くにさくロゴ
2000/04/14 第147回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第12号
姉妹サイト
 
2000/04/14 第147回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第12号

#1
第147回国会 法務委員会 第12号
平成十二年四月十四日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 武部  勤君
   理事 笹川  堯君 理事 杉浦 正健君
   理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君
   理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君
   理事 倉田 栄喜君 理事 木島日出夫君
      太田 誠一君    奥野 誠亮君
      熊谷 市雄君    左藤  恵君
      佐藤  勉君    菅  義偉君
      園田 修光君    萩野 浩基君
      藤井 孝男君    山本 有二君
      渡辺 喜美君    枝野 幸男君
      坂上 富男君    漆原 良夫君
      安倍 基雄君    青木 宏之君
      西村 眞悟君    保坂 展人君
    …………………………………
   議員           北村 哲男君
   議員           坂上 富男君
   法務大臣         臼井日出男君
   法務政務次官       山本 有二君
   最高裁判所事務総局民事局
   長
   兼最高裁判所事務総局行政
   局長           千葉 勝美君
   最高裁判所事務総局刑事局
   長            白木  勇君
   政府参考人
   (警察庁長官)      田中 節夫君
   政府参考人
   (警察庁長官官房長)   石川 重明君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 岡田  薫君
   政府参考人
   (警察庁長官官房国際部長
   )            兼元 俊徳君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    細川  清君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省保護局長)    馬場 義宣君
   政府参考人
   (外務省欧亜局長)    東郷 和彦君
   法務委員会専門員     井上 隆久君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十一日
 委員福岡宗也君が死去された。
同月十四日
 辞任         補欠選任
  加藤 紘一君     佐藤  勉君
  金田 英行君     萩野 浩基君
  保岡 興治君     園田 修光君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     加藤 紘一君
  園田 修光君     保岡 興治君
  萩野 浩基君     金田 英行君
    ―――――――――――――
四月十三日
 犯罪被害者基本法案(北村哲男君外三名提出、衆法第一九号)
 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)
 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案(内閣提出第七三号)は本委員会に付託された。
四月十一日
 子供の視点からの少年法論議に関する請願(第九八八号)は、「福岡宗也君紹介」を「伊藤英成君紹介」に訂正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)
 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案(内閣提出第七三号)
 犯罪被害者基本法案(北村哲男君外三名提出、衆法第一九号)

    午前九時三十一分開議
     ――――◇―――――
#2
○武部委員長 これより会議を開きます。
 この際、謹んで御報告申し上げます。
 本委員会の委員として御活躍されておりました福岡宗也君が、去る十一日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに、委員各位とともに故福岡宗也君の御冥福を祈り、謹んで黙祷をささげたいと存じます。
 御起立をお願いいたします。――黙祷。
    〔総員起立、黙祷〕
#3
○武部委員長 黙祷を終わります。御着席願います。
     ――――◇―――――
#4
○武部委員長 内閣提出、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び北村哲男君外三名提出、犯罪被害者基本法案の三案を議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。臼井法務大臣。
    ―――――――――――――
 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案
 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#5
○臼井国務大臣 引き続き法務大臣を仰せつかりました。今後ともよろしくお願いいたします。
 犯罪被害者等の保護を図るための二法案について、一括してその趣旨を御説明いたします。
 近時、我が国では、犯罪による被害者の問題に対する社会的関心が極めて大きな高まりを見せており、被害者やその遺族に対する配慮とその保護のための諸方策を講じることが喫緊の課題となっております。
 刑事手続の分野における被害者等に対する配慮及び保護の問題としては、強姦罪等の被害者が公開の法廷で、被告人等の面前で証人尋問を受けることにより精神的苦痛を受け、いわゆる二次的被害に遭うことがあること、親告罪である強姦罪等については、当該犯罪によりこうむった精神的ショックのため、短期間では告訴の意思決定が困難な場合があること、被害者等が公判廷で被告事件について意見を述べたいと希望することがあること等が指摘されているところであり、刑事手続において、被害者の心情及び名誉に適切に配慮し、かつ、これを尊重する必要があります。
 また、被害者等は、被害に係る刑事事件の審理の状況及び内容について深い関心を有するとともに、これらの者の受けた身体的、財産的被害その他の被害の回復には困難を伴う場合があることにかんがみ、刑事手続に付随するものとして、被害者等の心情を尊重し、かつ、その被害の回復に資するための措置を定め、もってその保護を図ることも必要であります。
 そこで、この二法案は、このような状況を踏まえて、犯罪被害者等の保護を図るための所要の法整備を行おうとするものであります。
 まず、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案の要点を申し上げます。
 第一は、刑事訴訟法の改正であり、次の点を主な内容としております。
 その一は、被害者等が証人として尋問される際の負担を軽減するための手続として、証人への付き添い及び証人と被告人または傍聴人との間の遮へいの制度を導入するとともに、証人を別室に在室させ、テレビモニターを通じて証人尋問を行うビデオリンク方式による証人尋問を導入し、その証人尋問の状況を記録した記録媒体がその一部とされた調書に証拠能力を与えることであります。
 その二は、親告罪である強姦罪等の告訴期間の制限を撤廃することであります。
 その三は、公判手続において、被害者等による意見の陳述を認めることであります。
 第二は、検察審査会法を改正して、審査申し立て権者の範囲を被害者の遺族に拡大すること及び審査申立人による検察審査会への意見書または資料の提出を認めることであります。
 次に、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案の要点を申し上げます。
 第一は、裁判長は、被害者等から申し出があるときは、申し出をした者が刑事事件の公判手続を傍聴できるよう配慮しなければならないとするものであります。
 第二は、被害者等から、損害賠償の請求など正当な理由に基づき刑事事件の訴訟記録の閲覧または謄写の申し出があり、相当と認めるときは、刑事事件の係属中であっても、裁判所は、申し出をした者にその閲覧または謄写をさせることができるとするものであります。
 第三は、被告人と被害者等は、両者の間における被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には、刑事事件の係属する裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申し立てをすることができ、その合意が公判調書に記載されたときは、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有するものとし、被害者等は、被告人から債務の履行がない場合には、別に民事訴訟を提起することなく、当該公判調書により強制執行の手続をとることを可能とするものであります。
 以上が、これらの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#6
○武部委員長 次に、北村哲男君。
    ―――――――――――――
 犯罪被害者基本法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#7
○北村(哲)議員 民主党の提出いたしました犯罪被害者基本法案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を説明させていただきます。
 我が国では、長い間、犯罪被害者は精神的にも経済的にも苦しめられてまいりました。近年、特にサリン事件以来、犯罪被害者の置かれている状況が広く認識されるようになり、また、被害者を支援する組織が各地に設立されるなど、ようやく犯罪被害者の支援について一定の前進は認められるものの、被害者の悲惨とも言える現状は基本的には変わっておりません。
 去る四月七日の本委員会における参考人の陳述においても、犯罪被害者の権利を明記した基本法の策定と、それに基づいた総合的施策が必要であるとの発言が繰り返し述べられました。基本法の策定は、被害者団体、被害者支援団体あるいはこの問題に精通する学者、弁護士らに共通の課題であります。私たちは、それらの意見を踏まえまして、犯罪被害者に対する総合的な支援対策に向かう第一歩として、ここに犯罪被害者基本法案を提出したものであります。
 次に、この法案の要点を御説明いたします。
 第一に、この法案は、国及び地方公共団体に犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する責務があることを明らかにし、犯罪被害者等の支援対策を総合的に推進し、もって犯罪被害者等の福祉の増進に寄与することを目的としております。
 第二に、基本理念として、一、すべて犯罪被害者は個人の尊厳が重んぜられ、犯罪被害の状況等に応じた適切な処遇を受ける権利を有する、二、何人も、犯罪被害者の名誉及び生活の平穏を害してはならないとの二点を掲げております。
 第三に、国は、総理府に設置される犯罪被害者等支援対策審議会の意見を聞いて、支援の基本計画を定めなければならないとしております。
 第四は、国と地方公共団体の基本的施策についてであります。国は、相談、指導等、安全及び生活の平穏の確保、刑事手続に関する適切な取り扱い、関係者に対する訓練及び啓発、教育及び啓発、調査研究の推進、民間の団体に対する支援、施設等の整備を行うものとし、地方公共団体は、国の施策に準じた施策及び当該地域の状況に応じた施策を実施するものとしております。
 そして、その他所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上、この法律案の趣旨について御説明をいたしました。
 犯罪被害者の惨状を御理解いただき、慎重に御審議の上、党派を超えて御賛同賜りますようよろしくお願いいたします。
#8
○武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#9
○武部委員長 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房長石川重明君、警察庁長官官房国際部長兼元俊徳君、警察庁長官官房審議官岡田薫君、法務省民事局長細川清君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、法務省保護局長馬場義宣君、外務省欧亜局長東郷和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
#11
○武部委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所千葉民事局長、白木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
#13
○武部委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田栄喜君。
#14
○倉田委員 昨日、本会議で、犯罪被害者等の被害者の権利、被害回復の立場ということで、大臣にお尋ねをさせていただきました。その質問の中で、あえて、刑罰権が国家に独占されているのはどうしてなのか、こういうお尋ねをさせていただきました。
 刑罰権が国家にあるのは私は当然だと思いますし、国家になくてほかにどこにあるのか、こう思うわけであります。しかし、刑罰権のあり方、刑罰権を国家が独占しているあり方、ありようについては、今司法制度改革論議のさなかでありますけれども、もう一度原点、基本に立ち返って検討してみなければならない、こういう思いから、その質問をさせていただいたわけであります。
 それは、さらに具体的に言えば、いわゆる犯罪被害者等の心情、早くその者を刑務所から出してほしい、あるいは無罪にしてほしい、自分で殺すから、それは感情の問題としてそういう言葉になっているのだと思います。しかし、その被害者の叫びというものに果たして我が国の司法システムというのが本当にこたえているのかどうか。その意味で、我が国の刑事裁判システムにおいて、被害者の立場というのは、あるいは権利というのは、余りにもなおざりにされてきたな、こういう思いを禁じ得ないわけであります。
 そこで、あえて少し難しい言葉で、リストラティブジャスティスという聞きなれない言葉を申し上げました。いわゆる回復的正義あるいは刑事和解モデル。つまり、我が国の刑罰権、どうして刑罰権が国家にあるのかということは、犯罪者を処罰するということが基本にある、これも当然のこととして疑うべくもないようにも思えるわけであります。しかし、このリストラティブジャスティスという考え方は、先ほど申し上げましたように、回復的正義、犯罪者を処罰するという考え方から、犯罪被害者の被害回復を図る、こういう考え方に、いわば発想の転換に立っているわけであります。
 この考え方自体が刑事裁判そのもの全体になじむのかどうかということは、そう簡単なものではないな、こう思います。しかし、やはり今までの我が国の刑事システム、刑事裁判の中で、被害回復を図るということが、刑罰権が国家にありながら、一方でそのことに少し目を覆い過ぎてきたというのか、無視をしてきたというのか、そういう思いがしてならないわけであります。
 昨日の本会議では、私は要望だけを申し上げておきまして、法務大臣もこの問題についてどうお考えになるのか御答弁はなかったわけでありますけれども、きょう、この委員会で機会を与えていただきましたので、あえてこの考え方について法務大臣の御所見をお願いしたいと思います。
#15
○臼井国務大臣 今委員御指摘をいただきましたこのリストラティブジャスティスという考え方、必ずしもどのような内容を含むものか明らかではない点というものもあるわけでございますが、刑事手続の過程におきましても被害者の立場は尊重される必要がございまして、その意味では、御指摘はごもっともな点があると考えます。
 ただ、我が国の刑事司法におきましては、従来から、検察官の起訴猶予処分における被害者への慰謝の措置の有無の重視、あるいは弁護人らによる示談への努力など、被害感情の融和を図る措置を通じまして、実務上被害者の被害回復は重視をされてきたものと承知をいたしております。
 さらに、このような被害回復の観点から、どのような制度的手当てが必要であるかにつきましては、今後とも検討いたしてまいりたいと考えております。
#16
○倉田委員 私どもの国の、日本のそういう刑事裁判、その刑罰のあり方も含めて、それが果たして厳罰的なのか、あるいは非常に緩やかで寛刑的なのか、甘いのかどうかということも含めて、私どもは、もう一度議論をしていかなければならないな、いわゆる科刑のあり方ということも考えなければいけない、こう思っているわけでありますが、あえてリストラティブジャスティスという考え方を御紹介したのは、回復的正義という被害者の立場ということをもっと考えなければいけないなという思いがあったことが一つ。
 それからもう一つは、今後、この法務委員会で議論になると思いますけれども、少年法改正の問題が出てくると思います。
 私も本会議で、少年犯罪の被害者の立場、あるいは精神障害者による被害者の立場ということを特に申し上げさせていただいたわけでありますけれども、少年法の問題について言えば、私は、私の大学時代の恩師がこの少年法をつくり上げたということもあって、この少年法の理念、目的というものを非常に高く評価をする立場であります。
 しかし、今の社会のこれだけの変化の中で、果たして今の少年審判のあり方で本当に十分なのかどうかということは、今回の少年法改正の中で大いに議論をしなければいけないなと今改めて思っております。私は、今の少年法、あるいは少年審判のあり方が、大方は、もう九割以上は本当に当初の理念、目的に沿ってきちっと機能しているのだろう、こう思っているわけでありますけれども、その限界的な事例の中で、果たして今の少年審判のあり方がたえられているのかな、こういう思いは確かに持っております。そういうことで、政府当局も、検察官関与の問題等々、今回の法改正を提出されていると思うわけであります。
 ただ、この場合でも、少年法は、審判のあり方が和やかを旨とし、少年の保護更生を目的としということであるわけであります。一方で、保護更生を図るためには事実関係を大前提としてきちっとしなければ、なかなか少年の本来の保護更生は図れないよということで、事実関係をいかに明らかにできるかということも今回の少年法改正の大きな目的なのだと思うわけでありますけれども、なかなか難しいなと思いながら、今考え込んでいるわけであります。
 このリストラティブジャスティスという考え方は、やはり加害者と被害者が向き合う、そして加害少年にも、その犯した事件の意味が本当にどういうことなのかということをきちっとわかってもらう。わかってもらわなければ、本当の意味での更生というものもあり得ないのではないのか。ただ、そのわからせ方の問題であります。
 名古屋で起こった、五千五百万だという話もありますけれども、あの恐喝事件、一部には、もうちゃんと処分がありながらもさらに恐喝を続けていたみたいな話もあるわけであって、限界事例の中においては、いや、少年審判なんて軽いものよ、すぐ出られるよ、こういう部分も確かに認めざるを得ないわけであります。そうすると、この限界事例の中において、果たして今のままで機能しているのかという思いは本当に強く持ってしまいます。
 では、どうしたらいいのか。少年審判を刑事事件並みの、ああいう当事者主義に徹してしまうのかどうか。これもそうもいかないだろうと思います。名古屋のこの事件も、いわゆる恐喝をして、五千万の大金、一回に百万とか五百万とか、そういうのを手にした少年が、それをいわば使いまくる。家庭とか地域とか、その環境というのは一体どうなっているのだろう、こういう思いも本当に強く私は持ったわけです。学級崩壊だとか教育の崩壊だとか、そういう問題も盛んに今議論をされるわけでありますけれども、これは本当に深刻な問題だな、こう思います。被害に遭う少年あるいは加害を起こす少年、そしてそのことに対して、地域、家庭がどういうことになっているのだろうという思いを強く持ったわけであります。
 そうであるとすれば、このリストラティブジャスティスという考え方は、いわば加害少年と被害少年あるいは被害少年の家族、そしてそこの地域を代表された代表者、つまり犯罪が起こるということは社会環境によって起こる、地域によっても起こる、やはり地域にも社会にも環境にも責任がありますよということを踏まえて、その被害者、加害者、そして犯罪を発生させた地域、社会環境、これが一緒になって、加害少年に、本当に自分は大変なことをしたのだな、こういうことをもう二度とやってはいけないのだな、命を奪うことの重みというものがこんなに大変なことなのかということを理解させることができる。そういう意味では、実は今アメリカ等で、アメリカのまねばかりするというわけではありませんけれども、非常に成果を上げているという事例が見られます。犯罪少年の、あるいは虞犯少年等々の保護更生を図るというこの目的の中にこのリストラティブジャスティスという考え方は非常に寄与するところがあるのではないのかという思いを、この考え方を勉強してみて私は強く持ちました。
 少年犯罪の部分について、やはり地域も一緒になって、その犯罪が起こった環境も含めて考えなければいけないということは重要な問題提起であろうかと思います。法務省では、まずは少年犯罪の分野においてこの考え方をぜひ研究していただきたいな、検討していただきたいな、こういう思いを強く持ったわけでありますけれども、大臣、いかがでしょうか。
#17
○臼井国務大臣 今委員るる御指摘いただきましたように、少年犯罪の凶悪化、多発あるいは低年齢化、そうした問題はまさに社会的な大変大きな私どもの問題でございまして、国を挙げてこの問題について対処していかなければならない、こう考えておりまして、私ども既に提出させていただいております少年法の一部改正案につきましてもぜひとも熱心な御論議をいただきまして、成立ができるようにお願いをいたしたい、こういうふうに思っております。
 リストラティブジャスティスの考え方につきましては、先ほども申し上げましたように、どういった内容を含むかということが必ずしも明確ではないわけでございますが、少年審判の手続というものは、少年の健全育成を期しまして、非行のある少年に対して保護処分を行うことを目的とするものでございまして、家庭裁判所において、非行事実のほか、少年の家庭環境や資質などを含めた要保護性の判断を行った上で処分を決することといたしているものでございまして、被害者への配慮のあり方についても、このような少年審判の特質も踏まえつつ、慎重に検討する必要があるものと考えております。
#18
○倉田委員 研究、検討はぜひともやっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 さて、被害者の権利と被害回復の立場でありますけれども、一九八五年の十一月、国連総会において、犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言、こういう宣言が採択をされておりまして、この基本宣言では、重大な身体的、精神的被害を受けた被害者が加害者から十分な補償が得られない場合は、国が経済的補償を行うよう努力すべきことを宣言、提言しているわけであります。もう一九八五年のことであります。
 私がきのうの本会議で、いわば少年犯罪の被害者等あるいは精神障害者による事件の被害者等は、人権の保障や少年審判の理念と目的のために、一歩抑制的な立場、引いた立場に置かれざるを得ない、国のそういう一つの理念、目的のために、あえてその立場が抑制されているわけであるから、いわばその部分は我慢を強いられているわけだから、その我慢に見合うだけの、いわゆる国の支援制度あるいは補償制度ということを申し上げたのは、そういう意味も含んでいるわけであります。
 実際に、精神障害者による犯罪の被害者あるいは少年犯罪による被害者等は、民事の損害賠償請求の中では、加害側のいわゆる資力の関係で、なかなか実際には損害賠償が、十全に回復できないケースの場合が多いわけですね。被害給付金制度があるわけでありますけれども、御指摘申し上げたとおり、これもこの趣旨からいえば本当に十分ではない。
 そういう意味で、加害者側から補償が得られない場合については、今この宣言でも申し上げたとおり、やはり国が補償制度というのを、あるいはこれに支援する支援制度というのを考えていかなければならないのではないのか、一九八五年十一月、国連ではこういう基本原則宣言を採択しているのではないのか、我が国では一体これに対してどういう考え方で今日まで来たのだろう、こういう思いが今回のこの審議を通じてしてなりませんでした。大臣、この点についてはいかがでしょうか。
#19
○臼井国務大臣 ただいま委員御指摘をいただきました、一九八五年十一月の国連総会における犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言に関連をしてでございますが、我が国におきましては、被害者に対する経済的な支援といたしまして、先ほど委員御指摘をいただきました犯罪被害者等給付金支給法に基づきまして、人の生命または身体を害する犯罪行為により不慮の死を遂げた方々の御遺族または重障害を受けた方に対して、国が犯罪被害者等給付金を支給することといたしているわけでございます。
 さらに、国が損害を全額補償するといったような考え方等につきましては、犯罪による被害は、まず加害者である犯人がその被害の賠償に努めることが原則であって、民事上の不法行為による損害賠償義務を負うこととされているところでございまして、今後、そういった点につきましては慎重な検討を要するものと考えております。
#20
○倉田委員 被害者が加害者側から十分な補償が得られない場合に、国が補償的措置を行うよう努力すべきである、これが基本原則の宣言でございますので、私は、これはやはり理のあることだ、こう思うわけですね。そうでなければ、被害には遭ったわ、被害回復は行われないわということでは、余りにも被害者の立場が気の毒であります。
 民主党の方から、犯罪被害者基本法案が提出をされました。おまとめになったことに私は大変敬意を表したいと思いますし、評価もいたしております。本会議であのように申し上げましたけれども、まだまだ被害者の権利回復、被害者の権利ということについては議論をしていかなければならないな、こう思うわけであります。
 そこで、民主党の提案者にも、いわば国の二次的補償責任、あるいは被害者と被害者家族に対する国の支援制度について、基本法にその理念は盛られているわけでありますけれども、さらに踏み込んで、具体的なお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
#21
○坂上議員 倉田委員の御質問にお答えさせていただきます。
 先生からは貴重な御提言をなされながらの質問をいただいております。ありがとうございます。
 昨日も本会議場でお答えさせていただきましたが、本法案の審議については、私たちは本会議で御答弁をさせてもらったような態度で臨んでおるわけでございます。
 そこで、国連被害者人権宣言でございますが、私たちは、この法案の作成の間も大いに勉強をさせてもらい、参考にさせてもらいました。犯罪被害者等が受けた被害の回復及び犯罪被害者等の社会復帰を支援する施策としては、もとより経済的な支援は重要でありまして、国の基本的施策として、給付金の支給について抜本的に検討する中で御指摘の国の補償についても追求をしたいと思っておるわけでございます。
 今、お話のあります犯罪被害者等給付金の制度についてでございますが、遺族給付金が最高千七十九万円、障害給付金が最高千二百七十三万円と承っておりますが、これは決して大きい金額ではありません。交通事故、災害と比べてみますると、極めて低いわけでございます。
 私は、きのうも申し上げましたが、新潟県で起きました女性長期監禁事件は、九年二カ月にわたる犯罪の継続があるのです。これなんかは、この給付制度はまさか犯罪行為が十年近くも継続するなどということを全く想定していなかったのだろうと思っております。最高でも二年、三年程度でしかなかったのじゃなかろうか、こう私は思っておりまして、まさに私たちが想像を絶するような長期にわたるところの犯罪の継続でございます。それだけに、一面、警察も批判をされるべきなんでございますが、また一面、被害者の回復のための国家的な援助というものは極めて大事になってくるのじゃなかろうかということを、私はこの問題を取り扱っただけに認識をいたしておるわけでございます。
 しかしまた、自然災害などの他の被害や犯罪行為以外の不法行為との均衡、または保険制度等の関連も考慮しながら、現状の見舞金的性格ではなくして、国家賠償的な側面も含めたより積極的な補償制度について検討することは、私は今後非常に重要な課題であると認識をいたしておるわけでございます。
 ぜひとも、この国連の被害者人権宣言を私たちの国内法の中でも名実ともに実現したいというのが私たちの願いでありますし、私たちの法案の精神でもあろうか、こんなふうに思っておりますので、どうぞよろしく御指導のほどをお願いいたしたいと思います。
 ありがとうございました。
#22
○倉田委員 もう時間が残り少なくなりましたけれども、今回の政府提出の二法案について、公判の傍聴手続と公判記録の閲覧、謄写、そして公判での意見陳述が盛り込まれることになりました。評価をいたしております。
 当初、公判の傍聴、そして公判記録の閲覧、謄写の部分について、政府御当局から私どもが御説明を受けたときには、被害者とそして死亡の場合において身近な身内ということになっておりました。これではちょっと狭過ぎるのではないのかということで、私どもは与党の皆様方にもお願いを申し上げまして、被害者が、死亡はしないけれども死亡に準ずるような場合が現実には起こり得る、心身ともに法廷に出られない場合があるということを申し上げて、政府の方でもその趣旨を酌んでいただいたのだと思うわけでありますけれども、「心身に重大な故障がある場合」ということを入れていただいたわけであります。
 当初の法案から比べれば、私どもは、この部分は修正をしていただいた、こういうふうな認識を持っているわけでありますけれども、「心身に重大な故障がある場合」を入れていただいたということは、どういう経過でありましょうか。
#23
○山本(有)政務次官 公判手続の優先傍聴、公判記録の閲覧及び謄写につきましては、被害者の心身に重大な故障が生じた場合におきましても、被害者が死亡した場合と同様に被害者本人は傍聴等の行為ができないところ、被害者の配偶者、直系の親族または兄弟姉妹は被害者の近親者として事件の審理の状況等に深い関心を有し、また被害者の損害賠償請求権の行使に助力する立場にあることが少なくないと存じます。
 こうしたことから、被害者が死亡した場合に準ずるものとして、御指摘の場合が含まれることを明示することとしたものでございます。そして、このことは原案に対して先生ほか各般の方から御指摘や御指導いただいたものであるというように考えておるところでございます。
#24
○倉田委員 議論をしてそういうふうにしていただいたということを感謝いたしております。
 同時に、これも本会議で申し上げましたけれども、このケースでも、配偶者の兄弟の場合、いわゆる傍系の親族の場合までは及んでいないわけですね。大臣は従来どおり配慮されるであろうということを御答弁いただきましたけれども、これはその制度の運用の中でさらに検討していただきたい、これをもう一度申し上げておきたいと思います。
 それから、もう一点。いわゆる意見陳述権でありますけれども、刑事訴訟法の一部改正、こちらの方は、つまり被害者等の定義が当初のままになっているわけですね。被害者保護の手続を図るための方はこの定義を直していただいたわけでありますけれども、刑事訴訟法の一部改正の方については定義がそのままで、いわゆる被害者が死亡した場合だけである。そうすると、今みたいに心身に重大な故障がある場合については、配慮をすることはあるんだろうと思うけれども、法律の規定の中には含まれていない。これは、傍聴あるいは記録の閲覧、謄写の場合と意見陳述の場合とでは異ならなければならないのか。私どもは、この場合も意見陳述を認めていいのではないのか、こう思うわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。最後にお伺いして、質問を終わります。
#25
○山本(有)政務次官 意見陳述ができる者の範囲は「被害者又はその法定代理人」とされておりまして、「心身に重大な故障がある場合」は含まれておりません。これに対しまして、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案におきましては、傍聴への配慮義務につきまして明定されている対象者や、公判記録の閲覧、謄写が認められる対象者には、被害者の心身に重大な故障がある場合における配偶者等も含まれております。
 これは、意見陳述が、その性質上、訴訟行為に準じた行為であり、その陳述の内容によっては判決内容に影響を及ぼし得るものであることから、被害者が生存している場合には被害者自身に意見を述べさせることを原則とすべきであると考えられるところからでございます。
 他方、傍聴等は訴訟行為に準じた行為ではなく、また被告人の刑事責任に影響を及ぼすようなものでもないものでございまして、被害者の心身に重大な故障がある場合に、その配偶者等にも配慮するのが適当であることから、対象者の範囲に差をつけたものでございます。
#26
○倉田委員 終わります。
#27
○武部委員長 日野市朗君。
#28
○日野委員 犯罪被害者の問題についていろいろ論じられてきたところでありますが、その問題をめぐって政府の側からも何点かの前向きの措置が法案として出されておりますし、また民主党の方から、基本法という考え方のもとに犯罪被害者基本法案というものが出されている。この委員会においてこのような問題が論議をされること、これは私も今非常に喜んでおります。歩みとしては決して速やかな対応ということではないのでありますが、遅々とした歩みであったにしても、前向きに一歩一歩出ていくということについては、私も評価をいたしたいと思います。
 しかし、今ここで考えなければならないことは、犯罪被害者の立場というものに対する配慮が国家の機構の中では比較的軽んぜられてきたといううらみはあると思うのであります。やはり国としては犯罪を禁圧するということが非常に重大な国家の機能でありますから、刑事的な措置の方が先行するということは、ある意味ではやむを得ないのかもしれない。しかし、現代という時代を見てみますと、犯罪も非常に複雑化してきておりますし、大型化しておりますし、その動機の点を見ても、一連のテロ行為などに見られるように、全く無差別、そして被害の及ぶ範囲も非常に幅広くなってきたというような事態を踏まえて、今までのように、単に国家の法秩序を維持するために刑事的な処分だけを考えているというわけにはいかなくなってきた、そういう事態を迎えているというふうに思います。
 そして、被害者の立場というのは実に気の毒なものでありまして、私も随分いろいろなケースを見ておりまして、実に悲惨な場面に幾つも遭遇をした。もちろん、犯罪の被害者になるということ、これはもうそれ自体が悲しむべきことでありますけれども、そのことによって、一家が本当にもう生活が立ち行かなくなってくる、一家の家族としての結びつき、それすらも切り離されてしまう、一家がばらばらになってしまう。それまで営んできた営業が、一家の支柱を失った、それから会社または商店の中心的な人物を失ったために、そういった経済的な単位まで崩壊をしてしまう、そういう事例を私は幅広く経験的に見ておりますので、この問題というのは非常に重要な問題であって、国家としてはこの問題を決してないがしろにしてはいけないのだというふうに思います。
 そこで、まず基本的な被害者の立場に対する考え方について伺ってまいりたいと思います。
 先ほどから国連の一九八五年の被害者人権宣言の話が出ております。こういう、犯罪被害者に対して国としてきちんとした救済措置をとるべきであるという考え方、私もこれは肯定をいたしたいというふうに思います。なぜならば、先ほども言いましたように、これは被害者には非がなくて、そして一方的な加害を受ける、そういうことによって被害者という立場に立たされるわけでありまして、そういう被害者に対して国は何をなすべきかということであります。先ほども私、言いましたように、非常に悲惨な立場に追いやられる、そういった被害者の立場というもの、これは国家としてどのように考えていくべきものなのか、これについて、まず法務大臣に、そして次に民主党の提案者に伺いたいというふうに思います。
#29
○臼井国務大臣 ただいま委員御指摘をいただきましたように、犯罪被害によりまして、その御関係の皆様、本人ももちろんでございますが、大変多くの強い被害をこうむっていらっしゃる、そういう実例も私ども、マスコミ等で見聞きいたしております。
 私どもは、犯罪被害者の人権保障につきましての認識につきましては、犯罪被害者というものは犯罪行為によってその人格を侵害された方でございます。これまでも、このような権利の侵害に対しましては、損害賠償請求や刑罰権の発動を求める権利などが定められておるわけでございまするけれども、犯罪によって受ける被害の重大さ、多様さを考慮した対策の充実がさらに必要だと考えておりまして、今後ともこうした犯罪被害者に対する保護を含めた方策というものは政府としてしっかりとやっていかなければならない、このように考えております。
#30
○北村(哲)議員 被害者の人権についてどう考えるかというお話だと思います。確かに、国連の被害者人権宣言等にもありますように、この問題はもうほっておくわけにはいかない問題だと思っております。我が国においても、長い間犯罪被害者が、日野委員御指摘のとおり、精神的にもまた経済的にも非常に苦しい立場に置かれてきておりました。しかし近年、サリン事件以来、被害者の置かれている状況が広く世間で関心を呼んで、その被害者支援については一定の前進が見られているところでありますけれども、しかし、これはまだまだ民間に任されておる。
 そして、先ほど法務大臣も言われていましたけれども、国家対加害者の関係は国家権力対加害者で、国選弁護人などの制度があるんですけれども、被害者対加害者の間は一般民事の問題となって、対等の立場で不法行為責任とか損害賠償責任を追及できるだけだと。そういう関係は、実は相手がお金があるようならば、ある程度経済的賠償を受けられるんですけれども、犯罪者というのはほとんど無理なんですね、不法行為責任を追及したのでは。結局、実質的には全然ゼロということで、まさに形式的な補償にしかすぎない、こういう状態を放置するわけにはいかないのが現状だと思います。
 そういう意味で、実質的に社会の隅に追いやられて、それこそ忘れられた人たちをどう救うかということが人権問題だと思います。
 私たちのこの犯罪被害者基本法案では、このような犯罪被害者の悲惨とも言える現状を踏まえて、基本理念で、犯罪被害者は個人の尊厳が重んぜられ、被害の状況に応じた適切な処遇を保障される権利を有するということをはっきりと規定をしております。
 また、三条、四条では、犯罪被害者等の権利を実現するために、国そして地方公共団体は、犯罪被害者らが受けた被害の回復、そしてそれらの人たちの社会復帰を支援する責務があることを明らかにしておるということであります。すなわち、国が責任を持つ、あるいは地方公共団体がそれらに対して責任を持つということをはっきりと明言しておるわけでございます。
 また、その基本理念で、もう一方、マスコミによって犯罪被害者がプライバシーを侵害されたり、あるいは近隣によって、いわばあの人はもうどうしようもないんだというふうな言い方をされたり、あの人が悪いから犯罪が起こったんだというふうなことをされる、いわゆる二次被害あるいは三次被害を受けているということにかんがみて、犯罪被害者等のプライバシーは何人によっても侵されてはいけないということを明らかにしておるわけでございます。
 そういう考えでおります。
#31
○日野委員 今の法務大臣の答弁、非常にすらっとうまく優等生的にまとまっているんですが、もう少し意地悪い質問をちょっとさせてくださいよ。
 私は、いろいろな家庭が崩壊する例、それから企業なんかが崩壊していく例、そういうのなんかも挙げました。私は、こういった被害者の立場に対する国のなすべきことというのは、つまりその損害をてん補していく、埋め合わせていくということだけでは足りないような気がするんですよ。もっと精神的な、このごろいやしという言葉がありますが、それをいやしていくとか、さらに損害が拡大しないような国の方からのサービスを行うとか、そういうことも必要になってくるんだろう、こう思うんですね。その点についていかがですか。
#32
○臼井国務大臣 いわば国家としてのそうした犯罪に対する対処ということを考えてまいりますと、まず私どもは、そうした犯罪が行われた場合には、その犯罪を犯した者に対しての刑罰を、私的制裁ということではなくて、国としてしっかりと一つのルールにのっとって対処していく、そして、そのことによりまして国の治安というものをしっかり治めていくという大きな意味の責任があるというふうに考えております。また、こうしたことによって、国全体としてこうした犯罪というものをいかに防止していくかということについて、大所高所から対応していくことがまず大切だと思っております。
 また一方、こうした犯罪の被害に遭われた方々に対する配慮というのは、まさに直接的な被害を持たれている方でございますので、その方の気持ちがいやされるような科料のあり方、そういうものがやはり一方では考えられる必要があるんじゃないだろうか、こう思っておりまして、こうした点についてもさらに勉強していく必要があると思います。
#33
○日野委員 司法の構造というものを見てみますと、犯罪に対しては刑事法令が準備されているわけであります。一方、ではそこから発生してくる損害、これについては民事法の、主として不法行為の規定でありますが、これによって損害賠償ということが定められている。これが大きな、基本的な司法の構造でございますね。
 しかし、この損害賠償は、加害者の資力ということが非常に大きな要素になっています。加害者の資力が十分でなければ、損害賠償によって被害者の損害というのはてん補されない、埋め合わせがつかない、こういうことになってしまう。そこに一つ大きな問題点があることはもう既に指摘をされているところでありますから、そこのところはそう多くを言いません。
 しかし、損害賠償という場合、その中に精神的な損害に対する賠償というものが含まれています。いわゆる慰謝料でございますね。この慰謝料をどのように見ていくかということは、被害者の被害感情を融和していく、または被害者が社会の一員としてきちんと復帰をしていく、または社会の一員としてきちんとした仕事をやっていく、そういう中で非常に重要な部分であると私は考えております。
 この慰謝料というものについて、実は私、最近の裁判所における慰謝料の取り扱いというものについて非常に危惧している点が一つあります。これは、とりもなおさず、犯罪の被害者を救済するという意味からいえば、この慰謝料というのは非常に大きなウエートを占めるものであろう、こういうふうに思うんでありますが、最近、最近といってももう二十年、三十年近くになりますか、特に交通事故問題をめぐりまして慰謝料の定型化ということが進められておりますね。私は、特に交通事故をめぐっての東京地裁、大阪地裁の裁判官の皆さんのやってきた定型化していこうという作業というのは、これは交通事故という事件の処理に当たっては非常に有益だったと思っています。決してその価値をおとしめるつもりはないんですが、しかし、そこで定型化されてきた慰謝料のパターンというものが一般犯罪にまで敷衍されて、そして慰謝料というものによって被害者の精神的な損害を十分にカバーしなくなってきているような傾向がありやしないかということを私は憂慮しております。
 慰謝料というのはまさに精神的な損害に対する賠償でありますから、これはもっと緩やかに解していいのだろう。そして、事件をしっかり見て、その人がこうむっている精神的な損害、この精神的な損害には社会に対するその人の位置関係とかいろいろなものを含み得るわけですから、もっとこれを柔軟に活用していくということは必要なことであろうというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。それは裁判官の一人一人の判断でございますということは私はわかりますよということを前提にしてお伺いをいたします。
#34
○千葉最高裁判所長官代理者 交通事故による損害賠償の算定につきましては、委員も御指摘ございましたとおり、損害の態様、内容をある程度類型化、定型化することができますので、裁判実務上は、慰謝料等を含めて、損害額につきましては一定の基準を設けて処理をするという例が多いようでございます。これは、委員からもそういうことについては積極的な評価をいただいておりますけれども、交通事故では、やはりこういう処理が多く行われているわけでございます。
 これが、犯罪による被害についての損害ということについて、この考え方と同じような考え方でいいかどうかという問題でございますけれども、これはあくまでも個別の事件についての裁判体の判断ということになろうかと思いますが、やはり犯罪というのは必ずしも類型的にとらえられない、その被害も必ずしも類型的にとらえられないという点の特徴はあろうかと思いますので、こういった犯罪の態様、それから肉体的、精神的な被害状況等々、総合的な事情を考慮して、裁判体が個々の事案ごとに適切に処理をしていくものというふうに考えております。
#35
○日野委員 説明するのに便利ということはあるのですね。例えば、この犯罪によってこの人は何日間入院して亡くなった、そうすると、東京地裁なんかで使われているグラフでは大体このくらいよねというような見通しを立てるとか、何日間入院している傷害だから、グラフを見て、このケースの場合はこの線を使ってというようなこと。これは便利ではある。
 しかし、それのみに依存をするということは大きな間違いを起こすことになりはしないか。特に、被害者の救済、被害者に対する救いの手を差し伸べるというような点から、それから被害者の損害をきちんとてん補していくという点からすると問題があると思いますので、問題点として指摘をしておきたいというふうに思います。
 それで、被害者の立場で困るのは、第一次的には民事責任でございますよ、民事責任の追及は裁判所で民事的な手続を踏んで行いましょうということ、これは結構なんですが、時間がかかる、手続が面倒だ、緊急の、間に合わない、そして、判決はもらってみたけれども執行も不可能だ、相手に資力がなくて取れないというようなことは、実はもう山くらいあるわけだ。むしろそっちの方が多いだろう。
 そういうことになりますと、まず差し当たって、緊急性ある出費、例えば医療費、これに対する対応というものはどういうふうにあるべきかということになりますね。いわゆる給付金の支給があるということになりますが、それだけでは到底足りないというような場合の方が多い。それから、それにかかる時間を短縮するなんという必要も出てくるでしょうね。こういう緊急性のある出費なんかをどのように処理していくべきかという問題は、やはり大切な問題としてあるんだと思います。どう考えておられますか。
#36
○臼井国務大臣 犯罪被害者保護の問題というものは大変多岐の分野にわたるということは、今までしばしばお答えをいたしているわけでございますが、御指摘をいただいたような医療費等の緊急な支出等による被害者の保護のあり方というのもそれらの一つであるということは理解いたしております。これらの被害者の保護の問題につきましては、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議において関係省庁の緊密な連携のもとで検討がなされたところでございまして、今後とも、関係省庁は連携をしつつ、さまざまな具体的問題について取り組んでいくものと承知をいたしております。
#37
○日野委員 まあ、役所がやるとそういうことになるんでしょうね。そこが問題なんだということを私としては指摘せざるを得ない。
 どうですかな。そういうときのファンドをきちんとしておいて、そのファンドからきちんと支給をしていくというような、迅速性に欠けることのないような手段というのはぜひとらないと、犯罪でやられた上に、さらに今度は往復びんたを食うように、そういった経済的な面で参ったになってしまうというようなことを、私は、早急にここのところは何とかしなくちゃならぬ問題だということを提言しておきたいと思います。
 恐らく、大臣もうなずいておられるし、北村先生もうなずいておられるので、思いは同じだろうと思いますね。これは皆さん同じ思いだと思うのですよ。ただ、省庁間のいろいろな、また裁判所なんかのいろいろな調整やなんかがあって、なかなか思うように進まぬということなんだろうと思うのですが、そこをちゃんとリーダーシップをとるのは、私は大臣のお仕事であろうと思いますので、そこは強く私の要望として申し上げておきたい。ぜひ大事なお仕事として御理解いただくように、こんなふうに思います。
 それで、こういう犯罪被害者に対する部分的な、大事でないとは言いませんよ、大事な部分的な手当てが今度の政府から提出されている二法案の中でなされています。これは、私、先ほど言ったように、遅々たる歩みではあっても評価すべきものは評価する、こういう立場でおりますし、一方では、民主党の方から基本法という形でお出しになっている。
 私は、民主党の議員だからそう言うわけではないですが、やはり今の時点できちんとした基本的な法律を出して、これからの政策の指針というものをここで確立しておくべきだ、こう思います。それを明らかに宣言をして、まず手始めにこうこうこういうことをやるべきだということを問題意識としてとらえる必要があるというふうに思うのですね。
 それで、大臣に伺います。
 大臣は、きのうの本会議でもお答えになりました。大事なことを一つ一つやっていって、そして保護の体系をつくっていくという趣旨の発言を本会議でもなさいました。そういう一つのやり方、私に言わせてもらえば積み上げ方式とでもいいますか、これも私は決して意味のないことだとは言わないが、やはり基本的な理念、政策の指針、こういったものはきちんと打ち出すべきだと思う。私は、そういった点で、基本法の方は一応そういう作業には取り組んでおられるというふうに思います。
 それで大臣に。きちんとした理念を宣言し、政策を宣言し、国家としてのみずからの責務を宣言する、こういうことが必要だというふうに私は思っておりますが、いかがでしょう。それから、今大臣にこういう質問をしましたが、この点について、民主党としてはどういうふうに提案者として考えておられるか。御両者から。
#38
○臼井国務大臣 今委員御指摘をいただきました、ちょうどその裏返し的な論議になってしまうわけでございますが、御指摘をいただきました、理念とか方針をまず示していくというのも一つの御見解だと思うわけでございますが、この問題は、いつも申し上げておりますが、非常に多岐の分野にわたりますとともに、また一方では、被告人の防御権など、慎重な配慮を要するさまざまな要請との調和を図りつつ検討を進める必要があると考えておりまして、各般の問題の具体的検討を積み重ねていくことが肝要であると考えているのでございます。
#39
○北村(哲)議員 私は、まさに今大臣とは真反対でございまして、例えば、国連の被害者人権宣言がありました。まずやはり国の責務というか、国がどうすべきかということを決めるということが大事だと思います。
 私どもの提案した基本法というのはまさにそこの問題でございまして、犯罪被害者たちが受けた被害の回復とかあるいは社会復帰を支援する責務を国が負うんだということを、まずその骨格を国が定めて推進すべきという観点から、さらに国が講ずべき施策として、先ほど委員がおっしゃったように、まずは被害者からの相談を受けてそれに対する指導をする、医療の問題についての具体的な問題を検討していく、安全な生活あるいは平穏な生活を確保する、そしてさらに今政府が出された刑事手続に関する適切な施策などもその各論的なものになると思いますので、その大もとを定めるべきだと私は思っております。
#40
○日野委員 お二人とも、被害者の立場について、国としては被害者の権利がきちんと確保できるようなことを考えなくちゃいかぬという思いは共通しているように私は聞こえるんですね。ただ、法務省の立場としては、被告人の防御権等についてもっといろいろ検討をして、こういうお立場のようであります。
 しかし、この問題をめぐる世界の動き、それから国内の動き、これはどんどん動いておりますね。学界の動きもそれに加えておきましょう、学問的な検討の動きですね。この間も、参考人の意見の聴取をした際にも、そのことはかなり述べられておりました。もうどんどん時代の方が先に走っている。そのとき、法務省がここで歩みをとどめるということがあってはならぬのだと思います。
 刑事訴訟手続、捜査手続、それからあとは損害賠償の手続、そういったものについて配慮しなければならぬことは、これは当然です。しかし、その配慮は、今までかなり勉強の成果というのは上がってきている、私はこう思います。この間の参考人の意見も聞きました。法制審などの議論の推移、それから研究会がありまして、そこでもいろいろやっておられますね。そういったところの動きを見れば、そういった動きはもうとどまるところを知らない、どんどん時代をリードしていっている、私はこう思うんです。私は、法務省もぜひ、そういった動きを的確にとらえて、新しい一歩を踏み出していかなくちゃいかぬ、こう思っています。
 私は、きょうは時間がないから後の機会にまた、民主党の基本法案などに上がっている、いろいろなとるべき措置というのはずっと幾つか、九項目ぐらいにわたって上がっていますね、そういった一つ一つを点検してみて、国が現在どういうふうにそういった問題点に取り組んでいるかということをちょっと点検をしてみたいと思っています。これは民主党さんにも聞きますから、ちゃんと調べておいてくださいよ。
 そうすると、かなりのことはもう国はやっているんです。あとは、いかにこれをさらに強力に進めていくかという段階まで私は来ていると思うから、もちろん役所にも、それから民主党さんにも聞きますから、きちっと準備しておいてください。この民主党の基本法、これをやるだけの機はもう既に熟している、私はそう思うから、この次の機会にも、私はまた質問の時間をぜひもらって、そこのところはやろうと思います。
 きょうはちょっとこれから別の次第に移りたいと思いますが、法務大臣に一つ注文しておきます。これはやらないと笑われますよ、ちゃんと基本法のようなものをやらないと笑われるということを申し上げておきましょう。
 それでは、今度は、法案の内容について伺います。
 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案、これは付随法と言わせてもらいます。その四条についてお伺いをいたします。
 私は、民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解というのは、これは非常にすばらしい一つのシステムをおつくりになったというふうに思っています。でありますから、これが成功することを心から祈念をいたしたい。この制度が多いに活用されるということをお祈り申し上げたいというふうに思います。
 そこで、まずこの問題について伺いますが、この第四条では、被告人と被害者が共同して公判調書への記載を求める申し立てをする、こうなっていますね。現在の刑事法廷というものを頭の中でイメージして、さて、具体的にこの申し立てというのはどのように行われるのだろうかというふうに思うんです。まず、この「共同して」というのは、被告人と被害者との間で合意ができていることが前提、その合意に基づいて申し立てをする。この申し立ては、どこに対して申し立てをして、どこで、どのような形で和解内容を公判調書に記載をするのか、そこらのイメージがなかなかわきにくいところがありますから、ひとつ考えておられるところを御説明ください。
#41
○古田政府参考人 ここで和解の申し立てをして公判調書に記載する、これはどういうふうな手続で実際上行われるかということですが、まず、これを申し立てる先は、当該刑事被告事件が係属している裁判所に対して申し立てるということになるわけです。ただ、裁判所に申し立てる場合に、場所はどこかということになりますと、これは特に法廷でなければならないとか、そういうことにはならないわけで、裁判体である裁判所に申し立てたという実質を伴う方法で行えば、場所的にはそれで足りるということになるわけです。
 また、「共同して」というのは、その合意事項の内容等についてちゃんと合意ができているのかとか、あるいはその認定等について確認をするというような問題も時に必要となりますので、これは一緒に来ていただく、そういう意味でございます。
 それから、では実際に申し立てというのはどうするのかということになりますと、これはまず、どんな和解の内容であるか、例えばどういうお金を払うのかとか、そういうことがきっちり決まっているということ、それから、それがどういう問題についてそういう合意ができたのかということがはっきりしている、それをはっきりさせた書面を提出していただいて、それに基づいて刑事裁判の公判調書にその和解の内容となった事項を記載する、こういう手続になるわけでございます。
#42
○日野委員 そうしますと、これは、当該開廷日に被害者も傍聴しております。そして被告人の方から、こうこうこういう条件でぜひ和解をしてもらいたい、示談をしてもらいたい、こういう申し立てがなされる。裁判所が被害者に対して、どうですか、こう言っていますがというようなことで、ではこれを公判調書に記載をして、それに執行力を持たせましょうということはできるのですか、できないのですか。
#43
○古田政府参考人 公判期日で申し立てるということでございますので、そういう意味で、公判期日に出頭した被告人と傍聴に来た被害者の方々等の間で、その場で合意が成立した、そのときに、先ほど申し上げたような、例えば和解の内容とか、そういうことを決めた書面というのが用意ができて、手続的な要件が満たされるという事態になりますれば、その場でも申し立てができるということになると考えております。
#44
○日野委員 どっちにしても、これは、今、即決和解というのがありますな。和解条項を記載して、管轄は簡裁だったですな、簡裁に両当事者が出頭して、このとおりでございますというような形で決める。それと大して違わないものになりますかな。
#45
○古田政府参考人 民事の即決和解の手続について、私も詳しくは承知しているわけではございませんけれども、基本的にはこの手続も、刑事で特別なものというよりは、民事の簡便な和解手続と同じようなものを刑事の手続の中でも取り込むという考えでございます。
#46
○日野委員 これは現在の刑事手続でよく行われているいわゆる示談書ですね、そういったものを法廷に出す。そうしたら、その内容を刑事事件の訴訟記録の中に取り込んで、そしてその調書に執行力を与えるという形になると、非常にこれは機動的に弁護人も被疑者も動けるな、こういうふうなイメージを私は持ったのですが、そういうイメージとはちょっと違いますな、これは。
#47
○古田政府参考人 先ほど申し上げました合意内容等を記載した書面、これは実際問題として、今委員御指摘のように、示談書であることというのは十分想定されるところでございます。したがいまして、刑事事件に関して示談等が行われるような場合に、その示談書が提出され、それが先ほど申し上げた合意内容なり、どういう事項について合意がなされたのかということが明確になっているということであれば、そういう書面がこれに実質的に該当するという場合もあろうかと考えております。
#48
○日野委員 この規定が置かれて活用されるというためには、いわゆる即決和解みたいな形だと、何もこんなにこの法律で書かなくても即決和解をやればいいだけの話じゃないかとか、そういう話も当然出てくるのでしょうな。そこいらは機動的な処理を裁判所でおやりになるように十分研究をしていただきたいものだというふうに私は思いますので、その点は私の要望として申し上げておきたいというふうに思います。
 それで、私は、幾つかの気になる問題について御質問をいたしたい、こう思うのです。
 特に交通事故の場合、その示談には保険会社がかかわってくるという場合が多い。現在はほとんどと言っていいでしょう。みんな、自賠責のほかに任意保険に入るのが普通ですから。そうしますと、現実にはこういう事態になっているのです。
 交通事故が起きます。そうすると、もう加害者の方は一切合財全部保険会社にお任せ。示談つき保険なんというのが現在主流でございますからね。一切合財保険会社にお任せ、お葬式にも行かない。今こういうふうに進んでいるのが、交通事故についての業務上過失致死傷の問題であり、損害賠償の問題である。
 そうすると、こういう刑事手続における和解をするについても、これは保険会社の方がむしろ主体になってきますね。そうすると、この場合はどういうことになるんでしょう。被害者と被告人とが共同して申し立てをするということはどういうふうに理解したらいいんでしょうね。
#49
○古田政府参考人 ただいまのお話の場合には、恐らく保険会社が被告人の代理人になるケースであろうかと思うわけです。ここで被告人と被害者の方々等が共同して出頭するという場合に、代理人が出頭する、そういう場合もあり得るということは予定しておりますので、そういう場面の問題として処理されることになろうかと考えます。
#50
○日野委員 そうすると、一つ問題、今ちょっと気がついちゃったのですが、私、気がつかなきゃいいのにね。
 公判廷に被告人の代理人として保険会社が出ていく、こういうのは今の対審構造の中ではちょっと考えにくいと思うのだけれども、これはどうですか。
#51
○古田政府参考人 先ほども申し上げましたように、これは公判期日に出頭するということでございます。そして、そこで出頭するというのは、刑事の被告事件の当事者として出頭すると申しますよりは、刑事の被告事件の当事者である被告人がこの民事上の和解の当事者として出頭するということでございますので、今委員御指摘のような、刑事の被告事件のいわば対審構造で行っている審理の中に、それに無縁な第三者が登場する、そういう構図にはならないと考えているわけでございます。
#52
○日野委員 困ったな。ちょっと気になることです。そうすると、これは刑事事件の公判廷の中に民事事件の部分が入り込んでしまうのかね。これはちょっと困りましたな。どういうふうにそこを理解したらいいんでしょうね。
#53
○古田政府参考人 刑事の公判期日で、いわば先ほど委員の御指摘のあったような示談が別途できているときに、その事実を示談の当事者が共同して刑事の裁判所に申し立てれば、それを刑事の公判調書に記載する、そういう一定の事実をもって、その場合に強制執行力が付与される、そういうことになるという考えでございまして、そういう意味では、刑事の公判調書に民事上の和解の記録が載る、そういう手続にとどまるものだというふうに御理解いただきたいと思います。
#54
○日野委員 いや、あなたはさっき、公判手続の中で、被害者が傍聴席にいる、被告人もいる、その中で被告人が、何とか勘弁してもらいたい、これだけ払いますよ、こう言った。では、こう言っているんですから、どうです、被害者もここいらで話をまとめて、ちゃんと調書に載っかれば、こうこうこういう執行力を持ちますよ、その方が得ですよと裁判官が勧める場面なんかありますね。どうです、それは。
#55
○古田政府参考人 実際に、具体的にどういう形でそんな場面が起こるかというのは、これはいろいろなことがあり得るだろうと思うんですけれども、仮に、比較的簡単な内容の示談ができる、それが、例えば被告人の弁護人の方などももちろんいらっしゃるわけですし、被害者の方の方でも何かそれ相応の対応ができる、そういうようなことで、仮にそこでそういうふうな示談が現実にできるということであるならば、これは時間がそれほどかからないということであるならば、それについても何らかの対応というのはその場で可能な場合があるのではないか。その場合に、そこで行われました示談というのは、結局これも民事上の和解でございまして、たまたま公判期日に来たときにでき上がった民事上の和解をその公判期日に申し立てていただくことになるということだろうと考えております。
 なお、一点だけちょっと、先ほど申し上げたことについて付加して申し上げますと、例えば、保険会社が実際いろいろなことを、代行といいますか、そういうことをやっているという場合に、これが保険会社の方が直接来てやれるかというと、司法裁判所ですと、訴訟代理人になりますのは弁護士さんに限られるということで、保険会社の方そのものが代理人として来られるということにはならないと思われますので、申し添えておきます。
#56
○日野委員 これは理屈の面からいうとおもしろい問題になりそうだなと思うんですが、いささか講壇事例みたいな趣もありますから、ちょっと別の質問に移ります。
 それで、今お答えいただいたこととも非常に強く関連性を持つんですが、第四条第二項にこういう文章があります。「被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは、」こう書いてある。そして、「その旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。」こう書いてありますね。これは、もちろん保証それから連帯債務を負いますという内容の示談書、和解契約書ができ上がるわけですが、さっきも言ったように、私はこれはできるだけ柔軟に、まとまりやすいような形でやれるようにしたいと思うので、そういった人たちが物的担保を提供しますということを公判廷で言った、そうしたら、もちろんそこで物上保証契約は成立するんでしょうね。
#57
○古田政府参考人 例えば連帯保証人になられる方が、同時に抵当権などの物的担保も提供する、そういう契約ができますれば、抵当権設定契約が民事法の規定に従って成立することがあるだろうと考えております。
#58
○日野委員 ちょっと聞き取りにくかったんだけれども、成り立ち得ることだ、こうおっしゃったんですね。間違いないですな。やはりちゃんと答えていただきますか。
#59
○古田政府参考人 物上担保を提供する契約が有効に成立するという場合は、これはもちろんあり得るということでございます。
#60
○日野委員 中には、抵当権の提供なんかはまた別のことでございますというようなことを言う人もいるものだから、ちょっと確認させてもらいました。
 それから、警察庁からおいでいただいております。
 被害者の立場ということになりますと、まず犯罪が発生した、そうするとイの一番に被害者と接触するのは警察官ということになるわけですね。その場合、警察官の方が被害者について十分な思いやりを持った処置をとらなくちゃいかぬのだろうと思います。もちろん、接する態度もそのとおり。
 それから、では、こういう場合、どういうふうにしなさいと。すぐに病院に行きなさい、救急車を呼びなさいなんという話は、これは当然するわけだと思いますが、それから先、警察としてはどんなふうに接触をしていかれるのか、概括的にちょっと教えていただければと思います。
#61
○田中政府参考人 犯罪の被害に遭われた方々、御家族も含めましてでございますけれども、特に殺人事件などの凶悪事件あるいは性犯罪の被害に遭われた方々は、身体、財産などの直接被害のみならず、今御指摘のように、精神的にも大きな打撃を受けられておりまして、社会からの支援を必要としているということを私どもも認識しております。
 それで、私ども警察といたしましては、犯罪捜査というものを通じまして、生命、身体、財産の保護とか、あるいは国民の権利の保護というものの責めに任ずることは当然でございますけれども、やはりこうした被害者の厳しい現実に最初に接するのが私どもでございます。しかも、そこでの私どもの対応いかんが、被害者のその後の社会的立ち直りあるいは御家族の社会的立ち直りに極めて深くかかわっているということを十分に認識しておりまして、私どもがそこで果たす役割は大きいというふうに認識しております。
 したがいまして、今申し上げましたような認識のもとで、平成八年二月に警察庁におきまして被害者対策要綱を制定いたしまして、これを受けた都道府県警察におきましては、犯罪被害者の相談に応ずるために、犯罪被害者のカウンセリング体制等の整備に努めておりますし、また、犯罪被害者の精神的被害の回復のためのカウンセリング等を行う民間の体制が活発になってきておりますので、こういうものにつきましても、この団体の設立や運営に関して支援をしていく、あるいは相互の連携や情報交換を積極的に行いまして、被害者あるいは御家族にとって望ましいケアが行われるよう配慮しているところでございますし、今後、このような体制の充実強化に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#62
○日野委員 もう時間もなくなってまいりました。本当に警察官の方々の態度いかんというのは、被害者のその後の生活に非常に大きな影響を持つということは、まさに我々も、こういったいろいろな事件の認識をしてみて、経験上よくわかるところです。今の長官のお話でありますと、いろいろな手段を用意して、それに対応していこうとしておられる。これは私は、非常に貴重なことですから、ぜひ最初に接触する警察官の方々なんかにも、その要綱をきちんと守ってやっていくようにしてもらいたいものだと思います。
 どうも最近、警察は評判が悪くて、数々の不祥事などという問題が起きております。私は、そういう不祥事が起きてくるような土壌というのもまた一方で警察の内部に実は見ているわけでありまして、本当に今長官が言われたようなこと、これはもう長官が、きちんと全組織にこれが行き渡るような努力をやっていただきたいものだというふうに考えております。
 きょうはこの程度で、まだまだ問題はいっぱいございまして、さっきも言ったように、民主党の方々にも遠慮会釈のない質問もしたいと思いますから、そこは十分覚悟の上で、次にはおいでいただきたい。法務省も同じですよ。警察庁も裁判所も同じですが。
 では、時間が参りましたので終わります。
#63
○古田政府参考人 先ほど、和解ができたことの申し立てをどこでするのかということで、必ずしも法廷に限らないと申しましたが、ちょっとこれは私、混同がございまして、申し立て自体は、これは公判廷で行っていただくということでございます。
#64
○武部委員長 木島日出夫君。
#65
○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 犯罪被害者対策のための閣法二法案と民主党から出された基本法案が出ておりますが、私は、まず法案の中身に立ち入る前に、犯罪被害者対策に関する国際的な動向についてお聞きをしたいと思います。
 一九八五年の十一月二十九日に、第九十六回国連総会は、犯罪及び権力の濫用の被害者のための司法の基本原則の宣言を採択いたしました。そして、その宣言に含まれる規定を実効あらしめるため、必要な措置をとるよう加盟国に要請しているわけであります。
 最初に、日本政府は、十五年前ですが、この宣言に対してどんな態度で臨んだのか。それから、十五年経過しておりますが、この間、政府はこの宣言の方向に沿ってどんな措置をとってきたのか。まず法務大臣から、基本的なところを御答弁願います。
#66
○臼井国務大臣 御指摘の宣言は、犯罪及び権力の濫用の被害者のための司法の基本原則の宣言と呼ばれるものでございまして、御指摘のとおり、一九八五年八月から九月に開催をされました第七回国連犯罪防止会議において採択をされまして、さらに同年十一月の国連総会において採択されたものと承知をいたしております。
 同国連犯罪防止会議におきましては、三十二に上る多数の決議が採択されたわけでございますが、我が国は、同宣言の決議を重要な決議の一つと評価いたしまして、各国の意見の一致に向けて努力を払ったものと承知をいたしております。同国連犯罪防止会議におきまして、我が国を含む各国が意見の一致に向けて努力を払った結果、我が国を含む参加国の全会一致で採択されたものと承知をいたしております。
 国連被害者宣言に設けられている事項につきましては、被害者が公正な裁判手続を利用できたり、その被害感情等が捜査、公判において考慮されるなど、既に我が国で整備されてきておりまして、実務の慣行として対応されてきたところでありましたが、法務省におきましては、さらに法整備につき、平成十一年の組織的犯罪対策三法中の刑事訴訟法の一部を改正する法律、少年法等の一部を改正する法律案の国会提出などをしてきたところでございます。また、その他の施策につきまして、例えば、平成三年には福岡地方検察庁において被害者等通知制度が実施されたことを皮切りにいたしまして、同制度を設ける検察庁が増加をいたしまして、平成十一年四月からは全国統一の制度として、検察庁における被害者等通知制度を導入することとなったわけでございます。
 またさらに、被害者の損害回復に関する措置、被害者の意見を考慮する制度、被害者の不便を最小限にするなどの被害者保護に関する措置などにつきまして、所要の法整備を行うための調査検討を進めた上、今国会に犯罪被害者保護のための法律案を提出するに至ったところでございます。
#67
○木島委員 私も、改めて国連総会で採択された宣言を読んでいるのですが、この中身を見ますと、犯罪の被害者対策ともう一つは権力の濫用の被害者対策と、大きく二つの範疇があるのですが、後者はともかく、犯罪の被害者対策として、「司法及び公正な処遇へのアクセス」、これは中を見ますと、法務省、警察庁さらには裁判所、これらが一体となって取り組むべき中身だと思うのです。それから、「損害賠償」と「補償」、これは法務省が主管となって、政府として、内閣として取り組まなければいかぬ性格のものが盛り込まれているやに思います。
 それからもう一つ、「援助」というところは、宣言の十四項、十五項、十六項、十七項なんですが、例えば十四項は「被害者は、政府、ボランティア、地域社会又はその土地固有の方法により、必要な物質的、医学的、精神学的、及び社会的援助を受けるべきである。」それから第十五項は「被害者は、保健、社会福祉及び他の関連する援助を利用できることを知らされ、また容易にこれらを利用できるべきである。」特に十六項は「警察職員、司法職員、保健職員、社会福祉職員及び他の関係職員は、被害者の要望に敏感になるよう訓練を受け、また適切かつ迅速な援助をするためのガイドラインが作られるべきである。」こうあるので、これは法務省、警察庁はもとよりのこと、日本の省庁としていいますと、厚生省とか、あるいはまた地域社会も関係しますから自治省とか、そういう役所も本気になって取り組まなければ、この国連宣言の方向に沿った施策ができないと思うんですね。
 それで、本来、内閣官房に聞くべき質問かもしれませんが、政府全体としてのこの宣言を受けた取り組みがあるのか、あるいは関係省庁連絡会議なるものが日本の政府にこの宣言を受けてつくられているのか、その辺どうなんでしょうか。これは法務省で結構です。
#68
○古田政府参考人 関係省庁連絡会議におきましては、もとよりこの宣言に含まれているような内容の事項を配慮して、それぞれ関係省庁でどういう施策をとるか、あるいは検討していくかということを議論したというふうに承知しております。
#69
○木島委員 いや、恐らくほとんどやられていないと思うんですよ、厚生省においても。
 ですから、私が聞いているのは、それぞれの省庁がこの宣言を受けてやるというんじゃなくて、政府挙げて一体的に、組織的に犯罪被害者のための諸施策をやるんだという意味での組織はつくられているんですかと。それは、まだ日本政府にはそういうのは設置されていないのか、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議みたいな、あるいは内閣総理大臣か官房長官が責任をしょった、法務大臣でも結構ですが、そういう組織が今内閣にあるのかということです。
#70
○臼井国務大臣 平成十一年の十一月十一日、内閣官房長官決裁で犯罪被害者対策関係省庁連絡会議というものが設置をされたのでございます。
 この連絡会議におきましては、犯罪被害者対策に係る問題につきまして、ただいま委員御指摘をいただきましたように、大変多方面に、多岐にわたるものでございまして、関係省庁が多くございますので、関係省庁の密接な連携を確保いたしまして、政府として必要な対応を検討するため、内閣の中に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議というものを設置するということにいたしたわけでございます。
 その構成といたしましては、次のとおりでございます。
 議長は内閣官房副長官が事務取扱としていたすことになっておりまして、副議長は内閣官房の内政審議室長がいたすことになっております。構成員といたしましては、警察庁長官官房長、経済企画庁国民生活局長、法務省刑事局長、文部省体育局長、厚生省保健医療局長、運輸省運輸政策局長、海上保安庁次長、労働省職業安定局長、自治大臣官房総務審議官、こういうことになっておりまして、幹事といたしましては、関係行政機関の職員で議長が指名した者がいたすということになっているのでございます。
#71
○木島委員 そういう組織ができて、内閣として挙げて一体として犯罪被害者対策を前進させるというのは非常に結構なことだと思うんです。
 ただ、私に言わせれば、余りにも遅過ぎたんじゃないか。宣言は八五年ですから、設置されたのは九九年です。だから、私、そこに日本政府の対応の遅さというのがあるんじゃないかと。もうこの間、欧米先進各国はこの宣言を受けて、いち早く犯罪被害者のために政府を挙げてやっているわけなんで、そのことを指摘しておきたい。
 おくれて出発でありますが、それだけに、おくれを取り戻すために、改めて全力を尽くして被害者対策のために頑張っていただきたいと思いますし、その中でも中心は内閣官房だということですが、やはり犯罪被害者に一番密接に関連して近いところにあるのは法務省だと思いますので、法務省が先頭に立ってリードするような、そういう構えで取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それで、次に、一九九八年に第七回の国連犯罪防止刑事司法委員会というところで、被害者のためのハンドブックが採択された。そして、国際的にも被害者対策の標準化が進められているとお聞きをしております。
 昨日、私はきょうの質問をするに当たりまして、その資料をいただいたわけなんですが、英文の原本であります。ハンドブックとガイドがあるようであります。
 そこで、法務省にお聞きしますが、どんなものがつくられたんでしょうか。その中身の要約を知らせていただきたい。それから、これは何のためにそういうところでつくられたのか。各国政府に対して、どういう縛りをこのハンドブックなりガイドはかけようとしているのかという点。そして、日本政府はこれらのハンドブックやガイド作成に参画したのか、日本政府はこういうものに対してどういうスタンスで臨んでいるのかという点。まずその辺を答弁願いたい。
#72
○古田政府参考人 御指摘の二つのものでございますが、まず、国連の被害者宣言を実施するためのガイド、これは政策立案者向けガイドということになっておりまして、その内容は非常に多岐にわたっており、かついろいろな点を含んでおりますので、一つ一つ申し上げると大変時間がかかってしまいますが、端的に申し上げますと、被害者宣言の各事項に沿って、それぞれそういう事項に関して、こういう国ではこういうことをやっている例があるとか、そういうサンプルを紹介したり、あるいはそこでいろいろな、こういう点に注意すべき事実があるというようなコメントを付した、そういうようなものが内容でございます。
 一方、ハンドブックと呼ばれますものは、これは、実際の国連被害者宣言の活用及び適用のための被害者をめぐる司法、これまでの実際の取り扱いについてのハンドブックという性格のもので、これにつきましては、二次的被害を含む被害者の被害の実態や被害者支援プログラムの内容の例、こういうふうなものが紹介されているわけでございます。
 したがいまして、このガイドあるいはハンドブックというのは、内容的には、いずれも各国などが参考にする例とか、そういうものを示すということが主眼でございます。
 なお、このガイドは、国連の犯罪防止刑事司法委員会そのもの自体が作成したわけではございません。これは、そういうようなハンドブックないしガイドのようなものが必要だということでワーキンググループを別途つくりまして、そのワーキンググループが作成したものでございます。
 ただし、そのワーキンググループには日本からも参加しておりますし、このハンドブックあるいはガイドが委員会に報告されたときには、その内容をめぐって、いろいろな必要な事項あるいはどう考えるべきかについての議論が行われ、日本もこれに積極的に参加したことは事実でございます。
    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕
#73
○木島委員 ありがとうございました。
 これには最高裁、日本の裁判所当局もかかわっておるのでしょうか。
#74
○古田政府参考人 ちょっと現在、私自身、正確な記憶はございません。
#75
○木島委員 それでは、法務省にお願いをしておきますが、私の手元には、今答弁されましたハンドブックとガイドを英文で持っているのですが、ここは日本の国会ですから、これを全文翻訳して、これからの日本の犯罪被害者対策の基本になるような非常に重要ないろいろなことが指摘されているようでありますから、これを当法務委員会に提出していただきたい、そんな取り計らいをお願いしますが、まず法務省の意見を。よろしいですか。
#76
○古田政府参考人 かなり膨大なものですので、若干お時間も必要かと思いますが、努力したいと思います。
#77
○木島委員 それでは、お願いをいたします。
 次に、同僚委員からも指摘をされておりましたが、率直に言いまして、我が国のこれまでの刑事法制度には犯罪被害者の権利という概念は基本的には脱落していたのではないかというふうに思わざるを得ません。
 ここに、法律時報の九九年の九月号、犯罪被害者の権利特集号なのですが、そこで最初の論文をお書きになっているのが新倉修国学院大学教授であります。新倉教授が主張しているのは、「刑事法のパラダイム転換と被害者の権利」ということですが、要するに「現行の刑事法制度は、多くの論者が指摘するように、公法的刑罰観ないし刑法観に基づく。」という指摘です。「戦前には、犯罪被害者が刑事裁判所に損害賠償の申立を行う付帯私訴の制度があったが、戦後廃止された。おおざっぱに言えば、日本で西洋法の継受とともに進められた公法的刑法は、手続法の側面でも、徐々に被害者を埒外に置き、その公法的性格を強めてきた。」こんな指摘もございます。そこで、同僚委員からも指摘がありましたが、「これらに対して、積極的に被害者関係的な刑事法制度の構想を打ち出すのが、「被害回復的司法」論ないし「関係修復的司法」論」だということで、この教授はそういう立場から、日本の刑事法制の根本的な理念を転換せよという強力な主張を展開されているわけであります。
 まず、大きな基本問題ですから、法務大臣の認識をお聞かせ願いたいと思うのです。どうなんでしょうか。
#78
○臼井国務大臣 刑事司法は、刑罰権の行使によって法秩序の維持という目的を達成しようとするものでございまして、その過程において、被害者の立場を尊重し、その保護を図る必要があると考えております。
 我が国におきましては、これまでも被害者保護のための法整備は逐次にわたって行われてきたところでございまして、また、既存の制度の運用によって被害者保護に努めてきたところでございます。しかしながら、近年、犯罪被害者の問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せておりまして、被害者に対する一層の配慮と保護のための具体的方策を講じることが喫緊の課題となってきているものと認識しておりまして、現在御審議いただいております二法案を国会に提出したところでございます。
#79
○木島委員 先ほどもそういう答弁がありましたが、率直に言って、欧米先進各国と比較いたしましても、日本の刑事司法手続の中に犯罪被害者の権利という観点の位置づけがほとんどなかったと言ってもいいんじゃないのでしょうか。先ほどもありましたが、刑事被告人の弁護人が被害者の方と和解をして一生懸命やってこられたとか、そういう個々の努力はありますけれども、国の刑事司法、刑事裁判を全体としてどう位置づけるかということを見ますと、やはり新倉教授が指摘しておりますように、だんだん被害者がらち外に置かれていって、刑事法制度の公法的性格が強まっていったんじゃないかと、これは率直に言って指摘せざるを得ないと思うんですね。
 もう一つついでに言いますと、先ほど触れました法律時報の昨年九月号で、これは高橋則夫早稲田大学教授がかなり具体的に、いわゆる回復的司法とこれまでの司法の観念の違いということで、十四項目を挙げて、こういう点で考えの基本が違うんだということをずうっと挙げているんですよね。やはり、率直にそういうことを直視するということから始めないと、あれこれ被害者の世論と運動に押されて一部手当てはするけれども、それでは小手先の犯罪被害者対策に終わってしまうんじゃないかと危惧するんです。
 これは法務省刑事局長に聞きますが、大臣の答弁は答弁として、率直に言って、日本の刑事司法の根本的観点が、やはり高橋教授等が指摘するように転換が迫られているんじゃないかと私は思うのですが、刑事局長の認識はどうですか。
#80
○古田政府参考人 私のこれまでの検察庁における経験も踏まえて若干申し上げたいと思います。
 先ほど大臣からも御答弁があったとおり、いわゆるリストラティブジャスティスというふうなアイデアに示される内容、これはいろいろな意味で刑事司法の中で評価して取り込んでいかなければならないものだというふうに考えているわけでございます。
 ところで、では、日本の刑事司法はこれまでどうだったんだろうかということを考えてみますと、例えばアメリカあるいはドイツのような制度と違って、検察官の起訴猶予権限が非常に広いこと、あるいは、これはいろいろな御批判もあるところではございますが、例えば供述調書の活用される場面が非常に多い。そういうふうなことから、被害者の方にとって、先ほども大臣から申し上げましたとおり、実際上、事件処理の過程で加害者の方からのいろいろな慰謝の措置というのが図られていっている、そういう実態もあったわけでございますし、あるいは、証人としての被害者という観点からも、供述調書の活用等でかなりのところ、いわば第二次被害的なものも避けられていた、そういうふうな実情があったことは、これは私は事実だろうと思うわけです。
 そういう点から申し上げますと、リストラティブジャスティスというようなことで言われているようなことというのは、かなりの部分が実は日本の刑事司法の中ではそれを、意識的か無意識的かということは別といたしましても、取り込んできて運用はされてきたのではなかろうか、そういうふうには思うわけです。
 ただ、先ほども申し上げましたように、そういうような問題についてやはりきちんと意識をして、これからどう対応していくかという視点を持って我々も考えていかなければならないというふうに思っているところでございます。
#81
○木島委員 今の答弁は、日本の刑事司法の非常に大きな特徴の一つに起訴猶予処分があると。確かに、そうなんですね。アメリカなんかは、大体基本的に起訴する。
 そうすると、起訴猶予処分がある。起訴前の段階で捜査官である検察が間に入って、事実上、被害者の方と目の前にいる被疑者、加害者、これを示談させてきたんだと。そして、示談が成立すれば、それを大きな根拠として、起訴猶予処分ということをやってきたのだ。だから、事実上日本の刑事司法は、公判段階ではなくて公判に至らない前段階で、被害者救済、被害者対策が検察官の手で行われてきたのだ、そういう論だと思うのですね。
 そういう側面もあるでしょう。あるけれども、逆に言うと、それが非常に不透明な形で行われてきたのではないかな。逆に言いますと、そういう形で示談が行われ、それゆえに、起訴しない、不起訴処分が裁定される。そうすると、そういうことに対して、被害者は心の底では大変な不満を持っているのではないのだろうかと思えてならないのですよ。
 起訴猶予制度と被害者救済というものの関連、私は刑事局長の答弁を聞いてそう感じたのですが、私の感じ方は間違いなのでしょうか。言わんとするところは違うところにあるのですか。
#82
○古田政府参考人 まず第一の問題として、私は起訴猶予の問題というのは一つの例として申し上げたわけで、先ほど大臣から申し上げましたとおり、やはり公判段階になってからの弁護人の方の示談の活動とか、そういうことも当然含むわけでございます。
 それと、検察官がいわば両方に和解を勧告して示談を成立させるということではなくて、起訴猶予にする場合に、そういう示談が関係者の間でうまく成立し、被害者の方も御納得がいけば、これは検察官としては、起訴猶予の処分という選択の上で判断の要素として非常に大きくなる。そういうようなことが、結局起訴猶予という制度があることによって、恐らく関係者の方もそういう努力を重ねられるという傾向になっていく、そういう趣旨で申したわけでございます。
 したがいまして、やはりそこでは、被害者の方が納得しておられるかどうかということが大事なことでございまして、率直に申し上げまして、ただいま木島委員が御指摘あったように、示談はできたのだけれどもそれでも被害者が納得していない、そういうふうな場面というのは、それでは本当は示談というのは成立していなかったのではなかろうか。実際に本当に納得しているのかどうかというような点などは、これは確かめているわけでございます。
 ちょっと起訴猶予の話に詳しくなり過ぎてしまいましたけれども、要は私が申し上げたかったことは、いろいろな、そういう被害者と加害者との間の人間関係その他、それと、もちろん被害者の経済的な、あるいは精神的な損害、そういうものの回復ということについては、日本のシステムではかなり今までも考慮されてきていたのではないか。その意味では、リストラティブジャスティスということの主張している非常に大きなコアの部分というのは、現実的に日本でも実践されてきていたのではないか、そういう考えを持っているということを申し上げたかったわけです。
#83
○木島委員 検察が間に入って示談すること、決して悪いことではないと私は思うのですが、ただ、その発想は、やはり被害者の権利を人権としてきちっと肯定して対応するというのではなくて、国親思想というのでしょうか、そんな立場での取り組みだったのではないかなと思うのです。今求められているのはそうではなくて、被害者の権利を人権としてきちっと位置づける、肯定する、やはり被害者の権利が人権としてきちっと肯定されて、不当に軽視されてきた被害者の復権が図られることによって、さらに一層刑事被告人の方の権利の尊重もきちっとするということではないかと思うのですね。
 そうしますと、国家というものは、超然として、社会秩序の専権的な回復者として立ちあらわれるのではないのだ、犯罪の被害、加害によって引き裂かれた人間関係を修復する、そういう責務を負うサービス機関とならなければならぬ、これが新倉教授の基本的なスタンスなのですね。やはりスタンスは大分違うと思うのですよ。
 その辺、法務大臣、どうでしょうかね。国家のあるべき基本スタンスの問題なのですね。どうお考えですか。それだけお聞きして、時間が来ましたからきょうのところは終わりにしたいと思うのです。
#84
○臼井国務大臣 いずれにいたしましても、司法というものは常にとどまっているものではなくて、やはり社会の変動とともに変化して当然だと思っておりまして、被害者保護につきましても、今まさに国民の意識の高まりというものが来ているわけでございまして、私ども、その国民の皆様方の意識におくれない司法といいますか、そういうものに対して心がけていかなければいけないと考えております。
#85
○木島委員 終わります。
#86
○杉浦委員長代理 次に、西村眞悟君。
#87
○西村(眞)委員 自由党の西村です。
 犯罪被害者学の趨勢及びこの法案の前提たる立法事実は十分承知した上で、そうであるからこそ、以下、要点をまとめて質問させていただきます。
 およそ刑事訴訟の発展の歴史は、無辜を罰してはいけないということでございます。それは真実をいかに発見するかということでございました。また同時に、犯罪被害者の応報としての刑罰ではなくて、国家の刑罰権の発動要件としての刑事手続という位置づけをなしているのであります。経験上、被害者の応報感情を自由奔放に刑事訴訟に加えてくるならば、真実発見をおろそかにし、ひいては過酷な応報にならざるを得ないという歴史的なことを我々経験しているからであります。このような観点から、現在における刑事訴訟は、真実発見のために、裁判所の予断を排するための起訴状一本主義、また被告人の反対尋問権の保障という制度的原則のもとに組み立てられております。
 そこで、この原則から見て、本件法案の問題点を指摘して、明確な見解をいただきたい、こう思います。
 まず、被害者の証人尋問における付き添い、遮へい、ビデオリンク方式の導入は、被告人の反対尋問権の十分な行使を抑制する可能性があるのではないかという点についての御答弁をいただきたい。
#88
○古田政府参考人 今御指摘になりました制度は、これはいずれも、証人が過度の心理的、精神的苦痛などをこうむることがないようにする一方で、反対尋問権について、これを実質的に害することがないような、そういうような証人尋問を確保する、そういう観点から必要なものであると考えており、訴訟関係人の意見も聞いた上で、裁判所がその採否を決定する仕組みにしております。
 個々に申し上げますと、証人への付き添いの措置につきましては、これは当然ながら、その付添人は、裁判官あるいは訴訟関係人の尋問、それから証人の供述を妨げたり、これに不当な影響を与えるような言動をするということは禁じられておりますし、そういうことが起こらないように裁判所も十分注意をするということになっております。
 また、証人の遮へいの問題につきましては、被告人と証人との間では確かに遮へいということはあり得るわけですけれども、これは弁護人がいなければできないということにしておりまして、弁護人はずっと証人を観察していることができるという仕組みにしております。
 それから、ビデオリンク方式にいたしましても、これもテレビモニターを通じてではありますが、当然顔とか様子が見える、そういう状況で証人尋問を行うわけでございますので、もちろん直接見てというよりは何がしか雰囲気が違う場面も、それはないとは申しませんけれども、反対尋問権を実質的に害するようなものではないというふうに考えております。
#89
○西村(眞)委員 反対尋問権はこの制度の中で工夫されて保障されておる。それから、やはり証人が心理的圧迫を受けないということは真実発見に資することであると思います。ただ、真実発見の観点から、もう一つの側面も見逃すことができない。
 反対尋問権が保障されておるとしても、果たしてこの方式が真実発見の方向にのみ作用するのかという疑問が私にはございます。なぜなら、人間というものは真実を知っている者の面前ではうそは言いにくいからでございます。また、たとえうそを言っても、それは態度、表情にあらわれるものであるからです。しかし、この証人尋問は、被告人と遮断しビデオで、また遮へい物で遮断した上に行われるのである。この点で、裁判所の真実発見のための注意力は、特にこの証人尋問方式をとるならば、増強といいますか、私が今申し上げた真実発見の反対の方向に流れる危険性もありはしないかという観点から、注意を向けられてしかるべきだと思いますが、いかがでございますか。
#90
○古田政府参考人 ただいま御指摘のような問題につきましては、遮へいにいたしましても、先ほども申し上げましたように、少なくとも弁護人は顔を見ている、それから、当然ながら被告人には直接肉声は聞こえるわけでございます。また、ビデオにしても、これはモニターを通じて表情等もよくわかる。そういうような点から、御指摘のようなおそれというのは私としては極めて乏しいだろうというふうに考えておりますが、もちろん、どういう場合にこれを採用するかとか、あるいはビデオリンク方式をとる証人尋問の場合にカメラワークをどうするのかとか、そういうことについても含めまして御指摘のような問題が起こらないように十分検討して運用していく必要があると考えております。
#91
○西村(眞)委員 次に、被害者の意見陳述の問題に移りますが、先ほどの証人尋問は、刑事訴訟における罪体立証と量刑の二つの段階にまたがるものでございますが、この意見陳述はどの段階でなされるのか。そして、私は量刑の段階でしかなされ得ないと思いますが、その段階でしかなされ得ないという制度的担保は那辺にあるのかということでございます。
 民事訴訟では、よく冒頭における原告の陳述ということが行われるときはあるわけですね。しかし、刑事訴訟においては、予断排除の原則というものがございますから、罪体立証の段階で意見陳述を聞くことは不可であろう、このように私は思いますが、その点、制度的担保はいかに確保されておるのかということをお伺いします。
#92
○古田政府参考人 確かに、意見陳述につきましては、これ自体は被害者の方々などのその事件に対するいわば所感のようなものでございます。したがいまして、このような御意見を承るのは、やはりもうほぼ証拠調べが終了した段階というのが一般であろうと考えておりまして、罪体そのものが争われて、そこでその立証が行われているさなかにこういう意見陳述が行われるということは、これは考えられないことだろうと思っております。
 そのために、結局、裁判所の方で審理の状況その他の状況を考慮して、適切と認める場合にこれを行わせるということにしておりますし、また、この意見陳述の希望は検察官を経由して申し出るという仕組みにしておりまして、検察官の方では、その訴訟の進行状況、それに伴う立証の計画その他を考慮した上で、適切な時期について裁判所にその申し出を取り次ぐ、そういうことなどから、不適切な時期に意見の陳述が行われるということはあり得ないと考えております。
#93
○西村(眞)委員 現実の刑事訴訟においては、被告人の最大の関心は量刑にあります。したがって、量刑が被告人のいわば運命にとって大きな分かれ道となる、これは事実でございます。
 さて、この意見陳述は量刑に影響を与えるのか。与えるとすれば、それは証拠である。証拠であるとすれば、なぜこの意見陳述に反対尋問の機会がないのかということをお伺いします。
#94
○古田政府参考人 この被害者などによります意見の陳述は、先ほど申し上げましたように、基本的には証拠調べ手続がほぼ終わった段階でするということが考えられるものでございまして、その陳述の内容は被害に関する心情その他の意見ということでございますので、言ってみれば、これは被告人の最終陳述に比較的似た性格を持っているようなものだろうと思うのです。
 では、これが訴訟法上どういう資料として扱われるかということになりますと、これを事実認定の基礎とすることは法律が禁止しております。ただ、おっしゃるように、量刑につきましては、いわゆる情状の問題でございますので、それを考える上で適当と認められる資料であればこれを参考にすることはできることになりまして、そういう意味では、この意見も量刑の一つの参考資料になり得るということになるわけでございます。
 そこで、そういうことであれば反対尋問が必要ではないかということでございますが、先ほども申し上げましたように、いわばこの意見というのは、基本的には被害者等の方々が事件について持っておられる所感というふうなもの、心情でございまして、そのこと自体は反対尋問になじむものではないのではなかろうか。そういう心情を抱くに至った前提となる事実とか、こういうことになりますと、おっしゃるとおり反対尋問ということも考えられるわけですが、どういう気持ちであるかというだけのことでございますので、なかなかちょっと、いわゆる反対尋問にはなじむものではないのではなかろうかと考えているわけです。
 また、反対尋問権の保障を本来しっかりやらなければならない証拠と申しますのは犯罪事実の認定に関するものでございまして、その他の情状関係のものについては、非常に重要な情状に影響する事項であれば別でございますが、必ずしもそのすべてがすべて反対尋問が必要になるということでもないというふうに理解されていると考えております。
 しかしながら、その意見陳述の内容が事実認定上重要な問題に結局かかわるようなものを含んだり、あるいは量刑上非常に重要な問題になるような前提事実を含むようなことになりますと、これにつきましては、やはり意見陳述という形ではなくて、証人尋問という形に切りかえて、それを済ませてから改めて意見の陳述をするという取り扱いをすべきことになろうと考えております。
    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
#95
○西村(眞)委員 今、局長が言われた、法廷に何かの意見を申し述べたいという被害者が、単なる心情だけを語る。その心情は、本件事件に関することですから、必ず厳罰に処してほしいとか、法定刑にない刑罰をもってやってほしいとか、素人ですからそういうことになるわけですね。
 どの段階で反対尋問が可能な証人尋問に切りかえるのか、それとも、それは意見陳述としてそのまま容認して被告人の反対尋問をさせないのかというふうな判断は、ある意味では、素人といいますか、被害者の感情を述べさせるという、感情でありますから非常に難しいと思います。
 したがって、私の今の質問の段階では、裁判所の訴訟指揮が極めて重要な要素となって法廷における理性的な運用を確保するものになろうと思いますね。そういうふうに思うわけですが、局長の意見も同じでございましょうか。
#96
○古田政府参考人 御指摘のように、いわば前提となる事実のようなものも含めた、そういう形の意見ということも、しばしば実際問題としてはあらわれる可能性もあると思っております。
 しかしながら、そういう場合におきましては、やはり裁判所がしっかりそこら辺は御判断をいただいて、反対尋問をすべきものについてはそういう取り扱いをするようにしていただくということで担保できると考えております。
#97
○西村(眞)委員 法は、単に国会で決議して法になるのではなくて、運用の中で法になるわけですから、本件法は、やはり裁判所の極めて理性的な運用をもって初めてこの立法趣旨が実現されるものであると思います。
 これで質問を終えます。
#98
○武部委員長 保坂展人君。
#99
○保坂委員 社民党の保坂展人です。
 本法案の中身に入る前に、一点だけ、緊急に政府見解をお伺いしたいのです。
 イタリアで、三十一年前に、ミラノのフォンターナ広場というところで銀行が爆破をされて、十六人が亡くなって八十四人の方が負傷をするという大規模なテロ事件、これは未解決で、最近事態が動いてきたということですが、三月二十日、つい最近ですが、このフォンターナ爆破事件遺族の会、ルイジ・バッセラさんの公開書簡が小渕総理に届けられた。また、ノーベル文学賞受賞者のダリオ・フォさん、あるいはフランカラーメさんなど、同様のアピールがされていると聞いております。
 なお、三月二十四日、ローマ発の共同通信による記事は、イタリア政府はその身柄引き渡しを日本政府に要請をした、こんなふうに伝えているところなんですが、昨日ですか、ルチアーノ・ビオランテ・イタリア下院議長が我が国を訪問して帰国をされたと思います。
 外務省にまずお尋ねをしたいのですが、イタリア政府からこの件で身柄引き渡し要求は存在したのかどうか、また過日、議長から特別な要請などはあったかどうか、お答えいただきたいと思います。
#100
○東郷政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、イタリア政府から我が国政府に対する要請があったかという点についてでございますが、三月の三十日に、東京にありますイタリア大使館の方から私どもの方にこの人についての引き渡し要請というのがございました。
 それから第二に、十二日のビオランテ下院議長と森総理との会談におきまして、ビオランテ議長の方から、この爆弾テロ事件はイタリア国内で非常に関心が高いという御発言がございまして、総理の方からは、今申し上げた三月三十日に日本に対して引き渡し請求が行われておって、現在、政府部内で検討中であるという趣旨のお答えをされました。
 以上でございます。
#101
○保坂委員 私もこういった事件が、もう随分前の話ですから、あったこと自体も十分承知していなかったのですけれども、世界じゅうが大変騒然とした時期、この銀行テロ事件というのは大きな衝撃をイタリア国内でも与え、そしてまたこれは未解決ということで、さらにその関心を呼んでいた。この遺族の会会長によれば、日本においては例えば地下鉄サリン事件などのような大変衝撃的な事件だっただろうというふうに言われています。
 そして、この事件が九〇年代に入って急展開を見せて、日本に長らく生活をされている、いわゆるファッション関係の仕事をしている人物が裁判所から被疑者として出廷を要求されるという事態で、今局長がお話しになった経過となってきていると思いますが、もう一回外務省に、イタリア国内でこの件がどのような反響を呼び、また日本政府の対応をめぐってどのような世論が、報道がされているのか、あるいは、日本政府としての見解は議長に総理がお話しになったということが初めての対応だったのかどうか、そのあたりを御報告いただきたいと思います。
#102
○東郷政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、このピアッツァ・フォンターナ事件、一九六九年に起きました爆弾テロ事件、これはイタリアの国内で広く知られている事件でございます。特に、ことしの二月になりまして、本件に関します裁判がミラノで開始されるという報道がなされて以降、イタリアの幾つもの新聞で本件が大きく取り上げられております。その容疑者の一人のゾルジという人が日本国籍を取得して日本に生活しているということも今申し上げましたような幾つもの報道の中で報道されております。
 三月になりまして、イタリア側の内部におきまして日本への引き渡し請求をするということが検討されているということもつとに報道されておりまして、その全体の論調の中で、日本からイタリアに対して引き渡しが行われるべきである、こういう主張も行われていたところでございます。
 ただ、三月の三十日に実際にイタリアの政府から日本政府に対して引き渡し請求が行われたという、それ以降、それほど大きな記事は報道されておりません。それから、先ほど委員御指摘の、イタリアのノーベル賞受賞作家及びテロ事件の被害者がそれぞれ小渕前総理に引き渡しをめぐる本件についての書簡を発出されたということもイタリアの国内で報道されております。
 日本政府といたしましては、このイタリアにおける事情を注意深くフォローしつつ、在京のイタリア大使館と連絡をとっていたところでございますけれども、先ほど申しましたように、三月の三十日に正式の引き渡し請求というのがございましたので、ただいま政府部内で検討中であるということを、先般、森総理からビオランテ議長にはっきり申し上げた、こういうことでございます。
#103
○保坂委員 民事局長にお尋ねしますが、政府としては、アメリカとの間にあるような協定はないわけですから、逃亡犯罪人引渡法によって、これをそのまま踏まえると、日本国籍を取得しているという点がこれはちょっとひっかかる、日本国民であるということで引き渡すことはできないのだという見解がマスコミ報道などには少し出ているのです。これについて簡単に事実を伺いたいのですが、この人物、デルフォ・ゾルジという方が、いつ帰化の請求をして、そして国籍をいつ取得されたのか、これについて簡潔にお願いをしたいと思います。
#104
○細川政府参考人 帰化の許可は官報の告示をもって効力を生じますが、この方の官報告示は平成元年、一九八九年十二月十八日の官報に掲載されております。
 申請の日についてお尋ねでございますが、これは一般的には高度なプライバシーに係る帰化許可申請事件の性質上、具体的な日を申し上げるのは適当でないと思いますが、申請から許可の間に一年を優に超える期間があったというふうに申し上げたいと思います。
#105
○保坂委員 民事局長、その間、審査をされたと思うのですが、この国籍を取得する際に、この方は実は七〇年代のテロ事件などで有罪判決を受けているという事実があるそうですけれども、そういった過去の犯罪歴などの前科はないというふうに述べたと報道などで伝えられています。
 この件は、もし虚偽の申告をしたのであれば、その国籍取得自体どのような合法性を持つのか。虚偽の申告をした場合に、もし前科があったという場合にはこの国籍取得などに、これはそう簡単に認められるわけはないと思うのですが、そのあたりはいかがですか。
#106
○細川政府参考人 前科等があることは、帰化の条件の一つにある「素行が善良であること。」に反するわけで、それが判明している場合には、特に長期間を経過しているとか軽微なものであるとか、そういうものでない限りは許可をされないわけでございます。
 お尋ねは、今後どうするかということも含んでいるかと思いますが、一般論として申し上げれば、爆弾テロ事件の真犯人と認められる者が犯行後我が国に帰化しており、その処罰のために外国から引き渡し請求がなされたような場合には、帰化の取り消しという可能性についても検討する用意がございます。
#107
○保坂委員 もう一問で、実は、九〇年代に入ってイタリアの捜査が展開をして、一九九五年、今から五年前に、イタリア大使館にもう一度パスポートを申請して旅券をもらっているのですね。この段階で二重国籍ということになっているわけで、二重国籍は日本の国籍法で認められていないと思うのですけれども、この段階で日本国民、つまり国籍をいわば失っているのではないか、こういう指摘もあります。
 このあたりは事実確認も含めて、またそのパスポートは二年後に抹消してしまったということなので、やはりそこの二重国籍状態をうまく使いながら捜査の手を逃れたのではないかという指摘もあるのですが、その点について、民事局長、お願いします。
#108
○細川政府参考人 この方が帰化した当時のイタリア国籍法におきましては、イタリア国籍を有する者が他の国に帰化した場合には何らの手続を経ることなく当然にイタリア国籍を喪失するという規定でございましたので、我が国に帰化したことにより日本国籍のみになったわけで、二重国籍ではございません。(保坂委員「いや、パスポートを」と呼ぶ)イタリアのパスポートを発行するかどうかは、これはイタリア政府の判断で、我が国が関与するものではございません。したがいまして、その間の事情は現在のところ判明しておりません。
#109
○保坂委員 この件は、大変長い経過もあるでしょうし、またそうしてイタリア政府からの要請もあり、大いに慎重に、外交的にも、しかも大きな関心をイタリア国内で呼んでいるということで、法務大臣に最後に総括的に、イタリアの報道の中にちょっと、日本政府がきちっと対応してくれないのではないかという懸念を一部伝えているものもあるようなので、そんなことがないように、ぜひ私の方からも、慎重に、しかもまたできるだけ早く正確な調査をした上で結論を出していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#110
○臼井国務大臣 御指摘をいただきました犯罪人引き渡し請求につきましては、法務省といたしましては、本年四月六日、外務省からイタリア政府の請求書の送付を受けたのでございます。
 今後、引き渡し請求の理由となっておりますテロ事件の内容や証拠関係を慎重に検討いたしまして、これを踏まえて適切に対処をしてまいりたいと思います。
#111
○保坂委員 それでは、この件で、外務省や警察の方にちょっと時間不足で質問できませんでしたけれども、どうぞお帰りいただいて結構です。民事局長も結構です。
 それで、検察審査会法の改正問題に入りたいと思います。
 今回、法務大臣もよく御存じだと思いますけれども、三年越しにこの検察審査会の中で、特に交通事故の被害に遭った片山隼君の御両親のその議決が、あなた自身には申し立て権がないのですよ、却下します、しかし職権で審査会でやりました、これは定番的に、レギュラーにこれまで書かれてきたことだと思うのですが、これはお子さんを失った御両親にとってみれば非常にむごい、亡くなった子供が申し立てすることはできないではないか、こういう本当に率直な叫びから、政府におかれまして、きちっとこれを真摯に受けとめていただいて、スピーディーにこういった法改正に踏み切っていただいたことは、私の方からも大変感謝をしたいと思います。
 そこを踏まえて、一点目。これは、害をこうむった者が死亡していた場合には当然請求できないので、この近親者、配偶者並びに直系の親族、兄弟姉妹というところに範囲を広げられたわけですけれども、重傷を負った場合とか、乳児、幼児あるいはさまざまな病気ないし障害で申し立てができない、こういう場合も同様の問題が発生するのではないかと思うのですが、刑事局長にちょっと、その辺をどういうふうに考えるか。
#112
○古田政府参考人 ただいまお尋ねの、検察審査会に対する審査申し立て権、まずこの性格をどういうふうに考えているかということから御説明申し上げますと、検察審査会はその申し立てがあった場合に審査を義務づけられ、その結果、場合によっては公訴の提起に至るようなこともあるということで、それは訴訟行為に準ずるような重要な行為である、性質的に言えば告訴権と比較的類似したようなところがあるわけでございます。そこで、その範囲はやはり告訴権者と同様の範囲とするということが適当であろうと考えているわけでございます。
 ところで、今委員が御指摘のような、例えば重傷を負っておりますとかあるいは子供でありますとか、そういうような場合につきましては、一つには、これは書面で申し立てることができるわけですので、重傷を負っておられるような場合でも書面で申し立てをしていただくことは可能でございます。それから、例えば子供さんのような場合には、法定代理人は代理人として当然申し立てができます。そういうことから、御指摘のようなことについては、まず問題になることはなかろうと考えております。
#113
○保坂委員 検察審査会の議決に至るまでに採用された捜査資料や証拠など、これがどういった資料に基づいて議決に至ったのかということが被害者あるいは請求者、申立人にやはり開示されるべきではないのかなと思いますが、その点は、刑事局長、いかがですか。
#114
○古田政府参考人 一般的な取り扱いを申し上げますと、検察審査会に審査申し立てがあった場合には、検察審査会から検察官の方に対しまして、その事件の記録の送付が求められます。そこで、検察庁の方では、その求めに応じまして、不起訴処分の当時にいわばそろっていたといいますか、その記録一式をお送りする、それに基づいて審査が行われるというのが一般的な形でございます。
#115
○保坂委員 それでは、矯正局長、保護局長にせっかく来ていただいていますので、最後になりますが、議員各位からも、これまでの刑事司法のあり方を大きく考え直すべきじゃないか、いろいろな意見が出ました。
 私も先日、アメリカのアミティという、犯罪をかつて犯した人たちがお互いに助け合って、というよりは、お互いの犯した犯罪をそれぞれ率直に述べ合いまた指摘し合う、共同生活を営む中で再犯率が極めて低くなってきておる。そういう先進的な、犯罪大国アメリカにおける実例を実際アメリカの方たち二人からお聞きして、感慨を深くしたところです。
 日本においては、こういった試みは、一応行われていると聞いていますけれども、なおそういうアメリカの事例などにも倣って大いに研究をし、そして薬物中毒者の方たちの中ではダルクという同様の体験者の自助組織がありますが、そういう活動に対して現在お考えになっていることを簡潔にお二人にお述べいただいて、おしまいにしたいと思います。
#116
○鶴田政府参考人 お答えいたします。
 ただいま御質問のありましたアミティの存在につきましては、詳細は承知しておりませんが、アメリカにおきまして、アルコールや薬物の依存症の方のために刑務所内外で指導活動を行っているというふうに聞いております。
 ところで、我が国の方の矯正におきまして、今どういうふうな処遇をやっているかということでございますけれども、受刑者の改善のために、例えば覚せい剤でありますれば覚せい剤乱用防止教育とか、また、酒癖といいますか、酒のために犯罪を犯したという受刑者も多いわけですので、そういう受刑者に対する酒害教育とか、そういったいわば処遇類型別指導によって受刑者に専門的な働きかけを行っております。
 そういう過程で、多数の篤志面接委員という方がございまして、民間のボランティアの方ですけれども、こういう方に積極的に貢献、御協力をいただいているという実情にあります。
 そういった意味で、矯正の分野におきましても、民間ボランティアの活動は犯罪者の社会復帰を図る上で大変重要な役割を担っているというふうに考えておりますので、今後とも、必要に応じまして、外国の状況等も研究しながら矯正処遇の一層の充実を図ってまいりたい、かように考えております。
#117
○馬場政府参考人 我が国の更生保護の場面におきましても、保護司さん、更生保護婦人会員、BBS会員等、いわゆる民間の方にかねてから御協力をいただいているということは、もう委員御承知のとおりでございます。
 それから、今先生の御発言にございましたダルクということにつきまして、保護の分野では、このダルクのメンバーから講義をしていただくとか、あるいは連携をとって薬物依存者の更生を図るということで、日ごろ連携を深めているところでございます。
 また、諸外国の問題につきましては、今後とも研究を重ねてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
#118
○保坂委員 以上にて終わります。
    ―――――――――――――
#119
○武部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております各案審査のため、来る十八日、参考人の出頭を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#120
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る十八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十四分散会

ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト