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2000/02/29 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 国民福祉委員会 第6号
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2000/02/29 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 国民福祉委員会 第6号

#1
第147回国会 国民福祉委員会 第6号
平成十二年二月二十九日(火曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十五日
    辞任         補欠選任   
     脇  雅史君     尾辻 秀久君
 二月二十八日
    辞任         補欠選任   
     尾辻 秀久君     日出 英輔君
     松崎 俊久君     直嶋 正行君
     柳田  稔君     堀  利和君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         狩野  安君
    理 事
                田浦  直君
                山崎 正昭君
                勝木 健司君
                山本  保君
                小池  晃君
    委 員
                久野 恒一君
                中原  爽君
                南野知惠子君
                日出 英輔君
                水島  裕君
                今井  澄君
                佐藤 泰介君
                直嶋 正行君
                堀  利和君
                沢 たまき君
                井上 美代君
                清水 澄子君
                入澤  肇君
                堂本 暁子君
                西川きよし君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大貫 延朗君
   参考人
       放送大学教養学
       部教授      神代 和俊君
       中京大学経済学
       部教授      都村 敦子君
       日本労働組合総
       連合会総合政策
       局生活福祉局長  桝本  純君
       全国労働組合総
       連合事務局長   坂内 三夫君
       千葉大学法経学
       部助教授     広井 良典君
       東京大学経済学
       部教授      神野 直彦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
〇参考人の出席要求に関する件
〇国民年金法等の一部を改正する法律案(第百四
 十五回国会内閣提出、第百四十六回国会衆議院
 送付)(継続案件)
〇年金資金運用基金法案(第百四十五回国会内閣
 提出、第百四十六回国会衆議院送付)(継続案
 件)
〇年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関す
 る法律案(第百四十五回国会内閣提出、第百四
 十六回国会衆議院送付)(継続案件)

    ─────────────
#2
○委員長(狩野安君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る二十五日、脇雅史君が委員を辞任され、その補欠として尾辻秀久君が選任されました。
 また、昨二十八日、松崎俊久君、柳田稔君及び尾辻秀久君が委員を辞任され、その補欠として直嶋正行君、堀利和君及び日出英輔君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(狩野安君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に放送大学教養学部教授神代和俊君、中京大学経済学部教授都村敦子君、日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長桝本純君、全国労働組合総連合事務局長坂内三夫君、千葉大学法経学部助教授広井良典君及び東京大学経済学部教授神野直彦君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(狩野安君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(狩野安君) 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、三案について参考人の方々から御意見を聴取することといたしております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、三案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の答弁とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず神代参考人から御意見をお述べいただきます。神代参考人。
#6
○参考人(神代和俊君) 今回の年金改正法案は少子高齢化が従来予想していた以上のスピードで進行していくことに伴う年金財政の収支バランスをとるということを基本的な枠組みにしていると思います。
 御承知のように、平成九年一月の人口推計と平成四年九月の人口推計との差を見ますと、男女平均の六十五歳時点における余命年数が二十・三年から二十一・一年に四%増加しております。また、合計特殊出生率は一・九一から一・六一に低下をいたしております。
 その結果、二十歳から六十四歳の人口を分母にいたしまして六十五歳以上人口を分子といたします比率をとりますと、新しい人口推計では、二〇五〇年時点において六四・六%にまで増加するということが見込まれております。御承知のように、これと同じ数字は二〇〇〇年時点では二七・七%、二〇二五年では五〇・二%でございます。言いかえますと、二〇〇〇年時点では働く人三・六人に一人の割合で高齢人口が存在いたしますが、二〇二五年にはこれがほぼ二人に一人、二〇五〇年時点におきましては一・五五人に一人という大変大きな負担を負うことになります。
 このような死亡率の低下あるいは平均余命の伸びによりまして、年金給付総額は四%ほど増加すると見込まれます。
 高齢人口比率のこのような上昇によりまして、実質的に賦課方式に近い現行の年金方式では、年金給付総額の増加を賄うための現役世代の厚生年金保険料率が最終的に三四・三%、国民年金保険料は二万四千三百円にまで増加すると見込まれます。これを将来、現役世代の負担可能な限度にまで抑えるためには、給付の伸びをできるだけ抑制する以外に方法がございません。特に、新旧人口推計の比較を見ますと、二〇二五年以降二〇五〇年までの負担が特に大きくなることが予想されます。
 以上の要因のほかに、成長の鈍化に伴って賃金上昇率が低下し被保険者の伸びが低下するなどの問題が生じますが、それによる負担増加の見通しにつきましては、賃金上昇率、物価上昇率、運用利回りが、お手元のメモにありますような形で同程度ですべて低くなった場合には最終保険料率にはほとんど影響を及ぼさないと推計されておりますけれども、私見では、成長鈍化によって失業率が上昇したり、あるいは被保険者の減少が生ずることも考えられますので、その影響はもう少し厳しくなるのではないかと考えます。
 このような予想以上の高齢者負担の増加に際して、将来の働く世代の負担を負担可能な限度内ぎりぎりに抑えていくということから、具体的には保険料率を現行給付水準で放置した場合の三四・三%にもなるものを二六%程度にまで抑えたいということで、そこのメモに書きましたような四つの基本的な手段の組み合わせによりまして将来的な保険料率を抑えたい。
 特に、六十五歳以降の年金額を賃金スライドをやめて物価スライドのみにするということが四%ほど保険料の伸びを抑制する効果があると考えられます。また、報酬比例部分の年金の支給開始年齢を二〇一三年から段階的に六十五歳に繰り下げることによって三%ほど抑制できるはずであります。
 その他はそこにあるとおりなので省略いたします。
 当初、年金審議会におきまして御答申申し上げました案と改正法案とは二つの点で御承知のように違いがございます。保険料の凍結と基礎年金国庫負担の三分の一から二分の一への引き上げということで、これは政治的な御判断によるものでありますが、それによって最終保険料率は二五・二%になるものと予想されます。さらに、以上の改正に加えまして総報酬制を導入いたしますと、最終保険料率は現行給付水準維持の場合の二六・七%から一九・六%に引き下げられると見込まれると思います。
 今回の法案のもとになりました審議会答申におきましても、女性と年金の問題は非常に複雑な問題を含んでおりますために早期の検討ということにゆだねたわけでございますが、私としては、この法案ができるだけ早く成立されまして、懸案の女性と年金に関する諸問題が速やかに検討を開始されることを希望いたしたいと思います。
 最後に、今次改正案につきましては、各方面から負担と給付のバランスをとることにのみ終始して、いわゆる抜本改革になっていないとの批判がございます。
 基礎年金を目的消費税による案につきましては、そこに書きましたような三つほどの大きな難点があるかと存じます。
 一つは、現行消費税の益税などの欠陥を抱えたままではまずいと。やはりインボイス方式を導入することが前提になるのではないかと思います。
 第二に、消費税を最終的には一五%以上に上げなければ、現行の消費税の扱いにもよりますが、一五%以上に引き上げなければならないことになりますために、その政治的な実現可能性が極めて危ぶまれること。また、政権の交代による政治的な不安定が懸念されるところであります。
 第三に、また前回、消費税の引き上げの際の駆け込み需要やその反動が非常に大きかったことを考えますと、それがさらに増幅される危険が大きく、経済的にも大きな危険性をはらんでいると考えます。
 しかしながら、一九九〇年代の経済低迷やグローバリゼーションの中で噴出してまいりました超低金利、それに伴う年金財政、特に企業年金の財政の悪化等、そうした諸問題に加えまして、人口推計の精度あるいは不確実性、さらに総人口及び労働力人口が二十一世紀には間もなく減少に転じます。二〇〇五年ごろから労働力の総数が絶対減に転ずると思いますが、それによる経済成長率の鈍化の見通しなども考慮いたしますと、国民の年金制度に対する不安を除去するためには、スウェーデンが一九九九年から改正をいたしましたいわゆるスウェーデン方式、これは簡単にはそこに書きましたように拠出建て賦課方式の単一所得比例年金、最低保障をつけたものでありまして、それから経済調整スライド方式、さらに平均寿命の伸びを給付に自動的に反映させる除数方式等、大変画期的な考え方を含んでいると思いますが、これに準じた抜本的な改正を次期財政再計算に向けて準備すべきではないかと考えます。
 もちろん、スウェーデンの社会保障制度は我が国と多くの点で異なるわけでございますので、単純な制度の引き写しは非常に困難であります。我が国の現行の分立した年金諸制度間の統合をいかにして図るか、特に国民年金の一号被保険者を統合できるかどうか、極めて政治的に困難な課題を含むものと予想されます。したがって、そうした単純な引き写しは非常に困難だと思いますが、スウェーデン方式も参考にした検討が必要になろうかと考えます。
 いずれにいたしましても、我が国の現状では、いわゆる抜本改革と現行制度からの実現可能な移行措置に関する検討がほとんどなされていないと思います。したがいまして、このような現状におきましては、まず今回提案されておりますような改正を速やかに実現しておく必要があると考えます。
 以上です。
#7
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、都村参考人にお願いいたします。都村参考人。
#8
○参考人(都村敦子君) 都村でございます。
 年金制度改正案について意見を述べさせていただきます。
 お手元に資料をお配りしています。
 まず最初に、年金制度改正案の評価についてですけれども、今回の年金制度改正案は年金財政の安定、生活水準の維持、それから世代間、世代内の公平の確保という三つの問題を解決するための基本的な方向を目指しています。
 それで、改正案の基本的な考え方、給付の上昇を抑える四つの手法、そして年金制度の仕組みを改善する五つの方策、さらには積立金の運用の改革、いずれについても適切なものと評価できます。
 二十一世紀へ向けての厳しい挑戦に取り組む第一歩は国民のコンセンサスの形成に努めることにあると思います。負担及び給付に関する適切な情報の伝達と一般的な認識を高めることが必要とされます。
 今回の年金改正に向けて、今までにない徹底した情報公開や調査が行われた点も評価できます。五つの選択肢の公表、年金審議会の議事録とか資料の公表、年金白書の刊行、公的年金制度に関する大学生アンケート調査、それから年金改革に関する有識者調査などであります。
 改正案の基本的な考え方についてですけれども、まず保険料負担については、現行制度を維持していくと保険料負担が約二倍ぐらいになるということになっているんですけれども、将来世代の保険料負担を過重なものとしない、無理なく払える負担の範囲内ということが基本的な考え方になっております。
 それから、年金給付については、制度を見直しても現在の高齢者が受給している年金額を削減することのないようにする、それから現在受給している人の年金もこれから受給する人の年金も少なくとも物価の伸びに応じて上昇していく、安心して暮らせる年金額を保障するということであります。
 二十一世紀に向けた政策の重要な側面は世代間の公平の問題であると思います。退職して年金を受けている者は幸せになるんだけれども、働く世代の方は負担に押しつぶされて生活が非常に苦しくなるという社会は私は望ましくないと思います。人口構成の変化に柔軟に対応できるように、年金給付の方もある程度削減するとともに現役世代の負担も幾らかふやすという方向での改正が必要だと思います。
 支給開始年齢の引き上げについては十分な年数をかけるということで、男性は二〇一三年度から二〇二五年度、女性は二〇一八年度から二〇三〇年度まで、三年ごとに一歳ずつ六十歳から六十五歳へ引き上げるということになっております。
 改正案の内容ですけれども、給付の上昇を抑える四つの手法ですが、まず厚生年金の五%適正化ということで、公的年金のカバーする範囲はどの程度かというのが問題になるわけですけれども、現在の厚生年金の給付水準は平均的な高齢者世帯の消費支出の約九四%をカバーしております。この五%適正化が行われた後では消費支出の約九二%をカバーするということになります。
 年金改革のキーワードとして大事なのは安心と信頼と公平です。今回の改正では、四つの指標を組み合わせることによりまして年金水準の引き下げは五%と小幅にとどめることができたわけです。
 二番目はスライド制で、これは将来世代の負担の上昇を抑える必要があることから、賃金スライドをやめて物価スライドのみにする、年金の実質価値が下がることはないということですね。諸外国でも年金受給者は物価スライドのみという国が多いわけです。
 三番目は厚生年金の支給開始年齢の引き上げですけれども、六十五歳からの平均余命が延び、それから年金受給期間も延びていることや六十五歳現役社会への移行ということを見据えて年金制度を設計する必要があるということです。六十五歳までは若い世代からの仕送りによって暮らすのではなくて、就労によって自立して暮らすことができるような社会にすることが必要だと思います。
 それから、四番目は六十歳代後半の在職老齢年金ですけれども、現役世代の負担が重くなっていることを考えますと、六十歳代後半の在職者に年金が満額支給されるということは現役世代の理解を得にくいと思います。在職者に負担を求めるとともに、厚年の支給も一定の制限を行うということであります。
 それから、制度の仕組みを改善する五つの方策としましては、一つは国民年金保険料の半額免除制度ということで、これは低所得者を対象に年金の減額を防ぐということであります。
 それからもう一つは学生の特例制度で、これは大学生のアンケート調査をしたんですけれども、三五・四%の大学生が在学中は保険料納付を猶予して社会人になってから学生時代の分もまとめて支払うような、そういう仕組みを導入すべきだというふうに答えているわけですね。今、親が払っているケースが多いんですけれども、この改正が通りますと自分の年金は自分で負担することになりまして、社会的な常識にかなうと評価しております。
 それからもう一つは育児休業中の保険料免除ですけれども、これは将来の年金制度を支える子供を育てる世代を支援するということで、被保険者に続いて事業主の方も免除するということであります。
 この半額免除と特例と育児休業中の保険料免除は本年四月の実施を計画しているわけであります。
 その次は総報酬制ですけれども、ボーナスについても保険料と給付の算定基準とする方式に改めるということで、世代内の公平を確保するということであります。
 それから、基礎年金に対する国庫負担割合の引き上げについて改正案で明確にされたということであります。国庫負担割合の二分の一への引き上げによりまして、保険料を負担可能な水準に抑えて制度を安定させることができます。できるだけ早い時期に実施することが望まれます。
 その次は、年金福祉事業団の解散と年金積立金の自主運用の体制の構築であります。
 年金福祉事業団が行ってきた還元融資の整理については、地域経済や雇用、あるいは年金制度の加入者や年金受給者に悪影響の出ないよう配慮された内容になっておりますし、それからまた新しい年金積立金の自主運用の仕組みについては、被保険者の利益という運用の目的が明確にされておりまして、現役世代の負担の軽減という形での被保険者の福祉の増進が期待できます。
 今日、私たちの退職後の生活は公的年金なしでは考えることはできないわけです。今回の改正案の基調には公的年金は今後とも社会連帯の理念に基づいて実施するという原則が貫かれておりまして、これはとても信頼できるし、安心できる点だと思います。公的年金が将来にわたって確実な年金を支給できる制度にするために、改正法案の早期成立が望まれます。
 それから、第二のところでは国際的な視野から見てみたいと思います。人口構成の変化が公的年金支出総額に及ぼす影響であります。
 現行の公的年金制度を維持する場合、我が国の公的年金支出は先進諸国の中で最も急速に増加します。これはOECDが予測しております。我が国の公的年金支出の対GDP比は一九九五年には六・四%で、英語圏諸国よりもやや高いんですが、ヨーロッパの主要国に比べるとかなり低いんです。しかし、現行制度を維持する場合にこの比率は二〇二〇年には一四・三%となりまして、英語圏諸国の平均の約三倍、それからまたヨーロッパ諸国の多くの国よりも高くなると予測されているわけです。これは表1のところにデータを掲げてございます。
 既に高齢化の進行していたヨーロッパ諸国では、急増する費用負担に対処するために一九八〇年代から年金改革が行われてきました。それは年金財政の支出の抑制、収入の増加、それから公的年金と私的年金間のバランスの見直し等が行われてきました。表2では、年金支給開始年齢について、それは三十年くらい前から六十五歳という国が非常に多いんですけれども、女子については六十歳というところもあったわけですが、それが二十一世紀の初頭に六十五歳に引き上げられるということであります。
 人口高齢化のテンポは世紀の変わり目以降加速すると予測されています。今その対策を講じなければ、高齢化がピークになる二〇二五年以降、問題がますます顕著になるわけですから、年金改革は現在の我が国にとって緊急の課題であります。
 三番目に、改革のパッケージということで、あるプログラムにとってかつては外生的要因であると考えられていたものが現代社会では内生的要因となり、他の諸要因との相互影響が当該プログラムにとって不可欠な部分となっています。公的年金制度はまさにその最たる例であるというべきであります。
 財政上の配慮のほか、全体として次のような結果をもたらす改革のパッケージが必要とされると思います。特に、高齢者雇用の促進とか現役世代への支援とか、あるいは高齢者を含めた国民の意識の変革などです。特に、年金制度を支える側をふやすということです。それは大事なことではないかというふうに思います。
 第一点は、ライフコースに関する個人の選択の幅を拡大するということであります。健康度と個人の選好に従って年齢のいかんを問わずどれだけ就労するかの選択に関して最大限のフレキシビリティーが与えられることであります。
 二番目には、退職後の所得の公的年金部分と公的年金以外の収入源との最適ミックスを考えること、これは私的年金とか稼働所得とか貯蓄とかであります。
 三番目は、医療、介護、子育て支援など生活を支える社会保障基盤を整備することであります。これは年金制度の安定や年金の実質価値を高めることにつながります。年金積立金の一部を有効活用するというようなことも考えられる必要があると思います。
 四番目は、現役世代の男女が仕事と育児や介護の両立を図ることができるような環境を整備することであります。
 五番目は、女性が働くのに水を差すような社会保険、税制上の障壁を取り除くことです。
 六番目は、アクティブ・エージング・ポリシーを推進すること、これは高齢期に経済活動や社会活動に参加しプロダクティブな人生を送ろうとする人々をサポートする政策を再構築することであります。
 七番目は、社会のあらゆる分野における男女平等が確立されること、これは例えば男女の賃金格差など社会の実態が年金の給付水準に反映されるわけです。現在でも厚年の老齢年金の男子の平均に対して女子はその五四・七%なんですね。ということがありますので、やはり男女共同参画社会を目指すことが必要だというふうに思います。
 それから八番目は、学校、企業、地域などさまざまな場や機会を通じて社会連帯意識の醸成、福祉教育、年金教育の推進を図ることであります。
 年金制度の設計、展望、見直し、改革等においては、経済的な考慮のみならず広範な社会的考慮が必要とされます。長期にわたる経済的、社会的趨勢を視野に入れることが肝要であろうと思われます。
 以上です。
#9
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、桝本参考人にお願いいたします。桝本参考人。
#10
○参考人(桝本純君) 桝本でございます。
 本日は意見を表明する機会をお与えいただきましてありがとうございました。委員長初め当委員会の先生方に冒頭まずお礼申し上げたいと思います。
 さて、今回の年金改正法案でございますが、総括的な評価をいたしますと、私どもは、これは現在の我が国の公的年金が必要としている改革を避けて通り、そしてその給付の水準を引き下げるという非常に狭い財政論的な観点に終始している。その結果については、これから年金を受け取る世代、特に若い世代に対して国の年金に対する信頼感を損なう結果を呼ぶのではないか。端的に申しますれば、これは改革というよりは改悪の内容であろうというふうに考えるところでございます。
 年金は年金だけで単独に存在しているわけではありませんで、高齢者の生活を支えるという意味から申しますと、医療や介護あるいは雇用といったようなさまざまな条件と相まって、一つのセーフティーネットと申しますか、生活の支えを構成する、その中の重要な柱が年金だというふうに思います。したがって、年金の制度を手直しするという場合にはその全体像を示すことが特に重要だろうと思います。
 現在、政府は年金、医療、介護、少子化対策、こういった社会保障制度全般の改革に向けた有識者会議というものを設けて提言を取りまとめる作業を既に始めておられるわけで、そうであるとすれば、その提言を受けた上で、あるべき年金の姿、年金の役割というものを総合的に検討するのが筋ではないか、そのように考えるところでございます。
 年金をめぐる条件は確かに今お二方の先生からるる指摘されましたように大変厳しいものがございますけれども、同時に、暮らしの将来像や見通しがないまま、負担と給付の財政論の枠内だけで、結論から出てくるのが給付抑制というだけでは、この現在の厳しい環境の中で本当に国民合意と呼べるものにはならないのではないか。私どもは、社会保障制度というのは、イデオロギーやあるいは政党の立場の対立のテーマというよりも、国民生活のあるべき姿という点で本当の合意をつくっていただきたいというふうに考える。その点から、以下、幾つかの点について申し述べたいと思います。
 現在の公的年金制度の危機というのは、実は財政上の危機というよりも、その制度に対する信頼の危機だというふうに思います。このことを端的に示しておりますのが、しばしば指摘されております基礎年金制度の空洞化という現象で、先月下旬に社会保険庁が発表いたしました九八年度の数字で見ますと、最近では払うべき人の半数近くが保険料を納めない。この状態はますます急速に深まっているわけで、それは納めない人の問題もありますけれども、制度に対する信頼が急速に弱まっているということをよく示しているのではないだろうか、このように思います。
 こういう方々は将来無年金者になるか、あるいは出ても極めてわずかな年金しか受け取ることができない。その意味で、既に国民皆年金という我が国が掲げてきた政策目標は事実上空語になっている、これが現在の我が国の公的年金制度の本当の危機だろう、そのように考えます。
 二十一世紀に向かって我が国の公的年金が直面している最も大きな選択は、この国民年金の空洞化という事態に対してどういう方向をとるのか、つまりそれは国民皆年金という政策的な目標を本当に実現するために制度の抜本的な見直しを図るのか、あるいはそうではなくて現行の制度の延長上で国民皆年金というスローガンをおろすのか、この選択だろうと思います。冒頭、今回の改正法案が必要な改革を避けて通っていると申しましたのは、まさにこの選択について一つも明らかな態度をとっていない点であります。
 私どもは、国民皆年金という理念を本当に実現するために、基礎年金制度は近い将来保険方式ではなくて税を財源にするシステムに改めるべきだ、このように考えます。それに向かっての一つの非常に大きなステップとして、現在の基礎年金の給付額に対する公費負担割合を現状の三分の一から二分の一へ直ちに引き上げるべきだというふうに思います。これは前回改正のときに国会御自身が合意をされた内容だったはずでございまして、これを次回改正までというふうに言えば十年先送りの話になってしまう。この点、ぜひとも先生方に御留意をちょうだいしたい、そのように思うところでございます。
 次に、冒頭申しました二番目の点、非常に大きな水準の引き下げであるということでございますが、これは今お話しのありましたお二方のお話と若干というか、かなり違うかもしれません。
 お手元にこういうリーフレットを、私どもが組織内で議論するためにつくりましたものを配っていただいておりますので、ちょっと中をおあけいただきたいと思います。開いていただきますと、内側の左半分に昭和六十年改正以降今日までたどってきた経過と、それから今回の政府案が示している将来像というものを図で示してございます。幾つか私どもが置いた仮定もございますので、すべてが厳密なものというふうには申し上げませんが、一応のめどをつけることができるのではないかというふうに思います。
 政府案では、将来とも現役労働者の賃金の約六割を保障する、こういうふうに言っておりますし、厚生省資料ではもう少し詳しく、現状は六二%であるものを五九%保障するんだ、このように説明をして、今回の改正案が給付水準の切り下げといってもさほど大きなものではないという印象を世間に振りまいているわけですが、しかしこれは現実からはかなりかけ離れた数字だというふうに申し上げなければいけません。
 まず、現状の水準でございます。
 現在の制度が将来に約束している水準はどの辺にあるのか。これは厚生省の公的な数字ではしばしば二十三万円ということが言われてまいりました。これは九四年の価格水準で、現在国会に提出されている法案の内容では九九年度価格で二十四万二千円というふうに表示をされているかと思いますが、私どもの資料ではあえて広く使われてまいりました九四年度価格で数字をお示ししてございます。それが左から二番目です。
 しかし、実は前回改正で賃金スライドの方式が賃金総額スライドから手取り賃金スライドに切りかえられまして、将来の賃金スライドのスライド率は低くなることが見込まれております。その低くなるスライド率を適用した場合にどうなるか。これは年金審議会の資料にも、それから最初の年金白書にも収録をされている厚生省自身がはじいた数字ですが、二十一万一千円というのが現在の制度が将来に保障している本当の水準です。これは十一年度価格に直すと二十一万八千円程度、三・一%の引き上げでありますから二十一万八千円程度になるかと思います。
 二十一万八千円というとかなり潤沢なように見えますが、ここには条件が幾つかございます。
 一つは、これは年金の総額であって、年金生活者はここから税、社会保険料を負担しなければならないということです。所得税の負担がかかる人はかなり少ないと思いますが、一番大きいのは国民年金の保険料です。現在でも高齢者の人たちは約一〇%の公租公課の負担をしております。しかし、例えば今度の四月から介護保険制度が始まりますというと、年金受給者は年金からその保険料を差し引かれる、こういうことになるわけで、二〇二五年という今回の改正ターゲットを見ますと、これは一〇%ではおさまらないだろう。先ほど私どもの勝手な仮定もあると申しましたが、仮に一五%にこれが膨らんでいくというふうにいたしますと、現在の制度のままでも将来の世代の手取り額は二十一万一千円ではなくて十八万円、こういうことに相なるわけでございます。
 もう一つ問題なのは、ここで言われている数字というのは、夫婦とも六十五歳を超えて、そして夫婦とも一カ月も休むことなく二十歳から六十歳までの四十年間保険料を払い続けた、こういう理想的なケース、つまりモデルケースでございます。実際にはそんなことはないので、例えば途中で転職をすることがあればその間失業状態もあり、いろいろな事情で保険料を納められないような時期が長い人生ですから挟まることは当然でございまして、雇用の流動化というような議論があるとすればそういう傾向はむしろ強まっていくかもしれません。
 そういう意味で、平均的な水準というのはこのモデルよりも一割程度ぐらい低いというふうに理解をしていいのではないか。それが下の方に書いた数字でございまして、それを当てはめますと、将来の二〇二五年段階での年金額というのは、九四年価格で申しますと総額でも十九万円ぐらい、手取りでは十六万円程度、これが現在の制度が将来の世代に約束している実際の水準です。
 これを高いから引き下げろという根拠はないのではないかと私どもは考えました。しかし、今回厚生省が出している、政府が提案している内容は、この高さをさらに約一割程度削減しようという内容でございます。
 どのような形で約一割かと申しますと、それが一番右側の絵でございますけれども、まず一番上の老齢厚生年金という部分を五%削減する、これは法規定そのものに入っている数字です。しかし、これは二階だけの五%ですから、下に本人の基礎年金と配偶者の基礎年金、これを合わせたもの、全体でいいますと五%ではなくて二%程度にすぎません。
 しかし、重要なことは、これはもらい始めた時点の水準だということです。受け取り始めてから後、これは法律で決められているものではありませんが、今回の政府提案の中に重要な項目として、非常に大きな項目としてありますのが賃金スライドの停止です。この賃金スライドの停止を厚生省当局は財政効果の面で七%程度というふうに見ているそうで、したがって出発点における二%ダウンと、それからもらい始めてから生涯を通じての水準がそれに対応して下がるとすれば約七%ぐらい、足して九%程度、本当は掛け算ですから、精度を若干犠牲にいたしますと約一割、こういうことになるわけでございまして、結果、出てくる数字はそこにあるようなものです。
 したがって、モデルではなくて平均的な給付水準ということになると、下にありますように総額で十七万円程度、手取り額では十四万五千円ぐらい、これは九九年価格に直しても十五万円弱ぐらいでございます。これは、全国六段階に分かれております現在の生活保護基準と比べた場合に、東京や大阪のような大都市圏ではほぼそれに見合う数字にすぎません。しかも、生活保護の場合には一切の公租公課から解放されているわけですから、実質的には一銭も自分では負担する必要のない生活保護基準よりも四十年間営々と保険料を納めて受け取る年金の方が低いという逆転した状況になるわけで、このようなことが実現するのであれば、一体だれがこういう年金を保険料を払って支えようという気になるでしょうか。
 私どもは、単に水準が千円下がったとか二千円下がったとかという額を問題にしているのではなくて、年金制度に対する信頼そのものを根本から損なう、既に損なわれつつあるものが一層ひどいことになる、こういうことでこの内容に反対しているわけでございます。
 それではどうしたらいいのかということでございますが、私どもは公的年金というのは基本的には現役世代から親の世代への一つの仕送りのシステムだと思っております。仕送りという観点から考えますと、現役の世代の所得と年金水準との間に一定の割合を将来とも維持する、こういうことが必要なのではないか。現状の制度は、所得代替率などというふうに申しますが、右から二番目の数字の上にありますように約五五%というふうに推計されます。これはドイツが約六〇%ぐらいということに比べますと決して高いものではありませんが、我が国の状況にかんがみて、これを引き上げるという要求をする必要があるとは思いませんが、少なくともこれは将来にわたって維持をする、このことを約束するのが政治の責任ではないだろうか、そのように思います。
 この年金の水準の問題はぜひとも私ども共通に念頭に置いておきたいと思いますが、二〇二五年及びそれ以後の年金です。私自身は多分そのころは生きていないと思うんですが、年金審議会なんかでも大抵の人は生きていないような年齢の人がこの問題を議論してまいりました。これを受け取るのは現在の三十代から若い層の人たちです。私どもは、そういう人たちの将来に対してせめて現行制度程度のものを約束すべきではないか、そのように考えます。
 その場合の負担が大きくなり過ぎるというのが厚生省の主張でございますが、このパンフレットの一番後ろを見ていただきますと、将来の保険料水準は厚生省が言うような過大なものにはならない。二〇二五年段階で完全な、いわゆる賦課方式だと考えますと、基礎年金の国庫負担を二分の一へ引き上げることを前提にしてみますと、月例ベースでいうと保険料二五・四%ぐらい、小数点以下のところはほとんど有効ではないと思いますが。それから、総報酬制にしてみれば二〇%ぐらい。それから、将来、基礎年金を完全な税方式に切りかえるとすれば、二階建て部分のところだけですから、月例方式にしても一八%、総報酬制にすれば一四%程度でおさまるというのが私どもの計算でございます。
 もちろん、現状よりは高くなります。しかし、これだけの負担を若い世代にお願いすること、それから将来の水準について約束をすること、これの組み合わせで全体としての年金制度をみんなで支え合っていく、こういうことが必要なのではないだろうかというふうに考えます。
 そのほか幾つか申し上げたい点がございますが、時間が参りましたのでこれで終わらせていただきます。あとは御質問をいただいて補足させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#11
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、坂内参考人にお願いいたします。坂内参考人。
#12
○参考人(坂内三夫君) 全国労働組合総連合、全労連事務局長の坂内でございます。
 私は、今回の年金制度改悪案に対して反対の立場から意見を述べるとともに、国民の生活と将来に重大な影響を与える問題として、本委員会を初め国会での徹底した審議を強く要望するものであります。
 長引く不況の中で、今どの産業、どこの職場においても労働者の雇用と生活が大変な状況にさらされている、このことは委員の皆さん御承知のとおりであります。
 全労連が開設をしている労働相談にも、突然給料が減らされた、ボーナスがカットされた、正社員からパートに切りかえられた、配転を強制された、リストラで解雇された、会社が倒産した、そんな悲鳴が毎日のように殺到しています。家族の方からも、夫が過労死しそうで心配だ、子供が学校を卒業したが就職先が決まらない、年金や医療、介護の不安で夜も眠れないと悲痛な訴えが寄せられています。
 私たち労働者は、ぜいたくでなくてもいい、まじめに一生懸命働いたら家族そろって人間らしい生活が送れる、定年後にはささやかであっても安心できる将来が過ごせる、毎日毎日そのことを願って働いております。今回、政府が示している年金改正案は残念ながらそんな労働者の願いに反する改悪だと言わざるを得ません。多くの労働者や連合、全労連、全労協、労働団体がこぞって反対をしている背景、今日の深刻な雇用不安、生活不安、将来不安に政治がこたえてくれることを心から期待するものであります。
 私が今回の改正案に反対する第一の理由は、まず厚生年金の支給開始年齢を段階的に六十五歳までおくらせるという問題であります。
 これによって、現在、男性で三十八歳、女性で三十三歳以下の人は六十歳代前半での年金が全くもらえなくなります。このことについて、政府は、六十歳代前半の雇用確保が前提だとこれまで言ってきました。その対策や手だては進んでいるのでしょうか。
 現在、多くの大企業では六十歳定年制を労働協約で明記しています。しかし、実際にはリストラの名で人権侵害を伴うような早期退職の強要や出向、転籍の強要などによって大量の解雇や人減らしを行い、労働協約で明記している労使間の雇用上のルールさえ守られていないのが現状ではないでしょうか。
 これに対する政府の対策も極めて不十分であります。深刻さを増す失業・雇用問題、その最大の原因は余りにも身勝手な大企業の大量の人減らし競争にあるのではないでしょうか。ところが、政府はこれを規制するどころか、産業再生法などによってリストラ合理化企業に税制上の優遇措置を講ずるなど、むしろ労働者の雇用を脅かす政策をとっているのが現状だと思います。ヨーロッパ諸国のような解雇規制も労働者保護の法律もない中で年金支給開始年齢を引き上げることは労働者の生活をますます脅かすものであります。
 国際的に見ても、世界百十カ国の年金支給開始年齢を調べてみますと、男性六十歳、女性は五十五歳という国が最も多く三一%、次いで男女とも六十歳が二五%、男女双方とも六十五歳というのは一三%にすぎません。正規の支給年齢が六十五歳であっても、各種の規制緩和措置を設けてそれ以前に支給を開始し、退職と年金支給を接続させて老後の所得保障の切れ目をなくすという措置を多くの国が実施しています。フランスでは六十五歳が六十歳に引き下がり、ドイツでもことしの一月に六十歳に早めることでドイツ経営者団体全国連合会とドイツ労働総同盟の基本合意が成立をしたと伝えられています。
 定年前の退職強要が当たり前のようにリストラの手段とされ、年金開始年齢が六十歳から六十五歳におくらされようとしている、こういう日本の現状は早期支給の国際的な流れにも反するものではないでしょうか。六十歳代前半の雇用確保という政府の前提が崩れている以上、勤労者の退職後の生活を困難にする支給開始年齢の繰り延べは見送るべきと考えます。
 第二は、年金の支給額を大幅に削減するという問題であります。
 改正案は、物価上昇率については毎年、賃金については五年ごとにまとめて上昇分を反映させるという現行制度を廃止するとしています。賃金スライドの実施年に当たることしは三・八%の引き上げが本来あるはずでありました。これを凍結するとすれば、厚生省がモデル世帯の標準給付額としている月額二十三万八千百二十五円に当てはめると、年間で約十万八千円も減額をされます。厚生省の説明によっても、二十年後の年金は今よりも月額六万円も支給額が減らされることになります。
 さらに、今回の改正案では、ことし四月以降に年金をもらい始める人は報酬比例部分の支給額を五%削減するとしています。これまでは千分の七・五であった乗率が千分の七・一二五に引き下げられるわけですから、厚生省がモデルとする四十年フル加入の場合、二〇二五年には現行制度よりも月額約一万円の支給減となるわけです。現行の年金額がすぐに下がらないような経過措置が盛り込まれているとはいっても、大きな将来不安であることに変わりありません。
 こうしたことによって、若者が将来受け取る年金のカット額は幾らになるのか。厚生省も、夫が六十歳で退職し妻は専業主婦というモデル世帯で、現行では総額六千百万円もらえるが、これが改正されれば四千九百万円になると答えております。現在、三十五歳の夫婦で総額一千二百万円にも上るカットをされる。超低金利政策の犠牲を受ける年金生活者に打撃を与え、現役世代の将来にも不安を加速させる、こういう賃金スライドの廃止や報酬比例部分の五%削減は改正案から削除すべきと考えます。
 第三の問題点は、労働者、国民には大変な犠牲を強いながら、国が実施するはずであった国庫負担の引き上げが先送りされていることであります。
 国庫負担二分の一への引き上げは、前回、九四年の国会審議を通して国会と政府が国民に約束した公約であります。年金改革と言うなら、まずは全会派が一致して採択をした附帯決議並びに年金保険法の附則に明記された基礎年金部分への国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げる、この約束を果たしてから給付と負担をどうするかを議論すべきではないでしょうか。これは余りに当然のことだと考えます。その約束をほごにすることは国民の政治と国会に対する信頼を損なうものであります。
 現在、国民年金の保険料は月額一万三千三百円、高過ぎる保険料が払えない滞納、免除、未加入者の合計が一千十二万人、第一号被保険者の四〇%を超えています。さらに、パートや派遣、アルバイトなど、政府の雇用政策の誘導によって不安定雇用が急速に広がっているもとで、厚生年金に入りたくても入れない。労働時間が通常労働者の四分の三以上の労働時間に満たない。企業が保険料負担を避けようとする。派遣や臨時は収入が不安定だ、就業が途切れる、こういう理由で厚生年金には加入をさせないという場合もあります。このような年金の空洞化を解決するためにも、国が財政面での責任をどう果たすのか、本国会審議で明確にすべきであります。
 第四に、厚生年金の部分を含めると実に百八十兆円、年間支給額の六年分にも上る巨額の年金積立金を株式市場などで全面運用するというリスクの問題であります。
 これまでも厚生省が監督する年金福祉事業団の運用によって一兆八千億円もの累積赤字を出したことは国会でも問題になりました。厚生省は積立金の運用収益で将来世代の保険料負担を軽減すると言いますが、赤字の責任を一切とろうとしない厚生省にその運用を白紙委任することは危険だと考えます。経済金融情勢が激しく揺れ動く中で、年金をマネーゲームのリスクにさらす運用は避けるべきであります。
 最後に、この間、労働者、国民には大幅な負担増を押しつけ、給付は大幅に削減するという年金制度や医療保険などの改正が進められてまいりました。公的年金を初めとする我が国の社会保障制度に対する労働者、国民の信頼は大きく低下をしていると言わざるを得ません。
 経済企画庁が行った一九九九年度の国民生活選好度調査でも、リストラ、人減らしによる雇用不安、医療、年金、介護費用の負担増に国民が強い不満を抱いていることがはっきりとあらわれています。生活全般の満足度は四四・二%で過去最低となりました。老後に明るい見通しを持っている人の割合は二割に満たず、これも過去最低となりました。逆に、老後は今後とも明るい見通しではないと回答した人は八二・四%に上りました。
 良識の府である参議院での徹底的な審議を尽くし、十分な国民合意を踏まえて決定すること、労働者と国民の将来不安を解消し、だれもが納得できる結論を導き出すことを強く要望いたしまして、意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
#13
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、広井参考人にお願いいたします。広井参考人。
#14
○参考人(広井良典君) 広井でございます。
 私は、社会保障全体の今後のあるべき姿、そういった視点から今回の年金改正法案についてお話しさせていただければと思います。ほぼお手元にございますレジュメに沿ってお話をさせていただければと思います。
 最初に、我が国の社会保障というものを全体として眺めますと、幾つかの特徴があろうかと思います。ここでは二点ほど指摘させていただければと思います。
 一つは、混合型モデルとでもいうような社会保障となっているということでございます。
 この趣旨は、日本の社会保障は、年金も医療保険もそうでございますけれども、当初はドイツ型の社会保険のモデルから出発したわけでございます。サラリーマン中心で、所得比例給付というのが基本的な特徴でございます。それが次第に普遍主義モデルといいますか、イギリス、北欧的な社会保障の要素を導入していったわけでございます。そもそも皆保険体制にしたということが第一ステップとしてあったわけでありますし、そういった性格がよりはっきりしてきましたのが、年金におきます基礎年金の導入、あるいは医療におきます老人保健制度、これはサラリーマングループと自営業グループ全体を橋渡しする制度をつくるということで、ドイツにはないタイプの仕組みであるわけでございます。
 ところが、現在の日本の制度はいわばそうした移行の途上にあると言えるのではなかろうかと思います。基礎年金につきましても、三分の一が税、三分の二が保険という、いわば折衷的なといいますか、両者の社会保障のモデルの原理が混在した形になっている。したがって、社会保障あるいは年金や医療保険制度の基本的な性格がわかりにくい、非常に複雑で原理となる考え方がはっきりしていない、そこが日本の社会保障制度の基本的な問題ではなかろうかと思います。
 もう一つの現在の日本の社会保障の特徴として、社会保障給付費が全体として低いということがございます。
 レジュメに社会保障給付費のGDP比を示してございますけれども、スウェーデンはもちろん、他のヨーロッパ諸国に比べましても相当低い水準であるということが見てとれます。これまでは高齢化の割合が低いから低いという説明がなされてきたわけでありますけれども、ことし日本の高齢化率はスウェーデンを抜いて世界一になるわけでありまして、高齢化が低いからという理由はもはや成り立たなくなる。したがいまして、なぜ日本の社会保障給付費は低いのかということを改めて問い直す必要が生じているわけでございます。
 社会保障の中身で見ますと、失業給付や子供関連あるいは医療といった部分が低いわけでございまして、より実質的な背景といたしましては、いわば日本の社会保障はインフォーマルな社会保障とでもいうようなものにかなり依存してきた、とりわけ会社が提供する種々の手当等々に依存してきた部分が大きかったと言えるかと思います。
 ところが、現在、そうした会社あるいは核家族といったものが雇用の流動化、リストラ等々の中で急速に解体しているわけでありまして、社会保障制度全体の再編成が必要になっている時期と言えるかと思います。
 それでは、これからの社会保障全体と年金のあり方についてお話しさせていただきます。
 まず、何よりも重要であろうかと思いますのは、医療、年金、介護といった社会保障の個別分野を縦割りで考えるのではなくて、生活保障の全体像がどのようになっているのか、社会保障全体のビジョンをまず示していくということが何よりも重要であり、また国民が求めていることであろうかと思います。
 そういった視点に即して考えますと、社会保障が、すなわち公的な部門が果たすべき役割といたしましては大きく二つの柱があろうかと思います。
 一つは所得再分配、すなわち一定以上の生活をあらゆる国民に保障するという機能でございまして、これは税を財源に保障するのが筋であります。具体的には、年金の基礎的部分あるいは高齢者の医療や福祉はこれに該当するものではないかと思います。
 もう一つはリスクの分散、すなわち保険でございます。これは民間保険ということも可能であるわけでありますけれども、経済学でいいます市場の失敗、民間保険が十分機能しない領域があるわけでございまして、これについては強制加入の社会保険ということが求められるわけでございます。若年者の医療保険はこれに該当するものであろうかと思います。そうでない部分、年金の所得比例部分といったものは民間保険にゆだねてよいというのが基本的な考え方ではなかろうかと思います。
 二ページ目に参りますけれども、そういった点を踏まえますと、これからの社会保障の全体的な姿といたしましては、私は医療・福祉重点型とでもいうような社会保障が最も妥当ではないかと考えております。
 すなわち、医療や福祉につきましては、なかなかうまく市場が機能しにくい部分でございますので、公的な保障をしっかりとする。患者負担拡大等々といったことは極力行わず、公的な保障を中心とする。
 それに対しまして、年金につきましては所得再分配としての機能、それから保険あるいは貯蓄的な機能、これははっきりと分けて、公的な制度、すなわち政府が保障するものといたしましては所得再分配、すなわち一定以上の生活をすべての高齢者に保障するという厚目の基礎年金、財源は税と、これに再編成を図っていくのが最も妥当ではないかと考えます。
 その大まかなイメージを、ちょっと図が見にくくなって恐縮でございますけれども、簡潔に示しているのがそこに示している図でございます。
 それからもう一点、今後の社会保障について補足いたしますと、個人のライフサイクルを座標軸とする社会保障ということがもう一つの大きな柱であろうかと思います。
 すなわち、雇用の流動化あるいは女性の社会進出という中で、個人が単位となる社会になっている。したがいまして、失業関連給付や子育て支援というものは一層の強化が求められる部分であろうかと思います。
 また、これは税と保険の役割分担を明確にしていくということとも重なってくるかと思います。子供や高齢者につきましては基本的に所得がない、一部を除いて所得がない世代であり、かつ医療などの給付も集中的に必要となる世代でございますので、当然それは所得移転としての性格が強まるわけですので、給付と負担、拠出と給付を均衡させる保険制度で維持するには原理的な困難がある。したがいまして、子供、高齢者については税を中心、逆に現役世代については極力保険原理に立った制度とするというのが最も妥当ではなかろうかと思います。
 その場合の税財源につきましては、既存のものに加えまして消費税、これはやはりヨーロッパ各国の水準が軒並み一五%以上であることを考えますと不可避のことであろうかと思いますし、さらには相続税、あるいは欧米諸国、ヨーロッパにおいては環境税を充当するといった改革も進められておりますので、そういったものが考えられるかと思います。
 いずれにしても、将来世代のことを十分に考え、負担の問題を避けて通らない議論が必要であろうかと思います。
 最後に、今回の改正案に即して三点指摘させていただければと思います。
 第一は、既にお話し申し上げましたように、基礎年金の財源はすべて税にするのが妥当で、こうした方向の改革を直ちに進めていく必要があろうかと思います。その趣旨は先ほど申し上げたとおりでございまして、基礎年金制度がすべての国民に一定以上の生活保障を行うという趣旨から、税が妥当ということでございます。
 かつ、基礎年金の水準を現在よりも厚目のものにする必要があろうかと思います。これはなかなか確定的なことを言うのは困難ではありますけれども、現在の一・二倍ないし一・五倍程度の厚目の基礎年金の水準が求められているのではないかと思います。
 二点目といたしまして、逆に所得比例部分は、先ほどの考え方からも導かれますように、むしろ縮小し、最終的には廃止する方向での改革が望ましいと思います。
 端的に言いますと、所得比例部分の年金といいますのは、高所得の人が高い年金を、これは払った保険料に応じてということではありますけれども、高い年金を受けるということでございますが、果たして政府が、国家がそのような制度まで行う必要があるのか。所得比例部分はむしろ民間にゆだねて、政府の役割としては先ほどの基礎年金をしっかりとしたものにするというのが重要ではなかろうかと思いますし、現在の年金制度が、相当な高水準の年金を受けている層が見られる一方、基礎年金につきましても半数が五万円未満といったいわば過不足が生じている状況を踏まえますと、今のような改革の方向が望ましいのではないかと考える次第です。
 三点目は補足的なことでございますが、学生の保険料については、今回、追納ということが出されておりますけれども、むしろ一切認めないという方向が妥当ではなかろうかと思います。これは専業主婦、第三号被保険者が保険料を払わなくてよい、すなわち所得のない者は保険料負担をしなくてもよいということとの均衡ということもございますし、若い世代におきます年金に対する信頼を確保するという意味でも、むしろ一切行わないというのが基礎年金の趣旨にかなう方向ではなかろうかと思います。
 いずれにいたしましても、社会保障全体のあるべき姿、今後の公私の役割分担ということを明確に打ち出す、その枠組みの中で年金の今後を考えていくべきではなかろうかと思います。
 以上でございます。
#15
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、神野参考人にお願いいたします。神野参考人。
#16
○参考人(神野直彦君) 東京大学の神野でございます。
 私は財政学を専攻しておりまして、社会保障や年金を御専門に研究ないしは審議してこられた先生方を前にほとんどお役に立つようなお話はできないのですけれども、財政学の立場から年金問題について発言をしてまいりましたので、全くの素人談義になる危険性があるわけですが、今回の年金法の改正問題についてお話をさせていただこうというふうに考えております。
 財政学の立場からいいますと、私たちの経済は市場経済と財政という二つの全く異なった原理、一つは競争原理、もう一つは協力原理とでもいいましょうか、二つの全く異なった経済によって支えられていて、私たちの生活はこの二つの経済がうまくバランスをとらないとうまくいかないのだということをまず申し上げておきたいと思います。しかも、市場経済とか財政とかということはあくまでもこれは人間の生活にとっての手段です。目的と手段を間違えてもらっては困るということです。
 今回の年金問題につきましても、年金財政というのはあくまでも手段で、年金財政がやらなければいけない目的があるはずです。国民が安心して年をとることのできるような体制をつくっておくとか、そういう目的があるはずで、その手段として財政というものがあるわけですね。したがって、財政そのものを、収支を均衡すること自体を追求してはならない。財政の危機の背景には必ず社会的な危機や経済的な危機がありますから、あくまでもそういう社会的な危機や経済的な危機に対応しながら財政を再建していく、そういう姿勢がとられなければならないだろうというふうに考えております。
 最近のスウェーデン政府の合い言葉といいますと、スウェーデンは財政再建をする目的として、強い福祉を実現するために財政を再建しよう、ストロングウエルフェアを実現するためにストロングファイナンスをやろう、こういうふうに訴えているわけですね。
 年金財政は非常に危機的な状況にあるわけですけれども、私たちがこの財政を再建していく目的は何なのか。それはストロングウエルフェア、強い福祉を国民に保障してあげるためなんだという目的を見失ってはならないというふうに考えています。
 こういう改革を進めるときに一番重要な点は、どこに行くのかという目的を明確に指し示してあげることだと思います。目的の地に着いたらどういうことが起こるのか、そして私たちが行くべき方向性、これはこっちの方向ですということを明確に示してあげるということが一番重要なことではないかというふうに考えています。
 道に迷った人に道案内をするときに、一番わかりにくいのは、最初から右を曲がって左を曲がってこちらに行ってというふうに教えると、途中で思わぬ工事現場なんかがあったりすると目的地に行き着かないということがあるわけですね。したがって、目的地はこの方向ですというふうにまず指し示す。その上で、あなたの今ここの現在地からこう行ってこう行ってこう行きなさいというふうに教えてあげることだと思います。
 この改正も、一体どういう方向に向かって、どこの目的を目指して進んでいくのかということをまず明確に指し示した上で、差し当たってこの改革をするのだということをしないと、国民は不安におののくばかりだというふうに言わざるを得ないと思います。特に、負担増や給付の削減を行っていくわけですから、では今後ともこういう負担増や給付の削減が続くのかどうかという不安におののいてしまって、かえって不況を深化させてしまいかねないということをはっきりと認識しておく必要があるというふうに考えています。
 そういうことを逃れるためには、例えば、先ほども神代先生からもお話がありましたけれども、現在のシステムをこのまま守っていくと、人口推計を誤ったり、今回も人口推計は間違えた、間違えたといいますか実際と違ったわけですね。それから、経済成長率も今後とも予測と違うことが起こるかもしれない。それから、特に超低金利と申しますか、利子率、運用利回りの低下、こういったことが起こると、また負担増や給付の削減が起こるのではないかというふうに国民は必ず不安におののきます。
 確かに今回の改革は人口の推計の予測が違ったり経済成長率の見込みと違ったりしたことによってそれへの対応として行われるわけですけれども、今後ともこの制度を維持する限りはこういうことが起こるだろうというふうに思わざるを得ないと思います。
 それはどうしてそういうことになるのかというふうに考えてみますと、財政と市場というのは繰り返すようですが全く違った原理で動いていて、市場の方が違った動きをした場合にはそれを財政の方がうまく補完できる、別な原理で動いているから補完できるというふうになっていなくちゃいけないわけですね。ところが、現在の年金制度は余りにも市場原理を入れ過ぎた、このことが非常に大きな原因になっているのではないかというふうに私は考えています。特に、積立制度の理念を残したまま昨今言われている市場原理を導入するような改革の方向では、現行の制度を維持して人々の生活を安定化させていくのは無理だというふうに考えています。
 では、どうしたらいいかということでありますが、これも私は神代先生と全く同じ意見でありまして、神代先生のレジュメの中に、一九九九年のスウェーデンの改正があって、拠出建て賦課方式の単一所得比例年金にすべきだという御提案がありますが、私も全くこのとおりだというふうに考えています。ただし、先ほども神代先生が御指摘のように、スウェーデンと日本とは国情が違うので、それを配慮して行うようにというお話がありましたが、それも同じように考えております。
 特にスウェーデンでは、四〇一kに似た制度というふうに申し上げておきますが、その制度と神代先生がおっしゃっている制度と組み合わせているわけですけれども、日本のように貯蓄率の高い国では四〇一kに似たようなスウェーデンが導入しているような制度をやる必要はない。スウェーデンは消費が非常に多過ぎて、貯蓄が低いために強制貯蓄をやらせているので、それはやる必要はないというふうに考えておりますので、拠出建て賦課方式の単一所得比例年金、そしてこれは最低保障つきの年金を導入すればいいのだというふうに考えています。
 ただし、年金だけでお年寄りの老後の生活を支えていくというのは無理でございますので、先ほど広井先生がお話しになったように、社会保障というのはきちっとした体系立ったシステムでもって老後の生活を支える必要があるだろう。
 そこで、私の考えでは、三つの政府、国、地方、社会保障基金、社会保障基金も一つの政府だというふうに私は考えています。というのは、実体のある政府もヨーロッパなどにはありますので、一応この三つの政府を考えて、それぞれの政府が役割と責任を果たすという方向に改革をしていくというのがまず前提でございます。
 お手元に私のレジュメがございますが、一枚めくっていただきますと、「三つの政府体系の概念図」というのがございます。
 私たちの生活は、労働市場で働いて得た賃金と、その賃金によって原材料を買ってきて、この原材料に家族や家庭の中でアンペイドワークをしながら、無償労働をしながら、あるいは友人たちやコミュニティーの相互扶助に支えられながら私たちの生活というのは支えられているわけですね。したがって、賃金とコミュニティーでの無償労働、これを保障してやれば人々の生活は成り立つわけであります。
 そこで、そこに書きましたように、社会保障基金、社会保障とは一体何なのかというと、これは生産の場においていわば友人たちがお互いに正当な理由で失った賃金を保障し合おうという制度ではないか。老齢とか疾病とか失業とかという正当な理由で賃金を失ったときにその賃金を保障してあげればいいのだ。それに対して、地方政府の方はさまざまなサービス給付で、あたかも教会がやっていたように、老人ホームとかケアつき住宅とか、それから医療とかというようなサービスを給付して、セットで人々の生活を保障するというような仕組みをつくればいいというふうに考えられると思います。この二つの地方政府が供給するサービス給付と社会保障基金が提供する賃金代替としての年金、これのミニマムを保障する責任が中央政府にある、国にある、こういうふうに考えた方がいいだろうと思います。
 一枚おめくりいただきたいと思います。
 そうしますと、社会保障基金という政府、いわば社会保障基金というところに拠出する社会保障負担でやるべきことというのは賃金の代替でいいわけですから、その人の生涯の賃金の一定部分を保障してあげればいいはずであると。だから、今の基礎年金とその二階建て部分から成り立っているような年金を一律に所得比例の拠出建ての単一年金に全部改めちゃう、一挙にしてしまうということですね。
 その上で、しかしこれは社会保障基金の責任でありますので、中央政府、国には人々のミニマムを保障する責任がありますので、そこに書きました拠出が全くない人、ゼロの人でももらえるミニマムペンション、最低の年金というのを保障してやって、斜線を引いてあるところですが、そこの部分は中央政府が税で補完をする。特に国税、ここは再分配になりますので、望ましいのは累進所得税とか法人税を軸にした、直接税を軸にした地方税でこれを保障することが望ましいということになるわけですね。この二つの中央政府と社会保障基金とセットでもって年金を整備していくというやり方が望ましいのではないか。これはスウェーデン方式を一部修正してつくり上げたものでございます。
 したがって、こういう方式に移るということを前提に毎年毎年の部分的な改革を進めて、できるだけ早い機会にこういう人々が連帯によって安心できる生活を保障するような年金に移っていくということが重要ではないかというふうに思います。そうでないと、いつまでもこのままでいきますと、繰り返し繰り返し予測に誤りが起きたときに給付を削減したり負担増を求めたりしなければなりませんので、先ほど来お話が出ているように、必ず人々は年金に対する信頼を失ってしまうという事態になりかねないというふうに考えています。
 時間でございますので、とりとめのない議論になったかもしれませんが、あとは御質問でお受けできればというふうに思っております。
#17
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#18
○久野恒一君 自由民主党の久野恒一でございます。
 本日は、参考人の諸先生方、公私ともにお忙しいところ、我が委員会に出席を賜りまして、いろいろと御示唆に富んだお話をちょうだいいたしまして本当にありがとうございました。話を聞くほどになかなかためになることがございます。以下、私の質疑に入らせていただきたいと思いますけれども、失礼とは存じますが、座らせて質問に入らせていただきます。
 確かに、先生方のお話を聞いておりますと、どなたももっともなことを言っておられるわけでございまして、そういう意味ではどの方にどういう質問をと思って先ほどから考えておったんですけれども、なかなか該当してまいりません。どなたも本当になるほどな、こういうところをディスカッションしたいなと思ってもなかなかそういう案が浮かばないわけでございます。したがいまして、私の考えていることをまず述べさせていただきたいと思います。
 そもそも、私は、年金というのは社会保障制度の中にしっかりと位置づけられたものである、そういうふうに思っております。言いかえれば、社会保障制度というのは、皆様方もおっしゃったように、医療、福祉、年金、そしてこれから介護というふうに入ってくると思います。こういうものが非常に不安定な状態である。そういう中でもって、今、年金法改正案が提出されたわけでございます。
 一方、この景気低迷の中で、先ほど坂内先生がおっしゃったように、非常に雇用が不安定である、そういう労働条件、失業者、その問題もございます。したがいまして、厚生年金だけでもって物事を解決していっていいのかなというふうに思うわけでございまして、そういう意味では一番最後の神野先生の考え方というのは非常におもしろい発想であるなというふうに感じておりました。少なくとも最低保障はやるべきであるというのが私の考え方で、基礎年金でもって最低の保障は国がするべきである、これが私の考え方でございます。
 過去、右肩上がりの保障制度というものはもうなくなっちゃったわけですから、どんどん少子高齢化でもって年金も積み立てる人が少なくなって、受け取る高齢者がふえてくる。そうすると、どうしても受け取る人のもらう金額と面積、これはやっぱり同じ面積が今問われているんじゃないかなというふうに思うわけでございまして、積立率が上がって、そしてさらに給付率が下がってくるという単なる数字合わせだけでは解決できない問題であろう、根本的にやはり改革をしていかなくちゃならない。
 ところが、先ほども言いましたように、医療とか福祉とか介護保険ですけれども、福祉もそうですが、障害者プランとかなんとかがこれからだんだん決まってくると思いますけれども、そういうものがまだあいまいもことしている。そういう中で年金問題だけをディスカッションしたのでは、これはやはり片手落ちではないかなというふうに思います。
 そういう意味で、私は自民党でございますので賛成の立場でもって質問させていただくわけでございますけれども、やはりどういう状況の方でも必要最低限の生活、老後の安定というものは保障されなければならない、そういうふうに思っておる次第でございます。そういう意味では、いつリストラされてしまうかわからない、そういう中で厚生年金だけの見直し、あるいは国民基礎年金を三分の一を二分の一に引き上げるとか、小手先だけの改革ではどうにもならないのではないかというふうに自分では思っております。
 そういう意味で、質問でございますけれども、神野先生が二ページでもって「三つの政府体系の概念図」のお話をなさいました。中央政府があって、そして人によって掛け率がそれぞれ違って、そういうものには地方財政も絡んでくるわけでございますけれども、そういう三者が交わり合って、その掛け率に従って基礎年金というものを取っ外しちゃって、三ページのAというところでもって支給額があるという考え方は非常におもしろいと思うんですけれども、この財源的な問題は一体どういうふうに算定しておられるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
#19
○参考人(神野直彦君) 時間がなかったものですのでお手元のレジュメを御説明しなかったわけですが、お手元の「協力社会における新年金」というレジュメの一番最初のページを見ていただきたいと思います。
 まず、お手元の図で、三角部分の社会保障基金の方ですが、これは所得に比例して拠出する社会保障負担で行います。これは税か保険かというのはいろいろ定義があって難しいんです。財政学の方では、もともと税というのは保険であるという考え方もあります。税保険説というのもありますので税か保険かというのは難しいわけですが、私の定義では、とにかく社会保障基金というある独立した政府みたいなものを抽象的に考えて、この社会保障基金という政府に、仮の政府ですが、独立した会計でも何でも構わないんですけれども、そこに納めるのが社会保障負担ないしは社会保障の拠出金だというふうに考えて、これは給与所得と事業所得に比例して拠出するというふうにして財源は調達をする。
 ただ、企業側がどの程度負担するか、事業主がどの程度負担するか、比例して拠出する部分のうち事業主がどの程度負担するか、本人がどの程度負担するかというのはまた別に考えなくちゃいけませんが、とりあえずその本人の所得に比例した拠出金で賄われるということです。
 その負担の水準はここの三角形で、年金として自分の生涯得た賃金のうちどの程度保障してもらうのかという国民の意思決定で決まる。それから、ミニマムペンションの方は先ほど申しましたように国税で一般財源として繰り込みますので、この国税をどの程度の水準にするのかということもミニマムペンションをどの程度、最低限度の年金をどの程度の水準にするのかということを国民が意思決定できる。この制度にすると国民がわかりやすくなるんです。自分は賃金のうち何%まで負担する、だから何%をもらうんだということがまずわかるようになりますし、国税を決めるときも、最低限度というのはここなんだから国税はこの程度必要なんだということがわかるようになる。
 私は頭が悪いせいか、今の年金制度は自分の負担がどこでどういうふうになっているかよくわからないので、あなたの年金は高いんですか低いんですかと言われても返答に困っちゃうんです。私は能力が落ちるからそうかもしれない。一般の国民でもかなりの人がやっぱり困っていると思うんです。ですから、こういう形でわかりやすく、国民が意思決定しやすいように、ああ、ここまでだったら、ここまでの所得を保障してもらうんだったらここまで負担するということがわかるようなシステムにすべきだというのがこの案の趣旨でございます。
#20
○久野恒一君 Aのポイントは大体幾らぐらいを考えておられるのか。
#21
○参考人(神野直彦君) これは余り意味がありません。というのは、こういうことをするメリットはクロヨンサン、トーゴーサンピンと言われている所得税の捕捉率も上げることができるんです。なぜなら、事業所得などをごまかして低く申告をしてしまうと当然社会保障負担は少なくなりますが、年金も少なくなってしまうということになるわけです。
 したがって、ここをできるだけ斜めにしたいためにやっているものですので、だから年金額を少しでも払えばミニマムペンションというか最低限の年金よりも上げることができるシステムにしていくということですので、この角度は余り意味がない。できるだけ角度をなだらかにした方がいいというぐらいで、年収でいいますと大体六百万以下になると思います。
#22
○久野恒一君 四十一分まででございますので、本当に時間がございません。もっともっとお聞きして勉強したい点がございますけれども。
 私が今お尋ねしたのは、やはり国民基礎年金とか厚生年金とか共済年金とか、三つに分かれていますよと、これの中で、やっぱり国民というのは、老後はだれしも平等に安心して過ごせる、そういう世代をつくりたい、そういう気持ちでお聞きしているわけでございますので今の質問になったわけでございます。
 広井先生にちょっとお尋ねしたいんですけれども、二ページの図の中でアメニティーとございます。これはいわゆる厚生年金そのものをアメニティーと言っているのか、どういう部分を、三階部分ではなくてもちろん二階部分だと思うんですけれども、二階部分をアメニティーにとったらいかがかなという御発想で言っておられるんですか。
#23
○参考人(広井良典君) このアメニティーは、ちょっとこれは誤解を招きやすい図で、これは医療についてのお話でして、非常に広い個室であるとかそういった部分については医療の場合すべてを公的に賄う必要がないという意味で医療に関して使っている言葉ですので、差し当たって年金とは直接関係はございません。
#24
○久野恒一君 もう時間がございません。もっともっと質問したかったんですけれども、本当に私自身は基礎年金だけでもって生活ができるような時代にしたいな、私はそう思っております。むしろ二階部分はアメニティーでやっていいな、そういうふうな気持ちでおります。そのためには、早いところ医療がはっきりして、高齢者の医療はどうするんだ、それから介護保険は一体どうなっていくんだ、そういうものがしっかりと安定した基盤の上に乗っかることをこれから決めていく問題でございますので、そういう意味では区切りとして今回の年金法改正はとりあえず通していただいて、そして次のステップとして大いに考えていく場合があるんではないかなというふうに思います。
 ほかの参考人の方には質問できなくて申しわけございませんでしたけれども、これにて終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#25
○直嶋正行君 きょうは、参考人の先生方、どうもありがとうございました。それぞれのお立場から大変幅広い御意見をちょうだいしまして、本当に年金の問題というのは難しいなというふうに改めて思いました。
 それで、順次幾つか、お話の中でお触れにならなかった部分等も含めて確認の意味で質問させていただきたいと思うんです。
 幾人かの方が国民年金の今の空洞化について、さっき桝本さんからは九八年度の調査ではもう半数近くの人がというお話がございましたが、この空洞化について、神代先生、それから都村参考人は私の聞き落としかもしれませんがお触れにならなかったように思いますので、どのようにお考えになっているかを簡単にお聞かせいただければというふうに思います。
#26
○参考人(神代和俊君) 空洞化についての議論は、先ほどの桝本さんの表現もそうですが、確かに大事な問題ではありますが、私は括弧つき空洞化と書くことにしております。不必要に誇張されている面が多い、特に新聞等の書き方にそういう書き方が非常に多いのは遺憾なことだと思います。
 と申しますのは、国民年金の保険料を納めていない人は三種類ございます、先生も御存じだと思いますが。一番多いのは免除者の約四百万人というのがございます。これはもともと社会保障の制度でありますから、地方税も納められないような低所得の人の保険料を一定期間免除するのは、むしろ制度の本旨からいって当たり前のことで、そのかわり保険料を納めなければその分だけ将来もらえる年金が減るということでありまして、短期的に、緊急避難的に免除しなければならない人が特に不況の際にはふえると思いますが、こういう人を空洞化という分子の中に入れるのはそもそも間違いです。
 それから、もう一つの種類は未加入者でございます。この未加入者も主たる部分は自営業の方でありますが、サラリーマンでも年金受給開始年齢以前に失業いたしますと保険料を払わなきゃいけない、国民年金。身分が変わったことに気がつかない人たちもたくさんいらっしゃる、学生の問題はありますけれども。この未加入者はなるべく少なくした方がよろしいので、社会保険庁で近年随分そういう加入促進の努力をなさって改善されてきていると思います。未加入者は九十九万人ぐらいだと思います。
 未納者は百七十二万人ほどいるようでありますが、未納者というのは一月、二月納めなかったという意味じゃなくて二年以上にわたって意図的に納めない人を指しておりまして、これが一番問題。中には相当高額の所得税を払っている方もいるやに伺っております。
 私は、分子には未納と未加入の人を加えた二百六十万ぐらいの数を持ってくるべきで、分母は、空洞化論をおっしゃる方は二千万ほどの一号被保険者だけを分母にして計算されますが、六十年改正以来基礎年金で全部統一しているわけですから、分母には七千百五十万ぐらいの人を持ってこなければいけないんですね。そうすると、私の定義では、本当に納めていないのは三・八%なんです。ですから、これは決して軽い数字とは思いませんけれども、それに対しては国民年金法で所得税に準じて強制徴収することが規定されているわけですから、もう少しきちっと国民の義務を果たさせるような、既にいろいろ講じられておると思いますが、そういう努力をなさるべきだと思います。
#27
○参考人(都村敦子君) 神代先生と大体同じなのでございますけれども、基礎年金を支えるのは第一号被保険者だけではないわけですね。
 それから、保険料免除の規定は皆年金システムのもとでは不可欠なことであります。
 ですから、通常、保険料を納めていない人が二分の一とか三分の一とか言われるわけですけれども、これは分子と分母と両方に問題があるわけです。分母を一号被保険者だけにしているというのが問題で、国民年金被保険者全員を分母にすべきだし、それから分子の方は未加入者と未納者だけにすべきで、免除者というのはちゃんと法律で定められて、免除を申請すれば免除されるわけですからそれは除くということで、やはり現時点で五%弱になると思います、このような計算をしますと。ですから、二分の一とか三分の一というのは非常に誤解を招く数字というか言い方であるというふうに思います。
 以上です。
#28
○直嶋正行君 では、桝本さん、多分お考えがあると思いますので、今の点についてちょっと補強していただければと思います。
#29
○参考人(桝本純君) 実はお二方の先生と私とはかつて年金審議会という場でこの問題について大分議論をする機会がありまして、私は非常に違う考え方をしております。
 つまり、現在、国民年金は一号、二号、三号と、三つの給付も負担の形態も全く異なる被保険者に分類されておるのは御承知のとおりで、例えばサラリーマンでありますとこれは給料から天引きをされる。これは問答無用なわけですね。
 今、私たちが問題にしているのは、納めていないのがいい悪いということよりも、納めないという現象が目立っていることは一体国の年金にとって何を示しているのだろうかということなんです。これは明らかに制度に対する不信が深まっていることを示している一つのバロメーターであろうと。その意味からいえば、サラリーマンについて言えば、毎月の給料から強制天引きされるのがバロメーターなんかになりっこないわけですね。
 それから二番目に、定額保険料という現在のシステムは実際に納められない人を生みます。ですから、免除というシステムは必要なんです、それを前提にすれば。しかし、免除というシステムがあるからそれは合法的だから問題にならないんだということではなくて、その人たちは実際に、今でいうと三分の一しか年金が出ないわけですね、二万円しか出ない。それで基礎年金の役割を果たせるかといったら果たせないわけであって、そういう免除者が不可避的に出るような今の定額保険料方式、これは全く所得に無関係な定額保険料、こういう極めて逆進的なもの自体が制度の欠陥なんだというふうに思っております。
 それから三番目に、払っていない人のことばかり問題になるんですが、払っている人についての問題もぜひ御注目をいただきたい。今払っている人たちだって、払うか払わないかすれすれの人がいっぱいいるわけで、払いたいと思っていないけれども、一生懸命徴収係の人の説得を受けてようやく払っている人がたくさんいるわけですね。そのために、徴収係の人たちは、これは市町村の人であったり、あるいは二年目は社会保険事務所の職員であったりいたしますが、本当に朝早く行ったり夜遅く行ったり日曜日に行ったり、何度も何度も足を運んでいるわけで、そのために大変なコストがかかっております。我々サラリーマンの場合の徴収コストは大体〇・一%ぐらい、これは極めて低額ですが、現在の一号被保険者については千円集めるのに百円以上もかかっていると言われる。これは納めているから問題がないんじゃなくて、それだけのコストがかかっているということ自体が既に社会保険制度としてほとんど破綻だというふうに言わなければいけないのではないだろうかと。
 以上でございます。
#30
○直嶋正行君 ちょっと神野先生にお伺いしたいんですが、さっきお話の中で、積立金制度を含めて今の仕組みの中で年金を運用しようとしても将来的にこの制度の維持は無理じゃないか、こういう御指摘があったように思うんですが、神野先生は今の年金積立金、これは大体百四十兆円、年金基金を入れますと百八十兆円というふうに言われているんですけれども、今の制度についてもうちょっと詳しいお考えをお聞かせいただければと思うんですが。
#31
○参考人(神野直彦君) 先ほど申し上げたのは、今後積み立て不足と言われている額を積み増ししていきますと、これは恐るべき額を積み立てていかなくちゃいけないわけですね。そういうことが一つ可能かということもありますし、それから先ほど来申し上げているように、それをやっても必ず予測とぶれるわけです。利子率はどうなりますか、成長率はどうなりますかという予測とずれたときにまたやり直しで負担増なりなんなりにいきますから、これは積立方式で高齢化が強まっていく過程を乗り越えようというのがどだい無理なのではないかということであります。だから、私どもの主張は、むしろ賦課方式に改めて積立金なんかは取り崩しちゃった方がいいという考え方であります。
#32
○直嶋正行君 さっきお話の中で触れられなかったんですが、桝本参考人はこの積立金についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
#33
○参考人(桝本純君) ただいま神野先生の方から伺いましたお話とくしくも私どもの考え方はほとんど一致しております。
 年金と一口に申しましても、民間保険といいますか私的保険というのは必ず積立方式でやらざるを得ません。なぜかというと、どうしても任意加入になるからです。公的年金の場合には積立方式ももちろんとれますけれども、公的年金なればこそとれるのが仕送り型の賦課方式なので、私どもは、今、国の年金が百八十兆円とか、あるいは将来の高齢化のピークになってもこれが数年分、三、四年分あるとかというような財政の方式は非常に不健全なのではないだろうかと。
 お手元に私の資料として配っていただいたデータの部分がございますが、そのデータの二枚目のところにただの表だけのものが二つついてでございます。これはプレゼンテーションで申し上げたかったのですが、上のものは昭和六十年改正当時の財政見通しです。下のは今回の改正見通しです。
 昭和六十年改正当時の見通しのときには、将来の高齢化のピークになったときには、積立金、これは表の一番右側の列を見ていただきたいのですが、これは何年分という数字でございますけれども、将来はこれはほとんど一年あるかなきかになってしまうという予測をしていたし、当時の人たちはこれが年金のあるべき姿だと考えていました。最近では、この下にありますように、高齢化のピークになっても三、四年分の積立金を保持し続けようと。これは全く思想が違うわけであって、これはかつての方が健全な思想だったのだろうというふうに考えています。
#34
○直嶋正行君 それからもう一点、年金水準といいますか、私の記憶でいいますと、五年前の改正のときに、当時、名目賃金に対する年金額、年金水準というのをはじいてそれをもとに給付額、モデルで計算してやっていたのを五年前の改正で、いわゆる可処分所得スライドというんですか、これに変更したというふうに思うんです。今回の改正案は、今度は厚生年金の水準の五%カットとあわせて、法的事項ではありませんが、いわゆる賃金スライド部分をやめる、新規裁定のときのみでそれ以降の賃金スライドをやめる、こういう発想になっているんですが、結局ここで私は問題点として大きなものが二つあるというふうに思うんです。
 一つは、年金水準について長年とってきた考え方を五年前に変更した。それで、あのときも大変大きな議論があったんですが、とにかく新しい考え方を導入した。それをわずか五年たって今回またまた給付の考え方を変更すると。たった五年でこういう変更をするということが、国民の立場から見ると、年金の安定ということからいいますと本当に望ましいことなのかどうか。
 特に賃金スライドというのは、本来いわゆる現役の賃金の上昇に合わせて年金給付もスライドさせるということですから、ある意味でいうと経済成長のパイを現役の方だけではなくて引退世代にも配分をする、こういう発想があるんです。多分、日本の年金制度というのは今までそういう発想に立って負担と給付も考えられてきた。
 ところが、今回、私は政府の説明で一番問題だと思うのは、言ってみれば、今申し上げたようなことを、これ以降は経済成長の成果は引退世代には配分しないよ、これからは物価の伸びだけでやってください、こういうことでして、これは私は国民的に見て非常に大きな考え方の変更だと思うんです。
 ところが、余りこのことはきちっと説明されていない。この点について、賃金スライド導入時のことも含めて桝本さんからちょっと御見解をお聞きしたいと思うんですが。
#35
○参考人(桝本純君) 成長の成果配分の対象に退職者も含めるか含めないかというのは一つの選択であって、一般論としてどちらがいいという議論は非常にしにくいと思うんですが、どちらにするのかについてははっきりとした理念が必要である。これについて、理念の変更であるものを理念のレベルでは議論せずに、お金がないからだ、財政上きついからだという議論だけでしてしまうところに一番大きな問題があるように思います。
 これはその国その国によっていろいろ事情が違います。年金水準が非常に高いからそういうことは高齢者の生活を考えれば必要ないという国もあるでしょう。それは例えば、先ほど代替率という数字でお示ししましたけれども、現在の我が国の年金が将来に約束しているのは、現役と退職者、それぞれ手取りで見ると、一定の前提を置いての数字ですが、一〇〇対五五です。これは決して高いとは思いません。ですから、そういうところでは、この五五%というのを下がらないように守る必要があるという意味で私たちは賃金スライド、可処分所得スライドというものを維持すべきだというふうに考えています。
 しかし、非常に受け取り始めのところが高い場合にはそんな必要がないという国もあるいはあるわけで、そこの水準と無関係にこれは議論できないのかなというふうに思っております。それから、社会変動が非常に激しい場合には、これはゆったりしているときとは非常に違うんだろうというふうに思います。
 それから三番目に、高齢者の人が何を負担するのかということとの見合いもございます。基礎年金を税方式にする、その場合に、私どもは二分の一までは一般財源、あとの二分の一については間接税を念頭に置いておりますが、間接税ということになれば、これは高齢者の方々もまた負担をお願いするわけです。そうすれば、そういうふうに高齢者自身も年金を受け取りながら一部負担をするということに対して見合ったものというのはあってしかるべきなんではないか。
 そういう総合的なことの中で判断されるべきことで、私どもは私どものあるべき姿として現状の制度の手取り賃金スライド、いわゆる可処分所得スライドは維持するのが合理的だというふうに思っております。
#36
○直嶋正行君 水準の話で、さっきお話の中で桝本さんからこの表、要は年金水準というのはいわゆる四十年加入モデルで議論されることが多いのだけれども、実際は違いますよと。それから、社会保険料負担等を除いた手取りで見ると水準がかなり変わってきます、こういうお話があったんですが、都村先生の方から先ほどお話しのときにお配りいただいた「改正案の内容」、この一枚目の右の上の方なんですが、年金水準について、高齢者世帯の消費支出のほとんどをカバーしていると。五%切り下げ後も九二、こういう数字で御説明いただいているんですが、この部分というのは、今のお話でいいますと、いわゆるモデルの金額でこういう算定をされたものなのでしょうか、ちょっとここを補足していただければと思うんです。
#37
○参考人(都村敦子君) 厚生年金の給付水準についてでございますけれども、この数字は平成十年の家計調査に基づく高齢者夫婦世帯の平均的な消費支出を分母にしまして、厚生年金のモデル給付を分子にしております。
 ですから、九四%というのは、二十五万七千円が高齢者世帯の平成十年の消費支出でありまして、それに厚生年金のレベルが二十四万二千円ということで九四%ですね。それから、五%適正化の後のカバー率については、同じく二十五万七千円を分母にして、五%カットされた二十三万七千円を分子に持ってきますと九二%ということですから、平均的な高齢者夫婦世帯の最近の消費支出と比べているわけで、この五%適正化された後の二十三万七千円というのは、衣食住と保健医療と交通・通信費を全部入れて、それにそのほか残っている部分、教養娯楽、教育、交際費、その他という部分の八〇%、それを入れたものが合計すれば九二%になるということです。基礎的な消費の部分、衣食住、保健医療、交通・通信というところは全額カバーされるので、公的年金が高齢者世帯の消費のどのくらいをカバーすればいいかというのは、いろいろ調査もありますし大変議論のあるところですけれども、実際の数字を当てはめるとこういうふうに極めて高いですね。
 これは平均値ですから、もちろん今の高齢者は両極化していますから、非常に収入も高くて消費支出水準も高い世帯と、そうじゃない、ひとり暮らしの女性とかそういうところもあります。これはあくまで高齢者夫婦世帯の平均的な消費支出ということで比べていますから、もちろんもっと中身を分ければ違ってきますということであります。
 以上です。
#38
○直嶋正行君 つまり、要は、分母の方はモデルで四十年モデルを分子の方に置かれていると、こういう理解でよろしいですね。
 ちょっとこの辺はまたいろいろと委員会の中で議論もさせていただきたいと思いますが、あと雇用との関係をやはり私たちも検討しておかなければいけないと思うんです。
 今度の政府案では基礎年金から始まって、二階部分も順次二〇二五年にかけて支給開始年齢を延ばしていこうということなんですが、一方で今こういう経済情勢あるいは雇用情勢が大変厳しい状況でございまして、とりわけ中高年齢者の方はリストラ等もあって大変厳しいということなんです。
 実際に、個人の生活設計を考えましても、やはり年金支給年齢と雇用年齢との接続というのは大変重要な話じゃないかと思うんですけれども、この点について特に桝本さんのお考えをお伺いしたいと思うんです。
#39
○参考人(桝本純君) 御指摘いただきましたとおりでございまして、雇用と年金の接続というのは私どもにとって最も重要な基本的なテーマであります。
 かつて、我が国の主要な企業は企業定年は五十五歳でございました。その当時、公的年金の支給開始年齢は六十歳で、会社は定年で追い出されて五年後にならないと年金は受け取れないという状態を、多くのサラリーマンは非常に苦しい中で再就職をし、低賃金の状況の中でくぐり抜けて、ようやく六十になると追いつくと。そういう状態に対して、私どもは、六十歳までの雇用延長、すなわち定年延長ということを三十年もかかってやってまいりました。
 これが、六十歳未満の一律定年制は法律上違反であるということになったのはほんの二年前のことです。そうなったと思ったら、年金の方が今度は六十五歳からだという話になる。少なくとも下半身に関しては既に前回改正でそうなっちゃっている。そして、時あたかも雇用情勢は御案内のとおりでございまして、前回改正のときに下半身を六十五歳にしていくことについては高齢者の雇用情勢が改善をするということの見通しに立ってした話ですが、では、この間、高齢者雇用は前進してきたか。
 バブルの真っ最中であっても、六十歳代の労働者は就職しようとすると十人に一人しか仕事が見つからない。あの年齢別求人倍率という統計が果たしてどのくらい信頼に足るものかということは、神代先生からまたしかられるかもしれないのですが、極めてまともな仕事を発見するのが難しい状態にあることは昔も今も変わりません。しかも、我が国の企業はそれについて改善するための具体策を本気になって取り組んでいるのか、私は極めて疑問であります。やむなく六十五歳定年延長ということを主張している労働組合もございます。しかし、主張できない労働組合もあります。
 お考えいただきたいんですが、中学を卒業してずっと働いてきた人は六十歳で四十五年も働いているわけですね。それから、在職中に大変きつい労働をしている人はたくさんおります。こういう人たちが六十歳になると大体もうこれで勘弁してくれと、本当にそういう状態に心身ともになるわけです。一方で、六十五歳まで元気で働ける人には職を用意していただけたらいいんですが、それもそうなっていない。
 そういう中では、年金の方を先になくしていくのは逆だろうと。むしろ、職がきちんと保障されれば、たとえ年金は出るにしても、やっぱり働いた方がいいやということで、実際には年金を受け取らない人がふえていくということの方がはるかに健全なのではないかというふうに思います。
#40
○直嶋正行君 私も、今の雇用情勢を考えると年金支給年齢をさらにおくらせていくというのは大変問題が多いと思うんです。
 実は、前回改正のときに、桝本さんからお話がありましたが、定年が六十歳だ、支給開始年齢は六十五だよと。では、五年間のこの谷間といいますか、これをどうやって埋めるんだという議論がいろいろありまして、結局あの当時、いわゆる部分就労、部分年金というんですか、要するに少し賃金は低いけれども、働いている人にはその生活を補てんするという意味で年金も支給しましょう、こういう発想が私は前回から入ったと思うんです。その一つの象徴が、六十から六十五歳にかけての二階部分の六十歳からの支給を残したと。
 あの当時も、一階も二階も六十五にしてしまえという議論もたしかあったんですが、国会での議論の中でそういう格好にしていったと思うんです。ところが、それに沿ってこれからいろいろと労働省も今度新しい法案を出されるとか努力がされようというときに、実はその二階も今度先送りよと。もちろんそれは二十五年かけての話、先の話かもしれませんが。
 そういう意味でいうと、せっかく前回入れたその部分年金、部分就労という考え方が今回の改正でどこかへ行ってしまったんじゃないかな、こういうふうにも思うんですけれども、この点は私は実情から見ると相当深刻な問題だと思うんですけれども、済みません、時間がありませんので簡単で結構ですから、ちょっと桝本さんからお答えいただければと思うんです。
#41
○参考人(桝本純君) この部分就労、部分年金というのは、労働組合の方は十五年前から主張してきたことですが、全く実現しておりません。
 現在の在職老齢年金制度というのは、実は年金がカットされるだけで労働時間は短くなっていないわけですから、部分就労、部分年金ではなくて全部就労、部分賃金、部分年金なんですね。その場合の部分年金というのは、実は年金ではなくて賃金補てんにすぎません。それでなくても年金財政がきついという中で、雇用調整助成金も真っ青なような賃金補てん機能を年金から支出するという非常に大きな矛盾が今の高齢者雇用の中にはあるわけでございます。
 この部分就労、部分年金という考え方がいわゆる別個の給付という六十歳から六十五歳までの二階部分に示されたのだとすれば、その目的を実際に我が国の社会の中に定着させていくのはまさにこれからの課題なんじゃないかと。それをなくそうというのは、私どもから見ればこれは改悪だということにならざるを得ないわけでございます。
#42
○直嶋正行君 終わります。
#43
○山本保君 公明党・改革クラブの山本保です。ちょっと声が聞きづらいかもしれませんが、御質問させていただきます。十五分間しかございませんので、本来ですとすべての参考人の先生方にお聞きすべきだとは思いますが、ちょっとそうなりませんのでお許しをいただきたいと思います。
 用意していなかったんですが、今ちょうど私の尊敬する直嶋先生からまさに労働の桝本先生に、非常におもしろい議論になったので、ちょっとそれに乗っけさせていただこうと。まだお話、多分足りないんだろうと思いますから。
 これは、桝本さん、今のことについての価値観というか、つまり日本というのはこういうときにきちんと目標を決めないとやらないんじゃないかと。十三年後から六十五歳にする、だからこの十三年間で、いろいろ労働の先行きなんかを見ましても、基本的に労働力人口が減ってくるんだと、今はちょっと特別ですけれども。そういう中で六十五歳の方、そして今も、部分就労という言い方は私は余りその概念がはっきりしないんですけれども、しかし今までの、いわば生きていくためにやらなくちゃいけない仕事というところから、もっと生きがいだとかいろんな形での仕事や社会参加、いろんなものを含めた形での六十歳以上の方の人生というものをいかにつくっていくのかということが課題だと思っているわけですよ。
 そのときに、十三年先からやろうじゃないか、こうすることは私なんかは妥当な方法ではないかという気もするんですけれども、いかがでございましょうか。
#44
○参考人(桝本純君) 大変高い御見識からのお話だというふうに伺っておりますが、私ども組合員の置かれている状況は、先生のお話の次元とはやや違っておるのが実情でございます。
 これは、労働省の統計をちょっと御紹介いたしますと、今の六十歳代の労働者でなぜ働いているのかというときに、もちろん生きがいとか仕事に対する喜びとかということを挙げる人も決して少なくないのですが、一番大きい理由はやはり経済的理由なんですね。そして、その経済的理由を挙げる人がすべて健康なわけではありません。だから、逆に言えば経済的な理由によってかなり無理をしながら働かざるを得ないケースにある人たちもかなりいる。こういう人たちにとっては、少なくとも引退する条件というのを一方で保障して初めて他方でその生きがいとかあるいは仕事に対する誇りとかというものを十分に生かすということが積極的に評価される、そういう社会になるのではないだろうか。
 その点で、私どもの周りで起こっている事態は、ハッピーな話も個人によってないわけではありませんけれども、むしろアンハッピーな話をなくしていただくのが当委員会に私どもが期待している話だということでございます。
#45
○山本保君 ありがとうございます。
 労働界でお仕事をされていて、そういうほんのわずかでもマイナス面があるのではないかということに対しておそれを持っておられるということはよくわかりますけれども、私などは今のお話を聞きながら、確かにこれは責任が重いな、きちんとこういう高齢者の生活をつくっていくことをまたいろいろ御意見を伺いながらしなくちゃいかぬなと思いました。
 では、ちょっとほかの先生にも伺うわけです。
 今いろいろお聞きいたしまして、今後の年金制度には、例えば私的なものなのか公的なものなのかという議論もございました。それから、お金で行うのかサービスで行うのか、またその財源は税なのか保険なのかというまさにこの問題についての基本的な、時間が非常に短かったですから結論だけだったと思いますけれども、お話を伺って、私は当然これからそういうことの話をしていかなくちゃいかぬというふうに思っておるわけでございます。
 そこで、私どもの方からお願いいたしました神代先生にまずお伺いしたいのでございますが、不勉強で、この委員会でも実はもうよく詳しい先生から出ておったんですけれども、スウェーデンの方式、先生のところに御紹介を、非常に中心のところだけ書いてございます。こういう抜本改正をという文章がございますけれども、このスウェーデン式の抜本改正というのはどういう内容でございましょうか、できましたら少し詳しく教えてください。
#46
○参考人(神代和俊君) スウェーデンのやり方がそのまま日本に持ってこられるとは私は考えていないんです。ただ、スウェーデン方式の非常に魅力的な部分は、そこのメモの最後の方に、括弧の中に書きましたような点ではないか。特に経済調整スライド方式と、平均寿命が延びた場合に自動的に年金が減らせる制度になっているんですね。ですから、これはむしろ将来的に言うと給付を引き下げるビルトインスタビライザーみたいな制度をとっているということで、日本の世論の中でそういうことが受け入れられるかどうかは全く私はわかりませんが、高齢化というもののもたらす財政的な大きな圧力ということを考えると、一々その都度国会で法案を出して御議論いただくというのはもう非常に大変でありますし、手間がかかりますので、そういうことをやったということが私は非常に注目すべきことではないかと。
 基本的にどういうふうにこれができるかは、例えば単一所得比例年金というのは、神野先生のお話の中にも出ておりますけれども、これの前提条件はもう非常に厳しいと思いますね。先ほど所得税の捕捉率が高まるというふうな神野先生の御評価でありましたが、逆に、最低保障年金をつけた場合は、所得税の方はうまくクロヨンで脱税しておいて、税金を払わないでおいて、そして生活できなくなったら最低保障にただ乗りする、こういう危険性も非常にあるわけで、特に日本の一号被保険者の大部分を占める自営業者の現在の税金に対する態度というものを前提にしますと、とてもこれはすぐには日本では導入できないなという印象がむしろ私は非常に強いんです。
 けれども、ここに示されたような経済成長が、特に労働力人口が減り出した段階で本当に何%維持できるのか、あるいは金利がどういうふうに動くのか、出生率が今後どういうふうになっていくのか、非常に不確定な要素が多い中で一々五年ごとに見直さなきゃいかぬというのは、これは確かに皆さん御指摘のように制度の安定性に対する国民の信頼を損なう危険が大変大きいので、スウェーデンのようなことができればいいなという願望を示したようなところでありまして、本当にこれを日本の現行の制度と、現実に既にたくさんの人が年金をもらっておりますし、期待をしておられるわけで、現行制度からスムーズに移行するその移行措置というのをよほど綿密にプランニングしませんと、考え方がいいからといってすぐそれに飛びつくということは非常に難しいと思います。ですから、いわゆる抜本改革の議論をするのならばそういうスタンスでやるべきではないかという趣旨で書いたわけでございます。
#47
○山本保君 ありがとうございます。
 その次に一号被保険者の難しさということもお聞きしようと思っておりましたけれども、もうお答えいただきまして、たしか先ほど神野先生からもそんな意味のお話があったかと私も思っておったんです。
 日本の官僚が非常に丁寧に細かくつくっているのが逆に裏目に出て、予想できないことを予想しているわけですから当然変わってくる、変わるたびに法律の条文や数字を全部変える、こういう作業で何カ月も国会議員もえらい時間を食う。こういうことは何かおかしいなという気がしてしようがありません、特に最近のこの委員会の動かし方を見ていまして。何とかそういう、全体的に制度のまねという意味じゃありませんけれども、今おっしゃったスタビライザーですか、そういうものは確かにこの次の制度改正のときには考えるべきだという気がいたしました。
 ありがとうございます。
 次に、都村先生にお聞きしたいのでございますけれども、時間的に無理かもしれませんが、一つは、先ほどちょっと桝本さんにお聞きしたこととも絡むのですけれども、先生の最後のところに、「改革のパッケージ」ということがございます。その中の六番にアクティブ・エージング・ポリシーというのがございまして、私も最近、この前の委員会で、今度のゴールドプラン21にヤング・オールドでしたか、元気なお年寄り九割というような数字が出てきて、初めて見たものですから、大分評価したんですけれども、この辺とか、また一番のライフコースに関する個人の選択の幅、こういうようなことについて先生のお考えをもう少し具体的にお願いできますでしょうか。
#48
○参考人(都村敦子君) アクティブ・エージング・ポリシーを推進するということですけれども、今お話がございましたように、今は高齢という意味が一昔前と違うわけです。それで、高齢者の多くは健康で活動的なわけです。ですから、健康度と個人の選好に従って、年齢のいかんを問わずどれだけ就労するかの選択に関して最大限のフレキシビリティーが与えられることが望ましいと思うんです。
 それから、先ほどもお話がありましたけれども、労働から退職へ徐々に移行するような、そういう機会をつくることも大事だと思うんです。
 このパッケージのところの最初にも申しましたように、やはり年金制度を支える人たち、これは今は就労していない高齢者とか障害者とか、あるいは家庭にいる専業主婦の方とか、そういう人たちがいろいろいるわけですけれども、年金制度を支える側をふやすということが年金の安定ということに対して非常に大きな意味を持ってくるわけです。ここでアクティブ・エージング・ポリシーと書きましたのは、高齢期になっても健康で活動的な高齢者たちは、経済活動とか社会活動とかボランティア活動とか、そういうところに参加して、何か生産的な人生を送ろうという人が今ふえてきているわけです。
 ですから、その人たちをいろんな生涯学習政策とか健康政策とか就労政策とか、あるいはシルバー人材センターのような生きがい就労とか、そういったいろいろな政策をもう一度再構築することによって、もっと高齢者の社会参加、経済参加を活性化していくことが社会にとってもプラスではないかというふうに思います。
#49
○山本保君 ありがとうございます。私もまさにそう思います、NPOなどのことを一生懸命やってきたわけなんですけれども。
 そこで、もう一つ都村先生にお聞きしたいんです。ちょっと意地悪な質問をしますけれども、今の支えるということになりますと、今度は子供のことになってまいります。たくさん子供を産んだ方がいいんじゃないかと。働いている女性の方が子供の数が少ないじゃないかとか、女性は働くことよりは家庭でちゃんとだんなさんを支えて子育てをしっかりやった方がいいんじゃないかというような感覚が一般にまだまだあると思うんです。先生、男女平等とか女性が仕事と育児の両立というようなお話もありますけれども、この辺についてはどのようにお考えでございますか。
 これで最後になります。お願いいたします。
#50
○参考人(都村敦子君) 横軸に年齢階級をとって縦軸に女性の労働力率をとると、よくM字型になるといいますね。子育てをするちょうど三十代の前半のところでがたっと下がって、やっぱり退職して子育てせざるを得ない。だけれども、先進諸国では昔はM字型だったんですけれども、子育て支援が充実してくるというようなこともありまして、今はほとんどの先進諸国が台形型になって、学校を卒業して就職してずっと高いところで労働力率が推移する、M字型に下がらないということがあるわけです。日本も少しずつはMの底が上がりつつはあるんですけれども、やはりM字型なんです。
 労働省で調査しておりまして、就労していない二十代後半とか三十代前半とか三十代後半の女性に就労の希望があるかどうかというのを尋ねているんです。その調査が行われているんですけれども、それを今働いている人に足し上げます。その足し上げたのを求めますと台形型になるわけです。落ち込まないわけですね。ですから、女性で子育てをしたり家庭で家事とか介護とかをしている人たちも、できれば経済活動とか社会活動に参加したいと思っている人が多いんですね、その調査を足し上げますと。
 ですから、そのためにはやはり、最後のところにも書きましたように、仕事と育児や介護が両立できるような環境整備、それを行うことが非常に大事で、それを行うことによって子供を持ちたいと。持ちたいと思っていない人が持つことは、これは全く個人の自由ですから、持ちたくない人はそれでいいんですけれども、もし仕事をしながらも一人でも子供を持ちたいと思っている女性は、持ちながら両立ができるように社会全体で支えていくということが必要だと思うんです。それがまた、さかのぼっては年金制度にも社会保障制度にもいろいろ拠出者の方に回るわけですから、プラスの効果をもたらすわけですね。ですから、そういう支援は、先ほど広井先生ですか、日本の社会保障給付費の比率が低いというお話がございましたけれども、三部門に分けますと、年金と医療については高齢化の程度と割とパラレルなんですね、外国と比べましても。
 どこが違うかというと、年金、医療を除く部分の社会保障です。ですから、子育て支援とか介護の支援とか、あるいはケアつきの住宅をつくるとか失業者に対する支援とか、そういったいわゆる年金、医療以外のところが異常に日本は低いんです。そこがおくれているということで、ぜひこれからそこの部分をもっと充実していくということが大きな社会保障の課題だと思うんです。
#51
○山本保君 全く同感です。ありがとうございました。
#52
○井上美代君 日本共産党の井上美代です。
 参考人の皆様方、貴重な御意見ありがとうございます。私の持っている時間が二十分しかありませんので皆様に御意見をお聞きすることができないのですが、私は今、たくさんの署名だとか請願だとか、それからファクスでも送ってきたりはがきもいただいたりしているんですけれども、やはり現場の意見をぜひお聞きしたいというふうに思いますので、全労連と連合の参考人の方に御質問をして、ぜひ御意見を聞かせていただきたいというふうに思っております。
 まず最初にお聞きしたいことは、二問あるんですけれども、一つは、先ほど少し話が出ておりますけれども、六十歳が六十五歳になっていく、繰り延べされるということにつきまして、今度の改悪法案の中身では、国民の生活不安というのはさらに深刻になるというふうに思うんです。長引く不況の中で倒産、リストラ、失業、もう本当に深刻な状況で、私も聞くにたえないようないろんな状況がございます。そういうことで、職安も随分回りました。そして、どういうふうにして皆さんが仕事を探しておられるのか、どういうふうにあるのか見てきたんですけれども、これがまたなかなか大変なんです。
 最近は、再雇用制度を採用するということで企業が随分力を入れておられるようですけれども、これがまた再雇用ですから人の選別になるんです。選ぶんですね。だから全員ができないということもありますので、そういう点で労働条件も非常に悪くなっているというふうに私はお見受けしておりますし、不安定雇用も大変ふえております。そうした中で、六十五歳になったらそこのところをつなぎ切れないという気が非常に強いんです。これはこの委員会でもいろいろ審議されているところですので、ぜひそこをひとつ第一問としてお聞きしたいというふうに思います。
 もう一つは、非常に年金が低い人の問題なんです。
 先ほど、桝本参考人は生活保護水準並みのことを触れられたんですけれども、私も同じようなことを考えておりました。特に、低い人として女性が私は挙げられると思うんです。女性というのは、年金では男性の半分、もちろん賃金も半分です。だからそのまま反映しているわけなんです。
 これは私、厚生省に計算してもらったんですけれども、女性の場合、年金受給総額というのが三千五百万円から二千八百万円と、七百万円も減額になるということなんです。月額は月々十一万円ですけれども、これがまた八万八千円ぐらいに減額されるんです。本当に生きていけないというふうに思うんですけれども、こういう問題について現場はどういうふうにお考えになるのか。
 まずはこの二問について、全労連と連合にお聞きしたいと思います。
#53
○参考人(坂内三夫君) 最初の御質問のときに久野先生から、年金は年金だけ取り出して議論すべきではない、医療、福祉、介護など総合的な社会保障全体をひっくるめて議論すべきではないかというお話がありましたが、私は、今、井上先生の話もお聞きして、それにプラスしてやっぱり雇用問題と年金問題はどうしても切り離せないという気がいたします。雇用との結合問題を絡めて議論すべきだというふうに思います。その場合、日本の雇用システムというのが急激に変化をしている、しかもそれは一時的なものではなしに構造的に変化をしてきているということに注目すべきだし、考慮すべきではないかと思うんです。
 御承知のように、日本の経済界は、戦後、日本の高度成長というのは日本的労務管理システムによって支えられてきている、その土台は終身雇用制度と年功序列賃金である、こういうふうにおっしゃってこれまで日本の経済成長を支えてきたわけですが、しかしこの国際的な産業再編がずっと進む中で、日本の経済界はもう終身雇用制度や年功序列賃金制度というものは維持できなくなってみずから放棄をしてきている。
 それにかわって今何が起こっているかというと、労働の規制緩和が起こって、九七年に女性保護が廃止されて、九八年に労基法が見直しをされて、九九年には派遣法と職安法が見直しをされた。その結果何が起きたかというと、臨時、パート、派遣、アルバイトなどという不安定雇用労働者が急激に増加して、これが先ほど言いましたけれども一千二百万を超える。
 こういう状況の中で、不安定雇用労働者の多くは厚生年金や社会保険などには加入をしていない。政府の調査によっても一七・九%ぐらいの加入率だというふうに言われているわけで、こういう雇用問題と結合して議論をすべきだというふうに思います。
 ことしの春闘では、年金の支給開始年齢の繰り延べなどもありまして、それとの関係で六十歳定年制を改善して雇用延長を図れということが労働組合の強い要求になっているわけですが、この問題については、電機などの一部の大企業では労使間の進展が伝えられていますけれども、それはほんの一部の大きな企業にすぎない。大企業でも激しい競争社会の中で労働者の四三%、四〇%以上は定年前に退職をするというのが日本の現状でありまして、しかも中小企業の場合にはもっと深刻だと思います。雇用の延長だとか再雇用制度などというのはもう夢の話であって、早期退職制度とかリストラ、会社の倒産、雇用はますます厳しいというのが実態であります。
 しかも、一たんリストラをされれば、離職をしたら再就職というのはほとんど困難で、全国の職業安定所に求人を届けている企業の求人年齢の上限というのは三十七、八歳だと思います。しかも、六十歳代前半の有効求人倍率というのはたしか一番新しい数字で〇・〇六ぐらい、十六人に一人ぐらいしか職がないわけでありまして、まさに砂浜で小石を拾うよりも高齢者の就職は難しいというのが今の現状ではないかというふうに思います。そういう今の雇用情勢の中で、支給開始年齢の繰り延べというのはやっぱりすべきではないというのが私どもの意見でございます。
 年金水準の問題、特に女性の問題に触れられましたけれども、この問題は日本の女性労働者の賃金水準の低さの問題とどうしても絡むと思うんです。私が今手元に持っている資料では、一九九六年のILOの資料があるんですが、これによりますと、男性の賃金一〇〇に対してスウェーデンが約九〇%、ノルウェーが八七・二%、デンマークが八五%、オーストラリアが八一・一%、フランスが七九・一%、ドイツが七三・七、イギリスが七〇%、アメリカが六八・二%ですが、日本は断トツに低くて五二・九%というのが九六年のILOの資料です。
 先ほど言いましたように、年金問題を総合的な社会保障、そして雇用や賃金との関係できちんと位置づけて議論をしていくということが非常に大事だというふうに考えております。
#54
○参考人(桝本純君) 二つ大変大事な点を御指摘いただいたと思うんです。
 まず第一に、六十歳以上の高齢者の就労問題でございまして、ここは従来、一律定年制というものがどういう役割を果たしてきたのか、これについてやはり見直すべき時期に入っているのではないだろうかというふうに考えます。
 従来、我々は定年延長ということをずっと要求してきたということを先ほど発言させていただきましたけれども、一律定年制というのは、その定年年齢に達するまで企業側の解雇権はかなりの程度制約される、一種の日本型の雇用保障だと、こういう形でとらえてきたわけですが、実際に第一次石油危機以降の動きを考えますと、例えば早期退職優遇制というようなものが非常に広範に導入されたことも含めて、必ずしもそれは従来型の雇用の安定にはつながりませんでした。
 それからもう一つは、大企業と中小企業の間の垂直移動というふうに普通言われますが、中小企業が大企業から排出された中高年労働者の受け皿になる。その中小企業の方は、逆に言うと定年年齢というのはあってなきがごとき状態で、高齢者の職場というのは専らそちらにシフトしてきた。こういう時期があって、今ではその受け皿そのものが収容能力を失いつつある、こういう状況なんだろうと思います。
 先ほど部分就労、部分年金という議論が直嶋先生の御質問を含めて出ておりますが、一時間当たり賃金についての平等という考え方をもっと積極的に導入すべきではないか。これは、戦後日本の労働組合が長いこと中軸に据えてきた賃上げ闘争というものが必ずしもそういう内容を持たないまま今日に来ていることについての反省も含めてそのように思う。この点が一つでございます。
 それから二点目の問題と絡みますが、定年前と定年後で個人ががたっと変わるわけでも何でもないのに、実際には例えば再就職、再雇用ということをいったときに、本当にがたっと賃金が落ちてしまうんです。これは明らかに何か使用前、使用後みたいな感じで、変な言い方ですが人間を見ている、そういうシステムに今定年制というのがなってしまっている。ハッピーリタイアメントという言葉がありますが、ちっともハッピーでない。
 それから、女性の年金水準の問題の御指摘でございますが、これは年金の制度が男女を差別しているわけではないので、現役時代の女性の賃金水準とそれからもう一つは就労期間、この両方の面で、結果、年金水準が非常に低い状態が生まれている、こういうことでございます。
 したがって、逆に言うと、就労条件からすると高齢者と女性というのは、一緒にするとしかられるかもしれませんが、非常に似ているわけです。これはある女性の思想家が言ったことですが、子供は人間以前で高齢者は人間以後で女は人間以外だと、こういうふうな非常に刺激的な言い方で僕はびっくりしましたが、しかしまさに壮年男子しか一人前ではない。こういうことがある意味では日本の戦後の経済成長の裏側にあった社会的なシステムだったとすれば、それを変えることが二十一世紀に向かって今非常に大きなテーマになっているのではないだろうか、そのように考えるところでございます。
 なお、女性の低額年金という事態について、今回の改正案は高額年金者についても低額年金者についても一律にその給付水準を引き下げる、この点について特に私どもは重大視しております。高い年金をもらっている人に対して、そんなに高くは要らないではないかという人に全体のために我慢をしてもらうということは当然あっていいと思いますが、高い人も低い人も一緒に下げてしまうというのはとんでもない問題ではないだろうか。
 最後、一言余計なことでございました。
#55
○井上美代君 あと私は二問質問をしたいんです。
 それで、連合の方に御質問したいのは、私自身もいろいろと質問もさせていただいているんですけれども、まだまだはっきりしない部分がありますし、問題点も相当あるんじゃないかというふうに思っているわけなんです。皆様方がどこに審議をすべき課題を求めておられるのかというあたりを聞きたいわけです。そこのところを連合に答えていただきたい。
 そして四つ目のを、日本の女性たちは八六年までは五十五歳で支給されていたんですね。それを六十歳、六十五歳とずっと繰り延べしていっているわけなんですけれども、やはり今医療関係や運輸労働者の中に五十五歳年金支給を求めていらっしゃる方たちがいるということを聞いているんですけれども、恐らく労働との関係があるんだろうというふうに思うんです。だから、その辺を聞かせていただきたいのと、先ほどのお話の中で、外国では、フランスやドイツなんかでは六十五歳が六十歳に今度は変わってきているという世界の流れを触れられたんですけれども、そこも触れながら、もう少しその辺を聞かせていただきたいんです。よろしくお願いします。
 桝本さんに今の三番目のを、そして四番目のを全労連にお願いしたいと思います。
#56
○参考人(桝本純君) 手短に申します。
 年金の問題についてぜひ中心に据えて御論議、御審議いただきたいのは、水準の問題と支給開始年齢の問題であります。そして、それに対応した負担の問題です。
 この三つの組み合わせについて、私どもは厚生省が出しているデータというのは決して十分に情報公開が行われているとは思いません。例えば、将来の財政見通しの中で、現行の制度そのままであれば保険料が三五%ぐらいになってしまう。私どもは全く違う結果を計算しておりますので、そういうふうになるなら、厚生省の推計の内容そのものが国民に明らかになるような審議をぜひともお願いしたいというふうに思います。
 以上です。
#57
○参考人(坂内三夫君) 私は、今は全労連の事務局長をしておりますが、その前は病院の労働組合に長くおりまして、日本看護協会の皆さんと一緒に看護婦等の人材確保法の成立などについて運動してきた経験を持っております。
 看護婦の場合、今は約百万人の看護労働者がおりますけれども、その多くは月のうち三分の一ぐらい夜勤をしなければならないという状況に置かれています。そういう中で、看護労働者の中では、六十歳定年、六十歳年金支給でも遅過ぎる、もう五十五歳ぐらいからどうしても年金支給をしてほしいという要望は非常に強いものがございます。
 こういうものは、諸外国に行っていろんなことを聞いてみますと、外国の場合には年金制度が割かし充実をしていますから、労働者の要求も、もっと退職年齢をうんと引き下げて年金も早くもらえるようにしろというのが欧米などの労働組合の要求ですが、日本の場合には、残念ながらもっと定年制を後ろに持っていけという、正直に申し上げまして、これは年金制度の貧弱さと雇用条件の悪化というものがやっぱり日本ではそうさせているのではないかというふうに思います。
 国際的なさまざまな比較から見ましても、日本でも早く女性労働者の早期支給制度というものが取り入れられていくということを我々は強く願っております。
#58
○井上美代君 今、私は五十五歳定年というのが、外国の場合には女性と男性の間に五年ぐらいの差を置きながら支給をしているというふうに聞いているんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
#59
○参考人(坂内三夫君) 世界全部を調べたわけではないんですが、先ほど意見の場所でも申し上げましたが、世界百カ国ぐらいの年金の支給開始年齢は男女別にどうなっているのかということを調べますと、男性が六十歳、女性が五十五歳という国が最も多く、これが約三一%を占めるということを見ましても、男性と女性の間に、さまざまな条件がありますので、年金の支給開始年齢の段階を設けて、女性にもっと早く支給開始をすべきだというのは当然の女性労働者の要求でありますし、我々男性も含めてそのことを支援していかなければならない問題ではないかなというふうに考えております。
#60
○井上美代君 以上で終わります。
 ありがとうございました。
#61
○清水澄子君 社会民主党の清水澄子です。
 私どもも、この年金の改正については、年金、医療、福祉、雇用を含めた全体的なビジョンという中で改革案を出すべきだという考え方に立っているわけですけれども、御指摘をされている方も多いんですが、今回の政府案というのは、財政面からのみの非常に縦割り的な改革に偏っているためにいろいろ問題が多過ぎて、早くこれを通過させなさいと言われても、私たちはこれで本当に責任ある審議になるだろうか、私たちはどういうふうにこの内容を国民が納得できるようなものにするかということで悩んでいるのが現状でございます。そういう中で、ひとつ神代参考人に、私は十五分しかありませんのでぜひ御協力ください、お伺いしたいわけです。
 やはりここでちょっと問題を投げかけていらっしゃるんですけれども、この最終保険料率は政府はほとんど影響を及ぼさないと言っているわけですけれども、先ほどから問題がありますように、今日のリストラとか雇用状況はこれまでのような状況じゃないわけです。そういう中で、本当に最終保険料率は影響ないのか。それからまた、四十年モデルというので、これに該当する人たちというのが非常に減るのではないか、そういう意味でもこの政府の推計というのはとても甘いと思うんです。その点が一つ。
 それと、やはり改正案への批判について、今日、抜本改正と現行制度からの実現可能な移行措置に関する検討がほとんどなされていないというふうにここで御指摘なさっているんですけれども、参考人がイメージされている移行措置というのはどういうことをお考えでしょうか。
 この二点について、まずお伺いします。
#62
○参考人(神代和俊君) 最終保険料率は、私がそこに引用しましたように、厚生省の試算は、出生率、死亡率とを別としますと、賃金の上昇率とか物価の上昇率、運用利回り、ここに書いてあるような数字で計算していると思います。私個人は、そういう見通しよりも若干厳しいことも起こり得るんじゃないかなという危惧は持っています。ですから、後ろの方に書いたのは、将来、予想以上に経済情勢が悪化したときにどうするかということも視野に入れて将来的には考えた方がいいというふうに考えております。
 ただ、四十年モデルの人が減るというのはちょっと私は理解しにくいんです。今までは、私自身も二年前に公務員をやめましたけれども、たしか三十六年しか厚生年金と共済年金含めても掛けておりませんで、これは大学院なんか余計なところへ行ったためですけれども、今まではやっぱり四十年に満たない人がかなりいたと思います。今後はそういう人がどんどんふえてくるので、よほど激しい大恐慌が来て、失業者が何百万というか今の三百万の二倍か三倍になるようなことになればちょっとわかりませんが、一般的には四十年の満額の人がふえてくるというふうに思います。
 それから、抜本改正へのつなぎということですけれども、これは既にいろんな方がいろんな意見を出していることは御承知のとおりであります。消費税方式にしても民営化論にしても、そのいずれもが財源の手当てだけではなしに、現在までに既に発生している年金の債務の処理の仕方とつなげた形でスムーズな移行策というものを考えなければいけないと思うんですが、現実的な案として提示されているのは改正案で厚生省がお出しになった案しかないんです。
 それで、非常に魅力的ないわゆる抜本改正論というのはたくさんありますけれども、そのどれ一つとってみても、具体的に果たしてそれで今までせっかくあった、まあまあそれはいろいろ欠点はあるにしても、国際的に見ても相当高水準の年金を今まで確保してきて、今後も約束している。それを、この程度の改正をやればいろいろ問題は次々に出るにしても、まあまあ何とか維持できるというかなり確かな制度を放棄してまで別の不確かなものに乗りかえるということは非常に危険なことだと私は思います。
 ですから、スウェーデン方式もここに書いたように傾聴すべき点がたくさんございますから、そういうものを取り入れて現行制度とドッキングさせることがどういうふうに可能なのかということは少なくとも今まで審議会では検討しておりませんから、今後検討する必要があるというふうに考えていますが、ですからその移行のプロセスはだれにもまだよくわからないというのが正直なところかと思います。
#63
○清水澄子君 ありがとうございました。
 では、広井参考人にお伺いいたします。
 先ほど基礎年金部分を公的年金としてもっと分厚いものにした方がいいとおっしゃったんですが、現状の一・二倍とか一・五倍とおっしゃったんですけれども、生活保護費との関係などはどうお考えになっているかということが一点。
 それから、基礎年金の財源については、先ほどは相続税とか環境税の導入を提案されましたが、企業の社会的責任という面から見て、全額税方式にした場合の企業負担分の軽減等はどのようにお考えになっているか、この二点をお伺いします。
#64
○参考人(広井良典君) 発表のときにも申し上げましたように、まず現在の基礎年金水準は低きに失しているということが確かに言えるのではないかと思います。六万七千、四十年加入の場合はそうですけれども、平均すると五万円前後で、半数以上の人が五万円未満の年金ということでかなり過不足の不足の部分に該当すると。
 それから、既にお話もありましたように、特にひとり暮らしの高齢女性が急増しているというような現状の中で、基礎年金をしっかりさせるというのは最も重要なことではないかと思います。
 水準はどれぐらいが妥当かということで、これはなかなか一義的に言うのは難しいとは思いますけれども、基本的な発想としては、ミニマムというよりは英語でオプティマム、最適という言葉がありますけれども、最低生活の保障というよりはもう少し最適なといいますか、一回り厚いものということになろうかと思います。
 ただ、現実的には、一つは現在の高齢者世帯の消費水準、先ほど都村先生のお話にも出てきましたけれども、一カ月二十三万七千六百円というような数字が私の手元にありますが、こういったものをにらんで、あと生活保護。生活保護は世帯人員によって違ってきますので、基礎年金は一人が単位ということになりますのでちょっと計算の仕方が違ってきますけれども、そういった生活保護水準との兼ね合いなど、あるいは消費水準との兼ね合いから見て先ほどの最適な水準は何かというのを考えていくべきかと。そういうことで一・二倍から一・五倍程度というふうに申したわけですけれども、ここらあたりは最終的には税によってあまねく高齢者に保障すべき生活の水準はどれぐらいなものかというコンセンサスといいますか、そういったものになってくると思いますが、目安として今申したような水準ということになろうかと思います。
 それから、財源につきましては、私は消費税それから相続税、環境税と申したわけですけれども、消費税はやはりヨーロッパ並みの一五%以上の水準になっていくことは不可避ではないかと思っております。
 それから、御指摘があった点は企業との兼ね合いですけれども、環境税は、例えばデンマークあるいはオランダなどで環境税を社会保障財源に充てるということは既に実施されておりますし、私自身は今後この環境の政策と社会保障を統合していくということは一つ大きな課題になっていくテーマだと思っておりますので、これは企業が負担するという意味でも考えられると。もちろん既存の、つまり消費税、相続税、環境税ですべて対応するというのではなくて、既存の税との組み合わせということでバランスをとっていくことになるかと思います。
 ただ、これからの社会保障の財源としては、やはり社会保障そのものが個人単位化ということになってきますと、基本的には個人が負担面でも単位となっていくというのが基本で、それを企業の、残る財源、税財源との組み合わせ、バランスをどうとっていくかということかと思います。
#65
○清水澄子君 ありがとうございました。
 では、桝本参考人にお伺いいたします。
 繰り上げ支給の減額なんですけれども、今本当に六十歳から六十五歳という引き上げでも大変なわけですが、六十歳で年金を受けなきゃいけないというときに非常に減額率が高いですね。今、国民年金ですと六十歳で減額率四二%になるという、これほどの減額という中では受け取る人も大変です、職業はなし。しかし、最近これを申し込む人も少なくなっているというんですけれども、そういう面も含めてどういうお考えでしょうか。そして、この減額率というのはどういうふうに扱うべきだとお考えでしょうか。
#66
○参考人(桝本純君) 私どものこのリーフレットの一番後ろのページをごらんいただきたいと思いますが、それぞれ各国ごと、大体ここに挙がっているのは支給開始年齢、フル年金でいうと、フル年金というか、制度上六十五歳から開始されるものが前倒しで受給したときにどのくらいの割合になるか、これを一〇〇から引いたものが減額率ということになりますが、日本の場合には、今、先生からお話がありましたように、現在の基礎年金というのは六十歳から支給した場合には減額率四二%で、六十歳以降五八%の数字に下がってしまう等々という各国比較をしたものでございます。
 私どもはこの問題をどのレベルでまず扱うかというと、これは定額部分が六十一歳支給開始になるのは来年の四月二日以降なんです。まさに来年に向かってこれは整備をしておかなければいけない非常に喫緊の問題だというふうにとらえております。そして、もちろん安い年金をもらうよりは働ければいいんですけれども、そうでない状況にある人たちにとってこれはいわば命綱みたいなものですから、そういう観点で扱うべきだと。
 実は、我が国の減額率が極端に高いというのは、恐らく二つ理由があって、一つは、これを制定したときは国民年金制度が導入された昭和三十六年で、その当時の六十五歳の平均余命というものを前提にしているんです。その後、我が国は長寿化しているわけですから、長寿化になれば長生きするわけですから、そこの前倒しに伴う減額率はもっと小さくて数理上合うはずです。
 それからもう一つは、当時の金利を高く見ていればこれは大きくなるわけで、その両面からいってこれは不合理だろうと。しかし、数理的にどこが客観的に合理的なのかということを議論するのは難しいので、むしろ政策的な判断になるのだろうと思いますが、私どもは五年で二〇%ぐらい、多くても二五%ぐらいの限度であればやむを得ないのかなというふうに感じております。
 問題は、来年からだということを特に御留意いただきたいというふうに思っています。
#67
○清水澄子君 ごめんなさい、もう皆さんにお尋ねする時間がないので、最後に桝本さんに一つ。
 年金福祉事業団の解散及び年金基金法についてです。これについて基本的な問題はないのでしょうか。
#68
○参考人(桝本純君) 年金福祉事業団を解散して承継団体に切りかえるということ自体について私どもは反対ではありません。しかし、問題は、その後の承継団体が何をやるのかという問題であります。
 年金福祉事業団がこれまでやってきた主な事業というのは三つあるというふうに認識しております。一つは融資事業で、特に重要なのは私どもにとっては住宅融資です。それから二つ目は施設事業で、しばしば問題になるのがグリーンピアという大型保養基地でございます。それから三番目が、年金積立金の部分的な自主運用を昭和六十年以後やってきた。この三つでございますが、大きい変化は、この自主運用が、資金運用部からの借り出しでもって部分的に行うのではなくて、資金運用部へ預けないで、今度できる基金というのがこれを直接自主運用する、ここが軸になっているわけです。
 しかし、その観点からすると、施設事業だとか融資事業だとかというのはむしろ邪魔者であって、そういうものはなるべく廃止した方がいいという考え方が一方にあります。私どもはこれは反対です。
 特に住宅融資の問題は、これを廃止するならば新しい官民格差を呼ぶことになります。なぜかというと、公務員の人たちが入っている共済年金にはこの融資制度はきちんと最初から組み込まれているんです。それに対して、民間労働者が入っております厚生年金制度にはこういう融資制度がなかった。これを後からつくってきたのは実は私ども労働組合の先輩たちです。そして、それをこれまで我々の組合員は大いに利用させてもらってきました。ですから、これはぜひ維持をしてほしい。特に、高齢化に見合ったいい内容のものにしてもらいたい。
 実際の今の運用システムには非常に大きな問題があって、それは克服しなければならない、改革すべき点はいっぱいありますが、この制度そのものが間違っているというふうには私どもは全く思いません。
 それから二番目に施設事業でございますけれども、大型保養基地、確かに利用率は低いんですが、では観光旅館の平均値に比べて著しく低いかというと、それほどでもないんですね。ただ、間違えているのは、非常にへんぴなところにつくってしまったために短時間で利用するには絶対に向かない。もともとそうじゃなくて一週間ぐらいの長期滞在のためにつくったはずなのに、実はそのように活用するプログラムを厚生省は用意しなかった。
 しかし、あれは労使が出した積立金でつくった一つの国民資産ですから、つくるだけつくっておいて、そのときにゼネコン屋さんをもうけさせて、要らなくなってしまったからぶっ壊すので、またゼネコン屋さんをもうけさせて我々の積立金は瓦れきの山になるだけだと、これは一つも勘弁できないので、ぜひともそれの有効活用ということを考えてほしい。これは高齢化対応で、年齢帯ごとのグループの健康づくりセミナーみたいなものを労使で一緒にやれば十分に活用できるだろうというふうに思っております。
 それから最後に自主運用の問題ですが、本当に我々の積立金、拠出したものでできているものですから、間違ってもマネーゲームなんかに陥らないように、安全確実を旨としてやってほしいというふうに思います。
 しかし、年金制度全体からいえば、そういうものの運用収益に頼るなんということは決して正しい姿だとは思いません。将来は、そういうものには頼らない、頼れないというものになっていくんでしょう。また、なっていくべきだと思います。
 しかし、当面はかなり巨額のものがあるわけです。これについてはぜひロスが出ないようにしてもらいたい。その場合に重要なことは、システムの透明性と、それから運用結果に対する責任の問題。この点について全く現在の事業団は不明確なのであって、この点については大いに改革が必要だと思います。
 なお、住宅融資もこの自主運用の一環ということになりますが、現在の住宅融資は別に低利融資をやっているわけでも何でもないので、日本の国内で働いている労働者を相手にしていわば貸し付けるということで、これほど確実なものは本来ないはずでございますから、そういうことも含めて、住宅融資を含めた今後の融資事業のリニューアルと積極的な展開というのを、高い保険料負担にあえいでいる現役の被保険者に対して少しでも還元するという観点でぜひきちんとやっていただきたい、これが私どもの期待であります。
#69
○入澤肇君 自由党の入澤でございます。
 最初に、神代参考人、都村参考人、それから神野参考人にお聞きしたいのですけれども、昨年の二月二十六日に提出されました経済戦略会議の答申、「日本経済再生への戦略」の中で、年金改革について幾つか提言がございます。
 一つは、公的年金はシビルミニマムに対応すると考えられる基礎年金部分に限定しろ、その水準は高齢者の基礎的生活コストをカバーできる水準にしろと。それから、その財源は、二十一世紀のなるべく早い時点で税による負担割合を高めて、さらに将来的には税方式に移行することが望ましいと。これが一点。それから二点目は、世代間の不公平是正の視点から高齢者に過度の優遇措置となっている公的年金等控除の税制の見直しも視野に入れろと。三つ目には、基礎年金部分が将来税方式に移行した場合には報酬比例部分を完全に民営化すると。
 こういうような年金改革の提言がございますけれども、これについての見解をちょっとお聞きしたいんですが。
#70
○参考人(神代和俊君) 結論的に申しますと、私は余り賛成できません。
 基礎年金を税負担するということについては既にいろいろ、消費税でやるにしても、あるいは神野先生御提案のような所得比例方式でやるにしても、それぞれ非常に困難な問題があるということは、消費税については私の陳述の中で指摘しておりますし、所得比例というのは非常に魅力的な考え方なんですが、先ほど申し上げたように、現行の所得税の捕捉そのものに非常に難点があるので、にわかにはこれは実現はできないというふうに思います。
 また、そのほかにもいろんな提案が、学者は言論の自由がありますのでいろんな案を出しておりますが、現実的に現行の制度に置きかえるようなものとしては、これは到底批判にたえない考え方だと思います。
 それで、年金税制の見直しは、これはある意味で当然ですから、いずれやらざるを得ないかなと思います、退職金も含めて。ただ、これこそ既得権益が絡みますのでどういうふうになるかは私にはわかりませんが、筋としてはいずれ是正すべきだと思います。
 報酬比例の年金を民営化しろということですね。これは、日本の持っている所得再分配の一番立派なところは、中小企業の労働者といえどもとにかく報酬比例の部分があるということです。
 先生御承知と思いますが、例えばアメリカの連邦社会保障の年金は一万三千ドルです。しようがなくて、いわば日本の基礎年金に該当する部分しかないですから、あとを四〇一kその他の企業年金。しかし実際は、アメリカでも最大多数の企業年金は確定給付型の年金を現にもらっている人、これには補足的に確定拠出をもらっている人も入れますけれども、数として圧倒的に多いのは確定給付をもらっている人たちであります。ところが、アメリカの労働者の約四割は全く確定拠出も確定給付ももらっていない、おまけに公的年金に報酬比例がほとんどない、そういうひどい制度であると私には思えます。
 それに比べると日本の公的年金は、いろいろ問題があるにしてもとにかく、企業年金や中退金とか財形年金とか多少フリンジがありますけれども、そういうものに一切入っていない人が約二千万人おりますが、そういう二千万の中小企業労働者もとにかく公的年金で報酬比例の部分があるということは大変すばらしい制度で、これを何としても守る工夫をすべきだというふうに私は考えます。
#71
○参考人(都村敦子君) 公的年金を民営化するということは、報酬比例年金を廃止するということですよね。これは、私は社会保険の長い歴史を逆戻しすることだというふうに思います。
 社会保険というのは非常にすぐれた保障システムであって、世界の多くの国で採用されているわけですけれども、こういう確定給付型の賦課方式の年金が長い歴史を持っているということは、それによって貧困が物すごく減少したわけですね、貧困の減少に寄与したわけです。社会保険には、負担と給付の関係が明確で均衡を確保しやすいとか、それから受給権者は所定の給付を自分の公の権利として受けられるとか、それから事業主負担があるとか、いろいろメリットがあるわけですけれども、そういう制度によって、かつて高齢者イコール貧困という時代があったわけですけれども、もうそれが今はだんだん解消されつつあるわけです。
 そういうふうに社会をいい方向に持ってきた制度を廃止して民営化するというのは私は大反対であります。このすぐれた、先ほども申しましたけれども、社会連帯の理念に基づいて運営していく社会保険というのを今度の改正でも中心に置いて、これを継続するということがはっきり打ち出されたというのは非常に評価できるし、信頼できるというふうに考えておりますので、民営化して移行していきますと、大きなインフレなんかがあった場合にどうなるのかとか、それから零細企業とか中小企業の人たちがまた両極化して、高齢期に貧困層に落ち込んでしまうわけです。そういうこととか、切りかえ時に二重の負担があるとか、いろいろ問題点が余りにも多くて、絶対この社会保険の長い立派な歴史は続けていくべきだというふうに思います。
 それから、先ほどの桝本参考人に関連してちょっと意見を追加させていただきたいんですけれども、年金福祉事業団が行ってきました還元融資につきましては、事業団解散後も住宅融資を今後少なくとも十年間は実施して、その間の事業実績等をもとにしてその後のあり方を決めるということになっております。
 それからまた、年金担保の融資につきましても、今後は社会福祉・医療事業団が事業を継続して続けていくということになっておりまして、年金制度の加入者とか年金受給者の福祉の増進には配慮した内容になっている、これは最初の意見陳述のときにもちょっと触れさせていただきましたけれども。
 それから、グリーンピアにつきましても、事業からの撤退については時間をかけて行うということになっておりまして、地元の経済とか、それから年金加入者などへの影響が少なくなるように配慮されているということで、ちょっと先ほどのに追加させていただきます。
 以上です。
#72
○参考人(神野直彦君) 時間がないようですのでごく端的に申し上げますと、私は余り賛成できません。それは、先ほど来お話があるように、年金というのはあくまでも社会的連帯のための基金なんですね。したがって、それを徹底させるべきだというのが私の考え方ですので、私は賛成できません。
 例えば、先ほど来、ヨーロッパでは給付開始年齢の引き下げ圧力がかかるというようなことの議論がありましたが、これも同じことなんですね。社会的な連帯の基金であるから、失業者がヨーロッパの場合に若年層でまず出てきますので、若年層のために仕事を譲ってもらいたい、世代間で連帯していきましょうという基金だからそういう要求が出てくるわけです。そういうきちっとした位置づけを行うべきだということです。
 それから、ミニマム保障について、これは税方式で、私の税方式というのは全く一般財源、国税を投入しろということなんですが、消費税を投入することについては賛成できません。
 なぜならと申しますと、お年寄りも消費をするでしょう、だから消費税をかけたら世代間の公平が確保できるという議論がその背景にあるわけですが、その議論の前提は、人間が二十から生まれてくるという前提をとっているんです。人間は二十から生まれません。したがって、子供時代に扶養されているときの消費税というのは現役世代が払うんです。子供がたくさんいれば現役世代に重い負担になるんです、消費税でやれば。したがって、世代間の公平というのは消費税では図れない。
 それから、その上、世代内の公平というのは崩れてしまうということです。私は、むしろフランスのように、フランスが生活保障税を入れたときのように賃金だけじゃなくて資産所得を加えるとか、それから純資産税を入れるとかというような形で、資産課税でもって資産所得のあるお年寄りにも負担してもらうという方向を目指すべきだというふうに考えています。
#73
○入澤肇君 広井参考人は今のお三方の考え方に対して反論はございませんか。
#74
○参考人(広井良典君) 恐らく、私は今の先生方のとかなり違った意見になるわけですけれども、私自身はやはり年金の役割というものを明確にさせていくべきではないか。
 発表の中でも申しましたように、一定以上の生活保障をするという機能に関してはやはり税が妥当で、その基礎年金部分をしっかりさせるということに公的な年金の本来の役割というのはあるのではないか。したがいまして、基礎年金というのはあまねく平等な給付ということになるわけですけれども、その部分をすべての高齢者にしっかりと保障される。
 経済戦略会議の問題点は、むしろその基礎年金の水準が私から見ると低いということで、それの一定レベルアップを図った上で、むしろ所得比例の部分というものは縮小し、私自身は最終的に基礎年金にすべて純化してもよいと思っておりますけれども、それが年金の姿として最もわかりやすい、かつ過不足のない姿ではないかというふうに考えております。
#75
○入澤肇君 最後に、桝本参考人にお聞きしたいんですけれども、年功序列賃金制とか終身雇用制が変わってきて、かなりの企業で年俸制を導入した一番のねらいは退職金を払わない、退職金制度をなくすというふうなことがねらいとして言われているんですけれども、今までは退職金プラス年金ということで老後の設計をしてきた。退職金がなくなりますと、年金部分のウエートが非常に重要になるわけでございます。
 そうすると、今の基礎年金、それから報酬比例部分の厚生年金、この仕組みを基本的に変えていく必要性が出てくるんじゃないかというふうな感じがするんですが、どうお考えでしょうか。
#76
○参考人(桝本純君) 退職金の問題は、実は今の日本の労働者が持っている格差の中でも最も大きい格差なんです。しかも、これだけ統計の好きな我が国で、実際に幾ら払われているかということについての統計が全くないのも退職金なんです。
 したがって、長期勤続、定年退職に伴う非常に巨額の退職金を得ている労働者というのは今まででもそんなに日本全体の中では多いわけではありません。これは一部の大企業とそれから公務員、それも男子に限定されている。最大限見積もっても全日本労働者の中の二割ぐらいじゃないかと思うんです。
 ですから、それを日本の標準型のスタイルだと見るということは実態としてはできないんです。ただ、そうあるべきだという一つの共通の価値観が成り立ってきたことは事実なので、中小企業は全部そっちの方向を向いているわけです。しかし、実態はそうなっていない。
 私は、個人的な見解だと聞いていただきたいんですが、長期勤続に伴って累積的に給付額が上昇するああいう退職金制度というのはもうもたないんじゃないかと思っています。そして、それは日本の労働者の平等という観点からいっても必ずしも望ましいことでもないと思っています。そうなりますと、逆に平等を保障した老後生活を保障するようなものというのは、やっぱり公的年金の比重を上げざるを得ないのかなと。これを個々人の努力で、つまり典型的には預金ですね、私的年金も含めて、貯蓄という形でやるとこれは現役時代の格差そのものなんですが、現役時代の賃金格差がいろいろあるのはしようがないんですが、老後になって仕事をしなくなっても仕事についていたときの格差がそのまま残るのはおかしいわけで、これを圧縮できるのは公的年金だけだと。その圧縮機能ということからいえば、定額の年金と報酬比例年金との組み合わせということにならざるを得ないだろうと思います。
 したがって、基礎年金が例えば生活保護に比べて低いのはけしからぬという議論が時々あるんですが、それはちょっと違う議論なので、生活保護というのは一部の生活困窮者の方々のための生活を支える極めて特殊な給付です。基礎年金というのは全国民を対象にした給付ですから、片方は条件つき、片方は無条件給付なので、私は、基礎年金の現在の水準というのはまあまあということで、これは低過ぎるとも高過ぎるとも思いません。
 ただ、実際にはそれだけで暮らせるものではないのであって、労働者の場合にはそのほかに報酬比例型の年金がある、自営業者の方々はそこに独自の資産形成や何かがある。そういうものも一切なくて、いろいろな事情で生活が苦しい人のために別個な福祉的な手当が条件としてある、こういうことではないかと思います。
#77
○入澤肇君 終わります。
#78
○堂本暁子君 無所属の会の堂本暁子です。
 きょうはいろいろありがとうございました。
 先ほど、神代参考人が、女性と年金は大変複雑な問題で、速やかに検討に入ってほしいというふうにおっしゃいました。今回の改正ではこの問題は入っていないんですけれども、人口の半分は女性ですので、大変この問題が先延ばしされていることに私はいささか不満です。その理由というのは、やはり一号、二号、三号というような被保険者に、分断と言っていいんでしょうか、全くある意味では違った年金の体制の中に置かれているということは余り公正ではないのじゃないかというふうに思うんです。
 それで、神野参考人が徹底した連帯の方針とおっしゃる中で、夫婦には二分二乗法を適用したいとおっしゃっている。そういうことで本当にそういった不公平を少しでも緩和できていく方法なのか、ここのところを御説明いただきたいのと、それから神代参考人に、そうおっしゃるのであれば、どういうような具体的なビジョンをお持ちなのか、次に伺いたいと思います。
#79
○参考人(神野直彦君) まず、私の提案している中では、お手元の「協力社会における新年金」の(5)に当たりますけれども、「夫婦には二分二乗法を適用する。」、したがって、夫の所得と妻の所得を合算して、その二分の一について負担料を支払う。支給の方もそれぞれの人についてずっと記録をとっておきますので、最後のところは、いろいろな方と離婚したり結婚したりしながらやっても、すべて二分の一ずつで合算したものの総計額についてそれぞれ女性も登録されていて、その額についてもらえる、こういう仕組みを考えているということです。
 したがって、専業主婦と言われる人についても、結局、縦割り分業というんでしょうか、夫も妻も外で働いて、夫も妻も家事労働をするという分業と、縦で、夫は外で、妻は家庭の中で分業しているというふうにみなして、合算して二分の一にしてしまうというやり方で割り当てた方がいいのじゃないか。これはいろいろ難しいことがあって、主婦の労働ないしは家事労働をどう評価するかというのはなかなか難しいんですが、とりあえず私の考えているのは、そういう方式で乗り越えられるのではないかというふうに考えております。
#80
○参考人(神代和俊君) 女性の年金については明確な答えがなかなか出しにくいので先に延ばしたということなので、私自身もかなり迷っている点がたくさんまだ残っておりますが、現行の制度を擁護するオフィシャルな議論というのは、いわゆる応能負担論ということで、これはなかなか筋の通った議論で、これにかわるものを考えるというのは非常に困難だと思います。
 ただ、応能負担論を前提にしても、なおかつちょっと私がどうかなと疑問が残っていますのは、遺族年金になったときに、専業主婦でだんなが高い月給をもらっていた人の遺族年金の方が比較的低い賃金で一生働いてきた単身の女性の年金より高くなるというようなことに関する不公平感、これは感ですからいいとか悪いとかはなかなか言いにくい面もありますけれども、その辺の問題も含めてどうしようかということを検討せよということだと思いますので、非常に難しいと思っています。
 ただ、私は、実は三号被保険者問題というのは、本当は年金の問題よりは税金の問題じゃないのかなと。配偶者控除の制度が果たして今日でも残すべき制度なのかどうか、これは非常に私は疑問に思っております。ただ、税調の問題でありますから、配偶者控除がある制度の中で専業主婦を持っている相対的に高所得のサラリーマンが非常に優遇されているという感じは共働きの世帯はみんな持っているわけです。
 私は家庭の事情で、最初の家内は病死しまして、そのときは専業主婦で、子供を産んで年金ももらわずに死にましたが、再婚した今の家内はずっとキャリアウーマンで、この間失業したんですけれども、これは家内がきちんと働いていたために、私は再婚して以来は今度は配偶者控除というのは全然もらったこともないし、それで家内が失業したら家内の分も国民年金も私が払っておりまして、どっちに転んでも余り世の中いいことがないなという感じがしております。
#81
○堂本暁子君 広井参考人が個人単位ということを書いていらっしゃるんですけれども、これは今お二人の議論からいいますと、しかも今、桝本さんや、それから神代参考人がおっしゃった、日本の女性は男性の五二%だということを考えると、先ほどのお二人の参考人への質問の逆さまの質問になりますけれども、その辺はどうお考えか。非常にすっきりすることは確かなんです。広井参考人は大変すっきりさせることがお好きだということはわかっているんですけれども、非常に明快であることは事実なんですが、その五二%という給与、この点については、それからアンペイドワークについてはどのようなお考えでおっしゃっていらっしゃるんでしょうか。
#82
○参考人(広井良典君) 基本的には社会保障制度というのはいわば世の中の変化を追っかけているようなもので、世の中の変化に応じていかに適切に後から対応していくかというのが本来の姿であろうかと思います。
 したがって、そちらが先行して、すなわち、女性が実質的に就業率も低かったり低賃金であるところを社会保障制度だけが個人単位ということで突っ走っていくと、これはある意味では本末転倒になるわけで、それを追いかけていく。ただ、世の中の方向としては、結局、およそ社会保障制度というのは家族や共同体の中で行われていたことが個人単位の社会になっていて、介護もそうですし、年金もそうですし、それを補完する制度として発展していくものですし、それから経済が進展していく中で、さらに核家族が女性の社会進出の中で個人単位のものになっていくという方向自体はもう変えがたい確かな方向だと思いますので、それをいわば追っかける形でそういった個人単位の社会になっていくのをもう一度支援するということでついていくものだと思います。したがって、先ほど神野先生のお話になった二分二乗方式のようなもの、こういったものはやはり過渡期の制度としては非常に重要になってくると思います。
 ですから、最終的な姿と追いかけていく過渡期の制度というのは区別して、追いかけながら適切なもので対応していくことになると思います。
#83
○堂本暁子君 神野先生にもう一度伺いますけれども、今、皆様のお話を伺って、長いこと構築されてきた日本の福祉の社会保障制度の中でなかなかその切りかえが難しい部分だとは思います。しかし、なおかつ先ほど御説明いただいた二分二乗法だけではなくてもう少し、今まさに広井参考人は後を追っかけてというふうにおっしゃったんですが、逆に社会保障がリードする部分もあるんじゃないかというふうに私は思うんです。
 逆に言えば、今のような形で三号被保険者の枠におさまっていれば働かなくて済む、百三十万以下のという、そういう形でもう今や一千二百万人という女性がその枠でそれを、両面あると思います。そこがあるから、老後も非常に先ほど言われた高いサラリーマンの奥さんであれば高い年金を得るということもできるでしょうし、一方で保障されるという部分もあるでしょうし、いろんな功罪があるとは思うんですけれども、そういった制度がある以上は逆に本当に女性の所得をきちっと上げていくことが難しい、足を引っ張るということもあるんではないかということで、私は社会保障のあり方が税制とかそれから女性の賃金にまで響いてくるんではないかというふうに思ったりするんですが、その点はいかがお考えでしょうか。
#84
○参考人(神野直彦君) 先ほど広井先生がおっしゃった二分二乗制度は過渡期の制度だということに関連するかもしれませんが、現在のように女性に対して必ずしもフェアな賃金体系になっていなくて労働市場がきちっとでき上がっていないというような状況のもとでは、ある程度二分二乗のような形で各女性にもきちっとした年金権をちゃんと与えていくというようなことをした方が、三号被保険者に何かいわばむちを打つような形で追い出すということよりも、その人たちにちゃんときちっとした市場が開かれているのであればいいのですけれども、開かれていない以上、やや過渡的なやり方かもしれませんが、そういう世の中に動くまでの間は少なくとも二分二乗制度のような形でつないでいくというのがフェアなんじゃないかというふうに考えています。
#85
○堂本暁子君 その先はどのように、もしそれが過渡的なものだとすると、先は非常に理想的なと申しますか、二十年後か三十年後かわかりませんが、どのようにお考えになりますか。
#86
○参考人(神野直彦君) 二分二乗制度も全く同じことなんですが、基本的には個人単位で考えているわけです。個人単位にやるために二分二乗という便法を使っておりますので、最終的には広井先生がおっしゃったような個人単位になるだろうと思います。
 と申しますのも、結局、社会保障制度というのは、本来、家族とかコミュニティーとか友人たちが連帯でやるべき生活の保障をそうした機能が縮小しているために代替するわけですので、家族単位でやってもしようがないわけです。家族の機能が縮小しているために行われるものですから、個人単位で行うことになるというふうに思います。
#87
○堂本暁子君 ありがとうございました。
#88
○西川きよし君 本日は御苦労さまでございます。私がラストバッターでございます。よろしくお願い申し上げます。
 まず、基礎年金の税方式についてお伺いをしたいんですけれども、昨年十一月の「年金と雇用」という雑誌の中なんですけれども、矢野年金局長がお書きになっておられるんです。
  結局、税方式で一番ワリを食うのは二号被保険者、サラリーマンです。基礎年金にかかる費用の半分は企業が負担していることからサラリーマンの保険料の下がり方は半分となり、消費税と保険料を併せたトータル負担は増えてしまう人が多いからです。一番トクするのは企業です。だから企業が税方式を主張するのはよくわかるんですが、サラリーマンの代表と称する人たちが税方式を主張しているのは、どうしても理解できません。
こういうふうな御意見があるんですけれども、これはまず桝本参考人と、その後、広井参考人にお伺いしたいと思います。
#89
○参考人(桝本純君) その問題は、年金局長がどういう御理解かは別にいたしまして、ある意味で非常にわかりやすい御説明ですね。私どもは、税方式にしてしまえば何もかも解決すると言っているのではありません。税方式にすることに伴って生ずる新しい課題が当然あると思っております。
 例えば、今の消費税でいいのか、あんなものではだめだと。言えば、どういう間接税が必要なのかということも問題になります。その中で、例えば今の基礎年金部分に相当するところは三分の二が保険料で賄われております。三分の二の保険料の部分は労使折半でございます。ここのところが消費型間接税であるということになると、基本的にはこれは最終的に最終消費のところで課税されるわけですから、言ってみれば消費者イコール労働者、こう考えますと、労使折半だったものが十対ゼロ負担に変わってしまう。これはおっしゃるとおりで、それに対する補償措置が必要になります。私どもはその補償措置の問題の検討も、これまた今までやられたことのない領域ですので、本当の税方式への切りかえのためにはぜひとも必要なことだと。これについては各方面にも訴えてまいりましたし、いろいろな方々からのアドバイスもちょうだいしてまいりました。
 たまたま年金局長がそういう議論について余り御関心を向けていただけなかったのは大変残念なことですが、そのことは年金審議会の席でも私どもは議論をした記憶がございます。したがって、そのことを全く私どもが関心がないというのであれば、労働組合がそういうことを主張するのはおかしな話だというのは御批判として成り立つと思いますが、私どもはそれについては別なコンペンセーション、補償措置を必要としていると思うんです。大きく言って三つ考えております。まだ結論は出しておりません。
 一つは労使負担割合、残った保険料部分についての労使負担割合を五、五ではなくて六、四にするとか七、三にするとかという、負担割合の変更です。
 それから二番目は、現在の保険方式は標準報酬月額表というものがございまして、年金については一番頭が五十九万円、五十九万円を超える賃金の者は七十万円であれ百万円であれ五十九万円分しか保険料を取られないというふうになっているわけです。これは労使について共通なんです。労働者にとってはそれを上げますと年金給付に反映しますからあれですが、使用者側については別に企業が年金を受けるわけではありませんから本来関係ないはずなので、この天井を労使で変えるという考え方。
 それから三番目は、保険料の方はそのままにしておいて別個な負担、人を雇うということに伴う負担を使用者側に新しくお願いする。つまり、社会保険で楽になった分に相当する負担をお願いする。これは、ですから、法人所得税のように黒字の企業だけが払って赤字の企業は払わないということにはなりませんね、賃金と同じ、人を雇っているんですから。だから、最近の何かと話題の多い外形標準課税のような形になるのかなと。その場合には、人件費になるのか付加価値になるのかということになろうかというふうに考えております。
 とりあえず、公費負担二分の一までの引き上げを何としても実現していただいて、その上に立って具体的な検討に入りたい、このように考えております。
#90
○参考人(広井良典君) 二点に分けてお話ししたいと思いますけれども、まず現在の三分の一税、三分の二保険料ということ自体が非常に国際的に見ても奇異な、特殊な姿であります。これはどうしてこうなったかといいますと、基礎年金制度ができましたときに、当時は増税なき財政再建ということで、国民年金が破綻しかかっていたのを増税は一切しないで厚生年金の保険料で国民年金を救済する、こういうことで三分の一税、三分の二保険料という形がとられたわけで、老人保健制度も同じであったわけでございます。ですから、基礎年金、三分の一税、三分の二保険料というのが私から見ると非常に中途半端な過渡期の制度であって、いずれにしてもこれは基礎年金の性格からしても税で賄うのが筋であるというのがまず大前提でございます。
 次に、では税にする場合にどのような税かということで、私はやはり消費税というのがこれから有力な候補だとは思っておりますけれども、ただすべて消費税かというと、必ずしもそれはそう考える必要はなくて、所得税、法人税、そういった現行の一般財源との組み合わせで考えていくということは、企業の負担とのバランスということを考えても考えられることだと思います。
 ただ、消費税は、何度かもう既に申しましたように、国際的に見ても一定の社会保障を充実させているヨーロッパ諸国は軒並み一五%以上の、スウェーデンになると二五%というような、そういうことの対比からしても、やはり日本の税のバランスからしてもう少し社会保障の財源として充当することを当然考えてよいのではないかと思いますし、あるいはクロヨンの問題等々を踏まえますと、あるいは個人単位化ということを考えますと、一つの主たる財源として考えていっていいのではないかというふうに思っております。
#91
○西川きよし君 次に、無年金障害者の問題についてお伺いしたいんです。
 まず、今回のこの改正案でございますけれども、学生の納付特例制度、これは引き続き広井先生にお伺いしたいんですけれども、今回のこの制度をどういうふうに評価されておりますか。
#92
○参考人(広井良典君) 私は、大学で社会保障論というのを教えているわけですけれども、率直なところ、学生の世代の現在の年金に対する不信感というのは相当なものがあるという、それがすべてよく知った上でのものかどうかという点はあるかと思いますけれども、かなり不信感を持っている。その一つが、所得がないにもかかわらず二十から払わなければならないということで、これはやはり第三号被保険者、所得がなくても専業主婦は保険料を払う義務が免除されていることとのバランスを考えますと、あるいはそもそも基礎年金というものが保険料の拠出とは差し当たり独立して一定以上の年金を保障するという制度から考えますと、専業主婦と同様の扱いにしてしかるべきではないか。したがいまして、今回の改正のように改めて払うということではなくて、一切その義務から解放するというのが最も望ましい姿ではないかというふうに思っております。
#93
○西川きよし君 五十分まででございますので、引き続きこの無年金障害者の問題について関連してお伺いしたいんですけれども、政府の見解では、制度に入っていない方あるいは入っていてもその保険料を納めていない方、こういった方々に年金を支給するということはその制度の根幹に触れるわけですから、保険料は納めていないわけですから、対応することは大変に難しいということですけれども、たくさんのお便りを私の方にも先ほどの学生さんの問題等々いただくんです。この点につきましては、広井参考人はどういうふうにお考えでしょうか。その後、坂内参考人にもお伺いしたいと思います。
#94
○参考人(広井良典君) 先ほどの質問とは。
#95
○西川きよし君 無年金の保障の問題ですけれども、いわゆる入っていてもお支払いしていない、そういう人にもいわゆる給付ができないかという。
#96
○参考人(広井良典君) これは、結局基礎年金というものの性格をどういうふうにとらえるかということになるかと思いますけれども、基礎年金というのは、基本的に先ほども申しましたように保険料の拠出とは独立した形で、老齢の場合あるいは障害等の場合にその生活を保障するという制度のものですので、これはやはり一律にそういった保険料の拠出とは無関係に保障するというのが本来の筋だと思いますので、そのような形で制度を実施していくのが妥当ではないかと考えております。
#97
○西川きよし君 では、お支払いするということですか。
#98
○参考人(広井良典君) はい。
#99
○参考人(坂内三夫君) 私も実は年金保険料を払っていない息子を一人持っている身でありまして、国会でこんなことを申し上げるのはなんですが、今、若者それから学生の公的年金に対する信頼感というのは非常に低いと思います。それは、今もお話がありましたように、所得がないのに年金保険料を払わなくちゃならない、仮に払っても将来払った年金保険料に見合うだけの公的年金が支給されるかどうかということについて、若い人たちは非常に不安を持っていると思います。ですから、そういう若者の不安に本当に今回の年金改正法の中身がこたえているかというと、私は大いに問題があるというふうに思います。
#100
○西川きよし君 そのお話は先ほどお伺いいたしましたんですが、無年金障害者の部分というのはいかがなものでしょうか。
#101
○参考人(坂内三夫君) 無年金障害者の問題についても、やっぱり今回の問題についてはいろいろ問題点があるだろうというふうに思っております。
#102
○西川きよし君 引き続きまして、障害年金の中でも精神障害者の方々についてきょうはお伺いしておきたいんですけれども、障害の程度を評価する基準の問題ですとか、また病気になりますとその後にもいろいろ混乱するわけですけれども、なかなか申請ができないというケースがございます。
 衆議院の方の議事録等々にも目を通させていただいたんですけれども、職場に勤めていた方が病気が進行して職場に勤められなくなった。本来でいえば障害厚生年金の対象者であるはずなんですけれども、そういうこともなかなか申請ができなくて、退職をして病気が進行していってそれどころではなくなったわけです。それで、いつの間にか無年金状態になってしまった、こういうケースも多々あるということもお伺いしておるわけです。この精神障害者と障害年金という点で、いわゆる働いている方の不利益ということについて、まずこれも桝本参考人と坂内参考人にお伺いをしたいと思います。
#103
○参考人(桝本純君) この障害年金は、我が国の公的年金の中では最も不備な分野だと思っております。その最も不備な分野をカバーするための努力がこれまた極めて不足をしてきたということの中で、先生御指摘の一つは若年無年金障害者、この問題はまだ何の手当てもされていない。これは、今回の年金改正のときに第三号被保険者問題と並んでぜひとも何かしようということが審議会での大方の合意であったにもかかわらず政府案には入っていない、こういう問題が一つでございます。
 それから、精神障害の問題は、これはほとんどまだ十分に検討されておりません。
 二つ問題があります。一つは障害の程度の判定という問題と、それから障害者自身の実際に行動するための条件が非常に制約をされる。特に単身者の場合そうです。精神障害にも種類がいろいろありますけれども、これは種類の問題と程度の問題とが複雑に絡み合っておりまして、これについては本人だけではいかんともしがたい要素があるわけなので、これについてはぜひとも、不幸にしてそういう障害に陥った人の生活全体についてのサポートシステムをとる以外にない。これは年金だけの問題ではないだろうと思います。
 特に、あえて言いますと、分裂症の場合が非常に大変であって、これに対する精神的なケアというのは、やはりかなりきめ細かいものを今後用意していくのが日本の課題である。これは、例えば年金の手続の問題で先生御指摘でございますが、年金以外に手続が必要なことはいっぱいあるわけですね。
#104
○西川きよし君 時間が短いものですから。手続やお医者さんのこともいろいろあるんですけれども。
#105
○参考人(桝本純君) ただ、これは年金の問題を離れてきちんとした対応を考えれば、年金の手続の問題もその中で解決するのではないかというふうに思います。
#106
○参考人(坂内三夫君) 精神障害者に対する考え方は、今の連合さんとほぼ同一でございます。
 前回、九四年の年金改正の議論のときに無年金障害者の所得保障などについて国会で全会一致の確認があるにもかかわらず、今度の年金改正の中身に盛り込まれていないということは極めて不十分だと思います。先生おっしゃった二分の一の国庫負担の問題とあわせて、この問題は、本委員会を初めとして、この国会で議論を詰めて結論を出すべき問題だろうというふうに考えております。
#107
○西川きよし君 終わります。
#108
○委員長(狩野安君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼申し上げます。ありがとうございました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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