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#1
第142回国会 法務委員会 第6号
平成十年三月二十七日(金曜日)
   午後一時三十三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十五日
    辞任         補欠選任
     田浦  直君     遠藤  要君
 三月二十七日
    辞任         補欠選任
     千葉 景子君     菅野 久光君
     橋本  敦君     吉岡 吉典君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         武田 節子君
    理 事
                清水嘉与子君
                依田 智治君
                大森 礼子君
                平野 貞夫君
    委 員
                遠藤  要君
                岡部 三郎君
                長尾 立子君
                前田 勲男君
                松浦  功君
                菅野 久光君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                円 より子君
                照屋 寛徳君
                吉岡 吉典君
                山田 俊昭君
                矢田部 理君
   衆議院議員
       発  議  者  保岡 興治君
       発  議  者  濱田 健一君
       発  議  者  上田  勇君
   国務大臣
       法 務 大 臣  下稲葉耕吉君
   政府委員
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  山崎  潮君
       法務省民事局長  森脇  勝君
       大蔵省証券局長  長野 厖士君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
   参考人
       早稲田大学総長  奥島 孝康君
       関東学院大学経
       済学部教授    中川美佐子君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○株式の消却の手続に関する商法の特例に関する
 法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
○土地の再評価に関する法律案(衆議院提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る二十五日、田浦直君が委員を辞任され、その補欠として遠藤要君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(武田節子君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に参考人として早稲田大学総長奥島孝康君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 また、土地の再評価に関する法律案の審査のため、本日の委員会に参考人として関東学院大学経済学部教授中川美佐子君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(武田節子君) 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び土地の再評価に関する法律案を議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、二名の参考人の方々からそれぞれ御意見を伺います。
 御出席をいただいております参考人は、早稲田大学総長奥島孝康君及び関東学院大学経済学部教授中川美佐子君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず、奥島参考人、中川参考人の順に、お一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 なお、参考人の意見陳述、各委員からの質疑並びにこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、まず株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、奥島参考人にお願いいたします。奥島参考人。
#7
○参考人(奥島孝康君) 奥島でございます。
 本日は、このような権威のある皆様方の御審議の席にお呼ばれいたしましたことを心から光栄に存じております。
 私は商法の一専門家でありますので、この問題につきましては時限立法ということでありまして、経済政策的なにおいが大きな立法ではありますけれども、私は純法律の立場から、このポイントだけを簡単にコメントさせていただきたいと思っております。
 前提でございますけれども、この問題を考えるときに私たちがまず考えておかなければいけないのは、株式会社法と言われる法律の大きな全体的な構成であります。株式会社法というのは、現在ではあらゆる国において最も効果的な組織形態になっておりまして、完成度の一番高い組織形態だというふうに言われているのは皆様方もよく御存じのことだと思います。
 なぜそういうことになったのかというと、その秘密が株式にあるという点についてもこの四百年の歴史の間に次第に明らかになってきております。株式会社四百年の歴史の中で、株式会社についての一番ポイントであります大きな仕組みというのは、簡単に言えば株主有限責任の原則と資本充実の原則と言われる二つの原則の組み合わせによって株式会社法というものができ上がっているという点であります。
 御存じのように、株主は自己の出資した額を超えて責任を負う必要がありませんので、したがって社会に散在しております遊休資本というものを集めるのが容易な仕組みになっております。また、株主は株式というものによって、権利を株式と呼んでおりますが、これを株券という証券に表章させることによって容易にこの権利を譲渡することができるというシステムができておりますので、事実上、会社という組織の構成員となったりそれを離脱したりすることが非常に容易にできる仕組み、これが株式会社をして今日の隆盛を誇らしめるような基本的な原因であるということは既に多くの方々が指摘しているところであります。
 ところが、そういたしますと、株式会社を舞台として、場合によりますと詐欺が横行するということになります。
 事実、歴史はその事実をたくさん示しております。なぜならば、株主は株式会社をつくることによって、そしてお金を集めることによって、そのお金を持ち逃げするというようなことが、日本の会社の出発時点であります明治初期のころにも新聞を毎日にぎわすような事件が続いていたわけであります。
 ですから、これをそういう株主による詐欺的なお金集めの手段ではなくて、どうやって事業資金という形で本当に転化していくことができるかといいますと、それは会社の内部にしっかりと資金をとどめておくというシステムをつくり上げていかなければいけません。また、そのことが、要するに最終的に責任を持つ必要のない株式会社において、債権者が安心できる保証装置といいますか、あるいは担保というものをつくり上げることになります。これが資本充実の原則と言われるものであります。したがって、株式会社制度を成り立たせているのは、この資本充実の原則というものが株主有限責任の原則というものとうまく対応関係、バランスを保っているからであるというふうに言ってよろしいかと思います。
 ところが、今回の問題というのは、御存じのように、この資本充実の原則と言われるものに基本的に真っ向から対抗する、そういうふうな非常に大きな問題を理論的には含んでいる、こういうふうに申し上げてよろしいのではないかと思っておるわけであります。
 具体的に申し上げますと、今回の立法といいますのは資本準備金を財源とする自己株式の取得であります。資本準備金と言われるものは、資本充実の原則という会社法の基本原則に基づいて債権者に対する責任財産を形成する有力な手段として会社法の中には定着しているわけでありまして、明らかにこれは会社法の基本原則にのっとった考え方に基づいてつくられたものでありますので、これを要するに自由に株式取得に使用していいかどうかということになりますと、それ自体が理論的に大きな問題であるというふうに言わねばなりません。
 他方、自己株式取得というのは、本来、言葉の上からも自己矛盾いたしますように、いわば一種の資本の返還であります。会社が株式を発行することによって出資を得る、そしてそれを買うということは、その出資を返還することであります。したがって、これはある意味で隠れた資本減少ということになりますので、各国ではこの問題について扱う場合にはかなり慎重な態度を持っておりますが、とりわけ我が国の会社法体系と言われるものはこの自己株式取得に対して世界でも一番厳しい態度をとっております。
 これがいいか悪いかということはここで私は議論するつもりもありませんし、その必要もないかと思われます。それは我が国の立法者がそういうふうに判断したからそういう法律ができ上がっているわけでありますので、自己株式取得を容易に認めるということは資本充実の原則にとって重大な脅威であるというのがこの会社法を国会で制定している方々の考え方の基本的前提になっているというふうに考えるからであります。
 そうしますと、この資本準備金というものを用いて自己株式を取得するというのは、二重の意味において明らかにこれは会社法の基本原則に対する挑戦を行っているというふうに考えられる。私の話は理論的なものですからやや大げさでありますけれども、話の筋はそういうことになるのではないかということを申し上げているわけであります。
 まず資本という側面から見てまいりますと、資本というのは二つの意味合いを持っております。一つは、これは営業活動の基礎をなすものでありまして、しっかりと営業活動をできるだけの財産というものを会社内部にとどめておかなければいけないという意味において、いわば財産拘束機能というものを持っております。
 しかし、これはそうあるべきだという考え方でありまして、資本というのは、具体的に形があって銀行に預けられているとか、会社の金庫の中に入っているとか、証券に変わってあるとかいうことではありません。要するに、計算上そういうものが会社内部に財産としてなければいけないという観念であります。
 それに対して、自己株式取得と言われるものは、御存じのように資本の払い戻してあります。ですから、この資本準備金として会社内部にこれだけの財産をとっておかなければいけないといういわば会社財産の最も中核的な部分を自己株式取得の財源に充てる、つまり出資の払い戻しに充てるということでありまして、本当は図でお示ししますとわかりやすいのでありますけれども、これは一つの会社財産というものがまずあるというふうに頭の中でお考えいただきまして、その中心になるもの、これから先に使っていこうではないかという考え方であります。
 なぜならば、資本といい、資本準備金といい、その本質は異ならず、資本準備金というのは本質は資本であります。なぜならば、これは出資金によって成り立っているものだからです。だから、資本というものがあってこそ株式会社と言われるものが成り立つわけです。株主有限責任制度と言われるものが成り立つわけであります。
 そういうものをしっかり持っておけということは、商法の中では、それを取り崩すというのはもう最後ですよ、会社がつぶれそうになるとき、つまり資本の欠損が出てきたときにはそのてん補に充ててよろしい。そして、資本準備金というのはもともと資本なんだから、資本というものにいつでも組み入れることができる。じゃ、なぜ最初からもう全部資本にしないんだ。私は本当は資本にすべきだとは思っておりますけれども、しかし、これはこういうふうな考え方があるわけです。
 最後のとりでというのは、さくは二重、三重の方がいい、こういうふうに考えるわけでありまして、いわば資本準備金というのは会社の最後のとりでの外堀に当たる部分を考えておりまして、ここが破られて初めて内堀の資本というところに欠損が出てくる。そうなったときに初めて会社というものは危うい状態におるというふうに考えた方が、考え方の上にしかすぎませんけれども、いかにも会社が安全なシステムになっている、債権者に対してしっかりと責任財産をつくり上げるシステムになっている、こういうふうに考える方々がかなりいらっしゃいまして、現在のようなシステムになっているわけであります。
 そういうことで、言ってしまえば会社法の最も基本的な原則に当たる部分にいずれも抵触する考え方でもって、なおかつこういうことをこの時代にやらなければいけないか。確かに、これは政治という観点から見ますと、緊急は法を知らずであります。場合によったら、それは法律があろうとなかろうと、やらなければいけないことはやらなければいけないでしょう。しかし、緊急は法を知らないんですけれども、要するにこういうやり方をやるということは、なぜ必要かといったら、それは現在の資本主義体制、つまり市場経済体制というのを確保しようと。市場経済体制というのは、実は株式会社が担っているわけであります。その市場経済体制を担っている株式会社のいわば最も基本的な部分というものに対して、そこを弱体化することによって資本主義の市場経済体制というのをどうしようというのは、ある意味で矛盾ではないかということだけを私は申し上げておきたいと思います。
 技術的な点はもういっぱいありますので、その点は御質問にお答えするということにさせていただきます。
 ありがとうございました。
#8
○委員長(武田節子君) ありがとうございました。
 続きまして、土地の再評価に関する法律案について、中川参考人にお願いいたします。中川参考人。
#9
○参考人(中川美佐子君) ただいま御紹介いただきました中川でございます。
 このような場で陳述する機会を与えられましたことを光栄に存じます。
 私は、関東学院大学経済学部の会計学の教員でありまして、財務諸表論等を担当いたしております。研究面では比較会計制度論を提唱し、略歴のところにありますように、これまで外国の会計制度や監査制度について研究してまいりました。恐らく、比較会計制度論とか比較会計学とかいう言葉を用いたのは私が最初ではないかと思っております。実務には疎いわけで、また企業会計審議会には関係しておりませんので、ここで述べることは私の全く個人的な見解であることをお断りいたしておきます。
 このような人間がこのような場で参考意見を述べることはどうかとも考えましたけれども、日ごろから学問は社会に還元されなければならないと思っておりますので、意見陳述に応じた次第であります。ただ、法律案に接したのが二日前でありまして、従前から関心を持ってフォローしてきたわけではありませんので、十分に検討する時間的余裕がなかったことも事実であります。参考人として呼ばれましたが、むしろ私の方が先生方から御教示を受けることを期待している次第です。
 私が外国の会計制度等を研究するのは、社会科学においては自然科学のような実験ができません。そのために、外国の事例とかあるいは過去の事例を研究するわけでありまして、これが自然科学における実験にかわるものと考えているからであります。
 しかしながら、このたびの法律案は、寡聞にして私の知る限りでは外国に例を見ません。土地を含む資産の再評価は、インフレ時またはインフレが一段落したときに行われるのが常だからです。そのようなわけで、ここでは法律案を読んでの私の個人的な見解を述べさせていただきます。
 また、法律案が目的とする貸し渋りの解消等に役立つかどうかといった議論については、土地問題の専門家の御発言を尊重していただきたいと思います。私は、法律案の問題点に限って以下陳述いたしたいと思います。
 法律案について申し上げるに当たりまして、基本的な立場を三つ明らかにしたいと思います。
 一つは、会計規定や基準の設定は恣意性を排除し、利益操作の余地を狭めることを目的とするものでなければなりません。二つは、財務諸表の利用者に有益な情報を提供するのに役立つものでなければなりません。三つ目は、法律の規定は解釈に疑義が生ずるものであってはなりません。以上申し上げました観点から取り上げることにいたします。
 さきに、インフレ時以外に法律を制定して土地を再評価するということは外国に例を見ないと申し上げましたが、簿価と時価が乖離している日本企業の実態を考えたとき、財務諸表の利用者の立場から、簿価と時価の乖離を是正するために土地再評価法を制定すること自体に異論はありません。
 ただ、既に成立している金融システム安定化法におきましては、保有株式の評価に適用されていた低価法から原価法への切りかえを認めております。保有株式につきましては、商法で原価法と低価法の選択肢を認めていること自体が投資家の立場から問題にされているさなかに、一歩後退する措置がとられたわけであります。このような措置は、ここで問題にしている土地の再評価に関する法律案との整合性を欠くものと言わなければなりません。
 また、土地の中でも再評価の対象とされているのは事業用土地に限るとされています。販売を目的として所有するものは除くという表現はあいまいで、土地を商品として扱う不動産会社等が除外されることはわかりますが、土地を商品としていない企業における遊休地の場合、投資用か事業用かは不明であります。いずれにしましても土地全体ではないわけで、この点に恣意性の入る余地があります。
 また、時価についても複数の中から企業に選択を認めておりますが、再評価の方法は本来一律に適用すべきものと考えます。
 さらに、再評価差額金を非課税とするからには、法のもとの平等を考える必要があります。法が施行される前に、担保能力を高める等のため有税で土地を再評価した企業があるとすれば、そのような企業に対しても配慮が必要ではないでしょうか。
 また、対象企業を大会社その他の金融機関に限っておりますが、仮にチェック機能を考えてのことであるとすれば、中小会社にもチェック機能を整備すれば認めるべきではないでしょうか。
 再評価差額金を負債の部に計上するのは、その性格を引当金あるいは利益の繰り延べと考文でのことと推測されますが、さらに検討を重ねた上で決定すべきことであり、当面は負債の部と資本の部の間に独立の区分を設けて記載すべきものと考えます。
 いずれにいたしましても、外国に例を見ない立法ですので、各国から脚光を浴びることが予想されます。したがいまして、我が国の企業の信用のためにも首尾一貫した内容のものにしていただきたいと思っております。
 以上です。
#10
○委員長(武田節子君) ありがとうございました。
 以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより両参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○千葉景子君 きょうは両参考人に大変貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。
 私も、実は率直に言いまして両案につきましてもなかなか難しいといいましょうか、わからない部分がたくさんあるんですけれども、まず奥島先生には、商法の基本といいましょうか、会社組織の基本という観点から大変理論的に問題点を整理していただきまして、本当にありがとうございます。
 私も大変同感するところがたくさんあるわけでございますが、ただ、いわゆる経済対策、経済動向に対応して商法のさまざまな特例やあるいは改正というものがここ数年来続いてきております。昨年も株式の消却特例法という形で帳簿の基本がやはり大きく変更され、そういう方向に流れをつくられていくということがございました。
 そのときには多分予測をしていなかったのだろうと思いますけれども、今回新たな形で、先ほど御指摘があったような資本充実の原則やあるいは自己株式の取得、こういう点に理論的には真っ向から相対抗するような形でまた問題が法案として提起をされました。
 先ほど先生もおっしゃっておられましたけれども、やはりこれからの日本の経済のあり方などを考えたときに、商法というのは未来永劫変わってはいけないということではないというふうに思いますが、大変大きな基本にかかわる問題であろうというふうに思います。
 そういうものが割と短期間に、それからそういう根本的な議論が十分にないままに今進んでいるようにも思いますが、その点について、経済動向の観点を頭に置いた際に、奥島先生は今後商法の基本を尊重しながらどういう論議を行っていったらよいとお考えになっておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
#12
○参考人(奥島孝康君) 大変難しい問題でございまして適切に答えられるとは思いませんけれども、ただこういうことだけば申し上げてよろしいのではないでしょうか。
 今、日本がいろんな意味で問われているのは、グローバルスタンダードという言葉で言われておりますけれども、要するに各国から日本の企業が信用されるということが一番大事である。信用されもような企業になるためにはどうしなければいけないかというと、私はコーポレートガバナンス・フォーラムの代表もやっているわけでありますけれども、企業に対する適正なチェックあるいはモニタリングというようなものが行われる、とりわけそういう形で企業の行動というものが透明性を持つことが必要だろうというふうに思っております。
 それは日本の商法のシステムというのが、自己株式取得というのは隠れた資本の減少であるからいけないというふうに言っておりますように、もしもこの資本準備金による消却というようなものを認めるということになりますと、実質的に資本準備金というものは資本でありますから、本来だったら資本の消却という形で法律上の手続があるわけです。それが資本減少という手続でありますけれども、だから、資本減少という手続をとればいいではないかということになり、またその内容が似ているということで確かに資本減少の手続の場合の債権者保護手続というものもとられていて、いろんな点で配慮がなされているという点について、私はこの法律というものについて取り組まれた方々がかなり善意で、しかもまじめに取り組まれているというふうに信じております。
 しかし、もしもそういうことまでお考えになって本質は資本減少なんだとお考えになるんだったら、なぜまともにそういう形でもってこの問題を処理していこうというふうにお考えにならないのか。例えばの話ですが、今まで商法学者は一人として資本準備金による自己株式取得などというようなことは考えたことがありません。確かにそういうことを思いつきとしてお考えになったんではないということになりますと大したものだというふうに思いますけれども、しかしそれをお考えになるんだったらどうしてちゃんとそのために準備してあります本来の制度を用いられないのか。
 こういうふうなことを考えていきますと、最近のストックオプションの場合でもそうでありましたけれども、場合によったら痛くもない腹を探られるようなこともございます。ですから、やはり世界各国から見て立法と言われるものが正々堂々と行われていて、そして日本の企業というものが世界の企業から見て信頼するに足るような行動ができるシステムを備えているというふうな評価が下される、そういった方向でもってこの商事立法というものは行われていくべきである、私はこういうふうに考えております。
#13
○千葉景子君 ありがとうございます。
 それでは、中川先生にお尋ねをさせていただきます。
 先ほど、日本の簿価と時価が乖離をしている、それについて是正のために再評価をするということ自体には異議はないというお話でございました。ただ、先ほど何点が御指摘があったように、恣意的な対応を排除したり有益な情報がそれによってきちっと提供されたり、それから解釈上疑義を生ずるようなことは法的にはあってはならないというような御指摘もございました。
 多分、現在のような簿価と時価が大変大きく乖離して企業の資産状況がわかりにくい、十分に実際をあらわしていないというようなときに再評価というのは必要かというふうに思われるんですが、先生の御指摘のあったようなことを十分に満足させるためには再評価の際に例えばどんな点について気をつけたらいいか、先ほど幾つかは御指摘がありましたけれども、こういう点についてはぜひ盛り込まなければいけない、あるいは認識しておかなければいけないというような点がございましたら御指摘をいただきたいと思います。
#14
○参考人(中川美佐子君) お答えいたします。
 先ほど申し上げたことと重複すると思うんですけれども、再評価というのはその方法は一律でなければ意味がないわけです。あるものだけを再評価しても意味がないということです。
 土地についてやるというのは、日本企業の場合には殊に土地について簿価と時価との乖離が著しいということが指摘できるかと思うんですけれども、ただその場合でありましても、事業用土地に限るとか販売を目的として所有するものは除くとか、そういうようなことでありまして、土地のすべてを再評価の対象にしているわけではないわけです。もしやるとすれば、すべての土地についてやらなければ意味がない。
 今、時価が問題になっておりますのは、むしろ土地ではなくて金融資産の方なんです。その方の時価というのは、私のような財務諸表の利用者にとりましては極めて重要な意味を持っているわけです。土地というのは、今急にというのがある意味では唐突な感じがするわけでありまして、必要ではありますけれども、順位づけからすると最優先されるべきものでもないと考えているわけです。
 再評価差額金が非課税であるということで、法のもとの平等ということから大会社やその他の金融機関に限るのではなくて条件が整っている場合にはほかの中小会社にも認めるべきだ、それからやむを得ず法が施行される前に有税で土地の再評価を行った企業があるとすれば、その事例は存じませんけれども、そういうような企業があるとすればそういう企業に対しても配慮を行うべきだという趣旨でございます。
#15
○千葉景子君 ありがとうございました。
#16
○大森礼子君 公明の大森礼子です。
 両先生、きょうは大変にありがとうございます。
 まず、奥島先生の方に質問させていただきます。先ほど先生は、今回の法改正は資本充実の原則を侵害する重大な改正だというふうにお述べになりました。それから、自己株式取得そのものの危険性と資本充実の原則を害するという二重の意味の危険性があるとおっしゃったんですが、実は昨年、平成九年にストックオプション制度導入による自己株式取得を認めるための商法改正と株式の消却特例、これも議員立法という形でございました。このときは、非常に自己株式取得禁止の原則を変えていいのかどうかという論議があったわけです。それから一年で、今度は何と資本充実の原則を変えるような内容の法案が出てきたわけでございます。
 それで、今回の法案の条文を検討しますと、資本準備金を取り崩すことによって自己株式を取得して消却することができるとして取得価額の総額というのが定めちれているわけですけれども、これは、例えば利益準備金は法の規定どおり資本の四分の一つまり満額まで定めている場合を前提としますと、資本準備金を全部取り崩すことも法律は許容しているというふうな形になってしまいます。それで、この提案者の場合には、要するに資本の周り、先生が先ほどおっしゃったお城の周りのさくでしょうか、これは利益準備金という形で資本の四分の一でいいということになると思います。
 この点について、株価は上がるのかもしれませんけれども、このことが将来会社の存立そのものを脅かすのではないかということを少し懸念するわけなんですけれども、この点についての先生の御見解をお尋ねしたいと思います。
#17
○参考人(奥島孝康君) 私も十分なお答えができるかどうかわかりませんが、二点お話し申し上げます。
 一点は、ストックオプションのときに私どもが問題にしました点の御指摘がありましたけれども、そのとおりでありまして、私どもはストックオプションに反対するものではありません。ただ、十分な立法上の検討なしに行われているために商法の全体的な体系との整合性が問題になったわけであります。つまり、自己株式取得の場合には、商法が認めておりますのは非常に短期間にこれを消却するという方向で認めておりましたけれども、今度のストックオプションでは十年間持っていくことができるということになりますと、これは従来と比べまして資本充実を害するおそれが非常に大きいというようなことがありますし、またその立法技術上の詰めが甘いために、非常に短期間で行われたためにそうならざるを得なかった。そのためにさまざまな問題が解釈論上も起こってきたというようなことは後の経緯が示しているとおりであります。
 そういうことがありましたので、今回の立法につきましても私たちは注目いたしておりましたけれども、わずか二カ月足らずの準備でもってこの立法に踏み切られたようであります。したがって、やはり今回の立法というものには会社法の基本的な体系性からいって問題があるという点を私は御指摘申し上げた次第であります。
 これが将来どういうふうな形で影響を残すかといいますと、これは時限立法でありまして三カ年でありますので、そのこと自体が大きな影響をもたらすというよりも、通常何もないときには資本準備金をたくさんつくることによって株式の無償交付を行い株主の御機嫌とりをする、これは一種の詐欺であります。なぜならば、株主から余分に金を取っていて、その金でまた株式にかえて株主に渡すわけでありますから。そういうことをやっておきながら、こういう非常事態だからこれはすべて株主に返してしまうべきであるなどというふうな言い方をなされるのはちょっと調子がよ過ぎる、そういう言い方をしては失礼でありますが、そういうことを言えた義理ではないのではないかというふうに思っております。
 したがって、私がこの立法の将来に向かって非常に危惧しております点は、こういうふうに何かの緊急事態になったときに、基本原則というものについていとも簡単に穴をあけていくというようなことが自由自在にできるんだという前例をこういう形でつくられるというのは適切ではないのではないか。立法する者としての見識にもとるのではないかという感じを私としては持っております。
#18
○大森礼子君 まだまだお聞きしたいんですけれども、時間の関係で中川先生にお尋ねいたします。
 既に先生述べられたことなんですけれども、財務諸表の果たす役割といいますか、企業会計の一般原則にも真実性の原則というものがございまして、企業の財政状態及び経営成績に関して真実な報告を提供するものでなければならないとあります。正しい情報を提供する、そしてその情報というのは各企業比較可能なものでなければいけないだろうと思うわけです。
 この点を考えますと、先ほども既に先生おっしゃいました、株式については原価主義を採用して時代に逆行することをとっている、一方では土地については時価とする。時価主義というのは時の流れにかなっている方法かもしれませんけれども、一方で一部の企業にのみ、それから一部の土地のみに限定するということ、それから時価そのものの定め方も明らかでない、こういうふうになっております。
 そうしますと、財務諸表に盛られます情報というものが比較可能でなくなりますと、結局、本来その財務諸表の持つ役割というのを果たせなくなるのではないかなという気がいたします。
 こういう動きについて、例えば海外等から見まして日本の財務諸表、ここでは貸借対照表になるんでしょうけれども、これがむしろ余計わからなくなる、こういう批判が起こるのではないかということを危惧するわけですが、この点について先生いかがお考えでしょうか。
#19
○参考人(中川美佐子君) 今、真実な情報というようなお話がありましたけれども、真実と言う場合、過去の事実と現在の事実があるわけでありまして、これまで原価法というものがいろんな国でとられてきたというのは、それが首尾一貫した理論体系に支えられているからなんです。損益計算ということからすれば証拠書類もそろっているし、そういうことでとられてきたわけですけれども、ただ、情報を利用する側とすれば、原価情報というのは取得した年次によってその価額が違いますので貸借対照表等にヘテロジーニアスな金額が示されている、そういうようなことでありまして極めてわかりにくいという面があったわけです。
 比較可能性というようなことをお話しになられましたけれども、今の財務諸表はもう既に比較可能性がないわけです。そういうことで、企業間の比較ということは選択の幅がありますのでできないことはもとよりですが、そういうことを捨象しても、一企業につきましても比較ができないという状態であるわけです。
 時価をとりました場合には、時価というのは変動しますから、比較という点でどうかという問題はやはり残ると思います。ですから、比較可能性ということからすれば限界があるわけです。その情報を利用できるかどうかということに重点が置かれてくるわけでありまして、各国の動向として、今では財務諸表の有用性の方に力点が置かれているというのが現状ではないかと思います。
#20
○大森礼子君 終わります。
#21
○照屋寛徳君 両参考人には、大変貴重なお話を聞かせていただきまして、心から感謝を申し上げます。
 奥島参考人に何点かお尋ねをいたしますが、私も、どうも最近景気対策あるいは経済政策という観点からの商法の改正、特に議員立法による改正が多くなってきた。議員立法そのものの重要性を否定するものではございませんけれども、しかもかなり短い時間に議論が終わってしまうということに危惧をいたしているわけであります。また、この株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案についても、今まで私が抱いていた疑問が奥島参考人のお話を聞いてますます深まってきたような気がいたします。
 会社法の原則に対する二重の挑戦だ、こういう御指摘がございましたけれども、資本準備金というのはそもそもその財源が資本に近い性質のものであるはずであります。ところが、この法案を準備している提案者によりますと、現在の日本では必要以上の資本準備金の積み立てが実態としてあるんだと。だからこの資本準備金による自社株の取得・消却をお考えになっているようであります。
 まず一点は、この資本準備金の積み立て、積み立て過ぎて悪いということがあるのかどうなのか、そこら辺をお伺いしたい。
 それからもう一点は、本改正案による資本準備金による自己株式の消却によって商法が規制をする自己株式の取得制限の趣旨が損なわれるおそれがあるのではないかということを思っているわけですが、先生のお考えをお聞かせいただきたい。
 それから、最後にもう一点は、本法改正によって発行済みの株式数は減る一方で企業の資産が減少するので、自社株消却による株価への影響、効果というのはないのではないか、こう指摘する学者もおられるようでありますが、奥島先生はどのようにお考えになっているか。
 以上、三点についてお教えいただきたいと思います。
#22
○参考人(奥島孝康君) まず第一点の資本準備金を積み過ぎていないかということでありますが、これはやはりそういう面がなきにしもあらずだというふうに思っております。といいますのは、調子のいいころにエクイティーファイナンスということが非常に人気を持って、そして時価発行ということでどんどん公募が行われたわけであります。ところが、問題はなぜ資本準備金の方に積んでいったかと。それは、法律でもってこの出資のうちの半分は資本準備金にすることができたからなんです。
 なぜそういうことになったのかといいますと、昭和五十六年の商法改正のときに、もともと資本準備金というものは資本なんですから基本的に全体としては資本にすべきだと、資本にしない部分というのは四分の一ぐらいにしようというのが立法者の提案であったわけですけれども、それを経済界は、いや、資本準備金にするという部分を大きくしたいのでぜひそうしてくれと言ったわけなんです。
 なぜかといいますと、先ほどお話ししましたけれども、その資本準備金の資本組み入れによって株主に対して株式の無償交付を行うことができたわけです。つまり、資本をふやすという形で株式を発行する、それを株主たちにお配りした。ですから、株主はいわば自分たちが出したお金を後からそうやって株式という形で権利としてもらっているわけですけれども、しかしそういうふうな細かいことを考えておりませんから、ある日会社から株式が無償でもらえた、欄からぼたもちが落ちたという形で喜んでいるわけでありますから、先ほど申し上げましたように一種の詐欺ではないかというふうなことを私申し上げたわけであります。
 そういうやり方に会社側としては従っていたためであろうというふうに邪推できるわけですけれども、資本準備金をたくさん積ませてほしいというのが会社側の要求であった、それを今さら資本準備金が多過ぎるとは何事だと私なんかは思っております。
 なぜならば、全部これを資本にどんどん積み上げていけばいいじゃないですか、そして株式を発行しなければいいんです。全部資本準備金をなくしてしまうことは簡単なんです。株主総会の決議は必要ないんですから、取締役会の決議でもってこれを資本に組みかえていくことができるわけです。
 そうすると、資本が大きくなります。今度、資本額が大きくなったらいいのか悪いのか、それはその会社によって違うでしょう。それは会社が考えることでありまして、もしも多過ぎるというんだったら資本減少をすればよろしいだけの話であります。そのための要するに資本減少という手続が用意されているわけであります。自己資金が多過ぎるんだったら返せばいいんです。だけれども、本当にそうでしょうか、そうではないのですね、明らかに。
 なぜならば、アメリカの企業とかドイツの企業なんかに比べまして日本の企業は明らかに自己資本比率が低いのです。半分とは言いませんけれども、それに近く低いのです。そしてまた、御存じのように、金融機関では自己資本比率というのをふやさなければいけない、八%をどうやってクリアするかということが問題になっているではありませんか。ですから、もともと我が国の企業の資本というのは、その企業の全体資金の中に占める割合というのは決して多くないのです。ですから、この資本準備金を積み過ぎているというのは一体どういうことなのか私には理解ができないということであります。
 それから第二点でありますけれども、こういうことをやっていきますと、自己採式取得禁止と言われる日本の会社法の建前というのが崩れないかという点でございますがまさにそのとおりでございます。
 日本は世界で最も自己株式取得に対して厳しい国であると、これがいいか悪いかと申し上げましても、これは現在の会社湊がとっている一つの立法政策、あるいは立法的な選択の問題でありまして、もしもこういう自己株式取得禁止と言われるものに対してアメリカなどのようにもっと緩和すべきであるという考え方を今回の法案を準備した人たちが考えるのでありましたら、むしろそちらの方から正面切ってこの問題に対して議論を挑むべきであると私は思っております。
 しかし、ともかく、今そういうふうなシステムのもとで今回のような形の資本準備金による株式取得というようおことをやるのは、資本準備金自体が資本充実のための制度である、それが今度は自己株式を取得することによってさらにまた資本の払い戻しを打っていくという意味で、先ほどから二重の意味で現在の商法の基本的な体制に対する挑戦だということを申し上げたわけでありまして、そういう意味ではまさに御指南のとおりであるというふうに思っております。
 それから三番目でありますが、既にこれはお答えいたしました。つまり、日本の企業の資本先案はどうかということでありますけれども、日本の企業の資本充実というのはアメリカとかドイツに比べますと非常に低い。自己資本比率が低いということは数字の上で明快でありますので、その点については、こういう形で資本先案をますます低くしていくということが日本の企業の体質を欧米の企業の体質と比べてさらに弱化させるものであるということだけは、この点については明快ではないかと思っております。
 以上です。
#23
○山田俊昭君 二院クラブの山田でございます。
 きょうは、南先生、どうも御苦労さまでございます。時間の関係で奥島先生にだけ限って御質問させていただきます。
 先生のお話をきょうお伺いしたわけですが、私も法律を多少かじる者として、今回の改正が非常に恐ろしいという表現は妥当かどうかですが、一種の詐欺にも近いというところまで先生が明言されるような法改正であるということをただいま認識しまして、いささか驚いているという状態であります。
 株式会社四百年の歴史で非常に完成度の高い株式会社法の仕組みの一つ、いわゆる商法学界の伝統といいますか、学者間でいささかも触れられないようなところに、実務の必要性、株価対策という景気浮揚の小手先理論をもってして対応しようとする本法律案は対して私もいささか問題であると思うわけでありますけれども、市場の要請からそういう形をとらざるを得ない一時的な限時法といえども、かかる商法改正が一時的とはいえなされたとしたなら、いわゆる商法学界の歴史の中に大きな汚点を残す法改正ではないのかとすら考えるんですが、この点に関して先生の御意見をお伺いいたします。
#24
○参考人(奥島孝康君) 同感であります。
#25
○山田俊昭君 商法学者はほとんど反対されていて、実務というか経団連の要請に従って急遽この法案が提出されたという流れだと思うんですが、日本の商法学者のほとんどは反対されているんでしょうか。
#26
○参考人(奥島孝康君) はい、そのとおりであります。商法学者はほとんどすべてこの法案に対しては反対意見を持っていると私は確信しております。
 ストックオプションの場合は二百二十五人の商法学者の方々が反対という声明を私ども一緒に出したわけでありますけれども、今回の立法につきましてもその二百二十五人の方々というのは恐らく全く同意見であろうというふうに思っております。
 なぜならば、この二つの法律と言われるものは基本的に非常に短い時間に練り上げられたものであって、したがって立法技術的に問題があるということもないわけではありませんけれども、それより何よりもその二つの、ストックオプションの場合と今回の場合いずれにつきましても、商法の従来の体制の中にいわば木に竹を接ぐような異質なものを持ち込んだという感が深いからであります。今回の場合についてはとりわけその点が大きいのではないか。理論的に異質なものを従来の商法の中に取り込んだというところが今回の方が非常に明快なんではないかという感じがいたします。
#27
○山田俊昭君 今回、この悪法を成立させることは断じて許されるべきではないという先生の御見解で、この小手先というか木に竹を接ぐような、商法の基本的な原理原則、理論を破って株価対策をしようとするということは悪法で絶対認められるべきではないという先生の御見解はわかったんですが、本衆の株価対策、景気対策というのは、実体経済、もっとこんなこと以外にやるべきことが多くあるんだろうと思うんですけれども、この小手先的な今回の改正ではなくて何かいい株価対策があるなら参考までにお聞かせをいただきたいと思います。
#28
○参考人(奥島孝康君) 私は一介の法律家にしかすぎませんので、経済政策的にどうすればいいかということはわかりません。
 ただ、私の立場で言えることが一つだけあります。それは、日本の企業が企業経営の上で世界のだれから見られてもよくやっている、非常に健全な経営を行っているというふうな信頼を得るという道が株価に対しても一番遠いようでいて近い道ではないかというふうに思っております。
 というのは、御存じのように、この銀行のジャパン・プレミアムという問題というのは、日本の銀行のビヘービアというものがその金利の面においてあらわれているわけであります。それと同じように、この日本の経営者と言われるものの行動が世界的なグローバルスタンダードから見て適切な行動をとっているというような評価がされますと、それがまた日本の会社の株式というものに反映してくるはずだというふうに私は思うからであります。
 以上です。
#29
○山田俊昭君 もう一点なんですが、これ新聞記事からの質問ですが、今回の金融機関の自社株買いということにつきましては、優先株、劣後債の買い取りを通じて十三兆円の公的資金が投入されるわけであります。その十三兆円のお金が金融機関に入ってそれが自社株買いの原資に回るということになりますと、経営不振の金融機関の株主のために公的資金が使われてしまうのではないのか、結果的に公的資金投入がこの自社株買いを援助する形になってしまうという批判があるんですが、この点に対する御意見をお伺いしたいと思います。
#30
○参考人(奥島孝康君) この問題につきましては、私は一法律家の立場としてにわかに論評することができません。むしろこれは中川先生の方がお詳しいのではないかと思われます。
#31
○山田俊昭君 中川先生、今の私の質問に対してもしお答えいただければお願いしたいと思うんです。
#32
○参考人(中川美佐子君) 済みませんけれども、もう一度お話ししていただけますか。
#33
○山田俊昭君 今私の質問しているのはある学者が問題提起しているところなんですが、ことしの二月十二日、日経新聞に植田和男東大教授が問題提起されている質問なんでありますが、金融機関の今度の自社株買いということに対して、かつて十三兆円投入して優先株とか劣後債を買うという形で公的資金が投入されておりますね。そうすると、その入った金融機関の資金がこの自社株買いに回されるということは、いわゆる今度の公的資金投入は自社株買いを助長しているということへの批判につながらないかという質問でございます。
#34
○参考人(中川美佐子君) 同感です。
#35
○山田俊昭君 終わります。
#36
○委員長(武田節子君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#37
○委員長(武田節子君) 速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
#38
○委員長(武田節子君) 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#39
○千葉景子君 きょうは提案者の方も大変御苦労さまでございます。
 先ほど参考人の方から今回の株式の消却の手続に関する商法の特例法についての御意見をいただきました。商法例専門の参考人でもございますので、商法の理論ということを前提にいたしまして大変整然とした御意見をいただき、私もなるほどと思った部分がたくさんあったところでもございます。
 正直申しまして、今回の株式消却に関する特例法、いわゆる商法のこれまで言われていた大きな基本原則というものと比較をいたしますと、いろいろな点で新たな問題点を含んでいる、そういうことが言えようかというふうに思います。そういう意味では、これまでの大きな原則と今回の法案の内容の違い、あるいは原則がどのようにこの法律によって変容をしていくのだろうか、そんなことを疑問に思う点もございますので、お聞きをしてまいりたいというふうに思っております。
 そこで、まず基本的なことでございますのでちょっと法務省の方にお願いをしたいと思いますが、株式の消却という問題につきまして、商法の基本では資本の減少、それから配当可能利益による消却、こういう形で規定をされております。株式の消却という問題がこういうことに限定されている理由というのはどういうところにあるとこれまで解釈されてきたのでしょうか。
#40
○政府委員(森脇勝君) 株式の消却と申しますのは、株式会社が発行した株式のうちの特定の株式を消滅させるという手続でございます。
 今、委員が大きく二つにおまとめになりましたが、大きく分けると確かにそういう形で分けられるわけでございますが、今まで数次にわたって消却の手続を設けてまいりましたので、その関係を御説明させていただきますと、資本減少の規定に従ってする場合というのが一つございます。それからさらに、定款の規定に基づいて配当可能利益をもって消却する場合というのがございます。それから、定時総会の決議をもって配当可能利益の範囲内で取得して消却する場合というのがございます。昨年のいわゆる消却特例法によりまして、公開会社が定款の規定に基づいて取締役会の決議をもって中間配当の可能財源の二分の一を限度として株式を買い受けて消却する場合。そういたしますと四つのタイプに分かれるわけでございます。
 これらを大きくまとめますと、委員御指摘のとおり、資本減少の場合と、それから大きな意味で申しますと、配当可能利益的なものを財源とする場合、この二つに分かれるわけでございます。
 どうしてこの場合に限られているかということでございますが、これは消却をする前提として株式を買い入れるという行為がございますために、会社の財産が社会に流出するという部分がございます。それに対しまして、会社の債権者が害されるおそれがあるというところから、これに影響を及ぼさないという形を考えておりまして、まず資本減少の場合におきましては、債権者保護手続を履践するということによってこの部分を確保しているわけでございます。それから、大きく分けて配当可能利益を財源とする場合、こちらにつきましては、配当可能利益でございますので、これは債権者を害するおそれがないという形から買い受け・消却が認められてきておる、こういうふうに理解しておるところでございます。
#41
○千葉景子君 今、株式の消却についてもやはり会社財産をきちっと確保しておくということが大変重要なポイントになっておろうかというふうに思いますが、今回の株式の消却について、一面では、先ほどの参考人からの御指摘もございましたけれども、自己株式の取得規制の緩和をある意味では促進をするという結果になろうかというふうに思います。
 株式の消却というのは自己株式を取得して行うということでありますが、商法はこれを非常に例外的なものというふうにこれまで位置づけてきたと思います。平成六年の改正、平成九年の改正、近年この例外が徐々に拡大をしてきているわけですけれども、自己株式の取得を規制する趣旨というのは、従来から、先ほどの指摘にもあった資本維持の原則、株主平等の原則、またインサイダー取引の防止、そして会社支配権の維持に利用されやすい、こういう点の防止、そして会社荒らしなどを助長させないというような点が自己株式取得の規制として大変厳しく課せられていたのだというふうに思います。
 今回の株式の消却の手続に関する法律によりまして自己株式取得規制がさらに緩和されるという結果になるわけですけれども、これまでの規制の趣旨、これが損なわれるような結果にならないかどうか、大変その辺が懸念をされるんですが、その点については提案者の方ではどのようにお考えでしょうか。
#42
○衆議院議員(保岡興治君) 今、千葉先生からお話がございましたとおり、確かに自己株式を取得するということは原則として禁止されている。それには今おっしゃったような四つほどの理由があるということでございます。
 ただ、自己株式取得というものにはそれなりの役割というのが期待されているわけでありまして、その自己株式取得を規制緩和によってもう少し使い勝手のいい、会社の経営上あるいは株主のためにも、そしてまた経済のためにも自己株式取得というものが必要とされる。一方、確かに今言われるような弊害もあるわけで、そのために、まず先生が挙げられました自己資本の維持の観点という点からいいますと、資本準備金を財源とする株式の取得・消却を無制限に認めますと、会社の財務基盤の脆弱化ということになると。そこで、商法上利益準備金の積み立て限度というのが資本の四分の一と法定されている。そのことから、資本準備金を財源として取得・消却ができる株式の取得価額の総額を定款に定めるに当たって、その額は資本準備金と利益準備金の合計額から資本の四分の一に相当する額を控除した額の範囲内とするということにしております。これによって、法定準備金のうち資本の四分の一に相当する額はいわゆる欠損に対するいわば安全弁として社内に留保されることが可能でございます。
 次に、内部者取引の防止の観点でございます。
 この点は、改正商法特例法に証券取引法の適用について所要の規定を設けてインサイダー取引規制に関して必要な法的手当てをいたしております。この結果、消却のための自社株取得に関する取締役会の決議はインサイダー取引規制上の重要事実ということになっておりまして、これを公表しなければその事実を知っている会社関係者は自社株を売買することができないことになるということにされております。
 また、経営者の地位の不当な確保を防止する観点、不当な会社支配にならないかという点については、取得した自己株は遅滞なく消却される、保有することはできませんので、かかる観点から大きな問題とはならない上、定款によって取得・消却ができる株式の総数を定めなければならないこととされておりますので、株主もその点において多数の決議をもって認容しているということで歯どめがかかっていると思います。
 また、株主平等を確保する観点からは、自己株式の取得方法を市場買い付けと公開買い付けに限ることにいたしておりますので、会社が恣意的に特定の株主から株式を取得することができないようになっている。
 こういう措置をとった上で今回の特例を設けていることを御理解賜りたいと思います。
#43
○千葉景子君 さらに、もう一方で、今回の自己株式の消却については資本準備金を消却の財源とするということになります。その点についてお尋ねをしておきたいというふうに思うんです。まず、ちょっとこれも基本的な問題なので法務省の方にお聞きしておきたいと思うんですが、いわゆる資本準備金と利益準備金がございます。それの趣旨あるいは目的の違いというのはどういうところにございましょうか。
#44
○政府委員(森脇勝君) まず資本準備金でございますが、これは資本取引から生ずるものの一定限度を配当に回さずに積み立てていただく、こういう趣旨のものでございまして、資本取引と申しますのは、例えば株式を時価発行したことによって生ずる払込剰余金の部分でありますとか、あるいは資本減少手続をとった、減資の差益が生ずるといったもの、あるいは合併によって差益が生じたもの、こういったものがございますが、それは資本取引から生じたものでございますので、限りなく資本金に近い。したがって、これを配当財源に回すということは性質上できないというところから準備金として積み立てさせる、こういう性格のものでございます。
 これに対しまして利益準備金でございますが、株式会社が利益を上げた、これは本来であれば株主への配当財源としてよろしいわけでございますが、株式会社は継続性が必要でございますので、将来営業不振に陥った場合に直ちに配当財源がなくなるといったような事態を回避するために、毎決算期ごとあるいは中間配当の際にその配当可能利益の中から一定の割合の額を積み立てさせる、言ってみれば政策的に強制しているという部分でございます。したがいまして、これにつきましては資本の額の四分の一を限度として準備金を積ませる、こういうことになっているわけでございます。
#45
○千葉景子君 今、資本準備金と利益準備金の違いをちょっと聞かせていただきました。資本準備金というのは、資本取引で出たものですからある意味では資本に準じていると言ってもいいと思います。利益準備金は、利益が出てそれを次の経営の安定のために一定の部分積み立てておくというものであろうというふうに思います。
 今回の改正によってこの資本準備金の方を自己株式消却の財源としようということになるわけですけれども、今説明があったように、資本準備金というのは資本に準ずるという性格のもので、これは資本の欠損の補てんに当てる場合とか資本に組み入れるというような場合に使用がこれまで限定をされてきております。資本準備金というのはそういうものですから、会社の財政的基礎を形づくっているという大変基礎的なものであろうと思うんです。
 この改正でその資本準備金の部分を消却の財源にしようということなんですけれども、利益準備金は今回は手つかずで、むしろ会社資本に準じた非常に厳格な規制がかけられている資本準備金を使って消却をするということにはどういう理由があるんでしょうか。利益準備金を活用しないということについては特に何か意味があるんでしょうか。
#46
○衆議院議員(保岡興治君) 利益準備金を対象にしなかった理由は、利益準備金の方は法によって資本の四分の一を上限として義務的に積み上げが求められております。したがって、これが積み上がってきちっと整っている会社について、これを取り崩しますと、本来株主に配当することのできる全額、利益が上がって配当できる場合に、一定の割合で利益準備金に積まなければならないということになりますので、株主の利益配当の予測というんですか、期待というものを損なう可能性があるということで利益準備金には手をつけない。
 一方で、なぜ資本準備金を財源として自社株の消却をしたかといいますと、それは七〇年代、特にその時代に入ってからだと思いますが、時価発行による増資がどんどん行われるということになりまして、非常に額面を超えて高い株価がついて、そのために非常に大きな資本準備金が積み立てられるという結果になってまいりました。その結果、直接金融であるエクイティーファイナンスによる会社への資金の取得というものがどんどん行われる。しかし、一方で株主もまたどんどんふえるということになりまして、企業が上げている利益というものの一株当たりの配当率というのがある意味では少なくなっていくというようなこともあって、株主の方では、株式市場ということを考えますと非常にそれが緩んで、また株の魅力も失われていくというような状況が出てまいりました。
 最近はいろいろと経済情勢が昨年の秋から非常に危機的な状況になって、いわゆる資産デフレ、その中でも株価が下がってきているという状況のために日本の経済が非常に金融、経済両面で大きな障害を抱えるような形になってきて、そのために苦しんでいるところへもって、昨年の秋以来のアジアの経済・通貨危機が韓国にまで飛び火してくる、あるいは大型の金融機関の破綻がある、それに加えて、いわゆる国民負担が四月以来ふえてきたことに対するデフレ効果、回復がおくれていたというようなことで、あっという間に経済、金融が不透明になって崩れてきた、真っ暗になっちやった。
 そこで、我々としてはこういった状況をいかに乗り切るか、日本の経済が底割れ、市場が底抜けするような、いわば金融破綻みたいな、アジアに起こった現象が一気に日本発で起こる、そういうことはどんなことがあっても防がなければならないという決意で、昨年来、金融安定化対策やマクロ経済に積極的な対応をしてきたわけでございます。
 そういうわけで、特に期末の三月の株価の状況というのは、各企業が会社の経営上非常に大きな影響を受けるものですから気にするところでございます。そういう意味で期末の株価というものは日本の経済にとって非常に重要だということにもなります。日本の経済にすきを見せると外国からヘッジファンドなどがその落差をねらって売りにかかるというような現象もありますので、万全の体制で備えなきゃならないということもございまして、実は資本準備金が先ほど申し上げたような近年の大量なエクイティーファイナンスによって積み上げが非常に多額になっている一方、株式市場が緩んでおる。しかも、持ち合いの解消ということも経済構造改革上非常に必要だ。しかも期末になればそれを予定して出してくるところもあれば、また利益を確保して表に出さなきゃならないということで、いろいろ期末の株の放出ということもあって、いつも期末の株は、このところずっと見ておりますと五年来一年間で一番株価が下がってしまうという傾向もありまして、我々としてはそういうことのために多額に積み上がっている資本準備金を引き合いに自社株消却ということで、今時の経済や経済構造改革にも資する自社株消却というものがもっと行われるようにその選択肢をふやしたということでございます。
 そしてその際には、先生が言われたとおり資本準備金というものは資本に準ずるものでございますから、資本充実・維持の原則から減資の手続、いわゆる資本そのものを減らす手続と同様な厳格な手続をもって、しかも定款で多数の決議によって行うということで、いわば我が国の商法が求めております資本充実の原則の最も厳しい手続を踏んで、この自社株消却ができるような法制として提案をさせていただいたわけでございます。
#47
○千葉景子君 今、御説明をいただきましたが、もう一つこの株式消却特例法で配当可能利益を財源にする自己株の取得・消却、この際には取得株式総数について発行済み株式総数の十分の一以内という数量規制がございます。今回の改正は資本準備金をもって行うわけですけれども、その財源の規制はあるわけですけれども、数量規制については特に講じられてございません。
 今、厳格な手続に基づいてということでもございますが、やはり提案者の御指摘にもありますように、資本に準ずる、こういうものを使って消却をするということになりますが、数量規制など設けなかった理由というのは何かございますか。
#48
○衆議院議員(保岡興治君) おっしゃるとおり、現行法で、取締役会の決議によって配当可能利益を財源として取得・消却する際には、株式の総数は定款で定めて、その総数は発行済み株式総数の十分の一を超えることができないという制限を設けております。
 しかし、今度の改正法では、取締役会の決議によって資本準備金を財源として取得・消却する場合に、株式の総数及び取得価額の総額は特別決議によるということになりますが、定款に定めなければならないということになっておりますし、またこの株式の取得価額の総額については、先ほど申し上げたように、資本金の四分の一の法定準備金の枠という上限を設けて制限をいたしておりますし、また平成十二年三月までの時限的なものとして期限を限って、額を定款で明示して、しかも資本準備金の対応できる上限も定めて今回の立法をいたしております。
 先生御案内のとおり、定時株主総会で行いますいわば一番一般的な形の自己株式の取得・消却は制限がかかっておりませんので、そういうことと彼我比較すると、今度の立法はきちっとその制限、消却できる株の数は限っておりませんけれども、それに準ずるいろいろな配慮をして、いわばこの自社株消却の弊害を防ぐ手当てをして配慮しているものと考えます。
#49
○千葉景子君 ところで、資本準備金につきましては、先ほどもちょっとお触れいただきましたけれども、利益準備金のような資本の四分の一に達するまでという積み立て限度の制限はございません。準備金が多過ぎたら資本に組み入れるということをすればいいわけでございまして、資本準備金の積み立て過ぎというのがどうもよくわからないんです。別に悪いことをして積み立て過ぎているわけではございませんで、そうすると、株式が低迷する一方でその会社内には必要以上の資本準備金が積み立てられている、だからその資本準備金を使って株式を消却して株価をできるだけ安定したものにする。
 資本準備金の積み立て過ぎというのは一体どういうことを意味するのか、それからそれは客観的な基準というものを本当に設けられるのか、そこのところはいかがなものでしょうか。たくさん積み立てちゃったからちょうどいい、ここを使おう、何かそんな感じがしないでもないんですけれども、その点についてはどういう御認識をお持ちでしょうか。
#50
○衆議院議員(保岡興治君) 資本準備金は法にのっとって一定の資本取引の部分を積み立てられる仕組みになっていることは先ほど民事局長がお話しのとおりで、資本を補完するものとして制度はつくられていますから、多ければ多いほどいいと言っていいぐらい、別に多くて弊害があったり問題があるという意味で必要以上積み立てられていると言っているのではありません。むしろ、法制上は会社の資本ないし資本準備金というのは非常に大事な部分であるということについて、我々の見解も恐らく皆様と変わりないものを持っていると思います。
 しかしながら、先ほどから申し上げているように、このところ特に七〇年代には、またバブル期にもそうですが、大きければ大きいほどいいことだということでどんどんエクイティーファイナンスをした。株主はふえる、額面以上に売れるものですから資本準備金はどんどん積み上がる。こういった資本準備金が非常に大きくなっている事実はあるわけでございまして、それに対して一方、自社株消却の必要性というものが一般的にもまた現在の経済情勢においても求められていることは先ほど詳しくお話を申し上げたとおりでございます。
 そういうことでございますので、この過大に大きくなっている資本準備金というもの、過大というとまた誤解を受けますが、多額に積み立てられている資本準備金というものを財源に自己株式の取得・消却を行うことはどうかということを考えてみました場合に、一体どこまでこれを使えるかという一つの基準でございますが、いわゆる法定準備金には利益準備金と資本準備金と二通りあって、いずれも積み立てられる理由は違いますが、将来の経営の不安がないように会社の財産を留保する制度であることに変わりない。それが法的に義務づけられているのは利益準備金だけでございまして、これが資本金の四分の一でございます。
 したがって、法定準備金の法律が求めている義務的な積み上げは利益準備金にある資本の四分の一と考えまして、それに達していない会社は資本準備金をそれにプラスして、さらにそれを超える部分について自社株の消却を可能とするという仕組みをつくりました。
 そういった意味で、必要以上と言ったら語弊がありますが、法が求めている以上の資本準備金があった場合には、今申し上げたような意味で法が求めている法定準備金以上の資本準備金がある場合にという趣旨でこの法律を構成していることを御理解いただければと思います。
#51
○千葉景子君 まだお聞きをしたいこともあるんですけれども、先ほどからお話がございますように、経済情勢を考えたときにやはり何らかの対応策をということについては私たちも十分に承知をしておりますし、そういう意味でのいろんな対策というのはともに議論させていただいてきたところでもございます。
 ただ、今回の株式の特例法は、やはり何といってもそれが結果的には日本の市場経済、その基本をなす会社、組織、そのシステム、その根本を大きく変えていく、そういう内容を含んでいるということには変わりないというふうに思うんです。そういう意味では、その基本法をこれだけ大きく変容させようという問題ですから、先ほど参考人の御意見にもございましたように、経済情勢はよくわかりますが、それだったら本当に商法はどうあるべきかというようなところから本来であれば論ずるべきではないんだろうか、そんな気がするわけです。
 特に、昨年も特例法が制定されましたけれども、そのときは資本準備金を財源としての株式消却というのはほとんど触れられなかったわけです。一年もたたない間にまた今度は資本準備金、あ、そうだ、あそこに資本準備金がそういえばあったと。何かそうやって目につくところつくところということで対応がされているのではないか、そういう懸念もちょっと持たざるを得ないわけです。
 せっかくいろいろな形で商法の原則には十分配慮されたという提起をなさっていらっしゃるわけですから、そういう意味ではもっと根本的な、日本の企業はどうあるべきやというようなことからぜひこういう場所でも議論をすべきではなかろうかというふうに思うんですけれども、その点についてはどうお考えか。
 それから、法務省の方にお尋ねいたしますが、これまで基本法というのは法制審議会などの慎重な議論を経て提起をされてくるというのが原則でもございました。議員立法が悪いということを決して言っているわけではない。ただ、法制審の方も、やはり慎重な議論とともに時代にきちっと適応できるような、これだけ激しく動く時代でもございますので慎重かつスピーディーな、これは大変難しいことではございますけれども、そうすることによって速やかに対応していく、ニーズにこたえていくということもやっぱり必要なんだろうというふうに思うんです。
 そういう意味で、法務省の方もこういう新たな課題についてこれからの議論をどういうふうに進めていかれようとしているのか、法制審議会のあり方なども含めてちょっと考え方をお示しいただきたいと思います。
#52
○衆議院議員(保岡興治君) 千葉先生御指摘の点はまことにそのとおりだと私も思います。株式会社法等の企業法制がきちっとしていなきゃいけない。しかも、基本というものが明確でだれにもわかりやすくなければならない。そういう意味では、自由主義経済の中で会社法制というのはとても大事な基本法だと思います。
 しかしながら、昨年のストックオプションの一般化の法制とか、あるいは自社株消却を取締役会で年度途中でも機動的に対応できる道を切り開く緩和措置であれ、これは必要な法制が法制審議会の審議やまた手続を待っていたのではあの時点における必要性、社会経済上のニーズにこたえるのに遅過ぎるという判断をして、立法者としてこの議員立法で行うと。もっとも、国民の多くの意見、特に専門家の学者の先生方の御意見を初め聞くべき意見というものは伺わなきゃならないと思いますが、昨年は六月の定時株主総会にぜひ間に合わせたいという観点から、そういう法制審等の御意見を伺う機会もなく立法されるということになってしまいました。
 しかし、昨年あのときにやっていなければ、今日もあの法制は恐らくまだ国会で審議もされていないだろうことを考えると、世の中がこれだけ変化しこれだけ激しく動く中で政策的判断の国会の責任というのは極めて重いと。
 確かに、基本法というものに対しての重さ、尊厳さというものもありますが、一方、基本法が担っている社会経済的な責任、使命というものもあって、それには変化の激しい社会にきちっと迅速に対応するという側面もあわせ持たなければならないということを考えれば、私は基本法であるから短期間で改正してはいけないとか、それから基本原則は絶対に理論的に守らなければいけないという性質のものではなく、基本原則も大事にしながら社会経済のニーズにこたえる。今回の立法もそういう趣旨で提案させていただいていることを御理解いただければありがたいと思います。
#53
○政府委員(山崎潮君) 法制審議会の点でございますけれども、法制審議会は、先生も御案内のとおりでございますけれども、国民生活あるいは社会に重大な影響を与える民事法、刑事法、こういう基本法について政策の審議を行うとともに法案の立案の準備を行う、二つの性格を有するものでございまして、そういう意味で大変重要な審議会であるというふうに認識はしております。
 しかしながら、こういうような性格を持っているからといって、やはり審議が社会経済の進展あるいは変動、その社会の動向等に速やかに対応できるようなものにするという必要は当然あるというふうに認識をしておりますし、このような観点から、法制審議会のあり方等につきましては、その見直しについていろいろな御指摘あるいは御意見があるということは法務当局としても十分承知しているところでございます。
 そこで、法務当局といたしましては、このような事情も踏まえまして、現在審議のより一層の促進あるいは充実の観点から審議方法の工夫など、法制審議会全体のあり方に関しまして多角的な検討を行っているところでございます。マスコミにも一部報じられているところでございますけれども、現在鋭意検討中でございますので、詳細については現時点では御勘弁をいただきたいと思いますが、なるべく早くそう遠くない時点できちっとした結論を出していきたいと考えているところでございます。
#54
○千葉景子君 終わります。
    ―――――――――――――
#55
○委員長(武田節子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として吉岡吉典君が選任されました。
    ―――――――――――――
#56
○大森礼子君 公明の大森礼子です。質問させていただきます。
   〔委員長退席、理事情水嘉与子君着席〕
 先ほど、参考人の方に御意見を聞きました。この前は、自己株式取得禁止の原則、その規制を取り除く改正だったわけですが、今回は資本充実の原則まで踏み込んできたということで、ちょっと正直言ってびっくりいたしました。
 先ほど奥島参考人も、いろいろ景気対策としてあるにせよ、こういう緊急事態になったときに商法の基本原則に穴をあげていくことを危惧するものであるという御意見がございました。これは当然だろうと思います。
 私も資本充実の原則について、果たしてこのようなやり方でいいのかどうかという観点から質問させていただきます。
 まず、利益準備金については積立額は資本の四分の一に達するまでという定めがございますが、資本準備金にはその総額の限度がない。そのことから、先ほど提案者がおっしゃいましたように、資本準備金が非常に巨額になるとかだぶつくとか、だからそこを使ってもいいんじゃないかということからこういう改正案の内容が出たのかなというふうな気がするわけです。
 資本準備金がどれだけあればいいかは別としまして、今回の改正案によりますと、例えば三条の二の第三項、自己株を取得して消却すべき株式の取得価額の総額というところで、これは三項と五項とあるわけですけれども、「資本準備金及び利益準備金の合計額から資本の四分の一に相当する額を控除した額を超えることができない。」とございます。それでこの場合、利益準備金の積立限度を資本の四分の一としますと、利益準備金が満額まで積み立てられている場合、資本準備金に相当する額をそのまま使うことができるということになると思うんですが、これは間違っておりませんでしょうか。
#57
○衆議院議員(上田勇君) 商法においては先生の今御指摘にありましたように利益準備金についてのみ上限が定められております。資本準備金については定められておりません。今回の法案におきましてはその合計額が資本の四分の一ということでありますので、先生が今御指摘のように、利益準備金が満額積み上がっている場合には論理的には資本準備金を全部消却に充てるということが可能であります。
#58
○大森礼子君 改正案の条文の内容をちょっと確認させていただきたいものですからこういう質問の仕方をさせていただきます。
 そうしますと、この改正案で資本準備金全額を取り崩すことも可能であることを内容としているわけですが、そこまでいきますと資本準備金の制度そのものを全く無にすることになるのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#59
○衆議院議員(上田勇君) 御承知のとおり、資本準備金については商法上は上限の数量についての定めがありません。しかしながら、資本準備金というのは資本に準ずるという形のものでありまして、それが債権者に対する保護の役割を果たしているというのは事実であります。今回はそういった意味を踏まえまして、資本準備金を自己株式取得に使う場合には定款を変更する、これは株主総会での議決が必要になりますし、同時に債権者に対しましてこの法案におきましても十分な債権者保護の手続を講じることを定めているところであります。
   〔理事情水嘉与子君退席、委員長着席〕
 その意味で、利益準備金が資本の四分の一を上限というふうに定められていることから、法定準備金の目的、債権者に対する保護という目的はその数値をもって一定の基準を満たすものではないかというふうな考えに基づきまして、利益準備金が足りない場合には、そのすき間といいますか、その部分については資本準備金をそこまで割り込んでの取り崩しはできないとしているものの、資本の四分の一が確保されておればそれが債権者に対する保護としては一定の基準を満たしているというふうに理解してそういうふうな形をとらせていただいたところであります。
#60
○大森礼子君 資本充実の原則というのは、私も昔商法、会社法を勉強したときに、要するに株式会社というのは有限責任が原則である、そこで債権者保護のためにやっぱり資本を充実させるということですね。
 それで、私がお尋ねしたいのは、法定準備金が資本の外枠にありまして支えるものでわかるんです。ただ、この法定準備金も資本準備金と利益準備金と分けてございます。それぞれの財源となるものや性質も違う。だから法律上は資本準備金と利益準備金とはきちっと立て分けているわけですね。それから、例えば資本の欠損に充てる場合にはまず利益準備金を使う。これもなるべく資本準備金には手をつけないようにしよう、資本準備金は本当に最後のとりでの部分ですからなるべくこれに手をつけないようにしようという趣旨であるはずなんです。これは原則のはずなんです。ところが、この改正案によりますと、先ほど先生も法定準備金が四分の一あれば資本本体は大丈夫じゃないかとおっしゃったんですけれども、同じ法定準備金でも資本準備金と利益準備金で違うわけですから、なぜ資本準備金は全部なくなっても利益準備金の方の四分の一でよろしいとお考えなのか、そこのところを聞きたいのです。
#61
○衆議院議員(上田勇君) 資本準備金が積み上がっていくのは先生も御承知のとおり株式の時価発行をした場合であります。これは時価発行を行っていない企業においては極端な話をすれば資本準備金の積み上がりがない。したがいまして、商法において特定の数値が定められていないというふうに理解するわけであります。資本準備金がなぜ必要かといえば、これは債権者に対する保護ということが重要になってくるわけでありまして、したがいまして、所要の手続を踏まえれば資本準備金を取り崩すことについて問題がないというふうに考えた次第です。
#62
○大森礼子君 資本準備金の方の財源というのは時価発行の払込剰余金の部分だからと。利益剰余金の方は毎回決算のたびに利益配当のときに積み立てていきますね。その違いをおっしゃったんですが、私は、資本準備金の方はそんなにしょっちゅう入ってくるものじゃないから、つまり一たん取り崩してしまったらなかなかまた積み立てるのが大変だからこそ余計になるべく取り崩さないようにしているのが法の趣旨なんだろうなと思うわけです。利益準備金の方は減りましてもまた毎回利益配当のたびごとに、十分の一ですか、積み立てていくわけですね。毎年利益準備金は積み立てがなる。だから、むしろ使うのであれば利益準備金の方を先にすべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#63
○衆議院議員(上田勇君) 資本充実の原則というのは先生のおっしゃるとおりであるというふうに思いますけれども、資本準備金というのは資本に準ずるものでありますが、資本についても一定の手続を踏まえますと資本減少ということも商法上可能なわけでありまして、したがいまして、株主あるいは債権者の利害を踏まえた上で資本準備金を減額するということを一律に禁止するものではない、考え方として一律に禁止するものではないというふうに思うわけであります。
 利益準備金については、先ほど保岡先生の方からもお答えがありましたけれども、これは商法上も資本の四分の一に達するまでは利益処分として支出する金額の十分の一以上、また中間配当の際には分配額の十分の一を積み立てるということになっているわけであります。したがいまして、これを先に取り崩すということになれば、さらに利益が発生した場合は配当可能利益や中間配当可能利益から積み上げていかなければいけないということになります。そうなりますと、これは株主の利害を損なうおそれがあるということから、今の企業のバランスシートを俯瞰したときに、資本準備金がかなり多額になっているということから、これは資本準備金を利用する方が適当ではないかという考えに基づいているものであります。
#64
○大森礼子君 確かにそうなんです。だから、この法案を見まして、利益準備金にはなぜ手をつけないのか、利益準備金を自己株式の消却財源としない理由は何なのかなと思って私は考えていたんです。債権者保護か株主の利益を優先するかということで、要は株主の方を優先したんだなというふうにとるわけです。多分そういう姿勢でございますね。
 それにつきましてはちょっと乱暴ではないか。資本準備金を全部取り崩しても何か資本の周りに準備金があればいいんじゃないか、それが利益準備金であってもいいんじゃないかというのは資本準備金制度というものを非常に無視した荒っぽい考え方ではないかなというふうに思います。これは意見として言っておきます。
 時間がないので次に行きます。
 条文解釈なんですけれども、改正案の三条の二の六項、定款の定めがあって、それから取締役会の決議があって、その買い受けできる総額というのは五項の方であるわけですが、その後に、この取締役会決議による資本準備金をもってする自己株式の「買受けは、最終の」云々とありまして、これを「下回るときは、することができない。」という文言になっております。
 お聞きしたい点が二つあるんですが、まず、「下回るときはことあるのですが、これはどういうことでしょうか。例えば、その「純資産額」と、それから「商法第二百九十三条ノ五第三項各号」云々以下の「金銭の額の合計額」とが等しい場合にはどうなんでしょうか。これも「下回る」という中に含まれておるのでしょうか。
#65
○衆議院議員(上田勇君) 両者が等しい場合には、「下回るとき」には該当しないというふうに私たちは考えております。
#66
○大森礼子君 じゃ、わかりやすく言えば未満ということでよろしいわけですね。
#67
○衆議院議員(上田勇君) そうです。
#68
○大森礼子君 よろしいですというお返事ですので、次に行きます。
 それから、「することができない。」とあるんですが、これはどういうことなのかよくわからないのですね。
 と申しますのは、例えば金額がこんなときにはすることができないという形はほかの消却のための株式買い受けのところで出てきます。それはあくまで利益消却の場合なわけですね。だから、一応取得総額を決めたとしても、実際、配当可能利益の範囲でするわけですから、その配当可能利益がないような場合、あるいはその取締役会決議の場合には中間配当の財源もないような場合にはしないと。それから、定時総会によって定めたとしても、決算時にその利益が出ないようなおそれがあるときにはしないと。だから、その場合の「することができない。」というのは、利益処分という性質からすることができないというのが出てくるんだと思うんです。
 ただ、この場合は、ここの「純資産額が商法第二百九十三条」以下云々とあるのは、これも中間配当ができるかどうかというこの基準でございますよね。何で利益消却ではない資本準備金による消却の場合こんなものが基準になるのかどうか、どうもよくわからないんです。教えてください。
#69
○衆議院議員(上田勇君) 第三条の二第六項の趣旨でございますけれども、資本準備金というのはその性質が資本に近いことから利益配当の財源とすべきではないというふうに定められているわけであります。なおかつ、その積み立ても法定化されているわけであります。こうした制限を設けましたのは、その企業の将来の財務内容が悪化した場合に備えておくというのが主な趣旨でありますし、同時に、もう既に財務内容が相当悪化しているような企業におきましては、資本準備金を株式の取得・消却の財源とすることは、さらに悪化をさせてしまうということから認めていないわけであります。そこで、資本の欠損が生じているというような場合に資本準備金を財源とする株式の取得・消却を認めていないという規定を設けたわけであります。
#70
○大森礼子君 非常にわからないですね。将来の財務内容が悪化するような場合までも資本準備金を取り崩してはいけないというわけなんです。とても慎重に配慮したように見えるんですけれども、しかし、この六項の条文を読みましたら、「純資産額が商法第二百九十三条ノ五第三項各号の金額及び同条第一項の規定により分配した金銭の額の合計額を下回るとき」はできない。しかし、下回る額といいますか割合というのは何も規定していないわけですね。下回る程度によって随分財務内容の状況が違うんだろうと思うんです。
 それで、今、将来の財務内容が悪化する場合には資本準備金取り崩しによる自己株買い受け・消却をすべきではないとおっしゃるんですけれども、しかし、イーブンの場合、つまり等しいか上回る、少しでも上回ればできる。できる範囲は何かというと、また五項に戻ってきまして、資本準備金全部の額ができることになりませんか、この条文によりますと。
 私の理解、間違っておりますでしょうか、ちょっと教えてください。
#71
○衆議院議員(保岡興治君) この六項は、上田提案者が言われたように、中間配当ができる場合を規定しているわけです。
 中間配当ができない状況というのはいわゆる欠損が生じているということでございますから、欠損を生じているような経営の悪化している会社の資本準備金は取り崩すことができないということを明確にしているわけで、じゃ少しでも上回っていたらできるのか、そういうちょっと上回っていても経営が悪いじゃないか、こうおっしゃっているのかもしれませんが、それはあくまでも後は経営者の判断の問題でございますから、そこは法律でどこまでいいというものを我々は決めなかったということでございます。
#72
○大森礼子君 ほかの利益消却の場合には、要するに利益消却ですから配当可能利益、これが一つ基準になります。まず数額上あるかどうかということと、それをやったとしても期末の決算のときに利益がマイナスにならないかどうかということになりますね。そういった意味では、大きな外枠として取締役会決議の場合には中間配当ができる場合と限定を置くのは意味があると思うんです。
 繰り返しますが、定時総会のときに決めたとしても、期末決算でマイナスになるような場合には取締役会でもしてはいけないわけですね。
 だから、利益消却だからこそ配当可能利益によってできるかできないか決まるということは、その合理性、因果関係はわかるんですけれども、この資本準備金と中間配当ができるかどうかという点、この因果関係、結びつきというのが非常によくわからないんです。
 今、御説明がありましたので一応伺っておきますが、それでもなお相互の結びつきといいますか因果関係がよくわからないというのが私の意見でございます。
 それから、この件につきましては、三月三十一日までに施行しなくては意味がないんだというふうな説明もされておるわけです。この法改正の趣旨をしっかり押さえていく必要があると思うんです。もちろん株式消却によって株式数を減らすことでROEが向上して経営効率を高める、これが一番大きな一般原則みたいな目的だと思うんです。
 そして、それ以外に、公的資金投入で金融機関の優先株購入、これはBIS基準をクリアするためですが、購入すると株式数がふえるから、逆にふえた分を株式消却により減らさないとバランスがとれなくなると。だから、公的資金投入による金融機関の優先株購入と連携しているんだと言う人もいるんです。それから、土地再評価法との関係で、土地再評価を行った場合自己資本比率が上昇する。そうすると、その分ROEの方が低下するから株価は下落をするんじゃないか、そこでROEを高めるためにこういうことをやる必要があるんだと。土地再評価法との関係でこういうことも言われているわけです。それから、一般に金融機関について、三月末のBIS基準をクリアするために、株価を上げることによって有価証券含み損を減らす目的もあるんだろうとか、いろいろ言われておるわけです。
 いずれにしましても、三月三十一日までに施行させたいとずっとお話を聞いていたわけなんですけれども、やはり今言いましたような公的資金投入の関係、土地再評価法との関係、それから金融機関の三月末の決算、BIS基準をクリアする、これもやっぱり大きな目的としておられるわけでしょうか。
#73
○衆議院議員(上田勇君) 今お話にありましたように、三月三十一日までにぜひ成立をさせていただきたいということをお願いしているわけでありますが、これは年度末を過ぎた場合に、過ぎたからといって、今の株式市場の状況を見るときにこの法案の効果が全くなくなるということではありません。むしろそれ以降も必要ということには全く変わりがないわけでありますけれども、この対象としている公開企業の多くは三月三十一日を決算期としていることから、今非常に株価が低迷している中で年度内に成立させていただくことが今の株価の低迷に対する対策として有効であるので、何とか年度内での成立をお願いしている次第です。
 なお、今御指摘のありました金融機関への資本注入とか土地再評価との関係でありますが、まず資本注入について言えば、これは自己資本の充実のために行うものであります。ところが、この株式消却はむしろその自己資本を減少させるということで全く違う方向のことでありまして、それを関連させるということは全く考えておりませんし、現に私たち承知しているところにおいては、金融機関においては自己資本の充実の方が優先されるので自己株式の取得を想定しているところはほとんど見当たらないということであります。
 また、土地再評価の方についてですが、これは後日委員会の方でも御審議いただくわけでありますが、土地再評価によって生じる差額金はバランスシート上は負債勘定に入るものでありまして、自己資本利益の比率について影響を与えるものではありませんので、それとの直接的な関係もないというふうに御理解いただきたいと思います。
#74
○大森礼子君 時間ですので終わりますけれども、なぜお聞きするかというと、私たちはこの法改正の趣旨及び内容というのは周知徹底しなくてはいけない。それで、近い目的と遠い将来的な目的と二通りありまして、余り三月三十一日対策にこだわりますと、逆にこういう立法というものも株価操作ではないか、こういう御批判もあるものですから、こういう観点から質問させていただきました。
 以上で終わります。
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#75
○委員長(武田節子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、千葉景子君が委員を辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。
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#76
○照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳でございます。御苦労さまでございます。
 先ほど、本法案に対する参考人早稲田大学総長の奥島先生からお話をお伺いいたしました。私は、奥島参考人のお話を聞いておりまして、この法案を提出した人にもぜひ聞いてほしかったなという思いをいたしたわけでありますが、参考人の方から本法案が会社法の原則、一つは資本充実の原則、もう一つは商法が規制する自己株式の取得制限の趣旨に対する二重の挑戦であると、しかも、本改正案のように資本準備金による自己株式の消却なんというのは商法学者が今まで一人として考えてこなかった仕組みづくりだというお話をお聞きいたしました。
 さて、参考人の意見陳述も踏まえた上で何点か保岡先生にお聞きをいたしますが、この法改正の提案理由の中で、近年の大量のエクイティーファイナンスの結果、株式の需給バランスが崩れて一株当たりの利益が低下した、こういうような改正理由をお述べになっておりますが、この需給バランスの崩れ、特に一株当たりの利益の低下ということがどういう中身なのか、その一株当たりの利益が低下をしているというその実態、それについてお教えいただきたいと思います。
#77
○衆議院議員(保岡興治君) 具体的に数字で言うと、資本準備金の推移をまず明らかにしておきたいと思いますが、昭和五十七年の三月期における東証一部、二部の千三百八十社の資本準備金総額は約七兆五千億ということで、平成三年三月期におけるものは二十八兆六千億円となって、さらに平成九年三月期におけるものは三十一兆三千億となっております。このように急激に巨額な金額になってきておる。
 それに対して、一株当たりの利益の指標と考えられている株主資本利益率、いわゆる先生のおっしゃったROEでございますが、これは昭和五十七年三月期八・五%、平成三年三月期六・六九%、平成九年の三月期では二・五一%となっております。したがって、資本準備金の増加に反比例しましてROEが低下していることは明確な事実でございます。
#78
○照屋寛徳君 先ほどからこの資本準備金の積み立てと利益準備金の積み立て制限との関係、その差異についていろいろ質問等がございましたけれども、資本準備金というのはそもそもその財源が資本に近い性質のものであるというふうに私は理解をいたしております。
 それで、この提案理由で申し上げますと、企業内部に多額の資本準備金が積み立てられておるということをおっしゃっておりますね。それから必要以上の資本準備金の積み立て云々という話もありましたが、奥島参考人の話を聞いておりましたら、その資本準備金をたくさん積ませてほしいというのがそもそも企業、会社側の要求、要望であったんではないかと、そういうふうな指摘をしておりました。要するに、なぜ企業内部に多額の資本準備金が積み立てられたのか、なぜそういう事態が生じたのかということについて保岡先生のお考えをお聞かせください。
#79
○衆議院議員(保岡興治君) 率直に申し上げまして、企業側がその資本準備金制度をスタートさせるときにどういう考え方で臨んだかということについては、私つまびらかではございませんけれども、我々法律を勉強する際には、先生がおっしゃるように資本に準ずる、資本を補完する制度である、債権者保護の観点から会社財産を内部に留保する制度で重要な仕組みなんだということを承知してまいっております。
 しかしながら、先ほど上田提案者もお話しになりましたが、資本ですら減資の手続があって、その際には厳格な債権者保護の手続を踏むことになっております。そういう減資の手続と同様の債権者保護の手続を今回はとらせていただいているという意味で、資本を補完する資本準備金そのものが、先ほど申し上げたようにこのところの時価発行増資による巨額化、それは一時代の経済を反映したものであって、また一方で、その結果株式市場が非常に緩んで経済構造改革の観点からもできるだけ引き締めるということが求められて、持ち合いの解消の受け皿として期待されたり、あるいは先ほどから先生も言っておられるように、ROEというものを高めるということは株主にとっては魅力ある措置でございます。そして、従来会社に財産を留保することのみを考えて会社にある財産、利益というものを、この場合は利益から積んだものではありませんけれども、会社にある財産を株主に還元してさしあげると。また、別な経済的な観点から言えば、会社に余剰資産がある場合は株式消却ということを通じて市場に資金を還元して、もっとそれを必要としている新企業、成長企業にそれを回すというふうに市場に資金を戻す機能もあると。
 そういうことなど、自社株消却には重要な制度としての役割がございます。そういうことが今の経済上非常に求められているということに基づいて、しかも非常に経済が危機的な状況にあるということもあわせ考えでこのような臨時緊急のといいましょうか、時限立法を提案させていただいた次第でございます。
#80
○照屋寛徳君 本改正案は、定款授権に基づく取締役会の決議による自己株式消却、こういう仕組みづくりでございます。経団連がこの改正案の仕組みづくりと同時に定時株主総会の特別決議に基づく自己株消却を強く要望しておったようですが、この定時株主総会の特別決議に基づく自己株式消却というのを法案に取り入れなかった理由はどこにあったんでしょうか。
#81
○衆議院議員(保岡興治君) 経済界の要望というのは、資本準備金を財源とする自己株の取得・消却を認めるということがポイントでございまして、おっしゃるように手続は二通りあり得るということでそういう提案もなされていたわけでありますけれども、必ずしも双方がなければならないという性質のものではない。現行の消却特例法の基本的な制度というものは、定款の授権に基づいて取締役会の決議で自社株取得・消却が機動的に行われるという仕組みでございますが、それとの整合性もあるということで、今回提案しているように、より合理的な手法をとった次第でございます。
#82
○照屋寛徳君 本改正案により、資本準備金による自己株の消却によって商法が規制している自己株式の取得制限の趣旨が損なわれるのではないかというおそれ、これは私も強く感じております。参考人からもそのことについての指摘があったわけであります。
 保岡先生にお伺いいたしますけれども、この法改正によって株式相場にどのような効果を与えるのか。学者の中には、発行済み株式数が減る一方で企業の資産が減少するので、自社株消却による株価への影響はないというふうに指摘する人もおりますが、いかがお考えでしょうか。
#83
○衆議院議員(保岡興治君) 照屋先生が御指摘のとおり、学者の間には今言われたような理論をもってする意見やそうでない意見もあって、いろいろでございます。
 ただ、経済の実態というか、今までの自社株消却を決定した会社の株の状況を拝見しますとほとんどが値上がりいたしております。これは、私としては、株式がそれだけ少なくなることによって緊張関係ができるということで、また株式のROEも高まるというようなことがひいては株主重視の会社の姿勢として株主に好感を持たれる結果だと思うわけでございます。
#84
○照屋寛徳君 法案作成をする過程で市場関係者からもいろいろ御意見を聴取したと思いますが、市場関係者はこの法改正によって株式に即効性のある効果が生ずる、こういう期待を持っておるんでしょうか。
#85
○衆議院議員(保岡興治君) そのときの経済情勢やいろいろな要素があって株価というものは決まってまいりますから、必ずしも定性的というのか定量的に株が上がるものだというわけではないから、期待外れということもあるかもしれません。
 しかし、先ほど申し上げたように、自社株消却を行った会社の株はほとんど上がっておりますし、自社株消却の必要性というものは今の経済の極めて重要なニーズになっていることなどを考えると、そしてまた、株主重視の会社の経営姿勢が非常に株主に好感を持って迎えられ、期待されるというようなことなどをあわせて考えると、私はこの自社株消却の措置というものは、今度の議員立法というものは非常に重要な手段を経済界に与えておる。あとはこれを会社が、経済の実態がどう受けとめていくかということに期するものだと思います。
#86
○照屋寛徳君 終わります。
#87
○山田俊昭君 二院クラブの山田です。よろしくお願いいたします。
 最初に私の意見を少し述べさせていただきまして、基本的なことを二、三御質問させていただきます。
 株式会社のようないわゆる物的会社は、会社の財産が債権者に対する唯一の担保になっていることは言うまでもありません。そこで、商法は債権者保護の観点から、会社の財産をむやみに取り崩すことのないように厳格な規定を設けております。すなわち、株式の発行価額、いわゆる株主の払込金の総額のうち、資本に組み入れない部分であるところの払込剰余金を財源とする資本準備金については、資本の欠損の補てんに充てる場合、これは商法二百八十九条一項が規定しているところでありますが、もう一つは資本に組み入れる場合、二百九十三条ノ三、この二つに限定しております。
 本改正案は、株価対策の名目のもとに、債権者のリスクにおいて、この商法の大原則ともいうべき資本充実の原則をゆがめ、例外を拡大しようとするものであります。大同コンクリートのような一部上場企業が、黒字決算を予定し債務超過に陥っていないにもかかわらず、金融機関の貸し渋りによって倒産に追い込まれるような昨今の経済情勢をかんがみるとき、法定準備金は企業が債務超過に陥るのを防ぐための安全弁であることを改めて認識しなければなりません。
 また、我が国の企業は、法人の所有者であり、しかも最も株価による影響を受けやすい立場にある株主を軽視して、反面、取締役会や取締役の権限を強化する傾向にあり、このことが無能かつ不心得な取締役のデリバティブ等の投機的な取引による参観な損失や官僚の過剰接待等といった不祥事を誘発し、会社の存続さえをも危機にさらしていることを忘れてはなりません。
 こうしたことを念頭に置きまして、二、三の質問をさせていただきます。
 近年、自己株式取得禁止の商法の原則が、平成六年、平成九年、さらに今回の改正によってなし崩し的にゆがめられてきております。このことは物的会社の財政的基礎を危うくし、会社の健全な発展と会社債権者の保護を大きく損なうことになるのだと思いますが、いかがでしょうか。質問をいたします。
#88
○衆議院議員(保岡興治君) 自社株消却制度を平成六年から、そして昨年はそれを機動的に行うための特例を議員立法で行い、今回また資本準備金による自社株取得・消却というふうに、次々自社株取得・消却の道を開くことは会社財産を危うくするもので、債権者保護という重大な問題を生ずるのではないか、こういうお話でございます。
 先ほど来、諸先生へのお答えにも申し上げてまいりましたとおり、自社株消却というのは、一方でエクイティーファイナンスで資金を会社が得るだけじゃなく、時に必要に応じては自分が持っている財産というものを一定の要件のもとに市場に放出して株を減らすということが社会経済としてもまた会社としても必要な場合があると。したがって、アメリカなどは新株発行と消却とがほぼ拮抗しておる、そういうことで需給バランスが非常にきちっとしているために株価が今高値更新を続けているという説もあるぐらいで、我が国にはどんどん大きくすることがいいことだということで拡大する一方の法制しかなく、そういった手段が与えられていなかったわけです。
 先ほど来申し上げているとおり、ROEを高めたり、むしろ株式の魅力を高める、会社の財産を留保することだけに専念せずに、そういう経営でなくて、株主に利益を還元する率を高めていくためにも必要だとかそういったことを初め、持ち合いを解消するために、さらにバランスの崩れる市場を引き締める受け皿としての制度であるとか、いろいろ先ほどから申し上げている自社株消却の必要性、制度の必要性というものもあって、今回は、大量にこのところ行われているエクイティーファイナンスに対し、一方で市場が緩んで、今の経済・金融危機の状況と加えて考えると、今回の臨時異例の立法もまた今の社会経済のニーズにこたえるものであるという前提で、かつ債権者保護に対しては、債権者保護の最も根幹である資本、一番中心にある会社財産を守る根幹である資本ですら減少という制度、それを減資するという制度が認められていて、それと同じ厳格な要件を具備しているから、今回の自社株取得・消却の道を開いたという配慮をしていることを御理解賜りたいと思います。
#89
○山田俊昭君 自社株取得の必要性、いわゆる社会的ニーズというのは、不況の中にあって好況を呼ぶための一つの万やむを得ない手段としてとられたというようなことなんでしょうけれども、先生みずからお認めになったように、今回の法改正は極めて臨時的であって異例であって、本来の本道を完全に逸脱し、商法の本道を外れていることだけは確かなのであります。私も法律の勉強を多少してきている者なのでありますけれども、そのためにこういう形の手段がとられていいのかどうかということは大きな問題だろうと思うわけであります。
 そもそも景気浮揚とか株価というものは、いろんな経済のファンダメンタルズが忠実に反映して実体経済がよくなれば株価なんというのはひとりでによくなるわけであります。したがって、実体経済をよくするための政策を取り上げられず、本改正のように、迂遠姑息な手段と申し上げたら失礼かと思いますけれども、私はこういう株価値上げの名目のもとに小手先だけでやられるという方法に対しては非常に大きな疑問を持つものであります。
 このほかにも、政府要人がリップサービスで株価値上げのためのいろんな発言をされる、またPKOの人為的な価格操作によって株価を上げようとされる傾向が非常に多いわけでありますけれども、こういう形で株価操作がなされていいのかどうか非常に疑問に思うんですが、保岡先生の御所見をお伺いいたします。
#90
○衆議院議員(保岡興治君) 株価を操作するということになりますと、これは証取法の株価操縦ということにつながることでございますから、もとよりそういうつもりでこの制度を起こしているのではありません。
 先ほどから申し上げているとおり、自社株消却というものは、一定の社会経済上あるいは会社法制上もニーズのある、立法理由のある制度だということで、今の経済がそれを求めているということから今回の法制をお願い申し上げているわけでございまして、そういう選択肢がふえることによって自社株消却がさらに進む、その結果、株価が上がることが多いということでございまして、株価操縦をする、上げたり下げたりして何か利益を求めるというような性質のものではないのは先生も御案内のとおりでございます。
 そしてまた、いろいろ経済について御意見がございましたが、私たちは、非常に今世界が日に日に変化して、去年の今ごろのことを考えると、今日のことは恐らくだれも想像していなかっただろうと。先のことは神様しかわからないわけで、だれ一人わからないが、そういう将来の変化に対するリスクは政治家が負担しなきゃならない。先のことはわからないが、できるだけ読みに読んで社会のニーズあるいはその変化というものを判断して対応していく。
 したがって、商法学者の先生方などはこういう改正については基本を大きく変えるものだという御意見も強いことは承知しておりますが、そういう原則の持っている意味というものを考えて、時としては、そういった基本法であっても、その尊厳やその重さを求めるよりも、その基本法が社会経済に担っている使命というものを考えて臨機応変にまた制度を考えていく。
 その臨機応変に考えるときは基本的な本来の制度を損なわない配慮を十分するということが大事であって、そういった意味では、議員立法を短期にやったことについて御批判もありますけれども、私は、議員立法は今謙虚な姿勢を示すときではなく、むしろ役所が抱えている手続上のいろいろな限界、制約、そういったものを超えて、迅速的確に政治の責任においてきちっとした方向性や枠組みを示して、法技術的なお役所のあるいは学者の先生方の御意見をその中に組み入れて、立法と法律家あるいは国民とが知恵を出し合って役割を分担して、この世の中の変化に機動的に的確に対応する。そういった意味では、議員立法は今はむしろ積極的に、しかし真剣に検討すべき使命を担っているものだ、そう考えております。
#91
○山田俊昭君 先生のお立場から、現在、日本の経済界が要請するニーズにこたえるための必要な手段だということはわかるわけでありますが、それだからといって基本的なものが失われていいのかどうか多分に疑問に思うものであります。
 この点の議論が二つに分かれて一致点を見ないわけでありますので、私の言わんとするところ、先生のおっしゃるところ、十分に理解いたしましたので、次の質問に入ります。
 今回の改正は、株主総会でのいわゆる定款変更決議を待たずに自社株の取得ができる特例を認めるものでありますが、これはとかく株主総会が形骸化して株主を軽視する風潮にある我が国の企業の好ましくない体質をさらに助長するのではなかろうかという疑問を持つんですが、いかがでしょうか。
#92
○衆議院議員(保岡興治君) 先生のおっしゃるとおりの側面もあると思いますが、しかしながら、この期末における経済状況に的確に対応するというこの立法の趣旨から考えれば、そしてそのことが期末であるだけに極めて重要であるということを考えれば、例外として確かに定時株主総会前の取締役会決議ということになりますけれども、事後的に定時株主総会で決議をしなければ直ちに取得した株は放出、売却しなければならないことになっておりますし、また一方で、債権者保護の手続等、立法の上で債権者等に配慮すべき規定の遵守ということについては手続をきちっとすることで担保しておりますので、確かに異例の形ではありますけれども、先生方の御理解を賜りたいと思っているところでございます。
#93
○山田俊昭君 時間がないので、まだ二、三聞きたいところがありますが、はしょってお尋ねしますけれども、今回の改正はいわゆるインサイダー取引をさらに助長するのではないのか。定款にさえ記載すればいつでも自己株取得ができるという取締役会の決議もできるわけですから、もし今回の法改正をするなら、それとあわせて監視機関といいますか罰則強化の方も十分考慮されるべきだと思うんです。もちろんインサイダー取引に対して証券取引法が禁止していること、罰則を設けていることはわかるんですが、私が言いたいことは、さらに罰則強化と監視体制を徹底されることを希望するものでありますが、この点に関してはいかがでしょうか。
#94
○衆議院議員(保岡興治君) この点も山田先生のおっしゃるとおりだと思います。
 しかし、今回の特例もまた昨年の取締役会決議における機動的な自社株消却と同じようにインサイダー取引の規制の対象になる。したがって、取締役会の自社株消却の決議は重要事実としてそれが公表されなければ関係者は自社株の売買ができないということを初め規制はかかることになっておりますし、なお昨年来の国会での御努力によってこういった関係の罰則水準というのを高めて、さらに運用においてもできるだけ万全を期すような方向で国会の論議も進められておりますし、また行政でもそれを踏まえた対応をしているところだと思います。
 なお、今後、先生の御趣旨に沿ってさらに対策をきちっとしていくことが必要だと考えます。
#95
○山田俊昭君 終わります。
#96
○矢田部理君 もう既に出ている議論だと思いますが、制度の根幹まで動かして、しかもなぜ特別立法で緊急にこんな臨時異例の制度をやらなければならないのかという疑問はだれしも持つし、結局のところ、財界の要請に応じた株価対策じゃないか、立法による株価操作じゃないかという厳しい指摘すらあるわけですが、その辺はどんなふうにお考えになりますか。
#97
○衆議院議員(保岡興治君) 矢田部先生もおっしゃったように、先ほどもお答えしたとおりでございますが、株価操縦、株価を操作する、上げ下げして利益を得るというような趣旨では決してなくて、会社があるべき姿をとることによって結果として市場がそれを評価して株が上がるという措置はどんどん行うべきだと思います。
 今回の異例な措置がどんどん行われることを求めているというのではありませんが、自社株消却というものが今の経済、あるいは非常に異常な危険な状態にある経済状況というものにとってとても大事な選択肢の一つである、会社経営、会社運営の選択肢の一つであるというふうに考えて立法をさせていただきました。
#98
○矢田部理君 本当にそれが非常に大事な新しい制度だというのであれば、特別立法じゃなくて、商法の本法改正を本格的に論議すべきなのに、それをやらずにおやりになるというのは、少しく安易に過ぎるという点もあるかもしれませんが、結局のところねらいは、株価が上がらなければこの法律の意味はないわけでしょう。結果として上がるんじゃなくて、上げることを目的とした制度の創設なんじゃありませんか。
#99
○衆議院議員(保岡興治君) 我々の心の中には、心の中というか立法に当たった者としては、先ほど申し上げたように、こういった選択肢が制度として開かれることによって、それぞれの会社運営の判断でございますけれども、自社株消却という一つの経営のあり方を進めていく上での決断というものが株価に反映することは、それは期待して、期末の株価というのが会社にとっても経済全体にとっても非常に重要だという考え方でおるところでございます。
#100
○矢田部理君 市場のことは市場に任せるというような基本がありますね。
 ですから、ある株価を維持するために、あるいはつくり出すために政治がいろいろな手だてを実体経済とは別に講じることは、長期的に見て、ある時期は帳じりが合うのかもしれませんけれども、決して正しい手法ではないというふうに私は思っているのでありますが、自社株消却制度が新しく設けられたら企業はどんな動きになりますか、あるいは証券市場はどんな展開になることが想定をされますか。
 これだけではありませんで、例えば郵貯とか簡保資金などを直接株式市場に投入して株価維持をやろう、あらゆる手だてを講じて株価を動かそうというのは、政治にとっては邪道なんじゃありませんかというふうに私は思うのですが、その動き、展開をどんなふうにあなたは読むか、考えていますか。
#101
○政府委員(長野厖士君) 自社株の問題と公的資金の株式への運用の問題と多少分けてお答えをさせていただきたいと思います。
 自社株につきましては、かねて日本とアメリカの証券市場の違いと申しますか、アメリカにおきましては、例えば企業が資金を必要とした場合には時価発行をどんどんやる、そのかわり株の需給から見て供給が過剰になったな、手元に資金の余裕があるときにはそれを消却する、これ々非常に弾力的にやっておりまして、その結果として、企業の資金状態と企業に対する評価というものが市場に好感を持って受けとめられておるということがしばしば言われておりました。
 私ども、一昨年になりますか、時価発行の増資につきまして弾力化いたしましたけれども、この自社株消却というものを現在、保岡先生その他の御尽力でこんな形で御提案になっておられますが、そのこと自体は、そういった弾力的な企業経営、それに基づく適切な株式市場の形成という観点からは、私どもとしては適切な御施策ではなかろうかと考えております。
 第二に、公的資金、特に郵貯、簡保の株式市場への運用法でございます。
 これら郵貯資金、簡保資金につきましてもその運用の一部として株式というものをお取り上げになる、市場を預かる私どもとして、率直に申しまして、そのこと自体は歓迎してしかるべきことだろうと思います。いろんな方々が株式市場に参加されるということは私の立場では歓迎と申し上げたいと存じますが、ただ、公的資金ということになりますと、その場合に問題は幾つか出てまいりましょう。
 それが直接的に特定の銘柄でありましたり、株価水準そのものに対して国家の意思が価格形成に影響を及ぼすということがあってはならないという御配慮は皆さんお持ちだろうと思います。それから、株に投資するということは株主になることでございますから、株主権、議決権とかもろもろの経営に対する権利といったものを国家権力が直接行使するのがよいのか悪いのかといった別途の観点からの御検討は必要だろうと思います。
 そういった御検討を十分踏まえられた上での公的資金の株式運用というのは、将来を展望しますと、郵貯もすべて自主運用という流れになっておるようでございますから、その運用の一部として株式を組み込んでいただくことは私としては歓迎申し上げたいと思います。
#102
○矢田部理君 自社株の消却でどのくらいの資金が動いたり消却が行われたり、それから株価がどんな動きになるかという予測みたいなものはあなたのところはしていないんですか。
#103
○政府委員(長野厖士君) これは数年前に一部自社株の取得について認められるようになりまして、今回それがまた幅が広くなるということでございますけれども、そのような法制下におきまして自社株取得をするかどうかというのはあくまで企業の御判断ということになると思います。
 ごく最近、非常に有力な企業がその方針を発表されたということも聞いておりますけれども、それらほすべてそれぞれの企業のそのときにおきます株価と手元資金の状況、設備投資計画の有無、将来の展望といったことを踏まえて企業において御判断なさることだろうと思っておりますし、私ども今の段階でヒアリング等もいたしておりません。適切に企業が御判断なされることを期待いたしております。
#104
○矢田部理君 結局、慌ててつくっても大してこの三月期は自社株の消却に至らないのではないかという見方もないわけではありませんが、いっとき株価を上昇させる効果があったとしても、やっぱり実体経済が伴わないわけだから、長期にそれを維持する見込みということになると極めて不安定なのではないかという心配もあるし、また指摘もあるわけですが、その辺は証券局長、どう考えますか。
#105
○政府委員(長野厖士君) 基本的に、企業が自社株消却を御判断なさる場合には、ROE、株主資本利益率でございますね、こういったものの向上などを通じて株式の魅力が向上する、こう言われておりますので、いわば実体の伴わない価格の上昇ということではなくて、そのこと自体が株主によって歓迎されるということはあり得ようと考えております。
#106
○矢田部理君 そろそろ終わりにしますが、非常に安易な手続でやれるというふうに見ざるを得ないわけです。
 例えば、本来の資本の減少ですれば、特別決議を必要とするとか債権者の異議申し立て権なども保障されたりして、極めて慎重な減少のための手続がとられるわけですが、資本そのものではありませんが、準備金を減らすということになるとそれに近い考え方も実はあるわけでして、それが取締役会の決議等で進められるということになると債権者保護の面で一体どうなるか。さらにはまた、先ほども申し上げましたように、インサイダー取引等が出る温床になりはしないかというような心配もあるわけです。
 法務大臣に聞いた方がいいでしょうか、これはどうして政府で立法をしないで議員立法でやったのか、政府は全然関心なかったのか。その辺はどういうわけでしょうか。
#107
○衆議院議員(保岡興治君) 矢田部先生が言われた厳格な債権者保護手続とかその他、株主の利益、平等性を害しないかとか、そういうことについては、先ほど来お話ししているように、定款で取締役会に授権するところで株主総会の特別決議を踏んでおりますから、これも減資と同じ要件でございます。
 それからまた、債権者の保護手続も合併における債権者保護手続と同じ手続を踏んでおりまして、これはそういう意味では資本を減少するのと全く同じ要件で今回の特別立法を組み立てたということを御理解いただきたいと思います。
#108
○矢田部理君 これはちょっと私も正確じゃないが、三月期はそういう手続を経ずにやれるのと違いますか。
#109
○衆議院議員(保岡興治君) それはそういう要件を全部行うんですが、もう本当に臨時異例の一回限りの措置として取締役会の決議を先行させるけれども、すべて今私が申し上げた要件は事後的に備えられて初めて自社株取得・消却になるということでございます。
#110
○矢田部理君 だから、何でそんなに便宜的に今この時期にやらなきゃならぬかということになるから説得力がなくなって、当面の株価対策ということに焦点が当てられ、結果としてそうなるんじゃなくて、それを目的としてやることのあらわれではないかとすら思うわけでありまして、それはそれでいいです。
 最後になりますが、法務大臣に。何か大分議員立法としては大事だ大事だと言うんですが、法務省は全然関与しなかったんですか。そんな認識は持たなかったんでしょうか。
#111
○政府委員(森脇勝君) これは商法の今までなかった、言ってみれば重要な部分の変更にかかわる問題でございます。そういったところから、私ども、自民党の方からこういう案はどうかというお話をいただきました。その時点では、従来資本準備金をもって自社株を消却するという方法は考えておりませんでしたので、これに対する影響等を調査せざるを得ないという状況でございまして、さらにこれを法制審議会で御検討願うということにはこの三月期を目標とするのであるとすれば無理である。ただ、これのいろんなシステムにつきましてはその都度御相談いただいておりまして、私どもとしても会社債権者あるいは株主の利益が害されることがないかといった観点からは意見を申し上げさせていただいておるところでございますし、また、法制審議会のメンバーの個々の委員の先生方には意見を聞いて、それをお伝えしてきた。こういう形で今回の議員立法の準備が進められたものだというふうに承知いたしておるところでございます。
#112
○矢田部理君 法制審議会の先生方にも報告したり意見をいただいているということですが、そのサイドの意向というのはどんなふうに伝えられていますか。
#113
○政府委員(森脇勝君) それぞれに債権者保護手続がとられる、あるいは定款の変更、それから先ほどおっしゃいました第一回の、はっきり言いますとことしの六月までの臨時の対応策、そういったものについて相応の保護手続がなされているということで、一部の先生方からの御理解もいただいているというところでございます。
#114
○矢田部理君 一部は御理解いただいているが、大勢は批判的というか別な意見ということでしょうか。
#115
○政府委員(森脇勝君) 表現が適切でなかったかもしれませんが、聞いた範囲の先生方にはそういうお答えをいただいておるということでございます。
#116
○矢田部理君 あと最後に、法務大臣。
#117
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 商法を主管しております法務省の立場から申し上げますと、今回の法案は、原則として定款変更という形で株主総会の特別決議が要求されているということ、それから債権者保護手続が必要とされているということ、さらに法定準備金のうち資本の四分の一に相当する額は必ず社内に留保しなければならないこと等、株主、債権者の保護の点についても相応の配慮がなされているというふうに私どもは理解いたしております。
#118
○委員長(武田節子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#119
○委員長(武田節子君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 大森礼子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大森礼子君。
#120
○大森礼子君 私は、ただいま可決されました株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、公明、社会民主党・護憲連合、自由党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    株式の消却の手続に関する商法の特例に
    関する法律の一部を改正する法律案に対
    する附帯決議(案)
  株式会社制度における資本の原則等の重要性
 にかんがみ、政府は、次の諸点について格段の
 配慮をすべきである。
 一 資本準備金の性質に配慮しつつ、自己株式
  の取得・消却による資本の効率化を促進する
  ため、法改正の趣旨及び内容を周知徹底し、
  法の円滑な施行を図ること。
 二 株主、債権者等の保護並びに企業経営の健
  全化を図るため、会社の業務及び会計に関す
  る情報の開示制度の充実・改善に努めるこ
  と。
 三 自己株式の取得・消却に当たっては、イン
  サイダー取引など不公正取引に対して、証券
  取引法の厳格な適用を行うとともに、監視体
  制を充実強化するよう指導に努めること。
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#121
○委員長(武田節子君) ただいま大森君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#122
○委員長(武田節子君) 多数と認めます。よって、大森君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、下稲葉法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。下稲葉法務大臣。
#123
○国務大臣(下稲葉耕吉君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#124
○委員長(武田節子君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#125
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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