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1950/12/06 第9回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第7号
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1950/12/06 第9回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第009回国会 法務委員会 第7号

#1
第009回国会 法務委員会 第7号
昭和二十五年十二月六日(水曜日)
    午前十一時二十三分開議
 出席委員
   委員長 安部 俊吾君
   理事 押谷 富三君 理事 田嶋 好文君
   理事 猪俣 浩三君
      鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君
      花村 四郎君    牧野 寛索君
      松木  弘君    眞鍋  勝君
      大西 正男君    石井 繁丸君
      田万 廣文君    上村  進君
      梨木作次郎君    世耕 弘一君
 出席政府委員
        警察予備隊本部
        長官      増原 恵吉君
        検     事
        (法務府法制意
        見第四局長)  野木 新一君
        刑 政 長 官 草鹿淺之介君
 委員外の出席者
        議     員 庄司 一郎君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局民事局
        長)      關根 小郷君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局刑事局
        長)      岸  盛一君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
十二月六日
 委員小澤佐重喜君及び北川定務君辞任につき、
 その補欠として牧野寛索君及び飛嶋繁君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十二月五日
 夕張町に簡易裁判所並びに検察庁設置の陳情書
 (三重県名賀郡夕張町長北田藤太郎外一名)(
 第二三〇号)
 浜松市における不当強制執行に関する陳情書(
 浜松市旭町五十二番地荒熊隆司)(第二五八
 号)
 裁判所書記官及び少年調査官給與引上げに関す
 る陳情書外二件(山形地方家庭裁判所々長阿部
 勇外五十名)(第三二一号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一三号)
 刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一四号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一五号)
 訴訟費相等臨時措置法の一部を改正する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)(
 予)
 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改
 正する法律案(内閣提出第二七号)(予)
 検察行政及びこれと関連する国内治安に関する
 件
    ―――――――――――――
#2
○安部委員長 これより会議を開きます。
 日程によりまして、裁判所法の一部を改正する法律案外四案を議題といたします。
 この際お諮りしておきますが、本日の議題に関し、裁判所より出席説明の要求があります場合には、随時これを許すことにいたしたいと思いますが、御製議ありませんか。――御異議ないものと認め、そのようにとりはからいます。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 判事補の職権の特例等に関する法律について、第一に伺いたい点は、改正の第一でありまする「「技術院参技官」の下に「特許庁の審判長、審判官若しくは抗告審判官たる通商産業事務官、電波監理委員会に置かれる審理官、」を加える。」こうありますが、これを加えようとせられる根本理由をまず伺いたいと思います。
#4
○野木政府委員 まず特許庁の審判長、審判官もしくは抗告審判事たる通商産業事務官でございますが、これらのものは工業所有権に関する審判及び抗告審判に関する事務をつかさどつておるものでありまして、現在の判事補の職権の特例等に関する法律におきましても、すでにこれと同じ事務を取扱つておりました「特許局若しくは特許標準局の抗告審判官若しくは審判事たる特許局事務官」という名前のもとにおいて年限の通算がいたされておるわけであります。その後官庁機構の改革によりまして名前がかわりましたので、この際整理的の意味でこれをつけ加えたわけでございます。それからいま一点の電波監理委員会の審理官でございますが、実質的に新しく加わつたのはむしろこの電波監理委員会の審理官でございまし、これは先般需波監理委員会が設けられまして、そこに審理官という制度ができたわけであります。その職務の内容を概説いたしますと、この審理官は電波監理委員会の処分に対する異議の申立てを第一審裁判所に準ずるような手続で審理して、その審理の結果、意見書を電波監理委員会に提出します。電波監理委員会は異議の中立てに対する決定権を有しておるのすでありますが、その決定は審理官の審理の調査及び審理官の意見君に基いて行われる、そういうことになつておるのであります。そうしてこの処分に対する訴えは、東京高等裁判断の專属管轄となつてお石のであります。以上は電波決八十七條以下等に出ておるわけでありますが、こういう仕組になつておりまして、この審理官はある程度準司法的と申しましようか、法律專門家をもつて充てるというような性質の職にたつております。そうして電波監理委員会の方からも、審理官にあるいは裁判官もしくは裁判賞等の経験のある人を充てる場合に、せめて年限の通算の規定でも入れなければ、なかなか人を得られないから、年限の通算の規定を入れてもらいたいという要求もありましたので、その実体を考えてみますと、ただいまのようでありますので、入れてしかるべきものと存じ、ここに入れたわけであります。そのような意味合いにおきまして実質的に新しく加わりましたのは、電波監理委員会の審理官でございまして、特許庁の審判官もしくは抗告審判官たる通商産業事務官というのは、すでに前にも通算されておつたのが、その後官庁機構改革によつて名称がかわりましたので、その整理的の意味でここにつけ加えたのであります。
#5
○鍛冶委員 政治的意味ということは……。
#6
○野木政府委員 整理的意味です。
#7
○鍛冶委員 そもそもあの法律のできるときからわれわれは議論したのですが、一体こういう人が判事たるの資格を得るのに通算し得るという根本観念からも承りたいのですが、裁判官たるに適したる仕事をしておると思つておいでになるのですか。またそうでなければそういうことはできぬと思うのですが、その点はいかがですか。
#8
○野木政府委員 これらを通算するにつきましても、その前提におきまして、元裁判官の資格を持つておつた者とか、あるいは今後は司法修習を終えた者とか、そういう者がその後こういう職務についた場合に通算するというのでありまして、全然裁判官の資格も、旧構成法による判事等の資格もない、あるいは司法修習を終えたことのない、そういう全然しろうとが、こういう審理官の職についているからといつて、それをすぐ通算するというわけではないのであります。そうしてこの審理官の仕事というものは、日本の制度では主だそこまですぐには行きかねるようでありますが、聞くところによりますと、英米ではこの審理官の審理というものは、大体法廷と同じような仕方をしているというような話なのでありまして、これもそういう英米のまねをしまして、電波監理委員会の審理官という制度もできておるようでありまして、審理官というものは相当訴訟手続に準じたような審理をいたしますので、現在年限を通算せられておるほかの職と比べてみて、ほかの職の方か年限を通算されてしかるべきものであるならば、これもまたしかるべきものである、そういうように存じておる次第であります。
#9
○鍛冶委員 それはその程度にしておきます。その次に伺いますが、その次の、これも司法修習生の修習を終えた者ですが、衆議院または参議院の法務委員会專門員、同調査員または法制局参事等、こういうふうになつておりますが、これもどういう理由でお入れになつたのですか。
#10
○野木政府委員 この三條の二に掲げてありまする職務は、いずれも法律專門的の職務でありまして、いわば法務府事務官の職と似ておりますのみならず、すでに第二條の現行法において、裁判所構成法による判事または検事たるの資格を有する者がこれらの職にあつたときは、法務府事務賞の在職年数とみなされておるわけであります。ただ今までは司法修習生の制度はできて間もなくでありましたので、司法修習生の修習を終えた者で、こういうような職につくという者がなかつたわけでありますが、だんだん司法修習生の制度ができて時間がたち、司法修習生の修習を終えた者で、こういう職につくという場合も必要性が出て参るものと存じますし、また実際国会の法制局の方からも、こういうものを入れてほしいというような要望もございました次第なので、三條の二の規定を新設したのであります。従いましてこの三條の二の規定におきましては、司法修習生の制度ができてから後にある官職だけを入れまして、その以前にすでに現在廃官になつておるような官職は、ここに掲げてないわけであります。その点で第二條に掲げてある官職と少し差異ができておりますが、すでに現在廃官となつておるものを、将来に向つて可決修習生の関係では通算する現実の必要が起りませんので、それは落したという点で、多少差異はありますが、趣旨は第二條で認められておるものと同様でございます。
#11
○鍛冶委員 それではなおさら承りたいのでありますが、こういう仕事をすれば、裁判目たるにふさわしい経験を得たものとお認めになりますか。
#12
○野木政府委員 その点はつの根本問題といたしまして、いろいろ御議論のあるところと存じます。ただ私どもといたしましては、すでに現在の裁判所法で、いろいろの裁判官、警察官、弁護士以外の職にある者につきましても、通算の規定が認あられており、またすでにこの判事補の職権の特例に関する法律におきましても、やはり同じように通算の制度が認められておるわけでありまして、そのあとの権衡を考えますと、すでにそれらで認められておる限度におきましては、やはり認められてしかるべきではないか、これはまた判事の任用制度を根本的に考え直してみれば、これは別の考えがあるいは成立ち得るかとも存じますが、現在の裁判所並びにこの職権特例法等を基礎にして考えてみますと、ただいまの案に盛りました程度ならば、まず均衡を得てるものと存ずる次第でございます。
#13
○鍛冶委員 現在の法律の特例かあるということを引用になりますが、あれを入れるときに法務委員会の議論があつたことは、あなた方十分御承知だと思います。しかるにその議論のあつたものを、入つたからといつて、もう一歩進めていいのだということになれば、これはどこまで行つても際限のないことであります。その根本は、この仕事が判事たるにふさわしい仕事であるということでなかつたら、これは拡張できぬと私は心得ます。それをあなた方は、これでも判事にふさわしいものだと心得ておられるのかどうかということを私は聞きたい。そうでないのならば、入れるべきものでない。むしろ今のものでも下げてやらなければならぬとわれわれは考えておるのにあるのだから、ふさわしくないかもしれぬけれども、入れてやるのだということにたりますと、どこまでも入れることになりますが、その点を日われわれは聞きたい。判事というものは偉いものだというのには、従来のような修業をして来なければいけないものを、ほかのことをやつておつても判事になれるのだということになれば、判事が偉いのだという特権がなくなると私は考えます。その点はいかがですか。
#14
○野木政府委員 御指摘の点は裁判官任用制度の根本につながる問題で、ございまして、まことに重要な点と存ずる次第であります。しかしながら現在の裁判所法の制度及びすでにできてをる職権の特例に関する法律を勘案してみますると、ただいます案に盛りました度のものは、特に今までのわくを非常に拡張するという趣旨には考えられないで、むしろ多少その間を調整するという程度に存ずるわけでございますが、まずまずこの程度ならばさしつかえないものと信ずるわけでございます。ただ御承知の通り将来裁判官の任用制度をどうするかという根本的問題を考えまする場合には、この制度もあるいは全般的に再反省する機会もあると存じますが、ただいまのところは先ほど申し上げたように考えておる次第でございます。
#15
○鍛冶委員 法律に携わつておるというとこるから入れられるならば、それじやもうつ承りたい。司法修習生を置いた近ごろの古若者は判事補なんて仕事もできないし、あんなくだらないものはない、そんなものをやるよりか、おれはうちでひとつ勉強をしてやるその方がかえつていいと言つて、かりに毎日図書館にかよつて勉強をしているものとすれば、それを立証すれば、このうちへ入れていいと思いますが、それを入れますか。
#16
○野木政府委員 ただいまの点、御意見のほどは拜聽いたしますが、私どもこの年限通算の問題を考えました上を見ましても、実際におきまして、そのようだ議論は現実に起つたことはありませんし、またおそらく一般の法律的知識を持つた者の常識から考えで見ましても、まずまずそのようなものを通算してしかるべしという議論は、非常に特異な議論をする人は別問題として、まずないのではないかと存ずる次第であります。
#17
○鍛冶委員 私は極端な例を言つたのだが、理論上はそうなると思うから言つた。それじや、こう言いましよう。ほんとう判事になろうと思う人は、こういう職にはめつたにつかぬと私は思う。かりにこういう職についておる人がおつたとしたら、その人には気の毒かもしれないが、おそらく収入の点から、判事補をやるよりも、この方が収入があるということで行くのだと思う。そうでたければ行きませんよ。それ以外に考えられない。そうして何年だから判事にしてくれと言うなら、修習生を終えて十年やらなければならないという規定が、すべて無意味になります。こういう点はどういうふうにお思いになりますか。
#18
○野木政府委員 お言葉のような現象が生じましたならば、まことに実際上不都合が生ずるものと存じますが、少くとも現在の給與制度におきましては、むしろ判事補の方がやや上にあります。たとえば現実に電波監理委員今の審理官というようなものをとつてみましても、たとえこの通算の規定が付きても、よほど懇請されても、給與の関係で不利益になりますから、行く人がないのじやたいかと存ずる次第でありまして、せめて電波委員会につき出しては、通算の規定を置いたらどうというような点から出発したわけで中ります。
#19
○鍛冶委員 電波監理の方はそのようなことがあるかもしれないが、根本問題を言うのです。
 私が最後の結論として伺いたいのは、裁判官は他の行政官よりも偉いのだ。しかして待遇もよくせなければならぬのだ。この観念はあなた方も今日なお持続しておいでになるだろうと思いますが、まずその点から伺いたい思います。
#20
○野木政府委員 新憲法全体の精神からいたしまして、司法権は非常に尊重されるばかりでなく、司法権の中核とたるものは裁判事日でございますから、裁判官の地位もできるだけ高め、従つてその裁判官の報酬も財政の許す限りできるだけ高くしたいというのが私どもの念願でありまして、この点は当委員会の御意見と同じものと信じておる次第であります。
#21
○鍛冶委員 そこで裁判官が偉いというのは、実際に偉くなければ、ただ偉い偉いと言うだけではいけないのであります。ほかの行政官と同じ進み方をしておつて、私は裁判官だから偉いのだといつても通らないと思う。してみれば、裁判官の特別に偉いのは、裁判官にこういうことがある、こういう違いがあるという特長がなければ言えぬわけであります。行政官と同じようなことをやつていても、できるんだ、そういうことを言うこと自身が裁判官が偉くないんだということになると私は思う。こういうことを憂うるから私は言うのです。そういうことをやめて、裁判官になるには、修習生を二年間やつて、あと十年間たつてやつと裁判官になるのだということがなければ、特別の待遇にしてくれといつても国民は許しませんよ。それを一つも言わないで、ただ楽な方がいいのだということでは、あなた方自身裁判官を偉くないものにするものだと思いますが、この点はいかがですか。
#22
○野木政府委員 これらの点は、裁判官の任用資格を考える上におきまして、まことに貴重な御意見と存ずる次第でございますが、この法案におきましても、單に資格を與えるというだけでありまして、現実にその人が適当な人格、識見を備えて、裁判官たるにふさわしい学識を備えないならば、裁判官に採用せられないことになるわけでございまして、少くとも現在の裁判所法、職権特例といいます法律の全体の立て方を見ますと、今度のはある程度はまずまず調和がとれていると言えるのじやないかと存ずる次第であります。また任用制度をさらに根本的に考え直すという場合には、もちろん御意見のように再検討しなければならないと存ずる次第であります。
#23
○鍛冶委員 大体議論は盡きましたが、根本的に考えるのは、一日も早く考えてもらいたい。だからそういうものはなるべくやめてもらわなければならぬと思います。十年間というのは、被判官たるにふさわしい修業というわけです。しかるに裁判官以外の行政事務をやつておつて、十年間たつたから裁判官にするというのでは、裁判官は偉いんだから待遇をよくしてくれと言つたつて、他け行政官は許しやしません。報酬等に対しで大蔵省が言うのはその点だと思う。どうしでも、裁判官たり、判事たるにふさわしい修業をして来たということ、これがなくちやいかぬ。この大原則ははずされてはいかぬと思う。それだけを申し上げて、質問を終りたいと思います。
#24
○佐瀬委員 関連してお尋ねしておきたいと思うのですが、行政訴訟が通常裁判所の管轄になると思う。従つて行政士の官吏としての經験というようなものが裁判官にも必要であるという点は、想像するにかたくないわけです。ただいま問題にされたことは、そこらに多少関連があるものと思うが、その点をひとつ伺つておきたい。
#25
○野木政府委員 なるほど新しい裁判制度になりまして、行政經験が広く裁判上の問題になつて来たという点から考えまして、裁判官としても行政官としての經験がある者を取入れることも必要じやないかということも、確かに一つの見方と序ずる次第であります。しかしながら、現在の裁判所法の年限通算の規定及びこの判事補の職権の特例等に関する法律で年限を通算しておるという点は、御意見のような観点からではなく、むしろこれらの職務が準司法的もしくは法律専門的の職務にあるので、法律専門家である裁判官の資格に通算するのが正しいのではないか、そういう観点から出て来ておるのではないかと思うつておる次第であります。しかし御質問の点は、将来裁判官の任用制度などを考える上におきまして、一つの貴重な意見として再反省してみなければならないことだろうと存ずる次第であります。
#26
○佐瀬委員 根本問題としては裁判官の任用制度に触れるわけでありますが、何かそういう点について、当局者として見通しがおありになるかどうか。ことに裁判官の地位並びにそれに伴う待遇の問題において、行政官と区別をするというような建前から見ても、基本的な問題として、従来から裁判官の任用制度に改正を加える必要を認めておつたのでありますが、本改正方を審議する上においても、その辺に対して将来どうなるかという見通しを明らかにしておく必要があるのと思うので、この点ひとつ御説明を願いたいと思います。
#27
○野木政府委員 新憲法下における裁判所の地位を考えみますと、裁判所を動かす中核である裁判官目の任用資格をどうするかということが、他の問題に劣らず非常に重要な問題であると存ずるのであります。しこうしてこの点については、各方面にいろいろ御議論のあることもだんだん承知しておる次第でありますが、法務当局といたしましては、問題が非常に大きくございますし、また現在の裁判所法が施行になつて幾らもたちませんから、その利害得失がまだ十分現れていないのではないかという点も考え、具体的な準備にはとりかかつておらないのであります。しかしながら、判事補制度というものはどうもおちつきがない、この制度は再検討してみなければいかぬではないかということが、割合手近な問題として各方面でとなえられているというように承知しているわけであします。そのような点から入つて参しまして、各方面の御助力のお借りいたし、新憲法下にふさわしい裁判所制度をいま一度再反省してみたいという気持は、私どもは十分持つておる次第でございます。
#28
○田万委員 最高裁判所の關根さんに一つお尋ねいたしたいと思います。
 この法務委員会にかかつております法案は、大体事件の複雑性と事件の増加によりまして、これを促進するという意味のものが多いと思います。それに関連して一点だけお尋ねいたしたいのは、促進上非常に関係があるのでありますが、判事は事件の判断をするだけでよい、裁判の一切の判決文その他のものは判事補がこれに当たるというような制度が外国にあると聞いておるのでありますが、そういうことをお考えになつたことがあるでありましようか。事件の勝訴あるいは敗訴、判決、懲役あるいは罰金というような結論の判断だけを判事がいたして、判決文その他については判事補が当ると非常に事件の促進がもたらされ、また裁判所の多数の判事もこれを希望しているということを聞いているのですが、この点いかがですか。
#29
○關根最高裁判所説明員 ただいま田万委員のお話の通り、裁判官の補助機関といたしまして、準備手続その他いろいろ法令の必要な調査等をさせたらどうか、そういつた声がございまして――実は現在の判事補の制度を調査官もございます。現在そういう研究をいたしつつありますが、もし裁判官の補助機関として調査官を置きましたにいたしましても、実際に準備手続の期日に出まして、当事者の前でいろいろ主張なり証拠の整理をすることは、やはり若い人うよりも老練な人にさした方がよいのではないか、そういう意見もございまして、ただいまのところはまだそういう制度を採用いたしておりません。もし少し研究を要する問題ではないかと考えている次第であります。
#30
○田万委員 そうすると、判事補であつて実際には判事と同等の職務をとつている事実がたくさんあるのですが、これはどういうふうに解釈したらよいのですか。
#31
○關根最高裁判所説明員 ただいまの田万委員のお話の、判事と同等の職務をとつている事実というのは、具体的に申しますとどういうのですか。
#32
○田万委員 判事補で十分年すれば判事になる。これはわれわれもうよく知つているのですが、判事補で三年ぐらいたつた人、かつて物価庁で働いておつて、ルートを通つて判事補になつた人、が、ある裁判所では単独で裁判をいたしておる。これはどうなるのですか。
#33
○關根最高裁判所説明員 裁判所政法では、十年未満の判事は独立して判決以外の裁判をすることはできます。判決自体はできないということになつておりますが、判事補の職権の特例に関する法律によりまして、五年たちますとできるようになつておりますので、それによつてやつておるわけであります。
#34
○田万委員 とにかく判事補をつくつているのは、正式の判事としての資格はないので十年修養しなさい、そうすればりつぱな判事になるという意味に解釈しているのです。言えかえれば、人間的な修養と能力的な勉強期間は十年というふうに私は考えるのです。五年にいたしましてもまだ五年の残余期間があるので、未完成な判事補をもつて判事と同等な裁判に介入させるということになる。この点について弁護士会あるいは一般の人から、あれでは困るというような非難の声もいろいろあるわけです。そういう声は裁判所にも聞えているかもわからない。とにかく判事補はどこまでも判事補であつて、十年たつたら判事としての職務を忠実に執行できる能力的な人間を養成することが裁判の威信のために最も望ましいと私は考える。従いまして、判事補はどこまでも判事補としての身分に併う仕事をやらせ、判事はどこまでも判事としての仕事をするという区分のあるやり方を私は最高裁判所に特に希望しておきたい。これだけでございます。
#35
○關根最高裁判所説明員 ただいまの田万委員のお話、まことにごもつともでございます。ただ現在の民刑事の事件数その他から申しまして、判事の定員に満たない現状等を照し合せますと、どうしても判事補の五年以上経つた人には裁判をやつてもらわないと、実際上事件の澁滞を来す、そういうところから特にお願いをして判事補の職権の特例に関する法律を国会で成立させていただいたのであります。ただ理想としては田万委員の仰せの通りでありましで、判事の人員のできますると同時に、この法律はむしろ廃止すべきだという問題が出て来ると思います。
#36
○田万委員 了承いたしますが、迷惑をするのは大体事件当時者が迷惑をする。裁判所は裁判の手続上において迷惑をこうむるかもわかりませんが、裁判は一般大衆の利益のためにあるということであれば、裁判所の御都合のために一般人の利益を害するという行き方は、すみやかに考鷹を拂つてもらわなければならないということを申し上げて、私の質疑を打切ります。
#37
○關根最高裁判所説明員 最後に一言だけ申し上げておきますが、――裁判所の都合だけを考えて判事補の方に仕事をやつてもろうという意味ではございませんで、事件をなるべく早く処理しなければ、国民の側もせつかく訴えを起しましても、事件が何年かかるかわからないということでは、決して保護を全うするわけに行かないわけであります。裁判所は国民の権利保護ということが一番の仕事でございますので、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
#38
○安部委員長 これにて通告による質疑は終りました。他に御質疑はございませんか。
#39
○梨木委員 私は民事訴訟法の改正の点について、この前質問いたしたのでありますが、その点で私まだ了解できない点を一点伺いたいと思うのであります。この資料の中の十七ページによりますと、地方裁判所では、第一回の期日が事件受理の日から二十九日目、それから次回期日が、証人のある場合は三十六日目、証人のない場合は三十九日目、こういうふうになつておるわけであります。さらに資料によりますと、地方裁判所では、民事では裁判官一人当り六十件持つておる。こういうことになつておるようでありますが、一人当り六十件の事件を持つておりまして、そしてこの改正によるところの準備手続を経て、弁論の集中審理でやつて行く際には、大体想定されるところではどういうようなぐあいに事件が進められて行くか、これは現在の裁判所と弁護士の事件処理の状態をも加えて、最初の弁論が指定された場合におきましても、これが変更される場合もあり得ると思う。変更された場合は次同期日はいつごろになるか、これをこの資料に基いても少し科学的な一つの想定がありましたら聞かしてもらいたいと思います。
#40
○關根最高裁判所説明員 実はただいまお話の新しい継続審理の方策で参りますると、事件の処理のぐあいがどうなるかという点でございますが、今お話がございましたように、地方裁判所の判事の一箇月の負担量が、民事事件で六十件、これは統計の上から出て参りますが、その六十件を負担しております。これは未済事件になるかと思いますが、こういつた事件を順次集中審理して参りますると、どうしても、早いのはすぐできますけれども、あとまわしになります事件は数箇月先に期日の指定になるというわけでございます。それで現在の期日の指定の期間は、地方裁判所で申しまして、大まかに申しますと、長いのもございますけれども、平均いたしますると――かなりいなかの方の地方裁判所では、事件が少い関係から期日の指定が早くなる。東京などにおきましては、事件が一箇月に、五、六百件も参ります関係から、どうしても二、三箇月先になるという伸び縮みはございますけれども、平均いたしまして大略一箇月、ですから早く入ります事件はその程度で継続審理で終るわけでございますが、あとまわしになります事件はどうしても先に延びるわけでございます。ただ現在の資料から申しまして、それではどのくらい先になるかということは、科学的になかなか困難でございますので、一応の目安といたしましては、現在よりは早くなることは間違いないであろうということは推測できるわけでありますが、それ以上に科学的に平均してどのくらい早くなるかということは、ただいまの資料では申し上げかねるわけでございます。現在の地方裁判所の全国の平均指数を見ますると、百件事件が起きておりますると、百件のうち一年以内で処理するものが約七十件ございます。それからその残りの三十件が一年以上を越える。そして極端な例になりますと、なお数年かかるのもございますが、七〇%は一年以内に終つております。集中審理をいたしますれば、それよりもさらにそのパーセンテージはふえて来るのではないかということが予想されるわけでございます。
#41
○梨木委員 私はこの改正法によりまして、はたして事件が早く片づくかどうかに非常な疑問を持つておるのであります。これは実務家に聞いても非常に疑問を持つております。というのは裁判官一人に一箇月六十件を負担させておる。大体弁護の集中審理でやりますならば、一日におそらく一件くらいだろうと思うのであります。この資料によりますと、証人は一日に実際調べているのは五人であります。そうするとまず非常に簡單でありましても、原告、被告と証人を一人加えても三人であります。従つてきわめて簡單な事件でも証人は五人くらいはあるわけであります。すると一日に一件しか扱えないことになるわけであります。しかも弁論を集中すると申しましても、その集中された期日におきまして全部の証人の調べを完了するということは、困難だろうと思います。そうすればそれが翌日に続行されるか、あるいは、今度はその次に新しく期日をきめなければならない。続行される場合には次回がどのくらいの期日に入ることになるのか、こういうことが大体大まかに想定がつかない限りは、こういう訴訟法の改正によつて促進するとはいいながらも、事実は何ら促進の実績が上つて来ないということになると思うのであります。そしていろいろ実務家の経験を聞きましても、結局は同じことになりはしないかというような意見を聞くのであります。この点について一体一日にどれくらい弁論集中主義の改正法によつて事件がさばかれるか、それから一箇月一人当り六十件持つておるわけでありますが、準備手続もやらなければなりませんが、準備手続は一日どれくらいさばける予定でおるのか、こういう点をもう少し具体的に聞きたいと思います。
#42
○關根最高裁判所説明員 ただいま梨木委員の仰せの通り、実際問題といたしますと、いろいろ種々雑多の事件が多い関係から、平均いたしまして科学的な結果を申し上げることがなかなか、困難でございますが、大体一日にどれくらい証人の調べができるかというところは、地方裁判所におきまして八人調べられるという見込みでやつておる。ところがそのうちの三人が出て来ないで、実際は五人やつておるという現状が、統計の上で出て参つておりますが、今後はなるべく八人全部出て来ていただきたいということを裁判所側から当事者側にお願いして協力方をお願いしておるわけでございますが、結局一日に八人調べられるといたしますると、一件について八人の証人で済む事件は、一日で終るということになります。もつともこれは口頭弁論が始まりましてからのことでありますが、それまでに来ます準備手続の期間は、相当日時を要する場合が多いのじやないか、これは実は現在準備手続をやつている例は割合に少うございまして、統計の上でははつきり申し上げられないのでありますが、準備手続の期間は、当事者の方、――原告の方では大体調査をして訴状を出すわけでありますが、その訴状を受けとつた被告側では、それから調査をしなくちやならぬという場合が多いわけであります。その被告から受任された弁護士の方も、おそらくそれから調査をしなければならぬ、従いましてどうしても準備手続の期間は、ある程度予想しておかなければならぬというわけで、ただ準備手続が終りましたあとは、土俵の上に上つたということになりますので、土俵の上に上つた以上は、一気呵成に審理をするといつた建前でございます。従いまして計数の上ではつきり科学的なことを申し上げられないのは、非常に遺憾でございますけれども、同じ事件につきまして、きよう調べてさらにあさつて調べる、その次一日置いて調べる、あるいは毎日調べるということになりますと、裁判官も耳に入れたままでその記憶のままで裁判ができる。ところが現在のように継続審理でございませんで、一日に何件も入れている。あるいは十件、十五件と入れておりまする、どうしても一件について調べる証人が一人一人ということになりますので、どうしても記憶が飛ぶわけであります。いわゆるこま切れ裁判と申しますか、それよりもやはり耳で聞いたままの記憶に頼つて裁判ができるという方策の方が、どうしても早いということは、どなたがお考えになつてもおわかりになるかと思いますので、やつてみなければわからないのではないかというところもございますが、現在よりは早くお終るということは、当然の事理じやないかと考えるわけであります。
#43
○梨木委員 弁論を集中して記憶の新たなうちに判決を下す、私はそれにはしごく賛成であります。ところでそういう原則で行かれるといたします。ならば、集中された期日にどうしても証人が出て来ないということになると、その原則を貫くといたしまするならば、翌日、翌々日続行しない限りは――そうしたきわめて近い期日にそれが入らなければ、今説明されるような目的が達成できないと思うのでありますが、そういうことが実際的に可能かどうか、ずつと一日に一件か二件しか入れない、これが引続き入つて来るわけでありますから、これが押し押しになつて行つた場合、現在の訴訟の取扱い方を見ますと、この日に十件、十五件あるけれども、一件、二件入れてもよかろうという形で入れているのでありますが、今度のような弁論の集中主義で行きまして、どうしてもその期日にはそれだけ明けであるだけに、あまり融通をつけるということが、非常に困難になつて来るのではないかと思うのですが、そこのところはどういうような実際的な方針でやつて行かれるか、やむを得ないことで続行しなければならぬ場合には、次回期日がすぐ近いところに入らなければならぬと思うのですが、その辺の考慮はどういうぐあいにされておりますか。
#44
○關根最高裁判所説明員 ただいま梨木委員のおつしやるところ、まことにごもつともなことばかりでございまして、われわれも同じことを考えさせられるのでありますが、実際問題といたしますると、一旦期日をきめまして土俵に上つて相撲をとる日がきまつた、しかもその日がある都合によりまして、証人を五人呼んでおりましたところが、一人だけ来なかつた、そうしますとその一人を調べなくちやならないような事件といたしますると、どうしても先に延びる、そういうことのために、一週間のうち一日ある日を予備期日として、証人を一はい入れておかずに、やむを得ざる事由による期日の変更によつて、証人を調べなくちやならない場合の予備を置いておいたらどうかということを考えております。ただその前提といたしまして証人が出て来ないということはなるべくなくなそう、といつてあらゆる方策を講じなくちやならぬ、あるいは勾引なり、罰則なりいろいろ考えておりますが、制裁でやるということは、なかなかめんどうでございますので、事前に当事者の御協力を願うといつたことを考えておるわけでございます。
#45
○梨木委員 ところで調書のとり方でありますが、今の改正法の精神で参りますと、大体裁判官が証人を調べたその印象のあざやかなうちに、まず調書にとられたその事実を基礎とするよりも、法廷における印象が中心になるのではないかと思うのであります。そこで今までだと実際問題といたしまして、調書のとり方につきまして、書記官の方が独自にとるのでありますが、やはり裁判官もメモをとつておりまして、その間の調節をはかつておるようでありますが、裁判官が証人調べをした印象そのものを中心にしてやる、ところが調書においては、必ずしも裁判官が受けた印象と同じような記載がなされていないというようなことから、いろいろ控訴とか上訴の理由が、裁判官の、予想しないところから出て来るということも考えられると思うのでありますが、調書の作成については、調書ができておらなくても判決を下すような結果にもなるのではないかと思うのですが、その辺のところにどういうぐあいに考えておられますか。
#46
○關根最高裁判所説明員 どうも一々ごもつともばかりのことで、われわれも同じことを実は案じておるわけでございます。そこで調書の作成が、現在はどうしてもでき上りましてから裁判を下すといつた習慣になつておりますが、今後継続審理になりますると、とうしても調書の作成が遅れる場合があるわけでございまして、調書の作成を待たないで裁判を言い渡し、判決書を書かなくちやならぬということが出て来るのではないか、そういうことがないように、できれば速記者をつけるとか、あるいは録音機をつけて調書の作成にかえるとか、これは今度国会の御審議を仰ぐことになろうと思いますが、予算面におきましても録音機の要求を実はいたしておりまして、来年度からは録音機の使用を許していただきたい。そういつた方向に進んでおるわけでございます。
#47
○梨木委員 それから在廷証人の制度がこの改正法によりますと相当利用される必要が出て来ると思うのであります。ところで大体訴訟当事者は訴訟に関係ある人が証人に出ることになりますから、事実問題としては頼めば出てくれるということも考えられますが、しかしながら案外そうでもない。第三者でたまたまその事件にあまり当事者とは利害関係なくして、しかもその事実関係を知つておるという人を証人に呼ばなければならぬということが出て来ると思います。そういう場合は訴訟当事者はその人に在廷証人として出てもらうことを頼むことはちよつとぐあいが悪い場合がありますが、こういうことになつて来ますと、どうしても弁護士が裁判所の呼出しを代行してやるとか、何かある程度呼出しについて、強制力を持つたような形の呼出しに応ずる措置が講じられるような配慮がなされなければ、在廷証人の制度を活用することができなくなると思うのでありますが、こういうことはお考えになつておるかどうか。
#48
○關根最高裁判所説明員 ただいまの梨木委員のお話の点は、これは実はなるべく証人を申請された当事者側で連れて来ていただきたいということが、今後出て来るかと思いますが、どうし、ても証人によつてはやはり裁判所を毛ぎらいすることがまだございますので、そのためにはどうしても呼出状の送達が必要で、おつしやるように証人を申請した当事者に呼出状を送達してもらう、これはアメリカの制度などにはあるようでございますが、そういう制度を考えまして、法務府の方にそういつた立法の案をつくつていただいたらどうかということも研究したのでございますが、今度の国会は何分短かい国会でありますので、一応今後の立法の際に讓つたらどうかということになつたわけでございます。それからなおただいまお話の在廷証人は、まだ証拠決定をしないものについて、その日に連れて来ていただいた人を調べるということでございますので、在廷証人についてはあらかじめ呼出状を出すという観念はないことになるのではないかと考えられるわけでございます。
    ―――――――――――――
#49
○梨木委員 終ります。
#50
○安部委員長 それでは裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 なおこの際委員長から特に政府当局に要望しておきたいと思います。このたびの裁判所法の一部を改正する法律案によれば、住居侵入事件を簡易裁判所の管轄に移しましたが、この住居侵入事件は多く労働運動に関連して起るので、この場合は十分それに対しては注意をいたしまして、かかる場合は愼重審理の必要上、地方裁判所において審理するよう、特に御注意を拂われることを要望いたします。
#51
○草鹿政府委員 ただいまの御注意は一応ごもつともなことと存じますが、検察庁といたしましては、従来労働争議等に関しまする佳局侵入等の事犯につきましては、各地方検察庁に公安係検事を特別に設けてありますので、この検事が主任となりまして、検事もしくは副検事等を指揮命令して間違いのないようにいたして参つたのでありますが、今後住居侵入等が労働争議等に関して起り得ることは当然考えられますので、今後さらに一層この種事犯につきましては、原則といたしまして地方検察庁の本庁、もしくは少くともその支部においてこれを取扱うようにし、副検事単独でこれを処理させないように、必ず検事の指揮命令によつて愼重に扱つて行きたい。こういうふうに考えております。
#52
○鍛冶委員 私はさらにそれにつけ加えて、いま一つ最高裁判所側に希望を述べておきたいことは、訴訟促進ということはわれわれももちろん賛成でありますが、現在の簡易裁判所の実情を見ますと、特任の判事が半分くらいおるというような現状でありまして、この裁判官に裁判をしてもらうということは国民の信頼を得るゆえんでないと思う。ことにまたいかに法律を改正しましても、問題は人間なのですから、練達堪能の士さえ来れば、法律は改正せぬでも事件はおのずから進んで行く、下手な者は幾らやつておつてもひまばかりかかつて人の信頼を得ぬという実情でありますがゆえに、法の改正もよろしいが、それよりも基本的に有能なる裁判官を充実してもらうということを、まず第一番に前提として考えてもらいたいしそれと同時にそこまで行かぬ間はこの法律改正がありましても、めんどうな事件だと思われたならば、なるべく地方裁判所にまわして、国民の信頼を得るように裁判を進めてもらいたい。このことをつけ加えて希望いたしておきます。
#53
○五鬼上最高裁判所説明員 ただいま鍛冶委員の御質疑、ごもつともなことと思います。簡易裁判所の現在の判事については、研修その他、昨日も申し上げたように、あらゆる会同等において十分訓練し、そうして素質を改善して行きたい。なお今後の簡易裁判所の判事の任用につきましては、ただいまの御質問の点も考慮いたしまして、十分愼承にその事件を処理し得るようにいたしたい。またその間において簡易裁判所に取扱われる事件で、非常に困難な事件は地方裁判所の方に送るように、あるいは会同その他において研究いたしたいと思います。ただここで申し上げるのは、簡易裁判所の判事についてはいろいろ御批判ありますけれども、何を申しましても簡易裁判所の判事の待遇問題が、非常に待遇が低いから、弁護士方面から呼びかけましても、堪能なる裁判のできるような人はなかなか来てくれないということは、これは過去の事実であります。今後はその点も十分考慮いたしたいと思います。
#54
○押谷委員 質疑打切りの動議を提出いたします。すなわち裁判所の一部を改正する法律案、刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案の以上三件につきましては、連日真撃、熱誠なる質疑応答がありましたので、この程度をもつて質疑打切りの動議を提出いたします。
#55
○安部委員長 ただいまの押谷君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#56
○安部委員長 御異議なしと認めまして、本荘案について質疑を終了することに決しました。
 この際申し上げます。刑事訴訟法施行の一部を改正する法律案については、押谷富三君から自由党、国民民主党及び社会党共同修正案が提出になつております。よつてまず修正案について趣旨、弁明を求めます。押谷富三君。
#57
○押谷委員 刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案に対する修正案の理由を申し述べたいと思います。まず修正案を朗読いたします。
  刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第二條の改正規定を削る。
  第三條の改正規定中「第三條中「前條の規定にかかわらず、」を削り、同條の」を「第二條の」に改める。
 第三條の中「上告については、」の下に「第一條の規定にかかわらず、」を加える。
  第十三條の改正規定を削る。
 この修正理由を申し上げます。政府原案第二條において「裁判所の規則に特別の定があるものを除いては、」とあるの一は、旧法事件手続に関する定めを無制限に裁判所の規則に委任する結果となり、憲法第四十一條の精神に反します。すでに現行の刑事訴訟法施行法第十一條の規定によわ、裁判所は旧法事件の処理について必要なる事項を規則をもつて定めることができるのでありましてこれに加えて前條改正第二條のごとき規定を設ける必要を認めないと存じます。よつて同條を削除し、現行の第十三條を存続せしめることとし、その改正規定を削除することを適当と認めましてただいま申し上げたような修正意見を述ぶる次第であります。
#58
○安部委員長 次に本案について原案及び修正案を一括して討論に入ります。討論は通告順にこれを許します。田嶋好文君。
#59
○田嶋(好)委員 私は自由党、国民世主党、社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつております三案に対しまして賛成の討論をいたしたいと思うのであります。
 提案理由の説明にもございましたように、現在の訴訟準行土最も困難な問題は、山積いたしました事件をいかに処理するか、こういうことでございます。事件が山積したという理由、これはいろいろありましようが、提案理由の説明によりまして敗戦後の日本の国情と、それに併うところの機関が、全勢力を打込んでもなおかつこれが処理できないという正当な理由が、ここに認められておるのであります。もしもこれが裁判官の怠慢その他の機関の怠慢によつて生れておるものといたしますれば、もちろん私たちはこの案に賛成の意を表するものではないのでありますが、これが正当な理由として当然認められるといたしますれば、こうした山積いたしました事案を一日も早く片づけて、そうして国家の秩序を最も円滑に種持して行くということのためには、こうした法案が必要となつて来る。そうしてこうすることがむしろ国家の信用を維持し、また日本の国際社会への復帰の一助にもなる、こういうような考えが正当化されるのでありまして、この意味におきまして当然にこの法案は正当なものと考えるものであります。なお今押谷富三君から刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案に対する修正案が出ましたが、これももつともな修正案でありまして、最も議論の焦点でありました刑事訴訟法施行法の一部が修正される、そうしてわれわれ立法府の権威がここに保たれるということになりますれば、ますますこの案に賛成の意を表するということになるのでございます。ただ私は最後に少し要望いたしておきたいと思う点がございます。それはわれわれが調査をいたしました範囲によりますと累積された事件の内容の中に、書類の送達不能、それから病気によつて出頭不能というようなものが大分含まれておつたように思います。病気によるところの出廷不能による事件の処理不可能ということは、一応肯定できるのでありますが、刑事事件において逃亡その他によつて被告人の呼出上が不可能になる、そのためにたくさんの事案が特に高等裁判所において累積しておるというようなことは、国家治安の上から考えましても、まだ相当な努力を傾注すれば、この事件は法の改正なくしても裁判所自体またこれが検察当局が協力するということによつて解決せられる道があると思いますので、これらの点は累積されたこの事件を処理するために法律によつて解決するというような考えでなくして、今までの努力もさることながら、今後は一層この方面に対して努力を傾注されまして、この累積された事案を、法律とともに、法律と並行して一日も早く解決するように、当局の御努力をお願いしてやまない次第であります。
 以上をもちまして私は三案に対し賛成の意を表する次第であります。
#60
○安部委員長 上村進君。
#61
○上村委員 共産党はこれに対して反対するわけであります。というのはむろん民主憲法というものが、この基本的人権を何よりも尊重する建前で、あらゆる政治で運営されなければならない、裁判もまた一つの政治である以上は、この原則を無視することはできない。われわれの考えからいえば、悪いことは小なりといえども悪い。悪小なるをもつてなすなかれ、善小なるをもつてなさざるなかれというのが道徳の根源であつて、またそれが政治の根本原則であろうと思うのです。ですから悪いことが少しであるからいいじやないかということはいけないと思う。そういう意味におきまして、この改正案は修正されまして、大分調和されて来たのでありますけれども、なお上告におきましては、やはり相当の制限を受けることになるわけで、いわゆる悪小なるをもつてなすなかれ、この悪いということ、すなわち基本的人権、すでに国民が、旧刑事訴訟法において獲得したところの権利が、こういう改正によつて害せられるということについては反対せざるを得ないのであります。そういう意味におきましてこの規定は大分修正され、その修正趣旨には賛成、そういう点では全然反対ではない、けつこうでございますが、全体としまして、なおこの悪小なるをもつてなすなかれを犯しておるわけであります。そういう意味合いにおきまして反対しておく次第でございます。われわれ訴訟を促進するということについては、民事、刑事を問わず考えている。これは裁判所が法律をもつてやらなくても職務の上において忠実であり、基本的人権を尊重しつつ責任をとるという考え方ならば、法律で強制されなくてもできることであろうと思うし、またわれわれ弁護士は、少くとも日本の在野法曹として、過去数年にわたつて裁判所に協力して来ておるわけであります。何も急遽法律まで改正して、基本的人権を少しでも侵すようなものをもつてわれわれに臨んでもらわなくても、われわれ弁護士は弁護士の道義をもちまして必ず促進に協力するであろうし、またそれをやることが弁護士道であるわけであります。ことさらに事件を引延ばすとか、刑事事件の弁論を引延ばすというようなことをやる弁護士は、おそらくいないと思う。そういうことは弁護士のいわゆる職務道として十分お認め願つて、そうしてそういうことを弁護士におまかせ願うならば、こういう法律は必要がないのではないかと思う。
 簡単でありますが、そういう意味合いにおいて共産党としてはこの案に反対する次第でございます。
#62
○安部委員長 佐竹晴記君。
#63
○佐竹委員 刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案については、修正案の通り賛成いたします。
#64
○安部委員長 これにて討論は終局いたしました。次に採決に入ります。まず押谷富三君提出の修正案を採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#65
○安部委員長 起立多数。よつて本修正案は一決いたしました。
#66
○安部委員長 次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#67
○安部委員長 起立多数。よつて刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案は修正議決に決しました。
#68
○安部委員長 次に裁判所法の一部を改正する法律案及び民事訴訟法等の一部を改正する法律案について討論に入ります。討論は通告順にこれを許します。田嶋好文君。
#69
○田嶋(好)委員 私は民事訴訟法の一部を改正する法律案、それから裁判所法の一部を改正する法律案につきまして、自由党、国民民主党、社会党を代表いたしまして賛成をいたします。先ほどの速記録に私の賛成意見が述べられておりますので、その趣旨をもちまして、両案に対して賛成いたします。
#70
○安部委員長 上村進君。
#71
○上村委員 この民事訴訟法等の一部を改正する法律案、これも共産党としましては、反対の意見を表明する次第です。というのは、むろん共産党は、事件を促進することについて反対しているのではありません。いろいろの討論で盡きておると思いますが、事件が非常に延びるとか、事件が輻湊するとかいうことは、集中審理をやれば減るとか、あるいは集中審理でないからそういうふうになつたということだけではないと思うのです。やはりわれわれは一車しかひけないのです、われわれ一人で二つの荷車をひくことはできない。そこでこれは裁判所の員数の問題、すなわち訴訟取扱い処理能力が裁判所には不足しておるわけです。それを考えないで、そうしてただ事件の遅れたというところだけを見て、そうしてそれを集中審理をする。これはどんなにしたところで根本解決にはならないと私どもは思うのです。そうしてまた弁護士の方を全然この民訴は見のがしているわけです。弁護士もまた一車しか引けないのです。そこでわれわれがまたこの訴訟についてことさらに延ばすということはないけれども、事件の性質によりましては、きよう委任を受けてあす片づけては困る事件がわれわれにたくさん来るのでございます。そういうことを考えるときに、これは基本的人権の問題を考えることなくしては解決ができないし、また認識が不足ということになろうと思うのであります。訴訟を片づける席で利益をする当事者がある反面には、訴訟を片づける席でどんどんやられてはいかない事件があるのでございます。そういう立場の階級と依頼者があるわけであります。でありまするから、われわれは訴訟というものは決して原告だけでやつているのではない、また裁判所だけでやつているのではない、いわゆる一つの権利の争いとして、原告、当事者、裁判所、弁護士、こういうものがよつて、そうして言うべきところは言い、盡すべきところは盡す。そうして初めて、原被告ともに納得のできる裁判があるのではないか、こう考える次第でございます。そういうときにあたつて、なるほど準備手続は済ますけれども、準備手続もそうであると同時に、訴訟というものは何ら準備手続だけで盡すのではなく、訴えの提起から判決の送達まではいわゆる訴訟過程でございます。ですからこれを見のがして、そうして一気に片づける。この準備手続が終ればあとの期日は絶対にこれはやむを得ざる事由がなければ延期ができないということになつて、どんどん片づける。この法律ができることによつておそらく裁判所は少しくらいのことはどんどんかつてにやつて行くのではないか。そうしてそこに非常に摩擦が起きたり、われわれがもう少しこうしてほしい、この事件はこういう事情であつたということを言い盡すことができないような程度で結審されるのではないか、こういうふうに思うのであります。でありますから、私はこれがやはり刑事訴訟法と同じで人権の立場からもう少しお互いに弁護士、裁判所は裁判所、相手方は相手方、こういう立場から訴訟のほんとうの納得のできる、そうしてしかも訴訟を円満に進行して行くという自主的な訴訟進行にまつて、そうして解決して行かなければならないものであつて、先ほど梨木委員が一言つたように、この案は裁判所でもおそらくこれをやつて行つてうまく行くか行かぬかは、まだほんとうに未知数だと思う。そういうものを法律でこしらえて、そうして強行するということは、これはまつたく一大変革で、弁護士、裁判所、おそらくみなびつくり仰天しなければならないと思う、でありますから、そういう法律をこしらえることにまず専念しないで――訴訟を進行し、早く解決するためには、根本的に裁判所をふやし、いろいろの方法を講じ、そしてこの日本の今までやつて来たところの法廷の弊害というものをつくり直して、弁護士道、弁護士の権利、義務に徹したところの方法で行くべきであろうと思う。そういう意味で、この法律案を急拠出すということについて、そういう趣旨で反対する次第であります。
#72
○安部委員長 佐竹晴記君
#73
○佐竹委員 社会革新党を代表いたしまして、両案とも原案の通り賛成いたします。
#74
○安部委員長 これにて討論は終局いたしました。
 次に再案について採決に入ります。まず裁判所法の一部を改正する法律案を採決に付します。本案を原案の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
#75
○安部委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
 次に民事訴訟法等の一部を改正する法律案を採決に付します。本案を原案の通り決するに賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#76
○安部委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
 なおこの際お諮りいたします。ただいま議決いたしました三法案についての委員会報告書作成については、委員長に御一任を願います。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#77
○安部委員長 それでは二時まで本委員会を休憩いたします。
    午後零時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十四分開議
#78
○安部委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。
 検察倉政及び、これと関連する国内治安に関する件を議題といたします。発言の通告があります。猪俣浩三君。
#79
○猪俣委員 警察予備隊のことにつきまして質問を申し上げたいと思うのでありますが、実は先般江口次長に質問申し上げて答弁を得ているのであります。ただ江口さんとしては答弁をいたしかねるような事項もありまして、これは内閣総理大臣の答弁を伺わぬとはつきりしたことにならぬのでありますけれども、総理大臣はなかなか御出席にならない。そこで所管の大臣かとも思われる大橋総裁の出席を要求しまして、増原長官と大橋総裁の御出席のもとでお尋ねしたいと思つておりましたが、大橋総裁は参議院に行つておりますので、けさからお待ちいただきましてはなはだ恐縮に存じておりますので、増原長官にお尋ねしたいと思うのであります。大体江口次長にお尋ねしたことと同じようなことに相なるのでありますが、江口次長からは確答を得られなかつたような事項もありますので重ねて御質問申し上げたいと思うのであります。質問に先だちまして、私が質問いたさんとする趣旨は、昭和三十二年九月十六日のマ書簡によりましてでき上りました警察法と、今回のマ書簡によつてでき上りましたるこの予備隊令との間にいかなる異同があるか。これは法務総裁の答弁として、警察の観念には二つない、同じ精神に基くものであるという答弁があつて、しかあるべきことだと思うのであります。残るところは、しからばいかにしてこの二つの警察を、いわゆる警察の根本理念でありまするところの警察法の二大支柱になつておりまするところの警察権の地方分散化及び警察運営の民主化というものを貫くことができるかという観点から、この警察予備隊の運用の面につきまして御質問申し上げたいと思うのであります。そこで第一には、警察予備隊が出動する場合に何人の要請によつて事実上出動するのであるかという点、及び警察予備隊が出動した場合に、現地においてその指揮命令系統、最南の責任系統というようなことにつきまして二、三お尋ねしたいと思うのであります。
 第一の予備隊の出動関係、これは二つの場合正があり得ると思うのでありまして、一つは国家公安委員会の要請によりまして非常事態宣言が発せられた場合と、しからざる警察予備隊令第三條におきまして、治安の維持のため特別に必要があつた場合、二つあると思うのでありますが、非常事態宣言の場合はさておきまして、この治安維持のため特別に必要がある場合において、出動命令は総理大臣が出すことは当然でありまするが、この出動の要請は何人がやるものであるかということの質問をいたすのであります。これをお答え願いたい。
#80
○増原政府委員 御質問になりました点は、予備隊の係国務大臣であります大橋総裁からお答えをすることが適当でございまするが、ただいまこちらに出席をいたしかねますので、私から御答弁をいたすことにいたします。
 御質問になりました予備隊はだれの要請によつてこの三條の場合に出勤をするかということにつきましては、現在まだ成案を得ておりませんで予備隊としては研究中でございます。国家地方警察及び自治体警察関係者と十分の打合を遂げる必要がある問題と考えております。ただ一応私どもの構想を申し上げまするならば、大体予備隊の出動は、国家地方警察及び自治体の警察が治安の維持のために力余るという場合に出るわけでありまするので、やはり要請を待つて出ることを建前とする方がよくはあるまいかというふうに考えております。その際だれの要請によるか、国家地方警察を所管する中央の公安委員会の要請によつて出るか、場合によつては地方の各府県にある公安委員会の要請によつて出るか、その場合も出ることにするか、また相当大都市におきましては、自治体警察を所管する公安委員会の要請によつても出動するか、この場合も素案としては、大きい自治体警察を所管する公安委員会の要請によつてもまた出動を考えてしかるべき場合があるのではないか、あるいは各府県単位の公安委員会の要請によつてもまた出動してしかるべき場合があるのではないかというふうに考えておるわけであります。もとより中央の公安委員会の要請の場合には、出動をしてしかるべきである。また各種公安委員会の要請のない場合でも、これが要請をいろいろな事情でなし得ないというような場合も一応想定としては考え得るのでありますが、また要請のない場合にも総理大臣の独自の見解で出動をするということもまた考えてしかるべきではないか、一応素案としてはそういうふうに考えておりまするが、まだ関係者との協議も熟しておりませず、成案には至つていないという段階でございます。
#81
○猪俣委員 まだ研究中だということでありまするが、それに対してわれわれは不満があるのであります。第一の不満は、現在朝鮮事変その他によりまして相当の国内的の不安がある、なおまた神戸事件、大津事件その他におきましても相当の治安が欄乱されておる、そういう際に何人が出動させるのであるかというようなことまでもまだ研究中だ、さような一体ゆうちようなことでよろしいかどうか。
 第二といたしましては、第八国会におきまして国会開会中なるにもかかわらずこれを国会に付議しなかつた。マ書簡は政令で出せという命令をしていない。国会開会中にこれを出さずして、しからば臨時国会の要請があるならば、臨時国会に提案したらどうかということに相なつたのでありまするが、それじや間に合わない、急を要する、もう差し迫つておるから至急にやらなければならない、マ書簡においても早く実施しろということになつておるからということである。そこで国会が閉会する翌日か翌々日に政令でお出しになつた。これはあるいは早急に法律化することが困難で、その実施を急がなければならぬ事情があつたとも思われるので、われわれは一応さように考えたのであります。しかるに今日においてもまだ何人が出動させるのであるかも研究中だ、そんなゆうちようなことならなぜ法律案として国会へ出さなかつたか。これはあなたにこういうことを言うても始まらぬと思うのでありますから、これはよろしいのでございます。私は法務総裁と一緒に聞くつもりであつたために、つい口に出たのでありますが、それは私どもの意向としてそういう考えを持つておるから、至急研究を仕上げていただきたいと思うのであります。
 ただその際に、これも長官がお含みいただきたいことは、先ほど私が劈頭に質問の趣旨の際に申し述べたように、警察法の根本精神に離れたるやり方をお考えなさらぬようにお願いしたい。今原則として国家または自治体の公安委員会の要請というお答えがありましたので、それはやはりそういうふうにお願いしたい。ただそれは原則である、しかし総理大臣が單独で発動をする場合もあり得るような御答弁でありまするが、そういう規定を置きますると、えて原則が例外にされ、例外が原則になつてそこに警察権の一方的発動、民主的運営にあらざる時の政府の主張の一方的発動によつて警察権が濫用されるおそれが出て来て、いわゆる警察国家――せつかく警察法におきまして地方分権を建前といたしましたる日本の民主警察の精神がそこなわれるおそれがある。そこでそういう場合は、真にやむを得ざる、ほんとうの例外にとどめるような構想を練つていただきたい。これもまあ要望するのでありまするが、今申しましたように、公安委員会と連絡なしにただちに内閣総理大臣の命によつて出動するような場合、これは例外としてお認めになるようでありますが、どういう場合にこれを出動させるような構想でありまするか、いま少しく詳細に御答弁願いたい。
#82
○増原政府委員 先ほども申しましたように、建前としては、やはり公安委員会の要請ということが建前になると私も考えております。むしろ実際的な場合を考えますると、地方的な、たとえば大都市、あるいは府県単位の公安委員会等の出動要請によつて出るといいまする場合には、むしろ予備隊がまだ出動しなくてもいいと認められるのに、それぞれの責任者たる公安委員会ではぜひ出てもらいたいという場合の方が想定されるものではないかということも一つ考えられるわけであります。われわれとしては警察権の総合的な運営が民主的に行われることには十分留意をいたしまして、全般的に、合理的に出動の要請ありと考えられないような場合に、独断的な形で出動するというようなことは、規定の上にも、実際の上にもないように十分留意をいたして参りたい、かように考えております。
#83
○猪俣委員 長官は構想をお話になりましたからいたし方ないと思うのでありますが、一体第八国会におきまして、日本の性格それ自体を変更するがごときこの重大な問題を国会にかけないで――かけないとしても、いかなる構想でつくるつもりであるかと質問しましたところが、大体において今研究中だ、構想中だということを言つて、とうとうわれわれは把握できない。新聞ではいろいろたことが出ておるが、総裁に聞くと、それはまだ構想中だ、まだ研究中であるということで、とうとう質問できたかつた。今回は通常国会がすぐあとに控えておりますから、今研究中だというようなお答えでも、必ずやこの次の国会で明らかにせられることであると思いますから、これ以上は追究いたしませんが、早くこの研究を切上げていただかぬと、急遽こういう変則的な予備隊というものを設けた趣旨に沿わぬことだと思うのであります。
 それから第三点といたしましてこの今あなたの構想にありまするような国家公安委員会なりあるいは自治体の公安委員会なりが要請をいたしまして、そうしてこの予備隊が出る、かような場合には、国家警察なりあるいは自治体警察なりが、自分たちの力ではよく治安を保ち得ないという意味で要請するのでありましようから、かような事案の場合には、必ず国家地方警察なりあるいは自治体警察なりと予備隊とが三者競合して出動する場合が多かろうと思うのであります。しからばこの場合において、この三つの警察をいかに統合運営するかということは大きな問題だと思うのであります。この指揮命令系統を的確にし、その機構を整えておりませんなば、烏合の衆にひとしいことになつて、その力が半減されることは申すまでもないと思うのであります。そこで、こういうことにつきましていかなる構想をお持ちでございますか、そこを御説明願いたいと思います。
#84
○増原政府委員 出動の際の指揮権につきましても、まだ今結論に達しておりませんのはまことに遺憾であります。ただ予備隊が出動しまするのは、一応私どもの考え得まする事態は、同じく治安に支障がありましても、天災地変というふうな場合で、なるべく団体的な相当の力を持つておる者がありましたならば、これが出動をして民生の安定のために盡すことがいい、これに対しては別にどこにも異論の出るおそれがないという場合が一つ想定されるわけであります。そういう天災地変等の場合、すなわち地震がある、洪水があるというような場合には予備隊としてはなるべく出動をして、民生の安耐のために奉仕をしたいという考え方を私は今持つておるわけであります。こういう場合には指揮権について一本にして統合するという必要は特にはないように考えるのであります。指揮権の問題のありますのは、いわゆる騒擾とか暴動とか、相当規模の大きい、人為的な治安撹乱があつた場合、そうして国家地方警察なり自治体警察では負い切れないという場合、そういうときに出動した場合であります。これは予備隊出動の建前としましては、真に国家地方警察なり自治体警察で負い切れないという場場合に出動をすることが適当だと考えます。小規模なる場合に、予備隊が出ることが便利であるからという建前からさようしばしば出動することはよくないというふうに考えておるわけであります。そういう大規模の治安撹乱がある場合の出動という場合におきましては、予備隊としても相半の部隊が出動をする、そして予備隊としては、経験においてもあるいは地位等の問題についても、相当の指揮者がこれを指揮して出て参るということに相なるわけであります。従いまして、全体を統轄して指揮をする者をだれにするかということは、まだ関係者の間で協議決定に至つておりませんが、予備隊としては、予備隊の指揮者かそういう前提で出動し、そういう相当大規模の事態であり、また予備隊の指揮者が経験・地位等において上位の者が出て参るというふうなことから考えあわせで、予備隊の指揮者において指揮を統轄をするということを考えることがよくはないか。これはまだ協議決定になつておる事項ではございません。私の構想を御参考に申し上げるにとどめるわけであります。
#85
○猪俣委員 いつもまだ研究中だということでありまして、私どももどうも質問の中心点がなくなるのでありますが、ただ構想としてあなたがお述べになつたところによると、治安維持のために予備隊が出動したときに、予備隊の指揮官が全体を指揮するような構想である。これは私は警察法の精神と違つていると思うのであります。警察の民主的運営と違つて、ここに昔日の軍隊のようなものが出て出るようた感じを與える。御承知のように、警察法五十五條によれば、市町村公安委員会が国家地方警察に出動を促す場合には、その公安委員会日体が運営管理に当る規定になつている。これはいわゆる警察の民生的な運営の本旨からこうなつているだろうと思う。であるから、国家地方警察と自治体警察は、この五十五條の規定によりまして、自治体公安委員会が運営管理に当ることは明らかである。しかるに警察予備隊というものが出ると、いきなりその予備隊が今度は指揮をするというような形でありますと、警察法の警察とまつたく別個の系統の、別個の精神の警察がそこへ出現して来る。そういたしますと、この自治体警察、国家地方警察、予備隊警察の三者間におきまして、国家地方警察と自治体警察はこの五十五條によつて統合されているからよろしいけれども、国家地方警察予備隊との間におきまして必ずトラブルが起ると私は思う。これを一体どういうふうに調整するか。いきなり予備隊が指揮権をとるのだということになりますと、警察の民主的運営と違つて来ると私は思う。これはどういうふうに調和なされるのであるか、お聞きしたい。
#86
○増原政府委員 大体の基本的な問題についての構想を申し上げたのでありまして、具体的にこの指揮をとるとり方というものは、どういうふうにきめましてもなかなかむずかしい問題があるわけであります。自治体警察と国家地方警察と予備隊と三つのものが出て来るわけでありますから、これはおつしやる通りに非常に微妙な問題がたく、さん出て来るわけであります。たとえば東京においてそういう事態が起きた場合には、東京の警視総監というものは、経験から申しましても相当の地位のものであり、所在の国家地方警察の長よりも、現場において指揮をとるような場合において――これは事実上の問題として例に申し上げるので、法律問題を今ちよつと離れるわけでありますが、警視総監が指揮をとるというふうなことが警察官の数を統制する上においても、国家地方警察からではたくさんの応援警察官も出しにくいということもありまして、警視総監が指揮をとるということが事実上の問題としてひとつ考え得ることになるわけであります。相当の大都市、自治体警察のないところに参りますると、そうした関係は、事実の上では国家地方警察の関係者が指揮をとるということが、具体的の問題として都合がいい場合の方が多くなる。それと予備隊と三者合せて関連をして考えるべきものでありまして、事実上どういうような経験地位にある者が実際問題として指揮をとることがよろしいかということを考えることが適当ではないかという建前で、私は基本的な構想を申し上げたわけであります。
 なお予備隊が出ます際は、しかもそういう治安欄乱の場合には、騒擾とか暴動とかいう際でありまして、これは臨時の問題であります。御承知の通り警察予備隊は平素は原則として警察権を持ちません。出動に際しましても、その出動した事件に関連して、これもある程度極限された司法権を行うにとどまる。予備隊が出動をしまして、たとえば予備隊の指揮官が指揮をとる。その騒擾なり暴動をしずめるというための指揮をとるというふうにもし決定したと仮定をしましても、その場合の司法警察権行使の原則的な問題は、国警なり自治体警察なり残つておるわけであります。事態が治まりますれば、予備隊はただちに引上げる。事件に関運して、極限されて執行しました司法権の関係も、これを国警なり自治警に引継いで引揚げるということになりまして、予備隊の指揮者が指揮をとるということに決定をいたしましても、それはすべての警察権について行うという建前には、予備隊令の建前上なつておらないというふうなことになるわけであります。しかし私の申し上げましたのは、まだ基本的な問題についての私の構想を申し上げたにとどまるわけでありまして、実際問題としては、さらに綿密にいろいろな問題について考慮をし、関係者とよく話合いをする必要があるわけであります。これは遺憾ではありまするが、なお研究中に属するわけであります。
#87
○猪俣委員 私の問い方も悪かつたかもしれませんが、問題は、この警察の民主的運営として考案せられましたるところの公安委員会対予備隊関係の質問なんであります。今申しましたように、自治体公安委員会が要請した場合におきましては、国家地方警察も、その公安委員会の運営管理に服することになつておる。そういう場合、予備隊が出た場合にどうなるのであるか。それからなお国家非常事態が発生した場合におきましては、警察法第四條の第六号によりまして、国家公安委員会がその国家非常事態に対処するための警察の統合計画の立案、及び実施に関する事項をやることになつている。国家非常事態の宣言のあつた場合も、国家公安委員会というものは運営管理に当る場合がある。さようなこの警察法の精神から、この予備隊が出た場合に、公安委員会との関係がどうなるか。実際その現場において、何人に指揮を託するかということをたれが決定するのであるか。それはあなたが言うように、実際のその場所、そのときどきにおけるところの指揮者というものを臨機応変にきめる。それは法務総裁もそういうようなことをおつしやつたかと思うのでありまするし、江口さんもそんなようなことをおつしやつたように思うのでありますけれども、それは一体何人がきめるのか、予備隊の運営管理は何人がやるのかということが私の中心問題であります。それについてのお答えをいただきたい。
#88
○増原政府委員 予備隊令に書いておりまするように、警察予備隊は総理大臣の指揮統轄に属するという建前で発足をいたしておるわけであります。でありまするから、予備隊の動く場合は、総理大臣の指揮監督に属するということが原則であります。ただ予備隊が動きます場合はほとんどすべて国警なり自治隊警察の治安維持に関係のある場合でありまするから、三者に関係を生ずる。その三者関係を生じた場合の指揮権の所在、これを監督する者の所在というものについてただいま研究中であるということを申し上げたわけであります。予備隊自体としては、予備隊令に書いてありますように、総理大臣の指揮監督に属する、公安委員会の指揮監督には属さないということに相なつておるわけであります。他の二警察と三者相交わつて仕事をしなければならぬ場合にどうするかということはただいま研究中に属するわけであります。
#89
○猪俣委員 内閣総理大臣が最後の命令権者であることは、あなたからおつしやられないでもわかるのです。これは国家非常事態の宣言の場合も同じことである。その国家非常事態の宣言の場合におきましても、国家公安委員会というものがこの重大なる警察の統合計画の立案及び実施に関する事項を決定するように警察法の精神になつている。そこで治安維持のための特別の必要ありとして予備隊が出る場合に、一体その土地の公安委員会と予備隊がどういう関係にたるかを聞いているのであります。総理大臣が最後の命令権者で出動を促すことはこれは警察予備隊令に書いてある。これは非常事能の場合も同じである。しかし非常事態の場合におきましては、かような警察法第四條第六号がある。警察予備隊令にそういようなことがないから、実際公安委員会といかなる連繋のもとに運営をやるかをお尋ねするのであります。警察予備隊というものが別個な軍隊的なものであるならばこれは論外であります。いやしくもこの警察法の精神と合致いたしたる警察であるとするならば、しかもその運営が民主的にやるということが警察の精神であるとするならば、その根本精神を予備隊の運営の上にどれだけ生かすお考えがあるのかないのかという質問でありまして、総理大臣の命令権去々の問題じやない。実際その警察予備隊が自治体の公安委員会の運営に服することなく出勤した場合に、公安委員会との関係はどうなるかということの質問であります。
#90
○増原政府委員 その問題については、まだここで申し上げる段階に至つておりません。御了承願います。
#91
○世耕委員 ちよつとお尋ねいたします。きのう外務委員会であつたかと思いますが、総理は警察予備隊の隊長はわしだというようなことを言われておつたが、それは間違いじやないかと思う。もし長官が隊長さんであるとすれば、総理大臣は司令官とか何とかの肩書が出て来なければならぬが、そういうふうなはつきりした階級があるのでありますか。それが一点。それからもう一つは、司令官あるいは隊長であるとするならば、総理大臣の官邸はたれが警備するのか。隊長のいるところの警備は自治警がやるのか、国警がやるのであるか、あるいは予備隊がやるのであるかということをちよつと聞きたいと思います。
#92
○増原政府委員 これは政令に書いてあることでありますが、警察予備隊にはセビロを着た百名の本部というものがあります。その下に七万五千の部隊がある。予備隊全体としては、この本部に、長官を置きまして、これが予備隊全体を統轄しておる。その本部長官に私であります。しかしこの本部長官は、総理大臣の指揮監督のもとに働く。総理大臣は予備隊長官を指揮監督するという地位にあるわけであります。なお総理官邸の警備は、たれがするかということでありますが、予備隊は御承知のように、いわゆる非常事態と申しますか、国家地方警察、自治体警察等の手に余るというときに出て治安の維持に当るものであります。平素は警察務を執行したいというのが建前であります。従つで総理官邸を警戒するというような仕事は、本来自治体警察、東京警視庁がこれに当るということに相なつておるわけであります。
#93
○世耕委員 それれはちよつとおかしいのじやないですか。非常事態になつて参つた。そういうときになつて、総理大臣がどこかに連れて行かれたらどうする。命令ができない、活動ができないということになる。なお本部長官があなたとすれば、その総指揮官は総理とすれば、いわゆる俗にいう大将である。その大将のもとに組織がなくて、命令系統が迅速に動くということはないだろうと私は思う。今猪俣君の言う非常事態に対するところの活動状態が、私は法律的にも組織的にも欠けているのじやないか。ことに大将がいる本部に隊、所属の者が防備していないという場合、さようなことはないだろうけれども、万一ひつくり返つた場合を想定してみよう。警察予備隊でない国警もあるいは警察隊もひつくり返つたときにどうなる。そういうことは日本にはないけれども、外国には例が幾らでもある。そういう非常の態勢を予想して、完全に自治警察、予備隊警察なり、国警なりが活動していただかぬと、ちよつとそこに食い違いがあるのじやないか。これは実際問題としてあなたはどういうように取扱われるか。総理官邸をとり巻かれた、そうして総理がどこかに連れて行かれた、命令を出す人がない、こういうことになつた場合にどうするか。さような場合にあなたの心構えがあるとおつしやるならばけつこうでございますけれども、私はその点は今の組織では欠陥があるのじやないかということを感じる。さような場合におきましては、長官みずからが命令して臨機の処置をとるのだとおつしやるならばけつこうだと思いますが、その点何か御用意があるかどうか伺いたいと思います。
#94
○増原政府委員 私は御質問の趣旨をいささかとり違えてお答えをしたようにたりましたが、平素のことをお聞きになつたと思つて私はお答えをしたのであります。いわゆる非常事態で、予備隊が出動するようた事態になつた場合に、予備隊が出動をするというふうな場合でありますれば、予備隊が出て総理官邸を警備するということももちろんあり得るわけであります。私は平素の場合を先ほどは申し上げたわけであります。予備隊が出動するという判定の時期になりますれば、予備隊が出て参りまして官邸を警備するということももとよりあるわけでありまして、総理大臣が指揮命令できるような形にしておくことが基本に相なると思います。総理大臣が指揮命令できないような場合というふうなことも、これは想定としては全然ないとは言えまいと思うのであります。そういう場合もとより規定の上で適当な措置がとれるようなことも考えておかなければならない、これは先ほど猪俣委員にお答えをしましたのと同様でありまして、またそうした場合も、規定あるいは他の二警察との関連、その場合の指揮権というようなものについては、まだ、決定案ができておらない事情であります。
#95
○猪俣委員 この予備隊令ができたらただちに警察法の改正をやらなければいかぬのじやないか、そうしないとなかなか調和したいところがあるのじやないかと思われるのでありますが、今研究中、構想中であるために、警察法の改正手続をなされておらぬのじやないかと思うのであります。たとえばこの非常事態の宣言の場合におきまして、国家地方警察本部の長官及び警察管区の本部長と、その市町村の警察長その他との連絡は、警察法六十三條に書いてある。内閣総理大臣の全警察統制という中に書いてありますが、予備隊との連絡はさつぱりわからぬ、予備隊令にもそういうことは書いてない。そこで一体今の問題も起つて来ると思うのでありますが、こういう警察法六十三條のような関係につきましても、まだ研究中なのでありますか、お答え願いたいと思います。
#96
○増原政府委員 仰せの通り、そうした問題全体を含めまして、まだ結論に達しておらないということをお答え申し上げます。
#97
○猪俣委員 それではこの問題は研究中で、第八国会において警察隊の性格を尋ねたときと同じようなことになつてしまつた。研究中々々々でよくわからぬから、これはこの辺で打切りますが、最後に私が前提として申し上げました警察の民主化と予備隊の関係、これは予備隊性格にも影響することだと思うのでありますが、その観点に立ちましての質問であります。警察法の第十四條におきましては警察大学というものがあつて、ここで警察官を教育訓練しておるのであります。この警察大学に予備隊員を入れて教育訓練する考えがあるかないかをお聞きいたします。
#98
○増原政府委員 現在までのところは、警察大学に予備隊員を入れて教育はいたしておりません。将来の問題については、決定的なことを申し上げるわけに参りませんが、予備隊といたしましては、部隊行動を建前として治安維持の任に当るということに相なつておりますので、その教育の方針にいたしましても、おのずから平素司法権を中心とした警察務を取扱うという現在の国警及び自治警と相当趣を異にいたしますので、警察大学に予備隊員を、やつて教育をしてもらうということもあり得るかと思いますが、大体は予備隊において予備隊の運営上必要な教育機関をつくつて、ここで教育をするということが本来になるであろう、かように考えております。
#99
○猪俣委員 予備隊の活動及び具体的な動動が一般の警察と違うところがあることは、われわれも了解できる。大災地変とか、集団的な暴動に対しまして、こちらも集団的に対抗するという意味におきまして、国家警察及び自治体警察の弱体を補完する。そこでおのずからその使命に相応する活動、またそういう活動上の訓練ということはあり得ると思いまするけれども、私どもが再三お尋ねしておるように、警察というものは決して二つあるのではなくて、一本の警察であり、その根本精神は警察法に規定されておる。そこには警察の民主化ということが大きな一つの題目として出ておるし、この源泉となりましたマ書簡にも、その点を徹底的、に強調しております。ところが国内及び国外からこれが軍隊になるのではないかという憂慮が相当起つておることは申すまでもないのでありまして、その点から言いますと、民衆に奉仕する警察精神というものを打込まねばならぬと思う。あなたが現に取扱つておられるように、昔の軍隊教育を受けた下士官や将校が相当警察予備一際に入つておる。彼らに純然たる軍隊教育をやつたら、形の上ではどう言つても、情神的には軍隊になつてしまう。これをわれわれはおそれる。そこで実、際の訓練の目標には、普通の警察と違う訓練をしなければならぬことは当然でありますから、これは大いに訓練していただきたいけれども、警察の根本精神につきましては、警察大学校というりつぱな、施設が国家においてできておるのに、なぜことさらにそれと区わけをした訓練をやるのであるか。この警察大学校における教育はどういうことを教育しておるかを齋藤国警長官に質問いたしましたところが、第一に民衆の警察という教育をしておるという答弁でありましたから、しかるべきことだとわれわれは了承できるのであるが、しからばなぜこの予備隊だけは特殊の教育をするのであるか。われわれはそれを不可解と考える。自治体警察及び両家警察を補うためだけにできているという予備隊であるならば、実際の活動面だけの特殊の訓練をすることはもつともでありますけれども、警察の根本精神を何がゆえにここで同様に訓育しないのであるか。その点を承りたい。
#100
○増原政府委員 警察が主でありまして、予備隊も警察の吉的を達成するための組織であることは、仰せの通りであります。ただ分損する分野が現在の国警、自治警と大いに趣が異つておるということであります。従いましてその分担する分野にふさわしい教育をいたしたいということであるのでありまして、根本の警察精神、民主的な警察ということを教えないという意味では毛頭ございません。これは基本として予備隊の隊長にもぜひ教育をしなければならぬものと思つております。ただ任務分担の分野にふさわしいいわば特殊教育の面がありますので、そうした面においては予備隊において教育機関を持つことが適当であろうと思います。私も大学に絶対に行かせないという考えを持つておるわけではないのであります。先ほども申しましたように、大学に行つて教育を受ける場合もあり得るとは思いますが、やはり一応の建前は、警察予備隊が自身の教育機関を持つことが建前になるであろうと考えるわけであります。しかしその際についても、警察精神の問題といいますか、民主的な警察ということについては、十分徹底した教育を行うつもりであります。
#101
○花村委員 ただいま任務分担の分野のよつてその教育がきまるという話でしたが、予備隊のその與えられた任務分担の領域いかん。それから第二にその任務分担の分野に相応するいかなる教育をなしつつあるか、その教育内容の詳細。この二点お尋ねしたいと思います。
#102
○増原政府委員 予備隊の任務はきわめて簡單な言葉で書いてありまするが、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補う、いわゆる相当大規模の治安撹乱があつて、現在の国家地方警察及び自治体警察の手にあまるというときに出て行くというのが予備隊の任務であります。でありまするから、そうした集団的な治安撹乱をしずめるということが予備隊の主たる任務になるわけであります。先ほど申しましたように、天災地変等の場合には、できるだけ出まして、民衆の治安維持のために奉仕するということが適当かと考えまするが、その他の場合は、集団的な治安撹乱があつた場合に出るということが予備隊の任務であります。従いまして、そうした場合の治安維持の方法を教育をし、また訓練をしているということが、予備隊の教育のやり方になるわけであります。現在は予備隊が発足をいたしましてからまだ間もなく、その幹部もいろいろの事情で十分任命が終りておらないという状態でありまして、現在までのところは十三週間訓練というものをやつております。これはその基本的な事項を顧問という形の関係米軍将校から教授を受けまして――これを具体的に言いますと、前の晩にその仮隊長である隊員が教授を受けて、その翌日一般隊員にこれを教授するという、まあ変則的な形で今までは訓練を続けて来ておるわけであります。従いまして各個教練であるとか、部隊の訓練であるとか、あるいはいわゆる暴動鎭圧のための初期の演練であるとか、あるいは現在はカービンという騎銃を持つておりますが、この分解なり操作一訓練をしておる。そういうことを現在はやつておるわけでありまして、教育内容につきましても、これからわれわれ部隊で研究をし、成案を得て、これを実施するというほかない事情であります。
#103
○花村委員 抽象的に今説明されたようなことは、大体われわれも想像がついてわかつておるのですが、国警や自治体警察において治安維持上なし得ざる不備の点を補うと言われたのだが、それをもう少し具体的にどういう点とどういう点に対する権限を持つているものか。自治体警察や国警との職務権限の分野を、もう少し明確に説明を願いたいということと、これに対する教育内容でありまするが、訓練をしておられることは、いろいろ述べられたので、わかつておるのでありまするが、その訓練の詳細、つまり今何か銃を持つてやつておるような話もありましたが、銃だけですか、あるいはその、他の武器も使用するのか。たとえば機関銃のごとき、あるいはその他の武器等にも及ぶのであるか。そういう点をもう少し明瞭にお説明願いたいと思います。それからその教育というのは、訓練だけで学科等に対する教育はしないのであるか、教育内容の詳細を具体的に御説明願いたい。
#104
○増原政府委員 他の警察との限界というのは、予測隊令に出ております抽象的な文句しか現在はきまつておらないのであります。先ほど猪俣委員からも御質問がありましたが、まだ決定をいたしませんで研究中というお答えをいたした分野が非常に多いわけであります。規律のところは、先ほど抽象的に申し上げた以上を、お答え申し上げることは困難であります。そういう集団的な治安撹乱があつた場合に出て行くのでありまして、平素国家地方警察なり自治体警察の手が足りない、たとえば窃盗かよけい出たために地方警察の手が足りない、だからちよつと手伝えというふうな場合に、ちよつと手伝おうというのは予備隊の建前では、ございません。そういうときに手が足りないといつても、これを助けるというのは、予備隊設置の趣旨にはなつておらないわけであります。集団的な治安撹乱とか天災地変というふうな場合に出動して、国家地方警察なり自治体警察の力の足りないところを補うということが予備隊の任務であります。抽象的ではありまするが、そうしたことを越えまして、具体的な出動の際の三警察の指揮権の関係等は、先ほど申し上げた通りまだ研究中であります。
 教育の内容を具体的にというお話でありましたが、現在までにいたしておるのは十三週間教育というのでありまして、先ほど申し上げた程度のものであります。武器の訓練はカービン騎銃の操作をやつております。それ以外には武器は持つておりません。これは将来さらにどういう武器を持つかという御質問もありましたが、この点は今のところカービン銃を持つにとどまると申し上げるよりほかない状態であります。
#105
○安部委員長 この際お諮りいたします。庄司一郎君から前科抹消に関し委員外発言を求められておりまするが、本件を議題に供して同君に発言を許すに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#106
○安部委員長 御異議なしと認めます。委員外発言を許します。なお庄司君に申し上げますが、ただいま本会議が開かれましたので、御発言はつとめて簡單にお願いいたします。
#107
○庄司一郎君 ただいま委員御一同にお諮りの上、きわめて簡單な発言のお許しを得てありがとうございます。お伺いしたい一件は、過般隣の永田町小学校に前科抹消実施満三周年紀念の会合が持たれたのでございます。その際、都内外の多くの保護司諸君が集まられて、前科抹消実施の刑法第三十四條ノ二の改正はまことにありがたいことであつたが、その後、都あるいは市町村の戸籍寄留係等において、あるいは地方の警察、検察庁等において、前科抹消、すなわち罰金刑においては満五箇年、実刑を受けた者は満十箇年、もちろんその間に再犯、累犯等がなかつた場合でございますが、まつたく刑名簿よりカット・オフさるべきものが、いまだにそういうことが実施されていない市町村がきわめて多いのであります。あるいは警察も、あるいは検察庁も、何か犯罪捜査の便宜のためかどうかわからぬが、十年はおろか、二十年、三十年前の前科であつても、刑名簿にいまだにこれを登録しておる傾向がきわめて多い。このために保護司がいわゆる更正保護政策をとつて行く上において、就職等に非常に困る実情になつておるが、まことに困つたものであるというお話が多数の保護司諸君より出たのであります。そこで私はぜひ法務総裁あるいは政府委員の方にお伺いをしておきたい。せつかく長い努力をもつてこの刑法第五十四條ノニがここにうたわれるように相なつたにかかわらず、また釈放者に非常な希望と光明を把握させることができ得るようにこの刑法の改正がなつたにもかかわりませず、いまだに検察庁も警察も、あるいは身分証明書を発行しておる市町村の戸籍寄留係等において、最初の裁判の判決言い渡しをことごとく抹消せず、すなわち前科が抹消さるべきものを抹消しておらないという実情に相なつておるようでありまして、私はこのことを去る二十八日の予算総合において法務総裁にお尋ねしたのであります。ところが法務総裁は、まことに御同感であるから、関係の諸君と相談の上、きわめて近き将来において善処する旨のお答えではありましたが、現在刑政長官等においては、いかなる指導、あるいは監督と言いましては語弊がありますが、市町村役場あるいは下級の検察庁等に対して、いわゆる前科抹消問題について、その三十四條ノ二趣旨が徹底するように御指導、御誘掖をなされておるかという一点だけをお伺いするために、特別の発言のお計しをいただいたわけであります。
#108
○草鹿政府委員 前科抹消のことにつきましては、先般もお話がありましたので、この問題は費用の点からいたしましても、あるいはまた手続きの非常にむずかしい点等いろいろございますが、せつかくああいう法律ができましたので、この法律の趣旨に沿うべく、さつそく法務府としても努力しなければいけないと考えまして、法務府内及び刑務所、検察庁あるいは刑務所、さらに更正保護委員会等から委員を出してもらいまして、いかなる方法をとれば費用も最も少くてしかも的確にこの実を上げることができるかという具体的のことについて、さつそく委員会をつくつて研究を始めております。御承知のように抹消することは市町村でやつておりますが、刑務所からいつ刑が終つたとかいろいろなことの通知がなければ、市町村においてもわかりませんので、従来は間合せがありますと、執行後何年経つているという通知を出しておる程度でありましたけれども、今度は刑の執行が終りました者については、あるいは仮釈放をなしました者については、残刑がどれだけあるといつたようなことを書きまして、迅速に刑務所から市町村役場の方へ通知をする、こういつたような方法を目下考慮中であります。
#109
○庄司一郎君 ありがとうございました。なお委員長並びに法務委員各位に、この問題につきましては、どうか今後とも深き御関心を持つていただいて、平素御協力をいただきたい。大きな人道問題であり、社会問題である、この問題のよりよき御解決に御協力を求めます。たいへんありがとうございました。
#110
○安部委員長 それでは委員外発言はこれで終ります。
 本会議か開かれましたので、しばらく休憩いたします。
    午後三時五十一分休憩
    〔休憩後は開会に至らなかつた〕
ソース: 国立国会図書館
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