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2000/05/18 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 労働・社会政策委員会 第13号
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2000/05/18 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 労働・社会政策委員会 第13号

#1
第147回国会 労働・社会政策委員会 第13号
平成十二年五月十八日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十七日
    辞任         補欠選任
     中川 義雄君     清水嘉与子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉岡 吉典君
    理 事
                大島 慶久君
                大野つや子君
                小山 孝雄君
                川橋 幸子君
                長谷川 清君
    委 員
                上杉 光弘君
                斉藤 滋宣君
                常田 享詳君
                溝手 顕正君
                笹野 貞子君
                高嶋 良充君
                直嶋 正行君
                但馬 久美君
                浜四津敏子君
                八田ひろ子君
                大脇 雅子君
                高橋紀世子君
                魚住 汎英君
   委員以外の議員
       発議者      吉川 春子君
   国務大臣
       労働大臣     牧野 隆守君
   政務次官
       法務政務次官   山本 有二君
       労働政務次官   長勢 甚遠君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   政府参考人
       公正取引委員会
       事務総局経済取
       引局長      山田 昭雄君
       法務大臣官房審
       議官       小池 信行君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  房村 精一君
       法務省人権擁護
       局長       横山 匡輝君
       通商産業大臣官
       房審議官     梅村 美明君
       労働大臣官房政
       策調査部長    松崎  朗君
       労働省労政局長  澤田陽太郎君
       労働省労働基準
       局長       野寺 康幸君
       労働省職業安定
       局長       渡邊  信君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
○企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働
 者の保護に関する法律案(橋本敦君外一名発議
 )
○参考人の出席要求に関する件


    ─────────────
#2
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十七日、中川義雄君が委員を辞任され、その補欠として清水嘉与子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(吉岡吉典君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案の審査のため、本日の委員会に公正取引委員会事務総局経済取引局長山田昭雄君、法務大臣官房審議官小池信行君、法務大臣官房司法法制調査部長房村精一君、法務省人権擁護局長横山匡輝君、通商産業大臣官房審議官梅村美明君、労働大臣官房政策調査部長松崎朗君、労働省労政局長澤田陽太郎君、労働省労働基準局長野寺康幸君及び労働省職業安定局長渡邊信君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(吉岡吉典君) 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○斉藤滋宣君 おはようございます。自由民主党の斉藤滋宣でございます。
 通告に従いまして順次質問したいと思いますけれども、まず、法律案に入る前にお聞きしたいと思います。
 言うまでもなく、現下の雇用情勢は、三月の完全失業率が引き続き四・九%と過去最高水準にあります。雇用情勢は依然として大変厳しいものがあるわけであります。そういう中で、我が国経済は緩やかな改善が見られていると言われていますけれども、この景気回復を雇用の回復に結びつけていくことが今まさに喫緊の課題だと思っております。
 そのような中で、去る十六日、昨年六月の緊急雇用対策の七十万人を上回る規模を対象とする雇用就業機会の増大をさらにより確実なものにするために、総額約四千億の予算を活用しましてミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策を策定しまして、今後一年間に集中的な対策を実施することとされたことは私は非常に高く評価するものであります。
 しかし、大変残念なことに、これまで四回にわたる雇用対策が実施されてきましたけれども、雇用の下支え効果があったということは評価するわけでありますけれども、国民サイドに立てば、百万人、七十万人の雇用創出、そういう声が大きかっただけにその期待も大きかったと思いますから、やはり国民の皆様方からすると思ったほどではなかったのではないのかなという感じがあるのもまた事実ではないかと思います。
 恐らく、今回この対策をとられるに当たりまして、大臣におかれましても大変、種々の施策がなかなか成果が上がらないということもありましたから、胸を痛めておられたと思いますけれども、そういう中でこの対策をとることに対して、今度こそはというような意識も非常に強いのではないのかな、そのように思われます。
 そこで、今回の対策に対する大臣の決意と、今回の対策は今までの四度にわたる対策とこういうところが違う、だから国民の皆さん期待してくださいよというところもあるのではなかろうかと思いますので、ぜひとも大臣の決意と、国民の皆さんにアピールするところがあればその内容を含めてお知らせいただきたいと思います。
#7
○国務大臣(牧野隆守君) 雇用問題につきましては、当委員会におきまして、各先生から現実の雇用政策は十二分の効果を発揮しているかどうかという厳しい御意見も何回も、また常に実は御指摘をいただいておったところであります。
 御承知のとおり、雇用情勢は、産業構造の変化に伴いまして、また危惧される気持ちをお持ちの方々の個人の価値判断も非常に大きく影響いたしております。そういう点から、一つは産業界がより以上の人を雇用するという意思を持っているかどうか、また、そのことを現実に裏づけする設備投資等の動向がどうであるか、そして、御承知のとおり雇用形態がそれと関連いたしまして非常に大きく変化いたしておりまして、これらの点を十二分に考慮させていただきまして、本年度予算も通過させていただきましたし、また、基本的な雇用保険にかかわる法律につきましてもおおよその先生方の御了解をちょうだいいたしまして、最終的に具体的な雇用政策の発展について決断をさせていただいた次第でございます。
 明らかに雇用情勢は依然として厳しい情勢が続いていることは御承知のとおりであります。その中で、先ほど申しましたとおり、情報通信技術や介護関連の分野等においては最近ここ三カ月、昨年の十二月からでございますが、大幅な求人の増加が見られているところであります。これらの今後の成長が見込まれる新たな産業に必要な人材を早期に育成し、その着実な就職促進を図ることは極めて重要なところだろう、こう考えておりまして、こういう点を中心にいたしまして、これから一年間にわたりまして積極的にミスマッチの解消を重点とする緊急雇用対策を策定させていただいたところであります。
 その主たる要点は、一つはミスマッチの要因が、例えば情報通信技術関連を中心にいたしますと、非常に新規要求が多いわけですが、現実にこれらに対応して採用される人々というのは、職を求める方々の間で三割前後しか就職されていないという現状にあります。これは非常に大きい問題でございまして、そういう点で何としましても第一義的には能力開発につきまして全力を投球させていただきたい。
 この場合に、現在の政府並びに地方公共団体の能力開発に関する施設はまだ十分になっておりません。そういう観点から、民間の皆さんの、能力開発にかかわる事業に携わっている方々の御意見もちょうだいいたしまして、まず第一に基本的にはこの面に強化させていただきたい、こう考えたわけでございまして、一応少なくとも十四万人以上の方々にそういう機会がぜひ確保されるようにということで、これを基本的に第一と考えさせていただいた次第であります。
 第二は、具体的にじゃ会社でどうやって人を雇っていただけるか。こういう点で各先生方から厳しい御批判もいただいておったわけでありますが、いろんな制度が確立されておりますが、必ずしもそれがワークしていない、しかも新卒の学卒未就職者の方々が非常に多くなっているということで、抜本的に条件の変更を考えさせていただきました。
 最初は、中小労確法に基づく雇用創出でございますが、民間の中小企業の皆さんも非常に企業拡大について御熱意を持っておられまして、昨年、今日まで一年間で実は約九万人の方々が約二万人を超す中小企業の皆さんによって雇用されました。これについては二分の一、一年間に限っておりますが、賃金の助成制度を拡充いたしております。非常に中小企業の皆さんが積極的に参加しておられます。これに対する所要経費は一千億円をオーバーするわけでありますが、ぜひこの勢いをさらに促進させていただきたい、こういうことでこれから一年間に少なくとも十万人を対象とするこの制度を促進していきたい、こういうように考えた次第であります。これにつきましても膨大な予算が必要であります。
 それから次は、いわゆる各地域の実情において、地方自治体、県並びに市町村の皆さんにその地域で今の失業状況はどうなっているか、どういう仕事をやったら具体的に雇用が確保できるかと。
 これは私どもだけでできるわけではありません。地方自治体の皆さんの御努力に期待するということで、これも御承知のとおり二千億円の予算を配分させていただいたわけでありますが、これが現在まで約四百億円使用されております。これは来会計年度までを予定にいたしておりますが、残りの千六百億円もぜひことしじゅうに使っていただいて、具体的な雇用増加を図っていただきたい。こういうことで、大体今までのこの動き方を見ておりますと十五万人前後の方々の雇用が確保される、こういうように見通しておりまして、千六百億円も早急に使うことができるように各自治体に対して私の方から強い要請を行いたい、こう考えております。
 次に、これも非常に御批判が多かったわけでありますが、新規・成長分野に対する雇用の促進であります。
 九百億円の予算を計上しましたが、御承知のとおり十億以下の状況でございます。これも確かにやり方としては非自発的失業者を重点に考えておりまして、人様の雇用というのは一対一の企業対個人の関係でございまして、なかなか進捗していないというような状況でございます。したがいまして、年齢制限あるいは新規学卒者を加入対象人員として加えるというようなことで、これにつきましては約七万人の方々の雇用を私どもの労働省の全精力を投入して確保させていただきたい。
 そして、最後でございますが、いわゆる雇用不安、基本的に雇用不安というのがございまして、これが増勢されることは場合によっては社会不安に結びつくということも想定しなきゃならないわけでありまして、このような雇用不安をどうしてなくするかという点で、私どもとしましては、緊急雇用創出特別奨励金でありますが、地域ごとに五・二%とか五・四%という基準を決めまして、特に非自発的失業の方々を対象にということで考えておったわけですが、なかなか思うように進まないというのが現実の姿でございます。私どもとしては、一応のラインとして、セーフティーネットとして、もし五%以上になったときには緊急措置を講じなきゃならない、こういうことで条件を緩和いたしましてこの緊急雇用創出特別奨励金の運営に大きな弾力性を持たせまして、もし失業状態がそういうことであれば政府は全力を挙げてこれに対処するという姿勢を明白にする必要がある、こういうように判断いたしまして一応五%というラインを設定いたしまして、その場合には具体的にどうするかということを決めさせていただいたわけであります。
 これら総額を勘案いたしますと大体四千億円程度のお金が要るかなと、こういうことでございまして、これは雇用がふえればさらにこの関係の費用はふえてくるわけでありますが、一応それをめどとして緊急に雇用対策を推進させていただきたい。
 なお、これらの制度で不十分な場合には、来年度の新政策の中にさらに新たな項目を追加いたしまして、より積極的に雇用不安をなくす、こういう方向で努力したい、こういう考え方で当面の緊急雇用対策を決定させていただいた次第であります。
 どうか先生方の温かい御支援、また御叱正も賜りたい、この席をかりまして心からお願いをさせていただく次第であります。
 以上であります。
#8
○斉藤滋宣君 非常に御丁寧な御答弁、ありがとうございます。
 今、大臣も若干触れられましたけれども、私も質問のたびにお話しさせていただいておりますけれども、今回の対策もそうでありますが、今まで四度とられてきた雇用対策、その中身をいろいろ政策的に見てみますと、先日本会議でも御指摘がありましたけれども、必ずしも実績の上がっていない政策が多々あるのも事実だと思います。
 私は、そのときそのときでそういう政策は労働省としてベストなものとして取り入れてきたと思いますけれども、時には時代背景の変化とかそういうことによってなかなかうまく機能しないという場面もこれからもあろうかと思いますけれども、ぜひともそういう政策に対してきちっとした検証というものと評価というものをしっかりやっていただいて、そしてこれからとろうとする政策の中にそういった評価というものを生かしていく、どこが悪くてどこがよかったかということを生かしていくということをやはり労働省の中できちっとやっていくということが非常に重要な問題だと思いますので、ぜひともその検証と評価という問題を考えていただきたい。要望しておきたいと思います。
 そこで、今回の法律案に入るわけでありますけれども、今回の法律案では、企業組織変更に係る労働関係法制等研究会の報告を受けまして、それに沿った形での法律案の提案となっています。この中で一番、私が一番と言っていいのかどうかわかりませんけれども、大きな争点の一つと思いますのは、合併だとか営業譲渡のところが、今までの判例で十分である、だからいわゆる法的措置は不要なのだというところが一番大きな争点ではないのかなと私は思っています。
 そこで、順次お聞きしたいと思いますけれども、合併の場合、現下の法制において権利義務ですとか労働契約、労働協約というものはそれぞれどのように承継されていくのか、御説明いただきたいと思います。
#9
○政府参考人(澤田陽太郎君) 合併につきましては、商法等の規定によりまして解散会社のすべての権利義務は新設会社あるいは存続会社に包括的に承継されるということになっております。したがいまして、お尋ねの労働契約、労働協約につきましても、その内容を維持したまま包括的に承継されるということになっております。
#10
○斉藤滋宣君 その場合、合併の場合ですけれども、そうしますと労働者にはとりたてて不利益はない、そういう判断でよろしいでしょうか。
#11
○政府参考人(澤田陽太郎君) はい、そのとおりでございます。
#12
○斉藤滋宣君 それから、よく議論されることでありますけれども、民法六百二十五条との兼ね合いでいえば、今局長の説明でいいますと包括承継ですから、この場合は、六百二十五条の解釈は特定承継ということでありますから、この六百二十五条というものは適用されない、そういうことでよろしいですか。
#13
○政府参考人(澤田陽太郎君) 合併の場合には包括承継という法的構成でございますので、民法六百二十五条はそもそも適用にならないということでございます。
#14
○斉藤滋宣君 それでは、今と同じことですけれども、営業譲渡の場合はいかがでしょうか。
#15
○政府参考人(澤田陽太郎君) 営業譲渡につきましては、営業譲渡契約という債権契約の履行という形で行われます。営業を構成します個々の権利義務につきましては、個別的に権利の移転あるいは債務の引き受け等の手続を要するということになっておりますので、手続上は特定承継ということになります。
 したがいまして、労働契約につきましては、譲り受け会社と譲り渡し会社の間の譲渡契約だけではなくて、関係する個々の労働者の同意を必要とするということになっております。この点で民法六百二十五条が適用されるという点でございます。
 それから、協約につきましても、会社間の合意に加えて労働組合の同意を必要とするということは他の権利義務と同様でございます。
#16
○斉藤滋宣君 時間がないのではしょって質問させていただきますけれども、営業譲渡の場合、今局長の説明にあったとおり特定承継です。そうしますと、労働者を承継することは、もとの会社、譲渡会社と譲り受け会社との話し合いで決めることができる。そうなりますと、承継排除の不利益があるのでいわゆる承継される営業に主に従事する労働者については当然承継をしたらどうか、そういう議論もあるわけであります。
 そうしますと、今度は逆に承継強制の不利益というのが出てくると思うんです、当然承継した場合に。当然承継した場合には労働者に相当不利な場合も出てくるのではないのかなと思われますけれども、労働省のお考えはいかがでしょうか。
#17
○政府参考人(澤田陽太郎君) 先生お尋ねの、営業譲渡のケースでございますね。
#18
○斉藤滋宣君 はい。
#19
○政府参考人(澤田陽太郎君) その場合に、労働者に当然承継という法的枠組みで権利を与えた場合、例えば今回の会社分割の場合には、会社分割をするもとの会社、分割された会社双方について商法上の規定によって債務の履行が認められないようなものはそもそも分割させないという縛りがあるわけですが、営業譲渡の場合には営業譲渡をまさに譲り受ける会社の状況を労働者が総合的に判断して、自分は今の法制では行きたくないと判断すれば同意を拒否すればいいわけですが、当然承継になりますと総合判断して行きたくないと思っても行かされてしまう、こういう不利益が生ずると思います。
#20
○斉藤滋宣君 今お聞きしたのはそのとおりの話で、要するに承継強制の不利益が出てくるから、当然承継というのは、ある意味では雇用確保という面ではいいかもしれないけれども、移りたくないという人の場合は問題が出てくるわけですから、そこのところについて、これ以外にもまだ不利な場合というのが考えられるのかなということで今お聞きしたわけなんですけれども、いいです。
 それから次に移りたいと思いますけれども、現行法令や判例において、営業譲渡に際しては承継から排除される労働者の権利はどのように今現在守られているのか、だから今回はそういう法的な措置は要らないとお考えなのか。そこのところについて御説明いただきたいと思います。
#21
○政府参考人(澤田陽太郎君) 営業譲渡に際しましては、承継から除外されたといいますか、もともと譲渡契約の対象にならない方々については現在の使用者との関係は不変でございます。維持されますので、そういう意味で、現行法令上特段の措置がないということでございます。
 考えられる問題として、営業譲渡された営業が、当該労働者にとって残った場合にかなりの仕事を失ってしまう。その場合に、場合によっては配転をしなければならないというような事態が想定されます。そうした場合には、事業主は通常、労働者の希望等を聞いて配転措置を講ずるというようなことで、できるだけ残った人についての雇用維持努力を図るというのが現実に行われていると思います。
#22
○斉藤滋宣君 ちょっと時間がないので先に進みます。
 次は分割についてお伺いしたいんですけれども、今回の法律案では、分割承継の場合、いろんな問題が想定されるので部分的な包括承継という考え方に基づいている、そのように理解しているわけでありますけれども、いろいろな問題があったがゆえに部分的包括承継にしなければならなかった、その理由についてお伺いしたいと思います。
#23
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回の会社分割によりまして承継される営業に主として従事しているものにつきましては、今先生御指摘のように、部分的に包括承継ということで本人の同意を要しないという法律構成にいたしましたが、それは合併と同様に、現在主に従事している分野が分割で移るわけですから、合併と同様に雇用それから労働条件が維持されて移るということが一つ。それからもう一つは、承継後、新しい設立会社等でつく仕事につきましても、基本的にはそれまでの仕事が維持されるというふうに考えられて、実質的な不利益はないということで、今回、部分的包括承継という法律構成をとらせていただきました。
#24
○斉藤滋宣君 じゃ労働協約の場合は。今と同じ質問ですけれども。
#25
○政府参考人(澤田陽太郎君) 労働協約につきましては、基本的には分割会社の組合員である労働者が新設会社に移った場合には、分割会社で結んでいる労働協約が新設会社においても組合と同じ内容で協定されたものとみなすという規定にしております。なぜみなすにしたかと申しますと、承継されるということになりますと、分割会社における労働協約がなくなってしまいますので、そこの不都合を直す、みなすということに基本的にはいたしております。
#26
○斉藤滋宣君 この法律案では、承継営業に主として従事する労働者については本人の同意を要せずに当然承継とされることになっております。この場合、承継強制の不利益が考えられると思いますけれども、なぜこのようなことになっているのか。そしてまた、労働者の不利益というのはそんなに大したものではないというふうに労働省はお考えになられてこういうことにしたのか。そのところについてお伺いしたいと思います。
#27
○政府参考人(澤田陽太郎君) 先ほどお答えしたことと繰り返しになって恐縮でございますが、主として従事する方につきましては、ついている仕事が分割という形で移りますので、現在の雇用労働者としての地位、それからそこにおける労働条件が維持されるという点でございますし、仕事が変わらないということであれば実質的には不利益はほとんどないというふうに思っております。
 実質的な不利益がないという点について多少申し上げますと、通常、労働契約において当該労働者の仕事というのは極めてリジッドに限定されているというケースはほとんどございませんで、ある程度の弾力性を持った労働契約が事実上あるいは書面において結ばれておりますので、分割の場合にも事実上の不利益はないというふうに考えております。
#28
○斉藤滋宣君 そのとおりだと思うんですけれども、私は、我が国の雇用慣行の中でいわゆる終身雇用システムがとられてきたときに、いわゆる愛社精神というものが非常に企業側から求められたり、それからそういう愛社精神の涵養とか発露という問題が非常に何かいい従業員だという時代があったのも事実だと思うんです。また、今でもそういうふうに考えていられる方も結構多いのではないかと思うんです、私の考え方が古いかもしれませんけれども。ですから、分割会社に非常に思い入れのある労働者も決して私は少なくないのではないのか、分割されても、いや、私はもともとの分割会社の方にいたいんだ、この会社が好きなんだという人もいるのではないのかなと思うわけであります。
 ですから、主として従事する方の残りたいという意向を尊重した場合、何か企業にとって不利益なんということがあるんでしょうか。そこのところをお伺いしたいと思います。
#29
○政府参考人(澤田陽太郎君) 先生御指摘のように、自分はもとの会社に残りたい、愛社精神があるという方もあると思います。今回はそうした方々に同意は求めておりませんが、もし仮に同意を求めるということになりますと、設立会社の方から見れば、分割によって移ってきた営業について必要な人材が欠けてしまうというようなこともありまして、要員配置上の不都合というのがあるのではないかというふうに考えます。
 ただ、この点につきましては、商法改正案につきまして衆議院で附則五条が修正され、また私どもの承継法案につきましても新七条が修正、追加されたという点で、事前に労働者と協議するだとか労働者の理解や協力を得るとかいうことがございますので、事実上は使用者は当然承継される労働者につきましても十分相談をし話し合いをするということをしていただけるものと期待をしております。
#30
○斉藤滋宣君 局長のおっしゃることは私も十二分に理解しているつもりなんですけれども、今そこの話の中で私はちょっと一つ問題ではないのかなと思うのは、企業の立場から考えれば、企業の質を高めていく、そしてまたそのことによって日本の経済力を高めていくということは大変重要なことだと承知いたしております。また、その一方で、労働者の雇用を守ったり権利保護も考えていくということは大変重要なことでありますし、またその中で、労働者の意欲といいますか気持ちといいますか、そこを大切にしていくということも一方では大変大事な問題だと思います。
 片方では企業の発展、また片方では労働者の雇用、権利保護という問題、ここのところをうまく調和させるということが労働行政の中では非常に難しいことなのかもしれませんけれども、そこをクリアできなければ、今言ったように企業というものを考えれば、雇用者の気持ちを無視とは言いませんけれども、そこまで全員の気持ちを考えてしまったら企業は成り立たない。だけれども、その中でやはり労働者の権利保護だとか労働者の気持ちというものを考えていかなきゃいけないというのは当然あるわけですから、その二つを調和させていくということが非常に重要な私は問題だろうと思うわけでありますけれども、今回の法律案ではこの両者をどのように調和させていこうとされているのか、お考えをお伺いしたいと思います。
#31
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回の商法改正案及び労働契約承継法案は、先生御指摘のように、一方では企業の国際的な競争力を高め、企業の長期的な発展を促進する、それによって雇用の維持拡大にも大いに貢献があるという点を念頭に置きつつ、一方でその場合の労働者の適正な保護を図るという観点で一体のものとして提案させていただいております。
 私ども、今回の承継法案では、あえて商法の包括承継という法律構成に労働者保護の観点から特例という形で修正を加えておりまして、必要な保護はこれで図っているというふうに考えておりますが、なお労働大臣が承継法を施行する段階で使用者等に十分配慮していただきたい事項を指針という形で決めますので、そうした中でもさらに先生御指摘の点についてできるものがあればぜひ書き加えて、まさに両方の要請が調和するような運用を図っていきたいと、こう思っております。
#32
○斉藤滋宣君 そこで、今のお話に出ました指針のことなんですけれども、いわゆる主たる営業についている方と従たる営業についている方の立場が今回の法律はきちっと分けられているわけでありますけれども、ここで主と従という考え方が指針の中でこれから検討されるんだと思いますけれども、非常に線引きが難しいという感じがするんですね。
 ですから、主とされるか従とされるかによって非常に労働者の皆さん方の立場が大きく変わってくることも考えられますけれども、今検討中なのかもしれませんが、この主と従という考え方についてどのようにしてその指針の中にお考えを盛り込んでいこうとされているのか、そこのところを教えていただきたいと思います。
#33
○政府参考人(澤田陽太郎君) 主と従の基準につきましては、まずは省令で決めます。省令で決めたことにつきまして、実際の適用に当たって個々の事業主あるいは労働者側が迷わないように指針で裏打ちをしていくという構成になっておりますが、現在指針においてどういうことを規定するかは検討中でございまして、これまでの国会御審議等も踏まえてさらに検討し、さらに指針の作成に当たっては労使の御意見も踏まえて十分検討するというふうに考えておりますので、今後にゆだねるところがかなりあるわけですが、現段階で私ども考えておりますのは、主か従かを判断する場合に、当該労働者の現在の業務内容、それから当該労働者が現在所属している部署の業務規定上の範囲とか、こういうものをどう分析して評価していくか、そこについてかなり具体的なことを書かないといけないのかなと、一つ思っております。
 それから、例えばの例の話で恐縮ですが、研修のためにたまたま分割される部門に来ているというふうな方につきましては、これは主として従事しているという観点からしますと除外する余地もあるのではないかとか、それから私どもは省令におきまして、主従の判断を分割計画書等が作成される時点より一定期間前の御本人の就業状況を見るということを考えておりますが、その一定期間の中に例えば休職とかいう場合があった場合はそれは当然その間を抜くとか、いろいろなことがございます。
 ということで、なかなか明快な答弁を申し上げられないので恐縮ですが、これまでもいろいろ御指摘いただいた点を含めて適切な指針をつくるように努力をさせていただきたいと、かように思っております。
#34
○斉藤滋宣君 今具体的な話が出たので、ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、今、一定期間というものを考えて、いわゆる承継営業についている期間というものを勘案するということでしたから、ある意味では、例えば転勤してたまたまその承継営業部門に入ってきた、何カ月もたっていない人たちはその前の部門として考えるということだろうと思うんですね。そのことは理解できたんですが、例えば同じ会社の中で総務部におって承継営業部門の仕事をやっている、こういう人たちもいると思うんです。ですから、まだこれから検討するところですから具体に煮詰まっていないのかもしれませんけれども、今たまたまそういう具体の例をお話しいただきましたので、そういう場合はどのようにお考えになっているんでしょうか。
#35
○政府参考人(澤田陽太郎君) その点が大変難しいところでございまして、特に総務部門の方々が分割される営業に総務部門としてかかわっているという場合に、そのかかわり方が主か従かというのは一定期間における状況だけで判断できるかどうか非常に微妙な問題がございます。そういう場合には、御本人のこれまでの職歴とか、それから労働契約上のいわば職務範囲とか、そういうものを十分加味しないといけないなと思っておりますが、いずれにしろ、もう少し労使、関係者の意見も聞きながら詰めさせていただきたいと思います。
#36
○斉藤滋宣君 承継営業に主として従事する方は不服申し立てができないわけでありますから、やはりそこの指針の組み立てが非常に重要になってくると思いますので、慎重かつ労働者の立場もよく勘案した上で検討していただきたいことを要望しておきたいと思います。
 そして、これまでのいろんな議論の中で必ず出てくる中に、EUの既得権指令が出てまいります。企業の再編に際しまして、労働者の権利保護擁立法としての機能がある一方で、最近ややもすればその機能がなかなか成果を上げていないという話も聞いておりますけれども、わかる範囲で結構でございますけれども、このEU指令につきましてその現況を教えていただきたいと思います。
#37
○政府参考人(澤田陽太郎君) いわゆるEUの既得権指令につきましては、欧州各国で国内法制化されておりまして、労働者の権利を保護するために一定の役割を果たしておるということは事実でありますが、このEU指令に基づく国内法令を実際に運用する場合には欧州裁判所の判例というものが相当重きをなしておりますが、その欧州裁判所の判例自身がかなり揺れておりますといいますか、変化をしております。
 例えば、当初は、EU指令がそもそも適用される範囲、これは企業譲渡という言葉を使っておりますが、日本でいえば、合併であれ会社分割であれ営業譲渡であれ、全部含むようなあらゆる意味の企業の再編成という意味で企業譲渡と使っておりますが、この適用範囲について、裁判所は当初、企業譲渡について前後で内容の同一性があるかということを相当重視してこの適用範囲を確定してまいりましたが、大分同一性については緩やかに解する判例がその間幾つか出てきて緩くなったと。ところが、直近の状況になりますと、この同一性についてまた厳しい解釈を示した判決を出すというようなことで、そもそも適用について判例が揺れておるということで、労働者から見ると、あるいは消費者から見ると、自分はあるいは企業はEU指令の適用にこのケースはなるのかならないのかについてかなり不安が起きておるというようなことがありまして、欧州裁判所の判決自体につきましても各国でまた賛否を含めた議論が起きておる、こういう状況にあると聞いております。
#38
○斉藤滋宣君 どうもありがとうございました。
#39
○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。
 法案審議に入る前に、簡単に、十六日に発表されました雇用対策について労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
 今回、先ほどもるる御説明ございましたのでもう各論の方は結構でございますが、基本的に内容は私も拝見をさせていただきましたが、例えば新規・成長分野雇用創出特別奨励金とか緊急雇用創出特別奨励金といったこういうものの思い切った枠の拡大ということが中心だというふうに思います。そういう意味では、大臣がさっきお触れになったように内容的にはかなり思い切った対策だというふうにも言えるんですが、同時に、私が従来から指摘させていただきますように、いわゆる企業に対する助成金を中心とした対策の域を出ないという意味では必ずしもそうでもないというふうにも言えると思うんです。
 この点の議論は後ほどまた改めてさせていただくということにしまして、要は、今回の対策が今の雇用情勢を踏まえて労働省として、言ってみればまなじりを決してでも何とかこの雇用情勢を好転させるんだと、こういう強い決意のもとでお決めになって実行されようとしているのかどうか、私はかなりこの点が重要だと思いますので、まず大臣に、そういった強い決意を持ってこの対策を講じられたのかどうかということをお伺いしたいと思うんです。
#40
○国務大臣(牧野隆守君) 今回の決定につきましては、私自身といたしまして、労働省が現在施行している諸般の政策、これとの整合性というのは実は省内で非常に大きな問題になりました。しかし、それを断ち切ることが基本的に大切だと、こう考えておりまして、実は大変な督促をさせていただきまして、予算の通過、雇用保険法の御採択等を待って早急に、ずっと詰めてきておりましたが、決断させていただいた次第であります。
 特に、一番中心に考えておりましたのは技能訓練でございまして、これに、時間もかかりますが、現在ある政府、民間を含めての機能を十二分に活用できるかどうか、これが私自身の考えさせていただいた基本でございまして、そういう点で民間の専修学校だとか各種学校の関係者もおいでいただきまして、今どの程度の需要がありますか、それに皆さんは受けられる状況にありますかどうか、あるいはそれを促進するために皆さんとしてはどのような施策が必要と考えておられるか、これをまず第一にさせていただきました。
 そういう点で技能研修、特に新卒未就職者の方々も含めまして今全国的に早急に展開させていただきたい、そして、ミスマッチを基本的になくす方向に労働省の施策の面から、これは文部省その他にも強くお願いするところでありますが、労働省としては何をできるか、こういうことで策定させていただいた次第であります。全面的な協力の申し出がございまして、ぜひともこの点は基本的に実現させていただきたいと、こう考えております。
 あとの当面の雇用政策につきましては、先ほども御答弁いたしましたとおり、当然非自発的失業者を中心とするという今までの骨格は、労働省としましては雇用保険関係のお金の使い方としてこれは当然でありますが、どうもこれだけ高失業率ということになりますとそれではもう待ち切れない、こういうことで、必ずしも非自発的失業者に限定せずに、これを原則としておりますが、例えば研修を受けられた方については積極的にそういう紹介をさせていただく、また学卒の未就職者の方々についてもこの適用を受けて政策の対象にさせていただくという、範囲を基本的に拡大いたしましたので、少なくとも企業として雇用をしようという意欲のある方は必ず受けていただける。
 また、私どもとしては、企業の潜在的な雇用意欲というものを顕在化させるために最大の努力をさせていただきたい、このような見地から、今までどうしてもうんと言わなかった非自発的失業者以外の方々を対象にするということについて実は大きく踏み出させていただいた次第であります。
#41
○直嶋正行君 あと一点、これはもう後の時間の関係がございますので答弁は結構でございますので、指摘だけさせていただきたいと思うんです。
 今回の対策を見まして、雇用創出三十五万人という具体的な数字が挙がっております。今までの緊急雇用対策等の内容を見ますと、残念ながら実績がほとんど伴っていない、こういう情勢でございますので、そういうものから見ますと、三十五万人とこう言われてもにわかに信じがたい面もあるんですが、今大臣いろいろお触れになったようなことを含めて、これは必ず、三十五万人の雇用が創出できても今の失業者の約一割でございますので、ぜひこれは完全に実現をしていただきたい、このことを強くお願い申し上げたいというふうに思います。
 それで、本題の労働契約承継法の方の質疑に移らせていただきたいと思うんですが、きょうは、既に衆議院でかなりやりとりもされておりますので、その衆議院でのやりとりや、さまざまな与野党間の協議もなされていました。ですから、そういったものを一応踏まえた上で、幾つか重要と思われる点について御見解を伺いたいと、このように思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 最初に、いわゆる営業譲渡も含めた形での労働者の権利擁護、先ほども大分やりとりが出ておりましたが、これについてお伺いしたいと思うのでありますが、先日私が本会議で大臣に質問させていただきました。そのときに大臣の方からは、企業組織の再編にかかわる労働者保護に関する諸問題について検討の場を設け、立法上の措置を含め十分に検討してまいります、こういう御答弁をいただきました。
 それで、あのときにも申し上げましたが、企業組織再編にかかわるさまざまないわゆる法的な整備がこれだけなされるということは、当然企業がその対応をさまざまに変えていくということになりますから、従来の日本の雇用慣行を支えてきたバックグラウンドがそういう意味では大きく変化をしていく、こういうことになると思うわけであります。
 したがいまして、そこでさまざまな労働問題が発生する可能性があるということでございまして、この大臣の御答弁ございました検討の場を設けて十分検討する、こういうことなんですが、これは労働省としてもぜひ立法措置を行うということを念頭に置いてこの御検討を進めていただきたいというふうに思うわけでございますが、まず、この点について御見解をお伺いしたいと思います。
#42
○国務大臣(牧野隆守君) 今回の分割法の制定につきまして、各委員の先生方からは、合併または営業譲渡の場合はどうなるか、同じように保護立法をなすべきではないかというお考え方から、貴重な御意見をちょうだいしてまいりました。
 最高裁の判例に従うとか四条件だとか、こういうことで答弁申し上げましたけれども、実際に、特に大きい労働組合、人事関係がきちっとしている企業においては、その間においていろんな御議論がなされて両者とも満足できる結論が出る、こういうことに私どもは考えておりますが、しかし、多数の未組織労働者の場合には十二分にそれが保護されているかどうか、非常に雇用の流動化している状況においてどうなんだろうかという点で私自身としては非常に心配をいたしておるわけでございます。
 したがいまして、いろんな御審議の過程において各先生方からそういう御心配を非常にお述べになっておられますので、これらを含めて、じゃどういうことができるかな、あるいはどうすることがそういう力の弱い労働者の立場から、そういう方々の地位の保全と保護のために最善の努力をすることは、労働省としてはこれは当然の使命でございまして、そういう意味において学識者あるいは利害関係者の御意見を十二分にまずお伺いさせていただきたい、これが私どものスタンスでございます。その過程を通じて、具体的にどの点について立法措置を講ずるかどうかという点も含めまして貴重な大方の御意見をちょうだいすることができればと、こう考えております。
#43
○直嶋正行君 それで、私がぜひ必要だというふうに申し上げているのは、今まさに大臣がいろんな意見を伺うと、こういうふうにおっしゃったんですが、その意見を伺って検討する上で、立法措置を前提に、前提というのはちょっとあれかもしれませんが、立法措置を念頭に置きながらやはり御検討いただきたい、こういうことでございます。
 例えば、ことしの初めに発表されました労働省の研究会報告等も読ませていただきましたが、その中においても営業譲渡について、いわゆる承継を希望しても承継をされない労働者が発生し得る、そういう意味では不利益が生じるということは明確に認めておられるわけです。認めておられるんですが、法的な措置は必要ないと、現時点ではという条件つきながらそういうふうに言っておられる。だから、現実に不利益が出ることが明らかであるのにそこに手当てを打たないということについては私はやはり大きな問題がある、このように思うんですが、この点について改めてお伺いしたいと思うんです。
#44
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回、私どもが営業譲渡について立法措置を講じなかった点でありますが、今先生御指摘のように、不利益の生ずる余地があるという点については研究会でも触れていることは事実であります。そういう場合には、現実の裁判におきまして個々具体的なケースに即して、例えば承継されなかった労働者についてもそれがゆえなしとすれば裁判において承継させるというような判決が出ており、おおむね具体的な解決が図られているというふうに考えた上で、特定承継という法的性格とあわせて考え、立法措置を今回は講じなかったということで御理解いただきたいと思います。
#45
○直嶋正行君 それで、法的性格ということがやたら強調されているんですが、今お話しになったように、例えば現実の判例を見ますと、必ずしも特定承継だけを判断基準にしているわけではなくて、今局長おっしゃったようにまさにさまざまな状況を確認しながら、むしろどっちかというと、できるだけ理由をつけて労働者を保護しようと、こういう姿勢がかなりうかがえるんです。これは逆に言うと、現実の裁判でもそれだけ司法の方は苦労されているということなんですよ。
 それからもう一つは、判例でと、こういうふうにおっしゃるんだが、判例はやはり裁判に持ち込まないと結論が出ないわけであります。さっき申し上げたように、私たちのこの社会のバックグラウンドが変わってきているわけですよ。僕らも、企業がどんどん新しい時代に対応して組織を変えていく、適応していくということは否定していないんです。それは必要なことだと。必要なことだけれども、そのバックグラウンドの変化に伴って労働法制の方もやはりついていかなければこれはプラスにならない、こういうふうに申し上げているわけです。
 ですから、私が申し上げたいのは、現実の判例を見てもそういう傾向がある、なおかつそれは裁判だけで、今までとは違ってきて、判例に依存しているだけではなかなかそれは救済できないケースが数がふえる可能性がある。こういうことを考えると、やはり人間尊重というかそういう立場に立って立法ということを強く意識して議論を進めていくべきだと、こういうふうに思うんですけれども、ぜひこの点お願いしたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
#46
○国務大臣(牧野隆守君) 営業譲渡に関しましては、労働者を承継しようとする場合は、譲渡会社及び譲り受け会社間の合意を必要とするとともに、民法第六百二十五条により労働者本人の同意が必要であるとされていること、二番目、また裁判においても、このような基本ルールにのっとりつつ、事案の内容により具体的妥当な解決が図られていること、三番目に、労働条件につきましては民法の基本法理によりその変更に当たっては労働者の同意が必要とされていること等、労働者の権利は守られており、立法措置を講ずることは現時点では不要であると考え、労働契約承継法案においても特段の立法措置は講じなかったところでございます。
 しかしながら、今後、会社分割制度の導入により営業譲渡を初めとする企業組織再編のあり方の変化が想定されるところでありまして、営業譲渡等に伴う労働者の保護に関する諸問題について学識経験者等の検討の場を設けまして、立法上の措置を含めその対応のあり方について十二分に検討してまいりたい、このように考えております。
#47
○直嶋正行君 私、冒頭申し上げましたように、できるだけ衆議院でのやりとりも含めて前提にして議論させていただきたい、こういうふうに申し上げたんですが。
 要するに、今大臣おっしゃったように、検討するということはよく理解しています。しかし、その文言を注意深く読むと、検討、検討と二回出てくるんですよ。だから、先ほど申し上げましたように、背景が大きく変わってきている中で、これは司法判断もすごく今苦労して司法判断されているんですよ。ですから、そのことも含めて考えると、立法措置というのを先ほど言いましたように強く意識せざるを得ないんではないかと、こういうことで申し上げたわけでございまして、この点はぜひそういう考え方に立ってこれから議論を進めていただきたい、このことを強く要請しておきたいと思います。
 それでもう一つ、検討されるということで今もお話あったんですが、その中でちょっと二つばかり御見解を伺いたいと思うんです。
 一つは、今の立法化も含めてということでございますが、どれぐらい時間をかけておやりになるおつもりかということであります。これは、私どもの観点でいいますと、できればもう次の来年の通常国会ぐらいには法案も出していただきたい、これぐらいの感じで思っておりますが、いずれにしてもどのぐらいの時間、そういう整理なり検討が必要と思われておるかということが一つであります。
 それからもう一つは、さまざまな研究者も含めてそういう検討の場をおつくりになるということでございますが、これはぜひそういう中に労使のそれぞれが推薦をするそういう研究者を入れていただきたい。この間までの議論では労使の意見を聞くというふうなやりとりがあったようでございますが、ぜひ、意見を聞くということだけではなくて、そういう研究者の議論の場にやはり労使の推薦をする方を入れていただきたい、こういうことでございます。
 この二つについて御見解をお伺いしたいと思います。
#48
○国務大臣(牧野隆守君) まず、本法施行後、企業の分割等にかかわる状況も踏まえて早急に研究会を設置いたしまして、この研究会では労働法の専門家あるいは商法の専門家、企業組織論等の専門家、これらの方々を中心にしてまず研究会を早急に発足させたいなと。今、先生が御指摘の、労使から十二分の意見をいただくということはこれはもう当然のことでございまして、そういう御意見等も賜りながら速やかに結論をいただくように、またこの研究会の審議の過程におきましてもそういう結論を出すべき時期等につきましても御意見等を賜りながら労働省としては具体的に早急に進めていきたいと、こう考えています。
#49
○直嶋正行君 これも二点、改めて注文をつけさせていただきたいと思います。
 今、大臣、速やかにと、こういうふうにおっしゃった。ぜひそれは速やかにお願いしたいんですが、やはりさっきも言いましたように、これから分割法が施行されますと、もちろん企業を取り巻く状況を考えても、大変こういう企業組織の変更というのは重要な経営マターになってきますし、当然数もふえてくると思います。ですから、そういう研究会で議論をなされるときに、やはりそういった背景も踏まえて、ある程度具体的な日限も目標に置きながらぜひお進めいただきたい。
 それから、今の御答弁の中にございましたが、もちろん労使の意見を聞いていただきたい、このことは間違いございませんが、同時に、そういういわば労使の推薦をするということは、つまり具体的な労務なり経営の現場をよく御存じの研究者をそこに入れていただきたい、こういうことでございますので、ぜひその点の御配慮も賜りたい。
 改めてこのことをお願い申し上げたいと思うんですが、特に御見解あればお伺いしたいと思うんです。
#50
○国務大臣(牧野隆守君) 先ほど答弁させていただいたとおり、今おっしゃった先生の御意見、特に労使関係の意見をいただくということについては、十二分に反映されるように努力をさせていただきたいと思っています。
#51
○直嶋正行君 ぜひよろしく、私の申し上げたこと、お願いを申し上げたいと思います。
 それじゃ、時間の関係もございますので、次の方へ移っていきたいと思うんですが、次は、承継法における労働者への通知のタイミングでございます。
 商法の規定では、この分割計画書等を二週間前より備え置くと、こういうふうに規定されております。労働契約承継法の方では労働者への通知は二週間前までにと、こういうふうになっているわけでございますが、労働者への通知と備え置きというのはこれは同時期に行われることが私は望ましいと考えるんですけれども、さっき議論ございました、これから指針をおつくりになるということなんですが、例えばその指針に具体的に織り込んでいくとか、こういうことについてはぜひ御検討いただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
#52
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今、先生御指摘のように、分割会社から関係労働者への通知の時期につきましては、分割計画書等の本店に備え置くべき時期あるいは株主への株主総会招集通知とほぼ同時期に行われることを私どもは予定しております。
 そこで、現実に個々の企業における実際の取り扱いがどうなるかにつきましては、企業の規模とかいうことが反映されてそれぞれの事情によると思いますが、御指摘のように指針におきまして、今回の承継法におきまして通知をすることを努力義務化した趣旨を十分踏まえまして、分割計画書等を備え置くということが行われたとき速やかに労働者にも通知が行われることが望ましいというような趣旨を指針の中に書いていきたいと思っております。
#53
○直嶋正行君 それから、続きまして労働者あるいは労働組合と企業側との協議についてお伺いしたいと思います。
 山本政務次官、大変お忙しいところ、来ていただきましてありがとうございました。
 まず最初に、法務省の方に御見解をお伺いしたいと思うのでありますが、今回の商法改正案は衆議院の方で修正をされたわけでございますが、その中に「分割をする会社は、分割計画書又は分割契約書を本店に備え置くべき日までに、労働者と協議をする」、こういうことが規定されたわけでございます。
 その際に、これは衆議院の方のやりとりを見ますと、法務省の答弁の中で、私法上の原則として労働者から委任を受けた場合は労働組合等が協議できる、こういう御答弁をされております。このことは会社分割時において事業主は労働組合等と事前に協議を行う、労働組合がもちろんある場合ということでございますけれども、こういうふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
#54
○政務次官(山本有二君) 議員修正にかかわる問題でございますので余り差し出がましい意見を述べることはできないんですが、一般的な解釈論を申し上げますと、まず修正案附則第五条第一項は、会社に会社分割に伴う労働契約の承継に関して個々の労働者との協議を義務づけるということが原則になっております。
 そこで次に、労働組合との協議を義務づけたと読めるか、こういうことになりますと、これは直ちには読めない。そこで、会社が自発的に労働組合と協議を行うことはこの労働者との協議を義務づけたことからすると妨げられない、むしろ望ましいものだ、こういうようにこの修正案の解釈ではなろうと思います。
 次に、民法上、商法上のことを申し上げますと、この協議は労働者の代理人との間でもすることができまして、つまり労働者と協議するということはその代理人と協議するということも想定できるわけでありまして、その代理人資格につきましては、その要件が特に制限を設けておりません。すなわち、弁護士さんでなければならないとか社労士さんでなければならぬとかいうようなことはありませんので、いわば委任を受ければだれでもできる、こういうことです。
 したがって、会社は、個々の労働者から代理権を与えられた労働組合から協議の申し出があった場合にはこれに応ずべきものというように考えられるわけでございます。
 以上です。
#55
○直嶋正行君 これは法務省の領域ではないかもしれませんが、今の御答弁に関連してもう一つ、お答えいただければ御見解を伺いたいんです。
 今の、いわゆる代理権が労働組合に付与されるかどうかという点なんですが、例えば、通常の労働組合における機関決定を行って、組合員の総意としてこれについてはその代表である執行部にゆだねる、こういうことを行った場合、これは今次官がお答えになったような御趣旨になるのかどうかということなんですが、この点はいかがでございましょうか。
#56
○政務次官(山本有二君) すなわち、代理の委任の範囲の中にその決議の部分が包括されておれば、それは代理人との協議の中の協議事項として受け取ることができると思います。
#57
○直嶋正行君 続きまして、今の件について別の角度から労働省の方に確認させていただきたいのでありますが、今度の労働契約承継法で第七条が追加修正をされました。その七条に、労働者の理解と協力を得るということの内容が規定されまして、大臣の衆議院での確認答弁の中で、労働省令において労働者の過半数を組織する労働組合がある場合はその労働組合と、それから過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数代表者と協議を行う、こういう旨を規定するということで御答弁をされております。
 この答弁から推測すると、やはり会社分割に当たって事業主は労働組合等と事前協議を行う、こういうふうに理解させていただいてよろしいんでしょうか。
#58
○政府参考人(澤田陽太郎君) 衆議院で労働大臣から確認答弁を申し上げましたとおりでありまして、会社分割に当たり労働者の理解と協力を得る、その中身として、今先生が御指摘のように、過半数労働者を組織する労働組合があるときはその労働組合が使用者と事前に協議をするということが典型的な例としてあるということでございます。
#59
○直嶋正行君 ということは、これは事前協議という言葉の定義がなかなか難しいんですが、いずれにしても、事の前に労働組合と話し合うということは、もちろん労働組合がある場合は原則になる、こういうことになるのでしょうか、今のお答えでいえば。
#60
○政府参考人(澤田陽太郎君) 衆議院で修正いただいた第七条の書きぶりでございますが、会社分割に当たりと、こう書いてあります。
 この「当たり」というところが商法の修正のところとちょっと違う表現になっておりますので、この「当たり」のところを前後どれだけ見るかということにつきましては、それぞれの企業の会社分割のプロセス等々によって違ってくると思いますので、ここはそこにおける労使間の問題として適切に対処していくものと考えております。
#61
○直嶋正行君 次にお伺いしたいんですが、今の御答弁を受けて、要は、労働者あるいは労働組合と会社分割に当たり話し合う、これの実効を高めていくということを考えますと、今のお話しになったことをきちっと周知徹底していくといいますか、実質的には事に当たり事前に労働組合とあるいは従業員代表と話し合うんですよということをぜひ周知徹底していただきたいと思うのでありますが、例えばこういったことを指針に具体的に書き込むというようなことも私は必要だと思うんですが、この点についてはいかがでございましょうか。
#62
○政府参考人(澤田陽太郎君) 会社分割を円滑に進めていく観点からは、事前の労使の協議などによって労使が十分に意思疎通を図る、そして協力して取り組んでいくということが望ましいということはそのとおりであります。
 したがいまして、先ほど申し上げましたが、理解と協力を得るということの中身につきまして、労働省令で書くことを考えておりますが、ただいまの御指摘も念頭に置きまして、指針においてどういうようにそこを示せるか検討していきたいと思っております。
#63
○直嶋正行君 山本政務次官、ありがとうございました。結構でございます。
 続きまして、これはさっきも御議論ございましたが、包括承継をされる労働者の不同意、できないといいますか、不同意権がないということについてお伺いしたいと思うんです。
 先ほどの議論にもございましたが、個々の労働者というのはさまざまな事情を抱えていると思うんです。それで、今回の衆議院の議論でも、今もちょっとやりとりさせていただきましたが、労働者の理解と協力を得るという表現で、前もって話し合いをするということがうたわれておりますが、この会社分割において、つまり分割によって承継される営業に主として従事する労働者が会社を移籍する場合に、事前のそういう理解と協力を得る話し合いの中で、本人の意思を十分配慮した上で分割計画書に書き込む、こういうことがやはり望ましいと思いますし、そのことがぜひ実現できるように指導をすべきだ、このように私思うんですけれども、この点についてまずいかがでございましょうか。
#64
○政府参考人(澤田陽太郎君) 商法の修正で労働者と事前に協議するということになりましたが、先ほど山本総括政務次官の御答弁にありましたように、国会で修正された問題でございまして、私どもも今の御質問について労働省として判断する立場にないわけですが、私どもの理解としては、まさに当然に承継される労働者についても、この労働者との協議というものはかぶるというふうに思っております。その点について会社に指導するべきではないかというお話でありますが、商法の所管、法務省でございまして、私どもは商法の施行について施行権限がございませんので、御質問の点につきましては法務省と十分に相談して対処してまいりたい、こう考えております。
#65
○直嶋正行君 ぜひ実効の上がる形での御指導を、どちらが所管かということは別にしまして、お願いを申し上げたい、これは政府としてお願いを申し上げたいというふうに思います。
 それで、今のいわゆる当然承継といいますか、この部分についてもう一点ちょっと確認をさせていただきたいのでありますが、先ほどもちょっと触れました労働省の研究会報告を拝見いたしますと、いわゆる分割により承継される営業に主として従事する労働者には民法第六百二十五条一項の適用を認めない、つまり本人には不同意権がない、こういうことになるわけでございますが、そうした理由として三つ挙げておられます。一つはその労働者が従事していた職務と切り離されない、それから二つ目には、これは当然のことなんですが雇用及び労働条件が維持される、それから三点目として円滑・容易な会社分割が求められている、この三つを主な理由といいますか、大きな理由として挙げておられます。
 逆に言いますと、今申し上げた三つの中の一番と二番、つまり従事していた職務をそのまま続ける、切り離されないということと、雇用と労働条件が維持されるということになりますと、不同意権を申し立てる労働者というのは、私は逆に言えばごく限られた人になるだろうと思う。つまり、そういう意味でいうと、この三番目の理由として挙げておられる円滑・容易な会社分割は、この一と二が実現されれば、当然のこととしてそれはあえて言わなくても実現されるんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。
 さっきもちょっと触れましたように、そうはいっても現実には労働者の方にそれぞれに個別の事情がございます。例えば私が直接見聞したケースでいいましても、会社が工場を閉鎖する、そうするとどこか別のところへ配置転換して引っ越しをしなければいけない。しかし、実際には本人はそこで介護の必要な親を抱えている、だからどうしても引っ越しはできない、あるいは単身赴任で行くことも難しいとか、こういうさまざまなケースがあるわけでございまして、そうすると、さっきの事前に話し合うということも含めて考えますと、あえて本当はここでこの不同意権を認めないということは逆に必要なかったんじゃないか。ただ、この段階で法律を修正するという話は申し上げませんが、今申し上げたような個別のそれぞれの事情については、やはり運用の中できちっと配慮はされるように、先ほど申し上げた指針等含めて対応していただきたいものだ、このように思うわけでございますが、こういった点についてはいかがでございましょうか。
#66
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今、先生御指摘の研究会報告の三点の指摘はそのとおりでございます。一点、二点の条件が満たされれば、三点目の要請という観点からして同意しない人は少ないんじゃないかというお話ですが、そこはあくまで予測の話でございまして、多い少ないということは言えないと思います。
 それはそれとして、研究会報告ではそういう三点の理由を挙げておりますが、今回当然承継とした理由は、これはそもそも商法の三百七十四条の十、ここで「権利義務ヲ承継ス」、こうなっているわけです。承継法の方で書いております規定は、商法のこの規定を確認的に書いているということでございまして、そこの点は御理解をいただきたいと思う次第であります。
#67
○直嶋正行君 改めまして、個別事情に対する協議をぜひ推進していただくということでお願いを申し上げておきたいと思います。
 続きまして、省令あるいは指針の内容について質問をさせていただきたいと思うのであります。
 まず最初に、先ほどもちょっと議論がございましたが、会社分割において分割により承継される営業に主として従事する労働者、従として従事する労働者、これは範囲は先ほど御答弁で、省令あるいは指針で定める、こういうことにお答えになったわけでございますが、私は、実務的に見ました場合この部分が最も重要なポイントになる、このように思うわけでございます。
 したがいまして、さっきいろいろ御紹介がございましたが、最低限必要なことは、労使間で実際に運用するときに混乱が生じないように、やはり客観的に判断できる、そういうものを基準として規定すべきである、このように思うのでございます。具体的にさっきちょっと御紹介があったんですけれども、客観性を持たせるという意味で御見解をお伺いできればというふうに思います。
#68
○政府参考人(澤田陽太郎君) 先ほど斉藤委員の御質問にお答えした域を出ないわけでありますが、私どもも直嶋先生と全く同じ気持ちでございまして、運用に当たって労使間で混乱が起きては大変であるということで、関係労使の意見も十分聞いた上で、私どももあらゆる努力を払ってできるだけ明確化したいという所存でございますので、なお、この法律が成立した場合に施行されるまでの間、努力をさせていただきたいと思います。
#69
○直嶋正行君 それから次に、指針の問題でありますが、今もちょっと触れましたし、先ほど来指針でこういうことを折り込んでいただきたいということを申し上げていますように、指針が非常にこのケースでは重要な役割を果たすのではないか、このように受けとめております。
 したがいまして、今のいわゆる主として従としてと、こういうものの具体的な判断方法の問題はもちろんでございますが、例えばこの指針の中に、会社分割を理由として一方的な労働条件の不利益変更はできないこととか、あるいは具体的にこの法律あるいは措置を適切に実施するための留意事項を織り込んでおく必要がある。何が必要かということは、私ちょっと今思いつくものを少し申し上げますと、例えば分割に伴う退職金なんかの勤続通算の問題とか、あるいは法律上置かなければいけない従業員代表の組織とか委員会の継続性の問題とか、例えば承継に関して異議を申し立てたことによって労働者が不利益な取り扱いをされないこととか、そういったもろもろのことをできるだけ具体的に織り込んでいただきたい、このように思っておるのでございますが、この点については今どういった御検討をされておられるのでしょうか。
#70
○政府参考人(澤田陽太郎君) 御指摘のうち、会社分割を理由とした労働条件の一方的不利益変更はできないという点につきましては、これはもう明白なことでありますので、指針の中に明確に書くということは当然であり、やりたいと思います。
 それから、先生今例示されました退職金の勤続通算の問題とか、労使委員会、労働者代表の問題等につきましては、これは御指摘のような点は確かにあろうかと思いますが、ある意味で労使慣行にゆだねられている面が強うございます。そういうものについて、指針の検討に当たりましてどこまで書けるか、この辺も、繰り返しになりますが、指針の策定に当たりましては労使の意見を聞くということになっていますので、御指摘の点を念頭に置いて十分検討の範囲に含めていきたいと、こう思っております。
#71
○直嶋正行君 じゃ最後にもう一点、この指針について伺わせていただきたいと思うんですが、今、労使の意見も十分聞いてと、こういうことで御答弁をいただきましたので、当然お考えになっておられるのかなと思うんですが、ぜひ指針の検討においては、その場に労使の代表を入れるというような形で御検討を願えればありがたいと思うんですが、この点について、ちょっと性急な質問かもしれませんが、御見解があればぜひお伺いをしておきたいと思います。
#72
○政府参考人(澤田陽太郎君) 衆議院におきます附帯決議にも「労使を含む検討の場を設け、」というふうに決議されておりますので、政府としてはその辺を十分踏まえて対応したいと思っております。
#73
○直嶋正行君 私は終わります。
#74
○高嶋良充君 民主党・新緑風会の高嶋良充でございます。
 時間の割には欲張った質問をたくさん通告しておりますので、私の方も単刀直入に質問を申し上げますから、答弁の方も簡潔でしかも核心に触れる答弁をぜひお願いいたしたいというふうに思います。
 最初に、労働大臣にお伺いをいたします。
 私は分社化と分割化というのはどう違うのかなというふうに思って、この間も経済学者にもお聞きをしたんですが、このように言っておられました。日本では高度成長時代から分社化が盛んに行われてきているけれども、分社化というのは企業の多角化を目指すものであって成長と拡大ということがコンセプトになっていた、しかし今度の分割化というコンセプトは選択と集中だというふうに言っておられるんです。その意味は、今まで多角経営をしたものを、今度は逆に系列やグループから切り捨ててそれで再編成をするという、そういう手段として使われようとしているんではないかと。
 そういう意味では、調査室の資料に毎日新聞の社説も出ているんですけれども、まさにリストラ支援の総仕上げだというふうに毎日新聞の社説でも言っているんですけれども、そういう意味では、会社分割法によって合法的にリストラが促進をされるのではないかという指摘もあるんですけれども、労働大臣としてこのリストラ促進という部分とそのことが労働者に与える影響についてお伺いをしたいと思います。
#75
○国務大臣(牧野隆守君) 企業間の国際的な競争が激化した今日においては、企業がその組織の再編成により経営の効率性等を高めることによってその競争力を強化する必要があり、会社分割制度は企業組織の再編成を容易にするために導入しようとするものと承知いたしております。
 また、労働契約承継法案は、このような会社分割の際に労働者保護を図る観点から労働契約の承継等についてルールを定めたものであり、商法等改正案による会社分割制度と一体のものとして実施されるものであります。両法案が一体となって実施されることで、会社分割制度は労働者にとって必要な保護が図られた上で長期的には企業の競争力強化を通じて安定的な雇用の確保に資するものと認識しておりまして、人員整理という意味でのリストラの促進につながるとは考えておりません。
#76
○高嶋良充君 リストラの促進につながらない、こういうことと同時に、後で質問を申し上げますけれども、労働契約承継法によって労働者を保護する、こういうことを言われようとしたんだというように思います。
 そこで、お忙しい中、来ていただきました山本法務政務次官に、リストラという観点で数点質問を申し上げたいと思います。
 先ほども若干言いましたけれども、不採算部門の切り離しということが企業再編では営業譲渡なんかで特に行われるんですけれども、それがこの会社分割によって行われるということになれば合法的に整理解雇ができるんではないかと、そういう危惧をされている指摘もあるんですけれども、その点についてはどう認識されていますか。
#77
○政務次官(山本有二君) 先生御指摘の危惧についてでございますが、整理解雇につきましては、全体として裁判例の積み重ねによりまして要件が極めて明確にされております。もし、会社分割をしたということでこの要件が脱法されていく、あるいは骨抜きになっていくというようなことであれば、この分割法なんというのはそもそも立法してはならない法律であると、私はそう考えております。
 特に、会社分割手続におきましては、商法改正法案第三百七十四条ノ二第一項第三号等によりまして、各会社の負担すべき債務の履行の見込みあること及びその理由を記載した書面の事前開示が要求されております。したがいまして、利害関係者はすべからく、どのような分割になり、また分割された会社は果たして整理解雇目的かどうかということが事前におわかりいただける手段があるということでございます。
 したがいまして、分割により不採算部門を切り離す結果、債務の履行の見込みがなくなるような場合には、このような分割をすることができないというように計らっておるわけであります。
#78
○高嶋良充君 債務超過がある場合は分割できないと、こういうことですね。
 先ほど三百七十四条ですか、御説明いただきましたけれども、債務の履行の見込みの有無という部分ですね、これ具体的にどのような状態を指すのか、御説明いただけませんか。
#79
○政務次官(山本有二君) この意味は、分割時における財産の価格と債務の額の比較や収益の予測等を勘案して、個々の債権者の債権につきましてその弁済期においてその履行を行うことができるものと、こう判断される状態を指すところでございます。
 もう少し具体的に申し上げれば、会社分割後に分割会社または設立会社等が債務超過となる場合には、債務の履行の見込みがないというように端的に言えるわけでありまして、次に、分割の時点では債務超過にならなくとも、過去の実績等から大幅な減収、継続的な損失の発生、こういうものが予想される場合には債務の履行の見込みがないというように判断されるものと解釈いたしまして、つまり、ありていに言えば、確実にうまくいくんだというようなことがない限りはなかなか難しいよと、こういうことでございます。
#80
○高嶋良充君 あくまでも帳簿上でそれを見る、こういうことなんですけれども、その中で将来の収益予測も含まれると、こういうことですね。
 将来収益が落ち込んで赤字になるような会社もこれは分割できないというふうに私は理解をしているんですが、将来落ち込むかどうかという部分についてはその分割の時点でしかわからないわけで、もし将来、一年以内ぐらいにそういう事態になった場合はこれはどうなるんですか。
#81
○政務次官(山本有二君) 経営判断はすべからく市場経済の中で動くものですから、なかなか正確に予測するといっても困難性を伴います。
 そこで、先生のおっしゃられるように、実務上ではほとんどの会社が公認会計士の書面を添付して、その中に評価を入れておるような実務運用になろうと考えておりますので、その点において正確性を期していけると、こう考えております。
#82
○高嶋良充君 ということは、費用が赤字の状態では分割することもできないし、将来赤字が予測される場合も分割はしてはならない、そういうふうにとらえるということは、基本的には不採算部門は一切切り離しはできないと、そういうふうにとらえてよろしいですか。
#83
○政務次官(山本有二君) 基本的にはそう解釈いただいて結構だと思います。
#84
○高嶋良充君 分割法の中に、簡易分割もできるというふうになっていますね。これは株主総会の特別決議を必要としないということですから、株主はそれらの部分については基本的にはチェックできないと、こういうことなんですけれども、そういう簡易分割を、あの法では資産の二十分の一ですか、それを何回も繰り返して、結果的に清算的な分割を、清算というのは負の清算ですよ、そういう清算的な分割を招くようなことはこれは想定されないんでしょうか。
#85
○政務次官(山本有二君) 私も先生に御質問をいただくまでこの点、気がつかなかったわけですが、理論的には二十分の一の資産であればどんどん分割できるわけでありまして、数学的にはやがてゼロになるわけでして、非常におもしろいというか、御指摘だろうというように思います。
 ただ、この簡易分割は、一定の要件がある場合に株主総会の承認決議を不要とするにすぎないものでございまして、その他の要件及び手続につきましては通常の会社分割の場合と全く同様でございます。したがいまして、簡易分割におきましても営業をまず単位としなければなりません。そして、一つの営業をもちろん細切れに行うことができないと同時に、債権者保護手続等の手続を省略することは全くできません。
 したがって、簡易分割を何回繰り返して行うといたしましても、これは実際上考えづらいことでございますし、また債務の履行の見込みのない会社分割も許されません。したがいまして、事前開示もあればあるいは債権者の異議手続もあるし、分割無効の訴えもできる、こういうことでございますので、数学的理論とは少し違うだろうというふうに考えております。
#86
○高嶋良充君 山本次官の答弁を聞いていると安心できるのかなというふうに思うんですが、私は非常に悲観主義者ですから、それでも大丈夫かなというふうに思うんですが、ある経済誌の特集で、会社分割法によって企業はますます不採算部門や子会社を売却する動きが加速するんではないかということがこの間も出ておりました。そういう意味からいくと、法を善として活用される分はいいんですけれども、脱法的に活用されると労働者はたまったものじゃないというふうに思うんです。そういう意味では、不採算部門の切り離し、大丈夫だと、こう言っておられますけれども、悪い方に分割法が利用されないということは断言できないというふうに思うんです。
 そういう観点からいって、不採算部門の切り離しなどによって会社分割制度が不法利用というんですか、脱法行為が行われる、こういうことになった場合、法の実効性とそれから法的措置というのはどういうふうにとれるのか。そういう部分について、株主と債権者は提訴できるという、これは法に書いていますけれども、そこに働いておる労働者は一体そのことについて物が申せるのかどうか、あるいは裁判所に訴えることができるのかどうか、その辺について伺いたいと思います。
#87
○政務次官(山本有二君) まず、債務の履行の見込みがないことが明らかであるにかかわらず、不採算部門を切り離すために会社分割制度が乱用されたような場合には会社分割が無効となるという大原則がございます。
 次に、分割無効の訴えをそれではだれが提訴できるのか、特に労働者がその分割無効を訴えることができるかというところでございますが、この訴えにつきましては、分割の当事会社のまず株主、取締役、監査役、そして分割を承認しない債権者が提起することができるいわば提訴権者になるわけでありますが、次に、労働者がこれになるかでございますが、労働者も未払い賃金債権あるいは社内預金債権、既に勤務した期間に対応する退職金債権等を有しているならば、ここに言う債権者に当たるわけでございます。
 ただ、退職金規程のない会社というのがあれば、未払い賃金もなければ社内預金債権も全然ない、そして残るは勤めてやめるときには退職金が必ずあるだろう、こういうときは全部労働者として退職金があればいけるんですが、退職金がないところは別としまして、ほとんどの労働者は何らか会社に債権があるはずなんです、労働している以上は。そうするならば、債権者異議手続において異議を述べた場合は分割無効の訴えを提起することができるということになりますので、退職金規程のないところはやや不安であるということだけでございます。
 以上です。
#88
○高嶋良充君 ということは、結論的に申し上げれば、不採算部門は切り離しもできないし、逆に黒字部門を切り離して不採算部門を残すということも、これもできない。と同時に、人をつけないで工場設備だけを分割するということもできない、そういうふうに解釈してよろしいですね。
 それと、脱法的な部分については、法的な対応をすればこれらの今のようなケースについては分割無効だ、こういうことになるというふうに理解をしてよろしいか。
 それと同時に、そういう脱法的な行為を裁判で提訴するまでに、やっぱり未然に防止をするということが政府の側としては必要だと思うんです。そういう部分について経営者に対して、そういうことはできないよというところをきちっと周知徹底されるおつもりなのかどうか、その二点をお伺いします。
#89
○政務次官(山本有二君) まず、不採算部門の切り離し、整理解雇目的での分割というものがもし裁判に提訴された場合には、それはいわゆる整理解雇の判例法、これがオーバーラップしてまいりますので、裁判官は、そのような脱法行為であるならば整理解雇の四原則にのっとってこの分割の判断もされるだろう、こう考えております。
 それからもう一つ、大競争時代におけるいわば企業の再編成でございますので、その点も考慮しつつ判断するだろう、こういうようには思いますけれども、しかしあくまでこの整理解雇の判例法、これはゆるがせにしない、こう信頼をするところでございます。
 最後の御質問の周知徹底の問題でございますが、これはもう鋭意、商法を改正されこういうようになったということについては、パンフレット等の作成を急ぎさせていただきまして徹底する所存でございます。
#90
○高嶋良充君 ぜひ企業経営者への周知徹底というのは強く要請をしておきたいというふうに思います。
 次官、大変忙しい中、来ていただいてありがとうございました。席を外していただいて結構でございます。
 じゃ、本題の労働契約承継法の方の質問に入らせていただきますが、ちょっと時間がありませんので、大臣に対する最初の質問は最後のところで一括して御答弁をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 長勢政務次官にお伺いをこれ以降いたしますけれども、今も法務政務次官の答弁もありましたけれども、私は、企業再編を容易にするということについては、これは大競争時代と言われる中ですからやむを得ないかなというふうに思うんですけれども、ただ、そのことによって労働者の権利が損なわれるようなことがあってはこれは絶対ならないというふうに思うんです。
 そういう観点で質問をさせていただきたいんですが、会社分割法によって会社が分割されることで、今労働契約承継法が提案されていますけれども、この法案のみで労働者の雇用や労働条件が従来どおり守ることができるというふうに確信をされているのかということと同時に、会社分割に伴って労働者が解雇されることはあり得ない、そういう法務省の考え方も先ほど答弁いただきましたけれども、労働省としてもそういうふうに自信を持って御答弁できるのかどうかお伺いしたいと思います。
#91
○政務次官(長勢甚遠君) お話しのとおり、大競争時代、また日本が二十一世紀を生き抜いていくためにも企業再編というものが必要な事態だろうと思います。
 しかし、そのことが進める中で働く方々等にしわ寄せがあってはならない、これは政治の責任でございます。そのために今回この法案も出しておるところでございます。
 したがって、この法案でだけかと言われますけれども、この法案はまさに会社分割の際に労働者、働く方々に不利なことが起きないようにするための法律でございますから、これを前提にきちんとした運用を図っていくべきものと、これは法務省においても同じ考えでお進めになっておると理解をいたしております。
 また、解雇の問題についてもお触れになられましたけれども、この法案で、先ほど来法務政務次官からも御答弁あったとおり、分割を理由とした解雇というものは判例法理から見ても許されないということは明らかであると思っております。
 したがって、我々としてもこの判例法理の周知徹底を図る等、脱法的な行為が行われないように、また、法の趣旨に反した不利益なことが生じないように指導を徹底的に行っていかなきゃならないと思っておりますし、判例法理の周知徹底を図るとともに、仮にそういう問題が生じたような場合に迅速に解決ができるように労働基準法に基づく紛争解決援助制度、現在つくっておるわけでございますが、こういう個別労使紛争処理のための制度の一層の整備を図る等して、先ほど来申し上げておりますような法の趣旨を生かされた企業再編が行われるように、働く方々に不利のないように全力を挙げてまいりたい、こういう方針でおります。
#92
○高嶋良充君 もし仮に会社分割に伴って労働者が解雇された場合、これは想定されぬことではないというふうに思うんです。その場合の労働者の保護というのは、今御答弁の中で都道府県労働局長の紛争解決援助制度ですか、等々言われましたけれども、そういう助言、指導というのも大切なんですけれども、そういう裁判に行くまでの間の保護措置というか制度を一層強化もする必要があるというふうに思うんですが、そういう紛争処理ルール、そういう部分について制度化をきちっと図っていくという考え方も持っておられるのかどうか、その辺ちょっとお聞きしたいと思います。
#93
○政務次官(長勢甚遠君) 現在、労働基準法に基づく紛争解決援助制度として、都道府県労働局長が適切な助言または指導を行っておるというところでございますけれども、今後とも企業再編等が進む、またいわゆるリストラの不安というものも多いという中でいろんな事情が生ずると思います。こういう問題に労働行政としてきちんとして対応していく、そういう仕組みを現在も検討中でございますし、その検討を待ってそのルール化を図っていきたい、このように思っております。
#94
○高嶋良充君 整理解雇の関係について、先ほど、整理解雇四要件の判例が確定しているので、これらも含めた周知徹底を図っていきたい、こういう御答弁をいただきました。それはそれで非常に結構なことなんですけれども、最近、産業界ではこの整理解雇の四要件が厳し過ぎるのではないかというような指摘が一部から出ています。
 研究会でもそういう発言があったかに聞いておるんですけれども、政府としてはこの整理解雇四要件をどのような評価をされているのかということと、産業界で、一部だというふうに思いますけれども、四要件が厳し過ぎるから別途の法律をつくってはというようなことも言われているというふうに聞きますが、そういう産業界に対して、整理解雇四要件というのは判例でも確定をしているんだから、これをきちっと、そういう判例にまで行く前に、こういうことをやってはいけませんよというような、先ほど出されました周知徹底をもっと徹底的にやっていただくということが必要だと思うんですが、その辺についての労働省の決意も含めて聞きたいと思います。
#95
○政務次官(長勢甚遠君) 整理解雇の四要件についていろんな議論があるということは承知をいたしておりますし、その議論自体を否定するものではございませんけれども、判例がこのように確定いたしております以上、我々としてはそれに従って間違いのないようにきちんとした指導をしていく、こういう方針でおります。
#96
○高嶋良充君 いずれにしても政府としては、この整理解雇四要件というのは経営側のそういう姿勢に対して一定の、一定のというかかなり大きな歯どめ効果というのは持っている、こういうふうにとらえてよろしいですか。
#97
○政務次官(長勢甚遠君) 経営側にそういう議論があるということでは承知をしておりますけれども、議論は議論として、判例が確定しておる以上それに従って行動していただいていると思っておりますし、我々もその指導をこれからも強化してまいりたいと思っておりますから、当然、不当なといいますか四要件に合致をしない解雇というものは行われない大きな効果を持っておる、このように評価をしておるところであります。
#98
○高嶋良充君 しかし、これは判例が確定をしているということで、基本的には今言われたように歯どめ効果だという積極面もありますけれども、消極的にとらえれば歯どめ効果の側面しか持っていない、こういうふうにもとらえられるわけですね。
 そこで、次官も労働問題には非常に達見した知識を持っておられますので、先ほども出ておりましたEUの既得権指令、EU指令と言うんですけれども、そういう指令に従ってEUの各国では解雇規制についての法的措置というのがとられるというふうに思うんですけれども、若干その辺の事情と、私は我が国日本においても企業再編に伴う解雇の禁止を立法化すべきだというふうに思っているんですけれども、その辺についての政府の考え方をお伺いしたいと思います。
#99
○政務次官(長勢甚遠君) EU指令につきましては、当委員会またいろんな場で議論のあったところでございますが、雇用関係に関する各国の事情も異なっている部分もあるわけでございますから、一概に我が国でそれをそのままということについては慎重でなければならないと思っております。
 また、それはそれとして、解雇について立法規制を行うべきではないかという御意見ではないかと思いますけれども、先ほど最初に申しましたように、企業再編に伴って働く方々にしわ寄せが来ないようにということを極めて明確にするにはそれが一番わかりやすいといえばわかりやすいわけでございますけれども、いろんな事情の中で労使関係があるわけでございますので、これはよく話し合って円満な解決を図っていくというのが基本でございまして、これを一律に法律で規制するということについては私は慎重でなければならない、このように思っておるところでございます。
 今後、さらに議論をしなけりゃならない部分もあると思いますが、現時点ではそのように考えております。
#100
○高嶋良充君 四要件が判例で確定をしているから大丈夫だといっても、これは立法化とかを比較すれば強制力という部分も含めてかなり違うという部分があるので、その辺については我々納得できないんですが。
 解雇にかかわる立法化は問題ありと、こういうことでしょうけれども、そういう立法化を行わないということは、解雇規制の見直しについて規制改革委員会が報告書で指摘を行っていますね、これを労働省としては無視をする、こういうおつもりなんでしょうか。
#101
○政務次官(長勢甚遠君) 規制改革委員会の第二次見解というのが御指摘のとおり出ておるわけでございまして、無視をしておるわけではございません。
 労働省といたしましては、解雇の実態を把握するということを目的といたしまして、労働基準監督機関等に持ち込まれた解雇に関する紛争事案等について調査を行っておるところでございまして、今年度の第一・四半期までには調査を終わる、こういう予定であります。
 解雇に関するルールのあり方につきましては、この結果を踏まえまして必要な検討を行う、こういう方針で今進めておるところであります。
#102
○高嶋良充君 労働大臣にお尋ねをしたいと思います。
 労働大臣のもとに、これは総理のところにも届いておるはずですけれども、現在の時点で東京、大阪それから愛知、京都、北海道、秋田、福島、三重の各都道府県議会で、労働者保護のために一層の法整備を解雇規制も含めて求めるとの意見書が採択をされて、届いているはずだというふうに思いますが、これらはまだ八都道府県なんですけれども、しかし大半が大都市中心なんですね。ということは労働者人口でいえばこの八都道府県だけでも優に労働者人口の半数を超えるのではないかというふうに思っているんですけれども。
 その点はやっぱり重く政府としても受けとめていただきたいというふうに思っているんですが、その意見書について重く受けとめていただけるかどうかということがまず一点と、企業組織再編が活発になっているという時期でございますから、ぜひこの機会に早急に労働関係の法体系の整備のための検討と立法化を行う必要があるのではないかなというふうに思っていますが、その点について大臣の考え方を伺いたいと思います。
#103
○国務大臣(牧野隆守君) 委員御指摘のとおり、都道府県から、企業の分割譲渡、合併などによる再編に対応した労働者保護のための法律の早期の制定、企業組織再編における労働組合の協議、これらを主たる内容とする意見書を受け取っております。
 したがいまして、私どもとしては、今後、学識経験者等を中心とする検討の場を設けまして、これらの意見書の内容も含め、立法上の措置を含め十分に検討するなど、適切に対処していきたい、こう考えております。
#104
○高嶋良充君 ぜひ意見書の観点を重く受けとめていただいて、検討については早急にお願いをいたしたいと思います。これはまた次の委員会でも同僚議員からの追及もあると思いますので、よろしくお願いをしておきます。
 長勢次官にもう一問だけお伺いしたいんですが、本法案が基本的に、最初から言われていますけれども、会社分割法案に対応するということで、それに限定して出されてきたということですから、先ほども申し上げましたけれども、企業再編の流れを受けた労働者保護の必要性というのは今まで言われてきているわけです。これは昨年の産業活力再生特別措置法案の附帯決議にも盛り込まれているというふうに思っていますけれども、そういうことも含めて検討を継続していくということについては異議ございませんね。
#105
○政務次官(長勢甚遠君) そのとおりでございます。
#106
○高嶋良充君 じゃ最後に労働大臣、トップの質問とも関連をして、ぜひ労働大臣のお考え方をお聞きしたいというふうに思います。
 私は、このような大競争時代だといっても、あるいは幾ら市場経済万能主義だというふうにいっても、やっぱりいつの時代も人というのは物や金と同列に扱ってはならないというふうに私自身はいつも思っているんです。
 労働者というのは人的資源だというふうによく言います。この国会の始まるときのこの委員会の質問で同僚の長谷川議員が、人材の材は材料の材ではなしに財産の財を使え、こういうことを大臣に言われて、大臣もそのとおりだというふうに前にもお答えをいただいたんですけれども、私は、労働者というのは人的資源、材料ではなしに人の財産、そういうことであると同時に消費者でもあるし、強いて言えば市民でもあるし、国民でもあるし、究極は人間なんです。
 そういうことからいくと、本来経済が奉仕すべきというのは、その対象はやっぱり人間に対して奉仕すべきだ、そういうことでなければならない、これは万国共通だというふうに思うんです。
 そういう観点からいって、先ほど直嶋先生も言われましたけれども、人間尊重の立場に立って、企業の存続という部分も大事だけれども、そこで働く労働者保護というものが企業の再編と同様にきちっと均衡がとれる、調和がとれるというような状況の権利義務というのをきちっと与えていく必要があるのではないか、そのための法整備というものを早急にやるべきだというのが私どもの考え方なんです。
 だから、民主党も衆議院では議員立法で労働者保護法という法案を提出しました。ただ、ある程度の修正はありましたからそれは参議院には来ておりません、衆議院どまりになりましたけれども。
 そういう観点も含めて、今後、労働者保護という法整備をきちっとやっていくということが労働大臣の責務であり、使命ではないかというふうに思っているんですけれども、その決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
#107
○国務大臣(牧野隆守君) 委員御指摘のとおり、私自身も同じ考え方でございまして、企業再編とかいろんな法整備がなされておりますが、絶対に労働者の権利を損なうものであってはならないというのが私の基本的認識でございます。
 今回の緊急雇用対策の設定に関しましても、雇用なき繁栄というようなことは私としては絶対排除すべきだと、こう考えておりまして、そのような観点から雇用政策を進めさせていただきたい、こういうことでございまして、過日、御質問、御意見のありました人材、ヒューマンリソーセスというのをどういうように考えるかと、基本的な状況でございまして、そういう点では委員御指摘の同じ考え方に立ちまして勤労者の皆さんを最大限尊重させていただくということで、その努力については私は人後に落ちない、このような確信のもとでいろいろ仕事をさせていただいているところであります。
#108
○高嶋良充君 終わります。
#109
○委員長(吉岡吉典君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時十四分休憩
     ─────・─────
   午後一時十五分開会
#110
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#111
○但馬久美君 公明党・改革クラブの但馬久美でございます。通告の順序に質問させていただきたいと思っております。
 本法案、企業分割に伴う労働契約承継法案の審議は、衆議院におきましても本会議を含めて合計五回審議され、朝から、午前中、こちらの参議院の方でも審議が始まりました。既に問題は出尽くされた感じがいたすのですけれども、私個人的にはまだはっきりと理解できないところ、疑問に思う点が何点かありますので、改めて質問させていただきます。
 最初に、そもそもこの労働契約承継法案が提出されたいきさつから質問したいと思います。
 御存じのとおり、日本経済はバブル崩壊後の長いトンネルから抜け出す兆しも見えてはきているものの、財政出動やゼロ金利に支えられても国民が抱く雇用や老後の不安というのはまだ一向に解消されていないというのが現状であります。
 しかし、世界においては、日本のバブル期から既に大競争、いわゆる世界市場のシェアをめぐる巨大な多国籍企業による企業の合併また買収競争が物すごい勢いで世界を横行しております。日本経済が劣後状態からさらに落後者にというレッテルが張られないように、日本が世界に乗っ取られてしまうんではないかという、そういう危機感が経営者の皆様の中にもあるのではないかと私は思うわけでございます。グローバルスタンダード、いわゆる世界標準を制する者が世界市場を制するというように、企業の世界も戦国時代に突入しているとも言われております。
 しかし、日本の企業はいまだに行政の手厚い保護や株式の持ち合いによって世界市場へのオープン化がおくれております。既に欧米企業による日本企業の買収が始まっていると言われる現状でありますけれども、私は経済の素人でありますけれども、日本から日本の企業が世界に吸い取られていくというようなことは忍びない、そういう思いがします。
 このグローバル化時代の敗残者にならないためにも、大胆な企業管理システムの改革や株式の世界公開、そしてまた世界企業との提携等に踏み切ることが要請されていると伺っております。こうした日本企業が置かれた現状を見るときに、三年前から行われてきました企業組織の再編成における一連の諸改革もやむを得なかったかという感がいたしております。
 そこで、まず通産省から、日本の企業の置かれている現状と世界に列していくための今後の対策についてお伺いしたいと思います。
#112
○政府参考人(梅村美明君) お答え申し上げます。
 我が国企業は、先生御指摘のように、国際競争の激化あるいはバブル期の過大な投資などによりまして収益性が低迷している状況にございます。加えまして、資本市場の一体化が進みまして、市場による企業評価は一段と厳しくなっており、我が国企業が世界市場で競争していくためには収益性の向上に向けた取り組みが不可欠となっているわけでございます。具体的には、企業が不採算部門の合理化にとどまらず、経営資源を得意分野に集中させ、新分野をも切り開いていく前向きな事業再構築を行うことが重要でございます。
 こうした認識に基づきまして、これまで、持ち株会社の解禁、産業再生法の制定、株式交換制度の導入やさらには現在御審議中の企業分割制度などの企業の前向きな取り組みが円滑に進むような環境整備が図られてきたわけでございます。
 もちろん、世界に列していくためには、こうした事業環境の整備に加えまして、中小企業、ベンチャー対策、技術開発の活性化なども重要と考えておりまして、今後ともこうした政策の充実に努力してまいる所存でございます。
#113
○但馬久美君 そこで、企業組織再編成としてとられてきた諸改革の役割と経済的効果についてお伺いするわけですけれども、グローバル化へのステップとして、時代に勝ち抜き、産業の競争力を高め、経営の再構築を進めていくためには企業や会社の規制緩和を行って企業組織の再編成が要請されたところでありますけれども、次の諸施策はどういう役割を担い、またどういう経済的効果をもたらしてきたのか、あるいは今後もたらしていくと考えていらっしゃるか。
 まず、九七年、九八年の持ち株会社解禁の独占禁止法改正についてであります。また、昨年七月の株式交換制度の法制化の商法改正について、また昨年八月の産業活力再生法の制定について、それぞれ簡略にお述べいただきたいと思います。これは公正取引委員会とそれからまた通産省、それから法務省の方にお伺いいたします。
#114
○政府参考人(山田昭雄君) 先生御承知のとおり、持ち株会社につきましては、平成九年の改正によりまして、それまで純粋持ち株会社というのは全面禁止されていたわけでございますが、事業支配力が過度に集中することになる持ち株会社の設立、転化の禁止ということに改められたわけでございます。
 その趣旨は、経済の国際化等内外の諸情勢の変化を背景といたしまして、我が国企業といたしまして国際競争への対応等企業経営の選択肢として持ち株会社形態を利用したいという要望が非常に強くなっていること、あるいはこれまでの全面的禁止ということが過剰な規制になっていること等にかんがみまして、事業活動をより活発にする等の観点から持ち株会社を、第一条、事業支配力の過度の集中の防止というこの目的に反しない範囲で解禁したというものでございます。
 第二の評価という点でございますが、これまでのところ持ち株会社を設立した企業というのはまだそれほど多くないわけでございますが、いろいろ諸制度の整備とともに、これは今後経営形態というものをいろいろの形でとり得るという選択肢を与えたわけでございまして、持ち株会社につきましてもこれを活用する企業もふえてくる、このように考えているわけでございます。
#115
○政府参考人(梅村美明君) 昨年八月に御成立していただきました産業活力再生特別措置法は、本年五月十七日の時点で同法に基づきます事業再構築計画の認定実績は三十七件でございまして、分社化、増資、営業譲渡など、企業によります経営資源の選択と集中に向けた取り組みを広く支援しているところでございます。事業再構築に向けまして懸命の努力をしようとしています企業にとって大きな支えになっているものと、かように考えております。
#116
○政府参考人(小池信行君) 昨年の七月に成立をいたしました株式交換制度でございますが、これは複数の既存の会社の間に完全親子会社関係を創設するための制度でございまして、持ち株会社の創設をするために利用されるものでございます。先ほど公正取引委員会の方から御説明がございましたが、平成九年の独禁法の改正を契機とするものでございます。
 この持ち株会社の創設といいますのは、企業の組織再編成のための一つの手段でございまして、現在の経済状況のもとにおきましては、企業が単体ではなくて数個の企業が一つのグループを形成して競争力を強化しようとしている、そういう現在の経済情勢に即応するための法改正であったということでございます。
 なお、正確な件数までは存じておりませんけれども、この株式交換制度はかなり今利用されているというふうに承っております。
#117
○但馬久美君 いろいろありがとうございました。いろいろ諸改革のそういう役割を今伺いました。
 そこで、労働省にお伺いいたします。新会計制度導入に伴って、退職金や年金などの将来債務の計上が必要となるとともに、親会社とそれから子会社に対して戦略上重要かまたはそうでないと選別してまいります。資金の支援打ち切りとか、また売却、合併、清算等の動きが活発になってくると予想されておりますけれども、この新会計制度の導入による雇用への影響についてはどのように予測されておられますか。
#118
○政府参考人(松崎朗君) 企業活動や資本取引がグローバル化する中で国際的な会計基準の統一が求められておりまして、我が国におきましても、ことしの三月期決算より上場企業の財務諸表作成に連結会計が義務づけられます。また、来年三月期には退職給付会計の時価評価開示が義務づけられるということになっております。
 こういったことをポイントといたします新会計基準の導入に伴います雇用への影響につきましては、この基準が導入されつつある段階でございまして、まだはっきりした見通しが申し上げられるような段階にはないわけでございます。
 しかしながら、今申し上げましたような点がポイントでございますので、例えばグループ全体の利益が重視されまして業績の悪い子会社が整理されるとか、また将来発生する退職金でありますとか年金の負担を軽くするために例えば早期退職勧奨制度が導入され行われるといったものも、可能性としては考えられるわけでございます。
 このために、私どもとしましては、雇用への影響につきましては今後とも十分に注意してまいりたいというふうに考えております。
#119
○但馬久美君 この新会計制度というのはいろいろ情報開示されていくわけですけれども、このように企業、産業の再編成や新会計制度の導入等は経済の構造改革を進めていく上では避けて通ることができないと思います。
 雇用対策について万全を期する必要があると思いますけれども、労働大臣はどのような雇用対策を進めていかれるおつもりか、お伺いしたいと思います。
#120
○国務大臣(牧野隆守君) 御承知のとおり、現在の雇用情勢は、完全失業率が過去最高水準で推移するなど、依然として厳しい状況にございます。しかしながら、我が国経済の構造改革の進展によって、最近情報通信技術や介護関連の分野等においては大幅な求人の増加が見られるところであります。したがって、これらの今後成長が見込まれる新たな産業に必要な人材を早期に育成し、着実な就職促進を図ることが極めて重要であると考えております。
 このため、職業訓練の拡大や助成金の抜本的拡充など、成長分野に重点を置いた就職促進策を柱とするミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策を五月十六日に策定したところであります。この対策を実施することにより、今後一年間において少なくとも三十五万人程度の雇用就業機会の増大の現実化を図ることといたしております。
 今後とも、経済の構造改革に伴う雇用対策を積極的に推進してまいる所存でございます。
#121
○但馬久美君 ありがとうございました。
 では、続いて通産省にお伺いいたします。
 グローバルスタンダードの競争の影響で企業の再編はぐんと進むものの、今日までの企業分割、そして合併、営業譲渡などの実態はどのようになっているのか、お伺いしたいと思います。これは数字がわかれば教えていただきたいと思いますし、また今後どのように進むと予想されているのか、お伺いいたします。
#122
○政府参考人(梅村美明君) 企業を取り巻く環境、特に国際競争はその厳しさをますます増していくことが予想されるわけでございまして、そのため各企業は一層の競争力の強化に努めるものと思われ、こうした中で企業の組織再編は競争力強化のための重要な方法でございます。近年その数は、民間会社の調査ではございますけれども、顕著な増加傾向にございまして、例えば五年前に比して二倍強になっているとか、一九九九年は前年に比して四〇%増のMアンドAの件数になる等、増加傾向にございます。
 今後とも、こうした国際環境のもとでございますので、さらにこうした傾向は続くものというふうに予想してございます。
#123
○但馬久美君 それをお伺いいたしまして、今度労働省にお伺いいたします。
 全体を通して企業再編成によって人員整理またリストラは行われていくと思われますけれども、労働省はこれをどのように考えておられるのか、またその対策はどのようにとられておられるのか、お伺いいたします。
#124
○政務次官(長勢甚遠君) 経済新生を達成していく中で、今おっしゃいましたような人員整理、リストラというものはある程度やむを得ない部分があるというふうに思っております。
 しかし、こういう経済新生をなす中でしわ寄せが働く方々に来るということは十分に気をつけなきゃならない、避けなければならない大きな課題でございますので、安易なそういう問題が起きないように企業の責任というものも十分自覚していただく、そのための要請も行い、指導も行うとともに、企業が雇用を維持できるような各般の政策も講じてきたところでございます。
 また、当然不当な解雇といったようなものは許されるわけにはいかないわけでございますし、これにつきまして判例法理が確定をいたしておるわけでございますので、この趣旨に沿った適切な対策がとられるように企業に対する指導を強化してまいりたい、このように思っております。
 さらに、個々に個別の紛争が生じた場合、この判例法理等が徹底してその趣旨に沿った対応ができるように相談援助、またそれに対する指導のための仕組みも今強化をしつつ検討しておるところでございます。
#125
○但馬久美君 細々と大変いろんな政策がありますけれども、ぜひ努力していっていただきたいと思っております。
 このたびの労働契約承継法案の対象を分割に限ったのはどういうわけなのか、その理由というか、わけをお聞かせください。
#126
○国務大臣(牧野隆守君) ただいま御審議いただいている労働契約承継法案では、合併、営業譲渡については特段の立法措置は講じておりません。
 これは、合併についてはすべての労働者が承継されること、営業譲渡については労働者の承継につき民法第六百二十五条により本人の同意が要件とされていること、裁判例も権利義務は個別に承継されるという基本ルールにのっとりつつ事案の内容によって具体的な解決を図っていくこと等の事情から労働者の権利は守られている、こう見られております。
 したがって、合併や営業譲渡に伴う労働者の承継等につきましては立法措置を講じることは不要であろうと考えた次第でございまして、したがって、今回は会社分割のみを対象とした法案ということで御審議をいただいているところであります。
#127
○但馬久美君 ありがとうございました。
 解雇制限規制についてお伺いしたいと思います。
 従来、企業が労働者を解雇するには、最高裁の判例では、整理解雇四条件を満たさない限り解雇は認められないということになっております。通常の解雇は個人でありますし、また整理解雇は集団の場合が多いと言われております。
 この四条件、四要件と申しましょうか、この整理解雇の必要性があること、二つ目には解雇回避をしたこと、三つ目には解雇対象者の選定基準が客観的、合理的であること、そして四つ目が労使で協議を行ったことというのが要件になっております。そのほか、解雇規制として民法の六百二十五条第一項の権利義務の一身専属性の適用が挙げられております。
 しかし、企業再編成による今日のような現状では、例えば企業の採算性が悪い部門を分割し、また整理しようとする労働者を分割する企業に承継させて、倒産などすれば合法的な解雇となります。従来の法規制や判例では対応がし切れなくなっているということも言われております。
 こうした仕組まれた整理解雇の歯どめについてはどのように対応されるのか、御意見をお伺いしたいと思います。労働大臣にお願いいたします。
#128
○国務大臣(牧野隆守君) 今般の会社分割につきましては、商法等改正案におきまして各会社が分割によって債務の履行見込みがなくなるような分割を認めない、このようにいたしておりまして、不採算部門を分割、独立させるような事態は想定できないもの、このように考えております。したがって、それによる労働者の解雇という事態も想定いたしておりません。
 なお、会社分割後に新会社の経営が悪化した場合においても、整理解雇を行うときには四条件を満たすことが必要であることは裁判例において確立されておりまして、この判例法理により妥当な解決が図られるもの、このように考えております。
#129
○但馬久美君 この同じ質問を法務省の方にもお伺いいたしたいと思います。
#130
○政府参考人(小池信行君) 今、労働大臣がお答えになったとおりでございます。
 この会社分割法制におきましては、分割当事会社、つまり営業を移転する会社それから営業を譲り受ける会社双方につきまして、分割の結果債務の履行の見込みがあるということが要件とされているわけでございますので、いわゆる不採算部門のみを切り離すという形の分割はこれは許されないものというふうに理解しております。
#131
○但馬久美君 それでは次に、雇用の過剰は現在どうなっているのかという点についてお伺いしたいと思います。
 ことし四月二十八日発表されました最近の失業状況によりますと、三月の完全失業者は三百四十九万人、前年同月比で十万人が増加しているわけでございます。そのうち非自発的失業者は三月では二万人減、百四万人でした。
 ところで、雇用、設備、債務、この三つの過剰を解消しなければ経済の活性化はあり得ないと、ひところはこの過剰論議が新聞紙上をにぎわしておりました。今日、このうちの雇用の過剰感はどのように解消されてきているのか。一時、社内失業者は完全失業者の倍はいるのではないかとさえ言われておりました。現在、労働省はこの点どのように見ていらっしゃるのか、御見解をお伺いしたいと思います。
#132
○政務次官(長勢甚遠君) 労働省の労働経済動向調査によりますと、本年二月に常用労働者が過剰であるとしておる事業所の割合は二六%ということでございまして、一方、不足であるとした事業所の割合は一四%でございますから、過剰の方が上回っておるわけでございますが、過剰であるという事業所の割合は昨年二月よりもどんどん減少傾向にありまして、雇用過剰感は弱まっておると認識をしております。最近、求人等もふえつつある状況でございますので、今後そういう傾向で進むことを期待しております。
#133
○但馬久美君 これからまだ非自発的失業者がふえると予想されておりますけれども、その点はどういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。
#134
○政務次官(長勢甚遠君) 現在、御案内のとおり、完全失業率が四・九、また完全失業者三百四十九万人のうち百四万人が非自発的失業者ということで、大変厳しい雇用状況にあることは御案内のとおりでございます。
 今後、企業の、経済の新生を果たしていく中でリストラ等ということもあり得ることでございますから、これが早急に減っていくことを期待しているわけでございますが、そう安閑としてもおれないというのが私どもの見方でございます。
 したがいまして、やむを得ず失業された方々に対してきちんとした再就職の道筋をつくってあげなければならない。午前の審議で労働大臣からるる御報告申し上げましたとおり、今回、ミスマッチの解消を重点とした雇用対策を打ち出しておるわけでございますが、こういうことによりまして、これからのなお楽観を許さない雇用状況に対応してまいりたい、こういう決意でおります。
#135
○但馬久美君 ありがとうございました。
 経営者側からすれば、一番手っ取り早いのが何といっても解雇すれば済むことだと思います。しかし、先ほども言いましたけれども、整理解雇の四要件があって、無理に解雇すればやはり裁判に訴えられますし、現場サイドではどういう形で解雇が行われているのか。例えば、雇用の過剰の解消の仕方について、その方にアドバイスをお願いしたいと経営者サイドから求められた場合にはどういうふうに回答されるのか、その辺をお聞かせください。
#136
○政府参考人(野寺康幸君) 事業主が解雇を行う場合にはいろいろなケースがございます。いわゆる整理解雇に相当する場合もございますし、そうでないケースもあるわけでございます。私どもは、労働基準監督署を中心にこういった場合の御相談に応ずる体制をとっておりますけれども、特別にこの解雇をめぐります問題につきましては裁判例あるいは関係する法規等をまとめましたリーフレットを作成してこれを御説明し、また、事案に応じますけれども、そのケースに該当するような、かかわりのあるような裁判例につきましても御説明申し上げた上で、そういった法令あるいは確立された判例に違反しないような解雇が行われるように指導しておるところでございます。
#137
○但馬久美君 それでは、例えば四要件がそろって現場サイドにおける解雇申し渡しのそういう状況、そういうのはどういう例があるのか、もし御存じでしたら。
#138
○政府参考人(野寺康幸君) 整理解雇の四要件については、先ほど先生お述べになりましたので繰り返しませんけれども、整理解雇に仮に該当する場合であっても、さらにいろいろな手続上の問題でございます、例えば解雇の予告であるとか予告にかわる予告手当の支払いであるとか、いろいろなケースがございますので、そのケースごとに関係する法令あるいは判例等を引用しながら御説明申し上げているわけでございます。
 例えば、一例でございますけれども、退職金に関する問題が出てまいる場合もあるわけでございます。退職金を上積みするかどうか、あるいはどういう形でこれを払うかどうか、これはまさに労使でお決めになる問題でございますけれども、そういった例につきましても、必要な条文等を御説明しながら、できるだけ円満な解決が図られるようにしているわけでございますが、残念ながら、仮にそれが紛争といったような形になりました場合には、これはまた別に、各都道府県の労働基準局にそういった個別紛争の解決援助制度を設けておりまして、こういった形に移行した相談体制もとっているというところでございます。
#139
○但馬久美君 ところで、労働裁判の話がちょっと出ましたけれども、ふえているということも言われております。もちろん、裁判に持ち込まないように、労働者の権利など十分保護されておればそれに越したことはありません、今おっしゃったように。でも、やっぱりやむを得ない場合、裁判に持ち込んだ場合を考えて、現状ではどういう状況であるのか、もしその辺の件数があればお教えいただきたいと思います。
 また、原告側も被告側も早急なる審判を願っているわけですけれども、大体労働裁判はどのくらいの時間がかかるか、期間がかかるのか、もちろん個々のケースで違いはあると思いますけれども、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
#140
○政府参考人(房村精一君) 労働関係事件でございますが、平成十年度における労働関係民事訴訟事件、これの新受件数が千七百九十三件になっております。前年に比べまして百三十七件増加いたしております。また、労働仮処分事件でございますが、こちらはやはり同じ平成十年度で八百四十二件、前年に比べまして九十七件の増加となっております。
 一方、平均審理期間でございますが、これも平成十年度における労働事件の既済事件の平均審理期間でございます。労働関係民事訴訟事件につきましては十三カ月、一年と一カ月ということになっております。これは前年に比較いたしますと、前年が平均十五・四カ月でございましたので、二・四カ月間の短縮が図られております。また、労働関係の仮処分事件について見ますと、平均が三・五カ月ということになっております。これも、前年が四・四カ月でございますので、〇・九カ月の短縮ということになっております。
 以上でございます。
#141
○但馬久美君 いろいろと細々ありがとうございました。
 裁判の迅速性のためにも、方策として何といっても司法界の人員の拡大が何より優先すべきではないかと思いますけれども、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
#142
○政府参考人(房村精一君) 二十一世紀の我が国社会においては、司法の役割というのはますます増大していくものと考えられますので、これを担う法曹人口も増加させる必要があると思われますし、今委員から御指摘のありましたような裁判の迅速化のためにも、法曹人口の増加というのは求められているところだと思っております。
 現在、内閣に司法制度改革審議会が設置されまして、二十一世紀の司法のあり方について御議論願っているところでございますが、その審議会の論点項目の中にも法曹人口の適正な増加というものが取り上げられ、現在までの審議の中におきまして、司法の人的基盤の充実強化として法曹の大幅な増員が必要だということで委員の意見が一致したというぐあいに聞いております。
 具体的に申し上げますと、法曹となる者を現在、司法試験で選抜しておりますが、その合格者が従来七百人程度でありましたものを、昨年から年間一千人程度に増加しております。さらに、政府の規制緩和推進三カ年計画におきまして、千五百人程度への増加ということについてもさらに検討すべきであるということが言われております。私どもとしても、政府の規制緩和推進三カ年計画あるいは司法制度改革審議会の検討の結果も踏まえまして、早急に結論を得るべく検討を進めてまいりたいと考えております。
#143
○但馬久美君 ありがとうございました。
 ちなみに、海外の法曹人口というのは、これを見ますと、アメリカでは約九十四万人おられますし、イギリスは約八万三千人、ドイツが約十一万一千人、日本はまだ二万一千人ということでありますので、ぜひ、先ほどおっしゃいました二十一世紀の司法を支えるという、質の向上と能力の向上というのは非常に大事だと思いますので、その点よろしくお願いいたします。
 裁判にかけたいけれども資金がなくて泣き寝入りしている人たちもいらっしゃる、そういうことをよく聞きます。訴訟資金援助制度というのがあるのかないのか。なければ、やっぱりきちっと制度をつくるべきだと思いますけれども、その点、お聞かせください。
#144
○政府参考人(横山匡輝君) 委員御指摘の制度といたしましては、現在、民事法律扶助事業というものがございます。この事業についてまず御説明いたしますと、これは、資力に乏しい国民の方々等に対しまして、労働事件に関する裁判を含め、民事裁判における代理人の費用の立てかえ等の援助を行うものでありますが、国としましては、その重要性にかんがみ、財団法人法律扶助協会が行うこの事業に対しまして昭和三十三年度から補助金を交付し、その充実を図ってまいったところでありまして、平成十年度の扶助決定件数の実績につきましては一万七十九件となっております。
 今後とも扶助の需要の増加が予想されますことから、国としましては、この事業の一層の充実を図るため、平成十二年度は民事法律扶助事業関係予算としまして約二十一億八千百万円、これは前年度比で十二億四千百万円増、一三二%増となっています。この金額を計上いたしております。
 なお、本年十月一日からは、今国会において成立しました民事法律扶助法に基づき、法務大臣が指定した公益法人が民事法律扶助事業を行うこととなっておりますが、ただいま申し上げました金額には当該公益法人に対する補助金等も含まれております。
 以上でございます。
#145
○但馬久美君 ありがとうございました。
 次に、個別紛争処理の増加についてどう対応されていくのかということについてお伺いいたします。
 裁判にならないまでも個別労使紛争は一段とふえると予想されております。その現状と今後の対策についてお伺いしたいと思います。
 また、現場ばかりに任せていないで、労働省みずから先陣を切って取り組んでやるときが来たというふうに思いますけれども、御苦労を強いるようですけれども、労働省本体が動くことによって労使紛争の速やかな解決に拍車をかけることとなると思います。国民の皆さんのためにもこれはしっかり頑張っていただきたいと思いますけれども、この点、労働大臣、どんなふうにお考えですか、お聞かせください。
#146
○国務大臣(牧野隆守君) 企業組織の再編や人事労務管理の個別化に伴い、個々の労働者と使用者の間の労働条件等に関する紛争が増加しておりまして、これらの紛争を簡易迅速に処理できる体制の整備が求められているところであります。
 現在、労働条件に係る紛争につきましては労働基準法に基づき都道府県労働局長による助言、指導を、女性の雇用差別に係る紛争につきましては男女雇用機会均等法に基づき都道府県労働局長による助言、指導、勧告のほか、機会均等調停委員会による調停をそれぞれ行っているところでございます。
 今後、一層の増加が懸念されますこのような個別的労使紛争をより簡易迅速に解決することができるようにするため、第一は都道府県労働局長による助言、指導制度を拡充いたしたいと思っています。
 次に、調停制度の発展、拡充でございますが、今申しましたとおり、女性の雇用差別に関しては機会均等調停委員会による調停を行っておりますが、このように一般案件につきましても調停制度の発展的な拡充を図るべく検討中でございます。
 さらに、多様な内容の相談にワンストップサービスで対応するための労働基準監督署等の窓口体制の整備を図りたい、こういう方向でただいま進めております。
#147
○但馬久美君 ありがとうございました。
 最後に、労働者の保護法規の制定についてお伺いいたします。
 この労働者保護法規については、例えばアメリカは保護法規はなくて解雇は自由な国と言われております。それに対して、欧州は非常に厳しい労働者保護法規があり、日本はその中間に値すると思われます。その欧州における労働者保護法についてですけれども、かつてオイルショック当時策定されまして、その後九八年に改正されたEUのリストラ関連三指令として知られております。一つは大量解雇指令、二つ目には企業譲渡指令、いわゆる労働者既得権指令、そして賃金確保指令の三指令であります。
 この労働者保護指令を日本でも適用せよと労働界から盛んに言われております。衆議院におきましても労働者の保護をするという答弁をされておりますけれども、どのような保護法規を目指されているのか、御見解をお伺いいたしまして、私の質問にかえさせていただきます。
#148
○国務大臣(牧野隆守君) 御指摘のEU諸国、ヨーロッパの国々でありますが、我が国とは企業における労使関係の実情、歴史、雇用、労働市場の状況等が異なっておりますので、労働者保護や解雇規制についてヨーロッパと同様なルールを導入するのが適当かどうかという点については、同じようにやりなさいという意見もありますし、まだ十分検討すべきだという意見もございます。
 こういうことでございますので、合併、営業譲渡をも含めた企業組織の再編に係る労働者保護に関する諸問題につきましては、学識経験者を中心といたしまして労使関係の御意見も十分に拝聴いたしまして検討の場を設けまして、立法上の措置を含めいかなる方法が適当かということを十分に検討してまいって結論をちょうだいいたしたい、このように考えております。
#149
○但馬久美君 ありがとうございました。
 やはり、労働者保護法というのはこれから本当に大事だと思いますし、またこれからこういう多様化してくる労働社会の中でのそういう環境整備の中にもやはりこの保護法というのはこれから必要となってまいりますので、ぜひきちっと検討していただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#150
○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。
 今回、政府から提出をされました商法の一部改正案は、商法の中に会社分割法制を新たに導入するというもので、この法案によって会社が分割された場合に労働者の雇用上の身分や賃金、労働時間などの労働条件をどうやって引き継がせるのかというルールをつくる必要が生じて、労働契約承継法案が出されたと伺いました。
 しかし、この商法改正案と労働契約承継法案はなかなかわかりにくいということも言われております。新聞なども、けさから御紹介がありましたが、「気づいた時は別会社」、「手続簡単 再編を加速」、「リストラに悪用」、これは新聞記事でございますけれども、こんなふうに新聞では取りざたされ、また私のところにも働く人から何人もがいろいろな不安や疑問を持っておいでになっております。
 この法案そのものは私がつくったものではありませんので、そういった国民、とりわけ労働者からの不安や疑問にこの場で明確にわかりやすくお答えをいただきたい、こういう立場からきょうは法務省と労働省に質問をさせていただきます。
 まず、法務省にお尋ねをいたしますが、商法を改正して会社分割法制を新設するということでありますが、こういう新しい法制度をつくってほしいという要望、意見、これはどういう団体から、いつ、どういうふうに、どこへ出されたのか、また労働者やあるいは労働組合、こういうところからの要望はあったのでしょうか。お答えください。
#151
○政府参考人(小池信行君) お尋ねの会社分割法制につきましては、これは平成十一年三月三十日の閣議決定になります規制緩和推進三カ年計画において提言されていたものでございます。ところが、同年の五月二十日、第三回産業競争力会議におきまして、産業界の委員からこの会社分割法制の創設について早期に取り組むようにという強い御要望がございました。これらの要請を受けまして、法務省といたしましては、現下の経済情勢にかんがみ、企業の競争力を強化するために、会社の組織の再編成を容易にする法整備を急ぐということにいたしまして、検討した結果、今度の国会に商法改正法案の審議をお願いするということになった次第でございます。
 なお、労働関係者の御意見という御質問もございましたが、この商法改正法案は法務大臣の諮問機関であります法制審議会商法部会で審議をしたものでございますが、その商法部会の審議に日本労働組合総連合会の担当局長を参考人としておいでいただいて御意見を伺っておりますし、労働省の係官からも意見をいただいております。さらに、この法案の要綱、最終答申を取りまとめました総会におきましては、総会委員の一人であります連合の鷲尾会長から意見書が出されております。
 そういう御意見を私ども踏まえまして、この改正法案の附則第五条におきまして、「分割に伴う労働契約の承継に関連して必要となる労働者の保護に関しては、別に法律で定める。」という規定を置いたわけでございます。これを受けて今この当委員会で御審議されているいわゆる労働関係承継法が国会に提出をされたものというふうに承知をしております。
#152
○八田ひろ子君 経済連等産業界からの強い要望、こういうのを受けて、規制緩和三カ年計画とか産業競争力会議、こういうものの提言を受けてというふうなお答えがありまして、財界からの要望でこの法案そのものは出されてきたということであります。
 ところで、この会社分割にかかわる法案の作成過程では、労働者あるいは労働組合の意見というのが、今部分的には御説明ありましたが、公式にはどう聞かれたのか、また労働者側の意見はどういうものであったのか、法務省、それから労働省、双方に御説明をいただきたいと思います。
#153
○政府参考人(小池信行君) 労働者側の意見聴取につきましては先ほど答弁を申し上げたとおりでございますが、特にここで御要望が強かったのは、やはり会社分割に伴う労働関係の承継がどうなるのかというところにつきまして幾つかの御要望があったわけでございます。
 そこを私ども踏まえまして、さきに申し上げました附則五条の規定におきまして、会社分割に伴っては労働関係が原則として承継されるものであるということを前提に、ただ個々的に生ずる問題につきましては労働省の方での立法で手当てをされるということを予定して、先ほど申し上げた附則五条の規定を設けたというものでございます。
#154
○政府参考人(澤田陽太郎君) 私どもの方は商法改正にかかわる労働側からの意見聴取という問題ではありませんので、労働契約承継法案を作成する前段として研究会を設置いたしました。そこにおきまして、労働者側からの意見陳述、経営側からの意見陳述を聞いたほか、直接意見陳述をした労使団体以外の関係団体の方々の意見も文書により、その研究会におきまして十分検討をいたしたということでございます。
#155
○八田ひろ子君 労働者にとっては非常にかかわりが深い法案でありますので、しかし非常に不十分な意見の聞き方であったのではないかというふうに今の御説明を聞いても思われます。
 法務省に伺いますが、これまでも、大企業を中心にですけれども、今ある法律に基づいて会社をいろいろ分けたり、形ですけれども新しい会社に移したり、こういうのがありました。それはどういう法的手続が必要だったのか、またそれを認めるには従来どういう要件が必要だったのでしょうか。そして、今回提出されておりますこの法案では、会社分割をできやすいようにするための商法の改正ということでありますが、従来と比べてどこがどのように簡略になったのか、わかりやすく、簡明に御説明ください。
#156
○政府参考人(小池信行君) 委員の御質問は、現在の商法の法制のもとにおけるいわゆる分社化、つまりある会社がその自分の営業の一部を新設する会社に現物出資をいたしまして新株の割り当てを受ける、そういうタイプのいわゆる分社というものを恐らく想定されておられるのではないかと思います。したがいまして、そういうタイプの分社とそれから今回の商法改正案における会社分割とがどういうふうに違うのか、そういう観点から御説明をさせていただきます。
 この二つの法制は法律的な性質が違うということになります。今度の商法改正法案で予定しております会社分割というのは、法律的な性質はいわゆる包括承継と呼ばれるものでございまして、これは会社の組織法上の行為でございます。先ほど申し上げた現物出資、これは一般の取引行為でございまして、その法律的な性質はいわゆる特定承継と呼ばれるものでございます。
 恐らくお尋ねはその手続の違いということであろうというふうに思われますが、まず、営業を現物出資いたします場合には、裁判所が選任した検査役による調査が必要でございます。そのために手続的には、まず営業を現物出資していただいて、それが法律的には先履行ということになります。その上で会社の設立の手続に入りますので、その会社設立手続が終了するまでの間は営業を一たん停止しなければならないという問題がございます。さらに、裁判所で選任した検査役の検査がいつ終了することになるのかその見通しがなかなかつきにくい。したがって、現物出資による分社というものが時期的にはっきりいつ完成することになるのか当事者にとってはなかなか予測が難しいという問題がございます。それから、さらにもう一つ申し上げれば、現物出資に伴う営業の中に債務が含まれている場合、その債務については引き受けにつきましては個別の債権者の同意を得なければならないということになるわけでございます。
 これに対しまして会社分割の場合は、先ほど申し上げました包括承継でございます。しかも、ここでは裁判所の選任した検査役の検査は不要であるということになっておりますので、分割が成立いたしましてその登記がされますと、それと同時に営業を開始することができるというメリットがございます。さらに、債務につきましても、これは法律上当然に引き受けられる、新しい会社の方に引き受けられるということになっておりまして、債権者の個別の同意は不要だ、そういう意味でも手続が簡素化されております。
#157
○八田ひろ子君 今御説明いただいて、要するに今までは分社化するときには裁判所が命じた検査役による検査、こういう第三者関与というのがあったと。それから、一人一人の債権者の合意が必要だということで、非常に慎重で手間のかかる手続や要件があったというわけですね。しかし、今回の改正案では、分割しようとする会社は、分割計画書をつくって二週間本店に計画書を備え置いておけば株主総会で議決をすればよいという、そういう違いだと思います。
 そうしますと、今までと違う点は、まず分割計画書をつくるのにその会社以外の第三者は関与しない、裁判所は要らないということですね。言いかえれば、会社が自分でつくる、勝手につくるということになると思うんですが、労働者や労働組合の意見を聞いて、聞きながら分割計画書を作成する、こういうふうになっているんでしょうか。
#158
○政府参考人(小池信行君) 分割計画書の作成に当たりまして、事前に労働者あるいは労働組合の意見を聞くということを法律上義務づけたものはございません。
 ただ、会社分割を円満に円滑に進行させる上では、事前に労働者あるいは労働組合と協議するというのが好ましいと思っておりまして、そのような労使関係がこれから形成されることが望まれるというふうに考えております。
#159
○八田ひろ子君 労働者に聞くのが望ましい、これはどういうふうに担保されるんでしょうか。
#160
○政府参考人(小池信行君) 分割計画書の中身というのは非常に内容が多岐にわたるわけでございまして、これは後で御質問があると思いますが、特に個々の労働者につきましては、会社分割に伴って自分の労働関係の承継がどうなるのかというところが、これが恐らく最大の関心事であろうというふうに思われます。
 その点につきましては、これは衆議院における議員修正によりまして商法の改正法附則五条の改正がされまして、あらかじめ労働者と協議をするものとする、そういう条文が置かれているところでございます。この条文によりまして、会社側は会社の分割に伴いましてあらかじめその労働者と個別に協議しなければならないということになるわけでございまして、その協議を通じて労働者の意見が反映されていくものになるというふうに考えております。
#161
○八田ひろ子君 私が求めるような担保ではなく、個別協議、後でまた伺いますけれども、そういう中で意見が反映されるのではないかという希望で、道が全く閉ざされているわけではないが、この法律としては担保されないというふうにも受け取れます。そういうことであれば会社の分割というのは速いかなと思いますが、先ほど裁判所の手続がないので速いというふうにおっしゃったんですけれども、どれぐらいそれは短くなるんでしょうか。
#162
○政府参考人(小池信行君) あるいは私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、速くなるというふうに申し上げたわけではございませんで、裁判所の選任した検査役の調査がいつ終わるかということが手続的に判明しない、対象になります現物出資を構成する財産が非常に膨大である場合には、これはなかなかにそれなりの調査期間がかかるわけでございますので、いわゆる検査終了の時期の見通しがつきにくいということを申し上げたわけでございます。
#163
○八田ひろ子君 検査終了の時期が、検査をしなくてもいいということですので、その部分は短くなるということですね。
 この法案は、今までの答弁でいいますと、財界の要望でつくられてきた、強い要望とさっきおっしゃいましたが、法案作成過程で労働者の意見の聴取というのは極めて不十分でわずかだったわけです。さらに、会社を分割する計画書は会社が第三者の関与なしにつくることができるということですね。労働者、労働組合の意見を聞くというのはむろん義務づけられていなくて、会社が自由に勝手につくる。そして時間的にも今までの検査に要していた時間は少なくなるということで、数カ月の時間でできるんではないかというふうに思います。
 その上に立って簡易分割の問題でお伺いしたいと思いますが、今回の会社分割法制の中にこの簡易分割制度というのが制度化されます。この制度というのは、分割する営業、言いかえれば部門や業務ということですが、総資産の二十分の一以下であれば取締役会の議決だけで分割できる。これはどういう要件でそれができるんでしょうか。また、なぜ二十分の一以下の場合は株主総会の決議が要らないのか。その理由をお示しください。
#164
○政府参考人(小池信行君) 御指摘の簡易分割でございますが、この要件につきましては、分割をする会社、つまり営業を移転する方になる会社と、それから営業を譲り受ける方になる会社との間で要件が異なっております。今、先生が御指摘になりましたのは分割をする方の会社の要件でございまして、これは最終の貸借対照表上に計上された資産の合計額の二十分の一以下である場合、これが分割をする会社にとっての要件でございます。一方、営業を譲り受ける方、承継を受ける方の会社、これにつきましては、この営業を譲り受けた際に新株を発行するわけでございますが、その発行する新株の総数がその会社が発行している株式総数の二十分の一以下である、この場合に簡易分割ができるということになっております。
 こういう要件を定めましたのは、今申し上げたような二十分の一というのが一つの指標でございますが、この程度の規模であればそれぞれの会社の株主に与える影響が通常は軽微であろうということから株主総会の特別決議を必要としないということにしたものでございます。ただし、通常の会社分割の手続と違うのはその一点でございまして、そのほかはすべて通常の分割手続と同じでございます。
#165
○八田ひろ子君 そうしますと、その会社分割の二十分の一のことでもうちょっと教えていただきたいんですけれども、私ここに有価証券報告書、日産自動車のを持ってきました。これを見ますと、労働者の側から見ると大変なことだなというので聞かせていただきたいんですけれども、この日産の場合、総資産が連結でいえば七兆一千六百億になるんですけれども、単体でいいますと三兆六千億ですよね。その二十分の一といいますと一千八百億になりますね、単純な算数の計算でいくと。そうしますと、例えば、日産のいろんな工場があるんですけれども、いわき工場を見ますと、これ百八十八億円なんですよね。福島県にあって地価も安くて生産設備を入れても今御説明があった二十分の一よりははるかに下回るというところだものですから、この工場を例えば分割するということがあったとすると、取締役会の議決だけで分割できる、こういうふうに理解していいんでしょうか。
#166
○政府参考人(小池信行君) この分割の単位が営業というふうにされておりまして、つまり一つの会社が複数の営業を営んでいる場合に、独立したある事業部門を他の会社に承継させるというのが会社分割でございます。したがいまして、今御指摘のような工場が、これがそれだけでいわゆる営業としての実質を有しているというものであるならば、これは会社分割によって承継できるということになろうと思います。ただし、工場それだけでは営業とは言えないというものであるならば、それは会社分割としては承継することができないということになります。
#167
○八田ひろ子君 営業として認められるということになれば資産の二十分の一というのが適用されるということで、株主総会の議決がなくても分割ができるということですね。
 そこで、重ねてその問題でお伺いするんですけれども、この総資産の二十分の一を、先ほど、株主に与える影響は軽微であると考えられるということなんですけれども、働く人にとっては全く軽微どころではないわけですね。
 今例に出しましたところが現在四百八十七人の労働者が働いています。四百八十七人もの労働者がいる工場でも二十分の一以下の資産でそれが営業と認められる場合は取締役会の議決だけで分割ができるということになりますね。しかも、ここの工場というのは、日産で言いますと村山工場などから配転される受け入れの工場であって、だから、実際に今は四百八十七人ですけれども、もっとふえるんではないかと言われている工場なんです。株主にとっては二十分の一以下の少ない債権なんですけれども、千人に近いような、何百人もの労働者にかかわる重大な問題になることですよね。
 こういうときに、先ほど伺った中身なんですが、取締役会は簡易分割を決議する前に労働者の代表とか労働組合に意見を聞くという、そういうことはあるんでしょうか。
#168
○政府参考人(小池信行君) これも先ほど御答弁申し上げたこととあるいは重複するかもしれませんが、やはり簡易分割におきましても事前に労働組合あるいは労働者と協議をするということは、これは経営のありようとしても望ましいことだというふうに思っておりますが、ただ、それは今回の商法の改正法案においては会社に対する義務づけとはしていないところでございます。
#169
○八田ひろ子君 義務づけはしていないけれども、法務省としてはそういうふうに希望されているということですね。
 本当に、簡易分割であるかないかはともかく、株主総会の議決によるか取締役会だけの議決によるかの違いはありますが、この商法改正で労働者にとって分割計画書というのは大変重要な問題だと思いますので、次にこの会社分割計画書について伺いたいと思いますけれども、この商法改正案では、この計画書にはどのような中身が書き込まれるか、明記されるのか。働く人にとっては、午前中のお話にもありましたが、今後の自分の人生そのものにかかわることですが、この計画書は分割される会社の規模とか業務、場所や資産、生産額、予想している売上高や当分の間の収支の見通し、それと労働時間や賃金など働く人にとって最も重要な中身というのはきちんと盛り込まれているのかどうか。それを働く人、労働者が法律上も自由に閲覧をできるようになっているのかどうか、この二つをお尋ねします。
#170
○政府参考人(小池信行君) お尋ねの分割計画書、これは新設分割の場合、それから吸収分割の場合は分割契約書というふうに呼ぶわけでございますが、まず、この分割計画書の例で御説明をいたしますと、この分割計画書に何を記載するかということにつきましては、改正法案の三百七十四条第二項の方で定めているところでございまして、実はこれは非常に中身が多岐にわたります。
 例えて申し上げれば、新しく設立されて営業を承継することになる会社の定款、それからその設立される会社が発行する株式の割り当てに関する事柄、それから設立される会社の資本金等の金額、さらには新会社に承継されることになる権利義務に関する事項、こういうものが主として記載されるわけでございます。
 労働関係はこの承継される権利義務の一つでございまして、この点は衆議院における議員修正において、雇用契約というものがこの権利義務に属するということが例示的に示されているところでございます。
 先生が先ほどお尋ねになりました会社の資産に関する事柄、これは実は直接は分割計画書の問題ではございませんで、恐らくこれからお尋ねがあるかもしれませんが、その分割した両方の会社が債務の履行の見込みがあること及びその理由を記載した書面を備え置けということになっておりますので、その中で資産状態は記載されることになるというふうに理解しております。
#171
○八田ひろ子君 働く人は自由に見ることができますか。その計画書を法律上も労働者が自由に閲覧することができるということがありますか。
#172
○政府参考人(小池信行君) 分割計画書等の閲覧権者はこれは法律で定められておりまして、原則としては株主それから会社債権者でございます。この株主、会社債権者につきましてはそれぞれ、株主については株主総会で分割に賛成するか反対するか決めるために、それから債権者については債権者保護手続をとるために異議を述べるかどうか、そのためにその中身を閲覧することができるとしているわけでございます。
 それで、労働者の場合も、これも労働者自身が株主であるという場合もございますし、それから会社債権者であるという場合もあるわけでございます。例えば、会社に対して未払いの給料債権を持っているとか、あるいは既に勤務した期間に対応する退職金債権を有しているとか、あるいは社内預金債権を持っているとかいう場合にはこれは労働者も債権者でございますので、その債権者の立場で分割計画書等の書面を閲覧することができるわけでございます。
#173
○八田ひろ子君 債権者でなくても、私は利害関係者というふうに読み取っているんですけれども、利害関係者である労働者が閲覧できることになっているんじゃないんですか。
#174
○政府参考人(小池信行君) 株主総会の前に備え置くことを予定している書面につきましては、これは株主と会社債権者に限るわけでございまして、いわゆる先生の御指摘の利害関係者はこれは含まれないということになります。
#175
○八田ひろ子君 そうしますと、自分に物すごいかかわりのあるところ、二週間閲覧期間があるというんですけれども、そういうのはその前には全く見せられないということ、先ほど労働者と話し合うのは望ましいというふうに言われたんですけれども、そことはどういう関係があるのか。そこのところをもうちょっと詳しくお知らせいただきたいと思います。
#176
○政府参考人(小池信行君) この商法改正法案が予定しております閲覧権というのは、これはあくまでも法律上の権利として規定したものでございますので、会社が自発的に分割計画書などを労働者に開示するということは一向に差し支えないわけでございます。ですから、これは会社の判断にかかわることということになろうかと思われます。
#177
○八田ひろ子君 会社の判断じゃなくて、株主や契約関係にある者、それは閲覧できるんじゃないんですか、この二週間の間に。
#178
○政府参考人(小池信行君) 先ほども御答弁申し上げましたように、事前開示書面と呼ばれるものにつきましては、これは閲覧権者は株主と債権者に限られているわけでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたように、衆議院における議員修正におきまして、労働契約の承継に関してはあらかじめ労働者と協議をするものとするという修正が加えられておりますので、仮にこの規定が働くということになった場合には、その労働契約の承継に関する事項の範囲内で分割計画書等の内容の開示が行われるということになるのではないかというふうに思っております。
#179
○八田ひろ子君 株主総会の最低二週間前に備え置かれたこの計画書を労働者は閲覧することができる。それは、先ほどちょっとお話をしましたけれども、いろんなところに工場があるわけですから、これは本社に備え置くというふうになっておりますけれども、先ほどの例でいいますと、それぞれの工場で労働者は見ることができるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
#180
○政府参考人(小池信行君) この改正法案におきます分割計画書等の備え置き場所は本店に限っておりまして、本店以外の場所で閲覧をするということはこれは法律上はできないわけでございます。
 ただし、これも先ほど来申し上げております任意の措置の問題ということになりますけれども、会社の自発的な裁量で本店以外の場所で労働者の方にその中身を開示するということは可能でございます。
#181
○八田ひろ子君 会社がそれを認めれば労働者の働いているところで閲覧ができるという御答弁でありましたけれども、この問題に関連して、事前協議は後で労働省にもお伺いをするんですけれども、衆議院でも、またきょうのこの委員会でも問題になりましたけれども、不採算部門の切り捨てあるいは優良部門の切り離し、こういうことがこの法案で行われることになるのではないか、こういう心配はどこでもされるわけであります。
 会社分割で不採算部門を分割して新会社に衣がえをする、その会社に転籍すれば結局倒産させられて整理解雇になるんじゃないか。まさにペンキを塗りかえた泥船に乗せられる危険をどうやって回避したらいいのか、労働者は大変不安が大きいわけでありますが、法務省はそういうような会社分割は認められないというふうにおっしゃいますが、法律で罰則つきでこれは禁止ということになっておるんでしょうか。
#182
○政府参考人(小池信行君) 御指摘のように、商法改正法案におきましては、分割をする当事会社その双方につきましてそれぞれが負担する債務の履行の見込みがあるということを要件にしております。したがいまして、御指摘のような不採算部門を切り離して営業を承継させるということにつきましてはこれは商法上は許されない、具体的には、これは最終的には裁判所の判断によって会社分割が無効とされるということになろうかと思います。
 ただし、その罰則という点につきましては、ただ不採算部門を切り離したというだけでは罰則はかけられないということになります。
 ただし、取締役等が会社の資産状態につきまして虚偽の記載をした、先ほど申し上げました債務の履行の見込みがあることという書面を備え置くべきこととされておりますが、その書面に虚偽の記載をしたという場合には過料の制裁を科すことになっておりますし、さらにそのことによって労働者などが損害を受けた場合には取締役の責任を民事上追及することができるというふうに考えております。
#183
○八田ひろ子君 そのような分割計画書がもしつくられるというような場合、事前にこの計画書は認めるわけにはいかないといってとめることができる人はどういう人ですか。
#184
○政府参考人(小池信行君) この点はなかなか難しい問題がございますが、まず、法律的に考えますと、特に吸収分割の場合、つまり既存の会社が既存の別の会社から営業を承継する、その場合に譲り受けるのがいわゆる不採算部門であるという場合には恐らくその営業を譲り受ける方の会社の株主が反対するということになるだろう、そこが一種の抑止力になるというふうに考えられます。
 もう一つ考えられますのは、これは不採算部門だけを分割会社が切り離そうとする場合、これは先ほど来申し上げておりますように、事前に労働組合との協議、分割計画書をつくる前に事前にその協議をするというようなそういう労使慣行が形成されるとすれば、そこでまたチェックをされるということになろうかと思っております。
#185
○八田ひろ子君 そういう労使関係の慣行があればというふうにおっしゃるんですけれども、この法律でそれが担保はされていないというふうに先ほどからお話を聞いています。また、分割計画書そのものがさっきの御説明では第三者の関与なしにいわば勝手につくれるわけですから、そうしますと、土地代とか工場の施設設備というのを高い評価にして不当に含み益を膨らませて、債務超過にならない計画書になれば、それは実際には可能じゃないでしょうか。そういうことはきちんととめることができるというふうに言い切れるんでしょうか。
 また、先ほど慣行でそういうことができるかもしれないというふうに思いましたけれども、この分割は違法で無効だと労働者が、労働者が見れば、これは含み益というのが実際には現場の働いている人ならわかる可能性があるんですよね。ところが、そういう権利というのは実際にあるのかどうか。さっき希望をおっしゃったんですが、そこのところはどうなんでしょうか。
#186
○政府参考人(小池信行君) 先ほど来申し上げております債務の履行の見込みがあるということ、これを記載した書面、通常は分割の時点におけるその会社の債権債務の状態がどうなっているか、つまり、まず財産状態がどうなっているか、負債がどうなっているか、これを記載することに恐らくなるだろうと思います。その場合、おっしゃるように、要するに評価をどうするかという問題があるわけでございます。
 通常は、これは債務の履行の見込みがあるというこの書面をつくるについては、恐らく公認会計士さんのようなそういう専門の方々の手を煩わせるということになるだろうというふうに思われます。さらに、この債務の履行の見込みがあるというこの書面には、その財産をどういう方法によって評価をしたのか、時価によったのか、簿価によったのか、時価によった場合にはどういうような算定基準によったのかということも、これも具体的に記載すべきものというふうに思っておりまして、そのような記載をもとにしてそこに記載されている事項の真否を判断するということになるのではないかと思っております。
#187
○八田ひろ子君 労働者のチェックはできますか。そういう場合に労働者がきちんとそれを訴えることができるというのが保障できますか。
#188
○政府参考人(小池信行君) 少なくとも制度的にそこが担保されているというわけではございません。
 先ほど来申し上げておりますように、そういう不採算部門の切り離しというような、その会社の分割を会社側が試みようとする場合には、それは必ず手続として事前に労働組合等との協議をするのが望ましいということを今申し上げたわけでございます。もちろんそれも制度的に必ずそうしなければならないということにはなっていないわけでございますが、法務省といたしましても、今回もし仮にこの商法改正案を成立させていただければ、今回のこの立法において会社分割の目的とともに労働者に対する配慮がいろいろされているということを、これをいろんな手段で周知徹底を図りたいというふうに思っております。
#189
○八田ひろ子君 じゃ、次に労働省に労働契約承継法について伺いますが、分割会社というのは、設立会社に承継される営業に主として従事する労働者については、分割計画書中に記載の有無、その人が行くか行かないか、これを書面により通知しなければならないとなっておりますが、それ以外のこと、記載の有無以外のことで通知するものにどういうものがあるんでしょうか。
#190
○政府参考人(澤田陽太郎君) 承継法では第二条で一定の範囲の労働者について通知をするということになっておりますが、省令で決める事項につきまして、今後検討いたしますが、現在考えておりますことは、例えば分割後において労働者が従事する仕事、業務等の労働条件に関する事項、それから先ほど議論がありましたように、会社の本店に備え置かれます分割計画書等において明らかにされている事項のうちで労働者にとって通知することが重要と思われる事項、例えば分割の実施時期、新設会社等の本店の所在地、労働契約の承継先であります会社の事業等会社の概要に関すること、こうした点は労働省令の中で決めていきたい、こう思っております。
#191
○八田ひろ子君 ちょっと確認ですが、ここでは労働契約という言葉が何度も出てくるんですが、法案にはそういうのはないわけですね。定義というのは、労働基準法で使っている労働契約という用語と同じと考えてよろしいですか。
#192
○政府参考人(澤田陽太郎君) はい、そのように考えます。
#193
○八田ひろ子君 同じということになりますと、ここで言います労働契約というのは労働条件と一体になっているわけですから、労働基準法の十五条で労働条件の明示の義務がありますね、罰則も百二十条で三十万円以下の罰金。この明示義務の規定は間違いないですか。
#194
○政府参考人(澤田陽太郎君) 基準法十五条の明示義務の規定だとすれば、そのとおりでございます。
#195
○八田ひろ子君 そうしますと、本法案の会社分割によって設立される会社に労働契約を承継するということなんですけれども、労働基準法の十五条の明示義務が当然あるわけですから、働いている人にとっては自分がどこで何をどうするのか、仕事の内容、前提となる諸条件、これが変更になるのかが今いろいろ問題になるわけですけれども、実際に今の労働条件が承継されるかどうか、これを労働者にきちんと明示をしなくちゃいかぬというふうに思うんですけれども、それはされるわけですね。
#196
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回の会社分割におきます権利義務の承継は、たびたび御説明しておりますように、包括承継という法的性格でございますので、御指摘の現在いる労働者の労働契約の内容となっております労働条件、これについてもいささかの変更もなく承継されるということが明白であります。したがいまして、労働者に通知する事項として基準法十五条の各号列記の労働条件すべてを通知する必要性はない、今ある労働条件がそのまま承継されますので、その点の不安はないと思っております。
 ですから、労働条件のうち重要なものについてのみ記載することが適当ではないか、こう考えております。
#197
○八田ひろ子君 局長は不安がなくても、労働者は不安があります。
 私、ちょっとお伺いしたいんですけれども、これは労働法のコンメンタールなんですけれども、ここに出向のことが、明示すべき時期、労働条件というのが書いてありまして、ここでは、「在籍型であれ移籍型であれ、出向先と労働者との間で新たに労働契約関係が成立するものであるので、」「当該事業場における労働条件を明示することが必要である。」、こういうふうに書いてあるんですが、この法案のこういう場合には労働者が幾ら不安があったとしても明示しないということなんですか。
#198
○政府参考人(澤田陽太郎君) 明示しないということではありませんで、包括承継という法的性格上、労働条件は今あるものがそのまま移りますので、どこまで書くかということは、それは全部書けばいいかもしれませんが、その必要はないだろうということでございます。
#199
○八田ひろ子君 もう私は時間が来ましたので次に譲りますけれども、それが今大きな問題になっている。次回は具体的にお聞きしたいと思います。
 終わります。
#200
○大脇雅子君 会社分割に伴う労働契約の承継法案について、幾つかの論点をお尋ねしたいと思います。
 まず、営業の概念及び主として従事する労働あるいは従として従事する労働の意味についてお尋ねしたいと思います。衆議院での審議におきましては、本法案の制度趣旨と内容について一定の解明がなされたと思われますが、次の諸点を確認しておきたいと思います。
 まず、会社分割にかかわって使用される営業の全部または一部の概念の規定についてであります。
 営業は、商法上の定義に従いまして分割計画書等によって決まるのでしょうか。あるいは、客観的に判断される指標はどういうものでしょうか。客観的解釈基準は明確に示されるべきではないかと考えるわけであります。例えば、製造、開発、取引、人事、総務等さまざまな会社、企業の事業部門を総体とする企業活動を行う部門、これをどういうふうに考えるべきか。あるいは、特定の工場とか本社・本店、支社・支店、営業所、そうした地域的、場所的概念を指すのかなど、その定義によって非常に多義的になり得るのではないか。そして、その定義の定め方によって労働関係の一部を除外するということがあってはならないと考えますが、その可能性はないのか、法務省にお尋ねいたします。
#201
○政府参考人(小池信行君) 御指摘の営業という用語でございますが、これは既に現在の商法に存在をするわけでございます。ただし、商法自体は営業とは何かという定義規定は置いておりません。これは、解釈にゆだねられた問題ということになるわけでございまして、ただ、この点につきましてはほぼ確定した裁判例がございまして、判例法上次のように定義づけられるものと考えております。読み上げます。
 営業とは、営業用財産である物及び権利だけでなく、これに得意先関係、仕入れ先関係、販売の機会、営業の秘訣、経営の組織等の経済的価値のある事実関係を加え、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産をいう。
 これが大体判例法上固まった定義でございます。つまり、これが営業の客観的指標でございまして、現実に問題となった財産が果たして営業に当たることになるのかどうかというのは、今申し上げたような基準に照らして最終的には裁判所が判断をするということになるわけでございます。
 したがいまして、分割をしようとする会社の経営者が一定の財産やそれから労働関係を切り出して、これを一つの独立した単位の営業として会社分割の対象としたといたしましても、裁判所の判断でそれは営業を構成するものではないという認定が下されれば、これは会社分割としては効力がないということになるわけでございます。
 それから、営業に従事する労働者の問題について御質問がございました。
 営業の概念は今申し上げたとおりでございますけれども、この概念の中には、これは現に今営業が営まれているものが、それが新しい会社に承継されていってもそのまま機能するということを前提にしているわけでございますので、現にある営業に属し、そこに働いている労働者のうちその営業に欠くことができないものにつきましては、これを除いて営業を承継させるということはこれはできないものというふうに考えております。
 ただし、例えば営業にごく一部しか従事をしていないという方もおられるわけでございまして、そういう方につきましては、これはいわば営業にとって必要不可欠というものではないわけでございますので、そういう労働者を除外した会社分割というものも商法上は可能になるわけでございます。
 ただ、先ほど先生御指摘のように、営業に主として従事しているのか従として従事しているのかによって労働関係承継法の方で手当てをされていることは、これはまた別論でございます。
#202
○大脇雅子君 商法上の概念として有機的な一体性ないしは必要不可欠という概念規定があるわけですが、それでは労働省の方にお尋ねしたいのですが、営業の定義が明確になったとしても、その営業に主として従事していると判断されるのかあるいは従として従事していると判断されるのかによって分割会社への労働契約の承継が当然包括承継か否かということが分かれることになっているわけです。したがって、本法案の構造は、主従の判断基準のとり方によって労働者の権利義務関係が大きく左右されるというふうに考えられるわけですが、どのような判断基準を定めるのでしょうか。指針において具体的に明らかにすべきではないかと思うわけですけれども、その場合の基本的な考え方についてはどのように考えられるのでしょうか、お尋ねをいたします。
#203
○政務次官(長勢甚遠君) 御質問の基準は大変重要なものでございますから、できる限り客観的なものにすることが必要であるというふうに考えております。
 このため、労働省令におきまして、分割計画書等の作成時点で当該労働者が従事している業務、または分割計画書等の作成時以前の一定期間に従事した業務状況等を勘案して、主として従事しておる業務が何であるか、営業が何であるかということを判断するということを労働省令で明確にした上で、さらに指針で具体的な判断の方法等を示すことによって明確なものにしていきたい、このように考えております。
#204
○大脇雅子君 説明がちょっと抽象的なので少しイメージがわかないのですが、例えばどんなような判断基準をお考えになっていらっしゃるんでしょうか。そして、指針の決め方などはどのようになさるのでしょうか。
#205
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今、総括政務次官からお答えいたしました二点が省令でのまず中心的な基準になると思いますが、そのほかにも付加的な判断基準というものが必要になるのではないかというふうに考えております。
 そうした付加的な判断基準につきましては、省令で書けるものあるいは指針で書くものがあろうかと思いますが、今後、これまでの国会での御議論等も踏まえ、かつ労使の意見を聞いた上で詰めてまいりますが、現在私どもが考えておりますことを例えばという形でお話ししますと、一定期間の業務状況とか計画書作成時点での就業状況のほかに、当該労働者のこれまでの職業経歴、いわばキャリア形成がどうであったかということも場合によっては付加的判断要素として見なければならないのではないかと。職業経歴という問題とも不可分でありますが、いわゆるゼネラリストとかスペシャリストとかいう形で日本の現在の企業の中ではキャリア形成を積まれている方も結構おりますので、そうした大ざっぱな言い方ですが、ゼネラリストの場合、スペシャリストの場合について何か付加的要素として特段留意することがないのかどうか、このようなことも十分考えていきたいと思います。
#206
○大脇雅子君 そうしますと、どのようにして会社分割がされるかということもあり、法の施行後の実情に合わせてやはり見直しが必要になってくるんじゃないかと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
#207
○政府参考人(澤田陽太郎君) 法施行までに指針を決め、十分な周知期間を持って法の運用に当たりたいと思いますが、実際、会社分割が動き、それによってどういう状況が生まれるか、この現実の推移を見ることも大事でございます。そうした中で、指針に定めたことが見直しを要するということであれば、先生御指摘のように当然適切に対処していかなければならない、こう思っています。
#208
○大脇雅子君 そうした主従の判断基準がたとえ明確にされたとしても、労働者が従事すべき営業への配置転換の時期とか、あるいは研修、教育訓練を受ける時期とか、あるいは出向を取り消して戻るときの時期とか等によって非常にその区分が不明確あるいは不正確な場合があるのではないか、この方式を用いた労働者への差別的な取り扱いや選別、あるいは複数組合併存下における不当労働行為など、そうした労働法上違法とされるような問題が生じるのではないかというのが労働者側の非常な不安になっていると考えます。
 例えば、こういう法律がなかった場合の、国鉄の分割・民営化に伴って二百件を超える多くの不当労働行為の救済申し立てが行われて、全国の労働委員会の救済命令が続いていたということは非常に記憶に新しいわけですが、こうした事態がこの会社分割法案のもとで起こってはならない、そうしたことについて明確な手だてを講じておくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
#209
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今の御指摘の点は二つの部分に分かれるかと思います。
 一つは、例えば労働者の違法な選別にこれが使われるということであれば、これは不当労働行為直の問題として既にある現行の法規のもとで適正なる措置がとれるわけでありまして、こうした点は指針の中で主たる従たるという問題とは別に明確にすることが可能であります。
 それから、主たる従たるが明確でないということによって混乱が生じ、それが労使紛争になるということは大変私どもも不本意でございまして、そういうことがないようにできるだけ明確な基準をつくるということで最大限の努力をしてまいりたい、そしてできた指針の周知徹底に努めてまいりたい、かように思います。
#210
○大脇雅子君 その点の法と指針の運用について、労働大臣の御意見はいかがでしょうか。
#211
○国務大臣(牧野隆守君) 先生御指摘のとおり、分割に際しまして関係する労働者の皆さんがはっきりしていないというような状況は、これはもう絶対に避けなければならないと思っています。したがいまして、先ほどから答弁しておりますように、労働省令においてできる限り客観的な基準を設定することは当然でございまして、さらに指針において基準の適用の明確化を図りたい、こう考えており、ただいまは抽象的な答弁しかいたしておりませんが、現実に適用される場合にそこにおのずから解釈の相違だとかが出てくるということも当然予想されるわけでございまして、労働省としては、関係者からもし御意見があれば十二分に拝聴して、いかに客観的に基準ができているかということで御意見も賜るというようなこともしなければいけないなと、このように考えております。
#212
○大脇雅子君 恐らく、具体的にさまざまなクレームがあり、あるいは問題が生じてくるのではないかということがありますので、指針を、公正でかつ平等な形で活用できるようなものをぜひ充実させていっていただきたいと思います。
 さて、会社分割法における株主及び債権者に対しては、分割計画書等の事前開示手続を前提にいたしまして、分割無効の訴えとか反対株主の株式買い取り請求権とか、あるいは反対債権者の異議権というのが認められているわけであります。この意味では経済的変動に対する株主や債権者の保護というのは考えられていると思うんですが、会社分割に伴って雇用と労働条件の変動が当然予想される労働者個人について、やはり私は同様の保護が必要であると考えられます。
 今までの質疑の中で、分割計画書の事前開示手続、どの部分が労働者が見れるのか、あるいはきちっとチェックできるのかとか、あるいは分割計画書前に、その分割計画書に記入されるべき事前協議というのはどこまでされるのかというのは非常にあいまいであるように思われます。したがって、例えば事前の通告の権利とか労働者の契約承継の拒否権というのは、株主や債権者と比べましてその必要性はまさるとも劣らないというふうに思うわけであります。
 衆議院の審議において、労働者も債権者と同視する、そして債権者保護手続の中でさまざまな情報開示が得られるという旨の答弁があったと考えられますけれども、この点について再度お答えをいただきたいと思いますが、法務省、お願いいたします。
#213
○政府参考人(小池信行君) 労働者につきましても、先生御指摘のとおり、その会社に対して債権者という地位に立つ場合には他の債権者と同様の権利を行使することができるわけでございます。具体的には、先ほども申し述べましたが、未払いの賃金債権を有している場合であるとか、既に勤務した期間に対応する退職金債権を有している場合、これは債権者としての地位を持つわけでございます。
 そのほかに、この商法におきましても労働者の地位に対する配慮というものを幾つかしております。
 幾つか申し述べますと、一つは、そもそも会社分割の単位を営業としたことでございます。つまり、営業がばらばらに切り売りされるということがないように、もしそういう事態が起きますとそこで働く労働者の労働の場が失われるということになりますので、そういうことがないように一つのまとまりがある単位の営業をその分割の対象としたということが一点でございます。
 もう一つは、分割計画書などに承継される労働契約を記載することによりまして、分割の効果として当然に労働関係が承継をされるということにしたことでございまして、これも労働者の雇用の場が確保されるようにしたものでございます。
 さらに申し上げますと、分割によって承継されます労働契約は承継会社にそのまま引き継がれることになりますので、労働条件が不利益に変更されるということもないわけでございます。
 もう一つは、これは先ほど申し上げたと思いますけれども、いわゆる不採算部門の切り離しというようなそういう形での分割を防止するために、分割当事会社双方にとって債務の履行の見込みがあるという要件を加えることによりまして、赤字部門の切り離しにより労働者の雇用の場が脅かされることがないように配慮をしているという点でございます。
#214
○大脇雅子君 確かに、おっしゃるように営業を一つのまとまりとして切り売りができないというような形にまとめた分割ということとか債務の履行可能性というのは非常に重要なメルクマールだと思いますが、これ一方、ちょっと質問と外れますけれども、債権者の中には下請業者とかあるいは取引業者が入ります。非常に専属性が高い中小企業が加わる場合ですが、この場合は分割計画書に債権債務条項が入るわけですけれども、これで適当に打ち切るとか打ち切らないとか、こういう話になると、それが恣意的にあるいは計画的にリストラを求めてやられると、そのところにおける労働者にも非常に影響があるんですが、この下請業者とか取引業者に関して何か規制はありますか。
#215
○政府参考人(小池信行君) 下請業者の関係でございますが、先ほど御質問がありました営業概念の中に、営業に不可欠な要素として、場合によっては特定の下請関係が含まれるということもあり得ようかと思います。その場合には、これは営業にとって必要な契約関係でございますので、それは会社分割とともに新会社に承継されていくということになろうかと思います。
 仮にそうでないものであったといたしましても、当然、分割する会社から営業を譲り受ける、承継を受ける会社の方に承継されていく権利関係の中には下請関係もこれは含まれるわけでございますので、これが御指摘のように分割計画書に記載をされますれば従前と同じ条件で、契約条件の引き下げ等をすることなく承継されるということになるものと考えております。
#216
○大脇雅子君 そうすると、ちょっと重ねて、もしその分割計画書に書かれていなかったらもう保護はないんですか。
#217
○政府参考人(小池信行君) この商法の改正法案の建前では、承継される権利義務、これはすべて分割計画書に記載をされるということが要件、記載されたものが当然承継されるということになるわけでございます。記載されなかった場合は、これは従前の分割する会社との間の契約関係がそのまま存続するということになろうかと思います。
#218
○大脇雅子君 どうもありがとうございました。
 それから、会社分割における労働者の労働契約の承継において、これは一定の立法的な解決を目指すという特別法の立場にありますが、今回、労働契約の一方当事者である使用者との関係で、第三者への譲渡に関する民法の第六百二十五条一項との関係をどうとらえたらいいかということであります。
 本法第三条は当然承継で、民法六百二十五条一項を適用しない理由は何でしょうか。また、本法第五条の場合に、営業に従として従事する労働者の異議を認める理由はどこにあるのでしょうか、お尋ねをいたします。
#219
○政務次官(長勢甚遠君) 今度の法案におきましては、承継される営業に主として従事する労働者につきましては分割計画書等の記載に従って当然に承継されることといたしております。これは、商法等の改正案における会社分割制度が合併と同様包括承継としておるということでありますので、そういうことに加えまして、主たる営業に従事しておる人たちについては、合併と同様に雇用及び労働条件の維持が図られているということ、承継後もほとんどの場合に分割以前についていた職務と同じ職務に引き続きつくと想定されていることなどから、当然承継といたしましても実質的な不利益はなく、また、円滑・容易な会社分割の必要性が要請されていることからも、商法等改正案に従い、労働者の同意を前提とせず、当然承継としているということでございます。
 また、承継される営業に従として従事する労働者であって、労働契約が承継される、つまり承継会社の方に行くということにされた労働者につきましては、その労働者はそれまでに主として従事しておった職務から切り離されるという不利益を生ずる場合が想定されますので、こういう場合には保護の観点から異議申し立ての機会を付与するということにしたものでございます。
#220
○大脇雅子君 民法第六百二十五条一項を適用しないことによって転籍の同意権の空洞化が生じはしないかなと心配するんですが、その点どうでしょうか。
#221
○政府参考人(澤田陽太郎君) 転籍の場合の民法六百二十五条の同意の問題は厳然として生きておりますし、機能いたします。今回は会社分割の話でありますので、転籍の場合とは別物ということで私どもも理解しておりますし、今後ともそういうふうに指導等の場合にも対応していきたいと思っております。
#222
○大脇雅子君 その点が混乱しないように、指導の方はしっかりお願いしたいというふうに思います。
 次は団体交渉と労働協約についてお尋ねしますが、労働協約のいわゆる債務的部分の承継の範囲について当該組合と分割会社との合意が要件とされていますが、全部または一部の取り扱いを合意にした意味というのはどんなところにあるんでしょうか。
#223
○政府参考人(澤田陽太郎君) 労働協約の承継につきまして、第六条でいろいろ特例を、特例と申しますか規定を置いておりますが、基本はまず六条の三項の方で、分割会社と組合との間で締結されている労働協約につきましては、その対象となる組合員が設立会社等に承継された場合には、設立会社と当該組合との間で従前にあるといいますか現在ある労働協約と同一のものが締結されたとみなすというみなし規定を置いております。それは、労働契約と同じように協約も承継されるというふうにしてしまいますと、分割会社と労働組合等との労働協約が新設会社に移ってしまいまして、分割会社では労働協約がなくなるという極めて不都合なことになりますので、そうした法技術上の観点も含めて書きぶりをしております。
 それを原則とした中で、債務的部分につきましては、例えば労働組合の事務所を何カ所提供する、あるいは組合専従を何人まで認めるとか、こういうものについて新設会社との間で同じ協定が結ばれたものとみなすということにしてしまいますと、使用者側から見て不都合なことになります。必要以上の、いわば二倍計算、三倍計算という話が出てまいりますので、そこの合理性を保つために、債務的部分で労使が合意をした部分については分割計画書に記載する限りにおいて合意した部分が設立会社等の方に承継されるという構成をとっている次第であります。
#224
○大脇雅子君 そうしますと、労働協約の規範的な部分というのは包括承継でいく、そして債務的な部分というのは合意をされた部分を除いてあとは承継とみなされるということですね。
 では、労使慣行というものについてどう考えたらいいんでしょうか。規範的部分と債務的部分とに関するもちろん双方について労使慣行というものをどう考えたらいいのか。あるいは、その労使慣行は継続するというようなことを労使の間で決めれば、それはそれで効力を持つんでしょうか。
#225
○政府参考人(澤田陽太郎君) 分割会社にある労働組合の組合員が設立会社等に承継されたとした場合に、一番端的な例、恐縮ですが、吸収会社の方に分割会社の組合員が承継されたというケースを考えますと、吸収会社の方にはもともと別の組合があるということも想定されます。そうしますと、吸収会社の方では二つ組合ができるという形になります。その場合に、吸収会社において新しく来た組合員についてどういう労使慣行を結んでいくかという問題は、設立会社と移ってきた労働者の労働組合で、分割会社との労使慣行をそのまま維持するのがいいのか、あるいは新たにお互い協議をして新しい労使慣行を構築していくのがいいのかは自主的にお話し合いを願うことが一番いいのではないか、かように考えております。
#226
○大脇雅子君 吸収合併の場合はそういうこともあり得るんですが、しかし労使慣行というのは労働契約とある意味では一体性を持って存在をして会社の労使関係を規律しているわけですから、新設の場合はどうですか、やはりそれは一体化するんじゃないですか。
#227
○政府参考人(澤田陽太郎君) 新設の場合は、先生がおっしゃるようにこれまた労使の自主的な慣行の問題でございますので、行政がかくあるべきと言うことはできませんが、多分大方の場合にはそれまでの労使慣行をなるべく尊重して新しい新設会社でもやっていこうということになるものが多いだろう、こう思っております。
#228
○大脇雅子君 時間が参りましたので、次の質問は次回にさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#229
○委員長(吉岡吉典君) 両案に対する本日の質疑はこの程度といたします。
    ─────────────
#230
○委員長(吉岡吉典君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案の審査のため、来る二十三日午前十時に、参考人として日本経営者団体連盟参与成瀬健生君、弁護士奥川貴弥君、弁護士坂本修君及び中小労組政策ネットワーク常任運営委員小谷野毅君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#231
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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