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#1
第142回国会 法務委員会 第12号
平成十年四月十六日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十四日
    辞任         補欠選任
     伊藤 基隆君     千葉 景子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         武田 節子君
    理 事
                清水嘉与子君
                依田 智治君
                大森 礼子君
                橋本  敦君
                平野 貞夫君
    委 員
                遠藤  要君
                岡部 三郎君
                長尾 立子君
                林田悠紀夫君
                前田 勲男君
                松浦  功君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                円 より子君
                照屋 寛徳君
                山田 俊昭君
                矢田部 理君
   国務大臣
       法 務 大 臣  下稲葉耕吉君
   政府委員
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  山崎  潮君
       法務省刑事局長  原田 明夫君
       法務省人権擁護
       局長       横山 匡輝君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   浜野  惺君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   堀籠 幸男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る十四日、伊藤基隆君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(武田節子君) 裁判所法の一部を改正する法律案及び司法試験法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。時間を一時間いただきましたので、当面するこの法案の問題点について質問させていただきます。
 今回、いろいろ質問する関係で研究してみたわけですが、今日の我が国の社会の複雑高度化、さらに国際化の進展という中で、いろいろ法的ニーズというものが高まり、そういうものに対して国民の期待に的確にこたえていくということは法治国家として極めて重要なことだな、こう改めて認識した次第でございます。
 そういう点からも、司法機能の充実といわゆる社会的ニーズにこたえるという意味で、今回法曹三巻が合意した範囲において改正案が出てきたということでございますが、いろいろ研究してみて、試験制度のあり方とかどういう科目をやったらいいんだろうかとかいろいろ考える場合に、果たして現在の我が国において法曹人口というものは適切なんだろうか。要するに、法曹界ということを考えた場合に、まず質の高い法律専門家が適切な数おって的確に国民のニーズにこたえるということが極めて重要だな、こう考えます。
 そんなことで、なかなか難しいんだと思いますが、また三者の間でも当面増員していこうという方向を決めておるようでございますが、まず第一に、議論する手始めに、現在一番新しい数字で我が国の法曹人口というのはどうなっているのか、裁判官、弁護士、検事。さらに諸外国との比較において、前回外弁のときもちょっとお伺いしたんですが、どんな感じであるかということについてまずお伺いしておきたいと思います。
#5
○政府委員(山崎潮君) お答え申し上げます。
 まず、我が国の法曹人口について申し上げたいと思います。
 裁判官、検察官、弁護士の総計でございますけれども、約二万二千人でございます。平成十年四月現在で、簡易裁判所の判事を含む裁判官は定員として二千九百十九人、副検事を含む検察官の定員が二千百九十三人、弁護士が一万六千八百五十三人でございます。ちなみに人口は、正確なところはちょっと御勘弁いただきたいと思いますが、一億二千六百万前後でございます。
 それから、諸外国でございますけれども、諸外国の数字につきましては必ずしも同一時期ではございません。正確なものをつかむのが難しいところがございますので若干の幅はございますが、最近のデータでございますけれども、アメリカが約九十三万七千人の法曹人口です。アメリカは二億六千六百万という人口でございます。それから、イギリスが七万九千人ということでございます。イギリスの人口は五千二百万ぐらいということでございます。それから、ドイツでございますが、ドイツは十一万三千人の法曹人口でございます。人口全体は八千百万人でございます。それから、フランスでございますが、フランスは約三万五千人でございます。フランスの人口は五千八百万人というような数字になっております。
#6
○依田智治君 今、最新の我が国の法曹人口は二万二千人、外国等と人口比で見ると圧倒的に少ないということ。少ないといってもいろいろ要因があって、これから若干お伺いしたいと思うわけですが、一般的意見としていずれにしても我が国の場合は法曹人口が外国と比較して少な過ぎるんじゃないかという意見を言う人も結構耳にするわけですが、このあたりについての御見解はいかがでございましょうか。
#7
○政府委員(山崎潮君) 法曹人口が多いか少ないかという点でございますけれども、この議論につきましては、平成三年から法曹養成制度等改革協議会、いわゆる改革協と言っているわけでございますが、いろいろ議論を続けまして、平成七年の十一月に結論が出たわけでございます。その中でも多数意見としては、中期的目標として年間千五百人程度の司法試験合格者を出すべきではないかと、少数意見として千人ということがございましたが。この改革協の構成メンバーは経済界あるいはマスコミ、その他有識者もみんな含めての会議でございましたけれども、やはり各界から少ないという御意見が多数であったということでございます。
 また、昨今の規制緩和の政策が貫徹されていくということになった場合には事後チェック型の社会になるわけでございます。そういう関係からいきますと、やはり自己責任で問題を解決していくという社会になるわけでございますので紛争ばふえてくる、それなりに法的な需要は多くなるということでございますし、あるいは紛争に至る前に解決をするという需要はふえてまいるわけでございます。こういう点を考えますと、我が国の法曹人口全体として足りないという認識でございます。
#8
○依田智治君 経済界等も少ない、足りないと言うのは、言うなれば法律を相談する弁護士なんかが非常に少なくて不便しているというようなことなんでしょうか、そのあたりはどうなんでしょうか。
#9
○政府委員(山崎潮君) 経済界の反応につきましては、経団連あるいは経済同友会からさまざまな意見が寄せられております。経済界の大きなニーズというかこのポイントは、昨今いろいろ会社の問題が社会をにぎわせているわけでございますけれども、これからの社会を考えていった場合に、企業は利益だけを追求するということではだめで、やはり公的な社会的存在でございますので、いわゆるコーポレートガバナンスということが非常に重要になってくるということでございます。これはいろいろな政策というか施策を考える場合にも事前に法的な側面について十分検討した上で行わなければならない、あるいは事後にいろいろ事が生じた場合についても法的措置をきちっとしなければならないという要請が極めて強くなってきております。
 そういう関係で、現在、大きな企業に関しましては顧問弁護士というものは当然あると思いますけれども、それだけでは足りないということで、日常起こっている日々の出来事について、企業内にいてそれを承知しながら法的側面についてアドバイスをする、こういう人間が必要になってくるということが強く叫ばれております。いわゆる企業内弁護士の必要性ということでございます。
#10
○依田智治君 やはり今後社会が複雑化、高度化してくるに従って、そういう要請はますます高まってくるということは予想されると思います。
 一方、司法書士とか行政書士とか税その他法律事務を扱う隣接の専門職種というのも多数あるわけでございますが、我が国の場合はそういうような者が相当多数おるので、そういう点から見れば必ずしも国民が不便しているわけでもないんじゃないかという御意見がありますが、このあたりについての御見解はいかがでございましょうか。
#11
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘のいわゆる隣接法律専門職種でございます。どの範囲まで入るかというのはちょっと難しい点がございますが、正確な数字がどうかは別として、概数でちょっと申し上げたいと思います。例えば司法書士でございますけれども約一万七千人でございます。それから、社会保険労務士が約一万八千人、行政書士が三万五千人、税理士が約七万、大体こういうような数字になります。これを合計いたしますと、弁護士が約一万六千でございますから、それを何倍かする数字であるということにはなろうかと思います。
 ただ、私どもが考えておりますのは、先ほど申し上げましたが、これから事後チェック型の社会になっていく、そういう場合に法的ニーズが非常に高まってくることになります。そこで、国民の紛争を速やかに解決する、あるいは違法な行為について的確に対処するという必要性が出てまいりますとともに、紛争が起こる前に未然に防止しなければならないという要請もますます高くなってく谷わけでございます。
 こういうような中で、隣接法律専門職種にその部分を事実上代行させれば足りるではないかという議論もないわけではございませんけれども、やはり隣接法律専門職種というものにつきましては、現行の制度を前提といたします限り、その専門職種の領域は極めて限られているわけでございます。そういう点を考えますと、総合的な法律サービスという観点からいたしますと、やはりこれは法曹が行うべき範囲である、そういうことになりますので、このような隣接法律専門職種という方が多数おられても、やはり法曹の人口をふやしていく必要性は変わらないというふうに考えております。
#12
○依田智治君 これだけ多数の隣接法律専門職種がおられるわけでございますので、やはり私は社会的ニーズにこたえるために、法曹を中心としつつ、こういう業種とも連携し、一体的な形での充実した法律サービスが提供できるということが重要じゃないかと思いますが、このあたりは何か御研究されておるでしょうか。
#13
○政府委員(山崎潮君) 最近、この隣接法律専門職種と弁護士との関係、どうしても弁護士は法的な問題につきましてはオールマイティーの領域を持っているわけでございますので、他の職種は部分的に関連をしてくるということでございますが、その領域というのですか、社会で果たす機能、この現実を見まして、もう少し隣接法律専門職種に範囲を広く認めるべきではないかという議論は大分最近行われるようになってきているということは承知しております。
 しかし、これも長い歴史がございまして、そう簡単に、議論が出たからどこかで調和ができるという事柄でもございません。我々も重大な関心を持ちながら今いろいろな検討はしております。
 それともう一つは、お互いに連係プレーでやろうという側面、これを強調いたしますと、これは確かにお客様というか依頼者のためになるわけでございます。いわゆる総合事務所の発想でございます。それぞれの専門家がそれぞれ別に店を構えているということではなくて、いわゆる総合デパートの発想でございます。一カ所に行けばすべて隣接法律専門職も共同で必要なサービスができるということで、現在、総合事務所方式について法的な問題点とその解決策について検討をせよということで、行政改革委員会のいわゆる政府の規制緩和計画にも載っております。法務省といたしましては、今年度中に鋭意結論を出していきたいということで、そういう側面では検討をしております。
#14
○依田智治君 これだけ多数の職種があるわけでございますので、総合的に検討して、社会的ニーズによりよくこたえるような制度をぜひ検討していただきたいと思います。
 さて、我が国の裁判というのは極めて長くかかり過ぎているなということ、そういうような点から裁判制度自体に問題があるのかどうか、そのあたりの研究はまた別に譲るとして、弁護士だけじゃなくて裁判官、検察官の数、先ほどお伺いした数でも、裁判官、検察官とも二千人ちょっとというようなことで、これからいろんな形での法律的な、必ずしも訴訟がふえるということはありがたい社会でもないわけですが、そういうニーズに迅速的確にこたえていくということが大変重要だ。
 そういう意味からすれば、適正迅速な裁判というわけにいかないようなケースが相当多い。オウムなんかもう何年かかるかわからぬというようなことも聞いておるわけでして、そういう点で裁判官とか検察官の数という面から見た場合に、素人的に考えると何か少ない、足りないような感じです。また、少年法の改正問題なんかでも、今いろいろな議論の中で、凶悪な犯罪を起こした少年の場合には、的確に事実をいろいろ解明していくためにはやはり検察等が事実の解明のために関与していくことが重要だというような議論もなされているわけです。
 そういう点もいろいろかんがみますと、このあたりの数というのは現在十分足りているのかどうか。もし足りないとすれば、こういう改革の中でやっぱり逐次的確な増員と教育というものをやって社会的ニーズにこたえていく必要があるんじゃないかと思いますが、このあたりについての法務省の御認識はいかがでございましょうか。
#15
○政府委員(山崎潮君) 私の立場からは検察官の問題について申し上げます。
 確かに委員御指摘のような裁判の長期化ということがいろいろ声が上がることはあるわけでございます。裁判の長期化というのはなかなか複雑な要因を持っております。多種多様のものがあるわけでございます。必ずしもどれがどうとなかなか明確に言い切ることが難しいわけでございます。
 ただ、検察官といたしましては、従来から刑事訴訟法の規定等に基づきまして事件の争点の整理を行い、的確な立証に努めているというところでございます。裁判所及び弁護人と協力して公判審理の迅速化に努めてきているところでございます。
 ただ、最近はやはり大型の汚職事件あるいは組織的な凶悪重大事件、薬害事件等、公判審理の長期化を余儀なくされる事件が相次いでいる状況にございます。その公判審理を迅速に終結させて、適正な科刑を実現するということを可能とするために、最近三年間でございますけれども、合計で百一人の検事の増員をお願いし実現してきているところでございます。
 今後も厳しい行財政事情に配意しながら、犯罪の動向やその業務量の推移等を踏まえまして適切に対処していく必要があると考えているところでございます。
#16
○依田智治君 裁判官の場合は、私の友人なんかは自宅に大量の書類を持ち込んで幾つも事件を抱えて非常に苦労しているというふうなことをよく聞くんですが、裁判が大幅におくれる理由も、やはり担当する者が非常に手薄だというようなことがあるのかどうか。この間、定員法の改正でいろいろ事務官とかその他若干増員はあったわけですが、このあたりはどのように今認識しておられるのか。
#17
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) お答えいたします。
 まず、我が国の裁判の現状の審理期間でございますが、平成八年の地裁の民事第一審の通常訴訟事件の平均審理期間といいますのは全体で十・二カ月でございます。昭和六十年以降短縮化の傾向が見られまして、約七五%の事件は一年以内に終結しているということでございます。また、刑事事件では、平成八年の地裁の刑事第一審通常事件の平均審理期間は三・二カ月というふうになっておるわけでございます。
 裁判が公平かつ適正に行われるために訴訟手続という法的な手続を踏む必要がございますので、裁判に一定の期間を要するといいますのは裁判の本質的なものでございまして、諸外国でも同程度の期間を要しておりまして、我が国の裁判は諸外国と比べてそれほど遜色のない状況にあるというふうに言えると思います。
 ただ、委員御指摘のとおり、一部の事件におきまして審理に長期間を要しているということがございます。例えば、大型の公害訴訟とか薬害訴訟、当事者の関係が多数ございまして争点も多岐にわたるという大規模な事件、あるいは専門家の証人尋問を初めとしまして膨大な証拠調べが必要になる、これに伴って訴訟関係人の訴訟準備にも多くの時間を要するというものがございます。特に民事裁判の場合は、当事者主義という訴訟構造を持つことから、審理の迅速化を図るために何よりも当事者の積極的な訴訟活動が重要になってくるということでございます。
 そういう点も踏まえまして、各方面、特に国会の御理解をいただきまして一昨年ようやく国会の御承認をいただいて新民事訴訟法を制定するに至ったわけでございまして、これが本年一月にようやく施行になりましたので、早期争点整理と集中証拠調べというものの定着を図っていきたいというふうに思うわけでございます。
 委員御指摘の、特に裁判官が忙しいかどうかということと裁判官の数の問題を若干触れさせていただきますと、平成三年以降、バブル経済崩壊、経済不況等の影響を受けまして御案内のとおり大都市部を中心に民事事件が急増いたしまして、例えば東京地裁におきますと、裁判官一人当たりの単独事件の手持ち件数が一時二百七十件から二百八十件というふうになった時期がございます。その当時は、やはり民事を担当いたしている裁判官の負担というのは相当重いという状況にございました。
 そのような事件の動向を踏まえまして、平成五年から平成九年までの過去五年間に六十四人の裁判官の増員を図って繁忙な庁に手当てをして振り向けたわけでございます。その結果、東京地裁において現在のところ裁判官一人当たりの民事通常事件の、単独事件でございますが、手持ち件数が先ほどの二百七十から二百八十といいますのが二百四十件程度に改善されておるわけでございます。
 ただ、それならそれでもう十分かといいますと、私ども十分とは考えておりませんで、大規模庁で民事を担当する裁判官の実務的な経験やこれまでの私の裁判実務の経験によっても、二百四十件というのはやはりまだ忙しい部類に入る。二百件そこそこの手持ち件数ですと相当余裕を持って事件が処理できるというふうに思うところでございます。
 今後とも、こうした大規模庁におきます民事事件担当裁判官の負担の軽減を図るためにも、事件の動向等を踏まえながら着実に増員を確保していく必要がある、かように考えている次第でございます。
#18
○依田智治君 平均的に見ると、六十年以後七五%が一年以内に裁判が終結していると。ちょっと一般的認識からするともっと相当長くかかっているなということでございましたが、改めて認識させていただいたわけです。
 ただ、やはり社会的に注目するような事件、できるだけ早期に解決が欲しいというようなのが物すごく長くかかっていて、もう世の中における認識が全くなくなって薄れちゃったころに結論が出てくるというようなのが多いものですから、ちょっとそんな認識を持ったわけですが、一人二百数十件というのは大変な数字だなという感じもいたします。ただ、数だけの問題でなくて、全体の裁判の合理化、いろいろの考えの中からより適正迅速な裁判が確保されるように努力していただく必要もあるし、我々としても認識していく必要があると思っています。
 増員の問題はこれで最後にしますが、先ほど説明がありましたが、千人とか千五百人を中期的な目標としてやっていくというようなことですが、これは何年間で倍にするとか、何かそういう具体的な目標があってやっているんですか。当面は千人、しばらくはこれで続けようというようなことなのか。そのあたりについての増員目標というのか基本的考えというのは、どういう原点に立って千五百なりなんなりの数字というのを出しているのか。いろいろ報告書等を読ませていただいても何かちょっとこの理由がないものですから、腰だめのような感じもなきにしもあらず。どういう目標でやっておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
#19
○政府委員(山崎潮君) 昨年十月に法曹三者で合意した内容につきましては、当面の現下喫緊の課題にこたえるために千人体制にするという意思決定が行われたわけでございます。来年につきましてはとりあえずはちょっと経過措置の問題がございますので八百でございますが、当面千人体制でやるということでございます。
 さらに千五百人をどうするかという問題でございます。私どもといたしましては、今後の社会の需要等を想定いたしますと、やはり千五百人に増加していくことが必要ではないかということで議論はきちっとやりたいというふうに考えております。
 法曹三者で合意されましたのは、やはり千五百人問題はまだ法曹三者で合意はできておりませんけれども、まずそれをふやすかふやさないかという前提の議論をする場合に、やはり法曹というのは社会に出まして非常に公的な仕事をいたしますし、依頼者の保護という点を考えますと、ただ人数をふやせばいいということではございませんで、やはりきちっとした教育をした上で質の高い法曹を世に送り出すということが必要になってまいるわけでございます。
 そこで、千人体制にふやしまして、修習期間も一年半になるわけでございますけれども、この修習の体制を三期分卒業生を送り出すまで、この間、本当にふやしていったときの修習の指導方法、内容等にいろいろ改善すべき点があるかどうか、あるいは受け入れ態勢がどうなっていくか、それとともに社会の法的ニーズがどういうふうに推移をするのか、こういうことを検証して、その上で千五百人問題を議論しようというふうになっているわけでございます。
 したがいまして、千五百人問題を今後検討していくということになりますけれども、もっと先の社会的需要とかニーズ、こういうものを的確につかむ方法がなかなか難しいわけでございますので、その先のことについては、現在は全く計画があるという状態ではないということでございます。
#20
○依田智治君 そうしますと、来年は八百だと、その後三年間、まず社会的ニーズ、経済界を初めその他からふやしてくれという要望も強いからとりあえず千人でやってみて、その結果を踏まえて今後どうしていくかを考えようと、こういうことですね。
 そこで、この法案の中身ですが、二年の司法研修所における修習期間を半年削って一年六カ月にするということでございますが、これもふやすために施設、教育、実務修習担当者とかその他、現実に裁判で二百件以上も一人で抱えておるような裁判官、それから検事にしたってそれに対応していくということになってくると、修習生を指導していくということはまた大変なことで限界があるんだろうと思うんですが、そんなこともあり、期間も短くせざるを得ないということで短いのか。
 いただいた調査室のつくった資料を見ますと、法曹三者の意見で、最高裁は一年間でいいんじゃないか、法務省は一年六カ月だ、日弁連は二年間は必要だと。現場で一番法律をいろいろやっている弁護士が二年必要だと言っておられる。ちょうど間をとって一年六カ月にしたというふうな感じがなきにしもあらずなんです。
 ここのところは、いろいろ経験を積んできたのでノウハウも長年の中であるから、二年間やってきた研修を前期、後期、中間の実務修習も含めて四分の一削っても十分所期の目的を達せられる、こういうようなことでこうしたとなっていますが、このあたりについての法務当局のお考えをお伺いしたいと思います。
#21
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘ございました、二年、一年、中間で一年六カ見じゃないかと、決してそういうようなことで決まったわけではございません。
 基本的には、現在の二年間の修習といいますのは、研修所の教育と現地の実務教育に分かれるわけでございます。研修所の教育は前半が四カ月、後半が四カ月というふうになっておりまして、現地の実務修習は四つやるわけでございます。弁護修習、民事裁判、刑事裁判、検察とやるわけでございますが、全部四カ月ずつで基本的には動いているわけでございます。その中で、今回の短縮については、それぞれの分野から一カ月ずつを合理化するということになるわけでございます。
 一番大きなところはやはり現地の裁判所、検察庁の受け入れの問題でございます。現在は四つの分野について四カ月ずつ行われますので、一年四カ月かかるわけでございます。それが一期分であれば構わないんですけれども、次の期の修習生がまた来るわけでございます。そうなりますと、四カ月分につきましては現地で二期分がダブるという関係になります。弁護士会の方は教える側の人数等は非常に余裕がございますので可能でございますけれども、やはり裁判所なり検察庁につきましては、二期分がダブるということは修習生をふやしていくこととの関係では非常な混乱を生ずることになります。
 特に一番大事なのは、現地の裁判官なり検察官が生の事件を通じてマンツーマン的に指導をしていく、これによってよりよく身につくという体制をとっているわけでございます。例えば裁判所でいいますと、一人の裁判官に一人の修習生という形を仮にとるといたしますと、その裁判官の数に限定されてしまいます。一人に複数という体制は現在とっておりませんので、そういう関係から受け入れの数はおのずと限定されてまいります。現在は七百名体制でぎりぎりやっているわけでございますけれども、これを千名体制にするといったときにはその受け入れの問題でまずつまずくということになります。
 我々は、質を落とさないで、その上で卒業させなければならないという命題を負っているわけでございます。そうなりますと、そこで無理をして質を落とすような形は避けるべきであろうというふうに考えたわけでございまして、そういう点から、ダブる四カ月分はどうしても今後ふやしていく上では削っていただかなければならない、これが第一点でございます。
 もう一つは、長年司法修習制度を行っているわけでございますので、研修所におきましてもいろいろな指導上のノウハウが蓄積されております。こういうものを有効に活用する、あるいは時間割りの工夫等さまざま行うということで、効果的、効率的なカリキュラムを行うことが現段階で十分できるということでございます。そういうことから、一カ月ずつ前期、後期で削っても、合理化を行えば十分その中で現在と質の変わらない修習生を育てることができるという結論に達したわけでございます。
 この点につきましては、その指導に当たります教官あるいは教官のOBという方々にもいろいろ御意見を伺いまして、それでその範囲で十分できるという確信を得たということから、一年六月に修習期間を短縮するという点につきまして提案をさせていただいた、こういうことでございます。
#22
○依田智治君 いずれにしても、今後それが千五百人になったら今の教育方式では大変だろうなということが想像されるわけですが、そのあたりはまたいろいろ司法試験プラス修習制度のあり方ということで根本的に考える必要があるんだなという感じがしております。
 そこで、法務大臣、これは基本的な問題で私つくづく感ずるんですが、我が国の司法試験というのは一般的にはやっぱり難しいという認識をしておるわけです。この資料を見ましても、最近、平成八年、九年と非常によくなって、三年以内の合格者というのが五五%くらいになってきた。ひところはもう十数%なんという時期があったんですが、それが最近は三年以内が五五%、それから四、五年の合格者が一六、七%、それ以降の六年以上という方々がそれでもまだ二八、九%という状況になっておるわけです。合格者の年齢も、最近下がってきたというものの二十六、七歳ということで、大学卒業というのはストレートにいけば二十二歳くらいですから、やはり全般に結構がかる、こういうことを感じるわけです。――私の個人的なことですが、私なんかも司法試験を受けたいなと思ってわざわざ大学の法学部に入ったんですが、運動部の方に熱中していてどうも自信がないというので警察上級に行ったわけでして、もうちょっと楽な試験だったら行ったかも知らぬ、こういう感じがしておるわけです。
 そこで、アメリカはロースクールという形で、大学卒業したらロースクールへ入って三年やって、ロースクールへ入るのはそんなに難しくはないというように聞いておるんですが、大卒なりなんなり、例えばこれから公務員が天下りなんという年になって三年くらい法律学校に入って出直して、経験を生かして活動するというためにもこういうロースクールという制度は比較的いい制度じゃないかなというような感じもするんです。試験制度のあり方として、専門家をつくるあり方として幅広くロースクールでとって、そのかわり卒業試験で厳しくやる、だれでも入っていけるというように幅広く集めるという制度は検討に値しないかと思っておるんですが、このあたりは専門家の方でどのように考えておられますか。
#23
○政府委員(山崎潮君) ただいまも申し上げましたが、千五百人問題を議論していく中で修習のあり方をどうするかということは、現在の千名体制から一・五倍になるわけでございますので、そこはきちっと議論をせざるを得ないだろうというふうに思っております。それはそのとおりでございます。
 その中でどういう案が出るかということは、今のところ余り具体的にいろいろ言われておりませんけれども、やはり典型的な考え方としてロースクール方式というのも声が上がっておるところもございます。先ほど申し上げましたように、基本的に現在の修習のあり方を維持しながら当面やっていこうということでございますので、現段階で直ちにロースクール方式をとるということは今のところ考えられませんけれども、ただ、今後やはりロースクール方式も司法試験合格者の大幅な増加をするという場合の法曹養成制度のあり方の一つとなり得るものというふうには考えております。
#24
○依田智治君 私は、直ちにこういう制度にしろということではなくて、やはり十分検討に値するんじゃないかな。その場合、一体的な考えとして手とり足とり修習するというこの制度、二年を今度一年半にするにしても、そういうことよりもまず短期間にオリエンテーション的にちょっとやって、あとはもうオン・ザ・ジョブ・トレーニングでそれぞれ現場で教育していく。
 今度の三者のいろんな意見の中にも資格取得後の教育に相当重点を置いていく必要があるというように考えられている面もありますが、弁護士、検事、裁判官それぞれについていわゆる資格取得後の教育、特に裁判官の場合は、この前、法務委員長とともに我が法務委員会で司法研修所を視察に行ったんですが、司法修習生の教育コースと別棟で裁判官教育コースというのがちゃんとあって、裁判官の場合は特に法の最後のとりでとして本当にしっかりした見識と倫理というものも要求されるわけです。そういう点で、それぞれについて現在の資格取得後の教育はどういうぐあいにやって、しかもどういう点にウエートを置いてやっているのか、検事の場合は法務総合研究所というのもあるんですが、そのあたりのかかわりをちょっと御報告いただければありがたい。
#25
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘のように、いわゆる仕事についてからの研修というのは大変重要でございます。
 検察庁について申し上げますと、検事に任官いたしまして一年間を指導期間としているわけでございます。任官当初の四月から約二カ月半でございますけれども、法務省に浦安総合センターというものがございます。そこと東京地検の双方におきまして実務訓練を含みます総合的、集中的な教育を実施しております。その後、翌年の三月までの約九カ月半でございますけれども、これにつきましては東京地検以外の各地の比較的規模の大きい地方検察庁に配置をいたしまして、現場におきます具体的な事件処理とか公判の遂行を通じましてきめ細かな実地教育と指導を行っているところでございまして、これによりまして捜査、公判に関する基本的知識あるいは技術、検事としてのあり方を体得させております。その後も日常の執務の中で上司である検事が具体的な事件処理の指導、決裁等を通じまして各検事の経験年数に応じた適切な指導、育成を行っております。
 そのほか、もう少し中堅になったときに、全部ではございませんけれども、研修を中央で行って、さまざまな特定な問題あるいはそれ以外の問題も含みまして研修等を続けて不断の努力をしております。
 ちなみに、弁護士会の方はお聞きになられたのかどうかちょっとわかりませんけれども、これは私直接体験しているわけではございませんけれども、伺っているところを若干御披露させていただきたいと思いますが、日弁連におきましてもブロック別の夏期研修とかそれから巡回研修等を行っております。また、日弁連の研修委員会の主催によって全国の研修担当者の会議等が実施されているようでございます。また、全国すべてではないようでございますけれども、単位会によっては倫理研修等も行っているようでございまして、さまざまな研修は行っております。
 また、弁護士会は、弁護士となってすぐに独立するという方は少ないわけでございまして、共同の事務所に入ってトレーニングをするという例が多いというふうに聞いておりますけれども、そういうような事務所に入りまして先輩の弁護士のいろいろ指導、助言を受けながらトレーニングをしているという実態にあるようでございます。
#26
○依田智治君 裁判所、お願いします。
#27
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) お答えいたします。
 まず、委員御指摘のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの重要性に関する認識の点からお答え申し上げます。
 戦後五十年間、司法修習生としての修習が終了いたしますと裁判官、検察官、弁護士になる資格を与える、すなわち司法修習によって完全な法曹を養成するという法曹養成制度が確立されているところでございます。そこで、私どもといたしましては、そのような水準に達した場合にはできるだけ早く法曹資格を付与し、権限と責任を伴う立場につかせ、日常執務を通じて技量を磨かせることが適当であるというふうに考えております。実務を通じての教育を充実する方が効果があるという点は委員御指摘のとおりであるというふうに考えております。
 そこで、判事補の養成の点でございますが、現在の判事補の養成の仕組みは次のとおりでございます。
 判事補任官後、最初の二年間は研さん期間と位置づけておりまして、事件の種類、内容、件数等、それから指導体制などの面を考慮いたしまして、十三の大序の裁判所に配置して研さんを積ませているところでございます。この研さん期間中は合議体における具体的事件の処理を通じて行うオン・ザ・ジョブ・トレーニングを基本としつつ、さらにこれに集合教育を組み合わせた形をとっております。そして、この研さん終了後は、全国の裁判所に配置して日常の執務の中で裁判官として必要な知識、経験を培わせることを基本としつつ、あわせて任官後三年目、六年目、十年目という節目節目に実務能力の向上のため司法研修所において合同の実務研究の機会も設けているところでございます。
 今後とも、国民の負託にこたえ得る裁判官を養成するために努力してまいりたいと考えているところでございます。
#28
○依田智治君 それぞれやはり当初の司法修習というのはほんの入り口ですから、結局オン・ザ・ジョブ・トレーニングというのは、しかも時代の変化に対応したより的確な法律のサービスが提供できる、また法の判断ができる法律家をつくっていくということが重要ですので、今後とも力を入れていただきたいと思います。
 あと十分しかなくなりましたので、選択科目の問題をちょっとお伺いします。
 今回、選択科目というものがなくなってしまったんですね。私は司法研修所へ行ったときもちょっと質問したんですが、国際化の時代に国際法は私法も公法もなくなる。これから国、地方の関係とか行政にかかわる国民のいろんなものがある時代に行政法もない。民法、商法とやはり多少違った基本原則等もある労働法もない。なくても後でしっかりやるからいいんだ、教えるからいいんだという意見もありますが、選択科目にもないとなると、大学へ入って司法試験をやろうという人は、やはり目もくれずに違う方にウエートを置いてやるから、こういう方面に疎い人が多くなるんじゃないのかな。
 しかし、法律というのは基本ができていればあとは自分で勉強すればいいんだ、こういう意見もあるわけですが、特に行政法をなくしてしまうとか、国際的な時代に国際法がない。このあたりをなくした理由と、それから視察の際に司法研修所等で十分補うからというような説明もあったわけですが、本当にできるんですか。そのあたりをちょっとお伺いしたいと思います。
#29
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘のとおり、行政法、労働法等の選択科目は廃止することを予定しております。どうしてこういうふうにしたかということでございます。
 私どもも法律選択科目が重要な科目であるということは認識はしております。ただ、これからの世の中を見ていった場合に、法曹というのはさまざまな分野で活躍をすることが求められるわけでございます。その場合に、その中心となるコアである裁判、その裁判の手続、それも民事裁判手続、刑事裁判手続、双方も一応きちっとできるという基礎があった上で広い視野を持って活動するということが必要になろうかと思います。そこの中心がぐらついたまま広がっていくというのは、必ずしも正しいあり方ではないと考えたわけでございます。
 そうなりますと、どうしても民事訴訟法と刑事訴訟法は、現在片方でいいということになっておりますけれども、これは最低限のものとして今後の社会ではきちっとやっておいていただく必要があるということで、その両訴を必須化いたしました。それ以外の必須科目が憲法、民法、刑法、商法とあります。民事訴訟法、刑事訴訟法ということになりますと六科目になるわけでございます。
 では、それを除いた現在いわば法律選択科目となっているものを加えるかということも考えたわけでございますが、やはりこれを加えることは受験生の大きな負担になるというふうに考えたわけでございます。従来からなかなか受かりにくい試験であるという御指摘もいろいろございました。そういうところから、そんなに難しくない、努力すればどうにか受かる試験であるというところに導きたいということで、法務省もいろいろ施策をしてきたわけでございます。
 その観点から、平成三年に、前に一般教養科目、政治学とか経済学とか会計学とか、そういうのがありましたけれども、その点につきましては受験生の負担になるということから科目を削除したわけでございます。そういう流れにあるところにもう一科目を加えるということは、やはり従来の流れからいって受験生の負担になるということで、やむを得ず廃止するという選択をしたわけでございます。
 もう一点、ではそれでどうするのかと。確かにこれからそういう科目も必要になってくるわけでございますけれども、私どもといたしましては、民事訴訟法、刑事訴訟法の基礎をしっかりして、その上でそこがきちっと固まれば余裕も出てくるだろう。それから、基礎をしっかりやれば応用力がかなりつくはずであるということから、研修所においてこのような選択科目につきまして修習生に目を向けてもらうということから、基礎的な情報を教える、こういうカリキュラムを予定して今回の改正案を策定したわけでございます。
 具体的な内容につきましては、司法研修所の教官会議がございますので、その中で決められていくというふうに承知しておりますけれども、私どもといたしましてもこの趣旨が生かされるように最高裁の方にもお願いしているところでございます。
#30
○依田智治君 私は、行政法、労働法、国際法、いずれも極めて重要な分野だと思います。
 これは膨大な数の法律になるわけですから、こんなものを全部教えたって意味がないわけですので、それぞれ行政法の基本、労働法の基本精神、国際法の国内法と違うところという勘どころをきちっと研修所で教えていただく、そういうカリキュラムをぜひやって、落ちのないようにひとつその点を特にお願いしておきます。
 最後に、法務大臣、きょういろいろ質問しましたが、これから国民の法的ニーズにこたえながら、適切な数の法曹人口を養成し、また質の高い法曹関係者を養成していくということが大変重要だと思います。
 今後、司法試験科目のあり方を初め、司法制度のあり方、こういうものについて法務省としての取り組んでいく決意というか考え方を最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
#31
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 今回御審議いただいております二つの法案は、法曹に直接関係の深い内容でございまして、政府委員からいろいろ説明がございましたように、法曹三者、学識経験者等々の意見も踏まえましてこのような結論に相なったわけでございます。
 いろいろ御指摘がございましたが、法曹人口がもっとふえるべきであるという議論がもともとあるわけでございますし、社会のニーズがいよいよ多くなってきているわけでございますし、またそのことも予想されるわけでございます。質の高い立派な法曹をたくさん備えることが今後の厳しい社会、特に国際化の進む社会に対応するためにどうしても必要だと思いますし、このような制度の確立を契機といたしまして、私どもといたしましては法曹の体制の充実、その健全な運営というふうなものに努めてまいりたい、このように思います。
#32
○依田智治君 終わります。
#33
○角田義一君 法案に入る前に二つほどお尋ねをしておきたいことがございます。
 まず官房長にお尋ねいたしますが、昨日の幾つかの夕刊紙に、大蔵接待に元検事と。出向中の三年間にわたって数回の接待を野村証券から受けておったことが十五日わかったということで一連の記事が載ってございます。私は、今回の大蔵汚職あるいは日銀の問題等々、検察は今の非常に難しい局面を、まさに大臣の言葉をかりれば、法と証拠に基づいてきっちり踏み込んで頑張っておるなと。国民の検察に対する期待というものは、いっとき金丸さんの二十万の罰金で地に落ちましたけれども、大分回復されておるんじゃないかというふうに高く評価しておるんですが、こういうものがぽんと出ることによって、事実関係というものをはっきり把握しないといけないんじゃないかと私は思いますが、国民の印象とすると検察官おまえもかというような印象を持たれるということが恐ろしいと私は思うんです。
 したがって、一つはこの辺の事実関係について官房長としてどういうふうに把握しておるかということはっきり申し上げて、こういうことはやっぱりまずいことですね。検察も改めて綱紀をきちっと締めるということが私は大切じゃないかというふうに思うんですが、まず官房長から事実関係についてお答えをいただき、その上で大臣から所信を聞きたいと思います。
#34
○政府委員(但木敬一君) 委員御指摘の件でございますが、東京地検から証券取引等監視委員会に出向しておりました検事が野村証券から接待を受けたことはあるというふうに認識、承知しております。
 この件につきましては、委員御指摘のとおり、本来極めて慎重な態度をとるべき検察官にかかわることでございますので、法務省といたしましてはきちっとした調査をすべきものと考えております。現在、そうした姿勢で詳細について調査を続行しているところでございます。
#35
○角田義一君 大臣の前にちょっと。
 官房長にお尋ねしますけれども、調査して、調査した後どうするかということは、これだけ世間様に出てしまったことですから、やはりきちっと世間様にそのてんまつを明らかにする必要があると私は思うんです。これを調査してほっかぶりするというんじゃなくて、やっぱりそこはきちっと世間様に明らかにする必要がある。それがかえって検察の信頼を取り戻すことになると私は思うんです。
#36
○政府委員(但木敬一君) 委員御指摘のとおり、検察に対する信頼というのは極めて重要な問題でございますので、調査の結果、法務当局がこれに対してどういうスタンスを持って考えたか、また、どのような対応をするか、これにつきまして国民の批判にたえられる対応をとりたいというふうに思っております。
#37
○角田義一君 大臣、一言。
#38
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 昨年来、総会屋問題から始まりまして金融関係あるいは大蔵関係、日銀関係、いろいろ検察が地道に仕事を進めて今日まで来たわけでございます。私は、検察を信頼しているということをかねがね申しておりました。それと同時に、こういうふうな段階になればなるだけ国民の検察に対する信頼というのは非常に期待が高くなる。それだけに自粛自戒して厳しく、そして仕事は淡々と、それこそ法と証拠に基づいて仕事をやってほしいというふうなことをかねがね申し上げておりますし、またそういうような気持ちでなければならぬ、このように思います。
 このような報道がなされまして、今官房長から説明いたしましたが、大変遺憾なことでございます。事実関係をひとつはっきりして、それなりのけじめはつけなきゃいけない、このように思います。
#39
○角田義一君 刑事局長にお尋ねいたします。
 けさの新聞を見て私もびっくり仰天したんですけれども、「大蔵上層部六人、大手銀が接待 金融部門の要職歴任」ということで、六名のいわば大蔵省の高級官僚が、びっくりするようなことですね。名前はちょっと言うのもかわいそうだから言いませんけれども、ある人は接待額が六百八十万円で接待回数百八十回、ある審議官は接待額五百万円で七十回、ある局長は四百七十万円で百三十回、ある参事官は四百二十万円、百五十回、あと二人、三百七十万円、百三十回。五年間ですけれども、金額も金額であるし、第一、回数がたまげるような、仮に五年間で百八十回というと一年間で三十回、一月三回ぐらいお世話になっているという勘定です。
 これは検察当局とすると、こういう記事が出て、まず聞きたいのはこの記事に関心を持つか持たないかということだ。検察当局、どうですか。
#40
○政府委員(原田明夫君) 検察当局におきましては、一運の捜査と申しますかさまざまな検察活動を行っている場合に、さまざまな報道をなされ、また広く論議されているということについては、検察当局としての関心は当然持ちながら仕事をやるということはあることであると考えております。
#41
○角田義一君 この記事がどこから出たかという問題はさておいて、私は検察から出たとは思わないので、今大蔵が一生懸命内部調査をやっているのでそのあたりから出たのかどうかわかりませんが、出どころはここで詮索しません。
 しかし、この金額は逮捕され起訴された人たちの金額とは余り変わらない。ただ問題は、果たしてそれが刑事事件として成り立つか成り立たないか、職務権限との関係とか、いろいろ微妙な難しい問題があると思うんです。しかし、私は、検察はこれだけのことが世間に、表に出た以上、無関心でほっかぶりはできないと思うんです。これに対して果たして刑事的に成立するかしないか、やっぱりこれはきちっとやるべきことはやらないと、うやむやのうちにこれが葬り去られたということでは、ここまでやってきた検察の努力というものが九仞の功を一簣に欠くということになりはしないかというふうに思うんですが、刑事局長、どう思いますか。
#42
○政府委員(原田明夫君) 一般論ということで申し上げることをお許しいただければと存じますが、検察は報道があるなしにかかわりませず、一連の事象につきまして、事実関係を証拠に基づいて確定した上で、法に基づきこれを取り上げるべきであるというふうに考えるものについては従来から適切に対応してきたと思いますし、今後ともそれらについてはそのような立場から適正に対応していくものと考えております。
#43
○角田義一君 ここまででしょう、こっちが聞くこともあなたが答えることも。しっかり国民の期待に沿うようにやってくださいということだけお願いして、局長どうぞ、結構です。
 それで、今回の法律の問題について入ってまいりたいと思いますが、まず司法試験の科目の問題でありますけれども、先ほど依田先生からもお尋ねがございました。民事訴訟法、刑事訴訟法はかつては選択になっておりました。これが両方とも必須科目になる。私は、先ほどの山崎さんのお答えと同感なんですけれども、やっぱり法曹として一人前になっていくためには刑訴、民訴の手続、実体法だけわかっておってもしようがないんですよ、実体法が現実にどういうふうになっていくかということで手続法というのは猛烈に大事だと私は思います。
 それから、手続法は手続法の立派な法理のもとにあるわけで、そこのところの勉強をきちっとして両方とも必須科目にしたということは、私はそれはそれで非常に結構なことだというふうに思っております。ただ、それによって受験生の負担が重くなるんじゃないかというような意見も一方ではあるわけでありまして、その辺はどのように考えていますか。
#44
○政府委員(山崎潮君) 私の経験でも、訴訟法はややなじみにくいところがある、勉強したての者についてはそういう感があるということは否定できないと思います。これが二つになるということで、その負担は必ずしも軽いとは言えないかもしれません。ただ、ここで両訴をきちっとやっていただくという意味は、両者をやることによって共通する部分もあるわけでございますので、非常に理解がしやすくなるという面が一つございます。
 それから、民訴、刑訴で手続が全然違う場面もかなりあるわけでございますが、それはそれぞれの特質を踏まえてやっていることでございまして、そうなりますとその双方を比較することによってどうして違うのかというところの理解もよりよくできるようになるということから、若干の努力はしていただかなければならないと思いますけれども、将来にとっては大変にいいことだという理解をしているところでございます。
#45
○角田義一君 先ほど依田先生からもお尋ねがありましたけれども、選択科目を全部なくしてしまったということについては、特に大学教授の皆さんの意見というのは非常に厳しい御批判が多いように思われます。
 私どもの調査室でつくってくれた「法案に対する意見等」というのを見ますると、例を挙げて恐縮でございますけれども、例えば平成十年二月十七日の朝日新聞の「論壇」に、阿部先生は、神戸大学の教授ですけれども、行政法についてこう言っておられます。幾つかありますけれども、「司法試験で行政法を廃止すれば、裁判官、弁護士と、国の行政官との知識経験の差は格段に大きくなる。行政法は」「民事法とは原理を異にするため、法曹になってからでは、簡単には修得できない。行政法に精通した法曹はますます減少し、行政訴訟の提起数も減って、行政法を学ぶ法曹が一層減少するという悪循環に陥る。」。
 こういうことで、しかも例を挙げてこう言っています。「日本の行政は、行政指導、裁量行政にも見られるように不透明であり、しばしば恣意的でもあった。それなのに、行政を監視するための行政訴訟は先進国と比較して非常に少ない。例えば、人口比に換算するとドイツの三百五十分の一にすぎず、しかも原告勝訴率が低いため「行政訴訟はやるだけムダ」」、こういう現状だと。それから、国側は多くの立法作業に携わっておるから、「国側の代理人である法務省訟務局の検事が非常に詳しい。」。必ずしも弁護士や裁判官は精通していない。
 こういう形で、裁判所が最終的にはやっぱり行政のチェックもしなきゃならぬ面もある。国会もしなきゃなりませんけれども、国会は国会でのやり方があるけれども、国民の権利をもし行政が侵した場合に、個々具体的にそれを救済するのはやっぱり最終的には裁判所だということをいろいろ考えたときに、この行政法というものがなくなる。
 さらに、連合の方からも、ちょっと後でしますけれども、労働法も選択科目から削られる。労働法というのは、もう釈迦に説法ですけれども、全然また違った法理で、この前も予算委員会で伊吹労働大臣が共産党のたしか吉川先生に大分やられていました。僕は、あの程度の認識の労働大臣じゃ困る、あの程度の認識しか持ってない労働大臣じゃ、これはとてもじゃないけれども。労働法というのはやっぱり全然違う。この資本主義社会の中で、釈迦に説法ですけれども、ほっておけばもう弱肉強食になって弱者はどんどんいじめられるわけで、それを労働者が団結して資本家と闘うわけですから、全然法理が違うわけですよ、民法の単純な契約とは違うんです。
 変な話だけれどもそういう労働法の魂というようなものをきちっと学校で教えてもらわぬといけない。これは教えて、しかも司法試験で選択科目としてあることによって、私は労働事件を担当する立派な裁判官あるいは弁護士、そういうようなものができてぐると思うんです。これまた全部切られると。それから、今日の倒産がたくさんある中で破産法もなくなってくる。さらに、オウム事件のようないろいろな難しい刑事事件がいっぱい出てくるときに刑事政策もない。
 こういう形になりますと、確かに法曹三者でまとめて、いろいろ意見を聞いて、そしてこれはもう全部廃止してしまって民訴と刑訴だけでいいと。これはプロ集団としては私はそれでもいいように思うんです。私もプロ集団の一人ですけれども、例えば国会議員という立場で学者さんの意見を聞くともっともだなという感じも強いんですよ。本当にこれは全部を外してしまっていいのかなという懸念を私は持っている。
 弁護士の一員としては三者で協議したから賛成しないわけにいかないかもしれないけれども、国会議員とすると必ずしも簡単に賛成できないんじゃないかというように一晩考えて思ったぐらい、やっぱりこの選択科目を全部廃止したというのは私は深刻な問題を提起していると思うんですけれども、どうですか、山崎さんもう一遍。
#46
○政府委員(山崎潮君) ただいま委員御指摘のように、学者からさまざまな指摘があるということは重々承知しております。いろいろ御指摘はございます。私どもも、行政法、労働法、国際関係の法律あるいは刑事政策、これが大事だということは認識はしております。
 それで、それじゃどこでどういうふうにそのものを理解していくかという役割の問題にまず一つ基本的にはなるんだろうと思います。確かに、司法試験の選択科目から外すということになると、それだけ勉強をしない人、その科目をやらない人が出てくるということにはなるんですけれども、ただ、大部分の人たちは法学部から司法試験を受けているわけですので、法学部を卒業するためには司法試験の科目にあるものだけをやっているだけでは卒業できないわけですので、そういう意味では多くの法律について接するチャンスがあるわけでございます。
 大学の方も司法試験にあるからということではなくて、まず大学の方の努力としても、そういうことに魅力のある授業にしていただきたいという点がまず第一点ございます。
 それから、今回のものにつきましては、先ほどやむを得ず法律選択科目を廃止したということを申し上げました。それにかわる措置といたしまして、研修所で民事訴訟法、刑事訴訟法の基礎を万全にした上、精神的余裕を持ちながらそこで基本的情報を教えていくということを申し上げているわけでございます。
 私は長年この立法作業に関係しておりますけれども、知らない法律の問題をしょっちゅう問われるわけでございますが、それはかなり種類が違うものであっても、基本的な考え方を少しそこから応用していく、視点をのみ込みながら変えていくということでかなりのものは対処できるというふうに思っているわけでございまして、そういう点は私は共通するものではないかというふうに考えているところでございます。
 また、それぞれ試験科目を受けますけれども、受ける人たちはそれを選択いたしますからごく一部になるわけでございますが、これを研修所で情報提供をきちっとやることになりますと、合格をいたしました千人なら千人が全員聞くということになるわけでございますので、かえって私は輪は広がるというふうに理解をしております。
 それから、先ほどの新聞記事で言われております行政法の関係でございますけれども、裁判官が行政法に弱くなるという御指摘もございます。
 しかし、現実に裁判の現場を見ておりますと、行政訴訟をやる人が必ずしも司法試験で行政法をとっているとは限りません。とっていない人の方が多いのかもしれません。しかしながら、実務について、その事件について誠心誠意やっていくという中で相当な力をつけて適切な裁判を行っているという現状にございます。
 ですから、司法試験の科目を廃止したということは非常に残念ではございますけれども、それがすべてだという形ではないのではないかというふうに理解はしております。
#47
○角田義一君 その問題をもうちょっと議論したいんですけれども、この調査室でつくってくれた資料を見ると、これもちょっとびっくりしたんだけれども、青山という東京大学の教授の「ジュリスト」に載っている論文の最後の方に、今度の司法試験のいわば選択科目をなくすことについて、大学の法学部の意見を正式に聞いていない、手続上の問題が大きい、前回の例の財政法とか政治学とかというのをなくしたときよりも一層大学教育に深刻な影響をもたらす改正であるのに、どの大学もこの意見照会を受けていないと。それから、前は基本的合意を受けて法制審議会で司法制度部会が設けられて、そこで大学関係者の意見を聞く場が設けられたのに、今回はそれもなかった、不意打ちだと。激しく反発しているのは、内容のほかに手続によるところが大きい、そのことを法案提出当局が理解すべきである、こう書いてある。
 これを見て、私もプロ集団の一人であるけれども、プロ集団、三者がちょっとおごったのではないかなと率直に私は反省しているんです。こういうことを言うのは、国会しか言うところがないからあえてこれは言わせてもらう。
 やっぱり手続というのは本当に大事なんですね、手続論というのは。本当に大事なんですよ。内容がよければあんなものはどうせ聞かなくていいという問題じゃないんだ。そんな乱暴なことを言っちゃだめなんだ。丁寧にここまでやっぱりきちっとやらなきゃいけなかったんじゃないですか。
 ことしの受験生から今言った必須科目に全部してやらなきゃならぬという切迫したあれはないんじゃないのか。要するに、大学の先生の意見を十分聞いて、それから今あなたが言っているようないろいろなアイデアを取り入れるということを正式な場で合意を得ながら、なくすならなくすという非常に丁寧な手続をやっぱりやらなきゃいけなかったんじゃないですか。これはどうですか。
#48
○政府委員(山崎潮君) ただいまのような御批判があることを承知しております。そういう主張からいえば、十分であったかと言われると、必ずしもそうではなかったという感はいたします。
 ただ、これにはいろいろ道行きがございますので、若干御説明をさせていただきたいと思いますが、この問題につきましては、先ほども申し上げましたが、平成三年から設けられました法曹養成制度等改革協議会というものがございます。これは四年半ぐらいにわたって行われたものですが、この中で、法曹人口をふやしていくという関係の小委員会と、それから試験制度をどうするかという小委員会、二つに分かれまして相当な激論をしたわけでございます。実は行政法の学者、それから労働法の学者もその委員の中に入っております。
 それで、長年議論をしたわけでございますけれども、もちろんそれを廃止していいのかという意見もございました。ゼロだということではございませんけれども、多数の意見はやはり廃止するのもやむなしという結論であったわけでございます。
 こういう議論を踏まえて、改革協の意見書につきましては、民事訴訟法と刑事訴訟法を必須化しろということが主題に挙がっております。その理由の中で、やはり法律選択科目を廃止していくということが多数意見であったということも記載されております。
 それで、この改革協のメンバーにつきましては、こういう学者だけではございませんで、もちろん経済界の人、マスコミの人、それから行政法、労働法以外の学者の方とか、そのほか有識者を集めて議論したわけでございます。
 そういう中で、私どもとしては、もうそういう主題は上っていて十分議論はした、その延長線上で三者協を持ったわけでございます。三者協の中でも、途中で法務省の中間案とか、マスコミの記事等がなり出ていたわけでございまして、この論点については十分周知しているというふうに理解をしておりました。
 また、司法試験の運用の関係の司法試験管理委員会の中で制度の運用をする小委員会がございますが、その中でもこの議論をずっと続けておりまして、それから個別には大学の先生方にも意見を聴取して、やむなしという大体結論を得ていたわけでございます。
 それで、この問題が法曹三者で合意された後も、司法試験の考査委員会が開かれまして、そこで法務当局からこの法律選択科目が廃止されるということも報告しております。しかし、その段階で何も御意見はなかったという状況でございまして、私どもとしましては、長年議論を行って、それである程度御理解は得ているという心証がございましたので、こういうような選択をして法案として御提出をさせていただいた、こういう経緯にございます。
#49
○角田義一君 道筋はそれなりの理解はしましたけれども、別に東京大学が偉いと思わないけれども、東京大学を出た人が悪いことばかりをこのごろするから、私は一遍東京大学の総長を国会へ呼んで、どういう教育をしているのか聞いてみたいと思うけれども、それはこっちにおいて、いずれにしてもこの先生が「ジュリスト」にこういうことを提起しているわけです。これはやっぱり私どもとすれば、一体実際はどうだったのかということと、それから少なくともこういう批判を受けない程度のオープンな、例えば各大学にアンケートを全部とって集約してみるとか、いろいろな工夫をやった上ですべきではなかったかとは思うんですよ。万全とはやっぱり山崎さんも言えないだろう、開き直るほどのことでもないだろう、どうですか。
#50
○政府委員(山崎潮君) 確かに御指摘の点、もう一度改めてやるという選択をやれば万全であったというふうには私は今思っておりますけれども、この関係では私どもとしては実質上ほとんどその声がなかったというのが正しいところでございまして、やはり理解が得られているというふうに思ったわけでございます。
 ただ、今後またこういう問題、いずれこの法曹養成問題、試験を含めたいろんな問題が法曹に課せられてくるとは思います。そういう議論をするときにこのようなことのないように我々としても細心の注意を払って、手続はきちっと履践してやっていきたいというふうに反省はしております。
#51
○角田義一君 この問題について一言最後に要望しておきますけれども、先ほど依田先生からもお話があったとおり、行政法、労働法、刑事政策、破産等は非常に法曹として大事な勉強科目でもあるし、広く一般的なものを認識しておく必要があると私は思うんです。したがって、研修所へ入ったら、これは最高裁の方になると思うんだけれども、その辺をよく心得てきちっとやっていただきたいと思いますが、どうですか。
#52
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 法曹三者では、社会に対する広い視野を持ち、高い見識と柔軟な思考力を備えた二十一世紀を担うにふさわしい法曹を養成するために、司法修習の内容及び方法について工夫と配慮を行うということで合意いたしまして、司法研修所における前期修習及び後期修習において現実の社会に存在する多様な法的ニーズについての基本的情報を提供するということも合意の内容になっております。
 そこで、この合意の趣旨を踏まえまして、司法修習生に対しまして労働法関係をも含め多様な法的ニーズについての基本的情報を提供するため、充実したカリキュラムを組むべく、現在、司法研修所の裁判官教官、検察官教官及び弁護士教官から成る教官会議で検討中でございます。
 なお、一言御説明させていただきますと、現在、司法修習生のうち両訴訟法を選択している者は一割程度にすぎません。過去においては数%、二、三十人というときがありました、両訴訟法を受けた者は。そういう実情にございますので、現在、九割程度の司法修習生に対しては、司法試験において選択しなかった訴訟科目について合格者と同程度のレベルにまで引き上げるための補習というものをやっているのが実情でございます。
 こういう手当てを講じているわけでありますが、両訴訟法を必須化いたしますと、こうした時間を、現実の社会に存在する多様な法的ニーズについての基本的情報を提供し、または法曹としての識見、法曹倫理等の修得を図るようなカリキュラムに振り分けることができるということは御理解いただきたいと思います。
 なお、労働法、行政法の関係でも、これを選択して合格した人は毎年六、七%、数十人です。それ以外の人は要するに司法試験は受けていないで研修所に来ておりますが、こういう人たちは今までは大学教育なり司法修習なりあるいは実務についてからの段階でそうした分野に関する知識を修得するために努力していたというのが実情でございます。今度は法曹になる人全員について少なくとも基本的な点は修得していただこう、この方がむしろ国民の負託にこたえることになるのではないかと考えているところでございます。
#53
○角田義一君 次の問題に移りますけれども、今度の裁判所法の一部を改正する法律案を見ますると、いわば実務修習といいましょうか司法研修所のもとで教育を受けるのが二年から一年半に短縮されるわけですね。これは大問題だったと思います。
 私は、原則論を言えば、やっぱり二年というものは維持すべきだというふうに思います。二年が一年半になったのが財政的な事情、金がかかるということが最大の理由でもしこうなったとすれば、私はゆゆしいことだと思うんです。
 これは最高裁判所も検察庁もあるいは弁護士会も挙げて三者がやっぱり必要な予算獲得のために熾烈な運動をしなきゃいけませんよ。余り私はそれを聞かないな、言っちゃ悪いが、二年を維持したいから金をいっぱい頑張ってとってくれというようなことを。大体法務というのは族議員がいない非常に高尚な委員会ですからと思うかもしれぬけれども。
 それはどうなんですか、ざっくばらんなところ。財政的な理由で二年が一年半になったというんだったら、これは私はゆゆしい問題だと思います。そういう認識でやられたんじゃたまらないなと思うんだけれども、どうですか。
#54
○政府委員(山崎潮君) 法務の方からお答えするのが適当なのかどうか、これは裁判所の予算でございますので、一応のことをお答えしてから最高裁の方にお答えいただきたいと思いますが、この三者協におきましてもそういう視点から議論をした記憶は全くございません。
 やはり大量の修習生、合格者をふやしていかなければならない、それが従来からずっと課題であったわけでございまして、もとをただせばもう十年以上議論をしてきたわけでございます。ますます法的ニーズが高まっている中で、法曹としてとにかく早く多くの法律家を輩出しなければならない、そういうときにどうするかという点からかなり議論をしたわけでございまして、先ほども申し上げたかもしれませんけれども、やはりその質を落とすわけにはいかぬ。やはり実務修習でマンツーマンシステムを守りながらどうやって多くの人たちを受け入れられるか、そういう観点から検討していった結果、実務修習時において二期分ダブるということでございます。これが大変大きな問題になるわけでございまして、マンツーマンシステムを守りながら二期分を受けるということは現在の体制の中ではなかなか難しい。
 体制というのは、もちろん物的な問題もございますが、教える側もただ裁判官であればだれでもいいというわけにはまいりません。ある程度指導力を持った者がきちっとやらなきゃいかぬわけでございますので、そうなりますと、日常いろいろ業務をやっているわけでございます。そういう中でどれだけきちっと手が割けるかという問題にもなります。それから、検察庁にいたしましても同じでございまして、やはり指導官として教育をするということについてはそれなりの中堅の資質の高い検察官に教えてもらわなきゃならぬわけでございます。そういう点を考えますと、やっぱり教え手の体制、これもすぐにはたくさんの者を育て上げるというのは難しいわけです。
 しかしながら、現下喫緊の課題としてふやさざるを得ない。その点、両者を満たすという政策を非常に悩んだわけでございますけれども、そのためにはどうしてもやはり実務修習のダブりの四カ月間は減らさざるを得ない、こういう結論に達したわけでございます。
 あと、前後期の修習につきましては、先ほど最高裁の方からも御答弁がありましたけれども、いろいろな合理化、それから両訴必須でなかった状況でかなりほかのところにエネルギーを使っていた、そういうものは減ってくる。そういうような合理化を図れば、前後期一カ月ずつ短縮してもその中で十分新しい理念を教えていくことができる、こういう結論に達したわけでございます。
#55
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 私どもといたしましては、司法修習生の養成をして、国民の負託にこたえ得る法曹のレベルに持っていくということが一番重要であるというふうに考えていたところでございまして、そこで法曹三者で協議いたしました結果、これまでの指導上のノウハウの活用でありますとか時間割り編成の工夫等をいたしますと効果的、効率的なカリキュラムを編成することも可能になりまして、一年六カ月の修習期間で十分国民の負託にこたえ得る水準を充足する法曹を養成することが可能であるという結論に達して、一年六カ月実を提案しているところございます。
 最高裁判所といたしましては、法曹養成のために必要であるということであれば、予算について十分要求していきたいという基本的な姿勢を持っているところでございます。今回の一年六カ月実に至った原因が財政上の理由ではないということを申し上げたいと思います。
#56
○角田義一君 建前としては素直に聞かなくてはならないのかなという気持ちもしますが、私は必ずしもそうではないんじゃないかという気もします。
 そこでお尋ねしますけれども、今まで二年でやっていたものを一年六カ月でやるわけですから、局長は今までのノウハウを活用すれば一年六カ月で十分だという御答弁のようだが、それではその半年というものの埋め合わせということを法曹三者は何も考えないわけですか。やっぱりしかるべき方策を考えているんじゃないんですか、半年間短縮されたことを補うものを。もう今は一年六カ月で全部やってしまうから何もやらないんだと、弁護士会もやることないし、裁判官がやることもない、検察官も何もやることがないというふうにドライに割り切ってしまっていいんでしょうか。それとも、それは一つの課題として三者協の中では出ているんじゃないんですか、どうなんでしょうか。
#57
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 法曹にとりましては、国民の負託にこたえるために日々研さんが必要でありまして、一年六カ月の修習が終わった後での継続教育の重要性ということは三者協議でも合意されているところでありまして、その点はこれからも法曹三者が力を入れていかなければならない問題であるというふうに認識しているところでございます。
#58
○角田義一君 法曹三者でその辺の問題についてはよく協議していただきたいというふうに思います。
 それから、この法案が通って、ことしの五月からやられる試験は合格者を何人ぐらい予定しているんですか。
#59
○政府委員(山崎潮君) ことし五月十日に短答式の試験が実施される予定でございますが、最終的には司法試験管理委員会で決まることになりますけれども、予定といたしましては約八百人程度を予定しております。
#60
○角田義一君 丙案、丙案と世間で言うのは、弁護士会が丙案と言っているので、正式には別枠と言うんですか、その辺のシステムを簡単に説明してください。
#61
○政府委員(山崎潮君) 正式には合格枠制と言っております。
 この導入につきましては、平成三年の法律改正で制度としては導入されました。法曹三者の合意に基づきまして、ある一定の基準値を設けまして、初回受験から三回以内あるいは五回以内の合格者がどの程度の水準に達するかということを五年間検証しようということでございまして、五年間検証を経たわけでございます。
 しかしながら、初回から三回以内、五回以内の合格者の伸びが合意した基準値に達しないということから、合格枠制につきまして、制度としてはできていたわけですけれども、検証を経ていたわけでございまして、検証の結果、その合意の基準に達しないということから今度実施をされたわけでございます。
 この実施をされましたのが平成八年度の試験と平成九年度の試験の二回でございます。この結果につきましては、例えば一番受験回数が多かった平成元年でございますけれども、これですと六・六六年がかかっているということでございましたけれども、平成八年、九年、この二年間のデータによりますと、平成八年度が四・五二年、平成九年につきましては四・四二年ということで、その受験回数に相当改善が見られる、そういう効果があらわれているわけでございます。
 そして、この両者の試験の結果を総合して考えますと、合格枠制を導入したことによりまして優秀な人材が従来以上に司法試験を目指すという効果があらわれて、初回受験から三回、五回の人たちの合格のパーセンテージもかなり上がってきているわけでございます。これは合格枠制以外に一般枠があるわけでございますが、この一般枠の中の初回受験から三回以内、五回以内の人たちのパーセンテージも上がってきているという状況でございまして、やはり受かりやすい、昔ほど最難関の試験ではなくなったというイメージが浸透いたしまして、優秀な人材がかなり受けるようになってきたという効果があろうかと思います。そういう相乗効果があろうと思います。
 また、申請者の数を見ましても、その丙案を導入して二万五千人台から二万七千人台に上りまして、ことしは三万人を突破するという状況にございまして、非常に多数の受験者あるいは大学がこの合格枠制について積極的な評価をしているという状況にございます。
#62
○角田義一君 調査室でつくってくれた資料を見ますると、平成八年では三年以内と四、五年以内を加えた人が七〇%近くになっていますね。それから、平成九年もやっぱり七〇%を超えているんじゃないんですか。
 こういうふうになってきますと、その制度が定着してきたと言えば言えるのかもしれませんが、いずれにしても、別枠であれ、通常であれ、これだけ改善をしてくるということになると丙案というものをいつまでもやっていていいのかどうかという問題が当然出てくるでしょう、問われてくるでしょう。こういうある程度実績を見てくれば、そろそろ廃止してもいいんじゃないのかなというような議論が当然出てくると思うんですね。ここら辺はどうなるんですか。
#63
○政府委員(山崎潮君) 今、データの御紹介がございました。確かにそういうような効果があらわれていることは間違いございません。この点につきまして日弁連の方から、そういう効果があらわれているならばもう廃止をしたらどうかという提言があったということも事実でございます。
 これにつきまして、私どもの考え方でございますけれども、この二年の様子を見ておりますと確かにそういう効果があらわれているわけでございますが、ただ、これを直ちに廃止するということになったときに本当にそれで大丈夫かというところまでのデータがあるわけではございません。やはり一年、二年を見た段階で、そのときのいろいろな諸条件、要素が入り込みますので、それでかなりデータというのは動くわけでございます。やはり何年かきちっと見て安定的な数字が得られるかどうかが一つポイントになるわけでございます。私どもといたしましては、これを二回やったという程度ではなかなか安定的なデータがあって将来の予測が可能であるというふうにはとても言えない状況でございます。
 それからまた、一たん導入した制度、これはもちろん日弁連も含めました法曹三者で合意したものでございますが、これを導入して一年や二年でやめる、こういうようなことはやはり受験生にも非常に影響を与えることでございますので、それを直ちに改廃するということはできないというふうに考えているところでございます。
 ただ、この問題につきましては、丙案を導入しまして五年間、平成十二年までのデータをいろいろ検証して、その後に法曹三者でこの問題を、合格枠制について存続をさせるかあるいは廃止をするか、別の方法をとるか、これを議論しましょうという約束にもともとなっておりました。
 しかし、今回この三者協議会を通じまして、日弁連からの強い御要望もございまして、平成十二年の結果を見るというところまで待つのではなくて、また本年度も試験が行われますので、速やかにまたそういうデータをお互いにきちっと分析しながら今からでも議論を続けていこうということで私どもも了承いたしまして、即時廃止ということではなくて、お互いに議論はきちっとやっていきましょうということで合意したわけでございます。これで一応日弁連の方も納得していただいた、こういう経緯にございます。
#64
○角田義一君 三回以内に合格、別枠という制度、それなりの理由もあるんだと思いますけれども、逆に受験生の方とすると、三回で受かってしまいたいからといって、すぐに受けないである程度の実力をつけてそろそろ受かるかなというところから始めるというような人も出てくるわけでしょう。あるいは予備校でも、これ今見ているとすごい予備校があるんだね。それもそのような指導というか、サジェスチョンをしながらやっているということですから、これで全部この制度が万々歳というわけでもないので、いろいろ問題点もやっぱりあるということを認識しているんですか。その辺どうですか。
#65
○政府委員(山崎潮君) ただいまのような受け控え現象ですか、そういうようなことがあるやにも私どもも聞いております。実態のほどは正確にどうかということはちょっと承知はしておりませんけれども、いろいろな御指摘もございまして、私どもとしても、本当に何回も何回も長年受験をしないでもある程度努力をすれば受かるような試験にするためにはどうするかということは真剣に考えていかざるを得ないとは思っております。
 現在、こういう合格枠制というものを設けているわけでございますけれども、それは大もとの議論に立ち返れば、これは法務省が今直ちにそれを考えているというわけではございませんが、この合格枠制を導入する折にも別途の考え方も提唱されたわけでございます。世界の各国でも受験の回数の制限、五回とか二回とか三回とか、ほとんどの試験で導入しておりますけれども、そういうものをあるいは導入したらどうなのかとか、さまざまな議論をせざるを得ないことになろうかと私どもも思っております。
 ですから、この合格枠制がベストであるというふうに考えているわけではございません。もともと導入するときも、抜本的な解決は将来に託して、現在の状況をとにかく早く解決しなきゃいかぬということで緊急的に導入されたという位置づけでございますので、また将来いろいろな御批判があろうかと思いますけれども、それはきちっと検討していきたいというふうに考えております。
#66
○角田義一君 最後に大臣に一言お尋ねしますけれども、今までの議論を大臣も聞いておられていろいろ感ずるところがあると思うんですが、二十一世紀もあと二年かそこらで、しかも時代も変わり世間も変わるという中で、当然、法曹に求められる素質なりは違うと思いますけれども、ただ、私ははっきり申し上げますけれども、財界が求めているような法を武器に闘えばいいというだけではないのであって、裁判官にしろ検事にしろ、あるいは弁護士にしろ、やっぱり基本的には正義をきちっと愛し、しかも人権をきちっと擁護する、権力の横暴に対してはきちっとチェックする、こういう一番基本的な気概を持ってもらわなきゃいけないだろうというふうに私は思うんです。
 それは、裁判官であれ、検事であれ、弁護士であれ、そういった一番肝心なところ、きのうのイタリアの大統領の演説にもありましたけれども、弱い者とかあるいは人権がじゅうりんされる者とか、そういうことに立ち向かっていく気概というものをきちっと持つ、そういう法曹を育てていかなきゃ私はいけないんじゃないか。単なる技術屋じゃない、しっかりとした魂を持った者をつくり上げる、これがやっぱり大事だというふうに私どもは思っております。
 そのためにはどうしたらいいか、この制度でいいと私は思っていません。もっと本質的、根本的なやっぱり改革をして法曹の養成ということを考えなきゃいけないんじゃないかという気持ちを持っているんですけれども、大臣、いかがですか。そのことについてお尋ねして終わります。
#67
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 御指摘のように、法曹というものはやはり社会正義を実現するということが基本でございます。私も法秩序の維持と国民の権利の保全ということを申しておりますけれども、その言葉の裏にはやはり世のため人のためということがあるのだろうと思いますし、社会正義の実現ということだろうと思いますし、法曹もそれに向けて進まなければならない、このように思います。
 一応の現状、それから展望ということから申し上げますと、国際化がどんどん進んでいくということに相なろうかと思います。それから規制緩和が進む、結局自己責任というふうなことになります。そういうふうなことになりますと、刑事的にも民事的にも私は法曹のニーズというのはふえてくると思います。それにどういうふうに対応するかということで、現状を見ますと、大変言葉は悪いんですけれども、法曹というものが国民の近いところにない、非常に遠いところにある。
 一つの例を申し上げますと、三千三百市町村がございますが、私もびっくりしたんですが、弁護士さんが一人もいらっしゃらない市町村というのが二千八百以上あるんです。これで果たしてどうなんだろうかというふうな感じがします。それは裁判所のあるところ、お仕事のあるところというふうなところに集中されている。ところが、その二千八百の市町村の人たちが相談しようと思っても司法というものが身近にない、やはり法曹人口をふやさなきゃならないという一つの要素もその辺のところにも私はあると思うんです。だから、国民に身近に司法、法曹というものを感じていただくような施策というものを一つの大きな柱として考えなきゃいけない。
 それからもう一つの問題は、弁護士さんなりなんなりに頼めば幾らお金を取られるんだろうかと、そういうふうな不安というものがございます。だから、その辺のところをもっと透明性、それからクリアにする、片やそういうふうな側面に法律扶助の問題が出てくると思うんです。その辺のところをやはり我々としては突き詰めていかなければならない。
 それからもう一つは、法曹三者の問題でございますが、何といってもやっぱり裁判が長いというのが国民の感情だろうと思うんです。裁判に頼めばお金はかかるし期間がかかる、それよりももっと手っ取り早く何とか解決する方法があるんじゃなかろうかというふうなところに総会屋が介在したり暴力団が介在したりする。
 だから、そういうふうなことのない社会、今遠くて高くて長いということを申し上げましたが、逆に言うと近くて安くて短いということになろうかと思うんです。その辺のところを目指すのが私は法曹のあるべき姿だと思いますし、その一環として今回のこういうふうな改正をお願いしているというふうなことで、微力でございますが、みんな気持ちを合わせて、今申し上げました国民のためになる社会正義を実現するということを基礎にした法曹の確立に一生懸命努力してまいりたい、このように思います。
#68
○角田義一君 終わります。
#69
○委員長(武田節子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   正午休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#70
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、裁判所法の一部を改正する法律案及び司法試験法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#71
○大森礼子君 公明の大森礼子です。
 質問いたします。まず最初に、検察庁、法務省の方にお尋ねいたします。
 今回の改正案の流れのもとになった法曹養成制度改革というのは、昭和六十二年四月に法務省が法曹基本問題懇談会を発足させたことから始まっていると認識しております。それから規制緩和等いろんな問題も生ずるわけですけれども、行政改革委員会規制緩和小委員会の意見は平成七年以降に出てきたものというふうに認識しております。
 この昭和六十二年という年ですけれども、実はこの年に私は検事任官したわけでありまして、当時の状況を非常によく覚えております。当時は検事の任官数の減少が非常に問題となっておりました。そのころ出た雑誌の中には、「六二年少し増えたのも、」、これは検事任官者数ということです、「六二年少し増えたのも、従来は歯牙にもかけなかった女性を採用して、員数合わせをしたにすぎない。」、こう書かれまして、私も、そうか、私は検察の歯牙にかかったのか、そんなことあるはずがないと思ったことがあるわけですけれども、当時こういう状況にあったということで引用させていただきました。
 確かに、現場の中でも検察の危機という認識があったと思います。現場の検事の間でも、任官者をふやすような魅力ある検察にするにはどうしたらいいのか、みんな検事の仕事はすごく興味があって好きだと実務修習のときの修習生も言うわけですけれども、実際選ぶときにはやはり検事にならないという結果になってしまう、これは一体何が原因なのか等について議論したことがございます。
 その当時、先輩の検事も新任検事の意見にも耳を傾けてくれましたし、むしろ君たち若い人たちの意見を聞きたいんだというふうに意見を求められたこともございました。これらは雑談でもないんですけれども、自然とこういう話し合いが持たれたのは、みんな検察という仕事が好きだったので魅力ある検察にするためにどうしたらいいか、そういうふうな気持ちから真剣に話し合ったのだというふうに思います。その当時の私の意見というのは、いろんな会同とかそういうプログラムの中で、役所といいますか、最高検察庁の方にも届けられていると信じております。
 近時、合格者の増員によりまして検事任官者がふえておりますけれども、そもそも合格者をふやそうという動き、合格者数をふやせば割合的に見て検事任官者もふえるだろうという発想で先ほど言った基本問題懇談会がスタートしたとは思いたくもありません。
 そこで、検察庁の方にお尋ねするんですけれども、当時任官者が減少したときにどういう問題点が指摘され、それがどういうふうに改善されたのか。つまり、任官者をふやすために法務省、検察庁としてはみずからどのような努力をしたかということをまずお尋ねしたいと思います。
#72
○政府委員(原田明夫君) ただいま御指摘いただきましたとおり、昭和六十二年ごろというふうに振り返ってみますと、検事任官者数は四十名に満たないこともあるということで、近時と比較して少数にとどまっておりました。大森委員も御承知のとおり、毎年新任検事を採用いたしましても、相当数の定員との差、いわゆる欠員を抱えながらスタートをするというような状況がずっと続いていたということも事実でございます。
 そういう中で、どうして新任検事を希望する人が比較的少ないんだろうかということについても、私ども法務・検察全般の問題として考えておりました。なかなかいろんなことを言われるんですけれども、これだという決め手と申しますか、これをこうすればという点が見つかったわけではございませんが、確かに検察の仕事については魅力を感ずるという修習生が比較的多いわけでございますが、一たん任官希望ということになりますと踏み切れないという事情がかなりあったようでございます。
 その中では、やはり法曹三者の中でいろいろ比較ができる司法修習生の立場からいたしますと、検事の職務については多忙で極めて緊張感を伴うという状況の中で、一方では職務の性格上やはり全国的な検察庁のあり方を考えますと、検事の場合転勤が避けられないということでございますとか、やはり弁護士と比較した場合には実質的な収入面での格差がかなりあるといういわば処遇上の問題点もないとは言えないというような指摘があったわけでございます。
 そこで、私どもといたしましては、関係当局の御協力、御理解を得ながら、給与面での改善を漸次図ってまいるということでございますとか、執務環境、特に官舎等の手当ての整備を図っていくというようなことでございますとか、司法修習生に対しましては検察実務修習の機会等を通じまして、検察の使命の重要性や、その職務が持っている魅力と申しますかやりがいという点にも理解を深めてもらうように努めてまいりました。
 そういう中で、一方検察といたしましては、その職務行為そのものに問題があってどうこうということではないのでございますけれども、やはり権限を行使しているということにつきまして、広くその姿を国民から評価され、検察に対する期待も高まるというような中で次第に状況が変わってまいりました。確かに司法試験合格者数が逐次増加したという事情もあるの。でございますけれども、それだけでは到底考えられないような事情の変化が起こっているような気がいたします。
 特に、平成六年度以降は毎年七十名を超える任官者を確保できるようになってまいりました。逆に、そういう状況で定員が充足できる。改めて現在検察が抱えている事情から、その職務に伴います業務量がふえているという事情が理解されて、ここ三年間百一人の純増という、大変な現在の公務員全体の定員事情のもとでは破格のお取り扱いといいますか、理解が得られてきたと思います。
 そういう状況を踏まえまして、検察の置かれている立場、司法全体の中における検察の役割ということを考えながら、今後ともこの努力は続けさせていただきたい。単に数がふえたから希望者がふえるというようなものでは全くないということで、検察としての努力は引き続きやらせていただきたいと考えている次第でございます。
#73
○大森礼子君 検事の仕事というのは余り人に知られにくい面があるわけです。それから裁判官の方も忙しいことをよく聞きます。特に、忙し過ぎる裁判官という言葉が半ば定着しつつありまして、裁判官は忙しいんだと。じゃ、検事はどうだとなるんですけれども、やっぱり検事も忙しい。例えば捜査なんかですと事件というのがいつ入るかわかりませんし、現行犯逮捕してその身柄がいつ送られてくるかわからない、検事をしておりましてなかなか休暇とか予定してもとれなかったという記憶がございます。
 そういった意味で、本当に仕事量が多いということも事実でございました。若い方が入ってこられてもそういう厳しい仕事環境というものに直面するわけですので、検察庁の方ではそういう入ってこられた方が仕事をしやすい環境ということをこれからもぜひ考えていっていただきたいというふうに思います。
 次の質問ですが、合格者数がふえたことに伴いまして、女性の裁判官、女性の検事も増加したというふうにしていると思います。法務省、最高裁判所は女性裁判官、女性検事の任官者数の増加についてそれぞれどのように評価しておられるでしょうか。そして、今の現状を見まして、もっと女性の裁判官とか女性検事が御必要と思われるのか。そのための対策を今必要とする状況にあるのか。それとも、この流れていくと必要な割合の女性裁判官、検事はほぼ充足されるとお思いになるのか、この点についてお伺いいたします。
#74
○政府委員(原田明夫君) まず、女性検事の採用と申しますかその取り扱いという観点から、私の方からお答えさせていただきます。
 法務当局といたしましては、従来から性別を問わず有能で適性のある検事任官者を確保するという点では一貫していると存じます。しかしながら、やはり現実問題として考えますと、先ほどもちょっと触れましたが、検事に任官した後の転勤が伴うという問題でございますとか将来の仕事のあり方という観点から、やはりちゅうちょをするという女性の修習生も多かったろうと思います。しかしながら、最近では平成六年度以降、毎年十人以上の女性検事が採用されております。その全体の採用数の中でも一〇%半ばから二〇%を超える場合も最近は出ております。
 今後とも、引き続き、有能で適正のある者は女性、男性を問わず平等な取り扱いということで採用できるよう努めてまいりたいと考えております。女性の修習生全体の中に占める割合も毎年増加している状況にあるということを考えますと、今後とも相当数の女性検事を採用できることになるというふうに私どもとしては考えております。
 現実に女性検事として活躍している方々の話をいろいろ聞くわけですが、女性だからできないとか男性しかできないというような状況ではないようでございます。例えば財政経済事件、そういうものにつきましては女性検事が大変活躍して、いわばじっくり物を考えてやれる事件として興味を持って研究している、女性検事の中にはそういう分野にも自信を深めているというような状況があるわけでございます。
 この点につきましては、諸外国でも、欧米諸国に限らずアジア諸国でも女性の裁判官、検事というものが次第に増加しているということで、私どもとしてはそういう事態を踏まえて今後とも環境面、また執務のあり方の面から、任官した女性検事がその職務の遂行に当たっていろいろ当面する問題点についてもできるだけ広く調査し、または声を聞きまして、許される限り配慮できるような体制をとってまいりたいと考えている次第でございます。
#75
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判官の関係について答弁いたします。
 本年度、司法修習生から裁判官に任官した人は九十三名でございますが、そのうち二十一名が女性でございました。その結果、現在女性裁判官は二百九十八名となっております。
 この数年間を見ますと、女性修習生の修習生に占める割合以上の女性の方が任官しております。こういう近年の女性裁判官の増加は今後も続くものというふうに私どもは考えているところでございます。
 裁判所といたしましては、男性、女性を問わずすぐれた人材が任官することを希望しておりまして、すぐれた女性が多く任官することは歓迎すべきであるというふうに考えているところでございます。
#76
○大森礼子君 検察というのは昔は男の仕事だというふうに言われておりましたけれども、例えば事件とかを同じようにすれば同じように評価されるという意味で非常に女性にとってやりがいのある仕事であったと思います。それから女性裁判官につきましても、私も弁護士になりましてからいろんな弁護士さんとお話しするときに、その地方裁判所に女性の裁判官がおられた、この方は非常に優秀だし処理も早いというふうにきちっと評価されております。合格者数がふえていく、その中で裁判所あるいは検察庁で女性がふえていくことを希望するものであります。
 それでは、司法試験法と裁判所法の改正案について質問いたします。
 私は、五十九年司法試験合格で、当時は訴訟法が選択でした。それで、刑事訴訟法を選択しましたので、その後検事になりましたからいまだに民事訴訟法がよくわからないという状況であります。先輩検事の中にも、民事訴訟法選択だったからいまだに刑事訴訟法がよくわからぬと言っていた人もおられましたが、これは冗談だと思います。
 選択しなかった訴訟法については、合格後あるいは実務に入って学ぶべきと言えるわけですけれども、実務へ入りますとなかなかじっくり勉強する時間がない、これが実情ではなかろうかというふうに思います。そういった意味で、二つの訴訟法が必須であればいやが応でも勉強しなきゃいけないわけで、いっそそうであればよかったと思ったことも事実でございます。ただ、二つの訴訟法が必須科目であるということとほかの法律選択科目が廃止されていいということはすぐ結びつかないというふうに思うわけです。
 司法試験制度は昭和二十四年にスタートしておりますが、試験科目の変遷というものもございます。昭和三十五年までは刑訴と民訴が必須科目だったわけですけれども、昭和三十六年から訴訟法一科目が必須選択科目となりまして、それでそのとき選ばなかった訴訟法が法律選択科目の中に入れられて、その中から一科目法律選択という形になっております。それから、昭和三十六年からいわゆる教養選択科目というものも新設されております。
 三十六年からこのように変わった理由というのはそもそも何だったのでしょうか。もしかしたら受験生の負担軽減のためではなかったのかなという気もしますし、あるいは社会の多様なニーズにこたえるためにこのように科目が変わったのかなという気もするので、お尋ねする次第です。
#77
○政府委員(山崎潮君) 委員御指摘のとおり、司法試験の科目につきましては何回かの改正を経ているわけでございます。今、昭和三十六年からということでございますが、これは昭和三十三年の法改正で変わったわけでございます。その前には、憲法、民法、商法、刑法、それから民事訴訟法、刑事訴訟法の六科目が必須科目でございました。さらに、法律選択科目として行政法、破産法、労働法等の科目のうち一科目を選択するというふうにされておりまして、法律科目、合計七科目を受験するというシステムになっておりました。
 こういう中でいろいろ議論がございまして、受験科目数を維持しながら受験者の試験科目選択の範囲をより広くすることによって、特に大学在学生の受験を容易にするという観点から法改正が行われたわけでございます。これによりまして、やはり受験生の負担ということになろうかと思いますけれども、刑事訴訟法、民事訴訟法をそのまま必須科目とすることには負担があるということからどちらか一方ということにいたしまして、それに加えまして、両方とっても結構ですし、とらない場合には法律選択科目をとりなさいと。それにもう一科目新しいものとして一般教養選択科目が設けられて、合計七科目ということは同じでございますけれども、そこで幅が広がりました。広がったことから、受験生の負担を軽減しようという趣旨から両訴訟法を選択という形で設けたというふうに理解をしております。
#78
○大森礼子君 今回の改正案によりまして、選択科目というものを捨てて両訴訟法を必須とすることを優先させたわけであります。先ほど山崎司法法制調査部長の方は、選択科目を廃止した理由として、両訴訟法を必須にしたのでその負担を軽減するために法律選択科目については廃止したというふうにお答えになったと思います。まず両訴必須ということが前提となれば、それを基準とすれば負担軽減になるんでしょうけれども、これまでの六科目と比較した場合にむしろ中身的に見ると負担は重くなっているのではないかなというふうに思うわけです。
 従来、法律選択科目の中で選ばなかった訴訟法も選択肢の中に入っておりますから、法律選択の中で訴訟法を選ぶことで両訴訟法を選択できるわけですけれども、先ほど一割にも満たないとおっしゃったんですかね、非常に両訴を選ぶ人が少ないと。それは負担が重くなるからであります。ですから、両訴訟法必須を前提とすると負担は軽くなるかもしれませんけれども、これまでの科目構成から見ると実際は受験生の勉強しなきゃいけない量といいますか、この負担はふえていることになると思いますけれども、この事実はお認めになるわけでしょうか。
#79
○政府委員(山崎潮君) 確かに、昭和三十三年の改正で受験生の負担を軽減するということから両訴訟法を選択にしたわけでございます。今回、両訴訟法を必須にするというのは、まさに今まで長年やってきた制度をいろいろかんがみて、また今後の来るべき二十一世紀の社会にどう対応すべきかという観点から、この基礎となる両訴訟法、いわば飯の種みたいな、道具でございます。どうしてもやはりこれだけはきちっとやっておかなきゃならぬだろうということから入れたわけでございます。
 そういう観点からいきますと、昭和三十三年には負担軽減ということで選択の幅を広げた、今回は必須にするということになれば、私も先ほど申し上げたかもしれませんが、負担が軽くなるというふうには理解はしておりません。それなりに勉強はせざるを得ないと思います。その分の負担軽減は法律選択科目をやむを得ず廃止するというところで対処するわけでございますけれども、両訴訟法をやるということは、共通する面においてはより多く理解できます。また、違った場面につきましてはそれの違いを鮮明に理解ができるという点もございます。ですから、私は、この両訴訟法を必須にして負担軽減になるというふうには申し上げるつもりはございません。
#80
○大森礼子君 選択科目を廃止することについて、いろいろ学者の方たちから反対があるわけです。
 それで、実体法と手続法と分けてみますと、例えば先ほど触れましたけれども、検事になった人でも司法試験では民事訴訟法を選んだ方がおられます。ですから、実務に入ったときに刑事訴訟法を勉強するわけです。私なんかも弁護士になりますとそこからもう一度民事訴訟法を勉強するとかなるわけです、必要に迫られたものから勉強するという習性がありますから。常に法曹が直面する手続法の方がむしろ事後でもマスターしやすいのかなという気がするわけです。実体法というのは実務に入ってからは時間的な面を見ましてもなかなか勉強しにくいのではないかなという気がいたします。
 今回の改正で社会的なニーズにこたえるというような言葉がよく使われてくるわけですけれども、試験科目が同じになるわけですね。それから同じ研修を受けるわけです。そうしますと、画一的な法曹という形で司法研修所を出ることになると思います。これは京都大学の村中孝史教授が言っておられたことですけれども、画一的法曹の養成は社会の多様なニーズにこたえるということと矛盾しないのであろうか、こういう問題提起をしておられます。受験勉強というのは、やはりその科目についての基礎知識を修得するよい機会であります。それから、法曹の活動分野というものは非常に多岐にわたります。法曹である以上、例えば弁護士ですとそれでお金をいただく以上広く浅くという知識は余り役に立たず、やはり扱った問題について専門性を持っていなくてはいけないと思うわけです。そうしますと、将来専門にしようと思う分野の法律科目を受験生時代にじっくり勉強するということは実務に出てから非常に役に立つと思いますし、また弁護士に専門性を要求する社会のニーズにも合致するのではないのかなという気もするわけです。
 画一的法曹の養成は社会の多様なニーズにこたえるということと矛盾しないのであろうかという村中教授の問題提起について、法務省はどのようにお答えになるでしょうか。
#81
○政府委員(山崎潮君) ただいま委員御指摘のような見解があるということも私は存じております。もっと口の悪い言い方をすれば、全員が金太郎あめじゃないかというような痛烈なことを言われる方もおられます。
 確かに研修所の教育というか、司法試験の限りでは全員共通であるということで間違いございません。それからまた一方で、これから社会が多様化していく、あるいは国際化、複雑化していく、そういう中で多方面で活躍する専門家というものも当然必要であるということになるわけでございます。
 先ほど来いろいろ申し上げておりますけれども、試験の科目からは確かになくなります。しかし、そこの基礎をきちっと固めた上で、余裕を持って応用力で、司法研修所におきまして多方面の情報をきちっと提供いたしまして、その上でそれぞれの専門家に育っていってほしいというシステムにしたわけでございます。
 また、委員も御存じのとおりに、法曹というのはかなり皆独立性が強いわけでございますし、また個性も強い人間が多いわけでございます。ですから、基礎の教育を仮に同じ試験で入ってきてやったとしても、専門分野、興味、それぞれ分かれていく、これは必然のことでございます。ですから、基礎的な情報をきちっと研修所の方で提供していただきまして、その上で今度は自分の判断、自分の興味、あるいは自分の人生観でそれぞれ育っていくことになるわけでございまして、私はそういう意味で専門家がいなくなるという心配は全くないというふうに考えております。
#82
○大森礼子君 専門家がいなくなるという意味ではなくて、専門家が必要だから研修所の中、それから実務に出てからみずから勉強しなくてはいけない、その負担が大きいのではないかというふうに思うわけです。
 それから、法律選択科目を廃止しましてもほかの必須科目の方で基礎を固めて、それから司法研修所で多方面の情報を提供してというふうに繰り返しおっしゃられるわけですけれども、この多方面の情報を提供しということは具体的にどういうことなのでしょうか。きちっと講義等で教えるということなのでしょうか。
#83
○政府委員(山崎潮君) 研修所で行うことの具体的な内容につきましては研修所の方でお決めになることでございますが、私ども三者協を通じて理解しているところを申し上げます。
 研修所におきましてやはり多方面の知識、それから今後必要となるような情報を提供するということでございまして、先ほど来いろいろ申し上げておりますが、行政法だとか労働法、租税法、破産法、それから会計的なものとかさまざまな分野がございます。こういうものについて、あるものについてはもちろん全員ということになりましょうし、場合によっては個々の興味によって選択ということもあり得ますけれども、なるべく多くの情報を提供していただくということで最高裁判所の方にもお願いしているわけでございます。
#84
○大森礼子君 研修所に入ってから勉強するということが期待されているのかもしれませんけれども、修習期間が二年じゃなく一年六カ月に短縮されたということとの関係で、特に前期後期が三カ月ずつでしょうか、私たちの場合は四カ月四カ月でしたけれども、これでも非常に忙しかったというふうな記憶があるわけであります。司法修習期間を短縮した上でさらにこれらについての多方面の情報を提供する、提供する方はいいかもしれませんけれども、これを受け入れる余裕があるかどうかという点で非常に問題があるのではないかと思います。
 従来も司法研修所の方で、司法試験で選択しなかった訴訟法については集中講義みたいなものがあったと記憶しております。先ほど最高裁の方から、合格者と同じレベルにするための補習をというお話がありましたけれども、補習で合格者と同じレベルに達するとは私は到底思いません。結局のところは個人の勉強だということになるのでしょうけれども、そうすると司法修習期間が短いではないかという解決不能の堂々めぐりになるわけでございます。
 それで、法律選択科目の廃止につきましてはいろんなところから抗議の声が上がっているわけですが、平成十年三月六日付で連合の会長が法務大臣あてに「労働法が試験科目から削除されており、労働関係法の位置づけが低下することが懸念されます。」との要望書を提出しておられます。この労働界からの要望に対しまして、大臣はどのようにお答えになったのでしょうか、あるいはまだお答えになっていないとすればどのようにお答えになるおつもりでしょうか。
#85
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘のように、日本労働組合総連合会から要望書の提出を受けました。これにつきましては大臣にも書面としてお見せいたしまして、趣旨は申し上げてございますが、実際にお目にかかりましたのは大臣ではございませんで、事務当局でございます。
 そこで申し上げたことを今ここでちょっと御披露させていただきたいと思います。
 これは今回の法改正の趣旨と全く同じでございまして、労働法等の選択科目も重要である、しかしながら法律選択科目の廃止については、両訴訟法を必須化することに伴う受験生の負担を考えたらやむを得ぬ措置であるということが第一点でございます。また、今度の新しい修習体制のもとで、労働法を含むさまざまな関連分野の法律につきましては基本的な情報を最高裁判所の方で提供していただくということで、それがカリキュラムの中に組み込まれるものと承知しているということを御説明申し上げました。それで一応御理解をいただいた、こういう経緯でございます。
#86
○大森礼子君 先ほど角田委員が神戸大学の阿部教授の問題提起というものを引用されました。行政法についても本当に廃止していいのかという意見が強いわけです。法律選択科目につきましては、行政法、労働法、それから破産法、これは昭和二十四年から、科目内容は多少変遷がありますけれども、今までずっと選択科目であったわけです。これはそれなりの理由があるからであろうと思います。
 何回も言いますが、社会のニーズにこたえるというのでありましたならば、今の時代の流れから見ましても、行政法とか労働法、それから破産法をマスターする重要度が増してきているというふうに思うわけであります。労働法の重要性については連合の方が要望書を出したことからも明らかでありますし、それから行政法の関係では、先ほど阿部教授の言葉を角田議員が引用されましたので私は引用しませんが、参議院でも参議院改革として行政監視委員会を新たに設置して行政への監視を強めようとしているわけでありまして、こういう時代の流れ、国会の流れにむしろ行政法廃止というのは逆行するのではないかなというふうに思います。司法試験に受かった後でフォローするんだと言われればそれまでなんですが、問題はそれで十分かということです。
 それから、破産法につきましても、住専処理問題のときに、政府側が法的処理ではだめなんだ、時間がかかり過ぎるんだ、こういう説明をいたしました。そのときにも司法の器の大きさについても問題になったわけであります。例えばああいう住専処理の中でも本来であれば破産法手続によって処理されるわけですし、今会社の倒産、個人破産等、本当に増加しておりますから、破産法をマスターする法曹の必要性も増しているわけであります。
 そこで、法務省、最高裁判所に端的にお尋ねいたしますけれども、社会のニーズにこたえるというのであれば、労働法、破産法、行政法を法曹がマスターする重要度が増している、これは言い切れると思うのですけれども、いかがでしょうか。
#87
○政府委員(山崎潮君) 法律選択科目に盛られております科目につきまして、今後の社会を考えますとそういう分野についても非常に重要になってくるということは私どもも理解はしておりまして、決してそれを軽視していいという趣旨ではございません。
 先ほどから議論がいろいろございますけれども、行政法、労働法等の法律選択科目につきましては確かに試験からはなくなるということになりますけれども、試験を受ける方はそれぞれ科目ごとにいけばごくわずかに分散するわけでございますが、千名なら千名の修習生に対して共通の情報を教え共通の認識のもとに立てるという点では広く情報提供ができるわけでございます。
 それからもう一点は、研修所の教育、基礎を固めて出すということは当然でございますけれども、それ以上に、今後いろいろな問題につきまして、その基礎を学んだからただそれだけで何でもできるというわけにはまいらないわけでございまして、その後職業について不断に努力をする、そういう点も決して無視ができないわけでございます。やはり今後の社会に対応していくためには、もちろん研修所で基本的な情報を得て、自分はこういうことをやってみたいとか、そういう端緒にはなると思いますけれども、それで今度職業を持ってもっともっと自分で磨き上げて初めて専門家として役に立つわけでございますので、そういう面も無視ができないわけでございます。
 私どもとしまして、そういうことに期待をしておりますし、また研修所で広くその内容について周知をするということでかえって輪が広がるという理解をしておるわけでございまして、決して無視をしたりそれが必要じゃないということを申し上げているのではないということを御理解いただきたいと思います。
#88
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 法曹養成の観点からいたしますと、基本六法の確実な修得という基礎の上に立ちまして、これに加えて応用能力を備えさせながら、御指摘の行政法、破産法、労働法等の多様な法的素養を修得させる機会を付与することが正しい理解を得させる上で効果的であるというふうに考えているところでございます。委員御指摘のように、時代の流れからいたしますと、これらの科目についてもその重要性はますます増加してきているというふうに考えております。
 そこで、新しい司法修習制度のもとにおきましては、司法研修所における集合教育におきまして、現実の社会に存在する多様な法的ニーズにこたえ得る素養を身につけさせるための基本的情報を提供いたしまして、また基本六法の確実な修得を基礎とすることによりまして、行政法、破産法、労働法についても自己研さん等による専門的実務家としての知識等の修得、研究の深化が一段と容易になっていくのではないだろうかと考えているところでございます。
#89
○大森礼子君 行政法、労働法、破産法をマスターする重要度がいよいよ増してきているのではありませんかということを確認させていただいたのは、社会のニーズとありますから、これらを試験科目から外したことによりまして、将来、もし社会のニーズにこたえられなければこの制度をもう一度見直さなければならなくなると思うからです。
 要するに修習期間中にマスターできればいいわけですけれども、従来の両訴を必須とした上で何かの分野についての専門的な基礎知識も身につけさせようと思えば、例えば二回試験のときに、従来の法律選択科目でありましたものをどれか選択で一科目つけるという方法もあれば、人間はやはり試験があるから勉強するという悲しい習性があるものですから、それによってある程度これまでの科目と同様の効果が得られるのではないかと思いますけれども、こういう点は考慮される余地はないのでしょうか。
#90
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法研修所の修習の終わる段階で二回試験というものをやっておりますが、この二回試験の科目に何を加えるかという問題は、新しい修習制度ではどうするかということはまだはっきりと決まったわけではありませんが、委員御指摘の点は一つの考え方であろうかと思いますので、私どもとしては研究課題にはさせていただきたいと考えておのます。
#91
○大森礼子君 司法修習期間が一年六カ月ですから、本当に中身も大変だろうな、修習生も忙しくなるだろうなと思うんですけれども、今言ったような方法によりますと、あるいは行政法学者の阿部先生とか、こういう不安を多少解消できるのではないかなと思い提案させていただきました。
 それから、合格者数をふやすということですけれども、裁判官の数、検事の数が要るということはよく理解できます。問題は弁護士の数なんですけれども、国民の側からともかく弁護士の数を早くふやしてほしいという強い要望というのはあるのでしょうか。もしそれがあるとすれば、それはいかなる理由によるものでしょうか。
#92
○政府委員(山崎潮君) 法曹人口を増加させていくという議論はここ十年やっているわけでございます。声はいろいろございます。大きく分けまして、経済界からの要望と一般国民のニーズの問題でございます。
 まず、経済界は経団連あるいは経済同友会等、それから我々も、多数ではございません、わずかでございますけれども企業の方とお目にかかっていろいろお話を聞いております。やはり経済界のニーズは大変強いということでございます。会社のあり方につきましては、最近いろいろ考え方も変わってきておりますし、顧問弁護士という形ではなくて企業内弁護士をもっともっとふやしたいという希望が参っております。
 具体的な数字につきまして各社が私どもに話してくれるわけはございませんけれども、今後またその具体的な調査にもアクセスしていかなければならないと考えておりますけれども、この点は大変強い要望である。それは規制緩和の推進計画、ああいうところに寄せられた意見もそれを反映しているわけでございます。
 それからもう一点は、今度は市民の立場に立ってどうかというものでございますけれども、市民が法律的な悩みがあったときに法律家に身近に接するという要望は大変強くなってきております。特に、複雑な社会になります、あるいは親族相続、こういう問題の紛争が生じる余地が大変強くなってまいります。また、これからはシルバー社会を迎えまして後見をどうしていくかとか、こういうようなニーズが大変高まってくるわけでございます。
 そうなりますと、やはり気軽に法律家にアクセスしたい、いろいろ意見を聞いて自分の進路を決めていきたいというニーズがあるわけでございます。医者でありますと、大体の方はかかりつけの医者、ホームドクターがいると思いますけれども、残念ながら法律の世界につきましていわゆるホームロイヤーというような発想はまだまだ未熟でございます。そういう点につきましてやはり国民側からのニーズがあるということから、このホームロイヤーのすそ野を広げていく必要があるのではないかと考えるわけでございます。
 また、今後の規制緩和が行われた社会を考えますと、やはり自己責任で行動をしていくわけでございます。紛争が生じたらそれはきれいに整序せざるを得ないということになるわけでございまして、だれも助けてくれないことになるかもしれません。これを裁判で解決するだけではなく、準司法機関で紛争を解決する必要もありますし、その手前で解決をしていく、こういう必要性も当然に出てまいります。
 また、昨年、法律改正で導入されました地方自治体に対する外部監査制度があるわけでございますけれども、施行はまだまだ先でございますけれども、この監査制度の中に法律家に入っていただきたいというニーズもございます。あるいは最近よく議論されておりますけれども、国会議員の政策秘書に弁護士を登用するかどうかという問題もかなり議論をされているわけでございまして、いろいろな問題を総合勘案いたしますと、ニーズとしては相当なものがあるんじゃないかというふうに理解をしております。
#93
○大森礼子君 今、社会的ニーズが相当あるというお話をいただきました。ただ、今御答弁なさった方も、経済界のニーズ、一般国民のニーズというように分けてお答えになりました。私は社会的ニーズといった場合に一番考えられなくてはいけないのは、一般国民、一般市民のニーズにこたえられるかどうかであろうと思います。先ほど法務大臣も、今の問題は法曹が国民から遠くなっているというふうに御指摘になりましたけれども、まさにそこが問題であるというふうに思います。
 一般国民の側から見ますと、弁護士についても数が要ると私は思います。例えば刑事事件につきましては、当番弁護士制度、それから国選弁護等で弁護士さんが多忙なスケジュールを調整して要請に応じている姿を見ております。それから、今おっしゃいましたように手軽に法律相談を受けられるということも国民の大きな要請であります。相続というものはどこに住んでいる人でも必ず一度は起こる問題だからであります。
 そこで、国民のニーズというのならば、この司法試験制度、いかに合格者をたくさん出すかということではなくて、例えば憲法の規定する裁判を受ける権利をどう保障するかということだろうと思います。この観点から法律扶助制度の充実について積極的に取り組んでいかなければならないと思います。
 それからまた、当番弁護士制度というものも、やはり身柄拘束を受けた被疑者の人権保障のために必要な制度であると思います。拘束された人間というものは、その拘束の根拠を正しく知り、そしてこれからいかなる刑事手続が進んでいくかということについて知る権利があると私は思うからであります。当番弁護士制度も弁護士らが自前でやっております。これについて国は放置しておいてよろしいのでしょうか。きょうは時間がありませんので質問いたしませんが、いずれ、法務省は当番弁護士制度についてどのように対処していくのかを質問したいと思います。
 それから、気軽に法律相談を受けられるという点では弁護士偏在の問題があります。弁護士過疎の問題です。これは弁護士となる人の数がふえたからといって解決する問題ではないと思うわけです。
 地方へ行きますと、これは昭和六十年ごろからだと思いますけれども、裁判所の統廃合という問題がございました。地方の支部とか簡易裁判所が廃止される、それに伴って検察庁の方も支部とか区検が廃止されるということが起きました。
 弁護士事務所というのは普通やっぱり裁判所のそばにあるからお仕事ができるわけでありまして、裁判所のないところに弁護士事務所を置いても無意味なわけであります。ですから、裁判所の所在地に弁護士事務所が集まるということは一つの法則であるわけです。地方へ行きますと、いろんな法律問題、ちょっと聞きたいという問題があるんだけれども、平日に仕事を休んで遠くの弁護士さんを訪れるのは大変だ、それから裁判所へ通うのも大変だと、こんなことから問題を先送りにして、その結果問題が複雑化してもう手に負えなくなるという悪循環が続いているわけであります。
 このような裁判所の統廃合といいますか、これが一つの大きな原因であると私は思うわけですけれども、こういう状況をつくっておきながら、国民の法的ニーズにこたえるために法曹の数、弁護士さんの数もふやしましょうというのはどこか矛盾しているように思います。弁護士の法的サービスを受ける機会というのを国民側から奪った一つの原因は最高裁判所にもあるのではないかと思いますけれども、最高裁判所はどのようにお考えでしょうか。
#94
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 裁判所は、御案内のように、昭和六十三年に簡易裁判所の適正配置、平成二年に地家裁の支部の適正配置を行ったものでございます。裁判所の配置は、簡裁や地家裁支部が設置されて以後、基本的な変更が加えられないままになっていまして、その間の産業構造や社会事情の変化に伴いまして大幅な人口異動や交通網の発達、あるいは住民の生活圏の拡大とか行政区画の広域化等の状況が生じまして、とりわけ地域による事件数の偏りが非常に著しく、そのため裁判所の運営上種々の問題が生じてきたわけでございます。
 例えば、取り扱う事件数が著しく減少した庁においても、施設の管理等のために必要最小限度の人員を配置しなければならないために非効率な運用を余儀なくされる一方で、事件が急増した庁において有限な人的資源のもとで必ずしも十分な対応がとれていないという状況がございました。そのために、非効率的な運用を余儀なくされている庁を廃止する一方で、その余の庁の体制を充実強化する、各裁判所の事件数と近隣庁までの時間を考慮いたしまして、国民の利便と司法サービスの質の向上の調和を図るという観点から裁判所の配置を見直したものでございます。裁判所の適正配置により、一部の庁は廃止されたものの、全体としては国民の司法サービスの向上が図られたものと考えている次第でございます。
 委員御指摘の、廃止された裁判所の地域で弁護士がいなくなるという御指摘の点でございますが、裁判所の適正配置のために、廃止された裁判所の管轄区域で弁護士の数が減少しているという状況が生じているといった認識は持っておらないわけでございます。
 ただ、裁判所の適正配置の前後を問わず、弁護士過疎のいわゆる弁護士のゼロワン地域というのが極めて多く、法律相談もままならないという地域が多数あるなど、国民の司法へのアクセスの大きな支障となっていることは十分認識しているところでございまして、今回の法改正は、国民の法的ニーズに的確に対応できるように法曹人口を増加させることを趣旨としているものでございまして、今般、法曹人口が増加することに伴いまして弁護士過疎地域の解消が図られることを期待しているところでございます。
#95
○大森礼子君 数がふえたからといって過疎問題はすぐ解決しないと思いますし、それを弁護士の方で解決するというのはむちゃな話だと思います。
 今回の修習期間につきましては、最高裁は一年の修習を主張したというふうに伺っております。本当はこの根拠を詳しく聞こうと思ったんですが、時間がありませんので意見だけ述べます。
 最高裁の一年修習の内容というのは、実務修習を七カ月として、分野別が四カ月、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護修習、これは各一カ月です。検察実務修習を例にしますと、例えば東京地検などでは数が多いので、修習生は取り調べ修習と公判修習というように分かれて修習しておりました。各十五日となります。土曜日、日曜日もございます。パトカー試乗や、すり見学や矯正施設見学をしておりましたら日数がなく、さらに減ってしまいます。そうしますと、検察実務修習というよりも検察庁見学となってしまうのではないか。裁判実務修習でも、裁判所見学あるいは裁判傍聴にすぎなくなるのではないかというふうに思います。
 それで、なぜ最高裁がこういうことを主張するのか、それから弁護士会は二年間にこだわるのかを考えたときに、これは税金をもらうお役所の発想と自分で稼がなくてはいけない弁護士会の発想、この違いがあるのではないかというふうに思います。
 最高裁は任官者を得た後にトレーニングすればいいわけであります。判事補制度です。最初から単独は任せません。合議の中で判事補に対して必要なトレーニングをするという時間的余裕がございます。検察庁の場合には新任検事でも一人でやるわけですけれども、決裁制度というのがございまして、この中で決裁官というのがその新任検事等に指導するという機会がございます。
 ところが、弁護士さんの方には事務所経営というのが入っておりますので、最高裁判所とか検察庁のようにじっくりトレーニングしていたら自分がお金を稼ぐといいますか、仕事ができなくなってしまう、のんびり教えていたら事務所がつぶされる。だから、弁護士会としては、やはり一応お給料を払うわけですから、事務所に来たらある程度の簡単な事件については自分で裁判所に行って自分で処理するという人を望むのだろうと思います。
 すぐ実務で通用する人を欲しがる弁護士会と、それから基礎的なものさえ備えておけばあとはこちらでトレーニングできるというお役所、裁判所、それから検察庁、この仕組みの違いがこういう大きな見解の違いとなって出るんだろうと思います。
 これからもいろんな改革があると思いますけれども、この二つの違いというのをお互いが理解し合わないと、先ほど挙げましたけれども、結果的には国民のニーズにこたえられる法曹制度はできないのではないか、このように意見を申し上げて質問を終わらせていただきます。
#96
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。
 何点か質問をさせていただきたいと思います。
 私は、具体的な質問に入ります前に、法務省にまず御礼を申し上げたいと思います。といいますのは、四月の人事異動で那覇地検に初めて女性の検察官が赴任をされた、こういうことで地元沖縄ではマスコミで大きく報道されております。正確なお名前は記憶しておりませんが、山田さんというお名前でしたでしょうか、何かお兄さんも検察官だということで、そのことも含めて話題になっておりました。
 女性検事が赴任したから直ちに沖縄の法秩序の維持に役立つとか効果があるとか、あるいは犯罪の予防に男性検事に比べて非常に効果的だと、こういうことを言うつもりは毛頭ございませんけれども、裁判官や弁護士さんには女性がおりましたけれども、検察官は初めてなんです。
 御承知のように沖縄では女性はウナイ神でありますから、神様ですね。非常に沖縄の人はあがめておりますし、私は、これから法曹を志す若者には大変いい刺激になったのではないか、こういうふうに思っておりますので、下稲葉法務大臣、どんどん沖縄に女性の検察官を今後とも派遣していただきたいというふうに思っております。
 それから、最高裁にも御礼を申し上げますが、きょうは堀籠人事局長もおいででございます。かつて沖縄の裁判所にもおられまして、私どもも大変指導をいただきましたし、非常に信頼された裁判官でございました。沖縄で司法修習、実務修習を行うようになったのはもう六、七年になるでしょうか。そのおかげで随分若い弁護士さんがふえるようになりました。とても感謝をしておりますし、うれしく思っております。
 もちろん、沖縄で実務修習をした修習生がすべて弁護士になったわけじゃありませんし、裁判官、検察官に任官した者もおるわけでありますが、私は、任官した者を含めて、ある面で本土と違う歴史体験あるいは地理的な特性、文化的な特性を持っている沖縄で修習をすることによって法曹としての特性というんでしょうか、あるいは豊かな人間性というんでしょうか、柔軟な思考というんでしょうか、それを形成する上で大変大きな役割を果たしておるんではないかな、こういうふうに思っておりまして、私も、なるだけ修習生の歓迎会とかあるいは小旅行とか、そういったことには参加をするように努めておるところでございます。
 今申し上げましたように、今後とも沖縄における充実した実務修習が継続できますように御配慮をお願いいたしたいというふうに思います。
 さて、いろいろ社会が複雑に変化をし、法曹のあり方についても多方面から論議が行われておるところでありますが、今審議をいたしております法案との関係で、法曹養成の理念をどのように考えておられるのか、法務省、最高裁、それぞれにお聞きをいたします。
#97
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 法曹養成の理念についてお話がございました。けさほど来いろいろお話に出ておりますように、司法に対するニーズというものは多くかつ重要になってくると思います。要するに、国家の基礎を支えます司法の果たすべき役割は一層重要になってくるものだと思います。
 そこで、このような重要な司法を担う法曹には、社会に対する広い視野が要求されるわけだし、さらに、高い識見、柔軟な思考力といいますか、そういうふうな人間性豊かな方々が要求されるんじゃないかと思います。したがいまして、法曹養成の基礎は、やはりそういうふうな人間の養成というところに置くべきであろう。
 したがいまして、法曹三者それぞれの実務と心構えというものを修得いたしまして、三つあるわけでございますから、自分はこれだと仮に決めておりましても、法曹三者というのは一体でなきゃいかぬわけでございますし、一体でなければうまくいくはずもございません。そういうことからいいますと、統一修習ということが今一つの大きな柱になっているわけでございます。私は、そういうふうな統一修習の理念を維持して法曹養成に当たるべきだ、そういうふうに考えております。
#98
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) お答えいたします。
 法曹は国民の権利を実現する担い手でありますので、司法研修所を所轄する最高裁判所としては、国民の負託にこたえ得るような法曹の養成を行う必要があるという考えに立っております。
 そこで、司法修習制度につきましては、現行制度の目的とこれまで果たしてきました役割を踏まえまして、法曹三者いずれの道に進む者についても、法曹として国民の負託にこたえ得る水準を充足する統一修習というものを行うことを原則として、この原則を維持するとともに時代の要請に適応した法曹養成制度を構築するという観点から、社会に対する広い視野を持ち、高い識見と柔軟な思考力を備えた二十一世紀を担うにふさわしい法曹というものの養成をしていく必要があるというふうに考えているところでございます。
#99
○照屋寛徳君 私は、在野法曹の一人として、最近どうも弁護士の不祥事というか、いろんな事件を惹起したり事件に巻き込まれたりということが多く発生しているやに思いますし、非常に残念だなという思いをいたしております。
 法曹養成をする上で、やっぱり量だけではなくして、人権感覚にすぐれた、そして国民の立場、弱い者の立場に立った高い倫理観を持った法曹の養成をきちんとやらなければならない、またやるべきである。そのことが今必要とされておるというふうに考えております。
 ところで、この法曹人口の現状と課題についても何名かの委員から質問等がありましたけれども、諸外国に比べて極端に少ない我が国の法曹人口、例えば平成九年度の法曹一人当たりの人口六千三百七十八人という数字も資料に見受けられるわけでありますが、この法曹人口の現状、それから諸外国との比較、望ましいと考えておられる法曹人口などについて、法務省、最高裁の意見をお聞きしたいと思います。
#100
○政府委員(山崎潮君) ただいま委員の方から、日本の法曹は少ないという点について御指摘がございました。
 我が国の法曹人口はすべて合わせますと約二万二千人でございます。アメリカが九十三万七千人、イギリスが七万九千人、ドイツが十一万三千人、フランスが三万五千人という数に比べれば、極めて少ないということはおわかりいただけるだろうと思います。
 そこで、それでは本当に法曹人口をふやしていく必要があるのかということになろうかと思います。諸外国と比べてただ数字が少ないというだけでは、それはふやす理由にはならないはずでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、やはり国民の法的ニーズというのは、特に家庭にまつわるいろいろな法的処理、これはかなり重要になってくるのではないかというふうに思われますし、これだけ複雑な社会になりますと、身近でちょっと起こったことが法的紛争に発展をするという可能性も高くなってくるわけでございます。ですから、やはり気軽に法律相談ができるというシステムがまず構築されなければならないだろうというふうに思います。
 それから、先ほどから申し上げておりますような企業のニーズ、企業内弁護士でございます。そのほか、自治体、あるいは国会の政策秘書等のニーズもあるわけでございまして、やはり全体を見たらニーズがある。また、規制緩和後の社会を考えれば、ますますそれが大きくなっていくだろうというふうに考えられます。
 では、具体的にその人数がどうかと言われますと、これを的確に予測する法則はなかなか見出しにくいところがございます。将来の社会がどうなるか、経済状況がどうなるかと。バブルだってこれが到来するかどうか多分だれも予測はできなかっただろうと思います。また、急速にこれだけ景気が冷え込むということもなかなか予測がつかない。そういう点で大変難しいところはございます。
 しかし、今のような全体のニーズを考えますと、年間千人程度の増加については、弁護士会も当然そのニーズがあるというふうに理解しているわけでございまして、私どもとその点は共通しております。
 ですから、今回、現行の人的、物的範囲内で、当面の措置として千名にふやしていくという政策を立てたわけでございますが、今後、法務省といたしましては、千名体制にして世の中の社会的ニーズ等の動向を把握する必要はございますけれども、まだまだ少ないのではないかということで、そういう千名体制の実際の状況を見ながら、もう一度やはり千五百人程度への増加も議論する必要があるだろうというふうに考えております。この法曹三者の合意書でも、そういうような実態調査あるいは受け入れ態勢の問題とか、そういうさまざまな議論をして、もう一ラウンドきちっと議論をしようという合意をしているわけでございます。
 ちなみに、我が国の法曹人口を倍にするというふうに考えた場合、年間千名程度に増加させていくという場合でも今後約二十五、六年かかります。また、千五百人にふやしていったという仮定をしましても、十五、六年はかかるわけでございます。
 そういうようなことで、法曹人口をふやすというのはそう短期間に行われるわけではない。それで、社会の動きが急になったときにすぐふやせというわけにもまいらない。やっぱり着実にそのニーズにこたえられるようにふやしながら、またその先はいろいろ動向を見ながら検討をしていく、こういうふうに考えているところでございます。
#101
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 委員の御質問が裁判所にもございましたので、裁判官の教との関係でお答えをしたいと思います。
 裁判官数を諸外国と比較する場合には、国民が紛争解決のためにとる方法とか、訴訟手続の構造と申しますか、裁判所に提起される事件数と各国の国民性、経済条件あるいは法制の違いによる諸条件にも考慮を入れる必要があろうかというふうに思います。諸外国との比較において望ましい裁判官の人数は、今の諸条件を考慮に入れますと、なかなかお答えすることが難しいという点がございます。ただ、法曹人口全体の中での裁判官数の比率を見てみますと、職権進行主義を採用している国ではその比率が比較的高くて、当事者主義を採用している国は比率が低いといった特徴があるようでございます。
 ところで、我が国は御案内のとおり当事者主義を採用しておるわけでございますが、職権進行主義のドイツに次いで法曹人口に占める裁判官の比率が高いといった状況がうかがわれるところでございます。非常に興味のある数字ではございますが、この点をどのように理解するかというのは、なかなか難しい面があろうかというふうに考えているわけでございます。
 いずれにせよ、裁判所の事務量は提起されている各種事件の件数と事件の処理状況によって規定されるところでございますので、事件数といいますか、仕事量を離れた一般的な裁判官数というのは、なかなかとらえがたいというところがございますけれども、今回の委員の御指摘を踏まえて、さらにあるべき姿というのを検討し煮詰めてまいりたい、かように存じている次第でございます。
#102
○照屋寛徳君 先ほど法務省から法曹人口との関係で規制緩和のお話を答弁の中で触れておられました。いわゆる規制緩和社会の到来というか実現と法的紛争並びにその法曹の役割についていかなる変化を予想しておられるのか。また、それにどのような具体的な対策を講じようとしておられるのか、そのことについてお聞かせをいただきたいと思います。
#103
○政府委員(山崎潮君) 確かに今規制緩和の施策が講じられているところでございます。また、これが浸透いたしますと、やはり事後チェック型の社会になる、個人個人が自己責任で行動する、そこにはどうしてもトラブルが生じやすいということになろうかと思います。
 もう一点は、ただ規制緩和が行われるだけではなくて、これだけ社会が複雑化、高度化してきております。また、国際化という問題も大変大きな問題でございまして、経済取引だけではございませんで、渉外的な婚姻とか家族の問題もございます。それに伴うさまざまな紛争というものもどんどん広がってくるだろうというふうに思われるところでございます。そういう意味では、やはり法的に物事を解決していく、透明なルールに基づいて解決をするということが求められてきて、その分量も大変ふえてくるだろうという認識でございます。
 また、すべての案件を裁判で行うかということになりますと、必ずしもそうではないだろう。その前にやはり法律家が活躍をして未然に紛争を防止するという役割も大変重要になってまいります。場合によっては裁判以外の準司法機関を利用するという必要性も出てまいりますし、あるいはそういうものの構築をせざるを得ないことにもなるかもしれません。あるいは仲裁の制度を利用するとか、さまざまな紛争の処理形態も考えていかざるを得ない。そこで法律家が活躍するという余地は十分にあるわけでございます。
 これで人をふやしていくということになるんですが、ただそれだけでいいかということにもなるわけでございまして、まさに法曹人口の問題はとにかくふやしていくほかない。しかし、そこには教育という問題がつきまといますので、教育もきちっとしていくということになります。ただ、それだけではなくて、やはり法曹を取り巻く諸制度についてもそれなりの検討をしていかざるを得ないだろう。やはり法曹が足腰を強くして、それで活躍できるような素地を構築しなければならないということでございます。
 それからまた、今度これだけ紛争がふえてまいりますと、国民からのアクセスを容易にする、こういう視点も十分に考えなければならないところでございます。そのために、法務省といたしましては、現在、法律扶助制度について鋭意検討を続けているところでございます。また、弁護士業務につきましても、平成十年度中の懸案といたしまして、弁護士事務所の法人化について今鋭意努力を続けているところでございます。
 こういうようなさまざまな諸制度につきまして、法務省としては必要なものについてはなるべく迅速に検討して制度化していきたいというふうに考えているところでございます。
#104
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 裁判所の観点から委員の御質問にお答えしたいと思います。
 委員御指摘の規制緩和等に伴いどのような社会状況の変化が生じてくるかにつきまして、なかなか予想困難なところがございますが、いずれにいたしましても、事後的な利益調整や社会紛争の解決のルールの必要性というのが強く指摘されているところでございます。
 裁判所といたしましては、近年の社会構造の変化、経済活動の国際化の進展等によりまして各種の法律関係がますます複雑多様化あるいは高度化いたしまして、これに伴って国民の司法に対する期待がますます高まり、法的な紛争を公正な法廷手続で解決するという司法の役割はますます重要性を増すというふうに考えているわけでございます。
 今回の法曹養成制度の改革も、このような認識のもとで、国民の多様な法的ニーズにこたえていくためにこれまで以上に法曹の役割の重要性が増すという考えに立ちまして、法曹人口を増加させるという趣旨のものでございます。
 裁判所といたしましても、そういう意味で法的な紛争の適正迅速な解決を図るという司法の使命を果たしていくために努力をしてまいりたいと思うわけでございますけれども、もう少し国民の多様な法的ニーズにこたえていく場合の裁判所としての具体的なお話をさせていただきますと、裁判所といたしましては、種々の法的な紛争の類型に応じました適切な対応を行えるような体制づくりが必要である、かように考えております。
 具体的に申しますと、市民間の日常的な紛争について言いますと、今般、新民事訴訟法で新設されました少額訴訟手続の活用を図る、あるいは知的財産権をめぐる紛争というものがございますが、これも同じく新しい民事訴訟法に盛り込まれました特許権等に関する訴えにおける管轄の集中というような手続を活用するというような、さまざまな法的な類型に応じた民事訴訟法にも工夫が凝らされておりますので、これを活用し法的ニーズにこたえていきたいということでございます。
 また、裁判官及び裁判所職員が国民の多様な法的ニーズにこたえていけるように研修制度の充実についても努めてまいりたいというふうに考えておりますし、さらに事件動向に対応いたしまして人的、物的設備の充実、整備についても引き続き努めてまいりたい、かように存じております。
#105
○照屋寛徳君 法曹一元制度についても質問通告しておりましたがちょっと残り少なくなりましたので、この法曹一元制度は長所短所それぞれあるだろうというふうに私自身も認識をしております。しかしながら、この司法権の民主的な基盤を強化して法の支配を徹底させるためには法曹一元制度の導入が望ましい、私はこういう考えを持っております。この問題についていずれまた委員会で議論をさせていただきたいと思います。
 次に、現行の司法修習期間二年、これは何か具体的な弊害が生じておるんでしょうか。なぜ修習期間が一年六カ月なのか。司法試験合格者をふやすことへの対応なのか。それからまた、司法修習の内容、カリキュラムはどのように変わっていくんでしょうか。そのことについてお教えいただきたいと思います。
#106
○政府委員(山崎潮君) 具体的弊害があるのかというふうに御質問いただきますとなかなかお答えしにくいところがあるのでございますけれども、まず修習期間の短縮については、実務修習期間四カ月間、現地の裁判所、検察庁でダブってしまう。この点は修習生を多く受け入れていくということについての障害になる。それがある限りなかなかふやしていけないという点がございます。ですから、その点では四カ月間はやむを得ず削っていただかなければならないということでございます。これは別に弊害ということではないんだろうと思いますが、そういう趣旨でございます。
 それから、残りの二カ月はどうするかということでございますが、これは司法研修所における前期後期の期間を一カ月ずつ短縮するということになるわけでございます。これは長年司法研修所で教育をしてこられておるわけでございますのでさまざまな指導上のノウハウがございます。あるいは科目間でも場合によっては重複して同じようなことを繰り返して教えているという場面もないわけではございません。そういう点をさまざま総点検をいたしました。
 それからもう一つは、やはり時間割りの工夫でございますけれども、現在三時間目の授業を必ずしも毎日全部やっているわけではございません。もちろんセミナーとか入るものはございますけれども、そういうふうに聞いておりますけれども、普通社会人になれば五時あるいは五時半まで働くのは通常でございます。その辺も有効活用をしたい。
 そういうようないろいろな工夫を考えまして、一カ月程度削って新しい理念を入れていってもそれで十分できるのではないかということから短縮をするというふうに考えたわけでございます。
#107
○照屋寛徳君 次に、司法試験合格者増と裁判官の増員計画についてお伺いをいたします。
 弁護士の数は昭和六十二年一万三千四百十二名、平成九年で一万六千三百九十八名。ところが、裁判官は昭和六十二年二千十七人が平成九年で二千九十三人、そんなにふえておりません。検察官も同じでございまして、昭和六十二年千百七十三人が平成九年で千二百四十二名、こういう統計資料がございます。
 私はやっぱり裁判官が忙し過ぎては困ると思うんです。この司法試験の合格者をふやすことによって、弁護士の数だけがやたら多くなって裁判官がふえないということでは困るわけで、裁判官、検察官の積極的かつ計画的な増員を図る必要があるだろうというふうに思っております。とりわけ裁判官が余り忙し過ぎると期日もなかなか入りにくい、それからせっかく和解期日が入っても時間が十分にとれないとか、さまざまなことが言われているわけでありますから、ぜひ計画的な増員をお考えになっていただきたい、こういうふうに思っておりますが、いかがでございましょうか。
#108
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) お答えいたします。
 裁判所の事務量と申しますか、仕事の量は提起される各種事件の件数及び事件の処理状況等によって規定されるところでございまして、事件数を離れて一般的に裁判官がどのくらい必要かということはできないということでございまして、裁判官の必要数の検討に当たりましては事件数といいますか、仕事の量の動向を踏まえることが不可欠になっているわけでございます。
 事件数をもとにしますと、予測という観点から見ますと、まず民事事件につきましては、御案内のとおり、昨今の事件数の推移、社会経済状況の変化を踏まえまして今後も増加していくということを予測することも可能でございますが、裁判所全体の事件動向、長期的かつ具体的に予測することは極めて風難なわけでございます。
 また、裁判官の増員につきましては、もう一つ給源の面からも一定の制約があるわけでございますが、このところ修習生の人数の増加が御理解を得て図られてきておりまして、給源の問題もかなり先生御指摘のとおり改善をされております。ただ、任官希望者数が必ずしも修習生の人数と相関関係にあるというか、安定的なものではないというところがあることも御理解いただければと思います。
 今般の改正といいますか、いわば司法試験合格者数をとりあえず一千人の体制にしていただくというお願いをしているわけでございますが、この給源の問題がある程度こういうふうに整ってまいりますと、非常に裁判官の増員の基盤というものをつくっていただいて安定的になってくるということは申すことができるんだろうと思います。
 ただ、過去の経験から申しますと、景気にも大きく左右されるという面もありまして、安定的な任官希望者数の動向というのは予測することはやはり難しいということでございますが、このところ母数としての修習生の数をふやしていただいたおかげで最近は九十名から百名の間の任官希望者を得るということができておりますので、これを前提にさらに千人体制ということで私どもは任官者の確保ということができるようになることについて、相当改善されるということを実は期待させていただいているわけでございます。
 ただ、先ほど申しましたような不安定要素といいますか、不確定要素もございますので、あらかじめ具体的なこういう状況では裁判官がこのぐらいという数字をお示しすることはできないでおる状況でございます。ただ、短射的に申しますと、先ほど申しましたように、増加傾向にある民事事件というものを踏まえさせていただきまして、事件数に必要な人員をぜひ確保したいという観点から着実に裁判官の増員を回らせていただいてきているところでございまして、平成五年から九年までの五年間で六十四人の裁判官を増員させていただいて、平成十年度もこの過去の六十四人の三分の一に当たる二十人の増員を行ったところでございます。
 今後も事件数の動向を踏まえながら適正迅速な裁判の実現を図るために着実に裁判官の増員を図っていきたい、かように考えている次第でございます。
#109
○照屋寛徳君 終わります。
#110
○橋本敦君 私は、まず原則的な問題から確認をさせていただきたいと思っております。
 古いことですが、昭和四十五年五月十三日に我が参議院法務委員会では法曹三者に関する附帯決議を行いまして、「今後、司法制度の改正にあたっては、法曹三者(裁判所、法務省、弁護士会)の意見を一致させて実施するように努めなければならない。」という附帯決議を行いました。私は、これは我が国司法制度の円滑な運営と発展のためには基本的に大事な課題だと思いますが、今回の改正についてもこの立場を踏まえて協議を進め、協議の結果三者で一致した、こう理解してよろしいわけですか。
#111
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘の附帯決議、私ども重々承知はしております。
 三者協議の意義でございますけれども、三者でいろいろ話し合うということは、司法にかかわる施策を立てるということになりますと、その担い手は結局自分たちであるわけでございます。ですから、そういうところの理解をきちっと得た方が将来その施行をするときに非常にスムーズにいくということを考えて行っているわけでございます。
 私どもも委員御指摘のとおりその重要性については認識をして、その結果三者協で合意に達した、こういうことでございます。
#112
○橋本敦君 修習の期間を二年から一年半にするという問題については、私も経験をした者の一人として、二年の方が余裕があってよいという考えは今も持っているんですが、結論として合意されたということでありますから、法案には賛成する立場で質問をしたいわけであります。
 特に、先ほどもおっしゃいましたけれども、二年を一年半にしなければならない特別の弊害があったという問題ではない、法曹の新たな養成という課題に向かって今新しい出発をするということで、いろんな問題で合意をしたということでありますから、弊害があったということが基本的には理由でない、こうはっきり伺ってよろしいわけですね。
#113
○政府委員(山崎潮君) 確かにこの議論をしている中でいろいろ御意見がございました。はっきり申し上げれば間延びしているというふうに指摘された方もおられますし、さまざまな考え方が主張されました。
 ただ、私どもが昨年の五月に一年六カ月案を提案させていただいたわけでございます。それで今回そのことが結果的に合意に達したということでございますが、その理由は先ほど来私が申し上げている理由でございます。
#114
○橋本敦君 理由はわかりました。
 私が聞いているのは、特別な弊害があったからこれを除去しなきゃならぬという議論が核心であったわけじゃないということは間違いないでしょう、こういう確認です。
#115
○政府委員(山崎潮君) 弊害があるということで言ったわけではございません。
#116
○橋本敦君 この問題では、戦前は法曹養成は、言うまでもありませんけれども、それぞれ分離修習でございました。戦後、法曹一元、そして統一修習という新しい民主的理念が生まれてまいったわけであります。そういう法曹三者の統一修習、法曹一元という理念そのものは変更はないということ、この点は変わりありませんね。
#117
○政府委員(山崎潮君) この統一修習につきましては、養成制度における法曹一元ということで戦後取り入れられたものと承知しております。
 私どもも、今回この合意に達するについて、統一修習を維持する、それが大切であるということでずっと主張をしておりますし、その点で法曹三者で意見が食い違ったことはないというふうに理解しております。
#118
○橋本敦君 弁護士会の一部には、その大事な統一修習の理念が事実上崩れ去るのではないか、そういったことで統一修習がなし崩しにされ、あるいはやがて分離修習、官僚的な司法化、ごういつたことになるのではないかという心配からいろんな意見が展開されたことも事実でありました。
 その点でもう一つ確認しておきたいことは、この二年が一年半になったわけですが、最高裁が一年という御提案をなさっていたことも公になっています。この問題について、今後一年半というこの体制は維持をしていく、一年にするということは今は全く考えていない、一年半は守るという合意はこれは合意として確認をしていただいておると思いますが、その点は法務省、裁判所、それぞれにお伺いをしたいと思います。
#119
○政府委員(山崎潮君) 法務省といたしましては、修習期間について一年ということは想定しておりません。
#120
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 将来的な千五百人体制の実現につきましては、千五百人もの修習生に対していかなる形で修習を実施していくかという大きな問題がございまして、この点に関しましては実務修習を中心とする現在の司法修習の枠組みのもとで実現できるのかどうかを初めとした解決すべき事項が多々あるというふうに思っております。
 最高裁といたしましては、当面千人程度に増加する司法修習制度の改革を行った上で、その後の修習の内容や方法の改善、司法修習生の受け入れ態勢、弁護士に対する需要や社会の法的ニーズの動向等について調査検討を継続して、その結果を取りまとめて改めて三者協議で協議すべき事項であると考えておりまして、委員お尋ねの修習期間をさらに一年に短縮するかどうかというような問題につきましては、現時点では論ずることはいかがであろうかと考えているところでございます。
#121
○橋本敦君 論ずることがいかがであろうかということは、将来論じますよと、こういう意味ですか、はっきりしてください。
#122
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 千人程度の修習をこの法案が成立したときには実現させていただきまして、その結果を踏まえてあるべき修習のあり方ということを検討すべきであるということで、そういう千人体制が始まっていない現段階で、さらに将来の修習期間というのはこの段階で論じるのは困難ではないだろうかと考えている、こういうことでございます。
#123
○橋本敦君 三者協議で期間の点について何を合意されたんですか。一年半に反対したんですか。
#124
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 三者協議では、一年六カ月が千人体制のもとにおける修習期間として国民の負託にこたえる期間であるというふうに合意されたところでございます。
#125
○橋本敦君 はっきりそれを言えばいいじゃないですか。
 ところで、これから我が国司法のあるべき姿、国民の期待にこたえてどう法曹を養成していくかという大事な論議がきょうなされるときに、午前中にも質問が出たんですが、私は非常に残念なのは、きのうの夕刊に「元検事、証券会社から接待」、大蔵省証券局・監視委員会出向中の出来事として大きく報道された問題であります。
 最近、検察官の数がふえてきたということを刑事局長もおっしゃいましたが、私はそれ自体は結構だと思っております。日弁連がまとめた資料によりましても、検察官については、検察官が今後力を入れるべき問題として汚職、脱税事件等の摘発、これは国民の期待にこたえてやるということで、それ自体大事な課題として国民からも支持を受け、そういうことを念頭に置いてやりたいという意気込みを持つ人たちもふえて、世論調査の全回答者の六八%が、検察官が今後力を入れるべき課題としてこうした社会的不正の摘発を挙げているという報道があります。まさに正義の検察官を国民は期待しているわけです。
 その検察官が、今私がお話ししたように、証券行政を監視する証券取引等監視委員会に出向中に野村証券から飲食の接待を受けていたということが明らかになったことは、まさに検察官のあり方としてゆゆしき問題ではないか。
 出向中といえども、これは出向中ですから検察官の身分は失っていないんでしょう。官房長、どうですか。
#126
○政府委員(但木敬一君) 委員御指摘のとおり、東京地検から証券取引等監視委員会に出向した検事でございますので、検事の身分そのものは持っております。
#127
○橋本敦君 証券取引等監視委員会は、当然、証券会社を監督する責任がありますね。ですから、監督される側から飲食を受けるということは普通検察庁では考えられないことでしょう。被疑者からごちそうを受けるなんて考えられないことですよ。監視委員会に行って、そういう者に接待を受けるということが平然とやられるということは一体何ということか、そういう疑問を国民は持たざるを得ません。
 しかも、この問題については、この検事は一人だけではなくてもう一人いた、つまり二人だという報道がありますが、事実ですか。
#128
○政府委員(但木敬一君) そのような報道がなされておりますし、それについても事実であると思いますが、現在それらの件につきましては調査中でございますので、現段階では詳細はわかりません。
 ただ、そのとおりであるというふうに承知しております。
#129
○橋本敦君 しかも、私が問題だと思いますのは、法曹養成について論議をするこの委員会ですが、司法修習のあり方についていろいろ議論しなきゃならぬところでしょう。
 例えば、司法修習生指導要綱によりますと、司法修習生の修習については、学識の深化、その実務への応用とともに、一般教養を重視し、法曹たるにふさわしい品位と能力を備え、かつその社会的使命を自覚させる、こういう指導をしなければならないという司法修習生指導要綱が古くから定められています。
 これは間違いありませんね。裁判所、どうでしょうか。
#130
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法修習生の指導要綱について、委員御指摘のようなことが目的となっていることはそのとおりでございます。
#131
○橋本敦君 それでいいんですよ。
 ところが、新聞によれば、今月の三日まで司法研修所教官をやっていらっしゃった東京地検検事がこの問題にかかわっているというんですよ。こういうことで本当に法曹養成ができるんだろうか。検察庁はこの問題について真剣な反省と徹底的な事実の調査が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
#132
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 大変遺憾なことでございまして、委員御指摘のとおりでございます。
#133
○橋本敦君 私は、この問題について徹底的に調査をしていただきたいと思います。
 報道によれば、野村証券だけではありません。複数の証券会社から十回前後の飲食接待を受けていたという事実が報道されております。そしてこの出向中の三年間に、大蔵省の折衝窓口だった野村証券幹部から数回の接待を受けていたということばかりではなくて、今お話ししたように複数の証券会社ということですから、この点も徹底的に明らかにしてほしいと思うわけであります。
 もう一つ重大なことは、その接待の際に証券局業務課の課長補佐だった榊原氏、これは収賄罪で検察庁が起訴しました。官房長、間違いありませんね。
#134
○政府委員(但木敬一君) 間違いございません。
#135
○橋本敦君 その接待の際にも元検事が同席していたというのでありますから、いよいよもって重大な事案ですね。接待を受けて職務上便宜を与えたかどうか、これからの調査ですが、私は今そのことを言っているのではありません。こういう状態が本当にこのまま許されてよいのであろうかということを私はこの際厳しくこの問題の審議の過程で指摘をせざるを得ないということであります。
 この問題については法務省としては調査をし、そして大臣もおっしゃったように大変遺憾であるという立場で調査をはっきりさせるということでありますけれども、この調査の結果については当法務委員会にきちっと報告をしていただきたいと思いますが、官房長、いかがですか。
#136
○政府委員(但木敬一君) 委員御指摘のように、この問題は検察に対する国民の信頼に深くかかわる重大な問題と認識しております。したがいまして、きっちり調査した上で国民の批判にたえ得る対応をいたしたいというふうに考えております。
#137
○橋本敦君 検察の名誉のためにも、我が国司法の国民の信頼を確保するためにも、ぜひお願いをしたいと思うわけであります。
 それでは、本論の方に移っていきたいと思います。
 国民的な司法を確立する上で法曹人口の増大ということが今日的ニーズになっていることは言うまでもございません。それを進めていく上で私は幾つかの問題を考えなければならぬと思います。
 一つは、弁護士だけをふやすということであってはならない。いわゆる司法制度の国民的基盤でのインフラを整備するということが大事でありますから、裁判官の増員も、それから施設の整備も、検察官の増員も、そういったことが総合的に相まっていかねばならない、これが第一の問題であります。
 第二の問題は、法務大臣も指摘されましたから申し上げますが、国民から遠くなっている司法を国民にどう近づけるかという工夫を国会と政府の側がやらなきゃならぬ。そのための一つの問題として、私はまず第一に言いたいことは、法律扶助制度を思い切って拡大する。これは英国等に比べて甚だしく低いということはもう予算上何度も議論されて明白になりました。だから、国民の裁判を受ける権利を守るという立場に立って、法律扶助制度をもっと合理的に、政府全体としてどうするのがよいかという検討を進めていく必要がある。
 それからもう一つの問題としては、人権を守るという司法の本来の目的に照らして、先ほども大森議員から議論がありましたが、弁護士がやっております当番弁護士制度で、被疑者段階での弁護人の選任を国選弁護制度の拡充として国の責任でやる方法はないのかどうかこういった問題も国民の側からすれば裁判を受ける権利を拡充するために必要であります。こういった諸問題が今後とも法曹人口の増員と合わせて、国民的司法確立のために国会も政府も一緒になって検討すべき重大な課題だと私は思っておりますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
#138
○国務大臣(下稲葉耕吉君) お答え申し上げます。
 法律扶助制度の問題につきましては、先月の末に研究会から答申をいただいております。非常に少ない金額でございますが、今日まで続けてきていたのは事実でございまして、大体七千名ぐらいの方がその対象になっていたというふうに私は承知いたしております。
 法律扶助制度の問題は二つ問題がございまして、一つは法律扶助制度そのものに法律的な根拠を与える、今実務的にやっているわけでございますが。それともう一つは、やはり金目の問題、金額の問題だろうと思います。せっかく答申もいただいていることですし、あの内容につきましては私どもかねがねこういうようなことで関心を持っていたことでもございますので、今事務当局でも積極的に検討を進めておりますので、できるだけ早い機会に今申し上げました二点について前進するような措置をとるように努力いたしたい、このように思います。
#139
○橋本敦君 被疑者段階の弁護士選任制度について、この問題についての検討は法務省としてはお考えになるつもりはございませんか。
#140
○政府委員(但木敬一君) 被疑者段階の弁護制度につきましては、法務省と日弁連の間でかなり長い間、当番弁護士制度問題として協議してまいりました。このたび日弁連の方でその要綱案というのを出してまいりました。今後は法務省、特に刑事局と日弁連との間でこの被疑者段階の弁護制度のあり方についてさらに協議を重ねていくものと聞いております。
#141
○橋本敦君 そういった協議はさらに進めていただくことを積極的に期待すると同時に、私も努力したいと思っております。
 それからもう一つこの機会にお願いしておきたいことは、身体障害者の皆さん、ハンディキャップを持っている皆さん、胃の不自由な方、耳の不自由な方、こういった方が裁判を受けるということについての特別の手当てと便宜、あるいはそういう方が司法試験を受ける、目の不自由な方で司法試験を受けて合格をして頑張っていらっしゃる弁護士を私も親しいので知っているんですが、こういった面についても法務省あるいは裁判所としても特段の御検討を今後ともしていただくということが私は大事な課題ではないかと思っておりますが、それぞれの御見解いかがですか。
#142
○政府委員(但木敬一君) 司法試験は種々の障害を持っている方々に対しても開かれた試験となっております。例えば視覚障害を有する受験者に対しましては、点字による出題、解答、それから点字の六法全書の準備等いたしまして、また必要に応じて試験時間の延長なども認めておるところでございます。
 また、聴覚障害を有する受験者に対しましても、試験会場における書面による注意事項の告知、あるいは口述試験における筆談による質問というような形で、聴覚障害の方にも受験及び合格が可能であるように扱っております。
 また、身体的な障害がある方につきましても車いすでの受験を認めるなど、種々の配慮を凝らしているところでございます。
 今後とも、こういうさまざまなハンディキャップを負った方であっても意欲と能力に満ちた人たちを法曹界に迎え入れたいという姿勢につきましては、法務省は変わるところはございません。
#143
○橋本敦君 わかりました。
#144
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 身体に何らかのハンディキャップのある方が司法試験に合格した場合には、最高裁判所はすべて採用しているところでございます。
 司法修習生に対する二回試験の関係でどういう配慮をしているかという点について申し上げますが、二回試験の実施に当たって特例を認めるかどうかというのは、規定の上では司法修習生考試委員会の決定事項とされておりますが、これまでの実情を申し上げますと、本人の障害の程度、その他諸般の事情を考慮して最も適当と思われる特例を設けております
 過去の例で申し上げますと、高度の視覚障害者である司法修習生に対しましては、筆記考試の時間延長を認めた上で、考試記録を録音テープに録音してこれを自由に再生させ、答案についても録音したテープを提出させる方法をとるとともに、あわせて司法試験用六法を点訳したもの及びそのメモ作成のための点字タイプの使用を認めた例がございます。
 また、聴覚障害者である司法修習生に対しましては、口述考試において質問や解答を筆談で実施し、かつ時間延長を認めたものなどがございます。
 これらはいずれも他の健常者と同様に通常の方法及び時間内で実施することになりますれば本人に著しい不利益が生ずるため、それを防止するための配慮でございます。また、これら特例を認めた修習生につきましては、いずれも二回試験の考試の際に合格と判定され修習を終了しております。
#145
○橋本敦君 今後ともそういった方向での一層の配慮をお願いしておきたいと思います。
 時間がなくなりましたから最後の質問に入るんですが、現在、司法試験については民間にLECなどという大変な組織がありまして、九六年度合格率九〇%ということで、ほとんど大学教育よりもこちらに行って受験をして合格するという傾向が強くなっている。こういうことでいいのだろうかということが一つは重要な問題であります。
 例えば、司法試験法の一部を改正する法律案に対する平成三年の参議院法務委員会の附帯決議では、「法曹養成制度における大学教育との関係及び司法修習制度の在り方については、大学関係者及び法曹三者の密接かつ有機的な協力の下に検討を進めていくこと。」というような附帯決議がしてございます。これは非常に正しい附帯決議ですね。
 ですから、大学で法学教育を学び、大学で大学生として豊かな大学生活を送り、そこで教養も身につけ、そして社会に育っていく一環として法曹になろうというその道が、大学教育から違ったところの特別のこのようなLECという司法試験合格だけを目的としたところに行かなければなかなか通らないというここのところの問題は、私は、この附帯決議から見ても大学教育との関係から見ても、新しい法曹養成という意味で検討すべき問題があるのではないかと思うんです。
 その一つの問題として、例えば短答式試験問題がございますが、これなどは問題の難易度、出題の範囲等に関して正確な情報がなかなか入手できない。ところが、ここへ行けば多年の経験から積み上げたものが収集されているから、そういうことが知りやすいということでつい行くということもあると私は聞いておるんです。
 だから、一つの方法として、短答式試験問題を公表するということを思い切ってやられれば、それはどこの大学の大学生でもわかるんですから、それを一つの参考として勉強することも可能になるでしょう。
 いろんな方法で大学教育と司法試験を受けて立派な法曹になるという道を附帯決議にあるような方向で協力しながらやっていかなきゃならぬと思うんですが、この今私が指摘した例えば一つですが、短答式試験問題の公表に踏み切っていただけるものかどうか、今後、司法試験のあり方と大学教育との関係についてさらに検討を深めていただくということをお約束いただけるのかどうかお伺いして、質問を終わります。
#146
○政府委員(但木敬一君) 大学の法学教育との関係というのは今後の法曹養成制度にとって極めて重要な問題であろうと思っております。日本の大学の法学教育というのはゼネラリストを養成するための教育でございます。それに対しまして、裁判官、検察官、弁護士になろうとする者にふさわしい知識と応用能力という話になりますと、これはゼネラリストではなくて一種の専門家、プロフェッションとしての教育を必要とするわけでございます。正直申し上げて、その間にギャップがあることは否めないところでございます。それを補完しているのが、昔は大学内に設けられていたクラブ、いろいろなサークルでございます。ところが、現在ではこれをまさに一つのビジネスとして専門的に扱っている大きな予備校があるというのが現状でございます。
 したがいまして、我が国の司法試験合格者の六割あるいは七割が何らかの形で予備校に通って勉強せざるを得ないという状況を抜本的に変えるとすれば、まさに法学教育のあり方と司法試験との関係を考えなければならないということになろうかと思います。
 先ほど短答式の試験問題の公表という問題がございましたが、恐らくそういう問題では解決ができない。現状を申しますと、短答式の問題につきましては、短答式の試験が終わりますとそれほど時間がたたない間に復元されて出てまいります。それは有名予備校全部でありますし、また受験雑誌にもそういうものが書かれます。それは短答式の試験問題であるとは考査委員会議ではもちろん言っていないわけですけれども、出題したものと非常に近似したものが復元されているということもまた否めないところであります。それを公表するしないというような、あるいは試験のやり方というようなことで恐らくこの大きな問題は解決はできない。
 ですから、将来に向けて、法曹三者もさることながら国民的課題でもございますので、大学の意見も聞き、そして広くいろいろな人々の意見を聞きながら考えていくべき大きな問題であると認識しております。
#147
○橋本敦君 終わります。
#148
○平野貞夫君 朝から司法の機能を整備する、特に法曹人口をふやす問題につきまして当委員会のそれぞれプロフェッショナルの先生方からお話をずっと聞きまして、大変勉強になりました。印象に残りましたのは法務省と最高裁判所の方の自信あふれる答弁でございましたが、私はほぼその答弁も納得いたしました。
   〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕
 特に科目を六科目にする、これは六法全書の六法のことかどうかは知りませんが、いろいろ御意見がありましたが、医師国家試験でも専門的な科目というのを選択する余地はございませんで、試験に通ってからやはり修習の中でしかるべきものは勉強していただくという方針でいいと私は思います。問題は、試験に受かるということと修習をするということがこの法体系からいきましても分かれていますね、司法試験は法務省でやって修習は裁判所の中でやる。ここがスムーズに一体化しておれば、先生方の御指摘の御懸念も少しは解消するんじゃないかと思います。
 変な話ですけれども、この二つの法案が提出されて、私のところの自由党も趣旨説明要求でいわゆるつるしたわけでございます。この司法試験関係の法案をもう話がついたから付託してくれというふうに私が担当の議運の先生や事務に言いましたら、司法試験しかおろさないんです。それで、どうしてそうなんだと言ったら、司法試験というのはこれだけでしょうと言うわけです、裁判所法は別のものだと。これ、一般感覚からすれば、本当に司法の機能を整備すると言うなら、司法試験及び司法研修所法というもので一本化して、できればやっぱり法務省でかっちりとした管理と修習をやるという仕組みはつくれませんか。
#149
○政府委員(山崎潮君) 大変悩ましい御提案であろうかと思いますが、そもそも戦後、司法試験と修習のあり方をどうするかという議論があったようでございますが、戦前から修習に関しては裁判所を中心に行っていたということと、戦後三権が独立したわけでございますが、そのときにやはり裁判所は司法の中心を占めるということから裁判所の方に修習生の教育をお願いするというふうに決まったようでございます。
 では、試験はどうしてかということでございますけれども、試験はいろいろな学者とか実務家を巻き込んだ一種の行政的なというか、ほかの各種試験がございますけれども、こういうものについても所管はみんな行政庁で行っております。そういう慣例に従ったということで分かれてしまったといういきさつにあるようでございます。
 ただいま委員御指摘のような考え方は私も時々御意見としては承っております。今後この法曹養成問題につきましては、先ほど来出ておりますけれども、大学教育と法曹選抜の試験、それと修習、この三者一体の問題、ここをもう一度きちっと議論していかなければならないだろうということでございまして、実は昨年の十月二十八日に合意いたしました三者の合意書の中にも、これは合格枠制をきっかけにしているわけでございますけれども、法曹選抜のあり方について抜本的に見直していこうというくだりも合意されておりまして、今委員御指摘の点につきましても一つの御提言として我々としても一応考えてみたい。ただ、裁判所の方のお立場もございますので、私ども現在の段階でしかと申し上げることはできないわけでございます。
#150
○平野貞夫君 わかりました。
 それと、高齢者と言うとちょっと悪いですが、結構年齢が高くなきゃ司法試験に合格しない。したがって、労働法でも行政法でも勉強する時間的なものもなくなるということがあると思いますので、やっぱりできるだけ若い方が合格しやすい一つの状況というものも必要かと思います。
 私は率直に言いまして、専門家じゃございませんので素朴な質問しかできませんが、現行の科目制度に変わったのは昭和三十六年でございますか、いわゆる法律の専門科目としましては。昭和三十六年以降のことで一つ思い出すのは、ロッキード事件のときに問題になりました鬼頭さんという判事補がおりましたね。あの方はこの三十六年ごろ司法試験に通ったんです、パスしたんです。この科目が変わって、制度が変わって通った人なんです。私は同期生ですからよく知っています。したがいまして、制度を変えるときにはいろいろ問題が起こると思うんです。これは気をつけていた方がいいと思います、人もふやしますから。
   〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕
 それで、私、素朴なことを申しますと、彼が通ったことで、一体司法試験の制度というのは何だろうと、事件を起こす前からもう思っていました。昭和三十年代というのは特殊な時代ですからいろいろあるでしょうけれども、通る方のほとんどは立派な人格と見識をお持ちの方でしょうが、時たまああいう方がいる。あれで私は最も難関である国家試験の一種の権威というのが非常に落とされたと思います。これは答弁は結構でございますが、よくよく人格、人間の価値観、人生観、余り思想に立ち入るわけにはいきませんでしょうが、これは科目のこういう制度を改革した後というのは起こり得ることですので、くれぐれも注意してひとつ運営していただきたいと思います。
 それから、私の体験で申しますと、七、八年昔になりますか、衆議院のことですが、国会の審議を通じて贈収賄事件というのが発生した。例えば撚糸工連事件とかリクルート事件なんかがそうなんですが、そういったときに地検特捜部から連絡があって、私はその窓口をやっていたんですが、若い検事が来まして、国会の運営とか会議録とか質疑の状況なんかをいろいろ聞かれるわけです。そのときに感じましたのは、もちろん憲法も勉強されて試験に通ったんでしょうけれども、余りにも統治といいますか国家運営の原点のことについての常識というのがない。
 例えば、企業に頼まれて国会で質問する、そのこと自身が悪いと言うんです。あるいは団体に頼まれて国会で質問する、そのこと自身が悪いと言う。冗談じゃない、そのことを通じてお金をもらうとかなんとかということが起こる、そこに犯罪が生ずるわけであって、それだったら議会は機能しないぞということを私らは言うわけでございます。あれから十年近くたっていますからもうそんな人はいないと思いますが、非常に若い検事さんたちがそういう世間の一般常識といいますか、本当に条文の読み方しか知らない。それは若いですから研修していかれるわけでしょうが、しばしばそういう経験に遭って私は唖然としました。
 今後、新しい社会のニーズということで司法機能の整備をするわけでございますが、修習の際には、一般教養というより国家公務員として、これは司法試験を通った人だけでもないです、各省のエリートと言われる人ほど国会の本質的機能について理解していない。逆に言うと、国会の本質的機能を理解したら試験に通らないんじゃないかというぐらい一種の画一的思考です。ですからいろんな事件が官僚の世界で起こって、これは教育の問題だと思います。(「国会法が選択科目じゃないからだよ」と呼ぶ者あり)国会法というのは戦時国際法みたいな部分がありますので難しいと思いますが、その辺の教育をよくやっていただきたいということを要望しておきます。
 ほとんど要望の話になるんですが、先ほど大森理事から弁護士過疎の問題が出ました。私は高知県土佐清水という日本で一番過疎の生まれでございまして、中村市、宿毛市、あの周辺を入れて約十万人ぐらい人口がおるんですが、弁護士さんの仕事ができる方が一人しかいないんです。これも裁判官をやめられて高齢の方でございまして、非常に法律的な仕事が多くなっているときに困っております。
 ところが、土佐清水市からは伝統的に、例えば人権問題の森川金寿先生とか、松川事件の主任弁護士をやった岡林辰雄先生とか、そういう物すごい著名な弁護士が出るところです。今でも弁護士の方たちは結構出ていますけれども、全く帰らない。
 これは法務省に言ってもしようがないことかもわかりませんが、やはり国民の法意識、それから義務教育も含めた、やっぱりこれから法の支配ということについて我々も目覚めにゃいかぬわけですので、何とかいい知恵を出していく。例えば高知市だってそんなに多くはいません。それでお金持ちは、例えば大きなパチンコ屋で脱税問題が起こった場合には大金出して東京から弁護士さんを呼んでやっておるわけなんですよ。地域による弁護士過疎の問題は僕ら一種の人権問題じゃないかと。ここの問題を一つ提起しておきますので、ひとつ御検討いただきたいと思います。
 それから、各専門の先生方がほとんど質問なさっているものですから、何かとっぴな質問をして申しわけないのですが、司法制度の整備ということになりますと、私は最終的にはやっぱり憲法をどういうふうに見ていくかという問題に突き当たると思います。政治改革の問題で、いわば国会制度、議会制度も本当に新しい社会のニーズに対応するためには憲法を見直さにゃいかぬ部分がございます。
 国会の場合ですと、憲法に規定していろいろんな言葉、技術的なことも含めて大体二十カ所ぐらい変えてもらわなきゃ何かあったときに運営できなくなるような問題があるわけなんです。司法制度はそれほどではないと思いますが、例えば、三権分立を規定していると同時に、お互いに三権はチェックし合えということも憲法の要請だと思いますが、私個人の意見としましては、行政と立法は相当チェックし合うわけですが、憲法解釈権を持っている司法が腰を引いているといいますか、積極的に憲法問題について入ってこない。そういう意味では現憲法の趣旨を十分生かし切っていない部分があるというふうに私は思いますが、質問の通告もせずに失礼でございますが、何か大臣の御所見がありましたら。
#151
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 最高裁に御質問なさればと思うのでございますが、大変大きな問題だと思います。私自身もいろいろそういうふうなことで考えていること等もございます。
 国会、内閣、それから裁判所、いろいろ比べてみますと、やはりそういうふうな面から取り上げてみましても、裁判所の方をもう少し高く評価してもらわぬといかぬところがあるんじゃないかなというふうなことで、かつてその辺に座っておりましたときに問題にしたこともございます。最高裁の長官とも今お話のような問題も含めましてまた十分お伝えし議論してまいりたいと思います。
#152
○平野貞夫君 大変失礼しました。
 私、いろいろお話をお伺いしていまして、司法制度のあり方の根本問題というのを我々政治家は真剣に考えなきゃいかぬと思います。その際、やはりこれは憲法を変えなきゃできないことでございますが、憲法裁判所といいますか、そういうものをつくることによって、数がふえ質も複雑になる刑事、民事事件がかなりスムーズにはけるようになるのではないか。そういう意味で、行政の問題も含めてそういう根本的な仕組みがえを議論する時代ではないか、こういう考えを持っております。
 これにつきまして、私は大臣のお立場でお答えは求めませんが、根本的に司法の機能を、この二十一世紀、しかもグローバリゼーションの中で日本でいい制度をつくろうと思ったら、ぜひそういう視野で奥深く幅広くひとつ検討すべきではないかという希望を申し上げまして、終わらせていただきます。
#153
○山田俊昭君 二院クラブの山田です。よろしくお願いします。
 先ほどの橋本先生の質問のちょっと続きみたいなことを関連でお聞きしたいんです。いわゆる司法試験の問題のディスクロージャーを先生は質問されたけれども、答えが十分返っていないので改めて聞きますが、司法試験の択一問題とか論文試験の問題がなぜ公表されないんでしょうか、お尋ねをいたします。
#154
○政府委員(但木敬一君) 御案内のとおり、司法試験は、裁判官、検察官あるいは弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする試験というふうになってございます。その試験の中には第二次試験というのがございまして、第二次試験には短答式試験、論文式試験、口述試験、この三段階がございます。
 委員お尋ねの短答式試験の試験問題を公表しないのはどうしてかということでありますが、これは相当以前からそういう要望が寄せられておりまして、それについて法務省の中で、特に司法試験の考査委員の中で大分論議を重ねてまいりました。
 結局、現段階における結論としては、問題を公開すれば受験者がこれを手がかりに過去の問題を繰り返し勉強して、知識の詰め込みや受験テクニックを身につけることに精を出す傾向を助長するんだと。それは短答式試験という試験方法そのものが持っている宿命でもあるんですが、試験の中身が過去と全く違うものを出すのにみんな知恵を出すんですが、非常に難しいんです。それで、これまで過去出した問題をこれが過去出した問題ですというふうに全部公表すると、結局それを全部覚え込まれてしまう危険があるということなんですが、正直言って短答式の試験問題は、先ほど答弁申し上げたとおり、短答式の試験が終わりますと数日のうちに受験予備校あるいは受験誌上でその問題がかなり近い形で復元されて、それについての解答まで出されるという状況になっておるわけです。
 そういう状況を踏まえて、かつこれからいろいろな情報公開等が非常に強く要請される中で、なお現在の方針を維持していくべきかどうかについては検討の余地があるというふうに思っております。
#155
○山田俊昭君 検討の余地があるんじゃなくてぜひ公表へ向けて、今お聞きしていると、問題を公表しない理由として納得できる話は一つもないんです。むしろ、逆に過去の問題を覚えられると困ってしまうと。司法試験を受けようと思う人は、司法試験を受けて合格するにはどうしたらいいかという手がかりは過去の司法試験の出題問題や傾向を調べなくして向かえないわけであって、官房長が今お答えになったのは全く逆のような気がいたします。
 先ほど橋本先生がおっしゃっているように、いわゆる司法試験の予備校が学生に五問ずつ記憶させるんですよ。どうしてあれすぐ翌日復元できるかというと、受験生に試験科目を全部署り当てて覚えさせてきているんです。それで出てきたのを復元している。そんなばかなことがなされているという現状を見れば、一刻も早くその非を改めて国はこの司法試験の問題を公表するという姿勢になられるべきだと思うんです。ぜひぜひそうしていただきたいことを強く要望するものであります。
 そして、司法試験受験生の中には本当に人生をかけている人がいるわけで、これはやはり法務省としてのディスクローズをぜひお願いしたいんです。受験したときに、合格した人はいいんでしょうが、落ちた人は、私は何点で落ちたんだろう、どうして落ちたんだろうという理由が知りたいですね。次の合格へのステップ、来年は合格するためにはどういう勉強をしたらいいか、なぜ落ちたかを知りたいわけでありますから、択一試験であればせめて合格点数が何点で受験者が何点で落ちたかぐらいは教えるというか公開するということをぜひぜひしていただきたいんですが、この点はいかがでしょうか。
#156
○政府委員(但木敬一君) 委員御指摘のように、受験生はこの受験に人生をかけている方々が非常に多い、それは私たちもそう思っております。その受験者にとって、今後も受験を続けるべきかあるいはあとどのくらい勉強しなければならないか、あるいは転身を図るべきか、それらの選択が的確にできるようにいろいろな情報を与えるべきであるという御主張もそのとおりだと思います。
 現在、論文式についてはABCという方式で、あなたは今どの辺の位置にいますということはお知らせするようにしております。今後とも受験生に有用な情報、つまり、受験生が自分の次の行動を決断するために必要な情報であって司法試験の制度になじむものについては、今後ともそういう情報を受験生に与えていきたいというふうに考えております。
#157
○山田俊昭君 その司法試験問題、いわゆる自分の試験の結果に対するディスクローズをぜひぜひお願いいたします。
 私は落ちこぼれ人間でして、相当受験回数受けて合格してきた者なんですが、いわゆる司法試験にのめり込んだために人生を棒に振ってしまった人間の人権の保障という問題、これは法務省にお尋ねするとちょっと的外れかもしれませんけれども、先ほどの問題開示によって、自分がどの程度勉強すれば可能なのか、あるいはいつまでやってももう受からないかの判断はできるわけでしょうけれども、やはり司法試験をやるとなかなかあきらめ切れないところがあるわけであります。
 生活の問題もありまして、どこかに就職する、特に行政、市役所とか区役所とか何かに勤めまして司法試験の勉強をしていると、相当強い圧力がかかる、やめろという圧力がかかる。あるいは司法試験を勉強していると、どこか一般の会社を受けると、自分の会社に対して労力を全部つぎ込んでもらえない、いわゆる腰かけ的な就職だという前提で入社を断られるということが非常に多いと聞いているわけであります。
 そこら辺のところ、どうして司法試験受験生が一般の企業、行政官庁で嫌がられるかという理由、何かあるものを見たら、司法試験受験生は理屈っぽくて視野が狭い、独立心がないという先入観がある、精神異常だというレッテルを張られてしまう、司法試験を何回も受けているとちょっとおかしいんじゃないかというような目で見られてしまう、司法試験受験生というのは無為徒食のやからだ、誇大妄想だというような理由づけが業者、企業の中であるんだそうであります。
 これは法務省にお尋ねするのもあれですが、法務省の人権擁護行政の一つとして何か考えてやってもらえないかということなんです。例えば何年か受けて、ここまでカウンセリングしてやる必要が法務省にあるかどうかなんだけれども、何らかの人権擁護、法務省における何らかのケアのシステムができないかという点をちょっとお尋ねいたします。
#158
○政府委員(但木敬一君) 大変難しい御質問でございます。
 ただ、私どもが言えることは、確かに長期間の受験にのめり込んでしまってその人生をかなり大きく空費してしまう人もおられる、それを後から空費だと感じてしまう人がおられる。一つの問題としては、従前の司法試験では、本当に長期にわたって予備校通いをして人生を過ごさなければ合格しない。合格するのは言ってみればその年その年の運というような問題で人生を重ねていかなければならない状況というのはあったと思います。その状況については、少なくとも合格者増ということと合格枠制というその二つの併用によってある程度、つまりその道の資質がある人はそれなりの年限で受かれるようにはなったと思います。
 しかし、それだけですべての受験者について救済できているのかといえば、やはりそうではなかろうと思います。先ほど委員御指摘のように、どこかの段階で、自分は一体このまま受験を続けたらいいのだろうか、それとも転身したらいいのだろうか、その判断をするについて有用な情報は法務省としてもできる限り受験生の方々に提供して、受験生の方々の次の決断というものに対する何らかの資料を与えていくということも一つの方法だと思います。
 ただ、受験者そのものに対して人権擁護局が例えば何かできるかと言われますとこれは非常に難しい話ですし、そういう受験者に対して個別救済が何かできるかというとそれも非常に難しい話であろうと思います。私どもができるのは、先ほど申しましたように、資質がある人はできるだけ長期間の受験をしないでも受かるようなものにしたいということと、その適性を彼自身が見きわめるために有用な情報を提供することによって自律的な判断を助けてあげたい、こういうことだろうと思います。
#159
○山田俊昭君 よろしくお願いいたします。
 合格者の平均年齢は最近二十九歳から二十六歳になったということですが、受験生の平均年齢といいますか、最高どれくらいで、最低は在学生だろうと思うんですけれども、受験者の平均年齢、わかったら教えてください。
 そして、受験回数の一番多い人、平均的に何回くらい受けて合格しているか、わかったらそこら辺も。
#160
○政府委員(但木敬一君) 平成九年度の論文式試験の合格者につきまして、まず年齢別の色分けを申しますと、二十四歳以下の人が三百八名、二十五歳から二十九歳までの人が三百七名、それから三十歳から三十四歳までが九十二名、三十五歳から三十九歳までが二十九名、四十歳から四十四歳までが九名、四十五歳から四十九歳までがゼロ、五十歳以上が一となっております。
 受験回数で申しますと……
#161
○山田俊昭君 合格者のあれを言っていないですか。僕が聞いているのは受験生の平均年齢。
#162
○政府委員(但木敬一君) どうも突然の御質問で、なかなか出なくて申しわけないです。
 受験者で申しますと、新規受験者が四千七百八十一名、二回目の受験者が二千九百十一名、三年目が三千六十八名、四年目が二千四名、五年目が九百四十七名、六年目が一千四百五十名、七年目が一千百十九名、八年目が九百六十一名、九年目が八百九名、十年目が六百四十六名、十一年目が六百五十三名、十二年目が五百二十二名、十三年目が五百二名、十四年目が五百十二名、十五年以上が二千七百七名でございます。
#163
○山田俊昭君 今聞いて、司法試験受験浪人の人権というか、大変な労力、これはむだとは言わないんですが、合格してその能力を発揮できる地位が与えられればいいんですが、そうでなく、今も悶々と受験生活をしているという人を多々知っているだけに思うんです。法務省は口癖のように若くて優秀な人材確保と。いわば年齢が低くなるということが大きな前提で、若いにこしたことがないということなんだろうと思うんですけれども、私は、法曹、検事、裁判官でもある程度社会経験を積んだ人がなって、大岡越前だとか桜吹雪を出すんじゃないんですけれども、社会的ないろんなことを経験した人間が裁判官になったり検事になったりするのは非常にいいことだと思うわけでありまして、ただ若年化を目指した人材確保という観点はちょっと変えていただければありがたいなという気はいたします。
#164
○政府委員(但木敬一君) 委員御指摘のとおり、年齢ということだけにこだわって法曹養成全体あるいは検察官任官者というようなものを考えてはいけない、そのとおりであると思います。
 現に、検察官になった方でも、三十歳をかなり過ぎた段階から検察官になられて、本当に生きがいを持って検事生活をやられた方ももちろんたくさんおられますし、決して年齢によって考えるべきではない。法務省は音から若くて優秀なというふうに言っていたという御指摘ですが、法務省としてはそういう考えではなくて、受験予備校等に通い続けるような期間はできるだけ短い方がいいというふうに一貫して申し上げてきたと思います。
 したがいまして、いろいろな社会経験を積まれた方が司法試験を受験なさって入ってくる、銀行に勤めた方、あるいは教職員の方、スチュワーデスの方、あるいはお子さんを持たれた主婦の方、これらの人々が入ってくるというのももちろん法曹にとって多様性をより深めることであって、非常に喜ばしいことだというふうに考えております。
#165
○山田俊昭君 今のお答えを聞いて、年齢のことは余り考えられていない様子ということで安心をいたしました。
 次に、きょう朝から元検事の接待汚職という問題が出てきているんですが、私はここで法曹人の倫理という問題をお尋ねしたいと思うんです。倫理というのは、法律以前の道徳とかというのは、別にこれは教えて教えられるものではない、みずからによって培われていかなきゃならないと思うんです。
 政治家の倫理が今問題になっているんですが、法曹人の倫理というもの、先ほど示されたように、司法試験に合格するためには相当な年数がかからなきゃ合格しないという試験制度であります。青春を棒に振って、いろんな読みたい本も読まずに法律書物に日夜かじりつかなければ受からないわけであります。極端な例ではないんですが、我が友も敵に見える、これが落ちればおれが受かるんじゃないかと、私は実際そう実感して司法試験を受けたので、非常に問題な受験生かもしれませんけれども、過酷な試験だとそういう気持ちすら持ってしまう。
 そういう人たちが必死の思いで、倫理観も何もないとは言わないけれども、勉強いらずに来た人間が司法試験に合格して修習生になるわけですけれども、試験段階で倫理のテストはもちろんないわけです。研修所に入って法曹倫理としての指導、教育がどの程度行われているのか。司法試験のいわゆる教養と違うんです。教養はいろんな形であるんでしょうけれども、いわゆる倫理というものに対する倫理観の植えつけ、法曹人が持たなきゃいけないものを最低限度教育する、これだけはやらなきゃいかぬということは、修習のカリキュラムに入っていたかどうかちょっと記憶がなくなってしまっているんですが、ここら辺のところは非常に大事なところだと思うんですが、いかがでしょうか。
#166
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法研修所における教育の問題でありますので、私どもの方からお答えいたします。
 司法研修所での司法修習生の修習の目的と申しますのは、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官または弁護士にふさわしい品位と能力を備えさせるところでございます。そこで、司法研修所では、前期及び後期において、法曹の職務を遂行するに当たって要請される法曹としての倫理を身につける機会を設けているところでございます。
 この問題につきましては、新しい修習のもとでも次のような配慮をいたしたいと考えております。すなわち、前期修習及び後期修習において、法曹の職務を遂行するに当たって要請される法曹倫理を修得させるため、法曹倫理教育を強化すみことを考えております。これは講義及び事例研究によって構成されることになろうかと思いますが、その内容につきましては、法曹三者に共通する倫理、それから法曹三者それぞれの固有の倫理に関するものに分けられるかと思います。
 その核の部分はある程度明らかでありまして、例えば日弁連の弁護士倫理などが参考になるわけでありますが、基本的な概念といたしましては、誠実、公正、廉潔、司法過程への忠実義務、司法改善への協力義務等でありますが、こういう概念を享受し修得させることなどが考えられます。さらに、法曹の先輩の信条でありますとか体験等の講話を聞かせるような内容の講義も有効であると考えておりまして、この点はさらに国民の負託にこたえるようにカリキュラムの編成に当たっては努力してまいりたいと考えているところでございます。
#167
○山田俊昭君 倫理という非常に難しい問題で、法曹養成の理念が国民の負託にこたえられる法曹を養成する、国民の負託にこたえられる法曹とは何か、広い視野と高い識見と柔軟な思考だと、こう御答弁なさっているんですが、それらを培う教育というのは非常に難しいと思うので、これはもうどうしろああしろという具体策はないわけだろうと思うんです。
 やはり研修所の教育、弁護士になったり、それぞれの任官してからの倫理観の植えつけというのはもちろん終生やらなきゃならないとは思うんですが、難しいところだと思うんです。二年が一年半になってそんな時間がとれないかもしれませんけれども、ゆがんだ受験生活とは申しませんけれども、社会を余り知らない人間がようやく研修所へ入ってまいります。そういう人たちに正しい法曹への道をぜひ修習期間に植えつけてやっていただければ幸いかと思います。
 次に、まだ多少時間があるのでお尋ねするんですが、日本で法曹資格を取得する場合は、司法試験に合格して司法修習二年を終えて法曹資格を取得するわけですけれども、外国、先進国だけで結構でございますけれども、法曹資格の取得要件と申しますか、そして司法修習制度を採用している国が何カ国ぐらいあるのかということをお尋ねいたします。
#168
○政府委員(山崎潮君) 外国の四カ国についてちょっと御紹介をしたいと思います。
 アメリカにつきましては、もう皆様方御存じのようにロースクール方式を採用しております。大学院等に設置されているロースクールに入学するわけでございますが、そこで三年間の勉強をするわけでございます。もちろん最後に試験がございます。そこで卒業をいたしまして各州の弁護士会で法曹資格付与試験というものに合格して初めて弁護士になれる、こういうシステムをとっているわけでございます。
 また、イギリスにつきましては、バリスターとソリシターと二つに分かれるわけでございます。
 バリスターの方は、法曹学院、法律学校、ここに入学をするわけでございますが、これは入学試験はないようでございます。ただ、出るには相当大変なまた試験を通らなければならないということになるわけでございますが、期間はここは一年でございます。それで実務教育修了試験、バリスター資格付与試験でございますが、この試験を通ってバリスターになるわけでございますが、さらにそれから一年間バリスターの事務所で実務研修をする、これによって初めて独立の一人前の弁護士となれる、バリスターとなれる、こういうことになっております。
 また、ソリシターにつきましては、法律学校等におきます教育をするわけでございます。ここは期間は一年でございますが、またその試験を通った後に実務修習、ソリシター事務所で二年間修習をする、こういうシステムになっております。これが終わりますと資格が出てくるということになります。
 ドイツにつきましては、第一次の国家試験がございます。その国家試験を通りまして二年間修習をいたします。ただ、ドイツの場合は司法研修所に相当するものがございませんので、各裁判所とか実務地に配置されるわけでございます。そこで二年間修習を行いまして、第二次の国家試験に合格しますと資格が出てくる、こういう制度でございます。
 さらに、フランスでございますけれども、フランスは司法官の試験と弁護士の試験が別々になっております。司法官の試験につきましては、国立司法学院というところに入学をするわけでございます。そこで司法官試補となって二年七カ月の勉強が必要でございます。この終了後にそれぞれの裁判官、検事というふうに分かれていくわけでございます。
 それから、弁護士につきましては、弁護士研修センターというところに入所いたします。ここで一年間の勉強をいたしまして、そこを試験を受けて卒業して、さらに弁護士補として二年間実務を行う、それを終了して初めて一人前の弁護士となる、こういうような制度をとっているようでございます。
 世界それぞれいろいろな伝統を抱えておりますので、さまざまなやり方をしているというところでございます。
#169
○山田俊昭君 時間が来てしまいましたので終わります。
#170
○委員長(武田節子君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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