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2000/03/28 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 財政・金融委員会 第8号
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2000/03/28 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 財政・金融委員会 第8号

#1
第147回国会 財政・金融委員会 第8号
平成十二年三月二十八日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十七日
    辞任         補欠選任   
     櫻井  充君     福山 哲郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         平田 健二君
    理 事
                中島 眞人君
                平田 耕一君
                寺崎 昭久君
                海野 義孝君
                池田 幹幸君
    委 員
                岩井 國臣君
                片山虎之助君
                河本 英典君
                世耕 弘成君
                中島 啓雄君
                林  芳正君
                日出 英輔君
                伊藤 基隆君
                久保  亘君
                福山 哲郎君
                浜田卓二郎君
                笠井  亮君
                三重野栄子君
                星野 朋市君
                椎名 素夫君
   国務大臣
       大蔵大臣     宮澤 喜一君
   政務次官
       大蔵政務次官   林  芳正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉田 成宣君
   政府参考人
       沖縄開発庁総務
       局長       玉城 一夫君
       大蔵省関税局長  渡辺 裕泰君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(平田健二君) ただいまから財政・金融委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨二十七日、櫻井充君が委員を辞任され、その補欠として福山哲郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(平田健二君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 関税定率法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に沖縄開発庁総務局長玉城一夫君及び大蔵省関税局長渡辺裕泰君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(平田健二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(平田健二君) 関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○伊藤基隆君 おはようございます。
 伊藤でございます。
 本法案には賛成の立場を表明しておきまして、きょうはバブル後の景気対策について少し整理を図りまして、大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
 もう十年になろうとするわけでございますが、バブル期からこの間の流れは一定の法則のもとに流れてきたように私は考えております。バブルを伴って五十一カ月続いた平成景気と言われているものが九一年二月を山に後退局面に入りまして、通常の景気循環要因にバブル崩壊の影響が加わって長期化、深刻化することとなりまして、現在でもその苦悩が続いておるわけでございます。
 月例経済報告で景気調整局面入りを認めたのは九二年の二月で、九二年三月に緊急経済対策で公共投資前倒し等が決定されまして、その後、夏にかけて株価が一万四千円台まで下落したわけですが、九二年八月に史上最大と言われた事業規模十兆七千億円の大方の予想を上回る総合経済対策が出されました。九三年度には三回の景気対策が打ち出されまして、四月に総合的な経済対策の推進についてで十三兆円、九四年二月に総合経済対策で五兆円強の所得減税を含む約十五兆円と、史上最大が更新をされたわけでございます。
 この間、景気は九三年十月を谷に回復に向かいますが、回復の足取りは極めて緩やかなもので、九五年に入ると、阪神・淡路大震災や一ドル八十円という急激な円高の影響で景気は足踏み状態となって、四月に緊急・円高経済対策、九月に事業規模約十四兆円の経済対策が行われました。
 公定歩合は九一年以来九次にわたる引き下げで史上最低の〇・五%という状況になりまして、金融政策の限界である超低金利政策、ゼロ金利政策という異常事態が今日まで継続されております。
 こうした景気対策の効果もあって、九五年度の経済成長率は四年ぶりに三%成長を取り戻しまして、九六年度は消費税引き上げ前の駆け込み需要の影響もあって四・四%の成長となりました。
 しかし、九七年四月に消費税引き上げが実施されますと、駆け込み需要の反動による消費の冷え込みと、たび重なる景気対策による赤字国債発行が恒常化し、それを脱却するために選択しました経済構造改革路線が重なったため、九七年度には景気は再び後退局面に突入し、さらに十一月の大手金融機関の破綻、金融システム不安で景気は最悪の状況となりました。
 このため、再度の景気対策が必要となりまして、九七年十一月に規制緩和等を中心とした二十一世紀を切りひらく緊急経済対策、九八年一月に金融システム安定化のための緊急対策として三十兆円の公的資金の活用を可能にする措置の決定が行われ、二月に特別減税の実施、四月に事業規模十六兆円の総合経済対策が打ち出されたものの、景気回復が展望されないで、七月の参議院選挙で橋本内閣が退陣をいたしました。
 小渕政権により財政構造改革法が凍結されまして、二匹のウサギを追わずに景気回復を最優先するために、九八年十一月に緊急経済対策二十四兆円、九九年十一月に経済新生対策約十八兆円が追加されました。さきに成立した来年度予算はこの路線の集大成であるというふうに私は見ております。財政赤字の拡大が今後の大きな課題となっています。
 ずっと並べました緊急経済対策、史上最大規模が続いてきた。整理しますと、一貫してそういう状況が続いてきたということをうかがい知ることができるわけであります。これが十年の流れだと思います。
 私は、バブル崩壊後にとられたこれらの景気対策は、全く効果がなかったというのではなくて、景気の下支えを懸命に行った、政府の懸命な姿勢というものはあったかというふうには思います。しかし、たび重なる景気対策が民間需要を喚起して自律的な景気回復を定着させることには成功しなかったわけでありまして、その意味では失敗をしている、構造的な失敗ではないかという批判があるわけであります。
 バブルの後遺症の大きさ、また過大な債務を抱えた企業のバランスシート調整とか不良債権処理のおくれから金融政策の有効性が低下しているということについても挙げなければならないかと思いますが、景気の動向を見誤って財政再建路線を重視する余り、景気の腰を折ってしまった政策判断ミスも大きな原因の一つだというふうに思います。
 これは橋本内閣における判断ミスということを世上言うわけですけれども、日本の財政状況はずっと悪化していましたから、大蔵省の行政態度といいますか、行政の基本姿勢として第一義的に財政再建路線をとる、これが最優先されているという伝統があるんじゃないかというふうに思っています。プラザ合意からバブル発生の間における政策の判断ミスということについては、さきの特別委員会か何かで大蔵大臣の見解もお聞きしましたけれども、そういう伝統的な財政再建最優先主義というものがあったのではないか、これが政策の判断の間違いにつながったんじゃないかというふうに私は思います。
 財政再建も視野に入れた中でのたび重なる景気対策は、補正予算を組み、公共投資の追加とか公的金融機関による融資拡大という手法が中心となってきたわけでございますが、まず大蔵大臣にお伺いしたいのは、本年度は補正予算を組むことをお考えかどうか、その可能性について、さきに否定されておりますけれども、ここで改めてお聞きしておきたいというふうに思います。
#7
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもの大変関心の深い問題を御提起になっておるわけでございますので、それにつきましてもちょっと触れることをお許しいただきたいと思いますが、今、伊藤委員は十年間を回顧せられました。
 私自身は、いつの日にか、過ぎ去ったその十年、私は一九八五年プラザ合意からすることがいいのではないかと思いますが、大変にいい何年間かがあり、次に悪夢のような何年間、やがてこれはデータが集まりましたときに学問的な意味での回顧を必要とする十五年間であったと私は思っております。まだ我々はそこから脱出しておりませんので客観的に見れませんし、またそれだけのデータも十分ではございませんが、必ずそうしなければならない十五年間であった、あるいは伊藤委員のお言葉をかりれば十年間であったと思っております。
 それで、私自身は、そのうち小渕内閣が発足いたしましてから一年七カ月かかわってまいりましたが、大変率直に申しまして、この仕事を一年七カ月前に始めましたときに、日本経済が持っている不良債権あるいは不良資産、これは官にも民にもあるわけでございますが、その深さというものが全く自分にわかっておりませんでした。
 比喩的に申しますならば、とにかく財政を総動員してこれを脱却したい、そして民需につないでいきたいけれども、このヘドロのような中へどれだけコンクリートパイルを打ったら基礎ができるかという計算は何にもわかっておりませんでした、実は今でもわかっておらないわけでございますけれども。経験的に、とにかくあらゆるものを動員してパイルを打って打って、さてそこでようやく基礎ができて、その上で民間の経済活動が動き出すかどうか、どれだけすれば、どれだけ時間がたてばそうなるかということが正直言ってわからずにやってまいったわけでございます。
 したがいまして、そういう努力がむだではなかったか、全くむだだと言っていらっしゃるのではありません、もっと効率的にできなかったか、まだ成功していないのではないかとおっしゃることは、私はそうかもしれないと、その点は素直に自分も毎日思っていることでございますので、思います。
 ただ、先般、十―十二月のQEの中で設備投資が初めてプラス四・六%になりましたことは、私にとっては実は非常に希望の持てることだと思っております。十―十二が非常に悪うございましたから全般的によくないという評価になっていますけれども、初めて設備投資が表面に出てきた、水面にあらわれたということの意味を私は非常に大事に考えております。
 御承知のように消費はよくございません。これはこれだけのリストラをやりますとある程度覚悟しなければならないことでございますが、それにもかかわらず設備投資がプラスになってきたということは、これは消費と違いまして一度顔を出しますと、頭を出しますと何期かは続くのが普通でございますので、これで先が見えたような思いがいたしておるわけでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたように、これらのことは何年かたちましてこの十何年を回顧した中で正確にはわかってくることで、今私が申し上げていることもまた結果として全く間違っているかもしれないという危険は存在しているわけでございますけれども、そういうふうに判断いたしております。
 大変長くなりましたが、十二年度予算を新年度から執行してまいります中で、この中には御承知のように金融危機についての終止符を打つ、あるいは公共事業についても前年度と同じだけのかなり多目の計上をしてございます等々から、私としてはこの予算をもって従来の景気刺激的な対策を一応正常化したいと考えてまいりましたし、また経済の動きもそういうふうに展開する可能性がかなり高い、こう考えておりますので、例えば公共事業につきましても、従来前倒しを続けてまいりましたが、この十二年度にはいわば自然体の執行を基本的には考えたい、事態が変わりますれば改めなければなりませんが、そういうふうな思いでございます。
 したがいまして、その展望が誤っていなければ、これが御質問のところでございますが、秋になって大きな補正予算を組む、昨年度も一昨年度もそうでございましたが、そういうことをせずに、やがて民需に経済の動きがバトンタッチできる、そういう状況が展開するのではないか。間違っているかもしれませんが、そういう公算が高くなったと考えております。
 したがいまして、もしその見通しに誤りがなければ、大変高い金額の国債を発行することになっておりますが、今年度補正によってそれがさらに上積みをされるということは避けることができるであろうし、またかなりたくさんの先ほども申しましたような景気刺激的な要素あるいは金融安定化の要素は、これはそうなりますれば十三年度には必要のないことになってくるはずでありますから、十三年度は国債の発行額を減らすことができるであろうというような、幾らか希望的でございますが見通しを持っております。
 したがいまして、ただいまの御質問に対しましては、平成十二年度の秋に大きな補正予算を組む必要があるかないかと。今といたしましてはそういう必要がないような経済運営が可能ではないか、そうなればそういうことをする必要がないということを私といたしましては考えております。
#8
○伊藤基隆君 今の答弁を聞いておりまして、私たちは野党でありますから与党と激しく争うわけでございますが、国という立場から見たときにはそうなることをだれしも望んでおるわけでございまして、財政再建というのは大変重要な至上命題であることは間違いございません。十―十二のQEの中で設備投資がプラス四・六%というのは、泥の中にアンカーを打ち込んでやっと下の岩盤に着いたかという大蔵大臣の感想はよくわかりまして、私もその点は、ああ、やっとそこまで来たかという感じは持っております。
 さきの予算委員会で、実は大蔵大臣が、正確にどういうふうに言ったかは覚えていませんが、日本の国力ということについて、国民の資産、千二百兆とも言われている資産、それとGDP、それから公債残高、これを見たときに、日本の底力というか基本的な力はあるんだと、それがゆえに楽観的でもあるんだということを言いまして、公債残高に対する批判が大変厳しい中での大蔵大臣の答弁として私は注目して聞いたわけでございます。
 これは現実的ではないかもしれませんけれども、一つの家庭の財政から見たときに、年間六百万円の収入があって、これはちょっと低いんですが、六百万円の借金があって、しかし千二百万円の貯金があるというものなんだと、国力の基本は。
 この国力の基本はいつかまた大蔵大臣の御意見をお聞かせいただくチャンスをとりたいと思っているんですけれども、日本の国力の基本にそういう力があって、しかしそれが、例えば国民の資産というものがアメリカの景気動向によって危うくされないかということは常にあるわけであります。
 さらに、日本の国力の基本は製造業だと私は思っていますから、製造業が耐久資材よりは機械とか原材料の輸出が圧倒的に多いんだ、八割方そうなんだという状況を見ると日本の製造業の実力のほどが知れるわけでございますけれども、それが設備投資に転化を始めたと。
 しかし、一方でその製造業の力の源泉の一つに安定した労使関係というのがあって、そのことが過度のリストラということがもしあったとすれば崩壊しかねない。これは製造業が再び力を復活させるときに力をそぐものになりはしないか。
 自民党の一部から労使関係に介入するような政策上の発言がありますけれども、何もわかっていないんじゃないかというふうに私は思います。製造業は経営者だけで成り立っているわけじゃなくて、中小企業から大企業に至る労使関係の安定というものが非常に大きいわけでありますから、技術革新ももちろんありますけれども、そういうことが今後設備投資がプラスに転じたということをさらに固めていく上で不安要因になりはしないか。
 さらには、社会的な安定の問題で、治安が悪化している。警察の問題も出てきました。福祉に対する展望が、年金、医療、介護等について、特に年金が今、国会の中で争いになっているわけですが、この展望が国民の中に安定要因を見出し得ないんじゃないかというような問題。
 さらには、財政と金融の分離の中で、金融政策、金融再生委員会、金融監督庁のやっていることが、先般の手心発言はもってのほかでございますけれども、全体的にはきちんとやってきたけれども、それは財政とか国とか社会のらち外ではないんですが、金融監督に特化し過ぎているための不安要因が出てきやしないかというようなこともあって、私はかねてから財政と金融は一体であるべきだという主張を党内でもしていて、少数意見なんですけれども、ならば今度内閣府にできる金融をコントロールするシステムが有効に働くかどうかという問題もありますが、そういうときに、今、政府は財政と金融両方の政策のコントロールを強力に、総理がやるのかある委員会がやるのかわかりませんけれども、やらないと、せっかくの回復基調に持っていくことが不可能になるんじゃないか、あるいは日本の国力を失うことになりはしないかというようなことも実は考えておりまして、これは質問通告していないんですが、今の大蔵大臣の御答弁をお聞きしていて、ふと、日ごろから思っていることをしゃべりました。
 何か御所見をお伺いできればと思っています。
#9
○国務大臣(宮澤喜一君) 前段のお話でございますけれども、アメリカの連銀のアラン・グリーンスパンが私によく言うことでございますが、かつて一九九〇年代の初めごろに年率一%であったアメリカの生産性というものはしばらく前ですけれども四%ぐらいまで来ている、今はもっと来ているのかもしれませんが。彼はその一つはインフォメーションテクノロジーであると言いますが、もう一つの原因は労働の流動性であると。ただし、すぐに言いました、これは君の国とは違うねと。私は違うと言っておるわけです。
 つまり、一種のレイオフによるああいう社会のあり方そのものを我々はまねをするつもりもないし、まねをすることも恐らくできない。しかし、我々は我々で、労働のモビリティーを我々のやり方でやってきたし、同じことをするとは言いませんけれども、アメリカのようなやり方を我々はそのまますることは恐らくないであろう。
 それは伊藤委員が今おっしゃったことと結局同じことでございますが、社会全体の連帯性というもの、あるいは労使関係とおっしゃいましたからそれでもいいんですが、それは我々はアメリカ流になることを志向しているのではないと私は思っております。ですから、そういう意味で、物をつくるということのこれからの意味、またそれをバックアップするところのいろいろな体制について、我々はアメリカと同じ道を歩むわけではない。
 殊に、バックアップする、その前段のことで言いますれば、いろいろレイオフがありまして、ことしの労使交渉も終わりに近づいていますけれども、一つ私が気がついておりますのは、昨年の夏ごろには失業率が五%に近づきました。間もなく五%を突破すると言われましたけれども、実際にはそれから多少好転に向かっていまして、現実には常雇用からテンポラリーな雇用に変わっておりますから賃金水準は下がっていますけれども、完全失業の数字はあるところでとまってきたというあたりにいろいろ我が国なりのアメリカと違った労使の関係が働いているんではないかと思いますし、最近、有効求人倍率が少しよくなっておるというところもあるいはそうであるかもしれない。十分ではないけれども、日本は日本なりのそういう対応の仕方をしながら、しかし旧態依然であるわけではなくて、多少時間がかかっても我が国なりの対応をするのではないか。
 そこへいきますと、おっしゃいますように、いわゆる社会保障についての基本的な国民のコンセンサスが生まれていないということは非常に気になることでありまして、一つ一つの施策がばらばらに議論され、しかも全体として、国民全体がどのぐらいの給付とどのぐらいのコストの水準でコンセンサスが生まれるかということがいまだにわかっていないということは非常に不安なことでございます。しかし、我が国の雇用といいますか国のあり方というのはアメリカのようになることは私はないであろうと。日本なりの対応をして二十一世紀に向かう。
 そういう意味で、明らかにアメリカのようにスピーディーにはいっていませんし、今のところ、給与等々についてややカットがあるというようなことはもう、しかしだからといってアメリカほど貧富の差が逆にそこから生まれるような動きをしているわけではないはずでございますから、そういう意味で日本は日本の道を歩くのであろうと。
 最後に金融の話をされまして、考えてみますと、戦後依然として我が国の金融というものは銀行を中心に行われておりました。間接金融である。国民の資産もほとんどが貯金であって、エクイティーキャピタルを持っているということは非常に少ない。それは多少伝統的な教育もあるかもしれません。貯金、貯蓄は大事だが投資をするということはどうもという二宮尊徳どまりのところがございまして、どうもその問題もあるかもしれないと私は思いますし、あってほしいと思いますので、今までのような銀行のあり方が今後とも続くのではないし、また続いてはいけないだろうというふうに思っておりますが、これはこれからのことであろうと思います。
#10
○伊藤基隆君 今年度の補正予算についての考え方をお聞きいたしました。
 補正予算で毎年大幅に積み増しするという手法は計画的、継続的な公共投資の実施を実は困難にしているのではないか。社会的なさまざまな投資がまだ不十分だということも政府は言いますけれども、補正予算積み増しの手法がそのことを妨げている面もなくはないというふうに私は思います。
 それは、過去五年間の決算で公共事業関係費の不用額、つまり使い残し金額と翌年度への繰り越しを調べてみますと、平成六年度、九四年度決算で不用額九十四億円、繰越額一兆五千九百九十三億円、七年度決算で不用額四百九十億円、繰越額二兆九千七百二十九億円、平成八年度決算で不用額七百四十八億円、繰越額一兆七千七百五十四億円、九年度決算で不用額百八十四億円、繰越額一兆二千百五十二億円、平成十年度決算で不用額百八十億円、繰越額三兆百八十四億円となっております。九三年度以降、決算額が予算現額を大きく下回っておりまして、毎年多額の予算が執行できず、これが繰り返されていたことになります。
 この背景には、公共投資の実施主体の多くは地方で、九六年度の政府投資の中央、地方別の割合は地方が七四%ということでございますが、国が補正予算で補助金をつけても地方が対応できないという問題が指摘できるのではないかというふうに思います。また、補正予算による公共事業関係費の追加を繰り返した結果、補正後の前年度予算額と翌年度当初予算額とを比較すると、新年度当初では公共投資額が前年度実績を下回るために、一時的にはむしろ需要抑制効果を持ってしまったのではないかというふうにも考えます。
 このように、補正予算によるストップ・アンド・ゴーの景気対策は結果としてたび重なる史上最大といううたい文句ほどの効果を生まなかったのではないかというふうに考えられます。また、公共投資が緊急に追加しやすいプロジェクトに向けられ、結果的に非効率な面あるいは民間需要に結びつきにくいものに対して行われたという問題もあろうかと思います。
 今年の初めに、梶山静六元官房長官が週刊誌上で小渕政権の経済政策を批判しました。「戦略上、最も愚劣な戦力の逐次投入をやめ、ここぞという分野に集中して徹底的に資金を投入していくべきです。」と、いかにも元軍人らしい表現を使っておりますけれども、過去の景気対策がその景気対策のとり方の誤りによって民間の自律的回復に結びつかなかったのではないか、景気の下支えには役に立ったにしても自律的回復に結びつかなかった政策上の問題があるんじゃないかというふうに考えますけれども、大蔵大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
#11
○国務大臣(宮澤喜一君) 公共事業につきまして私ども反省していることは幾つかございまして、その一つは内容が依然として旧態依然たるものであるということであります。
 この点は前にも申し上げましたが、昨年の秋ごろから四つの目標、第一は構造改革的な部分、第二はいわゆる少子高齢化対策、第三は環境、第四は情報通信でございますが、いわゆるミレニアムの中でそういう四つの大きな重点的な配分をし、また従来の配分もそれに従って整理をいたしてみますと、大体九兆余りの二割余りはそういう方に入ってきている。これからこれは伸ばしていかなければなりませんが、そういう反省をしたり、時間がかかってなかなか効率のいかない古い公共事業を既に廃止、中止したりいろいろいたしておりまして、これはこれから我々の努力の要るところでございます。
 しかし、そうではありますけれども、日本のインフラストラクチャーというのはもう公共事業が要らないというほど十分ではない。我々の郷里からの、お互いにそうでございますが、希望というものもかなりそういう部分が多いことがそれを示しておるし、また都会には都会なりのニーズがあるわけでございますから、私は公共事業が要らなくなった日本というものではないと思っておりますけれども、そういう反省点がございます。
 それから第二に、秋に大きな補正を組むということが現実に不可避だと考えますと、当初の予算の査定というものはおっしゃいますように影響を受けます。どうせ秋にまたしなければならない。及び、今の予算編成でいいますと、当初予算にはシーリングというものがございますけれども補正にはシーリングというものはないわけでございますから、いわば我々の社会が自分でつくったルールを補正という形で逃れるような大変奇怪なことになっておりまして、これはそれなりの弊害がございます。
 殊に、今おっしゃいましたように、地方財政がこうなりましたので、単独というものに全く期待ができないということにもなります。これは地方財政の問題としてもう本当に取り上げなければならない焦眉の問題になってまいりましたが、そういうこともございます。
 それらのことで、大きく補正に頼ってやってきたやり方というのはできるならば脱却をいたしたい、今回それができればということを心がけておるわけでございます。
#12
○伊藤基隆君 財政問題等に対する質問はまだたくさん用意したんですが、時間の関係で終わりにいたします。
 関税局長においでいただいているので、税関の人員問題について関税局長の考えをお聞きします。
 この委員会でも二回ほど大蔵大臣に御質問申し上げて、前向きの御答弁をいただきました。昨年は行財政改革・税制特別委員会で林政務次官にもお聞きして、前向きの御答弁をいただいております。総務庁長官にもそのような答弁をいただきました。さきの予算委員会でも同じ質問を大蔵大臣、総務庁長官、その他の大臣にもいたしました。
 私は労働条件問題でこの問題をお聞きしているわけではなくて、その面もなくはありませんけれども、社会的問題、特に日本の治安とか青少年問題の根幹をなす重要問題として対応しなきゃならないんだということでお聞きしています。
 財政・金融委員会の地方視察の中で税関長からの話を聞いていると、つくづくそのことが重要な政治課題というか社会的課題だというふうに思っております。現場は関税局長を頼りにしているわけであります。関税局長がどういう頑張りをするか。大蔵大臣が前向きの答弁をしても、関税局長が減ってもやむを得ないということだったらそれは対応できないわけであります。きょうは初めてお会いしますので、関税局長の考え方をぜひお聞かせいただきたいと思います。
#13
○政府参考人(渡辺裕泰君) 覚せい剤、麻薬等との関連で今後の人員をどうしていくのかというお尋ねでございます。
 先生御存じのとおり、近年、第三次覚せい剤乱用期、こういうふうに言われております中で、覚せい剤、麻薬等不正薬物の問題が深刻化をしております。
 税関におきましては、不正薬物の国内流入を水際で阻止するということを最重要課題の一つとして位置づけて、警察、海上保安庁等関係取り締まり機関との連携を強化しながら積極的な取り締まりを実施しております。その結果、昨年の水際における不正薬物の押収量は約二・二トンとなっておりまして、過去最高を記録いたしました一昨年の押収量の約二・五倍になっております。また、過去五年間におきます不正薬物の国内押収量全体に占めます水際での摘発の割合は六割台か七割台程度というふうになっております。
 このような状況に対しまして、税関としましては、薬物乱用防止五カ年戦略にのっとりまして、一つは情報収集、分析の強化を図っております。これは各国税関当局との情報交換、分析を行うための連絡事務所、RILOと申しておりますが、それの我が国誘致、そういうようなこともやっております。
 それからまた、麻薬探知犬、エックス線検査装置の増配備など取り締まり検査機器の整備も図っております。来年度はコンテナ全体を一遍に検査できる大型エックス線検査装置を初めて導入する予定でございます。
 それからまた、地方港を含めました広域的、機動的な取り締まりや警察、海上保安庁等との合同取り締まりの積極的な実施など取り締まり職員の効率的活用等の対策を積極的に講じまして、取り締まり体制の強化を図っております。
 それからまた、法制面におきましても、現在御審議をお願いしております法律の中で不正薬物の密輸入に対する罰則の引き上げ、これをお願いしているところでございます。
 今後とも不正薬物の流入阻止のために水際取り締まり体制の一層の強化に努めてまいりますとともに、先生がおっしゃいました必要な定員につきましても、その確保に向けて引き続き全力を挙げてまいりたいと思っております。
#14
○伊藤基隆君 終わります。
#15
○海野義孝君 海野でございます。
 いよいよ沖縄のサミットも四カ月足らずになりました。先週末のお休みを利用されて総理も沖縄に行かれてつぶさに視察をされ、またいろいろな御発言もあったわけでございますけれども、私も一月に沖縄県へ委員派遣で視察に参りまして、経済界、産業界あるいは財界、金融界等々からもいろいろなお話をお聞きしました。
 沖縄県の経済の振興という問題は私は大変重要な問題だと思うわけでございますが、そういったことで、沖縄経済振興に関連しまして、いわゆる沖縄型特定免税店制度につきまして、わずかな時間でございますのでこの点に絞ってお伺いしたいと思います。
 平成十年度に創設されました沖縄県から出域をする旅客等の携帯品に係る払い戻しの制度、この根拠法は何であるか、まずお聞きしたいと思います。
#16
○政府参考人(渡辺裕泰君) お答え申し上げます。
 沖縄型特定免税店制度は沖縄振興開発特別措置法第十八条の八及び関税暫定措置法第十条の四第一項の規定に基づくものでございます。
#17
○海野義孝君 今おっしゃった根拠法である関税暫定措置法第十条の四でございますけれども、これの法制定の目的についてお聞きしたいと思います。
#18
○政府参考人(渡辺裕泰君) 目的を一言で申し上げますと、沖縄県の観光業の振興を図るためということだと思います。
#19
○海野義孝君 沖縄型の特定免税店制度、これのあらましといいますか概要について簡単に教えてください。
#20
○政府参考人(渡辺裕泰君) 沖縄型特定免税店制度は、現行の観光戻税制度の対象となっております物品以外の物品で沖縄に輸入されたものにつきまして、沖縄県から沖縄県以外の本邦に出域する旅客が、税関長の承認を受けた小売業者、具体的には特定免税店でございますが、から購入し携帯して本邦に出域してまいります場合に、一人当たり二十万円の範囲内で関税に相当する金額を差し引いた価格で購入することができるというものでございます。
#21
○海野義孝君 そこで、沖縄型の特定免税店、これはたしか昨年第一号店がスタートして、その後どういう状況になっているかわかりませんけれども、その免税店の状況につきまして教えていただきたいと思います、これまでの営業状況。
#22
○政府参考人(玉城一夫君) お答えを申し上げます。
 この沖縄型特定免税店でございますが、那覇空港の本館の二階にそれぞれ百五十平米、二カ所指定をいたしまして、十二月十七日から営業を開始しております。
#23
○海野義孝君 今のお話ですと、昨年の十二月の半ばに第一号店が認可されて営業を開始したということでございますけれども、その後の免許の状況あるいは今後の見通し、これについてはいかがでございますか。
#24
○政府参考人(玉城一夫君) 確たる数字を持ち合わせてございませんが、日本航空側と全日空側にそれぞれ一カ所ございまして、いずれも一日当たり大体五十万から六十万ぐらい、両店で約百万円の売り上げが今出されております。
 ただ、当初の予定よりは大分、二〇%程度ということで予想ほど伸びていませんので、沖縄型特定免税店、また実際に販売業務をやっておりますトクメン沖縄におきまして、品ぞろえなどを含めまして今販売の拡大に向けて努めているという状況でございます。
#25
○海野義孝君 この免税店の観光客への浸透といいますか、さらに売り上げの拡大を図っていく、沖縄の経済の振興のために、観光によっての年々の入域出域が相当ふえているというように理解しているわけで、県民の方々の三倍ないし四倍ぐらいたしか出域もあるというふうに聞いているわけですけれども、そうした中で、取り組み方としてはまだちょっと弱いのではないかなという感じがします。
 観光客等に対するいわゆるPR、こういった面で現在おやりになっていること、それに今後お考えになっていることはどういった点でございますか。
#26
○政府参考人(玉城一夫君) 沖縄開発庁におきましては、この制度の趣旨が十分各方面に理解されますように、パンフレットを作成し配布したり、あるいは講演会等でよく周知を図るように努めてまいりました。
 ただ、株式会社でございますトクメン沖縄などにおきまして、その制度の趣旨が十分活用されますように、まだスタートして半年足らずでございまして、営業努力もしておりますが、これからさらにPRも含めまして一層の努力をされるように私どもは期待しているところでございます。
#27
○海野義孝君 沖縄県としましては、今の特定免税店制度の前に、一九七二年に沖縄県が本土に復帰した際の特別措置としまして、一九七二年から観光戻税制度というのがスタートして今日に至っているわけでございますけれども、これと特定免税店制度との違いはどういった点にあるのでしょうか。
#28
○政府参考人(渡辺裕泰君) 観光戻税制度と沖縄型特定免税店制度との主な相違でございますが、まず観光戻税制度は、沖縄県の日本への復帰に伴います税負担の激変緩和措置として設けられたものであることを踏まえまして、復帰時の本邦と沖縄との税率格差が大きかった一部の品目を限定的に対象として、関税と内国消費税を払い戻すというものでございます。これに対しまして、沖縄型特定免税店制度は、沖縄県の観光業の振興を図るという趣旨を踏まえまして、観光戻税制度の対象物品以外のすべての物品を対象とし関税を払い戻すというものでございます。
#29
○海野義孝君 沖縄の方の調査というか、沖縄の新聞及び沖縄の当局の方からいろいろと教えていただいた状況によりますれば、この観光戻税制度というのは近年その利用が急減してきているということでございます。片や沖縄型特定免税店制度のスタートの状況は大変遅々たるものでありまして、相互にそれぞれ問題点をはらんでいるのではないかな、こういうふうに思うわけでございます。
 先ほど教えていただきました観光戻税制度の品目が八品目ありまして、沖縄型特定免税店における取り扱いの免税品目はそれを除くものである、このように聞いているわけでございますけれども、調べましたら、どうも観光戻税制度における八品目につきましては、いわゆる関税の戻しと消費税とを比較しまして低い方の戻しを行う、こういうことでございまして、消費税が実行されて以降、例えば革製のハンドバッグを初めとしてライターとか万年筆とかべっこう製品とか、こういったものにつきましても消費税の方を払い戻しの対象とするということになりましたから、観光戻税制度の当初の目的から見ると、明らかにこのメリットもなくなってきておると。
 一方、沖縄型特定免税店制度による品目はそれを除くということになりますと、例えば腕時計であるとか高級ハンドバッグであるとかいったものが対象外になるということで、これまた沖縄に観光に行った人たちが関税等のバックによってかなりメリットがあるものが実は使えない、メリットを享受できない、こういう相互に欠陥が出てきているのではないかというふうに思いますけれども、その点はいかがでございますか。
#30
○政府参考人(渡辺裕泰君) まず、観光戻税制度について若干御説明させていただきますが、この制度は沖縄復帰時から大分動いておりますのでかなり複雑な制度になっておりますが、一言で申し上げますと、沖縄が本邦に復帰いたしましたときの日本国と当時復帰前の沖縄の税率格差、この格差額を限度といたしまして関税と消費税をお返しするということで、関税、消費税両方とも返るケースもございますし、それから関税、消費税の一部が返るケースもございます。そういう制度になっております。
 それで、観光戻税制度の対象品目を沖縄型特定免税店制度の対象から除外いたしましたのは、これらの品目が復帰時の税率格差が大きかったということを踏まえまして、沖縄県の復帰に伴う税負担の激変緩和措置として既に戻税制度が設けられておりますことから、制度の重複を避けるというためにこの八品目を外したというふうに考えております。
#31
○海野義孝君 最後の一問として、宮澤大蔵大臣に御見解をお聞きしたいと思いますが、この問題につきましては、今いろいろとお聞きした範囲におきましては、沖縄復帰以後今日までの間に観光戻税制度等が設けられた当時とは状況もかなり変わってきているというお話でございますけれども、せっかく今回こういった免税店制度ができたわけでございまして、もちろんこれは国内線のショップに設置されるわけでして、国際線の場合のデューティーフリーのものとはおのずから違うかとは思います。
 一方は当初の目的が達せられたというか、今日においては急減してきて効果がほとんど出ていない。一方でこの免税店制度がスタートしたけれども、これからが重要なわけです。いよいよ七月二十一日からのサミットを控えまして、多くの人たちが沖縄に注目しますし、また沖縄に出入りするようになるわけですので、この際にお互いの問題を解消する意味で、この観光戻税制度と沖縄型特定免税店制度のメリットというか特典を統合整理する、そういった方向に向かって沖縄の振興のために考え直すべきじゃないか、このように私は思うわけでございますけれども、大蔵大臣、これについて検討する考えがおありかどうか、お聞きしたいと思います。
#32
○国務大臣(宮澤喜一君) お尋ねを伺っておりまして、私が知りませんことをいろいろ聞かせていただいた思いがします。そういうことになっているのかということを、まことに申しわけありませんが、今伺いました。
 どういう理由によるものなのか、またそれはそれなりに何か理屈があるのかもしれませんけれども、どうも実際思ったほどの効果を上げていないというような御指摘で、私も自分でよく聞いてみたいと思っております。
#33
○海野義孝君 最後に一言だけ。大変重要な御発言をされましたので。
 大蔵大臣も沖縄サミットの重要閣僚として行かれるわけでございますので、今申し上げた点についてはしっかりと御検討いただいて、ひとつ前向きの取り組みをしていただきたい、このように思います。沖縄の経済振興のためにぜひともよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
#34
○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。
 私は今回導入が提案されている簡易申告制度をめぐって伺いたいと思います。
 一般論として手続の迅速性、利便性の向上ということは当然あり得ると思うんですけれども、果たして今回の制度が関税法の本来の趣旨とたがうものにならないか、本当にこの制度によってリスクを的確に見きわめられるかが問題だと思います。
 具体的に聞いていきたいと思います。
 まず、衆議院でも議論になりましたけれども、大蔵省は全輸入貨物の半分程度がこの簡易申告制度の対象になると見込んでおられます。関税局長はその中で、決して貨物がノーチェックで引き取りになることはない、危ないと思えば審査、検査を行う、明らかに怪しいものは現場で当然チェックするというふうに言われておりますけれども、果たしてそうかということなんです。
 私、勉強してみましたが、今度の制度の前提となっている通関情報処理システム、NACCSということで、コンピューター処理をするということが前提ですけれども、対象貨物についてコンピューターが審査、検査すべき貨物と判定しない限り現場の税関職員は直接調べる仕組みになっていない。つまり、あらかじめコンピューターにこれは危ないとかおかしいとかという情報がなければ、そもそも税関職員の方が現物貨物を見る仕組みになっていない。どうやって職員の方々が現場で見てこれはおかしい、怪しいと判断できるのか、まず伺いたいと思いますが、いかがですか。
#35
○政府参考人(渡辺裕泰君) 現在どういう場合に検査をしているかというお尋ねでございますが、私どもはハイリスク貨物とローリスク貨物に貨物を分類いたしまして、ハイリスク貨物については重点的な検査をする、ローリスク貨物については検査を極力省略するというのが基本でございます。
 そういう中で、具体的運用におきましては、コンピューターによってローリスクと判断される貨物についてもすべて区分一としないで、区分一というのは審査、検査省略ということでございますが、区分二、文書審査、あるいは区分三、現物検査を出力いたしております。この趣旨は、現在の関税法上はだれでも輸入申告を行うことができ、またローリスクであってもノーリスクではないことから、このような輸入申告をすれば必ず区分一、審査、検査省略が出るといったことがないようにしているものでございます。
 通常はコンピューターの処理に従ってやっておりますが、コンピューターで区分一と出ました場合でも、もちろん職員が過去の経験等に基づきまして、これは検査の必要があるという場合には検査をいたしておるわけでございます。
#36
○笠井亮君 今、区分一、二、三という話もありましたけれども、結局、今の情報処理システムでいけば簡易申告の場合は一という形でいって、そして書類検査、それから現物検査という三分類があると。すべて基本的にはオンラインで処理されるわけですね。
 それで、簡易申告ということになれば基本的に自動的にいくということで、コンピューターの画面の中でこれは怪しいとかおかしいとか情報があって、これは検査しなさいということを言わない限り、職員は貨物を基本的には見ない仕組みになっているんじゃないですか。そこはどうですか。
#37
○政府参考人(渡辺裕泰君) まず、システムを設計いたします折には、必要な審査、検査が確保されるということに留意してシステムをつくっているわけでございます。簡易申告におきましても、輸入申告に対して必要に応じて検査が可能となるようにシステムを設計していくことにいたしております。
 ただし、システムで区分一と出まして、審査、検査省略と出た場合でも、職員が現物を見たときにこれはおかしいな、やはり検査をすべきだという判断をいたした場合には検査をするということがございます。
#38
○笠井亮君 私も現場の方に聞いたんですが、職員の方がたまたま見つけるというのは、保税地域に行ってたまたま見て、これはおかしいと見つけて危ないという、そんなことは本当に例外中の例外のことであって、基本的には自動的にコンピューター処理をしていくということを前提にして、そして区分一ということで簡易申告になれば、これはもう自動的に引き取りはすっといくということが前提になっているから、これは利便性ということでやるんでしょう。結局これは見ない仕組みに基本的になっている。必要に応じてと言うけれども、基本はやらないということで大きく変わるということだと思うんです。
 それで、大蔵省は、これは事前にいろいろ審査する、事後にも調査と言いますけれども、事後の調査があるということで、衆議院でもいろいろありましたが、昨年の場合、輸入者がどれくらいいて、どの程度を対象に事後調査というのをやっていますか。
#39
○政府参考人(渡辺裕泰君) まず、全体の輸入者数でございますが、年間に一千万件を超える輸入件数がございますので、これを輸入者ごとに名寄せをすることが事実上できませんものですから、全体の輸入者数というのは把握いたしておりません。
 ただし、それだけでは事後調査の管理ができませんものですから、事後調査の主な対象として税関が把握しております輸入者数、管理対象輸入者数と私どもの言葉で申しておりますが、それは平成十事務年度で三万八千三百三十九者でございます。これに対しまして、平成十事務年度、平成十年七月から十一年六月において事後調査を実際に行いました輸入者数は四千五百二十八者でございます。
#40
○笠井亮君 そうすると、実際には輸入者数の一割強しか毎年事後調査をしていないと。しかも、問題が判明したときにはもう通関した後ということであります。そして、現場でおかしいと思うような荷物、貨物をとめることができるのかという問題を先ほど申し上げたわけですが、しかも事前のチェックで問題業者を排除する、そして事後のチェックもすると言うけれども、それは課税という観点からの調査に基本的に限られていると。
 私は問題はそれにとどまらないと思うんです。麻薬、けん銃などの社会悪物品の検査という問題がありますが、それと同時に、例えば他省の法令関係、つまり検疫だとか、あるいは食品衛生法などに基づく許可、承認が一方で厚生省とかありますよね。それについてきちっと作業の流れの中で確認等が保証されているかという問題があると思うんです。
 私も関税率表をいろいろ見てみたんですが、例えば陶磁器の皿の場合、これを見てみると、食品衛生法に基づく輸入届の必要な食卓用品も、それから届け出の不要な台所用品その他の家庭用品及び化粧用品も、このシステムの中でいきますと同じ分類コードで分類をされていく、そして流れの中で見ていくということになっています。台所用品として今回の新しい制度の仕組みで年二十四回の実績を積んで輸入する、そして簡易申告の指定を受けた後に、本来ならば届けの必要な食卓用品の皿に変えて届け出をしなくても、今度は自動的に基本的にオーケーになってしまう。
 こういう場合に、品物を基本的に見ない仕組みの中で果たしてそういうことが是正できるのか。税関業務の中でこの辺は非常に重要ですね。これは果たしてできるんでしょうか。
#41
○政府参考人(渡辺裕泰君) 私どもの現在御提案申し上げております簡易申告制度の特徴と申しますのは、現場でできるだけ混乱あるいは不正が起きないように事前にできるだけ貨物を絞り込むということを御提案申し上げております。その点はヨーロッパ等の制度に比べてはるかに厳しくなっております。
 したがって、私どもの言葉で申し上げますHS番号九けたできちっと絞り込む。もちろん絞り込む際には現物も確認させていただき、それからそれについての物も見せていただいてその上で確認するということをいたしておりますので、御懸念のような問題というのは実際には余り起きないのではないかというふうに考えております。
#42
○笠井亮君 絞り込むときは最初でしょう。つまり、最初に見てこれを確定するときは九けたでやるわけですけれども、それを今度の仕組みで年二十四回やれば、そしてちゃんといい業者であるということさえすれば、後は自動的にオンラインに乗っていくわけですから、簡易申告になってしまえばその後も見ないですよね。だから、あるときまでは台所用品ということで入れてきたものだけれども、同じコードですから、二十五回目からは皿になってしまうと。これは意図的であってもなくても、ミスの場合もあるかもしれない。しかし、それは実際としてはチェックできないという仕組みになるんじゃないですか。
#43
○政府参考人(渡辺裕泰君) 同一の分類番号と申しますか、HS番号のもとでも他法令に該当するかどうか判断を要する場合というお尋ねだと思いますが、その場合には私どもは例外的にインボイスを徴収するということが必要だと思っておりますし、そういうことができるような仕組みに現在したいというふうに考えておるわけでございます。
 それからまた、他法令のお話でございますが、他法令の該当物品を簡易申告制度の対象にするかどうかということでお尋ねになっておられますが、私どもが考えておりますのは、いわゆる他法令、他省庁のいろんな規制に関する手続、例えば検疫、食品衛生等々でございますが、これらは簡易申告制度を導入いたしましても、またその対象物品につきましても、今までどおり他法令による検査、審査等をやっていただいて、その後が税関手続でございますので、その後の税関手続を通常申告か簡易申告かにするということで、他法令の手続については簡易申告を導入いたしましても何ら変わりはございませんので、その点の他法令の審査、検査が緩くなるのではないかという問題はないということでございます。
#44
○笠井亮君 厚生省でいえば、審査、検査の省略や形骸化それ自身指摘されております。ただ、今申し上げたような形で、結局、税関のところというのは、そういうことを全部集約的にやって、ここできちっとやるというのがもともとの仕組みでありますから、だから意図的であってもなくても、これは別に食品衛生法に関係する問題、必要ないということで厚生省に出さずに、そして税関のところで簡易申告で通ってしまう。それで、今までと違うことを二十五回目からやるということになった場合、これはそうは言ったって今までチェックできたものができないということになると思うんです。
 これは皿ばかりじゃなくて、例えば子供の玩具にしても、材質を特定し、乳幼児が口に接触するもの、例えば積み木とかお面とかガラガラとかボールとかままごと用具などは本来規制の対象ですけれども、関税率表でいくとほとんどその他のものというふうに分類されてしまうことになると思うんです。
 だから、輸入時の現物確認が大事だと思うんだけれども、簡易申告制度では実際にはチェックできない可能性も出てくる。けさもテレビでトウモロコシの遺伝子組みかえの輸入の問題の現場をニュースでやっておりましたけれども、食料品をめぐってもさまざまな不安や危惧がある。輸入や引き取り時の税関の審査、検査というのはやはり大事なことで、社会悪物品の防圧や取り締まりばかりじゃなくて、他法令との関係でも今まで多面的なチェックをやるシステムというのが基本的にあったということでやってきたと思うんですけれども、簡易申告制度でいうと、過去三年間に違反がない、そして帳簿処理がしっかりしている、担保も出せるということでやっている企業、業者で年二十四回以上同一貨物を輸入しさえすればこの指定を受けられますよね。そうなると、今後もこの業者、輸入者は悪いことをしない、いい業者という前提に立って、後は、これは悪いケースの場合は中身をごまかしたとしても、あるいはミスでうっかりしたとしても、税関のところでチェックできなくなるということが起こるんじゃないかと、私はそこを危惧しているんです。
 大蔵大臣に伺いたいんですけれども、今申し上げたようなことで、国民の健康や安全を守るための水際でのチェックというのを放棄することにつながるということが出てくるのではないかと思うんですけれども、消費者、国民にとってこれが大きな不利益につながりかねないんじゃないかと、その点についてはいかがお考えでしょうか。大臣に伺いたいと思います。
#45
○政務次官(林芳正君) 委員からいろいろ御指摘をされて、また関税局長からもお答えをしておったところでございまして、細かい点に立ち入りませんけれども、答弁でずっと言っておりましたように、簡易申告制度とほかの観点からのいろんなことは別でございまして、あくまでほかのものでいろんな疑いがあれば、それはきちっと今までどおりやるということが原則でございます。そういった意味で、もし一回承認を受けた者が仮に不正を行っておった場合にはちゃんと審査、検査ということでチェックを受けるということになるわけでございます。
 また、審査、検査に区別があるわけではないわけでございますが、いわゆる社会悪、先生がおっしゃっていたようなものに関するものと納税に関するものと分けて考えますと、今申し上げましたように、社会悪物品については従来どおり検査を行うということでございます。
 それからもう一つは、納税のための審査、検査というのは基本的に省略することになっているわけでございますが、これも必要な審査、検査を行う権限が当然のことながら残っているわけでございますから、関税逋脱の疑いがあるというような場合にはきちっと検査をするということになっておるわけでございまして、そういう意味で、この審査、検査を通じて不正な申告をチェックすることは可能であるというふうに考えてこの法案をお願いしているところでございます。
#46
○笠井亮君 貨物について全般的に検査するのは税関以外にないということで、貿易管理上、税関の検査というのは重要な役割を持っているということで、他法令との関係でも、それはもう厚生省は厚生省で食品衛生法の承認とかはあるわけですけれども、にもかかわらず、それがちゃんと証明されているかどうかは一方で税関でやるということがあるわけですね。ただ、私が申し上げたような形で、実際に国民の口に入るもの、あるいは衛生にかかわる問題について、今度簡易にすることによってそれのチェックが薄まるという可能性が起こるじゃないかということなんですよ。
 では、ちょっと伺うんですけれども、例えば国際的調和ということを今度一つの題目として簡易申告制度が導入されておりますが、これはEUモデル、EUなんかでもやられているということで言われておりますけれども、EUのモデルのもとになったとされるドイツでは私が申し上げたような他省法令関係の貨物というのはこの簡易申告制度の対象になっていますか。
#47
○政府参考人(渡辺裕泰君) 他法令の許可、承認の手続でございますが、一つだけ政務次官の御答弁を補足させていただきますと、他法令の許可、承認等の手続、これは現在も輸入許可の要件となっておりますし、簡易申告制度を利用する場合においても、同様に輸入申告、引き取り申告の段階で税関が他法令の確認を受けたかどうかさらに確認をするということで、従来と全く異なるところがございません。
 それから、ドイツについてのお尋ねでございます。ドイツで他法令貨物はどうかというお尋ねでございますが、実は私どもで調査したところ、ドイツには他法令該当貨物という言い方がないようでございまして、どのような種類の貨物が我が国のいわゆる他法令該当貨物に当たるのか必ずしも明らかではございません。
 どういうものを対象にし、対象にしないかということで聞きますと、ドイツでは輸入禁止制限貨物あるいは輸入の都度コントロールすべき物品は原則として簡易申告制度の対象外とされているそうでありますが、最終的には個別の税関が判断しているようでございまして、必ずしも具体的内容が明らかではございませんでした。
 我が国におきましても、引き取りの時点で現品確認が必要となるなど簡易申告になじまない貨物についてはその対象としないということにいたしております。
#48
○笠井亮君 ドイツでは必ずしも明らかでないと。調査団も行かれていろいろ調べられたと思うんですけれども、やはりきちっとチェックしなければいけないもの、先ほど言われたその都度コントロールすべき品物というので、食肉とか武器、兵器、医療製品とかセンシブル製品、成分が絶えず変化する商品などは、これは基本的に対象外としているわけですよ。
 日本でいえば、食品衛生法とかそれにかかわる問題については、これは少なくとも対象外にしないとできないじゃないかと。厚生省は厚生省でやるんだ、だからそれはちゃんと確認するんだと言われましたけれども、先ほど申し上げたように、同じコードで入ってくるわけですよ。二十四回やっていれば、二十五回目以降に違うものを入れてきたとしても、税関の方としては、以前と同じでこれは食品衛生法に係るものでないからチェックする必要がないとなれば、これはもう確認しようがないですよ、そもそも。そんなものは要らないということで通っちゃうわけですから。そこにこの簡易申告制度の問題点があるんじゃないかということを私は申し上げているわけです。その辺はよく研究していただきたい。
 私は水際での検査、審査というのは税関機能の一番の基本だと思います。それで、簡素化とか利便性でこれをあいまいにしてはいけない。やっぱり税関、通関制度の根本改悪につながる問題だということを指摘したいと思います。
 先ほど来ローリスクのものについてはできるだけ簡便にやるんだというお話がありましたけれども、そう言われるならば、ローリスクならローリスクなりにそれに見合う頻度で、必要な人員も確保して、きちっとランダム検査してリスクコントロールをやるべきじゃないかと思いますけれども、その点、最後に大臣に、大きな意味での、きちんとやるべきだという点についての所見を伺いたいと思います。
#49
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどから政務次官と局長から詳しく御説明いたしましたとおりでございますが、行政に当たりましては、御指摘の点は十分注意をいたします。
#50
○笠井亮君 終わります。
#51
○三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。
 改正法案に関連をいたしまして、三項目ほど質問をいたします。
 まず、簡易申告制度の問題でございますが、この制度は関税の事後的納付を認めることによりまして通関の利便性が向上するという点で基本的に評価できるものと考えておりますけれども、この制度につきまして若干お伺いいたします。
 先日の衆議院大蔵委員会での答弁によりますと、大蔵省はこの制度が迅速な通関に資するものであると強調されておりますけれども、この迅速性の向上という点につきまして、具体的な例はどのようなものでしょうか。そのメリットについて御説明いただきたいと思います。
#52
○政府参考人(渡辺裕泰君) 簡易申告制度につきましては、輸入者の利便性が向上する、あるいは税関行政の効果的な運営が図れる、それから税関手続の国際的調和が図れる、そういうメリットがあると考えております。
 その中で、輸入者の利便性の向上でございますけれども、一つは納税申告に必要な書類、情報、これは引き取り申告に要するものに比べましてかなり量が多いわけでございます。したがいまして、引き取り申告に必要なある程度の情報はそろったけれども、納税申告に必要な情報が全部そろわないので貨物が引き取れないというケースが現在もございます。あるいは時間がかかっているというケースがございます。こういう方についても貨物を迅速に引き取ることが可能となるというメリットがございます。
 それからまた、少ない申告項目で貨物を引き取ることができる、納税申告を後日まとめて行うことができる、そういうことで申告手続の簡素化、効率化が図られるという問題もございます。
 それからまた、メーカーの方などがおっしゃっていますのは、現在ジャスト・イン・タイムで生産を行っておられますので、この簡易申告制度の導入によりまして迅速かつコンスタントな貨物の引き取りが可能になれば自分のところの在庫を減らせるメリットがあるというふうにメーカーの方は言っておられます。
#53
○三重野栄子君 そういう利点もあるかと思いますけれども、このような制度につきまして過去に国会でどのような論議が行われたかということを調べてみました。古い議論で恐縮ですけれども、昭和五十九年の衆議院大蔵委員会におきまして、当時の関税局長が答弁されたものがございます。要約をいたしますと、関税の事後的納付は担保の提供者の問題で、中小の通関業者に負担が大きい、こういった制度の導入は難しいというような趣旨での答弁でございました。
 そこでお伺いしたいのでございますが、今回の簡易申告制度の導入に当たりまして、今もいろいろございましたけれども、中でも中小の通関業者への配慮はどのような形になっているでしょうか。実際に通関業者のうちこの制度を利用できない、したがって海外との取引でそういった中小の業者が排除されるおそれがあるのではないかと心配しておりますが、何か具体的なデータがあれば御説明いただきたいと存じます。
#54
○政府参考人(渡辺裕泰君) お答え申し上げます。
 先生から今、事後的納付制度あるいは後納制度についての昭和五十九年当時の御議論の御紹介がございまして、当時は確かに、先生がおっしゃいますように、通関業者が担保の肩がわりを強いられることによって中小通関業者の排斥につながるのではないかという議論があったということは私どもも承知をいたしております。
 ただ、その後、平成元年に納期限延長制度として、輸入者が担保を提供して納期限を三カ月延長できる制度が導入されております、通関業者ではなくて輸入者が担保を提供するという制度でございますが。この担保は輸入者がみずから担保を提供しているのが実態でございまして、これによって中小業者を含め通関業者へのしわ寄せという問題は生じていないというふうに考えております。
 このように、輸入者が担保を提供するということについては既に定着していると考えられますので、簡易申告制度が導入されましても中小の通関業者が排斥されるという問題は生じないというふうに考えております。
 また他方で、簡易申告制度が導入されましても通関業者は従来どおり引き取り申告と納税申告の代理を行うことができますとともに、簡易申告に係る申請手続につきましても新たに通関業務として代理申請できるように制度改正をお願いいたしております。このような通関業務につきましては、中小の通関業者であっても大きい通関業者であっても区別なく認められているところでございまして、簡易申告制度の導入によって中小の通関業者が排斥されることはないというふうに考えております。
#55
○三重野栄子君 続きまして、やはり中小の問題でございますけれども、加工再輸入減税制度に関連してお尋ねいたします。
 今回の改正によりまして、同制度の対象品目に新たに皮革製品が加えられることになっております。この改正によるメリットにつきまして、生産者や消費者それぞれの観点からあると思いますけれども、御説明をお願いします。
#56
○政府参考人(渡辺裕泰君) 加工再輸入減税制度は我が国から輸出されました原材料を用いて海外で加工等が行われました製品を再び我が国に輸入いたします場合に関税を軽減するものでございます。具体的には、製品の課税価格から輸出原材料貨物の価格を控除して、それに関税率をかけることで負担の軽減を図っているものでございます。
 今般の改正では、加工再輸入減税制度の対象製品といたしまして、皮革製品のうち革靴、野球用のグローブ、ミットを除きました残りの革製のかばん、ハンドバッグ、財布、衣類、手袋等の皮革製品を本制度に追加することといたしております。
 この制度の活用によりまして、輸出原材料であるなめし革の製造業者にとりましてはなめし革の輸出が促進されるメリットがございますし、皮革製品の製造業者にとりましては海外での安い生産コストを活用して競争力を高め、それを通じて産業全体としての体力の維持強化を図るというメリットがございます。一方、消費者にとりましても本制度によりまして海外での安い生産コストを活用した低価格の皮革製品の供給が促進されるというメリットがございます。
#57
○三重野栄子君 このメリットについても評価できると思いますけれども、この制度の導入に関しまして関税率審議会調査部会の審議録がございまして、拝見をいたしますと、下請業者等に影響が生ずるとの懸念があるようでございます。
 この制度が導入されましても、海外へ生産拠点を移せないような中小零細業者は今回の改正によりましてより安い海外産の製品との競争を余儀なくさせられるように思うわけでありますが、この点につきまして政府の見解をお伺いいたします。
#58
○政府参考人(渡辺裕泰君) 今回の制度改正に当たりましては、当初、通産省等から御要望をいただきました折に、私どもも制度を改正することはやぶさかではございませんけれども、それによってかえって国内の下請業者等の生産者が困るというようなことがあってはまずいので、その辺をよく業界等と詰めていただきたいということを申し上げました。
 そのこともございまして、皮革及び皮革製品業界におきまして本制度の効果に関して下請業者への影響についても十分に勘案した上で慎重かつ総合的な検討が行われ、合意の得られた製品について対象品目の追加の要望がなされたものというふうに承知をしております。
 私どもが聞いておりますところでは、この制度の活用が見込まれます外国から再輸入されます皮革製品は低価格品が主流となると考えられます一方で、国内企業の戦略といたしましては、国内製品の高付加価値化あるいは市場の動向に迅速に対応した製品づくりの推進によりまして、外国で加工された製品とのすみ分けを図ることとしているというふうに聞いております。
 それから、今回対象に追加いたします皮革製品につきましては、下請の方も含めました国内企業の影響にも配慮いたしまして、減税の対象となる輸出原材料や海外での加工工程に限定を加えるということも考えております。
#59
○三重野栄子君 海外での減税の問題につきましてはまだ私もよく研究しておりませんけれども、やはりこの業者の方は中小零細の方が大変多うございますので、より多くの御配慮をお願いしたいというふうに思います。
 最後の問題といたしまして、個人輸入の免税限度額の問題につきましてお尋ねいたします。
 税関手続に関する企画部会懇談会におきまして、日米商工会議所協力会議や製品輸入促進協会から要望があったようでございます。
 国際的な比較で見ましても、アメリカ、シンガポール、オーストラリアなどと比較しましても低い水準にあるようでございます。現在一万円となっております我が国の免税輸入限度額は三万円ぐらいに引き上げてもよいのではないかというふうに思ったりするわけでございますが、いかがでございましょうか。仮に三万円に引き上げた場合の減収額がどのぐらいになるのかも含めてお答えいただきたいと思います。
#60
○政府参考人(渡辺裕泰君) 先生御指摘の一万円の免税制度は、納税者の事務負担の軽減に資するとともに、税関におきます円滑な事務処理を維持するという観点から、国内取引との負担の均衡にも配慮しつつ国内産業に対する影響等を勘案して、免税することが適当でない貨物を除きまして、輸入される貨物で課税価格の合計額が一万円以下のものにつきまして関税及び消費税を免除しているものでございます。
 このような少額貨物に対する免税制度は諸外国でどうなっているかということでございますが、アメリカでは二百ドル、一ドル百六円としまして二万一千二百円以下と聞いておりますが、消費税と同様の付加価値税制度を有しますEU諸国におきましては現在二十二ユーロ、一ユーロ百二円といたしますと二千二百四十四円以下となっておりまして、付加価値税制度を有する国との比較で見ますと、日本の免税点は相当高い水準にあるということではないかと思っております。
 御指摘の趣旨は、納税者及び税関双方の事務負担軽減等の観点からこの一万円の免税点を例えば三万円に引き上げてはどうかということと思いますが、いずれにいたしましても消費一般に広く公平に負担を求める消費税の国内取引との負担の均衡の問題、さらには国内産業に対する影響など慎重に検討すべき点が多々ございまして、免税点を引き上げることは困難と考えております。
 なお、この減収額につきましては現在計算をいたしておりませんので、手持ちの数字はございませんことをお許しいただきたいと思います。
#61
○三重野栄子君 大蔵大臣にお願いをしないまま突然で恐縮ですけれども、いろいろ業務に関しての御努力は伺いました。その中で、これから人員削減という方向もあるだろうと思うんですけれども、税関業務の特殊性に関連をいたしまして、職員の皆さんの問題も含めて、今まで議論のありましたことにつきまして、大蔵大臣、一言お声をいただきたいと思います。
#62
○国務大臣(宮澤喜一君) 実は昨日も、大蔵省関係の職員の組合の幹部の諸君、たくさんございますが、と話をしましたときに、税関につきましては、私はしばしば本委員会を初めとして国会の委員会で、いろいろ社会悪物品の我が国への侵入について新しい非常に大変な仕事をしている、本来の仕事に加えてそういうことでいろいろ事務の努力はしているだろうが、事務能力を超える仕事をしているのではないかという御指摘があることを税関の代表の諸君に話しました。そういう御指摘にもかかわらずなかなか定員というものがふえない、むしろ全体の削減計画の中で減っていくということに国会で非常に御批判があるということも申しました。幹部諸君としては、自分たちも全力を挙げて合理化に努め、なお一生懸命いたしておりますけれども、おっしゃるような御指摘の点がございますというような返事をしておりました。
 要は、どれだけ私どもがこういう定員削減の中でそれに対して対応できるかということでございますので、私どもの方にどうも国会の御意向からいいますと責任がかかってくるような、そういう意識はいたしております。できるだけ努力をいたしたいと思っております。
#63
○三重野栄子君 よろしくお願いします。
 終わります。
 ありがとうございました。
#64
○委員長(平田健二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#65
○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、関税定率法等改正案に対する反対の討論を行います。
 反対の理由の第一は、関税法に課された役割の一部放棄につながる簡易申告制度を導入することであります。
 簡易申告制度の導入は、財界、多国籍企業の要望に沿ったもので、輸入品に対する検査体制を一層骨抜きにし、不公正な輸出入取引の防止、水際での麻薬、けん銃等の社会悪物品の流入阻止、関税などの適正な徴収を確保するという税関に課せられた使命遂行を妨げ、貿易の公正で安全な発展を阻害するおそれの大きいものであります。
 反対の理由の第二は、粗糖等関税の撤廃、加工再輸入減税制度の対象に皮革製品を加えることなど、地域経済にとって重要な地域農業、地場産業に否定的な影響を与え、衰退を招きかねない内容が含まれていることであります。
 以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。
#66
○委員長(平田健二君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 関税定率法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#67
○委員長(平田健二君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、寺崎君から発言を求められておりますので、これを許します。寺崎昭久君。
#68
○寺崎昭久君 私は、ただいま可決されました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、民主党・新緑風会、公明党・改革クラブ、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和ある対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。
   なお、関税の執行に当たっては、より一層適正・公平な課税の確保に努めること。
 一 急速な高度情報化の進展により、経済取引の国際化及び電子商取引等の拡大が進む状況にかんがみ、税関の執行体制整備及び事務の一層の機械化・合理化の促進に特段の努力を払うこと。
 一 著しい国際化の進展等による貿易量及び出入国者数の伸長等に伴い税関業務が増大、複雑化する中で、その適正かつ迅速な処理に加え、麻薬・覚せい剤を始め、銃砲、知的財産権侵害物品、ワシントン条約該当物品等の水際における取締りの強化に対する国際的・社会的要請が高まっていることにかんがみ、税関業務の一層の効率的・重点的な運用に努めるとともに、税関業務の特殊性を考慮し、税関職員の定員確保はもとより、その処遇改善及び機構、職場環境の充実等に特段の努力を払うこと。
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#69
○委員長(平田健二君) ただいま寺崎君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#70
○委員長(平田健二君) 全会一致と認めます。よって、寺崎君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、宮澤大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮澤大蔵大臣。
#71
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
#72
○委員長(平田健二君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#73
○委員長(平田健二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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