考えております。
 次に給與ペースでございまするが、今回の給與ペースはいずれ御審議を願うことに相成つておりまするが、人事院の意見を尊重いたしまして、それに副うようにいたしておるのであります。
 第一の問題は、平均千円を上げますのに、下のほうに薄く上に厚い、こういうことはございまするが、人事院のほうもそういうふうになつております。政府が今考えておりますのは、人事院よりもちよつと上の上げ方が多くなつております。大体一番下の階級に対しまして上の次官級のところが七・三倍から八倍くらいに政府の案はなつておると思います。併し戰前とか戰後の時に比べますと、戰前は二十倍或いは十五倍というふうな状態であつたのであります。私は八倍ぐらいが適当ではないかと考えております。
 次に非常に低い人は課税をするのは無理じやないか、併し課税最低限というものは、何も最低生活を保証するというので基礎控除等を置いているわけではございません。課税最低限の人をどのくらいにお考えになりまするか、これは二千七、八百円、三千円の人は一割五分控除をいたしまして、そうして、それから三万円を控除いたしまするから、下のほうには今度の所得税でも過重にはならぬと考えております。
 尚、給與の地域差でございまするが、今は特、甲、乙と、三割、二割、一割と相成つております。人事院の勧告ではこれを五階段に分けて、二割、三割五分、二割、一割五分、一割、こう五段階になつておりますが、政府で考えておりますのは、三割を二割五分に、二割を一割五分に、一割を五分というように三段階に差向き行こうと思うのであります。これによつて下がりました金額は、一般の本俸が上つて来るのでありまして、全体としては動かないと思いますが、人事院は、やはり今の三段階ではよくない、変える考えを持つておられますので、政府の方もそれに従つて行こうと思うのであります。
 尚、裁判官の給與につきまして今お話ございましたが、只今検討中であります。実は裁判官のほうは一般職員よりも相当高くなつておるのであります。大体一般職員の七割増くらいになつておりましようか、そこで今後千円上げますときに同じ割台で行くかどうかということが問題であります。例を以て申し上げますると、大学を出て十二、三年の人が裁判官だつたら一万八千円の俸給であります。併しこれは一般官吏だつたら一万八千円に対しましては九千八百円、十二、三年経つて課長になつている人が一万円程度、こうなつておりますので、相当差があるのであります。一般職員を上げた時にそれと同じ割合に裁判官を上げますと、相当裁判官が実質的に上げ過ぎるというのが議論の的になつております。この点は只今関係当局で検討を加えておるのであります。いずれ又御審議を願うことに相成ると思います。
   〔国務大臣増田甲子七君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(増田甲子七君) 小川さんにお答えを申上げます。
 近来台風被害その他豪雨のために災害が非常に頻発いたしておることにつきましては、災害復旧関係の主務大臣として非常に恐縮に存じておる次第でございます。尤もこれは小川さんのよく御承知の通り、戰時中の濫伐、過伐、或いはあなたの特に御指摘になつた災害防除施設の維持修繕等が軍事費等に喰われておりまして、いわゆる不用不急の事業として、我々は国土の保護なり、或いは資源の開発は最も急務と考えておりますが、当時はいわゆる不用不急の事業としてあと廻しにされておつたことに胚胎いたしておる、こう存じておる次第であります。そこで只今の予算は、我々自身も不満足に思う次第でありますが、併しながら敗戰の今日、我が国の財政経済力がまだ復活していない状況でございますので、現在の財政力を以てしては、本年度の百億の予備費と、それから皆様に議決を願わんとする四十一億、合計百四十一億を以て満足いたさなければならぬ、こう考えておる次第であります。尤も御指摘の通り、我々は災害防除施設の維持修繕等にもつと平素力を入れておつたならば、災害の予防は期待し得るという御調に対しては、私も全然同感でございます。金額は比較的零細ではございますが、この方面につきましても我々主務省として特に力を入れております。のみならず、災害防除施設の増設が最も急務である。御指摘のことく治水或いは治山というようなことは政治の相当重要部分を占めておると、こう考えております。治水の完璧を期し得たならば、これに伴つて利水ということも又我々の期待通り期待し得ると、こう考えておる次第であります。例えば水力資源の開発にいたしましても、農業用利水にしても、工業用水にいたしましても、或いは水道用水にいたしましても、河を山の上から港の末に至るまで、国若しくは公共団体の営造物として健全な状態に置くこと、即ち治水の完璧を期し得たならば、今日大きな問題となつておる国土の総合開発も期待し得ると、こう考えて、財政力の許す限り我々は力を入れたいと存じておる次第であります。(拍手)
   〔政府委員浅井清君登壇・拍手〕
#25
○政府委員(浅井清君) 地域給の問題についてお答えを申上げます。
 地域給の減額についてのお尋ねがございましたが、御承知のごとく物価はどこもここも高くなつておりまして、物価の地方差は少くなつて来た。従つて地域給で操作し得る範囲は三割もなく、せいぜい二割五分から二割ということである。それから地域給を減額いたすのでございますからして、地域給を減らしますることは、相当程度本俸を引上げることを前提として考えておる次第でございます。
 次に裁判所職員についてのお尋ねがございましたが、裁判官については大蔵大臣から御答弁がございましたが、裁判所職員と申しますると、裁判官を除きました一般職の職員の俸給が低きに過ぎるという御趣旨ではないかと存じますので、一つ附け足したいと思います。一般職に属します裁判所職員の給與が一般の政府職員の給與より下廻つておることは事実でございまするが、これは裁判所職員の平均年齢が最近若くなりまして、概数を申上げますと、一般職の職員の平均年齢が三十歳でありますのに対しまして、裁判所職員は二十七歳、十六歳以上二十五歳までの職員が一般官庁では四八%余ございまするのに対しまして、裁判所の方は六三%、従いまして扶養家族が、一般官庁の平均が一人六七となつておりますのに対しまして、裁判所の方は一人となつておる次第で、このようなことから総平均におきまして裁判所職員の給與が下廻つておるかと存じております。これは決して待遇の不公正を意味するものではございませんでして、尚、最近裁判所書記官の号俸調整等をいたしまして優遇に努めておる次第でございまするから、御了承願いたいと存じます。
 尚、給與ベースそのものに関しましては、いずれ給與法の改正案が提出せられました曉におきまして人事院の所信を申述べたいと存じます。(拍手)
   〔小川久義君発言の許可を求む〕
#26
○副議長(三木治朗君) 小川久義君。
#27
○小川久義君 先程お尋ねいたしました中に、大蔵大臣の公共事業費と災害復旧に対するお答えがなかつたように思いますが、特にお答えを願います。
   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#28
○国務大臣(池田勇人君) 公共事業費につきましては、財政経済の状況等を考えまして、できるだけ重点を置いて考えておるのであります。今年度におきましても昨年度に比べまして相当の増額をいたし、尚、補正予算でも只今申上げた通りであるのであります。而して公共事業費のうちにおきましてどれだけの災害復旧費を認めるか、或いは又災害防除費をどれだけ見るかということにつきましては、安本長官その他の関係大臣と考慮しておりますが、これは総理の施政方針演説或いは私の財政演説にも申上げております通りに、いろいろな点を勘案しまして、できるだけ重要性を認めて編成しておるのであります。
#29
○副議長(三木治朗君) 松原一彦君。
   〔松原一彦君登壇、拍手〕
#30
○松原一彦君 私は第一クラブに所属しておりますが、クラブの性質上代表ではございません。同意を得まして私の所信を私の責任において申述べようと思います。
 私は総理大臣にお尋ねを申したいのでありますが、この民主主義の政治のあり方は、初めから結論を決めたものが喧嘩をし合うのではなくて、熟議懇談によつて相手方に納得して貰うものであり、総智を集めて妥当な結論を出すのが正しいと思つております。従つてもう最初から結論付けてしまつて置いて、そうして相手の言うことは一切耳に入れないで突ばねてしまうというようなことでは困ると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)どうか吉田首相におきましても、私は決して御無礼なことは申上げないつもりでおります。懇ろにお尋ねを申しますから、どうか蹴飛ばさないで(笑声)御親切に一つお答えを願いたいのであります。
 私がお尋ね申そうと思いますることは、実はどうもこの演壇の拵え方が熟議懇談に適しておりません。もつとやさしく差向いてお話を申した方がいいと思うのでありますが、どうもこれは民主的にできておらないで、お尋ね申す人に尻を向けてお話をしなければならないようなこの構造は、将来お互いにこれは考え直したいと思う。政府は高い所から君臨し、又下のほうから議員が申上げるといつたようなことでも悪いし、この演壇の上に立ちはだかつて大きな声を出すことも私は面白くないと思う。まあ将来これはこういうふうな形でなくして、本当に懇談のできる形式、できるならば吉田首相にも自由党の真中に降りて来て坐つて頂いてお話がしいいのでありますが、これは将来一つお互いに考えたいと思う。
 今日私がお尋ね申上げたいと思うことは、第一は外交、特に講和に対するところのお心構え、又その御信念についてであります。私の考えるところによりますと、これはかような敗戰国が講和に臨むのでありますから、勿論講和会議の席上で対等にものの申されないことは分つております。又予め総理大臣といつたような責任の地位にあらるる方が、いろいろなことをば御自身の即断で言われることもこれはよろしくない。常に首相が講和は機微を要するものである、自分の多年の経験によつてこういうことには習熟している、よく知つているが故に言うのであるが、どうか外交に関する限りは愼重にあつて欲しいと、こう常に言われていることに対しましては私は賛成であります。併し今回の講和会議はその対象とするところは我が八千万の国民であります。政府に対象の講和会議ではないと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて講和会議に際して全八千方の国民はぎりぎりの所でどういうことを期待し熱望しているかということを、何かの機会においてはつきりと連合国側のほうに知つて置いて貰うことは、一つは今日まで史上前例のない程の寛容と又厚意とを以て我が国を導いて来られたところの連合国に対して尊敬を拂い、且つ信頼を捧げるところのものであつて、その国民の総意ぎりぎり国民は如何なるものを希望し如何なるものは希望しないかということを知つて置いて貰うことによつて、私は相互に非常な利益があると確信するのであります。と申しますのは、例えば日本の再軍備の問題のごとき、ちらほらとすでに起つております。これは間違いのないどこかから起つているに相違ありませんが、恐らく連合国側のほうにおきましてもこういう重大な問題に対しましては意見が分れると思います。意見が分れた場合、凡そそれが正反対と仮定しまするというと、その最終の決定は、それは日本民族が本当に望んでいるのか望んでいないのかということが、大きな決定の動機となると思う。これは私は間違いのないことであろうと思う。由来、昔のような懲罰主義ではない、今日は敗戰国に対しましての民族の自決を許す場合も多いのであります。こういう場合の決定が、日本国民の本当の期待することをば知つておらるることによつて先方にも好都合であり、我々民族にとりましても大きな望みが嘱せらるることになりまするならば、私は何かの方法において、あらゆる機会においてこの日本国民の総意の結集を連合国側の方々に知つて置いて頂きたいと思う。こういう意味におきまして、私は首相が今日午前中、国民の意思を決して曲げはしない、国民の希望するところは述べてよろしい、抑えた覚えはない、外交は愼重にしなければならないけれどもが、国民の希望は決して抑制しないからあらゆる機会に述べろ、こう言われたことに対しては、私は誠にその通りだと思います。我が意を得たるものでありますが、併し国民の希望と申しましても、かような占領治下にありましては我がまま勝手なことは申されません。これは一つの限度があります。又国内におきましても我々は憲法を持つております。この憲法に背くようなことは、これは希望としても申出されない筈であります。この制約條件の下においての希望でなければ、これは正しい国民の希望とは申されないと思います。遠慮なく言えと言わるるならば申しますが、併し私の今日まで折々耳に入れますところによりまするというと、首相は大変慎重に御用心なさつていらつしやるようでありますけれどもが、首相の身辺若しくは與党の方々の間から、私のこれはどうかと思うようなことが沢山耳に入つて参つておるのであります。例えばほうぼうの演説などを聞きましても、警察予備隊、あれは国際連合軍の国際警察軍になるものであるとか、或いはやがては朝鮮に進出して、その防備に当るものであるとかいつたようなことが、不謹愼にも言い散らされておる。これは憲法においても実は疑義があるのであります。勿論疑義があります。国際連合に我々が協力するということは、これは差支えありますまい。併しながら平和保障を受けることにおいて、国際連合に、若し大きな我々に対する義務が生ずるということになりまするというと、これは今日の憲法ではそのままには受け容れ難いという疑義がすでに学者の間にも起つております。今日の憲法のある間にさような一方的な不謹愼なことが指導せられるとか或いは言い触らされるとかいうことに対しては、慎重を御希望なさる首相においても、このままでよいでありましよか、どうでありましようか。又日本の憲法の本質から申せば、私は一方的に対立的な立場には立たれないようにできておるものであると思うのであります。併したびたび問題になつておりまするいわゆる外交白書について見ましても、首相の身辺から相当踏み込んだ御指導があつておる。又巷間、私はよく知らないのでございますけれどもが、新聞などに散見するところによりまするというと、私共の信頼する佐藤議長も折々さようなことをお漏らしになつておるのではないかという私は疑いを持つのであります。これは余程御用心して頂かないというと困つたことになると思います。私は首相がかような点につきまして、本当に日本の民族が何を求め、何を嫌つておるかといつたようなこと、いわゆる講和会議に対するところの大きな期待につきまして、念を入れて、何かの資料によつて、あらゆる機会にお調べになつていらつしやるであろうかどうかということを懸念するのであります。ダレス顧問は先般日本に来られましたが、あの忙しい間に各層の要人に面会して、日本民族の真に求めるものを打診して帰つておる。いろいろな方面からその材料を集めて帰られたと私は聞いております。尚、進んでソ連側までもその打診を進めて慎重に準備をしておられるように聞いておりますが、今吉田内閣におきましては、何かそういう点で、本当に虚心坦懐に日本民族の期待を聞いておられるかどうかということについては私は若干不安がある。或いは首相の独断で以て、もうこれで分つておるといつたようなことがあるのではありますまいか。(拍手)私はこの点に大きな不安を持つのであります。外交のことは俺に任せて置けとおつしやるお気持がどこかにあるのではないかと思う。私はそれであつてはならないと思います。そこで今朝来の首相のお気持も多少私に分りましたから、国民の意見は幾らでも言え、聞こうと言われるのに対しまして、この壇上から私は真の国民の総意、通念と思うものをここに申述べて、首相の所見をお聞かせ頂きたいと思うのであります。
 その第一は、今回日本国民が求めておるものは單なる独立ではない。完全な自主権を持つた独立であつて、いろいろな紐の付いた條件附の独立ではない。これが第一の国民の要求だと私は信ずるのであります。(拍手)どうこうしなければ独立は許さぬとか、或いはどうこういう條件の下に日本の独立を許すとかいうようなことは勿論あるでありましよう。併しながらその独立の最終の決定線は、独立した後には條件がない、そうして国内のこと、日本国として別国の間に伍する上に、その行動はすべて国民の自主権によつてこれが決定せられるところの真の独立であつて欲しい。これが私は全国民の要求であると思うのでございまするが、同僚の諸君は何とお考えでございましようか。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)いわゆる独立の名はあるけれどもが、條件附の独立であつて、半属国であるとか、いわゆる植民地的な独立国であつてはならないのであります。かような意味におきまして考えますときに、いろいろ聞えて参りますことにはどうも面白くないものがある。先刻、首相は何ら未だ曾て密約したことはないと抑せられるので、私は安心はいたしまするものの、どうも首相の身辺の方々から巷間にそれとなく伝えられるところでは、いずれ再軍備は必至であるとか、或いはどうこういう條件は必ず天降つて来るとかいうような臆測が撒き散らされておる。ここに不安の種があのであります。私は日本国民は一日も早く独立の講和に達したいとは思いまするけれどもが、併しそんなに急いでまで、どんな條件でもいいから独立したいというのではございません。多少の時間がかかろうとも本当の独立が得たいのであります。真の完全なる独立の日を私共は期待しておるのであります。これに対しまして首相の御所見を伺いたい。
 又第二に国民の総意と信じますることに、憲法を本当にこのまま尊重してくれるかどうかということであります。勿論憲法も我々国民が作つたものでありますから、国民によつて変えないとは私は申されません。枝葉末節の変更は将来においてもあると思いますが、あの憲法の前文と第二章とは、何と申しましても、日本国憲法の世界に誇る史上未だ曾てなかつたところの独特のものであるのであります。ここに日本国憲法の特徴がある。このことにつましても、又この憲法の成立に当りましても、これは並々ならぬ日本国民の苦心の末にできましたものであることは、すでに首相も御承知の通り。併し私は念のために同僚諸君の前で、この憲法の成立について今一度顧みられたいと思うのであります。昭和二十一年六月二十日、時の天皇の御名の下に、内閣総理大臣吉田茂氏が憲法の草案を最後の帝国議会に提案になつた。その提案を見るというと、誠に異色のある憲法であり、いろいろな非難がここに起つて参つたのであります。かような夢のような空想のことが果してできるのかどうか。史上未だ曾て自衛権をも捨てたような、さような憲法が行われるものではないという非難、その他いろいろな点につきまして相当に議論があつた。議論は沸騰いたした。或いはこれは向うから強制せられたのじやないといつたようなこともあつたのでありますが、併し首相はたびたびここでお答えになつた、それによりますと、この憲法は人類普遍の原理に基いて、世界恒久の平和のために我が日本国民が挺身しようとするものであつて、専制と隷属、偏狭と制圧とをば一切この地上から除き去ろうとするところのこれは最高の憲法である。かように首相はたびたびお話になつて提案せられたものであります。爾来、私共も当時衆議院におりましてこの議に参加したのでありますが、委員会を開くこと九十一回、本会議を開くこと九回、稿を改めて審議すること四回に及び、そうして前後一百十日間を費して惨澹たる苦心の末にでき上つた憲法であることは、その提案者である吉田首相、第一次吉田内閣当時の総理、とくに御承知のことであります。私は今思い起すのでありますが、昭和二十一年十月七日にこの憲法は最後の決定をいたしましたが、その前日、六日にこの演壇で、ここで私共の同郷の大先輩木下謙次郎氏は最後の討論に立ちました。これは当時與党の長老であつたのでありますが、この木下氏がかようなことを申された。この憲法はいろいろな非難もあるけれども、これは人類のために、いや、国民として、国家としての最高の規範を示すものであつて、ただ一片の法律ではない。これは国の聖典であり、バイブルである。この聖典であり、バイブルとも言うべき憲法ができたことによつて、若し世界に新しい光明を投ずることができるならば、それは我々誠に光栄の至りであると思う。三千年来求めて止まなかつたところの恒久の平和がここに糸口を切ることができるとするならば、これに越した仕合せはない。若し世界の各国が本当に真底から平和を求めるならば、おのおの持つところの古い憲法を破棄し去つて、我が日本国憲法を採用せよ。然らば世界の平和は立ちどころに実現するであろう。我々日本民族は戰争に敗れたけれどもが、その敗れた機縁によつて、ここに史上未だ曾て試みたことのない、身を以て世界平和を指導する先頭に立つ光栄を担うことができるに至つた。何という喜びであろう。我々は今や世界平和の指導者となることができた。私はこの憲法のできたことを心から喜ぶと、原稿で卓を叩いて降壇したことを、はつきりと、この傍聴席から見て、今尚ありありとその印象を残しているのであります。木下謙次郎氏は七十八歳でありましたが、間もなく病んで死にました。私はその後に会うてその当時のことを語つて非常に喜び合つたのでありますが、それ程の誇りを持つて亡くなられたところの木下氏のことを考えましても、私は日本の憲法は独得のものであり、この独得のものであるが故にこそ、日本は私は今後安心して独立を任して貰えるところの條件を完備していると思うのであります。
 然るにも拘わらず、ややもするというと一部から日本に再軍備を許すとか許さないとかいうような声がある。許されて軍備をするというような性質のものではない筈であります。又世界の連合国その他の国々が若し日本をして再び軍備を持つような国に引戻すようなことがあるとしたならば、その人々ば私は断じて平和の誠意を持つ人ではないと思う。(拍手)それは折角ここまで進んだ日本をもう一度軍備の悪魔に戻すというような、そういう肚の中には、体には鎧を纏いながら、上に平和の衣を着た、これは偽装の悪魔であると思うのであります。(拍手)日本の中立的な立場というものは、消極的に押付けられたものじやない。詫び証文ではないのであります。この中立は、積極的に世界の国々をこの同じものに推し進めるところの積極性を持つたものであり、本当に丸界に平和を求めようとするならば、日本と同じような国が二つでき、三つでき、五つできなくちやならんのであります。(拍手)国際連合の方々が心から平和を求めておいでになることに対しましては敬意を表しまするが、我々の仲間に入るならば国際憲章に従つて共同の秩序を保つために軍備を持てとは私は恐らく言われまいと思うのでありますが、どうでありましようか。むしろ世界の平和を打ち立てるために日本りような国をこれ以上に作るための、ここに一つの標本としても、これを推し進めなくちやならないと私は考え得られるであろうことを信ずるのであります。マツカーサー元帥は御承知の通りの大きな人格の方であり、非常な寛容と指導力とを以て今日まで日本を指導しておいでになつたのは、この憲法を満足とせられてでありました。私はさように信ずる。あの憲法のできた当時にマツカーサー元帥は、これをば非常に激賞せられた。更に極東関係十三ケ国はこの憲法を承認しておるのであります。今更日本をもう一遍軍国主義の仲間入りにしようとは恐らくせられまいと思う。勿論連合国の仲間に入つて平和の保障をして貰うことができるならば、それはこの上もないことでありますけれどもが、果してこのままの憲法で連合国の憲章と一致するかどうかには疑いがあります。若し両立しない場合においては、私は須らく連合国のほうの側でその憲章を改められて、かような国が仲間入りのできるようにすべきことであると思う。(拍手)そうでなけらねば偽装であります。本当のものではございません。世間には軍備がなければ独立はできないと申す方が沢山あります。蓋しこれは俗論であります。一体インドが如何なる軍備を持つて独立したか。朝鮮がどうして独立したか。フイリピンがどうして独立したか。一番いい例がインドである。インドの指導者ガンジーは極めて貧乏人であり、極めてお人好しであつた。幾たびか英国の官憲から欺かれた。欺かれ通したけれどもが、彼はどこまでも正しいことを信じ、そうして無抵抗の抵抗を続け拔いた。インドの独立は軍備があつての独立ではない。その民族の総意が独立を要求したからであると私は確信するのであります。(拍手)今、日本が講和態勢に臨むには、その臨む準備行動は、一に日本民族が真に結束して、この姿を以てどこまでも世界の平和に貢献するために独立さして欲しいということのその熱意にかかつておると私は信ずるのでありまするが、首相はどうお考えでございましようか。
 時間がありませんから、まだ申したいことがありますが、私はこれに関連しまして内政問題を申上げたいのであります。このままの姿で、この占領治下にあつて、鉄の枠をはめられておつても尚且つこの状態である。国内の状態御覧の通り、てんやわんやのこの国内状態、これで以て平和に一体臨めるか。又首相は多数党をお持ちになつて、この講和にお臨みになり、独立の條約は自分の手でとおつしやるが、若し独立した後に今の日本のこの政党の状態で果して我々はどうなるかということに対しまして、一体御確信がおありになるであろうかと思う。これは独立した後に難儀をするのであります。これは大変な難儀であると思う。非常な苦しみが日本にはやつて来る。そこには不動の信念を持つて、俗論に迷わされないで、インド以上の難儀をしながら、ここに世界平和のための主張を貫くとところの固き決意がなけらねば、むしろこの独立は急がなくてもよろしいと思う。非常な決意がなけらねば、非常な難儀を覚悟しなければ、うつかり私は独立して、日本国民は塗炭の苦しみを見るであろうことをば心配するものであります。尚、内政に関しましては申上げたいことが沢山ありますが、これはもう時間がありませんから、いずれ官邸にでも伺いまして、ゆつくりと懇談をさして頂きたい。どうぞお許しを願いとうございます。伺うことは伺います。
 私は以上を首相にお伺いしまして、どうか短かい言葉でもよろしうございますから、蹴り飛ばさないで(拍手)ねんごろなお答えを願いたいのであります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 私の本心は、蹴り飛ばすことを以て考えの根本といたしておるのではないので、そうお思いになつては誠に遺憾に思いますから、本人はそういう考えのないことを先ず御了承を願いたいと思います。
 続いて講和問題でありますが、私は先程も申した通り、午前も申した通り、結局講和というものは国民の輿論の赴くところによつて、政府がその国民の輿論の動向を察し、帰趨を察して行くべきものであるということを申して、政府として、はた又私が私一人に任しておけなどというような僭越なことは申した覚えは毛頭ないのであります。どうぞ諸君におかれても、お話の通りこの講和は日本百年の礎を築くよのでありますから、意見は御自由に、たとえ占領下においても自由な意見の発露については総司令部もむしろ歓迎するところであろうと思います。即ち総司令部にしても連合国にしても、帰するところは永久の平和であります。存続すべき平和であつて、この平和の目的が、講和の目標となつておる国が不満を抱き、不平を持つた平和は結局永続しない。これはヴエルサイユ條約の停戰條約の例によつても明らかなところであります。講和條約に参加する各自がおのおのその満足とし又要望するところを盡して、これが内容になつた條約にして、初めて存続せられるのであつて、一方的に押付けた條約は決して存続するものでない。苟くも永久の平和、存続すべき平和を望む以上は、関係国の要望をよく取入れて作り上げた平和、講和條約、それが完全なるものであつて、私は連合国が必ず日本国民の要望を、希望するところを十分取入れた條約を作り、内容を以て作るものと私は確信をいたします。そこで、従つて又半独立とか、或いは植民地的独立を日本に許そうという気持は、私の接触した限り、連合国の政治家等においてはその考えは毛頭ないのであります。日本において、日本の独立を保護し、日本の自立を完全にする條約をどうして作るかということを考えて、ダレス氏のごときも日本にわざわざ来て、各方面の意見を聴取したことと考えます。でありますから、御懸念のごときことは先ずないと……先ずないではない、断然ないと私は確信いたします。従つて又お聞きの我が党内若しくはいわゆる私の側近なるものが、再軍備とか憲法改正とかいうようなことを公言したというお話でありますが、その事実は存じませんが、少くとも私は再軍備は断じていたしたくないということを申しておるのであります。(拍手)憲法は改正いたしたくないということは明瞭に申しておるのであります。又現に日本に対して憲法改正を要望しておる国は何もないのであります。どこの国からもないのであります。それは現在のところ講和條約の内容となすものはまだ決まつておらないので、講和会議開催について各方面の、各関係国の意向を探つておるということが現在の状態でありますから、こういう條約、或いは條約の内容はこうである、或いは日本に再軍備を許せ、許させようということは、問題になつておらない筈であります。成る程新聞雑誌には、日本に軍備を許すべし、持たさしむべしという議論はありますが、これは一個人の議論であつてこれを日本政府への公然の交渉として参つたことは無論ないのみならず、或る者は日本に対して軍備を許すということを論じておる者がありましようが、又これに対して許すべからずという議論は相当強いのであります。現にオーストラリアにおいても、或いはその他の国においても、日本のために戰争中いろいろな被害を蒙つた国においては、日本に軍備は許さないがいいということを極力主張いたしておるのでありますから、軍備を許せということは決して世界の輿論ではないのであります。これに対し強硬な反対論のあることも御承知願いたいと思います。
 又私の所においで下さつて御意見をお示し下さることは喜んで伺います。(拍手)
    ―――――――――――――
#32
○副議長(三木治朗君) 木村禧八郎君。
   〔木村禧八郎君登壇、拍手〕
#33
○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして、專ら財政経済の側面から首相の施政演説及び蔵相の財政演説に対して質問いたしたいのであります。同僚諸君の質問との重複を避け、又細かい点については予算委員会その他各委員会において質問するといたしまして、先ず私は昭和二十五年度補正予算及びこれと一体となつて編成されつつあります二十六年度予算につきまして、その編成の基本となるべき問題について御質問申上げたいのであります。
 言うまでもなくその基本となるべき問題に二つあると思うのであります。その第一は、朝鮮動乱の我が国経済に対する影響をどう見るかという点、その第二は、米国援助打切り後及び講和後の我が国のいわゆる自立経済の規模内容をどう見るか、二十五年度補正予算及び二十六年度予算は、この二つの問題の正確なる把握とその見通しの上に立つて編成されなければならぬことは言うまでもないと思うのであります。この観点からいたしまして、先ず吉田首相に二つの点を御質問申上げたいのであります。
 その第一は、首相は国会召集が遅れたのは朝鮮事変の影響を見定めたからである、そういうふうに言われておりますが、その影響をどういうふうに御覧になつたか、その見解が施政演説のどこに現れておりますか、具体的に指摘して頂きたいと思うのであります。私は朝鮮事変の最も根本的な影響は、この事変を機会といたしまして、我が国の経済が世界的な国防経済いわゆるデフエンス・エコノミーの一環として利用され、その方向に編成替されるに至つたということであると思うのであります。表面的現象といたしましては、特需の発生、輸出増加、物価高、オーバー・ローンとなつて現われておりますが、その根本は平和経済から国防経済の一環として編成替されたことにあると思うのであります。(拍手)その結果といたしまして、現に国民生活は圧迫され低下しているのであります。これこそが事変の最大の影響であります。事変の影響を見定めたと言われますならば、これに対し如何なる対策を立て、補正予算に如何にこれを反映させましたか、その点をお伺いいたしたいのであります。
 その第二は、国防経済体制は、如何なる国においても政治的独裁、フアツシヨ化をもたらすことは、歴史の明証するところであります。従いまして、今こそ民主主義擁護にとつて最も重大な時だと思うのであります。然るに吉田内閣はこの体制にむしろ便乗しまして、民主主義を擁護する代りに、これを抑圧することに努めているように見受けられるのであります。警察予備隊の予算や電力再編成案を審議させないこと、その他、労働組合の抑圧等は、その最も典型的な証拠であると思うのであります。(拍手)このために国民は、これまで言われて来ましたいわゆる民主主義というものに対して漸く疑問を持つに至つておると思うのであります。首相は施政演説で、平和国家、民主国家としての日本の再建に更に一段の努力を傾注すべき時であると述べておられますが、現実と矛盾しておらないかどうか。矛盾していないといたしまするならば、その根拠を明らかにして頂きたいのであります。
 次に池田大蔵大臣に質問申上げたいのであります。
 先ず第一に二十五年度補正予算及び二十六年度予算編成の基本的な考え方について質問いたしたいのであります。蔵相は予算編成の基本的な考えといたしまして、第一に我が国経済は再建への道を順調に進んでいるということ、第二に殊に朝鮮動乱以来著しく活況を呈しているということ、第三にこの好機を逸することなく我が国経済の自立を促進するよう特に配慮せねばならぬということを挙げております。この三つの基本的な考え方に基いて補正予算及び二十六年度予算の編成に当つている、こういうことを述べておられます。併しながら予算編成の基本的な考えといたしましては、この程度の考え方では著しく皮相的であり、且つ一面的でありまして、朝鮮動乱の影響或いは米国援助打切り後乃至講和後の自立経済の問題に対して、正しい認識を欠いていると評せざるを得ないのであります。成る程、朝鮮動乱の影響によりまして、特需及び輸出関係の大企業或いは大銀行は活況を呈しまして、例えば六大銀行の九月末決算の償却前利益は三十九億二千七百万円でありまして、前期に比べて六億六千百万円も殖えております。資本金に対する償却前利益率は最高十四割九分、最低約八割六分に達します。而も税金は逆に一億一千五百万円も減つておるのであります。先程羽生氏の質問に対して大蔵大臣は、所得が殖えれば自然増收になると言つておりますが、銀行はこのように沢山の利益が出まして、而も逆に一億一千五百万円も税金が減つておるのであります。而もオーバー・ローンは金融債券で解消させて貰えるのであります。更に東京証券取引所上場会社の九月末決算による平均配当率は約二割、配当金額四十億円程度でありまして、前期より配当率は約六分、配当金額は約十五億円の増加であります。新規配当、特配が殖え、人絹紡績は、新光レーヨンの四割五分の初配当を初めといたしまして、軒並一割乃至一割五分の増配で、平均三割の配当と言われます。又大蔵省調査によりますれば、本年四月以降に決算期を迎えた会社の申告所得額が五千万円を越え、その所得額が前期に比べて倍額以上に急増加した会社は、東京国税局管内で十八社、大阪国税局管内で十三社、合計三十一社に上り、更にうち七社は前期に比し五倍以上の飛躍的増加を示しているのであります。誠にすばらしい活況であります。その上、税制改革で法人は住民税の所得割がなくなりましたので、例えば東京都の例をとりましても、百万円のこれまでの住民税がただの二千四百円に激減しているのであります。
 これに反しまして朝鮮動乱の勤労者の生活に対する影響はどうでありましようか。生産が安本指数によりますれば五月の九二・七から九月の一〇三・三に飛躍的に増加しておりますのに、併しながら雇用状態はどうでありましよう。労働省の調査によりますれば、前月対比で五月は〇・二%減少、六月は〇・三%減少、七月は〇・四%減少、八月は増減なしで、むしろ生産が殖えながら失業が殖えておる。この状態をどう御覧になるか。又実質賃金指数は、大企業、大銀行の上陳のような大幅な利益増加に反しまして、八月は八七でありましたが、六月の八九に対しまして、八月は八七で二ポイントむしろ逆に下つております。国民の生活水準は、安本調査によりますれば、昭和九―十一年平均に対しまして、六月は七五%であつた。七五%まで生活水準が向上しましたが、八月は七〇%にこれが低下しております。九月は七一%、で著しく国民生活は低下しております。特に被服品の消費水準は、事変前に対しまして四―六月の平均五一%から九月には三二%に著しく下つております。従つて特需輸出増加で滞貨が一掃され、生産は活況を呈したといいますのは、朝鮮動乱の表面的な影響でありました。以上指摘いたしましたことがその実質的影響であると思うのであります。これこそが大蔵大臣の指摘するところの吉田内閣の下における資本蓄積の姿なのであります。而も蔵相はかかる姿の資本蓄積をますます強めるために国民に協力を要望しているのでありますが、全くこれは国民を愚弄するものであつて、国民が果してこれに協力し得るかどうかは私は疑問であると思うのであります。更に講和後の財政経済につきましては、再軍備は行わないと申しますけれども、例えば警察予備隊の費用が二十六年度予算におきましては最初百二十億組みながら、或いは百億くらいに又増加するやに聞いております。そういう形で軍備費というようなものが殖えますならば、国民負担は決して軽くならないのでありまして、講和後の我が国経済を考えるとき、そう簡單に楽観はできないと思います。要するに蔵相の予算編成の基本的な考え方は、私は余りに皮相的であつて、或いは又聞違つていると私は思うのでありますが、非常に重要な問題でありますから、真剣に答弁して頂きたいと思うのであります。
 次に、大蔵大臣の当初の予算編成方針は二つあつたと思います。一つは財政規模の縮小による予算上の減税、もう一つは旧債務償還等による超均衡予算の回避、これを是正する、こういうことにあつたと思うのであります。それが全く覆えりまして、大蔵大臣の当初言明よりも財政規模が拡大され、予算上の減税が税法上の減税に振替りまして、インベントリー・フアイナンスによつて超均衡予算が継続されることになつた根本の理由、これはどににあつたのか、御質問したいのであります。私はこれは朝鮮動乱の影響及び講和後の経済に対するドツジ氏と蔵相との認識見解の違いから生れたと思うのでありますが、その違いの根本はどこにありましたか、お尋ねしたいのであります。更に動乱の影響に基く物価高、消費者米価の引上げによる生活水準の低下は、今回の名目的な減税、半ケ月分の年末手当、明年一月からの千円のベース・アツプでは、私はカバーできないと思いますが、若しカバーできると御主張になるならば、その具体的根拠を示して頂きたいのであります。更に生活水準の低下を防ぐ根本策は、特に食糧、綿花の輸入を増加することである。そういうように思います。従つてその見通しはどうであるか。更に保有外貨がこの頃はどのくらいになつておるか、保有外貨の金額、そうして又それがなぜ急速にこれを活溌に使えないかどうか、その根本の理由について御説明願いたいと思うのです。
 次に安本長官に対しまして三つの点をお伺いしたいのであります。その第一は、特需と輸出と国内需要との調整の問題であります。で、もう御説明するまでもなく、特需輸出が今のような日本の経済の下で余り殖えますと、国内需要を圧迫して国民生活が低下することは明らかであります。先程申上げましたように、この特需と輸出は、世界的な国防経済の一環として日本経済が利用され、編成替されつつあるのであります。早く言えば現地調弁みたいなものである。従いまして、それが余りに多くなると国民生活を圧迫することは明らかであります。この調整をどう図るかということは非常に重大な問題であります。例えば特需については、あちらさんから物を持つて来て貰うか、輸出についてはその見返りと輸入をどうして確保するか、こうしなければベース・アツプしたり減税してみても国民生活は確保できない。結局例えば軍備的な需要と平和的な需要との調整の問題であります。これについてドツジさんと如何なる交渉をされ、今後の見通し、如何なる見通しを持たれておりますか。今後国民生活に重大な影響を與えますので、この点についての御答弁を願いたい。外貨が溜り、ドルが溜つて喜んでおる時代ではない。そのために国民生活が非常な圧迫を蒙むる。先程申上げましたように、指数にはつきりと国民生活の低下が現われておるのでありますから、この調整のために如何に努力されつつあるかを御説明願いたいと思います。
 それから第二は、米国対日援助打切りの時期、その見通しにつきまして伺いたいのです。又その対策、特に対日援助を打切りますと見返資金が問題になる。この見返資金はどういうことになりますか。その点についてお伺いしたいと思います。
 第三は、いわゆる自立経済の規模、内容、條件についてお伺いしたい。自立経済の段階に入つた場合、貿易の規模、生産の規模、生活水準はどういうようになるか。又自立し得る條件は備わつておるかどうか。この点についてお伺いしたいと思います。
 次に通産大臣に簡單にお伺いしたいのであります。最近新聞の伝わるところによりますと、輸入契約が破棄されて非常にそれが多くなつておるように聞いております。これは事実であるか。これが事実でありますと、今後重大な問題になる。この輸入こそが、今後の国民生活の確保、日本の再生産確保の一番重要な問題、最大の問題だと思いますので、その点について、その実情及び対策についてお伺いしたいのです。
 最後に労働大臣にお尋ねしたいのでありますが、これまで吉田内閣の失業対策は、貿易振興によつて失業人口を吸收するということが失業対策の根幹であつた筈であります。成る程貿易は非常に殖えまして輸出は増進しました。ところが雇用はどうでありますか。先程申上げましたように、労働省の調査によりましても雇用指数は減つておるのです。失業は殖えておる。輸出増進によつて失業者が吸收できないとなれば、吉田内閣の失業対策の根幹であるこの失業対策としてのいわゆる貿易振興策、これには再検討を加えざるを得ない。根本的な失業対策はどこに置くのであるか。今までの失業対策の支柱である輸出増進は決して雇用を、失業者を吸收していない。むしろ雇用指数が減つておる。その根本的な失業対策についてお伺いしたい。更に又労働者の実質賃金、延いて生活水準は、先程も申上げまたように、はつきりと生活水準が下つておる。指数がこれを示しておる。従いまして労働行政の側面から、これをどうして防ぎ、どうして労働者の生活を保障して、そうしてこの再生産條件を確保するか。その対策につきまして労働行政の面からどういうふうにこれをお考えになつておるか。その点について御質問申上げたいのです。
 以上を以て私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 御質問の要旨は、要するに、このたびの朝鮮動乱が日本のフアツシヨ化を進め、一方においては日本の民主化の発達を阻害しつつあるというような結論のように考えますが、これを私から申すと、まさに逆であります。何となれば、警察予備隊は決して再軍備ではないのであります。その目的とするところは、共産主義の危險に対して、共産主義の恣意によつて日本の治安を脅かされる、その治安を安全にするため、治安を確保するためにこしらえ、でき上つた、目的とする警察予備隊の組織であるのであります。この警察予備隊が組織せられるならば、一応我が国の治安は相当確保せられるものと私は確信いたすのであります。即ち民主主義の確立のために、警察予備隊はそれを目的として組織せられつつあるのであります。
 又電力再編成は、これは過去において総動員法のために、総動員法によつて日本の電力を統合して、いわゆる集中主義をとつたのであります。この集中主義を排除する、これを民主化する、電力の企業を民主化するというところに目標があるのであります。(「違う」と呼ぶ者あり)即ちその意味において民主主義はますます発達をし、フアツシヨ化ということは御懸念はないのであります。この結果については木村君もさぞ御満足になるだろうと思います。(拍手)
   〔国務大臣池出勇人君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(池田勇人君) 木村君にお答え申上げます。
 日本の経済が順調に自立再建への途を進んでいるということにつきまして反対のようでございまするが、これは私は日本国民の大多数は納得してくれると考えます。何故かと申しますると、昨年の、今私のところにあります統計は九月でございますが、消費者物価指数、昨年の九月は一四〇であつたのが、今年の九月は一三〇になつておるではごいざませんか。一時下りましてそうして一二四まで下りましたが、朝鮮事変後一三〇になつておるのであります。動乱の影響を私は見て行つて今度の予算を組んだのであります。得てして八月と九月を比べたり、或いは七月と八月と比べて、どうとかこうとか言うのでは、これは経済施策を誤まるものであります。生産におきましても、昨年の九月の生産と比べ、今年の九月の生産は非常な増大をしておるのであります。生産も殖えました。賃金も比べて御覧なさい。工場の平均賃金は、九月平均九千五百円というようになつておりますが、昨年の九月は八千九百円であつたではありませんか。こういうことを考えて、一ケ月ごとの動きに目を取られては経済政策はできません。(拍手)この一月、二月の国会におきまして、日本の輸入、輸出が非常に減つて、日本はどうなるかと声を大にしておつしやつた木村君が、今の我が国の輸出入の貿易の増大を見て非常に驚かれると思う。私はあの頃から輸入も伸びます、輸出も伸びます、こう言つておつたのであります。で、非常に伸びまして、予算では六億一千万ドルの予算が、例えば私は、貿易だけで九億程度になり、外貨の收入を得たならば十一億ドルを超えるという計算をいたしておるのであります。決して一時の、一ケ月や、二ケ月の現象で経済を論じてはいかんと思うのであります。(拍手)
 次に予算の編成方計につきまして、大蔵大臣は規模を縮小することを念願といたしておる。規模が殖えたじやないか。――六千六百十四億が六千六百四十五億になりました。三十一億殖えましたが、これは日本の経済が拡大し活溌化するために必要止むを得ざることなんであります。必要なるものの場合においては、経済の規模が殖えてもいい。これが日本の国力の発展であるのであります。昨年の七千四百億円に対しまして、今年は六千六百十四億に減りましたが、朝鮮事変が起りまして必要な経費が要るので三十一億円殖やしたのであります。私が財政の規模を縮小するということにつきましての考え方に、何ら変りはありませんが、やはり財政経済というものは、その時の様子により適当の措置を講じなくちやなりません。従いまして昨年よりは、やはり八百億円が減つておるのであります。
 尚、超均衡予算につきまして、私は先般の選挙前に、一般会計において債務償還はしないということは公約いたしました。来年度におきましても、一般会計で今年のように七百数十億の債務償還はいたしません。ただ問題は、政府において必要な資金を支出することはあります。債務償還はいたしません。決して私は今までの公約に反したことはやつていないのであります。殊に減税につきましても、何とかいろいろな理窟があるようでございますが、基礎控除の二万五千円を三万円にしたり、或いは扶養家族の一万円を一万五千円にしたのは、減税に違いございませんじやないですか。酒の千七十五円が九百五十円になつたのを減税じやないと言うのは詭弁です。(拍手)ただ問題は、あなたお出しになりましたように、銀行が非常な儲けがあつた、昨年よりも儲けて税金が安くなつたと言われたのは、去年に比べて今年は法人税を軽減したからである。超過所得に対する法人税をなくして、去年よりも所得が多くなつておる。それで減税になつておる。そういうふうに減税しておるのであります。とにかく所得が二十万円の人が三十万円になつたときに税金が殖えるのは当然、二十万円の人が二十万円であつたときには非常な減税でございますから、これは何人も疑いを容れる余地がないと思います。
 尚、次に外貨の保有でございまするが、これは発表することの自由を持つておりません。併し相当殖えておりすす。ドルにいたしましても、ポンドにいたしましても、相当殖えておるということは確かでございます。私は財政演説にも申しましたように、殖えた外貨を以て極力輸入を図つております。いろいろな方法で、例へば長期予算の外貨予算を作るとか、自由選択制を殖やすとかいたしまして、相当輸入を計画いたしておるのであります。この点につきましては関係大臣がお答えになりましようが、私の見るところでは、一四・半期、二・四半期は相当輸出超過でありしましたが、三・四半期におきまては、十、十二月ではちよつと輸出の方が殖えて参りました。一―三月では……第三・四半期では、輸出よりま輸入がちよつと多くなります。第四・四半期におきましては、輸出よりも輸入が相当多くなつて来る見込であるのであります。経済再建或いは国民生活の安定に今最も必要なことは輸入でございますので、全力を挙げて行つておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇〕
#36
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。
 第一点の特需と内需との調整についてお答えいたしますが、御意見のように、輸出が非常に今日殖え、従つて又特需がこれに並行して増加しておることはお話の通りであります。併し私共は特需が殖える半面において、内需との関係においてどうするかということについて、お話のように私共心配しております。併しこれについては只今大蔵大臣も申しましたように、輸入をこれに応ずるように増加して行くことが、第一の調整の方法であると考えております。今年の四月をピークといたしまして、五、六月は輸入が減りました。而も反対に輸出の方が目に見えて多くなり、特需が殖えたことは非常に御心配でありますが、幸いに七―九月以降に打ちました政府の手によりまして、八月、九月以降どんどんと輸入が上昇して参つておるすけでありまして、今年八月は約六千八百ドル、九月六千九百万ドル、恐らく一月、十二日等はどんどんと殖えて来ると私は思います。このことが今日一番大切なことでありまして、それによりまして七―九月以降において輸入外貨資金の決定に際しまして、大体合計いたしまして七―十二月まで八億ドル近くの輸入外貨の許可をいたしました。別に先物契約に対する輸入外貨資金として一億一千万ドル余を許可いたしております。更に一番心配であつた輸入を阻害しておつた手続上の問題につきまして、今まではどこの国から何をどれ程の額ということまで一々許可をしておつたような状況、こういうようなことが非常に輸入を遅らした原因であると思います。政府はこれに対しまして努力いたしまして、今日では大体二億ドル近くのものについて、約百二十品目については自由にどこの国からでも買えるような措置をとり、又従来は一四半期ごとの輸出による受取勘定の範囲内で輸入の許可をしておつたようなことが間違いである。もう少し今日のような事情の下においては、輸入を促進するためには或る程度の長期先物の契約をすることが必要であるということにつきましていろいろ努力いたしまして、今日は先物契約が認められまして、先程申しました先物契約に関する金額は別に許可されておる状況であります。遠いものは来年の十二月までの契約もできます。そういう形になつております。こういうことを併せて、とにかく輸入を殖やすことによつて輸出、特需に対応しつつ内需不便を来さぬように努力をいたしており、更に今特に朝鮮の関係からいつて、朝鮮向のものについて特別な輸入を願つたらどうかといふお話、そういう処置も大体……例えば原綿、木綿等については、朝鮮向のために特別に輸入をするというような特別措置をとりつつあることを御承知を願いたい。
 それから第二段の、対日援助の打切りの時期というお話でありますが、これはまだはつきり今申上げる時期ではありますまいが、今まで普通言われておつたところからいたしますと、来々年、二十七年度以降において、援助資金は今までの形においては或いは打切られるのではないかと考えておりますが、これは決定いたしておりません。
 次に、自立経済の條件と規模、構想についてのお尋ねでありますが、これも最近の状況によりましていろいろと條件が変つて来ました。併し私共飽くまでも独立の半面に経済自立を必要とするという建前で、半年程前から来々年若し援助資金が打切られた場合における自立経済の達成に如何なる方策をとるかということは、審議会で研究いたしております。大体の目鼻はついておりますが、いろいろ事情が変のてまりますので、まだ結論は得ておりませんが、大よその基本といたしまして審議会で考えられておる事柄は、来々年において物価の変動がありましようから分りませんが、九月頃の状況において考えまして、大体十五、六億の国際輸出入貿易関係を目安に、そのものを達成するがための内需の生産増強計画が必要であると思つております。飽くまでも自立経済の問題は、適当な生活水準を維持しつつ国際收支の均衡を得しむるということが基本であると思います。大体そういう規模の下に生産計画を立て、而して問題は電気、鉄或いは原綿、食糧というものをその範囲においてどう見積つて行くかということが中心條件になると思います。従つて一つの計画がその下に立てられて、それに如何なる資金が要するかということが問題なにつて来ると思います。只今審議会では検討中であることを申上げて置きます。
 この際、午前中私は衆議院に参つておりまして失礼いたしました羽生さんの御質問に対して、お答えをして置きます。
 第一点は、国土総合開発はやつておるかという御質問であつたと思います。今日自立経済の一方の裏付けは、国内資源の総合開発であろうと思います。今日各府県方面から出ました案を中心として、国といたしましては総合的に計画を進めつつありますが、施策はまだ最終の段階に至つておりません。併し取先れられるのはだんだん部分的にも取入れて施策の上に現わておることは、公共土木関係における開発計画に一部織込んでおります。
 第二点の、自由経済で自立経済が達成できるかというような御趣旨であつたと思います。これは私共飽くまでも経済施策の基幹は、自由経済で行かなければならず、又それで十分に達成し得ると確信いたしております。一例を挙るますと、先程の輸入貿易の推進の問題を例にとりましても、従来管理貿易的に、どこの国から何をどれだけというふうに一々許可をして統制して行く行き方よりも、これを自働許可制にして、一定量どこの国からでも買つて来いということになつて以後、輸出入は余程伸張しておるということは、輸出、輸入の貿易が一証左で、経済の基本が自由経済において立派に達成し得るということを確信しておるのであります。
 それから第三の点は、鉄鋼の補給金の廃止後の措置というようなお尋ねであつたと思います。これは或いは大蔵大臣からお話があつたかと思いますが、来年度において全部鉄鋼について補給金を外すことになつておりますが、現在銑鉄については残つております。来年度外した後においてどうかという問題でありますが、これは恐らくは現在の国際情勢を反映して、鉄鋼の価格は国際的に上るものと思います。従つて凡そ現在の価格、国際価格と国内価格の差がありましても、だんだんと国際的に鉄鋼が上りますが、内地の生産で鉄鋼を材料とする製品の輸出に対しても、恐らくは来年三月頃までの状況を見まして支障ないものと考えておりますが、これに対しましては、必要な場合に低利な金を造船等には出すというような措置で以て、措置がつくものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣横尾龍君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(横尾龍君) お答えをいたします。輸入契約のキヤンセルが、相手国の輸出制限及び朝鮮動乱後価格の上昇によることと、船腹の不足によるので、大部分は契約当時に予知し得なかつた貿易状況の変化によるものであつて、関係貿易業者の私益を図るために故意に契約を取消した事例は極めて少いのでございます。輸入契約のキヤンセルによつて所定の輸入ができない場合には、悪質のものは保証金を没收するという処置に出ておるのであります。悪質の事例は輸入件数二百二十件に対して二十件程あるのであります。今日においては朝鮮動乱後の影響も一応盡して、市況は一応落着いており、キヤンセルの事例はむしろ減りつつあるのであります。一方日本側の貿易業者も民間輸入取引に習熟して確実な相手方を選びつつありますので、今後はかかる問題は減少するものと考えております。さよう御承知を願います。(拍手)
   〔国務大臣保利茂君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(保利茂君) 雇用関係につきましては、御承知のように昨年一月以降、いわゆる安定政策推進の過程において相当量の雇用労務者の減少を見て、約一年半を減少過程でずつと来たのでございますが、労働省の統計を以ていたしましても、この減少の傾向の傾向は六月、七月を以て終りまして、八月には大体保合の状況、九月はやや上昇の傾向を示しておるのでございますが、特に輸出産業とせられる中小工業のうち紡織工業或いは金属工業、化学工業方面におきましては、相当著しい増加の傾向を示しておりますことは、先程羽生さんの御質問のときにお答えいたしました職業安定所の常傭労務者の就職状況と合せまして見ますときに、漸くにして安定から復興へという目標の下に進められて来ました現内閣の政策の成功がここに現われて来つつあると、私はそういうふうに思つております。(「朝鮮動乱で助けられたのだろう」と呼ぶ者あり)
 実質賃金の関係につきましては、昨年十一月以降著しい改善の跡を見せまして、八月頃少し抵下をいたしておりましたが、九月には又持ち直しまして二九%の向上を前年同月に比しまして増加を示しておるような次第であります。尚、戰前を基準にいたしまして、戰前基準の実質賃金指数は、工業平均賃金によりなければ九月には九二%まで回復をいたしております。大蔵大臣や安本長官が申されますように、今後輸出に対する政府の施策、それによりますれば大体今日まで見通して来たところの失業対策は、今後もこの方針を以てやつて行くことが妥当ではないか。尤も日本の人口の大部分、約半数を吸收しております農家の、いわゆる農家経済の改善、向上、充実を図ることによりまして、農家に今日抱えております多数のいわゆる過剰労力が、農家経済の向上によつて確実に吸收せられて参りますようにいたすことは、特に失業対策上重要なことであると考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
   〔佐々木良作君、発言の許可を求む〕
#39
○副議長(三木治朗君) 佐々木君何ですか。
#40
○佐々木良作君 議事進行の発言を求めたいと思います。簡單ですから自席から発言をお許し願いたいのですが……。
#41
○副議長(三木治朗君) よろしうございます。
#42
○佐々木良作君 只今の木村君の質問に対する総理大臣の答弁中、次の点はこれは事実に全く相違しておるものと私考えます。従いまして以下述べる点を議長において調べられまて、そうしてその事実の有無をお調べの上、政府向けに適当な御処置を願いたいと思います。
 内容は、今総理大臣の答弁中に、電力再編問題についてポツダム政令によらなければならなかつたことのその説明の中で、今の日発その他の電気会社は、国家総動員法に基いて戰時中に統制するようにまとめた会社であるから、これを適当にばらさなければならんという意味のことを言われております。特に国家総動員法に基いてできた云々ということをはつきり言われたと思います。これはとんでもない勘違いであります。現在できておる、今度の集中排除法の規定についてポツ勅の対象になつておるところの十の会社の一つの日発という会社は、御存じのように国家総動員法ではなくて、電力管理令と日本発送電会社法とに基いてできた会社である。それからあとの九つの配電会社が、その途中において配電会社を作るときに、配電統合のときに国家総動員法が使われたのである。日発についてはその後において数個の発電所を統合のときに総動員法が使われたことはあるかも知れないけれども、むしろ配電会社こそ総動員法に基いて作られた会社である。総理の言われることは、国家総動員法に基いてできた会社のように言われておる。従つてこれは全然措置が違つておりますから、適当の、一つ議長において取調べの上、政府向けに御注意なり御措置を願いたいと思います。
#43
○副議長(三木治朗君) 只今の佐々木君の御発言の件は、議長において政府に連絡の上、適当に措置いたすことにいたします。
 国務大臣の演説に対する質疑は尚ございますが、議事の都合により本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○副議長(三木治朗君) 御異議ないものと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十六分散会
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
ソース: 国立国会図書館
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