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2000/04/21 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 財政・金融委員会 第12号
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2000/04/21 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 財政・金融委員会 第12号

#1
第147回国会 財政・金融委員会 第12号
平成十二年四月二十一日(金曜日)
   午後零時三十分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         平田 健二君
    理 事
                岩井 國臣君
                中島 眞人君
                寺崎 昭久君
                海野 義孝君
                池田 幹幸君
    委 員
                河本 英典君
                世耕 弘成君
                中島 啓雄君
                林  芳正君
                日出 英輔君
                平田 耕一君
                星野 朋市君
                伊藤 基隆君
                久保  亘君
                櫻井  充君
                浜田卓二郎君
                笠井  亮君
                三重野栄子君
                椎名 素夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉田 成宣君
   参考人
       東京証券取引所
       専務理事     金子 義昭君
       弁護士      桜井 健夫君
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授
       金融審議会委員  神田 秀樹君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会消費者問題対
       策委員会副委員
       長        石戸谷 豊君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○証券取引法及び金融先物取引法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出)
○特定目的会社による特定資産の流動化に関する
 法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○金融商品の販売等に関する法律案(内閣提出)

    ─────────────
#2
○委員長(平田健二君) ただいまから財政・金融委員会を開会いたします。
 証券取引法及び金融先物取引法の一部を改正する法律案、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律案及び金融商品の販売等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
 本日は、三案審査のため、参考人として東京証券取引所専務理事金子義昭君、弁護士桜井健夫君、東京大学大学院法学政治学研究科教授・金融審議会委員神田秀樹君及び弁護士・日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長石戸谷豊君、以上四名の方々の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議事の進め方でございますが、まず金子参考人、桜井参考人、神田参考人、石戸谷参考人の順序で、お一人十五分程度でそれぞれ御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。
 また、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
 なお、御発言につきましては御着席のままで結構でございます。
 それでは、まず金子参考人からお願いいたします。金子参考人。
#3
○参考人(金子義昭君) 東京証券取引所の金子でございます。
 先生方におかれましては、日ごろ証券・金融市場のために御尽力いただきまして、まことにありがとうございます。この場をかりまして厚く御礼申し上げたいと思います。また、本日は証券取引所に株式会社形態を導入するための証券取引法の一部を改正する法律案に関し私どもの意見を述べさせていただく機会をちょうだいいたしまして、心より感謝申し上げます。
 私ども東京証券取引所といたしましては、証券取引所が株式会社組織を選択することができるよう法改正をできる限り早期に行っていただきたいと考えており、本日は証券取引所が置かれている現状などを御説明させていただいた上で私どもの意見を述べさせていただきたいと存じます。
 御承知のとおり、証券取引所は高度に組織化された市場である取引所市場を開設しており、この取引所市場は証券市場の中核的役割を果たすことが期待されている市場であります。したがって、証券取引所はこうした重要な機能を有する市場の開設者として高い流動性を持ち、かつ公正性、透明性が確保された市場を提供する責務を担っておりますので、このようなことから、不公正取引の監視などの自主規制業務をあわせて行っております。
 我が国におきましては、証券取引所は証券取引法で会員組織でなければならないこととされております。
 後ほど御説明いたしますとおり、証券取引所を取り巻く環境は国際的な市場間競争という新たなステージへと大きく変化しております。このような中で、諸外国においては、証券取引所がより競争力の向上を図ることを目的として株式会社化あるいは非会員組織化するという動きが活発化しております。こうした動きはこれまで比較的規模の小さい市場を有する国で見られたものでありますが、近時、ニューヨーク、ロンドンといった主要な国際資本市場においてその動きが顕著となっており、証券取引所の株式会社化は世界的な潮流となっております。
 この株式会社化の動きの背景には、通信情報技術の発展に伴う証券取引のグローバル化と国際的市場間競争という環境変化がございます。
 御承知のとおり、近年、経済活動、資金移動のボーダーレス化が進んでおります。インターネットに象徴される通信情報技術の発展によって、投資家は世界じゅうどこにでも迅速に資金を移動することが可能となっております。今後さらにこの傾向は加速度的に進むと予想されており、証券市場の構造そのものを大きく変えるのではないかと言われております。
 このようなボーダーレス化は国際的な市場間競争の激化をもたらしております。各国では、自国の市場の国際的地位を確保するため競争力を強化しようと躍起になっておりまして、特にテクノロジーの利用といったことが非常に重要な要素となっております。
 海外の状況について見ますと、欧州においては、欧州経済統合に向けての主導権をめぐって、それぞれ自国市場の地位向上を図ろうと取引所の組織改革とテクノロジー投資を積極的に行っており、国をまたぐ取引所間の合従連衡の動きが活発です。
 また、米国においては、従来より市場間競争を積極的に推進する政策がとられており、さまざまな形態での市場間競争が展開されております。最近特に注目されておりますのがECNと申しまして、これは電子証券取引ネットワークのことなんですが、このECNの台頭があります。ニューヨーク証券取引所の株式会社化の動きもこのことが大きく影響していると言われております。
 また、デリバティブの分野、派生商品のことですが、デリバティブの分野では、欧州に端を発した取引所間の合従連衡の動きが米国にも波及しております。欧州でいち早く株式会社化したEUREXという先物取引所がシステムへの集中投資を実行し、世界的な統合に向けてイニシアチブをとりつつありますが、シカゴの二大先物取引所もこれに危機感を持ち株式会社化の計画を打ち出すなど、組織改革に着手しております。
 日本の市場に関しましては、最近、株式市場における委託売買代金に占める外人投資家のシェアが四〇%程度にまで達しておりますように、日本市場についてもグローバル化がさらに進んでいる状況であります。こうした中で、日本を代表する企業がニューヨークやロンドンにも上場したり、最初に海外の市場に公開する企業もあらわれており、ナスダック・ジャパンといった海外からの参入も始まっております。
 このように、日本の証券市場、証券取引所も激しい国際的市場間競争の中に既に組み込まれております。私どもといたしましては、これに大変強い危機感を持っているところでございます。
 こうした状況のもとで、私ども東京証券取引所はニューヨークとも比肩する市場の構築に向けてさまざまな改革を進めているところでありますが、国際的な競争力は市場インフラの効率性、利便性と市場の公正性、信頼性の両方から総合的に図られるものであり、私どもはこの両方を高次元で実現すべく取り組んでいるところであります。
 まず、市場の効率性、利便性の向上を図る観点からは、システム化ということが大変重要になってまいります。私ども東京証券取引所は、昭和五十七年に市場第二部に売買システムを導入して以来、世界に先駆けてシステム化を進めてきた取引所であります。その後も数次のアップグレードをしてまいりまして、近々にも新株式売買システムを稼働する予定であります。市場間競争はテクノロジーの競争であると言っても過言ではありません。したがって、このテクノロジーへの投資はさらにふえていかざるを得ないと考えております。
 また、市場の公正性、信頼性は競争上欠くことのできない重要な要素であります。そこで、東京証券取引所では、そのような観点から、従来にも増して不公正取引の監視体制の充実強化、考査の実施等による会員証券会社の健全性確保、会社情報のタイムリーディスクロージャーの推進などに努めているところであります。
 証券取引所を取り巻く環境について御説明申し上げましたが、そのような状況を念頭に置いて考えますと、証券取引所について株式会社を組織形態の選択肢とすることは次のような意義があると考えております。
 第一は、意思決定の迅速化であります。
 競争的環境下においては、証券取引所は刻々と変化する投資家や発行会社などの幅広い市場利用者のニーズを的確に酌み取り、それに迅速にこたえていく必要があります。一方、証券会社等の経営スタイルは異業種からの参入や特定の事業分野への特化などにより一層多様化することが予想されており、今後、会員全体のコンセンサス形成ということはなかなか難しくなることも想定されます。そうしたことに対して、環境変化に迅速に対応するためには最も適している組織形態であると言われている株式会社組織を選択できることは非常に有効と考えられます。
 第二点は、資金調達手段の多様化であります。
 先ほど申し上げましたとおり、証券取引所は一種のシステム装置産業化してきておりまして、テクノロジー投資が不可欠かつ極めて重要になってきております。そこで、証券取引所としては、財政の安定性確保とともに、将来的な資金調達ニーズに対応できるよう資金調達手段の多様化を図っておく必要があります。
 そのような観点から、証券取引所の株式会社化はエクイティーファイナンスなどを可能とするものとして大きな意義があると考えられます。もちろん、実際にマーケットから資金調達を行うためには証券取引所自体が投資対象となり得る投資魅力を有していなければならないことは当然であります。したがって、こうしたことを通じて証券取引所の資本効率を高める効果も期待できるのではないかと考えられます。
 また、証券取引所の株式会社化は我が国市場全体の機能強化につながると考えております。証券取引所の効率性、利便性の向上は、市場参加者、投資家、そして有価証券の発行者等に対して一層利便性が高く、コストの低い市場サービスをもたらすわけですが、証券取引所の株式会社化によってそういった効果が期待されるものと考えております。さらに、証券市場の中核市場たる取引所市場の国際競争力の向上は我が国証券市場全体の競争力を高めるものと考えております。
 次に、自主規制機能と営利性の関係につきまして私どもの考え方を述べさせていただきたいと思います。
 自主規制機能に関しては、証券取引所が株式会社化したとしても、一般企業が自社製品の品質管理を行うと同じように、市場開設者として市場のクオリティー、質の維持向上に努めることは当然必要でありますし、市場の公正性が投資家の市場参加の重要なファクターであることから、市場の競争力を高めていくためには自主規制機能を発揮して公正性、信頼性を高めていくことは不可欠であります。
 したがって、私どもとしては、証券取引所が営利性を有する株式会社になったとしても自主規制機能と営利性が相反するというようなことはなく、法的枠組みとしても、これまでと同様の規制と行政当局による監督によって自主規制機能を担保できると考えており、これによって社会的公器としての市場の公共性、透明性は維持し得ると考えております。
 以上のようなことから、証券取引のグローバル化と国際的市場間競争の激化が予想をはるかに超える速度で進行しており、諸外国では主要証券取引所がことしにも順次株式会社化を実現しようとしている中にあっては、私ども東京証券取引所としても、より強力に効率性と利便性、サービスの向上を推進していく観点から、株式会社化について早急に議論を開始する必要があると考えております。
 海外の証券取引所を見ますと、法律で組織形態を会員組織に限定している例はないことから比較的早期の組織変更が可能な状況でございまして、したがって私どもとしてはできる限り早期に株式会社組織への転換を可能とする法整備を行っていただきたいと考えております。
 続きまして、証券取引所の株式会社化のための法整備に関する具体的な内容につきまして幾つか意見を述べさせていただきたいと存じます。
 一点目は、証券取引所の自主規制機能の維持のための措置についてであります。
 証券取引所については、組織形態として株式会社組織をとる場合であっても、現在と同様、自主規制機関として十分な役割を果たす必要があることは改めて言うまでもございません。
 現在、証券取引所につきましては、免許制がとられておりますとともに、自主規制機関として一定のルールを定め、取引参加者の遵守状況を調査し、仮に違反する行為があった場合には取引参加者の処分を行うということが義務づけられておりまして、証券取引所がそれを怠った場合には証券取引所自身が行政当局から処分を受けるという法的枠組みになっております。法案ではこうした法的枠組みが維持されておりまして、これによって証券取引所の自主規制機能は十分担保し得ると考えております。
 さらに、法案では、現行に加えて取引参加者が証券取引所の定める自主ルール等を遵守しなければならない旨を定款に定めなければならないとされておりまして、このように証券取引所の自主規制機関としての役割について法律上明確化を図っていただきますとその実効性が一層高まると考えております。
 また、法案では、株式会社組織の証券取引所の経営が特定少数の者にゆだねられ、公正性、中立性、信頼性が損なわれることのないよう証券取引所の株式について保有制限を設け、発行済み株式総数の一定割合を超えて保有することを禁ずる措置が講じられております。既に株式会社化、自市場への上場、これはみずからの市場への上場という意味ですが、自市場への上場を実施したオーストラリア証券取引所におきましてもこのような趣旨で株主一人が持つことができる株式割合に上限を設けておりまして、我が国においても同様の措置を講ずることは証券取引所の公正性、信頼性を確保する上で大変望ましいことであると考えております。
 二点目は、株式会社化された証券取引所の株式のただいま申しました自市場上場についてであります。
 株式会社化すれば必ず上場するということではありませんが、株式会社化によってエクイティーファイナンスが可能となり、広い投資家からの投資を募る場合には株式を自市場に上場することは当然考えられることと思います。
 現在、証券取引所の上場審査基準に適合しているか否かの審査は証券取引所が行い、行政当局へ届け出を行うことになっていますが、法案では証券取引所の株式を自市場、みずからの市場に上場する場合については行政当局の承認制とされております。これにつきましては、上場審査の公正性、信頼性を確保するのにかなったものであると考えております。
 以上、私どもの考えを述べさせていただきましたが、国際的な市場間競争はますます激しさを増してこようかと考えております。私ども証券取引所といたしましては、この証取法改正法案を成立させていただければ、東証内に特別委員会を設けまして、会員証券会社を初めとする幅広い方々に東証の株式会社化について御議論いただきたいと考えております。つきましては、今回の法案を本国会において成立させていただきますことを切に希望する次第でございます。
 最後に、私どもといたしましては引き続き魅力ある証券市場の構築に向けて努力してまいる所存でありますが、先生方におかれましては、今後とも一層の証券市場への御理解と私どもへの御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#4
○委員長(平田健二君) ありがとうございました。
 次に、桜井参考人にお願いいたします。桜井参考人。
#5
○参考人(桜井健夫君) 弁護士の桜井でございます。
 このような機会をいただき、ありがとうございます。
 私は金融商品の販売等に関する法律案について意見を陳述させていただきます。
 以下、この法律案について本法案というふうに言います。
 既に平成十年十二月から金融システム改革法が施行されるなど、金融分野の規制緩和が先行しております。今から二年近く前、同法案制定の際に御承知のとおり当委員会で次のような附帯決議がされています。「金融サービス法等の利用者の視点に立った横断的な法制について早急に検討を進めること。」と。ここに言う金融サービス法は、金融サービスの利用者を支える総合的な法律のはずです。
 私は所属する第二東京弁護士会と日弁連、それから任意の研究団体などで金融サービスの消費者問題を扱ってまいりました。この立場から、遅くとも金融分野の規制緩和と同時に金融サービス法を制定する必要があるというふうに訴えてきましたが、一向に制定されないまま今日に至りました。そして、さきの附帯決議から二年近く経過して登場したのが説明義務とコンプライアンスだけを取り上げた本法案です。
 金融システム改革法以降、既に次のような変化が起きています。
 まず、参入と監視の問題です。証券会社の専業義務の撤廃と免許制から登録制への移行がなされたことにより、ある商品先物取引の会社は証券業の登録をして名称を証券会社に変更し、証券会社の名前で商品先物取引を執拗に勧誘して被害を発生させています。また、南証券事件では証券会社に対する検査監視体制の不十分さが露呈しました。
 次に、店頭デリバティブの解禁による変化です。EB、エクスチェンジャブルボンドなどの複雑な構造の仕組み債の広告が連日のように新聞に掲載されています。これを見ると、高利回りの表示が大きく、リスクは目立たないように小さい字で書かれています。このような金融商品が一般投資家向けに大々的に宣伝して売られている国は知らないとあるヘッジファンドの経営者の人が言っていました。
 それから、投資信託が届け出制となったことから、投資信託と呼ぶのもはばかれるような怪しい商品が投資信託と名づけられて売り出されています。理解できた人は買わないような商品ですから、問題に気がついていない人だけが買っているというふうに思われます。
 それから、倒産した丸荘証券の事件では、証券の安全ネットの一つである日本投資者保護基金が大勢の一般投資家からの訴訟を抱えています。一般投資家のためにあるはずの安全ネットがその存在意義を問われているのです。
 日本では、金融資産を豊富に抱えている人の多くは退職した高齢者です。この人たちは、これまでに体験したことのないゼロ金利という経済環境の中で、耳なれない会社が売っている知らない金融商品を前に腕組みをして立ちすくんでいるという状況にあります。
 このような人たちを含め、日本国民にとっては、道路に例えれば、歩車道が区別され、路面や信号、フェンスなどがきちんと整備された道を通行するような、信頼感を持てる状況が金融の世界にも必要です。悪路や行きどまりには入り込む前にわかるような表示がなければなりません。そのためには、本法案のような断片的なものではなく、網羅的な行為ルール、充実した監視体制、横断的な自主規制機関、迅速で公正な紛争解決システム、頼りになる安全ネットなどを内容とする金融サービス法を早期に制定する必要があると考えます。
 まず、制度を考える際の出発点として、実情を認識することが必要だと思われます。そこで、証券取引の被害の実情と変額保険の実情を簡単にお話しさせていただきます。
 証券取引被害には、適合性原則違反、説明義務違反、断定的判断・不実表示・誤解表示・利益保証約束などを伴う不当勧誘、それから過当売買、無断売買などによる被害があります。多くは手数料稼ぎを動機として顧客の利益を顧みない事例です。無断売買以外は違法な勧誘による被害ですが、勧誘の形態を見ますと、国民生活センターが先月、二〇〇〇年三月に発表した金融商品に係る消費者トラブル問題調査報告書によりますと、全国の消費生活センターに寄せられた証券取引に関する苦情六百五十四件のうち、三分の一は訪問販売や電話勧誘販売であることが示されています。裁判になった事例では、訪問販売や電話勧誘販売の割合はさらに多くなると思われます。
 これらの被害を受けた人のうち、一部でも賠償を得た人は極めて少数でして、被害を受けたほとんどの人は損害を賠償されていないのが実情です。
 第二東京弁護士会が平成三年十一月二十八日に実施した証券取引一一〇番を五年間フォローした結果によりますと、電話がつながった九十名のうち、一部でも賠償を獲得した人が四人、全額回収は一人、こういう結果になっています。つまり、被害救済の判決が一件あれば、周辺にその何十倍、何百倍もの泣き寝入りがあると考える必要があります。それらの多くはやはり被害であり、立証責任が原告にあるため証明し切れないか、訴訟をする労力や経済力が足りないにすぎません。
 判例を見ますと、平成三年の証券不祥事以降に裁判となった事件が多く、それらの判決が出始めた平成五年から平成十一年までの七年間で二百件を超える被害救済判決が出されています。この数字は、何千件、何万件という被害を推測させるものでありまして、そのほとんどが救済されていないというふうに考えなければなりません。
 次に、変額保険事件ですが、変額保険事件とは、一九八九年から一九九一年にかけて、銀行員と生保営業職員が、都市部に自宅を持ち借金と金融資産が少ない高齢者に対し、自宅を守りましょう、一銭もかからない相続税対策ですなどと言って、銀行から数千万円ないし数億円の融資を受けて、それをそっくり変額保険の保険料として生保に支払うことを勧誘した事件です。銀行員と生保営業職員が一緒に戸別訪問するというのが典型的な勧誘形態です。負債による投資というリスクの大きい行為を全資産規模で行うことであるのに、リスクを意識させないような勧誘がなされ、数千万円から数億円の損害をこうむった人が続出しました。さきの国民生活センターの報告書によれば、融資と変額保険を組み合わせて契約した人で苦情を申し立てた人を年齢で区分すると、六十歳代と、何と八十歳代が最も大きな割合を占めています。
 変額保険に関して終結した数百件の訴訟では、記憶の衰えた高齢の被害者が勧誘経過の立証責任を負うこと、それから裁判所の新しいものに対する認識不足などから、救済する結論になっていないものが極めて多くなっています。二〇〇〇年になってもなお多数の訴訟が係属していますし、事件は全く解決していません。それどころか、顕在化していなかった件が、十年の融資期限到来で返済を迫られることにより、新たに事件として顕在化してきています。
 これらの被害状況と救済状況からしますと、行為ルールとして必要なことは説明義務のほかにもたくさんあります。
 まず、一般的な義務として証券取引法三十三条や商品取引所法百三十六条の十七に規定されているような誠実公正義務が設定されるべきです。証券監督者国際機構の行為規範準則にも規定されている標準的な義務です。
 それから、不招請勧誘禁止ルールが必要です。依頼によらない勧誘とも言います。訪問販売や電話勧誘販売などがそれに違反するということになりますが、それを原則として禁止して、その違反に法的効果を結びつけるだけで被害の相当部分は防げます。
 それから、適合性の原則も重要です。顧客の知識、経験、投資目的、財産の状況に照らして、不適当と認められる勧誘を行ってはならないという原則です。この違反に損害賠償義務という法的効果を結びつけることが必要です。適合性の原則は、証券取引法や証券業協会の自主規制規則に規定されているほか、証券取引事件について判例で損害賠償の根拠となるルールとして適用されています。判例では、ワラント、転換社債、株の現金取引、株の信用取引、オプションと、さまざまな証券取引について適合性の原則違反を認定して損害賠償を命じたものが出ています。リスクを内包する金融商品共通の特質にかんがみれば、証券取引以外の金融商品にも広く適用されるべきルールであると言えます。
 ほかに、断定的判断の提供とか不実告知、誤解を招く勧誘などについても横断的な規定が必要だと思います。
 本法案は説明義務を中心とした法律ですので、以下は説明義務に限定して述べます。
 さきの国民生活センターの報告書によれば、説明に関する苦情が半数近くを占めるということです。これはリスクや商品の説明がないということのほかに、不実告知や断定的判断提供も含めた割合です。
 それから、証券取引事件の被害救済判例の中では、説明義務違反を理由とするものが百六十件を超えています。全体で二百件余ですから、圧倒的に多くの割合を占めていると言えます。また、変額保険事件の被害救済判例では、ほとんどが説明義務違反と言うことができます。
 説明義務は、一般には民法一条二項の信義則、民法六百四十四条の善管注意義務、あるいは証券取引法三十三条の先ほどの誠実公正義務などが説明義務の根拠となるというふうに言われていて、その違反が民法七百九条の不法行為または四百十五条の債務不履行になるというふうにされています。
 判例の水準ですが、説明義務が争点となった判例には、ワラント、投資信託、信用取引、転換社債、変額保険、スワップ取引など、さまざまな種類の金融商品に関するものがあります。ここでは四つの判決を御紹介します。ワラントに関する高裁判決で最高裁もその判断を維持したもの、それから変額保険に関する最近の高裁判決です。
 ワラントについては、東京高裁平成八年十一月二十七日、これは相手に合わせた的確な説明、正しい理解、自主的な判断ができるように配慮する義務があるとしたもの、それから同じくワラントについて、広島高裁松江支部平成十年三月二十七日、これは理解するまで説明を尽くす義務、理解したことを確認する必要があるとした判例です。
 それから、変額保険について、東京高裁平成八年一月三十日、これはリスクその他について理解させるに十分な説明が必要だとした判例です。さらに、変額保険について、つい最近ですが、東京高裁平成十二年三月十五日、これは加入者の自主的な判断をゆがめるおそれのある情報を提供してはならない、この自主的な判断ということを重視した判決です。この判決は、生保協会指針等に抵触する募集行為があった場合は、その行為は原則としてこの義務に違反する違法な行為だというふうにしている点が重要です。
 このような判決を見ますと、当該利用者に応じた説明、正しい理解、自主的な判断という点を重視しています。これらの要素はほかの金融商品についての判決でも同様に重視されています。利用者の自己決定を支えるための説明ですから、その人に応じた説明、正しい理解ができるように説明するということは当然のことです。説明義務についての判例はこのようなレベルにあります。
 そこで、翻って本法案を見ますと、本法案の三条一項で、説明の範囲を、元本欠損が生ずるおそれがあること、その原因となる指標に限定しています。もちろん、期限のあるものは期限とか、そういう別のものもありますが。それから、説明の程度については、単に説明をしなければならないとされているだけです。
 確かに、本法案は、顧客保護を図るために金融商品に関する説明義務違反につき民事上の法的効果を明定し勧誘の適正の確保のための措置を定めるとの方向性においては、金融サービスについての顧客保護の前進を図るものと理解されます。しかし、この規定の仕方では、説明義務の範囲、程度とも、いずれも極めて不十分と言わざるを得ません。本法案の説明義務は、勧誘によるか否か、いかなる属性の利用者か、いかなる種類の商品かを区別することなく、いわば最大公約数的な最低限の義務として元本割れのリスクの存在のみにつき形式的な説明義務を課したという、そこに意味があるにすぎないということになりかねません。
 しかし、今日の判例のもとでは、かような低レベルの説明義務は実際の被害救済に関してさしたる意味を持ちません。むしろ、判例と比べてすらはるかに低レベルの説明義務の立法化は、販売業者がいかなる顧客、いかなる商品についてもこの程度の説明さえ行えば足りると誤解し、あるいは殊さらに同法を免罪符のごとく用いるときにはかえって被害救済に有害となるおそれがあります。
 説明義務を意味のあるものとするためには、説明の範囲を元本欠損が生ずるおそれがあることとその要因に限定せずに、より広く設定しなければなりません。商品の基本的な仕組みとリスクの程度について説明すべきこととし、融資やデリバティブなどと組み合わせた商品については、その組み合わせ全体の基本的な仕組みとリスクの程度について説明すべきこととする必要があります。業者が複数にわたるときは、全体について説明することについてそれぞれの業者が共同責任を負うというふうにする必要があります。この場合は融資業者も含まれるということになります。説明の程度については、当該利用者に理解できるように説明することが最低限必要です。このようにすることによって、説明義務を定めることが利用者にとって意味を持ってきます。
 ほかにも本法案について問題点はありますが、最も重要な点に絞ってお話をさせていただきました。
 以上です。
#6
○委員長(平田健二君) ありがとうございました。
 次に、神田参考人にお願いいたします。神田参考人。
#7
○参考人(神田秀樹君) 東京大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、本委員会におきまして意見を述べさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 早速、私の意見を述べさせていただきます。
 今回の三つの法案でありますけれども、これらの法案は二年前の平成十年六月に成立いたしました我が国のいわゆる金融ビッグバンを実現するためのかなめとなる四つの法律に、その後の状況の変化などを踏まえまして、さらにつけ加える形で金融ビッグバンの中核を形づくることになると考えられます極めて重要な法案であります。
 私は、今回の三つの法案の策定のもととなりました審議を行いました金融審議会の委員として、そして今回の法案の策定のもととなった多くの部分の審議を主として担当いたしました金融審議会第一部会の部会長代理として、審議会の場という限定された範囲ではありますが、今回の三つの法案の基礎となる議論に参加させていただきました。
 金融審議会での議論の成果はほぼそのままの形で今回の三法案に盛り込まれることになりました。今回の三法案も、平成十年の四つの法律と同様、大きな内容と相当な分量の法律の改正及び制定であります。平成十年のときと同じく、この大量の法案のすべてが成立することが我が国の金融ビッグバンを成功させるための法律面での対応措置としてぜひとも必要でありまして、その速やかな成立を私は期待いたします。
 今回の三つの法案のポイントを私が理解している範囲で簡単に申し上げたいと思います。
 まず第一の法案は、証券取引法及び金融先物取引法の一部を改正する法律案であります。
 中身は二つあります。
 一つは、二十一世紀を展望した金融・証券分野の基盤整備という観点から、内外における激しい環境の変化と競争の激化に対応し活力のある金融・証券市場の実現を目指すために、証券取引所と金融先物取引所の組織形態として株式会社という形態の選択を可能とすることであります。
 もう一つは、今日まで紙ベースで行われてきております有価証券報告書などの提出や受理といった一連のディスクロージャーのプロセスをすべて電子的な手段で行うこととするなどの措置を講ずるものであります。
 前の方は金子さんから先ほど意見陳述がございましたが、証券取引所と金融先物取引所の組織形態として、従来の会員組織という形態に加えて新たに株式会社という形態の選択を認めるという点であります。このような方向は、先ほども金子さんから御紹介がありましたように、近年、先進諸外国において競って検討が行われている事柄であります。この法案が速やかに成立すれば、この点につきましては、我が国は珍しくもアメリカに一歩先んじるということになります。
 組織の法律形態として、株式会社という形態は、諸外国における長年の経験により、他の形態に比べ数多くの長所があることが既に学問的にも実証的にも判明しております。言うまでもなく、株式会社という形態は法律的にはいわゆる営利法人でありまして、この点でこれまでの会員組織形態とは異なる面があります。そして、証券取引所や金融先物取引所は国の経済のかなめの一つである証券市場や金融先物市場の中核的な運営者であり、そしてまた自主規制機関として公共的な使命と役割を有すべき存在であります。
 そこで、一部には、株式会社という組織形態を認めると、このような取引所が有すべき公共性が損なわれるおそれがあるのではないかという指摘があるわけであります。しかし、そのような公共性を十分に維持しながら、組織形態としては株式会社形態を認めその長所を取り入れるということは法律的には十分に可能でありまして、今回の法案でも公共性を確保するために十分な法律上の措置を講じております。
 後半と申しますか、第二の方のディスクロージャー制度の電子化の方でありますが、これは近年の情報通信技術の革命的進展を今さら指摘するまでもなく、既に世界の趨勢となっております。
 欧米と比較いたしますと、電子化を実現する際には、我が国には日本語というハンディキャップ、すなわち例えば英語よりも電子化に伴う作業が大変であるというハンディがあるわけであります。しかし、電子化の方向は避けて通ることはできませんし、電子化によるメリットにも多大なものが期待されます。さまざまな場で電子化の推進ということが進められておりますが、証券分野でも今回このような法案までこぎつけたことはまことに画期的なことであります。
 第二の法案であります特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律案でありますが、二つの法律の大改正をその内容としております。
 すなわち、第一に平成十年に成立しました特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の大改正、第二に平成十年にかなり大がかりな改正がなされました証券投資信託及び証券投資法人に関する法律のさらなる大改正であります。
 これら二つの法律がカバーしております分野は、資産の流動化スキームと資産の運用スキームという、両者あわせますと俗に集団投資スキームなどと呼んでいるものでありまして、金融ビッグバンによって実現し登場すべき我が国の新しい金融の世界において、国民経済的にも中核的な役割を発揮することが期待されるタイプの金融仲介の仕組みのかなめとなるものであります。
 第一の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律でありますが、SPC法という略称で呼ばれております。諸外国でここ十五年ないし二十年余りの間に普及しました新しい金融の手法でありますセキュリタイゼーション、すなわち資産の流動化を我が国でもやりやすくし、そういった資産流動化を通じて国の経済の活性化を目指そうとして平成十年に成立した法律であります。
 この法律はそもそも我が国の歴史の中では画期的な法律であったと思いますが、法律が成立して以来、実際に運用してきた経験の中でさらなる大改正がぜひとも必要であるとの声が各界で高まりまして、それを受ける形で大改正を目指し、我が国における資産流動化の水準を先進諸外国の水準に一気に持ち込もうとするのが今回の法案であります。法律の名前も資産の流動化に関する法律というふうにシンプルに、特定特定と舌をかまずに発音できるような名前に改正することが提案されております。
 もちろん中身の方はより重要でありまして、これまで不動産と指名金銭債権などに限定されていました流動化の対象となる資産を財産権一般に拡大し、特定目的会社を登録制から届け出制に改め、その最低資本金の額を大幅に引き下げるなど、思い切った規制緩和を実現し、さらに流動化の器として会社のほか新たに信託も利用できるようにするなど、文字どおりの大改正であります。
 二年前につくった法律をこれほど短期間のうちに大改正するということは、この分野での動きの速さを示しているとともに、ここ二年の間における国会議員の先生方を含めた関係者の精力的かつ前向きの議論の蓄積の成果でありまして、こういう法案が国会に提出されたことは日本も将来が大いに期待できると感銘している次第であります。
 第二の方の証券投資信託及び証券投資法人に関する法律の改正案でありますが、これも大改正であります。
 法律の名前も、証券という単語を取り払いまして、単に投資信託及び投資法人に関する法律と変えようとするものであります。
 このような大改正は極めて望ましい改正であるにもかかわらず、数年前ころまではこういう法案がつくれるとは私には到底想像できませんでした。これも時代の変化なのか何なのかとある種の感慨すら私は感じておりますが、今回の改正が実現いたしますと、例えば日本版REIT、REITというのはリアル・エステート・インベストメント・トラストというものの略でありますが、すなわち不動産投資信託というのが我が国でも登場するというまことにうれしい内容の法改正でありまして、我が国の経済にとっても極めて益するところの大きい改正であります。
 最後に、第三の法案でありますが、金融商品の販売等に関する法律案であります。
 この法案につきましては本日に至るまで既にいろいろなところでいろいろな意味で議論が盛り上がっておりまして、今さら私がこの法案の内容や趣旨をここで申し上げる必要はないと思います。
 そこで、一点だけ私の意見として強調しておきたい点があります。それは、この法律は私法である民法や商法の特別法として私法の性格を持つ法律であり、業法ではないという点であります。
 金融ビッグバンの実現にとって業法の改革が必要であることは言うまでもありませんし、その方向での改革がなされてきているわけですが、このような新しい私法のルールが我が国に導入されるとすれば、これまた我が国の歴史にとって画期的なことであります。
 この法案の国会提出までのプロセスにおきましては、私が知る限りでも、金融審議会におきましてもワーキンググループでの審議を中心として、本日御一緒の桜井先生と石戸谷先生を含めて、実に膨大な時間をかけて激論がなされました。そのような議論の成果として、政府が責任を持って政府提出法案という形でこの法案が国会提出されるところまでこぎつけたわけであります。
 もちろん、いろいろな意味でこの法案の内容につきましては不満を持つ方もおありであることは承知しております。しかし、私は、金融審議会の委員としても、また法律学を専攻する者としても、激論を重ねてここまでこぎつけたこの法案は、ここではその具体的内容には立ち入りませんが、一つの筋をきちんと通したすぐれた内容の法案になっていると思います。
 そして、金融分野の一番重要とも言える金融商品の販売というところに着目して新しい私法のルールをつくり上げようとすることをかなめとするこの法案は、条文の数は少ないのではありますが、先ほど桜井先生が指摘された、これまで起きたような問題に対して私法上特に迅速な被害者救済の道を切り開くことによってこの問題に正面から取り組もうとするもので、桜井先生は先ほど法案について批判的な点を強調されましたけれども、私としてはむしろ長所の方を強調し、現時点においてはまずはとにかくこの法案を成立させることがぜひとも必要であると思います。
 以上、簡単に今回の三つの法案について申し上げました。
 平成八年に当時の橋本内閣総理大臣がなぜ金融ビッグバン宣言をされたかと振り返ってみますと、いわゆる不良債権問題のために日本は、市場や制度と金融機関の側、証券会社、保険会社を含めてですが、の対応の両面において先進諸外国の動きに取り残されたという事実があったわけであります。
 そこで、金融ビッグバン作業を果敢に行ってきたわけですが、その後も平成八年秋のいわゆる金融再生法と金融早期健全化法の制定という非常事態を経て、金融機関の破綻等に対応しなければいけないという中で何とか金融危機を乗り越えようと我が国は最大限の努力をし、その努力の結果として幸いにも金融危機を乗り越えることができつつあるわけであります。したがいまして、金融ビッグバンは歴史的にも大きく残るであろう極めて重要かつ重大な国民的な課題であります。
 我が国の金融法制の改革は、将来の我が国の金融・資本市場と我が国の経済全体にとってはもちろん、世界経済にとってぜひとも必要であります。
 私は平成十年のビッグバン四法案の審議の際に衆議院の方の委員会において意見を述べさせていただく機会をいただきました。また、金融再生法などの審議の際には参議院の特別委員会において意見を述べさせていただく機会をいただきました。ビッグバン四法案の審議の際の意見陳述で、私は最後に「ニューヨークやロンドン並みの市場にとどまらず、それ以上の魅力を備えた市場の樹立を目指していただきたい」と当時申し上げました。しかし、「目指していただきたい」という表現を使わせていただいたのは、気持ちとしては半信半疑と申しますか、希望的意見でありました。金融再生法の際にはそういうことを申し上げる余裕すらありませんでした。とにかく早く何とかしましょうというふうに締めくくったことを今でもよく覚えております。
 本日は私はもっと前向きな気持ちでおります。ニューヨークやロンドン並みの市場にとどまらず、それ以上の魅力を備えた市場を我が国が樹立することも十分可能な状況に我々は達していると思います。
 したがいまして、私は、今回の三つの法案が速やかに成立するとともに、法制度以外の面も含めた一連の金融システムの大改革が国を挙げての改革として成功することを強く望みます。
 以上で私の意見の陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#8
○委員長(平田健二君) ありがとうございました。
 次に、石戸谷参考人にお願いいたします。石戸谷参考人。
#9
○参考人(石戸谷豊君) 石戸谷です。
 まず、このような機会をいただいたことに御礼を申し上げます。
 私は日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会で金融サービス法部会を担当しております副委員長であります。したがいまして、金融商品の販売等に関する法律について意見を述べさせていただきます。
 日弁連はいわゆる日本版ビッグバンに関して消費者保護の観点からこれまで意見を述べてまいりました。配付していただきました参考資料のとおりの経過で、これまで五本の意見書を取りまとめてきております。このように、日弁連としてはこの問題に力を入れてきているわけです。
 では、なぜかということになりますけれども、そもそも金融取引の分野におきましてはビッグバン以前から深刻な消費者被害が生じてきておりました。この実態と内容につきましては、意見書一の方で早くから指摘してきたところであります。
 しかも、他の分野の消費者被害にも増して金融の分野では紛争が解決しにくいという特徴がございます。例えば証券取引の分野では、損失補てん禁止の法改正がなされて以来、証券会社が裁判外の話し合いに一切応じないという態度をとるようになり、被害者は泣き寝入りするか裁判を起こすかという厳しい選択をしなければならないという実情にあります。
 そのようなことで、全国各地にワラント被害の事件を初めとする裁判が多数係属しました。被害者全体から見れば裁判まで起こした人はごく一部と思われますけれども、被害者勝訴の判決は延べ二百五十件程度になっております。しかし、残念ながら、損害賠償を命ずる判決が確定してもなおかつ賠償金を払わないというような態度をとる証券会社もありまして、そうした場合におきましては被害者は強制執行までやらなければならないという現状にあります。変額保険とか提案型融資の事件で保険会社や銀行を相手にする裁判も多数係属し、現在なお裁判が続いているという現状にあります。
 こうした状況の中で日本版ビッグバンを行うというわけであります。しかも、日本版ビッグバンは、イギリスのビッグバンが主として機関投資家等大口の投資家の使い勝手がよいようにというところをまず主眼として始めたのに比較して、千二百兆円に及ぶ個人金融資産を有効活用する、リスクマネーの供給の源とするということを目指しているわけでありまして、消費者が直接大きな影響を受けることになるわけであります。経済白書等でも、個人もリスクに挑むということを盛んに勧めるようになってきております。しかし、そうであれば、従来でも不十分だった利用者保護のルールについて、消費者がこのビッグバン後、金融業者の不適切な営業活動によって被害に遭わないように法整備するというのは最低限必要なはずであります。
 こうしたことは、日弁連だけではなくて、九七年六月に出されました証券取引審議会の報告書でも、例えば「一般投資家や海外の利用者が、信頼感を持って我が国市場や仲介者を利用できるよう、公正性、透明性の確保に全力を挙げる必要がある。」と力強く指摘していたのです。
 しかしながら、その後の経過を見ますと、金融規制の緩和の部分に関しましては迅速かつ膨大な法改正が行われてきました。九八年六月の金融システム改革法は法改正資料だけで合計二千ページにも及ぶという膨大なものでありましたし、本日テーマになっておりますものを見ましても、証券取引所の株式会社化という問題につきましては、検討課題として挙げられ始めてから極めて迅速に法案が提出され、SPC法のように施行されて間もないうちにさらに使い勝手をよくするということで、その後また速やかに法改正するといったような状況が続いております。
 これに対して、利用者保護については、今回、説明義務といういわば第一歩目の論点について法案がようやく出てきたという状況であります。しかも、その内容は甚だ不十分と言わざるを得ません。速やかに充実した利用者保護の法整備が必要と言わなければなりません。
 日弁連のこれまでの意見は、その最低限必要な事項をまとめたものにすぎないわけです。以下、五本について申し上げる余裕がありませんので、本日の法案に関する部分について、参考資料の日弁連意見書五の概要というものに基づきましてポイントだけ指摘させていただきます。
 まず、二ページ目のところにあります「金融商品の範囲」なんですけれども、今回の法案では商品先物取引関係は適用されないこととなっております。しかし、預貯金のような金融商品にも説明義務を課しているのに比較して、商品先物取引のようなリスクの高い、かつまたトラブルの多い金融取引を除外するというのは、これはどう考えてもおかしいのではないか、合理的な説明がつかないというふうに思われます。
 もっとも、この法案の内容のままでは商品先物取引を対象としてもほとんど実効性がないと思われますので、後で述べますように、内容を充実させた上で、商品先物、商品オプション等の取引にも適用すべきというふうに思います。
 参考資料をめくっていただきまして三ページ目のところにあります「説明の方法・説明内容等」、五項目めのところですけれども、その点についてお話しさせていただきます。
 今回は説明義務のルールについて法案としたわけでございまして、そのほかのルールについては触れてありません。まず、不招請勧誘の禁止ルールとの関係について一言申し上げます。
 多くの場合、金融取引のトラブルはその金融商品のリスクに主な原因があるというふうに考えられております。しかし、これは大きな誤解です。トラブルの大多数は営業員の不適切な勧誘との関係で生じております。
 例えば、かねてからトラブルが多い商品先物取引の場合、外務員が介在しないパソコンを使ったホームトレード方式の取引ではトラブルはほとんど聞かれません。なぜかと申しますと、外務員が介在しないために、顧客が自分の情報と判断で納得して取引を行っているからです。このことは、現状では金融商品それ自体のリスクよりも営業マンの不当ないし不適切な勧誘によるリスクの方が重大な問題であるということを示していると思われます。したがいまして、不招請の勧誘を禁止するとかなりそのトラブルは防げるというふうに考えられます。
 しかしながら、勧誘をどんどんやりますよというふうなルールのもとでは、それに対応した充実した説明義務の内容にしないと防げないという問題が一つありますので、指摘させていただきます。
 次に、適合性との関係ですが、判例の場合、説明義務と適合性についてたくさんの判決が出ておりますが、顧客がどういう人かによってその説明義務の程度というものを考えております。高齢な方、判断力に乏しい方、そういう人に対して非常にリスクが高い金融商品を勧めるといったような場合には、本当にその人が理解したのかどうか、理解できるように十分に説明し、なおかつ理解したかどうか確認しなければならないというふうに指摘している判例もございます。いろんな議論の中で、説明義務は説明義務、適合性は適合性というふうにすぱっと分けようじゃないかという方向がございました。これですと、説明義務と適合性を両方セットで法律化すべき、本来はそういうものであると思います。
 適合性が今回法案として盛り込まれておりませんで、説明義務もこれだけ説明すればいいという書き方になっております。そうしますと、説明したけれども中身がよくわからぬ、非常に複雑な商品でありますとか周知性のない商品、営業員の方がべらべらと説明したんだけれども、聞いている方が何かよくわからない、それでも説明義務は尽くしたことになるのかといったようなことになってまいります。
 説明義務というのは、金融業者の取引効率を高めるためのものでないはずです。利用者保護のために、利用者が自己責任で取引をできる環境整備をするために設けたはずであります。したがいまして、適合性を入れるか、適合性の原則を法案として盛り込まないのであれば、当該金融取引について十分に認識、理解したというところまで説明をするということでないと、現在の判例水準よりもむしろ後退した部分が出てまいるという内容になってしまうわけであります。
 参考資料の四ページ目のところに「説明義務の役割について」とありますが、そこは今私の方で申し上げたようなことがまとめて書いてございます。これは「中間整理(第二次)」に対する意見書という形でまとめていたものでして、「中間整理(第二次)」の方には、金融商品のリスクの程度について金融商品の基本的性格と仕組みに沿いつつ説明されるべきというふうになっておりましたので、金融商品の基本的性格と仕組みは当然このリスクの程度と同時に法案に盛り込まれるというふうな前提で意見書をつくっていたんですが、今回法案を見てみると、そこが明記されていないということになっています。しかしながら、この金融商品の仕組みとかリスクの程度などがわからないまま取引が始められるというような事態はあってはならないことでありまして、これは当然明記されるべきものであるというふうに考えます。
 そして、コンプライアンスの問題ですが、法案は当然裁判の判断基準となりますけれども、それと同時に金融機関がどのように運用するかというのが実は実務的には極めて重要でありまして、この法律、民法との関係、消費者契約法、業法、もろもろの法律を当該金融機関がどのような役割と認識して社内規程を整備するのかということは極めて重要であります。
 したがいまして、説明義務との関係でも、何をどの程度説明するのかといったようなことを含めまして公表範囲は広くとる必要があります。それで初めて消費者がその金融機関の関係法令の運用姿勢を明確に判断できるということになるわけであります。
 以上、ポイントだけ絞って申し上げてきました。利用者保護のための非常に数少ない、ほとんど初めてと言っていいぐらいの法律でありますので、いろいろ問題を抱えている以上、以上の点を中心に慎重な御審議をお願いしたいと思います。
 市場整備の点だけではなくて英米並みという市場整備を目指すのであれば、当然利用者保護の方面におきましても英米に匹敵する利用者保護ルールというものを同時に整備することが必要だということをお願いしまして、意見陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#10
○委員長(平田健二君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○中島啓雄君 自由民主党の中島啓雄でございます。
 四人の先生方、大変お忙しいところをおいでいただきまして、また貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。
 まず、金子先生にお伺いしたいと思いますが、証券市場の現状をるる御説明いただきまして、グローバル化の時代に対応していかなきゃならぬということでございます。
 先週末から今週にかけまして、御承知のようにニューヨークから発した株の大変な暴落がございましたが、これは投資家保護とか投機の抑制といった観点あるいは証券市場の健全な育成といった観点から、市場の問題でございますからこういった株の上下を抑制するというわけにはいかないんでしょうが、健全にコントロールするといいますか、おかしな投機が起こらないというようなことはやはり証券市場の役割ではないかと思います。そういう意味で、今後、証券市場が果たしていく役割、そして株式会社化される場合にそういった観点からどういった発展が考えられるか、その辺をお聞かせいただければと思います。
#12
○参考人(金子義昭君) 私ども証券取引所では、公益及び投資家の保護に資するように、有価証券の売買等が公正かつ円滑に行われることを旨として市場運営を行ってきております。御指摘のとおり、この点については証券取引所の基本的な使命でありますので、株式会社化されても何ら変わることはないと考えております。
 先週末のニューヨークの株価の下落によりまして市場がやや不安定になり、心配する方も随分出たんですが、現在も先行き不透明感というのは必ずしも払拭されたとは言い切れないかもしれませんが、一応落ちつきを取り戻しております。
 ただ、一般的に言って、市場の活性化のためには基本的には市場は自由でなければならないというのは当然でありますし、相場の変動というのもある程度マーケットにゆだねなければならないということが基本ではありますけれども、先生御指摘のとおり、他方、市場での取引が円滑に行われなければならないわけで、公正な取引を確保する、あるいは市場の過度の変動、危機的な状況を防止するという観点から市場の安定を図る必要があるというのは当然だと思います。
 私たちも、これは政府サイドでもそうですが、例えば空売り規制みたいな規制も導入されましたし、それ以外に取引所としては値幅制限その他の安定の仕組みを持っておりますし、今後どういう事態に対応してどのような対応が可能かということはその時々の状況に応じて考えなければいけないと思いますけれども、やはり円滑に取引が行われる市場、安定的な市場というのが基本でございますので、今後ともそういう公正性あるいは円滑な取引を確保できるよう私たちは努力していきたいと考えております。
#13
○中島啓雄君 ありがとうございました。
 次に、桜井先生にお願いしたいと思います。
 まず、先生のお話では、今回の法律は説明義務の問題その他かなり不備があるという御指摘でございましたが、消費者保護という観点でどこまで細かく法律に書き込むべきなのか、あるいは業者間の自主規制に任せるべきなのか、消費者そのもの、投資家の自己責任に任せるべきなのか、この辺が考え方によってなかなかバランスが難しいところではないかと思います。
 例えば企業財務の面で見ますと、企業会計原則というのは証券取引法なりなんなりをベースにしてございますけれども、これは企業会計の中で自主的な慣行として育ってきたものを集大成したというような体系になっておって、企業会計原則は企業会計審議会の答申に基づいておりますが、それの細かい点については公認会計士協会がかなり細かな指導をつくっておるというようなことがございますので、やはり金融商品についても、自主規制をどれだけきちっとするか、その中で悪徳業者を排除していくかというようなことも重要な課題ではないかと思います。その辺の業者間の自主規制といった領域と法律で規制すべき領域とをどう考えたらいいのか、お考えを聞かせていただければと思います。
#14
○参考人(桜井健夫君) まず、最初にお話のあった消費者保護と自己責任とのバランスの問題のお話ですが、これはてんびんのように両側に乗っかるようなものではないというふうに考えています。消費者保護がされた上での結果が消費者に行く、そういうものだという考え方です。
 これは極めて単純な話なんですが、自分で自分のことを決めることができるような前提条件をつくるというのが今おっしゃっている消費者保護の中身になると思います。そういう前提条件ができて、それで自分で決めたということになれば、その結果を自分が負うのはそれは当然のことということになります。
 それから、自主規制と法律の規制の問題なんですが、まず自主規制の問題としては、例えば証券業協会とかそういう縦割りの自主規制機関というのがあるわけですが、例えば投資信託を売るのは証券会社だけではない、銀行もそうだ、それから保険会社も売るというようなことになった場合に、この証券業協会に銀行も保険会社も入るというような形を一応やろうとはしていますけれども、どうしても今のところアンバランスな形の自主規制機関しか存在しないということになっています。それから、例えば投資信託協会には銀行が入っていないとか、投資信託を売っているのに入っていない、そういうことになってきますと、一体この自主規制機関というのは、今の現状は何なんだという、非常にばらばらな状態であるというふうに考えていますので、そもそもそういった自主規制機関を横断的にきちんとつくることから始める、それ自体がこの金融サービス法の中の一部ではないかというふうに考えています。
 それから、自主規制だけで足りるのかどうかということになれば、それで足りれば今まで例えば証券の世界で証券取引被害ということは起きてこないわけで、それで足りないからこそ法的な規制も必要だというふうに考えます。
 もちろん、自主規制機関がその内容をよくわかった人たちによってつくられるルールで、その公正性とか、それから利用者あっての業者であるということをそれなりにきちんと考えた上での自主規制でつくっていけば重要な役割を果たすことは間違いないので、自主規制機関の重要さというのは今後もそのままあり続けるというふうに思います。
#15
○中島啓雄君 ありがとうございました。
 同じ質問を石戸谷先生にもお願いしたいのでございますが、そういう自主規制と法律の関係。
 それから、桜井先生がおっしゃったように、自主規制機関を育てるという意味で、今後どういうように考えていったらいいか。その辺のヒントもあわせてお願いできればと思います。
#16
○参考人(石戸谷豊君) 自主規制ルールでも実効性の問題だと思うんですね。
 イギリスの金融サービス法においては自主規制にかなりの部分をゆだねているわけなんですけれども、しかしながら自主規制は、自分たちで決めた自主規制規則に違反したような行為が行われた場合には、それによって損害をこうむった方はオンブズマンに申し立てて、オンブズマンの方はそういう批判があればきちっと賠償を命ずるという意味では、それは法律に直接書かれていない自主規制ルールであるといっても、きちっと実効性が保たれているということが言えると思うんです。
 これに対して、日本でいわゆる自主規制と言われているようなものが同じような意味で実効性を持っているかといいますと、それは残念ながらそうなっていないということがありまして、したがいまして法律できちっと定めるということが必要になってくる。そしてまた、今後もちろん自主規制機関をきちっと立ち上げて自主規制規則をつくっていくということは非常に大事なことでありまして、私どももそのような方向でぜひやってほしいと思っております。
 その中で、イギリスの場合と同じように、自主規制機関の中に裁判外紛争処理機関を設ければ自主規制ルールも実効性を持つようになるでしょうし、自主規制機関それ自体が紛争を通じて問題の所在をいち早くキャッチして、ルールがおかしい場合にはルールを改正し、個別会社の営業がおかしい場合にはその会社を指導するといったような形で、単に紛争のミクロ的解決というものにとどまらない機能を発揮できるのではないかというふうに考えておりますので、ぜひ自主規制機関をきちっと立ち上げて、業界団体と自主規制機関という形じゃなくて、純粋の自主規制機関を創設していくことが大事だというふうに考えております。
#17
○中島啓雄君 ありがとうございました。
 次に、神田先生にお願いいたしますが、二つお伺いしたいと思います。
 一つは、SPCの関係と、販売法にも関係がございますが、それを普及させるにはどうしたらいいか。SPCといいますか、不動産を集団投資のスキームにするというのがなかなか難しい仕掛けでございます。これを一般の投資家にわかってもらうというのはかなり難しいことだろうと思いますが、そういう意味で、販売法の説明義務との絡み、それから不動産の流動化というのは必要なことだと思いますので、これを積極的に推進するPRの仕組みといいますか、何かその辺のヒントがあるのかどうか。
 それから、販売法に関連して、これは私法であって業法ではないとおっしゃいました。悪徳業者をどう排除するかとか、そういった問題はまさに業法の問題だろうと思いますが、今は業法はそれぞれ縄のれんでばらばらであるという状態なので、今後の課題といったようなことで何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
#18
○参考人(神田秀樹君) まず、第一点の方ですけれども、今回もしSPC法が改正が成立しますとさらに大改正になるわけですけれども、それを普及するためにはという御質問ですが、二点ポイントがあると思います。
 一つは、このセキュリタイゼーションとか資産の流動化というのは、私はよく飲みにくい薬をカプセルに入れて飲みやすいようにするという表現で言うことがあるのですけれども、もとは非常に売りにくい、あるいは流動的でない資産を、ストラクチャリングというふうに呼んでおりますが、これを組みかえてそれをセキュリタイズして、流動化してと言いますけれども、その出口の部分はカプセルのようにする。というのはどういうことかと申しますと、普通の株とか社債とか一般の金融商品と同じような形にする。したがって、投資家の方はカプセルになっていますから飲みやすいということでありまして、そこのつくり方、その仕組みのつくり方次第でありまして、それはその商品をつくる人がやはり工夫をする、これが一番重要なことだと思います。
 もう一点は、多くは実は桜井先生、石戸谷先生がおっしゃったことにも関係しますけれども、機関投資家向けの商品というものも主流であるというふうに考えられます。一般投資家向けの商品というものももちろんあっていけないことはありませんが、一般投資家向けの商品の場合には、またそれは一般の投資家が普通の株とか金融商品を購入するのと同じような、カプセルという比喩で申し上げましたけれども、そういう状態がどこまでつくられるか、そういう工夫にかかっているように思います。
 それから、第二点の方ですけれども、悪徳業者を排除するには、不適切あるいはいろいろな被害を今後防ぐためには、私は、業法と私法は車の両輪と言ってしまうとやや平凡な表現ですけれども、両方を強化する必要があると思います。
 それで、私法の方は、これまでは弁護士の先生方の御努力もあり、裁判所の御努力もあり、膨大な判例の蓄積が日本にはあるわけです。今回はそれに加えてもう一つこの法律を行こうと、こう考えているわけです。
 業法の方は、おっしゃるように、ばらばらという表現は必ずしもよくないかもしれませんが、これまでの銀行法、証券取引法、何とか法という中で最大限の努力をしてやってきているということだと思います。
 したがいまして、業法の方は今後どういうふうに考えるかということですけれども、先ほども御議論ありました自主規制機関の強化、自主規制機能の強化ということを含めて、私は、業法の方も必要があれば不断に見直していかなければいけませんし、そういう意味で、私法だけに頼るのではなく、業法の方による問題の対処ということも決して忘れてはならないと思います。
#19
○中島啓雄君 ありがとうございました。
 先生方のヒントを参考にまた私どもも勉強させていただきたいと思います。
 終わります。
#20
○寺崎昭久君 民主党・新緑風会の寺崎でございます。
 本日は、参考人の方々には貴重な御意見を御披露いただきましてありがとうございます。
 限られた時間でございますので、早速質問に移らせていただきます。
 まず、桜井参考人にお尋ねいたします。
 先ほど桜井参考人は、金融商品の説明義務が履行されたか否かということのかかわりの中で、顧客の立証責任に触れられました。その中で、被害救済の判決が一件あれば周辺にその何十倍、何百倍もの泣き寝入りがあると考える必要があるという趣旨のお話があったと思います。
 それから、別のところでも、これらの多くは被害であり、立証責任が原告にあるために、説明し切れないか、ないしは訴訟するだけの労力とか経済力がないために起こっている現象である、そういうふうに考えるべきだという御指摘がございました。
 このことは、見方を変えれば、顧客の立証責任が販売業者に移転されれば被害救済は相当程度改善されるという期待も持っているわけでございます。
 そうした観点から今回の金融サービス法案を見ますと、確かに原告側は業者から説明がなかったということを証明したり、あるいは説明不十分であったということを証明すればいいということになっておりますから、これまでに比べると若干その負担は軽減されたと言ってもいいんだと思います。
 しかし、そのことは、例えば業者側が顧客に過失ありということなどを言い出し、推定を覆す事実があるというようなことを言い出した場合には、それに対抗して顧客はやっぱり説明が不十分であったということを証明しなければいけないわけですね。これまでも難しいというのはこの一点だったと思うんです。
 この点について、これまでに比べて長足の進歩があった、改善があったということでなければ、相変わらず泣き寝入りの状態というのが続くのではないかと心配されるわけですが、桜井参考人はこの点についてはどういうように御認識されていましょうか。
#21
○参考人(桜井健夫君) 今回のこの金融商品販売法案で立証責任に触れているのは第五条ですが、これは損害額の推定規定です。ですから、損害額について、元本欠損額について推定がされているということなんですが、この点についての立証は実は余り問題になっていません。
 裁判では、出したお金から戻ってきたお金の差が損害だろうというふうに大前提としてまず出てきて、それについて、いや、実はもっと別の損害を小さくする機会があったとか、そういうのは業者の方が言ってくる、証明する、そういう流れになっていますので、これは現在の判例の流れからすれば決して消費者側、利用者側にとって新しい大きなプラスになるほどのものではないということです。
 立証責任との関係で言えば、一番大きな問題は勧誘経過の立証です。それは、説明義務に関して言えば、説明がされなかったことあるいは不十分だったことの立証、それが一番期間もかかるし、あと、その立証が難しい。それについての立証責任は今回の法案では全く触れていないということで、従来どおり利用者側が立証しなければならないということになりますので、その点については全く変化がないということになります。
 したがって、この立証の問題について新たに利用者側にやりやすい状況ができるわけではないので、重要な部分について、泣き寝入りがこれから、この法律ができることによって特に立証の問題を考えて減るということはないというふうに考えなければならないと思います。
#22
○寺崎昭久君 今の点について、業者から説明がなかったということをもう少し容易に立証できるような法律的な枠組みというのはつくれないものなんでしょうか。
#23
○参考人(桜井健夫君) それは、説明したことの立証責任を業者の方が負うというふうにすればいいわけで、理屈の上では簡単なことです。では、実際にバランス論として果たしてそれで業者側の立証負担が今度は逆に過大にならないかとか、そちら側の意見を言ってくる方も出るとは思いますけれども、基本的には今のままでは利用者側の立証責任が重過ぎることは間違いないので、何らかの形で立証責任を転換するという発想が不可欠だというふうには考えています。
 それは例えば勧誘なら勧誘の経過をどうやって証拠に残すかという問題で、これは利用者側よりは業者側の方がその経過を残すことはシステムとしてはつくりやすい、現にもう既にある程度行っている、そういう大前提がありますから、大きなドラスチックな変化でなくとも、ある程度対応のできるような形の立証責任の転換ということは可能だというふうに考えています。
#24
○寺崎昭久君 桜井参考人にもう一点御質問いたします。
 それは裁判外紛争処理の問題でございます。
 金融審議会の「中間整理(第二次)」によりましても、「今後、既存の業界団体等における自主的な取組みが更に進展することを期待したい。」という記述にとどまりまして、この裁判外紛争処理の問題については先送りされたと認識しております。
 先ほど桜井参考人の指摘について私からも紹介いたしましたが、トラブルの実態は表に出てくる係争事件の十分の一とか何十分の一だとか何百分の一だと考えた方がいいというお話を伺ったときには、私は少し言い方がオーバーではないかというように最初聞いたわけでございます。しかしながら、その後、証券業界等の事情の明るい人に話を聞いてみますと、私の認識の方が少し甘かったのかなと思わざるを得ないような事態に出くわしております。
 例えば、顧客から実際のトラブルが持ち込まれたときにどう処理するか。まず、投書とか苦情が証券業協会等に持ち込まれた場合に、証券業協会というのはどうも紛争を解決する当事者能力がないようでございまして、実際には証券業協会は該当する証券会社にそれを投げる。つまり、証券会社と顧客の間でそのトラブルを処理してもらいたいというやり方が実態であって、苦情の申し立ての多くというのは、説明があったとか任せてくださいと言ったとか言わないとか、あるいは絶対大丈夫だというような保証めいたことを言ったとか言わないとかいうようなことで、結局のところ水かけ論、解決が難しいというのが実態のようでございます。
 中には、もちろん損害賠償が行われるというケースもあるようですけれども、そうではなくて、証券会社が例えば公募株を優先的に回すとか、あるいはメリット商品を顧客に提示するとかいうようなことも含めて、折り合いをつけるというんでしょうか、グレーゾーンの中で折り合いをつけているというのがどうも実態だというようなことを聞いております。
 それがもし、すべてとは言いませんが、かなりの部分を占めているということになりますと、証券業協会等のそういう紛争処理機関に、処理機関の自主的な処理にゆだねるというだけで果たして問題が解決するんだろうかということを危惧するわけであります。
 この点について桜井参考人がどのように判断されているのかということが第一点と、それから例えば英国のようなオンブズマン制度を導入して紛争を処理するというようなことを考えると、我が国の法制下にあっては裁判を受ける権利の侵害になるのではないかという見方もあるようでございますが、この辺について御見解を伺いたいと思います。
#25
○参考人(桜井健夫君) まず最初の、紛争処理機関として証券業協会の話がありましたが、自主規制機関による紛争処理というのは、その自主規制機関が組織的に業界団体と切り離された純然たる自主規制機関という形であって、かつこれからの金融商品の状況からすれば横断的な、先ほどお話ししたような形の自主規制機関であれば、そこで紛争処理をするということは十分期待されるというふうに考えたいと思います。
 それは一つは、そういう紛争が起きて、その紛争の中身に応じたさらなるまた新たな自主規制としての対応が自主規制機関の中でできるということがありますので、自主規制機関がそういう紛争処理機能を持つというのは大切なことだというふうに思います。
 ただ、そこで大事なことは、やはり業界団体的な性格を持ったままの自主規制機関だとそれが期待できない、解決の公正さに対する期待ができないということが一つあります。
 そのために、構造的には、例えばイギリスのオンブズマンなんかで見られるようなやり方ですけれども、消費者を自主規制機関の紛争処理機関の中に構造的に入れてしまうというやり方が一つの有効な考え方なのではないかというふうに思います。それは常に自主規制機関の中の紛争処理機関について解決の状況をウオッチし続ける。消費者の代表が出ていって、そういうふうに見続けるということをやってその公正さを担保する。そういう構造的な工夫が必要なのではないかというふうに思います。
 それから二つ目の、裁判を受ける権利の問題ですが、まず利用者側の関係からいけば、そこの紛争処理機関による結論に不服があれば訴訟が起こせるというふうにすれば、利用者側の裁判を受ける権利は問題ないということになります。
 それから、自主規制機関での紛争処理ということで考えれば、自主規制機関の中で業者の方はそこに入るということと自主規制機関の裁定結果を受け入れるということはセットになっているというふうに考えれば、その点でも問題はないというふうに考えます。
#26
○寺崎昭久君 金子参考人にお尋ねいたします。
 適合性の原則についてでございます。
 証券取引法でも銀行法施行規則の中でもこの適合性の原則というのがうたわれておりますし、その一環として、例えば顧客カードを備えなさいという指導もされているように承知しております。しかし、この顧客カードがどこまで充実したものになっているのか。これも業界の事情通に聞いてみますと、少し心もとないような感じもいたします。
 外国のある証券会社の話も調べてまいりましたけれども、相当詳しい顧客カードを持っておりまして、項目数にすると三十に近い項目があるわけです。例えば、基本的な個人情報はもとよりですけれども、就業状況、それから退職後の生活設計がどうなっているか、その中には退職金だとか退職したい年齢はいつなのかとか、長期に寝たきりになった場合にそれをどうやってカバーできる保険を持っているのかとか、あるいは相続情報ということについて言えば、遺言があるのか、生命保険があるのかとか、あるいは資産情報について言えば、それぞれの家族構成員の資産構成がどうなっているのか、保有比率がどうなっているのか、お金で持っているのか、車で持っているのか、住宅で持っているのかというようなことも相当細かく把握しているというのが実態のように聞いております。
 金子参考人からごらんになって、日本の例えば証券会社で結構でございますが、果たしてこの顧客カードというのが有効に活用されていると見ておられるのかどうかということが第一点でございます。
 それから、今回の金融商品販売法案には適合性の原則というのが具体的に盛られず、物によっては業法にゆだねるというような格好になっているわけでありますけれども、業法にカバーされない部分もあるわけでして、そうしたことを考えると、単に勧誘方針を公表するというだけでいわゆるコンプライアンスというのが整備されるとか充実したというように言えるのかどうか、その点についてお尋ねいたします。
#27
○参考人(金子義昭君) まず最初の適合性原則の件ですが、確かに適合性原則自体は証取法の枠組みの中に規定されておりますし、証券業協会を初めとして証券会社と一緒になってできるだけ適切な勧誘が行われるように今まで努力していることは当然でございます。
 ただ、私は顧客カードが具体的に日本でどういうふうになっているかということをまことに申しわけないんですが承知しておりませんので、今ここでそれが不十分だとかちゃんとしているとかと申し上げる立場にありませんけれども、顧客カードそのものが適合性原則を維持して適正な勧誘が行われるような形で整備されるということは望ましいことだと思います。ただ、現状が十分かどうかということは今申しましたようにちょっと承知しておりませんので、コメントするのをちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
 それから、業法でカバーされないものがあるというのは、確かに今法案を見てみますればそういうことはあろうかと思います。証取法の分野ではかなりの程度いろいろな整備が行われてきている方だと思いますが、この金融商品販売法の関係につきましては、これはいろんな方のいろんな意見があるやに聞いております。事実、これは金融審議会の中でいろいろな形で議論された結果、妥当なものとして提出されたと聞いておりますし、先ほどの神田先生の御意見もございましたが、やはり現状においては妥当なものとして提出されたものであろう、かつそれは少なくとも法律的にある程度明確に規定が行われたという意味において望ましい方向であると考えております。
#28
○寺崎昭久君 金子参考人にもう一点だけ伺います。
 参考人はかねてより証券取引所がコーポレートガバナンスの議論に積極的に関与する必要があるという持論をお持ちのようでございますけれども、そのコーポレートガバナンスに対する発言の中には、例えば投資信託などを設計する場合に、その設計の段階で回転だとか乗りかえ売買を排除するというようなことをやろうじゃないかというのもコーポレートガバナンスの範囲に入るとお考えですか。
#29
○参考人(金子義昭君) 今の御質問の趣旨をちょっと正確に理解していないかもしれませんが、コーポレートガバナンスと通常言われております場合には、会社はだれのためにあるかという議論で、できるだけ株主のための会社運営といいますか、そういうものがきちんと行われることが大切であるという意味でコーポレートガバナンスという言葉が通常使われております。
 私たち取引所の者としては、当然、株式の売買が行われる場を提供しているわけですので、上場会社が株主のためにしかるべきコーポレートガバナンスを確保するというのは当然重要だと思っております。ただ、アメリカの例や何かを見ますと、例えば監査委員会の制度とか社外重役の制度とか、取引所の上場規則の中にそういうのを設けていることは若干ありますけれども、日本の場合はまだどういうコーポレートガバナンスが本当に望ましいのかというコンセンサスができておらない段階でございますので、私たちとしては一般的に、上場会社の方々にコーポレートガバナンスの精神を理解していろいろやっていただきたいというふうに要請しているところでございます。
 ただ、今の投資信託のこととコーポレートガバナンスの関係は私はちょっと御趣旨がわかりませんので、この程度にさせていただきます。
#30
○寺崎昭久君 時間がないので詰めて申し上げましたのでそんなことになりましたけれども、また改めて機会を見てお伺いしたいと思います。
 ありがとうございました。
#31
○海野義孝君 公明党の海野でございます。
 本日は、四人の参考人の方々には大変御多忙のところをお差し繰りして御出席いただき、大変ありがとうございます。
 最初に、神田参考人にお聞きしたいと思いますけれども、先ほど詳細にわたって今回のインフラに絡む金融三法の成立に至る御苦心、いろいろなことについてお話を承ったわけでございますけれども、私は欧米のいわゆる金融サービス法といったものと我が国の場合では大分違うんじゃないかと。
 その理由は、まず世界の諸国においてはビッグバンと同時に金融サービス法なるもの等を整備された。ところが、我が国の場合はまずビッグバンありきということで、既にビッグバンは一昨年の春の外為法の自由化以来出発しているということでございます。それからもう一つは、三百とも言われるような金融商品は何も今回の金融審議会で審議が始まってから出てきたものではなくて、従来、欧米においてはそういった仕組み商品なるものが相当あった。我が国においては、従来、規制とかいろいろなことでそういったものが国際的に見て入ってくるのが遅かったという面があると。
 そういった中で、今回ビッグバンに伴っての諸問題、中でも特にそういう制度的な面でのインフラ、特に利用者、消費者側にとってそういう対応がおくれていたということについて、これを急速に整備しなくちゃならぬということで御苦心があったんじゃないかと思います。
 これまでの金融審議会における審議、それから一応三法が成立した段階においての御所見というか、先生がお考えになっていたようなことがどの程度盛られたかという点について、直接携わられたお立場としてお聞きしたいと思います。
#32
○参考人(神田秀樹君) 非常に重要な御質問をいただきましてありがとうございます。
 二、三感想を申し上げたいと思うんですけれども、まず第一に、欧米で金融サービス法というふうにおっしゃったわけですけれども、イギリスには金融サービス法という名前の法律がございますが、アメリカにはそういう名前の法律はございません。
 いずれにしましても、例えばイギリスの金融サービス法という法律は消費者保護法ではありません。これは言ってみれば業法を横断化したような法律なんです。その中にはもちろん消費者を保護する部分も含まれていますけれども、必ずしも消費者保護を中核とした法律であるわけではありません。先ほどの言葉で言えば、規制緩和の部分も含んでいる、そういう全体を、たまたまというんでしょうか、金融サービス法と呼んでおります。しかし、それには銀行とか保険会社が提供するサービスはかなりの部分は入っていない、別法にゆだねられております。そういうわけでして、欧米においては、消費者保護とか利用者の保護というものは金融サービス法という名前のもとで統一的に行われているのではなくて、やはりいろいろなところに散在しております。
 日本につきましては、まさに御指摘のとおり、ビッグバンをまず宣言いたしまして規制緩和をしていく中で、消費者側というか利用者保護の問題の対応がおくれぎみである、あるいはおくれていはしないかなどという御指摘が非常になされたという事実があることは確かです。私もそういう意味ではおくれている分野もあると思います。
 ただ、先ほど桜井先生からも詳しく御紹介がございましたけれども、これまで日本は民法という、一般法というんでしょうか、法律を基礎に、弁護士の先生方の努力、裁判所の判例の積み重ねによって膨大な経験をして、あるところまで来ているわけです。
 今回は、金融商品の法案について申しますと、その上にさらに金融商品の有するリスクについて重要事項の説明がなかったということさえ示せばそれで損害額が推定される、そういう意味で因果関係についての立証責任は転換されるわけでして、その部分をつけ加えるという意味で前進しようとしているわけであります。他方、業法の方は、それぞれの業法ではありますけれども、順次ビッグバンの中で改善を積み重ねているわけであります。
 したがいまして、今回三法が通りまして後の世界ということですけれども、これはビッグバンの前の状態と比べますと、利用者保護という観点から見ても以前に比べれば格段の進歩であるというふうに思います。
 ただ、注意すべき点は、法律を変えれば世の中がすぐきれいになるとか、それほど簡単であれば法律をどんどん変えれば済むことでありまして、実際はこの金融の分野の被害とかいうものは必ずしも法律によって対応できないような部分、そのときの状況とかいろいろなことがあって生じているということはもう既に歴史的な教訓なわけです。
 したがいまして、私は、今後の課題ということで申しますと、今回この法律が通りました後も、利用者の保護という点につきましては、先ほど御指摘の自主規制機能の強化といった問題を含めて引き続き、一つ一つという言い方をするとちょっとよくないのかもしれません、次々とと言うべきかもしれませんが、順次必要があればさらに制度の整備をし続けていく、そういう対応は必要だと思います。
 ただ、今回の法律が通れば、前のビッグバンの法律も含めまして法制面ということで見ますと、それ以前の状態に比べますと私はかなりの程度よくなるというふうに認識しております。
#33
○海野義孝君 どうもありがとうございました。
 次に、金子参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほどいろいろ御説明もありましたし、御質問もありましたからその点は省きまして、今、神田先生からもお話があった自主規制ということに関連してでございます。
 我が国の証券市場におきましては、プロというか機関投資家が本格的に介入してきたことによりまして、証券関係の商品については、適正な価格形成とか投資家保護というような問題につきまして、ここ十数年来、機関化現象が進む中でそういう価格形成等についてもかなり変わってきているんじゃないか。
 例えば自動車とか一般家電製品であるとか、そういったものについては、消費者、利用者にとって危険なものであればこれの製造を中止するとか、そういうのがPL法であるわけですけれども、金融商品はますます危険なというか、仕組み商品というものがだんだん多くなってきているということでして、我が国の千四百兆円と言われる個人の金融資産というものがいまだに預貯金、それからせいぜい債券、国債とか、そういったところにとどまっている。最近、株式市場がやや活況を呈してきた中で個人のそういう資金が投資信託などに相当流れたとかいうことがありますけれども、いずれにしましてもそういった点で金融商品を扱っている証券市場はここ十数年において大きく変わってきたと思うんですね。
 そういう意味で、特にこれから株式会社東京証券取引所というようになった場合に、自主規制機関としての機能をどのように発揮していくかという点と、例えば日本証券業協会とか証券取引等監視委員会とは今後どのように連携していかれるかという点で、従来的な会員制の取引所形態からこれに変わることによって当然変わっていく面があるのじゃないかと思いますけれども、金融商品のリスクがますます多くなってきているということにもかんがみて、証券市場の社会的な責任もますます重くなると思いますので、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
#34
○参考人(金子義昭君) 最初に、自主規制機能あるいは機関としてどういうふうになっていくのかということだと思いますが、仮に株式会社化したとしても基本的に取引所の自主規制機能の重要性は変わらないと私たちは考えております。やはり取引所市場はその中核的な市場として効率的で公正な、利便性の高い、信頼できる市場にしなきゃいけませんし、そのためには当然に市場の質というものをみずから管理していかなきゃいけないと。これは例えば一般の企業でもそうですけれども、自分の商品の質を高める、品質管理をするというのは当然のことでありまして、競争力を高めるとすれば当然そういう配慮をしない限りその会社はだめになってしまうということだと思います。
 証券取引所も同じことでありまして、やはり市場のクオリティーといいますか、質の向上に努めなければそもそもそういう市場に参加する人がいなくなってしまうということでありますので、仮に株式会社化したとしても、当然のことながらその市場の質の向上に全力を挙げるということになろうかと思っています。したがいまして、私たちは自主規制機能をみずから発揮して公正な市場、透明な市場をつくりたいと考えております。
 第二点の、協会あるいは政府との関係ですけれども、市場の公正性の維持ということはもちろん、国民経済上の重要性にかんがみて、当然、第一義的には国の責任はございます。
 ただ、その自主規制機能のメリットというのを考えてみますと、一つは、その専門性といいますか、やはり実際に市場の実態に直接かかわっておりますので比較的そういう実態に即した規制がやりやすいということ、それから二つ目には、弾力性といいますか、世の中が大きく変わる中で、いろいろ変わっていく中でその状況の変化に弾力的に対応できる、その二点からいって自主規制のメリットはそれなりにあると思うんですね。
 そういう意味で、基本的には国とそういう自主規制機関が一緒になって公正性を保っていく必要があると。自主規制機関の場合は、そういう意味では自主規制というのはいろいろ分けられると思いますけれども、一つはいわゆる証券会社というか仲介業者と顧客との関係、もう一つはその仲介業者が中心になりますけれども、市場に参加する者とその取引所市場との関係という二つに分かれまして、市場に関する自主規制というものはやはり市場開設者が行った方が適当であろうと。それから、顧客と仲介業者の関係は協会がある程度中心的な役割を果たすことになるであろうと思います。
 それぞれ特徴、メリットがあるわけですので、それぞれの機関、それぞれの立場立場でメリットを生かしながらお互いに協力し合って市場の公正性を維持していくべきだと私たちは考えておりまして、そういう意味で、取引所、それから国といいますか政府と言った方がいいかもしれませんが、政府あるいは市場開設者並びに業界団体が一緒になって市場全体の公正性を保つべきだと考えております。
#35
○海野義孝君 終わります。
#36
○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。
 四人の参考人の皆さん、きょうは本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 まず、石戸谷参考人に伺いたいんですけれども、先ほど参考人、それから桜井参考人からもお話がありましたけれども、金融の分野では消費者被害が非常に多いというお話でありました。私も何といってもバブル以降の教訓、それから実際に進行しているビッグバンに対応する法整備でなければならないというふうに思うんです。
 この間、私自身も金融の現場に行って関係者にいろいろ伺ったところでも、勧誘の仕方にも非常に問題があると。とにかく収益第一主義でノルマを課せられて、勧誘の仕方、説明の仕方でも大きな問題点があると。研修なんかでも、要するに危ないですよ、リスクがありますよということは最初に言っちゃいけませんということを言われているということを含めて、相当大きな問題があるなというふうに思うんです。
 伺いたいのは、今回の法案に至る経過の中で、審議会の場も含めてなんですけれども、そういう被害者の実態とか現場での実情について実際どれだけ調査して把握しているのかという問題があると思うんですが、この点について石戸谷参考人はどのようなお考えを持っていらっしゃるか、伺いたいと思います。
#37
○参考人(石戸谷豊君) まず、前提としてですけれども、お手元の配付資料の流れの中で、私の方でオブザーバーとしまして入りましたのが最後のこの金融審議会第一部会「中間整理(第二次)」の取りまとめからでありまして、それ以前については、利用者側として入っていたのはこの「中間整理(第一次)」のときには日弁連から一名入っていた、それ以前については利用者側は参画していないわけでして、参画していない部分については必ずしもはっきりしないわけですけれども、知る限りでは、まず実態を調べて、紛争の原因がどういうところから生じているかということを調査検討して、それに対してどういうルールが必要かというような段取りでは残念ながら進められていないと。被害実態に即して考えなければならないというのは、先ほども申し上げましたとおり、日弁連としては最初の意見書から強調しているところでありますけれども、残念ながらそういうふうにはなっていないということがあります。
 したがいまして、例えば先物の例で先ほどお話ししましたようなことで、先物というのはリスクが大きいから当然トラブルが多いだろうといったような誤解が生ずるわけであります。逆にこの先物みたいなリスクが高くないものの例でいいますと、投資信託の例があります。証券一一〇番を証券不祥事以降何度かやりましたけれども、我々とすれば、ワラントはそういう意味では非常にリスクが高い、投資した金額が紙くず化する危険性がある、現に紙くずになった人が裁判をやっているわけですけれども。そういうリスクが高いものなので、当然ワラントの被害申し出が一番多いだろうというふうに思っていたんですけれども、実際問題としてはそうではなくて、どの一一〇番でも現実に苦情が一番多いのは投資信託であると。
 そうしますと、リスクが高いとか低いとかということよりは、先物の例でもお話ししましたとおり、売られ方が問題なんで、どういうふうに売っているのか、そこに問題があるんではないかということに当然なるわけでして、これは医者が患者を診て実際にどういう病気か診断して対処するのと同じように、やはりこういう問題は実態の方の解明からやるべきじゃないかというふうに現在でも思っております。
#38
○笠井亮君 さらに伺いたいんですが、先ほども議論があったんですけれども、実際にバブル以降の金融被害の裁判事例を見てこられて、説明義務だけ求めても、結局は説明したとかしないとか水かけ論になってしまって、実効性が上がらないということはないのかどうか。そういうことで実効性が余りないというふうにお考えであれば防止するためにどんなことが考えられるか、お話を伺えればと思うんです。
 私も一昨年秋に参議院からの派遣でイギリス等の実情もこの問題を含めて見る機会があったんですけれども、大分到達点が違うなと。先ほど参考人は英米並みの保護をというふうなことも強調されましたけれども、その辺も含めて御意見をいただければと思います。
#39
○参考人(石戸谷豊君) 先ほどの桜井弁護士のお話とも共通するところがあると思うんですけれども、確かに先ほど話が出ましたような立証責任の転換といったようなことがあれば、それは大変に役に立つと思います。
 現実問題として、説明したとかしないとかといったような問題について、証人尋問その他、事実認定に相当の時間がかかっている。これに対しまして、損害額については、当然ながら出したお金と戻ってきたものの差額が損害だという差額説で固まっておりますので、これ自体は余り問題がない。したがって、その説明したかしないかというところの手当てをやらないと裁判が迅速化しないし、なかなか実効性が上がらないということは御指摘のとおりだと思います。
 日本の消費者取引の他の分野と比較してみますと、例えば宅地建物取引業法に基づく不動産取引などでは、まず重要事項説明書を渡しますし、契約のときは契約書を逐一読んで確認をしていくといったようなやり方をしているわけでして、そこで言った言わないというふうなことが主たる争点になるというようなことは余りないわけですね。これに対して、金融の場合には迅速性を要するということを名目として電話でぱっぱとやってしまうというふうなことがあるので、こういったような問題が生ずるということであります。
 そこで、例えばイギリスの場合を参考に考えてみますと、イギリスの場合には、重要事項説明書と似たようなものなんですが、キー・フィーチャー・ドキュメントというふうな内容説明書のようなもの、金融商品の内容説明書のようなものを渡して説明する。さらに、アドバイスするときの義務というのは日本よりかなり高い。ベストアドバイスでなきゃならないというふうになっておりますので、ベストアドバイスを、なぜあなたにとってこの金融商品がベストであるのかということを書面に書いて渡す、リーズン・ホワイ・レターという書面化して渡すと。
 したがって、それで後でどういうことで勧められたというのがわかるという形になっていまして、言った言わないの話にならないような工夫をしているということがありますし、説明した、しないというふうな水かけ論的な論点だけではなくて、適合性という客観的な判断部分、ベストアドバイスという高い義務を課しているというふうなことと照らし合わせて、総体として利用者保護が図られているということになると思います。
#40
○笠井亮君 ありがとうございました。
 金子参考人に伺いたいんですが、時間の関係で多くは伺えないので、公共性、自主規制機能の問題については私はいろいろまた議論がしたいんですけれども、ここでちょっと一点だけ伺っておきたいのは、株式会社化によって、意思決定の迅速化ということと、それから伺っていますと資金調達の問題がありましたから、やっぱり収益性の高いものへのインフラ整備のために資金調達ということが優先されて重点に置かれるということになっていくと思うんです。
 会員組織として会員が平等に参加してきた取引所の運営が今度は営利追求の株式会社に変わるということで、先ほどもお話がありましたが、コンセンサスがなかなか難しいということもあったということだと思うんですけれども、結局そういうことによって中小の証券会社ないしは、どういう言い方をしたらいいかはあれですけれども、相対的に言えば収益性の低い会員と言っていいんでしょうか、市場参加者の運営あるいは意思決定からの阻害という問題が出てこないか、そういうおそれが出てこないかということについてはどのようにお考えでしょうか。
#41
○参考人(金子義昭君) 今後、仮に株式会社化したとした場合に、会員制度であればコンセンサスのもとで意思決定が行われるということなので、確かに中小を含めてある程度みんなの納得が得られるところでいろいろな物事が変わってきたということですが、それでは株式会社化すれば本当にそういう事態が変わってしまうのかという御質問だと思います。
 実際には、株式会社化したとしても、自分の市場が本当に競争力がある市場であるということ、そういうことであるためには、当然のことながらすべての取引参加者あるいは多くの取引参加者がそこに参加できるような市場でなければならないということだと思います。
 したがいまして、株式会社化すると利益追求のためにかなり一方的に多数決の論理で片づけられていくのではないかという懸念だと思いますけれども、もちろん迅速な意思決定という上ではある程度、完全なコンセンサスというよりは、時代の変化に応じて望ましい方向で必要な改革をしていくという方向に向かうとは思いますが、だからといって中小、これは中小といってもかなり多くの取引参加者になると思いますが、そういう方々の声を無視して市場運営をするということは不可能だと思います。
 したがいまして、いろいろな取引参加者の声を吸い上げて、そういうニーズに応じた仕組みをつくっていくかというのはもちろんこれからの課題ではありますけれども、私たちは、仮に株式会社化したとしてもそういう幅広い市場参加者の声をくみ上げながらよい市場をつくっていくことになろうと、こういうふうに考えております。
#42
○笠井亮君 市場参加者の意見は最大限聞いて反映させるということだと思うんですが、にもかかわらず最終的には迅速な意思決定ができるようにというためだということですよね。そうすると、そこでやっぱり利潤、営利が優先ということになりますよね。
 ましてや、国際間競争ということを先ほど強調された。競争力をつけなきゃいけないということになりますと、結局、意見は聞くんだけれども、インフラ整備にしても大証券会社とか収益性の高い参加者が使い勝手がいいような形に重点が行き、利益中心の意思決定や運営ということになってしまわないかということがどうしても残ってくると思うんですね。
 そうすると、では個人投資家との関係でも、例えば対面営業をやっているような会社に不利なようなことになってくれば、そことやりとりしている個人投資家にどういう影響が出るかということも出てくると思うんですが、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
#43
○参考人(金子義昭君) おっしゃるとおり、これからは、従来型の対面営業をしている会社、それに新しくインターネットとかオンラインでいろいろな取引をする会社、いろいろな営業をする会社が出てくると思います。そういう意味で、そのコンセンサスをつくるのはより難しくなるということがありまして、今後、意思決定の迅速化が図られないんではないかという懸念が出てきた結果、株式会社化という選択肢を認めてほしいということになってきているわけなんです。
 今まではコンセンサスということで、非常に少数の方が反対しているようなことでもなかなか物を決められなかったということはあり得たわけですね。幸いにして、会員制度が今まで悪かったかと申しますと、会員制度は戦後比較的うまく機能してきたと思います。なぜならば、大きな証券会社あるいは小さな証券会社を含めて大体同じような業務を行っておりましたし、比較的コンセンサス形成が易しかったんですね。
 これからは、今申しましたようにいろいろな証券会社が出てくる中で、コンセンサスを完全にやるということでは迅速な意思決定ができないということで、より変化に対応した措置がとれるような組織形態を選択させてほしいということであります。確かに論理矛盾ではないかという話だとは思いますが、一方で取引参加者の声を最大限集約しながら、かつごく少数の反対によって改革がおくれないように、そこのバランスをとりながら運営をしていくということだろうと思います。
#44
○笠井亮君 自主規制機能との関係も同じような矛盾をはらみつつの問題だと思いますので、これはまた審議の中でも引き続きやっていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#45
○三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。
 本日は、参考人の皆様、お忙しいところ御教授ありがとうございます。私はそれぞれ一問ずつお尋ねしたいと思いますが、よろしくお願いします。
 まず、金子参考人でございますけれども、東証では本年三月に広島と新潟両証券取引所を吸収合併されました。今回の改正とは直接に関係ないかもしれませんけれども、市場競争力強化という観点を重視する今回の株式会社化の動きの中で、こういったケースが中長期的に見ますとまた出てくるのではないかと思っております。
 こうした場合に心配になりますのは地方証券取引所に単独上場している企業の問題でございます。こうした地方単独上場の企業というのは地場産業などの地域に密着した企業が多うございまして、これらの企業に対する配慮も忘れてはならないと思うのでございます。
 今回の合併に当たっても、両証券取引所に単独上場されていた企業については東京証券取引所上場に当たって経過措置が設けられたと聞いておりますが、今回の合併に当たっての上場に関する経過措置の内容、経過措置の適用を受けた単独上場企業の概要や東証として地方証券取引所との関係などについて御所見をいただければと存じます。
#46
○参考人(金子義昭君) おっしゃるとおり、新潟、広島との合併を三月一日に行いました。これは、地方証券取引所を取り巻く環境がいろいろ変化する中で、地方の取引所自体が関係者と議論を重ねた結果、東証と合併したいというようなことでございましたので、私たちはその合併を了承したわけでございます。
 もちろん、合併に当たりましては、それが変な影響を及ぼさないように当然のことながら円滑な事業承継ということを考えなければいけませんし、事実、今回の広島、新潟につきましては、それぞれの取引所に上場されていました単独銘柄を私たちは包括的に承継しております。
 おっしゃるとおり、両取引所と私たちの上場基準に若干差がございますので、三年間猶予する経過措置を設けております。具体的には、上場株式数、株式の分布状況及び売買高に係る上場廃止基準の適用などについて三年間の猶予をすることにしております。こういうような経過措置を設けつつ、円滑な業務の承継というのを行っているわけでございます。
 今後、ほかの地方取引所がどうなるかということですが、確かにいろいろな環境変化がある中で、それぞれの地方取引所がどんな形で将来の姿を描いていくのかというのをいろいろ検討されているだろうと思います。これは私たちがどうこう申し上げるということではなくて、あくまでも地方のそれぞれの取引所がみずからの将来像を描くべく関係者と協議するような事項、関係者といいますのは地元の方々とか、そういう関係者と協議しながら決定されることだろうと思っています。
 広島、新潟のケースもまさにそういうことでございまして、東証としてはそういう要請があればということで広島、新潟との合併を決定したところでございます。
#47
○三重野栄子君 ありがとうございました。
 神田参考人にお願いいたします。
 投資家保護に関する規定でございますけれども、SPC法上の受託信託会社や投信法の投資信託委託業者等について、今回の改正案に新たに、忠実義務に加え善管注意義務が定められております。これは一般投資家の保護という観点からは評価すべきものでしょうけれども、しかし規定の仕方は非常に抽象的で、具体性が欠けるものであると思います。
 金融審議会第一部会のワーキンググループによるレポートにおきましても、現行法制では忠実義務等の具体的内容が明確ではない、広い意味での受託者責任の明確化を行っていくべきとの議論がなされたというふうに伺っておりますが、この点に関しまして、改正により新たに規定された忠実義務及び善管注意義務につきまして評価はどのようにされているか、お伺いしたいと存じます。
#48
○参考人(神田秀樹君) 御質問ありがとうございます。
 今の御質問の点は、実は私は長年論文で主張してきた点でございまして、そういう意味におきましても、今回、善管注意義務を含めて規定が盛り込まれたということを私は非常に喜んでおります。
 忠実義務、善管義務それ自体は一般的な規定なのでありますが、今までは善管義務の規定も設けられておりませんで、その内容は何かというのは、過去のいろいろな学説あるいは判例等である程度は明確になっております。したがいまして、こういう抽象的な規定でもこれが設けられた意義は私は非常に大きいと思います。
 それから、まさに御指摘のように、それをより具体化したルールというのがあった方がいい場合も多々あります。ただ、この点につきましては、実は平成十年のときの改正で投信法の例をちょっと申し上げますと、忠実義務を具体化した、私どもは行為規制とか行為ルールと言っておりますけれども、これを法令上明記して列挙するという改正を既に行っております。それを今回も引き継いでおります。
 そういうことで申しますと、忠実義務につきましては、それを具体化した法律の規定というものが整備された、これは金融ビッグバンの中でも、特に受益者というか投資家保護という観点から、業法の中のルール整備としては極めて重要な面だというふうに私は高く評価したいと思っております。
#49
○三重野栄子君 ありがとうございました。
 桜井参考人と石戸谷参考人にお伺いいたします。
 今回の金融サービス法案に関しまして、金融商品の説明義務の問題でございます。
 今回の法案において、少なくとも説明義務が明記されたことは一歩前進と評価できます。しかしながら、説明義務というのは、単に説明をしたという形だけではなくて、購入者が本当にリスクを理解するということが必要だと思うのでございます。その意味では、説明義務が明示されたといってもその運用は厳格に行われなければいけないと思うんです。
 そこで、お二方に、業者に対してどのように説明義務を果たしていくべきか、運用のあり方について過去の裁判例あるいは実際の苦情相談等を踏まえまして御意見をいただければと存じます。よろしくお願いします。
#50
○参考人(桜井健夫君) 今、金融サービス法案とおっしゃいましたけれども、金融商品の販売等に関する法律案のことを私は金融サービス法とは呼びたくないというふうに思っております。金融サービス法としてはまだやるべきことがたくさん残っている、そういう意味でそのようにまず考えております。
 それで、今の説明義務の話ですが、御質問の御趣旨が正確に理解できたかどうかよくわからないんですけれども、説明義務をどのように実行させるかというようなことですが、そもそもこの法案に規定されている説明義務というものは元本欠損のおそれとその要因ですから、これだけでは足りないというふうにまず言っているわけです。投資信託を含めあらゆるリスク商品について元本欠損のおそれがあります、それは例えば株価ですとか為替ですとかと一言言えばそれで終わってしまうような内容だとすれば、そんなことでは利用者の方はそのもののリスクを理解して、自分でそれを買うとかのそういう判断ができないということです。
 ですから、業者の方に履行してもらいたいことは、こういう元本欠損のおそれがある、その要因はこれですと、そういう説明義務ではなくて、これはこういう商品です、こういう構造のものですと。リスクについては、こういう程度があります、例えば出したお金が全部なくなっちゃうこともあります、あるいは逆にさらにもっとお金を出さなきゃいけないこともありますとか、そういう程度も必要です。それからさらに、物によっては構造的に例えば期間が来ると価値がなくなってしまうというものもありますから、そういったものは単に期間がありますということを言うだけじゃなくて、期間が来ると価値がなくなってしまいますということも言わないとそれはわからないと。
 そういう意味で、説明義務の中身として、範囲についてもっと広い範囲の説明義務を履行するような法律をつくっていただきたいというふうにまず一つ考えております。
 あともう一つ、程度の問題としても、単に言えば済む、あるいはそういうものが印刷された紙を渡せばそれで義務が履行されたという種類の義務では意味がないので、やはり利用者の方が自分で決定する前提として理解するということがきちんとできるような、それを支えるような説明義務というものを義務として設ける必要があるというふうに思います。
 その履行の方の問題は、あとは先ほどの裁判規範、あるいは自主規制機関とか監視機関とか、そういったところで担保することになることだと思います。だから、立証責任の問題とか、あるいは立証負担の問題とか、それから自主規制機関の制裁の問題とか、さまざまな形での義務の履行確保ということが考えられるべきで、そういった履行確保についての仕組みもまだまだ十分できていない、そういうふうに考えています。
#51
○参考人(石戸谷豊君) 二点申し上げます。
 第一点目は、今の桜井弁護士のお話と同じでして、まず説明義務を徹底するという意味においては、この説明義務の内容について、商品の構造、仕組み、リスクの程度、これを明文化する必要がある。説明の程度については、説明して顧客の理解を得なければならないというふうに明文化するというのが最もすっきりした形であるというふうに思います。
 第二点目は運用の問題ですけれども、運用につきましてはやはりコンプライアンスの方が非常に重要でして、金融業者の方がこの法案さえ守れば説明義務はそれでオーケーなんだという形で運用する場合には、これはかえって弊害が出てきかねない。現に説明義務、情報提供義務に関しては、この法律のほかにも業法があり、民法上の信義則上の説明義務、判例の集積されたものがありまして、それにさらにこの法律が加わるということですので、それらを含めて、あるいは今回消費者契約法が成立すれば、消費者契約法を含めて四段階における義務というものをコンプライアンスの中に統一して、当社はこういう形で運用しますというものを明らかにするということが求められるというぐあいに思います。
 それとの関係で一点だけ申し上げますと、法案の中に顧客の同意がある場合には説明を不要とするというふうなことがありますけれども、これも運用次第によっては甚だ危険でありまして、大変いい商品です、ちょっと中身は難しいんですが御心配するようなものじゃありませんよということで、じゃまあということで、じゃ説明不要ということでよろしいですかというふうな形で運用されると、全くこの法律が骨抜きになってしまうわけですね。ですから、この説明を不要とする場合というようなものの対象を乱用の危険のないようにきちっとした形で盛り込む必要があるというふうに思います。
 どうもありがとうございました。
#52
○三重野栄子君 長くなりまして済みません。
 ありがとうございました。
#53
○委員長(平田健二君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後二時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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