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1998/05/26 第142回国会 参議院 参議院会議録情報 第142回国会 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第4号
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1998/05/26 第142回国会 参議院

参議院会議録情報 第142回国会 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第4号

#1
第142回国会 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第4号
平成十年五月二十六日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     金田 勝年君     須藤良太郎君
     野村 五男君     山本 一太君
     山下 芳生君     橋本  敦君
 五月二十六日
    辞任         補欠選任
     一井 淳治君     小川 勝也君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         遠藤  要君
    理 事
                石渡 清元君
                片山虎之助君
                釜本 邦茂君
                高木 正明君
                野間  赳君
                伊藤 基隆君
                小島 慶三君
                荒木 清寛君
                赤桐  操君
    委 員
                石井 道子君
                海老原義彦君
                鎌田 要人君
                亀谷 博昭君
                久世 公堯君
                国井 正幸君
                清水嘉与子君
                須藤良太郎君
                田村 公平君
                常田 享詳君
                長尾 立子君
                林  芳正君
                松村 龍二君
                三浦 一水君
                宮澤  弘君
                山本 一太君
                石田 美栄君
                小川 勝也君
                小山 峰男君
                竹村 泰子君
                寺崎 昭久君
                牛嶋  正君
                海野 義孝君
                益田 洋介君
                渡辺 孝男君
                清水 澄子君
                田  英夫君
                笠井  亮君
                橋本  敦君
                吉川 春子君
                阿曽田 清君
                星野 朋市君
                佐藤 道夫君
                奥村 展三君
   国務大臣
       内閣総理大臣   橋本龍太郎君
       法 務 大 臣  下稲葉耕吉君
       外 務 大 臣  小渕 恵三君
       大 蔵 大 臣  松永  光君
       文 部 大 臣  町村 信孝君
       厚 生 大 臣  小泉純一郎君
       農林水産大臣   島村 宜伸君
       通商産業大臣   堀内 光雄君
       運 輸 大 臣  藤井 孝男君
       郵 政 大 臣  自見庄三郎君
       労 働 大 臣  伊吹 文明君
       建 設 大 臣  瓦   力君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    上杉 光弘君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 村岡 兼造君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  小里 貞利君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (沖縄開発庁長
       官)       鈴木 宗男君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  久間 章生君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       尾身 幸次君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       谷垣 禎一君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  大木  浩君
       国 務 大 臣
       (国土庁長官)  亀井 久興君
   政府委員
       内閣官房内閣内
       政審議室長
       兼内閣総理大臣
       官房内政審議室
       長        竹島 一彦君
       内閣法制局長官  大森 政輔君
       防衛庁経理局長  藤島 正之君
       経済企画庁調整
       局長       塩谷 隆英君
       経済企画庁総合
       計画局長     中名生 隆君
       経済企画庁調査
       局長       新保 生二君
       科学技術庁長官
       官房長      沖村 憲樹君
       外務省総合外交
       政策局長     加藤 良三君
       外務省総合外交
       政策局軍備管
       理・科学審議官  阿部 信泰君
       外務省アジア局
       長        阿南 惟茂君
       外務省北米局長  高野 紀元君
       外務省経済協力
       局長       大島 賢三君
       外務省条約局長  竹内 行夫君
       大蔵省主計局長  涌井 洋治君
       大蔵省主税局長  尾原 榮夫君
       大蔵省証券局長
       心得       山本  晃君
       大蔵省銀行局長  山口 公生君
       大蔵省国際金融
       局長       黒田 東彦君
       文部大臣官房長  小野 元之君
       文部大臣官房総
       務審議官     高  為重君
       厚生大臣官房総
       務審議官     田中 泰弘君
       厚生省生活衛生
       局長       小野 昭雄君
       農林水産大臣官
       房長       堤  英隆君
       農林水産省経済
       局長       熊澤 英昭君
       通商産業省環境
       立地局長     並木  徹君
       労働大臣官房長  渡邊  信君
       建設省都市局長  木下 博夫君
       建設省道路局長  佐藤 信彦君
       自治省財政局長  二橋 正弘君
       自治省税務局長  成瀬 宣孝君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        志村 昌俊君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○財政構造改革の推進に関する特別措置法の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○平成十年分所得税の特別減税のための臨時措置
 法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(遠藤要君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を開会いたします。
 財政構造改革の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、平成十年分所得税の特別減税のための臨時措置法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案、地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○林芳正君 自民党の林芳正でございます。昨日に引き続きまして御質疑をいたしたいと思います。
 まず、財政構造改革の方でございますが、これはむしろ去年このもとの法律を通したときにお聞きするべきだったかもしれませんけれども、そもそもなぜ財政赤字というものがいけないのか減らさなければいけないのかということにつきましては、哲学論争とも言えるぐらい大変大きな問題があるわけでございます。グラム・ラドマンやOBRAをやりましたアメリカにおきましても、憲法にこのバランスバジェット・アメンドメントといいまして、財政を均衡させる修正案を入れるかどうかにつきまして長年の議論がありまして、なかなか国会を通らないということでございます。両論あるわけでございますが、そういったそもそも論をまずお聞きしたいと思うわけでございます。
 よく言われますのは、財政赤字の問題点といたしましては、クラウディングアウトと申しまして財政支出が拡大をいたしますとこの支出を賄うために公債を大量に発行する。そうしますと、市中の資金が公債の購入に充てられるためにほかに回らなくなる。不足しまして、結果として金利が上昇するわけでございます。このため、民間企業は資金を調達するときに比較的高い金利で借り入れをすることを余儀なくされて、経済成長の源泉であります民間投資の抑制が起こるというようなことが言われております。これがまた中長期的には経済成長に悪影響を与えるおそれがあるというふうなことが言われておるわけでございます。
 一方、このクラウディングアウトという点につきましては、我が国の場合は大変に貯蓄率が高いわけでございまして、過剰貯蓄と言われるぐらいのものが存在をしておりますから、この問題は我が国に当てはまらないのではないかという議論もあるわけでございますが、この点について、まず総理の御見解をいただきたいと思います。
#4
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員もお触れになりましたけれども、確かに我が国は民間部門の貯蓄が多額に上っております。こうしたことを背景に、クラウディングアウトの問題というのは少なくとも我が国において顕在化するに至っていないことは、私は事実だと思います。
 しかし、将来を考えましたとき、今後諸外国に例を見ない高齢社会に我々は突入する、既に入っているわけでありますけれども、この状況というのは一層厳しいものになります。本当は長寿というのは喜ばれるべきことでありますし、私はそう思っておりますけれども、実は少子というものとこれが並行して起こっておりますために、他には例を見ない高齢社会というものを覚悟しなければなりません。それを考えたとき、中長期的には民間部門の貯蓄も減少する可能性というものを否定することはできないわけです。
 そうしたことを考えましたときに、公的債務残高の累増が続いた場合、これはクラウディングアウトの問題が顕在化する可能性はあり得ると言わなければなりません。それは、当然のことながら民間投資を抑制し、経済にマイナスの影響を及ぼすといったことだけではなく、財政自体につきましても実は高金利によって利払い費が拡大をする。これは財政状況の悪化が一層進むということでもあるわけであり、この悪循環に陥る危険性もなしとはしないわけです。そうした事態を阻まなきゃならない。そのためにも実は財政構造改革というものは着実に進めていく必要がある、私どもとしてはそのように考えております。
#5
○林芳正君 総理、ありがとうございました。
 私も総理が今おっしゃったことと全く同感でございまして、我が国は貯蓄は今は多いわけでございますが、これが人口構造によって変わってくるんではないかなという気がいたしておるところでございます。
 そこで、今、少子・高齢化になっていく、また財政の利払いというお話もあったわけでございますが、公債発行、これ増税に比べましてどうしても現世代、今生きて暮らして税金を払っておる我々の世代の国民の負担感というのはどちらかというと増税より希薄でございまして、ただ、将来世代の負担となるわけでございます。
 この財政赤字がどんどんと膨らんでいくという問題、総理が今おっしゃったとおりでございますが、一方で公債の元利払いのために租税で財源を調達すれば、結局は、公債を持っておる人というのも我が国の国民でありますから、国民の間で所得が移転するだけである。アメリカのように双子の赤字と言われましたときは、これは外国の方がアメリカの国債を持っておったわけですから国外へ移転をするわけでございますけれども、我が国の場合は公債はほとんど市中といいますか国内で償却をしておりますので、国内で所得が移転をするだけではないか、特段の問題ではないんではないかという見方もあるわけでございますが、この点について、総理、もう一点だけお伺いしたいと思います。
#6
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員が指摘されました公債といいましょうか内国債、正確には内国債の方がいいのかもしれませんが、国民経済的に見ると将来世代の資産である。元利払いは納税者から公債保有者への国内での所得移転にすぎず、各時点で利用可能な資源の量は変化しないので将来世代の負担にはならないという議論が学問的にある、学問だけではなくておっしゃる方もありますけれども、そういう議論があることは承知しています。
 ただ、そういう論理を展開していきますと、例えば現在の巨額の公債残高を償還するために仮に現時点で大幅の増税をいたした、そうしたとしても、実はこれは公債保有者に所得が移転するだけのことである、だから現役世代の負担にはならないという理屈も出てきてしまいます。しかし、これは一体いかがなものか。学問としての議論は別といたしまして、私は現役世代であれ将来世代であれ、そしてまた課された税が国債保有者に渡されるんだということでありましても、重い税負担を課すということ自体が実は経済社会に好ましからざる影響を与える、これは否定できないと思います。
 将来、高齢化社会と言われるものが高齢化の化の字が取れてしまう。高齢社会という状況の中では、当然のことながら社会保障負担がふえざるを得ないということでもあるわけで、そうしたことをあわせて考えます場合には、財政政策の議論としてはこの議論は少々妥当性を欠く、妥当性を欠くと申し上げたらしかられるかもしれませんけれども、私は妥当性を欠く議論だと思います。
#7
○林芳正君 ありがとうございました。
 私も、あえて異論を出して総理の御答弁を聞きたかったわけでございますが、まさに小さな政府というものを考えるときに、この辺をきちっと詰めて、その基本的な理解のもとにいろいろなことをやっていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
 そこで、各論に入るわけでございますが、今回の財政構造改革法の一部改正法案の、どういうときにこれを外すかということでございますが、「経済活動の著しい停滞」の一つとして考えている直近のツークオーター、二四半期連続で実質GDP成長率が一%未満という、まずそういう条件でございますが、これは米国のOBRA、包括財政調整法にも同じ規定があるわけでございます。
 そこでOBRA、少し我が国よりも先発でありますけれども、実際に米国でこの規定が発動されたことがありますかどうか、大蔵大臣または政府の方にお聞きしたいと思います。
#8
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 米国におきまして、九〇年から九一年にかけまして一律削減停止の要件を満たす時期がございました。議会におきまして一律削減停止の決議の採択が行われましたが、圧倒的多数でこれは否決されております。したがいまして、実際には停止条項は発動されることはなかったと承知しております。
 議会におきまして一律削減停止の決議が否決された理由として、当時の議会の審議におきまして、議会と大統領の合意の上、OBRAが成立した後早々にこれを破るようなことは不適切であり、議会は財政赤字に対し何ら有効な対策を打たなかったとの非難を受けることとなろう。それから、予算の規律なかりせば、議会は直ちに財政の混沌に陥るであろうというような意見が大勢を占めたとされております。
#9
○林芳正君 もって瞑すべしだと思いますが、まさに先輩のアメリカでもこういう規定をつくってはいますけれども、大変に慎重な運営をされておられるということであります。
 そこで、「経済活動の著しい停滞」のもう一つ、直近の一四半期の実質GDP成長率が一%未満で、かつ当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調な場合を考えておられるということでございますが、この消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調というのは極めて、何といいますか、雑駁といいますか、どの程度というのが具体的にわからないといけないような気がするわけでございますけれども、具体的にどういう指標をお使いになって、その指標がどういうふうになった場合にこの条項に該当するのか御説明をお願いしたいと思います。
#10
○政府委員(涌井洋治君) 消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調である場合ということでございますが、これはまず一四半期しか実質GDP成長率が一%未満を記録していないものの、次の四半期の実質GDPが公表される前であっても、足元の消費それから設備投資、雇用の諸指標から見て実質GDP成長率の低下が見込まれ、早急に施策を実行すべきであるという、そういうケースがある場合に備えて設けるものでございます。
 具体的には、消費につきましては消費水準指数、これは家計調査から作成される指数でございます。それから、設備投資につきましては資本財出荷指数、それから雇用につきましては有効求人倍率、これを基本的な指標として用いることを考えております。
 それから、これらの指標につきデータを比較する際は、短期的な変動を除去するために、直近三カ月平均と前三カ月平均、例えば十−十二月のGDPが三月に発表されております。その数字がマイナスである、そうすると一−三月のGDPの発表は六月になります。しかし、どうも足元の数字を見ると、その発表まで施策の発動を検討するには時間を待てないということで、そのようなケースの場合は直近三カ月、例えば十二、一、二月の数字は大体三月末から四月の早々にかけて出てまいります。ですから、十二、一、二月とその前の九、十、十一月、その指標を比較した上で、直近三カ月平均が前三カ月平均を下回っている状態を著しく低調と考えているところでございます。
#11
○林芳正君 ありがとうございました。
 具体的にきちっと決めておかないと、先ほどもアメリカの例を引きましたけれども、安易にこれを発動することになると、先ほど冒頭で総理に伺いましたこの基本精神というのが骨抜きにされてしまうわけでございまして、厳格な適用をお願いしたい。
 一方で、本当に悪いときには、いろいろ議論があるところでありますけれども、機敏に対応しなければいけない、こう思うわけでございまして、そういう趣旨でその三つ目があるんだと思うんです。
 もう一つは、「経済活動の著しい停滞」の三つ目としましては、「予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合」、これだけ読みますと何のことかよくわからないわけでございますけれども、内外の経済ショックに該当するものというのはどういうことを想定しており、そういうふうになった場合にどういうような条項の発動の手続になるのかあわせてお伺いをしたいと思います。
#12
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 直近の実質GDP成長率が二期あるいは一期一%未満というような状態、そういう数字がまだ出てないような状態であるわけですが、さはさりながら、「内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合」、つまりGDPの数字というものは三カ月後でないと出てこない、しかしその三カ月間待つわけにはいかないような状況が想定されるということで、まさにこれは予見できない経済ショックということで、文字どおり予見できない状況であるわけでございます。
 具体的に念頭に一つの例としてありましたのが昭和四十八年の石油ショックのときのことでございます。石油ショックは昭和四十八年の十−十二月にかけて石油価格が急騰しております。その結果として四十九年の一−二月の実質GDP成長率というのは、これはもう一三・一%の大幅なマイナスになったわけでございますが、その数字が出てきますのは四十九年の六月になってしまう。ところが、その直前のGDPを見てみますと、四十八年の七−九月期は一・一七%の増、それから石油高騰が起きた十−十二月の間でもこれは五・〇%、まだ増加していたということでございます。ところが、石油ショックは急激に経済に影響したということでございまして、間違いなくこの一−三月のQEは非常に悪いだろうということが想定されたわけでございまして、ともかくそれは六月までは待てない、そのようなケースを念頭に置いてこの規定を設けたわけでございます。
 それから、そのような状態に陥った場合にどういう手続でやるのかということでございますが、石油ショックのような急速な経済活動の停滞に陥った場合、それが国民生活へ重大な影響を与えているかどうか、その影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生じるかどうか、その時々の状況を総合的に勘案して、施策の実施の財源として前年度を上回る特例公債を発行せざるを得ないかどうかということを判断してまいる。
 具体的には、政府としてはまずそのような検討を行い、必要と認めた場合には補正予算を編成して、最終的には予算の形で国会にお諮りするものと考えております。
#13
○林芳正君 ありがとうございました。
 まさに機動的に、数字が出てくる前に発動できる条項を入れておくというのは大変に大事なことだと思いますが、今お聞きしたように、最後は補正予算をお組みになって、この国会へ出されるということであります。
 冒頭にお聞きしましたように、アメリカでも、議会に来てかんかんがくがく議論した結果やらなかったという例もあるわけでございまして、臨機応変ということで、みだりにこれを口実として財政赤字を削減するという基本精神が失われないように、これは我々も肝に銘じてやっていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
 そこで、きのう片山先生から最後にお話があったと思いますが、数字をどこへ出して、また歳入歳出を総合的にやることを何かできないのか、御検討されたらいかがかということでございましたが、今、グラム・ラドマンまたOBRAのお話をしたわけでございますけれども、アメリカでこの財政均衡法をつくりましたときにCBO、コングレショナル・バジェッタリー・オフィスというわけでございますが、議会に予算局を設置いたしました。向こうは我が国と大分制度が違いますけれども、政府にはOMBというところがございまして、そこでいろんな案をつくる、実際には議会でも編成にタッチをするわけでございますが、政府側でいろいろと情報を集めて数字をつくって統計をつくるというところと別に、議会の方にCBOというところを置きまして、日本の場合は経済企画庁が経済見通しを出しますけれども、それとは別に、例えば予算委員会の調査室が別の数字を出して、それが異なることもあり得るというような形で議論をしておるわけでございます。
 我が国は議院内閣制でございますから、アメリカの大統領制と違いまして議会と行政府との関係というのが異なるわけでございますから、このままこの日本版CBOみたいなことを言うつもりはないわけでありますけれども、二つの違ったところがそれぞれの観点から数字を出してその間で議論をする。財政赤字がどのように少なくなっていくのかという見通しについてきのうも議論があったところでございますが、一つのところが出すだけではなくてもう一つのところが出して、その間で御議論をし、また選択肢として議論をしていくということがあればもう少しいろんな選択肢が出てくるのではないかな、こういうふうにも思うわけでございますが、こういったことにつきまして、総理、もし御見解があれば賜りたいと思います。
#14
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、昨日、片山議員とのやりとりをいたしました速記を改めて目を通しておりますが、片山議員が展開されました御議論、歳入と歳出をばらばらに議論するのはおかしい、同時に税で議論をいたします場合においても、特定財源と一般財源あるいは国税と地方税、こうした関係をどう整理していくか、こうした観点から議論を提起されました。そして、私は一つの意見として評価しますということを、たまたまインターネットで届いておりました国民の御意見を踏まえて御答弁申し上げたわけであります。
 今、アメリカの予算制度と日本の予算制度は、議員御自身が指摘をされたことでありまして、私は、議会予算局、ここが果たしております機能というのは、アメリカの制度のもとではこれは当然のことながら予算編成権が議会に所属している、そうした観点から議会予算局というものの権限が広く立法府の中に設置されたと考えております。
   〔委員長退席、理事高木正明君着席〕
 国会に日本版のCBOと言われます点につきましては、アメリカの対応と日本の対応、制度の違いがございます。立法府の中における組織ということでありまして、政府側からコメントは控えさせていただきたいと存じます。
#15
○林芳正君 ありがとうございました。
 それでは、減税法案の方に移りたいと思うわけでございますが、きのうもいろいろ議論になっておりましたけれども、我が国の所得課税最高税率というのは国、地方合わせて六五%だと。諸外国の例もきのう引かれていろいろ論議がありましたけれども、大変に高いところにあるということでありますし、今回減税をやりまして、課税最低限、最初は三百六十一・六でありましたけれども、平成十年分については、今度の追加によって四百九十一・七万円まで引き上がる。
 昭和五十九年でございましたが、私が最初にサラリーマンを始めましてもらったときの月給が十三万六千五百円でございましたから、そのときはたしか所得税を払っておったような気がするわけでございますけれども、多分今度の減税になりますと、そのときの年収では所得税を払わなくてよくなるのかな、大変に高いといえば高いレベルになっているんだなと、改めて思うわけでございます。
 諸外国の例を引くまでもありませんけれども、例えばアメリカは二百四十四・八、英国は百五・六万円であります。それぞれ為替のレートがいろいろありますけれども、これを見ても若干我が国は高いところに来てしまったなという感じがするわけでございます。
 きのうも議論になりましたけれども、個人のやる気を引き出す税制ということでございますが、英米におきまして、まさに八〇年代にアメリカにおきましてはレーガノミックスということで、具体的にはこの減税につきましてはロス・ケンプ法案というのが出まして、そこで一連の改革をやったと。イギリスにおきましてもサッチャーがそのときにいろんな改革をやりました。
 きのう別の委員会の参考人でリチャード・クーさんという方が来られまして、私も長年の友人でございますけれども、ワシントンでこんな話題になっているということをおっしゃっておられましたのは、大変皮肉なのは、レーガノミックスはレーガンでございますし、サッチャーも保守でございましたが、保守のやった革命、減税にしろ構造改革にしろ、その成果が同じ党の次の方のときにはなかなかあらわれなかったということであります。
 レーガンのときにはブッシュのときになかなかそれがあらわれなかったし、サッチャーの場合はメージャーのときにはなかなか時間がかかるものですからあらわれなかった。党がかわりましてクリントンになって、またイギリスはブレアになったときにちょうど構造改革をやったときの成果が出てきて、レーガノミックスのおかげで今一番喜んでいるのは皮肉なことにクリントンとブレアである、こんなようなことを今ワシントンでいろいろと話をしておるんだ、こんな話をされておられたわけでございます。
 もしそうなることであったとしても、我々はここでこの改革から逃げてはいけない、こういうふうに思うわけでございますし、それは必ず我が国の将来にとって必要なことになる、こう思うわけでございまして、活力のある社会を構築していくためにはやはり最高税率を見直す、また課税最低限も含めて見直していかなければならないと私は思うわけでございますが、総理の御所見があればお聞かせ願いたいと思います。
#16
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員は所得課税から議論を始められました。私ども、本当に何回も御答弁を申し上げていることですけれども、所得税につきましては、二度にわたる抜本的な税制改革の中で大半の方が生涯一〇ないし二〇%の税率が適用される。そういう意味では、最高税率の問題を除くとフラット化しているということがまず言えると思います。
 同時に、議員が今御指摘になりましたように、累次にわたる減税の結果として課税最低限が諸外国に比して高い。所得課税負担全体としては主要先進国中最低となっている。そうした問題だけではなく、各種の控除などのあり方も、また資産性の所得課税、あるいは年金課税のあり方、個人所得課税につきましてもさまざまな議論があります。
 ですから、そうしたさまざまな問題について、よく申し上げますけれども、公正、透明で国民の意欲を引き出せるような、こうした制度改正を目指して政府税制調査会においては既に議論を開始していただいております。また、当然ながら与党税制調査会においても幅広くきちんとした検討が行われるでありましょう。
 その上で、租税負担率の国際比較を見ておりますと、国税プラス地方税という形で見ましたときに、国民負担率の中における租税の高さとは別に、やはりそれぞれの国の税収構造に違いがあるなということが非常に目につきます。
 例えば、我が国の場合、九八年度の構成比でいきますなら、資産課税などが一六・四、消費課税が二九・一、個人所得課税が二九・六、法人所得課税が二四・九というのが租税負担率の中で占めるそれぞれの税目ごとの構成比であります。
 しかし、例えばイギリスの場合に、三八・三と租税負担率が高いんですが、税目ごとの構成を見ていきますと、資産課税などが一二・九、消費課税は四二・二、そして個人所得課税が三三・三、法人所得課税が一一・五。あるいは、日本よりも課税最低限が高いという点でドイツをとってみましても、資産課税などが占めるウエートは、ドイツの場合は四・六、消費課税が四五・八、個人所得課税が四五・〇、法人課税が四・六、租税負担率は三一・一。
 こうして見ますと、やっぱり各国それぞれにいろいろなその国その国の仕組みというものはあるんだな、そしてそれなりの税の構造というものをその国情に合って工夫しているんだなという感じがいたします。
 そうした中において、日本における所得課税のあり方、これは今申し上げましたようなさまざまな論点を持って既にいろいろな角度から議論がされておりますが、大きく全体を論じていただく、その必要性があるということはいろいろな角度から指摘を受け、今回もそうした意味で、税制調査会において議論が既にスタートをした、与党税制調査会においても当然近く議論がされるであろう、その中からより意欲を引き出せるような方式が見出されることを心から願っております。
#17
○林芳正君 ありがとうございました。
 ぜひ、公正、適正、そしてやる気を引き出す、意欲を引き出す、特にこの意欲を引き出すというところに重点を置いて今からやっていかなければならないんじゃないかな、私はこういうふうに思うわけでございます。
 そこで、今、総理からも詳しく御答弁いただいたわけでございまして、各国それぞれの状況に応じていろいろ率も違いますし、やり方も違うということでございますが、その中で我が国になくてほかの国に大体あるというものの一つに納税者番号制度というものがあるわけでございます。公正、適正という意味からはこれの導入を図るべきという意見が大変根強いわけでございますが、いろんな経緯が今まであったことも承知をいたしておるわけでございます。
 その中で、特に金融ビッグバン、今まさに第三委員会室では財政・金融委員会で審議をしておるところでございますけれども、円の国際化という観点から、この間も大蔵大臣がおっしゃったということを新聞記事で拝見したわけでございますが、非居住者の受け取る国債の利子について源泉徴収をやっておるわけでございますが、これは大変評判が悪いわけでございまして、これを撤廃するのがグローバルスタンダードだ、こういうことでございます。ただ、納税者番号が我が国にないために本人の確認がなかなかできない。源泉徴収をやめちゃいますと、いろんな人がいろんな人の名前を使って自由にできるようになるではないかこれも当然のことでございます。
 あわせてお聞きをいたしますけれども、こういうことで、ビッグバンに対応していくためにもこの納税者番号というものは大変重要になってくると思われるわけですが、この検討状況について、また今申し上げました非居住者の国債の利子に対する源泉徴収の撤廃について、二点お伺いしたいと思います。
#18
○政府委員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。まず、納税者番号制度の方からお答えさせていただきますが、この問題につきましては、税務行政をどう効率化していくか、あるいは所得課税、資産課税の適正化をどう図っていくかという観点から検討が続けられてまいりました。
 最近、今、先生からお話がございましたように、金融システム改革に伴いまして資料情報制度を充実する必要があるんじゃないかというような要請がございます。そういう環境変化が確かに見られるというふうな受けとめ方が税制調査会の考え方でございます。ただ、まだこの納税者番号制度は、プライバシーの問題をどう考えるのか、あるいは経済取引への影響等の諸課題についてどう考えるのか検討を進めていく課題が残っているのも事実でございます。
 こういうことを踏まえまして、税制調査会の十年度の答申でございますが、「納税者番号制度をめぐる環境は新しい局面を迎えており、国民の受け止め方を十分に把握しつつ、より具体的かつ積極的な検討を行わなければならない時期に来ています。」とされているところでございます。今回、税制調査会基本問題小委員会ができて課税のあり方について検討が進められますが、その中でも検討が進められていくものと承知しているわけでございます。
 それから、二番目の国債の非居住者に対する源泉徴収を廃止したらどうかということでございます。この話、実は国境を越えた利子の支払いについてどう課税当局として取り扱うかという話でございまして、先生からお話しございましたように、グローバルスタンダードといたしましては、源泉徴収を行うか、あるいはそういう非居住者のどういう方に支払ったかという情報交換を行うという、少なくともそのいずれかを行うということがスタンダードになっているわけでございます。我が国では、御承知のように源泉徴収を基本にしているわけでございます。
 この問題の検討に当たりましては、課税権の問題をどう考えるかという問題があるわけですが、その話は別にいたしましても、居住者による租税回避、つまり非居住者という名で居住者がこの制度の適用を受けるということになればおかしなことになってまいります。また、その本人確認、これも先生から御指摘のあったとおりでございますが、さらにその非居住者について当該居住国に情報を教えてあげるという義務があるわけでございます。これをどう確保していくかという問題があると思います。同時に、これらの前提といたしまして、振替決済制度等の国際流通市場のインフラ、相当アメリカ等とは違うようでございます、この整備の問題、幅広い観点から検討が行われる必要があるというふうに考えております。
#19
○林芳正君 ありがとうございました。
 問題点は大体わかっておるわけでございまして、あとはいろんな整備をしていただいて、ぜひ導入の方向で推進をしていただきたいと御要望を申し上げておきたい、こういうふうに思うわけでございます。
 もう既に年金の方では年金番号というのがついておるわけでございます。納税者番号というとどうもイメージが、語感が悪いものですから、アメリカもソーシャル・セキュリティー・ナンバー、社会保障番号ということで実際これで税の管理をしておるわけでございます。年金番号が先行してついておりますし、景気対策にも盛り込まれました確定拠出型の年金ということも俎上に上がって今検討されておるわけでございまして、まさに個人勘定で年金が管理されるようになるということになれば、この年金番号との統一ということも視野に入れて御検討していただいてもいいんじゃないかなと思っておりますので、申し添えさせていただきたいと思います。
 それで、今触れましたけれども、総合経済対策におきまして、これも議論がいろいろ出たところでありますが、法人課税でございますけれども、国、地方をあわせて総合的な税率を国際的な水準にするということが盛り込まれておるわけでございます。
 これは、私も何年も党の税調でも申し上げてきたことでございますが、特に法人税の場合は、減税をした場合にそれが企業の意欲を刺激して、いろんな設備投資や投資に回るお金がふえることによりまして、減税をしますと可処分所得がふえますから、これが回り回って国の景気を刺激する。その分増収になるわけでございますが、その増収についてはなかなか法人税の減税財源にはしてもらえない。これは相関関係が難しいものですから計算することは難しいということでございます。
 そんな中で、やはり海外へいろんな優秀な企業が出ていく、租税回避といいますか一番安いところへ行くという問題も起きてきておるのは御案内のとおりでありまして、この精力的な検討を進めて早急に国際的な水準に持っていくことが必要だと思いますが、大蔵大臣、御決意をいただければと思います。
#20
○国務大臣(松永光君) 法人課税の問題につきましては、言うまでもなくこの三月に基本税率の問題については法律を可決、成立させていただきました。
 しかし、地方税の関係その他で諸外国と比べた場合には実効税率の面ではある程度高いものになっている。これがいわゆる法人課税について三年以内のできるだけ早い機会に欧米先進国並みにしようということの問題点はそこにあるというふうに思います。
 そういったことから、税制調査会で小委員会までつくっていただきまして、鋭意この地方税、なかんずく法人事業税の課税問題を中心に検討を進めていただく、こうなっておるわけでございまして、私どもとしては、その検討の結果を受けて欧米先進国並みの実質の税負担になるように努めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
#21
○林芳正君 ありがとうございました。
 そこで、これもきのう議論になったところでありますが、法人課税の見直しに当たっては、法人事業税、地方の方でございますが、外形標準化というものが検討の課題になっておるわけでございますが、まず自治大臣にこの段取り及び方向についてお伺いをしたい、こういうふうに思います。
#22
○国務大臣(上杉光弘君) 法人課税の問題は、事業税への外形基準の導入の議論でございますが、これは一つには課税の仕組みを変更するかどうかという議論でございまして、この問題が一つあると思います。それからもう一つは、法人課税の減税の議論でございますが、これは国税、地方税を通じて、ただいま大蔵大臣からお答えをされましたが、税体系全体で議論されるべきもの。この議論、二つあると思っております。
#23
○林芳正君 そこで、少し詳しくお聞きをしたいと思います。この外形標準課税をやりますと、たしかきのう自治大臣からはその地方税、地方の法人の税の部分では大体レベニュー・ニュートラルですよというお話があったわけですが、そういたしますと、個々の業種や企業によっては税が上がったり下がったりとでこぼこが出てくる、こういうふうに思うわけでございます。
 一方で、この法人事業税というのは国税の方の法人税の課税ベースの計算のときに損金になっておりますから、企業においてせっかく法人事業の地方の方が税金が減ったと思ったら、この損金が減るものですから国税の法人税の方で少し多目に取られて、全部取られちゃうわけじゃないんですが、法人税の税率分は法人税の方で取られてしまう。これでは余り減税をした喜びというのがなくなってしまうんではないかな、こういうふうに思っております。
 これについて、前提の話でございますが、何らかの配慮がされるべきじゃないかと思うんですが、その辺については大蔵省いかがでございましょうか。
#24
○政府委員(尾原榮夫君) ただいま先生からお話がございましたように、仮に法人事業税の外形標準化が行われたといたしますと、黒字法人の中には法人事業税の負担が減少し法人税の課税所得が増加するものが生ずることも考えられるわけでございます。
 ただ、これは、今、先生の方から損金というふうにお話がございましたが、まさにコストとして外部へ流出する部分、いわば法人事業税でございますが、この負担が減少して課税所得が増加するという当然の結果とも考えられます。また、法人事業税の負担がふえる法人の中には、逆に法人税の減収が生じるものもあるのではないかというようなことも考えられます。したがって、確かに先生のおっしゃるようなことが起き得るということは否定いたしませんが、これをもって直ちに法人税率を引き下げるという考え方になるのかどうかという問題があろうかと思います。
 いずれにいたしましても、この法人課税の問題は、税制調査会で小委員会が設置されて検討が開始されたわけでございまして、こうした検討の方向を見守って検討していくべきものと考えております。
#25
○林芳正君 ありがとうございました。
 そこまでしか御答弁いただけないんだろうなと思いながら聞いておったわけでございますが、これはまた税調でやっていきたい、こういうふうに思うわけでございます。
 そこで、法人事業税本体のお話で二、三お聞きをしたいわけでございますけれども、既に外形標準で実質的にやっておるところがございまして、これは従来業種と呼ばれておりますが、電気、ガス、生保、損保というのは、なかなか所得というのは難しいものですから、いわゆる売上収入の一・五%ということで既にやっておるわけでございます。今回の見直しはこういうところも含めて全部おやりになるのかどうか。
 それから、これは一部の商工会議所等で出ている議論かと承知いたしておりますが、外形標準ということになりますと応益課税であると。応能ではなくて、所得があるなしにかかわらず地方自治体のサービスを受ける対価として外形標準で地方の法人事業税を払うという考え方になりますと、今財政構造改革でまさに公共投資を七%ずつ減らしていくということでございますから、一方でそのサービスを形づくるもともとのインフラに対してはお金の出し方が減っておるということでありますと、これに対応して応益課税の外形標準も減らしていくべきではないか、これは導入された後の話でございますけれども、そういう議論があるわけでございます。その議論につきまして自治大臣はどうお考えかその二点をお聞かせ願いたいと思います。
#26
○国務大臣(上杉光弘君) 御指摘のように、電気事業、ガス事業、生命保険業、損害保険業につきましては、従来から所得ではなくて外形基準の一種である収入金額により、一・五%でございますが、委員御指摘のとおり課税をされておるところでございます。
 事業税の外形標準の導入につきましては、具体的な外形基準に何を用いるのか税負担の変動をどう考えていくのか、なお検討すべき重要な課題があるわけでございます。今後、政府税制調査会の場で広く各界各層の御議論をいただきながら検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございますが、御指摘の収入金課税法人の取り扱いをどうするかということについては、この中で検討してまいる当然の課題だと思っております。
 それから、応益課税の導入についてでございますが、ちょっと長くなりますが、法人事業税につきましては、事業主がその活動を行うに当たり都道府県から行政サービスとしてさまざまなものを受けておるわけでございます。その必要な経費を負担すべきであるという観点から、課税標準に外形基準を導入することにつきまして検討すべきと考えておるわけでございます。
 一つには、法人が受けておる都道府県の行政サービスには、地域においてこれまで整備をされてきました道路あるいは港湾等の産業基盤施設等の利用等のほかに、各種の産業振興施策あるいは中小企業金融を含む商工行政、教育あるいは警察、さらには衛生行政等のさまざまな幅広の行政サービスが含まれていること。それから二つ目には、これらの行政サービスを賄う財源といたしまして、地方税は三割程度にとどまっておるわけでございまして、法人課税はその一部にすぎないこと。三つ目には、応益課税という場合、具体的な受益と税負担は量的に対応するものではないことなどを考えますと、公共事業の動向によって事業税率を変更するという考え方は適当ではないと考えておるわけでございます。
#27
○林芳正君 ありがとうございました。
 そこで、先ほど少し空洞化のお話を申し上げたわけでございますが、今、自治大臣にも御答弁いただきましたけれども、法人事業税の見直しを含めて法人税全体を国際標準まで下げなければいけないということでございますが、一方でこれと表裏の議論がございまして、逆に余り行き過ぎますとある国が自国の経済や金融市場の繁栄だけをねらって税の引き下げ競争を行うと。
 よく船を持っておるところのかかる税金を安くして一国に船籍だけが集中したという例がありましたけれども、これと同じことが例えば法人税で行われたとするとどうなるかという議論があるわけでございます。いわゆる税のダンピングというふうに呼ばれております。だんだんと国際経済がグローバル化いたしましてボーダーレス、本当に国境を越えていろんなことが動くようになってまいりますと、税のダンピング競争が行われますと、移動しやすい資本というものはすぐ一番いいところへ行ってしまう。移動しにくいのは労働とか消費という部分でございますから、資本から労働や消費といった部分に税負担がしわ寄せをされる、こんなようなことになるわけでございます。税制の中立性、公平性ということが損なわれたり、各国の課税ベースそのものが縮小をしてしまうという弊害が指摘をされておるところでございまして、こういった観点から有害な租税競争を抑制するために国際的な協調が必要であるという認識が高まっておるところでございます。
 今般、OECDで租税競争報告書というものが公表されておられるところでございますが、これを受けて我が国としても引き続きこの目標四〇%ぐらいということでございますけれども、その先を見て、例えばアジアの国は今金融危機で大変だということでございますけれども、税率を見てみますと大変に安いといいますか低い税率でどんどん成長しておる、こういう問題も出てくるわけでございます。いろんなところで我が国がリーダーシップをとって国際的な協調に貢献をしていくべきだと思うわけでございますが、大蔵大臣の御見解を賜りたいと思います。
#28
○国務大臣(松永光君) 委員御指摘のように、OECD租税競争報告書が出たわけでありますが、有害な税の引き下げ競争、これをどうするかということについての問題点を整理して、国際的な協調によってこれに歯どめをかける、こういったことで報告書が出ておるわけであります。我が国はフランスとともに共同議長国としてこの報告書の取りまとめに努力したという経緯がありますので、これを強く支持していかなきゃならぬ、こう考えているところであります。
 なお、この報告書の公表は、税の競争の問題の解決の第一歩であるというふうに思っております。今後、この報告書の勧告が幅広く実施されていくことを期待するとともに、我が国としても、OECDにおけるフォローアップ作業に引き続き積極的に貢献をしていかなきゃならぬ、こう思っているところでございます。
#29
○林芳正君 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。
 時間も追ってまいりましたので、あともう一つお聞きをしたいと思うわけでございます。
 平成十年度の税制改正におきまして、これは小さな話といえば小さな話でございますが、大変に私は経済に対する波及の効果があると思っておりますのは、少額減価償却資産の取得価額基準というのがございまして、これが二十万円から十万円に引き下げられたわけでございます。
 大蔵大臣に、この改正で企業の事務負担がなるべく過大にならないようにどういうような配慮をしていただいているのかということと、あわせて、パソコン等がよく言われるわけでございまして、情報化の機器の普及の促進につきまして、これは経済対策の面で大変に重要だと思うわけでございますが、今回の経済対策においてパソコン等情報化機器の普及促進という観点でどういうふうな対応をされておられますのか、二点まずお聞きしたいと思います。
#30
○政府委員(尾原榮夫君) まず、少額減価償却資産の即時損金算入制度について申し上げますが、この制度は確かに企業の事務負担に配慮して設けられた制度でございました。ただ、これまでの制度は、幾らこの少額資産が取得されても、年間の償却額に上限がなかった、全額が即時損金算入になるということから、期末において一種の利益調整が可能となっているのではないかという指摘があったわけでございます。
 今回、課税ベースを拡大して税率を引き下げるということの中で改正をさせていただきまして、その際、主要先進国における取り扱いも参考にしながら、取得価額基準を二十万円未満から十万円未満に引き下げました。
 ただ、二十万円未満の資産についてでございますが、事業年度ごとに一括して三年間で償却できる、残存価額をゼロにできる制度でございますが、一括償却資産に係る損金算入制度というものを新たに講じまして、事務負担の問題に最大限の配慮を行ったということでございます。
 したがいまして、もう一点申し上げますと、この資産の個別管理はこの場合不要ということになるわけでございます。
 それから第二点のお尋ねでございますが、今回、中小企業投資促進税制というものにおきまして、新たに一定の要件を満たす複数のパソコンを同時に購入する場合、この投資促進税制の適用対象に追加するということにしてございます。この結果、今回の法律の提案をさせてもらっているところでございますが、三〇%の特別償却または七%の税額控除が認められるということになるわけでございます。一年間の措置でございます。
#31
○林芳正君 ありがとうございました。
 最後にもう一問だけ、今の関連で確認といいますか、御答弁いただきたいんですが、この改正をいたしまして、十万円以上二十万円未満のパソコン等を取得した場合に、今度は逆に新たに固定資産税がかかるんではないかというような御心配をされる向きがあるわけでございますが、この取り扱いについてどういうふうにされるのか、最後に御確認というかお答えをいただきたいと思います。
#32
○政府委員(成瀬宣孝君) お答えを申し上げます。
 今般の国税の税制改正に伴います固定資産税における償却資産の取り扱いにつきましては、取得価額が二十万円未満の償却資産で、法人税法等の規定によりまして一括して所得の計算上損金または必要な経費に算入する方法の対象とされましたものにつきましては、原則として課税客体としないこととする取り扱いとしたところであります。したがいまして、御指摘のように十万円以上二十万円未満のパソコンなどを取得した場合、通常これらの資産につきましては、法人税法等の規定により、一括して所得の計算上損金または必要な経費に算入する方法の対象とされるものと思われますことから、このような場合には固定資産税の課税客体となることはないものと考えられます。
#33
○林芳正君 はっきりと言い切っていただきましてありがとうございました。
 時間が参りましたので、私の質問は終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
#34
○山本一太君 総理、私は本委員会のメンバー、正規軍ではなくて出向でございますが、きょうは釜本邦茂理事初め先輩委員の御好意でこの貴重なチャンスをいただきました。私の持ち時間は一時間、六十分ということですが、大変いいチャンスなので一つ一つの質問を自分の言葉で、魂を入れてやらせていただきたいと思いますので、魂を込めた御答弁をお願いしたいと思います。
 さて、法案の内容についての審議につきましては、衆議院の方でも随分議論がございましたし、今、私の同僚の村議員、音楽仲間でもあるわけですが、林議員の方からもいろいろお話がありました。重複を避けるために私の方は関連質問ということで、財政全般ということですから主にODAを中心に据えまして、外交あるいは国際金融等の分野について橋本総理、そして小渕外務大臣を中心に御質問させていただきたいと思いますので、よろしくどうぞお願いをしたいと思います。
 まず最初の質問は、これは衆議院の方でも出たやに伺っておりますけれども、インドの核実験に対する日本の対応についてお聞きをしていきたいというふうに思います。
 御存じのとおり、日本は今でも世界最大のODA供与国でございます。毎年、一兆円を超えるお金をODAのために使っている、国家全体の財政の大体二・四%ぐらいをODAに使っている計算になるわけであります。そして、インドにとって日本はそのODAの最大の供与国でございます。そのインドが先般、五月十一日と十三日、二回にわたって抜き打ち的に核実験を強行したわけであります。
 これは、今NPTの締約国が大体百八十六カ国ぐらいになった、しかもCTBTを九六年にやっと採択したということで、世界が軍縮と核不拡散の流れに向かっている中で、この流れに逆行する大変な暴挙であったというふうに私は思っているわけでございます。
 当然、国際社会からもいろいろ非難が出まして、総理がこの間行かれたバーミンガム・サミットの首脳声明の中でもインドに対する非難が入りましたし、あるいは国連の安保理においては議長声明という形で非常に遺憾だという話が入ったのは御存じのとおりでございます。
 欧米諸国の対応は、多少足並みの乱れがございまして、アメリカは御存じのとおり武器輸出管理法というのがあって、グレン修正というのがありますからもう自動的にすべての経済支援を停止するということになりました。そして、フランスそれからロシアは基本的には経済制裁には反対だということで、大使を召還したヨーロッパの国もあるようですけれども、足並みが乱れたわけであります。
 その中で、日本政府、すなわちインドに対する最大のODA供与国である日本政府は、一回目の実験の後で、中国のときと同じだと思うんですけれども、人道援助を除く無償援助をストップしようという対応をいたしました。それを無視する形で二回目の実験が行われた後で、たしか新規借款の停止ということだったと思いますが、そこに踏み込んだ、こういう経緯だと思いますけれども、そうした経済制裁を含む日本のインドに対する一連の対応につきまして、小渕外務大臣の方にまず簡単で結構でございますから御説明いただきたいと思います。
#35
○国務大臣(小渕恵三君) 印パの間の地域の情勢というのは非常に厳しい環境にあることを承知いたしておりまして、したがって三月三十一日に橋本総理から特にバジパイ首相あてに親書を送って強く自制を求めたわけです。にもかかわらず、インドは地下核実験を実施したということはまことに遺憾のきわみでありまして、今、委員御指摘のように、我が国としてはこの実験に対して私自身もシン大使を招致いたしまして強く抗議を申し上げるとともに、無償協力の原則的な停止、対インド支援国会合の東京開催の見合わせを決定するという姿勢を示したわけでございます。
 しかるところ、また再びの実験を行ったわけでございまして、我が国としては新規の円借款の停止及び国際開発金融機関における対インド融資の慎重な対応という強い態度をとることと同時に、先ほどお話にありましたように、サミットにおきましても橋本総理がこの問題を取り上げられまして、各国と協調してインドの核実験について強い対応を考えてきておるところでございます。
#36
○山本一太君 大臣、私はこのインドの核実験強行につきましては、国際社会からこういうことはペイしないというはっきりとしたメッセージを打ち出すべきだというふうに思っております。
 一番問題なのは、インドが文字どおり確信犯でございまして、バジパイ首相の核実験後の会見におきましても、インドは安全保障上に必要なことは何でもやると、すなわち経済制裁を甘受することは覚悟の上だというお話がありました。小渕大臣が何度も呼んだ駐日大使のシン大使は日経新聞のインタビューで、経済制裁をしてもほとんどインドに影響ないということを日本にわかってほしいなどと言っているわけであります。
 インド全体のGDPに占める経済支援、経済援助の割合というのは四%以下ということでございます。本当にインドというのはしたたかな外交の国だなと思いますのは、インドが核実験をした、それにどうやってペイしないということをわからせたらいいだろうかという議論から、もう既にデファクトな核兵器保有国になったインドをこれからどうやってCTBTとNPTの流れの中に組み込もうかと、どうもこういう議論にすりかわっているような気がいたします。昨日も、バジパイ首相がどこかの記者とのインタビューで、自分はパキスタンと中国とは国交正常化をしたいというようなことを言っているわけであります。
 こういう状況の中で、もう一つお尋ねをしたいんですけれども、インドはもう既に未臨界実験といってコンピューターシミュレーションにまでいく前のデータを得たと、もう核実験はしないと言っているわけですが、万一インドが新たな核実験をした場合に制裁のレベルアップをするという準備があるのか。あるいは、特にパキスタンに対する、今どうも迷っているようですけれども、パキスタンに対しては日本政府としてこれからどのように対応していくのか、この二点について簡潔に伺いたいと思います。
#37
○国務大臣(小渕恵三君) さらなる実験を行ったらということでございますけれども、そうしたことの行われないように、先般は駐インド平林大使も、召還という言葉はいかがかと思いますけれども、帰国していただきまして、我が国の対応については改めて強くインド政府に抗議を申し入れているところでございます。
 また、世界各国も今御指摘のようにインドの核実験に対して厳しい目を持っておるわけでございますから、私どもとしては再度こういうことのないように強く主張をしていかなきゃならぬと思っております。
 パキスタンにつきましては、そもそもこの核実験につきましては、インド側の論理からいえば隣国の核開発等がありまして、みずからの国の安全保障のために行ったんだということでありますが、同様に恐らくパキスタンとしてもインドの核実験に対する強い不信感があるわけでございますから、このパキスタンにつきましても、既に橋本総理は登外政室長をロンドンから直接派遣をいたしまして、かりそめにもパキスタンがそのような対応をするということになれば我が国としては大変厳しい処置を講ぜざるを得ない、こういうことでございます。
 パキスタンにつきましては、インド以上に我が国のODAの供与国としては第一位であると同時に極めて大きなシェアを持っておるわけでございますから、パキスタンとしてはそうした事態を踏まえまして、核が存在するかしないかは私は存じませんけれども、インドに対抗するようなことは決して行ってはならないと強く自制を求めておるところでございます。
#38
○山本一太君 パキスタンに対しましては、ぜひとも引き続き日本政府の方からこの件については自制を強く促していただきたいと思います。
 どうもパキスタンがいろいろ迷っている理由は、まず一つ、インドと経済の規模が違う、実際に主要国からの経済制裁を受ければ経済がデフォルトするかもしれないというおそれもあるでしょうし、あるいは今もう一度パキスタンが核実験をやると国際世論の非難にさらされるということもあるかもしれません。ある筋によれば、実は技術的な制約がある、すなわちインドよりもすぐれた核実験ができないんだったらばやらない方がいい、どうせ水爆までいかないんだからというようなお話もあるようでございますけれども、このパンドラの箱をここで閉めることがやはりODA供与国の日本としての使命であると思いますので、ぜひともその方向で対応していただきたいというふうに思います。
 次に、総理にこの件について質問をさせていただきたいと思います。
 総理、私はこの一回目の核実験が行われた後、自民党の外交部会で発言をいたしました。今回の核実験については借款の即時全面停止も含めて断固たる措置をとるべきだという話を外交部会で発言をいたしました。もちろん、いろいろと慎重論があることも存じ上げております。板垣議員が立ち上がって、インドは日本にとっては非常に友好的な国だ、東京裁判のときのパル判事のエピソードなんかもおっしゃいまして、改めてインド人というのは日本人に対して非常に親日的だということは私も思い出したわけであります。さらにはまた、今この核実験の問題を除いては日本とインドの関係はすべて非常にうまくいっているという事実もあると思いますし、あるいはインドの巨大市場の魅力といいますか、経済的な考え方、経済的な配慮というのもあるかと思います。さらに言えば、インドがこのNPTに対してとっている立場、すなわち核保有国のエゴではないかという理論は必ずしも理解できないわけではないということも思っております。
 先般、ブレジンスキー博士が読売新聞に投稿しておりまして、アメリカの核拡散を防止する政策はもう破綻している、代々イスラエルに対してははっきり言っていないじゃないか、こんなダブルスタンダードを使って、しかも核保有国が削減の努力を十分しない中でインドにどんな説得力があるだろうという話がありまして、なるほどポイントをついているなというふうに思ったわけでございます。
 しかしながら、中国との横並びという話も出ましたが、私は、この件については日本は断固たる措置をとるべきだったというふうに今でも信じておりますし、これからでもあらゆる状態を考えた上で一歩踏み込んだ制裁措置をとってインドにはっきりとしたメッセージを送るべきだというふうに信じております。
 総理、私は国連機関にしばらく勤めておりまして、上司がインド人になったりパキスタン人になったりイギリス人になったりアメリカ人になったりどんどんかわるわけでありますけれども、日本の存在感というのは国際社会には確かにあると思います。ODAの最大の供与国、世界第二位の経済大国ということもあると思います。しかしながら、日本が本当に欧米を含めた国から好かれているか、信頼されているか、尊敬されているかということになると大いに大きなクエスチョンマークをつけなければいけないと思います。
 どうやったら日本がほかの国から尊敬されるような国になるか。ある識者がこういうふうに言いました。表面的にはにこにこしていても実は自分を嫌いな人に対して、おまえ、おれのことを軽べつしているな、おれを尊敬しろというのは最も愚かなオプションだ。どうしたらいいか。それは、人間であっても政治家であっても同じだと思いますけれども、やはり国としての生きざまを見せる、その国としての生きざまを見せることで初めて国際社会から認められ、人間としての、国としての価値を認められるという話でございまして、私はけだし名言だと思いました。
 いろんな配慮はあっても、日本は核の問題については原理原則に従ってここまでやるのか、こういうメッセージを今回の核実験は国際社会に対してアピールする大変いいチャンスだったというふうに私は今でも信じておるわけでございますけれども、この点について総理の率直な、個人的な御見解を伺いたいと思います。
#39
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私は多少議員のお気持ちと違うのかもしれません。相手がだれであれ、被爆国という体験を持つ日本として核廃絶という願いとその中における核実験の停止ということに求める手法というものは同じだと思います。相手によって使い分けるということではないと私は思うんです。
 そして、この実験が最初に行われましたときに、人道的なものは別として、インドの国民大衆を苦しめることが目的ではありません、政府に対しての反省を求めることでありますから。人道的な部分は除きまして、まず無償資金協力をストップしました。それだけではもちろん強いメッセージにはなりません。東京に招致をすることになっておりましたインド支援国会合、その招致を日本は行わないということを世界銀行にも伝えました。ところが、それでも全くインド政府の対応は変化をせず、二度目の実験を行いました。当然のことながら、これならば――これならばという言い方はいけません、これでもわかってもらえないのなら、資金協力だけではなく新規の円借款も停止をする、私はこれは相当に、議員が思われる以上に強い姿勢をとったと思っております。
 そして、まさに先ほど議員が触れられましたように、既に核を持った国としての対応の中でNPTあるいはCTBTにという動きを認めようとする国が現にあるわけですけれども、我々はそういう考え方はありません。その上で、インドに対して、核実験の停止と同時に核開発そのものをもう即時とめろということ、そしてCTBT、NPTの無条件締結というものを粘り強く我々は働きかけていきます。
 ただ、国際社会の全体がそうではないことを議員よく御承知の上で今お話しをいただきました。そして、例えばカットオフ条約の一つの例でありますけれども、これは日本が主宰をいたしました先日の事務的な会合、これにインドは出席をいたしております。イスラエルも、さっきお名前を出されましたけれども、出席をいたしました。実は、パキスタンはここには出てまいりません。しかし、我々はこうした粘り強い努力を払うのがまた日本の役割だと思っておりますし、こうした努力をこれからも続けていきたいと考えております。
 同時に、インドに対して、バーミンガム・サミットにおいてどのような反応、そして日本としてどういう思いを持っておるかを平林野印大使に私自身からきちんと伝え、インド側首脳にそれを伝達するように指示して帰任させたところです。
#40
○山本一太君 総理の方から大変理路整然とした、魂のこもった御答弁をいただきまして、ありがとうございます。私は、それでもこの日本の対応は不十分だったというふうに個人的にはまだ確信をしておるわけでございます。
 総理のおっしゃったように、インドの対応に今変化が見られるということで、核実験後、NPTへの加盟ということは口にしておりませんけれども、CTBTの幾つかの条項については従ってもいいというような話をしているやにも伺っておりますが、すなわち無条件でこのNPT、CTBTにきちっと加盟をする、こういうことにつきまして、引き続き日本側からもインド政府に対しましていろいろな働きかけをぜひ続けていただきたいということを一言御要望しておきます。
 さて、このインドの核実験に絡んで一つどうしても質問しようと思っていたことがありまして、これがきょうの委員会でやっと願いがかなったなと思っているわけでございますが、それは国連の安全保障理事会の改組の問題でございます。
 御存じのとおり、日本はアメリカに次ぐ分担金を負担している。国連に対するトップドナーと言っていいと思います。分担金は今大体一七・九%、約一八%を支払っておるわけでございます。
 総理、私の妻は今でも国連に勤めておりまして、昔はPKOの財務におりまして、今でも勤めているものですから、なかなか地元に帰ってこないで困っているわけですが、妻ときょう朝御飯を食べながら話しました。このままだと、あなた、日本の分担金は二〇〇〇年には二〇%を間違いなく超えるのよ、GDPの上昇だからこれはもう自動的に超えるのよという話を聞きまして、改めて日本の国連に対する財政的貢献の大きさというものを私も再認識したわけでございます。
 その絡みで言いますと、今度のインドの核実験というのは何で行われたんだろうと。一つは、もちろん隣国の巨大な中国が核を持っている。しかも、パキスタンが核を持っているかもしれないという疑惑がある。そういう安全保障の懸念が常にあるということはあると思いますし、パキスタンのミサイル実験はたしかことしだったと思いますけれども、パキスタンのミサイル実験も大きな契機になったかもしれません。しかし、やはりその背景には、インドという国が伝統的に自分の国のヘゲモニーを広げたいという思いがあって、すなわち南アジアの地域大国としてしか認められていない、やっぱり世界の大国として認められたいというインドの願いがあるような気がいたします。
 これに関連して、安保理との絡みで言いますと、一昨年、非常任理事国の改選がありまして、インドは日本に大敗をいたしました。私は、このことが今回の核実験の一つの理由になっているような気がしてならないわけであります。私は、日本は安全保障理事国の常任理事国になるべきだという持論をずっと持っておるわけでございます。その点について、今回のインドの核実験というものはこの安保理改組の議論に非常に悪影響があるんではないかというふうに大変心配をしておるわけでございます。今、日本がドイツとかP5の国々といろいろ連絡をとりながら進めている枠組み決議案にも恐らく非常によくない影響が出るんじゃないか。
 思ったとおり、アメリカは、やっぱりインドなんか入れない方がいいということを言い出しているわけでございますけれども、今のこの安保理改組につながる枠組み決議案の現状と、今度のインドの核実験がそれにどういう影響を及ぼすかそのインプリケーションについて外務大臣から一言伺いたいと思います。
#41
○国務大臣(小渕恵三君) インドの核実験につきましては、自国の安全保障ということが主張の主たるものでありました。また、実験後、インドにおけるバジパイ首相の演説等に対して国民がもろ手を挙げて大変驚喜しておるような場面を見ますと、インドの国民のある意味では本音の部分が出ておるんじゃないかと思っております。
 ただ、国連におけるインドの例えば常任理事国入りというような問題になりますと、この実験以降、いずれの国々におきましてもむしろ大変否定的なコメントを出されておりますので、そういった意味では、大国として国連の場で主要な地位を占めるということについてはむしろ後ろ向きになったことではないかなという感じがいたしております。
 しかし、我が国としては御案内のような経緯で強く常任理事国入りを主張いたしておりますので、我が国としてはこれから全力を挙げて次の総会に向けて努力を傾注していきたい、このように思っております。
#42
○山本一太君 小渕外務大臣御存じのとおり、私は衆参の自民党議員でつくる日本の国連貢献を考える議員研究会の事務局長を務めております。小渕外務大臣が外務大臣になる前に会長になっていただいた議員連盟でございます。そこの事務局を一緒にやっている私の盟友である衆議院の河野太郎という何か暴れん坊の議員がおりまして、二人で実はある手紙を英文でドラフトいたしました。ここにその原文がございます。これは英語のドラフトなんですけれども。
 これはどういう内容かといいますと、枠組み決議案をしっかりと日本として推していきたい。安保理をきっちりと改組してほしい。つまり、日本においては国連に対する財政的な貢献のサイズと国連における役割のサイズ、これがきちっとバランスをされていなければ、タックスペイヤーである国民には説明がつかないという内容でございます。最後の方に一行恫喝を入れまして、これが通らないと大変なことになるよというのも入れました。
 そして、これを衆参の四十人の議員のところに持ってまいりまして、中山太郎元外務大臣に代表になっていただきまして、手紙をつくりました。そして、数週間前に百八十四カ国、外務省を通さないで河野太郎と二人で手紙を書いたから、えらい時間かかりましたけれども、百八十四カ国のワシントンとニューヨークの国連代表部に一斉に送付いたしました。オルブライト国務長官とアナン事務総長とウドベンコ国連議長にも送付をしたわけであります。
 そして、そろそろその手紙が届いて反応が出てくるかな。こんなことで安保理入りが一気にいくとは思いませんけれども、少なくとも日本の立法府の中にも常任理事国入りを真剣に考えている勢力があるということを世界にアピールすることが目的でした。しばらく反応を待っておりまして、そろそろ届いたなと思ったときにインドの核実験が起こったわけであります。さらに、インドネシアの経済危機が起こったわけであります。
 国連に勤めていた経験のある妻と二人で話しました。日本の与党議員が四十人も署名してこういう形で外にアピールしたことはない。しかも、アフリカの小国まで全部一斉にこの手紙が届くと、一週間ぐらいはデリゲーションラウンジという代表部の人たちが集まるところでざわざわ話題になるだろうと我々は予想していたわけでありますが、インドの核実験があったためにまだ見ていない代表部もあるということがわかりました。ややがっかりしているわけでございますが、今初めて外務大臣に御報告しますが、反応もありました。
 まず、一番最初に反応してきたのはドイツであります。日本と常任理事国問題について立場を同じくするドイツの公使が喜々として日本代表部の公使のところに来て言ったそうです。大変興味深い、特にこの責任の分担の大きさと財政的な負担の大きさには均衡が保たれていなければいけないということは大変私はすばらしいと思うと。この手紙はすぐに本国に送付して、連邦議会の議員にみんなコピーをとって回すということで、ドイツの連邦議員はみんな見ているんじゃないかというふうに思います。
 アメリカとフランスとそれからイギリスからも反応がありました。これは担当官ベースですが、興味深い、しかしこれは立法府から来た手紙ということで政府として正式に行動はしませんという返事だったそうであります。
 一番愉快だったのがイタリアの反応でございまして、担当官がかなり怒って来たということでございまして、これは一体何なんだということで、説明を聞いて帰ったという話でございました。
 こういうことをしてみても、日本の常任理事国入り、安保理改組の問題というのはこれからいろんなハードルがあると思います。大臣よく御存じのように、イタリアとかパキスタンを中心とした中進国のグループ、何でコーヒークラブと呼ばれるのか後でお聞きしたいと思うんですけれども、そのコーヒークラブの面々がこの枠組み決議案を延ばそうという反対決議を出したりして、ここら辺のハードルを越えていかなきゃいけない。しかも、万一枠組み決議案が通っても、安保理を改組するためには国連憲章を変えなきゃいけない、三分の二以上の賛成が必要だという、こういう中でございますけれども、こういう状況を受けた上で、改めて日本としてどういう戦略を持ってこの枠組み決議案を進めていくのかことしが私は山だと思っておりますけれども、改めて大臣から伺いたいと思います。
#43
○国務大臣(小渕恵三君) 次期国連総会におきましてこの枠組み決議案を通すことによりまして新しい安保理のメンバーをつくり上げることができなければ、国連そのものが破れたということになりかねない状況じゃないかと思います。そういう意味で、山本委員初め委員の方々がこうした問題につきまして熱心にお取り組みいただいて、各国に我が国の立場を伝達していただくことは大変意義深いことだろうと思っております。
 アメリカの方は御案内のようにまだ十億ドルも国連の分担金が未払いになっておりますが、これも恐らく議会の強いプレッシャーでそういうことができない形になっているんだろうと思います。
 そこで、おくればせですが、昨年の総会におきまして、山本委員、河野委員、下地委員等が国連総会まで乗り込んでこられまして、アナン事務総長あるいはまたウドベンコ議長に対して強い今のようなお話をされたことに対して、心から感謝をいたし、敬意を表しておるところでございます。
 そこで、現実問題としては、今イタリアのお話が出ましたが、御承知のように、イタリアはドイツが国連の常任理事国に入るのに対して、本心から言えばなぜ自分の国もと、こういう感じも持っておられるんではないかと思いまして、そのことがなかなかもって国連の場でいろいろの決議案が提出されて、我が国の常任理事国入りが大変厳しい環境になっておるわけでございます。
 そこで、これを打開する方法としては、安保理の現在の十五のシートをもっとふやしていくことによってできないかという考え方もいたしておりまして、これも御案内のとおりですが、アメリカは二十一までならという感じをいたしておりまして、この点は橋本総理も先般のバーミンガム・サミットの折に同様の気持ちを持っておるドイツのコール首相に対して、この問題について、ともに国連の安保理入りについて共同で努力をしようというお話もされたようであります。
 しかし、これを乗り越えるためには、どうしてもアメリカがこの数字についてこだわりを持っておりますと結論がつかないということになっておりまして、いわゆる二十四カ国が入ることによって大方の御理解を得ながら我が国もドイツも常任理事国入りできるという体制をつくり上げようということでありますが、この点、山本委員も周知のオルブライトさんも長きにわたって国連の安保理で活躍されておられまして、数がふえればなかなかもって統一した考え方がまとまりにくいというようなこともございまして、今なおこの問題について非常に厳しい環境にあります。
 この点につきましては、また橋本総理が二国間の会談で、バーミンガムにおきましてクリントン大統領にもこの向きについてお話をされておるわけでございますので、何とかこの問題を打開して、次の総会で分担金の問題とともに我が国の常任理事国入りについて最大の努力をしていきたいと思っております。
 それにつけても、先ほどのような御努力に対しまして改めて敬意を表する次第でございます。
#44
○山本一太君 大臣から枠組み決議案の推進について、安保理改革について大変強い決意をちょうだいいたしまして、心強く思った次第でございます。
 きょう、この委員会がなければパキスタンの大使館に行って大使に会う予定でございました。私が行けないので、今、河野太郎が要請というか抗議に行っております。来週か再来週にイタリア大使に二人で抗議に行く予定にしておりまして、これからも立法府の方からこの枠組み決議案につきましては最大限のサポートをさせていただきたいというふうに思っております。
 そして、この安保理改革の一番のポイントは、大臣が大変個人的にも親しいオルブライト国務長官、私どもの大学の先生でもありましたが、極めて頑固な方でございますが、小渕人間外交でオルブライトの壁を崩して、ぜひこの二十一でまとめていただきたい、このことを強く御要望を申し上げたいと思っております。
 改めて申しますが、総理、私は日本は常任理事国になるべきだと思います。総理もたびたび日本は常任理事国としての責任を果たす用意があるというふうにおっしゃっております。中には、常任理事国になると軍事的な貢献の方に引っ張られるのではないかとかあるいは軍事参謀委員会の問題が片づいていないじゃないかとかいう意見もあると思いますけれども、私は、経済大国の日本が、しかもODAの最大供与国の日本がきちっと常任理事国になって、安保理の決定のプロセスプロセス一つ一つにきちんと参画をして、あるいは先ほどの核の問題、環境の問題、こういうところでほかのP5の意見をただすような日本的なきちっとした常任理事国のイメージを持って進んでいけばいいと思っております。
 これからも、議員外交を通じましてこうした問題につきましては全力でやっていきたいと思います。小渕大臣の在任中にぜひ安保理入りを実現していただきたいと思います。小和田大使の任期も二年か三年延ばしていただいて結構でございます。今のは失言でした。結構ではなくて、延びればいいなと私は思っております。
 さて、国連の話はこのぐらいにいたしまして、次に、きょうどうしてもお聞きしたかったODAの問題について伺っていきたいと思います。
 今度のインドの核実験というのは、文字どおり日本のODAを改めて考え直す大変いい機会になったのではないかというふうに思っております。
 日本のODAは一〇%削減ということで、昨年はODA応援団として微力ながら一生懸命与党の中を走り回ったわけでございますが、ここは、大臣の御尽力あるいは総理の御理解もあって、国際機関に対する拠出金は随分戻していただいて、間違ったメッセージを外に送らないで済みました。UNFPAとかあるいはユニセフとか、私の覚えている限りでは、例えばUNHCRなんかは少しふえたような気もしておりますけれども、その点については大変高く評価をさせていただきたいというふうに思っております。
 実は、これはちょっと参議院の宣伝にもなるんですが、ODAが転換期を迎えたということで、先般、参議院の国際問題調査会の中に対外経済協力に関する小委員会というのをつくりまして、十二回にわたってまじめに超党派で議論を重ねてまいりました。
 その報告書がこの間できました。この中で、ODAの理念から始まって、ODAの実施体制とか、あるいは国会とのかかわりとか、いろんな議論をいたしました。特に理念については、国益といわゆる人道援助のバランスをどうやってとるのかそんな話もこの中でしたわけでございます。
 そのことは、この平成十年一月に出た二十一世紀に向けてのODA改革懇談会報告書、これは外務省の指導でできたやに聞いておりますけれども、この中でも、私、ざっと見たんですが、一番の特徴として、「ODAが実現すべき目的」の中に「ODAの諸目的を実現することは、広い意味での国益の実現である。国際社会全体の利益のために行動することが、日本の長期的な開かれた国益につながる。」と書いてあります。この報告書で非常に目新しかったのは、日本の国益ということについてかなりはっきりと言及したところではないかというふうに思っている次第でございます。
 さっきアメリカ通の林議員がいろいろと話をされておりましたけれども、アメリカは日本よりもさらに議員立法が盛んなところでございまして、特に外交に関する議員立法が結構出ております。私の記憶では、二、三日前にもイランに対するミサイル技術供与についての制裁法案というのが出たようなことも覚えておるわけであります。
 先ほど、林議員の方からOBRAの話が出ました。OBRA、すなわちアメリカの財政均衡法というんですか、削減法案というんでしょうか、その前身はグラム・ラドマンという財政均衡法でございました。グラムもラドマンも両方上院議員の名前でございます。
 そこで、こういうことで負けてはいけないということで私も法律をつくりました。タイトルが山本・河野法と申します。やはり山本一太と河野太郎でつくった法案でございます。今、英文もつくっておりまして、山本・河野アクトというふうにしようと思っております。なぜ山本が先かといいますと、私が大学の先輩だからでございます。
 その山本・河野法の内容はどういうことかといいますと、正式名称が「国際連合安全保障理事会の改革のための枠組決議案採択促進法律案要綱」、こういうことになっておりまして、これを衆議院の法制局の方に持っていったら、こんなでたらめな法律は審査できませんということでございましたけれども、でたらめとは何だ、法律案としてちゃんと形を整えてくれということで河野議員から再三やってもらいまして、一応案がきょうに間に合って完成をしたわけであります。
 内容は一言で言いますと、これは安保理の先ほどの枠組みに関係があるんですけれども、この枠組み決議案が「国連総会で採択されるまでの間、国連及びその関連機関に対する任意拠出金について、遅滞なく、削減を含む見直し措置を講じなければならない。」、大変過激な法律でございます。これが一番。
 二番が、大変私の気に入っているところでございますが、簡単に言うと、この枠組み決議案を妨害する国であって「我が国が政府開発援助を供与している国に対するODAについて、遅滞なく、削減を含む見直し措置を講じなければならない。」、邪魔するところはODAを削るよという法案でございます。
 それで三として、「一及び二の措置に含まれる削減措置については、その削減幅を前年度比一〇%とする。」という、それこそ日本の国会のヘルムズと呼ばれてしまうような山本・河野法なんですけれども、この点について橋本総理に、おまえら何てばかなことをしているんだという意見でも結構ですが、率直な御感想を伺いたいと思います。
#45
○国務大臣(橋本龍太郎君) 実は今その法案の内容そのもの、要綱がまとまったというお話は初めて伺いましたけれども、その議論をしておられることは伺っていました。そして、手紙を出された反応も、反応の方はきょう初めて伺いましたが、手紙を出された、しかも初代の会長が今、外務大臣であるために、議員連盟の名前ではなく個々の議員の集合体という注意まで払って手紙を出していただいたということを存じておりまして、こうした点には私は敬意を表したいと思います。そして、今、議員が述べられた気持ちは、ほとんど本質的に私自身が思い、その上で各国の首脳あるいは会合の席上で主張しているものと変わらないと思います。
 ただ、議員がお話しになりませんでした部分が一つ私の場合にはついております。いつまでも旧敵国と呼ばれることには耐えがたい思いがあるという一言です。そしてその上で、我々の果たすべき役割にふさわしい負担はするけれども、役割が与えられずに負担だけを無制限に続けるつもりはない、これは明確に今までも言い切ってきました。
 そして、安保理の問題が論議をされ始め、次第に数の問題に、言いかえれば安全保障理事会という枠組みの話に議論が収れんをしてまいりましてから、とにかく極端な議論と極端な議論がありました時期に、妥協の成立する数は何かということを模索してまいりました。今、議員もお触れになりましたように、二十一から二十四の間にその議論というものは収れんしつつあります。
 その中で、確かにオルブライトさんは御自身が経験してこられた中から、数に対してのこだわりを非常に持っておられる、これはそのとおりです。その上で、先日、私がクリントン大統領にこの部分で触れた話は、運営が難しくなると言うけれども、ドイツと日本という強力な味方が二つ加わるという発想をとることはできないのかという言い方でありました。
 今回のバーミンガム・サミットにおける二国間会談はそれぞれこの問題が論議になりましたが、同様に他の首脳たちにも、我々は与えられる役割、果たすべき役割を超えた負担はできないし、するつもりもないという意思は明確に伝えてきたつもりです。その上で、私はこの問題にODAを直接絡めるということは必ずしも望ましいやり方だとは思いません。
 機械的にODAを考えました場合には、今回インドの核実験でも私が悩みましたように、政府に対して我々は抗議すべき場合でありましても、ODAの中、殊に無償の世界になりますと、本当にその地域の人々に直接かかわるものがあります。国民をカタにとるような形になったとき、果たして自分たちの主張というものは相手側の気持ちになったときにいかがなものだろう。ですから私は、そういう経済援助について安保理の問題と絡めるという直接のやり方は余りプラスばかりではないという気がいたしますが、気持ちとしては議員の言われたことは理解ができるつもりです。
#46
○山本一太君 大変真摯な、率直なお答えをいただきまして、ありがとうございました。
 私が一番恐れていた総理のコメントは、政治家としての見識がないんじゃないかと、これは立ち直れないかなと思っておりました。もう一つ恐れていたことは、どんどん進めると言われたらどうしようかなと思っておりました。これは、あくまでもODAというものについてはこのぐらい国益を考えたやり方もあるということを示すための実験でございまして、これが万一通るようなことがあればODA応援団としては大変困る状況になるところでございまして、一安心をしているわけでございます。
 常任理事国入り等につきましても、総理がきちっとした御理念をお持ちだということを改めて伺いまして、大変心強く思った次第でございます。
 ODAとその枠組み決議案を直接に絡めるというやり方は、総理のおっしゃったように正道ではないかもしれませんけれども、ODAを常に国益の観点からとらえていくということをやはりこれからも続けていかなければいけないのではないかということですので、ひとつ問題提起としてこれをお話しさせていただきました。
 さて、さっきの法律は、本当に海のものとも山のものともわからない法律でございますけれども、こちらの方はもっとまともな資料でございまして、さっきの対外経済協力に関する小委員会の報告書の件にもう一度戻らせていただきたいと思います。
 先ほどお話ししたとおり、この小委員会ではODAに関するさまざまな問題を話し合いました。しかし、この報告書の一番画期的な点は、それは今までもいろいろ議論はありましたけれども、時代のいろいろな変化を受ける中で、今やはりODA基本法というものを改めてきちっと考え直す時期に来ているんではないかその一歩を踏み出すべきではないかということを、両論併記ではなくて大きな方向として打ち出したことが画期的な点だというふうに思っております。この報告書には、さらにはODA基本法が出た場合の骨子の案まで出ているわけでございます。
 この点について総理の御見解を伺いたいと思います。私が覚えておりますのは、総理はたしか衆議院の委員会か何かで御答弁をされて、ODA基本法ということになると、ODAが持っている外交的な意味とか外交の柔軟性とかいう形から考えると、ちょっと私は首をかしげるというような表現を使われたような覚えがあるんですけれども、改めてODA基本法に対する総理の御所見を伺いたいと思います。
#47
○国務大臣(橋本龍太郎君) 確かに私は、ODA基本法についてその必要性をどう考えているかという御質問に対して、基本法という御議論になりますとちょっと首をかしげる部分がございますという答弁をいたしました。
 それは一つには、ODAというものの性格上、相手国の動向あるいは二国間関係といったものが総合的な判断のベースに入る。同時に、機動的な対応あるいは柔軟な対応、さらに昨今の状況の中から緊急性ということを入れてもいいかもしれません、こういう性格を考えたときに、基本法という対応が果たしてそういう部分にどういう影響を与えるだろうと、これは私は従来からそういう意識がございました。
 その上で、例えば国会が事後のチェックなどをしていただく、そのための工夫というものは必要だと、そういうことをむしろ考えてみるべきではないだろうかということを申し上げてまいりました。今もその点は同じような感じを持っております。
 ただし、その上で、これは私もちょっと目を通させていただきましたが、小委員会報告、議員が言われましたように確信が持てないとおっしゃる方々もおありであり、その方々の御議論もきちんと報告書の中に書き込まれた上で、ほとんどの小委員の積極的かつ具体的な意見が述べられたプロセスをきちんと把握しておられる報告書、報告書としては非常に、失礼な言い方でありますけれども、いい報告書だなと思いながら目を通させていただいたことを申し添えます。
#48
○山本一太君 総理のおっしゃったとおり、ODAというものが外交の非常に大きな柱の一つであるということを考えれば、ODAの基本法みたいなものをつくったときに、やはりそれは外交の柔軟性を何らかの形で縛るんじゃないかという議論が出てくるのは私は当然だというふうに思います。もうODA基本法と言った瞬間に外務省の経協局長のまゆ毛はこんなにつり上がっております。
 しかしながら、私は外交の手足を縛るということの意味をよく考えるわけであります。この点につきましては小委員会でも何回も議論をしたわけでございますけれども、いわゆる変な形で外交の手足を縛らない基本法というのは私は可能だというふうに思っております。そして、手足を縛らない基本法なんていうと理念法になっちゃうんじゃないの、それだったらODA大綱があるじゃないのという議論が随分ありますけれども、ODA大綱とODA基本法は明らかに違うと思います。
 ODA基本法をつくることによって、まずODAに対するタックスペイヤーである有権者の意識は間違いなく高まる。さらには、なかなかこれまで外交の方に、ODAの方に興味を持つ議員は、有識者の方はいっぱいいらっしゃいますけれども、比較的多くなかった状況の中で、議会におけるODAに対する認識を深めることができる。そして、健全な意味で国会のODAに対する関与というものがきちっと担保できる。
 さらに言えば、ODA基本法を持つことで世界一の援助大国である日本が、こういう原則に従って、しかも柔軟にODAをやっていくんですよというメッセージが送れるという点から考えまして、私はいい基本法、すなわち望ましい基本法という姿はあるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 大臣、よく言う話なんですが、外務省はODA基本法と聞いた瞬間にそれはもう困るという話なんですけれども、私はよく外務省の方に言うのは、もっとポジティブにとらえたらどうかと。外交の手足を縛るんじゃなくて、例えば今言われている十何省庁体制といいますか、いわゆる実施体制の一元化を図るとかあるいはODA全体の量の確保とか、そういう担保をむしろこの法律を通じてやる、もっとポジティブな面で考えたらいいんじゃないかというふうに言っておるんですが、この点について外務省のというよりは、外務大臣の御見識を伺いたいと思います。
#49
○国務大臣(小渕恵三君) 平成十年の予算が御案内のとおりODAについて一〇%カットから出発したわけです。私も本職につくまでは自民党の対外経済協力委員会の委員長が私のただ一つの役職でございました。この問題についても担当してきたわけでございますが、ODAにつきましてはこの予算が聖域としてとらえられてきて、日本経済、また財政の膨張とともにずっと右肩上がりでそれなりの大型の予算もつけていただきました。
 しかし、単に財源論のみならず、ODAにつきましてもやはりこの機会に大きく見直す時期に来ておるのではないか。そういう意味で先ほどの答申もいただいておるわけでございまして、そういうことから考えますと、この機会に、特にタックスペイヤーの皆さんがODAについて理解の上で、真に国際社会の中で我が国として国際貢献ができる手法として、やはりこれだけの予算をつけていく必要があるんじゃないかと思っております。
 そこで、基本法につきましては、総理から御答弁がございましたけれども、基本法というものの概念が、どうも基本法というとすべてその中で予算から何から全部縛るのではないかという、そういう認識もなきにしもあらずでございますが、これを読んでみますると、基本法の基本法たるもの、簡潔な基本法とか、あるいは国会のチェックによって外交政策を縛る可能性についてどのように調和を図るかを考えての緩やかな基本法とかいろいろ検討をしておられて、山本委員も本問題について非常に現実的なお話を党内でもされたと聞いておりますので、やはりこの機会にODAのあり方全体をきちんと勉強するという意味で、ODAについての基本的な考え方を、これは政府もあるいは議会とも、ともどもにひとつ検討をしていく必要があるのではないかと私は認識しております。
#50
○山本一太君 今の大臣の御答弁は外務当局よりもずっと踏み込んだ御答弁でございまして、私、大変感銘を受けたわけでございます。
 このODAの小委員会をまとめられたのは参議院の板垣議員でございます。今度御引退をされるわけでございますけれども、大変すばらしいお仕事をなさって、御苦労してまとめられて、板垣議員に、山本君、参議院の見識を集めてこれをつくったんだから、しっかりこの芽を残せというふうに御指示を受けております。参議院の方から近くODAの基本法を考えるプロジェクトチームが、衆議院ともよく御相談の上、立ち上がる可能性がございますので、そのときはぜひ総理あるいは外務大臣におかれましても、いろいろな可能性を見て、前向きに御検討いただきますことを強く要望を申し上げたいと思います。よろしくどうぞお願いいたしたいと思います。
 それでは、基本法の話はこのぐらいにいたしまして、インドネシアの話を少し伺いたいというふうに思っております。
 日本政府の今後のハビビ新政権に対する対応とか、いろいろとお聞きしたいこともあるんですけれども、時間が迫ってまいりましたのでそこら辺のところはちょっと飛ばしまして、IMFについて私が考えていることを二、三申し上げさせていただきたいと思います。
 先般のAPECの蔵相会議においては、IMFの金融支援の条件、IMFの改革プログラムが厳し過ぎるんじゃないかという批判が続出したというふうに聞いております。大蔵大臣、御苦労さまでございました。
 最初にその批判の口火を切ったのが松永大蔵大臣でございまして、各国の状況をちゃんと考えた上で対応するべきではないかというのは、非常にタイムリーな見識に富んだ発言だと思って私は新聞記事を拝見させていただいたわけであります。ある人が言っていましたが、IMFというのは大病院みたいなもので、アジアの国にはアジアのそれぞれの患者のことをよく知っている町医者といいますかその言い方がちょっと適当でなければ、ホームドクターがきっちりと処方せんを書かなければいけないというふうに私も思いますし、それはこれからアジア経済危機の中で日本が果たしていかなければいけない役割であるというふうに思います。
 また、橋本総理もバーミンガム・サミットに行かれたわけですが、きのうバーミンガム・サミットの首脳声明を読んでいたら、その中に社会弱者に対する配慮というのが経済危機の対応の中で入っておりまして、これも橋本総理が出されたイニシアチブであるというふうに伺っておるわけでございます。
 IMFのことについて大臣にお聞きしたいと思っていたんですが、ちょっと時間が迫ってまいりましたので、もう一つ直接にお聞きしたいと思います。
 アジア経済危機の原因というのはいろいろあると思いますけれども、金融のシステムがグローバルスタンダードに合わないといいますか、情報公開も進んでいなくて脆弱だったとかいう理由もあると思います。巨大な短期の資金が出たり入ったりしたということも、もちろんそういうような事情もあったというふうに思います。
 そして、何といっても今回の危機でクローズアップされたのが投機的なお金です。貿易量の何十倍、何百倍という資金の流れを何とか監督できないかという話でございます。このことについていろんなことを言われておりまして、税金をかけたらどうかとかあるんですが、これを大臣に伺っても、恐らく答えは有効な手段はありませんというお話に尽きると思いますので、これもスキップをさせていただきまして、私がきょうお聞きしたいことは次の質問でございます。
 最近、私がテレビで見て名前を聞くたびに非常に不快に思っている名前が二つあります。それはスタンダード・アンド・プアーズとムーディーズという二つの格付機関でございます。これは民間機関であるにもかかわらず、まるで日本の金融の、あるいはアジアの国の生殺与奪を握っているかような役割をこの二つの格付機関が果たしているわけであります。
 私は一応国際関係を勉強して、そんな理不尽なことを言うつもりもないし、何とかマフィアの陰謀というのも信じておりませんけれども、どうもここまでの格付機関の動向を見ていると、アメリカ政府と何か通じているんじゃないかということまで思わざるを得ないような、それは事実じゃないかもしれませんけれども、そういうことすら思っているわけでございます。
 この間、大蔵省の官僚に、日本の格付機関はどうしたのと聞きました。日本にも格付機関があるそうですが、どうものれんで負けているようであります。というよりも、どうも日本の格付機関の方がムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズよりもいつも甘いというような話でございました。
 このムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズというのは民間機関でございまして、もちろん政府とも関係ない。自由な資本市場の中で活動しているわけですが、しかし私は思うんです。もうこういう世界経済の状況になってきた場合には、やはりムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ格付対策というのが政府にあってもいいんじゃないかというふうに思います。
 大蔵省の方で、余り今時間がないんですけれども、例えばこれは九八年四月二日、ニューヨークでのムーディーズのプレスリリースを見ました。そこでこう書いてありました。ムーディーズ、日本の外貨建て債務のカントリーシーリングと日本政府の円建て債務格付の見通しをネガティブに変更、こう書いてあったわけであります。
 もちろん、日本の経済のファンダメンタルズがしっかりしているから、国としての信用をトリプルAから落とさないけれども、ちょっとまずいよと、こういうような話になっているわけでございまして、もし例えば日本の国債の格付が落ちるようなことになれば、日本の今度は金融機関、会社の格付も落ちるということになるわけでございます。
 大蔵省の方として、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズに対してこちらから積極的に働きかけて、日本の経済の状態というのを説明していらっしゃるのかどうか。あるいはこれから、民間機関ではありますけれども、決して大蔵省から申し入れるのは私はおかしい話じゃないと思いますが、日本経済が思ったよりも悪くない、機先を制してムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズにきちっと御説明をする準備というか予定があるのかどうか大蔵大臣に一言お伺いしたいと思います。
#51
○国務大臣(松永光君) 委員、たくさんのことを今発言なさいました。
 まず一つは、質問事項ではなかったかもしれませんが、この間のAPECの蔵相会議でのことのお話もございましたが、私は、IMFの金融支援をする場合の対象国の構造改革の問題については、まずIMFが韓国にしろインドネシアその他ASEANの国にしろ、大変努力されたことに対する感謝の言葉を述べた上で対象国の実情を十分分析され、なかんずく弱者に対する配慮をしたそういうプログラムであることが望ましいと、こういう形で非常に上品に私は発言しましたが、これに触発されて、韓国は遠慮しておられたけれども、ほとんどのASEANの国々が私の発言に同調するような発言が続いて、続き過ぎてカムドシュさんがどんな顔をしているのかなと思って心配したぐらいに私の発言は受けたような感じがいたしました。
 ただ、しかし考えなきゃならぬことは、IMFの支援を受ける国は、やはりつらいでしょうけれども、構造改革だけはきちっとやっていくということが前提なんです。それなしにはそういう国の金融システムの安定化は得られないという面があることは、私はこれは無視してはならぬ、大事な点だと、こう思っております。しかし、いずれもこれは橋本総理のサミットにおける発言の流れを受けてやっていることでありますから、私、独断ではありませんので御理解を願いたいと思います。
 それから、今のムーディーズ等々の格付会社のことでありますが、まず名称がいかぬね。格付機関と言うものですから、何か公的な機関みたいな誤解を関係者に与えているんじゃなかろうかなかんずく当事者に与えているんじゃなかろうか。あれは格付会社でございます。民間会社でございます。したがって、民間会社のすることについて大蔵省として一々コメントするということは、これは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
 しかし、いずれにせよ、大蔵省としては我が国の経済・財政状況、こういったものが正しく国内はもちろん外国に対しても伝わるようなそういう説明活動はしっかりやっていかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
#52
○山本一太君 まだいろいろお聞きしたいこともありますが、時間も二分となりました。出向者ですから時間はきっちり守らなければいけないと思っております。
 最後に、一言だけ総理にコメントをさせていただきたいと思います。
 総理、いよいよ参議院選挙が近づいてまいりました。六月には先頭に立って全国遊説をされるということでございます。私は、総理のおっしゃった参議院選挙でこの政権としての信を問うという方向はそれはそれなりに正しいというふうに思っております。
 私は、総理が選挙区でそうしてきたように、毎週毎週地元に帰って農家に泊まったり、農家の仕事を手伝いながらおばあちゃんやおじいちゃんたちとひざ詰め談判でやり、あるいは商店街のおじさんたちと話す。そんな中で、自民党に対するおしかりはあっても、自民党やめろという声はありません。自民党もっとしっかりしろという声だというふうに私は受けとめております。
 政権政党として過半数を目指すのは当たり前だと思いますし、一議席でも多くとるのは当たり前だと思いますが、勝負をする前から、何議席だったらその責任問題とかそういうピントの外れたコメントをする方々がいらっしゃいますけれども、そういうことは一切気にされないで、橋本総理をもって参議院選挙を戦って我々は勝つ、勝った後はきっちりとその改革について職務を全うしていただきたい、このことを一言言わせていただきたいと思います。(「余計なことを言わなくていいよ」と呼ぶ者あり)余計なことと言われましたけれども、最後にこのことだけコメントをさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
#53
○理事(高木正明君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#54
○委員長(遠藤要君) ただいまから行財政改革・税制等に関する特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、財政構造改革の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案外三案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#55
○小島慶三君 総理初め各大臣の皆様、本当に御苦労さまでございます。よろしくお願いをいたします。
 私、最初に伺いたいのは、今の経済の状況なんです。
 経済の状況の判断、予測というのはなかなか難しいものでありまして、森羅万象全部これに関係すると言っても過言ではない、そういう性質のもので、私もかつてはこの仕事に従事したこともございますし、会社へ入ってからもやはり予測というのが社運を決定するものですから、非常に重要な仕事としてやらせていただきました。そういう点から、皆様の御苦労をつくづくと思うわけでございます。
 現状の経済というのは、非常にこれは判断の難しい局面に来ていると思うんです。昭和二年から四年までの経済恐慌のときの日本の恐慌、それ以来の経済不況、あるいは恐慌と言った方が正確かもしれませんが、これに類するようなものは今まで我々経験がございません。したがって、従来であれば大体二年半ないし三年で頭を下げていれば不況の波が通り越す、そういう感覚で皆おったと思います。ですから、それが七年たっても八年たっても片づかないこの不況というのは全くだれしも経験がない。それだけにおびえも多いし、それからちょっとしたつまらないアナウンスメントでも非常にそれが大きく響くということもございます。
 だから、戦前の不況と比べて今大きく違うのは、社会の価値観とか考え方とかあるいは社会の構造とか、そういうものが大きく変動期にあるということが、これが一つでございましょう。
 それからもう一つは、何と申しましても世界的な広がりを持っているということであろうかと思います。一国の動きというのは必ず他国に反映する、そしてそれがまたリバーカッションを起こすということで、そのもとの国に戻ってくるブーメラン現象といいますか、そういうことがあると思います。
 それからもう一つは、恐慌に波があるということでございます。ですから、ちょっと一時明るさが見えたと思うとまた暗くなるということで、そういったサイクルがある。そのサイクルにもどうも我々は惑わされやすいということで、本当に御担当の皆様、御苦労なさっておられると思います。
 今、ここのところで私どもがしっかりと見詰めなければ、判断しなければならないのは、どうしても統計というものが二カ月、三カ月たった後から出てくるものですから、非常にこれはいろいろ数字の読み方や何かも難しいんですけれども、これはある程度はシャープに大胆に物事を割り切って見るという、そういう予測の姿勢も要るかと思うんですが、現状について非常に判断が分かれております。
 一つは、やはり政府の皆様のおっしゃられるような非常にソフトタッチな経済判断というものがある。これは政治の面かじ取りかじをとっておられる皆様としては、当然なソフト化だと思っております。しかし、現実はなかなか厳しいものがございまして、その点で一方では、今はもう新しいデフレ期に入ったんだ、こういう見方もされております。
 午前中に質問された林先生のお友達のクーさんという人は、このごろそういった経済判断や何かで随分表に出ておられるようですが、この人は、いやデフレではないということを言っておられる。生産とか所得とか物価とかあるいは設備投資、こういったものは循環的にダウンしていくような状況ではないということがクーさんのお説だと思うんです。それからもう一つには、いやそういうものではない、長引く不景気の中にぶち当たったビッグバンという大きな衝撃、これが非常な不安を呼んでいるんだ、こういう説もあります。この辺についてどういうふうに我々は考え方を持つか。これは二年間という今度の改善目標時期の延期、これに絡んでくると思うのでございますが、そういう点、総理及び企画庁長官の御見解をまず承りたいと思います。
#56
○国務大臣(尾身幸次君) ただいまの小島委員のお話のとおり、まさに非常に経済の状況、激動という言葉であらわしてもいいような状況であると考えておりまして、その中で正しい経済の状況についての判断をしていかなければならないというふうに常々自戒をしているところでございます。
 秋口のアジアの経済危機、あるいは相次ぐ金融機関の倒産、破綻等によりまして、消費者あるいは企業の先行きに対するコンフィデンスが非常に低下をいたしまして、金融機関に対する信頼感というのも一時大変低い状態になりました。
 それに対しまして、金融システム安定化対策三十兆円ということで対策をとりました結果、一月の半ば以降、そういう金融機関に対する不信感、心配というのはかなり改善されたと考えておりますが、将来に対するコンフィデンスの低下ということが、最終需要であります消費とか投資とかあるいは住宅建設等に反映をして、それがまた生産あるいは雇用等のまさに実体経済の面にまで及んできておりまして、この実体経済が非常に停滞し厳しい状況にあるというのがただいまの状況かというふうに考えております。
 これに対しまして、各般の総合経済対策を決定いたしまして現在国会で御審議をいただいているわけでございますが、私どもといたしましては、これが一日も早く実施できるようにぜひお願いをしたいと考えている次第でございます。
#57
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員から財政健全化の目標年次を二年延ばす、それとのかかわりという御指摘もいただきました。
 仮に、目標年次を据え置いて目標達成を急ごうとした場合、非常に急激な財政支出の削減という結果になります。これは、不測のダメージの懸念というものをぬぐい去ることはできませんし、同時に、やはり中期的に整合性のとれた姿をつくっていく必要があるであろう。ただし、それでは一体どれぐらい延ばしていくことができるのか。
 そうした場合に、たまたま平成七年のG10レポートで、二〇〇五年あるいは平成十七年ごろ、これは急速に我が国において貯蓄率が低下し始める、顕著に低下し始める、そういう予測をなされている。同時に、第二次世界大戦後のベビーブーマー世代、これがちょうどそろそろ六十歳あるいはそこを過ぎる。こうしたタイミングというものを超えてしまいますと、急速な貯蓄率の低下といった状況の中で果たして財政健全化といった目標を終えるのかという議論もあろうかと思います。そうした範囲におきまして二年の延長というものを考えました。
 同時に、金融システム改革の影響というものにも触れられたわけでありますけれども、確かにそういう御議論があることも承知をいたしております。しかし、今度SEC基準によって行いました決算の結果が今出ておりますけれども、金融機関の経営実態というものは従来以上に明らかになってまいりました。
 そして、私どもは、バランスシートの片方に不良債権があれば、これに見合う引き当てが行われていればという考え方を持っておりましたけれども、今回の決算を見ますとここにも相当な踊りがございます。そして、やっぱりバランスシートから不良債権そのものを消していく努力をいたしませんと金融システムに対する本当の信頼感というものは戻ってこないのではないかそうした思いも込めて今問題に取り組んでおりますということでお答えにしたいと思います。
#58
○小島慶三君 ありがとうございました。
 それで、そういう慎重な配慮で二年という期間を設定されたというふうに今承りました。
 ところが、けさの新聞を見ておりましたら、宮澤元総理が、今回のこの法律は再修正する危険性があるというんですか、可能性があるというんですか、そういうふうな発言をしておられるので、これは我々法律の改正の審議をしている最中でありますので大変愕然としたのでありますが、それはどういうふうにお考えになりますか。
#59
○国務大臣(松永光君) 実は私は直接宮澤元総理の話を聞いたわけじゃありませんが、私の役所の関係者が聞いたところによりますというと、宮澤元総理の発言の主たる内容は、税制改革の関連で、今、日本の個人所得に対する課税は、中低所得者層に対する課税は非常に低い、一方、二千五百、三千万といったような高所得者に対する課税は非常に高いと。税制改正を議論する場合には、理論的にはこの二千万、三千万以上の高所得者の税率が地方税を含めれば六五%にも達するという、そういう点を直すという問題があるけれども、それは現在の政治情勢その他を考えるとなかなか難しいでしょうという話があり、一方、そちらも直すし、さらに中低所得者の方々の分まで減税するとなるというと相当な財源が要るんじゃないか、その財源をどうするかというふうな話が進んできて、その趣旨の質問もあって、その場合には特例公債の問題が出てくるでしょうねという感じの話だったそうであります。
 したがいまして、正面から財革法の改正という話をしたわけじゃないというふうに、これは伝聞でありますけれども、私はそう聞いておるところであります。
#60
○小島慶三君 ありがとうございました。
 これは記事が出ておりましたのは東京新聞、中身は、個人の所得税最高六五%というのは高過ぎる、これはもう五〇%ぐらいまで下げた方がいいというのは一般の常識になりつつある。それからもう一つは、法人税。法人税も世界各国に比べると高過ぎるので、これも四〇%台に下げると。その二つはやらなきゃいけない。しかし、その財源ということになるとまたさらに問題があるので、当然ほかの増税ということもできないのでこれは特例公債によらざるを得ないということになるかもしれない、そういうふうな話で、そうすると今出ている法律は再改正する必要がある、こういうロジックだったと思うんです。
 私は、前から個人所得税の引き下げとそれから法人課税の引き下げというのは非常に急いでやるべきことではないかと実は思っておったわけです。ですから、今度もいろいろ公共事業等新社会資本のための支出増というものが中心になって、法人税とそれから個人所得税の方は検討するということになっておって、これが恐らく今回の緊急対策に対する一番の不満ではなかったかと思っておるんですが、これは後でまた話をさせていただきます。
 それから、先に参りますが、今回のこの法律の裏打ちをなす緊急対策ですけれども、この十六兆というのは一体どういう算出根拠でお出しになったのかこれをひとつお伺いしたいと思います。これは総理ですか、企画庁ですか。
#61
○国務大臣(尾身幸次君) この十六兆円を超える事業規模ということでございますが、現在の経済の状況、先ほど申し上げましたように停滞をし、厳しさが増しているという状況でございます。特に失業率三・九%、生産もマイナスを続けているという昨今の状況にかんがみまして、経済を一日も早く立て直していく、そしていわゆるマインドの悪化を防いでいく、そういうために十分な規模の経済対策を講じることが必要であるということで、過去に十五兆円を超える規模の対策がございましたが、過去の最大規模の水準を超える対策をしていきたいということで十六兆円に決定をしたというふうになっております。
 私どもといたしましては、事業規模の十六兆円もさることながら、同時に経済構造改革を進め、さらにいわゆる不良債権の問題の処理を進めることによりまして民間活力中心の経済の改革を実現していく、それによって引き続き経済が順調な回復軌道に乗るような対策も総合経済対策の中で同時にとっているところでございまして、こちらの方も実は大変大事な対策であると考えている次第でございます。
#62
○小島慶三君 ありがとうございました。
 実は、十六兆円のこれがどこから出てきたのか話の出だしも非常に突然出てきたような印象を私持っております。そこで、どうした算出根拠がお伺いしたかったわけでありますが、こういう対策を講ずる場合に前提というものがあると思うんです。需給不均衡というものがあって、需給不均衡を埋めるのが今回の対策だというふうに思っておりますけれども、需給のアンバランスという点を何兆ぐらいに置いておられたんでしょうか。
#63
○国務大臣(尾身幸次君) 今の小島委員のお話は、いわゆるデフレギャップのお話であろうかと思いますが、先ほど来のお話のとおり、秋口からいろんなことがございまして、消費者及び企業のいわゆる景気の先行きに対する信頼感が非常に低下をいたしました。
 その結果といたしまして、消費が停滞をし、それから設備投資も停滞をしている。それから、特に住宅建設の関係は、昨年の消費税の引き上げ前の駆け込み需要の反動減というのがそのまま続いておりまして、約百三十万戸くらいの着工数で推移しているという状況でございます。
 そういうことで、全体としての需要が非常に停滞をしているわけでございますが、これが一体どの程度の需給ギャップであるか、生産能力と需要の差がどの程度あるかということにつきましては、計算の仕方によりましてかなりさまざまな結果が出るために、特定の計算根拠だけを一律に論ずるわけにはいかないというふうに考えている次第でございます。
 その上で、あえて一例を申し上げますれば、例えばOECDの試算によりますと、九七年、昨年でございますが、GDP対比で三%程度の需給ギャップがあるという結果が出ているわけでございまして、私どもといたしましても、おおむねそんな感じかなというふうに考えているところでございます。
#64
○小島慶三君 その結果、かつて例を見なかったような大規模な財政出動というものがあったわけでございますけれども、その場合に私どもは、過去四回の補正予算、財政出動のときに、計算によりますが六十五兆ぐらい使って公共事業を中心とした対策をやったわけでございます。その効果も確かにあったと思うんですけれども、思ったほどのことはなかったということで、ケインズ方式はもう終わりかというふうなことが言われているわけでございます。
 それで、今回の対策を拝見してみますと、確かにそういった公共事業に対する従来の支出の反省というふうなことで公共事業中心にはなっておりませんけれども、そのかわり多数の多目的のいろんなプロジェクトがみんな補正の中に入っているわけであります。例えば環境・新エネルギー、情報通信、医療・教育、物流、国土、市街地、災害、防災、地方、住宅、十二項目もあるんですね。
 だから、これではばらまき的になって重点化ができていないというふうな感じを私は持つのでございますが、公共事業の見直しの修正はいいですけれども、新しいそういう社会資本のばらまき方ということについてはちょっとどうかという感じがするわけでございますが、この点はひとつ大蔵大臣にお伺いいたします。
#65
○国務大臣(松永光君) いわゆるばらまきといったような批判が起こらないような、そういう社会資本整備でなけりゃならぬと思います。
 これは総理みずからが記者会見で述べられたことでありますが、後世代の人から整備してくれておいてありがたいと感謝されるような、喜ばれるような社会資本、その整備に重点を置こうという考え方であるわけであります。特に緊急性の高いダイオキシンあるいは環境ホルモン対策、新エネルギー対策、それから将来の発展基盤となる科学技術の振興や情報通信の高度化への対応、そして少子・高齢化の進展等に対応するための福祉・医療・教育、こういった分野に重点的に公共事業費を配分した、こういうふうになっておるわけでありまして、その意味で、従来の公共事業のやり方とは相当、何といいましょうか重点化をし知恵を絞ってやることにしておる、こういうことでございますので、御理解賜りたいと思います。
#66
○小島慶三君 ありがとうございました。
 確かに御苦心の跡はよくわかりますが、余りにも広い項目にわたっているので、これはちょっとどうかという気がしたわけでございます。
 こういう形でやって、前の公共事業の場合と効率という点ではどういうことになりますでしょうか。例えば、前の公共事業の場合にはいろいろ付加的な需要が起きてきて、そしてそれが例えば新しい民需につながったとか、そういうこともあるであろうと思うんですけれども、今回の場合には、そういった追加需要というふうな面あるいは波及効果といったような面から見て、前の公共事業と比べてどういうことになりますでしょうか。
#67
○国務大臣(尾身幸次君) 公共事業という大きな分類に入りますものと施設費というような分類に入りますものが今回いろいろあるわけでございますが、需要を拡大するという意味の波及効果という点ではそんなに大きな違いはないのではないかというふうに考えております。
 ただしかし、供給サイドでその支出の効果によりまして日本経済の体質を強化する。例えば、情報通信とか技術革新とかあるいは福祉、そういう意味におきまして、日本経済の体質を強化し、生活を向上させるということあるいは環境、そういうところに特に意識的にお金を投入することによりまして、中長期的に我が国経済の体質改善を図り、そしてそれがもとでまた民間活力を十二分に生かせるような体制にする。そういう意味におきまして、供給サイドヘの効果という点では、従来のいわゆる公共事業とは一味違ったものになっているというふうに考えております。
#68
○小島慶三君 ありがとうございました。
 何かその辺の切れ味と申しますか、そういう点、ちょっと不満なような感じもないわけではありません。
 今回の施策が急速に効果を出していくということを望みたいわけでありますが、問題は、さっき申しました減税の問題でございまして、これはやはり所得税の、宮澤さんも言われた五〇%までのレベルダウンと、それから法人税の方の四〇%までのレベルダウンと。これは今回の対策ですとこれから検討すると書いてあるんですが、これが景気に対する政府の施策への一般の熱望というか、これを冷ましたんじゃないかと私は思っております。
 これはできるだけ早くやっていただきたいし、大体この実現というのはいつごろになるのか、また今どんな準備段階で進めておられるのか、その辺、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
#69
○国務大臣(松永光君) 景気対策としては、今審議をお願いしております法案にありますように、特別減税の実施そして追加、これが景気対策としての特別減税でございますが、しかし税制のあり方という議論は、これは景気対策としての特別減税とは別に行う必要があるというふうに考えます。すなわち、税制というものはそもそも公共サービスの財源としての性格を踏まえて、公共サービスの財源をどういう形で負担するのが妥当かという観点から議論をしなきゃならぬ問題だと思います。
 そういったことを踏まえまして、税に関する専門的な知識あるいは経験をお持ちの国民を代表するような方々に税制調査会というところにお集まりを願って、そこで公正、透明、国民の意欲が引き出せるような税制のあり方についての御検討を願うことにし、そして基本問題小委員会というところでそういう問題についての検討を始めていただいているところでございます。これは個人所得税課税の問題でございます。
 法人課税につきましては、先ほどから委員の仰せのとおり、この三月の国会で法人税の基本税率三七・五%を三四・五%に三%引き下げることを実現させていただき、また中小法人については二八%を二五%に引き下げていただきました。これは国税でございます。しかし、地方税の方がこれからの検討課題ということで残っているわけでありますが、方向としては三年以内のできるだけ早い機会に実効税率、現在四六・三六でございましたか、これは欧米先進国に比べるとまだ高い、したがって、それを四〇%そこそこぐらいのところに引き下げるようにということを念頭に置き、その場合には当然のことながら、国税の方は三%下げていただきましたので、地方税の方での法人課税のあり方を中心にして小委員会を設けていただいて、そして検討に入っていただいたところであります。
 その検討の結果が出次第、政府としてはその答申を尊重して具体的な改正案を準備して国会にかけて御審議をお願いする、こういう手順になろうかと思うのでありまして、問題はいつ税制調査会の答申がいただけるか、そこにかかっておるというふうに思うのでございます。
#70
○小島慶三君 私は今のお話を伺っていて大変がっかりしたのでありますが、要するに、今の景気対策の根幹をなすものはやっぱり民間が活力を取り戻すということだと思っております。民間が活力を取り戻すためにはやはり税金が一番決め手になるということで、私はこの二つの減税については非常に期待しておりますし、またそれなくしては今の政府の施策が実を結ばないというふうに思います。
 ですから、今のような手順を伺っていますと、これは大分先のことになりそうでありますし、俗にけんか過ぎての棒ちぎりということがありますけれども、そういうことにならないように、やはりある程度期待感を政府で十分がっちり受けとめたという形の施策が欲しいというふうに思うのでございます。ぜひその点の検討をお願いし、スピードアップをお願いしたいと思います。
 それからもう一つの課題は、これは前の改革法案自体にも関係するわけでありますが、景気回復と同時に目標の一つとして忘れてはならないのはやっぱり構造改革だと思うものですから、構造改革の焦点というのは、これはスリムな政府をつくるとよく言われますけれども、それに尽きるのではないか。できるだけ効率的な政府をつくるというのが私は眼目だと思うのでございます。
 その点、これは前の構造改革のときにも私申し上げましたけれども、できるだけ政府の中の業務を削るということで政府の負担を減らす。そして、やれるものは大体アウトソーシングという手法を活用して、そうしてそれによってできるだけ政府の支出を減らす、一般会計を減らす。これを真っ先にやって、それと連動させて特殊法人の整理合理化、そして民主化、民営化ということを実施していく。そういう手法が非常に欲しかったと私思っておりますけれども、この点、これからのいろんな機会もございましょうから、できるだけそういう方向で考えていかないと政府のスリム化ということはできないというふうに思うのでございます。この点は、もう時間もございませんから意見として申し上げておきたいと思います。
 それから、これは一番最後の質問になるかと思いますが、現在のアジアの危機と言われるこういった情勢について、これは日本にどういうふうな影響をこれからもたらしてくるであろうか、その影響の大きさはどうであろうか。これも予測でありますから難しいとは思うんですけれども、例えば今のインドネシアのあの問題については、たしか三百億か何か予算が組まれておると思いますが、そんな程度ではとても済まない。インドネシアが氷山の一角であって、恐らくその後にもいろいろ出てくる。政治的な問題も絡んでおりますからかなり深刻な問題も経済的には出てくるというふうに思うんですけれども、この影響の度合いとか、こういったものについての研究、これはどの程度進んでおられましょうか。今の段階である程度わかることがございましたら、アジア全般についてひとつお教えをいただきたいと思うんです。
#71
○国務大臣(尾身幸次君) アジアにおきましては、昨年夏以降幾つかの国で通貨・金融市場に大きな変動が生じまして、通貨価値が下落し、企業倒産がふえており、また生産調整をしている、株価急落等々の状況にありますし、インドネシアにおきましてはいまだ非常に厳しい状況が続いているわけでございます。
 こういうアジアの通貨、経済の変動は日本経済にどういう影響を及ぼすかということでございますが、考えられますことは、アジア向けの輸出の減少。あるいは向こうからの輸入圧力といいますか、そういうものによります輸入増加。それから、アジア向けの債権がありまして、それの不良債権化。あるいは現地進出企業の収益悪化などを通じまして日本経済に相当な影響があるというふうに考えられるわけでございます。
 輸出入を通じました影響につきましては、既に輸出への影響がかなり顕著に見られておりまして、例えばインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンなどのASEAN四カ国向けの輸出金額は昨年の十月−十二月期以降減少に転じておりまして、この四月には前年同月比で三七%減と大幅な減少になっているところでございますし、また韓国向けの輸出も七月−九月期以降減少に転じておりまして、四月には前年同月比四一%減と大幅な減少になっているわけでございます。
 これらの国に対します日本の輸出入に占める比率でございますが、九七年で見てみまして、ASEAN四カ国が輸出が一一%、輸入が一二%、韓国に対しましては輸出が六%、輸入が四%ということでございまして、今後ともその推移を注意深く見守っていく必要があると考えている次第でございます。
 それから、輸入につきましては、先方の輸出余力の減少とかあるいは輸出金融の混乱などによりまして、むしろ日本向けの輸出、つまり日本がアジア諸国から輸入している金額等につきましては、ここのところやや減少傾向になっているということでございます。アジアの国々が立ち直ってくれば輸出余力が出てきて、体制が整えばアジアからの日本向け輸出は増大してくるものと考えております。
 それから、邦銀のアジア向け融資でございますが、これもかなりの金額がございまして、昨年の六月末現在の数字でございますが、ASEAN四カ国向けが七百二十五億ドル、韓国だけで二百三十七億ドルという融資が行われているわけでございます。それから、直接投資残高も、インドネシアで三兆七千億円、タイ一兆三千億円というような状況でございまして、そういう貸し付けにも影響が出てくる可能性がございます。
 それから、現地におきます日本系の企業の収益悪化等につきましても大きな問題になる可能性はあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、アジアの国々が一日も早く立ち直って、潜在的な成長力は非常に強いわけでございますので、立ち直って順調な回復過程になるようにあらゆる支援をしてまいりたいと考えている次第でございます。
 大ざっぱに申しまして、韓国とタイはやや山を越したかなというふうに考えておりますが、インドネシアは政治の状況もございましてなお注目をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#72
○小島慶三君 これが最後の御質問になるわけでありますが。最近円安というものが進行しておって、これはさっきもちょっと申しましたクーさんの説でありますが、円安一円について、ちょっと数字が大き過ぎると思うんですが、一兆円の貸し渋りが起こるということがきのうの中小企業の委員会でそういう話がありました。
 ちょっと私びっくりしたんですけれども、確かに円安というものがここのところ急速に進行している。これについてどういうふうな対策を講じていくか。国際協調といったようなことしかないかもしれませんが、貸し渋りという問題にまでこれが影響してくるということになりますと、ほうってもおけないという話になると思うんですが、大蔵大臣、これはいかがでございましょう。
#73
○国務大臣(松永光君) 具体的な円相場について細かく発言することは事柄の性質上差し控えさせていただきますが、経過だけ申し上げますと、五月のサミットの前の蔵相・外相会議というものがロンドンで開かれました。そのときに、私はルービン米財務長官と会いまして、行き過ぎた円安というのは我々としては実は放置することはできない。したがって、この問題については常に注視をしていきたい。行き過ぎた場合には適切な措置をきちっととるという日本の姿勢であるが、アメリカ側もその点については理解をし、そして時によっては協調してもらいたいという話をルービンとしたのであります。
 それに対してルービン米財務長官は、行き過ぎた円安というものは適切でないという点についての認識は共有すると。そして、行き過ぎに対する是正措置についてはアメリカも理解を示す、こういうことを五月のサミットの前の蔵相会議のときに話し合いをし、合意したところでありますが、先週の土曜、日曜にかけて行われましたAPECの蔵相会議におきましても、その点については再確認をしてまいりました。
 したがいまして、行き過ぎた円安が続けばいろんな方面でよくない現象が出てくるわけであります。例えば、日本のアメリカ向けの貿易収支、非常な黒字になっておるわけでありまして、その黒字の六割以上が実は為替要因だと、こう言われておるわけであります。このまま放置すればさらに日本の対米黒字はふえるという問題が出てくるわけでありまして、その問題も考えますというとますます行き過ぎた円安については懸念せざるを得ない、こういうふうに考えておるところでございます。
#74
○小島慶三君 ありがとうございました。諸政煩多でありますが、ぜひその面にも御注意をお願いしたいと思います。
 終わります。(拍手)
#75
○小山峰男君 まず、総理に質問したいと思います。
 先ほども若干お話があったわけでございますが、今回の景気対策につきましては、十六兆円超というような過去最大の規模のものとなっておるわけでございますが、これはやはり現在の景気の状況が過去最悪のものになっているということを示しているものだろうというふうに思うわけでございます。また、この景気対策につきましては、単に景気回復だけではなくて、二十一世紀に日本の経済を活力あるものとしていくための施策も盛り込まれているということでございまして、大変難しい課題に対応しているというふうに思っております。
 さて、今回の十六兆円の中の主要な部分を占めますいわゆる国と地方の減税、さらに公共事業、社会資本の整備というようなもので十二兆円超が予定されているわけでございますが、その中身あるいは手法等については、後ほどもう少し具体的にお聞きしたいと思いますが、どうも従来型の中身あるいは手法になっているというふうに感じて仕方がないわけでございます。
 既に、平成四年から平成七年度にかけまして、いわゆる景気対策として六十兆余の対策がとられたわけでございますが、この対策につきましてもその後いろいろの評論等がございまして、従来型の対応では必ずしも景気対策につながっていかないというようなことが実証済みだというふうに私は思っているわけでございます。
 そこで、今回の十六兆円の景気対策につきまして、総理はどういうお考えでこの十六兆円の中身を決定されていったのか。また、既に一部の人の発言においては、追加でまた景気対策をやる必要が出てくるかもしれないというような発言もされたというふうにも聞いているわけでございまして、その辺も含めて総理の景気対策につきましてのお考えをお聞きしたいと思います。
#76
○国務大臣(橋本龍太郎君) 過去の経済対策も含めて、今回の総合経済対策というものについて考え方を述べるという御指摘をいただきました。
 これは私が申し上げるというよりも、今まで出ております御議論の中、過去の対策というものを振り返りましたときに、公共投資というものそれ自身が需要、同時に波及効果を通じて経済に好影響を与える、これは一つの考え方として定着をしてきたと思います。そして、そういう目で振り返りましたとき、九〇年代に入りましてからの累次の経済対策の中で行われてまいりました公共投資の追加、これはバブル崩壊後の民間部門の設備投資の急激な落ち込みを相殺する、そうした形で景気がスパイラル的に悪化していくことを防止する下支えに貢献してきたということは言えると存じます。同時に、減税が可処分所得の増加を通じて個人消費に対してプラスに働いた、さらに民間部門のマインドにもプラスの影響を与えたということは言えると私は思っております。
 その中で、今回政府が行おうとしております総合経済対策、それは当面の景気回復のための内需拡大という柱、同時に景気回復の足かせになっております不良債権問題の本質的な処理というものを目指す、同時に構造改革を見据えてそれに向けた方向を内容とするものになっている、そのような考え方を整理してまいりました。
 そして、後ほど具体的に細かいところに入ると言われましたので一々を今申し上げませんけれども、公共事業につきまして従来型のという御指摘もありましたけれども、私どもは社会資本を整備していく上で、将来を見据えた場合必ず必要となる社会資本を重点的に整備しよう、そうした基本的な考え方のもとに、環境あるいは新エネルギー、さらに情報通信高度化・科学技術振興、福祉・医療・教育という分野に重点的な配分を行ってきたつもりであります。
 また、税制については、既に本年特別減税を実施しておりますけれども、これに二兆円の特別減税を追加実施し、来年の二兆円の特別減税を既に公表しており、合計四兆円規模の減税を行う、あるいは設備投資、住宅投資を刺激するための政策減税をここに組み合わせていく、法人課税、所得課税についても方向性を打ち出す。そうした考え方を総合し、今回の景気に効果的に作用していく中身を盛り込んだ、私どもとしてはそのように考えておりまして、でき得る限り早く十年度補正予算案並びに関連する法律案の成立を両院にお願い申し上げたい、そのような思いを持っております。
#77
○小山峰男君 このことにつきましては後ほどもう少しお聞きをしたいと思います。
 次に、大蔵大臣に財革法の改正につきましてお聞きしたいと思いますが、いずれにしましてもこの財革法そのものが補正予算は除外されているとかいうようなことでかなりしり抜けになっているという感じもあるわけでございまして、今回の改正も大変中途半端なものであるというふうに思うわけでございます。こういう形でいく限り、景気回復にもつながらないし、また財政改革にも本当の意味でつながってこないだろうというふうに思うわけでございます。今のような形で減税あるいは追加公共事業、内需拡大というようなことが繰り返されていくとすれば、来年度もまた同じような補正予算を組まないといわゆる現状の維持ができなくなるという状況になるのではないかというふうに思うわけでございまして、そういう意味では大変中途半端な改正になっているというふうに思っております。
 また、社会保障関係費だけいわゆる別枠という形になっておりますが、確かに社会保障関係費も重要な課題ではございますが、私は環境だとかそういう問題を考えると、同等に重要な課題というのがあるのだろうというふうに思うわけでございまして、なぜ社会保障関係費だけ別枠にしたのか、その辺についてお聞きをしたいと思います。
 二点、非常に中途半端だということと、社会保障費の問題、大蔵大臣にお願いします。
#78
○国務大臣(松永光君) 財政構造改革を進めていく上での大切な枠組みの一つが、主要項目について量的縮減目標を定める、そして縮減をしていくというのが一つの骨組みでありますが、その骨組みの中で、平成十一年度に限り、従来の骨組みはおおむね二%を超えないこと、こうなっておるのを、極力抑制という形に改正をさせていただきたいとしているわけでありますけれども、その趣旨とするところは、社会保障関係費は、他の歳出分野と異なりまして制度的に高齢化に伴う多額の当然増が生ずるわけでありまして、その縮減には制度改革を必要とするという特質があります。
 制度改革というのは実は平成十年度をめどとして実施することになっておる関係上、十一年度につきましてはそのままでは新たな負担を国民に求める、そういう結果になりかねないので、そうしたことにならないようにしていかなきゃならない。そういう考え方のもとで、できる限り縮減するということに、おおむね二%という従来のキャップの表現にかえて改正をさせていただくわけでございます。これが社会保障関係費についてのキャップを、従来の表現とは違う、できる限り抑制という形にさせていただきたい、そうしている理由であります。
 最初に質問されたもう一つの事項についてでございますが、私どもはこれからの高齢社会を考えますというと、高齢社会になりましても、国民の方々が安心して暮らせる、そういう社会をつくり上げていかなきゃなりませんし、同時にまた経済の面では活力のある状態を維持しなきゃなりません。そういう施策に十分対応できるだけの財政の構造というものを実現しておかなければ、二十一世紀の本格的な高齢社会になった場合に大変なことになる、そういう厳しい認識を持っております。
 したがいまして、本格的な高齢社会に入る前に、何としてでも今申し上げたような安心して暮らせる社会、経済に活力のある社会、そういう社会を実現するに足る財政対応力を持っておく必要がある。そのことを考えると、財政構造改革の必要性、これは変わらないと。ただその中で、そのときそのときの景気の動向、経済情勢、それを見ながら適宜適切に景気対策を打っていくのもこれまた大事なことなのであります。
 そういう観点に立ちまして、財政構造改革法の基本的な骨組みは維持しながら、景気対策を打てるような仕組みとしての財政構造改革法の一部改正をお願いしておる、こういうことでありますので、御理解を願いたいと思う次第でございます。
#79
○小山峰男君 最初の社会保障費の関係、それならなぜ去年の段階でそういうことを見通せなかったのかなという気がいたすわけでございますし、また今の財政構造改革にしても、やるのならやっぱり補正予算までぴしっと枠をはめるぐらいにやらないと本当の意味の財政再建にはならないと。私はおととしの予算委員会で、財政改革法をつくったらどうだというお話もしたわけでございますが、それが一年半ぐらいおくれたためにこういう形になってしまったというのは大変残念だというふうに思っております。
 時間の関係もございますので、次に減税についてお聞きしたいわけでございますが、減税につきましても大変将来を見通した形にはなっていないというふうに思っておりまして、これでは本当に経済効果があるのかなという気がして仕方がないわけでございます。
 課税最低限の問題、今度四百九十一万というような形でいわゆる最低限が設定になるわけでございますが、私は果たしてこういう形でいいのかなという若干疑問を持っているところでございます。基本的には、所得税減税ももちろん重要なわけですが、私は政策減税を中心にやるべきだというふうに思っております。
 この政策減税につきましても、今回の中身を見ますと、先ほど総理から住宅の問題もお話がありましたが、六年でいわゆる百七十万から百八十万ということで十万円の減税効果、あるいはベンチャー企業対策等については一年限りの措置というようなことで非常に短期的な対応がなされているわけでございまして、これでは余り減税効果というのは出てこないだろうというふうに思っておるわけです。
 また、教育減税というのを大いに進めるべきだというふうに私は思っております。長野県から大学生を一名東京に出すとすれば最低年間二百万ぐらいかかる、二人出せば四百万というようなことになるわけでして、現在のいわゆる特定扶養控除五十八万円ですか、それから普通の扶養控除三十八万円との二十万円の所得控除がある、だから税額にすれば二万円から三万円ぐらいのいわゆる減税になっているということでございまして、これでは教育減税としての余り意味がないというふうに思っております。
 住宅減税あるいはベンチャー企業等について本当に効果があるのかどうか、その辺どういうふうに考えているのか、また教育減税については総理の見解をお聞きしたいと思います。
#80
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員から、政策減税を中心に考えるべきだ、そしてそういう場合に、議員は、一つは教育、そして住宅、ベンチャー企業育成という観点から柱を立てられました。当然のことながら、政策減税というもの、これはその時点における社会経済情勢などに対応するものとして、政策の緊急性あるいは効果の程度、手段の妥当性、さらに税制になじむかどうかといった総合的な観点から検討が行われるものであります。
 そうした観点から、今回、私どもは経済対策におきまして投資及び住宅について税制上の措置を講ずることといたしました。同時に、教育という視点から、議員、殊に大学生を持つその数でこれぐらいの金額がかかるという例示を挙げられましたが、私どもは教育というよりも子育てという視点からこの問題をとらえ、これに対しては歳出の部分、すなわち基金を造成するという形で対応することを考えました。これは私は両方の議論のあり得ることだと思いますけれども、今回、教育というより子育てという視点からとらえ、これを税ではなくて歳出の側で組み立てたということをまず申し上げたいと存じます。
 その上で、政策減税の中、投資減税につきまして、民間投資を促進するための税制上の措置、あるいは研究開発を促進するための税制上の措置、さらに住宅減税、それぞれの柱立てをいたしました。その研究開発を促進するための税制上の措置の中に、議員が御指摘になりましたように、ベンチャー企業を含む中小企業の研究開発を促進する観点からの中小企業者などの試験研究費に係る税額控除の特例についての臨時、時限の措置としての税制改正を含んでおります。すなわち税額控除率を六%から一〇%にと。こうした税が単年度でいいのかという御指摘は、これは私どもも真剣にやはり受けとめて今後の検討課題としていく必要のある課題だと思います。
 その上で、教育という面で減税という考え方の方が望ましいのか、あるいは子育てという視点から税ではなしにむしろ皆さんからいただいた税金の使い道の方で基金をつくって対応しようとする考え方、これは私はそれぞれの判断のあり得るものと。私どもは、今回、むしろ歳出によって基金をつくり、子育てだけではございません、ハンディキャップを持たれている、あるいはお年を召しておられる方々、それぞれの問題に対応しようと考えた次第でございます。
#81
○小山峰男君 私は、消費につながるような減税をということになると、まず教育減税。教育、子供たち、そういう形で金がかかっている人たちは消費を比較的抑えている。そういう人たちに消費をしてもらう。それから住宅についても、住宅をつくってもらうことによって消費が拡大する、そういう意味の私は減税をするべきだというふうに思っているわけでございまして、これは今後十分検討をしていただきたいというふうに思っております。
 次に、社会資本整備の関係でちょっとお聞きしますが、これは補正予算が出てくると思いますが、公共が四兆五千億、非公共一兆五千億、トータルで六兆というような形で予算が組まれてくるわけでございます。
 先ほどもちょっとお話がございましたが、この中身を見ますと、確かに環境・新エネルギー特別対策費だとか、余り今までになかった名前がついているわけでございますが、どうもいろいろお聞きしてみますと、従来型のいわゆる公共事業というのが相当あるというふうに聞いているわけでございます。従来型が必ずしも全部悪いとは言いませんが、一体この中で従来型と言われている公共事業はどのくらいあるのかということをお聞きしたいと思います。
#82
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 従来型あるいは新社会資本というような言葉が使われているわけでございますが、そういう明確な定義があるわけではございません。ただ、強いて挙げれば、予算書上、主要経費の区分といたしまして、社会資本整備の中では、道路とか下水道とかそういうものは公共事業関係費として整理するところでございます。それから、学校の施設だとか福祉の施設、医療の関係の施設とか、そういうものについてはいわゆる施設費というような言葉で、各省その他の、例えば福祉ですと社会保障関係費とかというようなところの中に含まれております。
 そういう面から申し上げますと、六兆円のうち約四・五兆円が公共事業関係費、それから一・五兆円が施設費という形になろうかと思います。
#83
○小山峰男君 そうすると、概念的には四・五兆円が従来型の公共事業というふうに解釈させてもらっていいということでしょうか。
#84
○政府委員(涌井洋治君) 世の中で、新聞等で使われている従来型の社会資本整備というものは大体このいわゆる予算書上の主要経費別分類における公共事業関係費ということでございますので、先生の言われるところかなと思います。
#85
○小山峰男君 それでは、総理の四月九日の記者会見につきまして、総理にお聞きしたいと思います。
 総理は、社会資本の整備につきましては、将来の世代が整備しておいてくれてよかった、そう言って感謝してもらえるような分野を重点にしたいと思いますというふうにおっしゃられているわけです。それで、例示として、例えばダイオキシンの問題あるいは地球環境問題に対応するための投資、少子化、高齢化社会に対応するために老人ホームあるいは育児施設の整備といった問題、さらに将来の発展基盤となる科学技術の振興と情報通信の高度化、将来を担う人材の教育など、こういう分野について重点を置いた社会資本の整備にしていくんだということをおっしゃっているわけでございますが、今の従来型四兆五千億みたいな話になるとこれとかなり矛盾をしてくるだろうと思うわけですが、総理、その辺はいかがでしょうか。
#86
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今の主計局長の答弁を聞いておりましてちょっと私は首をひねったのでありますが、もともと従来型の社会資本あるいは新型の社会資本、そういうふうな定義づけがそんなに彼が言うほど簡単にできるのかなと、実は私は本当にそう思いました。
 確かに、社会資本整備全体の六兆円の中で、予算書の分類からいえば彼の言うのはそれなりに正しいのかもしれません。しかし、大きくくくりました場合、環境・新エネルギー約一兆六千億円、情報通信高度化及び科学技術振興で一兆円、福祉・医療・教育といったくくり方で一兆円、物流効率化、緊急防災あるいは中心市街地活性化などの民間投資誘発型、これにそれぞれが約八千億円ずつ、こうした分野を重点的に整備しておりますし、これはすべて二十一世紀を見据えた社会資本の整備だと考えております。
 例えばこの中で、これはちょっと主計局長の説明のくくり方と違うんですけれども、今申し上げたような、例えば環境・新エネルギーという形でくくりましたとき、事業費一兆六千億円の中は国費七千八百四十九億円、そして約一兆五千億円の公共事業の中に国費は七千三百七十二億ございます。そして、それは特に緊急性の高いダイオキシン対策などの廃棄物処理施設などに充てられております。こういうものは旧式と言うのかあるいは新式と言うのか。
 少なくとも現在の廃棄物処理施設においては処理ができないからこそこういう対策をとるわけであります。こういうものは、確かに同じ項目は昔からございました。しかし、ダイオキシン対策などを考えた廃棄物処理、あるいは水質の保全、これも実は下水道ということにしてしまえば同じことであります。従来型ということになるのかもしれません。ダイオキシン対策あるいは環境ホルモン対策、地球温暖化を初めとした地球環境問題に対する取り組み、あるいは新エネルギー施設やリサイクル施設の整備などがこの環境・新エネルギーという分野にございます。しかし、似た名前、言いかえれば下水道というものは従来からございました。廃棄物処理施設という言葉も従来から予算書にございました。ただし、ダイオキシンに対する対策を十分に行えるような廃棄物処理施設という意味では、これは新しいものということになるんじゃないんでしょうか。
 ちょっとそこのところの分類につきましては、私は、私自身が考えておりましたのと主計局長の予算書上の説明との間に違和感を覚えております。(「不統一」と呼ぶ者あり)いや、不統一なんて言われちゃ困ります。それは同じ名前であることは事実なんです。廃棄物処理施設という名称は同じです。しかし、従来の処理施設のためにダイオキシンが発生したとするならば発生しないような対策をとる。名称としては同じでありましても、内容としては違うんじゃないでしょうか。
#87
○小山峰男君 また中身については主計局長によく聞いて、総理と同じ意思に統一をしておいてもらわないと、私の方も混乱するわけでございますので、それはまた政府として対応していただきたいと思います。
 それで、中身をまたよく聞いた上で、いずれ機会があればというふうに思っておりますが、総理としては先ほどの記者会見の中身を胸を張って今回の経済対策の中に盛り込んだというふうに理解していいわけですね。
#88
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、ダイオキシンで例をとって申し上げましたけれども、胸を張ってというほどうぬぼれてはおりませんけれども、私は今必要なものを一生懸命にやろうとしてきたことだけはそのとおりであります。
#89
○小山峰男君 時間もあれですから、自治大臣にお聞きしますが、今回の景気対策の中でも地方公共団体に地方単独事業として一兆五千億とか、あるいは公共事業の担い手として地方公共団体に要請する部分あるいは肩がわりしてもらう部分というのがかなりあるわけでございます。私は、まず景気対策としての減税は国のみで実施すべきものであろうというふうに思うわけでございます。今回の特別減税のように、国につき合うというような形で地方税の減税というようなものが軽々しく行われるということにつきましては、地方分権がこれだけ叫ばれている時代の中でどういうふうに考えたらいいのかなというふうに思うわけでございますが、自治大臣、どうですか。
#90
○国務大臣(上杉光弘君) 国が行います減税等に対して軽々しくという受けとめ方があるようでございますが、それは誤解でございまして、我々は軽々しくはやっておりませんで、重々しくやっておるわけであります。
 特に、今回の減税につきましては、地方財政は大変苦しい。今回の補正にいたしましても、最終的な地方債残高百六十兆というとんでもない地方債の残高を抱えるわけでございますから、当然これらのことは念頭に置きまして対応してきたわけでございますが、まず私は地方団体の御意向を十分お聞きしました。みずから求めて地方団体の代表の皆さんとお会いをいたしたわけでございます。
 そのような経過をいたしまして、結論として申し上げれば、我が国経済及び経済運営に関する内外の信頼の回復というのは、これは国家として当然必要なことでございまして、国を挙げて対処する必要がある。そうでありますれば、地方財政が苦しくとも国と一体となってこれに取り組まなければならないということにいたしたわけでございます。
 特に、総理からもございましたように、国の財政、地方の財政、これは公経済の車の両輪と同じでございまして、個人住民税については所得税と共通する税源ということで国民の皆様に負担をしていただいておるものでございますが、先ほどから申し上げておりますように、国と一体として景気対策に取り組むという考え方に基づいて国と一体的に減税を行うことといたしたところでございます。
#91
○小山峰男君 もう一点あったわけでございますが、ちょっと時間の都合で。
 総理にお聞きしたいと思います。
 先ほど、補正予算の審議についても促進してほしいというお話が総理の口から出たわけでございますが、景気対策として現在審議している財革法の改正案それから減税法案、補正予算案というものは一体のものだというふうに考えてしかるべきだと思いますが、その辺の見解はいかがでしょうか。
#92
○国務大臣(橋本龍太郎君) 政府といたしましては、平成十年度補正予算並びに補正関連の法案を去る五月十一日、同時に国会に提出をさせていただきました。でき得る限り早い成立を両院に対してお願いをいたしたいという気持ちは先ほど申し上げたとおりでございます。
#93
○小山峰男君 あわせて、この三案が成立することが景気対策に寄与するんだというふうにお考えかどうか、もう一度ちょっとお願いしたいと思います。
#94
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私どもは、我が国の経済及び経済運営、殊に景気を回復していくという点、また日本の経済に対する内外の信頼を回復するために、五月十一日にこれらを同時に国会に提出させていただいた次第であります。
#95
○小山峰男君 私たちとしましても、補正予算の審議をできるだけ促進をしなければというふうに思っているわけでございます。
 ところで、具体論を少しお聞きしますが、先ほどから従来型の社会資本整備というようなことでいろいろお話を申し上げましたが、私はやっぱり経済対策としては住民が参加するような、しかも環境保全型の社会資本の整備というようなものを積極的に進めることが景気対策につながるだろうというふうに思っているわけでございます。社会資本の概念というものも大きく変えていく必要があるだろう。こういう環境というような問題でいろいろ課題が多いときには変えていく必要があるというふうに思っているわけでございます。一兆円の投資が二兆円の消費につながるというような事業を選択的に実施すべきだと。
 例えば建設省、私もびっくりしたんですが、雨水の貯留・浸透施設等の普及というようなものにつきましても、企業がやるとかそういうものについては融資等があるわけてございますし、また合併浄化槽の貯留ます、下水道がつくられて要らなくなる、それを今度は雨水をためるものとして利用するというようなことについては、市町村が補助した場合にまた建設省が補助しているというような、私も知らなくてこの間建設省から聞いたんですが、大変画期的な事業もやっているというふうにお聞きしています。
 ここまで行くとすれば、この前もちょっと予算委員会でお話ししましたが、各戸に雨水をためるような施設をつくってもらって、そこへある程度の補助を出すというような形で需要効果を喚起することが大変大事だというふうに思っていますが、建設大臣、どうでしょうか。
#96
○国務大臣(瓦力君) 小山委員には予算委員会でも下水道の問題につきまして御質問をちょうだいいたしました。また今回、雨水流出抑制施設整備促進事業について御質問をちょうだいしたわけでございますが、これは下水道による雨水対策につきまして、雨水を速やかに排除する環境を整備する、このことは大切なことでございますが、貯留・浸透など流出抑制策を含めて総合的な対策を実施しているところでございます。
 不要になった浄化槽等を雨水流出抑制施設として活用する事業でございます。平成九年度に創設されまして、まだ新しい事業でございますが、千葉市など十三カ所に実施をいたしております。補正予算におきましても下水道事業による緊急浸水対策の推進を図っていくことといたしておりまして、必要な事業費を計上いたしております。限られた財源でございますが、事業の効率化に努めてまいりたい。
 そこで、委員に、くどいようでございますが、従来型ということになりますと私としてびくっとするわけでございますが、やはり国土の整備を図っていくということになりますと本来的な目的があるわけでございまして、時代時代の要請にどうこたえていくか、いろいろ費用対効果でありますとか何が益するものであるか、そういったことを時代とともに追求してまいっておるわけでございます。
 このたび委員がこの事業につきまして焦点を当てていただいたことが、地方におきましてまた関心を持っていただく機会になればいいと、かように思っておるところでございます。
#97
○小山峰男君 ぜひもう一歩進めていただいて、よろしくお願いしたいと思います。
 あと、太陽光発電等につきまして、あるいは環境型自動車等につきまして通産省、それからダイオキシン対策等で厚生省にもお聞きする予定でございましたが、時間になりましたのでまたの機会にしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#98
○牛嶋正君 私は公明の牛嶋でございます。
 きょうは一時間というちょっと長目の質問時間をいただきましたので、よろしくお願いをいたします。
 昨日からずっと各同僚委員の御質問を聞いておりまして、特に昨日一番バッターに立たれました片山委員の御質問でほとんど問題点の議論は尽くされているような気がいたします。そこで、きょうは私は少し視点を変えまして御質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、私、この法律について審議する前に、昭和五十六年の第二臨調によって打ち出されました増税なき財政再建、この経過をもう一度振り返ってみました。そして、この財政構造改革法の見直しが多分今回だけで終わるのではなくて、恐らく繰り返しこれからも見直しを行わざるを得ないのではないかという今懸念を持っているわけです。この懸念はちょっと不幸なことでございますので、増税なき財政再建との比較をしながら、特に大蔵大臣に御質問し、この懸念をできれば払拭したい、こんなふうに思っております。
 なぜそんなふうな懸念を持ったかということですが、私は、今申しました第二臨調が打ち出しました増税なき財政再建の基本的な財政再建のフレームと、今回のこの財政構造改革法の財政再建のフレームというのは基本的には同じではないかというふうに思っております。すなわち、歳入歳出のギャップをどう埋めていくかということですが、その埋め方として、歳出の伸びをできるだけ抑える、そして歳入の伸びを待ちながらそのギャップを埋めていく、これが二つの財政再建の基本的なフレームになっているのではないかと思います。
 両者の違いは、その歳出の伸びをどう抑えるかということでありまして、増税なき財政再建のときには、シーリング方式と呼ばれましたように、各省庁からの概算要求に当たりましてシーリング、上限を設定するという方式をとったわけであります。今回は主要経費につきましてキャップをはめるという方式でありますけれども、私は基本的には今申しましたように両フレームとも同じ基本的なフレームに立っているのではないかこういうふうに思っております。
 まず、この点について大蔵大臣の御見解をお尋ねいたします。
#99
○国務大臣(松永光君) 昭和五十六年の第二臨調による増税なき財政再建のフレームと、今回の財政構造改革法のフレームと同じじゃないか、似ているんじゃないかという御指摘でございますが、第二臨調の答申における財政再建策としては各省ごとの一律削減であった。しかし、財政構造改革法の場合は財政赤字の対GDP比を三%以下にするという財政健全化目標を定めた上で、その達成に向けて主要な経費ごとにめり張りのきいた量的縮減目標、すなわちキャップを定めた。片方は一律削減と。その点が私は第一の違う点だと思います。
 二番目は、財政運営の方針として官と民、国と地方の役割の見直し、歳出全般の見直しに当たっての具体的な観点を定めて制度自体の見直しもする、そして徹底してむだを省く、こういう考え方で財政構造改革法の基本精神はなっておるわけでありまして、そこに違いがあるというふうに私は思っております。
#100
○牛嶋正君 私も同じような認識ですが、私がお尋ねしましたのは、最初に申し上げました歳入と歳出のギャップを埋める場合に、埋め方はいろいろあるわけですね。すなわち歳入の歳入線をできるだけ歳出の歳出線に近づける、これは増税ですよ。それに対して、歳入の伸びを待ちながら歳出の伸びをできるだけ抑えていく、こういうやり方があると思うんですね。それでいきますと、両方とも私が今申しましたように歳出を抑えながら歳入の伸びを待ってそのギャップを埋めていく、こういうことで基本的には同じではないかということを申し上げたわけであります。そして、抑え方については大臣が今御説明されたとおりでございます。
 そこで、この基本的フレームが問題なんですね。と申しますのは、歳出と歳入は別々ではないわけですね。すなわち、国民所得あるいはGDPを挟んで相互に関連しているということです。ですから、歳出を抑えますと、これがかなりGDPを決定づける、総需要の中で大きなウエートを占めておりますから、それがGDPの伸びを抑えて、そしてGDPあるいは国民所得に依存する歳入も伸び悩むということであります。ですから、五十六年以降の歳出と歳入、歳入は税収ですが、この線をずっとたどっていきますと、シーリングによって歳出の伸びを抑えますと歳入の方も同じように頭を下げるわけであります。これはもう見事に線で描くことができます。
 そうしますといつまでたってもギャップは埋まらないということになるわけで、今のこの基本的なフレームはもともとそういう大きな欠陥、あるいは矛盾と言っていいのか、そういうものを持っているというふうに考えますけれども、この点について大蔵大臣はどういうふうに御理解されておりますか。
#101
○国務大臣(松永光君) 委員のおっしゃいました増税に頼らず財政の立て直しを図る、そのためには歳出の縮減合理化を図る。そのことについては第二臨調の場合と基本的には同じじゃないかという先生の御指摘、この財政構造改革法の基本的な考え方としては、歳入増じゃなくして歳出の縮減合理化を図る、それによって財政構造を改革する、その点については第二臨調の場合と同じだという御指摘でありますが、それは我々もそうだと思います。ただ、その手法は相当異なるというふうに申し上げておきたいわけであります。
 なお、一般歳出を縮減すれば、一般歳出そのものがやはり需要になるわけでありますから、それが縮減されれば需要減という結果になるでしょう。しかしながら、我が国の経済は、実は中心的な役割を果たすのは民間部門、民間活動でありますから、したがって、一般歳出を縮減させたからそれによって需要減が生じ経済活動が停滞するという考え方には私どもは立っていないわけでありまして、むしろ民間活動を活性化させることによって日本の経済全体を活性化させる。先ほど申し上げました民と官の役割分担を明確にし、そして民のより一層の活発な活動に期待するという考え方に私たちは立っておるわけであります。
#102
○牛嶋正君 恐らく増税なき財政再建のときもそのようなことで進められたかと思います。ただ、私が申し上げておりますのは、先ほど申しましたように、もう一度その増税なき財政再建の経過をずっと振り返ってみたわけでありまして、その分析結果を申し上げているわけでございます。
 そこで問題になったのは、最初、五十六年の増税なき財政再建のときの再建目標年次は昭和五十九年だったんですよ。それが次々に延ばされて、今と同じです、延ばされて、六十二年、六十三年、そして結局六十五年まで延ばされた。六十五年というのは平成二年です。そしてようやく特例公債の発行がゼロになるわけですが、ここで注意しなければならないことは、その間に、平成元年に消費税が導入されているということ、それからいま一つ、昭和六十三年ごろからバブルがずっと続いておりまして、税収の伸びが非常に大きかったということですね。そういう意味で、この基本的フレームがその財政再建目標でありますところの特例公債の発行ゼロをもたらしたのではなくて、私は外的要因ではなかったかというふうに思っております。
 ですから、増税なき財政再建そのものの評価というのは、私はそれほど高く評価することはできないと思っておりますけれども、改めて大蔵大臣に、増税なき財政再建、一応平成二年に目標を実現しましたけれども、これについてどのように評価されておりますか、御見解をお願いします。
#103
○国務大臣(松永光君) いろいろの経過をたどって、五十八年の第二臨調のもとにおける財政再建は当初の目標が延びて、そして平成二年とおっしゃったですか、平成二年に特例公債依存から脱却することができた。その理由そのわけは何であったかということでございますが、その間に歳出の削減も相当やったということも事実であります。同時にまた、バブルの影響で歳入が思わざるふえ方をしたということも事実であろうと思います。両々相まって赤字公債依存体質から脱却できたと、こう思います。すなわち、バブルの発生によってだけじゃなくして、その間に政府側も歳出の縮減のために相当な努力をした、そのことにプラスして好景気による歳入増があった、それで達成できたと、こういうふうな歴史的な過程じゃなかったかというふうに思います。
#104
○牛嶋正君 当時はまだ、第二次のオイルショック以降成長率がダウンしたとはいえ、大体平均三%から三・五%ぐらいのところで推移をしておりました。それでもなおかつ、やっぱりバブルというふうな一つの大きな税収をもたらすような期間がなければ平成二年の財政再建目標というのはなかなか実現しなかったんではないかというふうに私は今申し上げたかったわけでございます。
 そうだとしますと、その当時よりずっと悪い今の経済状態のもとで、基本的に同じフレームを持っている今回の財政構造改革案、この財政再建フレームというのは私は非常に実現は難しいのではないかと。そういうことで、一番最初に申し上げましたように、今後とも見直しは繰り返さざるを得ないのではないかというふうなことを申し上げたわけでありまして、どうも今の大蔵大臣の御見解を聞いておりましても、私はまだその懸念は払拭できないわけでございますけれども、もう一度改めて大蔵大臣の御見解をお尋ねします。
#105
○国務大臣(松永光君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、今度の財政構造改革の具体的な手法、主要項目ごとに縮減目標を定めて、そして歳出の縮減合理化を図ると。キャップでありますからこれは相当厳しくかかっておるわけであります。そのことが一つ。
 もう一つは、官と民との役割を明確にして、そして官の扱う分野を縮減する、それで歳出の縮減を図るという手法、これは五十八年の場合には余りなかったんじゃなかろうか。この点も新たな財政構造改革を実現するのに貢献する手だてだろうというふうに思います。
 それから三番目には、国から地方へという合い言葉にありますように、国と地方との役割分担の見直し、それを実行するという手法も取り込まれております。
 それからもう一つは、これは経済の分野で経済の構造改革を進めていく、規制緩和を進めていく、それらを通じて経済活動が一層活性化するような、そういったこともあわせて実行していくわけであります。
 したがいまして、五十八年度の第二臨調のときのやり方だけでやるんじゃございませんから、新しい手法を幾つも取り入れた上でやるわけてありますから、楽な道とは思っておりませんけれども、後世代のためにぜひともやり遂げなきゃならない我々の世代の極めて重要な責務である、その責務を果たすために全力を挙げて取り組んでいかなきゃならないと、そういうふうに思っているところでございます。
#106
○牛嶋正君 それでは次に、今回の法案改正のポイントであります弾力条項についてお尋ねいたします。
 これにつきましてももう皆さん随分と御議論なさったわけですけれども、弾力条項を導入する場合の前提といたしまして二つ並べて書かれております。一つは「著しく異常かつ激甚な非常災害」、それからいま一つは「経済活動の著しい停滞」であります。
 この後の方を取り上げて、皆さんもそうでしたので、御議論をちょっとさせていただきたいと思います。
 こういうふうに並べますと、異常かつ激甚な非常災害、これは恐らく十年か十五年に一回ぐらいあるような非常災害だと思うんですけれども、経済活動の著しい停滞も、そういうふうな十年とか十五年と言わなくても、いかにも二、三年に一回起こるような状況のように受けとめるわけでございます。私は、今回のこのフレームにおきまして、キャップのはめ方によってはむしろこれは臨時的かつ著しい停滞ではなくて常態ということになるのではないか、こんなふうな懸念をしております。
 この経済活動の著しい停滞につきまして、一、二、三と三つ挙げられておりますが、特に一と二につきましては、私はキャップのはめ方では臨時的じゃなくて常態になってしまうのではないかという懸念を持っておりますけれども、これにつきましては企画庁長官にお尋ねしたいと思います。
#107
○国務大臣(尾身幸次君) 先ほどから大蔵大臣が御答弁を申し上げておりますように、経済活動の著しい停滞等があって国民生活等に重大な影響を及ぼす場合に、例外的に特例公債が前年度に比べて増加することを許容されるというふうに直しているわけでございます。
 これは財政構造改革の基本的な骨格を維持しつつ緊急避難的に適切な措置を講ずるということでございまして、牛嶋委員の今おっしゃいますには、そういう状態が頻繁に起こるのではないかという御趣旨かと思います。
 私ども、これに対しましては、いわゆる赤字国債の発行も含めまして国内需要喚起対策をやるというのが今回の総合経済対策の柱になっておりますが、同時に、ベンチャー企業を育て、あるいは情報通信や科学技術の振興等によりまして日本経済の体質を強化改善し、民間需要中心の経済活動を活発化する。つまり、民間の経済活動を活発化して、それによってその力を喚起する政策、経済構造改革と一言に言ってもいいかと思いますけれども、そういう政策によりまして経済の体質を改革する、そういう点を実は大きな柱にしているところでございます。
 そういう対策をとることによって経済が自律的な発展軌道に乗る、民間需要中心の自律的な発展軌道に乗る、そのことをぜひ実現していきたいと考えているわけでございまして、そういう体制によって、いわゆる財政出動的な手をそう大きなものを打たなくても順調な発展軌道に乗るようなことに全力を注いでまいりたいと考えている次第でございます。
#108
○牛嶋正君 ちょっとお話がかなり抽象的でございますので、私は私なりに計算をさせていただきました。そうでないと、さっき私が懸念したような問題がやっぱり起こるのではないかというふうに思うわけであります。
 実は、予算委員会のときに、私、この四、五年続いてまいりました消費パターンを分析いたしまして、消費の所得弾力性という概念をここで発表させていただきました。
 今、私懸念しておりますのは、四、五年続いてまいりました消費パターンが今しばらく続くというふうに想定いたしますと、仮に二%の成長率を維持するためにも、住宅投資及び民間企業設備投資の伸びというのは大変な伸びを維持しなければ実現しないという計算が出てまいります。
 もう少し具体的に申しますと、消費の所得弾力性を今〇・六というふうに想定いたしますと、本来ならば二%の成長に対して消費の方も二%伸びてくれると成長の足を引っ張らなくていいわけですけれども、今申しましたように、弾力性が〇・六でございますので、一・二しか伸びてくれない。そうしますと、〇・五分だけ経済の回復の足を引っ張るわけでございます。
 それに加えて、公共投資にキャップをはめる。ことしはめられましたマイナス七%というふうなキャップをはめるといたしますと、本来二%伸びなきゃいけないのに七%マイナスですから、九%ギャップが出てしまうわけであります。これが経済全体のどれぐらい足を引っ張るかといいますと、〇・八%ほど足を引っ張ります。両方で一・三%。消費の方の伸び悩みと、それから公共投資にキャップをはめるということで一・三%の分だけ足を引っ張ることになります。
 そうしますと、それを補うために住宅投資と設備投資を、今申しましたようなところをそれによって補っていくといたしますと、常に六・五%伸びなければならないのであります。六・五%、これは大変な数字ではないか。今の住宅投資を見ておりましても、また設備投資を見ておりましても、幾ら先端技術を導入した新しい分野での投資をといいましても、六・五%の伸びというのは非常に難しいのではないか。
 今、仮にこれが三%にとどまったといたしますと、先ほど言いましたようなGDPの成長率は一%以下になります。ですから、こういうふうに考えると、必ずしも臨時的じゃなくて常態じゃないかなというふうに私は思うわけですけれども、これについて経済企画庁長官の御見解をお願いいたします。
#109
○国務大臣(尾身幸次君) 経済の状況につきまして総合的にいろんな試算をされておられます牛嶋議員の計算に対しまして、私は全体としては敬意を表する次第でございます。
 しかしながら、内容につきましては、私自身の感じと相当違っておりまして、第一に、消費がどうなるかということでございますが、所得弾性値を〇・六というふうにおっしゃっておられますが、現在の経済の停滞というものは、消費者のマインドが低下し、事業家のマインドが低下をしている、経済の先行きに対する不安感というものが実は消費の減退の原因でございまして、家計調査の消費性向でやってみましても、昨年の九月の七一・九%がことしの二月までで六八・四%と三・五%ポイント下がっているという状況にございます。三月にこれが七一・七%に上がって、ほぼ七二%程度の水準に戻っているわけでございますが、この三月の数字、七二%程度が続いていくといたしますと、これは限界消費性向も、所得が上がり経済が順調な回復軌道に乗るにつれて消費者のマインドがむしろプラスの方向に転換をしてくる、そのことによります消費の回復、増大ということも実は私ども計算に入れられるのではないかというふうに一つ考えている次第でございます。
 それから、政府の公共投資でございますが、マイナス七%という数字をおっしゃいましたが、これは十年度の数字でございまして、十一年度、十二年度につきましては前年を下回るということになっておりますが、どのくらい下回るかということについてはこれからの経済状況等を見ながら対応をしていくということになっているわけでございます。
 したがいまして、両方合わせて一・三%のマイナスギャップが出るということ自体は、私どもは消費の伸びあるいは公共事業につきましてもそういう数字にむしろならない可能性が強いというふうに考えておりますので、一・三%という数字にはならない、むしろ消費が回復してプラスに伸びるという可能性も見込めるのではないかというふうに感じている次第でございます。
 それから、設備投資、住宅投資につきましては、設備投資につきましても同じようにマインドの向上によりまして回復する点があると思っておりますが、特に今回の対策で設備投資促進税制を導入をしておりますし、住宅につきましても住宅投資促進税制を導入し、さらに住宅金融公庫の金利も二・七五%へと下げるなど、住宅投資、設備投資の増大を目指すいわゆる政策減税も相当程度思い切ったものをやっている次第でございまして、そういう点からもプラス効果があると考えている次第でございます。
 それからもう一つは、先ほどの繰り返しになりますが、やはりベンチャーの問題にいたしましても、予算規模で一千億円の投入をしてベンチャーを育てる。信用保証の面とかあるいは投資という形で資金を供給するというような面においてベンチャーを育て、その面から新しいサプライサイドの政策を実行していく。あるいは情報通信、科学技術、ビッグバン等々ございまして、そういう意味で民間のマインドが変わり、活力が出てきて、新しい二十一世紀に向かって全体の経済社会が動き出すならば、むしろそういう意味から経済が順調な回復軌道に乗り、本当の底力のついた発展が実現でき、それによって税収等も改善の方向に行くのではないかというふうに考えている次第でございます。
#110
○牛嶋正君 企画庁長官は非常にマインドという言葉をお使いになるんですね。私は、政策を立案していく場合に、マインドという言葉は余り使わない方がいいのではないかというふうに思います。
 と申しますのは、企画庁長官が昨年の秋ごろから消費の低迷に関しましてマインドを非常に強調されますので、実は私はそれに何らかの分析をいたしまして反論しようとして、先ほど言いましたような、バブル以降じゃなくてその前からも含めまして消費パターンがどんなふうに変化してきたのかということを分析してきたわけです。その過程で所得の弾力性という概念を導き出したわけです。
 そうしますと、そのマインドというのはここ一、二年の話でありまして、私は、バブルを一つの契機としながら、日本人の消費パターンというのは非常に大きく変わってきていると見なければなりません。これをきちっと見きわめなければ、いたずらに消費を刺激するというふうな政策をとりましても、それはかえって、非常に落ちついた賢明な消費パターンを今ずっとみんなが形成しつつあるのに、これに案外余分な撹乱を起こすようなことになるんじゃないかというふうに思っております。そういう意味では、私は余りマインドという言葉をお使いになるのはよろしくないのではないかというふうに思っているわけであります。
 ですから、どうしてもマインドが変わればこうなるというふうに説明せざるを得ないわけですけれども、我々としてはなかなか理解できない部分があるわけであります。むしろ私は、今の消費パターンというのはかなり続くのではないかというふうに思っております。
 そういたしますと、先ほど言いましたように、経済活動の著しい停滞という解釈でありますけれども、これは常態とは言いませんけれどもしばしば起こり得る現象ではないかというふうに思います。そう考えますと、私は財政構造改革法の発想を百八十度転換すべきではないかというふうに思います。
 と申しますのは、GDP成長率が仮に二%を超えたときに特例公債発行額を圧縮する、こういうふうな発想に変えてはどうかというふうに思うわけです。そうすることによって、先ほど私が申しました基本的なフレームの中に含まれている歳出と歳入のGDPあるいは国民所得を介しての相互的な関係、これがもたらす矛盾、こういったものを回避することができるのではないかと思います。
 これは基本的な考え方の発想転換でございますので、総理に御見解をお尋ねしたいと思います。
#111
○国務大臣(橋本龍太郎君) さんざん論議を楽しまれたあげくにボールをパスするというのは、ちょっとずるいと思うんです。
 と申しますのは、私は、第二臨調のフレームと現在のフレームとの対比から始められました部分に多少、異論があるわけではありませんが、しかし根底で考え方として整理しておくべき部分があるのではないかというところが、ボタンとしてかけ違っているのかなという思いがございます。
 というのは、ある意味では大変失礼な言い方であります、当然ですけれども、歳入と歳出が国民所得を介して相互に関連し合っている、そしてその部分をとらえて、現在のフレームと当時のフレームは基本的に同一のものという論拠を立てられました。そして、その延長線上で、マインドの部分はちょっと別にいたしまして、ずっと論議を進めてこられ、その上で議員としては、経済活動の著しい停滞というのがむしろ常態に近いのではないかという結論を導き出されました。私は、学問的な分析の上からであれば、その両者のフレームがほぼ相等しいと言われることにも必ずしも異論を唱えません。
 ただ、そこで、たまたま第二臨調の時期に党としての責任者をいたしておりました立場から考えてみますと、大きく違うのは行政の質的な変化を求めたか求めないかという点でございます。申し上げるまでもなく、私どもは今、行政の質的な転換、量的にももちろんでありますが、を求めなければならなくなっております。
 言いかえれば、俗に護送船団方式という言葉で形容されましたような、多かれ少なかれどの分野にも共通した手法でありますけれども、従来の行政という中には事前管理型の行政というものがつきものでありました。これを自己責任原則、もちろん行政の透明性とか公正性というものは確保するわけでありますけれども、それを前提にした事後チェック型に変えていこうとした場合、ここにどれだけの変数が働くのかということは、私は実は問題として相当大きな変化を与える要素だと考えております。これはある意味ではプラスの方向に作用する大きな要因でありましょう。
 もう一つは、第二臨調当時と今日とで一番著しく変化いたしておりますのは、人口予測と実態であります。これは、高齢化が私どもが当時予想していたよりもはるかに進んだということと、少子化の速度が依然として衰えていないという両面でありまして、これは必ずしもプラスと評価のできる部分ではございません。
 しかし、そういった大きな変数がありますときに、果たして議員が置かれたフレームだけでよろしいのか。この辺には私どもとしては論議の部分を残しておるように思います。
 むしろ、一方で進めております規制の撤廃、緩和、あるいは官から民、分権、いろんなものがありますけれども、質的な変化というものをどのように変数としてとらえるのか。これによりましては出された結論に相当変化を生ずるのではないか。学生としてそのように思います。
#112
○牛嶋正君 そういうお答えをいただけるものと思っておりましたものですから、一番最後にまとめて御質問させていただきました。
 それでは次に、財政の健全な運営とは何かということで、少し基本の問題に返りまして御質問させていただきたいと思います。
 私は、財政というのは幾つかの機能、本来的な役割を持っていると思いますが、普通それは資源配分機能、所得再分配機能、そして経済安定機能、こういうふうに分けております。
 今、総理がおっしゃいました行政の質の問題あるいは規制緩和の問題、私は、それは資源配分機能のところに含めて考えなければならない重大な問題であろうというふうに思っております。
 従来は、資源配分機能の場合で一番問題になりましたのは、公共部門と民間部門をどういうふうに分けるかということであったわけですけれども、それはもう今から十年も二十年も前の話でございまして、大事なのは、首相が今おっしゃいました行政の質の問題、すなわち公共部門に振り向けられた資源、それがどういうふうな効率的な結果を生み出すかということも非常に大事だということでございます。それだけに、財政の運営というのは非常に難しくなっているというふうに私は思います。
 それから、所得再分配機能、これは社会保障制度にかかわる問題であります。そして経済安定機能、これはもう言うまでもございません、フィスカルポリシーの問題であるわけであります。
 こういう三つの基本的な役割を考えた場合に、財政が非常に健全に運営されているということは、その三つの機能が十分に果たされて国民の生活が守られているということになるのではないか。そこに判断基準を置くべきではないか。十分にその機能が発揮されて国民の生活が一応守られているということになれば、財政は非常に健全な運営をされているということになろうかと私は思います。
 そうだといたしますと、単純に収支の均衡を図るだけではなくて、やはりそういった財政が持っている諸機能が十分に発揮されるような財政構造を準備していく、これがこの法律の基本的な目標ではないかというふうに思いますけれども、これについて総理の御見解をお尋ねいたします。
#113
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今の議員の御質問を私なりに組み立て直してみますと、財政の健全な運営という問いかけになろうかと思います。
 その場合に、議員が今挙げられました三つの機能、すなわち資源配分の調整、所得の再分配、経済の安定化という三つの機能に整理をされる、そして財政運営についてこの三つの機能がバランスよく発揮されることが期待をされるもの、これは私は本当にそのとおりで、素直にそのとおりに受けとめていかなければならないと思います。
 その上で、先ほど私は議員の御論議に対して変数という提起の仕方をいたしましたけれども、今、人口構造の変化、これは間違いなしに財政を取り巻く環境としての大きな変容の要因であります。そういう中において、その変化に対応しながらも、将来に向けてさらに効率的なこの三つの機能をバランスよく果たしていく、そのためにはやはり財政構造改革というものが必要なものではないかということをまず私は申し上げたいと思います。
 同時に、その財政の三つの機能と財政構造改革というものが矛盾するものではない、これはもう議員に申し上げるまでもないことでありますけれども、例えば財政が破綻した状況の中で適切な資源配分調整ができるか。できません。あるいは所得の再分配機能においてもしかりであります。
 そうしたことを考えてまいりますと、議員御指摘のその役割を十分果たしていきますためにも、我が国の財政構造というものを中長期的にさまざまな政策要請に十分対応できるだけのものに変革していく必要性というものは否定できないのではないでしょうか、と思います。
#114
○牛嶋正君 大体同じようなお考えであったというふうに思っております。
 私、ここでもう一つ、納税者の立場から見た財政の健全な運営というのを考えてみたいわけでございます。
 これまでの議論では納税者の立場というのは余り議論されませんでしたけれども、それは暗黙のうちに守っていたんだというふうに思います。というのは、納税者から見ましても、今申し上げましたような財政が持っている基本的な機能が十分発揮されて自分たちの生活が守られるということを一番望んでいるからであります。
 ところが、納税者の立場から見た場合、もう一つつけ加えなければならない問題があるかと思います。それは個々の納税者から見て受益と負担の対応関係が非常に明確であるということだろうと思います。私は、全体的に負担が重くなるに従いましてこの条件というのはこれから非常に重要になってくると思うわけであります。赤字国債の発行に伴う負担の将来への引き延ばし、これは恐らく現世代の納税者から見ましても必ずしも好ましいものではないというふうに私は思うわけであります。
 それでいきますと、財政健全化目標を二つ挙げておられますね。一つは財政赤字の対GDP比三%以下というのと、いま一つは特例公債発行ゼロであります。私は、特例公債発行ゼロの目標は非常に理解できるんですけれども、財政赤字の対GDP比三%以下というのは、増税なき財政再建のときもなかった目標値でありますし、なぜ三%以下なのかという点も含めましてちょっと理解ができませんが、これについて大蔵大臣の御説明をお願いしたい。
#115
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 国、地方の財政赤字の対GDP比三%以下という健全目標がなぜ掲げられたのかという御質問でございますが、この三%以下という数字は、我が国における国及び地方の財政赤字の債務残高、いわゆる債務残高そのもの、それの対GDPの比率の上昇をとめて現状程度に収束させるために必要な単年度の財政赤字の対GDP比が、それが経済計画の名目成長率見込み以下である、三%程度である、そういうことがまず念頭にあったということと、もう一つは、EUの通貨統合に参加するための三%以下の基準、それがこの数字を決めるときに勘案したもう一つの要素であったということでございます。
#116
○牛嶋正君 何かこれまでと違った目標を設定しなければならないというふうなことで設けられた目標のような気がしてなりませんですけれども、私は先ほど申しました納税者の立場から見て、受益と負担の一致をできるだけ求めていく、そういう形の財政運営というのがこれから求められるのではないかというふうに思います。
 この受益と負担の一致で一番問題になりますのは、耐用年数が二十年あるいは三十年といったような社会資本、これは耐用年数にわたりまして便益がもたらされていく、その便益に応じて将来世代の納税者がそれに応じた負担を税金でしていく、こういうことでなければならないわけであります。そういたしますと、それを実現していくためには、今行われておりますように建設費を借り入れで賄う、そして耐用年数にわたりまして受益に応じて借り入れを返済していく、償還していく、こういう償還ルールをきちっと立てることが一番肝心ではないかと思います。
 そういう意味で、私は財政再建健全化目標の中にむしろこういった償還ルールをきちっと定めることの方が重要ではないかというふうに思っておりますけれども、これについての総理の御見解をお尋ねいたします。
#117
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、建設公債について、議員は借り入れと言われましたが、建設公債で賄います部分につきまして六十年償還のルールがあることは御承知のとおりであります。
 このルールが定められたそのもとを尋ねてみますと、建設公債の見合い資産全体につきまして、その耐用年数などに従って平均的な効用発揮期間を計算したところおおむね六十年、そこから一つの目安として六十年で償還を図っていく、そういうルールが採用されたという説明を受けてまいりました。そういう意味では、現在の建設公債の償還ルールは、議員が提起をされましたような個別の資産と償還期間を直接的に結びつけておりません。そして、その発行につきましても、国会の議決を得てお許しをいただきましたその金額の範囲内において、期間あるいは毎回の発行額について国債市場の状況などを踏まえながら計画的に行っているわけであります。
 私は、議員の提起をされましたお考えは一つの立法政策上の判断であると思います。公債発行につきましても、各国のルールにそれぞれに違いがあることは、申し上げる必要がありません、もうよく御承知のことであります。そしてまた、これについてさまざまな議論がございます。本院において既にちょうだいをいたしました中にも、幾つかの発行ルールの変更についての御論議がございました。私自身も、例えば五年とか十年といった、そういった短期の国債というものは考えられないものかという自問自答をしているということを答弁で申し上げたこともございます。
 こうした点につきまして、いろいろな議論をしていただく、議員の今提起をされましたようなお考えも含め、こうした論議を深めていただく、あるいは広めていただくことは非常にむしろ有益なことではないかそう思いながら私は今御意見を拝聴しておりました。
#118
○牛嶋正君 この問題について若干まだ質問は残っておりますが、もう一つどうしてもお尋ねしたい問題がありますのでそちらの方へ移らせていただきます。
 今までほとんど議論されなかった問題の一つに、健全な財政運営を行っていく場合のもう一つの条件として、私は税収の安定性というのがあるのではないかと思います。
 これは国の方はそれほど問題にはならないわけですが、地方財政の方は、地域住民の日々の生活に関連するいろんな公共サービスを供給しておりますので、税収が安定的に入って、そして過不足なくそういった必要な公共財を供給していくということが必要であります。そうでないと、地方財政の場合にはなかなか健全な財政運営はできないということであります。
 ところが、先ほども申しましたように、税収というのは国民所得なりGDPに依存するわけでありますから、これを安定させるということは、言いかえれば国民所得の安定した伸びということになるわけでありまして、これは経済目標へと今度返っていくわけであります。
 ところが、税収の安定性を考える場合にもう一つ重要な要因がございます。これは税収弾性値でございます。
 御承知のように、国民所得の伸びに対して税収がどういうふうに伸びていくか、仮に国民所得が一〇%伸びて税収が一一%伸びる場合には、これは税収弾性値は一・一というふうに申します。この一・一という数字を挙げましたのは、大蔵省が税収を予測する場合にお使いになる税収弾性値のために一・一というのを使わせていただきましたが、これは聞くところによりますと過去何年かの平均値であります。しかし、各年度をとってみますと税収弾性値というのはかなりばらつきがあるわけであります。
 大蔵省にお聞きいたしますが、過去十年間のこの推移をちょっと教えてください。
#119
○政府委員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。
 昭和六十二年から平成八年までの十年間につきまして名目GDPに対する税収弾性値の推移を見ますと、一般会計分の税収の合計では、一番高いときが五・七五、低いときが三角の五・二一、こういうふうになっております。
 なお、御承知のように、この税収弾性値、名目GDPで割るわけでございますが、近年、バブルの崩壊でGDPが低いところがある、あるいは税収は資産所得に対しても課税が行われるというような要因もあろうかと思っております。
#120
○牛嶋正君 私が問題にしたいのは、今の数値というのは税収全体の弾性値でありますが、この税収全体の弾性値は個々の税目によって決まるわけであります。ですから、今、年度で変動があると申しましたけれども、個々の税目でもその弾性値は違います。そして、最も変動的な税目というのは法人税であるわけであります。
 ですから、法人税の税収予測が非常に難しいわけでありまして、これが財政運営を非常に難しくしております。しかも、我が国は幸か不幸か現在でも法人税収は二六・二%ぐらいですか、まさに法人税依存型の税制であるわけです。私は、ここに問題がもう一つあるのではないか。余りこれは皆さん指摘されませんけれども、本当に財政の健全運営のためにはそれは必要ではないかということです。
 時間が非常に迫ってまいりましたが、実はそういう意味では、私は、今の我が国の税制が早く法人税依存型の税制から脱却すべきである。これはもうまさに高度成長のときの税制ですよ。ですから、こういう低成長になった場合は法人税依存型であっては財政運営を非常に難しくするというふうに思います。
 そこで、先ほどから法人事業税の外形標準化が議論されております。それは国際的なグローバルスタンダードに合わせるというふうな議論が多かったわけですが、そうじゃなくて、地方財政、これからも非常に安定した運営を行っていくためには、地方税制そのものも法人税依存型から脱却しなければならない。
 そこで提案するわけですけれども、もう一度シャウプ勧告、シャウプ税制の原点に返るべきではないか。すなわち、シャウプ勧告に基づきまして昭和二十五年の税制改正のときには今の法人事業税ではなくて付加価値税というのが立法化されているわけであります。それが実施されないままに終わっているわけですが、最後に自治大臣にお尋ねいたします。
 私は今ここで付加価値税に戻るべきだという提案をさせていただきたいと思いますが、自治大臣のお考えをお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。
#121
○国務大臣(上杉光弘君) 委員御指摘のとおり、昭和二十四年八月二十七日、シャウプ第一次勧告がなされて付加価値税というのが示されたわけでございます。
 地方法人課税の今後のあり方につきましては、昨年末の政府の税制調査会の答申におきまして、「地方の法人課税については、平成十年度において、事業税の外形標準課税の課題を中心に総合的な検討を進めることが必要」とされておるわけでございまして、委員の御指摘の方向に私は大方あると思うわけでございます。
 事業税に外形基準を導入する場合の具体的な外形基準につきましては、利潤、給与、利子及び地代等を加算した所得型付加価値などを幅広く検討されておるわけでございます。今後、政府税制調査会等の場におきましてこうした検討を進めることとなるのではないか、こう思っております。
 事業税の外形基準の導入につきましては、都道府県の税収の安定化が図られ、地方分権の推進に資することは申すまでもございません。このような意義もあることから、自治省といたしましてはその実現に向けて努力を重ねてまいる所存でございます。今後、政府税制調査会の場等で、御指摘のありました付加価値を課税標準とする選択肢も含め、具体的な外形基準をどうするかなどの点につきまして幅広にさらに検討を進めてまいりたいと考えております。
#122
○牛嶋正君 どうもありがとうございました。(拍手)
#123
○清水澄子君 社会民主党の清水でございます。
 昨今の議論は日本国内の景気にばかり目が向いている感がありますが、私は、初めに昨年来のアジア通貨危機、特にこれに端を発した今回のインドネシアでの事態についてお伺いをしたいと思います。
 橋本総理は、ことし三月にはインドネシア・スハルト大統領を訪ねられてIMFとの取り決めについて会談をされました。しかし、インドネシア国内における社会経済情勢の混乱は、おさまるどころかますます厳しさを増して、ついに五月に入ると国民の不満が一気に爆発したわけであります。
 今回、インドネシアにおいて暴動に至るほどの事態になったのは、スハルト政権の腐敗があることは確かでありますけれども、他方、IMFの支援が多民族国家というインドネシアの国情やまた今日に至る歴史的な経緯を無視して、いわば先進国の目から見た改革を一方的に押しつけているからではないか。公共料金の引き上げ等、その負担を庶民に大きく課したという点が問題ではなかったのか。複雑な民族関係やそれから宗教的な事情など、文化や歴史を抱えているアジア諸国の実情に合わなかったのではないだろうか。そのようなアジアの国々のことを最もよく知っており、またアメリカに次ぐ出資国であります日本が、なぜIMFに対してもっと弾力的な改革を行うべきであるということを忠告できなかったのかということを考えざるを得ないわけです。
 そこで、総理に、今後日本がIMFとアジア諸国との間で果たす役割というのは非常に大きくなっていると思うわけですけれども、それにつきましての御見解を伺いたいと思います。
#124
○国務大臣(橋本龍太郎君) IMFが一連のこのアジア通貨危機の中におきましてそれぞれの国と合意をしまとめてまいりましたプログラム、これには御承知のように韓国、タイ、そしてインドネシア、三つの国が対象になるわけでありますけれども、私は、各国の直面しております経済困難あるいは経済情勢の違いというものに配慮しながら、IMFとして問題点を提起し、それぞれの国の政府あるいは関係者との間で論議をしまとめてきたプログラムだったと思っております。
 その上で、我が国自身も、そのプログラムの策定やレビューを行う理事会などの場所におきまして、プログラムがそれぞれの国の経済情勢に十分配慮されたものになるように努力をしてまいったつもりでございます。そしてその上で、タイ、インドネシアとIMFとの間でより実態に合うような修正と申しましょうか、調整が行われてまいりました。
 私は何もインドネシア政府をかばうつもりはございません、またIMFをかばうつもりもありませんけれども、IMFが求めたのは補助金の削減だったわけであります。その補助金の削減の結果、一気にそれが物価にはね返った、これは事実本当にそういう問題がございました。そして、それが民衆の反発を呼んだことも議員の御指摘のとおりであります。
 同時に、その補助金をそれでは本当に続けることがインドネシア政府にできただろうか、またそういう無理な運営はどれくらい続いただろうかということを考えますときに、IMFのプログラム、私自身も弾力性を求め、また多数の島から構成されているインドネシアの場合に、例えば地理的に一つの地域であれば人の肩で荷物を運ぶこともできますけれども、船または飛行機を使わなければ必要なものは届かないというその特性をもっと考えるべきだ、あるいは社会的弱者に配慮していくべきだというようなIMFへの日本としての忠告と申しましょうかインドネシア側に妥協を求めると同時に、IMF側にもそうした努力をしてきたことは申し上げておきたいと存じます。
#125
○清水澄子君 アジア各国が非常にIMFの援助を受けるわけですから、日本はその中での役割をぜひ今後もひとつ続けていただきたいと思います。
 次に、これは厚生大臣にお伺いをいたします。
 今回、総合経済対策が策定されましたが、世間の受けとめ方は、これでは今後ますます増税が見込まれるのではないか、また医療や介護、年金、子育てなど、社会保障の将来に不安があるという受けとめ方であります。こういうことでは、幾ら減税をしても消費には図らず貯蓄に回ってしまって、その効果というのは非常に限定をされてしまうと思うのです。
 消費を刺激して景気を回復していくためには、当然むだな歳出を削減する、それから財政赤字削減の展望を示すということは、これは引き続き大切なことでありますが、もう一つは、社会保障制度への信頼をどう高めていくのか、国民の不安というものを解消していく、そして安心できる仕組みというものを示すことが非常に今私は重要なことだと思っているわけです。
 そこで、私は去る五月十三日の本会議におきましても福祉への投資の経済効果について取り上げましたが、茨城県では県内の福祉整備がもたらす経済波及効果を調査しております。
 それによりますと、特別養護老人ホーム建設などの総投資額は一九九六年度から四年間に千二百二十八億円投資しなければならないと。それに対して、その波及効果は千八百六十二億円に上って、それは関連産業も含めて新たに一万二千二百七十人の雇用が生まれるという数字を出しておるわけです。さらにそれは市町村への波及効果も大きくて、市町村の純生産額を二・三%引き上げる、そして従業員数を一%引き上げて、その結果市町村の税収増が期待できると、こういうふうな計算をしているわけです。
 一方、同じ金額を建設部門に投資した場合に、その波及効果は金額で千八百二十七億円なんですね。そして、新規雇用は八千二百八十人にとどまっておる。それで、福祉への投資というのは地域内でその効果が非常に発生しやすい上に、サービス産業への波及効果が比較的高いと結論を出しているわけです。
 さらに、これは茨城ではなくて新ゴールドプランで、例えば九兆円の資金が投入されれば二十九兆九千三百億円の経済効果が生まれるという試算もあります。そして、それらは単なる投資というのじゃなくて、それは生産誘発効果があって、公共事業と遜色がない、付加価値誘発額ではむしろ公共事業を上回っているという試算結果もあるわけです。
 特に、この福祉サービスというのは対人サービスですから、その需要はすべて内需でありますし、消費であるわけです。ですから、冷え込んだ消費への刺激策としても大変効果があって、さらにそれらは安心の基盤づくりになっていると思うわけです。ですから、私は、福祉というものを今までの古典的な弱者対策という意味で理解をしているとか、給付が消費にだけ回っているというふうな見方とか経済にとっては福祉はお荷物だというようなそういう認識を今私たちは改める必要があるんじゃないだろうか、このように考えます。
 そこで、小泉厚生大臣、このような推計結果を御存じでしょうか、そしてまた、そのような結果についてどのような感想や展望をお持ちでしょうか。
#126
○国務大臣(小泉純一郎君) 福祉の投資が雇用の面においても消費の面においてもいろんな付加価値を生み出す、あるいはさらに福祉の投資が別の投資を呼ぶという論文あるいは研究が各方面においてなされているということは承知しております。また、その内容の概要についても聞いております。
 介護基盤整備なんかを見ますと確かにその面が強いですね。雇用面において、これから福祉関係のホームヘルパーとか訪問看護、あるいは民間の事業者にもこの介護サービスに参入してきてもらうということで、農協にしても生協にしてもむしろ意欲的にその投資を始めている、人材教育を始めている。今御指摘のように、確かに福祉が今まで考えられなかったような新たな投資なり需要を呼ぶという面がはっきり出てきているんじゃないかなと思っております。
#127
○清水澄子君 私は、福祉に限ればいいというわけではなくて、これからもさまざまな社会資本を整備する必要があることは認めております。しかし、従来型の社会資本整備をこのまま続けていけばいいのかというと、私はそうではないと思うわけです。
 少子・高齢社会に対応した福祉への投資こそが、今、私どもはどういうことをやるべきかということをやはり研究し、それを具体的な政策にする必要性が非常に求められていると思うわけですし、それがさらに経済的にも大きな効果があるということが明らかになっている段階では、結局、福祉の経済的役割というのは非常にこれからも高まっていくと思うわけです。このような観点から、財革法改正案によって平成十一年度の社会保障関係費のキャップが外されることになった点を私は評価するわけです。
 しかし、これを給付の増加に対応するためという議論だけで終わらせてはならないと思います。肝心なのは、将来確実に増大する福祉需要に対して的確な供給をどのように確保していくのか、そのための投資のあり方とか、そういうことをやはりこの構造改革という中でもっともっと究明されるべきだと思います。
 今般の補正予算にも新ゴールドプランの前倒しが盛り込まれているわけですけれども、さらに福祉への投資を充実させていくということ、それらをやっぱり景気対策とあわせて、今度、社会保障を福祉中心の社会構造に転換させるというチャンスにすべきではないかと私は思いますが、厚生大臣、いかがでしょうか。
#128
○国務大臣(小泉純一郎君) 今の財政構造といいますか国民負担率を見ても、このままの制度を維持していきますといずれ社会保障関係の費用がほかの費用を大きく上回って、もし将来五〇%を超えない国民負担率にしていこうというのならば、ほとんど福祉にとられて、公共事業も含めてほかに投資が回らなくなるおそれがあると思います。それほど高齢者の伸びの勢いというのはかなり大きいんです。だからこそ構造改革しなきゃいかぬと。
 今でこそ公共事業が地方と合わせると社会保障関係予算を上回っております。しかし、一般会計では既に公共投資よりも福祉投資の方が上回っておるんですから、今後地方で、福祉投資というのは、むしろ社会保障関係の投資を公共事業、今までの箱物の公共投資よりもより充実していこうという雰囲気、環境は強まっていくと思います。このままの制度を維持していくと、ほかの福祉関係以外の財政需要に対応できない。深刻な問題を抱えております。
 だからこそ、社会保障の制度改革も必要だ、構造改革も必要だ、各省庁予算も大事だ、バランスを見た投資が必要だということで、今構造改革に着手しないと大変なことになるということで、年金も医療も介護も制度改革、構造改革に取り組んでいるということを御理解いただけると思うのであります。
#129
○清水澄子君 総理は厚生行政に非常に造詣が深くていらっしゃいますが、同じだとおっしゃるのかもしれませんが、やはり総理御自身の御見解とか展望をお聞かせいただきたいと思います。
#130
○国務大臣(橋本龍太郎君) 先ほど厚生大臣からも御答弁を申し上げましたように、社会保障あるいは福祉関係のサービス提供、そうしたものをまとめた社会保障制度というものが安定した購買力を国民に与える、あるいは新たな産業や雇用を創出する、そういう効果があることは私自身も存じているつもりですし、そういういろんな推計あるいは論文等があることも承知をしております。
 同時に、人口構造の変化というものを頭に置いたとき、若い方々がどんどん減っていく人口構成の中で、将来ともに必要な給付を確保しながら制度の効率化あるいは合理化をどう進めていけば国民の協力を得ることができ、しかもセーフティーネットとしての役割を維持し続けられるような仕組みをつくれるだろう。そういう視点で考えるときに、社会保障構造改革の難しさ、同時にその必要性というものも考えなければなりません。
 私どもは、この非常に大きな変化の中で、先ほど厚生大臣小泉さんも言われた国民負担率というものを頭の中に常に置きながら、将来ともに維持し続けることのできる、そして必要な給付の確保のできる仕組みづくりをこれからも考えていきたいと思っております。
#131
○清水澄子君 そこで、今度は大蔵大臣にお伺いしたいわけですけれども、財政の構造改革を推進しつつ福祉重視型の構造に転換していくということは、これはこれからの日本では避けられない課題だと思うわけです。しかし、今いろいろ御答弁はあったわけですけれども、現実には社会保障のあるべき姿というのはまだ明確に示されておりません。そして、社会保障関係費をいかに削るか、そういう議論の方が先行してしまっている感があるわけです。片や、それで公共事業費等にむだがないかといえば、例えば道路特定財源の問題などがあるわけです。
 私は、この特定財源がこれまでの日本の発展に貢献したことは認めますが、今後の福祉社会への転換に当たって、この道路特定財源の一部をもう少し福祉社会構築のために活用していくことが必要ではないかと考えます。この揮発油税、ガソリン税、自動車関連税収というものを道路建設のためにだけ使うというのはやはり問題があるんではないでしょうか。
 昨年の十月十四日の本院の予算委員会におきましても、当時の三塚大蔵大臣は、財政構造改革特別措置法で、歳出を洗って適正なものにすると同時に、税収のあり方にも公平、中立、簡素なものを目指していっていますというふうに断言され、そして、この道路特定財源についても、検討を進めていかざるを得ないというふうに述べておられるわけですが、特にこの道路特定財源は余りにも多額で、年間二兆円を超えているわけです。ですから使い残しがあるほどあるという点すらも指摘されております。
 ここで、この財政構造改革のあるべき姿を展望したときには、こういった公共事業型の特定財源というものをやはり早く見直していくということは、私はこれは必要なことだと考えますが、大蔵大臣の検討は進んでいるのかどうかということをぜひお尋ねしたいと思います。
#132
○国務大臣(松永光君) 委員御指摘のように、道路特定財源、これは相当な額に上っておることは委員も御承知のことだと思いますが、この特定財源につきましては、去年の六月三日の閣議決定、「財政構造改革の推進について」、これを踏まえまして、その歳出面での取り扱いについて、狭い意味の道路じゃなくして、道路関係社会資本への活用を図ることによって運用の見直しを行うということになったところであります。
 少し説明させていただきますと、建設大臣の方が適当かもしれませんけれども、同じ道路でも、例えば高齢者が安心して歩行できる、高齢者が安心して買い物に行ったりすることのできる、そういう形での整備という面などに相当力を入れて、街路整備といいますか、そういったものもなされております。また、物流効率化といいますか、そういうような面にも十分配慮して、例えば踏切をなくして立体交差式にするとか、そういったいろいろ知恵を絞った形でむだのないような使い方がなされつつある、そういった方面は認めていただきたいものだというふうに思います。
#133
○清水澄子君 これをすべて福祉に回しなさいと言っていませんけれども、必要なところには道路関係でもそれは使用することだと思いますが、道路建設以外は使えない、こういう制度はやはり問題が残ってくると思います。
 そこで、総理にお伺いしたいわけですけれども、こういった問題に踏み込まないままでは財政の構造改革ということにはならないのではないかと思いますが、私は、不要とすべき特別会計を整理して、今後ますます必要となる福祉とか環境、そういう分野にこの財源を振り向けていくべきだと考えるわけです。
 ですから、総理、道路特定財源の見直しを初めこの関連制度、法律などの改正をどのように考えていらっしゃるか、そのことについての御所見をぜひお聞かせいただきたいと思います。
#134
○国務大臣(橋本龍太郎君) これは私が申し上げるまでもなく、特別会計という仕組み、それは国が特定の事業を行う場合などに一般会計と区分して経理をすることが合理的だと、そういう場合に法律によって設置をされるわけでありまして、これは特定の事業についての事業収益あるいは受益と負担の関係など、こうした点が明らかになるという利点があります。
 ただ、会計として独立している、そのためにほかの施策との調整が難しくなるといった問題、あるいは財政全体の一覧性が害されるのではないかそういった議論も従来からありました。そうしたことから、必要なものは当然認めていかなければなりませんけれども、全体的には抑制的に取り組んでいく、あるいは既存の特別会計についてもその必要性について不断の検討が必要であるということは、私は議員の御指摘を否定するものではありません。
 先ほど大蔵大臣が御答弁をしておりましたように、道路財源としての特会についても新たな工夫が凝らされた、そのような今答弁がございました。同時に、一般会計と同じように特別会計それぞれにつきましても歳出の抑制や見直しを図ってまいりました。
 個別のことに一々触れはいたしませんけれども、今その上で申し上げたいこと、それは議員がお述べになりましたような形で特別会計を整理する、そしてそれを財源として他の分野に転用する。これは一つ一つの特別会計が特定の財源を持っているか持っていないかにかかわらず、この厳しい財政事情のもとでそれぞれの設置の趣旨や目的に従って一生懸命適正な運営を図っている中では容易なことではないということを私は御理解いただきたいと思います。
 殊に、これは負担してくださる方々がその目的というものに対して負担をしてくださっている。それを他に転用するということは、私はそう軽々にお引き受けをしていいのかどうかというためらいも率直に言ってございます。
 むしろ、環境あるいは福祉の分野におきましてこれから先も大事なものをどういうふうに予算化していくか、これは当然のことながら我々が努力すべき分野でありますし、またそうしたものを考えていく、これは不断に必要なことでありますが、特定の特別会計を一般会計に転用する、あるいは特別会計を廃止する、それなりに慎重な検討が必要ではないだろうか、そのような感じを率直に今受けております。
#135
○清水澄子君 道路に絶対使ってほしいと思ってガソリン税を払っている人ばかりじゃないと思います。そういう法律になっているから、税ですから払っているというのが多いと思いますが、ぜひひとつ御検討いただきたいと思います。
 次に、現行の財政構造改革法では、当初予算での社会保障関係費の伸びについて、平成十年度で三千億円、そして十一年度、十二年度で二%以下に抑制するとされております。
 それで、改正案では十一年度に限って社会保障関係費のキャップを外すこととされているわけでありますけれども、そもそもこのキャップというのは何を根拠に策定されたのだろうか。これは前から私は疑問を持っているわけです。また、その財政構造の枠の中でどのような社会保障の構造改革を進めようと考えられたのか。その辺について、大蔵大臣にお願いいたします。
#136
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 当初の財政構造改革法におきまして社会保障関係費のキャップを二%としていたわけでございますが、その根拠ということでございます。
 これは、財政構造改革会議の「財政構造改革の推進方策」、昨年の六月三日に閣議決定されておりますが、その中で、集中改革期間中、社会保障関係費は、「対前年度伸率を高齢者数の増によるやむを得ない影響分以下に抑制する。」と、そういう表現になっております。
 この考え方を踏まえまして、九年度の社会保障関係費約十四・六兆円のうち、年金、老人医療費に対する国庫負担等のいわゆる高齢者関係予算額、これが約八・二兆円でございます。それから、これら高齢者関係予算の対象となる高齢者数が人口推計によれば十年には三・七%程度増加するということでございます。そういうことで、十年度の社会保障関係費の増加額の上限が三千億円程度。つまり、計算式で申し上げますと、八兆一千五百億、これが高齢者関係の予算でございますが、高齢者関係者の数が三・七%伸びるとこれが約三千億になる。それから、二%と申しますのは、社会保障関係費全体が十四兆五千億であったということで、十四兆五千億分の約三千億と、これが二%ということでございます。
#137
○清水澄子君 余り理解できないんですね。何かいろいろ説明されましたが、結局高齢者の人口増というんですか、高齢者数が人口推計によればふえていくという中で、大体二%という形で決められたんでしょうね。
 でも、それは非常に疑問なんですね。高齢者人口は社会保障の重要な要素ではあっても、それは私は絶対の基準ではないと思いますし、特に人口のみを見ても、全体の人口構造の変化とか就業構造の変化、その他さまざまな要素によって負担も給付も変動していくのであって、それが高齢者人口というとき、六十五歳以上の高齢者の人口はと、こういうふうに必ず入っていくんですが、そういう数字の割り出しては今後の社会保障とか福祉というのも、それこそさっき小泉大臣がこのままの制度ではというのは、私はそこをむしろ一度考え直すといいますか、六十五歳以上が必ずしもすべて社会的扶養をされる人口であるのかどうか。やはりそういう点でも、これだけ寿命が延びて元気な人、それから自立的に生きていきたいという人たちも多いですし、だからそういう中でのどういう社会保障、福祉に変えていくのかというふうなところをきちんと踏まえないと、高齢者人口という年齢でもって切り取ったその数字でこういう社会保障予算のキャップをはめたり外したりというのは私は非常に問題があるのではないかと思います。
 そして、高齢者人口というのは、結局一方で少子という問題があるわけですから、そちらの方はどうするのかという問題どこれは含めて考えないと、高齢者人口の割合だけでこういう決め方をするというのはやっぱり当然見直すべきではないか、このように私は考えますが、厚生大臣いかがですか。
#138
○国務大臣(小泉純一郎君) 今、御指摘の高齢者人口をどのように考えるかという視点で構造改革なり制度改革が始まっているんです。というのは、年金にしても、このままどんどん年金をもらう方がふえる。今の給付をそのままにしていくと、これは若い人の負担が大変な重いものになってしまう。当初、今の給付を維持するんだったらば、サラリーマン等の厚生年金は一七%程度の負担が、三〇%までに抑えようといっていたのが三四%になってしまう。これは企業と折半にしても負担が重過ぎるのじゃないか。三〇%を超えないのはもちろんだけれども、できればもっと低く保険料は抑えたいという若い世代の希望もあるのではないか。このまま放置していきますと、年金一つとっても、年金を受ける人が大体毎年百万人ふえる、しかも長生きの時代ですからもらう期間が長くなる、若い人は減っていく。年金一つとってもこういう構造です。
 そして、医療をとってもそうです。構造改革しない限り、大体高齢者の医療費というのは若い世代の五倍以上かかっています。これは今まで経済成長の伸びに関係ない。となれば、若い人も、病院に行かない人も、医者に診てもらわない人も今保険料を負担していただいている。二十代、三十代の所得というのは、平均をとってみると高齢者の所得と余り変わらない。保険ですから、病気にならない人も保険料を負担してもらわないと病気になった人は困るわけですけれども、それもやっぱり限度があるだろう。高齢者だから月千二十円だけでいいかという問題が出てきたわけです。
 それで、去年これを一回五百円にして四回まで、二千円ということに変えたんだけれども、これも今の現状を維持すると貴重な医療資源がむだになるんじゃないか。負担できる人にも負担してもらわないで済むというような面があったのじゃないか、必要のない薬ももらっていたんじゃないのか、必要ない検査もしていたんじゃないのか、必要ない治療もしていたんじゃないかという問題が出てきたからこそ、薬価基準制度を抜本的に見直そう、診療報酬体系も見直しましょうということで本格的な制度改革、構造改革が始まったんです。
 それは当然高齢者がふえてきたという要素もありますし、これからの少子化、そしてお互いが、高齢者だけが給付を受ける立場じゃない、そのいい例が介護保険であります。高齢者にも保険料を負担していただきましょう、サービスを受けるんだったら一割負担していただきましょうと。既に本格的な構造改革、制度改革が始まっているわけです。それは、お互いがこの福祉制度、社会保障制度というのは支え、支えられ、助け合っていく、協調と連帯の精神で安定的に運営してこうということで、既に本格的な改革が始まっているということはもう委員もはっきりよくおわかりだと思いますけれども、今後ともこの改革の動きをとめてはならないと思います。
#139
○清水澄子君 私は、今日までの全体の社会保障の体系とか体制というのを根本的に見直す時期に来ていると、このことについては同感ですし、もっと根本的に見直していくべきだと思っているわけです。
 しかし、そこに最初にキャップありき、その枠の中でという社会保障制度のあり方では問題が起きるのではないかということを申し上げております。特に、財政のあり方というのは、そういうふうに何を今どう改めるかということが先にあって、それに対してこういう財政の支出になるのだ、負担になるのだということが必要なわけでございますし、それから医療制度でもやはり抜本改正が先です。
 そして同時に、女性の年金のあり方を含めた公的年金制度がこれでいいのか。女性の場合も、きょうは私は問題を申し上げませんけれども、すべて家庭の女性は全部社会的扶養者になるというのはこれもまた問題でありまして、やっぱり働ける人は働く、そのために働けるための支える条件というものが政策として必要でしょうし、そういう人たちが税金も納める、そして保険料も納める、年金の保険も納めるという納める側に立つということも、私は女性の場合ももっとふやせるでしょうし、それから高齢の人でも定年後だって働ける人は働いて年金を納める側にもなるという方だって、今度制度を変えていく中でみんながそれを生きがいを持って支え合う、そういう制度がやれていくと思うんです。
 そういうことを先にやるべきだと思いますので、厚生大臣、勇気が要るかもしれませんけれども、平成十二年度においてもキャップにとらわれることなく予算編成が行われるようにすべきだと考えますが、いかがですか。
#140
○国務大臣(小泉純一郎君) これは、予算をふやしてやるというのは一番やりたい、楽なんです。いかに予算を減らすか削減するかというのにどれほど苦労が要るか。みんな総論は予算、歳出は削減しなさいと言っているんだけれども、いざやってみたら、委員会でも削減したところばかりじゃないですか、批判が出て不満が出ているのは。とんでもないと。あの歳出削減しろ、補助金なんか全部廃止しろといった議論はどこへ行っちゃったのか。補助金を廃止しろと言ったところが、一〇%補助金をカットしたらみんな文句が出ている。
 これほど、歳出削減こそ本当に勇気が要ると思うんです。歳出をふやせという改革だったら、こんな楽な改革はないですよ。しかし、このような財政状況、幾らふやせといったって、福祉だけふやしていたらほかの省庁が文句を言いますよ。それはやっぱり予算の現実の問題を考えて、お互いの調整をしながらバランスを見ながら、国民全体の均衡ある負担はどの程度か、給付はどの程度かということを考えてやらないと、財源は有限、要望は無限、これをどう調整していくか。お互いぜひとも知恵を出していただきたいと思います。
#141
○清水澄子君 どうもありがとうございました。(拍手)
#142
○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。
 当委員会で財政構造改革法案の審議をしたのはわずか六カ月前、半年前でありました。十一月十日の総括質疑で私もこの場で質問をいたしまして、この法案の問題について、この法律の枠を超えた予算を出さなきゃいけないときにどうするのか、改正なんじゃないかということを総理初め閣僚の皆さんと議論をさせていただきました。
 今回、総理がその法律の基本は変えないということで必要最低限とおっしゃっていますが、景気対策上改正せざるを得なくなったというのがこの経過だったと思います。
 昨年の審議の中でも議論をさせていただいたんですが、そして多くの委員からも議論がありましたけれども、結局、財政構造改革をやらなかったらば大変なことになるんだということを総理初め政府側はおっしゃいました。そして、そういう改革に伴う痛みについては耐えていただきたいんだということをおっしゃいましたが、相変わらず今回の改正に当たってもその立場は変わっていらっしゃらないというふうに私は質疑を伺いながら感じているところであります。
 あのときも問題になりましたが、改革の先にどういう豊かで活力ある社会があるのか。安心して豊かな福祉社会ということを言われるわけですけれども、それをつくっていけるのか。経済成長ができるかを示し得ないで、国民が感じるのは痛みということになりますと、そういうやり方で財政健全化を進めようとしたために、九兆円負担と相まって経済成長もとまって、税収も落ち込んで、早くも行き詰まったという中での流れなのかなということを私なりに感じているところであります。
 総理はこの改正をめぐって二〇〇五年ということに相当こだわっていらっしゃるというふうに思うんですけれども、今改正を必要最小限とおっしゃいますが、それを提案されるならば、そのことで今度こそ景気も上向いて、そして国民が安心して暮らせる、そういう日本になっていくという保証はどこにあるとお考えなのか、国民に納得いく説明をしていただきたいと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。
#143
○国務大臣(橋本龍太郎君) 二年間延長をしたが、それで大丈夫かというお尋ねであります。その二年という時間の延長というものは、弾力的な運営を考えていかなければならない今回の事態の中で、中期的に安定した財政運営を示す姿勢が我が国の経済の現状を踏まえれば必要だ、そういう判断から出してきたものであります。
 その場合にも、今までよく御見からちょうだいをいたしました御意見の中に、要調整額が残るがというお話があり、それは赤字国債で埋めるのかといった御議論に何回か発展をいたしました。今そこまでのお問いかけはありませんけれども、いずれにしても要調整額というものを処理していくのは大変な努力が要ることでありますから、私どもはその努力をしていこうと考えております。
#144
○笠井亮君 今、二〇〇五年までやってどういう展望が、社会が開けるのかということを伺ったんですけれども、それについてはお答えいただけなかったように思うんです。しかし、ただいま総理がお問いかけがなかったですがということでお答えいただきました。ではこれで本当に大丈夫なのかということについて、まさに総理が言われたことに関連して具体的に私は伺っていきたいと思うんです。
 まず、今回の改正で言われております目標期限の問題であります。
 今、二年間延長して大丈夫かということで、この間、御見からもということがありましたが、もともと財政健全化のためには二〇〇三年までに財政赤字を対GDP比三%以下、特例公債を毎年度縮減してゼロにするという目標をやらないとだめだというのがこの法律の至上命令であり、財革法はまさにそのためにつくったというのが政府の説明だったと思うんです。ところが、それが早くもできなくなって、目標年次を二年間延ばすということになったわけであります。
 これは事実確認ですので大蔵省に伺います。先日、五月に「財政事情の試算」というのを改めて出されましたが、この試算というのは昨年秋の財革法審議のときからしますと何回目の改訂版ということになりますか。
#145
○政府委員(涌井洋治君) お答えいたします。
 昨年秋のこの法案審議の段階におきまして、平成九年度予算を前提とした試算をお示ししました。それから、平成十年度予算の成立に伴い、平成十年度予算を前提とした試算をお示ししているところでございます。それから、今回この法案の御審議をお願いするに当たり、あわせて補正予算も提出ということでございますので、補正予算も含めたところの試算を示したところでございます。
#146
○笠井亮君 昨年から三回目ということであります。
 これまでこの試算というのは大体年一回、予算審議の際に大蔵省から出していたものでありますけれども、半年間に三回というのはそれ自体が極めて異例なことを示していると私は思います。どうしてこんなことになったんですか。
#147
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 昨年秋の試算はあくまでもその法案の御審議のための、その法案で財政健全化目標を示しておりますのでそれを前提とした機械的計算、これは昨年の秋の段階は平成九年度当初予算を前提とした計算でございます。
 それから、平成十年度予算の編成に伴いましてその土台が変わるものですから、これは御承知のとおり、毎年度毎年度、当初予算の審議の段階で御提出しているところでございます。
 それから、今回はこの法案の審議をするに当たり、その材料として改めて提出しているところでございます。
#148
○笠井亮君 要するに、見通しが甘くて狂った、こういうことでありまして、そのはっきりした証拠だと思うんです。それをはっきり認めていただきたいと思うんです。
 半年間にいろんな変化があったとは言われながらも三回ですから、これで二〇〇五年の最終年限までにどうなるのかというのは私は非常に心配なんですけれども、一体あと何回つくり直したらいいのか。このペースなら四十五回ぐらいになるのかなと。つくられる方は大変に御苦労さまでありますけれども、そういうことになる。
 しかも、このとおりになるかという疑問は衆議院審議でも出されておりましたが、今回の試算では二年間延長をして目標を達成するために公債金収入を毎年度一兆円ずつ減らさないといけないということで、十一年度についてはそれに加えて特別減税のための特例公債発行分を二兆円減らすということになると思うんですけれども、大蔵大臣、二〇〇五年に赤字国債発行をゼロにするには十一年度以降一般歳出の伸びをゼロに抑えたとしても最大四・七兆円の要調整額、つまり財源不足が生じる、そういうことをこれは示しているんですね、そうですね。
#149
○国務大臣(松永光君) 要調整額が出るということを示しておるわけであります。
 具体的に新しい年度の予算を編成する場合には、それを念頭に置きながら歳出について徹底した見直しをして、むだを省きあるいはコストの縮減等々あらゆる創意工夫を凝らして予算の編成をする、こういう大変な努力をしていかなきゃならぬ、こういうことでございます。
#150
○笠井亮君 二年間延長しても大変な努力と言われるほどぎりぎりのへ余裕というよりは大変なそういうやりくりが求められている、そういうことで理解してよろしいわけですね。
#151
○国務大臣(松永光君) 国民の幸せのためにそういう努力をしていくのが政治家の務めであり、特に政府の務めである、こう思っております。
#152
○笠井亮君 半年前にも同じような御答弁を、当時は松永大蔵大臣ではありませんが、前大臣初め閣僚の皆さんから伺ったわけでありますけれども、要するに必ずやれるということではないんですね、これは。
#153
○国務大臣(松永光君) 必ずやらなきゃならないんです。それを申し上げておるわけです。
#154
○笠井亮君 やらなきゃならないと。そうしますと、幾つか問題があるんですけれども、この試算の大前提の一つが歳入の問題であり、なかんずく税収だと思うんです。ところが、それ自体この試算の前提となる問題でありますけれども、どこに根拠があるのかというふうに私は拝見して思わざるを得ないと思うんです。
 例えば平成九年度の補正後の税収見込みというのは五十六兆二千億円ということになっておりますけれども、これは大蔵省に伺いますが、今確定している分、ことしの三月までの税収というのは幾らになっておりますか。
#155
○政府委員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。
 九年度税収でございますが、三月末税収まで判明しているところでございます。三月末の累計で申し上げますと四十一兆五百九十五億円、こういうことになっております。
#156
○笠井亮君 つまり、この試算で言われている五十六兆二千億円ということをやり切るためには、四、五月で十五兆円なくちゃだめだ、そういうことになりますね。
#157
○政府委員(尾原榮夫君) 三月末までの税収は進捗割合七三%でございまして、三割残っているわけでございます。
#158
○笠井亮君 三割、要するに十五兆円ということになるわけです。これは今の景気では大変なことであります。ちなみに、消費税率アップの駆け込み需要があった八年度でさえ、その辺を反映しての四、五月の税収というのは十二兆円だったと思うんです。昨年度は石油ショック以来二十三年ぶりにマイナス成長になるということさえ言われている。税収が昨年同時期を上回って十五兆円確保できるという保証はどこにあるんですか。
#159
○政府委員(尾原榮夫君) 三月末で対前年同月比で比べてみますと約三・四%となっておりまして、補正後予算の八%を下回っておりますが、この要因といたしまして源泉所得税について二兆円の特別減税がございますので、三月支給分の給与についての特別減税の影響がございます。その一方、消費税の引き上げによる増収効果が三月決算法人を中心に集中的にあらわれてくると見込まれると考えております。したがいまして、今の税収累計の前年比をもって全体を判断することはいかがであろうかというふうに考えているわけでございます。
 いずれにいたしましても、今お話がございましたように、四月には確定申告、あるいは五月には三月決算法人に係ります法人税収、消費税等々三割の税収があるわけでございまして、まさに今後どのようにあらわれてくるのか十分注視していく必要がある、こういうふうに考えております。
#160
○笠井亮君 大変に楽観的だと思うんですね。去年四、五月が十二兆ということで、ことしは十五兆円やらなきゃいけないということになりますと、景気は悪くなっているわけですから大変なことだと思うんですよ。三月期決算を注視していくと言われました。しかし、東証一部上場の企業の三月期決算が四年ぶりで経常減益の見通しとなっている。これはもう大変な問題としてきのう、おとといあたり大きく報道されているところであります。
 和光経済研究所の集計した結果を見ますと、前年同月と比較した経常利益の伸び率はマイナス一%、一年前の伸び率の二〇・〇一%に比べて大きく落ち込んだと。そして、今後間もなく出る業績悪化の著しい自動車や電機メーカーを加えると、経常ベースで五%程度の減益になると予測されていると思うんですよ。
 この三月期決算の企業というのは五月に法人税を納めるわけですね。厳しい決算を反映される。法人税の三分の一が五月に納税される。昨年度で見ると、五月の税収の七割が法人税だったはずであります。四、五月期の納税額がその前の年が十二兆円のうち半分が法人税ということでありまして、法人税だけじゃなくて、消費税だって厳しいということが今度の場合については言えると思うんですよ。
 つまり、注視していくと幾ら言われても、到底この十五兆という見通し、その最初さえできない。大きな見込み違いか、さもなければ言葉は悪いですけれどもごまかしているのかという、この試算の前提になっているんじゃないかと言わざるを得ないと思うんですけれども、どうですか。
#161
○政府委員(尾原榮夫君) ただいま、最近発表されております民間調査機関の企業収益の見通しについてのお話がございました。
 法人税収でございますけれども、これらの機関の発表なさっておりますのが経常利益ベースで発表されているものでございます。したがいまして、必ずしも法人税の課税ベースと一致するものではないというふうには考えております。
 したがいまして、今この発表されている数字がそのまま税収に反映してくるわけではないというふうに考えているわけでございますが、一般的に申し上げまして、税収の見通しをやったときのいろんな指標、悪化しているものもございますので、そういう点も勘案しながら、今後の四月、五月、税収がどう出てくるか、よく注視してまいりたい、こう考えているわけでございます。
#162
○笠井亮君 幾ら注視して期待をされても、経済はそうなっていないんですから、これはそもそも試算の前提自体がもう最初からできない相談になっているんじゃないかと言わざるを得ないと思うんですよ。
 しかも、税収そのものを見ますと、バブルの時期というかその最後のころになりますか、九〇年、平成二年のときでさえ税収は六十兆円程度でそれ自体が過去最高だった、一年間の税収でいうと。バブル崩壊後、税収自体は減少しまして、私も表を拝見して改めて感じたんですけれども、九〇年代の後半になりますと五十一兆円とか五十二兆円ということで停滞しているわけです。ところが、この試算を拝見しますと、順調に税収が伸びていくということで、平成十七年度、二〇〇五年度、この最終年度については六十六兆四千億から七十五兆八千億に税収がなるというふうに見込んでいる。
 大蔵大臣、これは達成できるという見通しをお持ちなんですか。
#163
○政府委員(尾原榮夫君) 平成十七年までの税収でございますが、これは御承知のように、財政事情の試算ということで、名目成長率に弾性値一・一を掛けてございまして、定性的な、機械的な試算を行ったわけでございます。そのような性質の数字でございます。
#164
○笠井亮君 この財革法改正で二年延長するという裏づけとしてこの試算を出しているはずで、機械的にやりましたなんという話では、経済は生きているということをもうさんざん政府は言われているわけですから、そんなことじゃとてもこれは裏づけにならないわけですよ。努力目標にすぎないというふうに言われるのであれば、これはまさに政治的に無責任と言わざるを得ない。
 伺いたいんですけれども、税収の落ち込んだ不況期に財政収支を改善した例というのは過去にも外国にもないということが専門家からも指摘されておりますけれども、不況の時期に財政収支を改善した例というのがこれまで内外にありますか。
#165
○政府委員(涌井洋治君) 突然の御質問で、手元に資料がありませんので、後ほど資料を提出いたします。
#166
○笠井亮君 私はこのテーマで質問することはもう通告しているわけであります、テーマというのはこの問題をめぐってですよ。とっさに出ないということは恐らく念頭にないんでしょうね。
 特別減税の財源も来年分の二兆円がカウントされていないし、さらに今後検討するとされている恒久減税の問題、あるいは法人税率の引き下げなど、少なくとも短期的には財政赤字拡大要因がやっぱりあると思うんですけれども、それらもこの法案の改正の前提になる、前提といいますか裏づけになるようなこの試算の中には考慮されていない。その上、昨日来議論がありますけれども、不良債権の処理をめぐっての財源問題というのも出てくるだろう。そうなりますと、さらに財政を圧迫するという要因が生まれることは明白だと思うんです。試算の前提になる成長率というのもあります、一・七五から三・五。これ自体どうなるか。いろいろ議論を聞いてもあやふやだと。
 要するに、この試算というのは、税収の見込みも無理をして、財革法の破綻が明らかにならないように苦し紛れに数字を置いただけで、とてもできないと本音では思っていらっしゃるんじゃないですか。ちょっと意地悪な言い方になりますが、いかがですか。
#167
○政府委員(涌井洋治君) 先ほど大蔵大臣から御答弁がありましたように、この財政健全化は現在の我が国経済、財政が置かれた中では絶対行わなければならないということでございますので、いろいろ歳出歳入、特に歳出削減で厳しいキャップをかけているわけでございます。それに向けて全力を挙げて進んでいかなきゃならないと考えております。
#168
○笠井亮君 やらなくてはならないということを繰り返されます。しかし、一方では財政赤字拡大要因がある。先ほど宮澤元総理の発言の問題も出されていたと思うんですけれども、大蔵大臣は先ほどもやらなくてはならないと言われました。大臣は衆議院、参議院の審議の中で、この法案については改正をお願いしている以上やらなきゃいけないことだし、石にかじりついても達成するということを繰り返し言われております。そして、再延長するんじゃないかということについても、そういうことで可能性を否定されるということを答弁されているわけですけれども、やらなければいけない、一体どう石にかじりついたら達成できるんですか。
#169
○国務大臣(松永光君) 基本的に言えば、歳出のすべてについて聖域なく徹底した見直しをして、むだを省いて経費の縮減、そして場合によっては合理化、重点化を図る、そういった形での歳出の徹底した見直しが最も大事だろうと思います。同時にまた、経済政策の面では、これはよく経済企画庁長官の言う言葉でありますけれども、規制緩和あるいは経済構造改革を進めて経済の活性化を図っていく、それを通じて歳入を確保する、その両面からの最大限の努力をしていくことが目標達成のために大事なことであろう、こういうふうに思います。
 なお、先ほど主計局長の方に資料がなかったようでありますが、私の手元に資料がありました。それは何かというと、景気が悪く税収増がないのにもかかわらず財政再建が実現した例が歴史上一つでもあるかという御質問でした。すぐ答弁できなかったので局長は怒られましたけれども、私の手元にあった。
 それはIMFのワールド・エコノミック・アウトルック、九六年五月においては、デンマークやアイルランドを初めとする過去の経験からすると財政健全化と経済状況の改善を同時になし遂げることは可能とされていると。デンマークは一九八三年から一九八六年、アイルランドは一九八七年から一九八九年の財政健全化期間においてそれぞれ歳出削減を中心とした財政収支の健全化を行い、必ずしも大幅な収入の増加を伴うことなく財政健全化と順調な経済成長とを達成していると承知している、こういう資料がございます。
#170
○笠井亮君 今のは私もぜひ具体的な資料をいただいて研究してみたいと思うんです。ただ、総理が先ほども、今回の改正をめぐってというか、この財革法の考え方をめぐって、二〇〇五年という議論の中で、平成七年のG10の報告書の問題を取り上げられました。私も大蔵省の国際金融局の資料をいただいて見たんですけれども、その中で言われている問題の一つで、「経済が外的ショックを受けていない時期には、財政政策は債務GDP比率を低下させることをめざすべきである。」という指摘もされているわけでありまして、私はこの問題もあわせてよく研究をしてみたいと思います。
 そして、いずれにしても石にかじりついてということで言われましたが、それに対するお答えがありましたけれども、具体的にどうするのかという、そういうものが結局は聞かれなかったんじゃないかと思うんですよ。聖域なく見直しをすると言われても、まさかこの間成立した予算の中にむだがあるとは大臣からおっしゃらないと思うんですが、むだをなくしということは逆に言えばむだがあるということなのか、そういうことも出てまいります。
#171
○国務大臣(松永光君) 来年の予算の話なんです。
#172
○笠井亮君 いや、今の財政構造の中であるということは、それが反映したのが今度の予算ですから。そういう問題があります。
 それから、財政・経済構造の改革を今後も進めていくと。しかし、これからやるのでどうなるかわからないわけでありまして、にもかかわらず絶対にこいつだけはやれるんだ、やるんだという決意だけ幾ら示されても、国民は全然納得できないんじゃないかというように思うんです。改正を提起する以上、確かな見通しを持って考えて出すのが当たり前だし、どういうことを考えているのか、より具体的に、そこはこういう考えでこういうふうにするからこうなってできるんだと、石にかじりついてというのはただ精神条項じゃないんだということをはっきり言っていただきたい。そして、ではそれが達成できなかったらだれが責任とるんですか。
#173
○国務大臣(松永光君) 例えば今参議院の財政・金融委員会で御審議を願っている金融改革四法、あれを成立させていただければいろいろな面での規制緩和、少なくとも金融証券取引等に関してあの業界は相当活性化してまいります。これは一例でございますけれども、その他、経済企画庁を中心にして規制緩和の計画を立てて実行に移しつつあります。
 そういった構造改革、規制緩和、それによる経済効果というものもぜひ達成させなきゃいかぬし、達成させたならば税収の増は見込める。歳入増と、それから先ほど申し上げました十一年度以降の予算についての徹底した歳出の見直し、縮減合理化、これを進めていって、そして目標年次にその目標を達成できるようにあらゆる努力をしてまいりますということを申し上げる次第でございます。
#174
○笠井亮君 半年前もやはりあらゆる努力をすると言われました。それは政府ですよ、政府が言われたんです。経済構造改革も含めてさまざまな改革をすると効果が出てくると。実際は半年やって効果が出てきていないわけですよ、まだこれからと言われるかもしれませんが。
 しかも、先ほど私が提起した試算の問題というのは、既に三月の時点で、要するに法人税についてもその前提になるものが固まっている問題について、十五兆もいく見通しがないじゃないかと言っているのに対してそこがもう最初から狂っているじゃないかという話をしているわけで、今後の見込みで何とかなりますというだけの話では、これはきちっと納得がいくような話になりません。明確に達成の根拠も示せないということでありますと、これは逆に破綻を認めたということになるわけです。
 大体、過去三十年以上にわたって、むだと言われましたけれども、放漫財政のツケをつくってきたわけで、これを短期間で解消しようとすること自体が無理な理屈じゃないか。二〇〇五年までに赤字国債をゼロにしようとすることよりも、むしろ弊害の方が大きいということをこの面では感じるわけであります。
 もう一つ、弾力条項の問題に関連して伺っておきたいと思います。
 去年の秋、財革法という政府の予算編成を制約する法律を政府みずからが提出した理由について、政府はこう強調されてきました。内閣がこの間みずからの判断のみによって自由に法定された方針等を変更して予算を作成することは許されなくなるという点にこの法律案の大きな意義があると繰り返し聞いたわけであります。総理、これは今も基本的に考え方は変わらないわけですね。
#175
○国務大臣(橋本龍太郎君) でありますから、財革法の一部を修正し、国会の御了承を得ようとして御審議を願っております。
#176
○笠井亮君 ところが、そういうふうに強調されているんですけれども、今回の改正では二つの条件はつけております。要するに、改正の中身というのは、内閣みずからの判断によって赤字国債を増発できる予算を作成することが許されるようになる。理由はどうであっても変えたことをお認めになりますね、基本的な立場は。
#177
○国務大臣(橋本龍太郎君) 大変失礼でありますが、ただいま議員のおっしゃる意味がもう一つのみ込めません。恐縮ですが、もう一度繰り返していただけますか。
#178
○笠井亮君 昨年議論をしたときに、政府の説明は、内閣がこの間みずからの判断のみによって自由に法定された方針等を変更して予算を作成することは許されなくなるという点にこの法律案の大きな意義があるというふうに言われてきたわけであります。説明されてきた。そして、それは変わっていないとおっしゃったんですが、今度の改正の中身というのは、内閣みずからの判断によって赤字国債を増発できると。いろいろ条件をつけていますよ。しかし、そういう予算を作成することが許されるようになるということなんじゃないんですか。だから、変わっているんじゃないですかということですよ。
#179
○国務大臣(橋本龍太郎君) 大変難しい理屈をおつけになられますけれども、要するに今御審議をいただいております修正案を国会がお認めをいただければ、その修正された範囲内において政府は行動するということであります。
#180
○笠井亮君 政府自身が説明してきた財革法の根本の構造、これが明らかに変わるものだと思うんですよ。
 では、弾力化の条項を聞いていきましょう。
 条件の一つに「経済活動の著しい停滞」というのがあります。法案では「国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の政令で定める状況」、具体的には三項目を想定しているということでありますけれども、ではなぜこれを法律に書き込まずに政令で定めるんでしょうか大臣。
#181
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 通常、その他の法律においてもそうでございますけれども、基本的な内容は法律で定め、あと具体的な実施基準は政令で定めるということはよくあることでございます。
 今回のこの法律におきまして、「経済活動の著しい停滞」、それにつきましては法案におきまして「国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等」という基準が示されておるわけでございます。
 その具体的内容につきましては、御答弁申し上げているとおり、これは財政構造改革会議で決定し明らかにしているところでございまして、GDPの四半期ごとの成長率の対前期比ということで非常に技術的な規定でございますので、この部分については政令の規定になじむという考え方でこのような扱いにしたわけでございます。
#182
○笠井亮君 法律事項にしたらまずいんですか。
#183
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 この基準の内容というのは極めて技術的なものでございますから、むしろ政令事項の方が適当ではないかと考えたわけでございます。
#184
○笠井亮君 政令というのは政府の判断でいつでも変更できる、そういう点では恣意的判断の余地がある、私はこういうものだと思うんです。法律に縛られずに政府が自由に判断できるようにしたのか。こんな重要な法律要件を欠いて、政府に適用要件と判断権をゆだねるような本法案というのは、これは欠陥があるんじゃないかというように思うんですが、いかがでしょうか。
#185
○政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。
 この基準に該当した場合に直ちに特例債について例外規定が働くということではないのでございまして、まずこの要件に該当した場合にトリガーが発動される。つまり、赤字国債を減らさない、要するに一つのその時点においてしかるべき対策を打つ、その場合に赤字国債がふえるような対策を打つ必要があるかどうかというような検討を行う基準でございまして、その上で政府として必要がないとした場合にはこの規定は働かない。とりあえず予算編成権を持つ政府としてそういう対策を打つべきだと判断した場合には補正予算を組んで、その上でかつ最終的には国会の御了解をいただくということでございます。
#186
○笠井亮君 国民に痛みを求めてやるような財政構造改革で、絶対にこれはやらなきゃいけないということで二〇〇三年までと言ってきたわけです。それを二年延長すると。
 今までこの法律の意味というのは、内閣をきちっと縛って、内閣の勝手な判断でやれないようにするんだということを繰り返し言ってきたのに、今度は赤字国債を発行できるように、増発できるようにすること自体を内閣の判断でやれるようにして、それで政令だと。こんなことで本当に国の財政再建を真剣にやる、そして国民にそのための痛みを甘受してくれと言うことができるのかということでありまして、そんなのは説明になっていませんよ。しかも、政府が判断すると。適切に判断できるかという問題があります。
 経企庁は昨今の景気動向について判定する景気基準日付検討会議を近く開いて、昨年五月が景気の後退し始めた時期だということを宣言することも含めて検討しているということを言われました。経企庁長官に伺うわけではありませんので結構ですが、一年たっていつから落ちたのかを判断するみたいな話です。しかも、政府は昨年の七−九は上がったので財政構造改革を推進した、しかし十−十二月の結果が三月に出て悪化したので今度は改正をお願いするんだということを言っているわけでありまして、こういうことで本当に経済活動の著しい停滞の判断を適時適切にできるのか、こういうことが問題になるわけであります。
 この点でも、本当にできるんですか大蔵大臣。
#187
○国務大臣(松永光君) さっきから委員の御意見を聞いておりますというと、政府が勝手に何でもするような言い方をなさいますけれども、そうじゃないんです。
#188
○笠井亮君 やれるようになっているんですよ。
#189
○国務大臣(松永光君) いや、そうはならないんです。この法律に基づいて、現行法のままだというと毎年毎年の予算編成に際して特例公債の発行高を前の年よりも減らしていくというのが定められておる。今度の改正案では、その原則は認めつつも、特別な事情がある場合には、予算編成上特例公債を前年度よりも減らすということでは必要な対策が打てないという場合にのみ特例公債発行の減額を義務づけられずに必要な予算が組める。その条件は政令で明らかにし、それに基づいて政府は予算案を編成する。それを国会にお出しして、そして御審議をお願いするわけであります。最終的には国会で決めていただくわけでありますから、政府が勝手にやるなどというのは全く理屈に合わない話だと私は思います。
#190
○笠井亮君 先ほど言いましたけれども、もともとこの法律を去年つくったのは、政府の予算編成自体を制約するような法律をみずから出すんだということで提案されたわけです。国会審議はまた別です。しかし、あれこれの経済状況の判断、それが正確にできるのか。しかも、その中に政治的な判断、裁量が入らないのかということを含めて……
#191
○委員長(遠藤要君) 笠井君、時間です。
#192
○笠井亮君 はい、終わりますから。
 そういうことを含めて、この問題というのは多くの問題を含んでおりまして見通しもない。そして、結局国民には痛みを求めるということで改正をする。こういう法案では本当に国民は納得しないし、国民には一層の痛みが寄せられるだけだ、そこだけが残るということは重大な問題だということを重ねて指摘申し上げて、きょうの質問は終わります。(拍手)
#193
○星野朋市君 まず、自治大臣にお伺いいたします。
 今度の十六兆円の景気対策の中で、地方単独事業一兆五千億というのが計上されておりますけれども、自治大臣の頭の中ではこの一兆五千億はどういう形のものに使おうと考えておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
#194
○国務大臣(上杉光弘君) 政府の方針であります社会資本整備の基本線に沿ってこれはやらなければならない、このように考えております。
#195
○星野朋市君 問題は、正式にまだ決まったわけではございませんけれども、首都圏を中心として幾つかの地方団体、県ですね、これがこの地方単独事業一兆五千億の使われ方に対して拒否反応といいますか、自分のところは積極的にやりたくないというような意思表示をされていると私は聞いておるんですが、その実態はいかがなものでしょうか。
#196
○国務大臣(上杉光弘君) 拒否されたということはまだ私は聞いておりません。
 ただ、地方におきましては、六月の補正、九月の補正、これはそれぞれ都道府県も市町村もやるわけでございます。財政事情等もございますから、そこらも含めて弾力的にこのようなことを考えて地方団体にはしていただくものと、このように考えております。
#197
○星野朋市君 東京都の例で見るごとく、東京都は今のままでは人件費のアップもできない、それから事業費のアップもできない、このままでいくとやがて数年にして財政破綻を来すんじゃないか、こんな状態も伝えられておりますし、それから各県もいわゆる箱物をつくると後の維持費が大変で、そのときはいいんだけれども、ほとんどこれは後の維持費のためにマイナスになってしまうというふうなことで、必ずしもそういう形のものを歓迎するわけではないんです。
 そうすると、この事業費を消化させようと思えば従来型の公共投資的なものにならざるを得ないというふうに私は考えますけれども、自治大臣はどうお考えでございますか。
#198
○国務大臣(上杉光弘君) 自治省というか政府から今回の景気対策、公共投資で箱物をつくれという指示はいたしておりませんし、またできるものじゃございません。それは自主的な判断におきまして公共事業とお取り組みいただく、こう思うわけです。
 ただ、今までの経験から、実績から申し上げますと、経済対策をずっといたしておりますが、地方単独事業の追加要請に対しまして、補正予算においておおむねそれに相当する額以上の額が計上されておる実績がございます。
 例えば平成四年度、これは九月までの補正額でございますが、追加要請は一兆八千億でございましたが補正は一兆九千二百億、平成五年度は一次から三次までやりまして要請額三兆一千億に対して三兆二千四百億、平成七年度は一兆円に対しまして一兆五百億と、それぞれ要請をいたしましたものを上回る補正額を計上いただいておる、こういうことでございまして、それぞれの地域の財政事情あるいは地方団体が取り組まなければならない社会資本の整備にお取り組みをいただくものと、このように考えております。
#199
○星野朋市君 そうすると、この一兆五千億は完全に消化されるという御自信だと思います。今は低金利の時代でございますから、地方債を発行すれば直ちに売れてしまうというのが一つ根底にあるわけでございますけれども、地方債の発行残高も百六十兆というような単位になってまいりました。そうすると、国の財政だけではなくて、地方財政というのはこれからどういう展望を持ってやっていくのか、その点については大臣はどうお考えですか。
#200
○国務大臣(上杉光弘君) 私は、今後、地方の問題は地方分権を抜きにして考えられないと考えております。地方財政は八十七兆九百六十四億円です。その中に一般歳出が七十三兆四千億ございます。その七十三兆四千億の七〇%は社会保障あるいは教育、公共事業でございまして、公共事業がすべてそれでという意味ではございません。七〇%、七十三兆四千億の中に占めておるわけです。政府の法律や制度や人の配置、予算の問題も含めてこれはなされておるものでございまして、地方分権は秩序を持ってやらなければなりませんけれども、地域住民に身近な施策をおおよそどこまでどのような形で分権していくか、こういうことになろうと思います。
 そうした場合に当然財政問題が伴ってまいります。財政問題となれば、それでは交付税の率はそのままでいいのかという問題は必ず議論の中で出てくることであります。消費税の国と地方の配分も率的にどうするかという問題は当然出てくると思います。そして、先刻から議論されております地方税の外形標準課税の導入をするのかしないのかこれも含めた議論として当然これは地方財政問題に絡んでくる問題でございまして、これらのことを国会にも御相談申し上げ、政府としてもぎりぎり研究をいたしまして、安定的に地方財政が財政健全化をしていくような方策というものは財政構造改革とあわせて地方分権とともに取り組んでいかなければならない課題だ、このように考えております。
#201
○星野朋市君 過般の予算委員会において私はこういう質問をして、これは途中でとまっておるんですけれども、例の三月三十一日に公的資金を導入した主要十八行というのがございます。主要十九行なんですが、中の日本信託は別としまして主要十八行、このうちの三行だけが時の不良債権といいますか私は銀行局長ともども問題債権と言っているんですが、問題債権をSECの基準でもってあらわしたら幾らになるかということを当時の七人委員会が求めたはずなんです。
 そうすると、この十八行のうち三行だけがSEC基準の金額で提示をした。他の十五行は間に合いませんといってこれを出さなかった。公的資金を導入するのに、全部が間に合わないなら話はわかるけれども、三行だけは出しておいて十五行は出さないというのは何事だと、そして五月になってもまだそれがわからないのかそういう質問をいたしました。銀行局長からは、これは督促をして五月の末には全部そろえますというお話がございました。さらに、新聞報道によると、各行の頭取を呼んで督促するというような報道までなされておりますけれども、それは私にはわかりません。
 結局、きのうかおととい明らかになったんでしょう。けさの新聞に主要十八行の不良債権の償却額とSEC基準による新しい問題債権額が発表されました。先日はこの主要十八行でほぼ十兆円が償却されるだろうと。私は十兆三千億ぐらいじゃないかと言っておったんですが、結局最終的には十兆四千九百億という不良債権の償却がなされた。そして、この十八行だけに限ってみれば、もとの自己査定の基準よりもSEC基準によると実は三九%ふえていた。ふえていたのは、いわゆる滞りの分を六カ月から三カ月に延ばした分まで入れたということになりますけれども、しかしSEC基準というのは少なくとも国内の自己査定よりも国際的に認められている基準なんですから、それに沿うのは当たり前のことなんですね。
 ということで、さてそうなると日本の問題債権というのは、十八行についてはわかったけれども、この前一月に七十六兆七千億と発表された第二地銀まで含めたSEC基準による実際の問題債権は幾らになるだろうかということがいまだにわかりません。ここまでは大蔵省の管轄ですから銀行局はそのデータを集めていると思うんですが、現状はどうなっておるか、お答えをいただきたいと思います。
#202
○政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。
 今、先生から御指摘いただきましたように、主要銀行の決算のいわゆる短信というレポート、ディスクロージャーが真っ盛りでございまして、今十八行そろっております。
 概略申し上げますと、今までの全銀協の統一基準の公表不良債権というものの系列で見ますと、実は十八行であと一行残っておりますが、単純に十八行ずつ比べますと六・七%減っております、その系列でいいますと。しかし一方で、新しい基準、SEC基準で、先生が今御紹介なさったように、三カ月以上のものも拾いなさいとか、あるいは少しでも条件を緩和したのは全部拾いなさいということでSECと同じようにしましたので、それが二十一兆七千七百億。これは相当ふえておりまして、見方によっては約五割増し、経営支援先というのを分母に入れますと四割増しになりますが、かなりふえました。
 そういった新しい基準でやっておりますが、先生の御指摘の七十六兆というのはこの議論ではなくて、少し違う、回収の度合いの程度の問題で、全く問題のないもの以外のものが全部で幾らあるかということでございます。
 私が今紹介を申し上げておりますのは、いわゆるリスク管理債権という形に名前は変えさせていただいておりますが、結局何らかの客観的な形で傷がついているもの、例えば延滞があるもの、それから相手が破綻したもの、あるいは金利をまけてやっているもの、元本をまけてやっているもの、そういった客観的に拾えるものを全部拾ったものという系列でございます。
 それで、こういったSEC基準というものが世界でも一番厳しい基準でございますが、これは今度の三月期から全国銀行、つまり第二地銀までこれでやってみてほしいということで強くお願いし、全国銀行も大変な事務作業でありますがやってみましょうということでやっております。これがそろそろ決算が出てまいりますので、また決算がまとまりましたらその辺の数字を私どもも集計いたしたいというふうに思っておりますが、少なくとも十八行ベースでいいますと、せんだってからの、昨年来の公表不良債権額二十八兆ですと申し上げていたのが、この十八行ベースだけで見ますと五割増しとか四割増しとか、そういう数字になっておるということでございます。
 これが現状でございます。
#203
○星野朋市君 私が何を言いたいかというと、結局のところ日本の問題債権というのは一体幾らなのかということなんですよ。これが何かのたびにふえていくという形が日本の信用を落としていると思うんですね。
 大蔵省の管轄にない例えば系統金融機関、農中とその下にある信連、今度はここもSEC基準でこの問題債権を出さなくちゃならないですね。そうすると、恐らくこれは今三千億ぐらいあるはずですから、これも三割増していくと約四千億になる。もっと多くなるかもしれません。それから、大蔵省の管轄にないいわゆる信用金庫、信組、ノンバンク、それから大手ゼネコン、商社、こういうものを含めると一体日本の不良債権は幾らなのか。それをはっきりさせて、それから政府はこれをどう処理し対処していくかということでないと、日本はいつまでも何かあるんじゃないかというふうに思われがちだと思うんですけれども、大蔵大臣、御見解を。
#204
○国務大臣(松永光君) 私の考え方を申し上げます。
 銀行を中心に金融機関の本当の体力がどの程度かということを明白にさせることが金融機関に対する内外の信認を得る道だと、総論として申し上げれば、そう私は考えております。
 それからまた、不良債権については、総理がよくおっしゃいますように、バランスシートから消すというのが終局的な不良債権の処理だと思いますので、バランスシートから消すためには何をすべきか。あるいは銀行にそのことの実行を要請しなきゃならぬだろうと思います。あるいはまた、消しやすいようないろんな仕組みをつくらなきゃならぬと思います。
 そういったことを通じて不良債権の終局的な処理、すなわちバランスシートから消すという措置、これを速やかに実行することが日本の金融機関の体力をつけることになる。金融機関の体力がつけば、必要な企業等に対する資金の供給は順調になされるでしょう。それが日本の経済を活性化させる道だというふうに私は考えております。
#205
○星野朋市君 事実関係で局長から。
#206
○政府委員(山口公生君) 今年の三月期からSEC基準で開示を強く求めて、それを実行していただくのは全国銀行ベースでございます。信金、信組は今度の三月期につきましては破綻、延滞、金利減免という基準でやりますが、十一年三月期、つまり今年度の、来年の三月期のSEC基準での開示については金融システム改革法において義務づけしておりますし、信金、信組も全国銀行と歩調を合わせた形で開示がなされるというような方向で検討しておる次第でございます。
 それから、一つつけ加えさせていただきますと、海外からのこういう評価というものは、やはり外の国の、あるいはアメリカの基準、これはデファクトスタンダードといいましょうかこれに合っているということで、かなり比較ができるというような見方もできると思うのでございます。したがって、これからはこのSEC基準で出した数字というものが主として議論の対象になるのではないかというふうに感じております。
#207
○星野朋市君 そのほかに、私は一月二十九日の予算委員会において、東南アジア向けの貸し付け、与信残高に対する問題債権の問題を取り上げました。銀行局長は、その場合はドル建てである、それからデリバティブをやっている、為替予約もやっているからさほど問題がないというお答えでございましたけれども、各行は既に数百億単位でもってこの三月期に引当金を計上してまいりました。
 今度のインドネシアの問題、それから昨年来のアジア通貨の下落によってこの問題債権が幾らになるかという問題は重要な問題でありますが、きょうここで論じていると時間がございませんので、これはあしたまたやることにいたしまして、きょうは別の問題をちょっと取り上げたいと思うんです。
 一九九五年の四月、日本の円がまさしく一番高かった、八十円をつけた四月十九日という日があります。この翌日に予算委員会がありまして、総理が通産大臣でおられて、まさしく日本の円がそんなに高くなると日本はいかにもつぶれそうだという議論が盛んにされていたときなんです。総理はそのときに通産大臣として、円が高くなっても日本の企業というのは努力して七〇%は転嫁するよと、こうおっしゃっておられた。
 私も実務の経験上それはわかっているんです。そのときに私が申し上げたのは、日本の輸出輸入、これは昨年度で言うと、輸出額は四十九兆円、輸入額は三十七兆円ですから十二兆プラスになっているわけですけれども、十年間ずっとどういう形態になっているかというと、輸出額の三八から四〇%が円建て、輸入額の一八から二〇%というのが円建てなんです。これを相殺して計算してみると、十円の為替でもって二兆数千億、これパーなんです。だから、円高になるときは直ちに輸出の関係であらわれますからいかにも損したように見えますけれども、これは同じことが円安になろうが円高になろうがしばらくたつとトータルではパーになるんです。
 それだったならば、業者は円建ての比率をもっと高くして、円を国際通貨に持っていけないかということを私は主張したんです。そうしましたら、時の大蔵大臣武村正義氏は、しかし議員、各国が円の通貨を持っても日本の証券市場、いわゆる東京の市場がいろんな規制があってこれが有効に使えない、こういう状態ならば円を持つ意味が余りないからというお答えだったんです。
 そんなばかなと言いたいところなんですが、今まさしく並行してやっている財政・金融委員会で金融システム四法案、いわゆる通称ビッグバンと言われることで、改正外為法の問題はもう済みましたが、金融四法案が成立すると日本の市場というのはまさしく外国並みになるわけです。
 そうしたら、日本はいかに円をローカルカレンシーで終わらせないでいわゆる国際通貨に持っていくか、この努力をしないと、今やドル圏とユーロ圏というものができてしまって、日本は三極構造の一角を占められない、こういうことになりはしませんかまさしく規制は撤廃されたわけなんですから。
 大蔵大臣は先日も円の国際化ということを訴えられたそうですけれども、今の日本の現状というのは、景気は悪い、円は安い、条件は非常に悪いんですけれども、こういう規制撤廃、それからフリーの市場ができたこの機会に円の国際化というものをもっと進めるべきだ、私はこう思いますけれども、総理、いかがお考えですか。
#208
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私はただいま議員の議論をしておられることに全く異論がありません。
 というよりも、我々は、ユーロ建て取引を近い将来考えなきゃならないとき、円が少なくともこのアジアだけではなく決済通貨の一つとして生きていけるような環境をつくらなきゃなりません。そのためには使い勝手がよくならなきゃなりません。そして今、議員からもお述べをいただきましたように、金融四法の御審議をいただいております。あと、確かに非居住者の使い勝手がいいようにとか、まだやることはあります。ありますけれども、これは日本だけのメリット、デメリットの話ではないと思います。
 今回のアジアの通貨危機の中で、もしアジアにおけるドルヘの過度の依存というものが、円がより国際化され、そして円による決済というものが通貨面、金融面において多少ともにその負担を軽くしていた場合に、私は随分状況は違ったろうと思っております。そして、その意味ではそういう方向を脳裏に描きながら、今まで努力が足りなかったことを悔いておりますが、その限りにおきまして問題意識を共有していると感じましたし、その努力はこれからも真剣に続けていきたいと存じます。
#209
○星野朋市君 若干時間は余しましたけれども、これで終わります。(拍手)
#210
○佐藤道夫君 朝来まことに御苦労でございますが、今しばらくおつき合いください。私が最後でございます。
 私も星野議員に倣いまして銀行の不良債権問題を取り上げたいと思います。
 この問題がにわかにクローズアップされまして、本来は法律問題、せいぜい社会問題でもありというところですが、今や政治問題になりつつある、こう言ってもいいわけであります。総額が幾らだといろんな議論がありますけれども、どうもはっきりしません。額はさておきまして、私の関心はこの不良債権を取り立てるために全国の銀行がどれだけの努力を傾注してきたかこういうことであります。
 これは一般の例で申し上げましても、バブル期にある人がある人に土地を担保に金を貸した、バブルがはじけて金は返らない、どうするか。言うまでもないのでありますけれども、弁護士を頼んで土地について競売の申し立てをする、それから訴えを提起する、相手方が多重債務者の場合には破産の申し立てをする。手間暇がかかる、お金がかかる、しかしみんなそういうことをやっておるわけであります。銀行だけがそういうことをやらなくていい、こういうわけにはまいりません。
 そこで、バブルがはじけてから今日に至るまで銀行がどれだけの努力をしてきたか。これを調べるのはそう難しいことではない。聞けば、やっております、頑張っておりますと、こう言うに違いないんですけれども、努力というのは数字となってあらわれるわけでありますから、銀行がここ何年か、五年なら五年の間で申し立てた競売件数、破産件数あるいはまた訴えの件数でしょうか、そういう数字を出してくれば、どれだけの努力をしておるか、どれだけの手間暇をかけておるか、またどれだけの費用をかけておるかある程度見当もつくわけでありますけれども、大蔵省はこういう数字は把握しておられるでしょうか。
#211
○政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。
 結果として申し上げますと、大蔵省としてはその数字は把握してございません。
 銀行もそういう法的な処理に訴える場合もございますし、法的な処理に行く前に当事者間で一生懸命話し合いをして解決するというケースもございますので、その辺をごしんしゃくいただければと思うわけでございます。
#212
○佐藤道夫君 これは実は調べようと思えばそう難しいことではありません。どうか監督官庁といたしましてこの数字ぐらいは出して、銀行もこれだけ頑張っておる、あるいは全然何もしていないということは国民の前に明らかにしていただきたい、こういうことを希望しておきます。
 実は私は銀行は余り信用していないんです。多分余り取り立ての仕事はやっていないんじゃないか。これは住専の場合がまことに顕著な例でありまして、住専が破産しかかった場合に何もしていなかった。法的手段に訴えると手間暇がかかる、費用がかかるということでそのまま放置しておいて、いずれ政府が乗り出してくるだろうと。案の定政府が乗り出しまして、六千八百億円という公的資金を投入して問題を一応解決した。
 最近でもまたそういう話が起きておりまして、具体的な例を挙げて恐縮でございますけれども、昨日、自民党の山崎政調会長がどこぞやらの講演会で、公的資金を投入して不良債権を買い上げるという提案をしておるようであります。これはある意味では銀行の思うつぼなのでありまして、それを待って解決すればまた問題をしのげるのではないかと。
 私は国民に対するメンツというものがあろうかと思うんです。国民も銀行をじっと見ておりまして、これだけ銀行が頑張っておるならばなるほど公的資金の投入もある程度やむを得ないのかと、こういう気持ちにもなってくれるだろうと思います。私は、金融システム安定のために公的資金を投入する、本当に必要ならばどうぞ遠慮なく投入してくださいと、そういう考えを持っておるわけでありますが、やっぱりその前提として銀行がやるべきことをやる、これは大変大事なことだろうと。そのために若干の手間暇がかかろうが費用がかかろうが、これはやむを得ないことであります。何もやらないで、さあ公的資金で処理してくださいよと言われても、国民としては到底納得できない。
 そこで、大蔵大臣にお願いするのでありますけれども、あすでもいいと思いますが、銀行に対してもうどんどん大号令をかけていただきたい、やるべきことをやれと。そもそも日本人というのは借りたものは返す、貸したものは取り立てる、これは当たり前の、法律論というよりむしろ道義の話でもありまするから、やるべきことをやれと、公的資金の投入その他はすべてその後の問題だということを大蔵大臣として銀行業界に厳しく注文をつけていただければと思います。いかがでしょうか。
#213
○国務大臣(松永光君) きのうもこの席で申し上げたんですけれども、銀行というのは案外夢をもう一度で、土地がもう少し上がるかもしれぬ、そのときに競売、申し立てなんかをした方が得かもしれぬという感じで放置しているのがあるかもしれぬということを私は申し上げました。
 委員御指摘のとおり、銀行がどれだけ貸し出した債権の取り立てのために努力をしておるかこれは裁判所の受付のあれをずっと見ることでも可能でしょうし、あるいは銀行そのものに問い合わせしても可能だと思いますので、問い合わせをし、また不良債権であろうが多少傷ついた債権であろうが債権者としてしっかり法的な措置をするように要請はしたいと思います。
 それと同時に、今また公的資金で不良債権を買い上げるという発言をした人がいるそうでありますが、そういったことをする気持ちは私はありません。少なくとも貸し手の責任、借り手の責任、いずれもその責任を果たし合うことが日本の法秩序を保つ道だと、こう私は思っております。
#214
○佐藤道夫君 大変力強いお言葉で、どうぞ後日撤回することのないようにしっかりと肝に銘じていていただきたい、こう思います。
 次に、昨日の本委員会で総理がこの問題で、債権者、債務者の権利関係を調整するために独立の行政委員会の設立も考えておる、こういうお話があって、けさの新聞にも各紙それぞれ取り上げておりました。まだ構想の段階だろうと思います。詳しい詰めもしておられないので余りこういうことを申し上げるのもどうかと思います。私の意見だけを述べさせてください。これは実は憲法上大変重大な問題をはらんでおるということも当然お気づきだと思います。
 まず第一に、明治以来、債権、債務者の間で紛争があれば、それは裁判所に持ち込んで解決してもらうということでずっと来ているわけでありまして、調停の申し立て、和解の申し立て、裁判所がそれを受け付けて解決に導いていただくと。要するに、国民の常識として、債権、債務者間の紛争の解決は司法事務だ、裁判の仕事だということがありまして、司法権は裁判所に属する、こういうことになっておりますから、この銀行の不良債権の関係だけを裁判所から引き抜いて別な委員会にやらせることは、司法権は裁判所に属すると定めた憲法違反の疑いがあるので、この点は十分に検討していただきたいと思うのが第一。
 それから第二点、これも大事なことでありますけれども、一般の債権者は従来どおり裁判所に調停や和解の申し立てをすることになります。裁判所というのは、私も知っておりますけれども、そんなに能率的な役所ではないわけでありまして、またうるさいことはうるさいわけで、書類が完備していない、判こが落ちている、いや、何だかんだといってなかなか事務が進まない。中には、朝から晩まで待たされて、きょうは済まないけれども帰ってくれと言われて帰されたとかというような状況もないわけではありません。
 そうすると、一般の債権者は、おれたちは何で裁判所に行ってこんなに苦労せねばいかぬのか、銀行の関係だけは何か独立委員会なるものがさっささっさと処理してくれている、おかしいではないか、同じように扱ってほしいということを言い出す人が多いだろうと思います。中には、法律を知っている人は、これは同じような扱いをするのは憲法が保障している十四条の問題ではないか憲法違反の問題もあるのではないかと、こういうことを言い出す人もあるかもしれませんので、これを後日法案化して、衆国会には出したいということも申しておられたようですけれども、十二分にこの点はお含みおきの上、内閣法制局等で検討されんことを要望しておきます。これは回答は必要ありません。
 それから次に、外交問題というとやや大げさになりますけれども、取り上げたいと思います。
 今、日本の経済問題、これは挙げて国際的な問題になっておりまして、最近開かれる国際会議、外交会談あるいは首脳会議、これで必ずといっていいほど日本の経済問題が取り上げられて、いろんな意見が外国から日本につけられております。注文がつけられております。
 これが内需の拡大という程度の一般的、抽象的なことならば、そうですか、頑張りましょうということで済むのでありますけれども、具体的な政策、例えば減税要求、大幅な減税をした方がよろしいということになってきますと、これは率直に言いますと内政干渉ではないのかと。要するに、景気を回復するためにいろんな政策の選択があるわけであります。減税も一つ、それから規制緩和も一つ、大幅な公共投資も一つ、いろんなことがあるわけで、何を選ぶかというのはその国の政府の考えることでありまして、外国からあれこれ言われることではないと私は思っております。
 この四月にアメリカから国務次官が来たときに、外務省の柳井次官がはっきりと具体的な政策についてあれこれ言うのはやめてほしい、日本としてもやるべきことはやっておると、こういうことを申したということが新聞報道されておりまして、私もそのとおりだと思います。願わくば、これは次官は次官、大臣は大臣という線ではっきりと申すべきことは申してほしい、こういう気持ちでおりましたらば、この前のサミットで総理とクリントン大統領の会談の際に、今度は不良債権の問題が提示されたと、こういうことになっております。その件に関する大事なことですから、読売新聞の五月十七日欄に掲載されております。クリントン大統領は橋本首相に、不良債権問題は「手遅れにならぬうちに素早く対応することが、コスト負担を減らすことにつながる。解決に向け断固たる措置を取ることが重要だ」と。これは日本政府から新聞社に対して訂正の申し立てがないものですから、多分こういう話があったんだろうと思います。
 私はこれを読みまして、率直に、何かこれは親が子供に、学校の先生が生徒に、あるいは大会社の社長が関連会社の社長に言っているような感じがしてしようがなかったわけであります。ちょっとおかしいんじゃないかと。我が国とすればやることはやってきた、これからもやっていく、余計な口出しはしないでくれと、そういう毅然たる態度をとっていただきたかったな、こういう感じもしたわけであります。
 私、ある経済評論家、口の悪いことで有名な人ですけれども、この話をしたら彼いわく、それは日米間のやらせだよと言うのであります。日本政府がアメリカに頼んでそういう発言をしてもらって、それを日本に持ち帰って、さあと、こういうことだと。うそか本当か、多分うそだと思いますけれども、しかし減税の話が出た場合に減税がぱっと日本の国内問題として出てくる。また今度は不良債権問題で政府、与党問で検討会を開こうと。余り手際がよ過ぎるものですから、そういう疑いもないわけではない。
 どうか総理、ひとつこれからもこういう問題、日本の経済問題について外国からいろんな注文がついてくるんだろうと思います。筋道だけは間違うことなしに、毅然とした態度で対応してもらえればと思います。
 最後に、この点につきまして総理のお考えを承って、質問を終わりにしたいと思います。
#215
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今のお話、実はその十七日という日付、後でちょっとその新聞を探してみますけれども、そういう報道になったとすれば私は大変残念だなと存じます。
 なぜなら、事実は道さ、道さという言い方も変ですけれども、今度日本がとろうとしている総合経済対策の中身はこういう中身だと、その中で景気刺激策とともに金融改革、殊に不良債権をバランスシートから消したいという話を私は確かにいたしました。それは何もクリントンだけではございません。そして、それは大事なことだということを確かに彼は私に言いましたけれども、議員のおっしゃるような内容のことを長々と話してはおりません。
 そして、もともとそれほど長い時間の会談の予定ではございませんでしたが、むしろインドの核実験の問題あるいはインドネシアの情勢分析など、話す話題が急に飛び出したテーマもふえましてありましたために十分な時間というわけにはいきませんでした。
 そうした中で、確かに彼自身が、アメリカもかつてそういう時代を経験したことがあるよ、苦労したけれども今はうまくいっているよという話をしていました。それは間違いなしに私が説明したことに対してしていたことでありますが、これはクリントン大統領の名誉のためにも内政干渉というようなものではなかったということだけは申し上げておきます。
 なお、先ほどの御意見は私なりにこれからの勉強の糧にさせていただきます。
#216
○佐藤道夫君 一点だけよろしいですか。
 五月十七日の読売新聞でございますので、御検討の上、もし間違っておればしかと読売新聞社に抗議していただきたいと思います。日本の首相の名誉のためにも私はそれを希望いたします。
 以上です。
#217
○委員長(遠藤要君) 次回は明二十七日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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