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2000/04/25 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 経済・産業委員会 第12号
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2000/04/25 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 経済・産業委員会 第12号

#1
第147回国会 経済・産業委員会 第12号
平成十二年四月二十五日(火曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十日
    辞任         補欠選任   
     千葉 景子君     足立 良平君
 四月二十四日
    辞任         補欠選任   
     倉田 寛之君     世耕 弘成君
     保坂 三蔵君     中島 啓雄君
 四月二十五日
    辞任         補欠選任   
     続  訓弘君     海野 義孝君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         成瀬 守重君
    理 事
                馳   浩君
                畑   恵君
                円 より子君
                山下 芳生君
                梶原 敬義君
    委 員
                加納 時男君
                陣内 孝雄君
                須藤良太郎君
                世耕 弘成君
                中島 啓雄君
                真鍋 賢二君
                足立 良平君
                今泉  昭君
                木俣 佳丈君
                海野 義孝君
                加藤 修一君
                西山登紀子君
                水野 誠一君
                渡辺 秀央君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        塩入 武三君
   参考人
       一橋大学大学院
       法学研究科教授  松本 恒雄君
       社団法人全国消
       費生活相談員協
       会消費生活専門
       相談員      岡田ヒロミ君
       社団法人経済団
       体連合会経済本
       部長       角田  博君
       日本弁護士連合
       会消費者問題対
       策委員会委員長  藤森 克美君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○消費者契約法案(内閣提出、衆議院送付)
○消費者契約法案(第百四十六回国会千葉景子君
 外一名発議)(継続案件)



    ─────────────
#2
○委員長(成瀬守重君) ただいまから経済・産業委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、千葉景子君、倉田寛之君及び保坂三蔵君が委員を辞任され、その補欠として足立良平君、世耕弘成君及び中島啓雄君が選任されました。
 また、本日、続訓弘君が委員を辞任され、その補欠として海野義孝君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(成瀬守重君) 消費者契約法案(閣法第五六号)及び消費者契約法案(第百四十六回国会参第六号)の両案を一括して議題とし、参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、参考人として一橋大学大学院法学研究科教授松本恒雄君、社団法人全国消費生活相談員協会消費生活専門相談員岡田ヒロミ君、社団法人経済団体連合会経済本部長角田博君及び日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長藤森克美君に御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております両法律案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様から、松本参考人、岡田参考人、角田参考人、藤森参考人の順にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、参考人の御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、松本参考人からお願いいたします。松本参考人。
#4
○参考人(松本恒雄君) まず最初に、このような発言の場を与えてくださいましたことに対して、お礼申し上げます。
 さて、消費者契約法案、さらにそのもとになりました消費者契約法検討委員会の報告書につきましては、既にさまざまな立場からの批判や不満の指摘がなされているところであります。
 これは、確かに中身につきまして妥協的ないしは折衷的な部分が非常に多いということから、事業者側から見ても消費者側から見てもあるいは研究者の側から見ても、必ずしも一〇〇%満足できるものではないということをあらわしています。
 とりわけ、重要事項の不告知について行為を要求し、そのかわりに情報提供の努力義務を置いているような点、あるいは退去の意思表明が威迫、困惑の場合に必要だとし、しかし態度であらわすという形でもよいというふうに報告書の注で書いている点、あるいは一般条項といいながら、なお完全な一般条項にはなっていない、ミニ一般条項的なものであるといった点が、この性格を端的にあらわしていると考えます。
 しかし、国民生活審議会の審議の方式が、消費者、事業者のコンセンサスをベースに報告書を練り上げていくという形をとっている以上は、このようなある程度妥協的なものも仕方がないということが言えると思います。その意味で、合意に達したという案は、ベストなものではないにしても、現段階でのベターソリューションであるというふうに考えております。
 次に、消費者契約法の意義について述べたいと思います。
 まず大きいのは、従来の行政ルール中心の消費者保護から、民事ルールを重視したものへという変換を促す一つの大きなファクターになっている点であります。
 従来は、何か問題が起こりますと、それを後追い的に規制するため、取り締まるための法律ができて、しかもそれを執行するのは所管の行政官庁であるという、まさに被害の後追い的な行政による消費者保護が中心でありまして、法律を動かしていくのも行政であります。
 これに対して、民事ルールといいますのは、行政は一たん外に出て、関係当事者間の民事法上の権利の行使、契約を取り消すとか解除するとか、損害賠償を請求するとか、効力を無効にするとか、そういった私人相互間の法律問題として処理をしようとするものであって、行政が消費者を守ってあげるという形から、消費者がみずからの権利を行使するという形でみずからの利益を守るという、法律を執行する、エンフォースする主体は行政ではなくて消費者であるという点で、非常に重要なものであります。
 この意味で、現在、同様に国会で審議されております独禁法の改正案の中で、被害者に民事上の差しとめ請求権を与えたり、あるいは損害賠償の請求をしやすくするような手だてがなされておりますが、まさに消費者契約法は、事業者・消費者間についてのそのような新たな民事ルールをつくろうとするものであり、独禁法は、主として事業者相互間ということになるでしょうが、そこで独禁法違反行為によって不利益を受けた競争事業者に対して、あるいは間接的には消費者についてもそうですが、一定の権利行使をゆだねるということで、行政が中心になって動かしてきた法律の仕組みを民間私人に開放するという性質を持っております。
 言いかえますと、従来の行政が消費者を保護するという意味での消費者保護法からその保護という言葉が外れるといいましょうか、消費者の法、あるいは消費者と事業者の間の市場ルール、取引ルールに関する適切な法律という意味で、私は、市場志向の消費者法という言い方をここではしております。
 市場内で、マーケット内で生じたことは市場内で解決するのがよりよいであろう。その解決手法は、契約を解消したり無効にしたり、あるいは損害賠償という形になります。これは、言いかえれば、フェアでないやり方で事業者が利益を得た場合には、その利益は吐き出さなければならないというルールを民事ルールとして設定することでありまして、言ってみれば、フェアな勧誘、契約、競争を経済的インセンティブを利用して実現しようとする役割があります。
 次に、消費者契約法の意義の第二点であります。
 消費者が信頼できる市場環境を整備するという役割がもう一つこの法律にはあると考えます。
 消費者契約法を批判する際に、この法律では救済されない被害者が多数出るという批判がなされます。私もそれはその局面だけをとらえれば事実だと思いますが、消費者契約法が消費者被害の個別救済だけを念頭に置いた法律ではないということを強調したいと思います。
 被害救済の側面だけを見ますと、既に生じてしまった事件について事業者側と消費者側のどちらを勝たせるかということですから、これは一方が勝てば一方が負けるという意味でゼロサムの世界になります。あるいは、紛争解決のためのコストを差し引けば、マイナスサムの世界ということになります。
 これに対して、もう少し大きなマーケット、市場という観点から状況を見ますと、従来の消費者契約法が成立する前の民法という百年前の法律の世界では、当事者は情報においてもまた交渉力においても平等であるという前提に立っております。したがって、一たん契約をしますと、はいと言った以上は後の負担はほとんどはいと言った側が負うという状況にあります。言ってみれば、はいと言ったら負けというルールです。損をしたくなければ、はいと言うなというルールで動いてきているわけです。
 これに対して、消費者契約法はむしろ信頼のルールへマーケットの環境を変えていくものだと考えます。すなわち、はいと言ったら負けというルールは、消費者にとっては、事業者の言い分を信用したらあなたは損をしますよと、それで裏切られたとしても文句は言えませんよという結論になります。これに対して、消費者契約法に盛り込まれていますところの幾つかのルールは、はいと言ったとしても、それだけで負けになるわけではない、むしろ消費者として事業者を信頼して、それが裏切られた場合はその信頼は回復されるべきものであるということを宣言していることから、逆に言えば、事業者側に対してフェアな販売活動を促す要因になると考えます。そして、このようなルールは既にフェアな販売手法をとっている大多数の事業者にとってもプラスになると思います。すなわち、十分な説明をしないで、あるいは威迫、困惑をさせて契約を不当にとる事業者というのは、真っ当な事業者から見れば、不公正な形での競争をしているとも言えるからであります。
 結論を申し上げますと、消費者契約法による従来の民法のルールを若干転換することによって、消費者が事業者をより信頼できるようになり、その結果、事業者のマーケット規模は広がり、事業者にとっても消費者にとっても、ともに得るところの多いプラスサムの世界あるいはウインウインゲームの世界になるということであります。
 個別の消費者被害の救済につきましては、例えば訪問販売法がかなり切れ味の鋭いルールを定めていますし、金融商品販売法が成立しましたら金融サービスについてはかなりの効力が生じてくると思います。消費者契約法は、これらの個別法に比べますと少し漠然とした一般的なルールを定めているわけで、訪問販売法が抗生物質とか解熱剤に当たるとすれば、消費者契約法は体力づくりのための漢方薬とかビタミン剤とか健康増進剤とかという性格のものだと思います。言ってみれば、じわじわ効いてくるものであります。
 既に、この効果は法律ができていないにもかかわらずあらわれております。例えば、全国銀行協会は、既に昨年の三月に「消費者との契約のあり方に関する留意事項」というものを発表しまして、翌四月には消費者ローン契約書の見直しを行っています。法律ができていないにもかかわらず、このような議論をしていることによって銀行業界で既に効果があらわれているわけで、これ以外にもいろいろな業界で消費者契約法の議論を参考にした見直し作業が行われています。
 最後に、今後の課題について幾つか申し上げます。
 第一は、消費者契約法が消費者の体力づくりの法律であるとすれば、それをサポートするところの各種の消費生活センターの役割はますます重要なものになるだろうということであります。
 次に、消費者契約法のルールが今でも漠然としている、できるだけ具体的な指針を明らかにする法律にしてほしいという要求が事業者側からいつも寄せられておりますが、私は、消費者契約法というのはある程度原則を宣言するものでいいのではないかと思っております。より具体的な各業界ごとの細かいルールにつきましては、それぞれの業界が中心となって、消費者や行政、学識経験者の意見も聞きながら、勧誘についての自主規制ルールをつくる、行動綱領をつくる、あるいは公正な標準約款を作成するという形で、具体的なルール化は事業者、消費者、行政、学者等が参加する共同規制の形で実現していっていただきたいと思います。この点で、金融商品販売法の中に盛り込まれておりますコンプライアンス規定を各事業者に策定させてそれを対外的に公表させるという試みも非常に参考になるものと考えます。
 次に、実際に消費者との間で苦情が生じた場合、トラブルが生じた場合の事業者の苦情処理体制の整備の点であります。これにつきましては、ISO、国際標準化機構の中で苦情処理についての国際規格づくりが既にスタートしております。我が国におきましても、日本工業規格の中に苦情対応のマネジメントシステム規格をつくるという作業が行われておりまして、原案が公表されております。
 次に、事業者と消費者の相対交渉ではなお解決しなかった問題につきましては、第三者型の紛争処理機関の設立、整備を進めることが必要かと思います。公的機関としては既に消費生活センターのあっせんあるいは都道府県の苦情処理委員会の活動がございますが、民間の部門におきましても、業界単位で独立性の高い紛争処理機関、英語ではビジネスオンブズマンというような言い方をすることもありますが、このようなものを導入すべく各業界で努力していただきたいと思います。この点につきましても、ISOで国際規格づくりへの動きが存在しております。
 さらに、約款につきましては、約款の適正性を調査し、不適正な場合には是正を勧告するような公的な仕組みを創設していただきたいと思います。これはとりあえず消費者団体の団体訴権の代替物として必要かと思います。
 さらに、悪質事業者につきましては、これは民事ルールで対応できる限界がございますから、やはり取り締まりの強化、警察や公正取引委員会、監督官庁による適切な規制が必要かと思います。
 最後に、今申し上げました市場志向、マーケット志向の消費者法の一環として消費者契約法をぜひ成立させていただきたいわけですが、その次の段階の問題といたしまして、消費者信用にかかわる法律の整備を国会においてもぜひ実現していただきたいと思います。
 といいますのも、製造物責任法が既に数年前にできまして、これで安全性に関する基本的な民事ルールができました。現在、消費者契約法の審議をしていただいておりまして、ここで基本的な契約についてのルールができます。また、金融商品販売法におきまして金融サービス契約についての基本ルールができます。
 そういたしますと、消費者取引の領域におきまして大きくおくれているのが消費者信用ということになるわけで、この点についてのレベルアップを図っていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#5
○委員長(成瀬守重君) どうもありがとうございました。
 次に、岡田参考人にお願いいたします。岡田参考人。
#6
○参考人(岡田ヒロミ君) ただいま御紹介いただきました消費生活専門相談員の岡田でございます。
 私は、昭和五十二年に通産省の消費者相談室に相談員として入りまして、国の消費者行政の隆盛期を経験してまいりました。六十一年に、ちょうど国と地方自治体を挙げて豊田商事一一〇番があった翌年なんですが、この年に通産省をやめまして、これからは地方自治体の時代だなという思いを胸に自治体へ勤務することにいたしました。現在、練馬区の消費生活センターに週三日、足立区の消費生活センターに週二日勤務しております。
 そのように、私の二十二年間の消費生活相談員としての生活は、ただ消費者の相談を受けて処理をする、そういうものだったわけなんですが、こういう私がきょうこういう立法の場でお話しさせていただくということは大変思ってもいなかったことでして、心からお礼申し上げたいと思います。
 それと同時に、きょうも北は北海道から南は沖縄まで相談業務に携わっている仲間たちの思いをどの程度皆様方にお伝えできるか大変心細い限りなんですが、相談現場の一相談員として、消費者契約法に対しての思いをお伝えしたいと思います。
 先ほどもお話に出ましたが、消費者契約に関して最初に私たちがなじみになったというのが訪問販売等に関する法律だろうと思います。これは五十一年に制定されたんですが、書面の交付義務とかクーリングオフ制度という、今まで事業者の方にとっては本当に寝耳に水の規制がかかってまいりました。ですが、これは指定商品制をとっておりまして、限られた製品に関してこういう義務が課せられたわけなんですけれども。
 この法律、一回目の改正が、五十一年に制定、公布されまして、六十三年に改正されました。そこで役務が入ってきたんです、サービスが。その次に、二回目の改正が平成八年。そして今回、去年の十月なんですが、三回目の改正がなされまして、それまで営業所等以外での販売に関しての規制だったものが、今回の改正では、営業所等における契約、特に四つの業種に限られたんですけれども、トラブルが最も多いとされるエステティック、それから外国語教室、それから家庭教師派遣、学習塾、この四業種につきまして、訪問販売と同じように書面の交付とかクーリングオフが規定されました。
 この流れを見ますと、五十一年、六十三年、平成八年、そして平成十一年というぐあいにその改正がかなり期間が短くなってきています。これはとりもなおさず、これは個別法というふうに言っていいかと思います、特別な業種に関して規制する法律という意味で、個別法の効力が余り長続きしなくなったということではないかと思います。
 それに加えて、最近、規制緩和の影響でしょうか、行政が自分のところで所管する法律に関して、その法律を運用して行政指導をするという、そういうことが大変少なくなりました。
 そういうこともありまして、私ども相談現場で個別法だけで解決できる案件というのは本当に少ないんです。ほとんどが一般法である民法、それからその民法の特別法である商法、そしてまた刑法という、そういう公法を駆使して私どもは処理をしなきゃいけない、そういう状況になっています。
 ところが、私たちがその事業者の方に一般法でこういうことが決まっていますということを説きまして、そしてそれを守ってくださいと言うことは大変困難なんです。事業者の方からすれば、個別法に関しては十分にわかっていて、守らなきゃいけないという頭はあるわけなんですけれども、一般法に関してはやはり余り関心がないという感じがして仕方がないんです。そうしますと、余り私どもが強く言いますと、ああ、もうわかった、わかったと。じゃ、裁判やってくれやと、こういう言葉が最後に出てこないとも限らない。その辺を私どもは事業者の方の顔色をうかがいながら、そういう言葉を出させないような形で処理をしているというのが現状でございます。
 それはなぜかと申しますと、消費者にとって裁判を起こされるということは大変なことです。加えて、消費者の方から裁判を起こすというのはもっと大変なことなんです。そういう意味では、消費生活センターのあっせんではありますけれども、歩み寄りの解決で消費者のほとんどは救済されているのではないかと思います。
 そんな中で、きのう私が受けた相談を御紹介したいと思います。
 それは、かなり以前、つまりバブルのころのあれなんですが、原野商法というのがありました。北海道とか山梨の奥とか、そういうほとんどその土地に住んだり耕したりできないような原野を消費者に高く買わせるという商法だったんですが、そういう商法の被害者になった方々は第二次、第三次の被害を受けています。
 今回の私の相談は第二次に当たるんですが、八十過ぎのおひとり住まいの女性の方です。この方が二、三十年前にお買いになった北海道の土地に関して事業者の方からはがきが舞い込んだそうなんです。それによりますと、おたくの土地が草ぼうぼうで周りが大変迷惑をしていると。ついては、測量して草を取って、そしてくいを打ちなさいと、そういう勧誘であったらしいんです。
 そうしましたら、そのお年寄りの方は、身寄りがめいごさんとかそういう方なものですから、自分が亡くなった場合にそういうめいごたちに迷惑がかかるということを大変悲しみまして、それで四十万の即金を払って契約したと。その話を聞いためいごさんがびっくりしまして、おばさんに対して、もう払ったお金は返ってこないかもしれないけれども、おばさん、これ絶対だまされているよと。ついては、これ以上またお金を取られないとも限らないから、消費生活センターに相談しようというふうに説得して私どもの方へ参りました。
 この業者に関しましては、過去に行政の指導を受けておりましたので、そのことを私どもから行政の方にも言いまして、御本人といいますかめいごさんの方から書類を持って相談に行かせようと思いました。ところが、その行政からの回答なんですが、実はこの事業者に関しては平成十年に免許を取り消しているために指導ができないと、こういう回答だったんです。つまり、法律で免許とか登録をした業者でなければ営業できないはずの業種に関して、それが登録や免許がなくても堂々と営業ができる、しかも、そういう事業者に対して行政が指導できない、こういう実態というのは私ども相談員はよく経験しております。これは不動産に限ったことではありませんで、最近の金融関係に関して、特に貸金業に関しては、人にもよるんですが、大方はこういう対応です。
 そこで申し上げたいことは、今回契約法ができることによって、民法というよりは消費者契約法という名前がついたことによって事業者の方との話が今までよりはスムーズにできるということと、それから、今のような登録や免許がなくなった事業者に関してもこの法律で対応できるのではないかと、そのように思います。
 消費者にとってこの法律がいいだけではなくて、まともに営業なさっている事業者にとってもプラスであると、そういうふうに私は思いますので、決して一〇〇%満足とは言えないにしても、ぜひとも消費者契約法を成立させていただきたいと、そのように思います。
 その中身につきまして、一相談員の見解を述べさせていただきたいと思います。
 一番大きなことは、すべての契約に関して適用があるということ。それから、消費者と事業者の定義が明確になり、そして枠が広がったということ。このことによりまして、最近始まったばかりの介護サービスに関して、必ずしもいわゆる商人ではなくて行政だとかNPO、そういう方々も事業者になるわけですが、この契約に関しても契約法で対応できるということ。それから、今まで私どもがちゅうちょしながら対応してきました内職商法とか、個人商店のいわゆる限りなく消費者契約に近いような契約、そういうものに対しても救済されるようになった、そういうことがまず挙げられると思います。
 次に、取り消し権、事実でないことを言ったないしは事実を言わなかった、そして今度は監禁とかそれから不退去、退去しない、退去させない、そういう状況で契約をさせた、そういうものについて取り消すことができるようになったということなんですが、大体消費者トラブルというのは勧誘の段階で発生いたします。特に訪問販売なんかに関しましては、消費者がじっくりと考える、またはどなたかと相談をする、そういう時間を与えてくれない状態で契約がされます。
 そういうことですから、一方的に事業者の提供する情報で消費者は契約をしてしまうんですけれども、クーリングオフ、そういうものがある場合は八日間は無条件でキャンセルできるわけですけれども、それがない業界、業種に関して、またはクーリングオフを過ぎたものについてこの取り消し権というものがかなり有効に使えるのではないか、そのように思います。
 それから、不退去罪につきましては、アポイントメントセールスとかキャッチセールス、それからお年寄りが大変被害に遭うSF商法があるんですが、御本人は帰りたいないしは帰ってほしい、そういう状況の中で契約をさせられてしまうというのが多いものですから、これまた同じように、クーリングオフの適用がない場合、クーリングオフを過ぎた場合、そういうときにかなり力を発揮するのではないか、そのように思います。
 それから、契約に関しまして、特にこういう勧誘のことに関しましては、もう一つ断定的判断というのが出てきますけれども、これは私たち消費者も決してあちらが断定することをそっくり信じているわけではないんです。ですが、美容に関すること、外形に関すること、そして金融に関すること、そういうものについてはかすかな期待も持っております。そういうものを自信を持って断定的に言われますと、何となくそうかなと思うのも一般の消費者ではないかと思います。そういう段階で契約をした場合にそれを取り消すことができるということは、今までになく私たちの処理の中では使えるのではないか、そのように思っております。
 その辺でまた一つ事例を挙げたいと思うんですが、これもまた最近、消費者契約法がかなり新聞等で掲載されているにもかかわらず、若い女性がキャッチセールスで七時間営業所にとめられまして、さんざん勧誘をされて美容器具を買わされた、そういう事例がありました。この女性は、帰り際に警察に行きまして、消費生活センターに相談しなさいと言われたということでクーリングオフの処理をしたんですが、同じく若い男性の場合は、アポイントメントセールスで十時間以上説得されて契約をするというケースも間々あります。
 男性の場合、今の女性のように臨機応変に対応するというのがどうも事例として出てこなくて、かなりたってから、その支払いができなくなってから消費生活センターに入ってくるというのもありまして、入ってきても勧誘の問題点もよく言えないというような大変意思表示の不得意な若者が多いんですけれども、こういう若者を今回の契約法でどの程度救済できるかはわかりませんが、取り消し権ができたというものについてはクーリングオフを過ぎてからでも救済できるのではないか、そのように思います。
 次に、五条の第三者の媒介や代理による契約についてのところなんですが、マルチ商法、連鎖販売のところでこれは規定があるんですが、このことで一般に私たちが相談の場で一番困ることというのがクレジット契約絡みの場合なんです。
 クレジット契約の場合は、販売店がありまして、その販売店がクレジット会社の加盟店という場合が一番正しい形なんですが、販売会社の下に取次店とか、ないしは枝番といいまして全然クレジット会社と契約関係にないところにクレジット契約が成立するという形があります。そうした場合に、例えば取次店とか枝番のところが倒産しますと、なかなか加盟店の部分で対応してくれないという形で、処理のときに大変苦労するわけなんです。
 幸い東京都の条例の中では、こういった場合にクレジット会社に加盟店ないしはその関連の企業に対しての監督とか指導を義務づけております。そういうことにつきましては、地方の相談員から東京都に関しては大変うらやましいというふうに言われます。つまり、クレジット会社の対応が地方と東京都では違うんだそうです。その辺からしても、今回、契約法の中で媒介の第三者の責任というのが出てきたことに関しては、ほかの地方のセンターでも都の条例と同じような対応ができるのではないか、そのように思っております。
 それから、第八条の債務不履行責任、瑕疵担保責任、不法行為責任の免責につきましては、やはり約款の中にそういうものが入っておりますと、大変古い判例があるそうで、その約款というものは認めたものとみなすというような、そういう何か昔からの考え方で、どうしても私たちセンターとしてもちゅうちょするんですけれども、今回、この法律の中でその辺の無効ないしは一部無効が出てきたということに関してはかなり改善されるのではないか、そのように思っています。
 大変時間がなくなってきたんですけれども、中身のことで随分言いましたが、ただ、では全部が救済されますかといいますとそうではなくて、先ほども出ましたけれども、私たち相談現場で一番多いのがお年寄りとかそれから判断力が不十分な若者、そういう方々がターゲットになっている、そういう相談が目につきます。今回の法律の中でその手当てがされなかったことに関しては大変に残念に思うと同時に、ぜひとも早いうちに改善していただきたい、そのように思います。
 それから、約款のところで一般条項、信義則の条文が入りましたことは大変前進だと思いますが、できましたら契約締結過程、その段階にもぜひとも信義則の条文を入れていただきたかった。そのことによって勧誘段階まで規制が広がるんだと。そのことでより消費者契約を適正にすることによって、事業者と消費者の関係はより対等に近づくのではないか、そのように思います。
 そのような消費者契約法なんですけれども、この契約法を有効に使うためには、私ども消費生活センターと消費者相談員の使命がかなり大々的に言われておりまして、衆議院の方でたくさんの附帯決議がつけられたやに聞いております。そのことに関して大変私どもも責任を感じております。
 ただ残念なことには、今現在、地方自治体において消費者行政は財政難のしわ寄せのターゲットといいますか、的になっております。そのために、県レベルのセンターの縮小に加えて相談員の不当な定年制も浮上しております。今までの個別法の適用に加えて、この消費者契約法での対応はより相談員の経験と研さんが必要かと思います。その意味で、ぜひとも消費生活センター相談員の充実と、それから身分の保障、その辺をお願いしたいと思います。
 不足の部分は、また御質問等でお答えしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(成瀬守重君) どうもありがとうございました。
 次に、角田参考人にお願いいたします。角田参考人。
#8
○参考人(角田博君) 経団連経済本部長の角田でございます。本日はこのような機会をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。
 さて、経団連では、国民生活審議会での審議に合わせまして、九八年の三月に、それまでありました製造責任問題検討部会というのを改組いたしまして消費者法部会を設け、消費者法の検討を始めました。その結果、九八年十二月に「消費者契約法のあり方について」という意見書を公表いたしまして、その中では「規制緩和と自己責任原則に沿う「消費者契約法」の立法化について、時代の趨勢や各国の現状を勘案すれば、基本的に賛成である。」というふうに申し上げております。この基本的姿勢は現在も変わっておりません。こうした観点から、現在提出されております消費者契約法案に対する経団連としての考え方を申し述べたいと存じます。
 まず初めに、消費者契約法の政府案に対する評価についてでございます。
 国民生活審議会では、消費者契約法の具体的内容につきまして、消費者団体や消費生活相談員、弁護士、学者の先生方、そして業界とか経済団体など各界各層の委員の間でさまざまな角度から長年の検討を重ねて、昨年十二月に報告書を取りまとめられました。
 審議の過程では、私は経済界の立場から、消費者取引に対して単に幅広い網をかぶせるというのではなくて、明確かつ予見可能性の高いルールを設定するよう報告に盛り込んでほしいということを繰り返し繰り返し申し上げてまいりました。
 今国会に提出されております政府案は、施行に当たって幾つかの課題が残されていると思いますけれども、法案としてはかなり具体的になっておりまして、非常に高く評価できるものだというふうに認識しております。消費者契約法の早期制定が必要であることは各界の共通認識であります。この政府案の方向でぜひ早期の立法化をお願いしたいというふうに感じております。
 続きまして、消費者契約法に対する私どもの基本的な考え方につきまして、四点に絞って御説明いたしたいと思います。
 まず第一は、消費者契約法の目的についてでございます。
 御承知のとおり、消費者契約法は、規制緩和時代の新しい市場のルールとして消費者、事業者双方の自己責任の範囲を明確にし、公正な消費者契約のあり方を求めるものでありまして、その意味では消費者を一方的に保護するための法律ではないというふうに認識しております。当然のことながら、事業者も基本的に優勝劣敗の市場原理の中で積極的な情報開示とルールの遵守を求められているわけでございまして、本法の立法の意義を厳粛な思いで受けとめております。
 消費者契約法という明確なルールが定められることによって、今後、消費者、事業者双方の契約に対する認識がさらに高まり、市場における円滑な取引が促進されていくことが期待されるわけでございます。
 第二に、取引現場の実態を踏まえた立法であるべきということを申し上げたいと思います。
 近年、消費者取引をめぐるトラブルが増加していることは事実ですけれども、それでも大部分は善良な消費者と事業者との間で正常な消費者取引が行われております。本法の立法化によって、消費者契約を行う事業者は、業種、業態や規模の大小を問わず新しい法律に対応するためのコストを負担する必要があり、それはある程度やむを得ないものと考えられます。しかし、トラブルを起こしていない善良な事業者に余計かつ過大な負担をかけることのないよう配慮をお願いしたいということでございます。そのためには、取引現場の実態に即した具体的で明確なルールと、法律の具体的内容の周知など立法に伴う措置が望まれる次第でございます。
 特に、本法の対象となる事業所数は全国で四百五十万というふうに推計されておりますが、その九五%は中小企業であります。こうした中小企業からは、現在の政府案以上に事業者に厳しい内容の法律になりますと、例えば十分な説明をしていないという消費者側からの一方的なキャンセルによるコスト増といったものに耐え切れないという強い不安の声が上がっております。現実の取引実態を十分踏まえた法制度にすることが強く求められているわけでございます。
 第三は、予見可能性の確保がぜひとも必要ということでございます。
 消費者契約法は、契約の取り消し、無効といった民事上の強い法律効果を定めるものでありまして、事業者の立場から申し上げましても、ルールを守りトラブルを回避するためにあらかじめ情報提供のあり方、契約条項を再検討するために、具体的にどのような行為をすればどのような効果が発生するのかといった、できるだけあいまいさを排した予見可能性の高いルールにするということが求められるわけでございます。これは消費者の側にとってもぜひとも必要なことでございます。
 また、取引現場で実際にトラブルが発生した場合に、裁判外紛争処理機関などでも円滑な解決が図られることが重要でありますけれども、その指針を明確に示すといった意味でも予見可能性の高さが求められると思います。
 四番目でございますけれども、消費者契約法の包括的民事立法としての性格ということでございまして、御承知のとおり、消費者契約法は取引形態の異なる消費者契約のすべてを対象とする法律でございます。
 このような性格上、考え得る悪徳商法のすべてに広い網をかけようとして法律の条文を抽象的なものにいたしますと、悪徳商法以外の合理的な取引まで取り消しとか無効の対象になるのではないかといった懸念を生みまして、それを回避するための余計なコスト負担を強いられるおそれがあります。これは、事業者に対する負担となるだけではなくて、価格上昇あるいは取引の萎縮といった事態を招きまして、社会的な負担増となってしまいます。
 そうはいいましても、私自身、悪徳商法の存在を容認すると申し上げているわけではございません。ただ、包括的民事立法である消費者契約法の性格上、本法だけで悪質な商法すべてに完璧に対応することは事実上不可能だというふうに申し上げているのでございます。一部の悪徳商法につきましては、先ほどお話もございました訪問販売法とかあるいは割賦販売法といった個別法と連携した対応を進めていただきたいと、ぜひお願いを申し上げたいと存じます。
 次に、現在、国会等で議論されております消費者契約法の個別具体的な問題点について僣越ながら私の考え方を申し上げます。
 第一に、政府案第三条第一項では、事業者の情報提供の努力規定を定めておりますが、これを義務規定とするといったことにつきましては国民生活審議会の場でもいろんな御意見がございました。
 確かに、私も、消費者と事業者の情報量の格差を埋めるためには、事業者が適切な情報開示を行う必要があるということについて否定するものではございません。ただし、各業態、業種によって契約の締結過程に影響を及ぼし得る情報の内容は多種多様でございまして、情報提供の方法もさまざまなものが考えられます。そうした中で、提供すべき情報の範囲を一律に消費者契約法だけで明確にすることは非常に困難であります。法律の条文の意味があいまいなまま情報提供を事業者の義務として消費者契約法に法定した場合、かえって事業者、消費者双方が混乱することにもなりかねません。
 さらに、消費者が消費者契約を締結するに際して、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他消費者契約の内容について理解するよう努めることは当然のことではないかと思います。そうすれば、不明確なまま消費者契約を締結してしまい、後でトラブルに巻き込まれる危険性というのはかなり低くなるんではないだろうかと思います。
 消費者契約は消費者と事業者との間の契約ですから、双方に努力義務を課すのは当然でありまして、片方だけにするといったのはバランスを失するのではないかというふうに考える次第でございます。
 二番目に、政府案第四条では、取り消しの類型として、重要事項について事実と違うことを告げること、それから将来における変動が不確実な事項について断定的な判断を提供すること、それから三番目に消費者に不利益となる事実を故意に告げないことという三点を挙げておりますけれども、三点目の故意という要件を外す必要があるんではないかという御意見があるというふうに聞いております。
 しかし、日常の取引におきまして、消費者の混乱を防ぐためにあえて知っていることを告げないとか、ついうっかり告げないまま取引が成立してしまったといったことはよくある話だというふうに聞いております。単に言わなかったというだけで取り消しという重大な法律効果を認めることにつきましては、取引の安定性、予見可能性といった点から大いに問題ではないかというふうに考えます。
 三番目は、困惑の要件ということで、政府案では不退去と監禁ということを挙げて明確化をされておりますけれども、それをもっと拡大すべきだという御意見があるようでございます。
 これにつきましても、事業者が威迫すること、消費者の私生活または業務の平穏を害し、困惑させること、その他消費者が合理的に判断することを妨げることといったような規定の仕方をした場合に、具体的にどういう行動が困惑に当たるのか、実際に消費者が困惑したというふうに主張してきた場合に本当に契約の取り消しを認めるべきなのかどうか、非常にわかりにくい、予見可能性が低くなるということで、これについても慎重に検討すべきだというふうに考えております。
 四番目は、先ほどから話が出ておりませんでしたけれども、取り消し権の行使期間の話でして、追認できるときから六カ月、契約締結時から五年ということでございますけれども、これをもっと長くすべきだというふうな御意見があるというふうに聞いております。
 これにつきましては、事業者にとりまして、いわゆる消費者契約というのは日々の事業活動でありまして、これが数年後にいきなり取り消されるといったようなことになりますと、日々の営業活動に重大な影響をもたらすという可能性がございます。また、消費者にとっても、契約の内容について確認し、取り消し権を主張するためには数カ月あれば十分なんではないかというふうに考えられます。本当に契約を締結してしまったことについて後悔をして、ぜひ取り消ししたいということを強く望むのであれば、その契約を半年もほっておくということが本当にあるのかなと私どもちょっと考えている次第でございます。
 五番目は、重要事項や威迫といった取り消しの要件の判断基準の指針を内閣総理大臣が定めたり、あるいは不当条項の具体的基準を政令で定めるといった点につきましては、立法府で法律の中身が明らかにされないまま行政府に大幅な裁量を認め、大きな権限をゆだねることになるのではないかと、ちょっと懸念しております。これもやはり一つ予見可能性が低くなるといった点で若干問題ではないかということを考えている次第でございます。
 最後に、消費者契約法の立法に当たっての今後の課題ということで四点申し上げたいのでございます。
 まず第一点は施行の時期でございます。政府案では本法の施行は来年の四月からというふうになっておりますけれども、事業者にとりましては、法律が制定されてから施行までに新しいルールに対応するために、従業員の教育とかマニュアルの作成、現在使用しております契約、約款の再点検、下請販売店への徹底といった、こうした入念な準備作業を行う必要がございます。既に立法を見越して準備に着手されている事業者もありますけれども、大部分の事業者は、制定後、コンメンタールとか逐条解説等が示された後に準備に入るというのが実情ではないかと思います。そうした点からぜひ施行の時期について考えていただきたい、あるいは逆に早期の成立を図っていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 二番目は、これと関連する話ですけれども、裁判規範であると同時に、事業者にとっても行動規範として機能するというものですので、法律の内容がより具体的になるように解説書の作成をできるだけ早くやっていただきたいということ。
 それから三番目は、消費者契約における紛争処理の迅速化といった観点から、地方自治体における消費生活センター等の裁判外紛争処理機関の充実をぜひ図っていただきたいということでございます。
 四番目がいわゆる消費者教育の充実といった点でございまして、特に日本人のような同質社会に生きる者にとりましては契約に対する考え方が甘いというふうに言われております。商品、サービスの多様化、複雑化、さらには経済のグローバル化に伴う国境を越えた消費者取引の増加に対応するために、消費者契約についての教育の重要性はますます高まっているのではないかというふうに考えております。担当の各省庁におかれましても努力をされているところでありましょうけれども、経済界といたしましても教材の作成等に企業の方の参加をお願いするなど、できるだけの協力を惜しまない所存でございます。国の施策として、いわゆる契約に対する考え方を一層明確にするという意味で努力をしてまいりたいし、またそれをお願いしたいということでございます。
 以上、消費者契約法に対する私の私見を申し上げましたけれども、繰り返しになりますが、消費者契約法の内容がゼロサムではなくてプラスサムのルールになるよう配慮をお願いしたいというふうに考えております。つまり、公正で予見可能性の高いルールが設定されますと、消費者、事業者双方が自己の責任と権利を正しく認識して、トラブルのない消費者契約を結ぶことができるために、全体として消費活動の活性化が期待できます。
 しかし一方で、単に消費者の保護とかあるいは悪徳商法の排除といった短期的視点からだけの点で立法化がなされますと、その対象となる一部の悪徳商法の被害者にとってはプラスですけれども、残り大部分の正常な取引を行っている人のコスト増、あるいは取引自体の萎縮を招いて、社会全体としてはゼロサムあるいはマイナスサムになってしまうおそれがあるということを恐れているわけでございます。
 この消費者契約法の立法化が契約に対する日本人の意識を高め、二十一世紀に向けての発展の礎になるよう祈念いたしまして、私の陳述とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
#9
○委員長(成瀬守重君) どうもありがとうございました。
 次に、藤森参考人にお願いいたします。藤森参考人。
#10
○参考人(藤森克美君) 日弁連の消費者問題対策委員会委員長の藤森でございます。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、この法案をもっても救済から取り残され、泣き寝入りを余儀なくされる被害者は出るであろうと、そういうことを危惧するものでございます。
 第一点といたしまして、法案の七条は、契約取り消し権の行使期間を追認可能時から六カ月以内、それから契約時から五年以内と定めておりますけれども、私ども日弁連が昨年の十二月に実施いたしました「消費者契約何でも一一〇番」というその統計結果におきましても、問題視する、あるいは相談に一一〇番にかけてきた人、そういう人たちが三年以上前の人たちが一番大きかったわけでございます。私の弁護士活動の体験の中で、霊感商法だとか法の華三法行の被害の事件をたくさん私は経験しているのでございますが、そういう事件でも五年、七年、八年、十年近くたってから被害に気づくと、そういうパターンのものが多いわけでございまして、ですから追認可能時から六カ月以内というのは短過ぎますし、これを三年程度、それから契約時から五年以内というのを十年以内に修正すべきだと私は考えております。
 それから二番目に、法案の三条一項の情報提供義務でございますが、これは努力義務ということになっておりますけれども、民事上の法的義務にすべきであると考えます。九一年、九二年当時、ワラント被害が全国で多数顕在化したわけでございますが、このような被害が実態としては裁判所の中ではそれほど手厚く救済されたわけではございません。今後また、そのようなワラント被害、あるいは変額保険被害、こういうものが出ないとも限らないと思います。そういう場合には、やはり情報提供義務が民事上の法的義務、そういうふうに高まらない限り、このような被害はなくならない、そういうふうに思います。
 それから第三点に、法案四条一、二項の不実告知型、それから二番目としまして断定的判断提供型、三番目といたしまして消費者の不利益事実の故意の不告知型の三類型を法案としては誤認行為として認めておりますけれども、四項で一、三の対象である「重要事項」を契約対象として契約条件に限定しているのは狭過ぎるわけでございます。購入動機や購入目的が含まれない可能性があります。
 現在、進行しております愛染苑山久の多数集団被害、これが顕在化しておるわけでございますが、これらの被害というのは、従業員として雇う、そのかわり山久の着物を買って店に出てくれと。それでクレジット契約を組んで何百万、金額の大きい人ですと一千万近くの被害に遭っているわけでございます。これは購入動機とか購入目的と関連してくるわけですけれども、こういう被害が法案の中ではなかなか救済の実が上げられないのではないか、そういうふうに考えるわけであります。あるいはモデルになりませんかと、そういうことで着物とか服を買わせる、そういう商法の被害も続発しておりますし、それから現実にはワープロを買わせるのに、ワープロを習得すれば内職として雇う、仕事も回す、そういうことの被害も随分顕在化しております。
 それから四番目に、法四条三項の不退去及び監禁行為に限定されたものでは救済はおぼつかない、そういうふうに考えるわけであります。私の体験からいたしましても、現実には電話による威迫・脅迫行為のすさまじさというのは、資格商法それから紳士録商法などで顕著であります。
 つい最近、私が体験した事件でも、九一年に中小企業診断士特別総合講座というものを無理やり契約させられた会社員が、その八年後に、九九年に至りまして業者から、あなたは何もまだ修了していない、二年間の講座だったんですが、その講座を全然受けていないし、修了未登録者に名前が載っている、その名前を消すのにお金を払えというようなことで、会社へもうじゃんじゃん電話がかかってきまして、会社の総務課の人もついにもてあますというような状況がありました。
 その方の場合には同時に四社、被害金額はせいぜい四、五十万の被害なんですけれども、ほとんど仕事ができないというような状況に置かれていたわけです。それを私が、これはひどいということで、その業者に対して慰謝料も請求したんです。もちろん出した金は返せと言いまして、慰謝料も、その実被害額を超える慰謝料を請求しました。そうしましたら、一社についてはその実被害額を超える慰謝料を払ってきました。それほどやはり業者というのは、自分たちがやましいことをやっているということの証拠なんです。私の経験ですと、こういう資格商法の事件などでは大体お金は返してきます、弁護士がついて交渉しますと。ひどいところだと私は慰謝料を請求するようにしているんですけれども。
 そういうことからして、こういう電話による威迫・脅迫行為のすさまじさというものは全然解決されない。この被害の人も大学出の年が四十代の人で、有名企業で働いているような人なんです。もともとこういう消費者契約法の被害者の概念に、社会的弱者という概念には入り切らないような人なわけですけれども、そういう人がこの法案ではますます切り捨てられるのではないか、そういうふうに考えます。
 それから、紳士録商法も、このレジュメに書いておきましたけれども、私は地元が静岡なものですから昨年の八月五日の静岡新聞なんですが、被害総額が十億円以上だということで、東京地裁での初公判で検察側が冒頭陳述で述べたということが報道されておりました。
 私の経験でも、市役所を退職された方あるいは大きな会社の役員を退職された方がその昔に紳士録に登載されまして、今になってその管理料を払えということで現実には恐喝をやるわけです。それは全部電話に基づくものです。そういうものについて、随分社会的に御苦労されて、もう社会の第一線から引退されて体力も衰えたような方がこういう恐喝のターゲットになってしまう。警視庁が捕まえた一件だけでも十億円という大変な市場規模じゃないかと、そういうふうに思うんです。
 そういうところからして、こういう法四条三項だけではちょっと被害者救済に心もとないのではないか、そういうふうに考えるわけです。
 それから五番目に、この法案の中では、消費者有利解釈の原則であるとか不意打ち条項であるとか過量販売、過剰与信に対する民事的制裁、それから四番目に知識や判断力が不足している状況を乱用する、そういうような点が全く触れておりませんので、この点についてまたぜひ考え直していただければと、そういうふうに思うわけでございます。
 私は、消費者センターからの紹介の事件を随分やってきているんですけれども、消費者センターが私の方へ紹介するということは、消費者センターで手に負えない事件が回ってくるわけなんです。ほとんどこちらが裁判を起こすとか、あるいは言うことを聞かなければこちらが現実に裁判を起こすわけですね。そうすると、その段階で解決することが多いんです。
 ところが、中には、集団のたくさんの被害がある事件で、裁判を起こされる側に回ったり起こしたりする側に回ったりするわけですけれども、裁判所の裁判官がなかなかこういう消費者被害に理解を示さない、あるいは消費者問題を大変お嫌いな裁判官が存在しているわけです。それは、一つには契約書面を過大に評価する裁判官の意識構造というのがあるんですね。それから、署名した、判こを押した、そういうことをもう何か過大に考える裁判官がおりまして、なかなか消費者が救済されないという部分があるんです。
 それから、気の弱い人だとかすぐ他人の言うことを信用してしまう人を、裁判官自身としては間違ったことをした生き方はしていないと思いますから、そういう人をなかなか認めたくないというか許せないというか、そういうタイプの裁判官が現実におりまして、そういう人のところに事件が回ってしまうと、まずなかなか救済されないというような実態が現実にあるわけです。
 そういうことで、消費者と事業者とはその知識、情報の量、それから判断や選択の能力、交渉力、組織力など格段に力が異なる、このことが被害をもたらす大きな要因となっているという、そういう被害実態に対する裁判官の認識の欠如というのをやはりこの際変革してもらわなきゃいかぬ、そういうふうに私は考えております。そのためには、消費者問題がお嫌いな裁判官でもその裁判官を法律で縛る、そういうことの必要性から消費者救済に厚いそういう法案をつくっていただきたい、そういうふうに述べて、私の陳述を終わります。
#11
○委員長(成瀬守重君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、御発言の際は、私の指名を受けてから御発言くださるようお願いいたします。また、質疑の時間が限られておりますので、簡潔に御答弁いただくようお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○畑恵君 自由民主党の畑恵でございます。
 まず、参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中をわざわざお運びいただきました上に、貴重な御意見の数々、拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。
 今の委員長からのお話にもありましたとおり、それぞれ今回二十分ずつの質疑時間でございますので、全員の方に御質問できない場合があるかと存じますけれども、その際は何とぞ御容赦くださいませ。
 まず最初に、岡田参考人にお話を伺いたいんですけれども、確かに今回の消費者契約法というのは、単に弱者としての消費者を一方的に保護する法律ではなくて、消費者も自己責任を負うし自立するというのは、それはもっともなことだとは思うんですけれども、やはり情報量ですとか交渉力にもともと格差がある、これを前提にして消費者を守ろうという法律でございますので、そういう観点でお話を伺ってまいりたいと思います。
 中でも私が一番危惧しますのは、岡田様の方も御指摘になりました高齢者の問題でございます。また、このごろは悪質な商法のターゲットになるのが判断能力が余りない若者ということもありまして、確かに未成年者は結婚していなければ取り消しができるということはあるかもしれませんけれども、特に高齢者そして若者に対する今回保護規定というのは特別ないわけでございますが、何かこういうサポートできるような措置が今後必要であるとか、あと教育の面ですとか、お考えのことがございましたらぜひ御指摘いただきたいと思います。
 あともう一点は、既に御指摘いただいた点ですけれども、消費生活センターそして相談員の皆様にこれからまさに活躍していただかなければいけないこの時期に、それぞれ地方自治体が予算の縮小という中で、先生は東京でいらっしゃいますけれども、隣の神奈川県では一九九九年度予算が前年度に比べて半減したというような状況でもございますので、実態としてこういう問題が起きている、少なくともこれだけの地域にはこれぐらいの専門の相談員を置かないとなかなかきちんとした対応ができないというようなことを、具体的な数値も入れて御開陳いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
#13
○参考人(岡田ヒロミ君) お答えいたします。
 まず最初の、高齢者と判断力不十分な若者に関してのお答えなんですが、私どもも一番そこが頭が痛いところでして、高齢者の方の場合は主に布団が商品になっておりまして、一回契約しますと何回もという方で、多い方の場合は十組以上契約させられるというようなこともあります。あと、意思能力に欠けるような若者に関しましては、やはりアポイントメントセールスとかキャッチセールスで絵画とか宝石を買わされています。
 こういう方々に対して何らか特別な対応をしなきゃいけないんですけれども、なかなかそこの部分に関してこれという対応策がありませんで、ただ、お年寄りが集まられるところに出かけていって消費者センターのことを知っていただくだけでもいいんじゃないかと、そういう催し物をしたり、若者に関しましては、判断力不十分者の施設へ行きましてビデオを見せてお話をするとかそういうこともやっております。今のところはそういうことぐらいかなというふうに思います。
 それから二番目の、消費生活センター相談員の身分保障に関しまして、今そちらに、ちょっと古いんですけれども相談員協会の方で九八年に調べました実態調査の資料をおつけしたかと思いますが、この後平成十二年、ことしはかなりまた深刻になっておりまして、一つの例を挙げますと、栃木県で定年制ができまして、県の相談員が五人いるんですけれども、二年後には五人とも定年になります。ということは、五人とも新人になるということなんです。トラブル自体は年間八千件ぐらいあるというふうに聞いていますから、いかに大変なことになるかということが思われます。
 それ以外でも、東京の近県におきましても、定年とかそれから県のセンターの縮小によって市町村にセンターがまだないということで、予算がゼロないしは七千円という町村もあるやに聞いております。
 そういう意味ではぜひとも、都道府県のセンターはセンターなりの役割がありまして、区市町村でできない部分をカバーしていただかなきゃいけないんですけれども、先ほど私が冒頭でお話ししました、国の消費者行政の隆盛期を私は経験しまして、これから地方自治体だと思っていましたが、国の予算が少なくなると地方自治体の予算も同じように減っていくんです。都道府県が減れば区市町村もまた減らされていく。この実態を変えない限りは、決して消費者保護基本法にのっとった身近な相談窓口で消費者が納得する処理というものはできないかと思います。
 そういう意味では、ぜひとも皆様方、先生方のお力をおかりしたいと思うと同時に、私ども相談員もできるだけ勉強して皆さんの御期待に沿うようにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
#14
○畑恵君 どうもありがとうございました。
 続きまして、今度は角田参考人にお話を伺いたいと思います。
 今の岡田参考人のお話を受けましてなんですが、どうしても国の財政危機、その余波で今度自治体の財政危機と。消費生活センターに直接に経団連の皆様方ですとか事業者の皆様方がどのように御支援できるかというところは難しいところかもしれないんですが、先ほど消費者教育についてはガイドブックをつくるなりいろいろな御努力をしていると拝聴いたしましたので、何か消費生活センターまたは消費者相談に御貢献なさっている方々を、費用の面も含めてですけれどもサポートするような、そういう御計画ですとかお考えはおありかどうか、これを一点伺いたいと思います。
 もう一点は、やはり御自身たちから自浄作用を高める御努力というのは常になさっていらっしゃると思うんですけれども、悪質契約の実態というのがなかなか民間の一般市民に伝わってこない。政府の方にも求めていくつもりなんですけれども、御自身たちから、悪質業者の事業者名ですとか、あと不適正な取引の実態ですとか、そういうものの何かホームページをおつくりになるとか、余りにも目に余る場合にはもう少しマスコミの方に公表していくような、そういう実態の情報公開というようなことを考えられないかなと思うんですけれども、この点についても御所見を伺えればと思います。
#15
○参考人(角田博君) 非常に難しい、答えにくい質問を二つもちょうだいしまして恐縮でございます。
 まず、私、経団連に勤めておりまして、経団連というのは千の大企業が中心になっております。その千の企業の中でまさにこういう悪徳商法をやる企業というのはまず皆無であろうというふうに考えておりまして、そうした意味で、二番目の御質問にございました、悪徳商法に対して自分たちの持っている情報を開示するとか、あるいはこういうふうに改善すればいいといったことについて具体案を提出するというのは非常に難しいし、我々自身もよくわからないというのが実情でございます。
 それと、各企業はお客様相談センターというのをすべて、すべてと申しますかほぼ持っておりまして、そしてその末端の過程では、先ほど申し上げましたように消費者教育について協力をする、あるいは消費者との関係をより良好にするためのパンフレットをつくるとか、そうしたことをやっていらっしゃる企業さんもかなりいらっしゃるというふうに聞いておりますので、ではこれで具体的にどうするということはまだ考えておりませんけれども、各地の消費者センターと御協力をして、情報交換をするあるいは必要な情報を提供するといったことにつきましても働きかけていきたいというふうに考えております。
 特に、この消費者契約法が成立しました暁には、これに備えて企業としてどういうふうに対応していくのか、自分たちの約款とかあるいは取引条件等についてもう一度見直してほしいということをメンバーの企業に訴えていくつもりでおります。
 以上でお許しください。
#16
○畑恵君 ありがとうございました。答えにくいところを答えていただいて、大変ありがたいと思います。
 ただ、先ほどゼロサムではなくてプラスサムにというお話をしていただきましたので、やっぱり全部大きく枠をかけないとなかなかその悪質な事業者が取り締まれないというような、そういう印象を消費者の方々が受けますと、全部経団連は健全な事業者の方々ばかりだという今のお話でございますけれども、結局そういう方々にまで不必要な過重な負担を強いることになりかねませんので、そういう意味では市場全体の健全化への御配慮といいましょうか、御努力というのをより一層お願いできれば幸いだと思います。
 変わりまして、今度は松本参考人と藤森参考人、御両者に伺いたいんですけれども、先ほど角田参考人の御提示いただきましたペーパーの三の(五)で御指摘を賜りました民主党案についてのお話なんですけれども、先日のこの委員会での審議の際も同僚議員から同趣旨の御指摘がございまして、やはり民事ルールの根幹部分を政令や指針にゆだねてしまうというのはいかがなものかと。これまでに前例がないし、これでは内閣がかわるたびに民事ルールの根幹が揺らいでしまうし、内閣総理大臣が定める指針や政令にゆだねれば政府の裁量によって消費者の救済レベルを著しく変化させる。さらには契約自由の原則への国家の過度の介入につながるんではないかという、そのような意見も出されたんですけれども、この点について、それぞれ法律の専門家でいらっしゃいますので、特に松本参考人におかれましては英米法の権威でいらっしゃいますし、他国とも比べられた中でこの御指摘についてどのように判断なさるか、松本参考人、藤森参考人の順番で伺わせていただけますでしょうか。
#17
○参考人(松本恒雄君) 消費者契約法が民事ルールについての法律であるとすれば、その重要な部分を政令やあるいは内閣告示とかいった行政の手にゆだねるというのは少し筋違いだろうと。行政規制に関するルールであれば、個別の具体的な部分については政令、省令、あるいは昔ですと通達というのもございましたが、民事ルールでは余り望ましくないと思います。
 それじゃ、抽象的なルールだけでは困るじゃないかというお話が先ほどから大変出ております、不明確であると。私は、明確にするのは、それこそ事業者が中心になって、当該業界においてどのような勧誘活動がフェアなものなのか、どのような契約条件がフェアなものなのかというのは、その業界で活動されている方が一番よく御存じのはずですから、各事業者が自分の業界にとって適切なフェアな競争ルールとはどういうものかということを、事業者だけでやりますとお手盛りになる可能性もありますから、消費者の意見も聞き、行政の意見も聞き、学者の意見も聞きながらみずから相場をつくっていくという形で具体化されるのが一番いいと思います。
 もちろん国会におきまして個別の細かいルールを定められるというのは、それはそれで大変結構なことかと思います。
#18
○参考人(藤森克美君) 私は、理論的に言いますと、そういう政令に委任することには問題があるんではないかというふうに考えますけれども、現在の状況でいいますと、なかなか裁判所が消費者救済に力をかしてくれないような状況があるものですから、当面はそういう政令に委任するという方法も許されるのではないか、そういうふうに私自身としては考えております。
#19
○畑恵君 申しわけございません。ちょっと私、法律に関して余り詳しくないものですから。
 そうしますと、藤森参考人のお考えとしては、問題があるかもしれないけれども、今はベストではないけれどもベターというか、ほかに方法がないのであれば仕方がないだろうという、そういうことでよろしゅうございましょうか。
#20
○参考人(藤森克美君) そのとおりでございます。
#21
○畑恵君 恐れ入ります。質問が相前後して恐縮なんですけれども。
 先ほどの岡田参考人への質問、ちょっとお時間がどれだけあるかはかりかねたものですから追加の質問をさせていただかなかったんですけれども、消費者相談員というのは具体的に市町村に大体何人ぐらいの人員配置をすればいいのか。今、全体の予算の縮小の中で、専門の相談員は置かないで、例えば都道府県ですとか市町村のOBの職員を一般的な全般の相談員として置かれて、その中で消費者相談も請け負っているという窓口がふえてきているという実態等を伺っているんですけれども、そういう方でもよろしいのか、それとも専門の相談員というのは必ず現場にやはり一人要る、あるいはこういう研修を受けなきゃいけないということがあるのかという、そういうちょっと疑問があるんですけれども、いかがでございましょうか。
#22
○参考人(岡田ヒロミ君) お答えいたします。
 確かに行政のOBの方が相談員についていらっしゃるというのは漏れ聞いております。ただ、本来行政というのは民事不介入というのがもともとありまして、消費者相談というのはそれが違うんですね。民事にどんどん入っていくんです。まして契約法ができますと、これは弁護士さんと同じようなことをやっていくわけですから、果たして民事不介入の考えでいらした方が消費者側ないしは企業側にバランス感覚を持った形で処理できるかどうか、そのことに関しましては大変私は疑問に思います。
 今、相談員自体の資格というのが、公的なものが二つ、それから私的なものが二つあります。公的なものとしましては通産省の消費生活アドバイザー、これはどちらかといいますと企業と消費者のパイプ、それから行政の相談員の資格としましては国民生活センターの消費生活専門相談員というのがあります。それと、一番歴史が古いんですが、日本消費者協会の消費生活コンサルタント、それに加えて国民生活センターが養成した相談員、この四つの資格がありまして、大方の相談員は二つ以上持っているはずです。
 そんな中で、しかも毎土日ないしは夜勉強しておりまして、弁護士の方を囲む勉強であったり、学者の方を囲む勉強であったり。それでもなおかつ、じゃ私どもは処理を大変容易にやっているかというと、そうではないというのが実態であります。ですから、やはり専門家は絶対必要であると思います。
#23
○畑恵君 どうもありがとうございました。非常に御熱心というか御苦労のほどがひしひしと伝わってくるお話で、感銘を受けました。私どもも少しでもサポートできるように仕事をしてまいりたいと思います。
 私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
#24
○木俣佳丈君 民主党・新緑風会の木俣佳丈でございます。
 本日は、参考人の先生方には大変お忙しいところ国会までお出ましいただきまして、まことにありがとうございます。特に私は、十年ぐらい前を振り返りますと経団連におりまして、ちょうど角田参考人のもとで御指導を受けておったやに記憶しておりますが、今や反対の立場でこうして質問をさせていただくのは心苦しい思いでございます。
 そのころをやはり思い出しますと、ちょうどソ連、東欧の改革がございました。ともに仕事というか、御指導を受けておったわけでございますけれども、ロシアの方々が日本にたくさん来られたのを覚えております。そのときに我々日本の方から申し上げたのは、日本の企業、産業界がこれまで発展した理由の最大のものとしてやはり消費者、きょうお越しの消費者の方々の厳しい目があった、これが最大の日本発展の原因であるということをロシアの方々にとうとうと言わせていただいたわけでございます。
 そういった意味でも、やはり健全な消費者あって健全な企業がある、こういうスタンスで我々民主党は消費者契約法、同じ名前ではございますが、別の法律を今定めて国会に上程し、審議の最中でございます。
 ところで、今回の消費者契約法の件につきまして、ある雑誌で私拝見をしたところ、消費者団体の代表の方々が法案の中身の点数を百点満点だと五十八点と口をそろえるというふうに書いてある記事を見ております。これを岡田参考人から何で五十八点なのかというところを伺いたいと同時に、せっかくの機会でございますので四人の参考人の方々に、点数をつけるとすれば何点か、一言で言っていただければ、この理由も重ねてお願いできればと思っています。
 では、岡田参考人からお願いします。
#25
○参考人(岡田ヒロミ君) 私が一番で大変厳しいんですけれども、消費者側からしますともう少し高く評価できるんではないかと思います。
 と申しますのは、昨年の十二月に出た案からしますとかなり消費者寄りに引っ張ってこられたんではないかと、そのように思いまして、大変、相談員がたくさん来ていますので、私、後でつるし上げを食うかもしれないので、厳しいんですけれども、七十点ぐらいにしておきましょうか。
 その根拠としましては、約款のところに信義則が入ったということと、それから勧誘段階で不実告知、それから断定的判断、これにつきまして、消費者の認識といいますか、そこに的を当てたという部分に関しては大変前進したというふうに思っております。
 以上です。
#26
○参考人(松本恒雄君) 先ほども言いましたが、コンセンサス形式で行っている審議会として合意に達した部分でありますから、それはそれで十分すぐれたものだろうというふうに評価いたしておりますが、ただし、私個人の、研究者としての視点から見ますと、いわゆる優良可で言えば可であろうと思います。
 なぜかということですが、この法律の性格が企業として、事業者としてとるべき商道徳の最低のモラルを示したものであろうと思います。ちょっとしかし、もう少し高くてもいいんではないかと、モラルとしては。この程度のモラルであれば、経団連の企業であればもう悠々クリア程度のモラルだと思います。したがって、もう少し高めに設定して、日本全体の商道徳といいましょうか商いのモラルを高める方向に行った方がよかったのではないかと、そういう意味で可というふうに評価しております。
#27
○参考人(角田博君) 経団連といたしましては、可という話がありましたけれども、良と可の間ぐらいかなというふうに考えております。
 その理由は、国生審の議論の中ではいろんな御意見が出まして、まさにできるだけとにかく幅広くあいまいにということで意見がまとまりそうでありましたけれども、各業界のヒアリングをやったんです。そうしますと、各業界からまさに身につまされた話と申しますか、こういうふうにあいまいに決められると我々のところはどうなるんですか、困りますという話がずっと毎日毎日続きました。それを受けて、経済企画庁の事務当局の方々もできるだけクリアにしようという努力をされてきた結果がこうした報告書になり、そして法案になったというふうに解釈しております。
 特に二点。一つは、重要事項ということにつきましてかなり明確になっているということを評価いたしたいということと、それから取り消しの要件で、ただ言わなかったから取り消しですと言われたら幾ら経団連の傘下の大企業でも対応できないところでございますけれども、一応故意という要件が入っているという意味で評価したいということでございます。
#28
○参考人(藤森克美君) 結論から言いますと、私も可でございます。その理由は、先ほど私がるる述べた、救済から取り残され泣き寝入りを余儀なくされる被害者が出るであろうと、そういうことでございます。
 以上です。
#29
○木俣佳丈君 ありがとうございました。
 この法案が出されましたときに、まだ今から四年、五年前に、平成七年七月一日施行のPL法、プロダクトライアビリティー、製造物責任法が施行されたわけでございますが、このときにも産業界から非常に大きな非難というのか、どうかなってしまうというような話があったわけでございます。
 ところが、その実、経企庁さんから出ているレポートを見ますと、何と平成十一年九月三十日現在でこれにおいて提訴された訴訟の数が十七件です、たった十七件。そしてまた、被害者が勝訴したのは一件、これは名古屋だそうでございまして、私の出身地なんですが、名古屋で一件だけということでございました。むしろ消費者の方からしても、大きく前進したと感じる、そしてまたやや変化を感じたというのを合わせますと、もうこれは八割を超えております。また、製造者側から見ても、影響はほとんどなかったというのが九割を超えておるわけでございます。そういった意味で、よく前進はしても、先ほどからプラスサム、プラスサムという話がありますが、マイナスサム、つまり合成の誤謬と言ったらいいのかどうかわかりませんけれども、足すとマイナスになるということは僕はないというふうに結論づけたいと思っておる次第でございます。
 さらに、現在三十万ぐらい苦情があって、これが三%ぐらいだという消費者団体の方々からのお声があります。ということは、割り算しますと一千万ぐらい眠っているというのか、ということになるのかなというふうに思うんですが、今回のこの法ができてそれほど、今、藤森先生からもお話がありましたけれども、一体全体その効果が上がるのかなと。だから、一千万ある問題ある商取引、契約がどの程度要は明るみに出て救済されていくのかなというのをちょっと、直感的にどのぐらいですか、藤森先生。どんなふうにお考えでしょうか。
#30
○参考人(藤森克美君) この法案ができましたら、それはそれで効果を発揮すると思います、私は。今までになかった、例えば情報提供義務が努力義務というような記載の仕方がされておりますけれども、これは弁護士の料理の仕方というか争いの仕方をいろいろ工夫すれば十分有効な材料にはなると思うんです。ですから、法案の成立ということは日弁連でも、ぜひ通していただきたい、そういう気持ちでいます。
 あと、だからいろいろ不十分なものはあるんですけれども、それはそれで弁護士の創意工夫というか、そういうことでカバーしていきたいというふうには思っています。かなり有効な力は発揮するんではないか、そういうふうに思います。
#31
○木俣佳丈君 さらにいろいろな、重要事項のみならず、契約の際の具体的な事例として威迫、困惑ということが今回除かれておるということなんです。
 我々民主党案では、これをやはり入れなければならないと。やはり今の世の中が大分リスキーな世の中になっている。そして、名古屋の、五千万を中学生同士がもぎ取るなんというでたらめな社会が今目の前にあるわけでございまして、威迫そしてまた困惑というのは高齢化に向かっていく中で非常にこれから多くなると思うんです。ですから、これを外して、単なる不退去または監禁に該当する場合に限定するということで本当に有効になるのかなと思うんですが、岡田参考人、どのようにお考えになりますか。
#32
○参考人(岡田ヒロミ君) 威迫、困惑ということで、私どもは、困惑の中に威迫は当然含まれている、威迫の方がより悪質性があると思いますので、その辺では大丈夫かと思います。
 ただ、私も申し上げ損なったんですが、先ほど出ました電話と文書のいわばこれはもう脅迫に近いような請求、取り立て、これに関しては私どもも手が出せない状況です。ですから、その部分に関してはぜひとも警察が積極的に動いていただきたい、そのように思います。
#33
○木俣佳丈君 経団連が九八年十二月十五日に出した意見書の中にも「四、威迫・困惑」の項目がございまして、ここに、今のところ威迫、困惑の概念というのが政府の中間報告では不明確であるから、結論を言うと、「その類型化を図ること等でその概念を明確にする必要がある。」と、こういうふうに結論づけておりまして、私もそうかなと。
 であるならば、やはり法案の中に書き込んでもらって、そして先ほど角田参考人が言われるようなガイドラインか何かで明確にこういったものだというのを示すのが一番明確じゃないのかなと。今の法律案では、これでは何かよくわからないと思うんですが、角田参考人、いかがそれはお考えになりますか。
#34
○参考人(角田博君) おっしゃいましたように、現在の不退去、監禁というのだと非常にわかりやすいということは事実だと思います。ただし、私どもも人に不安を生じせしめるような行動をして不当な勧誘をしてはいけないということはよくわかっております。ただし、現時点での限定以上に例えば威迫とか困惑という概念を持ち込んだ場合に、本当にこういうふうに我々の意見書でもって書いているような類型化ができるのかどうか、ちょっとその辺疑念があるところでございまして、もしそれができるということであれば、もちろん威迫、困惑という概念を用いても結構だというふうに思います。以上です。
#35
○木俣佳丈君 また、消費者の努力規定なんですが、これはやはり我々は削除しなければならないと。やはり情報を消費者の方が十分に持てるということは私はないというふうに今の段階では思います。
 さらに、これはやはり経済企画庁の論文の中で角田参考人が書いてありますように、「消費者が契約を取り消したいとしても、実務で二重の故意の証明は難しい。」、こういうふうにあるんです。この二重の故意の証明というのは本当に、これは「難しい」というふうに書いてありますように、要するに個々人が、消費者が立証責任というのを負って、情報をとって、しかも立証していくということは非常に難しいと私は結論づけたいと思っております。
 それで、じゃどういう方法があるのかなというふうに考えれば、消費者団体の方々が言われるように、団体訴権とかクラスアクションとか、こういったものが絶対に必要であるというふうに思います。堺屋長官は、政府提出のこの消費者契約法を称して、世界に本当に誇らしい法案だというふうに言われ続けておるわけでございますが、そのあたりもあわせて、岡田参考人と藤森参考人から、先ほどの団体訴権のことも含めてお願いします。
#36
○参考人(岡田ヒロミ君) 一番最近の例でココ山岡事件というのがあります。これは全国で九千人の若者が被害者になった事件で、二十六都市で裁判が起きています。東京におきましては四次まで提訴されているんですが、幸い東京でかなり消費者寄りの和解で解決しそうなんですが、まだ弁護団に加入していない被害者がおりまして、今現在、弁護団で次の被害者を募っているんです。
 この例をとりましても、やはり同じ事業者に対して同じような案件でいろんなところでそれぞれが裁判を起こすというのは大変不合理だと思います。そういう意味では、ぜひともクラスアクション的な制度、それから団体訴権といいますか差しとめ権、そういうものは必要かと思います。
#37
○参考人(藤森克美君) 集団事件が起こるたびに弁護士は弁護団というのをつくって、それで今は対処しているわけです。被害救済の部分が多いのですけれども、今後この団体訴権がもし認められれば、全国各地で組織している弁護団がそういう団体になりまして、そういう加害行為の差しとめとか、そういうことが予防の力を発揮するのではないか、そういうふうに思うんです。
 経済団体の方で御心配なのは、そういうわけのわからない団体が因縁をつけるというか、絡んでくるようなことを非常に心配されているんですけれども、現実には多分、団体訴権が認められていけば、全国各地にあるそういう事件ごとの弁護団が原告になりまして差しとめをやっていくとかということになって、そこら辺の弊害もなくなってくるのではないだろうか、そういうふうに私自身は考えています。
#38
○木俣佳丈君 最後の質問というか、意見になるかと思いますけれども、やはり今回法ができて、先ほど挙げましたような目に見えない声が、声なき声も含めて、一千万以上取引の契約だけで上がってくる。それをどうシステム的に情報を吸い上げるか。三百八十あるセンターの方々が中心になり、そしてまた、先ほど角田参考人が言われたような各企業の窓口ももちろん一つの吸い上げ場所だと思うんですが、要は、これは悪質なものだというふうに判断したり、そしてまた、時にはそれをまとめたりすること、これこそが本当に日本の社会にとっての宝に私はなるというふうに思うわけです。
 そのシステムをつくる際に、現在の状況ではだめなんだと。要するにもっと、法はできたけれども、先ほどの話になるかもしれませんが、もっとハード的なというのか、人的資源というのか、というものをもっとこういうふうにしなければならないという点を、松本先生と岡田参考人と伺えますか。
#39
○参考人(松本恒雄君) トラブルが起こった後の処理という点になりますと、現在のところは消費生活センターというのが一番頼りになるところですけれども、まだまだ十分知られていないということ、それから、センターに来られても人手が十分足りないということ、それからセンターの相談員のあっせんがすべてにおいて成功しているわけではないといった点、あるいは非常に複雑な、特に契約絡みの紛争というのは、法律の知識あるいはビジネスの知識がないと十分処理ができないというようなこともありまして、まずマンパワーをつけることが一番必要だろうと思います。
 しかし他方で、行政による処理だけではなくて、民間による、事業者団体による処理というのも、先ほどから強調していますように今後もっと充実していかなければならないだろうと思います。
#40
○参考人(岡田ヒロミ君) 今、全国の消費生活センターに寄せられた相談は、都道府県経由で国民生活センターにPIO―NETという形で入力されております。それはほとんど苦情が主なんですけれども、この情報がやはり余りオープンにされていないという部分が弁護士会なんかから出てきているんですが、私どももそれに対しては大変不本意だと思います。やはり全国から寄せられた相談というのは全国の消費者のために使ってほしいわけですから、今後契約法に基づいて裁判とか何かになったときに、国民生活センターのPIO―NETを有効に引き出せるような、それからまた、国会等の審議でも引き出せるような、そういうやっぱりシステムが欲しいかと思います。
 それに、もう一つお願いしたいことは、この国民生活センターに入力するために、カード、入力なんですが、これは都道府県でやっているんです。そうしますと、一枚幾らという世界なんですね。都の場合は、今東京都が入力して二十三区に対してそれぞれの受け付け件数の費用を負担しなさいと言ってきています。そうしますと、件数が多いところが負担が大きくなるわけです。私が出ています練馬、足立になりますと、六十万近くの年間の出費になりまして、これはとても出ません。そうすると、どうするかといいますと、せいぜい啓発費用か相談費用をそちらに充てざるを得ないという状況にあります。
 そんな意味では、ぜひPIO―NETの入力費用、これは県レベルですと一枚につき五百幾らというのがあります。そうすると何百万となりますから、ぜひPIO―NETの入力は有効活用のためにも自治体の負担を軽くする形で対応していただきたい、そのように思います。
#41
○木俣佳丈君 ありがとうございました。
 終わります。
#42
○海野義孝君 公明党・改革クラブの海野でございます。本日は、四人の参考人の方々、大変御多忙のところをお差し繰りいただきまして、私どもの討論のために貴重なる御意見を賜ったことを心から感謝申し上げます。
   〔委員長退席、理事馳浩君着席〕
 きょうお集まりの四人の方々は、今回の消費者契約法立案に当たって、それぞれの立場から大変御努力をなさったということでございますけれども、冒頭に松本先生もベストではないけれどもベターであるというような御発言がありましたが、四人の方々に点数評価をされた段階では、かなり厳しいことを松本先生もおっしゃっていたわけで、その辺が消費者契約法の検討委員会の委員長代理をなすって、いろいろと吐露できない苦衷を評点にあらわされたんじゃないかというような感じがするわけでございますけれども、その点で少しお聞かせいただきたいと思います。
 松本先生は、国民生活審議会の消費者契約法の問題についてはかれこれ六年ぐらいにわたって検討されてきたことでございまして、その間いろいろな紆余曲折があったということは、私どもも国生審のいろいろな報告書等を拝見しまして十分わかるわけでございますけれども、中でも平成十年一月の中間報告の取りまとめの際も中心的な役割を果たされた、そして去年十一月の報告についても委員長代理として取りまとめに当たってこられたということでございます。政府案につきましては、中間報告に比べて後退したんではないかというようなことも私も聞かないわけではないんですが、そういった意見を聞いておりますけれども、この点について先生はどのような御意見をお持ちか。
 それから、この契約法の第二章の締結過程のルール、これは欧米の消費者契約法と比べて十分なものであるかどうか、あるいは不十分なのか、その辺についてこの内容はどうかという点についてまずお聞きしたいと思うんです。
#43
○参考人(松本恒雄君) 中間報告、とりわけ十年一月の中間報告に比べますと、内容的には若干後退しているということは認めざるを得ないと思います。
 十年一月の段階ではまだ審議途上ということでございまして、そこで出されてきた一定の考え方を具体的に事業者の団体や消費者団体やその他行政等に投げかけて意見を聴取して、その中でこういうぐらいなら同意できるということでまとまったのが今回の案というわけですから、一月段階の案よりは後退しているということです。
 さらに、二つ目の御質問の勧誘過程の問題でありますが、先ほどから情報提供義務の話が一つ焦点になっておりますので、この点について若干私見を申し上げたいんです。
 情報提供義務というものを裸の義務として、しかもその違反に対して一定の民事的な効果の伴った民事ルールとしての情報提供義務という形で定めている国はございません。そういう意味で、情報提供義務が裸の民事的な義務として入らないことは国際的にはバランスはとれていると思うんです。
 ただし、重要事項についての不告知について故意を要求しないということと情報提供義務は必ずしもイコールではなくて、むしろ不実告知という間違ったことを言うというタイプにつきましては、故意も過失も要求しないで契約の取り消しを認めているわけですから、これの並びで、重要なことを告げないことがほかに告げたこととあわせてトータル正しくないことを告げたという、不告知が不実告知になるというふうな場合、あることを言わないことが間違ったことを重要なことについて言ったというふうになる場合については、むしろ不実告知の方のルールを適用する形で、故意は要求する必要はないのではないかというふうに個人的には考えております。しかし、これは一般的な情報提供義務というものではなくて、告げないことによる不実告知という形で一部吸収できるということであります。
#44
○海野義孝君 次に、岡田参考人にお聞きしたいと思います。
 日夜、消費生活専門相談員として大変御苦労されているということでございまして、今回の消費者契約法が施行というようなことになりますれば、言うなればこれまで御苦労された部分の一端は解消されるんではないかと思うと同時に、これからさらにこの消費者契約法を実効性あらしめるために、またいろいろな御苦労もおありではないか。現場にいらっしゃってそういった御苦労がおありかと思いますので、二点ほどお聞きしたいと思います。
 まず第一点としましては、この消費者契約法が例えば来年四月一日に施行された場合に地方の消費者行政、これは十分対応していける、このようにお考えになっていらっしゃるかどうか、あるいはまた今のうちに準備をしておくべき点、あるいは改善すべきではないかと思われるような点がありましたら、御指摘いただきたいと思います。
#45
○参考人(岡田ヒロミ君) まず、私は先ほど契約法について高い点をつけてしまったんですけれども、日本の場合は法律ができた場合に大変企業がその法律以上の対応をするんですね。最初にもお話が出ていましたけれども、既に業界の方では契約法をにらんだ形で改善してきているということを聞きましても、多分来年四月一日以降に関しては、業界ではかなり約款等がそろうんではないか、そのように思っております。これは、思っているというか信じたいと思っているんです。
 そういうふうに考えますと、今まで私ども相談員が、PL法の場合もそうでしたけれども、法律ができますと日夜勉強勉強に追われるんですけれども、法律が施行になったときに対応できないということは相談現場においては余りないんではないか。それはあくまでも都道府県の指導力の問題があるんですけれども、当然都道府県で相談員のための研修、そういうものを再三やっていただいた上で、マニュアル的なものも用意していただいてということになるかもしれませんが対応できる、そのように思います。
#46
○海野義孝君 もう一点お願いします。
   〔理事馳浩君退席、委員長着席〕
 本委員会におきましても消費生活センターの統廃合といったようなことについても議論されたところでありますけれども、消費者契約法の成立を契機としまして地方の消費者行政は今後どのように変わっていくべきか、特に都道府県とか区市町村との分担関係はどのようにあるべきか、さらに国はどのような支援をなすべきか。先ほどの委員の方の質問の中にも重複する部分があるかと思いますけれども、その辺も含めて改めてお聞きしたいと思います。
#47
○参考人(岡田ヒロミ君) 統廃合に関しましては、大変深刻な状況にあるということは聞いているんですが、相談員の努力とそれから各地区の弁護士会なんかの協力もありまして、今のところ一生懸命いい方向へ持っていこうというふうにしている状況ではないかと思います。
 ただし、契約法の施行に向けて予算がふえているかというと、そういうことは全く聞いておりません。ですから、契約法の影響というのが果たして地方自治体にあるかということになりますと、国から予算がつけばともかく、そうでない限りは私は望めないんじゃないか、そのように思います。
#48
○海野義孝君 次に、藤森参考人にお聞きしたいと思いますが、本法案の第十条の一般条項につきまして、参考人からは先ほどある程度評価できるというようなお話があったように私承知しているんですけれども、もうちょっとこの第十条の法的な意義について詳しくお聞きしたい。裁判の実務の観点から、どのような点が現行の民法等の規定よりも消費者にとって役に立つということになるのか、その点について教えていただきたいと思います。
#49
○参考人(藤森克美君) 消費者契約法は、民法とか商法の特別法というような考え方だと思うんですが、民法一条二項、これは信義則が規定されている法律ですけれども、これに反し「消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」というふうになっておりまして、その民法原則はあくまでも貫くという考え方だと思います。そういう点からして、この法案によって消費者保護に十全を図るという精神は全うされているのではないか、そういうふうに考えます。
 非常に規定が抽象的なものですから、現実に消費者トラブルの場面の中でこれがどういうふうになってくるのかという面はちょっと予測しがたい部分もあるんですけれども、「消費者の利益を一方的に害するものは、無効」というふうに書いてありますので、この点は心配ないのではないか、そういうふうに考えております。
#50
○海野義孝君 角田参考人にお聞きしたいと思います。
 経済界では、この取り消しの行使期間につきまして、政府案の「追認をすることができる時から六箇月」、「消費者契約の締結の時から五年」という期間もまだ長いという意見が一部にあったというように聞いておりますけれども、取り消しの行使期間が長くなることによりまして事業者にはどのような経済的負担がかかってくるのか、御説明いただきたいと思います。
#51
○参考人(角田博君) 二点あると思うんですが、まず第一点は、契約が成立したと思っていたのに例えば五年たってあるいは十年たってそれが取り消されたということになりますと、まさに取引の安定性というものに対して非常な影響を与えるということが一つ。それからもう一つ、具体的にどの程度の負担があるのかはわかりませんけれども、そうした事態が生じるときのために各種の契約の書類だとかそうしたものを保存しておかなくてはいけない、これはちょっと大変だという経団連のメンバーからの意見を聞いております。この二点からして余り長いのは問題であるというふうに考えております。
#52
○海野義孝君 藤森参考人にお聞きしたいと思いますけれども、不当条項につきまして、ブラックリストとかグレーリストを設ける必要性があるのではないかというような意見に対しての藤森参考人の御見解はいかがでございますか。
#53
○参考人(藤森克美君) 日弁連でブラックリストとかグレーリストについて、それを充実する方向でずっと検討してきました。そういう方向で法案ができるのではないか、そういう期待を持ってやっていたんですけれども、今回そういうふうにはならなかったわけですけれども、その点については、弁護士というのは実務家ですので、具体的な事件の中でそういう抽象的な一般的な条項を武器にいたしまして闘うというか、消費者の救済に資する方法をとりますので、その点についてはあった方がベターなんですけれども、なくても十分武器にはなり得る、そういうふうに考えております。
#54
○海野義孝君 岡田参考人、再三恐縮ですけれども、最後の御質問としてお聞きしたいと思います。
 紛争の解決機関としての消費生活センターの機能強化及び苦情処理委員会の活性化について御意見を賜りたいと思うんですが、消費者トラブルの場合に少額紛争が多い、裁判に行かずとも紛争解決ができる仕組みを整備しておく必要があると考えられるわけです。その場合に、地方公共団体における紛争解決が十分図られることになるのか、既存の機関、特に消費生活センターにおける相談受付や消費者保護条例等によって設置されている苦情処理委員会が十分機能するのかについて御意見をお聞きしたいと思います。
#55
○参考人(岡田ヒロミ君) 各都道府県に苦情処理委員会ないしは消費者被害救済委員会ですか、そういう委員会があるんですけれども、本当に機能しているかと言われますと、東京都はかなり頻繁に会合を持たれているみたいですが、一回から二回という自治体がほとんどのように聞いております。そういう意味では、条例で制定された制度でありながら、事務量の問題とか予算の問題とか、その辺があるのかどうかわかりませんが、ほとんど機能していないのではないか、そういうふうに思います。
 その一方で、国民生活センターにPL法ができたときに苦情処理専門委員会というのがあります。ここが契約に関しても当然適応できるのではないか、対応できるのではないかというふうに思います。それからしますと、地方で苦情処理委員会ができないようなケースの場合ないしは幾つもの都道府県に、地域にまたがるようなもの、そういうものについて国民生活センターの苦情処理専門委員会が対応してもらえば随分救済される部分があるのではないか、そのように思います。
 それから、消費生活センター以外では先ほどもおっしゃいました裁判所調停制度、それから弁護士会の仲裁センターというのがあります。全国で十カ所の仲裁センター、弁護士会あるんですが、大変消費者契約に関して積極的な会もあればそうではないところもあるということで温度差がかなりあるように思います。あと、十カ所というのは大変少ないものですから、そういう意味では司法書士など法律の専門家が、司法制度改革に絡むんですけれども、法律相談とか訴訟代理人、そういうふうな形をとれればもっと消費者というのは裁判にも入っていけるのではないか、そのように思います。
#56
○海野義孝君 時間になりましたからこれで終わりますけれども、四人の参考人の方々、本当にありがとうございました。今後の委員会での討論に大変有益な御示唆に富むお話をいただきまして感謝する次第でございます。大変ありがとうございました。
 以上で終わります。
#57
○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。きょうは、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、ありがとうございます。
 まず藤森参考人にお伺いをしたいと思います。
 四月四日の日弁連の法案に対する意見書を読ませていただきますと、不利益事実の不告知は故意を必要とすると、それがあるためにこの条項、すなわち取り消し条項が実際には機能しなくなるのではないか、その可能性があるというふうに述べられているんですが、この点について少し詳しくお伺いをしたいと思います。
#58
○参考人(藤森克美君) 故意を要件にいたしますと、裁判の現場の中で、先ほど来僕は言っているんですけれども、余り消費者問題に理解を示さない裁判官、現実にいるんですね。そういう方がそこをすごく厳しくとらえちゃうわけです。そうしますと、故意ということはこちらに、消費者側に主張立証責任があるわけですけれども、その点をすごく厳密にとらえる裁判官は、それの立証ができていないということで消費者を負かしてしまう。特に、もう判こをついたからあるいはサインしたからだめ、負けというようなそういう感覚の方が現実にいるものですから、そういうことで、そういう故意が要件になってしまうと、そのことを理由にして簡単に負かしてしまう、あるいは低い内容の、低い条件の和解を押しつけてくると、裁判官が。
 そういうようなことは現実にそういう裁判の現場の中ではたくさんあるわけですから、そういうことから日弁連では心配しているわけでございます。
#59
○山下芳生君 私もその御意見というのはもっともだなと思っておるんですが、ただ、事業者の方にとっては、故意を入れておいてほしいという御意見も出ております。
 角田参考人にそのあたりの、先ほどもそういう御意見だったんですが、なぜこの故意が必要なのか、もう少し詳しく伺いたいと思います。
#60
○参考人(角田博君) 特にこの意見は大企業というよりも中小企業の小売店主の話で聞いたんですけれども、例えば物を売ろうとするときに、とにかくすべて重要なことは全部伝えました、そして売りますということではなくて、とにかく売り主は知っていたんだけれども、ついうっかり言わなかったとか、あるいはこんなことを言うと消費者がかえって混乱するんじゃないかということであえて言わなかったということはよくあるんだ、それで契約が成立したなどということはよくあるんだというお話を聞いております。
 そうした点についても、うっかり言わなかったということについても、それを盾にとられて、この契約は取り消しですと、そうされると非常に困るという中小企業の店主のお話も聞きまして、いや、それではやはり要件として厳しいんじゃないか。厳しいというか、故意でもってこうしたことを言わなかったと、そうしたら取り消しという極めて厳しい措置をとられても仕方がないというふうに言えるんではないかという判断から、ぜひ故意ということは入れてほしいという意見になったわけでございます。
#61
○山下芳生君 不利益事実の不告知でございますので、単なる一般的な情報の提供ではなくて、その不利益事実を不告知する際にも故意でなければならないというのは、私、これは事業者にとっても最低限の、プロなんですから当たり前のことではないかと。それをうっかり言わなかったというのは、これは幾ら中小の方とはいえ、やっぱり故意とみなさざるを得ないのではないかと私は思うんですが、それを逆につけることによって今度は消費者がそれを証明しなければならないというのは、先ほど藤森参考人から言われたようになかなか証明すること自体が大変難しい。
 どっちかというと、その程度はやっぱり故意であろうがなかろうが伝えるのが当然ではないかという意見があるんですが、その点での事業者の側の反論といいますか、どういうものがあるんでしょうか。
#62
○参考人(角田博君) 非常に難しい話なんですが、例えばという具体例で議論したことがあるんですが、例えばこの車は非常に燃費がいいよと言われて買ったという消費者がいるとしますね。そして、実際に走ってみたら、その消費者にとっては市街地で走ることが非常に多かったというわけです。ですから、平均すると燃費はいいんだけれども、市街地で走ると通常の車以上に燃費が悪かった、これは不利益な事実ということに相当するんじゃないかと。これは、あなた方売る方はプロなんだから当然そのことも言うべきだったんだ、それを言わなかったのは悪い、だから取り消しだと言われると困るという、これは非常に、余りにも具体的過ぎて、これがその典型的な例とは言えないのかもしれませんけれども、そうしたこともあり、ぜひ故意ということを入れてほしいということだったんです。
#63
○山下芳生君 藤森参考人、今のような御主張に対して、日弁連としてはそれはこうできるんだというのがございましたら、それを少し伺いたいと思います。
#64
○参考人(藤森克美君) 今のようなケースですと、常識的に考えて、その消費者が言うことが、文句をつけること自体がちょっと常識に反するんではないか、そういうケースだと思います。ですから、そういうものが裁判になるとは僕は思えないし、それから裁判所がそういうクレーマーみたいな人に共感を示して勝訴判決を下すなんということはちょっと考えられないものですから、事案としてはちょっと考え過ぎなのではないだろうか、そういうふうに思います。
#65
○山下芳生君 これは具体的な問題になりますといろんなケースがあると思うんですが、しかし一般的に考えて、これを本当に使いやすいものにするためにどうなのかということなので、今のお二人の御意見も参考にしながら審議を進めていきたいと思います。
 続いて藤森参考人にお伺いしたいんですが、先ほどもありました無効となる不当条項について、ブラックリスト、グレーリストが必要だというふうに日弁連さんは御主張していたんですが、残念ながら入っていないということで、しかしそれでも頑張るという御意見なんですが、なぜこれが必要なのかというその必要性について改めて意見を聞かせていただきたいと思います。
#66
○参考人(藤森克美君) そういうものがありますと、具体的な個々の事件において当てはめが簡単ですから、ですから解決がしやすいということはあると思うんですね。特に、弁護士のところまで来ないケース、要するに消費生活相談員さんのところで解決を図るというようなケースの場合には、そういう具体的な基準がはっきりしておれば解決が速やかですから、そういうことで中間報告などでは検討していたという経緯であるというふうに理解しております。
#67
○山下芳生君 同じ問題を角田参考人にお伺いしたいんですが、事業者の側からも予見可能性の確保というのが非常に大事なんだと、こういう御意見が一貫されているように思うんですが、そうしますと、契約書の中にこういう条項が入っていたらこれはもうアウトですよというのを法律の中でできるだけリアルに列挙していた方が、これは事業者にとっても私は予見可能性という点では高まってよりよいのではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
#68
○参考人(角田博君) まさにそれがいわゆる包括的民事立法と言われる広いカバーする範囲で、すべてについてそういう、これがブラックリストです、これはグレーリストですという形でできるとすれば、それはその方がいいと思います。ただし、非常に難しいんじゃないでしょうか。
 いわゆる消費者契約の対象とする商品というのは範囲が広いものですから、それをすべてについてカバーして、これはクロ、シロと、そういうふうにまで大きなリストができるかどうかという点につきましては私は大変疑念を持っております。そういう意味で、ブラックリスト化ということについては賛成しかねると思います。
#69
○山下芳生君 ありがとうございました。
 続きまして、岡田参考人に伺いたいと思います。
 先ほどから相談員さんのいろんな御苦労を聞かせていただいて、非常にこれは努力が要る仕事なんだなと思いました。やはり行政や司法の専門的な知識も要るでしょうし、それから実際に知識だけではなくて経験の蓄積というのも恐らくこれは大事なんだろうと思うんです。
 相談者が、先ほどのお話ですと、自分の置かれた状況をきちっと表明がなかなかできない方もいらっしゃる、そういう方々から正確に的確に現状を聞き出すための能力もお要りでしょうし、アドバイスをして終わりになればいいでしょうけれども、場合によっては事業者に直接交渉しなければならない。そうなりますと、やはり知識とあわせて経験、場数というのも大変大事ではないかと思うんですが、どういうふうにしてそういう経験といいますか能力を習得されていくのか、また、いわゆる一人前の相談員さんにおなりになるにはどのぐらい期間が必要なのか等も含めてお話しいただければと思います。
#70
○参考人(岡田ヒロミ君) 私が相談員になったときは先輩がいまして、先輩を見ながら、反面教師の場合もあるんですけれども、かなり先輩が私たちにとってはお手本を示してくれたんですが、現在は試験制度になりまして、資格を取ったらぽんと相談員になれるんですね。
 そうした方々の研修といいますと、国民生活センターや都道府県であるんですが、主にこれは知識の研修なんです。そういうところで、たまに国民生活センターで事例研究といいますか、事例で議論する。これもどうしても知識になってしまうものですから、今おっしゃった経験とかそれから相談員のスタンスといいますか、それぞれの自分の中でのはかり、こういうものを持つことが絶対必要だというふうに思いますけれども、現状においてはなかなか難しいと。
 その中で、定年五年というのが大変広がっております。五年といいますと、やっと相談が落ちついてできる状況なんです。そのときに、はいさようならというのは、どう考えても現場としては不合理だというふうに思います。せめて十年以上は必要ではないかと、そのように思います。
#71
○山下芳生君 ありがとうございました。
 私は、個々の相談員さんの力量のアップと同時に、組織的な体制といいますか、先ほども市町村でカバーできないところを都道府県のセンターにカバーしてもらうんだと。ある意味では役割分担といいますか、補完し合っていると思うのですが、そのそれぞれの相互の補完関係について、少し具体的なお話も交えて御説明いただければと思います。
#72
○参考人(岡田ヒロミ君) 現状、東京都と二十三区、区市町村の例を言いますと、補完と言えるのかどうなのかわかりませんけれども、それぞれに相談は受けております。ただ、ここ何年か前から東京都の方ではそれぞれ相談者の居住地の方へ回しているというのが状況ではありますけれども、その意味では、やはり同じような相談をそれぞれが受けるというのはどう考えても非合理ではないかと。むしろ都道府県に関しては、区市町村の相談でまとめ役的な部分ないしはセンター・オブ・センターみたいなそういう役割が当初から求められていたのではないかと、そのように思いますが、現状においてはどうもそういうスタイルは見受けられないというふうな感じがいたします。
#73
○山下芳生君 私も地元大阪の相談員さんのお話を伺う機会があったんですが、そのときになるほどなと思ったのは、これから法案の問題にも関係すると思うんですけれども、故意であるかどうかを個々の事例ではなかなか判断できない、しかし同じような被害が同じ事業者によって複数出てきた、違うところで相談員さんが相談を受けた、突き合わせてみたら同じだったと。これはいかに、いや故意じゃないんですと言っても故意じゃないか、故意という表現がいいのかどうか、これは意図してその事業者が悪質な手口としてやっていると認定できる。それは、一つのケースではなかなかできないのだけれども、お互い相談員さんが横のつながりを持つことによってそういう断定というか認定ができるんだというお話を伺って、なるほどそういうこの横のつながりというのは大事なんだなと思ったんです。
 そのことについて意見を聞くって、私言ってしまいましたので、そういう点、ほかにもそういう組織的な何というか、強みといいますか役割というのはいかがでしょうか。
#74
○参考人(岡田ヒロミ君) 私が属しています全国消費生活相談員協会の方は全国にまたがっておりまして、支部があるんですが、それぞれの支部でやはり勉強会ないしはそのグループでいろいろ研さんしております。そこで情報交換というのはもちろんあります。
 あとは、先ほど来出ていますPIO―NET、それから東京都の場合メコニスという同じようなネットワークがあるんですが、そういうのを引き出すことによって、ある業者に関して同じような手口とか、その辺は幸いわかるようになりました。
#75
○山下芳生君 ありがとうございました。
 松本参考人にお伺いをしたいと思います。
 裁判外紛争処理の充実のために消費生活センターなどの充実ということについては先ほども御説明あったんですが、もう一つ、最初の意見の陳述の中で、独立性の高い業界別の紛争処理機関が必要だと。これは業界の中に、業界ごとに設けるといいましても業界関係者がやっていたのでは私はどうなのかなという思いもありますから、独立性の高いというのが大事だと思うのですが、具体的にはどういうことになるのか、海外の例等がもしございましたら御説明いただきたいと思います。
#76
○参考人(松本恒雄君) これは例えばアメリカですと、広告の適正化のためにベター・ビジネス・ビューローというのが有力企業を中心につくられていまして、ここが非常に権威が高くて、消費者の苦情が持ち込まれると適正な処理をして事業者名等も公開するという処置をとっております。
 また、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドといった旧英連邦諸国ではいわゆるビジネスオンブズマンと言われている銀行オンブズマンだとか保険オンブズマンだとか年金オンブズマンだとか、そういうたぐいの名称の機関がたくさんございまして、これは業界がスポンサーになる。しかし、オンブズマンとして仕事をする人は業界外の非常に尊敬されている元裁判官だとかあるいは学者なんかがなって、独自の事務スタッフを抱えて中立公正な判断をします。事業者側はみずからスポンサーになっていますからその判断に対しては従うという約束をしています。
 他方で消費者とか顧客側は、それに不満であれば裁判所の方に持っていけるということで訴訟の道は閉ざされているわけではないんですが、そのビジネスオンブズマンの権威が非常に高いことから、裁判所に持ち込んでもひっくり返るケースは余りないということを元オンブズマンの方からお聞きしたこともあります。
 日本でもPLセンターなんかは言ってみれば製造物責任法の実効性確保のためにつくられた業界別の紛争処理機関なんですけれども、その独立性とか中立性という点でなお十分なのかどうかというところを検証する必要があるだろうと思います。
#77
○山下芳生君 最後にもう一度岡田参考人にお伺いしたいんですが、これは相談員さんがどういう形で相談員さんにおなりになるのかということなんですけれども、いろんな資格を取られると。これはもう私、単純に本当にどういう実態になっているのかということなんですが、それぞれの、わずか五年でもう違う、何というか、任期が切られるような事態があると聞きましたけれども、相談員さんになるまでの何といいますか経過というものは、大体どのようにして皆さん相談員におなりになっていくんでしょうか。
#78
○参考人(岡田ヒロミ君) 公的な資格である消費生活アドバイザー、それから消費生活専門相談員に関しては通産省の外郭団体それから国民生活センターでテストをしますので、これはもうテストに受かれば相談員の資格が身につきます。それとあと消費者協会、財団法人なんですが、こちらでコンサルタントというのを養成しますが、これは五十二日間、毎日なんですけれども研修を受けまして、そしてそれを修了したときにコンサルタントの資格が与えられるんですが、これと国民生活センターで専門相談員の試験とは別でやはり同じぐらいの期間研修をして相談員という資格があるんですけれども、いずれも研修ないしは資格を取れば相談員にはなれると。
 ただ、問題は就職先がないということなんで、最近東京都の方で募集したんですけれども、何人かの募集に対して何十人と押し寄せているという感じですから、その選考がどのようにされているか、その辺はちょっと私どもではわからないんですけれども、相談員になりたい人はたくさんいると。そのなりたいがために難しい試験を取っているにもかかわらず、なかなかなれないというのが実態かと思います。
#79
○山下芳生君 どうもありがとうございました。
 終わります。
#80
○梶原敬義君 社会民主党の梶原と申します。
 四人の先生方におかれましては非常に貴重な御意見を賜りまして、また後日、本法案の審議日が入っておりますから、この中でまた皆さんの御意見を国会の審議に生かしていきたいと思っております。
 私は、四人の先生方に一つずつ順次質問させていただきたいと思います。
 最初に、松本参考人にお伺いしたいんですが、松本参考人は国民生活審議会の消費者政策部会の委員長代理をなさったと聞いておりますが、この中で実効性の確保についての議論をどのようにやられたのか、意見がどのように出たのか、特に先ほど消費生活センターの役割の重要さを述べておられましたが、その辺のことについてお伺いをしたいと思います。
 次に、岡田参考人につきましては、一つは、この法案ができた場合に相談件数が私は、来年の四月一日から、一時的かもわかりませんが、恐らくざっとふえてくるんではないかと、そんな感触を持つんですが、その辺はいかがでしょうか。
 それから、貴重な会員の実態調査というアンケートの結果をいただきまして、これを読ませていただきました。そこで気づいたことでありますが、契約更新について、これは一年更新になっております。一年更新になるということは、一年ごとやっぱり任命者の顔色を見なきゃいけないんじゃないか、そういう心配もあるんではないか。どうも、その辺の不安はあるのかないのか。
 それから、定年制のことは先ほど聞きましたからわかりましたが、諸手当について、一時金とか時間外とか通勤手当、退職金、すべてなしという欄がありますが、通勤手当なんかは出ているところも出ていないところもばらばらですね。そして、報酬についての満足度については不満という人が都道府県センターには百四ですか、百五十五人中百四。こういう数字を見ますと、我々もこれはやっぱり看過できないな、このように思います。保険の加入状況も未加入が多い。
 それから、逆に言いますと、一日に受けた相談件数なんかは、ちょっと計算をしてみますと三ないし九件の中に百二十四人入っているんです。百五十五人のうちに百二十四人。全部足してみました。日にそんなにたくさんの件数が入ってよう頭がもつなと、このように思うんですが。
 そういうことをこのアンケートを見ながら感じました。率直な御意見を重ねてお聞かせ願いたいと思います。
 それから、経団連の角田参考人、前は商工委員会と言っていたんですが、今は経済・産業委員会ですが、私は長いんです。豊田商事の事件で本当に深刻な議論をしまして、あのときに我々委員会の無力さというものをあれほど感じたことはなかったんです。本当に歯ぎしりをした思いがあります。
 今度の法案の審議に当たりまして、事件件数等も見ますと非常に伸びております。平成元年が三十三万が平成十年には五十九万、急激にふえております。だから私は、商売はいろいろな御心配はあろうかと思いますが、必ず、商売、事業というのはいいものはいい、伸びるものは伸びる。むしろ、変な心配を経団連の方はし過ぎじゃないかと。そんなことじゃいつまでたってもいいものは伸びてこない。そういう感じを持ちましたので、その辺の御意見を承りたいと思います。
 それから、藤森参考人、やっぱり委員会は最後は多数決で物が決まるわけでありまして、この委員会もやっぱり与党と野党と意見大分違うんですが、きょう御意見が出ましたように、条文ごとの問題点というのはずっと指摘されて、我々も問題意識を持っておりますが、そうそうこれを修正できるような力はないわけでありますが、あえてやっぱりこの法案についてここは大事だというのがあれば教えていただきたいと思います。
 以上、お願いします。
#81
○参考人(松本恒雄君) 実効性確保につきまして審議会でどのような議論がなされたかということでございますが、審議会における論点といいますのが、実効性確保の部分よりはむしろ法律に盛り込むべき具体的ルールの中身でありまして、実効性の方についてはそれほど対立がなかったと理解しております。
 例えば、消費者教育あるいは消費者向けの情報提供が非常に重要であるということについてはどなたも同じ意見でありますし、また裁判による処理をやりやすくすべきであるとか、あるいは裁判まで持っていかなくても適切な紛争解決がなされるようなメカニズムをいろいろつくるべきであるという点についてもおおよそ意見は一致しております。唯一一致しなかったのが団体訴権という、消費者団体に一定のイニシアチブを与えて訴訟を起こす権限を与えるべきかどうかという点につきましては意見が一致しなくて、今後継続的にさらに議論を進めるということになっております。
 実効性確保の問題で難しいのは実効性をどのように評価するかという点でありまして、現在各自治体におきまして消費生活センターの縮小の動きなんかが一部で出ているわけですが、これは自治体の財政事情の悪化から、効果が余り上がっていないような部分を縮小するという動き等もありまして、それでは消費者施策における効果が実現したかどうかをどう評価するか、ここが難しいところであります。相談件数が非常に多いというのは消費者施策が成功したから多いのか、失敗したから多いのかというような根本的なところがございまして、そのような消費者施策の評価をどのようにするのかというようなところの、何といいますか、手法を開発していく必要があるのではないかなと考えております。
#82
○参考人(岡田ヒロミ君) まず、一番目の御質問なんですけれども、PL法ができたときに、やはりPL法に関してマスコミで取り上げられるものですから、よく内容がわからないでいろいろ言っていらっしゃるという相談がふえました。その中でとても困るのは、御自分に有利な解釈をして私どもセンターに自分の要求を通させよう、そういう相談が一番困るんですけれども、契約法に関してもそういう相談はきっとふえるだろう、そのように思います。
 ただ、契約法が正しく消費者に伝わるための、そういう忙しさであれば、我々相談員は全くそういうことに関しては意に介さないといいますか、一生懸命やるものですから頑張っていくだろうというふうに思っております。
 それから、次の身分、待遇のことなんですが、もう私どもにかわっていただいて全部言っていただいたような感じで、きょう来ている傍聴の相談員もさぞ喜んでいるかと思うんですけれども、待遇に関してはいろいろ問題がありまして、いわゆる非常勤でも二通りありまして、年金とか保険とか交通費、そういうものがついている非常勤とそういうものがない非常勤がおります。
 原則月に十四日以上出る場合はそういうものがつくという形なんですが、必ずしもそれが相談員に有利ではないような自治体もありまして、非常勤になったがために定年制が出てきたとか、それから本俸、本来の給与が減ったということもあるものですから、どうも足並みといいますかそういうものがそろわないような感じがいたします。
 ですが、やっぱり労働力からしますと、今おっしゃったように一日三件とか五件とかいうのは少ない方でして、多いときは一人で十件以上受けると。その前から持っているのもありまして、一日で終わる相談というのはそうないんです。大方ずっと継続していきまして、消費者と事業者の間であっせんしていくわけですから、その辺では、一人当たり三十件から以上持っている相談員もいるという実態からしますと、やはり年金とか保険とか交通費、給料、それはもう満足している相談員はいないだろう、そのように思います。
#83
○参考人(角田博君) 梶原先生のおっしゃるように、経済界は心配し過ぎじゃないか、いい企業はちゃんと伸びるんだし心配する必要はないとおっしゃる、まさにそのとおりかもしれません。ただし、逆に言えば、悪徳消費者というのは、これはもうどういう網をかぶせてもやはりそれを破って何かやってくるんじゃないか、そういうことも言えるわけです。
 特に、私どもが消費者相談窓口の方とお話ししてみますと、やはり彼らはクレーマーと言われる非常に悪徳な人たちに悩まされています。それで、そのクレーマーに対してあいまいな基準を与えますと、彼らはそれを喜んで使ってくるわけです。そして、理不尽な要求を突きつけてきて、企業としては体面を汚されるのを恐れて泣き寝入りせざるを得ないということになるということで非常に心配をしているわけです。
 特に、最近事例がございましたけれども、例えばインターネットを使えば、たった一人のクレーマーが何千万人という人間に対して同じ情報を流せるわけです。そうしたことも使えるようになってきたということから、やはり企業としてはどうしても慎重にならざるを得ないということでいろいろ心配をしているところでございます。
 以上でございます。
#84
○参考人(藤森克美君) 法案の中で抜けているものでここが大事という御質問でしたけれども、一つ挙げれば、電話による威迫・脅迫行為というのは現実には非常にすさまじいものがありますので、私生活または業務の平穏を害し困惑させること、その他合理的判断することを妨げるという、こういうような内容のぜひ条項を盛り込んでいただきたい、そういうふうに考えております。
#85
○梶原敬義君 終わります。
#86
○水野誠一君 お疲れさまでございます。
 私は最後の質問者になりました。大抵聞きたいことはもう各委員がほとんど聞いてしまうということでいつも苦慮するんですが、私、先ほど採点という中で、皆さんの採点を伺っていると大体良と可の間ぐらいと。ただ、岡田さんが一番最初に七十点とおっしゃって後悔されていたようなんですけれども、でも私は正直なところ、岡田さんが七十点をつけていただいたということは大変大事なことじゃないかと思うんです。といいますのは、今まで六年間にわたっての議論の中でやっぱりいろんな意見が出てきている。それで、事業者側それから消費者側双方の意見が出てきている中で、悪く言うと妥協の産物だという言い方もあるんですが、私は、やはりそこは相当燃焼された中で一つの落としどころが決まってきたのかな、そういう感じがするんです。
 ただ、私はきょうはまず最初に松本先生から伺いたいと思うんですが、先生も先ほどからおっしゃっているように、行政ルールから民事ルールへという、これは大変大きな意味を持った言葉だと思うということと同時に、単なる弱者保護ではなくて、契約概念ということを明確に日本の社会にも植えつけていく一つの契機にもなるだろうということで、私も同感でございます。
 しかし、その中で、先ほど来いろいろ議論があるわけですが、いかなるルールをつくっても、悪徳業者がだまそうと思ってやったときというのはこれはどうにもならない。その後の紛争の処理であったり、契約の取り消しであったり、そういうルールは確かにできるわけですが、やはり大事なのはいかに予防していくかということに尽きるんじゃないかなと思うわけです。
 いろいろな今回もそういう議論もあって、特に消費者教育ということの重要性ということもいろいろ出てきたわけでありますが、松本先生にまず伺いたいのは、先ほど来欧米での事例ということも質問の中にちらちらとは出ているんですが、これは欧米、特にアメリカあたりというのはPL法なんかでも一日の長がありますから、非常に歴史が長い。しかし、片方では非常にエキセントリックな事例というのをよく我々も聞かされるわけです。電子レンジの中に雨でぬれた猫を入れたら死んでしまった、どうしてくれるというような話だの、実際最近でもマクドナルドでやけどをされたという方の話とか、非常に過激な話というのが聞かれるわけです。実際はもっともっと正しいPL法の運用と成果というようなものが出てきているというふうに見るべきだと思うんですが、この消費者契約法で我々が海外から学ぶべきもの、これは非常に重要な要素だ、重要な事例だというようなものがあれば、ぜひ何か御紹介をしていただければと思います。
#87
○参考人(松本恒雄君) 一つは実体法的なルールの面ですが、一昨年、経済企画庁の委託で研究者グループが海外の類似立法の状況、それからそれが経済等にどのような影響を与えたかということについて調査をいたしまして、ここに報告書がございます。海外主要国においては、全く同じではありませんが、それぞれ歴史を踏まえた上で消費者契約についてそれを適正化するための民事ルールを持っている、そしてそれがあることによって、経済に対してマイナスの影響を与えた、企業活動を混乱させたとかいうようなことは出ていないというレポートがなされております。
 むしろ、アメリカなんかが一番極端といえば極端ですが、消費者や私人に積極的に訴訟を起こす権限を与える、サポートすることによって、そのルールの実効性を図っていくという発想が非常に強いです。それが一番極端にあらわれますと、PL事件で懲罰的損害賠償で非常に巨額の賠償額を認めるというような形になるんですが、これはアメリカの一種の公平についての、何がフェアかということについての理念でありまして、日本の発想は、被害者が焼け太りするのはよくない、自分の生じた被害以上に賠償金を得られるような懲罰的な性格の賠償はよくないという発想が非常に強いです。しかし、アメリカはむしろ逆で、加害者が不当に得た利益を留保できるということは不公正である、それはむしろ吐き出すべきであるという、そういうフェアについての考え方の違いがかなり大きいと思います。さらに、マーケット中心の志向が非常に強い国ですから、私人がいろいろイニシアチブを発揮してルールの実効性を確保していくことの方が行政がいろいろするよりはいいんだというところがあります。
 しかし、アメリカでもいわゆる取り締まりという局面につきましては、例えば我が国の公正取引委員会に対応しました連邦取引委員会、FTCは、非常に消費者向けの欺瞞的取引に関しては積極的な摘発活動をしておりまして、そういうことを考えますと、我が国におきましても、消費者契約法だけで消費者被害がすぐに救済できるとか防止できるということは、私は考えません。むしろ事業者の中でも、悪質な事業者に対しては取り締まりの方をきちんとやるべきだし、悪質でない大多数の事業者だけれども、しかしやり方が少しフェアでないとか説明が十分でないとか、そういう部分については、この民事ルール、あるいは自主的につくられるルールでもって適正化していくというのがいいのではないかと考えております。
#88
○水野誠一君 次に、岡田さんに伺いたいんですが、今こういった法律が立法されているということ、これを私も周りの人たちに聞いてみると知らないんです、こういうことが今、国会で議論されていると。特に、こういった被害に遭う方、遭いそうな方ほど知らないんです。これは非常にやはりそこに重要な問題があると思うんですが、こういった被害をあらかじめ予防するということ、これが実は消費者相談の仕事の中でも重要な、これからの仕事の中で重要な要素を占めるんじゃないかと思うわけです。それで、日々いろいろ努力をされている中で、先ほど、お話というかこの紙の中にもPIO―NETの話が出てまいりました。これはもうまさにお書きになっているとおりで非常に期待も大きいんだけれども、ただ相談件数がふえればふえるほど今度はPIO―NETに入力する手間がかかって、実際、相談する、あるいはそれに対応するというところの金も力もそがれてしまうというようなことになる。あるいは、先ほど来いろいろ質問もございますけれども、今、自治体は経費を削減しなきゃいかぬという中で、またそういう経費もどんどん下がってくるということで、私はやはりここは何か知恵を使っていかないといけないんじゃないかなと。
 特に、この間の委員会でも私は質問させていただき、また提案をさせていただいたのは、PIO―NETというものが、今はまだそういった各苦情処理機関同士の情報交換ということになっていますが、これをもっと表に開かれた、もちろんプライバシーの問題とかそれは守らなければいけませんが、開かれたネットにしていくということによって、逆に言えば入力をするのももっと広くボランティアに手伝ってもらう、そして我々外部からも、あるいは消費者もそれにアクセスすることによってさまざまな今の事件の実態というものを知っていくというようなことを考えていくべきじゃないかなと思うんですが、その辺について何か御意見があったらお願いします。
#89
○参考人(岡田ヒロミ君) 私もそのとおりだと思います。
 やはり、一番考えなきゃいけないのがプライバシーの部分と正確性の問題だろうと思うんです。その意味で、いろんなところから入力するというのはどうしても不正確になってしまうということが考えられるものですから都道府県がやっているということなんだろうと思うんですけれども、このPIO―NETの情報を有効に活用するためには、もっと情報が引き出せるようなシステムが絶対必要だと思います。
 それから、プライバシーとか情報の正確性、そのことにばかりこだわっているものですからどうしても消極的になるわけで、出した情報について責任をとらなきゃいけないという、そういうことというのは国民生活センターには私は必要ないんじゃないかと、そのように思うんです。
 ですから、どんどん情報をオープンにして、あるときは攻撃もあるかもしれませんが、そういうものを受けながらその情報というものがだんだん成長していくのではないか、そのように思っています。
#90
○水野誠一君 特に予防の仕事というのは、この消費生活相談員だけの仕事じゃなくて、特にお年寄りやなんかを被害から守るというようなときには介護の場面とかそういうものも大いに使って、もうあらゆるところから周りに防御のネットワークを張っていくというようなことをぜひやるべきだと私は思っておりますし、またそういう方向にできるだけ持っていきたいと考えております。
 次に、角田さんにお尋ねしたいというか、もう先ほどから事業者の立場でお話しなさっているわけでありまして、私も実はこの間の委員会で東芝事件を一つの例に挙げて、あの人がクレーマーであったかどうかというのはわかりませんが、しかし消費者と事業者の関係というのは、昔のように強大な事業者と非常に弱い消費者という関係だけではなくなっていくんじゃないか。やっぱり、相当もっと複層的な関係というものを想定してこの消費者契約法もつくっていかなきゃいけない、また考えていかなきゃいけないということを申し上げたんです。
 それはさておいて、私はこの中でやはり重要なことというのは、時代によってどんどん消費のあり方あるいは契約のあり方が変わっていくという中で、見直し規定、つまり何年かの後にしっかりその条項を見直していくということ、これが大事じゃないかと思うんですが、その点について角田さんの御意見をお伺いしたいと思います。
#91
○参考人(角田博君) 確かにおっしゃるとおり、最近インターネットの取引等新しい取引形態が非常にふえておりまして、現時点でこれでいいだろうと思った消費者契約法が、例えば二年後、三年後にはもう大幅に変わってきているという点については認めるものでございまして、当然のことながら見直しをしなくてはいけないというふうに思います。
 見直し規定というものを具体的に入れるかどうかについては、これはまた先生方で御議論いただけばいい話ではないかと思いますが、ただ、見直しの期間が余りにも短いと、現時点での消費者契約法が国民の末端まで浸透して、そして見直しに十分な情報が集まるまでに結構時間がかかるのではないかと思うんですね。それを例えば短い期間でもってすぐ見直そうということで拙速にやられるよりも、やはり十分な時間をかけて、経済社会の変化の動きを見ながらそのときに合ったものにしていただきたいというふうに考えております。
#92
○水野誠一君 ありがとうございました。
 最後に藤森先生に伺いたいと思います。
 これは民主党案でもあるんですが、契約取り消し権の行使期間というのが議論になりました。これは、先ほど先生から一つ、例えば霊感商法みたいな例もお挙げになって、被害者が気がつくのが意外と十年先ということもあり得るというお話もあったんですが、確かにそれは極端な例としてはそういうものもあるかもしれない。しかし片方で、やはり通常の商売、ビジネスというものを考えていったときに、余りにもやはり十年というのでは長過ぎるんじゃないかというのが私の偽らざるところであります。私も昔、流通業におりましたものですから、非常にそれは実感として感ずるわけであります。
 それから、またもう一つ重要なことというのは、今こういった商売の形態というのも多様化していくわけですが、それと同時に商品の形態というのも多様化していく。つまり、特に形のないサービス商品、これは先ほど来例が出ておりますけれども、いろいろな研修、学習というようなものから、精神的な満足、安らぎを得るというようなものまで無形商品の販売みたいになったときに、こういった被害とするのか、いや、それは被害じゃないというような認定というのも大変難しくなっていくんじゃないかと思うんです。そういった商売の形の変化ということについて、現場でいろいろ御経験になっている藤森先生の何かお感じになるところがあればぜひお話を伺っておきたいと思います。
#93
○参考人(藤森克美君) 契約取り消し権の行使期間を長目にというふうに日弁連の方で主張しているのは、やはり悪質商法というか、悪徳商法を念頭に置いた考え方なんです。
 今、水野先生がおっしゃるような通常のそういう取引、そういう中で何年も先になってから初めて文句をつけてくる、そういうケースというのは、まず常識的に裁判所の中で絶対それが認められるということはございませんし、それから消費者相談員の段階でもそういうものを受け付けられるとは思っていないんです。ですから、その点において、期間を長目にすることによって弊害が出てくるのではないかと、そういう心配は日弁連としてはしていないんです。
 むしろ、被害実態に即して言うと、そういう精神的なものをサービスにしているような、例えば宗教関連の被害だとかそういうものについて言うと、やはり長いことたたないと、あるいは何か社会的な事件でわあっと被害者が顕在化するというような段階にならないと、自分も被害を受けていたんだということに気づかないケースというのがよくあるものですから、そういう意味で長目に私たちは考えているわけでございます。
#94
○水野誠一君 終わります。
#95
○委員長(成瀬守重君) 以上をもちまして参考人に対する質疑を終わります。
 この際、参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ当委員会に御出席いただき、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時散会
ソース: 国立国会図書館
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