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2000/02/23 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 国際問題に関する調査会 第3号
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2000/02/23 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 国際問題に関する調査会 第3号

#1
第147回国会 国際問題に関する調査会 第3号
平成十二年二月二十三日(水曜日)
   午後二時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十一日
    辞任         補欠選任
     小川 勝也君     広中和歌子君
     福山 哲郎君     柳田  稔君
     藤井 俊男君     羽田雄一郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         井上  裕君
    理 事
                河本 英典君
                鈴木 正孝君
                藁科 滿治君
                高野 博師君
                井上 美代君
                月原 茂皓君
    委 員
                亀井 郁夫君
                佐々木知子君
                塩崎 恭久君
                武見 敬三君
                野沢 太三君
                馳   浩君
                羽田雄一郎君
                平田 健二君
                広中和歌子君
                柳田  稔君
                魚住裕一郎君
                緒方 靖夫君
                高橋 令則君
                島袋 宗康君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        鴫谷  潤君
   参考人
       防衛大学校教授  田所 昌幸君
       前国際連合人材
       管理局部長    伊勢 桃代君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (「二十一世紀における世界と日本」のうち、
 国連の今日的役割について)

    ─────────────
#2
○会長(井上裕君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十一日、小川勝也君、福山哲郎君及び藤井俊男君が委員を辞任され、その補欠として広中和歌子君、柳田稔君及び羽田雄一郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(井上裕君) 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日も、本調査会のテーマである「二十一世紀における世界と日本」のうち、国連の今日的役割について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、防衛大学校教授田所昌幸参考人及び前国際連合人材管理局部長伊勢桃代参考人に御出席をいただいております。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙の中、本調査会に御出席をいただきまして、大変ありがとうございます。
 本調査会では、国連の今日的役割につきまして重点的かつ多角的な調査を進めております。本日は、国連改革と財政及び人事の問題につきまして両参考人から忌憚のない御意見を承りまして、今後の調査の参考にいたしたいと思います。何とぞよろしくお願いをいたします。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、国連の今日的役割のうち国連財政及び国連機関の職員問題について、田所参考人、伊勢参考人の順でお一人三十分以内で御意見をお述べいただいた後、午後五時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、意見、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、田所参考人から御意見をお述べいただきます。田所参考人。
#4
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございます。御紹介をいただきました防衛大学校の田所でございます。
 本日は、二十一世紀における日本外交のあり方というような、参議院にふさわしい大変長期的なテーマかと思います。多少なりともお役に立てるように努力したいというふうに思っております。
 まず、国連の財政については、基本的な問題と申しますか、基本的な構造の問題について若干お話をしたいと思います。
 実は、国連の財政は結構複雑にできておりまして、国連の財政についてお話しする前に基本的なところを確認したいということでございますが、まず第一に、国連は超国家機関ではございませんので、国の財政と同じような感じで国連財政を理解しようとすると、いささか誤った結論が出るのではないかというのが最初に申し上げたいところでございます。
 国際連合は、本委員会では随分外交問題に造詣の深い先生方が多かろうと思いますので不必要かとも思いますが、ぜひともこの点は強調しておきたいのですが、あくまでこれは加盟国の主権を前提にしている国際機関でございまして、ということは、予算に関してもあくまで最終的に責任を持っているのは、国連の事務局ではなくて各加盟国であるということになります。ということは、加盟国に権限がある以上、誤った財政運営がされるかどうかも加盟国に責任があるということになります。
 第二番目に申し上げたいのは、国連の予算は、その絶対額はそれほど大きくないということでございまして、国連の通常予算は大体現在で十三億ドル程度というふうに言われております。
 後から申しますように、国連の予算制度は結構複雑でございまして、通常予算以外にも、PKOの予算は別枠でございますし、それ以外にエキストラ・バジェタリー・リソーシズ、私は予算外資金というふうに呼んでおりますが、そういうカテゴリーのものもございまして、全体が幾らなのかということは必ずしも判然としない部分がございますが、通常予算だけを取り上げますと大体年間十三億ドル程度。これは、現在の世界のGNPが大体三十兆ドル強であろうと思いますので、GNPの〇・〇一%にも満たないぐらいの大変少ない額であると言うことができます。
 これにPKOの予算とかあるいは予算外資金、そして、これは国連の予算というふうに言っていいのかどうか疑問でございますけれども、もろもろの専門機関でありますとか、その種の国連機関と称されるものの予算を全部足しましても、実際これを足してどれぐらいになるかということを計算すること自身も大変なんですけれども、百八十億ドル程度ではないかというのが国連事務局が出している数字でございます。百八十億ドルといいますと、日本のGNPでも、為替レートに随分依存する数字でございますが、大体五兆ドル程度ですから、決して絶対額として大騒ぎをするほどの金額ではないということは強調するに値することかと思います。
 三番目に、既にお話ししましたように、国連の予算制度は随分複雑な構造をしております。その理由はいろいろなことがありますが、一つの大きな理由は、新しい時代のニーズに応じて次々に制度ができましたので、予算制度もそれに応じて進化していかざるを得なかったという理由がございます。
 例えば通常予算というのは、国連本体の運営にかかわる会議費用でございますとか、あるいは職員の給与でありますとか、あるいは国連ビルの維持管理でありますとか、そういった国際機関としての極めて基本的な核になる部分を賄うための予算でございますが、PKO予算というのは、これはそもそもPKOそのものが国連発足当時には予定されていなかった活動でございますので、PKOの予算をどうするかということは憲章に一切規定がございません。通常予算に関しては憲章にちゃんと書いてありまして、これは総会の権限であるということになってございます。
 そうしますと、PKO予算はどうするかということをめぐっては、PKO発足当初からいろいろな議論の的になったわけでございます。六〇年代の前半に大きなPKOが展開されたときに、具体的に申しますと、UNEFT、国連緊急軍というのがエジプトとイスラエルの間の国境に展開されましたが、その予算及びコンゴに派遣された国連軍の予算をめぐっては大変難しい国際問題が生じまして、フランス及びソ連がその分担金を支払わないという行動に出たことがございます。そのようなわけで、PKO予算についてはそもそも制度的には後からつけ足したものであるという側面が大変強うございます。
 PKOの予算に関してもいろいろな分担の方式がございます。一部の小規模なPKOは通常予算から支弁されておりますし、あるいは特別のPKO予算というものを一つ一つのミッションごとにつくってPKO予算を支弁しているケースもございます。多分これが一番多いであろうと思われます。そのほか、PKOの受益国に支払ってもらうというようなこともしたことがありますし、あるいは最近の傾向としては、PKOに実際出かけていく国に、こういう俗な言葉を使うといかがかと思いますが、丸投げといいますか、安全保障理事会はPKOの正統化機能を果たすけれども、予算に関しては実際にミッションに行く国にやってもらうというようなこともされますし、あるいは加盟国の自発的拠出で賄う、例えば利害関係の強い国がそのPKOに関しては予算を分担するというような方式もとられております。
 いずれにせよ、PKO予算は別枠であるということがここで申し上げたいことでございます。
 エキストラ・バジェタリー・リソーシズ、予算外資金と呼ばれているものは、これは主として、国連の活動の中で経済開発とか社会問題にかかわる活動、そういう活動を支えるための資金でございまして、これははっきり言えば、北の豊かな国々の自発的拠出によって開発問題や社会問題に関する予算を支弁している、そういうプログラムでございます。その大宗を占めているのはテクニカルアシスタンス、技術援助でございまして、実はこの予算の実態は非常に難しいんですけれども、恐らく通常予算よりも予算額は大きいだろうというふうに思われます。
 最後に、専門機関あるいは総会補助機関といったさまざまな国連に関連する機関がございます。UNDPとかUNEPとかといったそういう機関は総会の決議に基づいてできている総会補助機関でございますし、あるいはその他の専門機関、WTOはちょっとまた別なのかもしれませんが、例えばILOであるとかFAOとか、そのような国連ファミリーに属する国際機関が多数ございます。これはすべて別の管理理事会がございまして、予算は事実上別建てということになっておりまして、国連ファミリー全体の、国連システム全体の予算制度というのは大変統一性のない複雑な構造をしているということがここで申し上げたいことでございます。
 国連予算に関しては、慢性的な財政危機にあるということは委員の先生方はよく御承知のところであります。理由は何かというと、最大の理由は、アメリカが分担金をちゃんと支払っていないということに尽きるだろうというふうに思われます。分担金を支払っていない国はもちろんアメリカだけではありませんが、アメリカは通常予算の二五%を分担することになっている最大の分担金拠出国でございますので、アメリカがその予算を支払わないということになると、それによって国連が受ける影響は大変甚大なものがございます。
 次に、九〇年代の前半にはPKOが急増したためにこれに伴う予算が急増した、それに対して各国の支払いが追いつかなかったということも国連の財政危機の大きな背景になっております。
 PKOの予算は、一時は通常予算を上回るような額にまで達しておりまして、これが加盟国から順調に支払われませんと、結局このしわは、PKOを派遣している、要員を派遣している国に対して国連から支払われる補償金が支払われないという形をとって予算不足はあらわれます。ということは、人員を派遣するという形で、あるいは装備を提供するという形でPKOに貢献しても、一切の財政的補てんが受けられないという事態が生ずるわけでございまして、そうなりますと、貧しい国でPKOに要員を派遣している国にとっては、PKOに人が送れないというような事態も生じ得るわけであります。
 PKO予算はこのように急増しまして、九三年、九四年あたりはそもそも予算書類をつくるのが間に合わないというほどPKOが急増いたしましてかなり混乱を来したんですが、その後、国連本部の事務局でもいろんな改革がされたこともありますし、何よりもPKOそのものが急速に活動を縮小しましたので、この問題は、現在も未払いの分担金はあるにせよ、峠は越したかなという感じがいたしております。
 最後に、国連の分担金が支払われていないということが財政難の原因であるというふうに私は申しましたが、このようなことの背景になっているのは、特にアメリカで国連事務局に対する大変根強い批判がございます。国連の事務局の管理運営体制が不透明であるとか、そこには大変な非効率があるとか、あるいは官僚制が非常にぐあいの悪いことになっているといった、国連の事務局に対する行革を求めるような声が大変根強いということがアメリカのこのような態度の背景になっているということも申し上げることができるかと思います。
 さて、現在の課題ということを次にお話ししたいと思います。
 国連の通常予算は二年サイクルでつくられますので、二年に一度予算案が提出されることになっております。本年度は予算の一年目になりまして、二〇〇〇年、二〇〇一年をカバーする予算が昨年の末に国連総会で可決されました。その予算の規模は大体年にして十三億ドル程度、二十六億ドル弱というところでございますが、この額は絶対額としてもここ七、八年ほとんどふえていない、むしろ漸減傾向にあると言ってよかろうかと思います。これはアメリカが非常に厳しい姿勢を国連の予算に対してとっていることが関係しておりまして、国連の事務局は極めて厳しい予算運営をしているということは事実かと思います。
 したがって、通常予算は既に抑制されておりますし、また通常予算の決定は、国連憲章上は総会の三分の二以上の決議によって予算は成立するわけですが、八〇年代以降、さまざまな経緯を経まして、事実上国連の予算はコンセンサス方式で決定するという慣行が確立しております。ということは、事実上アメリカがイエスと言わない予算は通らない仕組みになっておりまして、したがって、恐らく通常予算が今後急激に膨張するというようなことは多分ないであろうというふうに思われます。
 PKOの予算も、PKOそのものに対するいろいろな疑問が出ております。PKO活動自身が九〇年代には急膨張しましたが、それに対するいろいろな問題点も出てまいりましたし、またそれに対する反省もなされております。したがって、PKO予算が今後、九〇年代の前半のように急膨張するということもいささか考えにくいところであります。
 もっとも、PKOの場合は国際情勢に非常に依存するわけでございますし、一つ大規模なPKO作戦をやりましたらばそれが大変大きな予算を食う活動でございます。最近PKO予算が比較的少なくて済んでいる最大の理由も、ユーゴに展開しておりましたUNPROFORが国連の手を経ましてNATO主導の作戦になったということが非常に大きく作用しております。再びあのような大きな作戦を国連が行うということになると、再びPKOの予算というのが急増することは考えられるわけでありますが、当面そのようなことは可能性としては比較的小さかろうというふうに思われます。
 何といいましても、今後の展望を占う上で最大の問題はアメリカの動向でございまして、アメリカが分担金を支払わないということは大変もちろん困ったことでございます。
 アメリカが分担金を支払っていない理由はもちろんいろいろあるんですが、その最大の理由は、アメリカの議会が非常に国連に対して厳しい姿勢をとっているということでございまして、むしろアメリカの行政府もこれにはちょっと手をやいているという節がございます。
 特に、米国議会は、予算を支払うのに際してさまざまな条件をつけておりまして、例えば現在二五%と決まっている予算を二〇%までにアメリカの分担率を削減するようにと、でないと支払わないとか、あるいはアメリカの委員をとある国連の委員会に選出しない限りは払わないんだとか、そういう非常に難しい要求を国連に対して突きつけております。行政府は恐らくこれは困ったことだというふうに思っているのだろうと思います。といいますのも、アメリカがこの程度の予算をけちることによって大きな利益を受けているとは到底思えない、むしろ国連の中では大変アメリカはこれによってリーダーシップを喪失しておりまして、非常に肩身の狭い思いをアメリカの国連外交官たちはしているところがございます。
 例えば先ほど申しました、とある委員会というのは、ACABQと言われる行財政問題諮問委員会という委員会がございます。これは国連の予算問題、行政問題に関する専門的な検討をするための諮問委員会でございまして、諮問委員会といいましても、ここには行財政問題の専門家が集まっておりまして、これが国連総会の第五委員会というところに勧告を与えて行財政問題が決まるという仕組みになっておりますので、これは大変強力な諮問委員会でございます。
 ここの委員に過去二回アメリカの委員が落選するという事態が起こっております。これは加盟国がアメリカの予算未払いに対してかなり頭にきているということを示すものでございまして、最初にアメリカの委員が落選してアメリカの委員がACABQからいないという状態になりましたときには、その選挙のときには何か満場で拍手が起こったという話を漏れ聞いておりまして、明らかに国連の分担金を支払わないということはアメリカの国連における活動を阻害しているわけでございます。
 議会がこのように内向きな態度になっていることにはさまざまな理由があるわけでございます。これは御質問があればまた詳しくお話しするといたしまして、ごく簡単に申し上げれば、やはり冷戦後アメリカが全般的に内向きの姿勢になっているということが一つの大きな背景になっています。
 また、一九七〇年代ぐらいから国連が極めてアメリカにとって扱いにくい存在になったという思いがアメリカの識者の中には強うございます。特に、日本人からは割と想像がしにくいんですが、七〇年代にはアラブのナショナリズムが大変強くなりまして、有名な反シオニズム決議、シオニズムというのは人種差別の一形態であるというような決議が通ったために、通常アメリカの外交問題、もしくは国際主義的な傾向の強いユダヤ人の人たちを非常に疎外するような結果になったとか、さまざまな理由が作用しておりまして、議会が大変国連に対して非協力的であるという状態が続いております。
 さらに、行政府が議会を必死になって説得したかというと、それもそうではございませんで、国連の問題は確かに行政府にとっても困った問題かもしれませんが、国連がアメリカの外交の中で非常に高い優先順位を持っていたというふうには少なくとも冷戦後は思えないわけでございまして、行政府が議会対策を十分にやったかというと、それも怪しいところがございます。そのような理由から、アメリカが国連に対して非協力的になっているというのは大変困った傾向でございます。
 三番目に申し上げたいことは、アメリカ政府は支払いの条件として国連の改革をするようにということを再三言っているわけでございます。中には好ましい改革も私の見るところあるように思います。
 国連の官僚制については、後の伊勢先生がより詳しくお話しになるかと思いますが、いろいろな点で国連の官僚制は管理が難しいところがございます。国の官僚制でも、やはり五十年間一つの制度でありますといろいろな難しいことが出るわけでして、官僚制固有の問題があると同時に、国際公務員、さまざまな加盟国が集まっている国際組織の官僚制に伴う固有の難しい問題がございまして、何らかの改革というのが望ましいという局面も全くないわけではございません。にもかかわらず、改革といいましても、基本的な改革は結局事務局の努力だけではできないことが大変多うございます。
 冒頭申しましたように、国連のあり方の最終的な責任者はあくまで加盟国の政府でありまして、加盟国の政府がしかるべき政府間協議体、総会であるとか安保理事会であるとか、そういうところで決議を通しませんことには、国連の基本的な構造、例えば国連憲章は一切変わることができないわけでございますから、事務局だけを責め立てたところでそれほど劇的な変化があるというふうには私には思えないわけであります。
 安保理の改革ということは本委員会でも既に話題になったことと思います。安保理改革というのは、これは容易に進むことではございません。日本の常任理事国入りをめぐる問題も恐らく本委員会で既に議論の対象になったことと思いますのでここでは繰り返しませんが、これについてもそう簡単に決まることではございません。加盟国がやはり予算問題も含めて改革というものに本気になり、またコンセンサスが形成されませんと、大がかりな改革というのは難しかろうというふうに思われます。
 第二番目に、国連の少なくとも通常予算の大宗を占めておりますのは、これは国連職員の人件費でございまして、これは後で伊勢参考人がお話しになる人事問題と密接にかかわっている問題でございます。
 国際公務員は、建前上はあくまで中立的な立場をとる独立的な地位を持っている存在ですけれども、事実上、国連事務局内のさまざまなポストには加盟国のさまざまな利害がかかわっていることがあります。例えばポストを削減するというようなことになりますと、そのポストの削減によって影響を受ける事務職員がいるような加盟国がそれに対して反対をする。事務局の効率化という総論には賛成するけれども、いざ具体的なところになるとなかなか難しいという問題があるということも注意が必要かというふうに思います。
 最後に、あと五分余りの時間をかけまして、日本との関連について私の考えるところをお話ししたいと思います。
 日本の通常予算の分担金は現在二〇%近くにまでなっておりまして、新たな分担比率が適用されるたしか二〇〇一年でしたでしょうか、からは二〇%を超えるということになります。アメリカが分担金の一部の分担を拒否しておりますので、実質的には日本が最大の分担金負担国になるというような局面も既にあったのではないかというふうに思います。日本はその割には国連では影が薄いではないか、日本の財政自身が大変な状態になっているのになぜ国際機関にこのように大盤振る舞いを続けるのかという声は納税者からも出てくる可能性がございますし、納税者の審査を受けないといけない国会議員の先生方の御関心もあるところかというふうに思います。
 現在の日本の分担比率が望ましいかどうかということについてはいろんな議論ができようかと思います。特定の国が大きな分担金を支払うというのは望ましくないという考え方ももちろんあろうかと思います。にもかかわらず、額としてはそれほど途方もなく大きな額ではないということをまず御理解願いたいというふうに思います。通常予算の分担金は義務的支払いでございますし、これは憲章上の加盟国の義務でございますから、特定の案件と結びつけて支払いを拒否するというような、アメリカのやっているようなことをやって日本の国益になるとは私には到底思えないということは、強くここで主張しておきたいというふうに思います。
 むしろ日本の場合、通常予算に関してはこれほど多額を払い、しかも滞納ということはないように支払っているにもかかわらず、この財政的貢献というのが余り評価されない一つの背景になっておりますのは、日本の予算年度が四月から始まる関係で支払いが若干おくれるということが起こっておりまして、時々新聞に大口の滞納国のリストなどというようなものが載ったときに、しばしば日本がそのリストの中に入ったりすることがございます。日本は年内に清算しておりますから実質的にはそれほど大きな問題は与えてはいないんですけれども、こういう新聞にそういうふうなことが載るというのは対外イメージ上大変好ましくないことでございまして、国連の予算制度、国連の予算年度は毎年一月から始まりますので、それとの整合性を考えて、どうせ支払わないといけないお金であれば、さっさと時宜を得た支払いをして日本の貢献をアピールするというようなことの方がむしろ国益にとってはプラスじゃないかなという気持ちがいたしております。
 二番目に、PKO関連の分担金に関しては、現在の制度は、PKOのミッションのスタートを決めますのが事実上安全保障理事会でございますので、安保理の常任理事国に対して特別に大きな負担を求めるような制度になっていることが多いわけであります。これは私は正しい制度であるというふうに思われます。P5、つまり常任理事国には特別な責任と権限がある以上、特段の負担を求めるのも当然でございまして、したがって、この問題を日本の常任理事国入りのてこに使うかどうかということはまた別の問題であるにせよ、常任理事国が特段の負担をするというのは当然なことであるという主張は、日本は国際社会で大きな声でしてもよいのではないかなというふうに考えております。
 実は予算問題で余り議論されないにもかかわらず、潜在的に大変大きな問題は、私が最初の方に申しましたエキストラ・バジェタリー・リソーシズ、予算外資金、つまり国連の経済社会問題関連の自発的拠出部分でございます。これは予算の額としては大変大きい額でございまして、もしも予算面からだけで国連を分析しましたらば、額からだけで見ると、国連は社会問題、経済問題をやっている援助機関のように見えるのではないかというふうに思います。一番ここがお金がかかっている分野なわけであります。そして、日本の自発的拠出も大変な額に上っているわけでございます。
 安全保障分野に関しては、現在日本の国内でもさまざまな意見があります。日本の貢献については、どういう形で何をどこまでやるのかということについてはいろいろな見解がありますし、国会でも各会派いろいろ立場の分かれるところでございます。しかし、社会問題や経済開発問題に関しては、各会派及び日本の国内の世論が比較的国際貢献ということに関してはコンセンサスのある分野ではないかなというふうに考えております。
 さまざまな援助機関が非常に複雑に入り組んでいて非常に非効率な運用をやっているというのが、私が国連の社会経済問題に関して感じていることでございまして、日本が大口の拠出国であるということをてこに何らかの大きなリーダーシップを発揮できるとすると、この分野が何かができる余地が非常に大きいのではないかというふうに考えているということをお話し申し上げまして、私の御報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。
#5
○会長(井上裕君) ありがとうございました。
 次に、伊勢参考人から御意見をお述べいただきます。伊勢参考人。
#6
○参考人(伊勢桃代君) 御紹介にあずかりました伊勢でございます。このように大局的また総合的見地から国の政策をお考えくださるという調査会を大変大事に思いまして、ここにお呼びくださいましたことを本当に感謝いたします。光栄に存じます。
 それで、きょうは国連人事についてお話しいたします。
 先生方も憲章については御承知のことと思いますが、申しわけないんですけれども、ちょっと憲章を読ませていただくことにいたしました。と申しますのは、国連の人事というものはこの憲章から出ておりまして、すべての人事政策というものはこれに沿ったものになっておりますので、ちょっと読ませていただきます。
 これは国連憲章の第百条に当たりまして、「事務総長及び職員は、その任務の遂行に当つて、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない。」、「各国際連合加盟国は、事務総長及び職員の責任のもつぱら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果すに当つてこれらの者を左右しようとしないことを約束する。」、「職員の雇用及び勤務条件の決定に当つて最も考慮すべきことは、最高水準の能率、能力及び誠実を確保しなければならないことである。職員をなるべく広い地理的基礎に基いて採用することの重要性については、妥当な考慮を払わなければならない。」、つまり憲章の百条、そして百一条の文章でございます。
 国連の公務員制度と申しますのは非常に古い歴史を持っております。ちなみに、国際公務員制度というものが一応今のような形で確立されたのは、一九〇五年の国際農業機構から発足していると言われております。いわゆる十九世紀から二十世紀に移り変わってきましたときに、政府からの独立、そして国際公務員特権及び免除、それからノーブルメヤーというような給与の考え方があるんですけれども、そういうものがつくられましたことは、これはあのころの国家体制、国家というものを基礎にしておりました世界の政治情勢からは非常に画期的なものであって、そしてこれを皆さんが承諾したというところにやはり国際連盟、また国際連合の非常に大きな意味があります。
 その中で、機構と人事の構造が今現在どうなっているかということをきょう御説明するのでございますけれども、きょう、表を三つお配りしておりますので、表2をちょっとごらんくださいますでしょうか。その表2ですが、これはまた後ほど日本の職員の問題等には触れますが、今ここで見ていただきたいのは、どういうような構造になっているかということでございます。
 上の方にUSG、ASG、D2、D1、P5、P4、P3、P2、P1と書いてございます。これは国連の専門職員の名称でございます。USGというのはいわゆる事務次長、明石さんがこのUSGに当たられたわけで、USG、ASGと申しますのはそもそも最初から政治的に任命されるということが、もう既に一九二一年の国際連盟の時代からこれはそういうふうになっております。これは、考え方はどうなっていたかというと、いわゆる国のレベルで非常に影響力のある、政治力のある方に一時的に国連に来ていただいて、そしてその影響力をフルに使っていただいて国連の仕事をしていただくという、そういう指導力のある人を呼ぶということになっております。
 それから、私ども管理職と申しますのは、P5が課長職でございまして、それからディレクター、いわゆる部長職になりまして、D1、D2となります。基本的にはこの人たちも下から上がってくるということですが、近年、そのD1とかD2も非常に政治的な色彩が強い採用になってきたことは確かであります。P5が課長レベルですから、これからいよいよ管理職、またいろんなことの決定をするというレベルになってまいります。
 この表は、いろんな問題を指摘しておりまして、また後ほど御説明いたします。
 機構というのは、大体すべて局とか部とか課とか、そういうふうに分かれておりますので、課は課長、それから部が部長、そして局長がいわゆる事務次長のレベルになってまいるということでございます。
 それから、採用方法でございますけれども、これは国連の事務局自体が私は一番系統立った採用方法をとっていると思います。と申しますのは、国連の事務局は、大体三十二歳ぐらいまでの方、この表からいいますとP1、P2、ここまでは試験制度で行っております。これは日本ではほとんど毎年行っております。試験制度というのは国別にやっておりまして、その国での候補者を募り、そして筆記試験、面接試験等を行い、非常に公平な立場で国連の内部で委員会をつくり、そこから試験にパスした人をまた今度はいろんな国の候補者とまぜて、そして考え、それを採用に持っていくという方法をとっております。
 上の方になりますと、これは試験制度ではなく、ベーカンシーアナウンスメント、いわゆる空席をすべて公告するということが義務づけられております。この空席の公告でございますけれども、これは国連事務局内部、外部、ニューヨークから発信しておりますので、ニューヨークの国連代表部百八十八カ国にこれを伝え、そしてそこから御自分たちの国に発信をする。ですけれども、最近はコンピューターが非常に発達しておりますので、これはインターネットでもある程度は今出ておりますのでごらんください。ベーカンシーアナウンスメントが出ますと、これに沿って自由に個人が応募できるということになっております。内部での委員会制度というのがありまして、ここで外から採用するのか、または中からの昇進で空席を埋めるのかというようなことが討議されて決まるわけなんです。
 人事決定に関する権限と分担でございますが、これがやはり国連の非常に複雑なところになるわけなんですけれども、国連の事務局だけで申しますと、国連の本部はニューヨークにございます。それから、世界の五カ所にいわゆる経済社会委員会というものがありまして、アジアではバンコクに大きな、ESCAPと呼んでおりますが、アジア太平洋地域をカバーする経済社会委員会、それからヨーロッパはジュネーブ、アフリカはエチオピア、ラ米はチリ、そして中近東が、いろいろ紛争のために移ったのでございますけれども、現在はヨルダンというところで活動しております。そういうところの一番上の方たちには相当な権限が渡されております。ですから、中央の人事というのはニューヨークが主体でございますが、そういういろいろなオフィスにも人事というものがございます。
 それから、もう二つ大きなオフィスがあるのでお知らせしますが、これはジュネーブとウィーンに二つ大きな国連の事務所、それからナイロビに環境問題、都市問題をやっておりますところ、こういうように地理的には分布されておりますが、その一つ一つの一番上の人、長、この方の人事に関する権限等非常にあいまいなところがありますものですから、なかなかニューヨークの中央の人事とプログラムの権限に関する担当の一番上の人、この権限の分担というものが人事の決定には非常に影響してまいります。
 それから、国連が必要としている人材でございますけれども、これは明らかに二十一世紀に向かう国連が今後どういうふうに変化をしていくかということを見きわめる必要がまずあると思います。先ほど田所先生が事務局に対する批判ということをおっしゃいましたが、やはり事務局の職員、適材適所かというようなことは、やっぱり二十一世紀に向かってのいろいろな問題がありますけれども、ここで日本と関係して国連が必要としている人材の面で特に問題になるような点としましては、コミュニケーションの問題それから経営能力の問題、これは後ほど問題点、そして国連人事と日本のところで詳しく申し上げます。
 それからもう一つ、国連の中にはもうほとんどあらゆる職業、職種がございます。例えば、これがユネスコですと教育関係が主になるんですけれども、国連の場合は職種というものはいかようにも分類できます。法律もあればコンピューターの専門家もあれば、統計、会計、もうありとあらゆる職種が入っている。しかしながら、専門機関の専門官というのはいないということ。例えばFAO、農業の専門官とかユネスコの教育専門官、それから労働問題はその専門機関にお任せしますが、あとはすべての専門が入っている。ですから、国連の採用の基本というのは専門職の人を入れているわけなんです。ですから、専門の技術を持っていないと国連には入らないというのが基本線ではあります。
 次に、国連人事の問題点でございますけれども、表1をちょっとごらんくださいませんでしょうか。
 ここに、いろいろと言われております地理分布の問題があります。この地理分布というのは、地理的分布と言ってもよろしいんでしょうけれども、これはGDPパーキャピタの収入が基本になって分担金をつくり、その分担金によって望ましい職員数の範囲というものを決めます。しかしながら、これは非常に複雑でして、例えば中国、インドなどは国連がすべての人を代表しての仕事をする以上は人口ということも考えてほしいということで、人口に関する係数というものもここに入ってはおります。
 それからもう一つは、分担金が非常に少ない、一人にも満たないというような国がございますが、これはそういうことを排除しない、とにかくみんなで一緒に仕事をやろうという国連のそういう考え方ですので、一番下の枠、二人から十四人ぐらいの枠はすべての国に持たせておりますので、GDPだけではこれはちょっと数字が違ってまいります。
 そういうようなことをトータルにしまして望ましい職員数の範囲というものを決めていくわけなんです。これが非常にいい点もあり、大事な点もあり、それから非常に難しい点、本当に人事をやっていく面からはいろいろな点がございます。
 ここではちょっと問題点を申し上げたいので申し上げますけれども、例えば米国は分担金二五%を本当を言いますと払うということに決められておりますから、それを基準としての職員数の範囲というものを決めております。大体この計算をしますときのポストの総数ですけれども、これも変わりますけれども、現在のところは大体二千七百ポストを基盤にしております。二千七百、これは通常予算から出たポストでして、PKOとか先ほど言っておられます予算外のお金というものによっての人件費ということではありません。
 こういうふうに地理分布をしていきますと、なかなか国連側では適材適所、いわゆる非常に能力のある候補者がいてもその人を雇えないというようなことが頻繁に今出ております。
 それと同時に、やはりこういうものをつくっておきませんと、どうしても人間というのは、あくまでもやっぱり上司は自分が仕事をしたい人とやるというようなこともある、文化的なこともある、いろいろなこともありますから、地理分布というのは難しいながら、何とかしてこれを活用しながら人事をやっていく、採用していくということで国連はいつも悩んでいるわけなんです。
 こういう地理分布があるものですから、結局、権限を地域委員会とかが持ちますと、人事が中枢的に政策をやりたい、しかしながらプログラムの方の長は自分のところは能力のある人を欲しいということの葛藤が絶えずあるわけで、ここで国連の人事をする権限というのは非常に難しいということがあります。
 それから次に、終身雇用でございます。
 この終身雇用というのは、御存じのように国連も創設以来これは終身雇用であるから、とにかく独立を保つ、政治的にも中立、ニュートラルというより、インパーシアリティーの方がいいという御意見もあったかと思いますが、全くどこにも加担しない、そういう立場をとる人たちを確保しておきたいということで終身雇用ということを言ってまいりましたけれども、今度はいろいろな問題が出てまいりました。
 というのは、終身雇用をしておりますと、やはり先端的な技術がなくてはいけない分野があります。例えばコンピューターテクノロジーの分野。国連は、例えば大きなコンピューターからパソコンに変わったときの苦労というのは大変なものでして、そういうような分野は終身雇用でない方がいいのではないかというような考え方も出てくる。しかしながら、法律部門では国際法、先例、いろいろあるからこれは終身雇用にしようとか、行政官は終身雇用とか、いろいろな議論がありますが、いまだこれは国連の人事政策として解決しておりません。
 ですが、今のアメリカからの強力なる圧力によって、とにかく縮小しろという圧力ですからなかなか予算の枠も難しく、だんだん終身雇用というのが減ってきております。この減ってきているという実情、これがまた今後、国連の能力ということに大変に影響があるかと思います。ですから、この点でも本当にそろそろ国連としても確とした立場をとるべきという感じがいたします。
 それから、採用に関してですけれども、申し上げたように、能力一筋でいくということが非常に難しい、そして地理分布というものも考えますと、やはり政治的影響というものが非常に出てきております。私が三十年前になりますけれども国連に行ったときは、政府に連絡するとかいうことは全く思いもよらないこと、全くいけないことだと考えておりましたけれども、現在はその体制が崩れております。それで、これも本当に国連が今悩んでいるところだと思います。
 ただし、国連が非常に人事が政治化されたということはよく言われますけれども、百八十八カ国の全部大使がいらっしゃるわけでもないんですが、百八十八カ国が自分のところと言って主張されると、これはないにも等しいような圧力ですから、国連としてはそういう立場で能力主義、能力本位でやるというような意気込みもありますけれども、これが高い地位になればなるほど非常に難しいという実態がございます。
 それから、採用の方法でございますけれども、今国連は一つ一つのポストでやっているので、こういうことがいいのかどうかという感じもございます。むしろ国連に一括にして、そしてその中からいわゆる専門ゼネラリストというものをつくっていく方がいいのかとか、いろんな問題がございます。
 一つここで申し上げておきたいのは給料の問題ですけれども、これは一九二一年にノーブルメヤーというコミッティー、委員会がございまして、国際連盟のときでございます。このノーブルメヤーが決めた給料というのは、あのときは御存じのように比較するものが全然なかったわけですから、国際機関というのは初めてですから、そこで、どこに基準を置くかということでノーブルメヤーが考えたのは、国家公務員の中で一番最高の国家公務員給料制度というものを基盤にして、その上を行くということで決まったわけなんです。
 一九四五年、国連ができましたときはイギリスが基盤でございました。その後アメリカ、今現在アメリカを基盤にしております。この執行が非常に難しくて、アメリカも何とかして国連職員の給料は上げまいということで、もう一切聞かないというような状態で今やっております。
 それで、国家公務員の給料と申しましても、アメリカの国家公務員制度の中での給料体制は局によって違うんでございます。国防省とか国務省とか、そういうところで違うものですから、そこで、どこに基準を置くか等々の問題が非常にあります。
 それから、給料を比較するということは本当に難しいことで、国連の給与体制というものは、現在、住居費も非常に下に抑えておりますし、接待費、交通費、その他全部そういうものはございませんので、全く給料でみんなが賄っているという状態であります。最初の五年ぐらいは少々の住宅の手当はございますが、一切国連は不動産に手をつけませんので、官舎、公舎、そういうものもないという状態でございます。そういう面でも、今、アメリカとのいろいろ摩擦はございます。
 それから国連自体が、先ほど申し上げましたように、終身雇用とかいろんな問題で総合的な人事政策に欠けています。これが非常に影響しているのが昇進制度なんです、キャリアシステム。後から申し上げますが、日本の若い人たちは非常な苦労をしておられます。やはり総合的人事政策の欠如、これは何年も言われていることで事務総長にも要求をされておりますが、いまだに総会でこの結論が出ていないということであります。
 国連人事と日本でございますが、まず表1を見ていただきますと、ここで上からきますと米国、ロシア、ドイツ、日本、フランスと、こうくるわけです。
 ここで申し上げたいのは、日本の職員が非常に少ない、これは確かにそうなんです。表3を後で見ていただきますが、全体に国際機関に占める日本の職員の数というのは少ないんです。しかしながら、国連の事務局を考えますと、百人を超えている国というのは、百八十八カ国のうちわずか五カ国であります。
 ロシアの場合は非常に特殊な例でして、昔からずっといたんですが、これはソ連人としていたわけで、その方たちが今度ウズベキスタン、タジキスタンとか、そういうふうに分かれたときにどうしてもロシアに集中したということで、今、ウズベキスタンはまだ人数がゼロとか、カザフスタンとかまだ職員が出ていない状態の国が多いと思います。そういうような状態でございます。
 それから、表2でございますが、ここで見ていただきますと、ここで私が非常に感じますのは、先ほど申し上げたP5、課長以上、いわゆる政策決定に関係してくるレベルの上、これが日本は異常に少ない。ちなみに、米国は総体の人数が多いですからこれはしようがないんですけれども、米国八十八、ロシア二十四、ドイツが二十六、日本が七というような状態で、日本は非常にたくさんの方がP2からP4に固まっているという状態なんです。
 それで、この4から5に上がるのは非常に難しいです。今、国連のポスト数で一番多いのがP4なんです。P4を超えますと課長級。もちろんどこの組織もそうですが、数が減りますので、この政策決定にかかわるレベルに達するということが非常に難しい状態であります。
 それでは、どうして日本人はそんなに少ない、少ないというのか、絶対数ではないんですけれどもこんなに難しいのですかと。例えば、日本の分担金からしますと二百九十四人、これが中間数ですけれども、そこまで行けるのに何で百六人なんですかと、こういう質問がよく出されます。
 まず申し上げたいのは、とにかく国連の方の人事政策というものを総体的にもっとしっかりとしてもらうということ、これは受け入れ体制というものがありますので、非常に大事な点だとは思っております。
 それから、日本側の方にも非常にいろいろな問題がございます。まず、コミュニケーション、専門職とコミュニケーションの二つは、これは国連に働く以上は必須のものでございます。ここであえて申し上げたいのは、私は日本の英語教育はもう早急に何とかしていただかないと、これは国連だけでなく、ASEANでもどこでも本当に大変なことになると思います。本当にこれはお願いしたいことなんです。
 それから、管理職人材の不足。P5以上は上に立って指揮をとらなくてはいけない。そのときに、コミュニケーションもできないというような上が来ると、下が大変な苦労をいたしますので、この点では日本は非常に問題視されている国の一つでございます。
 日本人が能力の面で欠けていると、絶対そういうことはございません。今の日本の若い方たちは大変な実力者です、伸びています。ですからよろしいんですけれども、その方たちをやはり引き上げるには、人事政策をしっかりして昇進制度をやる、それから、上にもしっかりと日本人が参画をして、そして政策決定にかかわるということ、この体制をして、そして日本の国の政府と一緒になって国連の仕事に協力するということは非常に大事なことだと思うんです。そのときに、上に入ってくださる人材が少ない。
 まず、給与が低い、これがあります。この給与をどうやって補うかという過去にいろいろの工夫はあったんですけれども、基本的には、国連の職員はよそから収入を得ない、国連の収入で賄う、みんな同じレベルであるということを基本にしておりますから、余分な補足をするということは、これは基本的に禁じております。これは憲章違反なんです。でありますので、ここでまた日本が苦労するところなんです。
 というのは、管理職になればなるほど日本の国内の給料と国連の給料との差が異常に大きくなります。先ほどアメリカに沿ってと言っておりますが、もうアメリカの国家公務員制度が一番高い給料を出している時代ではなく、今はドイツとも言われ、シンガポールは特別な理由で、措置で高いと伺っておりますが、そういうような状態でありますが、あくまでもこれはアメリカが基本ということが政策でありまして、ここからは抜けられないということでございます。
 それからもう一つ、能力の面では全く世界に劣らない、そして優秀な若い人たちが出ている中で、やはり違うなと思うのが経営管理の考え方なんです。これは日本と国際社会とがときどき正反対なのではないかと思うぐらい違うわけなんです。ですから、管理職に出す場合に非常に難しい、人材を探すのが難しいということでございます。
 それで、やはり本当に日本人の職員を伸ばすということでは、若い人が入るということは、これは国連というところはどんなに財政上苦しくても新規の職員は入れるということが総会の決議でございます。その理由は、常に新しい血をここに供給しなくては世界におくれるというので、P2、3、この方たちの雇用は続けてまいります。ですから、ここに優秀な日本の若い人を送ることはできます。次は、この方たちをどうやって中から伸ばすかということ、これは国連の責任なんですけれども、なかなかこれがうまくいっていないということですから、こういう人事政策というものにやっぱり日本の政府も参画してくださり、そして強烈に総会の第五委員会で活動していただきたいということを思います。
 それから、人材を育成するということを本当にしていただきたい。育成というのはどういうことかと、いろいろとお考えをいろんな方がお持ちです。私の限られたあれからいいますと、今、D1、2、そういうところに国連、国際機関に動いていただけるような方は必ず経営関係の研修をお受けになる場を設けたいと思います。
 フランスでも博士号を取った後や専門職を取った後、そういった学校がありまして、エコール・ナシオナル・ダドミニストラシオンというパリにある学校なんですが、そこで一年ぐらい徹底的な経営行政の研修をするとか、やはり私は日本もこういうような研修、コミュニケーションの研修は若い人というようなことで、そういう体制を本当につくっていただきたいと思っております。
 それから、日本として本当にここでお願いしたいのは、日本の政府また外務省の方々が国連の場で非常に苦労しておられるというのは、日本は内部を見ていろいろ調整をなさるものですから、外で発言ができなくなっているのではないかと思うんです。
 よくここでもお話しになったと伺っておりますが、日本はどうも発言しないと言われておりますが、やはり内部からしっかりと基本をつくってあげないと、国際の場に出てちょうちょうはっしとやるところで発言が非常に難しくなるという状態はあると思います。それに加えて、日本は本当にコミュニケーションをしない国ということは、これはもう明らかですので、どんどん政府もいろんな発言を、もうミスとかそんなことではなくて、どんどん立場を確立していただきたい。
 それから、上に人がいないということは、国連の内部での人事委員会に出る日本人職員がいないということなんです。これは本当に採用、昇進にかかわります。というのは、何も国連が非常にいびつだということではなくて、国連は何とかしてバランスのとれた、そして文化を超えた公平なる人事をしようとしている、努力はしているんですけれども、やはり日本人がそこに要る。どうして日本人がいいかといいますと、基本的に日本人は公平なんです。それから文化的にも非常に公平な人が多い。ですから、日本人をもっとそういう中枢の委員会に出してほしい。ところが、出る人がいないんです。まず人数が少ない。そういうことなので、やはり上の方で人数をふやさなくてはいけないというようなことを痛感しておりますので、ちょっとここで申し上げました。
 三十分を過ぎましたので、ありがとうございました。
#7
○会長(井上裕君) ありがとうございました。
 これより質疑を行います。
 本日も各委員から自由に質疑を行っていただきたいと思います。なお、委員各位におかれましては、できるだけ多くの委員が質疑できますよう御発言は簡潔にお願いいたします。
 また、質疑時間が限られておりますので、参考人におかれましても、恐縮でございますが御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
#8
○広中和歌子君 伊勢先生にちょっと簡単に、今の御説明の中でフォローさせていただきたいことを質問させていただきます。
 日本人が管理職につきにくいということで御説明になった中で、経営管理の考え方の違いということをおっしゃいましたが、これは具体的にどういうことであるのか、大変興味がありますので、ぜひ御説明いただきたい。
 それから、上級のポストになると、例えば日本と比べて国連の職員、トップの同じようなレベルの職員の給料が低いという、しかも例えば日本からその差額を出すというようなことは許されないということでございますけれども、国連で働きたいという希望を持った方は少なからずいらっしゃるんじゃないかと思いますが、なぜ途中採用みたいな形で公募できないのか、その二点についてお伺いいたします。
#9
○参考人(伊勢桃代君) まず、一番最初の管理職につきにくい、管理の考え方が反対だと申し上げたんですけれども、国連というところは上に行けば行くほど細かいことを知り、そしてすべての知識を把握しているということが必要とされております。それから、国連の働き方としまして、これはチームというよりも一人一人が考えて働いて、そして上の人がそれをまとめるという考え方ですので、下でチームをつくって仕事をして上に上げていって上が承認するという型とは違うんです。
 ですから、企業からいらした方が、こんな例で申しわけないんですけれども、これがよく理解していただけると思うんですけれども、D2で日本の企業からいらした方があります。この方が部屋の中で本当に座っていらしたんです、下から仕事が上がってくると思って。下の職員は上から来ると思ってみんな外で待っていたという、本当にそういう例がございまして、これほど反対なのかという感じがいたしました。考え方が違うものですから、そこの難しさなんです。
 それから二つ目に、中途採用でございますけれども、これはいたしております。全体を申し上げますと、P2、3、これは若い方を試験制度で外からお入れしていますし、それから3の場合はP2の人を上げなくちゃいけませんから昇進の可能性を残しますが、そのほかにも特別に専門職ですね、例えば環境のデータの分析とか、そういう専門職に関しては外にあれするとか、そういうことがございます。D1、D2は、これぐらいになりますと、もう外、中、両方に公告を出すという実情であります。
 ただし、この場合に、これは人事規則に書いてございますが、能力そして経験その他経歴が同等の場合には中の人を昇進させるということが基準になっております。そこでいろいろな政治的な考慮が入り、それから地理分布の問題が入ってくるということで、中途採用は行っております。
 ただ、ここで今国連が苦しいのは給料が必ずしも、ドイツから一流の人を持ってくる、それから日本から一流の人を持ってくるということの難しさがあることはあります、という実情でございます。
 ですけれども、二年ぐらい出向していただく、これは外務省での懇談会でもお願いしていたんですけれども、経団連などで、企業の方で出向している間は昇進から外すことのないように、そういうような対策をとりながら本当に一流の人を出してくださいと。国連とか世銀、国際機関で働くことは日本の企業にとってもいいことなんですよということはお願いしておりますが、経団連などは、世銀にはお出しになるけれども、国連の事務局というのは余り魅力がないようにも感じます。給料は違います。世銀の方がずっと上でございます。
#10
○広中和歌子君 ありがとうございました。
#11
○鈴木正孝君 自民党の鈴木でございますが、きょうは両参考人、本当にありがとうございます。いろいろと経験に基づいて大変大事なお話をいただきまして、ありがとうございます。
 両参考人にちょっと一つ二つお伺いしたいと思うんですけれども、一つは、今お話もありましたけれども、国際公務員と出身国との関係ということでございます。どちらかというと日本の、私ども国民含めまして、国連というものに戦後加盟をする、そのときに国連というものにある種の何というんでしょうか、あこがれのような、非常に崇高な存在というような思いを非常に強く持った、インプットされたというか、そういうことがあったんだろうというふうに思います。そういう意味では、国連あるいは国際機関に対しての中立性とか公平性とか、そういうものをいかに確保するかというのは国際公務員としては当然のことだろうと思うんですが、その後のいろんな国際情勢の変化だとか、そういうものを前提にして考えてみますと、果たしてそれが絶対的なものなのかということを問い直してみる必要もあるんじゃないかなというような思いもございます。
 国連も、先ほどもお話しのように、主権国家というものを前提にして、それぞれに最終的には国が責任を持つ、加盟国が責任を持つということ。そういう立場に立ってみると、そこにいる職員そのものも、先ほどちょっとお話がございましたけれども、出身国との連絡調整だとか、あるいは出身国からそれなりの支援を、何らかの支援を受ける、そういうことを悪と見るということはやめた方がいいのかなというような、そういう感じもちょっとするので、その辺の経験に基づく、あるいは今の国際世論そのものの動向というものについて両先生からお話をお伺いしたい。
 それから、分担金の支払いに絡みまして、田所先生、先ほどもちょっとお話があったように思いますが、どちらかというと、国連改革あるいは安保理の常任理事国入りということを何とか先行させる、そういう意味で、日本の政治家の一部の方の中にもあるいは国会でその種の支払い制限というか停止というか、そういう決議をしたらどうだというような感じのことを言われる方もないわけではないんですね。
 そういうことについて、先ほどちょっと御見解もあったように思いますけれども、具体的にもう少し突っ込んで、いろんな角度からどういう影響あるいは余波が想定されるか、その辺をちょっとお伺いしたいと思うんですが、よろしくお願いします。
#12
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございます。
 まず、国際公務員の中立性に関してでございます。
 私の考えは、御指摘のとおり、大幅に考え直した方がいい時期ではないかなという気持ちが実はしております。政治問題や、あるいは安全保障問題の一部の問題の機微にかかわるような問題に関しては、中立性を旨とした国際公務員というのはやはりどこまでいってもどうしても必要になるところはあると思うんですけれども、国連は、先ほど伊勢先生のお話にもありましたように、実にさまざまな仕事をしているわけでして、全員が一つの人事制度の枠でなくてもいいんじゃないかという気持ちが私なんかはしております。
 特に、私が御報告の中で申し上げましたように、国連の場合、恐らく人員的にも予算的にもその半分以上を占めているのは社会経済関係の仕事をしている人たちでありまして、この人たちには、やはり政治問題や安全保障問題にかかわっている人たちとはちょっと違う能力を求めても私はよいのではないかという気持ちがいたしております。
 とりわけ、これは官僚制との問題でいえば、社会問題や経済問題はいろいろやることも時代とともに変わってくるわけでございまして、昔は必要だった仕事が要らなくなるということも現にいっぱいあるわけでして、一部の特別機関は、今や何の仕事をしているのかなと思いたくなるような特別機関もあることはあるわけですね。しかし、一たんできてしまったものをつぶすのは大変なことでございます。
 となると、あるいはある種の仕事に関しては、国連の現在の官僚機構を維持したままではなくて、あるいは特定のプログラムに関しては年限を区切って、こういうことをやるためにこれだけの人数をこういうところで動員するんだというようなプログラムをつくって、そこにお金もつけて、現在の国連機関の中でそういうプログラムに参加してもらえるようなところはやってもらうとか、今までの官僚制を使わずに別の方法で、現在の官僚制を使ってもいいんですけれども、その枠組みではなくて、違う枠組みで物を考えるというような創造性を持ってもいいんじゃないかなという気持ちが私はいたしております。
 二番目は、財政をてこにして日本の主張を通すというようなことに関しては考えはどうかというお尋ねかと思います。
 私、既に申しましたように、これに関して非常に重要なことは、憲章上の義務として決まっている通常予算の分担金をてこに使うのは、私ははっきり言って賛成できないということでございまして、これは失うものは大変多いと思います。これによって恐らく多くの開発途上国の支持を日本は失います。
 それから、フランスやイギリスというような国は極めて財政規律がしっかりしておりまして、一月とか二月とかという極めて早い時期にさっと義務的な分担金を払ってしまうわけなんですね。日本の場合は、先ほどちょっと申しましたように、大蔵省の予算法というのはなかなか厄介なものでして、私も国の公務員制度の末端におりますから予算法というのがいかに窮屈なものかは存じておりますけれども、そういうことは外国に言ってもわかってもらえないわけでして、為替レートを見たり、あるいは国際的な条約上の義務ができないと支出権限が出ないんだというようなことを言って非常にがんじがらめになってしまって、機動的に支出できないということの方がむしろ問題ではないかというふうに思っております。
 ただ、それは義務的なものでありまして、恐らく日本が今国連システムに出しているもののかなりの部分は自発的拠出の部分になろうかと思います。これは法的な根拠が違いますし、事の性格上、日本が賛成できないようなプログラム、もしくは日本の財政事情が大変だからということを言えば、断っても私は筋が通る性質のものかと思います。したがって、そこはやはり筋を通すということが非常に重要ではないかなという気持ちがいたしております。
 以上でございます。
#13
○参考人(伊勢桃代君) 一番最初の御質問にかかわることですが、国際公務員と出身国との関係については非常に難しい問題だと思います。
 というのは、現在、随分関係が変わってきていることは確かです。例えば、国連とか国際機関というもの、国際という意味なんですけれども、これが国と国とのつながりでできているという考え方と、国家というものを超えて一つの国際的な考え方というものを考えるという、その二つの考え方があって昔はこれがはっきりしていたんです。国と国とではなくて、その総合体というような考え方で国際的に物を考えるということだったんですけれども、今は全くこれが同じ意味で使われているという可能性がございます。
 それから、実際面としまして、今職員がいろいろと自分の国であるからこそ国連の立場とか中を説明ができるというようなこと、インフォメーションが悪い意味ではなくて流せるということ等々、実務上これが必要になってきていることは確かでございます。ですから、職員と国との関係というものが割に密接に行われるようになってきたということです。特に、国連というところは秘密が守れないところですから、秘密の文書とかそういうものは非常に少ないので、それほど神経質になるということはございません。
 ただ、一番の悩むところは、それでは非常に有能な方が発展途上国から来られた、その方はニューヨークで生活をし国連からの給料だけでやっていかれると。ところが、そこの差を出せる国の人だけがもっといい生活をするのかとか、そういうような問題になってくると、これは国連の職員として非常に難しい選択になると思います。日本側でもお考えになって、引退をしてから、後からか全く国連から切れたところで何か蓄えておいたものができないかとか、いろいろ本当に一流の方に国連に来ていただくときにそういうことを考えたらどうかというようなお考えもございました。けれども、国連の職員としましては、給料とかそういう収入の面で差があるということはやはり心苦しいものであることは確かでございます。
 お返事になっているかわかりません。まだ悩んでいるものですから、失礼いたします。
#14
○井上美代君 田所参考人と伊勢参考人には、いろいろと参考文献も読ませていただいたり、きょうのお話を伺いましていろいろ勉強させていただいておりました。ありがとうございます。
 特に、やはり日常的にはお聞きできない、そういう中身であったというふうに思うんです。
 予算や機構そして職員の問題、特に人事、採用、こういう問題というのは、その専門性についても、それから国際的な公務員というこういう人たちについても、やはりお二人の参考人のいろいろなお話によりましてとても深く理解することができたなというふうに思っております。
 私は、お二人に御質問したいんですけれども、言ってみればアメリカが力を出してつくって国連へとつないでいったと思うんですけれども、そのアメリカが今日やはり滞納をしている、その滞納額が三億を超えているという、この問題は非常に今日の国際情勢からすれば重要なことではないかというふうに思うんです。
 特にその意味で、ユネスコももう既にアメリカは脱退してしまっているんですけれども、どうしてもやっぱりアメリカにきちんと分担金も払ってもらわなきゃいけないし、そして国連のやはり長年の国連憲章を中心とした理念と機構、それから歴史、いろんなものを乗り越えてきていますから、そうした蓄積された歴史を大事にしながらどう秩序を保っていくかという、そういうところが非常に大事だというふうに思うんです。だから私は、なぜこんなにアメリカが滞納するのかということをもっと深く知りたいというふうに思っています。
 それで田所参考人の、分担金をなぜ滞納するかという中で私が関心を持ちましたのは、国際的な機構なり条約の枠組みなりにアメリカが拘束されることを拒もうとする単独主義的な傾向が強く反映している、こういうふうに述べておられるところがあります。そして、国連財政問題に関するアメリカの態度は明らかに国連憲章に違反している、一方で人権の普遍性を声高に叫びながら、国連憲章の義務を明白に無視するばかりかそれを既成事実化して、しかも国際的な制度を再編するための政治的な手段として利用することは国際的な制度や国連の持つ力の限界を痛々しくも示すものであると、このように田所参考人が、私がいただきました文献の中で言われているんです。
 私は、今日まだアメリカが子どもの権利条約も批准していないというような、幾つかの条約を調べますとあるんですね。だから、そういうものとかかわって、田所参考人の言われた国際的な機構なり条約の枠組みなりにアメリカが拘束されることを拒もうとするという、ここのところの関係をもうちょっと知りたいというふうに思います。
 もう一つは、私、女性の立場から、一つやはり田所参考人が言われている中身で目にとまったものがあるんです。
 それは、アメリカの議会が議論しても議論してもなかなか滞納金を出すようにならないわけなんですけれども、書いておられる中に、アメリカの歳出法から国連関係の支出が削減された直接の原因は、国連人口基金が家族計画関連の事業を行っていることに対して堕胎に反対する共和党の保守系の議員が激しく抵抗したためである、しかしこれは、堕胎が国内政治上の激しいイデオロギー的な争点になっていることと関連しており、というそこのところがあるんです。議会がやっぱり反対して、三一%から二五%にし二〇%にされていますよね。
 だから、そのところでちょっと調べたんですけれども、国連の中で、例えばUNIFEMだとか、ここに五位までのお金を出しているところを見たんですけれども、日本は三位なんです。そして、国際婦人調査訓練研修所は日本は四位なんです。日本は非常にまじめにお金を入れていっているんですけれども、国連の女性関係の拠出金、女性に対する暴力撤廃のところでも日本は二位なんです。だけれども、アメリカの姿が見えないんです。発展途上国の女性支援信託基金でも日本は、日本だけなんですが、ほかはないんですが、日本は一〇〇%。それから、国連の人口基金でも一位は日本です。アメリカの姿が見えないんです。結局、アメリカは女性のところにもお金が入っていないんです。地球上の女性たちが女性の憲法というふうに言っている女子差別撤廃条約というのがありますけれども、これについても今既に百六十五カ国が批准をしているんですけれども、アメリカは批准がされておりません。そういうことから考えると、先ほどの堕胎の問題とか、そういう問題がやはりリプロダクティブヘルス・ライツであるんです。
 だから、何かそういうものも関係しているんじゃないかと思ったりしたんですけれども、もし何か御存じであったり、何か考えるところがあったらぜひ教えていただきたい。こんなときじゃないとなかなか聞けないものですから、よろしくお願いします。
#15
○参考人(田所昌幸君) 余り読んでもらえていない私の論文を読んでいただきまして、大変ありがとうございます。
 アメリカが分担金を払っていないということに関して、詳しく考えているところを教えなさいという御質問かと思います。
 国際連盟は、当初アメリカが入らないことになって非常に機能しなくなったかなり悲劇的な国際機関でございますけれども、井上議員が御指摘のとおり、国際連合は、アメリカが一生懸命つくろうとしてつくった国際機関でございます。
 ただ、子細に調べてみますと、アメリカには脈々と続く孤立主義もしくは一方主義の傾向があるわけでございまして、国際連合を第二次世界大戦が戦われている当初構想されたときから、戦後になるとうっかりすると再び孤立主義に戻るんじゃないかということをアメリカの外交問題の担当者は非常に心配したわけで、したがってアメリカが後戻りしないように戦争中に国際連合をつくって、アメリカを国際連合のくびきの中にくっつけて制度の中につなぎとめて、そして再び孤立主義に戻らないようにというような意味合いも実はあったわけでございます。
 冷戦とかいろいろな国際情勢の変化に応じて国連に対してアメリカが期待した役割というのも変わったわけでして、冷戦のさなかは、粘り強く米ソの妥協点を探すというよりもプロパガンダの場に使ったというところもなきにしもあらずですし、では、冷戦後うまくいきそうになったかなと思うと、一時は物すごく本腰を入れたかと思うと急にふまじめになったりというようなことで、非常に国際情勢によってアメリカの国連に対する態度が影響を受けているということも井上議員御指摘のとおりかと思います。
 ただ、分担金を払わないということに関してはもちろんいろいろな理由がありまして、そういう脈々と流れるアメリカの一方主義的な傾向もありますし、そしてこれほど勝手なことをやっても国際社会から余りペナルティーを受けにくい、ペナルティーを受けても平気だというぐらいに強力だということもあります。あるいは、やはり冷戦というのはアメリカにとっては一つの戦争だったのでありまして、それが終わった後、戦後になって国際的な問題に対するかかわりというものにアメリカ自身がちょっと疑問を持ち始めているということもございます。
 ただ、一つここで強調しておきたいのは、これは議会にかなり限られた傾向でありまして、行政府なり外交問題の専門家の間で、アメリカが分担金を払わないことが非常にアメリカにとって賢明であると、いいか悪いかはともかくとして賢明であると言う人はまずもっていないということも重要ですし、それからアメリカのグラスルーツの世論のレベルでも国連に対する好感度は比較的高いですし、また国連に対して反対もしくはそれに対して疑問を投げかける人でも、一方的に分担金を支払わないということは望ましくないと答えている人の方が圧倒的に多いということも事実でございます。
 したがって、いろんな理由が複合しているんですけれども、議会の中のかなり特殊な要素によってこういう動きを議会がしているということは一つ言えるかと思います。つまり、議会の中のポリティックスに国連が巻き込まれてしまったと、国連が絶好のターゲットになってしまったという側面もあるかと思います。したがって、未来永劫にわたってアメリカの態度が変わらないかというと、そこまで悲観したものでもないかなという気持ちがいたします。
 あともう一つ強調しておきたいことは、アメリカは、国連がなかった場合、今以上に国際社会の規範に従ってくれるかという問題でありまして、アメリカが大国なのは国連の制度とは何の関係もなくて、大国だから大国なのでありまして、国連の場でアメリカが例えばACABQの委員に落ちてみんなからそこで拍手喝采を受けるとか、あるいは分担金を払わないということで多少恥ずかしい思いをするとか、こういうことは案外ばかにならないアメリカの行動に対する抑制の要因になっていようかと思います。
 したがって、日本としても、事あるごとにアメリカに分担金はちゃんと払って国際的なルールを守ってくださいよと言うことは、穏健に粘り強く言っておくということは決してマイナスではないし、それは、アメリカのような強い国を制度の中で封じ込めるというとちょっと言い方がおかしいんですけれども、ちゃんと秩序立って国際社会の中で行動してもらうようにするためにこれは結構役に立っているのかもしれないという側面もあるということを指摘したいというふうに思います。
 それから、女性の問題に関しては、残念ながら、私、詳しくは存じません。井上委員の方がよっぽどよく勉強されたのではないかと思います。
 ただ、一般論として言えることは、国連の活動で、経済開発の問題に関しては余り見るべき成果はないんですけれども、社会問題に関しては、事実上国際的なフォーラムで議論できるところは国連機関以外にないだろうというふうに思います。婦人の問題もそうですし麻薬の問題もそうですし、あるいは弱者の救済とか環境とか、その種の問題はいかに国連機関に欠点が多かろうとも国連以外にやるところがないわけでありまして、その点では私は国連の役割を高く評価しております。
 もっといいやり方はないかなという気持ちはいたしますが、そのあたりの社会政策的なプログラムに関しては、一九八〇年代の初めぐらいからアメリカの国内のイデオロギーが非常に冷淡になった。自由主義的な市場万能主義というのがかなり極端に出ていた時期が長かったわけで、そういうようなアメリカ国内のイデオロギー的な対立の格好のスケープゴートに国連がされてしまったという構図があります。
 これはまた、アメリカの国内でも知的な雰囲気はむしろ変わってきたというふうに私は理解しておりまして、一時のように市場経済礼賛というのは、ただいまは景気がいいので余り批判も聞かれませんけれども、徐々にそれに対する疑問というものも強くなってきていますので、これも短気にならずに日本としては淡々と正論を述べておくということがよいかと思います。予算の面でも淡々と国際的な義務を果たし、そして正論を淡々と果たしていくということが、国際社会にも、そして日本のためにもいいのではないかなというふうに思っております。
 お答えになったかどうか怪しいですが、それくらいで御勘弁ください。
#16
○参考人(伊勢桃代君) 余り補足することはございませんけれども、やはりアメリカは、実は先日外交委員会の委員長が安保理で証言なさいまして、非常に保守的な傾向があります。これは驚くほどなんです。というのは、アメリカの世論、先ほどもありましたように、聞いてみるとこれがいいことだと言っている人は一人もいないわけです。
 それから、アメリカ内での活動がありまして、これは、アメリカは大体一人当たり四ドル出せばこの分担金というのを払えるというので四ドルキャンペーンというのをやって、どれくらい今集まったのかは知りませんけれども、随分集まっておりました。
 ただ、そういう世論というものがあり知識階級というのがあるのに、どうしてこういう外交政策がこれだけ長く続いているのかということは、私自身非常に不思議に思い続けております。ただし、アメリカというところはああいう複合的な国です。宗教的にも堕胎に関して非常にかたい立場をとっている人が多いし、それから南部と北部の政治関係も違いますし、だから、その意味ではやはりこういうことが通るのかなとも思います。
 例えば来週、ボストンで会議がありますので私は行きますが、ここでは国連とアメリカとの関係についてという会議をやります。国連側それからアメリカ側からお出になるんですが、少しでも、市民団体の間でそういう努力はされておられます。ただ、本当に不思議な国だと思います、これだけの保守的なことが根強く残っているということ。考え方はほかにもいろいろございますが、国務省の要員のバックグラウンドですとか。アメリカというのは一人一人がいろんな歴史をしょってあそこに集まっておられるのでそういうこともございますけれども、ここでは長くなりますので。
#17
○井上美代君 ありがとうございました。
#18
○武見敬三君 両参考人に御質問をさせていただきます。
 まず、人事政策に関連してでありますが、我が国では外務省がジュニアプログラムをつくって、そこで正式の職員ではないけれども日本から給与をみずから負担して若い人たちを研修させた上で国連の関係機関で仕事ができるように送り込んでいるというジュニアプログラムというのがたしかあったかと思います。
 この研修に私も何度か講師として行って、そこでそういう若い人たち、これは女性が圧倒的に多かったんですが、話をしたときに感じたことは、語学の能力もかなりあるように思いましたし、また同時に、MAだけではなくて中にはPHDを取っている人たちもいた。ただ、どうも結果を見ていると、当初期待したほどその後正式な職員として採用されていないような傾向が私はあるように思います。なぜ正式採用までなかなか至らないのか、その原因をどういうふうにお考えになっているのかという点についてお伺いしたいと思います。
 それから、予算面に関しての御質問をさせていただきたいんですが、例えば我が国が国連を通じて、特に日本として特色のある分野を確立してその政策活動を展開するというようなことになるとすれば、私はヒューマンセキュリティーの分野というのが一つの極めてその可能性が高い、我が国に適した国際貢献の対象分野であろうというふうに考えております。
 小渕内閣のもとでは、こうした考え方に基づいて国連本部にヒューマンセキュリティー・ファンドというのを設立いたしまして、そしてこれを小さく産んで大きく育てようということで、新たな我が国の国連を通じたヒューマンセキュリティーの分野における支援策のツールとしようということで動き始めているように思います。
 この政策を遂行していくときに、まだ私十分よくわからないのは、その支出の仕方なんですね。これはイヤマークをつけて、それによって我が国がその支出対象というものをある程度規定していくことができるというふうに聞いているわけでありますけれども、どの程度このイヤマークというのは出資国によって左右することが、あるいは管理することができるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
 それからまた同時に、こうしたファンドをつくるときに、ヒューマンセキュリティーということであれば、実はUNDPが最も早い時期からこうした概念を政策概念としてつくり出してそれによって活動を展開している機関でありますから、本来ならばこうしたヒューマンセキュリティー・ファンドというのをUNDPの中に設置することもまた同時に可能であったかと思うわけです。
 ところが、実際にはUNDPには設置しないで国連本部に設置をした。その一つの理由は、恐らくはより広く柔軟にそのファンドを活用できるようにすることを想定していたのではないかと思いますけれども、実際にこうしたファンドを国連のこうしたUNDPのような特定機関につくる場合と、それから国連本部につくる場合と、どういうふうに政策上区分けしてファンドの置き方を考えたらいいか。
 なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、今まで国連に対する資金協力ということであれば、ただ分担金だけではなくて、むしろ出資国の判断によって濃淡をつけられる任意の拠出金の方を新たに日本としてどのように活用するかという考え方があるかとは思いますけれども、どうもこの任意拠出金という協力の仕方も、いま一つ我が国の政策的特色をつくり出す方法としては何か十分ではないと。より我が国の政策的特色を効果的につくり出すような財政的な支援措置というものを考えたときに、こうしたファンドというのは非常にいいやり方になるかなというふうに思っているものですから御質問させていただきました。
 以上です。
#19
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございます。難しい御質問をいただきました。
 まず、人事の問題は伊勢先生の方がお詳しいかと思いますが、私も若干考えがございますのでこの機会に申し上げさせていただきたいと思います。
 私が大学で教えておりましても、現在、私、防衛大学校でございますが、ほかの大学に非常勤で参りましても、若い修士課程くらいの学生で国際公務員になりたいとか国際的な場で活躍したいという学生が結構多いというのが私の印象でございます。
 しかもそれが、先ほど鈴木委員から、結構日本人は国連に対してロマンチックな気持ちを持ってきたんじゃないかというお話がありましたけれども、必ずしもそういうことばかりではなくて、かなり地に足がついたような人たちが国連というキャリアあるいは国際機関というようなキャリアを真剣に考えているということは事実でありまして、このジュニアプログラムがどういう理由で必ずしも所期の効果を上げていないのかということは私にはちょっとわかりかねますが、恐らく入り口の部分だけではどうも不十分なんじゃないかなというのが私が持っている感触であります。
 国連職員に採用されましても、その後自動的に昇進していくというようなものではございません。国連では随分リストラも行われているわけですから、その後の転職の可能性というものは常に考えないといけないわけでして、そういうこともあって、日本の場合はむしろ女性の方が専門職員が多いのは、テニスのプロテニス現象というような言葉があるようですけれども、男性の場合はリスクをとらない、もしくはとる必要がないというのが今までの雇用慣行でございましたので、女性で意欲のある人たちが、失うもののない人たちがどんどん、伊勢先生なんかもそうだったのかもしれませんが、そういう人たちが勤めているという傾向があろうかと思います。
 したがって、人材を国連に送り込むためには、そういう人たちの後の、そういうキャリアを持っている人たちを生かすような、活躍するような場をもう少し日本の国内でもつくれはしないかということが常々考えているところでありまして、これほどODA予算が多いわけですから、ODA関係のことも現在の官僚機構だけではなくて、もう少しそういう人材を活用してやるような方法はないのかなというようなことをかねがね考えております。
 それから、ヒューマンセキュリティー・ファンドのことについて御質問をちょうだいしました。
 まず第一に、ヒューマンセキュリティーとかあるいは社会問題、ヒューマンセキュリティーという言葉はかなり茫漠たる言葉ですので、学者として私は使うのに若干ちゅうちょを感ずるコンセプトではございますけれども、意味されているような社会問題やおのおのの人間の福祉を考えるような活動というのが日本の国際貢献として一番適切ではないかというお考えですが、それについては私全く賛成でございます。
 現に、日本はその点で地味ながらも結構努力はしてきているわけでありまして、国連という場を使う一つの効果は、日本はやっていますということを多くの国に知らしめるという効果があるわけでありまして、二国間でやっているのと違う意味は一つはそういうことかなというふうに思います。
 イヤマークがどの程度にきくのかというお話ですが、これは大変テクニカルで、私も正確なことを申し上げられるかどうかは自信がないのですが、これは多分に、先ほど私が申しましたエキストラ・バジェタリー・リソーシズ、予算外資金というカテゴリーに属するものになります。それは信託基金ともう一つの大きなカテゴリーは技術援助、テクニカルアシスタンスとトラストファンドということになりまして、今御指摘のヒューマンセキュリティー・ファンドはトラストファンドであろうかと思います。
 トラストファンドは、国連とそしてファンドをつくる国との間の協定によってできているものですから、非常に厳しいイヤマークを課すような協定を国連と日本政府が結べば、理論的にはどこまででも厳しいものができるはずであろうというふうに思います。
 ただ、御指摘の点は大変おもしろくて、私も頭が十分整理できないんですが、UNDPではなくて国連本体にトラストファンドができてしまった理由は何かというところなんですが、恐らく国連側として、国連という言葉が何を意味するかも大事なんですけれども、国連の事務局としては、もちろんなるべく機動的で柔軟な形でお金が使えるようなファンドがありがたいわけですから、恐らくはUNDPよりも国連本体に置いた方がいろんな用途に使えるのではないか、もしくは使う余地があるのではないかということを国連事務局の方としては考えたのかなというような思いが今お話を聞きながらいたしました。
 なお、ついでながらつけ足させていただくと、UNDPは確かにヒューマンセキュリティーというコンセプトを打ち出しました。私は、ソーシャル・サミットというのがコペンハーゲンで開かれましたが、それの準備委員会と称するものに、ストックホルムで開かれた専門家会議にも参りましたが、非常にそこでよくわかったことは、UNDPの活動のほとんどは、いわゆるオペレーション、事業関係ではなくて、会議を開いたりレポートをつくったりと、フィールドでの活動というようなものを余りやっていないように思えたという点でございます。
 国連の社会経済関係、特に社会関係の活動は、我々学者の言葉ではアドボカシー、何らかのプログラムをぶち上げるということがどうも主になっていて、そればかりやり過ぎているのではないかという不満を私は持っておりまして、ぶち上げる、一つのアイデアを国際的に高らかにうたい上げるということに私は意味がないとは思いませんが、もう少しフィールドでの活動をやってほしいという気持ちがいたします。その点では、あるいはUNDPよりは国連本体の方がフィールド活動には向いているのかもしれないなというような気持ちがいたします。
 どういうところに、どこにつくったらいいのかというのは大変難しい御質問です。よくわかりませんのでちょっと御勘弁をいただきたいと思います。
#20
○参考人(伊勢桃代君) JPOに関して私の知っていることを述べさせていただきます。
 JPOは、先ほどのジュニア・プロフェッショナルの略称でございます。ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーといっておりまして、JPOと私たちは呼んでおります。
 おっしゃいますように、これが発足しましたときは、JPOに行って一年なり二年なり発展途上国で仕事をし、そしてその結果を見て国連で採用するという考え方で発足しておりました。それがだんだん採用されなくなってきたという背景には、このJPOにはいろんな国が参加しておりまして、ドイツも参加しております。だんだん国連の方で採用できる余裕がなくなってきたという現実がございます。ですから、日本の場合ですと、JPOにいらして、その後試験を受けていただくとか、そういうような方法でもって国連に入っていただく。ドイツは国連に非常に強い抗議をしておりました、約束が違うのではないかというような抗議をしておられました。
 やはり私は非常に残念だと思いますのは、このJPOで行かれる方というのは非常に優秀な方たちなんです。発展途上国の非常にひどい状態の中でも立派に生活をしていく、そういう人たち、そういう実力を備えて帰ってこられる。ですから、本当を言いますと国連、特にフィールドの活動をしているところでもっともっと雇っていただきたいんですが、UNDPそれからユニセフもだんだん吸収する力がなくなってきたというのが現状でございます。
 私は、表3を見ていますと、とても日本の職員の数が少ないので、もっと国連システム全体を見直して、そしてこういうところでもっと余裕があるのかどうかということ、それからもう一点は、やはり国連に就職することだけがこれからは道ではなくて、こういう人材を本当に日本がもっともっと使っていくということが大事だと思うんです。
 ですから、日本がこれからしっかりと市民と政府が直結した形でいろんなことを海外でやらなくてはいけないことがもう続々と出てくるわけですから、そういう意味での訓練をしてきた人というふうにお考えくださって、国連全体も見なくちゃいけませんが、日本の国内からこの人たちを見直して人材として使っていただきたい、これを本当に切実に思っております。
 御質問ありがとうございました。
#21
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 まず田所先生にお尋ねしたいんですが、財政難ということで行革の強制というお話が出ましたが、アナンさんのもとで改革の一環としてですか、UNハウスというのがありますね。諸機関をその国の中に集めてやるという、それで効率性を図っていくということだと思うんですが、この実効性というか進捗状況。
 それから、せっかく一カ所に集まっていくのであれば、ある意味じゃ国連の大使館みたいな、その国における代表部みたいな形ができるわけで、そこに行けば国連のことが全部わかる、いろんな仕事あるいは連携がとれるという役割になるわけで、貧困撲滅等を考えてみた場合に、現地政府との連携も非常に効率的になっていくのではないか、そういう点についてコメントをいただきたいなというふうに思っております。
 それから伊勢先生に、先ほどコミュニケーションと専門職ということを言われたんですが、去年、当調査会でニューヨークとワシントンとソウルに行かせていただいて、岡団長の御配慮で国連職員の皆さんと懇談会を持つことができました。英語力が当然あるわけですが、若い方でもネーティブに近い英語力の方がおられて、結局その職員になる方も、ネーティブということは小さいときにアメリカなり英語圏にいるということなので、そういうことに頼ってきているのかなというか、そういう人たちしかいないのかなというか、そんな印象を受けたんですね。
 先ほど早急な抜本的な英語の教育の改革をというふうにおっしゃいましたけれども、具体的にはどういうようなことを先生としてはお考えなのか。
 私は、日本政府を挙げて、二十年三十年の長期なスパンで英語圏なら英語圏に、それが直接国連職員になるならないに関係なくどんどん留学させていくという思い切った手を打たないといけないのではないかというふうに考えておるんですが、その点についてコメントをいただければというふうに思っております。
#22
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございます。
 UNハウス等についての御質問かと思います。
 結論から申しますと、それほどはかばかしい効果を上げないであろうというふうに私は思います。実態をそれほどよく承知しているわけではありませんが、この話は、国連の歴史の文脈ではコーディネーション、つまり調整という問題でございまして、もろもろある専門機関やそれをどうやって全般的に調整していくかという問題であります。
 私が今手元に持っている資料にはこういうことが書いてありまして、もろもろの専門機関、特別機関の多くは、すべてではないんですが、多くは経済社会理事会に対して報告義務があるんですが、それは一九四七年には二十二機関あったんですが、一九八七年にはそれが六十になり、そして経済社会理事会に提出される文書の総ページは四千ページに上ると。そして、そのほとんどは多分読まれていないであろうということになります。
 これは、国の諸省庁が調整が極めて難しいのと同様というよりもそれ以上に調整が難しくて、これまでもいろんなことが試みられてまいりました。一時はUNDPを調整機関として強化するというようなことも考えられたんですけれども、その考えは事実上放棄されて現在に至っています。
 問題は、これは話し出せば非常に長い問題なんですけれども、各専門機関は、例えばWHOであったらば、それは外務省の所轄というよりも厚生省の所轄なんだろうと思います。WHOでどこかの国の代表が言っていることと国連本体で言っていることとUNDPで言っていることは全然違うというようなこともしばしば起こるわけでして、つまり国の中の縦割りが直接国際機関に持ち込まれるというようなこともしばしば起こるんです。
 この調整という問題は、それに加えておのおのの専門機関なり特別機関なりの官僚的な割拠主義、セクショナリズムというものももちろん関係するわけですし、本来ならばそれを調整するのは事務総長ですけれども、事務総長にはそのような権限もなければ予算上の措置も全然別ということですから、調整しようにもそのためのてこがない。したがって、仮に同じ場所にいろんな機関がいたとしても、それによって何らかの効用はあるかもしれませんが、やっていることはおのおのの部屋でばらばらということが十分考えられるかと思います。
 これは大変難しくて、私自身は、調整の強化ということは国連の文書ではしょっちゅう言われていますが、ほとんど進展を示さなかったというか、むしろ悪くなっている傾向すらあるわけで、今のやり方では解決しない、抜本的に、国連の官僚制とは違うプログラムでもぶち上げて官僚制に参加してもらうとか、何か別のアプローチを考えないと、この問題はそう簡単には解決しないなという気持ちを持っております。
#23
○参考人(伊勢桃代君) 英語のコミュニケーションの問題でございますけれども、どういう能力を欲しているかといいますと、英語と申しますのはアメリカ語とかイギリス語という意味ではなくて、もうこれは本当に国際の言葉になっているもので、国連の機関では、ジュネーブでさえも九〇%の書類が英語で書かれていると言われておりますので、本当に英語が国際語となって使われております。この件に関しまして国連で欲しているのは、まず書くことができること。例えば会議のノートをとり、そしてそれをまとめてしっかりとしたリポートを書くこと、そこまでは望んでおります。それからあとは、指揮をとるにしても何にしても、よく説明ができること。
 それから、日本の場合を見ますと、議長になる方が外務省の中でも非常に少ない、ほとんどいらっしゃらないんではないかと思うような。国際会議でも議長というのは大変な権限があるわけです。ですから、こういう実務的な言葉の使い方ですか、こういうものをやはりもっともっと広く、どんな年代にしてもどんな地位にあっても勉強できるというようなところをつくっていただきたいという意味で申し上げて、それからもう一つは、やはり日本の受験勉強のための英語の教育というものは、これは本当に役に立たないと思います。本当にこんなことをしていると日本がおくれます。それを申し上げたかったんです。
 それから、それでは海外で教育する、これは本当におっしゃってくださってよろしかったんですけれども、私は実はどこかの会合に行くと必ず、海外で勉強した経験がないとだめなんですかということを聞かれるんです。これは私は本当に、そうですと言うのがつらいんです。日本という国は立派な国であって、教育組織がしっかりしておりまして、ここにいても堂々と国連で活躍できるということを私は若い人に言いたいなと思っております。
 ただし、今のあれでは、おっしゃるように、留学制度をもっと促進してそういう勉強を外でさせるということも一つかと思いますし、また留学できない方等もありましょうから、その意味で補充的な何か設備、もちろん東京の津田ですとかいろんなところでそういう試みをやっておられるんですが、もっと集中的なものをつくっていくということが大事だと思うんです。
 国連に入られた方が中で非常に苦労しておられるんです。これは日本のためにもよくないので、やはり特にこういう実力をもっとつけるような、必ず国連に採用された日本人はそういう研修を受けるぐらいの経営管理とコミュニケーション、この二つはやっていただくといいと思う。というのは、国連というところはその意味で偏見があるんですけれども、一人日本人がまずくなるとますますこれはだめなんじゃないかとか、特にコミュニケーションの面では本当に容疑者ナンバーワンですので、何とかこれを乗り越えなくてはと思っております。
 ありがとうございました。
#24
○高野博師君 二人の先生にお伺いしたいんですが、今国連が抱えているいろんな問題の本質的な部分というのは、国際情勢が冷戦後変化をして制度的に国連が対応できなくなっているんではないか、特に国際の平和と安全という点に関して。したがって、いわば制度疲労を起こしているのではないかということで、だからどうしたらいいかという案はないんですが。
 それからもう一つは、国連が国益追求する場になっている。ですから、国際益とか人類益とかそういうことのためではなくて、国益のためにどこの国もあるいはその職員も動いているというところに問題があるんではないかと。
 国益という点についていえば、アメリカは典型的に国益を追求している。世銀とかIMFそのほかの国際機関はアメリカの国益にかなうということでアメリカは相当力を入れている、あるいはアメリカが主導権を握っているところがあるわけですが、国連はアメリカの国益追求にかなっていないという部分があるのでお金も払わない。結果的に孤立主義あるいは内向きになるのであって、孤立主義があったから国連にかかわらないということではないのではないかと。
 そこで、日本も国連中心主義と言っているんですが、むしろ国益追求というのをもう少し表に出して、そして国連に人材を送り込むというのを国策としてやらないと、これは教育制度の改革といっても簡単にできない話なので、国連職員は特に修士以上の学位を持っていなくちゃいかぬということで、これは国の政策としてアメリカほか外国に大量に留学させる、そして大量に国連に送り込むということを徹底してやらないと日本人職員はほとんどふえないんじゃないか、僕はそう思っているんですが、その点どうお考えなのか。
 それから、よくいろんな情報で国連の職員は昇進のためには何でもやるというような、要するに能力主義ではないというような報道なんか時々あるんですが、実際に伊勢先生は中におられて、これはどうなのか、事実なのかどうか。
 ちょっと今の点、まとまりませんが、お伺いいたします。
#25
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございました。
 私の考えでは、常にすべての国は国益を追求しているのだというふうに思います。問題はその国益の中身にありまして、非常に狭い国益を追求して、しかもほかの国の支持を受けないでも勝手にやるということなのか、国際社会の支持を受けながら自分の利益を追求していくというところなのかというところが違うところであります。
 私が知っております一つのエピソードを申し上げますと、ブライアン・アーカートという国連の事務局に長く勤めていた、PKOをずっと長くやっていたイギリス人がいるんですが、彼は国連発足以来ずっと国連の職員をやっていたんですが、彼は初期のころは国連には大変懐疑的で、そして初期のジェブという国連事務次長に、国連は果たしてワークするか、機能するかと聞いたんです。そうすると、ジェブはノーと。国連はそれ自身では機能しない、国連を機能させるかどうかは、加盟国が国連を通じて国連という機関を利用しながら幅広い国益を追求していくかどうかということにかかっている、国連そのものはそのために役に立たないんだったらなくてもよろしい、あれは単なる手段である、主体は加盟国であり、加盟国が協力して、啓蒙された国益を追求するのを助けるための機関にすぎないというようなことを言われたというふうに言っております。
 そういう意味では、いささか学者的で恐縮ですが、概念的に私は国益を追求するということはごく当然のことで常に日本もそうしてきたと思うんですが、それはどういう国益をどのように追求するかということに尽きるのでありまして、アメリカのやっていることがそれほど懸命にアメリカの国益を追求しているとは私自身には到底思えないわけでございます。
 それと、世銀、IMFに関しては割と積極的というお話でございますが、それは全般的に見るとそのとおりなんですが、昨今IMFに対しても大変アメリカ議会は厳しい姿勢をとっておりまして、我々外部の者から見ると大変不思議で、国連にしても世銀、IMFにしてもアメリカは事実上支配できるではないかと思うんですが、そういうところですらアメリカ議会は大変否定的な態度をとっております。これはもう国益がどうのというような高度な判断によるものではなくて、かなり議会が内向きの、議会内でのポリティックスの結果としてそういうことが出てきているという、少なくともそういう面があるということが重要かと思います。
 それと、国連中心主義と言ってきたけれどもという御指摘でございますけれども、私も国連中心主義という言葉には若干ひっかかりはあるんですが、実態的には国連中心主義ではなかったと思います。にもかかわらず日本が国連に求めるのは、国連というものが何かもう既に固定してあってその中でどうするかということではなくて、国連を通じて日本の国益、それも広い意味での国益、あるいは国際社会がどうあるべきかというような日本のビジョンを実現していくための手段だというふうに主体的に国連をとらえませんと、国際社会で決まっている何か上の方の、雲の上に上っている立派な規範があって、それに対して我々が受動的に対応するという姿勢だと、日本のような主要な加盟国であり主要な分担金の支払い国としてはいささか受動的過ぎると同時に、分担金を支払うという形で我々は国連のあり方に対して責任を持っているわけですから、若干無責任だという批判も浴びるかもしれないと思うんです。
 したがって、国連を通じて何をやるかということをしっかり考えていくという姿勢が大切で、そのための手段として日本としてもいろんなことを国策としてやっていくというお考えには私としては賛成でございます。
 以上でございます。
#26
○参考人(伊勢桃代君) ありがとうございます。
 まず、一番最初におっしゃった国際情勢の変化と国連の対応でございますけれども、これは私は本当におっしゃるとおりだと思うんです。冷戦を越えて、そして新しい状態に入る、二十一世紀の大変な時代に入るときに国連の今の体制ではいろんな意味で無理だと思います。これをやはり基本的に変えていくというのは加盟国でないとできないことで、事務総長が幾ら頑張ってもできないということです。
 私は、一九六九年に国連に入ったんですけれども、入ったときから改革はもうずっとやり続けという感じでおりまして、そしてその一つ一つが決して成功したとは言えません。むしろ、国連というのはいかに改革をするのが難しいか、本当に大変に難しいところだと思いますので、これをどういうふうにこれからやっていくのかということは、これはもう本当に日本の政府が率先してミレニアムの総会ででもぜひやっていただきたいことだと思います。これに関してはいろいろといろんな人の御意見、また私の考えもございますけれども、大事なことだと思います。
 それから、国益追求ということと、今、田所参考人がおっしゃったことに賛成なんですけれども、国連から何を得るかということが余りはっきりと自覚されていないのではないかなという感じはいたします。
 国連から得る非常に大事なことというのは、国連側から見ますと日本というのは非常に孤立した国であると。孤立というのはどういう意味かと申しますと、いわゆる植民地政策でもってつながっていた国々、アフリカ、ラ米、そして欧米との関係があります。それから、それとつながったアジアの諸国もありますけれども、そういう中で日本が非常に孤立しているというので、いわゆる国際社会の支持を得るということが非常にこの国連の場というものは大事だと、日本にとっては特に大事だと思うんです。
 その支持を得るということは国益につながるんですけれども、また同時に国際的に助けるということ、これは相互関係になっておると思います。その意味では、日本は本当にここを有効に使ってはいないという感じがします。
 これは、アメリカが本当に老獪、それからヨーロッパが老獪な国だと思うんですけれども、人権問題がここでやられていることがどういうふうにほかの委員会に影響してくるかとか、いろんな関係性、これをつけていかなくてはいけない。ところが、縦割り社会ではそれができないということですからやはり日本の中でそういうことを、国益追求ということが必ずしも悪いことではないということ、悪くなるかもしれないけれども悪くない、それからここをどういうふうに使っていくかという目標、これを本当にもっとはっきりわかるようにしていただきたいなというのが私の感じでございます。
 それから、国連の職員は昇進のためにいわば走り回っているのかということなんですけれども、実に驚くんですけれども、各国の大使が走り回っておられます。本当に驚くほど政治的になってしまったという事実がございます。
 それから、昇進制度がはっきりしていないために、昇進のことを自分がやらなくてだれがやってくれるという気持ちが非常に強い。ですから、上司と部下との信頼関係というものが非常に揺らいでいるという実情でございます。これは現実です。私のもとおりました部下も非常に優秀な人がおりますが、昇進とはつながらない人が多いという状態で、本当にこれは見ていてもつらいんです。
 ですからこそ、何とか早く強制的にでも人事の改革、それから人事制度の確立ということを本当に期限を切ってやっていただきたい。そうでないと、本当に昇進のために走り回る人もいけませんが、だけれどもそうせざるを得ない、そういう状態であるということを解消していただきたいと思います。
 これは明らかに事務総長の責任の管轄であり、事務局内部のこととは考えられますが、しかしそれにはやはり政治の環境というものが非常に強く動いているということは確かなので、その意味でも私は、二十一世紀に向かうときの国連がどういう人材を要するのかということをはっきりと表明して、今の人材と将来とずれがあると思うんです、それで、それをどういうふうに変えていくのかとか、それに関しては年功序列制でいくのか、それとも能力制度でやるのかとか、そういう本当にはっきりとした線を出して総会の決議で決めて、そして全加盟国がそれに従うというような体制、これが本当に必要になってきていると思います。
 ありがとうございました。
#27
○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。
 財政の問題について、国連の本体ではないんですけれども、私は、この十何年間かかわってきたジュネーブにある国連人権委員会、国連人権センター、そこの移り変わりを見ても非常に財政難を実感するんですね。スタッフが削られる、だからNGOのアムネスティ・インターナショナルよりもはるかに少ない職員でやっている実態があります。それからまた、議事録なんかももう七、八年前からつくらないですね。議事録なしですよ、テープだけ。それでしかもプレスリリースを配るだけなんですね。しかもそれが英語だけだという、もうまさに悲劇的な状況があるわけですけれども、それはすべて財政難というところからきているわけです。ですから、きょうのお話は非常に実感を持って聞くことができました。
 ちょっと話は変わるんですけれども、昨年の秋に私がASEAN諸国を回ったときに、ある国の外務省の方がちょうど東ティモールの多国籍軍の派遣のことで話になったときに聞くんですね。靖夫、PKOと多国籍軍とはどう違うかわかるかと、にやっと笑うんですね。財政だよと。つまり、PKOというのは原則国連の負担になる、多国籍軍というのは参加する自分たちの自前でやらなきゃならない、だから大変なんだと。だから日本政府、ちょっと財政支援よろしくという、そういう話になるわけですね。ですから、私たちもそれは非常によく理解したわけです。反対しませんでした、日本政府が財政支援することについて。アジアにそういう声があるわけですからね。
 そういう中で、きょう先生から聞かせていただいた話で非常におもしろかったのは、原則PKOは国連負担なんだけれども、しかし実態は違うということで、先ほどPKOの受益国が払う、丸投げの場合もある、それからPKOの参加加盟国の自主的な支出の場合もあると、そういうことを言われたわけですけれども、その実態がどうかということ、それをちょっとぜひお聞きしたいというのが私のこれは田所先生に対する質問です。
 それから、伊勢先生に対しては、先ほどから熱意ある、どうあらねばならぬ、日本のかかわりも含めて非常に心熱くして話を伺いました。
 私の知り合いの息子さんでも、国際公務員になりたいという将来の希望を述べる、そういう人が何人か出てきている、これは本当に私はうれしいことだ、大事なことだと思うんですね。ですから、そういう気持ちを本当に生かすようなことをこれからぜひやっていきたい、やっていかなきゃいけないと思っているんです。
 そこで、伊勢先生にお伺いしたいのは、長い間の国連での責任あるお立場、特に人材管理という非常に難しい仕事を担当されてきたそういう長いキャリアからして、何に一番苦労されたのか。やはり人間の評価に対する違い、文化の違い、そういうことも非常に大きな問題としてあると思うんですね。ですから、公正な人事ということに非常に苦労されたんだろうと思うんですね。
 その苦労をお伺いすると同時に、やはりこれからどうしていったらいいのか、これはもちろん財政的な裏づけ等々抜きには御提言というのは非常に難しいと思いますけれども、しかしそういう御経験からどういうことを提言されるのか、その点についてお伺いしたい。
 以上です。
#28
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございました。
 PKOの予算に関してその実態をもう少し説明せよという御質問かと思います。
 PKOは、私の報告の中でも申しましたように、憲章に書いてあることではございませんので、理屈の上からいえばPKOのミッションごとにどういうふうな予算の分担方式にするかということを決めておかしくないわけでして、理論的にはどんな方式でも構わないわけであります。
 現実には、先ほど報告の中で申し上げたように、いろんな方式がございまして、ただ恐らく七〇年代の半ばぐらいからは一つのパターンが踏襲されていて現在に至っているというふうに言ってよかろうかと思います。それはPKOも分担金方式でやるということでございまして、ただし分担の比率は通常予算の比率を使わずにPKOの予算の特別な比率を使うと。それはP5、つまり安全保障理事会で発言権を持っている国がより大きな責任を果たすべきだという観点で、安保理の常任理事国が、御案内のように、アメリカの場合は通常予算の場合は二五%ですけれどもPKOに関しては三一%を払う、そういうぐあいで、計算の詳しいフォーミュラについてはここでは申しませんけれども、P5はちょっと余計に払うということになっております。そして、開発途上国は通常予算でもかなり少ない額しか出していませんけれども、それよりも一層少ないというような、よりアクセントのついている予算分担方式になっております。
 なお、予算の問題もさることながら、PKOの財政面を全般的に見るには、国連が負担するといっても、それは事実上全額は負担していないということも重要なポイントであろうかと思います。
 国連が要員を派遣した国に対して費用を支払う際に、これは原価計算というわけにはまいりません。つまり、ノルウェーも非常に、自衛隊が恐らく世界で一番高い軍隊だと思いますけれども、その人たちと開発途上国の人たちを差別するというわけにはもちろんいかないわけで、同じ仕事をしていて、あなたは高いけれどもあなたは安いんですというわけには、国際社会の共同責任という観点からそれは無理な話でございます。ということは、標準的な支払いのためのフォーミュラといいますか、単価計算表みたいなものを国連当局が持っておりまして、それに基づいて支払っております。
 したがって、日本の自衛隊が行くときももちろん、北欧やカナダのようなPKOに非常に熱心な国々が要員を派遣するときはかなり多くの国庫負担を伴っているだろうというふうに思います。逆に、国連のPKO作戦に参加すると非常にネットの収入があるというタイプの国も開発途上国の中にはあるわけでして、それがPKOに対する参加の一つの誘因になっているという事実は否定しがたいというふうに思います。
 これは何が一番いい方式かというのは理屈の上で考えても大変難しい問題でございまして、同じように危険を分担しているのだったらば別の金額を払うというのはおかしいわけですが、さりとて全額をカバーするということになると大変な金額になってしまいます。これは国際社会がいかに貧富の差があっていろんな国がまじっているかという現実を反映しているわけですから、制度的にもずばりこれで完璧という制度はなくて、その場その場で多くの国が納得する、ちょっとずるい言い方ですが、常識的な解決を地道にやっていく以外ないのかなというふうに思います。
 なお、PKOの費用に関しては、恐らく開発途上国の一部は本来要員に対して支払われるべき給料を国庫に入れてしまっているというケースもあるというふうに私は承知しております。これもPKOというのは比較的崇高と思われている活動の実態から見るとなかなか複雑なものがあるわけですが、何といっても国際社会の現実は非常にさまざまな国があるわけですから、ある程度のことはしようがないという面もあるのかなというふうに思います。
 以上でございます。
#29
○参考人(伊勢桃代君) ありがとうございます。
 いわゆる国際公務員になりたいという方、本当に数がふえております。国際公務員への道とかいう講演会でもやればもう大変な申し込みが参りますので、非常にそういう希望を持っている若い方がふえております。
 確かにそういう方たちがもっともっと行かれるような大きな組織であればよろしいんですけれども、先ほどからの話がありますように、どんどん予算は削られ、本当にアメリカは国連を縮小するという方向で動いておりますので、これもなかなか門が狭くなっております。
 国連で何に一番苦労したかとおっしゃいますが、確かに文化の違う人たちと働くということは、百八十八カ国の人と働くということはたやすいことではありませんけれども、ここにはそれなりの喜びがあります。
 一番難しいのは、上の方の人の管理能力の差が余りにもあり過ぎて、この統一ができていないということだと思うんです。それから、事務総長の権限というものが非常に限られておりまして、こういう人事を交代させるということが政治上非常に難しい。不思議なことに、ブトロス・ブトロス・ガリという方はオルブライトとも正面衝突でもって大変な思いで退陣された方ですけれども、首のすげかえはおやりになっているんですね。事務次長レベルでの首のすげかえを非常におやりになって、あれはちょっと今までなかったことだったと思いますが、何とかそういう事務総長の権限、それからやっぱり上に来た方がこのごろ何年もいらっしゃるということではなくて、本当にその方の能力をフルに使って国連が主体となって適材適所を選べるという体制ということが大事だと思います。
 それから、じゃ日本でどうしたらいいかと。先ほど申し上げましたように、経営の考えが違うというあれですから、これはもう既にある機関を使ってもよろしいし、特別の講座を設けてもよろしいし、それから海外にある機関を使ってもよろしいと思いますが、とにかくこういった能力を上げるということ、これをぜひやっていただきたいということと、海外に出られた方が帰ってこられたときに、この人材を本当に日本の人材として有効に使っていただくというのか、その方たちにちょっと失礼かもしれませんけれども、もったいないと思うんです、若い人も何にしても、日本が使える人材ですので。そういうやり方というのを本当に考えていただきたい。
 何か茫漠としたお話のようですけれども、本当にそういうことに力を入れていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
#30
○藁科滿治君 それでは、田所参考人に二つ簡単に質問をさせていただきます。
 先日の調査会でも私は、日本の議会における国際機関の財政問題、こういう問題に対する審議、こういうものが非常に消極的ではないかという意見を申し上げました。特に、アメリカの議会における対応と対照的に、日本の場合には聖域的な分野であるというようなことで国連とかODAとか余り踏み込んだ論議をやっていない、こういう問題があると思います。
 御案内のように、日本の財政事情からいいましても、それから国連の負担率というものに見合う発言力を高揚する意味からも、もう少し積極的に国会で論議をする必要があろう、こういうふうに思っているわけでございますが、こういった考えについてお考えがあれば承りたい。
 それからもう一つは、アメリカの分担金の滞納が八〇年代から続いているわけですね。その背景的な理由はきょうのお話でかなりわかりました。そこで、最近五年ぐらいの実効負担率というものがアメリカの場合どのくらいになるのか、専門的な立場で何かデータをお持ちでしたらお尋ねしたいというふうに思っております。
 それから、伊勢参考人に一つ簡単に質問させていただきますが、国際機構の職員は志がある者を待つという姿勢ではなかなか集まらないんじゃないかというふうに思うんですね。そういう意味では、公務員の採用の仕組みをもう少し工夫してみる必要があるんじゃないかと。
 私の小さな意見でございますけれども、国際機構の職員、専門のスタッフを特別の枠を設けて採用する、そこで集中的に訓練をして登用していく、こういうような考え方も必要ではないかというふうに思うんです。あわせて、欧米の学校とかシンクタンクとか、こういうところに若い大変優秀な経験も豊かな人材があると思うんですね。そういうところにアプローチするというような考え方はいかがなものでしょうか。
#31
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございました。
 まず第一点に関してでございますけれども、審議をしていただくのは大変結構かと思います。特に国連の予算の場合は、ある意味では日本の予算書よりも、アメリカが随分厳しいことを言いましたのでかなり透明な予算制度といいますか、予算書は割と検討しやすいような形になっております。日本の予算書というのは私は読んでもさっぱりよくわかりませんが、国連の予算書は割とよくわかるようにできております。
 これも、決して国連の事務当局が積極的にそうしたというよりも、アメリカが滞納をして圧力をかけ続けた結果でございまして、私は分担金を支払わないという形で圧力をかけるのは日本としては決してよくないということを再三申し上げておりますが、日本としても、これだけ大口のお金を払っていて、そして財政も厳しい、納税者に対して我々としては説明しないといけないんだから、国連としてはこういうことをしてほしい、ああいうことをしてほしいという提案を何か立法府の立場でもしていただけたらよりいいのではないかなというふうに思うわけです。
 単に受動的に政府から出てきたものを賛成か反対か決めるだけではなくて、国際社会に対して日本の立法府のとある委員会としては、国連というのはこうあるべきだし、予算制度もこうだし、例えば日本の分担率は高過ぎるということが立法府の国民の負託を受けた議員の方々で相談した結果決まったということであれば、そのメッセージはやはり大変強いものだろうというふうに思うわけですね。
 ですから、提案型といいますか、議論をしていただいて国連はかくあるべきではないかと、それを日本政府を通じてやるのが議院内閣制の建前かと思いますけれども、立法府としてもこういうことを決めたということを外国から見てもわかるような形で出していただくと、これは私ども学者が何か提言を出すよりははるかに重みのあるものになろうかと思います。
 先ほどから申し上げておりますように、国連はほうっておいては動かないのでありまして、加盟国が積極的にそれを利用していこうという気持ちがないと有効活用ができない性質のものでございます。ですから、立法府としてもそこら辺知恵を絞っていただきまして、予算という角度から、例えば日本の発言権を増すにはどうしたらいいかとか、あるいは国連そのものを改革してよくしていくにはどういうふうにしたらいいのかとか、そういう前向きな提言を出していただくとよいのではないかしらというふうに考える次第でございます。
 これくらいで御勘弁いただけますでしょうか。
#32
○参考人(伊勢桃代君) 採用に関しての御質問でしたので、これについて述べさせていただきます。
 採用の仕組みでございますけれども、これは各国政府に空席を通知いたします。それと同時に、大学院、それから女性問題でしたら女性のいろいろな団体等にも連絡をしまして、この空席を皆さんに知っていただくというふうにしております。ただし、国によりますけれども、やはりもっと広く呼びかけるということが大事なことはありますし、それからどうしても外務省中心になるということはございます。ですから、もっと企業からとか、それから大学ですとか、そういうふうに大きく広げていくということ、これはもう大事でございまして、だんだん日本の中でもそういうふうに大きな広がりを見せていっていただいていると思います。
 それから、日本の外務省の方でも随分変わられたなと思いましたのは、昔は外務省からの出向、政府の出向と普通の職員と少し差別があるのではないかと私たちひがんでおるかの傾向がございましたけれども、このごろは本当に一生懸命日本の職員全般に力を入れてくださっているということが明らかに見えますので、これは本当にありがたいと思います。
 ただ、おっしゃいますように、もう少し積極的に政府の外を動員するということ、これは必要かと本当に思います。おっしゃるとおりです。
#33
○島袋宗康君 田所先生にお伺いします。
 先生のこの資料によりますと、二の「アメリカの国連政策と国連財政」というところで詳しく、六〇年代の時代にはアメリカは非常に国連に対して大きな期待を持っていたと、ところが七〇年代にまた変わっていくと、こういう年代によって非常に大きな変動が出てきておりますね。非常に詳しく書かれてわかりやすいと思っておるんです。
 その中にあっても、九三年の例のソマリアの米兵が殺害されたというようなところから一転してまた国連に対する不信感があって現在に至っているというふうな状況だと思いますけれども、しかしアメリカの世論としては依然として国連に対する期待度というのは六五%も持っているというふうな状況ですね。わずかに十数%しか反支持率がないというふうなことでありますから、今の状況からすると、アメリカが生みの親であるにもかかわらず全く非協力であるというふうな面からすると、やはりこの国連そのものもアメリカがあるわけですから、何とかやっぱりこの状態じゃいかぬじゃないかというのが世界的な世論かと思いますけれども、その点についてはまだもう少し詳しく、どういうふうにすればアメリカがより国連に貢献できるような体制をつくれるか、その辺もし先生のお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
#34
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございます。
 先ほど藁科委員の御質問の二番目に私、うっかりしまして答え損ねました。分担金、アメリカが滞納しているけれどもどれくらい実効的には払っているのかという御質問でございました。
 実は、この数字はかなり子細に検討しませんと正確なことを申し上げられませんので、極めて大ざっぱな数字だというふうにお考え願いたいんですが、国連の予算といいましても、ここで問題にしているのは通常予算であるということに限って申しますと、二年分の予算を滞納してしまうと、憲章上、総会での表決権を失うということが書かれております。実は、これが六〇年代にも問題になって、ソ連とフランスに適用されそうになったんですが、そのときはこれを適用しないということになりましたので実際にそうなってもアメリカに適用されるかどうかは怪しいんですが、アメリカの議会はぎりぎりそこら辺、そのあたりまで滞納金がふえそうになるとその部分は払うということを続けておりまして、何%という数字では申し上げられませんが、滞納をずっと引きずってきている額が二年間分の分担金に相当するぐらいの額をずっと引きずってきている、それはふえてはいない、しかし法的にはペナルティーが科されるぎりぎりぐらいの段階をずっと維持しているというふうにお考え願えれば大体正解ではないかというふうに思います。
 ということは、実効支払い率は恐らく経常分に関してはかなり高い、つまり未払い分がふえていない程度には経常的には払っているわけですから、どんどん雪だるま式に滞納分がふえているという状態ではないということは申し上げられるかと思います。
 今の島袋委員の御質問に関してでございます。
 アメリカが国連に対して大変非協力的であるのを何とかできないのか、その背景は何なのかという御質問であります。類似の質問を随分たくさんちょうだいしていますが、それは当然のことでございまして、アメリカが積極的にならないような国連というのは有効とはなり得ないわけでして、我々としてアメリカをどうやって国連の場に引きずり出すかということで何ができるのかという知恵を出さないといけないんだろうと思います。
 再三申し上げておりますように、日本が同じように分担金を払わないというようなことをやり出すとむしろ逆効果になりかねないと私は思いますので、そういう危ないことはやめた方がよかろうかという気持ちが私はしております。
 例えば、国連を通じてアメリカも入れるようなプログラムを一緒にやりましょうと。例えば、特定の地域で特定の年限を区切って非常にはっきりとした目標があるような、達成度がはっきりわかるようなプログラムを日本がお金を出して打ち出します、アメリカもこれに乗ってくださいというようなことを日本から持ちかけてみる。そうするとアメリカとしても、国連を通じてやると、自分でやるよりも国際社会で分担しながらやるわけだから、これは国連とはいいものだなというような気持ちになってくれるかもしれません。
 そういうふうに何かアメリカに対して積極的な誘因を与えるような方法が日本としてとれないかということを、特に日本の場合は安全保障面ではどの程度のことをするかということは各会派いろいろ御意見あろうかと思いますけれども、予算面では厳しいとはいえまだまだ余地があるわけですから、そういう予算上の措置をてこにしながらアメリカを国連のプログラムに引き込んでいくというようなことを考えるというのが一つのことで、具体的に何か言ってみろと言われると私としては直ちに困ってしまうんですけれども、それは思いつくままに言えば、識字率を向上させるとか、あるいは麻薬の問題はアメリカは大変深刻でございますので麻薬関係のプログラムを一緒にやろうとか、それを国連システムを使ってやろうというようなことを持ちかければ議会の反応も随分違うんじゃないかなというような気がいたします。そこら辺は知恵の出しどころではないかなという気がいたします。
 何分アメリカが大国なのは、再三申し上げているように、国連とは関係なく大国なのですから、その大国たるアメリカにどうやって行儀よくしてもらうかというために我々として国連を利用するんだという意識でかからないと、積極的に利用するんだという意識でかからないとうまくいかないのではないかなというふうに思います。
 もう一つは、今、島袋委員が御指摘のように、アメリカの世論レベルでは国連に対してそれほど反感が強いわけではないわけでして、これはすぐれて議会の問題であります。行政府だけを相手にしていてもだめで、議会の議員さんたち、立法府とも交流があるわけですから、日米二国間では協力が難しいことも国連という多国の場ではいろんな会派が協力できますよというふうなことをおっしゃってくだされば、アメリカの議員にもいろんな影響があるんじゃないかなという気がいたします。
 いずれにせよ、イデオロギー的に何があっても、やりが降ろうが何が降ろうが絶対反国連だというような、そこまで堅固たる反国連派の議員もアメリカの議会には私は少なかろうと思いますので、それは一定程度の効果があろうかと思います。
 第三番目に考えられますのは、議会だけではなくて、アメリカの世論に直接訴えかける方法はないかということでして、議会がああいうことをやっているためにアメリカは損をしていますよというようなメッセージを何とかアメリカの国民に出す方法はないかと。
 例えば、事務局は直接ロビーイングをすることは政治活動はできませんので禁じられていますけれども、例えば国連協会とかなんとかというのはアメリカにもございますし、そういう活動を強化するために日本としてどんな協力ができるのかということを考えてみるとか、何とかアメリカの世論に対して日本の政府なり立法府なりとしても、あるいは我々学者としてもできることは何かないかと考えてみるとか、現在のプレーヤーだけではなくて、プレーヤーを広げて新たなプレーヤーを入れて今の状態を打開するというようなことを考えてはどうかなというふうな気がいたします。
 厄介な問題ですが、アメリカは非常に変わりやすい国ですので今の状態がずっと続くということでもないし、そしてアメリカはいろいろ問題もありますし、私も論文の中でアメリカの問題を非常に強く指摘したところでございますけれども、オピニオンリーダーがいろいろやっている間にかなりの確率で時間がたつと自分でまともになるという部分もアメリカの歴史が示しているところですので、我々としては短気にならずに辛抱強く正論を、できることをやっていくということが日本としてできることじゃないかなというふうに思っております。
#35
○会長(井上裕君) ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#36
○会長(井上裕君) 速記を起こして。
#37
○月原茂皓君 いろいろ貴重なお話をありがとうございました。
 私は、もう時間も限られておりますので、伊勢先生にお尋ねしたいと思います。
 先生が先ほど説明されておったときに、日本の若い人に非常に苦労をかけておると、こういう言葉があったですね。ざっくばらんに言って、よその国の人たちで管理職についておるのはたくさんおりますね。見ておって、現在の状態で日本の若い人にはそのくらいのことはちゃんとできるような人間はたくさんおると、たくさんというか、資質を持っておるような人間がおるというふうに思われておりますかということが一つ。
 そうすると、やはり国連というのは国益というものを一つ頭に入れておかぬといかぬわけですから、その場合に我々が今後管理職をとるという場合に、どういう方面が日本の国としては管理職をとりやすいし、どういうところで活動すべきだと、その点をお伺いしたいと思います。
#38
○参考人(伊勢桃代君) ありがとうございます。
 まず、資質を持っているかどうかということなんですが、一番の境目に来るときがP4の人をP5に上げるときにそこに上がれない人が多いわけです、当然ポストが少ないですから。P5というのは課長級でございます。そこで非常に明らかになるんですけれども、日本はそこでひっかかります。というのは、非常に専門職でまじめで、そして一生懸命仕事をやって、これは認められるんです。ただ、そこで指導能力を出せるかどうかということなんです。これは本当に私は思いますのは、訓練と御本人の意思、自分がそういう指導者になりたいという意思があれば、これは何とかできる問題ではないかなと思います。
 特に、不思議な話、これは男女共同参画のときに、差別になりますが、女性の方が確かに国際環境には非常に順応して、そして非常に流動的に動かれるということがあります。ですから、私たちがそのころ心配しておりましたのは男性が元気がないということでありましたが、それはちょっと余論といたしまして、これは本当に本人の意思さえあれば何とかなることではあると思います。
 それから、ただどうしてそれが出ないのかということでありますけれども、やはりそういう指導力をとろうという気がない方が割におられるということはあります。これが日本的な性格なのかということかもしれません。
 それからもう一つは、外国の管理職をまず申し上げますが、全般的に高い地位で国連に来られる方は管理がまずいです。百八十八カ国の中で本当に経営管理をやかましく言っている国というのは非常に数が少ないわけです。これは、特にアメリカとか西欧のところで経営学とかそういうことが非常にやかましく言われているわけで、そういう国が世界じゅうにあるとは限りません。ですから、その意味でも管理職の人たちの研修というものを今非常に強力に、これは取らなくてはいけない必須科目として国連ではやっております。
 ですから、管理職をとる、どういうふうにして管理職を持ってくるかということなんですけれども、やはり私は、これは先ほども御意見がありましたように、国全体が一緒になって共同作戦でございますか、それをやる必要はあると思います。
 それはどういうことかといいますと、企業、それから財界でもどこでもいいんですけれども、一緒になって、とにかくこういう重要なポストがあるんだから国としてこのポストをとるからここに行ってくれと、そういうような国のレベルとしての決断というんですか、そういうものをまずやっていただく必要があるのではないかなと思うんです。
 今まで外務省の方を見てまいりましても、非常に犠牲が大きいというようにとられておられるし、全く犠牲が大きいのかもしれません。そこをちょっとお酌み取りくださって。
 ありがとうございます。
#39
○野沢太三君 自民党の野沢でございます。
 国連の費用に関して、きょう大変貴重なお話を伺いました。また、職員の問題につきましても、本当に現場で御苦労された伊勢参考人のお話、大変私どもにとっても心しなければいかぬ課題だと思うわけでございます。
 そこで、簡潔に一点お伺いしたいんですが、国連の分担金は各国にGNPを基準に割り当てるということで割り切っておられるんですが、これはもう少し収入をふやすという意味からしたら、もちろんGNP基準だと思いますが、例えば先日も小和田さんのお話を聞けば、責任比率といいましょうか、例えば常任理事国は一定のパーセントを維持してもらう、こんなのも一つあると思います。それから、アメリカが今好景気で史上空前の経済の繁栄を続けておる、そういったところからある程度ボランタリーな基金も受け取るというような、要するに基金の枠をもう少し広げるという努力、工夫がないのかどうか、この点についてお詳しい立場でひとつ御提言あるいは感想でも結構ですが、田所さん、お願いしたいと思います。
 それから、伊勢さんから先ほどから大変身につまされるお話を伺っておりますが、まずはいい人を送り込む、組織的に取り組むという意味で、私どもの経験からしても、学校をつくって送り込む、これも一つあると思いますが、今、多様な時代ですから学校というわけにいかぬかもしれませんが、少なくとも養成機関、あるいは特別な講習の機関なりチームをつくって送り出すという、これがまず一つですね。
 それからもう一つは、そこへ行ったときに孤立したり悩んだりしないようにお世話をする裏チームといいましょうか、国連代表部があるわけですから、あの辺のところでもうちょっと国連のプロパー職員の方のお世話をするということが非常に大事ではないかと思います。私もかつて本部に伺って担当職員の方といろいろ懇談をしてみると、将来が不安だということをやっぱりおっしゃるんですね。自分がこの勤めが終わった先どうなるだろうかという一抹の不安を持ちながら、しかし今の仕事に打ち込んでいるということでありますから、やっぱり行く先についても何らかのお世話をするんだという、そういった保証があれば安んじてやっていかれるんじゃないかな、こんな印象を持ちました。
 これは人にもよりましょうし、また機関として、国として取り組むというものが必要じゃないかな、必要ならもう立法措置もしてもやるべきではないかと私は思うんですが、ちょっと御感想を。
#40
○参考人(田所昌幸君) ありがとうございます。
 手短に申し上げます。
 現在の分担率以外の分担率があり得るんじゃないかというお話でございます。答えはもちろんイエスでございます。なお、現在の分担金比率は必ずしもGNPだけではなくて、大変複雑な方程式で、判然とはどういうふうになっているのかよくわからないけれども、それはいろいろな妥協の産物としてそうなっているわけでして、おおむねGNPという御指摘は正しいんですけれども、そういうフォーミュラになっております。
 ただ、私としては、幾つか御指摘申し上げたいのは、事の本質はお金が足りないということとはちょっと違うんじゃないかというふうに思っておりまして、再三申し上げておりますように、通常予算は金額としてはそれほど大した金額ではないわけであります。問題は、原則としてどういうことが望ましいのかというところと、それをどうやって国際社会で合意を得るのかという点でありまして、ともかく通常予算の予算だけを何とかするということであれば、何か先日のアメリカの新聞によると、アメリカのとある富豪が米政府が払わないのはみっともないからおれが寄附をすると言ったらしいですけれども、場合によってはそんなお金でも賄えるかもしれないようなお金であります。あるいは、しばしば予算の調達方法としては航空運賃に若干の課税をしてはどうかとか、その種のことも言われているわけであります。
 私は、どんな分担比率であるにせよ、国際連合が現在の憲章に基づくように加盟国を主体とするような国際機関である限りは義務的な部分というのはあるわけだし、それはちゃんと払うんだという原則は曲げてはいけないのではないかと思うわけです。比率の問題はそれから考えればよいことでありまして、実は長らくアメリカとか少数の国に余り極端に予算の負担なり予算を依存する制度はいけないということが随分言われてきているわけで、それに対してはアメリカが反対したというような奇妙な歴史もございます。
 ですから、因果はめぐっておって、いろんな方式があり得るんですが、少なくともこれは額の問題ではなくて、一つの原則さえあればどんな方式でも私は構わないのではないかと思います。ですから、四つか三つの国に分担して一つの国が二〇%以上というのはだめだ、最も豊かな国でも一〇%だというようなことにすれば、一国が分担金を滞納したからといって直ちに国連がおかしくなるというわけではありませんので、そんなことも考えられるかというふうに思います。
 時間をとって恐縮ですが、ただアカウンタビリティー、説明責任という観点からすると、あくまで加盟国の拠出金が基礎であるという原則は曲げてはいけないんだろうというふうに私は思っております。
 以上でございます。
#41
○参考人(伊勢桃代君) 短く申し上げます。
 野沢先生のおっしゃった人事に関することは本当に大事なことなので、ありがとうございました。
 それから、分担金の方でございますけれども、二十カ国で九〇%の予算を持っているというのは非常に脆弱な体質であって、分担金の計算の仕方、例えばこの間は中国の分担金が一%ということが問題になった。これもやはり考え直すということが必要だと思いますので、これこそ本当に分担金委員会でやりますので、ここで考えていただくことが必要かと思います。
 それから、国連はずっと何十年もの間、国連の財政基盤をしっかりさせるということでいろいろな考えが出されてきました。例えば、ちょうどOPECがこのときには一バレルに対して一セントを国連の国際機関に出すということ、それからこれはよく言われた国際的な観光旅行の〇・〇一%をこちらに上げるとか、そういう考えがたくさんあります。これに対して、現在のアメリカの外交委員長は非常に激しい反論で、税金を国連にやるなんていうのはとんでもないということを「フォーリン・アフェアーズ」に書いておいでになりますけれども、それにしてもいろいろな考えがありますから、やはりこの段階で一度それを集めて、そしてそういう人たちのいろんな案というものを考えるということは大事だと思うんです。というのは、イギリスでさえも非常に少ない額しか出さないというような状態になってきますと、これはますます将来が不安になってきていると思います。
 それから、国連の事務局はもう本当に効率で何かもっとお金を使わないで済む方法がないかというのを一生懸命考えておりまして、これをこれ以上切るということは、使い方はまだ問題がありますが、しかしながらこれ以上縮小するということは、これは本当に世界にとってまずいことだと私は思います。
 ありがとうございました。
#42
○会長(井上裕君) 本日の質疑はこの程度といたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 田所、伊勢両参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただきまして、おかげさまで大変有意義な質疑を行うことができました。
 最後に、両参考人の今後の御活躍をお祈りいたしまして、お礼のごあいさつにかえる次第でございます。
 ありがとうございました。(拍手)
 次回は三月一日午後二時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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