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#1
第142回国会 法務委員会 第17号
平成十年六月四日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十八日
    辞任         補欠選任
     広中和歌子君     角田 義一君
 六月三日
    辞任         補欠選任
     志村 哲良君     大木  浩君
     前田 勲男君     谷川 秀善君
 六月四日
    辞任         補欠選任
     大木  浩君     畑   恵君
     林田悠紀夫君     鈴木 正孝君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         武田 節子君
    理 事
                清水嘉与子君
                依田 智治君
                大森 礼子君
                橋本  敦君
                平野 貞夫君
    委 員
                岡部 三郎君
                鈴木 正孝君
                谷川 秀善君
                長尾 立子君
                畑   恵君
                林田悠紀夫君
                松浦  功君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                円 より子君
                照屋 寛徳君
                山田 俊昭君
                矢田部 理君
   国務大臣
       法 務 大 臣  下稲葉耕吉君
   政府委員
       法務省民事局長  森脇  勝君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
   参考人
       慶應義塾大学法
       学部教授     池田 真朗君
       東京大学法学部
       教授       岩原 紳作君
       弁  護  士  小野  傑君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る五月二十八日、広中和歌子君が委員を辞任され、その補欠として角田義一君が選任されました。
 また、昨三日、志村哲良君及び前田勲男君が委員を辞任され、その補欠として大木浩君及び谷川秀善君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(武田節子君) 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人の方々から御意見を伺います。
 御出席をいただいております参考人は、慶應義塾大学法学部教授池田真朗君、東京大学法学部教授岩原紳作君及び弁護士小野傑君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず、池田参考人、岩原参考人及び小野参考人の順に、お一人十分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため、申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 なお、参考人の意見陳述、各委員からの質疑並びにこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、池田参考人からお願いいたします。池田参考人。
#4
○参考人(池田真朗君) 慶應義塾大学の池田真朗でございます。
 まず、私からは、債権譲渡の対抗要件についての御説明と本法案の必要性、背景事情等を中心にお話し申し上げます。委員の先生方には十分御承知のことばかりかもしれませんがお聞き取りをいただきまして、細かい点につきましては、この後御質問いただいた際にお答えをしたいと存じます。
 まず、本法が対象といたします資金調達としての指名債権譲渡というものがどういうものかということであります。
 従来は、不動産などを担保に銀行から融資を受けて資金調達するというのが一般でございました。しかし、企業によっては十分な担保不動産などを持っていない場合があります。けれども、多数の指名債権なら持っているという企業が存在いたします。
 例えばクレジット会社などの場合には、立てかえ払いをした指名債権で、一本にしてみれば三十万とか五十万とかいうものが無数にございます。これらを何百何千とまとめて、特別にその債権を活用する目的でつくった会社や信託銀行などに譲渡して今必要な資金を得る。例えば、これから分割払いを時間をかけて全部回収して一億になるものを仮に今九千万円で譲渡して、その分の資金を得る。譲り受けた特別目的会社はそれをもとに証券を発行して投資家に売ったりするわけですけれども、この点は岩原参考人から御説明があると思います。そして、各債務者の方は相変わらずもとの債権者であるクレジット会社に支払いを続ければよく、クレジット会社は債権回収を代行して、回収したお金を譲受人たる特別目的会社に送る。
 こういう一つの新しい資金調達方法として債権譲渡をする。これは既に世界的に、アメリカ、イギリス、フランス等かなりの先進諸国で広く行われております。したがって、この資金調達のための債権譲渡は、倒産しそうになったところから債権譲渡で貸し金を回収するなどという危機的なものとは全く関係のない、正常な経済活動の中の新しい資金調達方法であります。
 また、この指名債権譲渡による資金調達方法は、自分の会社の信用力で資金調達をするのではなくて、資産としての債権そのものの信用で資金を得るということになります。つまり、債権というのは債務者が支払って初めて実現するものでありますから、それぞれの債権の債務者の信用力が問題になる。ということは、その債権を譲渡しようとする企業の信用は余り高くなくても、債権の債務者の方が優良ならばその債権は信頼できるので高く買ってもらえる。つまり、指名債権による資金調達は、自分の信用力が余り高くなくても債権の信用力があれば資金調達ができる、こういう利点があるわけです。一般に言うアセットバックトでの資金調達の利点ということであります。
 このようなメリットのある資金調達方法なんですけれども、我が国ではそれをやろうといたしますと、ネックになるのが指名債権譲渡に関する民法の規定であります。
 我が国は、指名債権譲渡も不動産の譲渡もフランス民法に倣って対抗要件主義をとっております。つまり、当事者の合意だけで当事者の間では権利が移転する。しかし、それを周囲の第三者に対抗する、自分が権利者となったと主張するためには、対抗要件という一定の法の定めた手続をとる必要がある。これが不動産では登記、動産では引き渡し、そして債権譲渡では、民法四百六十七条二項によって、確定日付のある証書による債務者への通知または確定日付のある証書による債務者の承諾というふうに規定されておるわけです。
 ちなみに、指名債権は、近代民法ではどこの国でも譲渡人、つまり債権者と譲受人との合意だけで譲渡できます。債務者が合意する必要はありません。債権譲渡というのは、債権の同一性を全く変えずに移転する契約ですから、債務者にとっては、債権者が変わっても当初の約束どおりの条件で約束どおりの期限に支払えばいいということですから、不利益変更はないということであります。それだから、そういうことになっているわけであります。
 明治に民法ができたときには、この規定が取り立て屋をはびこらせもということで随分反対をされましたけれども、債務者は契約をしたとおりの義務を履行すればいいだけでありまして、履行期が来れば払うのは当然のことですし、譲渡がされても履行条件が不利に変わることはないわけです。
 さて、債権の場合は、先ほど申し上げたように、当事者が合意しても債務者が支払ってくれなければ実現できません。したがって、権利を行使するためにどこかで債務者に知らせなければいけない。債務者に譲渡を認識させて権利を行使するだけのためならば確定日付ある証書を使うまでもないということで、四百六十七条の一項は、債務者に対する関係だけでは確定日付は要らないという緩和をした規定も置いております。けれども、これが他の第三者、つまりその債権を差し押さえる人や場合によって二重に譲り受ける人などに対して対抗するためには、優劣関係が決定できなければいけませんから、確定日付は必ず必要になるということであります。
 このように、債務者全員に通知しなければいけない、しかも確定日付をつけなければいけないというのが、資金調達のための債権譲渡では大変な手間とコストがかかるということで、実務界から何とかしてほしいという要望が強く出てきたわけです。さらに、通知をすると、従来の危機的段階での債権譲渡というイメージから譲渡人の信用不安を引き起こすので、できれば債務者には黙っていたいというニーズもあるようであります。ということで、何とかする必要性というのは確かにございます。
 それでは、民法を変えればいいかと申しますと、そうはまいりません。それは、現行の民法の規定は資金調達には不向きかもしれませんけれども、債務者にとっては一番安全なコストのかからないシステムであるというメリットがあるからであります。
 現行の民法のシステムはフランスと同じですが、債務者のところへ情報をすべて集中させるシステムです。アメリカは、債権の担保も譲渡も貸付証書の登録という制度を採用しております。ドイツはまた別で、対抗要件なしに第三者に対抗できるけれども、譲渡を知らなかったために不利益を受ける債務者は個別に保護するという方式であります。ですから、日本はフランスと同様で、債務者にまず譲渡の情報を通知して、債務者に弁済請求できる状態をつくるとともに、もしこの債権を譲り受けたい人は債務者に聞けばわかるという形で、債務者をインフォメーションセンターにいたしまして、不完全ながら公示の機能もねらったわけであります。
 そして、債務者は譲渡の通知に従って弁済すれば有効な弁済ができる、譲渡の通知がなければもとの債権者に支払えばいいという形で保護されるのはもちろんのこと、何もしなくても移転情報がすべて集まってくるので、一番安全でコストがかからないというわけであります。
 さらに、債務者だけでなく譲渡人や譲受人にとっても、例えば親族間とか友人間での債権譲渡を考えたりした場合には、何か書式を整えてどこかに登記登録をするなどというよりは、この民法の確定日付ある証書による通知のシステムの方が内容証明郵便一本でできるわけですから簡単で便利と言えるわけであります。
 したがって、不便を感じるのは、企業等が多数の債権を用いて資金調達をする場合が典型ということになります。そういうわけですから、民法の規定にはやはり合理性があり、また民法の規定を必要とする債権譲渡も相変わらず存在するということになります。そうすると、民法の規定と並行して、資金調達のための債権譲渡を対象とした対抗要件システムを簡易化する特例法が必要ということになるわけです。
 そうしますとポイントは、第一に、債務者に通知をしなくても第三者対抗要件がとれる、つまり、同じ債権を差し押さえる人や二重に譲り受けた人にも勝てるということ、第二に、そのために債務者の立場を今よりも不利にしてはならないということであります。そこから、現在の民法では重ね合わされている第三者対抗要件と債務者保護要件の切り離しということが出てまいります。これが、譲渡人と譲受人だけで債権譲渡登記をすれば第三者対抗要件はとれる、債務者は通知がなければもとの債権者である譲渡人に弁済すれば有効な弁済となるという本特例法の基本的発想ということになるわけです。
 さて、それでは、同じような目的のために平成五年につくられた特定債権法があるではないか、これではいけないのかということになりますが、残念ながら、特定債権法は新聞への公告で通知とみなすという基本的に無理な構造をとっている部分がありまして、また対象が特定業種の債権に限定されている点も合理性を欠くと思われます。
 したがって、我々のつくるべき法律は、民法と併存するんだけれども、業種業態による限定のない包括的な法律で、しかも民法のシステムとは異なり、明らかに第三者対抗要件と債務者保護要件とを切り離した法律ということになります。
 そうすると、第三者の方は、債務者への情報提供とは切り離した客観的な公示力のあるものということで、登記登録をすればいいという制度が考えられます。この場合の登記登録というのは、債権の存在を公に示すものではなくて、こういう譲渡にこの時点で対第三者優先効を与えるものとお考えいただきたいと思います。つまり、この債権譲渡登記は債権の登記ではありませんで、その譲渡について優先効を与える登録ということになります。ですから、本特例法では譲渡人と譲受人で登記をすれば第三者対抗要件がとれます。
 この債権譲渡登記は民法の確定日付ある通知にかわるものですから、民法の確定日付ある通知の場合も譲渡人が行い債務者は関与しないわけですから、債権譲渡登記に債務者の関与をさせなくていいのも当然ということになります。ただその分、登記される債権譲渡の債務者のプライバシー保護を考えまして、債務者名など登記の詳細情報は関係者でないととれないという手当てをつけておくわけです。
 そして、第三者対抗要件と債務者保護要件を切り離したのですから、譲受人は、他の第三者に勝つというだけが問題なら、譲渡のあったことを債務者に通知する必要はありません。したがって、通知は、主として自分のところに払わせたいというようなときにだけすればいいわけであります。このような債権譲渡の場合の譲受人というのは融資者ですから、通常は一つ一つの債権を回収する作業までしたいわけではなく、それはもとの債権者である譲渡人に委託しておけばいいわけでありまして、そのような場合は通知は必要ありません。一方、債務者は知らされないうちはもとの債権者に支払えば免責されるわけです。
 二つの法律ができて債務者が不利になるのではないかという御心配もあるかと思います。これは、債務者が二度払いさせられる可能性が大きくなるというのであれば心配する必要がありますが、債務者は一定の基準で支払えば免責される、あとは例えば譲受人と第三者の間の問題となる、こういうシステムであれば債務者について特に心配する必要はないと申し上げられます。
 なお、民法での譲渡と特例法での譲渡の競合、さらには特定債権法との譲渡の競合というのは理論的には起こり得ますが、これは実際にはレアケースでありましょうし、それらの間での優劣の基準がはっきりしていればこれもそれほど心配はないと考えます。御質問があれば具体的にお答えいたします。
 また、このような法律をつくっても、一般人の間で持たれる指名債権、つまりAさんがBさんにお金を貸したというようなケースの指名債権の性質やイメージは何も変化いたしません。実際にも、ただいま申し上げたような債権譲渡は従前どおり民法の対抗要件に服するわけであります。つまり、この特例法は、今までの指名債権の性質を変えようという法律ではなくて、今までの指名債権を新しい使い方で使いたいという人たちのニーズにこたえる法律ということになります。
 最後に、現在、国連のUNCITRAL、国際商取引法委員会というところで、まさにこの債権譲渡による資金調達を国際的に行う場合の対抗要件のルール等を統一しようということで、九五年の十一月から条約案づくりをしております。この作業部会にも私が第一回から日本代表として出席しておりますが、こちらはまだ確定はしていないものの、ここでも国際的な規格でのコンピューターによる登録制度の導入が有力になっております。ことし三月、この特例法案が提出されました直後、一カ月ぐらい後にニューヨークでUNCITRALの作業部会がありまして、私は会議の中で、我が国の新しい法律案ということで本法案を紹介いたしました。そうしましたら、通知システムの民法を持つ日本がこの条約案に適合する登録型の特例法をつくるということで大変注目をされまして、非常に好意的な反響を得ました。
 かような次第で、本法案は、ひとり我が国の国内金融取引に利するだけではなくて世界規模の趨勢にもマッチしているということであります。
 結論的に、ぜひとも本法案の御採択をお願いしたいと考えるものであります。
 ありがとうございました。
#5
○委員長(武田節子君) ありがとうございました。
 次に、岩原参考人にお願いいたします。岩原参考人。
#6
○参考人(岩原紳作君) 東京大学の岩原でございます。
 本法案は、いわゆる流動化、証券化の手段として用いられることが予定されておりますので、私は、その主な利用主体になると考えられておりますいわゆる特定目的会社、現在、本国会において審議中の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律案の特定目的会社、いわゆるSPCの御説明をさせていただきたいというふうに思っております。
 このSPCと申しますのは、債権を含む資産の流動化、さらには証券化のための有力な手段でございます。資産の流動化と申しますのは、資産を所有しております企業が資産を譲渡しやすい形に変形いたしまして、それを投資家、特に機関投資家に売却するというような形で資金調達を容易にする手法のことでございます。投資家といたしましては、投資対象が小口化されている方が投資しやすいわけでございますし、また資本市場で再譲渡して資金回収ができるようでないとリスクが高くて投資の対象とすることができません。そこで、小口化されて譲渡の容易な形、できれば有価証券の形になっていることが望ましいわけであります。これが資産の流動化であり証券化でございます。
 また、投資家といたしましては、資産のもとの所有者である企業、これをオリジネーターと呼んでおりますが、このオリジネーターが倒産をするとそのとばっちりが及ぶようなものでありますと、これまた投資対象として不的確であります。このオリジネーターの倒産のとばっちりが流動化あるいは証券化された商品に及ばないような仕組み、これをバンクラプトシー・リモートと呼んでおりますが、この証券化とバンクラプトシー・リモートの両者を可能にする手法がSPCでございます。
 すなわち、このSPC法案によりますと、オリジネーターが指名金銭債権または不動産等を別法人でありますSPC、特定目的会社に完全に譲渡いたしまして、まずバンクラプトシー・リモート、つまり破産等の影響が及ばないようにいたします。大量の指名金銭債権を第三者対抗要件を完備した形で容易にSPC等に譲渡できるようにする手段、それがここで審議していただいております債権譲渡対抗要件特例法案であるというふうに理解しております。
 この債権譲渡対抗要件特例法案の手続に従って譲渡いたしますと、オリジネーターが倒産して、破産管財人、更生管財人等が選任されたり、差し押さえ債権者があらわれたり、あるいは二重譲渡等がなされましても、これらのものに対して、この流動化商品、証券化商品を取得したものは譲渡の事実をもって対抗できるということになるわけであります。SPCが対抗できるから、これらのものも対抗できるわけであります。
 そしてSPCは、社債、コマーシャルペーパーまたは優先株式、これは法案では優先出資と呼んでおりますが、これを発行し、それを資本市場で分売することによりまして、小口化、証券化をすることができるわけであります。SPCは、資産といたしましては、オリジネーターから譲渡された指名金銭債権または不動産等があるだけでありますから、SPCが発行する社債なりコマーシャルペーパーなり優先出資といったものは、実質的には原資産の価値だけを表象する証券化商品になるということであります。
 その結果、オリジネーター自身は不良債権を多数抱えた格付の低い金融機関であり、また自分自身が社債を発行しても資本市場で消化してもらえないというような状態にあるといたしましても、SPCに優良債権を選んで譲渡すれば、SPCが高い格付を得て、資本市場で証券を発行するという形で消化することができるわけであります。これが証券化の一つの場合であります。
 また、金融機関は、このようにして資産の一部を切り離して証券化をしまして、資産規模を圧縮することができます。その結果、いわゆる自己資本比率を向上させ、いわゆるBIS規制を満たすことができるようになるわけであります。これは金融機関にとっては非常に大きな魅力であります。また逆に、不良債権のみを選んでSPCに金融機関が譲渡いたしまして、SPCにより証券化をして、いわゆる格付の低いジャンク債と呼ばれるようなものを専門に売買する業者に低い値段であれそれを売却し、不良債権の処理を進めるということもできるわけであります。
 このように、債権の流動化、証券化は、オリジネーターとなる金融機関あるいはノンバンクその他の事業者に新たな資金調達手段、資本市場からの直接の資金調達手段を与えるわけでありまして、資金調達コストの引き下げを可能にする一方、資産をオフバランス化したりあるいは不良債権処理の道を開くという効果もあるわけであります。逆に、投資家の立場からしましても、流通性がありリスクも限定された新たな投資機会を得ることができるということになります。
 このような指名金銭債権流動化手法の中でも、このSPCは極めて有効な手段であります。なぜならば、我が国では有価証券を発行する手段が大変限られているわけでありますが、SPCだけは有価証券を発行することが非常に容易にできるということであります。また、SPCは会社形態をとっておりますので、投資家に有限責任のメリットを与えるということもできますし、その他、投資家の権利保護のために充実した法制度を備えているということになります。また、証券取引法を適用して、証券取引法上の投資家保護を図ることも容易になるわけであります。
 このように、SPCは、債権譲渡対抗要件特例法と結びつくことによりまして、非常に大きな力を発揮するというふうに考えられます。
 もちろん、この指名金銭債権の流動化の方法といたしましては、ほかにも、例えば先ほど池田参考人からお話のありました特定債権流動化法もございますが、特定債権流動化法は適用対象がリース債権、クレジットカード債権等に限定されておりますし、有価証券形態を使うことも限定されておるわけであります。その意味で、この債権譲渡対抗要件特例法及びSPC法が成立しますと、それ以外の新たな債権の流動化、証券化の道が開かれるということになるわけであります。
 この債権譲渡対抗要件特例法はSPCにとっても非常に重要でございまして、これが成立しませんと、オリジネーターが所有している大量の指名金銭債権を第三者にも対抗できる形でSPCに容易に譲渡することができませんので、SPCの実際の利用が非常に困難になるわけであります。先ほど申し上げましたように、第三者対抗要件がないと、いわゆるバンクラプトシー・リモートにならなくて、オリジネーターの倒産リスクから逃れられませんので、証券化が第一歩のところでつまずいてしまうわけであります。
 このように、両法案は一体の関係にあるわけでありまして、我が国における証券化を進め、企業の資金調達方法及び投資家の投資対象の多様化、そして金融機関の自己資本比率向上や不良債権の早期処理を進めるためには、この両法案、ここで審議していただいております債権譲渡対抗要件特例法案の成立が大きな意義を有するものと考えております。
 以上でございます。
#7
○委員長(武田節子君) ありがとうございました。
 次に、小野参考人にお願いいたします。小野参考人。
#8
○参考人(小野傑君) 私、弁護士の小野と申します。
 弁護士実務として証券化案件に多く携わっておりまして、その中には、特定債権法上の小口債権またはアセットバックト、ABSと言わせていただきますけれども、資産担保証券も含まれております。そのようなこともありまして、実務家の視点から本法案の意義または検討されるべき課題についてお話しさせていただきます。
 まず、話の内容ですけれども、幾つかの視点から話をしたいと思います。
 一つの視点としましては、債権の流動化という視点でして、この法案の必要性、またこの法案の利便性の程度について話をいたします。
 次に、債務者保護に関連する事項だと思うんですけれども、先ほど池田参考人が話されていましたように、債務者対抗要件と第三者対抗要件を切り離すということが持つ意味合いについて話をさせていただきます。
 三番目に、特定債権法と本法案、特例法と呼ばせていただきますが、その競合する状況について話をさせていただきます。
 また、最後に、やや異なる視点ですけれども、債権の保有者たる債権譲渡人の立場から、債権流動化とは異なる視点からの話をさせていただきます。
 まず最初のポイントですけれども、この特例法導入の必要性でありますが、岩原参考人が強調されていましたように、債権の流動化におきまして最も重要な事項の一つとしまして、債権の原保有者であり譲渡人であるオリジネーターが倒産した場合であっても、債権譲渡の有効性を対破産管財人との間で否定されないことが重要であります。格付機関との交渉等においてもこの点が最も重視されるポイントであります。
 そのためには、債権譲渡に当たって何が必要かといいますと、これも繰り返しになりますけれども、第三者対抗要件の具備ということが絶対的な必要条件でございます。とりわけ数千、数万、あるいはもっと多い数になることもあります大量な債権群、これはよくプールと呼ばせていただきますけれども、これを流動化する場合に、民法四百六十七条二項の確定日付ある通知を数千、数万、またはそれ以上の数に対して送付するということは物理的にはほとんど不可能なことでございます。
 その結果、現状どういうことが起こっているかというと、債権流動化という側面におきましては、これが余り促進されないという社会経済的に余り好ましくない状況が存在しておりますし、また他方において、第三者対抗要件を具備しない形での債権流動化も行われるということになりますと、万が一オリジネーターが倒産した場合に受ける投資家の損害を考えますと、これは甚大なものでございます。
 リース・クレジット債権につきましては既に過去五年間の実績を伴っています特定債権法がございまして、これでは御存じのように極めて簡易な公告による対抗要件の具備制度が規定されておりますけれども、その他の一般の金銭債権につきましては、これまでは存在していなかったのが、今般特例法によりまして極めて簡便な方法で第三者対抗要件を具備できることになりますので、流動化に携わっている弁護士としましても、また実務家の一人としましても、その導入というのが一日も早くなされることが期待されております。
 次に、この法案の意義というのは非常に大きいものがございますけれども、では、その使い勝手、利便性についてお話しさせていただきます。
 この法案は、債務者対抗要件を切り離しまして、第三者対抗要件についてのみ債権譲渡登記により達成することとなっております。したがいまして、債務者対抗要件を具備するためには、この法案にありますように、登記事項証明書を添付した通知ということが必要となります。もともと債務者対抗要件と第三者対抗要件を切り離すということから始まりました立法の経緯からしまして、このこと自体は仕方がないことかもしれませんけれども、流動化の視点からの利便性は必ずしもよくないということを一言お話しさせていただきます。
 すなわち、第三者対抗要件が具備されたとはいいましても、債務者対抗要件が具備されていないものは、やはり債権流動化という観点からいたしますと極めて不完全と言わざるを得ません。ということは、いずれかの時点におきまして債務者対抗要件の具備が必要となるということでおります。その場合、証拠を残すという観点からしますと、結局、通常の民法の場合と同様に内容証明郵便による発送ということを考えますと、結果的にその費用と手間は現状と余り変わらないことになってしまいます。
 通常の場合、債務者対抗要件を具備する必要は必ずしもないのでありますけれども、先ほど不完全と申し上げましたのは、例えば原債権保有者、オリジネーターが倒産の危機に瀕しているときに債務者は相変わらずそのオリジネーターに対して支払いをなす、これが法的な形ですから、それが債権流動化にとっては好ましくないということですと、原債務者に対して例えばSPCに対して直接払いなさいということを言うためにはどうしても債務者対抗要件を具備せざるを得ないというような状況を申し上げております。
 また、やや理屈っぽい議論になりますけれども、債務者対抗要件を具備していないということは、原当事者間においては有効に債権が存在しているということでございますから、オリジネーターが何か違法なことをするという前提に立ちますと、その債権が二重に譲渡され得るということにもなります。今の二重譲渡というのは、対抗要件が具備された場合も二重譲渡は行われますけれども、法的な意味合いは異なります。これに対しまして特定債権法は、債務者対抗要件と第三者対抗要件をワンセットにしまして規定しております。したがいまして、債権流動化の側面からして極めて有意義なものでございます。
 特定債権法に対する幾つかの批判の一つとしましては、債務者対抗要件が知らないうちに具備されていることに対する批判がございますけれども、同法は、リース、クレジットという逆に非常に個性がない大量の債権のみを取り扱うという限定をしたことによりまして、その点の問題を緩和しております。
 まず、二重弁済のリスクに関しましては、そもそも法律上、原オリジネーター、原債権保有者のみに対する弁済を強制しまして他への取り立て委託を禁じております。また、オリジネーターが取り立てすることを解除する場合におきましても、これに対して通知を要求し、善意無過失で払った原債務者を保護するというような枠組みをつくっております。
 また、債務者対抗要件不具備という点の債権流動化の観点での使い勝手の悪さをもう一点述べますと、これは金融機関の保有する貸付債権の流動化の観点です。
 金融機関はノンバンクと異なり預金を受け入れておりますから、譲受人が債務者対抗要件を具備するまでの間、原債務者が預金を持っている場合には相殺その他の抗弁が継続することとなります。これは債務者保護の議論とは別個ということで御理解いただきたいんですけれども、債権流動化という視点からしますと、このような抗弁の切断というのが長く継続してしまうということは、利便性からするとそれほどよろしくないのではないかと思います。ただ、これは一つの議論でありまして、この特例法そのものの価値というものはそれ以上のものがあるということは先ほど冒頭で申し上げたとおりでございます。
 次の議論といたしまして、債務者対抗要件と第三者対抗要件を切り離したことに伴う新たな検討事項について数点触れたいと思います。これは、これまでの民法の条文または判例等が両者を全く切り離さない形で解釈、運用してきたものについて今般切り離すということから生ずる新たな検討課題でございます。
 例えば、債務者対抗要件を具備するための通知をする前に二重譲受人からの確定日付ある通知が到達するということは考えられます。この点はやや理論的または民法的な机上の議論かもしれませんけれども、一応論理的にはそういう状況もあり得るということでございます。既存の民法の議論または法理を適用しましても、こういう場合の基準というものは毅然とできるのでありますけれども、多少債務者保護という観点に立つことになりますと、債権の準占有者に対する弁済、本来の債権者でない人に払った場合であってもその支払いについて保護しようというような法理がございますけれども、この点につきましても今後は債務者保護という観点から柔軟な解釈論を展開する必要があるのではないかと思います。
 また、この切り離すことに伴う二番目の問題として取り上げますのは、不当利得返還という問題です。
 これはどういう状況を話しているかといいますと、これもやや理屈だけの世界かもしれませんけれども、劣後する二重譲受人がいた場合で、なおかつその劣後する二重譲受人が最初に債務者対抗要件を具備したことによって弁済を受けた場合、劣後する二重譲受人に対して優先する債権譲渡登記をした譲受人は不当利得返還請求権を持っているということでございます。これに関してもやはり細かい議論または新たな解釈論の展開というものが必要ではないかと思います。
 例えば、善意、悪意の場合の不当利得の返還義務というものは法律上区別されていますけれども、この場合、登記ファイルを見なかった者が見ないから善意だということで果たしていいのであろうかとか、また対価を払っている場合にどう取り扱うのだろうかとか、いろいろな状況を考えますと、全く新しい側面としての不当利得返還義務の議論が必要だと思います。
 大きい三番といたしまして、先ほど申しましたように、特定債権法上の公告によるみなし対抗要件制度と今般の特例法上の債権譲渡登記の関連についてお話ししたいと思います。
 先ほど申しましたように、特定債権法は既に過去五年間、確認しましたところ、債権譲渡の本数で百九十万件以上、公告による譲渡の債権総額としましては二兆円以上のものが実績として存在しております。これにつきましては、その百九十万件というものが民法との関連で何ら問題なくこれまで推移してきているということはやはり注目すべき事実だと思います。したがいまして、今般特例法が導入されましたとしても、その特定債権法とこの民法特例法というものは実務、現実におきましては共存共栄するのではないかというふうに考えます。
 最後に、全く異なる視点でございますけれども、債権の原保有者、要するにオリジネーターの立場からの議論をさせていただきます。
 本特例法は、もともと債権流動化促進のための法律として議論され、今般導入されることが検討されているものでありますけれども、法文にもございますように、債権質そのものも認められておりますし、また債権譲渡担保、これは外見上はわかりませんが、債権譲渡担保についての利用も可能でございます。
 債権者、ここで言う債権者というのはちょっと言葉が違いまして、そのオリジネーターの債権者、信用を供与しているものという部分で使わせていただきますけれども、その立場からしますと、もともと民法の対抗要件制度が極めて使い勝手が悪いということで担保の設定が困難であったものが今般の立法措置によって整備されるというような立場から評価できると思います。
 また、そのオリジネーター、とりあえずここでは債務者と言わせていただきますけれども、その立場からも、これまで担保不足によって資金の借り入れが困難であったのが今般の法整備によって担保を提供することによって資金借り入れができるようになるという言い方もございます。
 しかしながら、現状におきまして担保予約または対抗要件留保担保特約に基づきまして資金を借り入れている場合、このようなケースは間々あるようでございますけれども、本法律が担保提供について非常な簡便な方法で提供することによりまして正式な担保の提供を求められるという状況も考えられます。また、昨今の貸し渋りの状況からいたしますと、担保提供不要で借り入れたものに関して新たに本法に基づき担保提供が求められるというようなこともございます。もともと民法の確定日付制度の利便性がなかったことに起因した問題ですし、制度として利便性が向上することによるやむを得ないことだと思いますけれども、またこれを論ずる立場の人によってその考え方というのも違ってきますけれども、あくまで流動化の促進という観点からいたしますと、債権が担保提供されることによりまして資産が減少していくということは必ずしも好ましくはないのではないかと感じております。
 時間になりましたので最後になりますけれども、幾つかポイントを述べさせていただきましたが、本法案そのものは債権の流動化促進のために極めて必要かつ重要な法案でありまして、一刻も早く成立されることを期待しております。また、るる述べましたように、全く新たな制度でございますので種々検討すべき事項もございますので、もし同法案が採択された場合には、今後の政省令の作成に当たりまして十分その点の配慮をしていただき、また法文解釈につきましても、もちろん最終的には裁判所が行うのですけれども、債権流動化の観点からしますと実際に紛争事例となることは極めてまれ、またはほとんどあり得ないことでありますので、積極的に立法者の方から法文解釈についてのガイドラインなども作成していただければ運用面において極めて使い勝手がよいものとなると思います。
 また、全然別個の観点ですけれども、将来債権、将来発生する債権、これは債権流動化にとって、また担保という観点でもそうかもしれませんけれども、極めて重要です。これにつきましては、同法案そのものは直接扱っておりませんけれども、政省令作成に当たりましてもそれらが含まれるよう十分考慮していただければと思います。
 以上でございます。
#9
○委員長(武田節子君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。
 先生方にはお忙しいところを御出席いただいて貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございました。先般、法務省等に質問した事項の中で不明な点も大分わかったような気がいたします。ありがとうございました。
 そこで、時間が余りありませんので、まず池田参考人でございますが、法務省の債権譲渡法制研究会にも御参加いただいているということでございますが、先生方からもいろいろ触れられているいわゆる特債法は公告という形で債務者・第三者対抗要件をそれぞれに具備し、現にもう五年間で相当な実績を上げているというわけです。今度の場合は債務者・第三者対抗要件を分離するというような制度で、個別にという制度は、先生、国連の動きの中で登録というのが国際的趨勢でもあるということなんですが、これを検討なりする際に、これは民法があり特債法があり、また今度の特例法もある。理論的に言うと何か若干そごが生じるような感じもするんです。
 この特債法の公告制度というようなものについて、この特例法との関係において先生はどのように評価されておるのか、その点についての先生の御見解。クレジット債権等については現在の特例法によって処理してもいいんだというようにも聞いていますが、そのあたりについての御見解をちょっとお伺いしたいと思います。
#11
○参考人(池田真朗君) いろいろ御関係の方もいらっしゃると思うんですが、私個人の見解でお答えを申し上げます。
 やはり第一点として、まず特定債権法はこれを用いて資金調達を図れる業種がリース業界、クレジット業界に限られておりますが、世界的に見てこういう法律で業種業態の適用の限定のあるものはどうも存在いたしません。ですから、こういう限定はやはりちょっと合理性に欠けるという気がいたします。
 それから第二点、みなし対抗要件という形で特定債権法は第三者対抗要件として新聞紙上の公告で民法四百六十七条の対抗要件とみなすというふうにしているんですが、つまり特定債権法は民法の債務者を情報の中心に置く対抗要件をそのまま維持して公告という制度でそれにみなすというわけですけれども、これはやはりフィクションでありまして、新聞に載せるのと自分のところに通知が届くのとを債務者の認識という意味で同等に見ることはやはり無理ではないか。この意味では、今回の特例法のようにしっかり切り離した別制度にした方がよろしいという気がいたします。
 それからあと二点ほど、民法四百六十八条の二項に、債務者は通知を受けるまでに譲渡人に対して発生していた抗弁事由をもって譲受人にも対抗できるという規定を置いております。これは債権譲渡の性質を考えたときには当然の規定なんですけれども、特定債権法はこれに対応する規定を置いておりません。したがって、先ほど来ほかの参考人の方からのお話にもありましたように、新聞に公告がされた段階で債務者は実際にはそれを知らなくてもそこから先に発生した抗弁事由には対抗できなくなってしまう、これはやっぱり大きな欠点かなと思います。
 それからあと、もし三つあります法律でそれぞれの手続がされたというときに、今回の特例法と民法の間の優劣関係はかなり明瞭にわかるんですけれども、特定債権法の公告というのはやはり一日の幅を持ってしまうのではないかというふうに考えられておりまして、そうしますと、この特定債権法と特例法あるいは民法というのでぶつかり合ったケースではちょっとその先後関係が決めにくくなるという問題点もございます。
 この程度でございます。
#12
○依田智治君 ありがとうございました。もっと聞きたいのですが、それでは一人一問ずつお聞きしたいと思います。
 岩原参考人、SPCの仕組みで大量に債権を流動化していくということは私は賛成であり、ぜひやっていただきたいと思うわけですが、ただ、このSPCは債権を回収する専門家じゃないわけですね。そしてその債権自体がどのくらいの価値があるのかという評価、譲り渡される債権が的確に評価されて、しかも新たな債権者に対して裏打ちするためにはちゃんとそれが回収されるということが必要なんです。自民党の中でもサービサーに関する法律とかいろいろ研究しておるんですが、今回の第三者対抗要件法とSPC法、これが成立しても政治の努力でこういう法律をつくってもらえばなおいいというような、先生のそのあたりについての関連した御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
#13
○参考人(岩原紳作君) 今、先生御指摘のとおりの問題状況だと私も心得ておりまして、今サービサー法のことを御指摘になりましたけれども、私もぜひ成立させていただいて、実質的な不良債権の処分を進めていくことが何よりも大事でございますので、そのためにはそういう実質的に問題を処理できる仕組みをつくることが何よりも大事だというふうに心得ております。以上です。
#14
○依田智治君 どうもありがとうございました。
 最後に小野先生、先生が「金融法務事情」というので去年の暮れ、「債権譲渡における対抗要件をめぐって」ということで何人かの専門家の方々と意見を交わされておる中で、理論的にこの三つの法律のどちらが優先するかという問題、場合によっては二重譲渡もあり得るとか、いろいろなケースを想定して詳細な御議論の中で積極的に発言されるのを二度ばかり読ませてもらいました。頭が悪いものでなかなかよくあれなんですが、結局、民法がある、特債法がある、それでこの新たな特例法がある。それで、それぞれ到達時点とか、一日というスパンの中でいつ新聞が配達されたのかとか、今度は登記はその月の日時まで入れた登記になるというようなことがあったとしても、二重譲渡とかその他いろいろ万が一あった場合の権利関係というのは、結局最終的には裁判所という問題になるのかと思いますが、できるだけ新制度がそういうトラブルなく、現状においては今ある法律で適正に運用することが大変重要だと思うんです。
 衆議院でも、これが適正に運用されるように今後法務当局はしっかりと検討していけとかいうようなこと、先生の意見はこの中にありましたが、やはり新制度の趣旨というものについてより徹底した広報をして、登記というものは債権の存在を示すものじゃない、こういうのもありますが、この三つの制度が結局法が成立すれば成立することになるわけですので、このあたりについて、実務者の立場として、こういう点を注意していろいろやってもらう必要があるのじゃないかというようなもし御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
#15
○参考人(小野傑君) 何度も議論が出たように、特定債権法はリース、クレジットという非常に個性が乏しい少額のものを対象としていますので、まず現実的には起こらないし起こっていないということだと思います。
 ただ、御質問は理論的な側面も含めてということなので、その点について回答いたしますと、現在の民法の理論といいますか判例でも、同時到着というものに対して極めて幅広く裁判所は認定しているようだというふうに言われています。要するに、瞬間をとらえるのではなくて到達した時点が確知できないということで考えております。
 同時到着の場合には、債務者というのはその同時到着の人だれに払ってもいいということになっていますから、既存の民法理論の延長におきましても、債務者は同時到着てあれば何ら困らないということ。特に、一日の幅といいましてもそれは一日という単位ですからどの時点がわからないという理論構成も可能ですから、結局は同時到着ということになると思います。
 これは、繰り返しで申しわけありませんけれども、リース・クレジット債権というような、場合によっては数万、数十万というものについてあえて大手の信販・リース会社が二重譲渡するとか、あえてそういうものについて差し押さえをやるというようなことはほとんど過去において考えられなかったので、一応理論的な背景です。
 ただ、先ほど申しましたように、債務者保護という視点があれば、より債務者にとって有利な形での解釈論というのも今後展開すべきだと思います。とりわけ特例法はすべての金銭債権について取り扱っておりますから、債務者も大企業から消費者までいろいろ登場いたしますので、それぞれの状況に応じたきめ細かい解釈論の展開を法律家がすべきではないかと思っております。
#16
○依田智治君 どうもありがとうございました。
 こういう制度が新たにできる、それでやはり登記自体が債権の存在自体を証明するものじゃない、そういうような点もいろいろ考えますと、やはり関係者が、後で別に第三者対抗要件を具備した人がいるかもしらぬ、ちょっと登記を取り寄せてみようとか、そういうできるだけ未然に不適正な運用がなされないような感覚を持ってもらうということが大変重要です。そういう意味からすれば、やはり広報というものを徹底していくということが非常に重要だなというように私は感じております。
 本当に先生方どうもありがとうございました。
 終わります。
#17
○千葉景子君 本日は、お三方の参考人から大変貴重な御意見、お考えを聞かせていただきましてありがとうございました。
 お三方にちょっと共通の問題でまず質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私も、先ほどのお話を伺いながら、債権の流動化、そして資金の調達という時代のあるいは経済の要請というものに適切に対応していく、そういうシステムを考えていくことは大変重要なことであろうというふうに考えているところでもございます。これまで日本の法制度では、先ほど岩原先生からもお話があったように、有価証券を発行する手法がなかなか少ない、こういうこともございますので、これから何らかの適切な対応というのが求められてくるだろうというふうに思います。
 ただ、正直言って、ちょっと私も心配をするのは、特債法ができ、今度の特例措置が導入され、そして民法の原財もある。これ一方には、やはり一般の債務者、消費者と言われる立場あるいは一般の本当に個人の債務者というのがほとんどかかわっていくことになるだろうというふうに思うんです。そうなりますと、あるときは民法、あるときは特債法、あるときは特例と、個人の消費者にとってそういうものを適切にやはり判断するというのはなかなか難しい。制度としてはどれだから民法より特段に不利益になるというようなことではないんですけれども。
 そういう意味では、これからの時代に適応すると同時に、反対側にいる消費者とか個人の権利あるいはその立場を尊重する、あるいはわかりやすくしていく、不利益ができるだけかからないようにしていくという意味では、もう少し包括的に、あるいは制度として一本化をしていくとか、そういう方向性、そしてだれにでもわかりやすくしていくということが必要ではないかという気がするんです。
 その点については、この法案ばかりでなくて、これから先の議論として先生方はどのようにお考えでいらっしゃるのか、まずそれぞれ一言ずつお聞かせいただきたいと思います。
#18
○参考人(池田真朗君) ただいまの御質問、まさにそのとおりと思います。
 債務者保護という観点では、一つは民法全体の解釈論として、小野参考人からもお話がありましたけれども、四百七十八条に債権準占有者に対する弁済という規定がございまして、これは通帳と印鑑を盗んで持ってきた人に銀行が払ってしまったというようなケースでよく使われておりますけれども、この四百七十八条の解釈論によって、だれに払ったらいいかよくわからなくてちょっと間違えて払ってしまったというような債務者が救済されるような解釈論が展開される余地が一つあるということでございます。
 それから、やはり法制度としては将来的には運用状況等を見でなるべく統合、一本化していくというのが筋であろうということは私も考える次第でございます。
#19
○参考人(岩原紳作君) 私は専門が商法でございまして民法でないので細かい技術的なことは必ずしもよくわからない面もあるのでありますけれども、やはりSPCその他のいわば債権を譲り受ける立場の方からしましても、できれば将来的にはぜひ民法の先生方にも御努力いただいて一本化できるようなスキームができれば一番望ましいというふうに考えております。
#20
○参考人(小野傑君) 金銭債権というのは非常に千差万別、日々新たなものが発生し消滅しという状況ですから、これを一律に規定しようとしますと、どうしても現状の民法のような形で余りにも一般的になってしまうと思います。ところが、議論している側面というのは、債権の流動化とかまたは現下の金融機関の不良債権問題であれば銀行の保有している貸付債権ということで、ある特定の種類の債権でございます。したがいまして、理想論とは別に現実的な対応からしまして、または現実の問題を解決していくという観点からしますと、やはり個別な対応が必要だと考えます。
 ただ、批判としまして、ではある債権について別の法律かというような議論をしているつもりはございませんで、先ほど申しましたように、大量な債権群を取り扱うものにつきましては、債務者対抗要件の具備というものが極めて困難、第三者対抗要件、確定日付だけじゃなくて通知そのものも非常に大変ですから、やはり特定債権法のような両者が具備できる制度が必要だと思います。
 ちなみに、銀行とか保険会社の支店の譲渡の場合も公告制度ですべての債権群が譲渡されるようにもともとの日本の法制がなっております。特定債権法はそういうものをある程度参考にしてつくったんじゃないかなと個人的には思っております。
 あと、債務者対抗要件がそう簡易に具備されると債務者保護に貴さないんではないかという批判がございますけれども、これはドイツでもアメリカでもそうだとは思うんですけれども、債務者対抗要件、債務者保護の問題と対抗要件具備の問題というのはちょっと別個に考えるべきだと思います。とりわけ抗弁の切断のところは、個々の債権の抗弁の性質に応じて抗弁が継続するのか切断するのかというふうに考えればよいと思っております。
 以上です。
#21
○千葉景子君 ありがとうございました。
 今のお話にも関連をするんですけれども、小野先生にちょっとお尋ねしたいと思いますが、先ほどいろいろな細かい問題点についてはやはり立法者のところでできるだけ明確にしておく必要があるというお話がございました。私も、債務者の保護あるいは取引の安全ということを考えれば、最終的には裁判所ということになりましても、その立法の趣旨とかあるいはその考え方ができるだけ明らかになっていることが必要だというふうに思います。
 その意味で、今回の法律では大分政省令に今後ゆだねられる部分が多いかと思うんですけれども、そういう際に、例えば明確にしておくべきところ、あるいは本来であれば法律の方で明確にしておくべきであったというような点とかありましたら御指摘をいただきたいと思います。
#22
○参考人(小野傑君) 法律そのものが第三者対抗要件としての確定日付制度に対する手続法として違う制度を立法するということなので、極めてわかりづらいといいますか、法律ですから仕方がないと思うんですがそこの部分だけ触れております。したがいまして、いろんな状況を考えますとこういう場合どうなんだろうかみたいな形での解釈論というのが出てきます。
 その幾つかの事例としては、ちょっと先ほど申し上げたことと重複しますけれども、対象債権として何が入るんだろうか、これはすべて入るんですけれども、現行の解釈論で将来債権というのが一体どの範囲で譲渡が認められるんだろうかということは、必ずしも学者の間で意見が一致していないようですので、最終的には裁判所の判断云々よりも、政省令をつくる際に、要するに金銭債権一般について広げた以上はそういうものも含まれるようにしていただければと思います。
 そのほか、先ほど来議論されています、理論上の問題だとは思いますけれども、幾つかの対抗要件が同時に到着した場合の取り扱い、これは民法議論としては明確ではありますけれども、その辺も、先ほどの広報という観点からしまして、やはりこうなるという話とか、そういうことも政省令作成の際に検討されたらと思います。
#23
○千葉景子君 時間ですので終わりにいたします。
#24
○大森礼子君 公明の大森礼子です。早速質問させていただきます。
 お三人の参考人の方すべてこの法案の成立を希望されるということですけれども、ただ、SPC法とこれが通りますと、そういう会社にその目的とする仕事をさせるためには、それに見合った手段を提供しなくてはいけないという意味で、それを前提とすれば必要となるということはわかるんです。ただ、条文を見ますと、これは特債法なんかと比べましては法人について特に限定はございません。そして、大量の債権譲渡の場合に備えるといいながら、債権譲渡の数というものも限定がございません。それから、譲受人は個人でいいということですね。
 そうしますと、SPC法とこれが成立した場合は、SPCについては非常に便宜になる、債権流動化も図るという場面を想定すると非常に役立つし、また必要な手だてだろうと思うんですけれども、これ、法務省の方で一般私法の問題というふうにとらえておりまして、そうしますと、私は、債権流動化とかSPCとか、それとは関係ないところで行われる債権譲渡について不備が生じないかどうかということもつい考えてしまうわけです。
 変な例えかもしれませんけれども、例えば犬を買った、そうしたら犬小屋を用意してやる、これは当然だろうと思うんですけれども、馬小屋までは用意する必要はないかな、こういう考えなんです。
 そこで、そのはざまのところで、悪用の危険であるとか、あるいはかえって取引の安全を害するような事態が生じないか、これをチェックするのも立法府の役目であろうと思います。
 前置きが長くなりましたけれども、この質問は弁護士の小野先生がよろしいでしょうか、これは虚偽登記というのは避けられないわけですね、両者の申請行為でよろしいわけですから。悪用の危険とか、こういう点についてはどのようにお考えでしょうか。
#25
○参考人(小野傑君) あらゆる制度は悪用はもちろん可能ですし、おっしゃられるように利便性が向上することによって悪用することもより容易になるということもございますけれども、現行民法上も、それは虚偽の譲渡を考えることもできます。債務者対抗要件具備のところで虚偽といいましても譲渡人が通知をしなきゃいけませんから現行法上は問題ないですし、では特例法上どうなるかというと、共同申請で登記されますから、登記事項証明書を添付して譲受人が通知をしますから、譲受人からの通知といいましても、やはり当初登記の時点では譲渡人が関与しております。
 したがいまして、悪用するという側面での理論的な面から見ますと、やはり現状とは変わらない。ただ、さっきもおっしゃったように利便性の向上によって逆の側面があるということは否定できないと思います。
#26
○大森礼子君 私、実は検事をしておりましたので、つい極端な例を考えるんですけれども、まず、何か法案ができるたびにやくざがどう出るかなと考えてしまうわけです。
 例えば登記ができました、もちろんこれは公信力がありませんし、実際に正しい債権譲渡があったことを証明するものではない、それから債権の存在をその登記が証明するものではないということを言うわけですが、ただ、実際の場合、そういう法務局の方が発行する登記事項証明書とかがありますと、それに対して一般の人は信用しやすいであろう、こういうところからまた悪用の危険というのはあるじゃないか、こういうことも考えるわけです。
 考えるのは、法人に限定がありませんので、法人をつくって、譲受人は個人でもいいから、そこら辺が通謀してやれば非常に簡単に虚偽の外形が作出できるという点では一点心配しております、
 それから、小野参考人に集中してしまうんですけれども、先ほど事例として二重譲渡の場合の例をお示しになりました。
 第一譲渡があった、それから第二譲渡があった、この場合どうなるか。この場合でも二重の登記というのが可能らしいので、一応それを前提として考えてみますと、例えば第二譲渡人の方が債務者に通知することで債務者が第二譲渡人の方に支払う。これが本旨弁済であれ準占有者への弁済であれ債務は消滅するとなりますが、その後の第一譲受人と非常にまた複雑な問題を生ずるんではないかなという気がするわけです。
 それで、もし登記の先後で決するとなると、先に登記した第一譲受人が常に勝つとなりますと、第二かそのときわかりませんけれども、法人から債権をこれから譲り受けようとする者は、常に自分より先に登記がないかということを調べなくてはならないのではないかという気がするんです。
 そのことを前回聞きましたら、民事局長の方は、そのためにはこれから債権を譲り受けようとする者が譲渡人に対して、そういう登記は存在しませんという証明書を要求することになるんですという答弁だったわけです。
 そうしますと、それをもらわないと債権を譲り受けようとする者は安心して譲り受けできなくなるのではないか。これは通常の債権譲渡を想定している、大量じゃなくて、この場合も適用ありますので。普通の場合ですとかえって取引の安全を害する形になるのではないかと思うんですけれども、こういう点について先生はいかがお考えでしょうか。
#27
○参考人(小野傑君) これも現行民法と理論的には変わりがないところがございまして、現行民法ではそれは債務者本人に聞きなさいということになっております。インフォメーションセンターということで一番情報が集まっているところです。
 今般の法律は、その情報が集まるところを登記にも求めておりますから登記もチェックするということで、利便性の向上によってよりたやすくそういう状況が起こりやすくなるのかもしれませんけれども、現状においても二重譲渡は起こり得まずし、やはり債権を買う者はその債権がそれ以前に譲渡されていないかということを当然取引の安全上はチェックせざるを得ないと言えます。
#28
○大森礼子君 今申しましたのは、これまでのSPCとか大量取引でない分野を想定するわけですが、これまででしたら債務者に確認すれば済んだのが、この特例法になりますとどういう方法で対抗要件を備えているかわからないから、債務者に確認しても債務者が認識していない場合があるわけです。そうすると、債務者確認だけでは足りない。結局は、登記というのがなされているかどうか、あるいは譲渡人に対してなされていないという証明を常に要求することになるのかな、こういう疑問が生じたので今の質問をさせていただきました。
 最後に池田参考人、ちょっと少ない時間ですが、御質問いたします。
 先ほど、資金調達ということでABSの例を引かれて、企業の信用ではなく資産の信用に基づいて資金調達ができるということをおっしゃいました。経済状態が非常に健全な場合にはこれが当てはまるだろうと思うんですけれども、資産の信用といいますと、結局債務者の支払い能力ということになると思うんです。
 今回のSPCとそれに伴って債権譲渡の対抗要件の特例法を決めるということは、一方で不良債権の大量処理なんかにも非常に便利だということが言われております。ただ、買い取り価格によるのかもしれませんけれども、資産の信用ということを考えた場合に、不良債権処理には余り有効ではないのかという気がするんですけれども、この点いかがでしょうか。
#29
○参考人(池田真朗君) 資産の信用ということで、きょうはお話し申し上げませんでしたけれども、債権に対する格付というのがだんだん進んできておりまして、それによって債権の評価というのがかなり客観的に出てきて、それを根拠にしていろいろ流動化を仕組むということになると思います。
 不良債権処理の問題は、私は、学者としてはこういう制度を余り不良債権処理に活用してはいただきたくないと思うのです。
 こういう業界では、優良な格付の債権とやや優良でない格付の債権をまとめて、一定の利息、利率水準を出すという形で商品化するということは行われ得るというか、可能性はあるということを伺っております。ですから、不良債権処理に一部役に立つかもしれないけれども、この法案をつくること自体はそれを主たる目的にしているものではないというふうに私は認識しております。
#30
○大森礼子君 終わります。
#31
○照屋寛徳君 きょうは御三名の参考人から貴重な御意見を聞かせていただきまして、どうもありがとうございました。
 私も債権流動化が近時新しい資金調達方法として注目をされておるということもよくわかっておるつもりでございますし、現下の日本の金融情勢が債権流動化の促進を図らなければならない状況にあるということも認識をしておるつもりでございます。
 そこで、御三名の参考人にそれぞれ御意見をお聞かせいただきたいと思いますのは、SPC、いわゆる特別目的会社がつくられるわけです。債権を譲り受けたSPCは、債権の信用力のみを裏づけとして資産担保証券を発行してそれを投資家に販売する、こういう仕組みになるんだろうと思います。
 このSPCが発行する資産担保証券を購入する投資家の問題、これは参考人の先生方、どうなんでしょうか、この法律ができますと、日本の投資家がSPCが発行する資産担保証券を多く購入すると見込まれるのか、それとも外国人の投資家というかあるいは外国の機関投資家というか、いずれが多く投資するというふうに見込んでいらっしゃるんでしょうか。それぞれ参考人の先生方の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
#32
○参考人(池田真朗君) 恐れ入ります、私自身は民法の債権譲渡の対抗要件の研究者でありまして、資産担保証券の市場についてはちょっと見当がつきませんので、ほかの参考人の方にお願いしたいと思います。
#33
○参考人(岩原紳作君) 資産だけをいわば引き当ての財産にした証券を購入する投資家というのは、新しい形の金融についての相当な技術を持っている者でないと手を出しにくいというのが現実だと思います。
 日本の金融機関は、今まで長いこと債務者の顔を見て債務者の信用力でお金を貸してくる業務が中心だったものですから、こういう新しいアセット・バックト・セキュリティーズなどと呼ばれる金融の手法にまだなれていないということは否定できないところでありまして、最初は恐らくはやはり外国の機関投資家等が中心になってこういうのを購入していくのではないか。
 ただ、日本の金融機関その他の機関投資家も今後はそういった技術を身につけていくと思いますから、将来的には日本の機関投資家も同じように購入者として出てくると思いますけれども、最初はやはり外国の機関投資家が中心ではないかというふうに私は予想しております。
#34
○参考人(小野傑君) 特定債権法の実績で言いますと恐らく国内がはるかに多いと思いますので、その意味においては日本の投資家というのは存在しているのかもしれませんけれども、純粋な、要するに完全にアセットのみの信用力に依拠したようなものに関しましては、私の個人的な実務経験からしますと、やはりユーロとか最近では米国の市場とかでの投資家をにらんでの発行というのがより多いと思います。
 その理由は恐らく二つありまして、日本の場合ですと幾ら法的にしっかりしている仕組みだといいましてもオリジネーターの顔が見えてしまうというところです。これは投資家の啓蒙の話が一つあると思います。
 それから二点目としましては、これは我々法律家の問題だと思うんですけれども、諸外国におきましても、債権流動化を行う場合、どうしても既存の法解釈論と違う解釈論を展開しなきゃいけないときに、保守的な立場をとりますと、やっぱりあいまいだから問題であって、問題だから投資しないというような極めて保守的な投資姿勢をとることが日本の投資家にありますとやはり発展はしていかないと思います。欧米の場合には投資家の方も債権流動化を十分に理解されて、格付機関の格付をきちんと評価し投資をされているというふうに言えます。
#35
○照屋寛徳君 岩原参考人にお伺いいたします。
 特別目的会社、SPCが今後設立されるようになるわけでありますが、新しく設立されるであろうSPCというのは、債権を譲り渡したいと考えている譲渡人である会社、現に存在する会社、例えば銀行などが出資して子会社というか関連会社というか、そういう感じでSPCを設立するというふうな形になるんでしょうか、どうでしょうか。
#36
○参考人(岩原紳作君) 基本的にはそのようなことになるとは思いますが、ただ法律問題として、銀行が仮に一〇〇%自分が出資した特定目的会社をつくった場合、いわば親会社と一体ではないかという疑念を持たれる可能性がある。そうすると、親会社が倒産したときのリスクを遮断する、譲渡人でありかつ親会社になることが多いわけなんですけれども、そういったリスク遮断の点において疑念が生じるおそれがないわけではない。いわゆる法人格否認の法理などを適用されまして、両者を一体とみなされる危険が出てくる可能性がありますので、恐らく実際に設立する特定目的会社はなるべくそういう形をとらないようにして設立するのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
#37
○照屋寛徳君 池田参考人にお聞きをいたしますが、先ほど外国の事例等にお触れになってお話がございました。
 債務者保護とも関連をするわけでありますが、仮にこのSPCが設立されますと、外国の例でも、もちろん日本にはこれまでありませんから外国の例で結構でございますが、従来の債権債務の関係で、譲渡人の方が回収を図っていくというケースが多いのか、それともSPCの方で債権回収も図っていくというケースの方が多くなってくるのか、そこら辺の見込み等を含めて外国での事例等をお話しいただければありがたいなと思います。
#38
○参考人(池田真朗君) ただいまの点は基本的には、私最初の陳述で申し上げましたけれども、譲受人の方は融資をする立場なので自分で回収しようということには興味がないといいますか、必要がないということでそのまま譲渡人をサービサーといいますかその回収に当たらせるものにするケースが多うございます、それから、それ以外には、今のお話でいうとSPC側、譲受人側が第三のサービサーを指定する、そこに回収をしてもらう、両方があるようでございますが、SPC自身が回収にかかっていくというのは、オリジネーター、つまり譲渡人の方に何か問題があるようなケースで、それは基本的には多くないというふうに認識しております。
#39
○照屋寛徳君 ありがとうございました。
 終わります。
#40
○橋本敦君 きょうは三先生、御苦労さまでございます。
 対抗要件ということに関して、最初に池田先生にお伺いしたいんですが、特債法によります公告という問題、それから民法における確定日付の通知という問題、それから本特例法によります登記日の関係、レアケースであるけれども競合した場合の優劣というのは、やっぱり確定日付等の先後によりまして大体確定されるというのは最高裁の判例の筋だ。
 こういうことになりますと、それを厳密にやらなきゃならぬというので、法務省の方は、この特例法によります債権譲渡の登記について、政令によりまして登記の日だけじゃなくて登記の時間までも登記事項証明書には記載するという方向で、そういう規則を政令によってつくりたい、こういう答弁をされておるんですが、そういうことまで予定をされた法律なのかどうか、そこまで必要があるのかどうか、それがぜひ必要なのかどうか、まずその辺の先生の御意見はいかがでしょうか。
#41
○参考人(池田真朗君) 私は、ただいまのお話、特例法の場合に登記事項証明書に登記の時間まで入れる、これは望ましい方向だと思います。といいますのは、御承知のように、民法の場合には確定日付のある通知の到達時が基準になります。それから、この特例法は登記の日あるいはその時間がわかれば日時ということです。特債法は公告の日というので一日単位になってしまうかと思うんですが、これは先後がわからなければ同時到達として債務者はどちらに払ってもいいというのは、先ほど小野参考人からお話のありました最高裁の五十五年判決がございます。
 やはりたくさん同時到達になってしまうケースがふえることは好ましくありませんので、その優劣決定の基準がなるべく正確になる、明確になるということは望ましいことでございますので、私は登記事項証明書に時間まで書いてくださるというのであればそれが望ましいというふうに考えております。
#42
○橋本敦君 その場合、時間までとなりますと、受理をした時間なのか、登記手続が完了した時間なのか、一体どちらをとればいいのだろうかという問題がその次に起こってくるんです。そこらあたりは、先生の御意見、何かお考えがありましたらちょっと伺っておきたいんですが、いかがでしょうか。
#43
○参考人(池田真朗君) 受理から完了までの手続が例えば将来コンピューター化が一〇〇%進みますとかなり短くなるとかいうことがございますので、これは法務省当局の方で基準をどちらだというふうに決めておいていただいて、それを明らかになるようにPRしていただくということがとりあえずまず一番望ましいかと思っております。
#44
○橋本敦君 そういう手続がとれない一番問題なのは、特債法による公告なんです。特債法による公告ということになりますと、時の特定はもう事実上不可能と言わざるを得ません。だから、レアケースでありますけれども、これとの競合関係の優劣を判断するということについて一体どう考えたらいいんだろうか。
 それから、民法におきます確定日付による通知ということについても、この時の特定は一体どのようにして可能なんだろうか。将来これが争いになった場合に、公証的な証明方法というのが一体そこではあるんだろうかということが問題になるんです、登記の場合は登記所で厳密にレジスターしておけばできるんですけれども。
 そこらあたりは、一体どう整合性を持たせて解釈したらいいかということを考えておるんですが、先生の御意見があれば伺わせていただきたいと思います。
#45
○参考人(池田真朗君) まず、民法の方は、時の特定、到達時の特定については昭和四十九年の最高裁判決が一般の証拠方法でいろいろな証拠を集めて判断をしてよろしいということを言っております。特例法の方が登記事項証明書で時間までわかるということになりますと、この二つの比較はかなり明瞭につくことになります。
 御指摘のとおり、特債法の公告の日というのが問題でありまして、いろいろなほかのことも勘案して言わなければいけませんが、将来的には特債法のシステムが今回の包括的な特例法のシステムに吸収されるということで、民法と資金調達のための債権譲渡の特例法との二本立てになるというのが理想であると個人的には思っております。
#46
○橋本敦君 わかりました。
 私もこの際、本当にそういった法的安定性を確保するという点からいえば、特債法は廃止をして一本化していいんじゃないかという考えも持っておりまして、ちょっとその点でもお伺いしたわけなんです。
 その次の問題といたしまして、今度は岩原先生の方にお伺いすることになるかと思うんですけれども、いわゆるSPCとの関係でいいますと、優良な債権の譲渡しか受けないよということになりますと、資産の流動化、資金の流動化、こう言っても、優良債権ということの選択が事実上行われて期待したほどの資産の流動化というのは起こるだろうかということが一つと、今銀行が抱えております五十兆を超える不良債権の処理ということについては、この特例法は全く役に立たないとまでは言わないけれども、基本的に役立つというようなことは考えられないのであろうかといった問題です。
 このあたりは、今の日本の金融資本の危機という現状の中で一体どう考えたらいいのかという点を私は考えておるんですが、先生のお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
#47
○参考人(岩原紳作君) 確かに、投資家の立場からいいますと、それは優良な債権を原債権とした債権の証券化商品を手に入れたい、これは当然のことであります。したがいまして、少なくとも中心的にSPCを使い、そしてこの特例法を使って行われる債権の流動化というのは、当初はそういった優良なものからまず広まっていくのではないかというふうに私も思います。
 ただ、じゃ不良債権については全く無理かというと、そうではないというふうに考えております。
 例えば、また外国の話になってしまいますけれども、外国においてはまさにそういう不良物を中心に売買をするという機関投資家もまたいるわけでありまして、いわゆるジャンクボンドの市場というそれだけのマーケットも成り立つわけであります。さらには、いわゆる墓場のダンサーと呼ばれるような、そういう特に悪いものだけを扱う業者の人たちもいるわけでありまして、むしろそういう人たちに活躍してもらって、値打ちのないものは値打ちのないなりの価格をつけてもらってそれをマーケットで売却できるようにする、これがやはり必要でありますし、徐々に進んでいくのではないか。
 外国の場合はそういう市場が既に成立しておりますから、それなりの技術を持った業者がいるわけでありますので、そういう人たちがだんだんそういう取引をリードしていって、日本の投資家もそういうことになれて、今後はそれはそれなりのまたマーケットができていく。最初すぐには無理かもしれませんけれども、徐々にできていくのではないかというふうに期待しております。
#48
○橋本敦君 その点で、岩原先生、SPC自体が逆に不良債権を抱えてしまって、買った債権の回収が不能になるというような状況も含めて、SPC自体の存立が、採算的に赤字を抱えてしまうというような心配がないとは言い切れぬということを私は心配するんですが、今おっしゃった外国の例でそういった不良債権の問題に関連をして、いろんな低額での販売その他もあるでしょうが、そこのところ自体がバンクラプトシーになってしまったというようなケースなんかないんでしょうか。
#49
○参考人(岩原紳作君) それは当然そういう危険な商品を扱うわけですから、そういうリスクと隣り合わせであることも確かでありまして、かつてドレクセル・バーナムという非常に有名なアメリカの証券会社がそういうジャンク債にかなり力を入れていたところ倒産したという有名な事件もございましたので、これはまさにそういうものを扱う業者の腕が試される。また、そのためのいろんな技術も開発していかなければいけない。
 前の先生から御指摘がありましたけれども、SPCを設立するときに本当にどれだけの価値のある資産が譲渡されているかということを押さえる、これが非常に大事でございまして、そこら辺を今後実務の運用の中でどこまで実現していけるかということにかかっているんだろうと私も考えております。
#50
○橋本敦君 ありがとうございました。
 小野先生、時間がありませんので失礼いたします。
#51
○山田俊昭君 二院クラブの山田です。基本的な疑問点というか、お尋ねをいたします。
 法人が有しているところのいわゆる債権、その流動化を図るということなんですが、企業の資金調達に関する問題であって、本来資金の需要供給というのは市場原理と個々の企業努力に任されるべきである、こう言われるわけです。それを基本法である民法が特例を認めまして、経済社会の都合によって安易にこれを認めるのは適当ではないのではないかという批判がなされているわけですが、学者先生お二方の率直な御意見を求めます。
#52
○参考人(池田真朗君) 私は、ただいまの御質問に対して二つお答えしたいと思います。
 一つは、今回の特例法は、私冒頭の陳述でも申し上げましたように、しっかりと民法の原則は残しておいて新たなニーズに対応するルールを併設するという形をとっているということで、民法のルール自体を動かそうとしているものではないということが一点。
 それからもう一点は、私は国連の方にも出ておりまして、国際取引社会を見ますと、この流動化手法というのが世界的に企業あるいは金融機関の資金調達手法として今既に広く行われております。そうしますと、我が国がこれを特例法等の手当てをしないで何もいたしませんと、我が国の企業が相対的に他の諸国よりも資金調達において不利な立場に置かれる。
 これは先ほど申し上げましたように、国連でやっていますのは国際債権譲渡、つまり債権者と債務者が別の国にいるとか、譲渡人と譲受人が別の国にいるという形で国際的にこの譲渡が行われていますので、我が国がひとり民法の原則だけで手当てをしませんと、大げさに言うと日本の経済社会自体の地盤低下を招きかねないという気がいたしておりますので、この法案自体は結構ではないかと思っている次第です。
#53
○参考人(岩原紳作君) 確かに基本法であります民法、商法などと矛盾するような内容を持つ特例法を安易につくるということは望ましくないと私は考えております。
 最近、非常にいろんな特例法がたくさんできまして、中にはやや疑問があると私個人には思われるようなものもあるわけでありますが、ただ、それは基本法の理念や考え方と矛盾しているものがつくられたときに問題であるということだと思います。この債権譲渡対抗要件特例法については、私は専門ではないので十分な判断はできませんが、私の理解する範囲ではそういった性格のものではないというふうに考えております。
 さらにもう一つつけ加えれば、無論基本法も昔からの考え方を維持すればいいというものではございませんから、池田参考人が今御指摘のように、海外との取引等を考えて、もし従来の基本法の原則をある意味で言えば修正していく必要があるということであれば、それを特例法と一体にして全体としてそういうものに変えていくということはあり得るかというふうに考えております。
 以上でございます。
#54
○山田俊昭君 先ほど小野先生、この法律が通っても紛争が起こることはまれだ、大丈夫だというようなことをおっしゃったんだけれども、端的に考えて、この法律が通ると率直に言って暴力団とか事件屋、取り立て屋の活動を助長するという不安を私は持つわけですが、この点に対してどうお考えですか。
#55
○参考人(小野傑君) やや繰り返しになりますけれども、非常に簡易に債権譲渡の登記ができる制度になります。したがいまして、そういう裏の勢力の方がより簡易な制度がゆえにそれを利用しようとする方向に動けば、やはりそれは利用しやすくなると言わざるを得ないと思います。
 ただ、根本的な理念とか理論のところでは民法の原則は変わっておりませんので、その利便性に起因する使い勝手のよさが債権流動化にも資するし、譲渡担保にも資するし、他方、悪用する際にも悪用しやすくなるというふうな言い方になるかと思います。
#56
○山田俊昭君 それから、池田先生が、登記手続を省令できちっと決めてくれという意見と御要望みたいなことをおっしゃったけれども、もともとこれは不動産登記と同じように手続に従って法律で定めるのが筋だとはお思いになりませんか。
#57
○参考人(小野傑君) これは手続法でございます。したがいまして、実際の細かいところというのは、結局は一定の民法の解釈論にのっとった形での、例えば登記の申請書の書き方も何でもいいということにはきっとならなくて、私は関与していませんからわかりませんが、そうすると、どうしてもその時点での判断というようなことで政省令にゆだねる部分は多くなってくると思います。ただ、それは何を議論するかによって、法律が適切なのか政省令が適切なのかというのは変わってきます。ちょっと一般的な回答になってしまいましたけれども。
#58
○参考人(池田真朗君) 一言、私からもよろしゅうございますか。
 今のお答えなんですが、これは一般論としては先生の御指摘が説得的かと思うんですが、債権譲渡登記の手続に関しては今後コンピューター化が非常に進んでいくだろうと思うんです。そうすると、今の段階で法律で定めるというよりは、運用状況等を見ながら政省令で動かしていくという方が適当ではないかというふうに私個人は考えております。
#59
○山田俊昭君 池田先生が、今回、債務者保護という観点から債務者に不利益変更は全然ないから大丈夫だというようなことをおっしゃったんですが、現実に譲渡は転々としていくわけであって、最終的な譲受人が通知、承諾と登記証明書を添付すればいいわけですけれども、それはやっぱり一般に公開されてしまうという意味において、先生もちょっと言われたんですが、プライバシーだとか、その虚偽な債務があるような形の表示が債務者に与える影響というのは非常に大きいと思うんですが、この点の配慮がこの法律にはちょっと足らぬのではないかという気がするわけです。
 もちろん不良債権に対する債権回収という問題も入っているんでしょうけれども、金を払わぬやつは悪いやつだから、そういう債務者を保護する必要はないという言い方もあるかもしれませんけれども、その点いささか債務者保護の観点から危惧するものですが、池田先生の御所見をお聞きしたいと思います。
#60
○参考人(池田真朗君) 今の点ですが、債務者名の入りました詳細な登記事項証明書というのはその債権の利害関係人しか見られないというふうにしてございます。今度の法案は二段階の情報開示になっておりますので、この債権を譲り受けようなどという人は債務者名の入っている詳細なものまではとれないということになりますので、ここで一つ歯どめがかかっているかと思います。
 それから、逆に虚偽の登記事項証明書を当事者が結託してつくりまして、それで間違えてそれに対応して債務者が払ってしまったという場合には、先ほども申し上げました民法四百七十八条の債権準占有者に対する弁済という規定が使えるのではないかというふうに考えておりますので、これはまだ解釈論の問題ですから今ここで言い切るわけにはまいりませんけれども、法案自体でもそういう登記事項証明書をだれでもとれるわけではない、債務者名について入ったものまではとれるわけではないということを申し上げておきたいと思います。
#61
○山田俊昭君 もう一点だけですが、債務者のいわゆるもう払ってしまっているのに間違った登記だとか、登記には公示力だけで公信力はないと言われればそれまでなんだけれども、そういう場合の債務者のいわゆる異議申し立てみたいな救済的な制度というのはないわけですね。これは設けられるべきだと思うんですが、この点に対していかがか、お伺いします。
#62
○参考人(池田真朗君) これも民法の四百六十七条二項の確定日付ある通知と同じ力を与える債権譲渡登記であるということになりますと、これは債務者の関知しないところでその通知がされるわけですので、性質的に債務者に変更権等を与えるというところまでは必要ないのかなという感じはいたします。
 ただ、今後この制度が特に何か悪用されるというようなことが実際にでも出てきましたら、それはまた運用段階で考えなければいけないかと思いますが、私が予想としているところでは、先生のおっしゃるような暴力団が介入して虚偽の形でというようなケースがそれほど出てくるという感じはしておらないのであります。想定のことでお返事するのも申しわけありませんが。
#63
○山田俊昭君 どうもありがとうございました。
 終わります。
#64
○委員長(武田節子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#65
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、大木浩君が委員を辞任され、その補欠として畑恵君が選任されました。
    ―――――――――――――
#66
○委員長(武田節子君) 休憩前に引き続き、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#67
○千葉景子君 前回、この法案につきましてお時間をいただいて御質問させていただきました。おおよその考え方についてはお聞かせをいただいたんですけれども、何点か確認をさせていただいたりあるいは御質問したいところがございますので、時間は三十分いただいておりますがそこまで必要ないかとは存じますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。
 まず、前回の質問をさせていただいた際に、要するに、本特例と一般の民法上の債権譲渡というようなことが重なり合ったりする場合に、その優先順位をどうするかということにつきまして、登記では法案上は移転の時期が登記年月日ということで特定がされる。しかしながら、それに対して時間も登記に明記をするという御回答をいただいていたかというふうに思うんですが、そこまで明確にされるのであれば、やはり混乱を避ける意味でも、そしてむだな争い事というのも変ですけれども、それを避ける意味でも、法律でもう時間まで登記上明記をするという方がより明確になるんじゃないかと思うんです。
 政省令でそこについても手当てをするということも一つではございますけれども、この委員会の議論でも、この対抗要件の優劣関係が競合した場合に、余り事例はないのではないかという考え方がありますけれども、やはりそういう事態が生ずるケースを考えたときにはできるだけ明確な方がよろしいのではないかというふうに思いますが、その点について改めて法律に明記をするというお考えはありませんでしょうか。
#68
○政府委員(森脇勝君) 前回お答え申し上げましたのは、登記としては登記の年月日を記載する、こういうことでございますが、登記事項証明書には登記の年月日時を記載することといたしたい、こういう答弁をさせていただきました。
 このようにした理由でございますが、それはこの新しい債権譲渡登記によって生ずる効果は民法の確定日付ある通知と同様のものにする、こういうところに始まっているわけでございまして、登記事項としては年月日を記載するということにいたしたわけでございます。ただ、現実に対抗要件の競合という場合が起きましたときには、その対抗要件を備えたときの前後によるということが最高裁の判例として示されておりますので、その点をおもんぱかって、登記事項証明書については、登記事項である年月日のみでなくその時まで証明事項にしよう、こういう考え方を申し上げておるところでございます。
 それで、これをいっそ登記事項にしてはどうかということもあろうかと思いますが、この法案におきましては、債権譲渡登記の手続に関する事項のうちで、申請者等この制度の利用者の権利義務に直接かかわるものを法律で定める、登記申請書に添付すべき書面であるとかそういった具体的、細目的な事項は政令または省令で定める、こういう考え方に基づいているわけでございます。
 したがいまして、今御説明したとおりの経緯から、登記の年月目以外の時の部分でございますが、これにつきましては、登記に関する細目的な事項であるというところから、登記事項証明書の記載事項として法務省令で定めることが適当ではないか、このように分類いたしておるところでございます。
#69
○千葉景子君 その分類は、わかったといえばわかるんですけれども、権利義務関係にかかわることを法律事項に、そしてその詳細については政省令という区分けというふうにお聞きいたしますけれども、ただ、やはりこの対抗要件の優劣をつけるときにどちらかという話は決して権利義務関係に無縁なことではございませんで、その区分けの仕方というのは一つの基準ではあろうかと思いますけれども、できる限り法律の中でいろいろな問題を明らかにしておくということは私はやっぱりもっと考えてもよかったのではないか、こういう気がいたします。ただ、今のお答え以上にならないのかなという気もしますので、これはこの程度にさせていただきます。
 ただ、今度の特例法も、今お話がありましたけれども、かなり政省令でこれから決めなければいけない部分もございます。そういう意味ではその部分がどうなっていくのかなという問題もございますし、それから特債法などとの関係も非常に複雑である。債務者にとっては、私の債務はどこに行ってしまったんでしょう、あるいはどういう形で今動いているのかなというようなこともなかなか一つ一つ確認をするなどということは日常ありませんので、そういう意味ではこの特例法についてもできるだけ、こういう仕組みができました、一人一人の債務者あるいは消費者にとってもこういう問題点が出てきます、あるいはこういう処理がされますというようなことをやっぱり十分に知らしめるといいますか、混乱を避ける意味でも安全を図る意味でもしておくことが必要だろうというふうに思います。
 衆議院の審議などでもその点についてはいろいろと指摘がなされていたようでございますけれども、改めてこの法案の内容についてどういう形で周知徹底といいましょうか、これを利用する法人の側というのは、自分で使うわけですからいろいろ調べたり、当然のことですけれども、わかりやすいですけれども、やはり債務者の側にとっては、こんなものができたのかということすら十分にわかりにくいということもあろうかというふうに思います。だからといって地位が危うくなるということではございませんけれども、やはり登記という形によって債務者にとっては一定のプライバシーあるいは信用力、こういうものが外に出ていくということにもなるわけですから、登記に公信力がないということも含めて取引の安全、あるいは債務者に対しても、登記がなされたから必ずそれが信用というか、中身が確実にあるものかどうかという問題もあるんですよと、こういうことも含めて周知徹底をさせておく必要があると思うんです。
 具体的にはどういう形でおやりになるつもりでしょうか。よくあるように政府広報とかそういうことも一つの手法だとは思いますけれども、なかなかそれを直接に丹念に見る方も少ない。あるいは個人でローンなんか抱えていても、そんなところに余り思いはいたさないというのが普通だと思いますが、債務者保護あるいは取引の安全も含めて、この辺は具体的にはどんな形でおやりになる予定でしょうか。
#70
○政府委員(森脇勝君) 委員御指摘のとおり、今回の法律が成立いたしますと、債権譲渡という民事法の基本的な部分に関しまして債権譲渡登記という全く新しい制度が設けられることになるわけでございまして、その意味では国民各層にかかわりのある問題であるというふうにとらえています。
 今、委員御指摘のとおり、特に債務者としてかかわる方のことを考えますと、これは非常に多数に上るということになるわけでございます。そういった点も考えますと、広く国民にこの制度の趣旨、内容を正確に御理解いただくことが重要であるというように考えておりまして、このような観点から、法務省といたしましても、各種のマスコミを通じてこの点の周知を図る、あるいは説明会でありますとか講演会といったようなものでこの点の周知を図るということをやってまいりたいと考えておるところでございます。また、しばしば新法ができますとテレビ等の媒体を使える機会もありますので、そういった機会があればこれを逃さずに積極的に対応してまいりたい、このように考えております。
#71
○千葉景子君 それはやはり普通とられる手段でございまして、当然ながらそういうことは積極的にやっていただく必要があろうと思うんです。例えば債務を負うというのは消費者にとっては金融機関と契約を結ぶという時点があるわけですね。そういう際に、必ず債権が流動化されるとは限りませんけれども今こういう制度も取り入れられています、こういう譲渡の方法もとられるようになりましたというようなことをそういう契約時に何か知らしめたり、あるいはそういうことを金融機関等にできるだけ丁寧に説明をしてもらうというような指導などもされたりしたらどうだろうかというふうに思うんですけれども、そんなところは御検討されませんでしょうか。
#72
○政府委員(森脇勝君) ただいま委員御指摘の点も含めまして、広報の手段につきましては早急に検討してまいりたいというふうに考えております。
#73
○千葉景子君 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
 さて、債務者の保護という面で、これまでの民法上の債権譲渡でありますと、余りみずからのプライベートな信用力というのが外に出ていくということはそう多くないんですけれども、今回は登記ということになりますので、一定の方がこれを閲覧したりあるいは情報として得ることができる。それを余りだれでもできるようにしてしまったら消費者のプライバシー保護に欠けるということで、だれでも確認できるあるいは情報として得られるのは登記事項概要証明書、こういう形で債務者などが明らかにならぬような格好で実情がどうなっているかということを確認できるということにされているわけでございます。
 ただ、登記事項証明書そのものについては、「債務者その他の当該債権の譲渡につき利害関係を有する者として政令で定める」ということになってございますけれども、債務者というのは当然のことながらわかります。この「その他の当該債権の譲渡につき利害関係を有する者として政令で定める」のは一体どういう内容になりましょうか。具体的にはどの範囲ということがある程度確定をされているのかどうか、ちょっとその辺をお聞かせください。
#74
○政府委員(森脇勝君) 債務者のほかには譲渡されました債権の差し押さえ債権者、それから譲渡人あるいは譲受人の破産管財人、それから会社更生法による管財人、それから保全管財人、こういった方々が当然に利害関係ある者というふうに考えております。
#75
○千葉景子君 今挙げられましたのは例示的になるんでしょうか。それとも政令などで逆に限定的な形で利害関係人という範囲を定めるという格好になるんでしょうか。その辺はいかがですか。
#76
○政府委員(森脇勝君) まだ十分な詰めはなされておりませんが、余り限定的に規定いたしますと、将来どういう実質的に法律上の利害関係を有する者が出てくるかということはわかりませんので、ある程度概括的な条項もつくっておく必要があるのではないかというふうに考えております。
#77
○千葉景子君 確かに限定するというのはなかなか難しいところもあるんですけれども、「債権の譲渡につき利害関係を有する者」、法的に利害関係が生ずる関係というのはある程度現行法上限定をされてくるんじゃないか。将来、確かにまたいろいろな法整備がされたり、あるいは他の法令との調整というようなことも考えられないわけではないんですけれども、そういう際にはまたそこで再検討することもできようかと思います。余り包括的にしますと、結局は、だれでもとまではいきませんけれども、かなり広い範囲で閲覧といいますか、登記事項証明書を交付し得るということにもなりますので、その辺はやっぱりかなり限定的に政令などでも御配慮いただく必要があるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
#78
○政府委員(森脇勝君) 御指摘のとおり、解釈によって広がり得るような規定を設けるときには、この制度の重要な柱でありますいわば債務者のプライバシー保護という部分に欠けることになってくるであろうというふうに思われます。例えば、債権を譲り受けようとする者というのも利害関係人の中に含まれるというような解釈を生ずるようでは、これは制度の趣旨を台なしにするものでございますので、仮に例外的な事由、予想されないような利害関係者を含めるといたしましても、それには一定の歯どめが必要であろう。例えば、債権につき管理処分権限を有する者といったようなものをこれこれ及びその他当該債権について管理処分権限を有する者といったような限定の仕方というものが必要であろうというふうに現在考えております。
#79
○千葉景子君 その他にも政省令にかかわる部分というのはこの法律も大分ございます。そういう意味では、その策定に当たりましてはいろんな機会に委員会などにもまた御説明いただきながら、ぜひ取引の安全あるいは債務者の保護に欠けるようなことがないようにしていただきたいというふうに思います。
 それから、これは制度が幾つもになってしまいまして、私も一体どれがメリットがあってどれがデメリットなのかさっぱりわからないんですけれども、例えばこの登記する場合の手数料とか、これについてはどんな程度になるのでしょうか、
 実は、特債法で公告手続をする場合に一体どんな手数料なりがかかるのかなということでちょっと通産省の方にお尋ねをしてみました。今、確定日付の通知をしますと、その郵送料で相当なコストがかかる、これはこの法案のできるある意味で背景でもあるわけですけれども。特債法でやるとこれ本当にそうなの衣通産省にお聞きしたのですからそうなんだと思いますが、特段に手数料はかからないということで、新聞に掲載をする際に七十万円程度の掲載料がかかる。それで何十、何百という債権の公告が終わってしまうのかな、それでできるのかなとちょっと疑問にも思うんですけれども、そういう一応説明をいただきました。
 この登記の場合にはどの程度ということは考えておられますか。
#80
○政府委員(森脇勝君) この登記手数料については政令で定めるということになっております。現在、その詰めをしておるところでございまして、どのくらいの利用料を見積もるかとか種々の難しい面がございますが、概括的に申し上げますと、物価の状況でありますとか債権の個数、それから今回の場合には債権譲渡の存続期間というものが定められますので、それの長短といったことによって登記に要する実費というのが異なってくるのではないかというふうに考えられるところでございます。
 今お尋ねの件は、債権譲渡登記をする際の費用ということになろうかと思いますが、この制度を広く御利用いただくという面から考えましても、利用者に過度の負担をかけることがないような適正な価格を設定する必要があると考えておるところでございます。
 ただ、今委員の方から特債法の方では公告の費用に七十万かかるということでございますが、どういう規模の登記、どういう存続期間の登記がということにもよってきますが、到底そんなに高額なものになるというようには考えられないということだけ申し上げられると思います。
#81
○千葉景子君 何が高額かというのは難しいんですけれども、私も不思議に思うのは、特債法の方は数とか何にも関係なくて、公告をすぽっと一つ出すと、その債権の数がどうであろうが一括で済むといいますか、そういう制度のようです。登記の場合ですと、やっぱりそれは債権の数とか額とか、そういうもので一定の基準をつくるんでしょうか、それとも一括どのくらいの手数料みたいな格好になるんですか。その辺はどうなんでしょうか。
#82
○政府委員(森脇勝君) 今考えておりますのは、登記をいたしますとそれを私どもとしてはずっと保存しておくわけでございますので、コンピューターの一部を占領する、こういう関係になります。そういう点から、その存続期間の長短、一括して譲渡された債権の数、こういったものを基準に手数料が定められることになる、こういうふうに考えております。
#83
○千葉景子君 この辺もなかなかよくわかりませんが、いずれにいたしましても、余りにも債権の流動化ということがゆえに、細かい点とかあるいは債務者の側にとっての複雑さとか、そういうものが十分にこなせないままにこの法案というのが出ているんじゃないかなという感が私は率直に言ってしないではございません。
 今後、改めて政省令あるいはこういう債権流動化策、こういうものの検討をこれから続けていただく中で、また十分に配慮をいただき検討課題として頭に置いておいていただきたい、こんなことを申し上げまして私の質問を終わらせていただきます。
#84
○大森礼子君 公明の大森礼子です。前回に引き続いて質問させていただきます。
 この特例法ですけれども、我々がこれまで説明を受けた経緯等から考えまして、いわゆるSPC法とリンクしているのは間違いないと思います。そうしますと、SPC法が成立すればその運営に必要な制度を設けるのは立法府として当然だろうと思うわけです。ただ、リンクしているのであれば、SPC法の成立を待ってから本委員会でもこれについて採決すべきなのかなというふうに思っていたんですけれども、前回の局長の答弁ですと、必ずしもリンクしていない、一般に多数の債権譲渡のときにも利用が期待できるということで、SPC法案に関連はあるけれどもその成立を前提とするもめではない、一般私法として考えているという御答弁でした。
 そこで、どの視点から質問するかということで質問の仕方も異なってくるんですけれども、私は、きょうは一般私法という観点で質問させていただきます。一般私法の問題としてこの特例法の内容を考えてみたいと思います。
 最初の質問ですけれども、先ほど千葉委員の方から、時刻を登記に明記するとまで言うんだったら法律で定めるべきではないかという御質問がございました。そのときの局長の答弁が、判例を引かれまして、対抗要件を備えたときの先後によるというのが判例の考えであるからとおっしゃいましたけれども、このもととなる判例というのはいつの判例になりますでしょうか。例の有名な到達時説というのを述べた昭和四十九年三月七日の判例のことをおっしゃっているのでしょうか。確認させてください。
#85
○政府委員(森脇勝君) 今、委員御指摘の判例でございまして、これは民法の対抗要件であります通知につきまして、その前後について判示したものでございまして、昭和四十九年三月七日の最高裁第一小法廷判決というものでございます。
#86
○大森礼子君 私もその判例を想定しておったんですけれども、結局その判例の考えからすると、民事局長は、その先後を決めるためには、対抗要件を備えたときの先後によるというのが判例の考え方であるから、例えば登記についてはその時刻によって決めることになるだろう、こういうお考えなんでしょうか。
#87
○政府委員(森脇勝君) 委員御指摘のとおりでございます。
#88
○大森礼子君 ここで意見を言い合っても仕方がないかもしれませんけれども、私の理解では、この判例というのは確かにともに確定日付証書の通知があった場合の扱いをどうするかということでありまして、通知の到達の先後によるべしとしております。
 これは一つには、民法の対抗要件というのは債務者の認識というのをインフォメーションセンター、基準としておりますので、そこに最初に来たらそれに伴って債務者の方が支払うだろう、それで後の法律関係を複雑にしないためにその到達の先後によるということとしたと思うんです。
 それで、このときになぜ確定日付の後先にしなかったのかという理由づけもあったと思うんです。なぜその確定日付の後先にしないのかという理由については、もしそれで決めるとなると、後日付の通知が到達した後に長い間を経て先日付のそれが到達したときにややこしくなるから、こういう判断があって到達時を基準とするというのが判例の考えだったと私は理解しております。もし間違っていたら御指摘ください。
 そうしますと、この登記制度のもとでこの判例をそのまま基準にできるかどうかといいますと、まず債務者の認識を基準にするというのはとり得ませんね、この特例法では。それから、もし登記の日付の時刻で決めるといいますと、現行の民法の方で判例が確定日付の後先をとらなかったのと同様に、第二譲渡人であるけれども先に通知した側が通知しなかった側に負けることになるのではないかなと思うんです。言っていること、御理解いただけますでしょうか。
 つまり一言で言えば、この到達時説の判例の考え方の背後には権利行使に誠実であったものを保護するという考え方があるんだろうと私は思うんです。そうだとするならば、この考えをこの特例法のケースに当てますと、やはり登記の時刻で決するということは、むしろこの判例の基本的な考え方に反するのではないかと思うんですけれども、民事局長はどうお考えでしょうか。
#89
○政府委員(森脇勝君) この登記の効力をどのように持たすかということでございますが、これは民法の確定日付による通知と同等の効力を持たせる、こういうことでございますので、先ほど委員の御指摘になりました債務者の認識時点の先後によって決めようという基準だと考えますと、そういうことにはならないわけでございまして、今回の登記制度は、債務者に登記事項証明書を交付して通知すると、通知することによって登記の年月日が判明する、それによって判断していただこう、こういう基準にしているわけでございます。
 したがいまして、最初の問いでございます最高裁の判例がそのまま適用されるかという点については、もちろんこの制度についての判例はないわけでございますが、恐らく登記の時とそれから通知の到達時、これの前後によって決まってくるというような解釈になるのではないか、私はこう思っております。
#90
○大森礼子君 ここは解釈に違いが出ました。これをやっておりましても時間がなくなります。
 到達時説をとった最高裁判例というのは、要するに債務者の認識というのも一つの公示の手段とする、これを前提としておりますので、この登記制度とその前提を同じくするものではございません。だから、この特例法の場合に、この最高裁の判例をスムーズに同じように考えることができるのかどうか、私は極めて疑問に思います。
 それから、先ほどの千葉委員の質問なんですけれども、費用が全然わからないとは少しいいかげん過ぎませんかと思うんです。
 なぜならば、私は前回、局長に質問しましたよ。要するに、こういう大量の債権譲渡について極めて簡便な対抗要件を備える方法を認めるということは、暴力団に悪用される危険があるではないかということを申し上げました。
 暴力団というのは債権の取り立てをしのぎでやっているところが多いわけでありまして、いろんな金融会社から消滅時効直前みたいな債権を安く買いたたいて買い取って、債務者に取り立てに行く。それで、消滅時効を知らない人が間違って承諾してしまったもので払わなきゃいけなくなるとか、これを一つのしのぎにしているわけです。サラ金などが大量に不良債権を安く買い取って、この場合一応形は合法的です、取り立て自体は。こういう形で暴力団がいいしのぎに使うのではありませんかという意味で前回質問させていただきました。
 これに対しての局長の答弁が、こっちの登記制度の方がコスト高で手続が面倒なのでそういう心配は当たらないというふうに御答弁になったんです。
 だから、当然そのコストの比較というのはできているのかと思っていたんですけれども、この費用がどのぐらいかかるのかまだわからないのに、民法の場合とこっちと費用とか比較できないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#91
○政府委員(森脇勝君) 私が御答弁申し上げましたのは、特定の債権を目指してといいますか、特定の債権債務者間の債権を譲り受けて、それを取り立てることによって利益を上げる、こういう形の行為をいたしますにつきましては、現在の民法の規定による制度を利用するといたしますと、債権者から債務者に対して通知をする、それによって譲受人あるいは譲受人と称するものが取り立て可能になる、こういう民法のシステムになっておる。それに対しまして今回の制度は、制度を利用してそれを行うとすれば、まず登記をしていただきますよ、そのためには手数料もかかりますよ、その上で登記事項証明書を交付してする通知をしていただきますよ、そうなりますと現在の民法による通知の方法よりもより迂遠な方法をとることになりはしないか、こういう点を申し上げたわけでございます。
#92
○大森礼子君 民法の方は債権譲渡一個のことを想定したわけじゃないんです。こういう大量に簡便に対抗要件を備えるような方法がありましたら、要するに譲渡人の方は法人であればよろしいわけでしょう。譲受人は個人でもよろしいわけでしょう、やくざでもかまいませんね。そうしたら、大量に債権を譲り受けて、それをしのぎに使う、こういう場合が想定される。この比較をしていただきたいわけでありまして、何も債権一個のことを想定しているわけではないんです。
 それで、民法の確定日付によりますと、ちょっと私郵便局に行って今費用はどのくらいかかるんですかと聞いてみましたら、基本料金が定形内で八十円で、書留は四百二十円、配達証明が三百円、それから内容証明謄本一枚の場合が四百二十円、つまり最低千二百二十円一通につきかかるということがわかったわけです。
 基準としまして安くつくのかどうかということを知りたいから、それでこの法案の説明をされるときに、要するに一万本の債権譲渡をして一万本の内容証明をしていたらお金がかかりますよ、簡便さとともにコストが安くなるということを非常に強調されておられるわけです。そうだとすると、大体どのくらいの費用になるのかということがわかりませんと、いや安いんですよと言われても、そんなに高額なものにはならないと言われても、この高額という場合に私たちが考えている高額と法務省が考えている高額と一致しているかどうかわかりませんので、大体の線というのはこのぐらいかなと、これから政令で決めるんですから今確定した答えを言えとは申しませんけれども、大体これぐらいかなというこれも示すことができないんでしょうか。そうでないと判断できない、安くつくのかどうか。
#93
○政府委員(森脇勝君) 政令で内容を確定いたしまして利用件数を予測し実費等を考慮するということで現時点では確定的なことは申し上げられないところでございます。ただ、現在の通知を内容証明でいたしますと委員御指摘のとおり一債権について千二百二十円かかる、これが何本か集まると、例えば百本集まるということになるとそれの百倍かかる、こういう形でこの内容証明による通知というのがいわばコストが出てくるわけでございます。それから、特債法の方は先ほどの説明では一件について七十万ということでございます。
 登記による手数料の場合でございますが、これは実費が基本でありますので、利用者が多ければ多いほど、多いものと見込めば見込むほど安くなるということでございまして、現在の時点で申し上げられるのは、特債法の場合に比較すればかなり低廉なものになるであろう。仮に一本の債権を通知するという場合に比べますと、これはより登記手続の方が高額になるのではないかということでございます。
#94
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 民事局長はなかなか専門家なものですからなんでございますが、今私ども考えておりますのは、年間何件ぐらいあるだろうかと今予測しております。そしてそれに基づいて手数料はどの程度になろうかと、その辺の予測の今最中でございまして、十数万ぐらい考えられるのかなと。これはもうあくまでも予測でございますから、はっきりしません。
 そういうようなことからしますと、それは今お話しになりましたような特債法に基づく新聞公告七十万、あるいはまた今度は民法の手続によって送達するということだと一人千二百幾らかかるので、一万件だったら千二百万円かかるんじゃないかというふうな推計があるわけでございますが、私どもはそういうふうなことを参考にしながらも実際のところ、これは政治的な発言ですけれども、ウン万円程度の形になるんじゃなかろうかというぐらいのことしか今のところできていないということでございます。
#95
○大森礼子君 結局そこら辺がわかりませんと比較対照できないわけです、本当にこれは安くつくと言うけれども。あるいはこの法案の中で債権の数とか規定されてございません。ただ、だれでも法人つくったら勝手にできるという危険もありますけれども、大体登記手数料がこれぐらいだとしますと、民法の内容証明の場合と比較しまして大体何個以上ぐらいの債権でないと割がいませんから、大体これぐらい以上の債権譲渡に利用されるものと予想されますとか、こういう答弁になると思うんです。そこら辺がコストもわからないで、それでコストは安くなると言われても、それでああそうですかと引き下がっていたら私委員としての責任を果たしたことになりませんので、そこら辺の予測とか推測でも結構ですから、やはり根拠となるような数字はきちんと示していただきたいと思います。
 それから法務大臣は年間何件か今調べておりますと言うけれども、当然こういうのも予測がついていると思って私この法案審議していたんですけれども、これからするとしたら、思ったほどそんなに利用がなかったら、これは一般私法の問題として広げるわけですから、余りに大きな器を用意し過ぎでは後で混乱を生じせしめるだけという結果にもなると思うんです。もう少し立法させる事実といいますか、この検証をきちっとこちらにも示していただきたいと思います。
 時間がなくなるので次の質問に行きますが、前回、第五条一項六号の「譲渡に係る債権を特定するために必要な事項で法務省令で定めるもの」についても質問させていただきました。局長の答弁ですと、登記申請に原債務の存在を証明するような裏づけ資料は必要なく、譲渡人と譲受人が審査用紙に一項に掲げる必要事項を記入すれば足りるというお答えでございました。これを前提にしますと、虚偽登記というもの、つまり実体はないけれども登記だけを容易に作出できる、それは費用はかかりますけれども、作出できると思うのですとこの前質問いたしました。そうしましたら局長の方は、これはその登記によって利益を受ける者、不利益を受ける者、この共同申請によって一応登記の真正を確保しようということにした、こういう御答弁だったんです。大体登記というのは、不動産でもそうなんですけれども、利益を受ける者、不利益を受ける者でやる。私が問題としたいのは、全く架空の虚偽登記、つまりどんな法人でもいいわけですから、資格限定ないわけですから、法人と個人とが通謀して申請すればそういう虚偽の外形、登記を容易に作出できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#96
○政府委員(森脇勝君) 今回のこの債権譲渡登記について虚偽の登記を排除できるかという点でございますが、それにつきましては、今委員御指摘いただきましたとおり、債権譲渡、すなわち譲り渡すことによって権利を失う者、それと譲受人、譲り受けることによって権利を得る者、この両方が来れば一般的には真正が担保されるであろう、こういうことでございまして、現在の民法による債権譲渡の対抗要件の問題を考えてみますと、これも譲渡人、譲渡によって権利を失う者、この者からの通知ということを要件にいたしておるところでございます。そういたしますと、現在の民法で譲渡人がありもしない債権について債権譲渡の通知をしたときにどうなるのかという問題と同等の問題がこの債権譲渡登記についても生ずる、こういうことでございます。
#97
○大森礼子君 そうじゃありませんで、通謀ですから、全く形だけつくるわけです。だから、通謀の虚偽登記をつくる場合には、そんなことをやる側は債務者については全く考えていないわけなんです。そして登記事項証明書というのができる、そうしたら私はこういう債権を持っておりますよと。
 前回、民事局長がおっしゃったじゃないですか、これから取引に入ろうとする者は、自分は利害関係人に当たらない、だから債権を譲渡しようとする者にこういう登記があるとかないとかの証明を出してもらうんですと、こうおっしゃったでしょう。だから、そういう形でも登記事項証明書が使えるわけです。この虚偽のものを使って信用させて悪さをするということがあるんではないですかということを申し上げているんです。
 もう時間がないから次に行きます。
 二重登記。二重譲渡は当然あるわけですけれども、二重登記という事態が起こり得るかどうか。もうイエス、ノーだけで結構です、簡単に教えてください。
#98
○政府委員(森脇勝君) 起こり得ます。
#99
○大森礼子君 この二重登記をチェックするシステムというのはどういうふうになっていますでしょうか。
#100
○政府委員(森脇勝君) この制度は、債権が二重譲渡されることはあり得るという前提に立った上で、その二重に譲り受けた者同士の対抗要件をどう定めるか、これがこの法律の予定している規定でございます。
#101
○大森礼子君 そういうことを聞いているのではなくて、二重登記ができますかということは、一つの登記があるのにさらに後で同じ債権について登記しようとした場合、これを入力なんかしたときに、もう既に同一登記がありますということでぴんとコンピューターか何かではじかれるというシステムが構築されておりますかという質問です。イエス、ノーで結構です。
#102
○政府委員(森脇勝君) そのようなことは予定いたしておりません。
#103
○大森礼子君 そうすると、二重登記という事態も生ずるということです。非常にそこら辺からまたその取引の混乱とかいろんなものが生ずると思いますが、もう質問時間がありませんので、最後に法務大臣にお尋ねいたします。
 先ほど千葉委員もおっしゃいましたけれども、三つの対抗要件が競合する形になります。説明する側はつのどれでもお使いくださいとおっしゃるんですけれども、これは譲渡人側の都合だけ考えておりまして、債務者の側、それからこれから取引関係に入ろうとする者の利益というものを考えていないような気がするんです。本当に完璧に債権を確実に譲り受けようとすると、取引に入ろうとする者は、特債法に絡む債権ですとまず公告されていないかどうか、それから登記されていないかどうか、それからさらに債務者に確認するという手続を経ないと完璧な債権、権利を得られないと思います。これはまた後でお考えになってください。
 きょうの池田参考人もおっしゃっていましたけれども、特債法と特例法、これは特例法の方が広いわけですから、吸収という形になるんでしょうか、これを一本化させて、民法ともう一つのいわゆる広義の特例法、この特例法、こういう形にするのが望ましいのではないかというふうにおっしゃっていました。法務大臣、いかがお考えでしょうか。
 それから、これについては通産省とのいろいろ検討があると思いますけれども、そういう検討をしていく御意思があるかどうか、最後にこれをお尋ねします。
#104
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 委員もう御承知のとおりに、今、特債法と民法とがダブっているということでございます。それが現実の運用で問題になっている点があるかどうかということも私ども関心を持ちました。現実には問題になっておりません。
 今度、いわゆる特例法、本法が加わるわけでございます。本法は法人についての規定、それから特債法はまたいろいろ対象が限定されております。そういうふうな意味では、現実の問題としてどの程度トラブルが起こるかどうかということは、私はもうほとんどないんじゃないだろうかと思いますが、さはさりながら、法律的には競合する部分、重複する部分があるわけでございます。ですから、その点につきましては、この法案を運用させていただいて実態を見きわめたいと思います。
 そして、特債法とのかかわり合いにおいてどういうふうな問題があるのか。これはもう通産省ともよくお話し合いをしなきゃいけません。
 問題は、国民の立場でやはり法律の運用というものがうまくいくような仕組みでなきゃならぬわけでございますから、私どもとしてはそういうふうなつもりでやってまいりたい、このように思います。
#105
○大森礼子君 終わります。
#106
○橋本敦君 前回私がお尋ねしましたことに対して民事局長は、法案の十六条に、この法律に定めるもののほか登記に関して必要な事項は政令で定める、こう規定しているので、登記申請に関してその日時の時までその登記事項証明書の内容等について定めたいという御答弁がございました。
 衆議院でもこういった議論がいろいろあったと思うんですが、答弁は同じような趣旨の答弁を衆議院でもなさっているわけですか。
#107
○政府委員(森脇勝君) 今、確定的に確認することはできませんが、私、当初からこの点については同じ答弁をいたしているつもりでございますので、登記事項証明書の記載事項として、登記年月日のほか、その時刻についても記載することを予定しているということをお答えいたしております。
#108
○橋本敦君 そうすると、登記事項証明書を出すときには、そこまで記載するとなれば、その登記した日時の時まで、それは登記の原本かファイル原本か、後でそれが検証されるためにどこにそれは記載されることになるんですか。
#109
○政府委員(森脇勝君) ファイルに記載するということになると思われます。
#110
○橋本敦君 そうなれば、先ほどから議論されているように、法律事項としてもよいのではないかということもまた考えられるんですが、それはおいておきましょう。
 そこで、次の質問は、前回時間がなかったので私質問しなかったんですが、その日時の時は登記申請したときの時なのか登記手続が完了したときの時なのか、どちらの時なんでしょうか。
#111
○政府委員(森脇勝君) 登記をしたときの時を記載するということを予定いたしております。
#112
○橋本敦君 つまり、登記手続ができたときの時、こういう意味ですね。
#113
○政府委員(森脇勝君) はい。
#114
○橋本敦君 そうしますと、そういうことで特例法の関係では確定するとして、それで議論をしたんですけれども、民法の確定日付ある債権譲渡通知の到達の時点、それから特債法による公告、この三つの対抗要件の競合ということについて、民法の債権譲渡通知の到達ということとこの登記の時との関係ではこれはそれなりに比べることができるでしょう。ところが、登記手続というのは夜中に受け付けるわけじゃありませんし、夜中に完了するわけじゃありませんから、一定の範囲はありますね。ところが、公告ということになりますと、新聞公告ですから、特債法の公告との関係で一体優劣は、先後関係はどう決めたらいいのかという問題がレアケースだけれども理論的には残ってくるわけですよ。
 午前中の参考人質問でも、私がそこの点を池田参考人に質問しましたら、この点については極めて難しい問題だというお答えがございました。民事局長としてはこの点はどういうふうにお考えですか。
#115
○政府委員(森脇勝君) 理論的には、同一の日に到達、それから公告、それから本法案による登記、これが競合する場合はあり得る、こういうふうに考えております。
#116
○橋本敦君 あり得るから、優先順位としても先後はどうやって判断するんですかということになるんですよ。
#117
○政府委員(森脇勝君) 特債法の方では、これは日以上に細かい時を特定することができないというのが一般的な考え方のようでございます。したがいまして、この見解によるといたしますと、一方の対抗要件は日をもってしか定められない、他の対抗要件は時まで判明する、こういうことになってまいりますとこの先後関係は不明というように考えざるを得ないであろうと考えておりまして、前後関係不明の場合の権利関係をどうするか、こういう問題になってくると認識いたしております。
#118
○橋本敦君 そういう意味では、その点は整理をしなきゃならない、理論的ではありますけれども、法律上の一つの重大な欠陥を示している問題だというように私は理解せざるを得ないと思うんです。
 次の問題に移ります。
 特債法では債権の譲渡を公告でいたします。そうすると、債権の取り立てについては、これはもとの債権者が委託を受けているということを条件として通産省は認可をするというようになっているんです。ところが、特例法ではその規定はありません。しかし、特例法では譲受債権者が債権者として直接請求するためには登記事項証明書の交付が要るわけですから、そうでない限りはもとの債権者が取り立てるということになる。
 もとの債権者との関係では委任契約が存在するということを当然の前提として考えていると思うんですけれども、それを法文上、特債法のように明確にしていない理由は何かあるんですか。
#119
○政府委員(森脇勝君) これは本法律の利用できる場合をできるだけ広げようとしたわけでございまして、委員が今御指摘になられました取り立ての委託でございますが、それは譲渡人、譲受人間で定めるべきことで、今回の対抗要件の関係からはそこを規定する必要はないであろうということでできております。
#120
○橋本敦君 そうすると、債務者としては、登記事項証明書が送られてくれば、債権譲受人から請求できるということでの対抗要件ができてくる。それがないと、もとの債権者から請求が来る。債務者としては債権譲渡を知らないわけですから、債権者だと認識をして、そして例えば相殺の抗弁だとかいろんな抗弁権の行使をすることは当然に考えていくということになりますね。そういうことで抗弁権を行使して、そしてもとの債権者がそれを認めて債権が消滅したとします。譲受人が俺はそんなこと知らないよということで、そんなことは認めないということで、改めて登記事項証明書を出して自分が債権者だとして債権取り立てをする、こういうことが理論的に起こり得ませんか。
#121
○政府委員(森脇勝君) そういう行為がないかといえば、それは行為はあるんでしょうけれども、今の設例の場合でまいりますと、債務者としては、債権が譲渡されたことについて譲受人が対抗要件を持っておりませんから、当然にもとの債権者すなわち譲渡人を相手に債務を弁済すればこれは本旨に基づく弁済になるということで、自己の債務が消滅するということになります。その後に譲受人から請求を受けても、それは既に消滅しておりますという抗弁を出せるのは当然であると思っております。
#122
○橋本敦君 そういったことで裁判を起こされたら、裁判を受けて立たねばならぬということになるんです、実際の問題としては。自分の弁済は有効だということを証明しなければならない。裁判にならなきゃいいですよ。そこのところの債務者の保護というのはそういうあいまいなことでいいんだろうかという点を私は一つ心配するんです。
 それからもう一つは、先ほどからもありましたが、特債法では債権譲渡公告ということをやっていく条件として委託を必ずやる。それは取り消せないというぐらい厳しい関係が通産省との関係ではある。こういうわけで、私は特債法がいいと言っているんじゃありませんよ。ところが、今おっしゃったように、今度の特例法ではどちらが取り立てるかは任意に任す、こういうことですから、債務者にとってはどっちから来るかわからないという不安定さが残る。それから抗弁権がどこまで行使できるかということについても、それはあなたがおっしゃるように有効な弁済だということが客観的に証明されればいいけれども、争いがあった場合は問題がやっぱり出てくるという意味で不安定さが残るわけです。
 そこで、聞きますけれども、仮に債務者が弁済をした、債権譲渡をしたもとの債権譲渡人がその弁済を受領した、債権は消滅するわけです。その消滅したということについて登記はできますか。
#123
○政府委員(森脇勝君) 消滅の登記をするためにはもとの譲渡人それから譲受人の共同申請でする、こういうことになっております。
#124
○橋本敦君 そこが問題なんです。
 有効に弁済した、お金を払ったんですよ。だから債権は消滅したんです。その債権が消滅したということを、その債権譲渡登記の中から自分債務者名と債権は消滅して、登記を抹消してもらう権利があると思うんです。
 ところが、なぜ債務者にその権利を認めないんですか。譲受人、譲渡人がその登記を申請するならするということで、そっちに任せてしまって、債務者に自分で抹消したということを明確にできる権利をなぜ認めないんですか。
#125
○政府委員(森脇勝君) これは結局この法律で規定いたします債権譲渡登記の効力が何かというところから来るわけでございまして、その点は譲渡人、譲受人の申請に基づいて、その間で債権譲渡がなされましたという申請に基づいて登記がされる、こういうことになっているわけでございます。
 その登記の中に債務者が登場するというのは、当該譲渡人、譲受人間で譲渡された債権を特定するのに必要だからという形で債務者が登場する、こういうことでございまして、この登記の効果から考えますと、当該譲渡債権の債務者はこの登記によって法律上の利害関係を受けないということから債務者の抹消登記請求というものを認めていない、こういうことでございます。
#126
○橋本敦君 重大な問題でしょう。先ほど大森委員からは虚偽登記の問題がありましたが、真正に弁済をして債権が消滅しているんですよ。債務者にとったら、消滅したということを、登記ファイルから債権の抹消をしてもらう権利があっておかしくないんです。債権の譲渡人と譲受人の共同の登記か何か知りませんが、そういうことでなければできないとなったら、弁済した、消滅したにもかかわらず、その債権は登記事項証明書に残っていくじゃありませんか、そうでしょう。
 債務者保護に欠けること著しいと私は思います。この法律の一つの問題としては重大な欠陥がある。そうでなければ、局長、債権譲渡登記されたその問題の登記が次の第三者にまた譲渡されるということだってあるわけです。その場合に、これは消滅したんですよと言って抹消してくれればいいですよ、抹消しないでそのまま次の債権譲渡ということになって登記が続いていく可能性だってあるんです。
 それから、もう一つは、利害関係人が登記事項証明書をもらったら、そこには弁済したにもかかわらず債務者として債権額とともに載っているわけです。だから、その場合に、利害関係人はその登記事項証明書をもらって、これは弁済済みの債権で消滅債権だということがわかりませんよ。そういう意味の取引上の不安定性もある。だから債務者の保護からいっても、そういう安定性からいっても、正当な弁済があった債権については抹消するのは当たり前です。抵当権だって、抵当権抹消登記は支払った債務者が請求できるんです。
 そういう意味で、請求権がないというのは、私はこの法案については一つの重大な問題として検討すべきである。研究会でも法務省でも検討されたことはないわけですね。私は研究会の資料も読みましたけれども、検討されていない。
#127
○政府委員(森脇勝君) 今、そういう観点からの検討というものはなされておりませんが、先生が今御指摘になられました事項につきましては、これを解消する最良の手段としては、この登記の意義、制度の趣旨、こういうものを徹底していくことであろうというように認識いたしております。
#128
○橋本敦君 重大な問題があるんですよ。
 時間がありませんから次の問題に移りますけれども、第八条の関係でありますが、第八条一項は、何人も登記官に対して、登記事項の概要のことで登記事項概要証明書の交付請求ができる。しかし、この一項では、債務者のプライバシー保護のために、債務者の債務者名や債権額の欄は記載されない。これはわかりました。それで、第二項で、今度は政令で定めるということで、利害関係人、利害関係を有する者には当該債権の譲渡について登記ファイルに記録されている事項を登記事項証明書ということで出すということにしている。これもわかりました。
 そこで、利害関係人の範囲をどう定めるかという議論がありまして、先ほども議論されたとおりですね。そこで、債権の譲渡を受けたいと思っている譲受人はここで言う利害関係人には入らないという答弁があったかと思うんですが、その点は間違いありませんか。
#129
○政府委員(森脇勝君) 債権を譲り受けようとする者、それはここでは利害関係人に含めないということでございます。
#130
○橋本敦君 譲り渡そうとする者は請求すれば当然この証明書は自分でとれますね。
#131
○政府委員(森脇勝君) そのとおりでございます。
#132
○橋本敦君 そうすれば、債権譲渡するか受けるかというのは、債権譲渡する者がその証明春をとって、それを譲り受けようとする者が見せてください、どんな債権があるかわからないから譲り受けるかどうかの交渉も話もできませんよと言えば当然見せることになる。これは当たり前のことですね。だから、政令でせっかくそこはチェックされたと言うけれども、実際の取引では出てくるんですよ。それで、出てきたその登記事項証明書がひとり歩きをして、債権譲渡を受けるかどうかという市場取引の中で出回っていくという可能性がチェックできないんですよ。その中には債務者の債権債務も出てくるんですから、そういうことでプライバシーは完全に保護されるというわけにいかないなということを私は心配しておりますが、実際そうじゃありませんか。
#133
○政府委員(森脇勝君) この制度によって今御指摘いただいたような場合というのは当然予定されているところでございまして、そういった意味でも、債務者のプライバシー侵害のおそれがあるということになりますと、これはもう債権譲渡自体を考えなければ、債権譲渡の公告制度自体を許さないというところまでいかないと徹底できない問題であろうというように考えております。
 御指摘の八条の一項、二項の書き分けによって完全に債務者のプライバシーが一切取引界に出ないということまでは期待できるものではございません。
#134
○橋本敦君 時間がなくなりましたから終わりますが、まさにそういうことで、プライバシーの保護というものには重大な問題がこの法案にあるということです。その点、民法の原則からいえば、確定日付による債権譲渡というそのこと自体ではこういう心配は起こってこないんですよ。
 だから、そういう意味では、今日の金融情勢に見合う法案だと言うけれども、民法の原則を曲げて、プライバシー保護や対抗要件、そういった問題でこういう重大な問題があるということについて私は指摘をして、質問を終わりたいと思います。
#135
○平野貞夫君 けさから参考人の先生方のお話も勉強させていただきましたのですが、やはり民法の原則は原則として別に変わらないんだというお話ですが、印象としましては、やっぱり企業の世界、資本主義の世界がかなり激しく変わっているなと、それに対応するための一つの制度といいますか、そういう性格の法案だと思うんですが、やはり率直に申し上げまして、債務者の信用とかプライバシー、どうしても影響を受けるんじゃありませんか。
#136
○政府委員(森脇勝君) 債務者の信用あるいはプライバシーを保護するためには、債権譲渡登記の登記事項のうち、その債務者に係る部分はみだりに登記事項証明書によってだれでもがとれるということにはしない、こういう制約を設けることによりまして、一定の保護を図ろうとしているものでございまして、これによって債務者の情報が外部に出ることが完全に防止されるというほどの手当てではないという限度では御指摘のとおりであろうというふうに考えます。
#137
○平野貞夫君 私ども自由党はこの法案に賛成する立場でございますので、これ以上のことは申し上げませんが、やはり心配がある、そして法務省当局としても、そういう心配に対してはやっぱり十分な対応をしていただきたいということを申し上げて、次に移りたいと思います。
 前回、私、法務省民事局の所管の話ということで、大きくいろんな改革をやっている中でやっぱり総理大臣の姿勢というのは非常に大事だということで、橋本総理の中国ODA疑惑問題を取り上げたんですが、その続きを残りの時間でやらせていただきたいと思います。
 前回お願いしておりました在日大使館勤務者で日本に帰化した前例、過去二十年程度でございますが、名前を公表するのはまずいというのでしたら、件数でも結構ですから、御回答いただきたいと思います。
#138
○政府委員(森脇勝君) 御指摘のような事案に関する統計は私ども持っておりませんので、これは把握できないところでございますので、御理解賜りたいと思います。
#139
○平野貞夫君 把握できないということは、ないということですか、あるいは極めて少ないというように私は今の答弁で理解しておきます。
 けさになってお願いしました相撲の曙とサッカーの呂比須、このお二人は帰化申請をして許可になるまでにどのくらいの期間がかかったか、御答弁いただきたいと思います。
#140
○政府委員(森脇勝君) 曙関につきましては約十一カ月弱、呂比須選手につきましては八カ月弱というように把握いたしております。
#141
○平野貞夫君 わかりました。
 そこで、そのODA疑惑の朱さんについてでございますが、朱さんが中国人でしたので、中国の方と結婚されたのが昭和五十八年。そして平成元年に離婚されて、平成三年五月三十一日に日本人のJICAの職員と再婚された。そして埼玉県の狭山市を住所にして入籍された。そして平成八年一月十一日に橋本政権が誕生した。そして八日後の同年一月十九日に朱さんは帰化申請した。そして十一カ月後の十二月十六日に帰化が許可になった。これが事実関係だと思いますが、この場合に問題なのは、朱さんの帰化申請の動機でございます。
 平成三年五月三十一日の入籍でございますので、国籍法では三年ですから、平成六年六月一日には申請の資格があったと思うんですが、二年間申請されていない。これは事実関係だけ並べた話なんですが、橋本首相が誕生して八日後に帰化申請をした。一体帰化の動機というのは何であったかということを私は問題にしたいと思っておるわけでございます。
 帰化の動機について御答弁いただけますか。
#142
○政府委員(森脇勝君) これは高度のプライバシーに属する事項でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
#143
○平野貞夫君 申請者が帰化申請するときに、帰化動機書というものを出すはずでございます。今答弁できないというなら、それはそれで仕方ありませんが、我々はこの問題のプロジェクトチームを、先ほども民主党と自由党の共同会議をやったばかりでございますが、両院のそれぞれの機関においてその資料要求はし続けていくことになると思いますので、そのようにひとつ御理解いただきたいと思います。
 次の問題なんですが、帰化の動機に問題があるということが一つと、それからもう一つは、平成八年の一月十九日に申請されて十二月十六日に許可になる。そして法務省で調査したのは後半の四カ月ぐらいだというのが先般の答弁でございましたが、実はどういう調査を行ったか、徹底した調査が行われたかどうかということが一つ大きな問題でございます。
 と申しますのは、橋本総理と中国のODA疑惑の問題、特にこの朱さんとの関係につきましては、もう平成八年の三月ごろから世の中で非常に話題にされていた。そして四月には、もとは中国語で書かれたのじゃないかと言われる怪文書が流布された。その怪文書をめぐって五月、六月にかけていろんなマスコミが朱さんの問題を取り上げて、朱さんの職責、職務も話題にされております。そして、再婚された朱さん夫妻と前のだんなさんとの間で、たしか六月ごろでございますか、名誉毀損の訴訟が行われております。したがいまして、極めて社会的な問題になった方でございます。そして、そのころには朱さんというのは中国の公安関係に勤務していたという話も流れていたと思います。
 そういうことについて法務当局は、朱さんの帰化申請の調査についてどのようにどの程度調査をされたか、そういう情報を知らなかったということはないと思いますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
#144
○政府委員(森脇勝君) 個別事件の態様、審査の内容等については、これも個人のプライバシーにかかわる情報でございますし、さらにこういったことが公表されるということになりますと、今後の帰化行政の円満な進展にも障害になるということでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
#145
○平野貞夫君 もう一つ、朱さんは共産圏の人だということですね。共産圏の人の帰化調査については従来相当長期間の調査をするというふうに聞いていますが、その点、いかがでございますか。
#146
○政府委員(森脇勝君) 帰化許可申請事件が参りますと、それぞれの事案に応じまして、日本に住所を有している期間はどうか、あるいは申請人の本国法上行為能力に欠けるところはないか、あるいは素行善良と認められるか、自己あるいは配偶者、親族の資産、技能で生計を維持できる見込みがあるかどうか、あるいはその方が外国人である場合には帰化によって外国国籍を失うことになるかどうか、あるいは政府を暴力で破壊することを企てたり主張したりしたことがないかといった点につきまして、必要かつ十分な調査を行っておるところでございます。
#147
○平野貞夫君 そうすると、朱さんの帰化問題については十分な調査を行った、こういうことでございますか。
#148
○政府委員(森脇勝君) ただいま帰化許可申請事件についての扱いを一般論として申し上げましたが、個別の事案に対する調査の程度、内容等につきましては、これは個人情報に属することでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
#149
○平野貞夫君 十分な調査を行ったか行わなかったかということは別に個別の問題じゃないと思います。十分な調査を行ったんじゃないですか。
#150
○政府委員(森脇勝君) 先ほど申し上げましたとおり、帰化申請事件についてはその要件等についての十分な調査をし、それによって許可されるのが一般でございまして、それ以上に個別の事案についての調査ということについては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
#151
○平野貞夫君 そうすると、実際は十分な調査を行ったか行わなかったかということは、この場ではわからないわけですね。
 それではお尋ねしますが、公安当局に朱さんについて調査の指示というのは行われたでしょうか。
#152
○政府委員(森脇勝君) 個別の調査内容につきましては、個人のプライバシー及び帰化行政に重大な支障を及ぼすということで、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
#153
○平野貞夫君 私は、この問題は単なる個別の問題じゃないと思うんです。やはり総理の中国のODA疑惑にかかわる基本的な問題、国益にかかわる問題という立場から質問をしているわけです。
 局長が個別の問題だからこの場では答えられない、こういうことでしたら、私の総括としては、この朱さんの帰化問題というのは極めて疑惑がある重要な問題である、今後も我々はやっぱり追及していかなきゃだめだ、真相を究明していかなきゃだめだ、こういうように思うわけでございます。
 要するに、中国のベチューン医科大学附属病院のODA無償援助にかかわってさまざまな交渉があって、結果的には中国側の三十五億円という要請に対して二十一億円という無償援助が内定されたのに、さらに五億円追加されて二十六億円という決定になった。そして中国側では、それは当時の橋本大蔵大臣の尽力であるということを証言する方がおるわけでございます。そこにどういうような問題がかかわったかということの真相を究明することが非常に重要な問題なんでございます。
 したがいまして、この朱さんの帰化の動機、大体夫婦として一緒になれば一日も早く帰化したいものだと思うんですが、それを帰化申請を二年間も放置していた。そして、そのころ中国女性との問題はいろんなところで非常に話題になっていたわけです。そして、総理に就任して八日目に帰化申請した。そして、共産圏の人でありながらいろいろな問題が話題になりながら、十一カ月後に許可になった。
 私は、やはりこの問題の疑惑があるから早く朱さんを日本人にして、そして日本人という中でこの問題の真相が露出しないように早く日本人に帰化したと。そこにやっぱり帰化手続に重大な問題があるんではないか。あなたの明確な答弁が出ないものですからそういうふうに推測せざるを得ない、そういう前提で今後もこの問題を追及するということを申し上げて、質問を終わります。
#154
○委員長(武田節子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#155
○千葉景子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案に対する反対討論を行います。
 本法律案は、法人による債権譲渡を円滑にするため、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例として、法人が行う金銭債権の譲渡等について登記による新たな対抗要件制度を創設しようとするものであります。
 債権譲渡の対抗要件制度につきましては、現行の法体系において、民法第四百六十七条の規定による確定日付ある証書による譲渡人からの通知または債務者の承諾と、特定債権法の規定による公告との二つの制度があります。公告制度は、新聞紙上に公告がされたときは、譲渡した債権の債務者に対して民法第四百六十七条の規定による確定日付ある証書による譲渡人からの通知あったものとみなされ、公告の日を確定日付としています。
 このため、公告手続を済ませた債権の中に、それと同一の日に個別に民法第四百六十七条の規定による対抗要件を具備した債権がある場合、すなわち同一日に二重譲渡がなされた場合いずれが優先するのか、その判断が不可能であるという事態を生ずることになります。最高裁判例は、債権の二重譲渡の場合、確定日付ある譲渡通知が債務者に到達した日時の先後によって優劣を決定すべきであるとしています。しかし、同一日の場合、通知の到達は時間が単位となりますが、公告は日が単位となりますので、先後の確定は不可能となり、優劣関係は不明となってしまいます。債務者保護の上からも、また、取引の安全の確保からも重大な問題がおると指摘されているところであります。
 本法律案は、このように、現行の法体系においても重大な問題がある、民法及び特定債権法の規定による二つの対抗要件制度をそのまま存続させた上、さらに新たに登記による対抗要件制度を導入しようとするものであり、これにより債権譲渡の対抗要件制度は三元化され、対抗要件が重複した場合の優劣関係の判定はより一層複雑困難なものとなります。
 本法律案の規定によれば、登記の日が確定日付とされます。そこで、本法律案の登記による対抗要件と民法の規定による対抗要件とを具備した二重譲渡がなされた場合、確定日付ある証書による譲渡人からの通知の到達日と登記の日付が同一日であれば通知の到達時刻と登記の時刻の先後により優劣を決定することになります。本法律案の債権譲渡登記は、特定債権法の公告と同様、日を単位としており、通知の到達のように時間を単位としてはおりませんので、民法と特定債権法の対抗要件の重複の場合と同じく、先後の確定は不可能、となり、優劣関係は不明となってしまいます。
 この問題について、本委員会の質疑において法務省は、登記事項証明書に時刻を記載することによって解決すると答弁されていらっしゃいますが、本法律案は、債権譲渡登記ファイルの記載事項として「登記の年月日」を掲げており、登記の時刻の記載は定めておりません。法務省は、本法律案第十六条の「この法律に定めるもののほか、この法律に定める登記に関し必要な事項は、政令で定める。」ということを根拠に登記の時刻を記載事項とすることを政令にゆだねることとしていますが、国民の権利義務を確定する対抗要件の優劣関係を決定する重要事項でもあり、国会の審議権が及ばない政令に安易にゆだねようとする態度には納得がまいりません。そのほかにも、民法の原則と並列する異なるシステムを導入しようとするにもかかわらず、内容が政省令にゆだねられている部分が多く、解釈、運用に疑義が生ずる結果になりかねないのではないでしょうか。
 この問題は、そもそも不良債権を処理するための債権流動化を急ぐ余り、現行の債権譲渡法制の問題点を十分に吟味することなく、債権譲渡の簡素な第三者対抗要件制度を導入しようと立法化を焦ったため生じた法の不備ではないかと考えます。国民の権利義務を確定する基本法に不備があってはならず、登記の時刻等が必要なことは明白でございますので、一時しのぎの政令によるのではなく本法律案を修立して法定すべきではないかと思います。また、特定債権法と本法律案の規定による対抗要件が同一日で重複した場合もその先後は確定することができず、優劣関係は不明となってしまいます。
 さらに、本法律案の規定による債権譲渡登記は譲渡人及び譲受人の共同申請によって行われ、債務者は関与いたしません。このため、債権成立について無効等の瑕疵があったり、弁済や相殺等によって債権が既に消滅しているような場合であっても債権譲渡が登記され、あたかも債権が存在しているかのような外観を呈するおそれがあります。登記に公信力がないことはもちろん当然でございますが、登記されることにより債権の存在等について事実上の大きな推定力が生じることは否定できません。
 これに対して、債務者へは登記事項が通知されることもなく、仮に債務者がその事実を知ったとしても異議を申し立てることもできません。登記事項証明書の交付により債務者の住所、氏名、債務額等が利害関係人に公示され、債務者のプライバシーが公表されることになりますが、その内容が事実に反するものであるときは債務者の信用を損ない、プライバシーを侵害することにもなりかねません。本法律案は、第三者対抗要件の具備を容易にする反面、一般消費者である債務者が無視されているかのように、その保護の手続が十分になされておりません。この登記を信頼して債権を譲り受けた譲受人の取引の安全を害することにもなります。
 このように、本法律案は債権譲渡の優劣関係の判定をますます複雑なものとし、取引の安全を損なうとともに債務者の信用やプライバシーを害するおそれが多分にあり、債権者保護、債務者保護の両面から見ても大きな問題が存在しており、このままでは到底賛成することはできません。
 特に、本法律案により債権譲渡の対抗要件制度が三元化されてしまうことは、取引の安全の上で大きな問題となります。対象をリース・クレジット債権に限定している特定債権法は、この際廃止すべきではないでしょうか。本法律案による債権譲渡の対抗要件制度は、民法の特例ではあっても、一般消費者が債務者である場合にはむしろ原則となるものと推測されます。それだけに、解釈上疑義が生じてはならず、不明な点を政省令で補うという手法はとるべきではありません。
 債権譲渡の対抗要件のあり方について、取引の安全と債務者保護の両面から対抗要件制度の一元化を目指してさらに検討を続けていくよう強く要望いたしまして、反対討論を終わります。
    ―――――――――――――
#156
○委員長(武田節子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、林田悠紀夫君が委員を辞任され、その補欠として鈴木正孝君が選任されました。
    ―――――――――――――
#157
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、本法案について簡単に反対の意見を申し述べます。
 民法が原則としております債権譲渡に関しての第三者への対抗要件と債務者保護要件の統一的な機能というのは、私は基本的には民法の大事な原則として守るべきである、こう思っております。ところが、特債法によって一部の例外ができ、今度は本法案によって新たな特例規定が設けられるということでこの原則が大きくゆがめられるということについては、私は重大な懸念を持っているわけであります。
 本案の背景としては、最近の金融事情のもとにおける資産の流動化なり、あるいはまた市場における資本調達という企業、財界の側の要望があることは事実であります。もう一つは、不良債権処理に関連して特定目的会社の設立と深くかかわってこの法案が出されていることも審議の中で明らかになってまいりました。そうした一括した債権譲渡を可能にするというのがまさにこの手続であります。
 しかし、その特定目的会社それ自体がそういった債権の譲渡を受けて果たして十分に機能し得るのであろうか。今日、五十兆を超える銀行の不良債権と言われている。優良債権ばかりを特定会社に集めてそこで処理をするということならまだしもですが、そうはいかないという状況の中で、不良債権を含めた債権の法人の一括譲渡が特定目的会社自身の経営を困難にして、新たにそこにまた公的資金の投入というおそれがないわけではない。こういった問題は払拭できないわけであります。この点は、この法案に賛成する立場で意見を述べられた岩原参考人も否定し切れないところでありました。
 具体的な問題として、第三者対抗要件としていわゆる特債法による公告と民法における債権譲渡の確定日付による方法と、それから本法案による登記という関係があります。この関係がまた具体的にはどの債権が優越するかということについて特定して安定的に解決し得るということが不可能な状況があります。とりわけ、いわゆる特債法における公告との関係においては、債権の優劣を具体的に特定し得るということ自体が事実上不可能だというのは森脇民事局長の答弁からもうかがわれるところでありまして、この点についての解決が法自体の中で整合性を持ってできないというのは法の重大な欠陥と言わねばなりません。
 それから、債務者保護の点からいっても、私も指摘したんですが、正当に弁済した債務者がその弁済した債権の抹消登記ができないというのは一体どういうことであろうか。この点については何らの考慮もされていないのであります。そういった考慮をするとすればこの特例法は成り立たないと、そこまで森脇民事局長は答弁されたわけであります。しかし、そういった正当に弁済されてなくなった債権が登記ファイルに記載されたまま、譲渡人と譲受人が共同で抹消登記をしない限りは次の債権譲受人にもまた続けられていくわけであります。こういった意味からいっても、プライバシーの侵害ということだけでなくて債務者の権利侵害ということにもかかわってくるでしょう。
 それからさらに、この法案では債権の問題について何人も概要事項の証明はとれますが、債権の具体的な登記証明書はとれないというようにしてプライバシーを保護している仕組みだと言いますけれども、債権を譲り受けるという市場交渉の中では、債権の譲渡人の方はとれるわけでありますから、それを示して交渉する中でひとり歩きしていくというプライバシーの侵害もとめようがないということは民事局長も御答弁のとおりであります。
 そういった点から見て、本法案については、債務者保護という点からいってもプライバシー保護という点からいっても民法上の原則からいっても多々重要な問題のある法案でありまして、賛成できないということでございます。
#158
○委員長(武田節子君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#159
○委員長(武田節子君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 大森礼子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大森君。
#160
○大森礼子君 私は、ただいま可決されました債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明、社会民主党・護憲連合、自由党及び二院クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案に対する附帯決議(案)
 政府は、登記による債権譲渡の対抗要件制度の導入に当たり、取引の安全及び債務者保護を図るため、次の諸点につき格段の努力をするとともに、新制度の適切な運用に配意すべきである。
 一 債権譲渡の対抗要件に関する民法による通知並びに特例としての公告及び登記が競合した場合における優劣関係が明確になるように制度を運用し、その状況を踏まえて、対抗要件制度全体の在り方について、更なる検討を行うこと。
 二 本法に基づく債権譲渡登記が譲渡に係る債権・債務の存在を公示するものではないことを含め、新制度の周知徹底を図るとともに、債務者の信用やプライバシーが侵害されることのないよう、適切な方策を講ずること。
 右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#161
○委員長(武田節子君) ただいま大森君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#162
○委員長(武田節子君) 多数と認めます。よって、大森君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、下稲葉法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。下稲葉法務大臣。
#163
○国務大臣(下稲葉耕吉君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#164
○委員長(武田節子君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#165
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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