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1950/12/01 第9回国会 参議院 参議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第1号
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1950/12/01 第9回国会 参議院

参議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第1号

#1
第009回国会 法務委員会 第1号
昭和二十五年十二月一日(金曜日)
   午前十一時一分開会
  ―――――――――――――
 委員氏名
   委員長     北村 一男君
   理事      伊藤  修君
   理事      宮城タマヨ君
   理事      鬼丸 義齊君
           左藤 義詮君
           鈴木 安孝君
           長谷山行毅君
           山田 佐一君
           齋  武雄君
           棚橋 小虎君
           岡部  常君
           高橋 道男君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
           須藤 五郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○小委員会設置の件
○小委員の選任の件
○小委員長の選任の件
○裁判所法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○刑事訴訟法施行法の一部を改正する
 法律案(内閣送付)
○民事訴訟法等の一部を改正する法律
 案(内閣送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (神戸市の騒擾事件に関する件)
 (警察予備隊に関する件)
 (黙秘権に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(北村一男君) 只今より委員会を開きます。
 先ず初めにお諮り申したいことがございます。当委員会は検察及び裁判の運営等に関する調査につきまして従来司法制度に関する小委員、新刑事訴訟法の運用に関する小委員、青少年犯罪に関する小委員の三つの委員会を設置いたしておりましたが、今期國会におきましても以上の三小委員を設けることといたしまして、且つその小委員長及び小委員は前國会の通りといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(北村一男君) 御異議ないものといたしましてさよう決定いたします。
 尚特に小委員の変更その他御希望がございます方は後刻委員長までお申出を願います。
#4
○委員長(北村一男君) 次に一昨日当委員会に予備審査のため付託されました三法案の審議に入ります。
 先ず裁判所法の一部を改正する法律案につきまして政府の御説明を願います。大橋國務大臣。
#5
○國務大臣(大橋武夫君) 只今議題となりました裁判所法の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
 先般連合國最高司令官の覚書により、我が國の裁判権に対する制限が緩和され、本来十一月一日以降我が國の裁判所は、占領軍要員として指定されている者を除き日本に在住する連合國人に対し民事及び刑事の裁判権を広く行使することができるようになりましたことは御承知の通りでありまして、このように我が裁判権の及ぶ範囲が拡張されるに至りましたのは、連合國が我が國の司法制度及びその運用に当る裁判所を信頼したからにほかならないと信ずるのであります。この信頼にこたえるためには、適正な制度の下に適正な裁判を迅速に行うことが極めて肝要であると存ずるのでありまして、先般の覚書におきましても民事及び刑事の事件の審理の促進について特に要請されるところがあつたのであります。
 政府といたしましても、つとに民事及び刑事の事件の審理の促進のために制度の改善の必要を認め、準備を進めて参つたのでありますが、抜本的な対策を樹立するためには制度の全般にわたつて徹底的な検討を加える必要があり、成案を得るためにはなお相当の日時を要しますので、今回は、事件の迅速処理のため差しあたり特に緊要と認めるもののみを取上げて早急に改正案を提出することといたした次第であります。
 この裁判所法の一部を改正する法律案も以上のような趣旨に基き、民事及び刑事の事件の審理の促進を図るための方策の一環として立案されたものでありまして、その改正の要点は第一は、下級裁判所の裁判官の職務を代行する裁判官の範囲を拡張することであり、第二は、簡易裁判所の裁判権を拡張することであります。
 以下改正の趣旨について順次御説明いたしたいと存じます。
 先ず第一は、下級裁判所の裁判官の職務を代行する裁判官の範囲の拡張に関する改正についてであります。現在裁判所法におきましては、下級裁判所の裁判事務の取扱上差し迫つた必要があるときは、一定の範囲内において裁判官の職務代行の途が設けられており、高等裁判所の場合については、その高等裁判所が、その管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事に所要の職務代行を命じ、地方裁判所の場合については、その地方裁判所の所在地を管轄する高等裁判所が、その管轄区域内の他の地方裁判所、家庭裁判所又はその高等裁判所の裁判官に、又、家庭裁判所の場合については、その家庭裁判所の所在地を管轄する高等裁判所がその管轄区域内の他の家庭裁判所、地方裁判所又はその高等裁判所の裁判官に、それぞれ職務の代行を命じ簡易裁判所の場合については、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、その管轄区域内の他の簡易裁判所の裁判官又はその地方裁判所の判事に、所要の職務代行を命ずることができるものとされているのでありまして、これにより、裁判所の事務の実情に応じてある程度裁判官の配置につき臨機の措置を講じ得る道が開かれているのであります。ところが裁判所の事件の徹底的な迅速処理のためには、より広い視野に立ちより広い範囲に亘つて機動的に下級裁判所の裁判官の職務代行を命ずる措置を講ずる必要がありますので従前の規定による裁判官の職務代行の範囲を拡張し、高等裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所の裁判官については全國的に、又簡易裁判所の裁判官については、高等裁判所の管轄区域の範囲内で、相互に他の裁判所の裁判官の職務代行を命ずることができることとしようとするのでありまして、裁判所法第十九條、第二十八條及び第三十六條の改正規定は、この趣旨から立案いたしたものでありますが、右第二十八條の改正規定は、裁判所法第三十一條の五の規定により、家庭裁判所にも準用されることになるわけであります。
 第二は、簡易裁判所の裁判権の拡張に関する改正についてであります。先ず民事につきましては、御承知の通り、現在簡易裁判所は訴訟物の価額が五千円を超えない請求につき裁判権を持つものとされているのでありますが、この金額の定められました昭和二十二年五月当時に比較いたしますと、我が國の物価指数は数倍に高騰いたしているのでありして、統計の示すところによりますと簡易裁判所の取扱います民事の訴訟事件数は極めて少数であります。この点から申しますと、比較的簡易な手続によつて軽微な事件の迅速な処理を図ることを使命として、設立されました簡易裁判所は、民事の関係におきましては十分にその機能を果していないものといわざるを得ないのでありまして、簡易裁判所の取扱う民事の事件が少いことは、それだけ地方裁判所の負担を過重ならしめていることになるのでありますから、この際簡易裁判所の民事に関する裁判権を訴額三万円を越えない請求にまで拡張して、下級裁判所における事務の負担の調整を図り、以て民事訴訟事件の審理の促進に資することは、誠に事宜に適した措置であると考えるのであります。
 次に、簡易裁判所は刑事につきましては現在罰金以下の刑にあたる罪又は選択刑として罰金が定められている罪にかかる訴訟のほか、窃盗罪又はその未遂罪に係る訴訟についても裁判権を有し、且つ窃盗罪若しくはその未遂罪にかかる事件又はこれらの罪と他の罪との間にいわゆる牽連盗等の関係があり、これらの罪の刑を以て処断すべき事件においては、三年以下の懲役を科することができるものとされているのであります。然るに窃盗罪又はその未遂罪と比較して、事案の軽重につきさほどの差異もなく、又通常、窃盗罪又はその未遂罪に関連して発生いたします或る種の犯罪につきましては、簡易裁判所に対して窃盗罪又はその未遂罪に関すると同様の権限を與えますことは、先に簡易裁判所の民事の裁判権を拡張いたす際に申上げましたと同趣旨により、極めて適切妥当ではないか、かように存ずる次第であります。
 裁判所法第三十三條の改正は以上申上げましたる趣旨から立案いたしたる次第であります。以上本法案の大要の御説明をいたしましたる次第でありまするが、何とぞよろしく御審議を賜わりまするよう切にお願いを申上げます。
#6
○委員長(北村一男君) 引続きまして刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案、以上二件につきまして政府の提案の理由を承わります。
#7
○國務大臣(大橋武夫君) 只今議題となりました刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案並びに民事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申上げます。
 この二つの法律案のうち、刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案の提案の趣旨は、裁判所法の一部を改正する法律案の提案理由の説明におきまして申述べました連合國最高司令官の覚書の趣旨に鑑み、旧刑事訴訟法及び日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律の適用される、いわゆる旧法事件の審理の促進を図るため、刑事訴訟法施行法に所要の改正を加えようとするものでございます。
 改正の要点は次の二点であります。先ず第一は、旧法事件の処理についての裁判所規則に関する事項であります。現在の刑事訴訟法施行法も裁判所規則に対する委任の規定を有しているのでございますが、その條文の形式上規則を制定することのできまする範囲が明瞭を欠いておりまするので、今回この規定の形式を改めまして、旧法事件に関し裁判所の規則を以て審理促進のため必要な特則を定め得ることを明らかにしたのであります。
 第二は、最高裁判所における旧法事件の処理に関する事項であります。即ち、旧法事件の上告手続について特則を設け、上告理由、書面審理等主要な部分について新法の規定を適用することにしようとする趣旨でありまして、これによりまして最高裁判所の負担を調整し、全体としての審理の促進を図ろうとするのが主な目標であります、御承知の通り最高裁判所は、憲法の解釈問題の解決、法令の解釈の統一を図る等の重要な任務も持ち、而も裁判官の数は僅かに十五人に過ぎません。然るに同裁判所の受理する刑事事件の数はますます増加の傾向にあり、未済事件の数も又殆んど毎月増加している状況でございまして、旧法事件の未済だけでもすでに一千件に上つております。又現在下級審に係属しておりまする旧法事件のうち、上訴されて近い将来最高裁判所に来るという予想を立て得るものも相当多数に上つているような次第でございます。
 このような実情に顧み、今回の改正は旧法事件の上告についても新法を適用し、最高裁判所の負担を調整することによつて、その最も重要な使命に十分力を注ぐことができるようにするということを目的とするものでございます。
 今回の改正案は多少被告人の利益に影響するところもありますが、他面著しく正義に反するものであれば刑の量定事実誤認についても原判決を破棄することが認められる等、従来よりも被告人に利益となる面もあるわけでございまして、決して被告人の重要な利益を害することはないものと私共としては考えている次第でございます。
 以上がこの法律案を提案いたしました理由であります。
 次に民事訴訟法等の一部を改正する法律案の提案の趣旨といたしましては、「裁判所法の一部を改正する法律案」の提案理由において申述べましたところと同様でありまして、民事訴訟事件の審理の促進を図るため、差当り特に緊要と認められる数点につきまして民事訴訟法等の一部を改正せんとするものであります。以下改正案の要点につきまして簡單に御説明申上げます。
 第一は、簡易裁判所の事物管轄の拡張に伴う規定の整理であります。「裁判所法の一部を改正する法律案」の提案理由において御説明申上げました通り、民事訴訟事件の迅速な処理を図るため、裁判所法中の関係規定を改正いたしまして、簡易裁判所の事物管轄の範囲を訴訟物の価額三万円を超えない請求にまで拡張しようとする次第でありますが、それに伴い、民事訴訟費用法及び民事訴訟用印紙法中の関係規定を整理しようとするものでございます。
 第二は準備手続の拡張であります。現行法では準備手続は裁判所が会議体で審理する場合に、例外的にこれをすることができることとされておりますが、訴訟事件の迅速な処理を図りまするためには、口頭弁論を集中して継続的に行うことが最も有効適切な方法であり、集中審理がよく実効を收めるためには、準備手続において弁論の準備が十分行われていることが必要であると存じますので、裁判所が一人の裁判官で審理する場合にも準備手続をすることができるように改めようとするものでございます。
 第三は、準備手続を経た口頭弁論期日の変更の制限であります。右に申しました通り、準備手続において十分なる弁論の準備をいたしましたる上、口頭弁論を集中して行い、一挙に事件を解決することによつて訴訟の迅速なる処理の目的を達しようとするのでありますが、口頭弁論の期日が容易に変更されることになれば、到底その目的を達することができません。そこで準備手続を経た口頭弁論期日の変更は、止むを得ない事由がある場合でなければ許すことができないものとしようとするものでございます。
 第四は、在廷証人等に対する日当、旅費、止宿料等の支給であります。先に申述べましたように、集中審理によつて証拠調を行うようになりますと、勢い証人等はその尋問を申出た当事者が同行していわゆる在廷証人等として尋問する場合が多くなるものと考えられますので、在廷する証人等を取調べた場合にも、裁判所の呼出に応じて出頭した証人等と同様に、これに対し日当、帳費、止宿料等を支給することができることに改正しようとするものであります。
 以上が、この法律案を提案いたす理由であります。何とぞ両案ともよろしく御審議を賜わりまするようお願いを申上げます。
#8
○委員長(北村一男君) 次に質疑に入るに先立ちまして、只今御提案のこの三案につきまして、政府委員より補足的の御説明があれば承わりたいと思います。
#9
○政府委員(野木新一君) 只今の提案理由の説明につきまして若干補足的に御説明をいたしましてこの案の御理解に、便宜のようにいたしたいと存じます。
 先ず裁判所法等の一部を改正する法律案の方から申上げますが、裁判官の代行することができる範囲の拡張につきましては、提案の理由でやや詳細に説明がありましたので省略いたすことにいたしまして、裁判権の拡張の方につきまして数字などを入れまして若干御説明申上げたいと思います。
 先ず民事の裁判権の方の拡張でありまするが、現在の五千円を三万円に上げましたのは物価指数なども考慮いたしてこれを検討した次第でありますが、こういたしますと事件がどの程度地方裁判所から簡易裁判所に移るかと申しますと、現在の地方裁判所の事件のうちの約三二%くらいが簡易裁判所に移るわけであります。それだけ地方裁判所の負担が軽くなり簡易裁判所の負担が重くなるわけでありまして、現在地方裁判所と簡易裁判所と比べて見ますと、地方裁判所の方が遙かに多忙になつておるということが窺われるのでありますので、それによつて一審事件の分配が妥当に調整されるであろうという次第であります。尚このことは上訴の関係については簡易裁判所の事件が移りますと、その上告は現在の体系によりますと高等裁判所に行きますので、延いて最高裁判所の負担の調整にも響いて来る、そういうことになるわけでございます。
 次に刑事の方で申しますと、どういう罪名のものが今度新たに簡易裁判所の管轄になつたかということの詳しい説明は、お手許に配付して置きました資料の中に詳細に掲げて置きましたが、この数字を申しますと、昭和二十三年度の統計から申上げますと簡易裁判所の刑事の通常一審の終局人員というものは十万九千五百五十五人ほどでありまして、これに対して今度の措置によりまして地方から簡易に移るものが総計いたしますと大体一万四千二百六人ほどに当りますので、二十三年の統計を基準として申しますと簡易裁判所の刑事の事件は約一割三分、一三%ほど増加する、こういうことになるわけであります。この刑事におきまして簡易裁判所に移るべきものは大体事件も簡單なものが多く、又窃盗罪と密接な関連を以て処理されるものが多いという事情も考慮しておるわけであります。
 次に簡易裁判所の裁判官は現在どういうような人たちから構成されておるかということもお手許に表として差上げてございますが、その十四表によりますと、現在六百十二名簡易裁判所の判事がおるわけでありますが、そのうち判事から任命されたのが百十九名、判事補から任命されたのが九十人、検察官から任命されたのが十人、弁護士から任命されたのが百十二人、いわゆる選考による任命が二百五十九名その他二十二名ということになつておりまして、いわゆる判検事の資格のある人、弁護士の資格のある人から任命された人が六百人のうち三百人以上を占めておるわけであります。そうしてこういういわゆる俗にいう有資格のかたがたは都会地におるかたが多いのでございまして、民事事件なども都会地が統計上多い。こういうことになつておりますので、新らしく民事事件につきまして裁判権の範囲を拡張いたしましても、実質的にはこういうようなかたがたが多く取扱うということになるわけでありまして、そう心配することはないのではないかと存ずる次第であります。
 次に刑事訴訟法施行法につきまして若干補足的に御説明申上げます。一番問題であります三條の二項の規定でございますが、この点はやや詳しく申上げますと、本條はいわゆる旧法事件の上告審の性格を新刑事訴訟法上告審の性格に近付けようとするものであります。併し全然新法の上告審に切替えてしまうというわけでありませんでして、基盤としては旧法の上告審が残つており、そこに新法のうちの或る規定を適用して行く形になつておるわけであります。尚旧法におきましては上告裁判所は最高裁判所である場合のほか高等裁判所があるわけであります。即ち簡易裁判所を一審とする事件の控訴審は地方裁判所で、その事件の上告裁判所は高等裁判所であり、更に高等裁判所の判決に対しては、刑事訴訟法応急措置法十七條の規定によつて憲法問題についてだけは特に最高裁判所へ特別の上告をすることができるということになつておるわけでありますが、今回の改正におきましては、高等裁判所が上告裁判所である場合、及び今申上げました応急措置法の規定によつて最高裁判所へ、いわゆる特別上告がされたという場合を除外いたしまして、最高裁判所が通常の上告裁判所である場合の上告だけを問題にしたわけであります。右の二つを除外したわけは、現に高等裁判所に繋属している上告事件は余り数が多くなく、今後高等裁判所に繋属するであろうと思われる上告事件と、簡易裁判所の旧法未済事件及び地方裁判所にある旧法の控訴事件の数から考えて見ますと、高等裁判所の負担をさまで増大する虞れはないわけでありますし、又この点は裁判官の代行ということもききますので、この際はこれを取上げなかつたわけであります。なおいわゆる特別上告も非常に限られておる問題であつて数も多くありませんので、この際はこれを取上げないことにしたわけであります。
 次にここに三條の二で取上げました新法の規定について若干御説明を加えて行きたいと思います。先ず新法の四百五條上告理由の規定、四百六條上告審としての事件受理の理由、四百八條書面審理、四百十條及び四百十一條破まの判決の規定でありますが、これらについて一括して御説明をいたしますと、旧法の上告理由は原則として法令違反で、特に重要な訴訟法の違反、即ち法律に従つて判決裁判所を構成しないとき、裁判官の審判に除斥せらるるべき裁判官が関與したとき、検察官がなすべき被告事件の陳述を聞かないで審判をなしたとき等二十有余に及ぶ絶対的上告理由のほかに実体法違反と手続法の違反とを含むものであります。これに対しまして新法の上告理由は四百五條にきめるもので、いわゆる憲法違反と判例抵触でありまして、新法がこのように上告理由を制限した趣旨は、最高裁判所としていわゆる憲法裁判所たる機能を十分発揮させると共に、終審裁判所として判例の統一を図らしめることにあるわけであります。更に新法四百六條は法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件につきましては、最高裁判所が上告審として事件を受理することができるときめておるわけでありまして、現在この事件受理の制度といたしましては、最高裁判所は刑事訴訟規則で次の三つのものをきめております。その一つは高等裁判所が第一審又は第二審の判決に対しましては、その事件が、法令の解釈に関する重要事項を含むものと認める場合は、上訴権者はその判決に対する上告の期間内に限り、最高裁判所に事件を受理すべきことを申立てることができる、この申立てに対しまして、最高裁判所は相当と認めるときは上告審として、事件を受理することができる、これが一つであります。その一つは、地方裁判所、高等裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対する最高裁判所のいわゆる跳躍上告ということ。第三には、控訴裁判所は憲法問題のみについて控訴を申立てられた事件につきましては、相当と認めるときには最高裁判所に移送することができる。そしてこの三つの含みを設けておりますが、この新法四百六條の規定によつて作られた只今の規則に基いて、最高裁判所の受理した事件は上告事件となるわけであります。上告の理由があるときは破棄することになるわけでありますが、上告理由に該当する事由が判決に影響を及ぼす場合に限られるわけでありまして、裁判所は具体的に事件の解決を図るべきものでありまして、抽象的な法律問題を論議するところではありませんので、具体的に判決に影響を及ぼす場合だけ破棄する、そういう建前になつておるわけであります。又判例抵触を理由とする上告の場合には、最高裁判所が、従前の判決を変更して原判決を維持するのを相当と認めるときは原判決を破棄すべきではないということにもなつておるわけであります。
 次に、最高裁判所は上告が理由がないときでありまして、判決に影響を及ぼすべき法令の違反、甚だしい刑の量定不当、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認、再審の理由、判決後の刑の廃止、変更、大赦があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する、そういうように認めたときは判決を破棄する、これが新法の四百十一條の定めるところであります。このうち量刑不当とか、重大な事実誤認、再審の理由というものは上告理由になつておらないわけであります。ところが新法の條文におきましては、こういう場合でも放つて置いては著しく正義に反すると認められる場合には、原判決を破棄することができるということになつておりまして、その点は旧法よりも被告人の方に厚い面が現われておるわけであります。
 次に、新法は上告審における書面審理による上告棄却を認めておるわけであります。それが新法四百八條の規定がそれでありますが、旧法の上告審におきましては、必ず公判期日を開いて上告趣意書に基いて弁論を行うことになつておりますが、新法におきましては法律審理に徹した点から書面審理を認めたわけであります。上告審における弁論は事実審の弁論と異なりまして、上告趣意書に基く弁論及びこれに基く審理にある点を考えて見ますと、事後審査の方法としての書面審査も可能であると言い得るわけでありまして、而も書面審理の手続を認めますと事件の処理が非常に早くなるので、多数の上告の中には余り問題にならないものもありますので、そういうものは一々公判を開かないでも書面だけで審理して理由のないものは棄却できる、そういう新法の規定を旧法にも取入れようというわけであります。
 次にこの四百十四條において、準用されております三百七十三條の上訴の提起期間の規定、それから三百七十六條の上訴趣意書の規定、それから三百六十八條から三百七十一條までのいわゆる上訴費用の補償の規定でございますが、新法は上告の提起期間を従前の旧法の五日を十四日と延ばして、上訴権者に十分に考慮の余裕を與えることにしております。従つて三條の今度の改正案によりますと、旧法事件につきましても上告の提起期間は十四日となりまして、この点は被告人に有利になるわけであります。又検察官だけが上告した場合のその上告が棄却された、又その取下げがあつたという場合には、新法は被告人保護の見地から費用の補償をしておるわけでありますが、この改正案もそれを取り入れることにいたしております。
 次には上告趣意書の提出につきましては、旧法では最初の公判期日を指定して通知するとその期日の十五日前に上告趣意書を差出す建前でありますが、新法ではこれに関しては裁判所の規則に任せておるわけであります。これは新法は四百十四條において準用する三百七十六條の規定からそうなるわけであります。そうして現在の刑事訴訟規則では、上告裁判所は訴訟記録の送付を受けてから趣意書差出の日を指定することとして、判例継続の理由とする條項につきましては、その判例を具体的に示すことなどをきめておるのであります。これらの規則はこの三條の二の改正規定に基いて恐らく同種の規則ができるものと予想されるわけであります。
 次に新法の四百九條被告人の召喚不要の規定、それから四百十五條から四百十七條までの訂正判決の規定及び四百十八條の判決の確定の規定を取入れた点でありますが、旧法における上告審では新法と同様被告人の召喚は不要であつたわけでありますが、これに関する規定が多少明らかでなかつた点もありますので、今度はその点を明瞭にしたわけであります。尚新法の條文ではいわゆる判決後訂正の制度を設けておりまして、最高裁判所の判決でも言渡した後にある場合に訂正を許すという制度がアメリカの例にならつて認められましたので、これもこの三條の二で取入れようとしたわけであります。これに関連いたしまして判決の確定の時期が違つて来ますので、これに関する新法の四百十八條も三條の三の方で旧法事件に取入れることにしたわけであります。
 以上総括して申上げますと、この旧法事件の上告審を全部新法に切替えるというわけではなくて基盤には旧法が残つておる。ただ新法の規定を被告人に不利な点、有利な点を合せて均衡を取つて若干規定を、若干といいますか重要な規定も大部分取入れた、そういうわけであります。
 次に第十三條の規定の改正、即ち十三條を削除いたしたわけでありますが、これは第二條の改正と相関達するものでありまして、現在の十三條におきますと、この二條との関係でどの程度まで裁判所の規則で特則を設け得るや、やや明瞭を欠きまして、先般この点がいろいろ問題になつたこともあつたわけであります。即ち現在のままで放置しておきますと、十三條は、旧法事件の処理について必要な事項は、裁判所の規則で規定し得ると規定しておるわけでありますが、同條には「この法律に定めるものを除く外」とありまして、他方現在の第二條には旧法事件につきましては「なお旧法及び応急措置法による。」とありまするため、而も詳細な手続に関する旧法の規定でもすべて適用されるのではないかという解釈もされるきらいもありまして、そういたしますと裁判所の規則で規定し得る余地は殆んどないというような疑義も生ずるわけでありますし、又旧刑事訴訟法は憲法第七十七條の規則制定権を予想していない旧憲法下にできた規定でありますので、この際裁判所の規則制定権ができました今日におきましては、その規則制定権に相当ゆとりを残したらいいのではないかという考え、而も旧法の規定がそのまま存続するため、その後の非常に急激な事情の変化に応じて適宜規則を以て必要な事項を規定する、そういうような旧法の規定は非常に細かくできておりますので妨げとなつておるのでありますから、この際裁高裁判所の規則できめ得る範囲を現行法よりも少しゆとりを設けさしたがいいのではないかという見地からいたしまして、疑義のある十三條の規定を廃しまして二條におきまして「この法律及び裁判所の規則に特別の定があるものを除いては」旧法及び応急措置法を適用するというふうな形にしたわけであります。この規定によつて現在どのような旧法事件について裁判所の規則が予想されるかという点につきましては、事務当局から伺つたところによりますと、旧法の控訴審の手続におきまして、被告人にどの点が不服であるかという不服の範囲を明らかにさして、審理をその点に集中して行く、不服のない点については審理を簡單にして行くというような規則などが考えられておるようであります。刑事訴訟法施行法はその程度にいたします。
 次に民事訴訟法の改正案のほうに移ります。これにつきましては特段に御説明するまでもなく、要するに民事訴訟法の今後の行き方といたしましては、準備手続というものを大いに活用いたしまして、一人の裁判官の場合も準備手続を開き得るようにいたしまして、準備手続ですべての攻撃の防禦の方法を明らかにし、そこで十分お膳立ができた後に公判を開いて、公判に入りましたならば集中的に審理を進めて、そうして全体として短日月に民事訴訟事件を完了させようという意図から出ました規定の改正でありまして、條文的には特に御説明するまでもないことと存じますので、時間の関係もありますからこの程度で概括の説明は終ることにいたしたいと思います。
#10
○委員長(北村一男君) 質疑に入るに先立ちまして、只今須藤委員より法務総裁に対して緊急の質問があるという申入れがございましたので、その発言を許します。須藤委員。
#11
○須藤五郎君 昨日衆議院における法務委員会を傍聽しまして強く感じたことなんですが、朝鮮人の問題です。衆議院においては非常に激しい言葉でやりとりをされていたと思うのですが、私は激しい言葉でなしに桑らかい言葉で御質問申上げたいと思うのですが、大体私はこれまで関西におりまして関西の朝鮮人の空気を知つておるのですが、戰時中朝鮮人は非常に日本の戰力に対しまして貢献をしたと思うのです。戰争に協力をして、恐らく朝鮮人がいなかつたら日本の土木事業というものは殆んどできなかつたのじやないかというように私は考えているのです。飛行場を作るにしても殆んど朝鮮人が動員されて寒いときに水の中に入つて飛行場の修理をした。又朝鮮からは強制的に引張つて来られて非常に苦難な労働を強いられたということを私は戰時中この目で見ているわけなんですが、その戰時中非常に迷惑をかけた朝鮮人諸君に対しまして戰後日本がどういう償いをしたかというところに非常に問題があると思うのです。ところが戰後になりますと朝鮮人は一切日本のいわゆる普通の職域からロツク・アウトをくらつてしまつて、普通の工場とかそういう所は朝鮮人を使わなくなつてしまつて、そうして朝鮮人の生活は脅かされたと思うのです。戰時中はヤミなどをやつてそういうような生活の苦しみを朝鮮人は耐え忍んでやつて来たわけですが、それがだんだん困難になつた。そうして最近ではいわゆる密造酒ということを朝鮮人が始める。なぜああいうことを始めるかというと、朝鮮人の職域が非常に狭められて、殆んど正しい労働に就くということが範囲が非常に狭められたというところにああいうことが起つて来たのだろうと私は解釈しておるものであります。ところがその密造酒のほうもだんだんと苦しくなつて来て、朝鮮人としては今日生活を立てて行く方法がなくなつて来た。非常に朝鮮人の生活は最近逼迫して来ていると思うのです。そこに今度の生活保護法の要求などが強く出て来たのではないだろうかと、私はそういうふうに解釈しているものなんです。それに対しまして警察の彈圧が度を超えたというところに私は今度のああいう大きな騒擾に至つた原因があるのじやないかと、そういうふうに私は考えているのです。これはまだ現地を見ておりませんので実情はまだわからんのです。できれば参議院の法務委員会も一度現地に行つてよく調べてみる必要があるのじやないかと思つておるのですが、詳しいことは自分で調査しておりませんから申上げられませんが、これまでの朝鮮人の生活を見た私の観察から言いますと、そういうところに原因があるのじやないかと思うのです。朝鮮人は決して好んで暴力を振う人間ではないと思うのです。日本人よりもむしろおとなしいのじやないかと思うのです。ところがなぜああいうふうなことが突発的に起つたかというと、日本人以上に朝鮮人の生活の苦しさということが結局原因しておる。これは法務総裁の権限外かもわかりませんがそこにずつと大きな原因があると思うのです。ですからこの原因を除けるように政府の方で処置しなければ何回でもああいうことが繰返されて来るのじやないか、こういうふうに思うのです。昨日の法務総裁の御答弁では、共産党が指導しているようなふしがあるというようなこともおつしやつていられましたけれども、私は共産党に入つてはおりますが、今日の共産党は決して暴力を肯定しているものではないと思うのです。暴力革命を計画しているものではないと思うのです。むしろ私は共産党は暴力に屈服しないという態度をとつているのではないかと思うのです。決して暴力を肯定して積極的に暴力を振うということを言つていないと思うのです。私はこう信ずるものですから、今度の騒擾事件に共産党が積極的に暴力を振うように支持したというふうには私共にはどうしても考えられないわけですが、法務総裁はどうもそういうふうに信じていらつしやるのじやないかと思うのです。答弁の中から僕にはそういうふうな空気が感じられたのですが、これは法務総裁の考え間違いじやないかと私は思うのです。
 それと警察官の取締が最近非常に私は行き過ぎておるのじやないかという心配が一つあるのです。それは先月の初めに大阪の中央公会堂で学生諸君及び國鉄の労働組合が文化祭をやつたことがあるのです。私も招待されて文化祭に出席していたのですが、ずつと最後になりまして各労働組合などからのメツセージが出たわけです。ところがそのメツセージを読むか読まんかということで警察当局とその主催者との間に衝突を来したわけなんです。メツセージを読むならばこれを彈圧する、実力を以て彈圧するということを警察当局が言つて来ましたので、丁度私もそのときに立会つていましたから私は監督官の警察官に言つたのです。メツセージの内容が問題になるならば心配したさんな、決してそういうあなたたちの立場が困るようなそんな過激なメツセージは来ないものと思う、だからメツセージの内容をあなたたちが心配するならその心配はしないでいいじやないか、ただ單なるメツセージを読む読まんによつて実力を行使するなどということを言い出さないでやらしたらどうだろう、ここまで今来ておるのを最後に来て混乱さす必要はないじやないかと私が言いますと、当局は許可願にはメツセージを読むということがなかつた、だからメツセージを読むならどうしてもこれは承認できないのだ、こう言うのです。それで当局と主催者との間に意見の衝突を来しまして、主催者としては飽くまでも断行するという態度をとつてやつたわけなんです。それでほうぼうから来たメツセージを二、三読んでおる間に警官隊が二百名ほど棍棒を振上げて会場に闖入して来て、そうして大衆に襲いかかつたのです。私はそれをちやんと見ていたわけです、舞台の上に上つて実は見たわけなんです。あたかも猛獣が棍棒を振上げて襲うごとき形相を以て私たちにかかつて来たのです。私は冷靜な立場でよく観察しておつてどうも行き過ぎだと思つたわけです。若い者がやつておることに対してああいう行き過ぎた彈圧をする必要はなかつたと思うのです。話合いで済むと思うのです。そうしてそのときに棍棒で毆られて頭を割られた怪我人も出ました。私はあとで天満署へ参りまして署長に会いまして、検束者が五人ばかり出ましたから早く釈放するように申入れたのですが、署長はそのとき私服を着ていましたがちやんと舞台の真ん中に出て彈圧を指揮しておつたのです。私がそのことを申しますと、私は実はよそへ行つておりましてこの話を聞いたあとで帰つたのでと署長は言いますけれども、署長は自分の眼の前で指揮しておつたのです。私は署長がきまり惡がつてそういうことを言つたのだろうと思いますけれども、私は釈放をお願いして帰つたようなわけなんですが、本当にああいう仕方はできんと思うのです。初めて見た印象から言いまして、どうも警官のそれが少し行き過ぎやしないかと思うのです。
 ですから神戸において最初生活保護法を申出たときに警官のやり方が少し行き過ぎたためにああいうふうに騒擾が大きくなつてしまつたのではないかという心配が私にはするのですよ。だからそういう点よく法務総裁の方でも気をつけて頂きたいと、私はそういうように考える。それと同時に、朝鮮人諸君の生活の安定のできるように、やはり日本としては戰時中随分朝鮮人に迷惑をかけておるのですから、今日それにお詫びをするというような気持からでも、朝鮮人の生活をもう少しよく考えてあげる必要があるのではないかと、そういうふうに私は二つの点から今度の事件を見ておるわけなのです。
 それからもう一つですが、最近今日の新聞にも出ていたように思うのですが、警察予備隊の問題なのです。法務総裁は本会議におきましても、常に警察予備隊は國内の治安維持のためだということを言つていらつしやると思うのですが、私たちもまあそういうふうに受取つて行きたいと思うのですが、いろいろ最近言われて来ることには、又私が実際見て来たことを総合すると、どうも法務総裁の言葉を率直にそのまま受取りがたいような点が多々出て来るわけなんです。私は二月ほど前に舞鶴へ参つたことがあるのです。舞鶴に何の気なしに行つて見ると、あすこには警察予備隊が随分いるのですが、町の人の話では舞鶴に六、七千人いるということを申しておりました。それで警察予備隊諸君の生活を見て、舞鶴の良識ある人が私にこういうことを言いました。警察予備隊というのは警察という名前がかぶつているがどうも我々には納得できない。どうも戰時中の特攻隊のような気持がしてならない。その証拠にはあの人たちは夜になれば、特別仕立のバスに乗つて遊廓通いをしておる。又町で酒を飲んで喧嘩をおつぱじめるというような状態である。我々は兵隊だと思つておればあれを黙つて見ていることができるが、警官だと思うとどうも承服しがたい点が沢山あると、実は私もその夕方町を歩いていると、酒を飲んで喧嘩をしている一組に出会つたわけなんです。私自身でもあれが警察官ならば、どうしてもああいう態度は許しがたいものだと、まあ兵隊ならば仕方がないということも言えますが、警察官としては許しがたい点が沢山あります。
 それから訓練の仕方におきましても、小銃の訓練をしたり又ひどいのは戰車の訓練、高射砲の訓練すらも受けておるということが評判されておる。匍匐前進は皆やつておる。そういう訓練が内部においてなされておるということでは、これはどうも警察官としては行過ぎではないだろうか。法務総裁は日本の共産党の暴動に対する処置だと言つていらつしやいますが、日本の共産党は武器は一つも持つていない、又暴動を起す心配もないと思うのですが、それに戰車や小銃の訓練をする必要は、どうも私には納得しがたい点が沢山あるのです。
 それからもう一つは、千人余の警察予備隊員が首を切られたという話なんですが、これは今日の新聞を見ますと、要するに入れるときに急いで入れたので、身体検査が十分にされていなかつたために、結核の慮れのある者が千人程出た、だからそれをやめてもらつたということなんですが、こういうこどがあるということを聞いておるのですが、やめられた人たちが非常に困るといつて東京本部へ電話で訴えた。ところがそれを申渡したのが外國人から首切りを申渡された、そうしてそれを本部へ訴えたところが外國の人から言渡されたならばこちらとしては現状ではどうも仕方がないという返事をもらつたと、どうも取付く島がないということなんですね。そういうことが訴えられておると思うのです。そうすると、ますます私たちは法務総裁の言つていらつしやることが腑に落ちなくなつて来て、実は非常に解釈に苦しむわけなんですが、率直に警察予備隊の性格を私はもう一度はつきりして頂きたい。それから又、首を切られた人たちがやはり十分に結核の療養のできるように、治つたら又採用するとおつしやるならば治るまで十分にどこかの病院へ入つて再び採用のできるように、最初慌てて採用したという責任はやはり政府当局にあると思うのですから、その人たちが生活に困らないように十分してあげて頂きたい、そういうふうに私は考えるわけなんです。
 それからもう一つお伺いしたいのは、黙秘権の問題ですが、春日正一君が捕えられて裁判にかかつた時に、何か新聞にちよつと出ていたと思うのですが、春日君の黙秘権は認めないというようなことがちよつと何かに出たように思うのですが、事実黙秘権というものは認められないのでしようか、どうでしようか、その点を伺いたい。まあ大体こういうことなんですが、一つ私の納得の行くように説明して頂きたいと思うのです。
#12
○國務大臣(大橋武夫君) 只今須藤さんからかずかずの点について御質問がございました。朝鮮人の生活が戰後非常に窮迫をいたしておる、これがいろいろな問題の種になり易い、日本の立場としてできるだけ在留朝鮮人の生活について面倒を見る必要があるのではないかという点が第一の点でございます。このことは誠に御尤もでございまして、いやしくも國内において生活することを認めます以上は、これに対してできるだけ政府としてもその生活の立ち行くような世話をしなければならんことは、これは当然であると考えております。
 それから次に警察の行過ぎに対して気をつけて欲しいという点でございまして、このたびの神戸事件におきまする警察の措置につきましては、私は必ずしも行過ぎがあつたというふうには聞いておりません。何となればこの事件の起りまする数日前からいろいろ小規模ながら類似の事件がございまして、これに対する警察側の措置があつたわけでありまして、それに対する抗議として初めから警察に抵抗するというような気勢を示しておつたのみならず、この多数の人たちが抵抗乃至暴行に用いるための手段といたしましてあらかじめ樫の棒を準備しておつた。或いは割挽きを持つて来るとか、或いは投石のための石を拾つて準備しておつたとか、或いは目潰し用の唐辛子の粉末を用意しておつたとか、こういう点を見ますると集まりました群衆の側においても相当不穏な空気があつたものと思いまするので、これに対して警察が解散を命じたということは当然であり、又この解散の命令に従わなかつた者に対してこれを検挙するという措置に出たのも、これは実情として止むを得なかつたのではなかろうかと思うわけであります。ただ併し如何なる場合におきましても警察権の使用というものは必要の最小限度にとどめらるべきものであることは、これは申すまでもないのでございまして、私はこのたびの事件において警察が検挙の権能を発動したということは当然であると思います。併し逮捕その他に当りまして不当に容疑者を虐げるというような事態が若しあつたとするならば、これは厳重に戒しめなければならんことであると考えております。
 それからもう一つ例をお挙げになりました大阪の中央公会堂の問題でございまするが、これは私事情を聞いておりませんので尚取調べておきたいと存ずるのでありますが、集会において現在許可制度になつておりまするので、この場合におきましてはあらかじめ許可の條件として集会においてこれこれの行事を行うのだということが定められましたる場合、出先の警察官といたしましてその許可の條件を守ろうとするめは一応当然な態度であると、こう思うのであります。ただその後警察が出て行つて不当な暴行をしたようにもお話がございましたが、若しさような点がありましたらばこれ又十分に取調べたいと存ずるのであります。
 それから第三に、予備隊が軍隊のようである、こういう点についてお話があつたのでございまするが、警察予備隊の性格につきましてはたびたび申述べましたる通り、政府といたしましてはこれは一般警察力の補充といたしまして設けられましたる警察力でありまして、その任務は飽くまでも平和國家、文化國家、又民主國家としての我が國の平和と秩序を維持し、國内における公共の福祉を保障するということがその目的であります。具体的に申しまするならば、一般の警察力を以て対処できないようなところの非常な事態に当つてこれが出動するというわけのものでございまして、その活動も飽くまでも警察の任務の範囲内に限定されておりますることは、マツカーサー元帥の書簡並びに警察予備隊令に明らかとなつておるところでございます。従いまして警察予備隊というものは飽くまでも軍隊とは明確に違つておるのであります。即ち軍隊というものは外敵と戰うことをその第一の任務といたしておるのでありまするが、警察予備隊は飽くまでも國内における治安のための出動ということが、第一の任務であります。従来我が國の軍隊におきましては國内に出動いたしまする場合に、地方長官の出兵請求に基いて出動するということがございました。併しながらこれは軍隊といたしましては第二義的な使命となつておつたのでありまするが、今日の警察予備隊はこの任務が第一義的な使命と相成つておるのであります。従いまして飽くまでも従来の軍隊は外國との戰争に当つて外征して行くということが任務であつたのでありまするが、今日の警察予備隊は國内において治安維持に当るのである、外征或いは外國との交戰ということは行い得ない、こういうふうになつておるのであります。勿論警察予備隊はその任務が通常の警察力を以て処理することのできない場合に出動するということに相成つておりまするからして、その装備におきましては警察力よりも自然重いものを持つということは当然であろうと存ずるのであります。警察といたしましても現在全然武器を持たないわけではございませんで、棍棒にいたしましても見かたによれば武器とも言えまするし、又ピストルのごときものも一つの武器であると思います。現在警察予備隊が装備いたしておりまする武器といたしましては、アメリカから供給せられておりまするカーバイン銃というものでございまするが、これは小型小銃と訳しておりまするが、併しその効力から申しますると従来の日本の歩兵銃が二千メートル、三千メートルの射程を持つておりましたのに対して、これは数百メートル程度の有効距離しか持つていないのであります。どちらかというと小銃の小さいのと言うよりピストルの大きいのと言つたほうが当つておるのではないかと思つておるのであります。将来或いはそれ以上の装備が備えられる場合もあるかも知れませんが、要するにこれは國内警備上の必要の限定において装備も又準備されるものでありまして、今日文明國間の戰争というようなものを予想いたしました場合においては非常に高度の武器が必要となると思うのですが、さようになりまするとこれは憲法九條におきまする戰力は保持しないという規定にも抵触することになるのでございまするが、警察予備隊の装備というものは飽くまでも國内治安のために必要な最小限度にとどまる、こういうことを私どもといたしましては考えている次第でございます。併しながら先程御指摘になりましたるごとく、従来軍隊が部隊として出動しておつた、その際に備えてのいろいろな訓練、こういうことをいたしておりましたが、それを同様の訓練が今日行われているということを御指摘になりました。もとより部隊として又銃の装備を持つて出動いたすことを予想いたしまする以上は、その出勤に当りましては、やはり部隊の形従つて部隊としての出動に必要なる技術上の訓練ということは当然であろうと思うのでございます。特に相手が又相当な武器を持つということも予想しなければなりませんので、これに対応いたしまするために相手の実情を偵察する練習であるとか、或いは又相手に迫つて行きまするための匍匐訓練というようなことも、これは必要止むを得ざる最小限度であるというふうに考えております。併しながら如何なる場合におきましても、この警察予備隊が外國との交戰に使用されるということはあり得ないものであるということを私どもとしては考えているわけであります。
 それから警察予備隊の現在の規律が非常に乱暴である、例えばバスで特殊な町へ行くとか、或いは酒を飲んで市民と喧嘩をするというような実例を御覧になつたそうでございます。実を申上げますると、警察予備隊は現在一般隊員が募集せられてこれが指導訓練に当り、又これを指揮監督すべき幹部というものがまだできておらない状態であります。一応指揮者の地位に立つ人を仮に採用いたしておりまするが、これは仮の幹部でございまして本来としての十分なる幹部としての訓練をいたしておりません。従いまして仮の幹部であるというために統率力或いは指揮命令をやろうと思いましても、一般隊員のほうでもまあ仮の幹部じやないかという気持で受付けがたいというような点がございまして、現在の段階におきましてそういつた点は非常に不十分である、それがために御指摘のような好ましからざることがあるということも私ども十分に承知をいたしております。これは併し余り極端なものに対しましては、一般警察力を以て取締るという措置を講じているのでございまするが、できるだけ早く幹部を十分に充足いたしますると同時に、隊員に対する教養指導訓練を完璧ならしめましてかようなる不体裁のないように注意しなければならない、警察官として市民の信頼を博し得るような、そういう警察官に仕立てて行くということは当然必要なことでありまして、戰時中におきまして私どもが一部の軍隊の乱暴な態度に対して、まあ軍人だから仕方がないといつたような態度を以てこれに対すべきではないし、又警察予備隊としても國民にさような気持を起させることがありまするならば、これはその使命から考え又その性格から考えまして決して好ましいことではなく、むしろ市民にさような感じを與えるということは断じて避けなければならん、こういうふうに考えておるわけであります。幹部の充足につきましては、非常に遅れておりまして、いろいろな問題が生じておるのは遺憾でありまするが、大体一月中旬ころまでには全般的に充足いたすという考えを以て進んでおりまするし、又訓練も漸次進んで参つておりますが、近く民主國家、平和國家の警察官として恥かしくないものに仕立て上げられる時期もそう遠くはないと期待をしているわけであります。
 それから警察予備隊におきまする結核の問題につきまして、これは昨日法務委員会においてもこの問題を取上げられ、又只今須藤さんからもお話があつたのでございまするが、実はこの問題につきましては警察予備隊の一般隊員募集の際には短期間に多数を募集することが必要とせられまして、相当大勢の中から選抜をいたしましたので、いろいろと検査もいたしたのでありまするが、残念なことには全國的の結核予防の見地よりいたしまするレントゲンによる結核診断が行われておらなかつたのでございます。ところが予備隊の訓練その他の関係からいたしまして、今後予備隊について結核の問題というものは相当注意しなければならないということになりまして、このたび全國一齊に結核の検診を行なつたのであります。その結果不幸にいたしまして千名足らずの結核の疑いのある人たちを発見いたしたのでございます。もとよりこれらの人々のなかには現在かなり惡く、発病直ちに靜養を要するという人たちもございます。併しながら相当の数の人たちは現状においては病気を自覚もしておらない。又現在の服務について格別苦痛も訴えておらない、いわゆる自覚症状が全くない、又発病しているという程度にまでもなつておらない人たちが相当あつたわけであります。併し先ほど申しましたる通りまだ部隊の編成が完成しておりませんので、幹部も非常に手の届きませんような関係で中央の本部と現地部隊との間の連絡が極めて不十分でありましたる結果、遂に現地におきまして一齊に解雇するというような措置をとつたわけであります。このことは解雇措置がとられましたるのちにおきまして本部においても知つたような状態でありまして、これらの人たちに対する取扱というものが極めて遺憾でありまするし、これをできるだけ是正してもつと手厚く扱うことが必要であるという考えのもとに、いろいろこの問題に対して研究を進めましたる結果、差当り隊務に従事し得ると認められる人たちは医師二名以上の健康診断の結果、そのことが証明せられましたならば直ちに原隊に復職せしむるという運びにいたすことにいたしております、それから又不幸にして発病いたしておりまするが、或はははつきり発病という状態にはありませんでも、医師の診断の結果、今後隊務を継続いたしまするならば発病するのではないかと思われるような状態にある人々につきましては、この際自宅或いは隊の連絡ある病院に收容いたしまして、そうして相当期間療養せしめまして経過を見ますると共に、将来解雇しなければならん人たちに対しましてはこの期間にそれぞれの措置を講じさせるようなゆりとを與えるようにしたい。かような方針のもとに只今準備を進めておるような次第でございます。いろいろな行き違いのためにこれについて一般隊員に非常に不安を與えましたということは、政府といたしましても極めて申訳ない次第であると考えておるのでございます。
 それから最後に御質問になりました春日正一君についての黙秘権の問題でございまするが、黙秘権につきましては刑事訴訟法において黙秘権に対するはつきりした規定がございまするので、この規定は如何なる犯罪人に対しても又如何なる容疑者に対しましても当然適用があるわけでありまして、春日書が刑事訴訟法上の黙秘権を拒否されるというようなことは、現在の訴訟法の下においては全然あり得ないことでございます。ただ一部新聞紙上におきまして春日君が黙秘権がないという見解で官憲から取調べをするという記事が載りましたのは、恐らく刑事訴訟法上の黙秘権の問題ではなく、実は春日君につきましては団体等規正令によりまする出頭義務違反という容疑で逮捕いたしたわけでございます。従いましてその出頭義務違反を構成すべき事実については、当然刑事訴訟法上の黙秘権が認められるわけでございまするが、逮捕せられたのちにおきまして、法務府といたしましては団体等規正令の規定に基きまして法務府の調査権を発動いたしたわけでございます。この調査権に対しましては、調査に応ずる義務が団体等規正令で明記せられてあるわけでありまして、この調査権の発動によりまする質問事項に解答を怠りまする場合におきましては、これは当然団体等規正令による義務違反として刑事上の問題が発生し得る余地があるわけでございます。従いましてこの調査権発動に対しては黙秘権がないということが新聞記事に載つたのだろうと思いますので、これは刑事訴訟法上の問題でなく、団体等規正令の調査権に対しては黙秘権がない。黙秘したる場合におきましては調査権を拒否したという別個の刑事事件が発生するという規定になつております。そのことであるかと存ずるのであります。
#13
○須藤五郎君 大体今非常に御丁寧な御返事を頂いたのですが、朝鮮人の今度の問題で、最後に起つた騒擾事件に朝鮮人が準備をしていたということが言われておりますが、私はなぜその準備をするような事態が到来したかというところを今お尋ねしておるわけなんです。そういう準備をさせるように仕向けた点がないか、あるかという点なんですね。私はそういうように朝鮮人が目潰しを持つたり或いは木刀を持つたりして、出かけるような状態を、その以前の小さい問題のときに警察官の行過ぎがそういう状態を作つてしまつたのではないかという心配が私にあるものですから、そういう点をお尋ねしたわけです。
 それから予備隊のことですが、今日訓練に当つて外人がタツチしておるというような点が言われるものですから、今日非常に世界情勢は複雑になりまして、日本人全部が恐らく日本が再び戰争に捲込まれるのではなかろうかという心配が実にピンと来ておるのではないかと思います。恐らく皆さんの頭の中にも来ておるのではないかと思います。我々といたしましては、飽くまでも日本は平和を守つて行きたいという気持ちが非常に強いわけであります。それと関連いたしまして非常にそういう点で不安がある。私はこの前鉄道公安官がピストルを持つといつたとき、私は公安官がピストルを持つのは行過ぎではないか、そういう必要がないかどうか、私は持たん方がいいという意見を持つておつたのですが、この間電力の調査に九州に参りましたときに、或る駅でばつたり公安官に会つたわけなんです。私は公安官に尋ねたのです。そのピストルが何か役立つたことがあるかと尋ねた。それを使うようなときに出くわしたかねと尋ねたところが一回もありませんという、一回もないことは大変結構だと、そうしたらいや一回ありました、こういうわけです。どういうことだと言つたら、この間鉄道のストのときに実は役立ちましたよという返事なんです、その公安官が。私はそれがここでそういうことのためにあのピストルが使われるのではないかという立場から、スト破りのようなときにそのピストルが役立つのではないかと質問したときに、それは絶対に使えませんという御答弁だつたと思うのですが、たまたま吸收で尋ねたらそのとき初めて役立ちましたということを公安官から私は聞いて、やつぱりそういうふうになつてしまうんだと、幾ら法務総裁の気持はそうでなくても、やはりそういうものがあるというので結局末端機関へ行くとそういうふうに使われて行く虞れが十分にあると思いますので、予備隊の訓練にいたしましても装備にいたしましてもですね、必要以上のことがあればやはりときが来ればそういうふうに又使われて行くという虞れが十分あるのではないかというような心配が私たちにピンと来るものですから、御質問申上げたわけであります。
 それから今の春日君の黙秘権の問題は、私は法律家ではありませんので、そういう法務府の調査権の問題になつて来ると、私には討論をする資格がありませんし、できません。この問題は鬼丸先生なり方々の專門家の方がありますから、法務府の調査権を拒否することはできないというようなことにつきましては、皆さんからの御意見を私はむしろ伺いたいと思いますので、私の質問はこれで打切つて置きます。
#14
○委員長(北村一男君) 質疑は明二日十時から本委員会を開きまして継続いたすことといたしまして、本日はこの程度で散会することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○委員長(北村一男君) 御異議がないものと認めまして、散会いたします。
   午後零時三十二分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     北村 一男君
   理事
           宮城タマヨ君
           鬼丸 義齊君
   委員
           長谷山行毅君
           齋  武雄君
           岡部  常君
           高橋 道男君
           須藤 五郎君
  國務大臣
   國 務 大 臣 大橋 武夫君
  政府委員
   法務府法制意見
   第四局課長   野木 新一君
ソース: 国立国会図書館
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