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2000/05/09 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第12号
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2000/05/09 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第12号

#1
第147回国会 法務委員会 第12号
平成十二年五月九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     藁科 滿治君     小川 敏夫君
 五月八日
    辞任         補欠選任
     角田 義一君     千葉 景子君
     橋本  敦君     林  紀子君
 五月九日
    辞任         補欠選任
     林  紀子君     橋本  敦君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         風間  昶君
    理 事
                北岡 秀二君
                塩崎 恭久君
                竹村 泰子君
                魚住裕一郎君
                平野 貞夫君
    委 員
                阿部 正俊君
                竹山  裕君
                服部三男雄君
                松田 岩夫君
                吉川 芳男君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                千葉 景子君
                橋本  敦君
                林  紀子君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
       発議者      江田 五月君
       発議者      小川 敏夫君
       発議者      竹村 泰子君
   国務大臣
       法務大臣     臼井日出男君
   政務次官
       法務政務次官   山本 有二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       長        石川 重明君
       警察庁長官官房
       審議官      佐々木俊雄君
       警察庁刑事局長  林  則清君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       厚生省社会・援
       護局長      炭谷  茂君
   参考人
       地下鉄サリン事
       件被害者遺族   高橋シズヱ君
       犯罪被害者家族  山本 忠国君
       テレビドキュメ
       ンタリー・ディ
       レクター     坂上  香君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付
 随する措置に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
○犯罪被害者基本法案(江田五月君外二名発議)

    ─────────────
#2
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨八日、角田義一君及び橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君及び林紀子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(風間昶君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案外二案の審査のため、本日の委員会に地下鉄サリン事件被害者遺族高橋シズヱ君、犯罪被害者家族山本忠国君及びテレビドキュメンタリー・ディレクター坂上香君を、来る五月十一日に中央大学総合政策学部教授宮澤浩一君、弁護士・日本弁護士連合会犯罪被害者対策委員会副委員長高原勝哉君及び武蔵野女子大学人間関係学部教授・精神科医小西聖子君をそれぞれ参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(風間昶君) 次に、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案外二案の審査のため、本日の委員会に警察庁長官官房長石川重明君、警察庁長官官房審議官佐々木俊雄君、警察庁刑事局長林則清君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び厚生省社会・援護局長炭谷茂君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#7
○委員長(風間昶君) 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び犯罪被害者基本法案を一括して議題といたします。
 三案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#8
○北岡秀二君 久々の委員会で質問をさせていただきたいと思います。
 このたびの法案、非常に待望久しい法案でございまして、本当に私もいろんな立場で犯罪ということを考えていったときに、今まで加害者の人権、犯人の人権というのは本当にいろんな意味で議論をされたり、そしてまたいろいろ措置をされたりということで、既にそのあたりの対応というのは、十分と言えるかどうかはわかりませんが、それなりに措置をしてきた。しかし、被害者の人権あるいはいろんな立場での手厚い保護という部分に非常に欠けておるのではないかというような議論も長年あった。
 そういうような状況の中で、今まで十分な対応がとってこられていなかったことに対して、私も大いなる疑問もございましたし、角度は違いますが、少年法のいろいろな議論をやっておるときに、ジャンルは全然違うんですが、少年による犯罪被害者の御両親のいろいろな意味での話を聞く機会がございまして、私も個人的には、被害に遭った方の家族、本人はもとよりでございますが、大変苦しい思いをされているんだなということを改めて再認識させていただいた機会もございました。
 このたびの法案でもそのあたりを十分に、十分と言えるかどうかはわかりませんが、何とか対応しようということで、一応こういう形での法律が上がってきたということは、私は大変喜ばしいことだろうというふうに感じておる次第でございます。
 今回の立法について、基本的な考え方をまず聞いた上で、その後個別具体の内容について質問させていただきたいと思います。
 まず、政府が提出した犯罪被害者保護のための二法案、どのような基本理念に基づき作成したものであるか、総括政務次官にお伺いをいたします。
#9
○政務次官(山本有二君) 犯罪被害者は犯罪によって大きな精神的、財産的被害を受けることが少なくないとともに、事件の処理に関連して種々の負担を負う現状にございます。また、刑事手続が対象としている事件によって直接の被害を受けた者という意味では、事件の当事者であり、多様な面からの配慮が必要でございます。
 刑事手続について申し上げれば、現行の刑事手続において、検察官及び被告人、弁護人を訴訟当事者としていることを前提としつつも、その手続において犯罪被害者の立場が尊重され、その心情、名誉、被害回復あるいは刑事手続における負担の緩和について適正な配慮が図られることは、被害者の心情が刑事司法に適切に反映され、被害者が過度の応報感情に走ることを防ぐ上で有益であるばかりではなく、事件の処理の一層の適正化、ひいては犯人の改善更生に資するとともに、刑事司法に対する国民一般の信頼の確保に寄与することにもなる、そう考えておる次第でございます。
#10
○北岡秀二君 証人尋問の際の証人の付添制度は、証人の著しい不安や緊張を緩和するため、証言の際に適当な者を証人に付き添わせることができるとするものでありますが、これは具体的にはどのような証人に対して行うことを想定したものであるか、また付添人となることができる者はどのような方を考えておるのか、お伺いしたいと思います。
#11
○政府参考人(古田佑紀君) どのような証人が具体的に念頭にあるかあるいは可能性が高いかという点について申し上げますと、例えば強姦罪などの性犯罪の被害者の方あるいは年少者の証人、それから知的障害のある方など、法廷で証人尋問を受ける際に非常に精神的負担を余儀なくされ、著しい不安や緊張を覚える可能性が高い、あるいは現にそういう状態になることが十分予想されるような方ということになろうかと存じます。
 一方、ではどういう方にここで言う付き添いをしていただくかということでございますが、基本的な考え方としては、証人のそばにおりまして証人を見守ること自体によってその証人の方が安心する、あるいは不安や緊張が緩和されるということが期待される方ということになるわけですが、具体的にはそういうことに習熟したと申しますか、十分心得たカウンセラーの方、あるいは証人が年少者のような場合にはその保護者というような方などが想定されるわけでございます。しかし、具体的にどういう方を選ぶかということになりますと、これは裁判所が検察官、弁護人の意見も聞いた上で適切な方を選ぶということになると考えております。
#12
○北岡秀二君 このたびの法律の中には、遮へい措置あるいはビデオリンク方式による証人尋問というような内容もあるわけでございますが、確かに証人が安心して供述するのに有効な方法であると思うわけであります。しかし、他方で被告人の反対尋問権の行使との関係で多少問題があるのではないかという意見も一部にあるわけであります。
 この点について法務省はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
#13
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに御指摘のような懸念あるいは御意見があることも承知しておりますけれども、例えばまず遮へい措置について申し上げますと、これは弁護人の方が審判に立ち会っておられる、証人尋問に立ち会っておられる場合に限るわけでございまして、弁護人との間ではこういう遮へい措置は設けることはないわけでございます。したがいまして、反対尋問等の中心となります弁護人の方につきましては、その面前で証人の供述を見聞きしながら直接尋問するということになっておりまして、一方、被告人につきましても、確かに証人の姿自体は見えないこととはなりますけれども、その尋問あるいはそれに対する証人の答えを終始これも直接聞いていて、後に尋問する機会も与えられるわけでございます。そういうことから考えますと、被告人の反対尋問権が実質的に損なわれるということにはならないと考えております。
 次に、ビデオリンク方式による証人尋問につきましては、これは法廷と証人にいていただく別室にそれぞれテレビカメラとテレビモニターを置いて、リアルタイムでお互いに法廷の状況及び証人の状況がわかる状態で質問をするということでございまして、そういうことからいたしまして、証人の例えば表情とかそういうことも十分把握できるわけでございます。したがいまして、やはりこれも被告人の反対尋問権を実質的に損なうというふうなものではないと考えております。
#14
○北岡秀二君 次に、親告罪であります強姦罪等の性犯罪について、現行の犯人を知った日から六カ月という告訴期間を撤廃することとしておりますが、このような撤廃をしなければならない理由、そしてまた、告訴期間を撤廃すると時効との絡みで事件はいつまでも起訴できるということになるのかどうか、このあたりをちょっとお伺いしたいと思います。
#15
○政府参考人(古田佑紀君) 今回、強姦罪等の性犯罪のうちの親告罪につきまして告訴期間の制限を撤廃いたしましたのは、こういうふうな犯罪の被害者の方は非常に犯罪による精神的ショックが大きい、あるいは犯人との特別な関係があるためになかなか告訴に踏み切れないというふうな事情があるとか、そういう点から問題があるという御指摘もございまして、そういう点を考慮して制限を廃止することにしたいと考えたものでございます。
 ところで、告訴期間が撤廃されたといたしましても、今委員のお言葉の中にもありましたが、公訴時効が一方でございます。したがいまして、その公訴時効の期間が過ぎた後は処罰ができないわけですので、いつまでも起訴ができるということにはならないわけでございます。なお、念のため申し上げますと、強姦罪につきましては公訴時効は七年、強制わいせつ罪は五年ということになっております。
#16
○北岡秀二君 それと、今回の法案には被害者の意見陳述制度が設けられております。刑事手続の中で被害者みずからが意見を述べる場が与えられる、これは非常に結構なことだろうと思うんですが、今までそのあたりに対する要望もあったかと思います。今回、意見陳述制度を設けるとした一番大きな理由はどういうところにおありだったのか、お聞かせをいただきたいと思います。
#17
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、これまでも被害者の方がその事件に対して持っておられるいろんな心情などにつきましては、これは情状証人という形などで裁判所に認識していただくというふうな措置をとってきたわけでございます。
 しかしながら、何と申しましても、証人という形になりますとあくまでもいわば訴訟手続の客体というふうな状態でございまして、やはり被害者あるいはその遺族の方の中からは、みずから直接裁判所に聞いていただきたいという気持ちを持っておられる方も少なくないわけでございます。したがいまして、そういう方たちについて、みずからが、証人ということではなくて、被害者という立場で直接に裁判所に自分の心情等を訴える機会というものをつくることが適当と考えたものでございます。
#18
○北岡秀二君 さらに第三条で、被害者に公判記録の閲覧等を認めるとしております。このことについて、閲覧そしてまた写しをとらせていただけるということに関連して、プライバシーの保護という関連でまたいろいろ問題が出てくるであろうかと思うわけでございますが、このあたりの防止策をどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
#19
○政府参考人(古田佑紀君) 委員御指摘のとおり、やはりいろんな方のプライバシー等に係る問題を含む記録などが刑事裁判のときには特に多いことが考えられるわけでございます。したがいまして、こういうようなものにつきましてはおっしゃるとおり大変慎重な配慮が必要であろうと考えているわけでございますが、そういうふうなプライバシー侵害のおそれなど種々の要素を裁判所の方で適切に御判断いただいて、閲覧、謄写をどの範囲で認めるかということの御判断をいただくということを考えている次第でございます。
 特にプライバシー等につきましては、被害者等からの閲覧の理由など勘案いたしまして、そういうふうな部分について、特に積極的にどうしても必要だというふうなことがない場合にはその部分はお見せしないというような形での措置もとれるわけでございます。また一方、閲覧をすることになりました被害者等の方につきましても、これは一種の訓示規定ではございますけれども、そういうことで知り得たいろんな情報を正当な理由がない形で利用してはならないということで、そこら辺についての配慮をお願いすることにしております。
#20
○北岡秀二君 次に、第四条の「民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解」とはどのような制度なのか、この制度によって被害者はどんなメリットを受けるのか、お教えをいただきたいと思います。
#21
○政府参考人(古田佑紀君) 実務上、刑事訴訟あるいは刑事手続一般でございますが、その過程で被告人と被害者あるいはその遺族の方との間で損害賠償等につきまして示談が成立するということはよくあることでございます。しかしながら、この示談書があるというだけでは、仮に後にそれに従った履行がなされない場合にはそれ自体で強制執行という手続はとれず、改めて民事訴訟を起こす必要があるわけでございます。
 そこで、示談書に記載されているいろんな、例えば金銭の支払い等の条項が後に履行されないような事態が生じた場合に、改めて民事訴訟を起こさないでも強制執行ができるようにして被害者の方々の損害回復に役立たせるということがこの制度の目的とメリットということになるわけでございます。
#22
○北岡秀二君 このたびの法案をつくるに当たりまして、法務省はパブリックコメントを取り上げ、またいろんな角度から検討しようという取り組みがなされました。そのパブリックコメントにも入っておりましたし、そしてまた、なおかつ法制審議会の諮問事項にも盛り込まれておったことなんですが、没収、追徴を利用した被害回復制度というのがあったかと思うんですが、この点の法整備が今回の法案に盛り込まれなかったその理由はどういうところにあるのか、お伺いをしたいと思います。
#23
○政府参考人(古田佑紀君) 委員御指摘のとおり、財産犯につきまして、財産犯で得た利益またはそれを売ったりして得た利益などにつきまして、これを没収のために保全するという制度を設け、そしてその保全された財産を被害の回復に充てるという考えを法制審議会に対して諮問いたしたことは事実でございます。
 この点につきましては、法制審議会の刑事法部会で種々の角度から詳しい議論がなされたわけでございますが、この制度につきましては、まず、日本では没収のための保全という制度が必ずしもこれまで存在しない、組織犯罪対策法あるいは数年前の麻薬特例法で初めて創設された制度でございます。したがいまして、まだこの制度の運用に慣熟しているとも言えない面がありますために、その没収保全あるいは追徴保全の制度の運用状況をさらに見守った上で検討していくことが適当ではないかというような御意見。
 あるいは、今回の諮問に係る没収保全等を利用した被害回復制度が財産犯でございまして、一方で身体犯の方の場合にはどう考えるべきなのかというふうな問題も考慮しなければならないこと。
 さらには、この没収、追徴制度を利用することといたしますと、多数の被害者の方がいらっしゃる場合に、刑事裁判の目的からして、起訴の対象となった事件の方とあるいは不起訴処分になった方というのがどうしても出てくるわけでございますが、そういう方たちとの間での不均衡が生ずるというふうな問題があるのではないか、そういう点が懸念されるので、さらにそういう点も含めましてより広い角度から検討した上で結論を出すことが適当であるという御意見が大勢を占めたわけでございます。
 そのような理由から、今回の法案にはこの制度については盛り込まなかったわけでございますが、いずれにいたしましても、この点につきましては引き続き事務当局において検討をして、適切な方策を考えるということで現在検討を続けているところでございます。
#24
○北岡秀二君 大臣にお伺いしたいと思うんですが、犯罪被害者保護の問題には今回の法案以外にもいろんな問題があるだろうと思います。私が政務次官をやっておったときにも法務省でいろいろ議論させていただいたんですが、事件として成立していらっしゃる状況の中での被害者に対する保護、これもいろいろ問題があろうかと思いますが、特に訴え出るにも訴え出られない水面下に隠れた犯罪の被害者というのもたくさんある。
 そういう状況の中で、できるだけ訴えやすいような制度もつくってあげなきゃならぬだろうし、そしてまた、なおかつ我々の身の回りということを考えてみますと、私も地方議会を経験しておる中で、恐喝に絡む問題、そしてまたいろんな部分で社会的に表に出すと非常に違う角度での社会的な制裁が出てくるがゆえに事件にできないというような事件もたくさんある。
 これも広い角度で物を考えてみますときに、犯罪被害者、事件としては成立していませんから正確には被害者ということで言えないのかもわかりませんが、実質上の被害者となるだろうと思うんですが、私はいろんな角度で考えてみますときに、そういう方々にもある程度スポットを当ててあげたいな、そしてまたできるだけそういう部分の水面下に隠れた事件も何とか解決したいなというような話もしたことがございます。
 これは今私が申し上げたことのみならず、事件として成立されておる部分の犯罪被害者というのも本当にいろんな部分で困っておることがございます。そういう観点から申し上げると、今後とも政府としてあるいは法務省としても実効性のある具体的な施策に真摯に取り組んでいただきたいと私は痛切に感じる次第でございます。
 この点について、今後の法務大臣の取り組みの姿勢というのを統括してお聞きしたいと思いますが、どうでしょうか。
#25
○国務大臣(臼井日出男君) 今、委員御指摘をいただきましたとおり、犯罪被害者対策の問題に関しましては検討すべき点というものが多々あるというふうに認識をいたしておりまして、今回の法案はその中で刑事手続に関連して特に早急に手当てが必要なものにつきまして法整備を行うものでございます。
 法務省といたしましては、今後、今回の法整備に盛り込みました点以外の点につきましても今後とも検討を行ってまいりまして、議論が熟したものから適切に対処してまいりたいと考えております。
#26
○北岡秀二君 前段に申し上げましたとおり、加害者の問題については長年いろんな意味で措置がされていらっしゃる、そしてまた被害者の部分については私はこれからだろうと思いますので、そのあたり相当な意気込みで今後取り組んでいただきたいなと思う次第でございます。
 それでは次に、民主党の提案の法案について二点ほどお伺いさせていただきたいと思います。
 このたび、民主党が犯罪被害者基本法案を取りまとめられたことについては敬意を表したいと思うわけでございます。法律をつくるという観点から申し上げますと、いろんな角度から慎重に検討しなければならないところがたくさんあるだろうと思うんです。
 この民主党案の中で、犯罪の被害者といっても、通り魔による犯罪被害者から始まって、時と場合によったらやくざの抗争事件によってそれに巻き込まれる、そのやくざ自身が巻き込まれる被害者というのもあろうかと思うんです。そのあたり、犯罪被害者であれば一律に扱われるということになるのかどうか、お伺いしたいと思います。
#27
○小川敏夫君 私どもの法案提出に御評価いただきましたこと、大変感謝いたしております。
 確かに、委員御指摘のように、事件によっては加害者よりも被害者の方が悪いのではないかというようなケースもこれは決して珍しくはないことでございます。この私どもの法案の趣旨をまず理念とそれから具体的な適用というふうに二段階に分けて説明させていただきます。
 まず理念の方でございますが、一言で言いますと、犯罪を犯した加害者あるいは被疑者、被告人に対しては手厚い人権の配慮があるのに、一方、被害者という場面におけるそうしたさまざまな保護の観点の配慮が欠けていたのではないか。そういう観点から、加害者にすら人権の配慮があるのに被害者に保護がないというのはおかしいのではないかということで、やはり被害者に対する保護、配慮をすべきであるという理念でございます。
 それから、実際の具体的な適用に当たりましては、そのような非常に悪質な被害者もあるいは全く落ち度がない本当に保護に十分に値する被害者も全く均一に扱おうというのではなくて、やはり具体的な適用の段階に当たってはその事件のさまざまな事情をしんしゃくしてその事情に応じた保護を行うというようなことを考えております。
#28
○北岡秀二君 それと、もう一点、審議会について、基本法の第十八条に犯罪被害者等支援対策審議会を設置することとしておるわけでございますが、御承知のとおり、今の行革の流れの中で、審議会はできるだけ取りやめにしようというような流れが一方にあるわけでございます。このような状況、行政の背景の中で、あえて審議会を設置するという部分、どういう思いでこの条項を書き込まれたのかお伺いをいたしまして、私からの質問は終わらせていただきたいと思います。
#29
○小川敏夫君 確かに委員御指摘のとおり、行革の必要性あるいはいたずらな審議会の設置というものは避けるべきであるということはまことに御指摘のとおりでございます。
 ただ、この答申では、可能な限り意見提出手続の活用あるいは公聴会や聴聞の活用、関係団体の意見の聴取等によることというものがございますが、私どもとしては、そのようなことはもちろん活用すべきでありますが、やはり審議会というものを設けて常時そのような国民の意見を反映できる、そうした機関的なものを設ける必要があるのではないかという観点から審議会というものを設けました。
 いたずらな審議会というものは不要である、設けるべきでないと思っておりますが、私どもは、そうした観点から審議会を設置する必要がこの場合においてはあるのではないかというふうに考えた次第でございます。
#30
○千葉景子君 民主党の千葉景子でございます。
 きょうは、政府からの法案とそして議員が立法いたしました法案とが並行して議論をされ、いろいろな角度から犯罪被害者の救済について議論をされるということに私も大変有意義なことだということを感じているところでございます。ぜひよりよき成果が上がりますように、心から私も期待をさせていただきたいと思います。
 さてそこで、まず基本法の提案者の方にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、今回、政府の方では幾つかの個別の救済策というものの提起をいただきました。それに対して、基本法という形で法案をまとめた、個別施策の積み上げというだけではなくて基本法というもので取りまとめた意味というのはどういうところにあるのでしょうか。その基本法の必要性というところをまず提案者の方でお考えを御説明いただければと思います。
#31
○竹村泰子君 犯罪被害者がこれまで大変悲惨な状況に置かれてきたことにつきましては、本委員会共通の認識であるというふうに思います。確かに、警察庁、法務省でそれぞれの対策が積み重ねられ、それなりの評価もできます。しかしながら、現実は真の解決にはほど遠いものがございました。犯罪被害者が少なくとも加害者と同等の権利保障を得るためには、まず犯罪被害者の権利の提起と被害者対策の基本理念を明らかにする必要がございます。
 私たちは、憲法十三条の個人の尊厳、憲法二十五条の生存権の保障等の規定に基づきまして、国及び地方公共団体が犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務を有することを明らかにするため、この法案の第二条で「犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、被害の状況等に応じた適切な処遇を保障される権利を有するものとする。」と規定し、さらに第二項で「何人も、犯罪被害者等の名誉及び生活の平穏を害してはならない」とし、いわゆるプライバシーの尊重を規定いたしました。
 ちょっと長くなって恐縮ですが、第二に、個別の施策ではしょせん継ぎはぎの取り組みしかできませんし、計画的、総合的な取り組みにはならないと思います。個別省庁の縦割りの対策では限界があると言わざるを得ません。この法案に基づく犯罪被害者等支援基本計画のもと、経済的側面、精神的側面、刑事法的側面、いずれも統一的な対策が必要であるというふうに思います。
 三番目に、犯罪被害者の支援は国際的な要請でありますということです。国連被害者人権宣言に基づき、既に欧米を中心とする多くの国々では被害者の権利を確立し、法整備を進めるとともに、民間の被害者支援機関が組織され、国と社会を挙げて総合的な対策を進めております。
 そういった観点から、私どもはぜひ基本法が必要であるということで判断をいたしました。
#32
○千葉景子君 今御説明をいただきましたように、犯罪被害者のこれからの支援ということを考えますと、基本的には計画的、総合的に網羅をしていく必要が私もあろうかというふうに思います。そういう意味では、それを指し示す基本理念のようなものをまずきちっと定めて、その上で個々の施策を一つ一つ積み重ねていくという手順が必要なのではないかというふうに私も思います。
 そこで、政府の方にお尋ねをさせていただきますけれども、こういう基本法の制定ということについてはどうお考えになっておられるでしょうか。今説明がありましたような、やっぱりまず基本的な理念のようなものをきちっとしておくことが必要なのではないかという気がいたしますけれども、いかがでしょう。
 それと同時に、民主党の方でこのような基本法を提案したということについて政府としてはどういうふうな評価をお持ちであるのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。
#33
○国務大臣(臼井日出男君) 犯罪被害者保護の問題につきましては、多岐の分野における種々の施策が必要でございます。私どもといたしましては、まずもって個別具体的な施策を講じることによって対応することが肝要である、このように考えているところでございます。
 政府におきましては、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置いたしまして既に一定の施策を講じておりまして、今後さらに行うべき施策を検討しているところでございます。
 基本法の必要性につきましては、こうした種々の個々具体的な施策を講じていく中で総合的な見地から検討するのが適当である、このように考えておりまして、またその内容につきましても、被疑者、被告人の防御、その他の刑事司法制度の適正な運用に与える影響など、種々の観点からの慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
 次に、その評価でございますが、民主党所属の議員提出に係る犯罪被害者基本法案につきまして法務大臣としての所見を述べることというのは差し控えさせていただきたいと思いますが、あえて申し上げるとするならば、犯罪被害者保護の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まずもって個別具体的な施策を着実に実行していくことによって対応することが肝要である、このように考えており、犯罪被害者のための基本法といった立法手当てを検討することは意義あることであるとは考えておりますものの、被疑者、被告人の防御、その他の刑事司法制度の適正な運用に与える影響など、種々の観点からの検討が必要である、このように考えております。
#34
○千葉景子君 大臣も基本法について論ずるということは意義あることだという御認識はお持ちのようでございます。ぜひそういう基本的な理念のようなものを念頭に置きながらいろいろな施策を積み重ねていただきたいものだというふうに感ずるところでございます。
 さて、今、大臣の方からもお話がございました。一方で被疑者、被告人の権利というようなことも忘れてはならないというお話でもございました。私もそのとおりであろうと思います。
 そこで、基本法の提案者の方にお尋ねをいたしますけれども、この基本法を読んでみますと、例えば被害者についての刑事手続に関する適切な取り扱い、十一条ですけれども、こういう規定もございます。そういうことを考えますと、現行の刑事司法手続の構造に今回の被害者の保護ということを加えることによって何か変更があるのかなということも感ぜられるところもあるんですけれども、しかし、被疑者、被告人の権利というのは憲法上保障されるものでもあり、現行の刑事司法手続の構造というものもきちっと確保していくということも一方必要であろうというふうに思っております。
 そこで、現行の刑事司法手続との関係については、この基本法というものはどういうふうに位置づけておられるのでしょうか。その点について、被疑者、被告人の権利の保障という観点も含めてお答えをいただきたいというふうに思います。
#35
○小川敏夫君 まず、結論から先に申し上げさせていただきますと、現行の刑事司法手続の構造には全く変更を加えるものではございません。そうした被告人の基本的人権を重視した今の刑事訴訟手続とそれから被害者保護の精神というものは、これは矛盾しない、すなわち両立するものだと考えております。
 本法案は基本法でございますので、国の施策の方向性を示したものでございます。したがいまして、本法案の規定によって直ちに具体的な施策の実施を義務づけているものではなくて、具体的な施策につきましては、本法案の規定を受けて改めて個別法を制定する必要があるものであります。したがいまして、第十一条の規定によって現行の刑事司法手続構造に直接何らかの変更を加えることにはなりません。
 ただ、現行刑事訴訟法等は、本条が規定する犯罪被害者等の権利という観点から改正の必要性が検討されるべきであると考えておりますし、政府提案の刑事訴訟法の一部改正等についても、そのような位置づけにおいて評価すべき改正であると考えております。
 被疑者、被告人の権利については、憲法上も適正手続保障に関する第三十一条等の諸規定において定められているところでありまして、それらの権利が不当に制限されることがあってはならないことは当然でございます。
 本法案は、長い間精神的にも経済的にも苦しい立場に置かれてきた犯罪被害者等の悲惨とも言える現状を踏まえ、特に犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰、すなわち犯罪被害者等の人権の回復を図ることを目的としたものであります。したがいまして、そのことと被疑者、被告人の権利の保障というものは、冒頭にも述べましたとおり両立するものであると考えております。
#36
○千葉景子君 次に、やはり基本法の提案者にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、犯罪被害者の救済というのは、やはり国民こぞって、あるいは社会全体としてこれから考えていくべきものであろうというふうに私は思います。この法案の中にも「国民の責務」ということが規定をされております。これはどういうことを意味する、どういう趣旨で盛り込まれたものでしょうか。その点についてのお答えをお願いいたします。
#37
○小川敏夫君 この点につきましても、本法案は基本法でございまして、この法律によって、そしてまたこの条項によって直ちに国民に具体的な義務というものを課しているものではございません。そういう意味におきまして、これはいわゆる努力規定でございます。これまでも、悲惨とも言われる犯罪被害者等の置かれた特異な状況にかんがみて、犯罪被害者等の受けた被害の回復と社会復帰の支援には国民の理解と協力が不可欠であるということを国民の一人一人が自覚するということを特に国民に対して訴えかける意味を持つものでございます。
 また、昨今、マスコミ等によりまして犯罪被害者への取材攻勢といったいわゆる二次被害などの問題が深刻化しております。こうした事態に対処するためにも、やはり国民のそうした自覚というものは不可欠であるということでございます。こうした場合、国民は犯罪被害者等のプライバシーの保護が図られるよう、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の名誉及び生活の平和を害さないように努めなければならないというその精神を示したものでございます。
#38
○千葉景子君 よくわかりました。
 直接義務を課すという規定ではないけれども、やはり犯罪被害者の救済ということを国民がこぞって考えていくべきだという精神がここにも盛り込まれているものだというふうに私も受けとめさせていただきたいというふうに思います。
 次に、法案の中に基本的施策というものをつくりなさいということになっておりますが、それに関しましてお尋ねをいたしますが、その中に「民間の団体に対する支援」ということが盛り込まれております。犯罪被害者の支援あるいは救援ということについて民間の果たすべき役割というものは私もこれまでもそれから今後も大変重要なポイントがあるのではないかというふうに思います。
 そこで、提案者としては、被害者救済における民間の活動をどのように評価なさっているか、そして今後どんなことを期待され、こういう規定がつくられているのかということが一点。それから、民間の団体に対する支援というのは具体的にはどのようなことを念頭に置いてこういう規定をつくられているのか。その二点についてお答えをいただきたいと思います。
#39
○小川敏夫君 犯罪被害者の問題につきましては、まず第一にやはり直接その犯罪を取り扱う警察あるいは裁判機関、そうしたところが適切に対処するということが最も重要な責務であると思いますが、しかし一方で、やはりこれまでの被害者の救済に接してきました民間団体、さまざまな民間団体がございます。あるいは日弁連が行う各不法行為の被害者救済の法律相談も、これは広い意味ではやはり民間の被害者救済団体であると思いますし、あるいは交通遺児のあしなが基金といったようなものもやはり広い意味では被害者救済の一つの団体であると思います。あるいはドメスティック・バイオレンスにおけるシェルターなどもやはりそういったものであると思います。今現在でも多岐にわたりまして非常に多くの民間団体というものがそうした被害者の救済に実際に当たっているというのが実情でございます。
 また、そうした実情を見ますと、どうしてもやはり警察や裁判所だけでは手の届かないようなきめ細かい配慮というもの、あるいは本当に被害者の立場に立った対応ができるというのはやはり民間団体の方がまさっているのではないかというような現状を認識しております。
 そうした認識に立てば、やはりそうした実際の被害者の立場に立った、あるいは被害者と接するそうした民間団体の意見あるいは経験を生かした施策を講じるという意味におきましては、やはりさまざまな民間のそうした団体の意見を取り上げ、あるいはそうした助力を得るということが必要であるという観点に立ったことでございます。
#40
○千葉景子君 次に、やはり基本的施策ということに関して、「関係者に対する訓練及び啓発」ということがうたわれております。私も、この間の現状等を考えますと、やはり関係者に対する訓練及び啓発というのは非常にこれから不可欠なことではないかというふうに思っています。
 その意味で、特に言われているのが二次被害、三次被害、あるいは性犯罪などだとセカンドレイプと言われているような状況がむしろ関係者の心ないさまざまな対応によって起こされているということもございます。そういう意味では、関係者に対する訓練、啓発ということは大変重要だというふうに思いますけれども、その辺の認識についてはどのようにお考えでしょうか。
#41
○小川敏夫君 まさに関係者、特に具体的にはやはり直接事件を担当する警察あるいは裁判所が最も重要な対象だと思いますが、やはりこうした被害者の保護という観点に対する認識というものは非常にそういう機関にこそ重要視して持っていただかねばならないと考えております。
 私も弁護士をしていた経験からしますと、どうも捜査関係あるいは裁判所も含めて、被害者というのは犯罪を立証する一つの証拠物というような観点で見ているのではないかと。被害者は生身の人間で、被害に遭って本当に保護を必要としている一人の人間なんだという観点が欠けていたんではないかというような気持ちを本当に強く抱いたこともございます。
 そうした意味におきまして、例えば警察では被疑者の取り調べ室と被害者の事情聴取室が全く同じ場所であるとかということも考えますと、やはりこれまでそうした被害者保護の認識に欠けていたんではないかという思いを本当に強く感じております。特に、最近でも埼玉や愛知で警察の対応が大きな問題となるようなストーカー事件もございました。そうしたことも踏まえると、本当に関係機関には被害者の保護の観点に立った啓発行為、あるいは具体的にどのような対応をするかの訓練というものを徹底してもらいたいと思っております。
 今回の政府案の提出によりましても、一部そうした点におきまして前進がありますので大変評価できると思いますが、関係機関、先ほども言いましたように民間の支援組織というものの持っている経験と知識等も生かしまして、より訓練や啓発に努めていただきたいというふうに考えております。
#42
○千葉景子君 今お聞きしておりまして、やはり犯罪被害者に対する対応というのが、この基本法でうたわれておりますように一人一人の被害者の人権、そういうものに立脚をして、そして一つ一つ方向性やあるいは施策を講じていく、こういう総合的な観点が貫かれているのではないかというふうに私も感じます。政府案からも幾つかの本当に改善策が提案をされておりますけれども、やはりこういう総合的組織、それから一つの理念に基づいたこれからも取り組みというのが期待されるのではないかと改めて感ずるところでございます。
 そこで、提案者の方にもう一点お聞きをさせていただきますけれども、先ほどもちょっとお触れがありました審議会の問題でございます。
 やはりこの犯罪被害者の保護ということを総合的に考えるとすれば、縦割りのやり方というのは防がなければいけない。やっぱり総合的にどこかで施策を検討し、あるいは講じていくということが必要になっていくのだろうというふうに思います。この案では審議会を総理府に設置するということになっておりますけれども、この総理府に設置をしようという意図、これはどういうところにあるのでしょうか。
#43
○小川敏夫君 今、委員からも御指摘がありましたように、縦割り行政等ありまして、違う役所がそれぞれの役所の中で対策を講じていると。その結果、総合的にはうまく連携ができていないということから、被害者保護の観点の施策に十分でないという結果が生ずることが十分考えられることでございます。
 そうした観点から、いわゆる各省庁に点在しておりますそうした対策を総理府にまとめまして、被害者の保護という観点に立った施策を統一的に総合的に行って被害者の保護の施策に抜かりがないような手だてを講じたいという観点から総理府に設置するということにしたものでございます。
#44
○千葉景子君 私もぜひこれは政府の方でも今後被害者に対するさまざまな施策を法務省は当然のことながら政府全体として取り組めるような体制を期待するところでございます。
 ありがとうございました。
 それでは、政府側の方に何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。
 先ほども北岡委員の方からも御質問がありまして、今回の対策の一つとして経済的な支援の面がいささか欠けているのではないか、薄いのではないかという感じがいたします。被害者回復に資するための没収、追徴制度を活用する、これについては今回の導入が見送られました。それについては先ほど御説明をいただいたことでもございますので一定の理解はさせていただくところでございます。
 今後、やはり経済的に困窮するという被害者の皆さんも大変多い、こういう点についてどんなお取り組みをされていかれるのか、そんな方向性、そういう点についてどんなお考えをお持ちなのか、まず大臣にお聞きをさせていただきたいと思います。
#45
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま委員御指摘をいただきましたとおり、犯罪の被害者のこうむった被害の回復というのは大変重要な問題であると考えております。今後とも、犯罪収益を利用した被害者回復制度の検討というものも含めまして、より広い視野から被害者回復のため実効性のある諸方策について検討を進めてまいりたい、このように考えております。
#46
○千葉景子君 ぜひその点について引き続き御検討をお願いしたいと思うんですが、実は従来からの犯給法による見舞金の支給という制度がございます。これによって一定の経済的な支援というのがされているんですけれども、これは見舞金という位置づけという制度的な限界もあろうかというふうに思います。大体これまでの例で考えますと、一九八一年から一九九六年の十六年間で年間平均二百人強受けている、人数が。支給額が平均すると二百三十万円程度だということになります。これまでも最高でも千二百万程度ということでございますし、総額でも、先ほどのあれからほぼ計算していきますと、年間で五億程度と、非常にそういう意味では微々たる額でございます。
 そういう意味では、まだ経済的な支援についての法制度が確立をしていないという中ではこの犯給法による支給ということについてもさらなる充実なども検討する必要があるのではないか。適用範囲をできるだけ拡大するとか、金額についても、見舞金とはいいながらももう少し額を引き上げるなどの必要性もあるのではないかというふうに思いますけれども、これは警察庁の担当分野ということになろうかと思いますが、その点についてはいかがなものでしょうか。
#47
○政府参考人(石川重明君) 現行の犯罪被害給付制度につきまして、支給対象の拡大あるいは給付金額の引き上げを求める切実な御意見があるということについては私どもも承知をしておるわけでございます。
 委員御案内のように、犯罪被害給付制度は、昭和五十六年に施行された法律に基づきまして、不慮の犯罪被害に遭われ死亡なさった方の御遺族あるいは重い障害が残った方に対して社会連帯共助の精神にのっとって国が見舞金的性格の給付金として支給を行うということでございます。これまで犯罪被害者等給付金の額につきましては、他の公的給付との均衡あるいは物価水準の上昇等をしんしゃくいたしまして、昭和五十七年、六十二年、平成六年の三回にわたって引き上げを行ってまいったところでございます。また、支給対象となる重障害の範囲につきましても平成九年に拡大をするなど所要の見直しを行ってきたわけでございます。
 今後、被害者の方々に対してどのような支援をしていくかということについてでございますけれども、被害者のニーズというものは非常に多岐にわたっていることでございますので、社会全体の問題として議論をしていく必要があると考えておるわけでございますが、現在、給付金の問題につきましては、警察庁におきまして被害者支援先進諸国におきます犯罪被害者に対する経済的支援制度の性格あるいは他の公的給付との関係といったような被害者対策に資するための総合的な調査研究を実施しているところでございまして、これらの調査の結果あるいは現在の被害者のニーズといったものを踏まえながら、犯罪被害者給付制度の拡充を含めまして被害者支援策のあり方について積極的に検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#48
○千葉景子君 ぜひ今後、犯給制度だけではない形で経済的支援をどうしていくのか、こういうことと相まって犯給制度の方の充実なども検討いただきたいというふうに思います。
 次に、犯罪被害者の中でも大変精神的にもいろいろなダメージを受けている被害者として、性犯罪の被害者について大変憂慮をされている部分がございます。これまでの統計などによりますと、性犯罪の被害者というのは捜査機関になかなか届け出ない。そういう意味では被害自体が顕在化してこないという部分もあろうというふうに思うんです。被害を受けても一割未満ではないかと言われております、届け出てくるのが。こうなりますと、やはり被害者の十分なサポートといってもなかなか難しいということになります。
 なぜこういうことになるのか。これにはいろいろな理由があると思うんですけれども、先ほど捜査機関等関係者の教育、啓発などの問題も指摘をさせていただきましたけれども、やはりよく言われるように二次、三次被害、セカンドレイプと言われるようないわれなき中傷のようなものにさらされるのではないか、こういうようなこともあろうかというふうに思いますし、あるいは個人情報、プライバシーが何らかの形で漏れていくのではないか、こういうおそれ、こういうことも含めてなかなか届け出る方も少ないという実態ではないかというふうに思います。
 そういう意味では、性犯罪には限らないんですけれども、特にこういう問題については改めて捜査関係者の教育等が十分になされることが必要ではないか。この間のいろいろな捜査機関の対応などを考えましても、いろいろ努力はなさっているかと思いますけれども、まだまだいわれない対応をされているという部分が見受けられるわけでございまして、こういう点についてどう警察庁の方でもお考えになっておられるのか。
 また、個人情報をやはりむやみに出さないということも大変重要なことではないか。外国などで性犯罪の被害者の個人情報は公開をしないというような原則も打ち立てているところもあるわけですし、こういう点についてどうお考えになっておられるのか、その対策あるいは今後の対応の御決意のようなものをお聞かせいただきたいと思います。
#49
○政府参考人(林則清君) お答えいたします。
 問題が非常に多岐にわたっておりますが、まず最初に申されました二次被害の防止ということにつきましては、例えば女性警察官を拡充して被害者の方に当たらせるとか、先ほどもちょっと話が出ました調べ室で調べるのではなくて、専用の被害者用の事情聴取の部屋を整備するとか、あるいは犯行現場を再現するときには御本人を傷つけないようにダミー人形を使ってやるとか、その他もろもろ二次被害の防止ということについては努めております。
 それから、安心して訴えができるということにつきましても、なるべくそういった専門の相談の窓口というものをさらに拡充していこうということを考えております。
 それからまたプライバシーの関係、これが非常に大きな問題だと思いますけれども、事件であっても公表する場合に、被害者のプライバシーが侵害されることがないということについては被害者の住所、氏名の個人情報というものを公表しないということで徹底してまいりたいというふうに考えております。
 それからまた教育の点でございますが、現在も全国レベルにおける専門のそういう犯罪被害者に対する対応の仕方を、全国的な教育を中央へ集めましてやっておりますし、また県レベルではそれに当たる者専門の非常に詳細なといいますか、場面場面に応じた具体的な教育を現在も行っておりますが、さらにこれを拡充して行ってまいりたい、かように考えております。
#50
○千葉景子君 これまで、とかく犯罪被害者について、一般的にも被害者の方もどうも何か落ち度があって悪いんじゃないか、何か自分から原因をつくっているんじゃないかというような見方がされたり、性犯罪の被害者などですといわれなき、本当に被害者の方がむしろ誘い込んだんではないかとか、あるいは声も上げずに黙っていたのはおかしいんじゃないかとか、いろいろなやはりいわれなき中傷などがされてきたということもあります。
 こういう意味では、この問題は決して捜査機関ばかりではなくて、先ほどありましたように国民の責務ということではありませんけれども、全体がやっぱり人間として、そして人権に優しい、そういう対応をとっていくということが必要であろうというふうに思いますけれども、やはりその一番端緒になる捜査機関の対応というのは非常に重要であろうというふうに思います。より一層の教育あるいは体制の整備というものを求めておきたいというふうに思います。
 時間がもうありませんので、一点ちょっとお聞きをしたいと思います。
 今回、被害者等による意見陳述権というのが盛り込まれました。これにはいろいろな私は微妙な問題があろうかというふうに感じております。それがゆえに、この意見陳述に対して質問をできるという規定が盛り込まれたり、あるいは証拠としないということが明記をされたり、これはやはり一方で事実関係の確定ということにもかかわる部分があるし、それから一方では被害者の心情をきちっと明らかにするという側面、さまざまが絡み合っていく問題であろうというふうに思っております。
 ただ、下手をすると、これまでやっぱり被疑者、被告人の権利というものもきちっと確立をされて、単なる応報的な裁判ではなくて、やはり矯正あるいは立ち直り、こういうことも考えてきた裁判を逆行させるようなことになっても困るわけです。実質的に被害者が陳述をすることによって応報化とかあるいは重罰化、心証をそういう方向に持っていくというようなことになってもこれは問題を残すというふうに思いますけれども、その点については、大臣、どうでしょうか。そういう問題点、懸念というものは払拭をされるものでしょうか。
#51
○政務次官(山本有二君) この被害者の意見陳述と申しますのは、従来の手続の客体としての被害者という意味ではなくて、積極的に主体として刑事手続に参加してもらうという趣旨が根本であろうかというように思います。ただ、そのことによって裁判官の心証に著しい影響があるとかあるいは事実関係に影響があるという先生の御懸念、これはもっともでございますし、それをきっちりと法の中でうたい込んで、みじんもそういうような懸念のないようにしておるつもりでございます。
 ただ、先生がおっしゃるように、余りにも今度情緒的に流れ過ぎないようにという御指摘は大変意味ある御指摘でございますので、今後、運用において是正あるいは監督していただきたいというように考えるところでございます。
#52
○千葉景子君 時間になりました。ありがとうございました。
#53
○魚住裕一郎君 公明党・改革クラブの魚住裕一郎でございます。
 かつて弁護士をやっていたときに、被害者という場合は刑事手続においていかにして公判期日までに示談をかち取るかみたいな部分が最大の関心事だったわけでございまして、そういう意味では弁護活動をやりながら確かに、今客体というような表現が政務次官からありましたけれども、そんな気持ちがします。そういう状況の中でも、やはり被害者の保護、救済ということが本当に国連でも取り上げられ、大きな社会のうねりとして刑事司法制度の信頼を維持するためにも必要である、そういう観点から私も発想するところでございます。そういう意味から、今回の政府の二法案、そしてまた民主党が御苦労されましたこの基本法、まことに敬意を表する次第であります。
 まず、大きな法案、基本法案から御質問をさせていただきたいと思うわけであります。
 いろいろ勉強させていただきました。政府の法案提出に当たりまして、去年の夏ですか、いわゆるパブリックコメントというものをやりましていろんな意見をいただいたというような手続をとったことを承知しているところでございますが、民主党のこの犯罪被害者基本法案、このおつくりになる段階で、いわゆる国民一般の皆さんの意見聴取というような形はどのような形でとられたんでしょうか。
#54
○竹村泰子君 国民の意見を聴取したのかという御質問ですけれども、この法制化につきましては、昨年来、党内にプロジェクトチームを設置しておりまして、さまざまな立場からの御意見を伺ってきたところです。
 どのような方からの御意見を伺いましたかと申しますと、日弁連犯罪被害者対策委員会高原勝哉氏、朝日新聞記者の河原理子氏、諸澤英道常磐大学学長、全国交通事故遺族の会会長井手渉氏、犯罪被害者の会の会長岡村勲氏、全国被害者支援ネットワークの代表山上皓氏などの方々でございます。
 意見交換をする中で犯罪被害者基本法を制定する必要性を痛感いたしまして、本法案の立案に至った次第です。
 また、今、魚住議員の御指摘にありましたように、原案ができました時点で民主党のホームページにも掲載するなどをいたしまして意見募集を行いました。寄せられました意見を参考にしながら、最終案を得たことを御報告申し上げます。
#55
○魚住裕一郎君 もちろん基本法案ですから、基本理念といいますか、そういう方向性、どういう方向で犯罪被害者を救済していくかということを掲げるわけですが、もちろん多岐にわたる分野にかかわるわけであります。
 立案するに当たって、議員立法ということでございますけれども、与野党を問わず各政党間における話し合いとかをされたのかどうか。あるいは、政府当局においてもかなり深く広く突っ込んだ議論をしているわけでございまして、政府当局に対するヒアリングというのはどの程度なさったんでしょうか。今の御答弁だとそこまではされていないように聞こえたんですが、いかがでしょうか。
#56
○竹村泰子君 魚住議員御存じのとおり、議員立法を提出いたします経過、段階ではいろんな方法がございますし、与野党で協議をして、そしてみんなで議員立法を出すこともございますし、また意見の調整がつかない場合には単独で出すこともございますことは御存じのとおりです。
 今回、この法案に関しましては、時間的なこともありまして、これだけのヒアリングを重ねてまいりました結果、与野党ともに協議ということの経過には至っておりません。そういったことで、民主党単独の提案というふうになっておりますことを御報告申し上げます。
 それから、省庁のヒアリングに関しましては、法務省刑事局、警察庁犯罪被害者対策室などからヒアリングをさせていただきまして、さまざまな角度からの御意見を伺っておりますことを御報告申し上げます。
#57
○魚住裕一郎君 この基本法案の第二条に、本当に大事なことだと思うんですが、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、被害の状況等に応じた適切な処遇を保障される権利を有する」というふうに規定されておるわけですが、この権利なんですが、具体的にその権利性というんでしょうか、どういうような法的な効果を考えておるんでしょうか、御教示いただきたいと思います。
#58
○江田五月君 二条の権利の性格という御質問ですが、この表現ぶりを読んでいただくとすぐおわかりと思いますが、日本国憲法の十三条、個人の尊厳とか、あるいは二十五条の生存権の保障、これも権利でございます。犯罪が起きた場合に、犯罪の被害者はこういう憲法上の権利がいわば侵害をされているわけですね。しかし、一方で、刑罰権というのは国家が独占をしていて、そして加害者の方は被疑者、被告人として罪責、刑事責任の追及の場でいろんな権利を与えられながら刑罰が決まっていくという中に置かれると。被害者の方はそのままになっている。
 そこで、憲法上ある権利をもう一度確認をして、そして経済的にあるいは精神的に、また刑事司法的にもそういう権利が確保、回復されるようにということで、ここで権利ということを書いているわけです。国連の被害者権利宣言もございます。
 したがって、この権利の法的効果、効力ということになりますと、これは憲法上のそういう権利をここで改めて確認をしているということでございますので、この権利を直接根拠として国とか地方公共団体に対し犯罪被害者等が何らか具体的な請求をすることができるという性格のものではない。国あるいは公共団体、あるいは国民、いろんな民間団体などがさまざまな犯罪被害者に対する支援をする場合に、その根拠となる一つの抽象的な権利というものを書いているということで、具体化のためには個別法の制定など、いろんな手続が必要だと思っております。
#59
○魚住裕一郎君 確かに、二条の表題というんでしょうか、「基本理念」というふうに書かれておりまして、権利といっても基本的に理念であるというふうに理解をいたします。
 その今の第二条に言う「権利」の具体的な手続、具体化したものが実は十一条かなというふうに私ども理解をするのでありますが、この十一条におきましては適切な取り扱いを定めるという形になるわけです。例えば、刑事手続において「意見の表明の機会の付与」あるいは「情報の提供」という形で規定されているんですが、この規定を根拠にして具体的に意見表明をすることができるんでしょうか。あるいは、情報の提供を求める、そういう請求権というんでしょうか、あるんでしょうか。
 つまり、二条で「権利」と言いながら、こちらでは権利と書かないで「必要な措置」というふうに書かれておりまして、より具体化されるべきところが何で権利になっていなくて「必要な措置」になっているのかなと。その辺疑問に感ずるものですから、ちょっとお聞きしたいと思います。
#60
○江田五月君 二条のところでは「基本理念」ということで権利という考え方を明らかにした。これは一項、そして二項の方も同じことでございますが。そして、十一条でさらにそれを具体化していくことを国に命じておると。十一条は、国は「必要な措置を講ずるものとする。」としておりまして、国がそういう必要な措置を講じなきゃならぬということになります。
 私どもは、そういう理解のもとでこのたびの内閣提出の法案を見ますと、なるほど、例えば意見陳述権、その場合の裁判所における心理的な圧迫を受けずに意見を陳述することができるような措置などなどいろいろ閣法に書いてございます。そういうものはこういう形で実現をされていくものなんだなということが私たちの基本法を見ればよくわかってくると、そういう構造になっていると理解をしております。
 したがって、本法案の規定は具体化のもう一つ前の段階ということであって、権利を具体的に保障するためには今の内閣提出の法案のような個別法が必要であって、したがって内閣提出の法案は評価ができる、そういう整理でございます。
 ただ、現実には、例えば裁判所で裁判官が訴訟指揮を行います。その訴訟指揮の際に、こういう基本理念とかあるいは十一条のようなものがありますと、そういうものが訴訟指揮の際の指針になる。こういう意味で、具体的な裁判所の中の措置でこれが具体化されるということもまた出てくる、こういう意味でも意味があると思っております。
#61
○魚住裕一郎君 基本理念、それから中間的なものという御説明をいただきましたが、最後には訴訟指揮等を含めた指針になり得るというお話でございます。
 そうなりますと、具体的なあり方にかかわるものでございますので、当然被害者のことだけではなくて、適切な司法の運営とか、あるいは被疑者、被告人の人権、防御権、こういうことについても配慮をする必要があろうかというふうに思うわけであります。
 いろんな資料がございますが、日弁連が昨年の十月二十二日ですか、犯罪被害者基本法要綱案というのを発表されましたが、その末尾に「被疑者及び被告人の権利」ということで、そういう面にも配慮をしているわけでありますが、この民主党提出の基本法案の中ではそのような御配慮というのはどこに盛り込まれておるんでしょうか。
#62
○江田五月君 さまざまなところで「適切な取扱い」といったような表現ぶりをしておりまして、その「適切」ということはその権利の調整ということであろうと思います。
 もちろん、刑事司法の適切な運営、あるいは被疑者、被告人の人権、防御権等の保障、これは必要なことはもう当然であり、憲法でも三十一条等諸規定が置かれておるわけでございますが、他方で、犯罪被害者が長い間精神的、経済的に、あるいは刑事司法の手続の中で苦しい立場に置かれてきておる、悲惨とも言える、そういうことを踏まえて今回こういういろんな規定を設けたと。
 私どもは、もちろん被疑者、被告人の立場におかしな揺らぎがあってはならぬということは当然であろうと思います。被害者に権利を与えると被疑者、被告人の権利保障は有名無実になる、そういうことはあってはならぬし、またないと思っておりまして、これは具体的運用の場合の調整の問題である。
 例えば、情報提供を受ける権利を被害者に与える、そうすると、これを乱用してどんどん情報を、おれは権利があるんだと言って受けて、これをマスコミなどに流して利を図るとかいうようなことがあれば、これは被疑者、被告人の権利を今度は害していくというようなことにもなってくるわけですし、もちろん権利の乱用は許さないというのはこれはもう法の一般理論でございますので、そうしたことが当然ここでもかかってくるのは当たり前だと思っております。
#63
○魚住裕一郎君 それと、ちょっと戻るんですが、第一条に「犯罪被害者等」という表現がございます。その中では「犯罪被害の発生の防止又は犯罪被害者の救助に当たったことにより被害を受けた者」というようなことが出ているわけでございますが、ある意味ではこのような人も犯罪被害者そのものとも言えるわけなんですが、その点はどのように考えておられるんでしょうか。
 この日弁連の案だと「犯罪被害者」と「準犯罪被害者」という「準」というのをつけておるんですが、あえてこれを「等」に置き直しているというのはどういうことになるんでしょうか。
#64
○江田五月君 「準」という言葉も一つの考え方ではあろうと思いますが、「犯罪被害者」という場合には、直接に例えば殺人なら殺人で殺害行為を受けた者ですね。しかし、その者が亡くなってしまえばそれで犯罪被害者はいなくなるというのではいけないと。その犯罪行為によってさまざまな形で、精神的、経済的、その他被害を受けている者はいるわけで、配偶者、直系親族、兄弟姉妹その他これに準ずる者、こういうものが一つある。
 さらに、犯罪が起きてその犯罪によって何らかの被害をこうむって社会的にその回復を求め得る、そういうある種の保護範囲に入る人々というのはどんなものがあるんだろうかと考えまして、例えば犯罪被害の発生を防止しようとする。線路に石が置かれている、これをどかそうとする、これは被害の発生の防止ですね。あるいは被害者の救助に当たる。これもいろいろなことがあるでしょう。ホームに突き落とされた被害者を救済しようとする、そういう際に列車にはねられたということになりますと、これは犯罪の直接の被害者ではないけれども、やはり犯罪に起因してそういう被害が起きているわけで、これはやはり犯罪被害者を救済していこうという際にその保護の範囲に入る人々であるという意味で、私どもこういう人々を、「準」という字は使っておりませんが、この法律の保護の範囲に入る者という意味でこれらの人々を挙げて、そして、被害者とそうした人たちという者をその後に区別をしていく理由はありませんので、これをひっくるめて「犯罪被害者等」ということで一括してその概念を用いている、そういう仕組みにしているわけでございます。
#65
○魚住裕一郎君 そこの部分、わかりました。
 ただ、「準」であろうと「等」であろうと、だんだん広がっていくわけですね、相当因果関係の中でどんどん損害を受けた人が。そうすると、犯罪の直接の被害者とそれから関連して損害が生ずる人、全く犯罪と関係なく損害を受ける人というのが出てくるんだろうと思うんですね。その辺のバランスといいますか、余りにもあいまいになっていくんではないのかなと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
#66
○江田五月君 これもなかなか難しいところであることは御指摘のとおりだろうと思います。
 ただ、直接の犯罪の被害者だけが犯罪被害者として救済されるというのでは、先ほど申し上げましたような犯罪に起因して被害をこうむった人たちはじゃどうするんだということで、かえって直接の犯罪被害者との間での均衡を失することになるだろうと思うんです。
 ですから、保護範囲をどこまで広げるか、相当因果関係をどこまで認めるかという、なかなか法理論の中でも困難な課題でございますが、私どもはここに書いてあるような表現ぶりでその間の調整を図ったということで、本質的には刑罰権が国家に独占されている、しかし、そのことの反対要素として、どこまでの人々を社会的に救済していくかということで、私は、犯罪以外の原因で被害に遭った者と犯罪に起因して被害に遭った者とはやはりそこは違いがある、区別されるべきものであろうと思っております。
 ただ、立法論的には、とにかく世の中森羅万象ことごとく、そういう身体的な精神的なダメージをこうむった者はまず社会がその補償をして、社会というのは国ですね、国が補償して、国が後で原因者に求償するという制度は世界各国を見ますと立法論的にはあると思います。私どもはまだそこまでの立法論を採用したわけではありません。
#67
○魚住裕一郎君 それでは、政府の方にも若干お聞きしたいと思います。
 先ほど、パブリックコメントをされたということでございますけれども、広く意見を聴取したということだと思うんです。求めた、募集したということだと思うんですが、具体的にどのような意見が寄せられたのか、そして、その中からこの政府の二法案に、どういう理由で選んで法案化されたのか御説明をいただきたいと思います。
#68
○政府参考人(古田佑紀君) パブリックコメントを募った結果、お寄せいただいた御意見はトータルで百件余りでございました。
 この意見募集の要領に掲げた項目といたしましては、今回御提案申し上げております法案に含まれている事項と、その他御意見のあるものということでパブリックコメントをお願いしたわけです。
 政府案に現在盛り込まれております内容の点につきましては、性犯罪の告訴期間等、これは六カ月というのは非常に短いと、その延長あるいは撤廃を考えるべきである、あるいは非親告罪化すべきであるという御意見もあったわけでございます。
 以下、証人の負担軽減措置とかこういう点につきまして、基本的には圧倒的に賛成の御意見が多かったわけでございます。
 そのほかにどのような御意見があったかといいますと、例えば、被害者の名誉保護のために公判を非公開にすべきである、あるいは性犯罪等の法定刑を引き上げるべきであるというふうな御意見などもあったわけでございますが、これは憲法上の裁判の公開の原則との関係、あるいは法定刑につきましてはいろんなバランスの問題等もございまして、今回はそういう点については盛り込まなかったということでございます。
#69
○魚住裕一郎君 だんだん時間がなくなってきましたけれども、最後に、犯罪被害者保護の問題は関係各省庁一生懸命議論をし、省庁連絡会議でもいろんな検討をなされたところでございます。さらに一層充実をさせていかなきゃならないと思うところであります。
 二次被害、特に被害者がマスコミの取材とか報道によって精神的な負担とか大変な名誉毀損もあると思いますし、事実じゃないことも報ぜられたというようなことも犯罪白書かなんかに書いてあったと思うんですが、そういういわゆる報道被害の問題ということもあろうかと思うんですが、この問題に対して法務大臣の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。
#70
○政務次官(山本有二君) 犯罪被害者の方々はさまざまな関心の対象となり、御指摘のようなことによって大きな精神的負担を受けることはしばしばあるものと存じております。
 被害者に関する報道につきましては、報道の自由との関係もあり難しい問題であると思いますが、このような被害者の方々の御心労を考えますと、報道機関におきまして、誤報道を防ぐことはもちろんのこと、被害者やその家族の立場に十分配慮した適切な対応をとられることが望ましいと考えております。
 捜査当局におきましても、犯罪事実等を公にする場合には、犯罪被害者のプライバシーを侵害しないなど、被害者やその家族の立場に配慮する必要があり、またその内容に誤りがあってはならないことは当然であるので、そのような点に十分配慮しつつ適切に対応していくものと考えております。
 以上です。
#71
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
#72
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 今回の法改正で、六カ月だった性犯罪の告訴期間が撤廃されるなど、一歩前進だと思いますが、今後、犯罪被害者の権利を定め、犯罪による精神的、経済的被害にどのように国として補償していくのかなど、今回の改正を契機に早急に行わなければならない問題は山積していると思います。
 私は、時間的制限もありますので、きょうは性犯罪被害者の問題を中心にお伺いしたいと思います。
 今回の改正で、裁判の証人になる際はビデオリンク方式をとり得る、また付添人もつけられるとなっておりますが、犯罪被害者は裁判に至るまでに既に数回に及ぶ事情聴取に応じておりまして、特に性犯罪被害者に対する二次被害という問題が指摘されております。本来、こうしたことはあってはならないことですが、この二次被害をいかに食いとめるか、軽減するか、これは警察庁、検察庁にとっても重要な課題だと思います。
 そこで、私は捜査段階での付添人ということについてお伺いしたいと思います。
 被害者の心理的な傷の深さを考えますと、事情聴取の場合、事情聴取の場所とか時間などを被害者の要望に合わせることはもちろんですけれども、被害者の意向に沿って保護者や医療関係者、弁護士などの付添人をつけること、これもぜひ必要なことだと思いますけれども、いかがでしょうか。警察庁、法務省、それぞれ端的にお答えいただけたらと思います。
#73
○政府参考人(林則清君) 性犯罪被害者の事情聴取に当たりまして、被害者から付添人の立ち会いを要望された場合につきましては、ケースによって違いますけれども、場合によってはだれにも影響されないといいますか、それで被害者自身の被害認識を言っていただくという捜査上の必要があるとか、あるいはケースによっては被害者のプライバシーの問題にも関連するケースも中にはありますので、そういうことを考慮する必要がケースによってありますので一概には申し上げられませんけれども、今、先生御指摘のように、何よりも被害者の心情というものに配慮して、ケースによっては、被害事実をお聞きする際に付添人の方についておってもらった方が言いやすいといいますか、そういうケースもあろうかというふうに思います。そういう意味でケース・バイ・ケースになってこようというふうに考えております。
#74
○政府参考人(古田佑紀君) 基本的にはただいま警察庁の刑事局長から御説明申し上げたとおりで、検察庁の実務におきましてもやはりケース・バイ・ケースで、特に付添人の方がついているためにかえって供述にいろんな疑念を生じさせるようなことがあってはならないというような点も十分配慮しながら対応しているところでございます。
#75
○林紀子君 今、警察庁も検察庁の方からも、付添人というのは捜査段階でも被害者の要望によってつけられるというお話があったわけですけれども、特に性犯罪被害者の場合というのは大変気持ちが動揺しているということもありまして、今回、裁判所で証人を尋問する場合も証人の著しい不安または緊張を緩和するために付添人をつけるというふうになっておりますので、ぜひ捜査段階でもこれを実行していただきたい、そう思うんです。しかし、このことはなかなか被害者には知らされていない、知られていないということなんじゃないかと思うわけなんです。
 大臣にここでお伺いしたいんですけれども、これは性犯罪ではありませんけれども、教師から体罰を受けた高校生が被害者だった事案では、検察官は聞き取りの際、親の立ち会いを全く認めなかったという事例もあるということも聞いているわけです。捜査の際には、まず年少者やそれから性犯罪被害者の場合特にですけれども、付添人がつけられるということをまず知らせるというところから始めないと、これはありますよと言ってもなかなか付添人がつけられるということを知らないんじゃないかと思うわけです。そして、被害者の意向を尊重するということを徹底すべきだと思いますが、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
#76
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに委員御指摘のとおり、付き添いというのも事実の問題として必要に応じてそういう措置をとっているわけでございます。
 この点につきましては、実際に事情聴取をお願いする際に、やはりどうしても一人では嫌だとか大変気おくれするとか、そういうふうなお話がこれはしばしばあるわけでございます。そういう実際の中でそういうふうな気持ちを持っておられる方については、場合によってはどなたか適当な方に付き添っていただくということも可能ですということを申し上げることによってそういういろんな何といいますか、精神的な負担の緩和等に配慮をしているという状況でございます。
#77
○林紀子君 そして、性犯罪の被害者が捜査過程で一番つらかったことは事情聴取が何回にもわたって行われるということだということなんです。
 科学警察研究所の被害者調査でも、同じことを何度も聞かれる、四〇%、事情聴取時間の見通しについて話してほしい、三七%などという結果がありまして、何人も何人も入れかわりで同じような質問をして、同じことを何回も言わされていいかげんにしてほしかった。性犯罪被害者の場合は特にこれがどんなにつらいことだったかというふうに思うわけです。
 このような悲鳴のような声も上がっているわけですから、こうした二次被害を軽減させるために警察、検察ともに研修を行って捜査技術を高めるという、こういうお話を伺ったんですけれども、じゃ、実際はどうなっているかというと、性犯罪被害についての研修を受けないままに現場に配属されている警察官も少なくないということです。これでは二次被害を防ぐために万全を期しているというのは到底言いがたいと思うわけですが、これも警察庁、法務省、それぞれどういう状況になっているかお聞きしたいと思います。
#78
○政府参考人(林則清君) ただいま御指摘ありましたように、いろいろ言っていましても、実際にやるといいますか、その衝に当たる警察官が研修を受けてこういったものの特異性というものについて十分理解しておるということが一番大事であろうかということであろうと思います。
 私どもも、再々お答えしておりますように、こういう性犯罪に当たる者、一つは、先ほどの何回も聞かれるというのは専門の女性の担当者などを決めておけばそういうことも少なくなるだろうという効果もあろうかと思います。
 その研修でございますけれども、現在までのところ、中央で性犯罪捜査専科ということでそういったいろんな微妙なことを、心理的なことも含めて、これは平成九年以降、中央で三回やっておりますが、平成八年以降、各都道府県警察では平成八年から百二十回程度全国でやっておりまして、現在四百七十二回、一万四千名近い人間がきめの細かい研修を受けておる状況でございますが、まだ受けていない者もおると思いますので、これは毎年地方レベルにおいても中央レベルにおいても進めてまいりたい、かように考えております。
#79
○政府参考人(古田佑紀君) 捜査過程でのいわゆる二次被害、これは大変私どもも心しなければならない問題だと考えているわけでございます。
 ただ、御理解をいただきたいことは、一方で事案の真相を明らかにして刑事責任が本当にあるのかどうか、それがまたどの程度のものかということを判断するためには、どうしても実質的には言ってみれば反対尋問みたいなこともせざるを得ないところもあるわけでございます。また、捜査もこれは順次発展していく流動的なものですから、関係証拠がその後どうなったかによってはやはり被害者の方にももう一度確かめなければならないとか、そういうこともこれはどうしても出てくる場合がある、この点はぜひ御理解をいただきたいと考えているわけです。
 しかしながら、そうは申しましても、そういうふうなことで被害者の方にいろんな負担をかけるということは、これは極力最小限にしなければならないということは事実でございまして、そのためにはできるだけ客観的な証拠で立証することを工夫するとか、いろんな捜査立証について工夫を凝らすということも必要だと考えておりまして、こういうことにつきましては、被害者の方から実情、事情を聴取するということが捜査官としては基本的な職務の一つでございまして、過去いろんな日常的な指導などを通じまして、またいろんな経験を積み重ねることによって捜査官が体得してきたという面があるわけでございます。しかし、そうは申しましても、特に被害者の方々の心理とかそういう点につきましてはここ数年非常に研究も進んでまいっておりまして、やはり組織的にそういう問題について研修等をするということが必要だと考えております。
 なお、数字を申し上げますと、平成十一年におきましては……
#80
○林紀子君 済みません、時間がありませんので今のお答えで。
 やはり研修を受けて、どれだけ検察、警察が熟練をしているかというのは一つのかぎになると思うんです。
 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、ぜひともこれは現場に出る前にきちんとこの研修を受けるということを実行してほしい。これは人数の関係ということもあると思うんです。ですから、やはりどれだけ人員をふやしていくかというようなことにもかかわりますので、ぜひこれは研修を受けた後に現場に行くということを実現するために努力をしていただきたいということをお答えいただきたいと思うんです。
#81
○国務大臣(臼井日出男君) 先ほど来委員お話がございましたいわゆる被害者の二次被害等については、私どもも細心の注意を行わなければならないというふうに考えておりまして、委員御指摘をいただきましたようにいろいろな多くの問題ございますが、被害者に対してそうした二次被害を与えることのないような配慮を尽くすためにこれからも努力をいたしてまいりたいと考えております。
#82
○林紀子君 次に、被害者が映っているビデオなどの証拠品の処分ということについてお聞きしたいと思います。
 児童ポルノの事案というのもふえておりますけれども、その被写体になった子供たちは、自分の裸体などがビデオに収録されてしまったこと自体、これは大変な精神的打撃を受けているわけです。これは一度の性被害にとどまらないさらに重大な精神的苦痛だと思うわけです。ですから、被害者は一日も早くこの世からこうしたビデオが確実に抹消されたい、こういうのが心情だと思うわけです。
 この証拠品というのは検察庁が処分しているということですが、裁判の確定後はこれらのビデオテープなどは速やかに被害者の方に返す、そういう措置を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#83
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のような御提案というのも一つの考え方というふうには思うわけでございますが、現実的なことを申し上げますと、特にいわば営利目的で作製されたようなものについては大変な量に上るわけでございます。場合によってはこれが数千本とか、そういうようなことも実際はあるわけでございます。
 そういうようなことから、検察庁におきましてこういうビデオテープなどにつきましては確実に処分をするということで従来やっておりまして、そのためにそのビデオがおよそもう残らないようにするというためには相当しっかりした設備のあるそういう施設を探しましてそこでお願いをするというふうなことをしておりまして、御指摘のような点につきましては実務的にはいろいろ問題があって、慎重に検討しなければならないというふうには思っております。
#84
○林紀子君 大臣にたびたびお伺いして申しわけありませんけれども、じゃ、この証拠品というのが本当に検察庁内で安全に保管されてきちんと廃棄をされるのかどうかということなんです。
 私、伺いましたら、平成八年、九年、十年と証拠品が窃盗に遭った、盗難されたという事件があって、しかもその一件はわいせつビデオの窃盗だったというわけなんです。これは事務官が自分で見るために持ち出した、一本を廊下に置き、残りの一本は燃えないごみとして袋に入れて捨てた、こういう話になっているわけです。
 そうしますと、性犯罪の被害者というのは、この自分が映っているビデオというのがいつ流出するのか、また複製されるのではないか、本当に心配なわけですね。今みたいな話を聞きますと、ますますこれは大変だと、その心配が重なるというふうに思うわけなんです。
 ですから、難しい面があるというお話でしたけれども、どうしても被害者に返すという措置を検討していただきたいということが一つ。この検討に時間がかかるようでしたら、ぜひ本人並びに弁護人がこの廃棄の現場に立ち会って、確かに自分が映っているようなとんでもないビデオというのが廃棄されたんだと確認できる、そういう状況というのをすぐにでも運用の面でつくっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#85
○国務大臣(臼井日出男君) 今、委員御指摘のような、万が一にも証拠品等が窃盗される、こういうことはあってはならないことでございまして、私どもとしてもそうしたことが起こらないようにさらに細心の注意を持って行ってまいりたい、このように考えております。
 今、委員御指摘をいただきました証拠品の本人への返還あるいは立ち会い等につきましては慎重に検討する必要があると考えておりますが、従来から、被害者から検察庁に対しまして証拠品に対して廃棄されたかどうかということが照会があるといった場合には回答するということも可能である、このように考えております。
#86
○林紀子君 問い合わせによって回答できるというところまでは行っているわけですからね。それでは、いついつ処分するからということを言っていただいて、その日に本人並びに弁護人が立ち会うと、そういうところというのは何か非常に難しいところがあるんでしょうか。そこまではできるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
#87
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほども申し上げましたとおり、ビデオテープ等を廃棄するやり方というのは、これは非常に大型の、これを完全に砕いてしまう、そういうようなものにかけてやるというのが普通なわけでございます。そういうような設備を持っている廃棄物の処理の業者とか、そういうところはそう多くないわけでございますし、それと同時に、大量に廃棄するということが一般でございます。
 そうなりますと、言ってみますと、ただいま御指摘のような立ち会いというふうなお話になりますと、廃棄物の処分について検察庁の方での計画というものを非常に立てにくくなるというような問題のほか、かなり遠隔のところまでおいでいただかなければならないとか、実務上非常にさまざまな問題が起きてくるということが実情でございまして、その点について御理解を賜りたいと思っております。
 なお、先ほど御指摘のありましたわいせつビデオテープの証拠品の盗難事件につきましては、その後、そういうことが起こってはならないことにかんがみまして、一層証拠品としての取り扱いを厳重なものにするように事務を改善しております。
#88
○林紀子君 検察庁内で盗難があるというのだけでもびっくりする話なんですけれども、それは厳重に保管をするということは当然です。遠方から来るという話もありますけれども、それはまさに自分の問題で、一生これから先あのテープはどうなったのか、どこへ流れていっているのかという心配をしながら暮らすよりも、幾ら遠方でも自分のことでしたら来ると思うんです。
 ですから、問い合わせのあった人にはちゃんと知らせる、いつ廃棄をするんだということまで知らせる。事務的なことでしたらぜひそこのところは何とかクリアできないかということも研究していただきたいと思います。
 それを伺って、終わります。
#89
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほども申し上げましたような事情があり、かつ、非常に大量に廃棄されるとその中のどれかという特定とかいろんな問題も起こるわけでございますが、御指摘もございますので、いろんな角度から研究はしてみたいと考えます。
#90
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 被害者救済法がこういう形で議論されることを大変うれしく思います。
 いろんな方が関係者に対する訓練、啓発のことを聞かれました。
 国連の総会の宣言においても、被害者に対しての適切かつ迅速な援助をするためのガイドラインをつくるべきだというのが十六項に規定があります。例えば去年、アメリカ人の女性から相談を受けたケースは、強制わいせつに遭って警察に突き出したら、警察官に、この男はばかだね、略式で五万円ぐらいの罰金になるだろう、キャバレーで五万円払えばもっとさわれたのにと言われて、非常に怒って外国人記者クラブで彼女は記者会見をしたというようなこともあって、実は桶川のケースだけではなく、山のようにそういう話は実はたくさん聞いてきました。
 先ほど警察の啓発についての取り組みの決意を話していただいたんですが、法務省として、関係者に対する訓練、啓発を現在どうやっていらっしゃるか、今後の取り組みについてどう考えていらっしゃるか、お聞かせください。
#91
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほどもお答えしたところでございますが、従来から、被害者の方などにつきましてはその心情に十分配慮した対応が必要であるということで、それぞれいろんな指導監督あるいは経験を通じていわばノウハウを蓄積してきたところでありますが、現在のようないろんな研究が進展した状況にかんがみまして、やはり組織的なそういう研修が必要であるという認識を持っており、新しい任官者の研修の際とかそういうときには、被害者の方への対応のあり方、被害者心理等についての講義などの機会を設けるということで個々対応してきているところでございます。
 今後とも、そういうふうな対応につきましては充実させていきたいと考えております。
#92
○福島瑞穂君 今までの人権啓発・教育で非常に苦情がたくさん上がってきているわけですから、今後はもっと組織的に、プラグマチックに、あるいはガイドラインをつくるなど、ぜひお願いします。その点については法務委員会などでまた質問したいと思います。
 本人のケアとフォローなんですが、共生社会に関する調査会で去年九月末から十月、女性への暴力について国会議員で視察に行きました。イギリスでビクティム・サポート、被害者のためのサポートというNGOを国が何億円もかけて補助を出し、裁判所の中にそのNGOがいて被害者のケアにずっと当たっているということを知り、日本でもこういう取り組みがなされればいいなというふうに思いました。被害者の人は、裁判所に行ってどういう目に遭うのかわからないし、どこに座るのか、何を言われるのかなかなかわからないというような状況もあります。
 今回、法案の中には余り盛り込まれていないのですが、本人のケアやフォローについてはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
#93
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに今、被害者あるいはその遺族の方々にとっては、刑事手続の中に関与するということは初めての御経験になることが多く、おっしゃったようないろんな戸惑いなどがあることも事実だろうと思っております。
 そういうことに関しましては、検察庁におきましてはいわゆる被害者支援員制度を設けまして、これでそういういろんな御疑問あるいは戸惑い等についてお答えする、あるいは法廷にも御案内するというふうなことをサービスすることを考えております。
 そのほかにも、警察御当局におきましてもいろんな似たようなサービスをされておられる部分もあるように承知しておりますし、また民間団体でもそういうふうなことを考えるような団体ができ上がっているというふうに承知しており、こういうところとも十分連携をとって対応していきたいと思っております。
#94
○福島瑞穂君 そういう制度をつくられるということで、ぜひ頑張ってください。今後、またいろんな進行状況について教えてください。
 今回、被害者救済法ができたことで、リストラティブジャスティス、回復される正義ということが議論になり、これが被害者をどういうふうに回復していくのか、いやしをしていくのか、それをどうやって全体の制度の中に生かしていくのかということが議論されることが他の分野においても非常によい影響を与えるのではないかというように思います。加害者をマイナスの存在からプラスの存在に転化していくことは、社会にとっても被害者にとっても非常に重要なことだと思います。
 セクシュアルハラスメントでも性暴力でも、被害者の女性たちが怒るのは、加害者が全く反省をしていない、あるいは悪いと言いながら全く理解をしていない、何にもわかっていない、事件に向き合ってくれないということにやはり非常に憤るわけで、加害者がきちっと事件に向き合い、何が問題なのかということを理解することで随分被害者の気持ちも変わっていくだろうというように思います。
 ところで、刑務所の処遇についてお聞きします。
 先日も殺人未遂を犯した男性が、刑務所に入っていた男性が出所してまた殺人を犯したのではないかということで、もちろん無罪の推定がありますから真相はわかりませんけれども、逮捕されるということがありました。
 こういうことが繰り返されるたびに、私はある意味で刑務所の中における矯正が失敗しているのではないか、あるいはうまくいっていないのではないかという気がするんですけれども、その矯正、刑務所の中の加害者に対するケア、カウンセリングなどはどういうふうに行われているのでしょうか。
#95
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 我が国の矯正のあり方についての考え方をお話しすることになるかと思いますけれども、受刑者の処遇というものは、その収容を確保しながら、刑法十二条二項に「所定の作業」ということで定められております刑務作業を実施することを基本としておるわけですけれども、規則正しい集団生活の中で刑務作業を通じて労働意欲を喚起し、労働の習慣を身につけさせることは受刑者の社会復帰を図る上で効果的であり必要と考えておるわけです。
 しかしながら、それと同時に、更生を図るための矯正教育を行う必要があるわけでありまして、各行刑施設の現場におきましては、個々の受刑者の人格的特性とかあるいは環境的、社会的な問題について科学的な調査を行いまして、その結果に基づきまして個々の受刑者に最も適した処遇プログラムを立てまして、刑務作業のほか生活指導とかあるいは各種教科教育、医療等の処遇を行っておるところであります。
 それはそれなりに効果があるというふうに認識しておりますけれども、矯正処遇の場合は完璧ということはございませんので、いつも現状に甘んずることなく、今後とも、一つとしては処遇類型別指導というのがあるわけですが、これも犯罪者の行動面や犯罪に至った要因に着目しまして、同じ類型に属する者を集団として編成して効果的な指導をねらいとするものですが、そういった処遇類型別指導の充実強化とかあるいは新しい処遇技法の導入など、いろいろ工夫を凝らして一層効果的な受刑者処遇を行うように努めてまいりたい、そのように考えております。
#96
○福島瑞穂君 具体的にカウンセリングはだれが行っているのか、例えばどれぐらい時間をかけているのか、個別ケースにどれぐらい向き合うようなプログラムを立てていらっしゃるのか、教えてください。
#97
○政府参考人(鶴田六郎君) 受刑者に対するカウンセリングということですけれども、これも矯正処遇の一つの方法、一つの技法といいますか、そういうことでとられておりまして、刑務所には心理学を専門とする矯正職員のほか、部外に篤志家の方もおられますので、そういった方の協力を得ながら対象者の個別的な必要に応じて今申し上げたようなカウンセリングというようなものをやっておりますが、ただ、何時間くらい、どのくらいでやっているというのは手元に資料がありませんので、その点はちょっとお答えいたしかねるわけです。
#98
○福島瑞穂君 少年法の議論がありますけれども、少年院と刑務所と両方見学に行って思うことは、むしろ少年院などの方が細かく個別に一人一人についてフォローしている、あるいは少年院を出た後についてもフォローしているけれども、例えば刑務所ですと、出所をした後のことについては基本的に、保護司さんたちにはお世話になるとしても、なかなか体制がとれていないのではないかというふうに思うことがあるんですね。
 それで、漠然とやるのではなくて、例えば性暴力の加害者に対しては性暴力がいかに相手に痛みを与えるかとか、強盗に遭った人が夜に外出できなくなるぐらい恐怖を感ずるとか、具体的に個別的にいろんなことを、事件に向き合うような丁寧な話し合いなどをしない限り、ただ軍隊行進をして、作業所で働いて規律正しい生活を送れたからといって、決して犯罪に向き合うことはできないというように思うんですが、もう一度、今の矯正で例えば少しこういうことは工夫ができるのではないか、篤志家に頼るのではなくて、もう少し刑務所の中でこういうことができるのではないかということについてお聞かせください。
#99
○政府参考人(鶴田六郎君) お答え申し上げます。
 一つのそういう被害と向き合うといった観点で、被害者の視点に立った処遇ということもあるのかと思いますけれども、全部の施設というわけではありませんけれども、一部の施設におきましては、先ほど申し上げました処遇類型別指導というものの一環といたしまして、例えば殺人、傷害などの他人の生命、身体に重大な損害をもたらす犯罪を犯した人とか、あるいは交通事故により人を死傷させた受刑者をそれぞれ集団として編成させて、被害者に対してできることは何か、そういったことを課題にして集団討議をさせたり、また、今、委員の方からお話がありました性的犯罪、そういった受刑者に対しましても、被害者とかその遺族に関するVTRを視聴させたり、そういった工夫をしているところであります。
 今後、そういった今行われているような処遇の実績効果等を見きわめまして、今後とも円滑な社会復帰ができるように努力してまいりたい、そういうふうに思っております。
#100
○福島瑞穂君 類型別の処遇の中でお互いに話し合いなどをしていらっしゃるようで、できるだけそれを広げて精力的に取り組んでくださるようにお願いをしたいというふうに思っています。また、処遇の改善あるいは取り組みなどについて法務委員会などでぜひまた聞かせてください。
 それで、受刑者は刑務所の中で基本的に限られた親族としか文通ができません。これは全く遠い先の話かもしれませんが、ケースによっては、例えば被害者ときちっと文通をするとか、もう少しいろんなことも可能ではないかとは思うんですが、今、受刑者がいろんなものが非常に制限されているということについてどうでしょうか。
#101
○政府参考人(鶴田六郎君) 委員御指摘のとおり、受刑者の外部の者との信書の授受と申しますか、その相手方につきましては原則として親族に限るという取り扱いがなされておるわけですけれども、刑務所長の許可があれば親族以外の者でも信書の発受はできるということになっております。
 ただいま御指摘のありました、例えば謝罪文書の被害者への発送というようなことも一つあるかと思いますけれども、それも今申し上げました矯正処遇の基本的な考え方であります社会復帰に向けた更生改善を図るということに資するということで非常に大きいものがあるということであれば、そういった被害者の方に信書を発するということは可能ではないかというふうに考えておりますが、ただ一つだけ、この場合は、被害者の側でもそれを受け入れるというか、そういう心情に達していることが必要でありまして、かえって被害者の方に不安とかそういうようなものを招きかねないという面もありますので、その辺のことは大変慎重に配慮する必要があるなといった感じを持っております。
#102
○福島瑞穂君 回復される正義、言葉でリストラティブジャスティスと言うと格好いいですけれども、刑務所や警察や、もちろん裁判の中でも、それからまた弁護士の考えもそうですけれども、百八十度頭を、九十度ぐらいかもしれません、百二十度ぐらいかもしれませんが、頭を切りかえて、どうしたら加害者、被害者がある程度向き合えるのか、あるいは加害者が問題に向き合うためには何ができるのか、いろんなことの取り組み、特に刑務所は今までとは違った視点も必要ではないかと思っているので、ぜひ頑張ってください。
 それとの関係で、弁護士会が台湾や外国の刑務所によく行っているのですが、台湾では刑務作業への報奨金を日本の十倍ぐらい、貨幣価値が違いますから一概には言えませんが、そのうち四分の一を天引きして被害者基金に払っているということなどを聞きました。
 こうしたことは加害者の被害者全体に対する償いになると思うんですが、日本では、これはずっと法務委員会で聞いておりますが、余りに報酬がとてつもなく少ない、長く刑務所にいても出るときには本当にわずかなお金しか持って出られないというようなことについて、もう少し本人の自由になるお金があれば、例えば被害者へ払い続けるというようなこともできると思いますが、いかがでしょうか。
#103
○政府参考人(鶴田六郎君) 受刑者に支給される作業賞与金というものの性質と申しますか、それについてはいろいろ議論があるわけですけれども、現在のところは、刑務作業を奨励し、かつ釈放時に当座の生活維持や就職準備のための更生資金に役立たせる、そういった刑事政策の一環として支給しているわけです。
 支給されたものは原則として釈放時に渡すことになりますけれども、取り扱いとしては、その中から被害者に弁償をするという申し出が出れば、それを可能にするような取り扱いということは法律上できるようになっておりまして、現に、金額としてはわずかですけれども、送金事例としては、例えば被害者の供養のため被害者の親族とかあるいは被害者の菩提寺、身元引受人等に定期的に送金しているというような事例もございます。
#104
○福島瑞穂君 犯罪はゼロにはできませんけれども、犯罪をできるだけ少なくするためにすべての人、いろんな人が努力をすべきだというふうに思っています。
 私自身は、受刑者にほとんどお金を与えないで、しかも十分なカウンセリングもケアもせずに社会にほうり出せば、まず家を借りるのにも、みんな困るのは連帯保証人がいなくてアパートを借りられない、職につこうにも身元保証人がいない、それからお金がないので、とりあえずホテルに泊まってもすぐお金がなくなってしまう。ですから、今の処遇のあり方は犯罪者をふやす方向に働くのではないか。どんな人も仕事もなくお金もなく社会にほうり出せば、それは問題を起こしやすいだろうというふうに思っています。そういう意味で、刑務所内できちっと報酬を、多額では無理だとは思いますけれども、せめて最低賃金の保障ぐらいをしていくということをしていかない限り、結局は変わらないだろうというふうに思っています。
 そういう意味で、ぜひこの点については、国会が予算をふやせばいいということかもしれませんけれども、逆にお知恵をおかりして改善をしたいと思っています。
 私は十七分までなので、最後に一つだけ年金のことをこの関係でお聞きをいたします。
 例えば免田栄さんが無年金になったということが衆議院で質問されていますが、年金の支給について、例えば免除の申請をするようにとか、さまざまな通知、教育などについてどうなのかという点と、現在、無年金になる人が多いのか、年金と受刑者の関係についてちょっと教えてください。
#105
○政府参考人(鶴田六郎君) 受刑者、二十歳以上から六十歳未満の受刑者に限られるわけですけれども、国民年金の被保険者の資格を有しておりますので、国民年金法の所定の要件を満たせば国民年金の支給を受け得る立場にあるわけです。そういった国民年金を受けることは釈放後の社会復帰を図る上でも意味があることでございますので、各刑務所等におきましては、平成六年度に訓令及び通達を発しまして、受刑者が受刑を開始する時期の指導の際に年金制度の項目等を設けて情報提供を行う、そういうことをしておりますほか、釈放時期が近づいたときにも、年金その他の社会保険制度についての指導をしているという状況で、そのほか最近では所内に備えつける「所内生活のしおり」という冊子があるわけですが、そういうところにも書いて年金制度の周知は図っておるというところでございます。
#106
○福島瑞穂君 以上です。
#107
○平野貞夫君 犯罪被害者等の保護、救済についての制度ができるわけでございますが、これは長年にわたる国民の要望でございましたし、私ども法務委員会でもその制度の整備を盛んに主張してきたわけでございまして、一つの成果として評価するものでございます。
 一般の刑事手続に付随する措置についてはかなりの改善があったと思います。ただ、問題がこれでないかと言えば、各先生方御指摘のとおり、経済的配慮が欠けていることとか、あるいは、この法律で書くのがいいかどうかは別にして、少年法ですか、少年犯罪に対する適用がないこと等、問題が残されておると思います。
 この制度はさらに一層拡充整備されなきゃならぬと思っておりますが、整備されることを要望いたす立場から、このさらなる整備についてどのような御所見か、法務大臣の御意見をいただきたいと思います。
#108
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま委員御指摘をいただきましたとおり、犯罪被害者対策の問題に関しましては検討すべき点が多々あるわけでございまして、今回の法案では、その中で刑事手続に関連をいたしまして早急な手当てが必要なものにつきまして法整備を行うものでございます。
 私ども法務省といたしましては、今回の法整備に盛り込まれました以外の点につきましても、今後とも検討を行い、議論が熟したものから適切に対応してまいりたい、このように考えております。
#109
○平野貞夫君 どうか、さらなる画期的な整備を要望しておきます。
 さて、最近、少年を中心に凶悪犯罪が頻発しております。その多くは現在の社会に対する反発、不満というものがあるようでございます。犯罪被害者対策も重要な問題だと思いますが、何よりも犯罪を発生させない政治的、社会的努力が必要だと思います。そのための根本は、やはり政治の姿勢、あり方、これに対する国民の信頼確保だと思います。
 そういう観点から問題を提起してみたいと思うんですが、小渕首相の急病による総辞職、それから森内閣の成立に至るプロセスについて、多くの国民は不透明さと憲法上の疑念を持っております。こういうもやもやとしたものが私は非常に凶悪犯罪発生の遠因になるというふうな見方をしておるわけでございます。
 実は、私、四月二十五日の予算委員会でこの問題を取り上げましたところ、内閣法制局長官は、今回の一連の問題について憲法が予定するところではない事態だったという答弁を私にしております。要するに、憲法に規定にないことに対して対応したという法制局長官の答弁だと思いますが、これは非常に重大な答弁、発言だと思いますが、まず、江田議員にお聞きしますが、五月七日に民主党の菅政調会長は記者会見で前内閣の総辞職についてこのようにおっしゃったということが報道されております。医師団の発表もなく診断書もない段階で総辞職したのは憲法七十条、総理が欠けたときの総辞職の規定でございますが、の想定したことなのか、国民の訴えとして司法の場において見解を求めたい、こういうふうに述べられております。総辞職手続の適法性を問う提訴を検討しているものだと思います。
 私はこの問題について再三国会で取り上げておりますが、どうも国会の議論がいま一つ盛り上がらない。非常に憲法運用の根本問題だと思っておるんですが、残念に思っておるところですが、この菅民主党政調会長の指摘はまことに大事なことでして、敬意を表するものでございます。
 そこで、犯罪被害者基本法案の提案者である江田先生であり、また裁判官の経験もございましたのでお聞きしますが、このいわゆる総辞職無効確認訴訟ということになりますか、これについてのひとつ御所見をいただきたいと思います。
#110
○江田五月君 犯罪被害者のことを考えるには、まず犯罪をなくすことを考える、人に襟を正せと言うにはまずみずから襟を正さなきゃならぬ、そのためにはというので今の御質問、大変重い御質問でございまして答弁に苦慮するわけでございますが、私どもの菅政調会長の取り組みについて評価をいただいて大変ありがとうございます。
 憲法七十条の内閣総辞職の要件である「内閣総理大臣が欠けたとき」、これが一体何を指すかということ、それからどういう資料とか手続でこれを認定するか、これは憲法問題だと思います。
 今回の総辞職は、これは小渕恵三さんが重篤な病で病床にあるということ、しかしこれが憲法に言う「欠けたとき」と当たるかどうか。これはこれまで判断された例がないんですね。したがって、先ほどの法制局長官のような答えが出てくるのかと思いますが、今回初めてのケースだと聞いておる。
 また、どういう資料と手続で病状を認定するかについて、これは今回は青木官房長官の言葉があるだけです。その言葉は青木官房長官の認識を示しています。青木官房長官の認識の根拠は、青木官房長官の言葉によれば、四月二日七時ごろ小渕さんと会って話をした、これも言葉があるだけですが、それから医師から説明を聞いた、これだけであります。これだけの根拠で憲法上最重要な事柄である内閣総辞職につながる総理大臣の病状を認定できるか、またその認定が妥当かどうかを国民が判断できるか。国民のことは知ったこっちゃないというのは、これはちょっと憲法上ますます問題になるわけですから、こういうことも、これも憲法問題でございます。
 さて、ところで、現行憲法では憲法解釈を最終的に決定するのは最高裁判所。しかし解釈上、最高裁判所は下級裁判所の判断について上級審としてその判断の妥当性を判断する、示すということになっていますから、下級裁判所も含めた司法機関が憲法解釈の最終判断者ということになる。そこで、一刻も停滞を許さない国政の運営を憲法に適合した方法で行っていくには、今回のこの事件、このケース、これは憲法問題ですから、裁判所にこの内閣総辞職についての憲法適合性の判断を下してもらわなきゃならぬということになります。
 私としては、少なくとも今回の病状認定の資料と手続は、これは甚だしくずさんであって証拠法上どうかなどということを考えるまでもなく許されないものであり、今回の総辞職は憲法適合性に重大な疑義があると思います。憲法の番人たる裁判官の皆さんも、もし本当に憲法の番人としての見識と責任感をお持ちなら、これは当然そう考えると思うんです。
 しかし、我が国では現実にはどうなっているかというと、訴訟手続上のさまざまな制約のために、裁判所にこの種の判断を求めることが著しく困難になっています。諸外国の例を見ますと、抽象的違憲審査権というような形でドイツの憲法裁判所の例などもあるし、また我が国国内でも、例えば公職選挙法のように特別の訴訟形態を用意している場合もあるわけです。ですから、この困難をこのまま放置していていいか、手当ての必要性を痛感いたしますが、しかも、現実にはもっと悪い。
 この困難のゆえか、あるいはこの困難を口実にしてか、行政が頼るべき憲法解釈を内閣法制局が行っている。しかもその法制局の解釈というのは最近極めて政治的配慮に富んだ、偏った、言い方によっては、見方によっては脱法行為の手助けをするようなものになっていると思われます。そこで、何としてもこういう隘路を乗り越えて、今回の総辞職について裁判所の憲法判断をいただきたい。法律実務家が在朝在野越えてこの困難を克服する法律的な知恵を出さなきゃならぬことだと思っておりまして、菅政調会長はそういう意味で何とか頑張ってみたいと言っておるわけでございまして、ぜひとも御指導をいただきたいと思います。
#111
○平野貞夫君 まことに憲法及び民主政治に対する明確な御意見でございまして、大変評価するものでございますが、率直に申し上げまして、私も連休中、何かいい方法がないかということを考えていたんですが、さすがはやはりこういうことに菅政調会長が気がつかれたということは大変なことだと思いますので、これは憲政擁護運動なんですよ、民主政治を守るやり方なんですよ。ぜひひとつ、私の方でもいろいろ協力しますので、前向きに御検討いただきたいと思います。
 実は、この問題について私は、先ほど申し上げましたように、予算委員会で取り上げましたところ、大変な誤解を受けまして、私が申し上げた趣旨は、総理が急病となり、医師団の公式発表をせず、あるいは診断書も出さず、病名まで公式に決まっていないわけですからね。こういう状態で職務遂行不能としてやぶの中で憲法七十条の拡大解釈をやった、そして内閣総辞職をさせた。このやり方は一種のクーデターですよと。これを前例とすれば、こういうことが前例となれば、健全な総理を病院に拉致して意識不明として医師団に公式に発表させなければどんなことでもできますよという、仮定の発言を、指摘をしたところ、予算委員会では、その場ではもめなかったんですが、その後理事懇で、私の発言を削除するということを予算委員長が宣告されて、ただその後ちょっと慎重になられてまだ削除の手続がとられていないようですが、こういう発言を削除するようではこれは議会政治の自殺ですよ。危機だと、僕はこう思っているわけです。
 そういう意味で、そのときの予算委員会にいらっしゃった法務大臣、そのときの雰囲気も御存じだと思いますが、今、江田議員の御意見も含めて、法務大臣、こういう訴訟が起これば法務大臣が相手方になるわけでございますが、どういう御所見をお持ちかお答えいただきたいと思います。
#112
○国務大臣(臼井日出男君) 御指摘のような報道がなされているということは承知をいたしております。今後どのような訴訟が提起されるかなどにつきまして具体的な問題については掌握をいたしておりませんし、いずれにいたしましても、意見を申し上げる立場にはないと思いますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
#113
○平野貞夫君 わかりました。これ以上は法務大臣に申し上げませんが、ちょっと技術的なことで刑事局長にお尋ねしたいんですが、刑法百三十四条に医師等の秘密漏示禁止規定があると思いますが、現在、医師団が病状を、いわゆる公人、総理大臣であったときの、公人であったときの病状を発表していないわけですが、これはなぜ発表しないか。どこかの力が発表させないのか、あるいは家族が反対して発表させないでいるのか、これは事実わかりませんが、どうでございましょう、こういう憲法に規定のない行為をやる際に、医師団の、医師団、これは病院側も困っておると思うんですよ、さまざまなうわさが出て。医師団の判断で公人であったときの小渕総理の病状を発表することは、この刑法百三十四条の除外要件の「正当な理由」に入るかどうか、どのような御見解でしょうか。
#114
○政府参考人(古田佑紀君) 特定のある事象についていろんなことを想定してのお話ということでございますので私どもとしては答弁をするのは適当でないと考えておりますが、一般論として申し上げれば、秘密漏せつ罪が成立するためには、医師が正当な理由がないのにその業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らすと、こういう要件に該当することが必要だということになります。
#115
○平野貞夫君 別に特別に私条件いろいろつけているわけじゃございませんが。そうすると、一般論という形でお話しになったんですが、医師団の判断で、総合的に判断して医師団が病状を家族の了解がとれないという前提で発表したらこの刑法の百三十四条に抵触、いわゆる違反すると、こういうことですか。
#116
○政府参考人(古田佑紀君) 繰り返しの御答弁になってまことに恐縮ではございますけれども、ある特定の事実関係についてここでそれが秘密漏せつ罪に該当するかしないかということについて申し上げるのは、これは御容赦いただきたいと考えております。
#117
○平野貞夫君 そうすると、これはあれですか、その判断するのはやっぱり裁判所ですか、最終的に。
#118
○政府参考人(古田佑紀君) 犯罪が現実に何らかの形で成立するかどうかということは、実際の証拠とかそういうようなものとの関係で法律上どうなるかということを判断するという必要があるわけでございますが、いずれにいたしましても、ある特定の状況を想定してのお尋ねということについては、法務当局としては答弁を御容赦いただきたいと考えているということでございます。
#119
○平野貞夫君 わかりました。これ以上申し上げませんが、ただ、近代国家というのは、やはり客観的な事実、客観的な論理、これは一々憲法に、あるいは法律に規定することじゃありませんが、そういう条理のもとで機能するわけでして、診断書もない、医師団の公式発表もないという状況で憲法に規定のない行為が行われたということは、これは本当に外国人はみんな失笑していますよ、やはり日本はおかしな国じゃないかということ。まことに残念でなりません。私は、医師団が判断すれば免責される要件ではないかと、こういう個人的な意見を持っておるということを申し上げて、終わります。
#120
○中村敦夫君 まず最初に、刑訴法等の一部改正案に関する質問をいたします。法務省、お願いします。
 この法案では、希望すれば法廷で自分の気持ちを話すことができる被害者の意見陳述権というものが新設されているわけですね。今までの被害者の言い分というものが黙殺されがちで、言いたいことも言えないというこれまでの状況から考えれば一つのアイデアではあるかと思います。
 しかしながら、私は反対をするわけではないんですが、これを裁判の手続の中にシステムとして組み入れることが果たしてこれまでの裁判の骨格というものを守るために適当であるかどうか大変疑問な点があります。
 一つは、被害者の心情とか感情というものが発言されるわけですから、また、この部分が大変大きいと思うんですね。そうしますと、これは大変マスコミなんかにとっては書きやすい、また売りやすい記事になるということでありまして、飛びつくということは十分に考えられます。そして、それが世論というものを形成するということは現在のマスコミ物理学の現状なわけです。
 そうなりますと、やはり裁判官といえども一人の人間でありますから、やはりそうした圧力に抗することは非常に難しくなる。どうしても自分の判断というものを真っ当にできないという立場に追い込まれることは十分に理解できるわけですね。この点に関して法務当局はどういうふうに考えておられるのかお答えいただきたい。
#121
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに現在の当事者主義構造あるいは刑事裁判の骨格ということから考えまして、被害者の方にどの程度の立場を認めるかということについては慎重な検討が必要な問題だと我々も考えているわけです。
 しかしながら、この意見の陳述に関しましては、現在も実質は情状証人というような形などでその心情等についていろいろ訴える機会というのも設けられているということも事実でございますし、この意見の陳述があってもこれに対しては当然のことながらそういう意見に対して弁護人あるいは被告人の方からそれについての意見なり、場合によっては反論ということを表明する機会というのは十分確保されているわけでございます。
 そういうことからいたしますと、裁判官としてはそういうようなものをすべて考慮した上で判断をするということになるわけでございまして、バランスという面から見て問題が起きるというふうなことは考えられないと思っております。
#122
○中村敦夫君 法律案要綱の六の七というところに、「裁判所は、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代えて意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができるものとする」というふうになっています。
 この「相当」というところの基準ですね、ここのところが非常にあいまいじゃないかと。例えば被害者が、大変犯人が憎らしい、死刑にしてくださいというような発言、こういうことをしてもいいのか。つまり、どこまで言っていいのか、言ってはいけないという規則をあらかじめつくって指導するのかどうかというところの境界線というのは、どういうふうに考えていますか。
#123
○政府参考人(古田佑紀君) 相当でないときというのはいろんな場面が想定されるわけでございまして、ただいま御指摘のような、恐らくいわば過度に応報感情をむき出しにするような御意見みたいな場合かなと想像するわけでございますが、そういうふうな場合にはやはり相当でないというふうな判断になるものと考えられます。
 一般論として申し上げますと、ただいまお話の中にあったような、それがどう見ても過度に感情的だとか、あるいはいろんな発言の内容からして審理に非常に混乱が生じるおそれがある場合とか、こういうふうなたぐいのことが相当性を判断する上での大きな要素になるものと考えているわけでございます。
#124
○中村敦夫君 だから、陳述書に切りかえたときには多少その辺の処理はできると思うんですけれども、現実に裁判の過程に立ってしまったらもうそれは言えるわけですよ。
 ですから、やはり相当でないというもののあるガイドラインというようなところはやはりつくっておくべきではないか。特に、量刑に対して被害者が特定の主張をするというようなことは、裁判のあり方としてはちょっとやはり公平ではなくなるんであろうというふうに思いますので、その辺のところはもう一度検討をしていただきたいという要望をしておきます。
 この件の質問は終わります。
 次に、新潟県警の交通事故もみ消し疑惑に関する質問をいたします。警察庁にお願いしたいんです。
 五月一日に新潟県警の元機動隊長である大沢という現在容疑者が、代議士秘書からの交通事故もみ消し疑惑で逮捕されたわけです。ところが、この大沢容疑者としては、なぜ自分だけが逮捕されるのか非常に疑問であった。つまり、このような事柄は警察の中において日常茶飯であるのに、なぜ私だけがということもあったのでしょう。
 実は、一般の人たちから頼まれてもみ消しするのではなくて、新潟県警の内部で幹部から何度ももみ消しを依頼されてやったと。そして、そのメモを自筆でつくって、これがもうマスコミに流れて明らかになっているわけです。そのメモを読む限り非常に具体的でリアルなわけですよ。どうしてもこれが全部うそだというふうにはとても思えないわけです。
 そのメモには大体十件、具体的に書かれているわけですけれども、こうした警察内で起こった事柄、このことに対して今警察はどういう取り調べをしているのか、各ケースで明らかになったのはどれなのか、処分はどうするつもりかということをお答えいただきたいんです。
#125
○政府参考人(石川重明君) 委員御指摘の件でございますが、ことしの四月下旬に新潟県警察に対しまして報道機関から取材があったわけでございまして、そのことを端緒といたしまして県警の監察部門を中心に関係者から事情聴取、それから問題とされている交通違反の有無についての調査を開始したという報告を受けております。
 これまでの調査では、速度違反自動監視装置による取り締まりを担当している交通機動隊の幹部に対して、部下職員等の違反について違反の有無を確認したり直接交通機動隊へ出向くということなどを行っておった他の所属の幹部職員等がいたということが判明をいたしたわけでございますが、現在なおその事実関係の詳細については調査中であるというふうな報告を受けておるわけでございます。
 したがいまして、処分等につきましては、その結果を踏まえて事実関係に照らして新潟県警において適正に行われるというふうに承知をいたしておるところでございます。
#126
○中村敦夫君 きょうの新聞でも、大沢容疑者に頼んだ代議士秘書も逮捕されているわけですが、新たに一般民間人五人が書類送検されておりますね。一般の人たちに対しては非常に素早い処分の決定があるわけですけれども、警察内部になると調査中というのがもう永遠に続くような感じで非常にあいまいなんですが、これはどのぐらいの時点で明確になるんでしょうか。十件もあるんですから、全部が同じように時間がかかるのではなくて、わかりやすいものからどんどん発表すべきではないかと思うんですけれども、いかがですか。
#127
○政府参考人(石川重明君) 個別の件について最終的な調査結果が出ているといった段階ではないわけでございますけれども、いずれにいたしましてもこの調査は厳正に行いまして、その調査結果を踏まえてきちっとした対応をする、こういうことでございます。
#128
○中村敦夫君 この名簿の中には、元加茂署長の伊藤盛雄氏というんですか、この方のように、例の雪見のマージャン接待の後に綱紀粛正のために本部長が交代した後でこういうもみ消しを依頼したという件もあるわけです。
 そうなりますと、あれだけ大騒ぎして本部長交代までして綱紀粛正というものを宣言した、その反省の跡が見られないということについては、要するに綱紀粛正とかいうのは単なる宣言だけなんですか。実際にそれを宣言した場合に、それをやるために具体的にどういうことをやるかというようなマニュアルなり規則というものはつくられないのですか。そのことをお聞きしたいんです。
#129
○政府参考人(石川重明君) 今お尋ねの件につきましては、先ほど申しましたようにその時期や処理の状況を含めて新潟県警察において事実関係を解明中であるわけでございますけれども、御指摘のように、女性監禁事件あるいは特別監察の際における幹部職員等の不適切な対応ということで国民の大きな御批判を招いたということで、新本部長のもとで規律の厳粛な維持ということで取り組んでおるわけでございますが、これにつきましては、職務倫理、教養の問題とか、あるいは監察をもっときちっと機能させるとか、あるいは警察職員一人一人が自分の行動について警察職員としてのあるべき姿というものを具現化していくということについて真剣に取り組む必要があるわけでございまして、そういった意味でいろいろな対策を今新潟県警としてもとっておる。したがいまして、こういう状況下でさらにこの新本部長のもとでそういう対策を進めていくものというふうに私どもは承知をしておるわけでございます。
#130
○中村敦夫君 そのいろいろの対策というのが具体的によくわからない。みんなで反省しますというようなことでは、実際問題何も変わらないというのが組織だと思うんです。やはりはっきり国民にもわかるような対策というものを具体的に出してそれを発表してもらわないと、単なる常に何か起こったときにそのときだけ反省の弁とこれから頑張りますという宣言文だけ出すということが続いているようだというふうに私は考えますので、今後そうしたものを明確に国民の前に発表するというふうにしていただきたいということであります。
 最後の質問ですけれども、実際、交通違反のもみ消しというのは、これは新潟県警に限らずもう日本じゅうでどの県警でもやっている事柄だということはもう常識に近いぐらいに国民の間では疑われているわけですよね。そうなりますと、法律はあってもコネさえあれば何とかなるんだという社会がもう一つできてしまう。裏社会というものが大規模に日常的に存在してしまうということは法治国家として大変問題であると思うんですね。そのぐらいいいじゃないかという庶民感覚はあるにしても、やはりそれも許されないんだということが大義名分であり、実際に厳しい処置というものが警察内部であろうが民間であろうが行われないと、これはもうこの国が根幹がおかしくなってしまうということになると思うんですね。
 これはたまたまの事故だなどということは言わずに、これはもう一般的な日常的な問題であるし、政治家もかかわっているということもみんな知っているわけですから、ここでとにかく直そうじゃないかというふうに全体で決意しないといけないと思うんですね。特に警察官が警察内部で上司に頼まれてもみ消しするというようなところから問題がずっと残っていたのでは全くこれは解決にならないと思いますが、このことをまず警察から始めてもらいたいというふうに思います。
 ですから、警察庁として全国的にこれを絶対にやめさせる、そして厳しく処分するということのために、今後何らかの対策を立てるおつもりがあるのか、どういう対策なのかということをお答えいただきたい。
#131
○政府参考人(佐々木俊雄君) 警察庁といたしましては、これまでも交通の取り締まり等の管理につきましては厳正公平に行われるように指導してきておるところでございます。
 過日、四月十九日に全国の交通部長会議を開催いたしましたが、その場におきましても、適正な警察行政、交通警察業務の推進、特に交通取り締まりの適正な管理について万全を期するように指示したところでございます。今後とも都道府県警察に対しましては同様な指導を徹底してまいりたい、このように考えております。
 なお、御質問の点につきましては、現在新潟県警において調査中ということでございますので、その結果を待ちまして適正に対処してまいることといたしております。
#132
○中村敦夫君 今全国ですぐに何かやれというふうに言っても、やはり政治の世界も一緒になってやらない限り難しいと思いますが、まず第一に、実際に逮捕された警察官がこの人たちから頼まれたという手書きのメモがもうあるわけです。そしてここにちゃんと十件の具体的な名前とそしてどの場合にやったかということまであるわけですから、これは到底虚偽であるというふうには思えないんですね。このことを厳正にまず処分していただきたい。うやむやにしないでほしい。これをやることから始まるんじゃないかと私は思うので、このことを強く要望して、質問を終わりたいと思います。
#133
○委員長(風間昶君) 午後二時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時五十四分休憩
     ─────・─────
   午後二時二分開会
#134
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、林紀子君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君が選任されました。
    ─────────────
#135
○委員長(風間昶君) 休憩前に引き続き、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び犯罪被害者基本法案を一括して議題といたします。
 本日は、三案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、きょうおいでになっていただいております三名の参考人の方から御意見を伺います。
 本日御出席いただいております参考人は、地下鉄サリン事件被害者遺族高橋シズヱ君、犯罪被害者家族山本忠国君及びテレビドキュメンタリー・ディレクター坂上香君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 なお、高橋参考人の方から御著作であります著書を各委員に御寄贈いただきましたこともあわせて御礼申し上げます。ありがとうございます。
 議事の進め方でございますが、まず高橋参考人、そして山本参考人、次いで坂上参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただければと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、御着席のままで結構ですが、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にできましたらお願いしたいと存じます。
 なお、参考人の意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、まず高橋参考人からお願いいたします。高橋参考人。
#136
○参考人(高橋シズヱ君) きょうはお招きいただき発言の機会をいただきまして、お礼を申し上げます。
 地下鉄サリン事件が起きてから五年以上がたちました。その間、私は主人亡き後の家庭を守り、私自身望んでもいないつらい経験をしてまいりました。また、地下鉄サリン事件被害者の会の代表世話役として、地下鉄サリン被害対策弁護団の指導を受けながら、被害者救済のための活動もしてまいりました。
 おかげさまで、平成十年四月にはオウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律、そして平成十一年十二月には特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法、いわゆる被害者救済法ですが、制定されまして、被害者の要望の一部がかなえられましたことに感謝申し上げます。被害者の要望の一部と申し上げましたが、残りの部分は満たされていないわけでして、その部分についてお話しさせていただきます。
 まず、経済的被害回復のための要望ですが、五年前のあの暖かい穏やかな春の日に主人は命を奪われ、何千人もの人が死に直面し、人生を狂わされ、将来の夢をもぎ取られました。私は損害賠償訴訟の原告の一人になりました。被告たちに賠償金の支払い能力がないことは承知していましたが、私は主人を殺した加害者に謝罪させたかったのです。原告の中には被害による経済的損害が続いている被害者も当然いました。
 そこで、考えますことは、どうして被害者がみずから裁判費用を捻出し裁判を起こさなくてはならないのかということです。犯罪さえなければ経済的被害だってこうむることはなかったのです。それらは直接的な被害だけではなくて、葬儀費用や一家の大黒柱を失ったために生じた収入の減少分、被害者が仕事を休んだりあるいはやめさせられたりしたために得られなくなった収入、地下鉄に乗らないで通勤できる場所に引っ越すための費用、病院に支払う治療費やPTSDに代表される精神的な症状改善のためのカウンセリング費用等、もちろん民事裁判費用も含まれますが、事件の被害者にならなければ決して支払う必要のない経費です。
 被害者が民事裁判を起こさなくても加害者が被害弁償するのは当然のことです。しかし、民事裁判を起こさないと加害者に損害賠償の責任を課せられないのが現状です。ただ、たとえ勝訴しても、事件にかかわった被告人たちあるいは服役者のように加害者に支払い能力がない場合には被害者は被害回復できません。そのような場合には、国が被害者に経済的支援をしていただけないものでしょうか。
 犯罪被害者等給付金支給法では、犯罪被害者遺族と後遺症五級以上というかなり制限された被害者が対象で、しかも一時金で支給されます。遺族と重障害被害者に支給されるのは、過去平均約三百六十八万円と、一部の被害者がほんのいっとき間に合う程度の金額でしかなく、全く不十分と言わざるを得ません。地下鉄サリン事件の被害者で労災保険が適用にならなかった被害者には何の補償もありません。
 先ほど申し上げました特例法によって、オウム破産事件の生命、身体にかかわる被害の債権者への配当率が優遇されましたが、それでも現在まで配当されたのは被害額の約二割という結果です。破産管財人の御努力が続けられていますが、当事者だけが苦心するのではなく、皆様にも知恵を絞っていただき、私たち地下鉄サリン事件の被害者ばかりではなく、全国の犯罪被害者の救済につながるような被害補償の制度を考えていただけないものでしょうか。
 次に、身体的な被害回復のための要望ですが、地下鉄サリン事件の被害者は、サリン中毒の前例がないために病院で十分な治療が施されていません。入院している被害者は病院を転々とさせられています。社会復帰できない被害者は家族に面倒を見てもらっている人もいます。
 被害者の実態把握については、警察庁が二年前の平成十年に続きことしも地下鉄サリン事件被害者の被害実態に関するアンケート調査を実施しています。被害者は思い出すつらさに耐えながらも、国による唯一の調査ということで回答に協力しています。その調査資料が被害者の症状改善のために何か役立っているのでしょうか。きょうも後遺症に苦しみ続けている被害者がいますし、また生活に差しさわりないほどに回復した被害者であっても将来の健康への不安を持っています。
 病院のカルテの保存期間は五年ということですが、地下鉄サリン事件の被害者のカルテを破棄して被害者の存在を葬り去らないようにしてください。
 また、労災保険で治療費を賄っている被害者が最近労災保険の支給をとめられようとして困っているという話を聞きました。その理由は、労働基準監督署が病院の医師に被害者の症状が固定したという診断書を書くように要求しているということでした。どうして被害者がこのような対応をされなければいけないのでしょうか。犯罪被害者手帳の配付をするなど、被害者が病院で適切な治療を継続して受けることができるように、病院を初め関係機関に徹底した御指導をお願いします。
 次に、精神的被害回復のための要望ですが、被害者は心にうっせきしている加害者への気持ちを述べることができ、加害者の一生をかけた心からの償いが得られ、加害者が犯した罪に相当する刑罰に処せられることを望んでいます。今回御審議いただいているすべての項目につきましては、被害者への適切な御配慮をいただいていると思いますので、早期に実現されますようお願いいたします。
 特に、被害者が意見陳述することは精神的な被害回復のためにも重要と考えます。私も民事裁判の口頭弁論では、検察官調書とは違って、私自身の言葉で私や子供たちのつらさや悔しさを意見陳述することができました。ただ、被告席に座っていたのが代理人だったために、被告たちに私の意見陳述を直接聞かせることができなかったことは残念でした。刑事裁判では、この法案が通過すれば当然被告人に聞かせることができるようになるわけです。将来的には遺族が遺影を持って証言できるようになることを希望しています。そして、被害者が警察や検察から裁判の一つのこまとして扱われないようにしていただきたいと思います。
 私が三年前に証人出廷したときに、検事さんから打ち合わせと違うことを言わないでくださいねと言われました。私は検事さんのために証言するわけではないのです。また、検事さんの尋問がまるで加害者に対して尋問しているのではないかと思ったこともありました。
 それはいまだに入院している女性被害者のお兄さんが証人出廷したときでした。地下鉄サリン事件が起きる前日に、妹さんは勤務先と違うところで翌日行われる研修所までのルートをお兄さんに聞きました。翌日お兄さんは妹さんを最寄りの駅まで送っていき見送りましたが、その後、妹さんの乗った車両にはサリンがまかれたのです。検事さんは、お兄さんがその通勤ルートを勧めなければ、そして被害者を最寄りの駅まで送っていき、妹さんがその電車に乗らなければ被害に遭わずに済んだのですねというような尋問をしました。いかにもお兄さんに非があったかのような尋問でした。検事さんがもっと被害者の心情を理解してくださっていたら、このような尋問をすることはなかったと思います。
 そして、何よりも被害者の神経を逆なでしていることは、裁判が長期化していることです。被害者は一生病院とつき合わなければいけないか、薬を飲み続けなければいけないかというようなせっぱ詰まった生活を強いられ、あるいは将来の生活や健康にいつも不安を感じて生きていなければならないのに、加害者はきょうも税金で衣食住事足りているのです。松本智津夫被告の初公判から四年間、国選弁護人が努力してきたことは被告人を生き長らえさせることではないかとさえ思えるような裁判が続いています。刑事裁判は、裁判官、検察官、そして特に弁護人に努力していただいて迅速に進めるようにお願いしたいものです。
 最後に、犯罪被害者基本法案についてですが、被害者の権利の確立と被害者支援の必要性が徐々に高まり、犯罪被害者基本法案が検討されるようになりまして、大変ありがたいことだと思っております。全国の被害者自身の活動も活発になってきていますが、御存じのとおり被害者のニーズはさまざまで、それらを満たすにはいろいろな方面の専門家の方々の御支援が必要になってきます。
 被害者は、警察からあるいはメディアから事件を知らされ、警察の事情聴取を受け、司法解剖された遺体と対面し、メディアの取材攻勢に遭い、裁判にかかわりと、ずっとつらい経験をしていくわけですが、その過程の中で、被害者にかかわるこのような専門家の普通の仕事が、犯罪被害者にとっては初めて経験することでさらに傷つく出来事ばかりなのです。犯罪被害者基本法が制定されましたならば、被害者の権利が明確になり、被害者が状況に応じた支援をお願いすることができます。犯罪被害者の記憶や傷ついた心は決して消し去ることはできないのですが、被害者が必要としている支援を受けられることによって被害者は徐々に緊張や不安が減少し、社会への信頼を取り戻せるようになると思います。
 この時代、だれもが犯罪に巻き込まれ被害者になる可能性があります。被害者の問題を他人事と考えないで、社会全体が何らかの形で被害者を支援するような体制になることを希望します。
 以上、どうもありがとうございました。
#137
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
#138
○参考人(山本忠国君) 自分は今静岡に住んでいます。それで、今回この席に出席させていただきましてありがとうございます。
 自分の息子は今から三年半ほど前、平成八年九月十五日、九人のグループに関係のないことで殴るけるの暴行を受けて、当時、意識不明、そのまま病院に運ばれて、それで今三年半になってやっと辛うじて右手が少し動き出しました。それまでのいろんな体験というか思ったことをこの場で述べさせていただきたいと思います。
 まず、今この場でお話しする息子の経過なんですけれども、当時、静岡の日赤病院に急性硬膜下血腫ということで、すぐに手術をしないと命の危険があるということでその場ですぐに手術に入りました。それで、当初、容体も悪化したりして集中治療室に一カ月ほど入ったきりで、それからやっと一カ月を超えるころに個室に移されたときも、こちらからの呼びかけにも何も応答ができず、ただ人工呼吸器をつけたままで個室に移されました。
 それで、日赤病院で三カ月ほどしてから外科的治療法はもうないからということで、あとは家に連れて帰るか、またはリハビリ的な病院を探すようにというふうに担当の医師から言われました。自分たちはそういったことは一切今まで考えてもいなかったものですから、どうやっていいのかわからないし、そういった寝たきりの息子を、意識もこちらからの呼びかけにも応答がない状態で家に連れて帰ってもどうやっていいのかわからずに、当初、日赤病院の紹介で伊豆の病院を紹介されて、そちらの方をお願いに行ったんですけれども、そちらの方では、息子の状態から、そちらのリハビリ的な治療はできないとのことで断られて、さんざん困り果てたあげく、会社の方の病院が同じ伊豆にあるものですから、そちらの方に何とか条件つきでということで入れてもらうことができました。
 その条件というのが、どうしても息子の状態、寝たきりでつききりの介添えが必要ということで、妻が日赤の個室に移るころから休職、当然無給で一年半までは休職ができるということで、会社の配慮から一応何とかその一年半の間にということで休職をとるような形でいたんですけれども、伊豆の病院でもそのまま付き添い、二十四時間の付き添いを条件に何とか入れてもらうことができました。
 それから、伊豆の病院に半年ですか、事件当初から一年ぐらい、やっとそのぐらいのころに、息子の、こちらの呼びかけに対して反応が出るようになりました。それで今は、静岡のリハビリ病院を一年少し、今の病院に一年、もうすぐ一年半になります。そこでやっと何とかパソコンを使ってキーボードをたたけるような形にまでなってきました。
 これが今までの息子の経過なんですけれども、その中で、まず第一に自分が感じたこと。
 事件当初、警察、検察の方の連絡より先に、犯人が捕まったというのを自分の息子の友達だとか新聞の記事の方から先に知りました。今は制度も変わったようでそういったものはなくなっているようですけれども、当時は、最初の裁判が行われる日、その日を知ったのも息子の友達からでした。自分たちはそういったことを知りたいというのにもかかわらず、自分たちから言っていかなければだめだという、教えてもらえない、そんな形のものであってはならないと思います。
 あと、受け入れる施設についてなんですけれども、息子は寝たきり状態で、何とか今三年半かかってやっと右手だけが辛うじて動くような状態にまで持ってきています。息子はやっとことしで二十になりました。それをもう少し延ばしてやりたいものですから、何とかリハビリを続けていけるような病院を探すんですけれども、今の病院も当初半年または一年半ぐらいまではということで受け入れてもらえたんですけれども、その期限もそろそろ、また別の病院をという問題も抱えているものですから、そういった問題。
 いつも次の病院、次の受け入れ先、市の方にも施設として養護施設があるものですからそういったものもお願いしてあるんですけれども、当初お願いしたときに、県内で百二十五人中百二十五番目に当たると。それでその後、再度、今どのぐらいですかとお伺いしたところ、百四十何名中百三十五。その順番というのが、自分たち二人は共稼ぎで収入的にはありますし、そういったものもあわせると順位がどんどん下がっていく。長期にわたるそういった施設についてはほとんど受け入れられない状態であるというのが現状なものですから、そういったことも、もっと簡単に受け入れられるところができるのであれば、そういったものが自分たちには今欲しいと思っています。施設的にはそういう形になります。
 あと、今回、犯罪被害者給付金ということで支給の対象になりました。その支給対象額が三百三十五万円。裁判の途中で、相手三人が裁判の対象になったんですけれども、その三人の家族から二百万円ずつ、合計六百万。確かに二百万というのは自分たちにとっても大きな額で、合計すると一千万円近くになります。ただ、それもこの三年半で医療費としてかかっているのが一千万円を超えています。
 そういった状況の中で、今もずっと続いているんですけれども、日々大体一万円、月に三十万円前後医療費としてかかっています。二人とも今共稼ぎで働いていますので、それで妻の働き分を医療に、そちらの方に向けるということで生活は自分一人でやるような形。当然、自分たちは家のローンも払っていかなきゃならないし、次男が今高二です、これからの次男のことも考えなきゃならないものですから、そういったことを考えると正直言ってとても不安で、経済的にも不安ですし、先のことを考えるととてもやりきれない気持ちでいっぱいです。そういった中で、何とか今息子はここまで回復してきているものですから、できればこの状態を続けていけるような状況、そんな状況をずっとつくっていっていただければありがたいと思います。
 あと、自分たちが本当に今考えていることなんですけれども、加害者に対しての気持ち、これは自分だけかもしれません。
 正直なところ、加害者二人は三年半、一人が二年半、もう刑期も済んで出てきていると思います。うわさでは、出所祝いをしているといううわさも聞いたことがあります。そういった中で、刑期を終えればそれで終わり、その間に息子に何のあいさつもなし、謝りもなし、電話の一本もなし。当然二十を過ぎていますので、相手の親はもう親としての義務はないと、そんなことまで言われているんですけれども、加害者にも人権があるのであれば、人としての権利があるのであれば義務も、それなりの義務を果たしてこその人権だと思うんですよ。そういったものがない人間に対して、自分はとても人権をというような言葉は正直なところ今の気持ちでは出せません。
 加害者にも人権をという言葉をよく聞くんですけれども、確かに人権を認めるべき人間と、認められないそういった人間が実際にいるということを知っていただきたい。通常であれば、せめて電話の一本、手紙の一通、それをくれてもいいと思うのに、いまだかつて何の音さたもない。自分たちの状況が伝えられない。せめて自分たちがこうなっていることを知らせたいというのが今の気持ちです。
 それで、最後になんですけれども、今こうやってこの場に来させていただいているのは、当初自分たちは刑事、民事、一切わかりませんでした。刑事裁判、民事裁判が何なのかもわかりませんでした。それで、警察が入ってくれればすべて解決するだろうと思っていました。それが実際、刑事裁判は警察が調べて検事さんがそれを下す、そんな形のもので、民事とは別だということを初めて知って、その時点で自分たちはどうしていいのかわからなくて、息子の状況もそういった状況下で、時間もない中で、どうにか会社の方の法律相談というのがあるということで弁護士さんに相談したところ、その弁護士さんは、当然裁判を起こして勝てるだろうけれども、勝てたとしても一銭も戻ってこないだろう、恐らく一銭も取れないだろう、ただの白紙の紙をもらうよりは二百万それぞれ合わせて六百万、それだけもらえただけいいんじゃないかと言う。
 そういった形で裁判を起こすためには、当然息子の状態からすると何億という賠償金になると思うんです。だから、その裁判を起こす費用、印紙だけでも何十万かかる。そういったものにあえて費やすよりは、せめてその金をもとに生活の安定をとりあえずとった方がいいと言われたんですけれども、自分たちとしては、そのままほうっておけば息子は何のために、今そのまま、今の状態、息子は多分これから二十年、三十年、自分たちが先に逝くと思いますけれども、息子はもっと生きていくと思います。それも、相手は三年半でそれで終わっちゃう。それが息子は一生、二十年、三十年、ほぼこのままの状態を続けるかと思うと、とてもつらくてやるせない思いでいっぱいです。
 そういったことを考えた中で、たまたま弁護士さん、今回、犯罪被害の支援の方で静岡の白井弁護士という方に妻の知り合いから相談をすることになりまして、その方が、費用等は考えなくていいよということで、自分たちは安心してその人に任せておくことができました。そういった形の支援。
 当然、自分たちは何とか、そのままならないにしても、例えばその六百万を全部使ってでも裁判を起こしたい。起こすのは何でかというと、息子がこうなっているのに、相手は社会的責任をとった形の三年半の刑でそれで終わり、そのあいさつも一切なしという、そういった形のものではとてもやりきれない気持ちでいっぱいだったものですから、たまたま今回、相談ができる弁護士さんにめぐり会えたことを非常にうれしく、それと心強く思っている次第です。
 つたない陳述というか自分たちの今の気持ちというか、そういったものをお伝えするだけになりましたけれども、これが自分の今の気持ちです。
 どうも失礼しました。
#139
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、坂上参考人にお願いいたします。坂上参考人。
#140
○参考人(坂上香君) 坂上香と申します。
 テレビ番組の制作会社で働いています。ここ数年、主に犯罪とそれに対する社会からの対応ということをテーマにドキュメンタリーを制作してきました。きょうは、取材を通して私自身が見聞きし、実感してきたことをお話ししたいと思います。
 まず、今までお話にもあったように、犯罪といってもさまざまです。被害者、加害者といっても一つの枠ではくくれません。
 例えば、私がアメリカで取材した例では、殺人事件の被害者遺族でありながら加害者との和解を求める遺族の会という団体があります。和解を求める殺人事件被害者遺族の会というのが名称です。ボストンに事務局を置き、会員数四千人余りの中規模な全国レベルの組織です。
 ここに集う人々は愛する家族を殺されたという共通の体験を持っていますが、事件の内容や背景、事情、そして遺族が抱いている感情そしてニーズというのは本当にさまざまです。四千人の会員ですから四千通りあるわけです。
 例えば、彼らは和解を望んでいるといっても、その和解の形はそれぞれです。中には、子供を殺した犯人と面会や文通を続けて犯人を既に許したと言い切る人もいますが、これは本当にごく少数です。妻を殺した犯人を決して一生許せないだろうと言い、犯人を死刑にしても何も解決しないのでほかの可能性を探ろうとしている人もいます。また、殺された娘さんのよい思い出を人に語り続けることによって少しずつ生きる希望を取り戻していっているといった人にも会いました。
 二点目なんですが、司法への被害者の参加という点ですが、最近、メディアや社会の関心も高まっているように思います。被害者の視点が司法にも取り入れられ、被害者の知る権利というものが確立されることは本当に大切なことだと思います。
 しかし同時に、最近の司法に対する過度な期待に対して私個人は少し危惧を抱いています。特に、刑事裁判において被害者の声を反映させるという点についてです。
 私は、遺族を含むさまざまな被害者の方々がみずからの悔しさ、恨み、悲しさ、やるせなさ、戸惑い、怒りといったことを表現することはとても大事だと思います。その気持ちも本当に大事にすべきだと思います。そういう感情を持つなというのは、持つなという方が暴力だと思います。
 しかし、その気持ち自身を大事にすることというのが、直ちに刑事司法制度の上で被害者の気持ちどおりに犯罪の事実が認定され、刑罰が実現されるべきだというふうには考えません。
 被害者の気持ちというのは、時と場所とどのような支援があるかによって幅があると思います。その気持ちの幅、揺れ幅ですが、その幅を幅として受けとめるためにも、被害者感情の刑事司法制度への反映を固定的に考えるべきではないというふうに感じています。
 実際、和解のための殺人事件被害者遺族の会で出会った遺族の中には、事件直後は家族を殺した犯人はもう死刑で当然、むしろ自分の手で殺してやりたいというふうに思っていた人も本当にたくさんいました。しかし、十年、十二年、十五年、二十年という長い月日を経て、さまざまな人々から支えられる中で、社会からの支援を受ける中で気持ちが大きく変化したというふうに言っています。
 日本でも、少年事件によってお子さんを失われた遺族の方と何度か私自身お目にかかっていますが、語る場所、雰囲気などによってかなり違いますし、何よりも事件からの時間の経過、その中でどんな人たちと会ってきたか、さまざまな支援なんかによってかなり気持ちにも変化が見えているなというのが今の実感です。
 被害者の抱える問題というのは、当たり前ですが司法だけで解決するわけではないです。司法の改善と同時に、高橋さんもおっしゃられていたような心理だとか精神、医療、教育、企業など、社会におけるあらゆる分野で被害者への支援が必要だと思います。
 そういう意味で、レジュメの三点目にある必要な援助を後押しするシステム、場、人、ケアというのや、さまざまな機関の柔軟な連携が不可欠になってくるというふうに考えます。
 実はここに、ミネソタ州の人口十万人程度の郡が無料配布している被害者支援のリストがあります。これが現物で、これは私が勝手に日本語に訳したものなのですが、よかったら後で皆さん、手にとって見ていただきたいんですが、物すごくたくさん団体が載っています。
 これはただ単に犯罪の被害者ということだけではなくて、社会的不利益をこうむった人すべての支援団体の連絡先が載ったものです。緊急時の二十四時間電話相談から裁判所や病院までの車の手配や付き添い、被害者のためのお葬式のサービスまで、あらゆる支援先が掲載されています。今、もし同じ十万人規模の市町村レベルで日本でこのようなものをつくるとしたら、多分一ページにも満たないレベルだというふうに思います。
 四点目に挙げた被害者への弁償という点ですが、山本さんや高橋さんからのお話でもわかるように、現在の被害者給付金では全く不十分だというふうに感じます。
 アメリカでは犯罪被害者基金というのが一九八〇年代後半につくられました。日本円にすると一年に七百億円近い予算がこのようなリストに載っている被害者支援団体に補助金という形で還元されています。興味深いことに、この九〇%、七百億円の九〇%のお金は犯罪者が支払った罰金、反則金、保釈金または犯罪者の所有物を処分して得た利益などから出ているというふうに聞いています。
 それから、アメリカでは刑事レベルでも、事件で直接こうむった物損や体や心へのダメージ、傷ですね、に対しては被告人側が被害者に対して弁償金の支払いを命じられることになっています。昨年、少年犯罪への新しい試みを取材したときにも、それを見て知って驚いたんですが、少年事件でさえほとんど必ずと言っていいほど、その審判の時点で心や体や物へのダメージへの弁償が命じられています。
 そういう意味では、犯罪被害者の前提がアメリカと日本では余りにも違い過ぎます。日本では余りにも被害者への負担が多過ぎるように感じます。それによって多分被害感情というのもさらに複雑に絡まり合ってしまうんではないかというふうに個人的には感じます。
 レジュメの二番目の項目ですが、最近、日本でも凶悪な犯罪の報道が続いていて、加害者の人権は守られ過ぎているという議論が盛んです。被害者の当事者の方がそういうふうに感じられるのはもう本当にごもっともだと思います。でも、私自身、決してこの国では加害者の人権が守られ過ぎているというふうには思いません。被害者の人権も加害者の人権も両方十分に守られていないというふうに感じています。そして、そう言った方が正しいというふうに思います。どちらかを、被害者をおとしめるでもなく、犯罪者をおとしめるでもなく、両方ともどうしてもっとレベルを引き上げられないのだろうかというふうに思います。
 犯罪にどう向き合うかということを考えるとき、被害者の救済、支援と同じぐらい加害者の更生、処遇という点も重要だと思います。犯罪被害といっても、傷害、強姦、窃盗、殺人などさまざまですから、単に厳罰化だけでは問題が解決しないと思います。再犯防止という点からもかぎを握っていると思います。しかし、日本では、まず加害者の処遇関連の情報が圧倒的に少ないというふうに感じます。
 最近、少年院から出て間もない日本の二十前後の少年たちと話す機会がありました。大ざっぱに分けると二パターンぐらいに分かれるかなというふうに感じました。
 少年院における厳し過ぎて細か過ぎて理不尽なまるで戦中の軍隊のような規則、それと管理体制の中で全く感覚を殺して何も感じないようにしてきている少年たち。もう一パターンは、少年院で自分たちが受けた扱いに恨みと怒りを抱いている少年たち。彼らの多くは、自分の犯した犯罪に思いを寄せる、反省するどころか、すべてを忘れようとしている、もしくは少年院そのものや職員や少年院で生活をともにしてきた少年たちへの恨みつらみでいっぱいです。本当に彼らと話をしていて思ったのは、加害者の反省を促すという点でも全く逆効果なことやむだなことをやり過ぎているというふうに感じました。
 また、矯正職員と話をする機会もありましたが、中には現状に疑問を抱いてほかのアプローチを模索している人もいます。しかし、新しいことを始めるだけの周りの理解も協力も乏しく、制度的にもさまざまな壁があるというふうに言っていました。
 そういった意味で、今から、五分ぐらいに短縮した、九八年にNHKの衛星で放送した番組がありますが、このアメリカのアミティという民間団体運営の犯罪者の更生施設のあり方は参考になると思います。
 回してください。
   〔ビデオ映写〕
#141
○参考人(坂上香君) ちょっと時間が超過してしまいましたので、アミティのパートは割愛させていただきます。
 ただ、一つ触れておきたいのは、このプログラムに参加した受刑者の再犯率というのが何も受けない人たちの三分の一にとどまっています。
 この四月にここのスタッフを日本に招いて各地で講演会をして回ったんですが、彼女たちからよく言われたことに、厳罰化にしてアメリカの二の舞を踏みたいの、という言葉があります。アメリカは八〇年代から厳罰化の勢いを強めてきました。しかし、その結果が、端的に言うと、受刑者二百万人、保護観察や仮釈放中の人を入れると五百万人に及ぶいわゆる犯罪者と言われる人々です。
 三番目のレジュメの項目を見ていただきたいんですが、今アメリカはある種の転換期にあると言っていいと思います。昨年、犯罪少年が被害者と直接対話するという少年犯罪への新しい取り組みについて番組をつくりましたが、そのときの考え方の軸がリストラティブジャスティス、日本では修復的司法または回復的司法と呼ばれるアプローチでした。これは司法だけではなく教育現場などでも活用されているんですが、そこで感じたことは厳罰化が行くところまで行ったということです。今徐々に移行しつつあるモデルがリストラティブジャスティスというわけです。被害者の声を司法に反映させるという点がまず一つと、加害者の更生という両側面からのアプローチです。それは、後ほどお手元にある資料の四の「世界」の原稿を読んでいただければもう少し具体的に想像していただけるかと思いますが、要するに犯罪の当事者同士で犯罪によって起こった被害を回復しようという試みです。
 このリストラティブジャスティスという考え方は万能ではありません。特に加害者が否認している場合は使えませんし、被害が重い場合、例えば殺人事件やレイプなどのケースでは、直接加害者と被害者が対話をして解決するというケースはまだまだ欧米でも少ないです。
 ただし、凶悪犯罪への適用は不可能かといえば、決してそうではなく、レジュメの項目一に戻っていただいて、一の被害者へのケアということと、二に戻っていただいて、二の加害者への処遇、この二つの点が重要になってきます。すなわち、直接対話する前に、かなり長い時間をかけてじっくりとそれぞれがそれぞれの問題と向き合い、ある程度いやされ問題を受けとめられる素地をつくる必要があるからです。
 最後に、このような三つのテーマに私自身が関心を持つようになったのは、中学生のころ、私自身も十五人からリンチに遭いました。何のケアも全く受けられずに、学校からは、命に別状がなかったのだからラッキーだと思いなさい、あしたから学校に来なさいという扱いを受けて、ひどく怒りや何とも言えない感情にしがみつかざるを得ない状況が何年も続いていました。
 そういう意味で、この三つのアプローチというのは、私自身がもしあの中学のときに、被害に遭っていたあのときにこういう手法があったらなという思いから取材してきました。
 きょうはちょっと時間を超過してしまいましたが、どうもありがとうございました。
#142
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方の意見陳述は終わりました。
 これより参考人の方々に対する質疑を行わせていただきます。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#143
○北岡秀二君 自由民主党の北岡秀二でございます。
 三人の参考人の皆様方、それぞれのお立場で大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。特に高橋さん、山本さんにおかれましては、御家族が大変悲惨な事件に巻き込まれたということで、今まで御経験をされた思いをお述べいただいて、本当にありがとうございました。
 私からは、お三人の参考人にお一人ずつ、一問ずつお聞きしたいと思います。
 まず高橋参考人にお伺いをいたします。
 高橋参考人は、地下鉄サリン事件被害者の会を結成されて、その会の代表世話人ということで御尽力をいただいておるようでございますが、犯罪被害者の問題に現在まで取り組んできた中で支障となるようなこと、どういうようなことがあったか。そしてまた、なおかつ、現在までこの会をいろんな意味で維持していくに当たって、どんな御苦労をされていらっしゃるのかお伺いをしたいと思います。
#144
○参考人(高橋シズヱ君) 支障であったことと申しますのは、被害者自身が自分たちでいろいろな問題を乗り越えなくてはいけない、前例がなかったということもありまして、法的なことでは被害対策弁護団のサポートを受けられましたが、それ以外のことに関しては、何も私たちで回復のための手段というものを持ち合わせていませんでしたから、その点ではすごく苦労しています。
 そういうことに関しまして、関係省庁への要望書というのを毎年出しているんですけれども、そのことに関して全然回答がない。厚生省からは去年回答をいただきましたけれども、それ以外のところからは回答をいただいていないという現状です。ですから、そういう問題に関してどのように対処していったらいいか、いまだに見つからないという現状です。
 それから、会の維持のための苦労ということですけれども、やはり被害者同士が集まって何か話をするということは大変苦痛なことが多いし、そこでやはり医療的なサポートを受けられたらいいかなというふうに、今後もそれは引き続きあるんですけれども、活動を通してあるいは集い、会合を通してそういう医療的なサポートを受けられたらもっといやしにつながっていくのではないかというふうに思っています。
#145
○北岡秀二君 ありがとうございました。
 それでは、山本参考人にお伺いしますが、まず前段に、先ほどのお話の中で、息子さんが集団的に暴行をされた加害者の数というのは九人ですね。その中で、何のおわびも、あるいは御家族からの接触も、九人全員からなかったんですか。
#146
○参考人(山本忠国君) 九人グループというのはわかったんですけれども、そのうちの三人だけが加害者として扱われて、残る六人については、証拠が不十分というか、息子をどういうふうにして殴ったとかという状況がつかめないということで、一切そういった、残る六人、それも名前も定かでない状態のニックネームだけで、そこの九人がそれぞれが詳しい知り合いではないという、そこの場所に集まってつくったグループみたいな形の、俗に言う、昔チーマーという形のものであったんですけれども、そのうちの三人が捕まって、その三人の親御さんたちは両親そろって日赤の病院、入院中に何回か見舞いにも来てはくれたんですけれども、自分たちも状況が状況だけに病院には来てくれるなとお断りしたんですけれども、それ以後親御さんからも何の一報もないし、実際の三人、残る六人からも一切の連絡等も何もない状態です。
 そんな中で、自分は、たまたま新聞の取材に応じてくれないかという依頼があって、それも実名で載せてもらえないかという依頼があったんですけれども、実名を載せるということは、自分も会社を持っています。そういう中で、会社の中でも取りざたされるのを懸念はしたんですけれども、せめてそういう記事を見て何らかの電話の一本なりが来るのを期待して実名でということで二度ほど出させていただいたんですけれども、今に至って何の連絡もない状態です。
#147
○北岡秀二君 続いてもう一つお伺いしたいことがあるんですが、山本参考人におかれましては、息子さんが現在もリハビリ、いろいろ闘病中ということで、ともどもに犯罪被害ということに関してはもう闘っている真っただ中ということで、犯罪被害者の立場について、今までの御感想で、特に社会がもっと理解を深めていただかなければならないなという点がおありでしたらお教えをいただきたい。そしてまた、なおかつそれに対してどういう対応をお望みなのかお聞かせをいただきたいと思います。
#148
○参考人(山本忠国君) 社会に対してというか、自分たちの希望としては、自分たち、正直なところ、今こうやってお話ししている中でもとてもつらい気持ちでいます。今、三年半を過ぎてやっとここまで来ました。当初は、とてもこんなことは考えてもいませんでした。
 そんな中で、今回、たまたま相談に乗っていただける人がいた、それと曲がりなりにも何とか受け入れてくれるところがあった、そういう状況下があったからこそ今ここにいられるんですけれども、今後この先、受け入れ先がなかった場合、今二人で共稼ぎで何とかやっていますけれども、受け入れるところがない場合は、もう家に連れて帰る以外にないんです。ほかに受け入れるところがなければ家しか帰るところがないし、家に連れて帰りたいのはやまやまなんですけれども、今ここで、ここまでリハビリを行って、家に連れて帰って、妻なり自分なりが仕事をやめて、どちらかがやめて、それで続けていかれるかという状況が、現実的には難しいと思うんです。
 そういったことが、自分たちが被害を受けているにもかかわらず、なぜそんな心配をいつまでもいつまでもしていなきゃならないのかというのを非常につらく思いますし、今後ずっと続けていかなきゃならないだろうと思うことを、先を考えると、今こういう状況の中でこんな話をしていますけれども、それを口にするのがとてもつらいものですから、なるべく息子の笑い顔を見ながら、それだけを思って何とかやっていっている状況です。
#149
○北岡秀二君 ありがとうございました。
 それでは、坂上参考人にお伺いをいたします。
 坂上参考人を一般的なマスコミ人として質問をさせていただきたいんですが、犯罪被害者とマスコミとの関係、いろいろな功罪が言われております。プライバシーの問題あるいは執拗な取材の問題。当然功の部分も、坂上さんが活動されていらっしゃる部分というのはいろんな部分にスポットを当てて国民に広くその部分を理解していただく、そういう功の部分もあろうかと思うんですが、犯罪被害者とマスコミの関係についてのお考え、そしてまた本来どうあるべきかというようなお考えがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
#150
○参考人(坂上香君) 今、マスコミを代表するというようなお話があったんですが、私は一年に一本か二本しか番組をつくりません。いわゆるニュース報道と同じような仕事の形態をしていないので、どちらかというと自主制作に近いかと思いますので、私自身もテレビを見ながら、テレビに、モニターに向かって叫んだり、何でこんな報道をするんだ、ばかやろうというふうに文句を言う立場にいるので、どちらかというとメディアとしての意見を求められるとなかなか言いづらいというのがあります。
 一言言わせていただくのであれば、やはりメディアの人間への教育というか、こういう本当に、犯罪の当事者の方々を取材するということだけではなくて、まずこういう方たちがどういう問題を抱えているのかということを勉強する、知っていただくような機会をメディアの中にも設けて、例えば研修にそういうことを含んでいくというようなことも考えられるかなというふうに思っています。それぐらいしか言えません、済みません。
#151
○北岡秀二君 ありがとうございました。
 私はもう終わります。
#152
○千葉景子君 きょうは三名の参考人の皆さんには本当に、私もなかなか言葉に窮するんですけれども、重いさまざまなお気持ちを胸に抱えながらもお越しいただいて、そしてそれぞれ陳述をいただきましたことを本当に心から御礼を申し上げたいと思います。私たちも本当に気持ちをなかなか共有するところまでにいかないかもしれませんけれども、ぜひそれぞれの陳述をいただいたことを受けとめていきたい、まずそんな気持ちでございます。
 その上でお一人お一人ちょっとお尋ねをさせていただければというふうに思っておりますが、まず高橋参考人、ありがとうございました、本当に貴重なお話を聞かせていただいたわけですけれども、最後に、他人事と考えずに社会が全体でやはり取り組んでいくこと、そういうことの必要性をお訴えいただきまして、本当に私もそのとおりだというふうに思っております。
 その中で、経済的な被害の問題がございました。裁判費用を含め非常に、何で被害を受けながら自分たちが調達をしなければいけないか、あるいはお葬儀の費用からと、こういうお話でございましたけれども、なかなかすぐに解決をしないかもしれませんけれども、被害を受けられた皆さんが、一番真っ先にやはり経済的にどういう点をサポートすることが大事だとお考えでしょうか。これは、その時々に応じてさまざまな経済的な問題があろうかと思いますけれども、早急にしなければいけない、そういうことが何かございましたらお教えいただきたいと思うのですけれども。
#153
○参考人(高橋シズヱ君) 早急にと言われましても、やはり被害というのが長引くということがあります。例えば、地下鉄サリン事件の被害者でしたらばサリン中毒の後遺症というもの、頭痛ですとか、目、視力というかあれは目の障害なんでしょうか、目の筋肉だと思うんですけれども、光がまぶしくなったりとか、それからあと吐き気だとか、もちろんPTSDとか、もう長期にわたるものですね。そういう医療費というものがやはり長い間の負担になってくるということで、やはり医療費が一番必要ではないかと思っています。
 遺族に関しましては、やはり早急に何らかの、葬儀を出すためのお金が必要になりますし、また遺族でも引っ越さなくてはいけないような状況、社会的な状況ってありますね。近所の人たちの中傷、もちろん地下鉄サリン事件の遺族はその中傷を受けるようなことではないわけですけれども、それでもやはり周りの人の視線を感じるのが嫌だとかという気持ちになって引っ越しをするという人もいますし、また被害者自身が、サリン中毒のためにあの人は仕事ができない、あるいはすごい偏見だと思うんですけれどもサリン中毒がうつるというようなことまで言われて、仕事をやめざるを得なくなったり、またそこから引っ越さざるを得なくなったりとか、そういう資金というのがやはり負担になってくると思います。
#154
○千葉景子君 本当にそれぞれの部分でさまざまな経済的な負担ということがあろうかというふうに思います。今後、私たちもぜひ念頭に置かせていただかなければいけないというふうに思っております。
 次に、山本参考人にお尋ねさせていただきますけれども、やはり共通の問題になろうかと思いますが、先ほど裁判の話がございました。仮に裁判をすると非常に裁判費用もかかるし、そして結果的にはそれが取り戻せるかどうかわからない、そういう中で一定の譲歩をされたというお話でございましたけれども、もし裁判などがそういう費用とか十分にサポートするような体制があれば、やはり被害回復を裁判を通じておやりになりたいといいますか、なろうという気持ちは当然おありだったんでしょうね。その辺はいかがでしょうか。
#155
○参考人(山本忠国君) 今の点なんですけれども、今ようやく三年半過ぎたんですけれども、やっと提訴にまで、民事裁判の方を起こすことがどうにか、今回犯罪被害者給付金もいただいて、そういったことで正直、弁護士さんの方でボランティア的な動きをしてくれているものですから費用は気にしなくていいということで、そちらの方は何とかようやく今の時点で提訴に持ち込むことが、まだ完全な日取り、日程等は決まってないんですけれども、そこまでできました。それも相談ができるところ、そういった支援していただけるところがたまたま自分は知り合いということであったんですけれども、これがなければ自分たち、今もどういうふうにしていいのかわからずに、多分この場にもいない状態でいたと思います。
#156
○千葉景子君 山本参考人にもう一点お尋ねさせていただきますけれども、これも会社の方の対応も、休職などを含めて、また復職をするという受け入れの体制もあったように私もお聞きいたしましたけれども、やはり周囲の、あるいはそういう仕事の面などで、もしそういう体制などが十分でなければ大変経済的にもより厳しいこともあったのではないかというふうに思いますけれども、そういう企業あるいは会社とか、そういう周りの受け入れ体制といいましょうか、そういうものについてはやはり大変重要だなというふうに思うんですが、お考えはございますでしょうか。
#157
○参考人(山本忠国君) 今も会社に対してありがたいなと思っていることが、正直そういった制度があるということで、その制度、今までに自分の会社でこういった形の休職というのは初めてだったようなんですけれども、妻の上司等の配慮があって最大限、そこまで頑張ってだめならということで励ましもあって何とかそういった環境下で過ごせましたし、自分の職場自体は、周りの者が気を使ってくれて、正直なところ見舞いという形でみんなからもらって、本来でしたらそれぞれにお礼を言わなきゃならないというのをあえて一切することがないからと言ってくれて、息子のことに対して今まで一言も、みんな気を使ってくれて事細かには聞かないし自分も話さない、そういった状況の中で何とかここまでやってこれたのをありがたく思っています。そういった環境があったからということです。
 以上です。
#158
○千葉景子君 次に、坂上参考人にお聞かせいただきたいと思うんですが、先ほどから資料につけていただきましたものなどもちょっと拝見しながら、それから先ほどの陳述の中でもお話があったんですけれども、私も大変複雑に思っておりますけれども、やはり被害者の皆さんの人権あるいは救済を図るということと、それから加害者の側のやっぱり更生とか人権をより大事にしていくということは、やっぱり両方を考えていかなければいけないと、私もそこを本当に感ずるところです。
 最近、被害者の皆さんへ光が当たっていく、そしてそのサポートのさまざまな施策が講じられること、これは私も本当に大事なことだというふうに思っておりますけれども、やっぱりその反面で何かそれが、被害者への関心が高まる反面、加害者に対する攻撃のようなものに転化されていくことの危惧みたいなことをお書きになったりお話しされていましたけれども、そのあたりについてはもう少しお話しいただければと。今回幾つかの制度もつくられる予定ですけれども、そういうことがあらぬ反動になるということを私たちも避けなければいけないというふうに思うんですけれども、その辺いかがでしょうか。
#159
○参考人(坂上香君) 今おっしゃっていただいたこと、本当にそのとおりだというふうに私も感じておりますが、例えば被害者の方たちが抱く感情、私自身も、殺されてはいないですが十五人からリンチを受けたときに、たばこの火をすりつけられるだとか顔を廊下に押しつけられたりだとか、けられたり殴られたりだとか、とても屈辱的な目に遭いました。けがも負いました。そういう体験をしたときに、やっぱり物すごい感情を抱くわけです。その感情を抱くということ自体は責められないですし、それを逆にちゃんと受けとめる制度が必要だと思うわけです。
 今、本当にメディアぐらいしかそれを、それも受けとめているというふうには言えないですけれども、メディアが見たいようにそこだけをピックアップして放送していることが多々ありますが、メディアぐらいしかその話を聞いてくれるところがない状態なんだと思います。最近になって少しずつ自助グループですとかいろんな医療関係のところでカウンセリングなんかが始まっていますが、それも全然足りない状況だと思うんですね。
 そういうのはもちろん民間主導でいろいろやっていくべきだと思うんですが、資金的な面でいえば、先ほど紹介しましたように、アメリカでは被害者の基金ができていて、そこの中から七百億円という信じられない額が支出されて、その多くがそういうものに充てられているということなので、そういうものを育てていくのはやっぱり資金がかかりますし、いろんな人も要りますし、そういうことを簡単に民間に任せてしまって、やりたいようにやりなさいとか、警察主導だけで進めてしまうとかということではなくて、やっぱりお金がかかるんだと、それにやっぱり投資していくためには具体的に国としてどういうふうにお金を持ってくるのかとか、そういうことまで実際は考えていただきたいなというふうに思います。
#160
○千葉景子君 今のお話にかかわりましてもう一点だけお聞かせいただきたいというふうに思います。
 やはり国が制度をきちっとする、あるいは資金的なさまざまな施策を講じていく、それから捜査機関等も含めていろんな体制が必要だと思うんですが、民間のやっぱり力あるいはサポート、受け入れの体制、こういう役割というのも大変大きいのではないかと思いますけれども、その点について、日本も少しずつそういう動きが出てきていることではありますけれども、何かそういうところに期待するものなどがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
#161
○参考人(坂上香君) この件は私が話すというよりも、高橋シズヱさんがアメリカを三週間回ってこられたというふうに聞いておりますので、彼女にお話しいただいたらいかがでしょうか。
#162
○千葉景子君 じゃ、一言あれして、もし。
#163
○参考人(坂上香君) 今回も、被害者のケアという点では必ずしもないですが、逆に先ほどお見せしたアミティという加害者への更生プログラムの人たちを民間で呼びました。番組の視聴者の方たち、周りの人たちに声をかけて、本当に四カ月ぐらいで、大した額ではないんですが三百万円ぐらいをかき集めまして何とかやれたわけですが、本当にそういうレベルでできることというのは物すごく限られています。
 ただ、そういうものを支援、いろんな形で支援していく。ただ単にそれもお金をつぎ込めばいいというわけではないんですが、国としてやはりそれだけいろいろ育てていくという姿勢みたいなものが、西欧というかアメリカだけではなくて北欧やドイツなどイギリスや、ヨーロッパなんかにもかなり見られるので、そういうところはぜひ西欧諸国を参考にしていただきたいなというふうに思います。
#164
○委員長(風間昶君) 高橋参考人いかがですか。
#165
○千葉景子君 時間あれですけれども、せっかくですので。
#166
○参考人(高橋シズヱ君) やはり民間の組織も必要なんですけれども、民間の組織が動くためには、やはり一番そこで欠落している部分というのは資金の問題だと思うんですね。今、社団法人として犯罪被害者支援の都民センターが立ち上がりましたけれども、そこでも結局寄附集めが大変だろうと思うんですね。
 そういうものとは違って、やはり国がきちんと被害者の補償のことを対応してくれたらそれなりに資金援助ができるんではないか。国がその資金を、いわゆるファンドを持つためにはどこから資金を集めたらいいかといったら、やはり加害者から集めるのが私は一番妥当ではないかというふうに思っています。服役したときのその服役囚が労働によって得た収入ですとか、あとは交通の罰金ですとか、いろいろなものが集められると思うんですね。そういうもので国がちゃんと被害者に対して援助をする。それなりの犯罪被害者への償いの気持ちもあるでしょうし、そしてまた直接加害者、直接的な加害者ではないにしても、そこから被害者が支援を受けられるというシステムが私は必要じゃないかと思います。そういう根本的なものがあって、そして民間の支援組織もやりやすくなるというふうに私は思っています。
#167
○千葉景子君 ありがとうございました。
#168
○魚住裕一郎君 公明党・改革クラブの魚住裕一郎でございます。
 きょうは本当に貴重な御意見をお聞かせいただきまして、心から感謝を申し上げます。
 高橋さんのお話を伺って、五年前の三月二十日の日を思い出しました。選挙直前だったんですけれども、事務所の女性事務員が地下鉄で遭いまして、本当にあの時代のことをきのうのように思い起こすところであります。幸い今元気でやっておるところでございます。
 高橋さんの今のお話の中で、民間でやっているその中で資金の問題をお話しになりました。国からいろんな支援というようなこともあろうかと思いますが、逆にこのいわゆるNPOとか民間のボランティア団体に対する寄附金についての所得税等の控除制度があれば本当にボランティア的な資金が結構集まり得ると思うんですけれども、そういう点はいかがですか。
#169
○参考人(高橋シズヱ君) 今お手元にお渡ししました「それでも生きていく」の後ろの方のページに実は地下鉄サリン事件の被害者の会の口座が書いてあるんですけれども、実はそれを読んでくださって、寄附をしたい、その寄附金は控除になる、税金が控除になるのかと、そこまで私は聞かれて、振り込んでいただいている人もいるんですけれども、残念ながらそれは控除にはなりませんということを私は申し上げるんですけれども、やはり寄附金というのはできればそういう税金面でも優遇されたらいいんじゃないかというふうに私は思いますけれども。
#170
○魚住裕一郎君 私も全く同感で、ぜひそういうような、ボランティア団体に控除できるような制度をつくりたいなというふうに思っております。
 それからもう一つ、高橋さんがおっしゃられた中で、被害補償制度をしっかりしたものをつくってもらいたいというふうなお話もございましたが、高橋さんの想定される被害補償制度というのは簡略に言えばどういうような形になりますか。
#171
○参考人(高橋シズヱ君) 例えば、犯罪被害者の認定とかが難しいと思うんですけれども、やはり警察に被害届を出した時点でその人を被害者というふうに認定してほしい。すごく難しいと思うんですね、例えばこれは加害者がじゃどういう人かということにもかかわってくると思うんですけれども、とりあえず被害者になったらばそれなりの経済的な支援をその場で受けたいわけです。殺人事件にしてもそうですけれども、虐待にしてもそうですけれども、特に性被害なんかの場合には本当に即経済的なものが必要になってくる、まず引っ越さなければいけないとかそういうことが出てくると思いますし、ですから、とりあえずはそういうところで被害者の立場を認めてほしいなというふうに思います。
#172
○魚住裕一郎君 山本参考人、先ほどお話しの中で、いろんな事件があって、今回の件で初めて、民事と刑事と違うんだというようなお話をされて、それと、それを知ったという、一般的な感覚だとそうだし、警察に行けばいろんなことが解決できるんだろうなというふうに思うのもまた一般感覚だと思うんです。
 そういう状況の中で、ワンストップサービスではないんですけれども、やはり被害者という大変な立場、身動きとれないような立場でもあるわけで、そういうものを何とかつくっていきたいと私どもも思っているところですが、今、民事支援という話も、民事法律扶助とかそういう個々の制度はできつつあるんですが、逆に言えばそういう周知徹底が足りなかったというような側面ありますか。
#173
○参考人(山本忠国君) 周知徹底というか、自分たち当初、犯罪被害者給付金の支給ということで一度、対象になるかということで相談に行ったところ、対象にはなりませんよ、詳しいことを聞きたければ来てくれれば説明しますよと、そう言われました。状態が状態なだけに、出ないもの、それでまた何か話をしてそれなりの説明をすればそういった相談に乗りますよというお話であればそういったこともお伺いしに行くつもりではあったんですけれども、その説明をさせていただきますだけのお話だったものですから、もしそうであるのであれば、そういった状況をわかっていただいた中でもしあれでしたらということで、そういった資料なり今回こういうことでという案内があれば、自分たちは、それも今回弁護士さんの御尽力と県警の被害者対策室の御尽力によって給付の対象ということで支給の適用をされたんですけれども、できればそういった手続的なこと、状況も状況ということを考えていただけるような配慮をしていただきたかったなというのが一番の今の気持ちです。
#174
○魚住裕一郎君 お話伺って、そういう側面本当に大事だなと思いますし、今、審議をしておりますいわゆる犯罪被害者の二法、あるいは民主党案も含めて、成立したならばしっかりお知らせするということも大事だなというふうに思った次第であります。
 坂上参考人、いろいろお話をいただいて、またなかなかインパクトのあるといいますかあのビデオを見せていただきました。これ今、家族支援コンタクトということで拝見させていただきましたけれども、大変分厚いいろんなバックアップ体制があるなということを実感したんですが、これはミネソタ州ワシントン郡ということですが、これは全米にこういうような、各郡、カウンティーというんですか、にあるというふうに考えてよろしいんですか。
#175
○参考人(坂上香君) そのレベルまで達しているかどうかは別ですが、かなり大体郡にして無料でそういったパンフレットなんかを配っているという感じです。ミネソタ州のワシントン郡というのは中でも頑張っている郡というふうに考えていただいていいかとは思いますが、でも少なくとも五、六ページにはどこの州、郡でもなるというふうに考えていただいていいと思います。
#176
○魚住裕一郎君 これはほとんどボランティアですよね、この中身は。こういうものをしっかり私どもも育てていきたいというふうに思います。
 あと一点。ダメージへの弁償というお話がありました。少年事件でもそういうふうにしているということで、これは刑事手続の中で弁償も図られているということだろうと思うんですが、これについてもうちょっと詳しくお教えいただけますか。
#177
○参考人(坂上香君) 細かいことはちょっと私も勉強不足なのですが、私の知っている範囲でお答えさせていただきます。
 先ほど、三番目の項目で紹介したリストラティブジャスティス、修復的・回復的司法の取材をしたときに、それはいろんなパターンがあるんですが、子供たちがすごく卑わいな言葉をある民家の壁に書いて、その家の前でマリファナを吸ったり薬物を売ったりというケースだったんですが、一応審判を終えて、そこで金銭的な面は解決してから直接被害者と話し合いを持つということをそこの郡ではやっていたんですが、そこで知ったのは、もうその壁に描かれたダメージのお金をちゃんと査定してあって、それがちゃんと裁判所で認められていて、しかもそのお金がもう既におりていた、もう被害者が受け取っていたという段階でやっているので被害感情というのもある程度おさまっているわけです。もちろん、もっと重い罪、暴行だとかレイプだとかということになると全然また事情は別なんですが、そういった軽い犯罪レベルで和解プログラムというのは主導的にやっているので、そういった場合、先ほども言いましたけれども、前提がかなり違うわけです。
 心のケアだとか身体へのダメージに関してのケースは私自身個人的にまだ扱ったことがないのでわからないのですが、本で読んだ限り、基本的にはちゃんとケア、例えば病院に行ったりして出た費用、それをある程度調べると思うんです。それは本当にその被害で受けたものなのかどうなのか。それもとても難しいとは思うんですが、でも一応紙面上、法律上では犯罪によって受けた被害のダメージというのは刑事手続の中でちゃんと弁償するというふうに書かれています。
#178
○魚住裕一郎君 終わります。
#179
○橋本敦君 高橋さん、きょうは国会までお越しいただいてありがとうございました。貴重なお話を伺って本当にありがたいことですが、二、三お尋ねさせていただきたいと思うんです。
 一つは、サリンの被害者の皆さんは本当に生活の面でも医療の面でも現在でも大変だと思うんですが、具体的にこれらの皆さんが今一番望んでいらっしゃる国からの手当てということになりますと、具体的にはどういう点をどうすればよいかという点について、いろんなケースがあるでしょうけれども、例えばこういう場合はこういうことということで今お考えになっていらっしゃる点があればお教えいただけますか。
#180
○参考人(高橋シズヱ君) やはり経済的なものが一番大変だと思うんです。今マスコミの取材を受けている被害者でいまだに入院している方がいらっしゃいますけれども、その方が一生懸命取材にこたえて社会に訴えているわけですけれども、その女性被害者の場合には労災が適用されていまして労災で治療費の方は賄っているわけですけれども、それ以外に入院しているとたくさん細々したものが支出として出る。
 それからあと、皆さんの目の前にはあらわれないような被害者がまだたくさんいるということですね。その人たちは週に一度点滴を受けながら会社に通っているとか、あと時代が時代ですから、本当にリストラのトップに挙げられてしまうような働き盛りの会社員の人もいますし、あとその本の中にも書かれていますけれども、カウンセリングを受けるために精神科に通ったがために、保険証に病院名が書かれて会社にわかってしまって退職させられてしまったとかということがあったり、やはり日々の生活に追われているということで経済的なものが一番大変だろうと思います。
 その次に大変なのは、やはり後遺症、PTSDということもありますけれども、後遺症そのものもそうですけれども、病院がきちんとした治療を施していないということがやはり大変なことだろうと思います。
#181
○橋本敦君 最初にお話しになった日々の生活という点は、これは本当に深刻だと思うんですが、そういう点で、損害賠償ということで破産財団に対して損害賠償請求を被害者の皆さんがお出しになって、破産財団の処理として支払われるということを期待する以外に直接国からの給付は何もない方がたくさんいらっしゃる、こういう現状があるわけですね、今の犯罪被害者給付金制度では一定の限界がありますから。
 そういう損害賠償金について今の破産財団との関係ではどうなっていますか。
#182
○参考人(高橋シズヱ君) 原告四十一人が起こしている民事裁判では勝訴しました。三月九日に勝訴しました。しかし賠償金はありません。実際に手にするものはありません。
 それから、オウム真理教に対しての破産事件に移行した部分に関しましては、破産管財人から配当金が、中間配当ですけれども一回ありまして、損害金に関しましては約二割のものを債権者となっている被害者は受け取りました。
 実際に警察に被害届を出している被害者というのは五千三百人います。これは被害届を出した被害者であって、それ以外にも被害届を出していない人も私は知っていますので、実質的にはもう少し多い人数だと思います。その中で債権者となっている被害者というのは、地下鉄サリンの場合には千百何人かだと思います。ですから、本当に五分の一ぐらいの人しか破産手続によって賠償金を得られていないという状況だと思います。
#183
○橋本敦君 その破産手続も、今お話しのように配当が二割程度という状況にあるという状況ですよね。
 それで、先ほどのお話の中で、カルテを五年で廃棄するという今のシステムというのはやっぱり問題だから、カルテは大事にこれからも長く保存をして治療に万全を期すようなシステムを国としてもきちんと責任を持ってやってほしいという御要望がありまして、私も当然だなと思うんですが、実際にこれは五年で廃棄しますよということが具体的に通知とかなんとかという形であらわれているケースはあるんですか。
#184
○参考人(高橋シズヱ君) これは実際に私は病院に行っていないので知りませんでしたが、被害者の中に看護婦さんがいまして、御自分の経験から、カルテは五年で廃棄というのが通常だそうです。彼女の場合には自分で活動をしまして、私のは半永久的に残してくださいというふうに病院に頼んだから大丈夫だった。ほかの人はどうなんだろうということにはっきりここの五年ということで気がついたわけです。
 それで、結局廃棄されてしまうということは、今後何かの影響が出た場合に被害の状況というのがわからなくなってしまうわけですね。今後ということは、つまり例えば女性が結婚して出産をしてその子供にどういう影響があるか、それはわかっていないと思います、いわゆる染色体の問題だと思うんですけれども。そういうことですら被害者は不安に思っているわけですから、やはりカルテは残しておいてほしいということです。
#185
○橋本敦君 よくわかりました。ありがとうございました。
 それから次に、山本さん、本当に大変なお苦しみの中で御心労、御苦労がよくわかったんですが、さっきのお話の中で、加害者が逮捕されたことも裁判がいつ行われるということも今まで直接には何の通知もなかったというお話がございました。裁判の結果がどうなったかという裁判の結果についても公式にだれからも通知はなかったわけですか。
#186
○参考人(山本忠国君) 初公判からすべての裁判を自分は傍聴に行きました。それで、翌年一月二十八日、息子の誕生日が最終結審になりました。そこまではすべて、当然、相手はどんな相手なのか、それとどういうふうな気持ちでいるのか、そういうものを知りたくて、その公判で全部次の公判がわかりますので、自分で行っていました。
#187
○橋本敦君 少年事件の審判自体について、あなたのお考えや御意見を家庭裁判所の調査官あるいは警察官が直接あなたにお伺いするという手続はありましたか。
#188
○参考人(山本忠国君) 公判の中で、被害者の感情をということで、妻がそこで参考人ということで意見は述べさせていただきましたけれども。
#189
○橋本敦君 はい、わかりました。
 坂上さんにお尋ねしたいと思いますが、アメリカで厳罰化の問題で、厳罰化が果たしていいか悪いか、その結果についてアメリカでも議論があるというようなお話をもう少し具体的に伺いたいと思うんですが、おわかりの範囲でお教えいただけますか。
#190
○参考人(坂上香君) アメリカでは、刑務所をどんどんつくって、その中に薬物関係の人たちなんかをほうり込んで、随分受刑者数が、ここ十年で本当に信じられないぐらい、二百万人に今なっているんですが、ここ十年がとてもすごい勢いだったというふうに聞いています。
 罰するなということではないんですが、とにかくアメリカの傾向として、メディアの力もとても強いですし、特に凶悪な犯罪者を取り上げてモンスターのように扱って、例えば選挙のときに、私は厳罰化をします、こういう悪い子供たちにも容赦しませんというふうなことを言ってどんどん票を獲得していくという状況がここ十年以上続いているために、どんどん国家の犯罪政策として厳罰化の流れに行ってしまった。
 もちろん、州によって法律というのは物すごく違いますし、郡レベルでも微妙に違いますので総括して言うことは難しいんですが、ただとにかく刑務所に入れてしまえという中で、処遇プログラムというのが、日本よりはいろいろまだバラエティーに富んでいるんですが、でも本当に天と地の差がアメリカの中でもあります。南部なんかに行くと、ほとんど何か動物小屋みたいなところにただ単に、特に南部は黒人の受刑者が多いんですが、ほうり込まれているというような劣悪な環境がありまして、何のケアも何のプログラムも受けないでただ単にそこにいると。そういう中で暇をもてあましていろんな問題が起こっているというようなこともあって、ただ単に受刑者数がふえたということだけではなくて、犯罪者に関する問題がとにかくアメリカじゅうで今問題になっているということがあります。
 先ほど紹介したアミティというプログラムや被害者と加害者が直接向かい合って対話をするプログラムなんかは、それに対抗する手段というか、全く何もされてこなかったところ、もしくはすごく厳しくすることによって何の効果も得られなかった分野に対しての反省ということで出てきた手法だというふうに思っています。
 最後のリストラティブジャスティスというプログラムは、全米で最近かなり効果を上げていまして、いろんなレベルで、学校だけではなく、それこそ今バスの事件でも問題になっていますが、いじめに対応するために、ただ単にいじめた子を罰するとかしかりつける、説教するというのではなく、子供たち自身がどんなふうに考えていて、どんなふうに感じていて、どんな生活を送っていてということを直接当事者で話し合って、時間をかけて解決していくということが行われています。
#191
○橋本敦君 最後の一問ですが、今お話しのアミティの関係でいただいた資料を見ましても、一般受刑者の七五%が三年以内の再犯、しかしアミティで治療プログラムを受けた関係の方は再犯率は二七%とぐっと低いという数字が出ているんですが、やっぱりこれだけ、今おっしゃったような対話を通じ、いろんなケアを通じて更生できるというのは、これは少年事件に限らず一般刑事事件でもそうだ、こういう理解でよろしいですか。
#192
○参考人(坂上香君) 悲しいことに、アメリカでは少年への厳罰が進み過ぎたために予算が回らなくなってしまって、アミティでも少年へのプログラムが九五年の時点でカットされてしまったんですね。なので、今、少年関係はアミティもやっていません。それはアミティだけではなくて、アメリカ全体について、九〇年代に入って特になんですが、少年への、とにかく刑務所に入れてしまえと、それで解決するかのように語られる論調の中で、結局何もその中で施されてこなかったという中でいろんな問題が今噴出しているわけです。
 今おっしゃられたとおり、今の二六%という数字は、カリフォルニア州の大人の男性の一つの刑務所の調査によるもの、ドノバン刑務所というところなんですが、そこだけの結果です。ほかではもっとまたいろいろ違う数が出ていると思うんですが、もっと低い、例えば刑務所の中のプログラムを終えて外に出てからさらにフォローアップという形で継続的にケアを受けた場合、その数がさらに一六%に減るんですね。
#193
○橋本敦君 ありがとうございました。
 終わります。
#194
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 きょうは本当にありがとうございます。三人が話してくださったことを何とかいろんな形で政策に生かすことができればというふうに思っております。本当にありがとうございます。
 まず、坂上さんにお聞きします。
 きょうは、リストラティブジャスティスということでいろいろ話をしてくださったんですが、日本の社会、あるいは矯正、少年院と刑務所のこともちょっと日本のこともおっしゃったんですが、いろんなことを日本の社会でどう生かすことができるのか、どういう感じで生かすことができるのだろうかというのをずっと考えているんですが、午前中、矯正局長に質問をしたんですけれども、日本の少年院、刑務所の処遇が変わることが、急がば回れじゃないですけれども、遠回りでもやっぱり非常に変わっていくだろうと思っているんですが、それについてお考えをお聞かせください。
#195
○参考人(坂上香君) 今まで取材をしてきた中で共通して言えるのが、大体アミティにしてもリストラティブジャスティスにしても、きのうきょう始まったものではなく、六〇年代だとか七〇年代ぐらいから三十年も四十年もかけて今まで活動を続けてきているわけです。その中で出た結果というのが先ほどの一六%であったり二六%ということなので、今すごく犯罪に関して世間が盛り上がっているので、今すぐに結果をみんな求めたがるんですが、これはそんなに簡単に結果が出るものではないという認識をまずしていただきたいなというふうに思っています。
 今さっき、一六%、二六%といったあの数の中でも、刑務所を出てから三年の人たちを対象にやっているので、やはり四、五年するとまた少しずつ上がっていくという状況があるというふうにも聞いていますので、そういう意味ではフォローアップの、むしろ刑務所を出てからのプログラムなんかにももっと日本は力を入れるべきだなというふうにも思います。
 あと、刑務所、矯正機関の日本の問題なんですが、まず私個人が幾つか刑務所と少年院を回って見てきたんですが、すごく上下関係が、信じられないような軍隊スタイルのものがいまだに続いているということで、それは受刑者対職員というものだけではなく、職員の中でも上下関係が非常に激しいと。
 そういった中で加害者の人たちは、例えば先ほど例に挙げた少年院のケースですが、少年たちはうそをつくこと、職員の顔色をうかがうことを非常にうまく学んできたというふうに言っていました。とにかく職員に反省しろ反省しろ反省しろと毎日のように言われるそうです。壁に向かってとにかく自分が小さいときからのことを思い出して、自分が今までやってきたことを反省文を書いて毎日提出しろと。
 例えば、少年院の中で子供たち同士が話してはいけない、社会話をするなという規則があるらしいんですけれども、話をしたということで子供たち同士でチクり合って点数を稼ぐわけですね。職員はそれを聞いて、懲罰ルームみたいなところがあって、そこに入れると。ある子は十五日間そこにひとりで入れられて気が狂いそうになったと。そこで反省したのと言ったら、全然反省していないわけですね。じゃ何を考えていたのと言ったら、職員に対する憎しみ、自分をチクってここに入れたやつへの憎しみ、そういったような感情だけがその中で高まっていくわけです。
 なので、そういった上下関係だとかむやみやたらな厳しい規則だとかそういうものをとにかく排除する新しい、もっと加害者自身が反省するためにも、どうやって反省したらいいのかを、そんなマニュアルがあるわけではないですが、職員自体がもうちょっとそういうことを学べる機会、もうちょっと柔軟に加害者に対応できるようなもの、具体的に例えば被害者の感情を理解するためのプログラムなんかも一部では始まっているというふうに聞いていますが、まだまだ十分ではないというふうに感じています。そういうものをどんどん取り入れていくということが必要かなと。
 もう一つ最後に言いたいのは、元受刑者、受刑体験のある人を職員に取り入れるということをアミティではやっています。それが物すごく効果を上げているんですね。
 というのは、やっぱり凶悪な犯罪を犯せば犯すほど人への不信感が物すごいです。そんなむやみやたらに、反省しろ、自分がやってきたことを言ってみろと言ってもそんな簡単に言えません。やっぱり自分と似たような体験をして、それで社会復帰をして社会的にもある程度成功をおさめてきたような人たちが自分の前に来て自分の言葉で語ってくれるとき、ようやく彼らは自分の心を開くというふうにアミティの取材なんかをしていて感じます。
 日本でもそういうような、元受刑者が刑務所に例えばプログラムのボランティアとして入れるとか職員として入れるとか、そういうようなもうちょっと開かれたシステムを確立してほしいなというふうに感じました。
#196
○福島瑞穂君 どうもありがとうございます。
 次に、山本参考人にお聞きします。
 例えば弁護士は、被疑者、被告人の代理人になることもあれば、被害者のサポーターとして民事の裁判あるいは刑事の裁判にフォローしてつき合うということもあるんですが、やはり被害者の代理人というのはいろんなシステムの中で余り重要視をされてこなかったのではないかと思うんですね。
 先ほど山本参考人は、ボランティア的にかかわってくれる弁護士がいたので救われたというふうなことをおっしゃったんですが、法務委員会で民事扶助の法律ができたんですが、お金が余りない人がお金を借りてやる制度は、民事ではできているけれども、被疑者の段階、ましてや被害者については全然まだ、余り手が届いていないと思うんですが、そういう被害者のサポーターのシステムについて御意見をぜひお聞かせください。
#197
○参考人(山本忠国君) 被害者のサポート的な支援組織として静岡でも犯罪被害のということで対策室が設けられてはいるんですけれども、一番最初にまずかかわるのが警察の方。そういった警察の方からの、立場的に被疑者というか、今は相手なんですけれども、被疑者の状態の中からそういうアドバイスというのはできにくいかとは思うんですけれども、一番最初にかかわるところの担当の方から、こういうものもあるんだよ、こういうものもあるんだよ、せめて資料的なものをお渡しいただけたらなというのを今つくづく思っています。
 今は大分変わってきてはいるようなんですけれども、当初はそういったことがなかなかなされなくて、自分たちもどうしていいのかというので困り果てた部分があったものですから、そういったものがあったら、あったらというか、ぜひそういったことで支援していただけるところを国としても、支援するためには先ほども何度も出ているように経済的な基盤がなければできませんので、それを国として何とか伸ばしていってもらいたいなと思っています。
#198
○福島瑞穂君 ちょっとふだん思っていることを話したいんですが、被疑者、被告人の人権も被害者の人権も全然守られていない、特にメディアとの関係ではと思っているんです。
 特に、先ほど山本参考人は、自営業ですか、仕事をしていらっしゃるので名前、実名を出すかどうかということを考えて二度取材に応じたというふうにおっしゃいましたけれども、女性ですと、例えば長崎の保険金殺人事件ですと被疑者、被告人の段階で女性のヌードが出るとか、女性は被疑者、被告人になっても被害者になってもヌード写真がばんばん出るとか、被害者になって水着の写真が出るとか、そういうことがとても多くて、被疑者、被告人になっても被害者になっても物すごく家族も含めてプライバシーが侵害されると思うんです。
 ですから、少年事件で、なぜ大人は実名なのに少年は実名を出せないのかという論理よりは、被害者も被疑者、被告人もプライバシー、実名も含めて極力というかできる限り出さない考慮が必要ではないか。要するに、大人に合わせて少年を引き下げるとかいうことではなく、両方その考慮が必要ではないかと思っているんですが、そういうことについてどう思われますか。
#199
○参考人(山本忠国君) 自分の場合はたまたま、たまたまというか、実名で出しても何ら差し支えないというか、会社的には多分周りからはいろいろ問いただされるとは思ったんですけれども、思いがあったものですから、どちらかというとその思いが強くて実名でということを受け入れました。
 ですので、いろんなパターンがあると思うんです。実名で出してもらいたくない人は実名では出さなければいい。それも勝手に決めるんじゃなくて、新聞社の方も出していいかということを問い合わせてくれました。それで実際にその文章の内容も事前に見せてくれました。そういった配慮があったからこそ自分もその人を信用してそのまま実名でということでお受けしたんですけれども、そういった環境が、いろんなパターン、自分のパターン、また別の方のパターン、それぞれ違うと思うものですから、実名で出す、プライバシーの侵害云々というのは一概には決められないと思います。
#200
○福島瑞穂君 高橋参考人にお聞きします。
 経済的なことやさまざまな苦労について語っていただいたんですが、例えばPTSDや精神的な被害のカウンセリングが非常に不足しているということをおっしゃったと思います。私たちも、例えばセクシュアルハラスメントの裁判を起こすときは、弁護士はケアができないので精神科医の女医さんかだれかをつかまえてカウンセリングをやってもらいながら裁判をやったり、相談相手の人を確保してやったりということをやっているんですが、カウンセリングやシステムについて提言、こういうのがあったらというようなことがあればもう少し話をしてください。
#201
○参考人(高橋シズヱ君) 提言と言われても私もわかりませんけれども、少なくとも私は被害者の会の代表世話役という立場でいろんな人、被害者の会の中のほかの被害者の人から電話を受けたりします。そのときに私はとてもめいるんです。私自身がカウンセリングしてほしいなという気持ちが大いにあります。でも、じゃ私はだれに相談したらいいのかということもありませんし、今ほとんどそういうことがなされていないのが現状じゃないでしょうか。臨床心理士とかカウンセラーとかの養成を今後どんどんしてほしいなというふうに思っています。犯罪被害者に対応できるカウンセラーですね。
#202
○福島瑞穂君 どうもありがとうございます。
 坂上参考人にお聞きをします。
 私はあと貴重な時間が二分残っているので、リストラティブジャスティスや日本のことについて提言などがありましたら、どうぞ二分間お願いします。
#203
○参考人(坂上香君) 先ほど例に挙げた少年院から出てきた少年たちのうちの一人は、実は物すごく反省しているというふうに私は感じました。ただ彼にしても、彼は傷害致死で相手を殺してしまったわけですが、被害者に対してどういうふうに償っていいかわからないで、彼は少年院を出たり入ったりしているので、もう二十になるんですが、話していてもまだどこか幼げで、十代の頭、十二、三歳のような発言をしたかと思うと、被害者に対しての気持ちというのはもう真っ当な大人のような感情だったと思うんですが、償いたいという意味では。ただ、時々支離滅裂なことを言うのでどういうふうにとらえていいのかわからなかったんですが、彼にとっても、どうしたらいいのか、被害者に謝罪をしたり、または償いをしたりという仕組みがなければ、子供たちもまた大人の加害者もどうしていいかわからないと思うんです。
 そういう意味では、一つのオプションとして、先ほども言いましたが、万能ではないので、被害者への支援、加害者への処遇を進めると同時に、その二つを融合させる形で最終的に和解ができるようなプログラムをチョイスできるというような仕組みを日本でぜひつくっていただきたいなというふうに思っています。
#204
○福島瑞穂君 どうもありがとうございました。
#205
○中村敦夫君 中村敦夫です。
 お聞きしようと思っていた質問がほとんど出てしまいました。
 今回、内閣が提出しているこの二つの法律案なんですけれども、基本的には裁判の手続とか刑事の手続とかというところをより被害者に主張と人権と権利を与えるということの改正ですね。大方私は当然だと思っているし、遅過ぎたのではないかなというふうに思いますが、皆さんのお話を聞いていく中で、しかしながら、一番の被害者の問題はやっぱり経済的な問題だというふうな実感を持っているんです。ですから、この二つの法案で被害者のことを大分考慮してあげたといって終わってしまうと問題の根本的解決にはならないだろうと。逆に言えば、この二つの法案というのは随分安上がり、お金がかからないで被害者に恩を売ることができるという感じもします。
 それで、経済的にどういう支援の仕方があるかということで、坂上さんなんかがアメリカの例を引かれて、NGOとかボランティアとか慈善団体とか、そうしたところで膨大な基金が集まって運営されるし、また心理的な相談をする、そういう人々も組織もあるというお話です。
 私もアメリカに住んだことがありますから、そういう実態はよくわかっていますが、だから日本もそのようにすぐになるかというとこれは全く違うと思うんですよ。これは基本的に文化が違いますね。ですから、アメリカの場合、宗教、キリスト教文明圏、欧米は全部そうですけれども、個人が神と契約して善行をするということに非常に価値を置く日常生活、社会的な価値観というのがあるところです。日本もそれは多少はありますし、そういう人もいるけれども、全体としてはやはり国が最終的には責任を負うという文化なんですね。そしてそういうシステムとしてやってきました。
 ですから、絶対的にホープレスというかアウトになった場合に、やはり国家は責任を持たなきゃいけないという意味では、アメリカや何かの例で考えずに、絶対アウトの場合の国家の補償の仕方ということを考えなきゃいけない。
 そうなりますと、犯罪被害者といっても、ただ金持ちで物をとられた被害者と、実際に肉体的に傷つけられたり命を奪われ、そしてその家族が自活能力がないというケースだとか、あるいは精神的に立ち上がれない、ずっと続くというようなケースだと思うんですけれども、こうした場合に経済的に補償するのは、昭和五十五年に犯罪被害者等給付金支給法というのができて、それしかないわけです、そこが根拠になっているわけですけれども。これは基本的には非常に少ない額しか出ない。ですから、ずっと人生の設計が立てられるような性質のものじゃないということなんです。そういうものを、被害者が安心して人生設計を立てられるようなことをしないと国家の責任というのが全うできないとすれば、やはりこの法律の改正というんですか、もう少し実のあるものにしなきゃいけないだろうなと。
 この国は三十兆円以上も赤字を出して、大予算を組んで、必要かどうかわからないような道路をどんどんつくっているわけですから、そのぐらい勇気ある政府ですから、被害者に、そんなにいっぱいいるわけではありませんから、絶対的な補償をするということぐらいはやる気ならできると思うんですよ。
 そういう意味では、この法律について、もうちょっとどういう部分を改正してほしいか、最低どういうところを補償してほしいかというような御意見がありましたら、お三人一人ずつ、一言ずつで結構ですから、御意見をいただきたいんですが。
#206
○参考人(高橋シズヱ君) 何をするにも根拠となるものというのは必要だと思うんです。それが犯罪被害者支援ではこの法律だと思いますし、犯罪被害者基本法なんというのはもう本当に被害者の権利を認めるものであって、やはりこれは絶対に必要なことだと思います。
 支援組織が何かをするにしてもやはり資金的なものが必要になる。こういう被害者の権利を守るために支援をする、そのためには資金が必要だ。結局こういう法律があれば堂々と言えるわけです。主張できるということで、これはそういう資金面をカバーするのにもやはりこういう面、法律が必要だと思います。
 それから、あと警察庁で犯罪被害者対策室ができまして、いろいろ犯罪被害者にどういうふうに対応したらいいかということが今徹底されようとしていますけれども、じゃ、私が自分の家の近くの警察署に行ったらそこの若い警察官がそれに応じた対応を私にしてくれるかといったら決してそうではないわけで、やはりそういうところの教育というのが必要だと思います。すべての人の教育が私は必要だと思っています。
 たとえ被害者とともに泣く検察官であってでも、私、ちょっとお時間をいただいてお話しさせていただきますと、私の事件とは別の裁判なんですけれども、初公判に行ったときに検察官が凶器の包丁を右手を掲げて被告人に示しているわけです。それを見たとき、私は、やっぱり自分の大事な家族が殺されたその包丁というものを見たときにはどきっとするわけです、傍聴席で見ていて。私の前にいたその事件の御遺族の人はもっとひどいショックを受けたんだろうと思うんです。そういうことが起こり得るということは、検察官にしても、その法廷にいる人、関係者にしてはもう普通のことだと思うんです。当然、初公判ではそういう凶器を示すということは普通のことだと思うんですけれども、たとえ検察官であっても遺族になったら違うと思うんですね、凶器を見るその目というのは。やっぱり遺族になるとすべて違う。そういうことを検察官は配慮してほしいと思うわけです。少なくともそういうことが起こり得るよと、凶器が法廷に出されるということを教えてもらえればそのショックというのは緩和されると思うんです。
 それから、その初公判が終わったときに、検察官が遺族のそばに行って、きょうはつらかったでしょうと、その一言が全然違うわけです、ショックを和らげるわけです。そういう配慮がなされない、なされていない、検察官ででも。裁判官にしてもしかり、警察官にしてもしかりです。そういう教育、もちろんメディアもそうです。メディア関係者の教育、それから矯正関係者の教育というのもしてほしい。そういうところから犯罪被害者に対する目というものが変わってくるんじゃないか、社会の犯罪被害者に対する対応が変わってくるんじゃないかというふうに私は思っています。
 ですから、それをやるのはやはり政治の力ではないかというふうに思います。
#207
○参考人(山本忠国君) 何が必要かというか、今自分たちが現実的に迫っている問題としては次の受け入れ先、病院のあり方が、今、救急病院と長期療養型の病院という受け入れ先があるんですけれども、救急でも三カ月をめどにそこで回復の見込みがあれば長期にわたることも可能なんですけれども、通常で年単位の受け入れ先、施設に至っては県で八カ所しか息子の対象になる施設がない。そういった受け入れ施設をぜひとも何とか、これは犯罪被害者という立場ではないのかもしれませんけれども、実際問題として被害に遭えばそういった人間も出てくる。それがたまたま息子の今入っているところが、脳梗塞とかそういったお年寄りの方のリハビリ病院的なところ、どうしてもそういうところになっちゃうんです。そうではなくて、それなりのリハビリができるところ、そういった施設をぜひつくっていただきたい。
 経済的に幾らあればいいのかというお話ではなくて、あっても受け入れ先がなければ何もリハビリができない、そういう状況を少しでも何とか国として、実際、掛川では五十床あるうちの数床あいている施設があると聞いています。そこの申し込みもしています。ただし、受け入れ体制が整っていないためにそこの施設をすべて使うことができない状態であるというのを聞いています。そこに直接お伺いしたことがあります。ぜひそういった体制を整えていただきたい、その一言です。
#208
○参考人(坂上香君) 先ほど中村さんがおっしゃったことで一つちょっと誤解があったかなと思うのは、こういう団体というのは、もちろんこの団体それぞれがお金をつくってはいますが、国として被害者基本法というのがあって、基金があって、その基金の七百億円という中からかなりこういうところにもお金を送られているので、国としても例えば刑事レベルでの弁償金制度もありますし、国としての償いという意味でもアメリカはかなりやっていると思います。
 あと、土壌が違うということでしたが、それも全くそのとおりで、そういう批判をいつもいつも受けていたんですが、アミティを日本に呼んで八カ所で講演会をやったときに二千人が集まりました。そこには実際の犯罪の被害者の方もいらっしゃったし、加害者の方もいらっしゃったし、いじめを受けている子もいらっしゃって、もうとにかくあらゆる層の方たちが来てくれました。もちろん土壌は、宗教的、歴史的、いろんな背景は違いますが、それでもすごく関心があるんだなということは実感として得ました。
 あと、先ほどの高橋さんがおっしゃっていたことと重なると思うんですが、またアメリカの話で申しわけないんですが、ビクティム・インパクト・パネルといって被害者の影響を与えるそういう教育プログラムがあります。司法の中に被害者の声をというだけではなく、先ほどもおっしゃいましたけれども、社会全体に広めるために例えば司法、教育、メディア、矯正。矯正機関がそういう被害者の声を聞き入れるため、少年院や刑務所で行うためにはまず職員が理解しないといけないわけです。そういったレベルで、さまざまな研修で被害者の声を聞くために実際の当事者、レイプに遭われた方、殺人事件の被害者遺族の方、交通事故にお遭いになられた方、さまざまな方が呼ばれて話す機会というのがアメリカではかなりいろいろなところで義務づけられるようになっています。そういうことが一つ日本でも始められるのではないかなというふうに思います。
 あともう一つは、先ほどのリストラティブジャスティスに戻りますが、被害者と加害者が出会える仕組み、今物すごく分断されてしまっていると思うんです。被害者の方々の感情としてはもちろん歩み寄れない。時間ももちろん必要ですし、そのためにはいろんなケアも必要ですし、そのもの自体がないない尽くしの今の日本では非常に難しいと思うんですが、最終的にはそういうものも可能な社会をつくるために仕組みをなるべくつくっていく必要があるかなというふうに思います。被害者と加害者が何らかの形で対話を直接できるような場、仕組みをぜひつくってください。お願いします。
#209
○中村敦夫君 職員の訓練だとか、それから施設をつくること、あるいは大きな基金をまずつくることもすべて基本的に国が予算に組み込まないと実はできないんですね。そういう意味で御質問をしたわけなんですけれども、しかし、何が必要かということを明確にお答えいただいたので、私の質問はこれで終わりにしたいと思います。
#210
○委員長(風間昶君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、本当にお忙しいところ大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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