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1950/12/08 第9回国会 参議院 参議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第6号
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1950/12/08 第9回国会 参議院

参議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第6号

#1
第009回国会 法務委員会 第6号
昭和二十五年十二月八日(金曜日)
   午前十一時五分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (調査報告書提出の件)
 (朝鮮動乱に関する件)
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(北村一男君) 只今より委員会を開きます。
 先ず初めにお諮りいたしたいことがございますが、本委員会は第八国会閉会中に引続き、今国会におきましても、検察及び裁判の運営等に関する調査を行なつて参つたのでありますが、会期も終りになりましたので、今期国会中の調査について未了の報告書を提出いたさなければなりませんが、この報告書を提出することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(北村一男君) 御異議がないと認めましてさように取計らいます。なおこの報告書の案文は、便宜委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(北村一男君) 御異議がないと認めます。御賛成の方の御署名をお願いいたします。
  多数意見者署名
    齋  武雄  羽仁 五郎
    須藤 五郎  高橋 道男
    長谷山行毅  鈴木 安孝
    岡部  常
  ―――――――――――――
#5
○委員長(北村一男君) 次に昨日本委員会に付託されました裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案以上二件を一括して議題に供します。先ず政府の御説明を願います。
#6
○国務大臣(大橋武夫君) 議題となりした裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を便宜一括して御説明申し上げます。
 最近における生計費、民間の賃金その他の事情の変動に鑑み、政府は、一般職の国家公務員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出し、現に御審議を仰いでおりますことは御承知の通りであります。
 そこで裁判官及び検察官につきましても、一般の国家公務員の例にならい、その給与を改善する必要がありますので、この両法律案を提出した次第であります。
 この両法律案は、右の趣旨に従い、それぞれ各法律の別表を改正するとともに、裁判官の報酬等に関する法律第十五條及び検察官の俸給等に関する法律第九條に定める報酬又は俸給の月額を改正しようとするものでありまして、この両案による改正後の別表及び右各條に定める報酬又は俸給の各月額を現行の別表及び右各條に定める報酬又は俸給の各月額を現行の別表及び右各條に定める報酬又は俸給の各月額と比較しますとその増加比率はおおむね一般の国家公務員のこれに対応する俸給月額の増加比率と同様であります。
 以上簡單にこの両法律案について提案の理由を御説明申し上げました。
 なにとぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
#7
○委員長(北村一男君) 続いて質疑に入ります。御質疑のおありのかたは御発言を願います。
#8
○羽仁五郎君 只今議題になりました法律案に関連して、先日来法務総裁に向つて伺つて来た点で、なおまだ十分納得できない点があるので、二、三お尋ねいたしたいと思うのでありますが、我々が裁判官或いは検察官或いはそれらの機構に対してできるだけ優遇の趣旨を実現して行きたいというふうに考えるゆえんのものは、やはり何といつても国民の基本的人権が尊重されるか否かということにかかつて大きな問題があると思うのであります。
 先日来法務総裁から御所見を伺つているのでありますが、最近の事態のうちで二、三我々としても疑惑を抱いておりますものは、最初に一、二の事実でありますが、昨日か一昨日か、法務総裁から予備隊についての御説明があつたのですが、先頃東京の各地のあちこちの大学で学生諸君の運動があつた際に、これは私が聞いた事実でありますが、早稲田の学生の運動の際に、予備隊があすこに発動されたという事実があるのですが、そうして又その予備隊が、あの周囲に集つた一般民衆のほうに向つて動いた、或いは威嚇を加えたというような事実があるのでしようかどうか。昨日か一昨日かの法務総裁の御説明では、いわゆる集団的な、破壊行動が惹起されて、そうして一般の警察によつて処理できないというふうな非常な場合に発動するという御説明だつたのですが、先日の場合などがそういうように判断なされるのかどうか。
 これに関連して第二ですが特審局の御活動なんかにつきましても社会上或る程度の信頼を得ている人物に対して根拠なくして特審局が調査活動をなさるというふうな事実がないかどうか。今日は特審局長がお見えでないようですが、果してないというふうに言い切れるかどうか。若しあるとすれば今後もそういうことをなさるのかどうか、それを法務総裁の責任においてお答えを願いたいと思うのであります。
 何故こういうことを申上げるかと言いますと、言うまでもなく警察、或いは検察、或いは裁判、こういうこれらの機能というものは、言うまでもなく第一には人民が信頼するかどうかということによつてその機能を果すこともでき、又容易にこれを果すことができない、幾ら優遇されても、人民の信頼を受けなければ到底その機能を果すことができない。そうなると勢い人民の信頼しない場合にはどうしても威嚇的な手段を増大し、或いは権力、武力というものをますます増大して行かなければ到底治安の維持ということができないというようになつてしまう。そういう意味では先ず第一に裁判、検察或いは警察、これらの仕事を担当されるかたがたが第一に人民の信頼というものを得る、威嚇的な、或いは権力的な方法によつて事を処理するというような考え方を一掃されることが重大だと考えるからであります。中にも一般市民、国民の一人の人の基本的人権に対しても、これを軽々しく圧迫するというような態度がないというようになつて頂きたいと考えるからなのであります。それが第三であります。
 第四には、これもまあ我々の見聞する小さな事実ではあるのでありますけれども、例えば私どもが旅行しておりました場合なんかに見受けるのでありますが、電車の中などにおいて警察官の諸君は比較的その態度が、まあ比較的でありますけれども穏やかですが、どうも予備隊の諸君の態度はどうか。我々の学生時代などには、若い者が電車の中などでは成るべく席を讓つて立派に立つて乗つて行く。又軍人もそういう態度をとつていたのですが、戰車中に軍人が率先して、公然と席を占めるというような弊風を生じて、それでお婆さんや子供が立つているとようような甚だ見苦しい有様を呈しておつたのですが、現在どうも私の現に見ました一、二の例の場合には、いささか予備隊員諸君の名譽に反するような態度をとつておられるというような事実があるのですけれども、私は電車の中では立てとかいうような細かいことを言つているのではなくて、予備隊の教育全体をやはり民衆の幸福を守るのだ。民衆の基本的人権を守るのだということのほうに重点が置かれないで、何か民衆が悪いことをしたらばそれを圧倒するのだというようなほうはかりが、人民を敵視するような教育の効果が現実にそういう点に現れているのではないかと思うので、その点についても法務総裁の注意を喚起したいと思うのであります。
 それから次に、部分的な問題でありますけれども、この前の前々国会において法務委員会は警察及び検察の事務の民主化を目的といたしましていわゆる五井産業を中心に検察及び警察関係のかたがたの御協力を頂いて、証言を頂いていろいろと調査したのでありますが、その後に行われた警視庁の人事において、これは法務総裁の直接の御管轄の下ではないのでありますけれども、その人事において果してフエアーであるかどうかという点について我々はいささか心配するのであります。これは言うまでもなく、この国会においてそういう調査について証言をなさるときに、その後においてフエアーでないような処置を受けるかたが万一にも一人でもありますと、そのかたに対して、国会として結局それは国会の権威を下げることになるのでありますから、だから私は必ずやその後に行われた警視庁の人事は極めてフエアーなものであると確信をしておりますけれども、そうして又恐らく法務総裁もそういうふうにお認めになつているのだろうけれども、併しあの当時相当の年長のかたであつて、それがなかなか良心的な証言をなさつたかたが、そのかたが今まで長年つくして来られたそういう能力、又そういう努力に報いるような意味の人事であるかどうか疑問のようなことがあるように聞いておりますが、若しそういうことが行われると、今後そういうかたがたが国会の委員会の調査などにおいて証言をなさる場合、良心的に基いて証言者としての義務を果すことにいささか躊躇せられるようなことがあつては非常な大問題だというように考えますので、この点についてもどうか御注意をして頂きたいというふうに考えるのであります。当時警視庁内に、或いは警察関係なりにおいて腐敗とは言わないまでもなお一層民主化の努力をしなければならないのではないかという考えを述べたかたがたと、それから今日十分民主化されておるというふうな考えかたを述べられたかたと三通りあつたように思うのでありますが、その一層民主化しなければならないというようなお考えを述べたかたと、それからいや何も問題ないのだ、我々は立派にやつているのだというふうにおつしやつたかたがたとの間に、人事のフエアーでない点がありはしないかどうかというような点について、我々がいわゆる個人的の意味でなく、この国会の調査に対して証言者の協力が良心的に行われるという意味から、私はその点を憂慮する。その意味をどうか御了解願いたいと思います。
 それから最後にやはり予備隊関係のことでありますが、予備隊の宿舎について昨日か一昨日か御説明がございましたが、これについて私どもの知つております二、三の場合において、学校の校舎を予備隊の宿舎に当てられるのではないかというような動きのあつた事実があります。これは私はなかなか大きな問題であると思うのです。それで言うまでもなく個々の場合について私は細かいことを申上げるのではなくしてですね、国の一般の政策の上において我々が文化国家という誓約を以て立つておる以上は、先ず第一に学校の文化的な使命というものを重く考えて、そして処理をなさつているということを確信しているのでありますが、どうかすると、そういう点が忘れられて、予備隊の宿舎が必要であるとすれば、どこそこの学校の校舎をそれに当てたらどうかというような考えを持たれる方があるのではないか。そういう点は法務総裁が十分留意されたいというふうに考えるのであります。学校は言うまでもなく、多くの学生と教授と学校当局者が協力をして敗戰後の困難な状態の中で、或いは実験室、或いは読書室、その他教育のために必要な設備を営々として築いて来たところが多いのでありますから、それが一朝にして適当でもないような警察予備隊の宿舎に当てられ、両方の目的を十分果されないことになつてしまうし、何よりも恐れることは、その際に国民がやはり文化国家を建設するという至高の使命が軽んぜられておるように感ずる。そして極言すると、警察国家的の感じを抱いて来る、こういうようなことが考えられますので、その点について十分御考慮を煩わしたいというように考えるのであります。以上が私の質問であります。
#9
○国務大臣(大橋武夫君) 多数の御質問でありましたので、或いはお答えが漏れるところがあるかも知れません。漏れておりました節には重ねて御質問をお願いいたします。
 先ず第一に、先般の早稲田大学におきまする一部学生の騒擾事件の際に警察予備隊が出動したかどうかというお尋ねでございましたが、警察予備隊は今日まで全国において一度も現実に出動したことはございません。従いまして、早稲田大学の事件当時には勿論出動したことはないのでございます。これが、出動したかのごとく一部に伝えられましたのは、実はあのときに早稲田に出ました警察力は自治警察たる警視庁の警察官でありまして、御承知の通り警視庁におきましては、各警察署に所属いたしておりまする職員のほか、いろいろの集団的な事件に対処いたしまするために、平素から所属警察官の一部を以ちまして、各署に所属しておらないところの警視庁直属の予備員を保留いたしておるのであります。そしてこれを警視庁におきまして予備隊と名付けておるわけであります。曾ては旧警察の時代におきましては、俗に新撰組だなどといわれたこともあつたのであります。これはつまり各警察署に配置せずに、本庁において予備的に待機せしめ、必要に応じて応援に出すという意味において、警視庁の予備隊なのであります。これが当日も出動をいたしたようでありまして、警視庁の予備隊が出動したという記事は新聞記事によつて私も承知いたしたのでありますが、これは只今申しました警視庁の予備隊が出動した、そういう趣旨の記事でありまして、警察予備隊とは全然関係のない事柄なのであります。私はああいう際において警察予備隊が出動するということが、将来においても事件の規模、又性質から考えましてあり得ないことであると考えております。
 それから第二に、特審局が職務上調査活動をいたしまする場合におきまして、世間において信用されておる人物に対して、大した理由もないのに調査を始めるというようなことがあるかどうかというお尋ねであつたのであります。御承知の通り特審局は本年の八月に従来の約六百人の人員をポツダム政令によりまして千二百人増員いたしますことに相成つたのであります。実は特審局といたしましてはその任務から考えまして、非常に過少な人員を以つて働いているようなわけでございます。従いまして、理由なく調査をするというよりも、調査しなければならない事項がたくさんあつて、そちらへ手も廻りかねておるというようなのが現在の実情でございます。かような特審局のごとき性質の機関の活動に当りましては、的確な必要に基いてのみ行動すべきものでありまして、そうして漠然と何かあるのではないかというような軍なる予断、或いは予測に基いて行動を監視するということでは、到底人員が幾らありましてもきりのない話でありまして、従いまして或る程度の條項に基いてこれはどうしても何らかの特審局としての措置が必要である。そしてその措置の準備のため、或いはその措置として如何なる措置をすべきかということを考えるべき具体的な資料の蒐集に当るべきものであつて、漠然と何かひつかかるであろうというような趣旨で活動すべきものではないということをかねてから局員にも指示をいたしておるわけであります。もとより多数の局員の行動でございまするから、一々法務総裁たる私において指図をいたすわけには参りませんが、この趣旨はかねて申しきけておるのでございますので、恐らく御質問になりましたような、理由もないのに相当な人に対して尾行を付けるとか、或いはいろろい実情を聞いて廻るというようなことはなかろうと信じております。併し或いは又羽仁さんのお手許にさようなことについてお聞き及びのことでもございましたならば、又申しきけを頂きますならば、十分に調査をいたしたいと思います。
 それから第三に、予備隊員の態度が、その予備隊の性格から見て好ましくないではないかというような御趣旨の御質問でございましたが、私はこの点は現在の警察予備隊としてさようなことがあつても止むを得ないだろう。事実多少そういうことがありはしないかという感じを持つて伺つておつたのであります。実は警察予備隊の訓練につきましては、いろいろな機会において申上げておりまする通り、先ず急遽隊員が募集せられまして、これが指導訓練に当りますべきところの幹部というものの配置が非常に遅れております。これは大体来年の一月中旬頃までに整備したいという計画で、目下その候補者或いは任命された者の幹部の訓練をいたしておるわけであります。それで現状におきましては、各警察予備隊において、正規の幹部の指導というものが行われておりません。従いまして仮に各キャンプ各キャンプにおいて隊長或いは指揮者の仕事をとるべき人を仮に選びまして、その人たちが顧問役をいたしておりまする米軍将校と相談をいたしまして、その指導によつて訓練を実施いたすという実情であります。かような実情でございまするので、勢い訓練は、形の訓練が主になつて来るのでありまして、或いは集団行動についての訓練とか、或いは武器の操作についての訓練とか、こういつた行動上の訓練が多くなつておるのであります。で精神的な訓練ということになりまするというと、どうしてもこれは相当な力を持つた正規の幹部が任命されまして、それによつて行わなければならないのでありまして、現在の仮の幹部でなし得る程度の教育といたしましては、今申上げましたような動作の訓練といつたような外形的なものが主になつております。又それ以上の精神的な指導をこれらの幹部、仮の幹部を通じてやるということは事実不可能であるし、又適当でもないと考えております。従いまして、予備隊員につきましての心構え等は、もとより一応予備隊本部においてこういうふうな態度をとるべきであるというようなことを取りきめし、又これをキャンプに流してはありますが、併しそれが責任ある幹部によつて十分に心を込めて実践的な行動にまで、或いは態度にまで現われるような程度になるまでの教育ということは全然着手いたしていないわけでございます。従いまして現在の警察予備隊員は、或いは従来職事当時において召集を受けておつたものとか、或いはその後今日まで社会で個人としていろいろな分野で働いておつたというような人々が集まつておるのでありまして、形の上のことは、これは号令によつて何とでもなりますが、只今仰せられましたように汽車とか、或いは旅行等、街頭においてお見受けになります行為、これはその人たちが精神的な教育というものが現段階において殆んど行われておりません。その結果として御指摘のような好しくないという事態は、これは私十分今日あり得ると思つております。もとより私どもは、いつまで経つてもこれでいいというわけでもありませんので、来年一月中には新幹部を適正に配置いたしまして、これによりまして新幹部、正規の幹部による教育を進めて参りたい。この際においては、特に警察予備隊というものが従来の軍隊ではないのだ、警察でもない、軍隊でもないところの一つの新らしい制度であつてその隊員が全く服装の新らしいのと同じように、その精神においても、又その誇りにおいても新らしいものを持つて行くべきである。殊に先ほどお述べになりましたごとく、單に警察予備隊員というものは、これは非常の場合において治安の確保に当るわけでありますが、治安確保ということの要点は、力を以て圧迫させるということではなく、国民すべてが治安に自発的に協力するという体制以外に、真の治安の確保ということはあり得ないのでありまして、それがためには治安確保の責任ある地位にあるところのこの予備隊というものが、常に社会における動作において、或いは行動において真に国民の信頼を博し、その出動に当りましては、国民諸君の心からなる協力と援助を受け得るような体制を作つて行く。これが絶対に必要なことである。従いましてそれがためには社会に対する個人的な行動におきましても、一人々々が立派な国民としての行為をすべきものである。こういうふうに考えておるわけでありまして、新幹部整備の上は、かような精神に基きまして実際上の行動においても、国民個人としても立波な行為を、行動をとり得るような、そうした基礎になる精神的な、民主国家の国民としての精神的な訓育に重点を置いて参りたい、かように考えておる次第であります。暫らく時間をお貸し下さることをお願い申上げる次第であります。
 それから第四に、先般の警視庁の人事が果して警察民主化の線に沿うて公事に行われたかどうかという点について御質問を頂いたのであります。警視庁の人事につきましては、法務総裁としても又国警担当の国務大臣といたしましても、私には何らの権限もなく、又これに介入する立場にもありません。ただ噂といたしましては、この人事に対してもいろいろな批評があり得ると思うのであります。私個人といたしましてもかような噂に基いてこれについて批評をせよということになれば、いろいろと意見もあり得ることでございまするが、さような立場におりますので、これについての具体的な見解を申上げることは差控えさして頂きたいと存じます。併しながら自治警察といえどもやはり警察の一翼でございまするから、私はあらゆる自治警察におきまする人事が常に警察民主化という線に沿うて公平に行われなければならんということについては、警察の関係者の一人といたしまして強い要望を持つておることだけを申上げて置きます。
 それから最後に、予備隊宿舎に用いられておりまする各建物のうち、学校との関係はどうなさつておるだろうかという御質問でございます。警察予備隊は七万五千という多数の人員のために早急に全国で適当なる病舎を求めましたのでありまして、これが又現在求めつつありまするが、これについては各地においていろいろな問題を生じておりますことを聞いております。或いは札幌におきましては競馬場を取上げて転用いたしておる。或いは又学校の一部を他の土地においては硬つておるというようなことも聞いておるのであります。学校につきましては、私どもは文化国家としての日本、又教育の重大性ということから考えまして、如何なる場合においても、現に学校が使用しておる建物を警察予備隊のために坂上げるということは絶対にすべきでない。こういう建前を以てこの問題に直面いたしておるわけでありまして、ただ実際におきまして現地において学校の一部を転用いたしておるような場合におきましては、次のような事情に基く場合もあります。即ち戰雪中の兵舎として用いられておりました建物を、その後軍隊がなくなりましたために、いろいろな用途のために払下げておる。そして公共団体その他におきまして、特に学校としてこれを払下げを受けたものも相当あります。併しながらその学校がその後経営者の意図に反しまして、当初の計画通り生徒が集まつていないという学校も相当あるわけでありまして、例えば千人くらいを予定しておつたところが、現実には五十人か八十人しか生徒がおらないというような学校がある。又今日各種の学校が非常に全国に多数できましたため、これらの学校は今後当分の間は予定通りの人員を収容するということはあり得ない。又建物の改造その他にいろいろ費用を要しまするために、その費用の財源がないために、自治体として折角借受け、或いは買受けた建物を修理して現実に学校として使用することができなくなつておる、こういうものもあるわけであります。こういうものにつきましては、その部分について建物の管理者と話合いが付けば、一時警察予備隊の庁舎として借受けるということも、この急場を凌ぐ方法としては止むを得ない、こういう場合もあるわけであります。さような場合におきまして、従来学校になるはずのものが予備隊の兵舎になつたんじやないかというような例も多少はあると思いますが、これは只今申上げたような趣旨でさように相成つておるのでありまして、これによつて現実に学校の教育を妨げるというようなものにつきましては、断じてさようなことはないようにいたしております。現に久里浜におきましてあそこに水産大学がございまして、これが幾棟かの建物を使つておりまして、そして別に一部が空いておりましたので、そこを予備隊の庁舎に借入れることにいたしたことはあります。ところが予備隊におきまして一時人員などが増加いたしましたために、現実に学校が使用しておる一棟を予備隊が使用するというような事態を生じたこともあるのであります。これにつきましては学校当局から、或いは他の人から、こういう事態があるという申入れを私自身に受けたのでございます。早速事情を取調べましたところ、事実でございまして、これは予備隊に命じまして速かに返還せしめるという措置をとらせたこともあるのであります。学校の問題につきましてはかような考え方をいたしておる旨をお答え申上げます。
#10
○委員長(北村一男君) 羽仁委員に申上げますが、速記は十二時に割愛することになつておりますし、直接法案に余り深く関連を持たないものは法案の採決後一つ御質問願うようにお願いいたしたいと思います。
#11
○羽仁五郎君 それでは簡單に……。私は只今法務総裁に対する御質問で個個の問題についてはなお十分考えて頂きたいと思う点があるのでありますが、私は必ずしも側々の事実にあいてとやかく細かいことを言おうと思うのではないので裁判なり、警察なり、検察なり、法務の機能が完全に果されるためには基本的人権を尊重し、人民の信頼の上にお仕事をなさるということが第一である。この点について法務総裁は十分の識見をお持ちになつているというふうに信じたいのであります。且つ又今の警視庁における予備隊が民衆に向つて威嚇的な行動をとるとか、或いは特審局が社会的に信頼を有する人人に対しまして根拠なくしてその人々の活動を、社会的な活動を或る意味において妨げるとか、信用を失墜するとかいうような行動をとられる。これは自分のほうの仕事に熱心な余りにそういうことをなさるという弊風が今までの日本の官吏にはありますから、これは十分注意を願いたい。そういう人々の社会的活動を妨げるような或いはその人々の信用を落すような、或いはその人々の経済上の不利を招くようなことが起るのはなぜかといえば、やはり基本的人権の尊重という意識が特審局においてはつきりされておるかどうかということと関連があると思うのであります。御承知のようにさつきの予備隊の場合でも、昔のことでありますけれども、谷干城の書いたものの中に、軍隊の場合ですら強い敵というものは絶対に恐れない、併し弱い人民というもののことは飽くまで恐れるということを書いておられたと思うのです。そういう精神をどうか生かして頂きたいと思うのであります。殊に学校の場合には明治時代の古い考え方でさえも、小学校なり何なりの場合には、学校に軍人なり軍隊なりが出入するということを絶対にしないという考え方があつた。それが戰車中に大変紊れてしまつて、軍人が学校にどんどん入つて来るというような弊風を生じておつたのであります。明治時代でさえ学校に武器を持つた人がみだりに入らないというような認識を持つておられたのでありますから、いわんや今日民主主義の時代における認識は一層高くなければならない。どうかその点について検察官を監督する立場にある国務大臣としての法務総裁に、今後も御努力願いたいと考えておる次第であります。
#12
○委員長(北村一男君) ほかに御質疑のあるかたは……。
#13
○鬼丸義齊君 今委員会として予定しておるものは幾つですか。
#14
○委員長(北村一男君) 給与法案二つだけです。
#15
○鬼丸義齊君 それはどういう予定ですか。
#16
○委員長(北村一男君) 相成るべくは午前中に採決を……速記の関係がございますので。
#17
○鬼丸義齊君 大蔵省は呼んでいないのですか。
#18
○委員長(北村一男君) 呼んでおりません……。
 ほかに御質疑のある方はございませんか。
#19
○鬼丸義齊君 裁判官と検察官の俸給等に関する改正法律案について一点法務総裁にお伺いいたしたいと思います。裁判官の待遇に関しまして非常な経済上の変動もありまする折から、裁判官として非常な窮境に立つておりましたことが、幸いにも国会の方で先に若干不十分ながらもこれに対する給与の改善をいたして参つたのであります。で、当時法案を審議いたしまするときにも申上げておつたのでありまするが、すべてこの超過勤務その他一切を支給しなくて、裁判官は定められた額の範囲内において支給することになつておまりす。これは一般官吏とは異なり、特殊な扱いをすることにして同時に憲法改正によりまして、我が国の裁判官の地位を非常に高いところに置くべきであるという憲法の趣旨に従つて今日まで参つたのであります。このたび一般官吏の給与ベースの改善に従いまして、裁判官の俸給改正が行われますることは当然なことであります。法規上当然のことであると思つております。然るに新聞等の伝えるところによりますれば、大蔵省その他の見解が我々の従来考えておりましたこととの間に格段なる開きのあることを新聞は報道いたしております。ところがこのことは当時審議いたしまするときから、よくこの裁判所の実情、検察庁の実情に精通されたるものの意見であるといたしましたならば、我々は傾聴に値するのでありますけれども、全然内容を知らざる大蔵省がただ予算措置のみにとらわれまして、まさに当時崩壊せんとするような危機に迫つておりました裁判官の待遇改善に対しまして、非常なる反対の意見を言われておりました。当時すでにこのことについては十分考慮しておられることになつておりましたにかかわらず、或いはまだ同様な考えを持つておるようなことに―聞き及んでおりまして、甚だ私どもは憂慮いたしております。併し本日提案されましたる法案によりまして、幸いに法務庁或いは関係諸氏の御盡力によりまして、大体予定のごとく進行されるように聞いておりますが、今後におきましては、いわゆるこの裁判官の地位向上に対しまする点については深く考慮を払われまして、そうしてこの間再びそうした危惧を差挟むような行動にあることのないよう、特に法務総裁その他の関係のかたより大蔵省のほうに十分なる御警告を願つて置きたいことをこの際私お願いいたしたいと思います。総裁の御意見を伺いたい思います。
#20
○国務大臣(大橋武夫君) 裁判官及び検察官の俸給というものに対する考え方の根本につきまして、只今鬼丸議員から適切な御意見を伺いましたのであります。この裁判官、検察官報酬に関する法案が、予算案が早く提案せられましたにもかかわらず非常に遅れ、ようやく昨日衆議院に提出するというようになりましたのは、私ども政府といたしましても非常にこの問題の坂扱いについていろいろな事項について考慮をいたし、最後的な成案を決定することができなかつたためなのであります。で今回の補正予算はこの立案に当りまして、御承知のようないろいろな事情がございまするために、政府部内においても各方面と連絡いたしまして、十分なる連絡をとつてやるということがなかなか困難でありまして、特にこれは他の点は別といたしまして、給与ベースの問題につきましてそう十分なる打合せをなすということが困難でありまして、一応成る程度の金額を見積つて、そうしてこれを基礎としてできるだけ公務員について公平にベースを上げて行きたいというような考えで扱うようになつたわけでありまして、その結果としまして今回の公務員の給与べースの引上げは、必ずしもすべての公務員について同一の率を以て上げるというわけには参つておりません。従来比較的給与のよかつた公務員諸君は割合に上る率が少ない。従来給与の比較的悪かつた諸君が上る率が比較的多いというふうな結果と想成つているのであります。然るに裁判官につきましては、その給与に関する法律が制定せられましたる当時、特に当委員会におきまする適切なる御修正によりまして、今日の第十條というものができております。それによりますというと、他の公務員と同一の率及び時期を以て上げて行くべきものであるという意味の趣旨を、その例に準じて定めるべきである、こういうその例に準じてという言葉を以て表現せられてあるのであります。この立法の趣旨につきましては、すでに制定当時において当委員会において十分に論議せられ、政府部内におきましてもおのずから一定の解釈をいたしておるのでありまするが、勿論これはこの十條の精神を一応仮に定めて提案せられました現在の補正予算、この金額の範囲内においてでき得る限り生かして行くには如何なる案を考えるべきであるかという技術的な問題となつておつたわけであります。この十條の解釈並びに精神については、もとより当初より大蔵当局を含む政府部内で最高裁判所を通じましてこれは一致しておるのでありまして、問題はこの解釈と、この精神を現実に法案の上に活かすにはどういうふうな措置をとればいいかという技術的な問題が問題となつておつたのであります。この技術的な面について成案の過程におきまして、大蔵当局及び裁判所当局の間におきまして多少見解の差違があつたこともありまするが、併しこれは当事者双方とも第十條の精神を如何にすれば生かし、裁判官の報酬をして真に法律の要求したものに適合せしむることができるかという一致した指導精神の下に行われましたのでありまして、この間にはもとより根本の精神が一致いたしておりまする以上、技術的な点において多少の見解が相違いたしましても、非常な險悪な対立とか、そういうふうな事態にはもとよりならなかつたわけでありまして、極めて円滑に交渉が進められておつたわけであります。従いましてさような関係上、提案の時期が非常に遅れた次第でありまするが、この案が決定せられまして、政府及び裁判所共に満足をいたしておるというふうに私としては見ておる次第であります。予算の経理、特に来年度の予算の経理につきましても、双方十分に予算の計数を検討いたし、そうして経理し得るという見通しの下に提案せられたものでございまするから、必ず現在政府が予定いたしておりまする来年度予算の範囲で経理できるものと確信をいたしておるのであります。さような次第でございまするので、私といたしましては今後におきましても、裁判官の報酬に関する法律の第十條の精神、これは最高裁判所においては勿論、大蔵当局としても十分にその意義を理解せられ、又これを実施いたして行くのに誠意を以て扱うべきであるという心持を持つていられるということを私は確認いたしております。今後いろいろ議会におきましても、第十條の解釈並びに運用につきまして、大蔵当局も必ず今後もそれによつて協力されるということを確信いたしておることをお答えいたしておきます。
#21
○鬼丸義齊君 私はこの際裁判所の方に一応お尋ねいたしたいと思います。裁判所見えていますか。
#22
○委員長(北村一男君) 見えています。
#23
○鬼丸義齊君 裁判官は特殊な法律上の地位にありまして、又身分は嚴格に保障されております。それ故に一般官吏の扱いとはおのずから違つて参りますることは当然でありまするが、私は只今の制度における俸給に関しまする別表の定め方については、今後深く考慮を払う必要があるのじやないかと思います。ということは、例えば現在の裁判官であつて一号、二号、三号、それぞれ号数に従つて給与を受けております。裁判官の地位にふさわしい待遇を現在受けておりまするが、ところが号数が極めて限られておりまするがために、或いは裁判官であつて如何に精励、又優秀なる裁判官であつても、待遇上においてはあたかも壁にぶつかつておるような感がしてならないのであります。極めてこれは率直に申上げますれば、優良なる、極めて優秀なる人であつても、どの人であつても、とにかく現在の待遇より下げるわけにはこれは憲法上できない、結局玉石混淆というふうなことになつて、全く進取の気分を失つて来はせぬかということを憂えます。従つて勉強もし、優秀なる成績の人はどしどしこれは抜擢するの進路を開いて置かなければ、幾ら働いてももう待遇上には如何ともすることができないのであるというふうなことは、これはもう非常な実は人事の扱い上におきましても、考慮を払わなければならんことじやなかろうかと思います。例えば現在の制度における判事中、二号なら二号というものを一律に……一律と申しましようか、私は大部分の人が受けておるとするならば、もうこれ以上上らない、壁にぶつかつてしまうというようなことでありますようなことになれば、自然励みがない。やはり前途に洋々たる希望と進路というものがあることが、非常に人として励みを作ることになりはしないかと思います。その点に対して、地位を保障されておりまするだけ、私は今後の為政者としては考えておかなければならんことではないかと思います。もとより現在の待遇より下げることのできないことは言うまでもありません。併しそれが行詰つてしまつて、もう行き場のないことになつてしまつておりますると、自然ここに何とか自分の進退を決しなければならんということになり得る。練達堪能なる裁判官は長き間勤務されて、そうして極めて適切なる裁判を行つてもらわなければならん。失うたらば再び得難い地位にあられるものと考えまするとき、どうしても現在の制度に対しましては、一歩一歩考えを運ばれて、前途に一つ進路を与えなければ、如何にも行詰つてしまつて壁にぶつかつてしまつておる感がしておると思います。その点に対しまする裁判所のお考えはどうでございましよう。
#24
○説明員(五鬼上堅磐君) 只今鬼丸委員の御質問誠に御尤もな御質問であると思います。ただ裁判官の給与の現在の号俸の程度でいいものであるか、又これを少し多くするか或いはどうするかということについては、最高裁判所のほうでもいろいろ考慮はいたしておるのでありまするが、御承知の通り、裁判官は十年というような任期がきまつておりまするような関係からして余りその号俸の額を多くするということもどうかということも考えられますし、現行の制度でこれは必ずしもこのまま将来押して行けるものであるとも考えておりませんので、只今鬼丸委員の、おつしやつたような点等も十分考慮いたして、或いは判事補と判事の俸給の制度の作り方を別にするとか、或いは簡易裁判所判事等について今少し考慮するとか、いろいろの点を目下考究中でありますが、何分今回はただ一般公務員のベース引上げに伴うベースのスライドでありますからして、現状のままに十條の規定を適用した法案に対して裁判所としては満足しておる、こういう状態であります。
#25
○鬼丸義齊君 私は今回提案されましたる法案に対しましての御考慮をお願いするのではない。私のお尋ねいたしたい趣旨は、例えば例を挙げて申しますれば、一号なら一号、或いは二号なら三号ということで以てきちつと決めてしまいまするというと、もうこの上どんなに優遇したくつても、もう動きがとれない、二号は一号に行くのほかはない、こういう窮屈な制度はやがて行詰りを生じて来るような感がします。故に一号の中で或いは数階級を設け、二号の中で数階級を設け、順次やはり昇給の進路を私は設けておくことが非常な激励になるように考えます。激励はともかくとして、行詰りということほど私は人をして去勢することはないと思う。勿論裁判官の中には、誰が見ましてもこれはどうしてももう少し何とか優遇してやらなければならんというふうなことに考えられることがきつとあろうと思います。勿論、玉石と先ほど申しましたが、或いは玉ばかりかもしれませんが、おのずから私はその間に優劣があるはずだと思います。その点私は今後考慮されるお考えなきかということを今伺つたわけであります。
#26
○説明員(五鬼上堅磐君) 誠に御尤もな御意見だと存じます。ただ裁判官につきましては、理想といたしましては昇給等の如何に関せずすべてが練達堪能の士であつてもらいたいと思うのでありますが、併しながら制度といたしましては、この制度がいいかどうかということからもう一歩遡りまして、裁判官の任用の制度というようなものと睨み合せて、今後考究いたして行きたいと思います。御意見に対しては十分考究いたすつもりであります。
#27
○羽仁五郎君 ちよつと質問したいのですが、今までの俸給表によりますと、最高と最低との開きが大体六倍程度であつたのですが、今回の改正によりますと七倍に近いように見受けるのですが、これは今後ずつとこういうふうな今までよりも開きを多くなさつて行くということなのか、それともさつき法務総裁の御説明があつたように、補正予算の関係上、こういうふうな臨時の措置をおとりになつたのか、一般に上に厚く下に薄くというような考えが若しあるとすれば、甚だ好ましくないと考えるのですが、その点についてはどうでしようか。
#28
○国務大臣(大橋武夫君) これはひとり裁判官、検察官のみならず、公務員全体の給与制度の問題といたしまして取上げられた問題であるのでありまするが、政府といたしましては、今回の給与の改善に際しましては、従来の給与額が概して下が比較的楽であつた、上の者が比較的生活上困難の程度が多いというような結果に相成つておるという事実を認めまして、この点をこの機会に多少なりとも改善すべきものであるという考えで立案をいたした次第であります。
#29
○羽仁五郎君 どうも法務総裁のお言葉とも思えない。今までの待遇か下に比較的楽であつたということは、恐らく今日通用しないのじやないかと思う。勿論私は上を薄くしろという意味じやないのですけれども、併し、下のかたがたの、殊にここに見える判事補、或いは簡易裁判所判事の最も下のかたがたと、それから最高との開きが少し多くなり過ぎておるのじやないか。やはり従来までの程度のほうが少くとも現在の日本の状態から考えてみても妥当であつたのじやないか。私としては現在ここに提出されておる法律案は、そういう意味では臨時の考え方が現われておるのだろうと思います。どうか今後においてはやはり下級のかたがたが非常に生活に困窮されて、その貴重な任務を果されないというようなことがないように、現在の一般の客観的な生活困難の中で余りひどい開きがあるということは、或いはまあさつき最高裁判所のほうから御説明があつたように、高潔な判事諸君の場合、そういうことを口にされないということも、理想ではありますけれども、実際問題として恐らく困難だろうと思うので、今後においてはどうかお考えを十分願いたいと思います。
#30
○鬼丸義齊君 私も只今羽仁委員の申されました。先ほど事務総長の御説明中裁判官を神様のごとく言つておられるその従来の考え方は、もはや変えなければならんと思います。裁判官といえども立派な人間でありますから、やはり霞を吸つて生活するわけにはいかない。待遇についてはむしろ言わないまでに、こちらのほうで十分考えなければならん。裁判官がそういうことを口にして、若しも給与に関することが表面に現われるようなことになりますことは、やがて裁判官の地位を低くする、信用を低くすることになる。そういうことがないように、やはり裁判官は人間であるということに対する考慮に切換えて貰いたいと思います。
#31
○説明員(五鬼上堅磐君) 只今の御意見、御尤もな御意見ですが、私が先ほど申しましたのは、理想としては裁判官はかくありたいものだということを申上げたのでありまして、鬼丸委員の言われるように、さような給与等の問題について裁判官がいろいろ文句を言わないような十全なる待遇はもとより望ましいところでありまするが、鬼丸委員のおつしやられるやはり裁判官も人間であるということに十分考慮を払つておるつもりであります。決して神様のように考えておるということはございません。
#32
○委員長(北村一男君) ほかに御質疑はございませんか。
#33
○宮城タマヨ君 今の問題ではございませんが、法総務裁がお出まし下すつておりますので、ちよつと少年法による少年の年齢上の問題について一点だけ御意見が伺いたいと思つております。
#34
○委員長(北村一男君) それは速記の制約がございますので、法案審議のあとで、御質疑がほかになければ討論採決に入れまして、そのあとで総裁からお答えを願いたいと思います。他に御発言ございませんか……。御発言がなければ質疑は終局したものと認めまして、二案について討論に入ります。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○委員長(北村一男君) 御異議がないと認めまして、これより討論に入りますが、御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。
#36
○羽仁五郎君 私はさつき質疑の際に述べましたように、今回の改正案というものは、終局的な見解の上に立たれたものでない、臨時の考え方である。そういう意味で、最高と最低との開きが非常に多いことには、今後において是正される意味において賛成をしたいと思います。どうか従来くらいの比率がいろいろな意味から見て現実的でもあり、妥当でもあると考えるので、只今提出されている法律案については、今申上げたように賛成をいたしますが、今後においては一つ余り開きを大きくしないで、若い下級の人々の気持を阻害されないようにお願いしたいと思います。
#37
○委員長(北村一男君) ほかに御発言がございませんか。御発言がなければ、討論は終局いたしたものと認めまして、採決に入ります。裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上二件を便宜一括して議題に供します。両案に御賛成の方の御挙手をお願いいたします。
   〔総員挙手〕
#38
○委員長(北村一男君) 全員一致と認めます。よつて両案は可決いたされました。
 委員長が議院に提出いたします報告壽に御署名をお願いいたします。
  多数意見者署名
    齋  武雄  鬼丸 義齊
    羽仁 五郎  須藤 五郎
    左藤 義詮  高橋 道男
    長谷山行毅  鈴木 安孝
    岡部  常
#39
○委員長(北村一男君) なお口頭報告の案文につきましては、本委員会における審議の経過とか、或いは討論の趣旨、それから表決の結果を報告することとして御承認願いたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○委員長(北村一男君) 御異議ないと認めます。
  ―――――――――――――
#41
○宮城タマヨ君 先だつてから二日に互りまして、少年法によります少年の年齢引上げのことを最高裁判所のかたなり、法務府のかたがたなりからいろいろお答え願つたのでございますけれども、ただ一つ法務総裁にお伺いしたいと思つておりますことは、十八才から二十才までの準少年の非常に悪質でございますこと、又この数からいいましても、大変な数でございます。予想されるところによりますと、一カ年間に十万件も取扱うだろうということでございますが、それにつきまして今差当つての問題なのでございますが、とてもこれはこの家庭裁判所で賄いきれないのじやないか。又入れ物もとかくの説明を伺いましたけれども、私どもとしたら本当に納得ができないのでございますけれども、併しどうしてももう日が来年の一月一日と切迫しておりますので、この際としましたら、この間ちよつと政府の答弁にもあつたかとも思いますが新聞で申されておりますところによりますと、その間の準少年に対しましては検察庁が先議の権限を持ちまして起訴されますものを起訴し、より分けまして、そのあとの者を家庭裁判所の方に取扱いをされるような処置でもというようなことが窺われたのでございますが、最高裁判所の方のこの間の御答弁によりますと、少年法の第四十二條がどうしてもそれはできないということだつたのでございます。そうすると、どうしてもこれはできないので、皆家庭裁判所のほうにその十万件が参りますということになりますと、これは第一番に裁判官の数、今の手不足ということがございますが、この調査官の数も、それから調査官の質も、と申しますこと、質というのは悪質という意味でなくして、非常にこの不良などの犯罪程度の高い子供、少年を取扱いますることは、殊に婦人の調査官のかたはとてもできないと思うのでございます。そういうことになりますと、文例によつて少年を同行いたしますときに手錠をはめなければ、これは途中で逃げるにきまつておりますから、殊に婦人の調査官なんかは到底これは同行ができないと思つておるのでございますが、こういうことになりますと、これは同行いたしますときの問題なんかもございまして、同行の自動車なんかの用意も一体できているものでございましようか、どうでございましようかと考えておりますような次第でございますが、保護少年に対して絶対にこの手錠をはめて頂くということは私どもできないと考えております。でございますから、その手が打つてございますかどうでございますか。まあなることならば、この検察庁におきまして当分の間、当分の措置といたしまして、やはり検察庁にこの事件を今まで通りに持つて行つて、そうして起訴されないものだけを家庭裁判所の方に廻しまして、せめて保護少年としまして保護、観察にでも付されまするならば、今まで検察庁で野放しになつておりましたものが救済されるのではないかというように思つておりますが、この点は私大変大事な点だと思いますので、法務総裁の御答弁を願いたいと思います。
#42
○国務大臣(大橋武夫君) 少年法の年齢引上の問題でございまするが、この実施の時期が現在の法律によりますると、明年一月一日になつておるのであります。いろいろこれに関する準備その他の実情を考えて、或る程度延期してはどうかというような意見も一部において伝えられておるのであります。併し政府といたしましては、折角国会において十分な御検討を経て制定されました現行法を、立法の完全なる姿において一日も早く実施することは政府としての責任である。又これがために考えられるいろいろな困難という問題、特に今お述べになりましたごとき事件が非常に多くなつて、家庭裁判所で扱いきれないのではないか、こうした問題も十分想像はできるのでありまするが、併しやはりいろいろな準備、あの点もまだである、この点もまだであるというふうな事情で、延ばしておりましては、結局いつまで経つてもこれを施行するということができなくなりはしないか。この辺で現行法に従つて一応これを実施して行く。そうして差当りいろいろな困難な点がありますならば、その点だけについて例外的な、一時的な措置を講じて、曲りなりにも実施し、実施の過程において順次当初予想されましたような完全なる姿に成長さして行くということが、却つてこの少年法の適用の時期を早からしめ、その完全なる姿によつて実施されることの時期を早からしめる、こういうことになると考えておるのであります。そとで政府といたしましては一応これは来年の一月一日から現行法の規定通り適用いたして参りたい。併し只今宮城委員のお述べになりました四十二條の関係上の問題でありまするが、これをこの法律通り施行いたしますれば、事実現在の家庭裁判所の能力等から考えまして無理であります。でありまするから、これをできるだけ早く施行できるように進めて行くということが必要であります。その間におきましては一時便宜的な方法を講じまして、今お述べになりましたごとく、検察庁において全部を家庭裁判所に送致することなく、必要なものは直ちに通常裁判所に持つて行き、そうして保護少年を裁判所において撰り分けまして、それぞれ措置して行くということが必要であると考えておるのであります。当局といたしましては、この点につきまして成るべく早い機会において法的措置を講じて参りたいという趣旨で只今準備を進めておる次第であります。
#43
○鬼丸義齊君 私は前回当委員会において法務総裁に朝鮮問題に対しますることについて質疑とお願いとを申上げて置いたのでありまするが、総裁に申しましたように、吉田総理に対して進言し、且つ閣議に上程されて、如何にお運びになりましたか。この際拝聴いたしたい。
#44
○国務大臣(大橋武夫君) 実は今日閣議がございましたが、総理が出席がなかつたので、未だ御返事申上げるような運びになつておりませんことは誠に申訳ないと思います。できるだけ早い機会に相談をいたして置きたいと思います。
#45
○鬼丸義齊君 私はお伺いの趣旨は、むしろ総理みずからが当委員会に御出席願つてお伺いいたしたかつたのでありますが、議会末期であり、御多用であることを察しまして、特に総裁を通してこの問題についてお伺いいたしたのであります。そうした実は私は事務的に扱うような問題ではないと自信をいたしております。至急一つ総裁よりその処置をしてお答え願いたいと思います。
#46
○宮城タマヨ君 先ほどの法務総裁の御答弁に対して引続いてちよつとお伺いしたいのでございますが、お述べになりましたことは了承いたしましたが、この少年を先ず入れます器といたしまして、全国的に各県に一つずつ少年保護鑑別所がございますが、この鑑別所で賄おうという御計画でございましようか、如何でございましようか。
#47
○政府委員(草鹿淺之介君) 現在の案を少年法の理想通りやりますと、今の鑑別所では実際のところとても賄い切れませんので、これは私は順次この鑑別所の施設なんかも拡充して行かなければならないと思つておりますが、来年一月一日に迫つております現在においては、この鑑別所の現在の施設で賄えるようにいろいろな方面に応急的な措置を講じて行きたいと、こう思つていろいろなことを計画しております。
#48
○宮城タマヨ君 結局少年刑務所や、それから未決監をお使いになるわけでございますね。
#49
○政府委員(草鹿淺之介君) 少年刑務所なんかも一部そちらの方へ廻すとか、そういつた方法を講せざるを得ないだろうと思います。
#50
○宮城タマヨ君 刑政長官に、それではお伺いいたします。先ほど法務総裁に伺いました手錠の問題をどうお考えでございましようか。
#51
○政府委員(草鹿淺之介君) 恐らくこれは当然考えていることだろうと思いますが、少年保護の精神からもいたしましてそういう点は考えているだろうと思います。
#52
○宮城タマヨ君 是非これは保護少年として保護をしようという法律の精神もごいますけれども、少年法によるということになりますというと、この手錠をはめるということが、大変社会に悪い影響を及ぼすと申しましようか、その場合こんなようにしなければいいじやないかという結果になりますことを慣れますので、この手錠をはめないようにするには、どうしてもこれは同行するのは困難でございますから、一つ県に一カ所ぐらい子供を運ぶための自動車でも早速作つて頂くような措置をとつて頂きたいと思つてお願い申上げて置きます。
#53
○政府委員(草鹿淺之介君) 十分承わつて置きます。
#54
○委員長(北村一男君) ほかに法務総裁に御質疑のおありの方はございませんか。それでは速記を中止して下さい。
   午後零時三十六分速記中止
   ―――――・―――――
   午後一時二十五分速記開始
#55
○委員長(北村一男君) 速記を始めて……。それではこれで休憩いたします。
   午後一時二十六分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時八分開会
#56
○委員長(北村一男君) これより委員会を再開いたします。ちよつと速記をとめて……。
   午後三時九分速記中止
   ―――――・―――――
   午後三時二十三分速記開始
#57
○委員長(北村一男君) 速記を始めて下さい。本日はこれを以て散会いたします。
   午後三時二十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     北村 一男君
   理事
           宮城タマヨ君
           鬼丸 義齊君
   委員
           左藤 義詮君
           鈴木 安孝君
           長谷山行毅君
           齋  武雄君
           岡部  常君
           高橋 道男君
           羽仁 五郎君
           須藤 五郎君
  国務大臣
   国 務 大 臣 大橋 武夫君
  政府委員
   法務政務次官  高木 松吉君
   刑 政 長 官 草鹿淺之介君
   法務府特別審査
   局長      吉河 光貞君
  説明員
   最高裁判所長官
   代理者
   (事務総長)  五鬼上堅磐君
ソース: 国立国会図書館
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