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2000/04/10 第147回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第147回国会 本会議 第22号
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2000/04/10 第147回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第147回国会 本会議 第22号

#1
第147回国会 本会議 第22号
平成十二年四月十日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十九号
  平成十二年四月十日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時二分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(伊藤宗一郎君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。
    〔鳩山由紀夫君登壇〕
#4
○鳩山由紀夫君 私は、民主党を代表し、自自公連立政権から自公保融合政権へと変質を遂げた新政権のトップである森新総理の所信表明演説についてただすとともに、その政治姿勢について質問をいたします。(拍手)
 最初に、まず何よりも、小渕前総理が突如御入院をされ、復帰が困難な事態となってしまわれたことに対し、心からお見舞いを申し上げます。
 小渕前総理は、政策的立場の違いはあれ、日々激務の中で、日本が抱える数々の難題に挑んでこられました。その道半ばでの退陣は実に口惜しいことと御推察いたします。
 いっときも早く御健康を回復され国政の場に復帰されますことを、ここにお集まりの皆様とともに深く念願するものでございます。
 あわせて、森新総理におかれては、日本の行方と国民生活に対し重大な責務を担われる内閣総理大臣になられましたことに、改めてお祝いを申し上げます。
 しかしながら、私は、森新総理の誕生に心からお喜びを申し上げるには幾分のちゅうちょを感じているところでもあります。と申し上げるのも、小渕前総理の御入院から森新総理の誕生までの不透明な密室劇に対し、大きな疑念を払拭できずにいるからであります。
 まず第一に、小渕前総理が緊急入院をされてからその事実が国民に知らされるまでの間、二十二時間もの空白の時間が置かれたのは一体なぜでありましょうか。
 そもそも、国民を代表する国会によって指名された日本国総理の入院という非常事態を国民に知らせずに伏せておくという判断は、だれがどのような理由から下したのでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
 第二の問題は、その間何があったのかということであります。
 この密室劇は、国民に事実を伝えることはそっちのけで、当時自民党幹事長であった森総理御自身も加わった上で、小渕派を軸に自民党内の派閥間調整を首尾よく進め、公明党からの了解を取りつけるための工作だったのではないでしょうか。ある外国のメディアがこの成り行きを旧ソ連のクレムリンのようだと表現したことに象徴されるように、この密室劇の背景にあるのは、国民を無視した前近代的な秘密主義そのものであると言わざるを得ません。
 総理は、このような密室劇を通じて首班指名を受けることとなった当事者として、その密室談合型の政治運営をどう受けとめておられるのか、お伺いをします。
 第三の問題は、青木官房長官の一連の対応について、その疑問でございます。
 小渕前総理の入院から二十二時間もたって行われた記者会見では、総理との対談内容には一切触れることなく、小渕総理は意識があるのかも承知していないと述べられました。しかし、一夜明けた記者会見では、突如として、内閣総理大臣臨時代理を本人から指名されたと発言をされました。もしそれが事実であるとすれば、なぜにその晩の直後の会見で発表をされなかったのか。これに対して、国民は深い疑念と不信を抱いています。
 実際は密室の中で決められたとの自民党幹部の発言も報道されました。これら一連の動きが明らかになってまいりますと、私の脳裏には、秦の始皇帝の末期における趙高と李斯の密議が浮かんでまいります。私のこの想念を思い過ごしと断定できるでありましょうか。果たして私たちを納得させることのできる説明があるのでしょうか。もしなければ、青木官房長官を再任させたことは重大な過ちと言うほかありません。
 主権者たる国民に対して情報を隠すということは、まさに民主主義に挑戦する思想にほかなりません。民主党は、情報公開は民主主義を強くするとの視点に立って、一切の秘密主義を排することを強く求めたいと思います。(拍手)
 このように、森新総理の誕生には、実に不可解なことが多いのであります。この政権は、二重、三重の虚偽に包まれていると言わざるを得ません。
 そもそも、前政権のもとで、国民は政府に対しいかなる不信を抱いたのでしょうか。
 神奈川県警や新潟県警の不祥事、防衛庁調達本部の不正請求や証拠隠滅問題、埼玉の桶川におけるストーカー殺人事件に至る調書の改ざん問題、これらすべてに共通をしているものは、事実を国民に隠し、隠し切れなくなったときには虚偽の報告をして、仲間内で問題を処理してごまかし通そうとしてきたそのやり方に対してであります。森新総理の誕生に至る密室劇は、これとそっくりの構図ではありませんか。
 まさに、最も公であるべき政治の世界で、内閣総理大臣という国のリーダーを決めるという重大な問題を、派閥均衡の論理で身内で処理するということが行われました。これは、国民から負託された政治を私ごとと履き違えて何とも思わない、保身と守旧の自民党的体質がもたらしているものだと指摘せざるを得ません。
 当然のことながら、その結果は、自民党と公明党、すなわち自公保融合政権にとって最も据わりのいい人物を総理に据えるという結論にしかなり得なかったのであります。またしても国民はなおざりではありませんか。森総理の人となりを問うつもりでは一切ありませんが、森新政権の正統性には、したがって大いなる疑義があるのです。総理の御見解をお尋ねいたします。
 内閣総理大臣臨時代理が確認されるまでの三十四時間に及ぶ空白の時間は、危機管理について深刻な問題を投げかけました。実は、内閣総理大臣臨時代理については、過去大平内閣のときにも大問題となっていたものであり、政府として当然その教訓を生かすべき事柄でありました。
 しかも、小渕内閣になって強引に進めてきた一連の法案処理の中にも内閣法改正案があり、民主党としても、副総理の設置を含めた提案を既に行ってきた問題であります。にもかかわらず、今日まで放置されてきたこと自体に大きな問題があります。総理の御見解をお尋ねいたします。
 さて、新総理が指名されたにもかかわらず、新しい内閣が誕生するとの国民の期待は全く裏切られ、閣僚のすべてがそっくり再任されるという、かわりばえのない結果におさまりました。前政権の継承を唱える森総理の姿勢を考えると当然とも言える結末ではありますが、私たちは、新政権が一体何をしようとしているのか、全く理解ができないのであります。
 第一に、組閣に当たって、警察不祥事の責任が問われている保利国家公安委員長をなぜあえて再任されたのでしょうか。罷免をしないことと再任をすることとは、天と地ほども意味が違います。私どもには納得がいかないのでありますが、その理由をお伺いいたします。
 第二に、森総理は、警察の信頼回復や教育改革に取り組むことを公約されていますが、具体的に何をなさるのかということについては、何も見えてきません。
 特に、今まで一貫して教育問題、教育改革に取り組んできたと胸を張られる割には、教育の目標は学力だけがすぐれた人間よりも立派な人間を育てることだとの精神論を述べるだけで、教育改革国民会議に丸投げしようとしているように見受けられます。警察問題についても全く同様であり、これまた警察刷新会議へ丸投げしたままであります。ここは、丸投げではなく、リーダーとしての見識を明確に持ち、それを具体的に投げかける指導力が必要だと思います。総理御自身のお考えをお聞かせいただきたいのであります。(拍手)
 第三は、構造改革に対する総理の姿勢に関する疑問であります。
 総理は、所信表明演説の中で、日本経済の再生と大胆な構造改革に果敢に挑戦をしていくと言及されましたが、具体的に何をどうするのかについて、一切示されませんでした。
 総理が、前政権の中で、自民党幹事長の要職にありながら、規制改革の看板を掲げている内閣の方針とは逆行するかのごとく、規制緩和を見直す会の主力メンバーとして名を連ね、規制緩和に反対をしておられたことは周知の事実です。その総理が、これまでとは別人のように、規制緩和に取り組むとの演説を行いました。仮にも構造改革に取り組むというのであれば、前政権の何でもありのばらまき政策は大胆にストップさせる決断が必要となります。あなたにそのような覚悟があるのかどうか、総理の御決意をお聞かせ願います。
 加えて、私は、森喜朗議員の過去の相次ぐ失言問題について触れないわけにはまいりません。あなたはこれまで、エイズが来た発言、韓国労働者べっ視発言、大阪・たんつぼ発言、アメリカ・ギャング発言、沖縄・共産党呼ばわり発言など、まともな感覚の政治家なら気恥ずかしくなるような発言を繰り返してこられました。そこに共通しているのは、他人の痛みを感じる心が欠如をし、そのことごとくが差別的発言であるという点であります。
 国際社会において人権問題がまさに大きな政治的テーマとなっている今日、人権感覚の全く欠如したこのような発言は、政治家森喜朗にしみついたものではないかという疑いを禁じ得ません。所信表明演説にも人権という言葉が一切登場してこないのはなぜでしょうか。新たに国のリーダーとなられた人間として、この問題についてどう受けとめておられるのか、お聞きをしたい。
 景気の回復、経済の再生はすべての国民の願いです。前政権は、わずか一年八カ月の間に国と地方の借金を百十六兆円もふやし、景気対策と称する壮大なばらまきを行いました。しかし、その結果は二期連続マイナス成長であり、今年度の名目成長率も、当初の目標であった〇・五%はもちろん、年度途中で見直したマイナス〇・四%をも下回ることが確実であります。
 その上、二月の完全失業率は、過去最高の四・九%を記録しています。特に、二十四歳以下の若年層の完全失業率は九・三%と深刻であり、学校を出ても定職につけない若者が町にあふれています。
 企業倒産は、総額二十兆円を用意した特別信用保証制度の返済が始まった途端、十二月三割、一月四割、二月五割と恐るべきスピードで急増しています。職を失い、住宅ローンなど借金の返済に行き詰まった個人の自己破産も十二万件を突破しました。大変悲しむべきことに、生活苦からみずから死を選ばれる方も急増し、自殺される方は前年より八千人も多い三万二千人に達しております。
 政府は、景気は気からとばかりに、殊さら明るさだけを強調しています。しかしながら、このような我が国経済の惨状をかんがみるとき、私は、前政権が追った景気回復という一つのウサギは、全く得られていないと断ぜざるを得ません。森総理は、景気の現状についてどのような認識をお持ちなのか、また、〇・六%成長という前政権から引き継いだ公約は達成できるとお考えなのか、明確にお答えを願いたい。
 また、リストラにより企業業績が回復したとしても、雇用情勢はさらに悪化するおそれがあります。百万人の雇用創出というスローガンだけではなく、具体的にどのような雇用対策を打ち出すのかが問われているんです。森新総理のお考えをぜひお聞かせ願いたい。
 森総理は、背広のポケットにいつもお子さんやお孫さんの写真を入れて持ち歩いておられるとお聞きをしています。さぞかし目に入れても痛くないほどのかわいがりようだと想像がつきますが、しかし、年端もいかぬお孫さんに既に五百十二万円の借金が背負わされているということについて、総理はどのようにお感じになっておられるでしょうか。前政権が百十六兆円もの借金をふやした結果、国と地方の借金は六百四十五兆円、国民一人当たり五百十二万円に達し、主要先進国では最悪の借金地獄に陥ってしまいました。このままのペースでいけば、六、七年後には国と地方の借金は合わせて一千兆円を超えるとも言われています。
 財政破綻の先に待ち受ける増税の不安は、人々の財布のひもをますますかたくしてしまっています。その結果、GDPの六割を占める個人消費はますます冷え込み、景気はさらに悪化、しまいには財布そのものを小さくしてしまいます。このイタチごっこを防ぐには、早急に財政健全化の青写真を描き、国民の不安を取り除くしかありません。そもそも、我が国の労働力人口は既にピークを迎え、二〇〇七年には総人口も減少に転じます。労働力人口の減少は潜在成長力の低下をもたらし、本格的な高齢化の進展は社会保障費を急増させます。
 私たちに残された時間は多くはありません。間に合わなくなる前に、今から計画的に財政健全化に向けた取り組みを開始しなければなりません。森総理、あなたはいつから財政健全化への取り組みに着手するのか、明確にお答えを願いたいと思います。
 私は、規制改革を中心とする経済構造の改革とIT革命によって経済の潜在成長力を高めるとともに、できるだけ早い時期に赤字が累増しない財政構造を実現すること、すなわち、プライマリーバランスの均衡化を目指す財政健全化十カ年計画の策定が必要であると考えます。
 そのためには、まず、国と地方をあわせた公的部門の財政の現状を正確に把握すること、そして国民に明らかにすることです。財政健全化の第一歩は、財政の透明化と情報の開示を行うことにあります。その上で、国有財産の売却や特殊法人などの民営化、むだな公共事業の削減などにより、計画的な歳出の削減に本格的に取り組まなければなりません。
 民主党は、分権連邦型国家を構築し、行政の効率化や、負担と給付の関係が明確となる財政の仕組みを確立すべきと考えます。また、税金のむだや不正使用を監視するため、国会に行政監視院を創設することを提案しています。
 森総理は、最近の雑誌のインタビューで、高速道路や整備新幹線、そして空港など、交通体系の整備に並々ならぬ意欲を示されています。
 私は、百十六兆円も借金をふやして公共事業を大盤振る舞いしたにもかかわらずGDPが逆に縮減するという今日の状況は、公共事業がもはや必ずしも景気回復の有効な手段にはなり得ていないことを雄弁に物語っているものと考えます。これは、世界の常識であります。
 森総理にお尋ねしますが、総理の経済政策もやはり公共事業の大盤振る舞いしかないのか、あるいは、公共事業に依存した経済政策を転換し、構造改革を推進するお考えをお持ちなのか、お答えを願いたい。
 民主党は、国民の代表である国会議員が、国民に開かれた場である国会で、公共事業の全体像、個別事業について十分に審議できるシステムをつくることができるよう、公共事業コントロール法案を提出し、少なくとも五年で二割、十年で三割の公共事業削減を目指します。
 IT革命への取り組みは、この先十年の我が国経済の趨勢を大きく左右すると言っても過言ではありません。
 そこで、まず総理にお尋ねしますが、日米間の懸案となっているNTTの接続料の引き下げ問題について、どのように対応するのか、お聞かせください。米国から言われたから引き下げるといった消極的な対応ではなく、国民、国家のために積極的に引き下げるという状況をつくり出していくことが求められていると考えます。
 私は、ネットワークインフラの整備や利便性の向上のためのIT投資の促進とともに、一人一人の能力を高めるための人への投資を大胆に行うべきと考えます。IT革命成功のかぎは、人間中心の投資をどこまで行えるかにかかっています。森総理の御所見を伺います。(拍手)
 私の地元で、有珠山が噴火をし、多くの住民が避難生活を強いられています。まずは被災された方々に、心からお見舞いを申し上げます。
 私も現地に入り、被害の状況をつぶさに調査してまいりましたが、幸い、今のところ人的な被害はありません。しかしながら、物的、そして心的な被害は甚大であり、何よりも今後の生活や事業、あるいは雇用など、深刻な悪影響が懸念されております。
 これまでは、個人の責任に帰することのできないこのような不条理な災害であっても、ハード面ではさまざまな補助金や交付金などで手厚く補償されるものの、個人の生活や精神的ケアにかかるソフト面の経費はなかなかつかず、生活や個人事業面では有効な対策が打たれないということを繰り返してまいりました。このため、生活の安心は保障されず、将来不安も解消されないという不幸を被災された方々が背負い続ける悲劇を引き起こしてもまいりました。
 私は、政府には、今この有珠山の噴火に関する対策を一つの契機として、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた、箱物中心の支援策から人間中心の支援策に転換するという考え方がぜひ必要だと思っています。そのためには、個人資産にかかわるものであっても柔軟に対応できる制度の整備を今から急ぐことが必要です。また、例えば仮設住宅について、従来型の考え方にとらわれることなく、ホテルや旅館を借り上げるなどという柔軟な対応をすべきだと考えますし、生活の糧を失った人々に対する支援策を迅速に講じていくべきであります。総理のお考えをぜひお聞かせ願いたいと思います。
 沖縄サミットを前にして、日米間には大きな懸案が未解決のまま残されています。昨年、クリントン大統領は、懸案を抱えては行きたくない、我々が沖縄へ行くまでに未解決の問題すべてが解決されていることを心から望んでいると述べました。
 いわゆる思いやり予算や日米地位協定の見直しも重要な課題でありますが、ここでは米軍基地の移設問題についてお尋ねをします。
 私は、米軍基地が沖縄に集中しているという現実こそ問題の本質であり、普天間飛行場の県内移設は、結局は根本的な解決にはなり得ないと考えています。沖縄県民が代替基地の使用期限を十五年に限るよう強く要求するのは当然のことだと思いますし、県民は基地問題の解決こそを強く望んでいるのです。米国との交渉はどこまで進んでいるのか、サミット前の解決は可能なのか、率直にお答えください。
 私は、沖縄サミットが全人類に果たし得る最大の貢献の一つが、重債務最貧国の債務救済であると思っています。
 昨年のケルン・サミットで、G7各国は、重債務最貧国に対するODA債権の全面放棄など、七百億ドルの債務削減を決定しました。にもかかわらず、議長国である日本だけがいまだにこのG7合意を実行しようとしておりません。そもそも、この問題がサミットの独立議題にすらなっていないこと自体が、議長国の怠慢であります。今世紀最大の負の遺産とも言える貧困問題に、今世紀最後のサミット議長国として、日本は大胆なイニシアチブを発揮すべきではないでしょうか。総理の御決断を求めます。(拍手)
 次に、環境問題についてお尋ねをします。
 今日、地球温暖化の問題は焦眉の課題となっています。こうした中で、昨日閉幕したG8環境大臣会合において、COP3の京都議定書の発効時期が大きな焦点となりましたが、米国の消極的姿勢もあって、必ずしも前進しておりません。当時の議長国であった日本が率先して取り組むべきこの問題に対する政府として、果たして、二〇〇二年のいわゆるリオ・プラス10までに、議定書実現に向けて国内法を整備し、批准の実現をする用意があるのかどうか、まずお伺いします。また、沖縄サミットでは、この問題に対してどのようなリーダーシップを発揮されるおつもりなのか、重ねて総理の決意を明らかにしていただきたいのであります。
 最後に申し上げたい。
 私は、しばしば自民党と民主党のどこが違うのかと質問を受けることがあります。私の祖父鳩山一郎は、公職追放決定直後の演説の中で、自由主義は人格の尊厳が真髄であり、民主主義は友愛精神が基調であると述べています。今、日本に、殊に日本の政治に人格の尊厳を尊重する風土があるでしょうか。人格の尊厳なき自由主義がわがままで放らつな自分勝手な無責任国家をつくり上げ、自立と共生を調和させる友愛精神なき民主主義が依存心あふれる護送船団国家をつくり上げてしまったのであります。
 現在の自民党は、もはや自由民主党とは名ばかりで、そこには真の自由主義もなければ真の民主主義もありません。あるのは、政官業の癒着構造の中で身動きのとれなくなった政治であり、口きき、手心、えこひいきの政治であります。社会のモラルが退廃をし、数多くの不祥事が起きているのはここに原因があるのです。構造改革はそのスピードこそが求められているのに、遅々として進まないのもこれが原因です。だから、経済も本格的な景気回復にはならず、財政健全化はその青写真すら示すことができないのではありませんか。私は、教育の最大のテーマもまさにここにあると信じています。
 民主党の生きる道はここにあります。私は、民主党の自民党との決定的な違いは、政官業の癒着構造から解放された若さゆえの覚悟にあると信じます。この覚悟を持つことによって、失われている、国として、日本人としての人格の尊厳の回復をなし遂げなければなりません。そして、自由の重さと自立と共生に基づく民主主義の価値を一人一人の心の中に根づかせていくことができると確信しています。そのことによって初めて、社会を構造腐敗から立ち直らせ、経済構造改革も財政構造改革もスピードを持って進めることができるようになるのです。体質の違いが政策の違いを決定づけるのです。
 世界の潮流は、極めて速いスピードで流れています。政治の変革をリードするのは国民の意識にほかなりません。隣の台湾でも、野党の陳水扁氏が次期総統に選出されることになり、長期政権の腐敗政治に終止符が打たれることになりました。日本だけが取り残されることは許されないのであります。
 森喜朗自公保融合政権が国民の審判を受けて成立した政権でない以上、選挙管理内閣として、一刻も早く衆議院を解散し、二十一世紀の日本の未来を国民の審判にゆだねるよう強く求め、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(森喜朗君) まず、鳩山代表から、小渕前総理に対しまして御丁重なお見舞いをいただきましたこと、厚くお礼を申し上げる次第でございます。また、ちゅうちょしながらでもありましたが、私に対しても祝意をいただきまして、まことに恐縮に存じております。
 小渕前総理の緊急入院につきまして、また、その後の総辞職に至る経緯についてのお尋ねでございますが、これについては何ら問題はございません。後ほど青木官房長官から御報告させます。
 首班指名に至る経緯については、自自公連立が前夜事実上解消されましたことを受けまして、その後の対応について党内で協議をしていたことは事実でございますが、後任の問題について話し合っていたことはございません。また、私が四月五日の衆参本会議場で内閣総理大臣に正当に指名されたものでありまして、正統性に疑義があるとの指摘は全く不適当であります。
 内閣総理大臣臨時代理についてのお尋ねでありますが、小渕前総理が緊急入院してから臨時代理が指定されるまでの間については、後ほど官房長官から経緯を説明いたしますが、事態の推移を見きわめながら対応してきたところであり、空白の三十四時間という指摘は当たらないと認識をいたしております。
 危機管理の問題について、首都直下型等大規模地震発生時において内閣総理大臣臨時代理をあらかじめ指定することとしたことを除き、歴代内閣が常に臨時代理を事前に定めてこなかったことは事実であります。
 森内閣として、より一層の危機管理の徹底を図る観点から、現在、内閣総理大臣に事故あるときまたは欠けたときの対応につき、あらかじめ内閣総理大臣臨時代理を置くことを含め検討を指示いたしておるところでありまして、可及的速やかにその結論を得て対処する方針であります。
 組閣に当たって保利国家公安委員会委員長を再任した理由について、御質問がありました。
 私は、病に倒れた小渕前総理の後を受けて総理に就任したものであり、前総理の敷かれた路線を継承し、また、行政にいささかの空白期間もつくってはならないとの認識から、前内閣の全閣僚にそのまま御再任をいただくことにいたしたものであります。
 国家公安委員会委員長は、警察庁を管理する国家公安委員会を代表する者として、国民の警察に対する批判を真摯に受けとめ、失われた警察に対する信頼の回復と国民の安全確保に向けて、まさに陣頭に立って全力を尽くして取り組んでおりまして、私も、それが最もあるべき責任のとり方ではないかと考えております。
 警察の信頼回復についてのお尋ねでありますが、昨年来、警察において不祥事案が相次ぎ、国民の信頼を著しく失墜させたことはまことに遺憾であり、警察は、失われた国民の信頼を回復すべく、必死に取り組まなければならないと考えております。
 今回の事案を契機に、警察の制度及び運営全般についての見直しの必要性が指摘されており、現在、これを受けて発足した警察刷新会議におきまして精力的に御議論されているところでありますが、国民の信頼を回復すべく、警察の刷新、改革を早期に行うことが必要であると考えております。
 もとより、治安の確保については内閣がその責めを負っているところであり、再びこうしたことが起こらないよう、私としても関係者を督励してまいりたいと存じます。
 教育改革についてお尋ねがございました。
 小渕前総理は教育改革を内閣の最重要課題として取り組まれてきましたが、私といたしましても、所信表明演説で述べましたとおり、前総理と同じ思いで教育改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 このため、広く国民各界各層の御意見を伺い、社会のあり方まで含めた抜本的な教育改革について議論していただくために発足した教育改革国民会議において、ことしの夏ごろまでをめどに中間報告を提出いただき、その後、広く国民の皆様の御意見を伺いながら教育改革を推進し、国民的な運動につなげていきたいと考えております。
 構造改革についてのお尋ねでありますが、日本経済の新生のためには、構造改革と景気回復を車の両輪として進める必要があります。このような認識のもと、政府としては、これまでも企業関連諸制度の改革、中小企業、ベンチャー企業の振興、技術開発の活性化、高コスト構造是正のための抜本的な規制緩和、金融システム改革等日本経済の構造改革を着実に実施いたしております。
 今後も、二十一世紀型社会資本の戦略的な整備や規制改革の一層の推進、科学技術の振興等の構造改革を強力に推進し、単に景気を立ち直らせるだけではなくて、本格的な景気回復と構造改革をともに実現するために、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
 人権問題に関して御質問がありました。
 御指摘のあった私の発言につきましては、それぞれ必ずしも私の真意ではない部分が報道された面がありますが、報道により関係者の皆様が不快感を持たれたとしたら、大変申しわけなかったことと思います。
 人権は、すべての人々が社会において幸福な生活を営むために欠かすことのできない権利であります。人権の擁護は憲法の柱であり、民主政治の基本でもありますので、政府全体として取り組むべき重要な課題と考えております。私といたしましては、二十一世紀に向けて、すべての人々の人権が尊重される平和で豊かな社会の実現を目指して、今後とも人権擁護行政を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 景気の現状及び平成十一年度の経済成長率についてお尋ねがございました。
 最近の我が国経済は、全体として需要の回復が弱く、厳しい状況をなお脱しておりません。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響から、景気は緩やかな改善が続いております。企業の活動にも積極性も見られるようになるなど、自律的回復に向けた動きが徐々にあらわれております。
 このように、我が国経済はおおむね政府経済見通しで描いた回復過程をたどっているものと考えており、平成十一年度はおおむね実績見込み程度の成長の実現を期待いたしております。
 雇用対策についてのお尋ねですが、一昨年四月以来、四度にわたる雇用対策が雇用失業情勢に一定の下支え効果を発揮しているものと認識しております。今後とも、政府全体で緊急雇用対策や経済新生対策等を積極的に推進し、国民の雇用不安を払拭するため雇用対策に万全を期してまいります。
 具体的には、厳しい雇用失業情勢の影響を強く受けている中高年の非自発的失業者や学卒未就職者を重点にした雇用対策、中小企業の創業支援や、大規模なリストラの実施により大きな影響を受ける地域における雇用創出対策等を行うことにより、雇用の創出、安定、再就職の促進、能力開発に全力を挙げて取り組んでまいります。
 財政健全化への取り組みについてのお尋ねでありますが、極めて厳しい我が国財政の現状を見れば、財政構造改革は必ず実現しなければならない重要課題であり、我が国経済が本格的な回復軌道に乗ることを見きわめた上で、速やかに取りかからなければならない課題であると考えております。
 ただ、まずは緩やかな改善を続けている我が国経済を本格的回復軌道に確実に乗せることが重要であり、それに向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 日本経済新生のためには、景気回復と経済の構造改革を車の両輪として進める必要があり、単に景気を立ち直らせるだけではなくて、本格的な景気回復と構造改革の二つをともに実現することが重要であります。政府としては、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくよう全力を尽くします。
 このため、先般成立した平成十二年度予算を円滑かつ着実に執行していくことが最大の景気対策であるとの認識のもと、その実施に尽力してまいります。雇用対策にも万全を期し、国民の雇用不安を払拭するよう努めてまいります。
 あわせて、二十一世紀型社会資本の戦略的な整備や規制改革の一層の推進、科学技術の振興などの構造改革を強力に推進し、また、IT革命を起爆剤とした経済発展を目指すなど、二十一世紀における新たな躍進を目指した政策に取り組んでまいります。
 東西NTTの事業者間接続料についてのお尋ねでありますが、米国の要求があるかどうかにかかわらず、従前から、その引き下げは長距離通話料金等の引き下げにつながり得ることから、積極的かつ主体的に取り組んでいるところであり、その引き下げの一層の促進を可能とするための改正法案を今国会に提出し、御審議をお願いいたしているところであります。
 また、御指摘のとおり、将来にわたって我が国の繁栄を維持発展させていくためには、国を挙げて情報通信の高度化に取り組むことが不可欠であり、ネットワークインフラの整備、情報通信技術の研究開発、人材育成など、情報通信分野に対する投資を加速、推進していくことが重要であると認識をいたしております。
 とりわけ、二十一世紀を担う子供たちが情報通信を十分に活用できる能力を身につけていくことが重要であり、政府としても、平成十二年度予算において、ミレニアムプロジェクトの重要な柱の一つとして教育の情報化を位置づけており、情報通信を十分に使いこなせる人材を育成するための重点投資も積極的に推進していきたいと考えております。
 有珠山噴火対策についてのお尋ねがございました。
 きょうまで、噴火前の避難措置により人的な被害は生じておりませんが、地元では約一万三千人の方々が十日を超える避難生活を余儀なくされておられます。まずもって、不自由な避難生活を余儀なくされている皆様に対して、心からお見舞いを申し上げる次第でございます。
 政府としては、避難されている方々の生活や生業に対するニーズにきめ細かく対応することが必要と考えており、これまでも、避難所における生活環境の改善、医療や心のケアの実施、応急仮設住宅の緊急整備への着手、生業資金の手当てなども行ってまいりました。今後とも、地元地方公共団体と協力し、避難者のニーズにこたえる施策に政府一丸となって全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 普天間飛行場の移設、返還問題についてのお尋ねがございました。
 政府としては、米軍施設・区域が集中することによる沖縄県の方々の御負担を軽減するため、SACO最終報告の着実な実施に引き続き最大限努力するとともに、普天間飛行場の移設、返還については、地元の意向も踏まえて取りまとめました昨年末の閣議決定に従い、適切に対処する考えでございます。
 普天間飛行場代替施設の使用期限の問題については、政府としては、閣議決定にあるとおり、国際情勢もあり厳しい問題があるとの認識を有しておりますが、稲嶺沖縄県知事及び岸本名護市長から要請がなされたことを重く受けとめ、これを河野外務大臣及び瓦防衛庁長官より米国政府関係者に対して取り上げたところでございます。
 政府といたしましては、今後、国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき米国政府と協議していく考えであり、あわせて国際情勢が肯定的に変化していくよう外交努力を積み重ねてまいりたいと考えております。
 なお、普天間飛行場の移設、返還問題については、政府としては、九州・沖縄サミットの開催を決定する以前から全力で取り組んできたものであり、サミットの開催と直接関連するものとは考えておりません。
 重債務貧困国の債務問題についてのお尋ねですが、ケルン・サミットで合意された債務救済イニシアチブの迅速な実施が急務であります。我が国といたしましては、この問題を含め、貧困削減等開発上の課題にサミット議長国として最大限の努力を払う考えであります。
 この関連で、本日、国際的な枠組みのもとでの非ODA債権の削減率の九〇%から一〇〇%への拡大や、世界銀行の多国間債務救済基金への追加拠出を含む二億ドルの新たな措置を発表いたしたところであります。
 京都議定書の批准と我が国の役割についてのお尋ねですが、我が国としては、二〇〇二年までの議定書発効を目指し、国内で各種温暖化対策措置を実施している一方、関係国による議定書締結を可能なものとするため、気候変動枠組み条約第六回締結国会議、COP6に向けた国際交渉の進捗状況等も踏まえつつ、総合的な国内制度の確立に向けて検討を進めてまいります。
 九州・沖縄サミットにおいて地球温暖化を具体的にいかなる形で取り上げるかについては、G8環境大臣会合の結果も踏まえ、今後、G8間で真剣に協議してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣青木幹雄君登壇〕
#6
○国務大臣(青木幹雄君) 鳩山議員にお答えをいたします。
 その前に、小渕総理の緊急入院に際し、各党党首、国会議員の皆さんを初め、国民の多くの方々から温かいお見舞いの言葉や励ましの言葉をいただき、心よりお礼を申し上げます。皆様とともに、小渕総理の一日も早い回復をお祈りいたしております。
 以下、私の、経緯について、三日間の対応をこの場で御説明を申し上げ、御理解と、また、御批判があれば御批判をいただこうと考えております。
 まず、私が小渕総理の入院の第一報を古川政務秘書官から受けたのは、四月二日午前二時ごろでありました。その報告内容は、過労のため入院、検査中です、心配するほどのことではありませんとのことでありました。
 その後、午前六時ごろ、主治医より私が直接報告を受けました。その内容は、検査の結果は、正式には本日、すなわち二日午後十一時ごろにはっきりしてくると思われるとのことでありましたので、正式に病状を見きわめてから発表すべきとの判断のもと、検査結果が出るのを見守っていたところであります。
 率直に申し上げて、一国の総理の病状の公表については、急いで対応する必要があると同時に、病状がわからない段階で、混乱を招くことがないよう慎重に対応する必要もあると私自身が判断をしたからであります。
 また、当日、四月二日には、総理御夫妻は二組の結婚式に招待されていたため、おめでたい席を欠席し、その原因が病気ということでは、結婚式の温かい雰囲気を壊してしまいかねないとの配慮から、それぞれの結婚式に招待されておられました橋本元総理及び綿貫議員に対し、総理が出席できなくなったので、新郎新婦に失礼のないよう対応してくださいとのお願いをいたしました。
 午後六時ごろ、古川政務秘書官より、中間的な検査の様子をお伝えしたいとの連絡を受け、私は、午後七時ごろ病院へ参りました。そして、短時間ではありますが、総理とお会いをいたしました。その際、総理より、有珠山噴火の心配もあり、何かあれば万事よろしく頼む旨の指示を受けました。
 私が午後七時三十分ごろ病院を出た後、午後九時前、医師より、総理の病状に急激な変化が見られ、集中治療室に入られた旨連絡を受けました。
 そこで、明日から直ちに政務に復帰することが困難になった場合に備え、古川官房副長官に、法的にどのような形になるか念のため調べておくよう指示をいたしました。
 なお、誤報がされております宮澤大蔵大臣への電話は、午後十一時半の記者会見の前にいたしました。総理経験者の大先輩でありますので、総理が入院された旨と、小渕総理の指示を受けておりますので、私が必要に応じて臨時代理を務めさせていただく旨を報告いたしました。それに対し大蔵大臣は、それは当然のことです、頑張ってくださいと私におっしゃいました。
 午後十一時半、私は記者会見で、小渕総理は、四月二日午前一時ごろ、過労のため順天堂病院に緊急入院された旨の発表をいたしました。
 記者会見後、総理が午後十一時三十分ごろ昏睡状態となられた旨、連絡がありました。私としては、四月二日午後七時に総理にお会いした時点で指示を受けておりますので、万一災害等の緊急事態が発生した場合には、その時点で直ちに臨時代理に就任し、内閣の責任を果たす準備は既に整えておりました。発表の時間が翌朝になりましたのは、深夜でもあり、できるだけ混乱や誤解を招かないために、翌三日の午前十一時の定例記者会見でこのことを行った次第であります。
 この会見で、総理が御心配なされておりますように、有珠山噴火対策など一刻もゆるがせにできない諸問題に対応していく必要があることなどの状況を総合的に判断して、午前九時に臨時代理をお受けしたことを発表いたした次第であります。さらに、総理の病状について、病名が脳梗塞である旨と現在集中治療室で治療を受けておられる旨、あわせて発表をいたした次第であります。
 また、同日午後十二時四十分の臨時閣議で、総理の病状及び臨時代理指定の報告を行うとともに、衆参両院議長に対して通知し、官報公告をあわせて行ったところであります。
 同日午後四時の記者会見において、医師団から聞いた病状、治療状況等について、意識レベルは昏睡状態、人工呼吸器による呼吸管理等、詳細に御報告をいたしました。
 翌日、すなわち四月四日になり、引き続き予断を許さない状態が続いていることから、同日午後二時半、最終的に政治的な判断をしなければならない責任を持っております私自身が順天堂病院に伺い、医師団から詳細に事情をお聞きいたしました。
 臨時代理の権限には限度があり、片時も政治に空白をつくらないためには、小渕総理の病状によっては一刻も早く本格的な内閣を発足させる必要があり、内閣総理大臣が欠けたときには、内閣総辞職しなければならないという憲法第七十条の規定の判断をする必要がありました。すなわち、小渕総理の病状がこの「内閣総理大臣が欠けたとき」に該当するか否かを確認する必要があったからであります。
 医師団から事情をお聞きした結果は、現在、意識状態は昏睡状態、人工呼吸器により人工呼吸を継続しております、血圧、脈拍などは安定しておられますが、脳梗塞による脳障害のため、質問を理解したり御自分の意思を表明なさることは当分の間困難であるとの判断をせざるを得ないということでありました。医師団の報告に基づく小渕総理の病状は、憲法第七十条に言う「内閣総理大臣が欠けたとき」に該当するものと判断をいたしました。
 こういった手続をきっちりととった上で、四月四日午後五時の記者会見で、その病状を発表するとともに、いっときも政治の空白をつくることができないとの観点から、同日午後七時に臨時閣議を開き、内閣総辞職を決意することを明らかにいたしました。
 以上が、私がとった、四月二日、三日、四日、三日間の対応のすべてであります。
 私といたしましては、全力を挙げて取り組んだつもりでありますが、危機管理の問題、連絡、公表等の問題で御批判があれば、当然、官房長官である私の責任であることは十分承知をいたしております。
 我が国の危機管理については、早急に検討しなければならない多くの問題があることをこのたび痛感いたしました。それだけに、この際、今後の危機管理について、万全の体制をつくる努力をしていかなければならないと私は考えております。
 小渕前総理は、今も重い病の床で病魔と闘っておられます。また、医師団、そして家族は全力を挙げて治療、介護に当たっておられます。できることなら静かに見守っていただきたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(伊藤宗一郎君) 野中広務君。
    〔野中広務君登壇〕
#8
○野中広務君 私は、森総理大臣の所信表明演説に対し、質問をいたします。
 質問の前に、有珠山の噴火活動に伴い、御不自由な避難生活を長く余儀なくされていらっしゃる地元住民の皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、災害救助のために、関係される市町村、消防、警察、自衛隊を初めとする、またボランティア等の各関係者の皆さんに厚くこの席をかりて御礼を申し上げます。(拍手)
 政府におかれましては、総理の陣頭指揮のもと、危機管理と安全確保、さらに復興対策等に万全を期していただきたいと思います。
 また、志半ばにして病に倒れ、病魔と闘っておられる小渕前総理の一刻も早い御回復を心からお祈りをし、その人柄に一言触れたいと思います。
 お人柄を象徴するものの一つに、ブッチホンがあります。だれかれとなくおかけになった電話は、世界の指導者、各界の重鎮は言うに及ばず、それよりもむしろ一般の多くの国民に直接語りかけるものでありました。
 私は少しお控えになってはと申し上げたことがあったのですが、小渕前総理には、電話での接触と対話は、国民の息遣いと気持ちのありようをみずから確かめる聴診器だったのかもしれません。絶えず国民の目線で政治に取り組む姿勢がそこにありました。
 常に庶民との触れ合いの感覚を忘れずに、一昨年来、金融危機、経済不況から脱するための諸施策を初め、多くの施策に粉骨砕身の努力を重ねてこられました。そのため、身も心もぼろぼろになられたのであります。まことに残念至極なことであります。
 先ほど鳩山議員から、小渕前総理の病気に触れて、お見舞いの発言をいただきました。しかし、小渕前総理の心と身をぼろぼろにした原因の幾つかが鳩山党首みずからの発言にあったことを思いますときに、私はあの発言を聞きながら、余りにも遺憾である発言と感じた次第であります。
 その小渕政治を引き継ぐことになられました森政権は、ぜひとも、小渕政治の真髄とも言える国民の心を心とする政治に邁進していただきたいと思います。
 このたび、自民党、公明党・改革クラブ、保守党の三党派による新たな連立政権が誕生をいたしました。この連立政権が何を目指すのかを国民に示し、安心感を培っていただくことが肝要と考えます。総理のお考えをお伺いいたします。
 私は、国民の皆さんのさまざまな不安を取り除き、安心感を持ってもらうことが政治の重要な役割だと考えます。
 以下、幾つかの課題についてお尋ねしたいと思います。
 総理、あと二百七十日余りで二十一世紀を迎えます。私は、今日ほど国民のすべての世代が不満と不安を持っている時代はないと痛感するものであります。それは政治の責任であり、政権政党の責任であります。
 まず最初に取り上げたいのは、この五十年余り日本を背負ってきた現在の高齢者の方々の問題であります。
 高齢者対策は一つではありません。第一は、六十五歳を過ぎてもなお健康で、現役として活躍をし、税金や社会保険料を納めてくださっている人たちに対し、感謝をしつつ、生きがいを持ってもらうのが一つであります。第二は、年金生活を送りながらも、ゲートボールやボランティア活動に励み、健康維持に頑張っておられる方々への施策。第三は、不幸にして一度は病気に倒れたけれども、一生懸命リハビリに励み、健康を取り戻そうと頑張っておられる人たちへの配慮であります。そして第四が、前段の努力が報われることなく、介護が必要となった人たちへの施策であります。
 介護保険がようやく始まり、大きな混乱もなかったと聞いております。今、高齢者と言われる人たちは、敗戦後の食うに食なく、住むに家なく、働く職もなかったあの時代から、必死にこの国を立て直す努力をして、今日の近代国家日本をつくり上げた人たちであります。しかし、この一年余り、高齢者対策といえば介護の問題一色であったために、議論が深まれば深まるほど高齢者にとって息苦しい感じを与えてしまいました。
 また、高齢者は総じて今後の人生に不安を持っておられます。一生懸命働いてためてきた預貯金の利子が、金融市場の安定化のためとはいえ、紙一枚ほどの薄い、低い金利に長年抑えられ、孫にお小遣いを上げたり友達同士で旅行をすることもままならない状態で、我が国の経済再建を図る必要を理解しようとしながらも、大きな不満を抱いておられます。
 そのほか、いつリストラに遭うかわからない、あるいは学校を卒業しても就職できない、数多くの不安と不満があります。
 これらの不満を解決するのが政治の責任ではないかと考えますが、総理の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。(拍手)
 我が国経済は、回復の兆候がようやく見えたとはいえ、依然として厳しい状況にあります。適切な景気回復が必要なことは言うまでもありませんが、同時に、現在、国、地方を通じた国債残高についても、将来あるべき方向を明示する責任があります。国民に痛みを分かち合っていただく意思表示をするときがやがて来ると考えます。
 そこで、きょう私が総理に申し上げたいことは、国民に新たな負担を求める前に、我々みずからが取り組まなくてはならない課題が余りにも多いということであります。これらは、安易な従来型の官僚主導の延長線上で解決することはできません。その意味で、総理が明年度予算編成を主導する決意を表明された意義はまことに大きいと考えます。
 そこで、私からも二、三提案をさせていただきます。
 一つは、公共事業を初めとする過去の実績方式をやめ、事業の大胆な見直しに着手することです。事業内容や進捗状況などを精査する第三者機関の設置などを検討し、国民のためになっているかどうかという視点で大改革を行うことであります。
 第二は、社会保障のあり方についてであります。局あって省なしと言われる今日の厚生省の状況を早急に改め、年金、医療、介護などの施策全般を総合的に、その負担のあり方を含めて、国民に明示しなければなりません。
 政治家として森総理に決断していただきたいことを申し上げます。
 一つは、我々国会議員が歳費を一割カットすること。これは議員各位にもお願いいたしたいと思います。次に、公務員の給与カット、特殊法人、公益法人への財政支出を目標年次をつけてなくしながら、可能な限り廃止し、または民営化し、必ず情報開示をしていくこと、租税特別措置を全廃し、非課税分野を含めた見直しを含め、負担の公平を図ること、ODAを根本的に見直すことなどであります。
 以上について森総理のお考えをお聞きしたいと存じます。
 今国会から両院に憲法調査会が設置をされ、憲法について論ずる機会が持たれました。私は、憲法は常に議論され、その時代に合った改正が行われるべきだと考えます。
 ただ、一方において、安全保障だ、有事立法だということが強調されますと、国民はどこか不安を覚えると思うのです。それは、中国を初めとするアジアの近隣諸国においても同様であります。
 そこで、森総理、私は、憲法論議の前に、我が国が今後再び武力をもって他国を侵略することはないという不戦の誓いをするべきだと考えます。お考えをお聞かせください。(拍手)
 小渕前総理は、昨年四月二十九日、万感の思いを込めて、徹夜の決断で、サミット、先進国首脳会議を沖縄県で開催する決定をされました。
 私は、小渕前総理のサミットにかけた情熱と、むごい運命によってもたらされたその無念さをよく知る一人として、サミットの成功を心から願っております。沖縄県を初め国民全体の皆さんの御協力をいただきながら、森内閣が最大限の努力を積み重ねられることを求めたいと存じます。また、沖縄県の振興や基地問題への取り組みについてもよろしくお願いをし、お伺いをいたします。
 同時に、サミット成功のためには、森総理は、今月終わり、ロシア訪問をお決めになりましたが、その足で、G8の首脳と会談し、信頼関係を結ぶことが重要だと考えますが、どう対応されるのか、お伺いをいたします。
 私は、質問の冒頭、自由民主党を代表してという言葉を使いませんでした。先輩、同僚議員の御了承を得られないものもあろうかと考えたからであります。
 ただ、あの戦争があと一年続いておるとするならば、私が今この壇上に立っていることはなかったと思います。偶然にも、命をいただき、生かさせていただいて、きょうの平和な日本をこの目で見、かつ知ることができる幸せを心から感謝をいたしております。
 しかし、昨今は、相次ぐ不祥事や犯罪が生じており、まことに残念でなりません。忘れられておる公共心や道徳を取り戻し、人が人として尊敬し合えるような人権が守られ、隣人愛がはぐくまれるような社会を手にしなければなりません。
 きょう四月十日という日は、四十一年前の現天皇陛下の御成婚記念日でもあり、また、五十三年前の昭和二十一年に女性の投票権が初めて行使された日であります。男性と女性が平等で、互いに活躍できる社会を一日も早く実現させたいと思います。
 今、この瞬間にも地球上で宗教や民族や国境の争いなどで、多くの人たちの命が失われ、傷ついている中、我々は、戦後一度も戦争に遭うこともなく、平和な暮らしを築いてくることができました。このことを感謝し、心から誇りにしながら、四季折々の美しい自然に恵まれた、愛する日本を取り戻していかなくてはなりません。
 来る新世紀の平和を、議場におられる二十一世紀を担っていかれる議員各位にお願いしたいと思います。
 今、政治に託されている我々がなさねばならないことは、国民に安心感を持ってもらい、お一人お一人に将来の夢と希望を語っていただくことだと思います。
 その意味で、総理が所信で表明した日本新生内閣が目指す、安心して夢を持って暮らせる国家、心の豊かな美しい国家、世界から信頼される国家は、政治の取り組みの道しるべだと言えましょう。そして、この道しるべのもとの政治のかじ取りに最大の責任を負っておるのが自由民主党であります。
 総理にお尋ねいたします。我々自由民主党は、みずからの足元を見詰め直すことなしにかじ取りを続けてもよいのでありましょうか。
 民意を幅広く吸い上げるための制度の点検や、政策目的の積極的な発信、説明努力に一層の力を入れる必要があります。党の要職を歴任され、天命をもってして国政の最高責任者につかれた森総理に、党総裁として党改革の断行を導いていただきたいと思います。
 自民党が変われば、日本の政治も変わるのです。まず、我々が身を切る痛みを避けてきたことを深く反省し、大きな自民党丸の船体に閉じこもり、変化を志向する波の中に鈍感であったことを認めるべきであります。そして、総理、おくれを取り戻すために、急いで改革に取り組むという決意を示し、真摯に努力していこうではありませんか。
 再生する自民党と、公明党・改革クラブ、保守党との連立は、国民の利益に結びつくと信じます。岐路に立った日本の命運につながる連立政権を、持てるだけの力を結集し、支えていくことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(森喜朗君) 冒頭、野中議員から、小渕前総理のお人柄と政治姿勢について御紹介がございました。
 世界の指導者や各界の有識者のみならず、広く国民の意見に耳を傾け、直接語りかける小渕前総理の政治姿勢は、国民の目線に立った政治を実践されるものでありました。小渕前総理が病に倒れられてから、官邸には、一刻も早い御回復を祈るお見舞いの声が全国から多数寄せられております。これも、小渕前総理の、国民の心を心とする政治にあらわれたお人柄によるものと言えましょう。
 また、私は、就任をいたしましてから、アメリカ大統領、フランス大統領等、カナダの首相、多くの皆様と就任のごあいさつの電話を交わしましたが、必ず冒頭に、これらの国々の首脳から、小渕総理の功績をたたえ、小渕総理の御病気に対して極めて心配をしておられるという、そうしたお電話のお話もございましたことも御紹介を申し上げておきたいと思います。
 私は、前総理のお人柄と政治姿勢に思いをいたしながら、前総理の志を引き継ぎ、国民とともに歩み、国民から信頼される政府を信条といたしまして、持てる力の限りを尽くし国政に取り組んでまいります。(拍手)
 連立政権のあり方についてのお話もございました。
 野中議員の御指摘のとおり、連立政権が目指すものを明確に示すことは、連立政権に対する国民の安心感を培っていくために重要であると考えております。
 前内閣は、安定した政権基盤のもとで速やかに意思決定を行うことが国家の発展と国民生活の安定を図る上で肝要だとの認識に立ち、広範な政治合意をもとにして、連立政権のもとで政策を進めてまいりました。その結果、これまで、平成十一年度、十二年度予算の早期成立、ガイドライン関連法、中央省庁等の改革法、地方分権一括法、国旗・国歌法などの重要法案の成立のほか、国家基本政策委員会の設置、政府委員制度の廃止、副大臣制の導入や衆議院議員比例定数の二十削減など、大きな成果を上げてまいりました。
 今般樹立した自由民主党、公明党・改革クラブ、保守党による連立政権は、これまでの成果を踏まえながら、強い信頼関係に立脚した安定した政局のもとで、二十一世紀への新しい日本の国づくりを目指した各般の政策を積極的に推進することを目的とするものでございます。
 現下の重要課題は、経済の新生と大胆な構造改革に挑戦していくことにあります。三党の強い信頼関係を基礎に、緊密な連携を図りつつ、三党一丸となって山積する課題に果敢に挑戦し、国民の皆様からの負託にこたえていく決意であります。
 介護対策についてのお尋ねがありました。
 敗戦後の苦しい時期を生き抜いてこられた高齢者の方々が、この国に生まれてよかったと思えるよう、介護が必要となった場合にも国民みんなで支え合う制度として介護保険制度を創設いたしました。昨年秋に決定した特別対策の実施をも含め、関係者の懸命な御努力により大きな混乱もなくスタートすることができましたが、今後、介護保険制度が国民に信頼される制度に育つように引き続いて努力してまいりたいと思います。
 低金利政策についてのお尋ねでありますが、低金利により、金利収入が減るなどの影響を受けておられる方々がいることは承知いたしております。他方、我が国経済は民需の動向が依然として弱い状況にあり、金利の低下が、企業や家計の借り入れ負担の減少等を通じ、設備投資や住宅投資、ひいては雇用等の面で景気の下支えに貢献していることも否定できないと考えております。
 いずれにいたしましても、金融市場調節方針の決定等の金融政策は日本銀行の所管事項であり、日銀政策委員会金融政策決定会合において、現在の景気や金融市場の動向等を総合的に勘案しつつ、適切な対応がなされているものと考えております。
 財政問題についてのお尋ねでありますが、先般成立した十二年度予算においては、御指摘の公共事業について、新たな発展基盤の構築を目指し、物流効率化による経済構造改革の推進、環境対策、少子高齢化対応、情報通信の高度化といった、我が国が直面する政策課題に対応した重点化を行っております。
 今後とも、予算編成に当たっては、野中議員御指摘のように、従来の予算配分の考え方にとらわれず、個別の事業、施策が効率的、効果的なものとなるように不断の見直しを行うとともに、二十一世紀のスタートに当たって、我が国の将来の経済社会の発展に真に必要となる施策、事業に重点的、効率的な予算配分が行われるように全力を尽くしてまいりたいと存じます。
 なお、事業及びその実施過程の一層の効率化を図るため、費用対効果分析、再評価システムの活用により、事業の各段階ごとに評価を実施するなど、事業内容や進行状況のチェックを今後ともさらに進めてまいります。
 社会保障についてでありますが、急速に少子高齢化が進行する中で、持続的、安定的で効率的な社会保障制度を構築していく必要があると考えます。
 このため、さきに設置されました社会保障構造の在り方について考える有識者会議の議論も踏まえ、給付と負担のあり方を含め、国民の理解を得ながら、年金、医療、介護など諸制度について、横断的な観点から検討を加えてまいりたいと思います。
 歳費の一割カットについてのお尋ねですが、厳しい財政事情の中で、前内閣に引き続き新内閣においても、総理及び各閣僚の俸給の一割を国庫に返納する等を実施していくことを、去る四月五日の初閣議においても申し合わせしたところでございます。
 国会議員の皆様方全般についての歳費をカットすることについては国会において御議論をいただくべきことであろうと思いますが、私個人といたしましては、国民に対して政治家としての姿勢を示すという意味において、極めて意義があるものと考えております。(拍手)
 国家公務員の給与についてのお尋ねですが、政府としては、公務員給与の改定に当たっては、従来から、国家公務員の労働基本権制約の代償措置の根幹である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って対処してきているところでございます。
 国家公務員の給与をカットすべきではないかとの御指摘の点については、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、ますます深刻化している財政事情も踏まえ、国政全般との関連を考慮した上、適切に対処する必要があるものと考えております。
 特殊法人等の問題についてのお尋ねでありますが、特殊法人について不断の見直しを行うことは、行政改革を進めるに当たっての重要課題の一つであると認識をいたしております。
 政府としては、昨年閣議決定いたしましたように、累次の閣議決定等を踏まえつつ、徹底して見直し、民営化、事業の整理縮小、廃止等を進めるとともに、存続が必要なものについては、独立行政法人化等の可否を含め、ふさわしい組織形態及び業務内容となるよう検討してまいる所存であります。
 また、特殊法人等に対する補助金等については、法人等の事務事業の整理縮小、廃止等の推進にあわせ、整理合理化に努めてまいりたいと思います。
 さらに、特殊法人の情報開示につきましては、財務諸表の公表などの改善措置を講じてきているところであります。引き続きディスクロージャーの推進を図ってまいります。
 また、公益法人については、主として国からの委託事業を行う法人の設立を厳に抑制しているほか、閣議決定により、財務諸表等の公開を行っているところであります。
 財政再建に関し、租税特別措置の全廃など、税制の見直しについてのお尋ねがありました。
 租税特別措置等については、その政策目的、効果などを十分吟味しつつ、公平性、中立性確保の観点から絶えず見直しを行い、整理合理化を徹底する必要があると考えております。
 いずれにせよ、財政構造改革については、まずは我が国経済が民需中心の本格的な回復軌道に乗ることを確認することが必要であると考えております。
 税制のあり方については、公的サービスを賄うために十分な税収を確保しつつ、公平、中立、簡素といった租税の基本原則に基づきながら、今後の少子高齢化の進展など、経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えます。
 ODAのあり方についてもお尋ねがありましたが、我が国のODAは、国際社会の安定と発展に資するとともに、途上国と密接な相互依存関係にある我が国の国益にも資するものと認識いたしております。一方、我が国経済が厳しい状況にあることは十分認識をいたしており、今後とも改革のための努力を続け、効果的、効率的な援助を実施することにより、ODAに対する国民の理解と支持が得られるように努めていきたいと考えております。
 憲法論議の前に、二十一世紀を目前にして不戦の誓いをすべしとの御意見がございました。
 確かに、憲法のあり方については、国会の場を含め広く国民の間で議論を行う一方、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの戦後一貫した我が国憲法の基本理念を堅持していくことが重要であります。これは、野中議員の言われる不戦の誓いにまさにほかならないのでありまして、私としても、このような方針のもとで、世界の平和と安定のため積極的に貢献してまいりたいと存じます。
 本年の最重要の外交課題の一つである九州・沖縄サミットの成功といった、沖縄に関連する諸課題への対応について御質問がございました。
 私としましても、九州・沖縄サミットでは、万感の思いを込めてその開催を決定された前総理の基本的なお考えを踏まえ、二十一世紀がすべての人々にとってよりすばらしい時代となるという希望を世界の人々が抱けるような、明るく力強いメッセージを発信したいと考えております。
 また、日本でサミットが開催されるのはことしで四回目でありますが、ことしは東京以外での地方、しかも沖縄という重要な場所で初めて開くサミットであります。私も沖縄には相当の思いがあり、この機会に沖縄を世界に発信し、かつ、さまざまな形で沖縄の発展につながる機会になることを期待いたしております。政府といたしましては、G8各国ともよく相談をし、また、沖縄県等の各自治体とも緊密な連絡をとりつつ、サミット成功のために万全を期してまいります。
 また、政府といたしましては、米軍施設・区域が集中することによる沖縄県の方々への御負担を軽減するため、引き続きSACO最終報告の着実な実施に最大限努力するとともに、地域の振興といったその他の諸課題にも全力で取り組んでまいります。(拍手)
 サミット成功のため、G8の首脳と会談し、信頼関係を結ぶべきとの御提言がございました。議員も御指摘のとおり、サミット成功のためには、その前にも各国首脳との会談を行うことも含め、緊密な信頼関係を築いてまいりたいと考えております。
 最後に、自由民主党のあり方についてお話がございました。
 私は、総理就任以前は、自民党幹事長といたしまして、小渕前総裁を補佐して党の改革に取り組んでまいりました。政権を担う責任政党である自民党には、国民の意思を幅広く吸い上げるとともに、政策を積極的に国民に説明し、理解を求めていくことが特に求められております。変化に鈍感であったり、憶病であったりしてはなりません。私は、自由民主党総裁としても、国家国民を第一に考えながら党改革を断行していきたいと考えております。
 野中議員におかれましても、自民党幹事長として党改革に御尽力いただくことを心からお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
#10
○副議長(渡部恒三君) 坂口力君。
    〔坂口力君登壇〕
#11
○坂口力君 私は、公明党・改革クラブを代表いたしまして、森内閣総理大臣の所信表明演説に対する若干の質問を申し上げたいと存じます。
 質問に入ります前に、志半ばで病に倒れられました小渕前総理に、心からのお見舞いを申し上げる次第でございます。
 非常事態というまことに厳しい経済状態を双肩に担いながら、健康を顧みず悪戦苦闘の毎日を送られた小渕前総理の心情に思いをいたしますとき、まことに残念であり御同情のほかありません。いろいろの批判を受けながらも、毅然として経済対策を打ち続けられましたその成果が、今日の景気回復に結びついていることは間違いなく、後世において小渕前総理の功績は高く評価されるものと確信をする次第でございます。一日も早い御回復を心からお祈り申し上げます。(拍手)
 また、後になりましたが、北海道における有珠山の噴火によって大きな被害を受けられ避難生活を送っておられる一万三千余人の皆さんに対して、お見舞いと激励を申し上げますとともに、四十七都道府県における救援募金、あるいはまた現地救援事務所の設置等、党派を挙げて御支援を申し上げる決意であります。また、政府に対しましても、皆さんの健康管理などに最善の努力を求めるところでございます。
 さて、森総理に対しましては、お祝いを申し上げるというよりも、突発的な出来事の中で準備の暇もなく大任を受けられましたことに、むしろ激励と応援の言葉を贈りたいと存じます。森総理は、ラグビーで鍛えられた立派なお体ではありますが、激務の中でありますから、健康に御留意の上、山積する諸課題にお取り組みを願いたいと存じます。(拍手)
 森総理は、日本新生内閣を掲げられ、安心して夢を持って暮らせる国家を強調されました。御主張には全く同感でありますが、現実には困難の多いことも覚悟しなければなりません。
 まず第一に、日本を新生させるためには多くの構造改革が必要であり、いずれも痛みを伴うことばかりであります。
 最優先課題として、経済を自律的回復に乗せなければならず、情報化と国際化の中で、日本が高コストで収益性の低い国になっている現状をどう克服するかであります。
 IT革命は世界の流れであり、日本も積極的に取り入れ、先行するアメリカを大幅に上回るスピードでキャッチアップしていくことが不可欠であります。しかし、IT革命の前に、土地や事務費、エネルギー費、運輸費、通信費など、基礎的経費が世界水準を上回る高コスト体質になっていることをどうするか、ここにメスを入れることなしに、日本は勝ち組として生き残ることはできません。
 日本総研の藤井研究員など研究者の指摘によれば、農業革命や産業革命後の時代におきましては、土地、労働力、資本、国境など、物理的生産要素が経済力を決定してきましたが、情報技術革命では、物理的生産要素の決定力が完全に低下をしてしまいました。低コストのところを求めて企業や個人が国や地域を選択する時代であり、高コストの国は企業立地上回避され、収益性が悪ければ日本に存立する理由はなくなり、空洞化が進んでしまいます。総理が御指摘のとおり、日本社会の構造改革がさらに必要であります。
 しかし私は、現在日本で進んでいる規制改革や行政改革のスピードでは、諸外国に打ち勝ち、勝ち組として生き残ることは極めて難しいと考える一人であります。景気の足取りにいま一つスピードが感じられないのは、システム改革のスピードが影響しているように思います。
 特に、情報通信分野の規制改革が必要であり、例えば通信・放送関連には三百十五の許認可があると言われております。森総理の改革に取り組まれる決意をお伺いいたします。小渕前総理は電子政府の確立を叫ばれましたが、森総理はどのようにお考えになっているかもあわせてお伺いをしたいと存じます。
 さらに、同研究員の分析によれば、九年間に及ぶアメリカ経済の牽引力は、IT産業分野において、その主体は大企業ではなく、ベンチャー企業を含む中堅、中小企業であり、地域別には、大都市経済ではなくて地方経済が主役を演じてきたのであります。大都市や大企業よりも、地方経済や中堅、中小企業の低コストが価値を認められているのであります。
 しかし、日本の場合、大都市と地方都市との比較において、物価水準の格差は小さく、地方や中小企業は一層厳しい経済状況に置かれております。地方分権を推進し、地域間競争が自由に行える体制が必要になります。この点につきましても、総理の御決意を伺います。
 第二の問題は、雇用対策であります。
 安心して夢を持って暮らせる国家を形成するためには、年金、医療、介護など社会保障の備えが重要であり、雇用の満たされることが何よりも大切です。少子化が進み、高齢者が増加する中で、将来の社会保障を安定させるためには、保険料を支払う側の人口を増加させる必要があります。そのためには、どうしても六十歳代現役社会、子育て・雇用両立社会を確立して、高齢者や女性の雇用環境を拡充する以外に道はありません。私たちが子育て対策に真剣になっているのはそのためであります。問題は、その雇用を確保することができるかどうかにかかっています。
 労働省の試算によれば、二〇一〇年まで年平均二%の経済成長が続いたといたしましても、二〇一〇年には、労働力人口に対しまして約三百万人の就業者減になると推定されております。すなわち、二〇〇〇年の労働力人口は約六千八百万人であり、二〇一〇年には七十万人減少いたしまして約六千七百三十万人、しかし、就業者数は約六千四百四十万人になるというのであります。とりわけ製造業就業者は、一九九〇年をピークに減少に転じ、今後もさらに減少を続ける見込みであり、ピーク時に比較して約三百万人の減少になります。IT産業が成熟し、デジタル革命が起こったといたしましても、企業の効率化が進み、必ずしも雇用拡大に結びつかないことを示しております。
 もし雇用が拡大しなければ、六十歳代現役社会、子育て・雇用両立社会も絵にかいたもちになってしまいます。過去のように、景気が回復すれば雇用はよくなるという安易な考え方は捨てなければなりません。
 IT革命も、今までの仕事内容をITに置きかえるだけでは雇用が減少するばかりであります。新しい仕事内容をITを利用しながらどう創造するかにかかっています。ベンチャー企業の育成にどう立ち向かうかが、将来の社会保障を安定させるためにも、また、経済を長期安定軌道に乗せるためにも、必須の条件になってまいります。
 大学と地域経済の連携や、ベンチャー企業へのきめ細やかな支援などがすべてを決すると言っても過言ではありません。どのようなデザインを描こうとしていられるのか、お伺いをいたします。
 さらに、国が対応しなければならない問題は、IT産業の成熟に連動して雇用形態の多様化が見られることであります。日本の雇用形態は、伝統的に終身雇用、年功序列型を特徴としてきましたが、IT革命はその伝統を破壊しつつあります。
 私たちは、長い習慣の中で、正社員として雇用されることが最善であり、パートや派遣業で就業することや業務委託で仕事をすることは次善の策であり、労働として低く位置づける傾向がありました。しかし、IT革命以後は、積極的に派遣業などの雇用形態を好み、業務委託契約など多様な働き方を望む人々がふえていることを直視しなければなりません。我が国でも派遣業法の改正などが行われてまいりましたが、さらに一段の雇用関係法案の整備が必要であると思いますが、御所見を伺いたいと思います。
 第三には、総理が循環型社会の構築を取り上げていただきましたことに感謝申し上げます。
 公明党・改革クラブとして循環型社会形成推進基本法案を作成し、現在、与党内で調整中であります。堺屋太一経済企画庁長官のもとでも、二十一世紀の経済社会システム研究プロジェクトを開催されまして、その中の大きなテーマとして循環型経済社会の構築を掲げられております。
 堺屋長官の言葉をかりれば、個々のごみ処理や有害物質の除去の問題ではない、全社会的にいかなる仕組みをつくれば、天然資源の再利用を経済的にも美意識の上でも成り立つようにすることができるかという問題であると述べられ、さらに、使い捨ての社会を使い込みの社会に変えることであると言われております。すなわち、社会の構造、価値観を変える壮大なテーマであり、しかも、早く着手しなければ間に合わない問題でもあります。別な言葉で語れば、環境立国として日本が世界をリードすることのできる分野であり、新素材、新設計、新製品を創造する動機づけになり、新産業革命が待ち受けており、雇用を大きく拡大する分野でもあります。公明党・改革クラブが最重要視していますのも、ごみ処理はもちろんのこと、日本に新しい産業を創造させ、世界をリードすることのできる分野であると実感するからであります。
 この循環型経済社会の確立も、今までの大量生産、大量消費、大量廃棄の社会を転換することであり、痛みを伴うことであるだけに、急激な変化を快しとしない風潮があります。総理の強い決断があって初めて可能になるテーマであります。どうか、ラグビーのフォワードのごとく総理が前進していただきますよう、心から御期待申し上げるところであります。御決意をお伺いしたいと思います。(拍手)
 第四点目は、財政再建であります。
 私たちは、経済再建なくして財政再建なしの考え方に立ち、平成十二年度予算においては積極的財政路線を前面に打ち出してきました。そのことは、民需主導の景気回復を図る意味において重要なことであり、正しい選択でありました。
 しかしながら、財政再建を視野に入れながら、次の一手を考えるときが来ていることもまた事実であります。総理は、「みずからの主導で、二十一世紀のスタートにふさわしい予算編成を行ってまいりたい」と述べられております。「みずからの主導で」という七文字が光っておりますが、その中身の一端をお聞きしたいと思います。
 どれほど思考を重ねましても特別な妙手があるわけではなく、経済のパイを大きくして相対的に財政赤字を縮小させること、さらなる行財政改革を断行して歳出を制限すること、そして最後に歳入が増加する方法を考えること等に集約されてまいります。
 いずれにいたしましても、財政再建の入り口はさらなる行財政改革の断行であり、とりわけ、補助金制度の見直しや、地方政府に対する交付金制度のあり方を再検討するなど、どこまで思い切って取り組むかが連立森政権の評価を決すると考えますが、所見を賜りたいと思います。
 警察法の改正につきましても、一言だけ触れておきたいと思います。これだけ世間を騒がせ、国民の信頼を裏切ったのでありますから、どうしても今国会で法改正を断行しなければなりません。総選挙の混乱に隠れて先延ばしをしようとすることなどは、もってのほかであります。関係者のさらなる努力を求めます。
 最後に、森内閣は選挙管理内閣であるとの報道が目立ちます。総理としては恐らく不本意な記事ではないかと思いますが、そのような報道を吹き払う言葉があれば、お聞きをしたいと思います。
 衆議院議員の任期は十月十九日までであり、任期は残り少なくなりましたが、政治の重要性は、その長さではなく質が問われるのであります。国民の審判を受けるまでの残された期間に、充実した、質の高い一日一日を続けなければなりません。
 与野党ともに、総理の足を引っ張るようなことがあってはなりません。全魂傾けて御支援申し上げることをお約束申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(森喜朗君) 坂口議員からも御懇篤なる御激励をいただきまして、心からお礼を申し上げる次第でございます。
 坂口議員は自自公連立の政策面での中心になって、大変な御苦労をいただきました。当時、幹事長といたしましても、心から敬意を表しておりました次第でございます。引き続き、自公保の新たな連立に際しましても、どうぞ、政策の合意を求めていきますための牽引車的役割を果たしていただきますように、また政策が遂行されてまいりますように心からお力添えを賜りますように、お願いを申し上げる次第でございます。(拍手)
 構造改革に取り組む決意についてのお尋ねでございました。
 構造改革の推進は、経済を活性化し、強靱な経済基盤を中期的に確立させるために重要なものであります。これまでも積極的に取り組んできたところでございます。
 議員御指摘の情報通信につきましては、日本経済新生の原動力として大きな役割を果たし得るものであり、こうした観点から、電気通信分野における参入規制、外資規制及び料金規制の緩和等、積極的な規制改革を講じてきたところであります。今後も、情報通信分野における競争環境整備を初めとする経済の構造改革に大胆かつ積極的に取り組むとともに、地方分権の推進や来年一月の中央省庁再編の実施を通じ、行政改革を徹底的に推進してまいります。
 電子政府の実現についてお尋ねがありました。
 従来から、政府におきましては、各省庁の行政手続の電子化を進めてきたところでありますが、これを飛躍的に前進させるため、昨年の十二月十九日、小渕前総理は、ミレニアムプロジェクトの一つとして電子政府の実現を打ち出し、政府は二〇〇三年までに、民間から政府、政府から民間への行政手続を、インターネットを利用し、ペーパーレスで行える電子政府の基盤を構築することといたしております。
 私といたしましても、我が国における高度情報通信社会の実現のためには電子政府の実現は極めて重要なことと考えており、世界でも最高水準の電子政府の実現に向けて積極的にこのプロジェクトの推進に取り組んでまいりたいと考えております。
 地方分権を推進し、地域間競争が自由に行える体制を構築すべきとのお尋ねがありました。
 地域間競争による地域経済の活性化については、地方分権を推進するとともに、地域資源の有効活用等により地域独自の産業を創出し、その競争力の強化を図ることが重要であります。
 このため、私といたしましては、引き続き、地方公共団体が地域の意向を踏まえた特色ある行政を展開できるよう地方分権を推進するとともに、中小企業のさまざまなニーズに合わせたきめ細やかな施策を実施し、中小企業の自助努力を支援してまいりたいと考えております。
 ITを活用するものも含めたベンチャー企業の育成についてのお尋ねですが、我が国の経済活力の維持、向上のためには、ベンチャー企業の育成を通じた新たな事業の創出や雇用機会の確保が重要であります。
 これまでにも産学を結ぶ技術移転機関等に対する支援、地域における新事業創出のための総合的支援体制の整備等の措置を講ずるほか、ベンチャー企業向けの出融資制度の充実、人材確保の円滑化を図るためのストックオプション制度の拡充等の措置を講じてきたところであります。
 今後とも政府としては、大学や地域経済との連携も図りながら、自律的にベンチャー企業が育成されるよう、資金、人材及び技術の各方面から総合的な施策を講じてまいります。
 雇用形態の多様化に対応した雇用関係法令の整備についてでありますが、議員御指摘のとおり、労働者の多様な選択肢の確保等の観点から、広範な業務分野で労働者派遣事業を行うことができるようにするとともに、派遣労働者の保護措置の拡充を図ることを内容とする労働者派遣法を昨年十二月から施行いたしております。今後とも、雇用形態の多様化等に対応して、労働者派遣法を初め雇用関係法制の不断の見直しに努めてまいります。
 循環型経済社会の確立についてのお尋ねでありますが、大量生産、大量消費、大量廃棄という経済社会のあり方や国民のライフスタイルを見直し、環境への負荷の軽減を図るためには、循環型社会の構築が不可欠であります。循環型社会の実現により、喫緊の課題である廃棄物・リサイクル問題の根本的解決が図られ、同時に、これが新しい産業の創造につながるものと考えております。
 私は、このような認識に立ち、循環型社会構築の基本的な枠組みとなる法案を今国会に提出すべく、政府・与党一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
 財政再建についてのお尋ねでありますが、極めて厳しい我が国財政の現状を見れば、財政構造改革は必ず実現しなければならない課題であり、我が国経済が本格的な回復軌道に乗ることを見きわめた上で、速やかに取りかからなければならない課題であると考えております。
 議員御指摘の補助金制度につきましては、社会経済情勢の変化、官と民及び国と地方の役割分担のあり方等を踏まえ、スクラップ・アンド・ビルドの原則の徹底等、整理合理化を積極的に推進しております。
 また、地方交付税につきましては、地方団体間の財政格差の調整、各地方団体が責務を果たすための財源保障といった重要な機能を果たしており、その所要額の安定的な確保に努めているところであります。
 こうした点も踏まえ、財政構造改革につきましては、単に財政のみの問題にとどまらず、税制や社会保障のあり方、さらには中央と地方との関係や経済社会のあり方まで視野に入れて取り組むべき課題であると考えております。
 いずれにいたしましても、予算編成につきましては、先般申し上げましたように、私みずからの主導で行ってまいりたいと考えております。
 警察法の改正を今国会で断行すべきとの御意見でありますが、警察において不祥事案が相次いで発生していることは極めて遺憾であり、国民の信頼を回復すべく、警察の刷新、改革を早期に行うことが必要であると考えております。
 法案の取り扱いについては、国会、警察刷新会議等、各方面における御論議の推移を見つつ、適切に対処してまいる所存であります。
 最後に、この内閣が選挙管理内閣であるとの報道についての御指摘がございました。
 私は、この内閣を選挙管理内閣とは考えておりません。小渕前総理が突然の病に倒れ、その後を受けて政権を担うことになった私としては、小渕前総理が全力を挙げて取り組んでこられた経済新生を実現することが重大な責務であると考えております。
 まずは、予算の早期成立の効果を減殺しないためにも、予算関連法案の早期成立に全力を尽くし、予算の速やかな執行に万全を期していく決意であります。
 また、北海道有珠山噴火対策について、対応に遺漏なきを期することはもちろん、九州・沖縄サミットの成功に向け、議長国としての主体性が発揮できるよう準備に万全を期すことなど、山積する課題に果敢に取り組み、国民の皆様の負託と信頼にこたえていく決意であります。
 こうした内閣一体となっての努力により、選挙管理内閣との指摘を払拭してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○副議長(渡部恒三君) 枝野幸男君。
    〔枝野幸男君登壇〕
#14
○枝野幸男君 私は、民主党を代表し、森総理大臣の所信表明演説に対して質問をいたします。
 冒頭に当たり、突然の病に倒れられ、闘病生活を続けておられる小渕前総理とその御家族の皆さんに対し、私からも心からお見舞い申し上げます。
 小渕前総理は、病に倒れるまで、総理としての責務に全力を尽くされました。私は、野党としての責務に全力を尽くすことこそが、何よりものお見舞いであると信じるものであります。
 すなわち、与野党それぞれが、みずからの信じるところに従って全力を尽くして政策論争を繰り広げること、これが小渕総理の意思にこたえるものである、私はそう信じるところであります。(拍手)
 それにもかかわらず、先ほどの野中氏の発言は何でありましょうか。公党の党首がお互いに政策論争をぶつけ合ってきたことに対し、それが病気の一因だなどと本会議場で発言することは、余りにも品位に欠け、非人間的な発言であり、民主主義の政策論争を否定する極めて卑劣な行為であります。小渕前総理の病に対する国民の同情を利用するような発言は、小渕総理に対しても、私は極めて不謹慎であると思います。(拍手)
 この発言を聞いて、総理はどうお感じになったのか、率直にお答えいただきたいと思います。
 さて、私は、日本の抱えるさまざまな問題点の中で最も深刻かつ本質的であるのは、法治主義の崩壊であると考えます。日本がルールなき社会となっているのであります。
 その象徴的な問題として、私も、小渕前総理の急病という緊急事態におけるうそとごまかしについて異議を唱えざるを得ません。
 青木官房長官は、四月二日午後七時ころ、小渕前総理から臨時代理を務めるよう指示され、そもそも、何かあったら万事よろしくというのが本当に臨時代理の指名に当たるのかどうか疑問でありますが、その直後である午後七時三十分ころ、容体が急変し、昏睡状態に至ったと述べておられます。
 しかし、村上正邦氏の講演によれば、二日午後十時ごろから、村上氏と青木官房長官を初め、森総理御自身も加わられた五人で協議し、臨時代理について決定したとされています。宮澤大蔵大臣も、先ほどの青木長官の答弁とは異なり、この時点で官房長官から臨時代理就任の打診を受けたとマスコミに明言されておられます。官房長官の説明が真実ならば、こうした協議や打診がなされるはずはありませんし、そもそも、その重大な指示は、午後十一時の記者会見で発表されなければなりません。
 森総理を含む五人の政府・与党幹部は、小渕前総理が昏睡状態であることを利用して、その指示をでっち上げ、首班指名に次ぐ国政の最重要事項を私し、つじつま合わせのためにうそをついているとしか言いようがありません。(拍手)
 もし、村上氏や宮澤大蔵大臣の発言がうそであると言い張るのであるならば、政府の正統性を疑わせる重大な発言を放置せず、大蔵大臣と自由民主党参議院議員会長の辞職を求めるべきであります。総理大臣の具体的な認識と対応策についてお尋ねいたします。
 そもそも、この間の不信は、医師団にその病状、経緯について発表をさせないところから生じ、混乱を呼んでおります。少しでも不信を払拭するために、森総理は、今からでも、小渕前総理が総理大臣であった間の病状及びその経緯について国民に発表するよう、医師団及び御家族に要請すべきであります。
 もちろん、総理を退任された現在の御病状については、御家族のお気持ちなどもしんしゃくし、一定の配慮がなされるべきであります。しかし、一億三千万国民の安全を一身に背負っていた総理在任中について疑念や不信を生むことは、小渕前総理も真意ではないはずです。総理の見解を求めます。
 相次ぐ警察不祥事も取り上げなければなりません。
 大部分の警察官の皆さんは、今もまじめに努力されていると信じますが、このように不祥事が続いては、警察全体への信頼が揺らぎ、ひいてはモラルハザードの蔓延につながりかねません。対策は急を要します。
 第一の問題は、新潟県警不祥事への国家公安委員会の対応です。
 国家公安委員会は、不祥事への対応を、会議を開かないいわゆる持ち回り方式で決定し、これを正当化しました。しかし、警察法は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ会議を開き、議決することができないと明確に規定しています。いかなる詭弁を弄しても、正当化は不可能です。公安委員会がルール違反にほおかむりをするようでは、法治国家の自殺行為です。牽強付会の解釈を改め、責任を明確にしなければ、公安委員会への信頼は回復しないと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 第二は、森総理もかかわる石川県公安委員の加納氏に関する問題です。
 加納氏は、平成十年九月三十日まで、約二年間にわたって森総理の後援会長を務め、退任からわずか三日後、石川県公安委員に就任しました。また、公安委員在任中の本年三月五日、金沢市で開催された森総理のパーティーに出席し、乾杯の音頭をとっています。
 公安委員会は、政治的中立性を確保するための制度です。直前まで特定政治家の後援会長であった者は、仮に公安委員に推薦されたとしてもそれを断るべきでありますし、森総理の立場からも断るよう促すのが当然であります。また、政治家のパーティーは、選挙運動そのものではありませんが選挙を見通した重要な政治活動です。そこに堂々と出席し、乾杯の音頭までとった感覚は、公安委員として失格であると言わざるを得ませんし、これを依頼した森総理の見識も疑わざるを得ません。
 総理はどのような責任をとられるのか、答弁を求めます。
 第三は、警察改革の焦点である外部監察制度の導入について、政府・与党の一部からこれを否定する声が出ている問題です。
 現在、警察庁のいわゆるキャリアは全体で約四百人、同期が二十人前後の閉ざされた世界です。身内意識が生じないとしたら、その方が不思議です。現実に、新潟県警に対する特別監察など、内部監察が機能しなかった例は枚挙にいとまがありません。警察以外の不祥事については警察という外部チェックが働きますが、警察を取り締まる警察は存在しないのです。だからこそ、外部監察の導入は不可欠なのです。総理の具体的な見解をお尋ねします。
 第四は、桶川で、将来ある女子大生がいわゆるストーカーの手にかかって殺害された問題です。
 警察に訴えても助けてもらえない、しかも調書の改ざんまでしている。国民は一体だれに守ってもらったらいいんでしょうか。総理及び国家公安委員長は、殺害された女性とその御遺族にどうおわびをし、また、再発防止のために何をなさるのでしょうか。明確なお答えを求めます。
 これに関連して、民主党は、既にストーカーの処罰に関する法律案を取りまとめ、今週中にも国会に提出する予定です。また、犯罪被害者に対する経済的支援と精神的な支援についても盛り込んだ犯罪被害者支援基本法案も、先週末に提出しています。これらの法律は一刻も早い成立が必要であると考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか。
 警察問題の最後に、昨年、強行採決の末に成立した盗聴法についてお尋ねします。
 明るみになった一連の不祥事の中には、証拠の隠ぺいやでっち上げのような事案も含まれています。こうした現在の警察に、盗聴という強力かつ危険な権限を認めてよいのでしょうか。盗聴法は直ちに廃止すべきであり、少なくとも、警察改革が断行され、その信頼が回復するまでの間、その施行を延期すべきであります。総理の御見解をお尋ねします。
 白川代議士の秘書らが交通違反のもみ消しで逮捕された事件は、古い政治がみずからルール違反と不公正に手を染めてきたことを改めて白日のもとにさらしました。
 ところが、自民党の複数の幹部は、今回の事件を反省するどころか、個別の交通違反に関する問い合わせくらいならば正当な行為であるとの発言をしています。行政が、把握する個人情報を当事者以外に教えることは、原則として公務員法違反の犯罪であり、問い合わせること自体、その教唆に問われかねない問題です。
 こうした問題発言をする方が与党の責任ある地位にあることをどう考えるのか。また、こうした政治の体質を抜本的に改めるため、民主党が制定を強く求めてきたあっせん利得罪の導入を急ぐべきではないのか。さらに、総理の事務所は個別の交通違反に関する警察への問い合わせなどをしたことはないのか。御答弁を求めます。
 森総理は、倫理観と道徳心を強調して、創造性豊かな立派な人間を育てると述べられました。このこと自体は、私もおおむね同感であります。
 しかし、そもそも、倫理観と道徳心を失い、違法行為やルール違反すれすれの行為を繰り返してきたのはだれでしょうか。
 先週金曜日の新聞に、高校生が最もなりたくない職業は政治家であるとの記事が掲載されました。悪いことばかりしている、うそつきばかりというのが、私たち政治家に対する子供たちのイメージです。ルールが軽視される不公正な政治を省みるとき、私は、こうした子供たちの声に対する有効な反論の言葉を持ち得ません。
 本当に教育を考えるのであるならば、まずは大人が、特に政治が、ルールを守りうそをつかないという倫理と道徳の基本をみずから実践すべきであります。ルール無視の政治、癒着による不公正な政治の中心を歩んでこられた森総理がいかに声高に倫理や道徳を訴えても、説得力を持たないどころか、生まれるのは反発だけであると考えますが、いかがでしょうか。
 そもそも、総理の教育に対する認識は甘過ぎると言わざるを得ません。現在の教育は、安心して学校に行くことすらできない状態に陥りつつあります。教育の場で傷害事件や恐喝事件が繰り返され、教師による生徒に対するセクシュアルハラスメントのニュースがしばしば報道されています。学校には行けない、行かないという不登校の生徒、児童も、一部の問題ではありません。
 文部省を頂点とする上意下達型の管理教育が強化されるのに伴い、強い者にはこび、弱い者には強く出る体質に染まることを、教師も子供たちも余儀なくされてきました。これを潔しとしない子供たちと、他にはけ口のない最も弱い子供たちに、今そのしわ寄せが集中しているのです。長年にわたり文教行政の中心にあって、こうしたひずみをつくり出してきたのは森総理御自身です。
 まずは、安心して登校できる学校を取り戻すこと。そのために、まずはこれまでの文教行政を反省すること。文部省による中央集権的管理強化教育を、地域社会、保護者、学校の三位一体による自主性尊重の学校運営に転換すること。このことが教育改革の出発点になければなりません。総理の御見解をお伺いいたします。
 私は、一九六四年、ちょうど東京オリンピックが開催された年に生まれました。高齢化社会がピークを迎える二〇二〇年代には、私たちの世代が五十代の働き盛りとして、より若い世代とともに、年金や介護を支えつつ、これまで蓄積された膨大な財政赤字と戦うことになります。
 しかし、私は、少子高齢化に伴う負担増について、逃げるつもりはありません。私たちの世代は、高度経済成長など、先輩世代からそれ以上に大きな恩恵を受けているからであります。特に、少なくとも経済的、物質的な側面では、少子化によって兄弟の数が少ない分、より恵まれてきたことを忘れるべきではありません。その裏返しとして、将来、一人当たりの負担と責任がより大きくなることはむしろ当然のことだと思います。
 問題は、私たちの担うべき負担が公平なものであるのかどうかであり、私たちに残されるツケが有効に使われた結果であるのかどうかです。
 例えば、年金福祉事業団による運用の失敗で、厚生年金に一兆七千億円ものロスが生じています。その責任も明らかにしないまま、自主運用は拡大され、国民の負担する損失のリスクと運用コストも膨らみました。これで年金給付額が削られ、あるいは負担が引き上げられたのでは、納得できるはずがありません。
 年金福祉事業団の運用損失に対する総理の見解を伺います。
 現在、多くのお年寄りの皆さんは、決して十分ではない年金をさらに節約し、少しでも貯蓄に回そうと努力しています。万一、病気になった場合などの不安が大きく、それに備えたいという気持ちが強いからです。本来、社会保障制度が十分に機能すれば、受け取っている年金の範囲で十分な医療と介護が受けられなければなりません。しかし、社会保障のトータルビジョンは手つかずであり、特に、介護基盤整備のおくれによって、安心して年をとることができないのです。
 その一方で、政府は、景気対策と称して公共事業をばらまき、財政赤字を拡大させています。当面の景気対策のために一定の財政出動がやむを得ないとしても、どうしてそれを介護基盤整備などに集中投資しないのでしょうか。特別養護老人ホームなどを必要十分なだけ整備すること、特に、その住環境を考えるならば個室化を急ぐこと、あるいは高齢者住宅やグループホームについても目標を前倒しして必要数を確保すること、そしてホームヘルパーなどの養成を集中的に実施すること、こうしたことのために必要な費用は、この間にばらまかれた公共事業費に比べれば微々たるものです。
 少子高齢社会を乗り切るために必要不可欠な費用として使われた結果であるならば、その財政赤字の負担を私たちは喜んで引き受けます。しかし、目先の利権と人気取りのために生じた多額の債務がツケ回されるとしたら、到底容認することができません。何よりも、今、参政権を持たない子供たちに対して、余りにも無責任であります。
 高齢化のピークをどのようにして乗り切ろうとしておられるのか、そのためのコストについてどう考えているのか、多額の債務をツケ回される子供たちに対してどのような言いわけをなさるつもりなのか、森総理の御見解をお伺いします。
 明治維新以来の大変革期であると言われて、もう何年たったでしょうか。森総理を含め、ほとんどの政治家が改革を唱え、しかし、改革は全く進んでいません。
 明治維新のとき、幕府の中にも、開国という改革を断行して暗殺された井伊直弼がいましたし、勝海舟のような倒幕側以上の改革派も存在しました。しかし、百年以上過ぎた私たちは、徳川幕府が続いていては日本の近代化は不可能であったことを、冷静に振り返ることができます。いかに変える意欲があったとしても、さまざまな既得権としがらみに取りつかれた体制では、時代の流れについていくことは不可能なのです。
 ましてや、森総理の所信表明から、改革への具体的な意欲を感じ取ることはできません。真に、時代の流れに対応し、日本を立て直すためには、幕府を倒す、つまり政権交代以外にはないのであります。
 民主党は、確かに若い政党であります。しかし、明治新政府で日本の近代化を実現したのも、経験に乏しい若者たちでありました。今、必要なことは、既得権としがらみを断ち切る勇気以外にはありません。少なくとも、私たちはこの勇気を持っています。
 未来のために、勇気を持って、私は変えたい、このことを訴えて、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(森喜朗君) 冒頭、小渕総理へのお見舞いをいただきましたこと、私といたしましても、心からお礼を申し上げる次第でございます。
 野中議員の発言についてどう思うかということでございますが、同氏のここにお立ちになっての御発言は、個人的な御発言でもありますし、私はこれについて述べるということは差し控えたいと思いますが、しかし政治家として、特に、小渕総理のもとで官房長官をなさり、そしてまた党の幹事長代理等をこれまでされ、今幹事長として党の運営に当たっておられる。小渕総理と最も近いところにおられただけに、小渕さんのそのお気持ち、御家族のお気持ちをおもんぱかってここで御発言されたことは、私は必ずしも誤っているとは思わない。
 政党人は政党を代表してここでお話をされるわけでありますけれども、御発言の中には、当然その中には、やはり他人を傷つけないということと、おおむね常識に外れないということを、特に枝野さんにも申し上げておきたいと思います。(拍手)
 青木官房長官を臨時総理大臣として決定した経緯についてのお尋ねであります。
 その点については、官房長官から鳩山議員にお答えいたしたところでありますが、四月二日に青木官房長官が小渕総理を見舞ったときに、小渕総理から、有珠山噴火の心配もあり、何かあれば万事よろしく頼むとの指示があったものであり、御指摘のような事実は全くありません。
 小渕前総理の病状やその経緯の発表については、青木官房長官が医師団と話し合ったところ、医師団としては、例えば、脳梗塞であるとか病名は発表できても、一刻一刻いろいろ変化する病状については、家族の了解なしには発表できないとのことでありました。
 いずれ、結果が出て、いろいろな御報告をする場合はあるにいたしましても、現状においては、御家族のお気持ちや医師団のお考えを重要視すべきであると考えます。
 国家公安委員会の議決に関する御指摘がございました。
 議決の際には委員会を開いて決するのが基本であるものの、例えば、委員等の間で既に実質的な合意が形成されており、かつ緊急を要するような場合においては、持ち回り方式により議決を行うこととしても、警察法の趣旨に反するものではないと考えております。
 石川県公安委員の就任等につきまして御質問がありました。
 御指摘の委員は、公安委員就任に当たり私の後援会長を辞任し、また地元商工会議所の会頭として、私の在職三十周年を記念して開催された会合に出席されたものであります。
 警察法第四十二条は、公安委員は、「政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない」と規定しており、お尋ねの件は問題はないものと考えております。
 警察に対する外部監察制度の導入についてお尋ねがありました。
 警察に対する監察の第三者性を確保するという観点から、外部監察を導入すべきとの御意見があることは承知いたしております。
 この点につきましては、人事行政との連携や警察業務に精通した体制の構築等の観点も含め、警察刷新会議を初め各方面の御意見を伺いながら、監察の公正性及び実効性の確保方策について十分に検討する必要があると考えております。
 いわゆる桶川事件についてお尋ねがありました。
 まずは、被害者の方の御冥福をお祈りいたしますとともに、御遺族に対し衷心よりお悔やみを申し上げます。
 本件に関する警察の対応はまことに不適切であり、警察は反省しなければならないと思います。国民の切実な願いに真摯に対応がなされるよう、被害者の立場に立った捜査の推進や、困り事相談業務の充実強化等の措置を講ずべきものと考えており、その旨、国家公安委員長を督励してまいります。
 また、ストーカー行為や犯罪被害者支援についてのお尋ねでありますが、政府といたしましても、刑事手続における犯罪被害者保護のための二法案を今国会に提出したところであり、国民が安全に安心して暮らせる社会を実現するため、こうした問題に政府としても真剣に取り組んでまいる所存であります。
 なお、自民党といたしましても、ストーカー対策に関する法律を検討中でありますが、民主党から提出された法案につきましては、国会において御議論をされるべきものと考えます。
 通信傍受法について御質問がありました。
 同法は、組織的な犯罪をめぐる現下の国内外の状況にかんがみ、この種の犯罪に適切に対処するために必要不可欠な法整備を図ったものであり、組織的な犯罪と戦う上で極めて重要なものであると考えております。また、通信傍受の適正確保のため、法律上極めて厳格な要件が規定されており、警察においては当然適正な運用を行うものと考えます。
 したがいまして、通信傍受法を廃止しまたはその施行を延期するのは適当ではなく、また、その必要もないと考えております。
 交通違反事件についての行政当局への問い合わせに関連して御質問がありました。
 一般論としては、国民の要望を行政に伝えることは、国会議員としての仕事として一概に否定されるものではないと考えますが、交通違反については、規制に従って警察において対応されるべきものであり、政治家が関与して法を曲げるようなことは、断じて許されるものではありません。
 あっせん利得罪の導入については、まずは各党各会派の間において十分御論議をいただくことが基本であると考えており、政府としては、その結果を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えます。
 なお、私は、交通違反に関して法を曲げるような行為はもちろんのこと、個別の事案について問い合わせを行ったことはありませんし、私の秘書からもそのようなことはなかったとの報告を受けております。
 教育改革に関連して、倫理観と道徳心に関して御指摘がございました。
 倫理観と道徳心をはぐくみ、創造性豊かな立派な人間を育てるためには、子供を取り巻く社会そのものが子供の健全な育成を支えるものでなければなりません。教育とは、人間が人間を教える崇高な営みである。教える側にある大人がまず倫理と道徳を実践していくことが求められます。
 政治家にとっては、国家や国民を第一に考え、信念に基づいて取り組み、子供たちに政治の大切さ、社会に貢献することのすばらしさを学べるようにすることが大切であると考えます。私自身、常にこのことを心に刻みながら、初当選以来一貫して教育問題に取り組んできたところであります。
 教育改革については、小渕前総理が教育改革を内閣の最重要課題として取り組まれてきましたが、私といたしましても、所信表明演説で述べましたとおり、前総理と同じ思いでこの問題に取り組んでまいりたいと考えております。
 政府においては、これまで地方分権を積極的に進めているところであり、教育分野においても主体的、積極的な教育行政が展開できるよう、国と地方との役割分担を見直したところであります。今後とも、次代を担う子供たちがたくましく、心豊かに成長することができるよう、学校の自主性、自律性の確立に努めるとともに、学校評議員制度の導入など、学校、家庭、地域社会の連携を強化し、不断に教育改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 年金福祉事業団についてのお尋ねでありますが、近年の低金利、株価の低迷等により、平成十年度末の時価ベースで約一兆二千億の累積赤字が生じていることを重く受けとめております。しかし、平成十一年度については、現在決算の作業中でありますが、国内株式などの収益が貢献して、時価ベースで累積赤字を上回る黒字が発生する見通しであります。今後とも、収益のさらなる改善に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
 社会保障についてのお尋ねでありますが、少子高齢化が急速に進行する中で、社会保障のコストについてはその増大が見込まれているところであります。こうした中で、生涯を安心して暮らせる社会を築くため、持続的、安定的、効率的な社会保障制度を構築することが必要だと考えております。このため、さきに設置されました社会保障構造の在り方について考える有識者会議の議論も踏まえ、給付と負担のあり方も含め、国民の理解を得ながら、年金、医療、介護などの諸制度について横断的な観点から検討を加えてまいります。
 最後に、公共事業を初めとする財政政策についてのお尋ねでありましたが、政府は、経済を回復軌道に乗せるというかたい決意のもと、その時々の経済社会の情勢に対応して、あらゆる手段を適切に講じてきたところであります。
 この中で、公共事業については、民需の落ち込みを相殺する形で、景気がスパイラル的に悪化していくことを防止し、その下支えに貢献しております。その内容については、新たな発展基盤の構築を図るとの観点からの重点化に努めるとともに、その実施に当たっては、費用対効果分析の活用等を通じて、効率性、透明性の確保に努めております。
 このように、政府としては、二十一世紀に向けた真に必要な施策に、限られた財源の中で重点的、効率的な配分を行ってまいります。
 いずれにせよ、極めて厳しい我が国財政の現状を見れば、財政構造改革は必ず実現しなければならない重要課題であります。まずは、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せた上で、単に財政面のみの問題にとどまらず、税制や社会保障のあり方、さらには中央と地方との関係や経済社会のあり方まで視野に入れて取り組むべき課題であると考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣保利耕輔君登壇〕
#16
○国務大臣(保利耕輔君) 枝野議員お尋ねの桶川事件におきます警察の対応につきましては、まことに遺憾に存じておるところでございます。被害者とその御遺族に対し、埼玉県警察本部長が直接おわび申し上げましたほか、私も、過日の閣議後の記者会見におきまして、心からおわびの気持ちを申し上げたところであります。
 また、再発防止策については、国家公安委員会において、本件に関し反省すべき事項をできるだけ具体的に分析し、これを全国警察に周知徹底するよう警察庁に指示したところであり、国民の切実な願いに真摯な対応がなされるよう警察庁を督励してまいりたいと存じております。
 以上でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#17
○野田聖子君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十一日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#18
○副議長(渡部恒三君) 野田聖子君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  森  喜朗君
        法務大臣    臼井日出男君
        外務大臣    河野 洋平君
        大蔵大臣    宮澤 喜一君
        文部大臣    中曽根弘文君
        厚生大臣    丹羽 雄哉君
        農林水産大臣  玉沢徳一郎君
        通商産業大臣  深谷 隆司君
        運輸大臣    二階 俊博君
        郵政大臣    八代 英太君
        労働大臣    牧野 隆守君
        建設大臣    中山 正暉君
        自治大臣    保利 耕輔君
        国務大臣    青木 幹雄君
        国務大臣    瓦   力君
        国務大臣    堺屋 太一君
        国務大臣    清水嘉与子君
        国務大臣    谷垣 禎一君
        国務大臣    続  訓弘君
 出席政府特別補佐人
        内閣法制局長官 津野  修君
ソース: 国立国会図書館
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