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2000/04/20 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 外交・防衛委員会 第10号
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2000/04/20 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 外交・防衛委員会 第10号

#1
第147回国会 外交・防衛委員会 第10号
平成十二年四月二十日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十三日
    辞任         補欠選任   
     久野 恒一君     森山  裕君
     浅尾慶一郎君     羽田雄一郎君
     笠井  亮君     立木  洋君
 四月十四日
    辞任         補欠選任   
     岸  宏一君     依田 智治君
     羽田雄一郎君     浅尾慶一郎君
 四月十七日
    辞任         補欠選任   
     佐々木知子君     岡野  裕君
 四月十八日
    辞任         補欠選任   
     岡野  裕君     佐々木知子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢野 哲朗君
    理 事
                鈴木 正孝君
                武見 敬三君
                小山 峰男君
                益田 洋介君
                小泉 親司君
    委 員
                佐々木知子君
                村上 正邦君
                森山  裕君
                山崎  力君
                山本 一太君
                依田 智治君
                吉村剛太郎君
                浅尾慶一郎君
                海野  徹君
                松前 達郎君
                荒木 清寛君
                立木  洋君
                田  英夫君
                田村 秀昭君
                佐藤 道夫君
   国務大臣
       外務大臣     河野 洋平君
   政務次官
       外務政務次官   江崎 鐵磨君
       外務政務次官   山本 一太君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫻川 明巧君
   政府参考人
       外務省アジア局
       長        槙田 邦彦君
       大蔵省国際局長  溝口善兵衛君
   参考人
       慶應義塾大学法
       学部教授     小此木政夫君
       静岡県立大学国
       際関係学部教授  伊豆見 元君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○外交、防衛等に関する調査
 (朝鮮半島情勢に関する件)
○政府参考人の出席要求に関する件

    ─────────────
#2
○委員長(矢野哲朗君) ただいまから外交・防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日、笠井亮君及び久野恒一君が委員を辞任され、その補欠として立木洋君及び森山裕君が選任されました。
 また、去る十四日、岸宏一君が委員を辞任され、その補欠として依田智治君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(矢野哲朗君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外交、防衛等に関する調査のうち、朝鮮半島情勢に関する件について、本日の委員会に慶應義塾大学法学部教授小此木政夫君及び静岡県立大学国際関係学部教授伊豆見元君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(矢野哲朗君) 外交、防衛等に関する調査のうち、朝鮮半島情勢に関する件を議題といたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 委員長の矢野でございます。本日は、大変お忙しいところ本委員会に御出席を賜りまして、ありがとうございます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でありますが、まず、参考人の方々からそれぞれ二十分程度御意見をちょうだいします。その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構であります。
 それでは、まず、小此木参考人からお願いいたします。小此木参考人。
#6
○参考人(小此木政夫君) 小此木でございます。
 国内情勢を中心に、首脳会談、日朝交渉等についてお話ししたいと思います。
 韓国、北朝鮮の国内情勢ですが、韓国に関しましては、御承知のように四月十三日に総選挙が行われました。これは、選挙の三日ほど前に南北首脳会談のニュースが公表されたということで、大変その影響等が注目された、そういう選挙でございました。
 選挙の分析をするのがこの趣旨ではないとは思いますが、簡単にそのあたりから始めたいと思います。今回、韓国での総選挙の一番の大きな特徴は、慶尚道と言われる地域、韓国の南東部の地域を基盤とするハンナラ党が非常に強い結束力を示したということではないかと思います。恐らく、その南北首脳会談のニュースもそういう意味では地域の結束力を高めたということが言えまして、与党にとってはプラスとマイナスと相殺されたようなところがございます。つまり、首都圏ではプラスに作用したけれども、野党の強い地域ではむしろ警戒心が高まり結束を促してしまったというようなところがございます。その結果、ハンナラ党が過半数に近い議席を確保することになりました。もちろん、与党の民主党も善戦いたしまして議席を大幅に伸ばしたわけで、全体としてはどうやら二大政党制に近いようなものが韓国の中に出現したような気がいたします。
 これがそのまま定着するかどうかに関しては、次の大統領選挙と次の総選挙ぐらいまで見てみないと何とも言えないのでありますが、しかし、私が漠然としたイメージで描いておりますのは、全羅道を中心とする民主党、これは革新色が強くて改革志向性の政党ですが、北朝鮮政策に関してはかなり穏健で柔軟である、大きな政府を志向するような、そういう政党になりつつある。他方、慶尚道を中心とするハンナラ党は、保守的で経済的には自由競争を信奉する、そして北朝鮮に対してはやや強硬である、小さな政府を志向する。ちょうどアメリカの民主党と共和党のような関係、そういう二大政党制のようなものが輪郭をあらわしてきた。ただ、韓国においてはやはり地域の要素というのが非常に大きくて、当分そこのところは変わらないだろう、こんな気がいたします。
 南北首脳会談関連のニュースですが、全般的には国民に歓迎されている、かなり歓迎されていると言っても間違いないと思います。ただ、総選挙となりますとそれとこれとは別というようなことで、そのことが票には直接結びつかなかったということではないかと思います。
 いま一つ、選挙の影響で次の大統領選挙の展望のようなものが、やはり輪郭だけですが、見えてまいりました。この選挙で勝利したと言っていいんでしょうが、このハンナラ党の総裁の李会昌さんが慶尚道の票を固めたことによって次の大統領候補の最も有力な候補として登場したということが言えるだろうと思います。また、民主党の側では、選挙対策委員長を務めた李仁済さんがやはり有力な候補として登場してきているように思います。二人だけということはなくて、またさらに何人かの人が出てくると思いますが、しかし、三金対立から二李対立へというような様相が出てきているということも御報告申し上げなければいけないと思います。
 国内の情勢から見ました場合に、今後の南北首脳会談に与える影響ですが、私は韓国政府には二つの制約があるというふうに見ております。
 まず第一は制度的な制約でございまして、これは野党のハンナラ党が百三十三という議席をとったことによって、やはり金大中大統領も野党の協力なしに南北の首脳会談及びその後の経済協力というものを進めることができにくくなってきたのではないかという気がいたします。
 当初は、首脳会談開催のニュースで、これを利用して民主党が圧勝するというようなそういう予想もございましたから、そういうふうになった場合と比べまして若干様相が違うのではないかという気がいたします。大規模な経済援助をやるということになれば予算上の措置が必要になるし、予算上の措置が必要になれば国会でやはり協力を得なければならない、こういう意味合いでございます。
 いま一つは、能力に関するものですが、選挙戦の最中に言われましたのは、中東特需に匹敵する、あるいはそれをはるかに上回るような北朝鮮特需がある、こういう言い方でございました。と申しますと、中東特需は韓国の場合約五十億ドルと言われておりましたから、それを上回るような経済交流が北朝鮮との間に生じる。それが政府支援によるものであれ民間の交流によるものであれ、そういうことになります。果たして今の韓国にそれだけの財政的な基盤があるのかということになってきますと、やや首をかしげるところもございます。それは韓国の幾つかの経済研究所等がそのことを既に指摘しております。そういったことであれば、やはり国際機関とかあるいは外国の協力も必要とする、そういう事態が出てくるのではないか。このあたりは日朝交渉等にも影響してくる部分ではないかというふうに見ております。
 さて、南北首脳会談でございますが、これにつきましては後ほど伊豆見先生から特に対外的な部分について十分な説明があるというふうに理解しております。
 北朝鮮の国内の事情だけ申し述べておきたいと思いますが、大ざっぱに申しまして、政治の面でも経済の面でも北朝鮮の指導部が最も苦しかったのは九五年、六年、七年のこの三年でございます。これが最悪の時期であったというふうに申し上げていいと思います。そして、立ち直りといいますか再出発、あるいは正常化という言葉を使ってもいいんですが、そういう現象が見られ始めましたのは九八年以後です。これは端的に言えば、テポドンが上がって、そして最高人民会議が開かれた、そのころから北朝鮮の立ち直りが見え始めた、こういうことです。
 また、外国の目も変わってまいりました。その間、北朝鮮の早期崩壊論とか、あるいはミサイルの開発能力を本当に持っているんだろうかとか、そもそも金正日総書記という指導者は本当に有能な指導者なんだろうかというような、こういう議論が随分ございまして、それがわかるまでは北と交渉してもしようがないじゃないかというような議論がかなり力を持っていたわけです。しかし、これ以後、どうも北朝鮮はそう簡単に崩壊しそうもない、ミサイルまで上げているじゃないか、あのミサイルは我々が想像していたよりずっと進んでいる、金正日さんもなかなかやるじゃないか、こういうことになってきたわけです。このことは、ただ単に対外的なイメージだけでなくて、やはり政治経済体制の正常化というような、北朝鮮なりの正常化と言ったらいいかもしれませんが、そういうものが進行していくきっかけになっております。
 九八年の最高人民会議で金正日の指導体制というものがはっきりと確立されて、その後、政府機構の正常化が進んでおりますし、経済の面でも財政計画が発表されるようになりましたし、どうも工場やあるいは管理部門でリストラが盛んに行われているように見えます。経済計画を発表したいというところまで来ているように思います。あとは、労働党の創立五十五周年という年に当たりますので、党機構を何とか正常化したいというのが今の北朝鮮指導部の考えではないかというふうに見ております。
 そういう形で体制は再整備されつつあるのですが、しかし政治よりはむしろ経済の方にずっと大きな問題がございまして、つまりこの最悪の三年間に北朝鮮の経済規模はほぼ二分の一以下に縮小されているわけです。これは予算の面から見ましてそのようなことが言えるわけであります。その後、底打ちはしたけれども経済はなかなか回復しない、つまり底ばいのような状態が続いておりまして、いつまでこういった状態が続くのだろうか。二〇〇二年の金正日総書記の還暦までには何とか経済を立て直さなきゃいけないということになりますと、もうそういうタイミングは来ているということでございます。
 つまり、外部から資本や技術の導入ということを考えると、今韓国以外にそれをやってくれるところはないじゃないかというのが今回の首脳会談受け入れの大きな動機になっていたというふうに理解しております。
 したがいまして、首脳会談を受け入れるという決定、これは北朝鮮側が主体的に戦略的な判断のもとで行ったものだというふうに私は見ております。そのほかの要素もいろいろございますが、外交的なものもございますし、あるいは総選挙というタイミングをねらったという部分もございまして、いろいろな要素があるわけですが、金正日総書記自身の主体的なそして戦略的な判断だということになりますと、戦術レベルでのトラブルがあったからといってこの会談が流れるということはないだろうというふうに私は見ております。よほどのことがない限り、会談自体は実行に移されると思いますし、それが実行に移されれば相当規模の経済協力がやはり約束されていくということだと思います。
 したがいまして、南北関係において何が変わるのかということになりますと、もちろん二人の最高指導者が一堂に会するということは、それ自体大変大きな歴史的出来事でございますが、その結果として南北関係のどこが変わるのかというと、やはり経済的な相互依存関係のようなものが将来的に予想できる、こういうことなんですね。
 つまり、大規模な経済支援が入れば、それは北朝鮮側からすればやはり撤収されては困るものでありまして、毎年必要になってくるわけでありますし、韓国としても、民間の資金まで入るでしょうから、一たんそれを行えば途中でやめるわけにいきません。そんなわけで、ポイント・オブ・ノーリターンを超えるといいましょうか、南北の分断の歴史に新しい章が開かれる、このあたりが大きなポイントではないかというふうに見ております。そういった経済的な相互依存関係というのは、当然政治や安全保障の面にも影響を及ぼしてくるだろうということになります。
 そういうふうに見ますと、北朝鮮側が行った決断というものは相当リスクを伴うものであったということが言えるわけです。長い目で見ると、韓国に依存するような体質というのはできているわけでありまして、それは北朝鮮の今の体制の変質というものを迫りはしないか、こういう疑問が当然あるわけでありまして、あえてそれを知りながら決断したということは、かなり大きなリスクを伴っているということが言えますし、また韓国側のねらいというのは平和的にそれを達成したいというところにあるわけであります。
 さて、私に許されている時間がそれほどございませんので、日朝関係について少し申し上げておきたいと思うのでありますが、仮に南北の首脳会談が順調に行われて経済支援が大規模なものが入っていくということになりますと、最前申し上げたように、韓国は独力だけでなくてやはり日本の力をかりたいというようなことになってくるかもしれません。また、北朝鮮としても、韓国の支援だけでは足りないということになってくるかもしれません。
 要するに、私が申し上げたいのは、日朝交渉を早期に妥結させたいという欲求は、北朝鮮側からだけでなくて韓国からも表明されてくる可能性があるということです。両国の最高指導者たちが口をそろえて日朝交渉を早く妥結してくれないだろうか、そうすれば南北関係もやりやすくなっていくんだ、これで朝鮮半島情勢も変わるじゃないかというような趣旨の発言というものが両国の指導者から出てくるということが将来的には十分に考えられるわけであります。
 また、北朝鮮側が首脳会談の後、日朝交渉でどういう態度を示すのか。次の日朝交渉は首脳会談の前のようでございますが、それにしましても首脳会談のニュースが発表された後、どういう態度を示し始めるだろうか、この辺もポイントだと思うんですね。これをよい機会だと思っていることは間違いないわけですが、それでは日本との関係も早期に正常化したい、そのために拉致疑惑あるいはミサイルの脅威の削減というような問題に関しても思い切った譲歩をしてくるんだろうか。もしそうであれば、日朝交渉はかなりスピードアップするということになるわけですが。
 しかし、そうでない可能性もございます。今のような北朝鮮に有利に見えるような情勢を利用して、拉致疑惑やミサイルの問題を棚上げしたまま、何とか早期に国交正常化して過去の清算だけを、つまり補償だけを早く受け取りたいというようなことであるとすれば、これは日本側としてはそれほど簡単に受け入れるわけにはいかない。日本の世論、そのあたりに関しては警戒心を持っているように私には見えるのであります。
 したがいまして、そのあたりの扱い方というのが難しいわけでございまして、日本政府は朝鮮半島の二つの国から早く交渉を進めてくれと要請されながら、他方、国内からは、いや拉致問題はきちっと清算しなきゃいかぬという反対の声もある、その間に挟まって立場が難しいというようなことになりはしないかと危惧しているわけです。
 私の個人的な意見としましては、これは北朝鮮側の出方によるところが大きいわけですが、拉致問題や核疑惑、どこまでどういうふうにやったら日本側は日朝交渉を進めていいのかというようなあたりを十分に議論していただきたいというふうに思うんです。つまり、七件十人以上の方が一遍に飛行機に乗って帰ってくるというようなことはなかなか想像しにくいわけですし、またテポドンからスカッドミサイルまで一斉に廃棄されるなんということも想像しにくいわけですから、まず日本側としては何を求めているのか、それが満たされれば交渉は先に進むんだろうか、どれが絶対に譲ってはいけないものなんだろうか、このあたりの議論が重要ではないかと思うんです。そして、ある種の原則を持ってできるだけ柔軟に対応していただければと、このように考えている次第でございます。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 続きまして、伊豆見参考人にお願いいたします。伊豆見参考人。
#8
○参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。伊豆見でございます。
 お手元にレジュメをお配りしてございますが、これを細かくやりますとちょうだいしているお時間内では全部お話ができないかもしれませんので、少しはしょって御報告をさせていただくことをまずお許しいただければと思います。
 私に与えられました課題は、国際関係の視点の方から最近の朝鮮半島情勢の変化というものを検討するようにということでいただいておりますので、その中で注目される動きを幾つか挙げて検討をさせていただこうと思っております。
 国際関係の中での朝鮮半島あるいは北朝鮮ということで考えてみますと、この一年ほどはむしろ北朝鮮が非常に積極的に外交に取り組むようになったということが一番注目される点であろうかと思います。ほぼ一年というそれほど長い時間ではない間に、もとより米国との関係というのを今北朝鮮は重視いたしておりますから、それを継続するということを基礎にしながら、ここしばらく冷却化していたといいますか、かなり疎遠な印象を与えておりました中国や、あるいはロシアとの関係というものを進めましたし、あるいはヨーロッパ諸国との関係改善というものにも努力をして、その中ではイタリアとの間にこの一月に国交を樹立するというところまでこぎつけました。そのほかオーストラリア、カナダあるいはフィリピンといったところとの関係改善、正常化というものも目指している。
 日本に対しましても、考えてみますと九二年の十一月に日朝交渉を中断させて以降、それほど積極的に交渉再開に取り組んできたとは考えられない北朝鮮が、昨年の夏以降は非常に熱心になりました。もちろん、それが一つの大きな要因となって日朝交渉の再開までこぎつけたというのが現状であろうかと思います。
 ということで、この一年ほど、北朝鮮は大変積極的に外交を展開するようになった。範囲が相当広がってきたということがありますが、もちろんそれは、金正日体制というのがある程度安定をし、あるいは父親の金日成が亡くなった後の過渡期というものを乗り切って、それを前提にこういう外交の拡大というものを図っているということがまず言えると思います。これは先ほど小此木先生の方から御説明があったとおりでありますし、さらに経済再建の必要性というものがより増してきている、これも先ほど小此木先生の方から御指摘がございましたが、一応底を打った経済ということにはなりますが、二〇〇二年の金正日の還暦を目指して今北朝鮮は経済再建というものにかなり真剣に取り組もうとしているということがうかがわれますので、そういう理由があって外交を拡大してきたというところがあろうかと思います。
 もちろん、外交拡大、外交を積極的にやる、国際社会との接触を拡大するということは我々にとっては歓迎できる変化であろう、動きであろうと。国際社会の一員として北朝鮮の態度が今後変わってくるかもしれないということを当然それは予感させる部分がありますので、それ自体歓迎できるということにはなりますが、しかし、そういう変化が重大な変化かということになりますと、まだそこまでは言い切れないものがあろうかと思います。
 特に国際社会側の目から見ますと、北朝鮮の変化というのは、重要なのは本当に改革・開放というものを通じて国際社会の責任ある一員になってくるのかどうかという点でございますので、その点からしますとまだまだ北朝鮮の変化は非常に小さいものにとどまっておりまして、改革・開放の方向に動いているということは認められますが、しかしまだ十分なものでは当然ないということがあります。
 それと二番目に、これが私はより重要だと思いますが、今北朝鮮が我々にとって問題なのは国際社会に対してある種の軍事的な脅威を与えているということでありまして、そういう軍事的な脅威をみずから減らしていくという態度に出てくれるならば我々としてはより歓迎できるわけでありますし受け入れやすくなるわけでありますが、残念なことに、この点についても、北朝鮮は軍事的な脅威を減らそうという方向に動いているのかどうかはまだわからない。もちろん、将来そういう方向に動く可能性は一応認められると思いますが、しかし現在、一生懸命北朝鮮が関係の改善、正常化に努めているような国というのは、実は北朝鮮の軍事的脅威がそれほど減らなくても構わないという国ばかりであります。
 問題なのは、やはり日本とアメリカでありまして、日本とアメリカとの関係が正常化に向かう、あるいは大変友好な方向に向かうということであれば、その大前提は、北朝鮮の軍事的脅威というものを除去してもらうということが我々にとっては前提条件になろうかと思いますが、そういう点について北朝鮮が積極的に動き始めたという兆候はまだ遺憾ながらないというわけでありまして、歓迎できる動きではあっても十分なものではないということが言えようかと思います。
 そういう中で、今回、南北の首脳会談の開催に北朝鮮が合意するということになりました。この点につきましても、先ほど小此木先生が御説明になられました。小此木先生のおっしゃられたことは基本的にすべて意見を同じくするものでありますが、私は、今回の南北首脳会談というものを首脳会談だけで余り見ない方がいいかなと思っておりますのは、これは、韓国側が北朝鮮に対して経済援助を提供するということと、それと南北首脳会談を北朝鮮が受け入れるということが取引されたようなところがあるであろうと思うわけでありまして、そもそもこの動きは一カ月程度の非常に短い時間の中で急激に決まったとは考えない方がいいと思われまして、少なくとも六カ月程度の水面下でのさまざまな動きがあって、それが首脳会談開催の合意までこぎつけたということであろうかというふうに思っております。
 恐らく、最初は北朝鮮側が韓国政府に対してかなり大規模な経済支援というものを求めるようになり、それに対して韓国側にも、その準備というものが一応整った上で経済支援を与えるのであれば、その条件として南北首脳会談というような形を通じてそういうものを実現していかなければならないという要請が韓国側からなされ、最終的にはそれを北側も受け入れて今回、首脳会談が実現したのではなかろうかというふうに思っております。失礼しました、首脳会談はまだ実現しておりませんが、合意に至ったと。
 私も首脳会談そのものが実現する可能性は非常に高いと思っております。これは、結局は首脳会談が実現できなければ北朝鮮が得られるものはほとんど何もないということでありまして、北朝鮮はやはり経済支援というものを何としても獲得したいという強い要求から今回韓国との首脳会談開催に応じたと考えられますので、だとするならば、六月十二日に私はまず確実に南北首脳会談が開催されるであろうというふうに思っております。
 その首脳会談を通じて恐らく南北間の経済協力というものの枠組みが見えてくるはずでありますし、特に重要視されているのはインフラ部分の建設であろうということになります。これは北朝鮮側が一番今求めているものの一つであるということではありますが、どういうことが考えられるかということでありますが、我々は、しばしば北朝鮮への経済支援とかあるいはインフラ支援ということになりますと、何か新しいものをともかく北朝鮮につくってやるということばかりを考えますけれども、しかし恐らくそれはちょっと違うと考えておくべきでありまして、最初に問題といいますか大事なことは、現在北朝鮮が持っている現有の施設を再稼働させるということであります。
 御案内のように、ここ十年ほどは経済が極めて停滞をきわめたために、北朝鮮は現有施設をほとんど稼働できない。その稼働率は二〇%とも三〇%ともいろいろ言われますが、ほとんど稼働していない部分がある。そうしますと、重要なことは、まずそういう現有施設を修復する部分がかなりありますでしょうし、次にそれを再稼働させるということであります。それだけでも実は北朝鮮経済というのはかなり回復といいますか、盛り返すことはもちろん可能なわけでありまして、それが恐らく第一段階であり、その上で第二段階で新しい施設等を導入してさらに経済の再活性化を図ろう、そういうことを考えていると思われます。
 韓国が単独で支援できる部分は、私はその第一段階である。すなわち、北朝鮮の現有施設の再稼働というような部分については韓国の資金だけで十分に恐らく賄えるわけであります。しかし、新しい例えば電力についていえば、発電所をつくるとか、その発電所に対して重油あるいは石炭を供給するというようなことまで考えますと、これは韓国だけでは恐らくできないはずでありまして、そのために第二段階以降になりますと世界銀行やアジア開発銀行といったところからの融資が必要になりますし、あるいは周辺諸国からの協力、とりわけこれは日本が一番期待されているということになろうかと思いますが、そういうことが恐らく今回現実のものになっていくのであろうというふうに私は見ております。
 結局、こういう形で南北が合意できるということは、当面現状の中でお互いに生きていこうということでありますので、あえて言えば、それは統一の先送りということで実は南北が非常に共通の利益を持っているということであろうかというふうに考えております。
 北朝鮮にとってみれば、それは体制保障、体制をどうやって維持していくかということが一番重要だと。これはしばしば指摘されますし、全く私も同感でありますが、その体制保障というものを得、一方、韓国の方は平和的な共存というものを制度化させて余計な負担はこうむらないようにするというような、そういうことでは実は南北間には共通の利益があるわけであります。
 したがいまして、今回の首脳会談というのは、統一に向かって非常に急激なステップが踏まれるということではなくて、むしろ統一という課題はかなり後ろの方にといいますか、先の方に持っていくということで南北で合意を見るというような、そういう形になるのではなかろうかと思います。
 首脳会談に関連しまして、特に国際関係の枠組みでいいますと、一番注目される部分あるいは懸念される部分というのは、米軍の扱い、あるいはアメリカとのかかわりをどういう形で南北が話し合いをするのかということであります。
 既に在韓米軍について何らかの取引が南北間で行われるのではないかというような懸念も出てきておりますが、これは韓国側は明らかに在韓米軍の問題は南北の問題ではなくて米韓の問題であるということの立場を既に表明もいたしておりますし、その前提で北との交渉に当たると思いますから、私は今回、在韓米軍について何らかの合意が南北間にできることは全くないであろうというふうに考えております。
 しかし、もう一つ重要なのは、米朝間の平和協定というものを北朝鮮は一貫して望んでおるわけでありますが、これはむしろあり得るシナリオになるかなと。米軍はそのまま置いておく、しかしそのアメリカとの間に北朝鮮が平和協定を締結する。もちろん、一方では南北が進むということが前提になっておりますから、南北に加えて米朝という平和の枠組みを加えてやりますと北朝鮮はより安心するわけでありますし、北朝鮮の体制保障ということが考えられますので、そういうことが言えようか、そういうことは可能性としてあり得るというふうに思っております。
 最近の変化の中では、そういう南北が首脳会談の開催に合意したということが大きいわけでありますが、この結果として我々はアサンプションといいますか、朝鮮問題を考える前提を大きく変えなきゃいけないというふうに私は感じております。
 といいますのは、この五年、あるいはもうこの十年ぐらいずっとそうであったと言ってもよろしいかもしれませんが、朝鮮問題を考える、あるいは北朝鮮にどう対処しようかということを考えるときに大前提になっておりましたのは、南北関係は進展しない、南北関係は停滞したままである、それはなかなか北朝鮮が受け入れないからだめだという前提であります。その上で当たってきたところが今回、南北首脳会談、そして南北の経済協力というようなものまでが視野に入ってくるような状況になりましたので、むしろ今後は南北関係がかなり進展するということを前提とした朝鮮問題への取り組み、あるいは北朝鮮への取り組みということを考えなければいけないというふうに思います。
 これは、実は私は大変大きな変化であろうと思っておりまして、これ自体はもちろん歓迎される動きなのでありますが、単に歓迎とだけは言い切れないほどのより複雑な状況が生ずるのではないかというふうに思っております。
 実際、日米韓の協力ということがこの間非常に進みました。北朝鮮に対して我々は非常にいい協調をしてやってきたと思いますが、その大前提は南北が進まなかったという前提でありますから、これは三者間で協調することは実はやりやすかった部分が相当あると思うわけであります。ところが、一方で南北が進むということになりますと、日米韓が一緒になって北朝鮮に対応するというのは、これはそう簡単な話ではないということになります。
 特に、韓国側は今後経済協力の進展に重点を置くということが大いに考えられますし、その大前提は、実は韓国側が感じている軍事的脅威というのは、日本あるいはアメリカが感じている軍事的脅威とかなり質を異にする部分があります。どうしても日本やアメリカの場合ですと北朝鮮の大量破壊兵器を懸念しているところがあるわけでありますが、韓国の場合にはその点についての恐怖感というのはそれほど高くはなくて、むしろ現有の通常兵力に対して韓国側は懸念を持っているわけであります。
 そういうことを考えてみますと、韓国と実は日米というのはかなりずれるということでもありますし、さらに問題なのは、そういう南北がある程度和解をする方向といいますか協力の方向に行きますと、今度は中国やロシアにとって非常に好ましい状況が生じる。今までは、もう韓国は日米韓ということで協調体制で終始する、その上で北朝鮮をどう扱うかという話だけだったのが、今回南北がかなり一緒になる部分が出てきて、少し日米からも距離をとるということになりますと、中国やロシアにとってみればそれを歓迎し、そういう南北の協調進展というものを側面からより支援することによって、朝鮮半島そのものをかなり日米から切り離すということも可能になるということでありまして、中国やロシアにとってみるとこれから動ける範囲が相当広がるということだろうと思います。
 三枚目に変な図をちょっとつけておりまして、これは非常に単純化して書いてみたんで、私の頭の整理のために書いただけの話でありますが、今まではともかく日米韓というのが一方にあり、それで北朝鮮に当たる。北朝鮮の裏に中国とロシアが控えておりますが、それほど強いサポートをするとか、あるいは協調して動くという話ではなかったわけでありますが、これが将来北朝鮮と韓国というのがかなり一体となって動く部分が出てくるということになりますと、一体となって動ける南北朝鮮をめぐって日米、中ロの一種の綱引きも展開される、あるいは日米韓の協力と協調というものがかなり難しくなるというようなことが当然懸念、懸念といいますか見ておかなければいけないことであろうかと思います。
 ちょうだいしているお時間も限られてまいりましたので、日朝交渉につきましては、私はまず今北朝鮮側に交渉に取り組む非常に熱意が感じられるということだけは現時点では確かだろうと思いますが、ただ、交渉に一生懸命取り組もうとしているから日本に対して譲歩もし、日朝間でちゃんと妥結できるような方向に北朝鮮が積極的に動いてくるのか否かは今の段階ではまだわからないということになろうかと思います。
 これは考えてみますと、まだ一回目、二回目は双方のそれぞれの主張というものを相互いに明確にし、それに対してどう考えるかという反応、反論を行うというようなそういう形の会談になろうかと思いますので、本格的な交渉は第三回、第三回といいますか再開第三回目ということでありますが、になろうかと思いますし、そういう中で北朝鮮の本当の姿勢というものも見えてくるということだと思いますので、今の時点では、北朝鮮に熱意はあるものの、日朝交渉をきちっとまとめていこうとしているかどうかはまだ読めないといいますか、判断できない段階であろうかというふうに思います。
 その北朝鮮がどうしても譲歩しなきゃいけないといいますか、我々にとって望んでいる部分でいいますと、もちろん拉致問題がございますし、あるいは軍事的な脅威の問題があるわけでありますが、拉致問題につきましては、先ほど小此木先生がおっしゃられたことに私は全面的に賛成でありますし、北朝鮮側にもこの拉致問題が相当日本にとって深刻な問題だということをより深く受けとめてもらわなきゃいけないわけでありますが、その点では第二回目の会談が東京で五月末に行われると。
 ということは、日本側の雰囲気というものを北朝鮮の代表団が肌身で知る機会になるということでありますので、日本側にいかに拉致問題について深刻な雰囲気があるかということを北朝鮮が感じ取って、この問題を避けて通れない、したがって何らかの形で動かしていかなければいけないという方向に動いてもらうということを強く期待したいと思いますが、まだその点についてはそれほど楽観的になれるかどうかはわからないというふうに考えております。
 それと、やはり三回以降の展望でいいますと、北朝鮮が経済経済という経済協力ということに重点を置いてくる。これは、彼らの言い方からしますと過去の清算ということになりますけれども、私もその公算が非常に高いと思いますし、先ほど小此木先生が御指摘になられましたように、南北関係が進むと、特に経済関係が進みますと、日本に対し、日朝交渉を早くして妥結してほしいという動きが北朝鮮のみならず韓国側からも出てくるというのは、私もまさにそうであろうというふうに考えております。
 別に、それはそれで結構なのでありますが、問題は、そのときに例えば拉致問題、あるいはさらに我々にとっての重要な問題であるミサイルあるいは核といったような問題について、そちらの問題が少しおろそかになるというのが困るわけでありまして、その点で、韓国側にも日本に十分に協調していただけるようになっていただきたいと切に願っておりますし、期待はしておりますが、果たしてそうなるかどうかは保証の限りではない。むしろ、経済だけを優先させて、軍事的な脅威の問題については少し後回しでというような雰囲気が南北の中に、北朝鮮のみならず、北朝鮮はもちろんそうしたいわけでありますが、韓国もそちらの方向に行く可能性が私はやはり否定できない。ですから、そういう意味で、先ほどアサンプションが変わりました、南北が動き始めると朝鮮問題が相当変わると申し上げましたのは、そういうことからであります。
 あと、課題としては、ほんの一言だけ申し上げますと、そういう時期でありますから、私は日米韓の協調というのはなかなか難しいと思いますが、だからこそ、役割分担をきちっと明確にして、お互いにその枠をはめてきちっと動いていくということが必要であろうと思いますし、二番目にボトムラインの明確化ということを申し上げました。
 これは、先ほど小此木先生もおっしゃられていたことに近い話でありますが、もうこれ以上絶対譲れないというものが何なのかということを踏まえた上で日朝交渉にも当たらなければいけない、私もそう思います。
 それは、私は北朝鮮の核ミサイルの保有を阻止することが何よりも日本にとっては最大の喫緊の課題であろうかと思っておりますので、そういうボトムラインというものを明確にすべきであろうかと思いますし、そうであるならば、その核ミサイル保有というものを何とか阻止するのにどうすればいいのかというときに、私はやはり一種の取引というものをどうしても考えざるを得ないと思いますので、取引するか否かの前に、取引についての議論というものが恐らく必要になる。
 それと、最後に、南北の非核化共同宣言というものを挙げておきましたが、これは先ほど来申し上げておりますように、南北が経済経済ということで余り軍事とか核とかいうことについて熱心にならなくなるかもしれないという懸念がありますので、だとしますと、この非核化共同宣言をぜひともちゃんと実行してもらうという方向に我々は強く要請すべきではないか。
 非核化共同宣言は南北で結ばれたものでありますが、これを完全に履行しますと、朝鮮半島には絶対に核兵器は存在できないわけであります。一〇〇%の保証というか、一〇〇%を超えるぐらいの保証になるわけでありますから、この辺、我々はすべて忘れておりますけれども、もう一度持ち出して強く南北に対して要請をすべきであろうというふうに考えております。
 若干お時間を超過したかもしれませんが、申しわけございませんでした。
 ありがとうございます。
#9
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 それでは、これより質疑を行います。
 本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。質疑を希望される方は挙手の上、私の指名を待って御発言いただきたいと存じます。
 限られた時間でありますから、質疑、なおかつ御説明についても端的にお願いをしたいと存じます。
#10
○山崎力君 両先生にお伺いしたいと思いますが、南北首脳会談、これから順調にスタートするとしてという前提なんですが、何が協議されるかは別としまして、私の感覚からすると、今回の南北首脳会談をスタートできた一つの大きな理由に、金大中大統領の方がピョンヤンを先に訪れるということがあると私は思っております。
 これは、向こうの儒教的な背景からいって、年齢的にも政治的にも上といいますか、そういった人が北へ先に行くと、これがやっぱり北が受け入れる一つの大きな理由になっていると思うんです。そうしますと、問題は次のステップとして金正日が、肩書はちょっとどう言っていいかわかりませんが、総書記かあるいは主席かは別として、ソウルを訪れる機会がなければ次のステップに行かないんじゃないかという気がしております。それが果たしてできるのかできないのかが、この南北首脳会談が今後順調に発展していくかどうかというかぎになろうと思うんです。
 それがないと、それからほかに付随すると言ってはなんですが、日朝関係、あるいは米朝、そういったものの基本にある南北関係が進展しない可能性がある。そこで、非常にネックになる可能性があるというふうに私は、そこが一つの近未来での大きなポイントだろうと思っておりますが、その辺の見通しと考え方について、両先生から御意見を伺いたいと思います。
#11
○委員長(矢野哲朗君) それでは、小此木参考人、よろしゅうございますか、お願いします。
#12
○参考人(小此木政夫君) 御指摘の金正日総書記のソウル訪問というようなものが考えられるんだろうかということですが、私はなかなかそれは容易ではないというふうに見ております。幾つかの理由があるんですが、そして韓国側もそこのところはわかっているんじゃないかというふうに考えております。
 幾つかの理由の最大のものは、北朝鮮の政治体制というのはもう最高指導者にすべて依存した体制でありまして、ある種の国家有機体説のようなものがとられておりまして、最高指導者は人体でいえば脳髄に当たるんだということを彼ら自身が言っております。我々から見るとちょっとおかしな話ではありますが、しかし、もし最高指導者に事故がありますと、もうその体制そのものが大きく動揺する、そういうような状態、そういうような体制でございますから、次の後継者がいて国内を仕切っているというような状況がない限り多分南に出てくるというようなことはないだろう、難しいというふうに思います。
 繰り返しになりますが、韓国側もそういう事情についてはわかっているはずでありまして、したがって首脳会談というのは多分一回だけの非常にシンボリックなものとして行われて、あとの問題は実務的なレベルで協議されていくというような形態になるんではないかと思います。もちろん、それは経済協力だけではございませんが、例えばシンボリックなものとしては、例えばそうですね、離散家族の再会の問題ですとか、こういうものは実現しますと大変大きな意味を持ってくるわけです。あるいはワールドカップ、二〇〇二年のワールドカップが一部ピョンヤンで開催されるとか、そういうスポーツや人道の面での出来事というのは十分に予想されると思うんです。そういう形で韓国の国民の期待をつないでいくということが考えられていくんじゃないかと思います。
 ただ、首脳会談万々歳ですべてうまくいくのかということに関しては私自身も非常に強い疑問を感じておりまして、つまり北朝鮮側が受け入れたのは金大中大統領の太陽政策の自分たちに都合のいい部分でありまして、つまり経済的な実利というところに非常に大きなウエートがあるわけです。それでは政治的な分野、外交的な分野で原則を変えたのかといえば、それは変えていないわけです。ですから、南北の合意書の冒頭の部分に、一九七二年の七・四共同声明の統一三原則を再確認しと、こういうところがございます。文章がございます。これは、憲法の前文のような形でそれがうたわれているわけですが、自主、平和、民族大同団結というこの三原則であります。
 北朝鮮側から見た場合の自主というのは何なのか。それは南北が主体的に合意したことであって、それはアメリカや日本の影響を受けないんですと。つまり、韓国はアメリカや日本に依存するような外交政策はやめてくださいという、日米韓の分断のようなものも意味しているでしょうし、在韓米軍の撤退というような要求にもつながり得るわけです。あるいは、平和ということになれば、ある種の平和宣言を行って相互の兵力を削減しましょうというような、かなり厳しい主張が出てくるかもしれませんし、さらに民族大同団結ということになれば、韓国内の、国家保安法を撤廃しろとかあるいは学生運動に対する取り締まりをやめろとか、いろんな要求はやっぱり掲げられてくるだろうと思います。
 ですから、善意に基づく非常に素直な協力というだけではなくて、政治や安全保障の面での厳しい駆け引きというのも同時に展開されるというふうに考えた方がよろしいだろうと思います。
#13
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。あわせて、伊豆見参考人、お願いいたします。
#14
○参考人(伊豆見元君) 今、小此木先生の方から非常に細かい御説明がございましたし、私も全く同感でありまして、やはり二回目はそう簡単にはないと思いますし、金正日総書記がソウルに簡単に行くとは考えられない。もちろん、うんと先の話は別だと思いますけれども。その点を韓国側がよく承知していると小此木先生はおっしゃいましたけれども、私もそう思いますし、そこが大事なんであろうかと思います。
 すなわち、首脳会談というのは、定期的に韓国と北朝鮮の間を行ったり来たりしなければいけないようなものとして構想は恐らくされていないと思います。それは、受け入れられる素地がもう今の時点でも十分韓国側にはあると私は思います。ただし、とはいえ、やはりやったからには相互主義でという声も当然あるわけですから、一たん金大中大統領がピョンヤンへ行ったのであれば、次は金正日総書記がソウルを訪れるべきであるという声は当然あるわけでありますし、その辺の批判というものをうまく乗り越えられるかどうかは、今後の南北関係がある程度進展して、その経済協力の面で目に見えるような形で、ああ前に進んでいるなというものが見えるか否かにかかっていると思います。
 経済協力がある程度、経済協力といいますか韓国側の経済支援というものが進み、それがそこそこ効果を上げているようだという印象が持たれるようであれば、特に韓国側ですぐ第二回目を、そして金正日総書記がソウルにすぐ来なければいけないというような声は、私は余り大きくならないと思います。要は、首脳会談そのものが大事なのではなくて、やはり首脳会談後の展開が非常に大事ということになろうかと思います。
#15
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。続きまして、小山峰男君。
#16
○小山峰男君 両先生には、きょうはお忙しいところどうもありがとうございます。
 日朝関係でございますが、私は伊豆見先生が三枚目にこの表というか、図をかいていただいたわけでございますが、この下のような形になるというのは、やっぱり日本としては大変好ましくない状況だろうというふうに思っております。
 今、日朝交渉が再開された、五月にはまた東京でということでございますが、今その状況等をお聞きしますと、いずれにしても、日本側は拉致疑惑とミサイル問題、それから朝鮮側は過去の清算というようなものをお互いにぶつけ合っているという状況だと。これ、かなり長期化の様相を呈するだろうというふうに思うわけでございます。
 いずれにしても、何らかの形でやっぱり日朝関係が正常化しなければならないだろうし、韓国だとか米国も含めて巻き込んだ形で日朝関係が正常化されるというようなことが、何か第三の道みたいなものを探さない限り、お互いにぶつけ合っていてもなかなか結論は出ないのではないかなというような感じを持っているのですが、先ほども若干お話がございましたが、ちょっとこの辺、簡潔に両先生からお話をいただければと思います。
#17
○委員長(矢野哲朗君) それでは、順序を逆にしまして、伊豆見参考人、お願いします。
#18
○参考人(伊豆見元君) 大変重要な問題でございまして、御指摘のとおり、このままいきますとなかなか日朝交渉というのが進まないというのは、今の時点で考えますとその可能性が一番大きいということになろうと思いますし、やはりそれ自体が望ましいかというと、私も望ましいとは考えませんで、進展があるという意味は、それは我が国にとっての例えば安全の確保というものがより明確なものになるとか、あるいは朝鮮半島を含む北東アジアの平和と安定というものがより確固たるものになるということが一つあり、その上で過去の清算も遂げて日朝間が正常化、二国関係が正常化する、こういう意味であろうかと思いますので、やはり交渉は進展し、その中で結果が出てくるということが望ましいと思いますが、しかし、それが簡単ではないということも、また十分言える話であろうかと思います。
 今、懸念されますことは、先ほど来議論になっておりますように、南北関係が動き始めるということになりますと、その南北の中で経済協力が進みますと、日本に対して、北朝鮮に対して経済的にさまざまな形で支援してほしいという圧力がかかってくるということが一つ新しく考えられる可能性ということになろうかと思います。
 そうしますと、それにこたえるということは私は決して悪いことではないと思うのでありますが、しかし、そのためには、日本側が非常に懸念をいたしております北朝鮮の軍事的な脅威というものをどうしても減らしてもらう、その除去に努めてもらう、ある種の取引ということを、こちらが経済協力、経済支援というのを提供するのであれば当然その前提というのは北朝鮮側の軍事的な脅威というものが減るということを考える、それが前提になる、そういう方向に進めるべきであろうかと思います。
 今、日本国内ではこういうものを取引しようということは余り議論になりませんし、そもそも取引自体が余りよくないという考え方もあるわけであります。しかし、今後の状況ということを考えますと、経済協力、経済支援というものを北朝鮮に対してかなり出していく、あるいは出していかなければいけないような状況が一方で生じるのであれば、きちっとその前提として北朝鮮の軍事的脅威の削減を図るという、まさにその取引ということを真剣に考える、そういう時期に来ているのではないかと思いますし、それが日朝交渉を考える上でも一つのやり方ではないかというふうに思います。
#19
○委員長(矢野哲朗君) それでは、小此木参考人、お願いいたします。
#20
○参考人(小此木政夫君) 日朝交渉に関する北朝鮮側と日本側の態度を見ておりますと、かなり大きな違いがあるわけでして、北朝鮮側は国交正常化を最優先にしております。国交正常化というのは彼らにとっては過去の清算であり、過去の清算というのは要するに謝罪と補償だと、こういうふうに言っているわけです。そこのところに、つまり謝罪と補償を早期に獲得するところに北朝鮮側の最大のねらいがあるわけでございます。
   〔委員長退席、理事鈴木正孝君着席〕
 日本側は、もちろんその過去の清算をしないと言っているわけではございませんが、それと同時に拉致問題やミサイルの脅威の削減といった問題を解決してもらわなければ困る。つまり、これは同時に協議して最終的には一括して解決しよう、こういう方式ではないかと思うんです。したがいまして、拉致問題やミサイルの問題が入り口のところで先に解決されるというようなことは非常に考えにくくて、私はいずれも段階的に解決していくしかないというふうに考えております。
 最初に我々は何を要求したらいいのか。国交が正常化されるときには少なくともここまで行っていなければいけない、正常化した後にここまで行くことが望ましいんだ、こういうような考えで拉致にもミサイルにも対応していくべきじゃないかというふうに見ています。
 その場合、一番重要なのは、拉致問題の場合には要するに関係者の身辺の安全と所在の確認でありまして、そして、恐らく国交正常化がなされるまでには少なくとも両親を含めた日本側の関係者が北朝鮮を訪問して面会する、そのくらいのところまでは行かなければならないというふうに思うのであります。最終的には自由往来が確保されればいいわけですから、先方にいると思われる被害者たちが日本に帰ってくるような状況が確保されなければいけない。これは国交正常化以後のことになるかもしれませんが、自由な往来が確保されるような状態をつくっていかなければいけないと思うんです。
 それから、ミサイルに関しては私よりも伊豆見さんの方が専門なので後ほど補足していただきたいと思うんですが、私は、少なくとも日本を標的としているノドンミサイルの配備が現在進行中であるということに関してはやはり我慢がならないのでありまして、つまり、国交正常化交渉をやりながら新しい関係を築こうという段階で、しかし、中距離ミサイルが着々と配備されている。
 この中距離ミサイルというのはどこを標的としたものかといえば、ソ連や中国でないことは歴然としているわけですから、彼らは同盟条約や友好条約を持っているわけでありまして、したがって、日本を標的としているということが言えるわけであります。ですから、交渉するのならばまずその配備をやめてください、凍結してください。最初の第一歩はそれじゃないかと思うんです。
   〔理事鈴木正孝君退席、委員長着席〕
 しかし、これも現実的に考えますと、朝鮮半島に地域的なミサイル管理レジームのようなものができないとあらゆるミサイルを規制するというようなことは不可能だろうと思うんです。半島の中のスカッドミサイルをやめるなんということはまず不可能でありまして、これは南北の兵力の均衡に基づいているわけですからこれはやむを得ない。しかし、半島から外へ出てくるノドンミサイルやテポドンミサイルを何とか規制していただきたい。そういう管理レジームは恐らく、日朝交渉の議題であるというよりは、やっぱり米朝ミサイル交渉とか、あるいは四者会談を通じて達成されるものではないかというふうに見ております。
 いずれにしましても、そのような形で段階的に、伊豆見先生がおっしゃっているように、ある種の取引に基づいてこういった問題が処理されていくことが望ましいのでありまして、純粋な理想論というようなもので解決する種類のものではないというふうに理解しております。
#21
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございます。続きまして益田洋介君。
#22
○益田洋介君 まず、小此木先生にお伺いしたいと思います。
 今まさに日朝国交正常化交渉が始まったばかりでございますが、先日、委員長のお取り計らいで、高野政府代表、当委員会に懇談という形でございますが来ていただきまして、若干の意見交換をさせていただいたときに私は提起させていただきました。
 北朝鮮側は謝罪と補償が前提であるというまず切り口で出発をいたしましたこの交渉なんですが、以前は補償という言葉を使わずに賠償という言葉を使っていたのが、賠償というのは損失に対する補てんといった意味合いがあるわけで、要するに、被害をこうむった方に対して加害的な立場から損害に対する賠償をする、補てんをするという考え方が、補償という言葉に今回切りかえてきたところにどんな意味があるのだろうか、何を企図しているのだろうかということについて問題を提起させていただきました。それはこれからの交渉の過程でわかってくることじゃないかという非常にうまい答弁をいただきましたが、先生はこの点についてどういうふうにお考えかということが一点。
 今、取引というお言葉を両先生はお使いになりました。例えば、小此木先生のレジュメの二ページの経済的相互依存という言葉、非常に耳当たり、耳ざわりのいい言葉でございますが、実際はこれは、南北の関係においてでございますと、そこに両先生が指摘されているとおり日本という国が当然中に介入してこなきゃいけない。その際、どういうふうな形で実際は取引の材料として提供できるものが日本にあるのかというと、先ほど小此木先生は、世銀による融資であるとかあるいはアジア開発銀行の融資だとかおっしゃいました。
 世銀は、今回G7でIMFでも改善がかなりあちこちの国から要求がありまして、長期的な今までのような融資というのが果たしていいものかどうか。また逆に、アジア経済危機を誘引したのが世銀による金融・財政的な締めつけであったというようないろいろな反省がありまして、そう簡単にこういった状況下で世銀から資金が引き出せるとは私は思えないのと同時に、それであるならばODAを使って円借款とか、あるいは無償供与というようなことも考えられるのではないかというふうに先生のお話を伺いながら聞いていたんですが、これもやはり私も当委員会で、中国に対する、対中ODAの円借款について、透明度がなくて軍事目的に使われていく場合には、非常にODA大綱に言ってみれば矛盾する、あるいは抵触するようなことがあるとこれもなかなか規制があってできない。
 一方で、民間レベルの投資につきましては、中国で既にGITICというような政府関係のこれノンバンクがございますが、で焦げつきが生じていて、簡単に日本の国あるいはアメリカから民間レベルの投資が行われるとも思えない。ですから、取引とはおっしゃいますけれども、物すごいいろいろな問題を抱えているのではないかというような気がいたします。この点についてお伺いしたい。
 もう一点だけ。今度は伊豆見先生にお伺いしたいんですが、アサンプションが変わってくる、将来的なアサンプションという形で各国の交渉の構図が変わってくるという中で、具体的に中国とロシアというのが北朝鮮との接触が今の状況よりも太い線で結ばれるように拡大していく状況下において、ロシア、中国と韓国の関係も当然のことながら変化してくるのではないかという気がいたしております。
 それで、江沢民主席がイスラエルを訪れて、イスラエルの首脳と会って軍事的な話し合いも相当行われたというふうに報じられておりまして、そうすると、要するにアメリカがかなり牽制していましたのは、イスラエル製の早期警戒システム、これを中国側に輸出するということに対して、これは北東アジアの戦略のバランスを崩すんだというようなことになって大変な騒ぎになりかけていますが、こういった懸念がどんどん膨らんでいく。アサンプションはそのまま先生のおっしゃるような道筋をたどっていくのであればそんな懸念がされてなりませんが、これについてお考えを敷衍させていただきたいと思います。
#23
○委員長(矢野哲朗君) それでは、まず小此木参考人、お願いします。
#24
○参考人(小此木政夫君) 賠償という言葉を使わなかったことにはやはり意味があるというふうに考えるのは当然だと思います。前回の交渉では戦時賠償ということをはっきりと言っていたわけでありますし、それは北朝鮮側は金日成主席のパルチザン活動、あれは戦争だったんだ、こういうふうに言っていたわけでありますから、したがってそういう言葉を使わなくなったということ自体やはり変化だというふうに考えております。
 私は、日朝交渉に関しては北朝鮮側の方がはるかに交渉を妥結したいという熱意を持っているというふうに見ております。日本の方は相手の体制や出方を見てかなり懐疑心を持ってずっと来ているわけでありますが。例えば一例を挙げますと、九七年から八年の初めにかけて二回にわたって日本人妻が北朝鮮から故郷を訪問するというようなことがございました。そのころ森総理もピョンヤンに与党代表団団長として行かれたわけでありますが、北朝鮮の体制の中にある人間を外に出すということはこれはもう大変な話なんでありまして、南北の離散家族の再会というのがいかに困難であるかということを考えてみますと、当時彼らは日本人妻さえ日本に一回帰してやれば交渉が再開するんだというふうに信じていた、そういう可能性が濃厚に感じられます。まあこれは結局うまくいかなかったんでありますが、しかし、その当時から北朝鮮側の熱意の方がはるかに大きくて、その熱意の源泉が何なのかというと、まさにこの賠償であり補償である、つまり国交正常化に伴う資金であります。
 この資金の性質について今御質問ございましたが、我々が通常考えておりますのは日韓国交正常化のときのいわゆる請求権資金のようなものでございまして、当時無償で三億、有償で二億、合わせて五億の資金提供がなされたわけです。韓国はこれを巧みに利用しまして、当時ベトナム特需なんというのもございましたし、経済戦略の運営というのも大変巧みであったということもございまして、まさに韓国経済がそれをもってテイクオフするような、そういう大きな効果を持っていたのであります。
 北朝鮮側はそういうことを期待している。今の経済を何とか立て直したい、しかしそれには資金が必要であって、日本からの資金がその有力な源なんではないかということを考えているのであります。ですから、多分これは日本側からすればODAを使って、プロジェクト本位に、どういう形で金が使われるかということをきちっと査定した上で入っていくような、そういう種類のものになるんではないかというふうに考えております。
 取引というような言葉を使いましたが、最大の取引はそこでございまして、つまり拉致問題やミサイルの問題の解決とこの補償、彼らの言う補償の提供、これを取引するということでございます。人道問題に関して時々、米支援が行われて、食糧支援が行われたりなんかしておりますが、これは人道的なレベルでのより小さな分野での取引だというふうに考えてよろしいんじゃないでしょうか。国交正常化ということになりますと、どうしても今申し上げたような取引が必要になってくると思います。
#25
○委員長(矢野哲朗君) 続きまして、伊豆見参考人、お願いします。
#26
○参考人(伊豆見元君) 益田先生の方からの御質問に直接お答えすることになるかどうかちょっとわからないのでありますが、最近の変化ということを見てみますと、確かに中国、ロシアとまず北朝鮮の関係がかなり好転してきている。しかし、それが軍事的な意味合いを伴っているかどうかといいますと、私はそうではないと基本的には考えております。
 ロシアが今北朝鮮に軍事的な援助ができるという状況にないことは明確でありますし、中国はある程度の軍事的援助をしていると考えられますけれども、それが今後中朝関係が好転するに従ってさらに増してくるという、軍事的な援助が増すというようなことはやはりそれも考えられないと思います。
 もう一つの最近の特徴で、それは何回も御指摘しているところでありますが、南北関係が動き始めて南北に進展が見られるかもしれないということになることが、実は周辺の諸国のゲームといいますか、大国の政策というものにかなり影響するであろうと考えられますことは、結局は中国にいたしましてもロシアにいたしましても、朝鮮半島の問題を考えるとき、あるいは朝鮮政策をつくるときにかなりアメリカを意識してやっていることは間違いないわけでありまして、対米関係、対米政策の一つの部分として朝鮮問題を考えるという傾向が中国にもロシアにも非常に強くあろうかと思います。
 それが、今までは南北が関係が進展しないわけでありますし、韓国はがっちりと日米韓協調というような枠組みの中にいて、それで北朝鮮も米朝交渉をこの五年間は真剣にやってきたわけでありますから、アメリカの方にかなり引き寄せられるような部分もありということで、中国やロシアの目から見ますと状況は余りよろしくない。すなわち、アメリカの影響力が一番増すような、そしてアメリカを中心としたような日米韓、その中に北をどう位置づけていくかというような構図があった。こういうふうに考えてとらえてきたというふうに私は感じておりますが、それが今後、南北が動き始めますと、南北がもう少し中立的なといいますか、一つの独立変数になりがちである。
 そうすると、南北をひとつ自分たちの方により引きつけるということによって、アメリカの朝鮮半島に対する影響力あるいは政策というものをかなり変えていくことが可能になるし、むしろ中国やロシアにとってはその部分が有利になる部分が出てくるという、そういうことで、大きな戦略的なバランスが変わるというようなことにならないとは思いますが、少なくともここ五年、十年ずっと存在しておりました朝鮮半島をめぐる周辺の諸国あるいは大国間の関係、あるいはそのゲームといったようなものが今後かなり様相を異にしてくるということは大いにあり得ると思います。
 それは、日本にとっていいことかどうかはまだわかりませんし、少なくとも状況が変わる可能性があるならば、それに対する対応というものを早急に考え始めなければいけないというふうに感じております。
#27
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。続きまして、立木洋君。
#28
○立木洋君 お二人の参考人にお尋ねしたいんですが、南北首脳会談の合意が発表されたときに一番最初に頭に浮かんだのは、一九九四年六月の南北の首脳会談の合意でした。あのときは金日成主席が死亡されて実現しなかったわけですが、あのときから比べてみると朝鮮半島を取り巻く状況というのは大分変化があるんじゃないかなという気がしました。
 それで一点、小此木参考人にお尋ねしたいんですが、南北の問題で、御承知の、金大中大統領が就任されてその後太陽政策を取られたと。ことしになってベルリンにおける協議でいわゆる経済協力方針まで打ち出すというふうな宣言といいますか、あれが出されて、こういう状況の中で当初この太陽政策について北の方は極めて懐疑的といいますか、批判的な考え方があったんですが、これは大分見方が変わってきたんじゃないかというふうなことが感じられます。
 それで、選挙が終わった後、韓国での選挙が終わった後、いわゆる金大中大統領が野党に対する協力も呼びかける、それに対して対応するというふうなことも生まれてきましたし、だからこれはお話しのようにこの会談は進んでいくだろうと思われます。
 小此木参考人は、現在のところでは北の方は政治的、外交的な姿勢が変わるという状況は見られないと言いますが、このような経済交流あるいは協力等々が進んでいき、それと金剛山の観光みたいなもののように非常に人的な交流も進むという状況が来ると、やっぱりどうしても一定の影響が及ばざるを得ないんじゃないかという感じがするんです。次の段階での変化があり得るとすると、どういうふうな形で変化はあり得るというふうにお考えになるのか。南北の関係がさらに進展するというふうにお考えになるのか。これが小此木参考人に対する質問です。
 それから次に、伊豆見参考人へのお尋ねなんですが、交流、諸外国との関係を見てみますと、この点では御承知のペリー報告が去年の十月に行われました。これで、北朝鮮に対する政策の見直しが行われたわけですが、そういう内容が起こってきましたし、それから日本の場合でも去年の十二月、政党代表団が訪朝して、前提なしの正常化の話し合いをということで、既に延期された後の会議で、二回目が東京で行われるというふうな形にまで進んできております。
 これは、当然粘り強い必要な道理を尽くした話し合いということが必要になってくるだろうというふうに思いますが、こういう北朝鮮とそれから米朝の関係、それから日朝の関係、これの進展がやはりこの南北会談のあり方にも相互に関連し合ったんではないかというふうな感じがします。この問題が今後どういうふうに影響し合っていわゆる南北の関係の進展に進んでいくのか、そういう取り巻く日朝のかかわり方ですね、この問題についての御意見をお聞かせいただきたい。
 以上です。
#29
○委員長(矢野哲朗君) それでは小此木参考人、お願いします。
#30
○参考人(小此木政夫君) 北朝鮮側は金大中大統領の太陽政策をずっと慎重に見てきたと思うんですね。そして、金剛山の観光事業というのは、ある意味では実験的なことをやっていたわけであります。この間、政経分離というようなことでやってきたわけでありますが、ベルリン宣言は、しかし、そうは言っても政府が乗り出さなければそれ以上の大きな規模のものはできないじゃないか、こういう趣旨の宣言であったというふうに思います。
 私は、国内の情勢を中心にお話し申し上げたんですが、今後の展望という点で、特に外交的な点でということであれば、そもそも北朝鮮側は従来の外交方式を大きく転換したんだということを指摘しておかなければいけないと思うんです。伊豆見先生からも御指摘があったように思いますが、これまではアメリカとの関係を打開して、それによって日本との関係を打開する、最後に南を動かそうと、こういうやり方でやってきたわけですが、対米交渉にある程度限界を感じてこれを逆転させているわけです。そこのところに非常に大きな意味合いがあるんだというふうに思います。
 つまり、南との関係を打開すれば日本が動かせる、アメリカとの関係も将来的には変わるかもしれない。少なくともこの一年間は南北首脳会談を中心に南北関係をやっていきたい、そうすれば、アメリカで大統領選挙があって仮に共和党政権ができても、南北が順調にいっているときに米朝関係がおかしくなるわけがないんだと、そういうことじゃないかと思うんですね。
 ですから私は、北朝鮮側は、その過程で日本との関係も何とかしたいと当然考えているわけでして、したがって、北朝鮮側は南北関係の改善というものを、首脳会談を土台にして対日関係や対米関係を考えている、かなり長期的に動いているんだということを御指摘しておきたいと思います。
#31
○委員長(矢野哲朗君) それでは伊豆見参考人、お願いします。
#32
○参考人(伊豆見元君) まさに今、小此木先生が御指摘になったところが非常に重要なんだろうと思うんでありますが、やはり北朝鮮の外交というのは変わってきたという中で、そのプライオリティーの問題が変わってきたというのも非常に重要でありますけれども、同時に、多くの課題を一緒に取り組むようになってきた、同時に取り組めるようになってきたというのは、これは今までこの十年ぐらいはなかったわけであります。
 とりわけ、西側ということを意識した場合には、最初にまず日本とやり、うまくいきそうにないと今度はアメリカとやってみて、それならば韓国は最後に回るとかいう、一つ一つをやるだけでほとんど精いっぱいみたいなところがございましたけれども、この一年ぐらいの動きでいいますと、いろんなものを同時に並行して進めていこうとする。
 そうしますと、もちろん現在の意識からしますと、先ほど小此木先生が御指摘になられましたように、今は南北というものを少し表に出して、その影響というものをフルに使って日朝なりあるいは米朝を考えようということであろうというふうに私も思いますが、しかし、同時にその三つの関係を考えて動かしていこうとしているということもまた事実であろうと思いますので、これからは北朝鮮というのは、単にアメリカに集中しているときはほかの日本や韓国はほとんど枠の外に置き、今度は南にシフトしたんで日本やアメリカというのは少し外に置きというようなことは恐らくやらずに、全部を同時に相互に連関させて動かしていこうということを考えていくんだろうと思います。
 だとしますと、そのまさに影響ということになりますと、日朝交渉を考える場合、従来以上に南北の関係の動きというものが影響を与えると思いますし、あるいは同じく米朝の関係の動きというのが影響を与えるようになるということをちょっと覚悟しておかなきゃいけないと思いますのは、やはりそれはかなり複雑にどうしてもなるわけでありまして、日朝関係というものをやはり二国間関係だけで、あるいは二国間関係の側面を非常に重視して取り組むことは難しくなってくるんではないか。
 その二国間関係の中の一番典型的なものが拉致疑惑問題だと思いますけれども、この拉致問題だけで日朝関係を考えようとすることは情勢がだんだん許さないような方向に今明らかに行きつつあるんであろうというふうに感じております。
#33
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 他にもまだまだ御質疑があろうかと存じますけれども、予定の時間も参りましたので、参考人の方々に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 大変限られた時間で恐縮でございました。まだまだ田委員やら田村委員、佐藤委員、そして外務政務次官の山本委員などもぜひ御意見をちょうだいしたいというふうな希望もあったんでありますけれども、残念でありました。それほどまでに我々の関心事であります。きょうは大変重要な、貴重な御意見をちょうだいいたしました。今後の質疑に供させていただきたいと存じます。
 ありがとうございました。(拍手)
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#34
○委員長(矢野哲朗君) 速記を起こしてください。
    ─────────────
#35
○委員長(矢野哲朗君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外交、防衛等に関する調査のため、本日の委員会に外務省アジア局長槙田邦彦君、大蔵省国際局長溝口善兵衛君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○委員長(矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#37
○委員長(矢野哲朗君) 外交、防衛等に関する調査のうち、朝鮮半島情勢に関する件を議題といたします。
 本件について政府から説明を聴取します。河野外務大臣。
#38
○国務大臣(河野洋平君) 本委員会におきましては、これまで何度かこの問題についてお話を申し上げてきたところでございますが、本日機会をいただきましたので、改めて整理をして御報告を申し上げたいと存じます。
 最近、日朝国交正常化交渉が約七年半ぶりに再開され、また北朝鮮と諸外国との関係も大きく動きつつありますので、これらについて御説明を申し上げます。
 まず、日朝関係でございますが、政府としては、国交正常化交渉という本格的な協議の場を構築し、日朝間の諸懸案に対処することが朝鮮半島の緊張緩和及び我が国の安全保障に寄与するとの考えから、国交正常化交渉の再開に努力してまいりました。今般、ようやくこれが再開の運びとなり、今月四日から七日にかけてピョンヤンにおきまして日朝国交正常化交渉第九回本会談が行われました。
 我が国政府といたしましては、韓米両国との緊密な連携のもとに、北東アジアの平和と安定に資するような形で、第二次大戦後の正常でない関係を正すよう努めていくとの基本方針に従いまして国交正常化交渉に粘り強く取り組んでまいります。交渉に際しましては、日朝間の諸懸案の解決に向けて全力を傾けていく考えでございます。
 今回の会談におきまして、我が方としては交渉をまず軌道に乗せることを主眼に置きましたが、北朝鮮側も総じて国交正常化の実現に向けた強い意欲を有していることがうかがわれました。
 次回本会談は五月下旬に東京にて開催される予定になっております。
 次に、南北関係について申し上げます。
 先般、韓国及び北朝鮮より、六月十二日から十四日にピョンヤンにおいて南北首脳会談を行う旨発表がございました。政府としては、南北首脳会談の開催は画期的な意義を有するものとしてこれを歓迎し、全面的に支持しております。南北首脳会談が予定どおり開催され、これを契機に今後南北対話がさらに進展し、朝鮮半島の緊張が緩和することを強く期待しております。
 また、米朝関係につきましては、先月ニューヨークにて行われました米朝協議において、北朝鮮高官の訪米に加え、ミサイルや核に関する協議の開催に向けてさらに話し合っていくことになりました。政府としては、米朝協議のプロセスが続くことは緊張緩和及び北朝鮮をめぐる諸問題の解決に資する前向きの動きと考えており、これを歓迎いたしております。
 さらに、北朝鮮は、昨年九月の国連総会の機会に各国と相次いで外相会談を実施したり、本年一月にイタリアと外交関係を樹立するなど、昨年あたりから積極的な対外政策を展開しているように見えます。北朝鮮が国際社会との接触をふやすことは国際世論に直接触れる機会がふえることを意味し、基本的に好ましいものと考えます。
 北朝鮮をめぐる情勢は以上のとおりでありますが、我が国政府といたしましては、今後とも北朝鮮との関係に粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。
 以上、御報告申し上げます。
#39
○委員長(矢野哲朗君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#40
○武見敬三君 ただいま外務大臣の方から日朝交渉に関して、特に北朝鮮側から総じて非常に強い意欲を有しているというそういう御報告をいただきました。具体的にどういうところからこうした意欲をお感じになったのか、御説明いただけますでしょうか。
#41
○国務大臣(河野洋平君) 会議に出席をした我が方スタッフの報告を聞きますと、会議におきまして先方からさまざまな発言がございますが、その発言の端々にそうしたことが感ぜられると。
 例えば、拉致問題につきましても、我が方から拉致疑惑の解明というようなことを指摘いたしますと、先方からは拉致問題というような文言を使うならもう今後会議は続けることはできないというような非常に強い返事が戻ってきたそうでありますが、しかし、その後も若干のやりとりの後会議は打ち切られることなく続けられるというようなことがございまして、かつてこうした問題を契機に会議が中断したままになってしまったというころの状況とは少し違った状況になっておるというようなことも報告が来ております。
#42
○武見敬三君 確かに、報道を通じて知る限りにおいて、従来よく言われていたような戦後の償いとか補償みたいな話はどうも実際交渉の場では出てこなかったというようなことを伺っておりますし、実際に具体的に従来の北朝鮮と異なった対応ぶりが見てとれるというような話も伺っておるということは大変好ましい傾向だろうと思います。
 そもそも、朝鮮半島に関してこれをいかに安定化するかというのは、当面五年から十年ぐらいの時間軸で我が国が安全保障を考えたときに、これは最も重要な課題であるということは明白であります。その安定化を図るときに、北朝鮮に対して我々が分析を試みるときの二つの側面があると思います。一つは相手の意図であります。日本に対してどのような意図を有しているのか。二つ目が能力であります。特に軍事的な面でどういう能力を北朝鮮は我が国に対して有し、どの程度の能力上の脅威を我が国に対して与えているのか、こういう観点だろうと思います。こうした日朝交渉を通じて、意図の面での相互の理解と信頼を深めて、そして関係の改善につなげていくという流れが出てきたことは、緊張緩和という点から極めて好ましいと思います。
 しかし、他方で事軍事的能力という点から私どもが見た場合に、まだまだ現時点において現実に日本を射程に置いたミサイル、例えばノドンのようなものが配備をされ、そして着実にその脅威というものを増す、そういう政策というものは一向に変化をしていないという残念な状況も実はあるわけであります。
 そうした状況を、いかにこの交渉を通じて回避し、阻止し、そして抑止をしていくのかということがやはり最も大きな課題として私どもには与えられているんだろうと思いますが、その点、実際にこうした交渉を通じて核兵器の開発と、そして我が国に対して特に軍事的に脅威になるようなノドンの配備状況、こういったものをどのように御認識をされ対処されようとしているのか、御説明をいただきたいと思います。
#43
○国務大臣(河野洋平君) 今回の北朝鮮との交渉におきまして、御案内のとおり、我が方は韓米とともに北朝鮮に対する対応について十分政策的なすり合わせをいたしております。この日米韓三国によります協調した政策というものが北朝鮮政策の一つのベースになっていると考えていただいていいと思います。
 そのことが、我が方が対北朝鮮政策を実行いたします基本的な考え方、つまり対話と抑止ということを言っているわけでありますが、その抑止の部分に日米韓三国の政策協調というものは意味を持っているということもあるというふうにお考えをいただいていいと思います。
 三国はそれぞれ北朝鮮との間に別々の問題をそれぞれが持っておりますが、しかし基本的に今、議員がまさにおっしゃったように、北朝鮮の持ちます軍事的な脅威というものを抑えるために、あるいはそれに対抗するための力といいますか、抑止力というものを考えたときに、三国の政策協調というものは非常に意味のあるものだというふうに私は考えております。
#44
○武見敬三君 まさに三国の協調というのはペリー報告の包括的な枠組みの中でもその基本として確認をされている事項でもありまして、私はそれは今後南北の関係がさらに改善をされていく過程においても崩すべきものではないということはもう明白だと思います。
 ただ、例えば今回南北の首脳会談が開かれるというようなことになった経緯を振り返ってみたときに、実際に韓国の政府から我が国の政府に対して事前にどれだけの説明があったのか、そしてその後の説明というものについてはどういうものがあったのか、御説明いただけますでしょうか。
#45
○国務大臣(河野洋平君) 韓国政府から我が方には事前の説明がございました。それからまた、私はあのちょうど十日前ですか、直前に訪韓をいたしておりまして、韓国側首脳と会談を行った経緯がございます。しかしながら、韓国首脳との会談においてはこの問題は先方からは説明はございませんでした。ございませんでしたが、これはまだはっきり申し上げられる状況ではございませんが、私はどうもあの言葉はそれを意味していたのか、あるいはそういう下地があったのかと思い当たる節も若干なくはないのでございます。
 しかし、それが正しいかどうかはまだわかりません。いずれ韓国首脳との間で、あのときあなたがこう言ったのはこれだったんですねと言える日がいつか来るだろうと思って、それまで私は忘れずに持っていようと思っておりますが、南北会談について具体的な説明は、私が訪韓したときにはございませんでした。しかし、私が帰ってまいりましてから、あの会談が発表されるまでの間に韓国側から我が方に説明がございました。
#46
○武見敬三君 今後、実際にこうした南北の関係の改善の過程で、例えば経済の支援といったような問題が具体化をし、そしてまたその過程で日本にもさらに協力を求められるというような構図が出てくることも多分に考えられるだろうと思います。
 そこでは、日本独自の立場から対応する際に、必ずしも韓国と同じ立場をとれるというものではないという可能性も実は多々あるわけでございます。したがって、そういうことが予見できるわけでありますから、こうした期待に対する政策という観点で韓国政府との極めて緊密な協議、連携というものが私はこれからもさらに重要になってくる時期だろうと思います。
 したがいまして、どの程度の事前の説明が韓国政府からあったか私は存じ上げませんけれども、やはりこの点に関しては韓国政府に対してもきちんと言うべきことは言い、緊密な事前の連携をより図るということについての申し入れというものは、やはりちゃんとしておくべきではないかなというような気がいたします。
 時間も来ましたので、以上であります。
#47
○海野徹君 外務大臣に若干御質問させていただきます。
 今、武見先生からもお話がありましたが、北朝鮮が積極外交を展開している、非常にそれぞれ北朝鮮内部にいろんな問題があってそういうものが出てきたんだろうなと思います。大臣の御認識であれば、北朝鮮内部における積極外交を展開する背景がどこにあり、そのねらいがどこにあるかということを大臣としてどのような御認識をしていらっしゃるのか。それに対して日本としてはどういうような対応をしていこうとされているのか、概略で結構ですから、お話をお聞かせいただきたいと思います。
#48
○国務大臣(河野洋平君) 先ほど御報告を申し上げましたように、昨年あたりから北朝鮮は、例えば国連を中心に、北朝鮮外務大臣はしきりに多くの国の外相との会談を行っているという事実がございます。そしてまた、本年一月にはイタリーを初めとしてかなりの国と積極的な外交を展開しております。この積極的な外交の展開が一体何を意味するのかということは我々にとって大きな関心事でありますし、そこをきちっと分析しなければこれからの日朝会談に臨むに当たって我々の政策をつくり上げるのに十分なことができないだろうというふうには思っております。
 いろいろなことが考えられるわけでございますが、一つは、今も武見議員からもお話がありましたように、北朝鮮側がかなり積極的にさまざまな支援を求めている、食糧を初めとしてさまざまな支援を求める必要が生じた、あるいは支援を求めることによってそれをうまく活用できるだけの国内の体制をつくらなければならないと思い始めたということは一つあると思います。食糧について言えば百万トンから二百万トンの間ぐらい足らないだろうと、これは国際機関が言っているわけでございますが、そうした問題についてどうするか。ただただ毎年支援を求めていけばいいのかどうなのかということなどについてもいろいろ考えているのだろうと思いますが、しかしかなり緊急度が高くなってきたということがあるかもしれません。
 それからもう一つは、北朝鮮内部の体制がかなり自信を持ってきた。つまり、例えばこれまで軍の支援の上に乗って体制をつくってきたというものが、徐々にではあるけれども北朝鮮全体にその力というものを及ぼすようになって、今や相当な自信を持ったのではないか。その自信は、例えば党の機構だけではなく行政機構というものも徐々に整備されてきたかもしれない。ここのところはまだよくわかりませんが、例えば外交政策あるいは外交交渉などをやる担当部局といいますか、そういうものなども整備されてきたということかもしれない。
 そういったようなことを我々は考えておりまして、こうした外交交渉は当然のことながら、相手の体制がしっかりしている、その相手の体制と交渉しなければなりませんから、先方の体制がしっかりしているということは我が方にとって悪いことではありません。したがって、でき上がった体制と真剣な交渉を行っていいというふうに私は考えているところでございます。
#49
○海野徹君 非常に熱意を感じられる、あるいは北朝鮮側が急いでいるのではないかという話がよくあります。金正日さんが韓国の朴元大統領の日韓交渉なんかを非常に参考としている、そういうねらいはやっぱり経済援助だというような話がありまして、その後南北の首脳会談のとき、むしろ先ほどお話がありましたように事前に説明があったとすると、日本側としてもその首脳会談で金大中大統領に何らかのこちらからしていくというような御用意はありますか。
#50
○国務大臣(河野洋平君) ちょっと言い落としましたが、私は北朝鮮の積極的な外交姿勢の中で、我々が相当しっかり見なければならないことの一つは、金正日氏がピョンヤンにある中国大使館を訪問したということが一つございます。北朝鮮と中国との関係というものが、どこまで相互の利害が一致しているのかというようなことについても、よく考えてみる必要があるということだけちょっとつけ加えたいと思います。
 南北会談につきまして、我が方が金大中大統領に何らかのことをというお話でございますけれども、私は今それは考えておりません。これは恐らく金大中大統領にとりましても、この南北の首脳会談というものは金大中氏にとってみればもう何十年間信念を持ってこの問題に取り組んでこられて、いよいよその会談がここで実現をするというこの場面でございますから、少し大げさに言えば、ここはもう二人きりで真剣勝負をやって朝鮮半島の平和のためにがっぷり四つの会談をやってもらいたい。そういう気持ちが強くて、ぜひその上で、そして何らかの問題が片がつけば、それはそれからいろいろともつれはほぐれてくることになるだろうと私は思いますだけに、この南北会談はひとつしっかりやってもらいたいという気持ちが私には大変強うございます。
#51
○海野徹君 それでは次の問題なんですが、今度五月に東京で日朝交渉が行われるということでありますが、最近マスコミでもテレビ放映されて非常に問題になっておりますし、識者から再三の指摘があります朝銀信用組合への公的資金の導入の問題であります。これは我々も非常に問題が多いなという認識をしております。
 総連の財務部の幹部等も、匿名の形なんですが、テレビ出演してその実態をお話ししております。ということになると、大変これも日朝交渉の中で、経済支援の中で大きな問題の一つになってくるのではないかなと、その辺についての外務大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
#52
○国務大臣(河野洋平君) 朝銀の問題は、これは国内法規に基づいて設立された銀行でございますから、この問題についてどうするかという話は少し、外務省というよりは大蔵省か金融監督庁か……
#53
○海野徹君 いえ、大臣の今認識しているだけ。
#54
○国務大臣(河野洋平君) どうも私が御答弁を申し上げる柄でないといいますか、能力がないといいますか、というふうに私は思っておりまして、これはやはり日本の金融監督庁なりがきちんとした法規、法令に基づいて処理をなさることでいいのではないかというふうに私は思います。
#55
○海野徹君 以上であります。
#56
○益田洋介君 まず冒頭、去る十三日、早稲田大学の奥島総長にお会いいたしまして、ペルー問題につきまして私ども、委員長以下佐藤議員、全員の一致を見て決議をした上で交渉がやっと好転いたしまして、その点について感謝の意の表明が、外務大臣、委員長それから全委員の方によろしくお伝えいただきたいということなのでお伝えをさせていただきます。
 最初に、外務大臣にお伺いしたいんですが、アメリカの下院外交委員長であります共和党のギルマン委員長を初めとする超党派の議員団が十八日、KEDOにより北朝鮮に提供される軽水炉の将来的なおそれでございます原発事故が発生した場合の賠償責任については、アメリカの政府としては支払いをするべきでないと禁止する旨の法案を議会に提出いたしました。
 これはどういうことかと申しますと、一九九五年にKEDOと北朝鮮が結びました原発の供給協定の中には、事故が起きた場合には運転者である北朝鮮が全面的に原発の保険金、また加えて事故の賠償について責任を持つんだというふうになっているわけでございますが、アメリカの議会は非常に北朝鮮の責任能力についての疑問視が強くなっている、新たな言ってみれば事故補償問題が軽水炉事業のこれからの促進についての難問として浮上してきたわけでございます。
 このことについて、当然、我が国も我が国政府としてどのような対応を考えていかなきゃいけないか。法案までアメリカでは提出したわけでございますので、我が国政府として基本的なお考えを、まず外務大臣にお伺いしておきたいと思います。
#57
○国務大臣(河野洋平君) まず最初に、益田議員からペルー問題について御連絡をいただきまして、お目にかかってお話を伺うことがおくれておりましたことをおわびいたしますと同時に、大変御丁寧な総長からのお言づけ、感謝を申し上げたいと思います。
 今お尋ねのKEDOの問題でございますが、議員が御指摘になりましたアメリカ議会での動きにつきましては詳細を目下調べておりますが、アメリカ企業がKEDOプロジェクトに参加する場合に、その前提として原子力事故が発生した際の責任を負わされないようアメリカ政府の保証を求めているということであろうと理解しております。
 原子力事故が発生した際の損害賠償責任は、原子炉の運転者が一元的に負うというのが国際的に確立した原則であります。このことは、KEDOプロジェクトによって供与される軽水炉の場合も同様であって、北朝鮮がこの軽水炉についてかかる責任から免れないことは当然でございます。つまり、具体的には、北朝鮮はKEDOとの国際約束の中で原子力事故が生じた際の責任を負うための国内法制度や財政的保護措置の確立を行うとともに、KEDOやKEDOプロジェクトに参加する民間企業を保護するための措置を整備する義務を負っているわけであります。
 我が国としては、今後のKEDOとしての取り組みの中で、まずは北朝鮮にそのような責任を果たさせることが重要であるということが基本的な認識でございますけれども、はてそれだけの能力が北朝鮮にあるかどうかということについてのあるいはお尋ねかと思いますが、そこは大変問題であろうと思います。
#58
○益田洋介君 次に、槙田アジア局長に質問させていただきます。
 昨年十月十二日、ウィリアム・ペリー長官のペリー報告がなされました。その中で、結論の五番目としまして、北朝鮮に対する米国のいかなる政策も日本と韓国の積極的な支持や実施への協力がなければ成功し得ない、もちろんこの三国の利害は同一ではないものの三国間の協調を確保することは可能であり重要であると、このように述べております。
 たまたま、きょう委員長のお計らいで伊豆見先生に参考人として来ていただきまして、そのお話の中で非常に興味のあることがございました。それはアサンプションの変化ということでございまして、局長、このペーパーをお持ちですね、三ページ目にありますが、ロシアと中国と北朝鮮の関係が、アサンプションが伊豆見先生のおっしゃるとおりに推移するのであれば組みかえられる、密接な関係に至るんだと。そして、そのことによって私が懸念をいたしますのは、ロシアと中国と韓国の関係も当然ながらアシュームされる、変化することがアシュームされると。
 そうした場合に、例えば十九日に中国の江沢民主席が初めてイスラエルを訪問してイスラエルの首脳とさまざまな会談を持った折に、軍事同盟、軍事協力ということを合い言葉にしてさまざまな軍事面での協議がなされた。そして、一番卑近な例ではイスラエル製の早期警戒システムの対中輸出をすると。この問題は、非常にアメリカの議会でまた問題になっておりますが、こうした北東アジアの戦略バランスがどうなるかといった議論までアメリカで出ている。局長としては、どのようにこれをお考えでしょうか。
#59
○政府参考人(槙田邦彦君) 今御指摘の問題について的確なお答えをすることができるかどうか必ずしも自信はございませんけれども、恐らくアサンプションの変化と申しますのは、間近な将来においてそういうことが生ずるということではなくて、これから恐らく五年あるいは十年、そういう比較的長期のタイムフレームの中でそういうことが起きるのではないか、こういう話なんだろうと思うわけでございます。
 その場合の要素といたしまして、北朝鮮が今後どのような変化を遂げることがあるのか、あるいはないのかということがやはり一つの大きな要素になるわけでございまして、当面の、北朝鮮、中国、ロシアあるいは韓国、日本、米国、こういう関係の中における北朝鮮の重さと申しましょうか、そういうものがどれほど直近の将来において大きな意味を持つのかについては、これはちょっと私は即断ができないという感じを持つわけでございます。
 もちろん、長期的にいろんなシナリオが考えられると思いますけれども、北朝鮮が、去年の半ば以来行われておりますいろんな外交活動、南北首脳会談、日朝あるいは米朝、そういうさまざまな活動によりまして、いずれの日か国際社会に建設的な責任のある一員として帰ってくる、そういう状況になったときの北朝鮮の重みというものは、これはまた今、先生のおっしゃるようなアサンプションの変化の中で大きな意味を持つのかなと、こう思うわけでございます。
#60
○益田洋介君 それでは次に、大蔵省溝口国際局長に質問させていただきます。
 十八日、ワシントンで世銀の開発会議におきまして、世銀の前副総裁でありまして現在ブルッキングス研究所上級研究員のジョセフ・スティグリッツ氏が講演をいたしました。その折、米財務省とIMFの将来的な展望についてかなり批判的な意見を述べられて、今回のアジアの金融危機については、金融引き締め策や緊急の財政問題などで間違った処方せんを押しつけた財務省とIMFがあって、それがアジア全体の不況と高失業率に陥れた状況があったという反省のもとに立って、アメリカ政府の中にはもうIMFは不要であるというような考え方もしている。しかし同時に、これは世界的にやはり改編をすべきであろうというふうな声が上がっております。
 我が国としても、資金を供与している二番目に多い国でございます。どのように我が国の財政・金融担当局としてはお考えなのか、その点をお伺いしておきたいと思います。
#61
○政府参考人(溝口善兵衛君) 御指摘のように、アジアの危機に際しまして、当初の段階でIMF等の対応が必ずしも適切でなかったということがございまして、私どもはそういう際に、例えばインドネシアでありますとか、韓国の支援に日本も多額の貢献をいたしたわけでございますから、そういう過程でIMF等にもいろんな注文をつけました。
 例えば、インドネシアでは預金保険というセーフティーネットがない段階で不良資産が多い銀行をつぶしてしまえというような非常に急激な改革を求めるというようなことがございまして、今当面大事なのは、資金がインドネシアから流出しておるのであるから、その流出をとめるような短期的な対応に力を注ぐべきではないかとか、いろいろ具体的なことは申してきております。
 それからもう一つ、アジアの危機などにつきまして、これはいわゆるクローニー資本主義というアジア特殊の問題ではないかというようなことをいろいろ言っておったわけでございますけれども、私どもは、これはアジアの問題というよりも、情報通信が非常に発達し、資本移動が非常に容易になった新しい世界における一つの危機ということであるから、国際金融システム全体を見直すべきであるという主張をずっとしておるわけでございまして、そういう主張はIMF等の会議あるいはG7の会議等々で言って、ある程度そういう方向の実績が出てきております。
 最近の議論におきましても、アメリカが非常に熱心でございますが、私どももIMF、世銀の改革についてはやるべきことはやるべきだという主張をこの前のG7でもやってまいったわけでございます。今後、ますます私どもの意見を国際社会の中で発言してまいりたいというふうに考えているところでございます。
#62
○立木洋君 大臣、先日、日朝国交正常化の第九回本会談が開かれました。それについての感想を含めたお話は先ほどございましたけれども、七年半以前に行われた八回の本会談と基本的には何らかの違いがあったんでしょうか。もし違いがあるとすれば、こういう点だったということを、ちょっと明確に述べておいていただきたい。
#63
○国務大臣(河野洋平君) 七年半の時の流れというものがさまざまな国際環境の変化というものを引き起こしたと思います。
 それは例えば、ベルリンの壁が崩壊した直後のかなりまだ落ちつかない状況から、今やそうしたものが本当になかった、最初からなかったんじゃないかと思う人がふえてきたような状況でもございます。あるいはまた、北朝鮮の食糧事情、経済事情その他は非常に厳しい状況にさらされているということもあるかもしれません。
 考えてみると、あのベルリンの壁以降、例えばハンガリーのように韓国との国交を開始して北との関係が非常に厳しくなるというような国も幾つか出てきたというようなことがございますから、北側にとっても今回の交渉に臨むに当たって、私は八年前の交渉のときを近くで見ておりませんのでよくわかりませんが、私は、北としても相当に期するものがあるのではないかというふうに思います。
 一方、我が方も、村山元総理が訪朝されて、つまり超党派、国会各会派の皆さん方からも支持をされて正常化交渉をやれという大きなバックアップを受けているわけでございまして、そうした状況の中で、国民の感情というものにはいろいろございますけれども、交渉する条件というものは一つの条件がここにある。しかし一方で、拉致問題とかテポドンの問題とか、こうした状況というものが、七年半前にはなかったものが今あるわけで、こうした問題はそれはそれで大変厳しい問題というふうに受けとめながら今回の交渉に臨んでおります。
#64
○立木洋君 河野さんも、先ほどの説明の中で北朝鮮の最近の積極的な外交姿勢の問題を、イタリアその他を取り上げてお話がありました。
 いろいろ見てみますと、最近の状況の中では北朝鮮の外交姿勢というのは、極めて積極的に各般の交渉をおやりになっておられる。イタリアだけにとどまらないで、中国との間での外相の交流やあるいはロシアとの友好協力条約の調印だとか、あるいはフランスとの国交を正常化するための協議が始まるだとか、いろいろ進んでおるように見られます。
 特に、ASEANの地域フォーラムに加わるという積極的な意欲的な姿勢を示しているというようなことも報道がありますが、このASEANの加盟国の十カ国の中で、まだ北朝鮮と国交がないのがフィリピンとミャンマーだけだという状況ですが、近くフィリピンの外相との会談も予定されているというふうに聞きます。ここでの国交の正常化が進んで、さらにここに加盟する、いわゆるASEANの地域フォーラムに加盟するというふうなことになってくると、こういうふうな動きをアジアの平和と安全という状況から日本政府としてはどういうふうにお考えになっているのか。
 また、こういう北朝鮮の姿勢を、いわゆる対話外交へ変わった、どの程度変わった、あるいは大きく変わったというのか。対話姿勢の占める比重が極めて強まってきているというふうなことも新聞では一部報道がありますけれども、そういう外交姿勢の変化をどういうふうに見ておられるのか。その二点。
#65
○国務大臣(河野洋平君) ARFの参加につきましては、四月九日、コロンビアで行われた非同盟諸国会議、閣僚会議に際しまして、北朝鮮からタイに対してARF参加に関心があるという趣旨の発言があったというふうに私ども聞いております。まだ現在ではARFに正式な参加申請が来ているというふうには承知しておりませんが、タイの外相からそういった発言がございますから、恐らくそれに近い感じがあるのだろうというふうに思います。
 私は、北朝鮮が積極的に窓を開いて話し合う姿勢を見せているということは、これは我が方にとって大変結構なことだ、好感を持ってこれを迎えるべきだと思います。
 しかし、そうはいいますが、先ほどから申し上げておりますように、日朝国交正常化交渉におきましても、私は繰り返し、非常に強い意欲を感ずる、積極性を感ずるとは申しましたけれども、まだまだ、当然といえば当然だと思いますが、北朝鮮側からの発言は原則に非常にかたくなだ、原則を非常に強く守る、そういう姿勢はあるというふうに承知をしております。これはイタリーの外務大臣、ディーニ外相が北朝鮮外相と話し合われた後でもそうしたことを述べておられるようでありますが、原則には非常にかたくなだということのようでございます。それは当然といえば当然であるかもわかりません。
 ですから、話し合う、直ちに妥協が図られる、合意ができる、そんな簡単なことではないと思いますけれども、少なくとも話し合うということは話し合わないよりは数段前進だと思いますし、話し合おうと思えば、例えば話し合う場所に出かけていくということもあります。あるいは国外から話し合うために人を呼ぶということもあるわけでございますから、ただ単に言葉が行き交うだけではなくて、さまざまな状況を経験する、あるいはさまざまな状況の中でさまざまな情報を得るという意味でも私は何らかのプラスは必ずあるだろうというふうに思いまして、私はこの話し合いということに北朝鮮が、話し合い路線といいますか、話し合う方針というものを持たれたとするならば、それは歓迎をしたいというふうに思います。
#66
○立木洋君 これは最後なんですが、先日だったですか、この委員会でいわゆるペリー報告の問題について外務大臣にお尋ねしました。つまり、アメリカが北朝鮮に対する政策を見直すという、これに対するペリーの報告ですね、これについて質問いたしました。
 それで、この中では、もちろん核兵器の開発だとかミサイルの開発、こういうものについて、これを中止させるということのためにいわゆる積極的な対話を進めていくというふうな内容として、その立場に立ち戻れるように粘り強く努力をするというふうなことも指摘をしたわけですが、今後の日朝国交正常化の基本的な外交を進めていく姿勢としては、日本政府はどのようにお考えになっておられるのか。
 つまり、問題解決の結論が出るまで粘り強く話し合いを進め、道理を持って交渉に当たる。と同時に、そういうふうな点で、その話し合いを促進する姿勢をとり、平和的な話し合いを妨げるような行為、こういうふうなことはとるべきではないというふうな指摘を前回もしたんですが、その点についてもう一度重ねて、正常化の交渉が始まった今日の時点でお尋ねしておきたいと思います。
#67
○国務大臣(河野洋平君) 前回も申し上げたと思いますが、私は、我が国は話し合いによって問題を解決するという方法を原則としてとってまいりましたし、これからもそうした姿勢を持っていくべきだというふうに思います。しかし、他方で、これまた繰り返し申し上げておりますが、日米韓という三国の政策協調というものを、合意された枠組みといいますか、そうしたものをやはりしっかりと持っていくということが重要であろうと考えているわけでございます。
 私は、少なくとも我が方から話し合いを困難にするような不合理な作業はやるべきでないというふうに思います。しかし、我が方として、話し合いの中で言わねばならぬこと、言うべきことはこれはきちっと言わなければならないのは当然のことでございます。言うべきことをきちっと言い、双方が合意に達するための努力を粘り強くやるという姿勢で臨みたいと思っています。
#68
○立木洋君 終わります。
#69
○田英夫君 私が伺いたいのは、質問の結論を先に申し上げると、南北首脳会談が始まるわけでありますが、その延長線上で将来いわゆる南北統一というものが実現できるのかどうかということなんです。
 これは、日朝交渉を進める上で当然そうした大きな見通しを持ちながらやらなければならないと思いますので聞くんですが、金大中大統領は、一九七一年に三段階統一論というのを大統領選挙に当たって、最初の大統領選挙ですが、出しておりますね。第一段階では、南北それぞれ国家として存在をしながら、それを一種の共和国連合というような形で持ちたい、それがほぼ十年ぐらい続いた段階で第二段階で連邦制へ移行する、これも一つの国家になる、第三段階で完全な統一を行うということを既に三十年前に、ほぼ三十年前に出しているわけです。さっき大臣が言われたように、もうその思いは何十年続いてきている。
 一方で、その翌年、一九七二年にいわゆる七・四共同声明が出されて、私はその直後に北朝鮮を訪問して金日成主席から非常に熱烈な話を聞きました。恐らく彼の主導でつくられたもので、自主、平和、民族団結という原則に立ってやろうということで、ある意味では非常に似ております。その息子さんが今度それを引き継ぐことは当然だろうと思いますから、同じ民族として統一ということを当然双方の首脳は頭の中に入れながらだと思います。
 しかし、同時に、北の今の体制あるいは韓国の中のハンナラ党を初めとする反対をする勢力、これも無視できない、容易なものではないと思いますし、さらにこの朝鮮半島を取り巻く各国の中で、アメリカには基本的に南北の統一は好ましくないという意見があることも事実だと思います。そういう勢力があることも事実だと思います。あるいは日本にもあるかもしれない。
 こういう状況の中で、今、日朝交渉を再開するに当たって、外務大臣は基本的にこの統一という問題をどういうふうに考えておられるか、伺いたいわけです。
#70
○国務大臣(河野洋平君) 結論を先に申し上げますと、今の時点、南北の首脳は統一ということを考えていないだろうと思います。それは、むしろ統一を望むよりも、平和を望むということに最大の眼目があるのではないかと。つまり、平和の定着といいますか、そうしたことを考えておられるのではないかと。そうでなければ、話し合いは成功しないだろうというふうにも思います。
 したがって、我々が統一を願うとか、まあそれはそれぞれの立場ですからそれぞれの願いはあるかと思いますけれども、私は、この南北会談は、少なくとも今両首脳が、六月に行われる南北会談における両首脳の最大の願いは、朝鮮半島といいますか、韓半島の平和の定着ということを望んで会談に臨まれるのではないかというふうに思います。私は、そうであれば、この韓半島の平和が定着をするという目的をぜひ達してほしいと、今はそれを最も期待しております。
#71
○田英夫君 全く同感です。金大中大統領から恐らく外務大臣も直接聞かれたと思いますけれども、金大中大統領も統一ということを言わない。本当に朝鮮半島の平和ということを目指すんだということを強調しておられると思いますので。
 もう一つ。これは質問というよりも、ちょうど山本政務次官もおられますから、この際お願いをしておきたいのは、二十四日からニューヨークでNPTの再検討会議が始まる。これ実は朝鮮半島の問題と私は極めて関係が深いと思って見ております。
 本当に、日本を代表して、ぜひ山本政務次官に、このNPT体制というものを堅持しながら、私は基本的にその考え方は余り完全に満足しているわけじゃありません、核保有国に余りにも有利にできておりますから。しかし、平和のためには、それから核廃絶の一歩としてぜひ大事にしていきたいわけですが、その中で、我々に最も身近な問題は、朝鮮半島の非核化という問題につなげられるかどうか。伊豆見さんのお話にもありました南北の朝鮮半島非核宣言、このやり方も一つあるでしょう。あるいは、我々がかねてから言ってきた北東アジア非核地帯条約を日本を含めて結ぶというやり方もあるでしょう。ぜひそういうことを視野に入れながら、日本の主張を展開していただきたいということをお願いしておきます。
 終わります。
#72
○委員長(矢野哲朗君) 答弁、よろしいですか。せっかくですから山本政務次官、一言。
#73
○政務次官(山本一太君) 田先生のおっしゃったとおり、このNPTの再検討会議、大変大事なものというふうにとらえておりまして、我々としてはどうしても河野外務大臣にお出ましをいただきたかったんですが、こういう状況ですので、私がかわって、先生のお考えも頭に入れながら、一生懸命やってまいります。
#74
○田村秀昭君 外務大臣は先ほど、日本の外交は言うべきことはきちっと言うという姿勢で臨むというふうにおっしゃっておられます。外務大臣の外交演説にも、我が国憲法の中心的な柱である自由と民主主義そして基本的人権の尊重といった価値を国際社会に定着させていきたいというふうにおっしゃっておられます。
 それで、友好ということは、本当のことをきちっと言わないと本当の友好にならないと私は思っているんです。相手の気に入ったようなことだけ幾ら言っていても、それは友好にはならないと。それで、今回、ピョンヤンで行われた日朝交渉にしても、向こうは、日本が過去にしたことについては謝罪し、補償しろと、自分たちのやったことについては一切知らない、拉致なんてとんでもない話だ、それを言ったら席を立つというような話ですね。
 それで、最終的に何をねらっているかというと、補償金を取るというだけの話であって、そんな交渉を一生懸命進めてもしようがないんじゃないか、国益を考えてやっていただきたいということを、この前、私は高野大使に申し上げました。それで、日本の外交を見てみますと、外務大臣がおっしゃっているような、そういうような外交ではないような気がして私はならないんです。
 例えば、今回、チベットのダライ・ラマ十四世が来られて、石原知事と会う予定だったけれども、外務省からストップがかかって会えなくなったと。残念であると。外務省というのはビザの発給の権限を持っているんですね。その権限を乱用しているんじゃないか。
 この人は、一九八九年にノーベル平和賞をもらっている方ですよ。普通だったら、アメリカであれば大統領がお会いになるだろうし、政府の要人はみんなお会いになると思いますね。日本はだれも会わない。石原知事にも会っては困る、六十人以上の集会をやってはいけないと。私はきのう、お目にかかってきましたけれども。
 そういうことは、外務大臣の外交演説で言われていることと随分違うんじゃないか。これが日本外交の中国に対する土下座外交というか何というか、そういう言葉を使っちゃいけないかどうか知らないけれども、相手が気に入るようなことをすると。そういう人が来たときに、政府の要人が会わない。それが経済大国とか大国という名前をつけるような国なんでしょうか。外務大臣に御答弁をお願いいたします。
#75
○国務大臣(河野洋平君) お言葉でございますけれども、ダライ・ラマの入国について、もし中国側に意見を聞けば、ダライ・ラマの入国を認めるなと中国側は言うに違いない。私は、そういうわけにはいきませんと。ビザの申請があって、きちんとした手続が踏まれれば、私は入国を認めますということを申し上げたのであって、中国の気に入るようなことを私がやっているというのは、一体どこからおっしゃるのかわからぬけれども、そんなつもりは全くないということを申し上げたいと思います。
 さらに、私がダライ・ラマが石原知事に会うことを何といいますか、とめたというような事実があるなら、はっきり証拠を示して言ってもらいたいというふうに私は申し上げたいと思います。
#76
○田村秀昭君 外務大臣はビザの発給をされる前にはそういうことは言われなかったと、今おっしゃったとおりです。
 だけれども、ビザを発給してから、招待元の京都精華大学に外務省から、大臣は言われないと思いますよ、大臣がそんなことを言われたらとんでもない話ですけれども、外務省の担当者からそういう電話がかかってきて、それできのうも本当は六十人以上の集会をやるんだったけれども、それは取りやめてほしいと。そういうのが外務省の体質なんですよ。これは絶対間違いありません。
 証拠も証拠じゃないも、石原知事と会いたいと言っているのに会えないじゃないですか、会っていないじゃないですか。それで外務大臣もお会いになっていないじゃないですか。総理大臣お会いになりましたか。もうきょうお帰りになるんですよ。僕はそんなことは政府の詭弁だと思いますね。
#77
○国務大臣(河野洋平君) 私が承知する限り、ダライ・ラマ十四世は環境問題を講義する、あるいは宗教について講義をするために、それが入国の目的だということでありましたから、結構ではないですかと申し上げているわけで、その渡航目的のとおり行動されることについて、我々はそれに対して、何といいますか何の障害になるようなことをしたことはないということだけははっきり申し上げておきたいと思います。
#78
○田村秀昭君 私は、先進国でアジアのリーダーになるような国であるならば、ノーベル平和賞をもらった、暴力を排除してきた、そういうダライ・ラマ十四世に普通は総理大臣とか外務大臣とかがお会いになるのが筋ではないだろうか、地球上どこの地図に載っているかわからないような国じゃないわけですから。アメリカだったらクリントン大統領が会われると思いますよ、私は。
 それでは、なぜ外務大臣はお会いにならないんですか。
#79
○国務大臣(河野洋平君) ダライ・ラマ十四世が日本に来たら自動的に外務大臣が会うというものでもないのではないでしょうか。つまり、どういう目的で、例えば外務大臣に対してどういう目的で会いたいというお話があれば、そこはそこで検討するということになると思いますけれども、ノーベル賞をとった人が日本へ来たんだから総理大臣でも外務大臣でもみんな会えというのは、それはちょっと必ずしもそうですかと申し上げるわけにはまいりません。
#80
○田村秀昭君 そういうことを私は聞いているんではなくて、私は、明らかに日本外交の外務省の一部の中に、友好という名のもとに主体的な国家としての権威を失墜するような考え方というものが根強くあるんではないだろうかということを申し上げているわけです。
 それは、お忙しいのにわざわざ会われる必要はありませんけれども、石原知事とは会いたいと両方がおっしゃっていて会えなくなったことだけは事実でありますので、これは新聞にも載っておりますし、みんな報道されていることであって、御本人も、日本政府の対応はいかがなものか、敏感過ぎると思ったというふうな記者会見もしているわけですから。何も、我が国がよその国に遠慮して靖国神社に参拝しないとか、国内問題についてとやかく言われる必要はないと私は思います。
 それで、中国がチベットにしていることは、明らかにこれは侵略であって、六百万の人口の五分の一を殺害した、六千以上の寺院を破壊しているわけですから、日本が戦争中にしたよりもはるかに中国はチベットに謝罪しなきゃいけないんじゃないですか。よその国だけに謝罪しろと言って自分は謝罪しないというのは私はおかしいというふうに思っております。
 以上であります。
#81
○佐藤道夫君 私も、先ほどの外務大臣の、言うべきことを言う外交を展開したいというお言葉に大変強い印象を受けましたので、それを前提として二、三のお尋ねをしたいと思います。
 先般、当委員会での懇談会で、日朝会談の日本側の代表である高野大使と懇談の機会がありまして、その際、私から二、三の要望をしておきました。多分お耳に入っているだろうとは思いますけれども、念のためそれを取り上げてもう一度念押しをしておきたい、こう思います。
 最初の問題は、例の日経新聞の元記者のスパイ容疑での拘束の問題であります。
 私、この委員会でも言ったと思いますけれども、あんなものはスパイとは言わないんですよ。人前で、多くの人が見ている前で、写真禁止区域で写真を撮りまくる、そんなものはスパイであるわけがない、多分に軽率な人だろうというだけのことだろうと思うんですけれども、いずれにしろ、彼は拘束されましてもう数カ月に及んでいる、裁判にも付されていない。国民の生命、身体の安全を確保するというのは政府の最大の責務でありまするから、強く強く北朝鮮側に対して、釈放するか、もしスパイ容疑があるとすれば、近代国家というのはすぐそれは裁判に付すべきなんだ、どちらかの道を選択してくれということを厳しく申し入れていい。
 言うべきことを言う、当たり前のことだと思うんです、こういうことは。そんなものを放置しておいてどうだこうだと言う資格は私はないと思うんですよ。いかがでしょうか、その点は。
#82
○国務大臣(河野洋平君) 前回も佐藤議員からそうしたお話がございました。私どもも、邦人保護という立場は我々に与えられた重要な責務でございますから、この問題を軽んずるつもりは毛頭ございません。
 ただ、先方は先方の法令で、言ってみれば勾留をして取り調べをするというようなことを言っておるわけで、我が方としては少なくとも一日も早く帰国できるようにしてもらいたいということを先方に伝えております。このことは主として北京を中心に、北京の我が方大使館から先方大使館に伝えておりまして、その結果は、本人はピョンヤンにあります外国人用のホテルに足どめされている、健康状態は良好であるというような説明は聞いておりますけれども、依然として問題が解決していないのは事実でございます。
#83
○佐藤道夫君 先ほど外務大臣は、言うべきことを言う、粘り強く交渉していくということもおっしゃいました。どうか日朝交渉の際には必ずこの話をしまして、近代国家というのは、いつまでも人の国の人間を捕まえて入れておく、裁判もしない、そんなものは国家の名に値しないということをきちっと言ってほしいと思います。これは当たり前のことでありまするから。
 それから次に、高野大使に、今度米を送ることになって、北朝鮮側から何かあいさつ、お礼の言葉があったかと言いましたら、その席上、向こう側の首席である外務次官からありがとうございますという言葉がありましたということで、高野大使はそれでもって終わりという感じでありましたので、私、それは考え違いも甚だしいと。阪神・淡路大震災の際に北朝鮮が二千万円の見舞金を送ってまいりまして、我が方はこれに対して大変ありがたいということで、当時の村山首相の名義で北朝鮮首相に対して答電、感謝の電報を送っておるんですね。これが当たり前のことなんですよ。
 北朝鮮に対しては既に何回にもわたって米、食糧支援をしているけれども、お礼らしいお礼はまだ一回も届いていない。事務的にありがとうよという言葉ぐらいはありましょうけれども、送っているのは日本国民ですから、国民の税金で送っているわけで、外務官僚が送っているわけじゃないんですから、やっぱり日本国民の耳に入るようにきちっと北朝鮮の代表者から日本政府に対して謝礼の言葉がある。それは儒教の国ですから、両方とも。こういうことは会議の場でぱっと言っていいと思うんですよ、礼儀知らずか、あなた方はと。それぐらいのことは言うように部下の外務官僚に督励してください。いかがでしょうか。
#84
○国務大臣(河野洋平君) 二つ申し上げたいと思います。
 最初の杉嶋氏の問題につきましては、議員から日朝交渉のたびに言えと、こういう御指摘でございますが、日朝交渉は一回ずつ相当間の長いものでございますから、むしろ私は北京の大使館を通じて話し合うということの方が話し合いのインターバルは短くなるというふうにも思います。いずれにいたしましても、でき得る限りこの問題については頻繁に先方に話をするということで御理解をいただきたいと思います。
 二つ目の問題は、高野大使からも御報告を申し上げたかと思いますが、先方より謝意があったということは事実でございます。高野大使から私にもその旨報告がございました。
 私自身が、こうしたことに先方から感謝の意が表されたということを、もう少し何らかの形で広く国民に私から伝える努力をするべきであったかもしれないという反省もひとつございます。
 いずれにせよ、議員が今おっしゃったように、北朝鮮の意のあるところを国民に知らせるということは大事なことだと思います。向こうが手紙を出せば、それによって知らせることができるかどうかということも、それで十分かどうかということもわかりませんが、いずれにしても外務省として、この種の問題については国民に対して広く広報ができる方法を考えたいと思います。
 なかなかこういう話になると、一般的な広報、マスコミは取り上げない場合が多いものですから、多少苦心が要ると思いますけれども、何か工夫をいたします。
#85
○佐藤道夫君 最初の件ですけれども、日朝会談では大変重要な問題がいっぱい詰まっておるので、この件はなかなか持ち出すいとまがないという話でしたけれども、おかしいですよ、その考えは。
 国民一人の命は全地球よりも重いんだというのは、あなたの大先輩である福田首相が言っておる言葉ですよ。一人の命はそんないろんな交渉事よりもはるかに重いんだということを考えて、しかもこれを持ち出すのに五分か十分あればもう済む話でございましょう。それが忙しくてそういうことは言えないという考え自体が私はおかしいと思います。
 それから、お礼の点につきましては、これはやっぱり事務会談の際に事務当局が、ありがとうよ、うん、わかったわかったと、これで済む話じゃないんです。北朝鮮で一番偉いのはだれか知りませんけれども、その人がはっきりと日本国民全体に通ずるようなお礼の言葉を言うべきだと思うんですよ、その名前でもってね。そのこともきちっと、おたくも礼節の国ならそれぐらいのことはわかっているでしょうと、会談の際に申し入れていいわけですから。何度でもいいと思うんですよ、粘り強くやりたいということ。その言葉自体を受けまして、何回でもそういうことを言ってくださいよ、向こうがわかるまで。お願いいたします。
 それから最後に、これまでもう六回か七回にわたって食糧支援をしておる。しかし、一体どういう効果が上がっているのかさっぱりわからない。毎年毎年シーズンが来ると、困った困ったと言って、何か飢えているような子供の写真が世界じゅうにばらまかれる、一体これは何だろうかと。やっぱり農業政策の根本に基本的な欠陥があるからだろうと私は思うんです。
 ですから、食糧支援をするのも結構ですけれども、その点もやっぱりきちっと議論をして、でき得べくんば専門家チームを結成して、アメリカと共同のチームをつくってもいいと思うんですけれども、北朝鮮に行って克明に検査をして調査をして、これはやっぱりこういう欠陥があるから毎年こういうことになるんだ、この点とこの点は速やかに改善したらどうだというふうなことを指導助言することは、私は基本的に大切なことだと思うんですよ。
 北朝鮮の場合には、主体農法と言って、山のてっぺんまで木を切り落としましてトウモロコシの畑にしちゃった。これは金日成主席の温かい指導によるものだという話が喧伝されておりましたけれども、常識で考えたって山の上まで木を切ってしまえば、一たび雨が降れば大変なことになるわけですから、こんなことはもう農業とも何とも言わないので、今どうなっているかわかりませんけれども、やっぱりそういう欠陥が随所にあるから、毎年毎年同じことを繰り返して、米をくださいよ、我々は困っているんですよという話になってしまう。どうですか。
 ですから、米を支援してもいいけれども、調査団を派遣して、それを受け入れなさい、そして調査団の指導助言に従いなさい、それが条件ですよというふうにすべきだろうと私は思うんですよ。そうでないと、毎年同じことの繰り返しでございましょう。こういうことについて一体外務省は、むしろ農水省なんかの問題でもあろうかと思うんですが、どう考えておるのか。
 特に、すぐれて政治的なお立場である外務大臣にこの問題についての御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#86
○国務大臣(河野洋平君) 食糧不足の現状が一体どういうことからきているか、もう構造的に足らないものなのか、あるいはそれが自然災害によってひどく足らなくなっているものか、あるいは肥料とか農業機械とかいうものを持っていけば自助努力というものがそこで生まれて、その結果、食糧の自給はできるようになるものなのかというようなことについて調査をしたらどうだ、こういう御提言だと思います。
 私は、調査をするということは一つの重要なことだと思います。ただしかし、議員に御理解をいただきたいと思いますことは、現時点で我々が行っております食糧援助、食糧支援というものは緊急人道支援というふうに考えているわけでございまして、根本的、抜本的な支援を行うということを始めるためには、これは私の気持ちでございますけれども、国交も正常化されて、双方がお互いに本当に友好関係が芽生えてきた、そういう段階がいいのではないかという感じがするわけです。
 今は、あくまでも緊急的な人道援助として出すということが現在考えられているわけでございまして、こういう言い方をするとどうも少しせこいなとおっしゃられるかもわかりませんが、やはり国交が正常化された後に抜本的な食糧問題の解決についてしっかりとした技術支援をする、あるいはその他の支援をするということによって自立の方向に進めるような支援がなされるということが適切なのではないかというふうに私は考えておるんですが。
#87
○佐藤道夫君 最後に一つだけ。緊急の人道支援をよく五回も六回も続けてきたものですね。これからもまた恐らく十年二十年続けていくんでしょう。それはそれで結構だと思いますけれども、ばかばかしいと思いませんか。
 以上です。
#88
○委員長(矢野哲朗君) 本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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