くにさくロゴ
1950/11/26 第9回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第009回国会 本会議 第5号
姉妹サイト
 
1950/11/26 第9回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第009回国会 本会議 第5号

#1
第009回国会 本会議 第5号
昭和二十五年十一月二十六日(日曜日)
 議事日程 第四号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
    午後一時二十六分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(幣原喜重郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。河野金昇君。
    〔河野金昇君登壇〕
#4
○河野金昇君 私は、国民民主党を代表いたしまして、総理大臣の施政演説に対して、総理初め関係各大臣に若干の質問を試みんとするものであります。
 国会の開会が、衆参両院とも同僚議員の弔辞に始まり、総理大臣の施政演説またスエーデン国王の崩御に対する哀悼の辞に始まつておるのであり、あたかも吉田内閣の前途を弔うがごとくであります。(拍手)対日講和の締結も間近に迫りつつあり、一方対日援助打切りが一部に伝えられているがごとく一九五一年七月とするならば、今日最も重大な問題は日本経済の自立ということであります。安本が昭和二十七年度を目標こ描いておる自立経済の規模は、貿易の輸出入おのおの十四、五億ドル、食糧増産、米麦合せて千二百万石、生活水準は昭和九、十、十一、三箇年平均の八九%等でありますが、計画性なき古典的資本主義経済、自由経済を本領としておられる現自由党内閣において、はたしてこれが可能である心かどうか、安本長官から承りたいのであります。
 朝鮮動乱前の状況を考えると、日本経済は、ドツジ・ラインに名をかる現政府の施策により安定恐慌の状態にあり、税金の苛酷なる徴収と金融の引締めにあい、特に中小企業への影響ははなはだしく、破産続出の状態にあつたのであります。かかるときに朝鮮動乱が起り、日本経済の一部が立ち直つたことは事実であります。動乱勃発と同時に、特需が生じ、九月末には三百億円に達し、サービスを入れると三百七十億円に上り、滯貨をかかえて苦悩しておつた産業界は一息ついたのであります。かくのごとく、経済的危機を救つたものは、吉田内閣の政策にあらずして、朝鮮民族の不幸なる血で血を洗う内乱と、米国を中心とする国連軍の血の犠牲であつたことを忘れてはならないのであります。(拍手)
 特需と並んで注目されるものは輸出の増加であります。現在、世界中で生産力に余裕を持つている国は日本とドイツだけであり、他の国々は、ほぼ完全操業の形となつているのであります。米ソが代表する一つの対立する世界は、朝鮮動乱以来、再軍備のため軍需生産に大わらわであります。この世界情勢は、日本製品に対する注文となり、輸出の増加となつたのであります。その中心は綿製品、化学繊維、非鉄金属、鉄鋼等の輸出が増加し、年間六億ドルの目標が約十億ドルに達するであろうと思われるのであります。朝鮮動乱が第三次世界戦争に発展せず、国際的に武裝平和が続く限り、昭和二十七年度の十四、五億ドルの輸出目標は夢ではないように思いますが、朝鮮動乱の見通し、世界情勢の判断を政府はいかに見ておられるか、吉田外務大臣にお尋ねしたいのであります。(拍手)
 一方特需、輸出の増加は、動乱並びに世界情勢の変化により、原料輸入がこれに伴わないため自然内需の圧迫となり、物価の値上りを来し、社会不安、労働不安を生じつつあることも、見のがせないところの事実であります。従つて、この際食糧、綿花、羊毛等の輸入の見通しと現状を、関係各大臣から詳細に承りたいのであります。
 政府は、国会から、あるいは官庁から、あるいは教壇から、あるいは工場から、共産党員またはその支持者を追放されることに非常に勇敢であります。しかして、莫大なる国費を費して徳田球一君以下捜査されるも、ただぼんやりしておつた春日正一君一人をとらえた以外、今日に至るまで、その居どころさえつかめないところの現実の姿を、国民が一体何と見ておるか、政府はお考えになつたことがありますか。一体、彼らは日本に今まだおりますか。それとも全然居どころがわからないのでありますか。共産党員を首を切つて地下に追い込むだけが共産党対策であつてはなりません。政府の共産党対策があれば、この際大橋法務総裁からはつきり承りたいのであります。(拍手)
 中小企業者や農民、勤労者で共産党に入党し、あるいはこれに好意を持つ者で、はたしてマルキシズムあるいは共産主義の理論がわかつて入つて行く者が何人ありましようか。苛酷なる税金、不合理なる供出、まじめに働いても食つて行けない勤労者の生活を無視していては、一人の共産党指導者の首を切つても、より多くの共産党的人間のふえて行くことを政府は自覚して政策を立てなければなりません。(拍手)今日までのような中小企業者、農民、勤労者に対する思いやりのない無策を続けて行くならば、共産党の党勢拡張者は吉田内閣であると言われても弁解の余地はありますまい。(拍手)そこで政府にお尋ねをいたしますが、人事院勧告の賃金ベースは私たちは妥当と思うが、政府は追加予算案に見るがごときごまかしだけでなく、全面的にこれをのむ意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。なお国鉄第一次裁定を踏みにじつたのでありますが、このたびの第二次裁定を認める意思があるかどうか承りたいのであります。
 固定資産税、住民税は、つとに私どもの減税を主張したとろであるが、徴収の実情にかんがみ苛酷であるということがはつきりしたのであります。これが改正の用意があるかどうか、岡野国務大臣にお尋ねをいたしたいのであります。
 本年度の麦の供出にあたり、地方によつては不作にもかかわらず、むりな供出を命じ、それが軍政部、民事都の命令なりと言つて、苛酷なる供出が行われ、農民に惡影響を與えておるのでありますが、米ソ対立しておる今日、軍政部、民事部がかかることをお命じになるとは断じて思われません。おそらくこれは日本の役人たちの面子にとらわれての行き過ぎの行動であろうと思いますが、農林大臣はどうお考えになつておりますか。今年の米に対して司令部、軍政部の名が濫用された場合、農林大臣はいかに処理されるか、お伺いしておきたいのであります。(拍手)
 経済自立を目指して貿易の増進をはかり、なお国民の生活水準を高めんとするには生産の増強をはからなければなりません。生産の増強をはかるには産業資金の問題を解決しなければなりません。預金部資金、見返り資金、復金償現金等を産業資金に特に長期設備資金として活用し、生産を高めなければならないのであります。
 同時に、今一つ大きな問題は電力問題であるのであります。すなわち、電気事業の再編成問題を解決せずには日本経済の自立は考えられません。あらゆる産業の基礎である動力エネルギーを解決しなければなりません。日本が四つの島にとじ込められた今日においては、鉄も石炭も不足しております。ただあり余つておるものは水力のみであります。この豊富なる水力を利用して白い石炭をつくらなければなりません。かくして、水力電源の開発こそ今日の日本に負荷された唯一の産業自立への基礎條件であるのであります。かかる情勢のもとに、去る第七国会の終末ごろに申訳的に電力再編成法案が上程されたのでありますが、自由党内の猛烈なる反対と、政府にもまた熱意なく審議未了に終り、今日に至つたのであります。その間、司令部よりの見返り資金運用中止の報に接し、鋭意第七国会の九分割案とは別個の案を立案中のように承つておつたのであります。しかるに、二十二日マツカーサー書簡なるものがもたらされ、政府は二十三日の閣議で、第七国会に提出した政府案とほぼ同様のものを急遽ポ政令で公布するに至つたのであります。
 マ書簡の内容は公表されておりませんが、吉田総理は、二十四日の衆議院運営委員会において、マ書簡にはポ政令でやるべしということが明記してあると言明されたのであります。昨日、同僚笹森君の質問に対しまして、ポ政令でやつたことが惡いというなら、まずポツダム政令を出したGHQに対して詰問を発せられるがよいであろうと総理大臣は言われたのであります。とらの威をかりるきつねの捨てぜりふといわなければなりません。(拍手)国会開会中にもかかわらず、国会が審議する能力なしとして命令を出されたいということは、いかに占領下とはいいながら、国会議員として悲しみにたえないところであります。(拍手)しかし、第七国会以来今日に至るまで、政府は野党に堂々と国会において論議せしむる機会を與えず、もつばら自由党内の党利党略、利害関係によつて煩わされて今日までまとめ得ず、遂にマ元帥のごやつかいにならなければならないということは、自由党の分裂はこれで避けられるかもしれないけれども、国民がせつかく講和を目前に控えて自立への道を歩まんと奮い立たんとしておる矢先に、国民に重大関係のある電気事業再編成の問題が、国民から選ばれたるわれわれ国会議員をして審議できないような事態に追い込んだことは、政府が何と弁解しようと、自由党の党利党略のために国会の審議権がすりかえられたものであるといわなければなりません。(拍手)国会の審議権が重いか、自由党の党利が重いか、憲法の精神に照して、吉田総理大臣の明快にして責任ある答弁を求めます。(拍手)さらに、第七国会に提出した法案をひつ込めて別の案をつくりつつあつたところの政府並びに與党の諸君、特に当面の責任者たる通産大臣は、第七国会と同じものをポ政令で公布されても責任をお感じになりませんか。出所進退をわきまえた常識ある政治家なら、一日としてその職にとどまることはできなかろうと思います。(拍手)横尾通産大臣の決意のほどを承りたいのであります。
 さらに日発問題に対して質問を続けます。日発に対して監督権をお持ちになつておるところの通産大臣は、日発より自由党への百万円献金、古池信三田倉八郎、石川芳次郎の三名に、参議院選挙のとき、おのおの二十万円ずつ行つておる、さらに労務対策費として三千六百六十二万、そのうち電源防衛講演会費として一千九十万円を、共産党転向田中清玄等に渡しておる、そのほか官庁関係費七百七十二万円、渉外関係費一千四百五十二万円、電気事業経営者会議費八百三十五万円等、わけのわからない厖大な費用を使つていることが、考査特別委員会によつて判明したのでありまするが、こんなことぐらい何んでもないとお考えになつておりまするか。考査特別委員会では、多数によつて、何にもなかつたと押し切つておるのであります。新聞も何もなかつたと言つておるのでありまするが、けしからぬことだと思うのであります。公団のつまみ食い以来、自由党の方々の常識の基準がかわつて来たといわなければなりません。(拍手)監督の地位にある横尾通産大臣の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 さらに競輪問題が教育上、道徳上、治安上よろしくないということは、教育委員会、全国公安委員会、星島二郎君を会長とするスポーツ振興会議、関西婦人連盟等が即時廃止を決議し、新聞の輿論調査、街頭録音等によつても、その廃止の戸が圧倒的であります。現内閣におきましても、吉田総理、増田建設大臣、天野文相等は廃止に賛成のように承つておりまするが、ひとりわが横尾通産大臣は、職をとしてでも継続させると言つて箱根参りまでされたのであります。その小乘の決意たるや悲壯というべきであります。
 委員会においても、通産大臣は私の質問に対して自転車競技法は片山内閣のとき社会党が提案し、共産党を除く各党が賛成をした法案であるから、敬意を表してやめないとおつしやつたのであります。通産大臣は、ときどき妙なことをおつしやいます。片山内閣のときの法律を片つぱしからほごのごとくお捨てになるところのあなた方が、なぜにこの自転車競技法だけに特に御執着になるのでありますか。再開後不正があつたら、ただちに中止を命ずると、参議院の通産委員会ではつきり言明された通産大臣は、再開第二陣
               への西宮に不正行為のあつたことをお知りになつているはずであります。融通のきかないほどきまじめな通産大臣は、うそはおつしやらないであろうと思います。いかに御処理になりまするか、御決意のほどを承りたいのであります。(拍手)
 施政方針の演説では、農村問題に一言も触れておられません。去る第八国会の終りに、私たちはなるべく早く、できるならば九月ごろに、救農国会を開くことを政府に強く要望したのであります。農林大臣も大賛成で、興農国会を開くと方々で放送されたのであります。延び延びになつたこの国会の補正予算をごらんになつて、これが興農国会に値し、全国農民が奮い立つものが一つでもあるとお考えになりますか。休会中方々で朗報をまき散らされたことを思い起され、しかもなおこの現実に直面して、廣川農林大臣はうそぶくだけの勇気がありますか。(拍手)きのう、同僚笹森君の質問に対しまして、廣川農林大臣は、このたびの補正予算にはだめであつたが、来年度の予算にはうんと予算をとるということを言われたのであります。さすが廣川さんは僧籍に身をお置きになるだけあつて来世のことを説いて、現世において農民が苦しみつつある、悩みつつあることを、うまくごまかしておられるといわなければならないのであります。(拍手)
 元来、現政府並びに自由党には、一貫した農業政策、特に食糧政策がありません。昨年の総選挙には供出後の米の自由販売を唱え、選挙後の国会には、これと逆行する食確法一部改正の法律案を提案し、農民の憤りの声を背景に野党並びに参議院の反対にあい、二議会これの審議未了にあうや、たちまちにしてポ政令を公布し、農民と野党を唖然たらしめたのであります。そうかと思うと、その次には、またこれと逆のいも類の統制撤廃を行い、農民をまごつかせたのである。朝鮮事変が起るや、またもや麦の強制供出を行い、一方国内食糧の一割増産を命令し、来年一月よりの主食一勺増配の朗報をまき散らし、たちまちにして増配の朗報を撤回し、今また主食の統制撤廃を唱える等、まつたく無定見にして、いたずらに農民の食糧生産意欲を阻害する以外何ものもありません。(拍手)本議場を通じて責任ある政府の食糧政策を国民の前に示されんことを要望いたします。
 国際情勢から見ましても、自立経済の建前からいたしましても、食糧の自給度を高めることが最も必要であります。されば自立経済審議会においても、昭和二十七年度を目標に米麦合せて千二百万石の増産を見込んでおられるのである。しかし食糧増産といつても、米はもはや限度に来ているのであります。麦の増産は、作付反別から見ても、政府の政策よろしきを得れば増産の可能性があるのであります。しかし、政府の対策はこれと逆行しているのであります。すなわち麦の米に対するところの比率を、本年の八一・三%を六四%と二〇%も引下げて、生産者価格を急に低下する一方、消費者価格はそのままにすえ置くということは、内地の麦に圧迫を集中して、日本の麦は統制をはずして安くなつてもかまわない。日本の生産者たる農民に犠性を転嫁するものであつて、麦はかくのごとくすれば、増産どころか減産すること必至であり、これは單なる食糧問題だけではなしに、農村問題の根本問題であるということを承知の上で麦の対米比率引下げをお認めになつたかどうか、廣川農林大臣から承りたいのであります。(拍手)
 政府は昨年来、安易なる輸入食糧に依存して、国内増産を怠つて来たのであります。本年度の通常予算においても、輸入食糧補給金四百五十六億円を見積りながら、自給度を高めるに必要な土地改良費その他農業関係公共事業費は、わずかしか計上しておらないのであります。このたびの興農国会の補正予算にも見るべきものはありません。八月一日より肥料の統制は解かれ、肥料価格は六割方の値上りを来し、せつかくの農民に対する減税も帳消しのかつこうであります。この際、シヤウプ博士の第二次勧告にもあるがごとく、わが党の前からの主張を取入れて、農民の勤労基礎控除をぜひ認めることが必要であろうと思いまするが、大蔵大臣並びに農林大臣の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 肥料の輸出に関しましては、政府部内の不一致を世界に暴露し、肥料政策の無策を天下に示した結果に相なつておるのであり、肥料の増産と需給調整は必至の状態にあるとわれわれ思うのでありまするが、農林大臣の決意を示されたいのであります。
 わが党は、つとに農地の開発改良のため農林漁業に対する長期金融機関の設置を要望して来たのであります。見返り資金の農業開発資金への活用、農村より吸い上げた預金部資金を地方に還元して農業生産力の拡充のために運用すべきだと思うのであります。かかる見地から農林金融公庫法案の実現を期待しておつたのでありまするが、一体どうなつたのでありましようか。農林金融公庫に三十億円をまわすと一度予算面に顔を出しただけで、たちまちひつ込んでしまつたようであります。農林大臣は不必要とお認めになつたのでありますか。それとも財源を気前よく他にお譲りになつたのでありますか。それとも制度上できないというのでありまするか。日本輸出銀行法、中小企業信用保証法が認められたことはまことにけつこうでありまするが、なぜ農林関係だけが認められなかつたのでありまするか。農村軽視もはなはだしいといわなければなりません。(拍手)農業協同組合救済法案も姿を現わしてはおりません。農林金融公庫、農協救済法案をどうされるつもりでありまするか。全国農民待望久しきものでありまするがゆえに、農林大臣より納得の行く親切なる御答弁をいただきたいものであります。
 農業は、天候を相手として一年がかりの仕事をしているものであります。中途において変更があつてはたまりません。麦の統制は来年度からなくなりますか。米の統制はどうなりますか。もし統制を解くとしたら、統制撤廃後の処置をいかにされるか、はつきり承つておきたいのであります。
 一切の統制を解くことが自由党の方針であろうと思いまするが、自由経済の下では、組織を持たない農民と中小企業者が大資本、外国資本の犠牲に供せられるということは、戰前の日本の姿を思い起せばよくわかることであります。しかし、それでは政治はなきにひとしいのであります。政府は資本主義的合理性をむりに押し通すために社会的均衡をふみにじつているといわなければなりません。(拍手)社会保障制度審議会の勧告が出されたようでありまするが、中小企業者、農民、勤労者等に対して、これをいかに実行に移して行かれまするか、厚生大臣から御所見を承りたいのであります。
 最後に吉田総理大臣にお尋ねをいたします。一万有余名の人々が追放解除になられ、おのおの各界に復帰活躍されることは御同慶の至りにたえません。聞くところによると訴願委員会は解散されたやに承るのでありまするが、まだ追放解除の機会を望んでいる人々がたくさんあるのであります。今回解除になつた人と同等か、それ以下の人たちもまだたくさんおられるように思うのであります。これらの人々に何らかの希望を持たせてあげたい、訴願委員会の復活をお願いしたいと思うのでありまするが、総理大臣のお考えはいかがでありましようか。
 総理の施政演説にもあるがごとく、マツカーサー元帥は、二十四日、みずから陣頭に立つて全軍を指揮しておられるのであります。日本に進駐して以来五箇年、日曜、祭日もなく、一日としてその任地を離れることなく、朝鮮に動乱が起れば、ただちに飛行機で飛び、前線の将兵に激励と指揮を與え、タベには任地に帰り、京城を奪還されれば、これを朝鮮政府に返還する式に列し、夕べには任地に帰り、ウエーキ島に出てトルーマン大統領と会見し、タペには任地に帰るというように、いかに占領政策がうまく行き、いかに日本国民が仕合せになるかに日夜心身を苦しめられつつある姿には、自然頭が下るのであります。それに引比べまして。吉田総理大臣は。夏は箱根に涼をとり、冬は大磯に暖をとり、東京では眠られぬとのことでございますが。占領治下の総理大臣としては。少しマツカーサー元帥に見習われてしかるべきものかと思うのであります。国民は歯を食いしばつて日本再建に邁進しています。総理大臣も、わがままな態度を捨てて、国民とともにある心がけで、公用のほか東京を離れることなく国務に精励あらんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
#5
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの河野君の発言中、個人的の問題に触れた点につきまして、もし事実と異なる点がありますならば、速記録を取調べの上、適当な措置をとることといたします。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#6
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 朝鮮の動乱につきましては、国連司令部の声明にあります通り、その終局に近づきつつあると私は確信いたします。
 世界戰争の見通しについては、私がしばしば申す通り、このたび戰争が起つた場合には、これは人類の絶滅と申すか、あるいは世界文明の絶滅になるのであつて、かくのごとき責任をとる国はないと考えますから、私は、世界第三次戰争は、ただちに、少くとも容易に起るものではないと確信いたします。
 電力再編成については昨日詳細申し述べた通りでありまするから、今日再び重ねて説明をいたしませんが、この再編成に関するポツダム政令なるものはマツカーサー元帥の書簡に基くものであつて、自由党の党利党略によるものではないのであります。(拍手)
 また追放解除につきましては、なるべく今後においても追放解除をいたしたいと考えております。この措置については政府としては努力を拂いますが、しかし訴願委員会はすでに廃止いたしましたので、訴願委員会にあらざる他の方法で、できるだけ盡力いたしたいと思います。
 また私に対する箱根問題云々についての御忠告は承つておきます。
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
#7
○国務大臣(大橋武夫君) ただいま河野君から、共産党に対する対策について御質問があつたのでございます。日本の復興を阻害し、社会不安を激発し、法律秩序を破壊せんとするがごとき一部の分子の策動に対しましては、治安維持の観点から、法規の命ずるところに従いまして必要なる措置をとつておる次第でございます。河野君は、吉田内閣が続けば共産党がますます盛んになるであろうというようなことを申しておられまするが、これは今日の実情によつて、はつきりと御判断を願いたいと存じます。
    〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
#8
○国務大臣(岡野清豪君) 河野君の御質問にお答え申し上げます。市町村民税、固定質産税が高いということは、最近われわれが耳にする次第でございます。しかしながら、従来の税法では国税に偏重しておりましたのを、地方自治を確立するために、地方に相当の財源を與えて財政の基礎を固めるという方針のもとに、先般皆様方の御審議を経て新税法を確立したわけでございます。でございますから、市町村といたしましては、市町村民税並びに固定資産税は主要なる税収入の根源でございます。ただいまこれを減税する意思はございません。しかしながら、第二次シヤウプ勧告が出ましたので、それも検討いたしまして、もし他に財源が得られるならばこれに対して何とか軽減の道を講じたいという希望を持つておりますことを御了承願いたいと存じます。同時に固定資産税につきましては、本年度収入が五百二十億をもし上まわるようになりますならば、税率を下げるということになつておることは、皆様御承知の通りであります。これをもつて私の答弁にかえます。
    〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
#9
○国務大臣(廣川弘禪君) 河野君にお答え申し上げます。
 食糧輸入の見通しについてでございますが、私どもの方の関係におきましては、当初予算で三百四十万トンを計画いたしておつたのでありますが、それに関しましてポンド資金のいろいろな変化等がございまして、二百八十万トソ程度が確実となつておるのであります。そのほかに、その他の地域からいたしまして四十二万トンをなおこれに加えることができまして、三百二十万トンが輸入される見込みになつておる次第でございます。
 それから米の供出についてのだんだんのお話でございましたが、この米の供出について、民事部その他を利用して、あるいはこれをかさに着ていばつた地方長官があるかどうかというお話でありますが、そういう事実をあまり私は拝聽いたしません。しかし今年の米の供出につきましては、あくまで地方長官の自主的態度によつてやれということをはつきりきめて、すべての関係がこれに同意を與えておることを御了承願いたいと思います。
 それから次は、興農国会としては今度の補正予算はさびしいではないかというお話でありますが、これはとりようによつては、さように見えるのであります。この補正予算をごらんになればわかるのでありますが、麦の増産目的を達成するためにも費用をとつてありますし、あるいはまた災害応急対策といたしましても費用をとつておりますし、農業協同組合の再建に資するための費用もとつてありますので、決して農業を軽視しておる国会とは言えないのであります。なおこの上に、この前も申し上げました通り、十五箇月予算を長い目でごらんになつていただきたいと思う次第であります。
 食糧政策についての具体的なことを述べようということであります。河野君は、総理大臣の施政演説の中に農業問題が何もないかということでございますが、大きな一点を点じておるのであります。それは農業を振興し、食糧の自給度を確立するということを言つておるのであります。これのみで日本の全農業を表現いたしておるのであります。(拍手)この食糧政策は、あなたも十分御存じの通り、日本の食糧の自給度を確立するという以外に、その他の表現の言葉はないのであります。しかして食糧の自給度は、單に米麦のみにこれをたよつておるのではないのでありまして、われわれは畜産あるいは水産、その他あらゆるものを食糧に総合して自給度を高めることに努めておるのであります。これに要する費用は、補正予算において足りない点があるならば、これは二十六年度予算をつぶさに検討していただきますと、はつきり納得が行くことだろうと思う次第であります。
 またいわゆる食糧の配給状況、あるいはまたそれに関することをお尋ねのようでありますが、われわれといたしましては、自由党の政策はあくまで自由主義を基底として立つて参りますので、食糧におきましても、この自由を目途として、これに順次転換して行きたいと思うのであります。来年度におきましては、麦につきましては、農民のいわゆる自主的に販売するものを最高限度に買い入れるということを目途として参りたいのであります。米につきましては、これはある程度確定いたしました供出制度を持つて行く次第であります。またもう一つ配給制度につきましては、フリー・クーポン制度をもちまして、いわゆる配給辞退等をなくするような、最も国民消費者大衆の好むような方向に向けて行きたいと考えておる次第であります。それから麦の対米比価の問題でありますが、これも順次自由経済に移行して行く過程におきまして、これをいわゆる昭和九年、十年、十一年ごろの、統制によつてゆがめられないころの基準年度に順次さや寄せして行きたいという方向で進んでいることを御承知願いたいと思うのであります。
 それから肥料の需給調整に関するお尋ねでありまするが、これは私たちといたしましても、肥料は農民にとつて実に重大でありまするので、これに関しましてはわれわれは十分検討中で、一つの案を持ちたいと考えておる次第であります。
 それから農民勤労の基礎控除の問題でありますが、これはシヤウプ勧告案にもある通りでありまするので、われわれといたしましては、この線に沿うて目下研究中であるのであります。
 それから農林金融金庫のことについてのお話でありまするが、これはわれわれといたしましては、農民の金融を今まで、ここまで放置いたしておいたことは、お互いに相済まぬことであると思うのでありまして、野党の諸君が政府をとつたときも、この金融の方面はまつたく考えていなかつたのであります。そこで私たちの内閣におきましては、この長期金融、しかも低利な金融を考えて目下折衝中でありまするが、近いうちにわれわれは朗報を期待いたしておるのであります。(笑声、拍手)
 それから農業協同組合の問題でありまするが、農業協同組合は、これは何といいましても農村の中核体でありまするので、どういたしましても農業協同組合の更生をはからなければなりませんので、来国会には農業協同組合更生に関する一つの法律案を設定いたしまして、皆さん方の満場一致の御協力を願いたいと思う次第であります。
 それから米麦の統制の問題を最後にお尋ねでありましたが、先ほど申し上げた通り、漸次統制をはずす方向において進んで行きたいと考えておるような次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) 賃金ベースの問題でございまするが、人事院の勧告を尊重いたしまして平均千円程度引上げることにいたしました。従いまして、人事院の勧告は八千五十八円でございまするが、これをわれわれの計算にいたしますると八千四百円程度になるのであります。しかして今回引上げますると八千円程度になりまして、これは超過勤務手当並びに年末賞與を含まぬ金額でございますので、大体人事院の勧告を尊重し、その線に滑つて行つたものと言い得ると思います。
 次に国鉄の裁定の問題につきましては、ただいま裁定を尊重する意味におきまして、その線に沿うよう検討を続けておるのであります。
 最後に農民に対しまする課税につきまして御質問がございました。これに対しまして農林大臣がお答えになつているのでありまするが、御承知の通り今年度の減税によりまして、農民の負担は相当軽くなります。昭和二十四年度におきましては、農民の納めまする所得税は四百五十億であつたのが、本年度は米価が上りましても、その半額程度にとどまります。来年は今回の減税によりまして相当低くなると思うのであります。こういう点を考えますると、シヤウプの勧告には勤労所得の控除の線に沿つて一割控除を勧告しておりまするが、農民が勤労部分が多いからというので一割控除いたしますると、他の事業部門、たとえば左官屋さんでも大工さんでもいろいろな点で勤労部分の多いのがあるのであります。こういうことから考えますると、シヤウプの勧告はさることながら、私はいま少しく検討しなければならぬ問題だと思つております。(拍手)
    〔国務大臣横尾龍君登壇〕
国務大臣(横尾龍君) お答え申し上げます。
 綿花につきましては、本年七月より明年九月までの需要は、消費量二百十三万俵、ランニング・ストック四十七万俵を加えて計二百六十万俵程度が必要であります。この中に、すでに買付済みのものが八十万俵、ほかに六月よりの持越しが七十万俵で、今後買付必要量は百十万俵になります。米綿の輸出制限により、本年八月より来年三月までの対日米綿輸出量は五十五万俵と制限されて心配しておりましたところ、追加発表で三十三万俵、さらに朝鮮特需用として十万俵が加えられ、米綿は計九十八万俵となりました。このほかにパキスタンその他の国より買付予想が大よそ四十万俵、なおこのほかにブラジルより多少の買付が可能と思われます。従いまして需要は、ただいまのところにおきましては、あまり心配がないと考えるのであります。
 羊毛の需要は、本年七月より来年六月まで三十二万俵でありまするが、このうち買付済みは十九万俵、残り十三万俵を明年一月から六月までに買いつけたい予定であります。但し、買付量については不安がありませんけれども、ポンドが不足いたしまするから、この点に対して努力をしたいと考えるのであります。
 それから第二の御質問の点でありますが、これは総理からもお話がありました通り、マ司令部よりの書簡に従つていたしたのでありまして、私、とりましたる処置は正しいものと信ずるのであります。私は、今後この法令により早く再編成を完了いたしまして、わが国の水力電気の開発を早くしたいものと考えるのであります。日発の経理につきましては、当局としては常に監査しておりまするが、お話のような不正等は現在において認められないのでございます。
 それから競輪の問題でありまするが、これは国会の御意思に従いまして私は善処するつもりであります。西宮の競輪場におきまする不祥事件は、神戸市が主催いたしておる際、一着を予想されておるものが着外に落ちましたが、これは振興会で発見をいたしまして、ただいま本人を警察に出して取調べ中でございます。(笑声、発言する者あり)一方、神戸市の者を呼び出して事情を聽取することにいたしております。前に申しました通り、騒擾事件が起りましたときは、お話の通り私は競輪場に対し開催を停止する考えにはかわりがございません。
 肥料につきましては、本年度における窒素肥料の需給状況は、公団を廃しました八月初めにおきまして四十五万俵を持ち越しておりましたが、新たに七万俵の硫安の輸入をいたし、約百九十万トンの生産見込みでありますので、年間の総供給量二百四十万トン程度は推算されるのであります。これによりまして、国内の需要の二百十万トンに対しましては不足はいたさぬということに相なるのでございます。輸出に対しましては、来年の五月までに約九万二千トンの輸出が可能でありますが、その先は、増産ができますならば、そのときにおいて考慮して輸出をしたいと思うのであります。
 これをもつて御答弁といたします。(拍手)
    〔黒川国務大臣登壇〕
#11
○国務大臣(黒川武雄君) ただいま御質疑のありました中小企業者、農民、労働者に対する社会施策の件でありますが、政府といたしましては、民生安定については、かねて重大な関心を持つているところでありまして、従来とも種々の施策を講じて参りましたのでありますが、今回社会保障制度審議会から総合的な社会保障制度に関する勧告が政府に提出されましたので、政府といたしましては、ただちに社会保障閣僚懇談会を設け、鋭意検討中でありまして、成案を得次第実施に移し、施策の拡充強化をはかり、民生安定に遺憾なきを期したいと存じます。(拍手)
#12
○議長(幣原喜重郎君) 河野君、再質問がありますか。なければ次に進みます。
 稻村順三君。
    〔稻村順三君登壇〕
#13
○稻村順三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、二十四日、本院で行われた吉田総理の施政演説並びに大蔵大臣の財政演説に関連いたしまして、農業問題の基本問題を中心に、関係閣僚に若干の質問をいたしたいと存じます。われわれは、第八国会終了直後、野党各派の要望を結集いたしまして、救農のための臨時国会を正式手続によつて要請いたしました。しかるに、吉田内閣は荏苒日を送つて、あえてその要望を無規し、今に至つてようやく臨時国会を召集したのであります。しかもこの臨時国会たるや、通常国会を前にいたしまして、審議の時間もなく、重要問題を取扱うことができなくなつておるのであります。そればかりでなく、最も大事な農業関係の議案というものを審議することができないような状態になつております。われわれが救農臨時国会を召集すべしと要請したゆえんのものは、吉田内閣の超均衡予算方針が五、六月ごろに至つてようやく深刻に現われまして、すなわち農産物の相対的下落、鉄状価格差の拡大、金融の逼迫、農業協同組合の財政的危機、税金攻勢等の諸現象が顕著になつて参りましたのを、これを契機といたしまして、国会において根本的な農業政策を立てる必要があると考えたからであります。しかるに、これに加えて台風が全国を荒し、いもちが北陸地方に蔓延し、農民生活の破壊というものに拍車をかけました。かくのごとき悲惨事は、まず政府の超均衡財政方針に始まり、そのため災害の結果に対してすでに農民が抵抗力を失つていたことによつて惨事が倍加されたのであります。従つてこれらはすべて政府の責任であります。政府といたしましては、責任を痛感するという意味において率先国会を召集すべきが至当であると思うのであります。現にここに出席の廣川農林大臣が、救農よりももつと積極的な興農国会を開くべきであると言つたくらいであります。これは政府部内におきましても、責任政治の建前から当然であるという意味があつたことを証明しております。
 なるほど臨時国会は開かれております。しかし今日開かれているものは、われわれの要請した臨時国会の意義を失つたものでございます。憲法で議員の要求によつて臨時国会を召集すべき旨を規定しているのは、明らかに緊急事態に応ぜしめるためであります。たとい召集期日の規定がないにいたしましても、この精神は尊重されなければならないのであります。(拍手)しかるに、條文の形式的解釈によつて今日まで延引したことは、実質的には憲法の精神を蹂躪したものであり、かつ民主主義の冒涜でなければなりません。(拍手)
 政府が、かくのごとく憲法の精神を蹂躪する行為をあえてなすに至つたことは、これは單に偶然であるというわけには行きません。実に現内閣が農業問題を軽視するということそれ自身に根原があるのであります。民主主義は單なる精神的説教では徹底するものではありません。生活上における経済的裏づけがなければならないのであります。目下日本の民主主義化にとつて最大の障害は農村であります。しかも、農村を今日のままにしておく限り、人口の過半数を農村に持つている日本の民主主義化は絶対に不可能であります。従つて政府がこの農村窮乏のとき救農臨時国会を開かなかつたことは、民主主義化に熱意のなかつたことを何よりも雄弁に物語るものであります。(拍手)
 私は、かつて予算委員会におきまして、総理に対して、民主主義は近代生産機構の上でなければ繁栄しないと思うがどうかという質問をしたときに、総理は同感の意を表しました。だが総理は、その意味を十分に理解しておらないのであります。民主主義は近代生産機構の上でなければ繁栄しないというのは、近代的生産機構の上にのみ生産者はその生活の独立が保障されているからであります。みずからの生活が他によつて勝手に左右されるとき、いかに政治の上に平等を與えても、それは一個の形式と化し、実質的には政治的権利を喪失したものと同じであります。かくては、民主主義とは一個の空文にすぎません。それならばこそ民主主義は、とかく自立生活を脅かされがちである労働者には、自力によつて生活権を防衛する権利として団結権や罷業権を與えているのであります。しかるに、わが国の農民は、その生産機構が古くさい関係で、いまだかつて生活権が保障されたこともなければ、また現に保障されてはおりません。
 終戰前までは、農民はまず地主によつていつでも土地を取上げられるという点で、常にその生活の土台が脅かされて参りました。次に農産物の販売、農村必需品の購買、農業資金の融通を通じて、商業資本、先進産業の資本、金貸しに常に個人生活を犠牲にされて参りました。また農民は、資本主義の育成の資本を蓄積するために、政府からさえ重税を課せられて、最低生活もしばしば撹乱されて来ております。そこには民主主義のなかつたのは当然であります。
 終戰とともに、日本民主主義化の重責を帶たマツカーサー元帥が、農民解放に関する指令におきまして、農地改革の断行と、これによつて自作農となつた農民を再び小作農とざせぬための措置として農業協同組合の結成を命じましたのも、これが民主主義にとつて欠ぐことのできないものであることを示したものであります。しかるに吉田内閣は、この意義を十分に理解しておらないのであります。すきがあつたならば農地改革を打切ることばかり考えて、まず国会を通すことのできなかつた自作農創設特別措置法の一部の改正を政令によつてあたえてなし、旧土地制度完全解消の件につきましてもこれを緩和しようとしたり、農業委員会法を制定いたしまして農地委員会の廃止を策動したりしておるのであります。農地改革は單なる慈善心からばかりでなく、実に日本民主化という世界史的意義をもつてなされたものであることを知らねばなりません。この世界史的任務は、あらゆる機会において常に推進されなければならないのであります。しかるに、まだまだ相当量の小作地も残つております。山村農民の生活自立にとつて不可欠なる薪炭林もまだ解放されてはおりません。そして、それらは農民生活自立の支障となつているのであります。この支障は除去されなければなりません。
 そこで私は、吉田総理大臣及び廣川農林大臣に対して、いかなる方法によつて今後農地改革を堆し進めるつもりか、また今日の農地改革の程度において日本農民の生活を自立せしめる農業合理化の基礎とすることができるかどうか、この点を聞きたいのであります。どうも政府のやり方を見ますと、農地問題の本質に対してはまつたく無知であるのであります。これ私が現内閣が民主主義を理解していないとするところの第一の理由であります。
 農地改革は、農業を合理的に近代化する前奏曲ではありますが、合理化そのものではありません。それにもかかわらず、池田大蔵大臣は、かつて予算委員会におきまして、農地改革ができたから合理化は完了していると断定いたしました。これこそ吉田内閣が農業問題にいかに無知であるかを表明したものであると私は思うのであります。(拍手)それはともかくといたしまして、農業生産機構の近代化、すなわち合理化には、その前提として、生産に使つている土地條件を、経営合理化を可能とするように整備しなければなりません。土地改良、農地の交換分合、治山治水等がこれであります。この点、政府は他の農業政策に比べますと、いささか熱意があるようなふうに見えてはおりますが、しかしながら、これといえども多分にゼスチュア的であつて、民主主義化の一環として、農業合理化の建前からこれを考えているのではないのであります。
 なぜかというに、二十三年、吉田内閣ができて以来の農業関係公共事業費を見ますと、災害復旧を除きまして、二十三年度、二十四年度は百億未満、二十五年度におきまして百二十億くらいで、かかる大任務を持つているところの事業としては、あまりにも少額であります。農業関係公共事業費を増した増したというのは政府の宣伝ではありますが、その内容を見ますと、そのうち著しく増しておるのは災害復旧費だけであります。災害復旧費はもとより必要ではありますが、それは決して農業合理化を積極的にするのではありません。百パーセントにこれが完了いたしましたとしても、それはマイナスからゼロにもどるだけのことなのであります。従つて、災害復旧費と合理化の費用とは、これは全然別物でございます。しかも災害復旧費はふえたといつても、昭和二十三年度には被害の四九%、二十五年度には三八%ぐらいしか復旧してないのでありまして、仕事の量から申しますれば、誇ることができないで、むしろこれは政府の怠慢を示すほかの何ものでもないと思うのであります。(拍手)
 このように災害復旧が年々残されておるからこそ、そこで年々被害が拡大再生産されております。このような土地條件の整備に関する費用が少いために、現に少からぬところの費用を、農民が、あるいは地方自治体が負担しておるのであります。自立経済のできないところの農民に、かような償却に多年を要する固定資金を負担させるということ自体、農民の生活を窮乏に追い込み、結局は民主主義発達を阻止する原因であると言うも過言ではありません。かくのごとき費用こそ当然にも国が全額負担すべきものであると思うのであります。政府のやり方は、まつたく民主主義を伸長させるための計画性を全然持つておりません。計画性がないばかりではなくてこれにこれだけの費用を使つた、予算をとつたというな宣伝によつて、ただこれを自由党の選挙道具に使つておるよりほか何ものでもないのであります。(拍手)
 そこで私は安本長官並びに農林大臣に尋ねるのでありますが、一体どれだけの費用で何年間に、どれだけの量を、土地改良、農地の交換分合、治山治水等の事業として使うつもりであるか、また土地改良の全額国庫負担を考えておるかどうか、また農業関係の災害復旧を即時完了するところの意思があるか、ということであります。これまでの政府のやり方は、これまで述べた通りに、まことにたよりないのでありまして、これ民主主義化における農業の役割について政府において理解がないという理由の第二であります。
 以上の土地條件が整備されるならば、これを基礎といたしまして初めて経営の合理化が行われるのであります。しかし、それには三つの障害を克服しなければなりません。その一は、農民には設備資金並びに運営資金がないということであります。その二は、農村に過剰人口があるという事実であります。その三は、農業技術が未発達だということでございます。しかるに政府は、これに対してゼスチユア的の熱意すら示していないのであります。
 農民の資金難に対処する意味において、農民の自己資金動員の組織として農業協同組合がありますが、元来余裕のない農民の出資金と預金とでできておる組合であります。農民資金の需要に応ずることができるわけはありません。それどころか、農民組合の維持にすらむずかしく、とうてい農業生産のめんどうを見ておるということはできないのであります。そこで、ひたすら組合維持の建前から、農民を犠牲とする商業資本にまで堕落しているという事実をわれわれは見のがすことができないのであります。(拍手)それでもなお、全国組合中三八%は経営困難に陥つているのであります。それというのも資金難から来るものでありますから、真に農業協同組合の機能を発揮させるためには、長期にわたる設備資金はこれを国家資本から、短期運転資金には国家が保証を與えるということによつて、これを協同組合を通じて融資する制度をつくらなければならないと思うのであります。(拍手)
 しかるに現政府は、むしろこれと逆の道を歩んでいると言えるのであります。たとえば農協に普通法人税を課したり、地方税の改正に際して附加価値税をこれに課そうとしたり、議会がきらいであるところの政府は、政令がすきだと見えて、政府は農林中央金庫の融資を政令で制限したりしております。いずれも農業協同組合を破壊し、農業金融を逼迫させることばかりやつておるのであります。(拍手)わずかに農業手形によつて農業金融が息づいておるのでありますが、他に長期金融の道がないために、当然長期にわたるところの償却資産に対するものまでも農業手形に依存している現状でございます。收穫を担保として発行されているこの手形、これを長期に類するものまで借りるというならば、これは結局往年における青田売り以外の何ものでもないのであります。(拍手)
 この点に関し、すなわち農業金融、農業協同組合の育成に関して、大蔵大臣並びに農林大臣はどうして行くつもりか。農村人口の過剰、これは特に終戰後、復員、引揚げによつて顕著となり、さらにデフレは失業者を帰村せしめ、これに拍車している状態であります。政府はこれに対して何の手も打つてはおらぬではありませんか。そのため、たださえ過小農と言われているところの農民はさらに零細化し、合理化とはおおよそ縁なきものになつて行きつつあるではありませんか。私は、森農林大臣時代に、この点について警告したとき、兼業農家だから農政の相手にしないと放言したのであります。これ実に政府の過剰人口対策の貧困を告白しているものでありまして、現に開墾だとか、あるいは有畜化であるとか、農村工業化だとかいうところの、過剰人口を吸收すべきところの政策に対して、何ら積極的な手を打つていないではありませんか。(拍手)この過剰人口をどうやつて処理するつもりか、大蔵大臣並びに安本長官、農林大臣の意見を聞きたいのであります。
 農業経営合理化にとつてもう一つの障害は、日本農業の技術が未発達であるということであります。しかるに日本財政の最も大きな欠階は、技術研究に対してほとんど見るべきものがないということであります。技術の農業への導入に関しても、ほとんど意が拂われておりません。農林大臣は、今日の状態で農業合理化に対応でるというふうに考えているかどうか、この点について質問したいのであります。かくのごとく農業経営の合理化が無計画、無方針のままに放任されておりまして、私は民主主義に対して政府が理解しているとは思えないのであります。これ政府が民主主義に対して理解のないという第三の理由であります。このように合理化がある水準まで達したとき、農民はどうやら世界市場と結びついている市場価格に対応し得るように生産費を引下げることができるのであります。農民は、そのときに初めて自立できるのであります。そこで日本の民主化が発展して行くのであります。
 しかし、所期の水準に到達すること、これは一朝にしてできるものではありません。若干の時間を要します。そこで、それまでの手段として、農民に対して保護をするということが絶対に必要となつて来るのでございます。そうして保護政策中最も重要なことは、価格の面において農産物の生産費をカバーし得るようにすることであり、鋏状価格差を解消することであります。また農民に対するところの負担を軽減するということでございます。しかるに、この点に関しましても政府は何ら見るべき手を打つてはおりません。十月一日までに米価をきめるということは、これは法律で定めているところであるにもかかわらず、十一月下旬になつても、正式にこれの決定を見ることができなかつたではありませんか。供出はすでに進行しております。そのために一部代金の仮拂いしかできないのでありますが、その一部代金すらもが農業手形の期限が来ているというので引落されているのであります。これは政府の都合で米価の全額支拂いができなかつたのでありますからして、農業手形の期限を延期するくらいの手を打つてしかるべきものであろうと私は思うのであります。(拍手)
 また米価の決定につきましても、政府の態度は遺憾きわまりないものがあります。政府は、米価が俵裝込め五千五百二十九円だと発表いたしましたが、米価審議会に事前にこれをかけたという事実はないのでございます。法律的解釈はどうであつても、審議会というものを設けた意義は、政府の方針決定前にこれをかけるという意味に私は解釈してしかるべきものであると思うのであります。(拍手)次に米価そのものについても、日本農民組合を初めといたしまするところの農業団体は、裸で五千八百円を要求いたしましたのに対して、これも米価審議会にもかけずに無視してしまつております。賃金ベースとの関係があるからというのであるならば、何がゆえに二重価格制というものをとらないのであるか、この点につきまして農林大臣並びに安本長官に尋ねたいと思います。新米価で、まだ古い生産機構の中にある農民の生活を自立させるように保護し得ると考えているのであるかどうか。農業手形の期限に対するところの対策ができているのかどうか、この点につきましてもお伺いしたいと思うのであります。
 なお政府は、近々主食の統制を撤廃すると言つております。このことは、価格の面で農民を保護する必要がないということを天下に声明したものであると私は思うのであります。国際価格にさや寄せすれば価格騰貴をいたしますから、保護の必要はないというようなことは言えるかもしれません。それでは賃金ペースを上げるということを前提としているのかどうか、この点を安本長官にお伺いしたいのであります。どちらにいたしましても、政府は競争力のないところの農民を手放しで自由市場の中に追い込もうとしていることは間違いないのであります。
 それから鋏状価格差の解消につきましても、政府はまつたく無為無策であります。最近肥料統制を撤廃する前に、すでに合計約十割の値上げをいたしましたが、撤廃後さらにその内地生産の一部を輸出いたしたのでありまして、この輸出の結果、肥料価格が上りました。かかる肥料価格のつり上げをなしたところの責任は、一体だれが負うべき性質のものであるか。この点質問いたしますと、あるいはこれを通産大臣に転嫁する人もございますし、農林大臣に転嫁する人もございます。はなはだしきに至つては、日本以外のものにその責任を転嫁しようとしている事実があるのでありますから、私はこの点、通産大臣並びに農林大臣に明確に責任を明らかにしてもらいたいと思います。
 また農民の負担につきましても、政府は羊頭狗肉の政策によつて、農民に対して減税をした、減税をしたと呼称しておりますが、これは單に所得税の点から申しますと、多少そういうことが言えるかもしれませんが、地方税を重課して、これを中以下の農民に対して考えてみますと、むしろ中以下の農民は増税となつているのであります。(拍手)この点、大蔵大臣並びに岡野国務大臣はどう考えているか、御答弁願いたいと思います。
 以上農民保護に関しても、政府の考え方は何の積極性も持つておらないのであります。かくて、農民は依然として低賃金のてことして民主主義の圏外に置かれておるのであります。これが私の、政府が民主主義と農業との関係において無知であるとする理由の第四であります。
 かくのごとく吉田内閣は、どれをとつて見ましても民主主義に関して無知であるということを表明しておるのであります。またこの無知のゆえに、朝鮮動乱が起るや、大胆にも農業合理化のための何ら予算的裏づけもないところの食糧一割増産運動をやり出したのであります。まことに戰争中の農業報国運動というものに返つた感があるではありませんか。(拍手)反動内閣といわれるのもゆえなきにあらずと言いたいのでありまして、この点、吉田内閣はとくと反省すべきものでございます。私は、この点をこいねがつて質問を終えたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#14
○国務大臣(吉田茂君) 臨時国会早期召集の要求に対して、昨日もお答えを一応いたしましたが、第七国会後に朝鮮動乱が勃発いたしまして、その内外に及ぼす影響――農業はもちろんのことでありますが、その影響、動乱の将来の動向等を十分見定めて、これに対応して適当な措置を講ずることが政府として必要なことと考え、しばらくその動乱の動向について見定めておつて、今日に至つて臨時国会を召集するに至つたのであります。これは昨日も叙説いたしました通りであります。
 その他の問題については主管大臣からお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
#15
○国務大臣(廣川弘禪君) 救農といい興農といい、農民諸君は非常に国会に感謝いたしていることだろうと思うのであります。農業の根本政策についてのお示しでありますが、私たちは、この根本政策は、先ほども申し上げました通り、農業の振興をはかり、食糧の自給度を高めるために、すべての施策をここに総合して行くということであります。こういうことを忘れているのではないかということでありますが、これについては、国会を開かなくとも万般の処置を講じているのであります。すなわちその一つといたしましては、国会の開かれないときにおきましても、生産の度を低めてはいけませんので、興農一割増産運動を提唱して実際に当つておるのであります。なおまた台風の被害、いもち病その他農業災害に対しましてはでき得る限りの手を打つて、農業の根本施策に反しないように努力いたしている次第であります。
 次には米価の問題でありますが、米価の問題は、今まで野党の諸君がわれわれの内閣を低米価政策として攻撃いたしておりますが、諸君の内閣を持つたときも、現在の内閣より高米価であつたことはないのであります。われわれといたしましては、ここで初めて高米価の政策に転換いたしておる次第であります。(拍手)この高米価政策に転換するために、審議会に対しましてもまだ案がまとまらない次第であるのであります。
 次に土地改革の問題でございますが、土地改革の問題については、すでに自作農創設の特別措置の政令において明らかでありますが、あの法令の内容を見れば、よくわれわれの気持がわかると思う次第であります。
 次に、私たちの農業協同組合の更生に対する策をお尋ねでありまするが、先ほど申し上げました通り、農業協同組合が前の農業会より受継ぎました不当な継続された資本を合理化いたしまして、この問題について農業協同組合をどうして生かして行くかということにつきましては、今度の国会に農業協同組合更生に関する特殊な法律を持ちたいと思つておる次第であります。一それから農村人口の問題でありますが、これも抉してわれわれの方で案持つていないのではないのでありまして、副業の奨励、あるいは公共事業等に余剰人口を吸收いたしまして、十分人口を吸收して行きたいと思います。また二男、三男等に対する問題といたしましても、これを開拓方面に向けて行くことは、われわれの政策見ればよくわかります。
 また農業技術員の問題でありますが、これは来年度におきましては、われわれは各村一名ふやすような構想を持つておるような次第であります。
 最後に肥料の問題でありますが、肥料は、われわれといたしましては、日本の農村に沫惑をかけない程度に増産いたしまして、その増産されたものを国外に放出することについては農林省といたしましても賛成であることをお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#16
○国務大臣(池田勇人君) 農業金融の問題並びに農業関係の課税の問題につきましてお答え申し上げます。
 農業金融の問題につきましては、従来農林中央金庫が主として短期資金の融通に当つておつたのでありますが、それでは十分でないので、さきの国会におきまして見返り資金より二十億円の出資をし、これを元として二十倍の債券発行を計画し、長期資金の一部に充てておつたのであります。しかるところ、今の現状から申しますと、なおこれでも不足でありますので、低利のごく長期資金を農林並びに漁業方面に出すべく今検討を加えておるのであります。私は、はつきり申し上げてよろしゆうございますが、この次の国会には、ごらんに入れ得ると思うのであります。しかして、その金額につきましても相当の額に上り、利子も相当安いもので行くと思うのであります。しかもまた、一般会計あるいは見返り資金だけでは十分で、ございませんので、農林中金の金融債に預金部資金の金も相当出す考えでおるのであります。
 なお農業協同組合の問題につきましては、先ほど農林大臣が答えましたように、今の経営ぶりは必ずしも十分ではございません。そこで、われわれは農業協同組合運営対策協議会を開きまして、これの運営の万全を期するよう、今計画いたしております。何分にも今までの損もある程度ございますので、報奨物資によりまする損は、五億六千五百万円を補正予算で出して農業協同組合の赤字を埋めたいという考えでおるのであります。
 次に課税の問題につきまして、農林中金あるいは農業協同組合に課税しておるのは不当ではないかというお話でございまするが、経済活動を営み、所得のある場面には課税することは、負担の公平から当然であるのであります。しかし、それが共同の目的のためにやつた場合におきましては免税の措置を講じておることは、あなた方御承知の通りであります。なお農民に対しましての課税がきついと申しましても、これは先ほどお答えした通りであります。課税の重いか低いかということは、所得税と直接税だけで比較してはいかない。間接税も加えてやるならば、国と地方を通じて、昨年の税金と本年の税金との総額が減つておることによつて証明できると思うのであります。(拍手)
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
#17
○国務大臣(周東英雄君) 私にお尋ねの二、三点についてお答えいたします。
 稻村君は、わが政府が農村について考えていないということの一つの設例として、統制撤廃をするということが農民に非常に迷惑になるようなことをおつしやいましたが、一体戰争前において統制のなかつたとき、しかして戰争が始まつて主食の統制が始まらんとしたときには、農民全体において統制反対であつたはずであります。従つて、本来の姿としては、農民に自由の作付を認め、その生産品について自由の販売を認めつつ、その間に価格調整の機能を政府が持つことが一つの本来の姿であります。その形に返るについて経過的に必要な処置をとることが必要であつて、その必要な施設なくして統制の撤廃をすることに遺憾の点があるわけであります。政府といたしましては、そういう面からいたしまして、主食の統制の撤廃については、十分にあらゆる條件、たとえば価格調整の機能に関する国家的な施設なり、金融の措置なり、市場の問題なりを考慮しつつ、適当な時期に至つてやりたいと思うのであつて、ただいま農林大臣の答えましたように、ただいますぐにこれにかかわつてやる考えはないのでありますから、御安心を願いたいと思います。
 次に米価の問題でありますが、米価決定に関していろいろお尋ねがありました。価格審議会の前に発表したのはいかぬというお話でありますが、政府からこれを発表したことはございません。いろいろと重大な問題であり、価格パリテイが日に日に上昇いたします関係上、愼重に、かつ農民のためを考え、消費者の立場を考えつつ研究を進めております間に、いろいろの方面から研究されて新聞に出たかもしれませんが、その点は御了承を願いたいと思うのでありまして、政府が発表いたしたことはございません。かつ米価決定以前において一部拂いをしております。しかしお話のように、一部と申しましても、ほとんど大部分のものを支拂つておるのでありまして、むしろ私は、十二月一ばいまでには決定いたしまして、早くあとが抑えるように処置をいたすつもりであります。
 それから肥料の問題について、ただいまお話がありましたが、この際一応申し上げておきます。日本の立場といたしまして、農民のために必要な量の肥料を削つてまで輸出する意思のないことは、ただいま農林大臣が申し上げた通りであります。しかし、東亜市場の戰前における肥料の使用量というものを考えたときに、日本が東亜における使用量をまかなつて輸出することができるように生産を向上させて行くことこそ自立態勢に持つて行く一つの行き方であると考えます。従つて、今日われわれの考えておるところは、肥料の増産に関する面においてネツクとなつておる硫化鉱の問題、これはあるいは輸入をし、一部内地増産に必要なる対策をとることも問題であります。同時に、戰後あまりに有機質肥料の使用に関して看過されておりましたが、これを次第に有機質肥料の輸入なわ生産にまつて、金肥肥料と置きかえつつ増産し、かつこれを輸出することは、われわれの務めであると考えております。かくすることによつて農村の保護にもなり、日本の輸出増進になると考えております。
 また先ほどお話がありました鋏状差の問題でありますが、農産物価格と肥料、工業生産物との鋏状差の問題につきましては、できる限り必要な使用する工業生産品についての価格を下げるために一たびたび政府で申し上げておりますように、非常に戰争中遅れておる生産設備の置きかえ、産業の合理化について積極的に施策をとり、大蔵大臣が申し上げましたように、企業合理化のために見返り資金なり預金部資金の活用を積極的に考え、かつただいま能率的な機械の輸入に関しても措置をとりつつあることを御承知おき願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣横尾龍君登壇〕
#18
○国務大臣(横尾龍君) お答え申し上げます。肥料に関しましては農林大臣、安本長官から詳細にお答えになつたので、私から特にお答えする必要はないと思いまするが、私は、肥料の増産は、原料の確保と、そして電力をある程度増してやるならば、現在の施設は生産を約五〇%ぐらいしかやつておりませんので、この原料に対して極力われわれは努力いたしたいつもりであります。さよう御了承願います。(拍手)
    〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
#19
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申し上げます。ただいま農家に対して地方税が過重であるようなお説でございますが、これは地方税法を御審議願いましたときに十分なる資料をもつて御説明申し上げました通りでございますが、市村町民税並びに固定資産税を合せましても、所得税の減税並びに事業税の廃止ということによりまして十分カバーして余りあつたのであります。またその通りでございます。ただいま記憶に残るところにおきましても、十万円の所得を持つておりますところの農家は、今年度は約六千円の減税になつておることを申し上げし御答弁にかえます。(拍手)
#20
○議長(幣原喜重郎君) 稻村君、再質問がございますれば自席から願います。
#21
○稻村順三君 今の答弁を聞いておりますと、ほとんど的をはずれたような答弁が多いのででありまして、たとえば今の肥料の問題に対しましては(発言する者多し)私は肥料の輸出が惡いと言つたのではないでありまして、輸出をすることによつて起きたところの価格の騰貴の責任は一体だれが負うのかと言つたときに、一つも答弁はないのであります。
 それからもう一つの問題は、各閣僚とも抽象的に答弁いたしまして、單に理論の相違というところに逃げ込んでおるのであります。私たち地方税の問題を一つとつてみましても、実際農村の中以下の農民は、所得税がなくなつても、地方税の負担の増加がかえつて降路になつておる事実を指摘いたします。
 かようなことがありますので、今後われわれの質問に対して、閣僚諸君は十分なるところの態度をもつて臨まれたいということを要望いたしまして、私の質問を終えたいと思います。
    〔「総理を呼べ」「答弁の必要なし」「総理大臣はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
#22
○国務大臣(周東英雄君) お尋ねの点に触れませんで恐縮いたしました。ただいまのお話の点は価格の値上りの問題にお触れになりましが、私承知いたしておる点におきましては、たしか一かます当りでしたか、六百九十三円何がしが一円幾ら上つておる。これは一体肥料の輸出の関係による値上りではなくて、俵等のこまかい値上りであつて私どもは値上りと考えておりません。あなたの御指摘のような非常な値上りがありますれば別でありますが、今の点は実際的に俵の値上りであるとかいうことに対する問題でありますから、御心配はいらぬと考えます。(拍手)
    〔「総理大臣はどうした」「総理を呼べ」と呼び、その他発言する者多し〕
#23
○議長(幣原喜重郎君) 梨木作次郎君。
    〔梨木作次郎君登壇〕
#24
○梨木作次郎君 私は、日本共産党を代表いたしまして、総理大臣並びに大蔵大臣の演説につき質問せんとするものであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 第一に、人権問題に関し質問をいたします。張る九月五日、新宿職安において、自由労働者に対し武裝警官が発砲し、多数の負傷者を出した事実があります。御承知のごとく、職安に登録して働く自由労働者は、一日わずか二百四十二円の日当を得て、やつと飢餓から免れているのであります。これらの自由労働者にとつて、仕事にあぶれ、一日の日当を得られないことは何を意味するかは、あまりにも明白であります、自己の生命を守るため、このあぶれをできるだけ少くして、飢餓の脅威から免れるため安定所当局と団体交渉をせんとすることは、きわめて当然であります。しかるに職安当局は、労働者のあまりにも当然な要求にこたえるに、武裝警官の大部隊を出動させ、ピストルとこん棒でけ散らし、何らの抵抗もしない労働者に対し武裝した警官が暴行を加えるがごとき、これでも民主主義と言えますか。(拍手)城戸トヨさんという婦人労働者は、赤ん坊をおんぶしていたのであるが、血に狂つた警官は、生後九箇月の赤ん坊の頭をなぐりつけて負傷させるという、目をそむけしめる暴挙をあえてしているのであります。しかも、この事実につき警官に抗議するや、子供を背負つて来るやつが惡いんだ、文句を言わずに帰れと放言しているのであります。警察は、自分らの不当を隠蔽するため、労働者が暴行したとか乱暴したという口実を設けて。責任の回避をやつています。しかし、一体生後九箇月の赤ん坊がどんな暴行をしたというのか。あまりにも白々しい逃げ口上ではありませんか。かような警察のテロと弾圧こそ、労働者を不遇のやからと呼び、これを敵視する吉田内閣の労働者対策の端的な現われであり、まさに吉田内閣の責任であると考えるが、吉田総理大臣並びに労働大臣の見解を伺いたいと思います。
 次に、工場に勤務に出たまま行方不明になつた労働者の問題につき質問します。東京赤羽の元第一陸軍造兵廠で、今は日本製鋼と称し、戰車や小銃を製造しておるといわれるPD工場に勤務していた松永栄太郎という労働者は、張る十月十二日勤めに出たまま帰らず、今日まで、あらゆる努力にもかかわらず行方不明であります。しかも翌十三日には、自宅にジープが来て家宅捜査をしております。PDあるいはLR工場における日本人労働者は、労働組合運動の自由を奪われ、工場の出入には厳重な身体検査を受け、はなはだしきは弁当箱の中まで調べられ、四十五分の晝食時間が三十分に短縮され、午前、午後二回の休憩は五分、タバコを吸うひまさえないしまつ、しかも連日長時間残業を強制されるという、労働基準法を無視した奴隷労働を押しつけられておるのであります。かくして、勤めに出たまま行方不明になつても救い出すすべもないという悲惨な状態が生れておるのであります。吉田総理は、これでも軍需品製造は商行為でござるとか、労働は雇用契約であるとうそぶいておるつもりであるか。労働者は何と言つておるか。おれたちは一体日本人かどうかが問題だと、悲痛な叫びを上げておる。(拍手)政府は、PD、LR工場で働く労働者は日本人としての人権を認める必要はないと考えているのか、吉田総理、労働大臣、法務総裁の明確な答弁を要求します。
 さらに、奴隷狩りにもひとしい非人道的行為の横行事実につき質問します。去る九月、富山県、静岡県その他全国各地の公共職業安定所において、月牧は一万二、三千円、仕事は横浜港内の荷役、寝具、住居は船内宿泊ということで自由労働者を募集して横浜に連れて行き、そこで突然朝鮮行きが言い渡さ、れ、そのまま朝鮮作戰に動員された事実があります労働者の数は二千五百六十名と伝えられています。吉田総理は、朝鮮内戰には介入しないと口では言明しておるが、しかし、吉田首相の指揮監督のもと、にある職安の公務員が、朝鮮作戰の人夫の動員の援助をしていることは、これによつて否定できないと信ずるものであります。(拍手)これでも総理は朝鮮内職に干渉していないと言い切ることができますか。(拍手)われわれの同胞二千5百六十人の労働者は、一片の生命の安全に対する保障もなく、き爆弾の炸裂する朝鮮戰役に出動させられたのである。これが国連協力がもたらす日本人への贈りものである。このような野蛮未開の奴隷狩りにもひとしい、職安による人夫募集の非人道的行為をみずからやりながらどうして八千万国民の生命財産を守ることができるか、総理大臣の答弁を要求します。
 第二に、吉田総理に対し、いわゆる赤追放に関する憲法違反の事実につき質問します。政府は、赤追放の名のもとに、すでに一万七百五十七名に上る勤労者を官庁、職場、工場から出放しています。その理由とするところは、共産主義並びにその同調者と認定したからというにあります。しかし、これは明らかに、憲法第十四條に明記する、国民はすべて信條により差別扱いをされないとの保障を蹂躪するものであります。また、憲法第十九條は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と明記しておるのであります。いかなることを考えようと、それが思想と良心の問題である限り絶体に侵してはならないというのが憲法第十九條の精神であります。(拍手)しかるに政府は、共産主義思想の持主であるからというただそれだけの理由によつて、憲法や労働法の保障する基本的人権を一切無視して、長年まじめに働いていた労働者を、犬ころよりも残酷な仕打ちで職場から放逐しておるのであります。ひな壇に並んでいる大臣諸君に伺いたい。―――心の中で賄賂をとろうと考えておるというそれだけの理由でこれを逮捕したとしたらどうです。諸君は必ずや人権蹂躙と騒ぎ立てるであろう。だがしかし、それと同じようなことが、今政府の手によつて、赤追放の名のもとに公然と行われておるのであります。東條軍閥は赤だというレツテルを張りつけることによつてすべての反政府的人物を弾圧し、日本を軍国主義一色に塗りつぶし、日本を帝国主義戰争の血の海に引きずり込んで行つたではないか。しかるに、現に政府のやつておる赤追放は、まさに東條軍閥の手口そのままではありませんか。(拍手)これば明らかに憲法否認の暴挙であると断ぜざるを得ない。その真意は明らかである。戰争に協力し、軍需工業を復活し、労働組合を破壊し、日本の労働者を奴隷に陥れるために、何よりもじやまになる民族的自覚を持つた労働者、特に共産主義者を追い出そうとしておるのである。(「あたりまえだ」と呼ぶ者あり。)日本の労働者は、憲法や労働法を無視した不当な首切りに対し、ごむりごもつともとばかりに職場から追われ、失業者となり、ルンペン化するならば、それは明らかに民族の堕落と破滅を意味するものであります。不当首切りに対し、あくまでも正々堂々と闘い、日本人労働者の不屈の気概と誇りを堅持しつつ民族独立のために囲う労働者に対し、政府はピストルとこん棒によつて彈圧しておるのである。吉田総理は、一体だれのために、かかる暴逆をやつておるのだ。明確なる答弁を要求します。(拍手)(「君らにだまされるばかは、もういないよ」と呼ぶ者あり)
 次に、地方財政に関し関係大臣に質問します。地方財政の窮迫は、今日その極に達しております。さきに全国知事会議においても、国家公務員の給與引上げ財源、災害復旧費、地方負担増加等の財源に対し平衡交付金の増加要求があつたことは、大蔵大臣も御承知のことと思うが、今回の補正予算においては、わずか三十五億しか組まれていないのであります。しかるに、この三十五億をもつてしては、とうてい地方財政はまかなつて行けないことは明らかでありまして、さきに第八臨時国会において、地方財政の責任を担当する政府機関として設置された地方財政委員会は、平衡交付金八十三億増額の意見書を国会に提出しておるのであります。二十五日の地方行政委員会においては、自由党の前尾委員長でさえ、三十五億では地方財政は完全に破綻して、地方行政の混乱はシヤウプ税制以前にさかのぼるであろうと言つておるのであります。大蔵大臣は、三十五億の平衡交付金で、はたして地方財政が安定すると考えておるのか、大蔵大臣の所見を承りたいと思います。また地方行政を担当している岡野国務大臣は、八十三億の増額要求がいれられなかつた場合、その責任をいかにおとりになるつもりであるか、大臣のお考えを承りたいと思います。地方財政の破綻の結果、地方公務員の給與引上げ、生活安定については、何らの保障もないにもかかわらず、政府は地方公務員法を今国会に提出して、地方公務員から労働三法の権利を奪い、憲法に保障された政治的自由を拘束し、地方公務員を奴隷状態に突き落すことは、人権蹂躙もはなはだしいと思うが、所管大臣の所見を承りたいと思います。
 最後に税金問題について質問します。池田大蔵大臣は、演説の中で、国民の租税負担は、ここ一両年に比較し著しく軽減することになつたと述べました。しかし、横浜市にある朝倉病院では、二十四年度所得税について実情を無視した三十八万の税額を査定されました。そこで一部を納税し、残余は苦しい中にも納税する意思を表明していたにもかかわらず、横浜南税務署は、張る十月二十五日、武裝警官八十名を動員して差押えを強行したのであります。しかもその差押えに際し、医療器具を初め、使用中のベツドや、従業員の私物までも差押え、武裝警官は、手術後間もない結核患者に暴行を加え、二十七名の患者の病態を惡化させるという――無道をやつている。また東京都の豊島税務署の署員が、去る十月十二日、東京都池袋西口マーケツトの小野沢さんという八百屋さんに現われ、やにわに、店の品物を半額で売ります、そういう紙を店頭に張りつけて時価三万円の品物を八千三百円で売り拂つてしまい、小野沢さんには、一日の生活費として三百円を渡し、八千円を持つて行つてしまつた事実があります。このために、小野沢さんの細君は頭が変になつたといわれている。また東京都足立区興野町では、さきに五百戸が差押えを受け、十月になつてさらに三百戸が差押えされ、全戸数の七割が差押え処分を受けておるといふ惨状である。これはまさに税金徴收というようなものではなく、一種の強奪にもひとしい行為といわざるを得ない。これこそ吉田内閣の減税の正体ではないか。(拍手)そこで大蔵大臣に質問したい。大臣が税金を軽くするというのは、今後このようなむごい差押え、競売を絶対にしなくとも済むような租税の軽減をはかつたというのか、それとも今まで通り差押え、競売を続行するというのか、そのどちらであるか、明確な答弁を要求します。(拍手)
 なお税金問題に関し吉田総理の決意を承りたい。西ドイツのアデナウアー首相は、西ドイツ議会を通過した減税法案が占領軍の高等弁務官により拒否されようとしたとき、それでは総辞職のほかありませんとの決意をほのめかし、遂にその承認を得たという事実が伝えられておる。西独に比べてさらに広い自主性を降伏條項により認められておる日本の吉田首相においてその覚悟と決意ありやいなや、明確なる答弁を要求します。(拍手)
#25
○副議長(岩本信行君) ただいまの梨木君の発言中不穏当の言辞がありましたならば、速記録を取調べの上、適当なる措置を講じます。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#26
○国務大臣(吉田茂君) ただいまの質問に対しては、関係大臣からそれぞれ答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣保利茂君登壇〕
#27
○国務大臣(保利茂君) お答えいたします。
 第一問の日雇い労務者に関しまして、政府といたしましては、先般の国会における本院の御決議の趣意に沿いまして、就労日数の改善については全力をあげておるのでございまして、七月以来漸次上昇して参りまして、九月に至りましては、おおよそ全国平均十八日の線に上り、十月には十九日の線を越えて参りまするように、漸次日雇い労務者の就労状況は改善せられて参つております。(「何が改善だ」と呼び、その他発言する者あり)しかしながら、真にその日の生活に窮迫せられて失業対策の事業に就労しようという善良な日雇い労務者に、一部破壊的な扇動的分子が介入し、職安秩序を破壊しようとする者に対して警察当局が治安上適当の措置をとることは当然のことであろうと存ずるのであります。(拍手、発言する者あり)ただ御指摘の新宿職安において警察官が発砲いたしたという事実は承知いたしておりませんし、また事実そういうものはないのであります。
 なお第二の、各工場における労働者の行方不明事件については、私は今日一まで何らの報告を得でおりませんから、それは十分調査をいたすことにいたします。
 なお第三の進駐軍労務の関係につきまして、政府といたしましては、進駐軍労務者の労働條件が、労働基準法の示しますその條件が保持せられますように、関係当局とも十分折衝を遂げております。進駐軍労務者につきまして労働基準法違反のごとき事実はないと確信をいたしております。
 なお先ほど梨木君のお話に、朝鮮動乱に対して日雇い労務者を動員したというような誤解を抱かせるようなお話が、ございましたが、共産党の諸君より、その当時もお話を伺いまして、さつそく調査をいたしましたるところ、横浜のはしけ荷役に従事せられるために、各職業安定所より紹介した日雇い労務者が横浜に到着するや、一部扇動的な分子が、先ほどお話のようなビラをつくつて、そのビラを応募した日雇いの人達にまき散らして、そうして恐怖を與え、就労意識を喪失せしめるような事態があつたということは、調査の上明らかになつておりますけれども、進駐軍関係について十分調査をいたしましたるところ、労務需要に応ぜられたる労務者は、いずれも満足をせられておることは明らかでございます。(拍手)従いまして、梨木君のお話のようなことは絶対に事実と相違いたすことでございますから、そのことを明らかにいたしておきます。
 なお民間産業におきまするいわゆるレツド、パージに関しましては、今日、日本の自立経済達成ということが最も大事なときに、私は政府といたしまして、産業労働界の秩序の確立ということが何をおいても大事なことであろうと存ずるのであります。(拍手)こういう意味からいたしまして、各重要な産業の経営者が、その責任において、最近における日本共産党の動向等からいたしまして、その企業の内部において、いついかなる場合破壊行為に出るかもしれないというおそれある人たちを解雇せられるということは、私は企業防衛上当然許さるべきことであろうと確信いたしております。従いまして今回民間においてとつておられますところの措置は、政治の信條、あるいは政党の所属のいかん、その差別いかんということでなしに、いわゆるその企業内における危險有害な分子と認められた者に対して解雇措置をとられたものであると、さように了解をいたしておるのでありまして、この解釈のもとにおきましては、あなたの言われるような憲法もしくは労働基準法による信條等の差別待遇では絶対にありません。
#28
○副議長(岩本信行君) この際一言御注意申し上げておきますが、一般のお方々が静粛を保つていただくことはもちろんでありますが、質問者は特に静粛を保つていただくように御注意申し上げます。
    〔国務大臣大橋武男君登壇〕
#29
○国務大臣(大橋武夫君) 警察権の行使に当りましては、いやしくも日本国憲法の保障いたしておりまする個人の自由及び権利の干渉にわたる等、その権能を濫用いたすことのあつてはならないというのが警察法の根本精神でございます。政府は、たとい一部の法律破壊者に対する場合におきましても、警察はあくまでもこの精神に従つて行動せしむるよう指導をいたしておる次第でございます。
 梨木君の御質問になりました、職業安定所において警察官が発砲いたしたということは、一時風聞として伝えられたことがございましたが、調査をいたしましたる結果、まつたく一部の人人の、ためにするデマであるということが判明いたした次第でございます。かくのごとき虚偽と欺瞞を基礎といたしまして国民を誤らしめる行為は、これは民主国家、文化国家、平和国家としての日本の復興を妨げ、社会秩序を混乱せしめること大でありまするから、政府は嚴にかくのごとき行為に対して注意を拂つておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#30
○国務大臣(池田勇人君) 平衡交付金の三十五億円の増加は、国の財政状況並びに地方の状況を考えまして、できるだけの金額として出したのであります。なお詳細につきましては別の機会にお答え申し上げます。
 次に減税の問題でございまするが、われわれは誠実なる申告者を相手にして税法をやつておるのであります。脱税者その他につきましては、歳入確保の上から、法の規定によつて適当な措置をとらざるを得ないのであります。
 第三に、ドイツのアデナウアー首相が減税ができなかつたらどうこうとのいうお話がございましたが、日本政府におきましては、減税の要求をいたしましても常に関係方面と意見が一致しておりまするから、そういうドイツのような場合はございません。(拍手)
    〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
#31
○国務大臣(岡野清豪君) 地方公務員法は国家公務員法に準じてつくつておりますから、労働三法は適用いたしません。御答弁申し上げます。
#32
○副議長(岩本信行君) 小平忠君。
    〔小平忠君登壇〕
#33
○小平忠君 私は、農民協同党を代表いたしまして、国務大臣の演説に対し質疑を試みんとするものであります。まず最初に外交問題に関し吉田内閣総理大臣より明快なる所信をお伺いいたし、続いて農村の当面する重要問題に関し、大蔵、農林、安本、通産の各大臣に率直にして明快なる御答弁をお願いする次第であります。
 最近外電の報ずるところによりますれば、対日講和の機運が急速に進展し、米国を中心として関係各国間の予備交渉が着々と進められておるのでありますが、このことは、終戰後五年有余、ただひたすらに自由と平等と独立を念願して、国家の再建に黙々として努力して来たわが国民にとつて、私はこの上もない喜びであると信ずるのであります。従つて、日本の主権の回復、安全保障の問題、国際社会への復帰、領土問題等すべて日本民族百年の運命を決する重大なる講和條約が近づくに伴い、国民の大多数がその成行きに重大なる関心を寄せることは当然のことであるのであります。しかるに、吉田総理を初め政府の首脳は、今日に至るも国会における講和論議を避け、国民とともに語るを好まざる傾向が見られることは、まことに遺憾とするところであります。
 外交は外交の專門家にまかせておけというのは、吉田総理の一貫した考え方のようでありますが、これがもし真意なら、国民の講和に対する熱情を踏みにじる独善外交であると断ぜざるを得ないのであります。過去一箇年の間、最も大きな政治問題として紛争を続けて来た超党派外交が、遂に失敗に終つたことは、講和外交の国家的使命が忘却され、いたずらにこれを内政化し、党略化した当然の帰結であります。超党派外交の失敗によつて国内輿論の対立を深め、対外的に見ましても非常な惡影響をもたらした政治的責任は、強くこれを究明しなければならないと思います。(拍手)講和会議を前にして国民の大多数が望んでおりますことは、強力な国内態勢がすみやかにつくられることであり、同時に国民個々の純真にして切実なる意思を率直に反映せしめる国民外交の確立を強く希求しておると私は確信しておるものであります。このことに関して吉田内閣総理大臣はいかなる構想をお持ちでございますか、率直なる御意見をお伺いしたいと思うのであります。
 第二は、今回提出されました補正予算の内容であります。前国会開会劈頭において、わが党の代表が、その質問において救農臨時国会の召集を要求した。当時吉田総理は、必要があればいつでも召集すると明確に答弁されたことは、いまだ記憶に新たなところであります。その後野党各派が、急迫せる農村の危機と、台風災害対策等の緊急事態にかんがみ、救農臨時国会の召集を成規の手続を経て要求したのでありますが、政府はあらゆる口実を設けて今日まで開会を引延ばして来たのであります。しかもその間、廣川農林大臣は、野党のいう救農臨時国会の名称は適切でない、われわれはもつと積極的な興農国会として臨時国会を開くと大みえを切られたのであります。
 しかし、今次補正予算に現われた興農対策の実体には、ただ唖然たらざるを得ないのであります。すなわち、農業共済保險金八億八千余万円、供出報奨物資損害補償五億六千余万円、その他廣川農林大臣が鳴りもの入りで宣伝した食糧一割増産対策費が一億四千万円、農産物の災害対策費二億二千万円で、総計わずか十七億余円にすぎないのであります。これは歳出総額三百六十三億円に比較していかに貧弱なる予算であるかは一目瞭然であり、まことに寒心にたえないところであります。政府並びに與党が宣伝した與農国会の正体は、まさにかくのごとくであります。今や農村は、低米価と苛酷なる重税に噛まされ、加うるに資金難、資材難に取巻かれ、全国農民の大多数はまさに瀕死の状態にあります。かくごのとき現状は政府当局も十分了承されておりながら、今次の、ごとき補正予算の内容で、これでも與農国会と言い得るかどうか。予算編成の最高と責任者である池田大蔵大臣並びに四千万農民の父である廣川農林大臣に率直なる御意見を承りたいのであります。
 第三は、国民経済に最も重大なる関係を持つ食糧政策であります。政府は過般、主食の統制廃止と、輸入食糧の補給金を削減する方針を発表したのでありますが、その行き過ぎを戒めたドツジ書簡によつて急に方針をかえ、漸進的撤廃案に逆もどりしたことは、政府並びに與党の食糧政策の無定見を暴露したものといわなければなりません。われわれは、吉田内閣の食料政策の経過を顧みて、あまりにも安易な統制廃止論にまず驚かざるを得ないのであります。現下わが国の食糧事情は、日本の立体的條件からも、あるいは客観的な国際情勢から見ても、しごく簡單に統制撤廃が許されるほど楽観すべき実情にあるでありましようか、年間三百万トンの食糧不足は現在の日本にとつて宿命的な事実であり、統制撤廃も、この不足量の裏づけがない限り、実際上でき得ない相談であります。政府は、最近の主食需給状況について、今後一箇年間は、供給可能量はむしろ需要量を下まわる傾向にあり、持越し量の食い込みによつて需給のバランスを維持しなければならないと発表しております。かくのごとき見解で、はたしてよいでありましようか。私は、日本の総合企画庁たる安定本部総務長官の周東大臣に、政府の基本的な食糧政策と、今回の統制撤廃を主張する理論的根拠について、米麦並びに雑穀をそれそ、区分いたしまして、御説明をお願いしたいと思うのであります。
 さらに今回の政府案で、明年度麦は一定価格で無制限に買上げを行うことになりましたが、麦の対米価比率が従来の八丁三から六四に引下げられたことは、あまりにも不当の措置といわなければなりません。なおまた、政府が二十六年度麦の増産運動を実施する際に、二十五年度麦の価格を下まわらぬ価格で買うと公約したのでありますが、この約束がたちまちにして破棄されてしまうのでありますから、たまつたものではありません。これについて、増産運動の提唱者である廣川農林大臣に率直なる御所見をお伺いしたいのであります。
 第四は、現在農家経済の上に最も大きな波紋を投じておりまする肥料の輸出問題について質問をいたしたいのであります。本問題につきましては、先ほど来からいろいろ質疑されておるのでありますが、特に私が本問題の重要性に関して重ねてお伺いいたしたいことは、この肥料の輸出問題につきましては、休会中から農林、通産両委員会において重要問題として取上げられていたのでありますが、この際私は、通産、農林、安本の三大臣に、さらに明確なる所信をお伺いしたいのであります。
 今回政府当局が、農民の切実なる反対を押し切つて南方との肥料輸出を協定し、来年五月末までに、とりあえず台湾向けに七万七千トン、香港その他に一万五千トン、計九万二千トンの輸出を決定いたしましたことは、現在わが国の農民に大きな痛撃を與えておるのであります。特に日台協定による二十五万トンを初めとして、韓国への輸出要請等によりまして、国内需要への圧迫は極度に深刻化し、その結果は必然的に価格のつり上げを招来しております。現に東北、北陸地方の一部農村では、商人から、先高を理由にして、ひどく高値6買わされているところもあるのであります。低い農産物価格と重税に悩まされている農民にとつて肥料の値上りは何よりも脅威であり、ひいては農業生産の上にも重大なる影響を及ぼすのであります。農民への犠牲転嫁を承知の上で、かかる肥料輸出を強行した政府の真意はどこにあるのか、またこの肥料の値上りに対処して肥料需給法案を作成実施する意思はないのか、この二点について御答弁をお願いしたいのであります。
 さらに廣川行政管理庁長官に対しましては、この際肥料行政の一元化をはかるために、現在の通産省から農林省にこれを移管するお考えはないのか。また肥料のごとき、これはひとり農民のみ使う資材であります、従つて今日の段階から、私は肥料の、ごときものは、農民が自主的につくつた農業協同組合の手を通じて、農業協同組合の系統組織を通じて一元的に配給されてはいかがかと思うのであります、廣川農林大臣の御所見を承りたいのであります。
 次に第五の問題は、農林金融の極度に窮迫しておる現状にかんがみまして、見返り資金並びに預金部資金よりの長期低利の資金融資が絶対に必要であります。政府は、この一つの構想として農林漁業金融公庫の設立を計画いたしたようでありますが、その後の経過についてお知らせ願いたいと思うのであります。なお農業協同組合の再建整備をはかるため、現在固定化した債権、不動産、動産その他の資産を流動化することが急務であると思うのであります。このため農林中央金庫、信用農業協同組合連合会から特別融資を行い、政府がこれにその利子を補給する法的措置を講じで農業協同組合の刷新強化をはかることがまことに緊急であると思うのでありますが、そのような御意思があるかどうか。この両問題につきまして大蔵大臣並びに農林大臣にお伺いいたしたいのであります。
 最後に、農民解放の一環として農民組合法の問題でありますが、政府は、去る四月中旬、総司令部から内示を受けているにもかかわらず、今日に至るも何ら具体的準備が進められていないのは、いかなる理由によるものか、その了解に実は苦しむのであります。政府は、はたして同法案を提出する意思があるのかないのか、その真意につきまして農林大臣にお伺いいたします。
 以上をもちまして私の質問を終りまヰすが、私は非常に與えられた時間が短かいので、緊急重要な問題を要点のみお伺いいたしました。大臣の答弁は時間の制限はございません。どうか詳しく納得の行くような御弁を切にお願いいたしまして私の質問を終ります。(拍手)
    〔吉田国務大臣登壇〕
#34
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 講和に関する国民の自由なる意見の発露については、私は常にこれを希望し、それを奨励いたしておるのであります。昨日も、この国会において、政府としては国民の要望に従つて、国民の意のあるところに従つて講和條項を考えるべきものである、これがすなわち民主主義の外交であるということを申しておつたのであります。速記録をごらんになれば、私の意のあるところは御承知になると思う。
 また超党派外交については、昨日もここで申した通り、趣意においてはけつこうである。ただ、これに同調する政党が――つまりこれを拒絶する政党があるがためできないのである、はなはだ遺憾に思うということは、昨日も申した通りであります。(拍手)
    〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
#35
○国務大臣(廣川弘禪君) 小平君にお答えいたします。
 この臨時国会で、農業に関して予算が非常に少いのではないかというお尋ねでありまするが、これは今まで皆さんが御期事待したより少いと考えます。しかし先ほど申し上げました通り、予算の編成が十五箇月予算でありまするので、来年度予算をよくごらん願いたいと思う次第であります。
 次は米麦、雑穀の統制撤廃でございますが、この統制撤廃に関しましては、わが党が主張いたしておるように、統制は漸次はずして行くような考えを持つておりまするので、その線に沿うてしかも一般消費者に迷惑をかけず、また生産者に迷惑をかけないような方向で進んで参りたいと思つておろ次第であります。
 それから農林金融金庫の構想でありまするが、われわれは予算としてこれを要求いたしまして、大蔵省を通じて折衝いたしておるのでありまするが、今まで非常に関心を持たれなかつた農村に対し、しかも一般金融機関から締め出された農村に対して、長期の、しかも低利な金をまわしたいという構想で折衝いたしおるので、われわれといたしましては、うれしい見通しをつけておるような次第であります。
 また農業協同組合につきまして、この整備刷新について考えがないかということであります。これは毎々申し上げる通り、農業会より、いわゆる惡質とは言われませんが、固定した資産を引受けておりまするので、非常に資本が固定いたしておりまして、これを何とかして流通できるような方法にしたいというので、われわれといたしましては、来国会に協同組合の更生に関する法律とでも申しましようか、法律を設けまして、これをし利子補給なり、あるいはまた助長なりでき得るような方途を考えまして、農村の中核体である協同組合を育成いたして行きたいと思うのであります。
 なおここで申し上げたいのでありまするが、農業協同組合自体も、出資の増加なり、あるいはまた預金の増強なり、また経営の刷新なり、自主的にもこれは十分刷新をお願いいたしたいと考えておる次第であります。
 肥料の輸出につきましては、先ほど申し上げた通りであります。また肥料の高騰につきましては、現在配給公団に持つておりまする肥料の放出等を行いまして、上げてもらわないようにいたしたいと考えておる次第であります。
 また行政管理庁長官としての私の所信をお尋ねでありましたが、肥料の今まで発達いたして参りました歴史をつぶさに検討いたしまして、これを慎重に考究いたしたいと考えておる次第であります。
 農民組合法につきましては、事全農民に関する重大問題でありまするので、目下愼重に検討中でございます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#36
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。農林関係の経費が非常に少いというお話でございますが、補正予算でございますので、十分な予算計上ができなかつたのでありまするが、ほかの仕事に比べましては、私は特に力を入れたつもりでおるのであります。先ほど申されました農林関係以外におきましても、家畜衛生の資金として一億八百万円、あるいは農地調整とか農業調整で一億二、三千万円、また食管の方へも一千万円出しますし、問題の農業協同組合法の一部改正法律施行に必要な経費を七百万円組んでおります。これは農業協同組合に対して相当調査をいたしまして今後更生の道を開くような準備をするための経費でございます。こういうものを見込みますと、他の費目よりも相当力を入れておるのであります。別に災害復旧四十一億円のうちにも農村関係はございますし、また林業関係におきましても、既定経費を相当やり繰つてまわしておるのであります。補正予算案を御検討願えれば、われわれの努力の跡が見ていただけるのではないかと考えております。
 なお農業金融の問題につきましては、農林大臣がお話になりましたごとく、ただいま長期の、低利の金を相当額出すような計画のもとに、関係方面と話を進めております。先ほど申し上げましたように、来年度予算におきましてはこれが実現することを確信いたしております。(拍手)
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
#37
○国務大臣(周東英雄君) 私に対するお尋ねでありますが、先ほど農林大臣から申し上げましたので、つけ加えることはございません。ただ肥料の転出に関して誤解があるようですから、この際つけ加えておきます。肥料の輸出に関しては、あくまでも内地の農民の需要に対する供給に不足を来さぬ範囲内において考えておる次第でありまして、台湾向けの輸出等に関しましても、十分に現在の需給推算をもととして考えて、余力を持ちつつ操作をいたしておりますから、御安心願いたいと思います。(拍手)
#38
○副議長(岩本信行君) 石野久男君。
    〔小平忠君発言を求む〕
#39
○副議長(岩本信行君) 石野君に発言を許しましたから、小平君の発言は適当な機会にまたお願いいたします。
    〔石野久男君登壇〕
#40
○石野久男君 私は、労働者農民党を代表いたしまして、総理大臣並びに関係大臣に質問をいたしす。
 第一に、講和問題に関して質問いたします。吉田首相は、施政演説で講和問題に言及して、一日も早く、一国とでも多く講和をいたしたいと切望しておるわが国民、と述べて、早期多数講和の所信を再度明確にしたのであります。一日も早くと切望する国民の気持は、総理の言われる通り私も同感でございます。しかしながら、一国とでも多くといふ総理の発言については、多大の疑義と不安とを持つものであります。首相は、講和に対する吉田内閣の意思を、一国とでも多くと表明されたのでありますが、占領下の日本人民に世界が與え、かつ認めている道しるべはポツダム宣言であり、日本国憲法であることは、数次にわたるマ元帥の声明によつても、あるいはまた日本国政府の宣言によつて確認されているところでります。われわれは、政府の行為によつて、再び戰争の惨禍を省き起すことのないようにすることを決心し、戰争状態がいずれの一国との間にも残されない講和條約を締結することを心から念願しているのであります。(拍手)占領下にあつて力なき国の人民としての不安と焦燥の中から、なおかつ民族の独立と、祖国の復興と平和とを心から念願しているものであります。総理の言うごとくに、一国とでも多く講和をすることによつて戰争状態が依然として残されるような講和を切望している国民ではないのであります。総理がこのような講和を希望されるゆえんのものは、はたしてかかる講和が日本の将来の幸福と平和のためによろしいのであるという信念をお持ちになつているのでありましようか。もしも総理にしてこのような考え方を持つているといたしますならば、ポツダム宣言の趣旨に反し、日本国憲法は蹂躪されることになるのでありまして国際間におけるわが国の信用を失墜することになるものと憂えられるのでありますが、総理の明快なる所信を伺いたいのであります。(拍手)
 これと同時に、あなたが一国とでも多く講和をしたいと述べられた真意は、連合国の全部がそろつて講和会議を持つことが不可能であるという見地に立つて申されておるのでありまするかどうか、明確なお答えをお願いしたいのであります。(拍手)私は、総理が一国とでも多くという言葉で表明した、講和への所信は、総理が口ぐせのように言う、答弁のできない範囲への逸脱であつたと信じています。講和会議に対してわれわれ日本人がとり得る唯一の道は、ほかには有りません。それは全面講和であり、永世中立の立場であると信じております。(拍手)
 全面講和への客観的諸情勢は着んと醸成せられつつあるのであります。すなわち九月二十六日、トルーマン大統領が対日講和の予備隊交渉権限を国務省に與えて以来、ダレス氏は非公式に会談を関係諸国との間に着々と進めておるのであります。他面また十月二十八日には、ヴイシンスキー外相は、国連総会政治委員会において、西欧側が実行するならば日独講和條約に調印するであろうということを明言しておるのであります。世界の情勢はわれわれの期待する方向に有利に態勢を整えていると存ずるのであります。もちろん国際間の諸問題は、われわれの予想しないトラブルを将来も展開するでありましよう。しかしながら、われわれは敗戰国日本の復興と、祖国の独立と繁栄を心から念願する限り、全面講和こそわれわれの選び得る唯一の道であると信ずるのであります。(拍手)吉田総理は、かかる客観情勢のもとにあつても全面講和をとり得ないとする客観的情勢が那辺にあるかを明確にお答え願いたいのであります。われわれは、対日講話が着々と占領国の間で準備されているとともに、日本の再軍備と軍事基地化的存続が執拗に要求されていることもはつきり感ずておるのであります。トルーマン大統領が、九月十四日、日本の再武裝問題は非公式会談で解決されるべき全般的な問題の一部であるという旨を記者団に表明して以来、あるいは米外務当局の見解とか、いろいろの報道が、日本の再武裝と軍事基地化的存続を盛んに伝えておるのであります。ダレス氏が関係各国に提示した講和要綱にそれが明示されておるというニユースが十月二十六日に発表されまして以来、十一月二十三日付タス通信は、この七つの項目を報じておるのでありますが、それによると、日本領域の国際的平和と安全保障を維持するために、日本と米国及びその他の国々の間の責任分担を継続することを提起されておることが明らかになりました。十一月十七日、ロイター通信は、日米間に軍事協定に関する秘密交渉が行わており、この協定案は、今後日本の占領を継続するために、三箇師の米軍と、日本の警察予備隊を三倍に強化するのだということを言つておるのであります。(拍手)日本の再軍備と軍事基地化的存続がきわめて具体的に要求されていることは、おおい隠されない事実であるように思うのであります。多数講和やむなしという総理の見解に立つた場合、われわれの危惧する日本の再武裝と軍事基地化的存続の可能性が一層確実に固定化する危險を痛感するものであります。(拍手)
 このような事情のもとにおいて、恒久の平和を念願し、全力をあげてこの崇高な理念と目的を達成することを誓つた日本国憲法の條章は根本的に改変しなければならないかと思うのであります。西村條約局長は、二十五日の外務委員会において憲法改正も予想していると答えしおりますが、はたして吉田総理は同じような考え方をお持ちであるかどうか、はつきりとお答え願いたいのであります。(拍手)
 次に、電力に関するポ政令に関して御質問いたします。第七国会で議決成立させることができなかつた電力分割案に対する問題は、その後いろいろの立場から論議され、特に與党である自由党においては、この問題のために收拾のつかない峻烈な対立が行われたということをわれわれは知つている。第九臨時国会では、この電力分割問題こそ、電力が日本産業の将来を決する重要基礎産業であつてその分割方式のいかんによつては、地方産業の生命を施する死活問題であるだけに、経済問題としてはもちろんのこと、政治的な問題として特に論議せらるべきものであるとわれわれは期待したのである。われわれもまた、電力の全国的な発送配電の参一貫性と、わが国産業の百年の計として主張すべく、幾多のことを期待しておりました。しかるに、政府は突如としてこの問題を開会中の国会に付議することなく、ポ政令で実施することにしたのである。多数をたのむ吉田内閣が、党内の十分な納得と了解を得られるぬ無能力さを――袞龍の袖に隠れて暴政をし――ポ政令の蔭に隠れようとしたのであります。言語道断といわなければなりません。民主国会を冒涜するものこれに過ぐるものなしと断ぜざるを得ないのである。政府はかくのごとき專政と独断をしいることによつて、民主政治の自主性をみずから放棄するのである。今や国会は、四百六十六名の全議員を結集して、国会の自主権と審議権の擁護のために闘わなければならないときであると私は信じている。(拍手)
 政府が強行したポ政令については、学問的にも、法的行為の上からいつても多大の疑義が残されているところであります。私は、政府がポ政令を実施する根拠となつた法的解釈について政府の明確なる所見を承りたいのであります。すなわち私どもの信ずるところによりますと、政府が今回のポ政令を実施した根本法は、昭和二十年勅令第五百四十二号によるものと存ずのであります。この五百四十二号の勅令は、昭和二十二年法律第七十二号によつて、すでに昭和二十三年一月以降失効と相なつているものと信じております。法律第七十二号は、その後法律第二百四十四号をもつて改正せられたのでありますが、法律第二百四十四号は、勅令第五百四十二号ですでに発せられている命令の効力は、今後も有効であることを規定しているのでありますが、勅令第五百四十二号の昭和二十三年以降の効力については何ら規定するところがないのでありまして、政府はすでに失効している勅令第五百四十二号を唯一の根拠法として今回のポ政令を実施したとするならば、まさに立法国の権威はいずこはありやを疑わせるものでありまして、その罪万死に値するものと信ぜられるのであります。(拍手)あるいはまだ、勅令五百四十二号はポツダム宣言という特殊條件によつて日本国憲法の上位にあり、憲法を拘束するものであると政府が言うかも知れない。しかしわれわれは、占領政策は降伏文書が明記しているごとくに、日本政府が責任をもつて行うものであると信じておるのであります。日本国憲法は、ポツダム宣言受諾下の憲法として容認せられたものに相違ないのでありまして、自己の政治的無能力をあえてポ政令に依存し、国会の審議権を行政府が剥奪するが、ごとき行為は、まことに許すべからざる政治的罪惡であるといわなければならないのであります。(拍手)これはまた同時に憲法第九十八條――この憲法は国の最高法規であつて、この憲法に反する法律、命令、詔勅は効力を有しないとする憲法の趣旨に反する、憲法違反の行為であると断ぜざるを得ないのであります。政府は、かくのごとく憲法に違反する行為をあえてしたのであります。これに対して法務総裁の明快なる御答弁をお願いするものであります。
 私は、時間がありませんので、これをもちまして質問を終ります。懇切丁寧なる御答弁をお願いするものであります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#41
○国務大臣(吉田茂君) 御質問の趣意は、全面講和が可能なりやいなやという御質問のようでありますが、全面講和強しばしば私がこのところにおいても論じ来つたのであります。全面講和は、できればまことにけつこうであるが、できなければしかたがないことではないか。すなわち、日本に対して講和をしたくないという国に対しては講和をしいることができないから、できればけつこうであるが、というようなことは、これは私がしばしば申したことで、あとは議論である。
 また再軍備とか、あるいは軍事基地とかいうようなことは現に問題になつておりませんから、これに対してはお答えはいたさない。また秘密協定をしたということは、事実断じてないのであります。また憲法改正等は考えておりません。(「西村が言つたじやないか」と呼ぶ者あり)西村のことは、私は責任を負わない。また軍事基地であるとか、あるいは再軍備というようなことを目下私が考えておらないことは、明らかにお答えしておく。(拍手)
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
#42
○国務大臣(大橋武夫君) ただいま石野君から、ポツダム政令の法的根拠について御疑念を有せられるような御質問であつたのでございます。その根拠法規でありまする昭和二十年勅令第五百四十二号は、議会の承諾を得た緊急勅令でありまして、法律と全然同一のものでございますから、今日も完全にその効力を有しておるのでございます。このことは、すでに最高裁判所大法廷の判決によつて明らかでございまして、私どもは、今日ポツダム政令の法的根拠について、疑いを持つようなお方はないはずであると考えております。(拍手)
#43
○副議長(岩本信行君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト