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1950/12/04 第9回国会 参議院 参議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第3号
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1950/12/04 第9回国会 参議院

参議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第3号

#1
第009回国会 法務委員会 第3号
昭和二十五年十二月四日(月曜日)
   午前十時四十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○派遣議員の報告
○裁判所法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○刑事訴訟法施行法の一部を改正する
 法律案(内閣送付)
○民事訴訟法等の一部を改正する法律
 案(内閣送付)
○裁判所職員の定員に関する法律等の
 一部を改正する法律案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(北村一男君) 只今より委員会を開きます。
 本日は先ず先般議員派遣を行いましたうち、まだ北海道班の御報告が残つておりますので、御報告を願います。
#3
○長谷山行毅君 私は当委員会におきまして閉会中の継続審査にかかりました検察及び裁判の運営等に関する調査のために、北海道班として長谷川專門員と共に、去る八月の二十日から十日間北海道に参りまして、札幌、旭川、帶廣、函館等の各裁判所並びに検察庁、それから大沼、砂川等の少年保護施設につきまして調査したのでありまするが、主として青少年犯罪に関する問題、第二に、司法制度、特に調停制度に関する問題、第三に、帶廣の地方裁判所並びに地方検察庁設置に関する問題等につきまして、主として調査したのでありまするが、その資料は詳細提出してありますので、極く概要について御報告申上げます。
 先ず青年少年犯罪に関する調査でありまするが、これは青少年犯罪の現況、処分権並びに処遇状況の調査、その他本委員会で調査の要綱として出しました少年法、少年院法並びに犯罪者予防更生法の改正に関する各地の裁判所、検察庁の意見等は、すでに資料を提出してありますので、それは省略させて頂きますが、少年保護施設に関しまして調査しました大沼学院、それから紫明寮等について二、三申上げたいと思います。
 大沼学院は、御承知のように兒童福祉法による教護院であります。又紫明寮は、これは旭川管内の砂川町にあります三井鉱山の経営にかかるところの養護施設であつたのを、近年女子少年院に改めたものでありまするが、その両方とも非常に設備が優秀であるのであります。特に大沼学院のほうは、あの大沼公園の続きにありまして、誠に風光の明媚な所であつて、そしてその寮舎が五つの寮に分れておつて、各寮には職員の夫妻がまるで父親や母親のようにしてその子供たちと起居を共にしておる状態で、家庭的な補導によつて非常に成功しておることが注目されると思うのであります。なおこの紫明寮も、大沼学院も、開放式な施設でありますので、多少は逃亡者を出したこともあるのでありまするが、これは主として施設内における待遇、殊に食事等に対しての不満によるものでありまして、これはむしろ外形力によつて防止することよりも、その待遇を改善しまして生活に慰安を與えて、少年たちに心から居つかせることか、逃亡予防の最もいい方法じやないかというふうに考えられるのであります。この点につきましては、まだ十分とは認められないのでありまして、できる限り予算上の考慮をする必要があると考えておるのであります。
 次に少年法のいわゆる少年の年齢の問題でありますが、これは来年度から十八歳を二十歳に引上げることにつきましては、大体においては反対が多かつたのであります。これは或る札幌の家庭裁判所の意見でありましたが、そこでは青少年問題について統一的な取扱をし得る点について利益があるからという賛成論もあつたのでありますが、大部分はむしろ十八歳を限度とすべきではないかという意見が強かつたようであります。その理由としましては、十八歳を限度としまして犯罪の形態が量におきましても、質におきましても非常に変化して来まして、成年に近づいて来るために、少年としての特異の取扱をする必要が認められない、そして十八歳から二十歳までの間の犯罪の質が非常に兇惡化しておるというふうな理由、或いは少年院その他の保護施設におきまして、十八歳未満の者と十八歳以上の者と一緒に收容することは、その補導、矯正上において重要な支障を来たすことがあるという理由であります。さような理由からして少年院側のほうに反対の意見が非常に強かつたのであります。この点はやはり再検討を要するのではないかというふうに考えられるのであります。
 なお又少年問題を取扱う機関が幾多の系統に分れておりますので、相互の連絡も不十分な点もありまして、何らかの統一的系統に整理されたいという要望もあつたのであります。更に又少年院の在院者に対する職業補導についででありますが、これは十八歳未満の少年を事業所その他で労働に従事させることが許されないために、非常に不便を感じておるという声があつたのであります。この種の職業補導は、少年の勤労精神或いは貯蓄精神を涵養する上において大いに好果がある。單に学科教育のみに終る場合は、その残つた時間を空費させているために、矯正上却つて望ましくないということであるのであります。労働基準法並びに兒童福祉法によつて、十八歳未満の少年の労働に関しましては制限が設けられておるのでありますが、この枠内におきまして事業所その他の施設において職業補導を行うことは少年院法の十三條も認めておるところでありまして、これを積極的に活用するように研究する必要があるではないかと思わるるのであります。
 尚現在の重要問題でありまする青少年犯罪の増加は、結局のところは、敗戰によりまする日本の社会の混乱、即ち成人社会における道徳の低下或いは経済状態の逼迫、これらに伴うところの家庭の無秩序に基因するものでありまして、この点は今後の青少年犯罪の防遏対策樹立のために十分考えられなければならない点だと思うのであります。以上が青少年犯罪に対する点であります。
 次に調停制度に関しまして申上げます。これにつきましては、それぞれの裁制所から詳細の意見が出ておりますので、これは資料を拜見願うことにいたしまするが、大体におきまして各種の調停制度に関して統一法を作るということについては、家事調停を除き、これを一本化するということにつきましては、異論がなかつたのであります。ただ小作調停或いは鉱害調停等、特殊なものについては特則を設けるべきだという意見もあつたのであります。
 次に帶廣における地方裁判所並びに地方検察庁設置に関する問題でありまするが、現在帶廣には釧路地方裁判所帶廣支部と、釧路地方検察庁の帶廣支部があるのでありまするが、これらをそれぞれ地方裁判所或いは地方検察庁に昇格されたいという陳情でありまして、この陳情、請願は、従来からしばしばなされておつたのですが、このたび私どもが参りまして、官民双方から要望が非常に強かつたのであります。現在の釧路地方裁判所の管轄区域は、釧路國と十勝、根室、それから北見の大部分でありまして、二千四百八十九万里、四國の約二倍に該当するというふうな広い地域であるのであります。丁度北海道を半分にしまして、東北海道を殆んどこの釧路裁判所で管轄しておるというふうな、かような広大な管轄区域でありまして、これは司法行政の監督上も、又裁判事務の運営の上から見ましても、その円滑を欠くということが多いのであります。現在の帶廣支部の取扱事件は、民事も刑事もむしろ釧路の本庁よりも多いというような状態であるのでありまして、釧路地方から分離して、これを独立地方裁判所或いは地方検察庁に昇格した場合の予定の管轄区域というものは、十勝國と釧路國の一部、それで千三百八十五万里で、他の地方裁判所の管轄区域に比べましても、決して遜色はない。而も十勝地方は、東北海道の農業或いは林業、鉱業等の中心で、非常に現在のところ産業が勃興しかけておるのでありまして、これらのことを考えましても、その昇格は要望されるということで、これにつきましてもいろいろな資料を提出してあるのであります。これらの事情を考えまして、帶廣に地方裁判所並びに地方検察庁の設置を認めることが必要ではないかというふうに私らとしては考えて来たのであります。なおこの陳情は、帶廣地方裁判所設置を第一段階といたしまして、次には帶廣に高等裁判所の支部を設置して貰いたいという要望を含んでおるのであります。元来北海道はあのように広い地域でありまするが、現在のところは、札幌高等裁判所の支部というのが函館にあるだけでありまして、根室、釧路、帶廣等の東北海道の訴訟関係人の不便は非常に大きいのでありまして、これは是非東北海道に高等裁判所の支部を設けて貰いたいということが要望せられてあるのであります。但しその設置個所が帶廣がいいのか、釧路がいいのか、これは相当研究を要する問題だと思うのであります。
 更にあの寒冷地帶における裁判官、裁判所職員の待遇改善に対する問題でありまするが、この問題につきましては、それぞれ資料を提出しまして、各裁判所から待遇改善が要望されたのであります。裁判所の書記官や少年調査官の待遇改善の問題並びに裁判官の待遇改善の問題は、これは全般的の問題として暫くおくといたしまして、あの寒冷地帶における、不便な地域における職員の勤務地手当、或いは寒冷地手当、石炭手当並びに宿舎に関してこれは北海道の特殊事情に基きまして考慮すべき点が多々あるものと考えるのであります。先ず勤務地手当について見ますると、元来勤務地手当は、これは生計費の非常に高い、特定の地域に勤務する職員に支給されるものでありまして、現行法では特地、甲地、乙地の三段階に区分して地域を指定して支給されて、その額も差を設けられてあるのでありますが、この基準を設けた当時の経済事情と現在とは大分変動しておりますし、又北海道全般について見ましても、北海道の物価は決して低くはないのであります。特に冬季間における生活必需品は非常に高くなるのでありまして、燃料とか、被服或いは除雪費等は石炭手当、寒冷地手当によつて到底賄い得ないような状態にあるのであります。然るにこの交通不便な文化の遅れた僻地においては、むしろ勤務地手当は全然支給されないで、東京その他の大都市から転勤を命ぜられた者にとりましては、実質的にはむしろ非常な減俸になるというような状態でありますので、かような地域に転勤を希望する裁判官は殆んどいないということが、北海道の裁判官の人事の問題として重要視すべき点ではないかと思うのであります。北海道における勤務地手当を増額するか、或いはそれができないならば、勤務地手当制度というものを全廃したほうがいいという声が強かつたのであります。
 それから次に、寒冷地手当と石炭手当につきましても、これは現在北海道と青森と一律に取扱われておるのでありまするが、北海道自体について考えて見ましても、地域が非常に広いので、その寒冷の程度が非常に差が大きい。それでこれを一律に取扱うことは極めて不合理であるというのでありまするが、而も又これらの手当が十二月の一日に一括支給されるので、その後に転勤した者に対しては支給されないという不都合もあるし、又この石炭手当には税が課せられておる結果、北海道における平均使用料の三トンの半分も実際にはこの手当によつて購入し得られない。それだからむしろこれは現物支給して貰いたい。そうでなければもう少し何らかのこの手当の点について公平な適切な措置を講ぜられたいという要望が非常に強かつたのであります。
 次に、宿舎の問題でありまするが、これは御承知のような積雪の寒冷地帶におきましてのいろいろな不便があるので、この防寒費用、或いは除雪費用等、非常にかかるのでありまするが、その外に北海道は住宅が相当拂底しておるし、あそこでは借家をする場合については疊、建具というものを、みんなそれぞれ借家人が負担しなければいけないというような風習がありますので、これは住宅問題につきましては、官舎の足りないところは成るべく早く解決してやらなければならないのじやないかと思うのであります。又今年度から國家公務員のための國設宿舎の設置に関する法律の施行によりまして、官舎の貸料が前の二百倍近くに増額されたのでありまするが、これは非常に大きな負担になるので、何とか北海道の特殊事情を考えて、無料宿舎にして欲しいという要望も極めて強かつたのであります。
 以上申上げましたような待遇改善がなされておらない現状におきましては、北海道における裁判事務官の人事の交流は極めて困難でありまして、各裁判所長、或いは検事正、或いは高等裁判所の長官というものは、実にこの人事の問題については頭を悩ましておるのでありまして、これは延いては裁判事務の停滯を来たす虞れのある問題であつて、切実な訴えであると思うのであります。これに関しましては、当委員会におきましても極力関係機関と折衝しまして、速急に打開策を講ずる必要があるのではないかというふうに考える次等であります。
 以上簡單でありまするが、概略について御報告申上げます。
#4
○委員長(北村一男君) 長谷山委員の御報告に対して御質疑のあるかたは御発言を願います。別に御質疑もないようでありまするから、本件はこの程度にいたしまして、次に、法案の審議に入ります。
#5
○宮城タマヨ君 長谷山委員の説明に対する質疑ではございませんけれども、それに連関しましたことでちよつと発言させて頂きたいと思います。少年法によります少年の年齢の引上げ問題でございますけれども、これは昨年の暮に、法務府の当局をお呼びしまして、あと一年間で年齢を引上げましても、その施設は十分であるかということを当委員会で念を押しましたところが、あと一年間で十分に施設を完備するという御答弁がございましたので、一ヶ年間そのままということをこの委員会でもまあ認めたような形になつたのでございますけれども、御存じのように新聞でも非常にこの問題についてはやかましく騒いでおりましたのでございますが、当委員会といたしましても、一度当局をお呼び出し願つて、そうして家庭裁判所のほうの言い分と、それから法務府のほうの手当の現状につきまして、一度しつかり聞いて見たいと思いますが、何とかさようお取計らい願いたいと思つております。
  ―――――――――――――
#6
○委員長(北村一男君) 了承いたしました。
 それでは裁判所法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案、裁判所職員の定員に関する法律等の一部を改正する法律案、以上四案を便宜一括して議題に供します。御質疑のおありのかたは御発言を願います。速記をとめて。
   午前十一時十一分速記中止
   ―――――・―――――
   午後零時一分速記開始
#7
○委員長(北村一男君) 速記を始めて。それでは休憩いたします。
   午後零時二分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時四十九分開会
#8
○委員長(北村一男君) これより委員会を開きます。
 午前中に引続きまして質疑を続行いたします。
#9
○鬼丸義齊君 私は刑事訴訟施行法の一部を改正する法律案について二、三お伺いいたしたいと思います。
 第一にお伺いいたしたいと思いますることは、この改正法案中の冒頭にありまする第二條中「新法施行後も、」の下に「この法律及び裁判所の規則に特別の定があるものを除いては、」とこうあります。この前段の「この法律」というものにつきましては別段疑義はありませんが、「規則に特別の定があるものを除いては、」ということになつております。この規則というのは、現に施行されておりまする規則によるという趣旨であるか、或いは又今後新らしく、現在施行以外の点に対しても規則を作るという意味を含むのであるか、その点を先ずお伺いいたしたいと思います。即ち現在施行の分及び今後に規則を制定することをも含まれるのか。
#10
○説明員(岸盛一君) それは両方を含むのでありまして、現在施行されております規則では、当然黙つていてもかぶつて行きますが、それ以外に、この法案が通過しましたらこういう規則を作りたい、我々の考えております規則の案がございます、それを予定しております。
#11
○鬼丸義齊君 そうといたしまするならば、この裁判所の規則に特別の定があるものを除くという文字では当らないと思います。如何にもこの書き方からいたしますれば、現に規則というものがあり、その規則の部分は除くのだというふうな文意にしか見えません。将来これに基いて更に新らしき規則を作るものをこれに含むというふうには、この法文の書き方では解しにくいのですが、この点は如何でしようか。
#12
○説明員(岸盛一君) これは第二條の問題は、第十三條の廃止と相待つておるのでありますが、これはむしろ法務府の立案者側からお聞取り願いたいと思います。
#13
○委員長(北村一男君) 法務府はまだ見えておりません。
#14
○鬼丸義齊君 ちよつと、あなたにお尋ねするのは間違つておると思つておりましたが、まだ法務府は見えないと言いますので伺つたのです。そうすると法務府からは見えませんが、あなたのほうでおわかりの点だけお答え願いたい。仮に将来規則を改正することをも含まれるということであるならば、いわゆるこの二條の新法によつて、新らしく委任立法の規定ということになるので、その点が非常に重要になると思いますが、それはどういうふうに解しておられますか。
#15
○説明員(岸盛一君) これは第二條によつて、裁判所規則に委任されたと思います。それはこの法律が改正される趣旨、つまり審理の迅速を図るということが含まれております。その限度において委任された範囲内において裁判所規則を定めたい、そう考えます。
   〔委員長退席、理事宮城タマヨ君委員長席に着く〕
#16
○鬼丸義齊君 そうしますと、一体この文字の書き方とすれば、如何にも従来現に施行しております規則の分が含まれることに当り、将来の委任立法のこととしては少し当らないように思いますが、この書き方には、恐らくはこういうような趣旨の改正であるとすれば、将来のやはり委任立法も含まれておると私は思うのですが、そうすると結局どんなものを内容とするのかということの限界が我々は非常にわからないから伺つて置くわけであります。
#17
○説明員(岸盛一君) 第二條による委任によりまして、現在我々事務当局といたしまして、どういう規則を考えておりますかということを御説明いたします。
 この改正法案の第三條の二によりまして、最高裁判所が上告裁判所である場合、上告について、いわゆる旧刑訴事件について、いわば上告理由の制限に関する規定が置かれておりますのですが、その制限はその旧法事件についての上告を、新法の事件の上告と同じようにしようというのがこの改正案の第三條の二の規定でございます。でありますから、この新法の規定、新法の上告理由及び上告趣意書等の差出、その期間等に関するこの新法の法律に伴つてすでに出されております刑事訴訟規則の現行の規定は、全部やはりこれに適用されるということになるわけであります。そういう規則を以てその点を明らかにいたす考えであります。
 それから次に、この第二條によりまして、最高裁判所として、この現下の高等裁判所の旧法事件を迅速に処理しなければならんと、最高裁判所の負担を軽減すると同時に、高等裁判所の旧法事件の控訴事件をできるだけ早く処理するのが、将来の日本の刑事司法にとつて非常に大きな利益をもたらす、そういう見地から控訴審の手続について、次のような規定を設けたいと思います。それはこれから申上げます。この規則案の内容は、すでに昨年の全國の高等裁判所裁判官の定時合同の際にも、各地方からの意見としてありましたことでありますが、つまり控訴審をただ漫然と繰返さずに重点的にやつて行こう、判決に不服のある当事者に、不服のある点を、その点に限り重点を置いて控訴審を審理して行こう、そういう趣旨から次のような規定を設けたいと考えておるのであります。先ず公判期日において、控訴申立の理由を明らかにする手続というものを置きまして、裁判長は人定質問した後に、控訴申立人に対して、控訴申立の理由を問うということにします。それからそれに対する答弁としては、この第一審の判決に対してどの点が不服だということを控訴申立人からはつきりと述べて貰う、これは現行法には規定はありませんが、どうして不服だつたかということは、判決のどういう点が不服だということは、裁判の実際においても聞いておることでありますが、それをはつきり手続上のものにしたい、そう考えるのであります。それから控訴申立人のほうから、そういうふうに具体的に、原判決に対する不服の事項が申立てられますと、裁判所は、必要と認めるときは、控訴申立の相手方に対してその答弁を求める、そういうことによりまして、その争点というものをはつきりする。次に、これは只今のは公判期日における不服申立の限度を明らかにする手続でありますが、事件によりましては、公判期日でなく、準備期日を開いて、そこでさような手続をするのが便宜と考えられる場合もありますので、そういう場合には公判期日外で関係人を呼んで控訴申立の限度を明らかにするいろいろ手続を設けたいと思います。そうして要するに、さようにして原判決に対する不服の点がはつきりされますが、控訴裁判所は、控訴申立人が不服がないということが明らかになつた事項については、その点については、被告人の訊聞及び証拠調をすることを要しない。その場合には、そういう審理の省略をしました場合には、その不服のない限度において原判決の認定した事実によるということにいたします。つまり例えばたくさんの窃盗の事実が第一から三まであつたとします。この第一、第二の事実については、これは自分はもう不服はない。但し第三の有罪と認定されたこの点については不服であるというとき、審理をその第三の事実に集中する、或いは又事実関係については全然不服はないが、刑の量定について不服があるということになりますと、事実の点についての被告人訊問、証拠調等は省略することがです。專らその事件の情状について審理を集中する、さようにして、漫然とただ繰返すということでなく、本当に被告控訴申立人の不服のある点に審理を集中して行く、合理的にやつて行くということを考えておるのであります。ただ併しこの旧刑事訴訟法の規定は、控訴審については、覆審の構造をとつております。覆審の構造は、飽くまでこれを壊すことは妥当でないと考えます。それのみならず、当事者が不服がないからといつて、直ちにそれをその通り真実と確定することは非常に危険がある場合があります。そこで控訴申立人に不服のない事項についても、この事犯の真相の発見と、被告人保護のため必要と認めるときは、被告人訊問及び証拠調をしなければならないというふうに、事務的にそういう規定を置きました覆審的な構造はやめて置く、従いまして若し漫然と不服がないからといつて、審理を省略して、間違つた判決をするようなことになりますと、今度は新法に切り替わりますので、四百十一條の規定によつてこの判決は破棄される、そういうことになるのであります。これが控訴審の審理のやり方について、控訴審の覆審の構造をなお維持しながら、それを更に合理的にやつて行くために、かようなことを行うわけであります。それに伴いまして、控訴審において不服がなかつた場合も、不服なしとはつきりした場合の判決書の書き方、或いは控訴審全般の問題としては、いろいろ新法の規定に認められておりますその線を守りながら、その点に関する規則を設けたい。そういうことを只今としては考ております。
#18
○鬼丸義齊君 この改正法案が極めて簡單な規定で以て、内容は非常に大きなものを含まれておりますが、殊に只今の説明によれば、更にこれは裁判所の規則という文字の中に、そうした大きなものが含まれておることが明らかになつたのでありますが、元来ここで第二條のこの改正によりまして、委任立法をするということになりますると、丁度只今の刑事訴訟法施行法の十三條の何によつてできておると思うのですが、その範囲では賄うことかできないのであるか、或いは大体こういうことに対しまする重要な点を委任立法することは、やがては限界が明確でないことになつて、法律の変更も規則で以てなし得るというふうな虞れも多分にある、その点についてはどうしてもこの規定をここで設けなければやつて行けないという趣旨を、いま少しく明快なる御識別を伺いたい。
 もう一つ附け加えると、すでに刑事訴訟法施行法第十三條によつて、規則制定に対する委任もありまするし、又すでに憲法においても規則制定権を持つておられます。そういうものを権限の範囲内において、別段ここで新らしく委任立法を作らなければ、どうしても運用ができないという理由をもう少し明確に伺いたい。
#19
○政府委員(野木新一君) 先ず現在の施行法の第十三條の規定でございますが、この十三條の規定は、「この法律に定めるものを除く外、新法施行の際現に裁判所に係属している事件の処理に関し必要な事項は、裁判所の規則の定めるところによる。」というような表現になつておりまする関係上、先般も具体的の事件で、最高裁判所まで或る事件が問題になつたように、果して十三條のこの規定の書き方から見ると、どの程度のことを規定し得るものであるか。これを非常に厳格に読みますと、この施行法におきましては、旧法事件はすべて旧刑事訴訟法及び応急措置法によつて処理するというのが第二條にありますので、而も旧刑事訴訟法によりますと、新刑事訴訟法と違いまして、非常に細かなところまで法律で規定してあるわけであります。従いまして法律を尊重し、規則は法律に反するといけないというような、今まで政府の立場はそうでありましたし、國会の法務委員会の立場も、そういうふうに私ども了承して来ておるわけでありますが、そういう立場に立ちますと、果して十三條で規定する余裕があるかどうかという点が疑義が湧くわけであります。併しながら十三條の規定は、多少言葉は疑義を起す余地がないわけではないのであります。法律全体の趣旨から考えて見ますと、旧法と新法とは非常に変つてしまつた、而も社会情勢の変遷も非常に著しい時代でありましたので、一応旧法事件は、旧法によるとしながら、なお実際やつで見て、比較的小さい点において、どうも旧法では工合が惡い、むしろ新法の線に近付けたほうがいいというような点ができましたならば、或る程度までこの十三條の委任によつて規定ができるというような趣旨を盛つたものと解せられるわけでありまして、最高裁判所もそういう趣旨の下に、一応きまつたように承知しておる次第であります。併しいずれにせよ、十三條の表現がやや明確を欠きますし、又この書き方でありますと、その施行についても少しゆとりがないというような感じがいたしますので、この際は國際的要望によりまして、旧法事件は迅速に処理しなければならんということの要請がありますので、むしろ旧法事件の処理につきましては、或る程度裁判所側の創意工夫を発揮さしたほうがいいのじやないか。而も聞くところによりますと、規則で規定した点は、先ほど刑事局長から申上げた程度のものというように聞きましたので、それならば大体本来の規則でその程度規定し得るかどうか。規定し得るどいう見解も成立つし、或いはそれは少し問題もあるという見解も成立つかも知れませんが、そういうようなもやもやした点を除く意味におきまして、十三條よりもやはり広くゆとりを持たして、規則で規定し得るように委任したらどうか。委任するということは、すでに何も除外例がなければ旧刑事訴訟法は非常に細かくできていて、隅々まで彌漫しておりますので、それを一応法律第二條の規定によつて、法律自体で是正しまして、そうしてこの法律によつて規則でその点は或る程度旧刑訴に対し特例的なことをきめてもよろしいということを明らかにしようとしたものであります。併しながらこの書き方でもわかりますように、規則で定めることは何でもかんでも基本的事項までも、又被告人の利益に非常に大きな関係のある事項までも、そういう点までも全部規則に委任するということは考えておりませんで、それは第三條におきまして新法の條文の規定を拾つて来た、第三條の二ですか、これらとかれこれ総合して、全体として考えますれば、規則にここで委任した点も大体先ほど岸局長が規則の案として申上げました程度のことを一応ここでは考えておる次第であります。
#20
○鬼丸義齊君 従来裁判所の定めまする規則が、ややもしますと、法律で以て定めなければならんというような事項にまでも突入していはしないかということは、只今疑問とする点も、又論議される点もございます。ここに制定せんといたしまする「裁判所の規則に特別の定があるものを除く」ということを書いてあるところを見ますれば、現に規則で定めてありますものならば標準がとれます。併しながら先ほど来裁判所の説明員の御説明によりますると、将来に関しても尚且つこの規定によつて、この國の法律によつてその権限を規則に委任するのだ。いわゆる委任立法だというような御説明を受けたのです。そういたしますならば非常な重要な規定であります。又只今の説明によりまして見ても、もう少し広汎なる範囲によらなければ刑事訴訟法施行法の第十三條だけでは余りに窮屈になるため、非常に不便であるから、もう少し一つうんと広い意味においても委任を法律においてとつて置かなければ不便だというふうに考えられる。そうしてこういうふうな漠とした規定によつて委任権限を裁判所が持つことにしたのではなかろうかということについて、私は多大な疑いを持つのであります。先ほどの御説明によりますると、現に施行いたしております規則以外に、今後この法律の通過によつて、将来まさに作らんとする規則の裁判所の御意向を伺いたい。相当な広い範囲になると思うのです。私は現在の裁判所の規則の制定権の規定に対しまする範囲において、新らしくこれだけのことを作らなければ、どうしても運営ができないのであるかということに対して、今少し詳しく伺いたい。むしろこの上は私の希望としましても、この規則というもの、委任立法というものを全部除いたらどうか。こういうように考えます。で、それは除いては困る。こういうような不便を生ずるから困る。こういうふうで以て運営上支障を生ずるから困るということについての、もう少し具体的な御説明を承わりたいと思います。
#21
○説明員(岸盛一君) この第二條の「規則」というのは現行の規則だけじやない。新らしくできる規則を含むということも先ほど申上げました。それは将来の規則というふうにお聞取り願つたと思います。併し只今考えておりますのは、只今申上げた要綱の案の程度でありまして、今後どんどんといろいろなものを作るという考えは全然持つておりません。
#22
○鬼丸義齊君 それはもとより只今のお考えはその通りでありますけれども、明文ではこれ以上に及ばぬのだというのではないのですね。ここで委任の法律ができたとするならば、将来はどんどんこの法律に従つて作ろうと言えば作れるわけであります。それ故に非常に大きな規定だと私は解するのです。故にこういうものはやめてしまつて、どういう点において運用上困るかという点を御説明を願いたいと思います。
#23
○政府委員(野木新一君) 一応政府側からその点について御説明申上げます。先ず第一に現在の十三條が一応最高裁判所で或る解釈を下しましたものを、法律の書き方から見るとはつきりしない点がありますので、或いは一般の法曹界に裁判所の解釈は少し無理ではないかというような感じを持たしてもいけませんので、法律を尊重して行きたい。余りはつきりしない点をルールで規定して、ルールが法律を侵しておるというような批判が起つては、これは最高裁判所のためにもよくないし、又法律を立案する側としても取るべきことではないと思いますので、いずれにせよ十三條の規定ではややあいまいの点がありますので、この際十三條の規定を改めたい。勿論最高裁判所が十三條の解釈を下した解釈によれば、或いは先ほど岸局長が言われたことも止むを得ないではないかというような見解も出るかも知れませんが、そういたしますと、それは法律を無視しておる。少しルーで規定し過ぎるというような批判が一方に起きますので、それでは法律とルールとの関係が面白しくない。この際刑事訴訟法が非常に細かい点まで規定しておりますので、そうしたルールで法律を変えるといつたような、一見そういうふうに見られる疑いのあることも避けなければならないと思いまして、そういうことでもつと余裕をとつて、二條に現在の十三條よりもややゆとりを置きまして、而も最高裁判所がルールで法律を変えるというような万が一にもそういう批判を受けることのないようにゆとりを設けるよう。そういつた趣旨で改めたわけであります。それならば規則に譲るとしないで、ここに一々具体的に書いたらどうかという見解もございますが、大体最高裁判所が規則できめようとしておりる事項が、今度は事前に割合わかりましたし、而も今度はこれは旧法事件の処理ということで、これから続々発生する事件をずつと将来に亘つて規制するというものではなくして、すでに生じたる事件を処理するという一定のこの最高裁判所の規則に委任するとしましても、その規則の規定する事項はもう限られておるものでありますから、このようなことにしてもさして弊害は生じないではないか。若し将来ずつと続くものについてこういうように余り限定のないと申しましようか……、でありましたら或いはおつしやるような御心配は起るかも知れませんが、先ず旧法事件の処理という限度におきましては余りそういう弊害はなかろうということで、多少言葉が或いは足りないという嫌いはあるかも知れませんが、この程度で立案した次第でございます。
#24
○鬼丸義齊君 最高裁判所の解釈が余りに当時問題になりましたことも私承知しておりますが、やはりその結果としてこの法律が出たのだろうとは存じております。併しながらすでに控訴が提起されて進行中の事件は、たとえ手続にいたしましても定められた規則の手続によつて審理されるということは、一つのやはり既得の権限だと見でもいいと思います。それがやはりもうすでに控訴を提起している事件であるから、その範囲が限られておるのであるから、その範囲においては何らあつても差支えないというふうな趣旨に考えられましてはとんでもないことであります。で私は少し言い過ぎかもわかりませんけれども、人はとかく日本で一番法律を侵す者は誰か。それは法律を執行する者において一番多いのだと言われておるくらいであります。従つて嚴にこれは愼まなければならんことであろうと思いまするし、こんな空漠たる制限をこの際與えて、裁判所の手落ちはそれによつて未然に防げるかも知れませんけれども、よつて生ずる基本人権というものについてはどうなるか、ということを考えなくてはならん。殊に裁判所は專門家ですから、なかなかその規則をうまく考えて、次から次へと運営して、どこまでも一体引延して行くかわからん。我々には不審な先例さえも感せられるのであります。殊に今限られておる事件であるから、さしたる大きな弊害がないだろうというふうに解するのは、これはとんでもない差別扱いするもので、とんでもないことだと思います。で、私の今最後に伺いたいことは、こういう漠とした規則を作つて、成るほど裁判所の失敗はこれで以てきれいに片付くでありましようけれども、よつて影響するところというものは非常に大きい。殊にこの裁判所の規則というものと法律との間において、ややもするというと法律を規則によつて変更するというような虞れがあるというようなことの非難すらあるのであります。でき得べくんばこういうことでなく、この規則というもので、やはり委任立法というものでなくても済むのじやないかと思いますので、なければいけないかということを重ねてこの点伺いたい。どういう点が弊害だということと併せて……。
#25
○政府委員(野木新一君) 先ず第一に現在の十三條は多少はつきりしない形になつておりますので、十三條を存置したまま現在最高裁判所で、この法案の二條に基くものとして考えておられる程度のことを果して規定し得るかどうか。これは規定し得るという見解も勿論非常に有力な見解であります。併しながら又一方十三條の書き方がああいうことになつておりますので、それは少しむずかしいじやないかという見解も有力に出て来ると思います。そうなりますと、又そこでいろいろ無用な紛争を起しますので、やはりこの際といたしましては法律をはつきりさして、ルールで法律を変えたというような非難が起らないようにはつきりさしたほうが法律のためにもいいし、ルールのためにもよろしいとして、その間にゆとりを設けさすというのがこの案の趣旨でございます。
#26
○鬼丸義齊君 若しそういう趣旨であるといたしまするならば、例えば控訴事件におきましても、上告事件はここにございまするが、控訴事件の取扱等については数條の……、僅かな條文を規定すればそれで足りるのでありますから、むしろこうしたような漠とした大きな権限委任をしなくても、それを改正法規によつて明確に書いて、そうして新らしく規則を作つたらどうですか。その点はどうですか。
#27
○政府委員(野木新一君) 誠に御尤もな御質問と存じますが、只今最高裁判所で考えておられる程度の規則は、新刑事訴訟法とその規則との関係を見ますと、まあ大体新刑事訴訟法に振替えて考えて見ますと、規則できめてもまあ差支えないのではなかろうかというような程度の、これは人の見方によつて多少違う点はあるかも知れませんが、大体そんなように思われる事項であります。併しながらこの現在の施行法によりますと十三條の書き方で行きますと、如何にも窮屈で或いは規則では、新刑事訴訟法の下に規則で委任をするということは、なかなか規則では書けなかつたのではないかというような疑問もありますし、その辺で又いろいろと問題が起つて、却つて法律と規則との関係を混乱させるようなことになりますので、むしろ今度の案のような形にしたほうがよろしいと、そういうふうに考えた次第であります。
#28
○鬼丸義齊君 それはもう裁判所のほうで以て、お手盛りで自由にできるようなふうに権限を作られると、裁判所としては一番都合がいいが、そんなことはとんでもない。私の言のはやがてそうしたことによつて、法律と規則との間の限界について疑義が起る。幾つかに重なつておるというと、やがては規則の定め方について嚴格なる規定、基準というものをきめられることになつてしまつて、却つて角を矯めんとして牛を殺すということになる虞れがあるのであります。だから旧法時代の起訴事件についての分を賄うことが無理であるとすれば数ヶ條現わせばできるのであります。だからこんな大きな漠とした規定を、委任立法でたやすくていいとして出すことになりまするというと、法律と規則との限界をいよいよ混乱に陥れて、むしろ裁判所のほうといたしましても、それよりも又大きな誤りをでかすのではないかと恐れる故に、私はこの際むしろこの規則というものをこの中から除いてしまつて、そうして必要の改正を、本当に必要な分だけを明文で以て特に明確にして置くことはできないかということをもう一回伺いたい。
#29
○政府委員(野木新一君) 仰せのことは一応御尤とも存じますが、私ども政府側の見解といたしましては、新憲法施行以来、法律と規則の関係につきましては、法律が優位で、規則では法律を変更することができないという見解をとつて、それはいろいろの説はありますが、ともかく政府側といたしましてはそういう見解をとりまして、新刑事訴訟法を立案し、新刑事訴訟法施行法の案もそういう孝で立案し、そういう趣旨の下に國会の当委員会の御審議をお願いしたような次第であります。その見解は政府といたしましても今も尚変つておりません。又最高裁判所のほうにおきましても考え方としてはいろいろな考え方があるようでございますが、実際に規則を制定しておられるその実情を見ますと、やはり國会のほうの考え、並びに政府がとつておる考え方を尊重されて、努めて法律との間の矛盾撞着、或いは法律を変更することになるようなことは避ける立場で御立案になつておるようであります。ところで今度の施行法の二條の問題でございますが、私ども考えまするに、憲法で裁判所の規則制定権を明文を以て出したという趣旨をも考えますと、或る程度のことはやはり法律で規定してしまわないで、規則に余裕を残して置いたほうがよいのではないか。旧刑事訴訟法は旧憲法時代にでき上りましたものでありまして、従つて裁判所の規則制定権というようなことは頭に入れないで規定してありますので、新憲法になつてから見ますと、やはりずつと細かいところまでも規定し過ぎでいる。そう思われますので、新刑事訴訟法を立案する際には或る程度のことは規則に任したほうがいいという趣旨で、旧刑訴に比べますと新刑訴は訴訟上の基本的行動に属する事項及び被告人の利益に重大な関係があるような事項は訴訟法に盛りましたが、そうでない比較的軽微な事項は規則に讓つておる次第であります。そこでこの旧法事件は旧刑訴法の応急措置法で処理されるわけでありますが、今申しましたように、旧刑事訴訟法は非常に細かいところまで規定しておる。それであるから今の頭で見ますと、少し規則に余地をあけてやつたほうがいいのじやないか、そう思われるわけであります。而して規則に余地をあける程度でございますが、これは法律のほうで或る程度考え得るものと、政府側並びに國会側の立場に立つならば考えられると思うわけでありますが、この施行法案は、何分先ほど申上げましたように形式的な事件の処理でありますし、又これは率直に申上げますと、いろいろの國際的関係もありまして、急速に立案する必要もありましたので、各條文をやや簡單にするというような関係もございましたので、二條のような形にしたわけであります。
#30
○鬼丸義齊君 裁判所のほうで予想いたしておりまする控訴申立人の不服の範囲を指定し、これに対する控訴の理由を申立てする。若しその申立てをしない場合があるとすればそれは却下する。こういうことになつて来ますと非常なやはり基本人権というものに対する大きなことになるのではないか。
#31
○説明員(岸盛一君) 只今のそういう方式違反で却下するというところまではいつておりません。そこまでは恐らく考えておりません。
#32
○鬼丸義齊君 そこまでお考えになつておるんでしようか。
#33
○説明員(岸盛一君) そういう規則を作る考えはありません。
#34
○鬼丸義齊君 ちよつと私は曾つて裁判所のほうで、刑訴法の施行法の一部改正を考えておつたとき、その改正の中に控訴申立人は裁判所の規則の定めるところによつて、控訴の申立の理由を明らかにしなければならん。これは先ほど御説明があつたのですが、その申立人が前項の理由を明らかにしない場合には、控訴裁判所はそれを却下するということは考えられたんではないのですか。
#35
○説明員(岸盛一君) それは前にはそういうことも考えておつたのであります。
#36
○鬼丸義齊君 今はそういうことは考えておりませんか。
#37
○説明員(岸盛一君) 考えておりません。
#38
○鬼丸義齊君 そうすると、大体裁判所のほうでこの規則の狙いとする範囲をここで明確にして貰いたい。どの程度の範囲か……。
#39
○説明員(岸盛一君) それは先ほど申しましたように、控訴審の旧刑訴の覆審の構造、建前をこわすということはやらない。飽くまでも事実調ということが控訴裁判所の義務であるという考え方を残しております。ただ漫然と審議のやり直しをするということは非常に無駄なことも多いのでありましてもし被告人、控訴申立人のほうでこの点については不服がないという点がはつきりいたしましたならば、その点についての審理は省略して本当に不服のある点の審理に重点を置く、そういう行き方で行きたい。併し控訴申立人が仮に不服がないと申しましても、事案の真相の発見、被告人保護の見地から適当でないと認めるものは、裁判所は義務としてその点についての審理をしたければならない。そういう考え方で行きたいと思います。
#40
○鬼丸義齊君 只今のような説明であるとするならば、新らしい規則がなくてもできるではありませんか。そんな一体あなたの説明のような規則なんというものはどんな文字で現わすことになるのですか。
#41
○説明員(岸盛一君) 或る程度は只今申上げましたように、審理のやり方によつて賄い得ると思いますが、併し控訴審は御承知のように一件の記録を全部読んで法廷に臨みますので、控訴申立人がこの点は不服がない、又記録上から言つて非常に明瞭な場合であつても、現行法のままですと形式的に調べ直しをしなければならんということになります。そういうような場合にこの規則を設けますと、その点の審理を省略することができる。そして本当に不服のある点に審理を集中することができるわけであります。
#42
○鬼丸義齊君 只今の説明をずつと伺つておりますと、結局裁判所は前回高等裁判所で問題になつたことについて、規則に疑義が多いものですから、むしろ非難の起らない程度にこちらのほうで手盛りでやれることにして置かんといけないから、むしろこの際、法律を広い意味において変えて置くほうが便利であるということ以外に、何も大したことはないのではないですか。そういうふうにも思われます。これは規則の表だけを見ますと、この委任立法の範囲というものは、現に起訴にかかる旧法の事件は限られておりますが、併しこれを広範囲に裁判所のほうに法律の制定権を委任するということになれば、或る意味において議会は法律制定権の放棄になり、これは重大なものだと実は私は思うので、この点について伺つたのです。結局私は規則というものはなくても賄い得るのではないかという気がしてならないのですが、どうですか。
#43
○説明員(岸盛一君) 裁判所としましては先ほど申し上げましたように規則によつて、そういう手続を明確にしたほうが控訴裁判所として非常に審理がやり易い、こういうふうに考えます。なおこの際、最高裁判所の刑事訴訟法の規則はどのような過程を経て作られて
 おるかということについて御説明をして置きたいと思いますが、最高裁判所のうちに諮問機関として刑事訴訟法の規則制定諮問委員会というのがございます。この構成は最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所の裁判官、それから各検察庁、それから弁護士会、法務府、その他学識経験者等二十数名からなる委員会でございまして、先ず規則について、規則の内容はそこの諮問委員会に諮りまして、そこで各方面の又いろいろな意見を持たれるかたの十分な検討を願いました上で、或る答申を得て、規則制定諮問委員会の符申に基いて事務局で案をまとめまして、裁判官会議にかける。裁判官会議において更にそれを検討して最終の意思を決定する。そういうふうな手続を履んでおりまして、ただ最高裁判所の裁判官会議だけのひとりぎめでやつておるわけではないのであります。その点は御了承願いたいと思います。
#44
○鬼丸義齊君 私の刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案についての質疑はこれで終了します。
#45
○理事(宮城タマヨ君) 他に質疑はございませんか。ほかに質疑がございませんようですから、今日はこの程度で委員会を終ることにいたしまして、明日の委員会は午前十時から開きます。
   午後二時四十三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     北村 一男君
   理事
           伊藤  修君
           宮城タマヨ君
           鬼丸 義齊君
   委員
           左藤 義詮君
           鈴木 安孝君
           長谷山行毅君
           齋  武雄君
           岡部  常君
           高橋 道男君
           須藤 五郎君
  政府委員
   法務府法制意見
   第四局長    野木 新一君
  説明員
   最高裁判所長官
   代理者
   (事務総局刑事
   局長)     岸  盛一君
ソース: 国立国会図書館
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