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#1
第142回国会 国民福祉委員会 第9号
平成十年四月二十一日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十日
    辞任         補欠選任
     浜四津敏子君     加藤 修一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 正和君
    理 事
                尾辻 秀久君
                南野知惠子君
                水島  裕君
                渡辺 孝男君
                清水 澄子君
    委 員
                阿部 正俊君
                石井 道子君
                佐藤 泰三君
                田浦  直君
                常田 享詳君
                中原  爽君
                宮崎 秀樹君
                今井  澄君
                釘宮  磐君
                加藤 修一君
                西山登紀子君
                木暮 山人君
                西川きよし君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大貫 延朗君
   参考人
       日本医師会常任
       理事       小池麒一郎君
       聖マリアンナ医
       科大学客員教授  清水喜八郎君
       弁  護  士  鈴木 利廣君
       全国ハンセン病
       療養所入所者協
       議会会長     高瀬重二郎君
       国立国際医療セ
       ンター研究所所
       長        竹田 美文君
       明治大学法学部
       教授       新美 育文君
       大阪HIV訴訟
       原告団代表    花井 十伍君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に
 関する法律案(内閣提出)
○検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律
 案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本正和君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十日、浜四津敏子君が委員を辞任され、その補欠として加藤修一君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(山本正和君) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、両案について七名の参考人の方々から意見を聴取することといたしております。
 まず、午前は三名の参考人に御出席をいただいております。
 参考人の方々を御紹介いたします。日本医師会常任理事小池麟一郎君、聖マリアンナ医科大学客員教授清水喜八郎君、弁護士鈴木利廣君、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。
 両案につきまして、参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただき、委員会の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御着席のままで結構でございますから、御着席のまま御意見をいただきたいと思います。
 それでは、まず小池参考人から御意見をお述べいただきます。小池参考人。
#4
○参考人(小池麒一郎君) 日本医師会常任理事の小池麒一郎でございます。
 今回御審議中の法案に関して地域医療の視点から申し上げたいと存じます。
 制定以来百一年、現行伝染病予防法は、既に絶滅した天然痘が残っていることを見ましても現代には適合せず、患者さんの人権という点に関しましても問題が多かったと思います。
 また、感染症の領域では、過去三十年間にエボラ出血熱、ラッサ熱等を初め三十種類を超す新興感染症が出現しまして、我が国におきましても、一昨年、堺市での腸管出血性大腸菌O157感染症の爆発的集団発生を見たことはいまだ記憶に新しいところであります。
 さらに、近年、航空機大量輸送が頻回に行われる時代となりまして、潜伐期間内に空港検疫を通過し、世界各地の種々の感染症が直接我が国の生活の場に侵入するおそれがあり、それに伴って周辺への感染の危険は増大いたしております。
 加えて、食糧自給率が低下し、輸入食材依存性が高まっている我が国の現状におきましては、食材等に付着して偶発的に病原体が侵入する可能性も高いのでありまして、現実に海外渡航歴のない人がコレラに罹患した例もあり、さらにはオレゴン州輸入のカイワレダイコンの種子に付着したと考えられますO157の家族発生例で実証済みであります。イギリスでの狂牛病と国際的な食肉紛争を見るまでもなく多くの問題が発生しているところであります。
 しかし、国民病と言われた結核がほぼ制圧し得たこともあり、とかく我が国では医療関係者も含め国全体が感染症はほぼ克服できたと安易な考えを抱きがちであったのでありますが、国際交流の活発化に伴い感染症はボーダーレスとなったことを御理解いただきたいのであります。
 例えば、昭和三十一年以降、我が国では狂犬病の発生は外国でかまれ国内で発病した一例を除いて一人も出ていないのでありますが、世界じゅうで安全なのかと申しますと決してそうではありません。WHOの調査では、一九九五年には三万五千五百余人の方々が犠牲になっておられます。
 我が国でも、もっと身近なインフルエンザを例にとりましても、先般、新型香港H5N1の事件がございましたけれども、一昨年から昨年にかけての冬には多くの高齢者の方が亡くなられました。また、本年も小中学校におきまして学校・学級閉鎖が多発いたしました。脳炎、脳症を併発し、亡くなられたり後遺症を残されたりしている子供たちも少なくはないのでありまして、残念ながらその数は把握されていない次第であります。
 さらに、結核、マラリア、MRSA等、従来の感染症も薬剤耐性という装いを新たに再登場してきております。いわゆる再興感染症であります。
 したがいまして、医療現場では国境のなくなった世界じゅうの感染症に接する可能性が増大し、また新異感染症ばかりでなく再興感染症にも囲まれていると言っても過言ではありません。
 このような状況にあって、国民の健康を守り安全を確保するためには、現代感染症の実態に適合した感染症対策が何としても必要であり、新しい法律の成立が早急に望まれるものであります。
 今回の法改正におきましては、当然ながら症状の重症度と感染力によって一類から四類に分類され、さらに何が起こるかわからない状況にありまして、未知の新感染症まで包括されております。
 過去の関連法の反省に立ち、公衆衛生審議会伝染病予防部会基本問題検討小委員会で十八回、ワーキンググループを加えますと三十回以上、審議を十分に尽くしました。患者さんの行動の制限も人権に配慮し手続保障として条文にも盛り込んであります。例えば、三十日を超える入院に対する不服申し立てには五日以内に厚生大臣が裁決することが規定され、また、各保健所には医師以外の学識経験者も加わった感染症診査協議会が設置され、入院の妥当性について協議されることになっております。
 医師の立場から見ますと、手続保障に余り重きが置かれますと感染症の拡大防止に大丈夫かという心配があったことも事実であります。しかし、法案要綱は公衆衛生審議会で全会一致で了承されたものであり、小委員会報告書の内容は十分に現在御審議中の法案に盛り込まれていると思っております。
 さて、日本医師会といたしましては、堺市のO157発生時には厚生大臣と日本医師会会長の連名で治療のマニュアルを全国の医師に伝達いたしました。また、平成九年一月には感染症危機管理対策室を設置して、厚生省、各都道府県医師会と密接な連携を図りつつ感染症危機に対する即応体制を整えてあります。また、予防こそ第一義であるというふうに考え、日常的に予防接種事業に全面的に協力、努力いたしているところであります。
 付言すれば、最近、一部の地域におきまして麻疹が流行しておりますが、予防接種をしていなかった子供がほとんどであります。私としましては、予防接種率が著しく低下していることを憂慮いたしており、予防接種に対する再認識が必要で、国民の健康の安全保障という認識で取り組むべきであると思っております。
 今後、国において患者、感染者への良質かつ適切なる医療を提供することができる感染症予防対策を講ずるのに十分な予算措置を図ることを切にお願いいたしたいと存じます。特に、感染症に関する研究の推進、感染症に関する医師の再教育、感染症指定医療機関の整備を初めとした地域医療の現場への十分な支援が必要不可欠であります。
 私は、今回の法案は我が国の感染症対策の骨格をなすものと理解しております。今後、政省令、基本指針などで肉づけをして、我が国の感染症対策を確立していかなければならないというふうに感じております。
 感染症対策の推進に当たっては、行政、医師会、研究機関等の関係者がそれぞれの責務を果たすとともに、密接な連携を図って総合的な対策を確立する必要があります。今後、感染症に対する医学的知識、診断能力等を高めることが肝要であり、日本医師会は生涯教育の場を活用し、感染症についての教育に力を注いでいく所存であります。
 以上、雑然と申し上げましたが、公衆衛生審議会の審議にかかわらせていただいた一人といたしまして、感染症の脅威を考えるとき、国民の生命、健康を守るために、一日も早い感染症の新法の成立を期待いたしております。
 ありがとうございました。
#5
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 次に、清水参考人にお願いいたします。清水参考人。
#6
○参考人(清水喜八郎君) 私は、内科の感染症を専門にしている臨床医でございます。
 一九六八年に、厚生大臣の諮問で、今他の伝染病対策のあり方というのが諮問されました。それで、その当時、私は若くてそのお手伝いをさせていただきました。それから、平成四年から第十六期日本学術会議の免疫感染症研究連絡委員会で、平成九年の二月に感染症対策の確立ということで報告を出しました。その報告の基本になっている資料が本日先生方のお手元へ配ったものであります。
 若干そういった経過を踏まえて、私の感想を述べてみたいと思います。
 この感染症法案を運用するに当たって、患者に直面するのは臨床の医者であります。したがって、臨床の医者というのは感染症に関して十分な知識と経験を踏まえて最善の医療を提供することが大切であって、それがこの法案を活用し有用に運用することになるわけであります。
 この感染症の変貌というのは、私は三つの立場から考えなければならないと思います。つまり、今、実際に病院に入院している患者の中で、大体一五%の患者さんが何らかの感染症を持っています。なぜそういうことになってきたかというと、いわゆるコンプロマイズドホストという非常に感染しやすい、易感染性の宿主がふえてきた。つまり、高齢者であるとか、医療の進歩によって寿命が延びて超高齢化してきた。そういう人は非常に感染しやすくなっておる、これが非常に大きな問題の一つである。
 それから、いろいろ議論をされております、旅行速度が迅速化されてきて、いろいろな感染症が入ってくる。ですから、国内の感染症を考えるのではなくて、感染症というのはグローバルに、世界的にこれを見ていかなければならないというのが第二点。
 それから第三点としては、地球環境の温暖化ということが言われて多くの議論がされています。それに関して、感染症の議論はまだそれほどされていませんけれども、二〇一〇年にはマラリアが八千万人ふえる、あるいは腸管感染症がふえる。これは亜熱帯、温帯、要するにだんだん温暖化してくるということになるわけです。
 ですから、これに対して対応をしなければいけないということになりますが、さっきも申しましたように、専門的な十分な知識を持った医師が多くなければならないはずでありますけれども、二十世紀の医学の最大の進歩というのはペニシリンの発見、つまりペニシリンを初めとする抗生剤の発見というものが感染症を割に軽視することになってきて、それがもとであるためか日本における感染症を専門にする医師というのは極めて少ないわけであります。
 私のその文献の中に書いてありますけれども、特に臨床の医師が少なくて、内科、小児科、合わせて大体千五百人ぐらいであろうというのが現状で、その中で感染症学会として認定をした人が今四百人おります。今、日本の病院の数が九千ありますから、それだけの数、あるいは感染症を専門にしている人の数を推定しても七千人ぐらいしかいないわけですから、これはもう絶対的に足らないということがあるわけです。
 それで、もう一つそれが足らなくなった大きな要因というのは、その治療法の進歩でもありますけれども、やはり教育機関でこの感染症を専門に教育する感染症講座というのがないわけであります。アメリカではそういう講座が存在したために、あのエイズの大爆発があってもそれに十分対応できたわけであります。そのことは結局、研究費も少なくなる、業績も出なくなるという悪循環の繰り返しが行われる。
 ですから、ぜひともそういう教育機関の確立ということがこの法律の今後の運用のためには必要であるということ。そして、国立の感染症研究所あるいは国立の医療センターと大学との間の役割分担をはっきりすべきであろうということになります。百年前の伝染病予防法では、病原体の検索であるとか疫学調査というのがまだ全くやられない時代でありましたから、今後は、そういう意味を含めて感染症の専門医というものを養成することがこれからのこの対策の非常に大きな要点になってくると思います。
 この法律の中に感染症に関する協議会というのがありますが、この協議会の構成委員に学識経験者というのがあります。この学識経験者というのに、十分な知識と経験を持つ人材をこれから育成していくということが非常に大切なことになる。つまり、感染症というのは、あくまでも国内ではなくて世界的視野で見ていただきたい、見なければならないということ、そういう研修の制度をつくっていかなければならないわけであります。
 それから、もう一つの問題は、検査制度の問題が挙げられると思います。今、我が国においては、個人あるいは地域社会に非常に危険度の高い微生物の検出、これをP4の検査と言っていますけれども、これが日本では実際にやられていないわけであります。ですから、一号感染症のようなものが入ってきたときに、その病原体の検出をするためには、これはアメリカに送ってその検出をしなければならないというのが現実にあって、ぜひともこれも確立していかなければならない。
 それからもう一つ、この法律の中に出てくる新感染症という言葉がございます。これは最初の報告の時点では原因不明の感染症という言葉が使われておりましたが、私は新感染症という言葉の方が的確にその意味を表現していると思います。つまり、この新感染症というのは、今の私たちの医学の知識からは推定し得ない可能性のあるものまでも含めたものを新感染症としているわけですから、この新感染症が出てきたときの認定、これは公衆衛生審議会でいろいろ技術的指導をするという表現が書かれてございますけれども、これはさっきの感染症に関する協議会と同じように、つまりグローバルの視野で十分な経験と知識を持った学識経験者がここに入ってこなければ極めて困難な事態になります。ですから、報告のところをお読みになられるとやや理解しにくい面があるかと思います。
 それから、指定感染症という言葉が使われていますけれども、この指定感染症というのは、これは病原体のわかっていたものであって、例を挙げますと、新型のインフルエンザが出てきて非常に猛威を振るったときに、それは指定感染症として指定しなければならない。一時、MRSAが大変問題になりましたが、現在アメリカでは、MRSA以上にバンコマイシン耐性の腸球菌の院内感染が極めて流行して非常に困っております。そういうものが今度日本へ入ってきたときにも、こういうものの対応というものを考えなければならない。つまり、新感染症と指定感染症の関係というのは、新感染症のものでいろいろわかってきたらばこれは指定感染症になるし、指定感染症というのは今あるものも指定感染症になり得るものもあるという二つのものをお考えいただければよいかと思います。
 こういう一連の流れから、この法律に関する意見書が出されました。この中には頭の中で考えているものもかなり入っているわけであって、現場との対応の間にギャップを感ずる箇所は確かにございます。そのものが今度は要綱になって法律になってきますと、私どもがそれを読んでもかなり難解なところがあるわけであります。私の率直な意見といたしましては、この法律がもし施行されるようになりましたら、これをより正しく理解するために、関係者あるいは国民あるいは医師に対して、特に医師に対して運用上の解説書のようなものをぜひともつくっていただくことがこの正しい運用につながってくるであろうし、それからこの法律の見直しという面については、感染症の変遷というのは極めて早いわけですから、五年ごとの改定、見直しということはぜひ遵守をしていただきたいということをお願いしたいと思います。
 以上です。
#7
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。
#8
○参考人(鈴木利廣君) 私は、薬害エイズ事件における東京訴訟の原告弁護団の事務局長を務める弁護士であります。
 本日は、薬害エイズ事件から見た感染症法案の問題点について意見を述べさせていただきます。
 患者管理こそが恐ろしい感染症の予防政策であるとの認識に基づいた立法政策は間違いです。かえって感染拡大を招き、感染症患者への取り返しのつかない差別、偏見を助長させてしまうからであります。
 八八年に制定されたエイズ予防法も誤った予防政策の一例でした。政府や自治体が、エイズが恐ろしい致死的な病気であることを過度に強調して、積極的に患者情報を公表し、声高に予防を呼びかけ、力ずくで患者を医療管理下に置こうとした政策でありました。この政策がエイズのハイリスクグループであった血友病患者とその家族に回復しがたい打撃を与えたのです。
 八九年三月に公表された東京弁護士会の「HIV感染をめぐる差別・人権侵害事例(中間報告書)」、皆さんのお手元に配付されたかと思いますが、そこに詳しく報告されています。最も正しい知識を有していたはずの医療機関で、受診拒否という激しい差別が起こりました。医療現場だけではなく、学校、職場、地域、そして家庭ですら差別が起こったのです。
 八七年二月に公表されたいわゆる高知パニックの感染源になった血友病患者の母親は、次のように述べています。
  厚生省の発表に基づいて息子のことが報道され始めたのは息子が高知医大に入院中のときです。それまでも地元では医大の医師や看護婦なとが息子のことを病院内外で話していたために私が診療拒否をうける事態が始まっていました。
  しかし、報道されてからはそれはひどいものでした。新聞、雑誌、テレビなどの報道機関が息子の入院中の病院や自宅におしかけてくるわ、手紙がくるわ、近所を聞きまわるわで、生きた心地がしませんでした。それからというもの、近所の人たちは私たちをさけるようになりました。
  娘が勤め先を首になり、塗装工の夫には仕事がこなくなり、私は県内の病院ではどこも診てくれなくなっていました。
 息子の葬式には親戚もあまりきませんでした。息子の死後エイズ予防法ができ、エイズはますます怖い病気だという風潮が強くなったように思います。
  私は、エイズで死んだ患者の家族とわかるのを恐れて、夫と偽装離婚して籍をぬき、旧姓にもどって県外の病院に診てもらうようになりました。
  息子についての報道はデタラメだらけでした。息子が覚醒剤をやっているだの、エイズと知ってソープランドなどで女性にエイズをうつしまわっているだの…。
  私たち家族は、今でも高知に住んでいますが、息子が死んで十年近くたった今でも、エイズ患者の家族といわれて差別されることを恐れています。
  夫は息子のことで酒におぼれ、心臓病を思い、胃の手術もしました。今でも病気がちで仕事もしていません。私もリンパ腺管腫でまともに歩くことも出来ません。この十年知人や親戚もほどんど寄りつきません。
  私たち家族が差別されたのは、医療機関や県や厚生省が無責任な情報をマスコミや地域の人に流し、エイズが恐ろしい病気、不道徳な病気というイメージをつくったからだと思います。
  それでも私たちは娘家族がいなければ、実名を公表されてでも息子の仇をとりたいと思いました。しかし娘夫婦や孫のことを考えるとできませんでした。
これが高知パニックの当事者の発言であります。
 次は、九州の徳田靖之弁護士が報告している血友病患者の青年の例を御紹介いたします。
  彼の住んでいた小さな町では、彼が血友病であることは多くの人が知っていました。
  神戸や高知で起こったパニックは、間もなくこの小さな町にも押し寄せました。エイズは恐ろしい病気だという噂が広がっていきました。
  やがて、その噂は彼の親族に伝わり、彼の家族の耳にも入るところとなりました。親族会議が開かれ「このままでは親族全体が村八分にされてしまう。噂の出所がわからないから対応のしようがない。この際本人を町から出し、噂のおさまるのを待つ以外に方法はない」という結論が出されました。そのことを父親から告げられた彼は、家族を村八分から守るために自分が犠牲になるしかないと覚悟を決めたのです。彼は、誰一人として知る人のいない都会に出て、アパートでの一人暮らしを始めました。
  家族が訪ねてくることも殆どない、全くの孤独地獄の中で、彼を支えたのは、自らはHIVに感染していないという意識でした。自分は、感染していないのに、世間の偏見から家族を守るために犠牲になっているのだという思いが、辛うじて彼を支えたというのです。
  たった一人きりの正月を七回数えたと彼は言います。その彼に変調が生じました。
  極度に貧血が進行し、やがて幻聴が始まりました。訪ねてきた母親が驚いて実家に連れ帰ったとき、彼は二十八歳になっていました。そして間もなく彼はふとしたことから、自らの感染の事実を知ることとなったのです。それは、彼を支えていた最後の糸が切れてしまったことを意味しました。このまま生きていても仕方がない、彼は自ら手首を切って自殺を図ったのでした。幸いにも、家族の発見が早く一命をとりとめることができましたが、それから二年余りを経て今なお彼の変調は続いています。
  近所の目を意識して外出することもできません。一、二カ月に一回病院へ通う以外には、家の中に閉じこもったままという生活を続けています。あのパニックに伴う迫害によって家を遣われてから既に十年間、今も彼は完全に社会から閉じ込められたままの生活を強いられているのです。そして、そのうえに今なお幻聴が彼を苦しめ続けています。何かの機会に親戚に会うと、「帰れ」とか「消えろ」といった幻聴が聞こえると彼は訴えています。勇気を出して外に出て何かをしようと試みるたびに幻聴が悪化して彼の身体は硬直化してしまうのです。
  それは、まさしく、今なお彼を感染者として社会から排除しようとする地域の目を彼が意識するからに外なりません。表だった噂は消えたものの地域の人々の心にエイズに対する恐怖感と彼がHIV感染者であるとの認識は深く沈澱したままであり、彼に対する差別と排除の姿勢はいささかも変化はしていないからです。
と徳田弁護士は報告しています。
 血友病患者がエイズのハイリスクグループであるとされたときから今日まで、ずっと彼らは血友病をひた隠しにして生きてきましたし、今後もそうせざるを得ない状況です。八〇年代初頭までは、血友病であることを明らかにして、積極的に社会に理解を求めて活動してきた血友病患者会、当時全国に四十近くもあったようですが、その大半がこの十年間活動停止状態で、解散したところもあるようです。
 十年前のエイズ予防法制定過程でも、法案が差別を助長、拡大するとの指摘はされていました。感染症政策にとって差別防止の実効的施策が必要であると叫ばれていたのです。私も十年前の朝日ジャーナル誌で同様のことを述べています。
 今回の公衆衛生審議会小委員会の報告書は次のように述べています。過去における感染症患者に対する差別や偏見が行われた事実への深い反省が必要であると。
 先進諸外国では、一九七八年のWHOアルマアタ宣言以降、保健・医療政策における人権の重要性が指摘されてきました。感染症の危険回避を患者の人権尊重に優先させる考え方は誤りで、患者の人権尊重政策の推進こそが感染症予防に寄与するとの考え方に転換されてきました。
 アメリカ障害者法、一九九〇年に制定されたこの法律によって、アメリカでは疾病や障害を理由とする差別が禁止され、エイズ差別も減少し、患者のカミングアウトも増加したと聞いています。
 今回の法案には、患者の人権の保護とか人権への配慮という言葉はあっても、差別の防止解消政策の位置づけは全くありません。政府の基本指針の位置づけすらないのです。エイズ予防法制定過程において、当時の感染症対策室長は次のように述べていました。正しい知識の普及を図り、感染者や患者に差別が起きないようにする、そのためにもエイズ予防法が必要であると。しかし、この政策で差別を防止することはできませんでした。
 先日、結核感染症課長に差別の防止についてはどのように行うつもりかと質問しましたところ、いまだに正しい知識の普及を強調するだけで、ほかに施策はないと述べていました。いい考えがあったら教えてほしいというありさまです。厚生省の考えている人権政策のお粗末さの一面を見た思いがしました。なぜ同じ過ちが繰り返されようとしているのでしょうか。
 ドイツのワイツゼッカー大統領は、過去に目を閉ざす者は未来に盲目になると述べています。薬害エイズ事件の被害者たちは、エイズ予防法制定過程の資料、いわゆる黒塗り厚生省ファイルの開示と反省に基づく謝罪を求めています。その出発点に立って初めて人権保障に立脚した新しい感染症政策が生まれると信じているからです。
 今回のこの法案は、患者の行動制限規定などを中核とし、感染症政策にとって最も重要な感染症の科学的な実態把握システムや医療体制づくりなどの具体的な政策のほとんどを政府がつくる基本政策にゆだねている、いわば中身のない空箱法案であります。どんな感染症政策を行うのか、過去を反省しようとしない厚生省官僚にお任せした委任立法なのであります。
 感染症政策の重要性を強調すればするほど、その具体的内容は国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会において審議決定されるべきであります。厚生省官僚の立案したこの法案は国会の機能を軽んじた法案というわけであります。このような法案を国会ではわずか二カ月の審議で成立させようとお考えなのでしょうか。賢明なる御判断を求めたいと思います。
 ありがとうございました。
#9
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○宮崎秀樹君 自由民主党の宮崎秀樹でございます。
 きょうは三人の参考人の方々から大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、十五分という時間内でございますので、お一人お一人から御意見を伺いたいと思います。
 まず、小池参考人にお伺いいたします。
 御意見の中で、予防接種に触れられております。特に、ある地域におきまして麻疹が流行した、その罹患者はほとんど予防接種を受けていない子供さんであったというようなことでございます。予防接種の運用が変わりまして、従来の強制接種が任意接種に変わったわけであります。また、一人の接種にかける時間も限定されまして、一時間に二十名という一つの基準が示されました。
 このような状況の中で大流行が起きたというようなときに、やはり任意接種であれば、これは保護者の意思の自由でありますから、小さい子供さんの意思というのは働かないわけでありますから、そういうような事態が起きたときに現在のような仕組みで果たして対応できるのかどうかという点も含めて御意見を伺いたいと思います。
#11
○参考人(小池麒一郎君) 宮崎委員の御質問にお答えいたします。
 我が国の現状は、例えばはしかならばしかは、昔でございますと隣近所のお子さんがかかって亡くなられたとか、切実な環境条件にあったわけです。要するに、はしかという疾患がいかに危険で致命率が高いかというようなことを身近に知る機会に恵まれていた、いやこれは逆説的な話でございますけれども、本当は悲惨な状況を身にしみて感じていらっしゃったわけです。ところが、予防接種が普及いたしましてから、はしかの発生頻度が低くなってきて、そういう危険感覚がなくなって、むしろ予防接種の副反応の方が大きく報道されるものですから、予防接種の効能というものよりも副反応を怖がるというような形になりました。したがって、日本におきましてははしかの予防接種率も東南アジアよりも落ちている現状にあります。また、はしかばかりでなくて、インフルエンザの予防接種率というものも欧米から見ますと八分の一ぐらいの低さになっております。
 これを解決するのはやはり感染症の恐ろしさというものをある程度国民にもう一度思い起こしていただく、そういうようなインフォメーションを提供していくことが必要なんだろうと。
 もう一つは、副反応が起こらないようなワクチンの開発、これは二十億ぐらい投入すれば直ちに組織培養法とかいろいろな新しい方法でワクチンの製造が可能であろうと思いますし、その辺に対する努力が我が国としてはやや弱かったのではないか、そういうような二つのファクターからうまくいってないんだろうと思います。
#12
○宮崎秀樹君 ありがとうございました。
 それでは、清水参考人にお伺いいたします。
 清水参考人の御意見は、地球規模という世界全体を見ながら感染症対策というものをしなきゃ意味がない、また国内的には感染症の専門の医師が極めて少ない、感染症講座というものをやはり設けるべきだと。これは、講座を設けると大変コストがかかることでありまして、お役所的な発想だとなかなかここら辺は認めないというような仕組みが今ありまして、私どももこれは大変クレームをつけているわけであります。
 日本においては感染症、特にマラリアとか熱帯病に関する研究施設というのは少ないわけですね。こういうところにやはり国内の医師を派遣して研修を積ませる、さらには外国にそういう研究施設をつくって、そして実際そういうマラリア多発地域に医師を派遣して研修させるというような構想が私は必要ではないかと思っております。そういう点につきまして、清水参考人は具体的な何か御意見があればこの際お聞かせ願いたいと思います。
#13
○参考人(清水喜八郎君) 今の御質問の趣旨のとおりでございまして、感染症の大学の講座をつくるということはいろいろな面で大変難しいものであると思いますけれども、私は全部の大学につくれということを言っているのではなくて、少なくとも日本で必要な感染症の研究者の人材を育てるために、日本の中の例えば十校なら十校というものに対して講座を設けたらよいであろうという考え方が一つ。
 それからもう一つ、今のお話にございましたように、熱帯医学というものが、今は熱帯医学と寄生虫が一緒になって講座になっているのが現状であります。ですから、その熱帯医学、寄生虫の講座の中に、これにさらに感染症の講座を一緒に加味してつくりまして、そしてそれを外国なりなんなりに派遣して人材を育成して、それは医療支援にもなるだろうと思います。
 その二つの方法が今考えられる一番いい方法ではないかというように私は考えます。これは長期の構想にはなるわけですけれども、現実に私たちの年代までは昔の例えば腸チフスだとか赤痢であるとかジフテリアであるとか、そういう感染症を見ておりますけれども、それ以下の年代の方々はほとんどそういう、一号感染症というのは私も見たことがございません、二号すらも見ていない医師がかなりふえてきていますから、スペシャリティーとしての医師というよりもサブスペシャリティーの医師であってもいいですから、速やかに育てないと対策がうまく運用できなくなるということを大変私は危惧しております。
#14
○宮崎秀樹君 ありがとうございました。
 今、清水先生からお話がございましたが、全く私も同感でありまして、こういう法律の運用について、特に医師に対してきちっとしたそういうガイドラインなり内容を徹底させないと、法はできても運用面で非常にそこを生じる。小池参考人も触れましたけれども、その点は大変必要なことだと思っております。
 それでは、鈴木参考人にお伺いいたします。
 鈴木参考人は特にエイズの法案に触れていらっしゃいますが、この今回の新しい法律ではたしか第十二条でございますか、ここに、「四類感染症のうち、後天性免疫不全症候群、梅毒、マラリアその他厚生省令で定めるものの患者(後天性免疫不全症候群、梅毒その他厚生省令で定める感染症の無症状病原体保有者を含む。)」については、「七日以内にその者の年齢、性別その他厚生省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。」、こう記載されております。
 かつてのエイズ法を見ますと、第五条に書いてございます。これもやはり同じく、「七日以内に、」、これは「文書」となっております。「当該感染者の年齢及び性別、当該感染者がエイズの病原体に感染したと認められる原因その他厚生省令で定める事項を当該感染者の居住地を管轄する都道府県知事に報告しなければならない。ただし、当該感染者が血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、当該感染者について報告することを要しない。」。ここでは、血液凝固因子製剤というのは除かれているのですね。
 ところが、今度の法案は除かれていないのです。この点についてどういうふうにお考えになっているか、御意見があったらお聞かせ願いたいと思います。
#15
○参考人(鈴木利廣君) お答えします。
 医師に届け出義務を課してサーベイランスするというやり方も一つのやり方だろうと思います、是非はともかくにしまして。
 薬害エイズの被害者、凝固因子によって感染をした感染者たちはエイズ予防法のもとでは医師に報告義務を課さないでサーベイランスをやってきました。そのことによって実態把握をしてきたわけです。それでやれてきたということが現状だろうと思います。にもかかわらず、なぜここで医師の届け出義務ということを課した上でのサーベイランスをおやりになるのか、その必要性について説得的な根拠は示されていないように思います。
 ですから、薬害エイズ関係の感染者に関しては、今回の法案で規制が厳しくなったというふうにとらえていいのだろうと思います。その規制を厳しくする理由を立法提案者は説得的な理由を説明すべきであろうというふうに考えています。
#16
○宮崎秀樹君 そうしますと、この新しい法案の方が規制を何か厳しくしたと、逆に。そういうふうに解釈してよろしいわけでございますね。
#17
○参考人(鈴木利廣君) はい。
#18
○宮崎秀樹君 もう一つ、アメリカにおきまして、かつてエイズが出始めたころ、やはり大変な差別がございました。日本もそういう轍を実は懸念しつつ、逆に言えばあの法案をつくったと。厚生省を含め、当時の立法府にいた私どもももちろんその審議にかかわったわけでありますから、そういう意味でやったのが、結果的には先ほど来いろんな事例を起こしてきたという点で、それでは今回の法案でここだけはこうしてくれというのがございましたらお聞かせ願いたいと思います。
#19
○参考人(鈴木利廣君) 先ほど来から申しましたように、感染症政策というのはいつの時代にも差別や偏見を生んできました。そのことについて、どのようにしてそれを予防し、起きた差別についてどのように回復していくのかということについての実効的な規定を入れるべきだろうというふうに思います。
 アメリカ障害者法は、疾病や障害による差別をあらゆる分野で禁止をするということをやってきました。最小限度そういうものが必要のように思います。しかし、アメリカと同じでいいと申し上げているわけではありません。その点が一つあると思います。
 それから、先ほどの意見でも述べましたが、薬害エイズ事件においては、最初に科学的な実態把握がきちんとされないがために血友病患者の多くの人たちに血液製剤由来の感染を広げた。つまり、一次予防を誤ったわけであります。こういった一次予防を誤ったことに、実態把握が科学的にきちんとしていなかったという問題があります。そういった科学的な実態把握をどのようにしてつくっていくのかというのは、感染症政策の根幹にかかわる問題であります。O157でも、情報がきちんと正しく医療機関に反映されずに治療がおくれたということが報告されていますし、予防、治療双方にこの実態把握が適切に生かされるというためにどういう仕組みをつくるのかという、その政策の根幹をこの法案の中に入れ込むべきだろうと思います。
 そのほか、患者の行動制限の人権機構や医療体制の責任をどうするのかということについても、具体的な政策をこの法案の中に書き込んでいくべきだと、それが骨になるというふうに考えます。その骨のない法案では中身の空っぽな法案にすぎないのではないかというふうに申し上げたわけであります。
#20
○宮崎秀樹君 ありがとうございました。時間になりましたので、これで終わらせていただきます。
#21
○今井澄君 民主党の今井澄でございます。
 それでは、参考人に御質問いたしたいと思います。先ほどからのお話を伺っておりましても、感染症との闘いは終わりなき闘いであるという、新興感染症、再興感染症、それと医療側の油断と申しますか、あるいは住民を含めてのそういうこともあって、一つそういうことを感じます。
 それからもう一つは、人権侵害の問題ですけれども、これも率直に言えば終わりなき闘いというか、常にやっていかなければならない問題だろうと思いますが、特に人権の問題を考えてみますと、これは幾つかに分けられると思うんです。
 一つは、感染症ということで具体的に行動制限をするということ自身の中で注意しなければならない問題というのがあると思います。
 もう一つは、その時々に最高の科学技術や知識を使って治療や原因究明や何かをやる体制があるのかないのか、その努力がされているのかどうか。されていなければ、隔離しただけで、行動制限しただけで治療を放棄するわけですから、これも一種の人権というより人命軽視につながる人権限題だと思います。
 それからもう一つは、やはりいろいろな誤解等も含めて差別が行われる。それがこの感染症の治療とか予防とか医療、そういうことの範囲を超えて、人間としての生活そのものに重大な影響を与える、こういう問題のレベルが幾つかあるんだろうと思います。
 一番最後の問題については、これはやはり今度の感染症予防法の中でなかなか意見が一致しないところでありますし、これはもっとさらに議論を深める必要があると思うんですが、問題は私は本日は二番目の点のことについてお尋ねをしたいと思っております。
 先ほど清水先生のお話にありましたように、どうして今のような状況になってきたかということについては、科学、医学の発達に伴う一種の油断ということもあると思うんですけれども、それから感染症が減った、成人病とかその他のことに関心が移った、これは医師の関心も国家政策としても移ったことによって非常に手抜きが行われているというふうなことがあるのではないか、そこのところをしっかりしなければいけないと思うんです。
 この前、水島議員が本会議で質問をしたところ、いわゆるP4の話ですけれども、P4がどうしても我が国に必要ではないかと質問したところ、厚生大臣が、確かに御指摘のような施設は国内では稼働していないけれども、実際の診断は、ウイルス性出血熱であっても、こうした施設を必要をしない方法による診断が可能な場合が多いと認識しているというふうにお答えになっているんですね。また、今後、アメリカのCDCとの協力を含めて、検査体制を構築するとともに、我が国においても必要な検査ができるような体制整備等を進めると。この後半は非常にあいまいな答弁なんです。これは、アメリカと協力してCDCに送って早く優先して検査してもらうということを言っているのか、その辺が非常にあいまいだと思いますが、こういう厚生省の見解について先生はどうお考えになりますでしょうか。
#22
○参考人(清水喜八郎君) 今の問題に関連しては、これはビールス性疾患がほとんどであって、余り私はビールスに関して専門ではございませんけれども、恐らくその議論の中で出ていることは、病原微生物の検出はできなくても、少なくとも血清診断によって診断し得るであろうというのは、大体文献的な面からそういう御発言になったんだろうと思います。将来そういうことに努力をしてそういうものを日本につくるということに関しては、私はそのことに対しては何も情報を持っておりませんから、お答えする材料がございません。
 ですから、現状ではこういうものが出てきたときには血清学的診断において対応できるだろうと思います。しかし、さっきのような新感染症というようなものが入ってきますと血清学的診断もできませんし、病原微生物は送るということになりますから、やや問題は残るかもしれません。これは、この新感染症というものの定義の問題であって、私も大分この審議のときに議論をいたしましたけれども、これは今の現状における医学の常識では考えられない何かそういうものが起こったときの対応ということで、こういう新感染症という言葉が出てきたんだろうと思うんです。
 最初は原因不明の感染症という言葉が報告のときに使われていて、私は非常に抵抗を感じたんですけれども、むしろ新感染症という言葉は全く未知の新しいものという感じで、これはもう頭の中で考えたことで、現状ではこれに対する対応というのは一号感染症に準じたことになるわけです。ですから、報告書をお読みいただきますと、この診断の過程のところがいささか難解に書いてあると思いますが、非常に私は難しい問題が残っているだろうと思います。
 ただし、こういうものがなければそういうものが起こったときの対応がとれないわけですから、あることの必要性は認めるわけです。そこでそういうものが出てきて、もしその病原微生物がわかって検出されれば、これは指定感染症になっていくわけですね。だから、さっきもお話ししたように、指定感染症というのは、今あるものの中で非常に猛威を振るったものも指定感染症になるだろうし、新感染症の中でだんだんわかってきて指定感染症になる、その二つがあるだろうと思います。ですから、後半のものに関しては現状で対応できるかどうかということに関してはお答えする材料がございません。
#23
○今井澄君 わかりました。先ほど先生は日本にもP4レベルのものが必要だというお話だったと思います。結論としては、望ましいということでしょうか。
#24
○参考人(清水喜八郎君) 私は、あるべきだろうと。
#25
○今井澄君 わかりました。
 それから、私も医師をやってまいりまして、大変お恥ずかしいことにやはり感染症というものについては非常に知識や何かが乏しい。地域に行きますと大抵は学校の学校医あるいは保育園の園医というのをやっているんですけれども、例えば風邪がはやる、インフルエンザかどうか、まあインフルエンザだろうと。そうすると学級閉鎖にするとか学校閉鎖やなんか相談を受けるわけです。その場合に、校医としては権限もないですが、なかなか判定ができない。保健所に問い合わせても保健所自身がわからないということで、これまでの慣例に従うような形で大体学級閉鎖やなんかがされているような気がするんですね。そういう点で、専門家が少ないということを私も実感しております。かといって現実の問題として、今医師過剰時代と言われておりながら、感染症の専門家を育てるというのは非常に難しいと思うんですね。例えば、講座をつくってもそこに必ずしも専門医を志す医師が集まるとは限らないということがあると思います。
 先ほどサブスペシャリティーというお話があったと思います。あるいは国内で病気を診たこともない、ただ理屈だけあるいは実験、研究だけやってもしようがないので、海外に行って研修をというお話が出たと思いますが、現在の医師の教育の中でそういう社会的に必要な分野についてきちっと研修を受けさせる、あるいはサブスペシャリティーというのは知っているということですね、自分の専門は別に持ちながらも知っているということだと思うんです。そういうふうに医師の教育をしていく上ではどんなことが必要だと、あるいは有効だとお考えなのか、清水参考人と小池参考人にお伺いしたいと思います。
#26
○参考人(清水喜八郎君) お手元にお配りした資料の中にも書いてございますけれども、私が調べた範囲においては、内科の講座の中において感染症を専門にしている教授というのは今、日本全体で二人しかおりません。それから各大学で感染症の講義をする、つまり感染症学会の評議員以上の人であって、しかも講師以上の人と……
#27
○今井澄君 済みません。申しわけないんですが、時間が二分までしかないものですから、どういうことに力を入れると有効か、その点を。
#28
○参考人(清水喜八郎君) ですから、やっぱりそういうものの教育、啓蒙と、それから研修医の時代に海外教育というものをぜひ取り入れていただくようなシステムを厚生省として取り上げていただければ、これは興味を持っている人はかなりいるんですね、そういう方が中心になっていただくというのが一つの方法だろうと思います。
#29
○参考人(小池麒一郎君) 日本医師会は、日本医師会に限らず、医師は、生涯研修、教育を続けなければ、その成果を国民の医療の上に反映させることができないわけでございまして、そういう生涯教育の場を活用して感染症に対する再教育の継続性を保っていくということが一番肝要なのではないかと思っております。
#30
○今井澄君 清水参考人からは、研修医の若い時代に海外等へ行って経験をさせる、病気を診させるという御提案がありましたし、小池参考人の方からは、日本医師会が続けておられる生涯研修、教育ということだろうと思います。
 もう一つ、最初に取り上げました人権感覚の問題なんですが、やはり医師の人権感覚教育も非常に大事なような気がするんですね、これは単に感染症における人権だけの問題ではなく。つい最近も、実は私の八十八になる父親が肺炎になって入院しました。肺炎は治ったんですね。非常に厳しい状態ですが治りましたが、家へ帰れる状態ではなくて、もうちょっとで寝たきりにさせられそうになったんです。その辺、治療はできるけれども、生活へ戻せないという今の問題があると思うんです。人権とか生活面でのことが医師の教育に非常に欠けていると思うんですけれども、その点、何か方策がありましたら三人の参考人に一言ずつでもお聞きできればと思います。
#31
○参考人(小池麒一郎君) イギリスの感染症病棟を拝見してまいりましたけれども、やはり外からのコミュニケーションあるいは面会人との接見、それから電話が自由にかけられる、あるいはテレビも自由に見られるというような形で、病室の基準あるいは看護の仕方というものに特に留意すべきであろうというふうな感銘を受けております。
#32
○参考人(清水喜八郎君) 私は、一言で言えば、やはり十分な知識と経験を持って最善の治療を施す能力を持つということに尽きると思います。
#33
○参考人(鈴木利廣君) 医療現場における人権教育の前提ですが、これは技術的な教育をすれば足りるということではなくて、日本の医療・保健政策の中に患者の権利という視点がない、人権という視点がないということに問題があると思います。ですから私たちは、国会の方々にも患者の権利についての法案をつくるべきだと、その患者の権利という法案に基づいてさまざまな医療についての組みかえをしていく必要があるだろうと、その一つとして教育という問題も出てくるのではないかというふうに思います。
#34
○今井澄君 ありがとうございました。
#35
○渡辺孝男君 参考人の方には貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。
 私の方からは今回、参考人として来ていただきました小池先生、清水先生は公衆衛生審議会の伝染病予防部会基本問題検討小委員会の方でも御検討なされたということであります。その中で報告書が出ておりますね、「新しい時代の感染症対策について」ということで、この中で、過去の感染症対策の反省やあるいはまた現行の伝染病予防法の問題点等の改善を目指すということで、基本的な方向性といいますか、基本的な観点が出されております。
 「個々の国民に対する感染症の予防・治療に重点をおいた対策」が必要である。二番目には、「患者・感染者の人権の尊重」が大切である。三番目には、「感染症類型の再整理」が必要である。そしてまた、「感染症の発生・拡大を阻止するための危機管理の観点に立った迅速・的確な対応」が必要である。そのような基本的方向・視点が述べられているわけでありますけれども、これに沿ってちょっとお伺いしたいんです。
 まず、鈴木参考人にお伺いしたいんですけれども、この最初の「個々の国民に対する感染症の予防・治療に重点をおいた対策」が必要であるという観点なんですが、感染症の予防・治療に重点を置くという観点では、この報告でも「個々の国民の感染症予防及び良質かつ適切な医療の提供を通じた早期治療の積み重ねによる社会全体の感染症予防の推進」が必要であると。また、「感染症情報の収集・分析とその結果の国民への提供・公開」が重要というふうな報告になっております。
 まず最初に、良質かつ適切な医療の提供という点に関しまして、この法案に関しましてどういう御意見を持っていらっしゃるか、鈴木参考人の方から御意見をいただきたいと思います。
#36
○参考人(鈴木利廣君) まず、医療の提供のシステム的な確保、制度的な確保についてですが、これについてはこの法案の中には書き込まれていないというふうに思います。これは基本指針によって明らかにするということですから、どのような医療体制を確保していくのか、その中身が良質かつ適切なものなのかどうかというのは政府の裁量にゆだねられているという構造になっています。
 私たちは、HIV感染者に対して、一九八八年にできた法律でもそうでしたが、薬害エイズ訴訟の和解確認書まで制度的な政策医療が行われてこなかったと。そのためにHIV感染症は拡大し、しかも二次予防、三次予防と言われている合併症の予防や救命治療もできていないということが薬害エイズ事件によって明らかになったと思います。
 薬害エイズ事件では、和解確認書に基づいて、国立国際医療センターの中にエイズ治療・研究開発センターをつくり、そして各地にフロック拠点病院をつくり、そして一線の病院と連携関係をとってHIV感染症の予後を向上させるための治療体系をつくるということによって、わずかこの一年余りの間にかなりの改善を見てきたというふうに思います。
 こういった最近の感染症の治療体系の中でも、何をどうつくっていけば感染症の良質かつ適切な医療になっていくのかという実践を踏まえて、具体的に国が責任を持った政策医療をどのようにつくっていくのかということを法案の中に書き込むべきだというふうに思います。御承知のように結核医療などではある程度書き込まれているわけですが、感染症に関しては一部法案にそういう目的が掲げられても、きちんとした治療が行われてこなかったということが反省点だろうというふうに思います。
 今、この小委員会報告書の中には国立国際医療センターの強化などが提言をされていますが、法案の中では全くどちらの方向で医療体制をつくるのかもわからない、こういう状況だというふうに思います。
#37
○渡辺孝男君 同じ質問になるんですけれども、清水参考人、小池参考人にもお伺いしたいんですけれども、良質かつ適切な医療の提供という面で、今、鈴木参考人の方からは法案では中身がよく見えない、国が決める基本指針の方に書かれるということで、中身が見えないとやはり不安が残る、どういう形で適切な医療がなされるのか不安が残るというお話でありましたけれども、その点に関しまして御両人の御意見をお伺いしたいと思います。
#38
○参考人(清水喜八郎君) 感染症患者の良質かつ適切な医療というのは、私は早期に診断して早期に治療をする、ここで言う感染症というのは急性の感染症が主体として考えられているわけですから、これをいかに早く診断をつけていかに早く治療に持っていくかということは、これはやはり十分な知識と経験がなければできないことだろうと思います。それが良質な医療につながって、そのことはつまり患者の人権と国民の健康を感染症から守るというそのバランスの調整というものが一番必要になってくる、その基本はそこにあるんだろうと、私はそう考えます。
#39
○参考人(小池麒一郎君) 清水先生がおっしゃったようなことでございますけれども、一昨年マラリアにかかられた有名な学者が日本に帰ってこられて、診断がおくれたために医学者がお亡くなりになっている。やはり、早期にこういう感染症は診断するということが必要であります。
 それから、「良質かつ」に関しましては、医療法で医療行為というものは良質かつ適切であるべきというふうに規定されておりまして、恐らくこの法律の条項を外れる医療行為というのは、ごくまれに過誤があるかもしれませんけれども、大多数はないであろうと思っております。
#40
○渡辺孝男君 清水参考人にお伺いしたいんですけれども、国立国際医療センターというのは今後治療の大きな役割を果たす施設だと思うんですけれども、その法案の方にはなかなか位置づけといいますか、役割とか働き、そういうものがきちんと位置づけられていないのではないか。やはりいろんな新感染症とかが出た場合に、こういう国立国際医療センターが一生懸命いろんな重要な役割を果たすためには、やはり何らかの位置づけといいますか、法案での位置づけが必要なのではないかなというふうにも思うわけなんですが、その点に関しましては何か御意見ございますでしょうか。
#41
○参考人(清水喜八郎君) これは報告書の方に割に詳しく書いてあって、つまり感染症研究所というものが基礎的な研究をやって、それから医療センターの方は臨床の主体になるように私は読み取れると思います。しかし、新感染症は日本のどこの場所で起こるかわかりませんから、最終的な決断は国立国際医療センターでやっていただく形になると思いますけれども、それを法的に期待するということは非常に難しいように私は考えます。
#42
○渡辺孝男君 ありがとうございます。
 では、また別の質問で御意見をお伺いしたいと思うんです。先ほどの基本的方向・視点という意味では感染症の情報の収集と分析とその結果を国民へ提供する、公開していく、そういうことが大切であるというように報告書では述べられておりますけれども、この点に関しまして鈴木参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
#43
○参考人(鈴木利廣君) 実態把握、感染症に関する情報を集め、それを科学的に分析し、そして速やかに治療や予防につなげていくということが感染症の一次予防にとっても二次予防にとっても極めて重要なことだろうと思います。問題は、そういった行政的なきちんとした対応をどのような仕組みによってつくるのかということがこの感染症法案に求められていることだろうと思います。
 小委員会報告の中でも「危機管理の観点に立った迅速・的確な対応」ということが述べられていますし、その視点に立った法体系の整備ということですが、結局のところ、そういうことは基本指針にゆだねる、これからの話だということに法案ではなっています。
 小委員会報告では、この点に関して先ほども清水参考人がお述べになりましたが、国立感染症研究所の役割なども指摘をしております。国立感染症研究所がどのように役割を果たすのか、そして国立感染症研究所のいわば中核のもとにどのような全国的あるいはグローバルな分析、情報伝達網が引かれるのか、そういうことこそ感染症患者や国民は政策化してほしいと思っているわけであります。そのことが基本的な感染症政策の骨だと申し上げておるわけであります。その骨のない感染症政策でよろしいのかということを申し上げたいわけであります。
#44
○渡辺孝男君 実際に小委員会の方で検討されました清水参考人の御意見をお伺いしたいんですけれども、サーベイランスの充実、その中で国立感染症研究所の役割といいますか、どういうふうに位置づけられるのか。また、その場合の行政による患者さんのプライバシーを守るためにどういうふうにサーベイランスを行っていくのか。その点に関しまして御意見がございましたらお伺いしたいと思います。
#45
○参考人(清水喜八郎君) この問題は、さっきも若干触れましたけれども、感染症研究所ですべてやることが可能かどうかということが私は一つ問題が残っているだろうと思います。
 感染症そのものはさっきも申し上げましたように五年ぐらいを境として非常に変遷をしていますから、サーベイランスの仕方そのものも変わってくるはずですし、あるいは地方衛生試験所の役割であるとか大学の役割、これはその時代時代に応じて立てていくべきであろう、そういうふうに私は考えております。
#46
○渡辺孝男君 もう一点、清水参考人にお伺いしたいんですけれども、感染症の分類なんですが、新感染症というのは非常になかなか定義が難しいというお話でありました。例えば、最近話題になっておりますプリオン病というようなものはこの新感染症、今はまだ原因が完全には解明されておりませんが、この感染症の分類の中には位置づけられるんでしょうか。
#47
○参考人(清水喜八郎君) 私は入らないと思います。むしろ、全然未知のものというふうに考えていただいてよいだろうと思います。
#48
○渡辺孝男君 感染症一から四にも入らないし、新感染症とかそういう指定感染症にも全然位置づけられないという種類の病気というふうに……
#49
○参考人(清水喜八郎君) 何がですか。
#50
○渡辺孝男君 プリオン病。
#51
○参考人(清水喜八郎君) いや、プリオンはもう病態がわかっていますから新感染症ではございません。
#52
○渡辺孝男君 そうしますと、ああいうものはこの法案ですとどの分類に入ることになるんですか。
#53
○参考人(清水喜八郎君) これはむしろ四類に入るんではないんですか。
#54
○渡辺孝男君 そうですか。ありがとうございます。
 もう一問だけ、簡単に小池参考人にお伺いしたいんですが、適切な医療の提供となりますと、やはり医師が実際にはかなりの部分を占めるんじゃないかと思うんです。先ほども御指摘がありましたけれども、この感染症法案の中には医師のそういう良質かつ適切な医療の提供あるいは患者さんのプライバシーを守っていく、そういう義務づけといいますか、それが法案に書かれていない、医師法の方には書かれている。
 この法案にも今までの過去の反省を含めてやはり明記すべきではないかというような御意見もあるわけですが、それに関しまして医師会の先生にちょっと御意見をお伺いして、質問を終わりにしたいと思います。
#55
○参考人(小池麒一郎君) その点に関しましては、医師法にすべて守秘義務を課せられておりますので。
#56
○参考人(清水喜八郎君) 今、プリオンを四類というふうにお答え申し上げましたが、四類には入っておりません。しかも新感染症でもございません。
#57
○渡辺孝男君 そうしますと今のところは今回の法案の分類にはまだどこに位置づけられるかわからない、今後の検討ということになりますかね。
#58
○参考人(清水喜八郎君) ただ、この四類のこういうふうに出ているのは例示でございますから、この中に入れることは可能になるだろうというふうに思います。
#59
○渡辺孝男君 どうもありがとうございます。
#60
○清水澄子君 まず、三人の皆さん方の御意見、非常に参考になりました。
   〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕
 そこで、まず小池参考人にお伺いいたします。
 結核感染症のことについてお話になりましたけれども、今回の感染症予防・医療法の中になぜこの結核予防法が統合されなかったのか、私どもは非常に不思議なんですが、それらについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
#61
○参考人(小池麒一郎君) 既に結核予防法という法律ができてずっとそれが実施されておりますけれども、恐らくこの結核に関しては、全国民が国民病であったという認識が強過ぎてなかなかこれになじまないというところから分離されたというふうに理解しております。
#62
○清水澄子君 次に、審議会の内容が、私たちは小委員会の報告書は非常にたくさんの問題を提起されていて、新しい時代の感染症対策というものについて非常に重要な問題を提起されていると思って参考にしているわけですが、この内容がこの法律には十分に反映していないのではないかという私たちは問題意識もあります。
 しかし、先ほど審議会の内容は十分法律に反映していると断言をされておられるわけですが、それらは本当に、この法律にはさまざまな問題がまだあるんじゃないかなと思うんですが、そういうことは一切危惧はないとお思いでしょうか。
#63
○参考人(小池麒一郎君) 私どものフィールドからは、今後出される政省令並びに基本指針等施行細則について十分注意、監視していく所存であります。
#64
○清水澄子君 結核予防法は、感染症予防法の中で治療についても、それからいわゆる二次防、三次防のそういう考え方を実に一番反映させている予防法だと思うわけです。
 それが今回の感染症予防法と区分されているのはなぜかなというのが私なんかの疑問だったわけです。それらについて今のお答えだったわけですが、やはりそこはむしろ今いろんな感染症患者の人権の問題とどうバランスをとっていくかという意味で、その辺もここに何か問題が提起されているんじゃないかと思うんですが、それはあえてお答えいただかなくて結構ですけれども、それらについては、清水参考人はこの結核予防法と今回の感染症予防・医療法とがなぜ一つにならなかったのかという点についてはどのようにお考えになりますか。
#65
○参考人(清水喜八郎君) その議論は小委員会でもかなり出ました。
   〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕
 しかしながら、今回のこの感染症というものの中には比較的急性の感染症が主体であって、結核のような慢性の感染症の場合は現状の結核予防法で十分に対応できるであろうということから、分けるべきであろう、こちらに入れないでよいであろうという意見が強く出て、それによってそういう形になったわけであります。
#66
○清水澄子君 ありがとうございました。
 そこで、さらに清水参考人にお伺いをしたいわけですが、私どももこの法律を読みまして非常にわかりにくいわけです。例えば、定義なんですけれども、第六条に感染症というのは何なのかというのは、ただ一類、二類、三類とかそういう定義になっていて、そしてそれぞれの内容も病名が書いてあるだけなんですね。ですから、これが果たして定義ということになるのかという点につきましても、非常にこれでは読んだ人が、国民もよくわからない。この病名から落ちている問題はどこか政令とか省令に書かれるそうですけれども、だからそういう意味でこういう定義のあらわし方というので適切なのかどうか。その点についてはどのようにお考えになるでしょうか。
#67
○参考人(清水喜八郎君) この分類についてもかなり多くの議論がございました。結局、ここに書いてあるように、感染症というのはいわゆる病原微生物によって惹起される疾患群を感染症というふうに定義、それは書いてあると思います。その病原微生物によって感染力あるいは罹患した場合の重篤度、それからもう一つは救命度という問題が、この中に書いてございませんけれども、かなり入って、適切な治療があるかないかということも非常に大きな問題で、それらを含めてこういう分類になっていますから、この定義である程度は理解できると思います。
 ですから、先ほど私が最後に申し上げましたように、この法案に対する解説書というものは必要になってくる、私たちも必要だと考えております。
#68
○清水澄子君 そういう中で、先ほどから新感染症の分野というのは本当に病原体がわかっていないものといいますか、わかっていたものといないものということで非常にこれは難しい分野というお話もあったんですが、新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対して医師の健康診断を受けさせる権限というのを都道府県知事に責任を持たせているわけです。その辺で、それが一番わかりにくい分野ですね、新感染症という分野は。それが果たして都道府県知事がそれを認知したり調べたりする能力といいますかそういう面と、責任の範囲というのが都道府県知事でいいのかどうかという点でも非常にこの委員会でもいろんな指摘があるわけです。
 これは第七章第四十五条の「新感染症」というところなんですが、その点につきまして、そういう新感染症であるかどうかということの最初のある程度の認知をしなきゃならない責任主体というのはむしろ厚生省でなきゃいけない、厚生大臣でなきゃいけないんじゃないかなと思うんですが、その点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
#69
○参考人(清水喜八郎君) それに関しましては、これは参考資料としてシェーマを書いたのがたしかお配りされていると思いますけれども、おっしゃるとおり最初の認定は国がすべきだと思います。そのことに関しては第五十一条にそれが書いてあって、これは「技術的指導及び助言」ということで書かれてございますが、これが最初の新感染症かどうかというときに公衆衛生審議会の意見を聞くということになっていますから、公衆衛生審議会がそこでチェックをするということになるだろうと思います。これはそれで読み取れると私は理解をしておりました。
 ですから、最初から都道府県がやるのではなくて最初の認定というのはやはり国がすべきであろうと私は思います。
#70
○清水澄子君 そこで、先ほどから、しかしそれらの新しい感染症について、それを専門的に研究している医師とか体制も不十分であるというふうなことが現実の問題として指摘されているわけですけれども、未知の感染症に即応できる治療研究体制の整備というのは、今すぐ何をやるべきか、そして中長期的にはどうするかという点についてはどのようにお考えでしょうか。
#71
○参考人(清水喜八郎君) 新感染症については全くわからないものですから、これについて今研究をするということはできないだろうと思います。ですから、そういうことの見る目を持つ感染症の研究者を育成しておくということが現状での対応だろうと考えております。
#72
○清水澄子君 ありがとうございました。
 では、鈴木参考人にお尋ねいたします。
 この法律にはエイズ予防法でのいろんな反省点がここに反映していないという御指摘をいろいろなされたわけですけれども、そういう点で人権侵害を受けた人の救済というのはどういう措置が必要だとお思いになりますか。
#73
○参考人(鈴木利廣君) まずは人権侵害をいかにして予防するのかという発想が必要だろうと思います。それに関しましては、先ほど御質問にお答えする形で、差別禁止法のような差別禁止規定、あらゆる分野での疾病、障害を理由にした差別を禁止するということを法律上明確にし、差別が行われないために自治体なども含めてさまざまな施策を展開していくということが重要だろうと思います。
 現実に差別が起きた場合には、やはり裁判上の救済ということもありますし、行政上の是正措置ということも考えられるだろうと思います。現実に、例えば新感染症らしきものが出て、それが感染症と認定されるまでの間、感染症におそれを抱く医療機関が受診を拒否するというようなことは、その感染症の実態把握がなされるまでの間あり得ることだろう。それを個々の医師の良心や教育だけにゆだねるというのでは、これは制度とは言えないというふうに思います。
 ですから、そういう受診拒否があった場合には、行政的な是正を図り、きちんと感染症専門病院につないでいくということが必要だろうと思います。ですから、差別を防止、解消していくためにも医療制度をシステムとして確立をするということが重要です。既知、未知を問わず感染症が起きたときに、その感染症を一線の病院が担い、指定感染症医療機関が担い、そこに行って診ていただくというようなことではだめなのではないか。国がもっと積極的に個々の患者さんを良質な医療につなげていくという、それが途切れたときには国が是正していくというような支援の法案にすべきだろうというふうに考えています。
#74
○清水澄子君 ここには非常に行動制限が、強制入院とか交通遮断とか、それから隔離治療とかありますね。こういう面で、特に人権の擁護という面で必要な要件をどう法文化するかという点では、特にそこに何を必要としますか。
#75
○参考人(鈴木利廣君) 私たちは感染症政策が必要でないと申し上げているわけではありません。ですから一例外的な場合に、ある程度強制的な仕組みによって感染症を医療管理下に置くということは極めて例外的にあり得ることだろうと思います。そういうことに対応するためには、まずは任意入院が原則だということを宣言することであります。
 精神衛生法が精神保健法、福祉法に改正されていくプロセスの中でこのことは指摘をされました。小委員会報告書の中でも、きちんとした医療を提供する、任意の形で、ソフトな形で医療を提供する仕組みをまず確認をするというところから始まって、入院勧告、入院命令というところにいくべきだというふうに思います。
 それぞれの手続に関しては、憲法三十一条に基づいた厳格な法定手続が必要だと思います。しかしこの法案は、自由入院、ソフトなやり方で原則的に対応するのだということはどこにも見えません。その上で、いきなり勧告そして措置入院というふうになっています。小委員会報告書の中では措置入院までは触れていません。入院命令というところにとどまっていますが、この措置入院については精神病患者と伝染病予防法、この二つだけであります。しかも、この精神医療の中の措置入院については極めて厳格な手続がとられていますが、それに比べても極めてラフな手続保障しかないというのが現状だろうと思います。
#76
○清水澄子君 終わります。ありがとうございました。
#77
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。
 きょうは、参考人の皆さんには大変お忙しいところありがとうございます。時間の関係で皆さんに御質問できないかと思いますが、どうぞお許しをいただきたいと思います。
 鈴木参考人にまずお伺いをしたいわけですけれども、先ほどの宮崎委員の質問に対しまして、HIV感染被害者にとってはエイズ予防法よりもむしろ規制が強化されるというふうな御意見が表明をされたわけでございます、エイズ予防法が廃止をされるということに伴って実は被害者の方の規制が強化されるということにつきましては、もう少し御説明をいただきたいというふうに思うわけです。
#78
○参考人(鈴木利廣君) エイズ予防法の中で、凝固因子製剤により感染した者に関しては原則的に届け出義務が免除されているわけでありますが、これが法的に義務づけられるということになります。つまり、地元の保健所を通して都道府県に届け出られるということになるわけです。そのことによって、今まで起きていたこの薬害エイズ被害者、主に血友病患者の人たちですが、に対して地元で起きた差別、これが予防もできなく解消もできない状況の中で、さらに法的に義務づけるということがどういう新しい被害をもたらすのかということはわからないわけであります。必要性があって、必要最小限度甘受しなければいけない手続があるのかもしれませんが、その必要性が見えてこないというのがまず第一点であります。
 二つ目には、このHIV感染症は指定感染症に指定をされると。指定感染症に指定をされれば、強制的な健診とか就業制限とか措置入院というのが可能になるわけであります。このHIV感染症についてどのような場合にそういった強制的な医療管理下に置く必要性が生じるのかということばおよそ理解できないわけであります。理解できないが、先に何が起こるかわからないから何でもやれるようにしてほしいというのは、行政権限を規制するこの種の法案としては余りにもラフ過ぎるというふうに思うわけであります。
 三つ目には、この法案の十五条に関連することでありますが、都道府県の調査権の対象とされるということであります。都道府県が必要とあらばHIV感染症の人たちのところに職員を派遣して調査をすることができるということになります。
 このような、今までこの十年間なかったようなシステムをつくることにどんな意味があるのかということ、そのことに合理的な理由がない以上、とりわけ凝固因子製剤によって感染をしたHIV感染者の人たちをこういった規制の対象にするということに合理性はないというふうに思います。
#79
○西山登紀子君 鈴木参考人に引き続きお伺いしたいと思うんです。過去の反省の上に今回の新感染症の法案が提出されるべきだということでありますけれども、伝染病予防法は百年も前の法律だと、らい予防法につきましては、当委員会でも九六年に廃止をするときに厚生大臣が謝罪をするということがありましたが、このエイズ予防法については明確な謝罪ということはいまだかつてないわけであります。
 私も二回この法案の審議をいたしましたが、このエイズ予防法につきましては、前回厚生大臣が、不必要な差別、偏見を助長した面があった、患者に耐えがたい苦痛を感じさせた、この点は反省し、本案では患者の人権を重視し、人権の侵害、抑制にならないように配慮をしたという御答弁はありました。しかし、その答弁に至るまでには、正しかったというような局長答弁があったりいろいろございました。
 そういうことで、まだこの点につきましてはやはりきちっとした真相の解明が必要であるという点で、先ほど鈴木参考人がおっしゃった墨塗り資料というんでしょうか、私も公表を要求いたしましたけれども、八七年当時の資料がまだまだこういう真っ黒な墨塗りで出ているということについて非常に問題視をしているわけでございます。
 この点で、小委員会ではエイズ予防法の制定過程及びその後の九年間についての検証作業がされていないというようなこと、それからこの法案の提案理由説明の中にもきちっとした反省が述べられていないというようなことなどで、さらにつけ加えて御意見を伺いたいと思います。
#80
○参考人(鈴木利廣君) エイズ予防法に象徴されるエイズ予防政策、厚生省が一九八三年以来行ってきたエイズ予防政策にはあらゆる過ちがあったというふうに思います。まずは、八三年当時の実態把握に失敗したということであります。そして二つ目には、エイズ予防法政策に象徴されるような差別助長を生んできたということであります。
 そのことの反省の上に立つ以上は、やはりこれが過ちであるのであれば、二度と過ちを起こさないために何が必要なのか、そのためにはどのような制定プロセス、エイズ予防政策の立案プロセスがあったのかということを検証していくということが重要だろうと思います。
 ところが、和解前後に大量の厚生省のファイルが開示されましたけれども、エイズ予防法関係に関しては極めて大量の黒塗りファイル、ファイルの中に黒塗り資料としてしか開示できなかった部分があります。この中には、一説によりますと議員さんのお名前も出てくるということも指摘されているようです。
 つまり、国会で審議をして通ったのだから仕方がなかったというのではなくて、国会審議のプロセスでどのような価値観がないがしろにされていったのか、その制定プロセスの中にどういう力関係が働いたのか、そういうことを明らかにして新しい感染症対策に進むべきだろうと思います。
 私たちは、こういったプロセスについて国民に開示されるべきだ、国民の判断によってこの新しい法案との関係で検証を受けながらつくっていくべきだというふうに思いますが、今それすらなされていません。少なくも、国会議員の先生方がその資料を目にせずに、つまり過去の感染症予防政策の過ちに全く覆いをかけたままでこの感染症法案の問題点を検討して可決させていくということには到底納得できません。
 ですから、ぜひ厚生省に開示していただきたいというふうに思います。厚生省は、検察庁に押収されていて開示できないということを言っているようでありますが、厚生省は頻繁に検察庁に行って開示資料を閲覧しているということであります。しかも、残された資料もあるというふうにお聞きをしております。ですから、ぜひとも国政調査権等を活用して、その調査の上に立ってこの感染症予防法の審議に生かしていただきたいというふうに考えます。
#81
○西山登紀子君 私も先生と同意見でございます。
 厚生省も確かに閲覧していると、調査をしている、時間がかかると言っているんですが、そのときに、この前の厚生大臣の御答弁では、実は開示をする基準があるんだと。つまり、個人のプライバシーにかかわる問題だとかあるいは党にかかわる問題だとかいろいろ基準を持っている、行政側の基準があるということをおっしゃるんですね。今情報公開法のいろいろな制定の問題で日弁連の皆さんがいろんな陳情をされて、私も陳情を受けたわけですけれども、こういう点で、行政側が物差しを勝手に決めて、それでこの部分は黒塗りだよ、出せないよということはこれはどうなんでしょうか。
#82
○参考人(鈴木利廣君) 確かに、情報公開法の制定の中でどのような基準でどのような文書を管理し公開していくのかということについて議論があることは承知しています。
 しかし、そういった一般的な情報公開の枠の中だけでこの問題をとらえていいのでしょうか。これは一般的な情報公開、国民にすべて平等に公開する資料という位置づけではなく、政府あるいは国会が誤った法律をつくったということをどうやって今後の公共政策に生かしていくかというレベルの話であります。正しい公共政策をつくるときに過去の公共政策にすべて目をつぶってつくっていくのでしょうか。そこを国会や政府がきちんとみずからも検証しないでなぜ新しい感染症政策ができるのでありましょうか。ですから、一般の情報公開レベルの話とこれを一緒にするというところに意図的な感じを受けます。
#83
○西山登紀子君 どうもありがとうございました。
 それでは、清水参考人の方にお伺いしたいと思うんです。
 先生は御専門でいらっしゃいますが、先ほどもこの法案に非常に難解な部分が多いと。先生に難解な部分が多いと言われるとちょっと私たちもこれでいいのかななんて思って大変心配になるわけですけれども、その点で指定感染症の問題につきまして、公衆衛生審議会はこの指定感染症そのものについては触れていない。ところが、法案の中に指定感染症というのが入っている。では指定感染症というのはどんな感染症なのかということでいけば、この一類、二類、三類を除くほかのすべての感染症が入ってしまうんじゃないかなと。それもまた今度は、「感染性の疾病」というふうに書かれているわけですね。「「指定感染症」とは、感染性の疾病であって、」というふうなことで、私もこの点の理解をもう少し正確にしたいと思うんです。
 御専門の立場から、この指定感染症というのは例えば第四感染症の疾病はすべて入るということなのでしょうか。そして、「疾病」というふうになったのは一体どういう理由があるのか、また本当に必要なのか、その辺を含めてお教えいただきたいというふうに思います。
#84
○参考人(清水喜八郎君) 感染性疾病という表現は私は感染症と同じと考えてよいだろうと思います。つまり、病原微生物によって起こる疾病という考え方ですから、これは私は感染症と同じと考えていただいてよいと思います。
 それから、第四類ももちろん入りますしそれ以外のものも入るだろうと思います。結局、この表現は「国民の生命及び健康に重大な影響」というふうに書いてありますから、これは生命にもかなり重大な影響を及ぼすということになると極めて重篤な感染症というふうにお考えいただければよいだろうと思います。つまり、現状であるものがそういうふうな形で起こってきたときのことを考えているんだろうと思うんです。
#85
○西山登紀子君 それで、先生、この指定感染症の定義の中に感染力についての定義はないんですけれども、例えば重篤な感染力を持っていてというふうなことが盛り込まれなかった理由というのは何かお気づきでしょうか。
#86
○参考人(清水喜八郎君) 病原微生物を考える場合には二つ考えていただければいいと思うんです。一つは非常に重篤な毒力を持っている菌というものと、それから感染拡大が非常に速やかに起こってくるものと、その二種類があると思います。ですから、恐らく「国民の生命」という方は非常に重篤な菌を意味しているものであり、「健康に重大な」という方はその菌の感染力が非常に強いという意味をこの中に入れてあるんだろうと私は思います。
 したがって、そういう面に関しても、それからそのほかの、私は病名その他が難解であるということではなくて、運用が非常に難しいと思いますので、それは解説書がないとなかなか運用できないだろうと思うんです。そういう意味で先ほど申し上げたわけであります。
#87
○西山登紀子君 それでは、先ほど鈴木参考人が述べられましたが、この指定感染症に例えばエイズの感染者が指定されるというような危険性というのは実際に考えられるのか、想定されるのか、その点は先生どういうふうにお考えですか。
#88
○参考人(清水喜八郎君) さっき言いましたように、重篤性という意味から、あるいは拡大性という意味からいくと入ってくる確率というのは非常に少ないように私は考えます。
#89
○木暮山人君 ただいまいろいろ御高説を拝聴しているわけでございますが、この感染症に関しまして、事前対応型の感染症の危機管理体制の構築のため今後どのような方策が重要とお考えでしょうか、お伺いしたいと思います。これは小池先生にお願いします。
#90
○参考人(小池麒一郎君) お答え申し上げます。
 一つには、国際的な感染症情報を極めて精密に採取する、それによって対応できる体制をあらかじめ整えておくということが一つ。
 もう一つは、何と申しましても予防接種。予防接種の効く疾患と効かない疾患とがございますけれども、少なくとも効く疾患に関しては予防接種をきっちりやるということが二つ。
 あとは、国民に対する啓蒙、医師に対する再教育というようなことに尽きると思います。
#91
○木暮山人君 新しい感染症に関するところの法律が今諸先生の審議ででき上がるところでございますが、やはりこの感染症の法律をつくる間にいろんな問題があるんじゃないかと思います。我々は法律と言われますともう動かすことのできないような感じでございますが、この法律を今おつくりになりました委員の先生たちがいるのでございますけれども、そのほかに、先生たちはこの新しくできる法律を一読されたとき、どのようなものが理想的な法律なのか、そこら辺はいかがなものでしょうか。小池先生にお願いします。
#92
○参考人(小池麒一郎君) 先ほどの西山先生の御質問にもございましたけれども、例えば指定感染症というのを具体的に地域医療の立場から見ますと、インフルエンザの大流行、スペイン風邪を思い出していただきたい。それから、先般のO157の感染症のときに指定感染症になったわけでございます。そういうふうにして具体的にいろんな事象が起こったときにある程度対応できるような方策が盛り込まれているということが第一点。
 それから、今後どういうような事態が起こるかわからないということに備えて五年ごとに見直しとか、それから新感染症という問題を織り込んでいるということで対応できるのではないかというふうに思っております。
#93
○木暮山人君 この感染症の法律に関しましては、これは大変意義の深いものでございまして、これが全担当医に普及し理解される、これはなかなかこの段階まで行きますと難しい点もたくさんあると思います。
 また、特に大切な点は、いわゆるこの感染症の中にどこからどこまでが一類で、どこからどこまでが二類で、どこからどこまでが三類というような決め方、もしできましたらこれを御議論なさったその当時の状況をお話し願いたいと思います。
#94
○参考人(清水喜八郎君) この問題は先ほども御質問の中でお答えをしたと思いますけれども、定義の問題であって、つまり第一類というのは菌の感染力が非常に強いということと、それに罹患した場合には非常に重篤であるということ、それから現状ではそれに対応する適切な治療法がないというグループのものが第一類になっているわけであります。それで、第二類に関しては、感染力がかなり強いということと、それから病気の重篤性はあるわけですけれども、これは早期に診断をすればほぼ一〇〇%治すことが可能であるということ。それから、第三類に関しては、これはもう重篤性という意味からはかなり低いものでありまして、いわゆる入院まで持っていかないで就業制限だけにする。それから、第四類に属するものは、これは例示として幾つかのものが挙げられていますけれども、こういうものの感染症はどの程度現在我が国において発生しているか、あるいは世界的視野においてどういう状態になっているかというようなグループのものを第四類という形にまとめた、そういう議論がされてきたわけであります。
#95
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
 この感染症の法律につきまして、一類、二類、三類、四類といろいろ定められた中に患者さんが入っていくわけでございますけれども、これが治癒する段階というのはどんな段階で、だれが見定めるわけですか。これは小池先生にひとつ。
#96
○参考人(小池麒一郎君) 治療によって治癒した、それが例えばそのときに退院というふうになるわけですけれども、それは病原体が消失した、臨床症状がなくなったというような段階で退院ということになろうと思います。
 もし不幸にしてそのときに長引かされたというようなことがございますと、各保健所を中心とした感染症診査協議会というものがございまして、これは感染症病棟の医者と、それから地域の医師会ないしは感染症に関心のある医者、それからいわゆる学識経験者と申しまして医者以外の方々、例えば弁護士の方とかそういう方が入るだろうと思いますけれども、そういう協議会によって、普通七十二時間以上拘束された場合には、不服があるときにはその協議会に申し立てますと、協議会でその入院の状況が適切であるかどうか判断をされるということになります。
#97
○木暮山人君 いわゆる感染症そのものの発見ネットと申しますか、日本国じゅうに一億何千万人かいるわけでございますが、この人たちが今感染しているということを明確に判断するのは何日ぐらいあれば判断できるものでありますか。清水先生にできましたら。
#98
○参考人(清水喜八郎君) 一般的なお答えになるかもしれませんが、最低二日あれば判断がつくだろうと思います。ただし、第一類とか極めてまれな疾患に関しては、私はお答えする材料を今持っておりません。
#99
○木暮山人君 全般的に法律的に考えてみますと、もし例えば見過ごした場合、エラーで発見することができなかったというようなとき、法律ではいかがなものでしょうか、鈴木先生。
#100
○参考人(鈴木利廣君) 御質問の趣旨が少しわかりかねますが、通常との病気でも診断がおくれて、つまり診断義務、通常であれば診断できるはずが診断できなくてそして重篤な健康被害や生命侵害を受けたという場合には、通常は医師、患者関係の損害賠償請求事件として構成されるんだろうというふうに思います。
 そういうことをお尋ねになっているのでしょうか、それとも感染症治療体制の中で診断ができないということをどのように防ぐのかというようなことをお尋ねになっているのか、ちょっとその御質問の趣旨が……
#101
○木暮山人君 今のお答えで結構だと思います。
 そうしますと、前の清水先生のお話と鈴木先生のお話、これが例えば総体的に全般的に社会の批判を買うときになるとどんなことになるものでしょうか、鈴木先生に。
#102
○参考人(鈴木利廣君) 私の意見は、早期診断、早期治療というようなことを清水参考人も強調されていましたが、その早期診断、早期治療を行う仕組みをどのようにつくっていくのか、その仕組みによって、国民に感染症政策を理解していただくということが重要だろうということを申し上げているわけです。お答えになりましたでしょうか。
#103
○木暮山人君 はい、わかりました。
 以前に我々の聞いたことのない病気がたくさんあるわけでございますけれども、例えばエボラ出血熱とかそういうものが体内に侵入した、また同じようにいろんな感染源が体の中に入ってきているという場合、本人は何日ぐらいでそれを自覚するものでしょうか、清水先生。
#104
○参考人(清水喜八郎君) これは、病態によってかなり違いますし、潜伐期間が少なくとも一週間以上ありますから、それがたたないとそういう症状は出てまいりません。それから、ほかの疾患群についても潜伏期間によって違いますし、また出てくる病態も全部一律ではないわけですから、病態を把握してこの疾患群を疑うということが常に臨床の医師としては必要になるわけです。それで、疑って調べて、先ほども申し上げたような診断が早期につくということになります。そのプロセスが一番大切である。それが最初に私が申し上げた、正しい知識と十分な知識と経験を持った医師であればそれが極めて早く診断をつけることができるということを私が強調したわけでございます。
#105
○木暮山人君 私は今、先生のおっしゃったことは十分承知の上なんでございますけれども、これが最近のエイズとかいろんな病気のように長く潜伏する場合がございます。これについては社会的に非常に迷惑千万なことだと思うんです。しかし、見ようと思っても潜伏している間はそれは発見はなかなかできないわけです。そこら辺の日本の研究機構というものは今どんなぐあいになっているんでしょうか。
#106
○参考人(清水喜八郎君) 日本の研究機関においては、十分にそういった面に関しては研究をしています。しかし、先ほど来申し上げておりますように、ある種の疾患群というのは日本においては非常に症例の少ない疾患が多いわけですし、また日本でまだ見たこともない疾患もあるわけですから、それでそういう疾患についての研究、臨床というものは海外へ行ってぜひ研修をして、そういう経験を積んだ医師を育てるべきである。
 それから、基礎的な研究に関しては、これは国内においても十分遂行されているはずであります。
#107
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
#108
○西川きよし君 西川でございます。よろしくお願い申し上げます。
 私は、まず院内感染対策についてお伺いをしたいと思います。
 基本問題小委員会の報告でございますが、院内感染対策を考えた場合に、ウイルス性出血熱やペスト等の病原微生物の感染力が極めて強い場合とMRSA等のように感染力がそれほど強くない場合と、この二つが考えられる、こう書かれているわけですけれども、この院内感染対策としての医療現場での問題点を小池先生と清水先生にお伺いしたいと思います。
#109
○参考人(清水喜八郎君) 院内感染対策につきましては、今から五年前になりますか、厚生省からのいろいろな助成によって、日本感染症学会が中心になって日本の主要な病院の医師、看護婦を集めて毎年この院内感染対策に関するセミナーを実行しております。それに基づいて、各病院内においては院内感染対策委員会というのを作成して、それは院長が指導して、その対策に専門の医師、薬剤師、検査技師、看護婦、そういう者全部で院内感染対策チームというのをつくって院内感染対策に対応をしています。
 先ほど来お話が出ましたMRSAに関する院内感染対策も、その対策が実行されることよってMRSAの発症は極めて減ってまいりました。大体、統計で各病院二%ぐらいという数値が出ています。これは、MRSAそのものは消失させることはできないわけですけれども、院内においてそういう医療従事者の努力によって非常に感染発症例というものは減ってまいりましたから、ある意味においてはMRSA感染というのはかなり対応がとれていると考えてよいだろうと思います。
 その次の急性の感染症に関しては、例えば第二類の感染症に関しては、早期診断さえつけば院内感染の対応というのは指定病院に移すことによって対応がとれるわけであります。むしろ、これからの院内感染で一番問題になってくるのは、エマージングディジーズと言われる私たちが見たこともない感染症が院内に入ってきたときの対応を考えることが極めて大切になってくると思いますから、これに対する医療従事者の知識の普及その他に対しては、これから努力をしてさらにその知識を啓蒙していくということになる。たしか、ことしの院内感染セミナーではその点までの教育がなされていると思います。
 以上です。
#110
○参考人(小池麒一郎君) 西川先生御指摘のMRSAについては、清水先生が申されたとおりであります。
 急性感染症の特に感染性の危険なものについては、大変医療現場で慎重に扱わなければならない。その一つの証拠は、例えばロンドンにおけるエボラ出血熱、これは臨床検査技師がうつりまして死亡いたしております。さらに、Bビールス病というようなマッカッカという猿からうつる疾患も周辺の看護婦や何かがうつったりなんかいたしておりますから、感染症病棟の二重構造というものが必要であるし、病室は陰圧でなければならないし、外から空気が入ってくるけれども病室の空気は外へ出ないというような構造が必要であろうし、それから二重の扉によってある程度消毒とかそういうようなものが完全に行われるような条件になければならない。
 もとより、最初に申しましたように、人権に配慮して、面会とかそういうのがガラス越しにできる、それから音声もマイクを使ってできるというようなこと、テレビも電話もあるということも必要でございますけれども、感染症病棟の基本構造が必要であって、指定感染症病棟という施設に対する資本の投下というものが必要であろうと思っております。
#111
○西川きよし君 ありがとうございました。
 次に、先日も厚生省にもお伺いをいたしましたのですが、例えば介護力の強化型病院でありますとか療養型の病床群、新しく介護職員の方々でお若い方々も随分最近はお仕事をなさっているわけですけれども、せんだって現場の皆さんにもお伺いしたんですけれども、感染症に対する研修、講習などを受けることがなく十分な知識を持たないでお仕事をしている方々がたくさんいらっしゃいます。患者さんの介護に当たるときに随分、皆さん方は知識がないものですから不安を感じていらっしゃる。そして、患者さんに接しなければいけない。
 一般国民も含めまして、院内感染の防止への正しい理解を深めていただくための必要性、もう一度小池先生、清水先生にお伺いしたいと思います。
#112
○参考人(小池麒一郎君) 今、西川先生が申されました介護力強化病院とかあるいは療養型病床群、ここには高齢者の方がお入りになる。しかも身体的なハンディキャップ、運動機能がどうのこうのとか、そういうような方がお入りになるわけでございますから、一般の社会人から比べまして易感染性、感染を受ける力が非常に強い易感染性の方々である。したがいまして、そういうような若い介護の方々に対して、老人に対する感染の恐ろしさというものを十分に教育すべきであろうというふうに思っております。
 昔でございますと結核で、例えば武男と浪子というような時代がございまして「不如帰」というようなことがございまして、正岡子規も結核で亡くなりました。そういうふうに結核の恐ろしさというのを身にしみて地域の中で獲得していたわけでございますけれども、現在はそういう状況にありませんので、医者も国民もすべて感染症に対する危機感というものが希薄化している。これは非常に警戒しなければならない状況ではないかと思っております。
#113
○参考人(清水喜八郎君) 今の御質問は先ほど私がお答えした中に含まれていますけれども、つまり、院内感染対策チームという医療従事者全体が一つになって院内感染に対応しなければならない。その中に、今おっしゃられた介護者であるとかそういう方も集めてセミナーをやる。
 これは、日本でもこの院内感染を研究する日本環境感染学会というのを私どもがつくりまして、そういう方々がその学会に所属しておりまして、そこでそういう知識を啓蒙して、それで病院の中では全部の医療従事者が集まって院内感染に対する知識と情報、それから実践に関しての話し合いをやるようになっております。
 それで、先ほども申し上げましたように、ある施設になりますと、それを指導する医師がいない場合には、やはりその近辺の大学なり大病院の中のそういう知識を持った医師がそこのチームの中に行っていただいてやるというような方向性が今出てきております。ただ、それも先ほど申し上げましたように、非常に人材が少ないということが私たちがこれから何とかしていかなければならない問題だろうというふうに私は考えております。
#114
○西川きよし君 今、現実に余り進んでいないということでございますね。
#115
○参考人(清水喜八郎君) はい。
#116
○西川きよし君 ありがとうございました。
 次に、医療現場におけるカウンセラーの必要性と現場での実情についてお伺いしたいと思うんです。例えば、エイズ治療の拠点病院の要件の一つにカウンセリング体制が整備されていることが望ましいと、こういうふうに記されております。この場合はカウンセリングがなかなか根づかないというお話も多々お伺いするわけですけれども、実情を清水先生と小池先生にお伺いしたいと思います。
#117
○参考人(小池麒一郎君) 率直に申し上げまして、エイズ感染症に関しましては拠点病院を中心として専門的な治療というものが行われておりまして、なかなか地域の医療現場までおりてこない、おいでになっていただけないというような事情もございます。
 日本医師会といたしましては、平成八年からエイズ会議というのを四回開催いたしまして、これは駒込病院の根岸先生とかあるいは南谷先生とかまた厚生省の役人にも来ていただいて、エイズの実態というのを見まして、勉強いたしました。さらに、各都道府県医師会にアンケート調査用紙を配りまして、エイズ問題にどのくらい地域医療が取り組んでいるかという問題を浮き彫りにしたわけでございますけれども、残念ながら積極的にエイズ患者に地域医療で対応しているというところはまだ少数派でございまして、大多数のところは単に地域住民に情報を提供しているとか啓蒙運動をしているにとどまっております。
 この問題は、日本医師会として今後改善をいたしていきたいというふうに思っているところであります。
#118
○参考人(清水喜八郎君) この問題に関しましても、先ほど来お話を申し上げている院内感染セミナーというのがございまして、そこでこの問題も取り上げなければいけないというので、一昨年からそういう関係のセミナーをそこで行っております。今余り定着性が少ないというようなお話もございましたけれども、やはりこれは十分な知識と経験を持ってくれば私はかなり進んでいく可能性があると思います。それで、かなりその効果が出始めたのではないかというように私は考えております。
#119
○西川きよし君 ありがとうございました。
 最後の質問にさせていただきたいと思います。
 今度は食中毒の対策についてお伺いしたいと思います。二年前の大阪のO157によります集団食中毒以来、行政もその対策の強化を図っているところですけれども、学校給食が原因とされる食中毒は必ずしもまだ減少していないという面もあるわけです。今後はどういった対策が必要であるかというのを改めて清水先生と小池先生にお伺いしたいと思います。
#120
○参考人(清水喜八郎君) 食中毒の対策については、やはり私は正しい知識の啓蒙、特に国民、それから医師にとって必要なこと、これがまず第一だろうと思います。この前のO157のときも当初極めて混乱を呈しましたが、これはO157の食中毒に関する情報が我が国においては極めて少なかったためにいろいろな情報が発生当初に出て、それが混乱をした一つの大きな原因であっただろうと思います。
 あとで小池先生の方からお話があると思いますが、現在、日本医師会が中心になってこのO157対策について全国レベルにおいて行われておりますので、この問題についてはかなり解決がついてきておりますし、事実あのときにO157の感染でいわゆるHUSが起こって大問題になったわけですが、それ以後O157に対する治療の対応がきちんととられるようになってからああいう合併症の出方が極めて少なくなってきている、これも一つのあらわれであろうと私は考えております。
#121
○参考人(小池麒一郎君) 食中毒に関しましては、給食施設の機関別に発生頻度を調べたことがあります。昨年、医事新報に発表いたしましたけれども、学校の場合は、春休み、夏休み、それから冬休みもございまして、土曜日も日曜日も休みであります。したがって、それで一日に一回給食をするだけでございますから、給食の頻度としては非常に少ない。にもかかわらず、一般の給食施設の三倍ぐらいの発生頻度があるわけで、O157に限ったことではございませんで、サルモネラとかスモールRSビールスとかいろんな食中毒が発生しているのは事実でございます。
 昨年の後半あたりから大分減ってまいってはおりますけれども、まだその頻度としてはかなり高い方に位置している。やはり、これは給食のシステムあるいは給食関係者、その辺の努力が足りないのではないか。皆、家庭から安全だと思って給食を依頼しているにもかかわらず、安全と信じた給食によって被害をこうむっている例が少なくないということは、今後ますます学校給食の問題は改善に向かって検討すべきであろうと、そういうふうに思っております。
 それから、O157に関しましては、先ほど清水参考人が申しましたように、日本医師会の感染症情報のシステムを通じましてO157の治療方法、患者発生の動向、それから合併症がどういうふうに発生するか、その点に対して広範な調査を国立国際医療センターの竹田美文先生、午後から参考人でお出ましになりますけれども、その御指導のもとにおいて施行するというふうになっております。
 以上です。
#122
○西川きよし君 ありがとうございました。
#123
○委員長(山本正和君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十分開会
#124
○委員長(山本正和君) ただいまから国民福祉委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、参考人から意見を聴取いたします。
 午後は四名の参考人に御出席をいただいております。参考人の方々を御紹介いたします。
 全国ハンセン病療養所入所者協議会会長高瀬重二郎君、国立国際医療センター研究所所長竹田美文君、明治大学法学部教授新美育文君、大阪HIV訴訟原告団代表花井十伍君、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。
 両案につきまして、参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただき、委員会の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御着席のままで結構でございますので、御意見をちょうだいしたいと思います。
 それでは、まず高瀬参考人から御意見をお述べいただきます。高瀬参考人。
#125
○参考人(高瀬重二郎君) 全国ハンセン病療養所入所者協議会の会長を務めております高瀬でございます。
 西山議員の方から、本委員会に出席をして、らい予防法問題に取り組んでまいりました全療協の意見を参考人として何か話すようにということでございましたので、本日は喜んで出席をさせていただいた次第でございます。
 国民の健康と生活に極めて大きな影響のあります法案といたしまして、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案が今国会に提案されまして、ただいま審議をされておるところでございます。私は、この法案の内容を詳細にわたりまして承知し、また理解をしているものではございませんけれども、施行以来百年になります現行の伝染病予防法を抜本的に改正し、患者の人権にも配慮した新たな時代に対応する立法だと認識をいたしております。
 そこで、私は、去る四月十五日から二回にわたりまして朝日新聞の「論壇」におきまして掲載されました記事を一部引用させていただきたいと思います。
  わが国の伝染病・感染症対策は、これまで長い間、患者を社会に対する脅威と位置付け、専ら社会防衛的施策をとることに終始してきた。しかし、社会防衛論のみの対策は、一方で患者、とりわけ難治性の伝染性疾患の患者に対する社会的差別を発生させ、他方で、差別を恐れる患者の潜在化を招いてきた。その結果、例えばハンセン病やエイズウイルス感染症患者に対し、回復し難い差別を与えた。
  患者隔離を核とする社会防衛のみで感染症対策を行うのは不可能である。むしろ、一定の社会防衛的施策は取りつつ、感染症の実態把握と治療体制を充実させることによって早期治療を実現し、患者の社会復帰の道を拡大することこそが感染拡大防止を図る上で重要である。また、このような方法が、不当な人権侵害を防ぐ唯一の方策である。
このように論ぜられておるわけでございます。
 また、その翌日の「論壇」におきましては、最後のまとめの段階で、人権への配慮と危機管理対策とのバランスがとれた対策を強く望むものである、このように論ぜられております。
 それぞれの立場は違うようでありましたけれども、私もこの双方の意見にはおおむね賛成でございます。
 そこで、らい予防法についてでありますけれども、一九九六年、平成八年でありますが、私どもは多くの方々の御指導あるいは御理解、御協力をいただきまして、積年の悲願でございましたらい予防法を廃止することができました。同時に、新法の制定、施行されまして二年が経過したのであります。
 ここで、少しさかのぼりまして我が国のハンセン病行政を検証してみたいと思います。
 我が国の政府がようやくハンセン病対策に取り組みましたのは一九〇七年、明治四十年でございますが、法律第二号、癩予防二関スル法律であります。これに基づいて対策を行ったわけでございますけれども、以来実に八十九年にわたりまして民族の浄化、公共の福祉優先を国策として患者を強制隔離し、断種手術まで強制した上、これを撲滅するという極めて冷酷非道な政治を国は強行したのであります。まさに人間として自由に生きる権利を剥奪したものであり、その療養生活は辛酸をきわめたために、多数の患者あるいは家族のこうむった心理的、物理的被害は筆舌に尽くしがたいものがありました。戦後、二十八年でございますが、平和憲法のもとに改正されました予防法におきましても、なぜか強制隔離の基本理念が踏襲され、人間の尊厳は踏みにじられたままでございました。
 私どもは、一九五一年、昭和二十六年でありますが、全国ハンセン病患者協議会を組織し、らい予防法の粉砕、医療、生活の向上、改善を求めて闘いを展開したのであります。法の廃止は四十五年の長きにわたりまして辛抱強く組織の総力を結集して闘いを続けた結果であると私は確信をいたしております。
 強制収容が行われました当時の療養所は、よく言われることでありますけれども、刑務所に例えられたのであります。刑務所の場合は、刑期が終了いたしますと立派に社会に復帰することができるわけでございますけれども、私どもはいったん入所いたしますと退所の規定がございません。いわゆる無期懲役でありましたし、苦しさに耐えられず逃亡を試みる者も随分多かったわけでございます。
 それらを二、三申し上げたいと思います。
 日本政府が発行いたしました通貨などの使用は一切認めなかったと、各療養所が発行いたします園内通用票を使用させたのであります。日本国民としての権利を認めなかったと言えると私は思います。また、逃走防止の一つの対策といたしまして所内結婚を認めたわけでございますけれども、条件といたしまして人道上許すことのできない優生手術を強行したのであります。そのほか数え上げれば限りがございませんので申しませんが、当時の劣悪な医療、貧困をきわめました生活、働かざる者は食うべからず、戦力にならない者は国賊と言われた時代の療養生活は言語に絶するものがあったと言われております。そして、一九四七年、平和憲法が制定、公布され、初めて私ども患者にも参政権が認められ、人間としてあるいはまた日本人としての権利を手にしたのであります。
 こういった状況の中で、一九四三年、昭和十八年でございますが、特効薬プロミンが米国において発見され、不治の病から治る病気になったのであります。しかし、一九五三年の法改正では隔離政策の基本理念は引き継がれたのであります。また、「近き将来本法の改正を期す」という参議院厚生委員会の附帯決議があるにもかかわらず、その後四十年以上も放置されたのであります。
 文明国と自負する我が国において、このような絶対隔離を基本とした予防法が九十年もなぜ存在したのか、見直しがおくれたのか。いろいろありましょうが、私は最大の原因は政治や我が国の社会全体の患者、家族の人権を尊重するという意思の欠如によったのではなかろうかと思っております。また、これは専門の学術団体であります日本ハンセン病学会、そして真剣に取り組もうとしなかった政府の怠慢であり、その責任は極めて重大であると言わざるを得ないのであります。
 そして、一九九四年から五年にかけまして全国ハンセン病療養所の所長さんたち並びに日本ハンセン病学会が、立法の根拠を全く失った、医学的に見ても廃止されるべきであるという画期的な見解を表明されました。そして、元厚生省医務局長でありました大谷藤郎氏も廃止を主張され、早期実現に向けて情熱を持って指導し、あるいは政府の見直し委員会等の議を経てついに百三十六通常国会におきまして念願のらい予防法の廃止に関する法律が可決、成立を見たのであります。九十年にわたりまして患者、家族の人権を侵害し、偏見、差別の根源でありました予防法が廃止されました。ここに法のもとの平等と基本的人権を確立することができたのであります。すなわち、強制隔離から解放され、名実ともに復権をしたのであります。
 私どもの組織が必死に命をかけて改廃運動を始めまして四十五年間、今回の廃止運動に入りましてから五年の歳月を要したのであります。しかし、法の廃止が三十年あるいは四十年早く実現しておりましたならば、患者、家族の人生は大きく変わっていたでありましょうし、我が国のハンセン病の歴史は大きく変革していたと思われます。そして、私どもの大半は家庭にありまして人並みの幸せを享受していたでありましょう。また、社会復帰を願いながら果たせずこの世を去った二万二千の先輩たちの無念を考えますとき、痛惜の念にたえないところでございます。法の見直しのおくれましたことは返す返すも残念であり、私どもといたしましてはまことに無念でございます。
 法の廃止に当たりまして、当時の菅厚生大臣は、予防法の見直しがおくれたこと、旧来の疾病像を反映した予防法が今日まで存在し続けたことが患者、家族の方々の尊厳を傷つけ、多くの苦しみを与え、その上優生手術まで行い、皆様に身体的、精神的苦痛を与えたことにつきましてはまことに遺憾であり、率直におわびするとの謝罪らしき声明がございました。ただ一片の謝罪ではなく、その趣旨を今後の行政に反映されるよう改めて要請をしたいのであります。
 今回の感染症予防法案におきましては、大別して感染症の予防と患者に対します医療が二本柱のようでありますが、患者の人権、予防、届け出責務、就業の制限、汚染場所の消毒、物品の移動などそういう字句が非常に見受けられます。廃止されましたらい予防法と法形態が酷似しておりまして不快感をぬぐえないわけでございますけれども、法の審議、決定に当たりましてはあくまでも人権に配慮し、予防に行き過ぎのないよう、医療とのバランスの上に立った法が成立いたしますよう切望するものでございます。一たん法律が制定されますと、よほどの決定的な理由のない限り改正は困難であります。
 最後に、政府は、かつてのハンセン病行政の悲劇を教訓に、いかなる病気に苦しむ人も決して尊厳を傷つけることなく、すべての人が共生できる社会をつくるための法律であってもらいたいし、重ねて、誤った行政を再び繰り返すことのないよう強く要請をいたしまして、終わります。
#126
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 次に、竹田参考人にお願いいたします。竹田参考人。
#127
○参考人(竹田美文君) 国立国際医療センター研究所の竹田でございます。
 一昨年、平成八年七月、公衆衛生審議会伝染病予防部会は、感染症対策の見直しを決定いたしまして、同部会内に伝染病予防法の改定を目的とした基本問題検討小委員会を設けました。私は、同委員会の委員長として委員会の議論を取りまとめ、昨年十二月、「新しい時代の感染症対策について」と題する報告書を伝染病予防部会に提出いたしました。
 言うまでもなく、過去百年の間に伝染病を取り巻く状況は大きく変化しております。医学の進歩と医療技術の向上により幾多の感染症が不治の疾病ではなくなり、生命を落とす恐怖から人々を救いました。衛生水準が向上し、人々の健康と衛生に対する意識が高まったことと相まって疾病構造が大きく変わり、かつて猛威を振るった伝染病のほとんどが影を潜めてしまいました。
 一方におきまして、航空機による迅速かつ大量の輸送の日常化と国際交流の活発化による人と物の移動が病原体の国外からの侵入を容易にし、輸入感染症という用語が常用されるようになっております。さらに、ここ数年は、一歩踏み込んで新興感染症、すなわち国際的であるにせよ局地的であるにせよ公衆衛生上問題となるかつて知られていなかった新しい感染症、この新興感染症を世界の国々が協力し合って制御しようとする機運が各国政府、種々の学会の間で高まってきております。
 一九九六年四月に東京で行われました橋本首相とクリントン大統領の日米首脳会談では、コモン・アジェンダに新興・再興感染症が取り上げられましたし、昨年六月のデンバーにおけるG8でも新興・再興感染症が議論されたところであります。
 WHO、世界保健機関によりますと、過去二十年の間にこうした新興感染症は三十種類も出現しておるのであります。一昨年来、我が国を恐怖に陥れた病原性大腸菌O157もこうした新興感染症の一つであります。
 一年三カ月に及びました基本問題検討小委員会の議論を振り返って整理してみますと、新しい時代の感染症対策のための法律は感染症すべてを包括し得るもので、個別の感染症ごとに対策の基本的な考え方が異なみものではないという当然の考え方をもとに議論をいたしましたが、このことがかえって意見の取りまとめを大変難しくしたと私は考えております。
 すなわち、感染症は感染力、罹患した場合の重篤性から判断して危険性が極めて高い感染症と危険性が高くない感染症の両極の間の危険性の程度は千差万別であります。
 こうした感染症による危険性と患者の人権の尊重との関係を考えてみますと、危険性が極めて高い感染症の場合には、患者の人権の尊重へのウエートが多少軽くなっても危険性の回避を図る方策を考えなければ、将来国外から侵入してくるかもしれない感染症、例えばペストとかエボラ出血熱等々の、あるいは医学がまだ知り得ていない未知の感染症の制御は困難になります。一方、危険性が高くない感染症を考えてみますと、危険性の程度が低くなればなるほど患者の人権の尊重のウエートは限りなく重くなると考えられます。今回の法案の第四類の感染症にこれが当てはまります。
 危険性が極めて高い感染症の蔓延を予防するためには、感染症に対する危機管理体制が万全でなくてはなりません。一方、危険性が高くなくしかも治療可能な感染症については、患者の人権を尊重した医療体制の整備が求められるところであります。個々の疾病別に議論する場合は、危機管理対策と人権に配慮した医療体制のバランスの議論は比較的容易であります。しかし、感染症すべてを包括し得る法案について議論する場合は、危機管理と人権尊重のバランスをどうとるかが容易ではありません。委員会がまとめた報告書は、危機管理と人権尊重のバランスを考えたもので、委員全員のコンセンサスを得たものであります。
 昨年の十二月、委員会がその任務を終えた日、私は委員全員の長期間にわたる御努力に感謝と敬意を込めてあいさつをいたしましたが、その中で私は以下の文言を述べました。すなわち、委員お一人お一人におかれましては個人としては不満が残る報告書であるかもしれませんが、委員会といたしましては全員の合意が得られた報告書をまとめることができたことにほっとしておりますと申し上げました。
 ところで、現在審議が行われております法案について、人権への配慮という点においても危機管理上の予防という点においても、報告書の内容から後退しているという批判が私にも聞こえてまいります。しかし、これはさきに申し述べました委員会の議論の経過から考えても出るべくして出た批判と私は受けとめております。報告書の中の文言がそのまま法案の条文の中に表現されてはいないとしても、報告書の精神は十分に生きていると私は考えております。
 人権への配慮については、法案の中に今までの感染症関連法にはなかったもろもろの詳細な手続保障の規定が設けられています。当事者の良識のある法の運用と国民の感染症に対する十分な理解によって、かつて起こったような不幸な事態は生じないようにすることができると私は考えます。
 委員会の議論におきまして、良質かつ適切な医療の提供ということが大きなポイントでありました。危険性が極めて高い感染症にしても危険性が高くない感染症にしても、患者が最も望むことは現在の高度な医療技術によって病気を治療してもらうことであると思います。患者は病気を治してもらう権利を保持していると私は考えます。法案の中で医療機関の整備が明文化されていることは、とりもなおさず良質かつ適切な医療の提供を目指しているものと考えます。
 一方、危機管理という観点から法案の対応規定が十分でないという批判につきましては、新しい法律が、将来国外から侵入してくるかもしれない感染力が強く、しかも生命を脅かす感染症のみを対象としているのではないということを考えますと、必要な規定は盛り込まれていると思います。第一類感染症について規定されているもろもろの措置条項を適用することにより、第一類のような危険な感染症の蔓延を防ぐことができると考えております。
 以上、法案についての私の意見を申し述べました。ありがとうございます。
#128
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 次に、新美参考人にお願いいたします。新美参考人。
#129
○参考人(新美育文君) 新美でございます。
 ただいま竹田参考人が委員長を務めました基本問題検討委員会の委員として作業には参画してまいりました。本日はそこでの議論を踏まえて、また私は医事法及び生命倫理の研究者でありますので、その立場から今回の法案について八点にわたって意見を申し上げたいというふうに思います。基本的なスタンスは、竹田参考人が委員長を務められました検討委員会の報告書を基本的にベースにして意見を申し上げたいと思います。以下、お手元にお配りしましたレジュメをもとに御報告いたします。
 意見の第一点でございますが、この感染症予防あるいは医療の提供について考えるときの基本的な視点であります。この問題につきましては竹田参考人がおっしゃられたように、医学の進歩及び国際的な動向を取り入れて実情に見合った感染症対策を行おうということで、法案の中にはそれが盛り込まれており、基本的には私はそれで適切な実現に向かっていくだろうと考えております。
 しかしながら、同時にこの感染症対策によってもたらされる人権の制約に対する対応というものも国際的な調和が望まれるところであります。感染症というものが日本人のみならず外国人にも伝染していき、そして我が国でその対策がとられざるを得ないということを考えますと、国際的な調和というものは必要不可欠なことだろうというふうに思います。その意味で、この法案をつくる前提作業として行ってきたときには、竹田参考人がおっしゃられたように基本的人権の尊重というものも十分に配慮しなければいけないということになったわけであります。そして、その具体的なあらわれが報告書あるいは法案の提案説明の中で手続の保障あるいは必要最小限度の制約という言葉であらわされておるところであります。
 このような精神そのものは私は大いに評価されるべきであるし、もっと推進すべきであると考えております。ただ、一歩下がってこの法案の各論について見ますと、その基本的な理念というものが十分に実現され得るものか、いささかの疑念を抱かざるを得ません。以下、七つの点にわたって申し上げますが、その場合に委員の各先生にお願いしておきたいのは、委員の先生方が病原体の保有者であると診断された、しかし発症はしていない、自分自身はぴんしゃんしている、そのことを前提に私の提起する問題点を考えていただければ幸いでございます。
 それでは、その第二点でございます。健康診断につきましては、法案八四号の方でございますが、法案の十七条二項で強制するということが予定されております。この健康診断を強制的に行うということも、これは感染者あるいは患者の自由を奪うことは明らかでございます。このことについて適正な手続が用意されていないということは大きな問題ではなかろうかと思います。とりわけ心配いたしますのは、先ほど申しましたように元気いっぱいの保菌者、その人が健康診断なんか嫌だといって帰ろうとするときにどうやって強制するのか、強制するときにどういう手続をとるのか、何の保障もありません。これは一つ大きな問題であろうかと思います。
 それから、意見のその三でございます。確かに、良質な医療の提供ということで設備あるいは費用の負担ということがうたわれておりますけれども、問題は具体的にどんな医療がなされるべきなのかということが視点として欠落しておるわけであります。感染症の医療と申しましても、基本的には説明と同意に基づいた診療でなければいけないということを確認しておく必要があるのではないかということです。特に、強制的に入院させられた患者さんに対して医療をどうするかということは何も書いていなくて、費用だけ負担しましょうということになっております。これを、うがった見方をしますと、費用を負担するから強制的に治療を受けろということにもつながりかねません。これは国際的な動向でありますが、感染症に罹患している人を病院に強制的に収容するということと治療を強制するということは、全く次元の異なったものであるということであります。それで、感染症の治療において強制をするということは原則的には考えられないのではないのか、そのように考えております。
 意見のその四でございますが、健康診断の強制と同様の問題でありまして、七十二時間の入院については強制できるということが八四号の法案の十九条で述べられております。この七十二時間の入院について何ら手続的な保障がなされていないということは大きな問題であります。
 次に、意見のその五でございます。これは強制入院そのものですね、七十二時間を経たかどうかはともかくとして、十日間の入院をとりあえず認めるというものですが、この場合に、必要最小限度の強制入院であるということが求められるわけですし、その判断が適切であることが必要になるわけです。この判断について協議会による診査というものが考えられておりますが、この協議会そのものが一体どのような性格なのかが必ずしも明確ではありません。また、法案の中では医師が過半数を占めなければいけないということが述べられておりますが、基本的には人権制限が必要最小限度であるかどうかという診査であるかと思いますので、法的な判断だということになろうかと思います。したがって、人権の専門家、法律家である必要はありませんが、人権の専門家は少なくとも加わる必要があるであろうし、医師が過半数を占めなければいけないという合理的な理由はないように思います。
 それから、意見の六番でありますが、健康診断や入院勧告あるいは就業制限に関しまして、本人に対する通知以外に保護者に対して通知をするということが規定されております。しかしながら、本人または保護者ということが述べられておるだけでありまして、どういう優先順位があるのかが全く欠落しております。御本人に判断能力がある場合に保護者に対してだけ通知してもいいのか、極めてあいまいな規定になっております。この点をもう少し明確にしておく必要があろうかと思います。
 また同時に、保護者の概念の中身ですが、法案では親権者または後見人と言っておりますけれども、これらが本当に保護者として適切なのかどうかは大いに疑問があるところであります。親権者とか後見人といいますのは、身上監護の権限ないしは義務というものがあるというのは民法で規定されておりますが、本人にかわって医療上の意思決定ができるかどうかは法文上全く根拠がありません。そのこともあって、成年後見法の制度化ということで法務省あたりで現在議論がなされていることは委員の皆様も御承知のことだと思います。そのあたりの議論を踏まえないで保護者という概念を先行させることはやや問題としては不明朗の感を免れないというふうに思います。
 意見のその七でございますが、これはいろいろな処分の解除の要件についての意見でございます。就業制限の解除とか強制入院させられた場合の退院の要件として、病原体を保有していないことが確認された場合であるということを言いましたが、これは法律家の意見から申しますと、無の証明、ないことの証明は悪魔の証明と言われまして、事実上不可能であります。不可能なことを処分解除の要件にするということは、処分が永続していくということも意味するのだということになりかねません。そうであるとするならば、むしろ同じような趣旨を生かすとしたら、病原体の存在が確認できない、あるいは確認したと言えないというような形で証明責任を逆転していくことの考慮が必要であろうというふうに思います。
 それから、意見のその八、最後でございますが、新感染症に対する対応でございます。原因不明な新たな感染症に対する的確な対応が必要であることは疑いもありません。先ほど来申し上げております基本問題検討小委員会でもその必要性を認めてきておりました。ただ、そこでは、基本的には高度の蓋然性というものを要件としていろんな措置を考えました。この高度な蓋然性と申しますのは、十中八九そうであろう、それくらいの確率性がある場合にさまざまな対応をとろうということをしてきたわけでありますが、法案を見てみますと、それが単に「おそれ」という表現になっております。「おそれ」という表現はどの程度のものなのか、単なる懸念、杞憂でもいいのか、そういう問題がございます。的確にかつ強力な対策がとれるというためには明確な要件を立てていただくことが必要ではないのか、そのように考えております。
 以上でございます。
#130
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 次に、花井参考人にお願いいたします。花井参考人。
#131
○参考人(花井十伍君) 花井といいます。きはうは、このような意見を言う場をつくっていただき、大変感謝しております。
 ちょっと先立ちまして、資料なんですが、きょう二部資料を御用意したんですが、一部、「感染症予防法案に関する意見」、これは一九九八年三月付の大阪HIV訴訟原告弁護団ということになっておりますが、これは三月付ですので、内容についてはまだ法案要綱の段階で、すなわち適切な医療を提供するということが、感染症の医療に関する法律という名称に変わる以前のもので、その部分はもう既に先生方の努力で変わっている部分がちょっとありますので、それを承知の上、ごらんください。それからもう一点の資料は、午前中に配付されたものと重複しているようなので、これはもう説明は省きます。
 私は、今回の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案に対して、HIV感染者という、患者の立場から意見を述べさせていただきます。今、私は自分のことをHIV感染者というふうに言いましたが、これはエイズ予防法によるとそうではなくて、五条に書いてありますが、「エイズの病原体に感染している者」というふうなカテゴリーになるんですが、その当事者として、いわゆるエイズ予防法下における患者の体験的なものを踏まえて、今回の法律案に対して意見を述べたいと思います。
 今回の感染症法の二十一世紀に向けた理念として、私は体験的に、これは患者の立場からですが、一つ必要なこと、これは人間というのは人間として扱われて初めて人間として振る舞い得る、こういった理念をぜひとも反映させていただきたい。
 我が国のHIV対策、エイズ予防法に代表されるHIV対策は、HIV感染者を感染源としてとらえる余り、一人の病者、病んだ者、病人としてとらえる視点が決定的に欠落していた、このように私たちは評価しております。したがいまして、このエイズ予防法という法律は、これは完全に欠陥法であると断言して差し支えないのではないかというふうに考えています。
 その理由を以下に述べます。一いわゆる後天性免疫不全症候群、エイズという病が、原因不明でかつ致命的病として世界に登場したのは、合衆国CDC報告、一九八一年のことであります。それ以降、一九八三年には早くも感染経路が判明し、八四年には既にHIV抗体分離がなされました。さらに一九八五年には商業的なHIV抗体検査が可能になり、一九八七年には逆転写酵素阻害剤AZT、すなわち治療薬が登場するわけです。まさにこのエイズという、HIVですね、全く未知なるウイルスは、極めて短い時間に世界の専門家が解析し尽くし、実態が判明していくという、これだけ短期間にウイルスの実態がわかったという例はほかにないんではないかと考えております。
 したがいまして、このエイズ予防法は、一九八九年ですが、このときには既に発症予防の治療も可能だったわけです。すなわち、エイズは決して未知の病でも治療不可能な病でもなくなっていた、そういった時期にまさにこの法律が制定されたわけです。
 にもかかわらず、このエイズ予防法は、病人が普通に治療できる環境、感染者が人間として扱われる環境の基本である医療を受ける場を整備する視点に欠けていた法律として制定されてしまいました。エイズ予防法が当時は適切だったということを認識しているという意見もあるようですが、これには全く同意しかねます。むしろ、この失敗の教訓を生かすことによって二十一世紀の評価にたえ得る法整備が可能になるという認識をしております。
 私は血友病患者で、血液製剤由来のHIV感染だったわけですが、血友病という原因疾患があることもあり、もともと何らかの形で医療機関につながっていたわけです。ですから、全く健康な人が感染してしまったという方であれば、もう病院にいたことがないよと、そういう方もおられるかと思いますが、私どもは生まれたころから病院とつき合っていたわけで、感染の事実を知ったときも当然どこかの病院にかかっていたわけです。しかしながら、そこの病院で理由もなく診療を拒否されたりとか、運よく診療を許されても診察券を目の前でアルコール綿で消毒されたりとか、体にさわってもらえなかったりとか、そういったことが後を絶たなかったわけです。
 いわゆるストップ・エイズ・キャンペーンで「正しい知識が差別を防ぎます。」、こういうことがよく言われたんですが、これは最も正しい知識を当時持った専門家である医療従事者によって、これはすべてとは申しませんが、多くの医療従事者によって否定されていってしまったということで、必ずしも正しい情報、専門的な情報があればそういう差別は起こらないというのは全くこれは間違っているというふうに考えております。
 さらには、積極的にそういう患者を診ていこうとした医師が逆にほかの医療従事者から差別を受けるという全く異常な状況が現出したわけです。これはもう歴史的事実でありますから、こういう体制の中でこういう現象が現出してしまった。
 さらには、保健所による無料検査が実施された以降においても、抗体検査が陽性と判明した後のカウンセリング体制や、またその人を医療につなげていくサポート、そういうものが全く不備であったせいで、特に性感染の可能性が自分で疑われるような人たちが厳しい社会的差別状況と相まって、もし感染していたら人生終わりだ的な自暴自棄な気分に陥り、抗体検査を受けないという心境に陥ったわけです。結局、エイズ予防法は感染者管理法としても機能していなかったと言えると思います。
 こういう体験的経験を踏まえて、今回の法律に次の注文をつけたいと思います。
 まず、法律の名称に「患者に対する医療」が盛り込まれたことは本当に画期的なことだと思うのですが、第一条の「目的」の中には医療が入っていないんです。ですから、名称が「患者に対する医療」というふうになっているのであるから、目的の中にも明確に医療というものを位置づけるべきではないかと思います。
 それから、同様な理由で、三条の「国及び地方公共団体の責務」の中において、「感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という努力規定になっておりますが、これは明確に講じなければならないとするべきだと考えます。
 これはなぜそう思うかといいますと、HIV感染者の医療というのは、いわゆるHIV訴訟和解後にフロック拠点病院また国立国際医療センターの中のエイズセンター、これをキーステーションにしまして国策医療として強力に厚生省が推進してくれたわけです。これによって現在は非常に医療が好転したわけです。すなわち、医療というのは絶対このように国策医療と位置づけて強力にリーダーシップをとって推進しなければならないんだということを経験的に知っているからであります。
 二、HIV感染症において極めて過酷な差別が生み出されたということは先生方も御存じのことと思いますが、この反省を踏まえて、第二条の「基本理念」の中で「患者等の人権に配慮しつつ、」となっているところを人権に尊重しつつとするとともに、患者の人権保障の意識向上をも明確にうたうべきだと考えます。
 またさらに、未知の感染症に直面した場合は、世論なり現場の人間もそうかもしれませんが、極端な選択をしがちであるということは経験的に私たちが知悉しているところでありまして、二十二条関係におきましても、ここでは手続面、「第十九条若しくは第二十条の規定により入院している患者又はその保護者は、都道府県知事に対し、当該患者の退院を求めることができる。」、こういう規定があるんですが、これも明確に、単にいわゆる強制入院させた者に退院させてくれ、先ほど説明があったとおりなんですが、適正な手続でやはり客観的、科学的事実に基づいて第三者的な見地から判断できる人に対して退院を求められるような、そのような制度というか書き方に改めるべきではないかと思います。
 それから三、エイズ予防法が急速な科学的知見の蓄積により実態が明らかになったHIV感染症の患者に必要以上の管理を要求する法律となった反省を踏まえて、第六条の新感染症の定義に感染力の強さを加える。先ほど数人の参考人からもありましたが、極めて感染力が強く重篤な病というのが危険である、そういうことなんですが、ここには感染力の強さというのが加えられていないで定義があいまいになっております。ですから、感染力の強さもこの第六条の新感染症の定義に加え、科学的、合理的定義とすべきであると考えます。
 それから、同様な理由から、指定感染症というのは余りにも定義があいまいで私自身としては削除するべきだと思いますが、もしこれを残すのであれば、もう少し定義を明確かつ客観的かつ科学的な定義として書き込んでいただきたい、このように考えます。
 以上です。
#132
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#133
○阿部正俊君 参考人の方々、ありがとうございました。自由民主党の阿部正俊でございます。
 短い時間でございますので少し絞ってお話をお聞かせ願いたいと思いますので、二、三御質問申し上げたいと思います。
 まず、素人っぽく言いますと、今回の感染症というのは言ってみれば、法案をめくってみますとインフルエンザまで入っているわけでございまして、国民的にももっと啓蒙ということをしなきゃいかぬ疾病なのかなと思うわけです。
 逆に言いますと、例えばがんだとか循環器病とかいろんな大変な国民病的なものもありますけれども、感染症といいますのは一見恐ろしいということの感覚で受けとめる方もおりますけれども、逆に感染するんだということがわかっているということは、いわば予防できるということでもあるわけなんだろうと思うんですね。それが重篤かどうかは別にしまして、特にインフルエンザなんというのは本当に国民がもうちょっと気をつければ相当予防できるということが多いんじゃないかというふうに思いますので、この点について竹田先生にお聞きした方がいいかと思うんですが、実は第四条に国民の義務というのが書いてあるんです。これはよく法律上例文のごとく書かれるケースが実は多いわけですけれども、この感染症ということについて考えますと、国民がどういうふうに対応するのかということは大変重要なポイントなのではないか。
 今回、いわば従来の伝染病と言われたものから感染症という形での押さえ方の体系に変わるわけでございますけれども、この際、国民に対する啓蒙といいましょうかPRといいましょうか、きょうはマスコミの方も見えておられますし、そういうことを少し工夫していくべき時期に来ているのではないか。むしろ病気になってからどうということの前に、一般の病気でも健康をどう維持するのかということで物を考えるということになれば、この感染症についての国民の義務、これは結局みんなのためになるというようなことで、少しPRの仕方とかあるいはマスコミさんの対応の仕方とかいうことも、この間のO157のときのように何となく恐ろしいという側面が非常に強調されがちなんですけれども、少し冷静に考えなきゃいかぬ。
 そういう意味で、ここにある「正しい知識」とは何なのか、それから「予防に必要な注意を払うよう努める」というのはどういうことをすることなのか、またちょっと別ですけれども、「患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。」というのが国民の義務だ、こう書いてあるわけですね。というようなことで、何か少し今までの体系とは違った配慮が要るんじゃないかなと思いますので、この点について竹田さんから一言アドバイスでもいただければありがたいと思います。
#134
○参考人(竹田美文君) 先生おっしゃるとおりでありまして、感染症に関する知識を国民に広く知っていただく何らかの方策をマスコミも含めて考えていただきたいと思います。
 先ほど申しましたように、この新しい感染症に関する法案は、人から人へ感染するすべての感染症を含んでおります。したがいまして、四類で「その他」と書いてあるその他の中には無数の感染症があります。それをまとめて申しますと、感染症というのは、恐ろしい感染症はごく限られたものでありまして、国民の通常考える感染症あるいは国民の通常直面する感染症は日常たくさんある感染症でありますので、このPRを行政もマスコミもあるいは我々学界も極力啓蒙活動、啓発活動をする必要があると考えます。
#135
○阿部正俊君 それでは少し観点を変えまして、これは従来の伝染病というときに、先ほど高瀬さんがお使いになった言葉だったと思いますけれども、いわゆる社会防衛というふうな用語がよく使われてまいりました。社会防衛といいますと、いわばノーマルな社会がこちらにありまして、その社会を守るためにむしろそれを害するものはちょっと外にいてくれというふうな物の見方というのが正直言ってどこかにあったんではないかなという気もするわけですね。だから、多分この法案では社会防衛という言葉は使っていないのではないかなというふうな気がしますけれども、一種の危機状態をどういうふうに管理していくかということでの対応というのはどうしても必要なわけでございます。そういうノーマルな社会を防衛するんだというふうな意識ではない法体系に変えていこうというのが今回の一つの姿勢ではないか、こんなふうな気もするわけです。
 社会福祉の世界でノーマライゼーションということをよく言われるわけですけれども、言ってみればこの法案は私なりに解釈すれば、感染症についてのノーマライゼーションの法案であるということも言えるのかな、こんなふうな気がするわけです。
 それで、花井さんと高瀬さんにお伺いしたいんですけれども、従来のハンセン病の特別立法なりあるいはHIVの予防法なりなどの体系から見て十分かどうかというのは、私はいろんな意見があると思いますけれども、前進しているのか後退しているのかというふうな点から見て、ノーマライゼーションというふうなことから見てどう判断されますか、一言ずつちょっとお答えいただければありがたいというふうに思います。
#136
○参考人(花井十伍君) 先生おっしゃるとおり、リスクマネジメント、ノーマライゼーションの観点から今回の法案をどう評価するかという御質問だと思うんですが、やはり今のノーマライゼーションという考え方からのリスクマネジメントと、そういう意味においてもエイズ予防法というのはこれは完全に失敗だったというのが私たちの評価であります。
 今回の法律は、その反省を踏まえて、法律の名称も「医療に関する」と盛り込まれたことで一部よくなったと評価できる部分もありますけれども、やはり細部の構成とかその部分についてバージョンというか細かく詰めることによって、さらに理念を生かせるような全体の法律になるのではなかろうかということであります。決して後退しているというふうには考えておりませんが、せっかくつくるのであればやっぱり二十一世紀の評価にたえ得るような法律にしたいという思いから、先ほどのような意見を述べさせていただいた次第です。
#137
○参考人(高瀬重二郎君) 廃止されましたらい予防法と申しますのは、基本が患者を隔離する、恐ろしい病気であるから隔離しなければいけない、いわゆる社会防衛のために隔離するんだということがはっきりしておったわけでございます。こういうことがあってはならないと思うわけでございますけれども、今回の予防法の案を拝見いたしますと、廃止されましたらい予防法のような全く厳しい内容のものではないように思います。
#138
○阿部正俊君 極めてこの法案自体が医療の非常に細部の専門的な問題が多いわけでございますけれども、一般論だけで終始して申しわけないんですけれども、最後にもう一つ、全体を通じてお尋ねしたいというふうに思います。竹田さんと新美さんにお伺いできればと思うんです。
 今までの伝染病予防法を中心とした感染症に対する法体系というものが今回大きく統合されまして、三つの法案全部が廃止されて、新しい感染症の予防と医療に関する法律ということに体系がえするわけでございます。やはり一つの時代を画するものだろうなというふうな気がしますし、先ほど竹田さんが言われましたように、長い時間をかけて御議論いただいておまとめいただいたものだろうというふうに承知しております。
 これは正直申しまして、立法府での判断といいますのは、言ってみればすべての方々のすべてのものを全部満足させるような形というのはなかなか難しいということです。要するに、先ほどちょっと花井さんと高瀬さんにもお伺いしましたけれども、前進なのか後退なのかということがまず大事でございまして、十分なのか不十分なのかというのはさまざまな意見が私はあり得るだろうというふうに思います。そういう中で、今回の新しいこうした体系というのはどうもちょっと間違っているのじゃないかというなら別にして、そうした大づかみの判断というのはやはり基本になきゃいかぬのじゃないかなというふうに思うわけです。
 今回、伝染病予防法、性病予防法、HIV予防法等々を廃止いたしまして、新しい類型化した感染症予防・医療法体系にするということについての総論的な、前進なのか後退なのかといいましょうか、あるいはできたらこうしたふうな運用についての精神というのを生かしてほしいという点について御意見等ありましたら、竹田さんと新美さんにお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
#139
○参考人(竹田美文君) 結論から申しますと、大変な前進だと私は受けとめております。
 そもそも百年前、明治三十年にできた伝染病予防法と比較すること自身が適当でないわけでございまして、そういう意味では前進でありますし、先ほど申しましたように、現行の感染症関連法案のどれに比較いたしましても人権の配慮及び適切で良質な医療体系の提供という点においても前進しているというふうに判断しております。
 例えば、私の専門の医療で申しますと、現在の伝染病予防法は隔離が主体であります。避病舎という言葉はもう死語ではございますが、避病舎というところへ隔離して、そしてその人を抹殺していくといいますか、そういう形の基本的な姿勢があったと思いますが、当然この法律にはそういうものはございませんし、医療体系の近代化ないしは良質な医療を提供する施設に関しましても言及されております。
 もう一つ大きな違いは、伝染病予防法は、当時コレラが国内で年間十万人、死者が数万人、あるいは赤痢が十数万人という時代につくったものでありますから、国内で伝染病が蔓延するのをどう防ぐかというのが基本にありました。明治三十年のことであります。現在は国内で蔓延するというよりも、やはり視点は国外から入ってくる疾病をどうするかという点を視点に置いた法案であるというふうに理解しております。
#140
○参考人(新美育文君) お尋ねの点ですが、医療が進歩しまして、かつてと比べて非常にきめ細かな感染症対策ができるようになった、それを率直に反映できるような内容にされているということで進歩があるということは私も全く異論がございません。
 ただ、一つ心配なのは、一番きつい制約を受ける人のところにポイントを合わせますと従来の法律と変わる点はほとんどない。要するに、人権というのは一番弱い人に焦点を合わせなければいけない、あるいは一番制約を受けるところに焦点を合わせなければいけないのですが、そこから見ると余り進歩があったという評価はできないということでございます。
#141
○阿部正俊君 終わります。ありがとうございました。
#142
○水島裕君 会派民主の水島でございます。
 やはり時間に限りがございますので、私も焦点を絞って御質問したいと思います。
 本法律案では基盤整備、それから医療、人権というようないろんな大切なこともございますけれども、私は、まずこの法律の一つの目玉であります新感染症と指定感染症ということについて、主として竹田参考人にまずお伺いしたいと思います。
 と申しますのは、これがはっきりしないと、各党でもいろいろ検討しているのでございますけれども、ここがはっきりしないので最後の出口のところがもう一つはっきりしないというところがございますし、この委員会でいろいろ審議しておりましても、厚生省の中でも答えが食い違うということがあるからでございます。
 それで、先ほど先生おっしゃいましたように、この二十年で三十個ぐらいのいわゆる新興感染症というのがあるわけでございますが、こういうものがこれから起きたときにどうかということだと思います。言い方をかえますと、一類、二類、三類に入らない感染症で、主として公衆衛生学的な見地から何か対策をとらなくちゃいけないというのを新感染症か指定感染症にするんだと思いますけれども、むしろ例を言って先生に答えていただいた方が確実だと思いますので、一つ例を考えますと、O157と非常に症状が似ている、だけれども、例えば心臓の合併症で人がばたばた死んでしまうというようなことがあって、しかもあるクラスに十何人あるいは何十人と起きてきた、それからその方の家族にも同じような症状が起きてきたという感染症が、感染と思われますけれども、発生した場合は、とれは新感染症でよろしいわけでございますね。
#143
○参考人(竹田美文君) 先生がO157を対象にされましたので、先生の御質問を返すようでございますけれども、O157は三類感染症に入っておりますので、これは新感染症でも指定感染症でもなくなります。
#144
○水島裕君 ちょっと言い方が悪かったと思いますけれども、O157の類似ということでお話ししたということで、O157だか何だかまるっきりわからないということで今申し上げたようなのが起きたときは、それでよろしゅうございますね。
#145
○参考人(竹田美文君) 一類から四類までの感染症が疑われる場合には、新感染症でも指定感染症でもなくて、その疑いとして既知の感染症の中に入れて解釈いたします。
 四類感染症の中で、極めて重篤な症状を起こして、しかも感染力が強いと判断される感染症が出てきた場合、例えば最近の例でいきますと、香港でのインフルエンザが仮に我が国に入ってきた場合は、これは公衆衛生審議会の議題になり得る指定感染症かと思います。
#146
○水島裕君 O157なんということを私が言ってしまいましたもので、先生も先入観があったので、O157を一度忘れていただいて。それから、心臓の副作用が多発して死亡するというのは、これはO157じゃないわけでございますから、先ほど申し上げたのは新感染症と判断してよろしいわけでございますね。
#147
○参考人(竹田美文君) 現在の教科書ないしは学会で記載されていない感染症は新感染症というふうに理解しております。
#148
○水島裕君 これはそういうふうに診断していただかないと困ると思います。
 それで、今度それをもっと調べていきましたときに病原性大腸菌の感染症だということがわかって、例えば順番からいきましてこれはO200とつけようというふうな段階になったときは、今度は先生は何とおつけになりますか。
#149
○参考人(竹田美文君) これは公衆衛生審議会の議を経て一類から三類の中のどこに当てはまるかということが審議されるかと思います。したがって、五年で見直すということの条項が生きてくると思います。
#150
○水島裕君 もう一つわかりやすくするために、この定義のところを読みますと、一類から三類に入らないもので、その後に指定感染症というのがあるわけです。入らないもので、三章から六章までの何かしらの施策をとらなくちゃいけないものを指定感染症にすると書いてある。ところが、その後に「国民の生命及び健康に重大な影響を与える」とも書いてある。
 ということは、相当恐ろしいものである。だけれども一から三に入らない。ということは、どうもこれを見ている限りは、何となく既知の、どこかである程度わかっているものかあるいはその仲間というような印象がちょっとあるわけですね。と申しますのは、その次に新感染症と出てくる、これはもう全くわからないものだと。この方は間違いなく「国民の生命及び健康に重大な影響を与える」ですから、何か文言としてはやや似ているんですよ。
 ですから、この間も局長も答弁なさいましたし、けさの清水参考人も、そういうもので全く新しいわけのわからないものを新感染症、ある程度わかっているものとかどこかにあるものとかいうものは指定というふうにお答えになったんですけれども、それでもおかしいと思うんです。ちょっとその辺でいかがでございますか。
#151
○参考人(竹田美文君) 私も清水参考人の御意見と一緒でありまして、既に感染症として教科書に記載されているなりあるいは学会で報告されているもので非常に重篤で感染力が強くなった場合、例えば数年前に人食いバクテリアという感染症が流行いたしましたけれども、あれがもし相当な数が我が国に出てきた場合、本来この感染症は四類に入っておりますけれども、人食いバクテリアのような状態になった場合に指定感染症になる可能性があると判断します。しかし、記載のない感染症、これを新感染症と理解しております。
#152
○水島裕君 そうしますと、この間この委員会で、先生はお聞きになっていないから、竹田先生に申し上げているんじゃないんですけれども、私の質問に局長が答弁したのが違うということで、厚生省の担当官が答弁したのとも今のは違うのでございます。それですから、結局、私が申し上げたいのは、法律の主として文章でございますけれども、これはやはり直して、そういう誤解がないようにしないといけないのでございます。
 もしも今、竹田参考人が言ったこと、先生が小委員会の委員長ですから本当は一番合っているんですけれども、それが合っているとしますと、わけのわからない感染症がやってきた、だけれどもここに書いてあるほどの必要はない。三章から六章、例えば消毒だけをすればいいというものはこの新感染症の定義には入らないんです。入らないんだけれども、わけのわからないものだから、もう行くところがなくなってしまうんです。そういう疾患はどこにお入れになるつもりでございますか。
#153
○参考人(竹田美文君) これは公衆衛生審議会の議を経て四類感染症に見直しのときに入っていくと思います。
#154
○水島裕君 それもこれだとわからないわけですよね。そうすると、うんと恐ろしくないものはもう指定にも新感染症にもしないということでよろしゅうございますか。
#155
○参考人(竹田美文君) そのとおりと理解しております。
#156
○水島裕君 そうしますと、三章から六章までの規定の全部または一部を使わなくてはいけないというのは、三章から六章を見ていきますと、例えば消毒というのがあるわけです。だから、こういう新しい感染症が入ってきた、あるいは外国に今まであるのがわかっていたけれども、入ってきたというときに、消毒だけはしなくちゃ、あるいは就業制限だけはしなくちゃというときには、これは指定にも入れないわけでございますか。
#157
○参考人(竹田美文君) 就業制限が入ってきますと、これは……
#158
○水島裕君 今の消毒だけ。
#159
○参考人(竹田美文君) これは消毒ということになりますと、極めて感染症予防ということで、先ほど阿部委員から御質問がありましたようないわゆる国民の良識での予防ということになりますと、四類感染症でよいかと思います。
#160
○水島裕君 四ですか。
#161
○参考人(竹田美文君) 四類。
#162
○水島裕君 だけれども、その消毒だけ必要というのは、第五章か何かに消毒というのがありますね。その三から六までを使わなくてはいけないというのは、五章だけを使わなくちゃいけないというふうに解される。
 質問はこの辺でやめますけれども、ひとつ私ども先生方とも連絡をとって、やはり誤解がないように直すところは直さないと、私はこれを直さないと各党もなかなか最終的な結論が出にくいと思うんです。よそから来ましたのを拝見いたしましても、新感染症と指定感染症はもっとよく調べて、衆議院の方でもう一回ちゃんとやるとかという御意見もございますので、ひとつなるたけ早く、せっかくの参議院先議でございますから、参議院の方でよく相談して、また先生方とももちろん御相談してやらしていただきたいと思っております。
 もちろん、これは新感染症、指定感染症が目玉でございますので、そういうのを初めておつくりになったから多少何かの問題点が出てくるというのは理解いたしますけれども、余り詰めていくとおかしなところがあるというふうにお思いになりませんでしょうか。最後の質問でございます。
#163
○参考人(竹田美文君) 新感染症に関しましては、この法案の条文にありますように、病状の程度が重篤であるという縛りで私は縛れるというふうに理解しております。
#164
○水島裕君 それはそれでいいんですけれども、それでは、そうじゃないときには指定感染症にも新感染症にも指定しないで、公衆衛生審議会で意見をゆっくり聞いて一類から三類あるいは四類に入れるという解釈でございますね。
#165
○参考人(竹田美文君) 私はそう理解しております。
#166
○水島裕君 わかりました。
 次に、もう一つだけ竹田先生にお伺いしますのは、新感染症というのは、今お話のあるように、もう何が何だかわからない、やたら恐ろしいもの、先ほど清水参考人もおっしゃいましたし、先生方の同僚もみんなそう思っていらっしゃいますけれども、やはりそれは専門家と国が決めなくちゃいけない。先ほどは指定もしなくちゃいけないという話でございましたけれども、この法律を読んでいきますと、そのところが若干、無理して読めばそういうふうに読めないわけでもないんですけれども、例えば文章を見ますと、五十一条でございますけれども、「厚生大臣と密接な連携を図った上で」と書いてありますので、これはどうしても知事がやっていいというふうに読めますので、その辺の文言ももう少し間違いのないようにした方がいいんじゃないかと思いますけれども、御意見がございましたらお願いいたします。
#167
○参考人(竹田美文君) 私には委員会の委員の審議の中での先入観がありますから、今の先生の御質問は大変何というか青天のへきれきのような質問を受けておりまして、頭の中では非常に整理ができておるのでありますけれども、先生のおっしゃるわかりにくいという点が初めてわかったような気がいたします。
#168
○水島裕君 私の言うことがわかりにくいですか。
#169
○参考人(竹田美文君) いや、先生がわかりにくいとおっしゃることが初めて私は理解できたと。
#170
○水島裕君 それでは、新美参考人にお尋ねいたします。
 主として人権のことをお触れになりましたけれども、これも手直しするかあるいは附帯決議というところで何かしら入れなくちゃいけないことだと思いますけれども、要するに健康診断あるいは入院あるいは通知、通知が県とか本人とか家族とかいろいろあるわけですね、そういうことすべてにわたってと。そういうときに、手続あるいは法的手続ということで、患者の人権を配慮するようにもう少し細かく決めるか、あるいはこの後基本指針その他で決めるときに十分配慮せよと、一口に言っちゃいますとそういうことが非常に大きいというふうに思ってよろしゅうございますでしょうか。
#171
○参考人(新美育文君) 水島委員のおっしゃるとおりでございます。中身については御議論いただくことをお願いするとともに、手続で明確にしていただくことが一番大事だと思います。
#172
○水島裕君 ありがとうございます。
 それでは、これで終わりにいたします。
#173
○渡辺孝男君 公明の渡辺でございます。貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 最初に、花井参考人から先ほど御意見をいただいたんですけれども、医療の現場でも一番の専門家の先生でもそういう診療拒否とかいろんな意味で人権を無視されるような事態があったと、最初のころになりますかね、そういうお話がありました。非常にやはり差別意識、偏見というものはなかなか取りにくい、人間としてなかなかそういうのを取りにくいようなものがだれにも潜んでいるということも考えられるんですが、診療の立場にあれば当然そういうものを克服して医療行為をしなきゃならないということだと思うんです。
 これは参考人の方皆さんにお聞きしたいんですけれども、そういう感染症患者あるいはその疑いのある方への差別や偏見が日本あるいはまた外国でも生まれる可能性があると思うんです。そういう生まれやすい土壌に関しまして、そういう原因といいますか、そういうものに関しまして何かお気づきの点があればお話しいただきたいと思うんです。
 先ほど高瀬様からは、やはり我が国の人権意識が全般的に低いんだというお話と政府のそういう熱意がないんだというようなお話があったわけですけれども、そのほかに何かお気づきの点といいますか、ありましたらお聞かせいただきたいと思います。
#174
○参考人(高瀬重二郎君) 今回のこの法案、最終的にどういうことになるかわかりませんが、私はハンセンのこれまでの経緯から考えますと、やはり必要ではありましょうけれども、余り国民に恐怖心を与えるようなことをやりますと、これはあくまでも最後まで偏見や差別というのは出てくるんではないか。
 ですから、いわゆる正確に教宣活動といいますか、そういうことをやっていただかないと、ややもするとこういうような予防法というものにつきましてはらい予防法の二の舞になりはしないか、その辺が非常に私は大事なことじゃなかろうかと。ですから、余り恐怖心を与えないように正確に伝えていただくといいますか、それが必要ではなかろうかというふうに思っております。
#175
○渡辺孝男君 ありがとうございます。
 次に、竹田参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
#176
○参考人(竹田美文君) 伝染病予防法は疾病の対象が十一種類及び指定伝染病が三種類というふうに限定されております。感染症という言葉と伝染病という言葉は学問的には同義語でありますけれども、伝染病という言葉はもう死語になっております。伝染病予防法の対象疾患に差別が起こったと仮にすると、やはり法が限定された疾病を対象としたものであるということが一つの原因だろうと思います。それが端的にあらわれたのがハンセン病ないしは後天性免疫不全症でなかったかと思います。
 そういう意味合いから、今回の法律がすべての感染症を包括するものであるという点で、特殊なその中の一つの疾患を取り上げて差別が起こるということは従来と比べますと非常に薄まったというふうに私は判断しております。
#177
○渡辺孝男君 ありがとうございます。
 新美参考人の方からも御意見を伺いたいと思います。
#178
○参考人(新美育文君) この法案に関しましては、竹田参考人がおっしゃったとおりだと思います。
 しかしながら、感染症の患者さんが他の一般の人と違った扱いを受けるという点では、やはり差別と言わないまでも区別をします。人と違ったことについて何らかのスティグマと申しますか汚名をかぶせるというのは我が国のどちらかというと風土のような気がいたします。
 ですから、この法案の中だけでそういったものを解消しようとしても私はかなり難しいのではないかと思います。むしろ、人と異なった意見を持ったり異なった行動をするということを受け入れられるような社会を気長につくるしかないのではないか、そういうふうに考えております。
#179
○渡辺孝男君 ありがとうございます。
 花井参考人は本当に実感としていろんなことを感じていらっしゃると思うんですけれども、もう一度お話をお聞きできればと思います。
#180
○参考人(花井十伍君) 私も日本の根底的なことについては今の新美参考人の意見に賛同するものです。
 具体的に私の個人的な体験を言いますると、私たちの友人は比較的、私がHIVに感染しても受け入れてくれたのですが、友人が初めて子供ができたときに赤ちゃんをだっこしようかと思ったときに僕はちょっとためらわれたのです。それはなぜかといいますと、やはり、うつる、うつらない、正しい知識によってHIVがそれほど感染がないと、赤ちゃんをだっこすることで赤ちゃんにうつらない。わかっているんですが、自分の初めて生まれた我が子をあらゆる危険から遠ざけておきたいという気持ち、これはだれもが持っているものであります。
 ですから、新しい感染症ができたときに正しい情報が適切に、ネットが今発達していますから流せること、それは大事なのですが、やはり基本的にはそれだけでは差別が起こらないとは言えないと思います。
 ですから、まず、この法の中では制度を緻密に的確につくるということが前提でありますし、また、やはり幾ら正しい知識があっても人の気持ちというか感情というものはコントロールできるものではありません。したがいまして、その辺に関しては、国がやはりそういういろんな啓蒙であるとかそういうことに努めていくことによって、少しずつ意識を変えるような諸施策が有機的に絡まって初めて全体として新しい感染症制度というのができるのではないかと思います。
#181
○渡辺孝男君 どうもありがとうございます。
 今回の検討小委員会の方では、情報に関しましていろいろ述べられておるわけです。「感染症情報の収集・分析とその結果の国民への提供・公開」が重要であるというふうに述べられているわけですけれども、行政からの情報の提供というものと民間からの情報の提供というのがあると思うんですね。その場合、今まで患者さんとして体験しておられまして、行政の情報の提供のあり方あるいは民間の情報の提供のあり方に関しまして、何か要望といいますか、そういうものがあればもう一度お聞かせいただきたいんです。高瀬様それから花井様の方から御意見をお伺いしたいと思います。
#182
○参考人(高瀬重二郎君) 私はこういうように思います。これからこの感染症の予防法ができるわけでございますけれども、何といいましても教育、いわゆる教宣といいますか、これを重点にやらなければやはりまたいろいろな問題が起きてくるのではないかなというように思っております。政府がやるのかどこがやるのかよくわかりませんけれども、この辺がやはり重要な一つのポイントではなかろうかなと。いわゆる感染症に対する正しい知識の普及というのが絶対必要であろうというように思うんです。先生へのお答えになっておるかわかりませんが、私はそういうように思っております。
#183
○渡辺孝男君 花井参考人の方にも同じ質問なんですけれども、行政側それから民間側、そういう情報の提供のあり方に関しまして何が御指摘がありましたらばお伺いしたいと思うんです。
#184
○参考人(花井十伍君) 情報の公開の仕方についてはいろんな意見があることは私も存じていますが、私は個人的には、体験的には情報というのはもうすべて出すべきであると。日本においての教育水準も高いですし、原則的にはすべて公開するべきであると思います。
 それと、情報公開といいますと、例えばマスコミとかいろんな情報が入り乱れるわけで、それについていろんな、言ってみればデマとかそういうのも含めて情報ですから、そういうところで惑わされるということはこれはありがちなことだと思うので、やはり日本の政府においては、扱われる情報に関して適切なジャッジメントを行う部署というものが責任を持ってその情報を流すということが重要ではなかろうかと思います。
 記憶に新しいところでは、いわゆるカイワレダイコンの情報提供によって、結果的には大臣がカイワレダイコンを食べる、そういう状況がありましたが、やはり適切なジャッジメントはほかの不利益というのを一々考えていては、その責任の範囲の中では適切であってもほかでは適切じゃないという場合があります。ですから、どの範囲においてどれだけの責任を持って適切なジャッジメントを行うのか、そういうことを明確にした形で情報提供をする、こういうことがこれからやっぱり大事じゃないかなと考えております。
#185
○渡辺孝男君 次に、新美参考人の方にお伺いしたいんです。
 先ほど、本法案に対しまして手続関係が非常に不備である、特に人権への配慮という面で欠点があるのではないかというふうにお話ありましたけれども、やはり良質かつ適切な医療の提供という面でも、先ほど午前中の審議でも法案ではなかなか中身が見えてこないというようなお話がありまして、ほとんどが政省令の方で具体化してくるということがありました。そのように、政省令にほとんど委任する項目が多いということが非常に問題になったわけですけれども、この法案に対しましてそういうことをどのようにお感じになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
#186
○参考人(新美育文君) 良質かつ適切な医療を提供するということがうたわれたことはまさに私は大進歩だと思いますが、六章の医療のところで費用負担のことしか書いていないというのは余りにも拍子抜けをしたというのが率直なところでございます。
 ですから、原則論でもよろしいかと思います。先ほど申し上げましたように、説明と同意に基づく適切な医療がなされなければいけないという、その一カ条があるかないかだけでも大きな違いがあるのではないか、そのように考えております。
#187
○渡辺孝男君 次に、竹田参考人にお伺いしたいんです。
 保健所に設置されます協議会ですけれども、入院をさらに続けるかどうか判断するときの貴重な意見をいただくということになると思うんですけれども、その場合に、感染症指定医療機関の医師が入る、それから感染症患者の医療に関しまして学識経験を持たれる方、そういう方々の中から委員の方が入る、もう一つ医療以外の学識経験者の方からもそういう委員に入られるということであります。
 先ほど新美参考人の方からはドクターが半数以上を占める必要はないのではないかというようなお話もあったわけです。医療以外の学識経験者の方の中にはやはりそういう弁護士さんとか、あるいは場合によっては患者さんの立場にあられるような方で、体験を踏まえていて有識者というような方も当然おられると思うんです。そういう患者さんの立場の方から御意見を述べられる、そういう方になるべく多く参加してもらった方がいいというふうな話もあるわけですけれども、その点に関しましては竹田参考人はどのようにお考えでありましょうか。
#188
○参考人(竹田美文君) 診査協議会の目的になります。患者の人権に関する診査も一つでありますけれども、こういう形で入院が長引くとか、七十二時間の拘束がいいとか悪いとかいう問題は患者の病状を判断しての上でありまして、四類感染症等々には当てはまらないことであります。一類感染症とかあるいは新感染症に当てはまることでありまして、したがいまして、そうした患者をさらに入院を延長することが適当であるかどうかという医学的判断がかなり大きいウエートを占めるという点で、私は医師が半数以上を占めるということは極めて妥当だと判断します。
#189
○渡辺孝男君 今までのハンセン病あるいはHIV関係の感染症の治療に当たっていたドクター側もやはりそういう人権への配慮が欠けた面が多々あったのではないかというような反省のもとにこういう新しい法案ができるということでありまして、やはりドクター側はそういう医学的判断は十分できる、医療関係者の方ができるというものとまた違った観点で見直す方向で来ているのではないかなと私自身は考えるわけです。その点に関しまして、新美参考人の方から一言御意見を最後に伺って終わりにしたいと思います。
#190
○参考人(新美育文君) 今の協議会のことだと理解しますが、確かに竹田参考人がおっしゃられたように、入院が必要かどうかというのは医学的判断でございます。しかし、それを強制してもいいかどうか、これは法的な判断でございます。ですから、お医者さんの判断をすべてひっくり返すというつもりではありませんが、最終的な決定は法的に強制するかしないかという問題だと理解しております。
#191
○渡辺孝男君 ありがとうございます。
#192
○清水澄子君 参考人の皆さん、ありがとうございます。
 それで、ハンセン病の人権を守るために努力してこられました高瀬参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほど、一片の謝罪でなくて、これまでの過去のそういう過ちをぜひ法案に反映してほしいということをおっしゃいましたが、そういう立場から今回の法律の中にこれだけははっきり書いておくべきだということがおありになればお話しいただきたいと思います。
#193
○参考人(高瀬重二郎君) そういう文言が法律の中に生かされるかどうかは私もよくわからないわけでございますけれども、過去のハンセン病行政のような過ちは決してやらないんだと、やれないんだと、やっちゃ困るんだと、言葉はいろいろあると思いますけれども、そういった趣旨を何か法律の中でありますとか附則の中でありますとか、そういうことができれば私は非常にありがたいんじゃないかなと思っております。
#194
○清水澄子君 それではさらに、現在ハンセン病療養所から退所されました皆さんの社会復帰は円滑に行われておるでしょうか。
#195
○参考人(高瀬重二郎君) この社会復帰の問題は、今回新たにできました法律の中の第五条にもはっきり明記してありますし、さらにまた、本院並びに衆議院の委員会の附帯決議の中にもうたってもらっているわけでございますけれども、現状を申しますと、この三月に初めて具体的な社会復帰支援対策というのが出ました。これは平成九年度の予算に基づいて実施するわけでございますけれども、既に各施設でそれぞれ希望者と協議いたしまして内容を申請いたしました。間もなくこれが許可になると思います。
 具体的な内容は、いわゆる住宅確保、それから生活に必要な物品の購入あるいは物品の移動、そういったことに対して一人百万円以下ということが今決められまして、作業が進んでおるわけでございます。
 もちろん、私どもといたしましては不十分でございますし、さらに申し上げますならば、皆さんがせっかくつくっていただきましたいわゆる附帯決議の趣旨は十分盛り込まれておらないというように私は今のところ思っております。
#196
○清水澄子君 同じように、通院とか在宅治療のための医療体制は整備されておりますでしょうか。
#197
○参考人(高瀬重二郎君) それは徐々に整備をされつつあると思います。
#198
○清水澄子君 それでは、次に竹田参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほどのお話の中で、感染症をすべて一つにしたことは問題だというふうな認識を述べられたんですが、それはどういう意味を持っておりますでしょうか。
#199
○参考人(竹田美文君) 言葉が適当でなかったかと思います。今の先生のような意味合いで申し上げたのではございません。
 感染症はすべてを包括した法をつくるのが当然であるということで議論を始めました。そのことが議論を難しくしたということで、危機管理の立場の先生と人権尊重の立場の先生の間の意見がかみ合わないことがしばしばあったというふうな意味合いのことを申し上げた。しかし、結果としてはコンセンサスをもってあの報告書を提出した。したがって、感染症すべてを包括したのが問題であったというふうな意味合いのことを申し上げたのではございません。
#200
○清水澄子君 そこで、きょうのお話じゃなくて、朝日新聞の「論壇」を読ませていただきましたが、その中で竹田参考人がおっしゃっていることでちょっと私、理解できない部分があるわけです。
 それは、先ほどもおっしゃっていましたように、感染症には危険が高いものと高くないものとの両極の間の危険性は千差万別だと。まさにそうだと思います。しかし、この感染症による危険性と患者の人権尊重との関係を述べておられるところで、ちょっと理解できない部分があるわけです。
 それは、危険性が極めて高い場合には、人権尊重へのウエートが多少軽くなっても、危険性回避を優先的に考えなきゃならないという面と、一方、危険性が高くない感染症を考えてみると、危険性の程度が低くなるほど、患者の人権尊重のウエートは限りなく重くなるということをおっしゃっておられるんですが、その辺が私、人権というのは重くなったり軽くなったりというのはよく理解できないんです。
 やはり感染症というのは非常に危機管理的な側面があるわけですから、その症状によってはそれに適切に対応されていくことの中での人権というのはあるわけであって、それが何か人権というのは軽い方と重い方というふうに区分するというのはどういう考え方か、非常に私、ここを読んでいて首をかしげましたので、その辺についての人権に対する考え方をお聞かせください。
#201
○参考人(竹田美文君) 文章は、人権の尊重のウエートが重くなる、軽くなるというふうに書いたつもりでございまして、人権が重くなる、軽くなるとはなっていないような気がいたしますが、ともあれ、考え方としてはそうでございます。
 何を申し上げたいかと申しますと、委員会の中で人権という問題の中心議題は、患者を強制的に入院させるかさせないかということが人権侵害であるというのが議論の中心でございました。患者を隔離するという言葉、あるいは患者に強制的に入院してもらうということ、そのこと自身は人権に対する侵害であるという考え方がございました。
 したがって、人権というのは基本的人権を含めていろんなものがあると思います。ここで私が朝日新聞に書きました人権というのは、言葉が足らなかったのでありますけれども、患者を隔離するということを中心に、委員会での議論を中心に考えた人権でございます。したがって、極めて危険性の高い、すなわち感染力の強い患者の場合に強制的に入院していただかなくて感染症が予防できるかというと、これは医学的にはできないと思います。それを多少軽く、ウエートが低くなってもという表現をいたしました。一方、感染力が強くない疾患、しかも治療ができる疾患に関しては、入院措置そのものも必要でないという意味合いのことをその文章で書いたつもりです。
#202
○清水澄子君 今の問題では新美参考人、どんなふうにお考えになりますか。
#203
○参考人(新美育文君) 考え方は竹田参考人と同じでございます。ただ、表現の仕方がちょっと法律家の使い方と違っているだけだと思います。
 通常は、人権の制約が認められるかどうかということで議論するのが法律論でございます。ですから、公衆の健康に対する危険性が大きいときには、個人の人権の制約の度合いが大きくなってもやむを得ない、しかし、公衆の健康への危険がそれほど大きくない場合には、個人の人権の制約は極力小さいものにすべきだということで、人権そのものは同じです。それを制約する度合いが大きくても許されるのか、小さくなければいけないのか、そういう表現ぶりを法律家はします。竹田先生も恐らく同じ御趣旨だと私は理解して伺っておりました。
#204
○清水澄子君 ありがとうございました。
 それで、新美参考人にお尋ねいたします。
 先ほどの御説明の中でも感染症対策というのはやはりグローバルな視点ということを強調されました。そういう視点から見まして、今回の法律が他国からも、またはグローバルな視点から比較をして、特に人権という保障の面ではどういう面に問題があるか。先ほど幾つかの例をおっしゃいましたが、それらについて、例えば他の国とか、国際的にはこういう表現になるとか、こういう措置をとっているとか、そういう具体的な事例をひとつ御説明いただけないでしょうか。
#205
○参考人(新美育文君) 非常に難しい御質問で、一口に御説明することは難しいと存じますが、国際的なこういった感染症対策に対する法律がどういう動向にあるかと申しますと、恐らくこの法案が通りましたら世界で最新の、あるいは中身そのものも一番進歩したものになるだろうというふうに理解しております。ただ、人権の点に関しましては、欧米諸国と比べますとやや手薄であるという理解をいたします。
 レジュメのところにも最初の基本的認識のところで書いてございますように、一番統一性といいますか、統一的な物の書き方をしておるのが欧州の人権に関する多国間条約だと思います。それによりますと、公衆の健康の保護のために医療を強制する、これは健康診断も含めてですが、医療を強制することは人権の侵害である、あるいは人権の制約である、したがって、すべからく手続的な保障をしなさいということを言っております。
 そして、その中でも、そういった人権の手続的な保障の中で大事なのは、司法的な機関による審査が事前または事後に行われなければいけない、この司法的な機関というのは伝統的な意味での裁判所に限る必要はないけれども、少なくとも当該人権制約をする当局または行政府から独立した存在でなければいけない、これが欧州の条約の中身でございます。
 こういった議論は、世界人権規約の方でも同じようなことを言っておりますけれども、要するにある必要性でもって人権を制約しなきゃいけないという判断が適切かどうかは別の機関が常にレビューできるようにしなさい、そういうのが人権尊重という意味ではグローバルな考え方だと言ってよろしいかと思います。
#206
○清水澄子君 次に、時間がなくなるといけないので、花井参考人にお尋ねいたします。
 先ほど御自身のHIV感染の体験からいろんなお話があって、その実態というものが私たちの方に、わずかな話でしたけれども非常に追ってくるものがありました。そしてその中で、HIV感染者を感染源と言った、そして病人であるとか病者という考えとか視点が欠落していたことの差別ということをおっしゃって、本当にやはりここで議論していても患者の人たちの人権というのは重要だと思いました。その点を私どもも今度の法律の中で、それらがさらに新たな患者の人権侵害を生み出さないように審議をしたいという努力をしているわけです。
 この中で、いろいろな体験を通して患者の人権保障というのをどういうふうなシステム、この法律の中だけでできるのかどうかというのもあるんですけれども、どういうふうなシステムに具体化をしたらいいかという点でどういうイメージを考えていらっしゃるか。
#207
○参考人(花井十伍君) 大変専門的な御質問だと思うんですが、一つ、先ほどちょうど人権制約の問題であるという御意見があったと思うんですが、人権制約が大きくなる場合はそれについて適正な手続というものの重要性が増してくる、こう考えられると思います。
 私が今回の法律について特に思うのは、今回の法律案の中で、第六条の四類感染症の中の後天性免疫不全症候群というものがなかったとして、そしてこの法律が一九八三年にあったとすれば、先ほど竹田参考人は危険性が高いというのはいわゆる病状が重篤であり感染力が強いことと言っているのですが、ここには感染力が強とは書いていないので、まさにここに治療の結果が明らかに異なって、かつ病状の程度が重篤、かかったらみんな亡くなっていくわけですから重篤であり、蔓延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるというと、これはもう当時のエイズそのものであると思うわけですね。ですから、それにおいてやはりこの新感染症、なぜ感染力が強いということが入っていないのかということを非常に危惧するわけです。
 ですから、確かに理念的には進歩したということなんですが、それが本当に積極的に過去よりもよくなったということを評価するためには、やはりこういう手続とか規定を厳格に定めるということがまずは人権というものを守るための基本的なものではないかと考えています。
#208
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。参考人の皆さん本当にありがとうございます。
 まず、高瀬参考人にお伺いしたいわけです。今度の新しい法案は、もちろん百年前の伝染病予防法は言うに及ばずですけれども、過去の感染症対策についての重大な反省の上に改正がされなければならないわけでございます。特に私が先ほどお伺いをいたしておりまして、昭和二十八年、一九五三年当時に新薬の使用によって既にハンセン病は完治できる病気になっていた、ところがその後四十年間もらい予防法というものが放置をされてきたということにつきまして、社会及び政治に人権の欠如があったということで、高瀬参考人の方から厳しい御指摘があったわけです。
 らい予防法が廃止されるまでの間に具体的な被害として当国会でぜひ言っておきたい、つけ加えて言っておきたいということがおありになると思うんですけれども、その点についてつけ加えてください。
#209
○参考人(高瀬重二郎君) らいを予防する法律ができまして、先ほどの意見の中でも申し上げましたけれども、約九十年が経過しているわけでございます。それで、おっしゃったように、昭和二十八年当時改正されたわけでございますけれども、既に新薬等によりましてハンセンも治る病気になっておった。隔離条項は要らないわけでございますけれども、あえて隔離の条項が入って継続されたということで、非常に残念に思っておったわけでございます。長い歴史の中でいろいろございましたので被害事例を申し上げますと非常に長くなりますので、若干箇条的にひとつ申し上げてみたいと思いますのでよろしくお願いします。
 ハンセン病に対します偏見といいますかそういったことが起こりましたもとは、強制収容から始まったというように私は理解をいたしております。多くのいわゆる官憲によりまして強制収容された。当時の言葉で申しますと患者狩りを行った。まるきりけものでありますけれども、患者狩りを行ったということがございます。
 さらに、収容に当たりましては、この中にも出てくるようでありますけれども、必要以上の消毒を行った。恐怖心を与えた。そのことによりまして、家族はもちろんでありますけれども、いわゆる近隣の住民に至るまで恐怖心を与えました。このことが、それから以後の偏見を生み出す最大の原因になったであろうというように思っております。
 それから、一たん家族から患者が出てまいりますと、親戚縁者に至るまで、よく言われておりますように、結婚でありますとか就業でありますとか進学でありますとか、すべて影響いたしまして、その結果は、婚約の破談でありますとか離婚でありますとか、いわゆる登校拒否の問題等が出まして、一言で申し上げますならば、いわゆる村八分にされたということがございます。
 それから、こういう例はいろいろあるわけでございますけれども、一たんその家から患者が出てまいりますと、いろいろな経緯を経るわけでございますけれども、最終的には村人によって患者の発生した家は焼き払われるというようなことはもう多いわけでございます。それから、社会のハンセン病患者に対する冷酷な扱いといいますか、こういうことがございまして、一家心中でありますとか一家離散、あるいはみずから命を絶つというようなことも随分あったわけでございます。
 そこで、これは法によります欠陥でありましょうけれども、発病いたしましたら療養所へ入らなければどうしても診療ができない。薬もない、市販していない。いわゆるよく言われます選択の自由もないわけでございます。
 そういったこともございましたし、さらに一番厳しい現状といたしましては、強制的に優生手術を行った。これは優生保護法に昭和二十三年にハンセンも入ったわけでございますけれども、それ以前、大正四年ごろからずっと優生手術、断種手術が行われておりました。全く私はこれは人道上許されるべきでないというように思っております。
 それから、小さいことでありますけれども、船舶それからバス等の乗車拒否でありますとか、食堂に入れない。それから、園内の秩序規定、入園者心得というのがあるわけでございますけれども、それに違反した場合には直ちに、言いわけも何も聞かずに監房へほうり込んだというようなこともあるわけでございます。園内におきましては、いわゆる強制労働でありますとか、揺りかごから墓場までとよく言われますけれども、揺りかごはございませんが、墓場まですべて必要な労働につきましては患者が提供したということでございます。それから、先ほどもちょっと申しましたけれども、通貨の使用禁止。日本人でありながら日本の政府がつくった貨幣、紙幣が全く使えないというようなことでございます。それから、すべての通信物等につきましては検閲を行った。外出の制限、いろいろございます。
 数限りなくあるわけでございますけれども、このほかに個々に受けた被害、屈辱、悔しさ、これは数えると切りがないわけでございますけれども、そういうような状況がございました。
 その他のことにつきましては、先ほど意見の中であらかた申し上げたというように思っております。
#210
○西山登紀子君 そして、皆さん方の長年の大変な御努力があって、平成八年三月二十六日に参議院厚生委員会で四項目の附帯決議をつけたわけですけれども、この決議がその後どのように実行されているか、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。
#211
○参考人(高瀬重二郎君) 参考の資料といたしまして参議院、衆議院の附帯決議を印刷してお渡ししておると思います。この参議院の附帯決議の前文と申しますか、前段と申しますか、この中で、「政府は、本法施行に当たり、深い反省と陳謝の念に立って、次の事項について、」「適切な措置を講ずるべきである。」、このようにうたっていただいておるわけでございますけれども、結果は深い反省と陳謝の念に立って必ずしも行政は行われておらないと私は思っております。
 新発足いたしましてから二年が経過したわけでございますけれども、いわゆるハンセン病対策といいますのは、予防法は廃止された、病気も回復した、普通の疾病になった、そういうことで特別な扱いはする必要がないんじゃなかろうか、特別な扱いは問題がある、この際見直すべきであるというのが財政当局を初めといたします政府の考え方でございます。
 項目ごとに簡単に申し上げておきます。
 第一項、この問題につきましては、中で示されております患者給与金の問題につきましては従来どおり支給されております。
 それから、医療・福祉の処遇の確保につきましてはそれぞれ努力を願っておると思います。ただ、自分の園でなかなか治療が進まない、医療スタッフが不足でできない、そういったときには委託治療、あるいは転園治療もありまして、随分そういうことが多いわけでございますが、だんだん入所者が高齢化いたしますとともに、もうなかなか出ていけない、したがって自分の園で治療を望む者が非常に多くなってきたわけでございます。こういった面からいきますと、やはり自園におきます医療スタッフの充足でありますとか機械器具の整備でありますとかそういったことに対します必要な予算措置というのが望まれます。
 それから、不自由者等というのがあるわけでございますけれども、ここの介護につきましても、高齢化が進んでおります。それから、障害度、不自由度が進行いたしておりまして、二十四時間介護、あるいは食事の介助、痴呆症の増加等によります夜間当直、こういったことで必要な職員の増員、この辺のところが望まれるわけでございます。
 それから、先ほど清水先生の質問にも答えましたけれども、社会復帰者に対します支援策の充実の問題でございます。
 先ほど申しましたように、目下、平成九年度の分につきまして各施設で希望者と協議して申請いたしております。この社会復帰の支援をどうしようかというときに、厚生省がアンケート調査をやりました。当時の希望者は百名あったわけでございますけれども、先ほど申しましたような準備金として一人百万、このような支援策では非常に不安で、実際には社会復帰をする人たちはごく少数になるだろうと思われております。高齢化いなしまして、社会復帰したといたしましても労働によります収入は得られない。しかしながら、法律が改正されて自由になったということもありまして、せめて一度ふるさとへ帰りたい、そして家族と一緒の生活をしてみたいという希望は皆あると思うんです。しかしながら、今申しましたような支援策では到底そういうことは望めない。そうだろうと思います。
 具体的な支援の内容につきましては、先ほどちょっと申しましたので割愛させていただきます。準備金として百万、さらに生活の支援策として平成十年度で五十万が認められております。それだけでございます。
 それから、次の第三項の問題でありますけれども、診断・治療の指針につきましては既に作成されまして必要なところには配付されております。
 最後の教育、啓発の問題でございますけれども、一般市民に対しましては多磨全生園にあります資料館でありますとか各施設長、それから入所者等によりましてもある程度啓発活動が行われております。ただ、学校教育の中でのハンセン病に対します正しい知識の普及啓発でありますけれども、最近、療養所所在の近辺の学校との交流というのが非常に多くなりましたけれども、私は厚生省には申しておりますけれども、学校教育の問題につきましては文部省と十分な連携をとりながら具体的な学校教育の方針を立てていただきたいというように思っておるわけでございます。
 最後に、この附帯決議につきましては、せっかくつけていただきました附帯決議でございますが、これは行政において十分尊重していただいて政策に反映したものができますように、特にこれはお願いをしたいわけでございます。附帯決議をつけた、言いっ放し、聞きっ放し、これではやはり余り意味がないように思いますので、その点は特にお願いをいたしたいと思っております。
#212
○西山登紀子君 時間がなくなったんですが、竹田先生にお伺いしたいんですけれども、この法律の感染症、一類、二類、三類、指定、新感染症というのは大変概念というか定義があいまいです。先ほど午前中も、この先生は三類、いやこの先生は四類だと言って専門家の間でボールの投げ合いがあったりしまして、これでは国民の方が混乱をしちゃうんですね。
 この法案の四類の中で指定感染症に指定される可能性のないものはどんなものがあるんでしょうか。
#213
○参考人(竹田美文君) これは将来どういう病気が出てくるかということが我々予測できませんので……
#214
○西山登紀子君 いや、第四感染症の中から指定感染症になる可能性が全くないもの。
#215
○参考人(竹田美文君) これは、四類の感染症の中でどういう病気が、将来病原体の変異とかあるいは環境が変わってどういう病原体が恐ろしい病原体になるかということが予想できませんので、どれはなりませんということは学問的には申し上げることができません。
#216
○西山登紀子君 では、除くことはできない、すべて対象になる可能性はあるということですか。
#217
○参考人(竹田美文君) はい。
#218
○木暮山人君 現行の伝染病予防法等の問題については既に大分以前から問題を提起されてきております。例えば、昭和六十三年のエイズ予防法の審議の際も、現行伝染病予防法や性病予防法の問題点が指摘され、本院社会労働委員会においてこれも法体系の総合的な見直しについてまた附帯決議を付したところであります。それにもかかわらず、伝染病予防法の見直しにそれから十年を費やした、見直しがおくれた理由についていろいろな問題があったと思いますが、その問題のうち一、二お伺いできればと思います。これは高瀬重二郎会長にお願いします。
#219
○参考人(高瀬重二郎君) ちょっと質問の内容、要点を絞ってもう一回お願いできませんか。
#220
○木暮山人君 結局、これには附帯決議が付されたわけです。附帯決議そのものがついているにもかかわらず十年もそれがそのまま放置されていただけじゃなくて、中ではいろいろと議論があったと思うんです。その一番大きい議論をひとつ教えていただければ、この次の大きなあれになると思うんです。
#221
○参考人(高瀬重二郎君) 余り意味がわからなかったんですが、附帯決議と申しますのは、昭和二十八年のときも参議院の厚生委員会で九項目の附帯決議をつけていただきました。おかげでほとんどのことが実施されていったわけでございますけれども、最後の、本法は近き将来改正すべきであるということがあるわけでございますけれども、これが四十年も放置されておったということでございます。
 それで、私はそのことは、附帯決議はつけたが行政の方はそれを実際にはやらなかったということでありますけれども、それでは困りますので、附帯決議が有効に行政に反映されるようにお願いしたいということを申し上げたんです。
#222
○木暮山人君 伝染病予防法や性病予防法の見直しが十年前に行われていれば、単独のエイズ予防法は要らなかったはずであります。その意味でも、政府の責任は重いと言わざるを得ません。
 先日の本会議の質疑において、政府は、エイズ予防法の立法化について、当時としてはやむを得なかったという答弁をしております。しかし、当時は既にウイルスも発見されており、感染経路、感染力も明確になっておりました。エイズ予防法案の立法化が当時としてはやむを得なかったと判断された理由をまず問題の一としてお聞きしたいし、これもまるで反対の話ですけれども、患者さんまた病気が治った方々、例えば以前に附帯決議をちょうだいしておるわけですけれども、その附帯決議は五十万円、三十万円なんといって、それで今後ちゃんとした生活ができるものなんでしょうか。やはり、私はいわゆる附帯決議に対する忌憚のない意見を高瀬先生にお聞きしたいと思います。
#223
○参考人(高瀬重二郎君) 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、社会復帰いたします原則といいますのは、社会復帰すれば社会に出て生活しなさいよ、働いて生活しなさいよ、足らないところにつきましては生活保護で面倒を見ましょう、こういうことになります。しかしながら、今療養所におるわけでございますので、これが社会復帰しようといたしますと、住宅もございません、何もございませんので、まず住宅の準備から必要になります。それから、社会に出たときの生活物品でありますとか、いろいろ問題があると思うんです。それは、先ほど言いましたように百万で、これはまあ不足するでしょうけれども、問題になりますのはそれからです。
 生活保護を基準にいたしました生活というのは、自分が持っております預貯金なんかもすべて収入認定の対象になります。そうすると、全部それがなくならないと補助はもらえないというようなことになると思うんです。それで、五十万ぐらいの生活支援ではとても不安で社会へ出られない、これは現実です。ですから、私どもは厚生省が今度決めましたこの支援策については不満でございますので、今後、この改善に向けて努力していきたい。
 ただ、この問題につきましては。本法にも社会復帰支援のことはうたってありますし、両院の委員会からも支援を十分やりなさいよ、こういうことをうたっていただいておりますので、こういった趣旨からいいますと現在決めております支援策というのは不十分である、私はそのように思っています。三十万、五十万で安心して生活はできません。
#224
○木暮山人君 私もそのとおりだと思います。しかし、それをいわゆる附帯決議として皆さんがつけてくださったことはありがたいから、まあ黙っていようと。これは寸足らずで、いいみたいな悪いみたいな、もらったから、ではそれで安住した生活ができるかといえば、そうでもございませんから、やっぱり私ははっきりした何か数字を出しまして厚生省から援助をもらう方法を、特に皆さんが言えば案外厚生省ものみ込みがいいと思います。そうなされたらと思って、今質問したわけでございます。
#225
○参考人(高瀬重二郎君) よく理解しております。
 それで、私どもも先ほどから言っておりますように、現在決まっております支援策で十分と思っておりません。したがって、具体的に要求しております。それがどうなるかわかりませんが、残念ながら予算要求が九年度におきましては一人百万、十年度におきましては生活支援五十万、この予算しか決まっておりませんので、十一年度に向けて私どもは具体的にまた要請をしていきたいし、皆さん方の御支援も得たいと、そんなように思っています。
#226
○木暮山人君 そのお話を聞きまして、ちょっとつけ加えて意見をと思います。皆さんは好きでハンセンになったわけじゃございませんでしょう。これはだれが悪いかもわからぬわけでございますけれども、ここまでまいりますと、別にここで腹を立てても始まらないことでありまして、ただ、腹を立てさせないように社会がちゃんとやることがとても大切なことだと思うんです。私はそれを厚生省にちゃんと理解させて、一々陳情したりそんなことをしなくともちゃんとした、まあ最低でいいんです、支援をちょうだいするようにお話ししたらというような意見を今申し上げたいと思っているわけです。
#227
○参考人(高瀬重二郎君) 御意見のとおり、そういう世の中になれば私どもも非常に幸せだと思っています。しかし、今の政治の仕組みと申しますのは、やっぱり要請をしないと、お願いをしないとなかなか取り上げてもらえない、そういうような状態になっています。せっかく国会でつけていただいた附帯決議もなかなか行政はやろうとしない、それが現実だと思うんですよ。
 おっしゃることはよくわかりますので、引き続いて私どもも一生懸命この問題につきましては運動をしたいと思っていますので、御支援をよろしくお願いいたします。
#228
○木暮山人君 住専という問題が近年あったことは御存じですね。いわゆるお金を政府が六千億も出してあげた。まだ今から三十兆円も出すことになるんです、銀行を助けるために。
 ハンセンの治った皆様が今一万人といないんじゃないかと思うんです。そうしましたら、その人たちの苦労をぐっと支えて、せめて残っている人生を楽しく過ごせるように段取りをすべきだと思うんです。それがなかったら日本の国のいわゆる福祉なんというものは始まらないと思うんです。
#229
○参考人(高瀬重二郎君) おっしゃったように、現在ハンセンを思って社会復帰を既にしておる人たちが三千人ほどおります。それから、現在療養所におりますのは五千二、三百人おりますか、だから八千人ぐらいおるわけでございますけれども、先生がおっしゃったようなことになれば私たちは非常に幸福でありますし、長い間の苦労が報われるというようには思っております。ひとつよろしくお願いします。
#230
○木暮山人君 最後に一言言っておきますけれども、絶対腹を立てたりしちゃまずいと思うんです。日本の国は福祉国家なんでありますから、黙っていてもそういう方々を救出しなきゃだめな立場の国家なんです。それを十分皆さんにひとつお話しください。
 これで、私の質疑は終了させていただきます。どうもありがとうございました。
#231
○西川きよし君 御苦労さまでございます。よろしくお願い申し上げます。
 私は、まず花井さんにエイズの治療体制の実情についてお伺いしたいと思います。
 一昨年の四月、エイズ問題に関する小委員会の御発言ですけれども、会議録を読ませていただきまして、発言の中で、
  私たちが望んできたものは、いわば普通に診察券を出して普通に診療を受け、さらには必要があれば普通に入院したい、たったそれだけでした。しかし、この十年間、今まで言ったような国の政策により、全くそれは閉ざされてきました。余りにも遅過ぎた。しかし、今から全力を尽くして、僕ら感染被害者が生き残る道を何とか先生方の力で立ち上げに御協力をお願いしたいと思います。
と、こう述べていらっしゃいます。
 まず、今日の実情をお伺いしたいと思います。
#232
○参考人(花井十伍君) 和解が成立して以降、先ほどもちょっと申し述べたとおり、国がいわゆる拠点病院の中にフロック拠点病院、さらにはナショナルセンターとしてエイズセンターを国立国際医療センターにつくりまして、これを核にしましてエイズ治療体制というのを強力に推進して、さらには治験制度に拡大治験という新しい制度を導入しまして、アメリカである程度評価が定まった薬については拡大治験として日本の欲しい患者さんのところに届くような形にする、こういうことが功を奏して大分改善しました。
 今回の法律との兼ね合いでは、まさにこのように強力に推進して初めてこれが可能であったということで、やはりその医療の提供というのは、ただ提供するに努めるということだけであれば、それはこのような形で改善されることはないという経験的体験から、今回の法律についても国が責任を持ってそういうことを推進できるような法律にしていただきたいということを申し上げたわけです。
#233
○西川きよし君 次に、花井さんと、竹田先生にもお伺いしたいと思います。
 厚生省では、平成五年七月に、今お話にも出ました「エイズ治療の拠点病院の整備について」という保健医療局長通知の中で、総合的診療体制、個室の整備、カウンセリング体制、医療機関との連携、院内感染防止体制、職員の教育等、六つの整備要件を示しているわけです。ところが、昨年、総務庁の行政監察局が発表した報告書の中では、こうした整備要件を充足している拠点病院が少ないということが明らかになったわけです。
 花井さんからは、拠点病院の現状に対してどのようにお感じになっていらっしゃるのか、また竹田先生の方からは、医療機関の抱える問題点をお伺いしたいと思います。
#234
○参考人(花井十伍君) 拠点病院というのは全国に三百数十カ所ございまして、日本のHIV感染者全体の数とバランスしてどうなのかと、そういう議論もあろうと思うんですが、一つは、先ほど言ったように、当時は病院で私たちは本当に死ねるんだろうかと、そういう状況の中で、診てくれるだけでそれは救われるんだと、そういう状況があったわけです。
 現在は、診療が変わりまして、より専門、高度化してきています。したがって、全部の医療機関でその専門、高度な治療を提供できるかということは現実的に難しい部分も出てきていることは事実です。ですから、確かにその拠点病院、三百数十カ所がすべて最高の治療を提供できるというふうなことは現実的にはかなり難しい側面があると思います。
 したがって、その辺のことについては多少当時と状況が変わったわけですからいろんな整理の仕方があるとは思いますが、拠点病院が全体としてこうだというのはなかなか言いにくいんですが、やはり多少でこぼこがあって、患者さんを診たことがない病院もあれば、また一拠点病院でありながらブロック拠点病院に匹敵するぐらいの患者さんを診ている病院もある、こういうのが現状であります。
#235
○参考人(竹田美文君) 今回の法案の中の感染症に限って医療体制を申し上げますと、現在は伝染病予防法のもとでいわゆる隔離病棟ないしは伝染病棟というのがございます。しかしながら、今回の新法では、条文の中で特定感染症指定医療機関、第一種及び第二種感染症指定医療機関というのが指定されまして、この医療機関が整備されることが期待されております。
 特定感染症指定医療機関は、現在、国内では泉佐野市民病院にあるのみであります。これが厚生大臣の指定、国の指定によりまして全国に数カ所できる予定であります。これが新感染症及び一類感染症を取り扱うということになっております。それから、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関は都道府県知事の指定で今後整備されることが期待されております。
 先ほど来、花井参考人からのお話もありますように、国が積極的にこれを整備されるものと期待しております。
#236
○西川きよし君 そこで、先生にもう一点お伺いしたいんですけれども、この拠点病院の選定です。医療機関の協力そのものがなかなか得られないというケースが多々あるようですけれども、その部分の問題点というんでしょうか、背景にはどういうことがあるんでしょうか。実情をお伺いできればと思うんです。
#237
○参考人(竹田美文君) 後天性免疫不全症に関しましては既にいろいろなお話がありますので、いわゆる伝染病に関して申しますと、やはり伝染病というのが十一種類の病気を対象にしておりまして、隔離ということが前提になっております。
 古く言いますと、避病舎という感じになっておりますので、極めて劣悪な医療が提供されるのではないであろうかという錯覚、誤解が生じております。私自身、昭和十八年に避病舎に二週間ほど入った経験がありますが、当時は医師も看護婦も常駐しない小屋の中で医療を受けましたけれども、現在はそういうことは全国どこにもございません。
 したがいまして、決して劣悪な医療をすべての伝染病棟で受けているとは思いませんけれども、しかし今回さらに感染症全体を把握した中で特定感染症指定医療機関というのはごく限られた病院だけでありますので、これが医療機関側から忌避されるということは私はないと思います。
#238
○西川きよし君 次に、エイズ研究についてですけれども、この研究事業につきましては厚生省、文部省、科学技術庁の三つの省庁それぞれの事業があるわけです。研究者の中にそれぞれの事業を統合すべきではないかという御意見もたくさんあるわけですけれども、この点について竹田先生自身どのようにお考えになっておられるのか、それをお伺いして僕の最後の質問にしたいと思います。
#239
○参考人(竹田美文君) 私自身、エイズを専門としてはおりませんけれども、私の国際医療センター研究所ないしは国際医療センターの中にエイズの研究を活発に行われている研究者がおりまして、その意見を総合して言いますと、統合するべきであるという御意見があるのは事実であります。
 しかし一方において、予算措置というのが一本化されるわけでなくて、文部省、厚生省、科学技術庁から予算が措置される関係上、それぞれの省庁の予算のもとで研究が行われておりますので、これを統合するということになりますと、何と申しますか、政府から直接予算が配賦されるという形にならない限り実現しないと思います。
 しかしながら、科学技術庁、文部省、厚生省の間の研究者の間のコミュニケーションは非常によく行き渡っておりますので、現実の問題として問題点が起こっておるとするならば、特定の研究者、優秀な研究者に研究費がたくさん集中することに対して、比較的優秀でない先生からのクレームというふうに私は理解しております。
#240
○西川きよし君 ありがとうございました。終わります。
#241
○委員長(山本正和君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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