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2000/05/23 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第16号
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2000/05/23 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第16号

#1
第147回国会 法務委員会 第16号
平成十二年五月二十三日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十二日
    辞任         補欠選任
     竹村 泰子君     藁科 滿治君
 五月二十三日
    辞任         補欠選任
     藁科 滿治君     竹村 泰子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         風間  昶君
    理 事
                北岡 秀二君
                国井 正幸君
                竹村 泰子君
                魚住裕一郎君
                平野 貞夫君
    委 員
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                岡野  裕君
                竹山  裕君
                服部三男雄君
                松田 岩夫君
                吉川 芳男君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                藁科 滿治君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
   衆議院議員
       修正案提出者   北村 哲男君
   国務大臣
       法務大臣     臼井日出男君
   内閣官房副長官
       内閣官房副長官  松谷蒼一郎君
   政務次官
       法務政務次官   山本 有二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   白木  勇君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       内閣法制局第一
       部長       阪田 雅裕君
       金融監督庁長官  
       官房参事官    小手川大助君
       金融監督庁検査
       部検査総括課長  本間  勝君
       法務省民事局長  細川  清君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       大蔵大臣官房審
       議官       福田  進君
       通商産業大臣官
       房審議官     林  洋和君
       労働大臣官房審
       議官       石本 宏昭君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
 法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
○理事補欠選任の件

    ─────────────
#2
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十二日、竹村泰子君が委員を辞任され、その補欠として藁科滿治君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(風間昶君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣法制局第一部長阪田雅裕君、金融監督庁長官官房参事官小手川大助君、金融監督庁検査部検査総括課長本間勝君、大蔵大臣官房審議官福田進君、通商産業大臣官房審議官林洋和君及び労働大臣官房審議官石本宏昭君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(風間昶君) 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○北岡秀二君 さきの委員会で、この商法改正に関連いたしまして比較的労働者の保護という観点からの質疑が多かったということで、私は会社法の改正についての基本的な部分から質問させていただきたいと思う次第でございます。
 我が国の企業を取り巻く環境を考えてみますときに、国際的な大競争時代、さらには技術革新、そしてまたそれに関連してグローバルスタンダードというようないろんな非常に急激な変革の中で大変厳しい環境の中にある。そういうような状況の中で、国際的な競争力を企業としてもどんどんつけていかなければならないということで、いろんな角度からのスピードを求められる対応というのが今必要になってきておるということで、このたびの商法改正もそれに関連したことであるということでございます。
 現在まで、法務省において、会社法の改正ということで昭和五十年以降全面的な改正作業を行っておるというような状況でございますが、その五十年から始まった長期的な会社法の改正、それはどういうふうな形での理念、目的に基づいて作業が進んでおるのか、そしてまた、なおかつその作業終了をどういうふうに完成させていくお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。
#7
○国務大臣(臼井日出男君) 会社法は、会社の成立から消滅に至る諸段階につきまして団体及び構成員である株主等の内外の法律関係を規律する法律でございますが、会社を取り巻く社会経済情勢は刻々と変化するものでございますので、見直しの必要性の有無等につきましては絶えず配慮をする必要がございます。
 昭和四十九年の商法改正の際に、会社法の大幅な見直しを要求する国会の附帯決議があったことを契機といたしまして、法務省におきましては、同年から会社法の基本的な問題点につきまして検討を開始いたしました。昭和五十年六月には、企業の社会的責任や株主総会制度の改善策等を内容とする会社法改正に関する問題点の取りまとめをいたしました。以降、これに基づきまして、緊急性の高いものから順次七回にわたり改正を行ってきたものでございまして、今回が八回目に当たるのでございます。
 このように、政府といたしましては昭和五十年以来会社法の全面的な改正作業を続けてまいりましたが、今回の会社分割法制の創設によりまして重要な事項につきましての一応の見直しを終えることとなるのでございます。
#8
○北岡秀二君 今いろいろお話をいただいたわけでございますが、御承知のとおり、前段にも申し上げたとおり、非常に我が国を取り巻く経済情勢、そしてまた、なおかつ技術革新等々によって非常に物事の考え方も変わってきておりますし、そしてまた、なおかつ会社のあるべき姿というのも変わってきておるわけでございます。さらに、国際的な競争という観点から申し上げると新たな取り組みというのも必要になってくる。
 そういうことから言うと、今のお話の五十年以降の作業というのは、基本的には二十五年前に基本方針をつくられたということで、今申し上げました刻々変化をしておる企業を取り巻く環境ということを考えてみるときに、新しい時代への対応というのが当然必要になってくる。そのあたりでいろんな部分で考慮していかなければならないところがあるだろうと思うんですが、そのあたりについての姿勢はどういう形で取り組んでおられるのか、お伺いいたします。
#9
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま御説明をいたしましたとおり、政府といたしましては昭和五十年六月の「会社法改正に関する問題点」の公表以来、会社法の全面的な改正作業を続けてまいってきたのでございますが、今回の会社分割法制の創設により重要な事項についての一応の見直しを終えることになったのでございます。
 しかしながら、商取引の基本原則や会社の基本的なあり方を定める商事基本法でございます商法につきましては、社会経済情勢の変化に応じて多くの検討課題が提起をされているのでございます。また、これまでの商法改正法案の国会審議等におきまして附帯決議等として立法課題が提起をされております。政府といたしましては、これら多くの立法課題に的確かつ迅速に対応いたしまして、現行会社法制が新しい時代の要請に対応したものになるようにこれからも積極的に検討を進めていく予定でございます。
 こうした観点から、現在、法制審議会商法部会におきまして、今後どのようなスケジュールでどのような事項につきまして改正の検討をするかにつきまして審議を行っていただいているところでございます。
#10
○北岡秀二君 今話がございました、いろいろ新しい時代の新しい流れに的確に対応していかなければならない、そしてまた最近、これは政治の世界でも言われておることなんですが、対応に対するスピードが要求されるというような状況というのはいろんな場面であります。
 そういうことで、特に法務省を取り巻く一つの状況としての、今、大臣のお話の中で出てまいりました法制審議会の取り組み、過去にいろいろ議論されてきましたが、審議が遅いんじゃなかろうかというような御指摘がたびたび繰り返されてまいりました。最近の商法改正という実情だけを見てみますと、ある一部の方々にとりましてはむしろ従来の大変遅い対応よりも十分にスピードを持って対応しておるということで評価をされておられる部分もあるわけでございますが、私は個人的に最近の情勢ということを総合的に考えてみたときに、まだもっともっと柔軟に対応していただき、なおかつ迅速に対応していただきたいなという思いもあるわけでございます。
 大臣、この法制審議会の最近の取り組み姿勢と申しますか、あるいは取り組み状況についてどういうふうに評価をされていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
#11
○国務大臣(臼井日出男君) 政府におきましては、近時、商法については平成二年に会社の設立手続の簡素化、簡易化、最低資本金制度の導入をいたしました。平成五年に社債制度の見直しあるいは監査役制度の改正、平成六年には自己株式の取得制限の緩和等をそれぞれ内容とする改正を行いましたほか、企業の組織の再編のための法の整備といたしましては、平成九年には合併法の合理化、また平成十一年には株式交換制度の導入等を図ってきたのでございます。
 これらに続くものといたしまして、会社分割法制の創設を内容とする本法案を当初の予定を一年前倒しいたしまして今国会に提出をさせていただいているところでございます。
 これらの商法の改正作業におきましては、すべて法制審議会の審議を経て作業を進めてきたところでございまして、このような商法改正の状況にかんがみますと、法制審議会においては、その時々の社会の要請にこたえ、迅速かつ的確に審議がされているものと考えているのでございます。
#12
○北岡秀二君 この商法関係のみならず、法制審議会の存在については、過去いろいろ議論がある、そしてまたいろんな見方がございますので、ぜひとも今後法務省内部として、法制審議会のあり方自身、いろんな環境の変化に対してどういう方針で臨んでいくのかということに対して、いろんな意味でできるだけ大臣もそのあたりの法制審議会のあり方について特に注意を払っていただいて、今後の指導をしていただきたいなと思う次第でございます。
 具体的に今後の会社法改正のテーマとスケジュールについてはどのように考えておられるのですか、お伺いをいたしたいと思います。
#13
○政務次官(山本有二君) 大体、昭和五十年からの改正作業の最後の締めくくりの一番重要なのがこの会社分割法制でございまして、以後は重要でないという意味ではございませんが、今現在、夏をめどに法制審議会商法部会でテーマとスケジュールを決めようとしておりまして、経済社会の要請が強いものから順次改正するよう鋭意検討をいただいておるところでございます。
 先ほど大臣が申し上げましたように、恐らく、国際化、そして二番に情報化、三番目に企業統治というようなことがテーマとなろうというように思っております。
#14
○北岡秀二君 法律をつくるという観点から申し上げますと、ともすると企業の理論というのはなかなか通りづらい部分がございます。今おっしゃっていただいたとおり、業界あるいは経済界全体からいろんな要望が出ておる。
 そのあたり、我が国のよって立つところということを考えてみますときに、これはもう言い古された古い言葉でございますが、貿易立国ということでございますし、経済というのがいろんな意味で社会全体の大きな牽引力になっておる。そしてまた、なおかつ国際的な経済環境ということを考えていったときに、非常に迅速に柔軟に対応していかなければならないというような状況がまだまだあろうかと思うわけでございます。
 今後、いろんな意味で会社法制の整備については積極的にどんどんおくれることなく取り組んでいただきたいと思う次第でございます。
 今回の会社分割制度の問題について具体的にいろいろお伺いしたいなと思うわけでございます。
 きょう、通産省からおいでいただいておるだろうと思うんですが、前段に私も申し上げました経済環境がどんどん変わってきておる。独禁法の改正、持ち株会社をある程度認可したというところからどんどんと会社、企業活動のいろんな再編成、あるいはこのたびの分割もそうでございますが、かなりその必要性に迫られて今現在に至っておるというようなことであろうと思うわけでございますが、この現在の経済環境、なぜこういう法制度が必要になってきておるのか、そのあたりの背景と、このたびの会社分割制度の創設により我が国の産業組織の構造にどのような影響を与えていくのか、そのあたり基本的なところをお伺いしたいと思います。
#15
○政府参考人(林洋和君) お答え申し上げます。
 先ほど来、委員より、国際競争が激しさを増したというお話がございました。これは私の意見でございますけれども、なぜこの十年ぐらいの間、国際競争が大変厳しさを増したのかという点について申し上げさせていただきたいと思います。
 第一には、やはり冷戦構造が変化をして、旧ソ連あるいは中国を含めて経済的には市場原理とか利潤動機、これが妥当するようになってきたということが非常に大きな構造的な変化だろうと思います。水が高いところから低いところに流れますように、金利が一ベーシスでも高いところに世界のお金は流れていく、成長性が見込める経済、社会にお金が流れていく。
 そういう冷戦構造の終結と相並んで、サービスとか投資、知的財産権を含めた国際化、そして情報通信の発達、こういった三つの構造変化によって世界的な大競争というのが始まったというふうに理解しております。
 私ども学生のときには、規模の利益というのが生産規模の利益でございまして、自動車産業でございますれば、三十万台まではどんどん一台当たりの単価が下がってくると、シルバーストン曲線といって。したがって、三十万台つくっても四十万台つくっても生産規模の利益は変わらないなんということが言われておりましたけれども、その後、単なる生産ではなくて、ファイナンス、流通、技術開発、こういったものを含めますと競争の規模が変わってきている。
 例えば、金融であればシティバンク、それからトラベノール、エクソン、モービル、あるいはベンツ、クライスラー等々、世界的な競争が厳しくなっていて、その構造変化というのが、恐らく十年ぐらい前、今申し上げたようなことだったと思います。
 そういう中で、日本の企業が競争力の強化、生産性の向上、収益の向上を図るために、既存事業の効率化、あるいは得意分野への特化をしていく、あるいは新しい分野に進出をしていく、こういったことに取り組んでおりますが、人材あるいは資本、こういった経営資源を最適に配置するためには企業組織の再編を弾力的、スピーディーに行うことが必要であるというふうに認識しております。欧米諸国にあるような制度が少なくとも日本になければ日本の企業が競争上不利になるということでございます。
 そういう意味では、先ほど御紹介ありましたが、持ち株会社制度、あるいは株式交換制度、分割、そういった企業組織の再編を進める道具立てとしてのそういったものは非常に有益だと私ども考えております。
 今回の会社分割制度を先ほど申し上げた既存の制度とあわせて有効に活用していけば、我が国企業の競争力、生産性、収益の向上というのが図られて、ひいては我が国産業の活力、経済の活力が高まるものと考えております。
#16
○北岡秀二君 欧米の経済社会をいろんな角度で拝見させていただいておりますと、特に企業のいろんな部分の再編成ということに関連して、MアンドAというのが、企業買収というのがどんどん活発に行われておる。ともすると、我々の旧来型の日本的な考え方からすると、企業が一日にしてオーナーがもう全然違うところになっておる、ともするとなじみづらい部分もある。そしてまた、なおかつ今現在の日本の国の中でもそういうMアンドAがどんどん進行しつつある。
 この会社分割法が実施をされることになると、MアンドAがどんどんさらに進行していくんじゃなかろうかという見方がございます。これはもう先ほど申し上げられた産業競争力ということからするとやむを得ない部分もあって、当然プラスとマイナス両面あるだろうと思うんですが、この制度の創設によって企業のMアンドAは促進されることになるのでしょうか。そのあたりの御見解をお伺いしたいと思います。
#17
○政府参考人(林洋和君) お答え申し上げます。
 MアンドAの手段としては合併とかあるいは営業譲渡、既にある仕組みがございます。今回の会社分割の中でMアンドAの手段として恐らく出てくるであろうと想定されますのは、いわゆる吸収分割、分割をした会社がよその会社と一緒になるという形態だろうと思います。
 このことによってMアンドAがどこまでふえるのかというと、正直なかなか見通しが難しいと思います。冒頭申し上げましたように、合併とか営業譲渡とか分社化とか、いろんな手段がございます。したがいまして、この法律改正によってどこまでふえるかということよりも、やはり企業の経営者がみずからの会社の長期的な価値を上げるためにいろいろなことをやる、その一形態としてMアンドAというのも行われてくる、ふえていくのではないかと思います。
 ちなみに、平成十一年のときに公正取引委員会の合併等の基準が変わりましたものですから、ちょっとその公正取引委員会のデータは使えないので民間会社の統計で申し上げますと、合併、買収、営業譲渡、資本参加、出資の拡大という、いわゆる広義のMアンドAに該当するものが九三年は三百九十七件でございましたが、九九年には千百六十九件でございます。二〇〇〇年の一月から四月まで、十二カ月分の四カ月でございますが、これで六百十五件でございますから、年率千八百見当ということで、この分割によってふえるかどうかは別としても、いずれにしても企業をMアンドAするという方向はまだまだ続くのではないかというふうに考えております。
#18
○北岡秀二君 次に法務省の方に質問が移りますので、通産省はもうこれで終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
 先ほど御答弁にありましたとおり、この法制度は経済界からの強い要望に基づくものという形になっておるようでございますが、法務省が現在確認しております、会社分割制度を利用して組織の再編成を行おうということで計画しておる会社はどれぐらいあるのか、お伺いしたいと思います。
#19
○政府参考人(細川清君) 必ずしも正確な数について把握しているわけではございませんが、報道等によりますと、複数の銀行が共同で持ち株会社を設立した上で事業分野ごとに組織の再編成をすることとか、ある事業会社が特定の事業部門の一部を本体から分離した上でその子会社と統合させるというようなことを予定していると承知しております。これらの場合には、会社分割制度が利用されると見込まれておるわけでございます。
 もっとも、経営者というのはインサイダー取引の問題とか相場操縦の問題等がございますので、はっきり確定しないと外部には公表しない、我々にも言わないというのが一般的でございます。株式交換、会社分割の場合にも、法律の審議中にはほんの数件しか表ざたになっていなかったんですが、法案が通ってからわずかの間に既に四十件ほどが新聞等で分割の報道がされているというような状況でございます。
 したがいまして、私どもとしては、これが成立いたしますれば相当数の利用見込みがあるもの、このように考えているところでございます。
#20
○北岡秀二君 何回も申し上げますが、今回の法案というのは、とにかく企業の国際的な競争力を高めるために組織の再編成を容易にする制度を整備しようというようなものであるわけでございます。しかし、現行法においても会社分割につきましては営業の現物出資による会社の設立という方法でも同一の目的を達成することができるというような状況にあるわけでございます。
 こういうような状況の中で、新たに会社分割制度を設けようという趣旨について、これは再確認の意味で、どういうところの必要性からそういう流れに至ったのか、お伺いしたいと思います。
#21
○政府参考人(細川清君) いわゆる分社化のための物的分割、これはすなわち承継会社が分割に際して発行する株式を分割会社自体に割り当てる形態と同様の効果は、御指摘のとおり、現行商法においても営業の現物出資等によって行うことができるわけでございます。
 しかしながら、会社分割制度を創設することによって、第一には、従来の商法ではそういうことができなかった人的分割、つまり承継会社が分割に際して発行する株式を分割会社の株主に割り当てることができるようになった、こういう利点がございます。
 第二に、現物出資等の方法による場合と比べまして、会社分割制度におきましては裁判所が選任する検査役の調査を要しないものとしております。そこで、検査役の調査が必要でございますと、会社設立の手続が完了するまでの間に承継の対象となる営業を停止する必要があるほか、調査期間が一定ではございませんので、あらかじめ具体的なスケジュールを立てて分割登記を進めることができないなどの問題点があったわけでございます。
 しかし、今回の改正ではそういった調査は要しないものとしておりますので、そういった問題も解消されるということでございまして、従来の法制に比べて簡易、迅速に会社分割が行えるようになる、このように考えているところでございます。
#22
○北岡秀二君 ちょっと時間が経過しましたので、通告しておる質問をかなり飛ばして質問をさせていただきたいと思います。
 これまでの衆議院、参議院における審議において議論されてきたことではありますが、商法改正法案第三百七十四条ノ二第一項第三号等において、会社分割をする場合の事前開示書面として「各会社ノ負担スベキ債務ノ履行ノ見込アルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」が法定されていることにより、債務超過になるような会社分割が許されないということになっております。
 したがって、この第三百七十四条ノ二第一項第三号の書面の正確性を担保することが極めて重要な意味を持つことになるわけであります。この正確性を担保するための方策としてはどのようなことが考えられるのか、お伺いしたいと思います。
#23
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、本改正法案におきましては、事前の備え置き書面として、「各会社ノ負担スベキ債務ノ履行ノ見込アルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」が含まれております。この債務の履行の見込みがあるということは、個々の債権者すべてについて弁済期において履行することができる、こういう意味でございますので、その理由としましては、双方の会社それぞれについて財産の価額及び債務の額の比較により債務超過でないことを比較すべきこととなりますが、その場合には、財産の価額については時価によったのか簿価によったか、時価によった場合にはどのような算定基準によったのかということを明らかにする必要があるわけでございます。また、単に債務超過でないというだけでは足りなくて、将来の収益予測等も大事になりますので、その収益予測が悪い場合には債務の履行の見込みがないという場合もあるわけでございます。
 そして、こういったものにつきましては、まず当然に株主や債権者がその権利を行使するために閲覧に供されるわけでございまして、そこで判断がなされる。それから、不実の記載がされたときには、取締役は百万円以下の過料の制裁を受けることになりますし、また不実の記載によって債権者等が損害を受けたときは、商法二百六十六条ノ三あるいは民法七百九条等によって取締役個人が損害賠償責任を負うということになっているわけでございまして、こういったことから正確性が担保されるものと考えておりますが、なお第三者的な公認会計士等の専門家の意見等が添付されることは望ましいことは当然でございます。
 以上でございます。
#24
○北岡秀二君 それでは、これらの開示書類に不正な事項が記載された場合、取締役はどのような法的責任を負うことになるのか、お伺いいたします。
#25
○政府参考人(細川清君) 先ほどちょっと触れましたが、この三百七十四条ノ二の事前備え置き書面に不実の記載がされて、会社の債権者等の第三者に具体的な損害が生じた場合には、取締役は民事上一定の要件のもとに商法二百六十六条ノ三、または民法七百九条に基づく損害賠償責任を負うこととなります。
 それから、債務の履行の見込み及びその理由を記載した書面に記載すべき事項を記載しない、あるいは不実の記載をしたときには、取締役は改正の対象となっております第四百九十八条第一項第十九号により百万円以下の過料に処せられることになるわけでございます。
#26
○北岡秀二君 もう時間の関係で最後の質問を大臣にしたいと思います。
 まず、私はこの商法改正に関連して、最近の経済的な動向ということを考えてみたときに常々思うんですが、グローバルスタンダードという言葉が出始めてからもう久しくなっておりますが、いろんな御意見がございまして、グローバルスタンダード・イコール・アメリカンスタンダードだと。何もかもそのスタンダードに合わせていいのかどうかというような考えもあるわけでございまして、そういうことに関連して、いろんな面での法整備も、それなりに我が国の将来の経済界のあるべき姿、産業界のあるべき姿というのも当然頭に入れておかなければならない部分もあろうかと思うわけでございますので、そのあたりは今後の取り組みの方針としてぜひとも重々御理解をいただいた上で、商法の改正等がありますならば、そのあたりを御理解いただきたいなと思う次第でございます。
 そして、このたびの法改正に関連して、いろんな部分から問題あるいは危惧が指摘をされておるわけでございますが、ちょっと私、質問時間がなかったものですから、そのあたりの質問をしませんでしたが、株主や債権者の保護及び企業経営の健全化のために企業情報のディスクロージャーを一段と進める必要が指摘をされておるわけでございまして、法務省の今後の考え方、取り組みについて、法務大臣にお伺いしたいと思います。
#27
○政務次官(山本有二君) 株式会社には株主、債権者等多数の利害関係者が存在するのが通常でございますが、投資行為あるいは取引行為に関しまして、自己責任の原則が強調されている近時におきましては、その原則を機能させる環境整備の一環といたしまして、企業情報の開示の充実が求められているものと認識しております。
 企業情報の開示の重要性につきまして、政府は、平成九年五月に閣議決定いたしました経済構造の変革と創造のための行動計画におきまして、「国際的な動向、情報開示が企業行動ひいては我が国経済に与える影響をも勘案しつつ、企業情報の開示等に対する多様なニーズに対応した制度の整備・充実の具体的在り方について検討を行い、その結果を踏まえ、所要の措置を講ずる。」として、開示制度のあり方の検討を指摘しております。
 法務省といたしましても、平成十一年には、商法の改正により、監査報告書の記載事項の充実と、計算書類、株主総会議事録等の開示の対象者を拡大し、ディスクロージャーの一層の充実を図ったところでございます。今後も、企業情報の開示のあり方につきまして検討を進めてまいりたいと存じております。
#28
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 まず、法制局にお尋ねしますが、内閣総理大臣臨時代理の指定ですが、あらかじめ指定がなされていなかった場合にはどのようにして臨時代理を指定することになるんでしょうか。その手続について説明してください。
#29
○政府参考人(阪田雅裕君) お答えいたします。
 総理がその臨時代理を指定されずに欠けることとなったという場合どのようにするかということについては、内閣法その他法令には規定がございません。
 そこで、どうするかということでありますけれども、これにつきましては、これまでも歴代の内閣法制局長官等が何回か国会でも御答弁を申し上げ、また私も過日衆議院の法務委員会で答弁いたしたところでありますけれども、万が一そのような事態、すなわち総理がその臨時代理を指定することなく欠けることとなったというような事態が生じた場合には、総理大臣以外の閣僚が協議した上で臨時代理を決めるという以外に方法はないと考えられますし、またそのような方法で決めることが条理上許されるというふうに理解しております。
 なお、念のために申し上げますと、内閣法第四条第二項では、「閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。」というふうに規定しておりますので、この場合は内閣総理大臣及びその職務を行うこととなります内閣総理大臣臨時代理が存在しておりませんから、閣議は開催することはできませんということであります。
#30
○小川敏夫君 あと一点確認ですが、閣僚の協議ということですが、そうすると、閣僚以外の人は協議にもちろんのこと参加することはできないわけですね。
#31
○政府参考人(阪田雅裕君) 最高の行政機関であります内閣の首班を決めるという行為、内閣の首班の臨時代理でありますけれども、を決めるという事柄にかんがみまして、内閣以外の者がこれに関与するということは想定はされていないと思います。
#32
○小川敏夫君 ありがとうございました。法制局への質問はただいまで終わりでございます。
 次に、内閣官房の方にお尋ねしますが、今回の青木官房長官が内閣総理大臣臨時代理にあらかじめ指定されて、すぐに早急に実際に臨時代理になり、そして閣議が開かれて総辞職に至っておるわけですが、これは事実経過を時間を追って少し詳細に説明していただけたらと思います。
#33
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 四月二日の午後七時ごろ、青木官房長官は小渕総理にお会いをいたしまして、その場で総理から、有珠山噴火の心配もあり、何かあれば万事よろしく頼むとの指示を受けたところでございます。
 この指示は、病床にある総理が御自身の意思を、内閣官房を統括し、総理と一心同体の立場にある内閣官房長官に対して示したものであり、内閣法第九条で規定されておりますような事態が生じた場合には内閣総理大臣臨時代理の任に当たるようにとの指示を当然に含んだものであることから、この指示を受けて、青木官房長官が臨時代理としての職務を開始できる体制を整えていたところであります。
 その後、同日夜の官房長官記者会見終了後に、総理が昏睡状態となった旨の連絡を青木官房長官が受けられましたが、その時点においては総理が回復する可能性もあると考えられ、また休日の夜でもあり、内閣総理大臣としての職務を直ちに必要とする状況でもなかったところであります。
 翌三日午前九時の時点において、青木官房長官は、小渕総理が引き続き集中治療室において治療を受けておられることを踏まえ、有珠山噴火対策など一刻もゆるがせにできない諸問題に対応していく必要がある等の状況を総合的に勘案して、実際に臨時代理としての職務を開始したものであります。
 その後、同日午後零時四十分に臨時閣議を開催し、総理の病状、臨時代理の指定及び臨時代理としての職務を開始した旨の報告が青木官房長官からなされるとともに、衆参両院議長に対して臨時代理の発令通知を発出し、官報公告手続もあわせて行ったところであります。
 内閣総辞職につきましては、四月四日午後二時半に、青木官房長官が順天堂病院に出向き、意識状態は昏睡状態で、脳梗塞による脳障害のため、質問を理解したり御自身の意思を表明なさることは当分の間困難であるとの判断をせざるを得ないとの医師団の報告を直接受けられました。内閣総理大臣が意識不明であり、近い将来に回復の見込みがないような場合は、憲法第七十条に言う内閣総理大臣が欠けたときに当たるものと考えられることから、青木官房長官は、医師団の報告を受けて、小渕総理の病状がこれに該当すると判断し、この判断につき、同日午後七時の臨時閣議において了解を得て、内閣として総辞職の決定を行ったものであります。
 以上でございます。
#34
○小川敏夫君 承知しました。
 それで、四月三日の午前九時に臨時代理を実際に開始したということですが、これは具体的にどのような手続、あるいは手続といっても、例えば官房長官御自身が宣言したのか、あるいは何らかの手続がとられたのか、そこら辺のところをお聞かせいただきたいんですが。
#35
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 内閣といたしまして、国務大臣青木幹雄に対して、内閣総理大臣小渕恵三病気につき、内閣法第九条の規定により、臨時に内閣総理大臣の職務を行う国務大臣に指定するという指定を四月三日に行っております。
#36
○小川敏夫君 ちょっとよくわからなかったんですが、それはあらかじめ指定を受けていた官房長官が、青木官房長官御自身の判断でそのように開始した、こういうことになるわけでしょうか。ちょっとそこら辺のところがいま少しわからなかったんですが、具体的に手続がどういうふうに行われたのかです。
#37
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 青木幹雄官房長官としては、先ほど御説明を申し上げましたように、四月二日の午後七時に小渕総理大臣より臨時代理の指名を受けたということでありますが、その職務を行うことにつきまして四月三日に内閣告示を行った、こういうことであります。
#38
○小川敏夫君 実際の手続の流れを聞いているんですけれども、そうすると、あらかじめ指定を受けた人が、総理が欠けたという状態になったときに実際に臨時代理の指定を受けるわけですね。この臨時代理の指定を受けるときの手続のあり方を聞いているんですが、これは具体的にどのような手続を行ったのか、その事実経過をお尋ねしているんです。
#39
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 具体的には、内閣としての解釈は、総理大臣より臨時代理の指名を口頭でいただくということで差し支えないというように解釈いたしております。
#40
○小川敏夫君 私の質問の趣旨は、あらかじめ指定を受けたということは今御説明いただきました。指定を受けた方が、実際に総理大臣が欠けたということになって、そうすると指定を受けた方が実際に臨時代理になるわけです。
 この臨時代理になるときの手続ですが、これはどのような手続をとることになっていて、実際にどのような手続をとったのか。ですから、それはあらかじめ指定されていた官房長官が、総理が欠けたという事態が起きたので、みずから判断し宣言してなったのか、そうではなくて、しかるべき閣僚と相談されたのか、協議されたのかとか、そういうあらかじめ指定された方が、実際に総理が欠けた事態になったときに、実際に臨時代理になった、あるいはなる、その手続をお伺いしているのです、実際に。どうもよくわからないので私聞いているのですけれども、青木さんがあらかじめ指定されていたから青木さんの判断でなったということなんでしょうか、それとも何らかの閣僚とかそういう方と相談してなったということなのか、その事実経過だけ教えていただければいいんですが。
#41
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 他の閣僚と協議するとか、そういうことではございません。
 四月二日の午後七時に小渕総理大臣より臨時代理の指名を受けたということは、総理より直接に指名を受けたということであります。
 なお、職務開始につきましては、例えば海外出張の場合もそうでございますが、海外に出張をする前に臨時代理の指定はいたしておりますが、職務を開始する日、すなわち海外に出張をいたしますその日に業務開始として指定公示をいたしております。
 そういう意味で、翌三日の午前九時の時点において、ただいま申し上げましたように、有珠山噴火対策など一刻もゆるがせにできない諸問題に対応していく必要があるとの状況を総合的に勘案して臨時代理としての職務を開始した、そのことを内閣として告示をいたしました、こういうことでございます。
#42
○小川敏夫君 確認ですが、そうすると、あらかじめ指定されていた青木さんの判断で職務を開始した、その後の閣議でこれが了承された、こういう事実経過になるということでしょうか。
#43
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 閣議で了承ではありませんで、閣議には報告をしたわけでありますが、判断でやった、そういうことでございます。
#44
○小川敏夫君 ありがとうございました。官房副長官に対する質問はこれで終わりでございます。
 今、法務大臣に御出席いただいてこの法案の審議をしているわけですが、法務大臣は森総理大臣に任命されているわけでして、森総理大臣の職務に何らかの問題があればこの法案の審議がまた問題になるのではないかということで、その前提としてお尋ねしたわけでございますが、これからこの商法の改正、その法案のことについて質問させていただきます。
 まず、この会社分割ですが、これまでも会社分割が労働者の整理解雇のために利用されたり、あるいは整理解雇をするための一つの理由づくりとして用いられてはいけないということ、これはこれまでの審議の中で何度か説明していただくというか確約をいただいておるんですが、審議も大詰めになりましたので、改めてこの会社分割が整理解雇というものに利用されてはならないんだということの趣旨をもう一度説明、あるいは確約していただきたいと思いまして、その答弁をお願いいたします。
#45
○政府参考人(細川清君) 整理解雇につきましては、裁判例の積み重ねによりましてその要件が確立されているところでございます。
 具体的にその要件を申し上げますと、人員削減の必要性が認められること、解雇を回避するための努力がされたこと、被解雇者の選定基準が妥当なものであること、解雇の手続が妥当なものであることというのが判例上確立した要件でございます。
 これらの要件に照らしますと、会社分割のみを理由とする整理解雇は整理解雇の要件を満たしていないということになりますので、仮にそのような整理解雇がなされた場合には、その解雇は判例の要件の基準に照らして効力を生じない、無効である、このように考えているところでございます。
#46
○小川敏夫君 ありがとうございます。
 ここは働く者の立場を保護するという意味から非常に大事な点でございますが、できましたら法務大臣も、この会社分割が解雇のために用いられてはならないんだという御趣旨をもう一度明確に説明していただけたらと思います。
#47
○国務大臣(臼井日出男君) 今御説明したとおりでございまして、この分割法をお願いするに際しましては、私どもとしても幾つもの要件を設けましてこれらの会社分割というものが労働者に不利益を与えてはならないということを確認いたしているところでございます。
 そのようなことはあってはならない、このように考えております。
#48
○小川敏夫君 それでは次に、この会社分割はいわゆる会社の不採算部門の切り離しといいますか切り捨て、これに用いられてはならないんだということがこれまでも繰り返し質疑と答弁で確認されているところでございますが、質疑も大詰めになりましたので、その点について再度御確認いただけたらと思います。
#49
○政府参考人(細川清君) 改正法案の第三百七十四条ノ二第一項によりまして、会社は事前開示書面として、各会社の負担すべき債務の履行の見込みのあること及びその理由を記載した書面が要求されているわけでございます。
 この債務の履行の見込みの有無につきましては、個々の債権者のすべての債権についてその弁済期においてその履行を行うことができるかどうかにかかるものでございますが、この判断をする上では承継される財産の価額及び債務等の額が重要な要素となり、会社分割後に分割会社または設立会社の双方が債務超過となるような場合には、この債務の履行の見込みのないものとして分割は許されないことになるわけでございます。また、分割の時点では債務超過でなくても、収益の予測等により弁済期に債務の履行の見込みがないと判断される場合にもやはり会社分割は許されないことになるわけでございます。
 さらには、会社分割においては、設立会社の資本金の額等は承継する財産の価額から承継する債務の額等を控除した純資産額の範囲内で決めることとされております。しかも、設立会社はこの純資産額を表章する株式を発行することになりますので、債務超過となっている営業のみを承継させるということは、その面においても許されないことであるわけでございます。
#50
○小川敏夫君 昨日の日本経済新聞の社説なんですが、そこの部分、この会社分割は、「会社全体の重荷となっている赤字部門を切り離すというのは典型的な会社分割の狙いそのものである。」というふうに説明しておるわけです。
 そうすると、どうもこの法律が予定していない不採算部門の切り捨てということがまさに会社分割のねらいであるかのように間違った説明がされていると思うんですが、これはやっぱり間違っているということでよろしいんでしょうか。
#51
○政府参考人(細川清君) 先ほど来御説明申し上げておりますように、会社分割は弁済期に債務の履行の見込みがないことは許されないことになっておりますので、こういったことに誤解がないように、私どもも法案が成立いたしましたらここのところを周知徹底して、誤った報道がなされないようにいたしたいと考えております。
#52
○小川敏夫君 この法案も公表されてまさに審議の大詰めに来ているわけですが、日本経済新聞という非常に影響力のある新聞の社説でこのような表現がされるとなると、どうもこれまでの不採算部門の切り離しということはこの会社分割では予定されていないんだということの周知徹底がまだ不十分なんじゃないかと思います。その点、そういうことの誤解がないようになお一層の周知徹底に努めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#53
○政府参考人(細川清君) 会社分割法制を検討する当初において、経済界には一部にそういう意見があったやに聞いておりますが、法制審議会の審議の過程で、そういうことを否定するために先ほど来申し上げているいろいろな条文を整備したわけでございます。
 そういうことでございますので、今回の改正法案の趣旨が十分徹底していないのではないかと言われると、そうではないという反論をする元気が出ないわけでございまして、私どもとしましても、成立いたしましたらこの点は十分に周知徹底し、経営者ひいては労働者の皆さん方にもそういった誤解が生じないようにいたしたいと考えているところでございます。
#54
○小川敏夫君 それでは、次の点ですが、会社分割に当たって事前に労働者と協議を要するという規定が盛り込まれておりますが、これもこれまでの議論で再三質問され、答弁されている点でございますが、協議を要するとしたこの趣旨について、法務省としてどのように理解しているか、基本的な考えを説明していただきたいと思います。
#55
○政府参考人(細川清君) これは議員提案の修正案でございますので、私どもは提案者から委員会等でお聞きしたことによって理解したことを御答弁申し上げるわけでございますが、会社分割におきましては、合併と同様、権利義務の包括承継の効果を生ずる組織法上の行為でございますので、承継される営業を構成する契約上の地位も労働契約承継法で定めているとおり労働者の同意を要さずに当然に承継することになります。
 したがいまして、民法第六百二十五条の適用はないということになるわけですが、これが政府案なんですが、そういうことを前提としまして、会社分割による労働者の権利の承継につきましては、労働者の保護の観点から本人の意向を尊重する、そして協議するということが望ましいということでこういった修正がなされたものだと、こういうふうに理解しているところでございます。
#56
○小川敏夫君 それで、また協議の点なのでございますが、これまでの質疑の中で、労働者の協議、これを労働者が労働組合に委任することができるということはこれまでの答弁でいただいておるんですが、仮に労働組合がなかった場合に、労働基準法三十六条の一項に定めるような労働者の代表、これに協議を委任することができるということでしょうか。これも法務省のお考えをぜひお聞かせいただければと思います。
#57
○政府参考人(細川清君) 民法及び今回の改正法を含む商法上では、特に協議についての代理人の資格については制限をしておりません。
 したがいまして、御指摘のような労基法三十六条第一項の労働者の過半数を代表する者に対して代理権を授与すればそれは適法な代理人となるということで、したがいまして会社はその代理人と協議すべきこととなるものと承知しております。
#58
○小川敏夫君 その代理の点なんですが、一般的に協議の代理が許されるということになりますと、世の中いろんなさまざまなことがございますので、例えば会社側の人事部長とかあるいはそうしたいわば会社の利益を代表する者が一方で労働者から委任を受けた、いわば利害が対立する双方の代理人となるというようなことも考えられないわけではないというふうに思いますが、このように会社の利益を代表する、あるいは会社の代理人と言ってもいいような立場にある管理職の人が労働者の代理となるような双方代理というものは、これはやはり私は認められないと思うんですが、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。
#59
○政府参考人(細川清君) 民法第百八条の本文は、何人も法律行為の当事者双方の代理人となることはできない旨を定めておりまして、これに違反する行為は無権代理行為として原則として無効になるというふうに理解されております。
 したがいまして、労働者の代理人となった者が当該会社を代理する地位にある場合、当該会社の代理人であるような場合には、これは双方代理ということになりますので、協議の結果成立した労働契約の承継に関する合意等が無権代理行為となるということもあるというふうに考えておるわけでございます。
#60
○小川敏夫君 それでは、この協議ですが、実際に協議はどのような手順で行うんでしょうか。
 一般的には、会社分割を行おうとする会社側の方が労働者に協議を持ちかけると思うんですが、反対に労働者の方から会社側に協議を行うよう持ちかけることも認められると思うんですが、実際に協議のあり方、この手順ですね、これについて法務省はどのようにお考えでございましょうか。
#61
○政府参考人(細川清君) 一般に法令上の協議と申しますのは、問題となっている事項に関して相手方に対して必要な説明を十分に行って、相手方の意見を聞いた上で一定のことを行う場合に用いられる言葉でございます。
 本修正案におきましては、会社分割により承継される営業に従事する労働者に係る労働契約を承継会社に承継させるのか、あるいは分割会社との間で継続させるのか、こういうことに関しまして労働者に対して必要な説明を十分に行って、労働者の意見を聞いた上で決定すること、そういうこととなっているものと、こう承知していまして、これは会社の義務といたしたものでございます。
 したがって、この協議は会社または労働者のいずれからも求めることができるというふうに考えております。
#62
○小川敏夫君 それでは、また協議の点ですが、協議ですからいつかは、協議がまとまるか不調かは別にして終わると思うんですが、これは協議はどのような状態で通常終わる、協議の終了は何をもって終了というか、そこら辺、法務省のお考えを聞かせていただければと思います。
#63
○政府参考人(細川清君) 協議の終了の問題でございますが、この修正案におきましては、会社分割により承継される営業に従事する労働者に係る労働契約を承継会社に承継させるか、あるいは従来どおり分割会社との間で継続させるかに関して、労働者に必要な説明を十分行い、労働者の意見を聞いて、そういうことで合意を形成しようという手続でございます。
 したがいまして、これが十分行われれば、協議が最終的に成立しなかった場合でもやはり協議は行われたということになるというふうに解釈すべきものと考えております。
#64
○小川敏夫君 それでは、この協議の点の最後の質問なんですが、仮に会社側が協議を行わなかった、あるいは実質的に見て行ったとは認められないというような甚だしい形式的な内容の実態だったというような場合、これは会社分割の無効理由になるんでしょうか。その点について法務省の見解をお聞かせください。
#65
○政府参考人(細川清君) 今回の改正案におきましては、例えば合併無効の訴えとか株式交換、株式移転の無効の訴えとかと同様に、無効原因は個別的に明示しないで他の法律の条文から解釈して定めるということにしているわけでございます。
 今回の修正案は、これは会社に対して労働者と協議する義務を商法上の義務として義務づけているものでございますから、ただいま小川先生御指摘のように、この協議を全く行わなかった、あるいは実質全く行っていないと同じだと、そういう状況になりますれば、これは分割の要件を、手続的な要件を履行していないということになりますので分割無効の原因となり得るものと考えております。
#66
○小川敏夫君 きょうは修正案提出者の北村先生にお越しいただきましたが、特に具体的にこれを質問するということはないのでございますが、今この労働者の協議の点について法務省の見解をお伺いしましたが、いよいよこの法案審議も大詰めになっておりますが、この労働者との協議に関しまして、修正案提案者として何か御意見がもしありましたらここでお聞かせいただければと思います。
#67
○衆議院議員(北村哲男君) 北村でございます。
 ただいま法務省の方から、本来ならば修正案提案者の私どもがお答えをしなくちゃならないことも随分お答えになっていたようなんですけれども、いわゆる協議約款をつくることについては私どもは大変苦労をしまして、本当に今までの商法体系の中に一つの労働者保護についての風穴をあけたというふうな評価ができるのではないかと思っているんです。
 特にまた、個々の労働者というふうに商法上してありますけれども、現実は労働組合との間の協議になることはほぼ通常の形になると思っておりますし、また確かに解釈上は協議約款であって同意ではない。しかし、同意ではないけれども、本来労働組合との協議は合意を目的としてできるもの、するべきものでありますから、合意するつもりがなくて、ただ協議だけやって分割をするとなると、また法的な問題が改めてこれは労働組合法の問題として不当労働行為だとか誠実協議義務に反するような問題が起こってくるわけですから、現実には労働組合と合意に達するまでは話し合わなくちゃならぬということが想定されるわけです。
 そこまで持ってきたというのは、まさに今この問題で一番大きな問題とされているのが、包括分割のために民法六百二十五条の同意条項が排除される。だから、個々の労働者は自分たちが知らない間によその会社に移籍されてしまう、あるいは残されてしまう、それを何とかしたいという救済措置、六百二十五条に対する代償措置としてここを入れたということ。
 そういう意味で、かなり本当に努力して、そしてまた多くの労働者の皆さんが今社会でリストラの旋風に巻き込まれて雇用不安を考えておられる中で、この会社分割法をつくり、そして確かに社会構造の改革もしなくちゃいけないから分割も必要であろうと。しかし、片や働く者の雇用不安を解消していくという意味で、この条文を入れたことが大きな意味を持っていると私は考えております。
#68
○小川敏夫君 ありがとうございました。修正案提出者にはこれで質問は終わりでございます。
 次に、また法務省の方にお尋ねしますが、債権者保護の点でございますが、この今回の法案でも債権者の保護ということが盛り込まれておるんですが、例えば分割してしまった後、分割された会社が実は見込みが狂ったり、あるいは当初の資産評価が間違っていたりして、債権者が結果的に満足な弁済が得られないというようなことも決してないことはないとも思うんです。
 それで、私、債権者の保護ということをより徹底するためにはどうしたらいいかと考えたところ、実はそもそも債権者というのは分割する前の全部の財産がいわば債権の引き当てとして存在したわけでございます。ですから、今度は会社を分割した場合、とりあえず分割する方か分割された方かどちらでもいいですけれども、仮に何らかの事情で債権の満足が得られなかった場合には、少なくとも分割時にあった債権に関しましては、分割する会社であれば分割された方の会社、分割された会社であれば分割する方の会社が保証したら端的に済むんではないかというようなアイデアを思いついたんですが、そうすれば、そもそも債権者は分割する前の会社全部の財産が債権の満足を得るための引き当て財産だったということを考えれば、どうも私の考えは合理的じゃないかなと思うんですが、法務省はそこら辺のところはいかがでしょうか。債権者の保護の趣旨等も踏まえて御答弁をいただきたいと思います。
#69
○政府参考人(細川清君) ただいま小川委員がお述べになられました考え方、考え方としては一つの立法上の考え方だと思いますし、私どももそれを一時検討したこともあるわけでございます。
 ただ、よく考えてみますと、分割当事会社の一方の債務について他方の会社も保証責任を負う、こういうふうにいたしますと、保証人とされた会社は弁済等により主債務が消滅するまでの間は他方の会社の経営の悪化の危機を負担しなければならないということになるわけでございます。したがいまして、このような方法は、会社組織の再編成により経営の効率性を向上させる等の会社分割法制の目的に照らすと、分割当事会社に過重な責任を負わせるものではないかという問題点が第一点でございます。
 それから、今度は債権者の立場に立って考えてみますと、分割前には一方の会社に対してのみ、分割した会社の一つの会社に対してのみ請求すれば足りたのに、分割によってその責任財産が二つに分属するということになりますと、場合によっては双方の会社に対して債務名義を催告した上で強制執行をしなきゃならないということになると。そういうことで手続上の不利益はないこともないということになるわけでございます。
 こういったことを考えまして、御指摘のような方策はとらずに債権者保護手続を行うことといたしまして、ただ債権者保護手続上、催告されるべき債権者に対してその催告がなされなかった場合には、その承継した責任財産の限度においてその責任を負担するという法定責任を課すことにいたしたわけで、いわば催告がなされるべきなのになされなかった人については、小川委員御指摘のような考え方がとられているということになろうかと思います。
#70
○小川敏夫君 次に、株主の保護の点でございますが、簡易分割制度というものがあって、資産価値が二十分の一であれば特に株主総会の特別決議が要らないということになっておりますが、そうすると、悪知恵を働かせまして二十分の一以下を継続反復すれば実際には大半を分割できるんじゃないか、株主総会の承認なしにできてしまう、いわば脱法的手段の道をつくってしまっているんではないかと思うんですが、そこら辺のところはいかがでしょうか。
#71
○政府参考人(細川清君) 株主に対する影響が少ない場合には一定の要件のもとに株主総会の決議が要らないという考え方は、合併の場合にも株式交換、株式移転の場合にも取り入れられているわけでございます。ですから、それと基本的には同じ考え方なんですが、簡易分割によった場合でも、株主総会の特別決議を得ることは不要となりますが、その他の要件、手続については通常の会社の分割と同様でございます。したがって、分割は営業を単位としてのみ認められますし、債務の履行の見込みがなくなるような分割をすることはできませんし、債権者保護の手続も省略することはできませんので、簡易分割を実際上繰り返すということは余り考えられないのではないか、あるいは実際上困難ではないかと思っています。
 なお、当初から規模の大きな資産を承継するために御指摘のように細切れに簡易分割を繰り返すという脱法行為が仮に行われた場合には、それが簡易分割の手続の乱用に当たる場合には分割無効の原因ともなり得るものと考えております。
 また、そういう簡易分割の手続が乱用される場合には、そもそも取締役側は株主に選任されているものですから、株主は少数株主権の権利を行使いたしまして株主総会の招集を請求して取締役の解任決議を議題とすることができるわけでございますし、また、それで議題が否決されたけれどもなお違法な行為があるという場合には、少数株主権の行使として裁判所に対して取締役の解任の訴えを提起することができるということにもなりますので、余りこれが乱用されるということは考えられないのではないかなと私どもは考えておるところでございます。
#72
○小川敏夫君 その点に関してですが、これは簿価による、二十分の一という非常にわかりやすい規定を設けているんですが、ただ、そうしますと逆に、簿価が低くても大変に重要な営業部門があるのではないか。これは、例えばNTTとNTTドコモがそうだと言うのではなくて、一つの例として取り上げるだけなんですが、今NTTとNTTドコモというのが分割しておりますが、例えば移動通信というものがもうごくごく初期の出始めのころは、NTTという全体から見れば簿価は二十分の一以下であったかもしれないし、恐らく当初はあったと思うんです。しかし、将来性ということを考えたときには、これは大変に大きな将来性があって、とても簿価二十分の一だからいいというものではなくて、企業の命運を担うような大きなものじゃないか。ですから、今NTTのことは引き合いに出しただけで、それがそうだと言うわけではないわけですが、特に将来非常に成長が認められるというような部分であっても、しかし簿価としては二十分の一以下でしかないものもあると思うんです。
 これが例えば商法ですと、会社の合併あるいは営業譲渡などでは重要な営業の譲渡ということで弾力的な解釈ができるようになっておりますが、今回の分割で簿価二十分の一と言って切ってしまうと、将来二十分の一をはるかに超える大きな重要なものであっても、会社分割当時二十分の一の簿価であれば結局株主総会の特別決議が要らないということで株主の承認が漏れてしまうというようなケースもあり得るとは思うんですが、その場合についてはいかがでしょうか。特に、商法の営業譲渡が重要な営業というふうに規定しているのとこれを区別した点も含めて説明していただければと思います。
#73
○政府参考人(細川清君) 時価と簿価の問題は、一番典型的に問題になりますのは株式、債券等のいわゆる金融資産の問題でございます。
 これにつきましては、昨年の商法改正で、従来は取得原価主義を採用しておりましたものを、時価主義を採用することができることといたまして、公開会社等につきましては証券取引等で時価主義が強制されることになります。ですから、そういった問題はいずれはだんだん解消すると思いますが、御指摘のように時価と簿価が差があるということはあり得るわけでございまして、ただ、今回の改正法の考え方でございますが、分割におきましては、合併と同様、組織法上の行為であって、株主、債権者等の利害関係人も多数に上るのが通常でございますから、株主総会の決議を要するか否かの基準となる簡易分割の基準は特に明確に規定される必要があると考えております。
 そのために本法案におきましては、簡易分割の基準につき重要な営業という一般的な概念の基準を採用しないで資産二十分の一以下という客観的な基準を採用したものでございますが、これは資産二十分の一であれば一般的には重要な営業には該当しないというふうに考えられるからでございます。
 学者の中にも、営業譲渡につきましては、重要な営業とは何かという場合には資産の十分の一ぐらいが基準になるんだという学者もおられるわけでして、二十分の一ならば一般的には重要な営業には該当しないという考え方でこの基準を採用したものでございます。
 そして、簡易分割が可能であっても株主総会の決議という手続を経ることは妨げられませんから、資産二十分の一以下の財産でも分割会社にとって重要な営業と評価される場合には通常の分割手続を行うこともできるわけでございます。
#74
○小川敏夫君 簡易分割の場合、反対株主の株式買い取り請求権、これはどうなっているんでしょうか。
#75
○政府参考人(細川清君) 反対株主の株式買い取り請求権につきましては、分割する会社につきましては、これは人的分割のみを認めておりますので、この点につきましては株式買い取り請求権を認めておりません。
 他方、吸収分割の承継する会社の簡易分割におきましては、これは人的分割も認めているわけですが、その場合には、承継する会社の株主の持ち株比率に影響いたしまして株主の利害に影響が大きいものですから、その点については株式買い取り請求権を認めているということになります。
 ですから、繰り返しになりますが、物的分割の場合には、要するに発行される株式はすべて従来の会社のものになりますので、従来の会社の株主の持ち株比率に影響がないということで株式買い取り請求権は認めていないけれども、人的分割については認めているということでございます。
#76
○小川敏夫君 簡易分割の場合ですが、確認でございますが、簡易分割によって労働者が不利益をこうむるというようなおそれというものは、これはないんでしょうか。
#77
○政府参考人(細川清君) 簡易分割によりますと株主総会の特別決議を経ることが不要となりますが、この場合であってもその他の要件、手続につきましては通常の会社分割と同様でございます。したがって、承継の対象は営業を単位とするものでございますし、債権者保護手続も必要である。それから、分割する計画書、契約書等に記載することによって労働契約も承継会社にそのまま同一条件で承継されるということでございまして、労働者の保護に関しても、簡易分割だからといって異なる取り扱いがされるものではありません。それから、労働契約の承継法におきましても簡易分割と通常の分割との間に差異を設けていないところでございます。
 したがいまして、この簡易分割によって労働者の保護が害されるということは、それはないものと考えております。
#78
○小川敏夫君 債権者、株主、労働者の保護という観点を順次お伺いしたわけですが、あと私考えまして、債権者とは違って債務者、いわば取引をしている業者という面で何か不利益が及ばないかというようなことをあれこれ考えたんです。
 例えば、分割する前のA社、こういう会社から、A社が取り扱う商品をすべて仕入れていわば代理店としてこれを販売しているというような取引先があったとします。通例ですと、例えばA社との間で独占販売契約があって、A社が取り扱う商品について他社製品は取り扱わないというような独占契約を結ばされることも多いわけでございます。これが、仮にA社が取り扱う商品のうちの一部分をB社に分割してしまう、そうするとA社とB社は別会社になるわけですが、A社との間にA社が取り扱う商品は他社と取引してはいけない、こういう独占契約があった場合に、それまで取り扱っていたB社に移行してしまった商品について、これはA社との関係で契約違反になるというので事実上扱えないんではないかというようなケースもちょっと想定してみたんですが、このような形の場合、取引先が不利益をこうむる、特に分割された会社が敵対関係にあるというような関係に入ったときに大変困った事情が取引先に起きるんじゃないかと思うんですが、このような観点から、取引先の保護といいますか、どうなのか。私が今言った例などの場合には取引先はどのように対処したらいいのか、お考えをお聞かせいただければと思います。
#79
○政府参考人(細川清君) 御指摘の事例は、A社が甲乙二つの営業をしていて、会社分割でB社に乙営業を承継させた。ところが、C社というのがあって、C社が従来のA社の製品については甲乙両営業部門のものについても独占的に扱って、他の会社のものは扱ってはいかぬ、そういう約束があったという前提だと思うんですが、そういう事例で考えてみますと、これがどうなるかというのは、当該の独占的な取り扱い契約の趣旨によるわけでございますし、また通常は分割の場合に再度協議してその点を明確にすると思うんですが、そういうことが一切ないという状態で考えてみますと、一般論として申し上げれば、従来はC社は甲の営業の商品も乙の営業の商品もそれは扱う、こういう契約だったわけですから、そういう契約がある場合にはその業者が、つまりA社が分割によって一部の商品の製造部門を新設会社に承継させたときは当該商品の販売に係る契約上の地位も原則として新設会社、すなわちB社に移転する。だから、通常の解釈としては、意思解釈としては依然としてC社は乙の営業によって生ずる商品を独占的に取り扱う、そういう解釈になるのが普通なんではないかなというふうに私は考えております。
#80
○小川敏夫君 質問を終わります。
#81
○委員長(風間昶君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時二十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時六分開会
#82
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、藁科滿治君が委員を辞任され、その補欠として竹村泰子君が選任されました。
    ─────────────
#83
○委員長(風間昶君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#84
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に竹村泰子君を指名いたします。
    ─────────────
#85
○委員長(風間昶君) 休憩前に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#86
○魚住裕一郎君 公明党・改革クラブの魚住裕一郎でございます。
 前回に引き続きまして、この会社分割に関連して何点か御質問をさせていただきたいと思います。
 会社分割というのは、分割会社から新設の会社あるいは承継の会社に分割会社の営業を譲渡するというか、承継させるというような構成になっているわけでありますが、その営業を構成する財産あるいは債務、これがそれに伴って移転するという形になるわけであります。承継した財産あるいは債務、これを受け取る側になる設立の会社などにおいては、商法上いろんな計算項目でどのように計上していくかというのは結構実務上難しい問題があるのではないかというふうに思います。
 まず、その計算関係について若干質問をさせていただきたいと思いますが、まず今回の会社分割というのは組織法上の行為というふうに位置づけられております。新設の会社あるいは吸収分割の場合は承継会社が株式を発行するということが予定されているわけでありまして、株式があらわすその価値というものは引き継いだ財産と債務の差し引きした差額の純資産額、これをあらわしているというふうに考えるわけでありますが、この純資産額を設立会社等の資本項目にどういうふうに反映させるかということになろうかというふうに思うわけであります。
 原則としてこの純資産額は資本金として計上されることになるというふうに思うわけですが、新設分割における設立会社の資本金の額あるいは承継会社の資本金の増加額をどのように計上することになるのかにつきまして、まず法務当局から御説明いただきたいと思います。
#87
○政府参考人(細川清君) 御質問の点は、改正法案の商法第三百七十四条ノ五及び第三百七十四条ノ二十一が規定しているところでございます。
 これらの規定は、承継会社等の資本充実の観点から、承継する純資産額を基準に資本金の額ないし増加額を制限することとして、分割会社より承継する財産の価額から、先ほど先生が御指摘のとおり、承継する負債の額及び分割交付金、さらには吸収分割の場合においてはいわゆる代用自己株式の簿価の合計額を控除した額を限度として定めるものとしております。
 また、会社設立時に株式を発行した場合には、発行価額の資本金の組み入れにつきまして、会社の資本金の額が発行済み額面株式の総数に券面額を乗じた金額を下回ってはならないという原則がありますが、こういうことにかんがみまして、分割の際に額面株式を発行するときは、一株の金額にその株式の総数を乗じた額を資本金に組み入れなければならないものとしております。
 また、新設分割におきましては、無額面株式を発行するときには五万円にその株式の総数を乗じた額を資本金に組み入れなければならないことといたしておるわけでございまして、その限度内で資本金に組み入れまして、純資産額にさらに残余がある場合には、原則としてこれは資本準備金の扱いになるわけでございます。
#88
○魚住裕一郎君 後半部分は当然の原則かなというふうに思いますが、前半部分のお話の中で分割交付金という言葉が出てきましたけれども、これはどのような趣旨のもとに認められたものでしょうか。
#89
○政府参考人(細川清君) これは、合併の場合の合併交付金等と同様の性質のものでございます。分割交付金につきましては、改正法案の三百七十四条と三百七十四条ノ十七で規定しているところでございまして、人的分割の場合には分割会社の株主が設立会社等の株式の割り当てを受けることになりますが、その割り当て比率を計算した結果、単純な整数比にならない場合がございますので、これを調整する方法として一定の金銭を交付することを認めることといたしたものでございます。
 また、新設分割の場合にも複数の会社が行う場合がございます。こういう共同新設分割の場合には、各分割会社に対する株式の割り当て比率を調整する、整数にする、こういうために同様に分割交付金を認める必要があるわけでございます。
 これらの分割交付金は営業を承継する設立会社等から流出する財産であるために、資本充実の観点に基づいて、設立会社の資本準備金の限度額を定めるに当たっては、承継に係る純資産額からこれを控除する、そういう扱いになっているわけでございます。
#90
○魚住裕一郎君 同じく先ほどの説明の中で、吸収分割において、今お話があった分割交付金と同様の形で控除すべきものということで代用自己株式という言葉が出ましたけれども、これはどういうような趣旨で認められたものでしょうか。
#91
○政府参考人(細川清君) これは、改正法案の三百七十四条ノ十九が規定するところでございまして、この規定は、吸収分割の際に承継会社が現行の商法第二百十一条の規定により相当の時期に処分しなければならない自己株式を有している場合にはその新株の発行にかえて保有している自己株式の移転を認めるというものでございます。
 その趣旨は、会社が自己株式を処分した上で新株を別途発行するということにいたしますのは、手続が煩雑になるばかりでなく、余り合理性がないということになるわけでございます。そういうことで、合併等の場合と同様、この代用自己株式を認めたものでございます。
#92
○魚住裕一郎君 そういうふうに純資産額の中から若干控除するという形になるわけですが、新しい会社あるいは承継会社の方に現実に純資産額相当のものがきっちり移転していなきゃいけないというふうに、資本充実の原則というふうに何回もお話しになっているわけでございますが、ところが、今まではいろんな形で検査役が裁判所選任の形で出てくるわけでありますが、今回は検査役の調査は不要として手続の合理化を図っているというような形になるわけです。営業の現物出資の場合は検査役があるけれども、今回はないと。これは、実務界から評判悪いというふうに言われているんですが、この検査役の調査の実情あるいは問題点につきまして御説明いただけますか。
#93
○政府参考人(細川清君) まず、検査役の調査の実情でございますが、平成十年度に東京地方裁判所に申し立てられた設立または事後設立の際の検査役選任申し立て事件のうち、取り下げによって終了したものを除く四十九件を対象として調査した結果によりますと、申し立てから検査役の選任までに平均約二十日間、それから検査役の選任から報告書の提出までに平均約二カ月半を要しております。
 また、検査役として選ばれる方でございますが、通常は弁護士が選任されて、その弁護士が事務の補助を公認会計士に依頼するという場合が多うございますが、法的問題に乏しい事件では、公認会計士が最初から検査役に選任されるということもあるというのが実情でございます。
 次に、問題点でございますが、これは主として経済界から指摘されていることでございますが、第一としては、現物出資等の履行後に会社設立の手続が完了するまでの間に検査役の調査がございますから、この調査の完了するまでに営業を停止しなければならないということが第一点として指摘されたわけでございます。
 第二点として、裁判所が選任する検査役の調査が完了する時期というのは、選任された検査役によって差がございますので、完了する時期の見込みが立たないために、会社設立等の時期の確実な予測が困難である。それで、経営上の判断をすることが難しい場合があるというような御指摘がされているわけでございます。
#94
○魚住裕一郎君 ただ、昔、商法を勉強したとき、教科書を読むと、会社法というのはすべて資本充実の原則、これが金科玉条になって、何でもそれで貫徹されるというような思いをしたわけでございます。
 そうしますと、今検査役に問題点があるという指摘で、今回はなしにするわけですが、資本充実の要請は、検査役がいないことによってどういう形で担保されるんでしょうか。
#95
○政府参考人(細川清君) これは、合併の場合、あるいは株式交換の場合も同じですが、これらの組織法上の行為による場合には、いずれも検査役の調査は不要とされておるわけでございまして、その理由は共通でございます。資本充実を図らねばならないことは魚住先生御指摘のとおり大原則でございますが、会社分割におきましては承継の対象となる営業に含まれる財産や債務は分割時までに分割会社が保有しているものでございまして、その会社の決算につきましては設立時以降の毎決算期において監査役の監査、あるいは会計監査人の監査、あるいは取締役会の決議や株主総会の承認を経ている、そういうことでございますので、改めて検査役の調査まで要求する必要はないと。そして、右決算の結果をもって設立会社の資本の限度額に反映させることで足りると考えていただいております。
 先ほども申しましたように、この点の考え方は合併の場合や株式交換の場合と同じでございます。また、分割計画書に記載された資本の額等は株主及び債権者に開示されるということでございまして、株主等がその当否を判断して権利行使をする仕組みとなっておるわけでございます。そして、こういうことでございますので、他の場合と同様に、検査役の調査がなくてもよいと。それで、現物出資のような場合には、これは情報の公開もございませんし、債権者、株主といった第三者がおりませんので、専ら発起人の判断で行われる。そういうところで問題が起こり得るので検査役の調査が置かれている、このように理解しておりますので、今回の場合には検査役の調査は要らないということになったわけでございます。
#96
○魚住裕一郎君 何か腑に落ちないような気もしますけれども。
 次に、ちょっと細かいことになるんですが、吸収分割においては、のれんを承継会社の貸借対照表にも計上することができるということになっておりますが、その趣旨と、なぜ新設分割では認めなかったのか、御説明いただきたいと思います。
#97
○政府参考人(細川清君) のれんの計上につきましては、現行の商法二百八十五条ノ七に規定がございまして、のれんは有償で譲り受け、または合併により取得した場合に限り貸借対照表に資産として計上することができるものとされておるわけでございます。これは、そのほかの場合には合理的なのれんの評価額を付することは困難であって、恣意的に過大評価されるおそれが大きいためでございます。
 吸収分割におきましては、承継会社が発行する新株の割り当て比率を定めるために分割会社ののれんが評価されるわけでございますが、この場合には、分割をする会社と承継する会社という利害の対立する二つの会社が関与することによって恣意的なのれんの計上が防止されることになりますから、承継会社の貸借対照表にこれを計上することを認めることといたしたわけでございます。
 これに対して、新設分割にあっては利害の対立する会社の関与がありませんので、この場合にのれんの計上を認めますと、いわゆる会計学上禁止されています自家創設のれんの計上を認めることに等しいためにこれは認めないということになったわけでございます。
#98
○魚住裕一郎君 それから、最初の方の御答弁の中で、純資産額のうち資本金とされなかった額、分割差益というものなんでしょうけれども、これは認められると思いますが、設立会社の資本項目上はどういうような形で計上されるんでしょうか。
#99
○政府参考人(細川清君) 御指摘の分割差益の資本項目における計上基準については、改正法案の二百八十八条ノ二の改正によって手当てしているところでございます。
 まず、会社が新株を発行する場合には、株式の発行価額中資本に組み入れない額は資本準備金として積み立てるべきことが一般原則でございますので、これと同様の考え方に立ちまして、分割差益を資本準備金として積み立てるべきこととしておるわけでございます。これは今申しました二百八十八条ノ二の第一項に三号の二と三号の三を追加しておりますので、これによるわけでございます。
 それから、分割差益のうち、分割会社の利益準備金その他留保をした利益の額を超えない金額につきましては、設立会社あるいは承継会社の資本準備金にしないで利益準備金または留保利益とすることができることといたしておりまして、結局、設立会社等において分割後に利益配当がしにくくなるというふうなことを防止することといたしているわけでございます。
 そして、設立会社等においてこのような処理をしたとき、すなわち利益準備金または留保利益としたときには、承継会社の利益準備金及び留保利益の額を従来の分割会社の利益準備金及び留保利益から控除すべきことといたしておりまして、留保、利益準備金が二重に計上されることがないようにしているわけでございます。
 さらに、この場合には、分割会社の利益準備金から差し引くべき額は、承継会社の利益準備金の額を超えることができないことといたしておりまして、拘束性の強い利益準備金から拘束性の弱い留保利益にかえることはできないということといたしているわけでございます。これは、ただいま申し上げました二百八十八条ノ二に第三項から第五項を追加しておりますが、これによって定められているわけでございます。
 以上、もう一度取りまとめて申し上げますと、改正法案では分割後の分割会社及び設立会社等の利益準備金の額の合計額を分割前の分割会社の利益準備金の額より少なくすることはできないこととしておりますが、これは、利益準備金は本来資本の欠損等に充てるために使用できるものとするものでございますので、その趣旨を貫徹するということでございます。
#100
○魚住裕一郎君 一部重複するかもしれませんけれども、留保利益、利益準備金あるいは剰余金という形でできるのは人的分割の場合にはできるというふうになっているわけですね。物的な分割、要するに分割会社が新設会社あるいは承継会社の株主になるような場合は認めないというような形になっておりますが、これはどうしてでしょうか。
#101
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、利益準備金等の計上は人的分割の場合に限っておりまして、物的分割の場合にはこれを認めておりません。
 その理由を申し上げますと、人的分割におきましては、分割会社の純資産が会社分割により減少いたします。そのために、資本の部の数額を減少させる必要が生じます。そこで、その際には利益準備金及び剰余金を減少させることを認めて、その減少の範囲内で設立会社または承継会社において利益準備金または留保利益を計上することを例外的に認めたわけでございます。
 これに対して、物的分割の場合には、分割会社は設立会社または承継会社に財産が移転するわけですが、その財産の価値を表章するものとして株式の割り当てを受けるわけでございます。その株式が分割会社の資産になりますので、分割会社の資産状況は結果的には変更がないということになります。したがいまして、この場合には、資本の部にも変動することができないわけでございますので、したがって、利益準備金等を減少させることもできないから、設立会社、承継会社におきましては分割による利益準備金等の計上を認めることといたさなかったわけでございます。
#102
○魚住裕一郎君 会社の貸借対照表を見ますと、いろんな引当金というような項目がいっぱい出てきますけれども、この分割会社の引当金というものは、承継ということから考えるとその対象になるんでしょうか。
#103
○政府参考人(細川清君) 改正案では、分割により承継される権利義務は分割計画書の記載に従って承継されるわけでございますが、これは分割会社に帰属する現実の財産とか債務に関するものでございます。資本金の額とか準備金の額とか、そういう計数上の数額にすぎないものは、これは含まれないわけでございます。
 御指摘の引当金は、特定の支出または損失が生じることが相当確実に予想される場合に、会計処理上そのうち当該営業年度の費用または損失とすることを相当とされるものを貸借対照表上に計上したものでございまして、法律的に債務と認識できるものと法律上の債務とは言えないものとが入っております。法律上の債務と認識できる引当金につきましては、分割会社に帰属する現実の負債と、こう言いますので、承継対象の権利義務に含めることが可能でございますが、法律上の債務とは言えない引当金につきましては、これは計算上の数値にすぎないものですから、権利義務に含めることはできないということになるわけでございます。
 もっとも、設立会社また承継会社によって分割によって承継した資産等に関して、これは商法の定める公正なる会計慣行に従って新たに引当金を計上することは可能でございます。そうしますと、実質的には、結果的には承継と認めているのと同じような形になるということになるわけでございます。
#104
○魚住裕一郎君 そうすると、例えばいろんな引当金がありますが、退職給与引当金とかありますね。将来、数十年先に退職される方のことを考えながら、その期間における費用を考えるということになるんだと思うんですが、これは具体的にはどういうふうに扱われるんでしょうか。承継される人間に対応する引当金が人数割りでいくとか、あるいは在職年数まで加味した形で移転していくのか、どういう形になりましょうか。
#105
○政府参考人(細川清君) 退職引当金でございますが、退職金というのは、まだ退職していない場合でも既に勤務した期間に対応するものは、これは債務性があるとふうに判断されます。つまり、退職すれば直ちに払わなければなりませんので、そういう意味では債務性があるということでございますので、会社分割によって承継する権利義務に含めることができまして、分割計画書等の記載に従って承継されるということになるわけでございます。具体的には、必要なものを必要な限度でその分割計画書等に記載するということになろうかと思います。
#106
○魚住裕一郎君 わかりました。具体的な分割契約書みたいなところでやるしかないのかなとは確かに思うところでありますが。
 では次に、前回の委員会でも質問あるいは参考人の意見の中でも出た問題ですが、不採算部門の切り捨てが不可能であるというような論点がございました。改正案の三百七十四条ノ二第一項第三号及び三百七十四条ノ十八第一項第三号に記載がありますが、各会社の負担すべき債務の履行の見込みのあること及びその理由、それを記載した書面を備え置くべきことというふうになっておるわけであります。
 もちろん、経済団体等から考えてみると、債務超過会社であったとしても優良事業について分割できる道を開いた方がいいんだというような声もあるわけですが、あえてこういうような形にしたわけでありますが、確認の意味で、ここに言う債務の履行の見込みのある場合というのはどういうようなことを言うのか、その理由としてどういうことを書けばいいのか、具体的に記載した書面ということでございますので、ちょっと細かいことになるんですが、御説明を法務大臣あるいは法務当局からいただけますでしょうか。
#107
○国務大臣(臼井日出男君) 御指摘の債務の履行の見込みの有無は、個々の債権者の債権につきましてその弁済期において履行を行うことができるかどうかの判断にかかるものでございます。この意味での債務の履行の見込みがあるかどうかの判断をする上におきましては、承継される財産の価額及び債務の額が重要な要素となるわけでございまして、分割の結果、分割会社が債務超過になるような会社分割は、基本的には債務の履行の見込みのない分割として許されないのでございます。
 もっとも、履行の見込みを判断する上では、財産の価額と債務の額との比較に加えまして、会社の収益予測等も重要な要素となりますので、分割の時点で債務超過にならなかったというだけで直ちに将来の債務の履行の見込みがあるということにはならないのでございます。
 債務の履行の見込みがあることの理由といたしましては、財産の価額及び債務の額を記載し両者の比較により債務超過状態にあるかどうか、さらに将来の収益予測等を記載することが重要でございます。財産の価額につきましては、時価によったのか簿価によったのか、時価によった場合はどのような算定基準によったのか等も記載すべきということでございます。
#108
○魚住裕一郎君 そうしますと、相当詳しいというか、それを見ただけで、ああ大丈夫なんだなというようなことがわかる書面である必要があろうかと思います。ただ、そうは言われても、カンマがいっぱいついているような金額が出てきたり、一般素人的にはなかなかわからないようなことがあります。
 そうすると、今おっしゃったような趣旨の裏づけとして、やはり第三者的な専門家の目を通した方がいいんではないか。あるいは、営業報告書にもいろいろ、監査役の意見書とか出ていますけれども、そういうものも今回の今質問しております書面にもやはり添付した方がいいんではないか、公認会計士の専門家の目の意見ですね。この点はいかがでしょうか。
#109
○国務大臣(臼井日出男君) 委員御指摘をいただきましたとおり、公認会計士や弁護士などが会計上または法律上第三者的な立場から述べた意見書等が添付されていることが望ましいものでございまして、実務上もこれが実践されることを期待いたしているところでございます。
#110
○魚住裕一郎君 期待したいと。要するに、そういう形でアナウンスするということも含めて考えてよろしいですか。
#111
○政府参考人(細川清君) 現在、公開会社及び監査特例法上の大会社につきましては、会社の計算書類一般につきまして公認会計士による監査を必要としているわけでございます。これ両方合わせて今一万社程度でございますが、株式会社は実は百二十万社ほど全体でございまして、中小零細企業でも株式会社になっているものがございます。
 そういうことで、すべての会社に対して義務づけるものが難しいということが従来から言われているわけでございまして、そういうことを考えますと、今回の改正におきましても、商法ですべての会社にそれを義務づけるのは難しいと思っておるわけですが、そういう公開会社等あるいは監査特例法上の大会社につきましては、当然のことながら公認会計士等がされると思いますし、そういう方向で、それが望ましいんだということを私どもとしては周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
#112
○魚住裕一郎君 それから、今、商法三百七十四条ノ二の第一項第三号あるいは十八の第一項第三号のこの書面ということですが、これ大事な書面ですが、この内容がうそだったらまた冗談になってしまうわけですが、そのときの取締役の責任というのはどういうふうな形になるんでしょうか。法務大臣。
#113
○国務大臣(臼井日出男君) 御指摘のような場合には、取締役は商法改正法第四百九十八条第一項第十九号によって百万円以下の過料に処せられることになっております。また、この書面に虚偽の内容が記載された結果、会社債権者の第三者が具体的な損害をこうむった場合には、取締役の第三者に対する責任を定めた商法第二百六十六条ノ三第一項、または不法行為者の責任を定めた民法第七百九条に基づきその損害を賠償すべき責任を負うことになるのでございます。
 なお、これらの取締役の責任とは別に、このような場合には債権者の保護のために、特に本号の書面の備え置きを要求した趣旨を没却するばかりか逆に債権者を害することになることから、会社分割自体が無効となり得るものと解されております。
#114
○魚住裕一郎君 次に行きたいと思います。
 ストックオプションの関係ですが、今回の改正案でどういう改正点があるのか、その概要と、それから、分社化によって子会社ができる、そうすると、そこに移った従業員にとってみたら、この子会社の株式をもらってもマーケット性がないということを考えたら、やはりもとの会社の、あるいは上の会社と言ったらいいんでしょうか、そういう株式、そのストックオプションをもらった方がいいなというふうになるわけですが、この点はどうなっているのでしょうか。法務当局、お願いします。
#115
○政府参考人(細川清君) 現行の商法におきましては、自己株型のストックオプションとワラント型のストックオプションの併用を認めておりません。しかし、本法案が創設する吸収分割に際して、当事会社がそれぞれ別のタイプのストックオプションを利用している場合には、その併用を認めないとストックオプションの引き継ぎができないことになりますので、そういうことから、今回の法案においてはこれの併用を認めることといたしているわけでございます。
 もっとも、弊害を防止するために、その発行の限度は両社を合わせて発行済み株式総数の十分の一といたしているわけでございます。
 それから次に、子会社の従業員、取締役等に対して親会社のストックオプションを与えるという点でございますが、ストックオプションの制度は、会社の業績が向上して株価が上昇すればストックオプションを付与された取締役、使用人がその利益を得ることができるので、会社にとって有能な人材を確保することができるということでございます。そういうことで、その当該の会社の取締役、使用人に現在は限られているわけでございます。
 ただ、先生ただいま御指摘されたように、昨年の改正でも株式交換制度が導入されましたし、今回の会社分割法制の創設によって親子会社関係というのはさらに増加することが予想されます。そしてまた、御指摘のとおり、完全親子会社の場合に子会社の株が全く公開されていないという場合もありますし、また逆に、完全親子会社の場合には子会社の業績が向上すれば親会社の収益も増加するという関係にございますので、そういうことから考えますと、今後、ストックオプション制度の趣旨、既存の株主に対する影響を考慮しながら、ストックオプションの付与対象者の拡大について検討していく必要がある、このように考えているところでございます。
#116
○魚住裕一郎君 ぜひ使いやすいように、また子会社に行った人間も頑張れるように御検討をいただきたいと思います。
 続いて、税制について若干お聞きしたいんですが、新しい会社分割制度をつくってやはり最大のポイントは税制の問題かなと。会社の経営をやりやすいようにといいますか、経済の構造あるいは社会の構造が変化して、それに対応する形でこの会社分割制度というものもあるわけでございまして、それにさお差すような税制といいますか、特例措置を設けていくべきではないかというふうに思うところでございます。
 昨年の政府の税制調査会ですか、そういう具体的な対応を検討するというようなことが出ておりました。新聞報道等でも検討作業に入っているようでございますが、その検討の方向性といいますか、現時点における概略、どういう状況になっておるのか、ちょっと御説明をお願いできますか。
#117
○政府参考人(福田進君) 会社分割法制を創設いたします今時の商法改正法案に対応いたしまして、会社分割に係る税制上の取り扱いについては、現在、鋭意検討を進めているところでございます。
 想定される会社分割の形態や方法は極めて多様でございまして、これらに係る税制の検討に当たりましては、改正後の商法のもとにおける具体的な会社分割の内容や会社の資産及び負債の分割の際の取り扱いの詳細、さらには会計処理の詳細なルールの明確化が必要と考えられるところでございます。
 会社分割に係る税制につきましては、合併、現物出資等の資本等取引と整合性のある課税のあり方や、先ほど委員の方から御指摘のございました各種引当金等の資産、負債の引き継ぎのあり方、さらには所得税法や法人税法を通ずる株式譲渡益やみなし配当課税の取り扱いなどについて十分検討する必要がございまして、所得税法や法人税法などの各税法の広範にわたる見直しが必要と考えているところでございます。
 また、会社分割に係る税制の検討に当たりましては、会社分割の形態あるいは方法が極めて多様でございまして、いやしくもこれが租税回避の手段として利用されることのないように必要な措置を検討すべきであると考えているところでございます。
 したがいまして、会社分割に係る税制につきましては、商法あるいは企業会計の検討の動向なども見きわめつつ、平成十三年度の税制改正において対応すべく、現在、鋭意検討を進めているところでございます。
#118
○魚住裕一郎君 今御答弁いただいた平成十三年度の税制改正で云々というところ以外は、ほとんど去年の税制調査会の文章と同じような感じであったわけでございます。
 新聞報道によれば、いろんなことも法人課税小委員会において検討されてきておるようでございますが、例えば資産を引き継ぐ場合、時価との差額の問題が常に出るわけです。その差益というか差額に課税したらやはり厳しいだろうと当然だれでも思うし、そんなのじゃ分割はやめましょうという話になる。今最後にお話しになった租税回避の手段として利用される、これもまたおかしなことだなと。そういうようなことを考えて、その辺の検討ぐあい、どうですか。
#119
○政府参考人(福田進君) まさに今魚住先生御指摘のように、今回の商法改正によりまして会社の分割制度が導入される。分割制度が導入されたときに、分割に伴って含み益等が発生して課税関係が発生する、それに伴って分割の足を引っ張る、これも困ったことでございますが、他方でそういう制度を利用して租税回避が行われる、これも回避しなければならないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、両者を両にらみしながら、整合性のある制度を構築すべく今検討を進めているところでございます。
#120
○魚住裕一郎君 例えば、土地を承継会社あるいは新設会社に移すといった場合、含み益をどうするかという問題、繰り延べるかどうかという問題がありますが、登録免許税はもう当然出るわけですね。合併では軽減税率も考えられているわけでございまして、その場合、登録免許税等はどうなりますか、ちょっと個別になりますが。
#121
○政府参考人(福田進君) 御指摘の各種資産、負債の引き継ぎのあり方等を今検討しているところでございますが、先ほど私、所得税法、法人税法と申し上げましたが、当然登録免許税も含めて各税法広範にわたる見直しが必要と考えているところでございまして、現行の制度とそごを来さないようにということで検討させていただいているところでございます。
#122
○魚住裕一郎君 これで終わりますけれども、ぜひ会社分割制度が使いやすいように税法上も御検討をいただきたいことをお願いして、質問を終わります。
#123
○橋本敦君 前の委員会に続いて、労働契約の承継問題に関してまず質問したいと思います。
 会社が営業譲渡あるいは分社化、あるいは今回の分割、こういったことで労働者を全部切り捨ててしまうということは許されないという立場は、これは最高裁の整理基準に関する判例でも明らかだと思うんです。したがって、原則として労働者の労働契約を承継しますよというそのこと自体が私は決して悪いと言うつもりは全くないんです。
 問題は、労働契約を包括的に承継するということによって、民法の大原則である六百二十五条の労働者の同意権までないものとしてしまう、そういう仕組みは労働者の権利侵害を起こすじゃないか。だから、労働者の同意を要件として労働契約を承継するということになぜしないのかということを私は指摘をしてきているわけです。
 この点について民事局長、なぜ労働者の同意を要件としないのですか。もう一遍改めて聞かせてください。
#124
○政府参考人(細川清君) 民法第六百二十五条は、雇用契約には人的色彩があるので、その当事者の同意がなければその契約関係を他に移転することができないということになっているわけでございますが、現在の社会においては、企業に勤務している労働者の方々の契約というのは、人と人との関係というよりも、企業と、あるいは営業組織と人との間の関係ということになろうかと思います。
 本件の場合には、分割の対象が営業という一つの有機的一体としての組織を対象としておりますので、これが承継される場合には、その営業組織に勤務している労働者の方々もそこと一緒に移転するということが最も現状、従来の状況とも変化が少ないということになるわけでございます。そういうことから、また労働条件等も包括承継でございますからこれが分割によって変更することがないということになるものですから、労働者と会社の協議がまとまって合意することが好ましいわけですが、合意ができない場合のぎりぎりの解決としてはただいま申し上げたような方がむしろ適当であるという考え方によるものです。
 あと、理論的な問題としては、やはり包括承継の場合には六百二十五条は適用がないというのはこれは民法学者の間でも通説的な見解だと思いますので、これを両方あわせまして先ほどのような結論に至ったわけでございます。
#125
○橋本敦君 今の説明では、六百二十五条の民法の大原則をネグレクトしてよいという合理的な説明としては私は納得できませんね。それじゃ、なぜ民法六百二十五条が現に民法の大事な原則として規定があるんですか。だから、そういう意味ではもっと精緻にこの問題を考えなくちゃいけないと思いますよ。
 一つ民事局長に伺いますが、今のお話の中でも、承継後ほとんどの場合に分割以前についていた職務と同じ職務に引き続いて労働者はつくということになるので、これらの労働者については実質的不利益はないということを従前答弁されてきたし、今もそういった趣旨の答弁も含まれていると思うんですね。
 そこで伺いますが、承継後ほとんどの場合にそうだと言うんですが、必ずそうだということにあなたも答弁されていないんですから、ほとんどの場合にというのはどういう場合ですか。そうでない場合も起こるんでしょう。
#126
○政府参考人(細川清君) これは労働契約の承継法とあわせてお考えをいただきたいと思うんですが、従来の承継される営業に主として勤務した方は分割後もそれに勤務することになりますが、従として従来その承継される営業に勤務した方は異議権がありますが、異議を述べないで承継された場合には新しい、要するに承継される営業とともに移転するわけでございます。従来それは従としてそれに対応していたものですから分割後は仕事の内容が変わるのではないかと思われますので、ほとんどの場合というふうに申し上げたわけでございます。
#127
○橋本敦君 ですから、分割後仕事の内容が変わることも当然予定されているんですよ。だから、労働契約がそのままいく場合もあるけれども、そうじゃなくて従前の仕事と変わるということになる労働者も出てくるということでしょう。これら労働者について実質的な不利益はそれだけ考えただけで十分かというと、そうじゃないんですよね。
 この前も生熊参考人が述べていましたけれども、勤務場所が、新しく新設分割会社ができる、その会社が従来の会社と違って、東京で働いていた会社から例えば静岡とか九州とかそっちの方に分割会社が新設されるとなったら、そっちへ行かなくちゃならぬ。そうなりますと、家族を抱えて、まさに生活条件そのものが大変な変化を受けるわけですから。子供の学校の問題もあるでしょう。あるいは宿舎がどうなるかという問題もあるでしょう。そういった問題について、労働者は労働者のやっぱり労働条件、生活条件、これを考えて、その労働契約の承継について同意するかしないか自主的に自分の生涯を考えながら判断をして、同意するかしないか、それをはっきり言う権利は私はあってしかるべきだと思うんですね。
 その点、民事局長はどうお考えですか。
#128
○政府参考人(細川清君) 分割は従来の営業が別法人になるということでございますから、法律的には労働条件は分割によって当然には変更しないわけで、従来のまま、そのまま承継、包括承継されるわけでございます。したがいまして、勤務場所の変更等は、あるいは労働内容の変更等は、分割後のその会社内部における変更ということに法律的には整理できると思いますので、そういった場合には、承継会社の内部での配転等に関しては、従来の判例法理、個別の労働法理によって保護を受けるというふうに考えております。
 御指摘のございました配転の問題につきましては、配転命令に関する学説、判例を見てみますと、業務上の必要性と本人の生活上の不利益を総合考慮して判断すべきものであって、業務上の必要性が乏しかったり本人の生活上の不利益が重大な場合には権利乱用として無効になることがあるというのが、それらの裁判例で確立した考え方だと思っております。
#129
○橋本敦君 私はそれは全く形式論だと思うんですよ。分割会社がどこに仕事を持つということで設立されるか、行く前から分割の計画書を見ればわかるんですよ。だから、文句なしに同意なしに承継されるということを法律的に擬制をして、そして分割会社に行った後で今度はそこで今言ったような配置転換あるいは勤務場所の移転が合理性があるかどうか考えることができるし考えたらいいんだというのは、これは全く事後的な問題であって、事前に目の前に見えて極めて明らかな勤務場所の移転という問題についてはっきりしているのに異議も言えないし、それから同意もないというのは、私はこれは労働者の権利を甚だしく侵害すると思いますよ。分割計画書を見れば、その業務がどこに移転され、分割会社がどこに設立されるか、その場所もこれは明らかになるんでしょう。まず、この点、聞きます。明らかになりますね。行ってみなきゃわからないことはないでしょう。
#130
○政府参考人(細川清君) 新設分割の場合には、分割後設立する会社の定款等も当然分割の決議で定めるわけですから、本店の所在地等についてもその定款の記載事項となるわけでございますし、吸収分割の場合には、当然従来の会社の分割本店がその本店になるということでございます。
#131
○橋本敦君 ですから、吸収分割の場合はどこの会社が吸収するかも明らかだし、新設分割の場合はどこで新設されるか本店も明らかになるんですよ。だから、行ってみなきゃわからないということではなくて、行く前から、そういう労働者にとっての生活条件の重大な変化ということに直面するわけですから、この点について労働者の同意を要件とした上で、包括的な承継とおっしゃるけれども、労働契約の承継がなされるというように私はするのが当然だと思いますね。
 そこで、そういう問題に関連をして、事前に労働者が意見を言う機会をつくらなきゃならぬというので、事前の協議ということで衆議院で修正されまして、北村議員にわざわざ御多忙中おいでいただいたわけですが、事前の協議を修正としてお決めになった根本的な理由はどういうところでしょうか。
#132
○衆議院議員(北村哲男君) ただいま橋本議員がおっしゃったような、できれば事前に自分の処遇ということ、どこに行くかということについても知り、そしてそれについて納得ができる手順を踏むべきだということでこの修正案をつくったわけでございます。
#133
○橋本敦君 そうしますと、この協議というのは、労働者の同意するかしないかも含め、会社分割についてどう対応するかということの意見も含め、会社側と十分協議ができなければ意味がないわけですから、その十分な協議ができることのために私は二つの要件が大事だと思うんですね。事前に十分の期間をとって、よく考え協議するいとまがあるかどうか。それからもう一つは、会社側が誠意を持ってその協議を受けたかどうかという二つの点を検証する必要があると思いますね。
 法律的にはそこまで決めるのはなかなか難しいんですが、具体的にはどんなふうに運用するべきだとお考えでしょうか。
#134
○衆議院議員(北村哲男君) 今の二つの問題ですが、一つは、私どもの修正案では、株主総会の二週間前までにその労働者との協議を終了すべきことを要求するという趣旨を入れてあります。そしてそれについても、二週間前と言っておりますけれども、会社は労働者との間で誠実に協議を行うために必要な協議期間を見越して協議を開始すべきであるということは当然のことだと思っております。
 しかし、通常、会社は分割手続として、私どもは最初は事前にということでかなり前ということを考えておったんですが、しかし分割協議を会社がするより前にするとこれまたやっぱり無理がありますので、分割計画書などの作成、そして株主総会の招集通知の作成、そして発送等の手続を順次踏まなくちゃならないということがありますが、そのために株主総会の二週間前よりも相当以前の段階で協議を開始するものと考えます。
 具体的な協議期間については、分割する会社の規模とか分割の規模あるいはその内容、そして協議を必要とする労働者数などによって異なることになりますから、一概に言うことはできませんけれども、少なくともその期間は、誠実に協議する期間は必要であるということ。そしてもし事前にそういう期間を設けなくて、さあ協議しよう、調わなかった、じゃ分割協議を進めますよというふうにしてしまうと、これはやはり誠実協議義務違反となって、新たなこれは法律問題が生ずる、損害賠償義務が生ずるとか、そういう形で、裁判等によって事後的な救済は図られるようなことになると考えます。
#135
○橋本敦君 それで、今のお話に関連してもう一つ確認をしておきたいんですが、これは労働者の側から、会社が分割ということを検討していることがわかった段階で、早く協議に入りなさい、協議しようじゃないかと労働者の側から要求するということは当然できるわけですね。
#136
○衆議院議員(北村哲男君) 当然できると思います。
#137
○橋本敦君 その労働者ということで、多数の労働者がいますから、その多数の労働者と具体的に会社が協議を尽くすというのは、労働者の数が何百人といますと、あるいは企業によっては千人ということもあるかもしれませんね、具体的にそれはどういうように協議が進められることになるんでしょうか。
#138
○衆議院議員(北村哲男君) さあ、それは新しい想定でございますので、まず、修正案の附則の第五条第一項においては、会社の分割に伴う労働契約の承認に関しては会社は労働者と協議をするものというふうにしておりますけれども、これは、分割が営業単位で行われることにかんがみ、会社に対して、会社分割により承継される営業に従事する労働者に係る労働契約について、承継会社に承継させるか分割会社との間で承継させるかについて労働者と協議をすることを義務づける趣旨であるということであります。したがって、協議となる労働者は分割の対象となる営業に従事している労働者全員であって、当該関係労働者が多数に上ったとしても、それであってもすべての労働者と協議することになります。
 なお、民法及び商法は、この協議は労働者の代理人との間でもすることができるわけですから、その代理人の資格について特に制限がない以上、労働組合が個々の労働者から代理権を与えられている場合は、会社はこれと協議することとなるわけでございます。
#139
○橋本敦君 ですから、この協議は、個々の労働者が協議を要求し、誠実な協議を会社に求める権利があるわけですね。そのことを労働組合がある場合に労働組合に委任するということはこれはできる、しかし、基本的には個々の労働者の権利と、こういうことですから、個々の労働者が協議を求める、協議を要求する権利を行使すればいい。労働組合は、会社が誠実にその協議を受けるように労働組合としてサポートしていくということも可能ですからね。だから、法律上は個々の労働者が協議の権利を持っている、こういうことですよね。
 それで、その協議が、会社の方が全く受けなかった場合とか、今御指摘のように誠実に協議したと言えないという状況が客観的に明らかな場合、それは一体どうなるのかということになりますと、まさにそういう場合は分割自体が無効だという判断をせざるを得ないよと、またすべきだよということになるというふうに修正案提案者はお考えですね。
#140
○衆議院議員(北村哲男君) これはやっぱり場合によると思います。その協議を事実上形だけやって、全くやっていないというふうな評価をされるならば、これは分割自体が無効になることはあろうと思います。しかし、それは評価の問題になると思いますので、個々的な事案、あるいは事後的な審査の問題になると思います。
#141
○橋本敦君 もちろん私もすべて無効と言っていないんですよ。具体的に客観的に協議を会社が拒否したとか受けなかったとかいう事実がはっきりしている場合、あるいは誠意を持って協議したと客観的に言えない場合、そういう場合はまさにこの法律で定めたルールに違反するわけですから、そういうことを強行した会社分割はそれ自体無効だということが言えるということは間違いないと思うんですね。
 その点は、民事局長の先ほどの御答弁もありましたが、間違いないですか。もう一遍はっきりしてください。
#142
○政府参考人(細川清君) 修正案で義務づけられた会社の協議義務は、これは分割の前提として必要な手続でございますので、その分割要件でございます。そして、これは私法上の権利義務ということになっておりますので、これが全く無視されたという場合には分割無効の原因となり得るものと考えております。
#143
○橋本敦君 分割無効と判断された場合は、この法律によって会社の分割登記それ自体が抹消しなきゃならぬということになるでしょう。では、労働契約については、分割が無効だと判断された結果、どういうようになりますか、民事局長。
#144
○政府参考人(細川清君) この分割無効の判決が確定した場合の効果につきましては、改正法案におきましては商法百十条を準用しているわけで、分割無効の効果は将来にわたって生ずるわけでございます。それは、これまでに、分割無効の判決が確定するまでに生じた権利義務が錯綜することがないようにと、こういう意味なんですが、いずれにしましても、分割無効の判決が確定した場合にはその将来に向かって分割がなかったような状態に戻さなければなりません。したがいまして、労働契約はもとの会社との間に復帰するということになるわけでございます。
#145
○橋本敦君 私は法律的には当然だと思いますが、そのことは非常に大事な問題ですから、労働省の方にも、今の民事局長の御答弁で労働省の方の見解も間違いないかどうか、ちょっと念のために伺わせてください。
#146
○政府参考人(石本宏昭君) ただいま民事局長が御答弁したとおりでございます。
#147
○橋本敦君 そこで、このような事態が起こった場合に、分割無効の訴えをだれが提起できるか。例えば、労働組合が委任を受けて会社と協議するという状況になっていたときはその労働組合が訴えを提起できるのか、あるいは個々の労働者が訴え提起の権利を持つのか、その点は民事局長、どうお考えですか。
#148
○政府参考人(細川清君) 会社分割無効の訴えの原告適格は、株主あるいは債権者保護手続で分割を承認しなかった債権者等があるわけでございます。労働者も多くの場合は債権者でございますから、分割を承認しなかった場合には原告適格を持つわけでございますが、この原告適格はあくまでもその労働者御本人ということになります。
 労働組合等は、協議は委任できますが、訴訟ということになりますと、これは弁護士法の問題がございますので、基本的には御本人が弁護士さんに依頼するならば依頼するということで、労働組合が関与するとすれば、それに側面的からサポートする、そういう形になるのではないかと考えております。
#149
○橋本敦君 今のお話で、分割無効の判決が確定すれば労働者はもとの契約関係に戻るということですが、これは大変なことですね。
 それで、もう一つ聞きたいのは、この民法六百二十五条の同意を要件としない、でありますから、協議を尽くしたけれども協議が調わなかった場合は包括的に承継されるということになるわけでしょう。その場合に、その労働者がやっぱり私はもとの会社にとどまりたい、行くのは嫌だ、こう言って承知をしない場合には、それは自己退職になる、自分で会社をやめたことになるという答弁がたしか衆議院であったと思うんですが、民事局長、そういうことですか。
#150
○政府参考人(細川清君) 自己退職になるという御答弁は労働委員会での御答弁ではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、ただいま橋本先生御指摘のとおり、協議は誠実に行われたけれども最終的には合意に達せずに、承継会社に移転することになった労働者がその会社に勤務したくないということであれば、それは客観的な評価としては退職の申し出をしたと同じように扱えると考えることもできるのではないかというふうに考えております。
#151
○橋本敦君 それは一体法的根拠はどこにあるんですか、そんなふうに扱えるというのは。会社が懲戒解雇したわけでもないですよ。本人が退職の意思表示をしたわけでもないですよ。包括的承継で分割会社へ身分が移るなら、私は民法六百二十五条があるし私は同意したくありませんよ、こう言っているだけなんですよ。何でそれが自己退職になったりするんですか。だれが自己退職させるんですか。労働省でもいいです。
#152
○政府参考人(石本宏昭君) 御指摘の点は、承継された後の話として後ほど御説明させていただきますが、まず行きたくないと言った方々と会社とで分割前に話し合いが行われるようなことになるだろうと思います。その際に、いやどうしても行きたくないんだと、会社の方としてはあなたの方は大変重要だから行ってくれというふうな話し合いの中で、三つ可能性がありまして、一つは、どうしても行きたくない、では配転ということでよろしいかなという話もあると思いますし、それから労働契約の終了ということで、例えば合意で円満に退職する、あるいは解雇するといったケースがあろうかと思います。
 ただ、先ほど法務省からお答えにありましたように、分割計画書等に記載されたといった場合には、分割時において当然に当該労働者は、いや応なく、当該労働者に対する使用者たる地位は設立会社等に承継されますし、労働者は同じ労働条件で移るわけでございます。その後、さらに例えば新しい会社で就労を拒否したというふうな場合でございますと、これは設立会社等の取り決めに従って解雇するといったことになろうかというふうに思います。
#153
○橋本敦君 要するに解雇されるということを今おっしゃったので、自己退職ということじゃないということですか、はっきりしてください。そうでしょう。
#154
○政府参考人(石本宏昭君) 先ほども申し上げましたとおり、事前に話し合いをする中で、労働者として会社と話をつけて円満退職、あるいはもう嫌だということで退職される、それから、設立後に承継された会社で就労をするのは嫌だということで退職されるといったケースもあろうかと思っています。
#155
○橋本敦君 はっきりしないんだね。行きたくないということで断ったら、もとの会社と合意の上で労働契約を解約したということで自己退職になるというのは、そんなものは仮定ですよ。もとの会社で仕事をしたい、こう言っているんです。だから行くのは嫌だと言うんだ。だから、労働契約を自主的に解約する自己退職というのは起こり得ないんです。残るのは解雇だけですから、労働者に対するそういう意味では不利益な解雇ということがもう迫ってくるんですよ。そういう問題を一体どういうように労働者保護ということでやっていくのかということが、この法案に関連をして真剣に私は問われなくちゃならぬと思うんですね。
 そこで、次の問題に話を移してまいりますが、北村先生、協議関係はこれで終わりますので、ありがとうございました。結構でございます。
 この会社分割が不採算部門を切り捨てるというようなことでは、それはできないんだよということを民事局長は何度もお話になりました。それは債務の履行の見込みがないときあるとき、いろいろな問題があるんですけれども、その問題でちょっと私は具体的に質問をしたいんですが、例えば商事法務千五百五十三号に前田庸教授が論文を書いておられますが、債務超過になっている、債務の履行の見込みがなくなる、そういう場合は分割ができないことになっているというのは民事局長の御答弁ですけれども、その会社分割、そういう場合、債務が超過しているという欠損状態だというだけではこれは分割ができないということにする必要はない、債務超過であっても評価含み益などにより債務の履行の見込みがあるときはそれは分割ができるというのは、民事局長もおっしゃったとおりで、前田さんもそうおっしゃっているんですね。
 そこで、私は、このことをだれが保証するのかということが法制度的にこの法律ではっきりしているのかと。検査役はないんですから。そして、書面が出てくる、あとは株主総会の特別決議あるいは簡易分割手続、こうなっていくんですから、債務超過でも債務履行の見込みがあるということをだれが保証するということになるんですかと、こういう質問なんですよ。
#156
○政府参考人(細川清君) 債務の見込みのあること及びその理由を記載した書面というものは、その理由等を詳細に記載した上、あるいは将来の収益予測も記載した上で、まず事前の開示書面とされております。したがいまして、ここで債権者や株主がその商法上の権利を行使するためにこれを判断して、債権者保護手続において異議を述べるか、あるいは株主総会において反対をするかどうかということを決議するわけでございまして、そこにおいて第三者の目にさらされるわけでございます。
 それからもう一つ、この書面に不実の記載があるという場合には、これは商法の改正法案におきましてその取締役については百万円以下の過料に処せられることになっておりますし、さらに本法でわざわざこれが要件として規定されたことにかんがみますと、この不実の記載がある場合には会社分割無効の訴えの原因となり得るもの、このように考えておりまして、さらには、不実の記載をしたことによって債権者その他の第三者が具体的な損害をこうむったという場合には当該取締役は商法二百六十六条の三あるいは民法七百九条によって個人的には損害賠償責任を負う、こういうことで、この全体の債務の見込みのあることの書面の真実性を担保しようとしているわけでございます。
#157
○橋本敦君 今の話は、全部事後的なチェックなんですよ。そうでしょう。罰金にするとか過料にするとか、全部後の話ですよ。だから、分割会社に不採算部門ということのねらいで連れていかれた労働者が、そこで全部が不採算部門でやっていけないということで会社が整理をされて全部解雇されたと。後になって、あれは不実記載だ、ああいう分割はけしからぬということで裁判を起こすとかなんとか言ったって、労働者の不利益というのは現実にはもう回復しがたいんですよ。
 そこで、こういうような不当な目的を持った不採算部門切り捨てというような分割を防ぐためには、事前開示書面、こういったものについて第三者チェックが決定的に重要ではないかと私は思うんですね。裁判所の検査役選任という手続はないけれども、工夫してそれをやるべきじゃないか。
 例えば、同志社大学の早川勝教授もジュリストの千百六十五号で、会社資産の評価方法の第三者による検査は役立つだろう、検査を不要とするなら、評価の公正さの担保には、開示資料作成者に責任を負わせるか、利害関係人による検査役の選任の申し立て、または少なくとも専門家の鑑定の依頼を取締役に対して請求できるようにすべきだと書かれておる。専門家の鑑定をやれということを要求できるようにせよというのは、私は一つの案だと思いますね。
 また、大阪大学の吉本健一教授が商事法務の千五百四十五号で、検査役の調査が使いにくいとすればこれを改善する方策を考えるべきである、検査役の調査にかわる保護措置の導入も検討されてよい、そのような検討をせずに一切専門家の調査なしで企業結合形成行為を行うことは乱用の危険性が大きいと考える、こう書かれておる。私はもっともな説だと思うんですね。
 そういう意味で、この問題で、分割計画書等の第三者によるチェックを、単なる閲覧だけじゃなくて、問題があると見ればしかるべき鑑定人に鑑定させろということを取締役に要求するとか、あるいはここで言うような検査役の調査にかかわる保護措置、こういった措置を導入するということを積極的に検討すべきであったと思うんですが、民事局長、いかがですか。
#158
○政府参考人(細川清君) 御指摘の問題は、合併の場合に合併した会社の資産の充実というものを資本充実の原則について担保するにはどうするのか、あるいは株式交換、株式移転の場合に増加する資本金の額が適正かどうか等を判断するかどうか、こういった問題と共通の問題でございます。確かに先生御指摘のような御意見があることは私どもも十分承知しておるわけでございますが、最終的には法制審議会ではそういう意見が採用にならなかったわけで、私たちもそれでよろしいと最終的には思っているわけでございます。
 と申しますのは、合併法制のときに、平成九年の改正のときにこれは大分議論された問題なのでございますが、やはり事前にいろいろ要件を置きますと、日本の株式会社は百二十万社ありましてほとんどが中小零細企業だということになりますと、その要件が重過ぎるということと、それからもう一つは、事前の開示書面にはこれら従来からの貸借対照表等が同時に開示されるわけでございまして、こういった貸借対照表等は毎年の当該会社の決算期において監査役、会計監査人、取締役会議、株主総会等によって審査を受けている、そういうこともあるし、そして事後に、救済措置をとるということによって結果的に不当なものを防止できる、そういうふうな考えから総合的に考慮いたしまして、そういったチェックを法律上義務づけることといたさなかったわけでございます。
 ただ、この点につきましては、第三者、例えば公認会計士等がそういった書面をチェックをするということは、それ自体望ましいことであることは間違いないわけでございまして、私どもとしてもそういうことに、特に大会社についてはそういうことになりますように今後とも制度の周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
#159
○橋本敦君 今の答弁がありましたが、私は、従業員や労働者の権利を守るという観点から見ても、そしてまた、公正な第三者の判断ということをやっぱりチェック機能として持たせることが、こういう会社分割や組織の統合、再編ということについて、社会的にもそれは道理のあることですから、その点が十分なされていないというのは私は法の不備だと思わざるを得ませんね。
 それで、今度の会社分割というのは結局企業のリストラ、再編ということに大きく手をかすことになることは間違いないんで、例えば、第一勧銀、富士銀行、日本興業銀行の三行によるみずほフィナンシャルグループの形成というのがこれはもう各紙に出ておりますが、そのことはこの会社分割の法案の成立を見込みながらやっておるということを既に報道されておりますが、この統合、みずほフィナンシャルグループがこの商法改正によってできるとして、従業員が一万人前後整理されるということも報道されているわけですね。ですから、そういう意味ではこの問題は労働者の保護という観点から大変な問題があるわけですよ。だから、そういうような整理解雇とかあるいは不採算部門の切り捨てとか、そういうことは会社分割のこの法案としては考えていないんだということをおっしゃっても、実際の今日の経済界のリストラのあらしが吹き荒れている現状から見れば出てくるんですよ。
 例えば、一つの例をお話ししますと、不当労働行為を意図して今度の会社分割はやれないということはおっしゃいます。まず、その点を確認しますが、ある会社の一つの事業部門、そこに組合の活動家がたくさんいる、会社から見たら非協力的な労働組合がそこで力を持っている、その部門を分割してそっくり渡してしまう、明らかにそういう不当労働行為の意図でやられた、そういう分割は分割自体無効だということで提訴することはできるはずだと私は思いますが、民事局長、どうお考えですか。
#160
○政府参考人(細川清君) 分割の対象は、今回の改正法案では営業とされております。そして、その承継の対象となる営業に主として従事する労働者はその意思に反して営業から切り離されることはないというのが労働契約承継法案に定められていることでございます。
 したがって、そういうことを考えますと、一部の組合の活動家だけを承継させるとか承継させないということはなかなか起こりにくいことだとは思いますけれども、ただいま橋本先生御指摘のように、専ら労働組合を弱体化する、そういう不当な目的のために会社分割制度が乱用されたということが明らかな場合には、それは商法上も会社分割の無効原因となり得るものと考えております。
#161
○橋本敦君 労働省もその点はお考えは変わりませんね。
#162
○政府参考人(石本宏昭君) 法務省から御答弁のあったとおりだと考えております。
#163
○橋本敦君 その不当労働行為の申し立てによって会社分割が無効となるというのはよっぽどのことだという状況ですから、私は容易なことでないと思うんですよ。それだけで労働者の救済というのはそう簡単にできるような、裁判所の判断が出るかどうかは大変なことだと思うんですが、考え方として、不当労働行為を意図したと見られるそういう分割はこれは認めない、そういう政府の答弁は大事にしておきましょう。
 そういうことであっても、やっぱり労働者権利侵害は起こるものですから、御存じのようにEUでは、企業譲渡の時点で存在している労働契約または労働関係から生ずる譲り渡し人の権利義務は譲り受け人に移転すること、次に、労働条件などを譲り渡し後も維持すること等を盛り込んで、企業譲渡を理由にした解雇禁止を定めたいわゆる既得権指令というのが出ているわけでしょう。しかも、大量解雇をやる場合には労働者代表との協議だけではだめで、監督官庁の公的介入という制度があって、二重のチェックを大量解雇指令ということでECはやっているわけです。
 こういう制度がECにあって、分割は認めるけれども、一切認めないんじゃない、認めるけれども、同時に、今私が指摘したようなEC指令で労働者、労働組合の権利保護を図っている、そういう仕組みになっていることは、労働省、間違いありませんね。
#164
○政府参考人(石本宏昭君) 先生の御指摘にほぼ同じものというふうに認識しております。
#165
○橋本敦君 なぜ我が国でそれをやらないのかということなんですよ。
 先日も、全労連の生熊参考人も、今必要なのは、今回触れられていないが、営業譲渡、分割、合併、この問題を含めて、企業組織の変更にかかわる労働者保護法の制定だということを参考人で言っておられるし、連合の熊谷参考人も、本法案の修正と労働者保護法の制定を求める国民、勤労者の声が起こっています、連合もそれを求めるということをおっしゃっているのは、私は当然だと思うんです。
 今度の場合はそれなしにやられるということで私どもは厳しく反対をしておりますが、今後、日本の経済の本当の復興のためにも、労働者の権利、暮らし、そしてまた憲法に基づく生存権の保障という観点を貫く上からも、今後の法制度として真剣にこういった問題を検討すべきであるということを法務大臣に要望して、時間が来ましたので質問を終わります。
#166
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 会社分割法についてお聞きをする前に、緊急に東京電力事件容疑者マイナリ氏に関する身柄拘束についてお聞きをいたします。
 ゴビンダ・プラサド・マイナリさんは、一九九七年三月に起きた殺人事件の被疑者として起訴され、一貫して勾留されてきました。第一審の東京地裁は、二〇〇〇年四月十四日、無罪判決を言い渡しましたが、いまだに身柄が拘束をされたままです。これはどうしてこういうことになっているのでしょうか。
#167
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘の事件につきましては、一審で無罪判決があった場合に刑事裁判での勾留状はこれは失効したわけでございますが、私どもの承知しております限りでは、出入国管理法上の退去強制手続により収容をされたと承知しております。
 その後、この事件につきましては、検察官から東京高等裁判所に控訴が申し立てられ、東京高等裁判所におきまして検察官の職権発動の申し立てにより改めて勾留状が発付されたと承知しております。
#168
○福島瑞穂君 私はこのケースを聞いて本当に驚きました。刑事訴訟法三百四十五条で、無罪の裁判の告知があったときは勾留状はその効力を失うというふうになっています。ですから、日本は無罪の判決が出るのは一%を切っておりますけれども、法廷で無罪の判決が出ますとその場で釈放される、これが当然であった、当たり前であったというふうに思っております。しかし、彼は外国人であるということで逆に身柄を拘束されたまま控訴をされ、今度は勾留状によって身柄が拘束をされていると。
 それで、裁判所にお聞きをいたします。今まで一審で無罪判決が出されたにもかかわらず控訴審で再度勾留されたケースはあるのでしょうか。
#169
○最高裁判所長官代理者(白木勇君) お答え申し上げます。
 全国の裁判所で行われております被告人の身柄に関する決定をすべて把握しているわけではございませんので、お尋ねの点につきまして統計的なことは申し上げることはできませんけれども、たまたま私どもが承知をいたしておりますところとして申し上げます。
 一審で無罪の判決を受けた被告人に対しまして控訴審が第一回公判期日前に勾留状を発付した事例として、平成十一年七月十九日に名古屋地裁で無罪判決を受けた被告人、事件は窃盗罪でございます。被告人は住居不詳、職業不詳、氏名は自称朱という人物のようでございまして、国籍も自称中華人民共和国となっておりますが、この被告人に対しまして七月二十八日に検察官から控訴の申し立てがございまして、八月二十四日に名古屋高裁で勾留状を発付したという事例がございます。
 それから、第一回公判期日前に限らないということでございますと、一度無罪の判決を受けた被告人に対してその後勾留状が発付された事例は二、三ございます。
#170
○福島瑞穂君 今のことでこのネパール人の被告人以外のケースでは一件、やはり同じ外国人のケースで、一審で無罪判決が出たにもかかわらず控訴審で再度勾留されたケースがあるだけだと思います。なぜ無罪判決が出たにもかかわらず相変わらず身柄が拘束され続けるのかというのがわからないんですが、法務省にお聞きします。
 無罪判決が出た時点でなぜ釈放をしなかったのか、くどいですけれども。それから、通常、外国人の場合、有罪・無罪判決が出ますと強制退去されることが多いのですが、なぜそれがなされなかったのか、教えてください。
#171
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほども申し上げたとおり、刑事手続との関係におきましては一審の無罪判決の宣告により勾留状が失効いたしますので、その限りでは釈放をされたわけでございます。
 しかし、この方につきましては、一方で出入国管理法に基づく強制退去の手続がとられたということから、その強制退去の手続の問題として収容されたと承知しているわけでございます。
#172
○福島瑞穂君 ひどいと思うんですね。この人がもし日本人であれば無罪の判決が出た後釈放されたというふうに思われる。ところが、外国人であったために、無罪の判決が出たけれども入管法に基づいて身柄を拘束した。それで、この人の無罪判決が出たのが四月十四日、三年間の長い長い審理を経て身柄を拘束されたまま、四月十四日判決が出ています。
 それで、入管法違反の容疑ということで収容令書により収容したのが同じく四月十四日。なかなかその判断が出ない、強制退去の判断がなぜか出ないまま今度は勾留してほしいということを、東京地検は四月十八日、東京高裁に控訴。そして、退去強制手続が進行した場合、今後の訴訟手続の進行が阻害されるとして、地裁に対しマイナリ被疑者の身柄を拘束することを要請。この要請は十九日に地裁によって退けられ、東京高裁も翌二十日にこれを退けたということがあります。
 検察が何度もマイナリ容疑者の身柄拘束を申し立てたことについて裁判所は認めなかったわけです。そして、特に高裁は四月末までは地裁からの必要文書、訴訟記録が届かないため身柄拘束を決定することができないというふうにしていたわけです。
 ですから、その間、裁判所が判断をするまでの間、とにかく入管法に基づいて身柄を拘束し、何度も裁判所に行って、五月一日に東京高裁に訴訟記録が届き、五月八日にマイナリ被疑者の勾留を決定したと。
 つまり、この人は外国人である、入管法に基づいて拘束できるということをつなぎとして使って、日本人であれば釈放されるべきところを入管法でつないで、そして再び勾留状で拘束をした、これはひどいと思いますが、いかがですか。
#173
○政務次官(山本有二君) 司法手続である刑事手続と、行政手続でございます退去強制手続というのは別個、独立の手続でございます。これはもう申し上げるまでもない。入管当局は出入国管理及び難民認定法の規定に基づいて所定の退去強制手続を進めていたものでございまして、恣意的な法の運用が行われるというようなことはあり得ないと考えております。
 私も入管にもきっちりと尋ねたんですが、例えば地検や高検と入管の方が身柄について相談をしておったとか、あるいは何らかの協議をしたとかいうことがあるかと聞きましたら、それは全くないということでございますので、別個、独立の手続を推進しておったところ、行政手続をやっておったところを特に通訳の人がなかなかいなかったという特殊事情がたまたま重なったことによってこういうような結果となってしまったというわけでございまして、決して恣意的な運用があったと、こう見るところではございません。
#174
○福島瑞穂君 このネパール人の人は本当に気の毒で、書面を見ておりますと、捜査段階でもなかなか通訳がいない、三年かけて無罪判決を取得して、今度は入管法違反で身柄を拘束され続け、検察庁は何度も勾留してくれと裁判所に頼み、それは認められなかったにもかかわらず頑張ってやって、今度は勾留状に切りかえて拘束が続いているわけです。
 もし彼が日本人であったならば無罪判決が出た時点で釈放されるわけです。やっぱりこれは不平等、あるいは彼にとってみたらなぜこんな身柄拘束がされるのだろうというふうに思うと思うのですが、裁判所にお聞きをいたします。
 彼の身柄の拘束はなぜ行われているんでしょうか。あるいは、勾留状はなぜ認められたのでしょうか。
#175
○最高裁判所長官代理者(白木勇君) 勾留の根拠は刑事訴訟法六十条のようでございます。
#176
○福島瑞穂君 最高裁にお聞きします。一たん無罪判決が出た後釈放されて、もう一度勾留された人はいるのでしょうか。
#177
○最高裁判所長官代理者(白木勇君) 先ほどお答えしたとおりでございまして、無罪判決が出た後で高裁の方で勾留状を発付して勾留したという事例、第一回公判期日前が一例承知しておりますし、それから第一回公判期日前ということでなければ三例あるようでございます。
#178
○福島瑞穂君 つまり、先ほどもおっしゃったように同じようなケースはやはり外国人のケースなわけですね。日本人だったらこういうことは通常今までは起こり得なかったことが外国人であるのでこういうことが起きると。これはやはり私はひどい、ずっと身柄の拘束を、日本の裁判所で無罪判決がとれるということは物すごい、一%以下ですから、無罪判決そのものがなかなか出ないわけですが、無罪判決が出たにもかかわらず身柄の勾留が起きている。しかも、今まで、例えば難民申請の行政訴訟をやっている途中に強制退去させられるということもあったわけですよね、過去において。
 なぜこの人は強制退去ではなく勾留状で今拘束されているんでしょうか。再びお聞きします。
#179
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほども申し上げたことの繰り返しのようになりますけれども、この事件につきましては、一審の無罪判決が宣告された後、刑事手続としては勾留状が失効するので釈放ということに相なったわけでございます。しかしながら、検察官におきまして事案の内容を慎重に検討した結果、控訴をすることとし、あわせて刑事訴訟法六十条、所定の勾留の理由と必要性があると考えて、裁判所に対して職権発動の申し立てを行ったところ、裁判所におかれて勾留状を発付されたものと承知しているわけでございます。
#180
○福島瑞穂君 国際人権規約B規約は、九条におきまして、御存じのとおり「裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、」というふうに規定をしています。このことはとても重要なことで、なぜ身柄を拘束しているのかと思います。
 それから、裁判所に対しても、一審で十分外国人であるということも加味して、入管の問題も加味しながら三年間審議をし、無罪判決が出た後、一日に記録をもらって九日の日にもう勾留状を発付しているということはどうなんだろうかというように思っております。この事件は、個別ケースというよりも一般論として、つまり日本人であれば無罪判決が出たらその判決が出た途端に釈放してもらえるのに、外国人の場合は入管で拘束をしてしまって、その後勾留状をつけるというひどいことがなされるということで、ぜひ改善をしてくださるように、日本人も含めて、裁判に付される者を抑留することが原則であってはならないというB規約九条をぜひ実現してくださるように強く要望したいと思います。
 もっと言いますと、アメリカの場合は、御存じのとおり、陪審で無罪になればもう上訴ができません。一たん無罪というふうになればもう上訴ができないということで、被告人を刑事手続から解放しているわけです。つまり、このネパール人の人は、今のままですと、最高裁で刑が確定するまで身柄の拘束が可能となるかもしれない。こういうことについて、ぜひ一般的な問題として、特にまた外国人の処遇の問題としても検討していただきたいというふうに強く要望して、この件についての質問を終わります。
 では、会社分割法についてお聞きをいたします。
 きょうはわざわざ北村先生に来ていただいたので、まず修正案についてお聞きをいたします。
 前回もそうですが、先ほどから協議についての質問がありますが、私もちょっとさせてください。
 労働契約が承継されるということ、このことは当然だと思うんですが、いかがですか。
#181
○衆議院議員(北村哲男君) 労働契約の承継は当然でございます。
#182
○福島瑞穂君 それで、協議できる期間はいつからいつまでか。極めて短時間の間だと思うんですが、ちょっと私、はっきりしないところがあるので、協議できる期間について教えてください。
#183
○衆議院議員(北村哲男君) これは修正案の附則第五条一項では、株主総会の二週間前までに労働者との間の協議を終了すべきことを要求している趣旨でありますから、会社は必要な協議期間を見越して協議を開始するものと考えられます。
 実際に、通常の場合は、会社分割の手続として、分割計画書等の作成、それから株主総会の招集通知の作成、発送等の手続を踏まなければならないために、株主総会の二週間前より相当以前の段階で労働者との協議を開始するものと考えられます。しかし、株式会社の中には株主数の少ない中小会社もあることから、法律上の制限としては、分割計画書または分割契約書を本店に備え置くべき日まで、すなわち株主総会の二週間前までとしたものであります。
 これでは抽象的ではないかという批判も受けておりますけれども、その期間は誠実に協議をすることのできる期間とした上で、もしそれを果たさなかった場合はそれなりの法的救済を受けられるということは先ほど述べたとおりでございます。
#184
○福島瑞穂君 そうしますと、会社が例えば二週間前にやればいいんでしょうか。
#185
○衆議院議員(北村哲男君) 二週間前までにやればいいということです。
#186
○福島瑞穂君 労働者にとっては、どれぐらいの期間、どんな中身の協議、最終的にどう着地するかということがとても重要だと思うので、ちょっと粘ってわからない点を聞いて、ごめんなさい。
 とすると、結局最短二週間ということになるんでしょうか。
#187
○衆議院議員(北村哲男君) 最短二週間じゃなくて、株主総会の二週間前よりもずっと以前ということですから、それも、では以前とはいつまでも前かということになると、一番最初、やはり取締役会で恐らくこの会社を分割しましょうという話が始まると思うんです。それから、現実にさまざまな段階を経て最終的には分割計画書ができます。ですから、恐らく取締役会で一応会社の意思決定がなされた後、分割計画書、分割契約書ができる二週間前、株主総会の二週間前までのその間ということですから、それは会社の規模によっても、あるいは分割の内容によっても違いますから、その間できるだけ誠実に協議できる期間が必要であるという意味です。
#188
○福島瑞穂君 どうもありがとうございます。
 ただ、そうしますと、例えば私が、よし、協議はするけれども強行突破してやれなんて思っていますと、非常に短い期間になる可能性もあるのではないか。つまり、制度はどこまで担保しているのかということをちょっとお聞きしたいんですが。
#189
○衆議院議員(北村哲男君) この協議の申し入れは、何も会社から申し入れられるまで待っているわけではなくて、労働者あるいは労働組合がその事実を知ったときにはいつでも申し入れることができるわけですから、申し入れられれば、これは会社は協議する義務が生じるわけですから、それはわかったときになるべく早くやるようにという申し入れをすれば、会社はしかるべき期日を設けて誠実に協議する機会を持たなくちゃいけない。それをずるずる引っ張れば、また別の違法の問題が起こってくるものと考えます。
#190
○福島瑞穂君 先ほどの答弁で、労働者すべてと協議をするという答弁でしたので、きちっと誠実にやるためには、労働条件という極めて重要な問題ですから時間がかかると思うんです。会社の中で何となく分割されるのではないかといううわさが流れた時点で、そうしますと、働いている人たちは会社に対して協議に入りたい、あるいは協議に入る前提としてどうなっているかということが言えるわけですね。
#191
○衆議院議員(北村哲男君) それは言えるとは思いますが、その段階で会社が必ずしも応じなくちゃならないとは限りません。会社の意思決定がまずあるんじゃないかと思います。
#192
○福島瑞穂君 そうしますと、期間の限定はケース・バイ・ケースで言えないけれども、十分な協議が当然なされるだけの期間が必要であると考えていらっしゃるということでよろしいですか。
#193
○衆議院議員(北村哲男君) 委員の御指摘のとおりでございます。
 先ほど一番最初の御質問で、当然承継という問題を言われまして、私、簡単に承継されますと言いましたが、ちょっと御説明を加えさせていただきたいと思います。
 分割によって設立した会社は、分割計画書等の記載に従って分割をした会社の権利義務を承継することになるために、会社分割において承継される営業に従事している労働者に係る労働契約も分割計画書等の記載に従って承継されることとなるというふうにお答えさせていただきたいと思います。
#194
○福島瑞穂君 複数の組合がある場合には、当然ながらその複数の組合ともきちっと誠実に協議をしなければならない。組合に属していない未組織の人たちとも、代表であるいは個人単位で、極端に言えば一人残らずきちっと協議をしなければならない、そういうことでよろしいんでしょうね。
#195
○衆議院議員(北村哲男君) この商法の場合は、個々の労働者と協議をするといいますか、対象はすべての一人一人の労働者であります。したがって、その労働者がそれぞれ別々の幾つの労働組合に委任をした場合はその労働組合とそれぞれしなければいけない。労働組合に属していない場合はもちろんその個人と、個人がしたいと言えば個人ともしなくちゃいけないという形になると思います。
#196
○福島瑞穂君 次に、分割無効とされる場合についてお聞きをします。
 先ほども橋本委員からありましたが、例えば団交拒否などの不当労働行為は分割無効の訴えの要件となるのでしょうか。
#197
○政府参考人(細川清君) 団体交渉の拒否が、これは不当労働行為でございますが、分割無効の訴えの要件に当たるかという御質問でございます。
 この場合には、態様というものは多様でございまして一概に申し上げることは困難でございますが、一般に不当労働行為があった場合には、労働委員会による救済命令とかあるいは賃金仮払いの仮処分等、労働法理による救済手段が与えられるのが原則でございまして、これによって当該労働者の保護が図られますので、不当労働行為があったという事由だけでは原則として会社分割無効には当たらない、無効事由にはならないものと考えておりますが、先ほど橋本委員の御質問に対してお答え申し上げましたとおり、特定の労働組合を敵視してそれを専らつぶすために、そういうような不当な目的でなされたことが明らかであるという場合には、これは会社分割無効の訴えの原因となり得るものと考えております。
#198
○福島瑞穂君 だめ押し的で済みませんが、不当労働行為がなされた場合、商法上どう救済されるか、それはケースによっては分割が無効になるということでよろしいですか。それともほかに何かありますか。
#199
○政府参考人(細川清君) 不当労働行為があった場合には、これは労働組合法上の救済が与えられるのが当然のことながら原則でございます。ですから、あとは不当労働行為によって分割が正当になされたかどうかという問題になるわけですから、そういうことが先ほど申し上げたような事情がある場合には分割無効となり得る場合もあり得る、そういうことを申し上げているわけでございます。
#200
○福島瑞穂君 なぜ食い下がって聞くかといいますと、例えば十四年前に国鉄は分割をされました。これは国労、国鉄労働組合に対する不当労働行為ではないかということで、たくさんのケースが労働委員会に提訴をされました。地方労働委員会、中央労働委員会、すべてにおいて不当労働行為であるという判断が出たにもかかわらず、裁判所においては、会社が違っている、旧会社、新会社で、新しい会社になっているのだから不当労働行為ということは認められないということで、労働委員会では全部勝った不当労働行為のケースが裁判所で負けると。分割無効なんということは全然出てこない、むしろ分割になっているんだから仕方ないという形で判決が出たわけですけれども、それでここで食い下がって、不当労働行為がなされた場合商法上どう救済されるのかというのをお聞きしたわけです。でも、民事局長の答弁で分割無効になる場合があるというふうに聞きましたので、少し安心をいたしました。
 分割無効が判示された場合、分割前の会社に戻すことは事実上不可能ではないかと思われます。先ほど将来効が発生するという形でおっしゃいましたが、その点についてちょっと話をしてください。あるいは、もし国労の件について何かあるのであれば発言してくださっても結構です。
#201
○政府参考人(細川清君) 初めに国鉄の分割の話がございました。私どもは今回の法案をつくるときにその際の法案も調べたわけでございますが、これは、運輸大臣が閣議の決定を経て事業の引き継ぎ並びに権利義務の承継に関する基本計画を定めて、これに基づいて国鉄は承継に関する実施計画を作成する。それから労働者については、承継法人が国鉄を通じてその職員に対して採用の基準を示して募集する、これは改革法の二十三条第一項でございます、とされております。その上で、当該職員の承諾を得れば承継法人によって採用されることになる、こういうふうになっているわけですから、今回の法制と違いまして国鉄改革法は承継されないのが原則で、そしてできたJR各社が採用したいと採用の基準を示して新たに募集するという形でやりましたので、採用される人と採用されない人が出てきたというのが国鉄の分割の実情でございました。
 今回の法案は、分割される営業に主として従事する労働者については承継されないことはないということにしておりますので、国鉄の場合と問題が異なるわけでございます。
 それから、分割が無効とされた場合の分割前の会社に戻す点でございますが、会社を取り巻く利害関係人は債権者、株主等多数ございますし、分割が行われた後には分割が有効であることを前提として法律関係が形成されてまいります。したがって、分割の手続等に瑕疵があって無効としなければならない場合でも、これを単純に遡及的に無効とするときは法律関係が非常に複雑になります。
 そこで、本法案の三百七十四条ノ十二は商法の百十条を準用しまして、分割無効に伴う法律関係を画一的に確定するために分割無効の判決の効力は将来に向かって生じるということにいたしているわけでございます。そして、分割会社、株主及び第三者との間にそれまでに生じた法律関係には影響を及ぼさないこととしております。
 しかし、分割無効の判決が確定しますと、分割により承継された権利義務、労働契約も含みますが、これはもとの会社に法律上当然復帰するわけでございまして、ここのところは当然法律上復帰することになるわけでございます。
 衆議院の法務委員会で早稲田大学の上村教授が、商法の教授でございますが、分割無効については合併無効よりも非常に結果が明白なので、すべてもとに戻るわけですので余り問題は生じないんじゃないかというふうに御見解を述べられていたところでございます。
 ですから、御質問に最終的に端的にお答えいたしますと、分割無効の判決が確定した場合は分割された営業に従事されていた労働者も当然もとの会社の従業員となる、その会社との間に労働契約が復活するということでございます。
#202
○福島瑞穂君 先ほど橋本委員の方からも不採算部門の分離処分がなされないようにするための歯どめについてチェックが客観的に行われないのではないかという質問がありました。いわゆるリストラや不採算部門の分離処分がなされる、この法律ができた後これがなされると本当に困るので再度お聞きをいたします。
 評価の客観性というものは何によって担保されるのでしょうか。
#203
○政府参考人(細川清君) 会社分割手続におきましては、改正法案の三百七十四条ノ二の第一項によりまして、事前開示書面として各会社の負担すべき債務の履行の見込みがあること及びその理由を記載した書面が要求されているわけでございます。
 この履行の見込みの有無は、個々の債権者をそれぞれ取り上げて、そのすべてについて、将来にある弁済期においてその履行を行うことができるかどうかという判断にかかわるものでございます。したがいまして、判断をする上では承継する財産の価額と債務の額が重要な要素となりますが、したがってそれを計算して双方の会社が債務超過になるような場合には債務の履行の見込みがないものとして許されないことになります。また、債務超過ではなくても、将来の収益の予測などから債務の履行の見込みがないとされる場合もあるわけですが、そういう場合にはやはり分割をなし得ないということになります。
 そして、この書面は事前の開示書面としまして会社の貸借対照表や損益計算書等、あるいは分割計画書等とともに株主、債権者に公開されるわけでございます。そして、株主、債権者はこの書面を見てその内容を審査しまして、自分の権利行使をどうするかというふうに定めるわけですから、まずその段階で第三者のチェックにさらされるわけでございます。
 それから、これが見込みあること及びその理由を記載した書面が虚偽の事実が記載されていて、本当は見込みがなかったんだと、こういう場合には、これは本法案でわざわざこの要件を定めたわけでございますので、そういうことが虚偽であることが判明すれば、これは当然会社分割無効の訴えにより事後的に会社分割を無効とすることができるわけでございます。
 それからもう一つは、その虚偽の、法文上は不実といっていますが、不実の内容の記載をした、あるいはそもそもそういう記載をしなかったという場合には、これは改正商法によりましてその当該の取締役は百万円以下の過料に処せられる。さらには、その行為によって債権者等第三者が損害を受けた場合には、この当該取締役は民法七百九条あるいは商法二百六十六条ノ三の規定に従って当該取締役に対して損害賠償を請求することができる。いろいろこういうような事後的な担保がございますので、こういうことによってこの書面の真実性を担保しようとしているわけでございます。
#204
○福島瑞穂君 それは先ほど答えられたとおりなんですが、私が思うには、第三者の目というのは例えば検査役あるいはもう少し公的なチェック、評価の客観性をもっときちっと担保できるような制度というものが必要ではないかと思うのですが、これはいかがですか。
#205
○政府参考人(細川清君) この問題は会社の合併の問題、それから昨年の通常国会で御承認いただきました会社の株式交換、株式移転の場合と全く同じ問題でございまして、こういう場合に資本の充実の原則をどう判断するかということにつきましては、基本的にはこれらの制度におきましては情報開示が大事である、これを利害関係人に開示する。そして、その上で問題があった場合には事後にそれを救済する、事後に監視、チェックするという形になっているわけでして、こういう形が現在の社会経済情勢に照らせば商法のあり方としては適当であるというのが私どもの考え方でありますし、学界でも一般的な考え方だと思います。
 そういうわけでこういう制度といたしたわけでございまして、これにまたわざわざすべて検査役等をつけるということになれば、これでは従来と変わらないわけですから、会社分割による企業の再編というものが円滑に進まないということになるのではないかと危惧するわけでございます。
#206
○福島瑞穂君 不採算部門の分離処分などがなされないために何らかの歯どめが必要だと考えます。
 次に、会社分割を成功させるためには十分な労使協議が必要だということを周知徹底すべきですけれども、しかしその上でなお労使紛争が発生するケースも考えられます。仮に会社分割をめぐって労使紛争が発生した場合、その紛争はだれが一体承継をするのか、被分割会社が承継するのか、分割会社が承継するのか。場合によっては労働組合の弱体化にそういうことがつながるかもしれない。そもそも労使紛争中の会社の場合、会社分割は認められないとすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#207
○政府参考人(細川清君) まず、会社分割によって労使紛争が起こるということは円満な組織再編ができないということでございますので、私は、賢明な経営者というのは十分協議を尽くして紛争が生じないようにするというのが通常であろうと思います。私がいろいろお話を聞いた経営者の方々もそう言っておられました。
 ただ、不幸にして紛争が起こったという場合のルールでございますが、例えば解雇無効か有効かというふうに争っている場合は、例えばその人が属していた営業が承継された、そしてそこで承継されたといたしますとその契約上の地位も移りますから、その紛争の訴訟の相手方はその承継した会社を相手にするということになるわけでございます。
 他方、不当労働行為につきましては、不当労働行為をした会社というものがあるわけですからその会社が依然として相手になるわけですが、会社が分割によって労働者が承継された場合にはその直接の使用者は分割した会社ということになりますので、その会社を相手にして不当労働行為等があればその救済を求めるということになるわけでございます。親子関係等がある場合には、労働省の御答弁によりますと、これは法人格否認の法理等によりまして直接雇用関係のない親会社というものに対して交渉ができる場合もあるというのが労働省の公式な見解だと、このように承知しております。
#208
○福島瑞穂君 下請中小企業のことについてまた確認をさせてください。
 四月二十日の衆議院本会議の代表質問に対して大臣の答弁は、「分割により、下請企業との間の契約関係は営業とともに承継され、理由なく一方的に解除したり契約条件を変更したりすることはできない」というものでした。一方的に解除したり契約条件を変更したりすることはできないという原則は、分割で誕生する新会社、分割会社を吸収する会社、分割して残る被分割会社のいずれの会社に対しても当てはまるというふうに理解してよろしいでしょうか。
#209
○政務次官(山本有二君) いずれの会社にも当てはまると理解していいと思いますが、会社分割による承継の対象は営業単位としていますことから、当該下請業者との間の継続的契約関係が当該営業が有機的一体として機能するために必要なものであればこれを除外することはできず、そのまま包括承継されることとなり、分割自体により契約条件等が不利益に変更されることもありません。また、承継されない場合には、下請業者と分割会社との間で従前と同様の契約関係がそのまま維持されることになります。加えて、当該下請業者が分割時において有する債権につきましては、債権者保護手続等による保護の対象となります。
 このように、商法改正法案は、分割をする会社と継続的契約関係を有する下請業者の保護にも十分配慮したものとなっているものでございます。
#210
○福島瑞穂君 会社の再編の中で、特に会社分割法制を利用して持ち株型経営が本格化すると、一握りの持ち株会社の利潤追求のために多くの中小企業や労働者、下請が絶えず不安定な状態に置かれる弱肉強食の社会になるんじゃないかと非常に懸念をしております。今、政務次官が変更がないというふうに力強くおっしゃってくだすったので、今後もまた監視をしていきたいというふうに思っております。
 それで、簡易分割についてお聞きします。
 新設分割の簡易分割、また吸収分割で分割をする会社における簡易分割には反対株主の株式買い取り請求権が認められておりませんが、その理由は何でしょうか。手続が簡易なため、何度も簡易分割を繰り返していくということで乱用されるおそれはないのでしょうか。
#211
○政府参考人(細川清君) 分割会社における簡易な分割手続におきまして反対株主に対して株式買い取り請求権を認めていないのは御指摘のとおりでございます。
 まず、分割会社における簡易分割というのはいわゆる物的分割の場合に限っております。すなわち、設立した会社が発行する株式がすべてもとの会社に発行されるということでございまして、分割する会社の株主の持ち株比率に影響がないわけでございます。そういうことが一つの理由でございます。
 それから、あと制度の均衡論としては、重要でない営業の一部の譲渡の場合には株式買い取り請求権が現行商法上認められておりません。そういうことから、物的分割の場合については株式買い取り請求権を認めていないわけでございます。
 次に、二番目の御質問として、簡易分割手続は手続が簡易であるために何度も繰り返して乱用されるおそれがあるのではないかという御指摘でございますが、簡易分割手続は、その要件がある場合には株主総会の特別決議による承認を不要とするものにすぎません。そして、その他の要件及び手続については、通常の分割の場合と全く同様でございます。したがいまして、簡易の分割も営業単位としてのみ行われるべきものでございますし、一つの営業を細切れにして分割することはできません。
 それから、債務の履行の見込みがなくなるような分割もすることもできませんし、簡易分割においても債権者保護手続の手続を省略することもできませんし、労働者の保護についても全く同じでございます。
 さらには、この簡易分割の手続が乱用されるというようなことであれば、株主は少数株主権を行使して臨時の株主総会を招集し、その問題の取締役を解任する決議案を提出することもできます。あるいは、それで認められない場合には、会社に対して取締役の解任の訴えを請求することができるということになりますので、御指摘のような問題に対応するための手だては尽くされているものと考えております。
#212
○福島瑞穂君 以上です。
#213
○平野貞夫君 会社分割の制度を創設する商法改正法案の最後の「理由」というところに、「会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、会社が組織の再編成を行うことを容易にするため、会社がその営業の全部又は一部を他の会社に承継させる会社分割の制度を創設する必要がある。」ということが記載されていますが、この「最近の社会経済情勢にかんがみ、」という文言が、法務省から出される法案にここ数年必ず書いているというパターン化した文言だと思うんですが、そう言われればもっともかというふうに我々は感じるわけなのでございますが、この最近の社会経済情勢がどういうふうに変わり、それをどういうふうに制度として受けとめるべきかということは、これはやはり具体的なイメージがなければならない、こういうふうに私は思うわけでございますが、法務大臣、この会社分割法の中での最近の社会経済情勢の変化の認識について、御所見を賜りたいと思います。
#214
○国務大臣(臼井日出男君) 東西冷戦の終えんによりまして、旧社会主義国が市場経済体制への移行を始めるとともに、西側諸国が軍備増強の重圧から解放されて、いわば経済に全面的に財政等を投入することができるようになった。こうした全面的な経済競争が激化し、いわゆるメガコンペティション、大競争の時代に突入した、こういうふうに言われておるわけでございます。
 このように、企業間の国際的な競争が激化した現在の社会経済情勢のもとでは、企業は、組織の再編成により経営の効率化や企業統治の実効性を高めることによってその競争力を強化する必要があるのでございます。
 政府は、この要請にこたえるために、平成九年には合併法制度の合理化を、平成十一年には株式交換制度の導入をそれぞれ内容とする商法改正を行ってきたところでございますが、今回の商法改正案も、このような社会経済情勢のもとで会社分割法制を創設することによりまして企業の組織再編成のための法制度を整備しよう、こういうことを考えているのでございます。
#215
○平野貞夫君 大臣のお話はよく理解できますし、また当然、この激化する国際的な大競争時代、あるいは言葉をかえて言いますれば資本主義の変化といいますか、あるいは進歩と言えるかどうかわかりませんが、そういう大きな激動に対応するものだということはよくわかります。
 しかし、急激にそういう大きなシステムを変える場合に、我が国は我が国としての習慣といいますかあるいは国民性といいますか、もちろんこれは改革されなきゃならない問題もあるわけでございますが、さまざまな影響が出てくるわけでございます。本法案の審議の中でも、各先生方から、下請との関係をどうするとか、あるいは労働組合、労働者の保護は大丈夫かといったような問題点が指摘されてきたわけでございます。
 ちょっと角度を変えて提起しますと、この分割制度の創設によって起こるというわけじゃありませんが、ここのところ、商法体系といいますか、商法という一つの法律じゃなくて、いわゆる商行為を伴うさまざまな事態の中で経済犯罪というものが非常に増加しているんじゃないか。これも最近の社会情勢の変化の一つだと思います。
 したがいまして、私は法律の専門家でないものですから詳細なことはわかりませんが、この会社分割制度を創設することによって、さまざまな今までと違った形の株式会社のありようが展開されるわけでございますが、そういったものを利用した形での犯罪も想定される、また起き得るんじゃないかというふうに思うんですが、その点について、大臣あるいは政府参考人の方、どういうお考えですか。
#216
○政務次官(山本有二君) 先生御指摘のとおり、会社分割それ自体で犯罪が直ちに発生するということは考えにくいわけでございます。
 ただ、最近の風潮としての国際化、あるいは大臣がおっしゃられるメガコンペティションにおいてますます競争が激化した中で、例えば我々が危惧している銃砲の関連だとか、薬物だとか、あるいはマネーロンダリングというようなことがますます国際化した中で行われているということにかんがみますると、まさに先生の危惧は当然だろうというように思っております。
 法務省としましては、この制度の目的、趣旨等の周知徹底を図りながら、会社分割法制が悪用または乱用されることがないように鋭意努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 ちなみに、今国会でのこの法案の改正の中にも、実はいわゆる総会屋対策の利益供与罪の中で、これまでは子会社の計算で利益を供与した場合は罪になりませんでした。しかし、この法案の中に、子会社の計算で総会屋に利益を渡しても罪になるという四百九十七条の改正も今回含まれているということでございますので、どうかひとつまた御理解と御協力をお願いしたいと思います。
#217
○平野貞夫君 一定の経済犯罪に対する対応は評価します。評価しますが、基本的に、私は当委員会で何回か申し上げたことがあるんですが、我が国の刑罰体系の中で、経済犯罪、不法な商行為に対する罰則が軽いと。本当は司法制度改革審議会あたりでここら辺も根本的に見直してほしい問題の一つだというふうに思っております。
 それから、新しい制度を適切に機能させる前提としましては、もちろん経営者とか企業人、それから会社の社員もそうでございますが、やはり常識的な、不当でない、いわゆる健全な資本主義市場経済にのっとってやるんだという倫理性といいますか、いわば市場経済の規律という精神的な面が非常に大事だと思って、いろんなところでそういう勉強、研究はなされておると思います。
 それにも増して、司法当局、これは別に法務省だけじゃないんですが、警察も含めて、こういうところが公正でかつ厳格な仕事をなさるということが、いわゆる信頼性を確保するということがこういう新しい制度なんかが出発する際のかぎだ、そういうふうに思うんですが、法務大臣の基本的な姿勢をお聞きしたいと思います。
#218
○国務大臣(臼井日出男君) 今、委員御指摘をいただきました私ども法務当局あるいは警察も含めてでございますが、もちろん当然のことながら公正公平、厳格な対処というのは基本でございます。そうした姿勢というものを貫きながら、なおこの商取引の基本というものを定めているわけでございますので、余りにもその基本法がきついために公正な商取引が阻害されるということがあってはならない、その辺も考慮しながら今後ともそうした法施行に心がけていかなければならない、こういうふうに考えております。
#219
○平野貞夫君 わかりました。
 経済のグローバル化ということで、随分日本は金融機関を初めいろんなところが開放経済の中で新しい制度を取り入れたり、のたうち回っているわけです。
 私、意見を言わさせていただければ、例えばアメリカ。アメリカほどグローバル化していない資本主義はないと私は思っております。アメリカが一番グローバル化しているようなことを偉い評論家の人は言いますが、アメリカの場合は、自由に経済活動をやらせる反面、やはり国家共同体をおかしくするような経済犯罪についてはきちっとした規律、しかも経済危機が本当に国家的に起こるようなときには、国家権力が直接資本主義に介入するというようなことをアメリカというのは結構やっておるわけでございます。
 それから、アダム・スミスが「国富論」を書いて自由放任主義の元祖だというふうに言われていますが、「国富論」を書く前には、国防の問題とか公共の秩序を保つためにはやはり資本主義市場経済原理というのはそれに服すべきだということをちゃんと著していまして、私はこれからの商法体系の適用については、自由濶達な経済社会の発展とともに、やはり本当に国家共同体としての厳格な法律の適用、執行というのも必要だと思っています。こういう要望をしておきます。
 そこで、実はこういう問題に関連して金融監督庁にお尋ねしたいんですが、四月十六日にテレビ朝日の「サンデープロジェクト」という番組で放映された話なんですが、朝鮮銀行破綻の真相という番組で、これを見まして大変私は驚いたんですが、特に大阪府の吹田市ですか、ここの土地をめぐる不正融資問題、あのテレビを見ますと、もう証拠も明確じゃないか、素人ですがそう思うんですが、これがいわゆる法律違反の問題として立件されていない。
 これは個別の問題で大臣に聞くわけにもいきませんが、私、日本の金融機関の方たちから話を聞きますと、何かそちらの方のことについては公正に日本の司直というのはやっているのかという、非常に信頼性を疑われるような話を時々聞くんですが、そういうことについて法務当局、何か御所見はありませんか。
#220
○政府参考人(古田佑紀君) 個別の案件そのものにつきましては答弁を差し控えますが、いずれにいたしましても、検察当局を含め捜査当局といたしましては、新聞あるいはその他の情報などにもふだんから十分注意を払いながら、犯罪があると思われるようなものにつきましては所要の捜査をいたしまして、それがどのような事件、あるいはどのような組織が行うものにいたしましても対処をしてきているものと承知しております。
#221
○平野貞夫君 御承知のように、公的資金がそちら関係に約一兆円投入されている。こういう実態から考えても、やはり日本人の税金から使われるわけでございますので、特に公正公平を旨とした仕事をしていただきたいというふうに要望しておきます。
 金融監督庁の方、この朝鮮銀行に対してたしか調査ができるという仕組みになったと思います。聞くところによりますと、債務超過の朝銀が十三あるというふうに聞いておりますが、これに対する調査はいつから始めて、大体日程的にいつまでに終了させるのか、そしてその調査のねらい、それから調査の方法、そういったことについて説明していただきたいと思います。
#222
○政府参考人(小手川大助君) 今の議員御指摘のお話でございますが、これは御承知のとおり、平成九年に朝銀大阪というのが破綻の公表をいたしまして、それで実際に公的資金が入りましたのは平成十年の五月十一日、ちょうど私どもの監督庁がスタートする約一カ月前でございました。それで、まさにこの四月一日に、いわゆる信用組合全体につきまして今まで各都道府県の方で検査・監督をやっていたんですけれども、これがすべて国の方に回ってきましたので、私どもの方といたしましては、とにかく来年の三月末までに信用組合全体についての立入検査を一巡するということで、この五月十八日にいわゆる問題になっている朝銀近畿信用組合については立入検査に着手したところでございます。
 それで現在、まさに議員御指摘のとおり、全国で破綻した朝銀信用組合といいますのが十三ございまして、これのいわゆる財産を引き受けるといいますか受け皿になる朝鮮関係の信用組合というのが四つございます。この四つにつきましても追って早急に検査に入りまして、先ほど申し上げましたとおり、平成十三年三月末までに立入検査を一巡させる方針でございます。
#223
○平野貞夫君 金融監督庁、それから法務当局、両方にお願いしておきますが、朝鮮銀行関係につきましてはさまざまな問題もありますし、また我が国における特殊な立場もございます。しかし、商行為あるいは活動における不正は不正でございます。日本の金融関係者から、どうも我々だけ厳しくして向こうは何らかの形で手を抜いているんじゃないかというようなことが言われるようじゃやはり法の正義は立っていきませんので、重々御留意されて、公平で平等な行政をやっていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
#224
○委員長(風間昶君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより両案について討論に入ります。
 御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。
#225
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、本件商法改正案並びに関係法律整備法案に対し、反対の討論を行います。
 政府はこれまでも財界の要求にこたえて、企業の国際競争力強化、経営効率の向上など、企業の利益を優先し、労働者保護を十分に行わないまま、企業のリストラ、合理化を進めるために、九七年には会社の合併促進の法制、持ち株会社制度解禁、九九年には株式交換・移転制度の導入などを進めてきました。今回の商法改正はこれら一連の法整備の総仕上げであり、現在の激しいリストラのあらしのもとでは労働者の雇用を一層不安定にし、労働者、労働組合の権利を不当に侵害するおそれが強く、到底容認できないものであります。
 反対理由の第一は、本法案は、会社分割においては権利義務関係が包括的に承継されるとして、民法六百二十五条が保障する労働者の移籍に対する同意権を認めていない点であります。そのため、企業利益が優先され、労働者の意思や個々の具体的生活条件を顧みず、労働者にとって同意しがたい不利益な移籍の強要にも道を開くものであります。
 なお、衆議院での修正による労働者との事前協議は重要でありますが、それによって労働者がこうむるこのような不安と不利益がすべて解消されることにならない心配があります。
 反対の理由の第二は、事前開示書面、分割計画書等の記載事項が基本的には会社の裁量、判断にゆだねられている上、会社資産が適正に評価されているかなどを第三者機関がチェックする法的保障がないため、リストラを目的とした不採算部門の切り捨てを法律上も実際上も具体的、確実に防止することができないことであります。また、現在も営業譲渡や分社化によって強行されている不当労働行為による労働者、労働組合の権利侵害がこの会社分割法によってさらに容易に行われるおそれがあります。そのため、このような場合、会社の分割は無効となるという政府答弁がなされていますが、それだけでは労働者の権利保護は十分ではありません。
 日本共産党は、ヨーロッパ諸国でもEU指令等で認められているように労働者の雇用と権利を守るための解雇規制法案、企業再編に伴う労働者保護法案を提出しております。今日の資本のルールなきリストラ、合理化に歯どめをかけ、日本経済の健全な発展のためにも、また労働者の雇用と権利を守るためにも、これらの法案を成立させることが広く要請されていることを指摘し、さらに政府にも積極的な対応を強く求めて、反対討論を終わります。
 以上です。
#226
○福島瑞穂君 社会民主党を代表して討論を行います。
 商法等の一部を改正する法律案、関係法律の整備に関する法律案について、反対の立場から討論を行います。
 日本では、今、多くの産業、多くの職場でリストラのあらしが吹き荒れ、労働者は職を奪われ、下請中小企業の整理、淘汰が進められております。特に日本は労働者の権利保護が欧米と比べて極めて弱く、史上最悪の失業率のもとで多くの労働者は苦しんでおります。
 会社分割法案は、これまで営業譲渡や合併などで企業の一部を移転していた法制度に加え、会社の一部を分割するという概念を新たに創設する法案です。会社分割法案では、労働契約関係を含むすべての法律関係、権利義務関係をばらばらに分解して、好むところのみセットにして一部と称して分割することを予定しています。しかも、小規模の一部の分割については、これまでの営業譲渡ですら要件とされてきた裁判所の関与や検査役の検査などを省略して分割できることになっています。
 このような企業側の一方的決定による権利義務の移転を許すならば、労働者を保護してきた労働基準法における差別禁止や、判例上形成された解雇規制、労働組合法に規定した不当労働行為の禁止などが会社分割においては有名無実化してしまいます。
 確かに、事前協議制については大きな前進であるとこれは大変評価できるとは思います。民主党の要求を入れたものであり、その御努力に敬意を表しつつ、さらに労働者保護の立場からも画期的な前進であることは十分理解いたします。しかし、まだその水準が満足のいくものであるとは考えることができず、反対をしたいというふうに思います。
 分割に当たって、民法六百二十五条一項で明記されている同意なき移転の禁止を除外し、新設分割、吸収分割された会社への労働者の雇用契約の移行を定めるものであって、労働者の意思を無視することは労働者の権利を大きく損なうものであり、結果としてリストラのための法律となってしまうという懸念を感じております。
 下請中小企業の取引契約保護策は何ら措置されておりません。さらに、持ち株会社の団交応諾義務や分割により重大な影響を受ける零細下請業者に対する保護策も講じられておりません。
 営業譲渡、会社分割、合併の区別なく、産業再生、企業再編に係る解雇規制を含む労働者保護立法が必要ですが、そのことは残念ながらいまだなされておりません。実際に会社分割法制を利用して持ち株型経営が本格化すると、我が国の企業社会は一握りの持ち株会社の利潤追求のために多くの中小企業や労働者が絶えず不安定な状態に置かれる弱肉強食社会が広がるに違いないとの危惧を抱くものであります。
 以上の理由で私どもの反対の討論といたします。
#227
○委員長(風間昶君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 まず、商法等の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#228
○委員長(風間昶君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、竹村泰子君から発言を求められておりますので、これを許します。竹村泰子君。
#229
○竹村泰子君 私は、ただいま可決されました商法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党・改革クラブ、社会民主党・護憲連合及び参議院クラブの各派並びに各派に属しない議員中村敦夫さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の諸点について格段の配慮をすべきである。
 一 会社分割に際して備え置く書面については、分割の当事者となる会社の株主及び債権者等の保護並びに企業経営の健全化を図るため、公正かつ透明性のある情報開示がなされるよう指導に努めるとともに、反対株主の株式買取請求権及び債権者保護手続並びに分割無効の訴えの制度等の趣旨の周知に努めること。
 二 会社分割に伴う労働契約の承継に関して、会社が労働者と事前協議をし、労働者の意思を尊重すべきものとする制度の周知を徹底すること。
 三 会社分割制度が労働者の解雇の手段として利用されることがないようにするため、会社分割の当事者となる会社に対し、債務の履行の見込みについて厳格な認定が行われるよう、その趣旨の徹底に努めるとともに、会社の組織の再編成のみを理由として労働者を解雇することができないとする確立した判例法理について周知を図ること。
 四 経済構造改革の進展に伴い、会社組織の多様な再編成が行われていることにかんがみ、合併、営業譲渡等の企業の再編成に伴う労働契約の承継に関連して必要となる労働者の保護に関しては、立法上の措置を含め、その在り方について更に検討すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#230
○委員長(風間昶君) ただいま竹村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#231
○委員長(風間昶君) 多数と認めます。よって、竹村君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、臼井法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。臼井法務大臣。
#232
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#233
○委員長(風間昶君) 次に、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#234
○委員長(風間昶君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#235
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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