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#1
第142回国会 国際問題に関する調査会 第2号
平成十年二月四日(水曜日)
   午後二時開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    会 長         林田悠紀夫君
    理 事
                板垣  正君
                笠原 潤一君
                山本 一太君
                広中和歌子君
                魚住裕一郎君
                田  英夫君
                上田耕一郎君
                永野 茂門君
    委 員
                鎌田 要人君
                木宮 和彦君
                北岡 秀二君
                末広まきこ君
                田村 公平君
                南野知惠子君
                馳   浩君
                林  芳正君
                岡崎トミ子君
                寺澤 芳男君
                松前 達郎君
                高野 博師君
                福本 潤一君
                大脇 雅子君
                笠井  亮君
                山崎  力君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        加藤 一宇君
   参考人
       大和総研特別顧
       問        宮崎  勇君
       三井物産総合情
       報室長      寺島 実郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (アジア太平洋地域の安定と日本の役割につい
 て)
    ―――――――――――――
#2
○会長(林田悠紀夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、本調査会のテーマであるアジア太平洋地域の安定と日本の役割について、二名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、参考人として、大和総研特別顧問宮崎勇君、三井物産総合情報室長寺島実郎君に御出席いただいております。
 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人におかれましては、御多用中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、忌憚のない御意見をお伺いし、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、初めに宮崎参考人、次に寺島参考人の順序でそれぞれ三十分程度御意見をお述べいただいた後、午後五時を目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。
 なお、御発言は、意見、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、まず宮崎参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。宮崎参考人。
#3
○参考人(宮崎勇君) 私は、ただいま御紹介いただきました宮崎勇でございます。座って報告させていただきます。
 本日は、参議院の国際問題に関する調査会に参考人として出席し、アジア太平洋地域の安定と日本の役割について発言させていただく機会を与えていただきましたことを大変光栄に存じております。問題が極めて複雑かつ広範でありますし、私は民間のエコノミストですから情報も限られておりますが、せっかくの機会でございますので、私は経済問題を中心にして与えられたテーマについて率直に申し上げたいと思います。よろしく御批判、御指導のほどを最初にお願い申し上げたいと思います。
 私は、私の報告について要約を半枚紙の資料で用意いたしましたので、これに沿って御説明を申し上げたいと思います。
 主として申し上げることは、アジアの問題と日本がそれにどういうふうに対応するかという問題でございますが、話の前置きといたしまして、冷戦の終結後、世界経済でどういう変化が起こっているかというようなことについて最初に報告を申し上げたいと思います。
 冷戦が終結後、大きな政治的、経済的、社会的な変化が世界的に起こっておりますが、私は大きく言って三つの特徴があると思っております。
 第一番目は、人々の関心が軍事あるいはイデオロギーという問題から経済あるいは生活への問題に移行してきていると思われる点であります。ここで言います経済とは、ただ単に成長率ですとか貿易ですとか投資ですとかといったような従来の狭い意味の経済だけではなくて、環境問題あるいは人口問題、都市問題等を含めた広い問題でありますけれども、そういう人々の関心の移行が一つの大きな特徴であると思われます。
 第二番目は、各国で改革・開放政策がとられている結果、世界全体で市場経済が拡大、深化を見せているということであります。そのために、いわば国境なき経済ということで、各国の相互依存の効果が極めて大きくなっております。
 この相互依存効果にはプラスの面とマイナスの面がございまして、特に一九八〇年代から九〇年代の初めにかけてのアジアにおきましては、相互依存効果のプラスの面が非常に大きくあらわれておりました。マイナスの面もあるわけでして、後ほど言及いたします今日のアジアの経済危機は、相互依存効果が大きくなっていることのマイナス面のあらわれだろうと思っております。
 また、市場経済に特有の競争の激化からくる勝者と敗者の対立という問題が、国内的にはもちろんのこと、国際的にも大きく問題になっております。私自身は市場経済が必ずしも弱肉強食だというふうには思っておりませんけれども、多分に現象的に弱肉強食的な面があらわれていると思われますし、今日のアジアの経済の中にもそういった面が見られると思います。
 第三番目は、このような市場経済の拡大を促進、加速している問題に情報化の進展という問題がございます。いろいろの面で情報がハード、ソフト両面にわたって発展しているわけですが、例えば今日のアジア危機と関連してデリバティブというような非常に多角的な金融商品が派生しているということも、その善悪は別といたしまして情報化の進展によって生まれたものでありますし、また、経済的な情勢判断あるいはそれに対応する決断の速さというものが要求されているのもこの情報化の進展によるものと思われます。こういう冷戦終結後の世界経済の変化に対応して、各国あるいは各地域でこの対応のあり方あるいはスピードが異なっておりまして、その点が今日の世界経済の危機の一つの側面をなしているというふうに思われます。
 きょうはアジアについて御報告申し上げるのが主でありますけれども、アジアの場合を考える一つの参考として、アメリカ経済の今日の状況が役に立つと思います。
 アメリカ経済は、御案内のとおり最近極めて好調を持続しておりまして、昨年、暦年の成長率が三・八%、物価も二%程度で落ちつき、財政の赤字もほぼ解消するというような状況になっておりまして、活性化が顕著であります。
 このような背景には、幾つかあると思いますけれども、冷戦の終結と関連して言いますならば、第一に平和の配当がアメリカ経済であらわれつつあるということがあると思います。もちろん、アメリカの軍事力は余りにも強大であるという一面は依然として残っておりますけれども、例えば国防予算をとってみますと、一九八五年から今日まで極めて大きな削減が行われております。国防予算をどの定義によってとらえるか問題がありますが、ほぼ二五%、国防予算が削減されております。それが財政の健全化に貢献するだけではなくて、いろいろの点でアメリカ経済の活性化に役に立っております。
 例えば、軍事部門の技術あるいはそれに従事した技術者が民間部門に移行するというような形で、今日のアメリカ経済を支えております情報通信産業あるいは医薬の分野においてその転換効果があらわれておりますし、逆に一部依然として残っております軍事産業の販路が国際的に広がり、アメリカは武器輸出を活発に行っているわけですが、外貨を獲得する一面とこの武器を購入する途上国との間でアンバランスが生じております。残念ながら、今日、武器輸入が一番増加しておりますのはアジア地域でありまして、そのことがアジアの経済困難の一つの要因だというふうに考えられますが、アメリカと対照的であります。
 アメリカ経済が活性化しております第二の理由は、いわゆる構造改革が早くから実施されているということであります。
 例えば、金融問題につきましてはっとにアメリカの金融システムの安定化策がとられてきたところでありますし、また、情報産業等の台頭は規制緩和等の構造改革が日本に比べて、何年と明確に言うことはできませんが、おおよそ十年先行しているというようなことがありまして、いずれにしても構造改革が進んでいるということだと思います。さらに、アメリカ政府当局、特に連邦準備制度が巧みな金融政策を展開するということによって物価の安定が図られる等、活況を呈しているというふうに思われます。
 そのことを申し上げましたのは、アジアあるいは日本との対照がそれらの点で極めてはっきりしているからであります。そういう冷戦終結に伴う事態の変化に対応するのに、残念ながら我が日本を含むアジア地域はおくれをとっているというふうに思われるわけですが、特に構造改革、中でも金融システムの改革についておくれているのが今日のアジアあるいは日本の金融危機の一つの大きな原因であろうというふうに思われます。
 アジア地域は、一九七〇年代半ば以降、九〇年代の初めまで著しい発展を遂げました。アジアと申しましても、言うまでもなく民族、宗教、言語、文化等について多様性を持っております。しかし、経済発展という点からいえば若干の共通点もあるわけでして、例えば平均的に貯蓄率が高い、あるいは国民が一般に勤勉である、そして向学心がほかの途上国に比べて旺盛であるというようなことが技術の吸収力を高め、あるいは企業家の企業家精神の発揮に貢献しているというふうに思われます。さらに、これらの国々は天然資源がどちらかといえば多様、豊富であります。それから、そういう経済を運営するに当たって、その開発が積極的に国家指導のもとで行われた。こういうようなことがごく最近までのアジアの発展に大きく寄与したというふうに考えております。
 ただし、最後に述べました国家指導型の開発というのは、ある意味においては独裁開発的な傾向を生み、さらには官僚組織の硬直性ということも加わりまして、全体としてこの種の上からの経済指導というのが限界に達してきているというふうに思われます。そのことが市場経済への移行との間にギャップをつくって今日の経済危機が生じているというふうに考えられます。
 また、開放・改革は進められておりますけれども、そのことが先ほど申しましたようにアジア各国間の相互依存関係を強めているわけですが、具体的にはこれらの国の経済成長が輸出主導型になっていったという点があるわけであります。日本の高度成長が本格化しましたときにも同じように輸出主導型の経済成長であったわけですが、同じような形態をとってまいりました。これは相互依存効果のプラスの面でありますが、今日、それが逆にマイナスになってきているわけであります。
 なお、アジアの各国は多様性を持っておりますから、発展の段階も違うわけであります。しばしば言われておりますように、そして橋本総理が今国会の委員会の中でも言及されたことがありますが、アジア地域の各国の発展は雁行形態をとっているということが言われております。カリが群れをなして飛ぶように波を打ちながら発展しているということで、この雁行形態の先頭に立ったのが日本だというふうに言われております、そして、日本の発展に続いて、いわゆる四匹の竜と申しますか四匹のトラと申しますか、韓国、台湾、香港、シンガポールという四つのいわゆる新興工業国がそれに続き、そしてさらに時期を置いてASEANの諸国、さらには中国へと波及してまいりまして、いわば雁行形態的に発展しているわけであります。
 所得の水準等からいえば依然としてそういう形の発展形態が続いているとは思われますけれども、グローバリゼーションの進展とともに、だんだん雁行形態というのは消えていく傾向にあると思われます。
 いずれにしましても、一九七〇年代から九〇年代の初めにかけて、これらの地域の経済成長率は非常に高かったわけでありまして、七〇年−九〇年、平均しまして新興工業国家の成長率が九・一%、ASEAN諸国が六・四%、中国が七・四%というようなことになっております。
 しかし、このような状況はこの一、二年の間に大変大きく変化しておりまして、いわば一種の調整期に入っているというふうに思われます。その調整期という意味は、経済体制が市場経済体制へ移行しているわけですけれども、まだ十分に移行し切れない。もちろん、先進国といえども市場経済というのは絶えず深化しているわけですけれども、特にアジアの地域ではそれがまだおくれているということで、世界的なグローバリゼーションの波の中に押し流されているという点が今の時期に起こっているというふうに思われます。
 特にアジアでおくれておりますのは、先ほども申しましたけれども、金融システムの面でございます。したがって、今日のアジアにおける経済調整は、主として金融危機という形であらわれております。全般的な経済危機だというふうには私は判断しておりません。アジアのいわゆるファンダメンタルズというのは基調的には変わっておりませんので、したがって当面の金融システムの改革に成功しそれが市場経済でうまく機能していけば、私はアジアの成長はもとのように戻ってくるというふうに考えております。
 ただし、この問題はアジアだけでは解決できないわけでありまして、今日のアジアの通貨危機あるいは金融危機というのは外部的な要因もかなり働いているというふうに思われます。先ほど申しましたように、情報化の進展によってデリバティブというような金融商品の多角化、多様化が進んでおりまして、資本の取引が非常に膨大な量に達しているわけであります。しかも、それをうまくコントロールするシステムあるいは知識が不十分だということがこの問題を非常に大きく増幅させているというふうに思われます。さらに、日本との関係でいえば、日本の経済動向、マクロ的な経済動向、あるいは円の動向、特に円がドルとの関係において非常に大きく変化しているというようなことが、アジアの通貨危機あるいは経済危機と申しますか、金融危機に非常に大きな影響を与えているというふうに考えております。
 金融システムのおくれと申しますのは、具体的には、金融機関の情報の開示がおくれている、不十分であるという問題ですとか、あるいは金融機関に対する監査体制が十分でない、非常に不透明であるということ、さらには金融政策がその他の政策によって極めて大きく影響されるというような問題があったり、あるいは金融を含めてこれらの国の経済運営の長期戦略が明確でないという点があるんだというふうに思われます。
 その金融危機の例をタイにとって若干見てみますと、今日のアジアにおける金融危機はタイに発祥したというふうにしばしば言われるわけですが、タイは御承知のようにドルにリンクしておりました。ドル・ペッグであります。厳密に申しますとバスケット方式でありますからドルだけではありませんけれども、そのバスケットの中に入っているのは大部分がドルでありますから、実質的にドル・ペッグと言ってよろしいかと思います。つまり、タイのバーツというのはドルとともに動くというシステムをとってきたわけです。
 こういうドルにリンクする体制というのは、当初は非常に有効で、タイの経済にとってプラスに寄与したというふうに思われます。通貨が安定しているということと同時に、当時はドルが弱いということもありまして、輸出型の経済成長を実現するのに大変有利に働いたという面があります。しかし、輸出が伸びると同時に資本の流入もふえてまいりまして、いわば国内で流動性が非常に高まり、高まった流動性が、必ずしも生産的な面ばかりではなくて、土地あるいはそれに類したものに投資されるというようなことになりまして、いわば一種のバブル経済的な様相を呈したわけであります。しかし、そういう状況が続く中で国際収支は悪化し、経常収支の赤字が非常に大きくなるということで、この面からさらに短期の資本の流入がふえるという状況になってまいりまして、金融危機の原因をつくったわけであります。
 このタイにおける金融危機、通貨危機というものが、いわば国境なき経済というようなグローバリゼーションのもとで、周辺諸国に波及しているというのが今日の状況ではないかというふうに思います。しかも、これらの波及を受けた国々もまた、構造政策、特に金融改革がおくれているという点がありまして、深刻になっているというふうに考えております。
 最後に、こういう中で日本がとるべき役割、責任等について申し述べたいと思います。
 まず基本的にしなければいけないことは、よく国際会議で使われる言葉ですけれども、プット・ザ・ハウス・イン・オーダ一ということで、とにかく自分のうちの中をきちっと整理しろということであります。
 日本の場合を言いますと、今は景気の状況が非常に悪い、そしてその中で経常収支の黒字が異常に大きくなっているということがあるかと思いますし、バブルの崩壊に伴って不良資産を抱えた金融機関が不良債権を抱えると同時に貸し出しを渋っているというようなこともありまして、これを国際的にも大きくしているということがあると思います。したがって、日本といううちの中を整理する、つまり安定成長軌道に早く回復させるということが必要であり、同時に、日本経済自体が構造改革を積極的に進めなければいけないというふうに思われるわけです。
 日本の国際的な地位というのは大変大きくなっているわけですし、また、その地位を果たせるだけの能力を持っているというふうに考えております。それが十分に果たせないために、現在、アジア地域に迷惑をかけている点もあるかと思われます。具体的に申しますと、円の変動が大きいとか、あるいは国内の景気が低迷しているために輸入が振るわない、つまり先方から見れば対日輸出が縮小しているというような迷惑をかけ、さらに、日本の金融機関の今の不安定な状況がひいてはアジア地域の金融機関の不安定をもたらしているというようなことがあるかと思われます。
 したがって、日本がみずからきちっと経済を立て直すということの中には、内需の拡大ということとともに、構造改革、中でも金融改革を積極的に行っていかなければいけないという問題があると思います。
 金融支援について申しますと、日本は十分にその能力があるというふうに考えております。
 申すまでもなく、日本は世界の一大資産国であります。対外債権は今一兆ドルに達しておりますし、当面の外貨準備も経常収支の継続的な黒字を背景にいたしまして二千億ドルをオーバーしているわけであります。また、国内の貯蓄にいたしましても、しばしば指摘されておりますように、個人貯蓄で千二百兆という資産があるわけでございますから、これを国際的に使うということも当然考えるべきだというふうに思われます。
 日本の役割の一環として、しばしば円の国際化ということが言われております。四月以降のビッグバンが実行に移される過程でだんだん円の国際化が進むとは思いますけれども、残念ながら日本の税制その他、国際的に見てまだ円が有利というような状況には必ずしもなっておりませんので、円の国際化はいましばらく時期を待たなければ大きな進展がないのではないかと思います。
 それから、国際金融協力については、IMFと協調しながらこれを行うべきだというふうに思っております。IMFは中立的そしてグローバルな立場から金融支援を進めているわけですから、全面的に協力すべきだというふうに思います。
 ただし、IMFの支援を受けておりますアジア各国から見れば、そのIMFの支援というのは、金融危機、通貨危機ではなくて経済危機に対応するような処方せんが非常に色濃く出ているという批判があるわけであります。過度の金融・財政引き締めというようなことは問題だというような言い方の反論がありますし、あるいは主権にかかわる干渉的な指示であるという声も一部にはあります。また、アメリカ国内では逆に、IMF体制と申しますか、IMFを支援することについてちゅうちょする向きもあるわけであります。そういうことを念頭に置きながら、我が国としてはIMFと協調してアジアの金融危機の解決に努力しなければいけないと思っております。
 最後に、いわゆる経済協力、経済協調との関係であります。
 日本は、昨年はODAが九十六億ドルということで若干前年に比べて縮小しましたけれども、依然として援助大国でありますから、このODAを中心にしてアジア地域との経済協力を一段と進めなければいけないと思いますが、既にこの会で指摘されておりますように、日本の援助はしばしば顔が見えないというようなことが言われております。せっかく国民の税金を使って海外と協力しているわけですから、顔の見えるような援助をやるべきだというふうに考えております。
 それから、援助の使われ方ということについては、民間の協力あるいは民間資金だけではなくて、貿易等を含めた総合的な立場で協力を進めていかなければいけません。当然のことながらODAは国民の税金ですから、相手国にわかりやすいということだけではなくて、日本の国民にもはっきりさせるという意味で、評価システム、監督システムというのがきちっと確立されていなければいけないというふうに思いますし、その点で国会の役割は大変重要だと考えております。
 どうもありがとうございました。私の発言は終わらせていただきます。
#4
○会長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 次に、寺島参考人にお願いいたします。寺島参考人。
#5
○参考人(寺島実郎君) きょうはこういう機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。
 私、現在、三井物産の総合情報室長ということをやっておりますけれども、昨年の四月までアメリカの東海岸で十年仕事をして、帰ってまいりました。ニューヨークに四年、ちょうどバブルの真っただ中のニューヨーク、九一年湾岸戦争のころまでニューヨークにいて、その後六年間ワシントンの所長として仕事をしてまいりました。ちょうど十年で帰ってきたわけです。
 私の視点は、比較的日本人としては外から物を見た体験という立場、それからビジネスの現場にいる人間という立場から、この国の進路、あり方について考えておるわけですけれども、きょうはこの機会に「日本の総合安全保障と進路について」ということで、アジア太平洋地域における日本の役割についての私の考え方を話させていただきたいというふうに思います。
 まず、日本の総合安全保障ということで、このテーマを取り上げました理由としましては、戦後の日本外交というのはそのまま対米外交だと言ってもいいというか、日米二国間の同盟関係を基軸にして外に対して動き、働きかけていく、そういうゲームを展開してきたかと思うんです。今、ユーラシア外交とか多国間の外交とかというさまざまな表現がなされる時代になっておりますけれども、対米関係をどうするのかということがやはり日本の進路の大変大きな軸になる。その際、私がまず申し上げたいのは、基本的な視点として、選択肢を硬直的に考えてはいけないというふうに考えることをちょっと申し上げさせていただきたいと思うわけです。
 これも一つの考え方ということで受けとめていただきたいわけですけれども、日本の国内に対米関係、特に安全保障、安保の問題について多様な意見、多様な考え方が存在しているという状況が大切で、ともすると日本における議論というのは、反米・反安保・反基地という立場に立つ軸か、親米・安保堅持・基地容認という立場に立つ議論が、二極に分解してしまっていて、実はいろんなオプションがあっていい、硬直的に考えてはいけないということで、私の一つの意見としてお聞きいただきたいわけです。私の立場は、先ほど申し上げたように十年間アメリカにいて、アメリカのいいところも悪いところも思い知らされている立場として、親米派の人間が言い始めている安保見直し論というふうにお聞きいただいていいと思います。
 アメリカから見れば、日米安保というのは片務条約です。というのは、世界最大の債務国が世界最大の債権国を自分の国の若者の血を流してまで緊急非常時になぜ守らなきゃいけないんだという床屋政談的な議論が拍手を受けやすい、そういう土壌があります。一方、日本から見た安保というのは、つい最近の中曽根さんの発言にもあるように、傭兵条約というか、基地の費用は我々が持っているんだという気分、七割は日本が金を払っているんだという気分、それが次第次第に盛り上がって、お互いに安保というものを見る目が交錯している。そういう中で、私は、相互に尊敬し合える防衛システム、相互敬愛のシステムに安全保障の仕組みというものを持っていかなきゃいけないと思う。
 今、親米派であれば安保堅持で基地容認なんだという枠組みからどういう柔軟なシナリオがあるのか。私がよくペンタゴンの関係の方とかワシントンで議論する機会において痛感したのは、要するに日本の意思が問われているんだ、日本はどうしたいと思っているのかと。つまり、戦後五十年、日米安保条約が日本の安定にとって大変重要な役割を果たしてきたということを評価するにしても、例えばこの先五十年、日本という国に四万七千人、一千万坪の米軍基地があってもちっとも不思議に思わないという発想で外交の基軸を組み立てている国が、国際社会の中で一人前の国として認知されるかどうかという議論をしっかり見詰めなきゃいけない。要するに、今後五十年たっても東アジア及びアジアの安定のために米軍基地は日本にあっていいんだというところから考えるのか、日本はどうしていきたいのか。
 その点につきまして、私、非常に気になる一つのアメリカにおける対日深層意識調査というのをある論文の中で引用しておりますけれども、ドイッチェという社会学者が行ったアメリカ人の深層意識の中にある日本に対するイメージという調査があるんです。これはどういうことかといいますと、あなたは日本が好きですかというような単純な世論調査じゃなくて、一人一人の人間に何時間も時間をかけて専門の心理学者が質問を投げかけてアプローチしているという調査なんです。
 それはどういうことを意味しているかというと、インテリ及びオピニオンリーダーほど建前論になるんですね。日本は立派な国だ、戦後あれだけの敗戦から立ち直った立派な国だと最初は言っているんです。ところが、あなたが最初に日本という言葉を聞いたのは何歳ごろでしたかとか、そういう話からどんどん入っていって、結論としてどういうことが出ているかというと、日本に対する一般的なアメリカ人のイメージというのは非常にネガティブというか、ある意味では残念なことですけれども平たい言葉で言えばさげすみの視線というものがある。それでどういうイメージかというと、閉鎖的で不公正でこうかつな人たちだと。最初建前で言っていた勤勉で規律があって効率的で集団的に調和しているというイメージが本音の部分で反転するということになるわけですけれども、問題はなぜだということなんです。
 それは、例えば日本が戦争時代に鬼畜米英と言っていたと同じように、アメリカも対日キャンペーンで、日本人なんというのは人間じゃないというようなネガティブキャンペーンをやっていたことが母親の世代から埋め込まれて伝わっているというような部分もあるわけですけれども、戦後になって日本が経済というところにだけ比重を置いて国づくりをしてきた。しかも、防衛安保のただ乗り論というのが非常にイメージとして受け入れやすい底流にある。そういうことが米国から見た片務条約としての安保というイメージをいやが上にも深めている。そういう中で、アジア太平洋をめぐる位置関係が、先生たちもよくおわかりいただいているように、日米中のトライアングルというか中国の台頭という要素が新しいゲームの要素としてくっきり出てきているわけです。
 昨年、九七年という年に、ついに中国は百五十年かけて香港返還というのを実現した。それによって中国のGDPは一年で三割伸びる、香港返還要素によって二割、前年の伸びによって一割ということで。中国の脅威と魅力といいますか、力をつけつつある中国の脅威と二十一世紀のマーケットとしての中国の魅力という二重の意味で、アメリカにとって中国に対する関心というのはいやが上にも高まっている。
 そういう地合いの中で、アジア太平洋のゲームというのは、我々がそれを望むと望まざるとにかかわらずトライアングルになってきているし、さらには多重になってきているし多角的になってきている。そういう中で、日本がアメリカとの関係を再構築していかなければいけないところに来ているのは間違いない。再構築というときに、世に安保マフィアという方たちがいるわけですけれども、これからも日米安保は大事だということを相互にエールを交換していればいい時代じゃないんですね。安保を深める必要がある。
 それはどういう意味かというと、今回の新ガイドラインに対する評価ということでお聞きいただきたいわけですけれども、これはアメリカの安保に対するフラストレーションを解消するという意味では二つの意味でアメリカにとっては前進だったんですね。一つは極東条項の実質拡大という意味で、それからもう一つは周辺有事に対する日本の協力を一歩引き込むという意味において。ところが、多くを述べる必要はないと思いますけれども、じゃ日本側の日米軍事協力によるアジアの安定確保という意味において前進だったのかということになると、必ずしもそうではない。
 特に、僕が申し上げたいのはドイツとの対比においてです。ドイツは駐留米軍経費を約十四億ドルぐらい負担しているわけですけれども、日本は御承知のように六十四億ドルとか六十五億ドルとかというレベルなんですが、その額の問題だけじゃなくて、九三年にドイツとアメリカとの間で基地の地位協定に関する見直しという新しい踏み込みをしているんです。ドイツの国内にも米軍基地はあるわけですけれども、その基地の相対化のために、つまりドイツの主権回復のために五十年かけて手をかえ品をかえして交渉して、九三年の地位協定改定では大変なドイツの主権回復に踏み込んでいるんですね。さらには、多国間の欧州安全保障の仕組み、全欧安保とかという仕組みの中でアメリカの基地の意味を相対化する試みを繰り広げてきている。そういう中で米国との軍事協力関係というものを仕切り直していっている。
 日本はその種の議論を一切しないで今日まで来たわけですね。要するに、もし新ガイドラインにおいて日本側から踏み込むべきことがあったとしたら、これは幾つもあるんですけれども、最も大きなポイントとしては地位協定という問題があっただろうし、基地の段階的縮小に向けての日本側の構想といいますか、土地の使用目的なんかについてドイツは非常に一個一個厳しく吟味するポジションをとっているんです、基地の土地の利用について。そういう段階的な日本側の背筋の伸びた議論が、逆に日米の軍事協力関係を中身のあるものにしていくということが私の申し上げたいポイントなわけです。そういう中で、多国間の外交に向かっていきつつある時代においては、日本の防衛とアメリカの防衛に関する議論のどこに基本的な違いがあるのかということを明快にしていく必要がある。
 その際、私が一番この国の外交の基軸にとって重要だと思いますのは、非核、核を持たないということ。多国間の外交というのは非常に理念性を問われる外交になります。二国間の外交というのは、労働組合と経営者の交渉みたいなもので、目の前に座っている人と長い間には落としどころが見えてくるというタイプの交渉なわけですけれども、多国間の外交というのは、国際機関に出ておられた方は寺澤先生初めよくおわかりのように、丸テーブルを囲んでいる外交ですから、理念性の高い、ロジックのはっきりした主張をしないと周りがついてこない。そういうゲームに変わりつつある中で、じゃ日本の外交基軸として大切な価値というのは何だろうかというときに、核の問題に対する独自性、五大核兵器保有国とは一線を画しているというところが今後中国とのつき合い方あるいはロシアとのつき合い方にとっても大変重要になる。
 その辺、詳しくはまた時間があればあれですけれども、私はその非核というのが日本外交にとって重要だということだけ申し上げさせていただきたいと思います。
 それから、今後の日本の安全保障を高めるために非常に必要な視点として二点だけ触れておきたいと思いますのが、今度のアメリカとのガイドラインの見直しの中にもこの種の視点が絶対必要だったろうし、これから必要になってくると思われますのが軍事における情報技術革新のことなわけです。
 それはどういうことかというと、アメリカにおける情報戦争高官会議というのが実はペンタゴンにできているわけですけれども、ストラテジック・インフォメーション・ウォーといって、要するに戦略情報戦争というキーワードがアメリカの軍事構想にとって最も重要なものになりつつあるわけです。それはなぜかというと、イラクの今の緊張の問題を見ていてもわかりますように、アメリカ軍に死人あるいは負傷者が出るような戦争は戦えない時代になっているんですね。リモートコントロールしたように、オーバーザホライズンと言うんですけれども、地平線のかなたからウォッチしていて人は死なないようにトマホークをぶち込んでいくようなタイプの戦争になりつつある。
 そういう中で、究極の研究開発と言われているわけですけれども、情報先端技術、これはどういうことかといいますと、例えばキーワードで言いますと、湾岸戦争で既にそのことの前兆が出ているわけですけれども、相手の情報システムを開戦劈頭に機能できないものにする。例えば、コンピューターにどんどん依存しつつあるわけです、軍事システムが。相手のコンピューターが制御不能な状態に、コンピューターウイルスとか電磁波でもってがたがたにしてしまう。湾岸戦争のときには現実にイラクの通信システムを開戦三十分でもってシャットダウンしたわけですけれども、そういう戦争になりつつあるわけです。
 つまり、一言で言うと、致死兵器、つまり人を死に至らしめるような兵器から、情報の優位性を圧倒的に確保することによって戦争が始まった瞬間に勝負があったような形にしてしまうようなタイプの戦争へと流れが変わってきつつあるわけです。したがいまして、防衛のシステムも情報システムということがあらゆる面で重要になってきている。そのことが、例えば安保の見直しにも日本の防衛構想の見直しにも、要素として大変重要になってきている。そのことを視点に入れない安全保障の問題というのは意味を持たなくなってきているということを申し上げたいわけです。
 それからもう一つは、安全保障の問題というのは軍事の問題だけじゃなくて、それを取り巻くさまざまな総合性といいますか、そのことが非常に重要になっておる。例えば、よく言われるようにエネルギーとか食糧の安全保障というのも大変重要なポイントになっていまして、私は、平成不況と言われながら日本経済が何とか息をついている大変大きな要素として、エネルギー価格が安いという要素があることに気がつかなきゃいけないと思うわけです。
 例えば原油入着価格という数字があるんです。日本の水際に原油が届いている数字、ドル建ての数字、しかもそれを円建てに直した数字というのがあるわけですけれども、一九九〇年を一〇〇として、円建でベースの原油入着価格というのは一九九六年に四八なんですね。つまり半額になっていたわけです。どうしてかというと、石油価格が軟化していた要素と円高にシフトした要素でもって、不況の中でエネルギー価格が安かったというのは僥幸にも近いような状況だったわけです。それが円安に反転したということと、一時的には石油価格、今また下がっていますけれども、構造的にアジアが七%の成長というものを続けてきた中で、エネルギーとか食糧なんかについて言えば、今ちょうど踊り場としてほっと一息ついているというか、もしそのままいっていたら、エネルギー、食糧のアジア地域における需給不安というのが大変だという問題がついこの間まで議論されていたわけです。
 今、踊り場に差しかかっているからこの問題がずっと消えていますけれども、構造的には例えば日本の石油の中東依存は八十数%に来ていまして、七三年の石油危機よりも上回っています。それは、中国が石油の輸入国に九三年に転じ、インドネシアが来世紀早々には石油の輸入国になるという状況の中で、中東へ中東へと依存が高まっていっちゃっているんですね。毎日五百万バレルの石油をのんでいる国が一割依存を下げるということになりますと、五十万BD、どこかにサプライソースを多角化しなきゃいけないわけです。そういった意味での戦略が非常に問われている中で、今の踊り場というのはこういう状況だからこそエネルギー、食糧の長期的な安全保障戦略を組み立て直すチャンスだとも言えるわけで、その点が視界に入れられなければいけないだろうというふうに思います。
 それから、アジアの安定と日本の責任ということで話を進めさせていただきたいわけですけれども、アジア危機の構図は、宮崎先生もおっしゃったようにまさにグローバルスタンダードに参入することの怖さといいますか、外部依存の高い経済開発にグローバルスタンダードということで踏み込んでいくと、逆にシステムがスタンダードに規制され始める。
 例えば、今世界の貿易というのは一日百五十億ドルあるんですけれども、為替の世界での一日の取引というのは九千億ドルになっています。つまり、実需の六十倍の資金が流れるようなシステムというのが、健全であるかどうかは別にして、現実なんですね。それによって、一たん改革・開放でもって踏み切っていくと、例えばタイ経済がそうですけれども、いいとなったらどっと金が入ってきて悪いとなったらどっと金が去っていくというような激しい揺さぶりの中で生きていかなきゃいけなくなる。そういうシステムの安定化に向けての再構築の構想が問われているということが大変重要だと思うんです。
 そういう中で、日本の責任ということについて申し上げますと、例えばアメリカから見れば、アメリカくらいにしか相対的に魅力を感ずる資金の行き場がないものだから、ニューヨークの株式市場だけがどんどん肥大化していくというか過熱にも近い状況になる。簡単に言うと、アメリカだけがシングルエンジンでアジア太平洋のあれを支えているようなものなんですね。もし日本がダブルエンジンで、潜在成長力が二・五%というくらい言われている国なわけですけれども、せめて潜在成長力ぐらいの成長力を見せていてくれたらと。アメリカというのはネット対外債務が約九千億ドルから一兆ドルになろうとしています。日本は逆にネット対外債権が九千億ドルということで、ちょうど双生児みたいになっちゃっているわけですけれども、米国のエンジンだけが過熱していく。
 一方、アジアについて言えば、今、日本の輸出力というのが約四千億ドルです。台湾、韓国で二千五百億ドル、香港を吸収した中国が三千億ドル、ASEANが三千億ドルです。日本を除く三つのゾーンは大体輸出入が均衡しているか輸入超過になっています。日本だけが大変な輸出超過なんです。アジアに対して約六百億ドル、アメリカに対して五百億ドル、九六年の数字ですけれども輸出超過になっている。アジアから見れば、もし日本が輸出の対象国として吸収力を持っていてくれたらこういう事態にはならなかったのになという思いがある。
 要するに、一言で言いますと、バブル再生じゃなくて、実需につながる内需の拡大を日本ができるかどうかというところが問われているんだろうと思います。しかも、対外ネット債権九千億ドル、先ほど宮崎先生も言っておられたように、個人資産一千二百兆円というようなものが国民の経済構成を高めるために使われていない、そのためのシステム設計図が改めて問われているんだろうと思う。私は、一言のキーワードで言うと、減税よりもプロジェクトということを申し上げたいんです。個人所得税減税にしても法人税減税にしても、減税も景気対策的な視点では意味のあることかもしれませんけれども、今、日本に問われているのはより長期、構造的な国づくりのプロジェクトだと。
 明らかに外から見て日本がおくれている分野が二つあるわけです。一つは何かというと、衣食住の中で食べ物と着る物だけは日本というのはもう世界の一流のところまで来ていると思います。しかしながら、言うまでもないことですが、住環境の整備ということだけはおくれている。例えば、二兆円減税して各家庭に六万円が配られても、住環境のスペース制約がある限り、これ以上一体何が買えるんだというようなスペースの中で大部分の国民が生活している。住環境整備ということだけはおくれている。ニューヨークと東京で比べますと、一人当たりの住居スペースが約半分ですね、三十平米対六十平米ということで。それからもう一つは、情報環境の整備ということで、これは情報のインフラも含めて、やはり大変にコストのかかる仕組みになっている。したがいまして、例えば九六年の産業設備投資に占める情報化投資というのは、アメリカの三二%に対して日本は一六%です。まだまだ情報化が立ちおくれている。
 しかも、ここから先は、私自身がニューヨークとワシントンという経済と政治の首都が分離された中に生活してきたということもあって、国会移転の委員会等で参考人として、首都が分離されたときに一体どういうことが起こるのかということで発言させていただいたこともあるわけですけれども、私は、住環境整備、情報環境整備の二つのテーマをつなぐプロジェクトとして首都移転というものに非常にこだわりがあるわけです。
 どうしてかというと、単なる景気づけの内需拡大のプロジェクトとしてじゃなくて、新しい公共投資のプロジェクトとしてじゃなくて一社会変革のてことして日本の国土軸を再活性化する。それによって、アジアの中で日本が実質三%の成長力を取り戻していくためのシミュレーションをいろいろやってみますと、二%の実質GDPを十年押し上げるようなタイプのプロジェクトとしては首都移転を軸にした住環境整備、情報環境整備くらいしかない。
 どうしてかというと、例えば国家公務員という大体平均的日本人の生活をしているレベルの方たちの住んでいる住環境をイメージしていただければいいわけですけれども、公務員住宅というのは五階建てでエレベーターも冷暖房も給湯も駐車場もないというような中でスペックができ上がっているわけです。簡単に言うと、二十一世紀の日本人というのは、そういう環境の中を住み続けるんですかというテーマに対して明快な発信をする必要がある。そのためには、首都移転をきっかけにして、新しい首都につくる公務員住宅のスペック、それから東京に残された国家公務員の住居の跡地開発ということによる再開発、そういうものを通じて住環境整備に対して一つの明快なメッセージを見せる必要がある。
 それから、情報環境についても、東京の過密を前提にしている限り、あらゆる情報型のプロジェクトのコスト高が解決できない。国土をもう一回広くやわらかく見直してみて再設計する必要があるんじゃないか。
 何でこんなことを僕は申し上げているかというと、さっき宮崎先生もおっしゃったんですけれども、内政こそ最大の外交戦略、日本がどういう国づくりをしているのかという骨太な発信をしない限り、アジアの安定の中での日本の役割というのは見えない。
 要するに、日本の失速の責任に対して、例えば日本は何をやろうとしているのかということが世界の人たちに三十秒でわかるようなメッセージに凝縮したプロジェクトが要る。これは何も東京湾架橋だとか新幹線だとか、あるいは本四架橋的な大型公共投資のぶち上げプロジェクトとしてじゃなくて、日本の国の再設計という意味において一つのテーマとして議論する必要がある。へその部分での首都移転にかかる国費というのは十四兆円というふうに言われているわけです。その周りに、民間の知恵で外からこの種のプロジェクトに参画する海外の若い人たちのエネルギーも吸収して、二百兆円から三百兆円の波及効果のあるプロジェクトにしていけるかどうかという知恵比べだと思うんです。
 要するに、グローバル化というのは外知恵も含めて知恵比べに入っているわけです。知恵比べによって競争というものをどうやって生き延びるかという、国のレベルでも企業のレベルでもそういう時代なんだろうというふうに思います。
 とりあえず、私の話はここまでにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
#6
○会長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 質疑に入る前に、出席者各位にお願いがございます。本日は、通常より一時間ほど質疑時間が短くなっております。つきましては、多くの方が発言の機会を得られるよう発言時間を制限し、一人一回五分以内におまとめいただくようお願い申し上げます。なお、希望者の発言の一巡後は再び質疑することを認めますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
#7
○山本一太君 五分以内ということですので、お二人の参考人に一問ずつ御質問をさせていただきたいと思います。
 まず宮崎先生に、去年、小渕大臣が金大中大統領のところに外国首脳として初めて行ったときに、私もちょうどたまたまソウルにおりまして、年末をソウルで過ごしました。明洞の繁華街をずっと三十一日の日に夜二時ぐらいまで歩いて、韓国の友人と一緒にソウルの状態はどうなっているのかというのを見てまいりました。
 思ったよりソウルが華やかで、明洞は二時ぐらいまで大変にぎやかだったので、意外と韓国も元気かなと思って帰ってきました。その後、結構有名な韓国スペシャリストの人にこの話をしたら、韓国の人はやけ酒を飲む習慣があるということで、そのままとっちゃいけないよということだったんですけれども。
 この間の銀行のロールオーバーというんでしょうか、韓国経済は一息ついた感じなんですが、最初このIMFの融資が決まったときに、東亜日報とかあるいは朝鮮日報とか、そこら辺に国恥とかIMF経済植民地主義とか出まして、かなりナショナリスティックな感じだったのが少しおさまったかなという感じもしておりますし、今韓国の人たちは、金大中大統領のもとでとにかく頑張らなければいけない、こういう雰囲気になっていると思うんです。
 それでも、先ほど先生がおっしゃったように、このIMFの融資条件というのは大変厳しいと思うんです。八%、九%の経済成長率を続けていた国がこれからそれこそ一・五%ぐらいまで一気にスローダウンをする、財閥の保護はなくし、つぶれるところはしようがない、淘汰されなさいというような状況をつくる中で、このIMFの今の韓国に対するモデルというものは、本当に先生が見て適切であるかどうか。先ほどおっしゃったように、通貨危機に対する対応じゃなくて経済危機に対する対応ではないかという批判も出ているんですが、もし先生の目から見てもうちょっとこういうやり方があるんではないかということがあれば、教えていただきたいなと思います。
 あと寺島室長に、大変おもしろいお話でいろいろ御質問したいことがあるんですが、一問に絞って言いますと、さっきおっしゃった日本外交の理念、マルチの場における理念性ということで、非核というものが有効だというふうにおっしゃいましたが、これはどういう外交戦略の中で、どういう形でこの非核をアピールしていけばいいとお考えなのか。
 この一問ずつだけ御質問をさせていただきます。
#8
○参考人(宮崎勇君) 山本先生の韓国に関する御質問ですが、私はやはり韓国の経済の危機も調整期の危機だというふうに思っております。非常に高度成長が続いた中で、いわば一種のバブル経済的な様相を呈してそれがはじけたということですが、先ほど申しましたように、経済危機よりは、その原因は主として金融危機だというふうに思っております。
 したがって、金融システムの改革、例えば情報の開示というようなことですとか、あるいは金融機関の監査、監督というのが非常に不透明、不明瞭であります。恐らく、そのことは韓国の財閥等との関係もあるかと思いますし、あるいは政治との関係もあるかもわかりませんが、いずれにしても金融システムを透明にするということが必要だというふうに思っております。
 したがって、IMFの勧告自体は私は基本的に結構だと思いますし、しかも昨年末の時点で行われたということは評価されていいと思うんです。経済政策一般にタイミングというのが非常に重要ですが、もしIMFの勧告がずれてことしになるというようなことであれば、もっとひどくなっていたというふうに思っております。
 ただ、先生も御指摘のように、韓国の中には不平がありまして、経済危機に対する処方せんであって、不当に国民が緊縮的な生活を強要されなければいけないということについては不平もあるようです。しかし、ある程度緊縮的な生活、経済をやらないと金融の安定にもつながらないんじゃないかという感じがいたします。そういう意味で、今度大統領になられる金大中氏も国民に耐乏を訴えられているというふうに思います。しかし、もともと韓国国民というのは勤勉でもありますし、貯蓄も非常に高い、いわゆるファンダメンタルズがいい国でありますから、日本の協力もあって、やがてこの調整期は乗り越えられると私は期待しております。
#9
○参考人(寺島実郎君) 今の点でございますけれども、核ということについて言えば、日米中の関係ということを前提に考えてみたときに、我々、これから幾つがこの関係をどうしていくかということを思考する際に核の問題に嫌でもぶつかる。なぜならば、中国の核実験に反対すれば、中国サイドがメッセージを発してくるのは、あなたのところの核が怖いんだと。我々、核も何も持っていないじゃないかと言うと、アメリカの核の傘に守られている日本の存在について語り出すわけですね。
 その米国の核の傘という問題についても単純じゃなくなりつつあるわけです。どうしてかというと、例えばもし十年以内の範囲で朝鮮半島に統一国家というものができたときに、統一韓国が核武装したときに日本では必ずその核に関する議論というものが誘発されてくる。それから、中国が軍事的圧力を東アジアで強めたときに日本自身の核に対する誘惑みたいなことが議論されてくる。そういったときにこそ、一つのこれが試金石になるわけですけれども、腹づもりとして非核ということをしっかり戦略的に確認していかないと、多国間の外交の中で、日本が米国周辺国ということじゃない、踏み込んだ発言なり政策論というものに説得力がなくなる。
   〔会長退席、理事板垣正君着席〕
要するに、中国の核実験には反対するけれども、戦後千三十二回、米国の核実験が行われているわけですが、それには一切発言しないできて、いきなりフランスの核実験に逆上したように反対してみたりするわけです。
 世界の核大国と日本はどこが違うのか。国連安全保障理事会なんかでのスタンスとしてもまさにこの点が違うわけで、核兵器の保有国というのは、不拡散条約の延長にこだわる一方で自分の既得権については非常に強く主張していて、例えば国際原子力機関の査察義務づけを拒否したり、条約で明記されている核軍縮努力の義務を展開しているとも思えない。そういうことに対して日本のきちっとした核政策、それから原子力の平和利用に対する政策といいますか、今原子力の平和利用技術において、アメリカが原発をほとんどつくれなくなっていますから、日本の電力会社ぐらい平和利用の技術を持っている国はないんですね。台湾でも韓国でも中国でも、近隣の国がどんどん原発をつくっていっています。そういうところに対して原子力の平和利用に関する技術の供与とかという問題は、安全保障上も大変重要になってきている。
 そういうことを総合的ににらんだ非核を軸にした核政策というものをしっかり見せないと、これから多国間のゲームに入っていったときに、特に中国の存在、韓国の存在ということになったときに話は単純じゃない。例えば、統一韓国が核を持ったときにアメリカの核の傘は機能しなくなります。というのは、アメリカにとって韓国も友好国、日本も友好国です。そういうゲームになりつつあるわけですね。
 だから、そういう複雑なゲームになりつつある中で、日本の核理念というのは一体何なのかというのが必ず問われるときが来るだろう、その準備が必要だというのが私の申し上げたい文脈です。
#10
○高野博師君 寺島参考人にお伺いいたします。
 アジアの経済危機がアジアの安全保障にどういう影響を与えるのかという観点なんですが、私は、中期的に見れば、今アジアの経済が一時悪くなったけれどもまたもとへ戻ってくるという観点からすれば心配ないだろうと見ていたんですが、イラクの情勢が緊迫してきたということもありましてちょっと不安定になる可能性はあるなと。
 それで、東アジアにアメリカが十万人の軍隊を置くというのは、これはジョセフ・ナイさんが言っているとおり、世界に同時に有事があったときに、戦争があったときに対応できるようにするためだということなわけですね。今、一方でイラクの情勢がこういう状況ですから十万人がどういう動きになるのか私はまだわかりませんが、そういう中で韓国なんかの経済危機、これは金大中次期大統領も、コーエン国防長官に北朝鮮がこういう経済危機をねらって何らかの動きをするおそれもあるというような発言もしていると。
   〔理事板垣正君退席、会長着席〕
それから、本年KEDOの負担、五十一億ドルを韓国が負担しなくちゃいけない。これもかなり難しくなるんではないかなと見ているんですが、米軍の駐留の費用も負担ができなくなるおそれはないかなと。それと、軍の近代化というのも凍結せざるを得なくなると。これは韓国ばかりじゃないと思うんですが、マレーシアとかタイとか同じような事情で、これはアメリカの軍事産業にも影響を与えるおそれがある。中国も、アジアの経済が悪くなると輸出が減ってくるということで労働者の解雇なんという問題になって、香港の統制なんということに出ないかなと。また一方で、そこまでは行かないと思いますが、国民の目を外に向けるという点では領土問題ということがまた出てくるのかなと。インドネシアの場合は、これは経済問題から政治的な問題、反スハルト勢力が強まるというようなことになってくる。
 全体として見ると、安全保障という観点からかなり不安定な要素が出てくるのかなと見ているんですが、その点はどのようにごらんになっていますでしょうか。
#11
○参考人(寺島実郎君) 二点だけ申し上げさせていただきたいと思うんです。
 現在の経済危機が、経済のレベルの問題を超えて政治及び安全保障の問題にまでかかわってくる可能性があるとすれば、僕はインドネシアの危機だと思うんですね。例えば、タイとか韓国は腹をくくってみれば為替の調整過程だというふうに言ってもいいと思うんですね、政治的な不安定要素を抱えているわけじゃないというか。ただし、インドネシアはまさにスハルト体制、それを開発独裁という表現をする人もいますけれども、行き着くところまで行き着いている感じがあって非常に危ないというか、それを一つのきっかけにして、例えばフィリピンの基地を引き揚げた、いろんなうわさが飛んでいます、アメリカがインドネシアに基地を持つための交換条件を議論し始めているとか。いずれにしても、一種の恐怖の均衡といいますか、スハルト体制がいいとは思っていないアメリカ、できればフィリピンのようにマルコス型モデルでもってソフトランディングしていきたいと思っているけれども、このピンを外せばがたがたといくからということで、やむなくとりあえずはスハルト体制支援で走っているアメリカ。そういう中で、インドネシア要素というのが要注目だなというのが第一点です。
 それからもう一点は、北朝鮮の南進の危機とかということがあるタイミングになるとある種のアメリカ側からの意図もあって盛んに出てくるわけですけれども、我々が正しく認識しておかなきゃいけないのは、北朝鮮といえども国際社会の中から孤立したいと思っているわけじゃないということなんですね。要するに、韓国を飛び越えてアメリカとディールしたいと思っている本音というのは、やっぱり世界が相互依存のゲームの中に入り、一種の自閉症的あるいは鎖国主義的な展開ではとても持ちこたえられないということがわかっているからこそ、例えば核の査察なんといっても、インドとかパキスタンとかイスラエルなんかは核を持っていると言われながらNPTにさえ加盟していないんだけれども、北朝鮮、イラクというのは、そういうシステムの中に参画しても国際社会の中で生きていきたいというスタンスをとっているということなんですね。経済的にもそうなわけです。したがって、北朝鮮だろうがイラクだろうが、国際社会から孤立しては生きていけないという認識は共有されてきているんだというふうに見なきゃいけないわけで、ただならず者国家のようにあらゆる不安定を外部にまき散らしていけばいいというふうには考えていないということだろうと思うんですね。
 要するに、ためにする情報というのに対して我々は非常に慎重でなきゃいけない、そのことだけちょっと申し上げたいと思います。
#12
○高野博師君 ありがとうございました。
#13
○福本潤一君 私の方は、今の高野先生の質問に対する補足のような質問で寺島先生に、安全保障の中で今後の戦略構想ということで、致死兵器戦争から戦略情報戦争へということを書かれています。現実にイラクの戦争のときに、湾岸のときにはコンピューターウイルスとかシステムダウンもあったわけですけれども、戦略情報戦争というとまるで死者が少ないような感じのイメージになって、若干イメージとは違う現実が起こりかねないなという危惧が一つあるわけです。
 その中で、湾岸戦争のときに、私もパソコン通信というのでPC−VANやなんか、グローバルビレッジでニュースやなんかを見ていますと、記事の中に大体イラク検閲と、検閲という文字が入っていたり、あとテレビ放送でもCNNが独占して、CNNがイラクの許可を得た上で放送した一つの映像がもう何回も何回も同じ場面だけ、それ以外ないのかというぐらいの、ある意味では検閲済みの形で進んでいったという現実があると思うんです。そういう状況での情報戦略をイラクは現実にどういう形で、ああいう形で検閲をした上で放送させるという許可をCNNと、あとはニュースでもそうですけれども、一社独占というふうにしたのかという経緯を知っておられれば教えていただきたい。
 もう一つ、今後の日本の責任というところで、急に住環境整備と情報ということを述べられて首都移転プロジェクトというのをお話しになられたので、これは首都移転というものに対してかなり強力な関心があられるなという気がしますので御質問させていただきます。
 首都移転によって、堺屋太一さんなどは、そういう大きなプロジェクトのときにどさくさに紛れてかなりのことが変革できるんだというような言い方で首都移転をとらえられたりしています。かなりの大きな予算を使ってやるものが、具体的にはそれだけの効果がないんじゃないかという声もあるわけですね。
 その中で、今のこの移転というものをアジアの安定の中で急に出された一つの背景を堺屋太一さんらと同じような意識で出されたのかどうかということと、出された関係で、責任のない立場で首都移転するならここの場所がいいという腹案があれば一言言っていただければと思います。
#14
○参考人(寺島実郎君) 今の先生の御質問で、首都移転のことなんですけれども、十分に時間がなくて意が尽くせなかったわけですが、このことについては、ワシントン、ニューヨークにいたというさっきの説明のことで意見を聞かれる機会が多いものですから何本か論文を書いてきているわけですけれども、僕はやっぱり中核プロジェクトというものが非常に重要になっている、そこにいろんな知恵を吸収していく中核になるプロジェクトが必要だという意味でイメージしています。
 ちょっと申し上げますと、さっき言い忘れたんですけれども、ただ新東京をつくればいいというものじゃなくて、新しい首都を例えば国際中核都市として国際性の高い都市にする。例えばジュネーブをモデルにして、ジュネーブというのは、あそこに国連欧州本部というのがあるんですね。年間四十万人の国連関係者が来ているわけです。十幾つかの国連本部があそこに集中しているわけです。もし、あの国連本部がなければジュネーブなんというのはスイスの山岳観光の出入りの町みたいなものですが、一泊五百ドルするぐらいのホテルがいつも満杯というような都市になっているわけです。しかも、情報密度の大変高い、国際性の高い都市にしているわけですね。
 もし、日本に国連アジア太平洋本部、安保理事会の方の常任理事国というよりも社会経済理事会の方の幾つかの機関の中核施設を持ってきたアジア太平洋本部的なものをつくれたとしたら、これは仮説ですよ、それも知恵なわけですけれども、そうしたらその都市は非常に安全保障上セキュリティーの高い町になる。なぜならば、核攻撃もできない、それから防衛コストを非常に下げる、都市としての国際性、情報密度を飛躍的に高める、そういう知恵を問われているんだと。ただ中核になっている国会と行政府を移転すればいいというものじゃなくて、その周りにどういう付加価値を創出できるかというところが物すごく重要。しかも、財政赤字の中で何で公共投資のプロジェクトをぶち上げなきゃいけないんだという考え方があると思いますけれども、これもまた知恵で、郵貯とか東京三菱のひとり勝ちと言われているような中で、郵貯の活用によって国家予算を使わないで、それの周りの付加価値でもってより税収を高めるぐらいの構想の中でこの種のものを走らせることだってできる。
 何でこのことを言っているかというと、日本が要するに自己責任として三%成長を実現するんだという決意を表明しない限り、しかもそれを具体的なプロジェクトイメージに設定しない限り、アジアの安定はないと思っているからなんですね。そういう意味なんです。だから、一国自己完結という意味じゃなくて、まさに日本発の世界恐慌は起こさないという言葉が走っていますけれども、日本だけの問題じゃなくなっているわけですね、日本の低成長とか日本のゼロ成長というのは。そこのポイントがあります。
 それからもう一つは、イラクの情報のことについて言えば、まさにおっしゃるように、僕は、今アメリカ流の情報ソフトウエアの優位性というのがあらゆる分野で際立っていて、御指摘のCNN、世界の映像時事情報のネットワークというものをアメリカがいつの間にかつくっちゃっている。それから、インターネットにしても米国流の情報システムの世界制覇だとも言えるわけですね。なぜならば、技術的にも言語的にもいかにもアメリカ的システムなんですね。それから、ウインドウズ、コンピューターのOSみたいなものも、アメリカ発信源のシステムによって我々は取り囲まれている。
 そういう中で、情報制御能力というのが国家間の競争においても戦争的な局面においても大変重要になってきていて、僕はアメリカのシステムを受容していかざるを得ないという現実認識と、そういう中で日本としての国家戦略が問われているという認識というのをやっぱりきちっと両方持たなきゃいけないというのが申し上げたかったポイントであります。
#15
○福本潤一君 どうもありがとうございました。
#16
○魚住裕一郎君 公明の魚住裕一郎でございます。
 両先生とも大変お忙しい中、ありがとうございます。
 結論として、今のアジアの危機を救うのは日本が活性化することであるということだと私は思いますが、何点か御質問をさせていただきます。
 まず宮崎先生にコメントをいただきたいんですが、アジア各国はずっと経済成長をしてまいりました。今ちょっと大変な危機になっているわけでありますが、この経済の成長また危機、こういう振動の中で、やはり各国のナショナリズムという問題が台頭してくるんだろうというふうに思います。特にアジア各国、我が国の歴史的経緯もございます。この台頭するナショナリズムの自制、セルフコントロール、このあり方をどのように考えていくべきであろうかということをお教えいただきたいと思います。
 それから、寺島先生にお願いしたいんですが、レジュメでは載っておりましたけれどもコメントがなかった国連アジア太平洋本部構想というのが今のお話の中でも出ました。首都移転に関連して出てきたような感じがありますので、これをもう少し具体的にお教えいただきたいと思います。特に、アジア太平洋の安定ということを考えると、やはり信頼醸成、多分これにもかかわってくるんではないかということからお願いをいたします。
 そしてまた、信頼醸成そして紛争を予防していくということが大事かと思います。本年一月、紛争予防戦略に関する国際会議というのが政府の主催で行われました。要員の訓練計画策定、そういうような提言を含めた報告がありますけれども、この紛争予防外交の前進について、これに向けての先生のお考えがありましたら、お教えいただきたいと思います。
#17
○参考人(宮崎勇君) ただいまの魚住先生の御質問ですが、ナショナリズムというのをどういうふうに定義するかということによって答えが違うと思います。
 国民が一致団結して事に当たる、その精神的な支柱という意味でナショナリズムを使うとすれば、プラスの面とマイナスの面があると思います。先ほど申しましたけれども、IMFの金融支援のやり方について問題があるというふうな声がアジア各国の一部にありますし、それからアメリカのやり方についても、例えばタイのネーションというような新聞を読みますと、この際にアメリカの企業が進出する、あるいはアメリカの勢力さらにはヨーロッパの勢力を増大させるためにああいう措置をとっていてけしからぬというような論調が一部にあるわけであります。私は、そういう意味での排他主義的な傾向になるということは避けなければいけないと思います。もちろん、支援をする方のアメリカにもIMFにも考えてもらわなければいけない点があると思いますが、支援を受ける国がその支援のやり方がけしからぬといって排他的になることは避けなければいけないと思います。
 ただ、いい意味において国民の団結心、これも誤解の多い言葉なんですが、要するに事に当たって、例えば韓国の場合、先ほど山本先生の御質問にお答えした中で申し上げたんですが、経済的な危機だからみんな団結して我慢すべきことは我慢してやろうじゃないかと、そういう意味でナショナリズムが高揚されるなら、私は大変結構だと思っております。
#18
○参考人(寺島実郎君) お答えさせていただきます。
 まず、国連アジア太平洋本部のことについてもう少しどういうことなのかということだと思うんですけれども、アジアにある国連関係機関の本部というのは、東京に国連大学、それから名古屋に国連地域開発センター、それからバンコクにESCAPの本部がある。御承知のとおりなわけですけれども、環太平洋というふうに目を向けて見ても、チリとコスタリカに小さな国連機関の本部があるだけで、いかにも米国及び欧州に偏重しているというか、そういう中で国連変革というのが盛んに問われているわけです。
 日本が得意とする分野、例えばODAとか環境とか、そういう分野に関するこれからできるあるいは既にある国連機関及びその関係の施設を日本に誘致して、それをさっきは首都移転の絡みで議論したけれども、何も首都とくっつけておくべき必然性はないわけで、それが極端に言えば北海道にあろうがあるいは沖縄にあろうがそれは構わないわけです。一つの発想として、国連常任理事国的な、安保理事会の方に大変大きな野心と役割を、多国間の外交の時代が来ているという本能から強く関心を深めるのも一つの方法だと思うわけですけれども、より重要なのは、やはり日本らしい貢献というものを国連に対してするための具体的なメッセージとして国連アジア太平洋本部構想というのはおもしろいんじゃないか。
 先ほど申し上げたように、ジュネーブには十五の国連機関が所在していて、調べてみると、さっき申し上げたように国連関係者だけで年間四十万人やってくるわけです。要するに、これは一つのひな形にしかすぎない構想なわけですけれども、そういう種類の構想に若い人たちのいろんな知恵を内外から吸収していくようなアプローチがあっていいというのが僕の申し上げたいポイントなんですね。
 それからもう一点は、紛争予防のことに関して、もし日本に欠けている紛争予防についての最大のポイントがあるとすれば、国際情報に関する情報インフラを構築していく努力に著しく欠けている、だから紛争に振り回される構造になっている。
 どういうことかというと、一つの例として、例えば中東という問題に関して、フランスがアメリカとは違うシナリオを絶えず出してきます。それは一九七四年、石油危機の翌年に、フランスはパリにアラブ世界研究所構想というのを発表しまして、フランスが六割お金を出して四割はアラブ二十二カ国に根回しして、アラブ世界研究所というのを二十年かけてつくっちゃったわけです。パリに、セーヌ川のところから見えますけれども、中東とか石油とかアラブの経済、民族、文化、あらゆる情報が集約できる仕組みを頑張ってつくっちゃっているわけです。そういうインフラがあって初めて、アメリカの対中東戦略とか中東外交に対して仕切り返していけるだけの視線というか政策論が見えてくる。したがって、アメリカにとっては目の上のたんこぶぐらいフランスの中東外交というのは、ある意味ではへそ曲がりとも言えるぐらいアメリカに関して仕切り返してきます。
 翻って、アジア太平洋の問題に関して日本が、過去二十年間そういう情報の集積をするシンクタンク一つ育ててきたかというところにかかってくるわけです。北朝鮮の問題だって、アメリカからリークされてくる情報に振り回される以外、独自のソースだとか独自の解析力というものを持っていない国が、国際社会の中でマイクが回ってきたからあなたも堂々と自己主張しろと言われてみたって、主張する論拠がないですね。
 情報インフラがないというところ、これは戦前からの宿命的な構図になっているわけです。要するに、多国間の外交の中で紛争的なものに巻き込まれていかないためには、例えば中東についても、アメリカの中東政策と日本の中東政策のどこに本質的な差があるのか、アメリカのイラクとの関係と日本のイラクとの関係とどこに差があるのかを瞬時に出して、アメリカのあのワシントンにおける議論というのは、さまざまなそういう公共政策志向のシンクタンクが政策オプションを提示するところから議論がスタートしていくという非常に高いレベルでいくわけですね。ところが、湾岸戦争が起こった後、議論が二つに分かれるわけです。今となっては仕方がないじゃないかと、アメリカが百三十億ドル出せと言っているんだよという議論が、理屈はよくわからないけれどもだめなものはだめと言うか、二つに一つになっていく悲しみというか、それぞれ論拠がないんだけれども。
 だから、そこに紛争に巻き込まれていかないための最大の投資が必要な部分があって、要するに情報インフラをつくる、そういう面で公的政策を志向する本当の意味での中立的なシンクタンク、日本にだっていっぱいあると言う方がいるんですけれども、日本のシンクタンクとは違うんですね。我々もそういうのはありますけれども、企業が冠をかぶせて持っているシンクタンクとか、それから官公庁のアンダーテーカーといいますか、公益法人として存在しているシンクタンクぐらいしかないんです。中立的な外交政策を分析したり情報を蓄積したりするようなところはない。だから、フランスのモデルというのは大変に参考になると思います。
 以上です。
#19
○林芳正君 自由民主党の林でございます。
 お二人の先生方、本当にきょうはありがとうございました。二つずつぐらい、お二人に御質問したいと思うんです。
 まず宮崎先生には、アメリカの経済の活性化について大変興味深い分析をいただいたわけでございますけれども、構造改革それからマネタリーポリシーをきちっとやってきたということで、特に最近レーガノミックスの見直しといいますか、当時はブードゥーエコノミックスなんと言われてさんざんだったわけですけれども、結局その残したものが今の活性化につながっているのではないか、決してクリントン一人が偉いわけではないというような議論を聞いて、大変おもしろく聞いておったわけです。
 そこで、財政構造改革ということでフィスカルの方はなかなか、歳出の方は今からそう自由にいろいろできるという状況でもないと思うんですが、税の方ですね。レーガノミックスの税というのは、ロスーケンプ、ケンプーロスといいますか、これだったわけでございまして、この辺の税制の改革を、キャピタルゲインとかそれから所得税のフラット化ということをやったということでありまして、それが日本の今からやらなければいけない構造改革にどこか取り入れられるところはないのかなという点が第一点でございます。
 それから、先ほど来IMFのお話が出ておりまして、実は我が党の党大会にジェフリー・サックス教授をお迎えしてこの間お話を聞いて、ずっと一晩おつき合いをしたんですが、サックス教授は御案内のように大変批判的なわけです。あそこまで極端にいかないにしても、先ほど来出ているような批判をIMFの方も受けて、それにまたカウンターとして取り入れたようなプロポーザルをしているんだとこの間IMFの所長さんが来ておっしゃっておられました。一方で、先ほど山本先生からもありましたけれども、小渕大臣が行かれたときに金大中次期大統領が、IMFを要するにGHQのように使って、逆にそれで改革をやっていきたいと。逆に言えば、日本よりも先に構造改革が進んでしまうかもしれないなとそれを聞いていて思ったわけであります。
 IMFの中で我が国、これだけODAもやってアジアの考え方というのを多分ワシントンやヨーロッパの方よりは身近に感じられるわけでありまして、アジア的なプレスクリプションというのを、IMFで我が国も第二位の出資国でありますからもう少し反映していけないのかなということ。それから、アジア版IMFというのは昨年ちょっとなくなりましたけれども、アジア版IFCという構想を今いろんな方がおっしゃっておりますが、これについてどういうふうにお考えかというのが第二点であります。
 それから、寺島室長にお聞きしたいのは、まず情報通信のお話で大変興味深く聞かせていただきまして、例えばTMD、これも考えようによっては全く人が行かずに空の上でというような話でありますけれども、TMDとかBMDについてこの戦略情報戦争の中に入っていくのか。それから暗号、これが今から一番キーポイントになっていくんじゃないかと思っているんですが、最近の新聞を見ていますとRSAよりもいいやつができてというような話を聞いたんですが、その辺の日米の、ヨーロッパは余り聞きませんけれども、技術の進展度合いのあたりを、最近の情勢を聞かせていただければということ。
 それから第二点は、エネルギー安全保障のお話で、天然ガスのパイプラインを我々、勉強会をつくって一生懸命やっているわけです。これの外の話よりも、国内で今着々と電力、ガスともども天然ガス化が進んでおりまして、余りおくれていきますと国内のニーズが、一応玉の手当てができちゃったんで、さらに追加投資をしてパイプラインを引っ張ってくる意味が民間企業としてはなかなか薄れてくるというような感じがするわけですけれども、やっぱり国策としてこれがもし必要だとすればどういった形でやっていけばいいのか。この二点についてお伺いしたいと思います。
#20
○参考人(宮崎勇君) 林先生の御質問にお答えしたいと思いますが、第一にレーガノミックスについてであります。
 御承知のように、レーガノミックスというのは経済的に言えば大きく言って四つの点から成っておりまして、一つは大型の減税、一つは財政の歳出削減、それから一つは規制緩和、それに適正な通貨のコントロールということだと思うんです。そのいずれも、いずれもといいますか、ほとんど今効果が非常にあらわれているという点は否定できないと思います。しかし、それがすべてレーガノミックスのせいであったかどうかというのは私は疑問が残っております。
 まず、減税について多少皮肉な言い方をすれば、レーガンの減税政策というのはある学者の思いつきの提言であって、何とかカーブという、名前は控えますが、レストランに行って、紙ナプキンにこういうカープをかいて、これだけ減税をすればこれぐらいの効果が出ますといった、余り理論的な根拠がなかったというふうに考えております。したがって、それでよかったということは必ずしも言えないんじゃないか。ただ、一般的に減税をするという意味でやって、それが活力を引き出したという点は否定できないと思うんです。
 それから、財政の再建については、むしろレーガンのときには財政の赤字は拡大しております。カットしておりますし、カットしておりますのは福祉に関連するところが非常に大きくて、むしろクリントン政権になってからその処理に困っているということだと思うんです。ですから、一概に財政再建もレーガノミックスのために成功したんだというふうには言えないと思います。
 それから、ジェフリー・サックスのことなんですが、私は彼がロシアの再建等についていろいろ提言したというその経緯は多少は知っておりますけれども、今回の場合については新聞記事でしかよく存じません。しかし、IMFのやり方について、それはアジアの実情を無視したやり方である、つまり、先ほども申しましたけれども非常に強い緊縮政策を求めるだけではうまくいかないだろうと。こういう点は、私は彼の指摘はある程度納得できます。ただ、それで本当にほかの改革がうまくいく条件が整うかというと疑問だと思っております。
 それから、そのことと関連してIMFのことですが、韓国にとっては非常に苦い薬であったと思うんですけれども、私は、やっぱりその薬を飲まなけりゃいけないということは新しい大統領も理解されて受け入れられたんだと思っております。
#21
○参考人(寺島実郎君) まず、情報通信のことなんですけれども、この情報通信のことについて、アメリカが大統領府のゴア副大統領を中核にしてあらゆる省庁をまたがって戦略的に情報通信戦略を組み立てていることについてもっともっと我々は注意を払わなきゃいけないということです。そういう中で、防衛という分野で情報通信技術というものがいかに重要な役割を果たしているかということは、林先生はTMDとか暗号のことを触れられましたけれども、僕は日本の防衛の基軸である専守防衛という概念が技術的に可能な時代が来たんじゃないかという気がしているんですね。
 というのは、致死兵器を持たなくてもこの国の防衛力を高めるというか、この分野においてこそ日本とアメリカが協力していくべき分野で、基地を置かなくても日米軍事協力ができるという考え方に傾いていっている理由というのはそこにあるわけです。つまり、TMDとか暗号とかも含めて、いわゆる情報システム制御能力をどうやって高めるかというところに専守防衛の技術開発の最大のウエートを置いていくべきポイントになりつつあるんじゃないか。それが第一点です。
 それからもう一つ、エネルギー安保のガスパイプラインのことについて指摘があったわけですけれども、今まさにこの問題における日本の感度のなさといいますか、エネルギーの価格が安くなっているから、どの民間企業も、いわゆる我々の言葉でプライスコンシャスと言うわけですけれども、価格に対する関心だけが先行していて、構造的な国家としてのエネルギーの安定とかということについて関心が向かなくなっている。
 さっき言いかけたんですけれども、一日五百万バレルの石油をのんでいる国なんですね。もし一〇%中東依存度を下げてこの国の安定感を高めようとしたら、どこかにサプライソースを求めなきゃいけなくなる。今、当社が三菱とかアメリカ、欧州の企業とジョイントでサハリンで大きなオイル、ガスの開発をやっています。もう一つ、通産省、SODECO肝いりのサハリンTというのとサハリンUというのが動きます。十年以内にもしこれがもう絵にかいたもちのとおり稼働したとしても二十五万BDですね。だから五%ですね、日本の需要からすれば。
 じゃ日本にとってエネルギーの安定化を図るためにどういう戦略が残されているのかといったときに、結局突き詰めていくと中南米なんですね。中南米にどういう布陣をしておくかということなんです。もっと言うと、ベネズエラとかコロンビアなんですね。コロンビアは太平洋岸の産油国ということで、これからは大変研究しなきゃいけない対象なわけですけれども、太平洋岸にパイプラインを持ってくるということになると、ゲリラとかセキュリティーの問題があってどうしても、イギリスのBPなんかもカリフ海側の方に出している。
 問題は、カリフ海側からの石油のソースを日本に運ぶとなるとパナマ運河問題というのにぶつかるんですね。九九年パナマ運河返還という問題が大変な話題に多分もう間もなくなってくると思います。要するに、日本はどんどん中東への依存を高めて、でっかいタンカーをつくって効率的に石油を運んでこようというシステムになれ切っちゃったために、パナマ運河を通れるタンカーなんかないんですね。パナマ運河というのは、横三十二メートル、縦十二メートルしかない狭い運河なんです。いわゆるパナマックス仕様といって、六万五千トンのタンカーしか通れない。だから、小さなタンカーしか通れないから、ピストンをやってもすごく効率が悪くなるし、価格が高くなるからどこも手をつけないわけです。だけれども、ベネズエラとかコロンビアヘの布陣は日本の国家戦略上大事なんですね。
 そこで、例えばパナマ運河の横にあるパナマ・パイプラインみたいな構想だとか、いろんな構想が実は出ているんですけれども、価格が軟化しているから、当面必要がないからということで先送りにしているんですね。以前でしたら、通産省エネルギー行政という枠組みの中で大変な踏み込みがなされたんですけれども、今は行政改革だとか規制緩和だとかという流れの中で、民主導がいいという、悪い意味でのそういう効果が出てきていて、だれも旗を振らない。したがって、いつの間にか気がついたときには、多分今世紀中に日本の石油の中東依存度は九割超しますね、このままいけば。これはIEAでも大変問題になってくると思うんですね。
 アメリカは非常にしたたかにエネルギー戦略を打っていまして、もうおととしですけれども、中東に対する石油需要の依存度というのは一割を割ったんですね。九%になったんです。いつでも米州圏からの供給でもって切りかえられるように、価格が安いから中東から持ってきているけれども、つまり完全に米州エネルギー自給構想で待ち構えているわけですね。欧州は予想以上に北海原油が出ている。中央アジアからのパイプラインはほとんど欧州方面に抜けるプロジェクトになっているということで、もし第三次石油危機があるとすれば、それはアジア地域に偏差した石油危機になるんじゃないかという議論があるぐらい、その構造は非常に不安なんですね。
 そういう中で、たまたま今回アジアが失速して見直しに入っているということをチャンスと考えなきゃいけないというか、再構築しなきゃいけないというのが大変重要なタイミングになっていて、そういう意味合いにおいて、おっしゃったパイプラインの問題なんかも真剣に考えなきゃいけないときに来ているのじゃないかと私も思います。
#22
○上田耕一郎君 お二人の参考人、ありがとうございます。日本共産党の上田でございます。いろいろ御質問したいことがあるんですけれども、時間の関係でお二人の参考人に一問ずつお伺いします。
 宮崎参考人には、アジア経済の今の危機的状況とAPECの問題をお聞きしたいんです。
 御存じのように、APECは、クリントン大統領の強い指導性のもとに九四年のボゴール宣言で貿易投資の自由化の目標を決めたんですね、発展途上国は二〇二〇年というんですけれども。考えてみると、宮崎さんの言われた相互依存効果プラスの時期に結ばれたものなんですね。それが今のようなこういう状況になってくると、それぞれのアジア諸国が、宮崎さんが言われた金融システムの構造的改革、これは先進国に合わせろということだと思うんだけれども、それだけで足りるんだろうかと。やっぱりそれぞれの国がこの危機の中でもっと農業、工業を中心にした自律的発展を目指す必要に改めて気づき始めているわけで、そういう点でいうと、関税問題にしろ、旧来の保護主義の復活と言われかねないような問題も含めて、もっと自律的な発展を各国が援助する、特にODAの使い方なんかも含めて。
 ですから、今までのアジア経済がどんどん進んでいったときに、グローバリゼーションの方向に従って貿易投資の自由化をどんどん進めるという方向でいいのかどうかということが問われているように思うんですけれども、御意見をひとつお伺いしたいと思います。
 それから、寺島参考人には、新ガイドラインと日米中のトライアングル関係問題についてお聞きしたいんです。
 先ほどの米軍地位協定についてのドイツと日本の比較は大変印象的にお聞きしました。最近、ブレジンスキーが「ユーラシアの地政学」の中で、日本は米国の実質上の保護国だとずばり言って反響を呼んでいるんですけれども、ドイツと日本のそういう対米関係の質的な違いが言われるような結果を招いていると思うんです。
 新ガイドラインというのは、日本の世論には朝鮮有事ということがうんと強く出たでしょう。実際には、先ほど言われましたように、北朝鮮はむしろ米国との国交正常化を考えているし、アメリカも米朝枠組み合意以後その方向を見ていますし、北朝鮮が米軍のいる南朝鮮を攻めるなんということはほとんどあり得ないので、実質的には僕はアメリカのこの新ガイドラインの大きな戦略的ねらいは中国問題にあるんじゃないかと。これを表ざたにすると大問題になるので、周辺地域には地域名は入っていないんだということで隠しているんだと思うんですね。
 アメリカは台湾関係法をつくって持っていますね。それで中国側は、人民解放軍の元参謀長なんかは、もしこの新ガイドラインに台湾が含まれるなら侵略行為だということまで公然と言っていますからね。そうなりますと、日中の友好という大きな観点から考えると、こういう新ガイドラインで台湾問題を事実上焦点にするような方向というのはむしろマイナスになるんじゃないだろうか、そう考えるんですね。
 ところが、中国側は日本ばかり批判して、アメリカについて、台湾関係法についてはほとんど物を言わないということで、かなり中国側も複雑な態度をとっているんですけれども、日本と中国またアメリカ、こういうトライアングルの関係の二十一世紀の展望を見て、本当にこの新ガイドラインというのがプラスになるのかどうだろうか、これはやっぱり根本的に考え直すべきだと考えるんですけれども、御意見をお伺いしたいと思います。
#23
○参考人(宮崎勇君) 上田先生の御質問にお答えしたいんですが、APECが貿易投資の自由化を理念としている、これを推進しなければいけないということなんですが、私は、基本的にはそういう方向が世界経済の発展に寄与すると思います。つまり、国境はなくなるという形で相乗効果のプラスを期待したいと思います。しかし、国によっていろいろ事情が違いますから、自由化のテンポですとか、どこからするかというようなことについては慎重でなければいけないと思います。特に投資の面について言えると思います。
   〔会長退席、理事板垣正君着席〕
 貿易の方はかなり自由化が進んでおりまして、そういう意味で、中国のWTO加盟というような点は日本としてもバックアップしなければいけないと思っております。
 ただ、今日の混乱の大きな要因であります投資の面についてはいろいろ手順等を考えなければいけない。先ほどタイのところでちょっと申し上げたんですけれども、タイに対する外国からの資本流入というのは主として短期資本が多かった。これは、成長しているときには非常に即効的で効果的なんですけれども、少し経済が悪くなるときに逃げ足が速いというような問題があります。そういう短期資本についても無制限な自由ということになりますと、やはり本来の自由化の精神と違うような現象が起こってくると私は思っております。したがって、投資については一つのルールが確立されなければかなり混乱が起こると思います。
 ただ、アジアの危機について、アジアの一部には、これはアメリカの一部の投資家の投機によるんだというような非難がありますけれども、私は、今日の市場というのは個人がコントロールできるような問題ではないと思っております。むしろ、市場全体におけるルールが確立していない、そしてまた、先ほど申しましたように、それを受け取る側の金融機関が情報開示が不十分であるとか、あるいは投資をする、投資を受ける双方において評価システムというものがはっきりしていないというところに混乱があると思っております。
#24
○参考人(寺島実郎君) 上田先生の御質問に対して御答弁させていただきたいと思うんですけれども、今おっしゃるように、日米中の関係がこれから非常に微妙だということの極めて象徴的な問題が尖閣問題だと僕は思うんです。
 その尖閣問題というのがどういうことかというと、我々にとって非常に不思議なのは、アメリカは尖閣問題に対してコミットしてどちらかに肩入れすることを避けていますね。この問題ではできれば中立でいたいというスタンスを本音の部分で持っていますね。それはどうしてかというと、日本からすれば、アメリカのそのスタンスは論理的にはおかしいんですね。といいますのは尖閣というのは沖縄が返還される前はアメリカ自身が施政権を持っていたところなんだから、そういう意味合いにおいて、この問題について我々はどちらに帰属しているかよくわからないから当事者間の状況をよく見極めてというようなスタンスをとること自体は、日本側からすればおかしい話なんですね。
 ところが、そこに逆にアメリカがいかに中国に対して配慮しているかということが象徴されている。そういう面で、これから嫌でもこの尖閣に象徴される米中日のトライアングルの微妙なゲームに我々は巻き込まれていかざるを得ない。万一、そんなことはあり得ないと思いますけれども、中国が尖閣を武力的に占拠するというようなことが仮に起こったとしたら、絶対にアメリカは日米安保を発動させないだろうと思いますね、このナーバスな問題に関して。それぐらい微妙な問題だと。
   〔理事板垣正君退席、会長着席〕
 というのは、米中関係というのは我々が見ている以上に歴史的にも根が深いし、それからしかもお互いに、戦略的パートナーシップという言葉をこの間江沢民のワシントン訪問の際に使い始めましたけれども、戦略的パートナーシップというのは米中同盟のような単純な話ではなくて、相手を一がどの存在として高く持ち上げて、そことのパートナーシップでアジア太平洋のゲームをしていこうという意識のあらわれなわけですね。
 そういう中で結局大事なのは、僕はさっき、ガイドラインはアメリカのフラストレーションを解消する上では一歩踏み込んだけれども日本のフラストレーションを解消するという意味では踏み込んでいないということを言ったわけですけれども、中国に配慮してガイドラインの見直しに踏み込まないというそういう文脈じゃなくて、私の発想としては、中国に対してもアメリカに対しても日本が主体的に防衛構想を持っているんだということを示す中でガイドラインを見直すことに参画すると。そういうスタンスを貫かないと、中国に対しても、これから出てくるであろうロシアに対しても、北方四島の問題に対してさえ日ロ間で完結しない問題になっていっちゃう。
 というのは、ロシアから見たら日本というのは先ほどの先生の御指摘のようにアメリカの保護国だから、もし四島を返したらそこに米軍基地をつくらないという保証を日本ができるのかという話になっちゃうわけです。だから、ロシア内のコンセンサスさえつくり切れないじゃないかという話を当然持ち出してくる。
 つまり、北方四島の問題だって尖閣の問題だって、我々が思っているほど二国間の問題じゃない構図になっているわけですね。そういう中で、日米の安保それからアジアの多国間の安全保障の仕組みなんかについてやはり日本が主体的な構想を示す中で、中国との関係、ロシアとの関係というものを組み立てていかなきゃいけない、そういう状況になってきている。だから、対米配慮でガイドラインを見直していくだけじゃなくて、あるいは対中配慮でガイドラインを見直さないのでもなくて、我々の国というものがどういう防衛構想の中で、東アジアのみならずアジアの安定に対して存在感を持っていこうとしているのかという構想が問われているのだろうと私は思います。
 以上です。
#25
○永野茂門君 自由党の永野でございます。
 お二人の先生に大変に興味ある有用な話を聞かせていただきまして、感謝申し上げます。
 本日は時間がありませんので、寺島先生に三つの問題を申し上げますので、お答え願いたいと思います。宮崎先生には、お伺いしてお聞きしたい問題がありますので、よろしくお願いしたいと思います。
 第一は非核の有効性についてであります。この非核の有効性というのはそれなりによくわかりますけれども、アメリカの核の傘がないことを前提にしますか、それともあるということを前提にしますか。あるいはさらに、日本に対しての核攻撃というのは恐らくないんだろう、あるいは世界的に核攻撃がないかもしれない、そういうようなことを前提にしますかどうですかということが第一問です。
 それから第二問は、今ロシアの問題に触れられましたので私の質問が消滅したと申し上げてもいいんですけれども、本日の話の途中までは、日米中トライアングルの関係の中でどういうように処置していくか、どういうような対応をやっていくかという話が非常に強調されてきたわけであります。
 私は、アジアの問題を考える場合に、北方四島の問題もありますけれども、それを仮に別にしたとしても、やっぱりロシアはアジアの国であって、アジアの平和、安定、協力、そういうものを考え問題解決を考えたり、あるいは先ほどもちょっと出ましたエネルギー問題なんかも考えても、どうしても非常に重要な一国であって、今ちょっと大国でない状態にあるわけですけれどもポテンシャル的に大国であることは間違いないし、ロシアについて大いに考察し考慮していくことが多いと思っておりますが、このロシアについてどういうような御見解をお持ちですかというのが第二問です。
 それから第三問は情報戦争の問題であります。きょうのお話の主体は、エレクトロニクスを中心とする指揮・情報システムに対して何らかのエレクトロニクスを含む物理的な力を加えることによって、あるいはハッカーの力等も利用してこのシステムを無能の状態に追い込むということを中心にお話になりましたが、アメリカの中でこれを別な使い方、つまり偽情報を流す、さらにもっと深く言えば集団戦の戦略に使うというようなことについてどの程度研究が進んでいるかということについてお話をお願いしたいと思います。
 以上です。
#26
○参考人(寺島実郎君) 非核の有効性について御指摘があったわけですけれども、私の視点は、現実に日本がアメリカの核の傘の下にいるという事実認識と、それから一歩一歩、一つずつ主体性を持って核の問題に対する発言力を高めていくという方向性と、やっぱり両方認識しなきゃいけないという立場でいるわけです。今現在がアメリカの核の傘の下にあり、であるがゆえに、逆に言えばアメリカにも一定の距離をとった非核の政策の中に踏み込んでいくことが、次の多国間の外交の中での理念性として有効であり、かつ重要であろうという認識です。
 それから、核攻撃の可能性がないというふうには、もちろんゼロとは当然言えないと思います。ただ、あらゆる手段を講じてその可能性を削減するシナリオ、さっきのいわゆる国際中核情報都市みたいなものをつくるのも外延的ではありますけれどもその構想の一環だし、多国間の外交の場で非核理念を掲げている国としての存在感をより高めるごとも核攻撃に対する一つの大きなスタンスになるでしょうし、そういう意味で非常に重層的な非核戦略というものが必要なんじゃないかというのが私の議論のポイントでございます。
 それから、ロシアについては、ロシア崩壊ということで若干ロシアを軽く見る傾向があるわけです。先生御指摘のとおりに、これから日本にとってロシアというのは大変重要な、何も資源の供給ソースとかという意味じゃなく、ロシアの存在感そのものが安全保障の問題にとってもやはり究極的には最大の問題になってくるというふうに認識しております。
 しかも、ロシア経済が、極端に言えばマフィア経済なんていうことを言う人もいますけれども、ソ連邦崩壊後、今底を打ったと言われております。新しいロシア型の新興財閥といいますか、金融・産業複合体という言葉がございますけれども、かつて軍事・産業複合体と言われた国だったわけですけれども、金融資本ががたがたになった産業資本を買いあさって再編、統合していく流れの中にあります。そういう中で経済のシステムの再編が行われているわけですけれども、余りに激しい商業主義の導入というようなことで、国内の少しでも愛国心を持ったような青年たちが新しいロシアの経済のつくり方に大変な失望感を深めている。国内的にもそういうことから大変危険な要素をはらみながらロシアが動いているということに我々はもっと関心を持つべきだろう。先生がおっしゃるとおりだと思います。
 それから、情報戦争のことにつきましては、アメリカというのは、ペンタゴンの周りを取り巻いているシンクタンクを含めて、非常に多角的に情報システムの制御能力を高める研究開発を進めているというふうに思います。事実、結局アメリカの産業が再活性化しているということとこの問題というのは大変リンクしていまして、先ほど宮崎先生の御指摘にもあったように、軍事産業の民生転換というか、本来は軍事目的で開発した技術を民生の分野に転用し投入するというところに今のアメリカの再活性化の一つのがきがあり、しかもその大部分は情報システムの分野にその産業が大きく育ってきている。しかも、そういう分野を育てるための仕組みといいますか、例えばベンチャーキャピタルとかベンチャーファンドだとか、あるいはNASDAQ的な仕組みがアメリカの新しいそういうソフトの情報システム産業を育てる上で大変有効に機能したというのが、僕はアメリカの再活性化にとって大変重要だったと思うんですね。
 日本のバブルというのは結局、日本の金融セクターにいた人たちというのは、土地絡みの担保のとりやすいところにだけ融資して、金が回らないような仕組みしか思いつかなかった。逆に言えば、アメリカは戦闘産業というか最も戦闘力のある二十一世紀の中核産業にお金が回るような仕組みを少なくとも思いつき、かつ実現したというところにあの国のすごみがあるわけで、そういう面での情報システムの制御に向けて、彼らが核の傘から情報の傘へということを盛んに言い始めているところに我々はもっと注意を払うべきだというふうに思います。
#27
○永野茂門君 ありがとうございました。
#28
○田英夫君 社民党の田英夫です。いいお話をお二人から聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 寺島さんに伺いたいと思うんですが、お書きになりました「日米中トライアングル・クライシスをどう制御するか」という文章を大変同感を持って拝読いたしましたが、冒頭に松本重治さんのお名前を出しておられる。私は孫弟子のようなものですから、大変感謝しております。
 この日米中トライアングルということは、実は昨年、新ガイドライン問題が出てきたときに、内容を申し上げるとあれですが、与党三党のガイドライン問題協議会という場でかなり激論になったテーマであります。私が皮切りをしたんですが、要するに、今までの日本政府の外交の基本は日米基軸で、日米安保条約中心ということになっていたところに問題があるんじゃないだろうか、やはり日米中トライアングルという視点を重視するべきじゃないかという問題提起をして、その与党三党の代表団がアメリカへ行きましたときにこの問題を出されたら、ブレジンスキー氏がやはり日米中トライアングルを重視すべきだという意見を言ったそうであります、私は参加しなかったんですが。それから、昨年のちょうど三月だと思いますが、ワシントン・ポストにいたオーバードーファー氏がやはり同じ日米中トライアングル重視論を述べております。それから、与党三党のガイドライン問題協議会で、二十回ぐらいやったんですが、最後に松永信雄元駐米大使を呼んで御意見を聞いたところが、松永さんも日米中トライアングル重視論を述べられた。
 結局、与党三党の合意はできなかったんです、ガイドライン問題については意見が食い違いましたから。しかし、日米中トライアングルということについては、何となく初めの議論よりも合意に近づいたような形で終わりました。
 今、改めて寺島さんのこういう御意見を拝聴して、これから二十一世紀に向けて、確かに日米中というのはバイオリズムがあっておもしろい歴史をたどってきているわけですが、これからの二十一世紀に向けてはやはりその関係を固めていく時期ではないかと思います。それには日本は何をしたらいいのか、この点を教えていただきたいと思います。
#29
○参考人(寺島実郎君) 今、田先生がおっしゃった問題意識というのは私は大部分共有するわけですけれども、私は、日米中トライアングルというのをどういうふうに構想したらいいのかということを盛んに求めてきているわけですけれども、トライアングルの一角を占める存在たり得るのかという状況になってきていると思うんですね。
 米中という、どちらかというとそれぞれが自己中心的な価値、アメリカはデモクラシーと市場主義というものを世界に定着させることに激しい情熱と自己確信を持っている、中国の方はまた別な意味で自己中心的、中華思想とも言えるような自己中心性を持った国。それぞれがある種の超大国としてのパワーを持っている国の間に挟まって、今まではアメリカの対アジア外交の基軸は日本だという信頼感と期待の中に存在していたと思うんですけれども、アメリカからアジア太平洋を越えてこっちサイドを見たときに、明らかにバイオリズムから考えてみてもトライアングルになりつつある、御指摘のように。
 アメリカのアジア外交というのは、国務省の中の記録をたどっても、この約百年間、中国を基軸とするのか日本を基軸とするのかという議論を繰り返し繰り返しバイオリズムのようにやってきていて、そういう中で僕は、日本がそのトライアングルの一角を占める気迫とシステムを構想しているのかというところに返りたいと思うんですね。
 そういう中で、中国に対しても一定の距離、アメリカに対しても協調を前提にした一定の距離感を持ち、尊敬されるような関係に持っていくためには、どういう魅力を自分が装備していくのか。中国にとって日本の魅力はただ単に技術だとか経済援助だとかというだけじゃない、あるいはアメリカにとって日本の魅力とは一体何だということを考えてみたときに、やはり僕は、この国が今こそ淡々と粛々と、国づくりというさっきの議論に戻るわけですけれども、内需を強め国民生活のレベルを変えて、日本というのはすごい、とらの子産業である製造業というのを大事にしながらいい国づくりをしているんだなということで発信するというのがまずベースになると思う。
 軽装備経済国家としての行き方、いろんな行き方が世界の国にあっていいというか、全部が同じような普通の国になる必要はない。日本らしい国のあり方みたいなものをきちっと説明できる国づくりをしていく以外にそのトライアングルの一角を占めることはあり得ないだろうな、そういうふうに考えます。
#30
○末広まきこ君 まず、宮崎先生からお伺いしていきたいと思うんですが、アメリカ経済活性化の背景に構造改革の早い実現があった、それは何かというと規制緩和と巧みな金融政策であったと。このお話を聞いていまして、振り回されている金融政策と巧みな金融政策との差はどこにあるのか、埋めるにはどうしたらいいのかという点をお伺いしたい。
 それから、寺島先生にお伺いしたいのでございます。首都移転というのは大変夢のあるプロジェクトだと思うんですけれども、何しろ現実が現実でございますので、国家の再設計という意味では夢がある。それと同時に、個人のライフスタイルの転換という方を見詰める必要があるのではないか。国家が再設計するならば、人も人生設計をもう一度検討してもいいのではないでしょうか。週休二日制というものが実現している現状で何を求めていくのか、生きている喜びをどこに感じるのか、高価ではないが気楽に楽しめる人生、そういう人生設計の再検討、何に向かっていくんだという、それも必要なのではないのかなと思いました。この点、お聞かせ願えればと思います。よろしくお願いします。
#31
○参考人(宮崎勇君) 金融改革の点でございますけれども、私が申し上げたのは、今日、日本で金融機関の不良債権の処理が問題になっておりますけれども、アメリカはこの種の問題を日本よりかなり早く片づけたということです。もちろんアメリカも懸命といいますか、巧みに迅速に処理をしたわけではなくて、問題がかなり切迫してから公的資金の導入ということで、おくれたものですからやっぱり法に触れるというようなことで監獄に引っ張られた人もかなりいるわけですが、もうちょっと早くやればアメリカでももっとうまくいったと思うんです。しかし、それにしても日本よりはかなり早く大胆にやっている。
 その理由はいろいろありますけれども、やはり金融の重要性ということについての認識がアメリカの方が高いということ。日本の金融機関というのは、いわゆる護送船団方式と言われますように秩序が変わるというようなことが余り念頭にないものですから、金融システムのあり方について考えることが、危機感が少なかったんじゃないかというふうに思っております。そういう金融危機の回避が日本より早かったという意味で構造改革が先行したと申し上げたわけです。
 もう一つの構造改革が日本より先行したのは情報通信の分野におけるディレギュレーションであって、そのことが寺島さんもおっしゃったように今日のアメリカの設備投資に情報通信産業が非常に大きく貢献し、また経済成長をもたらし、その結果雇用がふえているのも主として規制緩和が行われた部分で行われているわけです。そういう意味で全体的に日本の構造改革はおくれているというふうなことを申し上げたわけであります。
#32
○参考人(寺島実郎君) 先生御指摘の個人のライフスタイルの問題というのは、私ももちろん大変関心といいますか、重要なポイントだろうと思っております。
 特にどういう意味でそれが重要だというふうに私なりに考えているかというと一戦後の日本の教育というものを私自身も昭和二十二年生まれですから受けて育った世代なわけですけれども、世界をいろいろ回ってみてますます思うのは、結局この国の人間というのは、簡単に言うと広い意味での教育というもので次の世代を育てるというのが国としても家族という意味においても大変重要なわけですけれども、徹底した私生活主義といいますか、要するにミーイズムの世代というものを育ててきちゃっているわけです、ライフスタイルとしても。そして、社会工学的な議論というのが物すごく少ない。
 といいますのは、例えば新しい公共心というようなものを持った日本人というものを育てないと、それは全体主義とか国家主義とは違って、パブリックということに汗を流したり貢献したりすることに対して大切な価値を感ずる人間を育てないと、国を守るもなければ、あるいは経済を安定させるもない。みんなが自分の私生活、個人主義じゃないんですね、個人主義というのは全体に対して個の価値を守ろうとするある種のたくましさに裏づけられた思想なわけですけれども、私生活主義というか生活保守主義みたいなものだけを育てちゃっている。
 だから、社会工学的議論が必要だというのは、世界を回ってみると、さっきの言葉ですが知恵比べに入っているわけです。どうやって若い世代に公的な問題意識を持ってもらうか。例えば、アメリカのクリントン政権がやっているのは、三年間いわゆるパブリックな分野でボランティア活動をした人間に大学に行くときの費用を支援しようというようなプログラムをつくってみたり、手をかえ品をかえして若い世代が公的な問題意識を持った人生設計図を持ってもらおうということでみんな大変な苦労をして知恵を出しているわけですね。
 そういう中で、例えばの話が、若い世代だけじゃなくて高齢化問題が大変重要になってきている中で、社会工学的という意味は、一定の仕事を終えた、社会人としての生産活動を終えた世代の人たちを教育の現場にリクルートして、子供たちに伝承とか文化とか日本人とかというものを、あるいは現場がどう動いているかという話を一番臨場感を持って語れる世代を教育の現場にリクルートしていくようなアイデアだとか、つまり元気な老人がふえていくのを単なる福祉の対象としてじゃなくて活力のある者としてどうやって活用していくかだとか、いろんな知恵が出されないと社会的な安定とかそういうものはなされない時代になっている。それが僕の言う社会工学的という意味なんです。個人の生き方の問題、本人の決意の問題としてだけじゃなくて、社会のシステムの問題として、そういう種類の知恵、つまり子供たちにどうやって公的な問題意識を持たせるか。ボランティア活動の問題だって、あるいは教育の現場に高齢者をリクルートしていくような問題だって、大変重要になってきている。
 一つだけシンボリックな話をしたいわけですけれども、スペインのバルセロナにサグラダファミリアという教会をぶっ建てているプロジェクトがあります。もう百年以上も建て続けているんですけれども、この先まだ百何十年かかると言われているわけですね。建築を志しているような日本人の若い人たちがボランティアで働いています。僕はそれらの人と話してつくづく思うんですけれども、なぜそんなことをしているのと言ったら、自分の人生をかけられるような、歴史に自分のつめを立てるようなことに貢献してみたかった、何かやってみたかったということがあるんですね。僕は、今のこの国の閉塞感とか失速感というのは、若い世代の少しは問題意識を持っている人たちに目に見える形で参画したいというプロジェクトを見せていないところだと。
 そういう意味合いにおいて、失業率三・五%と言っておりますけれども、二十歳代の人の失業率は七%を超していると言われているわけです。特に若い女性の失業率は物すごく高いと言われているわけです。そういう中で、目に見える形で希望を与えるようなプロジェクトをぎりぎり構想していくということが、経済のセクターにある人間にとっても、あるいは公的セクターにある人間にとっても大切なんじゃないかなという気がします。
#33
○末広まきこ君 ありがとうございました。
#34
○笠原潤一君 両先生の大変に示唆に富んだお話、非常に感銘して聞いておりました。
 宮崎先生にお尋ねしますが、かつてメキシコが金融不安を起こしましたね。これと今度の韓国の問題とでどちらがより深刻かということ。
 それからもう一つは、IMFが支援を決定したんですが、支援を決定した当座は韓国というのは非常に国辱的な問題だということでわあわあ言っておったわけです。ところが、急にこのごろになってIMF寄りの姿勢が当然であるというふうに言い出してきたんですよ。私が言っちゃおかしいかもわかりませんが、韓国という国の国民性によると思うんです。それで、考えてみますと、韓国は円筒形経済です。中小企業が育っていないんです、実際の話が。そこへIMFが支援して、メキシコとは違うんだけれども、果たして本当に効果があらわれるだろうかという心配があるんです。言うなれば日本のかつての戦前の財閥の時代みたいなものであって、中小企業とか小企業というのは三角形的な、そういうピラミッドのような形をしていない経済ですから、そういう点ではIMFの支援が果たしてうまく実行できるかどうかという心配があるんですが、その点はいかがであるかということです。
 それからもう一つは、寺島参考人にお聞きしたいんですが、実は今、首都移転の話が出ました。それで、実際日本という国は一億二千万ですね。各国の制御できるというのは、このごろ変わってきまして、大体一千万単位ぐらいの人間が一番制御しやすいというか非常にコントロールしやすいんです。ですから、考えてみますと、連邦制という問題も出てきたんです。ドイツなんか完全に連邦制ですからね。そういう点からいって、連邦制の問題で、連邦に十とか十五、九州とか四国とか、いろんなところに新しいキャピタルをつくる。アメリカも、ワシントンというのは最も政治的な町ですが、ロサンゼルスがありシカゴがあってシアトルがあってデンバーがあってというような、アメリカには中核的な町がたくさんありますね。もちろん連邦的です、連邦制ですから。首都移転も非常に大きなインパクトです。これは私ども岐阜県もやっていますから、三カ所にもう決めましたから私は賛成していますが、しかし一方、そういう問題もあると思うんですよ。ですから、よりどちらが非常に効果的かということをお伺いしたいと思うんです。
 それからもう一つ。日本の方は首都移転にかかるコストが大体十四兆円ぐらいと言われているんですよ。ところが、今先生がおっしゃったように二百兆、三百兆で向かわなきゃ実際の首都はできません。政治と経済は表裏一体ですから、やっぱり政治だけでは何ともならぬと。政治、経済が一体でないと結果的には、オーストラリアのキャンベラもそうですけれども、オーストラリアが発展しないというのはキャンベラに首都があって実際に全然伸びていかないんですよ。ですから、政治と経済は一体でなきゃいかぬという論理もあるんですが、その点はいかがですか、お伺いしたいと思うんです。
#35
○参考人(宮崎勇君) メキシコと韓国の違いでございますけれども、数字的にはっきり申し上げることはできません。しかし、メキシコの場合には公的な部分における債務が非常に大きかったということで、韓国と若干模様が違うと思います。それから、韓国の場合には、これは韓国だけじゃなくてアジア全体なんですが、どちらかといえば足の速い資本の流入があって、したがって逃げるのも速かったということがあると思います。
 それから、後段の中小企業が育っていないという点は先生の御指摘のとおりで、これは台湾の場合と比較してみると明瞭であります。台湾の経済は足腰が強いと言われるのは中小企業が非常にしっかりしているからということで、韓国の場合には財閥の力が余りにも強過ぎた、したがって中小企業も大企業の中の労働組合も十分に成熱していなかったということが今日の危機の一つの大きな原因だと思います。したがって、IMFがやっている処方せんだけでは私は不十分だと思っております。そういう構造的な問題についてもメスを入れなければいけない。しかしこれは、IMFが考えるというよりは韓国自体が考えるべき問題だと思っております。
 なお、メキシコの問題については、当時、寺島参考人がおられたので、もっと正確なお答えができると思います。
 なお、先ほどの末広先生に対する私の答えの中で不十分なところがありましたので、補わせていただきたいと思います。
 先生、構造改革がおくれた中で、一つ金融政策ということをおっしゃいました。そして、これが日本と違うということなんですが、私が申しました金融政策が巧みであったというのは、むしろ通貨のコントロールをアメリカはうまくやったということで、これまたクリントン政権であるから、レーガン政権であるからということじゃなくて、ボルカーさんあるいは現在のグリーンスパン議長になりましてから、双方が自主性を持って金融政策を巧みに運営したということだと思います。
#36
○参考人(寺島実郎君) 先生がおっしゃった連邦制的な分権化という流れも、僕は日本が本当に構想しなきゃいけない、研究しなきゃいけないテーマだというふうに思います。
 ただ、一つ考えなきゃいけないのは、国家としての分権による活力を出すという方向と要するに総合化というのは、これは企業経営でも今はそうなんですけれども、グローバル化してどんどん分権化してどんどん関係会社に分社化していくという戦略とそれを束ねていく総合戦略というのは同時並行しなきゃいけないわけで、仮に分権化を志向する一方でも国家としてのきちっと目鼻だちの整った戦略性が要るわけです。ただ任せりゃいいというものじゃなくて、国家は国家の束ねる、やるべきことがある。そういう面で、その分権型ネットワークといいますか、ネットワーク化して総合戦略を持つという意味が非常に重要になるわけです。
 そういう文脈で首都移転なんかもしっかり構想すべきで、ただ首都に何か新しく集積すればいいというものじゃなくて、繰り返しになりますけれども、分権との整合性による知恵だとか、情報インフラを光ファイバーなんかを使ってネットワーク化していく。大きな武器にしていくべきだと思うのも、東京を中心にしてはその種の新しいネットワーク化の構想というものが組み立てにくいということもあるので、更地の上に一つの中核都市というものをイメージしてみるのがこの国を活性化する上でいいのかなと、そういうポイントが一つございます。
 それからもう一つは、政治と経済の距離の問題なんですけれども、私自身、ワシントンとニューヨークに生活しておって一番感じているのは、逆に日本の問題はこの距離が近過ぎるところにあると。つまり、霞が関と丸の内、いわゆるセクターの中心が一つのところにだんごのようになっていて、電話一本かけて夜会うという、そういう関係は果たしていかがなものか。むしろ一定の適切な距離といいますか、やはりその距離が非常に重要で、例えばそれが仮に一時間離れていても、我々はよくニューヨークからワシントンに飛んでこれから関係の官公庁の人たちと議論しようというふうなことがいろいろございましたけれども、どろどろになっていくんじゃなくて、一定のしっかりしたけじめの中で、変な話ですが、飛行機の中できようのミーティングの方向性というものを冷静に考える距離感というのは意味があるなとつくづく思ったわけです。二重投資のむだみたいにも見えるわけですけれども、やはりそこは政治と経済の距離というものをとってみる試みにかけるべきじゃないかと思います。
 それから、今、宮崎先生の方からあったメキシコの件ですけれども、メキシコというのはやはりアメリカのおひざ元で、アメリカにとってみれば一種の、今で言えばNAFTAのメンバーでもある国ということで、アメリカが原因をつくりアメリカが面倒を見たというふうな展開になっておりますけれども、アジアに関しては、アメリカとアジアとの距離感もあって、日本の役割が非常に問われているというところに一つ問題の違いがある。韓国にしても、アジアの国というのはさっき宮崎先生も御指摘のように、メキシコとは違って、貯蓄率の高さとか経済というものの下を支えているインフラの部分で中南米の国なんかよりははるかに安定感のある状況にあるというふうに思っています。だから、そういう面では話がかなり違うなというのが僕自身の印象です。
#37
○山崎力君 まず、宮崎先生にお伺いしたいんですが、経済が素人の私から見ますと、一番のアジアの問題というか今回の問題というのは、雁行成長が今までの普通の考え方だったのが、今後もこれがこういった形でできるんだろうかできないんだろうかという点が一つあると思います。
 それは、投資があればそこで生産性が上がって各国間で同じような製品がわっとつくれる、そこで競争が生まれて、いいところはいいけれども数からいけば悪いところの方が多くなっていくという形、これは投資の受け皿のところで全然違った形になってくるという感じがするわけですね。そこのところに、今、通貨危機的な、先ほど先生の表現で言えばルールが不確立だと、確立されなきゃいかぬという問題が加わったときに、将来、各国経済の基盤の成長が雁行していけるのかどうかという部分は極めて根本的なところでわかりづらいという気が私自身はしているわけです。その辺をどのように考えればいいのかという点を宮崎先生にお伺いしたいと思います。
 寺島先生には、現象面での数々の適切な指摘でなるほどということがあったんですが、事我が国に関して見ますと、根本問題、それではなぜそうなったのかという根本要因のところは、レジュメを見ていくと「高い理念性」という表現がある。そうすると、我が国において高い理念性を持つということが可能なのかどうかという根本問題があるわけですが、むしろ戦後は我々は理念を捨てたからこそここまでやってこれたんじゃないんだろうか、それじゃ何が現時点での我が国の理念になり得るのかということを言っていただかないと、私に言わせれば先生のおっしゃったことはすべて絵にかいたもちになるんじゃないか。ところが、なかなかそれが出てこない。
 単に国益といっても、そのおどろおどろしさはこれはもう歴史を学べば当然出てくる話ですし、正義なのか、倫理なのか、今さらイデオロギーでもないだろう、宗教なんかとんでもないよと。そうなったときに、国際社会において我が国が理念性を持つ、その理念とは何があるべきなのか。人類愛だとかなんとかということでこの経済問題その他は、外交なんというのはまずできない。だけれども、西洋の連中はその部分があるんじゃないか、そこがポイントになっている。簡単に言えばパワーポリティックスを、その中で国を主張する論理性というものの担保をキリスト教国家出身のところはしているし、あるいは中国は別の観点からしている。その中で我が国のあれは何なのだろうかという点をお答え願えればと思います。
#38
○参考人(宮崎勇君) 先生の前段の部分についてお答え申し上げます。
 私は、冒頭の発言の中で、アジアにおけるいわゆる雁行形態という発展形式はだんだん薄れていくだろうというふうに申し上げました。それは、グローバリゼーションが進んでまいりますと経済体制が等質化するということがありますし、それから片一方では、例えば成長率なり所得の高さというようなことからいきますと、先行したところはだんだん成熟過程に入ってまいりますからその意味でテンポが鈍ってくる、後の方が追っかけできますから、全体として雁行形態ではなくなってくるというふうに思います。
 しかし、そうは言いましても、各国それぞれ経済に特性がありますから、全体のグローバリゼーションが進む中で新しい分業体制というものができると思うんです。つまり、比較優位なところをだんだん伸ばしていくという結果になってくる。それがグローバリゼーションのプラスの面でもあるんですが、そういう比較優位をうまく生かせるかどうかということで、それぞれの国の構造改革がどの程度進むかということによって、依然として進んでいる国、おくれている国が出てくると思うんです。そういう意味では、だんだん雁行形態そのものは形が消えていきますけれども、先に行く今後からついていく人ということは依然として残っていくと思います。
 あるいは先生の雁行形態と言われる意味を私は間違って受け取ったでしょうか。
#39
○山崎力君 済みません。
 私が言いたかったのは、そういうふうな形で一つのモデルケースとして考えられていたんですけれども、例えば日本において最初に造船とかあるいは自動車とかそういうふうな形の産業の先進性と経済成長性というのがあって、それを追っかける形でアジアの国が来ていたと。ところが、今これだけの技術と資本さえあれば、その技術移転が可能になってくれば、マレーシアでもインドネシアでもどこでも自動車がつくれる。それで、それをやったときに、雁行じゃなくなって、後から追っかけていくんじゃなくて一斉に横並びにしようとする。そのときにさっきおっしゃったような形での新分業体制というものが今までと違った形で出てこなきゃいかぬのに、果たしてその見通しが立っているんでしょうかと、こういう感じの質問だったわけです。そこのところに投資の流動性が、短期投資がというようなことも含めて、うまくいけるようなめどが今の経済の中で見えるんでしょうかと、そういうことが一番の質問の内容だったんです。
#40
○参考人(宮崎勇君) 市場経済のもとで経済が先行きどうなってくるかということについては、市場に聞けというのが答えでございまして、そのことは、先ほども申しましたけれども、要するに事態の変化にシステムをどういうふうに変えていくか、それによると思います。
 今起こっている変化というのは、目に見えた形でこうなるんだというのは、恐らく二十年、三十年たたないとわからないというのが率直なところであります。
#41
○参考人(寺島実郎君) 先生が御指摘になった日本にとっての理念性というか、日本の価値とは一体何だろうかということをまさに考えるわけですけれども、私が気になりますのは、今、グローバルスタンダードとか世界標準とか、そういう市場化という流れの中で我々が目指さなきゃいけない方向として規制緩和とか大競争の時代とかといった一連の流れができつつあるわけですけれども、その中でまさにおっしゃるように日本的価値というのを踏み固めなきゃいけないところに来ているだろうと。
 というのは、アメリカ的スタンダードの世界基準化というのをグローバルスタンダードと言っている傾向があるわけで、そういう中で、ただアメリカ的価値を礼賛していればいいというものじゃない、市場化とかそういうゲームの中に流れをとっていかなきゃいけない部分もあるわけです。
 この数字は非常に重要だと思っていますのは、アメリカでも七〇年代の初めごろはGDPに占める公的規制分野の比重というのは二割ぐらいあったんです。それを規制緩和、競争競争ということで、さっきのレーガノミックスじゃないですけれども、九〇年代に入って七%くらいまで押し下げてきたと言われておるわけです。一方、日本のGDPに占める公的規制分野の比重というのは四二%だというふうに経企庁の出している数字では推計されております。アメリカの激しい競争市場主義の社会も多分行き過ぎ、日本の四二%というのも社会主義国も真っ青の公的規制国家だということになっていて、これも内外価格差だとか規制の壁ということでこの国の活力をそいでいるということもまた一つのポイントだろうと思う。
 問題は、では日本はどういうあたりを青写真を描いて進んでいくんだということになるかと思うんですけれども、幾つかのキーワード的に言うと、一つは、安保の問題と絡めて言えば、やはり軽装備の経済国家としての理念性というものをしっかり踏み固めるべきだという点。
 それから、一つの例として、日本のいいところというのは、戦後のさまざまな要因があって、五五体制批判というのは大変多いわけですけれども、その一方で、実態として、社民主義的な政策を導入してきたことによって世界でもまれに見る富の平準化した国というのをつくっているわけです。ある意味では中間層というものを育てる社会というふうになっているわけです。
 アメリカの競争競争の中で今何が起こっているかというと、極端な貧富の差の拡大というのが起こっています。これは、例えばこの数字があります。アメリカの大企業のCEO、つまり会長、社長ですね、トップの平均年収と労働者の平均年収というのは、一九六五年に四十四倍の差があったんですけれども、九五年にはついに二百十二倍ということになっています。日本は大体これが二十倍です。極端に平準化しています。それがいいという意味で言っているんじゃありません。もっと日本にも競争を導入して、ストックオプションその他で活性化させなきゃだめだという議論があってもいいと思います。
 ただ、アメリカの二百十二倍というものの背景にあるもの、例えばディズニーのアイスナーという会長がいるんですけれども、九六年の年収は何と一億九千五百万ドルというような信じられないような年収を一人の人が取るような仕組みになっています。果たしてそういうアメリカンスタンダードにおける競争市場がいいのか。日本のよさというのは、ある種の健全な中間層、みんなが中間意識の中で生活していられる。ただ、さっきの末広先生の話じゃないですけれども、ある種の個人の生き方として幸せなのかというときに、余りにも私生活的なものに傾斜し過ぎているんじゃないかという傾向もありますけれども。日本の国をつくっていく上で我々がやってきたことというのはすべて間違っていたわけじゃなくて、その持ってける価値というのもやはり踏み固めなきゃいけない部分がある。
 そういう意味で、非核ということをさっき申し上げましたけれども、もう一つは、軽装備の経済国家としてある程度、分配の問題とか雇用の問題とか環境の問題、簡単に言うと社会政策を重視した国づくりというのがこの国のあり方としてふさわしいんじゃないか。
 事実、今欧州がアメリカと一線を画し始めています。EU加盟十五カ国中十三カ国でかつて社会主義政党と言われたところが政権に参加しています。ことしのドイツの総選挙でSPDが政権をとれば、EUは十五カ国中十四カ国がかつて社会主義政党と言ったところが市場経済に対応する形で衣がえして新しい時代に生き延びています。それは何を言っているかというと、欧州は、アメリカ流の競争競争市場主義に対して社会政策重視という方向にかじを切り始めているということなんです。
 だから、欧州の実験、それからアジアの混乱の中から出てきている反省、そういうものを踏まえて日本の政策理念というものをやはり見出していくべきだというのが私が申し上げたいポイントです。
#42
○広中和歌子君 まず、宮崎先生にお伺いいたします。
 アジア経済の金融を中心とする危機についてでございますけれども、マレーシアのマハティール首相がジョージ・ソロスという投資家を名指しで批判しております。一国の首相が個人を名指すということは特別なことでありまして、その背後にあるものは、これは私の想像でございますけれども、恐らく欧米資本主義の陰謀というのか、そういったものに対する強烈な批判ではなかろうかと思います。
 先ほど寺島先生が実需の六十倍の資金の流れがあるというようなことをおっしゃいましたけれども、このグローバルな市場の中で翻弄されないための処方せんとは何かということを伺いたいわけです。先ほど宮崎先生は、アジアの問題として、ルールが確立されていないとかシステムが確立されていないことが原因だというふうにおっしゃいましたけれども、果たしてそれだけでよろしいんでしょうかということでございます。
 今、ヨーロッパも、アメリカ的なルール、アメリカ的なやり方に対して一つの新しいスタンスをとろうとしているということをちょっとおっしゃったわけですけれども、こういう中で新しいルールというのはどういう形で動いていくんだろうか。私は、例えばトービン・タックスみたいなのに非常に興味を持っているわけですけれども、やはりある程度金融に関してはレッセフェールではいけないんじゃないかというふうに思うんですが、それについて御意見をお伺いしたいと思います。
 それから寺島先生には、先ほど、日本は何をしたいのか、日本の主体性を確立することが非常に大切だ、欠けているのは構想力だというふうにおっしゃいました。私も、アメリカから帰ってまいりましたころ、日本はGDPは非常に上がったけれども真の豊かさがないという中で、例えば首都移転なんというのも一つの新しい構想であるということでそれをずっとフォローしてきたわけです。なかなかいいことをおっしゃる方もいっぱいいたし、国会の中でもいろいろあったわけですけれども、構想と実行とのギャップ、そこに問題があるんじゃないかと。
 アイデアを出す人は日本の中にも結構いるけれども、それを実行に移していくための何かが欠けている。それは、リーダーシップを育てない教育なのか、日本の文化なのか。ともかく意思決定システムが十分に機能していないということだろうと思うんですが、いかがでしょうか。
#43
○参考人(宮崎勇君) 最初に、マハティール首相の発言についてでございますが、マレーシアの通貨あるいは株式市場が混乱したということで、それは特定の投機人が大きなお金を投入したから、それを移動させたからだということでああいう発言があったんだと思いますが、投機であったかどうかという証拠は実はソロス本人以外にはだれもわからないんじゃないか。マーケットはそういう性格を持っているんです。もしソロスがマハティールの言うように悪いことをしたとすれば、その罪というのはやがて投機をした人にはね返ってくるわけですから、現にはね返ってくる可能性が今出ているわけで、私はマーケットというのはきちっとそれを評価するんじゃないかと思っております。心情的に、マハティール首相が、ソロスはけしからぬ、アメリカの資本主義はけしからぬと言ったのはよく理解できますけれども、マーケットというのは、市場経済というのはそこのところの判定というのはなかなかつけにくいんじゃないかと私は思います。
 それから、ルールづくりで何をするかということなんですが、簡単に言いますと、例えばタイの場合もそうですけれども、攪乱要因の非常に大きなものは短期資金が非常に短期間に大量に移動したということですから、その短期資金の移動について一定のルールを設けるということは必要じゃないかと思います。そのことが為替の変動も大きくしている。世界で今、一日一兆ドル、お金が動いているというような状況ですから、なかなか一律に律するというようなルールはできませんけれども、個別の国が大きな資本移動について一つのルールを持つということによって解決できるんじゃないかと思います。
 それから、トービン・タックスというのは私も余りよく理解しておりませんが、トービンから聞いたところでは、要するに、軍事支出なんかに使っているお金に対してタックスをかけて、それを世界の福祉、軍縮その他に使えと。こういう意味のトービン・タックスですか。
#44
○広中和歌子君 いや、そうじゃなくて、為替の移動ですね。
#45
○参考人(宮崎勇君) それは、デリバティブというものが登場しまして、今申しましたように世界の通貨の混乱要因になっている。したがって、大量移動した場合に、移動について何%課税をしてそれを通貨安定のために使えと、そういう意味のトービン・タックスですか。
#46
○広中和歌子君 いや、通貨安定ではなくて、例えば環境とか貧困の解消であるとかいうようなことに使うと。それはそれ自体がいいことであるし、またタックスをかけることによって、それは非常に小さいものであったとしてもやはりある種の抑制になるんじゃないか。ですから、実需の六十倍といったような資金の流れはある程度抑制されるんじゃないかという考え方でございます。
 失礼しました。
#47
○参考人(宮崎勇君) はい、わかりました。
 トービン・タックスというのは、要するに精神は、世界経済あるいは世界の社会に非常に撹乱要因になるような経済行為に対して、そこから税金を取って全体の安定のために使おうという提案で、軍備費にタックスをかけるとかあるいは大量の資本移動についてタックスをかけるということで、それを世界の公共のために使おう、こういう趣旨だと思います。
 それは、理念としては結構なことだと思っております。援助のあり方についても議論する場合にその提案がしばしば行われますけれども、肝心なことは、投機資金がどれぐらいであるかというのをどういうふうに限定するかというようなこと、それから、今のように情報化時代で瞬時に申し込みと決済が同時に行われるようなときに全部捕捉できるかというような技術的な問題がありまして、理想論実現ということはなかなか難しいんじゃないかと思っております。
#48
○参考人(寺島実郎君) 今、先生御指摘になったソロスの件で、一つだけちょっと僕の方からも。
 去年の七月、タイ・バーツの投機が起こる本当に一日前に、僕はジョージ・ソロスとニューヨークで一時間、一対一で話していたんですね。
 それで、このソロス問題というものをちょっと申し上げておきたいのは、ソロスという人間の存在はアメリカ流資本主義というよりもグローバリズムのシンボルと。というのは、非常に始末が悪いと言うと言い過ぎなんですけれども、彼はハンガリー系ユダヤ人の子供としてブダペストに生まれて、ナチに追われてロンドンに行って、「開かれた社会とその敵」という本を書いたカール・ホッパーという有名な哲学者の弟子で、オープンソサエティー、世界は差別だとか国境の壁だとかというものによって仕切られるべきじゃない、自由に人、物、金が動いて、そういう時代が理想的な時代なんだというある種の信念体系を持っているわけですね。
 だから、彼は世界一のフィランソロファーですね。つまり慈善活動家で、九二年から九六年まで十三億ドル寄附しているんです、個人で。何をやっているかというと、ミャンマーのスー・チーなんかを含む改革・開放とか民主化だとかというものに対して異常な情熱で注ぎ込んでいるわけですね。だから、ある面じゃ信念を持った確信犯みたいなものですね。グローバルな金の移動、グローバルないわゆる民主化というものを夢見ているというか、ある面じゃ始末が悪いくらいの信念の人というか。
 マハティールの国民国家を大事にする政治家の視点とグローバリズムとのせめぎ合いみたいなものが、僕はあの論争のポイントだろうと思うんですね、どっちが悪いとかということなく。やっぱりその次の制御ということを、先生がおっしゃるように、今の議論のように考えなきゃいけないような時代に入ってきているんだろうなと。
 それからもう一つは、構想力と実行力のギャップのことについて言われたわけですけれども、まさにそこに苦しみ抜いている国だろうと思うわけです。
 翻って歴史の教訓を分析して見ていると気づくんですけれども、例えば国民性とか日本人の傾向とかというところに由来するべき問題じゃなくて、明治の時代の日本人がやったことというのはやはり大変なものだったなとつくづく思うわけですね。だから、これから多分だめだろうというものじゃないなというのが私の申し上げたいことで、結局、デ・ファクト・スタンダード、世界基準をつくり出す先頭に立つ力はないかもしれないけれども、つくり出したスタンダードの中で、一緒にスタンダードをつくっていくこととかスタンダードの中で仕切り返していく、サバイバルしていく力というのは日本の経済、企業というのは十分持っている。だからそういう意味で、どういうあたりに視点を置いて設計図をかくのかということなんだろうというふうに思っています。以上です。
#49
○寺澤芳男君 民友連の寺澤です。時間がないので二分で質問をさせていただきます。寺島さんによろしくお願いします。
 寺島さんは、床屋政談的ではあるがということで、アメリカ人の深層心理、対日感情は、アンフェアである、ずるい、さげすみの感情があると。それはもうまさしく私も全く同感でして、これはもう二十年ぐらい全く変わっていない、今後よくなるよりもますます悪くなるんじゃないかという非常に悲観的な見方を僕はしているんです。NHKの大河ドラマで今「徳川慶喜」というのをやっていて、ペリーが憎々しい俳優が出てきて、あれがどういう影響を、これは司馬遼太郎さんの原作ですからそうはならないんでしょうが。
 床屋政談的な庶民の感情というのが我々政治家にとっては非常に大事なわけですが、今後アメリカと日本の関係をよくするために、長年アメリカにおられた寺島さんの何かサジェスチョンでもあれば二言お伺いしたいと思います。以上です。
#50
○参考人(寺島実郎君) 当然のことかもしれませんけれども、個人の人間関係でも国家間の関係でも、おれを軽蔑するなというメッセージを出しちゃったらそれでおしまい、結局相手をして軽蔑させないだけのこっちサイドのスタンスというか生きざまだけが解答であるわけです。もしアメリカの世論というか本当に考えていることを変えていくならば、先ほどの繰り返しになりますけれども、やはり日本が尊敬に値するような目線で、自分のところの頭のハエを追って、しっかりとした構想力を持った国づくりをしていくしかない、それだけが唯一の解答です。
 具体的に言えば、安保についても、自分は親米だから基地も結構、安保の継続も結構、拡大も結構というのが果たして本当に尊敬されるのかということですね。むしろ、寺澤先生もよく御存じのように、正しい自己主張というか正しい存在感を持って発言する人間が尊敬されるのがアメリカの社会であり国際社会なわけで、迎合したり合わせたりすることによってとても評価が高まるとは思えない、そういうことを申し上げたいと思います。
#51
○会長(林田悠紀夫君) まだまだ質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度とさせていただきます。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 宮崎参考人、寺島参考人におかれましては、大変お忙しい中、長時間御出席をいただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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