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#1
第142回国会 労働・社会政策委員会 第14号
平成十年四月二日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月一日
    辞任         補欠選任
     長谷川 清君     吉田 之久君
 四月二日
    辞任         補欠選任
     上杉 光弘君     馳   浩君
     佐藤 静雄君     常田 享詳君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鹿熊 安正君
    理 事
                石渡 清元君
                海老原義彦君
                笹野 貞子君
                大脇 雅子君
                吉川 春子君
    委 員
                狩野  安君
                小山 孝雄君
                佐々木 浦君
                常田 享詳君
                橋本 聖子君
                馳   浩君
                平田 健二君
                吉田 之久君
                木庭健太郎君
                山本  保君
                聴濤  弘君
                都築  譲君
                堂本 暁子君
   国務大臣
       労 働 大 臣  伊吹 文明君
   政府委員
       労働省労政局長  澤田陽太郎君
       労働省女性局長  太田 芳枝君
       労働省職業安定
       局高齢・障害者
       対策部長     中野 秀世君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   参考人
       日本銀行理事   本間 忠世君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鹿熊安正君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨一日、長谷川清君が委員を辞任され、その補欠として吉田之久君が選任されました。
 また、本日、上杉光弘君が委員を辞任され、その補欠として馳浩君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(鹿熊安正君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に参考人として日本銀行理事本間忠世君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(鹿熊安正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(鹿熊安正君) 中小企業退職金共済性の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対する趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○小山孝雄君 自由民主党の小山孝雄でございます。
 質疑に入らせていただきますが、これは安定局関係になるんでしょうか、この制度と大変密接な関係にございます失業率、大変悪くなりつつあります。最も直近の失業率で三・六%、これは円高不況直後の八七年一月以降十一年間で最悪の水準だと、こう新聞は報じたわけでありますが、この辺について一言まず所感を承ります。
#7
○国務大臣(伊吹文明君) ただいまお尋ねがございましたように、先般発表されました失業率及び有効求人倍率を見ますと、まことに日本の歴史の中では非常に厳しい状態にあるというふうに認識をいたしております。特に失業率が高いのは、若年層とそれから五十歳代以上の方であります。
 ところが、若年層は、先生よく御承知のように、有効求人倍率が一を超えているわけでございまして、これは、職はかなりあるけれども気に入った職がないという現象でございます。そこで、若い方々を中心に、気に入った職がなければ職につかないという、それだけ余裕のある国に実は日本はなれたわけでありまして、私どもが就職をいたしました三十五年前、あるいは戦後、日本をここまで持ってきてくださった方々の若いころと比べると随分いい国になったんだなという実感はいたしております。
 しかし、問題は、それだけのいい国にしてくださった方々の現状が一番問題でございまして、特に五十歳以上の方々は有効求人倍率が〇・二を切っております。ということは、働きたい方に比べて職がないということでございますので、これらの方々については、るるこの委員会でもお話ししておりますように、労働省としては、短期的には雇用調整助成金の適用業種を拡大するとか、あるいは高齢な方を雇っていただいた場合の助成金を交付するとか、あるいは新しい職を積極的に職安で開拓をしながらマッチングするとか、そういうことをやっているわけでございます。その場合の、特に中小企業の方の一つの支えが、今日御審議をお願いしている中退金ということになろうかと思います。
#8
○小山孝雄君 人にとって働く場所がないということほどつらいことはないと思います。命を失う次に職を失うということは大変なことだと、こう思う次第でありまして、早くこの傾向から脱したいものだと念願せずにはおれません。
 そこで、この中退金法改正、いろいろありますが、一番のポイントは運用利回りを下げざるを得ない。これはどうしてそういうことになったのでございましょうか。
#9
○政府委員(澤田陽太郎君) 高齢化が進展いたします中で、この退職金制度は労働者の老後生活を経済的に支える重要な役割を担っております。したがいまして、中退金制度といたしては、確実に退職金が支給されるように安定した制度運営を行うことがまずもって求められております。
 そうした中で、近年の金利情勢、著しく低い水準で推移しております。この結果、平成八年度におきましては、中退金制度の資産運用利回り三・八四%と、予定運用利回り四・五%を実際大きく下回る状況になっております。
 また、単年度収支も平成四年度以来赤字になっておりまして、累積の支払い準備金積立不足、これも一千百億円余を迎える大変厳しい財政状況になっております。
 加えまして、今後の金利動向、予想は大変難しいわけでありますが、急激に金利が上がるということはなかなか見通しがたいのではないかというように私ども判断しておりまして、制度の安定的な運営を図る上では、この際、まことに残念ではありますが、予定運用利回りを下げることを御提案申し上げている次第でございます。
#10
○小山孝雄君 その背景には超低金利ということがあることは言うをまたないわけであります。
 きょう、日銀の本間理事にお越しいただきまして、まことにありがとうございます。
 金利につきまして、一般の多くの国民は日銀の方に聞く機会があればこういうことを聞いてみたいなと思うんじゃないかということをお聞きしてみたい、こう思いますので、ひとつしばらくおつき合いのほどをお願い申し上げます。
 日銀総裁、新総裁が御就任なられたわけですが、三月二十日の会見で、金利についてどういう認識をお示しなられたのでございましょうか。記者会見のときの模様は新聞報道ではございましたが、教えてください。
#11
○参考人(本間忠世君) お答えをさせていただきたいと思います。
 記者会見で新総裁が申し上げましたのは、景気、経済の現状を踏まえまして、先生ただいまおっしゃいましたような現状の低金利、なぜ低金利をここまで続けざるを得なかったかというところをまず申し上げ、それから現状から今後の判断ということを申し上げたというふうに記憶しております。
 この景気の現状との関連で、公定歩合、現在御承知のとおり〇・五%でございますが、これは九五年の九月以来二年半余に実は及んでいるわけでございます。
 九五年九月のときにはどういう判断をして金融緩和措置を講じたのかということでございますが、一つは、当時、物価がどんどん下がっておりまして、それがさらに下がるということになった場合に、その悪影響が非常に大きく懸念をされるという問題。それから、企業や家計の自信を回復させるということが非常に大事だと、いわゆる企業、各家計のコンフィデンスを取り戻す。それから三番目に、経済を自律的な回復軌道に移行させるということで始まったわけでございます。
 その後の状況は残念ながらここまでそういう経緯をたどらずに参りまして、結局これから経済の持続的な成長を確保していく上で、今申し上げましたようなことが全部いい方向に変わっていくためにどういうことを考えなければいかぬか。差し当たっては、現状の金融緩和の状況を続けざるを得ないというふうに総裁は申し上げましたが、何とか反転のきっかけというものをどういうふうにつかみ得るかということを強く頭に置きながら、これからの政策運営に当たりたいということを申し上げたというふうに記憶しております。
#12
○小山孝雄君 それだけですか。
#13
○参考人(本間忠世君) 恐縮でございますが、総裁が申し上げたことの、景気との関連では私はそういう意味合いのことではなかったかというふうに思っております。
#14
○小山孝雄君 景気の関係について、金利についてどういう発言をしたかと聞いています。
#15
○参考人(本間忠世君) 金利につきましては、一つは景気、経済の現状というものから見まして、残念ながらまだ景気の現状は停滞が続いて、下押し圧力も強まりつつある、こういう状況だという景気の現状、ここを頭に置きますときに、金利については現状の金利を当面は維持せざるを得ない。つまり、金融緩和基調を当面維持することをやはり頭に置かざるを得ないというのが申し上げた基調だったと思います。
#16
○小山孝雄君 大事なところを外しているじゃないか。「金利が低過ぎることは、私も外にいて感じていた。」、外にいてというのは日銀総裁になる前ということでしょう。基金を運用している財団などは苦しいということを総裁は語ったということを新聞報道で見ましたが、それは間違いですか。
#17
○参考人(本間忠世君) そういう趣旨の話を総裁は申し上げたというふうに思います。
 大変恐縮でございますが、ちょっと突然のお尋ねだったものでございますから、総裁の発言そのものを私は今持ち合わせていなかったのでこういうふうに申しましたが、総裁の申し上げた気持ちはまさにそういうことでございますし、現実にそういうことを申し上げたということでございます。
#18
○小山孝雄君 一番肝心なことを外したら困りますよ。総裁も、外にいるときは、総裁になる前はそういうことを感じておられたということは重大なことなんです。それを外しては困りますよ、あなた。それを言ってもらうために来てもらったんですから、そんなことは事前に言わなかったけれども。
 そういうことで、うれしくない法改正をやらなくてはいけない、こういう現状になっているということを御認識いただきたい、こう思うわけであります。
 そこで、低金利で喜ぶ人、そしてまた困る人、いろいろいるわけでございますが、低金利が続くことによって喜ぶ人はどなただと思いますか、理事、ひとつ言ってみてください。低金利政策が続くことによって喜ぶと思う人はどなたですか、だれが喜ぶんでしょうか。
#19
○参考人(本間忠世君) お金を借りておられる方々が、金利の低下に伴う支払い利息が小さくなるという意味においてプラスが落ちるというふうに感じられるんではないかと思います。
#20
○小山孝雄君 お金を借りている方だけですか、喜ぶのは。答えてください。
#21
○参考人(本間忠世君) 金利は金の借り手と取り手との間のレートでございますので、それが下がるということは基本的には金を借りる側にプラスが落ちるということではないかと私は思います。
#22
○小山孝雄君 確かに金を借りている人は、金利が安いということはそのとおりだと思います。しかし、それだけではないんじゃないでしょうか。もう時間がありませんので、私はもう一つは銀行が利益を受けると思いますが、それは間違いないですね。
#23
○参考人(本間忠世君) 銀行は金を調達する側と貸す側と両方でございます。したがいまして、資金を調達するサイドにおいては市場からの調達の金利というものが低くなる。それから一方で、今度はお金を貸す側でございますから、これは貸す金利も低くなる、両サイドございます。
 したがいまして、これはもちろん時間の差もございますので、最初に金利が下がったときには調達するところに最初にプラスが出るということでございますが、一定の時間の中では今度は貸す側の金利も下がってまいりますので、プラス、マイナス両方の中で金融機関というのは仕事をしているというふうに考えます。
#24
○小山孝雄君 それからありませんか、思いつきませんでしょうか。
#25
○参考人(本間忠世君) 広い意味での金融機関というところで先生のおっしゃるところがあるかもしれませんが、基本はやっぱり私はお金を借りる側にプラスがある。お尋ねについて言えばそういうことが基本の考え方になるものだろうと思います。
#26
○小山孝雄君 だんだん時間がなくなって、本当に、いつも吉川先生が早う、早う、短くしゃべれ、短くしゃべれと言っていることがよくわかる気がするわけでございますが、あと五分しかありません。
 理事、私は思いつくままに拾ってみました。低金利を喜ぶ人、これは銀行、それから消費者金融会社、サラ金です。借りる側は銀行等からの融資を受ける場合は低金利で、貸す方の利率は変わらないわけですから、これは大きな利幅があります。そして、一番最初におっしゃられましたけれども、借りる側というんですが、これは一部の事業会社じゃないかと思います。
 しかし、一部の事業会社と申し上げたのは、今日貸し渋りということでなかなか貸してくれないし、また借りている金も早く回収するということで、いつも以上にペースを上げて返せ返せということで、また今もやられているわけですから、果たして私はこれがどこまでメリットに挙げられるのかなという気がするわけです。
 それでは、困る人はどんな人だと思いますか。低金利政策が続くことによって困る人はどういう人たちだと思いますか。
#27
○参考人(本間忠世君) これは立場が逆でございますから、低金利であるということで困るというのは今度は金を貸す側、こういうことになります。
#28
○小山孝雄君 本当に時間がなくなってきましたので、思いつくままに拾ってみました。そうかどうか後で伺います。
 年金生活の方、それから勤労者、これはみんなそうですね。それからもちろん預金をしている人、これからいけば、個人レベルに関しては全員だと、全国民だと、こう思うわけであります。
 その認識について、間違っていましょうか。
#29
○参考人(本間忠世君) おっしゃるとおりでございます。おっしゃるとおりでございますが、金利の問題について今先生がおっしゃいますように金利の収入に多くを依存しておられる家計あるいは財団あるいは年金基金、こういうところにとって金利が低いままでいることが大変厳しい状況であることは私ども十分承知しているつもりでございます。
 ただ、いわゆる現在のような経済情勢のもとで、企業あるいは全体の景気というものがよくなる、そしてそれが回り回って家計にもプラスになってくる、生産が上がり所得が上がり収益が上がるということが、結局やっぱり家計収入の八割を占める給与所得というものを上げていくということにつながっていく面があるわけでございますので、ここはやはり経済全体のダイナミックな構造の中で家計にもプラスになる、そしてそれがひいては全体の景気が上がっていく中では金利も上がっていく。そうなれば先生おっしゃいますように、財団なり年金基金などにとってもプラスが出てくる方向に経済が変わっていく、何とかそういう方向に経済の流れを変えていかなければいかぬということで我々は努力しているつもりでございます。
 お尋ねが、それぞれがプラスがどうかということでお尋ねいただいたと思いましたが、全体をつなげるメカニズムとして私どもはそういうふうに考えながら金融政策を運営させていただいているつもりでございます。
#30
○小山孝雄君 私は現在打てる手で最も効果的な不況脱出対策は金利をわずかでもいいから上げることだと、こう思っておりますが、日銀の内部で、金融政策について金利は少しでも上げるべきだという論議は一つもなかったんでしょうか。
#31
○参考人(本間忠世君) 日銀の中でもいろいろこれまで議論をしてきております。先ほど来申し上げておりますように、景気の現状が残念ながら停滞が続き、そして下押し圧力が強まってきている。けさ発表させていただきましたが、短期経済観測、企業のビジネスについてのサーベイ、これもやはり状況について一段と厳しい悪い認識が出てきておる、こういう状況でございます。
 その中で、この先景気についてどういう認識を持ちながら金利を考えていくかということでございますが、そういう認識の中で先週、日本銀行の政策委員会の金融政策決定会合というのが三月二十六日に開催されております。そこで今のような議論をいろいろいたしました結果、これまでの金融緩和基調を当面維持することが適当であるというふうに決定をされておるものでございます。
#32
○小山孝雄君 けさ発表されたのは日銀短観というものですか。
#33
○参考人(本間忠世君) はい、さようでございます。
#34
○小山孝雄君 これをめぐって例の課長さんがどこかに流したというのが疑惑の対象になったあれですかな、違いますか。
 私は本当に景気を刺激していく最大のものは金利政策の変更だと、こう思っておりますし、多くの国民もそう思っていると私は思います。どうぞ日銀の金融政策の論議の中に資していただければと、こう念願せずにはおれません。これが中退金の法改正までして運用利回りの一・五%も下げなければいけないという悲しい現実が起こってきているということもぜひひとつ御承知をいただいて、これからの金利政策を正しく多くの国民の気持ちに沿うようにしていただきたいということを念願して私の質問を終わります。ありがとうございました。
#35
○平田健二君 おはようございます。民友連の平田健二です。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず労働大臣、けさの新聞を見ますと、連合の鷲尾会長ときのう会談をされ、その中で連合の政党支持の問題について労働大臣と連合の鷲尾会長との間で激論があったという報道をされておるんです。
 確かに連合も特定の政党を支持するようにということで組合員には話をしますけれども、実は私も労働組合の現場におりまして、労働組合の世論調査をしますと自民党が一番多いんですよ、政党支持は。ですから、まあそうかりかりしないで、ひとつぜひ連合どうまくやっていただくということをお願いしておきたいと思います。
#36
○国務大臣(伊吹文明君) 昨日鷲尾さんに来ていただきまして、御一緒にお話をいたしました。実は、私は長年の友人でもございますし、私は全然かりかりしていないんです。そして、党の雰囲気を鷲尾さんにお伝えしたわけです。その党の雰囲気について、鷲尾さんはかりかりされたという部分があったかもわかりません。
 そして、やはり労働省は、できれば連合が八百万じゃなくて、ぜひ組織率を高めて、五千五百万の働く方の代表という組織になっていただくことが一番望ましいわけですが、残念ながら現在は公称八百万の構成員ですけれども、その方々の御意見を伺うというのは、政府としては当然の私は役割だと。そして、私も同じことを申し上げたんです。連合の中の皆さんの一番の支持をいただいているのは自由民主党だと私は自負しておりますと。
 それから、まあその他特定宗教団体に属しておられる方々か何かいろいろ数がございます。したがって、信条だとか政党支持というのは非常にいろいろあるんではなかろうか。だから、単組あるいは単産にもいろんな御意見があるんであって、これは憲法の言うところの政党支持、信条の自由というのは皆さんにあるわけです。そして、労働組合にも労働者の勤務条件を維持向上させていくという労働組合本来の目的の中で政治活動をするという自由はあるわけですから、私は政府の立場から言えば、本当はこれは自由民主党がこういうことを言うよりも、連合の中で、今のような形でいくことが本当に働く人たちの勤務条件の向上に資する運動になるんだろうかどうだろうかという、組合内自決の御議論でおやりになるべきことなんだと私は思いますということを実は鷲尾さんに申し上げた。
 そして、政府としては常に対話の窓口は開いておくし、きょうお申し入れのあった政労会見等についても、私が努力をしてみましょうということで別れたわけで、私との間ではにこにこで別れまして、かりかりで別れたわけではございません。
#37
○平田健二君 先日来、自民党の山崎政調会長が連合とはもう話をしないとかいろいろ報道されていますので、そういうことを言わないで連合の話も聞いていただくと、ぜひお願いしておきたいと思います。
 そこで、まず今回の中退金の関係につきまして、今なぜ運用利率を改定しなきゃならぬのか、この理由についてお聞きします。
#38
○国務大臣(伊吹文明君) ただいま小山先生の御質問に対して、参考人である日本銀行理事の本間さんからお答えをしたことが基本的には私はあると思います。
 ただ、中退金の場合は、三割が財投預託になっている以外はいわゆる自主運用というような、言うならば冒険というか、リスキーなことはやりませんでした。したがって、今の市場金利よりはかなり高く運用できていることはもう先生御理解いただいていると思います。
 しかし、それにもかかわらず、やはり市場金利全体の動きの中で、今法律に書かれている利回りを前提に今後のお約束をしていくということは結果的に無理があるだろうということで今回のお願いをしたわけで、今までの方は今までの既得権は当然あるわけですから、今後御契約になる方については市場金利の動向を見きわめて少し下げさせていただかないと結果的にうそをついたことになってしまうということです。
 これは率直に言って、中小企業の、特に厚生年金や厚生年金基金というような恵まれたものを持っておられない方々のためにお預かりしている立場からいうと、非常につらいことでございますし、できるだけこれから運用もリスキーなことを避けて、一時浮利を求めて大きな穴をあけてはいけませんので、今までのような実直な運用は続けながらやらせていただきたいと私は思いますが、基本的に理由ということになりますと、市場金利の動きの結果ということを申し上げざるを得ないと思います。
#39
○平田健二君 お話はわかるんですけれども、今大臣がおっしゃいましたように、中小零細企業で働く勤労者にとって今回の金利の切り下げというのがどういう意味を持っておるか、労働省はどう考えておるんでしょうか。今、大臣がちょっとおっしゃいましたけれども、実際に退職をされる中小零細企業に働く人たちにとっては、今回の運用利率を下げるということについて労働省はどう考えておるんでしょうか。
#40
○国務大臣(伊吹文明君) もうこれは先生がよく御理解いただいていると思いますが、今までお約束をし、それに従って退職後の設計をして払い込みをしておられた方々には今までお約束したとおりのことをするわけです。今回お願いしているのは、これから契約をされる方については、現在の金利状況を前提にすればこういうことになりますという、言うならば、商品の表示を誤りのないようにしておかねばならない。
 それでも、私は率直に申し上げて、先ほど来、小山先生と参考人との間の質疑がございましたように、低金利が日本経済全体のためにいいのか悪いのかという根本論はもちろんあろうかと思いますが、今の市場金利のもとではつらいことだけれどもやむを得ない。
 もちろん、市場金利が自由にできるのであれば、そして市場金利をどんどん上げて雇用も維持できるのであればそうしてさしあげたいし、あるいは、税金でもって補てんをして高い利回りを維持できるのであれば、増税ができるのであればそうしてさしあげたい。しかし、労働大臣の立場としては、いろいろな諸般のバランスの中から、つらいけれどもやむを得ぬこととして商品表示を間違いのないように申し上げて、その前提で契約をして生活設計を立ててくださいということをお示しするということだろうと思います。
#41
○平田健二君 今、大臣のお答えの中で、違いますよね。
#42
○国務大垣(伊吹文明君) もちろん、私が申し上げているのは、今までお振り込みになった方でも、これからの振り込み分については当然下がるわけですよ。だけれども、今まで契約してこられた方が幾らもらわれるかということについては、従来振り込んでこられた分についてはそのときにお約束したとおりの金額をお払いするわけで、それを減額するわけではないということを申し上げているわけです。
#43
○平田健二君 先ほど日銀の方のお話もお伺いしていまして、確かに運用利回りが非常に悪くなっている、金利も低い、責任準備金も相当多額の赤字を出しておる状況は理解できますが、金利が改善されたら早急にこの運用利回りも上げるということはぜひ約束をしていただきたいんです。今回下げることは仕方がない。だけれども、経済状況が回復して金利が上昇するようになれば即回復させるということをぜひ約束をしていただきたいんです。
#44
○政府委員(澤田陽太郎君) 先生が御指摘のように、今後金利が上昇いたしまして、実際の運用利回りが今回提案させていただいております予定運用利回り三・〇を上回った、実績が上がった場合には、この中退金制度としては付加退職金というものに運用利回りの成果を振り向ける。ですから、端的に申しますと、基本退職金は三・〇で保証いたしまして、それ以上の運用は付加退職金という形で勤労者の退職給付の方に上乗せをしていくという仕組みをとっております。
 したがいまして、実際の運用利回りが好成績を上げた初期の段階におきましては、予定運用利回りを直ちに上げるということではなくて、付加退職金の方に積んで、そのまた一部は御指摘の責任準備金の積み立て不足の方にも充当させていただきたい、こう考えております。
 そして、運用利回りが非常に継続的に好成績であり、今後とも見込めるという第二段階になりましたら、手順としては御指摘のように、予定運用利回りの改定につきまして、引き上げについて検討するということになろうかと思っております。
#45
○平田健二君 付加退職金の問題ですが、連合は付加退職金制度は続けるべきだということなんです。やっぱりこういう事態になりますとそれは意味はわかりますけれども、多分この中退金制度が発足するときに、我が国の経済はずっと右肩上がりで推移するということを前提に組まれたと思うんです。ですから、付加退職金制度は運用益が出ればそれを退職金で即払うわけですよね、出すわけでしょう。
 ですから、右肩上がりで経済が成長しておるときにはいいんですけれども、今まで運用利回りの上の分は付加退職金で払うわけですから、出すわけですから、積み立てがないんです。ですから、一たんこういう事態になるともう即赤字になっちゃうわけですよ。この制度を、いいか悪いかは別として、一度やっぱり真剣に考えてみる必要があるのではないかなというふうに思っております。そういうふうに考えてください。これは連合の方針と少し変わった発言ですので、余りこのことを強調するとまた問題がありますので、しかし制度としてはやはり考えてみる必要があるというふうに思っています。
 それから、内容ですけれども、分割支給制度、大変いいことだと思いますが、現在十年ですね、これをもう少し拡大することはできないのか。
 それから、分割支給の要件に退職時六十歳以上と、こうあるんです。でも、最近六十歳前に退職する人も相当数おると思いますので、この六十歳要件というのを少し緩和する必要があるんじゃないかなと考えておるんですが、いかがでしょうか。
#46
○政府委員(澤田陽太郎君) 現在の中退金制度におきます平均的な退職金の支給額が百万円弱となっております。そして、平均の加入期間が八年ということになっておりますので、現在の分割支給の十年をさらに延ばしますと、年四回分割支給しておりますが、一回ごとの支給額がかなり低くなる可能性がございまして、余り現実的じゃないだろうと思っております。まずは、この平均退職金額百万円というレベルを少しでも高くなるように、今回御提案しております通算制度を活用するなどによりまして、まず元を大きくして、その上で勤労者の方のニーズ等を踏まえて検討していきたいと思っております。
 それから、六十歳以上という縛りにつきましては、基本的には分割支給制度の趣旨として老後所得に充てるということですから、勤労所得が平均的に期待される年齢層については分割支給の必要性は薄いだろうというふうな考え方で六十歳以上という縛りをつけております。
 したがいまして、これも今後六十歳以前に退職された方がどういうような就業の状態になっていくか、労働省は片方で六十五歳までの継続雇用という政策を推進しておりますので、そういう動向あるいは勤労者の具体的なニーズ等も踏まえて考えさせていただきたいと思っております。
#47
○平田健二君 それから、通算制度です。この通算制度、非常に私もいい制度だと思うんですけれども、金額だけなんです。例えば退職金というのは、勤続が長ければ長いほどカーブがずっと上がっていくわけです。今回のこの通算制度というのは金額だけで、このカーブが上昇するというところまでは通算しないんですよね、そうですね。ちょっと教えてください。
#48
○政府委員(澤田陽太郎君) 今回の通算制度は、片方の制度から片方の制度へ移る場合に、前の制度で支給されるであろう退職金を移動後の制度の方に持ち込む、そして、持ち込んだ退職金につきましては移動後の制度に基本的には乗せていくという形になります。
 したがいまして、移動前後の制度によって先生御指摘のように支給のカーブが多種多様でございますので、以前の制度のカーブを移動後の制度の方に持ち込むということになりますと、場合によっては移動後の制度に過大な負担をかけるようなこともありますし、逆に負担を軽減されるようなことにもなりまして、制度同士から見ますと、移動が自分にとって公平なのか不公平なのかという問題が非常に起きてまいります。
 したがいまして、今回御提案しておりますのは、移動後の制度の退職金支給方式に乗っていくというふうに整理をさせていただいております。
#49
○平田健二君 次に、中退金制度のある企業に仮に十年なり十五年勤めて、そして今度はその制度のない別の大企業か公務員か知りませんが、勤めた。そうすると、中退金制度で積み立てた退職金をそのままその方が本当に引退するまで、六十歳まで中退金制度に置いておく、そこで運用してもらうという制度ができないものかどうか。
 今ですと五年ですね、制度としては。ですからそれを、中退金のある企業に十五年勤めて退職金をそのときにもらわないで、労働者が本当に年金をもらう年齢、六十歳になるまでそのまま運用してください、こういった制度ができないものかどうか、お尋ねいたします。
#50
○政府委員(澤田陽太郎君) 中退金制度加入企業を退職された方がほかへ移られた後も御本人の退職金給付額相当を中退金制度の方で管理していくという点の御提案でございます。
 管理する意味は、よく考えますと、勤労者のメリットとしては、自分でそれを市中の金融機関に預けて運用するよりは中退金に据え置いた方が高い金利が得られるであろうということがメリットだと思うわけです。そうなりますと、労働者にとっては確かにメリットはございますが、逆に特殊法人として、中退金制度を預かる機構として、そういう市中の金利と中退金が提供する金利について、言い方は悪いわけですが、そういうことをやると勤労者が市中に預けることについていわば金利の面で差がついて民業圧迫になるというおそれもございまして、そういうことが妥当であるか必要であるかについてはいろんな面で議論をしてみないとなかなか一概に言えないなどいう気がいたしております。
#51
○平田健二君 今、中退金制度に入っている方、企業が五十四万ですか、労働者が四百六、七十万、五百万切っています。しかも、先ほど言われましたように、中退金でもらう退職金の平均額が百万切っていますね。あなた、そんなんで民業を圧迫しますか。
 それで、お金というのは手元にあれば使っちゃうんです。これは私だけか知りませんが、手元にあれば出ていくんです。そういう意味で、中小企業に働く勤労者の老後の問題ですから、そういう意味ではやはりそういった運用をする制度も、そう言わぬで少し検討してください。ぜひお願いします。
 それから次に、加入促進についてですが、多分ことしの十一月までですね、増額したときの二分の一の国庫補助というのが。これはことしの十一月過ぎたら三分の一になるんですね。こういう時期ですから、ぜひこの二分の一の補助をもっと続けていただくということによって今よりも加入が促進されると思うんですけれども、いかがでしょうか。
#52
○政府委員(澤田陽太郎君) 先生御指摘の掛金変更に伴います助成措置につきまして、現在時限的に特例を講じております。この特例措置を御指摘のように継続すると申しますか、復活するかどうかという点につきましては、十一月に消えますこの制度の効果、実績を見なければならないと思っております。
 私ども、現在までのこの特例制度についてのチェックをいたしましたところ、確かに平成七年十二月からこの制度がスタートいたしましたが、その当初は効果があったというふうに判定できます。しかしながら、急速にその効果が落ちてまいりまして、ざっと見ますと一年ほどで大分効果が薄れてきたという状況になっております。そういう状況を考えますと、今回この特例措置をどうするかについては少し慎重にならざるを得ないという状況がございます。
 ただし、二分の一が今度は通常の三分の一に戻りますので、この三分の一の制度をさらに活用していただくというふうなことに当面力を入れて、それでもなかなか問題が残るということであれば、現行の制度をどうすれば改善できるかという観点でいろいろ検討すべきことはあり得る、こう思っております。
#53
○平田健二君 この資料を見てみますと、新規加入者がそれほどふえていないんです。どこにそういう原因があるのか。そしてまた、この中退金制度への加入促進をするため中小企業庁であるとかあるいは市町村とかにどういう働きかけをしておるのか、こういったことについてわかれば教えていただきたいと思うんです。
#54
○政府委員(澤田陽太郎君) 先生御指摘のように、ネットベースでの増加というのは多いとは言えない、まさに微々たる伸び方であると思います。ネットの伸び方は、結局新規に入る方とおやめになる方との差し引きになりますので、新規に入る方は、私ども例えば都道府県と連携したり、あるいは事業主団体等々と連携してPRに努める等しておりますが、中小企業が近年廃業率が以前に比べてかなり高くなっているというような状況もありまして、いわば脱退される、やめられる事業がかなりの数に上っておるというようなことで、そちらの方をどう食いとめていくか、この両面でやっていかないとならないというふうに考えております。
 やめる方をなるべく少なくする方法としては、例えば経営上掛金の支払いが非常に困難であるというような場合には、一時的に掛金を減額する措置もございますので、こういうものもよくPRいたしたいと思いますし、繰り返しになりますが、新規の加入促進についても関係方面、関係団体と連携をとりながら一層の努力をしていきたい、かように思っております。
#55
○平田健二君 確かに、こんな不況になってきますとやめたいということになると思うんです。加入促進をするためには、やはり経営者の方が使い勝手がいいというふうにしてやらなきゃいかぬと思うんです。
 今、最低の五千円という掛金が一番多いわけです。中小企業の経営者は景気に左右されますから、一番もうかっておるときの時点で本当は三万円掛けたいんだけれども、しかし、そうは言ったって経済の状況からすると最低の五千円にしておかなきゃしようがない。今言われましたように、増減はできると言いますが、なかなか先は読めませんね。ですから、五千円は五千円。
 極端に言いますと、ことしはもうかった、だから一時金としてこの中退金制度に一人平均五万なら五万、十万なら十万積んであげようと、そういったことができればいいわけです。平均して三万円ずつと掛け続けることはなかなか難しい。そうかといって、従業員のことを思うとやめるわけにもいかぬ、だったら最低毎月五千円掛けておこう。それで、もうかって利益が出たら、出た分だけ五万でも十万でも一時金で振り込むという制度ができないものかどうか、いかがでしょうか。
#56
○政府委員(澤田陽太郎君) 先生の御提案、大変私どもも参考になるところは確かにございます。
 私どもの掛金についての基本的な考え方を申し上げますと、退職金掛金につきましてはできれば長期的、継続的にだんだん上がっていくように事業主の方に御努力をいただきたい、かように思っております。
 そうした中で、非常に景気のよいときに短期的に増額できるような仕組みを導入することは、ある意味では継続的にだんだん長期にわたって上げていくという私どもの期待について若干ベクトルが違う作用を及ぼす可能性がございます。
 それと、多くの場合に、事業主が幾ら掛金を掛けるかというのは労使の交渉あるいは就業規則等で決めている問題でございまして、基本的には、労使間でどういうような掛金の仕方がいいかということをお話の上で決めることであろうと思いますので、先生の御指摘については少し時間をかけて検討させていただきたい、かように思っております。
#57
○平田健二君 それからもう一つ。今、途中で滞納、払えない、これは大体一年ですね。それから、滞納期間が支払い続けた期間の六分の一、それを超すと自動的に脱退ということになります。
 こういう経済状況ですから、もう少しこれに余裕を与えたらいいんじゃないか。どのくらいが適当かということはわかりませんが、こんなに長く不況が続くとは思っていませんでしたのでということですよ、早く景気回復せぬといかぬわけですけれども。少し猶予期間を考えられないかということ、いかがでし。ようか。
#58
○政府委員(澤田陽太郎君) 確かに、掛金を負担する事業主の立場からはそういうことも必要性はあろうかと思います。一方、退職金をもらう労働者の立場から申しますと、できれば途中で切れることなくずっと引き続いてという要請がありまして、その辺のバランスをどうとっていったらいいかというのは大変難しい問題でございます。
 先生の御指摘につきましては、私どもも、今後の中退金制度をいかに充実していくかという大きな課題の中で十分検討させていただきたいと思います。
#59
○平田健二君 昨年、この場で質問をさせていただきまして、中退金と特退金が合併した、それで新機構になった。それは行政改革のためにやるんだということで、当時松原局長がお答えになっておるんです。実際にきのうからスタートした新機構は三名しか減っていないんです。行政改革で大上段に去年やって、結果三人なんですよ。どういうふうに考えていますか。これで質問を終わります。
#60
○政府委員(澤田陽太郎君) 昨日、新設いたしました勤労者退職金共済機構、職員数は先生御指摘のように確かに十年度は三名減にとどまっております。あと役員の方は、統合前十二名を統合後八名ということで四名減らしております。
 ただ、この特殊法人の定員につきましては、定削計画による分、それは既定方針で決まっている分、それから特殊法人の統合に伴って、単年度ではなくて数年にまたがって定削を予定している分がございます。この辺をあわせて申し上げますと、職員数につきましては平成十三年度までに合計十二名削減という予定になっております。
 前回の法改正のときに当時の局長が御答弁申し上げました内容と比べてどうかという点は、先生御指摘の点があるかとは思いますが、統合によりまして業務自身が決して減るわけではなくて、従前の業務をそのまま引き継いでおりますので、その点も十分御高配いただきたいと考えております。
#61
○平田健二君 ありがとうございました。
#62
○木庭健太郎君 中小企業の労働問題、いろんな問題があると思っております。きょうは中退金の話ですけれども、例えば労働条件とか労働福祉面でやっぱり規模間で極めて大きな格差があるという問題に常に私たちは認識を持ち、労働行政もそれを主眼としてやられていると思うのでございますけれども、その中できようも一、二点、そういう問題をどうお考えで、どのように進めるつもりでいらっしゃるのかを先に聞いておきたいと思うんです。
 一つは、中小企業労働の特徴の一つですけれども、やはり第一に中小企業の場合離職者が多い。離職して次に行くときにどうなるかというと、結局そこの部分で賃金格差がまた起こってくる。大企業の場合は別としてと言い切れるかどうかは別として、中小企業労働者がいわゆる労働移動を行うときはどうしても前職経験などが反映されていかないという面、十分に評価されない、転職すると給与の増額が全然期待できない、そんな面が非常に大きく、これがまた規模間格差というものをさらに大きくしている面の一つだと私は思っております。
 こうした賃金格差の是正を図っていくためのいろんな方法があると思うんですけれども、今ホワイトカラーについて職業能力評価制度、これの整備を図るというような問題があると思います。もちろん職業能力が適正に評価されていけばそういった問題が少しでも解消できると思うんですけれども、今後中小企業向けの能力評価制度というか、そういったものをどんなふうにして取り組んでいくお考えでいらっしゃるのか、その辺を一点まず伺っておきたいと思います。
#63
○政府委員(澤田陽太郎君) 今、先生御指摘の点は私どもと全く同じでございまして、現在の、特に中小企業で働く方々が移動した場合に種々の不利益をこうむるという点につきましてはそのとおりであります。
 その大きな理由が、能力評価制度につきまして日本国の場合には勤続というものがかなり事実的には働いておるということで、やはり勤続も大事ではございますが、まさにその方の持っておられる能力、ポテンシャルをどう評価するかと同時に、個々の労働者のポテンシャルをいかに高めていくかという点が大事だろうと思っております。
 それで、先生御質問の点は中小企業労働者に焦点を当てたような職業能力評価制度というお話でございますが、労働省は現在、技能検定制度を持っております。これはいわば技術・技能系の検定でございまして、結果的にといいますか、現実は中小企業の方々がこの検定制度を持ち、それをみずからの職業能力アップのために使われておるということでございますので、この技能検定制度につきましてさらにどうしたらいいか。
 それは、労働省の技能検定制度のみならず、でき得れば政府関係で横にいろいろそういう類似の制度がございますので、そういうものも整合的にどういうふうに整備していったらいいかという観点で、職業能力開発局で研究会を設け、現在検討を進めているところでございます。
#64
○木庭健太郎君 ぜひ、そういう研究をするのはどんどんやっていただきたいんですけれども、それを本当に実のあるものにしていかないと、いつまでたっても形としてでき得ていないという現状が私はあると思います。せっかくの制度もいろんな形で、省によって違った制度を持ってみたり、そうすると結局生かされないという結果が今生まれているような気もします。ぜひそこは御検討をいただきたいと思っております。
 もう一点だけ、こういう問題でお聞きしておきたいんです。もちろん中小企業の場合、高齢者が多いという問題がございます。単にこれだけとは思っておりませんけれども、現実、私たちが見て気づくことはどういうことかというと、高齢者雇用の面では、例えば大企業は一定の年齢に達しますと関連企業、特に中小関連企業に高齢者を移して行くわけですね、常に。こういうことを出向という形で繰り返していく。こうした人事慣行みたいなものが結局中小企業にしわ寄せといいますか、働いている方々にとって意欲をなくす面にもなっているのは事実でございます。
 ある意味では、大企業においても能力によって高齢者の雇用という問題も考えでいただかないとと思うんです。大企業においては高齢者の雇用割合は低い、これはもう事実でございます。だから、大企業がもう少し高齢者雇用拡大のために、これは社会的責任でもあると思うんですけれども、この辺についてどんなお考えを労働省として持っていらっしゃるか聞いておきたいと思います。
#65
○国務大臣(伊吹文明君) 先生がおっしゃるとおりだと思います。私の限られた経験から申しましても、私の実家なども金融機関を定年になった人にお願いするなどということがないとは言えないわけでして、これは一つは終身雇用制をどう考えるかという大きな問題があると思います。
 基本的に、私は終身雇用制というのは労使双方にとって安心して働けるし、安心して能力開発も行えるという意味で決して悪い制度ではないと思いますが、今後はここに少しバイパスをつけて、職業紹介機能を充実させることによって流動性を高めていく。そして、場合によっては、先生が先ほどおっしゃったような資格の問題を少し整備することによって、能力のある人が中小企業の方へマッチングできて、しかも、それがかなりその人を満足させるような給与が払えるような経済をつくっていかねばならない。そういう中で総合的に進んでいく問題だと思います。
 私が経済団体の方に申し上げているのは、今高齢者を粗末に扱っている企業は、少子の年齢世代がだんだん働く世代になってきたときに、必ず高齢者の方から見放されますよということを実は申し上げております。機会を見つけて先生がおっしゃっているようなことを大企業の方々にも申し上げたいと思っております。
#66
○木庭健太郎君 それでは中退金の問題、今平田先生と論議をされておりましたけれども、中退金の共済制度、さまざまなメリットがあるいい制度なんですね。ところが、制度ができて四十年たつけれども、なかなか加入企業にしてみても加入者にしてみても、本当に中小企業に合ったような形でふえているかというと、先ほどの数字は私の調べたのと違うんですけれども、八年度末で四十一万社でしたかね、そんな数だし、被共済者数が二百八十一万人と、なかなかこれはふえていかない。
 今回改正する中でいい面もあるんですけれども、逆に先ほど言った運用利回りの問題とか、せっかくふやそうという方向なのに後退させようとしているような面もある。労働大臣はさっき連合が八百万で全労働者から比べれば少ないなどとおっしゃる。中退金こそ、これだけ中小企業があって、何でこのままの状態にとどまるんだということだって非常に私は大きい問題だと思います。
 どのような形でこれを本当に皆さんに使っていただくかという問題、特に先ほど、例えば二分の一効果が薄まるとおっしゃいましたね。こういう趣旨というのを最初はばあんとアピールすると、その後少し定着していくわけですから、定着していく中でもそこの部分をもっと強調するとか、何らかの方法をとり続ければ私はやりようがある問題だと思っているんです。
 大臣としてもうこれくらいの数でいいんだと認識されているのか、もっと頑張ろうという気があるなら、連合のことをおっしゃる前にまず自分のところもやっていただきたいと、こう感じるんですけれども。
#67
○国務大臣(伊吹文明君) 連合の話は、これはお金を負担してそれをもらうということではございませんので、少し次元が違うと思いますが、率直に言うと、加入者が中小企業で、それを負担される方が事業主だという中小企業特有の厳しさ、つらさというものが一番ここにあると思います。したがって、促進をしていくということだけを考えれば、国庫補助を入れれば軽くいけると思うんですが、それはまたおのずから負担の問題が出てくる。
 そういう中で、先ほど平田先生が政府委員との間のやりとりをしておられて、大変建設的なお話も幾つかあって、なるほどなと思って実は聞いておりました。これからまた木庭先生からも同じような御提案があるんだと思いますが、そういうことを受けとめてやらせていただきたいと思います。
 そして、今、社民党、さきがけとともに御承知の四〇一Kというものを入れるかどうかということを与党内で実は議論をいたしております。これは、中退金のように固まりにして運用する制度ではありませんが、労働者が企業を移動した場合にポータブル、背中に背負いながら行けるという制度です。これなども組み合わせればどういうことになるのかなというようなことも考えながら先ほど平田先生のお話を私は伺っておりましたので、どうぞ建設的な御提言がございましたら、中小企業で働くつらい人たちのためになることはお互いに協力してやらせていただきたいと思います。
#68
○木庭健太郎君 もう一つその問題で、制度の中身そのものも整備していくことで魅力を持たせる。ある意味では企業主さんの問題ですから、それも必要でしょうけれども、この周知徹底という意味でこれがどれぐらいやられているのかという面も、県を通じてみたり団体を通じてみたりいろんな形でやっていらっしゃるんですけれども、私はこれはもう少しやりようがあるような気もするんです。
 現状を少し御報告いただいて、この程度のことはこうやっている、ただ今後この点を改善していこうと思っているというような点がありましたら、啓蒙活動という意味で何か労働省の方でおっしゃりたいことがあれば聞いておきたいと思うんです。
#69
○政府委員(澤田陽太郎君) まず、啓蒙といいますか普及、PRにつきましては、毎年十月に加入促進月間というものを設けまして、この時期に集中的な広報等をやっております。また、一般的な広報だけではなくて、特定の地域を選びまして、そこを対象に具体的な加入促進活動を展開しておるという点もございます。
 その他幾つかやっておりますが、先生御指摘のように、ある意味ではメニューはいっぱいあるけれども決定打がないという点が確かにございます。
 今回、この法改正を提案させていただく前に、審議会でいろいろ御議論をいただきました。その際にも、まず制度の普及、加入促進についてさらなる対策の充実を考えるべきであるという御意見を相当いただいております。その点につきまして、他のいろいろ宿題もございますが、審議会で引き続き議論をしていくということになっておりますので、現在かくかくの方針があるということはにわかには申し上げかねますが、実際効果の出るような普及促進対策を構築していきたいという気持ちで頑張らさせていただきたい、かように思っております。
#70
○木庭健太郎君 もう一つ、パートタイム労働者の問題も少し聞いておきたいと思うんです。
 加入促進対策のようなことで、例えば掛金の特例を設けてみたり、そういった問題もあるのも事実でございます。
 ただいずれにしても、パートタイム労働法、この指針を見ますと、「事業主は、短時間労働者の賃金、賞与及び退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。」となっているようでございます。
 ただ、実際、パートタイムの方の退職金というのは、いろいろ難しい面が確かにあると思うんです。パートタイムと言う限り、どれくらいの期間勤めるとかいろんな問題はあると思うんですけれども、企業別で退職金制度の適用状況というのを見ますと、五人以上二十九人以下で八・九%、三十人以上九十九人以下で六・二%、百人以上二百九十九人以下で八・七%、千人以上の大企業で見ても一七・一%、こういう実態がある。こういう問題にどう取り組んでいくのか、私も極めて難しい問題があるとは思っております。
 しかし、いずれにしてもこのパートタイムの方々について法ができた上でいろんな整備をしなくちゃいけない。一番整備ができていない面の一つは退職金の問題だという気もしております。この辺について、どう今後この問題にお取り組みになられるのか、お聞きしておきたいと思います。
#71
○政府委員(太田芳枝君) 退職金制度の適用に係りますパートタイム労働者と通常労働者の格差につきましては、先生御指摘のように格差がございます。
 この問題につきましては、やはりパートタイム労働者に対する企業の雇用管理上の問題に帰するところが大きいと思いますが、そのほかにもパートタイム労働者の約四割が有期雇用であるというようなことによる要因も大きいのではないかというふうに考えるわけでございます。
 ただ、こうした問題への対策といたしまして、私どもといたしましては、パートタイム労働者の中小企業退職金共済制度への加入促進というものを図りたいということで努力もしておりますし、また企業内の雇用管理上の問題につきましては、事業主に対しまして、先生今御指摘になりましたパートタイム労働法及びこの指針に従いまして、就業の実態に応じて通常の労働者との均衡を考慮するよう積極的に働きかけてまいりたいというふうに考えております。
#72
○木庭健太郎君 働きかけてまいりたいということを聞きましたので、具体的にどうされるんですか。もう少し、こんなことでこうやってこういうところは何か少しはよくなったよというのがございましたら。頑張るという言葉はわかるんですけれども、具体的にどんなことが前進しているか。
#73
○政府委員(太田芳枝君) 現在、パートタイム労働法をもとにいたしまして、私ども二十一世紀職業財団という財団が各県に展開をさせていただいております。そこにパートタイムに対するアドバイザーがおりまして、そのアドバイザーの方々が企業を訪問いたしまして、パートさんの雇用管理上の問題点等々を勉強し、指摘をさせていただいているわけでございますので、そういうときにこの退職金等につきましても、より長期に働いているようなパートさんについてはこの適用促進を企業権働きかける等の努力をしているところでございます。
#74
○木庭健太郎君 あと、先ほども通算をどうするかという問題がありました。今回、一歩は前進していると思います。例えば、再就職できた場合は特定退職金共済制度に通算される。
 大臣は全く別の方法でということもおっしゃいましたけれども、それはそれとして、もう一つはこの中退金制度の中で通算制度をどんなふうに拡充していくかという問題はあると思うんです。それがないと、結局やっていても中途半端なものになってしまうというところがまたふえていない理由にもなると思うんですけれども、この通算制度というもの、今回初めての取り組みで一歩進んだとしても、例えば今後どういう形にするか、例えば税制適格年金にもというようないろんな方法があると思うんです、やり方は。
 そういった意味で、この通算制度、今ようやく一歩が始まったところだと思っていますけれども、大臣の考えでいる四〇一K、これも私も非常にいいやり方だと思っていますし、そこをどう整理していくかというのがあるんですけれども、それとともに、いわゆる中退金の中でこの通算制度をどう今後本当に広げていってより使いやすい形にしようとされているのか、するという気がおありになるのか、お聞きしておきたいと思います。
#75
○政府委員(澤田陽太郎君) 今回、第一弾として、特定退職金共済制度との間で通算制度を設けましたが、その大きな理由は、今後の日本国の経済社会を考えると、労働移動がこれまで以上に必要性を増し、現にふえていくだろうというところがあります。
 そういう観点からいたしますと、通算の仕組みは労働者にとって基本的には意味のあることですから、今回の措置にとどまらず、より広げていくことが大事だろうという認識は持っております。
 今、先生御指摘の、例えば税制適格年金というお話が出ましたが、税制適格年金との通算ということを例示的に考えますと、中退金の方は個人別残高管理方式でやっております。税制適格年金の方はそういう個人別残高管理をしておりません。いわばプールでやっておりますので、中退金から持ち込んだ勤労者の退職金が適格年金の方では全体の積立金の中に入っていくというようなことがありまして、その辺はどうすべきかとか、いろいろ問題点がございます。
 私どもも、広げていくという基本的なスタンスの中で、どういうようなところとどういう仕組みでつながっていけばいいかということは重大なる研究事項ということで認識しておりますので、しばらくお時間をいただきたいと思っております。
#76
○木庭健太郎君 もう一点、今度は受け取るときの問題でございます。
 これも十年間年四回分割払いという制度があるわけでございますけれども、これは退職金の一部を一時金で支給してもらって残りを分割と、こういう問題でございます。これをやったことで非常に年金的意味合いを持つわけですから私はよかったと思うんですけれども、そういう意味では年金そのものの方、これについては平成元年の年金法改正から、これも使う方々の要望の問題があって、現在は年六回支給になっているわけでございます。この辺をどういうふうに考えるかという問題が私は起きてくるんだろうと思います。
 多分、皆さんからすれば額が少ないからというお話もあるでしょうけれども、これを私ども計算してみますと、分割支給を開始した平成三年の分割退職金の一回当たりの平均額が十万二千二百九十三円でございました。平成八年には十五万八千四百三円まで伸びている結果がございます。ちなみに、平成八年の一年間に受け取る額を見ますと平均で六十三万三千六百円ですか、そこまで大体上がってきておると思います。そうすると、これを六回にするとちょうど十万円程度にはもうなっているものもあるわけです。こういう部分で、どうより使いやすい制度にするかという面でいけば、こんな問題も視野に入れながらぜひお取り組みをいただきたい。
 こういうことについての御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
#77
○政府委員(澤田陽太郎君) 先生御指摘のように、私ども年四回にしておりますのは、一回当たりの分割支給額の水準と、もう一つは勤労者退職金共済機構、運営団体の事務負担の問題がございます。」
 しかしながら、公的年金の六回、あるいは労災保険ほおきます年金もややおくれましたが六回ということになっております。そういうことを考えますと、中退金制度におきます給付の水準の動向と、それから実際の分割支給を受けておられる勤労者の方々の御要望、これを見ながら検討していきたいと思っております。
#78
○木庭健太郎君 終わります。
#79
○大脇雅子君 中小企業退職金共済制度の財政状況につきましては、これまでのさまざまな御質問の中で、市場金利の動向を見きわめながら利率が下がっていくという御説明があったわけです。しかし、利率の改定により退職金額の算定の基礎となる金額を改定するということは、中小企業に働く労働者の労働条件の低下ということになることは間違いがないことであります。
 退職金制度の支払い準備形態別企業数の割合を見てみましても、中小企業は主として社内準備預金の中での積み立てが大勢を占めますけれども、中小企業になりますと中小企業退職金制度の重みというものが大きくなってくるわけです。
 財政状況の安定化ということが目的であっても、低下分の補てんとかあるいは段階的実施というような措置が必要ではないかというふうに考えられますが、いかがでしょうか。
#80
○政府委員(澤田陽太郎君) 中退金制度は、もう御承知のように任意加入の事業主の相互共済という制度でございます。そうした任意加入の事業主の相互共済制度というものにおきます国の基本的な役割は何かと言いますと、独力では退職金割度を持つことが困難な中小企業に対しまして、簡便な社外積み立て型の退職金制度の枠組みを提供するということにあろうかと思っております。
 そうした制度の枠組みを前提といたしますと、強制加入の社会保険とはやや性格を異にするだろうと思っておりまして、相互共済という基本的な性格である以上、退職金の支給額そのものに関して国庫が補てんするということはなかなか難しいと考えております。
 また、段階的な対応という先生の御提案でございますが、この制度を長期に安定的に維持していくという上では財政の健全化がまず第一でございますので、現在の状況は段階的に対応するだけの財政的余裕がない。もう喫緊の課題として安定化を図らなければ制度そのものの根幹に響くというふうに私どもは認識しておりますので、今回の御提案をさせていただいております。
 そうは申しましても、これまで制度に加入してきました事業主、勤労者につきましては、先ほど大臣から答弁がございましたように、これまで既に掛金をいただいているお約束した分については保証いたしますし、新規に、あるいは全くの新規だけではなくてこれまでも加入いただいて制度が変わっても引き続き継続するという方々につきましては、制度改正の内容、趣旨等をよく御説明申し上げて御理解を賜る努力はしていきたいと思っております。
#81
○大脇雅子君 先ほどの御説明にもありましたように、運用利回りが恒常的に回復する場合には見直していくというふうに言われましたので、そういう意味では時限的な特例措置として、でき得る限り労働者の労働条件の低下につながらないようにお願いをしたいというふうに思うわけです。
 第二に、中小企業に働く労働者の離職、転職の実情についてお尋ねをしたいと思います。
 最近の失業率が三・六%の関連で、特に中小企業における最近の離職、転職の実情というものはどのようになっているでしょうか。とりわけ、労働移動が激しい中小企業においてこの退職金制度の効用といいますか、機能というものは非常に位置づけが大きいというふうに考えられるので、その関連でお尋ねをしたいと思います。
#82
○政府委員(澤田陽太郎君) 労働者の労働移動を見るデータとしては雇用動向調査というものを私どもはやっておりまして、これをベースにお話し申しますと、今いる企業から動いた。動いた先が、再就職してほかの企業に行くか、失業者になるのか、労働市場から引退するのか、この辺はわかりません。とにかく動いたということで離職率を見ておりますが、このレベルは、先生御指摘のように規模が小さくなるほど離職率は高くなるということでございます。ただ、雇用動向におきます離職率は時系列的に見ましてもそれほど動いておりませんので、微変化の状況にございます。
 したがいまして、先生御指摘の近年の失業率の高水準との関係で雇用動向の離職率を解釈することはなかなか難しいと思いますが、直近のデータ、例えば平成九年上期と平成八年上期の雇用動向におきます離職率の差を見ますと、中小企業になるほど平成九年上期の方が離職率が大きくなっているということは、ある程度、全体の労働移動、その中でも失業については、中小企業のこうした離職率の動向が何らかの関係があるであろうということは推測できなくはないというふうに思っております。
#83
○大脇雅子君 今回の法改正の中で非常に積極的な意味を見出せるのは、特定退職金共済制度との通算制度の創設があるというふうに考えられるわけです。離職率をお聞きしたのは、この通算制度はどの程度の労働者への適用が見込まれているのかということをちょっとお聞きしたかったわけです。
#84
○政府委員(澤田陽太郎君) 大変難しい御質問でございまして、いろいろな前提を置いて私ども推計いたしてみました。
 その結果をかいつまんで申し上げますと、現在中退金制度加入企業から転職している方は累積十七万人というふうに見込まれております。そのうち、転職先が中退金制度に加入しているところへ移動して、いわば中退金制度の中で既にできておる通算制度で移動している方が現在大体一万件ぐらいあるというふうに思っております。こうした現状をベースに推計いたしましたところ、今後新たに設けます特退共との通算制度によりまして、一つは、特退金共済制度から中退金制度への通算制度を利用できる労働者数は約二万一千人、逆に、中退金制度から特定退職金共済制度へ移動する人が九千人ぐらい、年ベースでありますが、合わせて三万人ぐらいが当面見込まれるというふうに推計をしております。
#85
○大脇雅子君 ぜひこの通算制度が活性化して機能するように、運用についてさまざまな御努力をいただきたいと思います。
 それについて、制度間を移動した場合の処理の方法というものは具体的にどういうふうになるのでしょうか。先ほど中小企業退職金共済制度は個人別でというふうに言われたんですが、特定退職金共済制度とは仕組みとしては一緒なんでしょうか。だから、そこへ移ることによって利益、不利益が生じないような処理というのは必要だと思うんですけれども、それは心配ないんでしょうか。
#86
○政府委員(澤田陽太郎君) 今回の通算先であります特定退職金共済制度は、先生御指摘のように、個人別残高管理方式でありまして、方式は中退金と同じであります。
 ただ、違いますところは、中退金の方の退職金支給カーブはいわば累積カーブになっておりまして、加入期間が長くなればなるほど有利になる、基本的にはこういう仕組みになっております。一方の特定退職金共済制度の方は今約一千ぐらい制度がございますが、多種多様でございまして一概には言えませんが、平均的に申しますと、そこの退職金支給カーブはフラットなカーブ、累積カーブにはなっていないところが多いということがございます。
 その点で、お互いのもとの制度を導入できないと、移った先の制度に乗るのが制度間の負担の公平な分かち合いという点では適当だろうということで今回御提案をさせていただいております。
#87
○大脇雅子君 先ほどの御説明でいえば、特定退職金共済制度から中小企業退職金共済制度へ移る人の方が多いということですから、そういう意味ではその人たちには問題ないのかもしれないんですけれども、そのほか九千件の人たちについてもやはりそうした同じような制度への枠組みへ持っていかれることが通算制度にとって大事だと思いますので、そこは制度の問題点を少し検討していただく必要があるのではないかというふうに思います。
 最後に、申込金を不要とする簡素化などもできるだけしたらいいかなと思うんですが、ただ、退職金制度というのは、今まで年功序列のいわゆる終身雇用制と組み合わさって企業へのいわば定着政策として一つ作用していたと思うんです。それで、大企業にそれが非常に大きく機能していて、中小企業についてはそれがなかったということで、非常に中小企業の労働者の労働条件が悪かったということがあったと思います。そのために中小企業における退職金制度を設立したという意味は大きかったと思うんです。
 このところの退職金をやめて年俸制へ移行しようというような場合に、退職金制度そのものの社会的な機能が変化していくのではないかというふうに思うわけです。こういう傾向の中で、この中小企業退職金共済制度というものの効用というものを労働省としてはどういうふうに考えて、将来的に労働政策の中でどう位置づけていかれるのかというのを、最後に労働大臣にお尋ねしたいと思います。
#88
○国務大臣(伊吹文明君) 一番基本的で大切な問題のお尋ねだろうと思いますが、このことは、これからの日本の雇用制度のあり方が終身雇用制のようなものだけで動いていくのか、あるいはいろいろな企業間移動がごく当たり前のように行われるアメリカや欧州型の雇用制度をとっていくのかということにもかかわってくると思いますけれども、一部の大企業では、先生御指摘のように、既に退職金というものを賃金に上乗せをしてやっていくという制度がとられ始めております。
 そこで、そういう中で、先ほど木庭先生からもお尋ねがありましたように、終身雇用制の大企業が退職年齢に達した人を中小企業に押しつけていくというようなやり方は、やはり基本的に私は徐々に改めねばならないと思います。さはさりながら、中小企業というのは市場経済のもとで競争していくには相対的に非常に難しい立場におられる企業でございますから、そこに働く方々の勤務条件を少しでも上げていくために、先ほど来平田先生、木庭先生、今大脇先生からも建設的な御提言をいただいておりますので、そういうものを含めて、税制上の掛ける場合の損金の扱い、受ける場合の所得税上の扱い、それから将来の全体の年金制度の公平、不公平を含めて大変難しい問題ですが、私は、ここにこそまさに構造的改革をやらねばならない分野があると認識してやらせていただきたいと思います。
#89
○大脇雅子君 終わります。
#90
○吉川春子君 今、中小企業は不況、銀行の貸し渋りの影響で大変困難に陥っております。消費税を価格に転嫁できない中小企業がきのうの予算委員会での大蔵省の答弁でも六十万に上っている、こういう状況で消費税を納入しようと思えば、従業員の福利厚生や給与にも影響を及ぼさなくてはならないところに追い込まれている企業も少なくありません。
 それで、伺いますが、中小企業における退職金・企業年金に関する研究会報告、平成八年八月では、今後の中退金制度に求められるものは、「(1)福利厚生事業による魅力づけ」で、「制度加入を進める観点からも、さらに何らかの福利厚生事業を実施することについて、」検討が必要だと、「(2)中退金制度における老後所得確保機能の強化」などが指摘されています。
 そして、この報告書には運用利回りを引き下げることなどは触れられておりません。しかも、前回法改正で四・五%に引き下げてからわずか三年しかたっていないのです。それなのに今回なぜ三%に運用利回りを大幅に引き下げる改正を行うのでしょうか。
 この質問は同僚委員からもありましたけれども、市場金利の引き下げが原因だと、そういう御答弁がありました。そういう不安定なものに運用利回りをゆだねていいのでしょうか、制度の目的からそれは望ましくないと思います。過去において金利がうんと高いときがあったんだけれども、では、それに沿って運用金利が引き上げられたかというと私はそうではなかったと思うんです。やはりこういう不安定なところにゆだねるということはよろしくないのではないでしょうか。
#91
○政府委員(澤田陽太郎君) 中退金制度のまさに資金の運用につきましては、まずは安全確実であるということが基本でございまして、それは法律等で規制されております。そうした中で、例えば運用部資金に入れるとか国債を買うとかいう形でやっておりますほかに、市中の金融商品を使って運用しなければ全体としての運用成果を高めていくということはなかなか難しい状況にございます。
 先生御指摘のそういうやり方がいかがかという点につきましては、では、どういうようなかわりのやり方があるのか、私ども今ちょっと悩んでおるところでございます。
#92
○国務大臣(伊吹文明君) 政府委員が答弁しましたことに私が補足するというのも妙でございますが、三割を例えば財投に預託するとかあるいは確定利付の国債等、その運用は一応きちっと規制されているわけですが、財投金利や国債金利というものも、市場経済というか、私たちの住んでいる日本では、これは経済状況、金融状況に応じて変動するものでございますから、そういうものにゆだねるべきでないということであれば、じっと持っておれば利子は生みません。したがって、掛金以上の配当はできません。どこかにやはりこれは運用をしなければならないわけで、税金から割り増しを乗せてお渡しするという制度ではございませんので、ちょっと先生の御質問の趣旨がよく我々はわかりかねるわけなんです。
#93
○吉川春子君 中小零細企業がこれによって退職金制度を維持しようとしている、それを金利が下がったから直ちにそういう支給の金額も引き下げていくという制度がいかがなものか。金利が下がった、では、直ちに運用利回りも下げますという形じゃない、そういうことが望ましいということを私は指摘したんです。
 具体的にそれを伺っていきます。
 まず、この制度によって、今回の改正で、括弧つきの改正ですが、直接影響を受ける事業所はどれくらいかという数字は大臣の趣旨説明で四十一万、加入労働者数は二百八十一万と、このように報告されましたが、これは事業所規模別にパーセントでおっしゃっていただきたいと思います。
#94
○政府委員(澤田陽太郎君) 平成九年三月末現在の企業規模別の加入状況を割合で申し上げますと、企業規模一から四人が全体の三九・四%、五人から九人が二八・二%、十から十九人が一八・七%、二十から三十人が六・六%、三十一から五十人が四・一%、五十一人から百人が二・二%、百一人から二百人が〇・七%、二百一人から三百人が〇・一%ということで、規模の小さいところの方が当然ながら割合が高いという結果になっております。
#95
○吉川春子君 そうですね。規模が二十人未満の企業が実に八六%以上利用している、こういう制度であるわけで、これを非常に魅力的なものにして、特に困難な中小零細企業のもとで働く労働者の退職金を守っていかなきゃならないということは、大臣もうなずいていらっしゃいますので、御異存はないのだと思います。
 それで、大臣、お伺いしたいんですが、退職金は高齢化の一層の進展の中で、老後生活を支える柱としてもその役割はさらに大きいものになっている。特に、独力で退職金制度を持つことが困難な中小企業においては、退職金制度の普及率等について格差が大きい中で、今後とも事業主の相互共済の仕組みと国の援助から成る中退金制度の果たすべき役割は大きい。これは一月三十日の建議で述べられているわけですけれども、内容を魅力的なものにするためにどういう努力を今後されようとしているんでしょうか。
#96
○政府委員(澤田陽太郎君) 今、先生がお読みになった建議はそのとおりでございます。
 そこで、私どもは制度の内容を充実する、魅力あるものにするという観点でいろいろ検討し、今回その一つとして通算制度の創設ということを御提案申し上げている次第であります。
 ただ、残念ながら、予定運用利回りの引き下げにつきましては、制度の充実という観点ではマイナスの要素があることは事実でありますが、あえて申し上げますと、制度の充実の前提として制度の安定、継続ということがまず必要でございまして、そのためには今回やむを得ざる措置として予定運用利回りの引き下げをさせていただくという点でございます。
 また、今回の法改正だけではなくて、審議会の建議でも今後残された課題、やるべきことが幾つか書かれております。法改正事項ではありませんが、資産の運用について全体にもっと効率を上げるという宿題をいただいております。これは予定運用利回りの引き下げをある意味ではカバーする対策にぜひともしていきたいというように思っておりまして、そうした面でも今後さらに検討し、制度の充実に役立ついろいろなツールをつくっていきたいと思っております。
#97
○吉川春子君 今回の運用利回りの引き下げでどのような被害が出るんでしょうか。掛金額の最も多いのは八千円前後と聞いていますけれども、例えば区切りよく一万円と仮定した場合に、退職金の受取額は現行と改正後、どの程度差が出てきますか。
#98
○政府委員(澤田陽太郎君) 掛金月額一万円、平均加入期間八年、こういう条件でやってみますと、現在の給付額、退職金額は百十五万五千円となります。これが改正後に新規に加入された方が
 一万円で八年という計算をいたしますと、百八万四千円となりまして、約六・一%の減少になります。
#99
○吉川春子君 現行で例えば二十年後、三十年後、幾ら受け取ることになりますか。改正後の数字では幾らになりますか。
#100
○政府委員(澤田陽太郎君) 例えば、加入期間二十年といたしますと、現行では三百八十九万三千円になります。これが改正後は三百三十万二千円ということになりまして、約一五%の減少という形になります。三十年の場合、これは現実にはほとんどあり得ないケースでありますが、現行では七百五十四万、これが新規では五百八十二万四千円という形で約二三%の減少となっております。
#101
○吉川春子君 大変な減額になるんです。そして、老後の生活設計の影響も大ですけれども、この減額についてあらかじめ加入者に連絡をして同意を得ておりますか。
#102
○政府委員(澤田陽太郎君) 今回の減額についての御提案につきましては、審議会におきまして十分御議論をいただいております。そこでは使用者の代表、受け取る側の労働者の代表が当然入っておりまして、そうした方々の意見を踏まえて答申をいただき、国会に提案させていただいておりますので、個々の事業主、労働者に事前に了解をとるということは必要のないことと思っております。
#103
○吉川春子君 審議会の代表は、例えば労働者代表だとしてもその意見を代表して言っているわけじゃなくて、単なる審議会の委員としておっしゃっているんであって、それだから了解をとる必要がないと言い切れるんでしょうか。
 これは、労働者において退職金を受け取る債権はいつの時点で発生するんですか。
#104
○政府委員(澤田陽太郎君) 労働者が退職した時点でございます。
#105
○吉川春子君 加入したときには債権は発生しないんですか。
#106
○政府委員(澤田陽太郎君) 私どもはないと考えております。
#107
○吉川春子君 これは第三者のためにする契約だと、きのう説明されましたね。
#108
○政府委員(澤田陽太郎君) 債権として確定して現実化するのは退職時点ということでございます。
#109
○吉川春子君 そうしますと、中退金制度に申し込んだとき、何らの債権も発生しないんですか。退職して退職金を受け取るときにしか債権が発生しないんですか。いいですか、そういうことで。
#110
○政府委員(澤田陽太郎君) そのように考えております。
#111
○吉川春子君 これはすごいですね。要するに、事業主が中退共に申し込むわけです。そして、そこで契約が成立するわけでしょう。そこで契約が成立するわけでしょう、どうなんですか。
 ちょっと時間がないので、こんな基本的なところはすいすいと答えてください。
#112
○政府委員(澤田陽太郎君) 失礼いたしました。
 契約は確かに成立いたしますが、そこでは労働者の期待権が発生いたします。繰り返しになりますが、具体的に債権が確定するのは退職時点ということでございます。
 一つ余計なことを申し上げますと、事業主と労働者の間の退職金の問題と、事業主が労働者に支払う退職金の中でいろいろなやり方があろうかと思いますが、その一部である中退金の退職金の問題とは当然ながら区別して考えているところでございます。
#113
○吉川春子君 私、ちょっと時間がないので確認だけしておきますが、とにかく事業主が加入しますね、そのときに期待権以外は何らの債権も発生しないと、こういう答弁と確認していいですね。
#114
○政府委員(澤田陽太郎君) はい、結構でございます。
#115
○吉川春子君 これはもう大変な契約に事業主が入るということになると思います。
 それで、労働省は法的には関係ないと言うんだけれども、それは大変疑問がある。同時に、国のやる制度としてこれだけの大幅な利回りの引き下げにより退職金の受取額が減るわけだから、そういうことについて何ら事前に事業主にも知らせない、あるいはもちろん労働者にはもっと知らせない、了解もとらない、こういうことが国の制度としていいんでしょうか。
#116
○政府委員(澤田陽太郎君) 今回の御提案を国会でお認めいただくことになるとすれば、施行は私ども平成十一年の四月からというふうに考えております。
 その施行前に、今回の改正の内容につきましては既に契約されている事業主、労働者、それからこれから加入する可能性のある中小企業の皆さん方には十分に御説明し、理解を賜ることにいたしております。
#117
○吉川春子君 それはもう国会で決まった後こういうふうになるんだということで知らせるということであって、そんなに重大な影響を与える当事者に何ら事前に知らせないと、審議会をやりましたからそれで済みますという問題じゃないじゃないですか。これは大変な民主主義に反する発想だと思います。これはやっぱり何らかの形で事前にお知らせするということぐらいの手続は行ってしかるべきじゃないですか。
#118
○国務大臣(伊吹文明君) 吉川先生、こういうことだと思います。
 例えば、厚生年金だとか国民年金にお入りになっている皆さんもいらっしゃいます。しかし、受給者の年齢あるいは加入者の年齢構成、いろいろなことがあって、それを変えねばならないときは、その法律はやはり国会へお願いしているわけです。そして、その法律が通った後の時点から新法が適用されるんであって、従来既に入っておられる方は、その入っておられるときまでの給付の約束と掛金は変わらないわけです。
 ただ、今後は掛金は変えさせていただきたいということでございますから、民主主義の手続を経て国会で通していただいたものをごらんになって、継続をされるか新規加入をされるかは国民お一人お一人が御判断をなさるということになっておるわけです。
#119
○吉川春子君 それは違うと思うんです。契約だとおっしゃるわけでしょう、第三者のためにする契約だとおっしゃるんでしょう。その一方の契約当事者に何にも知らせないで一方的な運用利回りの切り下げを行うということは私は法律的にもおかしいと思いますが、政府の施策としてもやっぱり今度こういうふうになるんですよというぐらい、百歩譲って了解まで得られないとしても、そういうことを知らないうちにいきなり国会で決めました、何月何日から法を施行しますという形で行うということは余りにも不親切ではなかろうかというふうに思うわけです。
 それで、もう一つそれでは伺いますけれども、やはり退職金というのは後払い賃金という形になるわけですね。だから、今度の法改正で企業としては労働者の賃金を勝手に切り下げることはできないという立場に立てば、そういうふうに悩む企業が多いと思いますが、そうだとすれば現行の給付額を維持するためには企業の持ち出しがふえるわけです。
 まず具体的な数字をお伺いいたしますけれども、現行の給付額を維持するために掛金をどれだけ引き上げなくてはなりませんか。十年目、二十年目、三十年目、この数字をパーセントでお示しいただきたいと思います。
#120
○政府委員(澤田陽太郎君) 例えば二十年目で申しますと、掛金ベースで言うと一七・九%の引き上げが必要であるということになります。
#121
○吉川春子君 二十年目で一七・九%ですね。
 だから、これだけの負担を中小企業はみずから負わないと改正前の水準で働く人たちの退職金を保証できないんです。
 こういう負担能力が今の中小企業にあるとお思いでしょうか。
#122
○政府委員(澤田陽太郎君) 先生の御指摘でありますが、そこは一概にあるとかないとか言えないと思います。
#123
○吉川春子君 それはどういうことですか。中小企業の現状とかあるいは景気の見通しとかいろんなことを考えてこの利回りの引き下げということを行ったんじゃないんですか。中小企業がどうだかわからないで、やみくもにこういう改正案を出してこられたんですか。
 中小企業の見通しについてどういうふうにお考えなんてすか。こういう一七・九%もみずから負担をするという、そういう能力が今の中小企業にあると思うんですか。
#124
○政府委員(澤田陽太郎君) 中小企業の経営者にとりましては、この掛金はいわば労働コストの一部でございます。現在、一般的には大変経営環境が厳しい中で中小企業も御苦労されておりますが、労働コストの総額をどうするか、その配分をどうするかにつきましては、それぞれの経営状況の中で事業主が判断することでありまして、私どもが掛金という形での労働コストの配分についてどうであるかということはなかなか言いがたい、こう思っております。
#125
○吉川春子君 中小企業については大変冷たい御発言ですね。
 ことしは通常国会が一月十二日に開会されたんですけれども、銀行に三十兆円を投入する、こういう補正予算二法案の審議から始まったわけです。銀行については片や三十兆円、今までに例のないようなことをやっておきながら、中小企業労働者の本当にわずかな、しかも退職金ですよ。ふだん賃金でも大企業とは格差がある、そういう中で働いている退職金、その負担を切り下げておいて、そして中小企業に負担を押しつけようとしても実際はなかなか難しい。その負担は労働者に来る可能性が大きいと思うんです。
 そういうことを避けるためにも、やはり政府がこれはいろんな形で中小企業に対してあるいは中小企業の労働者に対して援助をすべきだ、そのことを最後に大臣に私は要求します。いかがですか。
#126
○国務大臣(伊吹文明君) 金融機関への三十兆というのは、これは言うならば金融機関の預金引き出しあるいは自己資本充実のための貸付金でございます。金融機関の運転資金を政府が保証して貸しているわけですから、アメリカの例もそうでございますが、これは当然将来金利をつけ、あるいは株の値上がりによって返ってくる運転資金です。
#127
○吉川春子君 返ってこない場合もあるんですよ。
#128
○国務大臣(伊吹文明君) したがって、今の中小企業について言えば、同じように中小企業金融公庫とか国民金融公庫とか環境衛生金融公庫からその運転資金の手当てはしておるわけです。
 先生がおっしゃっているのは、この中退金について、金利状況等から従来どおりできなかった場合に、要するに税金を投入するあるいは運転資金じゃなくて贈与をすると、税金あるいは雇用保険から贈与をするということがなければ先生がおっしゃっていることはできないわけです。
 私も中小企業の息子でございますから、中小企業の諸般の対策というのは今これは十分だとは思いませんが、国民負担の枠の中で政府としては努力をしておりますし、今後とも税制あるいは予算の面で努力できることについては私は政治家として最大限の努力をしたいと思っております。
#129
○吉川春子君 時間なので、終わります。
#130
○堂本暁子君 最後になりますと大体質問は出切ってしまいまして、重なる分が非常に多いのでダブって伺うことはしないことにいたします。幾つかの点について確認をさせていただきたいというふうに思います。
 それにつけても、同僚議員がるる今まで言ってこられたように、こういった景気が悪くなったときあるいは金利が下がったときに、中小企業に働く方たちのところへしわ寄せが来るような形できょうの法改正をしなければならないということ、大変何かつらいというか、こういう国民の信託を受けている立場としてもっとどうにかできないのかなということを非常に思います。
 大臣は先ほどもおっしゃいましたけれども、年金の公平、不公平ということも大きな問題でもございますが、やはり労働のあり方も変わってくるときで、もっと抜本的な構造的な変革の時期に来ているという中でこの問題をどう位置づけたらいいのかと思っております。ただ、そのことをここは議論するという場ではないと思いますので、意見としてそれを言わせていただいた上で幾つかの点を確認させていただきたい。
 まず、きょう問題になっているのは資金の問題、運用の問題、そして金利の問題というふうに思います。きのうからまさに金融のビッグバンがスタートいたしまして、そういった中で外資系も入ってくるわけです。今後その運用方法、縮小する方向なのか拡大なさるおつもりなのか、どのような基本的な姿勢で運用に当たられるのかということをまず伺わせてください。
#131
○国務大臣(伊吹文明君) 先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、建議では効率的にということは先生御指摘のとおり言われているわけです。
 ただ、率直に申し上げて効率的という言葉は非常に難しゅうございまして、厚生年金基金等でバブルのときに自主運用して大穴をあけたところもあるわけです。そのときに自主運用をしなかったところはみすみすチャンスを見過ごしたじゃないかというおしかりを実は受けながら雇用保険特会などはぐっと耐えておって、そして全額財投預託でずっときたわけです。結果的には、我々は雇用保険特会では穴はあけませんでした。しかし、大赤字になっている他の特会もございます。
 そういうことから考えますと、効率運用というのは非常に難しい言葉でございまして、大切なお金を預かっておるわけでございますから、欲張らずそのかわり損をしない、そういう運用姿勢でやはり基本的にはいくべきなのであって、一時の浮利を求められない者が能力がないとかうまくやらなかったという風潮は私はとらない方がいいのじゃないかと思っております。
#132
○堂本暁子君 確かに特会で大変赤字を出したところがあることは存じておりますが、それゆえにこれから中退金制度で大事なことはやはり情報の公開ではないかと思うんです。一方で私は情報公開法とも深くかかわっておりますけれども、ほとんど国の事業に近い公的な性格を持っている制度である以上、事業内容の公開というのが大変必要だと思います。その点について見解をお示しいただきたい。
#133
○国務大臣(伊吹文明君) これは中退金の問題だけではなくて、自由化をしていけば自己責任というものは当然生じてくるわけですから、自己責任を負わす限りは自己責任を負うための判断である、例えば銀行の内容であるとか、こういうものは当然私は情報公開をしていかねばならないと思います。ただその中で、国家の安全保障だとかあるいは国家をうまく動かしていくためにできないものがあると思いますが、そこの範囲についてはいろいろ御議論が当然あると思います。
 中退金の内容についても、国民のお金をお預かりしているわけですから、どういうものに資産の運用をしているのか、労働大臣が決めるわけですから、それがどうであるかということは今も当然皆さんにお知らせいたしておりますし、今後もそういう姿勢は私はきちっととっていきたいと思っております。
#134
○堂本暁子君 確認ですけれども、決算内容についても公開されますね。
#135
○政府委員(澤田陽太郎君) 政府の特殊法人共通のことでございますが、特殊法人のディスクロージャー基準に従いまして官報におきまして決算内容を含めて公表いたしております。
#136
○堂本暁子君 あと中小企業退職金共済事業団の役員の方ですけれども、その役員が機構の資産運用に重大な責務を負うことになりますけれども、責務のあり方と範囲、これもお示しいただきたいと存じます。
#137
○政府委員(澤田陽太郎君) 機構の役員が資産の運用に関しまして善良なる管理者としての注意義務、これを持っておることは明らかであります。
 その点につきましては、特に中退金法に明文の規定はございませんが、民法上明らかになっておりまして、私どももそういう立場で監督をしておりますし、特殊法人の役員も自覚をしてやっておるところでございます。そして、中退金法上の関連する規定といたしましては、善管注意義務との関係が深い兼職禁止規定、それから刑法等の運用についてのみなし公務員規定が定められているところでございます。
#138
○堂本暁子君 大臣、最初に申し上げたように、今構造的な改革の時期を迎えているというふうに思いますけれども、その中でやはり退職金というのは、私も三十年ほど企業に勤めていましたが、大変楽しみにしているものなんです。本当に賃金に退職金を上乗せするようになるような時代が来るのかどうか。
 いろいろあるとは思うんですけれども、日本国の特徴は、正規の雇用者とパートやそれから派遣の人との格差、それからもう一つは恐らく大企業と中小企業との格差、もう一つはやはり男性労働者と女性労働者の差別、これはもう非常に特徴的なんではないかというふうに思っております。
 ことしの二月の労働力調査によりますと、パートや日雇いは二十五万人ふえたけれども、正規の雇用者は三十四万人減った。そして、女性の場合も正規の雇用者は十五万人減って、パートが二十一万人ふえたという数字があります。
 こういった全体的な雇用の状況の中で、中小企業にもそういった同じようなことが比例して起こっているんだろうというふうに想像できるんですけれども、そういった中でやはり一番弱いところにしわ寄せが行く。
 こういった退職金のあり方、私はできることなら、そういう弱い人がいつも不利な立場に立つようなことがないためには通算できるような、例えば大きい企業でリストラの対象になった、あるいは中小企業から大企業に就職できた、あるいはパートになるとか、いろいろな時期やそれからその人の年齢によって雇用の移動があると思うんですが、そういったときに一番弱い者にしわ寄せが行かないような、不公平が行かないような方法というと、やはり通算できるような退職の制度ではないか。あるいは、本当にもう退職金というのをなくして賃金に上乗せするのか、その辺のあたり、大変これはこれからの日本国の労働政策の根幹にかかわってくる問題だと思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
#139
○国務大臣(伊吹文明君) 大変難しい御質問でございますし、また国政というか労働政策を考えていく基本的な価値観とか哲学にもかかわるものだろうと思います。
 労賃に上乗せをしていくというやり方は基本的には移動の自由を認めて終身雇用制をなくしていくという方向だろうと思いますし、通算をしていくというのもそういうことがあるんだと思います。これはどちらがいいか一概には私は言えないと思います。
 多分ここにいらっしゃる先生方はすべて職場の移動をされた方々ばかりだと思いますが、今後はいや応なくそういう方向が私は出てくるだろうと思いますし、またその希望しておられる方の働き方としてそういう道を閉ざすべきではないと思います。
 そうなった場合に、先ほど平田先生や木庭先生や大脇先生から、この制度を前提とした上で通算制度等について大変建設的な御意見を幾つか承りまして、私は伺っておってなるほどなと思うことも多うございました。したがって、どちらをとるかというんじゃなくて、やはり多様な選択にこたえ得るような制度、仕組みをやっていく。その一つとして通算制度のあり方について、先ほど来の建設的な御提言を念頭に置きながら今後少し検討させていただいて、審議会等にもお諮りをして、またもう一度法改正をお願いする場合もあろうかと考えております。
#140
○堂本暁子君 終わります。
#141
○委員長(鹿熊安正君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#142
○委員長(鹿熊安正君) 御異議ないと認めます。
    ―――――――――――――
#143
○委員長(鹿熊安正君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、佐藤静雄君が委員を辞任され、その補欠として常田享詳君が選任されました。
    ―――――――――――――
#144
○委員長(鹿熊安正君) これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#145
○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 中小企業退職金共済制度は、一九五九年に発足し、独立ては退職金制度を設けることが困難な中小企業に対して従業員の福祉の増進と中小企業の振興を目的に行われている制度であり、今回の法改正はこれに逆行するものだと考えます。
 具体的に、反対の第一の理由は、本法案が中小企業の経営者と労働者双方に新たな負担を強いるものだからです。すなわち、本改正によって減額される退職金は、御答弁がありましたように、一万円の掛金で仮に二十年加入した場合、三百八十八万三千円が三百三十万二千円に、実に五十八万一千円にも及びます。ただでさえ困難な状況にある中小企業労働者の退職金を一五%も切り下げることが許されるはずがありません。また、事業主が退職金額を維持するためには、事業主は毎月の掛金額を一七・九%引き上げなくてはなりません。消費税の五%への引き上げ、医療保険改悪による九兆円負担増とそれに引き続く金融政策の誤りによって引き起こされた、かつてない深刻な政策不況のもとで、さらにこれだけの負担を強いることは悪政以外の何物でもありません。
 特定退職金共済との通算制度を導入することは、中小企業労働者の在職年数の実態、特定退職金共済の普及の実態から見て当然のことでありますが、これによって中退金制度が民営化の方向に進むものであってはなりません。
 最後に、このような重要な法案を参議院先議法案として充実した審議を行うべきところ、短時間の審議で議了することにも反対であることを申し述べまして、討論を終わります。
#146
○委員長(鹿熊安正君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#147
○委員長(鹿熊安正君) 御異議ないと認めます。
 これより採決に入ります。
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#148
○委員長(鹿熊安正君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 笹野貞子君から発言を求められておりますので、これを許します。笹野貞子君。
#149
○笹野貞子君 私は、ただいま可決されました中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民友連、公明、社会民主党・護憲連合、自由党及び新党さきがけの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、中小企業に働く労働者が比較的頻繁に労働移動する実情にかんがみ、中小企業退職金共済制度の運用に当たり、次の事項について特段の配慮を行うべきである。
 一、本制度の普及促進を図るため、地方公共団体及び事業主団体等との連携を一層強化するとともに、増大するパートタイム労働者等に対する加入促進策を積極的に進めること。
 二、本制度の安定に資するため、その資産運用について、その安全性と有利性の確保に一層努めるとともに、制度運営についての情報公開に努めること。
 三、少子高齢社会に対応し退職金制度の有する労働者の老後保障機能の充実を図るため、適格退職年金等との通算について検討すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
#150
○委員長(鹿熊安正君) ただいま笹野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#151
○委員長(鹿熊安正君) 全会一致と認めます。よって、笹野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、伊吹労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。伊吹労働大臣。
#152
○国務大臣(伊吹文明君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
#153
○委員長(鹿熊安正君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#154
○委員長(鹿熊安正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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