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#1
第142回国会 労働・社会政策委員会 第9号
平成十年三月十二日(木曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月十一日
    辞任         補欠選任
     吉岡 吉典君     聴濤  弘君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鹿熊 安正君
    理 事
                石渡 清元君
                海老原義彦君
                笹野 貞子君
                大脇 雅子君
                吉川 春子君
    委 員
                狩野  安君
                小山 孝雄君
                佐々木 満君
                佐藤 静雄君
                坪井 一宇君
                橋本 聖子君
                勝木 健司君
                長谷川 清君
                木庭健太郎君
                山本  保君
                聴濤  弘君
                都築  譲君
                堂本 暁子君
   国務大臣
       労 働 大 臣  伊吹 文明君
   政府委員
       経済企画庁国民
       生活局長     井出 亜夫君
       厚生省児童家庭
       局長       横田 吉男君
       労働大臣官房長  渡邊  信君
       労働省労政局長  澤田陽太郎君
       労働省労働基準
       局長       伊藤 庄平君
       労働省女性局長  太田 芳枝君
       労働省職業安定
       局長       征矢 紀臣君
       労働省職業安定
       局高齢・障害者
       対策部長     中野 秀世君
       労働省職業能力
       開発局長     山中 秀樹君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   説明員
       文部省高等教育
       局大学課長    清水  潔君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠選任の件
○労働問題及び社会政策に関する調査
 (労働行政の基本施策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鹿熊安正君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨十一日、吉岡吉典君が委員を辞任され、その補欠として聴濤弘君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(鹿熊安正君) 理事の辞任についてお諮りいたします。
 狩野安君から、文書をもって、都合により理事を辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(鹿熊安正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(鹿熊安正君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に石渡清元君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(鹿熊安正君) 労働問題及び社会政策に関する調査を議題とし、労働行政の基本施策に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○橋本聖子君 おはようございます。橋本でございますで労働・社会政策委員会で初めての質問の機会をいただきました。本当にありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、女性の立場から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 我が国が抱えております二十一世紀に向けての最大の問題の一つに少子高齢化が挙げられると思いますが、当然ながら、経済社会における女性の果たす役割につきましてはますます大きくなります中で、女性特有の感性を生かす機会、また女性にしかできない仕事、自分の持っている能力を十分に発揮することができる雇用環境の整備は重要と考えます。
 このことから、男女の雇用機会均等の確保対策を進めていただくとともに、職場におけるセクシュアルハラスメント、いわゆるセクハラ防止のための対策ですとか、妊娠中及び出産後の女性労働者の社会的支援の充実がこれからはますます必要ではないかと思いますけれども、この点を含めまして、女性労働対策について大臣にお伺いしたいと思います。
#8
○国務大臣(伊吹文明君) ただいま御質問のございましたことは、これからの日本社会を考えていく上で私は大変重要な視点だろうと思います。
 まず、少子・高齢化とおっしゃいましたが、少子ということは、二十年後には働く人が非常に少なくなるという問題が必然的に起こってまいります。現在の日本経済を維持して、そして今日の行き届いた制度をそれによって支えていくためには、少なくなる働く人はどこかで補充をしなければなりません。それは、高齢退職者にもう少し引き続き働いていただくか、女性にさらに社会に進出して働いていただくか、外国から労働者を入れてくるか、どれか三つだろうと思います。
 その中で、女性が社会に出て労働力として大いに存在を発揮してくださるということは非常に重要な問題だと思いますが、それにも増して大切なことは、社会に出て働くということによって異なる価値観に触れ、そして自分が存在しているという喜びを感ずるという権利は女性にももっともっと私は解放されるべきだと思っています。
 そういう意味で、今御指摘のございました男女の雇用均等法というのは私は時宜を得た法律だと思っておりますので、募集、採用、定年、退職、解雇に至るまで男女の差ということによる差別は行ってはならない。しかし、そのことは同時に、母性あるいは女性特有の問題を除いては実社会においては男女はともに権利を主張し、ともに義務を果たしていくという社会でなければならないと思っております。
 そういう意味で、育児でございますとかあるいは女性特有の性ということについては何らかの保護、しかるべき措置を講じていくというのがあるべき姿だと思いますが、それ以外においては十分女性も対等の立場で権利と義務を果たしながら社会参加をしていただく、これが私は基本であると思っております。これからは、将来的には女性の課長だとか女性の次官だとかというのが珍しくない社会に私はなってもらいたいと思いますし、立派な人を課長にしたら結果的にそれが女性であるという社会がやっぱり一番いい社会ではないかと思っております。
 そういう社会を目指して、今、橋本委員が御指摘になったような気持ちで我々も取り組ませていただきたいと思っております。
#9
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 少子化が一層進展していく中で、この少子化問題についてお話をさせていただくときには、何か自分自身にも責任があるようでちょっと肩身の狭い思いをいつもしてしまうんです。女性の職場進出が進みまして妊娠中及び出産後も働き続ける女性が増加していっておるんですけれども、職場において女性が母性を尊重されまして安心して子供を産むことができる、産み育てていくことができる条件整備というのが重要であると考えます。
 現在、企業におきましてはなかなか母性健康管理に係る制度の実施率というのはまだまだ低いというふうにお聞きしておりますけれども、女性労働者のための母性健康管理に対しての現状と対策についてまた少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
#10
○政府委員(太田芳枝君) 先生御指摘のように、女性の職場進出が進みまして妊娠中及びまた出産後も働き続ける女性が増加しているわけでございます。職場において女性が母性を尊重されつつ安心して子供を産み育てることができる環境を整備するということは、私どもにとって非常に重要な課題であるというふうに認識をしておるところでございまして、先ほど大臣も御説明されましたけれども、企業における母性健康管理に係る制度というものにつきましては充実していかなければいけないというふうに考えているところでございます。
 ただ、先生御指摘のように、この母性健康管理に係る制度の実施率というのは必ずしも十分な状況ではございませんで、例えば平成六年でございますけれども、いわゆる妊娠中とか出産後の通院休暇があるというような企業は二二・七%程度にとどまっているというような状況がございました。
 こういうようなことから、昨年の六月、男女雇用機会均等法を改正させていただいたときに同時に労働基準法の改正を行いまして、双子以上の多胎妊娠の場合の産前休業期間、これまで十週間というふうに決まっておったわけでございますが、これを十四週に延長するという改正を行いました。
 また同時に、均等法を改正いたしまして、妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関しまして、女性労働者が健康診査を受けるために医者に行くわけでございますが、そのときそういう必要な時間を確保することができるようにするということ。それから、健康診査に基づきましてお医者様からいろいろ指導事項を受けた場合に、そういう指導事項を労働者が守ることができるようにするための措置に対しまして事業主に対して義務化を行ったところでございまして、この措置につきましてはこの四月一日から施行されることになっているわけでございます。こういう点で母性の充実ということを図らせていただいたわけでございます。
 そして、この法律の実効性を確保するための措置といたしまして、特に医者の指導事項を事業主に明確に伝えるということから、母性健康管理指導事項連絡カードという一枚紙のカードをつくりまして、これにお医者様からいろいろ指導すべき事項を書いていただいて、それを女子労働者が事業主に見せるというような形で実効性を確保していきたいというふうに考えておるところでございます。」
 また同時に、企業内の産業医さんなど産業保健スタッフがいろいろ企業の中におられるわけですが、こういう方々に対しましても研修を充実するとか、それから小規模事業所におきましてはなかなかそういうスタッフというのも充実できませんので、小規模事業所の女性労働者たちに対する母性健康管理の相談事業というものを行いまして、さまざまな形で企業の中における母性健康管理の体制の整備充実について促進をしていきたいというふうに考えているところでございます。
#11
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 将来的なデータといいますか、もうずっと先の話ですけれども、八百年後には世界から日本人がいなくなってしまうというようなデータが出ているということもありまして、そういう面でやはり母性健康管理につきましても御理解と御支援のほどをより一層お願いしたいと思います。
 少子・高齢化に伴いまして共働き世帯、核家族化の増加の中で、男女労働者が生涯を通じて充実した職業生活を送るためには、やはり仕事と育児、介護との両立をバランスよく保っていくことが今後二十一世紀の日本社会の真の活力の源というんでしょうか、元気な日本づくりの根本的なところがあると思うんですけれども、職業生活というものとそしてもう一つ家庭生活というものの両立は重要な部分なんですけれども、この点につきまして、元気な日本づくりの支援対策といいますか、どのようなことをされているのか、また今後どのようなことをされていく考えがあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#12
○政府委員(太田芳枝君) 少子・高齢化、また共働き世帯の増加、それから核家族化などが進む中で、男女労働者が生涯を通じて充実した職業生活を送るためには、やはり仕事と育児、介護との両立をどうやって図っていくかということは、先生御指摘のとおり、これからの我が国にとりまして非常に重要な課題であるというふうに認識しているわりでございます。このため、労働省におきましては、職業生活と家庭生活との両立支援対策といたしまして三つの柱を立てまして施策を展開させていただいております。
 一つ目は、育児休業とか介護休業を取得しやすく、また職場復帰しやすい環境をつくっていくということでございまして、このために育児休業給付とか介護休業制度の導入奨励金などの支給を行っているところでございます。
 二つ目の柱といたしましては、この育児や介護をしながら働き続けることができる環境を整備するという観点から、事業所内託児施設を設置いたします事業主に対する助成金の支給などを行っているところでございます。
 三つ目は、実際に育児、介護のために一たん退職した方々がまた再度就職したいというときに再就職がしやすいような支援対策を行っているところでございますが、これらの両立支援の三本柱、今後とも一層充実してまいりたいというふうに考えております。
#13
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 やはり家庭生活の充実ということが大切になりますので、ぜひその点もよろしくお願いしたいと思います。
 女性の労働支援と同時に、出産そして子育て支援も日本の活力に結びつくと考えておりますけれども、労働力で女性を必要としていくと同時に、女性、母性の原点とも言える出産、子育てというのは特に重要になってくると思います。
 その子育て支援ということについてお聞かせいただきたいんですけれども、子供を持ちたい、家庭を持ちたい、でも仕事をしていかなければいけない、そういう中で、心が落ちつくといいますか、安心して産み育てることのできる環境整備というものは、労働省として子育てという点を踏まえてはどのような支援をされているのか、またどのような点を踏まえてこれから実施されていくのかを、同じようなことになる部分もあるかと思うんですけれども、詳しくお聞かせいただきたいと思います。
#14
○国務大臣(伊吹文明君) 勤めていらっしゃる女性とそれから専業で主婦をしていらっしゃる女性の出産率を見ますと、勤めていらっしゃる方の方が子供さんの数が相対的に少ないというのは統計数字に出ているとおりでございます。これはやはり勤めることによって収入を得たいという面と、それから勤めるということを通じて社会に参加をして、家庭にいるだけでは味わえないいろいろな価値観に触れて、そして女性もまた人間として成長していきたいという気持ちと、それからまた子供を産み育てる、これも女性として私はすばらしい事業だと思うんですが、その二つがはかりにかけられていると思うんです。
 これは悪いとかいいとかということではなくて、人間が生きていく上での価値観の問題でございますから、勤めることによって社会参加をして人間的成長を図りたいというお気持ちの中で子供もまた育てられるような状況をつくっていく、これが労働省のやるべきことだろうと思いますので、行政としては今政府委員が申しましたように、企業の企業内託児所に対する助成やなんかということをやっておると同時に、育児休業をとられる方に対して、その休業期間中に給与の一部を雇用保険で助成するということをことしの予算折衝の際に大蔵大臣とお話をして、将来的に盛り込んでいくという合意に実は達しているわけです。
 そういうもろもろの措置を通じて、勤めながらもまた子供を産み育てていただける環境をつくっていきたいと思っておりますが、基本的にはこれはやはりパートナーの理解というのが一番私は大切だと思うんです。
 私ごとになりますが、実は私の妻も社会に出て仕事をいたしております。私が先にうちへ帰るときもありますから、そういうときはおくれて帰ってきても落ちつけるようにしてやる程度のやはり配慮はお互いに持っていないと、そういう家族でないとなかなか女性が子供を産み、育児をしながら勤めを続けるということは政策だけではなかなか難しいんじゃないかという気持ちも私は持っておりますので、そういう社会にぜひ日本の社会がなってもらいたいと思っています。
 もう一つ、最後に私は政治家として申し上げると、最近のいろいろな非行事件というか、日本社会として残念な青少年のナイフの問題等を見ますと、保育あるいは託児はお金でできますけれども、子供を育てて子供をしつけるということは、基本的にはやはり母親のぬくもりと父親の厳しさによってできてくるんだという原点だけはお互いに確認をした上で、最後に物的な要件を整備していくということであろうかと思っております。
#15
○橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひ女性労働者支援について一層の充実を図っていただきたいというふうに思います。
 国会議員になって出産をした例というのは日本はまだないということですので率先して、余計なことを言うとあれですけれども、二十一世紀に向けてやっぱり頑張っていかなければいけないなと思いますが、その前に、大臣が今お話ししてくださいましたようにパートナーの問題がありますので、大臣のように御理解のある方を見つけたいというふうに思います。
 もう一つ女性問題についてお伺いしたいと思います。
 女性労働者対策につきまして、近年、再就職型の女性を中心に、自己の能力を生かす別の就労機会として、みずから事業を起こして頑張っていこうという方がふえてきているというふうに聞いておりますが、やっぱり男性と比べまして、女性の場合は生活関連分野などの事業アイデア、女性にしかない考え方ですとかそういうものが豊富ではあるんですけれども、ある意味で会社設立に必要な知識ですとか手続、また事業運営に役立つ企業経験に乏しいことなどから、企業また事業経営のさまざまな場面で、設立していく上で困難な問題がたくさんあるというふうに聞いております。
 せっかく、これから自立して社会で頑張っていきたいという女性がたくさんおりますので、女性企業家を目指す方々、また今企業家として頑張っておられる女性の方々への支援対策についてお話をお伺いしたいと思います。
#16
○国務大臣(伊吹文明君) その前に、ちょっとおわびをして訂正しておきたいと思います。先ほど私、年末の予算折衝で育児休業給付を新設するように大蔵大臣と云々と申し上げたようですが、これは女性を含めて介護休業給付を新設するように折衝したということでございますので、この点、訂正をさせていただきます。
 それから、今御指摘の点は、将来の雇用を確保するという意味では、すぐれた労働力と資本と技術、これが一体となったところで新しいベンチャー企業が起こるわけですから、そのベンチャー企業を起こそうとされる方は何も女性だけに限定をする必要はありません。したがって、男性、女性を通じてそのようなベンチャー企業を起こそうと思われる方には、労働省には実は中小企業労働力確保法という法律がございまして、この中でいろいろな支援、特にベンチャー企業として労働力を確保される方に対する助成措置等を講じておりますので、女性も堂々たる社会のベンチャーの一員として男性と同じようにこの制度を利用していただければ結構かと私は思っております。
#17
○橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
 続きまして、障害者の方の雇用問題について幾つかお話をお聞きしたいと思います。
 障害者のスポーツの祭典であります長野パラリンピックが三月五日に開会されまして、今まさに夢と感動を与えてくださる選手の活躍が報道されておるところです。私も、初日そして二日目と競技を見させていただきまして、また土曜日の最終日には現地に行って競技を見させていただきたいというふうに思っているんです。
 日本では東京大会に続きまして二回目のパラリンピックの開催となりまして、冬季の大会では今回が初めてです。そのオリンピックの後に各オリンピック会場を利用してパラリンピック大会が開催されているんですけれども、日本で開催されていなかったということもありまして、健常者のオリンピックをマスコミの方が取り上げてくださるのに比べて、パラリンピックというのは日本で放送が少なかった分、日本の方にまだなかなか理解されていない部分がたくさんあったんです。
 今回は、冬季オリンピックの大活躍に続いてまたその同じ場所でパラリンピックが開催されたということで、勢いに乗ってといいますか、パラリンピックの選手がもうすごい活躍をしてくださいまして、メダルラッシュですごく今回の長野のパラリンピックというのは盛り上がって、日本の皆さんにも理解をしてくださる面が多くなっているんではないかなというふうに私自身もすごくうれしく思っております。
 東京大会に次いで二回目の開催となりましたけれども、今回の大会の開催理念としまして、
 世界の身体障害者が一堂に集い、人類共有の文化であるスポーツを通じて友情と国際親善の輪を広げ、新たな可能性を見出し、明るい希望と勇気を抱くことのできる大会とします。
  この大会は、来たるべき二十一世紀に向け、障害のある人々が完全に社会参加でき、持てる可能性を追求できる社会の確立を目指して開催します。
というふうにされております。本当にすばらしいことなんです。
 私自身のことで恐縮なんですが、七回のオリンピックに出させていただいた経験があるんですけれども、実は私の七回のオリンピックのチャレンジスピリットといいますか、チャレンジ精神というのは、私がドイツ、オーストリーの方でリハビリをしなければいけない体でいたものですから、そのときにあるバスケットボール選手、冬季大会の選手ではなかったんですけれども、バスケットボールのパラリンピックのその選手との出会いが私のチャレンジ精神というものを駆り立ててくれまして、その思いが七回のオリンピックにつながったんです。
 最初は、リハビリをしなければならない、けがや病気を抱えてしまったということで、私自身すごく暗くなっていることが多くありまして、落ち込みながらといいますか、暗い表情でリハビリをしていたときに、たまたまパラリンピックでバスケットボールを目指しているその選手が物すごく明るく声をかけてきてくれました。私は、どちらかというと自分のことだけで精いっぱいで、リハビリをしていても周りの状況というのが全く見えないというんですか、本当にすぐ先に迫ったオリンピックや国際大会をどうしてこの体で出たらいいのかということで、方向が本当に一点しか見えていないときで、逆に励ましてあげなければいけない健常者のオリンピック選手としては恥ずかしいところだったんですけれども、声をかけてくれた方が車いすの選手でした。
 そして、やっと状況が判断できたといいますか、そのリハビリセンターを見渡すことができたんです。そうしましたら、健常者のオリンピックで障害を持った選手、パラリンピックを目指して頑張っておられる選手、そして一般の社会復帰をするために一生懸命リハビリをされている方、そういう人たちが同じ場所で同じ指導者のもとで明るく和気あいあいと復帰を目指して頑張っていたんです。そのときに私はすごく自分自身が情けなくなりました。
 選手というのは、ある意味で壁を乗り越えてといいますか、域を超えた部分の選手が多くて、それによってメダル獲得というのがあるんですけれども、パラリンピックの選手というのはアスリートとして域を超えているその前に、人間としてといいますか、人生の幾つかの挫折を味わって、そこでもう何枚もの壁をぶち破ってパラリンピックで頑張っていこうという気持ちになっておられる方がいて、その方たちの毎日の努力というものを目の前で見たときに、健常者の選手というのは、与えられた時間の中で一生懸命頑張るということが努力というものだと勘違いしているなというふうに私は思ったことがありました。
 例えば、手がなかったり足がなかったり、一生涯車いすで過ごさなければいけないという選手は、そういうものをどうやったらほかの面でカバーしていくことができるのかという人間の潜在能力を引き出すために日々努力をしているんです。そういう未知の可能性というものを追求していくことこそが、スポーツマンだけではなくて人間として、本当の意味で使われる努力という言葉なんだなというふうに思ったときに、スポーツという世界で、健常者の選手もパラリンピックで頑張っておられる障害を持った選手を見習って一生懸命頑張っていかなければいけないんだということを思ったことがありました。
 我が国でも、スポーツというのは理解をされている部分がありますけれども、まだ社会生活の中では健常者と障害者の触れ合う機会といいますか、認識度の低さがいつも残念でならないんです。アメリカですとかヨーロッパ諸国などでは、健常者とパラリンピックの選手というのが本当に和気あいあいと同じ施設を利用して、気持ちの部分で盛り上げていこうというところにスポーツ文化の高さというのですか、日本もこれから見習っていかなければいけないなというふうに思ったことがありました。
 スポーツの交流を通じまして、障害者の雇用や社会参加についてたくさん感じたことがありましたので、今、私ごとですけれども、今までの経験ですとか思ったことを話させていただきました。
 伊吹大臣もいろんな場所で障害者の方々との触れ合いや交流を数多く持たれまして、御尽力されていることに感謝申し上げます。大臣の今までの障害者の皆さんとの触れ合いの中でのお話ですとか、また今回のパラリンピックを見て感じられたこと、質問とはちょっと外れてしまうのかもしれませんけれども、経験等をお話ししていただければと思います。よろしくお願いします。
#18
○国務大臣(伊吹文明君) 今、橋本委員がおっしゃったことは、障害者の運動のテーマになっております完全参加と平等という言葉、まさにそのものだろうと思います。
 私も、実はボランティアとして地元の障害者団体の連合会の会長を十数年務めておりますが、率直に言って、これから高齢化社会になりますから、いずれ我々も少しずつ視力が衰えたり聴力が衰えたり、あるいは足腰が衰えたりしてくるわけでありますし、あすここから帰るときに交通事故が起これば、我々がすなわちすぐに障害者になるわけであって、私は、障害者の問題というのは我々全員の問題として考えねばならないという気持ちで実はボランティア活動をしているわけであります。
 そこで、この方々をお金だけで暮らしていけるようにしようというのであれば、障害年金とか、あるいは生活保護とかいう制度があると思いますが、先ほど女性の問題についても御質問があったように、やはり社会に参加することによって自分の存在感を確認して、そして同時に、人間として自分に磨きをかけて成長をしていく喜びはどのような人にも私は開かれていなければならないと思います。
 そういう観点から、この方々にもできるだけ社会に完全参加をしていただくために私は努力をしていきたいと思うし、そういう気持ちで多くの日本人が障害者の問題を考えていただきたい、こんなふうに考えております。
#19
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 パラリンピックが五日に始まりまして、そして二日目にアイススレッジという競技で金メダルを三つとられました。私自身近くで見て本当に感激をしてきました。
 その中で、スポーツをしているパラリンピックの選手だけではなく障害者の方たちにすべて当てはまることだと思うのですが、やっぱり雇用の面で物すごく現状が厳しいというお話を関係者の方から伺ってまいりました。これだけ人々に勇気と感動を与えたパラリンピックですが、そこで活躍する選手も実際に職場に帰ると厳しい面があって、職場環境、またトレーニング環境というものでなかなか理解されない部分があって、職場をやめて独立をして自分で家で生計を立てて、そしてパラリンピックに臨んでいるんだという涙ぐましいお話も聞いてきました。
 大臣の所信表明の中でも、障害者の雇用対策につきまして、障害者の方々の能力と適性に応じた雇用の場が確保されるようきめ細かな施策の推進と述べられておりますけれども、雇用失業情勢が厳しい中で、やっぱり障害者の方々の雇用もますます厳しくなっていくと思いますけれども、一般の企業では障害者の雇用状況というのはどのようになっているのか、詳しくお聞かせいただきたいというふうに思います。
#20
○国務大臣(伊吹文明君) 統計的な数字は後ほど政府委員から御説明をさせますが、法律によって御承知のように障害者の法定雇用率というのがございます。各企業は知的障害者、今度のパラリンピックには知的障害の方々も御一緒に仲間として参加されて、私はそれはすばらしいことだと思います。労働省がやっております障害者雇用の対象は身体障害と同時に知的障害の方も含んでおりますが、これらの方々を含めて雇用者のうちの一・八%に雇用率を七月から引き上げたいと実は思っております。
 そのためには、まず何よりも経済状況がよくならないと、率直なところ、やはりハンディのある方ですから生産ラインに参加するとか事務に参加するというのは、企業としてはそれなりにコストパフォーマンスの上にある意味での大変なギャップが生ずるわけですが、しかしそのギャップを乗り越えるだけの企業活動というか企業の収益が上がるということは、これはもう市場経済では根本的に重要なことですので、私はこの金融二法というのが通って、そして貸し渋り現象というものが解消されていくことに従って、まず景気がよくなっていくということを期待したいと思います。
 その前提で、障害者を雇用していただくということは、先ほど橋本委員がおっしゃったように、どういう社会的な意味があるのかということをまず経営者によく理解をしてもらわねばならないし、そして一・八に引き上げたときにそれを達成できない企業には指導しなければいけない。そして、指導してもなおかつ一・八を達成できない方にはある意味でのペナルティーがあるんです。このペナルティーのあり方も申し上げねばいけませんし、そして雇用をしてくださった方には逆に、あめと言ってはいけませんが、助成措置があるんです。
 こういうことも地元の職安等を通じてお話を十分させていただいて、障害のある多くの方が社会のパートナーとして参加をして、お給料をもらうということももちろんですが、パラリンピックに参加して何かを達成したというその喜びと同じことを職場でやはり障害者にさせてあげるような方向に持っていくということを今やっておるところでございます。
 状況がどうなっているかというのは政府委員から統計数字を説明させます。
#21
○政府委員(中野秀世君) 障害者の雇用状況についてのお尋ねでございますが、平成九年六月一日現在におきます障害者雇用状況について見ますと、法定雇用率が適用されます一般の民間企業におきます実雇用率は一・四七%となっております。
#22
○橋本聖子君 ありがとうございます。
 パラリンピックへ行きまして第一に感じたことは、顔を見ますととても障害を持った方とは思えないぐらいすごい、本当に勝負師、健常者のオリンピック選手以上にすばらしい顔つきをして競技に臨んでいたんです。そういう意味では、障害を持った方という目で見るのではなくて、逆に周りの皆さんも同じ気持ちの中で職場でも理解をしていただけたらなというふうに思います。
 企業の指導、支援のみではやっぱり限界があると思います。選手が練習をしていた福祉施設等関連部門での連携も保たれていかなければ、スポーツだけではなくて一般の障害者の方の雇用問題についてもやはりそこら辺の連携が保たれなければなかなか難しい面があると思うんですけれども、この点につきましてはどのようになっているかお聞かせいただきたいと思います。
#23
○政府委員(中野秀世君) 近年、障害の重度化あるいは障害者の高齢化が進展する中にありまして、障害者の雇用を促進していくためには企業への指導、支援を中心にする施策にとどまらず、福祉部門を含む関係機関と密接な連携を図りながらきめ細かく各種の施策を講じていくことが必要であると考えております。
 このため、労働省といたしましても、厚生省との間で連絡会議を開催するなど、連携の強化に努めているところでございますし、また地域におきましても雇用、福祉、教育、医療機関等から構成される障害者雇用連絡会議の開催などを通じまして、障害者を支援する機関相互間の連携強化ということに努めているところでございます。
 地域レベルでは、また福祉部門と雇用部門との連携を図りながら、訓練から就職あるいは職場定着に到るまでの相談援助を一貫して行います障害者雇用支援センターの設置を促進して、障害者の雇用の促進に努めているところでございます。
 今後とも、福祉部門との十分な連携をとりつつ障害者雇用の一層の促進に努めてまいりたいと考えているところでございます。
#24
○橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
 一般の方の顔ですとかまた性格が違うように、やはり障害も一つの個性としてとらえていく社会でありたいというふうに私は思います。障害者問題というのは決して少数派の問題ではなくて、すべての人たち、自分たちの問題である意識も大切だというふうに思います。
 障害者問題を高齢者問題と同様に扱うべきという声もありますように、やはり高齢になればだれしもが何らかの障害といいますか、腰が痛かったりひざが痛かったりというように、高齢者になればなるほどそういう一つの障害を持つようになるのが自然だと思いますので、障害者の住みやすい社会というものはだれにとっても住みやすい社会であると思いますし、障害者問題の取り組みを強化していくということは高齢者社会の対応にも非常に役に立つものと思います。
 障害者雇用の問題への取り組みが二十一世紀に向けまして私たちの明るい社会づくり、道づくりというふうに考えます。同じお話になるかと思いますけれども、改めて大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
#25
○国務大臣(伊吹文明君) 今、橋本委員がおっしゃったことを、私は地元の障害者団体連合会の会長としていつも多くの方々に申し上げているわけです。
 つまり、健常という言葉が私はいいかどうかわかりませんが、障害がない方々に私のお話を聞いていただいているけれども、いずれお年を召せば何らかの意味の障害をお持ちになるし、お帰りに事故が起こればたちどころに障害者におなりになる、だから障害者の問題は我々すべての問題であると考えてあらゆる面で取り組もう、これを充実するならばだれかがその財源というのですか、経費を負担しなければならない。税を払うのは嫌だけれども、障害者対策の充実だけしろというわけにはいかない。だから、みんなが助け合って、みんなの問題として対策の充実とその負担の義務を果たしていく社会でありたいということを私はいつも申し上げております。
 その負担の義務に耐えられるように、これから日本経済が万全の体制で大きくなっていくように、しっかりと諸般の改革を進めていくというのが政治家の大きな仕事じゃないか、こんなふうに私は考えております。
#26
○橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
 続きまして、能力開発についてお話をお伺いしたいと思います。
 職業能力開発短期大学校の大学校化などを計画的に整備されていくというふうなお話が所信の中にもございました。人材育成という意味でもあると思います。
 またスポーツの話で恐縮なんですが、この人材育成はスポーツの中でも大変な課題になっております。どうしても名選手名コーチにあらずといいますか、感覚的なものを教える部分というのは物すごく大切なんですけれども、指導力の向上がなければいい人材が育たないというのが実際のところで、やっとスポーツ界も、指導者を育てていくことがやはり今回の長野オリンピックのようなメダルラッシュにつながったんではないかなというふうに思っているんです。指導者としての能力、そして育成の担い手である方たちを育てていくのはスポーツだけではなくて社会においても同じことだと思うんですけれども、この点につきまして、これから具体的な取り組みについてお聞かせいただきたいと思います。
 我が国の産業基盤をなしてきた技術技能の継承、活用をよりしていくということが、これから二十一世紀に向けて大変重要な部分でもあると思いますので、その点を含めましてお話をお聞かせいただきたいと思います。
#27
○国務大臣(伊吹文明君) 具体的なことは後ほど政府委員から御説明をさせたいと思います。
 まず、橋本委員のようなすばらしいスポーツ選手を育てるには立派なコーチが必要であるということは、もちろん私はそのとおりだと思います。しかし、それ以上に大切なことは、やはり橋本聖子という立派な選手が子供のころからどのような人間として育てられてきたかということ、これが私は一番大切なのではないかと思うんです。したがって、職業についても、手に技術をつけるとかあるいは職業の能力を立派につけさせるためには、やはり立派な人間でなければ私はそれは非常に難しいことじゃないかと思います。
 そういう意味では、戦後、日本がここまで回復してきたのは、やはり明治維新以降の教育、あるいは江戸時代にさらにさかのぼる商人道とか武士道とかという日本の基本的な教育のあり方がずっと根づいてきたということは非常に大きな問題として考えねばならないと私は思っています。
 したがって、手に職をつけたり技術をどうしたりということは、今立派な教育基本法というものがあるわけですから、基本的にはこの教育基本法に沿った教育が現場においてまず子供のころから行われる。その子供にどういう技術や企業に対するどういう帰属意識を教えるかということ、これが私はやはり政治家として一番今考えておかねばならないことではないかと、実は最近の状況を見て思っております。
#28
○政府委員(山中秀樹君) この産業基盤をなす技術技能をこれからどうやって引き継いでいくかということは、今非常に重要な課題であります。
 特に、今生産拠点の海外移転とか最近の若者の物づくり離れ、あるいは後継者が高齢化して技術技能が廃れていくのではないかという危機感を非常に私ども持っておりまして、それに対して私どもも、具体的に申しますと高度熟練技能活用促進事業という難しい名前で言っていますが、この高度技能がどういうプロセスで成り立っていくのか、あるいは高度の技能者を具体的に選定してこの方々が若者に技術技能を教えたり、あるいは技能五輪とかいろんな形で大会をやっていますが、そういう場で実際にもっと活躍していただくとか、いろんな形で高度技能が継承され発展していく施策を今後とも十分講じていきたいというふうに思っております。
#29
○橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
 もう時間もあと十分となりましたけれども、このような機会にスポーツの話をさせていただくことがなかなかないと思いますので、要望も含めまして最後にお話をさせていただきたいというふうに思います。
 主にアマチュアスポーツ選手の現状を踏まえましての要望となると思うんですけれども、長野オリンピックでも日本の選手団が大活躍をしてくれました。テレビを通じまして報道されていましたが、アマチュア選手が社会人として働き盛りとも言える年齢のときにちょうどスポーツに打ち込んでいるということで、ある一定の活躍をした選手を除いてはなかなか企業に復帰するということ、引退後の進路というのがだんだん狭くなってきていまして、すごく頭を悩ませているんです。
 先々のことを考えるとどうしても不安になってしまうものですから、言いわけだというふうに言う方もいらっしゃるんですけれども、なかなか成績が上がらないというようなこともありまして、どうにかならないものかということをいつも考えておりました。何のためにやってきたのかという壁にぶつかっていると、メダルを目指していてもなかなかいい方向に向かないということがあります。
 選手生活をしていく中で、職業もそうなんですけれども、もう一点はけがとの闘いなんです。仕事場で作業中にけがをするのと同じように、トップレベルを目指すとどうしてもスポーツ傷害というものを起こしてしまいます。私自身も、呼吸器に障害を持って深呼吸ができなくなってしまう体になったり、また、肝機能、腎臓を悪くしたりということで、激しいスポーツをやっていることによってスポーツ傷害というものを持っている一人でもあるんですけれども、長野で戦った選手たちも必ず体に一つはそういう傷害を抱えてオリンピックに臨んでいたのが現状なんです。
 例えばスポーツ先進国と言われているドイツですと、一八八八年の障害者スポーツの発祥の地でもあるということで、大変考え方が進んでいるんです。一流選手、一般の選手が職業に復帰する、職場に復帰する、また、普通の生活が送れるように支援をしてあげる政策というのが物すごく進んでいるんです。
 物すごく激しいトレーニングをした体というのはそれだけまたクーリングダウンというものを、フォローをしてあげなければ一般の方以上に老化が激しいのが実際のところの悩みにもなっているんです。ドイツですと、選手を終えて、その選手が普通の人間の体に戻るまで、最後まで面倒を見てあげるというような政策がとられているんですけれども、日本では労働能力の低下とみなされがちで、まだそこまで理解をされていない部分がたくさんあります。
 スポーツ振興を図っていくためにも引退後のフォローが必要だと思うんです。スポーツ選手だけには限らないですが、職業リハビリテーションなどの充実も図っていかなければいけないと思うんです。その点につきまして、これからの考えですとか、現状の職業リハビリテーションなどのお話を聞かせていただきたいというふうに思います。
 アマチュアスポーツ選手がけがをしましても職業リハビリテーションを使わせていただけない厳しい状況に置かれていることもありますので、その点の御理解、また今後の対策などについて、質問がたくさん重なってしまいましたけれども、あと五分の時間なんですが、ぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。
#30
○政府委員(中野秀世君) 職業リハビリテーションにつきましてのお尋ねですが、障害者の方の職業生活における自立を図るためには職業リハビリテーションの措置は大切であると考えておりまして、このためさまざまな職業リハビリテーションの措置を講じているところでございます。
 具体的に申し上げますと、まず公共職業安定所におきましては、きめ細かな職業相談あるいは職業紹介の実施を行っております。また、障害者職業センターにおきましては、障害者の方に対します職業評価あるいは職業指導、職業準備訓練等の専門的な職業リハビリテーションサービスというものを提供してございます。さらには、障害者職業能力開発校におきます職業訓練の実施といったさまざまな施策を講じているところでございます。
 今後とも、先生御指摘のスポーツ障害を受けた方々を含めまして、身体に障害のある方、知的障害のある方、また精神障害のある方などの障害の種類あるいは程度に応じましてきめ細かな職業リハビリテーションの措置を講じてまいりたいと考えているところでございます。
#31
○橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひ御理解をしていただきまして、より一層の支援をいただきたいというふうに思います。
 きょうは本当にありがとうございました。終わらせていただきます。
#32
○海老原義彦君 自由民主党の海老原であります。きょうは、労働大臣には初めの一問だけ伺いたいと思います。
 大臣、ただいまの橋本委員に対する御答弁を伺っておりましても、大変哲学的ないいお話を伺いましたので、私の質問にもぜひ大臣自身の哲学をお聞かせいただきたいと思います。
 さて、大臣御存じのとおり、当委員会はことしから構成が変わりまして、家族あるいは余暇あるいはボランティアなどに関するいわば社会政策的な事項を所掌として含めるというようになりまして、その名も労働・社会政策委員会と改められたわけでございますが、大臣の所信の中にも、こういった社会政策的な面について労働省でも深く関与しているよというお話をいろいろと伺いましたわけでございます。
 私は、余暇その他と一番深い関係があるのは労働時間の問題かなと思っておるわけでございます。労働時間の短縮というのは世界の趨勢でございますし、我が国におきましても、しばらく前までは労働時間短縮の趨勢が続いておった。五、六年前ぐらいまではそうかなと。最近はどうも非常に景気が悪いということで、労働時間短縮も進まないということなのかなと思うわけであります。景気が悪いときにはやはりそういう方向というのはなかなかとりにくい。
 いわば時短というのは、企業にとってはコストがふえていくということでありますし、労働者にとってみてもやはり残業時間が減って収入が減少するという面もある。成長経済のもとでないとなかなかやっていけないんじゃないか。言うなれば、GDPの成長のときに多少のGDPのマイナスの要素があってものみ込んでやっていくということなのかなと思うわけでございます。
 しかしながら、時短というものによる余暇の増大、これは労働者の生活全般、個人的な生活の充実あるいは家庭生活の充実ということに深く響いてくるものでございますし、あるいはボランティア活動の促進などという副次的な効果もございましょう。いわば、国民経済計算にあらわれないような何か別の要素の大事な効果を生むし、人類の未来を語るときには欠くことのできない一つの視点というものがあるんじゃないか。即物的な経済の成長と、それから、そういった経済外の生活の充実とどっちをとるかというよりも、均衡をとって発展していかせるというのが一番いいのかなと思うのでございますけれども、これはなかなか考え方として難しい問題ではないか。
 労働省の行政は、大体一番発足的には苦汁労働から労働者を救っていく、いわば資本家の搾取から救っていくという立場であって、資本家を抑えて、そのかわり労働者がもうかるというものであった。必ずしもそうではないものばかりが出てきて、時間短縮などというのは全くそういうものではない。経済的には労働者だってあるいはかぶるかもしれない。しかし、それにもかかわらず、やはり一つの大きな未来の生活のあり方というものを指し示す大事なものなのかな、私はそんなふうに考えておるんですが、こういう面についての大臣の御所見、御哲学を伺いたいと思うわけでございます。
#33
○国務大臣(伊吹文明君) 海老原委員から大変哲学的な御質問を受けましたが、私も今委員が御指摘になったのと実は全く同じような考えを持っております。
 私たちが生きている日本社会においては、特に戦後から高度成長の時期ごろまでは市場のメカニズムに乗っている物の豊かさというものが不十分であって、それはある程度追求しなければ人間として生きていけない、まさにそういう時代であったと思います。幸い先人の大変な御努力によって、今の老人医療制度、あるいは年金制度、あるいは医療保険制度、雇用保険制度、あるいはその他の生活水準、これについてはいろいろな御不満や御批判がありますが、世界の他の国に比べてこれほど行き届いている国は、私は率直に言ってないと思うのであります。
 今後日本人が、もう少し物の豊かさを追求して生きていくのか、それとも、いわゆる市場のメカニズムに乗らないような価値観を求めて生きていくのか、これがまさに海老原委員がおっしゃった選択の問題、生きていく価値観、哲学の問題だろうと私は思っております。
 したがって、基本的には市場の原理原則の中で我々は生きているということをまず確認しなければなりません。したがって、景気が悪くなったり企業の収益が下がれば、これは労働条件は必ず悪くなります。しかし、この程度までは我慢をしても、余暇だとかその他のお金であらわせないものでの喜びを選んでいくかどうかという、まさに私はそこの選択の問題だろうと思うのであります。
 そこで、御承知のように、この十年間で大体二百時間ほど労働時間は短縮されてきておるわけでありますし、週四十時間というものが定着をしてきているわけであります。
 生産性が上がれば四十二時間のときに払っておられた賃金のままで四十時間に持っていくということは、企業としては可能です。しかし、生産性が上がらなければ四十二分の四十という基本給にならざるを得ない。これが原理原則であります。そして、五十時間働いておられれば、四十時間のときは十時間の超勤が支給される。四十二時間のときは八時間の超勤が支給される。望むべくんば四十時間の労働時間にして、かつての四十二時間、四十五時間の給与が払えるような実体経済にまず持っていく必要が私はあるのではないかと思います。
 その上で、給料が若干減っても余暇を楽しむことによって、先ほど橋本委員からも御質問があったようないろいろなボランティア活動とかスポーツだとかということに人間として生きていく価値観を見出すかどうかという、日本はそこまで選択できるようないい国になったということを私はまず先人に感謝をしながら現状の認識を申し上げたいと思います。
 労働時間の短縮をしていくということであれば、基本的にはやはり有給休暇は完全に消化できるような職場環境であってほしい。有給休暇を完全に消化してなおかつ余暇を楽しみたいので四十二時間を四十時間、四十時間を幾らという話が出てくるのが筋であって、有給休暇は消化しないけれども基本的な時間だけを短くしろというのも少しつじつまの合わない話かなと考えたりもしている。これは私の率直な感想でございます。
#34
○海老原義彦君 いろいろ実地の行政に即して、また哲学的なものを含んだ御所見をありがとうございました。
 私の大臣に対する御質問というか、労働省に対する質問はこれで終わりまして、ここから先は経済企画庁に伺いたいと思います。
 冒頭に申しましたように、我が委員会の所管に社会政策関係がたくさん入ってきました。具体的には家族とか余暇とかボランティアというものでございますけれども、一体我が国の行政はそういったことについて何をしているんだろうか、どういう分野があるんだろうかということを、急に入ったものですから私どもここにおります委員全員だれもよくわからないなということがございます。
 きょうは国民生活局長においでいただきまして余暇に係る行政上の施策、各省が行っている施策の概要とそれから予算の現況など、あるいはさらに、将来行うべき施策、どういう視点で考えておるか、どんな計画があるかというようなこと。余暇あるいはボランティアについて、あるいは、家族問題全般ということになると経済企画庁の所掌を超えること甚だしいものがあるかもしれませんので、絞って家庭生活について、そういった三つの点について、三大話で伺いたいと思うんです。
 まず余暇について、各省では現在どんな施策を行っていて、予算の現況がどうなのか、また将来行うべき施策の視点と計画を伺いたいと思います。
#35
○政府委員(井出亜夫君) お答え申し上げます。
 余暇の取り組みにつきましてでございますけれども、経済企画庁におきましては、国民生活の安定と向上ということを目的といたしまして、各種施策の企画あるいは総合的な調整というものを行っているところでございます。余暇、それから先生おっしゃいましたボランティア活動あるいは家庭生活というふうなものにつきましては、いずれも国民生活におきまして重要な位置づけを持つものでございますから、国民生活の安定と向上という観点からこれまでも国民生活白書でございますとか、あるいは国民生活審議会などにおいて取り上げることを初めといたしまして、実態の分析、各種の提言、情報交換等々を行ってまいりました。
 具体的に余暇について申し上げます。
 労働時間の短縮等により、個人の自由時間は増加をしておりまして、多様な余暇活動というものが国民生活にゆとりあるいは心の豊かさというものをもたらすものと考えております。各省庁における余暇に関する取り組みにつきましては、国民の多様なニーズに対応をいたしました各種施設の整備といったハード面の施策、それから余暇情報の提供でございますとか、あるいは余暇関係の運動の盛り上げというふうなソフトの施策まで幅広い分野を含んでいるというふうに認識をしております。
 これらにつきまして、経済企画庁で把握をしております関係省庁の余暇関連予算について申し上げますと、平成九年度では、その総額というのはおおむね六千七百億円程度の規模になるのではないかというふうに考えております。
 また、各省庁の平成十年度予算案における取り組みというものにつきましてちょっと御紹介をさせていただきますと、例えば、総務庁では広く国民一般を対象とした健康・体力づくりのための国民運動推進事業というものといたしまして約二億円、環境庁では自然公園等の事業といたしまして約百三十億円、国土庁では過疎地域滞在施設整備モデル事業というふうなことで約六億円、文部省では生涯学習の一環ということで放送大学関係に必要な経費といたしまして約百十一億円、厚生省では高齢者の生きがいと健康づくり推進事業費等々といたしまして約十七億円、労働省では労働時間の短縮対策推進費といたしまして約百二十八億円、それから建設省では都市関連等の整備事業ということで約千五百七十五億円というふうなものが計上されているところでございます。これは、余暇関係ということですから、余暇そのものというところから余暇に寄与するというふうな非常に幅広いものを含んでおるわけでございます。
 経済企画庁におきましては、このような関係省庁間の横断的な連絡調整でございますとか情報交換ということを行っておりまして、関係十五省庁との間に連絡会議というものを持っておるわけでございます。それから同時に、都道府県の担当者会議というものを開催いたしまして、国の施策を取りまとめた各種の情報提供というものを行ってきているところでございます。
 それから、余暇行政についての今後の展開でございますけれども、平成七年末に策定されました現在の経済計画、これは七年の十二月に閣議決定されておりますけれども、その中で「豊かで安心できる経済社会の創造」という項目を設けておりまして、その中に余暇が位置づけられております。
 項目といたしまして、一つは、「ゆとりのための労働時間の短縮」というのを掲げておりまして、内容といたしましては、年次有給休暇の取得促進でございますとか完全週休二日制の普及促進、所定外労働の削減というふうなものを柱として取り組みを進めることを決めております。それからまた、「自由な生活時間のための条件整備」といたしまして、文化やスポーツ、観光、レクリエーション等の多様なニーズに対応した各種施設の整備を図る。この二つを重点的に進めていくことが盛り込まれております。
 また、国民生活審議会におきましても、将来の生活展望の一環といたしましてこの余暇活動の重要性、あるいはそれに伴う環境整備の必要性というものを提言しておるところでございます。
 私どもとしましては、これらを踏まえまして、今後とも関係省庁と連絡をとりながら、余暇関連の施策の推進が図られる。それから、各地方自治体で行われているさまざまな取り組みを支援してまいりたい、このように考えております。
#36
○海老原義彦君 ボランティアについてはどうですか。
#37
○政府委員(井出亜夫君) ボランティア活動について申し上げますと、我が国においては、国際化や高齢化の進展等の環境変化の中で国民のゆとりと豊かさを享受できる社会を築いていくために、個人の自立と社会参加が重要な役割を果たしているというふうに考えておりまして、ボランティア活動はその重要な要素をなすものであるというふうに認識をしてございます。
 このため、国民生活審議会におきましては既に、昭和五十八年でございますが、自主的社会参加活動の意義と役割ということにつきまして提言したのを初めといたしまして、最近では、平成六年でございますが、社会参加活動としてのボランティア活動の必要性等につきまして提言を行ってまいりました。また、ボランティア活動につきましては、従来からその実態分析でございますとか、あるいは情報提供というものに取り組んできたところでございます。
 御案内のように、平成七年一月に発生いたしました阪神・淡路大震災に際しましては、多くのボランティア活動の精力的な活動というものが改めて高く評価され、今日に至っているというふうに認識をしております。
 ボランティア活動を推進するための関係省庁の具体的な施策を御紹介申し上げますと、例えば、文部省では生涯学習ボランティア活動総合推進事業といたしまして一億五千二百万円、厚生省ではボランティアセンター活動などの民間の地域福祉活動の推進費用としまして二十五億六千九百万円、労働省では勤労者のボランティア活動参加のための環境整備として約一億一千万円、外務省ではNGO事業補助金制度といたしまして十一億五千百万円等々が計上されておるところでございます。
 経済企画庁におきましては、ボランティア活動の環境整備を図るために、平成八年度においてボランティア団体を含む市民活動団体の活動実態調査ということで全国的な調査をさせていただきました。これによりまして、今全国にあるボランティアの数でございますとか、これにかかわる人数でございますとか、そんなふうなものもようやく明らかになったわけでございます。それから、これらの団体に不可欠なリーダーのための研修資料の作成などを行ってきたところでございます。
 平成九年度、今年度におきましては、特にボランティア団体を含む非営利団体の経済規模というものが国民所得統計の中になかなか載ってこないという問題が先ほどの御指摘の中にもございましたけれども、そういう分野を少し把握しようというふうなこと、それからボランティア団体の情報発信機能というふうなものにつきまして調査を行っているところでございます。
 それからさらに、十年度予算におきましてはボランティア活動を含む市民活動の実態調査・分析を中心に予算を計上しておるところでございまして、今後ともボランティア活動を含む市民活動の環境整備ということに取り組んでまいりたい、こう思います。
 それから、さきに当委員会で御審議の上可決されました特定非営利活動促進法案、これにつきましては、政府部門、企業部門に次ぐ第三の部門と言うべき部門でございまして、この活動を促進する上で大変重要な役割を果たすものと認識しておりまして、所轄庁の一つになっておりますから、法案が成立いたしました暁には国会での決議、あるいは御審議等を踏まえまして適正な運用に努めてまいりたい、かように考えております。
#38
○海老原義彦君 最後に、家庭生活について同じようなアイテムでお答えをいただきたいと思います。
#39
○政府委員(井出亜夫君) 家族・家庭生活について申し上げます。
 経済企画庁においては、先ほど申し上げましたように、国民生活の安定と向上という観点から、家族や家庭生活を取り巻く状況について調査・分析を行うとともに、必要に応じ提言等を行ってきたところでございます。
 ただ、この予算につきましては、これを一元的に家庭生活関係予算というのを取りまとめることがなかなか困難でございますものですから、ボランティアあるいは余暇と同じような形ではやっておりません。
 それで、私どもでいろいろなことを調査・分析しておる中身をもう少し御紹介申し上げますと、例えば、昨年度の国民生活白書におきまして、国民生活の安全、安心という観点から家族を取り巻く状況について国際比較を交えながら分析を行いました。それからまた、今年度の国民生活白書におきましては、女性の職場進出と国民生活や社会の制度・慣行とのかかわりという中におきまして、仕事と家庭を両立させるための支援のあり方ということで、育児休業制度の定着でございますとか介護休業制度の普及促進、それから延長保育などの多様な保育ニーズに対応すべきであるというふうな指摘を行ったところでございます。
 今後とも、国民生活行政全般の中で家族・家庭生活というところには大きな関心を持ちながら取り組んでまいりたいと思っております。
 以上でございます。
#40
○笹野貞子君 民友連の笹野と申します。
 まず最初に、昨年の臨時国会の折に、大臣は同じ京都出身ということで、京都の地場産業を復興する意味で大臣にぜひとも和服でということを私が特にお願いをいたしましたところ、大臣はお正月、今度の通常国会で和服をお召しになって大臣席にお座りになりました。大変りりしく、よくお似合いで、私は本当に議場から拍手喝采をしたいところでしたけれども、大臣の、その産業を興す情熱にまずもって敬意を表させていただきたいというふうに思います。
 それでは、質問をさせていただきたいと思います。
 造詣の深い大臣のことですから、先ほども非常に哲学的な御発言をなさいました。私も、大臣の労働行政に対する一般的なお考えをきょうはお聞かせいただきたいというふうに思っています。
 昨年、労働省が設置されて五十年を迎えたということを聞きました。労働省を愛する私といたしては、大変おめでたいことですし、また、この労働省が設置された歴史を振り返ってみますと、戦後我が国が本当に民主主義に変わった一つのあかしとして憲法が制定されましたが、その憲法の中に勤労権という非常に画期的な権利が規定されました。この権利を実現するために労働省は次々と労働行政に対する基本的な法律をつくってきました。例えば、労働組合法あるいは労働関係調整法、労働基本法という俗に労働三法と言われるもの、あるいは労働者災害補償保険法、職業安定法、失業保険法など、本当に労働者を保護すべく大変画期的な法律ができ上がってきました。
 この戦後五十年の労働省の歴史というのを見ますと、まさに勤労者に対して手厚い保護をするという、そういう歴史が五十年だったというふうに私は理解しております。
 しかし、五十年たった今、これから法制化されようとする、あるいは改正されようとする法案を見ますと、どうもこの五十年の歴史が、例えば経営の合理化とか生産費用のコストダウンとか競争原理というような、何か一見聞くと非常にもっともらしく聞こえるそういう名のもとに、私は何か違った方向に行くのではないかという危惧を持っております。今度の労働基準法の見直しなんかは私はそれに匹敵するんじゃないかというふうに思っております。
 こういう競争原理あるいは生産性のコストを下げるという考え方で労働行政を進めていきますと、まさに弱肉強食、あるいはその結果によって、先ほど橋本議員が本当に熱のこもった御質問をなさいました障害者、あるいは私たちを含めて家庭と職場を持つ女性の勤労者というものがこの競争原理の中で厳しい状況に置かれるのではないかというふうに思います。
 そして、私が一番大臣にお聞きいたしたいのは、この間大臣と久しくお話をさせていただいたときに、大臣は終身雇用制はいい、日本にとって終身雇用制というのは本当にいい制度だと盛んに力説したのを見て、私は正直言いますと、あれっというふうに思いました。そのあれっというのは悪い意味ではありません。やっぱり大臣っていい人なんだなと、こういうふうに思ったわけです。
 この今の競争原理とかそういうのを推し進めていきますと、例えば労働基準法の改正なんかを見ますと、大臣が終身雇用制はいいというその考え方と裏腹の方向に行くんじゃないかというふうに思いますので、まず第一、大臣、終身雇用制をこの流れの中でどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
#41
○国務大臣(伊吹文明君) まず、お答えをする前に、私が着物を着てきたことについての御感想をいただきましたが、私以上に着物の似合う笹野委員が着物を御一緒に着てくださらなかったことを私は大変残念に思っておりますので、この次は同じ京都選出の国会議員として、地場産業のために御一緒に着物でひとつお話をさせていただきたいと思います。
 それから、大変広範なお尋ねでございますので、若干お答えが長くなるのをお許しいただきたいと思うんですが、労働省の行政あるいは労働省の沿革については委員御指摘のような形で私は動いてきたと思います。
 先ほど海老原委員からも御質問がございましたように、戦後、私たちは市場経済の中で物の豊かさを達成しなければ生きていけない、みすばらしいという状態が戦後三十年ごろまでは、ですから昭和五十年近くまでは私は続いたのではないかと思います。
 その間に日本の政府のやってきた政策というのは、弱い者を常に助けながら、今、金融行政がその残滓を引きずりながら批判をされているような護送船団という言葉が使われるように、そういう形で実はやってきて、農業を保護し弱小企業を補助しながら強くなってきた、これは私は否定できないと思うんです。そういう波の中に働く人たちをほうり込めばどういう形になるかということは、これはもう一目瞭然であったので、行政もまた当然そういう流れをたどってきたと私は思います。
 しかしながら、産業面においてもある程度まで豊かさが確保維持されてきた場合には、やはり最終的には消費者の利便ということを考えれば、競争原理というものはある程度入れることによって物の値段を下げていくという、こういう流れに来ていると思うんです。
 じや、労働分野についてはどうかということになりますと、労働者というのは人間でございます、物じゃございません。したがって、ここには市場原理以外の大切な基本的な部分というのは残しておかねばならない、こう私は思っているわけです。しかし、基本的に残しておかねばならないということと労働行政を護送船団でやってもいいということとは若干私は違うのじゃないかという気がいたしております。
 そこで、私は終身雇用制というのは日本の文化と伝統のつくり出した大変立派な制度だと思っておりますし、これからもこの終身雇用制を維持発展させていくということが私の労働行政の基本と実は認識しておるわけです。
 そこで、例えばアメリカのような派遣型の国と日本のような終身雇用制の国とが、他の条件が全く同じだとして、自動車あるいはコンピューターあるいは繊維でもいいですが、そういう商品をつくり出して国際市場で戦う。そして、その戦いに勝つことによって国を富まし、その富んだ富によって今日の福祉制度だとか生活水準の向上を達成するということを考えれば、他の条件が一緒であれば、終身雇用制の方がコストパフォーマンスは負けるのは決まっておるわけです。それは不況期にも賃金を払いながらそれを維持していかねばなりませんから。
 しかしながら、それにもかかわらず戦後ずっと日本が貿易戦争を勝ち抜いて今日の豊かさを実現できたのは、やはり不況期にも賃金を払いながら労働力を維持していくにはそれなりのメリットがあったからだと私は思うんです。そのメリットの一つは、これはもう明治維新以後の教育によって培われた日本人の立派さ、率直に言って私はいいところだと思います。
 それから企業も、これはもう一生うちの企業で働くと思えば、年に二度ぐらいは健康診断をして、要するに健康管理をしておかないとえらいことになるわけです。それから同時に、職業的な能力をつけるための法人の損金による投資を行えるわけです。働く側も結構なことだ、一生ここで働けるという安心感を持って、忠誠心を持って働ける。これが不況期においてコストパフォーマンス上の不利を補ってなお余りある状態であったから、日本は国際的な貿易競争に勝ち抜いて今日の豊かさを維持したと私は思うんです。
 したがって、一番大切なことは、やはりこの日本人の立派さ、自助自立の気概と、そして産業に対する帰属意識というんでしょうか、権利だけを主張せずにきっちり義務を果たしていく性格というんでしょうか、そういう日本人をつくる教育をつくっていけば私は終身雇用制というのは守れると思いますし、また、そういうふうな形で守っていかねばならないと思っているんです。
 ところが一方で、豊かになって、先ほどもいろいろな御質問がありましたが、子供を産み育てながら保育園へ子供さんを連れていった後少し働きたいとか、あるいは子育てが終わった後また働きたいとか、いろいろな働き方の選択が豊かさゆえに出てきているということも確かにあるんです。それにこたえるのは、私は派遣職員とかパートという形態だろうと思うんです。今おっしゃっている労働基準法の裁量労働制とかあるいはまた変形労働時間制度とか、こういうものはあくまで終身雇用制の枠の中の話でございますから、その枠の中の話として労働時間の管理を働く人たちにゆだねるということなのであって、それは終身雇用制を破壊するという先生の問題提起の仕方については、私は率直に言ってやや奇異な感じを受けました。
 終身雇用制の枠の中で労働時間の管理をゆだねていく、もしこれをだめだと言いまして、そして日本人の資質がだんだん自助自立の気概と権利だけの主張で義務を果たさないということになってきますと、企業は多分終身雇用制をやめて、そして裁量労働制じゃなくて派遣職員型の形をとってくると思います。すべてがそういう形になるということは私は余り感心したことじゃないと思いますので、その点はぜひ御理解をいただきたいと思っております。
#42
○笹野貞子君 今の大臣のお考えを聞いて、大変私は安心したと言うと非常に失礼な言い方ですけれども、そういう思いです。しかし、大臣がそのようにお考えになっているのとは裏腹に、労働省がかつて戦後設立されたときの熱い国民に対する勤労権の確立というものとちょっと違う方向に徐々に行くのではないかという私の危惧ですので、大臣がそうではないんだというふうに今お話しになったことに対して私は大変力強く思います。
 もし、労働省がかつての憲法制定下のあの働く人のためになる行政というものをバランス的に小さい方向に持っていくとするならば、小さい方向というのはフィフティー・フィフティーから三、七になり二、八になりという、経済効率の方を幅広くして勤労者の方に対する行政を少なくさせるならば、これは私はまさに労働省の任務放棄ということになりはしないかという危惧を持っておりますので、大臣、その点は戦後できた労働省の五十年の歴史というのをひとつしっかり踏まえて、これからも着物を着ながらやっていただきたいというふうに思っております。
#43
○国務大臣(伊吹文明君) 今、笹野委員の御指摘になりました基本的なところは十分わきまえてまいるつもりでございます。しかし同時に、労働行政もあるいは働く人たちも護送船団の意識は、ここまで豊かになった限りは捨てていただいて、労働組合の指導者の方も護送船団であればやりやすいという感じは捨てていただいて、本当に働く人たちのためになる方法を一緒になって私はつくっていきたい。
 今おっしゃった、労働基準法に入れております裁量労働制のようなものを実態的にとっている、しかもこれは、御承知のように、現場の生産ラインでこういうものを入れるという法律にはなっておりません、ホワイトカラーの本社機能の方々ですが、こういうものを実質的に今入れているところでは、大体七〇%の働く人たちがこれを入れてよかったという答えをアンケートに寄せておられるということも申し添えておきたいと思います。
#44
○笹野貞子君 きょうは私と同僚議員の長谷川議員と一緒に三十分ずつの質問で、要領よく質問をしなければ後の長谷川議員に迷惑をかけますので、本当はもっともっといろんな大きな問題を大臣に投げかけようと思ったんですが、私は連合議員ですので、どんなことがあろうとも勤労者の立場、そしてやっぱり組合という存在を維持するための代弁者としてこれから発言しなければいけません。労働基準法の改正とかあるいはいろんな法案の改正は、多分大臣の御発言によっては対決姿勢になるかもわかりません。
 きょうは、本当のことを言うと、男女雇用機会均等法の改正に従って男性と女性との共通の規制外労働を百五十時間から三百六十時間にするという連合の強い主張を大臣にお聞きしたかったのですが、時間が迫りましたので、私は大臣の女性観をやっぱりちょっとここで聞かなければいけない。先ほど橋本議員に対しては本当に優しい女性観でしたが、ちょっとあれではまだ生ぬるいので、もう一歩踏み込んで派遣法というものについて、これは今大臣も、だんだんアメリカ型の派遣という問題がこれから大きな価値観を持ってくるというふうにおっしゃいましたので、ここでお聞きをいたしたいというふうに思います。
 この派遣法、まだ出ておりません、審議会の答申が出たところですので具体的ではないんですが、この派遣法の改正ではどういう視点で見直しということがなされているのか、その点をお聞きいたします。
#45
○国務大臣(伊吹文明君) 先ほどお答え申し上げましたように、私の労働行政の基本としては、終身雇用制というものを大切にしたい。しかし、社会が豊かになった中でいろいろな働き方を希望する人たちが出てくるということは、これはとめられないことであって、特に女性とか高年齢者にとってはフルタイムの常用雇用ではない働き方もとりたいという方もいらっしゃるわけですから、そういう方々にそのバイパスとしての道を閉ざすということがあってはならない。
 ただし、私が職業安定局長に指示をいたしましたことは、派遣という形をとりながら、その際に本来負担すべきものを負担せずに人を使うということができるだけないように、その道をはっきりとすることによって、ILO条約にのっとったような形で派遣の問題は考えていこうじゃないか、こういうことを実は言ったわけであります。
 したがって、企業の中で幾つもの形の働く人たちが出てくると組合サイドもそれを管理していくのが大変だとか、そういう発想でこれは反対されては困るわけでして、やはり働く人たちの立場に立って、そういう働き方を希望している人にはそういう道も開いていく、しかしメーンの道はあくまで終身雇用だ、こういうことで私はこの派遣の法案は考えていきたいと思っておるわけです。
#46
○笹野貞子君 その点は全く私と同意見で非常に……
#47
○国務大臣(伊吹文明君) ぜひ賛成してください。
#48
○笹野貞子君 またそれは具体的に法案ができましたときに。基本線としては大臣とは同意見だというふうに申し上げます。
 しかし、大臣、この派遣が大臣とはまた違った方向に行く危険性があるんです。
 その一つに、大学を卒業してすぐに新卒派遣社員というのが今非常にたくさん数字的にもあるんです。この新卒派遣社員に、どうしてあなたは新卒派遣社員に登録したんですかという質問に対して、これは労働省からいただいた資料ですので全く間違いないと思うんですが、本当は正社員として働きたかったんだけれども、就職先が見つからなかったので登録しているというのが全体の二八%もあるんです。ということは、約三割が正社員になれないということなんです。
 新卒派遣社員といういろいろ新しい言葉が次々と出てくるわけですが、今、大臣は終身雇用がいいとおっしゃったにもかかわらず、三割の人が終身雇用制をとれない今の現状、新卒派遣社員ということに対して大臣のお考えを聞かせてください。
#49
○国務大臣(伊吹文明君) 笹野委員にお伺いしたいんですが、残りの七二%はどういうお答えだったんでしょうか。
#50
○笹野貞子君 これを見ますと、「派遣会社を選択するときに重視する点」という資料がありまして、たくさんの項目があるんですが、例えばその中に「働きたい仕事内容を選べるから」というのも三割あるわけです。また、専門的な知識を生かせるからというのも一四%あったり、いろいろ選択肢があるのは確かです。
 しかし、私がやっぱり重視したいのは、大学を卒業してすぐ行けないから登録したんだという、これは非常に私は重大だというふうに思います。そして、その大半が女性であるということも非常に私は重大だというふうに思うんです。
#51
○国務大臣(伊吹文明君) 今、御指摘のあったそのことは、今回の派遣の法律によって、例えばネガティブリスト化してはならないとか対象を拡大してはならないということになりますと、七二%の方々に対して大変困ったことになると私は思うんです。
 だから、大学を卒業してから正社員になりたかったけれどもなれなかったという二十数%の方に対しては、できるだけそういう方々を正社員として採用できるような経済状態というかパイを大きくするとか、あるいはまた何年か、例えば一年、一年で継続雇用をしていくような人は終身雇用にしなさいとか、そういう形の指導をするということによって別途対処をすべきことであって、七二%の人たちが希望している道を今の派遣職員を許されている業種のみに限定して閉ざしてしまうということとはちょっと私は視点が違うんじゃないかという気がいたします。
#52
○笹野貞子君 大臣、ここで問題なのは、新卒派遣社員というのは派遣法に照らしてみますとあり得ない現象なんです。派遣法というのは専門的な知識、経験豊かな人が派遣に登録するんだというんです。新卒というのはまだ専門も何もない、わからない、そういう人がこの法律に従ってするというのは、私はこれは法律違反だと。
 そして、もっと大臣ひどいのは、先日、この九万人のリストが漏れてしまって、それがパソコンで売られていたというんです。その売られた中に、容姿によってABCのランクがつけられて売られていた、こういうことなんです。
 これは個人情報が非常に守られていないということと、こういう危険なことがあるということ、これに対してどのような対処ができるかお聞きしながら、もしも大臣が派遣会社の社長でしたら私にABCのランクの何をおつけになるか、最後に質問したいと思うんです。
#53
○国務大臣(伊吹文明君) ちょっと最後の一番重要なところは私がお答えしますが、それ以外の先ほどの法律違反云々のことについては、事実関係を政府委員からまず最初にお許しをいただきたいと思います。
#54
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま労働者派遣のあり方につきましてお話がございましたが、現在の労働者派遣法に違反する事実があればこれは厳正に対処しなければならないというのが基本的な考え方でございます。そういう考え方を踏まえまして、新卒者の方々について現状御指摘のようなお話があるわけでございます。
 これは実態を統計的に私ども必ずしも把握いたしておりませんが、まず、対象業務以外の業務についている者、これは厳正に対処しなければならないということになります。対象業務についている方について新卒派遣と言われている方がやっておりますのは、例えば語学だとかあるいはOA実務だとか秘書業務についての研修を実施して、その研修を実施した後に本人が希望した場合に派遣システムで働く、こういう形になっております。したがいまして、研修をきちっと受けてそういう対象業務の仕事ができるような形になった場合について、これは必ずしも派遣法に反するということは言えないというふうに考えております。
 ただし、研修する研修費用等について費用を徴収するとか、そういう問題があればこれは制度的に問題があり得るというふうに考えております。
#55
○国務大臣(伊吹文明君) 私が派遣会社の社長であれば、多分容姿についてのランクはつけずに、能力についてのランクをつけて、笹野先生をマルAにしておると思います。
#56
○政府委員(征矢紀臣君) ただいまの答弁、事実関係を補足いたしますと、容姿ランクつきの個人情報というふうな記事でございますが、本事件につきまして、そのランクは職業能力のレベルであり、容姿のランクでないというふうに聞いております。
 いずれにいたしましても、派遣労働者に関します個人情報が外部に漏えいするということは、これは派遣労働者のプライバシーの保護という観点から大変重大な事態であるというふうに認識はいたしております。
 ただし、残念ながらこの点については現行法では規制がございませんで、やはりきちんとするためにはこの労働者派遣事業の見直しの検討の際にあわせて規制をすべきであるというふうに考えておりますが、この点につきましては現在関係審議会におきまして検討されているところでございます。
 なお、ILOの第百八十一号条約におきましても、労働者の個人データの保護に関する規定の趣旨、これも規定されておりまして、そういうものも十分踏まえて検討すべきものというふうに考えております。
#57
○笹野貞子君 長谷川議員には大変申しわけありませんけれども、最後のことをちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 今の御答弁でもやはり大変問題がある。これはこれからの派遣というものに対して、特に女性の派遣というものに対しては基本的人権の侵害になる可能性も十分あるというふうに思います。そういう点では、これからどうぞそういうことのないような行政をしていただくということがまず第一。
 そして、今研修をしてということを言いましたけれども、新卒の派遣者から授業料を取って講座を開いて専門化させるということをやっております。これは昔の、こんな言葉はこのごろだれもわからなくなりましたけれども、口入れ屋か女衒が連れてきて、素人の人からお金だけ取って就職させないというようなことも起こり得る。私たち女性はかってそういう歴史がないように労働省の職業安定所というところを信じてやってきたわけで、それがまた口入れ屋やら女衒が出てきて、容姿や年齢によって高く売られたり安く売られたりするということは、これは非常に大変な問題だというふうに思います。
 先ほど大臣から能力のマルAをいただいて本当に私はうれしいんですが、しかし容貌でマルAをいただいた方がよかったのかなと今複雑な心境で聞いておりましたけれども、これは女性にとっては大変な問題ですので、どうぞこういうことがないようなひとつ行政をしていただきたいというふうに思います。終わります。
#58
○長谷川清君 今せっかく笹野先生との質疑がありまして終身雇用の問題が出ましたので、予告はしておりませんが、この問題でちょっと今のことと関連いたしまして申し上げておきたいのは、大臣の終身雇用制というものをたっとびこれからも継続をする、維持発展させるというこのお考えは私も同感であり、またアメリカにおいてもヨーロッパにおきましても優良企業はこれをやっておるわけでありますし、これから二十一世紀に向かいまして世界の雇用関係というものは長期雇用の方向でもあります。
 ただ、日本の今の状況の中にありましては、大臣がそのようにお考えになり我々もそう考えているが、現実はといいますと、正規社員の方が減少し非正規社員の方が増大をしているというのがこれまた一方の現実でございます。
 要するに、それは世の中全体がグローバル化をしておりまして、それが進展をしてくれば企業側はどうしても企業間競争が起こるので、それに対しては自由に調整ができるような多様な雇用というものを望み、それがどんどん進んでいる。例えて言うならば、常用ということがあるし、今話題になっております派遣ということがあるし、あるいは期間労働もあれば季節労働もあればパートもある、いよいよ苦しくなったときにはある部分を関連会社や何かに置いていく。
 今、我々が大事であるとし大臣も大事だとおっしゃっている従来の終身雇用であるとか同一労働同一賃金とか、安定的にここにいれば、自己研さんを積めば積むほどそれが企業に反映され企業の側もそれに報いる、こういうことがいわゆる終身雇用のよさであったわけであります。それが、賃金に格差が生じてきたりあるいは人が人の能力を査定するような、能力を測定するような、そういう分野がどんどん拡大したりということになっていくわけですから、そういうところからどうしても労働意欲がだんだん落ちてくるということなどが現実に一方であるという事実。私たちは、いろいろなこれからの具体的な法案審議の中にあってそこら辺を大前提としてとらえておかなければならぬのではないか。
 そのことを今の問答の中で感じましたので、予告していないことではありますけれども、その点についてひとつお考えがあれば……。
#59
○国務大臣(伊吹文明君) 先ほど笹野委員にお答えしたのと基本的に同じようなことを繰り返して恐縮でございますが、終身雇用制だけでやっていくということは、それ以外の働き方を希望する人にとって非常に困ったことになる、ある意味では護送船団方式の雇用関係をずっと維持していけというようなことにもなるんではないかと私は思います。
 したがって、メーンの道は決めておきながら、希望によっては幾つかのバイパスが通れるようにというやり方がよろしいんではないかと思いますし、しかも、例えば裁量労働制にしろ派遣職員にしろ、労働者がそのバイパスを通る際に困らないようにどうするかということが我々労働省に与えられた大きな仕事であって、何か若干の、若干というと恐縮ですが、後ほど先生からそういう御指摘もあるかもわかりませんが、効果と副作用の副作用を御指摘になって、効果の方があっても副作用があるからその道はだめなんだというのはとるべき道ではないんじゃないか。
 今でも、構造改革を進めたり財政再建を進めたり、あるいはまた赤字会社を立て直したりするというときにはそれなりの苦しさというものもあるけれども、それは将来の大きな明るい展望のために乗り越えなければいけない苦しさではないか、私はそんなふうに思っております。
#60
○長谷川清君 根本的にちょっとそこら辺になりますと考え方、価値観が違うなということを感じます。
 具体的に今出ました裁量労働とか変形労働とかという部分のことについては、例えばトヨタであるとか日産だとか自動車会社の中でも今実際に裁量をやっているところでアンケートをとって、六十数%の人が不満がある。これはまた詳しくは法案審議の中でやります、ソニーの問題やあるいは東京ガスの問題。いろいろな部分でやっておりますところでいろいろと出ておることは事実でございます。やはり人がやることでございますので、あらゆるファクターによってそういうふうに結果が出てくるということであります。
 今、大臣がおっしゃいましたような第二の質問として、大臣がよくおっしゃっております効果と副作用。その副作用というのは、例えば今現在でも働いている人たちの可処分所得は実質で二・四のマイナスになっています。これは経企庁が発表しております数字によると、二・四だけれども実際には四・八の消費支出のマイナス。なぜ二・四で二・四ではないのか。倍以上の消費支出が落ち込んでいる。これは年金とか健康保険とか、あるいは自分の命の雇用ですらといったようないろんな不安があります。現ナマで財布の中は二・四落ちているから、勤労者は実感として非常に大きい損失を感じております。そこに不安があります。公定歩合だって本当にもう利息は安いです。行き着くところは、みんな大臣の言ういわゆる副作用。
 そして、倒産件数はことし一月で千四百六十九件でしょう。もう六十カ月ずっと千件以上が毎月倒産を続けている。しかも、負債額が七六%ぐらい増加をしているということは、単に中小零細だけじゃなくて大きい中型や何かでも倒産が起こっているということです。こういうことは、やっぱりこれは副作用だといって一人一人の働いている人々に全部かぶっているわけです。
 しかも、この一年だけで十万人失業者がふえましたから失業者は二百十八万人になりました。よく三・五だからどうという数字の話が出ますけれども、アメリカで使う数字と日本の数字は違います。非常に日本の場合は深刻です。選択をするために休んでいる、失業しているわけじゃありません。本当にやむにやまれず、働きたいのに働く場所を失うという深刻さがあります。
 大臣は効果と副作用と言うけれども、それは大前提にいわゆる六つの改革、これをやるためには効果と副作用がありますということを言っていらっしゃいます。効果と副作用の副作用は労働者にのみかぶっているという数字が出ておりますけれども、まずこれについては大臣としてはいかがお考えになりますか。
#61
○国務大臣(伊吹文明君) 日本では、企業にお勤めになっている方、自営業をなすっている方あるいは公務員である方を含めて、今しわが寄っていない方というのは私は率直なところどなたなんだろうという気がいたします。
 それは、赤字会社を立て直すときにはまさにそのようなプロセスを経なければ残念ながらあくが抜けないわけでございまして、かつての池田勇人さんのような失言は私はここではいたしませんけれども、ここはみんなが歯を食いしばって乗り切らねばならないのであって、先生御指摘のように、今確かに消費が大幅に落ちております。それは特に医療費と、それから消費税の所得税減税の見合いの補てんの税率引き上げがございましたので、これが物価にはね返って対前年比で約二・数%の消費者物価のアップがございます。だから、名目賃金は若干上がっておってもそこでまず実質賃金が下がっている、これは御指摘のとおりであります。
 それからもう一つは、おっしゃるように消費性向が下がっております。かって消費性向は七二、三%あったのが今は六八ぐらいになっております。中南米とかアジアとかアフリカでは消費性向は常に一〇〇%です。稼いだものをすべて食べなければ人間は生きていけないわけです。日本の場合は不況であれば、生活水準を同じにするのであればむしろ上がるべきなんですね、消費性向は。ところが、これが下がっているというのはまさに先生がおっしゃったように将来に対する不安があるからなんです。
 その不安は、私の主人が勤めている会社が倒産するんじゃないか、金融がおかしいから、私のお店がもらった手形の相手先が貸し渋りのために資金繰りがつかなくなって変なことになるんじゃないかということがあるから、みんな備えていらっしゃるわけです。その備えていらっしゃるところに何とか安心していただかなければならないというので、実は信用不安不況あるいは金融不安不況というものを払拭しようとして例の金融二法というのを前回通していただいたわけです。
 苦しゅうございますが、いろいろ手だてを講じながら、みんなにしわが寄っているところをひとつ乗り切るというのが今の状態であって、働く人たち以外にだれかが大変今いい目を見ておるということであれば、先生が御指摘のことは私はそのとおりだと思いますが、これは歴史の一つのステージではないかと私は考えておるんです。
#62
○長谷川清君 これも総ざらいをいたしますと、今現在の景気の問題ということに絡んでくるし、その景気に対処してきた今日までの政策のありようということがあると思います。ここは労働・社会政策委員会ですから、景気対策のものに触れるわけにはいかない――触れてもいいんだろうけれども時間がありませんが、やはりその最大のものは昨年の、自民党・橋本政権がとってきた一連の景気対策がもとから私は間違っていると思う。だから、今だれもいいことがないでしょうというおっしゃり方もここにつながってくるし、あらゆる分配のもとがおかしくなっている。
 だから、そういう意味においては、やはり正しい景気の対策ということを政府は責任を持ってやらなきゃいけないし、誤ったなら誤ったでこれを訂正しなきゃいけないと思います。それを九兆吸い上げたかと思ったらまた二兆出してみたり、あらゆる意味においてすべてこういうことをやる。
 そして、一方においての成果はというと一体どういう成果があったんでしょうか。六つの改革と言うけれども、改革の中でこういう代償と副作用の分だけ一体何がどう具体的にあったのでしょうか。今現在で収支決算を出した場合には、働いている人からすれば、大臣のおっしゃる副作用の部分ばかりを受けているという感じだと思うんです。少なくともこの景気対策以降の問題です。今日のこの状況というのはそういうふうに狂ってきているのではないかと思います。
 例えば、構造改革や規制緩和が進んでおります。この規制緩和は大いにやらなきゃいけないし、構造改革もやらなきゃなりませんが、私は人というものが絡む労働という問題については、経済的な規制の緩和ということとは異なった視点が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
#63
○国務大臣(伊吹文明君) 私が実は労働大臣を拝命いたしまして労働省へ行きまして率直に受けた印象をお伝えいたしますと、何と経済政策について発言をしない役所かなという印象を受けました。むしろ、短期的には雇用というのは経済政策そのものであって、労働力というのは市場メカニズムの中で最も重要な生産要素の一つであります。ただ、人間が絡むだけにそれをすべて市場の結果にゆだねるということは、先ほど来申し上げているように、私は余り賛成ではない。したがって、そこにはそれ相応の保護であるとかいう措置はかぶせていかねばならないんじゃないか。
 したがって、今回、労働分野の規制緩和というのも経済的な面がないとは私は否定いたしません、国際競争力に勝つことによって今日の福祉の制度だとか生活水準は守られているわけですから。しかし同時に、長谷川委員御指摘のように、それだけではよくないと私は思いますので、例えば裁量労働制を入れるときにはこういう縛りをかけておく、派遣をする場合には派遣をする人に社会保障上のこういうことだけはきっちりと派遣会社に義務づけておくというようなことをやっぱり伴っていかなければいけない。ただし、それが可能であるような経済状況をつくり出したい。
 そして、先ほどいろいろ政策面についておしかりを受けましたが、先般、イギリスのブレア首相が来られたときに、私は個人的に少しお話をする機会がありました。率直に言って、サッチャーさんがやったことを大変高く評価しておられます。あのときに、サッチャーさんは大変な非難を受けて、失業率が大変高くなって国民生活が非常に苦しゅうございました。しかし、それを乗り切ったがゆえに今日のブレアさんの立場があるんだと私は思うんです。
 同じように、今クリントンさんがああいう状態であっても支持率が非常に高いのは、評判が一時悪かったがレーガンさんがいたからだと、私はそういうこともまた歴史の事実としては評価をすべきじゃないかという気もいたしております。
#64
○長谷川清君 どちらかといいますと、今も裁量という問題があり、これも法律で出そうという状況でありますが、私は結論的にはもう少し時間をかけて検討すべきだと思っています。
 働いている側の人々に有効な法律というのは、日本の場合はそれを法律にあらわすのには十年ぐらいかかっちゃう、他の国はもっとスピーディーに対応する。いろいろ問題だなと思うやつはスピーディーに日本の場合には対応するということでは、きょうは概括的にそこら辺のところは逆立ちをしないように、そしてまた今大臣がおっしゃったようなそういう経済全体に全部まつわる労働ということでもありますから、そういう視点に立ってその辺は今後に期待をしたいと思います。
 それから最後になりますが、時間がありませんので少子・高齢という問題について、特に定年の六十歳から六十五歳への延長ということについてはどういうふうに具体的にお考えか、進め方について。
#65
○国務大臣(伊吹文明君) これは先ほど来御質問が各委員からございましたけれども、高齢者が働くことによって収入を得るということも非常に大切でしょうが、同時に働くことによって社会に参加をしている、存在感を持つということは、私はこれは高齢社会においては何より大切なことだと思います。
 そこで、少子化が進んでおりますので、十五年ぐらいか二十年ぐらいこれは率直に言って放置をしておきますと、今の日本の経済のレベルを維持しようとすれば、外国から労働者を入れてこない限りは必然に定年は延長されていかざるを得ません。しかし、それまでの間どうするかということが一番私はやっぱり問題だろうと思うんです。そこで、まず私たちは市場経済の中で生活をしているわけですから、企業が六十五歳まで継続雇用をしても、つまり労働コストを支払っても経営が成り立っていくだけの経済状況をつくり上げなきゃならない。橋本内閣は今そのための産みの苦しみをなめておるんじゃないかと私は思うんです。
 具体的には、我々は企業に、何らかの形で六十五歳まで継続雇用をしてくださいと。そういう制度があるところは長谷川先生御承知のように約八割あります。しかし、希望する人がみんなそういう状態に置かれているのは実は二割しかまだないんです。これは個別にまずお願いをして、そして市場経済がある程度それを許すような状況が近づいてきた場合には法律的なもので企業に強制をしていくという道をとっていくのかなと、そんなふうに考えております。
#66
○長谷川清君 これは確かに今すぐにということではございませんが、大きな柱としてそれを一刻も早く完成できるようなプロセスをひとつ歩んでほしいということがあります。
 また一つには、もう既に二十何年になると思いますが、全国のシルバー人材センターの問題です。私もこれは当初のひっかかりのときから、大河内一男東大総長が会長になり、私もそこの一員として常務をさせていただき、プラン・ドゥー・シーのプランニング段階から四、五年かけて東京につくり、全国にこのシルバー人材センターを設置していったという経緯がありますから非常に愛着を持って見ておるんです。
 現在のところ、資料によりますと、就業の延べ人員は三千二百十五万人というところまで来ておる、この一年間で四百万人ふえているということ。契約の方で見ましても、これはしょっぱなのころはもう全部官主体でいっておりましたが、今は逆に民間の方が六六・八%、官は三三%というふうに非常に健全な推移状況になっていると思いますけれども、しかしまだ十分ではないと思います。
 これらの全体の完成、それから今後の運営という点についてどのように具体的にお考えなのか。
#67
○政府委員(征矢紀臣君) 長谷川先生ただいまお話ございましたように、シルバー人材センターの問題、大変実務の経験をされておりまして詳しゅうございますので中身は申し上げませんが、今後の高齢社会の中で非常に大きな役割を果たすべき団体である、制度であるというふうに考えております。
 これにつきましては、昨年のデンバー・サミットでアクティブエージングというような考え方が打ち出されましたが、その趣旨に沿った制度であるというふうに考えておりまして、そういう意味では今後できるだけこれの充実強化を図っていく必要がある。ただ一方で、非常に財政事情の厳しい状況もあるわけでございまして、そういう中でどんなあり方で対処したらいいかというところを今後の重要な検討課題としているところでございます。
 現状、団体数は七百五十団体、ただいま先生延べでおっしゃいましたが、会員数も四十二万人と相当ふえてきている、そういう状況でございます。
#68
○長谷川清君 大いに頑張っていただきたいと思います。
 以上で終わります。
#69
○委員長(鹿熊安正君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十一分開会
#70
○委員長(鹿熊安正君) ただいまから労働・社会政策委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、労働問題及び社会政策に関する調査を議題とし、労働行政の基本施策に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#71
○山本保君 公明の山本保でございます。一月からこの委員会に所属させていただきましたので、よろしくお願いいたします。
 きょうは、先ほど午前中も大臣の方から非常にわかりやすく、また御自分の信念についてもお話がございまして、本来そちらからお話をお伺いするべきところではございますが、私は、きょうはこの委員会が今までの労働行政に加えて特に家族問題についてもということになりましたので、その意義から、最近問題になっております児童虐待、幼児が家庭内において虐待を受け、そしてひどいときには死に至るというような事件が起きておりますので、これについての対応につきまして厚生省の方から先にお聞きをしようと思っております。
 虐待という言葉は実は非常に古い言葉でありまして、昭和八年に児童虐待防止法という法律ができております。当時世界的にもこの問題が大きな流れになりまして、まだ児童福祉というような言葉のないようなときから児童虐待防止というのが全世界的に問題になり、日本はいち早くその当時この虐待に対する総合的な法律がつくられたものでございます。
 ただ、当時の虐待といいますのは、きょう午前中笹野先生からもお話がございましたけれども、家の貧しさなどによって子供が親によって売られる、無理やり引き離される、そして今で言う飲食店とか風俗営業、そういうところべ売られたり、または軽わざをやったり、こじきをやったりと、こういうことを前提とした児童虐待でございました。ですから、同じ虐待といいましても、最近新聞等で使われておる虐待とは大分イメージが違っております。
 この児童虐待防止法の条文はほとんどそのまま現在の児童福祉法にも取り入れられてはいるんですけれども、しかしながら、本来子供を愛し育てるべき親が、自分の子供の身体や心を傷め、ついには命を奪うことにもなるというようなことが前提となっておりませんので、実際にはなかなかこのことが問題にはならなかったし、公的な対応もおくれているのではないかと思います。私の知る限り、ついこの数年間やっと厚生省もその対応を開始したのではないかなと思っております。
 最初に、児童虐待は実は定義自体もはっきりとした定義がございませんが、きょうは詳しい内容については触れないことにいたしまして、厚生省が現在行政的に把握している児童虐待の状況について、まず厚生省の方から御説明いただきたいと思います。
#72
○政府委員(横田吉男君) 最近児童虐待が増加していることにつきまして、私どもとしても大変ゆゆしい事態であると思っております。
 私どもこの児童に関する相談、措置等に関する施設といたしまして児童相談所というのを有しておりますけれども、ここに虐待に関して相談があった件数を見ますと、平成二年度におきましては一千百件でございましたものが、八年度におきましては四千百二件ということで、約四倍近くにまで増加してきております。
 児童虐待を受けた場合におきましては、人格形成上も非常に大きな影響を与えることにもなる問題でございまして、私どもとしては大変ゆゆしい事態であると認識しております。
#73
○山本保君 今のお話ですと、平成二年の統計とそして最近の統計で四倍くらいにふえているということでございますが、今お話にありましたように、これは児童相談所という都道府県の機関が正式に受理をした数でございます。ですから、ここに上がってこないものはもっと多いんではないかというふうにも言われておりますし、また、最近民間のこのような問題に対して活動する団体も出ております。テレビ等でもそういう報道がよくあります。
 専門家のお話を聞きますと、本当に自分の子供に手を出している親というよりは、出すんではないかというおそれを持った親御さんからの電話が非常に多いというふうにも聞いておりますし、また、実際電話がある問題よりは電話のないケースの方が重いものであって、これはやみからやみに葬られているのではないかという心配もあるわけですが、児童相談所において四倍の発生件数が出てきているということはゆゆしきことだと思っております。
 この問題がなぜこれまで問題にならなかったかということは、先ほど申し上げたように実は親の権利と義務、親権というものがあって、自分の子供については親は第一義的な養育、監護及び教育、懲戒についてと民法にあります。責任と権利、権利といいますのは、つまりそうでない方に対して優先的な権利という意味でありますけれども、そういうものを持っている。このことが、公的な児童福祉サービスが入り込む余地がなかなか難しかったんだというふうに考えられるわけであります。
 局長の方から、今申し上げたようなことに絡んでも結構ですが、現在どのような形で対応を進めようとされているのか、また今どんな手を打っておられるのか、これについて概括をお話しいただきたいと思います。
#74
○政府委員(横田吉男君) この児童虐待の内容を見てみますと、主たる虐待者といたしましては五二%が実の母親であるという結果が出ております。次に多いのが実父でございまして二七%。現実に実の父母が虐待の主体であるというような結果でございまして、今御質問いただきましたように、親権との関係というのは大変難しい問題でございます。
 私どもといたしまして、そうした保護を要する児童がいた場合には養護施設等へ入所措置をとるわけでありますけれども、その場合におきましてもこうした親権との関係もありますので、可能な限り保護者等、親権を有する者の同意を得て行うことを原則としております。ただ、同意が得られない場合にも必要がある場合におきましては家裁等の許可を得て措置する、あるいは緊急を要する場合におきましては緊急一時保護ということで同意なしに措置することができることとされておるところであります。
 ただ、実際の運用におきまして、これまで親権に対する配慮というものもありまして、ややもいたしますとこの権限の行使というのが慎重に行われてきた嫌いがございます。私ども虐待が増加しているということにかんがみまして、昨年におきましては、看過できない場合においては親権者の意向にかかわらず児童の最善の処遇というものを重視して、一時保護等積極的な対応を図るよう各方面に周知徹底を図ったところでございます。
 今後とも、一時保護の活用あるいは家裁等の迅速な承認の申請、処遇について保護者と意見が対立している場合における、このたび法改正をいたしましたバックアップ機能としての専門化機能の活用等も図りまして、関係機関が協力して適切な保護に努めてまいりたいと考えております。
#75
○山本保君 親権というのは基本的人権でもありますし、生物学的なことから生ずる権利でもありますので、これをないがしろにしたり軽んじたりすることは、私はできないと思います。ただ、それは子供の保護という一連のプロセスの中で考えられるべきことであると思います。つまり、そのような子供やまたそれに悩んでいる親を発見して、すぐに家族問題として対応するその最初のところで親権をどうするかという問題ではないんじゃないかと思うわけです。
 ですから、今お話にもありましたように、法律にも緊急避難としての一時保護という行為が定められているわけです。このときには、本来ですともちろん親権に対する一時停止などの法的な措置を伴わなければならない子供を家庭から引き離すということについても、一時的であり緊急避難であるということから一時保護所というところへ連れてくることができる。ですから、この場合は親が承諾をしなくても強制的に連れてくることができる。
 もちろんこれを最初にやって、その後ある程度子供の生命等が安全になった場合に法的な対応を行うというようなプロセス、これはアメリカなどでもそういうふうに普通使われているわけでありまして、四十八時間以内に裁判所の許可を得なければならないというようなものを見たことがございます。今回の通知も見せていただきましたけれども、まだまだその辺について、そういう具体的に子供を保護する全体の流れということになっていなくて、ただ最初の法解釈だけがどうも通知で出るような気がしてなりません。
 きょうは時間のこともありますので詳しくそれを指摘することは行いませんけれども、ぜひここは法解釈に終わるのではなくて、全体的な子供の保護、発見し連れてきて、そして親との間をもう一度修復する作業をしながら子供を健全に育てる、そして最後にはその家庭に帰す。万が一つまくいかない場合にはまた別の公的な子育ての方に移るわけですけれども、こういう全体の流れの中でこの親権について検討していただきたいと思っております。
 そこで、一生懸命やられているとは思うんですけれども、しかし残念な事例がございます。これは最近、特に中学生などのナイフの問題が大きくなっておりますので、それに隠れてちょっと見えなくなっているかもしれませんが、その地域地域では非常に重大な、また暗い重苦しい問題であります。
 私のおります愛知県におきましても、この今月の四日でしたか、新聞報道が大きくなされました。豊田市というところで二十五歳のお父さん、お母さんは家を出てしまって、そして二歳と一歳の女の子がそのお父さんのところにいたんだけれども、新聞報道によれば、発見されたときにはもう既に遅く、二歳のお姉さんは一月ほどほとんど食事も与えられていなかったのではないかということで死亡していた。妹さんの方は何とか命は取りとめているというような報道がございます。
 これについてもう少し詳しくお聞きしましたところ、この新聞報道を見ますと、そういういわば閉ざされた家庭でありまして、ほとんど地域の人もその状況は知らなかったんだという報道がされておりますが、実はどうもそうでもなかったようであります。いろいろお聞きしますと、一月ほど前に児童相談所に、その家を出ているお母さんから子供が非常に心配だという相談の電話があった。ところが、私も専門家として非常に残念だと思いますけれども、その電話相談に対して、はっきり言えば家庭内でまず調整をしなさいよという形の指導があり、見守るという便利な言葉を使っておられるようですが、結果的にはそのまま放置をしてしまったのではないかということが言われているわけであります。
 私は、こういう児童相談所という最もこの部門については家族を守るために、子供を守るために一番活躍しなければならないような機関がなぜ有効な手だてをとれなかったのかということを考えるわけでありますけれども、局長、これについて個人的見解でも結構ですが、どのように思われるでしょうか。
#76
○政府委員(横田吉男君) 児童の虐待というようなものにつきまして、これは本来あってはならないことでありまして、そういった事例がある場合におきましては、数が少なくても決然として対応していくということが行政としても求められているのではないかと私ども考えております。
 今まではどちらかというと、家庭内の懲戒権の問題というようなことで当たらず触らずで来た面もあろうかと思いますけれども、我が国の最近の状況を踏まえますと、やはり実状に応じて迅速的確に対応するような体制をつくっていく必要があるのではないかと私ども考えております。
 そういった意味で、今回の児童福祉法の改正におきましても、より身近なところで二十四時間相談にも応じられるような児童家庭支援センターの創設というような仕組みを児童相談所以外に設けまして、できるだけ気軽に相談にも乗れるというような体制の整備を図っているところでございます。また現在、児童相談所の運営指針の改定も進めておりますけれども、虐待等に対する対応について、できるだけ迅速的確に対応できるような姿勢を求めたいというふうに考えているところでございます。
#77
○山本保君 これまでこの問題については厚生省はついつい及び腰ということがあったようでございます。また、現場の方にお聞きしましても、特に今回の場合そうでしょうし、一般的に親子げんかのような、親のせっかんのようなというときに最初はお巡りさんが行かれますけれども、警官は民事不介入というようなことで全く手が出せないというようなことも聞いております。それでは一番最後、子供が最大の被害者になってしまうという結果になるわけでございます。
 局長は今、これから積極的にやっていかれると言われたわけで、ぜひお願いしたいんですけれども、私、自分の経験からいきましても、ここで具体的にちょっと問題点を指摘しまして、対応策について早急な手を打っていただきたい。つまり、今おっしゃいましたのはいわば役所の通知レベルでどうしようとか、また法改正をどうするという話ではありますけれども、私の知る限り、現在のこのままのシステムでもすぐに手が打てるはずなんだと思っておりますので、ちょっと申し上げます。
 と言いますのは、これまで問題となっていたのは、実は法律にもありますが、こういう問題を発見した場合に、まずどういう人にその通告義務を課せるかというような問題が割と学会などでは問題になっております。私は、こういう問題よりは児童福祉行政というか家庭支援の行政というものは、原因究明であるとか、または他の法律との関係というようなことをやる前に、理由もわからなく原因もわからなかろうが、一番困っている子供と、そして実はその子供を抱えて悩み切っている、そしてもうノイローゼ気味になってとても先のことが見えなくなっている親を大至急守ってあげる、これが一番必要なことであると思います。
 そうしますと、まずこの時代でございますから、先ほども例を申し上げたように二十四時間体制で電話相談ができなければなりません、電話の受け付けがなければなりません。きょうは時間がないので、個々の内容について答弁といいますか、状況報告をいただきませんけれども、私の知る限り、全国で二十四時間体制で電話を受けている児童相談所などはございません。遅くまで受けているというのはあるかもしれませんが、こういう悲惨な状況が起きるというのは大体もう夜中を過ぎたようなときでありますし、また土日であります。そういうときの体制というのが非常に不備ではないかと思っております。これはもう電話機増設なんという話ではありませんので、ぜひこの体制をつくっていただきたい。
 問題になりますのは、児童相談所というのはほとんどが県の機関であって、そのための職員配置云々ということになってくるわけであります。先ほどからお話がありますように、主な児童相談所には一時保護所という子供を受け入れる施設、附属の機能があり、そこには専門家が常駐しているわけでありますので、ぜひこの一時保護所の機能に、電話をまず受けて、そしてこれから申し上げることについての最初のインテークをするということをつけ加えていただきたいと思います。
 第二番目に問題は、ここが一番問題でありますが、今の相談体制というのは、電話をしまして、これは先生方も多分経験があると思います。そういう問題があって支持者の方が電話をした、ところが来週の水曜日の何時に来てください、こういうような対応が非常に多いわけであります。先ほど申し上げた例も実はそういう形だったと思います。
 今必要なのは、困っている親、その子供のところに直ちに飛んでいって、そしてその状況を静め、安定させ、場合によってはその子供を引き取ってくる、こういう専門家がすぐに飛んでいくということが必要なわけでありますが、残念ながらこれも児童相談所では行われておりません。先ほど、今後その他の民間の方をというお話がありましたが、これはぜひ大至急手を打っていただきたいと思うんです、
 つまり、実は県内には児童相談所以外にこういう子供さんたちを生活させている養護施設でありますとか乳児院、それから教護院、また子供だけではなく親も一緒に引き取ってちょっとの間であれば生活ができる機能を持った施設がたくさんございます。
 では、なぜこの施設が動かないのか。これは権限がないわけであります。施設というのは、そこに県知事の措置によって入ってきた子供についてのみ事実上の親権行使ができますけれども、そうでない子供に対してはできないわけです。ですから、ここに法律的な対応をすぐにしなければならないわけでして、ぜひこの施設の職員の中でそういう有能な能力を持った方には知事認定などをされて、児童相談所の職員に準ずるような権限を与えて、もちろん権限でもって無理やり引っ張ってくるというようなことは一番の下でございますけれども、しかし最悪の場合にはそのことで親権にも対抗できるような対応をした上で、困ったときに児童相談所の一時保護所がまず受けたとしましたら、その指示を受けて、一番近い施設の職員が飛んでいく体制というものをぜひつくっていただきたい。
 第三番目には、もう申し上げたように、こういう子供さんや親をまず引き離して、大体アル中で暴れている男親から引き離さなくちゃいけないとかいろいろございます。そういう場合に、その子供たちを引き受ける先ほどの施設が最初に便利に使えますし、また一時保護所という児童相談所の施設、機能というのはそのために最も適したものであります。
 私が知っております限り、児童相談所の一時保護所には残念ながら中学生以上が入っている例が多いわけでございまして、中学生の非行を持っているような子供たちと一緒に育てることはできないというような理由から、どうしても幼児やまたその母親を入れるということはやっていない、おくれているような傾向があるようでございます。これは数字を申し上げません。
 しかし、こうであるならば、そのようなほかの施設で対応できる子供については早くそういう施設にまず一時保護を委託するというような手を打ちまして、県内に一カ所はいつでもあいていて親や子供が一緒になって囲われる、助けを求めてきた親や子供が保護できる、される、こういうシェルターをぜひ大至急つくっていただきたい。
 私が今申し上げましたことは、実は全部こういうものの予算はもう既に出ておりますし、法律変更もほとんど必要ございません。これは今年度中にでもぜひやっていただきたいと私は思うのでございますけれども、局長、時間もございませんが、最後に御返答いただきたいと思います。
#78
○政府委員(横田吉男君) 児童虐待に対する対応につきましては、まずは早期発見、早期対応というのが大事であろうと考えております。こうした点につきましては、先ほど申し上げましたように、今後、民間の養護施設等も活用いたしまして、身近なところに児童家庭支援センターというものの整備を進めていき、そこにおいてできるだけ早く情報をつかむあるいは相談を受けるという体制を整備していく。
 ただ、それと児相との連携によりまして一つの対応を図っていくということがございますが、そういった点と線だけでなくて、さらに面的にやはり対応していく必要があるのではないか。そういう意味におきまして、児童関係では児童相談所が中心になると思いますが、児童相談所、児童家庭支援センター、それから各種の児童福祉施設、それから学校、保健所、医療機関、警察等さまざまな地域の機関ができるだけ連携を密にし一つのネットワークというようなものをつくっていくことが必要ではないかと考えております。
 それから、問題が起こった場合、いろんな方から児童相談所あるいは児童家庭支援センター、福祉事務所、警察等を通じて通報があるわけでありますが、そうした場合におきまして、その実情に即して的確に対応できるような体制をどうやって整備していくかというのが一つの課題だと思っております。これは現在においてもやる気があればできるわけでありますけれども、夜間等の対応あるいは県によりましてかなりの相違があるような状況になっております。私ども、夜間や休日等も含めて一種の救急医療みたいなものだと思いますけれども、児童問題に関するそういう体制をどういうふうにして整備していくかというのが一つの大きな課題であると思っております。
 その際、御指摘のございました一時保護所、全国に現在百十カ所が大体児童相談所に併設されております。ここの入所、これは必ずしもそういった中学生だけでなくてゼロ歳からの乳幼児もかなり入っておられますけれども、入所はまだ四分の一ぐらいということで、東京みたいに込んでいるところもありますが、あいている状況にございますので、そういった施設をできるだけ機動的に活用することも進めてまいりたいというふうに考えております。
#79
○山本保君 どうもありがとうございます。厚生省の方はそれで結構でございます。
 それでは続きまして、きょうは総論的にまず雇用情勢、特に失業率につきましてお聞きし、その後に能力開発について個別論でございますが一点ほどお聞きしようと思っております。
 まず、完全失業率が史上最悪だというふうに言われているわけでございまして、労働大臣、このような状況をどのように認識しておられるのか。きょう午前中にもそんなお話がございまして、労働省だけの責任ではもちろんないと思うわけでございますから、逆に労働省ができる仕事というのも限られてくるかとは思いますが、閣僚として現在の景気の問題なども含めてどのように考えられているのかということでございます。
 そのための例を一つ申し上げますと、大臣がこの前ここで所信をお述べになったわけでございますけれども、どうもこれを読んでおりますと、現在の失業が多いということは、今、日本の経済の構造改革、ビッグバン等々がありますので、必然という言葉はおかしいかもしれませんが、そういうために起こっているという認識なのか、それとも、まさにきょうお話もありましたように、今の内閣の景気対策の失敗という言い方は酷かもしれませんが、しかし、そういうものによって生み出されているというのか、この辺がどうもはっきりしない。何かいかにも人ごとのような感じもあるのでございますけれども、この辺の現在の失業率が高い状況についての御所信をお願いいたします。
#80
○国務大臣(伊吹文明君) お尋ねは当面のというか、短期的な失業の状況についてのお尋ねだろうと思います。
 失業率が三・五、有効求人倍率が〇・六四というのは、日本の最近の歴史から見ると、諸外国と比べますと、これは終身雇用制という制度をとっておりますから非常に低いんですが、最近の日本の歴史の中でほこれは非常に高い、だから極めて厳しいと私は認識しております。
 そこで、構造改革の中で規制緩和と金融改革というのはかなり先行して進んでおります。そして、社会保障改革というのは、例えば老人医療の一部負担のように一部が行われたと私は思います。しかし、財政の構造改革というのは大変な議論はなされておりますが、実はこの予算が通過して初めて財政構造改革の内容を含んだ予算がディスバースされるわけです。ですから、構造改革の中の一部が実施されていることによるフリクショナルな失業というか、雇用不安というものが一つ原因であることは否定いたしません。
 しかし、私は、大部分はやはりバブルのときの、もちろん政策も悪かったわけですが、日本人全体が拝金主義に陥っちゃって、必ず土地が上がり株が上がりという気分の中で行った投資が結果的に金融機関の立場で言えば不良債権になってしまって、金融機関がにっちもさっちもいかない状況であるという評価を社会的に受けている。
 それが結果的には、例えば千人の預金者がいれば五人の引き出しという前提で金融機関の運営というものがなされているにもかかわらず、やや不安だぞというので、千人のうち三十人とか四十人の方が引き出しに来られる、それに備えるための引き出し資金を金融機関は準備しなければならない。そのことが健全に経営をしまじめに経営をしておられる中小企業を初めとする経営に大変な影響を与えて、その不安がまた不安を呼んで現在の経済状況になっているというふうに、ここはいろいろな見方があると思いますが、大きなところはそこにあるんじゃないかと私は考えております。
 もちろん、よく一部の政党や一部の方から言われるように、消費税を引き上げてしまったからとかという話があります。しかし、こういう理由ならば、その前にそれに見合う所得税の減税をしたということとあわせて考えれば、対面収支上どういうことになっているのかということもまた公平に私は議論しなくちゃいけないと思いますので、大きな今回の不況の原因は私流に言えば信用不安不況だというふうに考えております。
#81
○山本保君 私は少々見方を異にしているわけでありますけれども、またその議論は今後やらせていただくことにいたしまして、では、次のところへ移らせていただきます。
 ちょっと話が違う話になりますが、実はこの前この委員会でNPOの法案が通りまして、参議院でもほとんどの会派の方の御賛同を得て通過し、今、衆議院で審議されている最中であります。
 御存じだと思いますが、NPOといいますのは、きょう午前中にボランティアについてのお話が経済企画庁からございましたが、あのボランティア部門も含みますけれども、実はもともとそういうものよりは公的な、公共的なサービスを民間が行うという面で、今までの公務員、官庁と民間、非営利部門とが競争をしているというアメリカ型、ヨーロッパ型の社会を築くための法律である、私どもはそう思っておりまして、私もその法律を出させていただいたわけであります。
 残念ながら、今回は支持いただけなかったので、ぎりぎり現在の与党案について使いやすくなるような修正をさせていただき、そして税制についても今後積極的に行いましょうという答弁もありましたので、私はそれを信用しまして賛成をさせていただいたわけであります。
 労働省として、このNPOというような部門は非常に日本では限られておりますね、社会福祉法人であるとか学校法人であるとか。この部門をもっともっと規制緩和をしまして、例えば一億なんて言われるんじゃなくて、その部門によっては例えば五百万円ぐらいの基金を積めば、もちろんそのための事業法はつくる必要がありますしガイドラインが必要ですけれども、そういうことでもっと民間の方にこの仕事をさせていただければ、今までボランティアとしてほとんど税務署等は関知しない、つまり雇用ではなかった関係がきちんと雇用として生まれてくるのではないかと私は思っておりますけれども、労働省はこのNPOというものが雇用にどのような影響を与えるというふうにお考えなのかお聞かせいただきたいと思います。
#82
○政府委員(征矢紀臣君) ただいまNPOについての雇用創出効果の御質問でございますが、これなかなか定量的に推計することは困難でございますが、このNPO法が施行された場合に、NPO団体の増加あるいは事業の拡大、これが見込まれるわけでございまして、これに伴って一定の雇用創出が期待できるというふうに考えております。
 私ども平成九年調査で、比較的規模の大きなNPO団体を対象といたしまして実態調査もいたしておりますが、回答数が百七十五団体でございますが、その実情でいきますと、スタッフの総数が三千六百九十三人、そのうち専従の有給スタッフが約二〇%、七百五十一人、非専従の有給スタッフが二二%、八百七人というような調査結果もございます。
 一方、平成八年度の経済企画庁の調査によりますと、全国の市民公益活動団体は約八万五千団体と推定されておりまして、これは規模の小さいものが多うございますから、私どものサンプル調査と連動はなかなか難しいわけですが、そういう意味で一定の雇用効果は期待できるのではないかというふうに考えております。
#83
○山本保君 今お話がありましたように、経企庁の感覚というのがまさにボランティアに偏しておりまして、ぜひ労働省はこのNPOというものを雇用の問題としてとらえて、積極的に関与されるように私は今後も見守ってまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 次に個別の問題で、時間がありませんけれどもちょっとお聞きいたします。能力開発についてでございます。
 今度、新しい予算で教育訓練給付金ですか、こういう制度をつくられると、この概要についてできればお話をいただいて、それと、現在でもやっておられるはずの職業訓練などについての助成金もあるはずでございますが、これとの比較といいますか、その違いなどについて御説明いただけますか。
#84
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の教育訓練給付金制度でございますが、これは今国会に御審議をお願いしております雇用保険法の改正法案、これでその内容を定めようというものでございますが、産業構造の変化等に伴いまして多様な職業能力開発が求められている中で、事業主の方の行う職業訓練等に対する従来の支援、これは後ほど申し上げますが、それに加えて、労働者がみずから主体的に能力開発を行う場合これを支援する、こういう観点から教育訓練給付金制度を雇用保険制度の中で創設しよう、こういうものでございます。
 その内容につきましては、一定の要件を満たす被保険者または被保険者であった者、これが労働大臣の指定する教育訓練を受け修了した場合にその入学料及び受講料の八割に相当する額、これは最高限度額二十万円を現在考えておりますが、これを支給する、こういうものでございます。これにつきましては、現在の法律案におきまして平成十年十二月一日の施行を予定いたしておることから、十年度の予算におきましては約五十一億円、人数にして六万人程度の利用、これを見込んでいるところでございます。
 従来の教育訓練につきましては、例えば雇用調整助成金という制度の中で、失業の予防という視点から事業主が教育訓練を行った場合それに対する助成を行う、こういう制度もございます。これにつきましては、事業主が教育訓練を行った場合にその当該事業主に対する助成制度として給付金を支給すると、こういうものでございます。
 助成内容につきましては、訓練期間に支払った賃金のうち、大企業については原則二分の一、中小企業については三分の一となっておりまして、平成八年度の実績で見ますと、八百七事業所に対しまして合計三十五億円の助成を行っておるところでございます。
#85
○山本保君 この限られた予算の中でそれなりに仕事をしておられるということはわかりますが、しかし、先ほど来お話が出ておりますように、これから非常な勢いで経済構造が変わっていく、しかもいわば悲惨な失業ではなくして自分で自発的に、また職業選択でよいものに行くためにも、この職業能力開発というのは非常に重要な仕事になるわけであります。
 今お聞きしますと、こういう必要な方に対するものとしてはまだとても足らないんじゃないかと思います、人数的なことで言いましても。また出てくるお金も、その程度のお金ですとまあ言うならば、どこかの町の英会話学校とかワープロ学院へ行く程度のお金しか考えていないんではないかと思いますけれども、その程度の能力開発で次の段階、新しい雇用になっていくのか。もっと広く言えば、大きく言えば、その方の自己実現のためにその程度のお金でできるのかということを私は非常に危惧いたします。
 例えば、もっと踏み込みまして、今度介護のための手当を出されるというお話がありましたけれども、仕事を休んで大学、大学院などに行かれる場合に、そのための給与分と、そしてその間当然生活もありますのでその生活の手当も含むような教育休業というような制度を私は考えるべきだと思います。
 詳しいことは今後お話をしていただくとして、それに関連しまして、きょうはせっかく文部省の方からも来ていただいておるんです。そう考えますと、労働省は労働省で大学校をつくったりいわゆる職業訓練校をつくったりされておりますが、教育立国である日本が今一番しなければならないのは、さらに高校、大学、大学院というような高等教育において、労働の側から言えば、新卒対策しかやっていないでしょうということです。これだけ雇用体制、状況が変わり、つまり二十二、三歳の大学卒の段階で一生が決まるんではないという時代に来ているのに、なぜ大学はそのための対応をしていないんだというふうに私申し上げたいんです。
 具体的に言いますが、例えば国立大学の使命は機会均等であったはずですね。これは国家有為の人材というのもありますが、二つあって、一つは機会均等です。国立大学こそ土曜日、日曜日の授業を行って、夜間も当然行って、このような今の労働者の状況に対応した施策を進めるべきではないかと私は思っておりますけれども、文部省の見解をお聞きしたいと思います。
#86
○説明員(清水潔君) お答え申し上げます。
 現在、国立の大学においては学部、大学院双方のレベルで委員御案内のように夜間学部あるいは夜間大学院の設置を進めておるわけでございますし、また主として夜間において履修を可能とする昼夜開議制というのも導入しているわけでございます。昼夜開議制でございますと、大学院レベルで約七割、学部で言うと三割近くということになっておりまして、それはそういう意味での社会人の受け入れも逐年増加を見せているというふうな状況でございます。
 その実施時間帯についてということでございますが、通常の夜間の時間帯にとどまらず、あるいは土曜日を活用した形で社会人学生の就学上の便宜を図っているケースも少数ですが見られるところでありますが、御指摘のような状況はございます。
#87
○山本保君 まあ報道などを見ましても、このような再就職もしくは労働者の労働能力を高めるためのさまざまな情報提供でありますとか、また実際の講義等については私立大学の方が一生懸命やっているというような報道もございます。
 私は全国立大学ですぐに対応すべきだと思います。ここは議論する場ではありませんのでこれ以上このことについては申し上げませんが、ぜひ検討いただきたいということを申し上げまして終わります。
#88
○大脇雅子君 先ほど山本議員からも問題提起がございましたが、現在の雇用失業情勢について、これをどのように認識したらいいのか。確かに諸外国と比べて失業率は相対的に低いと言えるわけでありますが、この失業率の三・五という数値というものは、いわば摩擦的な失業というよりもむしろ低成長下、規制緩和に伴う必然的なものではないかというふうに見られるわけですけれども、これについての大臣の御認識についてお尋ねしたいと思います。
 それから、これまで高度経済成長の中で、いわば雇用調整金で持ちこたえる中で景気が回復して失業の危機が回避されたという形で、雇用調整助成金制度というものは労働政策の根幹をなしてさたわけですけれども、今後、そうした中で雇用対策についてはどのようなものを考えておられるのかお尋ねしたいと思います。
#89
○国務大臣(伊吹文明君) もう大脇委員よく御承知のことでございますが、諸外国に比べて数字の上では低うございます。雇用形態というのは各国みんな違うわけでございまして、私はグローバルスタンダードというか、アングロサクソンスタンダードで物をすべて考えるということには率直に言って余り賛成ではございません。日本は日本の伝統、文化の所産である終身雇用制というものが大宗を占めておって、その流れの中での三・五という数字はやはりかなり厳しいというふうに考えなければならないと思っております。
 この原因については、先ほど山本委員からもお尋ねがあり、いろいろな私は見方ができると思いますが、三・五の中の一部は確かに失業保険というものを当てにした、摩擦的失業というよりもやや自発的失業の部分がないとは私は申しませんが、大部分は今大脇委員がおっしゃったような原因による失業だと私は考えております。
 したがって、この当面の悪い景気の原因が何であるかという議論になってくると思うんです。そこのところをどう埋めていくかということになろうと思いますが、私は基本的にはやはり信用不安不況、不安が不安を呼ぶことによって出てきた部分が非常に大きくて、先ほど御質問の中にもあったような、例えばそのことが結果的に消費性向を低くしているというようなことにもつながって、不安が不安を呼んで悪い状況が悪い状況をさらに深めていくということでございます。
 したがって、一年の決算期を終わって締めてみれば、利益が上がっている企業においてすら月末のつなぎ資金が融資されないという苦しみの中で不況というか、倒産を余儀なくされておられるというところもあるわけで、幸い衆参両院の御理解を得て金融二法というものが通りましたので、これが私は本当に目的に合って実効ある運用をなされれば、例えば自己資本比率八%ということは八分の百ですから一二・五、だから一千億円の資本注入をしてもらったところは一兆二千五百億円の新規融資ができるということでございますので、これが完全に動き始めれば景気状況というものは好転してくるんじゃないか、私はこんなふうに考えております。
 それから、雇用調整助成金制度については、大脇委員御指摘のように、これは労働省の大きな政策手段であったわけですが、当面は、これだけの大型倒産が出てまいりますと決してそれだけではできないわけで、労働省としても従来のように職安の窓口に座っておって求職と求人を来たのを突き合わせるということではとてもいけない。
 だから、特に再就職の難しいホワイトカラーの中高年齢層の人たちのために新しい求職、求人がないかということを商工会議所、それから日経連、中小企業団体中央会、一都一道二府四十三県の出先の団体を通じてぜひ調べてもらいたい。我々もまた地元の職業安定所の職員や都道府県の職員を積極的に動員して、こちらからセールスとしてお伺いして求人を開拓していきたい。
 そういうことで、この前実は私自身もお願いに行き、職業安定局の諸君が今全国の出先の皆さんに協力を呼びかけて集計をいたしておりますので、これほどのような結果が出てくるかわかりませんが、集計ができましたら一度御協議の資料に供したい、こんなふうに考えております。
#90
○大脇雅子君 積極的に打って出る求人の開拓という新しい労働政策の取り組みというものには心から期待をするものであります。
 ただ、今この失業率を見た場合に、男女別にも多少の差があり、あるいは地域的にも多少のばらつきがあり、とりわけ業種別においてはこれからの見通しなどを含めて非常に大きな分析をしなければならない状況にあると思うんですけれども、このいわば失業全体を十把一からげではなくて、さまざまな次元からの分析はどのようにしておられるでしょうか。
#91
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の失業率の問題でございますが、この三・五%について、平成十年一月の完全失業率で見ますと、男女別に見れば、男性は三・七%と過去において最も厳しい数字であるということでございます。女性は三・二%となっております。年齢階層別に見ますと、これは若年層で高く、また六十歳を過ぎた高年齢層で高い。数字的には六%程度の数字になろうかと思いますが、そういう状況でございます。それから地域的に見ますと、今回の特徴は、東京近辺あるいは大阪近辺の大都会で三・五%より高い数字、四%近い数字になっております。それから北海道、沖縄等も厳しい状況でございます。
 それから、一月時点での完全失業者二百三十八万人でございますが、これを休職理由別に見ますと、一番多いのがやはり自発的な離職による者ということで八十九万人でございますが、非自発的な離職による者も六十六万人と、従来に比べますとふえております。それから学卒の未就職者が十万人、その他家庭の主婦等の方で新たに求職活動を始めている方が六十三万人ということでございまして、自発的離職者が約四割を占めておりますが、最近四カ月間は非自発的離職者が増加しておりまして、これは景気の停滞を反映しているものというふうに認識いたしております。
#92
○大脇雅子君 アメリカなんかは非常に不況のときはサービス業がそれを吸収してきたというような状況があると聞いているわけですが、日本ではもうサービス業自体もかなり膨れているということになりますと、先回も失業なき労働移動という労働省の政策にどういうシミュレーションがあるかとお尋ねをした場合に、全くまだわからない、やってみなければわからないというような御回答のような気がしたんです。
 こうした失業なき労働移動の先、その先の企業というか業種というか、そういうものはどういうところにあると労働省はお考えなのか。積極的に打って出る求人の開拓と言われた場合に、どの分野に雇用の創出を期待しておられるのでしょうか。
#93
○国務大臣(伊吹文明君) 具体的な細かな数字については政府委員から御説明をさせますが、大脇委員よく御承知のとおり、新しい雇用というのは規制緩和とそれから技術の研究開発、こういうところから新産業の芽が出てくるわけでございます。
 これは労働省というよりも政府として経済構造の変革と創造のための行動計画というものをつくっておりまして、この中の見通しによれば、まずこれから一番雇用の受け手として出てくるのは医療と福祉の分野、それから生活文化ということになりましょうか。例えば図書館だとか文化的な、先ほども御質問のあった余暇をどう使っていくかというような分野、それから情報通信あるいは流通、物流、こういうところではないかと思っております。
#94
○大脇雅子君 最近、規制緩和が雇用を創出すると言われていたんですけれども、新聞の見出しにも「失速する規制緩和」というような形で、財政改革か景気対策かという国の根本的な政策の言ってみれば分かれ道のようなところで、果たしてどのように雇用の創出ができるのかということが心配されるわけです。
 大臣は信用不安の連鎖がさまざまな不安を引き起こしているというふうに言われましたが、個人消費の冷え込みの主たる要因はこの雇用不安にあるというようなことが最近言われております。これまで雇用不安ということは終身雇用の中ではなかったわけでありまして、雇用不安を組み込んでいない経済政策ということにも批判がありまして、雇用問題は最大の経済問題だと言われているわけです。
 大臣の所信表明の中でも、こうした経済構造改革の中で「雇用政策面でもしっかりとした備えをすることが必要」であるというふうに言っておられましたが、この「備え」というのはどういうことをお考えなのか、伺いたいと思います。
#95
○国務大臣(伊吹文明君) 経済構造改革の中で、労働分野においても、これは午前中もいろいろ御審議がございましたが、例外ではない。例外ではないけれども、人というものが主体であるだけに、その基本的なところに対しては全く市場原理に任せるのじゃなくて、ある程度の備えをしておかねばならない。
 例えば、裁量労働制という、ある意味での護送船団方式ではない働き方を導入する場合には、普通のものであれば、これは裁量労働制を入れればそれで済みだと思いますが、労働の場合にはやはり職場の労使を代表する人たちの全会一致の合意というものがなければ入れられないとか、派遣を全く自由化してしまえば、物の場合はその規制緩和で終わりだろうと思いますが、労働という人を扱っている限りは、派遣会社において少なくともその人の労働条件が悪くならないような社会保障面の配慮を今以上にしっかりとしてもらわねば困るとか、そういうことだろうと思います。
#96
○大脇雅子君 中小企業の黒字倒産が社会問題化しているわけですが、中小企業に働く労働者の雇用不安というものを払拭するのにはどんな手だてをお考えでしょうか。
#97
○国務大臣(伊吹文明君) これも実は一番最初の大脇委員の御質問に対するお答えを繰り返すことになろうかと思いますが、貸し渋り現象というのはやはり一番弱いところから直撃をしていくと考えるのが普通だろうと思います。
 したがって、まさに今おっしゃいましたように、黒字であっても月末の資金繰りがつかないという倒産を回避するためには、金融二法を通していただいたので、これを迅速かつ積極的に金融機関が受け入れてくれて、そして国内業務であれば四分の百ですから注入資金の二十五倍、国際業務をやっておるところは八%ですから八分の百の十二・五倍の融資を実行してくれるということが私は最大の解決方法だと思っております。
#98
○大脇雅子君 雇用の創出というものが即座にできるということはなかなか難しいわけですが、その場合やはり雇用の確保ということになりますと、労働時間の短縮とか残業規制の強化ということで、労働者のジョブシェアリングのような形の雇用の確保ということが必要だと思うんですけれども、そういう政策については労働省はどのような見通しをお持ちなんでしょうか。
#99
○国務大臣(伊吹文明君) 労働時間の短縮というのは市場原理の許す範囲内で、つまり賃金を下げずにできる範囲内でやっていくというのが基本であって、フランスでもそういうことがよく言われますけれども、仕事の量が少ないので、その少ないものをみんなで分かち合って食べようよという形の時間短縮は私は余り賛成ではありません。
#100
○大脇雅子君 もう一つ雇用対策の重要な柱として、労働者個々人の積極的なスキルアップがあると思います。職業能力開発促進法によって職業能力開発短期大学校が四年制大学に昇格するなど、具体的な構想があったわけですが、この実施やその効果、今後のスケジュールはどうなっているでしょうか。
#101
○政府委員(山中秀樹君) さきの国会で改正していただきました職業能力開発促進法に基づきまして、現在の職業能力開発短期大学校を改組いたしまして職業能力開発大学校とするということで公共職業訓練の高度化を図っていく、こういうことでございます。具体的には、現在あります職業訓練指導員の養成を行います神奈川県にあります職業能力開発大学校と、現在東京にあります東京職業能力開発短期大学校をまず統合いたしまして指導員の養成やあるいは先導的な高度な職業訓練の実施、あるいは調査研究等々の業務を総合的に行う職業能力開発総合大学校を平成十一年度に設置することといたして、今そういう構想でございます。
 また、全国にあります雇用促進事業団の短期大学校をブロックごとに分けまして、十の職業能力開発大学校に再編整備をいたしたいと思います。
 この法律の施行が十一年度以降でございますので、それ以降三年計画で大学校に改組、再編整備していきたいというふうに思っております。このため、平成十年度につきましては、先ほど申し上げました総合大学校あるいは十一年度について三つの職業能力開発大学校の設置に向けての設備等の経費を六十一億円余でございますが、それを予算計上させていただいているところでございます。
 以上でございます。
#102
○大脇雅子君 ぜひその具体的な構想を展開されまして、性差なき職業教育ということを基本原則に、我が国の人的資源のキャリアアップ化を図っていただきたいと思います。
 一方で失業がふえる中で、不安定雇用労働者問題が大きな社会問題となっております。このところ、テレビでも派遣労働者のうち男性の派遣労働者が急増している、若年や高齢者の失業者が派遣労働に参入をしているということになっておりますが、派遣労働者の現状はどうなっているのでしょうか。また、職種ごとについてはどのような変化があるでしょうか。また、業界の売り上げの推移についてはどうなっているでしょうか。
#103
○政府委員(征矢紀臣君) 平成八年度労働者派遣事業報告結果によりますと、派遣労働者数は約七十二万人となっており、前年度に比べて一八%の伸びとなっております。
 これを業務別に見ますと、事務用機器操作、ファイリング、財務処理の業務における派遣労働者数が多くなっております。
 いずれにつきましても、現在この調査は男女別の調査をいたしておりませんので、男性の派遣労働者がどういう傾向にあるか、そういう点については把握いたしておりません。
 なお、平成九年度に実施いたしました労働者派遣事業に係る実態調査結果、これは別の調査でございますが、それによりますと、派遣労働者の約二七%が男性であるという結果になっております。
 労働者派遣事業全体の売上高でございますが、先ほどの事業報告結果によれば、平成四年度以降対前年度比減となっておりましたが、平成七年度に増加に転じまして、平成八年度におきましては約一兆二千億円となっております。
#104
○大脇雅子君 そうすると、二七%の男性の参入とか、あるいは事務とか財務等に対する増加幅が大きいというようなことは、結学派遣労働に対する需給両方の動向をどうとらえたらいいんでしょうか。
#105
○政府委員(征矢紀臣君) 事由につきまして統計的な状況を把握しておりませんので確定的には申し上げられませんが、いずれにいたしましても、こういう業務について需給両面におきます増加が背景にあって、結果としてこういう業務について派遣労働者数が多くなっているというふうに考えております。
#106
○大脇雅子君 橋本内閣は景気対策として派遣労働者のネガティブリスト化などを挙げておられるわけですけれども、景気対策の面から見て労働省はこれを試算されたことはありますか。景気にどの程度影響するのかとかいうことはどこでやっておられるんでしょうか。
#107
○政府委員(征矢紀臣君) 結果といたしまして、先ほど申し上げましたように売上高が増加はいたしておりますが、これを景気対策としてどの程度の影響があるかというようなことにつきまして労働省として試算したものはございません。
 ただ、経済構造の変革と創造のための行動計画ということで、二〇一〇年までの推計をしたものにおきまして、先ほど大臣から医療・福祉、生活文化等のお話がございましたが、この中で分野別増加数として五万人という推計はいたしております。
#108
○大脇雅子君 規制緩和の中での大きい課題がこの派遣労働であり有料職業紹介であるわけです。それに関してILO百八十一号条約というものがあるんですが、これの批准ということに対して我が国はどのように取り組んでいくべきとお考えでしょうか。
#109
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘のILO第百八十一号条約は、昨年のILO総会で採択された民間職業紹介所に関する条約でございます。
 民間職業紹介所と申しますのは、従来の家政婦、看護婦さん等々の紹介所あるいは人材派遣会社あるいは雇用情報提供会社、この三つが入るわけでございます。これに関する国際労働基準ということでございますが、これにつきましては、我が国におきましては政労使いずれも賛成、各国も多数の賛成により採択されておりまして、そういう意味では、先生御指摘のようにこの批准につきましては大変重要な喫緊の課題であるというふうに考えております。
 そういう視点から、今回の労働者派遣事業制度の見直しにつきましても、私どもとしてはこのILO第百八十一号条約を踏まえて関係審議会で現在御検討いただいているところであります。
#110
○大脇雅子君 そうしますと、非常に重要な条約で喫緊の課題だということになりますと、批准を具体的に考えていらっしゃるのでしょうか、それは大体いつなんでしょうか。そして、ILO百八十一号条約の批准に関しまして、国内法整備の課題はどんなものがあるのでしょうか。
#111
○政府委員(征矢紀臣君) 政府といたしましては、今言ったような経過を踏まえましてこのILO第百八十一号条約については早期に批准すべきということで閣議決定もいたしておるところでございます。
 その対応といたしましては、これは二つありまして、一つは現在の労働者派遣事業法の見直しをいたすことが必要でございます。ILO百八十一号条約との関係の見直し。もう一つ、職業安定法、これは民間の職業紹介の関係も含まれておるわけでございます。この職業安定法の改正も必要になります。
 したがいまして、私どもとしては、この二つの法律の改正を検討し、その上であわせで条約批准をするというスケジュールで考えてまいりたいというふうに思っております。
#112
○大脇雅子君 そうしますと、労働者派遣法の見直しと職安法の改正というのは、具体的にどういう点を労働省としては検討されるのでしょうか。
#113
○政府委員(征矢紀臣君) 具体的な中身につきましては三者構成の中央職業安定審議会において現在御検討をいただいているところでございますが、ILO百八十一号条約との関係で特に論点として考えられますのは、一つは対象業務の範囲でございます。
 これがILO条約の二条によりまして、いわゆるネガティブリスト方式でございます。経済活動、労働者全般に適用しまして、主たる労使団体と協議した上、外す分野を決める、こういう枠組みになっております。そういう点。
 それから、先ほど笹野先生から御質問ございましたああいう事件、民間業者の守秘義務の問題、これにつきましても百八十一号条約で規定されておりまして、現在の労働者派遣法ではその規定がございません。したがって、そういう労働者保護という観点から整備をする必要がございます。
 それからもう一点は、苦情処理の問題につきまして、派遣元、派遣先、派遣労働者、この三者の関係について、従来の労働関係と違うわけですから、そういう観点から苦情処理の問題が非常に重要でございますが、この苦情処理に関する仕組み、これについても検討する必要があるというふうに考えております。
#114
○大脇雅子君 職安法の改正は。
#115
○政府委員(征矢紀臣君) 職業安定法につきましては、まだ具体的にそこまでは検討いたしておりませんが、今申し上げたようなところが関連してくる、そういう面があるのではないかというふうに考えております。
 守秘義務等については一部規定がございますが、それで十分かどうかという問題もあろうと思います。
#116
○大脇雅子君 もう一つの不安定雇用労働者の問題として、パート労働者の問題があります。パート労働者の現状について、労働省はどのような認識をお持ちなのでしょうか。
 とりわけ、パート労働者の均等処遇の実現に関する問題については、通常の労働者との均衡を考慮して労働条件を確保するという指針ないしは本法があるわけですけれども、そういった均衡ないしは均等の物差しをつくるための研究会が始められると聞いております。この通常の労働者とパートタイム労働者の均等処遇の原則をめぐってどのような議論があり、研究会はどのようなタイムスケジュールで行われるのか、今後のスケジュールについてお尋ねしたいと思います。
#117
○政府委員(太田芳枝君) パートタイム労働者の現状でございますけれども、パートタイム労働者は増加傾向にございまして、平成九年で千百十四万人、雇用者の二割強を占めるに至っているわけでございます。その勤続年数も延びておりますし、また就業分野につきましても専門的、技術的分野等へも進出が見られまして、多様化が非常に進んでいるというふうに認識をしているわけでございます。
 また、パート法の施行状況について申し上げますと、労働条件明示の手続面は進展してきておりますけれども、昨今の景気の影響もありまして、賃金面を中心に雇用管理の改善度合いは足踏み状態にあるというふうに認識をしているわけでございます。
 先生御指摘の均等処遇の問題でございますが、これは現行のパートタイム労働法及び指針に沿ってこれまでも事業主に対し通常の労働者との均衡を考慮するよう働きかけてきたわけでございますが、先般、ことしの二月でございますが、女性少年問題審議会から出されました建議におきまして、この均衡の問題も含めましてパートタイム労働対策のあり方全般にわたって御検討をいただいたものでございますが、労働省といたしましては本建議を踏まえまして適切に対処していきたいというふうに考えております。
 先生御指摘の通常の労働者との均衡を考慮した処遇、労働条件の確保という問題につきましては、均衡を考慮するための労使の物差しづくりのためには、これは極めて技術的、専門的な問題でもございますので、検討の場を設置することとしたいというふうに考えてまいりまして、今後速やかに具体的な手順、進め方を詰めてまいりたいというふうに考えております。
#118
○大脇雅子君 先回、短時間労働者の雇用管理に関する法律の三年の見直しというのは、主として通常の労働者とそれからパートタイム労働者の均衡の労働条件等、具体的なそういう作業を踏まえての法改正ということを念頭に置いたものであったわけですが、それがまた三年の見直しに当たってそれを見送られたということは、私どもとしては残念だなと思っておりますので、でき得る限り早期に検討の場を設置されまして、いわゆる物差しづくりというものをぜひ早急にやっていただきたいと思います。
 次に、セクシュアルハラスメントの指針が出たわけですが、その中で一般的に批判が出ておりますのが、職場の延長線上の宴会などにおけるセクシュアルハラスメントは対象外になるような形で決められている。日本の宴会文化といいますとおかしいんですが、そういったものの中で、判例の多くも職場の外におけるセクシュアルハラスメント、上司の権力関係の行使としての女性に対するセクシュアルハラスメントというものにやはり大きな問題を提起していると思うんですが、この点についてどういう議論がなされたのか、そしてどうしてそのような形に仕切られたのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
#119
○政府委員(太田芳枝君) 今回の均等法の規定は先生御承知のとおりでございます。均等法にセクシュアルハラスメントの規定が盛り込まれたわけでございますが、この規定は、事業主が職場において行われるセクシュアルハラスメントについて雇用管理上必要な配慮をしなければならないという規定を置いたわけでございます。そしてその規定に基づいて、労働大臣は、事業主が配慮すべき事項についての指針を定めるという規定でございまして、その観点で指針がつくられたわけでございます。
 その指針につきまして、ちょっと長くなりますが説明をさせていただきたいと思うわけでございます。職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のための事業主の配慮ということで、女性少年問題審議会から指針案についておおむね妥当という御答申をいただいたわけでございます。
 その指針案は、事業主に対して、いわゆるセクシュアルハラスメントに対する企業の方針を明確化しなさい、そしてその周知啓発を一般内容とするいわゆる一般防止対策をするということ、それから、相談、苦情への対応による未然防止、セクシュアルハラスメントは起こらないということが一番よろしいわけでございますので、未然防止対策をするということ、そしてまた、起こった場合には、再発を防止する観点から事後の適切迅速な対応をするという三点を配慮するというような指針をつくるということの答申をいただいたわけでございます。今後は、できるだけ速やかに指針を告示いたしますとともに、平成十一年の四月の施行までにあらゆる機会を通じてこの指針の周知徹底を図ってまいりたいと思うわけでございます。
 そして、先生御指摘のセクシュアルハラスメントの行われた場所が職場に該当するか否かにつきましては、やはり一般的に職務との関連性とか参加が強制的であるかどうかということによって判断されると思うわけでございまして、実質的に職場の延長線上のものであれば、例えば宴席のものであっても男女雇用機会均等法上の職場に該当するというふうに考えておるわけでございます。
 また、実際に職場に該当するかどうか微妙な場合でありましても、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止する観点から、やはり事業主は相談、苦情にちゃんと対応するというようなことで一定の配慮をする必要があるというふうに考えております。
#120
○大脇雅子君 「職場において」という本文が場所的な範囲に限定することなく、職務との関連で権力関係の延長線上にある限りセクシュアルハラスメント規制の対象になるんだということは、どうか通達なり通知なりの啓発をなさるときにしっかりとお書きいただきたいと思います。現場の女性たちには、その点について労働省が限定的な解釈運用をするのではないかという批判がありますので、その点ぜひ留意をしていただきたいというふうに思います。
 それから、時間が余りございませんが、このところ自殺過労死というのが非常に大きな問題になっておりまして、労災認定要件を緩和したと聞いておりますけれども、自殺過労死事件で認定されたようなケースは何件ぐらいあって、将来どのように対応されるのか、お尋ねをしたいと思います。
#121
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘ございました業務上の理由に基づきます精神上の問題による自殺の事案でございますが、昭和五十八年度以降平成九年末までで労災の補償の対象として認定した件数は六件でございます。ただ、平成八年、九年になりましてそれぞれ対象が二件ずつあるというふうに、申請件数ともどもやや増加傾向にあることは事実でございます。
 こうした業務上の原因に基づきます精神上の問題による自殺につきましては、心の問題だけに、業務による起因性の判断が大変難しいわけでございまして、私ども目下労働本省に事案を上げさせまして、精神科等を含む専門家の方と相談して判断する、こういうことをいたしております。
 ただ、先ほど申し上げましたように、申請件数がやや増加傾向にあるわけでございまして、そういった方式は迅速さという点では問題があるわけでございまして、私ども専門家の方に集まっていただきまして、第一線機関で迅速かつ適切に対応するためには、こうした問題に着目した事実関係の押さえ方、あるいは業務起因性等を判断していく際の重要なポイント、そういった判断のよりどころとなるものを何らかの形でつくれないかということで検討に着手したところでございます。お時間をもう少しちょうだいしながら検討を煮詰めていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
#122
○大脇雅子君 過労死が国際用語になって、次に自殺過労死がまた国際用語になるということにならないように、ぜひ早急にガイドラインなどをつくられまして予防を完全にしていただきたいと思います。
 私は、新しい時代の労働法政策というものは、見直すべきもの、廃止をしないでしっかりと守っていくもの、そして新しい時代の要請で組みかえていくもの、そしてまた新しい領域で規制をつくっていくもの、規制緩和の中での労働法政策というものは非常に重要なものだと考えております。
 最後に、労働大臣に規制緩和下における労働法政策についてのお考えを伺いまして終わらせていただきます。
#123
○国務大臣(伊吹文明君) 先般来お答えを申し上げておりますように、労働というのも経済活動の一番大切な要素の一つでありまして、これに関する法制も経済活動とは無関係であるということは私は言えないと思います。
 したがって、時代とともに、また働く人が豊かになったがゆえにいろいろな働き方を希望されるための道を開いていくというのが我々法律を預かっている者の責任であると思いますが、同時に物ではない人手の問題であるだけに、基本的なところだけは市場原理の結果が必ずしも万能でないということを常に念頭に置きながら私は対応したいと思っております。
#124
○大脇雅子君 ありがとうございました。終わります。
#125
○堂本暁子君 新党さきがけの堂本暁子でございます。この委員会で初めて労働問題について質問させていただくことになります。
 大臣は、所信の中で障害者の問題に触れておられました。きょうは障害者、中でも精神障害者の問題について伺いたいと思っております。「障害者の方々の能力と適性に応じた雇用の場が確保されるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな施策を総合的に推進してまいります。」というのが大臣の御決意かと存じます。
 昭和三十五年に制定された障害者雇用促進法のたび重なる改正に基づいて障害者の雇用は進んでいるというふうに認識しておりますが、おくれているのが精神障害者の雇用対策ではないかというふうに私は長らく思ってまいりました。去年、百四十回通常国会でも障害者雇用促進法の改正が行われて、精神薄弱者を障害者雇用率に含むことになりましたけれども、そういった意味では身体障害者と精神薄弱者については同じ土俵にのったということが言えます。ノーマライゼーションの進展と申しますか、その観点から歓迎すべきことだと思っております。
 しかし、精神障害者については障害者雇用率には含まれておりません。その雇用対策がおくれていると言わざるを得ないのですけれども、大臣は精神障害者の雇用対策について、まずどのようにお考えになっていらっしゃるか伺いたいと存じます。
#126
○国務大臣(伊吹文明君) 実は、私自身精神障害を持っておられる親の会、またその家族の会のお世話を個人的にさせていただいておりますので、今先生に御質問していただいたことについては大変ありがたいことだと思っております。
 非常に難しいのは、まず精神障害者と言われる方々は、身体障害者や知的障害者の方々に比べまして障害が出るときと、そうじゃない、全くわからないときとがあるというのが、御承知のように大部分の障害者の方たち。御家族の方も、そういう事情もありますので、できるだけそれを表に出したくないというお気持ちが一方にございます。
 そして、精神障害という方々の具体的な範囲がどこまでなのかということが非常に難しいことでありますし、それから雇用管理の面で、常に障害が継続的に表に出ているわけではありませんので、私どもボランティア活動として就職のお世話をしておるんですが、お願いに行く際にやっぱり一番難しいのはこの分野でございます。
 そこで、これは医学的な医師の判断にもよるわけでございますが、医師もまた的確な判断をしていただきませんと、先生御承知かもわかりませんが、医師の判断で大丈夫だと言った方々で傷害事件が起こった、殺人事件が起こったという事案もかつてございました。我々の大先輩が刺殺されたというようなことも実はあったわけでございまして、そういう偏見を取り除いて、そして医学の判断によって社会的に参加をしてもらえる道をできるだけ私は職安を通じてお願いしていきたいと思っております。
#127
○堂本暁子君 大臣が今最後におっしゃいました障害者ゆえに事件が起きたという御発言、確かに事件が起きないわけではありませんけれども、精神障害者の方が事件を起こす割合というのは健常者より本当にはるかに少ないパーセンテージ。結局、障害を持つ方の方がどちらかといえば弱い方の方が多うございます。ですから、障害を持っている、精神病院に入っていたということが書かれれば、あたかもすべてそこに原因があるように世の中では言われがちです。しかし、実際に実態や数字を見てみますと、精神病院に入っていな人が強盗殺人とか傷害事件を起こしているかといえば、それははるかに少ないパーセンテージだということを申し上げなければならないと思います。
 そして、実際に日本では入院している数が今非常に多うございまして、三十三万人が精神病院に入院しています。イギリスで五万人ぐらいです。刑務所もイギリスは五万人、日本は五万人ぐらいで同じだというのに、この三十三万人というのは異常に多い数だと言うことができます。それは帰る先がない、あるいは職業がない、ほかに居場所がないというようなことも多くあると思います。厚生省の方では、二十年とか三十年というような入院ではなくてできるだけ短期の入院にしようということで大変な努力をしていらっしゃいますけれども、必要なのは受け皿としての労働の場だというふうに認識しております。
 そこで、次に伺いたいのは、そういった状況の中で、精神障害者向けの職場の適応訓練が実施されたのが昭和六十一年、それから助成金の対象となったのは何と平成四年からです。
 かつて労働省は、ILOの書類の中で、ディスエーブルの前にメンタリー・アンド・フィジカリーという言葉があった中で、フィジカリーしか訳していない。したがって、日本の障害者政策というのは身体障害者だけでずっと戦後やってきたということがございますから、車の両輪のうちの片方だけ、心身を分けることはできないはずなのですが、体の障害の方だけに労働政策がとられてきたという、これはもう否めない現実だというふうに思わなければなりませんし、そのおくれを取り戻すためにはどうしたらいいかというのがもう緊急の課題だというふうに思います。
 そこで、平成四年からやっと助成金の対象になった、余りにも遅い、余りにも差別をし過ぎてきた。この五十年の差別は一体何だったのかというふうに労働政策の側からは思っていただきたいというふうに私は思っております。
 平成八年の身体障害者雇用納付金制度に基づく助成金等の支給割合というのをここに持っていますけれども、支給総額は百二十二億五千三百万円、そのうち精神障害回復者に支給されている額は二億六百万円、支給総額の中に占める精神障害回復者等の割合で申しますと一・六九%です。人数の上で言うと、これは参議院の労働委員会調査室がつくった資料で見ているのですが、身体障害者が二百七十二万人、そして精神障害者が百五十七万人。この割合からいってわずか一・六九%というのは余りにも少ないのではないかというふうに思います。
 障害者雇用促進法の三条の四には、公共職業安定所は、障害者に適応した職業指導などを実施することが明記されています。そのうち安定所に登録している精神障害者の数は何人ぐらいなのか。また精神障害者のいる事業所数、それから労働者数はどのぐらいなのかということを労働省からお答えいただけますでしょうか。
#128
○政府委員(中野秀世君) 公共職業安定所におきましては、精神障害者の方がその能力に適合する職業につくことができるよう、その特性に配慮しつつ適性検査の実施だとかあるいは雇用情報の提供、職業指導等、必要な措置を講じることとされてございます。
 公共職業安定所におきましては、職業指導等、実施した実績を求職登録しておりました有効求職者数で見ますと、平成九年三月末の障害者の方の有効求職者数は九万五千五百十五人でございましたが、そのうち本人の申し出によりまして精神障害者として把握しております有効求職者の数は四千六百二十六人となってございます。また、平成八年度の障害者の就職件数は二万八千二百十六人でございますが、そのうち精神障害者の方の就職件数は千四百十一人となっております。
 また、精神障害者の雇用等の状況につきましては、プライバシーの問題等もございまして明確な把握は困難ではございますが、労働省におきまして平成五年度に行いました身体障害者等雇用実態調査によりますと、従業員規模五人以上の事業所で雇用されている精神障害者の方、精神分裂病、躁うつ病、てんかんの方でございますが、この方たちの総数は約二万三千人というふうになってございます。
 なお、精神障害者の方を雇用している事業所数につきましては、平成五年度の統計調査においては把握してございません。
#129
○堂本暁子君 今の御答弁によりましても、わずか二万人と、百五十七万人という数の中の二万人というのは余りにも少ないです。
 今、大臣は雇用しにくいだろうと、急性期のことをおっしゃったんだと思います、ぐあいの悪いときとそうじゃないときとがあると。しかし、それは分裂症の方でも本当に安定した状態、収入があって愛情のある中では急性期に陥っていくことが少ないんだろうと思うんです。外国なんかでは、アメリカなんかではもう本当に重病の方でも、重篤の方でも職業についている。なぜ我が日本国だけがここまで差別されるのかというその根本的なところをやはり労働省として私は考えていただきたい。
 呉秀三さんというドイツに学んだ精神科のドクターがおられます。かつての東京帝国大学に初めて医学部に精神科ができたときの最初の教授ですが、その人が、この病を得たる不幸のほかにこの国に生まれたるの不幸という言い方をしました。もう百年近く前のことですけれども、その状況が今のお答えを見ても一つも変わっていない。
 アメリカの弁護士がこういう表現をしました。日本がどんなにすばらしい技術を開発し、どんなに世界で経済的な一等国になろうとも、もし精神障害者の尊厳がきちんと保たれていなければ私たちは日本という国を尊敬することができない。最も日本で差別されているのは、外国人も差別されているかもしれません、身体障害の方も差別されていないとは申しませんが、精神障害ほどこの国で病を得たるときに不幸になるということはないんだと思うんです。
 それはなぜそういうことになるのかと言えば、職業が得られないという不幸です。現実に私はニューヨークにどういう状況か調べに行ったことがありますけれども、ニューヨーク市の場合は相当重篤な方でも、精神病院から出てきたらば市が雇用するためにきちっとアパートを、それこそどこでも、精神病院というレッテルを張られた一つのところではなくて、ニューヨーク市の中に五十ぐらいの部屋を借りているわけです。
 そこに入って、そしてカウンセラーでもなければ医者でもない人、それが美容師だったり学生だったり絵かきさんだったり、そういう人たちが一人ずつの患者さんに毎日電話をかけるんです。きょうは御飯を食べましたか、薬は飲みましたか、ぐあいはどうですかというように。仕事も、最初は二時間の仕事を探してあげる。それを半日の仕事にする。一年かけ二年かけしてフルタイムの仕事について、そしてそういうところから離れて社会復帰するプロセスがあるわけなんです。
 日本はもう最初から、今大臣がおっしゃったことでも、決して大臣を批判して申し上げるのではありませんけれども、大臣はほかの方から比べればはるかにそういったことで御認識が深いように思いますけれども、なおかつこういう人たちはというふうに、私自身を含めてとかく私ども日本人は思いがちなんだと思います。一たん自分が逆の側に立った場合に、全然違った状況に追い込まれる。まるで日本人扱いされないような状況が待っている。
 実際に、そういう方たちに私は随分会って歩いたんですが、最初に言われたことが、もっと人間らしく生きたい、人間がそう言うんです。やはりそういったような人間扱いをされないという状況は、アメリカがやっているような、ニューヨーク市がやっているような、そういう丁寧な労働の場に復帰させるための施策を、残念ながら日本はやってこなかったんだと思わざるを得ません。
 ケネディは二万人も入っていた大病院をオープンにしてしまいました。今でもニューヨークへ行くと、まるでアンコールワットの遺跡のようにして精神病院は建っています。建物はありますけれども、中に入っている患者さんは数百人というけたです。それは、むしろドクターたちが町に出ていき、そしてそのような形で職業への復帰を本当に工夫しているんです。
 ですから、実際に八時間労働をすることは大変に苦しいとしたら、やはり二時間の労働とか三時間の労働とか。そして作業所も結構今できてきています、東京でも。そういった共同作業所で仕事を覚えるということも一つ大事かと思います。しかし、日本は今申し上げた精神障害回復者に対しての占める額がわずか一・六九%、政策の貧困としか言いようがないのではないかというふうに思います。
 ましてをや、これだけ不景気になってまいりますと、障害者の方たち、特に精神障害者を含めて非常に雇用が難しくなってくるのではないかというふうに思うんですけれども、労働省として精神障害者を雇用する企業に対して公的な業務の発注、例えばお掃除、それからメーリング・サービスなど、そういう単純作業もできましょう。中には大学院を出られた非常に有能な方もいっぱいいらっしゃいます。状況さえよければ仕事ができる方もいらっしゃいます。関係省庁と連携をとりながら、公的なところでできるだけ仕事をつくっていくということも考えられると思いますが、これはいかがでしょうか。
#130
○国務大臣(伊吹文明君) 具体的な数字あるいは施策等については後ほど政府委員からお答えをさせますが、まず先生、ひとつ誤解のないように私申し上げておきたいんですが、私が先ほど例に引きました丹羽兵助先生がお亡くなりになった場合のことは、障害者の方が悪いんではなくて、そのような状態の方を病院経営者が経営の観点から野方図にしたということに当時問題があったわけです。したがって、実は私はそういう観点から申し上げているわけです。
 そして、今、先生がるるお話しになったことと、私も全家連という精神障害者の方々の家族の団体のお世話をしている一員として、常に同じことを申し上げているわけです。それは、労働省としても私どもは最善を尽くしますが、しかしこれはあくまで日本社会の中で人を雇うという関係でございますから、それは労働省だけの何というか、政策の貧困と言われるとやや私はつらいという気がして、日本人全体に意識を、今先生がおっしゃったように経営者も持っていただくし、またマスコミも持っていただくし、そういう状況の中から私は今おっしゃったような方向が出ていくのがすばらしいことだと思いますので、私も全く同じ考えを持っている者として、政治家として努力はさせていただきます。
 そして、なぜこういうことを申し上げるかというと、かつて身体障害者や知的障害の方にあった交通機関の割引制度、精神障害者の方に拡大しようと思って実は私は一生懸命やったことがあるんです。そのときに本人確認のカードというのが要るんです。しかし、団体の方のむしろ反対があって、団体の方のやや消極的な姿勢があってうまく当初いかなかった。しかし、これは団体が悪いんじゃなくて、なぜ団体がそれを隠そうとなさるのかというまさに社会意識のところに問題があるわけです。
 きょう建設的な御質問をいただいたということは、私も同じような仕事をやっている者として大変感謝をしております。同じ認識を持った上で私どもは受け答えをしているということだけは誤解のないようにしていただきたいと思います。
#131
○堂本暁子君 大臣のおっしゃることはよくわかるつもりでおりますけれども、ただ国としての少なくともコンセンサスがない。
 それから、ディスエーブルの翻訳をするときにそれがミステークだったのか意図的なものだったか、もう今となっては知る由もないのですけれども、いずれにしても、それを五十年間放置してきたということは、国としてそういった最も差別されている人を大事にしようという意思決定がこの国の政府なり国会なり国民全部の総意でなされてきていないということが問題であって、一番弱い人を救えない国は、さつきのように、桜がどんなに美しくてもどんなに経済的に発達してもその国は尊敬できないと言われるのはそういう意味だと思うんです。そのことを恥じて、やはり労働政策が一番今私は大事だと思っています。
 精神衛生法から保健法に変わり、厚生省は本当に変わってまいりました。五年ごとの見直しで変わってきたということが言えます。あとは受け皿が労働の場なんです。ニューヨークの場合、表札一つかかっていないわけです、わからないようになって。確かにそれはプライバシーを守っています。ですから、政策をどんどん進めるということは労働省として可能なことだろうというふうに思っています。幾何級数的な速さでここに対しての政策を進めてもいいんではないかというふうに思っております。
 平成十四年までに引き続き検討をするということが障害者雇用審議会でこれ決まっているようですけれども、その中でもっとこういった積極的なことを決めていただけたらと思います。平成十四年では私は遅いような気がいたします。もっと早くにいろいろなことが行われていいんではないかというふうに思いますので、その点のお考えを伺って、次にNPOの方に行きたいと思います。
#132
○政府委員(中野秀世君) 精神障害者の方の雇用の促進、職場の受け入れを進めていくためには、先ほど大臣の答弁にもありましたように、やはり精神障害者の方の範囲だとか実態を明らかにすること、あるいは適切な雇用管理をどういうふうに考えていくか、あるいは国民一般の方々の理解というものをいかに進めていくか、またそういった理解を進めるための周知啓発をどのように進めていくか、幅広い観点から考えていく必要があろうかと思います。
 と同時に、先ほど来申し上げましたように、私ども労働省といたしましても、公共職業安定所におきまして、精神障害者の方の場合はその程度だとかその病気の範囲、そういったものがそれぞれ異なるということもございますので、そういった特性に十分配慮しつつ、職業の評価だとかあるいは雇用情報の提供、職業指導というものを進めていくことが基本的に大事と考えております。
 と同時に、先ほど来先生の方から御指摘のございましたように、雇用の促進の観点からは、いわゆる特定求職者雇用開発助成金の活用だとか、確かに一・六九%という御指摘もございましたが、こういうような雇用納付金制度に基づきます助成金をやはり積極的に活用していただく、またそのために私どもも努力してまいるつもりでございますが、そういった各般の施策をいろいろな点で講じていくことによって少しでも精神障害者の方の雇用の促進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#133
○堂本暁子君 大臣が特に御関心がおありになるようですから、大臣の陣頭指揮でぜひ前進をさせていただきたいということをお願いして、次にNPOの質問をさせていただきます。
 大変急なお願いなのに応じていただいてありがとうございました。やっと参議院を特定非営利活動促進法案が通りまして、あとは衆議院での成立を待つのみでございます。所轄庁として経企庁は全国規模で普及宣伝をしていただきたいと思っていますが、今どのようにお考えでしょうか。
#134
○政府委員(井出亜夫君) 特定非営利活動促進法が成立した後におきましては、その適切な運用と普及定着というのが大変重要な課題となると考えております。
 この法律の運用につきましては、衆参両院で四十時間近い審議が行われました。この内容というものが極めて重要な指針とまた考えております。国会の議事録等々の配付でございますとか、所轄庁となる都道府県がこの国会での審議でございますとか経過の内容というふうなものを十分知り得るような措置をしてまいりたいと思いますし、またこの制度の普及ということにつきましても、広くこれが利用され、早期に定着するよう広報活動等々にも積極的に努めてまいりたいと思います。
#135
○堂本暁子君 あと二つ続けて伺いたいと思います。
 実際には余り所轄庁が表に出るということを望んではおりませんけれども、それでもどこの都道府県でどれだけの法人ができたのか、あるいは全国規模でどのような不都合が生じているか、あるいはどのように活用されているか、プラスマイナス両方の面、それからどのように税制の優遇措置を望んでいるかといったようなことも、三年後の見直しに向けてぜひ調査を今後も展開していただきたいと思っています。
 そのことと、次に会計原則なんですけれども、第二十七条の二号には、「会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。」とだけ規定しています。これに公益法人並みの会計原則が適用されると公認会計士の力なしにはなかなかできない、小さいNGOもたくさんあるわけですから、そういった会計の基準を法人に強要しないということを確認させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
#136
○政府委員(井出亜夫君) 私ども経済企画庁は、この法律が成立した暁には認証の業務を行う所轄庁という立場のほかに、法の円滑な運用を図っていく、そういう役割も与えられているものと考えております。
 したがいまして、今後国会におきましてこの制度等の見直しというふうなことが行われる際におきましては、私どもといたしましても、制度の実態や問題点の把握ということを行いまして、必要な資料提供というものができるように努力をしてまいりたいと思います。
 なお、その際、都道府県との関係におきましては、本事務が団体委任事務であるという性格を十分に踏まえて対応してまいりたいと考えております。
 それから、会計の基準でございますけれども、この法律の趣旨あるいは法案審議の経過というふうなものを踏まえながら、他の法令や一般的な用語の使用法というふうなものに照らしまして適切に運用してまいることを考えておりますけれども、会計原則につきましては、法律の二十七条の一号から四号までにその基本的な原則というものが明らかにされておりますので、その原則に沿っていれば、これを何か一律的に一つのものに当てはめるというふうなことではなく、法律上認められているものというふうに考えております。
#137
○堂本暁子君 ありがとうございました。終わります。
#138
○吉川春子君 労働大臣がその所信におきまして、国際的大競争時代を生き抜くには経済構造改革を推進し経済活力を維持しなければならない、その場合、経済活動の一方の担い手である労働者がその能力を十分に発揮し経済社会を支えることができるよう労働条件や労働環境の整備を進めることが必要だとされて、労働者には健康で安心して働ける労働環境を選び得る道を開くため労基法の改正案を提出したとおっしゃいました。
 その内容は、裁量労働制の対象範囲拡大、変形労働時間制の要件緩和など、規制緩和は善との考えを労働法規にまで及ぼすもので、労働組合の潮流を超えて激しい非難の声が巻き起こっております。私はこの問題については別途質問をして追及していきたいと考えております。現行の変形労働時間制についてさえ要件が守られていないのに、これを緩和したら一体どういうことになるのか暗たんたる思いがするわけです。
 そこで、伺います。
 JRは一カ月単位の変形労働時間制を採用しておりますけれども、これを悪用して、勤務の変更など勝手に業務の都合に合わせてその都度労働時間を追加したり、また翌日に移動させ社員を働かせてきました。JR東日本の横浜土木技術センターで働く二人の労働者が一九九四年六月二日、所轄の横浜北労基署に三十二条二違反として申告いたしました。これに対して労働省はどのような対応をとられたのか、まず具体的事例についてお伺いしたいと思います。
#139
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のありました事案でございますが、私ども承知しておりますのは、平成七年の五月に、横浜土木技術センターで働く二名の方が、一カ月の変形労働時間制のもとで規定された勤務が変更された場合の割り増し賃金の不払いについて申告があったという事案かと存じます。
 私ども、この事案につきましては、管轄の署におきまして本社担当者を含めた事実関係の確認に当たりまして、その間、本社と関係の労働組合の間でこの問題も含めた交渉が行われるような話もございましたが、結果的にそういったことまで交渉が及ばないということも判断いたしまして、上記の申告のあった割り増し賃金につきまして是正するよう勧告をいたしておる事案でございます。
 その後、このJRの方におきまして、この勧告等も受けまして、こういった一カ月の変形労働時間制での勤務の変更について労使間で交渉が持たれまして、昨年の九月に至りまして関係組合とそういった場合の改善策について交渉が妥結に至った。その結果、昨年の十一月にJRの方からその妥結に至ったところを織り込みました就業規則の変更届が出てまいりまして、その主たる内容は、今までこの一カ月の変形労働時間制についての勤務時間の勤務の変更が、単に業務上の必要がある場合にできるところが任意には変更しない、こういった趣旨が織り込まれた就業規則の変更の届け出が出てきたというふうに承っております。
#140
○吉川春子君 今、全部ストーリーを話していただきましたが、後半については後で伺いたいと思います。
 九六年二月二十七日に是正勧告をされましたね、その内容を簡単にもう一度説明してください。
#141
○政府委員(伊藤庄平君) この申告のあったお二人の方につきましては、特定の日にちを一日ずつ指定されておりますが、この日につきまして一カ月の変形労働時間制のもとであらかじめ指定されていた勤務が変更されて別の勤務時間のもとで働いたと、結果的に八時間の法定労働時間を超えた勤務があった、その分の割り増し賃金についての支払いを求めた申告でございます。
 私ども、こういったケースにつきましては従来から割り増し賃金を払うものという解釈をとっておりましたので、事実関係を確認の上、その割り増し賃金を払うように平成八年二月に支払いについての是正を指導したものでございます。
#142
○吉川春子君 一カ月単位の変形労働時間制は、一月を合計した総所定労働時間の平均が過所定労働時間におさまれば、ある日ある週は一日八時間週四十時間を超えても時間外労働とは扱われないという制度です。そして、一たん特定された後は変形期間開始後にこれを変更することはできない。使用者が業務の都合によって任意に変更されては働いている人はたまらないからです。労働省の基発一号という通達でも、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化するとしています。
 JRでは、変形期間中の所定労働日の労働時間帯は前の月の二十五日に勤務指定表として張り出され、社員もそれでわかるわけです。これと異なる勤務は所定外労働となるわけで、労働基準局の是正勧告は法に照らして当然の措置でした。JRはこの是正勧告に従わなかったわけですが、このことに対して労働省はどうされたのですか。就業規則じゃなくて、この賃金の問題についてどうされましたか。
#143
○政府委員(伊藤庄平君) この平成八年の二月に是正の勧告を出しましてから、その後JRにつきまして、本社等を含めましてこういった仕組みの改善策につきましてもあわせていろいろ指導をいたしておりました。また、この是正勧告の結果につきましても改善策の結果の報告をするようにという督促をいたしておったところでございます。
 そういったことも受けまして、このJR本社の方におきまして、これは制度全般にかかわる問題だということで関係組合と、いわば会社全体でこういった問題についての改善策を話し合うということで労使間の交渉等も持たれるに至りました。
 その交渉中に、お二人の方、別途この割り増し賃金の問題について東京地裁に提訴されたというふうに聞いております。提訴された後になりますが、平成九年の九月にこういった勤務変更をめぐるルールについての関係労働組合との改善策についての交渉が妥結して、先ほど申し上げました就業規則の変更に至ったというふうな経過をたどったものと承知しております。
#144
○吉川春子君 就業規則の問題は後半で聞きますが、要するに労働省の方が、賃金の不払いがある、これを払いなさいと是正勧告をJRにしたんだけれども、JRはこれを払わないわけです。払わないということに対して、払いなさいということを労働基準監督署としてはいろいろな方法を用いて行えるわけなんです。
 では伺いますけれども、これを払わないというのはどういう罪に当たるんですか。
#145
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほど申し上げましたように、この是正勧告につきましては、その結果を報告するようにJRの方に何回かにわたりまして督促をいたしてきております。
 また、今御質問ございましたこの割り増し賃金を払わない場合にはどうなるかという点につきましては、これは労働基準法に違反することになります。
#146
○吉川春子君 違反してどういう罪が科せられるんでしょうか。具体的に示してください。
#147
○政府委員(伊藤庄平君) ただいまのこの割り増し賃金を払わない場合の違反につきましては、労働基準法上の罰則といたしましては、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金という定めになっております。
#148
○吉川春子君 そして、労働基準監督官は刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行うことになっているのではありませんか。それをどうしてやらないんですか。
#149
○政府委員(伊藤庄平君) この申告のありました段階で事実関係を確認し、是正勧告をいたしまして、その後、その是正についての結果報告等も再三求めて是正について指導をしてきたところでございます。
 そういった形で問題を解決していくのが本筋でございますが、この罰則との関係、いわゆる司法処理をなぜしなかったのか、こういう御指摘かと存じますが、申告としてありました未払い賃金の金額、一日ずつの未払い賃金分の金額について申告があったわけでございますが、そうした金額。またその後、この変形労働時間制の運用をめぐる改善について労使で交渉等の話し合いが持たれて継続中である、そういった状況。さらには、このお二人の方が別途司法判断を求めて東京地裁に提訴されたというようなこと、そういった司法上の判断を求めている状況の中で、以上申し上げたような事実関係の中からは直ちにはこういった司法処理になじまないものという判断をいたしてきたわけでございます。
#150
○吉川春子君 それでは、先ほど来その本人が判断を求めた求めたとおっしゃっているんですが、本人たちはどういう判断を司法の場で求めたんですか。
#151
○政府委員(伊藤庄平君) お二人の方が東京地裁に提訴された、これは民事裁判として恐らく債務の履行を求めたものと思いますが、私ども本人が提訴された具体的な内容等について詳細には把握いたしておりません。
#152
○吉川春子君 それは局長、おかしいんじゃないんですか。私がなぜ司法警察官としてやらないのかと言ったら、本人たちが民事裁判を求めたからだとおっしゃった。そして、ではどういう民事裁判を求めたんですかと言ったら、それは言えない。これでは答弁になりませんよ。どういう内容を求めたんですか。
#153
○政府委員(伊藤庄平君) 提訴されたその内容につきまして、私ども提訴の内容がこの申告があったものと同じ一日ずつ分の割り増し賃金の支払いを求める訴訟であることは承知しております。
 ただ、それをめぐって御本人がどう法律上の主張をされ、またどういう事実関係を、私どもに述べたものにまたいろいろ補強されているのかもしれませんが、そういった訴えの具体的な内容については、私ども直接知る立場にないということを申し上げたわけでございます。
#154
○吉川春子君 私は裁判の内容を聞いていません。労働基準局長が刑事的な処分をしなかった理由として、二人が民事裁判を起こしたからだとおっしゃったので、では具体的にどういう裁判を起こしたのかと聞いています。そこだけでいいです。どういう裁判を起こしたから刑事上の処分はしなかったんですか。
#155
○政府委員(伊藤庄平君) 裁判を提訴したから、その理由のみをもって司法処理で対処しなかったというふうに申し上げているのではございませんで、実際求められている申告のあった割り増し賃金の金額、それからこの問題の発端となった変形労働時間制についての運用のあり方について労使間で現に交渉が持たれて継続中であるということ、さらに御本人が割り増し賃金の支払いを求めて提訴中である。こういった幾つかの状況の中で、私ども全体として目下司法処理になじまない事案として対応させていただいたということを申し上げているわけでございます。
 裁判の内容については、その御本人の詳細な主張については私ども承知する立場にございませんが、申告があった事案と同じ割り増し賃金の支払いを求めている訴訟であるということは承知いたしております。
#156
○吉川春子君 二人の労働者の訴えの内容は、Aさんは四万四千七百二十八円、Bさんは六万一千六百三十一円、所定外労働時間に対する割り増し賃金の支払いを求めたわけです。
 それで、私はJRは非常に悪質だというふうに思うわけです。といいますのは、この問題を取り上げるのは私はこの委員会で二回目なんです。九六年の四月九日に当時の永井労働大臣、松原基準局長に質問いたしました。そのとき答弁があったんですけれども、労働省はJRの変形労働時間制の悪用について何回も指導をしているとおっしゃった。そして、現場だけではなくて本社の社長に対しても指導していると松原局長は答えました。議事録を見てください。にもかかわらずこのようなことを繰り返し行って反省の色がありません。そして、労働省の行った全く法律に基づいた正しい是正勧告にも耳をかさない。つまり、行政を甘く見ていると言えませんか。私はそう言わざるを得ないと思うんです。
 それから、さらに重大なのは、原告の請求額は一人あたり数万円の単位なんですけれども、JR東日本には八万人の職員がいて、いまだに払わないんだから、日常的にこういうような時間外労働の割り増し賃金の不払いを発生させているわけです。その額は百億円に近いと言われているわけです。これを放置していいはずはないじゃありませんか。この二人は自分のある一日分についてだけ請求したんだけれども、トータルすると百億に近いという、こういう試算もあるわけなんです。私はこれは労働省が放置しておくのは大変よろしくないと思います。この上、さらにこの一年制の変形労働時間の要件緩和を行う労働基準法を今国会に出しているんですよ。今の制度さえ守られない、そういう中で違法がもっと拡大するじゃありませんか。
 当初の判断として司法処理しなかったと、それは今おっしゃったような理由からしなかったんでしょう。しかし、今のこの時期に至ってもいまだに払おうとしないこのJRに対して司法警察官である労働基準監督署が、監督官が何にもしないでいる、これは大変よくないと思うんです。大臣、いかがですか。お聞きのとおりのことなんですけれども。
#157
○国務大臣(伊吹文明君) 私は率直に言ってその事実関係をつまびらかにいたしませんが、JRが勧告に対して交渉を持たない、聞く耳を持たないということであれば、これはきちっとした司法措置をとらねばならないと思います。
 しかし、今政府委員がお答えをしておるのは、その間の交渉が持たれているということを申し上げているようでございますから、私はその結果を早く出すように政府委員を通じて先方に話をさせてみたいと思っております。
#158
○吉川春子君 局長、賃金の不払いの問題について、JRは払うというような姿勢で交渉しているんですか。就業規則の問題でしょう、おっしゃるのは。それは繰り返しこれからやるんです、そっちの時間もとっておかなきゃならないんです。賃金の不払いの問題について、JRは払うという姿勢に出ているんですか、その点だけお答えいただきたい。
#159
○政府委員(伊藤庄平君) JRの変形労働時間制の運用をめぐる問題については、確かにJRに対しまして私どもいろんな場合に、このケースだけじゃなくて指導した経緯がございます。その都度改善された事例もございますし、先ほど申し上げましたように、運用のあり方そのものをめぐって就業規則の変更等に向けて労使の交渉が行われるという形につながったものもございます。そういった是正勧告等、一連の指導の効果については、これは御理解をいただかなくてはいけないというふうに思っております。
 御指摘ございました割り増し賃金の具体的な支払いにつきましては、私ども行政判断をして是正の勧告をいたしておるわけでございますから、これについては当然行政上払うべきものということで引き続き臨んでまいります。
 先ほど申し上げましたように、東京地裁において、まさにこの点が今司法上の判断にゆだねられた形になっております。会社側も、提訴があってそれに応じていろいろ裁判所において議論を進めている段階にあるというふうに承知しておりますので、こういった司法上の判断が求められているケースと、私どもが行政判断したそれを進めていかなくちやいかぬ立場とがちょうどぶつかっている形になりますので、そこは三権分立のもとで私ども慎重に判断しながら、払うべきものについてはもちろん払ってもらわなくてはいかぬわけでございますので、そういったことを慎重に判断しながらさらに対応していきたいというふうに思っておるところでございます。
#160
○吉川春子君 民事と刑事をごちゃごちゃにおっしゃらないでください。今、労働者が提訴しているのは民事裁判。賃金債権は二年で消滅時効にかかりますので、その消滅時効にかかる直前にあの民事裁判を起こしたわけです。私が労働省に求めているのは労働基準法の百二条に基づく問題でして刑事なんです。そしてこれは消滅時効に三年でかかるんです。刑の時効、公訴の時効が三年でかかります。それがもう目前に来ているわけです。ですから、この刑事手続を早急に起こしていただきたい。
 これまで労働省は粘り強く指導してきたわけです。勧告も出してきているわけです。それでも従わない。だから、公訴時効にかかる前にぜひ司法手続を開始していただきたい。それこそが労働基準法の労働基準監督署の存在意義じゃないですか。民事上の支払わなきゃいけないという判断はもうとっくにしているのであって、それは裁判所の判断を待たなくてももうはっきりしているわけなんです。さっき労働大臣が、聞く耳を持たないようであれば対処をするとおっしゃってくださいました。そういう立場でぜひやっていただきたいと思います。
 それから、就業規則に入る前にもう一点。
 要するに、一カ所だけでやっているわけじゃなくて、八万人の職員を対象にしてこういうことをあちこちでやっているのであって、こういう違反が行われているということが指摘されているわけですから、局長、臨検を含めて、この一年の変形労働時間制の違法行為、賃金不払いがあるのかないのか、私はそういう問題について徹底的に調べていただいて報告していただきたい。その点はどうですか。
#161
○政府委員(伊藤庄平君) 先生、一年の労働時間の変形制というふうに御指摘ございましたが、これは一カ月の場合だと存じますが。
#162
○吉川春子君 ああ、一年じゃない、一カ月。間違えました。
#163
○政府委員(伊藤庄平君) 今までもJRの問題につきまして、このケース以外にも申告等は確かにございます。そういうことも受けまして、本社等に対しましても全社的に対応するように指導し、一定の就業規則の変更というような成果も出てきているわけでございますので、私ども今後、改正された就業規則等がきちんと機能して、こういった問題について申告、それを調べてみたらやはり労働基準法上問題があるというような事案に発展しないように十分留意しながら、それぞれ現地の監督署で対応をさせていきたいというふうに思っております。
#164
○吉川春子君 どうしても就業規則に話が行きますので、私はそれについてその次に質問します。
 一カ月単位の変形労働時間制に関して、労働時間の特定について労働省は解釈例規に次のように書いています。「変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週四四時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること。」。
 JRの就業規則は、改正前、その六十三条二項で、業務上必要がある場合、指定した勤務及び指定した休日等を変更するとしていましたけれども、これは労働時間の特定、解釈例規基発一号にも反することは明らかです。
#165
○政府委員(伊藤庄平君) このJRの事案で、一カ月の変形労働時間制の運用のもとになりました就業規則を見ますと、確かに、業務上の必要がある場合に割り当てた勤務の割り当てを変更できる、こういう規定がございまして、その後これが任意には変更しないという趣旨に変わってきておるわけでございます。
 問題は、私ども通達で出していますように、業務の都合によって任意に労働時間を変更することが織り込まれているような場合には、あらかじめ始業、終業時間等を特定して変形制を運用するという趣旨に合わないということの通達の観点から当然問題もあるわけでございまして、どちらかというと就業規則の文言の問題よりも運用の問題であるかもしれません。
 そういったことも踏まえながら、この問題に関連して労使間で新たな就業規則の策定ということに向けて話し合いが行われておったわけでございます。その結果につきまして一定の就業規則の改正が出てまいりましたので、今後は就業規則のきちんとした運用を通じてこういった問題が出ないように私ども期待もし、またそれぞれの所轄の署において留意をして対処していく、こういうことにいたしてまいりたいと思っております。
#166
○吉川春子君 それで、労働省の御指導によってJRも直したということなんですけれども、これは平成九年十一月十八日付で、「指定した勤務については、別に定めるとおり取扱い、任意に変更しない。」と、六十三条三項という形で直したわけです。
 それで、局長にお伺いしますが、「別に定めるとおり取扱い」というこのフレーズが入っておりますね。この「別に定めるとおり」とはどういう内容なのでしょうか、御説明ください。労働省に就業規則として届け出されていると思いますが、その内容はどういうことですか。
#167
○政府委員(伊藤庄平君) ただいま「別に定める」と。これは現地の労働基準監督署に届け出がされておるわけでございまして、私ども詳細にその文言一つ一つにつきましてあらかじめ把握をしていたわけではございませんが、この「任意に変更しない」ということを受けて、新たなルールとして会社側から出されました別紙による協定、これは就業規則というよりもどうも労使の協定という形で別に定めるところによりとなされているようでございます。勤務の割り当てを前月に決めるわけでございますが、前月の月末までに一たん決めた勤務の変更の必要性が出た場合についてのルール、またその翌月に実際変形期間開始後に変更の事由が出た場合についての変更の勤務命令を出す場合のルール、またそれぞれについてその割り増し賃金等の支払いが適切に行われるような形の部分、そういうものが織り込まれた協定というふうに承っております。
#168
○吉川春子君 「別に定めるとおり取扱い」というのを確かに労使協定で決めて、それを労働基準監督署に届けているかどうかは後で確認しますが、その内容はこういうふうになっています。「関係社員の勤務日の二日前までに、指定した勤務及び指定した休日等の変更を行うことがある。」として、次の場合を挙げているわけです。
 アが何らかの理由で欠勤が生じた場合、イが転勤、転職、昇職、降職または休職、エがダイヤ改正等業務執行体制の変更、オが臨時列車運転の必要、カは長期的警備が必要となった場合。これではあらゆる場合に二日前に勤務変更ができることになるのではありませんか。
#169
○政府委員(伊藤庄平君) 今、先生の御指摘ございました協定で、お話を聞いた限りで即断はちょっといたしかねるかと思いますが、例えばダイヤ等の変更があった場合等につきましてはかなり限られたケースになるのではなかろうかというふうに思います。また、ほかの方が有給休暇あるいは欠勤等の場合に、どうしても応援等の必要が出る場合、これは私ども有給休暇の取得促進等を進める上でも、ある程度職場の中で有給休暇がとりやすい環境、状況をつくっていくというような意味合いでは、そういう場合について必要の範囲ではそういったケースも出てくることももちろんあるんではなかろうかというふうに思います。
 それから、先生もう一つお話しございましたケースは、その点についてはまたもし御指摘があればお答え申し上げますが、今先生から御指摘があったケースでは、本当に任意に随時変更ができるという場合よりもある程度必要な範囲に相当限られてくるのではなかろうかというふうに受けとめることもできるんではないかと思っております。
 要は、それらをどう運用していくかという毎月毎月の運用の問題でもあろうかと思いますので、この変形労働時間制、あらかじめ勤務の始業、終業時間等を特定して運営していくという趣旨に沿っているかどうか、これは私ども十分留意しながら、各地の監督署において対応をさせてまいりたいと思っております。
#170
○吉川春子君 労働省は任意に変更できないんだということを原則にして指導しているわけでしょう。ところが、今私が挙げたのはもう全部入るわけです。これ以外に何があるのかと私は局長に伺いたいくらいです。つまり、「任意に変更しない。」と言いながら、「別に定めるとおり」ということでほとんど全部の場合、二日前に変更してもいいですよという形でやっている、そういう内容なんです。
 では伺いますけれども、労働基準監督署にこの「別に定めるとおり」の内容を届け出て、それで労働基準監督署もこれで結構、この例外的な扱いで結構と、こういう返事をされているというふうに理解していいんですか。
#171
○政府委員(伊藤庄平君) 現地の労働基準監督署におきましては、就業規則で別に定めるところにより任意には変更しないと、こうなっていれば、別に定めるところがどういう趣旨、内容のものであるかは当然関心を持って見ているかと思います。
 御指摘ございましたように、この別に定めるところによりというのが労使交渉の結果まとめられた労使間の協定ということでございますし、そういった中で、先ほど申し上げましたように、例えば他人の方が休む、そういった場合にどうしても必要な最小限の範囲での勤務変更、あるいはダイヤの組みかえというようなケースについての必要な範囲での勤務の変更、こういったことを労使間で話し合った結果、そういうケースについて変更が労使間で認められたということであれば、あとはそれが一カ月の変形労働時間制の趣旨を損なわないように正しく運用されているかどうかをこれからの関心事項として私どもは見ていかなければならないというふうに思っております。
#172
○吉川春子君 ダイヤの改正だけじゃないんです。何らかの理由で欠勤が生じた場合、転職、降職、昇職または休職、その他長期的警備が必要になった場合、大体どういう事由が生じても変更できるようになっているんです。
 局長、これが労使協定で認められるというのだったら、労働省が出した解釈例規の基発一号なんというのは全然意味をなしませんよ。ここには、さっきも読み上げましたように、「使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること。」と、あなた方自身が出しているじゃないですか。それに照らして、ほかに理由が思い当たらないぐらいの網羅的な内容について例外で出してきている。私は恐らくこれは労働基準監督署に届けられていないんじゃないかと思います。この就業規則には載っていませんから。
 だから、ちょっと次の質問もあるので、労働・社会政策委員会の質問どんどんありますので、これはこの次に持ち越します。よく調べてこれが適正なのかどうか、また答弁していただきたいと思います。
 そういうことでいいですか。
#173
○政府委員(伊藤庄平君) ちょっと補足させていただきます。
 先生ただいまの、任意に勤務時間を事業主が変更するようなものは変形労働時間制にならないという通達を私どもが出していることはそのとおりでございます。したがって、任意という形にならないように労使間で話し合われ、労使間で一定の事由を定めてこういった協定を結んで、変更ができる場合を限定して労使間で話をまとめている、そういったケースにつきまして、これは通達で言う一方的に事業主が任意に変更する場合に該当するかどうかとなりますと、私どもそれについては非常に慎重な判断を要することになろうということだけは申し上げさせていただきたいと存じます。
#174
○吉川春子君 次の質問に移りたいと思います。
 きょうも何人かの同僚委員の方が質問されましたけれども、失業率が非常に高くて、伺うところによると、これは労働省が統計をとり始めて以来最悪の数値だというふうに聞いております。
 それで、働いて賃金を得るということ以外に生活手段を持たない労働者、そしてその家族にとっては本当に失業ということはもう最悪の事態です。ですから、失業対策というのは国政上の大きな問題であると思います。
 きょうは時間の関係で限定的な問題で伺いたいんですけれども、失業あるいはリストラの脅威に最もさらされやすいのはパート労働者なんです。大臣の所信表明の中でも、パート労働者の問題については留意していくというくだりがありました。
 まず、我が国の雇用失業対策の重要な柱である雇用保険にパート労働者がどの程度加入しているのか、その数値をお示しいただきたいと思います。
#175
○政府委員(征矢紀臣君) パートタイム労働者につきましては、週所定労働時間が二十時間以上であるなど、一定の要件を満たす方を雇用保険の被保険者として取り扱っているところでございます。このうち、週所定労働時間が三十時間未満の方、これを短時間労働被保険者としているところでございますが、短時間労働被保険者の数は、平成八年度末現在で六十一万一千八百七十九人でございます。
#176
○吉川春子君 短時間労働者の雇用保険の加入率、特に女性の加入率というのはわかりますか。
#177
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の加入率というのはなかなか把握が困難でございますが、男女別に見ますと、今の数字のうち、男子が六万四千三百十六人、女子が五十四万七千五百六十三人という数字になっております。
#178
○吉川春子君 労働省の統計でも、パート労働者が一千万人を超えて、九五年の労働省パート調査でも、年収九十万以上百万未満のパートが二五%に上っているわけです。
 こういう短時間雇用労働者の雇用保険の適用の一つの条件が週二十時間以上、こういう条件になっているわけなんですけれども、非常に雇用保険の加入者が少ないわけなんです。雇用保険の対象者でありながら適用を受けていないパート労働者が多数に上ると考えられますけれども、その点についてはどういう手だてを講じているのでしょうか。
#179
○政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の点でございますが、いわゆるパートタイム労働者約一千万人という御指摘がございましたが、これは推計で正確な数字ではございませんが、このうち半分程度は三十時間から三十五時間の方々であるというふうに推定いたしております。この方々は短時間労働ではなくて、正規労働の方の雇用保険の被保険者、こういうことになるわけでございます。
 それから、雇用保険はみずからの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活保障を行う制度である、そういう趣旨にかんがみまして、労働時間、賃金、雇用期間等から見て雇用保険による失業時の保障を要する、これが認めがたい臨時内職的な就労者の方々、これは被保険者としては取り扱わない、そういう視点からの基準で対処しているところでございます。ただし、この基準を満たす方につきましては、事業主の方が所定の手続をとっておらない場合でも、先生御指摘のように失業した場合には雇用保険の当然適用される、こういう考え方で対処しているところでございます。
 なおかつ、この制度につきましては、機会があることに雇用保険の手続が適正に行われるよう周知徹底に努めているところでございます。また、事業所調査等によりまして、適切な手続を行っていない事業主を把握した場合には必要な指導を行っております。また、実際の手続に際しましては、雇い入れ通知書等により所定労働時間等について確認を行っているところでございますが、実態に応じて適正な手続が行われるよう今後とも十分留意してまいりたいというふうに考えております。
#180
○吉川春子君 大臣、最後にお伺いしたいんですけれども、私は先々週に大阪へ参りまして、パート労働者の皆さんと懇談をいたしました。そうしましたら、ある大手銀行が系列のパート会社をつくっているんですけれども、そこのパートの方は雇用保険が適用されなくなった。
 それは、今までは週二十時間以上働いていたんですけれども、二十時間を切るような労働時間の設定をされて、とにかく週二十時間にならないように、もう一時間でも三十分でも早く帰ってもらいたい、こういうことで雇用保険の適用から除外されてしまった、こういう非常に厳しい訴えを聞きました、これはもう非常に日本でも有力の大きな銀行です。三十兆の投入ももちろん真っ先に受けるところなんです。
 それで、もう一つ、全国生協パートタイム労働者懇談会の出しております「パート労働白書」の中に、週五日で十八・七五時間の契約なので二十時間の契約にしてもらいたい、雇用保険を適用してもらいたい、それで安心度が高まると言っているんだけれども、なかなかそういうふうにはならない、何とかいい方法がないだろうかということも書いてあるわけなんです。パートの方は賃金が安い、そして首切りがされやすい、しかもいざというときに条件があるのに雇用保険に入っていないということになると本当に大変な事態なんです。
 全般的な問題を引き続きやりたいと思うんですけれども、こういうパート労働者の問題について労働省でもぜひ全力を挙げて取り組んでいただきたいし、雇用保険の適用を徹底してやっていただきたいと思いますが、その点について最後に大臣の御所見を。
#181
○国務大臣(伊吹文明君) ちょっとまず事実関係を。
#182
○政府委員(征矢紀臣君) 先ほども申し上げましたけれども、パートタイム労働者につきましても、この要件を満たせば当然に雇用保険の被保険者となるものでございます。
 ただ、先生ただいま御指摘のような事実関係を具体的に把握しておりませんが、一方では契約自由の原則の問題もありまして、したがって個別契約まで具体的に私どもが指導するのは難しい面もございますが、実質的にその点がどうなっているかという点につきましては、この条件に合うか合わないか、そういうところはチェックする必要があろうかと思います。
 いずれにいたしましても、引き続き制度の周知徹底、これは機会あるごとに努めてまいりたいというふうに考えております。
#183
○国務大臣(伊吹文明君) 雇用保険というのは、継続的にそこで生活の糧を求めておられる方がやむを得ず失業された場合に、その方の次の職を見つけられるまでの間の生活保障としてやっているものであることは御存じのとおりで、そのお金は善意の方々の汗と油の結晶である保険の拠出金か、あるいは税金の補助金から措置されているわけです。
 したがって、二十時間以下の方々はそれをもってその人の生活が支えられているのかどうなのか、つまり善意の方の保険料をそこまで使うことがいいのかどうなのかということで、判断基準として二十時間という期限を置いているわけです。
 ただ問題は、実際は二十数時間になるのに無理に十五時間にさせているのかどうなのかという事実関係の問題であるし、同時に、それは雇う人と雇われる人との間の、自由市場経済と法治国家の我が国であれば法律と自由な民間の契約の関係において決まってくるわけですから、政府がそこまで口を出すかどうかということについては私はやや疑問があると思いますが、弱い立場の人を押し込めて今おっしゃっているような事案があるのかどうなのかということは検討させます。
#184
○吉川春子君 時間なので、終わります。
#185
○都築譲君 斎藤議長の発意のもとに参議院改革協議会というのが開かれまして、参議院の院の構成を変えるということで、この労働・社会政策委員会で家族問題を所管する、こういうことになりました。
 ということで、きょうは家族の問題についてお聞きをしたいということで、ぜひ厚生大臣、もしできなければ政務次官ということで御出席をお願いしたわけですが、他の委員会との関係もございまして不可能ということでございました。しかし、今後、こういう院の構成を参議院として行ったわけですから、ぜひ政府におかれてもその点を十分御承知いただければと、こんなふうに考えておりまして、局長さんには大臣、政務次官の方にもぜひよろしくお伝えをいただきたい、このように思います。
 労働大臣、もしよろしければ退席していただいて結構でございますので。
#186
○国務大臣(伊吹文明君) せっかくですから、少し御質問の内容をお伺いしたいと思います。
#187
○都築譲君 今、日本の国民の大宗を占めておる大体六千万人の勤労者には長時間労働の問題とかサービス残業の問題、あるいはまた長時間通勤の問題、あるいは勤労者住宅の問題、さまざまな課題があるわけですから、そういった意味でお聞きいただけるということであればぜひお聞きをいただきたいと思います。
 そもそも家族というものは、私自身、個人的には本来余り政治とか行政が立ち入るべきものではない、こんなふうに考えております。しかし、親が養育権とかあるいは監護権、こういったものを本当に適切に行使しない、あるいはまた懲戒権、しつけ、こういったものの行使として逆に犯罪にまで至ってしまうようなそんなケースがあるのであれば、行政として適切な対応をとらなければいけないということは当然のことでありまして、その観点からぜひこの家族の問題についてもきょうは取り上げていきたいというふうに思っております。
 そして、この家族の問題を取り上げたい、こういうふうに考えたきっかけは、三月三日のひな祭り、桃の節句のときに、実は地元愛知県で二歳の女児が栄養不良と脱水症状で衰弱死をしたという大変悲惨な事件が起こったわけでございます。地元の新聞なども大変大きく報道しておりまして、二日間でパン一切れしか与えなかったのではないか、こんな話もあるわけでございます。
 こういった状況を考えると、児童虐待といったものが最近とみに大きく報道されるようになってきておるわけでございまして、そういった中で今までの対応といったものがどうあるべきか、本当に真剣に考えていかなければいけないんではないか、こんなふうに考えております。
 ということで、まず最初に、幼児虐待あるいはまた少年非行、家庭内暴力、こういった事案がよくマスコミなどで報道されておるわけでございますけれども、家族のきずなとか、あるいはまた家族の役割といったものが、戦後五十年の間にまた大きく変化をしてきたのではないかな、環境も大きく変わった中で、今までと同じような発想でいいのかどうか、そういった点についてまず御見解を聞きたいと思います。
#188
○政府委員(横田吉男君) 少子・高齢化が著しく進行しつつある、あるいは核家族化の進行、また共働き家庭の増加、離婚家庭の増加等、非常にかつてと比べまして家族の形態が多様化し、またその一方において家族の結びつきが弱体化してきている点があるかと存じます。
 こうした中で、子育てを行う親の方におきましても、親の自信がないとか育児の不安というのを訴える方がかなりおられますし、一般的な傾向としましては、家庭における育児機能というものが低下しつつあるのではないかというふうに考えております。最近いろいろ生じております児童をめぐる事件につきましても、こうした家庭における子育て機能の低下というのが一つの要因になっているのではないかというふうにも考えております。私どもといたしましては、これらの家庭における育児機能の低下を補う観点からも、その支援策の充実強化が必要ではないかと考えております。
 今後とも、子育てそのものにつきましては家庭が基本になるのではないかと考えておりますけれども、私どもといたしましても、子育てを社会全体で支援するという考えに立ちましてエンゼルプランを策定し、その推進を図っているところであります。また、昨年におきましては児童福祉法を改正いたしまして、援助を必要とする家庭等に対しきめ細かな相談支援を行うということで、民間の養護施設等に児童家庭支援センターの設置を図る、あるいは全国に二万二千四百ございます保育所等におきましても、地域の母親等を対象とした育児相談ができるというふうな点につきまして制度化を図ったところでございます。今後とも、こうした子育ての支援につきまして、私ども力を尽くしてまいりたいと考えております。
#189
○都築譲君 今お話がございましたような子育て支援ということでぜひお願いをしたいと思いますが、ただ問題は、幼児虐待、児童虐待が急増しておるわけでございまして、先ほど申し上げた豊田の事件のほかに、例えば最近では、大阪で一歳の女児を餓死させるとか、あるいはまた名古屋でも昨年の六月に、これまた餓死をさせるというふうな話がございますし、さらに静岡の御殿場、神戸、最近では滋賀、こういったところでも虐待あるいはまた保護の拒否とか怠慢といった形で死に至らしめる非常に悲惨な事例があるわけでございます。特に、これが豊かさの中における餓死というような悲惨な事案であるわけでございまして、こういった児童虐待の急増傾向についてどうお考えになるか。
 先ほど山本委員の質問に対して、平成八年度は四千百二件の児童虐待が児童相談所、養護施設等に寄せられた、こういう養護相談の処理件数ということであったわけでございます。ただ、平成八年度の資料を拝見いたしますと、児童相談所における養護相談の処理件数の中で、例えば死亡という事案が三百六十六件あるわけでございまして、この死亡というのは虐待の四千百二件の内数なのか外数なのか、これは質問を通告しておらなくて恐縮ですが、もし外数ということであればそれはもっと深刻な事態になってきているのではないか、こんなふうに思うわけです。
 また、愛知県に子どもの虐待防止ネットワーク愛知というのがありまして、そこが昨年一年間で虐待されて死亡した事件ということでまとめた件数が、全国でこれは調査したようですが、八十八件、百三人になっている、こういう話もあるわけでございます。そういった傾向についてどういうふうにお考えになっておられるか、御見解をお聞かせください。
#190
○政府委員(横田吉男君) 児童虐待、非常にいろんなところで顕在化しつつあるということでございますが、私どもといたしまして、通例こういった案件につきましては、児童相談所の方に通報なり持ち込まれてくるということで統計的には把握しているわけであります。
 その件数につきましては、先ほども申し上げましたように、平成二年度におきましては一千百一件でありましたものが八年度には四千百二件ということで約四倍近くにまでふえている。この中で一体死亡がどの程度あったのかということについては私どもの手持ちの資料にはございませんので、帰りまして調べさせていただきたいと思います。
 ただ、こうした増加そのものにつきましては、先ほども申し上げましたように、家庭や地域における子育て機能の低下というのが大きな要因としてあるのではないか。また、最近におきまして住民の意識も変わりまして、従来は家庭内に潜在化していたものが顕在化するようになってきているという点もあるのではないかと思っております。
 申すまでもなく、児童虐待そのものは児童の成長なり心身に極めて大きな悪影響を及ぼすものでありますので、私ども腰を据えた対応が必要であると考えておりまして、何よりも早期発見、その前の予防、早期対応という面に重点を置いて施策を進めでまいりたいというふうに考えております。
#191
○都築譲君 今、子育て機能の低下ということが背景にあるということでございましたけれども、もう少し具体的に議論をしていった方がいいのかなというふうに考えております。
 三番目に児童保護のための措置の強化についてどういうお考えかということを聞こうと思いましたが、昨年の六月二十日に児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用についてということで通達が出されておりまして、今までの対応をもつと厳格に運用して、児童保護の観点から関係機関あるいは関係者に対して要請をするということでの取り組みがなされておる、この点は大変高く評価されるというふうに私自身は考えております。
 そしてまた、現に児童相談所の方たち、児童福祉士の皆さん、あるいはまた警察官とか学校の先生とかいろんな方たちが関係しておるわけでございまして、そんな中で、本当に御苦労も多い中で一生懸命児童の権利を守るということで御努力をされていることに敬意を表するわけであります。しかし、こういう通達が出されなければならなかった理由、そしてまたこういった通達が出されてそれで足りるのかというところも考えなければいけないわけであります。
 現に先ほどもお話がありましたように、埼玉県に家出をしていた母親の方から児童相談所の方に連絡があったけれども、結局見過ごしてしまった。それから、この豊田の女児の関係の場合、昨年の八月に父親が二歳の女児をメガホンでパンパンとたたく音が夜中になると何度も聞かれたということで、地域の住民が心配をしておった。そして、警察にも連絡をしたけれども、警察が行ってそういう事態がなかったということでその一日だけで終わってしまった。こういう状況が、結局この子供を死亡に至らしめたと、こういうふうに考えられるわけであります。
 今、児童福祉法の二十五条で通告制度というものが定められておりますけれども、この通告制度、通告という言葉が私自身はちょっと古めかしくて何か告げ口をするような印象で余りよくないんではないか。むしろ通報とかあるいは報告とか連絡というふうな形で、もっと気軽にやれるような、そういう仕組みというか考え方も取り入れていく必要があるのではないかと思います。この通報制度自身が、先ほど二十四時間通報体制をやるというふうに言われましたけれども、昨年の六月に出された通達が今のところ現に機能していなかったということがあるのではないか、こう思うわけでございまして、その点についてどういうふうにお考えになるか教えてください。
#192
○政府委員(横田吉男君) 児童の虐待に関しましては、先ほども申し上げていますように、何よりも予防なり早期発見、早期対策ということが大事であるということであるわけでありますけれども、親権との関係におきまして、従来、ともすれば家庭内に余り立ち入らないという一般の住民の意識もあったと思いますし、十分に機能してきたのかという点については私どもも十分反省しなければいけないかと思っております。
 ただ、今まで、昨年の通知の改正について申し上げますと、親権との関係におきまして、児童相談所が入所等を措置すると、その後親の方が親権に基づいて引き渡しを求めてきたときになかなか断りにくいというようなこともあって、関係者の間に疑問があったわけであります。私どもこの点につきましては、児童の最善の利益というのを主眼にいたしまして、親への引き渡しについても拒む必要があるというようなことで解釈を明確にするということで、児童虐待に関する私どもの体制の強化を図ったということでございます、
 通報制度そのものが十分に機能しているのかというごとでありますが、これにつきましては、先ほど申し上げました四千件ほど虐待の事例が児童相談所の方に来ているわけでありますけれども、このうち七割ぐらいは学校、近隣の方々、警察、福祉事務所、保健所等からの通報ということでございまして、私どもこういった通報がさらに気軽にされるように周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
#193
○都築譲君 ちょっとその問題はまた後で戻ってまいるとして、通報義務が国民一般にもあるんだというふうなこと、あるいは特に学校の先生とか保母さんとか家庭相談員とか民生・児童委員とか、あるいはまた医師、看護婦、教職、警察官、弁護士、こういった方たちはより強いその義務の履行が課せられると書いてあるんですが、実際にそこら辺のところを本当にどうやって周知をさせていくのか。
 そしてまた、国民の皆さんにもどうやって、もしおかしな親がいたらと、おかしな親と言っちゃいけないかもしれませんが、子供が虐待されているような事案、特に、例えば一時的に親がかっとなってしつけのために手を上げるということでなくて、継続的に執拗に繰り返しやっているような事案があったら、昔だったら余りそんなかわいそうなことをしちゃいけないよというようなことを言うおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんが周りにいたんです。今は住宅環境も変わって都市化も進んで、そういった世話をやく地域の機能というのもかなり低下をしてきている状況の中で、しかし、こういった事案があったらちゃんと専門のところに通報しなきゃいけませんよという義務がこの法律で書いてあるんだったら、書いてあるということを国民の皆さんだれも知っていないから、恐らくそのまま、ああ、ああ、大変だと言いながら見過ごしていたと思うんです。
 そこのところをどうやって周知をさせていくのか、具体的にどんなことを考えておられるのか聞かせてください。
#194
○政府委員(横田吉男君) 虐待等を見受けた場合に、これを児童相談所等にできるだけ早く通報していただくというのが私ども重要だと思います。
 この点につきましては、昨年におきましても虐待とは何か、虐待発見の目安とか発見した場合の対応等につきましての防止の手引きというようなものを、パンフレットでございますが、作成いたしまして、保健所、警察署など虐待事例を扱うと思われる関係機関に配付し周知徹底を図っております。また通知上も、守秘義務がある場合であっても通報して違反にならないというようなことを明確にいたしまして、周知を図ってきております。
 一般住民に対してどうするのだということでございますが、最近におきましては御指摘のとおり近隣関係も薄くなっているということで、近所のおばさん、おじさん等もなかなか見ていても言わないとか、あるいはなかなか伝わらない、通報がされないといった事例があるかと思います。こういった点についてどのように周知徹底を図るか、私ども大きな課題の一つだと思っておりますが、やはりこうした時代において、みんなが虐待は見過ごさないという環境づくりというものを図っていく必要があるのではないかというふうに思っております。
#195
○都築譲君 おっしゃるとおりなんでございまして、みんなが見過ごさないという環境をどうやってつくるのかなんです。その手引きを作成して、ただ手引きを一億人分刷るわけにはいかないわけですから、具体的にじゃどういうふうに本当にやっていかれるのか。県に対する事務ということでおりておるんでしょうけれども、そこら辺のところを本当に厚生省としてどういうふうに考えて、また県の方に対して要請をしていくのか、そういった具体的な話をやっぱり詰めていかないと、手引きをつくるのも結構ですし、それからまた環境を何とか整えていかなければいけないということも結構ですけれども、具体的にじゃ何をやるんですか。
 例えば一つの例を挙げれば、女性週刊誌とかを女性は読まれるわけですから、そういったところに、もしおかしな話があったら通報してくださいとか、児童相談所は何か困ったときがあったら必ず引き受けますと、そういう宣伝を出すとか、これまたみんなお金がかかる話かもしれませんけれども、そのお金を惜しむ余りにこれで何人もの子供たちが、全く無力な無抵抗な子供たちがそのまま死んでいくようなことで、果たしてそれで本当に国としての機能というものを果たしているのかということにもなりかねないと思いますが、いかがでしょうか。
#196
○政府委員(横田吉男君) 児童虐待の早期発見というものがまず重要だということだと思いますが、児童問題については、地域においては児童相談所が中心でございます。そこに相談等が最終的には持ち込まれてくる。
 ただ、全国に百七十五カ所ということでこれだけではなかなかカバーし切れないということで、私ども昨年の児童福祉法の改正に基づきまして、各民間の養護施設等に児童家庭支援センターというものを附置いたしまして、地域で気軽に相談等が持ち込めるような体制をつくりたいということで制度化を図りました。これは点を線にしたわけでありますけれども、さらにそれを地域の中において面的なものにしていく必要があるだろうと思っております。そういうふうなことによって、一つはネットワークづくりということで児童相談所、家庭支援センターあるいは各種の児童福祉施設、それから保健所、警察、学校、医療機関さまざまな機関が連携をとって対応できるように、それぞれ若干ずつ特色がございますので、そういったネットワーク体制ができるようなことが一つ私ども必要な方向だと考えております。
 それから、そうした中で各都道府県、市町村等におきましても広報体制がいろいろあるわけでございますので、いろんな機会を通じて一般の国民にもできる限りそういった必要性が認識され、問題があった場合には一報をいただけるような土壌づくりを図ってまいりたいと考えております。
#197
○都築譲君 児童相談所が百七十五カ所で、また児童家庭支援センターを改正後の児童福祉法に基づいて設置をしていくということですが、今年度から十カ所というふうな形でスタートしていくわけで、私はこれからそういったところも充実をしていく、ただ財源的な制約も当然ありますからなかなか難しい中でしっかりとしたものをつくっていく必要があると思います。特に、申請を受け付けてはいと判こを押してそれで終わりじゃなくて、長期間にわたって恐らく指導、援護の業務を続けていかなければいけないでしょうから、人員の体制もなかなか大変なことであろうと、こう思います。
 ただ、先ほどから言われていますように、まず予防と発見、そして保護と、こういう段取りを考えると、今の通報制度自身が、どこに通報していいのか。例えば、愛知県に六、七カ所たしか児童相談所があったと思いますけれども、どこに児童相談所があってどういう機能をやっているかなんということはほとんどの住民はわからないわけです。やっぱり一番身近なのは警察とか市町村の役場とか、そういったところであるわけでして、県の機関として児童相談所を置いているのがいかがなのかなという感じがします。そしてまた、例えば役場とか警察であればすぐ電話一本で、わかりやすい番号でそれぞれの町とか警察署が当然配備しておるわけですから、そういったところをキーポイントにするとかいろんな仕組みが考えられるのではないか。できるだけ通報しやすい体制をどう組んでいくかということをぜひ考えていただければというふうに思います。
 それからまた、第二の大きな問題は、実は問題を起こした親のケアの問題が大きいだろうと思うわけです。結局、先ほども山本委員からお話がございましたけれども、親としても別に最初から鬼になっている親なんというのはいないわけでして、子供が言うことを聞かないということで瞬間的に鬼に変わってしまう、それが大変な事件を起こすというふうに考えると、親が親としてどういうふうに子供を育てていかなければいけないのか。もし本当に虐待というふうな事案になったときに、子供を一時分離して施設に入れて育てる。そして、親の方はガイダンスとかいうふうな形でやっておられる。
 この間テレビ朝日の夜の報道番組でチャイルドアビュースの件を取り上げて、日本の事例とそしてアメリカの事例といったものをやっておりました。親に対しても、本当にしっかりと親として振る舞えるようになる指導といったものをやって、そして十分に子供を育て得る態勢、状況になったということが判定をされたら子供と結び合わせる、こういうふうなことをやっているわけでございます。
 今までの事例などを拝見しておりますと、どうも悲惨さの再生産といいますか、自分が子供のときに親に余り面倒を見てもらっていなかった、放棄されていた、あるいはまた虐待を受けた。こういった人たちが大人になって、そして結局虐待を繰り返すというケースも相当あるわけでございます。ぜひ親に対する施策といったものをもっと充実していく必要があるのではないか、こんなふうに考えますが、いかがでしょうか。
#198
○政府委員(横田吉男君) 虐待の事例につきまして、主たる虐待者ということで見ますと、実母が五二%、実父が二七%というような割合を占めております。これは私どもも意外だと思っているわけでありますけれども、一番最初に申し上げましたように、核家族化が進みまして、あるいは近隣関係が薄れる中で密室育児と申しますか、母、子、二人だけで終日過ごすというような中での育児不安等がこういった行動に出てきているのかなというふうにも考えております。
 そうした意味におきまして、深刻なものもあるわけでありますけれども、一つは問題が起こる前に、親の方から虐待しそうになったということで心配な方もおられるわけでありますので、そういった心配について手軽に相談できるような体制整備が要るのではないか。こういう意味で、児童相談所が本来請け負っているところでありますけれども、なかなか児童相談所も敷居が高いというような地方もあもわけで、私ども、今回民間の養護施設等に児童家庭支援センターというような手軽な相談体制あるいは手軽な指導もできるというところを設置しようとしたということでございます。
 それからもう一つは、虐待が顕在化した場合の対応でありますけれども、これは程度によって違うと思いますが、軽い場合であれば児童家庭支援センターの職員が行って指導してもよろしいかと思いますし、程度が重いような場合におきましては児童相談所が親に対する専門的おカウンセリング等を実施していくということが必要ではないかと思っております。
 それから、施設に入所してしまった場合につきまして、親子を分離するわけでありますが、分離後の保護者に対する指導、御指摘がございましたように、幼少のうちは施設に入っていただいて、ある程度大きくなってくれば虐待もなかなかしにくくなる面というのもあるわけでありますので家庭に帰っていただく。そのために家庭の親との調整というようなものが必要になってくるのではないかというふうに思っております。
 確かに、虐待を解決していくためには虐待された児童に対する保護だけでなくて、親に対するそういった指導が大変重要ではないかと思っております。私ども、児童の健全育成を図るという観点から、今後、親への指導、家庭環境との調整の強化といった点についても努力してまいりたいと考えております。
#199
○都築譲君 一昨年の十二月に中央児童福祉審議会基本問題部会の中間報告が出されて、それに対して日弁連の方から意見書が出されたわけでございます。その中の項目などを読んでおりますと、今までお話をしていただいておりますけれども、もっと法律的にいろんな事項を措置していかなければいけない課題を取り上げて指摘しておるわけでございます。
 その中では、先ほどの通告義務の問題、これを強化すると同時に、逆に誤った通報ということで名誉毀損で訴えられることのないような免責規定を設けるとか、あるいはまた親の分離制度、期間は今限定がないわけですけれども、だからこそ親が引き取りに来ると帰さざるを得ないとか、そういう状況があるわけでして、そういった期間限定の仕組みをつくるとか、さらにその際に親の意見聴取をして子供を引き取ることができるようにするとか、さらにまた抜本的にそもそも虐待禁止規定といったものをつくる必要があるのではないかとか、そういった指摘もあるわけでございます。そういった問題について、またこれからいろいろと私自身も勉強していきたい、こんなふうに思います。
 最後に、先ほど冒頭の質問の中で、家族の役割やきずながどういうふうに変化をしたのかということで申し上げましたけれども、実際に都市化が進み、住宅も団地とかアパートというふうな形でなかなかお隣さんもわからない。さらに、核家族化が進んでいくという状況の中で、昔であれば、おじいちゃん、おばあちゃんがそこまでやるなということで、孫をかわいがるというふうな形での居場所が子供たちにはあったような気がしますが、そういった状況がない。さらにまた豊かさが、相当昔と申しますか、三十年、四十年前と比べるとはるかに豊かになった分、実は近隣の人たちも自分の後難を恐れるというか、余計なものにかかわりたくないという思いで非常に保身的になってきている傾向もあるのではないか、そんなことも考えられるわけです。
 逆にまた、自分自身が非常に悲惨な生活をしていれば、いらいらとか焦りとか、こういったものが募って子供に感情のはけ口が行くというふうなことも考えられるわけですから、そういった問題とか、あるいはまた情報化といったものが非常に進んだ結果、今までであればもっと親身になって触れ合ってというところがあったにもかかわらず、あらゆるいろんな情報がそういう若い親のところに入ってきて、そういったものでないということで自分自身の不安心理が一層広がるとか、いろんな問題があるだろうと思うわけでございます。
 そういったことを考えると、本当にこの五十年間日本経済がこれだけ物質的に豊かになった状況の中で、今までと同じような子育てという発想自身が、あるいはまただれかがやってくれるだろうという安易な考え方が実際には子供たちにその犠牲を強いているのではないかというふうな気がするわけでございます。もしこういう状況に変わってしまったということを受けとめるのであれば、それに見合ったしっかりとした体制をまた築き上げていく必要がある。
 例えば、アメリカの親に対するケアプログラムといったものもしっかりと法律で義務づける、あるいはまた通報制度といったものもしっかりと法律で義務づける、こういった仕組みも真剣に考えていくべき時期に来ているのではないかということを申し上げて、その点については時間も参りましたので、きょうはこの辺で終わりたいと思いますが、また後日改めて議論をさせていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
#200
○委員長(鹿熊安正君) 本件に対する質疑はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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