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2000/02/01 第147回国会 参議院 参議院会議録情報 第147回国会 本会議 第3号
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2000/02/01 第147回国会 参議院

参議院会議録情報 第147回国会 本会議 第3号

#1
第147回国会 本会議 第3号
平成十二年二月一日(火曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  平成十二年二月一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る一月二十八日の国務大臣の演説に対し、これより質疑を許します。村上正邦君。
   〔村上正邦君登壇、拍手〕
#4
○村上正邦君 平成十二年、西暦二〇〇〇年の新しい千年紀を迎えました。一年後は二十一世紀であります。この歴史的転換期の節目に当たり、代表質問に立つ機会を与えられましたことは、まことに意義深いものがございます。
 さりながら、壇上に立ってみますと、民主党、共産党、社民党などの議場真半分の野党席は空席であります。まことに寂しい思いがいたします。内閣総理大臣の施政方針演説等に欠席し、今また代表質問を放棄するとは、憲政史上初めてであり、大きな汚点を残すことになります。
 ましてや、参議院においては、特別の対立もなければ波静かな状況の中で、衆議院における対決がそのまま参議院に持ち込まれていることは、まことに遺憾であります。こういう事態にこそ参議院の独自性を発揮するときではないでしょうか。良識の府と言われる参議院として実に残念なことであります。
 これからでも遅くありません。言論、政策で闘うという本来の議会政治のあり方に立ち返って、野党諸君、直ちに本会議に出席されて、野党各党代表の熱のこもった高邁な論戦を聞かせていただくことを切に望み、本論に入ります。
 私は、与党三党の先陣を承り、もとより自由民主党・自由国民会議を代表するものではありますが、野党不在の代表質問であるだけに、二院制における参議院独自の役割を重視する立場から、与野党の枠組みを超えて、日本国全体の政治がいかにあるべきかを考えたいと思います。
 時には政府を叱咤し、時には政府をただしてまいります。あくまで国民の視点に立って、国民とともに考え、国民とともに二十一世紀日本の国の形や総理が掲げた富国有徳の具体的実行策を中心に、率直に質問させていただきます。総理、凜とした決意と明確な指針を示されますよう、強く希望いたします。
 この千年紀の年頭に当たって、世界各国の政治指導者のメッセージが伝えられました。わけてもアメリカのクリントン大統領は、二十一世紀を目前にして、変化を恐れてはならない、変化を歓迎し、変化をつくり出そうと高らかにうたい上げました。
 南アフリカのムベキ大統領は、新しい世紀は希望の世紀にならなくてはならない、過去の千年紀にあらゆる悲劇を経験した我々だからこそ、今、輝ける星を目指すのだと力強く国民に呼びかけました。
 これら指導者のメッセージは、世界の多くの人々に何とあすへの明るい夢と希望、そして大きな勇気を与えてくれたことでしょうか。政治指導者はかくありたいと感銘を覚えたものであります。
 産業革命以来、今日までの近代社会の特徴は、経済を初めとして、あらゆるものを量的にもっともっととパイを拡大し、欲望を追求し続けた点にありました。無限への衝動が大量生産、大量消費を生み、人間が生きるためなら自然を征服することが許されるという錯覚に陥っていたのであります。
 しかし、今、人類は資源の枯渇、自然の破壊、地球の汚染という極めて深刻な問題に直面し、根本からの変化、変革が求められるところとなりました。地球は私たち今生きている者のためではなく、未来に生きる子供たちに託す宝物なのであります。
 二十一世紀は、これまでの金、物の物質万能主義の物差しでははかり知ることのできない心の豊かさ、精神の時代が到来するものと考えます。決して容易な、生易しい変化と変革ではありません。だが、この無限の欲望を追い求める近代の克服なくして今日の危機は乗り越えられません。
 私たちは、変化を恐れることなく、いかなる事態にも応じ、人々を鼓舞し、決断の勇気を与え、勇敢に立ち向かわなければなりません。窮すれば変ず、変ずれば通ずと言われます。価値の転換、変化と改革の中にこそ、二十一世紀の日本の、また世界の明るい未来が開けると信ずるからであります。
 総理、政治指導者として、近代をどのように認識しておられますか。また、価値の転換、変化、変革にどう取り組まれていかれますか。決意をまずお聞かせ願いたいと思います。
 政治の究極の目標は、人類恒久の願いを実現することであります。その願いは、相はむことのない戦争からの解放、乏しき者のない貧しさからの解放、病のない死の恐怖からの解放であります。私たちが過ごしてきた二十世紀は、その目標に向かって大きな前進と多くの希望を与えてくれました。
 しかし、新たに迎える二十一世紀には、今世紀が積み残した世界経済の安定、核拡散防止、地域紛争、難民、環境破壊、人間性の崩壊など地球規模の重い課題があり、まさに人類の英知が試される時代であります。
 我が国において憂慮されますことは、世紀末現象であります。政官財界における不祥事の多発、組織的な犯罪の増加、親子や夫婦のきずなさえ金にかえる人倫にももとる凶悪、残忍な事件が多発したり、犯罪の低年齢化、薬物の乱用など挙げれば切りがありません。
 私は、その原因を一点に求めるならば、徳の不在に尽きると考えます。信、仁、義、礼、節、忠、孝、恩といった、日本の歴史の中に根づき、そしてまた世界に誇るべき普遍的な道徳観はどこへ行ってしまったのでしょうか。すばらしい日本人の精神文化はどうしてこのように緩んでしまったのでしょうか。
 このような憂うべき姿を目にして、私がその必要性を痛感するのは、豊かな感性に根差した日本人の心の確立であります。悠久の歴史と伝統文化が息づく日本精神のルネサンスが必要であります。過去のあしきものは捨て、よきものは断固として生かし、後世に正しく伝えていかなければなりません。総理、日本精神ルネサンスの先頭に立つ御決意がおありですか。
 あわせて、日本人の魂の問題として申し上げたい。それは、靖国の問題でございます。
 二十世紀は、顧みると戦争の世紀でもありました。戦争による全世界の犠牲者は、一般国民、軍人を合わせて五千万人以上にもなります。我が国でも、さきの大戦において亡くなった人たちは約三百十万人に上り、今なお大きな傷跡を残しているのであります。
 とりわけ国のため戦場に散った方々に対して深く深く思いをいたし、国が慰霊し顕彰することは、世界共通のことであります。そして、どのような形で戦没者を慰霊するかは、あくまでそれぞれの国の主体性の問題であり、諸外国の干渉や思惑によって振り回される性格のものではありません。
 小渕総理もかつて代表質問の中で、時の中曽根総理が公式参拝を決断、実行されたことに賛意を表されております。
 二十世紀の最後のこの年にこそ、戦後を引きずっている一大懸案に決着をつける節目ではないでしょうか。周辺諸国からさまざまな論評が出るかもしれませんが、日本の文化への理解を求める努力をしていくべきだと思います。総理、いかがでしょうか。総理の決断あるのみだと思います。
 私は、政治家の姿勢として、国民との直接の対話、つまり中世や江戸期の賢人たちが実行したつじ説法の効用について常々申し上げてきました。その日を対話の日と呼んでもいいと思います。
 総理は、先日の自民党大会で、国民との対話の日を設けると言明されました。新たな世紀の新たな時代には、国民との間に信頼関係を構築することが重要であります。政治と国民の距離感を縮めるのには、情報通信手段に頼るだけでは血の通ったものとはなりません。直接の対話による信頼の確立こそ小渕政治の原点であると私は考えております。
 総理の政治に対する気概、気迫が必ずや国民に伝わると思いますので、御期待申し上げております。
 私どもも、総理がつじ説法に立たれる同日同時刻には、全国津々浦々において議員おのおのが国民との対話を展開したいと思います。
 改めて総理の御決意をお聞かせ願います。
 さて、我が国経済は、景気下支えのための積極型予算を編成してきたところにより、景気にようやく明るさが見え始めました。
 総理は、景気を本格的な回復軌道に乗せるためには、なお手を緩めることなく努力せねばならないと言われていますが、そのために、まず十二年度予算の早期成立を図らねばなりません。
 他方、国と地方との財政が深刻な状況になり、長期債務残高が六百四十五兆円に上っています。巨額のツケを後世に残したことは、我々政治家一人一人が責任を共有するものであります。
 長期にわたり我が国の経済、財政のかじ取りに献身されてきた宮澤大蔵大臣は、多分に胸痛むものをお感じだと思います。
 今後、財政再建にどのような見通しをお持ちなのか、その手段、方法はどうなのか、日本経済の新生へのシナリオを内外に明らかにすることが必要と思います。国民にあすへの安心と活力を与えるとともに、世界経済安定の上からも必要なことだと思いますので、大蔵大臣、いかがでしょうか。
 小渕総理は、二十一世紀の日本の国づくりについて、富国有徳という目標を掲げておられます。
 富国有徳とは、豊かさとあわせて、徳、すなわち高い志を持った国家像であります。二十一世紀の精神の時代にまことにふさわしい、国民が共有できる哲理と言えましょう。
 戦後、歴代の政権は、吉田内閣の戦後復興の政治から始まって、中曽根内閣の戦後総決算に至るまで、それぞれ高い政治目標を掲げてまいりました。富国有徳構想は、ここに二十一世紀への新たな国家目標を提唱したものとして、私は高く評価するものであります。
 総理は、富国有徳の具体的取り組みについて、昨年の施政方針演説で五つのかけ橋を掲げ、ことしの年頭所感では五つの未来を打ち出されました。さらに、ことしの施政方針では五つの挑戦を国民に示されたのであります。
 創造、安心、新生、平和、地球の五つの柱の立て方も適切だとは思いますが、大事なことは、一つ一つの課題の解決と目標の達成に向けた具体的な実行であります。この実行に当たり、前提となるのが、国家目標実現のための政治勢力を総結集して、政権と政治の安定を樹立することであります。
 政党は政治家のエゴのためにあるのではありません。政治は政治家のためのものでもないのであります。政党の存立は国家国民のためでなければなりません。
 近年、政党は、立党の理念や哲学も定まらないままに離合集散を繰り返し、政党支持率の合計が五〇%を割り込むなど、国民の政党離れは加速度的に進み、政党崩壊の危機に直面しているのであります。今こそ、小異を捨てて大同に立った政党の新生、国民の信頼にこたえるいわば平成の新保守合同を求めたいと私は考えております。
 愛党よりも救国であります。かつて、昭和三十年の保守合同に際して、当時の緒方竹虎自由党総裁は、保守合同は爛頭の急務なりと喝破されました。私が今同じように考えるのも、二十一世紀に向けて国家百年の計を立てるに当たり、政治の安定が第一に重要だと思えばこそであります。
 自自公三党による連立政権の目的も政治の安定にあります。もともと参議院において自民党が過半数に満たない現状から、これでは国家喫緊の課題に迅速的確に対応できないとして、その必要性が生まれてきたものであります。ところが、単に衆議院の数の面をとって、三党連立を巨大与党と論じている者がおりますが、野党欠席のこの議場を見て、どこに巨大与党の姿がありますか。これまさに参議院の存在を無視した、二院制をないがしろにする議論であります。全く遺憾なことであります。
 政局への思惑が先走りすると政治をゆがめてしまいます。その最たるものがいわゆるパーシャル連合、すなわち部分連合論であります。政府・与党が政策課題ごとにケース・バイ・ケースで野党の協力を得て政権を運営すればいいという、さももっともらしく聞こえる論でありますが、これは無責任な場当たり主義であり、顛倒妄想以外の何物でもありません。顛倒妄想とは、ないものをあると思い、あるものをないと思うという迷いであります。
 我が党が参議院で過半数に満たないこの十数年の経験則からしても、また、大きく激しく動いていく時代であればこそ、安定した政権基盤が求められることは当然のことであると思います。
 このように三党連立は必然でありますが、国民に大きな信頼と安心を与えるために、総理も強調されているように、連立の実績を国民の前に積み重ねることであります。そのためには、党首、総理、代表が、この三人が大いに胸襟を開いて腹のうちをぶつけ合い、難局に向けて強固なスクラムを組むことであります。
 総理、まずお互いを認め、認め合うことであります。信じ、信じ合うことであります。たたえ、たたえ合うことが大事なのであります。三党連立の総理の自信についてお答え願いたい。
 さて、本年七月下旬、第二十六回の主要国首脳会議、いわゆる沖縄サミットが沖縄県名護市郊外の部瀬名で開催されます。サミット沖縄開催は、総理が施政方針において、万感の思いを込めて決断したと言われました。まさしく歴史的決定であり、高く評価しております。
 総理は、このサミットを絶対に成功させなければならないと言われておりますが、私も小渕総理の手で何としても成功させてほしいのであります。伝家の宝刀を抜く誘惑に負けてはいけません。
 この第百四十七回国会は、新世紀へのかけ橋の基盤をつくる歴史的な役割があるはずであります。浮き足立つようなことがあってよいものでしょうか。やるべき重要課題は山積しているではありませんか。一日たりとも空白を許してはなりません。与野党の垣根を超えて真摯に国のあるべき姿勢を論議すべきであり、堂々と王道を求めてこそ勝利は開けるのであります。日本の政治の指導者としての責任を全うしてほしいのであります。
 サミットのメーン会場となる建物は、三月に完成予定とのことでありますが、既に沖縄県民からの公募により万国津梁館と名づけられました。かつての首里城正殿に置かれた鐘の銘にちなんだ万国への橋渡しという意味だそうであります。まさしく沖縄サミットの今日の意義を何よりもよく示しているではありませんか。
 私は、ここで三つの提言をしたいと思います。
 ことしをスタートとして、毎年時期を定め、万国津梁館にアジアの国々、地域の代表が一堂に会し、スイスのダボス会議のような沖縄アジア会議を創設したらいかがでしょうか。さらに、地球の未来を担う子供たちが全世界から集う沖縄・国際子どもサミットも検討してはどうでしょうか。
 沖縄は、さきの大戦末期に我が国土で最大の戦場となり、一般住民も含めて実に十九万人もの人たちが犠牲となりました。
 沖縄守備隊の大田中将は自決の直前に電報を打たれました。「一木一草焦土ト化セン」「沖縄県民斯ク戦ヘリ」と惨状を訴えられ、沖縄「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と締めくくられているのであります。
 しかし、今日なお沖縄県民には基地をめぐる危機や不安が去っていません。このような状況を我々国民一人一人の問題として真剣に受けとめ、問題が解決されていくよう最大限の努力をしていかねばなりません。
 総理も二十一世紀を平和の世紀と位置づけておられますが、この夏の沖縄サミットを機に、沖縄の苦しみ、悩みを全世界に訴え、新しい千年紀の幕あけにふさわしい平和への宣言を沖縄から世界に発信すべきと考えます。過去の戦争による惨状や世界唯一の原爆被爆を体験した日本人の立場から、沖縄サミットで二十世紀を総括しての世界戦争終結宣言をまとめ、平和への決意を世界に向かって宣言してはいかがでしょうか。
 加えて、沖縄サミット成功のための危機管理上の対応は万全なのか、総理及び沖縄担当の青木官房長官にお尋ねいたします。
 次は、新しいアジア外交についてであります。
 総理、新年早々のカンボジア、ラオス、タイ三カ国歴訪は成功をおさめ、敬意を表します。
 アジア太平洋地域において、安全保障、経済、文化、学術の交流など総合的協力関係をどう築き上げていくかであります。我が国外交が主体的立場をとって、アメリカ、中国、韓国、インドネシア、ロシア等々、アジアと太平洋の国々や地域との間に一層の信頼関係を構築していかなければなりません。
 EU諸国が三十年かかって昨年統一通貨をスタートさせましたように、相互の深い理解と尊重を原則として、アジア太平洋においても世界経済における競争力を強めていくアジア共通市場や経済統合による共通通貨の創設に向け模索していくべきではないでしょうか。
 アジア経済圏を築いていく上で解決しなければならない課題も数多くあります。
 中国と台湾との関係は平和裏に両国の英知によって正常化していくべき問題であります。核兵器やミサイルを保有する巨大な軍事力を背景に台湾の武力解放などということは、日本を含めたアジアや世界全体に大きな波紋を投じ、平和と安定を壊します。そのようなことは万が一にもあってはならず、日本外交はその旨を世界に向かってはっきりと表明しておくべきだと思います。
 また、中国や朝鮮民主主義人民共和国との外交は、未来を見据え、筋を通し、本音で話し合える信頼関係の確立に向けて、新しい大きな一歩を踏み出したいものであります。総理の御所見をお尋ねいたします。
 総理は、ことし年頭の「五つの未来」の中で子供の未来を熱っぽく語っておられましたが、私も同感であります。この国の未来を託すのは子供たちだからであります。
 しかし、その子供たちの出生が年々少なくなり、二〇〇七年ごろからは日本の人口は減少していくと見られています。かつて経験したことのない重大な事態であります。その主要な背景を探ると、女性の社会進出による意識の変化や家族のあり方、価値観の多様化、それに伴う晩婚化の傾向などが挙げられましょう。
 戦後の「新生活運動」の名のもとに少なく産んでよい子に育てるという運動が続けられてまいりましたが、行き過ぎが生じたのではないかと私は案じております。
 「なんでこんなに 可愛いのかよ 孫という名の 宝もの じいちゃんあんたに そっくりだよと 人に言われりゃ 嬉しくなって 下がる目じりが えびす顔」、これは七十万以上の今大ヒットを続けている「孫」という歌の一節であります。作詞も作曲も歌い手も、ともに山形のサクランボ農家のおじいちゃんコンビが孫の誕生を祝って手づくりでつくったものであります。肉親の情愛が切々と伝わってくるではありませんか。
 今後は、子育てに若い世代がもっともっと誇りや喜びを感じ、また家族のぬくもりのある家庭の幸せを感じられるような意識改革が必要であります。
 一方、社会、政治全体で安心して子育てができるような環境改善の取り組みも行っていかなければなりません。児童手当を充実した経緯は承知いたしておりますが、さらに税制を含めて長期的な取り組みが必要であります。
 また、出生率を上げる目的を持って例えば子供三人財団のようなものを設立し、三人以上の子供を産み育てることが大事だよという精神的土壌を培う国民運動を官民一体となって推進することも大事なことではないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。
 ここで私が少子化現象とあわせて言及したいと思いますのは、生命の尊厳という人類社会の最も根源的な問題であります。
 今世紀後半の五十年において、優生保護法の名のもとに、厚生省に報告があっただけでも何と三千五百万もの母体に宿った生命が誕生を見ずに、やみからやみへと葬られたのであります。やみを入れれば五千万と言われるこの命の神秘と尊厳に対する自覚を欠いた大きくて重い事実であります。
 人には、父と母で二人、父と母の両親で四人、そのまた両親で八人の親があります。こうして数えていくと、数字の上では、十代さかのぼって一千人、二十代で百万人、三十代では何と十億人を超える祖先が存在することになります。そのどの一人の命が欠けても今日の自分は存在しないのであります。逆に言えば、自分の命は十代後には一千の子孫となり、三十代後には十億の子孫の命となって未来へ幸はえていくのであります。一人の個の命のとうとさに今さらながら神秘と感動を覚えるではありませんか。
 優生保護法は、今は母体保護法と名を改めておりますが、もとはといえば、終戦間もないころの苦しい生活、住むに家なし食糧不足という時代に、いわば経済的理由から緊急避難的な規定として中絶を法律の傘の中に入れて黙認してきたものであります。生命の尊厳が失われてきたのであります。生命軽視の諸悪はここにあると言っても過言ではありません。戦後日本において、経済発展が光だとするならば、この問題はまさしく影であります。
 総理、新世紀を迎えようとする今日、一日も早くこの影を払拭して、国際国家日本、人道国家日本にふさわしい経済的理由の条項を削除した母体保護法に改めるべきであると考えます。見解をお伺いします。厚生大臣に強くこのことを申し上げておきます。
 次に、内閣の最重要課題である教育の問題であります。
 教える者と教えられる者との縦の秩序回復が第一であります。子供が主人公などというとかく子供におもねた教室の現状であっていいものでしょうか。学ぶということはまねることであります。教師も家庭も社会全体も子供がまねるにふさわしい姿勢が大切であります。
 また、美しい日本語を身につけることはもちろんのこと、英語で意思疎通を図ることが大事という総理のお考えに全く同感ではありますが、加えて、特に漢字はこれからも大事にしていかなければなりません。自国の言語、文化を軽んじた民族は衰退いたします。
 また、世界の国々にはそれぞれ誇るべき神話があります。我が国においても、古事記に代表される神話は、古代遺跡の発掘によって七千年前ごろの歴史の事実として裏づけがなされつつあります。日本国と日本人のルーツを解き明かす神話を学ぶことも大切なことではないでしょうか。
 中曽根文部大臣には、教育改革の先頭に立って力いっぱいの奮闘をお願いしなければなりません。中曽根大臣の決意を伺い、教育問題は連立与党自由党の扇千景議員会長に譲らせていただきます。
 先ほど、子供の未来重視を訴えましたが、ことしは国際子ども読書年であります。これは、子供たちに豊かな感性、創造力、表現力を身につけてもらうことの大切さから、昨年の通常国会で決議したことによるものであります。
 一昨年、インドのニューデリーで開かれました国際児童図書評議会世界大会において、皇后陛下は、子供のころの読書の思い出と題する基調講演をビデオを通して行われました。皇后陛下のこの講演は世界に広く紹介され、内外に深い感銘を与えられました。読書の大切さを御自身の体験を通して語りかけられたことは、国境を越えて人々の心を打ったのであります。まさに読書は人の心をつくり、人を感動させます。読書年の成功に向けて政府の取り組みをお伺いします。
 国会を国民に対して開かれた場にし、特に子供たちに対して政治を身近に感じてもらいたいと考えております。参議院は、五十周年記念行事の一環として開催し好評を得た子ども国会については、既に本年開催を決めております。できるならば、これを常設することを提案していきたいと思っております。
 今は、子供たちが国会見学に来ても、満足して見学ができる状況にないことは議員各位御承知のとおりであります。きょうも小中学生が、寒空のもと見学に来ています。国会に子供たちの学習広場や見学コース、食堂、懇談室、休憩室などの整備を進めたいと思います。尾崎記念館やバス駐車場などの国会周辺を再整備し、あわせて外国の議員との交流の場など、マルチメディアを駆使した立法府と行政府一体の情報発信基地を建設してはどうでしょうか。
 子供たちの未来と関連させて、総理、これをぜひ実現させようではありませんか。議員宿舎が狭いなど、これは後回しにしたってやるべきことは、こういうことの方が私は先だと思っております。
 次に、当面する重要な課題について質問いたします。
 近代を超えていく新しい時代は、物づくりに加えて、情報、バイオといった新たなテクノロジーの飛躍がなくてはとても実現するものではありません。
 アメリカは既に、情報技術を経済、教育、政治に大幅に組み込んだ新たなネット社会を構築し、生産性を大きく高めております。また、第二の情報技術革命と呼ばれるバイオ技術革命にも速いテンポで取り組んでおります。我が国も、これらの面を急ぎ促進する必要があると考えます。
 過去、我が国繁栄の基礎は、中小企業のひたすらなる努力によって築かれてまいりました。情報、バイオの新しい芽生えは、我が国初め世界の多くの国で中小企業から誕生しております。重要なことは、旺盛な挑戦心と豊かな創造力を持つ研究者を育て、そこに生まれた研究成果を最大限生かせる体制づくりにあります。
 健全な中小企業の育成こそ二十一世紀への我が国の繁栄へのかけ橋であり、今後も変わらぬ我が国の至上課題であります。総理のお考えをお尋ねいたします。
 次に、国民生活の安心にかかわる今日の課題として、私は、雇用、社会保障、金融システムの三分野を指摘したいと思います。いわゆるセーフティーネットの問題であります。
 完全失業者数が三百万人近くに上るなど、雇用問題は深刻であり、この取り組みはまさしく政治全体の責任であります。一方で、安易にリストラと称する人員整理に走る経営者たちにも猛省してもらわなければなりません。
 日本の企業社会に根づいた終身雇用制は、経営者と働く人たちがさながら家族の一員のように太いきずなで結ばれ、日本版家族主義の発露として定着してきたものであります。それが、効率至上主義のもとに軽々しく打ち捨てられていくのはまことに遺憾なことであり、今、働く人たちと経営者との間に新しい信頼関係が求められています。
 年金、医療、介護など社会保障制度は、少子高齢化が急速に進むこれからの我が国で、国民一人一人が安心して生活していくために、その充実整備が政治の急務であります。年金改革法案は、さきの国会でまた継続審議となりましたが、年金という国民的課題を、仮にも党利党略的立場から取り扱うようなことがあってはなりません。
 金融のビッグバンは、二十一世紀へ向け避けられぬ時代の流れであります。旧財閥系の枠を超越した大銀行同士の合併などによるメガバンクが次々誕生しようとしております。この動きはよく見守ってまいりたいと思います。
 しかし、国民大衆が各種金融機関のこれからの信用力に不安感を抱いているのも事実であります。このために、ペイオフ制度の実施予定は一年間延期されることとなりましたが、この間に国民各層の不安を除く措置を十分に講ずるべきであります。
 雇用、社会保障、金融に今必要なことは、国民すべてに安心していただけるようなセーフティーネットを十分に張りめぐらすことであります。
 福祉・環境問題は、連立与党公明党の鶴岡洋議員会長にお譲りし、これまでにとどめておきます。総理のお考えをお尋ねいたしておきます。
 ここでさらにつけ加えて提起したいのは、食料の自給率低下や遺伝子組みかえ食品の登場による食生活不安の問題であります。
 我が国の食料の自給率は、九八年度で四〇%まで低下し、これは先進国の最低レベルであります。こんな状況では、昨年制定された食料・農業・農村基本法のもとで、よほどの決意で新しい農政を展開していかなければなりません。また、遺伝子構造の解明は、食料生産のみならず、医療、生命科学等において重要ではありますが、自然本来の流れを人為的にねじ曲げるようなことがあってはなりません。あくまでも倫理・道徳性と安全性の枠の範囲での発展を目指すべきだと考えますが、農政への取り組みとあわせて、総理、いかがでしょうか。
 次に、国家の根幹にかかわる問題について五点順次伺ってまいります。
 その第一は、我が国のあるべき姿であります。
 総理は、国づくりの基本理念として富国有徳を高らかにうたいました。しかし、一般国民の立場からすると、その具体的な中身はどうなのかよくわかりません。そこで総理、国民に、さらには世界に向かって、力を込めて我が国の根幹たる富国有徳とはどのような国の形をしたものか示す必要があると私は思います。お答え願います。
 総理は、施政方針の中で国民と国家との関係について、個人と公が横の関係になって協同作業で国を治める協治への転換を目指すべきだとの考えを示されています。協治とは私たちには新しい造語の印象を受けますが、これは私一人ではないと思います。この考えの前提には家族、公や社会への責任が必要だと思います。このような耳なれない造語、わかりにくい概念によって国民と国家の関係を変えようとすることについてはいかがかと申さざるを得ません。
 日本人の意識の振り子が戦後、公から個に大きく振れ過ぎて義務感や公徳心が失われつつある中で、一体どのような協治によって富国有徳の国づくりを目指していくのか、国民に向かってわかりやすく、国民だけでなく、我々議員に向かってわかりやすく説明していただきたいのであります。
 国家根幹の第二は、我が国が国際社会に貢献していくための体制の整備であります。
 これについて総理は具体的な構想を示されていませんでした。冷戦後の国際社会は、地域紛争、テロ、難民、麻薬の蔓延など、いまだ混迷の中にあります。我が国は、国際平和維持活動協力法、PKO、国際緊急援助隊派遣法による国際貢献を行うこととなっております。
 しかし、我が国の貢献は他の先進国の水準と比較すると余りにも見劣りいたします。昨年十月の与党連立政権合意書には、「PKOのうちPKF本体業務の凍結を解除するための法的措置を早急に講ずる。」とありますが、前の国会でも法律の改正はできませんでした。東ティモールの事態に際しても、我が国は国際社会、特にASEAN諸国の期待にもかかわらず、要員派遣など目に見える積極的貢献はできませんでした。三党合意の展開を待っているのではなく、政府の側からの積極的な決意表明が求められていると思うのです。総理の決意表明をぜひお聞かせいただきたい。
 第三の課題は、有事法制、危機管理体制の整備であります。
 今回の施政方針演説の中にも有事法制については一言も触れられておりません。昨年の通常国会においては、確かに日米防衛協力に伴う周辺事態法が成立いたしました。しかし、日本において有事が発生した場合に、自衛隊はどう行動するのか、地域自治体や住民との協力関係はどうなるのかの具体的対応はまだ手つかずなのであります。
 有事法制というと、国家権力が国民の基本的権利を制約するので、慎重に審議すべきだなどとよく言われます。しかし、有事法制は、万一の事態に国民の生命、財産を守る、被害を最小限度にとどめる、また復旧に向けて国民一人一人がそれぞれの役割のもとに協力し合うルールをあらかじめ定めて訓練しておく、いわば備えなのであります。
 阪神・淡路大震災から既に五年が経過しました。悪夢のようなあの惨状は忘れようもありません。危機管理の不備がいろいろ指摘され、地震発生などに備えた体制の早急な整備が唱えられたものでありましたが、当時の熱気はどこへ行ってしまったのでしょうか。この教訓は何としても生かさなければなりません。
 東京都において、ことし九月に自衛隊が参加して大規模な総合防災訓練が石原知事によって計画されています。その実施体制は画期的であり、こうした訓練が全国的に広がっていくことを願っています。せめて県庁所在地や政令指定都市においてこうした訓練を実施すべきだと考えます。
 また、大規模災害に迅速的確に対処する上からも、統一した我が国のデジタル地図の作成も急務であると思います。総理はいかがお考えでしょうか。
 危機管理の重要さは、何も災害への備えだけではありません。特に、原子力関係を含む重要施設や、通信、交通管制施設などの防護体制については、テロやゲリラなどの侵入にも備えなければなりません。例えば、原子力発電所の警備を民間の一企業である警備会社のみにゆだねていいのでしょうか。
 ここで私がどうしてもただしておきたいことは、原子力発電所建設をめぐる問題であります。
 昨年の茨城東海村の臨界事故によって、またも原発への不信が募ってしまいました。安全確保体制の抜本的強化、総点検の徹底により、国民の不安を払拭することは待ったなしの課題であります。原子力への信頼回復を図り、原子力発電建設計画が地元住民を初め国民に十分理解されるよう、全力を傾けなければなりません。有事法制、危機管理への対応とあわせて、総理の御見解をただします。
 国家根幹の第四は、国防を国政の中で正当に位置づけることであります。
 二〇〇一年一月からの中央省庁再編に当たっては、防衛庁はそのままとどめおかれておりますが、それでよいのでしょうか。国の存立の基本を担う行政機関は、その実態に即して国防省なり防衛省なりにすべきであります。
 国会においても、外交演説や財政演説と並んで防衛演説が行われるべきであると私は思います。日本の防衛のあり方を説明することは、それこそシビリアンコントロールの実践と言えるのではないでしょうか。
 また、大綱や中期計画などの防衛計画の策定や、それに基づく防衛装備の決定に当たっては、みずからの手で国の安全を守るという防衛の基本に立って判断すべきであると考えます。総理の見解をただします。
 第五は、二十一世紀の日本の国の形を規定する新しい憲法の制定であります。この問題こそ、我が国の最大の国民的課題でありましょう。
 にもかかわらず、施政方針では「幅広い議論が展開されるものと期待いたしております。」と、まるで、総理、人ごとのように触れておられますが、それでいいのでしょうか。新しい国づくりがそれでできるのでしょうか。
 ことしから衆参両院に憲法調査会が設置され、私自身も参議院の憲法調査会長として大きな責任を担うことになりました。あるべき国家像を見据え、真剣な論議を目指す決意であります。
 私の憲法に対する私見として、憲法調査会長の立場を離れて憲法観を申し述べさせていただくことをお許し願えるとするならば、私は、憲法前文から始まって、新しい時代の日本国と日本国民のための、そして国際社会の一員としての役割を担う格調高い新しい憲法をつくり上げるべきだと考えております。それは、我が国の伝統文化を踏まえ、我が国の平和、安全維持を高らかにうたっていくという昇華の道であります。私は、九条を初め、二院制のあり方等についてしっかりと提起していきたいと考えます。
 参議院は、衆議院と異なる六年という保障された任期の中で、長期的、大局的に腰を据えて論議ができます。憲法議論は、参議院が本領を発揮するに最もふさわしいテーマであると思っております。憲法調査会は衆参平等主義であることを付言しておきます。
 新しい憲法の制定は、慎重な論議を重ねつつも、いつまでもその目標を先送りにしてはならぬと考えます。私は、憲法調査会の最終答申は五年以内、その後憲法の改定はその三年後、つまり今から八年後、平成二十年を制定目標にしたいものだと思います。もちろん、その間にも論議の過程で審議の進行や途中のまとめを国民に対し報告していくことが重要であります。
 私がここで強く思い起こしますのは、明治維新後、日本の国づくりのもととなった憲法をつくり上げた偉大な政治家の血のにじむような彫心鏤骨の足跡であります。総理、彫心鏤骨の足跡であります。千年紀を迎えたこの天のときに憲法調査会が設けられたことは、大きな歴史的な意義があります。明治の先人に学んでまいりましょう。
 憲法改正についてどのような取り組みをなされるのか。例えば、国会の論議を踏まえて九十六条の改正条項に定める国民投票制度を創設する等、しかるべき対応が必要であると考えますが、いかがでしょうか、お伺いします。
 締めくくりに当たり、申し上げたいことがあります。
 昭和三十年秋、第二十三国会で当時の鳩山一郎総理が行った所信表明演説の全文を読んで私は愕然といたしました。この半世紀、日本の政治は何をしていたのか、怠慢ではなかったのかとの思いを強く駆られるものであります。
 演説では、次のように述べられております。
 日本を真の独立国家に立ち返らせるためには、何よりもまず国の大もとを定める憲法を国民の総意によって自主独立の態勢に合致するようつくり変えることが大切だと、新憲法制定の必要性を説いておられます。その上で、我が国の議会政治は、従来しばしば、分立した幾つかの政党の間に見られた不明朗な政治的駆け引きの余地を完全に遮断し、政策の審議にその精魂を傾けられるという正常な道を歩むことである、政党はあくまで言論によって闘い、多数決によって決するという原則の上に立ってよき先例を積み重ね、それによって動かしがたい議会政治ルールをつくる、正しい民主政治の姿を確立しなければならないと述べているのであります。
 何と四十五年前の演説が、今日の政治の問題点の核心を見事に突いているではありませんか。
 この半世紀、時代が大きく進展したにもかかわらず、変わっていなかったのは政治そのものであり、政党や政治家の姿そのものだったのであります。
 新しい世紀を前に、私たち政治家は、このことに深く心いたさねばなりません。政治家の使命感と責任感の欠如は、憂うべき我が国の現状を招いてしまったと言っても過言ではないと思っております。
 鳩山由紀夫代表はこの場におられませんが、この際あえて申し上げます。鳩山さん、この祖父の演説をどのように受けとめられましたか。審議拒否などお恥ずかしくありませんか。友愛の精神は、天地万物に感謝し、天地一切のものと和解することであると教えられたものであります。父や母に感謝し、兄弟相和し、新憲法の制定、成熟した議会政治の確立、このことに思いを深くし、祖父の志を継がれることを祈ってやみません。
 物を失うことは小さなものを失うことであり、名誉を失うことは大きなものを失うことである。政治家が勇気を失うことはすべてを失うことであると言われます。
 総理、今こそ変化を恐れることなく、大転換期の国家の発展と国民生活の安定を確かなものにするために、実相を直視する勇気を持ち、勇敢に立ち向かっていかなければなりません。今、自分がやらねばだれがするの気概を持ち、敗北を恐れず、捨て身で、私心をなくし、虚心坦懐で、ひたすら重心を低くしてみずからの責任に挑戦する総理の姿勢に対し敬意を表し、私ども与党三党は懸命に支えてまいります。
 総理は、施政方針の締めくくりを国際読書年にふさわしく宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の一節を引用されましたが、私は、質問の終わりに当たりまして、総理に私の思いを込めた漢詩をお贈りいたします。
 富国有徳
  小渕恵三讃
 淵泉の長流利根と稱え
 峻秀、競逐して雄魂を養う
 新世を披くに五橋を架けんと唱え
 有徳を宗とし、基盤を堅めんこと
 を期す
 ふちや泉の水は時には地下に潜り、あるいは谷や川のほとばしりとなり、悠々とした時を経て、古くは関東第一、坂東太郎と称賛される利根の流れとなる。上毛三山の険しい山々を仰ぎ見つつ、すぐれた人々の魂の触れ合いを通して雄々しい精神が養われた。その人が、今、新しい時代を開かんとして、五つのかけ橋、五つの挑戦を提唱して、国民の関心を呼び起こし、富国有徳の理念に基づいて、国づくりの基盤を固めることを期しているとの意であります。
 総理の御健闘を祈ってやみません。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(小渕恵三君) 村上正邦議員にお答え申し上げます。
 ただいま村上議員は、日本と日本人の現在と将来を憂い、熱情を込めて議員の信念を訴えられました。私は緊張して拝聴させていただきました。また、議員から、私と富国有徳にちなんだ漢詩をいただきました。私は、この詩を拳々服膺し国政に全力で取り組んでまいりたいと思います。
 村上議員は、今回の施政方針演説そして代表質問に対する野党の態度について、憲政史上の大きな汚点であると述べられました。野党議員に対して、言論、政策で闘うという本来の議会制度のあり方に立ち返るよう呼びかけられました。私は、本日、村上議員が、野党不在の代表質問であることも考慮されて、二院制における参議院独自の役割を重視する立場から、与野党の枠組みを超えて政治全体を見据えて質問されたことに対し、まず深く敬意を表したいと思います。
 村上議員は、産業革命以来の近代社会の特徴について、あらゆるものを量的に追求することにあるとされた上で、二十一世紀には物質万能主義ではなく、心の豊かさ、精神の時代が到来すると指摘されました。また、日本に見られるさまざまな世紀末現象の原因として、本来、日本人が持つ道徳観やすばらしい精神文化が失われつつあることを挙げ、心の確立の必要性を訴えられました。
 これまで近代社会は、人間が自然を管理し利用することにより量的な発展を重視してまいりました。現代の大量生産、大量消費、大量廃棄という近代社会のシステムはもはや限界に来ていると言わざるを得ません。まさに人類は、村上議員の御指摘のとおり、新たな価値観、社会の仕組みを必要としておると思います。金銭ではかることのできない価値をとうとび、心の豊かさも重視する姿勢と物を大切にする循環型社会を目指すべきであります。
 また、我が国は第二次大戦後、急速に経済成長をなし遂げました。衣食足りて礼節を知り倉廩実ちて栄辱を知ると言います。しかしながら、私たちが直面する現実はこれとは異なった様相を呈していると憂えるものであります。
 私は、かねてから二十一世紀の日本のあるべき姿として、経済的富に加え、物と心のバランスのとれた国、すなわち富国有徳の国を目指すと申し上げてまいりました。富国有徳の国を支えるものは、究極のところ人であります。私は、その意味で社会のあり方まで含めた抜本的教育改革が求められていると確信するものであります。まず、大人みずからが倫理やモラルにふだんから注意し、子供の健全な発達を支えていく社会を築いていかなければなりません。その上で、自分に厳しく相手に優しく、助け合い、いたわりの気持ちの大切さを持った子供たちがはぐくまれるよう、教育改革に全力で取り組んでまいる決意を申し上げたところであります。
 靖国問題につきましては、日本人の魂の問題であるとされた上での御質問がありました。
 昭和六十年に当時の中曽根総理が実施した方式による靖国神社公式参拝が憲法に違反しないとの政府見解は、現在でも変わっておりません。
 今日の我が国の繁栄が戦没者の方々のとうとい犠牲にあることは申すまでもありません。議員は、国のため戦場に散った方々に対して深く思いをいたし、国が慰霊し顕彰することは世界共通のことでありますと述べられましたが、私自身、戦没者の追悼に対する気持ちについては人後に落ちないつもりであります。
 今後、公式参拝を実施するかどうかにつきましては、この私の現在置かれた立場から率直に申し上げるならば、多くの我が国国民や遺族の方々の思い、及び近隣諸国の国民感情など、諸般の事情を総合的に考慮し、自主的に検討した上で決定すべきものと考えております。
 国民との直接対話についてお尋ねがありました。
 「若聞人なくば、たとひ辻立して成とも吾志を述ん」、これは江戸中期の心学者である石田梅巌の言葉であります。これは、私が官房長官としてお仕えいたしました竹下総理が所信表明演説で述べられたことであります。私の信念でもあります。
 これまで私は、できる限り国民の皆さんと直接にお話をし、また御意見に耳を傾けることを政治の原点と考え、努力してまいりました。先日、自民党大会で申し上げた国民との対話の日につきましては、今後精力的に取り組んでまいる所存でございます。
 連立政権についてお尋ねがありました。
 私は、いかなる政策、いかなる改革も政治の安定なくしては実行し得ないと確信しております。
 私は、一昨年の参議院選挙後、日本が危機的状況に陥る中で、政治の安定が何よりも大事であるとの思いで、自自連立、そして先般の自自公連立政権を樹立いたしました。連立政権の運営に当たっては、党と党との信頼関係がまずもって必要であります。これに加え、三党党首間の確固たる信頼関係が重要であるとの村上議員の御指摘、まさにそのとおりであります。信なくば立たずであります。
 私は、小沢党首、神崎代表との間で強い信頼関係で結ばれていると自負しているところでありますが、さらに一層胸襟を開き、難局を乗り切るべく、かたいスクラムを組んで進んでまいりたいと考えております。
 次に、九州・沖縄サミットについて開催の決定を高く評価していただいた上で、ぜひ成功させなければならないとの力強い御主張がありました。まさに私の思いと軌を一にするものであり、私は、このサミットを成功させることは私に課せられた国際的な責務であると考えております。
 その上で、村上議員から三つの貴重な御提言をいただきました。
 まず、万国津梁館を会場として沖縄アジア会議を創設してはどうかという御提案でありましたが、九州・沖縄サミットは七年ぶりにアジアで開催されるサミットであり、サミット前後にはアジア諸国からの参加も得た多くの交流プログラムが計画されているところであります。政府としては、議員御指摘のように、サミットの開催を契機として、今後沖縄が万国への橋渡しとしてアジアの国々との交流の場になることを期待し、御提案を十分念頭に置きつつ、このための努力を行ってまいりたいと考えております。
 次に、沖縄・国際子どもサミットを検討してはどうかとのお尋ねでありました。
 世界の子供たちがみずから二十一世紀の世界を考えることは極めて有意義であります。沖縄県では、次の世代を担うG8の若者が一堂に会し、若者ならではの純粋な視点で二十一世紀の世界像を議論するG8高校生サミットを六月に開催することといたしており、政府としても引き続きこれを積極的に支援してまいる所存であります。
 さらに、沖縄の苦しみ、悩みを世界に訴え、新千年紀の幕あけにふさわしい平和への宣言を世界に発信すべきではないかとの御提言がありました。
 そもそも私がサミットの沖縄での開催を決定いたしましたのは、沖縄での長い歴史の痛みを踏まえ、稲嶺知事を初め県民の方々の熱い期待にこたえるためでありました。
 村上議員が引用されました大田中将の電報は、私の沖縄への思いを一層強固なものとして沖縄開催の決定につながったものであります。
 私は、昨年九月にAPECの会議でニュージーランドを訪問いたしましたが、その際、同国に在住の大田中将の四女の昭子さんとお会いいたしました。昭子さんは、戦後、ニュージーランドの方と結婚せられたことにより、いろいろな苦労をされた方でありましたが、今回のサミット開催決定により、御尊父の沖縄への思いがこのことによって結実した気持ちである旨、涙ながらに述べられました。私も胸を熱くすると同時に、改めてその成功のために力を尽くさなければならないと覚悟をいたした次第でございます。
 私は、施政方針演説で申し上げましたとおり、二〇〇〇年という節目の年に開かれる九州・沖縄サミットを平和の世紀の建設を世界に発信する機会ととらえ、明るく力強いメッセージを打ち出したいと考えております。こうした私の平和に対する思いをサミットの結論に反映させるよう、議員の御提言も踏まえ、G8各国ともよく相談してまいります。
 以上、村上議員の御提案について私の考えも述べさせていただきました。九州・沖縄サミットの成功のために、国民の皆様からいただくあらゆる御提言についても率直にお聞きをし、真摯に検討したいと考えておりますので、ここに国民の皆様の積極的な御協力をお願い申し上げるものであります。
 沖縄サミットの成功のための危機管理上の対応は万全なのかとのお尋ねでありますが、沖縄サミットを成功させるためには、警備上の諸対策を初め、危機管理に万全を期することが不可欠であると考えており、関係省庁において現在あらゆる角度から総合的に検討を行っておるところであります。
 次に、アジア共通市場の創設についてお尋ねがありましたが、我が国は、多角的貿易体制の優越性を重視しておる立場であることは御承知のとおりであり、この立場を変えるものではありません。他方、アジアとの経済関係の強化に伴い、今後二十一世紀へ向け、国際ルールの枠組みのもとでさまざまな方途を検討することが適切であると考えます。
 次に、経済統合による共通通貨創設についてでありますが、経済的、歴史的、文化的背景が比較的近い欧州であっても通貨統合は長い時間をかけようやく実現したものであり、欧州よりも複雑で多様な背景を持つアジア地域においては、長期的な可能性はともかく、今すぐに通貨統合を推進する環境は必ずしも整っていないのではないかと考えます。他方、アジア諸国の通貨の安定は我が国にとっても重大な関心事であり、アジア通貨の安定に向けて、マニラ・フレームワークの活用や円の国際化の推進等を通じて、今後とも積極的な役割を果たしてまいりたいと考えております。
 新しいアジア外交についてお尋ねがありました。
 我が国外交が主体的な立場をとって、アメリカ、中国、韓国、インドネシア、ロシア等々、アジアと太平洋の国々や地域との間に一層の信頼関係を構築していかなければならないとの御指摘は全く見解を同じくするものであります。その認識のもと、今後ともアジア外交を積極的に進めてまいりたいと考えております。
 中国と台湾との関係につきましては、台湾をめぐる問題が、関係当事者の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望するとの我が国の立場をこれまでも機会をとらえて明らかにしてきております。この話し合いによる平和的解決を望む立場は、およそ両岸の当事者の英知を信頼していることの裏返しであるとともに、この地域、ひいては世界の恒久的平和と安定のためにも、武力による解決は決して望ましいものではないという私どもの信念の正直な反映でもあります。御趣旨を踏まえ、隣人たる日本人の真摯な希望を今後とも適時適切に訴えてまいりたいと考えます。
 中国との関係につきましては、最も重要な二国間関係の一つとしてこれを重視し、御指摘のように未来を見据え、筋を通し、これまで築いてきた首脳レベルの信頼関係を基本に、その進展に一層努めてまいります。
 また、北朝鮮との関係につきましても、日朝双方が言うべきことは言い、本音で忌憚のない話し合いができるようになることが重要との御指摘に同感であります。日朝関係の改善は難しい課題ではありますが、そのためにもできるだけ早く国交正常化交渉再開のための予備会談を行い、本格的な対話を実施してまいりたいと考えております。
 少子化問題について、若い世代が子育てに誇りや喜びを感じるような意識改革が必要であるとの御主張がありました。
 私が主宰する少子化への対応を推進する国民会議に参加されております「リング」あるいは「らせん」等の作家である鈴木光司さんが、御自身を文壇最強の子育てパパと称し、会議でこれまでの自分の二人の子育ての経験を踏まえまして、今の日本の社会に余り結婚したくない、子供を産みたくないという漠然としたムードが漂っている、私はこうしたムードに言葉を当てはめる、要するに意識化するのが小説家としての私の役割であると考えているとおっしゃっておりました。私は、このような子育ての喜びについてどんどんと発信されていけばと願っておるところであります。
 また、議員から税制を含めた長期的な取り組みや子供三人財団など、子供を産み育てることが大事だという精神風土の国民運動の官民一体となって推進することも必要との御主張がございました。
 私は、子育ての意義や喜びについて若い世代に向けての啓発活動を含め、国民的な理解と広がりのある取り組みも重要でありまして、国民会議において各界各層における取り組みを推進するとともに、広く国民に向けた情報発信を行うなど、幅広い対応を行ってまいりたいと考えております。
 議員は、生命の尊厳を人類社会の最も根源的な問題と述べられました。生命の尊厳を守るために生命を尊重する気風を醸成していくことは政治の重要な課題であると考えております。
 議員から母体保護法に関連し指摘された人工妊娠中絶の問題については、胎児の生命尊重、女性の自己決定についての考え方などをめぐり、国民各層に多様な意見が存在いたしております。また、国際的にも対応は分かれているものと承知をいたしております。国民個々人の倫理観、道徳観、宗教観とも深く関係しており、国民各層における議論の深まりが重要であると考えております。
 議員は、国際子ども図書館設立推進議員連盟の会長として、子ども読書年について中心的役割を果たし御尽力されたことに深く敬意を表します。また、私も議員が述べられました皇后陛下の「子供時代の読書の思い出」と題する基調講演に接し、心打たれた者の一人であります。
 子供にとって読書は豊かな感性や情操、そしていたわりの心をはぐくむ上で大切な営みであります。昨年の衆参両院における御決議に当たりまして、私みずから所信を申し述べさせていただきました。政府といたしましては、御決議の趣旨を体し、子ども読書年が来るべき二十一世紀に世界に羽ばたく子供たちの健全な育成に向けた国民的努力の一層の契機となるよう、関係各界の理解と協力を得つつ、各種の普及啓発活動など、取り組みを全力で進めてまいります。
 子ども国会の常設化や子供たちの国会見学の環境整備についてお尋ねがありました。
 平成九年に行われた前回の子ども国会においては、子供の議員が真剣に意見を交換し、子供たちの自然、環境やお年寄りへのさまざまな思いが入った子ども国会宣言が取りまとめられるなど、非常に意義のあるものでありました。子ども国会の常設化や子供たちの実りある国会見学の実現は、国会を国民に対し開かれた場に一層し、子供たちに対しての政治を身近に感じてもらうための意義深いものであります。関係者とともに真剣に取り組んでまいるべきものと考えております。
 研究開発と中小企業の育成についてお尋ねがありました。
 議員御指摘のとおり、遺伝子工学等のライフサイエンスや情報通信技術は、米国の例を見るまでもなく、今後の経済、そして国家の死命を制する重要分野であります。我が国としては、これらの分野において大胆な技術開発に取り組むこととし、いわゆるミレニアム・プロジェクトを推進するとともに、研究を進めるに当たっての環境整備や産業技術力強化に力を注ぐ決意であります。
 また、産業と雇用を生み出す主役は中小企業であり、なかんずくベンチャー企業であります。日本経済の牽引力となる中小企業、ベンチャー企業の育成は、我が国の繁栄へのかけ橋であります。さきの国会で、このような思いから三十六年ぶりに中小企業基本法を改正し、また関係法律の成立や特別保証制度の拡充を行いました。今後とも、中小企業の研究開発から事業化までの一貫した支援や、産学官連携支援を含め、意欲ある中小・ベンチャー企業への支援に万全を期してまいります。
 議員は、雇用、社会保障、金融に必要なのは国民すべてが安心するようなセーフティーネットを十分に張りめぐらせることであると主張されました。
 第一、まず、雇用問題についてのお尋ねでしたが、政府としては、厳しい状況にある雇用情勢の改善を図るため、緊急雇用対策及び経済新生対策の着実な実施に全力で取り組んでいるところであります。
 また、我が国企業は、これまでリストラ計画が雇用調整を伴う場合でありましても、自然減や配置転換あるいは出向等を行うことにより雇用の安定を図ってまいりました。今後とも、企業がこうした社会的責務を果たしていくことが極めて重要であると考えております。
 政府としては、労使に対して雇用の安定に向けての最大限の努力を求めてきたところであり、日経連と連合が共同で雇用安定宣言を出すなど、労使間でも取り組みを進めていただいております。
 私としては、かねてから我が国の構造改革を進めていく中で、雇用問題の対応についてはいわゆるアメリカ型でも欧州型でもない第三の道が考えられないのか、政府と労使がともに手を携え知恵を出し合い、二十一世紀に向けて国民の一人一人が安心して生活できる社会を築いてまいりたいと考えております。
 次に、セーフティーネットの社会保障制度についてのお尋ねがありました。
 先般、施政方針演説で申し上げましたように、今後少子高齢化が急速に進行する中で、国民の間には社会保障制度の将来に不安を感じる声も出ております。医療、年金、介護など、制度ごとに縦割りに検討するのではなく、実際に費用を負担しサービスを受ける国民の視点から総合的な検討が求められております。
 私は、いわゆる団塊の世代の人々がやがて高齢世代の仲間入りをすることを考えますと、最後のこれが検討機会との思いで、先般、社会保障構造の在り方について考える有識者会議を設置し、横断的な観点からの検討をお願いし、将来にわたり安定的で効率的な社会保障制度の構築に全力を挙げてまいります。
 第三に、金融につきましては、政府としては、今国会に金融機関の破綻処理等にかかわる恒久的な制度を盛り込んだ法案を提出することにより、破綻処理を迅速化、多様化するなど新しいセーフティーネットの整備をすることといたしております。
 また、ペイオフの実施延期の間における措置については、金融システムを一層強固なものにするため、ペイオフ解禁を一年延長いたしましたが、与えられた猶予期間中に揺るぎない金融システムを構築するため、中小企業向け金融を主たる業務とする金融機関の経営の改善等を図るとともに、我が国の金融システムを二十一世紀に向け安定性、競争力、活力を持ったものとするよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
 議員から、食料自給率の低下と遺伝子組みかえ食品の登場による食生活への不安の問題を挙げ、農政の取り組みについてのお尋ねがありました。
 世界の総人口が爆発的に増加し、食料の確保が地球的規模の課題となっている中で、御指摘のように我が国の食料自給率が主要先進国の中で最低の水準となっております。このため、食料・農業・農村基本法に基づき、食料自給率の向上に向けた生産、消費両面にわたる取り組みを通じ国内農業生産の増大を図ることを基本とし、食料安定供給の確保を図ってまいります。
 また、遺伝子構造の解明や遺伝子組みかえ技術の実用化に当たりましては、倫理・道徳面にも配慮しつつ、この技術の持つ大きな可能性について正当に評価がなされること、最近の科学的知見に基づき環境や健康等に与える影響についての十分な評価が行われる必要性があること、消費者の関心に対し的確にこたえる必要があること、これが基本であると考えております。
 次に、我が国のあるべき姿について、富国有徳の意味するところ、また施政方針でも述べた協治の考え方についてのお尋ねがありました。
 私は、かねてから他人に優しく、美しいものを美しいとごく自然に感ずることのできる社会、また隣人が優しく触れ合うことのできる社会、そして何よりも住みやすい地域社会を建設することが必要であるとの考えを持っておりました。また、国際的にも徳、すなわち高い志を持った国家でなければ豊かな国であり続けることは不可能であり、何よりも世界から信頼されなくなるわけであります。
 こうした考え方に立ちまして、二十一世紀のあるべき姿として、経済的富に加え物と心のバランスがとれ品格や徳のある国家、すなわち富国有徳の国家を目指したいと述べてまいりました。なお、こうした考えは、幕末の思想家である横井小楠が目指すべき国是として特に心徳の重要性を唱えていたことにも通ずるものであります。
 また、私は施政方針におきまして協治につきまして述べました。ここで私が申し上げたいのは、個人が自分の利益だけを追求し、公に、すなわちパブリックに無関心であるのではなく、むしろ個人が責任を持って公に参画し、ともに公を築いていく社会をつくることが必要であると申し述べたかったわけであります。そのことが国家や社会を品格あるものとすると考えております。四十年前、米国大統領ケネディが、国が諸君のために何をなし得るかを問う前に諸君が諸君の国のために何をなし得るかを問いたまえと述べたこととも軌を一にすると考えております。もとより、健全なる国家が存在することは当然の前提と考えております。
 PKF本体業務の凍結解除のための法的措置について御質問がありました。
 我が国が国際的安全保障の確立に貢献することは平和への重要な課題であることは申すまでもありません。そのため、目下三党派間で行われている凍結解除に向けた真摯な御議論がさらに積極的に進むことを強くお願い申し上げますとともに、その上で、私としても、我が国が国際社会に対して応分の貢献を行うべきことは当然であるとの認識のもと、しっかりとした対応を行ってまいりたいと考えております。
 また、東ティモールの事態に際しての我が国の貢献についてであります。
 東ティモールにつきましては、国連東ティモールミッション及び国連東ティモール暫定行政機構に対する人的協力を行ってきておるところであり、東ティモール避難民救援のための国際平和協力業務を実施しております。また、多国籍軍に対しASEAN諸国を初めとする途上国からの参加に資するための一億ドルを支援し、さらに今後三年間で復興開発経費として一億ドルを目途に拠出する等の支援を行ってきておりますが、今後ともさまざまな面で積極的な貢献を行う考えであります。
 議員より、有事法制は万一の事態に国民の生命、財産を守るいわば備えである旨の御指摘がありました。
 私としても、有事法制は、我が国への武力攻撃などに際し、自衛隊がシビリアンコントロールのもとで適切に対処し国民の生命、財産を守るために必要であり、平時においても備えておくべきものであると深く認識いたしております。
 震災対策に関する御質問がありました。
 六千四百人余にも上るとうとい犠牲者の上で得られたあの阪神・淡路大震災の貴重な教訓は、議員の御指摘のとおり、何としても生かさなければなりません。
 このため、政府としては、今秋、東京都において行われる地震防災訓練に当たりましては、陸海空の自衛隊を積極的に参加させ、文字どおり実践的な訓練を実施すべく、目下鋭意検討を進めているところであります。また、全国各地におきましても訓練が実施されているところでありますが、御指摘のとおり、東京都の訓練をモデルにし、自衛隊等との連携のもとでより実践的訓練になりますよう、政府としても支援してまいりたいと考えております。
 さらに、議員同様、大規模な災害に迅速かつ的確に対応する上で、デジタル地図を活用した防災システムの整備が重要であると認識しており、現在、その作成について政府を挙げて取り組んでいるところであります。
 原子力発電所等の警備についてでありますが、原子力施設等の重要施設につきまして、ふだんからテロ、ゲリラなどの侵入に備えていかなければならず、その際、各施設の自主的な警備にのみゆだねるべきでないことは議員御指摘のとおりであり、警察におきましても、各施設と緊密な連絡体制を確保するとともに、情勢に応じ計画を強化し、また、突発的事態に備え体制の整備や必要な訓練を実施しておるところであります。
 昨年の臨界事故を踏まえ、原子力の信頼回復についてであります。
 まず、加工施設を初め原子力施設について、事故後直ちに総点検を行い、安全性の確保をいたしております。また、私自身、原子力発電所を視察し、安全への取り組みをこの目で確認いたしておるところであります。
 さきの臨時国会で原子炉等規制法の改正及び原子力災害対策特別措置法の制定について可決、成立させていただいたところであり、政府としては、両法に基づき、安全確保及び防災対策の強化に万全を期してまいります。またあわせて、原子力安全委員会の事務局の独立性の強化や機能の強化等により安全規制を抜本的に強化してまいります。
 原子力は、安定的なエネルギー供給、環境保全への取り組みの観点から不可欠なエネルギー源であり、今回の事故で損なわれた原子力に対する国民の信頼を回復するため、全力で取り組んでまいります。
 国防を国政の中で正当に位置づけるべきであるとの観点から、幾つかの御指摘がございました。
 まず、防衛庁の省への昇格につきましては、行革会議の最終報告におきまして政治の場で議論をすべき課題とされておりますが、私としては、主要な諸外国の中で国防を担当する組織がエージェンシーという形をとっている国はないことを十分承知いたしておるところであります。したがって、この問題につきましては、このような点も踏まえ、国民の十分な理解が得られる形で議論が尽くされることが重要であると考えております。
 次に、防衛演説につきましては、防衛の重要性を踏まえれば、傾聴すべき貴重な御見解であると考える次第であります。
 さらに、防衛計画の策定につきまして、従来より我が国は節度ある防衛力を自主的に整備してきたところであり、みずからの手で国の安全を守るという気概を持って、国として適切な防衛体制をとることは国家存立の基本であると認識をいたしております。
 憲法調査会についてのお尋ねがありました。
 明治維新後、日本の国づくりのもととなった憲法をつくり上げた先達の血のにじむような彫心鏤骨の足跡に思いをはせられ、このたび議員自身も参議院の憲法調査会長として大きな責任を担われ決意を新たにされていることに対し心より敬意を表したいと思っております。
 私の施政方針演説で、いささか、期待するという文言が使われ、人ごとのようにお聞きになられたということでありますが、私は決してそういうことではございません。かつて内閣におきまして憲法調査会が設立され、長い間検討されましたが、結果的には両論併記の形となっておって、そのままになっておるわけであります。
 そういう意味で、内閣としても従来努力をいたしてまいりましたが、今や国権の最高の機関たる国会にこの調査会が設けられて、これから大いに議論をされるということでありますので、心を込めて大きな期待を持っておるところを申し上げたことを御理解いただきたいと思う次第であります。
 なお、国民投票の方法など憲法の改正にかかわる手続の法制化につきましては、今後、憲法に関する議論の中で検討されるものではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、今国会から憲政史上初めて衆参両議院に憲法調査会が設置されたことは極めて意義深く、将来の我が国の基本的あり方を見据えて幅広い議論が行われることが大切であることは申し上げたとおりであります。
 最後に、村上議員への答弁を終えるに当たりまして、力強いお励ましとさまざまな政策提言に感謝を申し上げますとともに、議員を初めとする参議院の皆様の御支援と御期待におこたえすべく、この身を燃やして、その覚悟で国政に全身全霊で取り組んでまいる決意であることを申し上げさせていただく次第であります。御鞭撻をよろしくお願いいたします。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(宮澤喜一君) 我が国の経済は確かに最悪の事態を脱したと思いますが、いかにも民需の力が弱うございます。殊に国民消費はなお非常に低迷をいたしておりまして、このままでは景気脱出が困難と考えられましたので、昨年に続きまして、再び財政が全力を振るってその下支えをしなければならないと判断いたしました。先般の補正予算に加えまして、このたびの十二年度予算もそのような方針のもとに編成をいたしました。
 したがいまして、総理大臣が施政方針で言われましたように、ただいまは景気脱出が先であって、いわゆる二兎を追って一兎をも得ないという結果になってはならない、こういう御判断に基づいて予算編成をいたしました。
 こうした認識のもとに編成をいたしましたので、例えば十二年度予算におきましては、非常に景気刺激的でありました昨年と同額の公共投資を、公共事業を計上いたしております。また、金融システムの安定化あるいは預金の保護という問題を政府は約束いたしておりますので、預金保険機構に交付いたしました国債が現金化されるという事態になることを考えまして、償還財源として四兆五千億円国民の税金をいただきまして国債整理基金に投入をいたしました。このほかにNTT株の売却代金一兆五千億円がございますので、都合六兆円を用意したことになります。この点は何としても今回をもって景気脱出をいたしたいという私どもの念願に立つものでございます。
 しかし、その半面、財政演説で申し上げましたように、財政が危機的状況にありますことは御指摘のとおりであります。そういうことで、財政構造改革は避けて通れない、できるだけ早く着手しなければならない課題ではありますが、そのためには、我が国の経済が民需中心の成長軌道に乗ったということを確認いたす必要がございます。
 この点は、御承知のとおり、経済回復の軌道が明確でございませんと中期的な経済の展望、フレームワークをかくことができません。その結果として、税収の推定が困難でございますし、また民需が興りました場合に国債の消化がどのような条件で行われるかという見当もつきにくうございますし、国際収支の問題もございますし、それに、あえて申しますならば、先ほどもお話のございましたいわゆる社会保障施策、年金にしろ医療にしろ介護にしろ、それらについて将来どのような給付とどのような国民負担が国民のコンセンサスによって支えられるかという、その御承知の問題についていまだ結論が出ておりませんというようなこともございまして、これらの様子がはっきりし次第、一刻も早く財政再建に取りかからなければならないと考えておるところでございます。
 一方、ただいま御審議中の予算をもとに近い将来を展望いたしますと、歳出面におきましては不況打開のためのいろいろな措置を計上しておりますので、それは例えば先ほど申し上げました四兆五千億円でありますとか、あるいはいろいろの不況対策というものは自然にこれは要らないことになりますので財政の負担からは落ちていくことになりますけれども、しかし他面で、どうも人口動態の変化はこれは避けられないところでございますから、社会保障関係の経費はやはり将来に向かって漸増していくと考えておかなければならないであろうというようなこと。また、景気が回復いたしますならばただいまのような低金利ということは到底望めない。今、十年物の国債は一・七%程度で出しておるわけでございますから、これはまことに正常な事態でないので、やがて国債発行も借りかえもかなり高い金利を覚悟しておかなければならないといったような問題がどうしても避けて通れないかと思います。
 歳入面につきましては、景気が回復いたしますればもとより租税収入がふえることは、これは間違いないし、そうでなければなりませんが、従来の経験から申しますと、景気回復に伴う租税収入の増加は大体名目成長率の一・一というふうに考えられておりますので、仮に二%の名目成長がございました場合の租税収入増収分は、今ちょうど全租税収入が五十兆にちょっと足りないぐらいでございますから、その二・二%は一兆余りでございまして、決して大きな租税収入が突然期待できるというような状況でもない、歳入面ではそういう見通しがございます。
 これを踏まえまして、これからの財政赤字を解消するということはなかなか簡単な問題ではないということはよく御承知いただいておるところであると思います。
 そこで、これからの我が国のあり方を展望いたしますと、今、中央の財政だけを申し上げましたけれども、地方財政も御承知のように非常に惨たんたる状況でございまして、今、中央、地方助け合ってともかく地方財政も運営されておりますけれども、これももう長く続けることはできない。恐らく地方財政、中央財政あわせまして、殊に中央、地方の行財政の再編成ということはどうしても財政改革と切り離せない問題であるように考えております。
 このようなことを思いますと、これから我々が二十一世紀に入りまして、財政改革というお尋ねにお答えはしておりますものの、実は、これは日本の経済社会のいろんな問題の全面的な再構築につながるのではないだろうかという思いがいたしております。
 このような財政の中で、そういう大きな仕事をやるということは御承知のように容易なことではございませんけれども、しかし、我が国ほどの力のある国がこんなことで私はへこたれるはずはないと思っておりまして、したがいまして、これは二十一世紀からのチャレンジと考えまして、最大限の努力を払ってこれに対応してまいりたいと思いますが、どうぞよろしく御支援のほどをお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣青木幹雄君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(青木幹雄君) 村上議員にお答えをいたします。
 私に対する御質問は、沖縄サミット成功のための危機管理上の対応は万全なのかというお尋ねであります。
 総理が施政方針演説において申し上げましたとおり、我が国が国際社会で果たすことを求められております大きな役割は、九州・沖縄サミットの成功の上に積み上げられると信じております。その観点から、このサミットはぜひとも成功させなければなりません。
 議員の御指摘のとおり、この沖縄サミットを成功させるためには危機管理対策も万全を期すことが不可欠であると考えております。現在、あらゆる場合を想定し総合的に検討しているところであり、最善を尽くす考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根弘文君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(中曽根弘文君) 私に対しましては、教育改革についてのお尋ねでございました。
 我が国の明るい未来を切り開き、同時に世界に貢献していくためには、あらゆる社会システムの基盤となっております教育は大変重要でございます。
 このため、次代を担う子供たちが豊かな創造性を持って、たくましく心豊かに成長し、そして日本人としての自覚を持つとともに、国際感覚を持った日本人として自立できるよう教育改革を進めていくことが重要であると考えております。
 特に、教員の資質向上に努め、地域や保護者から信頼され、子供たちをきちんと指導できる立派な、また生徒たちからも信頼されるような教員を養成することが重要であると考えております。
 また、子供が身近な大人を見ながら成長していくことを考えるとき、我々大人一人一人が子供の手本になるような行動や態度をとることが重要であるということは私も同感でございます。
 さらに、国際化が進む中で、日本人としての自覚を持って国際的に活躍していくためには、漢字や国語を正しく学ぶことはもとより、神話や伝承などを含めて我が国の文化、伝統、歴史を理解し、そして大切にしていくことが重要でございます。
 教育はまさに国家百年の計の礎を築くと言いますけれども、教育改革に全力で取り組んでいく所存でございます。(拍手)
#9
○議長(斎藤十朗君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十四分散会
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ソース: 国立国会図書館
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