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1950/11/29 第9回国会 参議院 参議院会議録情報 第009回国会 本会議 第6号
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1950/11/29 第9回国会 参議院

参議院会議録情報 第009回国会 本会議 第6号

#1
第009回国会 本会議 第6号
昭和二十五年十一月二十九日(水曜日)
   午前十時十八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第六号
  昭和二十五年十一月二十九日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 昨日の佐々木良作君の議事進行に関する発言について内閣に連絡して質しましたところ、佐々木君御指摘の通り、日本発送電株式会社法により設立せられた株式会社でありましたから、訂正方取計らわれたいという趣旨の回答がありました。右御報告いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国務
大臣の演説に関する件。
 昨日に引続き、これより順次質疑を
許します。兼岩傳一君。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
#5
○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して吉田総理の施政方針に対し若干の質問を試みんとするものであります。
 隣国朝鮮に発生した内職とその拡大は、我が国の一部産業の滞貨の悩みを解決し、そのため特需景気という新熟語さえ生れました。併しこの喜びは、はかないものでありました。つい昨日、滞貨一掃を喜んだ特需資本家が、今日は原料価格の高騰と輸入難に泣かなければならなかつた。そして日本経済は今や縮小生産とインフレの黒い影に脅かされるに至つたのであります。それのみか、戰局の進展に伴いまして、特需の品目、規格が猫の目のように変つて、第一線の技術者、経営者を苦しめ、特需の生産や輸送に従事する労働者諸君には、国連協力を笠に着た至上命令による強制労働、時間延長が課せられ、特需に関係しない一般市民、農民に対しては、最近の地方税の無法徴收に加うるに、生活必需品の値上りによる一層の生活難が来襲したのであります。而も日本は一部特需資本家の一時的な一握りの利益のためにアジア人民の怨みを買い、我が国経済と脣歯輔車の関係にあり、無限に有望な大陸の市場を失うに至つたのであります。以下、私はその点を明らかにして、これに対する吉田総理の方針を質したい。
 昨年十月一日中華人民共和国が成立し、人口五億、広袤六百万平方キロの新らしい中国の内部では、これによつて経済の仕組が一変し、農村では土地革命が行われて、土地は働く農民に與えられ、これによつて農業の生産力は驚くほど向上を来たしました。工場では労働者と民族資本家の協力、いわゆる労資両利の政策によつて、経営協議会が持たれ、労働者の生産意欲の向上によつて工業の生産は躍進し、鉄道、鉱山におきましても大発展を遂げたのであります。中華人民共和国は、この新民主主義の政治によつて国を復興し、やがて社会主義に到達するために工業の基礎を築きつつあるのであります。毛澤東主席は、全生産のうち工業生産の割合が僅か一〇%にも足りぬ遅れた農業国を、来る十年乃至十五年のうちに三〇%乃至四〇%を占める工業国にするのだ、この成否が中国共産党の指導する新民主主義の成功か否かを決する鍵であると言つておる。中国最大の工業地帯、東北、これは旧満洲のことでありますが、この東北の昨年の工業生産の割台は三五%でありました。毛澤東主席の達成のようとしておるところは、来る十年乃至十五年の間に全中国をこの地帯の水準に高めることであります。東北の人口は約四千万でありますから、この計画はこれから十年か十五年の間に東北に匹敵する大工業地帯を十二作ろうというのであります。古い侵略的な資本家が幾十年の日子を費やして漸く達成した成果を、新民主主義は僅か数年でこれを実現しようとするのであります。そのために如何に莫大なる資材、機械、技術を要するかは言わずして明らかであります。この構想は資本主義に捉われた人たちには理解できない。況んや吉田総理のごとくこれに敵意を持つ古い反動政治家にとつてこれを理解することは更に困難でありましよう。併し毛澤東主席の計画はすでに実践の一ケ年を経過しました。去る十月一日、中華人民共和国の陳副総理は、共和国の成立一周年の祝賀演説で、この一ケ年の経済復興工作の重点は二つあつた、一つは交通、特に鉄道であり、今一つは水利及び農業であると述べておりますが、鉄道の復興は本年五月ですでに八千七百キロ、経延長の約四割を完成しました。これと並行して天水―蘭州間の鉄道建設が二万五千の人民軍の手で開始され、これに続いて来たる十年乃至十五年の間に約二十万キロの鉄道を建設しようとしておるが、これは実に我が国の鉄道の総延長の約十倍に当るのであります。その他、日本製鉄産業と不可分の関係にある開らん炭鉱はすでに年産五百万トン台に達し、大冶鉄鉱山の復興、有名な黄河の治水工事、陜西省、新疆省の紡績、甘粛省、青海省の石炭開発、関中、蘭州の電力の建設もすでに開始されたのであります。
 英国の王立国際事情研究所の機関紙によりますと、ギラン氏は、今日東京で強く感ぜられる最大の矛盾は、アジアのために存在する日本の工場が、資材の供給源であり又日本商品の輸出市場であるアジア大陸から事実上切断されたままになつておることであると言つております。正にその通り、大陸との結合なくして日本の自立と発展はあり得ないし、これによつて中華人民共和国の建設も更に速度を早めるし、これによつて日本産業の自立と発展が保障される。(「中共代弁者だ」と呼ぶ者あり)然るに吉田総理は、連合国である中国、ソ同盟と日本との経済提携を拒否し、反対に民族独立運動の抑圧と植民地化を目指す東南アジアのいわゆる後進国開発計画に結び付ける政策のお先棒を担いでおられる。(笑声、「共産党の宣伝だ」と呼ぶ者あり)この政策は日本経済自立の問題を解決し得ないばかりか、東洋の諸民族を敵とし、世界の人民を敵とし、かくして日本経済を決定的に破壊するところの亡国の道であります。如何に反動且つ老おの吉田総理といえども、よもやこの自明の道理が分らない筈はありますまい。然るに現実において敢て日本国民にこの亡国の道を歩かせようとしておるのはそもそも如何なる事情に基くものであるか。私は率直にお尋ねする。国際帝国主義の圧力がこの道を吉田総理に強制しておるかどうか。大胆率直にこの壇上から全国民にこの点を明かにされたい。(「誰も聞いていないぞ」と呼ぶ者あり)
 次は平和の問題であります。アメリカ軍を先頭とする国連軍は、京城占領後、中国の警告を顧みず、三十八度線を越え、更に大軍を鴨緑江に向つて進軍させたのであります。これに対して去る四日、中国の全政党が一致して宣言を発すると共に、中国防衛のために義勇軍を派遣することを決定するに及んで、事態は俄然重大な段階に入り、今や全アジアは沸騰しつつあるのであります。
 然るに吉田総理は全国民の平和への熱望を蹂躪し、ポツダム宣言、極東委員会の対日政策及び日本国憲法の根本精神に違反し、国連協力を名として、軍事基地の提供、軍需工場の増設、海陸軍需品の輸送、警察予備隊の設置、職業軍人の追放解除、その他あらゆる措置をとりつつある事実は、衆議院における我が党の代表質問においてすでに明らかにされたところであります。日本はまさに吉田総理とその與党の手を経て国際帝国主義のために第三次大戦の導火線に利用されようとしている。(「それは共産党じやないか」「そうだ」と呼ぶ者あり)日本民族は建国以来今日程恐るべき危機に臨んだ経験はない。まさに祖国は興亡の岐路に立ち、全国民は平和か死かの断崖に臨んでいるのであります。
 果して第三次大戦は必至であろうか。この問に対して吉田外務大臣は、去る八月十九日、外務省を使つて、資本主義世界と社会主義世界は原子力を以て衝突することが必至であるという思想を展開させたのみならず、この戰争を起す者は恰かも社会主義陣営であるかのごとく(「共産党じやないか」と呼ぶ者あり)主張し、これを「朝鮮動乱とわれらの立場」と題するパンフレツトに印刷して天下に撒布し、自己の思想の宣伝に努めておられる。(「共産党じやないか」と呼ぶ者あり)恐らく、この結論は吉田茂氏の長年の外交官生活のカンによるものであり、そのカンたるや、満洲事変前にこの侵略戰争の準備をやつた田中大将の外務次官吉田茂氏のカンが(「何を言つている」と呼ぶものあり)成長発展を遂げたものでありましよう。(「そうだ」「寝言を言うな」と呼ぶ者あり)この意見こそまさに国際帝国主義者の見解と完全に一致する。私はここで、アメリカの独占資本家の機関紙とも言うべきウオールストリート・ジヤーナルが、朝鮮事変はアメリカの恐慌対策として頗る有利なビシネスであつたことを、「我々の当面の課題を解決するためには、戰争状態の方が平和状態よりも望ましい、平和は我々にとつて戰争よりもずつと危險である」と(「何を言つている」と呼ぶ者あり)書いているが、この意見は全くアメリカ流に大胆且つ率直であります。他方これに対して十月十六日のニユーデリー発UPによれば、ネール・インド首相は、我々民主主義世界と共産主義世界との間で世界戰争の起るのは避けられないとは思わないと語つております。ネール首相のこの主張こそ、まさにソ同盟、中華人民共和国の見解と一致する。(「何を言つているのだ」「それが共産党の質問か」と呼ぶ者あり)ソヴイエトの対外政策は、建国の当初から、社会主義と資本主義の二つの社会体制は平和のうちに共存できるというレーニンの見解を出発点としている。併し資本主義に取り囲まれて社会主義共和国が存在できるかという質問に対し、レーニンは、それは政治や軍事の面だけではなく、又通商や経済の面でも共存できると答えている。そしてソヴイエトのアジアに対する対外政策においても、「ヨーロツパの場合と同様に、諸民族すべての国の労働者、農民と平和の中に暮すことであり、我々はどの国も除外せず、すべての国と同盟を結ぶことに賛成である」と述べている。そしてこれに対する唯一の障害は、「アメリカその他どこの国でも同じだが資本家の側からの帝国主義である」と述べ、「アメリカの資本主義が我々に干渉しないことだ、我々も彼らに干渉しない」と述べている。(「述べておるのとやつておるのと違うじやないか」と呼ぶ者あり)これは今から三十年以前のことであつた。その後もこの国の平和政策は一貫している。スターリンは第二次大戰の済んだあとで、イギリス特派員ア・ヴエルトの質問に対して、イデオロギーの相違はあつても資本主義諸国とソ同盟の長期に亘る友好と協力は可能であるし、(「答弁無用だ」と呼ぶ者あり)二つの体制の間で平和裡に競争を行うことはできると信ずると回答している。この見地に立つソ同盟は、今や戰後の復興と発展のための第四次五ケ年計画の最終年度を迎えた。今年はヴオルガ河に世界最大のタイプシエフ水力発電所(出力二百万キロ)に着手し、明年は同じくヴオルガ河畔にスターリングラード発電所(出力百七十万キロ)の建設に着手することを決定している。(「何だそれが」と呼ぶ者あり)同時に中央アジアに延々一千百キロメーターの世界最大の大トルクメン運河を建設することを決定している。(「それは何だ」と呼ぶ者あり)二つの発電能力の合算は日本の総出力の約七割に近いし、有名なアメリカのTVAの二倍以上である。そして大トルクメン運河の延長一千百キロと言えば、その距離はまさに鉄道で東京から下関に至る距離である。これらの三大事業を僅か今後の五ケ年で実現しようとするのである。而もこれらの計画が重なる発電や運河の計画ではなくて、中央アジアの広大な砂漠を花咲く沃土に変えると同時に、ソヴイエトの穀物倉とも言うべきヴオルガ河右岸の大平野に電力と灌漑用水を提供せんとする計画である。農村へ送る電力量は二つの発電所の年間発電量の約四割に相当し、(「共産党の質問かそれが」と呼ぶ者あり)その面積は千四百万ヘクタールで、これは日本の全耕地面積の二倍以上に相当するし、且つアメリカ最大のコロンビア河のグランドクリー水力発電所の灌漑計画面積の約三倍である。(「それは代表質問か」と呼ぶ者あり)この驚くべき大計画は、(「中国へ行け」と呼ぶ者あり)その本質において、帝国主義のそれのごとく他国に対する侵略のためのものではなく、土地の根本的改良、人類史上(「何を言つてるんだ」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)最初の大規模な自然の変革を目指す鬪争である。而も昨年の穀物の收穫高に至つては日本流に計算して八億数千万石、これは自国民の最少必要量の約四倍である。工業について言えば、独ソ戰の損害はとうに復興されて、今年は戰前に比較して一五〇%の発展である。住宅について言えば、この五ケ年間に農村で二百五十万戸、都市では三千万坪を建設した。これらの建設は一体何を語るか。それはソ同盟の政策が人類の利益と幸福と平和を目指している証拠である。それであればこそ、この尨大な計画を遂行しつつあるソ同盟の軍事費は全国家予算の一九%に過ぎない。然るにアメリカにおいては五十一年度の直接軍事費だけで総予算の五〇%である。(「アメリカを誹謗するのか」と呼ぶ者あり)これは明らかに原子力を以て戰争をしかけようとするものがどちらの陣営であるかをこの上もなく明白に証明しておる。(「それは共産党ではないか」と呼ぶ者あり)私は、軍備の三分の一縮小と原子兵器の禁止を主張しておるのは何国であるか、これに反対しておるのが何国であるか、(「それはソヴイエトだ」「それは質問じやない」と呼ぶ者あり)平和署名運動をする平和な市民をレツド・パージという武器で攻撃をやつておるのが何国の総理であるかを吉田総理に思い浮べて貰いたい。(「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり)事態は明白である。(「明白だ、決まつているよ」と呼ぶ者あり)吉田総理こそ、国際帝国主義の手先となつて、その利益のためにソ同盟を先頭とするアジアの平和な諸民族に対する侵略戰争に日本を投げ込もうとしておる。(「それは共産党だ」「野暮な野次はやめ給え」と呼ぶ者あり)氏が施設方針の演説で、予期せざる朝鮮事変などと述べておるが、国民を欺き、自己を欺く、これより甚だしきはない。(「それは共産党じやないか」と呼ぶ者あり)なぜならば、吉田総理は去る五月三日の自由党の秘密議員総会で、近い将来必ず戰争は起る筈になつておる、この緊迫した情勢も知らずに全面講和を唱える南原などは曲学阿世の徒であるなどと語つているからである。(「寝言を言うな」と呼ぶ者あり)同時にこれこそが吉田内閣のやろうとしておる單独講和の内容を暴露しておる。(「嘘を言え」「どうした共産党」「大きい声を出すな」と呼ぶ者あり)この單独講和こそ反動吉田内閣の一切の売国政策の総結論である。(「誰も感心しないよ」と呼ぶ者あり)海のかなたでは、李承晩の売国的野心の犠牲になつて、朝鮮幾百万の平和な人民が家を燒かれ骨肉を失つておる。日本にとつてもこれは人ごとではない。(「売国奴は共産党じやないか」「それは共産党のためだ」と呼ぶ者あり)虎の威をかりる売国政治家とその與党の手による……「それは共産党だ」と呼ぶ者あり)單独講和の締結によつて、日本も又同じ道を歩かされようとしておる。(「そうだ、お前らのために」「共産党のために同じ道を歩かされるのだ」と呼ぶ者あり)吉田総理にして一片の愛国心があるならば、(「共産党に一片の愛国心があるか」と呼ぶ者あり)かかる危險極まる政策を反省し、(「愛国心があるか共産党」と呼ぶ者あり)日本の独立と平和のために一身を捧げて、早期全面講和のために全国民の先頭に立たるべきときではないか。これに対する総理の所信を質して、私の質問を終ると同時に、答弁の如何によつては再質問の意思のあることを表明して降壇するものであります。(「登壇無用」「答弁する必要なし」「答弁は要しない」「はつきり答えて下さいよ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(吉田茂君) 朝鮮事変はアジアの諸民族を敵に廻したというお話でありますが、アジアにおける共産主義の民族に対しては敵に廻したでありましよう。(拍手)併しながら民主主義国家、民主主義を以てその国策としておる国は、ことごとく今日日本の態度を礼讃しております。(「わかつたか」と呼ぶ者あり)それから第三次戰争は、私はこの間も参議院において申したと思いますが、そう容易に起る筈はないと、こう申しておるのであります。第三次戰争を御希望の諸君は別として、我々が希望せざるのみならず、(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)そう容易に起らない。又自由党の秘密会において、第三次世界戰争は必至などと申したことはないのであります。これを以て考えて見ましても、只今の御演説は共産主義者の宣伝演説と考えますから、それに対する私は答弁の責任を負いません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔兼岩傳一君発言の許可を求む〕
#7
○議長(佐藤尚武君) 数分間残つておりますから、再質問ならばお許しいたします。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
   〔「野次らないから質問らしい質問をやつて呉れ、黙つておるから」「大いにやつて呉れよ」と呼ぶ者あり〕
#8
○兼岩傳一君 総理の私に対する答弁に極めて不満足であります。(発言する者多し)私は以下具体的に七項目を挙げまして、総理がただイエス或いはノーとお答えになればよい形に具体化して問題を整理して再質問をいたします。(「早いことやれ」と呼ぶ者あり〕
 一、日本は一九四二年一月一日、旧敵国と單独講和を行わぬ旨誓約いたしました連合国の共同宣言に答え、米、英、ソ及び中華人民共和国の四大国の合意と一致による早期全面講和でなければならぬと考えられるか否か。
 一、講和によつて主権は完全に回復されなければならない。如何なる国家又は国際機関に対しても、主権が侵害されるような一切の義務を負うてはならぬと考えられるか否か。
 一、一九四三年十二月一日、米、英中国が署名したカイロ宣言及び一九四五年七月二十六日、右三国の外にソ同盟が署名したポツダム宣言は、琉球及び小笠原諸島を日本の主権から切離すべきことを規定してはおらない。それ故に講話に当つては、琉球及び小笠原諸島が日本の領土として主張することが正しいと考えられるか否か。
 一、講和後における日本領土から外国軍隊の即時且つ完全な撤兵を望むか否か。
 一、如何なる名目にせよ、外国軍隊のための日本領土の軍事基地を認めるか否か。
 一、如何なる名目にせよ、侵略戰争に加担せず、且つ再軍備をしないことを正しいと考えるか否か。(「当り前じやないか」と呼ぶ者あり)一、これらの事柄は、我で国会の自主性において、全国民と共は討議し解決することを正しいと考えられるか否か。
 以上七つの私の具体的な質問に対し、総理がこれを正しいと考えるか否かを簡単に明確に答弁をいたして欲しいのであります。全国民は、総理がこの七項目に反対であり、(「それは反対だ)と呼ぶ者あり)日本の独立と平和をみずから放棄しておるものと解釈をすべきものであるか否かを、日本国民が総理の答弁に基いて判断するために待ち構えております。私の再質問を終ります。(「そんなことはいかんよ」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
   〔「簡單明瞭」「答弁無用」と呼ぶ者あり〕
#9
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 御質問の多くはすでに私が明白に答弁いたしておる事項もあり、又私が答弁を拒んだ事項もありいたしますから、私の議会における、参議院における答弁等の速記録を御覧になつたならば、自然明らかであると思いますから、答弁いたしません。(拍手、「いいぞ」と呼ぶ者あり)
    ―――――――――――――
#10
○議長(佐藤尚武君) 河崎ナツ君。
   〔河崎ナツ君、登壇、拍手〕
#11
○河崎ナツ君 私は日本社会党を代表いたしまして、吉田内閣総理大臣の施政方針演説に対しまして少し質問さして頂きます。
 吉田内閣の施政方針演説は、成る程講和、財政、いろいろ当面の重要な方針を語られておりますが、いつもそうであるように、今度もそうでありましたが、国民の半数以上を占めておりますところの婦人と子供の育成、生活その他につきまして、政府の心を一言半句も述べたことはありません。それは吉田内閣の封建性から、女子供のことを政治的には一人前には考えることが少いから、取り抜かしても怪しまないのだとも思えるのでございます。(拍手)丁度例えて見ますならば、恰かも四角い座敷を丸く掃きまして、よく男の方はそうなさいますが、隅々にごみを掃き残しておりますが、それでも掃いたように思う。吉田内閣の政治の隅々には捨て置かれました婦人と子供に関するいろいろな問題がごろごろとしておるのでございます。私はこれを取上げまして、そこに見られますところの現政府の政治の半面を指摘いたしまして、適切なる施策を促したいと思いますものでございます。
 先ず第一に、労働憲章の一つでありますところの労働基準法が、今日におきましては実際は勤労者、年少勤労者を守り得ない状態にありますことを申上げて、政府の御所見をお聞きしたいと思うものでございます。(拍手)事態は基準法を守らせる係の監督官の人数が工場の数に比べまして余りにも少いことに起つておるのでございます。今日届出の工場は五十九万二千五百何がしございまして、監督官がたつた二千五百九十五人であります。これでは一人の受持が二百八十六工場、四年に一度しか見廻われない形になつております。この結果、監督官は奔命に疲れて過労のために病気続出の現状でございます。その罹病率が公務員百人に対しまして、最高裁判所のかたですと六・一人の割合であり、国税庁のかたですと七・三人、農地委員会のかたですと九・六人、そうして労働基準局の監督のかたがたは十五人乃至十六人おるわけでございます。これに基きましても如何に過労に……奔命に疲れているか、こういうわけでございますからして、各工場はまあいわば違反のし放題になりがちである。年間二十万工場ほどの巡視で、その違反が百二十万五千余件ありと報告されておりまして、恐らく全工場では三百十三万余件ぐらいに推定されるのではないか。況んや先月調査されました国勢調査での増加見込の工場数が十四万ほど殖えておることでございますから、計七十四万余工場ともなりますれば、事は甚だ大変でございます。だが、もつと重大なことは、この莫大な工場におきましての違反の件数は、それだけ勤労者を資本の重圧にさらしている結果になつていることでございます。(拍手)而も今特需景気の王座に立つております繊維関係で働いておりますところの五十万婦人年少勤労者が、この工場の悪條件にさらされながら、身を挺してその使命を果しておるのでございます。これは、政府は若しや今特需景気に沸き返つております繊維界のその歓声に気を取られまして、この歓声の実体を基準法の守られない裸工場で日夜稼ぎ出しておる五十万婦人年少労働者の大きな犠牲を頬被りして見送つてしまうのじやないでしようか。(拍手)でなければ、速かに監督官の数を増し、法の実施を守らせまして、違反なき明るい工場にして、快く安心して勤労者を働かせようとお思いにはなりませんか。保利労働大臣の御所見をお尋ねいたしたいと存じます。
 尚又、基準法の実施に関しまして私は文部大臣に申上げたいと思います。日本の基準法も、婦人の母性を尊重して、勤労婦人に産前産後の有給休暇を認めております。(「委員会でやれ」と呼ぶ者あり)ところで文部省は学校の定員定額制実施に当りまして、養護教員や休職保養教員のためには増定員をいたしまして予算が通つておりますのに、産前産後休養の教員だけを取残して今日に至つております。勿論今度の補正予算にも考慮されておりません。女子教員の分娩は昨年二十四年度で二万一千人ばかりあります。法の上では産休を認められながら、人の裏付けをされないこの妊娠教員たちは、代り手のない産休をしては生徒がかわいそうだと大部分は無理をして出勤しております。ですから女教員には流産だの早産だの難産などが多いのであります。でなければ、他の方々に済まないと、心弱い妊娠教員は自分の経済生活を犠牲にして退職します。男の教員よりもずつと女の教員が勤続年数の短かいのも一つはこういうこともあるのです。一方には学校長も女教員の産休を喜ばず、未婚者の就任を歓迎するかのごとき傾きさえ出て来ております。これが又妊娠教員を居辛くし、一層退職へと追込んでおります。裏付けのない産休が女子教員をこういう窮地に追込んでおりますことを政府は知つておいでになりましようか。而もこれが解決は一にかかつて天野文部大臣が産休の裏付けを学校の定員定額に組込むことのみにあり、又池田大蔵大臣はこれを予算上認めることのみであります。(拍手)にも拘わらず女教員の産休を尚も裏付けないままに据え置いて、年々二万一千何がしの妊娠教員に苦悩を強いておる限り、私はここにも吉田内閣の封建性、非民主性ありと非難するものも止むを得ないのでございます。(拍手)池田、天野両大臣の御所見をお聞かせ願います。
 尚、勤労婦人に関しまして、全国十一万何がしの看護婦の問題が今日看護婦の人たちを悩ませております。看護婦の制度が変り、差しずめ既成看護婦が、既得権を持つている看護婦がどういう立場に置かれているか。あの過労の中から先ず国家試験を受けなければ一人前として立てない。それらにつきましての問題につきまして、最も親切な立場から、どう既成看護婦を立たせて行くかということにつきましての厚生大臣のお考えを、一言全国看護婦のためにお聞かせ願いたいのでございます。
 私は次に平衡交付金が三十万收容兒童を踏み潰しかけている事実につきまして吉田総理に申上げたいと存じます。今年度から地方自治確立育成のために地方財政平衡交付金制を実施いたしましたことは一応尤もな次第であります。だからと言つて一律に交付金に置き替えることはどうかという論議の声がございましたが、その一つが兒童福祉法によりますところの施設收容兒童のための兒童保護費でありました。同じ性質のものである生活保護費が交付金の枠外に補助費として置かれまして適正に措置されておりますのに、この兒童保護費が枠内に置かれまして、ともすれば政治的発言力の強い部面から押されがちな地方財政に任されたのでございます。果せるかな、過去四ケ月間にすでに著しい支障が来たしておりますことを私は実地視察で発見し、又都道府県からの報告が示しております。保護費の未拂いや新らしい保護兒童の認定や、新施設認可の取止めや、入所兒童の制限や、富裕兒への置き替えや、さては保護費が低下し出したというふうな事柄で、施設に收容されておりますところの孤兒、或いは浮浪兒、或いは棄子、精神薄弱児、盲聾唖兒など、三十万保護兒童の生活が今脅かされております。尚、引続いて保護の手を待つておりますところの四十万の兒童への新らしい措置の手も引込められて行く憐れな事態の出現でございます。これは又延いては、そこに働く志の清純な、聖職に甘んずる多くの保姆、世話婦の人々の職場を狹め、生活を脅かすことででもあるのでございます。或いは人が申しましよう。市町村当局も新制度への切り換えでまだ慣れないだろう、長い目で見ておれば将来はうまく行くに違いないと申します。だが兒童は生きております。その日の生活乃至生命線を確保する必要がございます。地方自治能力の成熟するその時期まで待つてはいられないものがあります。これは何としても速かに兒童の保護費は生活保護費と同じ平衡交付金の枠から外すべきではないでしようか。それとも政府は三十万保護兒童が平衡交付金に押し潰されかけている事態から頬被りで行こうとでも言うのでありましようか。当面の責任者の黒川厚生大臣はどうお考えでしよう。岡野国務大臣、池田大蔵大臣の御所見を切にお願いいたしたいと思います。
 次に私の心を打ちますものは、六十一万の未亡人が女の細腕に百二十五万の幼兒を抱えまして、このインフレの嵐の中を冬将軍と顔を合せて立つておりますところの日本の未亡人世帯の問題でございます。生活保護法による被保護世帯の四五%は母子世帯でありますことは、未亡人の少くとも三分の一はこの法律にともかく最低線を支えられていることにおきまして、一応は落着いて来ましたが、今や次の段階といたしまして二つの問題を当面要求いたしております。一つは、母は子供の育成にその命を賭けております。そのためにも積極的な自立的な生活の確立を望んで止みません。このためにも先ず未亡人家庭への育英資金の大幅な開放と生業資金の貸付を積極的に考えらるべきではないでしようか。ところが育英資金につきましては、被生活保護者には、よしや優秀な子であつても、高校、大学への途が閉されております。又、生業資金におきましても、その貸付條件が返済の見込のある者か一定の生活特技のある者というようなものでございますので、未亡人たちには余り巖し過ぎると申しますか、未亡人たちの能力では高い所に、手の届かない所にありますので、結局は水上の月と眺めてしまうよりほかありません。未亡人の道を次へ開くために、この二つの面は何とか打開しなければなりません。このことにつきまして厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 更に私の黙視するに忍びませんことは、この未亡人世帶を通して見ました日本の女の細腕につきまして、男の細腕という言葉はありません。この女の細腕につきましてでございます。生活技能を一人前に持つていない者は日本で九五%と言われております。ここに未亡人世帯への対策が、資金貸付の前に先ず生業の手ほどきから始められねばならない、手数のかかるものであります。未亡人の生活無能力へのこの不安焦燥の結果は、遂に母子心中に終るか子持ち夜の女に落ちて行くのであります。而も日本にはすべての母と子の生活を制限なく守り抜く法の措置もございません。どこの国にも子供を抱えた未亡人世帶はありますが、多くの国はすでに社会保障制度に盛り込まれてその母と子は守られている上に、母なる女性は向らかの生活技能を一人前に持たされていること九五%であることは、その国の未亡人対策が日本の場合と雲泥の差の難易があることが知らされます。けれども日本の女性が生れながらにして無能力なのではありません。久しきに亘つて三従の教えの枠の中に生きるように平人前と育てられて来た結果であります。これは又、今までの日本の女子教育と職業教育の欠陷によると思いますが、天野文部大臣は何とお考えでありましようか。近頃文部省は、司令部の示唆もありまして、職業教育について大きな展開を画しているらしく、学校共同実習所の発表はその一つとして好もしい限りでありますが、事、女子の職業教育に関する限り、その施策が甚だ旧態依然たる恨みありとしばしば聞くのであります。未亡人生活はいつの世にもある女性の人生行路の一駒です。これからの未亡人対策の一環としても文部省の女子の職業教育は重要だと思うのでありますが、如何なる施策を立て、如何に考えておられるのか。未亡人及び全婦人のために天野文部大臣の御所見をお伺いいたします。
 次に私共の見付けます問題は、多子人工妊婦中絶に婦人が今日さらされまして、余りに多くさらされ過ぎておることにつきましての危險を申上げます。多子は貧困に追い込む大きな原因の一つであることは言うまでもありません。その上、日本は退つ引きならぬ人口問題解決のためにも、多子問題に当面しています。前国会で人工妊娠中絶が提案されていましたが、大衆はすでに自分の生活を守るために保健所を通して、妊娠中絶を著々実行しております。即ち昭和二十二年には十万人程ありましたのが、昭和二十四年には二十四万人でありました。ところが二十五年度は上半期ですでに二十二万を超えて、恐らく年間五十万人を超えるであろうと厚生省は推定いたしております。それらは皆、工員、勤め人、公務員、失業者、日雇者等々の妻たちでありまして、経済上の理由四五%、他は「つわり」、結核などの病気だと保健所は報告いたしております。これらが一応妊娠に関係いたしましての好もしい展開であるのでありますが、こうして妊娠中絶にだけ任せて置きますのは又由々しい結果を招来することを私は厚生大臣にお考え願いたいと思うものであります。妊娠は母性の自然の生理現象でありまして、中絶は母体にとつて不自然であります。技術的にも衛生的にも軽々しい妊娠中絶は母体を損い、弱め、余病を起し易くし、或いは死にさえ至らしめます。でなければ直ぐ次の妊娠中絶をして又次の中絶を必要とします。無策のままいつまでもこの妊娠中絶のみにさらして置きますことは母性の浪費であり、母性の冒涜でさえあると思います。もはや今日は妊娠調節に重点を置いた強い厚生行政に入るべきではないかと思います。(拍手)にも拘わらず末端実践機関でありますところの保健所では、避妊への指導啓蒙が極めて手薄であります。これは本省の決意の弱さが反映しているので、本省がはずめば末端もはずんで来ます。そうして女性の母性はますます守られると思います。黒川厚生大臣は、この分り切つた母性の浪費をこれからも尚引続いて日本の女性に堪え忍ばせようとなさるのでありましようか。それとも妊娠調節への新らしい計画をお持ちでありましようか。日本の全婦人のために、分けても働く工場農村婦人のために熱意ある御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、現政府が労働省の婦人少年局の存在を二度までも揺すぶり続ける事態を通じて、現政府の婦人少年者への無理解な封建性を強く指摘いたしたいと思います。(拍手)政府は前にも行政機構の整理をして冗費を省くというので、この局を全面的に取止めようとしたのでありましたが、今度は聞くところによりますと他省へ分散吸收せしめようとするというのだそうであります。取止め、分散吸收必ずしも悪いとは言われません。だが事にもより物にもよりけりであります。婦人少年局が日本の民主化にどんな使命を担つて設置されたかが正しく理解されたならば、取止めも分散吸收も断じてできるものではないと思います。この局は婦人労働、年少労働及び婦人課の三課から成る今は小さい局ではありますが、その任務は甚だ高邁雄健であります。先ず働く婦人の健康と母性を保護し、地位の向上に努めると共に、働く少年少女を過重な労働から保護し、そして男尊女卑の封建的弊風を打破して、婦人の社会的、経済的地位の向上を図ろうと目指しております。そのために先ず調査資料を收集しつつ一二歩来たのでありますが、早くも分散されて、婦人課は厚生省の兒童局へ、他の二課は基準監督局へ吸收されたのでは、如上の使命が果してどこで達成されるのでありましようか。(拍手)性格が違い、社会的感覚の違う所では別のものになつてしまうより外はありません。保利労働大臣はそうはお思いになりませんか。婦人局は三年前労働省の設置と同時に置かれたのでありますが、こうして働く女子年少者の問題が国家的に取上げられ、国家行政機構の中に一局を設けられましたことは、我が国有史以来初めてのことであります。(拍手)由来、女子年少労働者の低賃金とと悪な労働條件を以て、世界市場に注目を攻撃の的となり、又封建的差別思想の根強さを以て世界に知られていたところの日本にとりましては、これは又真に画期的なことであります。ここにおいて婦人少年局の社会史的な、文化史的な意義の深さを感じます。保利労働大臣はそうお思いになりませんか。(拍手)この使命を達成する第一歩として、婦人少年労働者の生活、労働の実態調査が少年局でなされておりますが、これが又日本に曾てない立派な記録でありまして、見かけは眇たる小冊子でありますが、日本の婦人解放の貴重なる科学的礎石の一つ々々であります。全くこの局の任務はかかつて又今後にあるのでありまして、解消し又分散するどころか、むしろますます強化して、婦人少年者に対する総合的な行政を推進する鉄の枢軸とさえなすべきだと思います。(拍手)これを未だに尚、揺さぶり続けている現政府の御見解はどうか。保利労働大臣にしつかりとお伺いしたいと思います。
 最後に社会保障制度につきましての政府のあり方について質問いたします。人間は働けるときと働けないときがあります。働ける人と働けない人があります。失業、老齢、病気等で働けなければ收入はありません。收入がなければ生活ができません。生活のできないことが人間の最大悲惨事であります。この悲惨事をなくして、いつでもみんなの生活を守り、生活を保障する政治、この政治が世界の新らしい政治の流れであります。社会保障制度こそがその具体案なのであります。然るに吉田総理大臣はこの方面にも積極的なる発言の一つもなかつたことは残念であります。(拍手)社会保障制度審議会の審議案……委員会からすでに出ている答申勧告案を、政府はいつ頃からどの程度に実施するおつもりでありましようか。日本の婦人は先程も申上げましたように、九五%まで、健康であつても、職場があつても一人前に働く力を持つていませんので、生活無能力者にせられて来ましたから、常に生活に脅かされ、生活保護者に卑屈になりがちでございます。臍繰金等をいつの頃からか作るようにさえなり果てました。(笑声)何という情ないことでございましよう。だから社会保障制度は婦人の生活に生命の火をつけるものといたしまして、独立人への心構えに入る一歩といたしまして、どんなに期待していたか知れないのであります。社会保障制度によりまして一番救われますのは、現段階の日本におきましての婦人の生活であります。多数の子供を抱えておつても子供年金がある、未亡人になつて子供を多勢抱えていても寡婦年金、遺兒年金がある、老年になつても養老年金がある、これらの社会保障による生活支柱は女の心を落着けまして、嫁や婿に必要以上に機嫌をとつたり、必要以上に虚勢を張つたりすることは要らなくなつて、女同士の応待がどんなに自然になることでしよう。けれども今度の審議会の勧告案は、子供年金は被用者にも一般国民にも省かれております。寡婦年金、遺兒年金、養老年金は、一般国民には若し財政の余裕があつたらと條件付きでありまして、多分見込はありますまい。これを知つて婦人はどんなにがつかりしたか知れませせん。被用者の家族以外の大部分の婦人、多数の婦人は又もや取残されたのであります。国民の半数を占める婦人、その婦人の大部分を取残した社会保障制度は婦人にとつては甚だ意味が薄いではありませんか。そんなに意味の軽い今度の案を現政府は又六掛ぐらいにしか実行しないだろうと聞いておりますが、それは本当でありましようか。これこそ吉田総理大臣からしつかりと、その肝をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 一体、六十一万未亡人と百二十五万子供との母子家庭の生活は、生活保護法の外は何で守ることになるのでしよう。同じ未亡人であるのに、欧米諸国の未亡人に比べて日本の方々は気の毒でなりません。せめてこの方々だけでも何とか方法を講ずる途はないものでありましようか。それから又、子供は遺児に限らず、すべての子供は全く育成する大人の責任、その責任におきまして、成るべく早く子供年金をとり上げて行くつもりはありませんか。この二つは黒川厚生大臣から御所見をお伺いいたしたいと思います。
 そうして一方には、社会保障を強く裏付けるものといたしまして、並行して次のことを一層推進することを附加えたいと思います。
 教育保障といたしまして、義務教育費の全額国庫負担と育英金の拡充、保育所、乳児院の増設、これらの国康負担によりまして、子供に関する身体と能力とを国家が十分に支えて行きますならば、大きな社会保障制度への強みでございます。又栄養保障として、中小学校給食の国庫負担、又簡素にして能率的な集団住宅、共同住宅の国庫負担の住宅政策、これらの保障は、又間接に婦人の生活、分けても勤労婦人の生活を簡素化し、能率化して、婦人が当面しておりますところの生活の重圧から解放することをも意味いたしておりまするが、社会保障制度はこの面におきましても将来の婦人を一人前に立たせる大きな救いの道であります。併し最もそれらの徹底的に考えられなければならぬことは、完全雇用であり、最低賃金の制定でありますが、これはどうしても一歩々々政府に取上げて貰わなければならぬことでありまして、ここまで参りますまでに六掛の現政府が幾年かかりますことか。併し今のところ、この審議会の答申に、勧告、少くとも六掛でなく、一〇〇%のそこから出発することを現政府に要請したいと思います。
 以上の事柄は小事でありますかのごとくでありますが、実は一連の常に婦人と子供を立ちすくませておりますところの大きな政治の取残しであります。この事態に対しましての吉田内閣の責任を以上で以て指摘したいと思つた次第でございます。私の質問はこれで終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。婦人、兒童の問題について御意見を詳細承わたのでありますが、ただ私がここに申したいことは、現政府がこの婦人子供の問題について甚だ冷淡だというお話でありますが、我々としてはそう考えておらないのであります。又関係大臣からしての答弁によつて詳細御承知を願いたいと思います。又社会保障制度は、審議会の勧告、答申に基いて、目下内閣において慎重審議いたしておりまするから、そのうち成案を得で御報告がでると思います。(拍手)
   〔国務大臣保利茂君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(保利茂君) 勤労婦人、年少労働者の問題が如何に重要であるかという河崎さんの御意見には、私全く同感でございます。従いまして、特にこの少年労働者は次の産業人の中堅となるべき方々でありますから、この少年労働者諸君の保護につきましては、政府としても万全の措置を講じて行かなければいけないと考えております。さような意味からいたしまして、労働省の婦人少年局のあり方があのままでよいかどうかということは検討を要すべきものがあると存じますけれども、勤労婦人、少年労働者を対象とする行政機構は、更に今日よりも拡充強化せられることを私は痛感いたしております。
 次に朝鮮動乱後における基準法の実施状況でございますが、労働基準法は実施せられましてから三年以上を経過しまして、経営者、労働者、労資双方とも基準法の趣旨を広く理解せらるようになりましたことは、今日広く一般に認められるところであろうと存じます。そういう上からいたしましても、戰前の労働者の労働條件と今日におきまする基準法実施以来の労働條件とには、全く隔世の感があると申しても差支えないのではないかと思ひます。特需増産の関係で基準法違反が非常に多くなつておるのではないかということでございますが、特需関係におきましても基準法の枠内で十分運用できるのでございまして、基準法の遵守を飽くまで努めておるような次第でございます。尚、基準法実施以来三年余を経過しまして、いろいろの面において基準法自体についても私は再検討をなすべき段階に来ておるものではないかと思いまして、只今私の手許において研究をいたしておるような次第でございます。(拍手、「知らないのは労働大臣だけらしいよ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。三十万になんなんといたしまする收容兒童の收容措置につきましては、従来政府の補助金でやつておつたのが、今年度より地方財政平衡交付金に入りましたために、地方によりましては、その経費の支出が遅れたところもあると思うのであります。併しこれは平衡交付金の使い方につきまして慣れて参りますれば、私は適当な措置がとられるのではないかと思つております。(「それまで待つておられません」と呼ぶ者あり)尚、女教員の待遇につきましては、一般義務教育費の問題と関連いたしまして、できるだけの経費を出すように政府としてはいたしておるのであります。何分にも義務教育費は御承知の通り平衡交付金に入れ込みましたために、政府のほうから、平衡交付金のうち、これだけを義務教育費にしろという指令はできないわけであるのであります。従いまして、地方財政委員会におき、或いは各府県におきましては、教育言葉等からいろいろな意見が出まして、適当に処理をされると考えておるのであります。従いまして、将来この制度について、標準義務教育費を置くとか或いは生活保護費のように国の費用で出すとか、こういう問題については、今後相当研究をして行かなければならぬ問題だと考えております。(拍手)
   〔国務大臣黒川武雄君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(黒川武雄君) 河崎議員にお答えいたします。
 御質問の第一点でありますが、保健婦助産婦看護婦法により、看護婦につきましては、新たに甲種、乙種看護婦に区分して、それぞれ試験制度と任務が定められておりますが、医療従業者としての看護婦の資質の向上のために、これは必要であると存じます。既存の看護婦につきましては、新法によりまして試験を受けるとこともできますし、又旧法による看護婦として業務を継続することができます。でございますので、既得権の侵害ではないと存じます。尚、既存の看護婦の処置につきましては、目下看護婦制度改善の一環といたしまして考慮いたしております。
 質問の第二点の兒童保護費の問題でありますが、これは従来国庫補助金の形式をとつておりましたものが、本年度からその大部分の約二十億が平衡交付金に組入れられ、地方に交付されることになつてたのであります。現在までこの交付金の制度による運営の状況を見ますと、お説の通りに、各府県市町村ともいろいろな困難な問題が起つておりまして、行政運用上甚だ困却しております。兒童保護費の本質的性質からいたしまして、生活保護同様に、従来通りの国庫補助金の形式によりますよう極力努力中でございますことをお答えいたします。
 第三点の未亡人対策の強化につきましては、第五国会における決議の趣旨にも副いまして、生活扶助、教育扶助、授産事業等の強化、母子福祉施設の整備、生産資金の貸出し等に努力いたしておるのでありまして、職業開拓、子女育英等、その他の関係につきましては、関係各省と緊密な連絡を図つておるのでございます。
 第四点の御質問につきましては、産兒制限の問題でありますが、最近妊娠中絶は非常な勢いで増加いたしておるのはお説の通りでございまして、昨年は約二十四万件でありましたところが、本年度は約その倍、五十万件に上ることが予想されるのでございます。この妊娠中絶が母体に及ぼします悪影響から考えまして、できる限り受胎調節の方法による方が適当であると存じます。政府といたしましては、優生結婚相談所、保健所等によりまして、各人の現実的要求に応じて健全な受胎調節の知識の普及及び指導に努力いたしたいと思いますが、現在のところ、そのお説の通り十分にその思想の普及ができかねておりますので、極力努力いたしたいと存ずる次第でございます。第五の社会保障制度の問題につきましては、先般、社会保障審議会から勧告がございましたので、政府におきましては直ちに社会保障閣僚懇談会を設けまして、鋭意勧告の線に沿いまして実施できますように努力中でございます。厚生省といたしましては、社会保險の整備を図りますと共に、生活保護、兒童保護等、社会福祉部門の内容を更に充実し、衛生面においては特に結核対策を強力に推進するという所存でございます。右お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣天野貞祐登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(天野貞祐君) 只今御質問の第一は産休の問題でございますが、これにつきましては、従来お説のような不完全な点があつたことを非常に遺憾と思います。それで、このたび平衡交付金の制度ができましたので、私のほうとしては、是非その中からして補助教員の費用を出すようにして、そうしてどうか産休が十分にできますように、教育長のほうに本省のほうから申入れをいたしております。それから第二の点は女性の職業教育のことでございますが、一般に、御承知のように今は男性と女性というような区別はすべての領域において取拂われておつて、教育の社会においても何らの区別もございません。それにつきまして、例えば中学校でございますというと職業家庭科、或いは高等学校でございますと職業技芸科というようなものがありまして、而もその学科を選ぶ生徒が非常に多いという状況でございます。それから又女子短期大学などにおいても、それぞれそういう将来に備えた技芸を授けるという科目がございまして、短期大学は女子の方がむしろ盛んでございます。或いは又社会といたしましては、いろいろな婦人講座とか、そういうようなものを設けまして、女子の将来に備えるということは十分なる配慮をいたしつつありますし、又将来もそういう点に十分考慮をいたす考えでございます。(拍手)
#17
○議長(佐藤尚武君) 岡野国務大臣は後刻出席の際答弁される趣きであります。堀越儀郎君。
    ―――――――――――――
   〔堀越儀郎君登壇、拍手〕
#18
○堀越儀郎君 私は我が国の教育に関して最も緊要と考えられる左の三点について、内閣総理大臣、文部大臣、地方自治庁長官、建設大臣、厚生大臣並びに大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。
 即ち第一、地方財政と教育費の関係、第二、災害復旧の問題、第三、教育施設とその環境の問題であります。
 御承知のように教育基本法の冒頭において、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」と宣言しているのでありまするが、終戰以来果してその成果が挙げられているでありましようか。当国会の内外において論ぜられ、或いは教育振興の決議案として政府に重大なる反省を促し、或いは又世論の強力なる擡頭を来たしているのであります。このときに当りまして、総理は過般、新聞協会懇談会の席上におきまして、次のように文教の重要性を開陳しておられるのであります。即ち「我が国が、世界平和破壊の汚名を負い歴史を傷けたのは、過去の教育に欠陷があつた。われらが、今日の逆境に転落したゆえんは、單に経済力の不足や領土の縮減だけによるのでなく、精神生活の面においても、欠けるところのあつたことを認めなければ、復興の政策に錯誤を来たす虞れがある。と述べ、更にその方策として「青少年に独立の精神を植付け、これに並行して、義務教育の完備、奨学制度の拡充、学術研究の奨励を行い、自立日本の建設の基礎としたい。」という決意を明らかにしておられるのであります。今回の臨時国会におきましても、「国民の精神的方面の作興即ち文教の振興の重要なる今日に如くものはない」と述べておられる。更に、「この際、教育に思いをいたし、健全なる国民精神の涵養を図るべきであると固く信ずる」と政見を発表しておられるのであります。所管大臣はもとより、閣僚諸君におかれましても、教育の重要性が日本再建の第一義であることの認識に立つている総理の所信と完全なる一致を見ていると了解するのでありまして、私もその所信に賛意を表するのであります。かくのごとき政府の所信に拘わらず、教育の実態は果してどうでありましようか。もとより教育の事業は急速なる成果を期待すべきではありませんけれども、少くともその施策が具現したかどうかは、国民の如何なる者もひとしく重大なる関心を持つているのでありまして、この点から考えまするなれば、見解や方針の発表に終らないまでも、空念仏に近いかの印象を国民に與えているのではないか。こういうことを私はここに申さなければならないことを非常に遺憾と思つているのであります。この観点から政府の施策について重要なる問題をお聞きしたいのであります。
 先ず第一に、政府が教育の重要性を如何に声明いたしましても、初等、中等の教育が先ず以て財政的に確保されなければ單なる声明に終ることは申すまでもないのであります。果して政府の施策がこれを保障しているでありましようか。私は現実の事例を引証いたしまして、政府の深甚なる反省を促したいと思うのであります。政府は地方財政平衡付金制度の運用によつて、地方自治の円滑なる運営と、地方財政の確保とを図ると申すのでありまするが、現実にその実情を調査いたしますと、少くとも教育費に関する限りはその期待を著しく裏切るものがあるのであります。政府は財政基準需要額と財政基準歳入額との差額を目途といたしまして、地方財政平衡交付金の交付をなし、その穴を埋めることといたしまして、これにて尚且つ不足する歳出財源は交付金の一〇%の特別交付金の交付をすると共に、当該地方財政收入の三〇%を財源として必要なる歳出に当てるというのでありまするが、ここに問題の核心があるのであります。これは地方歳入が一〇〇%確保できるということが前提となつているのでありまするが、地方歳入が果して調定額にまで達し得る見込があるのでありましようか。私の実地に調査した某県におきましては、第一期の調定額六億八千九百余万円に対して、收入額が十月三十一日現在において二億二千九百十二万円にしか過ぎない。即ち三三%の徴税成績であります。他の諸県について見ますと、八月末現在において二五%、二一%、二〇%、甚だしきに至りましては一六%という所さえもあつた。これを全国的に見ますれば二三%という実情であります。更に又これを某市について見ますれば、十月末現在において調定額に対して六一%に過ぎない現状でありまするし、東京都下各区の住民税について見ますと、十一月十八日の新聞報道によりますれば、第一期分は平均六三%に過ぎないというのであります。かくのごとき現状を以てすれば一〇〇%の地方歳入を見込むことは極めて困難でありまして、従つて又その七〇%を基準財政收入に見積り、残りの三〇%を以て先に申しました不足歳出の財源に見込むことは、恰かも空中楼閣を築くに等しいということを申上げなければならないと思うのであります。仮に八〇%の徴税成績を挙げることができるといたしましても、僅かに一〇%の余裕財源に過ぎないのであります。そこで私の最も懸念するところは、地方教育費の甚だしい不足を生じ、延いては初等、中等の教育は勿論、その他の文教施策に著しい欠陷を来たし、教育の根本が崩れる虞れがあるという点であります。第七国会において全会一致を以て可決されました義務教育費確保に関する決議、これに対して政府は重大なる責任を感ずべきであります。又或る県においては、教育費が基準財政需要額として見積られておる額に対して四億五千万円の不足を来たすことになり、その財源について甚だしい苦慮をしておるということであります。これは実に容易ならざる問題であります。而もそれを補填するために、止むなく国民の健全なる精神の復興に支障ありと非難されておる競輪による收入の増加に仰がざるを得ないという、極言いたしますれば博打のてら銭で教育費の一端を補おうということであります。これでは総理が精神の作興を如何に叫んでも、その成果は砂上の楼閣であり、さなくば五彩の虹に過ぎないのではありますまいか。(拍手)
 更に他の某県においては、県税徴收成績、九月十三日現在、第一期分三九%、市町村税第二期分徴收成績三九%に過ぎないのであります。而してその県の教育費の基準需要額として認められました額に対して、教育費の不足額は二億円に近いのであります。而も教育費は地方財政の三六%又はそれ以上を占め、第一位にあるのでありますから、教育費が最も被害を蒙むることになるのであります。況んや教育に関する予算の計上についても、往々にして他の経費に優先することなく、むしろ直接実績の現われる他の経費に優先されることがないと誰が断言できましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これらの影響が如何に教育の振興を妨げるかは敢て言うに及ばず、教育費の不足はPTAの寄附によつて賄わなければならないということになり、そのために教員俸給その他の減額、遅拂を来たし、教員の質の低下は教育効果の低下を見るに至ることは実に必然と申さねばならないのであります。かかる教育費確保の不可能を来たす重大なる問題を看過するにおいては、平素教育に熱心なりとの政府の見解も、総理の施政方針の演説も、皆これ單なるゼスチユアに過ぎないと非難せられても弁解の余地はないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)国家再建はおろか、実に悲しむべき事態の発生を見ざるを得ないであろうということを私は深く憂慮するのであります。
 以上に関連して是非私のお尋ねしたいことは、今回の補正予算において増額されました三十五億円の地方財政平衡交付金の内容についてであります。私の懸念するところは、義務教育に従事しておりまする教員に対する昨年度末手当の半額即ち七億余円を政府において本年度負担すると公約されているのでありまするが、この七億円は一応内定していた文部省所管の経費から削除されているのであります。この七億円は三十五億の補正追加の地方財政平衡交付金中に含まれているのでありまするかどうか。若しこれが考慮されていないとすれば、地方の財政計画に重大なる影響を及ぼすことは勿論、本年度の教員に対する年末手当等の支給にも極めて悪い結果を招来すると思いまするので、この点、大蔵大臣、地方自治庁長官の明答を希望するものであります。
 第二に災害復旧の問題でありまするが、二十五年度末において六三制実施について、最低限度の施設を目標としても、実に八十一万坪に達する教室の不定を来たすのでありまするが、而も僅少の予算しか計上できず、終戰五年を経過して、尚且つかくのごとき状態でありまするのに、先に襲来したジエーン及びキジア台風による教育施設の被害は、中破以上だけで実に百十五万余坪に達しておるのであります。これが復旧は地方財政又は私立学校のよくするところではありませんので、国庫のこれが復旧に要する支出として、文部当局の緊急要求は三十六億余円に及ぶのであつて、その緊急性を考慮の上、文部当局はこれを優先する必要から、六三制経費の補正要求さえも差控えたというのでありまするが、これに対し補正予算としては僅かに総額二億四千万円、そのうち公立学校として一億八千万円に過ぎない。私立学校復旧低利資金は全然計上されていないのであります。これを以て教育の振興なかんずく義務教育に特に留意すると言われる総理の心境が那辺にあるのか、了解に苦しむのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)
 以上の二点は、主として政府の教育に対する物的施策、なかんずく予算に関する事項でありまするが、第三番目にお伺いいたしたい点は、教育施設の環境の整備ということであります。総理が言われる、国の将来を担うべき青少年の純真なる心を正しい方向に伸ばすことが重要であるというこの総理の考えに対して、私は満腔の敬意を表するのでありまするが、果してこの総理の意図が施策の上に現われているか、行き届かぬ点がないかということを十分考察されたいと思うのであります。統計の示すところによりますると、二十歳未満の者の犯罪は、二十五年上半期において七万六千三百九十八名に達し、昨年度同期の六万一千五百五名に対して実に一万四千八百九十三名の増加、即ち二四%の増加率であります。これは昨日同僚岡本議員も指摘したところであります。一般成人の刑法犯が昨年同期の二十一万百四十五名に対し、本年は二十二万六千百七十二名、即ち六・六%の増加であるのに比べまして、青少年の犯罪が如何に増加しているかを物語つていると申さねばなりません。而もその内容を検討いたしますると、猥褻の罪を第一とし、これに類するものが最も多いのであります。尚又青少年のうち十四歳以下の者の犯罪は、昨年同期に比して七五%の増加であります。
 これによる結論としては、成人よりも青少年の犯罪が著しく増加していること、猥褻行為のごとき、風紀に関係ある犯罪が多いこと、十四歳以下即ち六三制在学中の者の増加が著しいという、この三点に帰着いたします。これは十四歳以下即ち中小学校在学中であるべき青少年を如何にして風紀の頽廃から護るかということが、第一に緊急の対策として講じられなければならないことを如実に示しているのであります。これに対して或いは補導の諸施設を講ずることも必要であり、又各種の方策もおありでありましようが、根本においては又、社会悪の根源たる国民生活の不安定を逐次排除するために、経済の安定、産業の復興を企図せられることも緊要と思います。併しながら私の考えといたしましては、総理のいわゆる青少年の純真なる心の方向を伸ばす、このために、又文相の言われる国民のボンサンスの向上のために、先ず以て青少年の教育の場をよりよく保つことが第一であると思うのであります。このことから、六三制校舎の最大限度速かに、最小必要限度にまで充実することの必要から、災害復旧に関しても先ず政府の所信を質したのでありますが、尚この外に学校を風紀の紊乱する慮れある状況から護ること、即ちその具体的な重要事項の一つとして、青少年の風紀頽廃を招来し、延いてはその犯罪さえも、もたらすような施設の排除が徹底的に行わなければならぬと思うのであります。
 最近における事例としては、東京都内の或る地区において、小学校と極めて近接した所へ風紀を紊す虞れのある業態を開始するであろうことが極めて明白である集団建築、並びに風俗に関する営業を正式に許可されたことであります。この集団的建築の所在地は、大体住宅地区と申すべき場所でありまして、近距離の地域に十数の学校が存在しておるのであります。地元住民の猛烈なる反対と正しき輿論の支持とによつて漸く解決したごとくでありますが、これは建築又は営業所の許可に当つても、單に法規に違反しないからという、法規の形式的解釈と、その運用の不適正とが、直接的には右のような問題を起す基となつておりますが、更に根本に遡つて、政府の施策全般がかくのごとき問題について各省間の連絡調整がとれておらないこと、各機関が別々の機能を果して事足れりとしていること、当路者が常に法規という狹い枠の中に閉じこもつて自己の責任を免かれんとし、広い視野と高い識見に立つて正当なる判断を下す訓練に欠けていることに基因すると申さねばなりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)單に法規の制定だけの問題ではありません。如何にすれば総理のいわゆる青少年の純真な心を伸ばすために、又如何にすればその教育の主体を守り得るかについて、政府は実に愼重にして周到なる考慮を抗う必要があると信ずるものであります。私がかく切言するゆえんのものは、決して東京都内の一地区の問題でなく、私の調べたところによりますれば、全国各地において、教育施設若しは住宅区域に近接して、集団的に軽飲食、喫茶等の業態に名を借りて開業し、而も風紀を紊乱して良民の顰蹙を招き、青少年の純真を傷けつつある同工異曲の事例を発見するからであります。
 もとより国民全般が文相の言われるボンサンスを持つように心掛け、正しい輿論が擡頭することによつて、かようなことの起らぬようになるし、又しなければならないことは、私もこの点は了解するのでありますが、同時に政府はその施策の中において、青少年の犯罪の増加が著しいこと、而も猥褻罪の多いこと、なかんずく十四歳未満の兒童がその多数を占めていることに思いをいたし、その根源を断つ方策、特に教育の場を風紀紊乱から守ることの施策を真劍に考慮される必要があるのではないか。講和近しの朗報を聞き、講和の問題のあり方或いは希望については論議せられましたが、民主国家として文化国家として国際復帰すべきこの受入態勢に対して重要なる文教問題が、総理の信念にも拘わらず全体の施策に現われないことは、文教に非常なる関心を持つ私の遺憾とする点であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 以上の点について総理初め、先程申しました関係閣僚の懇切なる誠意ある御答弁を得たいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 文教の重要性については、内閣、政府において特に重要に考えて、いろいろ予算その他に甚だ制限せられておる財政であるにも拘わらず、又緊縮を主としておる財政状態にも拘わらず、文教に関しては成るべく予算の許す限り支出したいと考えて、相当努力いたしたのであります。詳細の点については当局大臣からお話がありましようが、政府として文教に最も重要性を認めていることは勿論でありますが、同時に予算の裏付けについても十分努力したが、今日においてこれが最大限であつて、決してなおざりにいたしておるのではないということを御承知を願いたい。(「答弁が足りない」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(天野貞祐君) 堀越議員のおつしやることは私は一々御同感でございます。自分が無力にして、絶えず起つて来る問題に追いかけられて、十分そういう点にまだ力をいたしてないということを誠に申訳なく思うのでございます。ただこの災害復旧も不十分でございますけれども、これは本年度のものは必ず本年度で解決するということに従来なつておりませんから、場合によつては来年度に亘つてもこれは十分復旧いたしたい考えであります。
 それから青少年の問題につきましては、実にこれは憂うべきことだと思います。いろいろの方面にその原因がありますので、例えば青少年が自分はどこの国の者だかさつぱり自覚もない。又社会においてあらゆる投機的なものが行われ、又風俗の点においても、非常に淫靡なものが、社会に幾らでも、そこらに転がつているというようなことから、おのずから青少年が腐敗するとか、罪を犯すようになるとかいうことが起つて来るのでございまして、そういう点は実に残念なことに思つております。私も今後関係の諸閣僚ともよくそういう点について御相談をいたしまして、十分その点を改めて行きたいと思つております。差当つての問題としては、文教地区の設定ということによつて対処したい。併し文教地区以外の所における小学校、中学校等の環境については、場合によつては、やはり現行法の改正ということによらなければならないかと思いますが、そういう点についても十分今後努力いたして行きたいという考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(池田勇人君) 教育の問題につきましては、総撃がたびたび申しておられますように、我々としても最も力を入れておるのであります。補正予算についてそれが現われないというお話でございますが、補正予算には実は現われておりません。これは補正予算の性質上、教育問題を出しておらんので、来年度の予算におきましては画期的な教育予算の増額を図つておるのであります。小学校職員の再教育の問題とか、或いは育英資金の増額だとか、或いは私立学校の復旧に対しまする特別の措置、又義務教育につきましても、まあこれは極くささやかでございますが、将来に向つては教科書を全部組んで行こう、初年度からは一年生だけにしておりますが、今まで大いに議論になりましたことは、殆んど全部来年度は入れる考えで進んでおるのであります。従いまして今年度の補正予算におきましても、例えば平衡交付金につきまして、小学校の職員の給與をどうするかという問題があつたのであります。私は当初、昨年末の一人三千円の分が七億二千七百万円になつておりますが、これは、やはり二十四年度までは平衡交付金でなしに半分国庫負担ということになつておつたのだから、それを補正予算で組むつもりでおりました。又一月から三月までの小学校教員のベース・アツプ、全部ベース・アツプによります九億円も考えておつたのであります。然るところ、関係方面との折衝に当りまして、平衡交付金というものの性質は御存じのようにそういうふうなものでございません。大蔵大臣が義務教育の職員の給與を上げるために平衡交付金を増額いたしましても、これは地方財政委員会の方で法制上決めることになつておりまして、私はそういうふうなつもりを含めまして三十五億円増額いたしたのでありますが、これを強制するわけには行かないのであります。地方財政委員会でお考えを願うことと思うのであります。
 尚、次に災害の復旧でございまするが、今文部大臣の言われましたように、本年度の予備費並びに補正予算、又来年度の公共事業費等により、ジエーン台風その他によりまする災害の復旧はいたす計画で進んでおるのでございます。(拍手)
   〔国務大臣増田甲子七君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(増田甲子七君) 堀越さんにお答え申上げます。風教、道徳の維持向上について極めて御熱心なる御意見を承わりまして、そのうちの私に関する部分、即ち一定の地域におけるいわゆる歓楽街等の設置は面白くないのではないかという御意見に対しましては、私は全然同感でございます。元来法規の不十分であつた時代でも、かかる建築物乃至歓楽街の出現は望ましくないという見地から、法規を離れて常識的な見地から処理するように、それぞれの地方公共団体にも申入れをいたした次第でございます。それに基いて東京都においては着々処理をいたしておりましたが、御指摘のうち、本門寺等は既存法規によつても取締り得る次第でございまするが、住居地域でない部分について法規上の欠陷がございまして、これは道徳上の見地或いは常識上の見地から望ましくないという態度をとつておりましたが、法規を以て強制することだけは今までのところできなかつたのでございます。然るところ先だつて皆さんの議決にかかる建築基準法が十一月二十三日から施行されることに相成りまして、住居地域でない地域でございましても、学校等がございまして、風教道徳上の見地から面白くないこと思われる地域に対しましては、建設大臣が文教地区を指定することができます。そういたしましと、住居地域と同様の取締をし得ることに相成りました次第でございまして、即ち本月二十三日以降はかかる問題は全面的に、而も全国的に解消された次第でございます。問題となつておる他の二地域に対しましても、東京都と連絡いたしまして、建設大臣といたしましては、これらの地区を文教地区に指定したいということを元来二ケ月以前から考えておりましたが、先般、本院の文教、それから厚生、建設の合同委員会においても、私は公式に意思表示をした次第でございまして、将来ともこの法規を活用いたしまして、関係閣僚、地方公共団体と協力して、御希望に副いたいと思つておりまするから、将来必ず御期待に副い得ると私は確信いたしております。(拍手)
   〔国務大臣黒川武雄君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(黒川武雄君) お答えいたします。青少年の不良化防止の対策といたしましては、先ず環境の改善が第一であることは御指摘の通りでございます。特飲街の問題に関しましては、衛生の面は勿論、公衆道徳、教育環境整備等の観点からも十分に考慮されなければならないと存じております。又旅館の設置場所等につきまして、教育上及び公衆道徳に及ぼす影響を考慮いたしまして制限を加えますことは、現在の旅館業法では困難ではありますが、文部省及び建設省とも十分連絡いたしまして万全を期したいと存じます。(拍手)
#24
○議長(佐藤尚武君) 岡野国務大臣の答弁は後刻まで留保されました。
 議事の都合により午後一時半まで休憩いたします。
   午後零時十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時七分開議
#25
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたしたいことがございます。議院運営委員長左藤義詮君から委員長を辞任いたしたい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて本件は許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#27
○議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して只今欠員となりました議院運営委員長の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
#29
○鈴木直人君 只今日程に追加せられました議院運営委員長の選挙は、成規の手続を省略して議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
#30
○鈴木恭一君 只今の鈴木君の動議に賛成いたします。
#31
○議長(佐藤尚武君) 鈴木直人君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は議院運営委員長に山田佐一君を指名いたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#33
○議長(佐藤尚武君) 深川タマヱ君。
   〔深川タマヱ君登壇、拍手〕
#34
○深川タマヱ君 去る九月十六日から三日間に亘りまして、東京新聞の主催で各党の代表者を集めまして講和に関する座談会が催されました。その記事に対しまして、十月十九日附のワシントン通信でアメリカの対日講和関係の専門家から批評が寄せられております。その文書によりますと、日本人はよく無條件降伏というけれども本当は無條件降伏では決してない、明らかにポツダム協定に基く降伏である、無條件降伏の言葉に怯え過ぎて日本人の意向を率直に表現することを怠つてはならない。講和は一方的であつてはならないのであつて、弾圧によるものは永続きがしない。必ず当事者双方の十分なる了解の上で成立しなければならないのであつて、一体何が講和の基本條件になるかというと、それはクリスチヤンの良心に基く公正であると言われております。誠に筋の通つた立派な意見であると考えます。日本ではこの講和に関します限りは、相手国を刺戟してはならないというので、上も下も誠に涙ぐましいまでの心の遣いようでございますが、当事国から却つてかくも理解のある激励が寄せられた以上、私達は安心いたしまして、今後久しきに亘りまして世界の一員として、世界の文化に貢献いたしますためには、日本人はこれだけのことは、これだけの待遇はして貰つて置いたほうがよいと、それこそ神の前で公平だと考えられる問題につきましては、時を移さず、手遅れにならないこの時期を選びまして、あらゆる機会を選んで、最も熱心に相手国の認識を深めるべく発言することが最も大切であつて、これが日本のためにも、世界のためにもよいことだと考えますが、総理大臣は、このことにつきまして如何お考えなさいますでしようか。
 第二番目は大蔵大臣に対しまして財政問題についてお尋ね申上げたいと存じます。日本のインフレを貿易インフレと診断されましたドツジ氏の指導の下に、ここ二、三年間日本はできるだけ国民の手持の議員力を吸い上げるために、必要以上に重い税金がかけられました。そのために政府の手許では若干の資本は蓄積されましたけれども、何分そこに強制的でありますために二つの大きな無理が介在いたしておりました。その一つは、ややともいたしますと企業家の手許に資金が枯渇いたしまして、奪い生産が阻害されようという傾向であります。更に他の一つは、別に贅沢をしていた階級ではございませんのに、強制的に重い税金で購買力が吸い上げられたために、否応なく生活程度を引下げなければならないという無理があつたわけであります。併しながら日本のインフレが相当根強いものでありましたために、これを克服いたしますために、一時的には止むを得ない処置であつたかも存じませんが、只今はよほどその点緩和されております上に、世界情勢は変化いたしまして、朝鮮動乱以来、世界の軍拡の波に乗りまして日本の経済は特需景気に向おうといたしております。この時期にありましては、むしろ従来のように無理にも税金で企業家の手許から資金を吸い上げ過ぎるということよりも、成るべく潤沢なる資金を手許に残して置いて、できるだけ生産増強と輸出貿易に専念させるほうが、却つて日本経済復興には早途であると考えます。にもかかわらず、このたびの補正予算に当りましては、政府は相変らず外国為替資金に対して百億円、更に食糧管理特別会計に百二十七億円、更に不思議に思いますことは、朝鮮動乱以来、日本の内地の占領軍の数は減つておるわけであります。更に警察予備隊は別途の予算で成立されておりますために、終戰処理費は当然減額されなければならないものと想像いたしておりますにもかかわらず、今回の補正予算では更に九十三億円増額されておることであります。かように多額な資金が強制的に吸い上げられます関係上、企業家は再びひどい資金難に陷つて、折角日本に経済自立の絶好のチヤンスがめぐつて来ておるにもかかわらず、十分この時期を利用いたしまして生産増強に努力いたして、復興することができないようなことになることを惧れるものであります、これに対しまして大蔵大臣は如何お考えでございましようか。
 更に国民生活でありますが、今の国民はこれ以上無理な税金をかけて生活程度を引下げられるよりも、成るべくこの程度に止めて貰つて、自発的に資本蓄積をさしてくれるような政策に変えて貰いたいという希望を持つていたにもかかわらず、今回の補正予算を拝見いたしますと、国民生活は従前よりももつとその水準を下げなければならないようにできておることであります。補正予算で六十三億円、来年度におきてまして七百億円減税されると言われており、これは国民生活を安定さすためだと言われておりますけれども、その実は朝鮮動乱以来、日本の物価は上つております。過重な地方税に加えて、来年一月米が値上りをいたす予定になつておりますので、それらを総合いたしますと、来年一月早々、国民生活は従前に比べまして一七%の増加と言われております。七百億円減税になりますと、四%の生活費は下りますものの、差引いた結果は、従前より一三%だけは国民生活の引上げになりまして、それだけ国民生活の水準が下るという結果になりますので、これ以上重い税金をおかけにならないような方策を講じて頂きたいと考えるものでありますが、これに対する大蔵大臣の御所見が伺いたいと存じます。
 更にその次は来年中頃援助資金が打切られますので、否応なしに自立経済の構想を練らなければならない段階に立ち至つておるにもかかわらず、今回の補正予算を拝見いたしますと、果して政府はどの程度それに対して決意を持つておられるか、その跡が窺いにくいところであります。何分日本が経済自立をいたしますためには、少くとも千二百万石に近い主食の増産の計画が立てられなければなりませんのに、今回の補正予算でも農業対策に見るべきものがございません。更に日本経済復興につきましては、その根幹を成す電力の問題をお急ぎになつておりますが、政府の失政と相待ちまして、資金その他の関係上、私は間に合うと思いません。鉄鋼、石炭も相似た状態におります。更に千二百億円の援助資金が打切になりますと、当然これに代る民間資金が蓄積されなければなりませんが、政府は国民が喜んで容易に資本蓄積できる方策を講じておるものとは考えられません。著しい例は、無記名貯金の禁止及び貯金の名寄せ、こういうものは税金と関係がございますので、国民は貯蓄意慾がますます減少いたす姿になつておりますが、こういうものも入れまして、今後国民が自発的に喜んで資本蓄積できやすいような方策を、どういうような方法で講じておられるかにつきまして、更に大蔵大臣に伺う次第であります。
 それかも二十五年度におきましては、国税並に地方税におきまして予定の額が取り立てられないのがあるが、恐らく滞納者が殖えるという予想でございざしようが、その曉には政府は一体どうなさるおつもりなんでございましよう。今更のごとく地方税の厖大さに驚くわけでありますが、ときどきの新聞に、国民が憂わしそうな顔をして区役所や税務署に押しかけて、帳簿を見ておる姿を見るにつけましても、予想しなかつたことではなかつたけれども、今更のごとく誠に相済まんと、胸の締めつけられる思いがいたして、面を伏せておるのは私一人だけではないと存じますが、当然この年度末になりますと、重い税金を納められない人には差押えの手が打たれると思いますが、差押えについて一考をいたして貰いたいことは、私この夏滞納のために差押えられて、競売に付せられておる場面を見学いたしましたが、このあたりは多少無理が行われておるように思います。明治時代以来あつたのではないかと思われるような煤けた粗末な柱時計や、毀れた、文政時代からあつたような粗末な箪笥、それから綿の出ている蒲団、小さいまるい椅子や粗末な秤等が沢山差押えられておりますが、国民の怨みと血涙が滲み込んでおるような不気味な感じがいたしました。ずるい考えで滞納する人であるならば、それも当然な措置でありましようが、担税力以上の重い税金をかけて、納められないからというので差押えて、かような措置に出ておるということになりますと、悪徳の高利貸が病人の敷蒲団を引拂つている姿と大した変つたことがないのであつて、国民の生命財産を守ることを第一の使命と考えていなければならない筈の国家の政治家が、その舵を誤りまして恐るべき暴徒になつて、国民の首に繩をかけつつある著しい現象ではなかろうかと存じますので、(拍手)特にその点大蔵大臣の御考慮を煩したいところでありますが、早速地方税に対しましでは大額の減税の法案が提出されなければならないと思う次第でありますので、この点についてお尋ねいたすわけであります。地方税の減額につきまして思い当りますことは、最近地方税の増額の原因は、陳情その他で地方のお役人の中央への出張旅費及び中央のお役人さんの視察に対する宴会等々、誠に無駄な失費が重なつているそうでございますが、これに対しましては請願は一切文書によることということを政府は嚴重に守つていられるかどうか。これに関連いたしまして誠に不可思議に存じますことは、地方で大水が出たからといつて、或いは県庁が焼けたからといつて、その都度地方のお役人さんが十人どころか何十人も団体を組んで入れ代り立ち代り東京へ参りますたびに、私達国会議員がお供をさせられて、官庁へ頭を下げて廻らされる、どうも官僚独裁の前に、政治の審議権を持つている国会議員が頭を下げなければならない珍現象を呈しておりますが、これは終戰以後の日本の予算が修正できないところに原因があると思います。予算はその名の通り予算審議を終つたならば赤鉛筆で殆んど書き直されて然るべきだと存じますのに、それができないところに無理がある。予算として国会に出たならば、丁度大きい金庫に錠が下りたような恰好になりますので、官僚の手許で切盛りしているところを狙われるのだろうと存じますが、将来は予算修正に当りましては、大いに審議権を高調しなければならないところだろうと存じております。
 更に税制と関係いたしまして、今回公務員の給與が引上げになりましたが、これと関連いたして判検事の給與は案外上つていない。そのために希望者が少くて欠員をして、さなきだに事件が山積しておりますので、誠に裁判は進捗いたしませんので、国民が迷惑いたしておりますから、判検事の給與を引上げてもう少し増員して、もつと裁判の進捗を図つて貰いたいことが一つと、近頃集団犯罪が多くて誠に警察官吏の身の上が危險に瀕しております。どうぞ後顧の憂いなくして思い切つて治安に当つて頂きますためには、警察官吏の危險手当に対して法務総裁の格別なる御考慮が煩したいところでありますので、御質問申上げます。
 それからその次は、道義の点についてお尋ね申上げます。日本の今日の文化はすでに反省しなければならない時期に到達いたしておると思います。日本は戰争に負けた経験がございませんので負けずれをいたしておりません。終戰後は比較的敗戰ぼけをいたしておる形でございます。日本のものは何でも悪いと言われますので、何でもかんでも悪くて、良いものはさつぱりないかのごとき国民は懐疑に陷ろうといたしておりますけれども、案外日本は外来思想に対する理解が浅くて、消化不良な、誤解の点があるように思いますので、この際大いに整理をする必要があると存じます。その代表的なものを私は教育問題に拾いたいと存じます。日本は敗戰後国家思想が御破算になりまして、これに代るべき徳育の規準がはつきりいたしておりません。従いまして青少年は心のよりどころを失いまして、或る者は左傾し、或る者はアプレゲールにその日を暮す人が殖えて参ります。同じ理想であり目的でありましても、その場所と事情によりましては当てはまらないものがございます。欧米におきましてはクリスチヤンの国でありますので、日曜日に教会で子供が徳育されますが、日本ではそういう慣習のないところに特に文部大臣の御考慮を煩さなければなりませんが、日本の学校におきましては早く徳育の規準を設けて再教育しなければならないのと同時に、社会において極力子供の成長に差支ないように、健全なる第二国民を養成するに差支ないように、社会環境の整理が大切だと存じます。近頃十八歳から二十一歳くらいの子供が兇悪犯罪をいたしますにつけまして、漸く世人はあの世代の子供には何か共通した欠陷があるのではないかという疑いを持ち始めました。疑いは一切の発見の元であるという諺がございますので、疑いを持つようになつたことだけでも進歩だろうと存じます。今こそこのチヤンスを担えまして、徹頭徹尾その欠陥の所在を突きとめまして、禍根を残さないように改めなければならないと存じますが、それにつけましても去る十月二十日頃読売新聞社の窪美記者によりまして「はたちの倫理」というのが取扱われております。私はあれに対して非常に敬意を表しております。青少年の不良化の原因がどこにあるかということを徹頭徹尾追求しようとする態度でありまして、新聞が社会を指導しようとする熱心な現われであつて、誠によいことであると思つておるのでありますが、あれの中において子供は、何がよいか何が悪いことであるかにつきまして、もう少し早く教えて呉れていたら、こういうことにならなかつたと告白しておることは、正にこの頃の学校の徳育の欠陷を物語るものであろうと存じますが、社会環境の整理に当つて第一番に挙げなくてはならないことは、この頃の日本の一部の人の性道徳の頽廃でありますこれは特に今の自由党に十分責任を感じて貰わなければならないことは、日本の社会におきましては売淫行為が平気で行われておるということであります。私達の妹や娘である年頃の人、やはりこれは青少年の部類に属する人でありますが、夜ともなれば日本の大都市では、所かまわず吉原が街頭に進出したような恰好で売淫行為が展開されております、人肉市場が展開されております。この臨時議会の前に外国の新聞社から、今度臨時議会が開かれたら日本では人身売買のことを大きく取上げて貰いたいという注文が寄せられておることは、誠に不名誉な話であります。どうぞ総理大臣も、労働大臣も、厚生大臣も、法務総裁も、丁度特需景気に向つておりますし、紡績業は来年は八百万錘に施設が増大されますので、もう少しダンピングの虞れのないように紡績女工の給料でも引上げて、家もなければ、職業もない彼女達を就業させて正しく生きるように指導を願わなければならないと存じます。こういうことが青少年をして早熟にさせ、罪の蔭には男があり女があるという恰好になりまして、判断力の弱いばかりに誠に深みに陷つておると思いますので、次代を背負う青少年のために大人が率先してこういう問題の駆除に当らなければならないと考えております。
 環境の整理に当りまして、一つ通産大臣の御考慮を煩したいことは競輪問題です。いろいろ新財源としてお困りではございましようが、日本の復興のすべてに先立つものは、国民精神の復興であるということを強く御記憶願いたい。資本蓄積の大切なとき、生産意欲を減退さして、犯罪の温床となる、ああいう競輪をそのままにするということは、たとえ新財源としてプラスになりましても、国家の再建の上に大きいマイナスになるということを特に通産大臣は責任を背負つて貰いたいと存じますので、成るべく早い時期にそういう問題は廃して貰いたい。百円ぐらいで勝負ができますので、小学校の子供が学校を休んで競輪に耽る。当然競輪の結果として儲ける人は質屋さんばかりということでございますので、是非一つ全国の婦人団体からも強硬な反対の手紙も寄せられておることを御考慮を煩したいと存じます。
 尚日本の国は自主権の回復を主張いたしますが、その前に只今許される範囲におきましてのもつと自治の能力を発揮しなくちやならないと考えます。例えば上野の地下道の住民たちに対しましても、終戰後五年であります。社会連帶思想から考えましても、弱い者を助けるというような面から考えましても、あれはあのままで放任いたして置くことは誠に政治に甲斐性のない証拠でありまして、これ又自由党政府において責任を背負つて貰わなければならないところだろうと存じますので、ああいう問題、この頃は上野の地下道を抛り出されて、表で四千人が臭気芽々たる場所で寝ておるそうでございますので、努力しても努力してもできない階層に対しまして助けることは、資本主義の社会で行われなければならない点でありますので、十分社会政策の点で御考慮を煩したいと存じます。
 更に未亡人や傷痍者、それから貧乏人、病人に対する社会保障制度がどの程度今明年度において実現するか、厚生大臣にお伺いいたすところであります。産兒制限の声がやかましうなりまして、恐らく素人のお医者さんでもするのか知れませんが、避妊法が非常に婦人の健康を害しておりますそうでありますので、この点一つ、避妊をさせるなら、厚生大臣が科学的によく指導なさらければならないと思います。いろいろ申上げたいことが多うございますが、時間に制限がございますので、このあたりで止めますが、どうぞいずれも国民の聞きたいところでございますので、所管大臣からは御懇切なる御答弁が頂きたいと存じます。御靜聽有難う存じました。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。講和に関する日本国民の意見を率直に表明するようにということでありますが、これは岡本議員に対して私がはつきり昨日も申述べて置いたのであります。講和に関する国民の輿論を察して政府はその善処をするとそのためには、自由に率直に国民の講和に関する言論を発表して貰いたいと私ははつきり申して置きましたから、それで御了承を願いたいと思います。
 その他の問題については、所管大臣からお答えします。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。事業家、企業家の資金を吸收し過ぎて産業資金が足りなくなるのではないかという御質問でございまするが、今年度の減税によりまして、法人税その他は非常に減額されたのであります。尚資産再評価によりまして、償却も十分見ることにいたしました関係上、企業家におきまする資本の蓄積は相当見るべきものがあると考えておる次第であります。尚法人税につきまして、法人税が予算よりも殖えましたことは、意外に所得が、利益が多くなつて来たことであるのでありまして税法といたしましては、超過所得の所得税の撤廃等非常な軽減を図つておりまして、事業資金は相当会社に蓄積されるものと考えております。
 次に歳出の面で終戰処理費が九十億殖えたというお話でございまするが、終戰処理費は殖えておりません。人件費で九百万円は雑件で補正いたしておりまするが、九十二億殖えたのは、終戰処理から肩代りして国の歳入が殖えたのであります。従来終戰処理費から、予算では四十五億程度の收入を見込んでおりたのでありまするが、朝鮮関係に関しまして一応終戰処理費を立替えて、そうしてやつておるのであります。これはドル資金として向うから返して貰つて終戰処理費收入となつて参ります。従いまして当初の四十五億円の分が九十二億円になつたのは、終戰処理費からの收入が殖えたのでありまして、歳出が殖えたのではございません。尚それでは終戰処理費が非常に減るじやないかというお話でございまするが、大体これは今予算通りに行くのじやないか。ただ向うへ、朝鮮へ出掛けておられる方々がいつ帰るか存じませんので、受入態勢も整えて置かなければなりませんし、先程申上げましたように、これを終戰処理費で立替えて、そうして別の收入になつて来ることを考えますると、終戰処理費は予算よりも減つたことに相成るのであります。
 尚明年度は米価の引上げ、物価の引上等で国民の生活は下がるというお話でございまするが、私は決して下がらない。米価の生計費に及ぼします影響は、いわゆる標準世帶で、四・七人の家庭で月一万二千円の收入の方であつたならば、米価の引上げによる生計費の増は一・五%、而してその家庭におきまする所得税並びに酒税、物品税の軽減によりまして三・数%、結局二%だけは実質生計が向上するのであります。物価が上つたら困るじやないかという問題でありまするが、これは賃金も大体上昇の傾向をとつております。殊に公務員につきましては、平均千円の給與の引上げをやりますから、生計は楽になるともきつくはならんと考えております。若しそういうことがあるならば重大なことでありますので、政府はそのときになつたら善処いたします。私は今の見通しでは、生活は楽になると確信を持つております。
 次に、対日援助見返資金が、来年の七月から、即ち一九五一年乃至五二年のアメリカの予算から落ちるということがあります。新聞には伝えられておりまが、私はそう考えてはおりません。まだ続けて頂きたいと思つております。若しそれがなくなつたときには適当な措置は講ずる用意はいたしておりまするが、我々といたしましては、尚対日援助を続けて頂きたいという前提の下に行つておるのであります。
 次に、資本の蓄積の必要なことは御説の通りでありまして、財政演説にも申述べておりすように、預金利子の引上げとか、或いは証券市場の育成その他あらゆる施策を講じ、片一方では減税をいたしますと同時に、片一方では国民に消費の節約をして頂いて、そうして少い資本をできるだけ早い期間に蓄積したいというのが、我々の財政金融の基本方策であるのであります。
 尚税金の滞納につきましてのいろいろなお話がございましたが、我々としては、できるだけ正確な課税をいたしまして、そうして課税したものは是非とも納めて貰ように、法の命ずるところによつてやつておるのであります。若し課税に無理があつたならば、これは早速申出でられて救済の方法をとる準備をいたしておるのであります。だから若し課税が無理であるとか、取り方が法規に違反しておるということがあれば、いつでも直すのに吝かではございません。(拍手)
   〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
#37
○国務大臣(大橋武夫君) 只今裁判の促進につきまして、判検事の待遇改善問題について言及せられたのでございまするが、訴訟法規の改善及び関係公務員の給與の改善ということが、審理の促進上大切であると考へておりますので、政府といたしましては、これに関し必要なる法律案をこの国会に提案いたしたいと思つております。
 次に警察官に関する危險手当の問題でございまするが、警察官につきまして危險手当の給與を行うかどうかということは、これは給與体系に関する問題でございまして、現在の制度といたしましては、警察官のために独立した危險手当というものを制度として設けるという方法をとらずに、一般公務員に比して若干高い本俸を給するという給與の立て方をいたしておるのでございます。将来におきましては、他の公務員との関係その他十分に考慮いたしまして、検討の上警察官吏に関する適切な給與を実施いたすために善処いたしたいと、かように存じております。(拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(天野貞祐君) 只今申されました道徳教育に関するお考えは、私も全く同感でございます。でありますから学校教育の方面にも十分な考慮をいたし、又社会教育についても考え、両方の協力によつて何とかこれを改善いたして行きたいと考えております。これは極く細かなことでございまするが、最近文部省の社会教育審議会から「男女交際と礼儀」というようなパンフレツトを出しましたのも、そういう意図からいたしたことでございます。尚十分徳育ということについては努力をいたしたい考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣保利茂君登壇〕
#39
○国務大臣(保利茂君) 婦人の就職の問題につきましては、この六月頃からずつと男子の就職と同様に非常に改善されて参つておりまして、九月の統計では、職業安定所で取扱いましただけで四万八千からの就職者を出しております。御指摘のような方々につきましても、正業に就きたいという希望を持つて職業安定所においで頂くならば、十分御婦人の適職をお探しして御斡旋することに努めたいと存じております。(拍手)
   〔国務大臣黒川武雄君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(黒川武雄君) 深川議員にお答えいたします。
 第一に売淫禁止の問題でございますが、これはその関連するところが非常に広汎な問題でございまして、單に性病予防等の観点からのみでなく、国民道徳、国民経済生活の根抵に遡つて考慮せらるべきものであります。現在地方公共団体の中には売淫禁止條例を制定しているものもありますが、この問題は主として国民道徳の領域に属するものとして国民各自の道義的判断に待つべきものであり、法律を以て端的に禁止することは不適当ではないかと考えられるのでございます。現在厚生省といたしましては、売淫から生じますところの悪疾の蔓延につきましては、その予防治療の徹底を図つておりますし、又生活保護法その他各種の社会施策によりまして、貧困からこの売淫に陷ることを防止しつつあるのであります。社会風教の振興と社会施策の徹底とによりまして、今後ともこれら忌わしい問題を解消することに努めたいと存ずるのでございます。
 第二は、社会保障制度に関連して、生活困窮者、傷痍者、未亡人等に対する施策が、今明年度においてどの程度に積極的に実施せられるかという御質問でありますが、御承知のように今回政府が受けました社会保障制度に関する審議会からの勧告の内容といたしましては、社会保險制度の強化と共に、各種社会福祉施策、国家扶助の徹底等が強く要請されているのであります。厚生省といたしましても、従来ともこれらの人々に対しまして積極的に各種の措置を実施して来たのでありますが、明年度におきましては、生活保護、身体障害者保護、母子対策等について一段の強化を図りますと共に、衛生面につきましては結核対策を大幅に推進する予定でございます。
 第三の浮浪者に対しまする共同宿泊所設置でありますが、従来とも主要な道、府、県、都、市等に国庫補助を與えまして、そうしてこの種施設の整備に努力して参つたのでございます。すでに相当数の施設ができてはおるのでございますが、未だ十分とは申されない状況でございますので、今後ともその増強に遺憾なきを期したいと存じます。
 最後に御質問のありました妊娠中絶の件でございますが、先程河崎議員に対し御答弁いたしました通り、母体に対する悪影響を考えまして、今後できる限り健全な受胎調節の知識を普及指導することに極力努力したいと存じます。
 右お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣横尾龍君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(横尾龍君) お答え申し上げます。
 競輪につきましては国会の御趣旨に従い処置したいと思います。現在の段階におきましては、監督を厳重にいたしまして事故の起らぬようにしたいと思います。
    ―――――――――――――
#42
○議長(佐藤尚武君) 鈴木清一君。
   〔鈴木清一君登壇、拍手〕
#43
○鈴木清一君 私は労働者農民党を代表いたしまして総理並びに関係大臣に少しく御質問申上げたいと思います。財政的な問題につきましては特に我が党の木村君から質問されておりまするが、大蔵大臣がお答えになりました中に腑に落ちない点もありまするから、その点はやはり昨日のお答えの続きとして御質問申上げることにいたします。
 先ず第一に講和の問題につきまして御質問申上げるのは、先輩の諸議員の方々が大局的な見地からはすでにいろいろと質問されておりますので、私は極く身近かな例より見まして、何故現在の政府が殊更に全面講和を遠きものという工合に決めて、国民が最も心配しておる、戰争の危機さえ孕むところの單独講和促進に、すべての施策、行政を進めておるかという点についてお尋ねしたいわけであります。
 御承知のように、過日ロイター電が伝えておりますように、日本の政府は占領軍当局と或る協定を結ばんとしておる、その内容については御承知かも知れませんが、向後三十ケ年間占領軍三ケ師団の駐屯を継続して、更に現在の警察予備隊を三倍程度に増強する計画があるというようなことも含まれて、当時ロイター電は伝えたのであります。勿論こうした報達につきましては、いわゆる真偽は別といたしまして、全然虚構の報道であるとお答えにならなければならないかも知れませんが、併しながら小さな報道ではありますが、こうした報道が何故出たかということに重点を置かなければならないのであります。その報道が出ました数日後におきまして、自由党の現政府なり與党の幹部と目される人が、或る会合におきまして、警察予備隊三倍の増強を以て国連軍の警察指揮権の下に置かなければならないということを、たしか新聞で報道されておりました。相関連する報道と見ますなれば、少くともここに政府の或る意図があるではないかということさえ我々は感じられるのでありまして、この点につきましてお答えを願いたいのであります。
 御承知のように現下の国際情勢は非常に複雑微妙なものであります。人民民主主義国家、社会主義国家、それから資本主義国家の対立は、国連の中においてさえ非常な冷たい対立となつております。然るに現在の政府は、その対立せる一方の陣営に対してのみ何か積極的な支持を示すと同時に、すべての施策が、輸送方面につきましても、特需関係の輸送につきましても、特に積極的な支持を見るがごとき施策を行なつておるのであります。従つて私は真に日本国民の将来の安全な平和を願うとするなれば、戰争に巻き込まれるがごとき危險性を持つところの早期單独講和ということを控え、真にやはり国連憲章の下に全面講和を希望するところの自主的な態度が日本国民の姿であり、国民の声を代表するところの政府の努力でなければならぬと思うのであります。いわゆる我が党が掲げておりまするところの永世中立という言葉は、対立する二陣営の間に細い帶のことく中道を辿つて行くというのではなくして、絶対戰争は反対である、そうして又戰争に不介入であるという立場を日本国民が自主的に実践において守り抜いて行かなければならないという点に、永世中立の真髄があるということを、この際申上げたいのであります。
 次にお尋ね申上げたいのは、七月二十八日でございましたか、御承知のように従来の各産業部門に亙りまして、いわゆる政治的言葉でレツド・パージの問題であります。不当解雇が行われたのでありまするが、その理由につきまして、左の諸点についてちよつとお伺いいたしたいと思うのであります。その理由の中に、共産主義者であるが故にというような理由も聞いております。思想、信條の自由は、新憲法に従いましてはつきり明文化されておる筈であります。問題は解釈の問題でないのです。御承知のように、第一、共産党は合法政党として置くべき理由があればこそ又置いてあるのであります。従つて職場において党員であるが故になぜ追放されなければならないかとうことが問題であります。御承知のように憲法の制定以来今日まで何ら支障なく勤務しておつた者が、今になつていけないという理由は生れない筈であります。そして又、同調者という面の中に、組合の執行機関におきまして決定されました決議を、組合の執行委員であるが故にこれは実施しなければならない、それが本当の民主的な機関を守るところの責任あるべき執行委員の態度であらねばならぬし、又こうした機関の民主的なあり方こそ労働組合の本髄であつて、先ずデモクラシーの確立な組合の執行機関の中からとは、すでに政府自体が労働組合の健全な運動のための指針と言われておる筈であります。組合機関で決定されました執行に対しまて、たまたま積極的であつたという理由によつて、レツド・パージの名によつて同調者を排斥して行くということはどうした考え方からやられるのか、少くとも本当に健全な労働組合の運営ということを考えておられるのかということについて、私は疑義を持つのであります。前々国会におきまして、関係筋のサジエツシヨンという言葉をしばしば法務総裁などから聞いたのでありまするが、憲法はポツダム宣言によりまして起草され決定されたものであります。それが許しておる身分の保障、思想の自由、信條の自由につきまして、現在我が国の最高法規になつておりまするのが占領政策の基本でもあると信ずるが故に、ポツダム宣言によつて起草された憲法を蹂躪するがごとき、いわゆる憲法に抵触するがごとき行為は、尚今後もとられるのかどうかを私はお伺いしたいのであります。そして又こういう大きな問題を議会に諮りもしないで、法文化もされず、政府の独断専行であります。而も民間におきましては経営者の自主性に任すということを労働大臣は言われておつたのであります。政府は責任を回避いたしまして、経営者の自主性に任していわゆるレツド・パージを実行さしたということであります。同調者をも選択さしたということであります。そういたしますると、このような大きな問題を解決するのに一経営者の自主性に任して、その経営者が基本のない、ただ具体的に現われた経営部内におきまする行動を真に考えずに、ただ端的に現われたものを取上げて経営者がその対象とするというようなことが起き得た場合に、どこで責任を負うのか、現在の政府の労働責任者より経営者の方が真に権利を持つておるのかということさえ疑惑として我々は考えなければならないのであります。例えば一例を挙げますると、某新聞社におきましては、御承知のように、たまたまその解雇があつたときに、常日頃非常に勤勉であつたけれども、その日に限つて交渉のうちにたまたま酒を何か飲んでおられた、ただそれだけの理由によつてその人に解雇を言い渡したということ、而もそれは経営者の自主性によつて言い渡したのだということをはつきり言つておられたということについては、こういう例もあるのですから、どうかその点で今後につきます例といたしまして、労働大臣からもその点お答えを願いたいと思うのであります。いろいろ申上げたいが、少しく端折りまして、私はここで申上げたいのは、よく政府が言うところの暴力云々の言葉であります。暴力の規定をどこで付けるかということがはつきり私はお聞きしたいのであります。なぜかと言いますと、我々の考え方から申しますれば、御承知のように法律によつて決定された仲裁裁定、それから又人事院の勧告、今回の電力再編成におけるところのポツダム政令の発令、このごときはむしろ大多数を擁するところの現在の政府が議会フアツシヨ的な方向に向いつつあつて、何でも国会の審議権さえ拒否して、かくのごとき最も悪い意味におけるところの暴力を振うということを我々は考えざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)よく政府が言うところの街に起りまするところの暴力は、その原因を調査して頂けば分りまするように、先程の深川タマヱ女史が言われたように、街におきまする税金苦のために起りまする少しのトラブル、そうしたトラブルのごときは、その意味から言うならば本当に小さな暴力であります。その暴力を本当に直さんとするならば、政府が挙つて国民に堪え得る政策を実施して、この重圧なところの税金苦のごときを排除する政策を行なつたならば、而も行うところの余地は十分ある、それを行なつたならば、私はこうしたものは善政によつて自然に消滅して行くのであります。併しながら国会内において法律さえ蹂躪して大多数の威力を以て国会フアツシヨをせんとする暴力は、真に国会議員自身が、政府自身が考え直さなければ直らない暴力である。例えて言えば、現在の政府が政権を投げ出して総辞職をして、初めて国民に信を訴えてこそ直る暴力であつて、それでない限りは続く暴力であるだけに、私は悪い意味における暴力をみずから隠して、小さなトラブルを暴力と規定する政府の反省を求めたいのであります。第二次国鉄裁定の実施にいたしましても、今回のベース・アツプの問題にいたしましても、先ず給與ベースについてお聞きいたしたいのですが、政府は二十五年度予算において当初一ケ月分の年末手当、千円のベース・アツプを発表しておりました。それにも拘わらず最近半ケ月分の年末手当という法案を提出されております。そうして又国鉄の職員に対しましては、第二次裁定は、政府が負担されておるところの国鉄公社並びに政府が負担されておりまするところの立派な完全債務であります。この債務を履行するに当りまして、たまたま慣例として行われておりまするところの官公吏に対しまする給與ベースと同様に扱つてこれを実施しようとしておる。いわゆる俗な言葉で言う裁定と給與手当法とをすり換えようとしておる態度は我我誠に不可解であるのであります。はつきりここで私は運輸大臣にお尋ねして置きたいのは、裁定を完全に実施する気があるかということと、それから又今政府がとりつつある姿は、公務員の給與と公共企業体関係労働者の国鉄従事員の債務の履行とをはつきり区別して実施する気があるのかないのか、この点をお答え願いたいと思うのであります。
 給與べースにつきまして、少しく木村君から質問されましたことについて、いま一度大蔵大臣にお答え願いたいのは、御承知のように今回の減税は米価引上げをカバーできるというようなことを言われておつたようでありまするが、朝鮮動乱後におきまするところの物価騰貴に対しまして、はつきりしたこれがカバーができるようという根拠を示されておらないように聞いております。この点を御答弁願うことをお願いいたしまして、時間もございませんので、私はこれを以て質問といたします。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 全面講和、永世中立等の問題は、しばしば私が、論じ盡しておりますからして、ここに繰返しません。又軍事秘密協定のことは昨日も出ましたが、明らかにかくのごとき事実は全然無根の報道であることをはつきり申して置きます。又これを裏付けする新聞の記事云々というお話でありますが、新聞の記事に対しましては私は責任をとりません。警察予備隊を三倍にするという考えは毛頭ないのであります。又警察予備隊を以て再軍備のためにする編成ということは全然嘘であります。(「軍事教練をやつているじやないか」と呼ぶ者あり)そういう考えは政府は持つていない。
   〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(大橋武夫君) 只今鈴木君から共産主義者の追放に関してお尋ねがございましたが、この点は昨日羽生君の御質疑に対しまして労働大臣よりお答え申上げた通りでございます。(拍手、「もつと誠意を示せ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣保利茂君登壇、拍手〕
#46
○国務大臣(保利茂君) お答えいたします。レツド・パージの問題は、昨日羽生さんの御質疑に対して詳細に申上げた通り、それについて御了承を頂きたいと思います。尚、御指摘のような行き過ぎ或いは便乗解雇等の事実がございますれば、それについては中労委或いは地労委におきまして公正妥当な判断が下されるものと確信いたしております。
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(池田勇人君) 今回の財政並びに米価の措置につきまして、国民の生活が苦しくなるかどうかという問題につきましては、昨日お話し、又先程もお答えした通りでございまして、この長い目で見てどうなるかということを見て行かなければなりません。で、昨年の九月は、いわゆる消費者物価指数は一四〇であつたことは御承知でございましよう。今年の九月にそれは一三〇になつておるのであります。これだけ楽になつたと言えましよう。又平均工場賃金は昨年九月八千九百円が又今年は九千五百四十円になつた。来年は先程申上げましたように、所得税を大幅に減税する。酒税を引下げるし、物品税を引下げる。その他減税をいたしまして、それが一般家庭に及ぼします。生計費が非常に少くなつて来る。実質の收入が多くなつて来る。そうして米の値上げ、小麦と大麦は値上げいたしませんが、米の値上げによりまして影響するところは極く少部分であるのであります。こういうことから考えますと、国民の生活は非常に向上して来るということは、はつきり言えるのであります。(拍手)
   〔国務大臣岡野清豪君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(岡野清豪君) 河崎さんの御質問に御答弁申上げます。御質問の要旨は、兒童福祉費負担金を平衡交付金から移し、補助金にすべきではないかというような御趣旨に承わつております。兒童福祉費負担金は平衡交付金の創設に伴いまして廃止されたのございます。これによつてお説のように補助金とするようにとの御要望もありますが、先般地方行政調査委員会議の国庫補助金の整理に関する勧告が行われましたので、現在政府内部において具体案について研究中でありますから、お説の御趣旨を尊重し、よく検討いたしたいと存じます。
 次に堀越議員の御質問にお答え申上げます。
 お問いの要旨は、地方財政平衡交付金の交付状況並びに地方税の徴收見込額の確保状況から、これらの不足は教育費の確保を困難ならしめると思うが、これについてどうか、こういうような御質問でございます。教育費につきましては、従来義務教育国康負担金等により措置して来たのでございますが、御承知の通り地方財政平衡交付金制度の創設に伴いまして、地方財政平衡交付金及び地方税收入、即ち地方一般財源で賄われることになつております。地方財政委員会においては現在地方財政平衡交付金の交付事務の進歩に努力しておりますし、各地方団体においても、改正地方税法が漸く軌道に乗り、その成果を挙げつつある次第でございます。地方税收入は地方税法の提出が遅れましたので、その徴收状況について危惧される向きもあるようでございますが、政府といたしましては、地方団体に対し地方税の適正にして完全な徴收を勧奨すると共に、地方財政平衡交付金の改正なり交付によりまして、御質問の教育費は十分確保できると存ずる次第でございます。
 これを以て御答弁といたします。(拍手)
#49
○議長(佐藤尚武君) 運輸大臣は渉外関係のため出席ができませんので、後日出席の際答弁される趣きでございます。片柳眞吉君。
    ―――――――――――――
   〔片柳眞吉君登壇、拍手〕
#50
○片柳眞吉君 私は緑風会の所属議員の一員といたしまして、食糧問題、特に最近問題になつておりますところの主要食糧の統制撤廃の問題につきまして、総理その他所管大臣に対しまして質問をいたしたいと存ずるのであります。
 先ず本論に入るに先立ちまして第一に質問いたしたい事項は、これは実は昨日の本会議におきましても他の議員から質問された点でありまするが、今回の国会にすでに提出された、或いは提出を予定されておりまするところの予算案並びに法律案を見まするに、我々が憲法第五十三條の規定に基きまして要求いたしました農村対策を重点とする施策が殆んど考慮されていないことであります。このことはすでに他の議員からも質問があつた点でありまして、これに対しまして農林大臣は、来年度の予算を見て呉れと、こういうような御答弁でありましたが、どうも私はまだ釈然たり得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 農村の実情が悪化いたしておりますことは私から詳細に説明するまでもないのでありまして、それは主管省たる農林省の農家経済調査だけを見ても余りにも明瞭であるのであります。又、農村経済の中心をなすところの米価もまだ決定を見ないのでありまして、漸く本日総理官邸におきまして、米価審議会が開催をされておるのであります。昨年は九月二日にこの審議会が開催をされましたが、本年は殆んど米価が確定した上で審議会が開催されておるのでありまして、而も早場米地帯の米の供出はすでに殆んど完了に近づいておるのでありまして、このように米の問題も非常に審議が遅れておるのであります。いろいろ政府からも御答弁がありましたが、私の見るところでは、どうも現政府が農村対策に対する認識、熱意が足らないように断ぜざるを得ないのでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)これに対しまして総理大臣及び農林大臣の御所見を承わりたいでのあります。第二は、政府は主要食糧の統制撤廃を非常に急いでおるようであります。ただ当初の政府の計画は、丁度来朝せられましたドツジ氏の公正賢明なる意見の結果、相当修正されたようでありまするが、最近の情報によりますれば、雑穀は本年産の供出完了後自由販売にする、麦は明年から供出制度を廃止する、米は明年産米の供出完了後情勢に応じては自由販売にすることを考慮する、かように内定したようであります。従つてこの調子で行きますれば、米の問題は未だ確定は見ておりませんが、統制撤廃の時期も近きにありと見て差支えがないのであります。これは多年の自由党の公約から推して参りましても当然の帰結と思うのであります。昨日の答弁でも廣川農林大臣は、自由経済は我が党の大方針であるということを述べられておるのであります。ついこの間までは食糧の一割増産運動を政府は呼号しており、今は、今申上げましたような非常な急ピツチな統制撤廃論が出ておるのでありまして、私は勿論のこと、国民大多数がその帰趨に迷つておると私は見るのであります。そこで私が御質問いたしたい点は、朝鮮動乱を契機としての国際情勢の緊迫化、又我が日本の現在の国力から見て参りまして、かかる急テンポな統制の撤廃が果して適当であるかの問題であるのであります。国内には食糧公団を通じましての食糧の配給辞退が頻りに行われておる。或いは外貨資金の蓄積は予定計画よりも非常に殖えておる。こういうところから統制撤廃可なりと、こういう結論が出るのでありますれば、私は大変だと思うのであります。外貨は、昨日も大蔵大臣から御説明がありましたように、確かに最近非常に殖えておるのでありまして、予定の七億ドル弱が十一億ドルを越すだろうと大蔵大臣も言われておるのでありまするが、併しこれは日本経済の順調なる実力の回復ではないのでありまして、輸出が急激に増加いたしましたのは、朝鮮動乱の勃発或いは世界的な軍備拡張の影響が多分にあると思うのであります。而も輸入は従来のように簡單には運ばないのでありまして、輸入はむしろ困難なる状況に入つておるのであります。この両者が相待ちまして、外貨が或る程度蓄積された現象を呈しておるに過ぎないと思うのであります。ガリオア資金の漸減しますることは、昨日の安本長官の御答弁によりましても明らかであるのであります。又、国際情勢の緊迫しておりまするここ当分の間は、輸入物資の値上りを見るものとしなければならないのであります。更に、私が検討すべき点と存じまするのは、相当蓄積をされたと称しまする外貨の内訳であるのでありまして、ひとしく外貨と申しましても、ポンドとドルは、現在では自由に流用使用し得ないのでありますから、外貨の総額が増したからと言つて、どの国からも勝手自由に食糧の買付けができるわけには行かないのであります。現に昨今のポンド貨の不足によりまして、ポンド地域からの食糧輸入が相当困難になつておるというような状況を呈しておるのであります。我が国は遺憾ながら敗戰の結果、朝鮮、台湾という食糧の二大基地を失いまして、他面、人口は増加の一途を辿つておりますので、少くとも年間三百万トン以上の食糧はどうしても輸入しなければならないのであります。否、四百万トンの輸入を要する時期も遠くはないと私は見るのであります。統制を撤廃いたしまして、国内食糧で足らない分は外国から入れることになりまするが、この外国食糧を自由自在に幾らでも買付け得るということでなければならないと思うのであります。併しそれが先に申しましたような諸般の事情から、しかく簡單に輸入はできないと私は見るのであります。況んや国際情勢の動向を見るときは更にその感を深くするものであります。私は現在の統制方式が絶対よろしいとは存じませんけれども、この統制撤廃の時期は慎重にやらなければならないと思いまするが、これに対しまする特に吉田総理大臣の御所見を承わりたいのであります。又併せて外国から入れますところの輸入食糧が、現在の国際情勢下或いは外貨の関係から、その所要量が完全に輸入できまするかどうか。その具体的な見通しを承知いたしたいのであります。
 第三が麦の供出制撤廃の点でありまするが、これが全くの自由販売にいたしますかが議論の中心となつたようでありまして、最近の政府側の結論では、農家の希望に応じて無制限に買入れる、こういうことに大体決まつたことくでありまするが、果してそうでありましようかどうか。政府の御方針を承知いたしたいのであります。麦は元来国務的商品の色彩が強いものでありまするから、これを自由放任にいたしますれば、現在のところは国際価格の方が高くありまするから大した心配はございませんけれども、将来外麦が安く入つて来る場合には、如何にしてこれらの麦作を保護するか、この問題は農家にとりまして最も大きな問題であるのであります。この意味で、政府が農家の希望に応じて無制限に買入れる体制をとることは、考え方といたしまして私は賛成であります。ただこの場合に問題となる点が三つあると考えるのであります。その第一は、この麦の買入価格を如何にするかの点であります。政府の方針によりますれば、麦の米に対する比価、対米比価を相当引下げるようでありまするが、これが低過ぎては農家は保護せられないのであります。これが少くとも生産費をカバーすることでなければならないと思いまするが、これに対しまする政府の考え方を承わりたいのであります。問題の第二は、政府は無制限に麦を買入れるということでありまするが、食糧管理特別会計の予算を超過してまで買うことができまするかどうか。これは最近問題になりました食管会計のインベントリー・フアイナンスとの関係もありますので、政府の明瞭なる所見を承知いたしたいのであります。問題の第三は、政府が無制限に買うということになりますると、農家は一般市場が有利な場合にはそつちに売りまして一般の市価が下つた場合に政府に売るという逆選択をすることは明瞭だと思うのでありまするが、現に「いも」類につきましても同様の傾向になつておるのであります。かようにしますると、政府が最も心配しておりまするところの食糧管理特別会計の赤字を生ずる虞れがあると思いまするが、どういう見解でありまするか。私は生産費を補償する価格で政府が買うという方向には、先程申上げましたように賛成でありまするが、以上の三点につきまして御所見を承わりたいのであります。第四は米の統制撤廃の問題でありまして、これはさすがに未だはつきりした方向は決められておらないようでありまして、明年の米につきましては供出完了後、情勢に応じて自由販売を考慮するという程度にしか報道されておりませんが、雑穀が多れ、麦が外れることになりますれば、米の統制撤廃も先ず時期の問題と見てよろしいことは先程申上げた通りであります。米につきまして統制を撤廃して自由にしました場合に、どういう結果が出まするかということは、最近の各般の論調を見て参りまましても大体明瞭であるのでありまして、国産の米の消費者価格は非常に私は上るものと見て間違いがないのでありまするし、又その米の消費は国民全部には行渡りませんで、極めて一部に偏在する結果になると思いまするのであります。現在でも米の配給率は、全国年間を通じまして五割強に過ぎないのであります。これは外米を加えまして漸く五割強の配給しかできないのであります。この米の統制を外しますれば、消費者の価格は暴騰いたしまして、結局購売力のある階層、生活にゆとりのある人だけが米を買つて食べることになるのであります。更に自由取引となりますれば、現在消費を抑えておりまするところの或いは酒米でありまするとか或いは業務用米は、この機を得たりと進出いたしまするので、大雑把に言いますれば、現在は公平に配給いたしまして、五割強の配給しかできないわけでありまするから、これを自由よりどりにいたしますれば、先ず国民の半分しか米にはありつけない。こういう非常に不公正な結某を招来すると思うのであります。英国では今日でも尚定量配給制を布いておるとのことでありまして、これは食糧の公正な配給と、一旦緩急あれば、いつでも消費規正制をすることができる体制をとつているためだと称せられておりますが、この点等は大いに参考に資すべきだと思うのであります。この日本の米暴騰に対しまする市価及び数量調節に関しまして、政府は現在どの程度のお考えを持つておられますか、承わりたいのであります。政府の考え方は、或いは間違つているかも知れませんが、私が各般の情勢から推察いたしまするに、かような場合に政府はあらかじめ外国食糧を輸入して置きまして、これを随時国内に放出いたしまして、市価の調節を図るというような構想のごとくでありまするが、この点につきましても、私は大きな誤謬があると思うのであります。日本の米は御承知のごとく、その食味、嗜好の点から見て参りまして、簡單に他の食糧では代替できないのであります。日本人が日本の米に対する欲望度は別であるのでありまして、小麦粉なり或いは外米を出しましても、簡單には代替し得ないと思うのであります。従つて国内産の米が上りました場合に、外国から入れました外米なり或いは外麦を放出いたしましても、にわかに国内の米の価格は下らないと私は見るのであります。戰前の米の市価調整は、国内産の米なり、質、味或いはその他が内地米と同様なる朝鮮米なり、或いは台湾の蓬莱米を政府は買入れまして、これを市場に出して市価調節の効果を図つておるのでありまして、外米なり外麦を放出いたしまして市価の調整を図つたのではないのであります。従つて日本米価格の暴騰を如何にして調整する御方針でありまするか。これは国民生活に極めて重大な関係を有するものでありまするので、この点につきまして農林大臣の明快なる御答弁を得たいのであります。
 第五に、これは大蔵大臣に意見をお伺いしたい点でありまするが、前にも述べましたように、市価調節のために外国食糧を政府が輸入管理いたしまして、これを国内に放出するという構想のようでありまするが、その場合の放出価格は、市価を下げるという目的から見て参りまして、相当安くしなければその効果が達せられないと思いまするが、併し現在のところ、国際価格は簡單には下らないのでありまして、又国際価格が国内価格と同一になつたとしましても、その放出価格は一般の価格よりも安くしなければならないのであります。そういたしますると、輸入価格と放出価格との間には相当の開きが出ることになると思うのでありまするが、一方で輸入食糧の補給金を逐次減らして参りたいと言いまするが、他面に市価調節の面で国庫の損失が生ずることとなりまして、財政負担を軽減するという目的を達し得られないというふうに私は考えますが、これに対しまする大蔵大臣の御所見を承知いたしたいのであります。
 又、市価調節、数量調節の目的から政府が一定の食糧を保有することになりますると、その数量は絶対不足量プラス予備量を持たなければならないと思います。そうしますと、絶対不足量プラス予備量ということになりまするから、相当多量の食糧を政府は買入れ保管することになり、その間に相当の国庫の損失を見なければならないと思いまするが、併せて大蔵大臣の御意見を承わりたいのであります。第六に御質問いたしたい点は、統制が撤廃されますると、米を初めとして大豆或いは小豆等、国会食糧で消費者価格が相当に値上りするものが出て来ると思うのであります。これは農村側から見て参りますると、一見有利のように見えまするが、実際はそう簡單には行かないものと思うのであります。農地改革の結果、戰前までは相当多量の販売米を持つておりました地主階級は現在大部分がなくなりまして、現状は僅かの販売数量しか持たない零細農が多きを占めて来ておるのであります。税金負担の過重なり金融難は詳しく説明するまでもないのでありまして、特に最近は農業協同組合が非常に不振となりまして、農家の販売米処理に相当の困難を来たしておる実情であるのであります。そうしますると、農家は出来秋にその経済的窮迫から急いで米を売らなければならなくなると思うのであります。消費者の米価は一方に高くなり、農家の米の庭先価格は必ずしも大して有利にならないということになりますれば、これは誠に意味が薄いと思うのであります。又農家は正当なる米価、安定性のある米価を要求しておるのでありまして、何も不当、乱調子な価格を希望しておるのではないのであります。政府は生産者価格と消費者価格とのマージンをできるだけ圧縮するよう現在苦心を拂つておるようでありまするが、農業協同組合の不振なり農村金融措置を不問に付し、又強力な市価調節の方途を講じませんで統制を解くことは、極めて危險であると思いまするが、これに対しまして政府は如何なる考え方を持つておりまするか。農林大臣の御所見を承わりたいのであります。
 又、食糧の加工部面を担当いたしまする製粉、製麦、製麺、製パンの業者等、従来食糧の加工配給に協力しておりました人が沢山ありまするが、これは多くは中小の企業者であります。これにつきましても従来の政府からの委託加工の方式が最近変更になると聞いておりまするが、これにつきましても金融の裏打ちがなければ、加工業者は加工がやつて行けない状況にあるのであります。又食糧公団も明年三月までに卸小売を通じまして逐次民営に切替えて行くことになつておりますが、これらの約十万の業者は甚だしい金融難に悩んでおるのであります。食糧配給の重要性からこれは放任し得ない点でありまするが、この金融措置に対しまする政府の方針を承わりたいのであります。
 第七に、国際関係の緊迫化等の理由から、ここ当分の間は国際価格は大して下落しないと思いまするが、国際関係なり国際経済が平常に復して参りますると、外麦、外米、いずれも将来の国際価格はむしろ国内価格よりも下つて来ると私は存ずるのであります。集約度の高い我が国の農業は、経営規模の段違いに大きいアメリカ大陸の農業、或いは肥料なしで米がとれまするところの東南アジア諸国の農業とは到底太刀打ちができないのであります。而も年間三百万トン以上の食糧を入れなければならない我が国でありまして、戰前と違い、我が国の農業、食糧は、間断なく外国農業、図際経済の影響下に置かれることになるのであります。従つて我が国の農業政策或いは食糧政策は、食糧の自給できました戰前と同じ構想であつてはならないと存ずるのであります。消費者の面からいたしますれば、外国から安い食糧が入つて来ることはこれは歓迎すべきことであります。併しすでに生産費に弾力性のありません我が国の農家は、外国から安い食糧がどんどん入つて来まするのを放任されましては、これは立ちどころに参つてしまうと思うのであります。政府は来年の麦につきまして、農家の希望に応じて無制限にこれを買入れるというような構想を持つておられるようでありますが、この考え方を主要農産物全体についてこの制度をおとりになる方針がありますか。農産物価格支持政策の御用意がありますかどうか。政府の御所見を承わりたいのであります。
 以上が私の質問でありまして、この問題の中には、或いはまだ政府といたしまして未定の問題があるかも存じませんが、事が決つてしまいましてはこれは意味がないのでありまして、どうかその点を御了承の上、誠意ある御答弁を願いまして、私の質問を終りたいのであります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#51
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 食糧統制の問題とか農村対策等はお説の通り、誠に重要な問題として、政府も慎重に、真劍に検討いたしております。その詳細については、関係閣僚からしての説明によつて御了承願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#52
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。食糧問題につきまして造詣の深い御意見を承わりまして、誠に傾聽に値するものと考えております。先ず御質問の外貨の状況と、それから主要食糧の輸入の見通しはどうか――外貨の状況につきましては、本年内に今までにおきまして相当の蓄積が出ました。これは輸出の増加並びに朝鮮事変の特需関係の問題であるのであります。即ち労務関係でも五、六千万ドルの收入があつたのであります。これを加えますと、発表はできませんが、相当の数字に上つておるのであります。尚又スターリング地域の方も今までにはない蓄積があつたのであります。而してこれを利用いたしまして、できるだけ早く主食を入れたいと努力いたしておるのでありまするが、大体今年度におきましては、予定の三百四十万トン、米換算三百四十万トンが三百二十万トン入る見通しは付いたのであります。三百三十万トン程度入ると思います。尚、今日、日本とスターリング地域との貿易協定ができまして、その中にも相当の小麦輸入が予定せられておるのであります。尚、我々といたしましては、スターリング地域の主食ばかりでなしに、ドル地域の主食も買入れるように今後努力すべきだと思うのであります。そうして行けば主食の輸入にさした心配はないと思います。
 次に、銃刑撤廃後の価格調整の問題、或いはこれに対する国庫のやり方の問題でございますが、私は統制撤廃後におきまして先ず第一の問題は、日本が小麦協定に入れるか入れないかという問題であります。これが先決問題。小麦協定に入るといたしますれば、先程の問題のスターリング地域からの主食の輸入は相当制限せられましよう。小麦協定に入らないとすれば、主食の輸入は相当楽でありますが、買入れ価格は相当高い金額になるのであります。御承知の通り、只今予算で見込んでおりますのは、小麦のCIF価格で九十五ドル或いは九十三ドルと言つております。小麦協定に入りますと、段々と三年間で下つて来ますが、最低七十一ドル、而して今、日本で小麦を三千七百五十円で買つておりますと、六十八、九ドルでありますので、小麦協定に入れば、日本の内地の小麦価格と外国の小麦の価格とはそう違いません。入らない場合は、先程申上げましたように九十三ドルでありますから相当違うのであります。而して、いつ入るかという問題で国庫の関係も違つて来るのであります。併し統制は撤廃した、小麦協定には入らないということになりますと九十ドル程度、私はもう少し下つて来ると思いますが、八十五ドルくらいのものが入つて来たときにも、これは内地の麦よりは相当高いので、国が損失を蒙むることになる。これは止むを得ない。これは今の農村対策としまして、片一方では麦の値を上げると同時に、片一方では高い麦を一般消費者に売らないように調節するのが政府の務めであるのであります。私はそういうことは心配いたしておりません。又統制撤廃後、備蓄のために、相当の在庫品を持つために特別会計の予算が殖えるのは、これは当然のことであります。御承知の通り、アメリカは馬鈴薯その他の主食の価格維持に予算の五、六%をこれに出しております。二十数億ドルのいわゆる補助金的なものを出しておる。又イギリスは馬鈴薯増産のために、馬鈴薯に対して相当の補給金を出しておる。日本の出しておる輸入補給金とは違いまするが、国内生産増強のための補給金である。だから、このために、日本で最も重要な農村問題の解決のためには、我我政府はできるだけの施策を講じようといたしておるのであります。
 次に外国食糧の将来の価格という問題でありまするが、これは私はお話の通りに段々下つて来るだろうと思います。ただ米の問題はなかなかそうは行きませんが、小麦は大体外国も下つて来るように考えております。尚、統制撤廃後におきまする金融の問題につきましていろいろの問題がございます。例えば昔のように大地主がおるわけでありません。又一朝にして米問屋ができるわけでございません。併しいろいろの問題がございますが、政府に若し統制撤廃するということになりますならば、万般の処置を前以て講じてからやるという考えであるのであります。先程総理が申されましたように、非常な重要な問題でございまするから、我々は一応今予算では、一応予算では、麦にいたしましても、少くとも去年くらいは買入れる。米にいたしましても今まで通りの方策を講じて行つて、そうして情勢を見ながら適当の措置をする。今のような情勢ならば、麦は来年から外して行く、又米は来年から供出後は自由販売にしてもいいだろう。こういうふうな見通しで進んで行つておるのでありまして、情勢変化によつて考えなければなりませんが、我我の見通しでは、この通りで行けば、今考えておることが実行できると思つておるのであります。(拍手)
   〔政府委員小峯柳多君登壇、拍手〕
#53
○政府委員(小峯柳多君) 只今専門に御研究になり非常に造詣の深い御意見を承わりまして、私は安定本部の立場から主食の統制撤廃の方針を申上げたいと思います。
 戰後米麦の国内生産と輸入の状況は比較的順調に推移して参りまして、主食の需給状況も相当好転して参つておるように承知いたします。殊に麦につきましては、御承知のように、麦類につきましては配給を辞退するような傾向も相当見受けられますが、又闇の値段とマル公の値段が極めて近接しておるような状態でございますので、主食の統制の方式につきましては少し考えを変えてもいいのではないかと考えておる次第であります。併し統制撤廃のための統制撤廃を考えるのではありませんで、その間、極めて慎重な準備と用意だけはなければならないと考えて、おります。
 先ず麦でありますが、麦は今申上げましたような状態でありますから、二十六年度からの麦は供出制度をやめるつもりであります。そして秋頃、十一月頃からは配給制度も麦はやめて参りたいと思います。尚その麦の統制撤廃はやめますが、それに関しましてやはり準備が必要であります。先程御指摘になりましたように、政府は統制をやめましたあとでも一定の価格による買入れは続けまして、農業政策の建前から小麦の値段を考えて参りたいと考えております。又戰争前と今日のこの主食の需給構造が大分変つておりまして、非常に麦が重くなつておりますし、その麦の過半数は輸入に仰ぐような状態であり、又その値段も、今御指摘を受けましたように、又大蔵大臣から答弁がありましたように、国際的ないろいろな関係がありますので、国際的な輸入価格が余り高い間は、これに補給金を付しまして、これが消費者に及ぼす影響を防いで参るつもりであります。米の問題はここで御指摘のようになかなか麦のようには簡單には参りません。殊に米に対する嗜好というものは殆んど絶対に近い状態であります上に、朝鮮、台湾の輸入が御承知のような状態で殆んど望みがかけられません。又南方からの米の問題も、複雑な政情、又むずかしい政情から、外貨資金の問題もありますので、この米の輸入が思うようにできる筈はございません。そこで米に関しましては二十六年度は依然として配給の統制はやります。又供出の統制もやつて参るつもりであります。ただその場合に事後の割当でやるように考えたいということは当然だと思います。かようにいたしまして、米のほうは極めて愼重に考えて参るつもりでありますが、ただ来年の出来秋の作柄の状態やら或いは諸外国の状態などを勘案いたしまして、若しできるならば、供出ができましたあと自由販売にといいますか、多少加味したものを……、勿論そのときの状態にもよりますが、考えてもよいのじやないかと思つております。それにつきまして非常に御懇篤な御注意がありましたが、その御意見の中で、自由にしますと特定の人だけが米を食べる、或いは特定のほうに流れて、米が一般に廻らないというような欠点のほうの御指摘を強く申されたように思いますが、私共は自由の制度を仮りに加味するようになりますと、自由によつて隠れておりましたものが市場に出廻つて来る、そういうプラスの面も一応自由制度を加味する上には考えてもよいのじやないかと思います。併し米に関しましては二十六年度も自由にすることなしに、事情が非常に好転いたしました場合には、私共が年来主張して参りました供出が済んだならば自由にするということを加味して考えたいと、かように考えておる次第であります。(拍手)
   〔政府委員島村軍次君登壇、拍手〕
#54
○政府委員(島村軍次君) 先輩片柳氏からの農林行政並びに食糧問題に関する極めて適切且つ造詣の深い御意見を承わりまして、非常に参考になつたのであります。最後にお話のありました通りに政府でまだ決定を見ないような事項もありますので、十分これらに関しましては、御意見の点も考慮に入れまして、将来の対策を立てるようにいたしたいと考えるのであります。
 統制全般に関する問題については安本政務次官及び大蔵大臣のほうからお話がありましたので、農林省所管に関する事項につきましてお答えを申上げたいと思います。
 第一の、今次の国会に対して農林対策が極めて少いではないかというような御意見であつたのでありますが、御案内の通り今回の予算は、本年度の補正予算と来年度、二十六年度の通常予算のいわゆる、十五ケ月予算であることは、たびたび政府の声明にありまする通りでありまして、農林省関係の補正予算中、増産に関する経費の極めて少い点は御指摘の通りであります。ところが一面御案内の通りに麦の一割増産を民主的にやりたいという考えを以ちまして増産運動を起しておるのでありますが、差当り麦の増産二千六百万石の目標の範囲においてできるだけ経費の計上をいたし、農家の自主的協力と相待つてその増産の実を挙げたいと、かような考えを持つておるのでありまして、現に予算中に上がつておりまするものは、増産に必要なる経費一億四千万円、その他、麦の種子の消毒、或いは毎年きまつて発生する病蟲害の対策等に、事前にこれら予防対策を立てるための経費二億三千万円等を計上いたしておるのでありまして、これによつて将来食糧増産の実を挙げるための差当りの措置を講じておるような次第であります。同時に来年度予算におきましては、大臣から説明のありました通りに、不十分ではありまするが、相当の経費を計上し、更に金融対策についてもそれぞれの施策を施すための手段を講じつつあるわけでありまして、目下それぞれ検討を重ねて、次回の国会に提出いたす予定であります。さように御了承を願いたいと思います。
 米価の問題が決定が遅れましたことについては、農林省といたしましは、早く決定されることを望んで参つたのでありますが、関係方面その他の情勢によりまして今日やつと審議会を開く段階になつたのでありまして、この点は早場米地帶等の、すでに供出をしておる地方に対しましては、誠に申訳ないと思つておるのでありますが、本日の審議会において決定次第、早急にそれぞれ手続を運びたい点を御了承願いたいと思うのであります。
 麦の供出に関しまして、政府の発表いたしました二十六年産麦の買入を無制限にやるかどうかという問題につきましては、先般大臣が他の機会において説明をいたしました通り、先ず価格におきましては本年の価格に劣らない、多少これに加えた千五百三十五円、大麦においては九百七十二円、こういう予定を以て買上げをいたしたいということを関係当局と打合せ済みであります。尚、買上げの数量は八百八十万石を予定いたしておりますが、従来の実績に鑑みますと、例えば二十二年には五百四十四万石、二十三年においても六百五十二万石、二十四年においては八百八万石、二十五年、本年の実績は八百二十九万石、かような数字でありまして、予算八百八十万石の数字は、無制限とは申上げられませんが、大体一面には増産を図る、同時に国内生産の麦は大部分政府の買上げに応じて頂きたいということを期待いたしておる次第でありまして、予算上一応さような多量の数字を計上したことを御了承願いたいと存じます。
 尚、統制を撤廃した場合における農家経済の影響等につきましてはいろいろ御意見もあり、他の政府委員より御説明のありました点で大体御了承を願いたいと思うのでありますが、農林省におきましても、これらの問題は今後慎重に研究をいたしまして、農民の経済に影響を及ぼさないような方策を研究し、施策を講じたいことを申し加えまして、私のお答えといたします。(拍手)
#55
○議長(佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣の演説に対する質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#56
○議長(佐藤尚武君) 参事をして報告いたさせます。
   〔海保参事朗読〕
 本日衆議院から左の内閣提出案を受領した。よつて議長は直ちにこれを大蔵委員会に付託した。
 酒税法の一部を改正する法律案
 本日委員長から左の報告書を提出した。
 酒税法の一部を改正する法律案可決報告書
     ―――――・―――――
#57
○議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#58
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長小串清一君。
   〔小串清一君登壇、拍手〕
#59
○小串清一君 只今上程と相成りました酒税法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の概況並びにその結果について御報告をいたします。
 先ずこの法律案の内容について申上げます。酒類の生産が原料事情の好転等によつて本年度当初予算編成当時に比べて著しく増加したにも拘わらず、酒税の税率及び酒類の価格が高きに過ぎ、購買力がこれに伴わないために、正規の酒類の需給に混乱を生じ、酒税の円滑なる徴收に支障を與えると共に、酒類密造の弊害を大きくしている現状でありますので、酒税の税率につき、特に焼酎及び清酒第二級等、一般の需要の多い酒類に重点を置いてその引下げを行い、酒類の円滑なる需給を図ると共に、これを機として大いに密造の防止に費そうとするものであります。而してその実施時期は、酒類の年末年始における特殊な需給関係を考慮し、来る十二月一日を予定しておるのであります。
 本案につきましては公聽会を開きまして慎重に審議をいたし、又委員各位より熱心な質疑と政府の詳細なる説明がありましたが、その経過の詳細は速記録によつて御承知を願いたいと思います。
 かくて質疑を終了して討論に入りましたところ、黒田、油井両委員より本案に賛成をするものであるが、将来更に税率を引下げ、国民大衆の輿望に副うように、又密造等の弊害を極力除去するように努力を希望する旨の御意見がありました。かくして討論は終局をいたしまして、採決の結果、全会一致を以て原案の通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 右御報告申上げます。(拍手)
#60
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔総員起立〕
#61
○議長(佐藤尚武君) 総員起立を認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#62
○議長(佐藤尚武君) この際お諮りして決定いたしたいことがございます。去る二十二日、内閣総理大臣から、向井鹿松君を商品取引所審議会会長に、柿沼谷蔵君、島剛君、寺田省一君及び藤田國之助君を商品取引所審議会委員にそれぞれ任命したことについて、商品取引所法附則第七項及び第八項の規定により本院の承認を求めて参りました。本件について承認を與えることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#63
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて本件は承認を與えることに決定いたしました。
     ―――――・―――――
#64
○議長(佐藤尚武君) 次に、去る二十二日、内閣総理大臣から、東谷伝次郎君を検査官に任命したことについて、会計検査院法第四條第三項及び第四項の規定により本院の承認を求めて参りました。本件について承認を與えることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて本件は承認を與えることに決定いたしました。
 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時八分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第三日)
 一、常任委員長辞任の件
 一、常任委員長の選挙
 一、酒税法の一部を改正する法律案
 一、商品取引所審議会会長及び同委
  員任命につき事後承認の件
 一、検査官任命につき事後承認の件
ソース: 国立国会図書館
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