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2000/04/25 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 労働・社会政策委員会 第8号
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2000/04/25 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 労働・社会政策委員会 第8号

#1
第147回国会 労働・社会政策委員会 第8号
平成十二年四月二十五日(火曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十一日
    選任          魚住 汎英君
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     溝手 顕正君     脇  雅史君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉岡 吉典君
    理 事
                大島 慶久君
                大野つや子君
                小山 孝雄君
                川橋 幸子君
                長谷川 清君
    委 員
                上杉 光弘君
                斉藤 滋宣君
                常田 享詳君
                脇  雅史君
                笹野 貞子君
                高嶋 良充君
                直嶋 正行君
                但馬 久美君
                八田ひろ子君
                大脇 雅子君
                高橋紀世子君
                魚住 汎英君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   参考人
       日本経営者団体
       連盟常務理事   成瀬 健生君
       東京大学社会科
       学研究所教授   大沢 真理君
       中央大学経済学
       部教授      大須 真治君
       労働組合東京ユ
       ニオン書記長   関根秀一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本委員会の委員は一名欠員となっておりましたが、去る二十一日、魚住汎英君が委員に選任されました。
 また、本日、溝手顕正君が委員を辞任され、その補欠として脇雅史君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(吉岡吉典君) 雇用保険法等の一部を改正する法律案及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、参考人として、日本経営者団体連盟常務理事成瀬健生君、東京大学社会科学研究所教授大沢真理君、中央大学経済学部教授大須真治君及び労働組合東京ユニオン書記長関根秀一郎君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議事の進め方でございますが、成瀬参考人、大沢参考人、大須参考人、関根参考人の順にお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、まず成瀬参考人からお願いいたします。成瀬参考人。
#4
○参考人(成瀬健生君) 日経連の成瀬でございます。
 このような機会を与えていただきまして意見を述べさせていただきますこと、まことにありがとうございます。本日は、基本的に改正法案については賛成の立場から御意見を申し上げたいと思います。
 お手元にお配りしてございますレジュメに沿って申し上げてまいりたいと思います。
 まず最初の点でございますが、今日の失業問題、かつての戦後の失業問題と違いまして、豊かな社会での失業問題であるという基本的スタンスに立つべきではないかというふうに考えております。また、雇用機会はそれなりにあるというケースも多いわけでございますが、問題は、雇用の需要と供給両サイドの意見が合わないといういわゆるミスマッチというのが非常に多くなってきている。これはある意味では豊かな社会での失業問題の特徴かなというふうに考えている次第でございまして、そういう問題に正面から取り組む改正案として、大変適切な方向に進んでいっているというふうに基本的認識をしているところでございます。
 雇用保険というのはあくまでも雇用についてのリスクに対するセーフティーネットでございまして、いわば俗な言葉で言いますれば火災保険などと同じような掛け捨て保険であって、もし事故がなければ大変ハッピーだったというふうに考えるべき保険であるというのが日経連の基本的な考え方でございまして、そういう方向で改正法案も考えられているというふうに思うわけであります。
 しかも、国民負担率がだんだん上がってくる、いろんな意味で社会保障費も含め上がってくるという中で、できるだけ小さい負担で、できるだけ本当に困っている人に手厚い給付をするというふうな合理性のある方向に雇用保険も改正をしていかなければならないだろうというふうに考えているわけでございまして、そうした中で大事なことは、やはり働く人自身も自律的な生活設計の時代に入ってきたという認識を持っていただきたいというふうに思っておる次第でございます。
 と申しますのは、ライフステージと収入というものが比較的見合っていたというのは伝統的な年功制度の世界であったわけでございますが、今はライフステージと収入とは必ずしも一致いたしません。しかも、最近のように退職金等を前払いするというふうな制度も入ってまいりまして、自分の一生のライフステージ別の資金計画といいますか、生活についての計画は自分で立てるというふうなことが必要になってきている時期だろうと思うわけでございまして、そうした意味では、労働者も自律して自分の生活をきっちり考える、計画的に考えるということが要請される時代になっている、こんなふうに思っているわけでございます。
 こうした基本的な考え方に立って今回の雇用保険法の改正について考えてみますと、今までの離職事由によらず一律ということではございませんで、離職の理由によりまして二階建て方式にした、みずからの意思でなくリスクとして雇用を失うことになってしまったというふうな場合に特に手厚くするという二階建て方式にしたことというのは、大変合理性があるというふうに考えているところでございます。
 もう一つ、定年の問題がございます。
 定年につきましては、サラリーマンといたしましてはもう三十年、四十年前から定年になれば仕事から離れるということは見当がついているわけでございまして、先ほど申し上げましたような自分のライフステージのそれぞれの生活は自分で責任を持って計画し、設計をし、実行するというふうな立場から申しますと、定年というのはこれは予期せざるリスクではないというふうに当然考えるべきだろうというふうに思います。
 従来の雇用保険は、日本の場合、労使の協力が非常にしっかりしておりまして、欧米に比べれば非常に低い失業率で、そのために失業保険会計というのは比較的順調であったという面があったかと思います。しかし、時代が変わってまいりまして、構造的な問題も種々起こってまいります。多少欧米に比べれば低いという失業でございますが、日本としては過去に比べればかなり高いというふうになってまいります。
 そうなってまいりますと、従来のように、財政の順調なときの給付という形ではなくて、本当に重点的に絞り込んだ合理性のある、最低のコストで最大限のパフォーマンスをというふうな形の雇用保険を設計するということになりますと、この二階建て方式とそれから定年について、定年は予期せぬリスクではないという考え方で設計することは極めて妥当であるというふうに考えておるところでございます。
 また、その他の各制度の改善につきましてでございますが、再就職手当につきましても、今までのジグザグ型といいますか、スムーズでない給付のレベル、これを残存期間に三分の一ということで比例させまして、スムーズな給付になるように修正したということは合理的であると思いますし、また訓練延長給付の問題もございますが、これは従来、失業保険の期間が切れるとそれから訓練を受けようというふうなケースもあったやに伺うわけでありますが、できるだけ早くから訓練を受けて、そして新しい技能、技術を身につけて、できるだけ早く就業していただくというのが最も望ましいということで今後制度をつくり上げていくということでございますから、大変結構だと思っております。
 育児・介護休業給付につきましては、二五%を四〇%に引き上げるということでございまして、この水準はかなり適切なといいますか、かなりよい水準ではないか。社会保険料等の控除等も入れますと五〇%を切り上げる水準かなというふうに考えておりまして、国際的にもそれほど遜色のないものではないかと考えておるところでございます。
 さらに、弾力条項の見直しでございますが、これは極めて合理的な決定でございまして、今までは収入によって積立金との関係で判断をしておったわけですが、今度は実際にかかる支出ということにいたしましたので、これも合理的な判断だろうというふうに考えております。
 国庫負担の見直しにつきましては、暫定的に一四%という数字に下げられておりまして、国家財政の窮乏といいますか、中で、ある程度いたし方ないということで当時は決められたように承っておりますが、状況が変わってまいりました中で、これは本則に戻していただくということをお決めいただいて、これは大変ありがたいというふうに考えているところでございます。
 また、雇用福祉事業につきましては、いわゆる雇用保険上積み三事業につきましては、雇用と教育訓練につきましてはきちんとやっていただくことは大変重要だと思いますけれども、この状況の中で福祉への支出はかなり厳しく抑制していただくということが妥当かと思っておりますので、適切かというふうに思うわけであります。
 高齢者雇用安定法の改正につきましては、経営者サイドといたしましても六十歳―六十四歳の雇用をいかに進めるかということは大変重要なことだろうと思っております。そして、現実に労使の話し合いによって着々進みつつある途中でございます。年金との関係もございまして真剣な取り組みが続けられると思いますので、それを支援するような制度をお考えいただいているということは大変結構なことではないかと考えております。
 その他、中高齢者についての援助、再就職援助のあり方でございますとか、多様な働き方を可能にするシルバー人材センターの活動の範囲、機会をふやすというふうなことにつきましては大変望ましいことであろうというふうに考えております。
 お時間になりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
#5
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 次に、大沢参考人にお願いいたします。大沢参考人。
#6
○参考人(大沢真理君) 大沢でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。
 お手元にレジュメと図表、それから雑誌の記事の一部をコピーしたものがあろうかと存じます。
 私は、社会政策を専攻しておりますけれども、必ずしも雇用保険制度そのものを専門として研究してきたわけではございません。本日は、むしろ視野を広げて、高失業時代と言われるこの時点で、失業時の所得保障のあり方について国際比較の観点から若干日本の特徴を浮き彫りにいたしまして、その上で雇用保険制度の改正についての政策的インプリケーション、あるいは雇用保険を含む失業時の所得保障制度のあり方についての政策的インプリケーションを導き出せればというふうに考えております。
 最初に、昨今の情勢ということで、死に急ぐいわゆるおやじたちということで、おやじというのはもしかしたら差別語かもしれませんけれども、そこのところは御勘弁いただきまして、社会的セーフティーネットが破綻しているのではないか、そのあらわれではないかという趣旨でここは話させていただきます。
 御承知のように、つい最近厚生省から最新の統計が発表されまして、自殺が二年連続で三万人を超えるということが明らかになりました。九七年には二万人台であった自殺ですけれども、九八年に三万人を突破いたしまして、特に五十代の男性では前年に対して一・五倍になったわけでございます。五十代男性につきましては、九九年もこの過去最悪の九八年の数値を更新することが確実視されております。
 言うまでもなく、このような中高年男性の自殺の背景には景気低迷と雇用不安があるわけでございますが、最近、日経連の奥田会長が朝日新聞の月刊誌「論座」におきましてインタビューに答える形で、消費不況の最大の原因は雇用不安と老後不安にあるということをおっしゃっておりまして、大変興味深く拝見した次第です。
 では、このような高失業、そして雇用不安によって中高年の男性が一万人も年々自殺をするというようなことを背景にして、日本の失業時の所得保障のあり方を国際比較の上で特徴を浮き彫りにしてみるとどうなるかというのが次の二の部分でございます。
 表の一をまずごらんいただきたいわけでございますが、ちなみに表の一、二及び図の一は、京都大学教授の橘木俊詔さんの著書でございます「セーフティ・ネットの経済学」からとられております。
 まず、失業保険給付が手厚いのか薄いのかということでございますが、表の一に示されますように、失業保険給付が従前の賃金に対して何%になるかという置きかえ比率、あるいは賃金代替率で見ますと、日本は真ん中よりもやや下のところに、字が小さくて恐縮でございます、日本がございます。これを見ていただきますと、総平均、右端の欄で日本の数値は一〇%でございます。失業保険給付が、本人の従前賃金に対する置きかえ比率は一〇%にすぎないということで、この表に掲げられているOECD諸国の中で最低の手厚さというのは変な言い方ですが、最も薄い失業保険給付であるということに御留意いただきたいと思います。ちなみに、初年度、給付期間一年目の代替率は三〇%でございまして、これはOECD諸国の中では中の下か下の上ということで、決して一年目の給付も厚いわけではないということに御留意いただきたいと思います。
 次に、給付期間でございますけれども、これは図の一に示されますように最大支給期間が週であらわされております。そして、日本は最も低いグループ、つまり五十週を切っている最も低いグループの中に属している。この給付期間の短さというのが総平均で見ました置きかえ比率の低さに大きく寄与しているわけでございます。
 それから、加入しない雇用者が多いということの特徴も指摘できるかと思います。これは近年、パート、派遣等を中心といたしましていわゆる非正規の労働者がふえていることから、この失業保険制度によってカバーされない雇用者の比率はますますふえているところでございます。
 二番目の特徴は、いわゆる失業のわな、手厚い失業保険制度があるからいつまでも失業し続けるのだ、あるいは首を切られるわけでもないのにあえて離職をするのだといったことが言われますのがいわゆる失業のわな、あるいは失業に関するモラルハザードという問題でございますけれども、これは大くくりに言って三つのグループがございまして、英米両国、アングロサクソン系の国では比較的失業のわなといった事実が存在する。しかしながら、ヨーロッパ大陸諸国ではこの関連は非常に薄い、弱いというふうに言われております。日本に関しましては、はっきりと失業保険制度が失業率を上げているといういわゆるわなの関連はないということが実証研究によって明らかにされております。
 この原因でございますけれども、一つは、日本では給付期間が終了すると非労働力化する人の比率が高いという特徴がございます。このことを指して、定年退職された方あるいは結婚ないし出産退職された方を念頭に置いてこのようなことを指して、必ずしも必要でない給付が行われているのではないかという指摘もあるところではございますけれども、しかしなかなか見つからないために求職を断念する人の数も無視できるものではないということも重要かと思います。
 それから、失業のわなが弱いことの理由の二番目は、一と繰り返しになりますけれども、失業者の四割しか失業保険給付を受けていないということで、失業保険制度が仮に手厚いとしても、これが失業期間を長引かせる、あるいは失業率を高くするという誘発効果はないということとセットになっております。
 三番目は、生活保護制度は果たして失業者を保護しているかという問題でございます。実は衆議院での参考人の議事録を拝見いたしましたら、何人かの参考人あるいは議員さんが失業保険制度は失業者にとって最後のセーフティーネットというふうに御発言をされております。これは気持ちはわかるのでございますが、日本の制度を考えたときには奇妙なことでございまして、言うまでもなく生活保護制度こそが憲法の生存権条項を直接に反映する国民生活の最後のよりどころとされておるわけでございます。にもかかわらず、失業者にとってはそれは最後のよりどころにはならないというふうに一般に観念されている、それは実態を反映しているわけでございます。
 公的扶助を国際比較いたしますと、その規模を公的扶助支出の対GDP比及び適用人員比というもので見ますと、日本はOECD諸国の最下位にございます。それから、給付の基準そのものはOECD諸国の上位三分の一程度にございます。決して給付基準は高いというわけではないということに御留意いただきたいと思います。
 それから、その扶助の原則といたしまして、いわゆる補足性、つまり生活保護を受ける前に稼働能力を活用する、資産を活用する及び親族の扶養を優先するといったこの三位一体の補足性原則がOECD諸国の中で原則上最も厳しいと同時に適用においても厳しいということが明らかにされております。
 その結果、生活保護受給世帯を見ますと、傷病以外の事由で受給しているケースはまれでございまして、このことは、一般の貧困者比率は国際的に見て決して低くはない中で傷病以外の理由ではほとんど公的扶助を受けられない、受けることが非常に難しいということになっております。
 このことの結果でもあり、原因でもあるといいますか、表二をごらんいただきたいわけでございます。いわゆるここでは貧困世帯比率、貧困者比率のかわりに低消費世帯比率がとられております。それで見ますと、九三年段階で日本の全世帯の中で、低消費であるがために恐らくほぼ貧困であろうと目される世帯の比率は一五%程度でございます。この貧困者比率は決して国際的に見て低くはございません。
 これに対して、被保護世帯比率は九三年時点で〇・九三、最近では〇・七というところまで下がってまいりましたので、したがいまして、貧困な世帯のうちで保護を受けている世帯の比率、これが捕捉率でございますが、捕捉率をとりますと、九三年時点で六・二%、さらに最近の推計によりますれば五%台に下がっている。簡単に言いますと、生活保護基準よりも低い収入しかないような世帯で実際に保護を受けている世帯は二十軒に一軒しかないという、そういう状態でございます。
 このような中で、日本の生活保護制度は失業者にとって事実上セーフティーネットの役割は全く果たしていないということが言えるわけでございます。
 最後に、勤労者家計の国際比較から導かれる日本の家計の特徴でございますが、世帯主勤め先収入への依存度が高い、俗な言い方をすればおやじの稼ぎに一極集中した家計の構造になっております。
 まず、世帯主の勤め先収入の比率が高いわけでございます。これの裏腹としまして、世帯主の配偶者の収入が家計に占める比率が低くなっております。それから、勤労者世帯において社会保障の給付が占める比率はドイツやイギリス等に比べて低くなっており、韓国、台湾といった東アジアの国に比べますと贈与や仕送りが家計に占める比率が低くなっております。
 要するに、おやじの収入、しかもそのおやじの会社からの収入への依存度が非常に高く、したがっておやじの失業に対しては非常に脆弱な家計構造を日本の家計といいますか、家族のあり方というのはつくり上げてきたのだということに御留意いただきたいわけでございます。この背景には、言うまでもなく、成瀬参考人も御指摘がありましたような、年功制によるいわゆる家計のニーズと収入が見合ったような賃金構造というのをつくり上げてきたことが背景にはあるわけでございます。
 以上の国際比較から導き出される日本の特徴を念頭に置いたときに、ここからどのような政策的インプリケーションが導き出せるかということでございますが、失業保険給付は薄いのでございますから、このただでさえ薄い給付を削減するというのはやはりなるべくならば慎重であっていただきたいというのが私の考えでございます。もちろん、私は雇用保険財政が危機的な状況にあるということは存じておりますけれども、その立て直しを図るのであればいわゆる三事業の整理統合というようなところから手をつけることが妥当ではなかろうかというふうに思う次第です。
 それから、自発的離職、これは二階建てで非自発的と自発的を区別していくということが妥当ではないか、これは理論的にはそうなのでございますけれども、自発的離職というものを認定するのは大変難しゅうございます。
 実は私は一年間失業したことがございまして、そのうち九十日間についてはいわゆる失業手当を受けたことがあり、職安にその間通ったことがございますけれども、これは勤務先とのいわゆる紳士協定に基づく任期制の研究員をしていたことがございまして、この任期が切れたところで退職願を書いて退職したわけでございます。最初から任期ですから任期が切れることは予見をされておりました。けれども、ここで失業したということがリスクでないかといえば、やはり任期中に適当な就職機会がなく、やむを得ず失業するに至ったという意味ではリスクであったというふうに自分でも考えまして、これは職安に行って事情を説明し、なおかつ旧勤務先から紳士協定に基づく任期制でこの人はやめたのであるという文書を出してもらって待期期間を免除してもらったというような経験がございまして、このような経験に基づいてなおさらこの自発的離職の認定というのは慎重でなければならないのではないかと考える次第でございます。
 次に、以下の政策的インプリケーションは、雇用保険制度プロパーの問題というよりは、もう少し広く社会保障全体を失業時の所得保障、生活保障という観点から考えていただくためのポイントでございます。
 第一は、もはや世帯主、つまり夫であり父である男性世帯主の収入だけで家計の必要すべてを賄っていける時代というのは過ぎ去ったというふうに考えます。これは、私は労使双方の一致した事実としての認識にはなっているというふうに考えます。
 であればなおさらのこと、女性の就労を支援する、したがってシングルインカムの家計構造からダブルインカム、マルチインカムの家計構造にしてリスクを分散するということがこのリスクの高い高失業の時代、そして個人がリスクをとる、リスクテーキングな個人になっていくことが期待をされているこの現行の情勢では、女性の就労促進というのが今までにない重要性を持っているというふうに考えます。
 二番目は、現役の勤労者に対する社会保障の給付が大変薄い社会保障システムになってございます。その理由は、ヨーロッパ諸国と比べた場合に普遍的な児童手当がない。普遍的なというのは、親の所得の多寡にかかわらず児童に対して育つことを支援するような児童手当制度を日本は持っていないということ。それから、低所得者に対しての住宅費補助、住宅給付等々さまざまな名称がございますけれども、これがないということによってドイツやイギリスに比べて現役の勤労者の家計にとって社会保障の占める比率が低いという事実がございます。と同時に、最低賃金の改善についてもこれは生活保護制度とのリンケージで検討していただければというふうに考えるところです。
 最後に、生活保護制度の抜本的な改革。実際被保護人員がここに来てふえております。一時期百万人を割っておりますが、最近の統計では百万を上回ってふえてきておりますけれども、この際リスクをとれる人間になるためにはしっかりしたセーフティーネットがなければいけないという観点から、抜本的改革が必要な時期に至っている。その改革の方向性につきましては資料として添付しました雑誌記事に簡単に書かせていただいておりますが、時間が参りましたので最初の意見陳述は以上といたします。
 ありがとうございました。
#7
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 次に、大須参考人にお願いいたします。大須参考人。
#8
○参考人(大須真治君) 大須です。よろしくお願いします。きょうここで意見を言わせていただく機会をいただきまして、大変ありがたく思っております。
 私も、雇用保険法の改正について、私なりの意見を言わせていただきたいと思います。
 今回の雇用保険法の改正は、昨年の八月に雇用保険部会の中間報告が出されて、十二月に本報告ということで、それを受けて行われているというふうに考えておりますが、この雇用保険部会の報告では、雇用保険制度の再構築が必要であるということを言われ、それから現行雇用保険の見直しが必要だ、こういうようなことになっておるわけであります。その原因として、厳しい雇用失業情勢それから雇用状況の構造的な変化、こういうふうになっているわけであります。
 このような厳しい雇用失業情勢があることはほぼどなたでも一致した見解になっていると思うのでありますが、厳しい雇用情勢の中でなぜ雇用保険制度を見直さなければならないのか、あるいは見直さなければならないような雇用保険制度になっているのか、ここに問題が一つあるんではないか、こういうふうに思います。もともと失業者が大量に出たときにその生活を保障するためにある制度が、失業者が大量に出たところで見直すということでは、本当の意味での国民に対する生活の安定を保障するシステムとして有効であるかどうか疑問が生ずるわけであります。
 そういう点から、雇用保険制度の歴史という点で考えてみますと、最初の図に書きましたが、昭和二十二年に失業保険法が制定されて、昭和四十九年に今回の雇用保険法に改正されたといういきさつがあります。
 この失業保険の雇用保険への改正の論理は、これまでのような失業者に対して所得を保障するというような形での生活保障というだけでは不十分であるというようなことから雇用の促進という側面を導入するということであって、失業保険制度から雇用保険という今日の制度にしたわけであります。
 これは考え方としては、その裏側には、基本的には失業というものは極めて数の少ない一部のものになる、こういうふうに雇用の促進によってそういうことが達成できるという前提を持って行われたわけでありますが、現実には、雇用保険制度に移った一九七四年以降、グラフで見ていただいてもわかりますように、完全失業者数は百万人を突破して、それ以降百万人以上に現在まで、さらに二百万人から三百万人に近いところまで行く、こういう現状になっているということであります。ですから、この点で雇用保険への切りかえが本当に正しい判断であったかどうか、もう一度考えて見直すことが必要なんではないかと思っています。
 それから、もう少し最近の事例でいきますと、一九九二年の段階で、平成四年ですが、国庫負担率の暫定的な引き下げを行っています。このときもこの暫定的な引き下げを行った直後から完全失業率、完全失業者数が増大する、こういうようなことでありまして、このような雇用保険制度への移行それから雇用保険制度の運営の仕方、そのことが今日の雇用保険財政の困難というか、雇用保険財政を見直さざるを得ない原因になった。この点について、やはりこの際、再構築の必要性が言われるからには十分な過去の検討が必要なんではないかと思います。
 それで、その上で、再構築として今回出されているものにつきましていいますと、雇用保険部会の報告では、「早期再就職を促進するための給付体系の整備」、こういうふうになっておりまして、具体的には求職者給付の重点化を行う、こういうふうに言っております。しかし、この場合、雇用保険を改正していくという場合には、少なくとも雇用保険法の目的というものを十分意識して行うべきである。今回改正の対象にはなっておりませんが、雇用保険法第一条は雇用保険の目的をこういうふうに言っております。
  雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。
こういうふうになっております。したがって、当然、雇用保険法の見直しというのはこの第一条の目的に沿って行われているというふうに考えなければならないのでありますが、現実に行われている改正の方向は必ずしもそういう方向とはみなしがたい問題を持っています。
 具体的に言いますと、重点化ということでありますが、重点化ということによりまして失業理由による給付の区別を行う、こういうことが入っております。それで、これをわかりやすくするために図のBでありますが、それぞれの年齢階層とそれから保険加入期間ごとに今回の具体的な改正によって給付日数がどの程度ふえるか減るかというのを一応簡単に計算してみたものであります。
 見ておわかりのように、一般の解雇、退職以外の離職した場合の給付日数は全面的に削減されて、圧縮されている、こういうことになっております。それから、解雇、倒産による失業においても一部、若干の上乗せをしている、こういうようなことでありまして、全体的に見れば給付総額の削減ということが大きく出ているというふうに考えられます。
 この削減額は五千億円というふうに言われているそうですが、現在の求職者給付総額二兆三千億という点からするとすごい削減である。失業が深刻で厳しいという状況の中でこういうふうに、失業に対する手当をふやすということならば納得できますが、減らすという方向で行うということは、少なくとも労働者の生活の安定、雇用の安定という点から見てどう考えても疑問であると言わざるを得ません。
 この場合に、重点化するということで取り入れました解雇、倒産による離職と一般の離職を区別するということ、これ自体もかなり大きな問題ではないかと思います。労働者の生活という点で考えるならば、解雇、倒産で離職しても一般の離職で離職しても、離職して次の仕事がどううまく見つかるか見つからないか、これが問題なのでありまして、現実には解雇、倒産の労働市場と一般離職者の労働市場が別々に存在しているわけではありません。ですから、解雇、倒産による離職者も一般による離職者も同じように労働市場で仕事を探すわけでありまして、そうして仕事が見つかるか見つからないか、見つからない間は失業者ということで極めて生活が不安定になる、これを応援するというのが雇用保険の目的なわけでありまして、そういう点からしますと、解雇、倒産だけ特別に重点扱いして一般離職を圧縮するという理由は全く成り立たない、こういうふうに思います。むしろ、全体としてはやはり求職手当の総額の圧縮ということが大きく問題になっているのではないか、こういうふうに思います。
 その上で、さらに六十歳前半の労働者の問題を見させていただきますと、六十歳前半は、一般の離職者につきましても、それから解雇、倒産による離職者につきましても改正によって支給は圧縮されております。これは定年退職者が多いということですが、しかし、定年退職者の解雇が予想されているといいましても、それは別に定年退職者に特別のものではありません。逆に、解雇、倒産の人でも、いきなり解雇をしていいということにはなっておりません。労働基準法では、解雇は予告することが義務づけられております。そういう点でいけば、一般の解雇者と定年退職者を失業者給付で差別する理由というものはない、こういうふうに思います。
 そして、現実に六十歳代前半の部分でありますが、この点では非常に雇用状況は厳しい、こういうふうになっています。資料を見ていただくとわかりますが、日本労働研究機構が行いました調査でも、すぐに就職したいという人が三一・四%、それから、再就職に伴って年間収入が三〇%以上下がったという人が六八%いる。こういうようなことで、非常に六十代前半は仕事を探すのが大変であるということと、探せたとしても非常に収入的に大きな格差が出る。こういうことで、この部分について給付を圧縮するということはどう考えても納得できない措置ではないかと思います。
 そして、現実にはこの部分について年齢別に有効求人倍率は〇・〇七というふうになっておると思いますが、この〇・〇七という数字は現実には仕事がないということと同じであります。御存じのように、有効求人倍率は職安統計によって行われているわけでありますが、求職者の方は年齢が特定できますが、求人の方は年齢を特定することができません。四十五歳以下とかあるいは年齢不問というような求人が出たときに、これは職安の方で案分して年齢に割り振っているわけであります。その部分が来ているわけでありまして、一般的に求人としては若年者の方を選ぶという傾向の中では、ほとんどこの部分については仕事がない、こういう状況が現実にある。そういうことでありまして、この部分の給付を圧縮するということは、この六十歳前半層の生活を極めて不安定なものにするものだというふうに思います。
 こういうことでありまして、今回の措置については、保険財政の問題ということもありますけれども、この際、再構築と言われるからには、もう一度改めて本格的な見直しをしていただいた方がいいのではないか。その場合には、失業者の生活の実態を踏まえて、それに即したような形で制度が運営できるような形を考えるべきである。
 その場合には、雇用保険制度に変えたこと自体から問題を考え直してみる必要があるということと、しょせんは雇用保険だけでは失業の問題は解決できません。他のいろいろな諸制度、失業にかかわる制度もありますし、それ以外の雇用を促進する制度、経済政策も含めて考えていかなければならない、そういうものを含めて雇用保険で行うべき部分をできるだけ圧縮した上で雇用保険で厚い保護をしていく、そういう総合的な雇用失業政策が必要なんではないかと思います。
 時間がありませんので一つだけ言わせてもらいますと、一九九八年に公的就労事業、緊急失業対策法が廃止されておりますが、これは長期の失業対策にとって重要な制度であったわけでありますが、現在これはなくなっております。そういう点では、幾つか失業対策の柱を失った形で現在こういう長期の構造的な失業に対応しているというようなところで雇用保険の問題が出てきているわけであります。
 したがって、そうした過去にあった失業のいろいろな対応策も含めて、それから雇用保険制度に移ったときの問題も含めて、失業対策のあり方ということをもう一度根本的に考え直していただければと、こういうふうに思います。
 ただ、差し当たり保険財政が厳しいということで、来年度には既に基本給付金を食い込む、こういうことがありますので、そういう点については暫定的な措置をとって、改めて根本的な見直しをした上で新しい長期に継続できるような雇用保険の制度というものを考え直してもらえればと、こういうふうに思っております。
 これで私の陳述を終わらせていただきます。
#9
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 次に、関根参考人にお願いいたします。関根参考人。
#10
○参考人(関根秀一郎君) 東京ユニオンの書記長と、また派遣労働ネットワークの事務局次長をしております関根と申します。
 本日は、意見を述べる機会を与えていただきましてありがとうございます。
 私どもは、派遣労働者、あるいはパート労働者、あるいは有期契約労働者など、一般に不安定雇用労働者と呼ばれる労働者からの職場の相談などを多く受けております関係から、本日は、有期契約労働者への雇用保険給付の関連につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず一番目は、派遣労働者を初めとする有期契約労働者の雇用保険給付日数について述べさせていただきます。
 改正法案では、中高年リストラ対象者に対する求職者給付の重点化を目的の一つとしております。聞き及ぶところによれば、有期契約の期間満了による退職者は、定年退職者と並んで離職前からあらかじめ再就職の準備ができるものとして自発的退職者と同様の立場にある労働者と考えられているとのことです。
 私が用意いたしました資料の六ページ、これは労働基準広報という刊行物に法案の解説が出ていたところで拝見したんですが、六ページの一番右上の解説のところに、イ、これは自発的退職という位置づけだと思うんですが、「自己都合退職者や定年退職者、契約期間満了による退職者など離職前からあらかじめ再就職の準備ができるような者」というふうな形で、期間満了による場合も自発的退職というふうに位置づけられるというふうに伺っております。しかし、こうした考え方に基づいて法改正を行うということになりますと、派遣労働者を初めとする有期契約労働者に関する失業給付は極めて不公平になるということを述べさせていただきたいと思います。
 まず、有期契約で働く労働者は昨今増加傾向が顕著となっておりますが、既に有期契約労働者として働いて十五年あるいは二十年となる労働者も少なくありません。これらの労働者の中には、長期臨時と言われるように、契約を更新して一つの企業に極めて長期にわたり働き続けてきた労働者が少なくありません。契約期間の満了をもって必ずそこで終了するというものではなくて、契約を更新して働き続けているという方が非常に多くあります。こういう場合、通常の労働者に匹敵する労働契約関係の成立が認められるべきであるというふうに考えます。
 我が国における有期雇用は、労働基準法において上限を原則一年とする規制があるのみです。業務の基本的な性質が臨時的であるとか、活用の必要が臨時的であるとか、あるいは有期契約とすることが合理的であると認められる場合に限られるといった規制はありません。したがって、使用者が必要であれば通常の労働者と同じように、場合によっては通常の労働者よりかなり長期にわたって契約を更新して活用することが広く行われてきました。派遣労働者を初めとする有期契約労働者が増加している実態や雇用継続の実態は、労働省や東京都労働経済局などによる調査結果を見ていただければ明らかだと思います。東京都労働経済局の調査結果につきましては十三ページ以下に添付しました。
 このように、長期にわたる活用が行われながら、有期契約労働者は雇用調整弁的活用の対象として真っ先に企業リストラの対象になってきました。リストラ対象となるリスクは通常の労働者よりもかなり高く、その不合理をめぐって裁判上も争いになってきています。
 過去の裁判では、三洋電機雇いどめ事件、この事件においては、裁判所は、長期にわたり契約の更新を繰り返して働き続けてきた労働者について、勤続年数と業務の内容に照らして通常の労働者の労働契約に匹敵する労働契約関係が成立していたものとして、定年までの雇用が保障される労働者を中心に確立されてきた整理解雇法理の適用を認めました。
 また、丸子警報器賃金差別事件判決では、裁判所は、勤続年数や業務内容が正社員と同等であれば、均等待遇原則にのっとり、一定の勤続年数を経た労働者については通常の労働者として取り扱うべきだと述べています。
 このような労働者の場合には、契約期間満了による雇用の終了を解雇として余儀なくされた退職者に対する給付が保障されるべきは当然と考えます。
 また、我が国の有期契約が雇用調整弁として活用することを目的としているために、契約期間満了をもって必ずやめてもらうという性格を有していないことも考慮に入れるべきです。有期契約であっても、特段の事情がなければ契約を更新して働くことが予定されていることがほとんどです。このような場合には、雇用継続の可否が特段の事情の有無によって判断されることになり、通常の労働者と同じように、期間満了は解雇に準じた問題となります。
 以上のように、契約が長期にわたって継続していたり、長期でなくとも契約の更新があることを前提にしているような場合には、使用者からの雇いどめは労働者にとって望まないものであることはもちろん、予期しない出来事になるということです。二、三カ月の契約を更新して働いてきた労働者が契約更新時期の二、三日前になって突然更新しない旨を通告されるというケースも少なくありません。
 今回、契約期間満了というのが事前に就職準備ができるというような位置づけをされておりますが、現実に、例えば派遣労働者が働いている場合には、長期というようなことで仕事を紹介されても、実際には一カ月契約が届いて、その二、三日前まで更新するかどうかがわからないというのが実態としてあるわけです。そうした期間満了による終了がどうして就職を準備できるというふうに位置づけられるのか、ちょっと私としては理解できないと思っております。
 このような有期契約の場合、定年退職と同じように再就職の準備ができるかといえば、全くほとんどできないというのが実態です。契約期間満了の可能性があるから再就職準備をすべきだという考え方があるとすれば、それはそのような実態を余りにも無視していると考えざるを得ません。このような考え方が通用するためには、有期契約が認められる範囲を、契約期間を設定することが合理的であると認められる場合にのみ法律で厳格に規制すべきですし、有期契約を締結した場合には契約期間を超えて活用することを許さないという厳格な規制が行われている場合に限られるべきです。
 端的に言ってしまえば、有期契約で期間満了で終了した場合には、基本的には非自発的退職と考えるべきであると。そして、期間満了によってそもそももうこれは更新しないんだということが事前に定められているケースについてのみ例外的に自発的退職というふうに考えるべきであるというふうに思います。
 現行制度のもとでは、長期臨時といった矛盾した実態が一般化しています。そのような実態の中で、期間満了による雇用終了については、契約更新の可能性を含んだ契約関係にあり、しかも労働者が望まない事業主都合による雇用打ち切りについては、通常の労働者の解雇と同様、余儀なくされた退職として給付日数重点化の対象とすべきです。
 非自発的離職の範囲については省令で定めることとされているようですが、契約更新を予定していた労働者が事業主の都合で期間満了により雇用打ち切りに至った場合には、非自発的離職として取り扱うことを明確に定めることを強く求めます。
 二番目に、派遣労働者への雇用保険給付の差別的な取り扱いについて述べさせていただきます。
 今回の法改正では、登録型派遣労働者にも広く適用拡大していくということが盛り込まれておりますけれども、実際には、せっかく拡大されても登録型派遣労働者は非常に受給をするときに不利益をこうむるというような実態にあります。
 例えば、ここに記しておりますのは労働者派遣終了証明書というものです。労働者派遣終了証明書は二十三ページに添付いたしました。
 解雇や契約更新拒絶など事業主都合で離職した派遣労働者が雇用保険給付を受けようとする際に、労働者派遣終了証明書の提出を義務づけています。これは、他の雇用形態で働く労働者の雇用保険給付と比較して著しく差別的な取り扱いになっています。様式二号は派遣労働者のみが提出を義務づけられているもので、この様式に関するトラブル相談が非常に多くあります。相談の内容は、事業主都合で離職したのに労働者都合にされてしまったというものや離職票をなかなか発行してくれないという内容のものです。
 様式二号を見てみますと、たとえその退職が契約中途解除や契約更新拒絶など事業主の都合による離職であったとしても、一番「今後、派遣就業しないため」、二番「今後、被保険者となるような派遣就業をしないため」、三番「最後の雇用契約期間の終了日から一月程度以内に次の派遣就業が開始しなかったため」の中から「該当するものを○で囲むこと」とされています。
 1にあります事業主の都合で「今後、派遣就業しないため」とは、二十二ページのヘ、(イ)のcに記されておりますが、「事業主が以後派遣就業を指示しない旨を明らかにした場合」とされております。派遣会社が本人の希望にかかわらず今後派遣の仕事を紹介しないというような場合にはどのような場合が考えられるのかというのを想定してみますと、派遣労働者の年齢など差別的な理由によってもう今後仕事を紹介しませんよというようなことが考えられます。
 また、2にあります事業主の都合で「今後、被保険者となるような派遣就業をしないため」については、「事業主が以後被保険者とならないような派遣就業のみを指示することとした場合」とされております。派遣会社が本人の希望にかかわらず、今後、賃金額が極めて低い仕事か、所定労働時間が極めて短い仕事か、あるいは所定労働日数が極めて少ない仕事しか紹介しないこととする措置をとることを指しています。
 1の場合も2の場合であっても、派遣労働者が平等に仕事にアクセスする権利を不当に奪うものであって、このような選択項目が選択されることを認めることはできません。
 自己都合で離職する場合であっても、1か2を選択することは、労働者が今後どのような形態で働いていくかを事前に表明することを求めることになり、職業選択の自由を不当に規制するものと考えられます。
 また、二十四ページの3の(3)にありますけれども、事業主の勧奨に応じて退職した場合であっても労働者の都合に丸をつけるようにというふうな取り扱いになっています。
 これは、正社員の場合、事業主の勧奨であれば当然事業主都合ということで支給制限、給付制限を受けずに受けられるわけですが、派遣労働者の場合はこういった不利益な取り扱いも受けています。
 そして、1か2に該当しない場合には、たとえ当該労働者が離職票の発行を希望しても一カ月程度は離職票を発行しないという取り扱いになっており、派遣労働者が失業してもしばらく離職票をもらえないというトラブルの原因になっています。
 以上のように、派遣労働者は、契約解除や契約更新拒絶など事業主の都合で離職した場合であっても、通常の労働者と同様に離職後直ちに離職票が発行され七日間の待期を経てすぐに雇用保険給付を受けるということがなく、そうした措置は廃止すべきですし、その原因となっている様式二号は廃止すべきです。
 改正法案において、短時間労働者、登録型派遣労働者への雇用保険の適用拡大を図ることとしている以上、給付に関する差別的な取り扱いの廃止は急務です。
 三番目に、派遣労働者を初めとする有期契約労働者の教育訓練給付について述べます。
 期間の定めのない雇用と異なり、有期契約、とりわけ派遣労働者は、市場のニーズに見合った技能の習得が雇用と生活の確保にとって極めて重要です。コンピューターの関連業務などにおいて端的に言えますように、三年程度で技能の陳腐化が進む最近の労働市場の実態にかんがみますと、派遣労働者が一定の労働条件を確保する上では、企業内教育訓練の機会が保障されやすい通常の労働者とは異なって、少なくとも加入期間三年の条件を満たしたときには訓練給付金が支給されるよう見直しが検討されるべきだというふうに考えます。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
#11
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○大野つや子君 自由民主党の大野つや子でございます。
 本日は、お忙しい中、参考人の皆様には当委員会に御出席をいただき、また貴重な御意見、まことにありがとうございました。できますれば参考人の方全員からお考えをお聞かせいただきたいところでございますけれども、時間的にも大変限られておりますので、私は成瀬参考人を中心に質問をさせていただきたいと思いますので、御了解をいただきたいと思います。
 先ほど成瀬参考人は、豊かな社会の失業問題であり、今回の改正案には賛成であるという御発言をいただいたわけでございます。
 二月の失業率が四・九%と史上最悪の数字を記録するなど、今日の雇用失業をめぐる情勢は大変厳しいものがございます。先週木曜日に、四月二十日でございますが、当委員会の質疑におきましても、このような雇用情勢の厳しい時期に、また積立金がまさに枯渇しようとする時期に、求職者給付の見直しや雇用保険料の引き上げ、国庫負担の原則への戻しなどを行うのは雇用面でのセーフティーネットとしての役割からはどうなのか、十年度の改正では、国庫負担の引き下げをではなく、むしろその時点で原則の四分の一に戻しておくべきではなかったのかというような質問があったわけでございます。裏を返せば、このような厳しい状況に至ってしまったからこそ、給付の見直しを初めとする今回の改正案が考えられたとも言えるのかもしれないと思います。
 成瀬参考人としては、雇用保険の雇用面でのセーフティーネットとしての役割から考えて、このような雇用情勢が厳しくまた保険収支が悪化してしまった時期に改正を行うことについて、先ほど賛成というお話はいただいたのでございますが、どのようにお考えなのか、お伺いをもう一度したいと思っております。
#13
○参考人(成瀬健生君) まず最初にお話しいただきました国庫の一四%というお話でございますけれども、当時は保険会計が割合潤沢でございまして、同時に財政再建という大変大きな命題があるという状況でございました。そういう中で、協力するという立場でもって労使ともあのときはそういう方向で認めさせていただいたというように記憶いたしておりますけれども、その後の雇用情勢というのは確かにおっしゃるように予想外の悪化をいたした、こういうことでございます。
 これにつきましては、バブル崩壊以降の問題、さらにそのバブルというのは地価の下落が中心でございましたが、それが最終的に金融機関の問題に立ち至ったところでもって大きな雇用不安が起こった、こういうことでございます。これにつきましては、予測するべきであったというお話もございますけれども、現実問題としてほとんどこれは不可能であったのではないかなというふうに思っております。
 そうした意味で、今の雇用情勢の悪化を見通せなかったという点は確かに関係者全員の問題だというふうなことも考えられるわけでございますが、しかし、だからというわけではございませんけれども、それをチャンスに雇用保険制度というものを多少の雇用悪化の中でも永続性のある健全に続けていけるものにするという方向で見直しを図ったというのが現実ではないかと思います。
 この前提になっておりますのも、四から五%程度の失業率でございます。欧米のように一〇%というふうなことになりますと、またこれは全く違った世界になってくるというおそれもないわけではございませんが、私ども経営者の立場といたしましては、失業のセーフティーネットよりも雇用を確保することの方が何層倍も大事である、雇用を確保することが目的ではないか、したがってセーフティーネットはあくまでもそれがどうにもならなくなったときに補完をするものでありまして、同じ資金を使うならば雇用を確保する、雇用の促進、増進というところに政策を打つべきだろうというふうな考え方も持っておりまして、最もつつましい形で雇用保険を設計し、そして労使は無理をしてでも雇用を確保する努力を怠らない、こういうことでアプローチをしてまいりたい、こう思っている次第でございます。
#14
○大野つや子君 大変私も同感でございます。よろしくお願いしたいと思います。
 今回の求職者給付における倒産、解雇などの非自発的離職者に対する給付の重点化については、現在の雇用保険財政の収支状況なり受給者の実態などから見ますと、私は適切な措置であるとも考えられます。
 しかし、年齢が高くなればなるほど再就職というものが大変困難であるということ、特に六十歳以上では十人に一人ぐらいの求人しかないのが実態であるというようなことも聞いているわけでございますが、再就職の困難性という観点からは定年退職者を含めまして自発的離職者も非自発的離職者も同じではないのか、雇用保険が果たすべきセーフティーネットの役割からは両者の間に差を設けるのはおかしいのではないかというような御指摘も聞かれることでございます。このような指摘に対しまして、成瀬参考人の御意見はいかがでございましょうか、お伺いしたいと思います。
#15
○参考人(成瀬健生君) 定年の問題につきましては、原則論を先ほど申し上げたとおりでございますが、サラリーマンの人生設計の中で本人が責任を持ってやはり考えておくべきものであるというふうな基本的認識を持っております。
 しかも、しかもと言ってはちょっと問題ですが、今日の日本の高齢者、これは日本の歴史の中でも最も豊かな時代に属する、今後の高齢者はもっと貧しくなるというふうな意見もございまして、そういう状況でございますので、雇用保険のお金というのも結局サラリーマンと企業が払っている、みんなで払っているものでございます。もちろん国庫負担もございますが、これも税金によるものでございます。できるだけそれを自分の自覚の中でもってむだに使わないという努力をみんなで協力してやりませんと、雇用保険そのものがうまくいかなくなるというふうなことで、そうしたやはり自分のライフステージ別の生活の設計は自分で責任を持ってやる、リスクがあった場合は別でございますけれども、三十年、四十年前からわかっておった定年というふうなことにつきましてはそういう厳しい考え方をしませんと、甘えておりますと幾ら財政があっても足りないというふうなことも踏まえまして、どこかでけじめをつけなきゃならない、こういう点からけじめをつける方がよろしいのではないかというふうに考えております。
#16
○大野つや子君 ありがとうございます。
 次に、高齢者の雇用ということを考えました場合に、年金の支給開始年齢と接続は避けては通れない問題であると思います。
 今回の高齢者雇用安定法の改正によりまして、六十歳の定年年齢の引き上げや継続雇用制度の導入等によりまして六十五歳までの雇用の確保が事業主の努力義務として課せられることになります。
 成瀬参考人は二、三年前にある雑誌のインタビューの中で、六十歳を過ぎると企業が働いてほしいというようなことを言ってもほとんどがノーだというようなそういう意見が大多数であり、それが特に地方においては多いというようなこと、ただ年金の支給開始年齢が延びてくれば六十五歳まで働かなければという人がかなりふえてくるんではないかと思うというような御発言をされております。次年度からはいよいよ年金の支給開始年齢の引き上げが始まるわけでございます。高年齢者の雇用に対します意識は当時と比べまして変化してきているのでございましょうか。経営者の立場から、実態を踏まえてお聞かせをいただきたいと思います。
#17
○参考人(成瀬健生君) 私のお答えさせていただいたその文章につきまして、お読みいただきまして大変ありがとうございました。
 高齢者の雇用につきましては、確かに年金支給開始年齢の引き上げに伴って意識が変わってくるだろうと思います。従来は、十人お願いしても一人残っていただけるかどうかというのが実態の企業の状況でございました。今後は変わってくることが考えられますので、既に労使の間で積極的な取り組みが行われておりますし、ことしの春の労使交渉の中でも電機、繊維などはかなり前進を見たところでございます。
 そうした形で今後労使の自主的な取り組みは積極的に進んでいくだろうと思うわけでございますが、雇用というものはやはりビジネスの世界のものでございますから、雇用をして会社としてペイする人間でないと雇えないということは基本でございます。ペイしない人間だけ雇いますと会社は倒産して雇用そのものがなくなってしまうということでございますので、これは基本でございますので、労働条件につきましては十分に話し合いつつ、できるだけ働いていただくことが最も望ましいだろう。
 これは労使の積極的な話し合いにぜひ任せていただきたいと言っては語弊がございますけれども、努力を労使ともにするということを考えておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
#18
○大野つや子君 平成十一年の八月に閣議決定されました第九次雇用対策基本計画では、計画の最終年次であります二〇一〇年には六十五歳定年の普及を目指すということでございますが、日経連傘下の企業の高齢者雇用に対する御意見、ただいまもお聞かせをいただいたわけでございますけれども、過剰雇用の現状下では定年延長は不可能である、また六十五歳定年の法制化は反対である、労使自治のもとで長期的視点に立って段階的に対応すべきであるなどの否定的な意見も多いと聞いております。
 五十五歳定年制から六十歳の定年制までに約三十年という年数を費やしたわけでございますが、今後十年足らずでこの六十五歳の定年制を定着させるというのは相当のこれは努力が要るのではないかとも思うのでございますが、成瀬参考人、二〇一〇年の六十五歳定年制の定着という目標につきましてどのような御見解をお持ちでございましょうか。また、それを定着させるためには、政府、そして使用者、労働者の三者がどのような努力をしていったらいいのか、お聞かせをいただきたいと思います。
#19
○参考人(成瀬健生君) 定年延長の問題という言い方がなされる場合もございますけれども、日経連は雇用延長という形で申し上げておったりするわけでございます。基本的にやはり労使の話し合いにゆだねていただきたいという考えは強うございまして、法律でお決めいただくことにつきましては問題があるという認識を持っております。
 ただし、今回の六十から六十五、六十四歳でございますか、これへの雇用の一般化といいますか、この問題につきましては、五十五から六十よりもかなり早く進むのではないかなという考え方を持っております。これは、基本的に若年層雇用が減ってくるという面もございます。同時に、五十五から六十歳に延ばすときの大変なネックになっておりました年功賃金の修正という問題がもう既にかなりなし遂げられておるわけでございます。
 したがって、雇用というのは、先ほど申し上げましたように、賃金を払ってペイする雇用ということが基本でございますから、こうした年功賃金というふうなネックがとれますと雇用はかなりしやすくなるという面もございまして、今後実質的な雇用というのは比較的進むのではないかと私ども考えておるところでございます。
#20
○大野つや子君 また雇用保険関係に戻って恐縮でございますが、育児休業給付や介護休業給付の支給額を二五%から四〇%へと引き上げることは、先ほども大変よい水準であるというような御意見もいただいたわけでございますが、女性労働者の仕事と育児や介護の両立支援という観点からも大変力強い支援策になると思われるわけです。この制度の基本的考え方といたしまして、休業中の生活保障と同時に、休業後の仕事への復帰ということが特に育児休業給付についてあるのだろうと思います。
 このような観点に立った場合、育児休業給付の支給割合は休業中に三〇%、職場復帰後に一〇%というようになっておりますが、この割合が適当なのかどうか、あるいはこれは休業中に二五%、職場復帰後に一五%が適当なのか、これはさまざまな意見があると思われますが、この点につきまして、事業主のお立場から成瀬参考人のお考えをお聞かせ願えたらと思いますし、また女性の社会的進出や男女均等社会の確立に向けて活躍をされていらっしゃいます大沢参考人にもぜひお考えをお聞かせ願えたらと思いますが、よろしくお願いいたします。
#21
○参考人(成瀬健生君) ありがとうございます。
 四〇%の水準につきましては、目いっぱい経営者サイドとしては頑張った水準というふうに御理解をいただければと思います。
 それから、三〇%、一〇%という比率でございますけれども、まあそうかなと。私どもとしましては、二五、一五、ないし二〇、二〇というふうな意見もないわけではございませんでした。同時に、再就職の場合の十分な事前の準備といいますか訓練、こうしたものはきちんとやっぱりやっていかなきゃならないだろうと経営者サイドとして考えております。
#22
○参考人(大沢真理君) どうも御質問をありがとうございます。
 私は、育児休業給付、介護休業給付の率の引き上げにつきましては、もちろん女性労働者への支援であることは間違いないのでございますけれども、男女を問わず子供を産み育てることと職業生活を両立しようとする労働者のすべてのための政策であろうというふうに考えております。
 ただし、実情は、男性でもって育児休業をとる人の比率は大変低うございます。それよりは介護休業の方が男性の取得率が高いというのがよく知られた事実でございまして、少子化が深刻になっていく折、この問題に対処するためにはより多くの男性が気兼ねなく育児休業をとれるような条件、環境を整備するということが重要なのではないかというふうに考えております。
 ところで、この休業中の支給の割合とそれから復帰後のということ、その案分ということでございますけれども、聞くところによりますと、休んでおいて復帰をしないというケースも間々あるということで、このような案分というのは一つの方策なのかなという感じは受けるわけでございます。
 しかしながら、休業中に所得が減るということの困難性というのも無視できないわけでございまして、合計で四〇%という水準が国際的に見て遜色のないものかどうかというのが、つまり、日本の出生率の低さということで考えた場合には、出生率の高い国におかれましてはまたいろいろな政策手段のとり方があろうかと思いますけれども、先進国の中でも下から数えて三番目か四番目というような出生率の低さを考えましたときに、四〇%が十分かというふうに問題を立てますならば、必ずしもそうではないのではないかと。
 私自身は子供を産んでおりませんが、妹が二人子供を産んでおりまして、その都度育児休業をとっておりますけれども、非常に印象的に言っていたことが、三百万円か四百万円ためないと子供を産めないのよと。つまり、自分が休んであるいは連れ合いが何カ月か休んでいる間に失われている所得というのをあらかじめ積み立てておかなければ安心して休めないのよというふうに言っておりまして、この休業中の所得の減少というのは、つまり掛かりがふえて所得が減るわけですから、この困難性はより重視されるべきではなかろうかということと同時に、やっぱり復帰支援というのを今まで以上に手厚くしていただくということが必要なことかと思われます。
 あわせて、男性の育児休業取得というのをいかに応援していくかということなんですけれども、私はここはもう思い切ったポジティブアクションのようなことすら必要なのではないか。つまり、男性が育児休業を取得した場合には給付の率を高くするというようなことすら考えた方がいいのではないか、そうであってこそ……。やっぱり男女ともに家庭責任も子供を産み育てるということの喜びもまた負担も分かち合って、日本の将来というのを安定化させていくことはおぼつかないのではなかろうかと思っております。
 以上でございます。
#23
○大野つや子君 大変貴重な御意見をありがとうございました。
 時間が参りましたので、これで私の質問を終わります。
#24
○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。
 きょうは、大変有意義なそれぞれの意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。
 私は、まず最初に大沢参考人にお伺いしたいと思います。
 レジュメの一番最後に書かれておりました「政策的インプリケーション」、とても興味深いものでしたけれども、お時間がなかったようで、そのあたりもう少しわかりやすく示唆をいただきたいと思います。
 まず最初に、雇用保険財政を立て直すには三事業をリストラした方がいい、こういう御示唆があるわけでございます。
 私も、雇用保険の三事業とは一体何だろうなといつも思います。事業主負担だけで賄われておりますから、事業主の方々は、これはおれたちが労働者のためにこれだけ日本型の福祉をやっているんだというふうなことをおっしゃる方が多うございます。ちょっと成瀬参考人には私の言葉遣いが悪いかもわかりませんが、そのような意味で言われますけれども、中を見てみますと、逆に事業主が使える部分にしか使えない、本当に実際に必要な労働者まで届かない。
 ましてや、保険に未加入の労働者がこれだけふえてきておりますと、本当に必要なところに届かないという懸念がありまして、この三事業とは一体何だろう。もしも本当にその三事業が必要なら、雇用政策が必要なら、それは国の一般会計でやるべきであって、使用者負担の部分はむしろ失業給付等の方に入れて財政をしっかりさせた方がいいんではないかというようなことを単純に考えている人間ですが、まず、そこのあたり、三事業をリストラせよというその示唆のあたりから伺いたいと思います。
#25
○参考人(大沢真理君) どうも御質問ありがとうございます。
 もう既に御質問の中にある意味では答えが含まれておりまして、私、同意見なんですけれども、やはり労働者個人に届いていかない給付というのはいかがなものかということと、それから三事業全体として余りにもさまざまな措置というんでしょうか給付事業が展開されていて、これは相当の専門家でないと何がどうなっているというのがわからないくらいに複雑多岐にわたっているのではないか。このことが、企業が非常に潤沢な資金を持っているときであればともかく、今のような厳しいときに続けていくという上では相当厳しい精査をかけていかなければならないのではないかというふうに思う次第です。
 あわせて、申請するのにもなかなか大変で、これは専門の人に相談しないと申請するのも大変というようなこともあるいはあるだろうという問題も漏れ聞くところでございます。
 もう少し簡単で使いやすい、使い勝手のよい制度にしていくということが、たとえ労働者個人という枠組みに変更しない場合でも必要なのではないかというふうに思っているところですが、議員が御指摘のように、これは一般会計に移しまして、国の雇用対策あるいは雇用政策ということで積極的に展開をしていく方がよろしいのではないか。
 ただし、その場合の財源なんでございますが、これは間接税財源というよりは、やはり事業主が支払っている賃金総額に比例をした何らかの雇用維持税のようなものが考えられるのではないかと思いますけれども、雇用保険の方からいえば、これは三事業分の保険料収入を失業給付の方に移すというのが当面は必要なことではなかろうかと考える次第です。
#26
○川橋幸子君 ありがとうございます。
 成瀬参考人は別の御意見かと思いますが、後ほどまた伺わせていただいて、続けて大沢参考人に伺いたいと思います。
 御示唆の第二点は、「女性の就労促進を」と、その方が家計のリスクが分散されるであろうというふうなお話がございまして、ただいま同僚議員の質問に対して、育児休業、介護休業の話があったわけでございますが、女性の就労促進についてこの両制度、育児期、介護期も働き続けられるということはもちろん重要でございますけれども、就労促進にとって基本的にここが今一番日本の制度の場合は欠けていると思われることがありましたら御指摘いただきたいと思います。
#27
○参考人(大沢真理君) 簡潔にこここそがということでございますから、いろいろ申したいことはございますが、一点だけ申し上げますと、やはり年齢差別という問題が大変大きゅうございます。
 これは先ほど来定年制のお話もあったんですけれども、果たして定年制というものをいつまで維持する必要があるのかどうか。高齢社会になってまいりますと、単に自然年齢で人間の能力やエンプロイアビリティーというのは区切れるわけではなく、かなり個人別ということになってくるのだと思います。そのときに、一律六十歳とか六十五歳とかという定年制をいつまで果たして維持する必要があるのか。
 翻って、今、女性のいわゆる中断再就職、出産・育児期に一たん退職をしてその後また仕事を探そうという女性にとって非常に大きなネックになっておりますのが、三十五歳を過ぎますと正規従業員としての求人はほとんどないということなんですけれども、これが非常に大きいかと思います。
 したがいまして、年齢制限について、アメリカなどは既に六〇年代の末から年齢差別を禁止する雇用政策を持っておりますけれども、これが、単に女性にとってだけでなく、男女にとってフレキシブルに個人の能力と努力で自分の未来を切り開いていく時代にふさわしいあり方なのではないかというふうに思う次第です。
 あわせて、たとえ非正規の働き方であっても賃金、処遇において不当に差別をされないということも必要であろうかと思われます。
 以上です。
#28
○川橋幸子君 その年齢差別なんですが、この委員会でもよく議論が出るのでございますけれども、逆に男性の方々は、定年制というのは年齢によって優遇する、保護するという、そういう機能が今の日本では大きくてかつ必要なんだと、そういうお話が出てくるわけでございますけれども、そうした定年制と年齢差別といいますか、エージフリーをどうやってこれから解決していけばよろしいのか、御示唆いただければと思います。
#29
○参考人(大沢真理君) 諸外国には、つまりこの場合には欧米諸国でございますけれども、日本のような定年制というのはございません。その上で、じゃ、いつごろまで働いているのかといいますと、これはもちろん個人のばらつきが大きいわけでございますけれども、平均的に言って日本よりも比較的高年齢まで働いているわけです。働いている限りは年金の受給というのを先送りにして、その分年々の年金が厚くなるようにするというような備えもできるわけです。また逆に、雇用情勢が厳しいときには早期退職をして早期の年金支給を受けるというように、年金制度自体も年齢で区切るのでなく柔軟なシステムになっていて、その上で就業生活と年金生活というのがうまく接合されているということなのだと思います。
 したがいまして、これは定年制というだけの問題ではないのですが、接合が大事だということを申し上げてお答えいたします。
#30
○川橋幸子君 それでは、ほかの方々にもお聞きしたいので、大沢参考人にもう一問だけ伺いたいと思います。
 生活保護の抜本改革が必要だというふうにお話しでございます。しかし、私ども頭に入っておりますのは、現役時代の所得保障は雇用保険で、引退すれば年金で、生活保護というのが何か一般の方に対するミニマムの保障というよりも不幸な境遇に陥った方に対する保護というような感じのことが長年頭にしみついているわけでございますけれども、そのあたり、生活保障というのは雇用保険もあり年金もありそして生活保護がありといった場合のそれぞれの役割分担はどのように考えればよろしいでしょうか。
#31
○参考人(大沢真理君) 日本の生活保護についてるる申しましたけれども、保護率というのでしょうか、適用人員比だけ申しますと、例えばイギリスのような国では一〇%を超えているわけでございます。日本は一%を切っているわけですから二けたの差があるという状況で、この背景にはさまざまなことがございますけれども、この数字が既に物語っているように、公的扶助を受けるということについての文化的、心理的あるいは制度的なバリアというのが大変低くなっております。
 給付のレベルというのは日本と見合いの給付をイギリスなどは持っているというふうに御理解いただいていいと思うんですけれども、受給期間が全く違うんです。日本の生活保護の特徴は、非常に適用人員比は低いけれども、一たん保護を受け始めたら五年、十年と受けるということでございまして、イギリスのような国では多くの人が保護を受けるが比較的短期間にまた保護を必要としない生活に復帰をしてくるということで、これを私は弾力のある、弾性のあるセーフティーネットというふうに言っております。何か、ネットなんだけれどもねばねばになっていて、一たん落ちたらそこに捕まっちゃってもう抜け出られないというのではなくて、トランポリンのように弾性があって、そして通常の生活に復帰してきやすい制度、そういう制度設計を目指すべきではないか。これはイギリスの総理大臣のブレアさんなどがネットでなくてトランポリンと言っているのがたまたま私の考えと一致をしたんですけれども、そのようなことを考えているわけでございまして、そういった弾性のあるセーフティーネットにしていく上では、生活保護制度を取り巻くさまざまな制度的な原則あるいは適用上の特徴というのはこの際抜本的に改善すべきではないかというのが意見でございます。
#32
○川橋幸子君 ありがとうございました。
 それでは次に、大須参考人に伺いたいと思います。
 大須参考人も、雇用保険が失業保険から雇用保険に変わったときから問題を抱えたのではないかとか、あるいは私の単純な聞き方でございますけれども、むしろ失業対策事業が必要なのではないかというふうな御発言がございましたが、そういうのは多分失業時の生活保障をどこに求めるかの問題なのではないかと私は思います。
 失業時の生活保障というのが、今大沢参考人がおっしゃったように、ねばねばネットじゃなくてトランポリンみたいに弾力があっていつでもまたやり直しがきくようなそういう生活保護があれば、あえて失業対策ということではなくて、失業時の所得保障を雇用保険だけがかぶるのではなくて、生活保護も国の政策の中で整合性あるものとして機能すればよいのではないかと思うわけでございますが、そのあたりはどのようにお考えになられますでしょうか。
#33
○参考人(大須真治君) 今の御質問、多分、生活保護が充実すれば公的就労事業は要らないんじゃないかというか、そういうふうな御質問というふうに受けとめてよろしいでしょうか。
 ただ、生活保護の現行というか現状、これが僕はかなり問題だというふうに思います。もともとこれはそういう性格を持っているんじゃないかと思いますが、日本では特にそういう性格が強くなっているんじゃないかというものなんです。つまり、生活保護というのは確かに所得がなくなったときの最低の生活保障、こういう性格はありますけれども、逆に言うと、そういうふうになった人をある程度差別して仕事ができないような状態にして保護するというか、そういう、実際の運用上あるように思います。
 具体的には、例えば生活保護を申請する場合には、これを保護できる親類とか一連の人に聞いて、そしていなければ受けられるとか、それから資産がないというようなことを前提にして生活保護を出す、こういうようなことでありまして、実際には、生活保護の本来的なあり方かどうかは別として、現状の運営としては、生活保護になってしまったら働きながら生活をするというのではなくて、働かせないで保護をするというか、そういうような性格が非常に強いと思います。
 ですから、生活保護の実際の運用上、国民の権利として生活保護が十分受けられるような運用もそうでありますし、社会的な常識もそういうふうに成熟するということであるならば、生活保護からまた働きに出るということもできると思いますけれども、現状ではなかなかそこは難しくなっているのではないか、こういうふうに判断しております。
#34
○川橋幸子君 関根参考人にお伺いさせていただきます。
 派遣法が改正されまして、特に最近は派遣あるいは有期契約あるいはパート等非正規労働者の方が非常にふえていらっしゃる。
 きょうは派遣の方の活動をやっていらっしゃる参考人から御意見を伺って大変興味深かったんですが、伺ってもいつも単純な質問に私返ってしまうんです。どういう質問かというと、とにかく使用者の方々が入りたがらない、社会保険料の分だけコスト削減になる。企業も入りたがらない。それから、事業主の方がおっしゃるには、やっぱり派遣の人たちは御本人も入りたがらないんですよ、御本人が入りたがらないのにそれを事業主が上乗せして払うから払えというそういう強制はできませんと。何かそういう、お互い口実が労働者のせいであったり企業のせいであったりすることが多くて、どうやったら加入促進ができるか、これが一番私わからない点なんですが、それはどのようにすればよろしいと思われますでしょうか。
#35
○参考人(関根秀一郎君) 社会保険の加入については、おっしゃるとおり、労働者側が入りたがらないという側面も全くないわけではありません。
 ただ、私が多く受けている相談の中では、派遣労働者が社会保険に入りたいと言っても、企業がやはりコストが非常にかかるということで社会保険に加入させてくれないというものが非常に多くあります。
 それから、やはり事業主負担分のコストが派遣会社にとって非常に負担になるということから、社会保険に加入した場合には時給を百円カットするであるとかあるいは時給を一〇%カットするというような措置をとっている事業主がいるということは、これは事実です。
 一方、派遣労働者の側について、なぜ入りたがらない方がいらっしゃるのかということをいろいろと見てみますと、派遣労働という働き方が本人が望むと望まないとにかかわらず非常に短期的でぶつ切りにされてしまう傾向があるということなんです。本人は長期の仕事がしたいということで派遣会社に依頼をして、派遣会社も、じゃ今回長期のお仕事ですよということで紹介したとしても、契約期間自体は非常に短く、いつ切られてしまうかわからない。また、その期間の途中でも切られてしまうケースが多々あるということから、派遣労働者はその都度社会保険に加入してまた国民保険に切りかえるであるとか、あるいは社会保険に一たん入ったけれども今度は切られたために配偶者の被扶養者にまた入らなきゃいけない。こうなると配偶者にまで迷惑をかけるということから、そういったぶつ切りの雇用であることから入りたがらないという傾向があるようです。
 そこを継続して、切りかえが煩雑でなく、なおかつ継続して社会保険に加入できるようなシステムをつくらないと、そういった今のような非常にぶつ切りになってしまうような働き方の中では社会保険というものに加入したくないという方が出てくるのは仕方のないことなのかなというふうに思います。
#36
○川橋幸子君 成瀬参考人に最後にお伺いしたいと思います。
 今の質問に関連しての問い、後ほど申し上げますが、その前に一言。先ほど同僚議員の質問に対しまして、セーフティーネット、大事には違いないんだけれども、何よりもかによりも雇用確保、雇用機会を確保される、あるいは雇用機会をつくり出すことが大事だとおっしゃいましたけれども、今はそれがなかなか見つからない、それが、日本経済のこのような状況から雇用機会が確保できない状態の中でのセーフティーネット。ちょっとお話が逆転しているんじゃないかというような印象を受けましたことが一点です。
 それと、今のこのように非典型労働者、非正規労働者がふえていった場合の雇用保険ないし社会保険のあり方、こういうものについて経営者側はどのようにお考えになられるか。今は、不況のおかげで財政難だった、リストラがたくさん出たから財政難だったということかもしれませんが、これからはそういう社会保険の適用範囲がどんどんこのままだと縮小、シュリンクしてしまうという危険が大きいと思います。
 何か時間をちょっと過ぎたかもわかりませんので、割合短目のお答えで結構でございます。
#37
○参考人(成瀬健生君) 最初の問題につきましては、雇用確保が大事だと申しますのは、国民所得が国民に均てん分配されて国民が生活をするわけでございますが、その分配の方法としましては雇用とか就業によるものが最も健全なものではないかと考えておるからでございます。
 失業がふえますと、必ず社会不安が起こったり、場合によっては政権交代したりというふうな不安が起こることもございます。そんなことは歴史的にどこの国でも見られるわけでございますが、雇用が大事というのはそういう意味でございますので、同じ努力をするのであれば雇用確保の方にというふうに考えております。そして、働く方々にもできるだけ積極的に働く気持ちになってほしいということも同時にそういう気持ちは強く持っているということでございます。
 もう一つ、非正規従業員の問題でございますが、私どもの考えております雇用の構造というのは、非正規従業員の場合、本人もそういうフリーな立場で働きたい、そして企業の方でもそういうフリーな立場で働ける人を求めたいという、需給がマッチしたところにそうした雇用が発生するというのが原則だろうと思っております。
 もちろん、そうならない場合もあるとは思います。そういう場合も含めて考えますと、やはり今度の改正法でも出ておりますように、こうした雇用につきましての制度につきましては少し検討しなきゃならない点もあるのではないかと思いまして、今後の課題でもありますし、今度の改正法ではその点踏み込んだというふうに考えております。
#38
○但馬久美君 公明党・改革クラブの但馬久美でございます。
 きょうは四人の参考人の先生方、本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 まず初めに、成瀬参考人と大須参考人に同時にお伺いしたいと思います。
 失業率の将来予測と雇用保険財政の相関についてお伺いしたいと思うんです。
 九九年の八月、去年の八月ですね、第九次雇用対策基本計画が制定されました。その前提となったのが雇用政策研究会の報告書でありました。この雇用政策研究会が去年の五月に労働力の需給の展望と課題について報告しておりますけれども、これによりますと、二〇一〇年までの国民の一人当たりの実質のGDPは平均一%成長しても失業率は五・一%の高率であり、また平均二%成長しても四・二%という失業率が予測されております。要するに、日本の経済が今後一定の成長を上げながら前進しても、それでも四%台という失業率が継続していくということを予測されております。
 今回の改正で、雇用保険財政のこの危機的状況から、これを回避するために措置的に国庫助成とそしてまた保険料の引き上げを従前に戻したということで、行き当たりのような政策のようにも感じますけれども、先ほどの雇用政策研究会の労働力需給の展望と課題の報告をきちっと生かして、雇用保険財政の今後の予測といいましょうかシミュレーションとして保険料率やそしてまた国庫助成額を設定して、年々歳々弾力的に機動的に運用していくことが要請されると思うんですけれども、先生方はどういうふうにお考えでしょうか、お聞かせください。お願いいたします。
 まず、成瀬参考人からお願いいたします。
#39
○参考人(成瀬健生君) 大変難しい予測の問題でございます。
 この予測の中に入っております要素というのは、確かに景気循環による、ないしは経済成長が支え切れない雇用というふうなものによる失業というものも入っておりますけれども、長期的にずっと、何と申しますかコンスタントにふえていく失業というのがやはりございます。これは、日本もかつては二%というのが失業の定常状態といいますか常態だったわけで、二%を超えれば高いと言われておったわけでございます。今は五%を超えて高いということでございましょうか。
 社会が豊かになってまいりまして価値観が多様化してまいりますと、いろいろな生活の仕方がございますものですから、どこの国でも歴史的に、また横断的に見ましても、先進国ほど失業率が高くなる傾向が一般的に見られます。
 そうした失業が本当にどうしてもカバーしなきゃならない失業なのか、それともそうした豊かな社会化に伴う、価値観の多様化に伴う失業を一〇〇%救わなければならないのかというふうな問題は一つの大きな社会の課題ではないかというふうに考えておりまして、今度の法改正の中では本当に困っている方を中心に救う、最小のコストで最大の効果を上げるように救う、こういう考え方になっているわけでございます。
 私どもが想定しておりますのは、今五%に至らんとしておりますが、五%には何とか長い目で見ても行かせたくない、それは、そういうものが定常状態になるのはある意味では社会の劣化であるというふうな考え方も持つわけでございまして、やっぱり皆さんが勤労意欲を持って働く、そして働く機会を十分につくり出せる社会であるということが大事だと思っておりますし、これにつきましては、政府の政策はもちろんでございますけれども、同時に労使のあり方、これが非常に大きな力を持っていると思います。
 今の日本の失業率がこの程度でとどまっておりますのも労使の取り組みの結果だと私どもは判断しておりますが、そういう意味では、学者の経済予測だけでなくて、労使が現場で頑張っていかに雇用を確保するか、そのための知恵を絞るかということの中で五%を超えない失業率を幾ら日本が豊かになっても維持する、こんなふうなことは労使の課題ではないかなと、こんな認識も持ちまして、その程度の、以上の失業率は予想したくないというのが本当の気持ちでございます。
#40
○但馬久美君 ありがとうございました。
 同じ質問なんですけれども、大須参考人にお伺いいたします。
#41
○参考人(大須真治君) 大変難しい質問を受けまして、私としては何ともお答えしがたいと、こういうことでありますが、一つは、失業率の今後の予測というのはいろんな可変的な要素があると思うんです。財政の問題とか経済政策そのものの問題とか、そういうものがありますので、予測しても予測どおりいかない、こういうような問題があるんじゃないかと思います。
 ただ問題は、失業率と雇用保険財政というのは非常に相関的な関連はありますけれども、全くストレートに失業率に雇用保険財政が影響を受けるというか、そういう関係にはないと思います。雇用保険、要するに失業といいましても、基本的には保険という方式による失業の生活保障ということでありますから、当然限界がある。
 ですから、失業対策というのは単に雇用保険だけで成り立つわけではなくて、雇用保険が失業対策のうちのどの部分を担うという政策にしていくか、これによって、失業率だけじゃなくて失業・雇用政策のあり方とかかわって雇用保険財政というものも出てくると思うんです。
 ですから、私はその御質問について数字的にお答えするというのはとても今力量的にできませんけれども、少なくとも失業の問題、少なくとも失業対策のあり方ということをもっと考えていくべきなんじゃないか、そういうふうに思っています。
#42
○但馬久美君 ありがとうございました。
 先ほども労使のあり方、やっぱり双方によって現場で物事を見ていくというところの観点は、非常に私もそういうふうに同感いたしております。
 それでは次に、大沢参考人にお伺いしたいと思います。
 大変興味深く聞かせていただきまして、私も先生のレジュメの中の三番のところの「政策的インプリケーション」の中で、女性の就労促進を、現役支援の社会保障を、生活保護制度の抜本的な改革が必要であるということをさっきおっしゃってくださいまして、そのところの辺をもう少し詳しくお伺いしたいんですけれども、ここに括弧して、最低賃金の改善とか、普遍的な児童手当、そしてまた低所得者への住宅給付、この三点にわたってもう少し詳しく御説明いただけますでしょうか。
#43
○参考人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。
 最低賃金の改善というのは狭い意味での社会保障ではございませんけれども、これは生活保護制度との良好な接合というのを考えたときに避けて通れない。つまり、フルタイムで働いていても生活保護基準に満たないような低賃金というのが世の中にないわけではございませんので、その場合にはやっぱり最低賃金制度の方が間違っているわけでございますから、最低賃金というのはフルタイムで働いたら必ずその人にとっては生活保護基準をクリアするように設定されていなければおかしいんですけれども、もう既に最低賃金制度というのがなかなか改善されないようになってから二十年ぐらいはたっているはずでございまして、余り脚光を浴びることのない制度なんですけれども、この際お考え直しいただければというのがここでの趣旨でございます。
 それから、普遍的な児童手当でございますけれども、もちろん日本にも児童手当制度というのは一九七一年以来存在をしておりますが、よく御存じのように大変支給制限が厳しくなっておりまして、発足当時は、第三子以降であるとか、小学校就学時までとか、それからまた親の所得による所得制限というのがかなりきつくなっているというようなことで、これもILOの社会保障の国際統計などを見ましても、日本は社会保障給付に占める児童手当、家族手当の比率というのが大変低い。それだけでなく、発足時の七〇年代初めぐらいが一番給付の比率が高く、その後どんどん低くなっている。それは、ほかの社会保障制度が充実したのに児童手当は充実されてこなかったという問題がございます。
 と同時に、いわゆる母子世帯等については児童扶養手当という別建て制度になっておりまして、こちらは比較的給付額自体は高いんですけれども、これもまた母親の所得による支給制限というのが厳しくなっておりまして、必ずしも使いやすい制度ではございません。
 こうなってみますと、普通のサラリーマン、雇用者の世帯でもって児童手当を受けているというのは受けていても非常に少額でしかないということで、家計の足しにはほとんどならないというような中で、現役の勤労者にとりましては自分が社会保障でどういう恩恵を受けているのかというのが感じにくい。このことが、日本では例えば増税や社会保険料の引き上げに対する強い抵抗感、それから、ともすれば福祉を受けている人をべっ視するような態度というのにもつながっているのではないかと考えております。
 私が普遍的な児童手当と申しますのは、これはもう親の所得の多寡にかかわりなくすべての児童に対して児童が育つことの最低生活分を保障するというようなものを考えております。
 実は、日本は社会保障給付としては今言ったような現行の児童手当しかないんですけれども、他方で所得税の方には年少扶養控除がございまして、これは比較的中程度から以上の所得層にとっては節税になるということで恩恵を受けているわけです。これは低所得者には恩恵のない制度が行われているわけでして、諸外国で本当に子育て支援、それから子供の育つこと支援ということを考えたときには、所得税の扶養控除のようなものは廃止をする、ないしは思い切ってリストラをした上で児童手当の方を充実するという改革が行われているわけでございます。
 その意味では、最近、扶養控除の方をカットして児童手当を増額するという改革がなされまして、私はこれは方向性として賛成をしておるところですけれども、必要なのは、抜本的にやる、今のやり方ではとても足らないというふうに思っております。
 最後の低所得者への住宅給付でございますが、これは時間も限られておりますので本当に簡単に申しますと、これも諸外国でとられている制度です。日本の住宅政策はどうしても持ち家促進、持ち家補助政策中心でやってまいりましたので、最も住宅に貧困な層にとって住宅費用の援助が行われていないということになっておりまして、これも必要なことなのではないかという意味で挙げさせていただいた次第です。
 以上です。
#44
○但馬久美君 大変ありがとうございました。
 女性がこれから社会に出て、そして子供を産み育てやすい社会をつくっていくには、やはりこういう社会保障がベースにきちっとなければ、男女共同参画社会といってもまだまだこれからの問題であるなということを実感しております。
 今のこの児童手当制度の話なんですけれども、公明党といたしましても、現行は三歳児までだったのを就学前までの子供に延長させていただきましたけれども、これは今この一年間の話でありまして、これから中長期的に見た場合に、本当にゼロ歳児から二十二歳、これから教育の分野そしてまた育児にも本当にお金がかかる、そういうところをどう社会保障していくか、そう考えたときには、今度は高校、大学、大学院そしてまた専門学校、こういうふうなところも奨学金制度にしていき、そして今のゼロ歳児から十六歳までに児童手当制度を拡充していくという方向に考えておりますけれども、この点に関しまして、ヨーロッパ、特に北欧なんかはもう十八歳まで手当をつけているところもたくさんあります。
 先ほども大沢先生がおっしゃったように、本当に日本の児童手当に対して、そしてまた子供に対しての政府の予算のつけ方というのは非常に低い。まだまだこれからも課題が山ほどありますけれども、まず女性が何しろ産んで育てるというところにもっと手当てをしていかなくてはならない。
 そういうことに関しまして、ゼロ歳児から十六歳児、行く行くは十八歳児までのところの手当ということに対しましてどのようにお考えであるか、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか、大沢先生。
#45
○参考人(大沢真理君) お答えをいたします。
 私も、少なくとも義務教育終了までは、それから全日制の教育が続いている間はその間児童手当が支払われてしかるべきというふうに考えておりますし、あわせて奨学金制度というものがもっともっと充実されませんと、日本は本当に無資源国で、資源といえば人材しかないわけですから。
 ところが、今の教育の状況というのは、私も国立大学に勤めておりますけれども、やはり親の所得や文化的資源によって教育機会というのに非常に格差が出てきているというのが最近懸念されることで、これはまた多方面で強調される学力低下ということも、要は日本は中間階級というんでしょうか、中流が九割を占めるような安定した社会ということで何十年間かはやってきたわけですけれども、今この中流が多数を占めることによる安定というのはがらがらと崩れておりまして、それが学校での学級崩壊や学力低下というようなことにも結びついていると思うわけでございます。
 そういう意味で、実質的に教育機会を均等化するような政策というのは今急務ではないかというふうに思っておりますけれども、私は、雇用不安というのが必要以上に日本で大きくなっているのは、すべてが親の責任、それから、経済的にはすべてが父親であり夫である男性世帯主の責任というふうになっているところで雇用不安がある意味では必要以上に強く感じられ、それが中高年男性の自殺といったような究極的に痛ましい事柄に結びついているのではないかと考えますので、雇用保険法の改正ということからすればやや外側の状況ではございますけれども、書かせていただいた、しゃべらせていただいた次第です。
#46
○但馬久美君 大変示唆に富んだお話、ありがとうございました。
 それでは、あと残り時間を関根参考人にお伺いしたいと思います。
 雇用保険の適用除外規定によりまして適用対象外になっている人が今増加しております。その中で、派遣労働者、特に所定労働日数もしくは所定労働時間が極めて少なく、また期間を区切った派遣労働者、そしてまた短時間労働者、パートタイム労働者といいますか、また臨時的内職者、それからまた事業主と委託関係にある外交員やまた外務員、そしてまた在日外国人、国外就労者とか、また季節的労働者、そのほか公務員、そしてまた法人の代表者、役員、各種団体の役員、六十五歳以上の人たちなどいろいろありますけれども、特に失業率のリスクが大きい雇用体系にある人がカバーされていないことがいろいろ課題になっていると思うんです。
 雇用保険の財政面における収支の両面から適用除外について見直しが必要ではないかと思うんですけれども、関根参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
#47
○参考人(関根秀一郎君) 今お話しいただいた全般について私は実態をつかんでいるわけではありませんので、その一部についてしかお答えできないと思いますが、確かに派遣労働者あるいは期間契約を結んでいる労働者というのが非常に失業しやすいという状態にあるということ。にもかかわらず、現在そういった労働者が広がっていく傾向にあるということは非常にゆゆしき事態であるなというふうに思っているんです。質問に対するお答えになっているかどうかわかりませんが、現状においてそういった不安定雇用労働者が広がっていくということが、結果として非常に失業を生み出しやすい雇用市場になっているのではないかというふうに私は考えております。
 そんな中で、こういった派遣労働者あるいはそういった期間契約労働者が適用対象にきちんと入らないということによって、雇用は不安定であるにもかかわらず実質的には、そういった労働者が失業したときにセーフティーネットといいますか、きちんと保護されるという形がとられないというのは非常に問題があるというふうに思っておりますので、私は、適用対象につきましてはむしろ今後広くしていくべきであるというふうに考えております。ただ、同時に、適用を広くしていくのであるならば、きちんと給付が受けられる体制を整えなければならないというふうに思っております。
#48
○但馬久美君 時間が参りましたので、四人の先生方、大変ありがとうございました。
#49
○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 限られた時間ですべての皆さんにお伺いしたいのですが、時間切れになる場合は御容赦ください。
 まず最初に、大須参考人にお尋ねをしたいと思いますが、「給付の重点化と給付の削減」という項目をお話しいただいたわけなんですが、お示しいただいた表の労働力特別調査がございますが、このほかにも、総務庁の調査では、完全失業状態が六カ月以上、一年以上という方たちが急激にふえているという数字があります。こういう深刻な現状に加えて、今回の政府案では、全体の七割の人が初めから給付期間を減らされるというふうに説明を受けております。
 労働省は、特別に配慮を要するという、倒産、解雇等で職を失った人を重点化、先ほども出ていましたが、特に手厚くというふうに説明をされていますけれども、先日のこの委員会での質疑の中でも、実際にはこういう倒産、解雇の人たちというのを三割ぐらい見込んでいる。では、その三割の人が全部期間が長くなるのか、手厚くなるのかというとそうではない、実際には短くなる人があるということでありまして、重点化あるいは本当に困っている方を救うんだと言いながら、実は多くの方の給付が削減されている。
 しかも、今までの保険制度の中では、失業理由によってこういうふうに給付の中身が変わるというのは初めてのことで、先ほども大須参考人の方からその疑問をおっしゃったようでありますけれども、失業給付を受けられないまま生活しなければならない失業者の数がもしこの法案が通れば大幅にふえるというふうに予測されるんですけれども、そうした失業者対策として、今どういうことが大須参考人は必要であるのか、先ほど、公的就労事業や生活保護制度の問題を大沢参考人の方からも言われたわけなんですけれども、まず、大須参考人に、雇用失業政策の問題としてお伺いしたいと思います。
#50
○参考人(大須真治君) 御質問ありがとうございます。
 今言われたのは、僕はBの資料で、これはわかりやすくするというだけでつくったんですが、短時間労働被保険者以外の被保険者ということで、これはプラスマイナス全部ただやっただけなんで、大した資料ではないんですが、これで見ていただいてもわかりますように、「倒産・解雇による離職者の一人当たり給付日数の増減」というところで見ましても、倒産、解雇ならば全部が厚くなるかというとそうではなくて、ちゃんと削減されるところは削減されているということであります。それから、一般離職者についてはすべて削減、こういうふうになっていまして、そして、一般離職者が七割、倒産、解雇が三割、こういうような感じになるということですから、全体として給付総額の削減ということになるんだと思うんです。
 それで、失業の問題というのを考えた場合に、失業保険というのはやっぱり失業に対する対策の一部であってすべてではないというふうに私は思います。それで、現在、雇用保険が問題になるのは、失業保険を雇用保険に変えたときに、このときには議論としては、やはり雇用の確保ということを優先すべきであるということで、雇用の促進というか、そういうことで失業保険法を雇用保険法に変えたと、こういうことです。
 ですから、この雇用確保という問題が、これは一九七四年に変えているわけですから、うまくいってきたとしたら現在のような雇用保険財政の破綻というような問題は本来は起こらなかったはずなんです。それで、今も雇用確保が大事なんだと。雇用確保自体は大事だと思います。だけれども、二十年以上も前に同じようなことを言ってこういう状態になっているということなんですから、やはりそのときに言った雇用確保という問題についてそれなりの疑問を持ってもう一度考え直してみるということがどうしても必要なんじゃないかというふうに思います。
 それで、失業対策としてたまたま私ちょっと関係があって勉強したのがありますが、この六枚目と七枚目の資料で、労働省の職業安定局が出した「失業対策事業通史」というのがありまして、これは一九九八年の三月に出たと思います。というのは、このときに緊急失業対策法を廃止したからでありまして、失業対策事業が根本からなくなった、このときでありますが、ここに失業対策が一応「例えば、」ということで、第三段落です、失業対策の体系的なことを言っているわけであります。わかりやすくするために七枚目に私が勝手に整理してつくってみた、こういうことであります。
 そうすると、大きな考え方でいきますと、少なくとも失業対策ということで考えると、摩擦的な失業に対応する失業対策の問題と、構造的、長期的な失業というものに対する失業対策というのは制度としてやはり違うんだ、こういうことだと思うんです。ですから、少なくとも現在これだけ雇用失業が厳しいという状況については皆さん意見は一致しているわけであります。しかも長期にわたっている、こういうことでありましたら、やはり失業対策をもっと立体的に考える必要があるんじゃないか。だから、そういう意味でいきますと、一応私の整理でいきますとBのところであります、全産業的に大量に長期的に存在する失業対策については、これは失業対策事業で対応するしかないんだというふうに労働省のあれは言っているわけであります。
 ところが、現在は全く法律上失業対策事業は、緊急失対法が廃止されていますからありません。ですから、こういうふうに失業対策に対応する体系そのものを今崩してきている、崩してきているからこそこういう問題が雇用保険に集中してきているんだと。ですから、やはりもう一度こういう形で失業対策というものを立体的に組み直してみるという、そういう時期に今来ているんじゃないか。少なくとも雇用保険法をつくったときに出した考え方ではとても対応できないというのが今の状況なんではないかというふうに思っているということであります。
#51
○八田ひろ子君 ありがとうございました。
 先ほどもお話が出たんですが、生活保障、セーフティーネットというんですか、そういうので生活保護との関係で大沢参考人の方からも出ましたが、先ほど英国の例で、ネットではあるんだけれども、トランポリンのようにまたもとに戻るのがというふうな言葉の御紹介があったんですが、日本でいいますと、私はこの失業保険そのものも雇用保険の中の失業給付もそういったトランポリンであるべきだというふうに思いますけれども、そういう失業給付だとかと生活保護の関係を大沢参考人とそれから大須参考人にもう一度詳しくお示しいただきたいと思うので、お願いいたします。
#52
○参考人(大沢真理君) 現状では生活保護制度がほとんど失業者に対する所得保障の役割を果たしておりませんので、やや飛躍した感じを与えるかもしれませんけれども、私は、社会保険で対応することと公的扶助で対応することというのは切り分けた方がよろしいというふうに思っておりまして、それは社会保険のよさ、もちろん弱点も多々ございますけれども、よさの最たるものというのは、あらかじめ定められた保険事故が起こった場合には自動的に給付が行われるというところにあると思います。
 失業保険の場合には、就業したいという意思があり、職業を探しており、なおかつ見つからない、そういういわゆる三条件というのがあったときには失業であって、それは保険事故だからその他の事情は問わずに給付が自動的に行われる、その他の事情の中には例えばどのような理由で離職をしたかというのも含まれますし、あるいは資産があるか、ほかに収入があるかといったことがその他の事情などでございまして、そういうことを問わずにあらかじめ定められた額を給付するという、このよさはあるわけでございまして、そういう意味では、保険は保険として保険原理を踏み越えないで運用されることが正しいというふうに思っているわけでございます。
 その上で、いわゆる保険数理的に可能な期間の給付というのは行うべきだというふうに思っておりまして、今雇用保険財政が危機的な状況になっていることの理由は、保険数理的に失業率がそれだけ高まったからというよりは、ここ数年間、過去数年間の中で保険料率や国庫負担率が人為的にいじられてきたことに基づくものが多いわけですから、制度を再設計する場合にはやはり保険数理的に妥当な給付額と給付期間というものを設定して、その以外の事情は問わないというのが保険としてあるべき方法。
 他方、公的扶助、これは要は事前に拠出があるかないかを問わない、したがって所得が一定以下であればこれは給付の対象になる。だから、所得が一定以下であるかどうかということとそれから資産の状況は一定勘案しますけれども、主としては所得が一定以下であるかどうかということを調べた上でこれは無制限に、つまり無期限に給付をされるというのが公的扶助のあり方かと思います。その場合にはしたがって所得や資産についての調査を受けるという条件がございまして、これはどのような国であっても所得調査なしに公的扶助をしている国はございませんから、そういうものであろうかと思います。
 よさは無制限に給付をされるということなんですけれども、事柄が労働能力のある生産年齢の人間に対する公的扶助でありますから、やはりエンプロイアビリティーを回復するということとセットでないと弾性のあるセーフティーネットにはならないわけでして、そういう意味で、職業訓練施策のようなものと有機的に組み合わせた上できちんとした公的扶助が行われるということが連結のあり方として正しいというふうに考えます。
 しかし、所得の保障だけで失業問題が解決するわけではもとよりありませんので、さらに積極的な雇用政策というのと組み合わされる、こういうことがあって初めて雇用不安の解消というのができていくのであろうと考える次第です。
#53
○参考人(大須真治君) 生活保護制度と雇用保険との関係の問題でありますが、雇用保険は保険制度に基づいていますから、どう頑張っても一定の限界というか、給付の長さという点では限界があるのは当然だと思うんです。ですから、その場合、しかし給付の限界に来たからといって、では必ずしも失業状況からいって仕事が見つかるとは決まらない、こういうことですから、そういう場合にはやはり労働者の生活という観点からして所得をそれなりに保障していくということで、生活保護制度につなげていくということは必要なんじゃないかなと、こういうふうには思っております。
 ただ、現行の生活保護制度というのはかなり差別的に運用されているという現実があるということと、失業というのは生活保護の受給資格にならない、こういうふうになっていますので、その辺の具体的な生活保護制度の運用の仕方と、それから社会的な認識、そういうものを十分に変革させていくというか変えていくということの中で可能なんではないかと思います。
 やっぱり生活保護ということになると労働能力が逆に失われてしまうというケースがないわけではありません。むしろ生活保護の中でやはり改めて労働力として有効に働きに出られるというような形での運用ができるように、差別的なものをなくしてやっていくということが必要なんじゃないかというふうに思います。
#54
○八田ひろ子君 ありがとうございます。
 失業保険制度のあり方というか、今財政のお話も出ましたが、保険財政を安定させるためには、失業者の生活安定という本来の目的が軽視される、セーフティーネットの網を本当に粗くする法が始まって以来の私は変更だというふうに非常に心配をするわけなんですが、先ほど出ました雇用三事業のあり方で、大須参考人はどういう見直しをお考えなのか、また保険料の事業主負担のあり方なども、御意見がありましたらお示しください。
#55
○参考人(大須真治君) 雇用三事業については、先ほど大沢さんとの議論もあったようでありますけれども、もともとこの雇用三事業は雇用保険になるときに入ったものであります。現在も雇用三事業は財政的には一応事業主負担だけで行われているということで、失業給付とは別の財政で行われている。これはもともと雇用保険ができるときにそういう国会決議があったわけで、それを多分遵守されていることだろうと思います。私はやはり遵守していただきたい、こういうふうに思います。
 問題は、何でそのときに別にしろというふうに言ったのかということなんですが、恐らくこれは、雇用保険の中に雇用三事業を入れることによって、雇用三事業とそれから失業者給付の財政の流し合いというか、そういうことが行われるということがかなり懸念されたからではないかと思います。その点で、現在の運用自体はそういう決議を守っているという点ではいいんですが、しかし、それだったらば、雇用保険の中になぜこの失業者給付と雇用三事業が並んで存在しているのか。何の必然性もないのではないか。ですから、少なくともこの点でいくならば、雇用三事業というのは目的も違うし財源も違うわけですから、切り離しても問題は全くないんじゃないか。そういう意味で、雇用三事業のあり方については、もう一度改めて、本来的には私はやはり国の予算でやるべき事業ではないか、こういうふうに思っています。
 ただ、事業主負担というものもあっても当然だとは思いますが、その辺のところで、少なくともこの雇用三事業について、しかも中身について、これも大沢さんが言われましたからあれですけれども、全くすべて悪いというふうにも思っていません。それなりに使える事業もありますが、余りにも細分化され過ぎている、こういうようなことがありますので、この点はもう少し利用しやすい形にするということと、雇用保険の制度の中に雇用三事業を入れておく必然性は全く私としては理解に苦しむ、こういうふうに思っております。
#56
○八田ひろ子君 財政の問題として、保険料の事業主負担のあり方の面ではどうでしょうか。今の雇用保険のあれですね、財政的な。
#57
○参考人(大須真治君) 失業給付について。
#58
○八田ひろ子君 そうです、失業給付の方で、今の法律で問題になっている国庫負担を戻す問題とか、あるいは、今非常に、最初に大沢参考人も言われましたが、働き盛りの人のリストラによって自殺も多くなっている。ますますリストラがしやすくなるようにほかの法律でも支援するというのに反して、労働者を守る法律、ルールが全くないという中で、リストラがどんどん進んでいるわけです。失業率も高くなっている。
 そういう失業者をたくさん出す企業について、私どもとしては保険料を、リストラによって収益を上げた企業というのは失業者をたくさん生み出すものですから、当然そういった責任を果たすべきだという考えもあるんですが、そういう面ではいかがでしょうか。
#59
○参考人(大須真治君) まず一つは失業給付に関してですけれども、失業給付については、一応今回は原則の国庫負担四分の一に戻す、こういうことになっているようであります。もっと早くした方がいいんじゃなかったかというのはありますけれども。ただ、国庫負担四分の一というのが必ずしも永遠不変の原則というふうにする必要はないんではないか。少なくとも失業保険のときには三分の一、こういうふうにしていたわけでありますから、国の方としてこの失業対策というか、そういうものに相当力を入れなきゃいけない、こういうふうなことを判断されるのだとすれば、何も四分の一にこだわらないで、三分の一というようなことがあってもいいのではないか、こういうふうに思います。
 それから、労使折半原則になっているわけですが、私は理論的には必ずしも労使折半原則というのは成り立たないんじゃないか、こういうふうに思っています。
 というのは、賃金というのが、労働者における賃金ということと事業主における賃金というのは位置づけがかなり違うんじゃないか。労働者にとって賃金というのは生活費のほとんどすべて、事業主にとっての賃金というのは事業資金のうちの一定部分、こういうふうになっていますので、必ずしも労使が折半という原則はないように思いますが、ただ、なかなか現行では難しいかなというか、ほかのいろいろな制度との関係でいくとそうもいかないのかなというふうに、ちょっとここは迷っているところなんですが。
 それからあと、雇用保険について、失業給付は、当然失業者を出した企業はそれなりに雇用保険の財源を食っていく、こういうことでありまして、それなりに利用しているというか、そういうことになるわけですから、当然利用する分については、特別に多いところについては応分の負担はしてもらってもいいんではないか、こういうふうに思います。
 ただ、現状で見ると、なかなか現在の雇用体系では、最後に失業を出す企業が必ずしも最終的な責任がない場合が多いというか、しばしば大きな企業から圧迫を受けてどうしても人を雇わなきゃいけないというようなことがあって、それが玉突き的に失業者を出す、こういうふうなこともかなりあるわけですから、その辺の点も含めて、そういう大きな企業と小さな企業との関係というか、その点を十分考慮した上で、実質的に雇用保険に対して負担をかけるような失業者を出す場合にはそれなりの負担をしていただくということになれば、これは雇用保険の収入面でもプラスになるということと、失業者に対して一定の抑制機能を果たすということで支出面のプラスにもなるんではないか、こういうふうに考えています。
#60
○八田ひろ子君 ありがとうございました。
#61
○大脇雅子君 参考人の方には、大変貴重な意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 まず、関根参考人にお尋ねをいたしたいんですが、今度雇用保険法ではパートタイム労働者や派遣労働者が雇用保険に加入できるための収入制限の上限の制約が取り払われるというようなことがあります。かつてフルタイムパートという言葉が生まれたと同様に、今回は長期臨時という形で有期雇用とか派遣労働者に対する雇用の実態が象徴的に語られるわけですが、今回は派遣労働者を中心にして雇用保険法の適用についてさまざまな問題点をお話しいただいたんですが、派遣労働者の実態ということについてもう少しまとめてお話しいただけるでしょうか。
#62
○参考人(関根秀一郎君) パート労働者あるいは派遣労働者や期間契約労働者の問題を話しているときに、大きな誤解があるんじゃないかなというふうに思うときがしばしばあるんですが、といいますのは、その労働者がみずからそういう働き方を選んでいるんじゃないかという見方があるという傾向があるんじゃないかと思います。
 しかし、現実には必ずしもその労働者が望んでそうした働き方をしているんではなくて、できることならば期間の定めのない雇用契約で安心して働きたいと思っているんだけれども、実際にそうした採用枠がない、雇用がないことから、期間契約で働いたりあるいは派遣労働という働き方をしているケースが少なくないという実態をまず述べたいと思います。
 私が提出しました資料で十三ページに「労働者調査の結果からみた非正規従業員の実態」というのがございますけれども、まず派遣労働者を中心に見ていきますが、性別で見ていくと、派遣労働者の八五・九%が女性ということになっています。また、私ども派遣労働ネットワークで調査をした段階では、登録型派遣労働者の九三%は女性という結果が出ております。
 これは、なぜ派遣労働という現場において女性が圧倒的に多いのかということを考えてみますと、やはり雇用市場の中で圧倒的に女性の方が就職しにくい、非常に弱い立場であるということから、正規採用の枠から押し出されるように派遣労働という働き方を選択させられているという実態があるというふうに思います。
 実際に派遣労働で働いている人たちの具体的な働き方を見てみますと、実際長く働きたいという希望を持っている人が多いですから、派遣会社大体数社に登録をしてできるだけ長期の仕事を紹介してほしいというふうに派遣会社に依頼をしているわけです。それに対して派遣会社としても、できるだけ長い仕事をとってきてスタッフに紹介をするという形で働いています。それで、長期のお仕事ですよというふうに紹介するわけなんですけれども、現実にはいざ働き始めてみると、一カ月とか二カ月とか非常に短い期間の契約期間を定められてしまう、そういった契約書が後から送られてくるというのが実態です。
 実際のところ、契約書というのは本来、働き始める前、あるいは、契約満了期間が来るのであるならばその更新前に就業条件明示書あるいは契約書といったものが発行されるべきなんですが、現実にはその契約満了時期が過ぎたころになって初めて契約書が送られてくるというのがほとんどです。そして、そのほとんどの場合、二年、三年程度を目安に働いている派遣労働者が非常に多いんですが、その契約期間自体は二、三カ月程度でして、その契約を更新するかどうかについては一週間前程度に知らされるというふうなことが非常に多いのが実態です。
#63
○大脇雅子君 それでは、東京ユニオンではさまざまな相談事業をしておられるわけですが、雇用保険の受給等に関してどんなトラブルが相談事例として寄せられているのか、具体的にお話しいただけますか。
#64
○参考人(関根秀一郎君) まず、先ほど言ったような、契約期間を何度も更新したりして働いている、あるいは更新はしていないまでも更新を予定していたような働き方をしていたにもかかわらず、直前になって契約期間を今回で更新しませんよというふうに言われるケースがあります。
 そうしたケースにおいて、非常にトラブルが多いのは、派遣会社が離職票を発行するときに自己都合で発行してしまうということなんですね。先ほど言ったような派遣契約終了証明書、これに基づいて離職票を発行すると、どうしても選択項目が労働者都合というふうにしか選択できないということで、自己都合にされてしまうというケースが非常に多くあるようです。
 それから、例えば契約が終了したときに、派遣会社として新たな仕事を紹介したのに、あなたが受けなかったから自己都合になるんですよというケースがございます。そうしたケースでよく話を聞いてみますと、とてもじゃないけれども受けられるような仕事じゃなかったというケースが非常に多いです。形式的に仕事を紹介したということをもって、それに応じなかったから自己都合になるんだということのようです。
 そして、そういったケースをよく見てみますと、今までの働いていた仕事よりも時給は大幅にダウンしてしまう、そして通勤距離もとても通えないような場所で、また職務についても自分が今までやったこともないような仕事を紹介される。それでも応じないと自己都合になってしまうというトラブルがあるようです。
 また、今まで給付制限の問題について、自己都合であっても給付制限を受けないというケースがあるんですけれども、例えば会社から故意に排斥されて退職した場合については、離職票に自己都合と書いてあったとしても給付制限を受けないというのが本来取り扱いとして定められているわけですけれども、同じように二人の労働者が同じ会社から排斥されて退職したにもかかわらず、ある職業安定所ではきちんとその話をして給付制限を受けないで受給できた。ところが、もう一人の方は住まいがちょっと違うところだったものですから、別の職安に行って同じように話をしたところ、いや、これは給付制限かかりますという取り扱いにされてしまったという例もありました。
 また、これも派遣ではなく正社員として働いていた方なんですが、ビルメンテナンスの会社などでは、非常に多く高齢者雇用助成金を受けているケースがあります。御承知のとおり、高齢者雇用助成金を受けている会社において解雇を出してしまいますと、高齢者雇用助成金の支給が打ち切られてしまうということがあります。そうしたことから、会社が故意に解雇を出さない、本来は全く解雇であるにもかかわらず、自己都合退職を無理やり強いるというケースが非常に多いようです。
 私のところに相談に来たケースでは、高齢者雇用助成金を受けている会社が、解雇を出したくないがためにその労働者に自宅待機を命じて、六カ月間も放置をして給料を払わない、そして本人がギブアップして自己都合の退職届を出してくるのを待っているというようなケースがありましたし、また、高齢者雇用助成金の打ち切りを恐れるがために、本来は普通の解雇であるにもかかわらず、労働者の責任がある解雇であるということで、懲戒解雇というような手段をとってくるというようなケースもありました。
#65
○大脇雅子君 ありがとうございました。
 現場でさまざまな事例が法の運用のひだを縫うようにして行われているわけですが、このところ規制緩和と雇用の流動化の中で多様な雇用形態がつくり出されてきているわけですが、そうした雇用形態にかかわらず、公正かつ平等なセーフティーネットのあり方というものについてどのようなことが必要なのかという点について、大沢参考人と関根参考人にお尋ねをしたいと思います。お願いいたします。
#66
○参考人(大沢真理君) セーフティーネットでございますけれども、事柄が雇用形態のいかんにかかわらずということですのでそちらの方に重点を置いて申しますが、先ほど若干発言しましたように、雇用形態のいかんにかかわらず差別をされないということが原則だと考えます。このことをポジティブな言い方に言い直しますと、やはり労働の価値に基づいて、同じ価値の労働であれば同じ賃金率を支払うという原則が必要なのだというふうに思っております。
 ところで、ILOの条約等を見ますと、第百号条約、同一賃金についての条約は、先進諸国を中心として同一価値労働同一賃金の原則を含んでおるというふうに解釈されていまして、日本政府もそのことについては反対はしていない。むしろそのことを含んで日本は百号条約を批准しているというふうに答えていると私理解しておりますけれども、しかしながらそれが国内で適用されていない。そのために、規模別の賃金格差、そして男女の賃金格差という大きな賃金格差がある。
 男女の賃金格差につきましては、女子差別撤廃条約の委員会などを通じても、どうしてこれがこんなに大きいのかと。御承知のように、フルタイム労働者の所定内賃金で見ましても、女性の賃金は男性の六二%しかない。それから、フルタイムパートというような人々を入れてみてきたときには半分になってしまうということで、先進諸国といわず、工業化した国を通じて最も大きい男女の賃金格差が日本ではあるわけですけれども、これについて一体どういうことなのかというふうに日本の政府が聞かれましたときに、従来の回答としては、いや、男女の格差だけでなく、男性同士の間でも日本は年功制があるがために同一価値労働同一賃金になっていないんです、若いうちは安い賃金だけれどもたくさん働いて、いわばその働きを積み立てていったのを中高年になってから働きよりも高い賃金をもらうことで取り崩しているのが日本の年功制ですというような説明を日本の政府はしてきたんだと思うんです。
 これも年功制というのはすべての雇用者の中の二割か三割ぐらいしか厳密には適用されていないわけですから、それがためにすべての賃金格差が許されるということではないとは思いますが、しかし百歩譲ってその辺を認めたとしても、現状では年功制というのは明らかに過去のものになっていて、個人別の、それからそのときの働き、職務に応じたスポット的な賃金というふうに大きく動いてきているところだと思いますので、今こそ同一価値労働同一賃金の原則というのを適用できない理由は何もなくなってしまった。年齢差別の問題もあわせて、このような均等待遇で雇用差別を禁止するような政策というのが今非常に現実的にとりやすく、合理性のあるものになってきているのではないかというふうに考えますので、これがまずセーフティーネットではないかというふうに考える次第です。
#67
○大脇雅子君 関根参考人、何かありましたら。
#68
○参考人(関根秀一郎君) 雇用の流動化というのが、よしあしは別として非常に広がっている中で、果たして流動化した労働者、これが不安定雇用というふうにならないで、きちんと安心して働けるようなシステムをどうやってつくっていくかというのが非常に重要だと思います。
 例えば先ほど話が出ておりました社会保険に関することなんですが、労働者の側に確かに、特に派遣労働者の場合、加入したくないという方がいらっしゃることは事実なんですが、その派遣労働者がきちんと社会保険に加入していけるようなシステムをどうやってつくっていくかということが非常に重要だと思います。雇用が打ち切られるたびに社会保険から国民健保に切りかえなきゃいけない、そういった保険の切りかえの煩雑さが派遣労働者に加入したくないという気持ちを起こさせているわけですから、間があいたとしても継続して社会保険に加入できるようなシステムにしていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。また、そもそも話で言えば、間があいていくということ自体が労働者の雇用を非常に不安定にしているわけですから、そういったところに対する措置も必要であろうと思います。
 また、事業主の側については、やはり社会保険料がコストとして非常に負担であるということで加入を拒んでいるケースが多いわけですから、事業主の側のそういった観点からすると、派遣料金とは別建てで社会保険料を派遣先に請求できるようなシステムというのを構築すべきなんじゃないかというふうに思います。
 また、そういった流動化している働き方の中では、複数の会社を転々とするというのは言葉が悪いですけれども、幾つかの会社を渡り歩いていくということは往々にしてあるわけです。そうした方が退職金をきちんと保障されるような積み立て制度のようなものが必要なんじゃないかなというふうに思います。
 また、先ほど大沢先生がおっしゃっていたように、雇用形態が違うということで非常に賃金の格差が広がっているというのも実態です。派遣労働者が派遣先で、そこの派遣先の正社員と同じ仕事あるいはもっと荷重のかかる仕事をしているにもかかわらず、その賃金の大きな格差について是正をさせるような法律が一切ないということについては非常に大きな問題であるなというふうに思っています。
 また、今派遣で働いている方たちの間では三十五歳定年説なんというのがささやかれています。三十五歳を過ぎると仕事の紹介がない。これは、派遣労働者を受け入れている企業が若い人をよこしてくれというようなことをオーダーしてくるというのが背景にあるからなんです。
 昨年改正された労働者派遣法の中でそういった派遣先が労働者を特定するようなことは禁止された。また、若年層を指定するということも明確に禁止されているわけなんですが、残念ながらそのような実態は全く変わっておらず、つい先日もその件に関するトラブルがあったんですが、ある派遣労働者が常用型の派遣で働いていて偶然、偶然といいますか、三月の末でその派遣先がこれで終わりですということで契約が終了になった。そして、四月からの仕事を派遣会社として本来保障しなければならないんだけれども、その派遣会社が出してきた仕事の探索リスト、派遣先、こういうところを今探していますという探索リストを、一覧を見てみましたところ、二十五歳ぐらいまでという仕事ばっかりなんですね。これが研究開発職の仕事であるにもかかわらず二十五歳程度の人を求むという仕事ばかりである。こういった点も是正されるべきだなと、きちんと規制されるべきだというふうに考えます。
#69
○大脇雅子君 ありがとうございました。
 それでは、成瀬参考人にお尋ねしたいんですが、今のところ雇用三事業に対して大変批判が、いろいろ御意見が出たわけですが、私が調査いたしましたところによりますと、例えば創業や異業種への進出を行う中小企業が労働者を雇い入れる際の助成金は、予算額四百十三億七千六百万円に対して執行率が一二・三三%、それから中高年の非自発的失業者を雇い入れた事業者に対する緊急雇用創出特別奨励金は、予算額六百億円に対してわずか執行率は〇・六三%、新規・成長分野雇用創出特別奨励金は、予算額九百億円に対して執行率は〇・七七%、労働者の出向や再就職のための人材移動特別助成金は、予算額四百一億一千百万円に対して執行率三・二%という状況なんですけれども、事業主の方から見て、どうしてこのように中高年者を雇用した雇用創出のための助成金が利用されていないのかということですね。その点についてお尋ねをしたいと思います。
 それから、大須参考人に対しては、失対事業が、やはり雇用三事業の一つの財政の流し合いがチェックされたとはいえ、現行においてこのような状況についてどのように失対事業のあり方として思われるのかお尋ねをいたして、私の最後の質問にしたいと思います。よろしくお願いします。
#70
○参考人(成瀬健生君) 予算を組んだ三事業のお金が必ずしもうまく使われていないということは間々ございまして、実は私ども拠出をしております経営者もどうしてそういうことになるのかということを当局に御質問したりするわけでございます。もちろんその時代、その時期時期の、今挙げていただいたようなものも多分こういうものは需要がたくさんある、そういう声を反映したものとして創設するというふうなことでやるわけでございますけれども、必ずしも一〇〇%当たらないというふうなこともございます。
 私どもは拠出側でございますから、できるだけ有効に使っていただきたいということでございまして、そういうことができるだけ少なく当たるようにということをお願いしつつ、協力もしつつ、意見も反映しつつということはやっておるわけでございますけれども、結果的にたまたまそういうこともある。しかし、これは使い残ればまた別に使えるわけでございますので、できるだけさらに改善をして使う。そういう点では、私どもは常に意見を申し述べて、もっと使い勝手のいいものにということは毎年毎年繰り返し繰り返し申し上げて、少しずつよくなっているんじゃないかなという感じもします。
 ただ、こうした激変の時期にはちょっとそうしたミスマッチみたいなことが起こることも、ある意味では拠出側としてもある程度忍ばなければならぬのかなという感じもしないではございません。
#71
○参考人(大須真治君) 雇用三事業については、何で雇用保険の中にあるのかという、これがわからない、こういうことです。
 ただ、疑わしいと言っちゃいけないんですが、状況証拠からすれば、恐らく失業保険から雇用保険に変わるときに事業主負担部分を一応失業のお金に使っている、負担しているということで雇用三事業を入れたんじゃないかなというふうに、これは邪推ですがしていると、こういうことであります。ですから、これはやっぱり制度上すっきりさせた方が失業対策としてはいいんじゃないかなと、こういうふうに僕は思っています。
 それから失業対策事業はこの雇用保険事業とは関係ないというか、本来失業対策事業は国の資金で行うということが原則になっていますから、これは一回廃止されておりますけれども、ただ、それに関連した事業は辛うじて残っている面もありますけれども、これについてはやはり全面的に国の資金でやっていただくということが必要でありまして、ちょっと雇用三事業の問題とは違うような気がするんですが、何かあれでしょうか、僕の……
#72
○大脇雅子君 いえ、いいんです。緊急失対法が雇用保険法が改正されるときになくなって、そのとき大変大きな反対もあったわけですが、こういう時代に私は改めて失対事業というものの新しいあり方というのを考えるべきだというふうに考えているものですから、先生のお考えをお尋ねしたということでございます。
 どうもありがとうございました。
#73
○委員長(吉岡吉典君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は長時間にわたり、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 両案に対する本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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