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1950/12/02 第9回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第009回国会 本会議 第7号
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1950/12/02 第9回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第009回国会 本会議 第7号

#1
第009回国会 本会議 第7号
昭和二十五年十二月二日(土曜日)
 議事日程 第六号
    午後一時開議
 第一 国会審議権尊重に関する決議案(椎熊三郎君外百二十八名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第二 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
        ―――――
●本日の会議に付した事件
 考査特別委員会設置の動議(福永健司君提出)
 日程第一 国会審議権尊重に関する決議案(椎熊三郎君外百二十八名提出)
 日程第二 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 松江国際文化観光都市建設法案(山本利壽君外百七名提出)
 一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(内閣提出、第七回国会議決第三号)
    午後一時四十二分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 考査特別委員会設置の動議(福永健司君提出)
#3
○福永健司君 特別委員会設置の動議を提出いたします。すなわち、本会期においても前会期と同様考査特別委員会を設け、その委員会の構成、性質、権限等は昭和二十四年三月二十九日本院で決議した通りとし、委員会の費用については第十国会召集の日まで月平均百五十万円を越えない範囲で支出し得ることとせられんことを望みます。
#4
○議長(幣原喜重郎君) 福永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#5
○議長(幣原喜重郎君) 起立外数。上つて動議のごとく決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
 第一国会審議権尊重に関する決議案(椎熊三郎君外百二十八名提出)(委員会審査省略要求事件)
#6
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一は提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、国会審議権尊重に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。椎熊三郎君。
    ―――――――――――――
    〔椎熊三郎君登壇〕
#8
○椎熊三郎君 ただいま上程になりました本決議案について、共産党を除く在野各派を代表いたしまして提案の趣旨を弁明いたします。
 まず決議案を朗読いたします。
  国会察議権尊重に関する決議案
 政府は、電力再編成に当り本国会開会のへき頭、突如としてポツダム政令によるの措置をとつた。
 かくのごとき国民経済に重大なる関係を有する案件について、政府がいたずらに事態を遷延紛糾せしめ、この挙に出ざるをえなかつたことは、民主主義の基盤たる国会の審議権を無視し、議会政治に暗影を投ずるものであつて、はなはだ遺憾である。
 政府は再びかかる措置を繰り返さないことを強く要望する。
  右決議する。
    〔拍手〕
 去る二十四日、電気事業再編成がポツダム宣言受諾に伴う政令によつて措置されることが発表されました。われわれは愕然としてその真意の那辺にあるやを捕捉するに苦しむくらいでございました。思うに、終戰五年を経てなおかつかくのごとき状態がしばしば行われるということは、はなはだ遺憾でございます。(拍手)もとより占領下にありましては、政治、経済、各般にわたつて特殊の状態に置かれておりますので、必ずしもすべてが自主的に処置されるということではございますまい。マ元帥の書簡なるものも、その内容によつては絶対的の場合もあり得ることでしよう。今回のポツダム政令もまたこれがマ元帥の命令なりとせば、それはまたやむを得ないところでございます。ただわれわれの指摘するところは、何ゆえにマ元帥が吉田総理大臣に対し電気事業再編成について書簡を発しなければならなかつたがというところに問題がある。その原因は、一にかかつて政府の怠慢ではないか。(拍手)與党内部の対立抗争ではないか。(拍手)
 終戰以来五箇年の長きにわたるマツカーサ上元帥の占領統治政策を私どもは静かに顧みるに、その後日本の状態は日に日に回復せられておつて、マツカーサ元帥は、内政問題についてはなるべく日本の自主解決を希望しておられるようでございます。今や講和会議を目前にして、わが日本に対するマッカーサー元帥の感情は――あえて国民生活に直接密着するところの電気事業再編成のごとき問題に、命令にひとしき書簡を送つて、ポツダム政令によつてこれを解決せよというがごときことは、マッカーサー元帥のこれまでの統治政策の上からは私は考えられないところであるのであります。(拍手)
 本電気事業が経済力集中排除法に基いて検討されたのは、実に昭和二十三年からであります。爾来、官民あげてこの問題の研究審議を重ねまして、当時水谷商工大臣のときには、これは三分割案――当時朝野の有力者を集めました審議会においては、三分割案という成案を得ております。けれども、この案に対しましては、今日までの日発の当事者は、労働者をも含めて全面反対、これに対して配電会社は九分割に賛成しております。
 そもそもこの九割型案なるものが生れたゆえんのものは、吉田内閣によつて命ぜられた審議会の委員長たる――電気事業界の先輩といわれる松永君を委員長とするこの委員会の答申に基くものであります。松永君は、なるほど日本電力界の長老であるかもしれませんが、この問題については、世間多くの疑惑を残しておるのであります。(拍手)われわれ考査特別委員会において調査したところによりましても、九分割案を遂行せしめるための首唱者たりし松永君は、九分割賛成の配電会社から数百万円の金を受取つておるという事実が暴露しておるのであります。(拍手)これが今回、内閣にこの九分割案を答申いたしまして、電力事業などにはあまり関心を持たなそうに見える吉田総理大臣は、これをうのみにした形なのでございます。諸君の、與党たる自由党の内部においても、大半はこの九分割案には反対ではないか。(拍手)いわんや近畿地方の代議士に至つては、吉田総理大臣が独裁ぶりを発揮してこれを遂行せんとならば、自由党を脱退して近畿自由党を創設するなどということを言つておる。(拍手)
 かかる経過をたどつて――電気事業は国家産業の基幹として、その影響するところが非常に多く、ことに電源の確保開発のごときは緊急を要することは贅言をまちません。しかるに、第七国会には政府原案として九分割案を提出して、衆議院においては多数を頼んでこれを通過せしめた。諸君は心ならずもこれに養成をした。心ならずも賛成をした。(拍手)しかるに、これは参議院においては、ことに自由党の参議院議員諸君の猛烈なる反撃にあつて審議未了となつたのであります。
 爾来六箇月、政府も與党も、この問題の善後処置を発見するに今日まで苦しんで来た。第九回国会を迎うるにあたつてもなお最後案を決定するに至らず、遂に十一月二十日に至つても党議を決定することができなかつた。政府は提案することができなかつた。これは政府並びに與党の責任にあらずして何ぞや。(拍手)驚くべきことであります。国民経済に影響するところが大であればあるほど、国民代表たる国会の審議を盡すべきが当然であります。特に今回は臨時国会を開いておる。当臨時国会の会期は御承知の通り十二月八日まで。しかるに、政府の発表するところのポ政令による電気事業再編成の期日は十二月十五日ということである。従つてこの間にこの臨時国会に案を提出して審議せしめるべきことは当然であつて、これを避けたというのは何によるのか。すなわち、政府と與党の間の意見が一致せず、與党の間に九分割案に反対者が多数であつたからではないか。これはおおうべからざる事実だ。現にわが民主党は、すでに五分創案を(「笑わせるな」と呼び、その他発言する者あり)まじめに聞きたまえ。――五分割案をつくつてこれのOKを求めつつある最中である。しかもこの五分翻案には、諸君の内部において賛成者が多数あるではないか。ことに近畿地方の代議士の大部分は、わが民主党の五分割案に全面賛成しておる。(拍手)
 しかもこれは、マ元帥の書簡によつてやむなくかくのごとき処置に出たという。しかしながら、マ元帥の書簡なるものは、いまだ公表せられておりません。首相のこれに対する説明は、衆議院と参議院において重大なる食い違いがあるのである。(拍手)新聞紙の伝うるところによれば、首相は、去る二十日マ元帥に面会を求め、この問題に対する助言を求められたとのことであります。この吉田総理の要請によつてマ元帥の書簡なるものが発せられたとのことでございます。はたしてしかりとするならば、このことは、ひとり国会の審議権を無視したばかりではなく、まさに国政の最高責任者たる総理大臣みずからの政治の放棄であるといわなければならぬ。(拍手)みずから政治を放棄しておるのである。ここにおいてわれわれは、国会審議謙の擁護と尊重を政府に要望する次第である。
 われわれは、終戰以来五年間、占領下に営々として民主主義確立のために努力して参りました。世界の各国はこれを認めて、すでに講和の機運も十分に熟しておると私どもは信ずるに至つております。しかるに、今日ここに民主主義政治の本義を蹂躙して、国会開会中突如としてポツダム政令を出し、国会の審議権を無視したる態度は、はなはだ遺憾千万であるのであります。(拍手)吉田総理大臣は、常に口を開けば、民主主覇国家の実体を備うることが講和の前提條件であると申しておられます。しかるに、これに反する政治を行い、はたしてその責任を盡すものと言い得べきでございましようか。国会審議権の蹂躙である。明らかに民主主政治の冒涜である。(拍手)
 元来吉田内閣は、しばしば国会の審議権を無観しております。吉田総理大臣は、議会政治家としては必ずしも多年の経験を有する人ではございますまい。けれども、政治に対する信念だけは、国家最高の責任者たる総理大臣は堅持しておらなければならぬ。しかるに、新憲法下にあつて国家最高の機関たる国会の審議権を無視、蹂躙、冒涜するに至つては、これは民主主義政治家と申すことはできないのであります。(拍手)たとえば、昨年食確法審議の際、あるいは先般地方税法案の審議の際、これはいずれも国会の審議権を蹂躙したる例証であつて、吉田内閣が占領下において残したる惡政のレコードであります。(拍手)しかし食確法のごときは、国会が否決したあとの窮余の一策であつたのであつて、今回のごとく、国会がこれから法案を準備して本格的な審議を開始しようとするやさきのできごととは、同日の比ではないのであります。(拍手)今回の措置は、ただに審議権の蹂躙だけではない、みずから総理大臣が政治の責任を放棄したというところに重大な問題が残されておるのであります。(拍手)しかも何たることか。敗れたりといえども日本の総理大臣ともあるものが、みずからマ元帥に面会を求めてこの問題処理に関する助言を求めるというに至つては、その軟弱、その陋劣、その卑屈さ、言語に絶するものがあるのであります。(拍手)
 そもそも電力再編成は、二十三年以来の大懸案である。第七国会においては審議未了となり、さらに第八国会には遂に日の目を見ずに終つたのである。今日まで、かくのごとく事態を遷延したことは、ひとえに政府と與党の責任であつて、関係方面よりのしばしばの示唆によつて法案の提出を急がなければならなかつた事情にありながら、遂に最後案を與党と政府において決定することのできなかつたという醜態は、まさに諸君の責任である。まさに総理大臣の責任である。
 諸君、自由党内部の意見不一致によるこの醜態は何たることであろう。ひとり自由党の醜態にあらずして新憲法下、日本の憲法精神を蹂躙するの結果に立ち至つたことを私は嘆くのであります。(拍手)日ごろ独裁をもつて聞える吉田総理大臣も、この問題に関する限り得意のワン・マンぶりを発揮することができずして、遂にこの醜態を天下にさらすに至つたのでございます。これこそ、まさに與党内部の対立を回避し、絶対多数の崩壊をおそれ、これを隠蔽せんとする政府の陋劣なる手段にあらずして何ぞや。(拍手)諸君といえども議会政治家だ。諸君の権利を蹂躙せられてなおかつ諸君はこの吉田総理大臣の行動を是認せんとするのであるか。それは今日の国民に対する諸君の責務ではございますまい。反省を促すゆえんでございます。(拍手)諸君、もしそれ與党内部の混乱をポツダム政令の処置によつて押えるという手段を考えたとするならば、占領治下における占領軍の最高権威たるポツダム政令に対する威厳を損じたばかわではなしに、これをもてあそんだる罪惡は、国民とともに断じて責めなければならない。(拍手)しかも、このことによつてこうむる国民の損失の大なることは、実に言語に絶するものがございますぞ。諸君は、この事態を、この結果を見て、いかにして諸君の選挙区に帰られんとするのか。(拍手)実に自由党諸君の心事を考えるとき、うたた気の毒にたえざる次第である。(拍手)かくのごとき行動は、まさに鬼面人を威嚇し、国内の言論を抹殺する幕府故治の再現である。東條軍閥内閣の言論抑圧にもひとしき行動である。
 わが国はすでに講和会議を目前にし、国民最大の待望は、領土の保全、安全保障とともに内政自主権を確立するということにあることを忘れてはなりません。(拍手)もし講和会議が開かるにあたり自主権を要望すべき日本が、みずから民主政治の真髄を放棄するがごとき態度であり、今なお低劣なる民主政治の運営に終始しておるということであるならば、全国民の要望をいかにして貫くことができましようか。(拍手)思うに、不幸なるあの戦争には、同胞数百万の生霊を失い、わが国の国土はかくのごとく狭められた。われらの歴史を顧み、民族の行末を思うとき、現に国政に参與する者の責任は実に今日より重大なるときはないと私は考える。新憲法のもと国家最高の機関たる国会に議席を有する者、今日こそ身をもつて憲法の大精神を守り抜くときではなかろうがと私は思う。(拍手)
 終戦以来、あの混乱と窮乏のうちにあつて、平和なる文化国家の建設を目途としてあらゆる苦難を突破し、今やようやくにして秩序の維持、経済の復興に多少の曙光を見出すに至りまして、この上は一日も早く講和会議を迎え、国家の自主権を回復したいということは、わが民族全体の共通の念願なのであります。今回の吉田総理大臣のとりましたる態度は、議会政治家として恥ずべき行動である。しかも、占領治下にある日本の政府としても陋劣なる、卑屈千万なる行動である。しかもなお吉田総理大臣は、講和会議を自分一人にまかしておけと申しておらるる。私は、わが日本現下における外交界の大先輩でございまするから、このくらいの自信があつてもしかるべきものだと、日ころひそかに痛快を感じておりました。しかるに、今日みずからの政治の失敗をマッカーサー元帥に泣きついて助言を求めるに至りましては、あなたの卑屈、あなたの陋劣、実にこれは政治家としてとるべき態度ではない。(拍手)ひとり吉田総理大臣みずからの政治家たるの値打を下落せしめたばかりではない。わが国民八千万同胞全体の代表者として、全民族のつらに、どろを塗つた行動だと私は思う。(拍手)
 しかしながら、すでに事は過ぎました。望むらくは、今日以後政府においては、よろしく本決議案の趣旨に従い、今後絶対にかくのごとき過誤を改め、再び国会の審議権を無視することなく、憲政の常道を確立し、民主政治の達成に努力せられんことを強く要望いたしまして満場諸君の御賛成を期待して私の演説を終る次第であります。(拍手)
#9
○議長(幣原喜重郎君) これより討論に入ります。倉石忠雄君。
    〔倉石忠雄君登壇〕
#10
○倉石忠雄君 私は、ただいま御説明になりました本決議案に対して、自由党を代表いたしまして、反対の意思を表明いたさんとするものであります。(拍手)
 申し上げるまでもない事柄でありますが、講和條約をすみやかに締結してもらいたいということは国民一般の熱烈なる要望であります。講和会議の成立には、その前提の要素として、われわれがアメリカから援助を受けておる、(「何を援助を受けておるか」と呼び、その他発言する者多し)この経済について、すみやかに自立態勢を整えなければならないということも多言を要せざるところであります。われわれが終戦以来、国民一人残らず熱烈に希望いたしております経済の自立態勢を整えるには、アメリカ側の非常なる援助を受けして今日までやつて参りましたけれども、さらにこの自立の目的に到達いたしますためには、より一層の援助を受けなければならないということも、多言を要せざるところであります。
 皆さん、アメリカ側の対日経済援助が、大体において日本の経済が自立されるであろうという目標の一九五二年の六月を目途といたして参つたことは御承知の通りであります。しかるに、最近報道せられましたるグレー報告書というものによりますれば、朝鮮事変以来日本の国際収支がきわめて改善せられましたところから、この経済援助は一九五一年の六月で打切つてもよかろうという説が伝えられて参つたことは、諸君よく御承知の通りであります。アメリカ側の、しかもこの政府筋の有力なる委員会の意見として、かくのごとき意見が現われて参つたということを考えてみまするときに、われわれは、この従来行われておりましたアメリカ側の対日援助資金を効率的に取扱うことによつて、いかにして一日も早く日本の自立態勢を整えなければならないかということになるのであります。(拍手)(「本論に入れ」と呼び、その他発言する者多し)
 諸君、日本の水力発電が、日本の水力電気事業が日本産業の現状においては最も必要なる、最も有力なる資源であるということは、申すまでもない事柄であります。この日本の水力電気事業は、申すまでもなく過度経済力集中排除法の指定を受けておりますので、当然再編成を行わなければならなかつたのでありますけれども、この電力事業の再編成に対しまして、私どもは昨年までに百四十一億円の見返り資金の援助を受けて参つたことは御承知の通りでありますが、これが八月三十一日をもつてすでに打切られておるのであります。私どもは、この電気事業再編成に対して、八月三十一日以来何ら見返り資金を使用ずることができなくなつておつたという今日の日発の状態を考えてみますときに、いかがでありましようか。諸君御承知のように、電力の再編成が行われなければ見返り資金の使用を許さないであろうということは、しばしばその筋より警告のあつたところであります。しかも、この日発が見返り資金によつて工事を継続することができなく相なつたために、どういう状態になつておつたかと申しますならば、すでに日本発送電会社においては工事の中止をいたし、なおここに使つている労働者諸君もこれを解雇しなければならないような緊急な状態に立ち至つたことは御承知の通りであまりす。
 諸君、ここで私どもは、このやむを得ざる緊急状態に立ち至りましたときに、ポツダム政令によつてこの再編が命令せられましたということについては、今日われわれの論議を妨害いたしておられる野党側の諸君も、これは政党政派を離れて、国会議員として、そのよつて来るところの根源に対して深き考察を加えることによつて、お互いに反省をしなければならないところであると存ずるのであります。(拍手)
 野党の諸君が提出いたされましたるこの決議案、国会の審議権を尊重すべきであるということは、この事柄に対して何らの異議をさしはさむべきものではありません。国会の審議権、また議会の自主権を尊重すべしというこの趣旨に反対する者は、おそらく一人もありますまい。しかるに野党の諸君が――この決議案について、ただいまこの壇上において椎熊三郎君がお述べになつたところの御趣意は何であるか。すなわち、国会の審議権尊重という美名を掲げておりながら、そのなされるところの御演説をわれわれ拜聽いたしますならば、ただ單にこれを利用して政府を攻撃せんとする舞台効果をねらつておるのであります。(拍手)野党の諸君に私どもも訴えたいことは、国会の審議権を尊重し、国会の自主性を尊重しなければならない、すみやかにわれわれの国会の自主性を回復いたさなければならないことは当然でありますけれども、この国会の自主権をすみやかに回復いたすと同じ程度に、われわれは日本の経済の自主的独立性をもすみやかに回復しなければならないのであります。しかるに、ただいまの椎熊君の御演説を拜聽いたしましても、こり最も緊要なる命題を忘れて、いたずらに国会審議権尊重というがごとき、きわめて通俗にして、俗耳に入りやすい表題を掲げて、しかも決議案の内容とするところは、国会運営上の公式論に振りかざして政府攻撃の材料たらしめんとすることは、国際情勢の推移に盲目であつて、党利党略以外の何ものでもないとわれわれは断言せざるを得ないのであります。(拍手)
 野党の諸君は、静かにお考えを願いたい。敗戦の焦土から、孜々営々として今日まで祖国再建に努力いたして参りました一般国民大衆は、皆様方よりは、政治的感覚のレベルははるかに上であります。諸君が今日このように、いたずらに観念論を振りかざして、ただ国政の審議を妨害することを目的とするがごときことに対しては、国民は冷やかなる理性に訴えて、必ずや諸君を攻撃されるのでありましよう。ことに民主党及び社会党の諸君は、常に口を開けば、共産党とは断じて相いれず、明確なる一線を画するものであると言われております。先ほど椎熊君も、この壇上において、このようなことを言われておる。しかしながら、本決議案に対して共産党の議員に賛成の討論を許したのはだれであるかといえば、民主党の諸君であります。(拍手)椎熊君は議院運営委員会の委員であります。共産党は御承知のごとく別個の決議案を提出いたしておつたのでありますから、もしそれ共産党の賛成演説を拒否されようとするならば、民主党側御選出の議院運営委員は、これをやることができたはずであります。しかも、この野党側提出の本決議案に対し共産党まで賛成討論者に加えて、そうしてこの決議案に賛成する議員数の多きを誇らんとするがごときは、諸君の常に言つておられることとまつたく相反したる行動である。(拍手)しかも、本決議案にあとから賛成討論をされるでありましよう共産党の諸君は――共産党は憲法を否認し、議会政治を認めないものであるということは、常に諸君の鼻祖として尊敬いたしておるレーニン、マルキシズムがこれを認めておるではありませんか。しかも、この共産党と民主党とが相携えて本決議案を上程するに至つては、私どもは、民主党及び社会党の諸君のその心事の陋劣なることをまことにあわれまざるを得ないのであります。
 諸君、今日のわが国の置かれたる被占領地という特殊な事情を考慮せず、国会開会中のポツダム政令が非民主主義的であると攻撃せられるならば、第一回国会の片山内閣のときに飲食営業緊急措置令をお出しになつたのは、これは社会党の諸君であります。民主党の諸君もこれに対して共同の責任があるということは御承知の通りであります。われわれは、しかも本決議案に対して……。
    〔発言する者多く、議場騒然〕
#11
○縦長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
#12
○倉石忠雄君(続) しかも本会議案は、その表題には国会審議権の尊重という、いかにも堂々たる看板を掲げながら、その実は電力問題について政府攻撃をなさんとすることを真の目的とするものであり、羊頭を掲げて狗肉を売るものであるということは、諸君よくおわかりの通りであります。議院通常委員会において、うそを言うことができない、最も人格者であるとわれわれが常々尊敬している社会党の三宅正一君が、どういうことを言われているかと申しましたならば、三宅君は、要するに本決議案は解散要求の決議案ないしは不信任の決議案にやや似た性質を持つている決議案であります云々ということを言つておられる。もしそういう目的であるならば、なぜ正々堂堂と内閣不信任の決議案をお出しにならないか。(拍手)
 今日、野党の諸君は――民主党は党内派閥がはげしくて、その思想統一すらできないことは、昨日の議員総会の状況でもおわかりの通りである。(拍手)社会党はどうか。社会党は頭が三つあるへびのようなもので、どつちの方角を向いているかわからないようなものである。こういうものが野党連合をつくつて、不信任案というがごとき結束したる行動をとることができないりで、国会審議権の尊重というがごとき、あたかもまことに一般国民に受けのいいような表題を掲げ、その反面においては、いたずらに政府の攻撃に終始せんとするための党利党略より出でたる本決議案であるということを、われわれはこの壇上より明らかにいたさなければならないのであります。(拍手)
 諸君、今日朝鮮及び満州の国境における国際の情勢は、一歩を誤ればわれわれは重大なる関頭に立たなければならないような険悪な時局であります。かような情勢であるときに、ただいたずらに党利党略より出でたるかくのごとき決議案をこの国会においてもてあそばんとする、まことに誠意なき、不誠実きわまるところのかくのごとき本決議案に対しましては、私は自由党を代表いたしまして絶対に反対の意を表明せんとする次第であります。(拍手)
#13
○議長(幣原喜重郎君) 武藤運十郎君。
    〔武藤運十郎君登壇〕
#14
○武藤運十郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国会の審議権尊重に関する決議案に対しまして賛成の意を表明するものであります。(拍手)
 憲法は、その第四十一條におきまして、国会は国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である旨を高く宣言いたしております。その意味するところは、まず第一に、国会は直接に人民の意思を反映する最高の会議体でありまして、三権分立の制度にもかかわらず、なお国会は行政権及び司法権に優越するということであります。第二には、国会のみが立法権を持ち、国会以外に立法行為をなし得るものは存在しないということであります。これを換言いたしますならば、法律をもつて定むべき事項は、すべて国会の專権に属し、政府の命令その他によつてはこれを定めることができないという意味であります。(拍手)国会の審議権は、実に憲法のこの重要なる條項に根拠するものでありまして、国会の審議権を擁護することはすなわち憲法を擁護することであり、国会の審議権を蹂躙するものはすなわち憲法を蹂躙するものといわなければならぬのであります。(拍手)
 申すまでもなく、日本国憲法のもとにおきましては、政府の首班は国会によつて指名され、政府は国会の議決を執行し、国会に対して責任を負うのであります。すなわち政府は国会に従属するものでありまして、たとえて申しますならば、国会は主人であり、政府は番頭であります。政府が国会の審議権を尊重しなければならない憲法上の根拠は、ここにも嚴として存在するものであります。(拍手)この点は、アメリカ憲法におけるがごとく、人民の直接選挙による大統領が国会の議決に対して拒否権を有する制度とは、根本的に異なるものと申さなければなりません。従いまして、もし政府が、かつてに法律にかわるべき命令を濫発いたしまして、これに対して国会が無條件、無反省に拍手を送つて恥じないならば、日本は再び東條軍閥独裁内閣と、これに拍手を送つて翼賛議会の出現を許すものであります。(拍手)すなわちそれはナチス・ドイツのいわゆる授権法を再現するものでありまして、フアツシヨ以外の何ものでもありません。(拍手)日本は、すでに過去におけるフアツシヨ政治を敗戦によつて清算し、新たなる憲法によりまして、ようやく政治を人民の手にとりもどしたのではありませんか。しかるに、もしわれわれがみずから立法権を放棄し、これを唯々として政府の手にゆだねますならば、人民の代表たるわれわれの国会は、遂にまつたく無用の長物と化し、われわれはみずから墓穴を掘ることになるのであります。(拍手)
 吉田内閣の施政を見まするに、食確法の改正、警察予備隊の設置、人事院勧告及び国鉄裁定の蹂躙、国会開会要求の無視並びにこのたびの電力再編成の問題など、まことに恐るべき国会無視の連続でありまして、吉田内閣こそは実に憲法無視の常習犯と申しましても決して過言ではないのであります。(拍手)もちろんわれわれは、今もなお日本が占領下にあることを忘れるものではありません。従いまして、またわれわれは、連合軍最高司令官の指令または覚書が、おおむね至上命令的性質を持ち、これを拒否し得ないものであることもまた否定するものではありません。しかしながら問題は、かかる指令または覚書そのものの効力にあるのではなくして、これに示された事項を日本政府が国内に実施する手続のいかんにあるのであります。これを換言しますならば、最高司令官の指令はおおむねこれを拒否し得ないといたしましても、これを日本国内に実施する場合、その手続は、必ず政府の責任において、憲法の定めるところによらなければならないのであります。(拍手)申すまでもなく、日本国憲法は連合軍総司令部の助言と承認によつてつくられたものであり、占領下におきましてもなお憲法は日本政府のよるべき根本的基準として嚴として存在し、政府は、それが連合軍総司令官の指示する事項なるのゆえをもつて憲法を無視し、憲法に違反する手続によることは絶対に許されないのであります。(拍手)
 吉田首相は、外交上の往復文書はこれを公表しない慣例だから、マ書簡は公表しないと言われたそうであります。なるほど、外交官同士の個人的な往復文書や、対等な独立国間における往復文書などにつきましては、あるいはそういうこともありましよう。しかしながら、このたびのマ書簡は、決してさような性質のものでは、ございません。申すまでもなく、占領下における日本の法秩序は、マツカーサー元帥の権力を頂点として構成され、日本政府は、ただこれに従属する執行機関として存在するにすぎない、と解すべきものであります。従いまして、両者の間に対等な外交関係のないことは理の当然であり、政府もまた、しばしばこれを言明するところであります。しからばすなわち、外交関係のないところに外交文書はあり得ないではありませんか。占領政策に関しマツカーサー元帥より吉田首相に対して公に與えられにるものは、その名称のいかんにかかわらず、すべて外交文書ではなくして指令書であります。このたびのマ書簡もまた指令であり、政府が電力再編成に関するポ政令の公布をこれによつたと主張するならば、政府はすべからく、ただちにこれを公表して、その法的根拠を示すと同時に、国会に対する法律上並びに政治上の責任を明らかにすべきものであります。(拍手)しかるに政府は、何ゆえか、野党各派のマ書簡を公表すべしというまことにもつともな要求に対しまして、これをひた隠に隠して公表をいたしません。これこそは、まことに恐るべき秘密政治であり暗黒政治であるといわなければならないのであります。(拍手)
 しかしながら私は、マ書簡が吉田首相に対しまして、電力再編成を法律案として国会に提出することを禁じ、もつぱらただちにポツダム政令によつてのみ実施すべき旨を指示しているとは考えません。何となれば、日本の占領後すでに五年有余を経過し、軍備の廃止、財閥の解体、戦犯の追放など、ポツダム宣言の要求するところを完了し、平和国家、文化国家として再出発をしたのであります。マツカーサー元帥もまた、すでに数年前よりこの事実を承認し、日本は講和條約によつてりつぱに独立国家となる資格のあることをしばしば声明しておられるのであります。マツカーサー元帥のこの見解は、今や連合国人に対する裁判権の拡張、議案提出に対するオーケーの緩和、在外事務所の設置など、除々にではありますが、日本に対する自主権の承認として現われつつあるのであります。従いまして私は、マッカーサー元帥が、この際特に電力再編成問題について、法律によるな、国会の審議を経る必要はない、必ずただちにボ政令として出せないというような、自主権の承認、独立国の建前とまつたく相矛盾するような指令を出されるはずはないと思うのであります。(拍手)
 政府の言明するところによりますれば、マ書簡に付属する再編成案につきましては、十二月十五日までにその効力を発生せしむる処置をとるべきことを指示しておる由であります。はたしてしかりとしますれば、幸いに現在国会は開会中であり、臨時国会の全会期をこの法案審議に費しましても、なお余りがあるのであります。しかるに吉田内閣は、何ゆえごの法案を国会に、提出してその審議を求めないのか。審議を求めてなお成立しなかつたときに初めてポツダム政令によつても、まだ遅くはないではないか。マ書簡が特に十二月十五日の期限を切つておりますのは、政府が憲法に従つて国会の審議権を尊重し、この手続を行うための猶予期限と解すべきものであります。(拍手)従いまして、もしマ書簡がポツダム政令によることを許しているとしますならば、それは万一、十五日までに電力再編成法案が国会を通過しなかつた場合において初めてこれをなし得る意味であります。これを要するに、電力再編成問題につきましては、第一に、国会は開会中であり、第二に、十二月十五日という十分なる猶予期限があり、第三に、衆議院に絶対多数を誇る吉田内閣が当初よりポツダム政令によつたことは、党利党略のためにマ書簡を濫用または曲解し、憲法を蹂躙し、まつたく国会の審議権を無視したものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 私はこの際、ポツダム政令に関連いたしまして、自主権の回復について一言いたしたいと存ずるのであります。占領下におきましては、日本に完全なる自主権の存しないことは申すまでもありません。しかしながら自主権の制限は、占領当時と講和に直面する五年後の今日では、おのずからその範囲が異ならなければならないと思うのであります。これをドイツの例に見ましても、西ドイツの占領は、日本の場合と異なりまして、最初は完全な軍政に始まつたのでありますけれども、すでに一年半以前におきまして、いわゆるボン憲法を獲得し、占領條例に従いまして、立法、司法、行政全分野にわたり大幅な自主権を回復し、軍政は遂に民政に切りかえられたのであります。しからば、何ゆえに西ドイツではこのように大幅な自主権を得たかと申しまするのに、それは決して座して投げ與えられたものではありません。これこそは、占領以来、西ドイツの政府が、自主権回復の強い国民的要望を実現すべく不断に積極的な努力を怠らなかつたからであります。以上はドイツにおける一例でありまするが、私は、講和を前にして最も重要なる外務委員会にさえも、ほとんど出席したことのない吉田首相に、このドイツ人の勇気と努力とを求めたいのであります。
 私は、政府が電力再編成をポ政令によつたことに対してもちろん反対ではありますが、しかし、いたずらに反対せんがために反対しているのではありません。すでに二年有余にわたる重大懸案であるこの問題について、はたして吉田内閣は、これを解決すべく、いかなる積極的努力を拂つたでありましようか。何事もなさずして、今日遂にマ書簡を受取るや、易々として、自主権の回復と逆行するポ政令によつたのであります。私は、日本人の一人として心から民族の独立を思うがゆえに、吉田内閣のこの安易にして卑屈なる態度を非難したいのであります。
 先ほど自由党の代表者は、アメリカから経済的援助を受けているから、ポツダム政令による自主権の制限もしかたがないと言われるが、それは奴隷根性であります。経済的な援助と政治的な独立とは別個の問題であります。われわれは、経済的援助のために日本の憲法を、国会の自主権を、民族の独立を売り渡したくはないのであります。(拍手)
 今や、自主権の回復と民族の独立とは全国民に熱望するところであります。この国民的要望に対して鋭い政治的感知を欠き、何らの積極的努力を拂うことなくして、そのゆえにマ書簡を受取つた吉田首相の政治的怠慢と、無能と、不手ぎわとは、この一点だけによりまして国政担当の能力がないものといわざるを得ないのであります。(拍手)先ほど自由党の代表者は、不信任案を出してもらいたいというようなことことを言われましたが、われわれは、皆さんから要求がなくても、近く不信任案をこの点において提出する用意があります。吉田内閣の相次ぐポ政令の濫用と国会無視の行動とは、遂に憲法を侵してもいいのだという恐るべき観念を人民に植えつけ、人民の議会政治に対する信頼と希望とを失わしめ、ひいては吉田内閣と自由党の最も恐れる議会政治否認の、いわゆる危険思想を釀成するのではないでしようか。同時にまた、民族の独立心を知らず知らずのうちに麻痺せしめ、日本民族を植民地化するものと申さなければなりません。(拍手)
 ドイツの歴史を見まするに、一九三〇年には法律が九十五、大統領の緊急命令が五であつた。それが二年後の一九三二年には、反対に法律が五、緊急命令が五十九となつた。翌一九三三年にはヒツトラー政府が樹立され、当時最も進歩的、民主的といわれたワイマール憲法は、遂にその効力を停止されたのであります。私は、吉田内閣の施政のうちに、ナチス政府樹立の前夜を見るのであります。すなわち、今やわが国におきましても、われわれが国会に審議権の尊重という、議会政治のもとにおいて当然過ぎるほど当然な事柄について、あらためて決議案を提出しなければならないほど、政府に独裁があり、国会に数の暴力があるのであります。(拍手)これこそ議会政治の危機であり、フアシズムの台頭でなくして何でありましようか。国家審議権の擁護の必要なる、憲法擁護の必要なる、今日ほど重要な歴史の瞬間はございません。
 私は、以上の諸理由によりまして、本決議案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
#15
○議長(幣原喜重郎君) 石田博英君。
    〔石出博英君登壇〕
#16
○石田博英君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま提出せられてお与まする決議案に対し、第一に、この決議案の提出者の資格に疑点があること、第二に、この決議案の文面とその裏に盛られておる内容とに著しい差異があること、第三に、この決議案の前提となるべき現下の客観情勢に対する認識が、まつたくあきれ返つた誤認の上に立つておるという事実からいたしまして、私はこの決議案に対して反対の討論を試みようといたすものであります。
 私は先ほどから、民主党の椎熊三郎君の、非常にお元気な提案理由の御説明を承つておりました。また社会党の武藤新法学博士の非常に御懇切なる賛成討論を承つておりまして、まず第一に思い起しますことは、第一回国会、片山内閣当時の光景でございます。その片山内閣のときに、ちようど昭和二十二年十二月九日の午後十時四十六分のころ合いでございました。片山内閣は、食料品配給公団法、油糧配給公団法、飼料配給公団法及び食糧管理法の一部改正の法律案の上程をいたしておりまして、国会において審議の過程にあつたのであります。ところが、ただいま申し上げました時刻に、農林委員会は突如再開、討論を開始いたしまして、非常なる騒擾のうちに、一体委員会が正式に開かれたのか開かれていないのかわからない。当時の委員長は野溝勝君であつたと記憶いたしまするが、賛成の方の起立を求めると言うたけれども、何人起立したか、さつぱりわからない。騒然たる中に委員会を押し切りまして、そうしてこの本会議場に上程いたしたのであります。
    〔発言する者多し〕
#17
○議長(幣原喜重郎君) 静粛に。
#18
○石田博英君(続) ところが、時の衆議院議長でありました松岡議長は、議長の職権をもつて、議員に許された発言時間を五分間に制限いたしまして、そうして九日の十一時五十六分に本院を通過成立せしめました。あと余すところは、わずかに四分であります。そうして、これを急遽参議院に送付しましたが、その日のうちに成立する見込みに至らず、遂に参議院の時計をとめまして、もつてこの法律案の成立を強行いたしたのであります。昔、平清盛は太陽を西から東にやろうといたしましたが、当時の片山内閣、すなわち社会党及び民主党の連立内閣は、暴政第一といわれた平清盛以上の一圧力をもつて、国会の審議権を無視して、これら法律案の成立を強行いたしたのであります。(拍手)
 さらに、第二国会であると記憶いたしておりまするが、芦田内閣のときであります。昭和二十三年度予算が、政府の手続の怠慢によつて議会に対する提出が遅れました。そうして、七月二日までに、どうしてもこれを成立せしめなければならない事情が生れて参りました。従つて政府は、これまた国会の審議権を無視いたしまして、強行に強行を重ねて、遂に夜中の零時三十分から再び本会議を開会して、いわゆる徹夜議会、拂曉議会の先例をつくつたのであります。(「三年前だ」と呼び、その他発言する者あり)ただいま野党諸君の不規則発言中に、すでに三年前のことだからいいではないかという発言がありました。三年前のことならばよくて、三年後の今日は悪いという議論は成立いたしません。先ほど私が、この決議案の提出者の資格において疑問があると申し上げましたのはこの点であります。みずから国会の審議権を蹂躙し、力をもつて強行いたした、かつての與党諸君が、今日立場をかえると、かくのごとき決議案を平然として提出いたすその厚顔に対して、私は、ただ嗟嘆これ久しゆうする以外に方法がないのであります。(拍手)
 さらに諸君、椎熊君及び武藤君は、ポツダム勅令をもつてこれを国会開会中に施行したことについて、審議権の無視であると攻撃をいたしております。ところが、国会開会中にポツダム勅令を一番先に出した内閣は一体どこの内閣か、諸君御存じですか。それは当時の片山内閣が、第一回国会開会中、昭和二十二年七月一日、ポツダム勅令をもつて料理飲食店に対する飲食営業緊急措置令を実施したのであります。(発言する者あり、拍手)みずから先鞭をつけたことに対し、年月が経過し、みずからの責任がなくなつたならば、今日ほこ先をかえた、自分の恥はこれを押し隠して、かくのごとき決議案を提出するということに対しては、先ほど椎熊君は、わが吉田総理に対して卑怯、卑劣という言葉を使われましたが、その言葉そのままを椎熊君、武藤君に返上したいのであります。
 さらに先ほどから、自主権の尊重、あるいは国会は国権の最高機関であつて、正しい民主政治運営のためには国会の審議権を尊重しなければならないという御趣旨の御演説がございました。もとよりその御趣旨には、私は一言も異議をさしはさむべき性質のものではございません。また私は、今日までの国会及びその他の運用におきまして、必ずしも国権の最高機関としての審議権が完全に尊重され、完全に運用されたということも考えません。しかしながら、先ほどからの椎熊君並びに武藤運十郎新法学博士の御議論には、前提の認識において重大なる誤りがある。一体、今日完全なる自主権、完全なる国権というものが日本において認められておると考えておるならば、それこそ驚くべき現実認識の能力の欠如といわざるを得ないのであります。(拍手)今日われわれが置かれておりまする事態を正しく認識する能力のない者が、国民の代表として国政を論議するなどは、おこがましい限りといわざるを得ません。(拍手)まずこれらの諸君は、大学病院に行つて目と耳の検査をしてもらう必要があると考えるのであります。
 さらに諸君、われわれがポツダム勅令を施行いたしますのは、永久にこれを施行するということが許されているのではありません。占領下に置かれている間中、われわれの主権が、われわれの国権が、われわれの自主権が占領軍指令官の隷下にある間中、われわれはポツダム宣言を受訪いたしました義務といたしまして、それの命令に従う必要があるのであります。これらの事実は、私は先ほど申し上げましたが、いうまでもなく野党の諸君といえども万々御承知のはずであります。万々御承知の上でこの決議案を上程せられまする野党諸君の真意は、占領軍が今日わが国に駐在しておることの事実を諸君は否定せられるのであるか。さらにそれを不満として、諸君は実力をもつて占領軍の退去を求めようとせられておるのであるか。(「わかつたか」「内容空虚だ」と呼び、その他発言する者あり)さらに諸君は、あるいは日本のイニシアチブのもとに、即時講和の締結と完全独立の実施を要求せられようとしておるのであるか。もしそういう意図に基かれ、占領目的に公然、陰然と反対せられる意思があるならば、諸君、名目を改めて、占領軍の撤去を要求する決議を上程したまえ。(拍手)その勇気がなくて、事実の正しい認識を故意に隠蔽し、党利党略のために国民を欺瞞せんとする態度こそ国会の審議権を無視し、民主政治の正しい発達を阻害するものであると私は考えるのであります。(拍手)先ほど、私の反対討論に対して内容云々のお話がございました。内容空虚な一片の詐欺的な決議案に対して、内容ある討論をこれ以上しろということは、これは御要求をされる方がむりであろうと思うのであります。(笑声)
 諸君、(発言する者あり)諸君、議院運営委員会におきまして、先ほども同僚倉石忠雄君から……(発言する者あり)倉石忠雄君の反対討論の中にもございましたが、社会党の三宅君、あるいは民主党の椎熊君は、この決議案は内閣不信任の内容を持ち、(「あたりまえじやないか」と呼ぶ者あり)国会の解散要求にも比すべきものであるということを運営委員会で申されました。これに対して、今三宅君は一身上の弁明を試みようという準備中であります。いくら御準備をなされましても、速記録に明らかに載つているのであるから、これは否定できません。もし諸君、内閣不信任案を提出する意図を含んでおるならば、何がゆえに堂々と内閣不信任案をもつて本議場に臨まれないのであるか。さらに国会の解散を要求する意図を含んでおられるならば、何がゆえに堂々と国会解散要求をこの本会議に上程せられないのであるか。その確信と勇気を欠いておる諸君が、かかる欺瞞をもつて、詐術をもつて、国民諸君に必要なる事実の正しい認識を誤らしめ、もつて自己の党利党略に費せんとするがごときは、笑止千万と言わざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、以上三点、すなわち第一は、提出者において本決議案を提出する資格がない、第二は、本決議案の文面と内容には大きな違いがある、すなわちこの決議案を上程することそれ自身が国会の神聖を害し、審議権を無視するものであると私は考える、(拍手)さらに第三点は、現在完全なる自主権あるいは完全なる国権の行使が許されておるかのごとき錯覚と妄想の上に立つておるという理由をもつて、本決議案に反対の意思を表明いたすものであります。(拍手)
 さらにマッカーサー元帥からの書簡に対して、その内容について疑問を持たれる趣旨の御演説がございました。(「公表したらいいじやないか」と呼ぶ者あり)内容について疑問がある方は、書簡を発せられた占領軍当局、すなわちマツカーサー元帥御自身にお聞きになるがよろしい。さらにこの書簡は、現在までの慣習は、これは片山内閣も芦田内閣も共通でありましたが、書簡は常に出した方の許可がなければ公表できないのがあたりまえの話である。従つて、公表を要求せられるならば、この議場でなくて、場所をかえた方向へ持つて行つてなされるがよろしいと考えるのであります。(拍手)
 これ以上申し上げるも愚かしき限りでありまして(笑声)私は、かかる決議案こそ、かかる決議案を上程して本会議場を騒がすこと自身が国会の審議権を軽視するものであると考え、本決議案に反対の意を表明いたす次第でございます。(拍手)
#19
○議長(幣原喜重郎君) 三宅正一君から、身上の弁明をいたしたいというので発言を求められておりますが、ただいま討論中でありまするから、適当の時期に許すことにいたします。
 林百郎君。(「議長」「議長」と呼び、その他の発言する者多し)
    〔林百郎君登壇〕
#20
○林百郎君 私は、日本共産党を代表して、本決議案に賛成するものであります。(拍手)
 日本憲法によれば、国会は国権の最高機関であります。この最高の機関が当然に持つておるところの審議権、自主権について、今日ここにそれを擁護するというがごとき決議をしなければならぬという事態は、まことに遺憾であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)およそ世界の歴史において、国会が自分自身で、みずからの審議権の擁護を決議しなければならぬというごとき事例は、まことに稀有の事柄であります。これこそ日本民族の独立が今や危機に瀕し、日本の民主主義がまつたく蹂躙されておるという明らかな証拠であります。(拍手)すなわち、現に日本の国会は、人民の利益を守るための国家最高機関たる機能をまつたく喪失しておるのであります。このことは、濫発されるポ政令の公布によつて集中的に表現されておるのであります。
 たとえば食確法、この食確法が審議未了となりますや、これをポツダム政令によつて強行したのであります。ところが、その結果はどうであるか。総司令部及び民事部の命令という形で、農民に対し割当の三割から五割に及ぶ追加供出が強制されておるのであります。しかもジープが出動し、農民は買出し供出まで強制されておるのであります。しかも、この買出し供出の強制によつて、食管法に問われて投獄された農民は、全国教官に及んでおるのであります。
 最近においては、これまた第八臨時国会の開会中、全然国会を無視して警察予備隊の設置を決定し、着々としてこれを実行しながら、国会の閉会を待つて、ただちにポ政令を公布したのであります。この警察予備隊たるや、名称いかんにかかわらず、明らかに実質的には軍隊であります。この軍隊たるや、━━の指揮下にあることは明らかであります。(拍手)政府は国内治安確保のために必要だと言つておりますけれども、十一月三十日、トルーマンの声明によれば、朝鮮戦線に適当なときに━━━━━━━━━━━━を言明しておることによつて明らかであります。(拍手)
 また政府は、自作農創設特別措置法にかわるポ政令を公布したのでありますけれども、その結果はどうでありますか。土地強制買収は打切られ、地主の復活はなされ、土地の取上げは横行し、開拓の打切り、山林地主の復活が強化されておるのであります。
 公務員の労働基本権の剥奪のポ政令が公布されるに至りましては、三百万の官公吏の給與その他労働條件の改善の一切の方途はここに断たれ、日本の公務員を初め日本の全労働者諸君は植民地的奴隷状態に陥れられ、これに抵抗するところの国鉄労働者を初め数千の労働者が不当に逮捕され、今や日本の労働者諸君は、貧困と飢餓と暗黒のどん底に呻吟しておるのであります。
 しかるに、今回政府は、さらにまた日本産業の根幹をなすところの電気事業の死活を決定する処置を、またもや国会開会中ポ政令によつて強行したのであります。この電力再編成に対するポ政令は、明らかに日本の電力をすべて━━━━━━━━に提出せんとし、外債の復活によつて、ウオール街の国際独占資本に思うがままに身をまかせ、日本民族の産業を全面的に崩壊せしめんとするものであります。(拍手)しかも驚くべきことには、政府はこれら一切のポ政令について、これを占領下であるという口実によつて濫発しながら、講和後においてもなおその効力を存続させると広言しておるのであります。(拍手)
 かくのごとくにして、日本人民の利益を日本人民の意思によつて決定する最高の機関であるところの国会の審議権が、国会みずからの意思によらずして自由に左右されるということになるならば、国会はもはや無用であるのみならず、人民抑圧の桎梏となるのであります。(拍手)現に国会においてわれわれが行つておる審議そのものさえも、一定のわくがはめられ、事実上は完全にその自由を喪失しておるのであります。国家の予算にせよ、税制の改革にせよ、すべてが政府とドツジ氏あるいはシヤウプ氏等、いわゆる関係方面の人々と事前に打合せ決定済みのものであり、一旦国会に提出された後は、これに対し指も触れさせないのが現状であります。(拍手)これに触れたが最後、ポ政令を出すのであります。現に政府は、目下審議中の地方公務員法案及び地方行政制度の改革等に対しても、国会がこれを否決するならば、ポ政令をもつて強行する意図を抱いているとさえ伝えられておるのであります。これが一体民主主義でありますかこれがいわゆる自由国家のやり方でありますか。これがもし民主的であり、これが自由国家のやり方であるというならば、日本の人民は必ずかような民主主義、かような自由国家に対しては断固として反対し、広汎な民族的な結集のもとに、みずからの主権をみずから行使することによつて自己の意志を貫徹するでありましよう。(拍手)
 一体、この国会審議権を無視して、ポ政令をもつてすべてを強行しようとするところの本質は何でありますか。その最も端的な現われは警察予備隊であります。この警察予備縦隊は、その設置において国会の審議権を無視したというだけの問題ではないのであります。その結果たるや、国家の独立も、国の自主権もことごとく放棄するに至つたものであります。
 第一に、いの予備隊の最高司令官と呼ばれているものは━━━━━━━━のであります。(拍手)第二に、その教範は━━━━━━━━━━━━━ものであります。第三に、経理の実権は増原総本部長以外の人の手に握られているということは、増原隊長自身が述べているところであります。第四、福島県では飛行機の訓練を行つております。さらに三千台の自動車を装備し、その実体は明らかに軍隊であります。カービン銃をもつて武装した━━部隊、━━部隊、━━━━部隊、━━部隊等の用語を用い、みずから━━と称しているのであります。だからこそ旧軍人の追放を解除し、これを警察予備隊において採用しておるのであります。
 諸君、ポツダム宣言と日本国の憲法によれば、日本の進むべき道は明らかに民主主義の確立であり、軍事的勢力の完全なる一掃であります。しかるに、この警察予備隊の設置は、名称のいかんにかかわらず、日本の再━━化であり、日本の軍事基地化であり、その結果は三たび日本を世界大戦の、渦中に巻き込ませるものであります。政府の国会審議権の無視、ポ政令強行の本質は、実にここにあるのであります。(拍手)国会自主権の喪失の結果は、およそかくのごときものであります。今やわれわれは、単なる一片の決議ではなくして、広汎なる民主的民族戦線に結果した全人民諸君とともに、かかる隷属的状態に対し蹶起し、この蹶起した人民の力をもつて国会の審議権と自主権を擁護しなかつたならば、国の独立と中和は断じて擁護することはできないのであります。(拍手)
 諸君、先月二十八日、マシユース米海軍長官の日本問題に関する声明には、明らかに、日本に軍事基地を保持すべきかいなかは日本人の態度いかんにかかつている旨を言明しておるのであります。われわれ国会は、この際断固たる勇気を持つて、外に向つて日本民族の自主性を主張すべきときであります。そのことの緊要なること、今より大なるときはないのであります。そのいかんによつてわれわれの子孫の運命が決定されるのであります。民族の最大の不幸は、民族の独立を失つて他国の支配に隷属されることであります。日本の民族が一瞬たりとも望んでやまないものは、今や日本民族の独立であります。われわれ国会議員、はこの民族の独立の一つの象徴であるところの国会の自主権とその審議権の確立を、あくまでかちとらなければならないのであります。かかる意味において、わが党は本決議案に賛成するものであります。(拍手)
 ここに驚くべきことは、本決議案に対し、自由党がこれに反対しておる事実であります。また、参議院における同一の決議に賛成した議員が除名に付されている事案であります。(拍手)日本人としての良心があるならば当然賛成すべき国会自主権擁護の決議案に対し賛成することのできないという事実こそ、わが党が常に指摘するごとく、自由党がまつたく日本の人民の期待を裏切り、みずからその自主性を放棄し、反動━━政党として、みずからその墓穴を掘つていることの明らかな証拠であります。(拍手)日本の人民大衆は、必ずやみずからの手によつて日本民族の独立と国会の自主性とその審議権を完全に鬪いとるでありましよう。(拍手)
#21
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
 ただいまの林君の発言中不穏当の言葉があれば、速記録を取調べの上、適当の措置をとることといたします。
 この際、三宅正一君の一身上の弁明のための発言を許します。三宅正一君、一身上の弁明に限つておりますから、その点御了解を願います。
    〔三宅正一君登壇〕
#22
○三宅正一君 国会審議権尊重に関するわれわれの共同決議案に対しまして反対討論の際におきまして、倉石君から、私が運営委員会におきまして、本決議案は不信任案等と同じような重大な性質を持つているものであるという発言をいたしましたことにつきまして御質疑があつたのであります。そうして、内容が不信任案的な内容を持つておるならば、こういう審議権尊重という形式ではなくて、むしろ不信任案として出すべきであるという意味の御発言があつたのであります。この決議案は、参議院におきまして多数で可決されました決議案と同文の趣旨であります。ごらんになればわかりまするがごとく、国会審議権をポツダム政令によて蹂躙いたしましたことを、その政府の態度を糾弾いたしまして、そうして……(発言する者、離席する者多く、議場騒然)糾弾いたしまして……。
    〔発言する者多く、議場騒然〕
#23
○議長(幣原喜重郎君) 靜肅に願います。――三宅君、一身上の弁明の範囲を越えないようにお願いいたします。
#24
○三宅正一君(続) 範囲を越えておりません。――この主文をごらんになればわかりますように、この主文は「政府は、電力再編成に当り本国会開会へき頭、突如としてポツダム政令によるの措置をとつた。かくのごとき国民経済に重大なる関係を有する案件について、政府がいたずらに事態を遷延紛糾せしめ、この挙に出ざるをえなかつたことは、民主主義の基盤たる国会の審議権を無視し、議会政治に暗影を投ずるものであつて、はなはだ遺憾である。政府は再びかかる措置を繰り返さないことを強く要望する。」と書いてありますることは、すなわち政府の措置に対しまして不信任的な意をもつて、かかることを繰返さざることを要望する決議であることは明白であると私は信ずるのであります。(拍手)しかも不信任案を出したらよかろうと倉石君は言われておるのでありますが、不信任案を出しますということについては、われわれは、これだけの問題だけでなしに、別にいろいろの問題をもつて適当の機会に不信任案を出しますことは、われわれの決意しておるとこであります。審議権問題自体についても不信任に該当するほどの重大な案件であるという意味において運営委員会で申し述べたことが第一点であります。
 第二点は、料飲店の問題について叱責しておられますが、料飲店の問題については、新憲法が制定せられるとき、主食の配給その他について占領軍が一切の権限を握つておりまするときにポツダム政令で出して来たのであります。そうして期限が切れましたので、時間がなくて、向うから書簡が来まして、その書簡と一緒に片山内閣は発表したのでありまして、今回のごとく……(議場騒然、聽取不能)のこととは全然違つておるのであります。(議場騒然、聽取不能)今まで攻撃しておりまして、その攻撃を……(議場騒然、聴取不能)惡いことは、片山内閣がやろうと吉田内閣がやろうと悪いのであつて、われわれは、こういうことをなくするようにいたしますことが審議権尊重の意味であると考えるのでありまして、いたずらに言葉を構えて、みずからの惡いことをのがれんとする態度に対しましては、私どもは、その卑怯なる考え方に対しまして與党諸君の反省を求めたいと考えるものであります。
 こういうことをもちまして、私は不信任的な意味をもつて、つまり不信任案決議であるという一身上の弁明を申し上げまして、私の身上弁明にかえたいと存ずる次第であります。(拍手)
#25
○議長(幣原喜重郎君) これより採決に入ります。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#26
○議長(幣原喜重郎君) 起立少数。よつて本案は否決されました。(拍手)
     ――――◇―――――
 第二 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#27
○議長(幣原喜重郎君) 日程第二、日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員会理事佐々木盛雄君。
    〔佐々木盛雄君登壇〕
#28
○佐々木盛雄君 ただいま議題となりました日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案につき、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。本法案は、十一月二十四日内閣から衆議院に提出され、本委員会に付託されましたので、翌二十五日及び二十九日の両日委員会を開き審議をいたしました。
 政府側の説明によりますれば、さきの第七国会において日本政府在外事務所設置法が成立し、まずアメリカ合衆国内の五箇所に在外事務所を設置し、さらにその後同法第二條第二項に基く日本政府在外事務所増置令により欧州、南米、インドの十箇所にそれぞれ在外事務所を増置いたしたのであります。しかして、これらの在外事務所がつかさどる事務は右設置法の第三條に列挙されているのでありまするが、在外事務所を設置する相手国の意向により、右の所掌事務につきあるいは新たに加え、あるいは制限する必要の起ることが予想されて事たのであります。すなわち、在パリ日本政府在外事務所においては、フランス国の意向により、同條に掲げた事務のほかに文化的活動に関する事務をつかさどることとし、また一方同條に掲げる日本人の遺産の保護管理に関する事務は、フランス国の国内法の関係上行わないこととする必要が生じて来たのであります。右の事情によりまして、同法第三條に「文化的活動に関する事務を行うこと。」の一項を加えるとともに、一方所掌事務の制限は外務省令で定めることにいたしたいというのであります。
 本法案は、質疑終了の後、討論を省略して、ただちに採決に入り、多数をもつて可決されました。右御報告いたします。(拍手)
#29
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#30
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
#31
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#32
○議長(幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔(「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事小山長規君。
    〔小山長規君登壇〕
#34
○小山長規君 ただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法案は、国民金融公庫の資本金現在の三十億円を四十億円に増加しようとするものであります。国民金融公庫は発足以来再度の増資を行い、現在の資本金は三十億円でありますが、最近の金融情勢におきましては、国民大衆が生活再建のための生産資金を一般金融機関から融通を受けることはきわめめて困難でありますので、国民金融公庫に対する資金の需要は、はなはだ多いのであります。すなわち、本年十月までに普通小口貸しは三十三億一千万円、更生資金九億五千万円の貸付を行い、すでに本年度増資分十二億円は八月までに貸付を終了し、九月以後の貸付は、既往の貸付金の回収金のみに依存せざるを得ない状態になつたのであります。増大する資金需要に対処するにはきわめて不十分な状態でありますので、この際資本金を四十億に増加しなうとするものであります。(拍手)
 以上がこの法案の内容並びに提出になりました趣旨でありますが、この法案は、十一月二十六日、本委員会に付託されまして、翌二十七日、政府委員より提案理由の説明を聽取し、同日より数日にわたり各委員より熱烈なる質疑が行われ、政府委員よりそれぞれ答弁がありましたが、質疑応答の詳細については速記録に譲りたいと存じます。
 次に本日討論に入りましたところ、小山委員は自由党を代表して、現下一般大衆の金融難打開のためにきわめて適切た措置であると賛成の意を表せられ、内藤委員は国民民主党を代表して、国民金融公庫の資本金を今後さらに増額することと、農林金融についても考慮せられたいとの希望條件を付して賛成の旨を述べられ、川島委員は日本社会党を代表して、資本金を百五十億円に増加すること、借入れ後返済までにすえ置き期間を設けること及び金利が若干高いから考慮することを強く政府に要望して賛成の旨を述べられ、米原委員は日本共産党を代表して、各県に支所、各郡市に取扱所を設置すること、資金を少くとも百五十億にすること、貸付から返還までに少くとも六箇月のすえ置き期間を置くことの條件を付して賛成の意を表せられました。
 次いで採決いたしましたところ、起立総員をもつて本案は原案の通り可決いたしました。
 以上御報告申し上げます。
#35
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の遡り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 松江国際文化観光都市建設法案(山本利壽君外百七名提出)
#37
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、山本利壽君外百七名提出、松江国際文化観光都市建設法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんごとを望みます。
#38
○議長(幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#39
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 松江国際文化観光都市建設法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員会理事田中角榮君。
    〔田中角榮君登壇〕
#40
○田中角榮君 ただいま議題となりました、山本利壽君外百七名提出の松江国際文化観光都市建設法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 最初に本法案の提案の理由及び法案の要旨について申し上げます。松江市は日本文化発祥の地として広く知られ、古典的日本美を残存し、その明媚なる風光と、さらにわが国の歴史文化等を理解する上に欠くことのできない多くの文化財を有する都市であります。またラフカデイオ・ハーンの文筆を通じて世界的に著名であり、一名ハーンの町として世界に広く喧伝せられ、国際的観光都市としての名声がほうはいとして高まりつつあるのであります。以上の理由によりまして、松江市を国際文化観光都市として建設いたすことは、世界恒久平和の理想達成に資し、わが国の経済復興に寄與するゆえるであるとして本法案が提出せられたのであります。
 本法案の要旨は、松江国際文化観光都市を建設することを目的とし、これが事業の促進と完成に対しましては、国及び関係諸機関が国有財産の讓與その他により援助いたし、助成すべしとするものであります。しかして、本建設事業は松江市長が執行いたし、計画及び事業に関しましては都市計画法を適用するものであります。なお本法案は憲法第九十五條による特別法であるとしてあるのであります。
 本委員会におきましては、十一月三十日、提案者より提案理由の説明を求め、引続き二回にわたつて質疑を行つたのであります。次に質疑応答のおもなるものについて申し上げます。第一に、本法案は第八国会において成立いたしました京都、奈良の特別法と同種のものであり、これらと同様に文化観光資源及び施設維持のため文化観光保存地区の規定を設けてはいかんという質問に対しましては、文化観光保存地区の規定を設けることは望ましいが、住民投票の際反対運動の理由にされる懸念もあり、都市計画法、建築基準法、市の條例等でその面を補足して行きたいとのことでございました。
 第二に、附則におきまして、この法律は憲法第九十五條の規定により松江市の住民の投票に付するものとすると規定してあるが、これは單に宣言的なものであり、法律が制定せられて初めて効果を発揮する他の條文とは切り離して、別個の法律または決議として提出されるべきじやないかという質問に対しましては、この條文は法律ができる以前の経過を書いたものであり、憲法第九十五條の特別法であるかどうかという問題の余地をなくするために、明確にその旨を示したものであるとのことでありました。
 第三に、かかる種の特別法がすでに十一件成立いたしておるのであるが、これらを行政上いかに取扱うかとの質問に対しましては、建設省当局より、都市計画事業は戰災復興に重点を置き、国際観光都市に対する助成は、法の精神に従い、国家財政のわく内で許す限り努力いたしたいとの答弁でありました。
 最後に付言して申し上げたいことはこの種の特別法で成立したものはすでに十一に及び、今後においてさらに同種の法案が提出せられる傾向にあるのでありまするが、予算的には特別の考慮はできない現状であります。いずれにしろこの種の法案の濫立は、立法上にも行政上にも好ましくなく、むしろ国際観光都市建設に関する一般法を立案し、審議会等を設置いたしまして、十分に現地等調査の上、重要なるものより逐次着手すべきであるということが、本委員会全体の意見でありました。
 かくして、本日質疑を終了し討論に入りましたところ、共産党を代表して砂間一良君より、立案の趣旨には同情するが、国庫財政窮迫の今日、観光施設に努力するのは時期尚早であるとして反対の旨を、自由党を代表して瀬月山三男君、国民民主党を代表して村湘宣親君、社会党を代表して佐々木更三君よりそれぞれ、平和文化国家として進むべきわが国の施策としてきわめて妥当であるとして賛成の旨の討論がありました。
 次いで採決に入りましたところ、多数をもつて原案通り可決いたした次第であります。
 以上、簡単に御報告を申し上げます。(拍手)
#41
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#42
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
    ―――――――――――――
#43
○福永健司君 この際暫時休憩せられんことを望みます。
#44
○議長(幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。
 この際暫時休憩いたします。
    午後三時四十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後八時六分開議
#46
○副議長(岩本信行君) 休憩前に引続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
#47
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#48
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられましした。
 一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。人事委員長田中伊三次君。
    〔田中伊三次君登壇〕
#50
○田中伊三次君 ただいま議題となりました一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、人事委員会における審議の経過並びに結果の大要について御報告申し上げます。
 政府職員の給與につきましては、その生計費及び民間の賃金その他の事情にかんがみ、これを適正に改訂して、その生活の安定確保をはかる必要がございますので、昭和二十五年八月九日付で人事院が勧告をいたしました給與計画を原則的に倉重して一般職の国家公務員の給與を改訂するとともに、その支給方法等についても所要の改正を加えようとするのが、政府の本法律案を提案いたしました理由でございます。
 次に本法律案の要旨を簡単に御説明申し上げますと、次の六点に要約されるのであります。
 まず第一点は、昭和二十六年一月以降における一般職の職員の平均給與月額を約一千円引上げて、おおむねこれを八千円といたしたことであります。
 第二点は、俸給につきましては、まず一般俸給表の適用を受ける普通職員については、人事院の勧告を尊重してその俸給表を定め、次いで特別俸給表の適用を受ける税務、警察、船員等の特殊職域に勤務する職員などについては勤務時間差、職務内容等に基いた従来の取扱いを、最近の事情を参酌してある程度の調整を行い、もつて普通職員との権衡をはかつたことであります。
 第三点は、扶養手当につきましては、人事院の勧告に従い、現行の六百円、四百円をのまますえ置く方針をとつたことであります。
 第四点は、勤務地手当につきましては、その支給地域の区分は別に法律をもつて定める方針をとり、さらにその支給の割合は、人事院の勧告の通り、従来の三割、二割、一割の三区分を二割五分、二割、一割五分、一割、五分の五区分に改め、前に申し述べました支給地域に関する法律が制定施行せらるるに至るまでは暫定的に、従前の支給割合が三割であつた地域については二割五分、二割であつた地域については一割五分、一割であつた地域については五分といたしたことであります。
 第五点は、従来政令に委任いたしておりました昇給、昇格等に関する基準を、今回の改正を機会として法律に明確に規定いたしたことでつります。なお昇給制度につきましては、新たに能率給の制度を加味し、勤務成績特に良好なる者などについては特別昇給の道を開いたことであります。
 第六点は、職員が離職及び死亡等により職員でなくなりました場合に、その俸給の全額をその際支給するごととする等の現行の規定に基く給與の支給方法につきましては、従来か若干の問題がございましたので、これについて所要の改正をいたしたことでございます。
 以上が本法律案のおもなる要旨でございます。
 本法律案は、十二月二十九日人事委員会に付託となり、同日ただちに政府の提案理由の説明を聽取いたしました。十一月三十日質疑に入り、翌十二月一日には、この法律案の重要性にかんがみまして使用者側より一名、被使用者側より二名、学識経験者より一名、合計四角の参考人を招いてその意見を聽取するなど、愼重審議を重ねたのであります。委員会における質疑応答の詳細については、速記録にゆだねることといたし、そのうちのおもなるものについて概要を申し上げます
 第一に、政府は人事院勧告を尊重いたしておるというが、具体的にはどういう点について尊重しておるかという質問がありました。この質問に対し、政府からは、この法律案の作成にあたつては、勧告における一般俸給表の二級一号を二級四号と押えた点、号俸調整の格差を縮めた点及び検察官の俸給に関する規定を削除いたした点の三点を除き、その他はすべて人事院の勧告の趣旨を尊重しておるという答弁がございました。しからば勧告案による二級一号を二級四号と押えたのは。何ゆえであるかとの質問がございました。これに対し政府からは、人事院の勧告における二級一号というのは、満十八歳の成年男子の標準生計費を基礎として算出したものである、しかしながら二級に含まれる職員の年齢は十六歳より十九歳までに至つておるのであるから、その中間に当るのは十八歳と考えられるので、二級の中間に当る四号をとることにしたのであるとの答弁がございました。
 第二に、一体千円ベース・アップにより、米価引上げ等による生計費の膨脹をはたして補い得るかとの質問がありました。政府はこれに対して、米価引上げ等によつて生ずる生計費の膨脹は、改正税法による減税によつても十分に吸牧できるものと考える旨の答弁がありました。
 第三に、何ゆえに号俸の再調整を行う必要があつたのかとの質問に対しまして、政府からは、号俸調整の問題が起つたのは。昭和二十三年の五月ごろで、当時のベースは二千九百二十円であつたが、その当時に比べると、今日においてはすでに勤務時間差も少くなり、仕事の危険状態も著しく緩和せられて来たことであるから、従つてその格差を縮めて号俸の再調整を行う必要が本来生じて来るのであるけれども、しかしながら職域の性質いかんによつては、今日なおかつ多少の格差を残し置く必要があると考えるものがあるので、おおむね従来の二分の一程度に格差を縮めることにいたし、ここにその程度において号俸の再調整を行うことにしたのであるとの答弁がございました。しからば号俸の再調整によつて生ずる不利益をいかにして救済するか、これに対して何か救済の道はないのかという熱心な質問に対しまして、政府からは、今回の改訂に際しては、前に申し述べたことくに、昇給制度について昇給期間の短縮をはかつたほか、新たに能率給の制度を加味して、勤務成績の特に良好なる者については、特別昇給の道を開いておることであるから、各省・各庁における昇給資金の配分について極力考慮を拂い、昇給制度の運用によつて、あとう限り再調整によつて受くべき不利益を補つて参りたいという答弁がございました。
 第四に、人事院は国会並びに内閣に対して地域給に関する勧告を一体いつごろ行うつもりであるかという質問に対しまして人事院総裁からは、地域区分に関しては、いまなお研究の途上にあるわけであつて、いまだ結論に達していないのであるが、この臨時国会開中には勧告をすることは間に合うまいと考える、しかしながら来るべき通常国会の会期中にはおそくとも勧告ができるものと考えておるとの答弁がございました。
 第五に、地方教職員、警察、消防、一般吏員などの地方公務員の給與は本法に準じて改訂をせらるべき筋合いとなるのであるが、その財源については、いかなる財政的措置を政府は考えておるかという質問がございました。これに対しまして、政府からは、これが財政的措置としては、とりあえず今回の補正予算において新たに三十五億円平衡交付金を計上したのであるが、この平衡交付金は、既定の一千五百億円のうち、未交付の分もなおかつ三百数十億円今日存するのであるから、これらの交付金を合せたものを、地方公共団体の財政の実態に応じて、その配分につき十分の考慮を拂つて参りたい、なお地方公共団体の歳出については極力節減の道をとらしめ、事情によつては、比較的緊急ならざる事業のごときは、あるいはこれを繰延べるがごとき措置を行わしめてでも、地方公務員に対するベース・アップは、国家の公務員に対するベース・アップと同様に、完全にその実現を期して参りたいという答えがございました。
 本委員会は、本日の質疑を終了いたしまして討論に入つたのでありますが、藤枝泉介君は。自由党を代表いたしまして本法案に養成する旨を述べられ、平川篤雄君は国民民主党を、松澤兼人君は日本社会党を、加藤充君は日本共産党を、岡田春夫君は労働者農民党をそれぞれ代表せられまして本法案に反対する旨をお述べになりました。採決の結果、多数をもつて本法案は原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#51
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。平川篤雄君。
    〔平川篤雄君登壇〕
#52
○平川篤雄君 私は、国民民主党を代表いたしまして、ただいま上程になつております本法律案に対して反対の意を表明するものであります。(拍手)
 ただいま委員長報告の中に、政府の答弁として、八千円のベースであるというお言葉がありましたが、この給與の内容と申しますのは決して八千円のベースではないことが明らかにせられたのであります。(拍手)六千三百円ベースは、その後多くの公務員の行政整理によりまして、総平均額におきましては、なるほど六千九百円余りになつておるのでありますけれども、それは決して従来六千三百円をもらつておつた者の給與が六百円上つておるごとになつておるのではないのであります。従つて問題になりますのは、一体公務員の中で基準となります独身の成年男子の給與を幾らと考えておるかということが基礎になつて問題は起つて来ると思うのであります。こういう点におきましては、人事院の勧告は三千三百四十円であり、政府のそれは三千三百五十円と称しておるのでありますが、ただいまの報告にもありましたように、実はそれは人事院の勧告において三号俸としておりますものを、六号俸として計算いたしておるのであります。私は、かような点から、今回の給與をもしベースの名前をもつて呼ぶならば三千五十円ベースと呼ぶべきである、それに対して人事院のベースは三千三百四十円ベースである、こう申した方がわかりやすいと思うのであります。かかる実体でございますので、政府の申しておりますように、千円程度のベースを上げて、八千円ベースである、人事院の勧告とわずか五十八円しか違わないという、そういう宣伝はまつたく欺瞞にすぎないのであります。(拍手)
 さて、今回の……(「反対か賛成か」と呼ぶ者あり)反対であります。(発言する者多し)さて、今回の政府案を、世間では、高級官吏のみを厚く遇する給與案であると申しておつたのでありますが、その実体は私はもつともであると考えるのであります。中でもいろいろ論議の中心になりました地域給の引下げでありますとか、あるいは号俸の調整でありますとか、かようなものは、いずれも今回のごとき少額の増俸を行います際に断行いたしますことはい非常に公務員の給與に悪い影響を與えまして、妥当ではないのであります。これは相当大幅の増額があるときこそ行つてしかるべきものであつて、ただいまは、これを撤回すべきものと私は考えるのであります。
 かような個々の点は別といたしまして、なお私どもの明らかにいたしたい点は、政府はしきりに、この給與案は人事院の勧告を尊重してやつたと申しておるのでありますが、いろいろ明らかにいたしましたところによると、さようでないことが判明いたしたのであります。すなわち、政府は人事院の数字に基いていると言いますけれども、これは八月に提出いたしました、すなわち本年の六月以前の数字を資料といたしておるにすぎないのであつて、しきりに政府が言つておられます国連協力の精神は何ら見えない。その後の朝鮮動乱の影響というものは、この給與には一つも現われておらないのであります。(拍手)人事院はまた相談に乘つたかのごとく申しておるのでありますが、人事院は、つんぼさじきに置かれておりまして、全然この給與案の制定に協力はいたしておらないのであります。やつておりますのは、わずか数名のスタツフを持つております内閣審議室において行われておるのでありまして、この内閣審議室においては、科学的な、合理的な十分の研究が行われるはずがないのであります。従つて実情は、大蔵当局と官房長官が秘密課にこの給與案を作成したと断ぜざるを得ないのであります。これは一昨日の新聞に伝えてありますように、例の号俸調整が明らかになりますや、次官以下事務当局が周章狼狽したという事実をもつてしても明らかであります。(拍手)また給與案の数字ないしは方法というものをすべし人事院の勧告に従つてやつたと申しておるのでありますが、これまたまつたく無意味のことであつて、取上げておりますのは、單に給與をいささかでも少くするために利用せられておるにすぎない。(拍手)
 かく考えて参りますときに、私は吉田政府がみずからの財政政策によつて給與を曲げておると考えざるを得ないのであります。(拍手)政府は、給與と申しますものは国の経済というものを考えてやるべきものであるといわれるのであります。私は、この点は大賛成であります。給與を科学的に、合理的に算定いたそうと思えば、どうしても国の経済を考えざるを得ないのである。けれども、それは吉田政府の財政政策によつてこれを曲げるという意味では絶対にないのであります。(拍手)思うに、労働三法に規定せられておりますところの公務員の権利や、あるいは憲法において定められておりますものの一部までも制約せられまして、單に政治活動のみでなしに、経済的な要求すら十分に行動に現わすことのできない制約を受けておるのが国家公務員の実情であります。(拍手)しかも一方において、国民の公僕として十分な忠誠を誓わされておるのである。国会が人事院を置くことを議決いたしたのも、すべてかような公務員の要求を、向うから要求せられるに先立つてこちらが與えて厚く遇するという精神にほかならなかつたと私どもは考えるのであります。(拍手)かような意味におきまして、人事院の勧告はどこまでも尊重せられなければならないのである。しかるに政府は、あたかも人事院の勧告が給與法を制定いたします単なる手続と考えましたり、もしくはその勧告を理想案であるかのごとく考えて一笑に付しておるきらいがあるのであります。私は、かような態度はまことに奇怪しごくのものといわなければならないと思うのであります。
 およそ公務員は、吉田政府の使用人ではございませんで、明らかに国民の使用人でございます。だからこそ、この中立的立場というものを強制せられておるのであります。私は、このような意味におきまして、吉田政府の財政政策、ことに空疎な、内容のない減税という面子にとらわれまして犠牲を受けておるものは多々ございますが、一つは救農政策もそうである。あるいは中小企業の救済も、すべてさような減税という問題で犠牲になつておるのでありますが、この給與もまた面子にとらわれた諸君の考えによつて犠牲をしいられておると考えざるを得ない。(拍手)かかる一政府の財政政策によつて給與の根本を曲げるということは、ゆゆしき一問題でございます。
 皆さんも御承知のように、去年東京大学を卒業いたします政治経済学科の卒業生は、わずかに百三十八名のみが公務員に就職する希望を持つておる。かかる状態におきまして、次第に有能なる人物を公務員の世界から放逐いたすということは、国家将来のために、はなはだ憂うべきことと言わなければならない。どうかかような点において猛省をせられまして、早き機会においてこの乱暴な政府案を撤回せられ、人事院の勧告の線について法律案を作成せられて、これが実現に努力せられたいと考えるものであります。
 われわれは、かような意味におきまして、人事院の勧告案を支持いたします。政府の原案に対しては絶対反対の意味を声明いたす次第であります。(拍手)
#53
○副議長(岩本信行君) 藤枝泉介君。
    〔藤枝泉介君登壇〕
#54
○藤枝泉介君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題になりました公務員の給與改善に関する法律案に賛成するものであります。
 政府職員の給與が、その生活状態あるいは民間賃金との比較におきまして改善をはかる必要のありますることは、申すまでもないのであります。しかしながら政府の給與政策は、民間賃金、ひいては一般他物価への影響もはなはだ大でありまするし、他面公務員の真の使用者でありまする国民の負担能力をも十分に勘案してきあられなければならぬこと、また当然であろうと存ずるのであります。
 幸い政府の財政経済政策が着々効果をあげまして、経済が安定いたし、政府職員の給與を改善するも、民間給與あるいは一般物価への悪影響のない見通しのつきました今日、そうしてまた、国民の負担能力をこれ以上増加することなしに給與の引上げができる状態になりましたこの機会をとらえまして、来年一月一日現在、月額平均約八千円に給與を引上げるに至りましたことは、最も妥当な処置だと考えるのでございます。(拍手)
 ただいま平川君は八千円にならぬと仰せられましたけれども、この法律案の俸給表を適用すれば平均約八千円になるということは、浅井人事院総裁も言明されておるところでございます。(拍手)この法律案が今回行われました人事院の勧告そのものを内容としておらないというところに反対の御論拠があるようでありますが、人事院の勧告は、御承知の通りその重要なる考え方は、国民の生活水準的な生活を営むことを保持しようとするところにあるのであります。すなわち、独身の成年男子の国民生活水準を基準といたしまして民間平均賃金との均衡をはかつたものでありまして、この精神は本法律案にも十分に盛り込まれておることは御承知の通りでございます。(拍手)すなわち、独身の成年男子が国民生活水準を維持するに足る費用一箇月三千三百五十円を基準としておるのでありまして、單に人事院との違いは、この三千三百五十円を十六歳をも含むようなクラスに支給するか、あるいは十八歳平均のクラスに支給するかとの違いでありまして、少くとも独立の生計を営む公務員に対する給與といたしましては、むしろ政府案の方が妥当であると存ずるのでございます。(拍手)しかもこの生活水準の算定にあたつては、摂取カロリーの増加、その他このごろの国民生活の向上を織り込んでおるのでありまして、今回の改訂によつて公務員の生活も相当に改善されることを信ずるのでございます。
 また今回の改訂が上に厚く下に薄いという非難でありまするけれども、先ほどのように、基準は前に述べましたところに置きまして、上を人事院の調査による民間給與の平均に置いた、そうして俸給表をつくつたのでありまして、決して下級職員の犠牲において上級者の待遇の改善をはかつたものではないのであります。(拍手)むしろ責任の重い地位にあり、しかも生計費のかさむところの中堅幹部以上の人たちの給與が、税金等の関係を考慮いたしますならば、今まであまりにも恵まれなかつたといつてもいいのでありまして、上下の差が二十五倍もありました戰前のことは別といたしましても、あの生活給のにおいの非常に強かつた二千九百二十円ベース当時におきましても十倍の差のありましたことを考えますならば、今回の俸給表のこの給與体系は最も妥当と考えるのでございます。
 地域給についてでありますが、これは人事院の勧告をそのまま合理的に改善をはかるのでありまして、ただ暫定的に従来の例をとることになつておるのでございます。このうち三割を二割五分に引下げたという点についての非難でありまするけれども、地域給が生計費の地域差に基くものであるというこの本質にかんがみますならば、最近の統計が示すように、二割五分にいたす方が妥当であると信ずるのでございます。
 また特別俸給表あるいは調整号俸の適用を受けるいわゆる現業職員、特殊勤務者の引上率が一般職員のそれより低い点であります。これらの人たちは、例の二千九百二十円べースヘの切りかえ当時の特別な歴史的な事情もありますけれども、基準俸給が相当に引上げられました今日、従前の倍率をそのまま適用いたしますことは、一般職員との間にあまり開きを大きくするのでありまして、勤務時間差の問題、あるいはその他の事情の変化を織り込みまして多少の修正をいたし、一般職員との均衡をはかつたことは、むしろ当然ではないかと思うのであります。しかも本法律案は、現実の引上率一〇%を保障いたしておるのでありまして、最も條件の悪い場合でも、これは非常にまれな例でありますけれども、引上率が一割を下るようなことはないのであります。
 以上私は、反対論の主要な点につきまして、むしろ仁法律案の妥当なるゆえんを述べたのでありまするけれども、さらに本法律案は、昇給に関して重要なる改善をはかつておるのであります。昇給期間のいかんは給與の内容として重要なるものでありまするけれども、従来これが政令にゆだねられております。これを法律に規定いたしますと同時に、その期間の短縮をはかり、さらに能率給的な色彩を織り込みまして、成績優秀な者に対しましては、期間を超越し、あるいは二号俸以上の昇給を認めるなど、平均給の引上げとともに重大な給與の改善をはかつておるのであります。
 このようにいたしましてこの法律案は目下の国民の負担能力、あるいはわが国の経済事情、国民の生活水準等を勘案いたしますならば最も妥当なる案と考えるのでございます。反対の諸君が、あるいは九千七百円であるとか、人事院の勧告そのものをのめとか言いながら、この法案の審議の過程において何ら修正案も提出いたしませんで、いたずらに本法律案に反対せられることは、公務員の給與を引上げなくてもよろしいということに相なることと思うのでありまして、私はこの意味においてこの反対論のゆえなきを申し上げまして、本法案に絶対賛成いたすものでございます。(拍手)
#55
○副議長(岩本信行君) 松澤兼人君。
    〔松澤兼人君登壇〕
#56
○松澤兼人君 ただいま上程されております一般職の職員の給與に関する法律案に対し、日本社会党を代表して反対の意思を表明するものであります。(拍手)
 反対の第一の理由は、政府提出の法律案の内容は人事院の勧告を尊重しておらない点であります。法律第一條では、人事院の勧告を原則的に尊重しとうたつているのでありますが、その実質は決してそうなつていないのであります。政府は、人事院と話合いの上この法律案を立案したと言つているのでありますが、委員会の審議の過程において人事院は十分なる協力を與えておらないことが明白となつたのであります。(拍手)政府職員の給與の全責任を法律上負つている人事院の勧告が全然無視され、その権限を否定して成立したこの法律案は、人事院に対する挑戰であり、国家公務員法の蹂躪であると思うのであります。(拍手)かかる法律無視の上に決定した法案に対し、われわれは絶対に反対せざるを得ないのであります。
 第二に、われわれは政府職員の統一的な要求である九千七百円ペースの実現が喫緊の要事であると信ずるのでありますが、暫定的には人事院の勧告が急速に実施せられることが現在において必要欠くべからざることであると信ずるのであります。形の上では勧告が八千五十八円であり、政府案は八千円弱であつて、数字は似ているのでありますが、その内容はきわめて異なつたものであります。まず第一に、勧告では成年独身男子の給與三千三百四十円としているのに対し、政府案は三千五十円としているのであります。今日物価高の状態において成年独身男子の職員が三千円で生活を維持することは絶対にできないのでありまして、この法律では、政府は明らかに職員に対して低賃金政策を押しつけていると言えるのであります。(拍手)第二には、給與の上下の幅は、勧告では七倍、政府案では八倍強となり、上級職員は従来に比し相当高額の給與を受けることになり、反対に下級職員は低い給與を強制されることになるのであります。すなわち今回の給與法は、下級の者の犠牲において上級職員が不当の高給を受ける結果となるのであります。給與政策といたしましては、下に厚く上に薄いことが必要でありまして、これに逆行する政府の案を見ると、明らかに資本家的な本質が露呈されているのであります。(拍手)第三に、政府案では、特別俸給表や政令四百一号の適用を受ける特殊危険な業務に従事する職員に與えられておる調整号俸が切り捨てられて、既得権が剥奪せられる結果になるのであります。これらの人々は、それぞれ特別の号俸を受くべき当然の理由があるのでありまして税務職員、警察職員、警察消防職員、海上保安庁、船員、さらに癩、結核療養所に勤務する職員、郵政電通の特殊勤務職員など、これれらの人々は、今回の切りかえによりまして一号ないし四号低く号俸が定められるのであります。もしも、たとえば結核・癩療養所等に働いておる人々が、かかる号俸の切捨てを受けることになりますならば、この危險きわまりない第一線において国民の健康を確保しようとして働いておられる職員はその職を去り、新規採用が困難となつて、施設は荒廃に帰することは火を見るよりも明らかであると信ずるのであります。
 第三の反対理由は、公務員の給與は民間給與と均衡がとれていなければならないにかかわらず、八千円弱では、従来の不均衡が是正されないのみでなく、いよいよその差が大となつて来るのであります。政府の案では、朝鮮事変を契機とする最近の物価の動向は取入れられておらないのみならず、明年一月から実施せられる米価の値上り等により、さらに地域給の引下げ、調整号俸の切捨てなどによつて、ベース・アツプは事実上アツプにならない結果となるのであります。かくては科学的、合理的給與体系が崩壊し、民主的であるべき公務員制度が封建的官僚制度に逆もどりする危險性がきわめて増大するのであります。民主的にして能率的な公務員制度を確立する上からいつても、人事院勧告を無視し、大蔵省の一部官僚の手によつて一方的に決定されたこの法律案に対しては絶対に反対しなければならないのであります。(拍手)
 第四点といたしまして昇給期間の短縮や特別昇級制度が自由党の方々によつて非常に高く評価せられているのであります。これが今回の給與法の特色であるかのごとくいわれているのであります。しかしながら、われわれは、いわゆる特別昇給制度というようなものがもしも行われるならば、公務員は奴隷的服務を強要せられ、上級の者に阿諛追従をして特別の昇級をしようという人々が起つて来ないとも限らない。労働強化によつて現在でもその健康をそこね、結核その他の疾患にかかつている人が相当多数ある今日、かかる特別昇級制度が実施せられて労働強化と相なりますならば、かかる疾患はいよいよ激増されることが想像されるのであります。
 最後に申し上げたい理由は、委員会の審議の問に明らかにされたことでありますが、この法律の実施機関は従来のごとく人事院であるのでありまして、浅井人事院総裁は、この法律の実施が相当困難であることを言明しているのであります。それは政府が一方的に決定した給與法であつて、人事院としては何らあずかり知らぬうちに立案せられたために、人事院の不満と考えられる規定が外く挿入されているからであります。われわれは、この法律の実施によつて各官庁職員の間に起る不平不満が、法律の起案の責任者である政府に行かずに、立案に何ら関係のない人事院に行くことによつて人事管理の混乱と摩擦が起ることは容易に想像することができるのであります。政府が公約の面子にのみとらわれて、この不完全きわまる給與法を政府職員に押しつけようとする欺瞞策に対して、われわれは満腔の憤りを感ずるものであります。(拍手)
 以上の点を理由といたしまして、この法案に絶対反対の意を表明するものであります。
#57
○副議長(岩本信行君) 加藤充君。
    〔加藤充君登壇〕
#58
○加藤充君 一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案の上程にあたりまして、日本共産党を代表して絶対反対の見解を表明するものであります。
 第一、公務員の給與を改訂するとしまするならば、少くとも現行六千三百円ベースに三千四百円を加えた、いわゆる九千七百円ベースとすべきであります。これは全労働者のせつぱ詰まつた要求であり、民間給與に比しても妥当なる数額である。労働省の毎月の勤労統計、全国工業平均賃金その他によつて算出されました、まことに当然妥当の数字であります。しかるに、これがまつたく無視されてしまつておる。これが反対の第一点であります。人事院の勧告案の基礎計数は、それ自体いわゆる官庁統計に基いたものでありまして、特に朝鮮内職以降を無視しており、著しく実態を相違したものでありまするが、しかも政府は、この勧告案すらも、全然無視して低いベースを押しつけているのであります。このことは、人事院の存在意義をみずから否認したものであるばかりでなく、そのからくりを、みずから暴露したものであるといわなければなりますまい。
 次に、いわゆる賃金ベースなるものは、労働者を圧迫し、搾取の強化でありまするけれども、本法案に至りましては、六千三百円ベースのときに一応問題になりました生活給の本質を徹底的に破壊、御破算にして平均給を置きかえたインチキなものであり、ベースアツプでなくして、その改悪であります。十八歳独身男子が三千五十円で、諸君、独立の生計ができるでありましようか。とうてい食つても行けないものでありまして、ここに端的にこの法案の本質が暴露されていると思うのであります。これは千円アツプどころか、民主党の平川君の言われた通り、三千五十円ベースのインチキであるといわなけれでなりますまい。
 政府は財源がないと言つておりまするが、これはちようど東條軍閥内閣時代に、軍用米を夫引きしまして、一般民間人は残りの米でかつてに食らえといつた戰時中のやり方の再現であり、生きて行けない給與を一方的に押しつける、まさしく人殺し的な生活破壞のしうちであるといわなければなりません。組合活動の制限、労働基本権の剥奪、政治活動の禁止と合せまして、まさに天皇制フアツシヨ官僚の再現強化であり、このことがまさしく給與方面におきまして馬脚を現わしたものでありましよう。国連協力の仮面による吉田内閣の、戰争介入のための低賃金労働政策の端的な現われであります。この結果は職制による彈圧の強化となり、政治と行政の当然の腐敗となり、公僕の主人たるべき人民の負担の増大となり、生活の破滅的困窮を来すことは明らかであると断ずるものであります。
 次に、上に厚く下に薄い植民地的職階制賃金であり、労働者間の分裂と上役への仰合を勧める二階級特進の昇給のごときは、これまさしく戰時中の金鵄勅章的制度の再現であり、超過勤務手当の不拂いと相まちまして、職制の圧迫と労働強化の方針の現われであります。
 さらに、質的に生活給の一部であります地域給の引下げ、調整号俸の切下げに至りましては、既得権を侵害し、無慈悲といおうか、残忍といおうか、まさしく不当きわまるものであります。しかも政府の言う千円アツプというものは、数次にわたる下級職員の労働者の大量首切り、定期昇級、地域給や号俸調整の切下げの当然の結果であり、一般公務員大衆にとつては、まつたくやらずぶつたりの法案であるといわなければなりますまい。主食の値上げ、家賃、地代、住民税等の高騰に考慮を及ぼしますれば、まさに餓死賃金ベースであり、国連協力戰争賃金ベースであります。さきの国家公務員法の制定、このたびの地方公務員法案の提出、基本的人権の圧迫と相まちまして、労働者階級を軍事植民地的奴隷労働と肉彈に狩り立てんとするものであります。政府は財源がないと言つておりまするが、これは明かに欺瞞であります。国連協力の口実のもとに国際独占資本への隷属を深め、戰争介入のための一切の費用を断固として打切り、自主的に、民主的に、真に日本人民のための予算に組みかえ、これに努力いたしますならば、労働者に食える賃金を支給するということくらいは困難なことではありません。警察予備隊の創設とその軍事的拡充、海上保安隊の増強や、インベントリー・フアイナンス、見返り資金制度をちよつと一瞥しただけでも、この予算措置は明らかであります。
 占領下にすでに五年余を経た今日、日本の生活水準は西ドイツの三分の一だといわれるほど低いのであり、また米国では、最低労働賃金一時間七十五セント、月給三百ドル平均が労働者の收入だということであります。民族の生活水準の向上と平和の擁護こそが、わが人民の切実に要求いたしまするところの講和の内容でなければなりますまい。これを無視した本法案は、まさしく亡国的、売国的であり、民族の独立と平和のための人民の生活の向上を蹂躪するもはなはだしきものであります。わが党は、これに絶対反対の意を表明し、労働者諸君とともに最低生活保障の要求を支持し、そして労働者諸君とともに鬪うことをあえて誓うものであります。(拍手)
#59
○副議長(岩本信行君) 岡田春夫君。
    〔岡田春夫君登壇〕
#60
○岡田春夫君 私は、政府の提出いたしました改正案に対して絶対反対の意思表示をいたします。その理由を簡單に申し述べます。
 まず第一に、今度の改正案は、政府によると八千円ベースを実施する案であると言つておるが、これは全然インチキであるという点であります。この点につきましては、先ほど平川君からも詳細な説明がありましたので、この点は時間の関係で省略をさしていただきます。
 第二にわれわれの反対をいたします理由は、先ほど自由党の代表賛成討論として出られた藤枝君も言つておられるのでありますが、今度の給與改正案によつて、下級職員の犠牲によつて高級職員の給與の引上げが行われておるという事実は全然ないというのであります。ところが、これは賢明なる藤枝君の完全に考え違いであるといわなければなりません。この点について、以下時間をかしていただいて、私は反対の理由といたしたいと思いますが、具体的に申しましと、十五級の四号俸、各省の次官ならば、今度の給與の引上げによつて、本俸だけでも少くとも一万四千円の給與の引上げが行われるのであります。ところが下級職員の一例として、十八歳の独身の青年の場合において二級の一号の人でありますが、この人の場合には、今度の改正によると、大体本俸だけで五百円の引上げにしかなつておりません。高級職員の給與の引上げ額は、下級の職員の引上げ額の二十八倍に達しております。しかも政府は、今度の給與の引上げにおいて、一千円のベースの引上げを行つたと言つておりますけれども、この一千円の給與の引上げというその内幕は、高級職員には下級職員の二十八倍の引上げを実行しておるのであります。この点から見ましても、藤枝君が先ほど申されました、下級職員の犠牲において上級職員の給與を増額しているという点は明らかであります。平均千円のペースを引上げたといつても、下級の職員に対しては、わずかに五百円の引上げにしかならない。その残余の五百円は上級職員の引上げのために使われているというのが今度の給與ベースの内容であります。この意味においても、今度の改正法案というのは、明らかに下級職員の犠牲において上級職員の給與を十分に満足させるような引上げを行おうとしておるものであると断じても間違いがないのであります。(拍手)これが第二の点であります。
 第三の点については、先ほど松澤君も申されましたけれども、調整号俸の削減によつて、今度癩病院、国立病院、結核療養所、あるいは郵便局、電報の現業員の諸君は実際に給與の号俸が切下げになるために、今後運営上において支障が生じて、病院の運営というものは成り立たなくなるであろうということであります。昨日淺井人事院総裁は、この点を率直に認められて、この政府案の誤りを指摘されたのでありますが、この点について内閣副官房長官の菅野君は、その事実は知つておるけれども、あえて断行したのである、運営の支障は知りながらも断行したのであるということを、明確に答弁いたしております。これが政府の給與改正の内幕であり、運営をまつたく支障あらしめてもあえてこのような給與を行おうとしておるのが政府の今度の改正案であります。
 第四点は、先ほど加藤君も簡單に触れておりますけれども、今度の改正案は、給與の面から日本の官吏制度を軍国主義時代の天皇制官僚に復活させようとしておる点が明らかであります。上に厚く下に低い給與制度を確立するばかりではない。今度の特別昇給制度を確立することによつて、いわゆる戰争中の陸軍がやつた二階級特進の制度を、今度の官吏制度に二階級特進の特別昇給制度として実現しようとしておるのであります。これは明らかに吉田内閣の軍国主義的な性格がここに暴露されておるといわなければなりません。(拍手)こういう点におきましても、われわれは反対いたします。
 最後に、今度の改正案を中心にして、政府の部内において深刻なる内部の対立、不統一が暴露されております。この点については、まず人事院と政府との間の対立、あるいは各省間における対立がきわめて露骨に前回の人事委員会においても暴露されておるのであります。特に淺井人事院総裁は、昨日の答弁において明らかにいたしておりますが、今度の政府案によれば下級職員は国民生活水準を維持することができないと明確に答弁いたしております。これが今度の政府案のほんとうの内幕である。今度の政府案は、下級職員に過重なる労働と犠牲を、強要するごとによつて、上級職員のたらふく大もうけと、今後の高級官僚あるいは政治家と結びついて再び不正事件の巣を温存させるためにつくられた改正法案であるといわざるを得ません。(拍手)
 私たちは、この意味においても、あくまでもこの法案に対して反対をいたします。組合の諸君の要求する九千七百円を支持いたしまして、この九千七百円の獲得のために最後まで囲うことをここに明確にいたします。(拍手)
#61
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#62
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(内閣提出、第七回国会議決第三号)
#63
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#64
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。労働委員長倉石忠雄君。
    〔倉石忠雄君登壇〕
#66
○倉石忠雄君 公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件、第七回国会議決第三号に関する労働委員会における審査の経過並びに結果について御報告いたします。
 本件につきましては、前国会におきまして経過報告をいたしました通り、本年三月以来継続して審査をいたして参つたのでありますが、最近に至りまして公社の経理状況はやや好転いたして参りましたので、関係者は、公共企業体労働関係法の精神にかんがみ、国鉄従業員の給與については、国家公務員の年末手当とは切り離して、すみやかに仲裁裁定を履行すべきであると考え、関係方面に再三折衝を重ねました結果、ほぼ満足すべき金額の支出は可能であるとの見通しを得るに至つた次第であります。よつて労働委員会は、十二月二日会議を開き、あらためて最近における公社の経理状況について政府より説明を聽取いたしました結果、四十九億五千百八十一万三千円の支出は可能であることが明らかになつたのであります。
 かくて、自由党福永健司君の動議によつて質疑を打切り討論に入りましたところ、吉武惠市君より、公共企業体仲裁委員会の裁定、昭和二十五年三月十五日仲裁裁定第三号については、昭和二十五年度において四十九億五千百八十一万三千円を限度としてこれを承認する、残余はこれを承認しないと決すべしとの動議の提出がありましたので、討論をいたしましたところ、自由党島田末信君は吉武惠市君の動議に賛意を表し、国民民主党石田一松君、日本社会党青野武一君、日本共産党今野武雄君、労働者農民党中原健次君は、残余の分については政府はさらに努力すべきものであるとの意見を開陳せられて吉武君の動議に賛成いたされたのであります。よつて採決いたしました結果、全会一致、吉武君の動議の通り決定をいたした次第であります。
 右御報告申し上げます。(拍手)
#67
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。船越弘君。
    〔船越弘君登壇〕
#68
○船越弘君 私は、自由党を代表いたしまして、本日ここに上程されました、公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件に関しまして、総額四十九億五千百八十一万三千円を限り支出することを承認し、残余については承認しない、こういう委員長の報告に対しまして賛成の意見を表明するものでございます。
 国鉄労働組合は、本年一月五日、賃金ベース改訂その他労働條件の改善に関しまして要求を提出したのでございます。当事者間におきまして、この要求に対し自主的な解決が得られずして、調停委員会より仲裁委員会にこれが仲裁方を申し込んで参られたのでございます。しかして三月十五日に至りまして、公共企業体仲裁委員会より、四月以降の賃金ベースを八千二百円に改訂すること、その他一項目を内容とする仲裁裁定が下されたのであります。これに対しまして、政府及びわが党は、公労法の精神にのつとりまして仲裁裁定を尊重し、国鉄従業員諸君の労働の実態と生活の実情を察しまして誠意をもつてこれが実現方に努力して参つたのでございます。ところが、所定の期日までには予算上、資金上、どうしても不可能でございましたので、政府は遂に公労法第十六條第二項の規定に基いてこれを国会に上程したようなわけでございます。この措置の点につきましては、すでに国鉄第一次裁定及び專売公社第一次裁定の取扱いにより至当であることは十分確認されておりますから、いまさら議論の余地はここにないのでございますが、爾来労働委員会におきましては愼重に審議をいたしましてその経過につきましては、ただいま委員長より報告のあつた通りでございます。
 わが自由党といたしましても、法律の趣旨に従いまして、仲裁裁定を十分尊重して鋭意努力はいたしたのでございまするが、当時は予算上においても資金上においてもその経費の財源を捻出することの見通しが得られなかつたのでございます国鉄従業員諸君の苦衷は十分察せられたのでございますが、国家財政の健全性を維持する見地からは、どうしても支出が不可能であつたわけなのでございます。そこで、一応国鉄の経理の推移によつて事を判断することに決定いたし、継続審議となつたのでございますが、財源の見通しの判断についてはすこぶる困難でありまして、前国会の会期中にも逐に実現し得る段階に至らなかつたことは、まことに遺憾にたえない次第でございます。
 ところが最近に至りまして、ようやく国鉄の財政経理に見通しが得られることになりまして、先般来より関係方面と折衝を重ねまして、裁定履行に要する費用として四十九億五千万円余りを限度とする支出が先ほど可能であるという結論が得られたような次第でございます。本年一月国鉄労働組合より要求が提出されまして以来実に十一箇月の長期間にわたる努力の結果、その裁定の相当部分がようやくここに実現し得ることになつたのでありまして、問題の解決にかくのごとく長期間を要したということにつきましては、私情といたしましてはまことに遺憾であると考えておるのでございます。またこの間におきまして、国鉄従業員に対する御迷惑の点も十分了承いたして御同情申し上げるものであります。これとても、わが国の客観的な現状からやむを得ないものがあるのであります。また私は、国鉄公社従業員諸君の給與がこれで十分であるとは毛頭考えておりませんが、一応今回裁定の趣旨が相当程度実現いたしましたことは、まことに御同慶にたえない次第でございます。
 最後に、国鉄従業員諸君が長期にわたり、国鉄の公共性を十分に自覚されまして、公労法の精神を遵守され、問題を平和裡に解決することに努力されて参られたことに対し深く敬意を表しまして、ただいまの委員長の報告に対しまして簡單に賛意を表する次第でございます。(拍手)
#69
○副議長(岩本信行君) 石田一松君。
    〔石田一松君登壇〕
#70
○石田一松君 私は、国民民主党を代表いたしまして、ただいまの委員長報告に対し、前段の四十九億五千百八十一万三千円の裁定履行につきまして賛意を表明し、末尾の、残余の部分については承認しないという点につきまして、強い希望條件と見解とを表明いたすのであります。すなわち、残余の部分十億四千余万円をこの際かりに履行したといたしましても、国鉄経費総額の四二%にすぎない人件費なのであります。この四二%の総経費に対するパーセンテージというものは、過去二十箇年、国鉄が妥当なパーセンテージとして認めていたところなのであります。しかも民間の鉄道会社等におきましても、人件費は経費総額に対して五〇%をもつて均衡比率とされている事実より考えましても、国鉄の第二次裁定が全面的に履行されるということは決して不当なことではないと私たちは考えておるのであります。
 しかも、昨年度の十万名に及ぶところの従業員の整理、このために現従業員の労働は相当強化されております。それに加えて、朝鮮動乱以来、国鉄従業員の労働は倍加されたといつても決して過言ではないのであります。第一次裁定は、まつたく蹂躪されたにひとしい。今また、今年の四月より実施さるべきこの第二次裁定も、六月にべースバツクするということではございますけれども、四十九億五千百八十一万三千円を承認し、残余の十億四千余万円を承認しないということは、これら国鉄の従業員諸君が、穏健にして合法的なる労働組合活動をしてかちとつたその報いとしては、まことに画龍点睛を欠くうらみがなくはないと、ここに申し上げたいのであります。しかも、ただいまの船越君の御意見では、政府がこの公共企業体の、いわゆる公労法の裁定なるものについて誠意をもつて善処したとおつしやいますが、過去の第一次、第二次の裁定にいたしましても、ほとんどわれわれには誠意らしきものの片鱗をだに認められなかつたということであります。(拍手)まず最初はこれを蹂躪することに努め、しかも政府に不利益なる労働攻勢等にあわてて、その場その場を糊塗しようとするところの、一貫したこの公共企業体の公労法の仲裁委員会の裁定を尊重するという精神に欠けているものではないかと私たちは断じたいのであります。
 特にこの際、最後に確認をしておきたいと思いますことは、ただいまの委員長報告の末尾にありました残余の部分について承認をしない、この承認をしないというこの承認の意味は、公労法の第十六條第一項に明記してありますところの「国会によつて所定の行為がなされるまでは、」の、その所定の行為でございます。すなわち、この所定の行為を承認すないということは、政府の資金の支出を承認しないという意味でございまして、このために国鉄に関する第二次裁定の残余の部分を打切るといふ意味でもなければ、この第二次裁定そのものの効力が、この承認をしないという国会の議決によつて何ら左右されないということであります。(拍手)すなわち、十四億四千余万円の債権債務の関係が国鉄労組と国鉄との間になお残存しているということを、この際再確認したいと思うのであります。
 以上のようなことを私たちは強くこの際再確認いたしまして、今年度の末までに残余の十億余万円を、政府並びに国鉄はあらゆる最善の努力を盡して労組側に支給すべきである、この強い希望を付しまして、ただいまの委員長報告に賛成の意見を申し述べるものであります。(拍手)
#71
○副議長(岩本信行君) 赤松勇君。
    〔赤松勇君登壇〕
#72
○赤松勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま案件になつております公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件に関し、強い條件を付して賛成したいと思うのでございます。
 ただこの際、私どもが特にこの問題を取扱いまするときに、明らかにしておきたいと思いまする点は、日本国有鉄道法の第四十四條でございます。この第四十四條におきましては、御承知のごとく給與の予算総額がきまつておるのでございまするが、むしろわれわれといたしましては、日本国有鉄道法の第三十五條が優先するという考え方を持つておるのでございます。すなわち国有鉄道法の第三十五條は、これは明確に、日本国有鉄道の公社に関する労働條件の一切は公共企業体労働関係法によらなければならないと明記してあるのでございます。従つて、公共企業体労働関係法第三十五條の裁定の拘束力ということが問題になつて来るのでございます。われわれが先般の国会におきましても、あるいは委員会におきましても、大蔵大臣にしばしば質問をいたしました際に、大蔵大臣は、この国有鉄道法に規定されておりまする第三十五條の規定は、これは法規裁量ではなく自由裁量である、この自由裁量を建前といたしまして、従つてすべて国家財政の面から公務法の裁定をのむわけには行かない、こう主張して参つたのでございます。ところが、国鉄労働組合が先般提起いたしましたその裁判におきまして、東京高等裁判所は、明瞭にこの問題につきまして次のような判決を下しておるのでございます。
 この判決文は非常に重要な意味を持つておりまするので、その重要な部分だけを御紹介申し上げまするならば、控訴人及び補助参加入は、大蔵大臣または内閣の右予算移流用の承認または予備費使用の決定は、高度の政治的考慮に基く完全なる自由裁量によつてなさるべきものであると主張する。一般的にいえば、かかる行為は、行政上の効果に対する考慮によつて支配される自由裁量行為と言い得るであろうが、公労法上の協定または裁定の実施に関する限り、他の行政上の必要によつてなされる場合とはおのずから事情を異にする。すなわち公共企業体の職員は、私企業における労働者と異なり、事業の高度の公共性よりして一切の争議行為を禁止され、公社との間の雇用條件に関する紛議はすべて平和的な団体交渉によつてこれを決すべきことを要請され、相互の交渉によつては局面の打開をはかることのできぬ場合に備えて調停、仲裁等の制度を設けられたのであるが、交渉が円満に妥結して協定が成立し――これは第三十五條であります。――または紛争の最終的決定として、当事者がこれに服従すべき仲裁委員会の裁定が示された場合、これら協定または裁定の実施は、公社の予算上給與費目に余裕の存するきわめてまれな場合を除いては、事実上他費目の移流用によるのほかはなく、これが流用を承認するといなとは一に大蔵大臣の自由裁量にまかされ、その政治的考慮によつて左右されるものとするならば、公労法が紛争の友好的、平和的解決をはかるため団体交渉の慣行と手続とを確立し、公共企業者の正常な運営と公共の福祉を擁護せんとした立法の精神はまつたく没却される結果に立ち至るのである。かくては、政府から独立した地位と権能を與えられた仲裁委員会の制度も十分なる機能を発揮することはできず、職員の生存権の保障もなきこととなるわけである。それゆえに、かような控訴人の見解はこれを採用することはできぬ。これが東京高等裁判所の判決文であるのでございます。
 すでに裁判所におきましてこのような明確なる判決が下されましたことは、すなわち国家財政の面から今まで裁定を尊重すると言いながら、裁定の精神を、裁定そのものを蹂躪して参りました吉田内閣と大蔵大臣の見解は、これはまつたく反立法的な、反法律的な見解であるといわなければならぬのでございます。(拍手)従いまして、われわれといたしましては、この裁定に示されておりまするところの第一項の、昭和二十五年四月以降は八千二百円を実施しなければならない。――ところが、ただいま自由党の諸君の御提案でございまするが、吉武君の動議によりまするならば、これは四月一日から来年三月まで実施するならば総額六十億いる、それを四十九億にするんだ、あとの十一億は承認しないというのでございまするが、われわれといたしましては、この十一億はすなわち昭和二十五年四月一日からの八千二百円のバツク・ペイ、このベース・アツプは絶対に実施をしなければならないものであるということをば、本国会はこれを確認すべきであるという見解の上に立つておるのでございます。
 なおもう一点の問題は、これによつて裁定第二項が規定しておりますところのその二項をも蹂躪せんとするのでございます。わが日本社会党は、このような提案の仕方には絶対に反対でございまして、四十九億はひとまずその支出を認めるのでございまするけれども、すみやかに政府は四月一日にバツク・ペイをいたしまして八千二百円の全額を支拂う、すなわち残額十一億を即刻支拂い得るように、また第二項の実施についても十分誠意を持つて国鉄公社がこれを行い、かつ大蔵大臣は、ただいま申しましたような公労法の精神にのつとつてその予算の流用その他をば認可する、許可するという立場に立つてもらいたいと思うのであります。従いまして、われわれといたしましては、今申し上げましたように、裁定の示しております第一点、これは四月一日から八千二百円を実施しなければならぬものである、従つて公社には当然十一億の債務が残るということ、さらに裁定第二項も同様に残るという見解の上に立ちまして、これを條件として本提案に賛成するものでございます。(拍手)
#73
○副議長(岩本信行君) 今野武雄君。
    〔今野武雄君登壇〕
#74
○今野武雄君 国鉄第二次裁定におきまする今回の処置についての日本共産党の態度というものは、基本的には反対でありますが、しかしながら、年来を控えて労働者が困つている、こういう状態にかんがみて四十九億五千万円ばかりの即時支拂いということに対して、賛成の意を表するものであります。
 政府並びに国鉄公社は、国鉄労働者の当然過ぎる要求を、昨年の第一次裁定の場合においても履行しなかつたのであります。ところが、今度の三月十五日第二次裁定については、予算上、資金上どうにもならないことを口実にいたしまして、当然の義務遂行を今日までずつと怠つて来たのであります。この国会でも、第七、第八両国会を経過して、この第九国会に至つて初めてこの問題を取上げる、こういうようなことになつたのは、労働者の生活権を擁護するような正当な要求に対して、実に無責任な態度であると考えざるを得ないのであります。
 この八箇月ばかりの間に、国鉄労働者の状態はどうなつているか。これは実にひどいものだ。朝鮮内戰の勃発以来、軍需輸送を担つておる国鉄労働者は、非常にひどい労働強化をしいられて参つたのであります。特需ないしは軍需輸送ということのために徹夜労働が強制れ、そうして労働者諸君の言葉を借りれば、死ぬほどの労働強化が押しつけられて来たのであります。爆彈輸送と呼ばれておりますが、この軍需品輸送の労働は、きわめて悪質な━━━━━━による彈圧のもとで強制されている。この特殊超勤労働に対しては幾ら支拂われておるか。一時間にたつた三円です。そんな三円ばかりの手当というのは一体何であるか。これは賃金でも手当でも何でもないのです。こじきにくれてやる惠み物にひとしいものなんだ。これに対して職場の労働者は、一時間三十円にしてくれと言つている。実に控え目な要求を出している。ところが、これさえも聞き入れていない。こういうような朝鮮内戰に伴うひどい労働強化は、その実例をあげれば切りがありませんけれども、これによつて健康を破壞されている労働者は非常に多くなつて来ております。また至るところで、たとえば国鉄の名古屋のある職場では、約三分の一が結核だ。その他あらゆるところで、ほんとうにさんたんたる状態が呈されておるのである。ところが団結権や団体交渉権を制約されて、争議権を奪われて、労働三法の適用を剥奪された状態に陷つて、職制の彈圧がひどくて、正当な要求に対してはピストルとこん棒の彈圧をもつてこたえる。この組合の御用化、分裂政策、それに対して、さらに国連協力というような、そういう口実を設けているのであります。
 ところが、さきに国鉄の松江大会では、総評及び官公労の中心勢力によつて、国鉄労働者諸君は国連協力をしなければいかぬ、こういうようなことが言われたのでありまするが、この大会において、これが三百三十五対八十幾つという圧倒的な多数で拒否された。(拍手)そうして全面講和、平和運動の促進という決議がなされた。それは、軍事植民地的苛酷労働に対して日本民族の労働者はこういうふうに考えるということが、はつきり大会で出て来たのであり手。われわれは、民族独立と平和擁護のために闘う全人民とともに、この国鉄松江大会の誇りある成果を強力に支持しております。
 さて今回の裁定の件でありまするが、政府は、その一部約四十九億五千万円のうち、実は十六億円を削ろうとしたのであります。そうして、それを特需輸送強化や京都駅の復旧にまわそうとした。ところが、国鉄労働者が非常に熾烈に職場で要求し、実力行動をするという挙に出たために、これを復元することはやむを得ないということになつて、今度讓歩したにすぎない。(拍手)これで見ると、国鉄でも労働者は自信を持つていいのだ。鬪えば必ず勝つ、こういうことがはつきり出て来たわけである。
 しかしながら、朝鮮事変以来の物価高と、それから生活苦によつて打ちひしがれたこの国鉄労働者は、この裁定案の六十億でも、実は楽しい正月を迎えることはできないということだつた。いわんやこの四十九億円では、どんな正月が迎えられるか。これは考えてみてもわかることです。この破壞し盡された生活をかかえて苦鬪している国鉄の労働者は、この年の瀬を何とか越すために、ほかの官公労の労働者とともにさらに越年資金を要求してきつと戰いを進めることだろうと私たちは思う。(拍手)これこそ正しい要求だとわれわれ思う。政府はこれに正当にこたえなければいけないと思う。この議場で言葉の上で何か言おうとも、あの人たちの生活がどんなに苦しいかということ、これを見たら、人間である以上、これにこたえなければならない思う。だから、われわれとしては、国鉄労働者の要求を全面的に支持いたします。
 国鉄の労働者は、実は九千七百円を昨年以来要求している。裁定の金額は、労働者にとつては既得権なんです。だから九七ベースの内金としてこれをとろうという態度をとつて来た。われわれは、やはりこれをあくまでも支持いたします。従つてこの四十九億円、あとの十一億円を打切るということに対しては、これはどうしても既得権の侵害として反対せざるを得ないわけであります。(拍手)のみならず、このことは政府みずから労働者の基本的権利を剥奪した悪法であるあの公労法さえも蹂躪するという、まつたく不届きな、フアツショ的処置であると思うわけであります。さらに越年要求に結集した全労働者の鬪争を圧殺して、そうしてこの労働戰線を分裂させようという策謀なのだ。そのために、こんなに機を急いでやつているじやないですか。従つてわれわれとしては、基本的にはこれには反対でありますが、特に残余の金額の支拂い並びに九七賃金の要求を国鉄初め全労働者とともに囲うことをここに皆さんに明らかにすると同時に、年末を控えて一銭でもほしいと思う労働者のふところかげんを考えて四十九億円を支拂うことに賛意を表する、こういう態度をとるわけであります。
 しかしながら、このような植民地的な生活の水準から脱却をすることは、民族の独立ということなくしては得られないということは、労働者もわれわれもひとしく考えておるわけであります。だからわれわれは、あくまでこの民族の独立の旗を掲げて労働者とともに鬪うことをここに明らかにして、賛成討論を終るわけであります。(拍手)
#75
○副議長(岩本信行君) 中村寅太君。
    〔中村寅太君登壇〕
#76
○中村寅太君 私は、労働者農民党、社会革新党、農民協同党その他小会派を代表いたしまして、本件に対しましては委員長報告の通りに賛成の意思を明確に表示するものであります。(拍手)
#77
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本件は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#78
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本件は委員長報告の通り決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後九時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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