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#1
第142回国会 外交・防衛委員会 第12号
平成十年四月二十八日(火曜日)
   午後一時三十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十四日
    辞任         補欠選任
     鈴木 正孝君     青木 幹雄君
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     竹村 泰子君     笹野 貞子君
     広中和歌子君     寺澤 芳男君
     田村 秀昭君     泉  信也君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     青木 幹雄君     鈴木 正孝君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         及川 順郎君
    理 事
                須藤良太郎君
                武見 敬三君
                吉田 之久君
                高野 博師君
    委 員
                岩崎 純三君
                塩崎 恭久君
                鈴木 正孝君
                二木 秀夫君
                宮澤  弘君
                齋藤  勁君
                笹野 貞子君
                寺澤 芳男君
                田  英夫君
                立木  洋君
                泉  信也君
   国務大臣
       外 務 大 臣  小渕 恵三君
   政府委員
       防衛庁防衛局長  佐藤  謙君
       外務大臣官房審
       議官       海老原 紳君
       外務省アジア局
       長        阿南 惟茂君
       外務省経済協力
       局長       大島 賢三君
       外務省条約局長  竹内 行夫君
       文部省初等中等
       教育局長     辻村 哲夫君
       水産庁長官    嶌田 道夫君
       海上保安庁次長  長光 正純君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大島 弘輔君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の
 協定の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(及川順郎君) ただいまから外交・防衛委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、竹村泰子さん、広中和歌子さん及び田村秀昭君が委員を辞任され、その補欠として笹野貞子さん、寺澤芳男君及び泉信也君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(及川順郎君) 漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○吉田之久君 初めに、日中漁業協定の締結の意義につきましてお伺いをいたしたいと思います。
 我が国は、国連海洋法条約締結に際し、中国、韓国との間で条約の趣旨を踏まえ、新たな漁業協定を締結すべく合理的期間内に結論を得るよう努力する旨の閣議了解を行い、条約が我が国について発効した後、両国との交渉に着手してこられました。幸い中国との間では一九九七年九月に実質的な合意に達することができました。
 沿岸国が自国の排他的経済水域において漁業資源の管理を行うことは、近年我が国周辺水域における重要な魚種の資源状況が横ばいあるいは減少傾向にあることを考えた場合、極めて重要な課題であります。我が国の二百海里排他的経済水域の完全な実現は喫緊の課題であると存じます。
 そうした観点から、今般の日中漁業協定は評価するところでありますけれども、政府は改めてこの機会にその締結の意義をどうお考えになっておられるのかお伺いをいたしたいと思います。
#5
○国務大臣(小渕恵三君) この協定は、日中両国について平成八年に発効いたしました国連海洋法条約の趣旨を踏まえまして、沿岸国が自国の排他的経済水域におきまして海洋生物資源の保存、管理を行うことを基本とした新たな漁業秩序を日中間に確立することを目的といたしております。
 これまで中国漁船は、我が国の排他的経済水域におきまして我が国による規制、取り締まりのもとに置かれておりませんでしたが、本協定によりまして、今後これを基本的に我が国の管理下に置くことが可能となります。また、我が国漁船の中国の排他的経済水域内における操業も、基本的には中国側からの許可に基づいて実施されることになります。
 こうした結果、国連海洋法条約に則した新たな漁業秩序が日中間に確立されることになりまして、今後は日中間の安定した漁業関係の基礎となることが期待されておるところでございます。
#6
○吉田之久君 次に、日中交渉の過程においてかなり主張の隔たりがあったやに承っておりますが、特に我が国が中国との交渉に着手し一九九七年九月の実質合意に至るまでの経過で、日中両国間に存在した主な主張の隔たりは何であったのでありましょうか。また、そうした主張の隔たりを日中両国がいかに克服し今般の協定締結に至ったのでありましょうか、お伺いをいたしたいと思います。
#7
○政府委員(阿南惟茂君) 日中漁業協定交渉におきましては、まず、漁業協定締結以前に両国の排他的経済水域の境界画定、これを行うべきだという主張を中国側は当初強くしておりました。ただ、この境界画定には相当長時間がかかるという現実もございましたので、漁業協定に、この境界画定ということを並行的に交渉を続けながらやるという前提で交渉に入ったわけでございます。
 この境界画定に関しましては、実は随分長いこと中国との間で議論をいたしましたけれども、中国側は、この境界線の引き方について衡平原則という一つの原則で境界画定はなされるべきだと、これに対しまして我が方は、相対する排他的経済水域が重複する場合にはそれは中間線原則で境界画定を行うべきだというようなことで、まず排他的経済水域の境界画定について立場の隔たりがあったわけでございます。
 それは引き続き交渉するということにして、いよいよ協定交渉に入りました。実は、境界線を引くのが難しい水域は暫定的な措置を導入するという暫定措置水域を設けたわけでございますが、この点に関しまして中国側は、この暫定措置水域をできるだけ広く設定したい、なるべく日本の沿岸に近づけたものにしたいという主張をいたしました。これに対しまして日本側は、むしろ排他的経済水域を広くとりたい、したがって、この暫定措置水域は狭くしたいという基本的立場の隔たりがございました。
 こういう基本的な立場の利害の違いからくる隔たりとあわせまして、漁業協定というのは両国の経済利益が正面衝突するなかなか厳しい交渉でございますので、鋭意交渉した結果、双方の受け入れられるぎりぎりの段階で決着をしたと。先生がおっしゃいましたように、昨年九月、橋本総理訪中の直前に実質合意に達したという経緯がございます。
#8
○吉田之久君 中国の方はかねて大陸棚に非常にこだわってきておる経過もありますし、また交渉の途中では衡平の原則には人口、頭数の問題もあるんだというようなこともあったようでございまして、大変苦労されたと思うのでございます。
 そこで、この協定の適用水域の区分についてお伺いをしたいと思うんですが、この適用水域を日中両国の排他的経済水域の全体とし、沿岸国は原則として自国の排他的経済水域において漁業資源の保護を行うことを基本としています。その上で、漁獲、操業条件、取り締まり等の点から協定水域を、一、相互入会水域、二、暫定措置水域、三、北緯二十七度以南の水域の三つの異なる水域に区分しております。
 沿岸国による外国漁船の操業許可、操業条件の決定、取り締まり権の行使は国連海洋法条約の趣旨を踏まえた漁業秩序を基本とすべきという点であると考えますが、協定水域をこうした三つの異なる水域に区分した理由は一体何であるのか。先ほども暫定水域の問題についてちょっとお触れになりましたけれども、このように三つに区分するという例は余り今までなかったと思うのでございますが、その間の事情について御説明をお願いいたしたいと思います。
#9
○政府委員(海老原紳君) 本件協定におきましては、その適用水域は日中両国の排他的経済水域全体でございます。
 それで、ここにおきましてどのような漁業秩序を構築するかということで交渉を行ったわけでございますけれども、今、委員まさにおっしゃいましたように、我々といたしましては、国連海洋法条約に沿った形での漁業秩序を確立したいということで、基本的にはいわゆる沿岸国主義に基づく資源の保存、管理を行うということで交渉を行ったわけでございます。したがいまして、この日中両国の排他的経済水域においては、原則として沿岸国が資源の保存、管理を行うとした上で、相互に入会を認めるということにしたわけでございます。
 ただ、この相互入会措置をとらない水域というものが御指摘のように二つございます。一つはいわゆる暫定措置水域でございまして、これは東海の一部で北緯二十七度と北緯三十度四十分の間の水域でございますけれども、ここはいずれにせよ日中いずれかの排他的経済水域でございますので、日中両国で境界画定が必要となる水域でございます。
 したがいまして、境界画定のための交渉を行ったわけでございますけれども、先ほどアジア局長からも御説明をしましたように、両国の立場がかなり離れておりまして、合意に達することができなかったということで、そのため早期解決を要するという観点から暫定的な措置を導入する水域としたということでございます。
 具体的には、日中両国が日中漁業共同委員会の決定に従いまして、いわゆる共同規制を行うという水域でございます。
 それから、例外的な規定といたしまして、第二番目の水域につきましては、北緯二十七度以南の協定水域というものがございます。この水域におきましては、漁業実態が極めて複雑かつ錯綜しているという事情がございます。そういうこともございまして、現行の協定におきましても、北緯二十七度以南の水域というものは協定水域にしてございません。
 そういうこともありまして、この水域におきましては、基本的に新たな規制を導入することなく、現存の漁業秩序を維持することとしたということでございます。
#10
○吉田之久君 次に、相互入会水域における相手国漁船への操業許可についてお伺いをいたしたいと思います。
 相互入会水域においては、日中それぞれが自国の排他的経済水域に対し沿岸国としての権利を行使し、相手国漁船の漁獲を許可すると定められております。我が国の排他的経済水域については、我が国が、漁業資源の状況、我が国漁業者の漁獲能力、それから相互入会の状況等を考慮し、中国漁船の漁獲できる魚種、漁獲量、操業区域を決定することになります。
 漁業資源の量的な管理を日中漁業関係において実現することが協定そのものの実効性を確保する上で不可欠の要件であると思います。この協定に基づく中国漁船の操業許可、操業条件の決定に向けて今後我が国はどのような作業を行っていくのか、その点を具体的にお伺いをいたしたいと思います。
 また、ついでにもう一点つけ加えますが、我が国の周辺水域においては、中国、韓国漁船の進出が、資源の減少、我が国漁業者の漁具被害、操業妨害などをもたらしてきておることは事実でございます。この協定の締結により、相互入会水域において、中国漁船に対しては我が国の関係法令が適用されることになるはずでございますけれども、法令遵守の実効性を確保するためには取り締まり体制の強化に政府はいかに具体的に取り組んでいかれようとするのか、この両点についてお伺いをいたします。
 海上保安庁の方からもお答えいただければありがたいと思います。
#11
○政府委員(阿南惟茂君) 御質問の中国漁船への操業許可、操業条件の決定に関する部分についてお答えを申し上げます。
 本協定は、先ほど条約局審議官から御説明申し上げましたように、日中両国の排他的経済水域全体を対象としておりまして、国連海洋法条約の趣旨を踏まえて原則として相互入会の措置をとることとしているわけでございます。すなわち、原則として沿岸国がそれぞれ自国の排他的経済水域における資源状況等を考慮して、相手国漁船に対する漁獲割当量その他の操業条件を決定して許可及び取り締まりを行うこととなるわけでございます。具体的には、相手国漁船の操業条件の決定等は、この協定の中で設立が予定されております日中漁業共同委員会におきまして協議をし、その結果を尊重して決めていくということでございます。この協定が発効する前にも実際の運用に支障を来さないように準備協議をなるべく早期に開催して、相互入会水域における操業条件等については中国側と協議を行っていきたい、そういうふうに考えております。
#12
○政府委員(長光正純君) 相互入会水域における中国漁船に対する取り締まりの体制についてでございますけれども、私ども海上保安庁におきましては、従来から二百海里漁業水域において、また領海周辺海域におきまして、外国漁船の取り締まり等を行ってきたところでございます。
 そういった経験も生かしまして、今後とも巡視船艇、航空機を予想される主要海域に重点的に配備するなどによりまして、的確にこれに対処してまいりたいというふうに考えております。
#13
○吉田之久君 次に、我が国の二百海里水域内における外国漁船の操業状況についてお伺いをいたしたいと思います。
 我が国は、自国の排他的経済水域における中国漁船の漁獲を許可し、その操業条件を決定していく上で、自国の二百海里水域における外国漁船による最近の操業状況の把握は極めて重要なポイントであると思います。我が国の二百海里水域における外国漁船の最近の操業状況、とりわけ国ごとの主な漁獲魚種、漁獲量、操業区域等についてお伺いをいたしたいと思います。
#14
○政府委員(嶌田道夫君) 我が国の排他的経済水域におきます外国漁船の操業状況でございますが、まず中国漁船につきましては、対馬周辺を中心にいたしまして、これは底びき網漁船で、どんなものをとっているかといいますと、ウマヅラハギとかイカなどでございます。それからあと、まき網漁船によりましてアジ、サバをとっているというようなことでございます。そのほかに、日本海及び北海道の太平洋側でイカ釣り漁船が操業を行っているというのが現状でございます。
 さらに、韓国漁船につきましては、これは北海道周辺水域におきまして大型のトロール漁船がスケトウダラを対象に操業を行っております。また、西日本周辺水域におきましては底びき網漁船でカレイなどをとっておりますし、また、まき網漁船ではアジ、サバ、それから刺し網漁船ではズワイガニというような魚種をとっておるという状況にございます。
 どれだけとっているかということでございますが、我が国の排他的経済水域におきます中国及び韓国漁船の漁獲量につきまして、現在、中国及び韓国側から我が国の排他的経済水域におきます漁獲量についての正確な数値の提示がございません。明らかになっていないということでございまして、今後、実務者によります準備会合を鋭意進めていく考えでございますので、その場におきまして、言うなればこの漁獲量の実態についても明らかにしていきたいというふうに考えております。
#15
○吉田之久君 かなり綿密な情報交換とか相互確認がなされないと、結局わけのわからない管理になってしまうおそれがありますので、その点はよろしく御配慮をお願いしたいと思います。
 次に、暫定措置水域について、先ほどもお話がありましたが、北緯三十度四十分から北緯二十七度までの間の、日中間のおおむね距岸五十二海里の線で囲まれた水域を暫定措置水域として、日中両国が共同で漁業資源の保存、量的な管理を行い、その水域における取り締まりは漁船が属する国、すなわち旗国が行うことと規定いたしております。この規定は取り締まりという側面からは既存の漁業秩序の維持と何ら変わりはありませんけれども、従来とは異なる側面でありますところの保存措置、量的な管理措置としては今後具体的にどのような措置をとっていくのでありましょうか、お伺いをいたします。
#16
○政府委員(阿南惟茂君) 暫定措置水域内における保存措置、量的な管理等についてのお尋ねでございますが、国連海洋法条約の趣旨を踏まえまして日中共同で海洋生物資源の量的な管理を行うということで見解が一致しております。
 具体的な管理方法につきましては、先ほども申し上げました漁業共同委員会で協議の上決定して、それぞれ日中両国が自国の国内法令に基づいてこれを実施するということになっております。
#17
○吉田之久君 次に、北緯二十七度以南の水域についてお伺いをいたします。
 この協定は、北緯二十七度以南の水域においては、日中両国は基本的に既存の漁業秩序を維持し、自由操業を継続することと規定いたしております。つまり、この水域では自国の関係法令を相手国国民に適用しないということになると思います。こうした規定ぶりとした理由それから背景には、この水域では日本、中国、台湾等の漁業活動が伝統的に複雑に入り組んでいることが挙げられますけれども、念のため、なぜ自由操業を継続、維持することとしたのか、御説明をいただきたいと思います。
 また、北緯二十七度という線引きはどのような根拠に基づいて行われたのか。この二十七度以南の水域には尖閣列島が含まれます。何かはれものにはさわらない方がいいだろうというような考慮もあって二十七度線というところで線を引いたのか、その辺についての御説明をお願いいたしたいと思います。
#18
○政府委員(海老原紳君) 北緯二十七度以南の水域につきましては、ただいま委員がおっしゃいましたように、日中双方は自国の排他的経済水域におきまして自国の国内法令に基づきまして資源の保存、管理のための措置をとるということになっております。同時に、その水域におきましては、資源維持につきまして日中両国が協力関係にある。これは共同委員会の協議を通じた勧告を尊重いたしまして、これに基づきまして必要な措置をとるという協力関係でございます。
 このような協力関係にあることを前提といたしまして、相手国の国民に対しまして自国の漁業に関する法令を適用しないという意図表明を書簡の交換という形で行っております。これはどうしてかということでございますけれども、これも委員御指摘になりましたように、漁業実態が複雑かつ錯綜しているということでございます。
 二十七度という線の根拠というお尋ねでございましたけれども、これは先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現在の協定もこの北緯二十七度を南限としております。今回も、交渉の結果、先ほど申し上げましたように漁業実態が複雑かつ錯綜しているという事情を考慮いたしまして、基本的に新たな規制は導入しないという、水域のいわば上限線という形で日中で合意したものがこの二十七度線ということでございます。
 最後に尖閣列島についてのお尋ねでございますけれども、この協定はそもそも日中間におきまして新たな漁業秩序を構築するためのものでございまして、尖閣諸島の領有権とは本来関係がないというものでございます。
 先ほども申し上げましたように、この水域を設定しましたのはあくまでも漁業実態が複雑かつ錯綜しているということでございまして、尖閣の問題は関係がございません。
 以上でございます。
#19
○吉田之久君 次に、韓国との漁業協定の締結交渉についてお伺いをいたしたいと思います。
 残念なことに、本年一月二十三日に我が国が現行協定の終了通告を行う事態に日韓は至りました。金泳三政権の後を継いだ金大中政権との間でも、現在に至るまで実質的な進展を見るには至っておりません。
 外相は、去る二十一日、今月二十九、三十日、だからあす、あさってになりますね、この両日にわたって審議官クラスの実務者協議を東京で開くことを発表されましたけれども、この協議に臨む我が国の基本的な考え方をお伺いしておきたいと思います。
 また、この協議においては、日韓の最大の対立点であった竹島周辺の暫定水域の広さをめぐる問題が先送りされ、漁業資源管理のあり方から話し合う方針が決められたとの報道も伺っておりますけれども、この点につきまして大臣から御答弁をいただければありがたいと思います。
#20
○国務大臣(小渕恵三君) 日韓漁業問題につきましては、吉田先生御指摘のように、先月二十一日に朴定洙外交通商部長との会談におきまして、漁業関係者の対話を通じた雰囲気づくりを政府としても支援しながら早期交渉再開につき原則合意いたしたところでございます。
 これを受けまして、明二十九日より実務レベルでの交渉が再開されることになりました。私と長官との間で四月ごろに何とか再開をしようということでございましたので、月末になりましたけれども、まずこの交渉が再開されることになりましたことは約束の第一歩だ、こういうふうに理解をしております。
 政府としては、国連海洋法条約の趣旨を踏まえまして、新たな漁業協定の早期締結のため交渉に真剣に取り組む考えでございまして、今回の実務レベル協議におきまして漁業資源の維持管理のあり方、今後の交渉に関する基本的な考え方を話し合う予定に相なっております。
 なお、いわゆる竹島周辺の問題につきましては、前の長官との間でその線引きにつきましていろいろ議論をいたしてまいりまして最終的な段階に至っておりましたが、残念ながら今申し上げましたように、現協定につきましては、我が方から一応来年の一月までをもって現協定の効力を失うということに相なりましたので、今までの話し合いも十分考慮されなければなりませんが、まずは協定に向かって今申し上げたような話し合いを新しく始めることとなりまして、できる限り双方とも熱意を持って取り組んでまいりたい、このように考えております。
#21
○吉田之久君 時間が参りましたので、最後の質問にいたします。
 韓国との場合は、我が国が終了通告を行った直後、韓国政府は、我が国周辺水域で操業する自国船に対して講じている自主規制措置を停止すると通告し、その後がなり乱暴な漁獲が行われたように聞いておるわけでございますけれども、来年の一月二十二日まで現行協定は効力を持っているはずでございます。したがって、自主規制は生きているはずでございます。だから、政府は韓国側に対して今後いかなる働きかけをしていかれるのか、お尋ねいたしたいと思います。
 最後に、このようなことで日中漁業協定は結ばれましたけれども、日韓はこれからの問題となっております。ほとんど同じ水域で発効時期のずれを生じますこの両国間、三国間の漁業協定を新しい秩序のもとに確立していくというのはなかなか大変なことだと思うわけでございまして、その辺の大臣の決意もお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
#22
○国務大臣(小渕恵三君) 吉田委員御指摘のように、終了通告をいたしましたときは前の政権でございましたけれども、双方自主規制をいたしておった点につきまして、我が方がこうした行為に出たということにかんがみまして、自主規制措置に対してこれを解除といいますか韓国側からいえばそれを解くということでしょうが、そういうことの行為によりまして大型のトロール船が北海道沖合で操業を始めて、かつこれを続けておるわけでございます。
 そういった意味で、こうした状態がまた継続するということになりますと、いろんな感情的な問題も双方で惹起しかねないということでございますので、先ほど御答弁申し上げましたように、何としても新しい協定を一日も早くつくり上げるということに精いっぱいの努力をいたしていきたいと思っております。
 また同時に、韓国も中国との間で今交渉を進められておるようでございます。そういう意味で、この地域の問題は韓国、中国との間、あるいは日韓、そして日中はでき上がりましたが、それぞれに話し合いがまとまることによってこの地域の秩序が維持できるということになるわけでございますので、まずは我が方としては、日韓の問題について全力を挙げてこの協定締結のために努力を傾注してまいりたい、このように考えております。
#23
○吉田之久君 終わります。ありがとうございました。
#24
○高野博師君 それでは、日中漁業協定と関連しての日韓漁業協定、今大臣からお話がありましたが、それと関連して一つだけお伺いしたいと思います。
 現行協定は一月二十三日に一方的な終了通告ということで、一年間は有効なのでありますが、それまでに新しい協定がもしできなかった場合には国連海洋法条約が適用になると思うのですが、その方がいいという意見もあるというふうに聞いております。もしその場合には、竹島の領有権問題について韓国側が現在実効的な支配、すなわち施政を行っているという現実からするならば、漁業協定、そしてその中で暫定水域といういわば共通の土俵ともいうべきものがなくなるということは、日本にとっては不利になるのではないかという懸念を私はしているのですが、その点はいかがでしょうか。
#25
○政府委員(阿南惟茂君) 日韓漁業協定は、これから再開をいたしまして鋭意交渉をしていくわけでございますが、現行協定が終了後も一年有効である、その期間後のことをお尋ねかと思いますが、そういうふうにならないように双方にとっていい協定をなるべく早くつくりたいということで努力をしております。
 ただ、先生今おっしゃいましたような状況というのは、現実と申しますかそういう状況下では起こり得るわけでございまして、竹島周辺海域を含めて日韓両国の排他的経済水域の境界画定ができていないところでは、どちらの排他的経済水域か判然としないという水域があらわれてくるわけでございまして、漁場に混乱が生じる可能性がある。そういうこともございますので、であればこそ協定をできるだけ早くいいものをつくりたい、こういうことで努力してまいるということでございます。
#26
○高野博師君 それでは、前回の委員会の質問に引き続いて、児童の人権条約に関する問題を取り上げたいと思います。
 実はきのうの産経新聞の夕刊に「広島県の学習指導要領逸脱問題」という記事が出ておりまして、文部省が異例の調査をしたということで、これは県の学校が反国歌・反国旗教育などをしていて、これを是正するためだ、こういうことですが、これは児童の人権条約という観点から見ても関心があります。問題もあるかと思いますが、この事実関係はどうなっているでしょうか。
#27
○政府委員(辻村哲夫君) まず、このたびの調査の性格でございますけれども、御案内のとおり、地方教育行政の組織及び運営に関する法律という法律がございますが、その法律に基づきますと、文部省は、学校教育が法令の定めるところにより適切に行われるために都道府県、市町村教育委員会に対して必要に応じて指導、助言、援助を行い、またこれに関連して必要な調査を行い、あるいは資料、報告を求めることができる、こういう規定がございます。
 この地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づいて今回調査を行っているわけでございますが、その中身は、広島県の福山市内の小中学校におきまして、学習指導要領の上では原則週一度道徳という指導が行われるべきことになっているわけでございますけれども、それが必ずしも十分に行われていないといったこと、あるいは国旗・国歌の指導につきましても、児童生徒の発達段階に応じて的確な指導が行われるべきことになっているわけでございますが、この点につきましても必ずしも十分な適切な指導が行われていないというような指摘がさまざまな場で行われております。国会等におきましても取り上げられたところでございまして、こういった点につきまして文部省が県、市の方に赴きまして、今回その事実関係を調査し、また必要があればその指導、助言をするということで参っているものでございます。
#28
○高野博師君 今回文部省が特別現地調査を行ったということは、私は戦争中の文部行政をある意味で想起したのでありますが、日本の国歌と国旗は何でしょうか。簡単に答えてください。
#29
○政府委員(辻村哲夫君) 国旗につきましては日の丸、国歌につきましては君が代が慣習的にあるいは国民的確信として定着しているという理解をいたしております。
#30
○高野博師君 実定法上の根拠はありますか。
#31
○政府委員(辻村哲夫君) 明文の法律をもって規定されているものではございません。
#32
○高野博師君 国民的な合意ができていると、そういう明言ができますか。
#33
○政府委員(辻村哲夫君) この点につきましては、しばしば国会等におきましても内閣法制局長官からの答弁、その他関係大臣からの答弁におきましても繰り返し答弁されているところでございまして、政府としてはそのような理解のもとに国旗・国歌の指導をしているわけでございます。
#34
○高野博師君 学習指導要領にはどう書いてありますか。
#35
○政府委員(辻村哲夫君) 国旗・国歌につきましては社会科におきまして指導する、あるいは音楽の時間におきまして指導する、あるいは入学式、卒業式などにおきましても指導する、明確なものは後ほど御紹介いたしますけれども、そういった趣旨のものが学習指導要領の中に明記してございます。
#36
○高野博師君 学習指導要領は小中高と、このうちの小学校の音楽の部分に「国歌「君が代」は、」とさらっと書いてあるんですが、君が代を国歌とするとかあるいは日の丸を国旗とするというような明文規定はありません。学年の児童の発達段階に即してこれを指導するということになっておりまして、君が代、日の丸という言葉ではありません。国歌、国旗という言葉を使っておりますが、これは児童の人権条約から見ても、まさに思想、良心の自由という観点からすれば押しつけるべきものではない、そういうとらえ方はできると思うんですが、いかがでしょうか。
#37
○政府委員(辻村哲夫君) まず、国旗が日の丸である、国歌は君が代であるというのは、学習指導要領をもって初めてそうなっているというわけではございません。先ほど申し上げましたように、慣習法あるいは慣習法的に定着をしているという内閣の見解を踏まえまして、子供たちにこの国旗あるいは国歌というものについてどのような指導をすべきかというまた別途の教育的判断で学習指導要領の上に明記しているものでございます。
 特別活動の規定におきましては、先ほどちょっと言葉をはしょりましたけれども、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」とございますけれども、これは先ほどから申し上げておりますように、国旗は日の丸であり国歌は君が代であるという前提で、わざわざ国旗日の丸、国歌君が代という表現はとりませんで、国旗を掲揚する、国歌を斉唱するというように規定しているものでございます。
#38
○高野博師君 児童の人権条約から見ると、子供たちがこれを拒否するということは承認されるべきではないかという解釈が私はできると思います。
 私は日の丸、君が代に反対しているわけではありません。ただ、実定法上何の明文規定もないという事実があるわけです。ですから、こういうものをはっきりさせるべきかどうか、あるいは国民的なコンセンサスというものをつくっていく必要があるのではないかと。文部省が一方的に押しつけるというようなやり方は私は適当ではないと、そこを指摘しておきたいと思うんです。
 そこで、学習指導要領についてお伺いいたしますが、学習指導要領というのは、現在我が国が抱えるさまざまな教育上の問題との関係でも重大な位置を占めているのであります。この条約の政府報告書の二一七に、学習指導要領は大綱的な基準と位置づけています。そこで、学習指導要領は法的な拘束力を持つんでしょうか。
#39
○政府委員(辻村哲夫君) 学習指導要領は、全国的に一定の教育水準を確保するとともに実質的な教育の機会均等を保障する、そういう観点をもちまして、国が学校教育法四十三条等の委任に基づきまして教育課程の基準として定めております文部省の告示でございます。この学習指導要領を基準として各学校におきましては教育課程を編成するということになるわけでございまして、その意味で法的な拘束力を持っているというふうに考えております。
#40
○高野博師君 その法的拘束力を持っているという根拠は何でしょうか。
#41
○政府委員(辻村哲夫君) ただいま学習指導要領につきましての学校教育法等の根拠規定を紹介したわけでございますけれども、これに基づきまして教育課程を編成しなければならないという法規としての性格を有しているというふうに考えております。
 なお、このことにつきましては、既に最高裁判所の判決におきましてもそのような判決が確定しているところでございます。
#42
○高野博師君 この最高裁の判決の中で、法規としての性格を有するという部分については、これは学界で議論が真っ二つに割れているところでありまして、これが即法的拘束力を持つということにはつながらないという意見もあります。これは半分以上あるわけです。そういう中で文部省が勝手に法的拘束力を持つとすることは重大なことではないかと思うんです。
 この学習指導要領を大体読んでみました。大変膨大な中身を含んでいる。先ほどおっしゃったように一定の水準を確保するというのではなくて、また機会均等云々と言っておりますが、そういうものではなくて、この学習指導要領の内容、レベル、これが余りにも高すぎる、量が多すぎる、これが今の学校教育をゆがめていると私は思うのであります。この学習指導要領は法的拘束力があるというのであれば、これに基づいて教育をやらなかった場合に教師は処分されるんでしょうか。
#43
○政府委員(辻村哲夫君) 基準というものをどのように考えるかであるわけでございますけれども、ただいま私最高裁の判決で確定をしているということを申し上げたわけでございますけれども、平成二年一月十八日の伝習館高校事件判決というのがございます。この判決におきましては、当該高校の教師が学習指導要領を著しく逸脱した教育活動を行っていたということによりまして処分を受けました。そのことが争われたものであるわけでございますけれども、この判決におきましてはその処分が正当であったという判決であったわけでございます。
 そういう意味で、この基準というものの解釈があるわけでございますけれども、この学習指導要領に著しく逸脱するということでありますれば懲戒等の対象になり得るというふうに考えております。
#44
○高野博師君 この指導要領のすべての内容について、これは教師が教える義務があるんでしょうか。
#45
○政府委員(辻村哲夫君) 学習指導要領を見ていただくとわかると思いますけれども、学習指導要領の中にもさまざまな規定がございます。例えば小学校の二年生で九九を教えるというような部分もございます。留意事項として、その九九を教えるに当たってはこうこうこういうことに留意をすべきであるとかあるいはこういう配慮をすべきであるとか、あるいはおくれて進む子供にはこういう留意をして指導に当たるべきとかというような配慮事項的なものもございます。
 したがいまして、一律に学習指導要領のすべてにわたってということにはならないかと思いますけれども、学習指導要領が法規として求めておりますところにつきましては、教師はこれに従って教育活動をする義務を負っているというふうに考えております。
#46
○高野博師君 文部省作成の学習指導要領というのは、文部省による教育行政の中核をなすものだと私は思っておりますが、この学習指導要領によって今起きていろいろんな問題、落ちこぼしとかいじめとか登校拒否とかあるいは不登校、中退、校内暴力、こういうさまざまな問題の原因の一つになっているということは指摘されるとおりであります。
 これが子供に必要な共通の基礎的学力の一つの水準というのではなくて、生徒に序列をつくる、あるいは選別をする、そういう競争的性格を持っているというところに最大の問題があるのではないか。この教育内容が過大であるために、教師もそして生徒も、子供にとっても過重な負担になっているということだと思うんです。また、学習指導要領を通じて文部省の中央集権的なあるいは国家主義的な教育行政を行っているという指摘、見方もあります。
 そこで、学習指導要領がこれまで改訂されるたびに内容の量を増加させてきた、それから質のレベルを上げていった。今まで小学三年生がやっていたものを一年生にしてきた、中学三年生のも一年でやっている。膨大な量がふえていったということ。これはアンケートによれば、小学校の教師の九割の方が、三割以上の子供がついていけない、こういうアンケートの答えをしておりますし、半数以上の教師は、五割以上の子供はついていけないのではないか、こういう回答をしております。
 ちなみに、小学校で学習する漢字の量が今一千六文字、これは六九年の改訂のときは八百八十、七九年の改訂では九百九十、どんどん漢字の数をふやしている。今の子供たちの父母の代の二倍になっている。なぜこんなにレベルを上げていくのか、量をふやしていくのか。これについてはどうでしょうか。
#47
○政府委員(辻村哲夫君) 確かに学習指導要領につきましては、その内容が過重であるという御指摘を私どもも承知いたしております。ただ、先生も御指摘のとおり、学習指導要領が教育課程の基準としての大変重たい意味を持つということで、学習指導要領の制定に当たりましては、私ども特にそういった点を含めましてさまざまな方々の意見を聞きながら慎重に制定しているつもりでございます。
 一点でございますけれども、必ず学習指導要領の改訂を行う場合には、現行の学習指導要領が実際に子供たちにとってどのような影響を持っているのか、達成度はどうかということを、多くの学校の子供たち、教師たちに御協力をいただいて、そういった事実に基づいて学習指導要領の改訂作業をしております。現在も次の完全学校週五日制に向けた学習指導要領の改訂作業をいたしておりますけれども、その前には膨大な達成度調査を行っているところでございます。
 一点でございますけれども、毎回改訂のたびに学習指導要領の内容をレベルアップしてきているという点につきましては、私どもそうではないというふうに思っております。学習指導要領で決め、ますのは、小学校・中学校を通しまして、子供たちが社会人としてひとり立ちしていくためにどうしても必要なことを教える、そういう観点で教えているわけでございます。そのときにも、今言いましたようなさまざまな調査を行いましてこの内容を決めているわけでございます。
 漢字についての御指摘もございましたが、漢字につきましても、これは当用漢字の改定ということで、子供たちが将来新聞を読むときにはこのくらいの漢字は必要であろうというような常用漢字の改定を踏まえまして、それを学年ごとに割って教えていこうという形でやっているわけでございます。漢字の数がわずか数文字でございますけれどもふやされた経緯もございますが、そのときには一週間に一度、ですから年間に直しますと三十四時間から三十五時間の時間数をふやす形で漢字をしっかり教えようというふうにしているわけでございます。
 しかし、今の点は大変重要な点でございまして、子供たちがみんなこれによって振り回され、毎日慌ただしく学校生活を送るということであってはならないわけでございまして、心しているつもりでございますが、そういう趣旨に立ってこれまでも努力してまいりました。今後も努力していきたいと思っております。
#48
○高野博師君 今答弁されたような事実ではない、相当レベルは上がっているというのが事実ではないかと私は思うんですね。
 これは、小学校の教師の、江東区のアンケートですが、八三%の教師が国語の漢字が多過ぎる、それから九三%の教師が算数の学習内容を定着させる時間が足りない、こういう回答をしております。ですから、レベルアップじゃなくてミニマムスタンダードということが重要なのであって、競争させるためにどんどんレベルを上げていく、これが今の教育をやっぱりゆがめている、私はそう思います。
 条約の報告書で言うところの大綱的基準ではなくて学力競争の基準、これもぜひ見直していただきたい。この子供の人権条約の二十九条で人格の全面的な発達という教育目的があるわけですが、この実現も困難にしている。それから、人権教育の実現という点でも問題がある。
 先ほど、広島県の学校での問題がありましたが、道徳教育ということを言っておりますが、日本の道徳教育の問題は、個人の尊厳とか個人の人権とかそういうものに重きがあるのではなくて、社会の規範とかあるいは国家の秩序とか、そういうことに重点を置いているところに私は問題がある、それを指摘しておきたいと思います。
 そこで、去年の四月十五日現在で、我が国の自治体の三〇%に当たる九百七十五の地方議会が文部省に対して学習指導要領の抜本的な見直しを求める決議を採択しているんですが、これについてはどういう対応をしているんでしょうか。
#49
○政府委員(辻村哲夫君) ただいま御指摘のとおり、地方議会等におきまして千件を超える学習指導要領の見直しの決議がなされていることは承知をいたしております。この趣旨は、完全学校週五日制をなすべきと、そのためには現行の学習指導要領のままでは、これは六日制を前提にした学習指導要領なので内容が稠密になる、したがって完全学校週五日制にふさわしい内容の見直しをしっかりと行って、そして子供たち一人一人に豊かな心やたくましさをしっかりと身につけるような学習指導要領にしてほしい、こういった趣旨のものでございます。
 私たちもそれは適切な内容のものだという理解をいたしておりまして、現在、教育課程審議会におきまして完全学校週五日制を円滑にスタートすべく全力を挙げて努力をしている、こういう状況でございます。
#50
○高野博師君 前回の委員会でも週五日制の問題を取り上げましたが、週五日制にするということに相応する学習指導要領の内容の変更がなければこれはますます負担になるということでありますから、ぜひこの点は考慮していただきたい。
 それから、高校の進学競争についてですが、全日制高校入学を希望している生徒と実際に希望しながら入学できない生徒数は去年はどのぐらいありましたか。
#51
○政府委員(辻村哲夫君) 平成九年度でございますけれども、高等学校の全日制と定時制への入学志願者数は百四十四万五千人でございました。そのうち入学者は百四十三万二千人ということでございまして、一万三千名ほどの差がございます。
#52
○高野博師君 今、高校入学を希望している者を全部入れてもそれを受け入れるだけのキャパシティーがあるにもかかわらず、何ゆえに希望者全員に、入学のための計画進学率を設定して進学率を抑制するということをやっているんでしょうか。
#53
○政府委員(辻村哲夫君) それは入学者を抑制するということではございませんで、公立高校と私立高校とのシェアの問題、それから高等学校と専修学校とのシェアの問題等でそういったものをやっているわけでございまして、抑制するわけではございません。
#54
○高野博師君 今、一万三千人の子供が希望しながら入れなかったという事実があるわけです。これは私立に行くのかどうするのかわかりませんが、こういう計画進学率をつくることによって競争に駆り立てているということが問題だと思うんです。中央教育審議会、これが第十四答申の中で、受験競争の弊害について強い意識を持っている、にもかかわらず日本の産業の発展のために競争が必要であるという強弁をしているわけです。これは重大な問題だと思うんですが、これについてはどう文部省はとらえておりますか。
#55
○政府委員(辻村哲夫君) 私どもも、高等学校の進学をめぐりましてのいわゆる受験競争、過度の受験競争の過熱という問題は大きな教育問題だという認識をいたしております。そのために文部省としては、特色のある高等学校づくり、あるいは選抜尺度の多元化、選抜方法の多様化で一人一人の子供たちのいいところを見る、偏差値という一つの尺度で選抜をするということを克服しようということで努力をしているわけでございます。行政のこれからの努力も大切かと思いますけれども、現実にあるいわゆる学校間の格差意識というものから、子供たちはA校に行きたい、B校では嫌だという形での過熱な競争があるわけでございます。
 したがいまして、先ほどあらわれました数字も、現実にいわゆる収容定員に対しまして志願者数の少ない、定員割れを起こしている学校も相当数あるわけでございますけれども、一方では特定の高校に相当数が集中して、その学校以外は潔しとしない、それならば専修学校に行くというような子供たちもいるわけでございまして、そういうことからこういったギャップが生じております。
 ただ、この問題は私どもも大変大きな教育問題だと思っておりますので、保護者や進学者たちの意識の問題、進路指導の問題、それから特色ある高等学校づくり、さまざまな形でこの問題に取り組んでいきたい、こんなふうに思っております。
#56
○高野博師君 日本が学歴社会だということと日本の経済発展のために役立つ人間を画一的につくってきたというこの教育目的そのものが今行き詰まっていると私は思うのでありますが、この学校間の格差をなくすというようなこともぜひ前向きに取り組んでいただきたい。十四、五歳の一番多感な時期に受験勉強をさせられるということでプレッシャーが大き過ぎる。みんなこれで勉強が嫌いになっていく。大体今の子供の九割ぐらいはもう勉強は嫌いだということになっているわけです。
 したがって、この教育行政のあり方ももう一回見直していただきたい。これは、この人権条約から見れば条約違反のおそれがある。子供の学習権ということもきちんと規定しているし、人格を発達させる権利ということもあるわけです。
 こういうことを含めまして、今抱えている教育問題、例えば学習指導要領を変えただけでも相当の改善ができると私は見ておりますが、これについて前向きに取り組んでいただきたい。外務大臣に一言、今掲げたような問題があるんですが、総理になったらぜひ抜本的な教育改革をやっていただきたい、そう思っておりますが、一言所感を伺います。
#57
○国務大臣(小渕恵三君) ただいまの高野委員の御質疑、それに対して文部省側からの御答弁を拝聴いたしておりまして、児童の権利に関する条約に関連してのお尋ねでございましたが、種々いろいろ問題を提起されました。やはり子供がそれぞれの人格を伸ばしながら十分な教育を受けると同時に、そうした人権にかかわるような問題において子供たちが間違った道に歩むことのないように十分心していかなければならない問題ととらえております。
#58
○高野博師君 終わります。
#59
○田英夫君 今回、日中漁業協定が締結をされたということ、そしてあしたから始まります日韓新漁業協定、これが一日も早く締結されることを願うわけですが、この二つの漁業協定ができるということの意義は非常に大きいと思っています。
 国連海洋法条約、二百海里の排他的経済水域という原則に立った新しい漁業秩序といいますか、国際的な漁業秩序はこの日本の周辺で大きく確立する第一歩ということで、実はこの漁業問題というのは非常に重要な外交問題でもあったわけです、過去の例から見て。
 戦後を思い出しても、昭和二十七年、一九五二年に李承晩ラインがつくられて、これによって日韓両国の関係、もっともそれは戦争直後のことでありますし、植民地支配が解かれた韓国側にしてみれば直後でありますから高揚している時期、こちらは敗戦の中という状態ではありましたが、それにしても非常に両国関係にとっては好ましくない状態になった、それは魚をめぐってのことですが。
 統計を見ましたら、昭和四十年までに三百二十八隻が拿捕され三千九百人が捕まっている、抑留されている、こんな歴史があるわけです。中国についても、実は大型の漁船によってかなり大きな被害を受けた時期が一九八〇年代にあったと記憶しております。
 そういうことを考えますと、今回この日中ができ日韓もできれば、非常にこれは両国の外交にとって重要な前進になる、こう思っております。具体的なことは同僚委員がかなり聞かれましたので重複しないように伺うつもりですけれども、日中の方で一つ、イカ釣り漁について、中国側に期限を切って、特にいわば譲歩した部分があるように思いますけれども、これはどういういきさつでこういうものが入ってきたのか、水産庁からお答えいただけますか。
#60
○政府委員(嶌田道夫君) 現在、中国側は、我が国の排他的経済水域の中でいろいろなものをとっておりますけれども、その中で一番中国側として関心の高かったのはイカであるということでございます。そういう意味で言うなればイカに対象を絞って、今回の交渉でイカの漁獲実績につきましてこの協定にありますような形の要望をしてきた。それに対しまして、我が方としてはその要望に留意するというようなことになっているわけでございます。
#61
○田英夫君 このことは、日中漁業協定を全体として円満に締結していく上でやっぱりプラスになったと外務省はお考えですか。
#62
○政府委員(阿南惟茂君) 漁業協定交渉は、協定対象水域の決め方という問題もございますが、両国の経済利益をどう調整するかという観点から交渉が厳しくなるわけでございます。そういう点では中国側のこれまでの漁業実績等に配慮する、今水産庁長官が御答弁になりましたような点は協定を最終的にまとめる上で前向きな効果を発揮したというふうに考えております。
#63
○田英夫君 なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、もうおわかりかと思いますが、あしたから始まる新しい日韓漁業協定交渉でそういうことが起こり得るのかどうかですね。今までの旧協定を新しくしようという試みはずっと続いていて、ところが一挙に旧協定を中断してしまうということになったわけですが、交渉は続いていたわけですから、そういう中でその種のものがあり得るのかどうかということはどうなんでしょうか。
#64
○国務大臣(小渕恵三君) 日韓漁業協定につきまして、前の政権のとき担当は柳長官でございまして、私、昨年の暮れに参りましたときにいろいろお話も申し上げました。その過程で、線引きの問題もさることながら、韓国側としてはいろんな過去の漁業実績というものについても考慮していただけないかというようなお話もございました。
 本件につきましては、我が国漁業者の立場もございますから、私の立場でその段階では結論めいたことは申し上げられませんでした。先ほど田先生お話しのように、戦後の日韓の間におきましては、当初はむしろ我が方の漁船が韓国周辺に参りまして多くの漁獲をしたということによって李承晩ラインが設定されたというような経緯もございまして、現在はその逆の形に相なっておるわけでございます。そういう長い歴史の中での両国の漁民の皆さんの漁獲という問題については、これはある程度は考慮しなければならないのではないかというお話を実は申し上げました。
 しかし、我が国の漁業関係者の皆さん、特に北洋漁業に取り組んでこられた方々は、かつてソ連が一方的に水域を設定して我が国の漁船を排除したというような経緯にかんがみまして、国際的にはそうしたことは単純に認めるべきではないという議論も非常に強いものが残っております。この辺がこれからの両国間の漁業交渉の一つのポイントになるのではなかろうかとは思っておりますが、まさにそうした問題についても率直な話し合いをこれからしていかなければならないのではないか、このように考えております。
#65
○田英夫君 そうした意味で外務大臣の今のお答えは大変いい方向に行く材料になればと思います。
 今回の日中漁業協定のもう一つの大きな特徴といいますか注目すべき点は、尖閣列島といういわば領土問題がわだかまっていたにもかかわらず、両国が冷静にこれに触れずに漁業という点に集中してこの協定が締結できたということにあるのではないかと思います。
 その意味で、今まで話し合いがかなり進んできた日韓新協定についても、竹島の場合は暫定水域の中に入る、日中の場合は外にあるという違いはありますけれども、いずれにしても直接的に領土問題に触れないということにできるとすれば、これは日韓の方も日中と同じような意味でいい結果が生まれるんじゃないか、外交関係からいえばそれは大変いい方向に進むんじゃないか、その見通しはどうでしょうか。
#66
○政府委員(阿南惟茂君) 協定交渉途次でございますので先行きの予断はできませんけれども、これまでの経緯から申し上げますと、排他的経済水域の境界画定はなかなか難しいという状況で、双方が知恵を出し合って領有権問題をこの漁業協定の中でどう処理するかという調整を行ったわけでございまして、その結果境界線を一本の線で引けばどっちかのものにならざるを得ない。
 したがいまして、暫定措置水域というような形でこの問題を漁業協定の中で処理するということで、これまでのところ一応基本的な立場は一致をしておりますので、こういう点は今後の交渉でも一つの共通の認識として踏まえて進めていけるのではないかというふうに思っております。
#67
○田英夫君 日中の場合もそうだったと思いますが、日韓もいわゆる魚の資源の保護ということがやはり協定の重要な柱になっていくと思います。その点で韓国側の従来の態度からすると、現在この旧協定がまだ生きているにもかかわらず、規制水域を一方的に破るというような措置に出ている残念な状況がありますが、そういう意味からいって水産庁の方はこの資源保護という点の見通しをどういうふうにお考えでしょうか。これは一つの協定の重要な柱だと思いますが。
#68
○政府委員(嶌田道夫君) 現在、日韓の現行漁業協定は、これは昭和四十年にできまして、もう三十年以上になっておるわけでございます。その間韓国漁船の違法操業でございますとか漁具被害でございますとかいろいろな問題がありまして、日本側から現行協定の改定等についていろいろ話し合いをしてきたわけでございますが、なかなかそれが実現できなくて先般の言うなれば終了通告というようなことになったわけでございます。ただ、その背景といたしまして、なぜその現行協定を改定しなきゃならなかったかと。
 一番大きなことは、一昨年海洋法条約が批准され、発効されたということでございます。海洋法条約といいますのは、御承知のように、これは沿岸国がみずから責任を持って資源を守るということでございます。そういう意味で現在我が国におきましても昨年から魚種別の漁獲可能量を決める。これはTAC制度と呼んでおりますが、これを導入いたしまして日本の漁業者については守らせているということでございます。中国につきましてもこの協定が発効いたしますれば、日本と同じように中国の漁船に対しても守ってもらうということでございます。
 そういう中で、現在は韓国漁船だけがその適用を受けないで、言うなれば自由な操業ができるというようなことでございますので、これはやはり日本の漁業者としても看過するわけにいかないというような状況になっております。そういう意味で今回、日韓漁業協定を締結するという場合におきましては、一番大きな目的といたしましては我が国の資源保護ないしは資源を管理するということであるということでございます。
#69
○田英夫君 ぜひそれは重要な柱としていただきたいと思うし、おっしゃるとおり海洋法条約の考え方の一つの柱でもあるわけです。日韓の新協定についてはこれから交渉をしていくという段階ですから、なかなか内容は言いにくい点が多いと思いますけれども、暫定措置水域についても一時の雰囲気からすれば難しいこの協定が相当煮詰まってきている。距岸、陸地からの距離では一海里というのはたしか千八百五十二メートルだと思います、二キロ足らず。ただ、東の方が経度で一度違うというところまで来ているわけですから、その意味ではそんなに難しくはないという気もするんですが、漁業者のお立場からすると、東経一度違いというのはかなり大きいんですか。
#70
○政府委員(嶌田道夫君) 海でございますので、東経一度といいますと単純に計算いたしましても軽く四国ぐらいの面積になってしまうような広大な面積でございますけれども、そういう緯度、経度の話よりも、先ほど先生が言われましたように、この協定を締結することによりまして、我が国の資源がいかに保護され管理されるかということが一番基本であるというふうに考えております。そういう意味で、どうもこれまでの議論ないしは新聞報道等ではその範囲、緯度、経度のことが非常に強調されてはおりますけれども、やはり一番重要なのは、我が国の排他的な二百海里の中における水域の資源管理がいかに守られるかということであろうというふうに考えております。
#71
○田英夫君 たしか一月二十一日に、私がまだ大統領になる直前の金大中さんにお会いしたときの雰囲気からすると、ちょうどその二日後に閣議で旧協定を停止するという決定を政府がされた。そのことはもう既に伝わっておりましたので、非常に怒りを抑えるような雰囲気で、残念な遺憾なことだという発言をしておられた。これはかなり難問になるかなと、新協定の交渉再開がかなり難しいんじゃないかという雰囲気を感じまして、外務大臣にもお伝えしたと思いますが、これがあしたから再開できるということはまことに結構なことだと思います。どうぞひとつこれを円満に、いい方向に進めていただくことをお願いして、終わります。
#72
○立木洋君 同僚議員が質問されている内容もありますので、タブらないようにしてお尋ねしたいと思うんですが、私が最初に申し上げたいのは、やはりこれから日本の漁業をどういうふうに発展させていくかという問題、ある意味では一つの岐路に立っているとも言えるような状況にあるだろうと思うんです。
 これまでを振り返って見てみますと、もう大臣十分御承知のように、三海里から十二海里に領海がなるときにこれもおくれました。あのときにソ連の漁船が領海内まで入ってきてイワシをとられて、引いていた網まで壊されて大変な問題が起こるというようなことがあって、漁民の方々から大変な御意見が出されたという状況に私も遭遇しました。
 それから今度二百海里の問題についても、御承知のように例外措置がとられたわけですね。そのような例外措置がとられたためにどういうことになったかというと、もう北海道に行きますと大変でしたよ。御承知のように、底引き網でやられるものですから、実際に資源そのものが荒らされてしまう、どうなっていくんだ、これからの漁業はどうなるんだと。御承知のように今では、漁民の方々が魚をとって日本の国民に提供するよりも外国から輸入する、そういう比重が多くなるというふうなことで、未来の漁業というのは本当にどういう形になるのか、本当にどうなるんだというふうな問題等々まで起こってきていると思うんですね。
 だから、そういう中で道を切り開きながら、いわゆる対等、平等の関係でこういう漁業の問題についても新しい道を切り開いていくということは非常に大切な状況になってきているというふうに、改めてこれまでの外務委員会での経過を振り返りながら思っているわけなんです。
 その中の一つとしては、今同僚議員も言われた資源の保護、維持、これはやっぱり非常に重要だろうと思うんです。これまでの間、そういう例外措置がとられたために底引き網等々がやられて、日本の資源の受けた被害というのはやっぱり大変なものだろうと思うんですね。これを本当にそういう資源を維持し、保護されていくような正常な状態に持っていく。外国の漁民にしてみれば、今までそういうやり方でやってきたのを、今度は根本的に資源を保護するという観点から漁業のやり方を変えていかなければならないという問題にまでなっておるんですね。そういう中でのさまざまな行き違いだとかトラブルだとかが起こらないように注意しながら、資源の保護ということを重視してやっていかなければならないという問題があるだろうと思うんです。
 先ほど言われましたように、現実に資源を保護するとなったら今まで相手が日本のいわゆる二百海里の水域内でどれだけの魚をどれぐらいとっていたのか。正確なところはわからないというふうなお話を長官は先ほどおっしゃっておられましたけれども、実際にはそういう問題も全部明らかになって、そして科学的な根拠に基づいて資源が保護できるような状態にしていくことが必要だろうと思うんです。
 それで、例えば一九六〇年代の後半におきましては、大体スルメイカなんかについては御承知のように六十七万トンですか、相当な量をとることが可能だったと思うんです。ところが、一九九三年以降三年間から四年間ぐらいにわたっては大体三十万トン前後なんですよ、このスルメイカが。これはもう御承知のように、今度の場合にはスルメイカについては特定海洋生物資源ということになって、いわゆる漁獲可能量の制度というのが適用されたわけですね。
 そういうことを考えてみますと、今度九八年度は四十五万トンというふうになっている。昨年は四十四万トンまで回復しましたけれども、それ以前が三十万トン前後ですよ。御承知のようにこれは中国との関係でいつでも、イカ漁の問題については、あそこはアカイカが中心だろうと思いますけれどもスルメイカの問題も影響がないわけではない。それから韓国の問題も、スルメイカの問題については一定量とっているという状況があるんですね。
 だから、こういう漁獲可能量の制度というのをやって、九八年度四十五万トンというふうに決めて、そして今後のスルメイカの問題に関して言うならば資源を保護するという見地から見て本当に適切な数量なのかどうなのか。それから中国や韓国等、これまで漁獲している可能推定量等々を含めて考えていかなければならないような状況もあるだろうと思うんです。
 そういう漁業の資源を非常に重視し、そういう漁業のあり方を考えていくという点で、スルメイカの四十五万トンというのはどういう見地から出されたのか。そして、資源を保護していくという問題についての考え方、今同僚議員も質問されたわけですが、もう少し突っ込んで、技術的なこれまでの漁業のやり方等々も含めた改善の方向を図っていくということをも相手国との交渉の中ではよく詰めながらやっていく。
 資源の保護の問題というのは、これからの漁業のあり方にとっても漁業問題に関する外交交渉の上にとっても、私は科学的に判定するという上で大切な意義を持っているだろうと思うので、その点についてまず長官からお答えいただいて、後でちょっと大臣の方から御所見をお伺いしたいと思います。
#73
○政府委員(嶌田道夫君) 今、先と言われましたように、我が国はTAC制度を昨年から導入いたしまして、魚種別に漁獲可能量を決めているわけでございます。スルメイカにつきましてはことしからということでございまして、平成十年のスルメイカのTAC量四十五万トンというふうに決めています。これは根拠といたしましては、一口に言いますと資源量から推定した数字であるということでございます。
 推定するに当たりましても、水産庁は各水産研究所がございますし、各都道府県には水産試験場がございますので、そういうところの調査船によりますデータ、並びに各漁獲実績、漁獲実績といいますのは基本的には資源を反映しているということでもございますので、その二つから資源量を推測いたしまして平成十年度のTACは四十五万トンというふうに決めたわけでございます。
 ただ、スルメイカに限らず、TAC魚種の算定におきましては、今言いましたように漁獲実績がその資源評価の大きな要素になっておるわけでございます。それにつきましては、ロシア以外の外国によります採捕量は資源評価の基礎としていないということでございます。それはなぜかといいますと、先ほど言いましたように、中国、韓国におきましては正確なデータがないということと、大ざっぱなデータはいろいろ聞いてはおりますが、それもいま一つはっきりしない面もございますし、資源評価をする場合には各海域ごとに細かなデータが必要でございます。
 現在中国、韓国にもそのようなデータを要望しているわけでございますが、それが我が方の手元に現在ないということもございまして、そういう意味では、中国と韓国につきましては漁獲実績が資源評価に反映されていないというふうなことでございます。
 そういう意味で、これからこの日中、日韓の協定が、日中につきましては発効し、日韓につきましても締結されるならば、そういう漁獲実績も入れた新たな資源評価の上にTACを決めていくということになるというふうに考えております。
#74
○国務大臣(小渕恵三君) いずれにしても、どの程度漁獲するかという問題は、今、水産庁長官お話しのように、十分科学的根拠に基づいて資源の状態を判断しながら決定いたしていくべきところだと思います。
 日中につきましては、この協定の十一条で日中漁業共同委員会というものが存在をいたしておりまして、この委員会におきましては海洋生物資源の状況及び保存に関する事項等も検討することになっております。両国におきましていかなる数字を持つかということも含めまして、この委員会で十分議論して、結論的には資源が枯渇してしまっては両国にとってもこれは好ましくないことは当然のことでございますので、今後ともこの委員会を通じて十分な検討をいたしていくものと思っております。
#75
○立木洋君 今、大臣のおっしゃったのは非常に大切な点ですので、これからもできるだけ努力をしていただいて、今おっしゃったことの実現が順調に前進できるように重ねてお願いをしておきたいと思います。
 それで次に、これはちょっと変わりますけれども、中国との問題と関係があるんですが、化学兵器全面禁止条約が締結されて、他の締約国の領域内に化学兵器を遺棄した締約国は、遺棄化学兵器に関するすべての入手可能な情報を技術事務局に提出するというふうなことが決められているわけですが、これは日本としては技術事務局にどのような情報を提供したのか。その要点を御説明いただきたいと思うんです。
#76
○政府委員(阿南惟茂君) 具体的に細かいことは申し上げませんが、日本にとってこの化学兵器禁止条約が当面問題になりますのは中国における遺棄化学兵器処理の問題でございまして、これは先生も御案内のように累次にわたって現地調査をやっております。その結果をこの機関に報告をしております。
#77
○立木洋君 そういうのはもう前から聞いているからそんなことはわかっているんですよ。
 それじゃ、具体的に一つ一つ聞きますけれども、主にハルバ嶺で約七十万トン大体埋蔵されているんじゃないか遺棄されているんじゃないかということがありましたけれども、遺棄されている化学兵器の埋蔵量は、ハルバ嶺だけではなくて中国全土でどの程度あるというふうに日本側としては今までの予備調査と実地調査の中で推計されているのか。また、特にハルバ嶺以外に大量に埋蔵されている地域はどういう地域なのか。全部挙げていただく必要はありませんが、主な数字と主な地点だけ、ちょっと簡単に述べてください。
#78
○政府委員(阿南惟茂君) 何万発かということに関しましては、当初中国側から二百万発というような話もございましたが、一応我が方としては七十万発というふうに考えておりまして、これは大宗が今先生もおっしゃいましたようにハルバ嶺に集中しております。それで、そこの実地調査の結果、余り詰めた数字はそのとき出しておりませんが、一応六十七万発とか八万発ということ。それに加えまして、中国では大体江蘇省の南京周辺地帯がありますが、そのハルバ嶺がある東北地方がもちろん一番多い。その次は江蘇省の南京周辺。それから内蒙、内モンゴルにもこれは幾つかのドラム缶があるというようなことではございますが、やはりそういうものが遺棄されていたということを実地調査で確認をしております。
 詳しい分布図、把握している限りのものはございますので、いつでもまたお示しできると思います。
#79
○立木洋君 この遺棄された化学兵器を処理する上において、処理する施設を中国の領土内に建設するという点については双方で既に合意したんでしょうか。
#80
○政府委員(阿南惟茂君) 今、中国に遺棄してきた化学兵器の処理について、日中間で現地調査の結果を踏まえながら具体的処理方法を話しております。先方から見れば、日本側が持ち帰って処理してくれてもいいんだよということはございましたけれども、これまでの話し合いの結果、私どもの理解では、中国側も現地で処理する、中国の中で処理するということに理解を示してくれているというふうに考えております。
#81
○立木洋君 今までこういう化学兵器の処理をしたのは、新しい化学兵器を処理するというふうなことはあり得ても、長期にわたって埋蔵されたものを処理するということについての経験というのは世界的にもほとんどない状態に等しいんですね。そういう腐敗した状態を輸送するなんということになったら、これは大変なことになるんですよ。だから、それはそれなりに相当慎重な話し合いをして、やっぱり処理がきちっとできるような方法を考えていただかなければならない。
 もう御承知でないかもしれませんけれども、ハルバ嶺の近くの吉林というところに私は長いことおったことがありますが、あそこまで行くのは車をおりてから歩いて行って大変な地域なんですよ。それでもう道も大変だし、それから沼地みたいなものがあって、そんなところに工場を建てるなんということはできないんですよ。
 だから、相当周到な調査と準備がなければできないということもあり得るわけですから、これはよく中国側と話し合いをして、完全な適切な形で処理できる方法、やっぱりあれを動かして処理するなんということは、船に積んでいったら船が爆発するなんということになるとこれは大変ですから、いろいろ慎重な対応をして、詰めた交渉を私はさらに進めていくことが大切だろうということを述べておきたいと思うんです。
 さて、現地でこれを処理する場合の日本から派遣するメンバー、体制等々についてはどの程度の見積もりがあるのか。それから、処理する施設を建設して、それらのあらゆる費用、中国側にも協力してもらうというような必要が起こってくるでしょうし、それらのことを総合して大体予算はどれくらいに推計されているのか。
#82
○政府委員(阿南惟茂君) その点につきましては、まだ明確な経費の積算と申しますか算出はしておりません。
 常識的に考えて、七十万発はどの化学兵器を処理するには膨大な経費がかかるということは承知しておりますが、先生も今のお話の中でおっしゃいましたように、例えば中国側の協力をどの程度得るかというようなことも含めて処理の対応を決めて、そこからおのずから経費というものも出てくるということで、ただ時間の制限もございますので悠長にやっているわけではございません。中国側とも詰めて協議をしております。
#83
○立木洋君 これは期限は決まっているんですよね、条約によって。だから、今おっしゃったように、悠長に構えておったのではこれは困るので、やはりきちっとした詰めをやりながらも速やかな、そして十分に対応できるような体制をとりながら進めていくということが非常に大切だろうと思うんです。
 この問題に関しては、どういう立場でこの遺棄された化学兵器を処理するのかという基本的な観点、考え方ということをはっきりしておかないと私は困ると思うんです。この問題に対しては、実地調査が完全に終わって数量もほぼ正確にわかり、そして処理する施設をどこにつくり、どれくらいの費用がかかるかという問題等々が明らかになった時点で国会に報告をされるという予定をなさっておられるかどうか、大臣、いかがでしょうか。
#84
○国務大臣(小渕恵三君) 今後の経過につきましては、国会におきまして御要請があれば、誠意を持ってこの経過につきましても御報告を申し上げることになろうかと思います。
#85
○立木洋君 大臣、今お話がありましたように、費用は莫大なんですよ、これを処理するのにかかるお金は。百億やそこらのお金じゃないんです。兆という単位のつくお金が必要になるだろうというふうに想定されます、専門家等々のお話を聞きますと。そうすると、国民に対してもやっぱり理解をしてもらうということが私は非常に大切になってくるだろうと思うんです。
 歴史的なことについてはもう大臣十分御承知だろうと思いますけれども、一九一九年、第一次世界大戦が終わったときに、ドイツが致死性の毒ガスを使いまして、国際的にそれを禁止するということが問題になって、その協定に日本政府は調印したんです、当時の日本政府ですよ、今ではありませんが。しかし、調印したその一九一九年に何と日本の軍部は化学兵器をつくる研究所を設置したんです。一方で禁止する協定にサインしておきながら、その同じ年に化学兵器をつくり始めたのが日本だったんです、当時の日本の軍部が。
 そういうふうな状況の中で、中国に対しても、もう既に何回か私は聞きましたけれども、致死性のガス、マスタード、別名イペリット、こういうものが使われて、ただ単なる催涙弾だとかいう問題じゃなくて、死に至らしめる武器を使ったというのが、もうこれは防衛庁の防衛研究所に資料が全部あります。私も見せてもらいに行きまして、見てきました。防衛庁の方でおいでになっていると思いますけれども、いわゆる大陸宿六百九十九号で、支那派遣軍総司令官及び南支那方面軍司令官に対して、致死性の黄剤と言われる毒ガスの全面使用を許可、命令を出しておる。それが現実に使われた。一九三九年の七月から九月にかけて中国で使われたという資料もありますが、防衛庁、そのことについては確認されていますね、資料があるということを。
#86
○政府委員(佐藤謙君) まず、旧軍における化学剤の使用でございますけれども、くしゃみ剤などの非致死性の化学剤を充てんした兵器を使用したということは、防衛研究所に保存されている戦史資料からも明らかでございます。
 しかしながら、旧軍がイペリットなどの致死性の化学剤を充てんした兵器を実際に使用したか否かにつきましては、資料が断片的で確認することは不可能の状況にございます。
#87
○立木洋君 それは前の答弁に逆戻りしたよ、局長。
 今度、外務省が調査に行って、いわゆる黄弾に穴をあけてみたら、ちゃんとイペリット剤から何から出てきているんです。そして、現実に使用されたということが先ほど言った陸支密大日記第二号に明確に書かれてあります。私は、現実に見たんです。そういう資料があって、明確に外国でもそういうふうに日本軍が致死性の毒ガスを使ったということが明らかになっているのに、いまだにそういう死に至らしめる毒ガスを日本が使ったかどうかわからないというような立場で、かつての戦争に対して旧日本軍が行った行為について明確な考え方、反省というものがなければ、この遺棄されている毒ガスを何のために処理しなければならないのかという立脚点が私はあいまいになると思うんです。
 この点については、致死性の毒ガスを使ったという資料も明確に調べて、外務大臣のところに提出をして、どういう立場でこの問題を処理する必要があるのかということを政府としても明確にして国会には報告してもらいたいし、国民にも明らかにして、どういう必要性があるからこれだけの金を使って国際条約に基づいて対処しなければならないんだという報告がなされなければだめだと思うんです。
 そういう防衛庁の局長の答弁は私は了としません。それは全く十分な調査をしないで、かつての答弁を引き戻す、そういう答弁であるということだけを私は指摘しておきます。あなたの答弁を聞く時間がもうありませんから、結構です。
 大臣、この問題については、やはり日本の一つの戦後処理の問題として重要な問題だと思うんですね。相当な人々に犠牲を与えたということについては、日本政府は繰り返し中国に対しても述べてきた点でありますから、そういう立脚点を明確にした上でこの問題に取り組むんだということをも明らかにしておいていただきたいということを最後に強く要望しておきたいと思うんです。
 ただ単なる外交的な交渉で物事を済ませればいいということでなくて、何のために日本政府がこの処理を行わなければならないのかということ、日本のかつての旧軍隊が行った行為ですから、その問題についての立場を明確にした上で対応していただきたいということを最後に申し述べておきたいんですが、大臣の答弁を最後にお聞きしたいと思います。
 佐藤局長の答弁は、あれは間違っていますから、判断に入れなくて結構です。
#88
○国務大臣(小渕恵三君) いずれにしても政府部内のことでございますから、それぞれの資料というものは十分精査しなければならぬと思っておりますが、何よりも中国の問題につきましては、我々としては、日中平和友好条約の精神並びに四月に発効した化学兵器禁止条約に基づきまして、本件の処理につきましては誠実に対処いたしてまいりたいと思っております。
#89
○立木洋君 終わります。
#90
○泉信也君 自由党の泉信也でございます。
 日中漁業協定についてお尋ねしたいこともございますが、きょうは今お尋ねがございました日本軍が中国に残したと言われる化学兵器の処理の問題について、少し原点に戻らせていただいてお尋ねをいたしたいと思います。
 幾つかの経緯があって、この化学兵器の処理については化学兵器禁止条約に基づく処理だというふうに私は理解をしておりますけれども、かってアジア局長が法的義務を持つまでもなく道義的にというような御答弁をなさった経緯もあります。これは戦後処理というような観点で日本政府は対応しておられるのか、あるいはその対応の仕方が途中で変わったのか、この点はいかがでしょうか。
#91
○政府委員(阿南惟茂君) 私どもは、この問題は日中間の歴史の負の遺産だというふうに考えております。そういう観点からも誠実に対処しなくてはいけないと思っておりますが、基本的には化学兵器禁止条約が、化学兵器を遺棄した国に対して、その残された国の同意を得ることなく残していった化学兵器は廃棄しなくてはいかぬと義務づけております。そして、廃棄のために必要なすべての資金等を遺棄国が提供する義務があるということになっておりますので、義務という点からは化学兵器禁止条約、こういうふうに考えて対処しております。
#92
○泉信也君 恐縮ですが、時間が余りありませんので簡潔に要点だけお願いをいたします。
 誠実に行うということは、これは外交問題でありますだけに当然のことでありますが、最後におっしゃいましたように、今回の条約に基づいて処理をするという理解でよろしゅうございますね。
#93
○政府委員(阿南惟茂君) そういう御理解で結構でございます。
#94
○泉信也君 そういたしますと、条約の二条の定義の中にある、今局長も答弁をされました遺棄されたものであるかどうかということが大変重要な問題になってくると私は思います。これまでの交渉の中で日本政府は中国に、遺棄されたかそれともそうでないかという議論についてはどういう主張をしてこられましたか。
#95
○政府委員(阿南惟茂君) 現在中国に存在しております古い遺棄化学兵器、これは大宗が日本軍が残したものでございます。今、先生おっしゃったように、遺棄したかどうかということのポイントは、日本軍が終戦時に中国軍なり当時のソ連軍なりに武装解除で引き渡してきたんではないかと、そういう御趣旨かと思いますが、これは最近の調査によりましても、この遺棄化学兵器が発見されている状況等から武装解除によって整然と先方に引き渡してきたという状況ではない、まさに遺棄してきたものだというふうに判断せざるを得ないと考えております。
#96
○泉信也君 ポツダム宣言の九条を持ち出すまでもなく、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後」云々という条項がございますね、これで遺棄したものでないということを私は思っておるんですが、今の局長の答弁は状況からして遺棄してきたと、どうしてそういう判断をなさるんでしょうか。
#97
○政府委員(阿南惟茂君) 私が先ほど申し上げましたのは、現在存在している状況からということで、先生がおっしゃいましたポツダム宣言第九項の武装解除の規定は、これは一般に「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」と、こう書いてあるわけでございます。中国側がもちろんこういう化学兵器の引き渡しを武装解除のときに受けたということに同意をしておりませんし、このポツダム宣言第九項、今読ませていただきましたものから中国側が同意したと、これのみをもって言うことは難しいという判断でございます。
#98
○泉信也君 所有権の移転も行われていない、あるいは処分権の移転はどうかというような議論についてはどうでしょうか。
#99
○政府委員(阿南惟茂君) 先方が引き渡しを受けたということに明らかに同意していないわけでございます、現在も。したがって、先ほど申し上げましたように、このポツダム宣言九項から、引き渡しをした、所有権、処分権が渡ったというふうに考えるのはいささか無理があると思わざるを得ません。
#100
○泉信也君 百万丁に及ぶ銃でありますとか、あるいは山砲一千円、その他駆逐艦とか海防艦三十四隻というようなものが引き渡されておりますが、こういう銃類と砲弾とは区別して考えるべき代物ですか。
#101
○政府委員(阿南惟茂君) これは私ども、防衛庁の方からも伺って理解しているわけでございますが、今先生おっしゃいましたような通常の武器等については武装解除のときの引き渡しの記録もある程度あるそうでございますが、こういうものについてはそういう記録がないというふうに私どもは承知しております。
#102
○泉信也君 武器と化学兵器、いわゆる砲弾類が別だという論理は、戦後のあの武装解除を強いられたとき、無条件降伏したときにそういう理屈が成り立ちますか。当然一体的に相手国に差し出す、これが実態ではなかったんですか。
#103
○政府委員(竹内行夫君) ポツダム宣言につきましては、先ほど来答弁申し上げておりますとおり一般的な武装解除ということを定めたものでございます。他方、化学兵器につきましては、化学兵器禁止条約の中におきまして遺棄化学兵器の定義というものが別途、特別に定められているわけでございます。
 それで、我々の解釈といたしまして、中国で発見されました、また今後発見されます砲弾等の化学兵器が旧日本軍の所有していたものであることが明らかであると、その事実が明らかであるとするならば、それを前提といたしまして、今度はこれらの化学兵器の遺棄につきまして中国側が明示的な同意を与えていたかどうかということを検証する必要があろうかと思います。
 これまでの中国側との折衝及び現地の調査で判明いたしました状況等にかんがみまして、中国側がこれに同意していたことを示すような明らかな根拠がないということでございます。そういう根拠が明らかでない限りにおきまして、我が国としてはこのような化学兵器につきまして、遺棄締約国としてこの化学兵器禁止条約上の廃棄の義務を免れることはできないであろう、こう考える次第でございます。
#104
○泉信也君 それでは、機関銃とか銃砲等については引き渡したという書類でも残っておるんでしょうか。
#105
○政府委員(竹内行夫君) ポツダム宣言に基づきます武装解除の際に、その当時の引き渡しに関します記録というものが存在するというふうに承知しております。もちろん、いろいろ中国の各地で行われましたので、完璧にみんなすべての書類がそろっているということではないかもしれませんが、その辺の記録は通常の兵器については存在する、しかしこの化学兵器についてはそういうものは一切今まで見当たっていないということでございます。
#106
○泉信也君 化学兵器について日本製であるということは、私もこれまでの調査の結果として確かにそうだろうと、部分的にはソ連製もあるというふうに承知をいたしておりますけれども。だからといってこれを日本軍が遺棄したというふうに、どうしてすぐそういうふうに結びつくんでしょうか。
 これまで外務省は、外務大臣の報告を初め大変慎重に答弁をしておられますね。例えば旧日本軍のものである可能性が高いとか、日本軍が残した可能性の強い、あるいは日本軍が遺棄したと思われるものが中国に存在する、こういうふうに非常に慎重な言葉遣いをしてこられたと思うんですね。それはなぜか、恐らく遺棄したという確証がどこからも得られない。その結果として、日中共同声明とか日中平和条約の精神などを持ち出して。これを日本政府の責任の中で処理しようというような答弁をその後出しておられますけれども、遺棄したかどうかということは、実はこの条約の中で大変重要な問題であることは皆さんが一番御承知だと思うんですね。
 そこで、条約上の遺棄の確認ということについては、技術事務局というところですか、この第四部の(B)の10、11項に基づく査察、これをすることが条約上はできるようになっておりますけれども、こういうことまで日本政府としてはやって確認をするつもりがありますか、
#107
○政府委員(阿南惟茂君) この件の調査に関しましては、今、先生御指摘になりました査察が既に二度入っておりまして、まだ報告書は公表されておりませんが、査察が入ってそういうことも踏まえた上で判断をする、こういうことでございます。
#108
○泉信也君 私の読み間違いかもわかりませんが、この中に、「技術事務局は、必要な場合には、遺棄化学兵器の出所を検証し、並びに遺棄に関する証拠及び遺棄国を特定する証拠を示す。」と。これで本当に日本が遺棄したんだという証拠が示されれば条約に基づく整理を誠実に行うということも、これは当然だと思いますけれども、先ほどの答弁でも日本の旧軍隊が砲弾を遺棄したという証拠はない、むしろ消極的な考え方に基づいて日本の軍隊が遺棄したというふうにおっしゃっておると私は理解せざるを得ないんですね。こういう条約上の規定があるならば、どうして技術事務局に証拠を明らかにするように求めないんですか。
#109
○政府委員(阿南惟茂君) 先ほど申し上げましたその査察というのは、昨年の十二月とことしの一月と二度行われておりまして、その最終報告と申しますか、それはまだ公表に至っていないという状況でございます。
#110
○泉信也君 局長、私はそんなことを聞いているんじゃありませんよ。日本の国益を背負って交渉していただいておるんでしょう。しかも、さっき立木議員がおっしゃいましたように、幾らかかるかわからないじゃないですか、一兆円を超えるかもしれない。それを、そんないいかげんなことで答えてもらっちゃ困りますよ。
 遺棄したかどうかということが非常に重要な問題ですよね、繰り返しておりますけれども。中国側も日本がはっきり遺棄したということは言い切れない、日本側もそれを覆す証拠がない、私はそれが実態だと思うんです。
 では、もう一つ聞きますけれども、ハルバ嶺に埋めた、これはだれが何の目的で埋めたんでしょうか。
#111
○政府委員(阿南惟茂君) 私どもの理解では、吉林省のハルバ嶺一帯に遺棄されていた化学兵器を、当時非常に危険でございますから、これは五〇年代の初めに人民解放軍がそれを集めて、先ほど立木先生もおっしゃいましたように、非常に人が来ないような湿地帯の中の丘に、周囲の住民がそこに近づかないようなところに埋めた、こういう経緯だと聞いております。
#112
○泉信也君 これは、今おっしゃいましたように、一九五一年から十五年間ぐらい二度にわたって埋められたというふうに聞いておりますけれども、五一年といいますとまだ腐食をするとか液体が漏れ出すというような状況では私はなかったと思うんですね。そこであえてそういうことをなさった。朝鮮動乱が始まって、終わってと言った方がいいのかもしれませんが、そういう時期ですね。その当時、日本に何らかの意思表示が中国側からあったんでしょうか。こういうものがあるよと、そういう警告みたいなものが行われましたか。
 それからもう一つは、先ほどもちょっと触れましたように、米国とかソ連の製品が混在しておるという調査結果が出ておるようですけれども、これは事実でしょうか。二つお願いいたします。
#113
○政府委員(阿南惟茂君) この一九五一年、五〇年代、日中間にもちろん国交もございませんでしたので、当時、この件について中国側でこういう処理をするとか応急措置をとるということが正式に通報されてきたということは承知しておりません。
 また、日本の化学兵器、砲弾以外のものも調査の結果あったのではないかというお尋ねにつきましては、日本以外にも第三国のものが混ざっていたということは確認されております。
#114
○泉信也君 この当該地域が大変難しい戦場と申しますか場所であっただけに、いろんなことがあったと思うんですね。しかし、今お尋ねをしましたように、米国のものもソ連のものもある。それが全部日本の責任になるのかどうかわかりませんけれども、とにかく日本が遺棄したかどうかということが明確でないままこの話を進められることについては問題ではありませんか。どうやって日本が遺棄したということを証明するつもりですか。
#115
○政府委員(阿南惟茂君) 御答弁が繰り返しになるかもしれませんが、先ほど条約局長から申しましたように、武装解除のときに中国側が同意してこれを引き渡したかどうか、これについては中国側が同意をした経緯はないと。そして、ポツダム宣言九項だけから同意したはずであるというふうに断定することも難しいということを申し上げました。
 また、今お尋ねのハルバ嶺の状況、これは私も実際行って見てきた経験がございますけれども、確かに現状、そして各地で発見されている状況から見て、先ほど言及がございましたが、これが武装解除のときに他の普通の機関銃等、そういう兵器と同じような形で引き渡しをされたというのとは違う状況で現在発見されている。第三国のものもございます、この間の調査では大宗はやはり日本製のものだということでございますが。そういうことで、中国側の明確な同意がなかった、また発見された状況等から日本軍が遺棄したものと判断せざるを得ない、こういうことでございます。
#116
○泉信也君 中国側が同意を与えてはいないということが一つの論拠になっておると思います。確かにそのとき同意を与えなかったかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、小銃とか野砲とか、あるいは船舶類も押さえておきながら、弾は別だよ、そんな論理が通りますかね。
 私は、この部分については、もう時間が来ましたので、先ほど来申し上げておりますように、幾らかかるかわからない、環境対策は物すごい手間暇かかる。そういう問題のスタートのところを、今、外務省でお答えになりますような遺棄という認定をして、今申されましたような条件、証拠だけで先に進められることは国益に反すると思います。引き続き、この議論は当委員会を初めやらせていただきたいと思います。
 終わります。
#117
○委員長(及川順郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#118
○委員長(及川順郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#119
○委員長(及川順郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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