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1950/12/05 第9回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第6号
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1950/12/05 第9回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第6号

#1
第009回国会 法務委員会 第6号
昭和二十五年十二月五日(火曜日)
    午後二時十五分開議
 出席委員
   委員長 安部 俊吾君
   理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君
   理事 田嶋 好文君 理事 猪俣 浩三君
      鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君
      古島 義英君    松木  弘君
      眞鍋  勝君    山口 好一君
      吉田 省三君    大西 正男君
      石井 繁丸君    田万 廣文君
      上村  進君    梨木作次郎君
      世耕 弘一君
 出席国務大臣
        法 務 総 裁 大橋 武夫君
 出席政府委員
        検事法務府法制
        意見第四局長  野木 新一君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総長      五鬼上堅磐君
        判事最高裁判所
        事務総局民事局
        長       關根 小郷君
        判事最高裁判所
        事務総局刑事局
        長       岸  盛一君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
十二月五日
 委員牧野寛索君辞任につき、その補欠として小
 澤佐重喜君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十二月四日
 借地法の一部改正に関する請願(小林運美君紹
 介)(第四三八号)
 宇佐簡易裁判所を權限乙号支部昇格反対の請願
 (西村英一君紹介)(第四四一号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一三号)
 刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一四号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一五号)
 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)(
 予)
 判事補の職権の特例等に関する法の一部を改正
 する法律案(内閣提出第二七号)(予)
 検察行政及びこれと関連する国内治安に関する
 件
    ―――――――――――――
#2
○安部委員長 これより会議を開きます。
 本日はまず判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、政府の提案理由の説明を聴取することにいたします。大橋法務総裁。
    ―――――――――――――
#3
○大橋国務大臣 ただいま議題になりました判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について提案の理由を説明いたします。
 この法律は、御承知のように判事補の職権の特例と裁判官の任命資格の特例とを定めたものでありますが、今回の改正の要点は、次の三点であります。
 第一点は、旧裁判所構成法による判事または検事たる失格を有する者が特許庁の審判長、審判官もしくは抗告審判官たる通商産業事務官または電波監理委員会の審理官の職にあつたときに、その在職の年数を裁判官の任命資格について裁判所法第四十一條、第四十三條及び第四十四條が定めている年数に通算するについて、法務府事務官の在職年数と同じに見えるようにすることであります。
 第二点は、裁判所法による司法修得生を終えた者が、前に申しました職のほか衆議院もしくは参議院の法務委員会に勤務する常任委員会專門員、同調査員または衆議院もしくは参議院の法制局参事の職にあつたときに、その在職年数を前同様裁判官の任命資格に関する決定年数に加算するようにすることであります。
 第三点は、旧裁判所構成法による判事または検事たる資格を有する者及び裁判所法による司法修習生の修習を終えた者が、前に申しました各種の職にあつたときに、その在職年数を、この法律の第一條の規定により判事と同じ職権を行い得る判事補として指名されるに必要な年数に通算するについて、法務府事務官の在職年数と同じに見えるようにすることであります。
 以上申しました各職は、その性質がいずれも準司法的ないし法律專門的のものでありますので、その在職年数を法務府事務官の在職年数と同様に通算することは相当のことと存ずるのでありまして、これによりまして裁判官に任命できる者の範囲及び判事と同じ職権を行い得る判事補として指名できる者の範囲を広げ、もつて裁判官の充実に資するとともに、裁判官とこれらの職との間の人事の交流をより円滑にならしめようとするものであります。
 以上簡單にこの法案の理由を申し上げました。なにとぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
#4
○安部委員長 これにて政府の提案理由の説明は終りました。
    ―――――――――――――
#5
○安部委員長 次に検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件を議題といたします。発言の通告がありますから、順次これを許します。世耕弘一君。
#6
○世耕委員 私は少し別な観点から治安に関する問題をこの機会にご質問いたしたいと思いますが、昨日委員長を通じて総理のご出席をお願いいたしたのですが、これはどういうふうになりましたでしようか。
#7
○安部委員長 世耕委員に申し上げます。総理大臣はただいま参議院の方の予算委員会に出席されておりまして、どうも今日は出席できないような事情であります。よろしく御了承を願いま
#8
○世耕委員 御出席がなければやむを得ませんが、この機会に法務総裁に一応私の意のあるところをお尋ねして、あとで適当な機会に総理から御答弁が願えるようにおとりはからい願いたいと思います。
#9
○安部委員長 了承いたしました。
#10
○世耕委員 政府も御承知の通り、現在中共軍と国連軍の戰況は目下最終階段に臨んでおるように見られるのであります。そこでもしこれがさらに発展して、全面的戰斗状態に入つた場合に、日本の本土空襲ということが想像されるのです。それはなぜそういうことを言うかと申しますれば、北鮮その他から放送されている放送を聞いてみますると、近いうちに行くから、気をつけろというようないやがらせの放送が数回にわたつて行われておる。そういう神経戰術がもうすでに行われておるのであります。ゆえに私がただいまお尋ねする問題は、ただ空虚な問題でないということをお考え置きを願いたい。幸いにして北鮮における騒動が外交的に解決されればいいが、もし未解決のままに終つて、さらに国連軍が前進する場合には、おそらく中支なりないしは満州を爆撃するでしよう。その爆撃がひいては日本本土に敵機が侵入――敵機といつてはおかしいが、中共軍の飛行機が飛んで来るというのはあながち想像のみではない。むしろ国民の一部には不安を生じておる。さような場合を想定して、それぞれ治安の上において十分の心構えが当然あつてしかるべきじやないか。従来の政府のやり方は、事件が起つてからあとで手を打つというような行き方であります。神戸事件のごとき、名古屋事件のごときはややその轍を踏んでおる。さようなことで、もし爆彈がわれわれの頭の上に落ちる、それから対策を講じるというようなことになつたのでは、人心の收攬の道がつかぬのではないかと思うのだが、この点について何か心構えがあるかどうか。あるいは心構えの必要がない、それは相愛に属するとおつしやるのか、この点ひとつお開きしておきたいのであります。
#11
○大橋国務大臣 ただいまの段階といたしまして、本土空襲につきまして、大規模なるさような事態があるということは予想しておらぬ次第であります。実は本年夏、朝鮮事変が勃発いたしますると間もなく、関西の一部並びに九州の一部におきまして、外国飛行機によろ襲撃があるやもしれない、従つてこれに対して燈火管制の措置をとるように関係方面から指令があつたことはございます。しかしながらその後におきましては久しくさような事態には至つておらないような次第であります。もちろん今後におきまして、戰局の推移によりましては、あるいはまたさような空襲のおれがあるというような事態に立ち至りまして、これによつて関係方面から燈火管制を指示されるというようなことも想像してできないことはないわけでありまするが、しかしかような外国からの飛行機による襲撃というような問題につきましては、占領軍当局におかれまして、占領軍の責任として十分備えあるものと確信をいたしておるのでありまして、私どもといたしましては、そのさしずによりまして万全を期して行くようにいたしたい、かように考えておるわけであります。もとより当局といたしましては、この問題につきまして関係方面と連絡を緊密にいたしておることは事実でございます。
#12
○世耕委員 大体了承いたしました。それでもう一つお尋ねしておきたいことは、御承知の通り、ヨーロッパはもちろん米国において中共関係はかなり問題が最高潮に達しておるようであります。われわれの考えから申しましても、国際関係はここ一週間か、十日以内が大きな山ではないかと思う。その山はきわめて單純じやないのです。もし日本に思わざる災害が発生せぬとも考えられない場合でありまするから、私は特にこの点を政府側に注意を喚起しておきたいと思うのであります。
 次にお尋ねいたしたいのに、警察並びに警察予備隊が治安維持のおもなる担当者のように一般も考えておるし、またそうあるべきだと思いますが、現在の警察予備隊の組織がはたしてわれわれの治安を確保し得るように安心ができるものかどうかということを申し上げたい。それはなぜなれば、本委員会でも問題になりましたが、最近の予備隊員の中にいろいろな事件が発生しておる。これに対する何らかの改善の対策がなくちやならぬと私は思います。お件の内容についてはこの機会に発表するのは遠慮しておきますが、種々なる事件が発生しておるということは、政府も御承知のことと思います。もしこのままにして、警察の改革並びに警察予備隊の改革を断固としてやらなければ、赤の温床となるだろう。そればかりじやない。どろぼうを家の中に飼うという結果になりはせぬか、何か騒動が起つたような場合、頼りにするところの警察予備隊、警察が、かえつて民衆の反対の方向に立ちはせぬかという相愛がかなり多くあるのです。これはおそらく鋭敏な大橋法務総裁はすでに感得しておると思いますが、何かその点について打つている手を――私はこまかいことを聞こうとは思いませんが、大いにその点も対策はあるという力強い御声明を願いたい。しからば国民は非常に満足するであろう、こういうように考えておる。決して掘り下げて、いろいろなことをお聞きしようというのではありません。国民の不安を総裁を通じて、あるいは総理を通じて御声明が願いたいというのが、私の願うところであります。
#13
○大橋国務大臣 警察予備隊のことにつきましていろいろ御心配いただいておることは十分承知をいたしておるのであります。実は警察予備隊は、本年八月の二十三日に第一回の隊員の募集をいたし、爾後十月の中旬までに一般隊員七万四千の募集を終えたわけであります。これらの募集いたしました隊員は、それぞれ全国の各キヤンプに收容いたしたのでございまするが、これが指揮統率に当りまする幹部の千人というものがこれに並行して行われることができなかつたのであります。当初の計画といたしまして、七万四千人は一般から公募する。これは一般隊員として公募することにいたしたのでありまするが、特に幹部要員といたしまして、八百名だけを特別の試験によりましてそのほかに募集をする。最後に三百名の最高幹部及び特殊技術者につきまして、これは個別的折衝によつて充員をする。かような計画を立てたわけであります。七万五千の部隊の指揮、監督、指導、訓練に当りまする幹部要員といたしましては、少くとも三千以上を必要とするのでありまするが、これらの幹部のうち二百名を個別的折衝、また八百名を別個の試験募集をする、こういうことにいたしまして、都合三千名、このほかの所要の人員は一般隊員といたしまして募集いたしましたる七万四千のうちから選拔をいたし、これに訓練を施しまして幹部として任命させる、こういう計画に相なつておつたのでございます。しかるに一般隊員から選拔いたしまする当部客員は、これは灘拔の手続並びにその後の訓練に相当の期間を要する次第でございまするし、また特に幹部要員として募集いたしまする八百名につきましては、募集にあたる試験の手続が非常に丁重でありましたるため、いまだその最後の決定を見るに至つておらない状態であります。また二百名の個別的に採用すべき幹部につきましても、ただいまのところ約四十名を充足したのみでありまして、大部分はいまだ採用漏れとなつておる。かような状態でございまして、現在までの段階におきましては、一般隊員の募集及び充員は行われましたが、これに対する指導訓練に当りまする幹部は実はほとんどないといつたような状態にあつたのでございます。この結果といたしまして、当然起つて参りまするところのものは、各キヤンプにおきまする管理事務が行き届かない、また指導訓練においても十分なることができない。また中央本部との事務上あるいは指導訓練上の連絡も、各キヤンプの幹部が足りませんために行われない。かような管理上あるいは訓練上につきまして、非常に手の届きかねる状態にあつたわけでございます。この結果といたしまして、今日までの実情は世耕委員から御指摘に相なりました通り、今後のわが国の治安の最後の実力組織たる予備隊の性格にかんがみまして、決して満足すべき状態ではなかつた、こういう状態に相なつておつたのであります。すべての原因が、私どもといたしましては、各キヤンプにおける正規の幹部を早く任命することにある、かような考えをもちまして、現在あらゆる努力をいたしておるの直り事罪種暫くになつておつて恐縮いたしておるのでありまするが、大体一月の十五日を目途といたしまして、各隊の幹部を一通り充足し得るの見込みを立てておるのであります。その後におきましては、中央の指導がただちに地方に徹底し、また地方部隊におきまする管理においていろいろと遺憾な点が、着々改善せられるものと考えておるようなわけでありまして、これによりまして、初めて仁家予備隊がその本来の面目を発揮し得るものと確信いたすのであります。
#14
○世耕委員 了承いたしました。
 次にお尋ねいたしたいことは、日本の憲法においては、国家非常事態に対しては御承知の通り何らの規定がないり国家非常時における国民の権利義務などということも書いていない。日本の望むことではないが、もし日本の国に非分事態が勃発して、警察予備隊も手不足である、警察官も手不足である場合に、国民がこれに協力する何らかの組織がなくちやならぬのであります。あるいはそういう点の例を申しますと、英米法のごときは、たとえばコンモン・ローとか、一般の普通法と言いますか、そういう慣習法を基礎にして、それぞれ非常事態に対する国民の権利義務についての範囲がきめられて、公明な行動ができるようになつておりますが、もし万一非常事態が発生したときに、国民が協力する範囲とか、権限とか、義務とかということについて明瞭な規定がないのでありますが、こういうこともこの際考究しておく必要があるのではないか。またそういう点について何らかの御用意があらば、この機会に承つておきたいと思うのです。
#15
○大橋国務大臣 世耕委員の御指摘の通り、日本国憲法におきましては、従来の旧憲法のごとき非常事態に際会いたしまして、国民の権利義務に対し非常の制限を加えるという趣旨の規定はないのでございます。これは今後必要に応じて、あるいは法律により規定する以外にないものであろうと思うのでありまするが、しかしながらさようなる非常事態を予想いたしまして、あらかじめ法律をもつて、国民の基本的権利義務につきまして、極端なる制限を規定して置く必要が今日あるやなしやという点につきましては、なお研究を要するものと考えております。しかしながら警察予備隊が出動し、あるいは非常の際におきまして警察官が出動する、こういう場合におきましても、警察力は予備隊をも含めまして、その力には限りがあるわけでありますから、非常の場合においてでき得る限り国民諸君の協力を得なければ、十分なる活動をなし、また所期の目的を達することは不可能であると考えておるのであります。私どもは警察予備際の訓練に当りまして、またその指導に当りましては、常に国民の協力を受け得るような、すなわち国民諸君が警察予備隊のためならば、要求があれば自発的に協力してやろう、こういう気持を持つて、真に予備隊を助け、協力することができるように、それにはどうしても予備隊自身が兵に国民の信頼を博し、また国民の期待を裏切らないような、事実においてりつぱな予備隊であるということを国民に示さなければ、とうていその協力は期待することができないのであろうという考えのもとに、今後文化国家、平和国家、民主国家といたしまして、真の日本の国民の支持、協力を受け得るような方向にこの予備隊を訓練いたすべきである、かような考えを持つておるのであります。今後予備隊の訓練が一段と進み、またいろいろな事態がさらに困難になりまして、予備隊の活動に際し百民の協力を法律をもつて要請する必要を痛感する時期が、あるいはあるかもしれません。そういう際に際しましては、法律によつて協力を規定するということももとより必要と存じますが、さしあたりの段階といたしましては、警察予備隊を、できるだけ国民の期待に沿い、また国民が真にこれは自分たちのための予備隊である、これに協力するということは、ぜひ国民としてなさなければならぬものである、そういう気持を起していただけるような予備隊に仕上げて行く、この訓練の方針をもつて進みたい所存でございます。
#16
○世耕委員 今の総裁の御説明はよくわかります。結局それは予備隊を訓練して、国民に信頼のされる警察並びに警察予備隊をつくる、こういうお話であつて、これはまことにけつこうなことであり、またそうあるべきだと私は思います。しかしながら、非常事態が発生したときに、東京都内とか便利のいい町はいいが、山間部のような自治体警察も国警もまた予備隊も、そういう活動ができない場所において起る場合が想像されるのです。そういう場合には、当然民間の協力を得なくちやならぬ国民の協力を得なくちやならぬ。そういう場合に、やはり非常事態に対する国民の権利義務ということを一応明瞭にしておくことが、かえつて私は国民の意識を明瞭ならしめる上においてもよし、また事態を処理する上において効果的じやないか、かように考えるのでありますから、これをひとつ十分御研究を願いたい。そうして適当な機会に法文化すなり、何かの方法を講じてもらいたいということを、ここに希望いたしておきます。
 次にもう二点ばかりお尋ねいたしたいと思いますが、一昨日以来でありましたか、警察予備隊の海外出動という問題が取上げられて議論せられたようであります。あるいはまた再軍備の問題等に関して、アメリカの大統領トルーマン氏が、橋の所まで行つているのだという非常に巧妙な表現の報告をして、それがまた話題の中心になつているようであります。私はその点についてかれこれ論じたくはないのでありますが、こういう場合が想定できるんじやないか。警察予備隊が海外に出動することはさておいて、外から日本へ侵入して来る場合に、警察予備隊はどんな働きをするのか、しかも向うの武装した軍隊が、戰鬪的に上陸して来たときに、こちらの方の警察予備隊はどういう活動をなさる能力とまた指揮系統があるのかということは、考えておいてもむだではないと私は思う。この点について心構えがおありだつたら、この際私は、橋を渡る渡らぬよりも、向うから渡つて来た場合に、警察予備隊はどうするのか、逃げるのか、それとも迎えてこれを撃退するのか。その点は、一応こういう国際関係になつて参りますると、治安の上に重要な問題だから、考えておく必要があるんじやないかと思う。この点について御説明があれば承つておきたい。
#17
○大橋国務大臣 私どもといたしましては、現在日本国の治安というものは、国内の警察力ばかりでなく占領軍の兵力によつて確保せられておると考えるのであります。現在は占領軍が最後的には国内の治安について責任を負うておるものと考えるのでございます。従いまして、現在の段階におきまして、わが国土に占領軍以外の武装兵力が、侵略のためにやつて来るというようなことは、予想いたしておらない次第であります。
#18
○世耕委員 そうお答えになるだろうと私は想像したのです。想像したが、ほんとうを言うと、それだけでは国民が満足が行かない。私は皮肉を言うようでありますけれども、大橋総裁はどうも総裁になつてから、大膽が小心になつたように思う。こういうことは大膽に発表されていいのです。ドイツの総理大臣を見てごらんなさい。思い切り信念を発揮しているじやないか。あなたはそれだけの度胸があるはずだ。あなたが総理大臣のくせをならつて、そのようにあいまいな風を装うに至つたことははなはだ遺憾に思う。吉田総理大臣は舌が足りない。舌足らずです。だから私はあまり詳しいことはあの人に質問しようとしない。それであなたの施策なりを実は聞いておるのです。大橋総裁はもつとはつきり言うだろうと思つていたが、しかしこの点について少し悲観した。しかししかたがありません。しかし私の気持は、おそらく総裁の腹の中には幾分泌み込んでおるだろう、相共通するものがあるだろうと思つて、少しうぬぼれて、その程度しか申しません。
 そこで、今の問題について、もう一つこういうことが一つの問題になつて来る。朝鮮に起つた事件に関連して、私が申し上げたいのは、日本の治安並びに守備は、進駐軍が担当してくれているから安心だとおつしやいます。私も同感であります。しかしながら作戰、用兵の関係から、あるいは退却することがあるかもしれません。それは北鮮においてあの通りです。そこで進駐軍が退却してしまつたあとの治安は、だれが守つてくれますか。われわれの生命はだれが維持してくれるかということになります。その点はどうですか。
#19
○大橋国務大臣 現在のわが国の建前といたしましては、占領軍があるとないとにかかわらず、警察予備隊が治安を担当するわけであります。もちろん先ほど仰せられたような事態は、私断じて起ることはないと予想いたしますが、かりにそういう場合を想像いたしまするならば、国内の治安はあくまで警察予備隊が確立しなければならぬ。こういう使命、性格から考えまして、警察予備隊がいかなる行動に出るべきかということは、ある程度明らかになるものと信ずるのであります。
#20
○世耕委員 わかりました。それでそういうように作戰、用兵の建前から、かりに進駐軍が退却する場合、一緒に退却されるような心配はありはせぬかということは、これは国民のひとしく考えるところです。さような場合にも警察予備隊は踏みとどまつて国土を守るのだという力強い御声明に対して、おそらく国民は満足するでしよう。しかしながらそれほど重大な使命を帯びておる警察予備隊であるならば、現在の装備で満足できるか。現在の隊員ではたしてあなたのおつしやるような、国民の信頼し得るような、進駐軍が退却した場合のあとの治安の守りができるかということになると、ちよつとまだ不安が残るのです。これは今総裁からその返答をただちに聞こうとは思いませんが、そういうことも考えておいていただいて、国民の不安のないように、国民よりも先に憂うるという御態度をとつていただきたいという前提として、実はつけ加えて言うておるという真意を御了解願いたい。
 次に最後の問題としてお尋ねいたしたいことは、これも予想でありますが、予想が事実となつて現われて来るような傾向が国際情勢から実はうかがわれるのであります。
    〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
 それだからこれもお尋ねする。それは警察予備隊が将来国連の警察隊の一翼として出勤するかどうかということであります。あるいは一月員として出発するかということは、出勤する上において、指揮の上に非常に影響がある。国連軍に雇われて、用員の形において出動するのと、国連軍の一翼として日本の警察予備隊が出動するというのと、指揮の上に非常に大きな影響があるのでありますが、こういう点についても何か研究しておられるか。これは当然研究されなければならない問題だと私は思うのですが、どうですか。
#21
○大橋国務大臣 国連軍の一翼としても、またいかなる形においても、国外に出動するということは、ただいまのところ考えておらないような次第であります。
#22
○世耕委員 私は今出発するかしないかということをお尋ねしたのじやない。それはなぜかというならば、アメリカの大統領は、橋のそばまで行つておると言つている。これは必ずしも想像じやないのです。もし橋のそばまで行つているなら、ちよつと出てくれと言われたとき、いやでござると言う権能があるか。また気の早い人は、言わなくてもいいから手伝つて来ようということを言う人もある。そういうことも想定してそれぞれの処置をするところに、私は政治家の使命があるのじやないかと思う。ここで事件が起つた、暴動が起つた、それ出勤しろというのでは手遅れです。だれか殺された、犯人を逮捕しろというならおしまいです。殺されそうだから防ぐというところに意味がある。政治家の使命はむしろそういうところにあるのじやないか。私はむりな声明をあなたにお願いしようというのではないが、アメリカの大統領が、橋のたもとでとどまつているという巧妙な言い現わし方をするだけの、含蓄のある言葉の使い方があるとするならば、あなたももつと含蓄のある言葉をもつて、良識ある国民がなるほどと思う程度ならば、私は別に国際上の関係も何もかまわないじやないかと思うのですが、そう固くならないで御返答願えれば、非常にけつこうだと思います。
#23
○大橋国務大臣 これ以上含蓄のある答えは思いつきませんので、この程度で御了承願いたいと思います。
#24
○世耕委員 立場が立場だから、私はそれ以上のことを申し上げることを差控えますが、そういう気持が国民多数の中にあるんだということを含んでおいてもらわないと困る。忘れられては困るのであります。腹構えということが必要であります。
 それから最後にもう一点、希望を結論として申し上げておきます。日本人が一瞬日本のことを知つているのです。やはり東洋のことは東洋人が一番よく知つておる、この議論は私は正しいと思う。しからばわれわれは、日本に閲する限り、良識を持つて他国に協力するということが正当だと思う。この意味におきまして、とかくイエスという言葉が高く響いておるようでありますが、イエス・マンよりも、たまにはノーという言葉の方がより高価なものがあるということを認識しておいていただきたい。しからざれば、ノーもイエスも自由に言えるような立場で行かなければ、かえつて双方に大きな不幸を招くきらいがあるということを私はこの際附言しておきたいと思う。それからさらに、往々にして非難されておりますが、日本人があくまでも英米のサーバントとして働くことが英米を助ける意味になるのか、あるいはよきフレンドとして英米を助けることがより効果的であるかということも、私は、こういう難局に処する場合に認識をはつきりしておく必要があるのじやないかと思うのであります。東洋人の従来のくせといたしまして、謙讓の徳がややもすると、ノーを忘れてイエスに終るきらいがあつて、欧米風の見解がとんだところで誤りを犯して大きな問題を引起すことがあると思いますから、どうぞこの点も考慮に入れておかれて、今後国際一項並びに司令部との御交渉の上に忌憚ない意見を御交換くださるようにお願いいたしまして、私の質問を終ります。
#25
○押谷委員長代理 通告順によりまして、次は猪俣浩三君、
#26
○猪俣委員 私は第八国会の際に、警察予備隊の性格につきまして、法務総裁に御質問いたしました。それは昭和二十二年九月十六日のマ書簡の精神と、本年の警察に関するマ書簡の精神とが、警察の観念の上において、同一のものなりやいなやということで、それに対して法務総裁は、同一であるという御答弁であつた。しからばこの昭和二十二年九月十六日のマ書簡に基いてつくられましたる警察の根本規則である警察法、この警察法に盛られました警察と、今回のマ書簡によつて発せられましたる予備隊というものとは、警察の観念において異ならざるものであるかどうか。それも違いがないという御答弁があつたのでありますが、こまかいことについては、まだ構想ができておらぬからということで終りました。しかもこの予備隊令は政令で発布せられ、国会の審議にかかつておらぬのであります。そこで私どもはややくどいようでありますけれども、この点警察予備隊のことについて御質疑を申し上げる。そこでもし警察にして一にして二ないものであるとするならば、この警察法が根本法であり、政令の予備隊令はそれを補充するところのものであらねばならぬと思うのであります。そこで警察法の根本精神は申すまでもなく、警察力の地方分権制度及び警察運用の民主化ということが二大支柱に相なつておるのでありまするから、今回の予備隊の活動につきましても、二つの精神によつて運用せられなければならない。但し予備隊の使命は、また普通の警察と違うところがあるのでありまするから、その意味におきまして、内閣総理大臣の権限というものによつて統合せられることも、これまた必要かと存ずるのでありまするけれども、さような根本の使命等にさしつかえない限りにおきましては、警察法の精神によつて運営してもらわなければならぬと思うのであります。その意味において、昨日も私御質問申し上げたのでありますが、明確ならざるところがあるのであります。そこで警察法の根本精神によつて警察予備隊の運用をどう調和するかという原則に立ちまして、二、三なお確答を得たいと存ずるのであります。
 第一の問題は、今国際関係と連関いたしまして、国内の不安も相当あり、世耕議員のようななかなか強硬の意見の方もあるのでありまして、かような際におきまして、警察予備隊が出動した場合において、いかなる統制、統合、指揮系統を確立するか。国家地方警察及び自治隊警察二つあつて、これさえなかなか複雑であるのに、そこにまた予備隊が出ておる。この三者が現地に出動されましたときに、何人がこれを統合するのか、一体この三つを統合する最高の権力者は何人であるか。現地において指揮するのは何人であるかということが一つの疑問として、昨日も質問したのでありまするが、この点についてなお御研究なさつたことと思われますので御答弁いただきたいと思います。
#27
○大橋国務大臣 警察予備隊が出動いたしましたる際におきましての、この警察予備隊の指揮に当りまするのは、その部隊の指揮官であり、その最高の指揮官は総隊総監と仮称いたしておりまするが、警察予備隊七万五千の部隊に対する全体の司令官的な地位にありまする指揮官であります。これに対しまして自治神祭並びに国家地方警察は、その現場における指揮者が指揮官であり、自治警察についでは、最後的には自治警察の警察長、または国家警察におきましては、全国的な最高機関としては国家公安委員会であります。しかしながら警察予備隊の出動が指令せられまする際に、あわせて警察権の全体を統轄しまするために、警察法の規定により、非常事態の宣言がありました場合におきましては、国家地方警察本部長官が総指揮者となる。これに対しては内閣総理大臣がさらに最高の指揮をいたすことになつておるのであります。従いましてその際におきましては、警察予備隊総隊総監に対する内閣総理大臣の指揮権並びに、非常事態宣言の際におきまする国家地方警察に対する内閣総理大臣の指揮権というものは、最高の段階において内閣総理大臣一人に掌握せられておりまするがゆえに、この内閣総理大臣が適切なる指揮者を定めることもでき得るわけであると存じまするので、これによつて現場における部隊行動の調整をはかつて行くことができ得るものと信じております。
#28
○猪俣委員 非常事態の場合にはわかりまするが、この予備隊は非常事想の宣言のないときにも出動する場合があるのであります。そこで非常事態の宣言のないような場合に出動したときに、国家地方警察本部長官と総隊総監と申しまするか、そういう人との関係は一体どういうことに相なりまするか。
#29
○大橋国務大臣 この両者はそれぞれ相並んで自己の所轄機関を指揮するということに相なります。
#30
○猪俣委員 そういう治安維持を確保する予備隊が出動するような事案に対しまして、二本建の指揮系統、なおそのほかに自治体警察というものがある。それが一体いかなる関係で指揮権があるのか、申すまでもなく警察の一糸乱れざる行動は結局指揮系統にあると思う。それが今の場合だというと、公安委員会やあるいは本部長官あるいは総隊総監というような三つにわかれておるような状態である。その間にそれを統制すべき規則はない。そうしてそれは二本建であり、あるいは三本建であるというようなことでは、はたして機動的な活動ができるか、かように思われる。そこでこの国家地方警察及び自治体警察もある、かような場合になお予備隊が加わつておる。どうもこの法規を見ましても、今総裁が答弁したようなことが何條から出て来るのか私にはわからぬ。なお今の答弁だけでも国家地方警察及び予備隊とを現地において二元的に指揮することができるような御答弁でありまするが、どうもこれははなはだ機動的な流動に欠くるところがあるのじやないか。さようなことについて一元的にするような構想をお持ちであるのかないのか。なお自治体警察は一体どうなるのであるか、その点について御答弁願いたいと思います。
#31
○大橋国務大臣 ただいまのところでは、警察及び警察、予備隊の活動に対する指揮は二元的にならざるを得ないと考えております。もつともこれは国家非常事態宣言の廃せられましたる場合におきましては、内閣総理大臣において一元的に指揮することができますが、一般の場合におきましては二元的にならざるを得ないと考えておるのであります。しかし現実の状況といたしましては、警察予備隊はまだ早々の道程にありますわけでございまして、これが組織を完成し、実際出動に耐え得るよう状態になり、またしばしば出動いたすというような事態に相なりますと、当然警察との指揮系統の調整というような問題につきましても、十分に研究をしなければならないようなことに相なろうかと存じまして、この問題につきましては当局といたしましても愼重に研究をいたし、また準備を進めておるような次第でございます。
#32
○押谷委員長代理 ちよつと速記をやめてください。
    〔速記中止〕
    ―――――――――――――
#33
○押谷委員長代理 速記を始めてください。それでは猪俣君の質疑は一時留保いたしまして、次に本日の日程によりまして、裁判所法の一部を改正する法律案ほか四件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。この際お諮りいたしておきますが、本日の議題に関して、裁判所当局より国会法第七十二條第二項の規定によりまして出席説明の要求がありました際には、随時これをお許しいたしたいと思いますが、あらかじめこのように御決定を願つておくことに御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
#34
○押谷委員長代理 御異議がないようでありますから、さように決定いたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。鍛冶良作君。
#35
○鍛冶委員 最高裁判所の事務総長にお尋ねしたいことは、最高裁判所の規則をもつて定め得る範囲、ことに法律を規則で改正できるというお考えであるかどうかをまず伺いたいと思うのであります。
#36
○五鬼上最高裁判所説明員 憲法七十七條の規則制定権というものは、これはいろいろの考え方がありままして、新しいことでもありますし、まだはつきりとした学説その他もないようでありますが、実際上最高裁判所の方ではどういう考え方をしておるかということを申し上げて御了解を得たいと思います。ことに御質問の、規則をもつて法律を改正するような考えがあるかという御質問でありますが、今まで最高裁判所が設立されましてから下級裁判所の事務処理規則とかいろいろ内部的の規則はつくつて参りましたが、正式の規則は御承知の刑事訴訟規則というのがありますが、その規則を見ましても規則をもつて法律を改正するというようなことは全然ございません。従つてこの規則と法律の関係についてはいろいろ説がありまして、改正できるという説もありますし、できないという説もありますが、しかしながら実際上の運営においては、最高裁判所としましては、法律の改正を要するような場合には、やはり国会において法律の改正をしてもらうという、従来の態度は別に改まつておりません。特に規則によつて法律を改正するというような、今回のかりに第二條の規則ができましても、規則だけで法律を改正するというふうなことは考えておりません。
#37
○鍛冶委員 いろいろの説があつてきまらぬが、ただ便宜上やるといわれると、都合によりあるいはやれるかもしれぬというふうに聞えるのであります。これははなはだ重大だと思うから、この際私は意見を確定しておきたいと思う。ことにこれは新刑事訴訟法のできますときに、一体規則はどういうものができるか、それを見ないと刑再訪訟法を通すわけにいかぬじやないかということまでわれわれは言つたが、法律を改正するような規則はできない、こういうことを見きわめて通したはずです。しかるに、今いろいろ説があつて、基本観念はまだきまらぬけれども、ただ便宜上やつておるといわれると、はなはだわれわれはふに落ちないのですが、一体憲法第四十一條を最高裁判所はどういうふうに解釈しておられるか。唯一の立法機関ということは、法律の立法制定はすべて国会でやるものだ、こう書いてあるものと私は考えておるのですが、その国会でやつたものでも、最高裁判所はこれをいつでも変更する規則ができる、こういう考えが出て来るという根拠はわれわれには了解できない。そこでそれをどうお考えになつておるかを承りたい。
#38
○五鬼上最高裁判所説明員 ただいま申し上げましたように、いろいろ考えがあると申しましたのは、学説と各個人の説によつてそういうものがあるということを申し上げたのでありまして、最高裁判所としては、いまだ意見が確定しておりません。結局これは判例とか何かによつて問題が起つたときに出て来る問題であろうと思いますが、今のところ最高裁判所が可決行政を行う上においては、規則をもつて法律を改正するような考えも持つておりませんし、実際上今までのやり方についてもそういう例もございません。
#39
○鍛冶委員 私は個々の裁判所において、裁判所が独自の見解をもつてやられることは、そこまでは議論を進めませんが、この間の岸刑事局長の言葉の片鱗からうかがうと、最高裁判所は法律の間違つたところを皆直せるということで、従つて最高裁判所はどんなものでもやれるのだ、これは最高裁判所の意見としていまだにその意見をお打ちになつておりますか。もしそうだとすれば憲法四十一條とどう調和をしてその議論が立つか、それを向いたいと思います。
#40
○五鬼上最高裁判所説明員 岸刑事局長がただいま鍛冶委員のおつしやつたようなことを述べられたかどうか、私まだはつきり聞いておりませんが、そういう御意見も、多分個人としての意見を言われたのであろうと思います。最高裁判所の事務当局としましては、ただいまおつしやられたようなことは考えておりません。
#41
○鍛冶委員 ついでに承りたいのは、施行法をもつて本法たる訴訟法の改正ができると考えておられるかどうかこれを伺いたい。
#42
○野木政府委員 施行法も同じ法律であるから、できるということもあるいは見方によつては言えるかもしれませんが、本法と施行法との全体の趣旨から考えてみますと、施行法で本法を攻めるというふうなことは、やはり全体の趣旨に沿わないのではないかと存ぜられます。
#43
○鍛冶委員 この間もその議論について現行刑事訴訟法があつて、それを施行するに便宜なものだけをきめるということだけであつて、施行法によつて刑事訴訟法の規則をかえるという意味ではないと思いますが、いかがですか。
#44
○野木政府委員 十三條はやはり施行法のうちの一條でございますから、先ほど申し上げた趣旨のように施行法をもつて本決をかえるということは、十三條の趣旨には盛られておらぬものと思います。ただここでお考え願いたいのは、この施行法は新刑事訴訟法の施行法でありまして、この十三條では新刑事訴訟法をかえるということは毛頭考えておりませんが、新刑事訴訟法の施行法であるこの刑事訴訟法施行法の第二條によりまして、経過的に、一時旧法事件は「新法施行後も、なお旧法及び応急措置法による。」という條文がありまして、それから十三條に「この法律に定めるものを除く外、新法施行の際現に裁判所に係属している事件の処理に関し必要な事項は、裁判所の規則の定めるところによる。」という規定があるわけでありまして、この両者を考えまして十三條の規定は、施行法は経過規定を定めるという立法の精神から見まして、あるいは新刑事訴訟法の中で、規則にまかしておるという程度の軽い事項ならば、この十三條の規定で、経過事件の処理としてある程度の規定はできるのではないか、そういうのがこの立法の根趣旨のように思うわけであります。ただ十三條の字句がやや明瞭を欠く点がありますので、十三條を文字通り読みますと、旧刑事訴訟法を非常にこまかく規定しておりますので、旧刑事訴訟法を多少新刑事訴訟法的の精神に近づけるということを全然封じられはせぬかというように読める見解もありますし、親にそういう見解を述べておる人もあります。その点は最高裁判所の判決で、先日その見解はしりぞけられまして、経過的の場合には、ある程度の軽微の事項は規則で定めるというような見解が出ましたので、その見解に従いますれば、あるいはこの十三條でさしあたり現在裁判所が考えておる程度のことは、まかなえるのではないかと存ぜられるわけでありますが、私どもといたしましては、どうも十三條の字句に多少そういつた論議の点がありましたので、この際実は十三條の初めの案を書いたものとしては、非常に気持悪く思いましてそこをあまり紛糾の起らないようにはつきりした方がよかろうということで、十三條を削つて、第二條に「この法律及び裁判所の規則に特別の定があるものを除いては、」ということにしたわけでありますが、またこうして見ますと、おつしやるようにあるいは委任の範囲が広過ぎるのではないか、野放図もなく委任してあるというようなそしりも免れないような形になつておりますが、しかしまあこれで何でもかんでも、基本的事項、重大な被告人の利益に関する事項までも、裁判所の規則できめるというところまでを委任するという、そこまでは考えておるわけではないのでありまして、裁判所の事務当局もそこまで考えておらないようでありますので、まあまあこういう覆しても実際上は不都合ない。ことにこれは旧法事件だけに関することでありまして、ずつと将来これから起る事件までも、こういう形だとすると、あるいは問題かもしれませんが、旧法事件だけならばまあこれで弊害はないであろうという形で、こういう案を書いてみたわけであります。
#45
○鍛冶議員 十三條のことは、私は予備的に質問したわけでありますが、それでは改正の二條をお聞きしたいのですが、旧件は旧刑事訴訟法でやると十三條できまつておる、その旧刑事訴訟法の内容を変更させようとする改正だと見るほかありません。そうしてみれば今の議論の施行法をもつて本法をかえることはできないという議論に、まず第一番に反するものではないでしようか。
#46
○野木政府委員 ただいまの点につきましては、この施行法は新刑事訴訟法の施行法という形になつて駆りますので、この施行法で新刑事訴訟法自体をかえるということになりますと、まさにお説のような不都合なことになると思いますが、旧刑事訴訟法は新刑事訴訟法にとつてかわられますが、この第二條の規定によつて経過的に生かしておく、そういう意味でありますから、この施行法は、鍛冶委員がおつしやるように、施行法で本法をかえるというように、あるいは強く考えなくてもよいのではないかと思つておる次第であります。
#47
○鍛冶委員 そうおつしやるならばもう一ぺん逆に承りたい。「この法律及び裁判所の規則に特別の定があるものを除いては、」こう書いてあります。つまり裁判所の規則に特別の定めがあれば、旧刑事訴訟法はそれだけ適用にならないのだ、こういうお気持で書いておられる。またそう解釈せざるを得ない。そうしてみると、先ほど言われたように、裁判所の規則をもつて、適用されておる旧刑事訴訟法の内容をかえるものとする考えで出ておる、こう思うが、これは先ほど五鬼上総長の答弁から言いますと、かようなことはできないものと断定せざるを得ませんが、これはいかがですか。
#48
○野木政府委員 法律の委任も何もなくては、規則で法律に触れるようなことは定めないということは、従来とも政府もとつて参り、また当委員会の御意見もそのように承知しておる次第であります。ただこの第二條の場合におきましては、この第二條で委任するというその委任に基いた規則であると、旧刑事訴訟法の軽微な点は新法の方に乗りかえる、補正できる、そういうような仕組みに考えたわけでございます。
#49
○鍛冶委員 法律できめようといえば、やはりこの施行法でしよう。それだから前に、施行法で本法をかえられますかと聞いておるのです。施行法で、規則によつてかえる、こう言われるのだから、かえられぬものを施行法でかえておる、これは不都合だと私は言うのです。
#50
○野木政府委員 なるほど施行法で、刑事訴訟法の軽微な点を多少手を入れることはできると申しましたが、その刑事訴訟法たるや旧刑事訴訟法でありまして、今度の施行法は、直接旧刑事訴訟法の施行法というよりも、むしろ新刑事訴訟法ができまして、その新刑事訴訟法に対する施行法であります。従いまして、この施行法では、新刑事訴訟法を改正するというようなことは別に含んでおりませんで、ただ新刑事訴訟法を実施する便宜上第三條等の規定によりまして、ある程度旧刑事訴訟法を生かして行く、その生かすについては、そこに新刑事訴訟法とのわたりをつけるために多少修正規定を置かなければならない。それを本来法律で置きますれば一番無難であつたわけでありますが、何分当時は情勢の変化が著しいときでありまして、切り替えどきの混乱を避ける意味で、旧法は旧法で一応やつてみて、やつているうちに不都合を生じたら、ある程度軽微な点は裁判所の規則で、新法的な方向に向つて補正できるということにしたのが、この十三條の規定だと存じておる次第であります。それで今度の改正案の第一條も、考え方においては第十三條と同じでありまして、ただ十三條では委任の範囲がはつきりしませんで、いろいろ今まで疑義が起つた事情がありますので、その疑義を避ける意味で、第二條のような書き方をしたわけでありますが、旧刑事訴訟法を多少補正できるという点は、あくまでもこの施行法で規則に委任したからできるというのでありまして、この委任がなければ規則だけでは旧刑事訴訟法にせよ法律が先占している部分には手を触れることはできないというのが、政府の従来からの解釈であります。
#51
○鍛冶委員 たいへんわれわれと見解が違うので、もちろん施行法の第二條がなければ、旧法は廃止になるのでしたろうが、二條では旧来の事件、新法が施行になる前に起訴されたその全部の事件は、旧来のまま旧刑事訴訟法でやるのだ、こう書いてあるのであつて、旧刑事訴訟法はある一部だけとつて来てやられておるものとはわれわれは思つておりません。旧件に対しては、旧刑事訴訟法は旧来の通り現存しておるものと考えておるのでありまして、何か一部拾つて来て、そうしてやつておるのじやないのです。新刑事訴訟法施行後の事件はこの法律による、その前の事件は旧刑事訴訟法でやるのだ、ちやんと私は二本とも生きておるものと心得ておるのですが、その現存しておる刑事訴訟法を、新法の刑事訴訟法であればなおさら、施行法をもつてかえるとは、今野木さんがいくら言われてもわれわれは納得が行かないのですが、これ以上は議論してもしようがないけれども、あるいは観念の相違だといえばそれでよいのですが、われわれは旧刑事訴訟法は旧件に対してはそのまま存続するものと思つております。
#52
○野木政府委員 お説のような見解もありまして、従つてお説のような見解に立ちますと、十三條を非常に厳格に解釈するわけでありまして、ほとんど規則では何も定める余地はないということになつてしまつて、十三條の規定がほとんど死文に化してしまうということになるのではないかと思います。そして私どもといたしましては、この施行法全体の趣旨から見まして、しかも旧法は新法に移りかわるという点から見まして、新法である程度規則にまかしておくという程度のことは、それに相当するようなことは、十三條の規則である程度できるのではないかというように解釈しておつたわけでございます。先般の判決も大体その趣旨のような判決があつたようでございます。従いまして十三條はそう読めないのじやないかという疑問も、判決が出る前まではありましたので、そういう疑問を、判決があつたとしても、あとへ残すのはあまりおもしろくないというので、十三條をとつて第二條の今度のようにしたわけであります。この程度ならば施行法をもつて、本法を改正するということではなくして、その施行に伴うある仕度の手当をするという趣旨の程度ではないかと考えておるのであります。
#53
○鍛冶委員 それ以上は議論になりますが、とにかくわれわれは、旧件に対しては旧刑事訴訟法は存続しておるのだ、従つて施行法をもつてこれをかえることはできない。いわんやその施行法は裁判所の規則にゆだねて、そうして規則をもつて現存の法律をかえるということは、それはできないものだという考えを持つておるということだけを表明いたします。ただこの際申し上げておきたいのは、判裁所の態度もその通りだと言われるけれども、われわれは裁判所の規則というものは、法律がきまつて、その法律を施行するために便宜な施行細則とかいろいろなやり方、そういうものがきめられるものならいいが、最高裁判所の規則をもつて憲法四十一條に定めた権限で国会のつくつたものの内容をかえるということは、憲法四十一條に違反するものであるとわれわれは考えておりまするから、その点だけは明白に最高裁判所に、頭にとどめておいてもらうことをお願いいたしておきます。
 それからついでですから事務総長に伺いたいのですが、裁判所法の一部の改正にあたつて、昨日最高裁判所の方から答弁を得ますと、これも一つの訴訟促進のためにおやりになることでありますので、簡易裁判所へずいぶん事件を多く持つて行つて簡單に事件の処理をすることが、地方裁判所の負担が軽くなつて、事件も早く済む、こういう考え方であろうと推察するのであります。そこで問題は、現在簡易裁判所の判事というものは充実しておるかという問題なのです。これはきのう聞いたのです。そうしたらほんとうの判事の資格のない、いわゆる特任の判事が二百五十九名あるという。たいへんな話です。実員の半分以上、五割五分ぐらいのものは特任の裁判官である。しこうしてそういう特任の簡易裁判所の判事の裁判に対して、世上いろいろの批判があるようだがどうだと言つたら、その点も開いておると言う。そういう実情であるにもかかわらず、そういう簡易裁判所の管轄を拡張しまして、たくさんの事件を持つて行つて、はたして適正なる、国民の信頼を得る裁判ができると思つておられるかどうか。これを聞きたいのです。
#54
○五鬼上最高裁判所説明員 簡易裁判所の判事の任命について、前にも申し上げたいと思いますが、選考による任命の中にも、たとえば司法試験は通つているが、司法修習はしてないというような者、また外地において裁判官あるいは検事の資格のある者というものも含めまして、二百五十何名という数字が出ております。その点をひとつ御了解願いたいのであります。
 それから特任判事の問題についてですが、なるほど仰せの通りの非難は前には大分ありました。しかし最近においては二箇月あるいは一箇月半というような、相当長期にわたる研修を数回繰返して、そうして判事の質の改善に努力いたしておりますので、任用当時とは相当かわつて参りまして、その実れも向上しつつあるのでありまして、私の方といたしましては、今後その実骨については特段の注意はいたしたいと思いますけれども、まず今の改正法案程度の事件の処置には、さほど支障は来さないかというような考慮のもとに、訴訟促進の意味からも、かような措置が適当であろうと考えておるわけであります。
#55
○鍛冶委員 これは普通の事務の処理でありましたら、支障はないのでありますが、裁判というものは、国民の信頼ということが一番重要だ。その信頼を得られないで、ただ事件を処理したからといつて、それでいいと考えられることは、私ははなはだ考慮の余地があると心得えます。
 それからいま一つは、なるほど規則を改正するのも一つの方法であるかもしれままんが、それよりも問題は堪能なる人を得るということが何よりもその促進になると思うのですが、その点にいかがですか。
#56
○五鬼上最高裁判所説明員 御意見ごもつともであると思います。従つて今後の任用についても特段の注意をいたして、なるべく堪能なる判事を入れたいと思います。
#57
○鍛冶委員 特段の御注意を願うのならば、待遇の問題もありまするし、それからわれわれがいつも言うおる裁判官の任用の制度を根本的にかえるというところまでとくとお考えを願つて私の質問を終ります。
#58
○上村委員 関連して……。先ほどの鍛冶委員の質問は非常に重大であつて、われわれ国会議員としてやはり最高裁判所に根本的にお確かめを願つておかなければならないと思うのです。というのは、われわれが法律学校で習つた原則というものは、これはもう日本だけでなしに、古来からの法律の原則であつて、まず憲法的のものが一番優位であつて、その次に法律、その次に命令ということになつておるわけであります。そして命令をもつて法律を変更することはできないし、法律をもつて憲法を変更することもできない、こういう優位というものがきちんと区別されておるということが、やはり法治国のわれわれの通年であるわけです。従つてこの原則のもとに新しい二十世紀憲法が生れたものであろうと私は思うのです。従つて憲法の七十七條というものは、最高裁判所の規則制定権ではあるが、この規則制定権なるものは、決して最高裁判所が自由かつてに無軌道に制定していいということではないと思う。いわゆる法律解釈の根本原則を前提として尊重して、そうして七十七條が立案されたものと思うのであります。でありますから、鍛冶委員が言われたように、四十一條はこれは炳して国会の権能なので、国会のみが法律をこしらえる。その法律を最高裁判所が七十七條で自由かつてにこれを変更し得るというふうな御念を持つということは、三権分立の建前からいつて私は非常に間違つておるのではないか、こういう間違つた観念がこの十三條に現われて来ておるというふうに私は見なければなるまいと思う。でありますからして、ここでお確かめしておきたいのは、われわれの法律観念の根本理念からいうと、憲法、法律、政令――規則もやはり政令だと思う。政府で出せば政令になり、裁判所で出せば規則になるというお話でありますけれども、法律以外の命令にすぎないものであろうと思う。そういう根本の建前で立てられておつたということを、最高裁判所はしかも憲法の解釈について権限を持つている裁判所である。これが国会と矛盾したような解釈を出す権限を主張されているのかどうか知らぬが、そういう法律が出て来て、ここにはしなくも国会議員と最高裁判所職員の押問答が行われたわけでありますが、そういう点をどういうふうに解釈しておるか、七十七條の規則というものは、もうこの法律解釈の原則の第三位の効力しか打たないものである。そういうことの百パーセント効果を生ずるにしても、これはとにかく法律の範囲に一歩も進出して行けないものである、こういうお考えを持つておるかどうかということをお確かめしておきたいと思います。
#59
○五鬼上最高裁判所説明員 法律と規則の問題につきましては、先ほど鍛冶委員の郷質問にお答えいたしたより以上にはちよつとお答えいたしかねると思います。ただ御質問のお言葉中に、最高裁判所は規則をつくるのにかつてに規則をつくつておるのではないかというような質問がありましたが、さようなことはございません。規則制定委員会――裁判官、弁護士あるいは学者というような各方面の権威者を入れたその諮問委員会に諮問をいたしまして規則を制定いたしておりまして、決して最高裁判所だけでかつてにつくつておるのではないということを申し上げます。
#60
○上村委員 事務総長は私の言うことを誤解しておられるのです。かつてにつくつたというのではないのです。法律をかつてにというのは語弊がありますが、法律を改正してもいい程度の規則がつくられるという頭でもつてこれはつくつたのではないか、こう思つて言つているのです。それをお確かめ願いたい。
#61
○五鬼上最高裁判所説明員 規則だけでもつてこの法律を改正した、という例はまだございません。ただこの法律の委任に基いて規則に委任された範囲内において、あるいはその手続等に、十三條で、多少新法と旧法とのつなぎ合せのような規則をつくつたという事実はあります。
#62
○上村委員 その点は非常に大半でありますが、要するに規則、政令そういうもので自由に法律を――自由といつては何ですが、それを侵してもさしつかえないというような考え方をお持ちであるかどうか念のためにお確かめしておく次第です。
#63
○五鬼上最高裁判所説明員 その点は先ほど来鍛冶委員にお答えいたした通りより以上には、ただいま私どもお答えいたすことができません。
#64
○田万委員 ちよつと関連して……。五鬼上さんにお尋ねします。私浅学非才で誤つた質問をするかもしれませんが、かりに今問題になつておる規則と法律の効力関係でありますが、誤つて規則で法律を改廃するような事実が起つた場合、その有効、無効ということについてはまた問題になつて来ると思うのです。その際にそれの有効、無効という判断は、最高裁判所がすべきものであろうと思いますが、この点はいかがですか。
#65
○五鬼上最高裁判所説明員 むろん法律規則の最終的解釈は最高裁判所の判例によるものと思います。
#66
○田万委員 その際に、前に誤つて規則で法律を改正したという事実を御認定になる可能性もあろうと思うのでありますが、そういうことになりますならば、最高裁判所として規則をもつて法律を改廃するというようなことが一時的にも起り得るという危險性があろうと思いますが、この問題はどういうふうにお考えになりますか。
#67
○五鬼上最高裁判所説明員 最高裁判所において規則を制定しまする場合には、先ほど来申し上げましたように規則制定委員会の意見を十分尊重いたして制定いたしますから、規則と法律とが矛盾をするようなことはないと思います。しかしこの規則制定権というものは一極の司法行政であります。司法行政としてつくるものでありますからして、それは判例によつてどう判定されるかはちよつとここで申し上げることはできないと思います。
    〔押谷委員長代理退席、委員長着席〕
#68
○田万委員 先ほどから鍛冶委員並びに上村委員からくどいようであるが、たびたび質問している規則と法律というものの効力について、はつきりとした最高裁判所としてお答えがあるかのごとく、またないかのごとき印象を受けるのですが、これははつきりやはり規則では法律は改正できない、學説いかんにかかわらず最高裁判所はかように考えるということを最後にとどめの御明答をいただきたいと思います。
#69
○五鬼上最高裁判所説明員 先ほど来同じことをお答えいたしておる通り、先ほど程度以上のお答えはちよつと困難かと思います。
#70
○上村委員 この問題は非常に簡單な問題で、また法律学校の討論みたいな問題ですが、国民の権利にとつてはきわめて重大な効果を及ぼすのです。そこで法律と最高裁判所の規則とが違つた場合に、それは最高裁判所の解釈権にあるということでは私は納得できない。やはり根本原則というものは規則の方が下に効力がなつているんだから、もし法律と刑事訴訟法とそれから裁判所の手続規則とが全然違つている場合には、これは裁判所の解釈権は具体的にはありとしても、これは法律の方が優位であるという解釈をしなければならないと私は思うのです。でありますから、その点が最高裁判所におかれて一体どういうふうになるのか。これは仮定論のようですが、そこまで私は確かめておきたいと思う。
#71
○五鬼上最高裁判所説明員 私が先ほど申し上げましたのは、法律規則の最終的解釈は最高裁判所の判例できまるということを申し上げたのでありまして、最高裁判所が司法行政を行う上からでは、規則と法律とがどちらが優位であるということを解釈することはできないものと思つております。
#72
○上村委員 五鬼上さんは何かわかつたようなわからないような話ですが、そういうふうに食い違つた場合において一体最後に解釈するものは最高裁判所でしよう。けれどもそういうふうに明らかに法律と最高裁判所の規則が衝突した場合に一体どつちが正しいか、どつちを国民は尊重しなければならないかということについて、これは最高裁判所に解釈権は私はないと思う。あつてもそれは原則に従つて法律の方を優位として解釈すべきではないか、こういう質問なんです。
#73
○五鬼上最高裁判所説明員 先ほど来申し上げております通り、規則と法律とは将来において抵触するような問題はなかなか起り得ないようにわれわれは確信いたしております。しかしそういう場合があつた場合には、これは仮定の議論舌ありますが、そういつた場合にはやはり具体的事件について裁判所が最終的判断を下すよりいたしかたがないと思います。
#74
○大西(正)委員 私他の用事で委員会の途中で出たり入つたりしましたから、ほかの委員の方からお尋ねがすでにあつたかもわかりません。重復する点があるかもわかりませんが、二、三簡單にお尋ねしたいと存じます。
 裁判所法の一部を改正する法律案に関連してでありますが、裁判官の職務を代行するという点について、従来の法律、現行法によつてどの程度の職務代行が行われているか、数字的に御説明願いたいと思います。
#75
○五鬼上最高裁判所説明員 現行の裁判所法の規定に基きまして、職務代行をやつているものは、数字的に今はつきりした資料を持つておりませんが、私の方の今承知しているところでは、九州の管内で福岡地方裁判所が高等裁判所の方に委嘱されて代行している、それから高松の管内において地方裁判所の判事が同等裁判所の判事の職務を代行している、この二つだけの程度であります。
#76
○大西(正)委員 すると、事務総長御存じのものは二つだけの事例のようでありますが、そんなにあまり行われておらないものでしようか。
#77
○五鬼上最高裁判所説明員 この職務代行のごく臨時的の代行というのはあるいは従来ございましたかもしれませんが、これはすべて、高等裁判所管内でやつているものですから、最高裁判所としては数字的に今ちよつとわかつていないのです。
#78
○大西(正)委員 実はその資料を拝見したいのでありまして、最高裁判所でおまとめになつていると思つたのでありますが、そういう資料がいただいた資料の中にないわけであります。それであまり行われておらないものならば、そういうものを法律の上で形式的に拡張したところで活用されないものならば必要ないじやないか、かように考えるわけであります。
#79
○五鬼上最高裁判所説明員 従来の職務代行の範囲は高等裁判所の管轄内の代行だけでございます。従つて、四国なら四国の範囲において代行をしているというような場合、訴訟促進の意味から、ある高等裁判所に事件が非常にたまつている、しかもその管内において、代行さすべき人員がないというような場合に、どうしても他の高等裁判所管内から持つて行つて一時的にも代行さして事件の處理をはかりたいというのが今回の改正の目的でありましてたとえば北海道から仙台管内に持つて来るとか、あるいは東京管内から福島に応援に行くというようなことは現行の裁判所法ではできない。今回訴訟促進の必要から全国的に代行できるようなことを考えている次第であります。
#80
○大西(正)委員 提案の理由は十分にわかるわけであります。しかしながら実情は、現行法の範囲内つまり高等裁判所の範囲内で現実にどの程度の必要と、そしてまたその必要を満たすべくどの程度に行われているのか、これを実はお伺いしたいのであります。それと同時に、たとえば北海道から九州の果てとか、そういうかえつて能率を害するようなことは現実におそらく行われないのじやないか。またむしろ裁判官の数が少ないのであつて、それらの人がみな現に与えられている職務についてすでに事務がオーバーしている、その人がよその代行として任地を離れて他に行く、一時でも行くというようなことが現実にあるのかどうか、その必要があるのかどうか、もつと必要な面はほかにあるのじやないかというようなことが懸念されるのでお尋ねをしているわけであります。この点について納得の行く御説明を賜わりたいと思います。
#81
○五鬼上最高裁判所説明員 この職務代行を全国的に拡張する必要があるというのは、今日主として仙台と高松と福岡高等裁判所で、御承知の通り高松管内は地方裁判所が四つしかございません。それで判事の数も非常に少いのです。その少い点から高等裁判所の旧法事件処理のために一部だけ代行さしておるけれども、ちよつと数字はわかりませんが、あそこで相当多数旧法事件がたまつております。たとえば北海道あたりは非常に旧法事件の処理が早く行つた。こういうようなところからでこぼこができている。この旧法事件の処理を早くするためには、どうしても他の高等裁判所管内から持つて行く必要があるというような、異常時と申しますか、非常時と申しますか、そういうような状態において処置をして行きたい、こう考えております。
#82
○大西(正)委員 御趣旨はよくわかるわけであります。そこで今高松の高等裁判所その他二、三の高等裁判所の事件を御引用になつたわけでありますが、この訴訟促進については四国管内の高等裁判所の高松が非常に多い。そのことについては、たとえば高等裁判所の支部を四国の高知県、愛媛県、そういつた高松から時間的にまた交通の非常に不便なところに支部を設置されて、それを運用されて行くというようなことが私は必要ではないかと思うのであります。それによつてむしろういつたことよりも、支部の設置によつて刑事事件を裁いて行かれるということも必要ではないかと思うのでありまして、この点については最高裁判所となさいましてはどういう御見解を持つておられるか。
#83
○五鬼上最高裁判所説明員 高等裁判所の支部の設置については、従来からもできるだけいたしつつあつたのであります。しかしながら何と申しましても予算の関係が伴います。人の関係が伴います。この点において、ただいまの代行ということは一時的のものであります。もし支部を設置いたしますと、そこにやはり裁判所に対してそれだけの判事、書記官等も配置しなければならない。今二百人以上の欠員のある場合に、そういうように支部に判事を配置するということは非常に困難だ、庁舎の点も困難だというような点から、応急の間に合せとしては、この支部の設置ではまかないかねるのじやないかと考えます。
#84
○大西(正)委員 支部の設置について御努力を願つておるということを拜聴しまして満足であります。なお今後とも高知とかあるいは松山でありますが、そういつた非常に交通の不便なところに対しまして、ひとつこの支部の設置について十分御努力をお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、下級裁判所の設置法によりまして、法律の上では設置はされておるが、実際の建物がなくて別のところで事務をとつておる、こういうところがあるわけであります。私は高知県から出ておるわけでありますが、高知県下には事務総長よく御存じの通りにあるわけであります。こういうところの設置につきましても、その町村が非常に熱心で、すでに敷地まで提供しておるというところもあるわけでありますので、こういつたところについても何とぞ早く裁判所を設置されまして、数多く支部を設置されますように御努力をお願いしたい、かように存じております。
#85
○五鬼上最高裁判所説明員 法律上設置されておるが、実際に設置されてないところがあるというお話ですが、われわれの方としてはなるべくそういうことのないようにいたしたいと思いますが、何分国家の予算の現状からいたしまして、私どもの理想とするところには相当遠いのであります。しかしながら私どもはなお一層努力いたしまして、そうして法律に合致した裁判所の設置は一日も早く実現したいと思います。
#86
○大西(正)委員 それではその点を打切りまして、民訴の改正の点でありますが、実は民訴の改正から多少逸脱するかもしれませんが、昨日田万委員からお尋ねのありました交互尋問に関連をいたしましてお尋ねしたいのであります。民事の際には両当事者が弁護人を選んで、これが交互尋問することになります。それでお互いに実際上原被告の弁護人が対等の立場でやれるのでありますが、刑事の際においては交互尋問をやりましても、検察官が通常捜査権その他の権力を握つておる。証人が何らか検事の気に満たないことを言うと、その法廷において尋問の終つたあとで、ちよつと調べ室へ来いとかなんとか言つて、すぐひつぱつて行つて、偽証の疑いがあるのではないかというふうなことで取調べをすることが往々にしてあるのであります。かようなことは私は決して新しい刑事訴訟法の運用として、好ましいことではないと思うのでありますが、遺憾ながら実際はそういうことが往々にして行われておるのであります。しかも弁護人が尋問をしてそれに対して十分な反対尋問の機会があるにもかかわらず、これを行使しないで、そうして尋問が終るといきなりちよつと来いというわけで調べ室へ連れて行つてそういうことをするということは、私は検事が法廷において正当に与えられた反対尋問の権利を放棄しておいて、そうして別の権力を行使するということになるのであります。まことにけしからぬことだと思うのであります。こういう点について一体検事の再教育というか、どういうことを行つておられるか、お尋ねしたいと思います。
#87
○野木政府委員 刑事事件につきまして、法廷で証人の証言の疑惑を打破するためには、検察官といたしましては、反対尋問の技術の向上をはかりまして、まず反対尋問でそれを打破するというのが、新法の精神にかなつたところだと思います。ただ検察官がすぐ証人を偽証罪の嫌疑で取調べるというようなことは、具体的場合々々に従つて考えなければ、一々その妥当性を判断できないとは存じますが、通常に解してこれはひどい、あるいは弁護人その他法曹から見て、これは少しひど過ぎると見えるような場合がありましたら、それはやはり行き過ぎと存ずるわけであります。これらの点は私ども所管外でありますが、検務局で検察官の会同の際に、御趣旨の点は十分説明して注意を喚起するように、検務の方にも連絡しておきたいと思います。
#88
○大西(正)委員 この問題は今回の改正の問題から離れるわけでありますが、また相当な重大な問題を含んでおると思うのです。そこで詳しい御質疑は別の機会にいたしたいと思うのでありますが、ただもう一点だけお伺いしたいのは、たとえば検事が取調べをした証人を法廷で尋問する際に、検事が最初に主尋問をするわけであります。ところが弁護人が反対尋問をした場合に、検事の言つていることがくずれて来る。なんだかおかしくなつて反対の証言をし始める、そういう場合に検事の方では、検事がとつた調書と、法廷において言うところの証人の証言とが食い違つておる。そこでこれは検事のとつた調書という証拠資料と食い違つておるから、ただちに偽証の容疑があるとしてひつぱつたり逮捕したりすることができるのでありましようか。われわれ弁護人の立場から言えば、もし検事がそういうことができるならば、検事のとつた調書と公判廷の証人の言つていることが違つておるとすれば、むしろ検察官のやつた尋問に不法な方法が行われたのではないか、そこに涜職的な行為があつたのではないかという疑問を抱き得る余地が、われわれ反対側からいたしますと対等にあると思うのであります。そこで検事のとつた調書と違つておるというだけ唇、いきなりそういう手段を検事がとり得るかどうか、もしとり得るとすれば、被告人の立場からすれば、検察官の方の調書と違つた証言をした場合に、法廷における証言を正当なりと考えるならば、検察官の調書の作成について、涜職的な行為が行われたのではないかという推測が生じても、私は対等の立場で第三者が見たならば、そういうことも言われるのではないかと思うのであります。これはいかがなものでありましようか。
#89
○野木政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、これはやはり具体的にその場合々々について判断するよりいたし方がないではないかと存ずる次第であります。証人が検察官の手で調べられたときに、いろいろ思い違いをしておることもあるかもしれぬし、また検察官の問いの仕方が不適切なために答えがマツチしなかつたというような場合もあり、それが公判廷に参りまして、弁護人の適切な反対尋問によつて、真相が現われるという場合もあると思います。それですから、検察官の調書と法廷の証人の証言と食い違う、ただその一事をもつていつでも必ず偽証の嫌疑で逮捕ができるというのは多少行き過ぎではないかと思いますが、ただそれ以外にやはり何らかのほかの事情が加わつて、どうも偽証の嫌疑が濃いという場合には、やはり調書と証言の食い違いという点は一つの大きな偽証の嫌疑の資料にはなると存じます。従いまして具体的な場合について判断するよりほかないと存じますが、一般の法律事務に携わる人が見て、どうもこれはひどいという感じがあるような場合には、あるいは多少行き過ぎになつている場合もあるかとも思われますので、その点は検察当局にも通じまして十分行き過ぎのないように、会同等の場合に注意を喚起してもらおうと存じております。
#90
○大西(正)委員 私は具体的な例を申し上げて御答弁を願うべきでありますが、それは次の機会に譲ります。お答えも非常に漠然としたお答えでありますので、これで満足することはもちろんできないのでありますが、ただそういつた行き過ぎが相当多くあるのではないかと思われるのであります。そこでただいま御答弁にありましたように、ひとつこの点は行き過ぎのないように、行き過ぎによつて刑事訴訟法の精神が抹殺されるようなことのないように、万全の措置をおとりくださいますようにお願いをしておきます。この問題につきましては、機会を得てあらためて質問をしたいと思いますので、本日はこれで打切つておきます。
#91
○野木政府委員 ただいまの点につきましては、国会でそういう御発言、御要望があつたということを検務局の方に通じまして、会同の際には十分注意を喚起しておきたいと思います。
#92
○石井委員 いろいろと詳細な質疑がありましたので、簡單に二、三点質問をしたいと思います。裁判所法の一部の改正につきまして、訴訟中特に民事訴訟の場合において、三万円までの訴訟物価額は簡易裁判所がやるということにつきましては、力が足らないので問題が起るわけですが、こういうふうな議論が再三にわたつて出たようでありますが、この点についてひとつ裁判所側の御所見を伺いたいと思うのであります。たとえて申しますと土地の返還の訴訟等でありますが、現在訴訟物価額をきめるときに、大体賃料をもつてきめる、こういうことになつておる。ところが現在の農地調整とか、あるいは自作農創設特別措置法とか、こういう法律におきましては、非常に賃料が安くなつておる。賃料が安くなつておればおるほど、借地人におきましては本人のそのものを借りておる価値は大きいのであります。そういうような立場が発生するのでありまして、家屋等においても同じでありますが、ここで訴訟物の土地あるいは家屋とかいうものを、今までのように單に賃料を目安にしてきめるということについては、いろいろと間違いがあるのではなかろうかと思うのでありまして、これらについて裁判所の事務当局等においてはどういうふうに考えておられるか承りたいのであります。
#93
○五鬼上最高裁判所説明員 訴訟物の拡張に伴います簡易裁判所の判事の質の問題、この点につきましては、先ほど来の御質疑に対してもお答えしたように、最近では研修あるいは会同あるいはその他によつて判事の質をよくし、また判事の任用に対しても特段の注意を拂つて、どれだけの事件が移されても処置することに困らないように十分注意をいたしたいと思います。なお民事訴訟の価額の問題につきましては民事片上からお答えいたします。
#94
○關根最高裁判所説明員 ただいま石井委員のお話は、訴訟物価額の決定のしかたが低過ぎるというお話でございましようか。
#95
○石井委員 訴訟物の価額というものは、実際問題として簡易裁判所においてはあまり論議されたことがないので、手軽に扱われておる。そこで実情は、裁判官が見て訴訟手続をきめて地方によこしたり簡易の方によこしたりしておるのが実情のように思います。そこで訴訟物を今までのように家賃とかあるいは土地の賃料とか、こういうことだけによつて、争いがあつた場合にきめられるということになると、実情に沿わない問題が起るのではないか。こう思われるのであります。これについて裁判所においてどういうふうなお考えになつておりますか。
#96
○關根最高裁判所説明員 ただいま石井委員のお話の点でありますが、大体土地の明渡しの訴訟につきましては、訴訟物になるその土地の価格がはつきりしておるところはよろしうございますが、はつきりしておりませんと、あるいは一年の賃料の二十倍というような標準でやつておりまして、その賃料の決定につきましては、なるべく公正なものに従うという方向でやつております。ただ全国の各裁判所における取扱いは大体一定しておりますが、お話のような点が各裁判所の中にはあるかと存じます。その点は会同その他においてなるべく公正な価格に落ちつくようにいたしたいと存じます。
#97
○石井委員 ひとつ裁判所にお願いしておきたいことは、例の土地の価格でありますが、今度のポ政令に基いて買收をする場合におきまして、農地価格の最低価格というものは、一応五千円ばかりのところにきめられたのでありますが、最高がきめられておりません。ところが実際の農地の売買その他いろいろの動き等を見ますと、現在うわさに聞きますと、香川県においては田が一反二毛作になると、十万円ぐらいで取扱われておる。関東地方等におきましては、五万円ぐらいで取扱われておるというふうな実情になつておるようであります。しかるに今度の法律できめられた価格によりますと、大体五千円以上というわけで、最低が政府で買い上げる価格におきまして五千円程度にきめられておる。ここで相当のずれ等が起りまして、この扱い等におきましては、実際の価格というものが非常に値打のあるもので、この裁判の取扱いは、簡易裁判所の裁判官の充実ももとよりのことでありますが、地方裁判所等において愼重に御審議を願わなければなるまい、こう思うのであります。裁判所の方におきましても、よく会同等におきまして御通知置きをして、それに基いて間違いのないようにお願いしておきたいと思います。その点についての御答弁を置きましたらお願いいたします。
#98
○關根最高裁判所説明員 ただいまの石井委員のお話、まことにごもつともでございますので、その御趣旨に従いまして、できるだけ善処いたしたいと思います。
#99
○石井委員 刑事訴訟法の点について少しお尋ねしたいと思います。刑事訴訟法の問題でありますが、旧刑訴事件と、新刑訴事件というものは、大体併合審理をしないような建前でやつておるようでありますが、現在もさような扱いになつておるか承りたいと思います。裁判所側の実例を承りたいと思います。
#100
○岸最高裁判所説明員 旧法事件と新刑訴の事件は手続が違いますので、併合審理をやつておりません。
#101
○石井委員 そこで今度刑事請訟法施行法の改正ということになりますと、今度の扱いにおきましては、旧刑訴事件も相当に新刑訴の扱い方を翫味されて取扱われる、こういうふうになろうと思うのでありますが、さような段階に至つても、旧刑訴と新刑訴の事件を併合して扱われるようなことはなさらない、こういうふうな立場をとつておられるのでありますか、どうですか、この点を承りたいと思います。
#102
○岸最高裁判所説明員 今度の法案で考えられております点は、上告審の問題であります。またルールの方で考えられておりますのは控訴審のことでありますので、どうしてもこれは手続上別にならざるを得ないのではないか、そういうふうに考えております。
#103
○石井委員 今度最高裁判所は別でありますが、審理促推という立場からルールをつくりたいということになつておりますが、これは大体控訴審のルールを中心として、一審においてのルールはつくらない、こういう予定でありましようか。一審あるいは控訴審どつちも旧刑事訴訟法についての部分を制定しようというお考えでありますか、その点を承りたいと思います。
#104
○岸最高裁判所説明員 この刑訴施行法案の結果考えられております案の内容は、控訴審と上告審だけであります。第一審につきましてはこの案とは離れて、すでに実施されております刑事訴訟規則の不備を補いたい。二年余りにわたる経験に基いて、従来の刑事訴訟規則のうち、改めるべき点は改めて、実際に即したものといたしたい。つまり最初の規則は裁判の経験というものを経ずに、新刑事訴訟法ができた当時に、それに合せてつくつております。二箇年後の実施の状況を見て、もう少しルールとしてできる範囲内において、合理的に改むべき点は改めたい、そういう趣旨でこの法の研究は絶えずやつております。
#105
○石井委員 ここで旧刑訴と新刑訴の関係上、特に刑法の連続犯が削除された関係で非常に不公平な問題が起るのでありまして、この点についてはわれわれが刑法の改正をした当時今の佐藤検事総長等も出席されたときに、幾度か指摘されたのであります。連続犯等におきまして、新刑訴、旧刑訴によつて起訴されたような場合におきましては、併合審理ができないので、非常に不利益な裁判を受ける、こういうふうな場合が発生をいたすと思われるのでありまして、その当時連続犯について、さような場合についてはどうするかというふうな質疑をいたしたとき、前に非常に悪質な犯罪があつたが、それがわからない。そうして簡單な連続犯の末端等において処分がある。こういうときには前の事件の方を起訴せざるを得ないような立場になるかもしれない。大体において一度連続犯的なものについて起訴があつたときは、前のようなものをほじくるということはしないというような答弁によつてその当時審議が進められ、了解をしておつたのであります。そこで旧刑訴あるいは新刑訴という場合におきまして、区々に処分を受けるという場合において、やはり今後においても、被告におきましてその立場上から、連続犯が廃止されただけでなく、旧刑訴、新刑法と二法にまたがる関係上の不利益が発生いたすのであります。これらについて何か裁判所においてはお考えを持つておられるかどうか、いろいろとそれらについてのお考えがあれば承りたいと思います。
#106
○岸最高裁判所説明員 それはやはりその裁判所としましては、そういう事件が係属しているということは、同一の裁判所ですとわかりますから、裁判する際に、片一方の方でどの程度の刑が言い渡されているかということは、次に言い渡す裁判の際に考慮されておると思います。それからなお一番問題になるのは、その手続を別にすると執行猶予ができないのではないか。刑法第二十五條の関係で執行猶予ができないのではないかどいうことが一番大きな問題になつておりますが、それは本来だつたならば、一つの手続で行われる。そうすれば執行猶予ができるのが、たまたまそういうような経過的の事柄のために判決が三つにわかれる。そういうような場合には、執行猶予をしてもよろしいというような有力な学説もありますし、また実際の裁判官の間で、そういう見解をとつている人もあります。そういう脈はそう不利益を国民に与えていないと思います。
#107
○石井委員 それでは一応法務府側の意見を承つておきたいと思いますが、裁判所においてさような場合において、一方で執行猶予をする、また一方においても、大体事情を知つておつても執行猶予をする、両方の執行猶予の判決がある時期に確定をいたした、こういうわけであります。そういたしますると、執行猶予の取消しの問題でありまするが、刑法二十六條の場合において、第一号、第三号、この問題にわたりましていろいろと論議が行われると、裁判所でせつかくそういう場合を見はからつて執行猶予を両方においてつけてくれた。しかしこれが刑を執行する段取りになりますると、検察庁におきましては、第二十六條を適用して執行猶予の言い渡しの取消しを請求するというふうな問題が発生する、こう思われるのであります。実際検察庁においては、そういう場合において現在どういう扱いをされておるか。ひとつ承つておきたいと思います。
#108
○野木政府委員 新法事件と旧法事件と別に起訴された場合につきまして、御質問のような場合が起りますので、私どもいろいろ苦慮しましたが、先ほど岸刑事局長が言われましたような解釈が十分なり立ち得るものと信じまして、たしか私が刑事局を去つた後でありますが、刑事局長の方でそういう通牒を出しまして、大体そういう解釈に新法、旧法事件については従つた方がよろしい。従つて執行猶予の場合についても、そういう解釈のもとに取消しの請求はしないというような扱いにしようということで、たしか通牒を出しているように承知しております。
#109
○石井委員 新法、旧法につきましては、大体そういうふうに、裁判所のお考え等にのつとりまして、検察、三局においてもさような扱いをされておるということを働きまして非常に再びにたえないのでありますが、ここで大体犯罪もある程度におきましては、連続犯等においても前から見ますると、悪質性等がなくなりまして、非常に簡單な過誤によつて犯罪を犯すというふうな場面が現われて来ております。ところが、最近の起訴の傾向を見ますると、検察当局におきましては、犯罪の証の仕方が簡單であるというふうな事件は、これは裁判にかかつても簡單に一点がとれるというふうな立場で起訴をしたがる。犯罪の捜査上全部を調べないで、調べ落した場合、あるいはまたその後において軽易な問題が起つた場合にも起訴をするというふうな言葉が多く起つておるのであります。そこでそういうふうな場合におきましても、新刑訴あるいは旧刑訴ということでなく、今後におきまして新刑事訴訟法一本の場合におきましても、新旧が異なつたような場合におきましても、いろいろと連続犯等におきまして、本来旧刑法のもとにおきまして、これは併合審理さるべき筋合いだというような問題におきましては、ただいまのような新刑訴あるいは旧刑訴にまたがつた事件のような扱い方を裁判所並びに検察当局においてもしていただくという場面が、ある場合においては好ましいのではなかろうかと考えまして、今後において、新刑訴において起つた場合においてはどういうふうにお考えであるか、承つておきたいと思うのであります。
#110
○野木政府委員 事柄は検察の起訴方針に関連いたしまするので、直接私の所管からは離れますが、一応私の知つておる程度でお答えいたしますと、新法事件、旧法事件という観点を離れまして、新法だけの事件を考えてみましても、連続犯の規定がなくなつたために、被告人が特に不利益になるというような結果が生じないように、つとめて運用しておるように承知しております。たとえばある事実で起訴したという場合に、他の事実が見つかつても、それはむしろ情状として加味しまして、それをあらためて起訴して、またあらためて起訴いたしましても、審理継続中ならば、それは併合審理で同じ判決ができるということでありますから、被告人に特に不利益にはならないと思いますが、一方が上告審を係属しておるというような場合に、また追起訴すると、いきおい別々の判決になつて、被告人に不利益な場合が生じないとも限りません。従つてそういうような場合には、つとめてあとの方の起訴を避けるなりいたしまして、連続犯の規定がなくなつたために、それだけで被告人に不利益が生ずるということは避ける方針のように運用しておるように承知いたしております。
#111
○石井委員 この点われわれ連続犯の規定を削除するときにおきまして、非常に議論が出まして、そういうことがありましては、被告に気の毒な場面が起る。しかし犯罪の非常に悪質犯が続出したときでありまするとか、特に検察あるいは警察官方面の手簿のときであるからというわけで、過渡的の規定としまして、あの点を削除する必要があるのではないか、こういうふうな考えのもとに立法したわけであります。しかるに最近の動向としましては、割合に新しい検察官等がありまして、これは起訴さえすれば証明が楽であるというふうなものについては、起訴をしたがるというような形になりまして、ある意味において検察庁側あるいは警察官側の立場と、あるいは一般の社会の秩序というものを中心に考えた点から連続犯を削除したのが、最近は被告のために逆に不利益に利用されるというふうな形が現われかかつておるのでありまして、ひとつ十分に法務府等におきましてお考え置きを願いたいのであります。
 それから一点、ごく簡單な、わかり切つたようなことでありまするが、お尋ねしたいのでありますが、これは今度の第三條の二によりますと、上告の期間は二週間、こういうことに旧刑訴の事件においてもなるようであります。ところが旧刑事訴訟法のもとにおいては、控訴判決があつた上告権は破棄できるというふうな形になつておつたのでありますが、今度の新刑訴のもとにおいては上告権破棄というふうなものもありませんが、その扱いはどういうふうになるのですか。それは旧刑訴通り上告権破棄ができることになつておりますか、それとも二週間は破棄ができないのであるか、その点伺つておきます。
#112
○野木政府委員 三條の二に特に書いてある條文以外の点は旧刑訴がかぶつて来るわけでありまして、ただいま御質円の点は旧刑訴と同様と御承知を願いたいと思います。
#113
○猪俣委員 関連して一点だけ伺います。今連続犯の問題が出ましたが、これが廃止されたために、検事が起訴するときにたくさんのごみみたいな半作までみな起訴する傾向がある。ところがあまり事実がたくさんであるために聞取書を全然つくらないで、その起訴事実について調査しない、聞取りをしないで、いきなり起訴をやつておる事案がある。そこであなたは刑事訴訟法の立案者で詳しいのでお聞きするのでありますが、こういうふうな起訴平安について、本人の申開きを全然聞かないで起訴することが、今の刑事訴訟法上一体合法的であるかどうかということです。これが贈賄事件で饗応を受けたということで五十件、六十件も一級告についてざつと事実を並べて起訴しておる。ところがそのうちの三分の一くらいしか聞取書をつくらないで、あとは全然本人に聞かないで全部起訴されて、それが公判になつておる、こういう事案があるのでありますが、こういうことは一体許されることであるかどうか、御見解を承りたい。
#114
○野木政府委員 まず第一に起訴するかどうかを決定するために、十分被疑者の弁解を聞いてから決定すべきものだと思います。従つて証拠歴然たる事実があつて、被疑者が逃走しておるというような、非常にまれな場合を除いては必ず起訴前には被疑者の弁解を聞いて起訴するというのが、相当な道であろうと信ずる次第であります。そして実際もそのように行われておるものと私ども信じておるわけでございますが、もしおつしやるように一部の事実を聞いて他の事実について全然その弁解を聞かれないで起訴するというような事実がありますれば、いささかその部分は妥当を欠くのじやないかと存ぜられる次第であります。ただ実際弁解を聴取したところ、調書にとるかどうかということは問題は多少別個になりまして、ことに新刑訴のもとにおきましては、公判中心主義でありますから、あるいは時と場合によつて調書の方は省略する場合も考えられないわけではないと存ずる次第でございます。
#115
○鍛冶委員 先ほどの規則と法律の点でお尋ねいたしますが、人身保護法の第二條に「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる」そして「何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる」法律はこうなつております。ところが規則の第四條に「法第二條の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。」この「顕著である場合」ということは法律には、書いてない。それから「但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない」参とこうなつております。これは法律に定めない制限を規則によつて定めておるのですが、どういう御見解を打つておられるのでしようか、承つておきたい。
#116
○五鬼上最高裁判所説明員 その脈は民事局長からお答えいたさせます。
#117
○關根最高裁判所説明員 ただいま鍛冶委員からの仰せの人身保護法第二條におきましては「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる」そういたしましてその第三十三條におきまして「最高裁判所は、請求、審問、裁判その他の事項について、必要な規則を定めることができる」とございまして、第二條の請求できるという具体的の場合をルールにまかせておるわけでございます。従いまして第二條の場合を具体的に説明的にルールで貫いた、その書くことは二十三條で委任しております関係から、人身保護規則の第四條におきまして具体化したわけでございます。決して制限するという趣旨ではなく、法律の第二條の請求を具体的にわかりやすくいうわけでございます。
#118
○鍛冶委員 この委任の規定を出すときも、決して法の内枠をかえるべきものでない、適用のためのものをつくるということは念を押してあるはずです。あなたは具体的とおつしやるが、一体顯著である違反と顯著でない違反とはどこが違うか、これはどういうことなのですか。違反は違反でしようが、顯著でなければならぬという制限をあなた方の方で加えられるとすれば、反しておるけれども、顯著でないから、これは拘束からはずしてしまつて、やらないでもいいのだということに一体どこから出て来るのですか。第一にこれから聞きます。
#119
○關根最高裁判所説明員 ただいま鍛冶委員の仰せの点は、これは議論をいたしますと、結局見解の相違かと思いますけれども、当時この第二條そのままの形では結局具体的に請求の場合にはつきりしない点がございますので、それを二十三條でこまかいところは規則で請けという趣旨でこまかいところをルールで書いたわけなのでございます。以上は結局あるいは見解の相違になるかと存じますけれども、われわれは第二條だけではあまりに漠然としておりましてわからない。それがためにこそ国会で第二十三條を設けてルールにまかせておいでになるわけであります。その趣旨を受けてわれわれはルールを立案したわけなのであります。
#120
○鍛冶委員 ルールをこしらえられて悪いと言うておるのではないのですけれども、違反だといいながら顕著でないからということでやらぬということは、法の二條を無視したものではないのですか。私はそれを言うのだ。本法には顕著であろうがかかろうが、違反しておつたらそんなことはだめだとあるのに、違反しても顕著でないからやらぬということは、本法の内容を変更しておるといわざるを得ませんが、その点どうですか。
#121
○關根最高裁判所説明員 ただいま鍛冶委員の仰せの点は、結局人身保護法の第二條で申しますと、具体的に請求する場合の手続はすべてルールにまかせてございます。結局そうなりますとルールで請求の手続をきめますときに、そういう違背の事実が明らかである場合に限つてできる、明らかでない場合はできないという結果になります。おつしやる通りでありますが、実際の面その他から申しまして、その程度のことは二條の精神に反してないという趣旨でルールができ上つておりまして、しかもこれはルールの委員会が、御承知のように最高裁判所規則制定諮問委員会――これには在野の法曹の方も入つておいでになりますし、学界の方もおいでになります。その方々全部の御同意を得て、結局最高裁判所で制定したものでございます。
#122
○鍛冶委員 法律の内容をかえておりはせぬか、こう言うのです。かえておると私は認める。そういうことをだれがやろうが、委員会がやろうが、どなた様がやろうが、やつてはいけないものだとわれわれは考えるのです。顯著であろうがなかろうが、法に違反しておつても顯著でなければやらぬでいいのだ、違反しておるけれども顯著でなければいいのだということは、法の内容をすつかりかえてしまつたことになりませんか、どうですか。それでもあなたの方でかえておらぬとおつしやるならこれは別ですけれども、どなたであろうとかえてはいかぬという前提から質問したのです。
#123
○關根最高裁判所説明員 繰返して申し上げるのもあるいはれ見の相違になるかと存じますが、結局法律の第二條では、そういうふうな制限をしてはいかぬという趣旨に書いてあるとは考えておらないわけでございます。ただ第二條では非常に漠然と書いてございますので、あと細則はルールにまかせております。だから請求をする場合には、どういう場合に請求できるかということがルールにまかしてある、こういう見解であります。あとこれ以上は意見の相違かと思います。
#124
○鍛冶委員 これはどうも驚いたことです。どういう場合といつてどういう場合もない。本法に違反したらやると書いてあるわけです。違反したらやるとちやんときめてある。それを違反しておつてもやらぬ場合をつくるとはどういうわけですか。私はこれ以上議論してもしようがないからこれだけにしておきます。
 その次に行きます。但書に「但し、他に救済の目的を達するに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。」これも大なる制限なのです。本法においてはそういう制限はないはずでありますが、これは本法の内容とかわつておるとはお認めになりませんか。
#125
○關根最高裁判所説明員 鍛冶委員の仰せに対してお言葉を返すようでございますが、但書の点につきましても、先ほど申し上げましたと同様の解釈でルールの立案をされたわけでございまして、法律の第二條では具体的の請求の手続をいたします場合の手続としては不完全なわけでございます。それであればこそルールの委任規定を人身保護決自体がお設けになつたわけであります。しかもその委任の人身保護法の第二十三條をごらんいただきますと、最高裁判所は請求その他の事項といたしまして、請求について必要な規則を定めることができる。従つて請求巨体に触れまして、やはり規則を定めることができる。しかも第二條では漠然としておりますので、それをルールにまかせてある。これはわれわれの方の希望する人身保護法をおつくりになるときに、もう少し詳細につくつていただけば、そういうルールをつくる必要はなかつたのです。それが二十三條のような、案はこういつた委任規定は、ほかにもあまりございませんが、この規定がなければ、やはり詳細に実際の手続をいたします場合の規定を設けられないわけであります。これは技術的なことを申し上げるようでありますが、人身保護法第二條の規定に、最高裁判所の規則で定めるところにより請求することができる、そう書いてあると同じわけなんです。それをたとえば請求であれ、審問であれ、裁判その他の事項について、非常に広い意味の規則制定権を授任されておる。そういたしますと、各規定にそういう最高裁判所の定めるところによりというのを各条文ごとに入れるかわりに三十三條で一括してそういう条文をつくられたわけなのであります。そういたしますと、第二條自体最高裁判所の定めるところによりと書いてあるのとちつともかわらないわけなのであります。従つてどうしてもそういう規定をつくつた、ければ、実際の手続として動かないことになりますので、やむを得ざる必要から出た制定とわれわれは考えておるわけであります。
#126
○鍛冶委員 これはどうもあなたと議論をしても何ですが……。これをつくるときには私も主としてやつたので、ずいぶんその点は確かめてある。請求、審問、裁判、その他の事項について必要な規則を定める。請求にはどういう手続をやるか、だれがどういうことでやるか、そういうことをきめようといつたのです。違反しておるものを軽微だからやつてはいかぬなどということを書けとは――そんなことを委任しておつたら法が骨拔きにされるのです。手続規定を裁判所できめる。こまかいことはこつちでやらぬ。手続規定及び施行細則を裁判所できめるといつたつて、本法そのものの内容をかえろということまで委任するわけがないじやないですか。しかしそれ以上は言つてもしようがないから申しません。それともう一つ大事なことを言います。この人身保護法をつくつたのは、ほかに救済があつても、それにたよつておつてはいかぬのだ、この法律によつて早速ぴしやつとやれ、これがこの法律をつくつた根本趣旨なんです。それをその趣旨をひつくり返して、ほかに方法があつたらそれで、やれということは、まつたく人身保護法を破滅させるものだ。そんなことなら人身保護法なんかつくらなくてもいい。刑事訴訟法の救済方法で行けということはわかりきつている。それではいかぬから、特に人身を保護するために、この法律をつくつて早くやれというのでつくつた。しかるに、その後になつて、ほかにあつたら、それで行け、これでやつちやいかぬ。これは驚いたものだと思うんですが、どうですか。
#127
○關根最高裁判所説明員 ただいまの鍛冶委員のお話は、われわれがルールを立案いたしました当時も、まつたく同様の議論がございまして、われわれもその点十分に議論を尽しましたのでありますが、もし法律の第三十三條に、今仰せのごとく、單なる手続だけのことということになりますと、委任の仕方といたしまして、請求に関する必要な手続の規則と制限さるべき問題ではないかと思われるのでございます。従つて、この委任の仕方は、やはり第二條の規定自体、請求自体をある程度こまかく具体化していいという委任があるものと見られるのではないか。これは当時関係方面ともいろいろ問題のある法律であり、またルールでございまして、そういう点もいろいろございました関係もあり、かつわれわれ十分論議を尽しました上で、結局ああいつたルールができたわけでございまして、二十三條の委任規定をお読みいただけばおわかりの通り、かなり広汎な委任規定であり、第二條は漠然としておりますので、それを具体化するということは許されていいではないかという趣旨で立案したのでありまして、お言葉を返すようでありますが、立案当時の趣旨はそこにあるわけでございます。
#128
○鍛冶委員 今のお話で行くと、そうすると、最高裁判所でそういうことを認めれば、法律の内容がかわつてもいいんだ、こういうのですね。
#129
○關根最高裁判所説明員 たびたびお言葉を返すようでありますけれども、法律の内容はかわらないという見解でございます。人身保護法の第二條と二十三條と合せて考えますれば、二條だけでは漠然としているから、第三十三條と合せてルールをつくれ。われわれの希望いたしますことは、もう少し国会の方で具体化しておつくりになればよかつたのでありますが、あの当時非常に急いで立案せよということになつて、実に当時難澁したのです。新しい法律のことでもございますし、どういうふうにしてルールをつくるべきか、早急にアメリカなり英国なりの法律を調べましたが、アメリカでも英国でも、こんな漠然とした法律じやございませんで、法律自体が非常に詳しく書いてあります。それをあわせて考えますと、結局われわれがこの法律に随従してルールをつくつた形になりますが、合せたものがアメリカなり英国なりの法律と同様のことになつたわけであります。それであの当時、参議院の立案でありますが、やはり根本思想は英国のヘビアス・コーパースに従つてやつたということでございましたので、われわれ急に調べまして立案いたしたのであります。実はあの当時非常に苦心いたしました。もう少し詳しくやつていただけばこういつた御疑問はなかつたのじやないかと思います。今後そういうふうにお願いいたしたいと思います。
#130
○鍛冶委員 速記録を見ればわかると思うが、私との質疑応答で残つておるはずです。とにかく今までの御議論を聞いておりますと、結局二十三條で、法律の内容をかえてもいいと委任してあるものと考えてやつた、こういう御答弁に聞えます。われわれとしては、決してさようなものではない、二十三條はそんなものでないということをここではつきり申し上げておくよりほかありません。
#131
○關根最高裁判所説明員 これで終りにさしていただきたいと思いますが、鍛冶委員のお話で、私の答弁申し上げました点で、ルールで法律をかえる趣旨だということは決して申し上げておりません。結局この人身保護法全体の趣旨、先ほども申し上げました二條と二十三條両方合せますと、二十三條のルールで請求自体を具体化するということが許されておる。従つて法律をかえる趣旨じやないということをたびたび申し上げております。そういう意味に御了解願いたいと思います。
#132
○鍛冶委員 あなたがいくら言われても、われわれは法律の内容は変更しておると認めるから言うのです。これ以上は議論はよしますが、それでは最高裁判所でつくつたルールを変更するときには、どういう手続でするのですか。最高裁判所以外には変更できないのですか。
#133
○五鬼上最高裁判所説明員 ルール制定委員会にかけたものについては、大体改正の場合も制定委員会で改正しております。それからルール制定委員会にかけてない、ごく内部的の規則とか規程とかいうものは、これはただ裁判官会議によつて変更されるということになつております。そういう手続をとつております。
#134
○鍛冶委員 すると、はたからはできないわけですね。変更は、たとえば国会で法律を改正すると同じことに改正するとか、もしくはしてもらいたいというようなことは言えないのですか。
#135
○五鬼上最高裁判所説明員 それは適当と認めれば、ルール制定委員会にかけて改正するということになると思います。たとえば刑事訴訟規則の改正などは、各地の意見を求めて、その意見に基いて、事務当局で制定諮問委員会に申告して、そうしてルールを作成するという形になつております。
#136
○鍛冶委員 すると、重大なことにぶつからざるを得ない。われわれがここでいくら一生懸命やつて法律をつくつても、最高裁判所のルールでかえたら手がつかぬ。あなた方はわれわれのつくつた法律は最高裁判所でいくらでもかえられる。これで憲法四十一條はさしつかえないですか。
#137
○五鬼上最高裁判所説明員 先ほど来申し上げておりますように、法律をルールをもつて改正するということは、港津の委任のない限りはありません。
#138
○鍛冶委員 すると、また元にもどるが、二十三條は内容をかえてもいいと書いてあるのですか。三十三條以外にはないでしよう。
#139
○五鬼上最高裁判所説明員 人身保護法の点につきましては、關根民事局長から申し上げましたが、結局御見解の相違ではないかと思います。
#140
○石井委員 今までに規則と法律について非常に長い間論議して堂々めぐりしておるわけです。そこで法律をつくつた後に規則にまかせる場面が多いですが、裁判所においては規則制定について、一般の規則制定と、それから民事規則制定、刑事規則制定と委員会が三つあると承知しておりますが、大体そんなことになつておるのでしようか。
#141
○五鬼上最高裁判所説明員 ただいまの石井委員の仰せになりましたような委員会、そのほかに家事審判所規則制定の委員会がございます。
#142
○石井委員 大体その構成メンバーはどんなふうになつておりますか。
#143
○五鬼上最高裁判所説明員 今資料がないのではつきりしたことを申し上げかねますが、大体裁判官、検察官、弁護士、それから法律学者というような人で構成いたしております。そうして弁護士の方は日本弁護士連合会方面に連絡いたしまして、その方面から代表者を出していただいております。
#144
○石井委員 ただいまの事務総長の御答弁によりますと、国会議員が援けておると思われるのでありますが、国会議員も少し入つておつたように考えますが、いかがでしよう。
#145
○五鬼上最高裁判所説明員 実は国会議員の方にはぜひ入つていただきたいので、刑事訴訟の規則の委員会等には一応国会の方にお願いして入つていただくことになつておつたのでございます。ところが何か国会法の規定によりまして、国会議員は行政官庁の委員または裁判所等の委員にはなれないということで、すでに御承諾を得たのも取消したような実例がありまして、この点は、もし国会法で許されるならば、われわれはぜひ御連絡の都合上からも入つていただきたいと思つております。
#146
○石井委員 ただいま規則制定委員の関係等が、事務総長の御答弁をもちまして非常に明瞭になつたのでありますが、その規則制定委員に、立法府の国会の代表が発言の機会を得ないというこぶ、今回のような、いろいろと規則等についての論議を発生するようになつたのであろうかと思います。国会としましても、これについて何か意見を聴されるような機会を持つようにしなければなるまいと思うのでありますが、裁判所においては、それについてどういうお考えを持つておるか、最後に承つておきたいと思います。
#147
○五鬼上最高裁判所説明員 裁判所側としては、もとより国会との連絡その他からして、国会法の規定が改正されるとか、その他の処置が講ぜられた場合には、委員にお入りいただき、連絡の方法を講じたいと思います。
#148
○猪俣委員 百会で今の決を改正しましたら、あなた方はやはりルールを改正されるのですか。
#149
○五鬼上最高裁判所説明員 裁判所の規定には、別段国会議員を除外するというようなルールはございません。
#150
○猪俣委員 いや、そうではなく明らかならざる立法をしたために、皆さんの方は委任を受けたと思つてルールをつくつた。ところがそのルールが本法の内容を変更したように見える。そこで本決を国会においてもつと明確に改正した場合には、そちらのルールは当然改正されるかどうか、こういうことです。
#151
○五鬼上最高裁判所説明員 先ほど来申し上げておりますところでありまして、法律が改正になりまして、ルールがそれに反するようなルールがありましたら、もちろんそのルールは改正いたしたいと思います。
#152
○梨木委員 今の問題に関連してお尋ねいたしたいと思うのでありますが、私の研究したところでは、人身保護法が人身保護規則によつて骨拔きにされたと見ておりますが、一体この人身保
 法が施行になりましてから、この法律により救済を求めた実例はどれくらいありますか。
#153
○關根最高裁判所説明員 ただいま梨木委員のお話の点は、大体この法律が施行されましてから、全国で三十件くらいの請求がありまして、その中には刑事勾留が違法であるということを前提としたもの、あるいは親子関係のもの、夫婦関係のもの、いろいろございまして、結局そのうちで認められましたのは、ただ一件親子関係の事件で、たしか広島地方裁判所で認められた事件がございました。その他は大体原告側の請求が立たないことになつております。もつと多くていいのではないかという考え方もありますが、われわれが予想しておりましたところから考えますと、大体英国などの例から見ますると、割合によけい出ているのではないかというふうに考えられるわけでございます。
#154
○梨木委員 そこで刑事勾留にかかるもの、これが私大部分ではないかと思うのであります。私はやはり人身保護法の第二條から行けば、刑事勾留にかかるものについても不当なもの、これは法律上正当な手続ということになつておりますが、こういうものについても救済を認めなければならないというふうに考えております。そしてこれが法律の精神だと思うのであります。ところが規則の第四條によりまして、これを骨拔きにしている。こういうことになつて参りまするから、人身保護法による保護規定の救済を求める事例が少くなつて来ているのだろうと思います。そこで開きたいのでありますが、今三十件とおつしやいました中で、一つ認められた。他のものは中立人側の却下に終つているということでありますが、その中の大部分は刑事勾留にかかるものではないかと思います。却下の理由、それがおわかりになりましたら聞かしてもらいたいと思います。
#155
○關根最高裁判所説明員 ただいまの梨木委員のお話の点でありますが、私大体三十件と申し上げましたのは、実は計数を見ませんで申し上げたので、恐縮でありましたが、三十件と申し上げましたのは、大体刑事勾留についての分が二十七件ございまして、それが頭にありましたために申し上げたのでありますが私人間のものが十五件、それから行政処分に対するものが一件ございまして、そのうち却下の理由は、請求の手続が適法の要件を欠いているのがおもでございまして、却下の分がそのうち約十三件、それから取下げの分がかなりございます。これが十四件ばかりございました。それから実体に入りますのは割合に少いわけでございます。先ほど申し上げましたように、認容されたのが一件、これは親子関係の事件でございました。以上であります。
#156
○梨木委員 適法の要件を欠いたのは、私はおそらく規則の第四條、これで要件を欠いているということで欠いているのだろうと思いますが、いかがでしようか。
#157
○關根最高裁判所説明員 結局第四條の手続がないというものもございますし、それから請求の様式を欠いているというようなのもあつたと思いますが、その一々の具体的の事例は、ただいまちよつと資料がございませんので、この程度にしていただきたいと思います。
#158
○梨木委員 私はこの人身保護法の実施状況をもう少し詳しく知りたいと思うのでありまして、今質問いたしました、たとえば刑事勾留にかかるもの二十七件、それから私人関係とおつしやいましたが、これが十五件に、行政処分が一件、この却下の理由についての資料を提出していただくようにお願いしておきます。
 それから次に法案の質問をいたしたいのでありますが、刑事訴訟法施行法の一部改正、これは今までの委員の方からもおそらく質問があつたと思うのでありますが、この改正によりまして、上告に制限が加えられて来るわけでありますが、提案理由の中にも、今回の改正案は多少被告人の利益に影響するところがある、こういうふうに認めているわけであります。弁護士会から出ております意見害によりましても、既得権を害する。特に被告人といたしましては、旧刑訴によつて審理を受けるということを前提にして、被告人の利益を保護するもろもろの防禦の方法が講ぜられて来ているわけであります。それがこのような改正によりまして、突如として上告の分について新法によるということになつて来ては、これは非常に基本的な人権の保護というところに欠けるようなことになると思うのであります。この理由によりますと、「他面著しく正義に反するものであれば刑の量定事実誤認についても原判決を破棄することが認められる等従来よりも被告人に利益となる面もあり」というようなことを書かれてありますが、しかし基本的には一審、三審におきまして、旧刑訴の手続のもとに審理が行われて来て、それを前提としてやつて来ているのでありますから、やはりこういう大きな改正が途中で行われることは、非常に被告人に不利益だと思いますが、この点どう考えておられるか、見解を聞きたいと思います。
#159
○野木政府委員 ただいまの点につきましては、すでに他の委員から御質問があつたところでございますが、重ねて御答弁いたしますれば、本案におきましては、将来下級者の判決があつて上告しようとするものについてだけ、上告を制限しようとするものであります。この場合には、将来旧法による上告をなし得るであろうという、抽象的な一般的な期待が、裏切られることになるのじやないかという点は、一応お説のようになるかと思いますが、しかしそれはただちに既得権の侵害という点にまでは至らないのではないかと信じているわけであります。すなわち手続につきましては、訴訟手続不遡及の原則というものが存在していないわけでありますから、今言つたように、既得権の侵害というように強く言えないと存ずる次第であります。なお新法の一審、二審の手続と旧法の一審、二審の手続と比べて、どつちが被告人のために利益であるかという点は、旧法の方が必ずしも非常に利益であるとばかり言い切れないと存ぜられるのであります。というのは、旧法は覆審の構想をとつておりますので、一審はなるほど新法に比べると、多少丁重でないという点はあるいは言い得るかもしれませんが、二審ではさらに調べ直されるという手続は存するわけで、ありまして、第二審を新法のように切りかえますれば、これははなはだしく被告人に不利益だと言い得ると思いますが、第三審は旧法通り存しておきますれば一まず一審、二審全体として考えますれば、この切りかえによつて非常に被告人に不利益になるとばかりは必ずしも言い得ないと思う次第であります。しこうして上告審を切り心えることによりましては――切りかえると申しましても、全部上告審の手続は新法によるというわけではありませんで、旧法の基盤が残つておりまして、それに上告審の粒々の規定を取入れるということであります。これによりますと、被告人の利益になる点もあるわけであります。一番大きな点は、御指摘の刑の量定、事実誤認、再審の事由のある場合には、審査の対象になりまして、正義に反する場合には破棄されるという点が、一番理論的には大きな被告人の利益になると思います。と申しますのは、なるほど旧刑事訴訟法の場合においては、上告理由になつておりますが、すでに刑事訴訟法応急措置法によつて、再現の理由は上告理由から落されておりますので、旧法事件は旧法によるといいましても、こういう点は上告理由になつておらないのであります。ところが新法の上告にすれば、こういう事由があつて最高裁判所が正義に反するものと認めた場合には、最高裁判所が破棄するという点がありますので、この点が実質的には被告人の他の不利益を補つて余りあるものと思われますし、なおそのほかに上告提起期間が五日から十四日に延びること、それから検察官の上告の場合に理由がなかつたという場合には、上告費用の補償が更けられるということ、それから上告判決の訂正判決の制度は認められておるということ、そういうような利益の点もありますので、今度の案によつて被告人に非常に実費的だ不利益を与えるというようなことはまずない。そして一方旧法事件を特に迅速に処理しなければならぬような国際的な情勢もありますので、かれこれ勘案してみれば、この程度の変更はまずもつて両者の調和をとる意味において、まずまず適当ではないかと存ぜられる次第であります。
#160
○梨木委員 今いろいろおつしやいましたが、しかしどうですか、この提案理由の中にも実はありますように、改正しようというのも、ざつくばらんに言えば、旧法事件は簡單にもう片づけてしまうというところに、私は眼目があるように思われてしようがないのです。というのは、提案理由の第二項にも、実は最高裁判所に非常に事件が輻輳している。旧法事件の未済が千件にも上つている。未決増加の状況にある。これを何とかして早く片づけようというところに、この施行法の改正の眼目があると思います。私はここに人権の保障の点において心配なものを感ぜざるを得ないのです。簡單に片づけよう。なるほど新刑訴の、正義に反するとか、あるいは刑の量定、事実誤認というようなことが、上告理由にできるようになるということは、被告の利益のようにおつしやいますが、しかし今までの例によつても、最高裁はわれわれの感じているところでは、こういう理由でやつても、もうあつさりとこれは上告を棄却してしまつて片づけているように思われてしかたがない。問題は、旧法事件を簡單に片づけるためにやつて来ているのじやないか。この点はどうですか。提案理由にもそのことを白状している。ここに問題があると思いますが、これをどう考えるか。
#161
○野木政府委員 旧法下作を全体として審理を促進するというねらいであるということは、その通りでございますが、ただお言葉のように何でも簡單に片づけるという言葉で表現いたしますと、多少この真意から離れるのではないかと存ぜられる次第であります。と申しますのは、旧刑事訴訟法におきましては、比較的手続の可否のような点が上告理由になつております関係上、そういう点を理由にして上告して来るという例も非常に多いように承知いたしております。しかもそれは真にそういう理由であれば、また別問題でありますか、いろいろそういう点に関連して上告する事件も多い。ところが新法におきましては、もつと事柄を実質的に考えまして、最高裁判所の憲法問題の解釈をきめるとか、あるいは終審裁判として法令の解釈を統一するという重要な使命を考えまして、むしろ上告審を合理的ならしめるというのが、新法の上告審の趣旨であろうと存ぜられる次第であります。従つてこの上告審の手続を合理的ならしめる結果、比較的ささいな手続の点よりは、絶対的上告理由――絶対的上告理由と申しますと、それが判決に影響あろうがなかろうがそれで破棄するというのが、絶対的上告理由でありますから、そういう絶対的上告理由を少くする。そういうことに上りまして、上告審の手続を合理化するというのが、本案の理論的基礎になるものと序ずる次第であります。
#162
○梨木委員 最高裁判所に非常に事件が多くなつたために、現在の十五人の裁判官では非常に負担にたえがたいということは、よくわかりますが、しかしこれはこの前民事訴訟法の上告事件制限の審議の際にも問題になつたことでありますが、最高裁判所の裁判官十五名、これは以前の大審院時代ならば、この倍も裁判官がおつたわけであります。その大審院時代の裁判官よりも減つて来ておりますから、忙しいのが当然です。しかも今度の最高裁判所は、憲法によつて違憲の問題を扱うということになつて来まして、そしてさらに上告の事件を扱うというようなぐあいになつておるために、忙しくなつて来ておるのであります。そういう点につきましては、私は最高裁判所が非常に重要な憲法の解釈の問題を扱つておるからという理由で、他の上告事件をややもすればおろそかにすることになつては、これは非常に問題だと思う。そしてその傾向がどうも最高裁判所の判決の中に現われて来ているように思われてしかたがないのであります。そこで上告事件、それから憲法の問題を扱うこのぐあいと、これについて何か最高裁判所の方で、調和とか調節をはかる脈について、特別な研究が進められておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
#163
○五鬼上最高裁判所説明員 この最高裁判所の組織、権限等につきましては、これは設立当時からいろいろ問題がありました次第ですが、とにかく既存のように十五人の判事をもつてやるというところに落ちついたのであります。さて実施しまして、三年間の実績を見ますと、非常に事件が多い。判事の数が少いのに事件が多いという点、その他最高裁判所の機能等から考えまして、将来の司法制度全体の問題として、どういうようにやつて行くかということは、多少最高裁判所の事務当局あたりでは考えつつありますか、まだ具体的に申し上げるまでに至つておりません。
#164
○梨木委員 私たちが地方におりまして、非常に経験することなんでありますが、終戰後顯著な事例といたしまして、裁判官の異動が非常に少いのであります。そのために、案はあまり能力の点について、人民の側から不足な裁判官を配置された地方におきましては、権利の保護の点について非常に遺憾の点が多いのであります。そこで最高裁判所に向いたいのでありますが、ぼつぼつ裁判所におきましても、裁判官の官舎が充実して来ておるように見受けます。そこでこの裁判官の異動ということをどの程度に考え、どの程度に実行しようとお考えになつておられるか、またそれを実行する上におきまして、どういうところに支障があるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
#165
○五鬼上最高裁判所説明員 御承知の通り、下級裁判所の判事の任期は十年でございます。裁判官がある一定の裁判所に裁判官として任命をされますが、なるべく出勤しないのが、元来裁判所の法則ではないかというように考えております。従つて身分の保障とかいうような規定もございまして、そういうような点から、やはり司法権の独立というような点を考え合せまして、あまり異動を頻繁にすることは、ある場合には、また弊害も起る場合も予想されるのであります。現在の状態において多少出動が行われつつありますのは、やはり住居の事情とか、その他いろいろ裁判所全体の人事交流というような点から行われておりますが、一般行政官ほどそうあまりひどく異動ということは行つておりません。
#166
○梨木委員 実は地方におきまして、あまり素質のよくない裁判官がそこに配置されますと、実際そこの人民は迷惑するわけなんです。これは私はもう少し最高裁判所におきましても、もちろん裁判官の身分の保障の点との調和がむずかしいのでございましようが、しかしこの点につきましては、新憲法施行前におきましても、やはり裁判官の異動というものは、当時の憲法下の裁判官の身分の保障があつた際におきましても、行われておつたのであります。ところが終戰後の状態を見ますと、住宅の関係もあるかもしれませんが、ほとんど異動しておりません。こうなつて来ますと、非常に何か縁故のある人たちが、たとえば自分が生れた郷里であるとかいうようなところの裁判官に、主としてなつておるというような傾向が多いのじやないかと思うのであります。そこで根を張つてしまつて動かないというような傾向が出て来ますと、実際地方では非常に迷惑しております。だからこれは、実情を弁護士会あたりから聴取していただいて、もう少しこの点は考えていただきたい。特に簡易裁判所の場合におきましては、その地方の人を深川しておるのであります。これは簡易裁判所の特質にもよるのでございましようが、相当に弊害が出て来ておると思います。その結果、裁判に対する威信とか、あるいは信用というものを失墜する傾向も出て来ておると思うのでありまして、この点は最高裁判所におきましても実情を把握されまして、適当な方法を講じていただきいということをお願いしておきます。
#167
○五鬼上最高裁判所説明員 裁判官の採用、ことに簡易裁判所の判事の採用につきましては、なるべくそういう縁故のないところへ行つてもらうようにつとめております。しかしながら弁護士等で長い間弁護士をしておつて、功成り名を遂げられた方で、たとえば東京においてそういう方がおられて、簡易裁判所へお入りになるという場合に、弊害がないと認めればその土地に採用いたすような実例もございます。なお先ほど地方の方には、あまり有能でない裁判官というお言葉がございましたが、これは有能か無能か見方のいかんによりますが、近ごろは裁判官も新しい制度、新しい法律の研究に、そしてまた絶えず新しき知識を得るために、東京において会同をやつております。ことに最近は各所長まで研修所に入りまして研修をやつておりますので、お古典のように、将来はあまりお尋ねのようなことは少くなるだろうとわれわれは確信しております。
#168
○梨木委員 こういうことが起つておるわけなのであります。つまり刑事裁判におきまして、ある裁判官にかかると非常に重い、これは一つの定評になつておるわけなんです。そこで私は最高裁判所といたしまして――裁判官々々々につきまして、この人は刑が重いという、何か裁判の刑の量定におきまして、一つの傾向を持つておるということは、これは事実であります。こういう点については、もちろん可決権の独立の点から、最高裁判所といたしましてはどうごう指揮するわけには参りますまいが、しかし今おつしやつたような研修とか、いろいろなことが行われておると聞きますし、また裁判官会同のような場合、あるいは最高裁判所長官が訓示をするというような形において一つの修養の機会を持たれておるようでありますが、この点につきましても、どうも裁判官によつて重い、軽いということが長岡におきまして一つの定評にまでなる、また弁護士会におきましてこれが定評になるようにまでなつて来たのでは、これは相当問題であると思うのでありまして、やはり裁判官のそういう刑の量定なんかの面におけるところのやり方についても、相当重大な関心を拂つて、適当な研修を経てうまくやつて行くように、配慮を願いたいということをお願いしておきます。
#169
○五鬼上最高裁判所説明員 個々の裁判におきましての刑の量定の問題につきましては、これは控訴上告の道が開かれておりまする以上、とやかく最高裁判所は申し上げることはできませ
ん。裁判所制度全体といたしましては、先ほど来申し上げましたように、一日一日と改善されつつあるということを申し上げてお答えといたしたいと思います。
#170
○安部委員長 本日はこの程度にとど
めまして、明日は午前十時開会いたし
ます。
 これにて散会いたします。
    午後六時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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