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#1
第142回国会 法務委員会 第14号
平成十年四月二十三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     菅野 久光君     千葉 景子君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     照屋 寛徳君     三重野栄子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         武田 節子君
    理 事
                清水嘉与子君
                依田 智治君
                大森 礼子君
                橋本  敦君
                平野 貞夫君
    委 員
                岡部 三郎君
                長尾 立子君
                林田悠紀夫君
                前田 勲男君
                松浦  功君
                角田 義一君
                円 より子君
                三重野栄子君
                山田 俊昭君
                矢田部 理君
   国務大臣
       法 務 大 臣  下稲葉耕吉君
   政府委員
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  山崎  潮君
       法務省刑事局長  原田 明夫君
       法務省人権擁護
       局長       横山 匡輝君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   浜野  惺君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   堀籠 幸男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告申し上げます。
 去る二十一日、菅野久光君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。
 また、昨二十二日、照屋寛徳君が委員を辞任され、その補欠として三重野栄子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(武田節子君) 裁判所法の一部を改正する法律案及び司法試験法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○円より子君 民主党・新緑風会の円より子です。
 多くの会派からいろいろな御意見が出されて十分な審議もされたかと思いますけれども、一昨日、四人の参考人の方においでいただきまして御意見を伺いました。きょうはそれを踏まえまして質問させていただきたいと思っております。
 実は参考人の御意見を伺った後の質疑の中で、ある議員から多分この二つの法案は全会一致で参議院でも通るのではないかというような話がありましたときに、参考人の方たちの中にえっというようなお顔つきをなさった方々が何人かいらっしゃいました。長い期間をかけて専門家の方たちが十分審議をした上でこういった改正案が出てきたと承知しておりますけれども、やはり幾つか問題点がある、そういったことについて前回参考人の方から御意見が述べられたわけです。そういったものをできるだけきょうの審議の中で話させていただいて、法務省や最高裁の方でも、今後の検討として、また今回の改正の中でも改正していただけるものがあればやっていただきたいと思って質問させていただきます。
 今回のこの法律案ですが、長い間我が国では法曹人口が少ないということがあって、裁判所の機能がなかなか国民に開かれたものになっていかない、身近な司法というものからほど遠いのではないか、そういうことが随分言われてきました。まず、法曹人口がなぜ少ないのかということについて、考えられる理由があると思うんですが、そのあたりを最高裁と法務省の両方にお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#5
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) お答えいたします。
 裁判所の方は裁判官の数の観点からお答えをさせていただきたいと思います。
 我が国の裁判官の数が例えば諸外国と比べて少ないのか少なくないのかという観点から御説明いたしますと、裁判官の数が対人口比でいうと諸外国と比べて必ずしも多くない、こういうことは事実でございます。
 ただ、裁判官数を諸外国と比較する場合において、国民が紛争の解決のためにとる方法、訴訟手続の構造、それから裁判所に提起される事件数と各国の国民性や経済条件、あるいは法制度の違いなど、各種条件をも考慮に入れる必要があるわけでございまして、一般的によく言われる単なる人口比のみで裁判官が多いか少ないかということの評価は適切ではないのではないか、こういうふうに思います。
 ただ、法曹人口全体の中での裁判官の比率というものを見てみますと、民事裁判について、いわゆる職権進行主義といって、裁判官が訴訟の進行について主導的な役割を発揮するという建前になっておりますドイツといった国は法曹人口の中に占める裁判官の割合というのは比較的高くなっておるわけでございます。一方、民事裁判について当事者主義といった、訴訟の進行について特に当事者にイニシアチブがある程度広く認められておりますアメリカとかイギリスといった国では法曹人口の割合の中での裁判官の比率は比較的低いというのが特徴でございます。
 ところで、我が国の民事訴訟の構造といいますのはアメリカやイギリスと似通っておりまして、当事者主義を採用しているわけでございますけれども、法曹人口の中に占める裁判官数の比率というのは実はアメリカ、イギリスよりもずっと高くなっておりまして、ドイツに次いで法曹人口に占める裁判官数の比率が高い、そういう状況になっているところでございます。
#6
○円より子君 私は理由を聞いたのであって、ということは少ないというふうに考えていらっしゃらないと考えてよろしいですか。一言でお答えください。
#7
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 外国の法曹人口との割合で考えると、比率としてはむしろ高い方であるというふうになっております。
#8
○円より子君 少ないという理由をお答えにならなかったんですけれども、法務大臣にもお聞きしたかったんですが、後にさせていただきまして、裁判所の方にお聞きしますが、今回の改正では、法曹人口が少ないから改正して増員するんじゃないんでしょうか。
#9
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) 先ほど委員のお尋ねに、法曹人口全体の問題については法務省の問題でございますので、とりあえず最高裁判所といたしましては裁判官の人数の観点からのみお答えした次第でございます。
#10
○円より子君 そうすると、ちょっと質問が後先になるかもしれませんが、過去十年間、また戦後の司法研修所の卒業生数と、その人たちが裁判官になったか、検事になったか、または弁護士その他といった内訳が出ておりまして、昭和六十二年以降は裁判官はほとんどずっと一二%前後、それから検事は一〇%前後というところなんですね。それが昭和二十六年は、戦後すぐですから、もちろん戦後のすぐのころと時代が変わっていることは十分承知しておりますが、そのころは司法修習生のその後は、裁判官が二三・七%、検事が三一・二、そして弁護士が三九・一%という割合でなっていらっしゃる。今は弁護士が大変多くなっているわけです、七五%と。
 そうしますと、法曹人口というときに、また今回七百人ぐらいから千人にふやすのに当たって、修習期間を短くしたりいろいろな改革をするということなんですけれども、結局、弁護士をふやしたいということなんですか。裁判所は裁判官をふやしたいということではないわけですね。
#11
○最高裁判所長官代理者(浜野惺君) お答えいたします。
 裁判所の立場で、弁護士の数をふやしたくて、一方裁判官の数をふやしたくないのかという御質問でございますが、裁判所といたしましても、昨今、特に民事裁判の増加傾向が顕著に見られるのがここ数年の動向でございまして、これについて十分な、国民に利用しやすい、あるいは適正迅速な裁判を実現するという観点から、従前からも着実な増員の努力をしてまいったわけでございます。平成五年から平成十年の間に合計八十四名の裁判官の増員をお願いし増員を図ることができたわけでございますが、今後も特に民事裁判の増加傾向の動向に着目いたしまして、必要な数の裁判官というものを着実にふやしていきたい、かように考えているということがまず前提でございます。
 それはそういうことでございますが、ただ法曹養成制度との関係で、では法曹の人口がふえるということの関係で裁判官の数をどういうふうに考えていくかという御質問も含まれているかと思いますので、その点を若干御説明させていただきます。
 ここ十年以上も前の話から全体的なお話をさせていただきますと、法曹の修習生の毎年毎年の数が例えば五百名あるいは七百名というふうに徐々に多くなってきたわけでございます。それで、修習生の基礎になる数が少ない時期といいますのは、やはりその数だけ裁判官になるという方々がそんなに多くない時期がございました。そういう時期は、仮に事件数がふえましても、ですから増員をお願いしたくても、給源といいますか、ふえた定員を埋めることができない、裁判官になっていただけないという状況にありますと増員をお願いすることができないわけでございます。
 そういう関係で、合格者数が少ない時期は裁判官の在り手というものもそんなに多くありませんでしたので、給源を補充するといいますか、定員を補充する限度を考慮して、それでも目いっぱい事件数の動向に着目して最大限増員をお願いしていたわけですが、それでもその数はそんなに多くないわけでございます。それはやはり充員といいますか給源の制約がございましたので、空定員を抱えるわけにはいかない、空定員を抱えて増員をお願いしますと翌年以降の増員がまた非常に難しくなるというような状況があったわけでございます。
 そういうこともありまして、私どもとしては、給源を千人体制にする、その過程で五百名、七百名、千名というふうに給源をふやしていただいたわけですが、そういう関係で今度は給源からの制約というものは若干改善されるのではないか、そういう観点で、事件数の動向をにらんで裁判官の増員というのが今までに比べて給源のことについては余り考えないでお願いできるようになるのではないか、そういうふうに期待を込めているわけでございます。
#12
○円より子君 前回、裁判官の定員法の改正のときにも質問をさせていただきまして、そのときに東京地裁の例で、単独事件の手持ち件数がこのところの増員によって一時二百七、八十件のところが今は二百四十件程度になっているというお答えもいただきました。確かに事案に合わせて、事件の動向に合わせて増員という努力を一生懸命していらっしゃるのだと思いますけれども、司法修習生を幾らふやしても、合格者をふやし司法修習卒業生をふやしても、定員が何人と決まっているわけですね。
 そうしますと、それ以上ふえないと、ますます弁護士の割合が、今の七五%が八〇とか九〇とかになる可能性だってあるわけで、そのときになり手がなかったら困るからというような消極的な姿勢でやっていらしてはバランスが悪くなって、本当の意味での司法の機能が発揮できないのではないかと考えているんですが、なかなかどうも最高裁の方は、こちらがもっと裁判官の増員をして手続をスムーズにいかせたらどうかと申し上げても、どうもいつもいつも同じような御答弁で、裁判官は大事な仕事ですから、もうどんどん希望者がふえるよう努力し、また定員をふやしますとおっしゃらないんですね。その辺が大変不思議なんですが、そこをやっていては時間がなくなってしまいますので、ほかの質問に移らせていただきます。
 法務大臣は所信表明の中で、これからの司法のあり方というような形で、近年の社会の急激な変化に伴って、さまざまな紛争、違法行為に対して迅速に対応していく必要性が高くなっていますということで、司法が社会的要請にこたえて、これを担うに足りる資質と能力を備えた法曹を十分に確保する必要があるとおっしゃっています。この法曹の中には弁護士だけではなくてもちろん裁判官と検察官が含まれていると思うんですけれども、今のような裁判官、検察官の比率を、やはり合格者をふやしていけばこれもふやしていく必要があると法務大臣はお考えになっていますでしょうか。
#13
○国務大臣(下稲葉耕吉君) お答えいたします。
 法曹三者の体制が現状でいいかどうかという問題がまず一つあります。私は現状でも大変不十分だと思います。それから、将来を展望いたしました際に、いつも申し上げているとおり、国際化が進み、規制緩和が進み、自己責任というふうなことになりますと、事件がふえます。刑事事件についてもそういうふうな方向だろうと思います。そういうふうな中で体制がどうかということは、私どもとしては将来を展望しなくちゃいけない、こう思いますので、そういうふうな意味ではもう大変不十分だと思います。
 一つの例が、たまたま申し上げましたように、例えば弁護士さんにいたしましても、三千三百の市町村の中で二千八百五十六市町村は一人も弁護士さんがおられない。民事事件ですと、少なくとも当事者になりますと一人じゃ済まないと思います。だから、むしろ皆様方のお知恵も拝借いたしたいんですけれども、そういうことをカバーできるような体制なりを考え、あるいはまた国民的な要求というのを受けて一つ一つ解決していかなくちゃいけない、私はこのように思います。
 なるほど、検察官にいたしましても一時欠員がなかなか補充できなかった時代もございます。しかし、御承知のとおり、最近三年間は増員、増員、増員でお願いいたしまして、百名を超える増員を三年間でお願いしているというふうな体制でございます。したがいまして、一つ一つの事件を徹底的に解明して、おざなりにするんじゃなくて、仕事の余裕と心の余裕を持って対処できるような体制というものをつくっていかなくちゃいけない、私はこのように思います。
 そういうふうなことを基礎にいたしまして、一つ一つどういうふうに解決していくかというふうなことで取り組んでまいりたいと思いますし、また先生方のお知恵も拝借いたしたい、お力もお願いいたしたい、このように思います。
#14
○円より子君 それで、財界等の期待もありまして、国際法とかそういった国際社会、経済界で活躍するような弁護士さんも必要だということで、例えば合格枠で随分若い人がふえてきまして、司法試験に受かる年齢もこのところかなり若返っているようです。大臣も質の高い法曹が必要だとおっしゃっていますが、その質ということをはかるのは大変難しいかと思います。本当にただ若いということがいいのかどうかということがあると思うんですね。
 この間の山田先生の御質問の中で、十五年以上挑戦している方がまだ何千人もいらっしゃるというようなことも出て、私も含めて皆さん、ああ大変だなというふうに思いました。
 それで、合格枠というものがつくられて、二年とか三年とか、確かに短い期間で司法試験に通ればいいかもしれませんけれども、ただ若い人だけ優遇するというよりも、例えば質ということでいえば、教育者などにしても、大学出たての先生よりも何年か社会人でいろいろ活躍した人が教師になった方が子供たちの教育にもいいのではないかということもあります。教育と司法は違うと言われてしまえばそれまでなんですが、例えばそういった短い期間での合格枠をつくったら、社会人枠があってもいいんじゃないかということも考えたりするんですね。
 例えば私の友人が、ほとんど私と同世代ですけれども、長い間新聞記者をしておりまして、今も随分活躍しておりますが、その人が今司法試験に挑戦しようと思って頑張っているんです。
 私などもかつて小学校のころに医者か弁護士になりたいなんて思いましたが、でも六法全書を見た途端に私の言語感覚からするととてもこれは日本語じゃないという感じがいたしまして、もう読むだけで頭が痛い、よくこんなのを読める人たちがいるものだと思いました。言葉というのは常に人にわかりやすく平易に書くということをずっと子供のころから言われ続けてきたものですから、わざと難解に書いてあるような法律用語ですとか、それから裁判での判例などを見ておりますと、それだけで取っつき悪いという感じがいたします。人々に身近な司法というのは、法曹人口とか機能とか運営の仕方とかそういうことだけじゃなくて、言葉の問題等もあるなどいう気もするんですが、そういったことから考えても、試験科目自体、本当にこれでいいのかということがあるんです。
 それで、昭和三十六年から平成三年の間には、選択科目の中に政治学、経済原論、財政学、会計学、心理学、経済政策、社会政策のうちから一科目とか、また別のいろいろ労働法などの入ったものから一科目というような時代があったんですが、心理学ですとかそういったものが入った理由と、その後また削られてしまったということから考えたりしますと、なぜそういったものがなくなってしまったのか、これで幅広い人材の養成が本当にできるんだろうかというようなことがございます。
 法務大臣、社会人枠があっていいのではないかというようなことと、それから試験科目についても、本当にこれで幅広い人材が養成できるのか、また参考人から視野の狭い法曹を生み出すことにならないかという御意見があり、ここの部分は一年待って試験科目については検討したらどうかというような御意見もあったんですけれども、このような質という点についてどう思われるでしょうか。
#15
○国務大臣(下稲葉耕吉君) それは質の高い人をたくさんいただいて法曹の幅を広げなくちゃならない、このように思います。
 それで、年齢等の問題になってこようかと思うんですが、若くても社会的な経験をいろいろなさっている方もいらっしゃるでしょうし、いろいろだろうと思います。
 検察だとか裁判所の御意見は聞いていないんですが、非常に極端な意見を申し上げますと、十回ぐらい試験を受けてやっと合格なさったという方はもう三十歳を越しておられると思うんですね。そうすると、二年間司法修習に行かれまして、検察官になられる、裁判官になられる。検察官は六十三歳が定年ですから、そうしますと三十年勤務できるかできないかというふうなことになります。そうしますと、経験三十年以上を起さぬことには、現実の問題として検事正なんかになっておられないかもしれません。その辺のことも、検察全体の活性化なりなんなりということからも一つの配慮があったのかもしれません。
 しかし、試験科目の問題は別に置くといたしまして、私は、検察官にいたしましても裁判官にいたしましても基本的には常識ですから、それはやはり社会的な経験なり自分の努力なりというふうなことで人間の幅を広げる、視野を広げる、そういうふうなことによって初めて国民の目線の仕事ができるのではないか、こういうふうに思います。そしてまた、そういうふうに心がけなければならない、このように思います。
#16
○円より子君 それでは、裁判所の方に伺います。
 参考人の御意見の中に、一極集中の東京型ではなくて大阪にも司法修習所を設けるべきではないかというような御意見があったんですが、その件について、また大臣からも今お答えがありましたけれども、質の高い、視野の広い法曹を生み出すために、例えば試験科目は本当に今回のこういったもので適当なのかどうか、ほかにどんな御意見があったのか、それから私が先ほど質問しました社会人枠みたいなものを設けることについては何か検討なさっているのか、ちょっとお伺いできればと思います。
#17
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) まず、可決研修所の問題でございますが、現在のところは和光にあります司法研修所で十分その修習体制は間に合っているところでございまして、新たな研修所をつくるかどうかということは検討しておりませんが、さらに修習生をふやすということになりますと恐らく将来の研究課題の一つにはなるのではないかというふうには考えられるところでございます。
 なお、試験科目につきましては、前にも申し上げておりますように、法曹にとって一番重要なことはやはり基本の六法を学んでいただく、それに加えて各自が専門性を勉強していただくという方向がいいのではないかというふうに考えて法曹三者の合意をしたところでございます。これらの問題につきましても、弊害が出るということであれば恐らく将来また検討の課題にはなってくるのかなということはありますが、現在はとにかくこういうことでやるのがいいということで法曹三者で合意ができたということは御理解いただきたいと思います。
#18
○円より子君 それでは、社会人枠のことがあれなんですが、弁護士をまず何年がやってから裁判官や検察官になるという法曹一元制について以前随分話し合われたようですけれども、そのときにはまだ法曹人口の少なさやいろんな理由があってそのまま検討されただけで終わってしまったようです。今こそそれをもう一度真剣に検討すべき時期ではないかという御意見も随分ありましたが、その法曹一元制についてはいかがでしょうか。裁判所の方に伺います。
#19
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 法曹一元制度というのは本来望ましい姿であるというふうに私どもは考えておりますが、現在におきましてもまだその環境は整っていないというのが私どもの認識でございます。
 と申しますのは、弁護士から裁判官に任官する制度といたしますと、たくさんいる弁護士さんの中から優秀な方、弁護士会から推薦された方が裁判官になるという制度でございますが、このような制度、環境が整っているのは現在は首都圏と大阪圏ぐらいでありまして、それ以外のところではまだそういう制度ができていないという状況でございます。
 裁判所といたしましては、法曹一元制度の理念に少しでも近づく制度として弁護士任官制度というものを考えて、なるべく多くの社会経験のある弁護士の方に任官していただこうということで弁護士会にもお願いしているところでございます。
#20
○円より子君 司法というのは、私の周りの普通の国民の人たちから見たら、やはり日本では紛争を司法によって解決しようというよりは、できるだけ裁判所とは一生かかわりがない方がいいと思っている方が圧倒的に多いというのが現状だと思うんです。
 それで、そういったときに身近に国民の気持ちのよくわかるといいますか、そういった人々が迅速な裁判、そして納得のいく裁判をしてくれるような状況が必要で、もちろんそれはやっていらっしゃる方たちの側のPRといったこともあるかと思うんですけれども、開かれた司法といいますか、国民の利用しやすい、そして国民が参加しやすい司法、陪審制なんかもその中の一つかもしれませんけれども、そういった今後の国民に開かれた司法ということについて大臣の御意見をお伺いして、終わりたいと思います。
#21
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 開かれた司法ということで私どもも大いに努力しなくちゃならない、もういろんな工夫を凝らしてやってみたいと思っております。
 例えば今、司法のことについて学習指導要領にどういうふうな記載をされて、教科書にどういうふうなことが書いてあるか。今、学習指導要領の改訂作業を進めているということでもありますので、そういうふうなことからも若い人たちに関心を持ってもらいたい。あるいは最近、小学生を対象とします移動教室プログラムというのをつくりましていろいろ努力しようとか、それから法務省の中にもいろんなPR用の展示の部屋もあるんですけれども、年間一万人ぐらいしか来ていただけないというふうなこともございます。
 この前、日弁連の会長さんともお話ししたんですが、日弁連の方でもそういうようなことをお考えになっておりますし、それから巡回法律相談みたいなものもいろいろ考えて、具体的に今度はどこか九州の島を回ろうかと思っていますというふうなお話等々も出ております。
 そういうような形でいろいろ努力してまいりたいと思いますが、私どもが一つ大きな問題として取り組まなければならない問題は法律扶助制度、法律と金の問題ですが、これをできるだけ早く具体的に進めていかなくちゃならないな、こういうふうな感じでございます。
#22
○円より子君 終わります。
#23
○大森礼子君 公明の大森礼子です。
 前回通告しておりましたが聞けなかったことがありますので、これを最初に質問いたします。
 司法試験法の附則の四条ですが、「高等試験の行政科試験に合格した者」、これは受験資格について特別な扱いを規定しているんです。この受験生の割合というのはどのくらいあるものでしょうか。
#24
○政府委員(但木敬一君) 平成に入ってからで申しますと、大体年間数名程度でございます。最近三年間で申しますと、平成七年が五名、平成八年が四名、平成九年が三名でございましたが、これらの者はいずれも論文式試験で落ちておりまして、合格者はおりません。
#25
○大森礼子君 人数的には少ないんですが、ただこの附則の部分を今回の改正案と照らし合わせますと、附則四条で論文武筆記試験と口述試験を免除されない科目が規定されておりまして、三号では「民法及び商法のうち受験者のあらかじめ選択する一科目」、これを受ければいいということなんでしょうが、論文で商法を選んで民法を免除されても、口述では商法がないから民法を選ばざるを得ないのかと何か変だなと思いまして、これは受験生でちゃんと考えるだろうと言われたらそれまでなんですが、ここら辺の規定は問題ないのか。
 それから、同じく四号で「民事訴訟法及び刑事訴訟法のうち受験者のあらかじめ選択する一科目」とあって、選択する一科目でいいことになっていますけれども、これは改正案で両訴訟法を必須としたことと矛盾しないのかどうか、細かい点かもしれませんけれどもお伺いいたします。
#26
○政府委員(山崎潮君) 高等試験の行政科試験に合格された方につきましては、この附則で四科目を受ければいいということになっております。これは制度の改廃に伴う一種の既得権的な要請がございます。その後、戦後も商法が選択科目であったり必須科目であったり、科目はいろいろ変わったわけでございますけれども、その都度ここには全部改正を加えておりません。
 したがいまして、今回、民事訴訟法、刑事訴訟法を必須にするということをお願いしているわけでございますけれども、その点についても今回改めて手当てをしなかった。従前でも民法か商法どちらかでいい、そういうような形をとっておりましたので、既得権的なものについては手を加えない、こういう発想で改正をしなかったということでございます。
#27
○大森礼子君 それから、もう一点附則の関係でお尋ねいたします。
 六条に「高等試験司法科試験に合格した者は、司法試験に合格した者とみなす。」とあるわけですけれども、これに該当する合格者は最近いらっしゃるのかどうか、教えていただきたいと思います。
#28
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法試験ではなくて、その前のいわゆる高文司法科に合格した人も司法研修所に入る資格がございまして、最近でも七十前後の年輩の方が例外的に各期一人ないしゼロというようなことで司法研修所に入っているという例はございます。
#29
○大森礼子君 それでは、今回の改正案の内容についてお尋ねするわけなんですけれども、まず最高裁の方にお尋ねします。
 前回、ちょっと質問しかけたんですが、時間がなくて、私の意見のみ述べるという形で終わってしまいました。司法修習制度の改革について法曹三者がそれぞれ意見を出し合ってきたわけですけれども、修習期間について日弁連が二年間、法務省が一年六カ月、最高裁が一年間、こういう意見であったわけです。
 それで、前回もちょっとお尋ねしましたけれども、最高裁の案ですと、実務修習七カ月のうち分野別修習が四カ月で、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護、それぞれ一カ月の実務修習ということになります。例えば東京なんかですと人数が多いので、公判修習と、それから取り調べ修習、捜査の方と分かれて修習していると思います。そうしますと、検察修習一カ月としますと、捜査、公判で分かれると本当にそれぞれの日数がなくなる。一カ月間それ自体が短いということを言いたいわけです。それから、刑事裁判修習一カ月、たしかこの中に家庭裁判所の修習も入ったというふうな気がするんです。
 こんなことも考えますと、非常に実務修習期間が短いと思うのですが、最高裁判所が分野別修習は四カ月でよいと考えたときに、この実務修習で修習生に何を学ばせようと考えられたのか、これをお尋ねいたします。
#30
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 最高裁が当初提案いたしました修習期間一年の案と申しますのは、最高裁の事務当局が司法研修所を所轄する立場で改革協における議論の大勢に沿って具体化したものとして作成した、いわばスタートラインに位置づけられるべき案ということで提案したものでございます。
 すなわち、改革協の意見書によりますと、現行の二年間という司法修習期間については、テンポの速まった現在の社会の動き等からすると間延びしたものになっており、責任を負わない見習い期間という性質上長過ぎるのは好ましいことではないこと、法曹としてのトレーニングとしては法曹になってからの現場におけるオン・ザ・ジョブ・トレーニングの方が研修効果が高いこと、さらには司法研修所の集合教育についても、長年にわたって教育上のノウハウが蓄積され、より短期間で充実した修習を行うことも可能となっていることから、現在よりも短縮させた期間で効率的な修習を行い、法曹資格取得後の継続教育を充実させることによって修習期間を短縮することが可能であるということが指摘されておりまして、合格者の大幅増加に伴い修習期間を大幅に短縮すべきであるという意見が多数を占めたものでございます。
 最高裁としてはこの意見書の趣旨を踏まえ、それを具体化したものとして提案したものでございまして、実務修習期間につきましても基本的なものについてやったらどうかというような考えに立っていたものでございます。
#31
○大森礼子君 その改革協の意見を受けてということはよろしいんですが、それはあくまで一つの案を提案するときの動機づけであろうと思うんですね。意見書の趣旨を踏まえて提案されたのはあくまで最高裁なわけですから、そこに着目してお尋ねするわけなんです。
 改革協の意見書がどうであれ、最高裁がかつて主張されたところによりますと、今私が申し上げたように、各実務修習の期間が非常に短くなるわけですね。それで、ここでは一体何を学ばせることを目的としているのか、これをお尋ねしたいわけです。
#32
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) まず、改革協は法曹三者に対して抜本的な法曹養成制度を改革すべきということで私どもに示したものでございますので、その意見書を踏まえて、それを具体化すればこうなるのではないかということで、最高裁の事務当局がスタートラインに立つものということで提案したものでございます。
 そして、実務修習につきましても、従来かなり同じような事件の起案をたくさんやっていたとか重複していたというようなことを工夫して、基本的なことについてやれば提案した案であっても一定の水準を保つことができるのではないかということで、法曹三者の協議の際のスタートラインに立つ案ということで提案させていただいたものでございます。
#33
○大森礼子君 お話を伺っていると、最高裁は何か改革協の代理人みたいな形になるのかなという気がするんですけれども、今の説明はよくわかりませんね。
 そうすると、いろんな意見は取り入れるけれども、取り入れた上で最高裁としてはこう考えるという案ではなかったわけですか。
#34
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 先ほども申し上げておりますように、法曹三者の協議のスタートに立つ案ということで出しまして、最高裁としては、弁護士会、法務省の意見を聞いて、最終的には国民の負託にこたえ得る法曹の養成というのはどの程度がいいかということで、固定した立場ではないということで臨んだ案であったわけでございます。
#35
○大森礼子君 たたき台を出したということにすぎなければそれでよろしいんですけれども、いずれにせよこういう意見を出しましたら、法曹三者の間でどれがいいか、それぞれどれが一番合理性があるかということで検討すると思うんですね。
 それで、先ほどの各実務修習、これまで四カ月だったものが急に一カ月になってしまうわけです。そうしますと、幾ら一定の水準と言葉では言いましても事実上無理ではないかなという気がするんです。このように短くいたしますと、何かを学ばせるというよりも、単なる検察庁見学、裁判所内見学にすぎなくなるのではないかというふうに思うわけですけれども、最高裁はこの点をどのようにお考えでしょうか。
#36
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 私どもが提案した一年案では、実務修習は合わせると七カ月になるはずでありまして、一カ月で足りない部分はあるいは事件を追って残りの三カ月をやる、家庭裁判所における修習もそういうことを考えるということで、残りの三カ月で補完すれば実務修習は合わせると七カ月になるものですから、それによって実務修習はある程度のレベルまではいくのではないかということで、一つの案ということで提案したものでございます。
#37
○大森礼子君 一つの案として提案したというのがちょっとよくわかりませんね。
 何か一応案として出しただけで、特に本気で考えているわけじゃないんだ、こういう御趣旨なのかなとも聞こえますが、やはり意見というのはそれなりの合理的根拠があるから主張するわけでありまして、それが受け入れられるかどうかは別としまして、それで合理的根拠がなければほかの一年六カ月と二年のどちらがいいかということで検討していくのが筋なんだろうというふうに思います。
 それで、参考人で上野登子さんという弁護士の方がいらっしゃいまして、この方からも御意見を伺いました。この方は日弁連新聞というものに御意見を出されておりまして、参考人質疑のときにも私はこの新聞記事を引用したんですが、ちょっとここでも引用させていただきます。
 この方はこう言っておられます。「現行司法修習制度の最も優れた特質は、」と、このように書かれて、ちょっと間を飛ばしますけれども、「裁判実務能力において修習終了時にはどの職にあっても」、つまり弁護士、検察官、裁判官、「どの職にあっても民主主義憲法下の司法の担い手として、独立して職務を行える能力と見識を統一的に修得させることにあります。」と、裁判実務能力、この点について触れておられるわけです。
 それで、これが現行司法修習制度の最もすぐれた特質だと言っておられるわけですが、この事実自体は最高裁も法務省もお認めになるのでしょうか、それぞれにお尋ねします。
#38
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 修習の目的が、裁判官、検察官、弁護士いずれになる方についても、それになるにふさわしい力をつけていただくということにあることは委員御指摘のとおりでございます。
#39
○政府委員(山崎潮君) 修習の目的は、将来法曹として国民のためになる仕事をしていただく、そのスタートラインとしての基礎的な力を備えている者、こういう者を送り出すんだという点で、基本的には参考人の考え方と同じかというふうに思っております。
#40
○大森礼子君 今、最高裁にお尋ねしたのは、裁判実務能力という、この点についてお尋ねしたわけです。
 それで、法曹三者の意見ですが、これは司法修習制度の目的になるんでしょうか、これについては法務省も実務処理能力の付与という点を挙げております。日弁連は裁判実務の修習を基本としつつと挙げております。最高裁の方からはそこのところが抜けているのかなという気がするわけなんです。
 それで、法曹三者協議会では司法修習制度の修習の目的についても論点といいますか協議課題になっていたわけですが、この修習の目的のところで意見の一致というのはなされているのでしょうか。これはどちらにお尋ねすればよろしいのでしょうか。
#41
○政府委員(山崎潮君) 修習の目的につきましては法曹三者で合意されております。そこの認識の違いはないというふうに理解はしております。
 第一点は、基本的には実務をきちっとできる者、これを育てることは間違いございませんけれども、それに加えまして、それ以外の社会の多様なニーズ、これにこたえられるような幅広い知識を備えたような者、そういう観点を加えるということ、それから将来国民から信頼されるような人格あるいは倫理をきちっと備えた者を育てる、さらにその修習期間中に社会の法的ニーズにきちっと目を向けられるような修習課程を入れていく。
 前にも申し上げましたかもしれませんが、例えばボランティア活動をやっていただくとか、あるいは法律相談に一緒に立ち会ってもらいまして、国民のニーズがどういうところにあるかとか、そういうものをきちっと理解してもらいたい、そういうものの基礎を備えて卒業していってほしいという点では認識は違っていなかった、全員共通であったというふうに私は理解しております。
#42
○大森礼子君 私自身も修習を受けたわけでございます。そして、この上野登子さんは同じ新聞の中でこのようにも言っておられます。引用しますと、「実務修習によって、弁護士になる者は、裁判所・検察庁の実態を知り、将来裁判官・検察官と対等な立場で国民・市民の人権擁護に力を発揮できる能力を身に付け、他方裁判官・検察官になる者は、民衆の訴えや社会の実情に親しく触れ、人権感覚を涵養することに資するのです。」、このように述べておられます。
 実は私もこのように思って実務修習を受けたものでございます。それで、この意見というのは十分合理性があると思います。これからの協議の上で、ぜひこのような意見も十分検討というか参考にしていただきたいと思いました。
 次に、参考人質疑で青山参考人がこのようなことを言っておられました。今回の改正への動きにつきましては、法曹三者のみの合意である、大学関係者の意見を聞かなかったではないかと。それから、さきの司法試験法の一部改正、平成三年のときですけれども、この平成三年四月十六日の参議院法務委員会の附帯決議、これに反するのではないかという御意見がございました。
 この参議院の附帯決議は、項目二のところで、「法曹養成制度における大学教育との関係及び司法修習制度の在り方については、大学関係者及び法音三者の密接かつ有機的な協力の下に検討を進めていくこと。」、このようになっております。
 実は私自身も、青山参考人から御指摘をいただく前に、そうだな、附帯決議に反しているなと思ったんですけれども、この点について法務省の方はどのように説明されるでしょうか。
#43
○政府委員(山崎潮君) 平成三年の司法試験法の改正につきまして当参議院で附帯決議をいただいたこと、私どもも内容を十分承知しております。その附帯決議を受けまして、平成三年に法曹養成制度等改革協議会、いわゆる改革協と言っているものでございますが、これがスタートしたわけでございます。
 これは参議院の附帯決議の趣旨を尊重いたしまして、その構成員も法曹三者だけではなくて、学者はもちろんのこと、経済界あるいはマスコミ、主婦連の代表者等さまざまな有識者を入れて、四年半ぐらいにわたりまして議論を続けたわけでございます。その中で、法曹人口の増加の問題と司法試験の問題に大きく分かれたわけでございます。
 司法試験の方につきましては小委員会を設けました。そこで審議をお願いしたわけでございますけれども、その中には現在法律選択科目の廃止の対象になっております行政法の学者、労働法の学者、そのほかの学者も含めて議論をしたわけでございます。もちろん全員が同じ意見だったというわけではございませんけれども、長年議論した結果、法律選択科目を廃止することについてもやむを得ないという意見が多数を占めたということでございます。これは改革協の最後の取りまとめの中にもその記述がはっきり書かれているところでございます。実質的には、私どもはそこで十分意見を聞いたと考えております。
 その後、司法試験の運用の検討に当たります運用等検討小委員会というのがございまして、これも司法試験委員がみんな構成員になっているわけでございますが、そこでもこの議題を一定期間検討を続けたわけでございます。
 それから、法曹三者が昨年十月にこの法律選択科目を廃止するという合意をした後に、司法試験考査委員会議、これはもちろん法律選択科目の考査委員も全部参加しているわけでございますが、そこで法務省の方から報告をさせていただいたときも全く異議はなかったという状況でございまして、私どもとしましては実質的には御意見はお伺いし、基本的に反対はないという理解で進んだわけでございます。
 最終的に正式にきちっと聞いたかと言われますと、それはやっていないことは認めます。その点は反省が残ると思います。
#44
○大森礼子君 青山参考人も、改革協の意見を聞いたと法務省は反論するだろう、でもそれは個人としての意見にすぎない、平成三年のときには三十八の大学に意見照会をしている、こういう丁寧な手続をとってほしいということだろうと思います。こういう大学関係者の意見等を聞くについても十分検討していただきたいと思います。
 いろいろ質問しようと思いましたけれども、時間が来ましたので、最後に法務大臣に、これは通告していなかったんですけれども、大臣の御見解、御決意を聞こうと思ったのですが、その前の前提となる質問ができませんので、一点だけお願いしたいと思います。
 前回の質疑のときに、山田委員の方から、司法試験の問題の公開を検討してほしいという意見、なぜ公開しないのかという質問がありました。これは主に択一試験だろうと思うわけです。そのときにいろいろ御答弁いただきましたけれども、これは後で会議録を見てもわかりますが、合理的な理由というのはなかったと思います。
 今は記憶中心の問題ではございませんから、むしろ正しい問題を前提として、考える能力を養うために司法試験の択一式の問題を材料とする、これは受験生にとってむしろオーソドックスな勉強方法だと思います。今回のこの司法試験改正も、受験生がことし受けるかどうかを判断する考慮期間ができるように早く成立させよう、こういう動きもあって、我々も審議を進めてきょうに至ったわけでございます。
 もし本当に受験生のことをお考えなのであれば、受験生が最も求めている正しい問題を知りたいということ、つまり短答式問題の公開なんですけれども、このことについてぜひ積極的にお考えいただきたいと思うんです。もし大臣がこれから公開するようにしますと言っていただけたら受験生はさらに喜ぶと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか、ひとつお約束していただけませんでしょうか。
#45
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 試験を受けるために予備校みたいなものがたくさんできまして、そこでいろいろ出題の問題を中心にして検討されている、そして実態は大体問題そのものと似たような形でやられているというふうなことでございます。
 私どもの基本は広く法律の全般にわたってテストしたい。ところが、専門の一部の人たちで問題の傾向だけ探って、要するに山が当たるみたいな形の試験方法というものはやっぱりいかがなものだろうかというふうな考え方もございます。
 御指摘の点は部内で今十分検討させておりますので、その結果を待たせていただきたい、このように思います。
#46
○大森礼子君 一点だけつけ加えさせてください。
 昔は記憶中心の問題でございましたね。その後、問題傾向が変わりました。非常にいい問題、考えさせる問題になっております。だから、何かを覚えてどうこうなるというものではない。むしろ、いい問題だからこそ公開して、それを材料として勉強する機会を与えていただきたいというのが希望でございます。以上です。
#47
○橋本敦君 最初に、大臣並びに官房長にお尋ねをいたします。
 前回、検察官の身分を保有したまま証券取引等監視委員会に出向なさった方お二人が野村証券等から接待、供応を受けたということが大きく報道されたことについて、国民の検察に対する信頼ということを確保する上からも厳しく調査をしていただきたいということをお願いいたしました。官房長もそうした国民の検察に対する信頼にこたえ得る調査をやることをお述べになったし、その後の新聞報道で大臣もこの問題を重視してきちっと調査するということをお述べになったように伺っているところでございます。
 その調査の結果はどうであったか、まずこれについてお伺いしたいと思います。
#48
○国務大臣(下稲葉耕吉君) お答えいたします。
 先般もお話しいたしましたように、非常に遺憾な事件だと思います。早速、調査を指示いたしております。
 一部報道に間違いがございまして、三十名と出ておりますけれども、そういうふうな数字ではございません。実際は十名の者が対象になっておりまして、現在、調査を進めております。あらゆる角度からやっておりますし、早急に結論を出してきちっとけじめをつけたい、このように思います。
#49
○橋本敦君 官房長、ただいま大臣から総括的なお話があったんですが、十名ということも含めて具体的な内容、事実関係は今どの程度明らかになっているか、お話しいただきたいと思います。
#50
○政府委員(但木敬一君) 検察から検事任官中に証券取引等監視委員会を含みます大蔵省金融機関関連部局に出向するようになりましたのは平成二年でございます。平成二年から現在までの間、つまり現職で現在もそうした関連部局におる者を含めて人数は十名おります。
 この十名の者全員について調査を現在しているという段階にございます。もちろん本人から事情を聴取しておりますし、必要に応じて反面調査もしております。
 ただ、何分現在まだ調査中でございますので、その内容についてはいましばしお待ち願いたいと思います。速やかに事実を確認して、前回申しましたように、国民の批判にたえ得る対処をいたしたいと考えております。
#51
○橋本敦君 最終的な調査はこれからとしても、今お話があった検察官十名、全員とは申しませんが、少なくとも出向中に証券会社等から接待、供応を受けた事実があるということについては、これは正確にはこれからの調査にまつとしても、全面的にそういう事実はなかったということではないということで調査をされていると思うんですね。
 ですから、供応を受けた事実があったということについては、これは調査の対象として今も調査されているわけですから、そういう事実はなかったということではない、こう理解してよろしいわけでしょう。
#52
○政府委員(但木敬一君) もちろん一部の者については全くない者もおると思っておりますが、その供応といいますか接待といいますか、そういうことがあったという事実も否定できないところであります。
#53
○橋本敦君 その点について否定できない事実を直接本人からお聞きになるということ、そしてまた相手方からも聞くということ、いわゆる反面調査的な意味も含めて事実の正確な調査はこれからも全部についてきちっとおやりになるということでございますか。
#54
○政府委員(但木敬一君) そのとおりでございます。
#55
○橋本敦君 私は前回も申し上げたんですが、まさに検察官は私ども法曹の仲間の一員でございますけれども、とりわけ大蔵省汚職等の捜査について正義の検察として国民から期待と信頼が大きく広がっている中で、出向した証券局の中の、特に証券取引等監視委員会へ出向して、まさに証券会社の不正を取り締まらなきゃならぬという立場であることを十分、これはもう御本人はもちろんのこと、関係者もわかっている。検察官の身分を保有された方が調査の対象となる証券会社等から接待を受けていたという事実は、これは私は本当に大きな問題だと思うんですね。
 そういう意味で、大臣からも、非常に残念なことで、適正な調査を今後とも遂げるということはお話をいただいたわけですが、大臣に最後に、この点についてはいつごろまでのめどで、そして具体的にはどのようにきちっと報告をなされるおつもりなのか、その点をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#56
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 具体的に何月何日までと今申し上げられませんけれども、できるだけ速やかにということは、もう来月のできるだけ早い時期ぐらいにできないかなというふうなことで、今いろいろ指示しているところでございます。
#57
○橋本敦君 それでは、この問題については適正な調査を重ねてお願いして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 次の問題に移らせていただきます。
 最高裁に司法修習生の教育問題でお尋ねしたいんですが、司法修習生指導要綱というのができていると思うんですけれども、一番新しいのはいつ作成されたものですか。
#58
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 平成八年四月一日から実施されたものでございます。
#59
○橋本敦君 その平成八年から実施されたというものについてお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、総則の中で「司法修習生の修習については、学識の深化及びその実務への応用を図るとともに一般教養を重視し、法曹となるにふさわしい品位と能力を備え、その社会的使命を自覚させるように指導する。」というのがたしかあると思いますが、間違いありませんか。
#60
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法修習生指導要綱の第一章の総則第一にまさしく委員御指摘のことが書かれていることはそのとおりでございます。
#61
○橋本敦君 「一般教養については、修習の全般にわたり、視野を広め、事物の本質を把握し、高い識見と深い洞察力を養うように指導する。」というのも第四にあるわけですね。私はこれは全面的に必要なことだと思います。
 修習期間に立派な指導教官の指導を受けるだけでなく、実務の現場でいろいろな人間的交流やあるいは実務の修習経験を通じてお互いに切磋琢磨するということですが、一年半という修習期間で本当にこれが得られるだろうかということについてしっかり御検討いただかないと、二年から半年減っただけというわけにいかない。修習のこれからの内容のこの理念どおりの実現については特段の工夫と努力が要ると思うのですが、現在どうお考えになっているでしょうか。
#62
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) この司法修習の目的につきましては、法曹三者の合意にありますように、「社会に対する広い視野を持ち、高い識見と柔軟な思考力を備えた、二十一世紀を担うにふさわしい法曹を養成する」必要があるということでございまして、司法研修所としては法曹養成の責任を負っておりますので、そういう観点からカリキュラムの編成、実務修習等についても国民の負託にこたえる法曹養成ということで、全力を挙げてまいりたいと考えているところでございます。
#63
○橋本敦君 その要綱の中の第三章、「教養科目等」でございますが、一般教養として書かれていることと別に、第二に、修習生に実務に関する幅広い知識を修得させるために、行政法、倒産法、破産法ですね、それから家事少年関係法、知的財産法、独占禁止法、国際法等、こういった法律科目、それに加えて心理学、精神医学等いろいろありますが、こういったことをセミナー等を通じて修習させるというふうに記載されておりますが、修習のカリキュラムの中で一年半で十分これが消化できるんでしょうか。
#64
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 新しいカリキュラムについては現在教官を中心に検討しているところでございますが、まず第一点として申し上げられますのは、先日も御答弁申し上げましたように、現在、民事訴訟法、刑事訴訟法の両方を合格してきた人は約一割にすぎません。九割の方につきましては、司法試験に合格したと同様な学力をつけるための補習を行っております。この補習に使っているエネルギー、時間というものを今度は委員御指摘のようなそういう新しい分野に使えるわけでございます。
 それから、技術的なことを申し上げますと、現行のカリキュラムは実質的には前期は三カ月と一週間でございまして、後期は二カ月と三週間でございます。また、主として三時限以降にはセミナーを設けております。前期の必修単位は十六で、後期はすべて任意選択ということになっておりまして、一人一人の司法修習生から見ますと、これらセミナー枠をフルに活用しているとは到底言えない状況でございます。
 さらに、例えば二回試験後などには自由研究として特定のカリキュラムを入れていないというのが現状でございますが、これに対しまして新しいカリキュラム、現在考えておりますのは、三限全部をフルに活用し、かっこ回試験終了後、これは二十日ぐらいあるわけでございますが、修習の終了式までの間にもカリキュラムを実施することにいたしますと、前期、後期三カ月でも現行以上の単位数を確保することが技術的には可能であるという計算はできているところでございます。
#65
○橋本敦君 それで、学者の皆さんから、選択科目として行政法をなくしたこと、あるいはまた労働法を入れるべきだということ、破産法はどうかということなど、いろんな意見がございましたね。
 私が今言いました要綱の「教養科目等」の第二を見たんですが、ここの中に労働法が入っていないんじゃないでしょうか。労働法学会や労働弁護団等からも、今日の経済社会における労働事件の増加や、今度は国会でも労働基準法の改正で社会的にも大きな問題になってまいりますが、労働法を選択科目からなくすというのは問題だ、入れてほしいという強い希望もございました。
 私が今指摘したところに労働法というのは入っていないんですけれども、研修所としてはこの労働法ということについてはカリキュラム作成上どのように現在お考えになっていらっしゃいますか。
#66
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 修習生に対しましては、多様な法的ニーズについての基礎的情報を提供するという形で、委員御指摘のような労働法あるいは行政法、破産法というようなものについての基礎的な情報を提供して広く国民の皆さんの負託にこたえるような法曹の養成をしたいということでカリキュラムの検討をしておりまして、殊さら労働法を外そうという意思はございませんので、御理解いただきたいと思います。
#67
○橋本敦君 では、確認いたしますと、第三章の第二で書いてありますいろんな法律がありますが、ここには労働法は入っていないけれども、これは殊さら労働法の研修あるいはセミナーをやらないという趣旨じゃなくて、労働法も含めてカリキュラムに適正に入れ込んで教養の一環としてやっていく、そういうお考えだと承っていいわけですか。
#68
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 委員御指摘のような労働法を含めて、基礎的な情報を提供するためのカリキュラムということを現在検討しているところでございます。
#69
○橋本敦君 今回の改正については、選択科目をなくすということで学会からそれぞれ今指摘したようにかなり強い意見、要望もございました。したがって、私は、選択科目からそれをなくしたということに立って、これからの研修所のカリキュラムの中で積極的に今日の経済社会や国際交流の発展の時代に見合った学習ができるように一段と努力をしていただくことが、選択科目を廃止しただけにそれだけ余計大事になると思うんです。そういう努力をしていただきたいことと、それが一年半になったということとの関係で、本当にいいカリキュラムをつくっていただきませんと理想とするような方向が実現しませんので、そのことを私は強く希望しておきたいと思うんです。
 そういう新しいカリキュラムなりあるいは指導要綱なりというものの検討は現在続けていらっしゃるということですが、具体的にはいつごろまでにつくり上げられるおつもりですか。
#70
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 新しい修習が始まりますのはことしの試験に合格した人、来年の四月に司法研修所に入る方でございます。でありますので、それに間に合うように、裁判所としては年内にはまとめたいということで検討をしているところでございます。
#71
○橋本敦君 そういったカリキュラムについては、法務省あるいは日弁連と意見交換をして十分意見を聞き入れながらやっていくというシステムはあるんでしょうか。
#72
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) カリキュラムの編成は司法研修所における教官が中心でありますが、教官は検察官、弁護士という方で構成されておりますので、法務省、弁護士会の意見というのはそういう教官を通じて反映されるようになっているというふうに私どもは認識しているところでございます。
#73
○橋本敦君 教官を通じてということも、具体的には直接はそうでしょうね。しかし、こういったカリキュラムについて、これから作成する上でやっぱり法曹三者で協議をしていくという機会があった方がいいように思って私は質問したんです。
 今後の法曹養成に当たって、最高裁がおつくりになるカリキュラムについて協議をするということについて、法曹三者協議でも取り上げる機会があっていいのではないか、私はこう思っておりますが、この辺について法務省はどうお考えでしょうか。
#74
○政府委員(山崎潮君) この新理念につきましては法務省も少なからず関心がございます。もちろん弁護士会もあろうかと思います。最終的には研修所の教官会議でお決めになることでございますけれども、私どもも最高裁の方からいろいろその中間のことはお聞きして、きちっと意見は申し上げたいというふうに思っております。
#75
○橋本敦君 日弁連とも適正な範囲で協議、意見が聞けるような機会も最高裁として御検討いただきたいということを要望しておきたいと思います。
 質問通告では裁判官の増員問題もお願いしておりましたが、時間が参りましたので終わりたいと思います。
#76
○委員長(武田節子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、裁判所法の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#77
○委員長(武田節子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、司法試験法の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#78
○委員長(武田節子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 大森礼子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大森礼子君。
#79
○大森礼子君 私は、ただいま可決されました裁判所法の一部を改正する法律案及び司法試験法の一部を改正する法律案の両案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明、社会民主党・護憲連合、日本共産党、自由党、二院クラブ及び新社会党・平和連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    裁判所法の一部を改正する法律案及び司法試験法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 政府並びに最高裁判所は、社会の高度化、複雑多様化、国際化の進展に伴う多様な法的ニーズに的確に対応するため、次の諸点につき格別の配慮をすべきである。
 一 適正な法曹人口の在り方について、長期的かつ総合的な検討を加えるとともに、いわゆる合格枠制の見直しを含む法曹の選抜及び養成について、広く国民各層の意見を踏まえ、法曹三者において合意を得るよう努めること。
 二 司法試験の在り方については、大学における法学教育との関連性を重視し、大学関係者の意見を十分尊重すること。また、試験問題の公表を含む司法試験情報の開示について検討すること。
 三 法曹養成における司法修習制度の在り方については、統一修習を維持しながら、法曹として要求される識見、倫理等に関する研修の充実を図ること。また、修習体制の一層の整備を行い、司法試験から廃止される法律選択科目の研修に配意すること。
 四 法曹資格取得後の継続教育を充実強化するとともに、法曹三者による合同研修を行うことを検討し、また、将来の課題として、研修弁護士制度等について検討すること。
 五 増加する国民の法的ニーズに迅速・的確に対応するため、裁判官及び検察官の必要な増員を図るとともに、法律扶助制度等の司法の制度的基盤の充実・強化に努めること。
 右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#80
○委員長(武田節子君) ただいま大森君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#81
○委員長(武田節子君) 全会一致と認めます。よって、大森礼子君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、下稲葉法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。下稲葉法務大臣。
#82
○国務大臣(下稲葉耕吉君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
#83
○委員長(武田節子君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#84
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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