くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第142回国会 国土・環境委員会 第16号
平成十年六月二日(火曜日)
   午前九時二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十八日
    辞任         補欠選任
     村沢  牧君     青木 薪次君
 六月二日
    辞任         補欠選任
     青木 薪次君     瀬谷 英行君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         関根 則之君
    理 事
                岩井 國臣君
                上野 公成君
                小川 勝也君
                福本 潤一君
                緒方 靖夫君
    委 員
                太田 豊秋君
                鴻池 祥肇君
                清水 達雄君
                鈴木 政二君
                永田 良雄君
                岡崎トミ子君
                菅野 久光君
                荒木 清寛君
                瀬谷 英行君
                泉  信也君
                山崎  力君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        八島 秀雄君
   参考人
       高 崎 市 長  松浦 幸雄君
       東京大学工学系
       研究科教授    神田  順君
       鹿島建設株式会
       社設計エンジニ
       アリング総事業
       本部企画部長   坪内 文生君
       日本福祉大学情
       報社会科学部教
       授        片方 信也君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(関根則之君) ただいまから国土・環境委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月二十八日、村沢牧君が委員を辞任され、その補欠として青木薪次君が選任されました。
 また、本日、青木薪次君が委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。
#3
○委員長(関根則之君) 建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、四名の参考人の方々から御意見を聴取することといたしております。
 参考人は、高崎市長松浦幸雄君、東京大学工学系研究科教授神田順君、鹿島建設株式会社設計エンジニアリング総事業本部企画部長坪内文主君及び日本福祉大学情報社会科学部教授片方信也君でございます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人の方々には、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 本日の会議の進め方について御説明いたします。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人の方々の意見陳述は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず松浦幸雄参考人にお願いをいたします。松浦参考人。
#4
○参考人(松浦幸雄君) 私は群馬県高崎市長の松浦でございます。
 私ども高崎市では、昭和四十九年、群馬県より建築確認行政を引き継ぎまして、一般特定行政庁として市内のすべての建築物の確認事務、それに付随する許可、承認及び検査業務を行っております。
 私は、建築行政の現場を担当している自治体の立場から、また町づくりを進めている立場から、今回の改正案に対する意見を申し上げたいと思っております。
 高崎市は、現在人口約二十四万人で、東京より北約百キロメートルに位置する北関東の中核都市として、商業はもとより工業都市としても発展をしてまいりました。建築活動も活発で、建築確認の件数はここ数年の平均として年間約二千五百件を数えております。しかし、平成九年度は最近の経済情勢の動向を反映し二千百九十三件と減少しております。
 本市では、建築確認審査及び検査の業務を都市計画部建築指導課職員が担当しております。総勢二十名の課員がおりますが、これらの仕事に直接従事する職員は十一名で、このうち建築主事は課長を含め三名となっております。したがいまして、担当は年間約三百十件、建築主事は約八百二十件の確認事務を行っております。これらの業務に直接従事する職員は、これら確認業務のほか、日照障害や工事現場の騒音等の苦情処理、道路問題、違反建築、防災、耐震等の指導など、建築士や施工業者はもとより、一般市民に対しての対応もあり、担当職員は日々これらの業務に追われ大変忙しい思いをしております。また、建築主の権利の主張も多く、厳しい状況下での業務を強いられているのが現状でございます。
 さて、建築確認について御説明申し上げます。
 まず、確認申請を受理してから通知に至るまでの期間でございますが、建築基準法では一般住宅においては七日、その他の建築物では二十一日と定められており、本市におきましては七・六日と二十・三日となっており、ほぼ法定日数となっております。
 検査におきましては、建築主は工事完了届を建築主事に提出し建築基準法に適合しているかどうか検査を受けなければなりませんが、実際に完了届を提出し検査を受けたものは約四百件となっております。検査を受けないものの中には違法建築物等もあり、特に悪質なものに対して工事停止あるいは使用禁止命令を出すものもあります。その件数は年に二件ないし三件あり、そこまでに至るない口頭での指導勧告等においては年に約二十件ぐらいとなっております。それら処理期間は長いものでは半年以上にも及び、通常でも三カ月ぐらいの日数を要し、目に見えない労力は相当なものでございます。
 違反の多くは近隣住民、同業者等による通報が全体の八割以上を占め、残りは担当が現場調査時に発見したり、市の他部局からの情報によるものであります。特にここ二、三年はふえる傾向にあります。現状のままでいきますと、将来は市街化の進行に伴いますます多くなることが予想されます。
 さて、本市は群馬県の玄関口に位置し、上越新幹線、長野新幹線や関越自動車道の高速交通網に恵まれ、また現在、北関東自動車道が建設中であります。本市においては「交流拠点都市たかさき」としての人、物、情報、文化が行き交う町づくりに向け都市基盤整備を推進しているところであります。特に中心市街地の活性化を図るため、これまで十六地区の民間再開発事業を完成させるなど、民間活力の活用を基調とした町づくりを実施しているところであります。
 このような中で、建築行政には、個々の建築物の安全性、快適性を確保することに加えて、中心市街地の活性化、福祉に配慮した人に優しい町づくりを進めること、都市景観の向上など幅広い町づくりに役立つことを期待しているところであります。
 次に、今回の改正案について申し上げたいと思います。
 まず、確認検査業務ですが、確認審査、検査業務の内容は一定の基準に適合しているか否かを技術的に判断する作業で、行政的な判断、裁量性を伴わないものであります。特に技術的能力を持った者であれば、民間の技術者でも公務員である行政職員でも可能な作業と考えられます。本市においては、確認検査業務にかかわる担当職員の負担は大きく、この結果、迅速な処理を求める建築主の不満、違反指導の不徹底、低い検査率など、公益上の諸問題が発生をしております。
 それでは担当職員を増員すれば済むかといいますと、これにも大きな障害があります。本市では、行政改革の推進という観点から、行政と民間との役割分担を見直す中で職員数の削減に努めているところでございます。しかし、直接住民サービスにかかわる福祉や環境にかかわる部局では仕事量は増大の一途であり、また地方分権にえる権限移譲も予定される中、限られた人員での新しい行政ニーズにどうこたえていくのか、課題は山積をしております。
 このような中で、市職員全体で千九百九十五人おりますが、このうち建築関係技術職員は四十九名であります。優秀な専門職の確保は我々のような規模の地方自治体にとって容易なことではありません。建築の専門知識と経験を有する職員には、建築行政はもとより、公共建築の企画や管理、都市計画、区画整理、福祉の町づくりなど働いてもらいたい分野は多々ございます。
 確認検査業務の民間開放は建築主のニーズに即して建築確認検査サービスの提供が可能となり、市民サービスの向上につながるものと思います。民間に確認検査業務を任せることで建築主事の負担を軽減し、行政の専門職としてもっと取り組んでほしい違反建築物の是正、耐震改修、ハートビル建築物の推進、町づくり事業などにつながるものと期待をしております。
 なお、民間の機関に確認業務を任せることで行政指導の機会あるいは権限を背にした影響力が失われるのではないかと危惧する意見もあります。しかし、確認の保留などを背景にした行政指導は、行政、事業主、関係する地域住民にとっても好ましいものとは思えません。現在、要綱で対応しているものは、その基本的事項を順次条例化することが望ましいものと考えております。
 基本的には以上申し上げたとおりですが、制度の導入の暁に、建築主、設計者、施工者はふなれなために混乱することのないよう、本市においても、事務処理マニュアルの作成や関連部局との調整、また指定確認機関とのスムーズな協議など、体制整備を図りながら建築主や設計者、施工者に周知することとしており、早期に十分な効果があらわれるものと期待をしております。
 次に、建築基準の性能規定化でございます。
 私は、市長に就任する前には企業経営者の立場にありましたが、今回のこの性能規定化は建築の世界の規制緩和であるととらえております。本市でも新しい工法を研究している地元企業がありますので、設計や施工の自由度が高まることでいろいろな新しいアイデアが関係の業界で生まれ、小さな企業のアイデアが大きく羽ばたくことができれば地域経済の発展につながっていくものと期待をしております。また、新しい技術情報の普及について国の積極的な対応をお願いし、本市としても情報提供などに十分努めたいと思います。
 本市においては、中心市街地の活性化が町づくりの大きな課題となっております。お江戸見たけりゃ高崎田町と言われた商業都市として栄えてまいりましたが、商業地域がJR高崎駅を中心に二百九十三ヘクタールあり、容積率は四〇〇%と六〇〇%となっております。区画整理などの都市基盤整備により先ほど申し上げました再開発ビルやマンションの立地が進んでおりますが、さらに有効高度利用を図るためには、基盤整備の推進とあわせ、この改正案による施策が土地の集約利用による建築計画を図る上で寄与するものと期待しております。
 中間検査は、建築物の安全性の確保はもとより違反建築の防止にとっても大変有効な手段と受けとめております。建築物や工程を選択する方式は、地域の実情に合った大変現実に即したものと考えており、有効であると思います。本市においても、民間機関の指定状況を踏まえ、組織体制の充実を図りながら積極的に指定してまいりたいと考えております。
 次に、建築物の確認検査等に関する台帳の整備と図書の閲覧ですが、これらは行政手続の透明化の観点から、また建物の最終的な利用者、ユーザーが建て売り住宅やマンション購入に当たって建築物の履歴をみずから確認し、判断し得る情報を提供する観点から画期的であり、しかも意義ある措置と考えます。
 現在、本市においては建築計画概要書の閲覧申込件数は年間四百件を超えております。本制度により情報が開示をされ、業者の選択がなされていけば、建築業界のモラル及び建築物の質の向上に対する取り組みも大きく変わるものと思われ、検査率の向上にも大きく寄与するものと期待をしております。
 以上のとおり、今回の建築基準法改正案は、民間による確認検査業務を可能とすることで官民一体となった町づくりを推進することができるとともに、手薄になりがちであった行政の取り組むべき検査、監督等の業務の強化拡充を図られること、また中間検査を導入することにより建築主に対してより信頼のおける建物を供給することができるものであり、良好な町づくりを推進していく上で大変画期的な法制度の整備になるものと期待しておるわけでございます。
 以上でございます。
#5
○委員長(関根則之君) ありがとうございました。
 次に、神田順参考人にお願いをいたします。神田参考人。
#6
○参考人(神田順君) ただいま御紹介いただきました神田でございます。
 私は、東京大学に勤務しておりますけれども、大学では建築構造の中で設計荷重論という、ちょっと耳なれないかもしれませんけれども、構造設計を扱う場合の荷重の評価をどうするかということを専門にしております。具体的には地震工学ですとか、あるいは風工学、場合によっては信頼性工学とかいった、既に完成されておりますいろいろな学問を総合的に扱っております分野でございます。
 それで、建築を設計する場合に構造設計ということで構造の安全性を確認するわけでございますけれども、その場合に、風ですとか、雪ですとか、地震とかそういったものをどういうふうに扱うかということは、もちろん建築基準法の場合、施行令の中に規定してございまして、私の研究テーマとも大いに深く関係しておりますので、大学の講義の中でも重要なテーマの一つとして扱っております。
 それから、ISO、国際標準化機構というのがございますけれども、ISOにおきましても構造規定がいろいろな形で整備されてきておりまして、それらの策定に関係しまして、一九八六年から委員としてワーキンググループなどで参加しております。
 それと、日本建築学会におきましては、現在、総務理事をしております。五月十八日付で衆参両院の議長及び委員長あてに要望書をお出ししているかと思いますが、その要望書の取りまとめにも関係してまいりました。
 今回の建築基準法改正の内容が私にとりましても非常に大きな関心事でございまして、このような場で意見を申し上げる機会を与えていただいたことに対してお礼申し上げます。
 きょう、ちょっと資料を用意させていただいたんですけれども、お手元にございます私の提出いたしました資料を簡単に御説明したいと思います。
 右上に番号スタンプが押してありまして、一番目のものは、四月二十八日の段階では建築学会で要望書の取りまとめを行っておりましたが、そのときに理事の方々に説明するために私が作成したもので、言葉の表現とか若干その辺を修正したものでございます。それから二番目は、「建築基準法改正に望む」という縦書きのタイトルのついているものですけれども、これは昨年十月の段階で一般の新聞に投稿するつもりで書いたものでございます。それから三番目のものは、ちょっと古いものでございますけれども、一九九二年の十一月に、もう六年近く前ですが、建設系の新聞に書いた記事でございます。ここで、ヨーロッパにおきます基準の動向を紹介いたしまして、我が国での問題点等を指摘したものでございます。構造規定等に関する基本的な問題は現在も変わっていないと思っておりますが、このあたりが今回の基準法改正の契機になっているというふうに認識しております。
 そして、もう一点、私の著書を資料とさせていただきました。これは、阪神の地震の後で、私なりに建築構造の安全性といったものについて特に一般の方を意識して書いたものでございまして、昨年の六月に刊行されております。私は本日、御意見を述べさせていただくわけですけれども、その内容に直接基礎情報としてかかわることも多くあると思いましたので、参考にと思ってつけさせていただきました。
 少し前置きが長くなりましたけれども、基準法改正に当たりまして、私の専門であります建築構造に関係するところを中心に四点ほど述べさせていただきたいと思います。
 初めの三点につきましては、建築学会の要望書で既にお出ししておりますが、大きくその中では三つの内容について述べられておりましたが、その三つの内容と基本的に対応する三点でございます。
 まず第一点は、性能規定化に関することでございます。これは、お手元にあります資料の一ですけれども、ここでは一番目と二番目と三番目の項目が関係いたします。
 一口に性能規定というふうに申し上げますが、構造の分野あるいは防火、火に対するもの。構造、防火の分野においては、同じ性能規定といいましても、技術の現状ですとかその辺にかなり差があるということをまず御指摘したいと思っております。防火に関しましては、今回、性能の規定を変えるということが非常に大きな転換であるというふうに受けとられていると思います。一方、構造の場合は必ずしもそうではないというふうに思います。
 それは、現在の施行令におきましていろいろな規定があるわけでございますが、基本的には安全を確保するために、具体的な荷重の数値ですとかあるいは材料の許容値といったものを数字として、ある意味では仕様の形で示しているわけであります。そういった意味では、安全という性能を担保するための数字が示してあるわけで、既に仕様規定と言ってもよいとおっしゃっている方もかなり多くいらっしゃいます。
 新しい性能規定の場合には、現在の施行令で想定しておりますものよりは、特に計算方法などはかなり進んだものになるということが想像されます。しかし、実際にその荷重をどういうふうにとるのか、あるいは構造の許容値をどう与えるのかといったことについてはやはり示されることになると思います。そういたしますと、基本的には、現在の性能を意識した仕様規定が新しい体系の中でも性能を意識した仕様規定になる。ただし、内容的にはより高度なものになるという位置づけでございまして、仕様が性能に変わるというふうな形で見ておる構造関係の専門家は少ないのではないかと私は思っております。そういった意味では、基本的に余り変わらないという言い方も可能かもしれません。
 ただ、一番大切なことは、現在も建築基準法が安全性の最低限を必要とするということで規定しておるわけですけれども、安全性の最低限といったもののグレードを、今と同じ程度でよいのか、あるいはもっと安全にすべきか、場合によっては今までやってきたことが安全過ぎるからもう少し下げていいのか、その辺の問題が一番大切な問題だと思うわけですけれども、この点に関しましては今回の法改正案の中からは読み取ることは難しいというふうに思っております。
 それで、私の個人的な見解としましては、阪神の地震災害のデータを分析して現状の安全性ということで考えてみますと、もし最低基準ということであれば、条件をつけることによって、例えば地盤をより詳しく調べた場合にはもう少し低い荷重で設計してもよいというようなことは当然あり得るのではないかというふうに思っております。そのあたりのことは、お手元の本の四十ページから四十二ページあたりのところに書いてございます。具体的な数値等も入っております。
 また、その後四十三ページあたりにございますが、法律を守っているからといって壊れないというわけではないというあたりのことも広く認識していただくことも大切ではないかと思います。法で規定しておりますのはあくまでも最低基準でありまして、また地震そのものについては私たちはすべてを知っているわけではないからであります。
 それから、国際基準との整合性の話がよく出てまいりますけれども、これは資料三でヨーロッパにおける動きを紹介してございますけれども、特にヨーロコード、ヨーロッパの統一基準ではIS〇と整合するということを基本にいたしまして、ここでもう五年、六年、かなり精力的に検討が続けられております。
 その中で、構造安全性の考え方ですとか荷重の評価法、ライフサイクルのコンセプト、そういった原則的な部分はISOを尊重した基準に我が国も当然するべきだというふうに思っておりますが、そのあたりのことにつきまして建築学会などでいろいろ建設省の方たちのお話を伺ったんですけれども、よく見えないというのが実情だと思います。
 第一点が少し長くなりましたが、第二点は、今回のもう一つの改正のポイントでございます中間検査の導入の問題、それから確認申請の民間開放のことについてです。これにつきましては、制度的に整備しなくてはいけない点がいろいろあると思いますが、ここで指摘したいことは、かける費用とそれから得られる効果、いわゆる費用対効果としての意味でございます。
 仮に、もしこういったことを行政がすべて行おうということであれば予算措置が大変なことになると思いますが、もし民間で実施するとしても、それは例えば建設コストにはね返るとか、あるいは施工合理化の中で吸収していくというようなことが具体的にあるかもしれませんけれども、現実には大勢の方が時間をかけて働くということになるわけですから、国全体としては大きな出費になるわけであります。
 それは何のために必要か。それは、やはり安全性を高めるためだと思います。そうしたときに国民の側で、今より高い安全性が必要だ、だからこれだけのコストをかけるべきだというあたりのことがわからなくてはいけないと思いますし、その辺の判断のための時間とか情報がやはり必要なのではないかというふうに思っております。
 場合によっては、建築士の罰則規定、例えば工事監理をするということは法律にうたってあるわけですが、その辺の罰則規定を厳しくすることによって場合によってはより少ない費用でより高い品質が得られるということはあるかもしれません。
 ただ、その辺はいろいろシミュレーションをしてみないとわかりませんし、そのようなことを具体的にした上で国民の意見を問うことが必要なのではないかというふうに思います。ちょっと例が適切でないかもしれませんが、知らないうちに消費税が一〇%になっていたというような印象がないようにお願いしたいと思います。
 第三点は、阪神・淡路大震災をもう一度思い起こしてみた場合、特に五十万棟の全壊被害ですとか六千人を超える人的喪失の問題ですけれども、その多くは老朽化木造住宅に起因しているわけで、それに対してどう対処するかという問題でございます。
 今回の基準法改正の内容の中で、既存不適格建築に対する扱いがある意味では少し弱点になっているのではないかと思います。しっかりした対応が必ずしも明らかにされておりません。昨年施行されました耐震改修に関する促進法も、大規模建築に対してもなかなか遅々として進まないというのが現状だというふうに思います。
 例えば、消防法などを参考にして、構造安全性といった問題に対しても定期検査を導入するとか、あるいは中間検査の問題もむしろ戸建て住宅を優先するとか、そういったことが必要ではないか。もちろん、それも日本全国すぐにできるというのは費用的にも問題があれば、例えば地震危険の重点地区を優先するとか、いろいろな方法が考えられるのではないかと思います。
 ほかにも、資格制度の問題ですとか、建築主、設計者、施工者の責任分担の問題、あるいは環境負荷ですとか省資源の問題とかございますけれども、時間の関係もございますので、最後に第四点といたしまして、社会的合意の問題について私なりの意見を述べさせていただきたいと思います。
 今回の法律改正は、趣旨として、学術だとか技術、国際状況、環境など、いろいろな状況で五十年前の立法当時と大きく変わっておるわけですから、社会に適した法律あるいは社会の基盤づくりのための法律という形に衣がえしていく必要があるというふうには強く認識しております。しかしながら、現在の段階で、既に触れました安全性のグレードの問題ですとか費用対効果の問題について法律を改正してから考えるというのでよいのだろうかという疑問が今も私としては持っております。
 建築学会の理事会でいろいろ議論してまいりまして、三月、四月、五月と議論が進むにつれてようやく具体的に問題がわかってきたというような方もいらっしゃったわけで、もちろんそれはむしろその人が問題で、もっと早く積極的に意見を言うべきだったということも言えるのかもしれませんけれども、私が行政の方にお願いしたいのは、法律を提案するあるいは省令を閣議で検討するというときに、やはり十分時間を置いて、あらかじめ法律になる前に具体的な条文等のPRを行っていただいて、国民の間でもあるいは技術者の間でも十分な議論がなされるような場をつくるようにしていただきたいというふうに思っております。
 基準法の場合は技術が深く関係しておりますので、技術立国として世界に範を示そうという場合には、やはり法規制の一つ一つの数字が非常に大きな意味を持つわけでありまして、また国民生活にとっても安全で快適な建築のためにどれだけコストを払うべきかということは非常に大きな問題でございますので、今回の改正の趣旨に反対するものではもちろんございません。しかし、そのための社会的合意といった点で、今の段階でまだ必ずしも十分達せられてはいないのではないかというふうに認識しております。
 これをもちまして私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
#7
○委員長(関根則之君) ありがとうございました。
 次に、坪内文生参考人にお願いをいたします。坪内参考人。
#8
○参考人(坪内文生君) おはようございます。坪内でございます。鹿島建設設計エンジニアリング総事業本部の企画部長を務めております。
 意見を申し上げる前に、会社と組織につき紹介させていただきます。
 まず、鹿島建設でございますが、受注高一兆三千億、うち建築工事が九千二百億、その三五%、約三千二百億でございますが、設計施工工事で、すなわち鹿島が設計し鹿島が施工するという工事でございます。残りの部分は設計事務所の方が設計し当社が施工するというものでございます。
 私の所属します設計エンジニアリング総事業本部というのは、この建築の設計施工工事の設計を担当する部署ということでございます。独立採算制をとっております。ちなみに、施工を担当する部署は建設総事業本部というふうに言います。
 当社は、オフィスビルとかホテル、病院、学校、マンション等多くの種類の建築の設計を担当しておりますが、一戸建ての木造住宅はいたしておりません。
 当本部は総人員七百五十名、一級建築士三百九十名、建築のいわゆる意匠系というグループあるいは構造、設備、インテリア等各専門の部がございます。その他、支店の設計部と海外にも設計の子会社がございまして、総人員約一千四百名の設計組織でございます。私はそこの企画部長で、部門の経営企画を担当しております。
 また、BCS、建築業協会の設計部会の幹事も務めておりまして、同業各社の担当者と意見交換等はしておりますが、本日の意見はBCSの意見ということではなくて、鹿島の設計部門にいる坪内という個人で述べさせていただきたいと存じます。
 まず、今回の基準法の改正は、昨年の建築審議会の答申を受けて二十一世紀を見据えた大きな改革であり、新しい時代の建築や都市を支える基盤ができるものと評価いたしております。
 まず、確認検査の民間開放についてであります。
 建築確認については、現状百十万件の申請に対して執行体制が十分とは思われません。そのためと思われますが、当社が設計する大型案件では建築確認は定められた期日にはなかなかおりないというのが実情と聞いております。民間の指定確認検査機関ができ、これがうまく機能するとすれば、総体としての執行能力が増加し、建築確認申請がよりスムーズになると期待されております。
 また、現在では行政庁の担当者の間で解釈のばらつきがあり、今回のこの民間の確認検査機関が設立されることを機に解釈の統一化が進むものというふうに期待しております。これは随分行政の方で指導されて、解釈のばらつきの幅が狭くなっているというのが実情でございます。
 また、昨年、BCS、建築業協会の欧米調査団に参加いたしまして、イギリスのNHBCというところを訪問いたしました。ここは英国の民間確認検査機関でございます。彼らが言うには、自分たちは官よりも安くて早く、また解釈のばらつきがないと申しておりました。我が国でもそのようなメリットというのは十分期待できるのではないかと思います。民間が官側が提供できないようなサービス、例えば料金は高いけれども早くおろすとかそういうことでございますが、その結果、官民の方がよい意味で競争していただきまして、行政サービスの効率化と質の向上が期待されるところでございます。
 続いて、完了検査についてでございます。
 現在、百十万件の確認申請に対して検査済み証というのは三五%程度しか交付されていないと聞いております。当社の施工物件はすべて完了検査を受けておりますので、今回、民間開放により検査の実施率が向上すると思いますが、当方としては規制強化というふうには受けとめておりません。
 次に、中間検査についてでございますが、現在、特定行政庁によっては、指定して当方の工事を見に来られたり、あるいはこちらからお願いして来ていただく、つまり鹿島は十分いいよと言われても確認に来ていただくということもあると聞いております。なぜならば、完了検査で指摘されると手戻りになるからでございます。
 ちょっと例示で申しますと、防火区画というのがございますが、それは上階のスラブまで貫通していなきゃいけないわけで、天井のところでとまっていてはまずいわけですが、これの確認というのをもし中間検査で確認していただかなかった場合、完了検査で見たいというふうになって、普通は点検口から見ることになりますが、見えないということで天井をはがしてくれというようなことになりますと、終了後また天井をやり直さなきゃいけないという手戻りが生じるわけです。かつてそういうことがあったようで、できるだけそういう完了検査のときに目視でできないようなところは確認していただくようにしているということでございます。
 当社では品質管理というのはプロセス管理ということを考えております。品質管理システムというものを設けまして、各部署はそれぞれの業務分担に従って仕事を進めています。昨年、ISO9001という、品質管理をチェックするものでございますが、そこの認証を取得しまして、当社の品質管理システムが国際基準に合ったものというふうに認定されております。
 検査について言いますれば、現場の自主検査、これは施工側の品質管理、それと設計者の検査、これは工事監理、その上で官の検査をするというダブルチェック、トリプルチェックという形になっております。
 今回、特定工程が指定されまして中間検査が実施されますが、建物の品質の確保という観点でいきますと、施工で品質をつくり込むというのが大事で、それを工事監理で確認するというのがメインだと思います。公的な中間検査はその確認という補完的な位置づけじゃないかというふうに考えています。
 しかしながら、今回の中間検査というのは工事をストップするという強制力の強いものになっておりますので、特定工程、これはどういうものになるかちょっと見えできませんが、その指定につきましては必要最小限にしていただきたいと思います。特に工事のスケジュールに極力支障のないようにしていただきたいと存じます。
 改正案によりますと、特定工程が終了した後四日以内に申請をいたしまして、その受理後四日以内に検査を実施する、それで合格証の交付後まで工事ができないとなっております。執行体制が不十分なままこれが適用されますと、各工程のたびに工事がストップするということが危惧されるわけです。余り長期にわたって、例えば一週間とかそういう形に各工程でストップするようなことになりますと、これは全く現実を無視した制度と思います。
 したがいまして、施工の管理レベル、例えば当方のようにISO9000で高い品質管理のレベルがあるというふうに認めていただいたような場合はその指定の合理的な運用をしていただきたいし、また工事監理を徹底していることによる代替、あるいは期間を短縮するために事前に申請したり合格証を即時発行していただくとか、そういうことを御検討いただきたいと存じます。工事工程の遅延はコストに大きく影響いたします。現在、コスト縮減というのを強く求められておりますので、何とぞ御理解をいただきたいと存じます。
 続きまして、性能規定化についてでございます。
 基準法の性能規定化は設計の自由度が拡大し、技術開発が促進されると期待しております。当社は、霞が関ビルにより地震国での超高層ビルに先鞭をつけ、また免震や制震といった新しい技術に積極的に取り組んでまいりました。長野オリンピックのスピードスケート場エムウェーブは当社の技術の結晶でございます。ことし、英国技術者協会の最優秀作品に選ばれ、世界的評価をかち得ております。このような技術力を背景に、当社は性能規定化の流れの中で新たな技術開発の芽を探し、よいものを安くという発注者やあるいは社会の厳しい期待にこたえていきたいと考えております。
 先ほどのエムウェーブは木造のつり屋根構造ということになっておりますが、現行法では第三十八条の建設大臣の特例的認定、特認と申しますが、これを受けております。今回のこの性能規定化というのがちょっとよく見えないところがございますが、この三十八条の特認をイメージして理解しておりますが、現行に比べますると目標とする性能水準が明確になるだろう。また、指定認定機関というのが複数になります。今は建築センターでございますが、それが複数になるということになりまして審査の効率が向上するということを期待しております。
 今後、性能基準等が整備されてくると思いますが、我々実務側の意見の反映、あるいは技術基準の作成等に当たり専門技術者の活用等、性能規定化が実効あるものにするための連携を望んでおります。
 続きまして、型式適合認定についてでございますが、これは繰り返し使用する設計仕様書が認定されますと建築確認がスムーズになるということで期待しているところでございます。また、型式部材製造者認証というのがございますが、これは海外建材の輸入というものの促進に効果があり、建設のコストダウンに大きく寄与するものと考えております。
 続いて、連檐建築物設計制度についてでございます。
 従来から大きな街区の設計手法として総合設計制度とか特定街区等がございました。今回の連檐建築物設計制度はそれらの手法の一つというふうに考えられますので、町づくりの計画手法の選択肢が広がり、条件に合ったいろいろな建築をつくることができる、そのような可能性が高まったというふうに考えております。
 最後に、確認検査等の図書閲覧についてでございます。
 昨年、BCSの欧米調査に行ってまいりましたが、欧米では建築の発注方式というのがさまざまに工夫されております。欧米はベースが契約社会でございます。発注者、設計者、施工者等の当事者の役割が明確にされ、それぞれの役割、リスク、責任というのが明確になっているわけです。トラブルがあれば契約書に基づいて法的な解決がなされるということでございます。一方、我が国の方は信頼をベースにしておりますので、当事者の役割分担があいまいなまま進んでおります。二十一世紀を迎えまして、建設市場も国際化されるのは必定でございます。我が国の持つよさを生かしながらも国際化対応を進めなければならないと存じます。建築プロジェクトに参加するおのおのの役割、責任及び対価である報酬を明確にし、また情報を開示して透明性を高めていく必要があります。
 今回の改正では、確認検査等の図書閲覧によりまして、建築主、設計者、施工者、検査者、監理者の氏名の明記、またそれを開示することになっております。これを契機に、発注者を含めて各界での議論が活発になり、多様な発注方式の工夫、プロジェクトの当事者の役割分担の明確化等が進みますことを願っております。
 今回の改正により、我々技術者集団に対する社会の期待の大きいことを実感しております。二十一世紀を迎え、建築、町づくり、環境問題等に積極的に取り組み、社会の負託にこたえていきたいと考えております。
 以上で参考人としての意見を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#9
○委員長(関根則之君) ありがとうございました。
 次に、片方信也参考人にお願いをいたします。片方参考人。
#10
○参考人(片方信也君) それでは、私の方から今回の建築基準法の一部を改正する法律案についての意見を申し述べたいと思います。
 私は、日本福祉大学情報社会科学部に所属しておりまして、地域計画を担当しております。
 今回の建築基準法改正の基本的問題点は、まず第一に、その改正案が二十一世紀の日本の建築と町づくりを根本的に規定する重大な内容を持っているにもかかわらず、国民の世論を十分に喚起し、意見の交換を重ねることなく提案されていることです。特に、建築物の大多数を占める住宅は、安全性や健康性などを確保し、生命を維持する基本的な器としての役割を持っています。このような国民の生存権や財産権の保障に関する建築基準の内容を大きく変更し、今後の建築活動の質を左右する今回の改正について、国民が改正に当たる政府の見解を十分にただし、意見を述べることは当然の権利です。しかし現状では、国民の世論を喚起するに足る情報が開示され、改正案の是非について検討する余地が国民に十分に提供され、保障されているとは言いがたい状態であると思われます。
 個々の建築行為は、その建物の使い手、住み手の生活と建物が建つ敷地やその周辺の生活環境に長期にわたって影響をもたらします。つまり、建築行為が積み重ねられるということは住生活の様式を規定し、一定の居住環境の形成を意味していると言えます。代替性を持たない一定の敷地の空間的条件のもとで行われる建築行為について、個別の建築の財産権の保持と生命の安全、健康を守ることと公共の福祉の増進を図ることが建築基準法の目的に掲げられているのは、空間的条件と密接に結びついて供給されるという建築の他の一般的な耐久消費財とは異なる特性によっていると考えられます。個々の建築行為が個別の建築の最低の基準を充足し、かつ敷地やその周辺の居住環境を良好に維持することは、公共財的性格を持つ建築に課せられた役割です。
 今回の法案で提示されている建築確認検査のあり方は、さきに触れましたように建築の公共財的性格をいかに確保すべきかという課題と深くかかわっています。これまで建築主事がこの業務を担当してきたという現行法の意図はこの点にあると言えます。民間の特定確認検査機関へその業務が開放されることになりますと、営利機関の場合は市場競争の論理が優先し、建築の申請について個別的条件を基本に公共財として建築されるように必要な条件を十分にチェックする業務が採算に乗りにくいとか、あるいは多数の件数を処理するという理由などで十分に行われない可能性がこの法案では完全に排除できず、しり抜けになるのではないかと危惧されます。この意味で、現行法の趣旨を変えて民間への開放を行うという提案の理由が十分に明らかにされていないという疑問をぬぐい去ることはできません。
 現行法では、建築の最低の基準は仕様を中心とする単体規定と集団規定により構成されてきました。今回の改正案の中心の一つをなす仕様規定にかわる性能規定の導入は、それがどのようなものであるかについての情報が国民に十分に明示されていないため、住宅建築など今後の建築行為において住み手、使い手の生活様式を深く規定するにもかかわらず、関心を向けようがない現状を憂慮せざるを得ません。
 木造建築物について言えば、単体の仕様規定としての特殊建築の基準を新たに組み直して、先ほども御紹介がありましたように構造安全性、火災安全性などにかかわる事項として建築物の性能規定化を図ることとされていると思われます。全体として見れば、性能規定化に当たって新たに追加されている事項もあり、規定が細分化されるのではないかと思われるところも見受けられます。
 一九九七年三月の建築審議会の答申は建築主の自己責任の原則をうたっておりますが、これらの項目、特に組み直しを含めて新たに導入されようとしている事項で、自己責任の原則の明確な認識に立って理解可能な内容を提示するのかどうかについて疑問を持たざるを得ません。特に、建築物は本来住み手、使い手の総合的な判断によりその性能のよしあしを考慮できるものと言えますが、建設省が提示しています住宅性能項目案からはこれに応じた建築主のその判断がどのように導かれるか、明確ではありません。
 例えば、温熱空気環境にかかわる項目として提示されている防寒・防暑の規定も、それぞれの地域の気象条件に対応したその地域の住み方の知恵の評価が重要なポイントとなるように思われますが、性能規定はどのようにこれを位置づけるのか明確ではありません。最低の基準という意味合いであるなら、従来の基準の考え方で十分な側面があり、大幅な見直しにつながる性能規定化は必然性が薄いと判断されます。
 また、光・視環境の項目では、例えば眺望の確保など、建築物の所在地によって規定される側面が強いと言えますが、これを一般的な性能規定としてどのように表現するのかも明らかではありません。
 ライフサイクルへの空間の適合性の項目は、いずれも個別の住み手の家族の条件により大きく規定され、性能規定化にはなじみにくいのではないかと思われます。この項目で取り上げられている例えば間取りに関する項目も、一戸建て住宅などでは特に住み手の総合的な住み方を表現するものであり、一般的な性能規定のチェック項目には乗りにくいと判断されます。
 移動・操作の項においても、高齢者、身体障害者への対応については個人差が大きく、よりきめの細かい設計を行うことが基本であると言えます。つまり、どこまで一般的な規定なのか、個別の条件がどのように評価され得るのか、明示されておりません。
 以上の点は幾つかの例示にすぎませんが、それらの問題点を考慮する限り、住み手の立場からは性能規定として明確にされがたいものが多く、どのような建築が許され、かつ住み手の要求に一致し得るのかが判断しにくい上に、チェックの項目が多く、住み手に無用の混乱を招くのではないかと危惧されます。
 特に、型式部材等製造業者の認定制度では、過剰な競争が持ち込まれる危険もあります。そして、一定の量産を特徴とする業者がそのコスト競争で市場を確保しやすくなり、住み手の注文による住宅を生産する地域の町場の中小零細業者の業務に大きな影響を与えかねません。特に、そのコスト競争では、住み手の要求や、地域の自然的、風土的条件を考慮した住み手にとってよりなじみ深い住宅を供給するためのきめの細かい業務のシステムは、採算性に困難が伴うなどの理由で、軽視ないし無視される危険も大きいと考えられます。
 建築設計の自由度の拡大が性能規定化の背景に挙げられております。これには、一定の規定を満たしさえすれば、材料、設備、構造方法等に多様性をもたらすことができるとの判断があるように思われます。
 しかし、建築の大多数を占める住宅設計について言えば、建設省が一九九七年三月に発表いたしました住宅産業ビジョンでも触れられておりますとおり、多くの国民のニーズでは在来の木造軸組み工法への志向が強いという傾向があります。これは、性能に関する選択が格段に広い範囲で行われるかどうかというよりも、国土の自然的環境など地域性を反映するとともに、合理的で親しみの持てる建築技術に基づく設計業務が求められていることを示しています。
 ところが、性能規定化の中にこのような設計業務の仕組みがどのように生かされるのかが明らかでありません。むしろ、性能規定の一律的性格が実際の建築行為の中では重視され、地域ごとの特性を反映した建築主、住み手の立場を生かした建築設計が逆に制約される可能性があります。型式認定機関の承認は国の内外を問わないことになっていますが、これらの機関がこのような視点からの社会的役割を果たす保障は法案では明確ではありません。
 従来の集団規定にかかわる問題として、新たに創設されようとしている、これは仮称で紹介されておりますけれども、連檐建築物設計制度があります。この制度では、一定の区域内で指定容積率のもとで建築行為を行う場合に、隣接して建っているなどの建築物の未利用容積率を移転し上乗せできる仕組みとされていますが、これについては区域内の日影規制、隣地斜線制限等の新たな規制緩和になることも予想され、地価高騰の要因にもなる危険が大きいと考えられます。
 また、区域内でより大きな資金力を有する開発業者などにとって有利ではあっても、従来住み続けている個々の住宅などの居住者にとっては居住不安を引き起こすことになるおそれがあります。
 また、対象区域の公告に当たっては、土地の所有者、借地権者の同意は義務づけられておりますが、借家人の同意は義務づけられていません。そのため、特に借家人の居住権の保障が明確でなく、区域が公告されれば移転を余儀なくされる危険が新たに高まることになります。
 以上のような見解から、私はこの法案については賛成いたしかねるものです。
 以上で私の意見発表を終わります。
 ありがとうございました。
#11
○委員長(関根則之君) ありがとうございました。
 以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○泉信也君 参考人の先生方、本日はどうもお忙しいところをありがとうございました。
 今お聞きをさせていただきますと、片方先生を除いてはおおむね法改正については賛成であるという御意見を述べていただいたと思います。ただ、情報開示が不正確である、あるいは今後の運用の仕方によっては問題が出てくる、このような御指摘をちょうだいいたしたと思います。
 そこで、まず神田参考人にお尋ねをいたしますが、今回建築学会から御意見をちょうだいいたしました。その中で、技術の進歩、こういうことと建築主事のレベルが合わない、間に合わない、これまで以上にこのことが遵法性を損なわれることを危惧しておられる御意見が出ておるわけでございますが、これは民間の技術レベルの進歩と建築主事と言われる官側のレベルの進歩に差があるというようなことを御指摘になっておるのでございましょうか。
#13
○参考人(神田順君) 技術の進歩と、それから実際に施行令等に記されていることというのには、特に技術の方には幅がございます。
 それで、今回、性能規定化によって、また施行令の内容が新しく変わるという場合に、それが現実にどの程度のものになるのかということは、今の段階で私どもなかなかよくわからない部分があるんです。それが場合によって非常に詳細な解析を前提にしたような基準になりますと、その詳細な解析の内容がどの程度理解できるのかということについて、どうしても技術的なレベルとしての差が出てくるということから、現在やっておりますのは、もう四十年間運用されておりますので、そういう面で今の施行令をそのまま運用することについては余り問題が生ずるというふうには思わないんですけれども、新しくできたものがその辺についてどういうふうになるのかということに関して今非常に不確定要素も多いということと、新しい技術の進歩を計算等の手段のところに盛り込むということになると、それを直ちに現在の建築主事、あるいは設計者でもかなりレベルに差がございます。
 それから、特に一つ御指摘しておきたいのは、最近の計算というのは、計算機を使った計算でなされる場合が多いわけでありますので、内容が必ずしも十分わかっていなくてもインプットをすれば図面がかけてしまうというような問題があります。そうすると、なかなか施行令ということだけではうまく判断できない場合が多々出てくるのではないか、そういう危惧でございます。
#14
○泉信也君 坪内先生に同じような観点からお尋ねをしたいと思います。
 鹿島建設で非常に大きな工事を進めていただいておるわけでございます。その中で、先ほどの御説明にもございましたようなISO9001という品質管理で十分な施工監理・監督を含めてやっていただいておるということでございますが、これは非常に大きな企業だけではないか。むしろ、中小の方々にとってはこういう体制がとれないことが一般的ではないかと思うわけです。
 そうした場合に、大会社と中小の建設会社の間で何らかの差を設けると申しますか、これは中間検査の話も含めてございますが、先ほど手戻りを恐れるためにいろんな手当てをしていただいておるという、またその中間検査はむしろ会社側から求めてやっていただくというような非常に積極的な対応をしておられる会社、それからそういうことをやっていらっしゃらない会社。結果的にはそれが建築主の負担にはね返っていくというようなことが出てくるかと思いますけれども、大会社と中小会社の場合に何らかの差を設けておくというようなことが必要なんでしょうか。
#15
○参考人(坪内文生君) 今の問題でございますけれども、私が中小会社についてどうしたらいいかということを申し上げる立場にございませんので、自分の立場でいけば、社会の期待にどうこたえていくか、いい品質のものを安くつくるにはどうしたらいいかということを考えておりまして、ちょっと今の御質問に個人的にはお答えしかねるところがございます。
 ただ、中小の中でも積極的にやってこられる方が多分出てくると思います。ISOの9000というものはそう大システムではございませんので、きちっとしたマニュアルを整備し、システムどおりに運用するということをチェックされるわけでございますので、そう大きな差が出てくるとは思われません。
#16
○泉信也君 申しわけないお尋ねをいたしました。
 ISO9001で品質管理をやっていただいておるような会社にあっては、今回の改正が逆に民間の自主努力を否定するというか信頼しない、いたずらに行政の作業を現場に持ち込むというようなことであって、合理化に反するのではないかという思いも私はするわけですけれども、お立場からはどういう御判断になりますでしょうか。
#17
○参考人(坪内文生君) これがどういうふうに適用されるかがまだ見えてきておりませんが、行政庁が特定工程を指定するというふうになっております。これは地域の実情に応じてやっていただくわけですから、どういう対象を中間検査できちっと確認したらいいかという合理的な判断がされるだろうというふうに思っております。したがいまして、品質管理をきちっとやっているような会社のものについてはすぐには適用しない、あるいは今問題になっているような建物、例えば建て売り住宅が今問題になっているとすれば、建て売り住宅についてはきちっとやりますよというふうに合理的な運用をされるだろうということを期待しているわけでございます。
#18
○泉信也君 片方参考人にお尋ねいたします。
 先ほどのお話で、性能規定が結果的に地域の特性を反映させないことになるおそれがある、あるいは大量生産によってきめ細かな材料等の提供を結果的に阻害することにならないか、こういうことの御指摘があったと思います。
 町づくりあるいは建築物の個性をなくする方向に進むのではないかというやや否定的な見解が述べられましたけれども、むしろこの性能規定によっていい点もあると私自身は思っておりますが、そういう肯定的な面からの御意見が何かございますでしょうか。
#19
○参考人(片方信也君) 今の御指摘の点についてお答えいたします。
 私が懸念しております点は、建築物というのは特定の敷地の上に建つものでございますから、その土地の特性がそれぞれ地域地域によって異なります。そういう意味では、きめの細かい設計業務が求められているということを強調したわけでございます。
 その際に、地域地域にはやはりその地域にふさわしい建築材料やあるいは工法等が選択されるべきでありますが、これにはその作り手、建築主とともにそれに携わる設計や施工の組織が、一定の質的なレベルを確保するための業務を遂行できるかどうかという点がむしろポイントであろうというように思います。
 ですから、性能規定化の導入に提示されております背景にはそういう多様性への指摘がございますけれども、それは論点が違っていて、むしろ強調されるべき点は今申し上げました点ではないかというように思います。性能規定化ということになりますと、むしろ資材の海外からの輸入等がさらにしやすくなるといったような点がどうも重点になってくるというように思われますので、そういう懸念を表明した次第です。
#20
○泉信也君 松浦参考人にお尋ねさせていただきます。
 行政の現場で大変御苦労いただいておる御説明を含めてお聞かせいただきました。一人当たり八百件というような検査をやっていらっしゃるという現場の声として、今回の建築確認検査の民間開放についてはむしろ積極的に賛成したいという御意向であったと思うんです。これはほかの先生方からも御指摘がございましたように、また私どもが心配しておりますのは、コストが高まるのではないか、こういう心配でございます。
 先ほど坪内参考人からは、英国の例でむしろそのことが官側の競争意識を高めていいものになっておるという大変いいお話を聞かせていただきましたけれども、松浦参考人のお立場として、こうしたコストが高くなってくる、民間側がやるからには恐らく、今資料を持ってきておりませんが、官のやるコストよりも随分高くなるということが心配されますが、この点についてはどんなお考えでございましょうか。
#21
○参考人(松浦幸雄君) お答えさせていただきたいと思います。
 今コストが高くなるのではないかというようなお話でございますけれども、私どもの方といたしましては、八年度の実績として建築確認手数料並びにそれに付随する許可申請手数料は約五千万円の収入をいただいているわけでございます。担当者一人当たり約四百五十万円ということになるわけでございます。
 民間機関の建築確認検査手数料につきましては、民間機関は採算性を考慮した業務区域や対象建築物が設定できること、また建築主の多様なニーズ及び地域の需要動向に応じた民間ならではのサービス提供が今後可能であるというふうに思うわけでございまして、市場における選択を通した水準に決定され、採算性が確保されるということになるのではないかというふうに思っております。
 私ども、今担当者一人当たり四百五十万円の収入というのはまあまあの収入ではないかというふうに思っておりますけれども、我々地方自治体は、いわゆる市民に対するサービスが優先するものでございますから、どうしても単価からいけばちょっと低くなるのはやむを得ないというふうに思っております。ただ、この金額は余り低いとは私は思っておりません。
#22
○泉信也君 ありがとうございました。終わります。
#23
○上野公成君 きょうはどうも御苦労さまでございます。
 この建築基準法は相当な大改正であるわけでありますけれども、これが実際の現場において本当に受け入れられるのか、体制がちゃんと整備されるのかということにつきまして、松浦参考人にだけ質問させていただきたいと思います。
 先ほどの御意見で、大変前向きな賛成というような評価であったんじゃないかと思います。高崎市長というお立場で、高崎という地域あるいは実際の現場でどう対応できるかということでありますけれども、我が国の建築のほとんどが住宅だと思うんです。その住宅の担い手というのは大工さんだとか工務店が主で、そういう人によって支えられているわけでありますから、そういった大工さんや工務店にとってもこの性能規定化というものが、メリットがあるといいますかちゃんと受けとめられて、日ごろそれぞれのところでやっておられる工夫といいますか創意だとか、そういったものがしっかり生かされるということが必要じゃないか。プレハブメーカーとかそういう人だけにメリットがあって、大工さんや工務店にとってはかえってマイナスになるということであってはいけないんじゃないかと思います。
 日本は、この数年、特に技術だとか技能だとかというものが軽んじられているんじゃないかなという気がします。昨年も、NHKのテレビで技能オリンピックというのを見たわけでありますけれども、昔だったら大体日本が技能オリンピックで金メダルだったんですけれども、去年はたしか三つぐらいしかとれなかったんじゃないかなということであります。
 技能あるいは技術というのを大切にしてきたからこそ今日の日本の発展があったわけでありまして、そういった意味で、現場でそれぞれ担当をされている大工さんだとか工務店の方々が本当に努力されているわけであります。これは日本の伝統からいっても、日本の建築の仕口とかこういうものは本当に相当な価値のあるものであります。
 そういった意味で、せっかく性能規定化ということになりましたので、市長さんとしては大工さんや工務店の方々が本当の意味で生かされるような相当のバックアップをしていかないと、せっかくの改正がいい方向にいかないんじゃないかなというふうに思います。そのバックアップ体制について。
 それからもう一つ、大工さん、工務店に限らず、建築、住宅の場合は非常にすそ野が広いわけです。ありとあらゆる産業がアセンブルしてでき上がるわけでありますから、それぞれ技術力のある中小でも新技術、新製品をどんどん開発できるそういうチャンスにもなるわけでありまして、大工さん、工務店に限らず、いろんな地場産業の育成の最高のチャンスになるんじゃないかなということも考えられるわけであります。
 そういった意味で、今回の改正を評価されておられると思いますけれども、どのように対応させて、そして産業の育成あるいは大工さん、工務店の育成にどんなことをやっていかれるかという対応についてお伺いしたいと思います。
#24
○参考人(松浦幸雄君) 性能規定化によりまして設計が自由になりますれば、大きな企業だけでなくて、今、上野先生御指摘の大工さん、工務店の知恵や工夫が生かせる、そうしたケースが増大をいたしまして、地域産業にとっても私は大きなチャンスであるというふうに思っております。
 また、今技能オリンピック等のお話がございましたけれども、群馬県ではこの秋に全国技能オリンピックが高崎を中心に開かれることになります。このメリットを最大限に生かすためには、意欲のある大工さん、工務店が新しい技術の開発に取り細め、また性能規定化の成果が大工さん、工務店にわかりやすい形で広く活用されるような仕組みをつくることが私は重要であるというふうに思っているわけでございます。高崎市といたしましても、そうした市のネットワークを生かしましてこれらの情報を大工さん、工務店にどんどんPRさせていただいて、技術開発や活用のための技術的相談にも応じられるような体制づくりに今後努力をしたいと思っております。
 また、ぜひこの点につきまして、国におきましても性能が確かめられた材料や工法を順次わかりやすい基準として整備させていただいたり、地域の住宅産業の近代化や技術開発の積極的な支援をすることをこの場でお願いいたしたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。
#25
○上野公成君 それからもう一つの改正は、民間で確認をやるようにするということでありまして、先ほど市長さんから住宅は七日のところが七・六日かかるし、それから全体の件数でありますとか、問題の違反でありますとか、口頭で注意するとか、いろんなお話も御紹介していただいたわけであります。高崎市という地域におきまして、民間でこういった仕事をする会社が本当に存在し得るのか。そういうことがないと民間に主事をということがなかなかうまくいかないわけでありますけれども、こういった体制がきちっと整備されるということが、民間への主事の開放ということからいきますと一番大きなことになるんじゃないか。
 先ほど一人当たり四百数十万、これは市の場合は行政のサービスですからそういうことでありますけれども、民間でやれば今までよりサービスがいいというか、早くするとか、いろいろ民間の努力のしようというのもあるわけであります。私は業としても成り立つ可能性もあるのかなと思いますけれども、高崎市で円滑な運用のための体制整備というのが本当にできるのかどうか、その辺のお考え方を伺わせていただきたいと思います。
#26
○参考人(松浦幸雄君) 私ども高崎市は東京から百キロ圏に位置するわけでございまして、建築活動が非常に活発でございまして、建築士等の人材も比較的豊富であるというふうに思っております。そうした意味で、将来の民間機関の母体となり得る組織も見られるわけでございまして、今後民間の確認検査機関が育っていくことは十分期待をできるというふうに思っております。
 高崎市といたしましても、そうした民間機関の早期の立ち上げにできる限り今後協力をさせていただきたいと思っております。また、民間機関の指定を行う国や県におきましては、円滑な民間機関の育成が図られるように十分な御配慮のほどをお願いいたしたいと思っております。
#27
○上野公成君 民間への移行の体制も十分できる可能性があるというお話でありました。
 そこで、先ほど職員の問題について市長からお話があったわけでありますが、地方分権をすると仕事がふえる、それから行政改革をしてスリム化もしなきゃいけないけれども、行政の量というのはふえてきて、なかなか職員はふやせないという状況じゃないかなと思っているわけであります。仮に民間にそういう事務所ができて、そういった業務が民間の方にどんどん移行するということになりますと、今まで確認をやっていた建築の職員というのが高崎市の場合は四十六人おられるということでありますけれども、そういった職員の活用というのが、大変市長が悩まれている職員がなかなか活用できないということに生かされるんじゃないか。
 と申しますのは、やはり技術職員というのはいろんな仕事ができる可能性があるわけであります。市長さん自身も大学は土木の出身でありまして、今市長さんをやっておられるわけであります。私も通産政務次官を一年やらせていただきまして、どうも原子力のことをやっておるんだけれども原子力の核融合反応なんということも全然わからない人が責任者をやっている。特に、技術が軽視されているというのは、文科系に入るのには理科を全然とらなくてもできるようになっているんです。そういうこともありますと、やはりこれからは技能、技術が大事なわけですから、そういったことがきちっとできる人が何にでも使える、一人で二人分でも三人分でも使えるんじゃないかなというような感じもしております。
 特に町づくり、中心市街地が高崎市の場合も大変な問題を抱えているわけでございます。そういった意味で、技術系の職員一人を二人でも三人でも使えるという一般職員化、そういったことにも非常にメリットがあるんじゃないかなと私は思っておりますけれども、市長さんのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#28
○参考人(松浦幸雄君) 上野先生が御指摘のように、技術に裏打ちをされた行政の重要性ということについては全く同感でございます。
 これからの自治体の職員は、限られた専門の仕事しか経験をしないのではなくて、幅広い経験を積ませていく必要があると私も考えております。そのような人事配置を今行っているところでございます。そうした建築系の職員につきましては、従来確認検査に相当な人材を要してまいりました。町づくりなど幅広い分野には残念ながら十分な配置ができなかったところでございます。
 建築確認検査の民間開放によりまして、高崎市は今おかげさまで民間再開発事業というのがもう既に十六カ所行われておりまして、全国の中でも五本指に入るようなそうした開発をやらせていただいております。そうした意味で、建築系の職員が町づくりにもっともっと関係できるようになってくるんじゃないか、活躍できる可能性が大変広がるということでは、私ども市にとりましては大きなメリットではないかというふうに思っております。
#29
○上野公成君 終わります。
#30
○小川勝也君 民主党の小川勝也でございます。
 四人の参考人の方からそれぞれ特色のある立場から幅広い本当にためになる御意見を拝聴いたしまして、本当にありがとうございました。たくさん聞きたいことがありますので、順次お伺いをしてまいりたいと思います。
 まず、松浦市長さんにお伺いをしたいと思うんですが、先日の委員会でも申し上げたことでございます。建築確認が民間に開放されることによって、今までは市の特定の部署でやっておりましたことがさまざまなところにその確認の業務が分散してしまいます。例えば、高崎市の町づくりをよく知っている人たちだけがその建築確認の仕事に携わっていたものが、民間開放された暁には前橋の建築確認業者がそれを行う、あるいは東京から出張してきて行うということが起こってくるわけでございまして、町づくりや町並みをそろえるといった住民や市の努力がなかなかうまくいかないんじゃないかと、そんな心配をしておるところでございます。
 行政の立場からの御意見をお伺いしたいと思います。
#31
○参考人(松浦幸雄君) 小川先生御指摘のことにつきましてお答えさせていただきたいと思います。
 私ども高崎市では、高崎市都市景観条例を持っております。そして、大規模建築物等につきまして市長に対して届け出を義務づけておりまして、また中高層建築物指導要綱、宅地開発指導要綱等、要綱による指導も行っているわけでございまして、こうした町づくりの行政は建築活動と密接に関係をしているために建築確認の場を使っておりまして、それなりの成果があると考えているわけでございます。
 一方で、建築確認を後ろ盾に指導を押しつけているのではないか、また指導の根拠や基準がわからないというような批判もあるわけでございますけれども、町づくりは極めて重要な市の行政でございまして、だからこそその根拠、手続、基準、またそうしたものが明確である必要があるわけでございます。このような建築確認の場を使った行政指導という形についてはむしろ今回の法律改正を機に変えていく必要があるというふうに私は考えているわけでございまして、今後必要に応じまして目的、手続、基準の明確化を図りつつ条例化を考えてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
#32
○小川勝也君 次に、片方参考人にお伺いをしたいと思います。
 私もこの法律を勉強していく中でいろいろな問題点があるなというふうに思った次第でありますけれども、この法案に賛成しかねるという参考人の御意見に対しまして、どこが一番悪い点が、率直にお伺いしたいと思います。
#33
○参考人(片方信也君) 今の御質問にお答えしたいと思います。
 今回の法改正の最大の問題点になるということにつきましては、改正の内容が今後の二十一世紀の建築、町づくり、あるいは先ほど来議論のありました都市計画の内容を大きく左右する、そういうものになっております。したがいまして、個々の問題点につきましてはるる述べさせていただいたとおりでございますけれども、その内容等も含めまして、国民の間で十分に議論が進んでいるのかどうかという点がやはり大きな課題になっているんじゃないかという点があるわけでございまして、その点が目下のところ最大の問題点ではないかというふうに考えております。
#34
○小川勝也君 次に、坪内参考人にお伺いをしたいと思いますが、今回の法改正の眼目の一つに、より安全にそしてコストを下げる、こういう点があるかと思います。
 この法改正によって建設コストは下がるのかどうか、あるいはもし行政やそういった絡みにおいてコストを下げる方法というのはほかにあるのかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
#35
○参考人(坪内文生君) お答えいたします。
 まず、今回の法改正の趣旨は自由度の拡大というふうに理解しております。すなわち、いろいろな仕様規定等でがんじがらめになっているものが発想とか工夫が生かされるというふうに考えておりますので、一つは、例えば鉄筋コンクリート造とか鉄骨造とか、そういう単純な構造体ではなくて複合的な構造、いかに安くつくるかという観点から複合技術というのは今後増加すると思っております。そういうところに手前どもの持っております技術力が生かされるだろう。今発注者のコスト低減の要件は非常に厳しいものがございまして、今のテーマというのはほとんどそれに尽きております。
 安全性につきましては当然クリアしているところにございまして、阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、手前どもの耐震設計ガイドというのをつくって時代に即応した安全性の高い設計をするように努めております。
 それから、先ほど申しましたように型式製造者認定制度ということで、海外のよいものが入ってくるということが期待されます。我々としては、発注者並びに社会に対して安くてよいものを提供する義務がございますので、その意味での選択肢の拡大というのがこの法律の改正によって大きく期待されるというふうに考えております。よろしくお願いします。
#36
○小川勝也君 続きまして、神田参考人にお伺いをしたいと思います。
 先ほど坪内参考人の方からも少しお触れになられましたが、三十八条の問題、この御意見も読ませていただいたんですけれども、門外漢でもありまして少しわかりにくかったんですけれども、この意見書の二番のところ、三十八条のところをわかりやすく御説明いただきたいんです。
#37
○参考人(神田順君) 基準法の第三十八条といいますのは、法律で想定していない工法ですとか技術ですとか材料、そういったものに対しては特例の扱いがなされておりまして、個々に物件の安全性等に関して建設大臣がそれを認可するようなシステムになっております。具体的に私の了解しております範囲では、日本建築センターというところに評定委員会がつくられまして、そこで審査されているわけです。
 物件の数はかなりの数に上っておるように聞いておりまして、例えば高層建築ですと年間百件、百棟に迫るような数字になっておりまして、コンクリートや鉄骨造等についてもかなりの件数がそのような形で現在運用されております。
 一般に申しまして、どうしても法律とか取り決めというのは技術の進歩に対してはおくれる形になりますし、一般的な規定にならざるを得ませんので、やはり個別の建築物ということになりますと何らかの形で、法律でこのようなものが出てくることを予定して、それに対しては法律が想定していなかったことですから、三十八条のような形で用意しておく必要があるというふうに思うのです。今回の法律改正におきましては、すべてそれはもう政令の中に盛り込むんだというふうな御説明を建設省の方から伺っておるんですけれども、私ども技術の新しい開発というようなことで考えますと、やはり法律の中でその辺は明らかにしておいていただく必要があるのではないかというふうに思っております。
#38
○小川勝也君 今の点、ちょっとわからないんですけれども、例えば先ほど坪内参考人からエムウエーブはこの三十八条の規定によってつくることができたという話があったと思います。あるいは東京ドームや劇場の上にインテリジェントビルを乗せるという新しい技術もこの範疇の中から生まれてきたと思いますが、この三十八条が削除されて以降はどういう扱いになるのか、両参考人のうちどちらかで結構でございます。
#39
○参考人(神田順君) 私が想像しておりますのは、現在評定委員会等で検討しておりますのは、例えば超高層ビルもそうでございますし東京ドームが実際に認可された場合もそうでございますけれども、かなり学術的にも先端的な内容を盛り込んだ検討をいろんな角度から評価いたしまして、そういう形で安全性を確認するということで進められているわけです。
 ですから、一般に現在は木造の大規模なものというのは禁止されておりますので、そういうようなものについて技術が確立している部分については規定化して、一般に使いやすい形で運用されていくことになるというふうに思うのですけれども、例えば今の状況でエムウェーブのようなものを現実に確認申請のシステムの中でやっていくということに関してはまだまだちょっと時間的にも技術的にも無理があるのではないかというふうに思っております。
#40
○小川勝也君 それともう一つは、この建築基準法という法律、とても大事な法律なんですけれども、骨の部分はなるべく小さくして地域的なもので肉づけをしていくという形はとれないものだろうかというふうに常々私は考えておりました。
 例えば、沖縄と北海道といいますと風土や気候が全然違います。あるいは神田参考人の御専門でありますでしょうけれども、地震が起きやすいところとそうじゃないところ、地盤や地質などでさまざまな違いがあると思います。この基本的なベースは建築基準法で薄くかけておく、そしてあとは地域的な特徴によって法律や条例でいろいろ固めていくという方法はとれないものかどうか、御意見をお伺いしたいと思います。神田参考人、お願いいたします。
#41
○参考人(神田順君) ただいまの御指摘はまことに私も同感でございます。
 やはり安全性そのものも、文化とか住み方とかそういうことも深くかかわるわけでございます。しかも、四十年にわたっていろいろな形で技術が蓄積しておりますから、地方におきましてもそれだけのものは十分にできてきているのではないかというふうに思いますので、一般的な安全に関しては国で法律で規定しておく必要があると思いますが、具体的なそういう規定についてはその地方の特色を生かした運用というのが非常に望ましい。
 例えば、ヨーロッパなどでも、国の大きさとして比べますと日本というのはヨーロッパではそれこそ五カ国とか十カ国分に相当するわけです。ヨーロッパでもちろん統一の基準というものがつくられておりますけれども、やはりそれぞれその国における運用というのは図られているわけで、そういうような形が非常にこれからも望ましいし、可能性も十分あるというふうに思っております。
#42
○小川勝也君 坪内参考人にお伺いをしたいと思います。
 私は、前の委員会で、例えば市のOBが建築確認の業務をした場合に、その市と密着した関係があるのでその市の確認や建築に対する指導の癖がよくわかっているので有利になりはしないかという質問をいたしました。そうしましたら建設省からは、確認申請の仕事というのは裁量を挟む余地がない、決まったものだというお答えが返ってまいりました。
 きょう坪内参考人から解釈のばらつきがあるという言葉を聞きましたので、そこのことについてどんな問題点があるのか、お伺いをしたいと思います。
#43
○参考人(坪内文生君) 解釈のばらつきというのは、例えば極端な例で申しますと、私が聞いてきた話ですと屋外階段というのは幅が九十センチ必要である、一方、階段の踊り場というところは一メーター二十センチの幅が必要ですよということでございます。
 これは、直行階段、ずっと長い階段で、もし転んだときにそこの踊り場でとまるということを規定しているわけでございます。あるところで、極端な例ということで私は聞いてきたんですが、屋外階段で折れ曲がる階段のときは、ここの踊り場の部分は幅は幾らかというなかなか難しい問題がございまして、しゃくし定規に解釈すれば一メーター二十センチ必要でしょうということになります。九十センチでおりてきて一メーター二十センチの踊り場があってぐるっと回ってくる。合理的に考えれば九十センチでいいわけです。というのは、手すりもございますからそこで転げ落ちないということでいくと九十センチの方が合理的ではないかと思いますが、なかなかその辺が、一メーター二十センチだというふうに強く言われたということが、解釈の相違の一番わかりやすいことで申し上げますが、そういうことがあったというふうに聞いております。
 これから、多分民間が出てきてそういう解釈の差というのはいろいろ出てくると思います。現状でも、この解釈の差というのは建設省の方で随分調整されてきているという実態も聞いております。あるときはこれがよくて、だけれども、だんだんそれは全部どこへ行ってもだめになったとかいうふうに聞いておりますので、そういう指導あるいはフィードバックみたいなものが出てくると思いますし、これからの情報化の時代でございますから、判例、前例ですか、どういう条件のときどういうような許可をしたのだということのデータベースみたいなものができて、それが引用されて解釈のばらつきはどんどん小さくなってくるということを期待しております。
#44
○小川勝也君 大変参考になりました。ありがとうございます。
#45
○福本潤一君 公明の福本潤一でございます。
 さまざまな立場から御意見をいただき、ありがとうございました。
 最初に、神田先生の方にお願いしたいんですが、今回、阪神大震災の安全性の絡みもあって改正がスタートしたというのも一つの要因だということで、安全性の話の御専門のようにお伺いしましたので若干お伺いしたいんです。先生の御本の中に、法律を守ったとしても安全とは言えないというお話がありました。そうしますと、阪神大震災が起こるまでの基準どおりやれば安全だという建物も、ああいうより大きな地震が起こるとだめになるということがあり得ます。
 そうしますと、私は三年前まで河川の方の学者で専門でやっておりましたときに、洪水が起こるときの安全度で、例えば河川は百年に一回ぐらいの洪水までの安全に設計しようというと一定の基準はできますけれども、それよりもっと大きい洪水が来たときはやはり堤防破壊などが起こります。そういう絡みでいきますと、社会的な認知で超過確率が百分の一とか決まってくる。建物もすべてに安全といったら過大な費用がかかるということがあります。そうすると、例えば建物の場合は確率密度曲線の超過確率が何分の一以上というのはどういう形で決まってきておるのかというのを最初にお伺いしたいと思います。
#46
○参考人(神田順君) いろいろな形でいろいろなところで研究もされておりますし論文等も出ておりますが、現状の我が国の建築物の確率的な安全性というような意味から申し上げますと、設計をする立場からの数字といたしましては、例えば五十年間で壊れる確率としましては、十のマイナス二乗とかそのようなオーダーの数字がおおむね設計上の数字になっているというふうに解釈しております。
 ただ、現実にできております建物はいろいろな形で安全余裕が見られます。それは設計者がいろいろなところに多少お金をかけなくても安全にできるというようなファクターを持ち込みますと、阪神の被害を見た限りにおきましてはむしろワンオーダーぐらい少ないのではないか。ですから、十のマイナス三乗とかそのようなオーダーになっているのではないかというふうに思います。
 特に、地震に関しまして世界的な通例といたしましては五百年というような数字が出ております。これは余り数字がひとり歩きするのも問題かとは思うんですけれども、確率的には一年間に発生する確率が五百分の一程度の地震に対して倒壊しないというような規定になっておりますので、それこそ一万年に一度とか予期しない状況が起きればかなりの被害が出ることはある程度はやむを得ないということではないかというふうに思っております。
#47
○福本潤一君 社会的な話という以上に、五百年に一回とか千年に一回とかいうような話から決まっておるようでございます。
 こういう問題、先ほどの上野先生じゃないですけれども、余り理科系の話ばっかりしているとわかりにくい話になりかねないので、その絡みで若干具体的な話で坪内参考人にお伺いしたいと思います。
 あのエムウエーブというのは、木造とはいえかなりすぐれた技術を開発したということでございます。これはつり天井ではないですけれども、鉄筋の建物で、そういうすぐれた技術でできた富士宮にある建物が千年ぐらいはもつという建物だというお話を聞いたことがあるんですが、この建物だと何年ぐらいはもつ考えで建てられておるかというのをお伺いさせていただければと思います。
#48
○参考人(坪内文生君) ちょっとはっきりしたことは申せませんが、メンテがよければ長期にわたってもつというふうに思います。RC造で六十年ということが法定耐用年数になっておりますので、今どういう条件で設計したかがわかっておりませんが、そういうオーダーを期待したものだと思っております。
 全く申しわけございませんが、正確なことが申せません。
#49
○福本潤一君 木造建築とはいえかなり長期にもつものだろうと思います。六十年というお話が出ましたけれども、木造建築ではそこまでなかなかいかないところをすぐれた設計によっては対応できるということだと思います。
   〔委員長退席、理事上野公成君着席〕
 このお話によれば、建築士が総事業本部だけで三百九十名ということは、七百五十人の人員で三百九十名ということは半分以上持たれているということですが、これは全社的に二千人ほど一級建築士が鹿島はおられると聞きました。
 そうしますと、今回、民間開放という話が出ました。民間開放ということで自由度の拡大ができるんだと、非常に新しい展開ではないかと積極的に評価されているということになりますと、鹿島は木造の一戸建てというのはゼロ%だということですのであり得ない話かどうかはわかりませんが、鹿島として、そこへ例えば社員で、民間開放だからそういう新しい事業を事務所をつくってやろうというような人がおったときに乗り出していくような形の法案になっているのかどうか。それを具体的に考えたときに、どういう見通しかお伺いさせていただいて、もしそうでなければ、ないだろうなという気がしますが、なければどういう理由で乗り出せないのかというのもお伺いします。
#50
○参考人(坪内文生君) 今回の民間開放の確認検査機関ですが、一つの要件として公正性、要するにほかから独立して第三者性ということを強く求められています。
 したがいまして、当社の子会社がそういう事業をやったときに、当社の案件を検査なり確認するということは現状では社会的な賛同を得られないだろうというふうに思われますので、具体的には考えておりません。むしろ、我々は使わせていただくユーザーの立場というふうに考えておりますので、どういうふうに展開されるかよく見えませんが、現在のところは考えておりません。
#51
○福本潤一君 社会的な立場で検査と検査を受ける側という関係の問題を指摘していただいたと思います。そのお話しいただいた中に検査というものがありまして、具体的に現場でトリプルチェックができるというお話がありました。施工者のチェック、設計者の監理、そして完了検査という形で三段階。
 公共土木事業と民間の建築事業では違うのかもわかりません。先ほどの神田先生の話でも、公共土木事業だと厳密な計算をした上でここまでが安全だと思うときに、急に一・二倍にしておきなさいというような、エネルギーをかなりかけた厳密な計算ががくっと来るような話が後で出てきたりするのが土木工事の中にはありますけれども、こういう三段階でチェックするということになりますとかなりの検査がきいている。
 今回は、また中間検査というものが入ることになっています。そうすると、中間検査というものを今後より多くの事業に進めるという考え方と、限定して、中間検査で工事をストップすると結局は値段にはね返ってきて大変になるんだという御意見をいただきました。そこの関係でございますが、チェックはきちっと入っているからそのまま進む、現在あったときにストップしないような形でいくというのはもちろん施工者側にとっては望ましいのでございましょうけれども、これが進んでいくと、建設省側の御意見で中間検査の対象をより拡大していきたいという御意見があったわけです。
 そこの絡みで、チェックを受けたときに、検査ストップというのはなくても、中間検査の対象を広げていくという建設省の考えですけれども、事業者としてはどういうふうにその考えに関しては感想を抱かれるか、これをお伺いします。
#52
○参考人(坪内文生君) 今回の中間検査の導入につきましては、私の最初の陳述にありますように品質をつくり込むのはやっぱり現場であろうと、現場の品質管理がよくなければ幾ら検査してもいいものはできません。ですから、工事監理あるいは官の検査というのは確認、つまりダブルチェック、トリプルチェックをやっているんだと思います。したがいまして、必要最小限にしていただきたいというのがこちらの要望でございまして、特に工事工程がおくれるのを非常に危惧している声が上がっております。
 したがいまして、運用につきましては執行体制をきちっととっていただいた上でやっていただかないと、法律で決まっているからということでずるずる検査をして、なかなかしていただけないという状況では困るということでございます。
 こちらは確認していただく、トリプルチェックをしていただくことに対してはやぶさかではございませんが、工事工程がおくれることを恐れているわけでございます。
#53
○福本潤一君 対象範囲の問題はともあれ、そちらは建設省の今後の政令等を含めて、実情をもとに、拡大していくことをもとに対応していただければいいということだろうと思います。一番主眼は、工事ストップを必要最小限という形の対応にしていただきたいということだろうと思います。
 あと、片方さんにいろいろ反対の立場の御意見をいただきました。その中で特殊建築の法案の最後の方に言われた分で、連携して対応できる新しい流れのところもやはり反対だというのがあったと思います。そこのところの反対資料をもう一回確認の意味で、どうしてこれが反対なのかお願いします。
#54
○参考人(片方信也君) 今の御質問にお答えいたします。
 この連檐建築物設計制度の問題点につきまして私が一番懸念しておりますのは、新たな規制緩和を伴うということが予想されますので、特に日影規制とかあるいは斜線制限等の緩和措置がとられることが予想されますので、法文上は明確ではありませんけれども、関連資料を読みますとそういう側面が出ております。そうなりますと、大きな建築活動を行う者にとっては便利ですけれども、従来そこに住み続けているような、住宅が中心になるかとは思いますけれども、そこに住んでおられる住民の方々の利益に本当になるのかということになりますと、その点についてはやはり疑問を持たざるを得ないということが第一点であります。
 それから、容積の未利用部分をこの際活用するという趣旨が盛られておりますけれども、そうなりますと、これまで特に地価が上昇するということでさまざまな問題を起こしてまいりましたけれども、そういう状況が再現するのではないかという点も懸念されます。
 もう一点つけ加えさせていただきますと、公告対象区域というものが設定されるようになっておりますけれども、そこの土地建物に関する権利者の中で、借家人の権利がどう保障されるのかということが明らかでないといいますか、法文上はその権利が保障されておりません。その点につきましても問題点であろうというように考えております。
 以上、三点です。
#55
○瀬谷英行君 今までの御意見を伺っておりますと、片方参考人が反対であるということを明確におっしゃっておりますが、まずどこが悪いのか、どうしたらいいのか、条文的にはどうやったらいいのか、問題点を指摘していただければ幸いであると思います。
 それから、神田参考人は、法律はおくれがちである、政令にすべてをゆだねたのではどういうものだろうか、こういう疑問を示されております。ここもまた、法律の盲点といいますか、そういう点があってはならないということは確かだろうと思うんです。その点についてもお伺いをしたいと思います。
#56
○参考人(片方信也君) お答えいたします。
 私の今回の法案に対する基本的な問題点として考えております点は、先ほども触れさせていただきましたが、やはり性能規定の導入が全国一律の性格を持って、特にその部分が強く押し出されてくるというように考えられます。それぞれの地域地域の個性を生かす建築設計、特に建築物の大多数は国民の住む住宅でありますけれども、その住宅の設計に当たって、それらがむしろ地域の建築にかかわる職人さん、先ほども御指摘がありましたけれども大工さんや設計士さんやら建築技術者、職人さんたちが、コーディネートされた形で業務を行って国民の住宅をつくり上げておりますけれども、そういう建築の行為、設計行為等にやはり大きな影響を与えるというように思いますので、この点が今回の法案の中で一番大きな問題点として指摘される点ではないかというように思っております。
 以上です。
#57
○参考人(神田順君) 私の資料の三番で、ヨーロッパの統一コードについて少し記事を書いたんですけれども、これは一九九二年の段階でございまして、ヨーロッパではその後いろいろな形で議論されておりますが、まだなかなか本当に法律としてといいますか、規則として使える形にはできておりません。今、二〇〇〇年を目指してやっていると言っております。八年かかっておるわけです。
 建築構造関連の基準をいかによいものにするのかということ自体を現場の技術者が議論するというだけで非常に長く時間がかかるわけでございまして、抜本的に変えようとすれば、やはり我が国でも三年五年といった時間はどうしても必要じゃないかというふうに思っております。
 もし、これから二年間でやるということになりますと、そこにまたどうしても時間を優先するためにうまく盛り込めないこととかゆがみが出てくる可能性もありますし、ヨーロッパの例を見ましても、実際に設計者がそこで設計をして、またコンファレンスを開いて、自分たちの国とどう違うというようなことの議論を何度も何度も繰り返しているわけです。それはプロシーディングになったり、いろいろな形で報告されているわけであります。
 ですから、非常に進んだ技術を法律に規定するという場合には、やはりその辺、十分時間をかけた審議がされなければいけませんし、もちろん安全のレベルというようなことに関しては国会のような場で御審議いただく必要があると思うのですが、技術が十分反映されているかどうかというようなことに関しては、やはり実際に技術に携わっている者がいろいろな形でオープンに議論する場というものが必要ではないかというふうに思っております。
 そういうふうにして決めましても、やはり五年議論してつくれば、当然でき上がったときにはある程度おくれたものになる。それはもう宿命だと思いますけれども、その中でよりよいものにしていくためには、ヨーロッパの例なんかもあるんですけれども、例えば十年ごとにはこの部分は必ず見直すとか五年ごとにはこの部分は見直すとか、そういうようなことが現実に行われていかなければいけないんだと思います。
 八一年の新耐震と言われているものの改正の場合も、氏値というのがありまして、非常に大きな変形領域を評価する新しい手法で、これはもう世界的にも同じようなファクターが常識になっておりますけれども、その数字を八一年に導入したときも、実際はこれは五年後に見直しましょうということをかなりみんなで合意してつくったはずなんですけれども、八一年から既にもう十七年たって見直されていないわけです。
 ですから、法律を、特にそういうレギュレーションといいますか規則に関しては、この部分は五年ごとに見直すこの部分は十年ごとに見直す、そういうこともやっていくことによって技術のギャップをなくすことは可能になるかというふうに思います。
 そのようなことでよろしいでしょうか。
#58
○瀬谷英行君 私は関東大震災を東京で体験しました。と言っても、四つのときですから余り正確な記憶はないんです。ただ、うちの前の二階屋のかわら屋根が崩れて落下したということはあったんです。だけれども、家がつぶれたとか倒れたとかというのはなかったんです。当時住んでいたところは今の文京区です、昔は小石川と言いましたが。文京区とか豊島区とか、あのかいわいではそういう大きな被害を受けた家はなかったんです。被害の多かったのは浅草とか、いわゆる下町、本所、深川、あっちの方が非常に大きな被害を受けて、火災が発生をする。倒れたところで火が出る。もうほとんどが木造住宅ですから、倒れたところから発火するとたちまち広がってしまうということで、非常に甚大な損害があったわけです。
 だけれども、あの当時と今とでは建築様式が違いますから、同じようなわけにはいかないとは思いますけれども、今後の耐震構造といいますか、マンションのようなものは、もっともあれが韓国でつぶれて、瓦れきがそのまま墓場になってしまうという例があったということを聞きましたけれども、日本のそういう構造あるいは耐震建築ではあんなようなことは恐らくなかろうというふうな気がいたしますし、そういう実例もなかったように思っておりますが、その点は建築工学の点から坪内参考人か神田参考人に、どちらでもいいですけれども、そういう点をお聞きしたいと考えております。
 それから、地震というのは震源地が海の場合が割合と多いんです。そうすると、震源地に近いところほど被害が大きいんです。だから、同じ東京でもいわゆる山の生地域ではほとんど被害がなかった。それから海沿いの方で当時は横浜から鎌倉に至るまで被害があったんです。これは大きなニュースになっておりませんでしたけれども、関東の方の被害が大き過ぎたためもあるでしょう。だけれども、向こうでは何か皇族の方の別荘がつぶれて亡くなられた方があるということを聞いたのですから、やはりあの地域の地震というのは相当なものだったろうというふうに思うんです。だから、震源地が遠いか近いかによってうんと差が出てくると思うのです。
 そういうことを考えますと、今後どこで大地震が起きるかわかりませんけれども、耐震構造というのは建築学の上でよほど考えておかないと、大工さんの勘だけでもって今建てられている住宅が多いと思いますけれども、そこに建築の専門家の知識というものを十分に活用していただいて、今後の地震に対応できるように日本の建築がすべて過去の経歴を踏まえて建築されるということが、設計の上でもあるいは施工の上でも必要だろうと思うのでありますが、その点についての考え方をお伺いしたいと思います。
#59
○参考人(神田順君) 地震に関しまして具体的なお話を合いただいたわけですけれども、関東地震の場合は震源がやはり鎌倉とかそちらの方に近いわけですので、明らかにあちらの方が揺れが激しかったということが一つございます。
 ただ、私のこの本の中で三十三ページにも図を載せているんですけれども、同じ神戸で震源から非常に近い数キロの距離にあっても、やはり大きく揺れているところとそうでないところがあります。それは、大きな被害があったところとそうでないところと非常によく合致しております。今の我々の工学的な能力で地盤の揺れがどうなるかということについてはかなりわかってきておりますので、やはりそういうようなことを設計にうまく反映することがこれから大きな課題になっていくと思います。
 それと、一般に申し上げますと、海の地震というのは比較的規模が大きいんですけれども、繰り返しが二百年とか比較的短くてデータもよくそろっておりますが、内陸の地震につきましては繰り返し間隔が非常に長い、例えば二千年とか三千年とかそういう長い繰り返し間隔ということもあって、なかなか的確にいつ発生するかということについてはわかりにくいのが現状、これは地震学者の方もそういうふうにおっしゃっております。
 ただ、やはり今まで地震が多かったところはこれからも多いということはどうも統計的にも確かなようでございますので、今までの地震の発生の現状を見て、危険の高いところに対してはより高い性能を、そういう形でトータルとしての投資がバランスよく配置できるような形にしていかなければいけないというふうに思っております。
#60
○瀬谷英行君 私の体験はやはり幼児のころでしたから、横抱きにして母親が表へ飛び出した。ところがどこの家でもみんなはだしで表へ飛び出した、そういう状況だったんです。だけれども、その割に家屋の倒壊というのはなかったんです。それはかわら屋根が落ちたということはあるけれども、かわら屋根よりもトタン屋根の家の方が多かったのですから、トタン屋根の方はむしろそういうことはなかった。家屋というのは案外強いものだなと思いました。だから、それは長年の勘でもって、もう設計の段階から地震には強いようにできていたんだなと思いましたけれども、今後の対策として、やはり耐震住宅といったようなことは必要だろうと思います。
 また、特に高崎の市長さんなんかの場合、高崎というところは割と地震はないんですね。地震に強いところなんです。だから、そういうことは余り考えないでいいかもしれませんけれども、どこで何が起こるかわかりませんから、それらの点での住宅対策等について、あるいは防災対策についてお考えがございましたならばお伺いしたいと思います。
#61
○参考人(松浦幸雄君) お答えさせていただきます。
 今先生御指摘のように、私ども高崎市は関東地区の中では一番頻度の少ない地域ではないかというふうに思っています。ですから、今神田先生からもお話がございましたように、その頻度については余り私ども高崎としては憂慮するような段階ではないと思っておりますので、今の建築基準法で私は十分足りるというふうに思っております。
 以上でございます。
#62
○瀬谷英行君 最後にもう一度片方参考人に。
 今後の二十一世紀の問題としていろいろお話がございましたけれども、具体的に一体どういうふうにしたらいいのか、これは技術的な問題すべてを含めて、総括して御意見を伺いたいと思います。
#63
○参考人(片方信也君) 私は、建築基準法は基本的な骨格を定めるのに限定いたしまして、それぞれの地域ごとに合った建築基準のあり方をこの際本格的に検討すべきではないかというように考えております。
   〔理事上野公成君退席、委員長着席〕
 例えば、私は京都に居住をしておりますけれども、京都のような町ですと建築基準法以前の建物が多数を占めているわけでございまして、そういう意味では不適格建築物ということになるわけでございます。ところが、現在もそれらの住宅を中心とする建物は住み手や使い手によって長く大事にされております。こういう建築物は何も京都に限られたことではなくて、それぞれの地域地域にあるわけでございますから、それらの特性が生かせるように基準のあり方を根本から切りかえていくということが大切ではないかというように考えております。
 個別に、どういうふうな部分がどうかということにつきましては直ちには述べられませんけれども、先ほどの私の冒頭の発言でも何点か指摘しました、例えば性能項目で眺望というようなことが盛られておりますけれども、これなども一体性能規定というふうに言えるのかという点があるわけです。これはまさにその地域地域の建築の置かれている状況によって、そこに住んでいる人たちの立場から見てどのような眺望なりあるいは景観なりを大事にするかということにむしろ方向性を与えるべきでございまして、そういう点から見てやはり今回の法案については問題点がありますし、先ほども申し上げましたように根本的な切りかえの視点に立つべきであるというふうに考えております。
#64
○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。それぞれ有益なお話をいただきまして、本当にありがとうございました。
 町づくりの角度から片方参考人と松浦参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、大きな建築というのは町づくりに大きな影響を及ぼすわけです。それで、建築基準法は最低の基準を定めたもので、それを満たしていても町づくりをどうするか、あるいは地域をどうしていくのかということで支障がある場合が少なくないわけです。東京なんかではそれが多数あると言えると思うんです。
 そういう中で、建築確認はあくまで最低の基準を満たして確認するものにすぎない、建築計画の是非を評価するものではない、そういうものであると思うんです。先ほど松浦参考人が言われたように、確かに技術的な判断で裁量を伴わない、そういう側面は当然あると思うんです。そうすると、確認によって工事が可能になるという法的側面を果たすということもまた事実だと思うんです。
 建設省は町づくりの問題で、そういう必要性については独自に根拠とか基準とか手続を明確にして堂々とやればいいということを述べるわけです。そうすると、一方で自治体が町づくりの立場から計画について是正や訂正をする、そういうことを一生懸命やる、また他方で自治体の建築主事が確認して着工を可能にするというおかしな事態が生まれてくる、こういうことがあるわけで、これは矛盾だと思うんです。そういう中で建設省は、本当に必要な形態規制ならば都市計画法とかあるいは建築基準法の体系の中でゾーン規制をやるとか、そういうことは可能じゃないかということも提起されるんだけれども、例えば用途地域、これは全国一律でしかも一定の広がりを持った地域ということで、それがなかなか難しい状況にある。
 そこでお尋ねしたいんですけれども、地域の個別の事情による町づくりの必要性からの建築計画の評価と切り離した形で、純技術的な基準への適合性だけを判断する建築確認で建築を可能にする法体系、ここには私はかなり大きな根本的な限界と矛盾があるんじゃないかということを常々感じているんですけれども、その点についてどうお考えかということについて、両参考人にお尋ねしたいと思います。
#65
○参考人(片方信也君) 今の御質問にお答えいたします。
 最近、ことしの一月でございますか、都市計画中央審議会が答申を出しております。それを拝見いたしますと、現在の都市計画を支えている機関委任事務を改めまして受託法定事務にするといったような提言ですとか、あるいは現在行われております許認可の事務を廃止してこれを事前協議にしたらどうかといった提言も含まれております。
 中央審議会の答申どおり、もし次の都市計画法の改正がその方向に進むなら私は結構ではないかというように考えているわけでございますけれども、都市計画、つまり町づくりにかかわる法体系についての審議会等の議論の流れというのは、今それぞれの地域地域の実情に合わせた町づくりの可能性を広げようという方向に動いております。
 そういう点からいきますと、基準法の体系自身がやはり全国一律の基準的性格が非常に強い、しかも場合によってはかなり細部にわたるような性能規定というふうに進みかねない面も法案の中には含まれておりますので、その地域の町づくりと個々の建築のあり方がぶつかり合ってくるという場面が想定されるわけです。
 現に、例えば総合設計制度というのがございますけれども、総合設計制度で、歴史的な市街地の中などにその制度を適用いたしまして、京都では京都ホテルなどがその例でございますけれども、あるいは特定街区制度がありまして京都駅ビルが建築されておりますが、それを見てもわかりますように、建築の法体系の中に組み込まれている今御紹介いたしました二つの制度、それ自体も実は京都の町づくり、都市計画の方向に重大な影響があるわけです。
 そういうことを避けるためにも、基準法の体系はやっぱり地域の実情に即した内容に改めるべきであり、そして大きな建築物だけではなくて住宅につきましても長年の積み重ねによる町並み、景観がつくられていくということがあるわけでございますので、そういう目標をそれぞれの地域、自治体で持つことが広がってくる中で、個々の建築のあり方についても地域、地方自治体の意向がむしろその方向を決めていくというような仕組みをぜひとも導入すべきではないかというように考えております。
#66
○参考人(松浦幸雄君) お答えさせていただきたいと思います。
 今、町づくりのお話がございました。町づくりの行政というのは建築活動と密接に関係をしているために建築確認の場を使っているわけでございますけれども、それなりの成果があると考えているわけです。また一方で、建築確認を後ろ盾に指導を押しつけているのではないか、また指導の根拠や基準がわかりにくいという御批判もあることも事実でございます。町づくりは極めて重要な市の行政でございまして、だからこそ、その根拠、手続、基準は明確である必要がありまして、このような建築確認の場を使った行政指導という形については、むしろ今回の法律改正を機に変えていく必要があるのではないかというふうに考えているわけでございます。
 また、私どもは平成五年に高崎市都市景観条例を定めさせていただきまして、交流拠点都市高崎にふさわしい美しく潤いのある都市景観の形成を進めているわけでございまして、平成六年度から建築工事などの際に景観に対する配慮を促すために大規模建築物等、これは高さ十五メートル以上または建築面積千平米以上のものについてでございますけれども、その届け出をスタートさせていただいております。おかげさまで民間の御協力を得まして、駅周辺を中心に魅力ある都市景観が形成をされているというふうに私は思っているわけでございます。
 こうして基準法と条例とをうまく組み合わせていくことによりまして、良好な町づくりは可能であるというふうに私は考えております。
#67
○緒方靖夫君 松浦参考人は、特定行政庁と市長と、そういう立場をお持ちで本当に苦労されていろいろ仕事をされていると思います。
 特に、民間確認ということになった場合、事前に市としてそういう建築の内容とかそういうものを知ることはできない、したがってこれまでできていた必要な指導がやりにくくなるんじゃないかという懸念もあると思うんですけれども、その点どのようにお考えでしょうか。
#68
○参考人(松浦幸雄君) 私ども高崎市では、中高層建築物指導要綱によりまして建築確認申請前に近隣住民に対し計画の周知をし、その報告をするように指導しているわけでございます。今回の建築確認の民間開放によりまして、建築確認業務の場を使った行政指導という形は変えていく必要があるというふうに思いますが、今後必要に応じまして目的、手続、基準の明確化を図りつつ条例化を考えていきたいというふうに思っております。
 建築確認の民間開放により時間的にゆとりが生まれ、そうした時間を今後違反建築物の是正、耐震改修、ハートビル建築物の推進、町づくり事業など、より質の高い行政ニーズにこたえることが私は可能になってくるというふうに思っております。
#69
○緒方靖夫君 ありがとうございました。
 神田参考人にお尋ねしたいんですけれども、阪神・淡路大震災のときに芦屋浜の高層マンション、私はそこへ行って改めて驚きましたけれども、大変な厚さのスチールが切断される、そういう予想外の被害とか、そういう事態があったと思うんです。科学技術が進歩してもやはり解明し切れない部分というのはあるのかと、それを見ながら改めて思ったんですけれども、その点で仕様基準でも性能基準でも安全度の余裕を見ている、それがあると思うんです。
 先生の御著書を読ませていただきました。四十ページのところに「耐力の評価式が、もともと余裕をみている」、そういう記述もありました。科学的な知見の進展で構造計算が精密になるにつれて余裕度を少なくするということも可能になってきているんではないかと思いますけれども、それ自体は進歩だとしても計算の前提条件が狂うような事態が発生した場合には、予想を超えるような被害が出るという現実も予想されるわけです。
 特に、性能基準では仕様基準の場合よりも余裕度がぎりぎりになるという傾向が出ないのかどうか、その点、御専門の立場からお尋ねしたいと思います。
#70
○参考人(神田順君) 安全性に関しましては、現在の仕様規定で最低限を決めておりますけれども、現実にでき上がっている建物に関してはかなり幅ができるんだと思います。それをより詳細な解析をして、しかも安全はミニマムとしてはこの程度だというような決め方をしますと、その幅がやはり少なくなると思います。そこで、要するに最低としてはどこを決めるのか、日本としてふさわしいレベルはどの程度なのか、あるいはもう少し余裕がある場合にはどのくらい安全にするのか、そういうことを見えるようにしていくことが大切だというふうに思っております。
 現実に、その建物が倒壊する例というのは数からすると極めて少ないわけでありまして、今回の阪神でも老朽化木造ですとか八一年の新耐震以前の建物を除きますとかなり少なくなっているわけです。その少ない中にも現実に手抜きですとか施工不良といったものがある程度含まれていると思うんですが、残念なことにその辺の数字が明らかになっていないので、それをどういう形で変えたらどのくらいより安全になるのかということは非常に見づらいのが現状だと思うんです。
 常に余裕は見ておきますが、それは余裕を見ていることをどの程度見ているのかを明らかにすることによって、ミニマムと本来ふさわしい水準とというような形になっていけば、今よりも安全に対して安心できる状況というのは十分つくり出していけるというふうに思っております。
#71
○緒方靖夫君 ありがとうございました。
 神田先生にもう一つお聞きしたいんですけれども、きょういただいた先生の御意見の中に、性能規定化の理由の一つとしてこういうことが言われている。しかし、法案を見る限りではすべてを政令で規定していってしまって、結局単に行政裁量権を明文化するための法改正は技術の発展の阻害になりかねない。性能とは何かの議論も不十分であるという記述があります。技術の発展の阻害となりかねないという点についてそのお考え、またどういう議論が必要と考えられているのか、十分など言われるような、その点をお伺いしたいと思います。
#72
○参考人(神田順君) 一つには、技術者の側にも責められる部分は僕はかなりあるのではないかと思うのですけれども、五十年前にできました施行令等によって非常に丁寧に規定がされておりますので、ある意味では技術者というものがみずから安全性をどのくらいにするかというような判断をしなくても、とにかく規定どおりやっておけばこれは基準法に従ってやっておりますということで免罪符になってしまっていたという現状があるんだと思います。
 それは、なかなかエンジニアもそこから抜け出せないという状況があるわけでありまして、そうしたときに今回の規定改正によりましてより詳細な記述が、より詳細な解析に基づく性能規定ができた場合も、今までのようなことを続けているのでは判断をせずに単に全部法律に任せてしまうというようなことになるんだとしますと、本来目指しているものと違う方向に進んでいってしまう。
 そういう意味では、技術者の自己責任といいますか判断に関する責任がより大切なものだということが、やはり基準法の中でももう少し明確にうたわれてくる必要があるのではないかというふうに思っておりまして、規定を詳細化することによってより安全なものができるということに必ずしもつながらない面があるので、その辺がある意味では課題ということも言えるんだと思います。技術者を詳細な規定ができたからそれをやるんだよというだけではなくて、もう少し自己責任においてやれるということを感じさせるような、技術者を勇気づけるような法律であってほしいというふうに私は思っております。
#73
○緒方靖夫君 終わります。
#74
○山崎力君 改革クラブの山崎でございます。時間が制約されておりますので、短目にお答え願えればと思います。
 私は、この問題で今素人として法案審議に入って一番感じておりますことは、本来建築物の安全性のチェックをするべきというかその規範であるべき建築基準法が、その建築確認作業というところにおいて町づくりの部分と密接に関係してきてしまっている。要するに、純技術的な安全性を担保すればいい法律というものが、その単体ではなくて集団というものをどうしたらいいかというところまで来ている。ところが、それは別に都市計画法その他と関係しているものですから、その辺の役割分担が不明確になっているのではないかという基本的な認識に立ち至っております。
 そういった意味で、要するに建築確認作業で一番違反は何なのかといったら、建ぺい率と容積率だというんです。安全性の問題はもうごくごく一部だと、ごくごくではないんですけれども。そうすると、これは本当に建築基準法に基づく作業を建築主事たちはしているのか、そういう本来の趣旨からして外れているんじゃないかという気がしております。
 そこで、松浦参考人にお伺いしたいんですが、本来どうしても市民ないし国民がやってほしいというニーズがあるのならば、確認作業を三〇%でここ何十年来やってきたということはおかしいんじゃないか。幾ら市の予算が乏しいとはいえ、これに対して予算と人員をぶち込むというのは行政庁として、地方庁であっても当然ではないかと思うんですが、それを現実にやってこれなかった。ということは、それだけ市民のニーズがなかったというふうに考えてよろしいんではないかという気もするんですが、その点いかがでしょうか。
#75
○参考人(松浦幸雄君) 御指摘のことでございますけれども、私ども高崎市におきましては、今先生御指摘のような状況が続いて、三割ではなくてうちの場合は完了検査やなんかは二割ぐらいでございますけれども、確認の段階におきましていろいろと作業がたまってくることも事実でございます。職員数も少ないということになりまして、先ほど私の陳述にもございましたように今いろいろと数少ない職員の中でそれをやりくりしておりまして、現状は先生の御指摘されるとおりであろうというふうに思っております。
 今後、この改正によりまして民間開放されるということになるわけでございまして、そうした職員にとっては今の改正は非常にいいことであろうというふうに私どもは思っておるわけでございます。
#76
○山崎力君 ただいまというあれですけれども、本当にニーズがあるならばもう十年前二十年前から人員確保しているはずなんです。やっていないということは、それだけ市民のニーズがなかったということです。安全さえ確保していれば、ほかの町並みその他のところは、建て主としては、一般の住宅もアパートの集団住宅の経営者も含めて壊れるような家では困るけれどもその最低限の担保さえとれていれば、他人に迷惑をかけるということは御近所のつき合いということからの面だけであって余り言ってもらいたくない。そこのところを踏まえないでこの問題を考えても、僕はある程度むだだろうという部分があるわけです。
 そこでもう一つ、この問題の一つとして図書閲覧で、不動産を、住宅建造物をしっかり把握させる、情報公開すると言うんですが、これが実効性があるところまでの作業というのは、高崎市の場合にはどのくらいでその書類の整備ができるとお考えでしょうか。これから新しいものだけをやっていくというんでは、これは一〇%二〇%で、全体的にはそういった形でいけばほとんど実用性にならないという図書閲覧の作業になると思うんですが、その辺の見通しはどうでございましょうか。
#77
○参考人(松浦幸雄君) 今具体的なあれについてはちょっとお答えできないわけでございます。その数字等については私どもまだ確認をしておりません。申しわけございません。
#78
○山崎力君 申しわけないんですが、そういったことを私どもは実際の現場の首長さんの代表として来られた方に期待していたわけであります。法律の方向はいいんだけれども実際の現場でどうなのかというのをお聞きしたかったんですが、そういった意味で参考人として一番お詳しい方でも全然そういう数字がないということになれば、現段階では絵にかいたもちと判断させていただかざるを得ないというふうになってしまうわけでございます。
 それでもう一つ、今度は神田参考人にお伺いしたいんですが、安全性の問題で一番我々がショックを受けたのは、公共建造物が阪神・淡路で大分やられた。それが、あの時間帯でよかったけれどももっと違っていたら、例えば新幹線の鉄橋一つにしてもこれはもう千人単位の死者がふえていたかもしらぬと言われているわけですが、そういった点での結論。
 それから、先ほど気になった発言でいきますと、要するに施工不良なのか何なのかはっきりしていなけのでということが言われておりました。問題点が出てくるのは、設計のミスなのか、材料不良なのか、施工のミスなのか、いろいろ破壊された場合の、壊れた場合の要件はあると思うんですが、一言で今言われているのは古い耐震設計がやっぱり弱かった、新しいところはもっていたと、こういうことなんです。さはさりながら、古いところで公共的に言えば非常に重要なところがある。新幹線、それから私が驚いたのは地下鉄の崩壊、それからもちろん高速道路、一番目立ったところですけれども。それから公共建造物、県庁とか警察署とかというところがやられている。
 その辺のところを含めて、建築学会として何が安全性の最低限の問題で見直さなきゃいかぬのかという結論的なものは何か出ているんでしょうか。
#79
○参考人(神田順君) 順序を終わりの方から順番にさかのぼりたいと思うんですが、建築学会といたしましては、ここ二年半ぐらいにわたりましていろいろ検討して、最終的には現在七十二の提言というような形で取りまとめたものをお出ししております。それについても、具体的に例えば行政にどういうことを希望するのか、あるいは一般の国民としてどういう形で考えていかなきゃいけないのか、そういうあたりについての具体的な対策を今検討している段階でございます。
 それから、例えば公共建築物が壊れたということに関しましては、警察署ですとか消防署ですとか病院とかが地震のときにどれだけの役割があるのかというあたりをあらかじめ検討した上で、一般の建築物と同じ強さでいいのか、その辺の問題をやはりもう一度取り上げておく必要があるんだろうと思います。
 以前、基準法改正のときに、これは重要度係数というような言い方で呼んでおりますけれども、そういう形でその法律に盛り込むことに関してはかなり反対がございましたようですが、現実に地震災害に対してどういうふうに対応するのかということを考えますと、法律がたとえミニマムのリクワイアメントであったとしても、地方公共団体あるいは住んでいる人たちがどういう建物にどれだけの安全性が必要なのかということを認識していただくことが必要なんだろうというふうに思います。
 それから、私が申し上げました施工不良、手抜き等の事柄につきましては、現実に八一年以降設計施工された建物の倒壊のパーセントを統計から申し上げますと、その数は十分少ない数だというふうに思っております。ですから、統計的な意味合いからはむしろ安全性はもう少し低くていいのかもしれないというふうに思うほどであります。
 ただ、非常に残念なことは、これは建設省に注文することはなかなか難しい国民全体の問題だと僕は思うんですけれども、どうしても責任を明らかにしない体質が日本全体にございます。ロサンゼルスでノースリッジがあったときには、市がかなり厳しい強権をもってその証拠を明らかにするんだということで検査に乗り出したわけです。もし日本でそういうことをやろうとすれば、すぐ動けるだけの人とかお金が必要なわけで、なかなかそういうことに対してうまく動けていないというところがあって、残念なことに実際に壊れてしまったり、場合によっては大手の建設会社がつくったものでもコンクリートの強度が必ずしも十分でもなかったというようなことは、裏では聞いているんですけれども、果たしてそういう数が幾つあってその原因が何であったかというようなことについて公開する資料の形ではできていないと思います。この辺は今回の反省に立ちまして、将来こういうことがあったときに迅速な対応がとれるように、そしてやはり設計者の責任あるいは施工者の責任、その責任も壊れたことだけが責任ではないんだと思うんです。
 お医者さんが手術をするときに、どういう手術をするかという判断の適切なところの責任はあるけれども、患者が亡くなること自体に対しては医者が責任をとるという性質のものではないわけです。設計者が適切なレベルに対しての設定に関しては責任があると思うんですが、現実に壊れるかどうかということと適切な判断をしたかどうかということを区別して議論できるような状況をやはり日本全体でつくっていかなきゃいけない。そのためには、建設省としても指導という立場でそういう方向に国民が考えていけるような指導をお願いできればというふうに思っております。
#80
○山崎力君 今の問題は非常に私にも身につまされるところがありまして、「もんじゅ」のときとこの間の日銀のときに内部監査の実務上の責任者が二人とも自殺しております。そういった国民性があるということは重々承知した上で、これは時間がありませんので坪内参考人に要望だけ申し上げておきたいんです。
 日本の一流建設会社というものであれば、この間の阪神・淡路のときに被害を受けたあるいは被害を受けなかった御社の建造物がこれだけあって、そのうちの被害状況はこうでありというような報告書を出されるところがこれからの一流の建設会社ではないかというような感じを私は持っておりますので、関係者の間でそういった方向で御検討願えればと思います。
 最後に、片方参考人にお伺いしたいんですが、いろいろ反対の理由それから問題点を言われておりますが、いわゆる技術的な問題、建築基準法の問題が国民的議論になじむのだろうかという根本的な疑問を私は持っております。
 と申しますのは、先ほどの絡みでいけば、純技術的な安全性の問題に関してのことはちょっとなじまない。むしろこの問題でなじむのは、先ほどの例の日照権であるとか、容積率によって土地価格が上がるとか、あるいは借家人の権利とかあるわけですが、これはどちらかというと都市計画法的な絡みの方からきているダブった問題だ。
 そこで、極端かもしれませんけれども、例えば地方分権で、その土地土地の町づくりを建築基準法で認めるようにしたらどうか。これはまさに用途規制、建ぺい率その他出てくるんですが、これは松浦参考人にもお聞き願いたい。時間の関係でお答えは結構です。
 我が町は、要するに強権でもないんですけれども、市民の理解、すなわち市議会の議決をもって条例をやる。この区画はまさに発展させたい、よって容積率を一〇〇〇%に認めよう、そのかわりこっちの方はもう二階建て以上は認めない、あるいは極端に言えば鉄筋コンクリートは認めない、最近は一般住宅でも鉄筋建てが出てきていますけれども。そういったある意味で言えば極端なことも、先ほど片方参考人のことで言えば、地方分権的にやっていけば住民の理解さえ受ければできるということになるんですが、逆に進めれば。そういう考え方、そこまで地方分権に任せて、国はある程度やって、地方の人たちの納得ずくであればそこまでやっていいというお考えかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
#81
○参考人(片方信也君) 御指摘の点についてお答えしたいと思います。
 どこまで地方分権でというようなところの線の引き方については、御質問の中でも私の理解不足で聞き取り得ないところもややございましたが、基本的にはやはり安全性あるいは財産権の保障に絡むような基本的な骨組みは基準法で明確にさせるということが必要ですし、それ以外について特に御指摘のとおり町づくりや都市計画との関連が強くなってきておりますので、そういう側面から考えても地域、地方自治体の方に任せていくことが可能ではないかというように思っております。
 その際に、とりわけ重要な問題として出てまいりますのは、建築の質を高いレベルでどう確保するかということがあろうかと思うんです。特に、先ほど来も議論がありましたが、建築物を生産する際の設計者やあるいは職人さんやら施工監理等々の業務の関係が、お互いにそこが責任体制が持てるようにきちっとなっているかというと、その点にやはり今一つの大きな問題点があるというように考えておりまして、従来特に建築士、建築技術者につきましては建築手法制定にかかわっていろいろ議論があった経過があるわけです。特にそれは建築技術者、建築士の施工との兼業規定をどうするかということをめぐって随分長い議論がされ、そこのところは法文上も盛り込まれずに現行法ができているという経過がございます。
 そのことからいきまして、改めて建築技術者の特に中間検査等の検査がございましたけれども、それ以前に現場の、先ほど品質の管理というような御発言もございましたが、高い技術的なレベルを確保するための建築士の施工監理の仕組みをどういうふうに地方自治体で支えていけるのかということが課題になってくるというふうに思っております。
#82
○山崎力君 終わります。
#83
○委員長(関根則之君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用中のところ御出席を賜り、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 次回は六月四日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト