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1999/12/10 第146回国会 参議院 参議院会議録情報 第146回国会 法務委員会 第10号
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1999/12/10 第146回国会 参議院

参議院会議録情報 第146回国会 法務委員会 第10号

#1
第146回国会 法務委員会 第10号
平成十一年十二月十日(金曜日)
   午後一時三十分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十二月十日
    辞任         補欠選任
     中曽根弘文君     亀井 郁夫君
     吉川 芳男君     久野 恒一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         風間  昶君
    理 事
                北岡 秀二君
                塩崎 恭久君
                竹村 泰子君
                魚住裕一郎君
                平野 貞夫君
    委 員
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                亀井 郁夫君
                久野 恒一君
                竹山  裕君
                服部三男雄君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
                松田 岩夫君
   衆議院議員
       発議者      亀井 久興君
       発議者      山本 幸三君
       発議者      達増 拓也君
       発議者      上田  勇君
       発議者      漆原 良夫君
   国務大臣
       法務大臣     臼井日出男君
   政務次官
       法務政務次官   山本 有二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  千葉 勝美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       法務省民事局長  細川  清君
       国税庁次長    大武健一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○特定債務等の調整の促進のための特定調停に関
 する法律案(衆議院提出)
○民事再生法案(内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
#2
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律案の審査のため、本日の委員会に国税庁次長大武健一郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(風間昶君) 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 まず、この法案によりまして新たな調停制度が開始されるわけですが、本法が仮に施行されて調停制度が動き出した場合にどのように紛争解決の実効性が見込まれるのか、そこら辺のところについて御見解をいただきたいのでございます。
#6
○衆議院議員(亀井久興君) 具体的に、今御承知のとおり自己破産になりかかっているという人たちがたくさんいるわけでございまして、そういう人たちを経済的破綻に至らせないで何とか救っていこう、そういう基本的な考え方に基づいていることは御承知のとおりでございます。いわゆるサラ金業者から借金をしておる多重債務者でありますとか、あるいは商工ローン等による借金を抱えておる中小企業者とか、そうした人たちの紛争、債権債務の関係を調整していこうということでございます。
 このメリットと申しますか、特定債務者の経済的再生に資するという観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならないということでございますので、調停の中身につきましても、個々の債権者にとりまして経済的合理性を有するものであるとともに、債権者同士の間でも担保権の有無でありますとかあるいは順位等を考慮した公平なものでなければならないわけでございます。
 債務者との個別の話し合いとか、一般の調停手続ではこうした条件が要求されているわけではございませんので、専門的な知識、経験を有する調停委員から成る調停委員会のもとでこうした条件下で調停が進められる、そういうこと自体も債権者にとってのメリットではないかというように考えております。
#7
○小川敏夫君 どうもありがとうございます。
 従来も民事調停制度というものはあってそれなりに機能しておったわけでございますが、その民事調停制度とは別に特に新たに調停制度を設けるという、その一番の、一番でも二番でもいいですけれども、その主眼とするところをもう一度教えていただきたいんです。
#8
○衆議院議員(亀井久興君) 今御指摘になりましたように、特定調停もあくまでも民事調停の一類型であるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、経済的に破綻するおそれのある者がその経済的再生を図るための債務の調整を求めて申し立てるという事件でございますから、簡易迅速で柔軟な調停手続の特色を保ちながら、集団的処理、職権調査の強化等の再建型の倒産手続に類した取り扱いをすることが望ましい、そういう面があるわけでございます。本法は、そうした考慮に基づきまして、特定調停にふさわしい民事調停の特例規定を設けるものでございます。
 具体的には、特定調停につきましては、経済的に破綻するおそれのある債務者からの申し立て事件に限られるということでございます。また、その内容は、債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有するものでなければならないということでございます。また、そのために、当事者に債権債務の発生原因、内容等に関する事実を明らかにする責務があるものとされるほか、事件の一括処理あるいは特定調停の成立を容易にするための措置や民事執行手続の停止、調停委員の指定、調停委員会による資料等の収集についての特例規定が設けられているところでございます。
#9
○小川敏夫君 この法案の第二条で「「特定債務者」とは、」と、ちょっとさらっと読んじゃうと、あれ、法人だけかなというふうにも読めるようでわかりにくいんですが、要するにこれは個人も法人も当然特定債務者になり得るわけでございますね。
#10
○衆議院議員(亀井久興君) 経済的に破綻のおそれのある者の経済的再生に資するために、公正かつ妥当で経済的合理性を持っているというその観点でございますので、個人、法人というものは問いませんし、また事業者である非事業者である、そのことも問わないようになっております。
#11
○小川敏夫君 それで、予定する調停の事案で、特定債務者は金銭債務を負っている者ということですが、金銭債務というと普通は借入金が多いんでしょうけれども、それ以外にも売掛金とか工事代金とか、あるいは不法行為の債務もありましょうし、サラ金に陥っている債務者とかそういうことではなくて、金銭債務すべてを当然含んでおるわけですね。
 そうしまして、それを前提の上で聞くんですが、例えば今サラリーマンで大変住宅ローンで苦しんでおられる方がおる。特に、バブルのときに高い物件を買って、ローンの残高が物件の価値を超えてしまっている、あるいはローンを返済する資金がないというように困窮している方がいらっしゃるわけですが、そういう人も当然この特定債務者の中に含まれてこの調停制度を利用することができると考えてよろしいわけでしょうか。
#12
○衆議院議員(亀井久興君) 御指摘のとおりだと思います。
#13
○小川敏夫君 例えば住宅ローンなどの場合、債権者が複数ではなくて単独の場合もございます。この法律の趣旨ですと、例えば債権者が多数ある場合に、そうした集合関係の複数の債権者との関係で債務者が整理をするということも一番のポイントだというふうにお伺いしたんですが、債権者が単独でもこの調停制度は利用できるわけでしょうか。
#14
○衆議院議員(山本幸三君) この法案では債権者の数が単数であろうと複数であろうと区別をつけておりませんので、当然単数の債権者の場合であっても対象になります。
#15
○小川敏夫君 また一方、例えば今、現実に会社更生までいかなくても大変に多額の借入金に苦しんでいる大手のゼネコンとかそうした非常に巨大企業もあるわけでございますが、そうした巨大企業もやはり特定債務者としてこの調停制度を利用することができるということでよろしいわけですね。
#16
○衆議院議員(山本幸三君) 原理的には、いかなる形態の法人、大企業であろうと可能でございます。
 ただ、その場合に、権利関係が大変複雑でとても調停でできるのかというようなことがございますので、そこのところは調停委員会がそれを適当と認めるかどうかというところはございますけれども、法文上はそういう区別がございませんので、もう話がほとんどまとまっているというような段階でそれは可能であると判断すれば、大企業であろうと使うことはできます。
#17
○小川敏夫君 非常に権利関係が複雑であるとしても、例えば債権者が非常に数が多いと、ただ、この調停は債権者のすべてを相手に起こす必要はないのであって、その中で任意に取り出した、取り出すというのはおかしいですけれども、解決したい債権者だけをピックアップして調停を起こす、そういう利用の仕方も当然認められているわけですね。
#18
○衆議院議員(山本幸三君) 御指摘のように、対象となる債権者をこの債権者でやろうということはできますが、ただその場合、十五条で、調停条項案が再生に資するために公正かつ妥当で経済的合理性を有するものでなければならないという制約がかかってまいりますので、外した債権者との関係においてそういうことがちゃんと言えるかどうかという判断をしなければなりません。
 もちろん、調停外あるいは一般の民事調停で話がもう済んでいる、そして残りはこの特定調停でやりましょうという形でやって、しかし全体として見た場合にちゃんと債権者の間でバランスがとれている、合理性があるということになれば、当然適用されるということになります。
#19
○小川敏夫君 個人のサラリーマンの住宅ローンの債権債務関係も対象であるし、理屈の上では巨大な大手企業がこの制度を利用することも可能だということですが、提案者としては、債務者の層といいますか規模といいますか、どこら辺のところを一番の主眼として考えておられるんでしょうか。もし考えがあればお聞かせいただきたいんです。
#20
○衆議院議員(亀井久興君) 委員もよく御承知だと思いますが、昨年のいわゆる金融国会におきまして、不動産関連権利等調整委員会を総理府に設けるという法案が廃案になったわけでございます。そのときにいろいろ御批判があったわけでございまして、なぜ個人を対象としなかったのかという点とか、あるいはまた司法の場で、本来裁判所でやるべきことであって行政の力でそれをやるのはいかがなものかという御批判とか、あるいは税制上の優遇措置を与えるということがいわゆるゼネコンに対する徳政令になるのではないか、こうした御批判があったわけでございます。
 そうした御批判を私ども十分に踏まえまして、主として個人あるいは個人事業者、そうした人たちで今大変苦しんでおる人たちに主に焦点を合わせて、その経済的再生に資するために、公正かつ妥当で経済的合理性を有するというものに限って新たな特例制度を設けよう、そういう趣旨でございます。法文上は確かに大きい法人もそれを妨げるものではございませんけれども、私どもの目的といたしておりますところは今申し上げたようなことでございます。
#21
○小川敏夫君 条文の中に入ってまいりますが、十一条で「特定調停をしない場合」というのが一般論として規定されておりますが、具体的には発議者としてはどのようなケースを考えておられるんでしょうか。
#22
○衆議院議員(山本幸三君) 第十一条は、事件が特定調停に適さないと認められる場合等に、調停委員会が特定調停事件を終了させることができる旨を定めております。すなわち、民事調停におきましては、一般に「調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないものとして、事件を終了させることができる。」こととされております。これはもう一般の民事調停でそういうことになっております。
 それに加えまして、この特定調停におきましては、「調停委員会は、」「申立人が特定債務者であるとは認められないとき、又は事件が性質上特定調停をするのに適当でないと認めるときは、特定調停をしないものとして、事件を終了させることができる。」こととしております。
 「申立人が特定債務者であるとは認められないとき」と申しますのは、資力が十分にあってとても支払い不能に陥るおそれがあるというような当事者とは認められない、そういう場合を考えております。
 それから、後段の「事件が性質上特定調停をするのに適当でないと認めるとき」と申しますのは、例えば一つは、特定債務者の事業や負債の規模等により、特定調停手続によったのでは特定債務者の資産、債務の状況等に係る事実関係を明らかにすることが期待できないような場合、これはまさに大企業でとても規模が大き過ぎてその関係権利者から財産の状況から全部調停委員会で調べてやるというのは到底、ゼロから始めようとしてもとてもできない。ほとんど全部そういう話が済んで、ただお墨つきだけというような場合には可能かもしれませんけれども、そうでない場合にはむしろ更生手続なり民事再生法の規定に行くのが筋ではないかという感じがいたしておりまして、そういうことがあり得るというように思っております。
 それから二つ目には、例えば一部の債権者が弁済を受けておりますけれども、これを取り戻さないと債権者間の公平が保たれないというような場合がありまして、それが話し合いによって、調停手続によっては公正、妥当で経済的合理性を有する内容の合意を成立することが困難である、そういう状況になっているというような場合が考えられます。そういう場合に、弁済期にある債務の弁済でございましても、倒産というようなことになった場合には破産法上の否認権の対象になりますけれども、いずれにしても、一部の債権者だけに優遇的にやっていて、とてもそれでは合理的な解決が図れないというような場合が考えられると思っております。
#23
○小川敏夫君 十二条の「文書等の提出」の点でございますが、民事訴訟法もそれぞれ当事者が相手方に対して文書提出を求めることができる規定があるんですが、どうもこの十二条の提出はそれよりも広いように思うんですが、ここら辺の提出を求めることができる文書の範囲について説明をいただきたいんです。
#24
○衆議院議員(山本幸三君) 十二条で文書提出命令、これはこの特定調停が債務者の全体像を明らかにして、そして経済的再生を図ろうという目的を持っておりますので、そのために特に必要がある場合には調停委員会が文書提出命令をかけられるという規定を置いて、できるだけそういう実効を上げようとしているわけでありますが、民事訴訟法の文書提出命令と似通っているではないかというところでございます。
 ここのところの調停委員会の文書提出命令と民事訴訟法の提出命令とは少し違いまして、一つは、民事訴訟法における文書提出命令というのは当事者の申し立てによって発せられます。これによって、民事訴訟法は御承知のように弁論主義と申しますか、当事者が申し立てたことに基づいて裁判所が判断するということでございますので、相手がその提出命令に従わなければ提出命令をかけた側の主張が通るという形になっているわけですが、この民事調停の方ではそうではなくて、職権探知主義という形でやっておりますので、そういう形で、相手方との関係においては民事訴訟法上のそういう提出命令に応じなければ相手方の主張が通るというような形で制裁がかかっているものとは違います。
 それから、民事訴訟法の提出命令は当事者以外の第三者に対しても発することができますけれども、本法の提出命令は当事者または参加人に対してのみ発することができるということになっております。
 この特定調停の文書提出命令はまさに「特に必要があると認めるとき」ということでございますので、調停委員会がこの調停が公正かつ妥当で経済合理性を有する調停ができるということのために特に必要があると認める場合に限っておりますので、これが無制限に広がるというようなこともないと思いますし、民事訴訟法の規定とは違う、民事調停における職権探知主義を実の上がるものにしようということで考えておるものでございます。
 例えば、具体的な例で申し上げますと、私ども、民事調停でサラ金の調停なんかをやっている事例を聞くわけでありますが、債務者の方がサラ金の取り立てに応じて何度も利息を払っている。ところが、債務者の方はなかなかそういう記録を克明に残していないことが多いものですから、そういたしましたときに、債権者の方はいつこれだけの金額を返してくれましたということをなかなか示してくれない。今の民事調停ではこういう提出命令がないものですから、そのことがはっきりわからないためにうまく進まないということがございます。
 もしそのことがわかれば、例えば利息制限法の率を超えた以上に返していることは結構多いわけでありますけれども、その部分がきちんと計算できまして、それを超える分については元本充当するという形で調停をうまく成立させることができるんですけれども、現行の民事調停ではそれができていないということで、この特定調停ではそういう場合を想定いたしまして、債権者の側にどれだけの金額をいつ返してもらったかというところを出してもらって、そういう事態にうまく債務者の立場に立った形で解決ができるようなものを想定しております。
#25
○小川敏夫君 それで、私がちょっと疑問、疑問ということでもないんだけれども、疑問といえば疑問ですけれども、民事訴訟では文書提出命令の要件が定められておりまして、その要件に当たらない場合は求めることができないわけです。どうもこの十二条ですと、その民事訴訟で定めている文書提出命令よりも広くこの提出が求められるようになっていると思うんです。
 そうしますと、調停がうまくまとまればそれでいいんでしょうけれども、調停がまとまらなくて訴訟に移行するようなことも考えますと、本来訴訟では文書提出命令ができない、つまり相手方の防御方法ということもあって提出命令ができないものが調停委員会の場においてそれが出てしまうということで、そこら辺の民事訴訟における文書提出命令の制限を超えてしまうような形でこの制度が利用あるいは乱用されてしまわないかなと少し感じたんですが、これは調停委員会が当事者あるいは参加人から提出を求めた、そして提出があったものは当然当事者もこれは閲覧なり謄写できるわけですね。
 それを踏まえて、私が前段聞いた点もちょっとお答えいただきたいんです。
#26
○衆議院議員(山本幸三君) 当事者も当然閲覧できます。
 民事訴訟法による提出命令は、当事者の申し出に基づいて、つまり当事者が自分の主張を通すためにこういう文書を出してくださいよということで、当事者の主張といいますか、それの一部としてやるわけですね。したがいまして、まさにその訴訟の当事者が必要と認められている場合に出てくる。
 この民事調停におきましては、そうではなくて、調停委員会が一切のいろんな必要な資料等をみずからの権限でできるだけ集めて、そして判断していくということで考えておりますので、その意味では、調停上特に必要があるという場合にはこの資料というものは提出命令を出すことができるということでございます。
 そこのところがどちらがより広くてどちらが狭いかということはケースで違うと思いますけれども、民事訴訟法の方は、当事者の主張の一部としてそういうことがやられている。こちらの方は、調停という作業をうまくやるために調停委員会が必要と認めれば、それは必要な限りにおいて求めるということでやっておるわけでございまして、しかもその場合に、「特に必要があると認めるとき」ということで、そのことの具体的な意味は、特定債務者の資力、債務の状況あるいは具体的な残債務の額等、特定調停を行うに当たって明らかにすべき重要な事実関係においてそれが特定調停の成否に大きな影響を及ぼす場合に提出命令をかけるというようなことだと考えております。
#27
○小川敏夫君 これは、調停委員会のこの文書提出の運用の仕方によっては民事訴訟の攻撃防御方法の枠組みを超えてしまって、乱用される危険性があり得るんじゃないかという点を私の疑問として指摘させていただきます。
 次に、質問ですが、この調停の場合、金銭債務ですから、当然調停成立というのは金額の免除かあるいは期限の猶予かと思うんですが、その免除の場合について、債務者が免除を受けた場合の免除益に対する課税、あるいは一方、免除した方が債権者の方で損金処理できるのかという税法上の問題が前回の金融国会の際の特別立法では記載されていたんですが、この法案ではそれがない、ないことは好ましいと思っているんですが、そこのところの税法上の点について御説明いただければと思います。
#28
○衆議院議員(山本幸三君) 御指摘のように、昨年の金融国会で出ておりました不動産関連権利等調整法、略称でそう私ども呼んでおりますが、その中では、御指摘のように債権放棄した場合の無税償却、そして債務免除益については過去の累積損失との相殺ということを法律上明記しておりました。これは御批判を受けまして、今回法文上取り入れることをしなかったわけでありますが、その場合にじゃどうなるかということでございますが、こういうケースがうまくいくためには債権者が何らかの意味でそれをやることによってメリットがあるということがないとなかなかうまくいきません。
 そのメリットというのは、確かに倒産に至らしめるよりはできるだけ事業を継続してもらって、長い目で見て債権者間でバランスのとれた措置をすればそれ自体メリットがあるということも当然ございます。
 しかし同時に、その処理を行いますときに、例えば債権放棄をした場合に無税償却が認められるというようなことが債権者にとっては最大のメリットであるわけでありまして、私ども、銀行やあるいは貸金業者さん方の話を聞いておりますと、なぜ債権放棄をしないのかというと、基本的に二つ理由があると。一つは、下手にやると株主代表訴訟をやられるおそれがある、二つ目は、債権放棄をしても無税償却が認められるかどうかわからなければとても乗れない、その二つの理由でなかなかうまくやってくれないということでございます。そこを私どもは、こういう特定調停制度という一つの司法制度を使えば株主代表訴訟の心配もないし、あとは税務処理ですねということになります。
 税務処理については、最初に申し上げましたように法文上の規定がございませんので、基本的には税務署の個別判断という形になるわけでございます。その場合に、法人税、所得税法の取り扱いがありまして、債権放棄をした場合でも、寄附金に当たらなければ当然損金算入ということになるわけでございます。寄附金に当たるかどうかという判断を税務当局がするわけでありますが、それは、債権放棄を行うことの相当性とか、あるいは立て直す意味の債権管理がなされているかとか、あるいは債権放棄する範囲が相当であるかとか、あるいは債権放棄の額が合理的であるかどうか等を個々に見て判断するということになるわけであります。
 私どもは、国税当局に、この特定調停制度が活用されるためには、国税当局としてもこの法案の趣旨、つまり公正かつ妥当で経済的合理性のある調停を進めるんだという趣旨をよく理解し体して、個別の税務判断のときにはぜひ協力してもらいたいということをお願いしておりまして、この点は国税当局と最高裁との間で随分詰めてもらっております。国税当局も、そういう特定調停が一般の民事調停とは違うんだ、そういう意義を十分に理解して、できるだけ迅速かつ円滑に処理ができるように、例えば税務署に相談窓口をつくって、そして事前に相当程度の感触が与えられるという形で無税償却をできる形に協力したいというように言ってもらっております。
 したがいまして、基本的には今の法人税の基本通達の考え方に立って国税当局が判断する、その場合には、しかし特定調停の制度は十分に理解した上で協力してくれるという話になっております。
 それから、債務免除益のところでございますけれども、これは御指摘のように問題がございますが、これもいわゆる法人税、所得税の基本通達の取り扱いに準ずるということでございます。ただ法人の場合は、免除益が出た場合でも、青色申告法人、もう九割以上、九二、三%が青色申告法人でございますが、青色申告法人につきましては、その期を入れまして過去六年間の繰越欠損金との相殺が可能であるということになっております。個人事業者の場合には、青色申告者であればその期を入れて過去四年間の累積損失の相殺が可能でございます。個人につきましてはそういう規定はございませんけれども、資力喪失ということが明らかに認められれば、それはそこで課税関係は終わりということの取り扱いになると理解しております。
#29
○小川敏夫君 最後に、最高裁判所にお尋ねします。
 法の施行期間が二カ月というふうに非常に短くてすぐに施行される、もし法律が成立すれば。すぐに施行される中で、調停員に専門の人を特に指名するということで、いろいろな要件がございますが、こうした準備等、施行の受け入れ体制等はどうでございましょうか。
#30
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 裁判所としましては、これまでも多重債務者の債務調整に関する事件を中心とする調停事件について対応するために、まず事件処理において重要な役割を果たす調停員、これにつきましては資質の高い者を確保するということで努力をしております。そのほか機動的な人員配置、比較的余裕のあるところからこの調停を扱う部門への人員の異動というようなことがございますけれども、こういう人員配置をいたしております。それから、受け付け体制の充実、それからOA化等による事務処理の効率化、いろいろなことを進めてきておるところでございまして、おおむね順調な事件処理がされていると認識しております。
 今回の特定調停制度でございますけれども、この多重債務者の事件、債務弁済協定調停事件のかなりのものが特定調停事件として申し立てがされるということが予想されますけれども、今までのノウハウを生かしていきたいと思います。そのほか、金銭債務の調整等が必要になる場合もございます。今の御議論のように、いろいろ税務上の問題やら企業の財務上の問題についての専門的知識が必要になる事件も出てくるかと思いますけれども、そういう専門的な知識を持った調停員を確保するという点についても話を進めておりますので、そういう点につきましても体制を整備するよう今検討しているというところでございます。
#31
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 このたび議員立法でこの特定調停法案を提出されましたけれども、現在の消費者金融でありますとか、いわゆるカード破産とか住宅ローンの問題を考えた場合に、本当に時宜に合ったというか、本当に必要な法律案であるというふうに私も考える次第でございます。
 ただ、特定債務者に原則的に全然限定がないということで、先ほども小川委員の方からも質問があったんですが、ゼネコンでも使えますよというような話がありました。ゼネコン徳政令という批判が去年あったからとありましたけれども、ことしの三月四日、自民党がこの特定調停法案を出そうというようなことを決めたときに、山本幸三先生が日経新聞のインタビューに答えられた記事が載っています。そこでは、やっぱり金融機関はゼネコン向けの債権放棄に動いているんではないですかというような問いに対して、いや、特定調停でお墨つきとなればというようなお話をされているんですね。そうすると、何かやっぱりゼネコンなのかな、去年のあれとは別に新たに決めてもやっぱりゼネコンが念頭に置かれているのかなというふうにこの新聞を読んだときに思ったんですね。
 今の小川委員に対する答弁とちょっと趣旨が違うんですが、その点いかがでしょうか。
#32
○衆議院議員(山本幸三君) 私の発言についての御質問でございますので。
 昨年の金融国会のときは、特にそれもゼネコンだけと考えたわけじゃないと思いますけれども、法人だけを対象にしておりました不動産権利等調整法でしたからそういう議論がございました。先ほど亀井先生から申し上げたように、そのときの批判を受けて今回組み立てたわけでありますけれども、その意味では個人も入れて、すべての個人、法人、事業者あるいは非事業者を問わず対象にするという形で組み立てております。もともと民事調停自体が一切の制限のない、対象に特に制限をしておるものではございませんので、それはいかなる場合にも対象になり得るという形でできております。
 その後、御指摘のように、新聞報道等によりますと、ゼネコンの方々は既にもう個別に話し合いを銀行さんとして事実上そういう債権放棄というふうなことをやっているわけですね。これはまさに、こういう法律がなくても、先ほど申し上げましたように、ケースによっては法人税の基本通達に基づいた税務処理もできるわけでありますので、それにのっとったら無税償却という形でやっているかもしれないし、それは今でも特に法律がなくてもできるし、私どもから見れば、むしろゼネコンさん方は、そういうことを銀行との間で話をつける交渉力も持っているし、あるいは弁護士の先生方あるいは公認会計士の方々を擁してそういう処理を銀行との間でつけてやるし、実際にやっているというように理解をしております。
 ただ、私どもは、その意味では特定調停というこの法律ができなくても彼らはやるだろうと思いますし、実際にそうしております。そうなると、特定調停法の対象はまさに銀行さんとそういう交渉力を持たない、あるいは弁護士費用を払うこともなかなか難しい、あるいは会計士の方々を擁することもなかなか難しいというような人々がむしろこの特定調停制度に乗ってくることができることになるんじゃないか。そういう感じで、先ほど亀井先生が申し上げた意味で、むしろこの特定調停法案は個人、そしてそういう銀行との間で交渉力を持たないような中小零細企業が対象になるんじゃないかと思っています。
 ただ、新聞記事で申し上げましたのは、大手のそういうところであっても、話をつければそれで済むんですが、場合によってはそういう話はついたけれども、先ほど申し上げました株主代表訴訟なり、あるいは税務処理の関係から、この特定調停でやってくださいというところが出てくるかもしれませんねと、そのことは可能性としてはあり得るということを含んだわけでございますが、まさにゼネコンを念頭に置いてということで考えているわけでありません。むしろ、私どもは、ゼネコンさんはこんなものがなくてもやるように動いているし、やれるだろうというふうに思っています。
#33
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 私も調停成立のポイントはやっぱり税金の扱いだろうというふうに思っておるんですが、先ほど詳細にお話がございましたので、先ほど山本先生から相談窓口というようなこともあったと思うんですが、国税庁にかなり数多くの案件が持ち出されるというふうに思います。
 ただ、窓口に列をなすような形にもなりかねないかなというふうに思うんですが、ただ一方、例えば小作の調停みたいな場合は農業委員会からその調停の場に行くような形もあると思うんですね。そうすると本当に話が早くなるだろうというふうに思うんですが、その辺を含めて、国税庁としての対応はどのようにお考えになっているか教えてください。
#34
○政府参考人(大武健一郎君) 答えさせていただきます。
 法人が債権の放棄を行った場合の税務上の取り扱いに関する相談につきましては、現在、実は国税庁と各国税局で行っているわけでございます。
 ただ、ただいま先生からお話がありましたように、今後特定調停の状況が大変多数であるというようなことも想定されるわけでして、その相談件数が増加するとともに対象が全国に広がるというようなことであれば、例えば相談窓口を主要な税務署に拡大するといったことも考えながら対処していく必要があるというふうに考えております。
#35
○魚住裕一郎君 調停成立のためにこの条文の中では民事執行手続の停止というような内容がございますが、調停をうまく成立させるためには、恐らくいっぱい借金を抱えている人あるいは会社は税金もたまっているんだろうなと思うんですね。この滞納処分を停止するというようなことは考えなかったんでしょうか。
#36
○衆議院議員(山本幸三君) 御指摘のように、第七条で調停が成立の可能性がある場合に民事執行手続が行われますと、基盤となる財産が失われたりいたしますので、それを防ぐという意味で調停が成立するまでの間、一時的でありますけれども、裁判所は執行停止をすることができるという規定を置いております。これは、今の民事調停でも規則で、今の調停では担保は必ず出さなきゃいけないことになっておりますが、既にございます。今回の場合には無担保でもできるという形に少し広げております。
 その場合に、では租税債権はどうなるのかという議論がございますけれども、租税債権は民事上の紛争ではございませんので、既に一般の民事調停法の対象でもなっておりませんし、したがいましてこの特定調停の対象にもならない。その意味で、租税債権については執行停止の対象にはならないということでございます。
#37
○魚住裕一郎君 それとの関係で、具体的な調停手続を一生懸命やっているんですが、やはり強引なといいますか、そういう債権者も中にはいるわけで、民事執行はとまったけれども、では破産申し立てしますよというような場合もあるんですね。要件は違うんだけれども、支払い不能に陥るおそれがあるような状況ですから、破産原因と近接しているわけでありまして、一方で民事執行はとめながら破産については措置していないというのは、どういうことになるんでしょうか。それでは民事局長。
#38
○政府参考人(細川清君) 破産手続は、自己破産の例をとってみますと、これは公益的なことも考えて設けられておるわけでございます。また、破産手続をなさいますと、小口の債権者もみずから執行手続をしなくても、その債権が比例的な弁済を受けられるという公益的な問題もございます。そういうことを考えられまして、御提案の、ただいま御審議中の法案では破産手続はとめられないということにされたんではないかというふうに考えております。
#39
○魚住裕一郎君 終わります。
#40
○橋本敦君 提案者の諸先生、御苦労さまでございます。
 ここ数年の経済状況というのは大変深刻でございますから、中小零細企業の倒産あるいは自己破産の申し立てが急増しておりまして、昨年の自己破産の申し立ては十万人を超えるという状況、過去最高でございます。また、支払い困難になっている多重債務者は全国で百五十万人を超える、こういった状況も言われておるところでございまして、中には、警察庁の発表でも明らかなように、経済苦、生活苦によって自殺をなさる方が一昨年の六割増、六千五十八人と過去二十年間の最高となっております。
 こういった問題は、今日の深い社会構造に根差している諸問題があると思うのでありますけれども、いわゆる債務の弁済を含む解決、再生についてこの特定調停制度が役に立てばということで私も期待を込めて質問をさせていただくわけでございます。
 簡裁の民事調停に持ち込まれた貸金業関係の事件数を見てみますと、平成五年で四万七千二百九十六件、これが平成十年には四倍を超えまして十六万三百三十二件、こう増大をしているわけです。これによりましても、貸金業関係からくる債務の解決というのが大変国民的な重要な問題になっているということを物語っていると思うんですが、今回の特定調停制度がこういった状況に対応して具体的な解決に役立っていく、あるいは債務者の利用に役立っていくということについて、どういうような期待を提案者としてお持ちなのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
#41
○衆議院議員(亀井久興君) 今、橋本委員から社会的な背景については御指摘があったわけでございますけれども、そうした自己破産者が急増しておるという状況の中で、経済的な破綻に至る前に公正かつ妥当で経済的合理性を有するそうした調停を進めてまいりたい、そうした考え方でございます。今御指摘ございましたように、いわゆるサラ金等による多重債務者の申し立てます民事調停事件、破産事件、こうしたことが急増しておるわけでございますので、そうした人たちに調停制度をうまく活用してほしいという期待もあるわけでございますし、また住宅ローンの債務者もふえているという状況もあるわけでございます。
 先ほど来御答弁申し上げておりますが、こうした個人で経済的破綻に至りかけている、そうした人たちに何とか活用してほしいという思いが中心にはあるわけでございます。また、法人につきましても、やはり現下の経済情勢を反映いたしまして企業倒産が増加しておるわけでございますし、我が国経済の再生という観点からも不良債権の実質的な処理を促進していく、そうしたことも今必要とされていることではないかと思っておりますし、また、いわゆる商工ローンの債務者となっております中小事業者につきましても、円滑な債務調整の手段を提供するということが必要なことではないかということでございます。
 このように本法案は、法人、個人、事業者、非事業者を問わずに、経済的に破綻するおそれのある債務者を対象として考えているところでございます。
#42
○橋本敦君 次に論を進めたいと思うんですが、この第七条で、先ほども議論になりましたけれども、「特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、」「民事執行の手続の停止を命ずることができる。」という非常に大事な条項がございます。これは「特定調停に係る事件の係属する裁判所は、」と、こうなっておりますから、調停委員会が申し立てるわけじゃなくて、調停委員会が裁判所に意見を申し出る、あるいは当事者の裁判所に対する申し出に対して調停委員会が意見を述べる、そういった関係はどういうように機能するんでしょうか。
#43
○衆議院議員(山本幸三君) この七条の規定では「申立てにより、」ということで、当事者から裁判所に申し立てがあった場合に裁判所がそれを判断してやるということでございます。
#44
○橋本敦君 調停委員会の直接の権限ではないということですね。
 そこで、もう一つの問題は、第十四条でございますが、第十四条では、今度は「調停委員会は、特定調停のために必要があると認めるときは、官庁、公署その他適当であると認める者に対し、意見を求めることができる。」と、こうあるわけですね。
 先ほどから租税債権の問題が問題になりまして、滞納処分ということでこの租税債権の徴収が進んでいきまして、これに対する執行停止ができないと調停を円満に成立させるのが難しいという状況が起こったときにも、租税債権はそういった執行停止の対象にならないというお話がございましたが、この第十四条で官公署などに「意見を求めることができる。」と、こうありますので、この官公署には当然税務当局も入っているのではないか。したがって、調停委員会としては、この意見を求める、この意見の中で妥当な解決が図られるように、滞納処分、租税債権の扱いについても一定の配慮ということを求めることができるのではないかと私は解釈したいんですが、どうなんでしょうか。
#45
○衆議院議員(山本幸三君) 租税債権についての滞納処分がある場合に、これはそもそも民事調停の対象になっていないということで、この特定調停の対象になっていないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
 この十四条の官庁または公署その他適当と認めるものに意見の聴取を求めることができるとしております規定では、例えば事業者であれば、その事業者が免許事業をやっているような場合にはその免許を与えている役所を考えておりますし、当然御指摘のように税務署もあり得るわけでありますが、私どもが念頭に置いておりますのは、先ほどからの税務処理の関係、無税償却が可能になるかどうかというようなところを念頭に置きまして、この滞納処分についてどうこうできるかというところまで想定はしておりません。
#46
○橋本敦君 そういう答弁なんですが、租税債権について税務署に遠慮なさらないで、調停委員会としては、調停を成立させるために妥当な解決を図る上で、租税債権の国の行使についても一定の意見を言う、そういうことで理解をしてくれるならば、円満な解決方法について協力を求める、そういう姿勢でやっていただいていいんじゃないかと私は思うんですけれども、もう一遍、そこのところのお考えはどうなんでしょうか。そんなに遠慮なさらなくてもいいんじゃないかと思うんですが。
#47
○衆議院議員(山本幸三君) この租税債権のところは、徴収法等に基づいた範囲の議論であろうと思いまして、それはそういう法制上なかなか一部免除とかいうようなことは難しいと理解しておりますし、これはやはり民事調停の、民事上の紛争処理ということで限定して考えるのが筋ではないか。
 そのことによって、確かに租税債権の問題が重要な問題であるということは、御趣旨はよく理解いたしますけれども、体系上、民事調停の一類型としてつくるこの特定調停の中では、なかなか困難ではないかなという気がしております。
#48
○橋本敦君 これ以上議論しても、同じことをぐるぐる回りになるでしょうから。
 しかし、期待としては、私はやっぱり税務署に協力してもらう必要があるときは、調停委員会は十四条の規定で、遠慮なく意見を言うことができるというように解して運用してもらいたいです。
 同じ十四条で、労働組合があるときはその労働組合の意見も聞くということで、「意見を求めるものとする。」と、こう書いてありますから、これは、労働者あるいは労働組合の地位保全あるいは賃金債権等に重要な関係がありますから私は賛成する規定ですが、ここでは、「意見を求めるものとする。」と、こうあります。当然、調停委員会は、意見を求めた以上は可能な限りその意見を尊重するという姿勢で意見を求めて対処していただけると、こう解釈したいんですが、どうなんでしょうか。
#49
○衆議院議員(山本幸三君) 結論的に申し上げれば、おっしゃるとおりでございます。
 この規定は、経緯を申し上げますと、この法案をつくっておりましたときに、特に民主党さんの方からこういう規定を入れてもらいたいという御指摘がございまして、私どもも大いに結構なことではないかということで、この規定と、民事執行手続で給与債権のやつを外した、この二点が当初の原案に、民主党さん等の意見を入れて修正したということでございます。それが経緯でございます。
 その趣旨は、まさに労働組合等の意見を求めなければならないということでございまして、それは労働組合の協力が、やはりその事業者にとってはその事業が再生できるかどうかということには決定的な意味を持つわけでございまして、その意味ではまさに経済的再生に資するとの観点から、調停条項は公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならないわけでありますので、労働組合の意見は極めて重要であり、むしろ再生の可能性を決定づけるようなものだというように理解されますので、最大限尊重されるべきものだと理解しております。
#50
○橋本敦君 裁判所にお伺いいたします。
 現在、調停ということで多くの事件が係属して、大変裁判所も御苦労なさっておりまして、私も調べてみますと、現状では調停係の職員は年休もなかなかとれないというぐらい事件が急増している。そしてまた、お昼休みも十分とれないという状況と聞いております。書記官の残業も大変ふえておるわけですね。
 今度はこの規定によってかなり特定調停ということでの申し立て件数がふえ、利用されることも考えられるわけですから、人員の問題、それからさらには調停室というのは、私は簡易裁判所に行っても地裁へ行きましてもなかなか部屋がそう簡単にないので苦労されている現状にもよくぶつかるんですけれども、そういったインフラ整備あるいは人的整備を含めて思い切って、これが施行され来年度以降、予算も含めて抜本的な対策を御検討なさる必要があるんじゃないかと私は思っておるんですが、最高裁のお考えはいかがですか。
#51
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 債務弁済協定事件の多くが特定調停事件として裁判所に持ち込まれるということが予想されるわけでございます。現在でも債務弁済協定事件は非常に多数のものが係属しておりますので、その対応をいろいろ考えておるわけでございます。
 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、一つは委員のおっしゃるような人員の問題でございます。機動的な人員配置ということでございまして、東京、大阪を初めとします繁忙庁におきましては、調停委員の確保はもちろんでございますが、この受け付け部門に人を投入するという形で事務処理の対応をしております。この特定調停事件につきましても、事件の動向を見まして、機動的な、しかも適宜の迅速な人員配置をしていきたいというふうに考えております。
 調停室の御指摘がございました。最近の傾向といたしまして、紛争を和解で解決するというようなことがございます。事件が急増しておりますので、そういう状況でございますと調停室の確保が非常に大きな問題になってまいります。庁舎の新築や改築の際には可能な限り調停室についても数をふやすなどの配慮をしているところでございまして、また必要に応じまして調停室以外のスペースを、これはあいている時間にはもう調停室に振りかえる、そういう運用上の工夫も行っているところでございます。
 裁判所といたしましては、これは今のは例でございますけれども、これ以外にも人的、物的な体制をとって特定調停事件の対応に対処していきたいと考えております。
#52
○橋本敦君 今の人的、物的の充実ということで、予算を含めて積極的に予算要求も出してやりなさいよと、こう言っているんだけれども、そこのところのお答えがないんだけれども、どうなんですか。今のままでのやりくりじゃ無理でしょう。
#53
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 事件の動向を踏まえまして、予算的な点も視野に入れて対応を検討していきたいと思っております。
#54
○橋本敦君 終わります。
#55
○福島瑞穂君 社会民主党の福島瑞穂です。
 今、民事調停制度がありますけれども、それと今回の特定調停制度が、数として例えばどのぐらい移行していくのかということについてお聞きしたいと思います。
 現状でも調停事件がたくさんあるわけですが、現在の民事調停の事件のうち、この法案で問題になっている例えば多重債務関係などの件数、割合はどれぐらいか教えてください。
#56
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) いわゆる債務弁済協定調停事件という形での統計はとっておりませんけれども、簡裁の貸金業調停事件それから信販関係の調停事件、これがこれに相当するものだろうと思います。
 その事件数で申し上げますと、平成六年は六万三千三百七十二件ございましたが、これが順次急増いたしまして、平成十年は十八万八千四百九十八件ということでございます。民事調停事件全体の割合ということで申し上げますと、全体の七六%がいわゆるこの債務弁済協定調停事件に相当するもの、こういう数字でございます。
#57
○福島瑞穂君 ありがとうございます。
 つまり、現在の民事調停事件の七六%をこの法案が扱おうとしているいわゆる多重債務関係などの件数が占めていると。
 今回、御努力によってこの法案がもし成立した場合には、うまく周知徹底すれば、今、個人破産件数あるいは破産予備軍の個人は少なく見積もっても百五十万人と言われておりますが、非常にその件数がふえるのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
#58
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 特定調停制度が導入された場合には、委員御指摘のように、従来の多重債務者の債務調整に関する事件、これが特定調停という形で来る可能性が高いだろうと思います。それ以外にも住宅ローン債務者や事業資金を借り入れた商工ローンの債務者、いわゆる中小企業などもこの手続を利用するということがあり得るところでございます。それ以外にも破産予備軍的な人たちがこの手続を利用するということもあり得るところでございます。
 ただ、事件数として何件かというのは非常に難しいことでございますが、かなりのものが来るというふうに考えております。
#59
○福島瑞穂君 つまり、今の民事調停制度の七六%がこの特定調停制度が扱っていることなわけで、新たに独立させて制度を充実させればもっと件数が本当にふえるだろうというふうに思います。
 そうしますと、先ほど橋本委員の方からもありましたけれども、簡易裁判所の裁判官の人員、調停委員をどうやって供給していくのか、施設をどうするのかという問題が必ず起きると思うんですが、いかがでしょうか。
#60
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) まず、この種の事件を直接中心的に担当いたしますのは調停委員でございまして、調停委員につきましては従前から債務弁済協定事件というのをやっておりますが、それについてのさまざまなノウハウが蓄積されております。そういうノウハウを生かして新しくできます特定調停事件における事件処理に役立てていきたいというふうに考えております。それから、こういう債務弁済協定事件だけではございませんで、それ以外の中小企業からの事件もございますけれども、これももちろんノウハウがございますが、そういうものを生かしながらやっていきたいと思います。
 そういうようなことのほかに、調停委員の確保ということでは、特に税務とか会社の財務とか、そういう特別な知識を持った調停委員の確保というのが重要な問題になってこようかというふうに考えております。
 この点につきましては、裁判所といたしましても既にいろいろ検討しておるところでございまして、例えば日本公認会計士協会とか日本税理士連合会とか、そういう関係団体にも話をしております。そういう専門的な知識を有している調停委員の確保ということも考えていきたいというふうに考えております。
#61
○福島瑞穂君 今おっしゃったように、民事調停委員については、例えば「事案の性質に応じて必要な法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等に関する専門的な知識経験を有する者を指定するものとする。」というふうにしていらっしゃいますけれども、現在の調停委員は約一万二千人、とてもこれでは足りない上に専門的なスタッフをたくさん指定せざるを得ません。
 その点は、話はついているんでしょうかというのは変な言い方なんですが、ある程度その供給のめどというのはあるんでしょうか。
#62
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 関係団体の方でもこの裁判所の申し入れの趣旨を十分理解していただきまして、できるだけ調停委員になっていただくということで、こういう関係団体も協力をしていくという話を聞いております。
#63
○福島瑞穂君 ちょっと一つ前に戻って申しわけないんですが、今もたくさん占めている七六%を独立させて、資料提出命令など制度を充実するわけですから、裁判官、書記官などの数も絶対にふやさざるを得ないだろうと思うんですが、その点についてのもう少し明言、前向きの回答をお願いします。
#64
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) この種の事件の処理には調停委員が中心的な役割を果たすということで調停委員のことを申し上げましたが、もちろん裁判官それから書記官も重要な問題でございます。
 裁判官におきましては、現在も債務弁済協定事件の多いところなどではそういう専門的、集中的な係などをつくっておりますし、そういう組織的な対応はしていきたいというふうに考えております。
#65
○福島瑞穂君 破産の相談なども大変多いですし、破産あるいは夜逃げをしたり、あるいは自殺がふえているなど、いろんな社会問題が起きています。
 裁判所としては、例えば広報、この制度の周知徹底、特別調停制度の周知徹底などについてはどうやってやっていかれる御所存でいらっしゃいますでしょうか。
#66
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) この制度ができました場合の制度のPRといいますか、ぜひ御利用くださいというようなことを裁判所が言うのはどうかという感じがいたしますので、恐らく立法担当に携わっている方々がいろんな形で、いろんな方法でこういうのを紹介されることになるだろうと思います。我々といたしましては、そういう一般の利用者との関係では、やはり具体的に裁判所に来られた方の窓口での対応ということが大事であろう、そこを中心に考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
 窓口相談で、例えば現在などでもイラストを取り入れて手続をわかりやすくしたリーフレット、こういうようなものを用いて説明しておりますし、いろんな調停手続のそれぞれの中身についてもわかりやすく説明している。それから、調停の申し立ての希望があったときには、定型の申し立て用紙というのを用意しておりまして、適宜記入方法を説明しながら、申し立て書を作成していくその補助をしていくというようなやり方をしております。こういうような形での窓口での対応というのを今後とも充実させていきたいと考えております。
#67
○福島瑞穂君 家庭裁判所や簡易裁判所は無料法律相談などを非常に精力的にやっていらっしゃいますが、ぜひもっとPRをしてよろしく頑張ってください。
 次に、税金についてお聞きをします。
 きょうも質問が出ましたけれども、損金処理についての税金についての規定は今回ありません。その規定がない理由、経過について教えてください。
#68
○衆議院議員(山本幸三君) 昨年の金融再生国会で内閣提出の不動産に関連する権利等の調整に関する臨時措置法がございましたけれども、これも法人が対象でありますが、不動産の効果的な処分を通じて企業の再建を図る。そしてまた、金融機関の不良債権の自主的処理を促進するために総理府に不動産関連権利等調整委員会をつくって、そういう調停、仲裁をやろうという制度を考えたわけでありますが、先ほど申し上げましたように、幾つかの批判を受けまして今回の特定調停ということになりました。
 その批判は大きく三つございます。一つは、調停、仲裁は行政委員会でやるべきじゃない、本来裁判所でやるべきだという御批判。それから二番目が、事業者だけじゃなくて個人債務者についても対象とすべきだと。事業者だけにしていたのがゼネコン対象じゃないかと批判を受けたわけでありました。それから三番目が、御指摘の税制上の特例措置でございまして、これは債権放棄された場合の無税償却を自動的に認めるという規定になっておりましたし、債務免除益についての累積債務との相殺という規定もありました。しかし、これはおかしい、やはり税務署の個別の判断が筋ではないかという御批判でございました。
 こうした御批判を受けまして、ある意味でそのすべてを取り入れたという形で組み直したのが今回の特定調停法案でございまして、したがいまして、個人も対象にいたしますし、裁判所の民事調停制度の一類型として組み直したと。そしてその結果、債権放棄等に伴う税制上の手当ては法文上しないということになったわけでございます。
 これは、その意味では御批判を受けてやるということでございますが、ただ、そういうふうに切り離した結果、それじゃ効果が出るのかという懸念もございまして、そこのところは国税庁と相当激しく、私からいえば激しくやり合いをいたしまして、国税庁としては個別の判断という建前は崩すわけにはいかないけれども、最大限この趣旨を理解して協力はしたいというように組み立てたということでございます。
#69
○福島瑞穂君 債権放棄をした場合に損金処理を必ずするようにすれば、債権を回収するよりも損金処理をしてしまえというふうな形で貸し手側のモラルハザードが起きる可能性があるので、今回の制度は合理的だろうと思います。
 ただ、衆議院でもそうですし、今回でもそうなんですが、結局ケース・バイ・ケースだと、税務署の運用に任せるということになりますと一体どうなるのか。個別のケースでわからないとか、あるケースは損金処理される、あるケースはされないといういろんな問題が起きてくるのではないかと思うんですが、その点はどうなんでしょうか。
 例えば、裁判所で弁護士なり当事者、多重債務者と交渉して、最終的に損金処理をされるのかされないのかわからないまま話をするという実に不安定な状況になると思うんですが、そこはどうなるんですか。
#70
○衆議院議員(山本幸三君) おっしゃったように、そこのところが一番実際の処理をするときには大変重要な点だと思います。
 そこで、国税庁の、税務当局の個別の判断というのはこれは動かしがたいわけでありますけれども、しかし、この特定調停制度の趣旨は十分に理解してもらうという確約をいただいておりますので、従来はそういう処理をやっても税務署の判断は全然別ですから全くわかりませんよという不安定な状況にあったわけですね。そこで、その間のギャップを埋めるために、先ほども国税庁の方から御答弁いただきましたけれども、主要税務署には相談窓口をつくって、その調停の過程でも大体いけるというような感触が得られるような形にして、そしてまとまれば、もうそういう感触も得ていればほぼ自動的にいけますよという形でやっていただければというふうに思っております。
#71
○福島瑞穂君 実際上の運用で具体的にどうなるかは、私たちも公平にされているかどうか監視するということをやっていきたいと思います。
 最後に一点確認で、先ほど橋本委員からもありましたが、十四条第二項の、労働組合があるときはその労働組合、労働組合がない場合には従業員の過半数を代表する者の意見を求めるものとするということについての質問がありました。
 条文が求めなければならないというふうになっていないということについてちょっと一抹の不安があるんですが、先ほどの御答弁ですと、条文上は「意見を求めるものとする。」となっていても、実質的には求めなければならないということの確認でよろしいでしょうか。
#72
○衆議院議員(山本幸三君) この辺は法文上の書き方で、民事調停の世界では従来意見を求めることができるという規定が通常でありまして、それを強めて一歩踏み込むというところは、従来の合意ベースで話をするような、民事調停の世界ではこれもちょっと異常なんですが、それでも踏み込もうという決断をいたしました。
 その際に、行政庁なりあるいはそういう調停委員会に義務づけるという場合に、しなければならないと書くのがいいのかというところは、ちょっと法制上の書き方で余りにどぎつい表現はどうかと、踏み込む気持ちは決まっているわけですから。そこでいろんな例を調べまして「求めるものとする。」という文言にいたしておりますが、その趣旨は、先ほども申し上げましたように、聞かなければいけないし、それは当然のことながら再生ということには最も大きな要件になるわけですから、最大限尊重されるべきだということで理解しております。
#73
○福島瑞穂君 ありがとうございました。
#74
○委員長(風間昶君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
#75
○委員長(風間昶君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、中曽根弘文君及び吉川芳男君が委員を辞任され、その補欠として亀井郁夫君及び久野恒一君が選任されました。
    ─────────────
#76
○委員長(風間昶君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようでございますので、これより直ちに採決に入ります。
 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#77
○委員長(風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#78
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#79
○委員長(風間昶君) 民事再生法案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#80
○塩崎恭久君 自民党の塩崎恭久でございます。
 民事再生法の質疑がやっと始まることになりました。去年、私ども自由民主党では、先ほどの提案者であります山本幸三議員を初め、実は何を隠そう臼井法務大臣がまたその中心としてトータルプランというのをつくってまいったわけでございます。
 それは、日本経済の問題の本質は三つの過剰だというようなことがよく言われますが、中でも債務の過剰の問題というのが言ってみれば我が日本経済の震源地というべき問題ではないか、こういうことで、それが集約されております金融機関の不良債権の処理の問題、そしてまた、そこから派生して金融機関の再編の問題にまで至ったわけでございますが、こうしていろいろ日本の経済の問題を考えるに当たって、この債務の問題をこれだけ抱え込んでしまったときに何をすべきかというときに、倒産法制の見直しというのが不可欠であるということになったわけであります。
 この債務は、いろいろ統計はございますけれども、日米の不良債権の比較をしてみますと、アメリカの九〇年代、シティバンクが今非常に元気だと言われていますが、あのシティバンクも倒産寸前まで行ったわけでありまして、それが九一年でありました。そのときの不良債権は対GDP比でいきますと二・九%であったと言われております。日本の一九三〇年代のいわゆる昭和大恐慌と呼ばれたときの不良債権がどのくらいのマグニチュードあったかというと、GDP比大体二・五%ぐらい。そして今、これもいろいろ定義があって、自己査定とかあるいは要管理債権とかいろいろ定義がありますけれども、少なく見積もっても対GDP比で七%ぐらい、大きく見積もれば一五%を超えるような不良債権を銀行が抱えているということになっているわけであります。
 したがって、これは裏返してみれば、企業の側にそれだけの不良債務がたまっているということでありまして、去年は債権放棄を唱えるアトキンソンとかいろんな人が出てまいりまして、幾ら何でも平成の徳政令はというような話が出てまいりました。我々、トータルプラン、いろいろセットを考えましたけれども、その中で一つ出てきたのが、不動産に関連する権利等の調整に関する臨時措置法というのをつくったわけでありますが、いわゆる不動産関連権利等調整委員会という準司法的な手続で債権債務の整理をしていこうということになりました。
 ところが、これは金融国会で民主党の皆様方が、やっぱり裁判所をかますべきじゃないかという御意見もあり、あるいはゼネコン救済だ、あるいは銀行救済だ、こういうような御批判もあって、結局これが成立をしなかったわけであります。その他は民主党と我々自民党もしっかり手を組んで再生法もつくり、今いい結果を生んでいると思いますけれども、残念ながらこの法律がつぶれてしまった。
 そういう中で、我々はもう一回民主党の皆様方にも御理解を賜ってこれを復活したいと。決してゼネコン救済だ、銀行救済だじゃないんだということであったんですが、結局そういうことには至らず、今通りました特定調停、これは言ってみれば個人あるいは零細な企業を中心として債務の整理をしようという法律が一つできたんですが、この間の国会ではうまく通らなかった。結局、きょうこうして特定調停はでき上がって、そして今度民事再生、つまりチャプターイレブン型と呼ばれている再建型倒産法制がここで議論になって、皆様方の御議論の後に成立をしてくれればと、こういうふうに思っているわけであります。
 長々申し上げましたが、やっとここまでたどり着いたわけでありますけれども、この倒産法制、アジアの通貨危機のときにもいろんな問題が指摘されましたけれども、やっぱりああいった国々の抱えていた問題の一つには倒産法制がきちっとしていなかった、こういう問題があったやに聞いているわけであります。
 日本も倒産五法と呼ばれている法律がありますけれども、かなりクラシックな法律もございまして、我々がトータルプランの話を言う前からもちろん法務省はその問題点に気づいて検討していただいているようでありますが、我々、トータルプランをやっている中で、特に全体の、大体五年計画ぐらいでつくろうというやつをひとつ一年前倒しにしてくれという話で御納得をいただいて、さらにこの再建型の民事再生と今呼ばれている法律についてはさらに一年ということを中村元法務大臣が唱えて早くなったというふうに聞いているわけであります。
 あと個人の法制も早くした方がいいんじゃないか、こういう説が我々の中でも出ておりましたが、そもそも今回、和議法の全面改正と呼ばれている民事再生が出てきたわけでありますけれども、もともとの和議法にどこに問題があったのか、それから倒産五法がありますけれども、全体のどういうところに問題があったと大臣お考えになっておられて、この全体像をちょっとお話しいただきたいと思うわけでございます。
 今回、それで民事再生法については、その抱えている問題点のどこにこたえようとしているのか、そしてさらにその五法をいろいろ直していこうと思って頑張っていらっしゃるわけですが、一体いつまでに、どういうスケジュールでこの全体の倒産法制の体系が整うことになるのか、この辺について大臣の御見解をお伺いいただければと思います。
#81
○国務大臣(臼井日出男君) 塩崎先生には、トータルプランでは随分いろいろ御指導いただきましてありがとうございました。
 今お話をいただきました倒産法制の欠陥等の問題についてでございますが、倒産法制はそれぞれ制定の時期が異なっておりまして、それぞれ立法の思想や時代背景を異にしておりますために、その整合性を図るためにも今全体的な見直しというものは必要になってきているわけでございます。
 特に要点を申し上げますと、中小企業にとって利用しやすい再建型の手続が整備されていないということがございます。また、現在増加しております個人破産への適切な対応の必要性というものが迫られているわけでございます。実に、平成九年七万一千二百九十九件でございましたのが平成十年には十万件を超えている、こういう現況にもございます。次に、国際倒産事件に適切に対応するための規定の整備が必要となってきているということでございます。また、さらには大規模な倒産事件への適切な対応というものが必要になっている、こういうこともございます。
 今後の倒産法制の改正のスケジュールでございますが、平成八年の十月に倒産法制の見直しの作業を開始いたしたわけでございますが、当時は倒産法全体を見直した関係法案を平成十三年度中に国会に一括して提案をする、こういうことを目指しておったわけでございますけれども、しかしその後、現在御審議をお願いいたしております民事再生手続の検討を前倒しするなど、当初の事情の変更が生じた次第でございます。
 さらに、近年、個人債務者の倒産事件が年々増加する傾向にあるということも御承知のとおりでございまして、個人債務者向けの倒産手続につきましては、民事再生手続に引き続いて早急に制度の整備を図る必要があるものと考えておりまして、法制審議会倒産法部会におきまして現在鋭意御検討いただいているところでございます。
 しかしながら、昨今の経済情勢にかんがみますと、これ以外の倒産法制全体の整備もできる限り早期に実施すべきものと認識をいたしておりまして、今後も精力的かつ集中的に改正作業を進めていきたい、このように考えておる次第でございます。
#82
○塩崎恭久君 できる限り早く整備をしたいという大臣の御決意でございますので、ぜひひとつ前倒しにお願いをしたい、こう思うわけでありますが、危機というか、物事が急がれるときに、今役所に何人いるからこの人数でやればこの程度の日程でしかどうやったって早くはできないみたいな話がよく出てくるわけであります。
 しかし、諸外国を見てみますと、例えばアメリカなんかでも、新たな法律あるいは制度を考えるときには、そのとき、例えば一年なら一年、ばっと人をふやしてやるということをしばしばやるわけであります。
 これは、定員で縛られているお役所の方々にとって、やれといったってそれはなかなか難しいわけで、人を雇うにはお金も要るわけでありますから。そうなると、やっぱりこれはもう政治決断をちゃんとするかどうか、時の与党がちゃんとやるかどうかということである。
 日本の経済、危機を脱したとはいいながら、私は、先ほどの不良債権のマグニチュードを考えてみれば、今ちょっとよくなっているぐらいのことであって、一九九六年だって四%の成長をしていましたけれども、結局マイナス成長が二年続いたり、そういうことになるわけでありますから、やっぱり日本経済の震源地であるこの不良債権、そして企業の側から見れば不良債務の処理について、新しい倒産法制を活用しながら経済再生を図っていくということは非常に大事だろうと思うので、ぜひこれは、予算をつければ人はいるわけで、何とかそういうことを図ってでも早くやってもらいたいと思うわけでございます。
 今回のこの再建型倒産法制と呼ばれている民事再生法は、言ってみればアメリカのチャプターイレブンというのを模したところも若干あるというふうに聞いております。アメリカでは、私たちが知っているアメリカの企業でこんなところまで一回倒産したのかと、この民事再生にかかったのを倒産とこれからも相変わらず言うとするならば。それを見てみると、例えばメーシーズというデパートがありますが、これも一回ひっかかっているわけですね。それから、TWAという飛行機会社がありますけれども、これもそうだと。それから、サウスランドというセブンイレブンの運営会社、これもチャプターイレブンで立ち直っている。あと全米第三位の鉄鋼メーカーでLTVという会社もやっぱりチャプターイレブンで立ち直っているわけですね。
 ですから、知らないうちにこういうものを経て立ち直ってきているということを考えてみれば、この民事再生がきちっと機能するということは、我が国の経済、企業にとっても非常に重要な法律になってくる可能性が大きいと思うわけであります。
 この法律の特徴というのは、我々が去年いろいろ議論した中で、経営者にもう一回チャンスを与えようじゃないかと。一番仕事をしているのはその経営者であります。民事上、刑事上の問題がない限りはもう一回チャンスを与えて再建をするのが考えてみれば一番手っ取り早いかもわからぬということもあって、チャプターイレブン的なものをつくらなきゃいけないんじゃないか、こう言っておりましたが、その特徴というのは、債務者が事業を継続しながら、いわゆるDIP、デッター・イン・ポゼッション、占有継続債務者というわけでありますが、これが債務や事業の再構築を行える事業再建手段を与えてくれるというのがこの法律だというふうに言われているわけであります。
 そうしますと、これは一般的に債務者が債権者よりも有利な立場に立つ可能性があるということを意味しているわけでありますが、先ほど申し上げたアジアの通貨危機の際に、例えばタイとかああいう国で倒産法制をIMFのプログラムのもとで直していった、韓国もたしかそうだったと思いますが、そういう中で、こういう新しい再建型、つまりもう一回チャンスを経営者に与えるよという法制のもとで、結構旧財閥系とか古くからのオーナー経営者が居座ってしまって寝っ転がっちゃったというようなこともあったやに聞いているわけであります。
 アメリカの場合はチャプターイレブンの運用というのは、債務者のフレッシュスタートというか、もう一回やり直しということ、それから債権者の実質的な平等分配を図る、それからその二つの目的を実現させるために制度にフレキシビリティーを持たせようということだと言われているわけであります。
 したがって、このフレッシュスタートを債務者に与えると言いながら、実は再スタートする意欲もないような人をもう一回権利を与えて甘やかしてしまうというようなことになってはいけないんだろうと思うんです。そうしますと、債権者よりも債務者に力を持たせる可能性があるというときに、債務者が乱用をしないか。こういうことについての具体的な防止手だてというか、そういうことについての手だてはどのようになっているのかということについてお答えをいただきたいと思います。
#83
○国務大臣(臼井日出男君) 委員御指摘のとおり、この民事再生手続では、債務者が事業を継続しながら債務や事業の再構築を行うということになっているわけでございますが、一方、再生債務者が事業を継続しながら一方的に債務の減免等を得ることを認めているものではございません。再生計画案を提示して、再生債権者の多数の同意を得ることを必須の条件といたしているわけでございます。したがいまして、再生債務者等は、再生計画案において再生債権者の多数の同意を得られる弁済率あるいは弁済方法等を提示しなければならないわけでございまして、また経費削減等の経営努力も当然しなければならないものでございます。
 また、裁判所は必要に応じまして、再生債務者による財産の処分や借財等の一定の行為につき裁判所の許可を要するものといたしております。また、裁判所は監督委員による監督を命ずる処分をすることによりまして再生債務者の財産の管理処分権に制限を加えることもできるわけでございます。
 さらに、再生債務者による事業経営が失当である事業につきましては、管財人が選任をされまして従前の経営者の業務遂行権等が奪われる可能性もあるわけであります。さらに、これに加えまして、経営者等の役員の損害賠償義務を簡易迅速に追及するために決定手続による査定の制度を設けております。
 また、財産の隠匿行為などの債権者を害する行為に対しては十年以下の懲役または二百万円以下の罰金という刑罰も定めておりまして、倒産前後に違法行為を犯した経営者の民事、刑事上の責任を厳格に追及するということになっております。
 このように、この再生手続におきましては、債務者による手続の乱用を防止する措置が十分に講じられていると考えます。
#84
○塩崎恭久君 今、大臣お答えのように、債務者がこの法律がためにかえって甘やかされて乱用してしまう、債権者が相対的に損をするというようなことの防止手だては裁判所を中心にさまざま講じているというお話でございました。その点は行き過ぎないように、債務者に対するチャンスを与えるといっても行き過ぎないようにしなければいけないということでありますから、しっかりとやっていかなければならないなというふうに思うわけであります。
 そこで、これまで倒産五法の中で会社更生法は株式会社が対象であるというようなことで、いわゆる中小企業への適用というのがなかなか難しいというお話が随分出ておりました。今回、中小企業国会と呼ばれているわけでありますから、この民事再生法は特に中小企業に向いているというふれ込みでいろいろ言われておりますが、民事再生法はこれに配慮したということですけれども、なぜ会社更生法自体や和議法自体を改正しなかったのかという問題であります。逆に、大企業は民事再生法を利用できないのかという印象も、余りにも中小企業、中小企業と言うものですから、大企業には使えないのかと。
 さっき、アメリカの例でいけば、TWAみたいな大きな会社もみんなチャプターイレブンでやっているわけでありますが、では日本の今度の民事再生法とアメリカのチャプターイレブンは違うのかというようなイメージも若干持たれているところがあるんではないかなというふうに思うんです。
 そうなると、大企業はこの法律を利用できないのか、あるいは利用しにくいということになるんだとすれば、その理由は何だと、どこが使いにくいのかということをお聞かせいただければと思います。
#85
○国務大臣(臼井日出男君) 会社更生手続は、担保権や優先権がある債権及び株主の権利のすべてを手続に取り込みまして、組織法的な事項についてもこの手続によらなければ変更等ができないものとして、株式会社をめぐるすべての権利関係を更生計画により変更する手続でございます。これに対し再生手続というのは、中小企業等に利用しやすい手続とするために手続構造をできる限り簡素化いたしておりまして、担保権や優先権がある債権及び株主の権利を手続外に置きまして、企業の組織法的な事項にも原則として変更を加えないものといたしております。
 このような両手続の相違はその基本的構造にかかわるものでございまして、担保権や優先権がある債権についても権利変更を行わなければ企業の再建の達成ができないような事案や企業の組織法的な事項をも再構築する必要がある事案につきましては、会社更生手続の方がよりふさわしいものと考えられます。そこで、このような独自の存在意義を有する会社更生手続は存続させることといたしておりまして、会社更生法の改正によらず、新たに民事再生法を立案したものでございます。
 次に、再生手続は、従来、和議手続に対して指摘されておりました制度上の問題点を解消するとともに、和議手続と比べまして中小企業等にとって再建しやすい法的枠組みを提供し、債権者等の利害関係人にとっても公平かつ透明であり、現在の経済社会に適合した迅速かつ機能的な手続を構築いたしているところでございます。そして、和議手続に対して指摘されておりました制度上の問題点、それらはいずれも和議手続の基本的構造にかかわるものでございまして、和議法の改正によっては十分な対処が困難であるということから、和議法を廃止いたしまして民事再生法により新たな再建型の倒産手続を設けることといたしたものでございます。
 さらに、委員お尋ねの、大企業は再生手続を利用できるのかとのことにつきましては、再生手続は再生債務者となるべき者につきまして法律上何らの限定を設けておりませんので、大企業も再生手続を利用することができるのでございます。また、大企業であるがゆえに制度上再生手続を利用しにくい点があるわけではございません。
#86
○塩崎恭久君 調査室がつくってくれた資料にも中小企業を念頭に置いていると書いているものですから、どうかなと思ってお聞きをしましたけれども、今のお答えでいけば、大企業も全く問題なく使える、そして中小企業も使える、こういうことだと思うんです。今回のふれ込みは個人から法人まですべて使える、こういうことであろうかと思います。
 ちょっと通告をしておりませんが、民事局長がおるからあれですけれども、個人も使えるわけですよね。
#87
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおりでございます。
#88
○塩崎恭久君 そうしましたら、今度は企業の問題に戻りまして、大企業であろうと中小企業であろうとどちらでもいいわけでありますけれども、企業が民事再生手続を利用する場合と会社更生手続を利用する場合とにおける銀行を中心とする債権者、この債権者にとってのメリットそれからデメリットというのは、二つにケース分けしてみるとどういうことになるのか。特に、大企業の場合は銀行はどちらを選択することになることが多いんだろうか。この点をちょっと議論してみたいなと思うのでございます。
 アメリカは、先ほどのチャプターイレブンなどでよく、後ほどまたお尋ねしますけれども、デット・エクイティー・スワップみたいなやり方というのを随分やっておりました。今回の法整備においては、このデット・エクイティー・スワップについてもきちっとやれるようにしてほしいということを私も前々から申し上げておって、深山参事官を中心に頑張ってくれたと思いますが、銀行にとってみれば、この三月ぐらいにデット・エクイティー・スワップという言葉がえらいはやって、あたかも何か借金を株式にすぐ取りかえてくれて借金が棒引きになるかのような誤解がありましたけれども、それはとんでもない間違いでありますが、それで銀行が随分怒って、またデット・エクイティー・スワップの議論が少し下火になってしまいましたが、債権者の銀行がそんな簡単に債権を放棄するはずがないわけであって、再建可能だと思ったときに初めて株式に転換をしてもいいかなというぐらいのことだろうと思うんです。
 ですから、債権者たる銀行が会社更生法を望むのか、あるいは今度の民事再生法を選ぶのか、その点をメリット、デメリットを考えながらちょっと頭の体操をしてみるとどんなことになるのかというのをお答えいただきたいと思います。
#89
○政府参考人(細川清君) 銀行は融資をするに当たり債務者の不動産等に担保権を設定する場合が多いと考えられますが、まずこの担保権者の立場から考えてみたいと思います。
 担保権者の立場から見た場合には、会社更生手続が担保権をも手続に取り込み更生計画による権利変更の対象としているのに対して、再生手続は、担保権者は手続外で自由に担保権を行使することができることを原則としております。したがいまして、担保権者にとっては再生手続の方が担保権の制約が少ないということが言えるわけでございます。
 また、今度は、銀行が事業経営に深くかかわっている場合もありますので、企業の維持、継続を図るという観点から見てみますと、会社更生手続は、担保権や優先権がある債権についても権利変更を行い、企業の組織的な事項についても再構築を行い得る強力な手続でございますので、そういった点等においてメリットがある反面、非常に厳重な手続ですから、会社更生手続には非常に費用がかかるというデメリットがあることになります。
 他方で、再生手続は、担保権や優先権のある債権を原則として制約せず、企業の組織的な事項についても基本的に変更を加えることはできない手続である点で会社更生のように強力な再建手続ではございませんが、その反面において簡易かつ迅速な手続であるというメリットがあることになります。
 したがいまして、銀行等の債権者が手続開始の申し立てをする場合には、当該銀行の立場に応じていずれの手続のメリットが大きいかを勘案して手続を選択するということになろうかと考えられます。
 なお、債務者が特に大企業である場合についてのお尋ねでありますが、企業の経済的な破綻の態様や程度がさまざまでございますので、銀行がいずれの手続を選択することが多いかというのは一概には言えないであろうと。やはり事案を見ながら個別的に決めていくことになるのではないかというふうに考えております。
#90
○塩崎恭久君 後でまた出てくるかもわかりませんが、破綻原因が起きる前にこの手続に入れるというのがこの民事再生の一つの大きな特徴でありますから、銀行は当然債権者として、今度債権者からタオルを投げるというか、それもできるわけですから、能動的に会社をリストラクチャーしよう、それも法的手続がなければできないと考えながら、しかし本当に倒産までさせてしまう手前でやろうということを考えてみると、銀行にとっては、ケース・バイ・ケースということではそういうことなんでしょうけれども、今みたいな、再建をしやすいかもわからないと思っている銀行は先にタオルを投げてやるかもわからない。そういう意味では民事再生の方が会社更生よりもメリットがあるということはないんですか。
#91
○政府参考人(細川清君) 開始原因につきましては、和議法は破産原因があるときと言っておりましたので、これではちょっと時期が遅いということで大変批判されていたわけです。それで、会社更生手続と今回の再生手続を比較いたしますと、開始原因はほぼ同一でございますので、その点は余り差がないというふうに言えると思います。
#92
○塩崎恭久君 実は、その会社更生法というのは、導入したときからチャプターイレブン的なこともできるという建前で導入をされているんで、本当はできるはずだと、今の、破産原因がなくても会社更生手続には申請すれば入れるという話でありますから。しかし、それをやってこなかったわけですね。それは、通告もしておりませんが、何で会社更生法で、本来は再建型、会社更生ですから再建型なんですが、なぜ今回やらなきゃいけないようなことができなかったとお考えになりますか。
#93
○政府参考人(細川清君) これは、昭和二十七年にアメリカのコーポレート・リオーガニゼーションの、連邦のバンクラプシー・アクトの中のその部分をモデルとして会社更生法はつくられたわけですが、実は当時のアメリカの会社更生法はデッター・イン・ポゼッションによる経営の再編成、再構築というのはできなくて、現在の会社更生法と同じように管財人が任命されるということになっていたわけです。
 ところが、アメリカの方は連邦破産法が大改正されてチャプターイレブンになりまして、デッター・イン・ポゼッションでいけるようになったんですが、日本の会社更生法はその点は基本的な構造は変えておりませんのでそれができなくなってしまったと。従来、経営者が継続して経営陣に残れるものとしては和議法しかなかったものですから、そうすると今度は和議法の不備というものが非常に指摘されてきた、こういうような経緯でございます。
#94
○塩崎恭久君 よくわかりました。
 今の、破産原因が生ずる前に手続を申し立てることができるということ、そして早期の段階における再建への道を開けるということなんですが、この申し立て権の問題について若干お話を聞きたいと思うんですけれども、特に資産流動化の場合などでは大変必要になる措置でありますけれども、破産法ないし民事訴訟法上の取り扱いとしてこの手続の申し立て権の行使を事前に契約によって制限しておくことは法律上どうなのか、有効なのかどうかということについていかがでしょうか。
#95
○政府参考人(細川清君) これは大変難しい法律上の問題ですが、一般的に民事訴訟を提起しないという合意あるいは民事執行をしないという合意は、これは有効になされるというふうに解されております。
 次に、債権者と債務者の間で債務者が自己破産の申し立てを放棄する旨の契約をした場合の効力というのが問題になるんですが、これについては必ずしも十分な議論がされているわけでございません。確立した判例があるわけでもございません。しかし、考えてみますと、破産手続がすべての債権者に対して公平な分配を図って清算を行うという公益的性格を有している上、自己破産の申し立てにはみずから強制執行等の申し立てをすることが事実上期待できない小口債権者等を保護する機能もあると考えられます。したがいまして、債務者が一部の債権者との間において自己破産の申し立て権を放棄する旨の契約をしても、その効力を認められず、これに反してされた申し立ても有効であるというふうに考えられます。この点はアメリカでも多分同じ考え方がとられていると思います。
 今度は、債権者と債務者との間で債権者の破産申し立て権を放棄する旨の契約をした場合の効力につきましては、これは民事訴訟法上の不起訴の合意とか不執行の合意と同じように、私的自治の原則に照らして基本的に有効であろうというふうに考えられます。破産手続による公平な分配を期待するのが通常である小口債権者の保護の観点から、そのような債権者との間の契約について、例えば約款で一律に制限しているとか、そういうことがあれば例外的にその効力が否定される場合もあり得ると考えられております。この点もアメリカでも結論は同じであるというふうに承知しています。
 再生手続も、破産手続と同様に法的な倒産処理手続をして債権者間の公平を図るという公益的性格を有するものでありますから、お尋ねの、再生手続の申し立て権を事前に制限する契約の効力についても、破産の場合と同様に、債務者の申し立て権の制限については無効、債権者の申し立て権の制限については原則として有効、そのように解されると考えております。
#96
○塩崎恭久君 ありがとうございました。
 先ほど来出ていたチャプターイレブンで初めて導入されたデッター・イン・ポゼッションという概念でありますけれども、去年トータルプランをやっているときに随分問題になったのは、不良債務をしょってしまっている企業、特に例えば不動産の虫食いを何とかしないといけないと。その際に、大体地上げをした不動産業者というのはみんな債務過多になっちゃってどうにもこうにもならない、法的手続になっちゃっているところも中にはあるかもわからないけれども、そういうときに、もう一回その近辺を再地上げして、そして再開発をしたいといっても、その企業にお金を貸す人というのは出てこないわけです。そうなると、結局だれかに渡ってから初めてそこが再開発をされるかもわからないということですけれども、今、結局、実は銀行が不良債権を持ったままで、私は個人的には去年、引き当て基準を銀行に設けると同時に、ある一定の不良債権の売却ガイドラインみたいなものを持たない限りは担保不動産が世の中に出てこないぞ、不動産市場に出てこないぞ、こう言っていたわけであります。
 結局、そういうことをやらずに健全化法というのをつくってやっているものですから、銀行は、資本注入を受けたということもこれあり、じっと不良債権を持ったままになっているわけです。担保不動産もそのままになっているものですから、債務者は、虫食い地の所有権は持っているけれども債務をしょい込んでいてどうにもならない、だれもお金も貸してくれないからにっちもさっちもいかない。銀行は、土地がそのうち上がるだろうと何となく思って、なおかつ不良債権を保有するコストが安いものですから、そのままじっと持っているというのが今の現状であって、青空駐車場とか百円パーキングというのがどんどんふえちゃって、私の地元なんかでも、私の地元の事務所は松山市のど真ん中にありますけれども、大通りから二本入っているんです。ところが、前は大通りなんか見えなかったのに今は全部見えるようになっちゃった。何でかというと、それは青空駐車場に全部なっちゃったんです。恐らくそれはみんな担保不動産になっていて、債務者は土地を持っているけれども何にもならない、首も回らないけれども金も借りられないということでじっとしていて、どんどん日本じゅうが青空駐車場になるかもわからないぐらいの勢いでふえているということで、大変にゆゆしきことだと思うんです。
 これにはいろいろとやるべきことがありますけれども、きょうはこの議論の場ではないのでやめますが、このDIPファイナンス、デッター・イン・ポゼッションのファイナンスが可能になるというのが今回の民事再生法の一つの特徴である、こういうわけでありまして、大いに期待をしているわけであります。
 通常、会社更生手続に入るためには手続中の運転資金が必要で、それゆえ新たな運転資金等を提供するスポンサーがついていない限りは会社更生手続というのはうまくいかないということだと思うんです。民事再生手続では、会社更生法の百十九条の三、二百八条の五号と同様の規定を置いた上で、仮に破産手続への移行があった場合でも、民事再生手続の申請があればニューマネーの債権者は必ず共益債権、財団債権として保護されるということになっていて、民事再生手続を受ける債務者に対する融資が行われやすくなる効果がある、こう言われているわけであります。
 ですから、このDIPファイナンスができるということが、この日本の、さっき言ったような、不良債権がたくさんあるということは不良債務を抱えた企業がこれによってもう一回チャンスを与えられる一つの大事なファクターであるわけであります。ですけれども、このDIPファイナンスを共益債権とするだけでは、銀行の貸し渋りが続く今の施策としては不十分で、さらにこうした機能を充実させることが大事です。
 アメリカの例をよくよく考えてみると、裁判所の判断によりますけれども、いわゆるスーパープライオリティーとアメリカで言われているニューマネーの貸し手に手続中における共益債権の中でも最優先の弁済順位を与えるというようなことであるとか、それから担保順位でプライマリーリーンという制度があって、ニューマネー債権に対して申し立て前の債権より優先するという担保順位を与えると。それから、申し立て前の債権の担保とニューマネーの担保を入れかえるというクロスコラテラルというのがアメリカなどでは行われているわけでありますけれども、これは今回この民事再生法では認められなかったということだと思うんです。
 それで、申し立て前の担保権者に適切な保護を与えた上で担保権を解除するといういわゆるアデクイットプロテクション、これは一応たしかやれるようにしていただいていると思うのですが、今申し上げたいわゆるアメリカで言われるスーパープライオリティー、プライマリーリーン、それからクロスコラテラルと呼ばれているようなこういう制度を与えずにこれをやろうということでありますが、これは法務省にも私の書いたものをお届けしてぜひこれができるようにしてくれというふうに申し上げたつもりでありますけれども、却下された理由をぜひお尋ね申し上げたいというふうに思います。
#97
○政府参考人(細川清君) 一般論といたしまして、企業の再建のためにスポンサーから新たな資金を得ること、すなわちDIPファイナンスの道を開くということは非常に再建のために重要なことでございます。
 それで、ただいまのお尋ねは、米国の連邦倒産法十一章の三百六十四条にある三つのものを採用しなかったのはなぜかということでございますので、順次お答えを申し上げたいと思います。
 まず、スーパープライオリティーと申しますのは、先ほどの条文におきまして、手続開始後の新規融資について手続上通常の管理費用の地位を与えるだけでは信用供与が得られない場合に、裁判所の許可を得て最優先の弁済順位を有する債務を負担することと承知をしております。つまり、今回の法案の中では同じく共益債権というものの中でも優劣をつけているという法制でございます。
 我が国において同様の制度を導入する場合には、一部の共益債権について他の共益債権に優先する最優先の順位を付与することになります。しかし、再生手続上、共益債権にできる請求権はいずれも再生債権者全体の利益に資する共益的費用の性格を有するもので、御指摘のような制度を導入することは他の共益債権の保護との関係で支障が生ずるおそれがあります。他の共益債権、例えば開始後の労働者の賃金と比べてこちらが優先になるということがいいかどうかということがありますので、この点は今後なお慎重に検討する必要があるのではないかということで今回は入れないことにいたしたわけでございます。
 二番目のプライマリーリーンの問題でございます。先ほどの米国連邦倒産法の条文の中において規定があるわけでございますが、他の担保権がついていない再生債務者の財産等について先取り特権を設定することによって信用供与を受けることができるという制度だというふうに承知しております。この点は再生手続におきましても、他の担保権がついていない債務者財産等に新たに担保を設定して新規に融資を受けることは、明文の規定はありませんが可能でございます。もっともこれについては通常の場合は裁判所の許可が必要だということになろうかと思います。
 三番目のクロスコラテラルでございますが、これは倒産手続開始前の債権者が手続開始後も融資を継続する条件として、手続開始後に設定を受けた担保権によって手続開始前の債権についても担保するものとする合意を意味するものだと承知しております。そして、このような合意の有効性につきましては、米国倒産法上は明文の規定がございませんで、解釈上も有効とする見解と無効とする見解に分かれておりまして、判決例も両方あるということのようでございます。
 このような制度を導入いたしますることは、手続開始前の債権者相互の間で一部の債権者の債権を優遇し、平等でない取り扱いを正面からする結果となりますので、この点についてもなお今後必要性等について慎重に検討する必要があるんではないかということで、今回は取り入れていないわけでございます。
#98
○塩崎恭久君 今のスーパープライオリティーとちょっと違いますが、アメリカの場合には今ペイオフというのが問題になっていますけれども、預金債権を他の債権よりも優先するというのがあったりして随分考え方が違うなという気がいたすわけでありますが、なおこの辺の問題は、先ほどの労働債権等々の問題も含めてこれから、これが施行になってから実際にやってみて、やっぱりこういう問題を解決して今申し上げたような制度を導入した方がいいということもあり得ると私は思いますので、ぜひ引き続いて施行されてからの運用状況をよくごらんいただいて、必要なものは問題を解決した上で取り上げていただければなというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。
 それで、先ほど冒頭にちょっと申し上げましたいわゆるデット・エクイティー・スワップでありますが、先ほど申し上げたチャプターイレブンを使って再建されたアメリカのデパートのメーシーズなどもやはりこのデット・エクイティー・スワップというのを使っているわけであります。
 実は、このデット・エクイティー・スワップというのは何もアメリカの専売特許じゃなくて、イギリスなどでもやって、ユーロトンネルのときにもやって、日本に債権者である人たちも実はいて、余りその人たちはいい印象を持ってないという話がありますけれども、しかしケース・バイ・ケースで、アメリカのケースというのもいろいろ私も見てみましたけれども、株式といってもいろんな株式、いわゆる普通株であったり優先株であったり劣後ローンであったり、いろんな形の、もともとの融資が変わっているケースがあったわけであります。
 今度の民事再生ではこのいわゆるデット・エクイティー・スワップを実施することが可能ということになっているわけでありますけれども、問題は、その既存の株主の責任のとり方というか、新しく債権を持っている人が株主になるわけでありますけれども、当然その会社がそういう状態になったということは株主に責任が最初に行くわけであって、その辺の既存の株主の責任ということは今回の手続においてはどのようになっているのかをお聞かせいただきたいと思います。
#99
○政府参考人(細川清君) 既存の株主の責任が一番問題になりますのは、典型的な事例は会社が債務超過になっているという場合でございまして、そういう場合につきましては、本法案では裁判所の許可により再生計画の定めによる資本の減少に関する条項と、それから新たに新株を発行するために授権資本額の増額のための定款の改正というものを再生計画案に記載することができることになっております。これは新たな経済的支援者、つまりスポンサーによる支援を促進するためのものでございます。株式が発行された場合に、減資をしておりませんと新たな資金の価値が薄まってしまう、また既存の株主は何ら出捐をしてないのに価値が出てきてしまうという問題がありますので、そういう新たなスポンサーによる支援を促進するためのものであります。
 こういったことと並行して、再生債務者が新株を発行して、その際に再生債権者がその有する債権を現物出資することによっていわゆるデット・エクイティー・スワップができるようになるわけでございます。
 繰り返しになりますが、先ほどのように、資本を減少するということによってその既存の株主の株主責任がとられるということになろうかと考えております。
#100
○塩崎恭久君 今のその減資の手続ですが、通常減資するということなれば特別に株主総会の三分の二の同意が要るということだと思うんですが、この手続の場合の減資をする手続は、もう一回確認しますが、今までと違う手続にしているのかどうか、お答えいただけますか。
#101
○政府参考人(細川清君) 御指摘のとおり、商法では減資の手続に特別決議が必要でございますが、再生手続がなされている株式会社におきましても、債務超過でない場合は減資をする場合には通常の手続による必要があるわけでございますが、その当該会社が債務超過である場合には、再生計画の中に入れることによって、そしてそれが多数の債権者の同意を得られることによって、裁判所が許可をすればその特別決議がなくても資本の減少の効果が生ずるということにしておるわけでございます。
 その理由は、一つは、債務超過になっている場合には株主権の実質的価値がないということから、そういうことにしても問題はないというふうに判断したわけでございます。
#102
○塩崎恭久君 わかりました。
 きょうは金曜日でもございますので、そろそろ大臣の、今いろいろずっと議論をしてまいりましたが、去年トータルプランをいろいろおやりになられました。それから山本政務次官もおいででございますが、弁護士として今まで倒産手続をおとりになったことがあるかどうかよく存じ上げませんが、まず政務次官に、この民事再生手続を導入することによってどういうメリットがあるのかということを含めて、最初で最後の質問を、お考えをひとつ政務次官にお願いしたいと思います。
#103
○政務次官(山本有二君) 多大なメリットがあろうと思います。日本の企業の中の九割近くが中小企業と言われる企業でございまして、その何よりの経営のエネルギーというのはその経営者のいわば経営ノウハウでございまして、そのノウハウをみすみす全体に不況であるからといって見捨てて破産に持っていくよりも、その手前で社会経済的なその損失を阻止して生かしていくということはもう最大のメリットだろうというように思います。
 それから和議は、私も管財人の経験がございますが、そのときに本当にかわいそうだなと思うのは、再建計画をきっちりつくって、債権者がそれじゃ三割は払ってくれるねと約束をしてそれに期待をかけても、何の強制力もないわけでありまして、今回のこの民事再生法では、債権者表に載りました債権者は回収に執行力がつくわけでございますから、その意味におきましては大変強力な債権者の味方にもなり、債務者の味方にもなるという充実した法制ができ上がったと私は思っておりますので、ひとつ御指導をよろしくお願いいたします。
#104
○塩崎恭久君 最後に大臣に、今の政務次官のお話も含め、これからのこの民事再生手続に期待するもの、それから聞くところによると、大臣は個人の破産法制もきちっとやらなきゃいかぬ、こういうふうにおっしゃっていただいているようであります。この法律自体が個人にも使えるといいながら、これで全部やるというわけにもいかないわけで、やっぱり個人の法制は法制で要るんだろうというふうに私自身も思っておりますが、その辺の問題も含めて、ひとつ今後に対する御決意のほどを最後にお伺いをしたいと思います。
#105
○国務大臣(臼井日出男君) 塩崎先生とともにお仕事をしてまいっておりまして、個人の破産法制も全体的な中でもってぜひとも至急につくらなければいけない。冒頭に私、大変個人の自己破産の人たちもふえているということもお話しいたしまして、できるだけ早く実行に移したい、こういうふうに考えている次第でございますが、この再生手続によりまして、意欲ある中小企業者に対しまして再生のための簡易なかつ迅速な手続というものを提供することができるわけでございます。また一方、債権者にとりましても公平かつ透明なものになっておりまして、双方に大変プラスが多い仕組みになっているのでございます。現下の経済情勢を考えまして、一日も早くこの法案が成立をし、多くの方々にプラスになるようになっていただきたい、このように考えている次第でございます。
 この法案が成立をいたしました暁には、そうした多くの方々に利用していただけるためにも、この法案の周知徹底を図りまして、迅速なかつ機能的なそうした手続が運用できますようにさらに一層努力をいたしてまいりたいと考えている次第でございます。
#106
○塩崎恭久君 この法律は、施行を見ると、「この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」と、こう書いてあるわけであります。したがって、先ほど大臣それから政務次官のおっしゃっているように、期待するところ大ということであれば、一日も早くこれが施行されるということが大事でございますので、ぜひ委員会採決並びに本会議での成立が一日も早くできることを皆様方にお願い申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#107
○委員長(風間昶君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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