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2000/05/16 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 国民福祉委員会 第20号
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2000/05/16 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 国民福祉委員会 第20号

#1
第147回国会 国民福祉委員会 第20号
平成十二年五月十六日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十五日
    辞任         補欠選任   
     山本  保君     魚住裕一郎君
 五月十六日
    辞任         補欠選任   
     魚住裕一郎君     山本  保君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         狩野  安君
    理 事
                田浦  直君
                山崎 正昭君
                勝木 健司君
                山本  保君
                小池  晃君
    委 員
                入澤  肇君
                尾辻 秀久君
                久野 恒一君
                中原  爽君
                南野知惠子君
                水島  裕君
                今井  澄君
                佐藤 泰介君
                松崎 俊久君
                柳田  稔君
                魚住裕一郎君
                沢 たまき君
                井上 美代君
                清水 澄子君
                堂本 暁子君
                西川きよし君
   国務大臣
       厚生大臣     丹羽 雄哉君
   政務次官
       大蔵政務次官   林  芳正君
       厚生政務次官   大野由利子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大貫 延朗君
   政府参考人
       大蔵大臣官房審
       議官       福田  進君
       文部省高等教育
       局長       佐々木正峰君
       厚生省児童家庭
       局長       真野  章君
   参考人
       日本社会事業大
       学学長      京極 高宣君
       東京大学社会科
       学研究所教授   大沢 真理君
       神戸大学発達科
       学部教授     二宮 厚美君
       福井県立大学看
       護福祉学部社会
       福祉学科教授   大塩まゆみ君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
〇児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件

    ─────────────
#2
○委員長(狩野安君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨十五日、山本保君が委員を辞任され、その補欠として魚住裕一郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(狩野安君) 次に、児童手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案について四名の参考人の方々から意見を聴取することといたしております。
 参考人の方々を御紹介いたします。
 日本社会事業大学学長京極高宣君、東京大学社会科学研究所教授大沢真理君、神戸大学発達科学部教授二宮厚美君、福井県立大学看護福祉学部社会福祉学科教授大塩まゆみ君、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の答弁とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず京極参考人から御意見をお述べいただきます。京極参考人。
#4
○参考人(京極高宣君) 社会事業大学の京極です。
 児童手当のあり方に関しましては、政策的にもいろいろな面から検討しなくちゃならないと思っております。特に、我が国の社会保障全体の流れを申しますと、いわゆる低所得者対応から少子高齢社会対応へと大きく移っていることは言うまでもございません。ただ、全体としますと、社会保障はややもしますと高齢者対応ということで高齢化に向けた対応に力点がありまして、この点では少子化対応ないし児童に対する対応というのがややおくれていたかと思います。これは、国の方もそうでございますけれども、私ども学識経験者についても不十分なところがあったという反省もございます。
 さて、特に子育て支援ということを考えますと、旧連合政権のもとで高齢社会福祉ビジョン懇談会が開かれまして、二十一世紀福祉ビジョンも出されました。その際、高齢者に対するいわゆる介護の社会的支援につきましては比較的合意が得られたわけですけれども、子育てに関しては個別問題ということで支援がなかなか認めにくい状況がございました。エンゼルプラン等は提唱いたしましたけれども、やはり今後のことを考えますと、二十一世紀に向けて子育ての社会的支援を行うということが非常に重要だというふうに思っています。これは社会哲学の問題でもございまして、やはり企業も含めて責任を持っていく。個別企業の中で賃金の中に単に家族手当を置くとかということじゃなくて、大きな意味で社会的な対応をするということが必要になってきているかと思っております。
 さて、国際的に目を転じますと、先進諸国それぞれ少子高齢社会対応を行っているわけでありますけれども、大きく分けますと、北欧・イギリス型のように税に基づく社会扶助を中心とした国と西ヨーロッパのように社会保険を中心とした国がありまして、どちらかといいますと我が国は後者に属するというふうに思っています。
 しかし、児童手当につきましては、これはなかなか位置づけが難しいところでありまして、企業が出している国もあれば、税金だけでやっているところもございます。ただ、いずれにいたしましても、子育て支援のために社会的に対応するという点では変わっていないというふうに思っています。
 我が国の場合は、賃金、税制、社会保障給付、この三つの側面でそれぞれ児童に対する給付が入っているわけでございます。こういう三つそろっている国は日本ぐらいじゃないかと思うわけであります。おおむね、ヨーロッパでは税制上の扶養控除などをやめて児童手当を支給するというふうになっておりまして、ドイツなどは両方の選択ということがありますけれども、基本的にはそういう方向が出ているわけであります。
 日本の場合は、特に国際的な潮流でもございますけれども、どちらかというと多子家庭に対する対応から子育て支援というふうに児童手当の位置づけが変わってきているわけでありまして、それに対する手厚さという点では、国会決議等におきましても附帯決議で必ず不十分だということが指摘されるということで、国の方も大変努力はしてきたわけでございますけれども、今日から見ますと、国が大変な努力をやってきたにもかかわらず、児童手当の総額のパイは必ずしも大きくならない。いろんなやりくりをしてきましたけれども変わらない。小さく産んで大きく育てるということであったはずなんですけれども、小さく産んで小さく育てていたというふうな感じもいたすわけであります。
 今回は、私の印象では、特に義務教育就学前まで対象を拡大し、平年度ベースで二千二百億円ふやしたということ、児童手当の総額がほぼ倍増するということで、子育て支援にとっては非常にプラスであるというふうに思っております。扶養控除はどちらかというと逆進性がございまして、高所得、中所得の方には有利なんですけれども、低所得ないし中所得の低いところではなかなか効果がないという点で、私は非常に評価しているわけでございます。
 これを赤字国債でやるとかなんとか、あるいは税金をうんと上げてやるというのであれば別ですけれども、今日の財政の厳しさの中でここまで来たというのは一つのステップとして画期的なことではないか。しかし、もちろん平成十三年度以降の抜本的な見直しということがございますし、またそこで大いに検討していただかなくちゃいけない課題があるかと思います。
 特に、サラリーマンの場合はまだ特例給付がございますけれども、自営業者等は全くないということで、何か国民階層の中に子育て支援の手当に大分格差があるということで、これはいずれ何とかなくしていかなくちゃいけない。
 ただ、今後の方向として見た場合は、社会的支援、社会的連帯ということを考えたときに税金だけでいいのかどうか。やはり企業も参加し、あるいは場合によっては二十歳から四十歳までの介護保険を払っていない階層に育成保険料みたいなものを取って新しい保険をつくることも一つの手ではないかと思っているわけでございます。
 やはりこのような時代においては、痛みを分かち合って安心して子育てができる、そしてこれが一部分でございますけれども少子化にも多少影響が与えられるということになれば幸甚だと思っているわけでございます。
 以上でございますが、また質問があればお答えしたいと思います。
 ありがとうございました。
#5
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、大沢参考人にお願いいたします。大沢参考人。
#6
○参考人(大沢真理君) 本日は、このような場で意見を申し述べる機会をちょうだいいたしまして、大変ありがたく存じております。
 本日の参考人には、児童手当問題についての専門家中の専門家でいらっしゃる大塩さんもいらっしゃいますことですから、私は本改正案の趣旨でございます少子化対策を総合的に図るというのはどういうことかということを、国際比較の観点から意見を申し上げたいと存じております。
 そこで、お手元にレジュメと若干の図表がございますが、まず日本の勤労者の家計の特徴を国際比較から浮き彫りにしてみたいと存じます。
 この特徴は、簡単に申しますと、家計収入の総収入に対する世帯主勤め先収入の比率が高いこと、その反面で世帯主の配偶者の収入の比率が低いというところにまず特徴がございます。つまり、簡単に言えば、夫の勤務先収入の比率が高く、妻の収入が家計に占める割合が低いわけでございます。
 そしてその次に、社会保障給付の比率が家計収入に占める比率が低くなってございます。これは、図1に日本と韓国及びドイツのブルーカラー、ドイツのホワイトカラーという比較がございますけれども、日本の勤労者家計に占める社会保障給付の割合は六十代、特に後半になりますとふえるんですけれども、いわゆる現役世代にとっては社会保障の給付というのがほとんど家計に貢献をしていないという構造になってございます。他方で、韓国や台湾のような東アジアの国に比べますと、日本の勤労者家計の特徴は贈与や仕送りの比率が低いところにございます。要するに、世帯主の会社に対する家計の依存度が大変高くなっておりまして、このことを私は時として家父長制的な企業中心社会のあり方だというふうに言っているわけでございます。
 ところで、ドイツの現役世代にとって実収入に占める社会保障給付の比率が高い原因を探りますと、これは一つには児童手当、これが最大要因でございます。二番目の要因は雇用促進給付、一種の失業給付でございますけれども、これがあるおかげで現役にとっても、そしてブルーカラーの人にとってはなおさら実収入に占める社会保障給付の比率が高い。したがいまして、現役のときから社会保障制度のありがたみを実感できるという社会保障システムになっているわけでございます。
 続いて、児童支援パッケージと言われるものの国際比較を申し上げたいと思います。
 児童支援パッケージ、チャイルド・ベネフィット・パッケージとは、今、京極先生のお話にもございましたけれども、いわゆる子育て支援あるいは子供が育つことを支援する政策としては、以下の少なくとも数点のものをあわせて考えなければいけない。すなわち、現金給付である児童手当、それから扶養家族に関して税を軽減する所得税制、住宅費を軽減させる給付、それから保健医療費を軽減させる給付やサービス、そして最後に保育・教育費を軽減させる給付やサービスでございます。
 子供のいない家族の総所得に対して子供がいる家族が受け取っている児童支援パッケージが占める比率を見ますと、図2に示されますように、これはケース一が男性平均賃金の半分程度の所得しかない低所得者、ケース二はちょうど平均、それからケース三は平均所得の一・五倍を得ている比較的高所得者のケースでございますが、この三つの所得階層についてCBPの実質価値というのを見ますと、日本は、実は日本の数値の中には企業が支給する家族手当の扶養児童分が含まれておりますけれども、これを含めてもギリシャ、ポルトガル、スペインなどと並んで大変低くなっているわけでございます。
 一般に、この棒グラフの数値の高い国、CBPが高い国というのは所得制限のない児童手当を持っております。それから、税制がCBPに占める比重は比較的高所得者で大きくなっていること、これはただいまの京極参考人のお話の中にもあったとおりでございます。
 それから、日本の特徴は住宅費が格段に重く、図2というのは住宅費控除前の状態でございますから、日本の児童支援パッケージは辛うじてプラスの値になっておりますけれども、住宅費を控除いたしますとパッケージはマイナスになってしまいます。これは、日本の社会保障制度の中に住宅費を軽減する給付がないことによっております。それから、日本の低所得者にとっては住宅費の重さ、比較的高所得者にとっては住宅費と教育費が重いために、いずれも住宅費控除後のCBPはマイナスになってしまう。つまり、そのような意味では国は少しも子育てを支援していないということになります。
 続きまして図3でございます。
 手厚い児童支援パッケージがあったからといって子供を産むのかどうかということについてしばしば疑問が呈されておりますけれども、これを瞬間風速としての出生率ではなく八二年から九二年といった間の出生率の変化を見ますと、明らかに児童支援パッケージの低い国で出生率が低下した。出生率の変化の割合がマイナスになっているのは、八二年に比べて九二年の出生率が低くなった国をあらわしております。このようなことが一般的に言えるわけでございます。
 しかし、児童支援パッケージ、子育てといいますか少子化対策を総合的に図るというときには児童支援パッケージを見るだけではまだ足りないというのが私の理解でございまして、図は一つしかお示ししてございませんけれども、これはよく知られた事実として、二十五歳から三十四歳の女性の労働力率が高い国では出生率も高いという相関がございます。
 御承知のように、日本の年齢階層別女性の労働力率は二十五歳から三十四歳でがたっと落ち込み、ローマ字のMの字を描くいわゆるM字型になっているわけでございます。先進国と言われる国の中では、女性の労働力率といえどもM字型になっている国はほかにはございません。日本ではこの年齢階層の女性の労働力率が低いわけですが、そのような日本で出生率も低いということはほかの国にも相関関係として見出されることでございます。
 それから、女性の社会的地位、これはジェンダー開発指数というようなインデックスが国連開発計画によってつくられておりますけれども、平均寿命ですとか就学率それから一人当たり国民所得といった数値を男女の格差でもって減点したものがジェンダー開発指数でございます。これが高い国では出生率も高い。日本は、男女込みの人間開発指数では世界で四位、五位といった高いランクにございますけれども、ジェンダー開発指数というように男女格差を割り引いてしまいますと低くなるわけでございますが、ここにもこのような相関がございます。
 それから、図4は、これは日本経済研究センターの所長でいらっしゃる香西泰さんの最近の御研究の結果なんですけれども、ある程度開発が進んだ国では男女賃金格差が小さいほど出生率が高いという状態を示しております。エジプト、トルコ、スリランカ、中国等々といった国では男女賃金格差は大きいけれども出生率も高い。しかし、図の右下の方に示されております国、これはある程度開発が進んだ国というふうにここでは表現いたしましたけれども、ここでは明らかに右上がりの相関が見られるわけでございます。あわせまして、男女賃金格差が小さい国では夫の家事協力度も高いということが知られているわけでございます。
 以上の事実から政策的なインプリケーションを引き出すとすればどういうことであろうか。つまり、ここでは少子化対策を総合的に、これは児童手当法改正案の趣旨でもございますけれども、総合的に図るということの重要性を余すところなく示していると考えます。総合的に少子化対策を図る上で、児童支援パッケージというのはその指標となるものと考えます。児童支援パッケージの実質価値を高めたければ所得制限のない児童手当を採用していくことが重要であるというのも、以上の国際比較の事実は示しております。
 それから同時に、税制を通じる児童支援パッケージは低所得者にとっては有効性が小さいということも示しております。所得階層で区切ってどの所得階層の子育てを支援すべきかということに関しては、これはもう価値判断の問題ではございますけれども、他方で、今の日本で大変景気の回復がおくれている中では、このような現金給付はより消費性向の高い低所得者に対してターゲットが合わされることが必要ではなかろうかと考える次第です。
 そして最後に、男女賃金格差の縮小といったものをきちんと政策目標に掲げて推進される男女共同参画政策こそが最善の少子化対策になるということを申し上げまして、私の意見を終わらせていただきたいと存じます。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、二宮参考人にお願いいたします。二宮参考人。
#8
○参考人(二宮厚美君) 二宮でございます。
 私は、児童手当に絞ってお話し申し上げたいと思います。
 児童手当の内容につきましては、大体五つの論点が浮かび上がってくるのではないかというふうに思います。五つの問題といいますのは、あらかじめ項目だけ申し上げておきますと、まず一つは児童手当の趣旨ないし目的にかかわる問題、二つ目は支給時の所得制限の問題、第三番目には児童手当の支給対象だとか支給期間について、第四は児童手当の支給額だとか水準にかかわる問題、それから第五番目になりますけれども、今回の児童手当の最大の争点でありました児童手当の財源構成の問題、この五つにわたってそれぞれ、以下時間の許す限り意見を述べたいと思います。
 まず、第一番目の趣旨だとか目的にかかわることでありますが、先ほどのお二方の先生の話とダブるところがありますけれども、私は子供の生活保障につきましては二つの側面から統一して推進していかなければいけないというふうに思います。一つは、子供の生活を生計費の側面から保障する、すなわち所得保障の視点を徹底するということです。二つ目は、それにとどまらなくて、保育だとか学童保育にかかわって子供の発達に必要な社会サービスの保障、保育所を初めとして学校まで発達保障目的のサービスの保障の充実、この二つの視点の統一が必要だというふうに思います。
 児童手当は、その内部を見ますと、私は過去十五年ばかり学童保育の連絡会の大阪での会長を務めてきたのでありますが、これにかかわって、児童手当勘定の中に特別保育だとか学童保育のいわゆる児童育成事業が含まれておりますけれども、中心的には児童手当の財源は前者の所得保障を担っている。子供一人一人に対する、親ではなくて彼らに対する所得保障というふうに児童手当をとらえるのであれば、現在の法律の仕組み、前提になっております児童を養育している者に対する児童手当の支給、すなわち簡単に言えば親ないし世帯に対する支給ということになりますが、こういう家計ないし世帯補助的な考え方というものを改めていく必要がありはしないか。
 とりわけ、今回の措置は将来の児童手当の改革への第一歩、過渡的な措置だというふうに言われておりますけれども、全体として児童手当を子供一人一人の所得保障としてどう発展させていくのか、この方向が明らかになっていない。この点に私は大変大きな不満を持っております。
 とはいいましても、今全国各地で保育だとか学童保育が、例えば公立のものが民営化されるとか民間委託になるとか、いわゆる市場化路線が進行しておりますけれども、そのときに所得保障をちゃんとやっておれば、いわゆる現物給付というふうに言われております保育だとか学童保育の充実は後回しにしていいというか副次的なものでいい、こういう考え方もあるようでありますけれども、これはまさに少子化であれ子どもの権利条約の精神であれ、児童福祉の視点から見て非常に大きな問題を持っている。つまり、所得保障と社会サービス保障というのはあくまでも統一して相互補完的に充実させなければならないというふうに思います。
 それから第二番目でありますが、子供に対する普遍的な生活ないし所得保障という視点からとらえるとすれば、イギリスであるとかスウェーデンであるとかその他ヨーロッパ各国がそうしておりますように、親ないし世帯の所得制限はやはり撤廃する、もしくは当面撤廃という方向をにらみながら大幅に引き上げるということが必要で、そういう方向性を打ち出すべきではないかというふうに思います。
 ところが、今回の改正では児童手当の本則給付及び特例給付両方にわたって所得制限は据え置かれておりますし、所得制限の中でも、もう既にこの国会でも問題になっておりますけれども、いわゆるサラリーマン世帯と自営業世帯との所得制限の格差という従来から問題になっている問題群もなお踏襲されている、こういう問題点が第二番目に指摘できると思います。
 それから第三番目は、支給対象、支給期間の問題でありますけれども、今回の改正は小学校入学前までの子供に対して支給が延長される、こういうことでありますから、その限りでは支給対象児童や期間が拡大する。これは言うまでもなく評価できるわけでありますけれども、ただ日本の児童手当の歴史を振り返ってみても、これは一歩前進二歩後退というふうに言うべきではないか。
 つまり、本来であればヨーロッパ諸国に並ぶ形で、児童福祉で言うところの児童といいますのは児童福祉法にありますように十八歳まででありますから、十八歳までやはり延ばすべきだし、当面それが無理であるとすれば義務教育終了まで延長すべきではないか。とりわけ、第三子に限ってではありますけれども、日本の児童手当の中でも七〇年代の半ばから八〇年代の半ばまでおよそ十年間、義務教育終了前まで手当を支給したことがあります。
 したがって、こういう歴史の流れから見ましても、やはり最低でも義務教育終了までは児童手当の支給期間を延ばすべきではないか。この点の改善が、先ほど言いましたように一歩前進ではありますけれども、大きな日本の流れからすれば二歩後退ではないかというふうに考えられます。
 それから第四番目でありますが、児童手当の支給額、水準につきましては、先ほど大沢先生の御指摘にもあったわけでありますけれども、日本は少なくともヨーロッパ先進諸国と比べてみて圧倒的に低い水準にある。これは支給額もそうでありますし、児童手当や援助パッケージの総額を対GDPだとか国民所得比で比較した場合もそうでありますし、衆議院の議事録を私は来る前に読ませていただきましたけれども、ここでの委員会の議論の中でも、例えばGDP比でいいますと〇・一以下、先進国では少なくとも児童手当は二%ないし三%以上に達成しているというのが当たり前だという指摘がありましたけれども、こういう問題群、つまり支給額や水準についてやはりもう少し改善すべきではないかというのが第四番目です。
 それから第五番目、これはいわゆる財源構成の問題でありますが、今回の改正の最大のポイントは、児童手当につきまして従来の事業主七割負担、公費三割負担という財源構成を一たん横に置いて、三歳から六歳までの子供向け児童手当については全額公費負担とする、その公費負担の資金を年少扶養控除の引き下げで賄う、これが今回の改正の最大のポイントであったように思いますけれども、これは政府もお認めでありますが、千九百万人の子供に対する増税から三百万人分の支給対象児童の手当財源を捻出する、そういう格好で、事実上千六百万人の子供を持つ世帯ないし家族はそのおかげで増税というしっぺ返しを食らう、こういうことになっているわけです。
 私は、これは三つ問題があって、一つは年少扶養控除加算分十万円といいますのは一年限りで廃止でありますから、マスコミも言っておりますように朝令暮改というか、夕方にならぬ前に変えちゃうというぐらいで、朝令昼改というふうに言ってもいい、そういう問題点と、それから子育て支援全体の財源構成から見れば朝令暮改と並んで朝三暮四という問題点を持っている。それから、財源構成から見ますと、従来の児童手当の財源獲得という骨子から別建てのものを用意したという意味で接ぎ木という問題点を持っているのではないか。
 以上申し上げまして、私の意見にしたいと思います。
#9
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 次に、大塩参考人にお願いいたします。大塩参考人。
#10
○参考人(大塩まゆみ君) 福井県立大学の大塩でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、社会福祉の分野から海外の家族手当と日本の児童手当について研究した立場として見解を述べさせていただきたいと思います。
 資料を準備いたしましたので、どうぞごらんください。
 まず、児童手当についてなんですけれども、児童手当は御承知のように一九七一年に最後の社会保障として成立しました。最後の社会保障と言われたのはなぜかと申しますと、第二次世界大戦後に憲法二十五条を実現するために新しい社会保障制度の確立が必要であるとして医療保険とか年金保険などを順次整備したんですけれども、その計画段階でも児童手当は優先順位が最後で、実際児童手当の成立をもって福祉元年という言葉が一九七三年に使われました。
 この社会保障の中でも後回しにされてきた児童や家族の問題に最近ようやく政策的な関心が向けられてきたということはいいことだとは思うんですけれども、その動機が不純といいましょうか、本当に児童や家族の福祉が考えられているんだろうかという印象を受けます。児童手当とか児童福祉対策というものは、その社会がいかに児童や児童を育てる家庭を大切にしているかをあらわすバロメーターだと思いますけれども、どういう関心を向けるのかということが大事だと思います。
 社会保障や社会福祉の歴史を眺めてみますと、それは人権を軽視されてきた人の人権を確立する方向に歴史は動いているのだと私は思います。最近は、高齢者とか障害者の福祉対策にも以前に比べると随分社会政策の目が向いてきました。そういうふうに、児童を含めて自分の力で自立できにくい人の人権や生活、人格を守る方向へ社会保障が拡大されてきているとは思うんですけれども、まだまだ不十分だと思います。
 特に、ナンバー2の図表4に載せておきましたけれども、先ほど大沢先生もおっしゃいましたが、児童家庭施策への支出は日本はかなり低いです。それから、前のページのナンバー1にも図表2として社会保障支出に占める家族手当費を上から七段目ぐらいに載せておきましたけれども、これも日本はかなり低いです。
 イギリスの社会保障計画をつくったベバリッジは、社会保障を窮乏から自由への道と表現したんですけれども、私は、社会保障を長い歴史のスパンから見て、奴隷から人間への道と表現したいと思います。つまり、人間が人間らしい生活を送れるようにするのが社会保障や社会福祉だと思います。
 そうすると、人間らしい生活とは何かということになるんですけれども、人間の一つの真理は一人では生きられないということだと思います。そして、社会の中で生きるということがもう一つの人間の真理だと思います。特に、児童期は親や養育者がいなければ一人では生きていけませんけれども、人間の子供を育てることは年中無休でまさに家事・育児奴隷になったような気がするものです、これはちょっと私の個人的経験も入っているんですけれども。そういうことで、最近の少子化というのは女性が人間らしい人生を求めて抵抗している結果ではないかと思います。
 ですから、児童手当を少子化対策の目玉とするという人口政策的な発想では女性たちの反発を買うのではないかと思います。もっと女性や子供の人格や人間性を尊重した政策として児童手当を実施してほしいと思います。児童手当を少子化対策と銘打つと、お金目当てに子供を産ませるようなもので、生まれてくる子供のことは二の次になっているように感じられます。
 児童手当は現金給付なんですけれども、受給者に社会から何らかのメッセージが伝わると私は思います。それはなぜかといいますと、以前に児童手当協会というのがあったんです。これは今、こども未来財団になっているんですけれども、以前の児童手当協会のときに「児童手当」という機関誌が出ておりました。その機関誌の中に児童手当を受給している人たちの声が出ていたんですけれども、それによりますと、児童手当をもらって社会から子育てを応援されているような気がするというようなことを書いている人が何人もいらっしゃいました。
 つまり、児童手当は社会からの子育てへのエールとなって子供の健全育成への願いをメッセージとして運べる制度にするべきだと思います。どういうメッセージが伝わるかはその受け取る人によって違うとは思うんですけれども、政治での児童手当の扱い方とかマスメディアの取り上げ方、それから制度自体の実質的な内容がすなわち暗黙のうちに何らかのメッセージを発していると思います。
 児童手当が創設された当初、厚生省でその準備に当たった方がいらっしゃるんですけれども、その方がどういうふうに考えていらっしゃったかということをこのレジュメの一番最初のページの左側の2の二つ目の黒い星印に載せておきました。これは長いので文は省略しますけれども、要するに児童手当には児童養育家庭への応援団、サッカーでいいますとサポーターとしての機能を持たせられるような見方が必要だと思います。ですから、社会からのサポートが実質的に価値のあるものとして機能しなければ、児童手当の存在意義が感じられないと思います。
 そのためにはどうしたらよいかということなんですけれども、まずは現在の日本の児童手当の問題点を改善することが重要だと思います。それについてはレジュメの3に「現行児童手当の問題点」として載せておきました。
 つまり、支給期間が短いということ。それから、所得制限があるので結果として対象児童が少ないということ。それから、日本の児童手当はすべての児童の健全育成と資質向上を目指している制度なんですけれども、結果として結局一部の児童への選別的な制度になっているということ。それから、支給金額が少ないので、焼け石に水というか、余りありがたみが感じられないような内容になっています。それから、年金とかほかの手当は自動物価スライド制になっていますけれども、児童手当は物価スライド制も導入していません。いかに児童手当が軽視されてきたかということがこれで裏づけられていると思います。
 それから、支給金額についてなんですけれども、それがどういう根拠ではじき出されているのかということもわかりませんし、それから過去に支給年齢が三歳未満になったり小学校入学前になりましたけれども、その理由もはっきりわかりません。ILOの百二号条約で家族手当、家族給付の支給額の基準を出しています。これは資料のナンバー3の下の段の5に載せておきましたけれども、このILOの百二号条約に当てはめても日本の児童手当の支給金額は少な過ぎます。少なくとも現行金額の三倍以上は必要だと思います。
 それから、海外の家族手当についてもナンバー1の資料の図表2に十四カ国ほどの児童手当がどういう基準で出されているかということも一覧表にして載せておきました。支給年齢なんかも、ごらんいただいたらわかるように、ほとんどの主要国は十六歳以上です。ですから、せめて十六歳以上、できれば十八歳までは児童手当を支給するべきだと思います。
 制限時間が十分と大変短いですので、申し上げたいことはあらかじめレジュメと資料にまとめておきましたので、またごらんいただきたいと思います。
 これで終わります。ありがとうございました。
#11
○委員長(狩野安君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○入澤肇君 大変参考になるお話、それぞれの先生方、ありがとうございました。
 共通して言えることは、児童手当につきまして非常に位置づけが低い、あるいはその中身に非常に問題があるというふうに聞こえたのでございますけれども、それについては私は幾つかの理由があるんじゃないかと思うんです。その理由につきまして、先生方の御意見をまずお聞きしたいと思います。
 先ほど京極先生が、児童手当というのは小さく産んで大きく育てることがいい制度だというふうにお話しございました。
 たくさんの子育て支援対策が提言されているんですね。これはもう各団体、厚生省もそうですし、それから日経連、経団連、同友会、医師会。その中には児童手当あるいは出生給付、それから保育施設サービス、地域育児ネットワーク、育児休業、教育支援、それから勤務形態の弾力化、短時間労働の活用、あるいは同棲の容認、夫婦別姓、年功序列賃金体系の廃止、専業主婦優遇見直し、さらには住宅政策と、いろんなものが提案されております。
 こういう中で、児童手当について議論するときに、なぜこの児童手当が、今、先生方がおっしゃるようにもっと重視されなきゃいけないのか。子育て支援対策の中で何が最も有効で、優先順位はどうなのかということにつきましてお考えをお聞きしたいので、まず京極先生にお願いしたいと思います。
#13
○参考人(京極高宣君) 私は、優先順位というのは児童手当が一番とか保育所が二番とか、そういうことは言えないと思っております。ただ、所得保障という側面で考えた場合に、今後期待できる、また今後期待しなくてはならない社会的な支援として最も有効な方向じゃないかというふうに思っております。
 特に、先ほど申し上げたときに、賃金の中に例えば家族手当部分が入っている国、これは日本の特徴でございます。これは年功序列賃金体系みたいな形でやられていますけれども、こういう生活給的なものがだんだんこれから構造的に変化していくだろう。そうすると、そこに余り多く期待することはできない。
 また、租税上の扶養控除がありまして、これも高額所得、中額所得には非常に有利な体系ですけれども、これも国際的に見ますとほとんど廃止の方向に動いているわけでございますので、これに期待をするというのは、まあ大蔵省の方は大変期待をされているようですけれども、私は国民的な期待としてはどうなのかと思っております。
 そうすると、残るところ、所得保障的な面では児童手当が一番いいわけでありまして、その辺を整理すればもっと手厚い保障が将来はできていくんじゃないかと思っております。やはり所得保障というのが生活のベースでございます。
 もちろん、保育サービスその他さまざまな総合的な政策、あるいは女性の立場からいうともっと根本的な男女平等の問題ということに突き当たるかと思いますけれども、当面のことを考えますと極めて直近の問題だというふうに思っております。
#14
○入澤肇君 今の質問に関連して大沢参考人にお聞きしたいんですけれども、我が国でCBPが低い理由、特にギリシャなどと並んで低い理由としてどんなことが指摘されるか。
 我が国の社会福祉政策、これを数字で見ますと、先ほどの大塩先生の資料にもございましたけれども、年金とか医療とかこういうものに非常にウエートがあって、また厚生省の政策体系の中でも非常に重い政策になっております。要するに、こういうものに力が注がれ過ぎちゃって、子育て支援という最近の非常に重要な問題について十分な手が伸ばせないんじゃないかという心配、考え方もあると思うんですけれども、CBPが低い理由として先生はどんなふうなことを考えておられますか。
#15
○参考人(大沢真理君) 最初の意見の中でも申しましたけれども、一般にCBPが高い国というのは所得制限のない児童手当制度を持っている。日本にはそれがないというところでCBPが低いということ。それから、住宅費と教育費の負担が高いがために、もしこれを控除すれば、国は子育てを支援しているのではなくてディスカレッジしている、子供を産むなというメッセージを日本の政策パッケージは送っているというふうに言えると思います。これが日本のCBPが低い主たる原因でございます。
 以上です。
#16
○入澤肇君 そうすると、そのCBPについては計算上の問題であると。社会福祉政策の中でたくさんの政策体系を我が国政府も用意しておりますけれども、その中で、今、京極参考人にもお聞きしたんですけれども、どのようなウエートを持って児童手当制度は考えられるべきかにつきましてはいかがでしょうか。
#17
○参考人(大沢真理君) まず、なぜ少子化対策をとる必要があるかということを考えてみたいんですけれども、これは言うまでもなく、少子化していきますと高齢者比率というのは予想よりもさらに高まると。今まで厚生省の人口の将来予測というのが外れてきたのは、出生率が予想以上に低くなってきたことに原因があるわけでございます。
 それで、それに対する対策ですけれども、急にたくさん産んだのではより困るわけでございます。つまり、少子高齢化して何が困るかというと、一番困る制度は年金制度。ほかにもいろいろございますが、年金制度の財政が破綻するというのが一番見えやすいことでございます。これについて言えば、生まれた子供というのは最低二十五年間ぐらいは税金も社会保険料も納めませんので、今いきなり産んでも年金財政の破綻という問題は全く回避できないわけですから、産めばいいということではない。
 しかしながら、これ以上出生率が低下をすると、高齢化の問題というのが一応二〇五〇年ぐらいで、二〇一五年ぐらいにまず、山登りでいえばちょっと肩に上るというんでしょうか、やや高齢化のスピードが落ちまして、その後に次の山が来て、五〇年ぐらいから安定をした人口構成になるというふうに今推計がされておりますけれども、これ以上出生率が下がると、さらに次の山、三番目の山、四番目の山が来てしまうということで、これではとても日本の経済社会は耐えられないということから少子化対策を考える必要があるということなのだと思います。
 他方で、今はマクロで申しましたけれども、ミクロで言うとすれば、夫婦に対するアンケート等で、子供は何人欲しいかというアンケートに対して、実際産んでいる子供の数というのは一人以上差がある。つまり、三人欲しいと言っていながら平均で二人しか産んでいない、都市部ではさらに少なくなっているという状況ですから、産みたい、産める条件もそこそこある人がしかし産んでいないと。これはやはり問題なのではないだろうか。
 産んで育てたいという人がそう思ったときに産めるという社会でなければそれは福祉が保障されている社会とは言えない、幸せが保障されている社会とは言えないというところでこの少子化の問題というのはございますので、そういうふうに考えていったときに、今の日本の社会福祉の中で、どうしてこの児童手当制度がずっと後回しにされてきてしまったかということなんですけれども、やはり日本では子供は親の私物、私のものであるというような考え方が強かったことが一つあるのではないか。
 それから、企業が支給しております賃金が生活給的で、御指摘のように扶養手当ですとか家族手当という中に子供の分も含まれていたことから、社会保障でやる必要がどこまであるのかという議論もあったのだと思いますけれども、これも国際比較を客観的にやってみますと、日本で払われております企業の家族手当というのはそんなに実質価値の高いものではないというのがわかってまいります。
 そういう中で、さらにもう一点言うとすれば総合的に考えてこなかった。つまり、年金、医療といったことの今後の問題を解決する上で、世代間の連帯というような理念を強固にしておく必要があったわけなんですけれども、そこのところを総合的に考えてこないで、年金は年金、医療は医療で考えるというような考え方をしてきた結果、児童手当、子育て支援については後手後手に回ってしまったのではなかろうかと思っておりますけれども、それは今後は改められなければならないだろうと考えます。
 以上です。
#18
○入澤肇君 もう一つ、今のお考えを聞きながらお聞きしたいんですけれども、東京商工会議所が、日本国家の最重点課題として少子化対策を最優先に位置づけて考えるべきである、そのためには児童手当法みたいなことよりも人口減少社会対策基本法、このようなものをきちんと児童手当法の上に位置づけて、そして内容を改善すべきではないかということを提言しておりますけれども、今、先生がおっしゃった児童手当も医療や年金を総合的に考える中で位置づけるべきだというお考えからしまして、この東京商工会議所の提案につきましてはどうお考えですか。
#19
○参考人(大沢真理君) 不勉強で、提案されている人口減少社会対策基本法の中身を存じませんので勝手な意見は控えさせていただきますけれども、人口減少というときに、他方では景気がやや回復してまいりまして、職種、業種によっては人手不足というようなことも出てきた中で、外国人労働者の導入問題が新たに議論をされているというふうに聞いております。特に、これは介護労働力などを中心として議論もされているというふうに聞いておりますので、これはやはり外国人の導入といいますか、導入といいますと何か客体化しているみたいなんですけれども、このような議論ともあわせて検討されないといけない問題ではなかろうかと存じます。
 以上です。
#20
○入澤肇君 大塩先生にちょっとお聞きしたいんですけれども、いただきました資料で図表5を見ますと、合計特殊出生率の低い県と高い県が並べてありますけれども、平均的なサラリーマンの生涯所得の高い県が東京、神奈川、大阪、京都等なんですね。右側にある沖縄等は非常に低い。我が国の生涯賃金というのは大体二億五千万ぐらいで、東京は三億三千万ぐらい、東北各県と南九州は二億一千万前後なんですね。
 それと非常に連関しているように見えるんですけれども、要するに生涯所得の低い県の方が出生率が高いというふうに見えるんですが、この高い理由は先生はどんなふうにお考えになっていますか。
#21
○参考人(大塩まゆみ君) この図表は下がちょっと切れかけていますけれども、「子ども家庭福祉情報」という機関誌の中の一部の論文から抜き出してきたんですけれども、同じような図表が平成四年の国民生活白書にも載っていたと思います。
 きょう載せたこの論文の文章の方を読みますと、いろいろ分析してあるんですけれども、この合計特殊出生率の低い県というのは、今おっしゃったサラリーマンの生涯所得の高い県というような見方もあるのかもしれませんけれども、この論文を書いて分析された方によりますと、都市化の進んでいる地域の方が合計特殊出生率が低いというふうに分析されていました。
 私は、これを見て思ったのは、やっぱり地価の高い地域、東京、京都、それから名前は出ていませんけれども、この図を見てみるとやっぱり都市部の方が出生率が減っているんですね。それから北海道とか過疎地も出生率は低いんですけれども、都市部で出生率が低いということは、やっぱり住宅にかなりお金がかかって、子供を産んでいる経済的なゆとりもないということではないかなと思います。
 先ほど大沢先生もおっしゃいまして、レジュメの方にも書いておいたんですけれども、日本では海外のほかの諸国で社会保障として実施している住宅手当が社会保障として実施されていませんので、その辺の負担がかなり重くのしかかってきているということが出生率低下の一因としてあると思います。
 以上です。
#22
○入澤肇君 最後に二宮参考人にお聞きしたいんですけれども、五つの視点から児童手当について問題点を指摘されました。私も問題点としては非常によくわかります。
 これらを改善するために、先ほど京極参考人が社会的連帯が必要である、特に企業の役割が重要であるということを指摘されましたけれども、二宮参考人としては社会的連帯、それから児童手当制度における企業の役割につきましてどのようにお考えですか。
#23
○参考人(二宮厚美君) 私は、社会的連帯とか社会的支援は一面では進歩的だと。といいますのは、一九八〇年代のいわゆる子育てに対する家族責任的な、日本型福祉社会というふうに言われておりましたけれども、そういう考え方ではなくて、九〇年代に、介護もそうですけれども、社会的支援だとか連帯だとか、これは歴史的に進歩的な、そして肯定できる側面を持っていたと思うんですけれども、児童手当の拡充につなげるためにはいわゆる公的支援ですね、社会的というよりは公的支援という考え方をやっぱり軸にしていかないとまずいんじゃないかというのが一つ目です。
 それから、公的なサポートの際に、先ほど財源問題に触れましたけれども、現在の児童手当の財源構成に対する企業の責任については、どういうふうに根拠づけるかという点は幾つか議論があろうかと思いますけれども、当面は日本の児童手当を担うという意味では大変大きな役割を持っているので、その限りで企業の貢献といいますか役割というのは非常に大きいし、もっと今度も明確にすべきであったのではないかというふうに思います。
#24
○入澤肇君 終わります。
#25
○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。
 私どもは、今回の改正案には反対しております。それは、児童手当の拡充に反対しているのではなくて、実は昨年の通常国会には、所得減税とあわせて扶養控除を全廃する、そのかわり児童手当を十八歳ないし二十三歳までに拡充するという案を出したわけなんですが、今回のは余りにも不徹底。先ほどのお話にもありましたが、朝令暮改であるし、不徹底であるし、逆に増税になってくる人たちもいるという矛盾があるという意味で、抜本的な見直しをすべきであるという意味で反対しているわけです。
 それはそれとして、私どもも児童手当の拡充、そしてどちらかというと税制での手当てよりは現金給付というふうには考えているのですが、やはりそこで財源問題というのは非常に大きなネックになるわけですね。
 そこで、今の入澤先生の御質問を継続する形で私も何人かの方にお聞きしたいのですが、厚生大臣はこの前の質疑でこういうことを言われたんです。これまでは企業の拠出と公費の拠出は七対三、大ざっぱに言えばまあ二対一というか、それが今度逆転したという意味では今度の改革、改正は画期的なんだと、こういうことを言われたわけですね。先ほど京極参考人は、企業の拠出というのは非常に大事なんだと。それだけではなく、ちょうど介護保険、保険料を払っていない人からも育成保険料という形でというお話があったと思うんです。
 大沢参考人にお聞きしたいんですが、この現金給付としての児童手当の財源に企業が拠出することの必要性についてどうお考えになるか。また、二宮参考人にもその点をお尋ねしたいと思います。
 というのは、今、企業が国際競争で苦しいということ、いろんなことで社会保障の負担を逃れる方向に行っているんですね。例えば基礎年金を税方式にすると。私どもも主張しているんですが、経済戦略会議なんかも事業主負担が免れられるという目的なんだろうと思うんですが主張しているんです。果たしてそういうふうに社会保障の財源負担から企業の負担を少なくしていいのか、その辺についてお二人にお尋ねしたい。
#26
○参考人(大沢真理君) 私は、企業の負担七割という現行の負担割合がもう既に大き過ぎるのではないか。特に特例給付については全部事業主負担になっているというのは、これは子供を持っている労働者を雇う企業に対してむしろ差別をしているというようなことにもなりかねませんから、このことの理念というのは一体どこにあるのかというのがはっきりしないというふうに思います。
 そして、私がこれが理想と考えるような児童手当制度、つまり所得制限がなく、そしてすべての子供に対して地域や物価による調整はあっても一定額を支払うような、こういう児童手当の財源というのは、これはミニマム保障でございますから、国税でもって、しかもその税源というのは累進的な所得税を中心とする税源でもって充てるというのが理想的なあり方ではなかろうかというふうに思っているわけです。
 しかし、では企業は全く負担をしなくていいのかといえば、これはやはりコーポレートシチズンといいますか、日本の国の中で根づいて事業活動を展開している、そういった自然人とは違うけれども、市民の一員として日本の社会がサステーナブルに、持続可能になっていくことの応分の負担をすべきであろう。この場合には、やはり賃金支払い総額に応じた比例税のようなものを企業の社会保障負担税として考えるべきではなかろうかというふうに思っております。
 この点に関しては以上でございます。
#27
○参考人(二宮厚美君) 現在の児童手当に対する企業の拠出金は、御承知のとおり厚生年金の保険料に上乗せする形で、つまり社会保険料的性格を持って徴収されているわけです。社会保険料は、現在の日本の社会保障の仕組みを前提にしますと、ほとんど目的税的性格のものに近くなっている。例えば、医療保険にしましても年金の保険料にしましても、一般の租税とは違って、ある特定目的のための社会保険の保険料ないし拠出金でありますから、目的税的性格のものに近いというふうに思っております。
 これは一般の租税負担と、それから今述べました目的税というものとの比較の問題がそこから出てきて、私は概して目的税をふやすということそのものに対しては反対なんです。つまり、租税の一般性であるとか普遍性であるとか明瞭性であるとか、そういう点から見ますと、やたら目的税的なものをふやすということに対しては反対なんです。
 ただし、現在の社会保障に対する企業の拠出金や保険料は、しばしば問題にされておりますように、要するに赤字法人であれば法人税は払わなくてもいい、それによって法人税がどんどん空洞化してしまって、実際の企業がその営業活動を通じて問われる社会的責任を法人税だけでは果たせないという側面がある。そういう意味で、例えば東京で問題になっている外形標準課税なんというのもその一種だと思いますが、そういう性格のものとして明確にすべきだ。
 だから、今の児童手当に対する企業の責任というのは、私は応分の責任として明示すべきではないかというふうに思います。
#28
○今井澄君 この問題について、大塩参考人はどういうふうにお考えになりますか。
#29
○参考人(大塩まゆみ君) 企業の負担についてなんですけれども、私はフランスとかイギリスの家族手当の歴史を調べた観点からお答えさせていただきたいと思います。
 フランスは、賃金の家族手当という形から出発してそれが社会保障になった国なんです。フランスの賃金の家族手当を社会保障化するきっかけをつくった人はエミール・ロマネという人なんですけれども、その人は企業の経営者で、経営者の団体で家族手当の分をプールして、家族手当金庫というものをつくって子供のいる労働者に家族手当を出すという方式を考案した人なんです。
 その人が言ったことは、子供というのは親だけが育てるんじゃなくて親と企業と国が育てる責任がある、だから企業も子育て費用の三分の一を負担する責任があるということを言ったわけです。そのエミール・ロマネという人は家族手当の父と言われているんですけれども、そういう思想のもとに家族手当がフランスでは広がっていったという経過があります。
 ですから、現在の日本でも、子育ての第一義的責任は確かに親にありますけれども、子供を育てた後、成人した子供というのは企業の労働力になるわけです。企業は優秀な労働力を求めていると思いますけれども、その労働者を育てるのは家庭ですので、それに対して企業はそれなりの責任を果たすべきではないかと思います。ですから、企業の社会的貢献という意味でも企業は出費してもいいと思います。
#30
○今井澄君 今お聞きしたのは、こういう児童手当は社会的に支援するという意味ではやっぱり税でやるべきだというのが一般論として出てくる傾向にあるように思うものですから、企業のことについてちょっとお尋ねしたんです。
 ところで、財源をそういう形でいろいろ調達するにしてもなかなか厳しい状況の中で、所得制限を撤廃すべきだ、これは理念としてわかるんです。理念としてわかるんですけれども、なかなかこの辺は一人一人に十分な手当を、しかも所得制限を撤廃するとなると非常に大きな問題になってくる。そこで理念が大事になると思うんです。
 そうすると、児童手当は一体だれに何のために払うのかという議論を踏まえないと、所得制限を撤廃すべきかどうか、こういう厳しい中で財源を確保してもやるべきかどうかというところをはっきりさせなければならない。これは一種の神学論争みたいなものになってしまうといけないと思うんですけれども、子供に直接、子供のために子供に出す手当なのか、それとも子供を育てている親に出す、家計を担っている親に出す手当として考えるべきなのか。
 その辺のところを簡潔に、まず京極参考人に、所得制限は撤廃すべきかどうかということを含めてお尋ねしたいと思います。
#31
○参考人(京極高宣君) 大変的確な御質問だと思いますが、私は、現在の児童手当の制度ができたときの当初のねらいのように、やはり子供を育てる家庭に対する支援ということでありまして、直接子供に支給するものではないというふうに考えております。
 したがって、もし子供に直接支給するのだったらあくまでも平等に所得制限なしにその子供に与えるべきですけれども、やはり子育てをしている家庭に与えるということを考えれば一定の所得制限は必要だという考えを持っております。
 ここはリンクしていると思いますので、これが将来的に何か、社会的に子どもの権利条約ができた段階で、あるいはどんどん普及していく段階で子供に出すんだ、親はそれをただ監督しているだけだということになりますと、これはむしろ所得制限は撤廃すべきだと思いますけれども、今の制度の中ではやはり所得制限は設けるべきだと。ただ、その額について時代に合わせて引き上げていくということは必要かというふうに考えております。
#32
○今井澄君 同じ問題を大沢参考人にお尋ねしたいんですが、確かに現実にはそうなのかもしれませんが、御著書を読ませていただきますとむしろそうではない方向の御意見をお持ちだと思います。そうすると、その場合に現金給付というものの性格がどうなってくるかということもあると思うんですが、今の問題をお答えいただきたいと思います。
#33
○参考人(大沢真理君) 御指摘のように、私は著書の中で、所得制限なしにすべての子供に少なくとも義務教育期間中、それから義務教育を超えても全日制の教育を受けている期間は児童手当が支払われるべきだというふうに書いております。これは今、京極参考人からも御指摘がありましたように、児童手当の対象というのは親ではなくて子供であろうというふうに考えるからでございます。
 子供に対してミニマムの生活費の一定の部分を、サブスタンシャルな部分であればもっといいわけですけれども、一定の部分を保障するということは、やはりこれは社会全体が次世代の育成、次世代が生まれ育って次の時代の社会を支える担い手になるということに対して、今の大人の世代が全体として関心を持っているということの表現として、その子供が育つこと自体に対してミニマムの所得保障があるべきではないかというふうに考えるからでございます。そのような考え方に立って実際に運営している国も多いわけですので、これを提案いたしました。
 このように申しますと、それはばらまきであるという批判を直ちに受けるわけですが、しかし翻って考えてみますと、所得税の減免を通じる子育て支援というのは、これもるる指摘がありましたように、比較的中高所得の人に対して支援をしていく、そして所得の高い人ほど節税効果が高いという意味では、子供を育てる苦労に対して所得階層で差をつけている、もっと言うと子供の値段が親の所得で決まってくるような趣すらあるわけでして、これは子育てをめぐるさまざまな困難が非常に問題になっている今の日本において、密室での育児、それから社会の支援のない育児ということを打破していく、乗り越えていくためにも、世帯に対する支援ではなく、子供個人に対するそのような支援が適当ではなかろうかと考える次第です。
#34
○今井澄君 先ほども申し上げましたように、実はこれは考え方の違いでありまして、神学論争をやってもしようがないとは思うんですけれども、しかし実は結構大事なことだと思うんです。きょうの参考人、皆さんおっしゃいますように額が低過ぎる、上げろと。また、過半数の参考人が言われるように所得制限をなくせとなると、これはかなりの財源をどこかから調達してこなければならないわけですね。
 私どもも実は今度の改正案に対して対案を出そうと思ったんですよ、こんな中途半端なものじゃなくてきちっとした。ところが、年少扶養控除を全額廃止しても、そこから出てくる財源で今よりもより前進した児童手当というのは、どうしてもそういう制度ができなくて、所得制限をどうしてもどこかでかけざるを得ない。八百万あたりになっちゃうんですね。そうすると、では年収九百万、一千万の層の子育て支援はしなくていいのかという話になって、ついに私たちは対案を断念せざるを得なかったという経過があるんです。
 そこで、今ばらまき批判ということもありましたけれども、これはマスコミが挙げてばらまき批判をしているわけですね。今度の案は、私は多少選挙目当てと申しますか、中途半端な案をこんなところでこういうふうに出すよりはもっと抜本改革すべきなので、おかしいと思うんですが、それでも現金給付イコールばらまきという批判は結構簡単にされてしまうんですね。
 そこで、先ほど入澤先生の御質問にもありましたが、順位をつけるというのは確かに難しい、両方ともすべきであるというあれだと思うんですけれども、子育て支援のためのいろんな環境整備とか基盤整備とか現物給付とかというのと同時に、現金給付をする意味についてもう一度京極参考人と大沢参考人から、そしてそのばらまき批判に対してどういうふうにお答えになるのか、御意見をお聞きしたいと思います。
#35
○参考人(京極高宣君) 私は、所得保障的なものについては常識的に考えまして所得制限をして当然だというふうに思っております。ただ、子供を育てていくために必要な諸サービス、これは所得制限なんかもちろんとるべきじゃありませんし、すべての子供に平等にサービスが行くように図ろう、そのための財源措置も十分行うということは必要だと思っております。
 所得保障ということになりますと、実は年金の体系から、いろんな全体を見なくちゃいけませんので、この児童手当の中だけを、あるいは児童福祉の中だけを見てもなかなか語れない問題がございますし、総合的に見なくちゃいけないと思っていますけれども、一定の範囲で子供のためにお金を使うということについて国民的な合意がどの程度あるか。例えば、高齢者の介護に関しては相当使っても余り選挙民は文句は言わない。しかし、子供がいない世代も含めて、子供にそんなにかけていいのか、家族がやるべきじゃないかというような意見がまだまだ強いわけでありまして、その辺のやはりコンセンサスが十分まだ得られていないところにマスコミ等の批判もあるんじゃないかというふうに思っております。
#36
○参考人(大沢真理君) これは先ほどの税を通じる支援の裏返しにもなるんですけれども、一定額の児童手当を普遍的に支給するということは、低所得層にとっては世帯収入に占める児童手当の比率が高くなるという意味で重点化できるわけでございますから、私はタックスエクスペンディチャー、税の減免を通じる支援に比べて定額の現金給付の方がよほど重点化しているというふうに考えます。
 以上です。
#37
○今井澄君 確かに、私どももそういう観点から扶養控除を廃止して児童手当を増額しろという案を昨年出したわけなんですけれども、そのことはそうなんですが、何かしつこいようで申しわけないんですけれども、一定額の現金給付というのはある一定程度以上の高額所得者にとって余り意味がないこともあるんじゃないかと思うので、所得制限は本当に青天井でいいのか、それとも何かある程度のところでかけるのも合理性があるのかということですね。その点について大沢参考人、あくまでも所得制限はなしでいくべきだということなのか、現実の問題としてちょっと御意見をお聞きしたい。
 もう一つついでにお尋ねしたいんですが、子供に対する、本人に対する手当という考え方でいくならば、子供の銀行口座をつくらせてそこに振り込むと。そして、子供が成人したときにそれを自分の宝として、宝と感じてくれなければしようがないんですが、持っていってもらうという、そういう社会の連帯をつくるという方策の提案もあるんですけれども、いかがでしょうか。二つお聞きしたいと思います。
#38
○参考人(大沢真理君) 絶対に所得制限は必要ないのかということなんですけれども、これは私、行政費用の問題というのを考えていまして、八百万とか一千万とか所得制限が相当高くても、所得制限つきの給付である限りはミーンズテスト、所得調査というものをしなければならず、そのための行政費用がかかりますから、それはなしでいった方がよいのではないかということが第一点。
 第二点目は、所得制限をいたしますとどうしても国民を所得によって二分する。今、デジタルディバイドということが問題になっていますけれども、そうやって国民を児童手当がもらえる貧しい人とそれの要らない豊かな人というふうに分けるということの意味は、これは社会保障に対する信頼性、国民が全体で支えていくという観点から望ましいのかどうかというと、そうではないだろうというふうに私が考えていることによると思います。
 恐れ入りますが、第二点は何でございましたか。
#39
○今井澄君 子供の貯金、口座を開かせて……
#40
○参考人(大沢真理君) わかりました。私はそういうふうに考えております。
 ただ、そうはいっても、五歳、六歳といった、あるいは小学生ぐらいの子供がそのようなお金を賢く使うことができるのかどうかということですけれども、児童の権利条約にもありますように、これは親が子供の利益の最善を配慮する最も近い大人という形で親が後見をするというようなことでよいのではないかと思うんですけれども、このごろ児童虐待ということがさまざま問題になっておりまして、児童の虐待が起こるケースというのは決して低所得者あるいは一人親といった世帯に限られるわけではなく、高所得で親がそろっていても児童の虐待というのは起こるわけでございます。そういうときに、子供がこの親とは一緒に生活したくないというふうに思ったときに、最低限の自分の資力、ミーンズというのを持っているというようなことが大事ではないかと思いますので、このような点からあわせて主張している次第です。
#41
○今井澄君 ありがとうございました。
 現在の児童手当、今度の改正案も含めておかしい点として、サラリーマンと自営業者の間に区別ないし差別がされているということを京極参考人と二宮参考人が御指摘になったと思うんですが、いわゆるクロヨンというのがあるのかないのかということとか、その辺のことにもある程度かかってくるかと思うんです。
 そこで、御指摘をされなかった他のお二人の大沢参考人と大塩参考人にお尋ねしたいんですが、こういうサラリーマンと自営業者の区別、これはもともとはサラリーマンに対して、先ほどの大塩参考人のお話のように世界的にはそういうことから始まったということもあるのかもしれませんけれども、この区別というのがあることが合理的なのかどうか、クロヨン問題というのがあるとお考えなのかどうか、簡潔にお答えいただければありがたいと思います。
#42
○参考人(大沢真理君) 現在の自営業者との区別は恐らく事業主負担分の有無ということでなされているのではないかというふうに思いますけれども、もう少し原理的に考えますと、自営業主にとって子供というのは比較的幼少のうちから家業に対する労働力としての貢献のようなこともあり、賃金労働者にとっては子供は負担でございますけれども、そういう意味で自営業主にとってはそうでもない面があったということが原理的には背景としてあるのかもしれません。
 しかし、今日では、義務教育はもとより高等教育が一般化しておる中では、自営業主にとってもそのような子供の意味はございませんから、やはり子供本位に考えて区別をなくすということが重要ではなかろうかと考えます。
#43
○参考人(大塩まゆみ君) 私も大沢先生と一緒で、自営業主かどうかということで所得制限の金額を変えるというのはおかしいと思います。やっぱりそれが子供に与える影響があるんじゃないかと思います。
#44
○今井澄君 ありがとうございました。
 終わります。
#45
○井上美代君 今、参考人のお話を伺いながら、皆様方の陳述の中で児童手当がどうあるべきなのか、その方向というのも改めて深く考えさせられているところです。同時に、やはり問題点もかなりはっきりと指摘をしていただいているというふうに思います。
 私は、政府の今回出しております法案について、少し絞りながらお話を伺いたいと思います。
 まず、二宮参考人にお伺いしたいのですが、政府は少子化対策の柱としてだとか子育て世代の経済的な負担を軽減する、こういうふうに言って、その財源を小中学生の子供への総額二千三十億円、この数字が大変有名になっているんですけれども、二千三十億円もの増税をして、学齢期までということで新たに児童手当をもらえる、そういう子供が三百万人いるわけですけれども、差し引いても一千六百万人というここのところなんですけれども、この今回のやり方についてマスコミも非常に厳しい批判をしておりまして、効果よりも与党の都合ではないかということを言ったりしているんです。大臣は、扶養控除よりも児童手当の方が低所得者への効果があるということで、一歩前進ということをずっと繰り返して答弁されているんです。
 そこで、今回のやり方をどういうふうに考えておられるのかということをまずお聞きしたいと思います。
#46
○参考人(二宮厚美君) 全体につきましては先ほど申し上げましたけれども、少し触れなかった点に補足もしながら今の御質問に答えたいと思います。
 一つは、今お話がありましたように年少扶養控除よりは児童手当の方が、例えば非課税世帯に対する援助という点から見るとより児童福祉の理念にかなっているというのが今回の措置に対する擁護といいますか正当化論だと思いますが、つまり非課税世帯に対する改革、それだけ取り出すのであれば年少扶養控除と児童手当の、だれかがスワップというふうに言っておりましたけれども、そのことだけではなくて、非課税世帯に対する児童手当の趣旨を生かすのであれば別途考え得るということです。つまり、幾つか別に代替案が考えられるのであって、別に税制と児童手当を比較するということに限らない、これが一つあるだろうと思います。
 それからもう一つは、一番大きな問題であった、つまり千六百万人の児童を持つ家庭に対する増税によって三百万人の子供を持つ家庭に対する支援というのが今度の措置を正当化するときの最も有力な根拠であったと思いますけれども、問題を裏返して言いますと、これは、つまりは私が先ほど述べた点に即して言いますと、従来の児童手当の財源構成とはある意味では全く違うものです。これはもう既に明らかになっています。一歳から三歳までの児童手当の財源は、現在の児童手当に対する拠出金、つまり企業負担七割の拠出金によって賄われている。これに対して、今度のものは全然別の財源を持ってきているわけですから、これは接ぎ木というふうに言われても仕方がないし、児童手当そのものの財源構成に対する理念といいますか、その趣旨に即して言いますと大きく従来からずれているということがあるだろうと思います。
 ですから、例えば児童手当は福祉の措置でありますから、先ほどからお話しになっていますように、一人一人の子供に対して児童手当を支給するという点からすると、多少とも福祉の視点からすれば、その財源を確保する際に所得の水平的再分配ではなくて垂直的な再分配の視点を入れなければいけないと思うんですけれども、今回のものはまさに児童を持つ一般の家庭から税金を巻き上げてそれより少ない家庭のところへ渡すということでありますから、およそいわゆる福祉国家の理念であった垂直的な所得再分配という趣旨からも反するのではないか、そういうような問題点を感じます。
#47
○井上美代君 ありがとうございました。
 次に、大沢参考人にお聞きしたいんですが、先ほど民主党の方からも質問がありましたけれども、児童手当については二つの所得制限というのがあって、自営業などの非被用者の場合には四百三十二万円というのが所得制限になっているわけですが、厚生年金に加入のサラリーマン被用者は事業主の拠出金から十割給付で年収で六百七十万円というふうになっております。
 しかし、今回、拡充部分についてはこの特例給付分もすべて公費で支給されるとしているわけなんですけれども、このように二つの所得制限があるということ、これは児童手当だけであるということが質問の中でも明らかになっているわけなんです。それ自身問題であるわけなんですけれども、さらに審議の中で出てまいりましたのは、厚生年金に未加入の中小零細企業で働いている労働者、これは低い所得、いわゆる非被用者と同じになるということが言われたわけなんです。そして、結局所得制限が低く抑えられるわけなんです。
 そしてもう一つ問題は、例えば就学援助などについてはそのときの収入で評価されるというのですが、児童手当の場合には前年の所得で判断されるということがあるわけです。そのために、失業や倒産をしたとか、不況下で今大変ですけれども、所得が不安定な自営業にとっては仕事がなくなったとかいうことがありますので、前年度の収入があればもらえない、現実は非常に苦しくてどうにもならないというふうになっているんですけれども、そのときに受けられないという今の不況下での問題があるわけですね。
 大臣は、何しろ低い所得制限を超える人は高額所得者だということを言われたんですね。現実は、たとえ低い所得制限を超えても苦しいという現実があるわけなんです。そこを考えまして、児童手当の所得制限というのはやはりなくしていかなきゃいけないというふうに思っているんですけれども、今日の社会状況を見ましてどのようにこの所得制限というもののあり方を考えていくかという問題と、そしてもう一つは、先ほどから言ってもくださっているわけですけれども、そもそも二つの所得制限があるということをどのように考えられるのか。二つの制限は今あるわけですから。その両方をぜひ聞かせていただきたいんです。
#48
○参考人(大沢真理君) 先ほどから御質問いただいていますので、繰り返しにならないようにお答えしたいと思いますけれども、そもそも私は、理想的には所得制限なしに児童手当を支給すべきだと考えておりますので、これについてはそのとおりでございます。したがって、二つの所得制限があるということの合理的な理由はないというふうに考えます。
 先ほど、事業主が、近年、社会保険倒産というようなことも言われまして、特に厚生年金の保険料が払えないがために資産を差し押さえられたりとか倒産してしまうとかといったことがありまして、これを避けるために厚生年金に加入しなければいけないはずなのに加入をしない事業体がふえているということが新聞等で報道されております。これは、社会保険の空洞化ということを考えるときに大変ゆゆしい問題かと思います。
 翻って、日本の企業の税金や社会保険料の負担というのは諸外国と比べて重いのか軽いのかということを申しますと、これは法人税の税率だけを見ると高いかのように言われることがありますけれども、引当金ですとかなんですとか、利益を圧縮して見せるようなさまざまな税制上の措置が事細かにございまして、その結果、社会保険料負担を合わせた日本の企業の公租公課負担というのはヨーロッパ、アメリカの企業に比べて決して高くない、むしろ低い方であるということは、これは国会の場でも明らかにしていただいて、応分の負担を企業に求める必要があろうかと存じます。
#49
○井上美代君 ありがとうございました。
 それでは、大塩参考人に次に質問をしたいと思います。
 私は、日本の児童手当が創設されてからの変遷についてなんですけれども、支給年齢はむしろ義務教育終了前というのが創設のときにあったと思いますし、その途中のところでも十六歳未満までの支給というのがあったと思うんです。就学前まで支給されていた時期の方が言ってみれば長かったかなと思うんですけれども、それがどんどん切り下げられてきたのではないかと思っているわけなんです。
 支給年齢やその額について、これまでの変遷をどのように先生が評価されるのかということをお聞きしたいんです。
 私は埼玉の女性からお電話をいただきまして、この四月に孫が生まれたばかりだ、ところが息子の勤める運輸会社が経営難になって厚生年金の加入を勝手に外されてしまった、所得制限が低くなったということで市へ問い合わせると児童手当の支給対象にはならないことがわかったというようなお話がありまして、これで増税になって、児童手当を拡充したと言えるのかという質問があったわけです。
 児童手当は、一九七二年の導入以降、支給対象それから支給額が再三変わっているわけなんですね。今回、小学校入学までと支給年齢が引き上げられましたけれども、一口で言ってみれば一九九一年以前の水準に戻したにすぎないではないか、これで前進したと言えるのかということで、埼玉の女性からの電話を受けながら、拡充したと言えるのかというふうに言ったその思いというのが通じたような気がしたんですけれども、その辺も含めまして先生の御評価をお聞きしたいと思います。
#50
○参考人(大塩まゆみ君) 児童手当が前進したかどうかということですけれども、端的に言いますと前進していないと思います。
 先ほども京極先生がおっしゃったように、児童手当というのは創設時に小さく産んで大きく育てると言われていたんですけれども、ちっとも大きく育っていないんですね。児童手当というのは、研究者の中でもまま子扱いされていると言う人もいるぐらい、それぐらい軽視されてきたと思います。何とか欧米に追いつけ追い越せで、社会保障の形をつくるために名目的に制度だけはつくったものの、中身が実質的に価値のあるものになっていない。その問題点は先ほどから出ていますので省略しますけれども、一定の財源の中でのやりくりしかやっていないということなんです。
 過去からの支給総額などを見ますと、多少の変動があるものの、この参議院の国民福祉委員会の調査室の資料の中にも載っているんですけれども、昭和五十年度から平成十年度までほとんど支給総額の増加がないんですね。変化がなくて大きくなっていない。これに比べて、児童扶養手当という主として離別母子家庭に支給される手当があるんですけれども、あれなんかは支給当初に比べると二百何倍かになって、えっと驚くほど金額が上がっているんです。
 児童扶養手当はここで議論の対象にはなっていませんけれども、スウェーデンとかアメリカなんかは別れた夫から養育費を徴収して国が立てかえるだけということにしているんです。日本は養育する責任のある別れた配偶者からも徴収していないという問題点があって、あちらは全額国庫負担でしているということなんですけれども、児童手当については、児童手当の中の国庫負担の金額、その国庫負担額についてはこの資料の中に載っていないんです。国庫負担が出ている統計を見ましても、昭和五十四年の八百十三億円をピークにその後ずっと減っています。平成十一年では二百七十八億円になっているというふうに、国庫負担がどんどん減っていっているんです。
 ですから、変遷を評価するということなんですが、ちっとも評価できない、そういうことになろうかと思います。
#51
○井上美代君 このたび三歳未満を六歳未満ということで就学前までやっているということですけれども、長い歴史から見れば決して前進したというふうに対象範囲からしても言えないのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
#52
○参考人(大塩まゆみ君) そのとおりだと思います。
 児童手当法の最初の方に児童とは十八歳未満というふうに定義していながら、三歳未満にしか支給しないとか小学校入学前までしか支給しないというのは矛盾があると思います。実際に子育てにかかる費用というのは、そんな三歳未満とか小学校入学前よりもむしろその後の方がたくさんかかるわけですから、そちらの方に支援しないことには子供の健全育成が達成できず、子育て負担も軽減されないと思います。
#53
○井上美代君 ありがとうございました。
 そうしたら、時間はまだありますけれども最後になるかと思うんですが、私は今、大塩参考人が言われました国庫負担の問題というのは非常にやはり重要な中身ではないかというふうに思っているわけなんです。
 特に、見ますと、最高になったのは一九八〇年の八百十三億円を充ててきたというのがあると思います。一九九八年になりますと、それが二百八十六億円と減ってくるわけですね。このことについては私も質問いたしましたけれども、大臣は国庫負担が削減傾向にあるということはお認めになったわけなんです。そして、国際的にも非常に貧困であるということもお認めになったわけなんですけれども、このように国庫負担が実質でいけば三五%に至るところに激減をしているわけですね。一般会計に占める児童手当の国庫負担というのは、七七年で〇・二七%、それから九八年、九九年には〇・〇四%とずっと減っていくわけで、二〇〇〇年度をとってみても一般会計の〇・一三というふうになっているわけなんです。
 そこで、私は二宮参考人にお聞きしたいんですけれども、八〇年代から九〇年代において日本の社会保障、とりわけ児童福祉がどのように位置づけられてきたのかという問題と、また求められる総合的な少子化対策、児童福祉のあり方についてどうなのかということをお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
#54
○参考人(二宮厚美君) 私は、冒頭で申し上げたのですけれども、子供に対する福祉ないし社会保障の考え方は、一般の社会保障の考え方と連動していると思うんですが、基本的に最低限の生活保障のための所得保障、つまり児童手当の拡充です。
 これは、先ほどから話があるように所得制限抜きで子供の預金口座をつくるなんという話ではなくて、子供の生活費を一人一人の子供に対してできるだけ保障していく、そういう考え方に基づいて児童手当の理念を再構成するということがまず第一。
 それからもう一つは、学童保育などの実際の発達保障の社会サービス、この拡充が不可欠で、井上議員がお話しになったこの二つが、一九八〇年代、とりわけ半ば以降国庫負担が軽減されてきたのはやはりこの二つ、つまり子供の所得と発達保障という二側面に対する公的な責任、あるいは公的なサポートという考え方が八〇年代に弱まった。むしろ、歴史から見ると逆行するような家族責任論といいますか、親のかい性でやるべきだ、そういう考え方が非常に強くなって、これが一たん破綻をして、先ほどお話がありました社会的支援という考え方が九〇年代に出てきたと思うんです。
 私は、社会的支援というのは公的な責任が社会全体に分散してしまうという一つの大きな問題点があると思うので、やはり社会的支援の中の軸は児童手当にしろ学童保育行政にしろ公的なものであって、二つの柱に即した公的責任をもっと明確に打ち出して、それで二十一世紀への児童手当の改革への第一歩ということであればわかるんですけれども、そうはなっていないという点に一番大きな問題点を感じたということです。
#55
○井上美代君 ありがとうございました。終わります。
#56
○清水澄子君 まず、大塩参考人にお尋ねします。
 先ほど時間が足りなくて説明されていませんでしたけれども、現金給付の児童手当の長所、そして同時に現物・サービス給付との関係、これらについての御意見をまずお伺いしたいと思います。
 次に、子どもの権利条約が日本でも批准されたわけです。ですから、今度の児童手当についてもやはり子供を主体にした児童手当のあり方を追求すべきではないかということをずっと主張したんですけれども、大臣初めそこまではというようなお考え方なので、ですから私たちはこれから抜本改正するならそういう方向性はきちんと認識すべきだと思っているんですが、そういう意味で子どもの権利条約と児童手当との関係をどのようにお考えになるか。
 三点目が、先ほどILO条約の家族給付の最低基準についてお話しになった、中身は余りお伺いできませんでしたが。日本は母性給付と家族給付は批准していないというおくれた国なんですけれども、その点について、最低基準の考え方をちょっとお話しください。
#57
○参考人(大塩まゆみ君) まず、二点目からお答えさせていただきたいんですけれども、子どもの権利条約との関係です。
 子どもの権利条約では、先ほども申しましたけれども、子育ての第一義的責任は親にある、その親の子育てを援助するのが国の責任だ、そういう趣旨のことが書いてあります。
 それから、子どもの権利条約もそうですし、その前に出ました子どもの権利宣言、両方に載っているんですけれども、それが今後の子育て支援、それから児童福祉の根本的理念になるべきだと思うんです。今までも出ていますけれども、子供の最善の利益のために最高の考慮が払われなければならないというふうに言われています。
 それだけ子供の権利、子供の生活を重視しなければならないということで、どうしてそういう子どもの権利条約とか権利宣言が国連から出されるようになったかというと、現在でもそうですけれども、子供の権利とか生活とか人格、人権が尊重されていない現実があるから、あえてそうやって宣言なり条約を出さなければそれが実行できないという背景があると思うんです。ですから、それは覚悟を決めて、子供の最善の利益のために最高の考慮が払えるような制度をつくるということを根本理念にして制度設計をするべきだと思います。
 それから、ILOの基準についてです。
 ILOの基準については資料のナンバー3、ナンバー4に載せておきました。それから、その前のページのナンバー2に図表3としてILO百二号条約の批准状況を載せておいたんですけれども、参考として見ていただくのにふさわしいものは資料のナンバー4の最後のページの上の方の段の左側に書いておきました。上から読んでいただいたらわかるんですけれども、第二段落目ぐらいに書いておいたんですけれども、ILO百二号条約の批准国は一九九二年の段階では三十四カ国であったということなんですけれども、日本は家族給付部門については保留しているということです。
 ILO百二号条約というのは、医療、疾病、失業、老齢、業務災害、家族、母性、障害、遺族の九部門の給付に関する最低基準を規定しているんですけれども、その中の五種の給付、失業、老齢、業務災害、障害、遺族のうちの三種類の給付基準を国内法で実施できれば批准できることになっています。そうすると、女性に関する家族、母性給付についてはILOの基準に達していなくても百二号条約は批准できるということになっているんです。
 実際どうなっているかということは、前のページの図表3にほかの国々との比較をした一覧表が載っています。そこの中の七部として家族給付が出ていますので、それを見ていただいたらわかります。一番下に合計数も出ていますので、どの国がどの程度それぞれの基準をクリアしているかということも、右側にも計が出ていますのでわかると思います。
 ILOも言っているんですけれども、このページにもその後に載せておきましたけれども、社会保障は男性が男性のためにつくった制度であるので、女性の人生途上の社会保障を要するリスクに対しての思慮が欠けているということをILO自身が言っています。ILO百二号条約といってももう古いですから、確かにこれは最低基準でクリアすべきですけれども、今また子供の存在意義といいますか、子供自体それから家族も変わってきていますので、今の新しい時代に対しての基準を日本独自に考えてもいいんじゃないかと思います。
 それから次は現金給付と現物給付をめぐってなんですけれども、これも先ほどからいろいろお話が出ています。現物給付と現金給付とどっちがいいかということは全然言えない問題だと思います。たとえ保育サービスとかいろんな社会福祉サービスが出たとしても、子育てをする上ではそれ以外にいろんな費用がかかります。また、保育所なんかを利用しますと、その利用料も親の負担になってまいりますので、現金給付と現物給付を二者択一するというのはどだい無理な話だと思います。
 それから、レジュメの一番最初のページの右の方にも書いておいたんですけれども、実はちょっと前に私は京都市で一人親家庭の実態調査をしたんですけれども、その中で出てきたのが最近ふえている父子家庭の問題だったんです。
 父子家庭対策というのは母子家庭に比べると非常に貧弱で、福祉サービスも母子家庭の半分ぐらいしかないんです。だけれども、実際、父子家庭の中で育てられる子供がいるわけです。そういう子供に対しても、児童手当だったら現金給付ですので利用目的が限定されませんので、父子家庭の援助になると思います。現金給付のよさは目的を限定されないということだと思います。
#58
○清水澄子君 ありがとうございました。
 それでは、大沢参考人にお尋ねします。
 児童支援パッケージについての特に日本の問題点があるんですけれども、これは特に総合的な少子化対策ということでおっしゃっているんですが、その中でパッケージの中での児童手当のウエート、どういうふうな位置づけを考えていらっしゃるかということが一点。
 それから、日本の勤労者家計という場合、ここにちゃんと問題を出していらっしゃるんですが、最初の方の世帯主の勤め先収入の比率で考えられるということは、結局その家族全体を養うのは男性である、父親である、世帯主であるといういわゆるブレッドウイナーモデルといいますか、そういう発想からずっと日本の社会保障全体が出発していると思うんです。
 その点と、二番目の世帯主の会社への依存というのは、いわゆる企業福祉でこれまで補われてきた家族というのもこれは大体大手企業に勤めていた人ですね。そういう意味で、非常にこのところの問題点は今後の児童手当についても、特に日本は変則的なシステムになっておりますけれども、そういう中でやはり特にいわゆるジェンダーの視点で、後の方には三番目に男女共同参画と出生率で出ていますけれども、出生率だけじゃなくて、そういう意味でやはりブレッドウイナーモデルと児童手当あるいは社会保障との関係、弊害といいますか、そういうところについてお考えになっていることをお話しいただきたいと思います。
#59
○参考人(大沢真理君) まず、児童支援パッケージの全体の中で児童手当の占める比重についていかんということです。
 これはレジュメにも書いておきましたけれども、CBPが高い国というのは所得制限のない児童手当制度を持っているという点で共通点がございます。そういう中で、では所得制限のない児童手当が全体のCBPのどのくらいの比率を占めるのかということを申しますと、充実している国ではもう六割、七割、これは低所得層により厚くなっております。しかしながら、比較的高所得、この場合には、男性平均賃金の一・五倍のケースで見ましても、CBPの充実している国では五〇%ぐらいが普遍的な児童手当でもって構成をされているということで、この重要性がおのずとわかろうかと思います。
 このように、所得が高くても普遍的な児童手当でもって子育て支援あるいは子育ち支援をしてもらっているということが社会連帯、世代間連帯の重要な接着剤といいますか紐帯といいますか、そういうものになっているのではないかと考える次第です。
 それから二点目の、日本では福祉といっても福祉国家よりは福祉企業あるいは福祉家族への依存度が高過ぎたのではないか、そういう中で社会保障システムもブレッドウイナーモデルで来たのではないかという御指摘でございますけれども、まさにそのとおりであろうかと思います。それが現時点に来ましていろんな意味でほころびを示しているのみならず、悪循環に陥っているというのでしょうか、ブレッドウイナーモデルで来た社会保障システムそれから労働政策等が今の雇用不安それから老後不安が強い中ではセーフティーネットの役割を果たさず、むしろ不安をよりかき立てる方向に、これも将来を見通した整合的な改革案というものがきちんと提示をされないがために、より将来への不安をかき立てているという悪循環に陥っていると考えます。現時点は、改革にとっての最後のチャンスではないかというぐらいに考える次第です。
 ところで、このレジュメの三番目については男女共同参画と出生率のことを強調いたしましたけれども、これは、ともすれば日本では出生率が下がるのは女性が働きに出たがるからというような誤解がございますので、女性が社会で活躍をしており、その社会的地位の高い国ほど女性は安心して、あるいはそのパートナーたる男性も安心して子供を産み育てているのだということを強調したかったがためでございます。
 以上です。
#60
○清水澄子君 それでは、京極参考人それから二宮参考人に一言ずつ、もう時間がありませんので。
 どういう児童手当を二十一世紀には確立すべきとお考えでしょうか。一言ずつお願いします。
#61
○参考人(京極高宣君) 将来展望については平成十三年度以降検討するということになっているようでございます。
 私は、先ほど申し上げたんですが、ちょっとずれるかもしれませんけれども、まず今回の措置は今までの児童手当の財源のパイを倍にしたわけですから、今まではそのパイを大きくしないで支給年齢を変えたりいろいろやりくりしてきたのでありますが、今度は初めて倍増したという点で今までの手当法の改正と意味が違うということを申し上げましたので、繰り返しません。
 ただ、その上で、今後の方向を考えていく上で、これはいろんな考え方があるんですけれども、私が社会連帯的なということを申し上げたのは、例えば自営業者についても厚生年金基金みたいなことがもうちょっと充実してきますとその上に乗せられますので、基本的には児童手当は所得制限はフラットで統一的にやるということにするべきで、今の特例給付のあたりに持っていくということで、政府の方ももう少し公的な資金もつぎ込む必要があると思います。
 あわせて、中小企業とか零細企業を含めまして企業負担、それから最終的には私は個人負担も考えてもいいんじゃないかと。特別児童扶養手当とかあるいは児童扶養手当なんかも含めた何か児童に関する手当の総合的な社会保険というのを考えるべき時期に来ているのではないかと思っております。ただ、これは大変大きな問題なので、厚生省が考えているわけじゃなくて私個人が考えているわけですけれども、相当なことだと思います。
#62
○参考人(二宮厚美君) 一言だということなので、先ほどの清水議員のお言葉をかりて申し上げますと、子どもの権利条約の趣旨を徹底して子供の生活保障を普遍的に貫くということに尽きると思います。
#63
○清水澄子君 終わります。
#64
○堂本暁子君 きょうは御出席ありがとうございました。
 少し私おくれて大変失礼をいたしました。
 まず、京極参考人に伺いたいと思っております。また、非常に厚生行政にも影響を多く持っていらっしゃるのでなおのこと伺いたいのですが、大変お隣の大沢参考人と見解の差がはっきりしたように思っております。
 まず、児童手当が家庭へ対してのものなのか、それとも子供に対してのものかということに対して、京極参考人は、家庭へのものであるがゆえに所得制限が要るというふうにおっしゃいました。大沢参考人はそれに対して、そこには不公平が生じると、デジタルディバイダブルというふうなおっしゃり方で国民を二分化するというふうにおっしゃったんですが、こういった不公平を生むということの御指摘に対しては、京極参考人はこれをどうお考えになっているかということが一つです。
 それから二番目に、女性の問題ですが、お二人の女性の参考人から、やはり女性の人権として誤解がある、女性の人権問題、あるいは仕事をするから、学歴が高くなるから少子化が進んでいるんだという誤解があるというふうに大沢さんは指摘されたし、大塩さんはやはり女性の人権という視点で考えるべきで、児童手当を人口的なことの中心に置くべきではないと。私もそれは大変賛成でございまして、やっぱりリプロダクティブヘルス・ライツという物の考え方からいうと、そういった子産み、子育て等、それから単に仕事だけではなくもっと社会への参画ということがこれからの女性の生き方で求められているからこそ、そこで子供を産み、そしてまさに基本法の中に盛られたような男女共同参画というのがより社会を健全にしていくんだろうというふうに思っているわけです。
 そこで、二番目の質問については、先ほどからお示しいただいた児童手当については、比較的微調整というか具体的な調整をおっしゃっているように思いますが、もっとやはり根本から、この段階で、社会保障制度、児童手当に限らず年金ですとか保育の制度、いろいろありますけれども、そういった社会保障の抜本的改革が必要だというふうにお考えになっていらっしゃらないのかどうか、その点をまず伺いたい。
 それから、次に大沢さんに伺いたいことも先にちょっと申し上げたいと思うのですが、それはこのレジュメの中で、税制を通ずる児童支援パッケージは低所得者にとっては有効性が小さいというふうにお書きになっているんですけれども、そうだとすれば、やはり有効性を持たせるにはどうすればいいのかということになります。これも話が大きくなってしまいますけれども、社会保障の視点それからジェンダーの視点から一番最初にお書きになった税制の問題に結局は行き着くのかなというふうに思ったりしていますが、その点について簡潔にお答えいただけたらうれしいと思います。
 まず、お二人の参考人に伺って、そして大塩参考人にはこの4の現金給付と現物・サービス給付をめぐってのBのところですね、ちょっと意味がわかりにくいのでこの点について伺いたい。
 以上です。どうぞよろしく。
#65
○参考人(京極高宣君) 済みません、最初の質問、不公平の中身をもう一回ちょっと教えてください。
#66
○堂本暁子君 大沢さんが指摘なさった所得制限によって国民を二分するという不公平が生じるとおっしゃったことに対して、どのようにお考えなのか。
#67
○参考人(京極高宣君) 私は、小渕内閣から森内閣になりましても引き続き社会保障の在り方の有識者会議のメンバーでございます。九月までに基本的な方向を出すべく議論を進めているところで、結構活発な率直な議論が出ております。
 私が冒頭に申し上げたことは、社会保障に関しましては、従来男社会で男中心の、女性は主婦として考えた社会保障体系があって、高齢者に対しては一応手厚くなってきたのですけれども、世代間で見ると非常にばらつきがあると。新しい社会保障体系をどちらかというと個人ベースで考えていくような社会保障を考えるべきだという点では、恐らく大沢先生やほかの方とも共通点があると思います。ただ、このあり方に対しては、二十一世紀のどの辺を考えるか。もう二〇〇一年から二十一世紀なので、一〇年代、二〇年代というところで展望していきたいというふうに思っております。
 冒頭の問題ですけれども、現行の児童手当は家族に対する所得保障的な面が強いので、所得制限は不可避であるというふうに申し上げましたし、また財源的にも無理があるということであります。
 ただ、これは所得制限によって国民が分裂するのではなくて、所得格差がある今日の現代社会の矛盾ということを踏まえて対応するわけであります。現に二つの階層があるというふうに考えるべきなんで、それに対して対応するということで、制度によって二つの階層が起きたわけではございません。特に、低所得者、中所得者で非常に苦しんでいる方、パートタイムでいろいろ働いている方の話を聞きますと、そういう方々にもうちょっと手厚くするというのが私は政治のかなめじゃないかと思っておりますので、そこは現実を踏まえて申し上げているつもりでございます。
 ただ、将来的にはどうかということについては、私が申し上げたような例えば育成保険みたいなものができた場合には保険料を皆さん払うわけですから、これは対等に、介護保険と同じように所得制限なしで一定額を取ることができるというふうに思っておるわけでございます。
 それから、二番目の視点でございますけれども、抜本改正でございますけれども、これは冒頭に申し上げたわけでございますが、女性の視点というのは非常に大事だと思います、私も男性で余りよくわからないところがありますけれども。ただ、この場合でも、キャリアの女性の方の視点と一般の女性の視点と言ってはおかしいんですけれども、若干違うところもございますので、全体としてどういうふうに考えたらいいのかと。特に、母子家庭などで非常に生活が厳しい場合があるわけで、子育てという点で不利にならないように、父子家庭の御指摘もありましたけれども、両親がそろっている家族と一人親家族の間で子供に不利がないような手厚い対応というのが必要だと思っております。
 人権問題については私も十分にお答えできませんが、社会保障全体のあり方としては、従来の社会保障の体系から二十一世紀型の男女共同参画社会の社会保障へというふうに構想をしていきたいと思っておりますので、決意だけを申し上げて申しわけありませんけれども、私のお答えとさせていただきます。
#68
○参考人(大沢真理君) 私が税制を通じる児童支援パッケージは低所得者にとっては有効性が小さいというふうに政策的インプリケーションを導き出したことに関連して、ではどうしたらいいのかという御質問だったと思うんですけれども、一般に財政学者の人の言葉遣いで対策を財政支出で打つのか税で打つのかという言い方がございます。
 日本の政策というのは、ともすれば税で打つというのが大きくて、それがために税制が非常に複雑怪奇になっているのと、だれが便益を、ベネフィットを受けているのかというのが国民にとってもわかりにくい仕組みになっている。これは、税で打つと、財政支出で打つよりも税源、財源のことをとりあえず考えなくて済むということがあるのと同時に、税金をまけるわけですから、そうすると痛税感というようなものを和らげることによって有権者に受け入れられやすいというふうに考えてそのような傾向が強いのかと思うんです。
 これは、今、京極参考人のお話にもございましたように、所得階層によって差がある社会の中で税で打つというのを主体でやっていきますと、どうしても中高所得者に対する優遇になりがちであると。限られた財源の中で低所得者に本当の意味で重点的な給付をしていくためには、税で打つのではなくて、現金給付や財政支出を中心とすべきではないかというのが私の考えでございます。
 あわせて、その税の取り方というのも、今は間接税の方に流れがちではございますけれども、日本の所得税の税率というのはまだまだ諸外国に比べて高くないのでございまして、ここからは取れる余地がある。クロヨン対策を考えた上で、きちんと累進的な所得税を取ることをもう一度考えるべきではないかと考えております。
#69
○堂本暁子君 ちょっとだけ感想を言わせてください。
 私は、おっしゃるように、税制が余り複雑になっていることが諸悪の根源と言ってもいいぐらいに年金その他すべてをわからなくしてしまっているように思います。
 きょう、大沢参考人の発言でとてもすてきだったと思っているのは、児童虐待を受ける子供が自己資金が必要だというのはおっしゃるとおりで、児童虐待防止法という呼び声もあるようなときに、やはり私は、階層ということよりは子供自体への給付の方が正しいんじゃないかなというふうに個人的には考えています。
 京極参考人が女性でもいろいろというふうにおっしゃったんですが、やはりトータルとして女性のことを考えていただく。余りキャリアとかノンキャリアに関係なく、もう女性全体の視点としてのジェンダーというふうに私はとらえていただいた方がいい。女性を分断しないでいただきたい。それから、階層によっても分断しないでいただきたい。今は幾ら低所得といってもあえて高収入の大企業をやめて低所得のボランティアに生きがいを感じるような若者もふえている時代に、必ずしも高所得イコール豊かな生活とばかりは言えないというふうに私は思っております。
 ですから、二十一世紀の福祉のあり方というのは多分相当変わっていいんではないか。そういうことでいいますと、女性の側もキャリアとノンキャリアというふうには分けない方がいいと思う。それから、所得のあり方も低所得と中高所得というふうに、高い所得がある方というふうに分けて福祉を考えていくという時代は、保育所なんかが利用施設に変わっている時代でもあり、相当大きく変えていただく方が力のおありになる方だけに、ぜひそこのところは変えていただきたいときょうお願いをあえてさせていただいて、大塩さんにお願いをいたします。
#70
○参考人(大塩まゆみ君) レジュメの4のBについてですね、御質問は。
 まず、「両者を縮小させる。」というふうに書いたんですけれども、これはどういうことかと申しますと、児童手当に最初は福祉施設事業ということで一九七八年に現物サービス給付が導入されました。それから、平成六年に児童育成事業としてそれが変わりまして、サービス給付部門が拡大したんです。
 結局、そうなりますと、児童手当はもともとは現金給付として出発していまして、そういう現物給付を実施する場合は現金給付に支障がない範囲においてという規定があったんですけれども、実際、児童手当の中身が全然拡大していないですし、実質的に子育て支援、子供のある家庭に有効な補助ができていないということは縮小しているというふうに言えると思うんです。それから、福祉施設を導入した後に所得制限を強化しているんですね。
 そういうことを見ましても、この児童手当の経過、国会審議とか審議会の提案なんかをずっと眺めてみても、両議院での社会労働委員会の附帯決議だとか、それから社会保障制度審議会ですとか中央児童福祉審議会とかでも児童手当はもっと拡大すべきだというふうに言われてきたんですけれども、ちっとも拡大していないということが一つあります。
 それから次に、この児童育成事業での保育サービスについてですけれども、「児童福祉施設最低基準を満たさないサービスを増やし、」と書いてありますが、それで児童育成事業としてどういうことが始められたかということを平成六年にちょっと集中して調べたことがあるんですけれども、結局、事業所内保育施設ですとか企業委託型保育サービスですとか、それから駅型保育モデル事業ですとか、そういうものに児童手当の費用の一部が出されているんです。そういう今言ったような保育サービスというのは、本来、認可保育所で守られている児童福祉施設の最低基準というのがあるんですけれども、その最低基準以下のサービスしかしていないんですね。
 認可保育所というのは児童福祉施設の最低基準をクリアしていますので、子供何人に対して保育士が何人とか、それから建築に対しても防火建築にしなければならないとか、いろいろ子供の安全と健康のために守るべき基準が定められているんですけれども、それが守られていないということ、それから事業所内保育施設なんかでしたら、企業の経営が悪化しますと閉鎖したり休止したりするところも出てくる。そうすると、保育されている子供にも影響が出ますし、ちょっと時間がないのでゆっくりお話しできませんけれども、いろいろ影響が出てきます。
 いみじくも堂本議員さんは一九八一年にベビーホテルの問題を暴露されたと思うんですけれども、ああいう問題なんですよね、民間の保育サービスというのは。ああいう問題が出てくると思いますので、最低限児童福祉施設の最低基準をクリアされるサービスを拡大すべきだと思うんです。
 堂本議員さんが一九八一年にベビーホテルの問題を調査されましたけれども、あのときに乳児保育とか延長保育とか、そういう問題が出てきたはずなんですね、ベビーホテルに預けている子供というのは。あのときにもっと本格的に保育サービスを拡大しておくべきだったと思うんですね。今ごろエンゼルプランとか新エンゼルプランでサービスを出されていますけれども、ちょっと手おくれかな、その結果子供の数が減ってきたのかなということも思っております。
 以上です。
#71
○西川きよし君 本日は御苦労さまでございます。よろしくお願い申し上げます。
 これまでいろいろ少子化対策についての審議を当委員会でも何度となく行ってまいりましたけれども、そんな中で私がきょう先生方にお伺いしたいのは、例えばこれから産み育てる方、そしてまた子育てが終わった方々、全国の方々がどういうふうに少子化対策について、この必要性についてどれほどの認識を持っていらっしゃるのかなというようなことをまず、素朴な疑問ですけれども、お伺いをさせていただきたいなというふうに思うんです。
 これまでの審議の中で、この国会でも、そしてまた行政におきましても、それほどの認識の違いというのは僕自身も感じてはこなかったんですけれども、そういった中で、国民の意識ということで、きょうは政府が出しております「モニター月報」というのがありまして、この二月号ですけれども、少し読ませていただきたいと思います。子育てを終えられた兵庫県の五十八歳の主婦の方です。
  少子化対策への疑問 子供の出生率が相変わらず低く、政府はその対策を検討中という。児童手当の増額、保育所の増設、保育時間の延長、病児保育等々。そのどれも必要なことであるけれど、しかし、これらが完全に実施されたとしても少子化が改善されるとは思えない。どこか問題の核心がずれている気がする。
  私は専業主婦で三人の子供を育てた。夫は薬の研究開発で忙がしく、私は親戚、友人が遠く離れていたのでいつも一人で子育てをしていた。その間、私が最も悩みつらかったことは、次の三つのことだった。
 @社会から切り離されている孤立感と閉塞感。
 A子育ては女がするもの、という社会観念と夫の観念の重圧。
 Bそれによる仕事第一の夫の家庭、子育てへの関りの低さ。夫の生きがいと関心は仕事、ならば私と子供達は夫にとって何なのだろうという思い。
  悩み苦しみながら、一方ではそんな自分をいい母親、いい主婦ではないといつも責めていた。そして後年、こんな思いに悩んでいたのは私だけではない
というお話もいろいろお伺いしました。
 その間いろいろあるんですけれども、この奥様は、
  児童手当増額に税金を使うよりは、この体制づくりに使う方がどんなにか子育てが助かるだろうか。
  子供は未来の社会をつくる大切な存在、といいながら女にだけ子育てを押しつけてきた結果が少子化になってきたのだ。男も女も家事、育児ができる社会にならなければ、女は負担が重すぎて子供を産むのをためらう。
という、こういう御意見ですけれども、まずお聞きいただきまして、京極先生の方から順番に一言ずつお答えいただきたいと思います。
#72
○参考人(京極高宣君) 貴重な御意見だと思います。
 私は、少子化に関する有識者会議で提言されているように、やはり総合的な対応というのが必要だというように思っておりまして、そのときに三つの側面から考えてみたいと。
 一つは、やはり子育てコストの問題で、これをどうするかということで、社会的にいかに負担をするかということがあると思うんです。この問題はやはり、その一つがきょう議論されています児童手当の問題だと思います。ただ、それだけではなくて、女性の役割と男性の役割分担。私は、個人的な反省もございますけれども、子供を母親に任すということが本当にいいかどうか。
 それから、女がもっと働ける仕事が、子育て期間中も仕事が保障されるということがなければならないし、そういう点でまだまだ日本の労働慣行は欧米諸国と比べて非常におくれているということがございます。
 それから三番目の問題ですけれども、これはちょっと価値観と関係してくるんですけれども、やはり子供を育てるあるいは子供が育っていくことに対する喜びとか、そういうものが少し最近減ってきているんではないか。何か個人主義的なというか、わかりませんけれども、もう少し家庭というものを大事にするということが重要かなと思っております。
 いずれにしても、少子化全体の流れは私は急速に低下することはない、改善されることはない。いかに少子化を抑えるという役目はしていくべきだと思いますが、少子化が一気に改善されて昔に戻るなんということはもうこれはあり得ないことであって、これは文明史的な大きな視点から見ますとかなり重要なことなんですけれども、ただ、今の国際的に見てもちょっと異常な日本の少子化については、やはりきちっとした総合的な対応でやっていくということではないかと思っております。
#73
○参考人(大沢真理君) 大変興味深い貴重な意見というのをお聞かせいただきましてありがとうございます。
 私は聞いておりまして、我が意を得たりと感じるところが多かったわけでございます。ただし、この方があれかこれかという二者択一あるいはゼロサムというんでしょうか、こちらをふやせばあちらを減らすしかないという発想になっているところはちょっと残念かなと。もう少しやっぱりパイをふやす中で考えていただきたいというふうにも思います。
 いずれにしても重要なことは、余りにも家計の構造がシングルインカム、夫であり父親である男性のそれも会社からの収入にばかり依存する家計の構造になっているという中で、会社人間化もあるし、子育ては妻の責任、母親の責任というような規範もより強まり、そういう中で社会からの孤立や隔離というのも強まったのかなというふうに思います。
 繰り返しにはなりますが、やはり女性の職場進出、この場合にも低賃金で使い捨てのパートタイム労働者でいいというような位置づけではなく、きちんと男女賃金格差が縮小していくような意味での機会均等と、それから職業と家庭生活の両立支援、こういうすべてのパッケージが重要かなというふうに改めて感じた次第です。
#74
○参考人(二宮厚美君) 簡単に少子化対策という視点から子供の問題をとらえるというのは不十分じゃないかという趣旨を酌み取りますと、それは全く私は賛成です。
 それからもう一つ、これは大沢さんと同じですけれども、性別役割分担を子育ての中に残しておったら、結局子育ての困難だとか、先ほど出された悩みだとかは解決できない、これも御指摘のとおりだというふうに思います。
 もう一つは、今の大沢さんと同じですけれども、それと保育政策だとかコミュニティー政策だとかといったものは代替関係ではなくて補完関係なので、児童手当も子育て環境の整備も両方あわせて考えるという点では、代替というよりは相互補完というふうに考えた方がいいんじゃないかということです。
#75
○参考人(大塩まゆみ君) まさにそのとおりと非常に共感しました。多くの女性がそれを感じていることだろうと思います。私も子育てをしましたので、そういう経験はございます。やっぱり専業主婦で子育てをしていますと、社会から切り離された感じがするでしょうし、男女役割分業で女性だけが子育てをするべきというふうな感じもしますし、夫は全然協力してくれない、そういう感想を多くの女性が感じていることと思います。
 それで、ちょっと済みませんが、後半はどういう御質問ですか。感想ということでしたか。
#76
○西川きよし君 後半は児童手当の増額、いわゆる税金を使うのは反対だとか、もっと体制づくりに使うと。
#77
○参考人(大塩まゆみ君) もちろんそのとおりだと思います。ですから、もう今までおっしゃった参考人の方の繰り返しになりますけれども、児童手当だけを重視するというんじゃなくて、さまざまな子育て環境のためにもっと力を入れるべきだと思います。政策的にも重点化するべきだと思います。
 それから、先ほどちょっと申し忘れましたけれども、病児保育の問題も今出ました。病児保育も今非常に不足してる問題ですけれども、病児保育の場合、病児保育所というのを別につくると、子供が病気のときだけそこに行くというのだったら、非常になれないんです。だから、そういうときには家庭にベビーシッターに来てもらうというふうにすると、現金の方がいろんな目的で使えるという、そういうメリットはあると思います。
 それから、とかく子育て負担ばかりが強調されているんですけれども、そういうふうに子育てが負担だ負担だと言うと、子供が何か迷惑なお荷物というふうなように感じられると思うんです。だけれども、決して子供はそんなお荷物でも迷惑なものでもなく、子供の存在価値というのはすごくありますし、子育ては大変は大変ですけれども、子育てすることによって得るものはすごく大きいと思いますので、男性がそれに参加することによって男性自身も変わっていくだろうし、得るものも大きいと思います。
#78
○西川きよし君 私も三人の子供を育ててみまして、今おっしゃったことはよく理解できます。
 先ほどの奥様は五十八歳の主婦の方ですが、ほかにも、七十歳の男性の方は、「日本国民自らが招いた得策である。少子化に対して、貴重な国費から助成するのでなく、抜本的に少子化になったらなったで、もっと抜本的な施策を考えるべきだと思う。助成施策には反対である。」というふうな七十歳の方の意見もあります。
 もう一人、四十四歳の女性の方ですけれども、いろいろ御意見がございまして、はっきり言いまして毎日の生活の中では三人以上子供がいたら生活をしていけないと。この奥様はお二人ですけれども、私の周りでもそうです、同じような環境の人がたくさんいらっしゃいます、中流でいたいなら、中流の生活をしたいという気持ちが強ければ強いほど少子化にならざるを得ないというような御意見もございます。
 そこで、先ほどちらっとお話に言葉だけが出たんですけれども、そこをお伺いしたいと思います。
 これまでの議論の中でも児童手当の財源の問題がありまして、今後はむしろ個人負担、被用者負担の導入の検討も必要ではないかなという御意見があるわけですけれども、これに関して大沢さん、そして大塩さんにお伺いしたいと思います。
#79
○参考人(大沢真理君) 社会保険料方式ということなんでしょうか。私は、むしろ累進的な所得税を主たる税源とする一般財源で児童手当というのは賄った方がよろしいと。そうでないと、やっぱり人間目先の利益不利益というのを考えますから、自分は子供がいないのに自分の給料の中から児童手当の部分が何%も天引きされているということになると、これはまた一緒に働く仲間の中でつまらないねたみや何かが起こるのではあるまいか。むしろ、子供は全体として社会の子供だということを制度的に表現するためには一般財源によるものが適当なのではないか。その中で被用者も被用者としてではなく市民として貢献をしていくということでよろしいのではないかと考えます。
#80
○西川きよし君 もう時間がなくなりましたので、最後の質問として大塩さんにお伺いしたいと思うんです。
 例えば、せんだっても、一部施行前でありますけれども、申請せよと案内が届いたところがあるわけです。封筒をあけてみて、ああ、児童手当かということで、その場で破いて捨ててしまった人もいらっしゃったそうなんです。それは、恐らく所得制限で私は関係ないからということで捨ててしまったというふうに僕らは理解しておるわけですけれども、児童手当というのは一部の人だけが、そういう意識は根強くあると思うんですけれども、逆にその児童手当をもらっているということがなかなか言いづらい環境もあるということなんです。
 ですから、やはりこれは抜本的な見直しを行うときには所得制限のあり方という、ここが大きな問題になると思うんですけれども、この所得制限について最後に大塩参考人にお伺いをして終わりたいと思います。いかがでしょうか。
#81
○参考人(大塩まゆみ君) おっしゃるとおりだと思います。お母さん方の間でも児童手当とか、それから幼稚園に対しても入園補助金とかというものが所得に応じてあるんですけれども、そういうことが話題になることがあるんですね。そうすると、前に東京で何か幼児をお母さんが殺害した事件がありましたけれども、ああいうような問題にも発展していきかねない、子供を差別分断するということになりますので、所得制限はもうなくすべきだと思います。
 特に、この児童手当というのは公的扶助の中に含めるような形で整理している文献なんかも以前あったんです。最近、ちょっとなくなりましたけれども、そういう公的扶助的な制度に児童手当がなりますと、スティグマといいますか、自分は児童手当をもらうような低所得者だというような劣等感を子供が感じてしまいますし、お母さん自体も引け目を感じますので、所得制限はなくすべきだと思います。
 それから、先ほどの被用者負担についてですけれども、大沢先生は子供のない人のことをおっしゃいましたけれども、子供を持つ人の立場から見ますと、子育てで十分お金を出しているのにまたその上保険料みたいなものでお金を取られるということになったら、ますます子育てが重荷になってくると思いますので、被用者負担はなくす方がいいと思います。
#82
○西川きよし君 ありがとうございました。
#83
○委員長(狩野安君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。
 午後二時まで休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ─────・─────
   午後二時開会
#84
○委員長(狩野安君) ただいまから国民福祉委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、魚住裕一郎君が委員を辞任され、その補欠として山本保君が選任されました。
    ─────────────
#85
○委員長(狩野安君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#86
○委員長(狩野安君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に山本保君を指名いたします。
    ─────────────
#87
○委員長(狩野安君) 次に、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 児童手当法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に大蔵大臣官房審議官福田進君、文部省高等教育局長佐々木正峰君及び厚生省児童家庭局長真野章君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#88
○委員長(狩野安君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#89
○委員長(狩野安君) 休憩前に引き続き、児童手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#90
○松崎俊久君 民主党・新緑風会の松崎でございます。
 今回の児童手当法が出てきた理由の一番大きなものは、やはり総合的に少子化問題というものを考えていく、そういう背景があるからだろうと思いますが、世界じゅうどこを見ましても少子化という方向は先進国では共通の現象になっております。
 しかし、近年、一九六五年を境にして急速に少子化が進行したわけでありますが、その後、アメリカ並びに西ヨーロッパの幾つかの国々は増加の方向を示すか、あるいは少し上がったところで安定しているというような状態を示しています。ところが、イタリアもそうですが、日本はどんどん下がっていくという方向にあります。
 ヨーロッパと比較して、ヨーロッパがやや上昇を示す国々がある反面、日本が反対に急速に少子化が進んでいく理由をどのように厚生省は解釈しておられるのか、お聞かせいただければと思います。大臣、お願いします。
#91
○国務大臣(丹羽雄哉君) ヨーロッパの中でも、委員が御指摘のように、例えばフランスなどでは、六〇年代の半ばから七〇年代の半ばにかけまして大きく出生率が一時低下をいたしました後、八〇年前後に若干回復をいたしました。その後は緩やかな低下傾向にあるわけでございまして、最近は一・七となっておるわけであります。それから、スウェーデンなどは出生率の上昇には育児休業の有給化が大変効果的であったと、このようにお聞きをいたしておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、それぞれの職場におきます男女の共同参画状況であるとか保育サービスの普及であるとか、それから児童手当制度の有無といった要因も影響しているということは間違いないのではないか、こういうような分析がなされておるわけでございますけれども、これを我が国と単純に比較することは、率直に申し上げてなかなか難しいものがあるのではないかと思います。
 その理由といたしましては、結婚や出産に関する行動が、いわゆる性別役割分業や家族や職場のあり方に関する各国民の意識と実態、歴史や文化など、各国ごとに固有の多様な背景に深くかかわってきておる、こういうような背景があるのではないか、こう考えているような次第でございます。
 今申し上げましたように、少子化にはさまざまな要因や背景がございますが、私どもといたしましては、それぞれの国の例も十分に参考にしながら、保育、雇用、教育、住宅など、各分野にわたります環境整備や、今回御審議をいただいております児童手当の拡充などを総合的に実施していくことが何よりも大切なことではないか、このように考えているような次第でございます。
#92
○松崎俊久君 子供の数が減るとはいっても、かなり地域差が日本では見られます。例えば、沖縄などは、減ってはいるものの、日本の中でもかなり高い方に位置しますし、東北ないしは日本海岸の県などは非常に数が少ない状態であります。したがって、いろいろな少子化対策あるいは保育の問題などを考える場合には、やはり全国一律に単純に考えるのではなくて、地域差を検討しながら進んでいかなけりゃいけないと思います。
 この出生率を見た場合、例えば厚生省が調査なさったいろいろな結果を見ますと、多くの日本人は理想とする子供の数を平均しますと大体二・五人前後の回答が出ておりますが、ではどのぐらいあなたは産むのかという予定を聞かれると大体二・一前後の答えがどの年度でも数字が出ております。
 このような状態の中で、確かに人口というものはどの程度を目標にするとかどの程度に抑えるとかということはなかなか難しいことで、できにくいことですが、いろいろなPRなどを含めて、厚生省として将来の出生率をどの辺に安定させるのが一番いいとお考えになっていますでしょうか。
#93
○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、出生率をめぐります地域差でございますが、委員の御出身でいらっしゃいます沖縄県がトップで一・八三人であります。続いて島根県の一・六七人、福島県の一・六五人。それから、低い方の都道府県といたしましては東京の一・〇五、北海道の一・二六などが挙げられておるわけでございます。
 確かに、委員が御指摘のように、地域によってさまざまな地域差があるということは紛れもない事実でございますし、例えば保育所の待機児童につきましても都市部に顕著に見られるなど市町村別に大きな差があることなどから、各地域での少子化対策は当然その地域ごとの状況というものを踏まえて実施すべきだと、こう考えているような次第でございます。
 政府といたしましては、少子化対策推進関係閣僚会議で決めました少子化対策推進基本方針におきまして政府の基本的な考えや施策をお示しいたしておるわけでございますが、その基本方針におきましても、地方公共団体においては基本方針の策定の趣旨さらに内容を踏まえて少子化対策の計画的な推進を図るなど、地域の特性に応じた施策を推進するものとする、こういうこととされておるわけでございますし、厚生省といたしましても、今後、新エンゼルプランなどに沿いまして、地方自治体において実情に応じた対策が行われるように御支援を申し上げていきたい、このように考えているような次第でございます。
 それからもう一点でございますけれども、人口構成でございまして、年齢構成から見まして、近年の合計特殊出生率は人口規模を維持するために必要な二・〇八を大幅に下回っておることは御指摘のとおりでございますが、これはさまざま委員会でも御審議いただきましたように、急速な少子化というものは社会経済にさまざまな影響を与えるわけであります。これは結婚や出産はあくまでも個人の自由な選択にゆだねるべきでございまして、政策の前提として出生率の目標値というのは設定いたしておりませんが、厚生省の将来推計では一・三八から長期的には一・六一まで回復するのではないか、こう見込んでおるような次第であります。
 いずれにいたしましても、政府といたしまして、近年の少子化対策の背景となっております子育てや仕事と子育ての両立の負担感を緩和するために、保育、雇用、教育、住宅などの分野においてさまざまな環境整備や、今回御審議いただいております児童手当の拡充などを推進することによりまして、結婚や出産を望む若い男女の方々がその夢や希望を実現できるような社会の構築を目指しているところでございます。
#94
○松崎俊久君 男と女で、子供の少子化に対する厚生省の調査では大分数の差がございます。といいますのは、男は、どちらかといえば夫の方は経済的な問題を大きな理由にしておりますし、女性はどちらかというと働く条件、保育所の問題、育児環境というようなものが第一に出てきているようであります。
 私も、平成元年に沖縄へ赴任しました折に沖縄のいろいろな実情を見ておりましたら、まず子供が非常に多いのが当たり前というような印象に驚きました。私の教えていた学生に、あなたの兄弟は何人かと聞くと、七人というのが四、五人おりまして、兄弟が五人だとか四人だとかというのが普通のような状況であります。
 ところが、指数で見ますと、急速に日本で一番少子化が進んでいるのは、沖縄が一番スピードが速い状態になっております。これは沖縄が都市化してきたという意味もありますでしょうし、あるいは離婚率が日本一になってきたということもありますでしょうし、あるいは失業率が日本一高いというようなこともあるとは思うんですが、とにかくいずれにせよ沖縄は現在は子供が多いけれどもどんどん減っていく傾向にある、その速度が日本の四十七都道府県の中で一番速いスピードで進んでいます。
 こういうようなことを見ておりますと、特に沖縄が大きな産業がなく失業率が高いために、そして離婚した女性の働き口というのはスーパーマーケットのレジであるとか、居酒屋あるいはバーなど飲食店に勤めるというケースが多いわけですが、特に沖縄の場合は、御存じかと思いますが、飲み屋というものが九時にならないと開かないという状態で、深夜に及ぶ営業が当たり前という現状であります。そこで、夜間保育という問題がどうしても出てまいります。
 先日、堂本委員がベビーホテルの問題で質問されておりましたが、この保育所の整備という問題がいいかげんにされますと、このような悪質な、あるいは非常にもうけ、利潤を追求するベビーホテルなどのたぐいが進出してくる可能性があるかと思います。
 この新エンゼルプランの中にも書かれています保育所の多様な整備という項目について、これは次官にお尋ねしますけれども、現在、子供の保育所に入れないで待機している状況、それから保育所の増設目標あるいは多様な保育施設という内容について御説明いただきたいと思います。
#95
○政務次官(大野由利子君) 今、委員も御指摘のように、大変核家族化とかそれからまたライフスタイルの多様化が進んでまいりまして、さまざまな保育サービスの需要、その内容も随分バラエティーに富んできたわけでございまして、こうした保育サービスの需要に適切に対応して、仕事とか社会活動と子育ての両立が可能にできるようにするということが大変重要な課題であろう、このように思っております。
 このため、新エンゼルプランにおきましては、必要なときに利用できる多様な保育サービスの整備というものを掲げております。また、働くお母さんのためだけではございませんで、在宅のお母さん、在宅の乳幼児も含めた子育て支援の充実といった観点からも、主要な事業につきまして新エンゼルプランで平成十六年度までの目標値を掲げたところでございます。
 具体的に申しますと、低年齢児の保育所の受け入れ枠の拡大ですが、昨年四月現在の待機児童が約三万二千人、そのうち低年齢児が約二万一千人になっている。こういった実情から特に低年齢児に対する保育のニーズが高い、こういう状況を考慮いたしまして、今後五年間、新エンゼルプランで低年齢児の保育の枠を十万人分ふやして六十八万人にする、こういう目標を掲げております。
 それ以外に、延長保育で一万カ所、また休日保育で三百カ所、乳幼児の健康支援一時預かりを五百市町村、地域子育て支援センターを三千カ所、一時保育で三千カ所等々、さまざまな保育サービスが充実できるように目標を掲げているところでございます。多機能な保育所につきましては、保育所の改築等に合わせまして十六年度までの五年間で二千カ所整備したいという目標を掲げております。
 こうした新しいプランについて、これらの目標の達成に向けて努力をしてまいります。
#96
○松崎俊久君 少子化の原因によく高学歴化ということが言われます。
 私は高学歴化が必ずしも少子化に結びついているとは思えませんし、逆にヨーロッパの例などを見ますと、午前中の参考人質疑の際にも参考人から御発言がありましたが、やはり女性の社会的地位が高く、そして働いている率が高いほど出生率が高いという結果がヨーロッパでは出ておりますし、日本の場合も、現在、企業が求める新卒の学生についても大学院修了というような条件をつける場合がかなりふえてきております。
 女性の大学進学、大学院への進み方が非常にふえている状況において、やはり問題になりますのは保育所の問題が出てくるかと思います。よく古い人たちは、まさか厚生省はそんなことはおっしゃらぬでしょうが、学生のくせに子供を産むのはなどということはまさかおっしゃらないとは思いますけれども、先々週のアエラなども最初に母親としての学生の問題を大きく特集しておりました。私自身も学生結婚であったこともあり、家内が同じ医者でもあったことで、学生のときあるいは大学病院に入りたてのころは家庭と仕事の問題などでお互いに助け合う努力を必死になってやりました。
 学生の場合問題になりますのは、このごろ投書にも、アエラが二号後にも投書が出ておりましたが、大学に保育所をつくれという要求が複数載っておりました。大学並びに大学院の在学年齢というのは一番出産に向いている時期の年齢でありまして、しかも子供がどんどんふえている。むしろ、少子化を防ぐためにも安心して学問をしながら子供を預けるというようなことができた方がより学生のためにも少子化を防ぐためにもよろしいかと思いますが、大学の職員のことを考えても保育所というのは巨大な大学には設置されるべきだと思います。
 その点、文部省にちょっとお尋ねしたいんですが、そういうケース、テスト的にやっているようなところはございますでしょうか。それから同時に、大学に保育所を設置するという問題についてはどのようにお考えでしょうか。
#97
○政府参考人(佐々木正峰君) 御指摘いただきましたように、文部省といたしましても、学術研究の高度化あるいは高度専門職業人の養成等に対応するために大学院の拡充を図っておる中で、女子学生の大学院への進学者数も年々増加しているところでございます。
 大学院在学中に出産、育児を経験する学生や、あるいは育児をしながら再入学する社会人も将来的には増加していくものと考えられるわけでございまして、そのような学生のための保育施設を大学内に設置することにつきましては、少子化対策といたしましても、また勉学意欲を積極的に受けとめていくという観点から見ても有効であると考えているところでございます。
 現在、国立大学については看護婦など教職員のための保育施設が二十三大学に二十八施設設置されておりまして、そのうちの幾つかの保育施設におきましては学生等も対象として運営がなされているところでございます。
 文部省といたしましては、各大学においてさまざまなニーズがあろうかと思います。そういった学生等の多様なニーズも踏まえながら支援体制を整備していくことが大切であると考えているところでございます。
#98
○松崎俊久君 子供の医療の問題についてお伺いしますが、健康保険の診療報酬改正がまだ最終的に決まらない状況でもあり、非常に難しいとは思いますが、私、いろいろな大学の医局に当たってみますと、近年、小児科への入局が極めて減ってきているという現象があります。結局、小児科ではもうからないというふうに打算的に考える学生もいるでしょうが、民間中小病院などでは不採算部門ということで小児科閉鎖というそういう動きが見られます。この状態をほっておきますと、やはり小児科の医療の問題が相当大きな、救急だけではなくて、日常のかかりつけという意味でも困る状態になるかと思います。
 この小児科の医師が減っていく状況、それからこれに対する対策として、やはり国としては県に一つぐらいは、二次医療圏に一つとは言わないまでも、できたら二次医療圏ごとに、最初の段階は県単位でもとにかく小児病院をつくることも必要なことだろうと思いますし、それから小児科の医師が減っていく状況に対して厚生省はどのようにお考えか、お聞かせ願います。
#99
○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、小児医療につきましては、安心して子供を産み、健やかに育てていただくために少子化対策として大変重要であると考えておりますが、小児医療の提供体制につきましては委員御指摘のとおりさまざまな問題がある、このように考えているような次第でございます。
 まず、厚生省といたしましては、新エンゼルプランに小児専門の緊急医療体制を全国的に整備することを盛り込んでおります。さらに、平成十二年度の診療報酬改定において小児入院医療管理料、入院基本料に対する乳幼児加算の新設などを行う、さらに小児の診療棟や専門病棟など小児医療施設の整備の補助を行うなど、重点的な支援を行っているところでございます。
 二十一世紀に向けた母子保健分野の国民運動計画でございます健やか親子21、こういうのがございますけれども、本年中を目途に策定したいと考えております。現在、関係専門家から成る検討会を開催し、検討しているところでございますが、その中でも小児科医療の医師の数は平成四年度で三万四千六十四人、それから平成八年で三万四千七百四十五人、平成六年は三万三千五百六人ということでありまして、ちょっと微増減を繰り返しておるわけでございますが、地域において小児科医療の必要性というものが叫ばれておるわけでございますので、こういった面を十分に配慮しながら総合的な支援策というものを行っていきたい、このように考えているところでございます。
#100
○松崎俊久君 最後にお尋ねしますが、大臣、十三年、明年、児童手当のいわゆる抜本的な見直しをというふうに書いてありますが、一体この方向をどのようにお考えなんでしょうか。例えば、児童手当を渡す年齢をもっと伸ばしていくというような方向でお考えなのか、あるいは扶養控除に手をつける、もう一回考え直したりあるいは手をつけたりする方向でお考えなのか、いわゆる抜本改正の中心部分のどの点に重点を置いてお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
#101
○国務大臣(丹羽雄哉君) 児童手当の抜本的な見直しにつきましては昨年の末に与党間で合意をいたしており、厚生省といたしましては、与党におきます協議を踏まえながら検討すべきものと考えておるような次第でございます。
 そして、将来の抜本的な見直しのあり方については、本委員会の審議におきましても、例えば支給対象年齢については諸外国並みに拡大すべきではないかとか、あるいは所得制限については被用者と自営業者などとで限度額が異なっている点についてどう考えていくか。さらに、委員御指摘の扶養控除との関係については、扶養控除を減額して児童手当を拡充することについて理解できるという意見がある一方で、税負担はふやすべきではない、こういう意見も出されました。
 さらに、事業主負担につきましては、今回の拡充に必要な財源について事業主負担とせずに公費によって賄うことにした点についてどう考えるか、こういった点。それからさらに、手当額につきましては、実際の児童の養育費などとの関係についてどう考えていくか。こういうさまざまな御指摘をいただいたところでございますし、また率直に申し上げて、一部のマスコミからはこの児童手当についてばらまきではないか、こういうような批判もあることも事実でございます。
 いずれにいたしましても、こうしたさまざまな御指摘を踏まえながら、今後の児童手当のあり方については、少子化対策としての効果、あるいは税制などほかの施策との関連、さらに具体的な財源確保の方策などを十分に勘案して国民的な合意が得られるように厚生省として努力していきたい、このように考えているような次第でございます。
#102
○松崎俊久君 終わります。
#103
○今井澄君 松崎委員に引き続いて質問したいと思います。
 先ほどの松崎委員の質疑を聞いていて、学生、特に大学院生が子供を持ちながら勉学ができるようにという趣旨のことを聞きながら思ったんですが、例えばヨーロッパの国々で出生率の低下に歯どめがかかったり若干ふえたりしている過程が、これは因果関係があるかどうかは別として、いわゆる未婚の母がふえているということも並行しているんです。北欧では未婚の母が半分を超えている。この前もフランスに行ってきたらもう半分に近くなっているということがありまして、日本では結婚をしないと子供を産んではいけないようなそういう感覚がある。だから、晩婚化するに従って少子化が進んでいるという現象もあると思います。
 ところが、先ほどの松崎委員の御質疑にもありましたように、確かに自分自身の人生を振り返ってみても、やはり若いころというのは非常に情熱を持ち、体力もあり、ある意味では子供が自然にでき、育てるのにふさわしい年齢でもあるわけです。子育てというのは非常にエネルギーもかかりますし、私も学生結婚で子供が生まれて、家内が勤めて私が子供の面倒を見たりしながらやっていた経験もあるんですけれども、やはり年をとってくると、本当に子供を育てるためにあれだけのエネルギーが要るということを、やっぱり夫婦でもなかなかやっていけない、そういうこともあると思います。
 そういう意味では、結婚するしないにかかわらず、子供が生まれればそれはある意味で社会的に支援するというシステムがあれば非常におもしろいなと思います。
 ちょうど今、NHKの朝のドラマでやっているんですね。私は、ふだんは朝早いからほとんど見られないし、昼も食堂で食べているときもちらちらっと、ほとんどストーリーは追えないんですが、けさはたまたまこの委員会が最初でしたので、ゆっくり見て出てまいりましたが、そこでも未婚の母に対するさや当てとか既婚の母に対する反論とかがありまして、非常におもしろかったと思うんです。
 その点、価値観が変わっていくということ、言ってみれば、子供というのは既婚であれ未婚であれ、これは社会の子であるという考え方が一方にあれば、非常に自然なときに子供が生まれ、自然に健全に育てられるというふうなこともあるんじゃないかと思います。
 これは今、松崎委員の質疑をお聞きしていて思ったものですから、ちょっと感想を述べて、質問ではありませんので、当然、厚生省としても未婚の母支援なんという政策はお聞きしてもお答えにならないでしょうから、感想だけ述べておきます。
 私は、これまでの各会派の委員の御質疑、それから私自身がいたしました質疑もきょうまとめて最後にお聞きしようと思ったんですが、ちょうど松崎委員がお聞きになったことに対してお答えいただいたのは、どうも私が質問することでいろいろあらかじめお願いしてあったことを全部お答えいただいちゃったようなことであれなんですけれども、方向性について、支給年齢の問題、所得制限の問題、扶養控除との関係、財源の問題、特に事業主負担のこと、一人当たり支給額のこと、そういうことを一応整理して今後御検討いただくということですが、私は、やはりこの際、確かにこれが与党合意であり、与党が抜本改革に向けてやるということなんですけれども、政府として与党にお任せするということじゃなくて、しっかりこれを進めていただきたいと思うんです。
 きょうの午前中の参考人質疑の中でもそうですし、この質疑でも明らかになってきたのは、高齢者対策は相当この間力を入れたことによって先進国の中でも、遜色がないというところまで行きませんけれども、相当いい線行ってきていると思うんです。北欧にはまだまだかないませんけれども。
 私もつい先ごろフランス、イギリスに行ってきましたけれども、フランス、イギリスのお年寄りに比べれば日本の高齢者対策の方がよっぽど心も通い、力も入ってきていると思うんです。ところが、その反面、子供に対する対策は、少子化対策であろうとなかろうと、別に子供の数をふやすかふやさないかは別問題として、子育て支援というのは日本はまだ力が入っていないということなので、改めて大臣の御決意を伺いたいと思います。
#104
○国務大臣(丹羽雄哉君) 確かに、どちらかと申しますと、子供かお年寄りかというような分け方が適当かどうかわかりませんけれども、お年寄りの対策には相当な力を入れてきた反面、ややもすると、いわゆる子育てであるとかそういった面において希薄な面があったことも否めないのではないか、こう反省を含めて私自身考えておるわけでございます。
 そこで、少子化対策でございますけれども、これは当然、政府・与党が一体でございますので与党で御議論を賜るわけでございますが、私どもとして、もし仮に抜本的な見直しを行って法案を出すときには私どもの責任で出すことになると思いますものですから、当然のことながら私どもの考え方ということを申し上げなければならない、こう考えているような次第でございます。
 その中で、どういう点が問題点かということとして先ほど委員に申し上げたわけでございますけれども、いずれにいたしましても国民的な皆さん方の合意をもう一つ得られなければならないんじゃないか、こう思っておるような次第でございますし、ここにまいりまして、前回の委員会におきましても御指摘を受けたわけでございますが、さまざまな経緯、紆余曲折がございまして、ようやくここに来ていわゆる児童手当が少子化対策の中の重要な柱の一つとして位置づけられてきたわけでございますので、まずそのことを大切にすることが何よりも重要なことではないか。
 そういう中で、先ほど申し上げましたような対象年齢をどうするのかとか、それから額の問題であるとか、それからサラリーマンと自営業者とのいわゆる所得制限の問題、こういったような問題について議論を交わして、そしていずれにいたしましても国民の皆さん方から十分に理解と合意が得られるようなものにしなければならない、こう考えているような次第でございます。
#105
○今井澄君 やはり、そういう点は相当しっかりした決意を持って進めていただきたいと思いますし、どうもこの間ふらふらして政府全体としての意思一致もできていないし、去年は年少扶養控除ということで十万減税してみたり、ことしはそれを削って回してみたり、けさの参考人意見では朝令暮改ならぬ朝令昼改である、しかもふやしたり減らしたり増税になる人もいて朝三暮四みたいなものだということで、これは全く国民を惑わすものだと思うんです。
 ここはしっかりした方向を定めてやっていただきたいと思いますし、そういう意味では私どもは今回のようなこそくな臨時措置には反対ではあります。もっとこれはじっくり腰を落ちつけて抜本改革すべきだということで反対ではありますが、しかし扶養控除をなくしてそれを手当にしていくということは私どもの方針でもあるわけですから、それをしっかりやっていただきたいんです。
 くしくもこの基礎年金の問題について、この委員会でもさんざん基礎年金の国庫負担二分の一を即座にやれということを言ってきたのを厚生省は逃げに逃げておきながら、去る十四日、厚生大臣は三重において、来年からでも二分の一に上げたいと。それで、その財源が二兆四千億だけれども、その中では例えば扶養控除、恐らく今度は老人扶養控除を見直したり、いろんなところから財源を集めてやりたいという決意を表明されたんです。
 私どもは、この前の審議を踏まえてみれば裏切られたような気持ちがするんですよ。本当に舌の根も乾かぬうちに今度はやるというのは、私は裏切られたような気もしますが、反面やっぱりそれだけの決意を持って、これは政府全体としてそういう控除制度の見直しと絡めてやっていくことは私はいいことだと思っているんです。
 けさの参考人質疑でも、ほとんどの参考人の皆さんが税制で手当てをするというのは余りいい方法じゃないと。それはなぜかというと、だれにどのぐらいその恩恵が行っているのかが見えにくいということとか、税制が複雑になるとか、あるいは何か税を軽くしてあげることが恩恵のようなそういう間違った政策につながるということで、むしろ税控除はなくしてはっきり目に見える、しかも中低所得者に目に見えて厚い効果のある現金支給の方がいい、こういう御意見があったんです。
 そういう意味で、私は、基礎年金も厚生大臣が十四日に三重で言われたという方向で本当に来年からでも何とかやっていただきたいという、裏切られたという気持ちの反面、応援したい気持ちがあるわけです。
 大臣のそのお考え、御決意、それから二兆四千億というのは一応計算上それを何で幾ら、何で幾らぐらいはお考えになったんじゃないかと思うんですが、その辺も含めてちょっと御決意を伺いたいんです。
#106
○国務大臣(丹羽雄哉君) 先般来、この委員会で年金の審議につきまして大変御熱心な御議論を賜ったわけでございます。その中で、今井委員からも、また各党の委員からも、いわゆる空洞化というものを防ぐためには基礎年金の国庫負担を三分の一から直ちに二分の一にすべきだ、こういうような御意見を承りまして、いわば委員会における総意のような形であったわけでございます。
 そういうことを踏まえまして、また年金に対する空洞化というものが大変大きな問題になってきておることは紛れもない事実でございますし、私どもといたしましては年金に対する国民の皆さん方に対してきちんとした確実なものを示さなければならない、こういうような考え方に立ちまして、私といたしましては、来年、平成十三年の四月から引き上げる方向で検討に入っていただきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
 当然のことながら、これは与党三党の政策責任者の方々あるいは財政当局とも御相談を申し上げなければならないわけでございます。そういう中で、財源として私が挙げましたことは、現実問題として今景気を最優先しようというときに消費税を引き上げるということは難しいことでございますし、いわゆる扶養控除のあり方が盛んに議論なされておるわけでございますが、税制改革であるとか、それから歳出の見直しを含めました行財政改革によります財源の捻出、それから景気の回復の自然増、マイナス経済成長から前年度は二年ぶりにプラスになるようでございますし、来年さらにプラスの経済成長というものが確保されるということによりまして、自然増収を安定とした財源の確保を図る。
 こういうことでございますが、それがもしできなければ、二分の一ができないということになりますと、私はまず初めに年金担当の大臣として、二分の一に引き上げて国民の皆さん方の御理解を得ることが大切だ、こういうことで、暫定的に国庫負担の一部の繰り延べを行い、その間に限って年金積立金で、百四十兆あるわけでございますが、立てかえを行うことも検討すべきだ、こういうことを申し上げたわけでございます。
#107
○今井澄君 時間が足りなくなってしまいましたが、せっかく大蔵政務次官に来ていただいていますので、先ほども申し上げたとおりのことなんですが、今税制改正の議論も行われていると思うんですけれども、やっぱり見えにくい控除をできるだけ見えやすいものに振りかえていくという意味で、この基礎年金の問題も児童手当の問題も大蔵省として前向きに取り組んでいただきたいんです。結果としては課税最低限が下がるかもしれないけれども、その方がはっきりしていると思うんですが、どうですか。
#108
○政務次官(林芳正君) 個人所得課税におきます控除というお話を今ずっと委員と大臣に御議論いただいておったわけでございますが、世帯の構成ですね、先ほどから学生のときに御結婚をされたりお子様を育てられたりというお話を聞いておりまして、私も自分の留学時代を思い出しておりましたが、こういう世帯構成に応じて人的控除というのはあると。ですから、全くお子さんがいらっしゃらない場合とそれからお子さんがいらっしゃる場合ということを、やはり税の負担能力ということを調整すべきだという一定の機能があるわけでございます。
 そこで、課税最低限、今、委員もお触れになりましたけれども、ずっと人的控除の引き上げをやってきた結果、今国際的に見て大変高い水準であるというのはもう御議論がかなり浸透しておるわけでございますが、広く社会の構成員でそれぞれの経済力に応じて公正に負担し合う基幹税でございますから、こういう性格に照らして一体どれぐらいの水準が適当かということは今から議論をいただかなきゃいけないというふうに考えております。
 また、今御指摘がありましたように複雑になっておりまして、いろいろと累次にやっておるものですから、こういう複雑になり過ぎているものをもう少し趣旨や目的、そもそも何でつくったのかということを考えながら見直しについて今後とも幅広くやっていくべきだろうということでございまして、現在、今、委員が御指摘になりましたように、政府税調におきましてこの抜本的な見直しに向けて検討しておるという状況でございます。
#109
○小池晃君 私は、今最後に話題になりました基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げの問題について、児童手当の問題の前に一言お聞きしたいと思います。
 今、大臣が言われたように、二〇〇一年、来年四月には現在の三分の一から二分の一に引き上げたい、財源も消費税増税に求めるのは困難だということをおっしゃいました。この問題では、我が党も、昨年十一月十九日の衆議院厚生委員会で児玉衆議院議員が直ちに引き上げるべきと要求して以来、年金審議の中でも一貫して主張させていただいた問題であります。
 遅きに失したとは思うんですが、私たちはこうした声にこたえた当然の措置であるというふうに考えておりまして、やはりやるのであれば徹底的な歳出構造の見直しで新たな国民負担を求めることなくやるべきだ、財源を確保すべきだというふうに考えています。
 きょう午前中には、大臣も政治主導でやるんだと記者会見で述べられているようですけれども、これは万難を排してやるべきだというふうに考えるんですが、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
#110
○国務大臣(丹羽雄哉君) この年金に対する審議の中で数々の御指摘を受けました。特に、若年世代における年金に対する不信感、不満というものが大変強まってきている、そういう中において年金の空洞化というのが目立ってきているのではないか、それに対する有効な手だてというものをしっかりしろと。それから、最近では厚生年金適用の事業者でありながらそこから脱退する、こういうような問題が出てきておるわけでございます。
 この委員会における御議論、こういうものを踏まえまして、私といたしましては、とにかくこの国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる方向で検討しなければならない、こういうような思いであのような発言をさせていただいたような次第でございます。
 確かに、巨額の財源が恒常的に必要なことは言うまでもありませんけれども、この年金制度が今後国民の皆さん方の信頼をかち得ていくためには、私どもこの国会の場において申し上げましたけれども、できるだけ早く実現をしなければならぬ、このような思いで申し上げさせていただいたような次第でございます。
#111
○小池晃君 これはぜひ、来年必ず実現をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 法案の質疑に入りたいと思うんですが、児童手当の問題であります。
 世界的に見ても貧困な児童手当の支給年齢の拡大、これ自体は必要なことだ、これは各党各会派、皆そういう意見が出されたと思うんです。しかし、この間の論議と、きょう午前中の参考人質疑を通じてもいろんな問題点がまた出てきているんです。
 すなわち、児童手当の支給対象は三歳から義務教育就学前の児童への拡大だ、そのための財源を昨年導入したばかりの年少扶養控除の廃止で生み出す、ここに尽きるんじゃないかと思うんです。児童手当の拡大が三歳から義務教育就学前、一方、年少扶養控除が十六歳未満ということですから、差し引き増税になる人がかなりたくさん生まれるということは余り論証の必要のないほど明らかなことなわけです。この問題点は政府もお認めになってきた。
 しかし、説明としては、今回は経過的な措置であるということを繰り返し言われてきました。しかし、経過措置と言うからには、これはある目標があって、そこに行き着くまでにいろんな障害があって行き着かないので経過措置と言うわけであって、経過措置と言うからには行き着く目標があるわけですね。
 それは一体何なのか。これもいろいろ質問されてきましたけれども、これこれをやるということを断言できない、それはわかるんです。それは仕方がないにしても、少なくともどこを目指すのか。児童手当の支給対象年齢の拡大を目指すのか、あるいは支給額の増額を目指すのか、所得制限の緩和を目指すのか、その方向だけでも出さなければ、どこへ行くかわからないのにこれは経過措置ですよと言っても国民は納得できないと思うんです。ですから、その方向だけでも示すべきじゃないか。
 先ほど、大臣はいろんなテーマを挙げられて、こういう議論をされてきたのでそれを踏まえて検討したいということなんですけれども、どういう方向で、児童手当を拡大する方向でやるのかどうか、このことを国民に向かって示すことが、経過措置と言われるのであればやはり必要なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#112
○国務大臣(丹羽雄哉君) 今回の法案の提出に至りました経緯につきましては再三答弁をさせていただいたわけでございますけれども、まず初めに、扶養控除を減額することによってその分を児童手当に充てましょう、こういうところからスタートしたわけでございます。その結果、これまでは三歳未満であったのが就学前と、こういうふうになったわけでございます。
 今、委員が御指摘になりました支給対象年齢の問題であるとか扶養控除との関係であるとか、この辺のところを率直に申し上げて余り十分に、年末でございまして、議論をせずに、とにかくいわゆる少子化対策の一つの柱として児童手当というものを拡充しようじゃないかというような、初めに拡充ありきと、こういうところでなされた嫌いがなきにしもあらずであったわけでございます。
 今後は十分に抜本的にこの問題等を含めまして議論を申し上げて、いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたけれども、まだまだマスコミの一部の中にはばらまきであるとかいう大変厳しい批判があることも紛れもない事実でございますが、皆さん方に喜んでいただけるような児童手当というものをつくり上げていかなければならない、こう考えているような次第でございます。
#113
○小池晃君 ばらまきという問題ですけれども、大臣はマスコミがばらまきと言うんだとおっしゃるけれども、児童手当の拡大自体をばらまきだという議論は国会の中では出ていないです。これは増税対象が拡大された被害のばらまきという側面はあっても、児童手当を拡大することについてそれを否定するような議論というのはこの間の審議を通じてもなかったはずなんです。
 ですから、経過的な措置で十分時間がなかったからここまでだったけれども、本当はもっと拡大したいのかどうか、そういう方向に進むつもりがあるのかどうか。だから、具体的にどうやるかは示さなくてもいいです。例えば、支給年齢を拡大するか、あるいは所得制限を撤廃するか、支給額をふやすか、そういったことはともかくとして、ともかく児童手当というものを拡大する方向で今後進んでいくんだと、その方向でも示してもらわないと、これは経過措置だからこういうことで我慢してくれと言われても国民は納得できないだろうと思うんです。
 だから、私は、児童手当を拡大する方向なのかどうか、それだけでも示すべきじゃないかと申し上げているんですけれども、いかがでしょうか。
#114
○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほどから申し上げておりますように、与党三党で御議論をいただくことでございますが、経過措置でございますので、これによって縮小するようなことではなくて、基本的には、どういう形になるかわかりませんけれども、いずれにいたしましても中身を充実させていくことになる、こういうふうに私どもは受けとめておるような次第であります。
#115
○小池晃君 児童手当の中身を充実させていくんだということでありますので、これはこれとして私たちは今後の行く末というものをきちっと見守っていきたい、申し上げるべきことは申し上げていきたいというふうに思っております。
 しかし、そういう方向だということであっても、では今回の措置の内容はどうかというと、今回の措置の内容というのは一言で言ってしまうと余りにひどいんじゃないかというふうに思う面が大変あるわけです。経過措置だと言うからには、いろいろあっても多くの国民にとって一歩前進だ、一歩でも二歩でも前進だと言えるような中身であって初めて経過措置と言えると思うんです。
 ところが、冒頭述べたように、これは財源としては年少扶養控除、こっちの方が児童手当の拡大対象よりも対象年齢が広いために差し引き増税となる方が圧倒的に多い。これは何度も言われていることですが、子供の数でいうと、児童手当の拡大が三百九万人、年少扶養控除の廃止による増税が千九百万人で、差し引き千六百万人増税だと。これだけの人が逆に増税の被害をこうむる措置になっている。
 ですから、私は、たとえ経過措置だということを言っても、これだけ被害が生まれる経過措置というのはあっていいのかと。経過措置にしても、これは余りに問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、そうは思われませんか。
#116
○国務大臣(丹羽雄哉君) 扶養控除と児童手当というのは、これはもともと制度の位置づけというのを異にいたしておることは委員も十分に御承知のことと思います。ただ、子育ての経済的負担の軽減という観点から見れば、私はこの扶養控除と児童手当というのは同じ機能を有しているのではないか、こう思っておるような次第であります。
 扶養控除は、今さら申し上げるまでもなく、高所得者に対してより大きな効果があるわけでございます。非課税世帯には効果がないことは言うまでもありません。一方で、児童手当は、定額でございますが、低所得者にも必ず給付される、こういう違いがあるわけでございます。
 いずれにいたしましても、今回は、先ほどから申し上げておりますように、扶養控除の一部の減額というようなことによってこのような措置がとられたわけでございます。それに伴います増税という言葉が適当なのかどうかわかりませんけれども、その前年に行われました定率減税の導入に伴い一部の層が負担を重くしたことは事実でありますが、私どもは、この児童手当だけではなくて、子育て支援の問題であるとかあるいは奨学金の問題であるとかさまざまな形で、今後ともいわゆる児童を育成するという方向の位置づけのもとに少子化対策の重点化を図っていきたい、このように考えているような次第であります。
#117
○小池晃君 扶養控除から児童手当、現金給付へという方向性の合理性は、これは私たちは否定していないんです。ただ、それはその対象年齢が同じであって初めて成り立つ議論であって、要するに三歳から六歳までと、十六歳までとをこれをスワップしたことに大変問題があるんだというふうに言っているわけです。
 それから、一部の人だとおっしゃるんですけれども、それは認識が間違っていると思います。これは数でいえば圧倒的に税金が、増税だと言っていいのかとおっしゃいましたけれども、前の年よりもことし払う税金がふえるというのはこれは増税と言うんです。その増税の人が圧倒的多数なんです。これはもう間違いのない事実です。
 その上で、これはこの間、大臣が議論されていることなんですが、扶養控除は高所得者に恩恵が行くんだ、児童手当は低所得者に重点があるんだと。確かに、非課税対象でない人にとって扶養控除がメリットがないということもわかるし、児童手当がそういう世帯に恩恵をもたらすということはこれは事実です。しかし、今回の扶養控除の廃止による増税対象というのはどういう世帯か。これは年収五百万、四百万、子ども一人の場合は年収三百万の世帯もあるんです。年収四百万、五百万円、こういう世帯が高額所得者か、これは決してそんなことはないわけです。大変苦しい中で子育てしているわけです。
 今回の措置で増税となる世帯というのは決して高額所得者ばかりじゃないということは、これは大臣も認めていただけるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#118
○国務大臣(丹羽雄哉君) 今、私の手元に数字はございませんけれども、委員の御指摘のようなことになると思います。
#119
○小池晃君 差し引き増税となるのは決して高額所得者だけじゃないんです。年収四百万、五百万、特に義務教育就学後のかなり教育費負担がかかる世帯にも負担がのしかかるわけであります。
 ここで、年少扶養控除の制度についてちょっと大蔵省にお聞きしたいんですが、今回負担増の原因となっています年少扶養控除の制度、これは昨年一年限りだったというような議論が一部にあるんですね。
 そこで、ちょっと大蔵省にお聞きしたいんですが、そもそも年少扶養控除創設の理由、これを御説明いただきたいと思うんです。
#120
○政府参考人(福田進君) 今御指摘の年齢十六歳未満の扶養親族に係ります扶養控除の割り増し特例、十万円の割り増し特例につきましては、平成十一年度税制改正において、我が国における少子高齢化の進展という経済社会の構造変化のもとで景気の状況も踏まえて子育て世帯への配慮として実施されたものでございます。
 ちなみに、根拠の法律は、御案内の、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律第三条の規定が根拠になっております。
#121
○小池晃君 この制度、これは結果的に一年限りになったかもしれないけれども、政府は今のような位置づけで経済社会構造の構造変化に対して行ったというものであるわけですから、これはそもそも初めから一年限り、一年ぽっきりというような時限的なものとして始めたものじゃないというふうに思うんですが、これはいかがですか。
#122
○政府参考人(福田進君) 今御説明申し上げました経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律第一条が趣旨規定でございますが、
  この法律は、近年における我が国の経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応するとともに現下の著しく停滞した経済活動の回復に資する個人及び法人の所得課税の制度を構築することが国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、その一環として、これらの事態に対応して早急に実施すべき所得税及び法人税の負担軽減措置を講ずるため、個人及び法人の所得課税の在り方について、税負担の公平の確保、税制の経済に対する中立性の保持及び税制の簡素化の必要性等を踏まえ、この法律が施行された後の我が国経済の状況等を見極めつつ抜本的な見直しを行うまでの間、所得税法及び法人税法の特例を定めるものとする。
というふうに趣旨規定がございまして、一年こっきりの法律かどうかという御指摘に対しては、一年こっきりの法律の規定ではないというふうにお答え申し上げたいと存じます。
#123
○小池晃君 最後だけ言ってくれればいいんです。
 三月十一日の公明新聞で、公明党の坂口政審会長がこう述べておられる。「一九九九年の一年間に限り十万円増やした年少扶養控除を引き下げて元の状態に戻し、」、それから別の場所では「昨年一年間限りということで減税になっていた」、こう書いてあるんです。
 しかし、今の答弁を聞けばこれは初めから一年限りということでやったことじゃないということははっきりしていると思うんです。ですから、こういう構造変化に対応してやるんだというふうに言って始めていながら、一年たったらぱっとやめてしまう、まさに朝令暮改、朝令昼改という中身じゃないだろうか。
 大臣に改めてお伺いしたいんですが、先ほど私が申し上げたように、被害者の方が多いような措置であります。一年前に始めたこの制度を朝令暮改という形で、これは宮澤大蔵大臣もなかなか説明困難だとおっしゃっている。そうしてまでやられた経過措置、たとえ経過措置にしてもこれは問題があると、先ほど大臣は胸を張っておっしゃいましたけれども、胸を張ってこれはいい制度だというふうに国民に説明できるような中身でしょうか。もう一度お伺いしたい。
#124
○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほど来御説明を申し上げさせていただいておりますけれども、今回の与党間の協議におきましては、とにかく赤字国債を発行しない、こういう前提のもとにいわゆる年少扶養控除の減額というものが決定されたわけでございます。そして、その中におきましていわゆる少子化対策における児童手当というものを一つの柱として位置づける必要があるんじゃないか、こういうような御議論の結果、これまでの三歳児未満から就学前まで延長させていただいた、こういうような経緯でございます。
 そういう中で決められたことでございますし、これは当然のことながら、まず年少扶養控除を講ずることに伴いますさまざまな問題でございますが、私どもはやはり所得の低い方にも限定的に給付をすることの方が望ましい、こういうような観点からこのような児童手当につきまして拡充を図った、こういうようないきさつがあるわけでございます。
#125
○小池晃君 所得の低い人たちに限定、重点的に配分するということは、それは先ほどからそのことは否定していないんです。中低所得者にも増税の被害が及ぶ、このことを問題だとお考えにならないのかというふうにお聞きしているんですけれども、どうでしょうか。
#126
○国務大臣(丹羽雄哉君) ですから、先ほどから申し上げておりますように、さまざまな問題がございまして、前年に比べれば確かに委員が御指摘のような負担増になる階層もございますけれども、この児童手当の措置だけではなくて、奨学金の制度であるとか子育て支援基金制度、こういったようなものを総合的に勘案する中においていわゆる負担が重くなる層について手厚い支援策を行うと。いずれにいたしましても、私どもは健全な児童の育成というものを目指しておるんだということをぜひとも御理解賜りたい、こういうことでございます。
#127
○小池晃君 総合的に見れば、手を打っているということは、この部分だけを見ればこれは問題があるということの裏返しなんです。
 大臣、この間の議論を通じてこの御説明をするときに、これは赤字国債を出さない、限られた財源の中でということをしきりにおっしゃるんですね。しかし、これは財源の問題を勝手に限られた財源などと言わないでいただきたいというふうに思うんです。皆さん、あなた方は、一つの柱としてこれは確立する必要があるんだ、少子化対策の象徴だとまでおっしゃった。そうまでして児童手当支給を拡大する必要があるというふうにするならば、私は幾らでも財源はあるというふうに思うんです。
 例えば公共事業、熊本の川辺川ダムは総事業費二千六百五十億円、国費二千二十一億円、諫早湾の干拓は総事業費二千四百九十億円、国費千七百六十億円、関西国際空港二期工事は総事業費一兆五千六百五億円、国費五千二十二億円、公共事業予備費は二〇〇〇年度予算では五千億円。この一部でも削れば、こういう無理無体なやり方をせずに十分児童手当の拡大はできるじゃないですか。
 先日の質疑で我が党の井上議員の質問に対して、大臣は、日本の子育て支援給付はこれは国際的に見てもおくれているんだというふうにおっしゃった。それであれば、やはりこういうむだこそ削るべきじゃないか。同じ子育て財源の中から、右のポケットから左のポケットに移すようなやり方をするからこういう矛盾が生まれるのであって、こういう歳出構造の徹底的な見直しに足を踏み出すべきじゃないですか。いかがですか。
#128
○国務大臣(丹羽雄哉君) 個々の公共事業の問題についてとやかく私が申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても子育てというものは大変重要でございます。そういう中において、当然のことながら、今後、扶養控除の減額の問題であるとか歳出の資源の再配分であるとか、こういったような問題が全体的な問題として当然議論があってしかるべきだと、このように考えているような次第であります。
#129
○小池晃君 歳出構造の見直しは議論があってしかるべきだということであれば、やはりこういう同じパイの中を食い合うようなやり方は矛盾を拡大するだけだ、本当に抜本的にその道に私は足を踏み出すべきだというふうに思います。
 宮澤大蔵大臣も、この問題で私も予算委員で質問して、あと財政・金融委員会でも議論があって、どうも一貫した、ちゃんとした御説明をすることは非常に苦しいです、一種の妥協でございますから、ちゃんと整合的に説明することはなかなか難しい、こうまでおっしゃっているんですね。よほどのことだと私は思うんです。
 こういう大蔵大臣すら説明不能だというようなやり方をすべきではないし、本当に大臣がおっしゃったように、歳出構造の見直し、公共事業のむだ遣いであるとか、あるいは銀行に対する税金投入、こういったものに一切手をつけずに子育てのための財源の中で無理やりやりくりするようなやり方、こういうことをするからこういう矛盾が生まれるんだというふうに思うわけです。今回のこの措置については到底きょうの議論を通じても納得できるものではない、そのことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
#130
○清水澄子君 きょうの午前中の参考人からの意見陳述を伺って、むしろ厚生省とやりとりしているよりよっぽどすっきりしたわけです。というのは、やはり児童手当というのは一体どう考えるべきか、何なのかという基本的な考え方について、私も今まで何回も大臣にもお尋ねしましたけれども、日本の場合は全くこれまで児童そのものの主体について余り考えていなかったわけです。では家族の経済支援かといえば、そうでもない中身ですし、きょうの参考人のほとんどの方は、すべての子供、十八歳までの子供に、これは親ではなくて子供に生活支援をするものであると。そしてもう一方は、ただそれは現金給付でやるべきで、児童手当だけでは子供は発達できない、だから一方で子供の発達に必要な社会サービス、それはもう一方で必要なのだというような、いわゆる現金給付と現物給付といいますかサービスという、こういう考え方でもっと根本的な改革をしてほしいということを述べられました。
 一人だけは、これは厚生省の社会保障制度審議会の責任者でもありますから現状のところで話をされておりましたけれども、やはり将来的にはそうあるべきだろうと。そして、子どもの権利条約の視点というのは非常に重要であるというふうなお考えが述べられていたわけです。
 ですから、私どもは、抜本改正を十三年にするというのであれば基本的な方向性は明確でないとだめだろうと思います。具体的には、それらを段階的にどうするかとか優先順位をどうするかというのはあるでしょう。だけれども、方向性がちっとも伺っていてもはっきりしないというのは、私はこれは非常に怠慢だと思います。
 これだけ初めてこういう児童手当そのものでこうして議論できるのはとてもいい機会だったと思いますし、それからその中の大沢参考人なんかは、今回ここで本当に基本的な整理をするというのは最後のチャンスかもしれないとまで言われました。ですから、私もそうだと思いますし、非常にこれはさまざまな矛盾と、これまで軽視してきたというのか放置してきたために非常に多くの問題があって整理しにくいことがいっぱいありますけれども、それだけにこれをきっかけとして二十一世紀に向けてきちんとすべきだと思うんです。
 そういう中で、日本は結局、今の制度は事業主の拠出金という制度に、過去の歴史的な経過から事業主の拠出金が七割という負担で出てきた制度ですし、それを今度、大臣は逆転させたということが大きな評価であるというのを褒めてくださいと言っていらっしゃるんですが、それはそれで本来のあるべき姿を求めなきゃならないと思います。
 しかし、ここで、私は事業主も社会的な連帯という中で今後役割は大きいと思うんですけれども、その前に、日経連はこれは少子化問題という視点で企業主が主に児童手当の部分を引き受けているけれどもこれは反対だということを言っておりますし、それからこういう経済的なインセンティブによって出生率が改善するのかどうかとか、それからやはり児童手当制度というのは全額国庫負担でやるべきだというような考え方を述べております。しかし、同じ経済団体でも東京商工会議所は、現在の児童手当の支給額を二倍に引き上げるべきだ、そして所得制限をもっと緩和して拡大をすべきだ、そういうふうな考え方を発表しているわけです。こういう経済界の考え方について、大臣はどのようにお考えになっておられるでしょうか。
#131
○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、日経連でございますが、児童手当の拡充についての日経連の考え方というものがございます。事業主負担を主な財源とする現行の児童手当制度の枠組みを前提とした拡充には反対だ、少子化問題は国民的課題であるという観点から欧州の各国と同様に児童手当の財源は本来全額税で賄うべきだ、こういうことでございます。それから、東京商工会議所もこの児童手当の拡充の問題についてお触れになっておるわけでございますが、これについて財源をどうするかということについてはお触れになっておらない、こういうことでございまして、さまざまな御意見が各団体によってあるわけでございます。
 いずれにいたしましても、今回の児童手当の拡充について、新エンゼルプランの策定などとあわせて幅広い総合的な少子化対策の中の一つの柱として位置づけているところでございますが、やはり率直に申し上げて、事業主の皆さん方の御理解、御協力をいただかなければ児童手当の今後のさらなる拡充というのはなかなか難しいのではないか、こう考えております。
#132
○清水澄子君 だから、日本の場合は今後も事業主の負担は求めていくという、そういう基本的な考え方はお持ちですか。
#133
○国務大臣(丹羽雄哉君) 求めていくというより、求めていくことに御協力をお願い申し上げたい、こういうことでございます。
#134
○清水澄子君 次に、厚生省の厚生保険特別会計、児童手当勘定の財源ですね、予算の使い方というんでしょうか、この児童手当勘定を見ますと、この中には児童育成事業というものも入っているんですが、保育所政策などが入っているんですけれども、これは平成六年につくられたものでしょうけれども、児童手当基金という勘定、予算であるわけですね。これを全額使っても足りないのに、その中でさらに乳児保育とか一時保育とか学童保育とか、こういうものを、特に平成十二年度予算では二百八十四億円ですか、そこで予算化しているわけですけれども、これについても日経連は、この児童手当の財源が他の児童育成事業の財源に回されているのも問題だと指摘していますけれども、私もこれは一致いたします。
 やはり、児童手当に支給すべきものはきちんと児童手当に支給し、足りない財源をどうするかということを本格的に、税の面なり、または国庫負担の面で検討すべきであって、それから乳児保育とか保育政策は一般財源でやっていくべきだと思うんです。ですから、これらについては今後きちんと整理をすべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
#135
○政府参考人(真野章君) 先生御指摘の児童育成事業は、平成六年の制度改正によりまして、事業主から拠出されます財源の一部、千分の〇・二でございますが、これを活用いたしまして、一般会計による事業を補完しながら、共働き家庭などの多様なニーズに対応した各種の子育て支援、児童健全育成のための事業を行うということで制度化されたものでございます。
 この趣旨を踏まえまして、保育サービスにつきましては、その中心を占めます保育所の一般的な運営費や多くの保育所に普及してきた事業、これにつきましては一般会計で対応いたしますが、特別会計としては保護者の勤務時間などに応じた長時間の延長保育など、そういう分野については特別会計で対応するという整理をしてまいりました。
 特に、延長保育につきまして特別会計と一般会計との役割分担を十二年度も見直したということでございますが、今後ともそれぞれの事業の趣旨、目的に応じまして一般会計と特別会計の役割分担を勘案いたしまして、それぞれふさわしい負担にするという方向で検討したいというふうに思っております。
#136
○清水澄子君 午前中の参考人が指摘されたことはまさにその問題でありました。このやり方はおかしい。これは事業者の後押しをしているものであって、保育サービスといっても、こちらで使う保育サービスは児童福祉施設の最低基準以下のサービスをここで提供している、これでは本当に子供の発達とか安全には資することができない。だから、こういうやり方だと児童手当の方も縮小されるし、それから児童福祉サービスを代行しながら最低基準を満たさないサービスをふやしているじゃないか。だから、この予算の使い方は非常に問題であるという指摘がなされました。
 こういうことについて全く問題意識が今ないのを聞きましたから、それはもう私は絶対容認できないと思います。ここで新たに今度の機会にそれを検討し直すということが必要であって、このままやりますというお答えでしたから、それはまたいずれ、私はきょうは時間がありませんから、この次にまた指摘をしていきたいと思います。
 次に、よく日本の女性はこのごろ働くようになったから子供の出生率が低いとか言われるわけですけれども、例えば女性が働くようになったのはどの国もみんなそうです、今日。これは当たり前です。そして、出生率が低下している傾向というのも、これは各国に見られるのも共通であります。しかし、その率が特別低いというのは日本だけなんです。
 特に、私は、注目すべきことは、一九八〇年代にはEU諸国は共通して子育て期に当たる二十五歳から三十四歳の層は、働く女性が非常にふえていっているわけです。しかし、余り下がっていないんです、出生率は。だから、就労パターンが男性と同じように、子育て・出産期の年齢になってもずっと働いているという、そういうところを見ますと、決してこれは女性がただ働くから減ったという、そんな単純な問題じゃない。そこにはっきり何が問題かというのは出ていると思うんです。
 例えば、アメリカ等でも、三歳以下の子供を持つ母親の就労率は五二・五%あるんです、ところが出生率は二・〇三。そして、フランスでも、三歳以下の子供を持つ母親は六〇%働いているが、出生率は一・七二。スウェーデンもそうです、八五・八%働いている、三歳以下の子供を持つ母親です、そして一・六一生まれている。
 先ほど大臣は、日本の場合は今一・三八、それが一・六になればと言っておられましたが、日本は三歳以下の子供を持つ母親は二八・二%しか働いていない。にもかかわらず、一・三八しか出生率がないというのは、それは日本の女性の就労というんですか、その条件が非常に子供を産みながら働くという当たり前のことがしにくいということを私はあらわしているんだと思います。
 先日、ノルウェーの国会議長のコッレ・グロンダールさんが見えて、そのときに聞きましたけれども、女性が働きやすい国ほど出生率は上がります、非常に単純なことですとおっしゃったわけですね。女性が子供を産んで自分の仕事や活動ができる社会というのは、また長期的に将来性のある社会ですと。今、少子化少子化というのが何かただ声高に叫ばれるだけで、本来なすべきことがほとんどなされていない。
 そういう意味で、何が大きな原因かというのは、きょうの参考人の皆さんたちも、女性の基本的な働き方の問題をどう改善するか。ジェンダー視点で、今の社会保障のあり方も夫、父親がすべて家族を養うという制度から発達してきているので、そういう点も改善すべきであって、女性も男性も働きながら子育てもできる、そしてお互いに……
#137
○委員長(狩野安君) そろそろまとめてください。時間が過ぎています。
#138
○清水澄子君 自分ひとりで生きられないときにみんなが支え合って社会連帯で生きていく、そういう政策にすべきであるというお話がありました。
 ですから、ここはもう問題がはっきりしていますから、ぜひ大臣、その方向性の中で、やはりジェンダー視点という視点で一度分析をして、問題をきちんととらえていただきたいと思います。いかがでしょうか。
#139
○国務大臣(丹羽雄哉君) 再三この審議の中でも議論を呼んでおるところでございますが、これまで男性は仕事、女性は家庭と、こういったような固定的な観念ではなくて、新しい少子化対策のあり方というものをつくり上げていかなければならない。そういった観点から、先生の御意見は貴重な御意見と承らせていただきたいと思います。
#140
○堂本暁子君 けさの参考人の御意見は、ほかの先生方もおっしゃったように、大変本質に迫るものがございました。
 例えば、児童手当の理念そのものなんですけれども、果たして対象が児童本人なのか、あるいは実際に養育に当たっている家族なのかというあたりで事の本質が変わってくるということも非常に浮き彫りになりました。所得制限は、もし児童が対象なのであれば必要ないであろう、そして養育者が対象であれば所得制限があってもいいのではないかというふうに御意見が分かれたわけです。
 衆議院で、対象は児童なのかそれとも家族なのかという質問に対して、大野政務次官が、実質的には親が受け取るんだから親であろう、管理も使用もということで御答弁になっているんですが、子供が管理するしないということは別として、やはり対象が親に対してのものというふうに厚生省はお考えなのかどうか、もう一度確認の意味で、これは大臣に伺わせていただきたいというふうに思っております。
#141
○国務大臣(丹羽雄哉君) 児童手当制度でございますが、児童を養育する家庭の生活の安定と、さらに児童の健全育成という二つの目的を掲げているところでございます。
 このような法律の目的からいたしまして、理念といたしましては、児童手当は家庭ないし保護者を対象として支給されるものであって、その結果、児童のためになると、このような理解をいたしておるような次第であります。
#142
○堂本暁子君 今の御議論の継続なんですけれども、けさ展開されました参考人との質疑の中で、であるとすれば、所得制限を設けるということは国民階層を二分するものであるというふうにおっしゃったわけです。このことについての御見解はいかがでしょうか。
#143
○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほどお話をお聞きしておりまして、子供を対象とするならば所得制限は設けるべきでない、子供を対象としないならば所得制限を設けてもよろしいと、こういうような何か御見解があったと、こういうふうにお聞きをいたしておるわけでございます。私どもは、対象はあくまでも子供ではなくて親でございますので、これによって国民階層を二分するというような参考人の発言の趣旨は、所得制限は児童を差別するといった趣旨ではないと、こういうふうに考えているような次第であります。
#144
○堂本暁子君 現実の問題としては、所得制限というのが税制に基づいているということで、これはまた新しい不公平感が生まれています。
 午前中の質疑の中で、所得制限を行うことは児童手当をもらえる低所得層ともらえない中高所得層というように国民階層を二分するもので、みんなで支え合うという社会保障に対する国民全体の信頼感を損ねるという発言がありました。
 同じように、午前中の質疑の中で、この社会保障制度が社会のセーフティーネットの機能を果たしているだけではなくて、将来を見通した整合性のある改革案を示さないと、雇用不安それから労働の不安をかき立てるような悪循環に陥っているという御意見もあったんです。
 それは、今申し上げた国民階層を二分するということ。これも実に複雑で、どこからどう二分されているのかすらわからない。そういう中で、社会保障制度、例えば保育とか年金とか、今までるるここで御議論があった中で、今、清水議員もおっしゃいましたけれども、やっぱりジェンダーの視点が欠けているからこういうことになるんだというふうに私は思っています。
 こういった悪循環に陥っている、一刻も早くこれを解決すべきだというふうに言われたんですが、この参考人の御意見に対してはいかがお考えでしょうか。
#145
○国務大臣(丹羽雄哉君) 直接その参考人の発言をお聞きしておらないわけでございますので、手元にでもあればお答えしやすいんですが、基本的な認識といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、当然のことながら従来のいわゆる男性、女性といったような役割分担ということではなくて、女性の社会進出が非常に活発化する中において、いずれにいたしましても今回の児童手当法というのは、若い男女の皆さん方の健全な子供の育成に少しでもお役に立ちたい、立たせていただきたい、こういうような目的で法案を提出させていただいているような次第でございます。
#146
○堂本暁子君 やはり、そのジェンダーの視点というのはどういう視点かというところが、どうも日本の財務当局を初めとして、きちっと押さえられていないと思うんです。
 たまたまきょう質問があることは多分御本人も御存じないと思いますけれども、「日本の社会政策とジェンダー 男女平等の経済基盤」という本が、おとといでしょうか、届いたんです。塩田咲子さんという方が書いた本なんです。これはもう日本の戦前からの社会保障制度から戦後にかけてあらゆる社会保障制度をずっと網羅的に、大変な勉強をされたと思いますが、まとめていらっしゃるんです。
 その児童手当のところの周辺を見ますと、例えば今指摘した悪循環というようなことの一つ、例えばこの間から私が問題にさせていただいている保育の問題ですけれども、保育はもう既に九六年で年収五百万円以上の第六所得階層以上が六七・四%に達している。だから、保育所を利用するお母さんたちはいわゆる低所得階層ではないわけですね。
 この方がおっしゃっているのに、この方は育児手当という言葉を使っていらっしゃいますが、この育児手当をどう使用するかは育児担当者、両親ですね、の自由な選択とし、就業とは無関係に公的な保育をだれもが料金を払って利用できるようにすることができれば、保育園の措置制度の廃止も政策の合理性を持つということなんですね。
 まさにそういうことだろうと思うんです。一方で保育を利用という形に切りかえ、そして救貧的な措置から利用に切りかえておきながら、児童手当の方は所得制限を設けているということで、そこには整合性がないというふうに思うんです、私は。もしこういうふうに保育の制度を利用というふうに切りかえるのであれば、その場合には、やはりそこでは当然のことながらお母さんたちは保育料を払うわけですから、高額の所得者でも子供に対して児童手当が支給されてしかるべきではないかというふうに思っています。
 もう一つそれに関連して質問させていただきたいんですが、これは大沢真理さんのレジュメなんですけれども、非常に大きな日本の行政の誤解があるというふうに彼女は指摘しています。
 どういう誤解かといえば、高学歴そして就業が少子化を招いていると。そうではないというふうに彼女は言っているわけです。二十五歳から三十四歳女性の労働力率が高い国での出生率も高い。それから、女性の社会的地位、ジェンダー開発指数で見た女性の社会的地位が高い国では出生率も高い。それから、ある程度開発が進んだ国では男女の賃金格差が小さいほど出生率が高い。男女の賃金格差が小さい国では夫の家事協力度が高い。というふうに、日本の厚生行政が分析していらっしゃることとすべて逆なんですね。
 そういうことからいいますと、私はやはりもっと、女性が単に働くということだけではなくて、社会参画するということの中で出生率も結果として上がってくる。今、少子化対策としてとられていることは、むしろその悪循環の輪を断ち切るというよりはそれを加速しているような気すらしないわけでもないわけです。
 その辺で、やはりこの女性の社会参画あるいはジェンダーの視点からの社会保障制度と言ったらいいでしょうか、年金や保育や育児休業制度、それから今度の児童手当、すべてを含めてそこにやはりそもそもの立脚点の転換が必要だというふうに感じますが、いかがでしょうか。
 要するに、女性が高学歴だとか働くから、専業主婦になっていないから出生率が下がるのではないということなんです。逆なんですね。もっと社会参画しやすいような政策、そういう政策をとるところの方が各国では出生率が上がっているということなんです。だから、できるだけ社会参画できるような制度をつくるべきなのではないかということです。
#147
○国務大臣(丹羽雄哉君) 確かに、委員が御指摘のように、いわゆる労働力と出生率の関係から見ますと、高学歴の女性の皆さん方の進出によって出生率が下がっているというよりはむしろ上がっておる、こういうような傾向があるということにおいては同じ認識に立つものでございます。
#148
○堂本暁子君 多分とてもお答えになりにくい質問をしてしまったのかもしれないのですけれども、それは逆に言えば、日本の社会保障制度がそういう視点に立っていないということなんですね。
 ですから、例えば児童手当にしてもそうですし、年金なんか特にそうですけれども、るる申し上げたように、年金は主婦が、専業主婦ですけれども、社会参画しにくいようなシステムになっているわけですね。だから、そこのところを切りかえない限り、大きなビジョンとして今後の日本の社会保障制度というものの抜本的な改革をされるのであれば、そういった視点からの改革が必要ではないかということなんです。
#149
○国務大臣(丹羽雄哉君) 私どもがさまざまな社会保障を進めるに当たって、いわゆる高学歴者を重視するとか低学歴の女性の方々を何か軽視するとか、こういうことはあってはならないものだと、こう考えております。
 大切なことは、先ほどから委員が御指摘になっておりますような男女共同参画型社会の実現と、そういう中において私どもの方策というものはなされておるわけでございますし、その一つ一つ、この問題あの問題ということの議論は今、私は念頭に浮かびませんけれども、大方において私どもがこれまでそういった観点から進めてきた施策というのは誤りがなかったと思っておりますし、委員の認識と大きな隔たりはないと、こう考えております。
#150
○堂本暁子君 最後に三十秒だけ。
 私はとても違っていると思います。特に一番違うのは、やはり子供を妊娠し産み育てる側の性である女性が、子供を産んでも、リプロダクティブヘルス・ライツという言葉でいつも申し上げていますけれども、そういう中で社会参画がしやすいような政策は非常に少ない。だから、いろいろ制度的な、もっと労働の問題、それから年金の問題なんかもありますけれども、やはりもう少し女性の健康という視点からもそういった政策が展開されることで、この児童手当だけではなくて、総合的な観点で女性がもっと生きやすい、社会参画しやすいような抜本的なビジョンをぜひ打ち立てていただきたいというお願いをして、終わります。
 ありがとうございました。
#151
○西川きよし君 どうぞよろしくお願い申し上げます。
 先日来、大臣の御答弁ですけれども、結婚や出産を望む人がその希望を実現できるような環境整備をするために総合的な少子化対策があって、その一環として児童手当の拡充があるというような御答弁をいただいておりますけれども、短い時間ですので続いて質問の方に入らせていただきたいと思います。そして、いろいろとお聞きいただきたいことがたくさんございます。
 まず、内閣総理大臣官房広報室が毎月「モニター月報」というのを発行いたしておりますが、こちらの二月号、少子化についての御意見が紹介されております。
 本日も、参考人の皆さん方、そして諸先生方がいろんな角度で御質問をされているわけですけれども、まずいろいろな方々がいらっしゃるな、本当にこの少子化対策の必要性、行政はもとより国会もそうですけれども、それほど認識の違いというものがないのではないかなというふうに私自身思うわけです。そしてまた、国民の意識の中で、本当にこの少子化というもの、実は余り日々の生活の中で周りの人には我々余り聞かないんですけれども。
 そこで、自分がひとつお尋ねしてみたいなと、これひとつ読ませていただきます。これは「モニター月報」の方でございますが、こちらは兵庫県の五十八歳の主婦の方でございます。
  少子化対策への疑問 子供の出生率が相変わらず低く、政府はその対策を検討中という。児童手当の増額、保育所の増設、保育時間の延長、病児保育等々。そのどれも必要なことであるけれど、しかし、これらが完全に実施されたとしても少子化が改善されるとは思えない。どこか問題の核心がずれている気がする。
  私は専業主婦で三人の子供を育てた。夫は薬の研究開発で忙がしく、私は親戚、友人が遠く離れていたのでいつも一人で子育てをしていた。その間、私が最も悩みつらかったことは、次の三つのことだった。
 @社会から切り離れている孤立感と閉塞感。
 A子育ては女がするもの、という社会観念と夫の観念の重圧。
 Bそれによる仕事第一の夫の家庭、子育てへの関りの低さ。夫の生きがいと関心は仕事、ならば私と子供達は夫にとって何なのだろうという思い。
  悩み苦しみながら、一方ではそんな自分をいい母親、いい主婦ではないといつも責めていた。そして後年、こんな思いに悩んでいたのは私だけではない、多勢いたんだと知るようになった。だから私は政府の考えている対策は問題の周辺対策にすぎないと感じている。
  一番に大切なことは@子育ては女も男もするのが当り前の社会になること。そのために企業や男の意識が変ること。A男も女も子育て可能な働き方ができる社会体制を。労働時間の短縮、例えば子供が六才までなら朝九時半―四時半までとする。病気の時は即、休めるようにする。そうなれば時間的にも精神的にもゆとりをもって子育てができる。児童手当増額に税金を使うよりは、この体制づくりに使う方がどんなにか子育てが助かるだろうか。
  子供は未来の社会をつくる大切な存在、といいながら女にだけ子育てを押しつけてきた結果が少子化になってきたのだ。男も女も家事、育児ができる社会にならなければ、女は負担が重すぎて子供を産むのをためらう。
こういった御意見がこの「モニター月報」、内閣総理大臣官房広報室から毎月出ているものですけれども、今お聞きいただきまして、この児童手当の増額に税金を使うよりは体制づくりが必要なんだということですけれども、大臣、いかがでしょうか。
#152
○国務大臣(丹羽雄哉君) 三人の子供を育てた専業主婦の方の実感といたしまして大変切実に私ども受けとめさせていただいたような次第でございます。
 さまざまな御意見がございますので、この点、非常に参考にもなるわけでございますけれども、少子化の要因でございます晩婚化、未婚化の背景には、子育てそのものの負担感と同時に仕事や子育ての両立の負担感の問題があると、こう考えているような次第でございます。男性の育児参加の促進など、家事、育児は女性任せといった意識を改めていくことも、今、委員がお読みになったこのモニターでも明らかなように、少子化対策の中で大変重要であると考えておるような次第でございます。
 こうした観点から、政府といたしましては少子化対策推進基本方針を決めまして、労働時間の短縮であるとか男女共同参画社会の形成の促進について取り組むことにいたしておるわけでございます。今回の児童手当の拡充につきましても、まさに雇用、保育、教育、住宅と幅広い総合的な分野から、これも一つの柱として御提案をいたしておるところでございます。
#153
○西川きよし君 次にもう一つ、今度は「少子化対策の基本的問題について」というのを、これは七十歳の方なんですけれども、読ませていただきます。男性の方です。
  少子化が問題視されているが、そもそも、男・女の結婚が、晩婚化し、一方では、女性の職場進出、働く者の増大、又、職業婦人となると結婚はしたくないとか、人間個人のエゴも原因となっている。
  少子化が進行すると国の将来の発展にも大きく影響することは否めないが、少子化対策として、今、検討あるいは実施されている施策は、あまりに、家庭や個人の自助努力や自立を阻害しており、まさに過保護と思われる。
  子どもを生むことは、結婚することと共に個人の自由であろう。
  しかし、子どもを生んだ以上、親が責任を持って、育てていくのが当然であると思う。
  子どもを育てなくて、母親が働きに出るのは、ただ自己の収入のみを求めて、子どもはほったらかしということになる。母親が働き家計を助けるのも程度問題であろう。
  保育所へは、働くために入れたいということになれば、結局は、子どものめんどうは、他人にまかせることになり、母親が得た収入の目的は、結局、少しでも裕福な暮らしをしたいという欲望の表われとなる。
  結婚して、夫の収入だけで生活する自助努力の精神が薄れてきたことは、事実だと思う。
  そうでなければ、夫の価値も半減してくるし、子どもも母の愛情を受けとめられなくなる。一方では、母親は、当然働くことがつとめという考えにつながる。
  保育所も、増やす必要はなく、自分の子どもは、自分の力で育てるのが当然であるので、児童手当の増など考える必要もないのではあるまいか。
  余りに過保護政策は、問題である。
  貧しくても親子の共生こそ、今の時代に要求されるのではないか。
  又、政府や自治体が、助成してくれるのが当り前、もらえるものは、少しでも多い方がよいという。もらい根性の助長こそいましめなければならない。
  総選挙前の飴与えに終ることなく、十分検討されるべきである。
  少子化は、日本国民自らが招いた得策である。少子に対して、貴重な国費から助成するのでなく、抜本的に少子化になったらなったで、もっと「抜本的」な施策を考えるべきだと思う。
七十歳の男性でございますが、抜本的な部分を考えろということですが、いかがでしょうか。
#154
○国務大臣(丹羽雄哉君) 子育てにつきましての親の責任であるとか役割が重要であるということでございますが、私もその点におきましては全く同感でございます。
 その一方で、現在の我が国の社会状況を見ますると、いわゆる固定的な性別の役割分業を前提といたしました職場優先の企業風土であるとか、あるいは核家族化、さらに都市化の進行などによりまして、子育てや子育てと仕事の両立の負担感というものが大変増大しているということもまた紛れもない事実でございます。
 こうした中におきまして、子育てについては、基本的には今この方のような要するに自分の力、自分でまずきちっとやるということでございますけれども、これは当然のことながら、こういったような社会状況というものを踏まえながら、例えば保育対策の充実であるとか、あるいは今回御審議をお願いいたしております児童手当の拡充、こういうもので社会全体で子育て家庭を支援する、こういうことがまた必要になってきているのではないかと、こう思っております。個人がその責任を果たせるような仕組みを社会全体でも同時に進めていくということもこれもまた必要なことではないかなと、こう思っておるような次第でございます。
#155
○西川きよし君 ありがとうございました。
 最初が三人の子どもを育てた五十八歳の主婦の方、そして今七十歳の男性の方、皆さん納税をされて、そして自分の思い思いのことをこうして取り上げていただいて、本当に私も大変いい参考にさせていただいておりますが、ここでは一歩も二歩も先に進んだ議論が闘わされているわけですけれども、皆さん方はこういうふうに正直なところ思っていらっしゃる。
 こういうところに一つ質問させていただいても不思議で悩むところもあるわけですけれども、最後は静岡県の四十四歳の働いていらっしゃる女性の方ですけれども、
  少子化はやむをえない 元旦の新聞に今年、新成人が百六十四万人になり、二〇〇五年百四十八万人、二〇一〇年百二十万人前後に減少すると書かれていた。
  私事だが子供が二人いる。去年と来年に成人式を向かえる年齢だ。我家は五年前に家を新築し、子供は他県の大学に行っている。仕送り等、お金の面でかなりギリギリである。去年の一月から上の子の国民年金を払っているが、今年の十月から下の子も払わなければならなくなり、何かと親に負担がくる。はっきり言って、三人以上子供がいたら生活していけないように感じる。私の回りでも、同じような環境の人は、みな同じことを言っている。
  中流でいたい気持ちが強ければ少子化にならざるをえない。今の世の中、家を建てて、何人も子供を育てることは難しいのだ。正社員の地位ですら危うい時代でもあり……。
  私は将来、少子化ばかりでなく、結婚しない人も増えるように感じてならない。
こういう御意見を今読ませていただいたわけですけれども、もう時間もございませんけれども、今これをお聞きいただきまして、この児童手当等々、年齢の問題、そしてまた税の問題、今のこの御意見、トータルでひっくるめまして、最後に大臣に答弁をいただいて、終わりたいと思います。
#156
○国務大臣(丹羽雄哉君) 結婚をするとか子供を産むとか、こういった問題につきましては、私どもかねてからあくまでも個人の自由であるということを申し上げてきたわけでございます。
 ただ、率直に申し上げて、さまざまないわゆる社会的な状況の変化によって結婚をしないとか子供をつくれないとか、そういうものについては私どもは社会全体の中でお手伝いをしなければならない、こういうような観点でございます。
 いずれにいたしましても、この委員会の審議を通じましてさまざまな御意見が出されておるわけでございますけれども、今、出生率が一・三八でございますか、昭和二十二年はたしか四・五四でございました。ですから、私どもの兄弟などは四人、五人、六人という方が、先ほどの話じゃございませんけれども、少なくなかったわけでございます。だんだんだんだん少子化になってきた。
 その要因というのはどこにあるのかということを私どもはいわゆる少子化対策の中で十分に分析をしながら、さまざまな、先ほどから申し上げておりますような雇用であるとか教育であるとか住宅であるとか、そしてこの児童手当もその一つの重要な柱として挙げさせていただいておるわけでございますが、何をもって、すぐにこれがどうのこうのという話ではありませんけれども、先ほどのお話の中にも北欧の国の中では非常に一時は下がってきたけれども上がってきたと、こういうような状況もあります。
 やはり、若い方々がふえていくということは大変すばらしいことでございますし、お年寄りにも長生きをしていただかなければならない。その一方で、若い方がふえていくということはその国の活力を増すことでございますし、現に私どもの担当いたしております、また御審議をいただいております社会保障というものは、世代間の支え合い、年金にいたしましても医療にいたしましてもそういったような側面があるわけでございます。こういった社会保障の充実のためにも、やはり適正な人口規模と申しますか、若い方が産み育てられるような環境をつくっていくということが大変重要なことではないかな、こう認識をいたしておるような次第でございます。
 今回の法案につきましては、そういったような観点から総合対策の一つの柱として提出をさせていただいた、こういうような経緯があるわけでございます。正直申し上げて非常に難しい問題でありまして、これをしたからすぐにどうなるとか、あれをしたからどうなるとかという問題ではなくて、国全体で、社会全体でこういった問題に取り組んでいく姿勢ということが今何よりも求められていることではないか、このように考えているような次第でございます。
#157
○委員長(狩野安君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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