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#1
第142回国会 労働委員会 第12号
平成十年五月六日(水曜日)
    午後一時一分開議
出席委員
  委員長 田中 慶秋君
   理事 荒井 広幸君 理事 小林 興起君
   理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君
   理事 鍵田 節哉君 理事 中桐 伸五君
   理事 河上 覃雄君 理事 青山  丘君
      甘利  明君    井奥 貞雄君
      飯島 忠義君    大村 秀章君
      白川 勝彦君    棚橋 泰文君
      長勢 甚遠君    能勢 和子君
      山本 幸三君    近藤 昭一君
      玉置 一弥君    松本 惟子君
      桝屋 敬悟君    岡島 正之君
      武山百合子君    大森  猛君
      東中 光雄君    濱田 健一君
      土屋 品子君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 伊吹 文明君
 出席政府委員
        労働省労働基準
        局長      伊藤 庄平君
        労働省女性局長 太田 芳枝君
        労働省職業安定
        局長      征矢 紀臣君
 委員外の出席者
        労働委員会専門
        員       中島  勝君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月六日
 辞任         補欠選任
  岡島 正之君     武山百合子君
  金子 満広君     東中 光雄君
同日
 辞任         補欠選任
  武山百合子君     岡島 正之君
  東中 光雄君     金子 満広君
    ―――――――――――――
四月三十日
 権利拡充の労働法制実現、基準緩和の阻止に関
 する請願(中西績介君紹介)(第二〇〇一号)
 労働法制の全面改悪反対、労働行政の充実に関
 する請願(石井郁子君紹介)(第二〇五九号)
 同(大森猛君紹介)(第二〇六〇号)
 同(金子満広君紹介)(第二〇六一号)
 同(木島日出夫君紹介)(第二〇六二号)
 同(穀田恵二君紹介)(第二〇六三号)
 同(児玉健次君紹介)(第二〇六四号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇六五号)
 同(佐々木陸海君紹介)(第二〇六六号)
 同(志位和夫君紹介)(第二〇六七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二〇六八号)
 同(辻第一君紹介)(第二〇六九号)
 同(寺前巖君紹介)(第二〇七〇号)
 同(中路雅弘君紹介)(第二〇七一号)
 同(中島武敏君紹介)(第二〇七二号)
 同(中林よし子君紹介)(第二〇七三号)
 同(春名直章君紹介)(第二〇七四号)
 同(東中光雄君紹介)(第二〇七五号)
 同(平賀高成君紹介)(第二〇七六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二〇七七号)
 同(藤田スミ君紹介)(第二〇七八号)
 同(古堅実吉君紹介)(第二〇七九号)
 同(不破哲三君紹介)(第二〇八〇号)
 同(松本善明君紹介)(第二〇八一号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第二〇八二号)
 同(山原健二郎君紹介)(第二〇八三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二〇八四号)
 中小企業退職金共済法の改悪反対、退職金共済
 制度の充実に関する請願(大森猛君紹介)(第
 二〇八五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第三三号)
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。
#3
○玉置委員 連休明けでございますが、大変御苦労さまでございます。
 突然連休前に指名をされまして、よく考えてみたら一日しかなかったので、余り大した準備はしておりませんけれども、労働委員会としては最重要課題でございますので、大臣並びに関係当局の方に今までのずっと一つの流れをお聞きをしながら、今何が問題点かというのと、それから全体の流れとしてはもっと論議を私どもはすべきじゃないかというふうに思いますが、政府の方はなぜそう急ぐのかということを明確に御答弁をまずいただきたいと思います。
 その前に雇用状況でございますが、大変今悪化をしておりまして、昨年来どんどんと雇用情勢悪化という数字があらわれてきている。これは、私どもにしてみれば、橋本内閣の政策の失敗ということでございますが、昨年の四月にさかのぼりまして、消費税の二%引き上げ、そして二兆円減税の廃止等々から始まりまして、九月には医療費の値上げとかがあったわけであります。
 雇用情勢の悪化が伝えられ始めたのが昨年の六月ごろからだったと思いますが、そういう情勢をずっと踏まえながら予算編成に入ってこられまして、八月概算要求、そして十二月に最終的な数字を固められたということでありますが、その後に平成九年度の大型補正予算というのがありました。その中で、金額そのものは三十一兆数千億円でございますが、実際に具体的な一般的な経費に充てられた部分、この部分が一兆一千億ぐらいしかないということでございまして、余り雇用情勢の変化にはつながらなかったのではないか、いわゆる景気対策として不十分なまま終わったのではないかというふうに私は感じておりました。
 その後、橋本総理は、ずっと予算委員会の最中に、この補正予算を通していただき、なおかつ平成十年度予算を通していただければ必ず景気がよくなります、これが景気対策です、こういうふうにおっしゃってきたわけですね。しかし、私どもにしてみれば、橋本総理が把握をされております景気状況よりもはるかに悪い方向にどんどんと進んできた。こういうことが数字上述べられ始めたのが本年二月の末ぐらいでございました。そのころでもまだ、桜の咲くころに景気がよくなるというふうに言われた経済企画庁長官みたいな方がおられますけれども、実際には桜がもうとっくに散って、ツツジが咲いて散ってという時期に来ているわけでありますが、世の中で景気がよくなったという実感は余りないということであります。
 この平成十年度予算は、一般経費はいわゆる自然増をいかに抑えるかということで終始をしましたけれども、いわゆる公共事業に関しては七%の切り込みをやろう、こういうことで、実質的なマイナスの予算ということであります。ですから、私はその当時はまだバックにいて、いろいろ意見を言う側でございましたけれども、そのときに予
算の理事さんとかに、なぜそこまで切り込めないのだという話をよくしたのです。というのは、平成十年度予算を通してもあるいは平成九年度追加補正を通しても、景気に対する支えにはならないということですね。これは単なる金融システム維持と預金保護、そしてもう一つはいわゆる財政再建の第一歩の予算ということでありましたから、景気にはむしろ逆行して悪い影響を与える、こういうことでありました。ところが、労働大臣も当委員会におきまして同じような答弁をされ、予算委員会でも同じような答弁をされたということであります。
 そして今回、平成十年度補正予算、これは聞くところによりますと、何か十五日から二十日の間ぐらいに出したいという意向があるようでございますが、そのぐらいに出てくるということでございました。
 私がまずお聞きをしたいのは、自信を持って進められてきた今までの九年度補正予算、そして平成十年度予算、これによって雇用情勢がどのぐらい影響したのかということです、数字上お示しをいただきたい。数字でわからなければ言葉でまずおっしゃっていただきたい。
#4
○伊吹国務大臣 数字上の詳細については後ほど政府委員から答弁をさせますが、まず基本的に、今先生るるお話がございました中で、やはり雇用状況が厳しいという面では私は先生と見解を同じゅういたしております。
 そして短期的には、雇用というのは、やはり景気と申しますか、有効需要を適正に管理することによって経済が順調に動いていく中で維持されていくものでございますから、先ほど消費税の二%引き上げというお話がございました、しかし、これはもうよく御存じのように、直間比率を見直すために、かつて同額の所得税減税を先行させて、そして後でその分の帳じりを合わせるというのを延期をしていたのを実行したということでございますから、私は、真水が幾らであるという議論よりも大切なのは、政府支出あるいは税制、政策金融等を使ってトータルの有効需要をどのように大きくするかということに雇用というものは影響してくると思います。
 そこで、累次の予算及び補正予算を編成しながらやっておりますけれども、根本的には、当委員会でも申し上げましたように、金融デフレというものを払拭しなければ補正予算の効果が上がらない。補正予算は効果がないとは私は申しません。補正予算は効果はございます。しかし、この効果を万全たらしめるためには、今国民が漠として抱いておられる将来に対する不安、雇用に対する不安、年金に対する不安、老人医療費に対する不安、これらを取り除かねばなりません。この不安を最もかき立てているというか、この不安の最も大きな原因になり補正予算を有効需要に結びつけられない原因は、私は金融システムの信認低下、金融デフレにあると思います。
 例えば、御承知のように、消費性向は昨年は七二%から三%ございました。一年たって、今六八しかございません。実質可処分所得が落ちておるのに消費性向が落ちるということは外国ではあり得ないことでございます。生活水準を一定に保とうとすれば、当然消費性向は上がっていきます。これを、消費性向が下がって貯蓄がどんどんふえてもなおかつ生活が十分できる豊かな国日本と考えるのか、将来のために不安があるからやむを得ず貯蓄をしておられると考えるのか。いずれにしろ、三十兆円あるいは十三兆円と申しますか十兆円と申しますか、金融システム安定のための法案と予算措置をせっかくこの国会でやっていただいたわけですから、金融機関が公的責任をはっきりと自覚して、十兆円をできるだけ早く使って貸し渋りという現象を解消することによって企業家のマインドを引き上げる、それによって御家庭の主婦の方とか会社の経理部長の方々が、将来御主人の雇用は大丈夫か、うちの会社の資金繰りは大丈夫かという不安を払拭する、これが私は最大のことだと思っておりますので、決して補正予算は効果がなかったとは私は思いません。
 ただ、この三十兆円というものを使い切った上でないとなかなか効果が出てこないという、今の金融システムのバブル時代からの崩壊と申しますか、金融機関への信認欠如と申しますか、ここに大きな原因があると思っております。
 尾身企画庁長官は桜の花の咲くころということを申しましたが、先生御承知のとおり、大体経済指標というのは二カ月から三カ月おくれてまいりますので、七月ごろには尾身さんの見通しがそう間違ったことにはならないような数字が出てくるのではないかと私自身は考えております。
#5
○征矢政府委員 九年度補正予算あるいは十年度本予算、今回予定しております十年度補正予算、そういう関係でどのぐらいの雇用効果が出るのか、こういう御指摘でございますが、九年度補正予算でどのくらいという、これは先生御指摘のように、私どももこれでの雇用効果というものは計算いたしておりませんのでお答え申し上げかねますが、十年度の本予算と今回の総合経済対策に基づく補正予算、これをあわせまして、政府としては、GDP一・九%成長が可能となる、こういう計算をいたしておりまして、そういうことを前提にいたしますと、十年度の本予算と今後の補正予算、これをあわせまして十年度の経済見通しの一・九%の成長、これは達成可能であると尾身経済企画庁長官が国会で御答弁申し上げておりますが、そういうことを前提といたしますと、経済見通しで約六十万人の雇用増を実現することは可能である、こういうふうに考えております。
 なお、今回の総合経済対策で、私ども緊急雇用開発プログラムという形で対策をまとめておりますが、これにつきましては、雇用の維持、失業予防対策、あるいは離職者等の再就職への支援対策、新規雇用創出対策、こういうものに取り組むことといたしておりまして、全体の規模として五百億円程度考えておりますが、これによる雇用開発効果といたしましては約四十万人程度、これは御承知のように、失業予防効果というのは雇用調整助成金等によりまして失業しないで済むように、こういうことでございますし、あるいは離職者対策等で職業能力の開発をする、これも計算に入れておりますので、直接の雇用創出効果ということには必ずしもならないわけでございますが、対策の対象として約四十万人程度増加するのではないかというふうに考えております。
#6
○玉置委員 経済対策というよりも、今回は金融不安とそれからやはり雇用不安、こういうようなものが一体となってどんどんとうわさのように肥大化していった、これが原因だと思われるので、お金を使ってもなかなか立ち直りは難しいと思うのです。むしろ、我々から見ると、金融ビッグバンで本当に日本の金融機関どこまでどうなるのだというのが予測もできない。うまくいきそうな気もするし、みんな生き残れない気もするしというところで、一般の皆さん方も同じだと思うのですよ。
 昔に比べて非常に経済的な情報も一般家庭で注目されていますし、そういう面では今まで以上に金融の破綻というものが影響が大きかったのではないか。本来は、企業がまずやられてそれから一般家庭に波及をするということでありますが、一般家庭の方が先にアウトになった。いわゆる消費マインドを消してしまった。
 片方では金融の貸し渋り、これは自分たちが名目上の体質改善をやろうということでの貸し渋りになったわけですね。自己資本比率を上げるのに一番簡単なのは貸し出しをしない。収益率を上げる、あるいは自己資本を増資するとかいうことではなくて、まず貸し渋りからやろうということでやったという一番悪い結果を生んだ。これが日本の経済を冷やしてしまったということだと思うのでございます。
 一番心配するのは、そういう金融機関がつぶれたときにいろいろな企業が関連で巻き込まれて破綻をしてしまう、そういう状態が多分出てくるだろう。そうなりますと非常に大きな雇用問題が発生をするわけで、これに対応していくためにやはり今から体制をとっておかなければいけないということで、最近雇用対策本部をつくられましたけ
れども、やはり早く情報を持っていただいて、場合によっては経済閣僚の一人として大いに伊吹大臣にそういう場で発言をしてもらいたい、こういう希望でございます。
 余りこればかり時間をとると労働基準法が進みませんので、労働基準法に話を移します。
 もともと中基審で出されました建議、これは、中基審のメンバーのいわゆる意見合意ができなかったということで、並列に皆さんの意見を書かれた部分がたくさんあります。こういうことで出されてまいりましたが、それでは結構まだ時間がかかるなというふうに思っておりましたら、今度労働基準法改正でき上がりましたとこういう話で、早速話が出てきたということでございます。
 私の見識というか、昔からこの労働基準法そのものは、労使関係でもめそうなところをみんな決めておこう、そして社会的に一定の方向に導いていくための一つの上限を押さえた指針である、こういうふうに思っております。この上限を押さえた指針、いわゆる上限は上限であります。だから下は幾らでもいいですよ、下限は下限で、例えば最近のように上を自由にということで上下左右を押さえればいい、こういう話でありましたというふうにとらえていたのでございますが、両論併記と言われて出てきた結果が、いわゆる使用者側意見というものが大量にこの中に生かされてきて、そしてほとんど組合側意見というものが生かされてこない。というのは、まだ継続して話し合わなければいけない部分がたくさんありながらこの法案が提出をされたということに一番問題があるのではないかというふうに私は思います。
 そこで、この提出に至った過程の中で、なぜ両論併記とかありながら継続した審議を労働省として審議会に依頼をしなかったのかということと、なぜ法案化を急いだのかということについて、まずお聞きをしたいと思います。
#7
○伊藤(庄)政府委員 今回労働基準法の御提案をさせていただいておりますが、それに至るまでの審議会の経緯でございますが、審議会におきまして、労働基準法の改正に向けまして、まずは社会経済の構造変化、あるいは働く人たちの意識や働く方への期待、そういっだものが変わってきていることを受けて、この労働基準法、新しい時代に合わせるべく見直しをしていかなくてはいけないということにつきましては、公労使の方々一致した認識を持っていただいて、長期間にわたりまた多くの回数にわたって論議をお願いしてまいったわけでございます。
 その結果まとめられました建議におきましても、そういった共通認識はもちろん一致しておりまして、多くの項目につきましても公労使で一致を見たところでございます。
 ただ、こういった多くの回数の中で、確かに労働側委員から多くの意見が提出されました。それをめぐりまして長期間議論も行われまして、酌み取るべきものは建議の中で酌み取りながら、建議の中で公労使一致した形の中へ取り込んでまいったところでございます。ただ、残念ながら、労働側の意見の中で一〇〇%建議の中に公労使一致というふうに至らなかった部分につきまして、労働側委員から別途の意見が三点付された、こういうことが最終的なこの法案提出に当たっての答申の姿になっておるわけでございます。
 先生御案内のように、こういった労働条件をめぐる問題、労使で鋭く対立し、相当な主張のし合いというものがあるわけでございます。労働条件をめぐるそういった性格上、私ども、ぎりぎりまで粘り強い論議をお願いしながら、ある段階、最終の局面では、公益委員の方がいわば事実上の調停のような形で取りまとめて労使の方の納得を得ていく、こういう場面も生じてくることはやむを得ない面がございますので、そういった点につきましては、ひとつ御理解をいただきたいというふうに思っております。
 さらに、この付された労働側の意見につきましても、そういった意見が出されるに至った背景となっていますいろいろな労働側が懸念しています点につきましては、十分、法案作成の段階でも、そういった弊害が出ないようにというための工夫等も随所に入れながら法案を作成いたしたわけでございますし、さらにこの法案を成立させていただきましたならば、法案を施行するための細則を決定する段階で、やはり労働側委員の意見の契機となりましたいろいろ懸念すべき問題については、そういったことが生じないよういろいろ万全の配慮をしながらそういった細則も決定できるようにまた審議会の方にもお願いをしてまいりたいと思っておりますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
#8
○玉置委員 今回は、本来望まれて、望まれてというか、うまくいっている部分については、例えば時間外労働のように、規定を廃止をするというか法律で設定をするというふうに一応書かれておりますが、その上限が明記されていないとか、あるいはその他大臣の裁量によるような規定、あるいは監督署の裁量によるような規定とかいうものが非常にたくさんあるのですね。本来はこういうもめごとの条件というかをはっきりさせないと、かえってもめるようなことがたくさんあるわけでありまして、そういうところからいきますと、決めなければいけないところをかえってぼかしてしまって、逆に労使で話し合うべきところを明記してしまっている、こういう感じがするわけです。私がずっと見ておりまして、例えば大臣がこれにタッチをするなんて普通考えられないわけですから、どうせ、どうせと言ったら怒られますが、行政の方がやられると思うのですけれども、実際にそういうことが本当に可能かどうかということですね。というのは、例えば労働組合の組織率が今二十数%の下の方になっております。それ以外は労働組合なしですね。ということは、労使委員会をつくらないとまずできないというふうなことがあります。
 今、中小企業の数を調べてみましたら六百五十万事業所あるわけですね。事業所というか事業主体があります。労働者の数は五千四百万人という大変膨大な数がおられるわけでありますが、その人たちを例えば十人以上の企業グループとして考えていって、じゃ果たして今労働基準局なり監督署がそれぞれ現地に行って調査をされて、労使委員会ありますか、じゃどういう取り決めをされておりますか、そういう方たちとどう決めましたかという調査をやっていくということになるわけですね、この法律ができますと。果たして時間的にそういうことが可能かどうかということで、むしろそういう部分こそ明快にある程度決めておかなければいけないのじゃないかということです。
 できないようなことは逆に大臣と行政の側の裁量に任せるということが非常に多いのですが、この辺の基準をどこで線引きされたのかということをまずお伺いしたいと思います。
#9
○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘のように、労働基準法という性格上、労働条件のいわば最低基準に係る規定は、使用者に義務を課したり、あるいは労働者の方に権利を与えるという性格のものでございますので、できるだけ法律で具体的な基準を明記していくということが望ましいことはもちろんでございます。私ども、そういった考え方に沿って、この労働基準法というものの改正等を行う場合にも、そういったことを頭に置いて対処をいたしているところでございます。
 ただ、労働条件の基準の中には、その内容によりましては、法律で直接規定するには詳細にわたり過ぎるもの、あるいはいろいろ経済環境等労働を取り巻く環境の変化に機動的に対応してその基準というものを変更していく必要があるもの、あるいは画一的に定めることが、業態、業種によっては不都合を生むようなことが出てくるもの、そういったものに限りまして、法律上の委任に基づきまして、労働大臣の告示あるいは命令といったものに具体的な規定の内容を委任しているわけでございます。
 例えば、御指摘ございましたように、今回の改正法案では、時間外労働につきまして、その上限基準を新たに法律に基づきまして労働大臣が定め、労使の方にそれを遵守していただく、こうい
う規定をつくったわけでございますが、その時間外労働の上限基準も、法律に基づいて労働大臣が告示で明快な形をつくりまして公表してまいるわけでございます。したがいまして、それに基づく指導も、その上限基準というものに適合するような指導を行うわけでございまして、実際上裁量的余地は全くない、こういう形になるわけでございます。
 また、労使委員会というようなものに代表されます、いわば労使の間で話し合うように、こういう部分が多いのではないか、こういう御指摘でございますが、この労使委員会は、裁量労働制の新たなルールとして、厳正な裁量労働制の実施を確保していくために設けた制度でございますが、この裁量労働制の性格上、私ども、例えば中小零細企業におきましては、社長がおり、あるいは部長、課長がいて、その下の方に本当に仕事を全面的に任されているような環境はまずないのではなかろうかというふうなことから、実際上この裁量労働制を、私どももちろん決議の届け出を受けてチェックいたしますが、使い得る企業というのは相当限られているのではなかろうか。したがいまして、私ども、窓口においてその内容、また実際の人事管理、労務管理の実情に合った形で届け出られているかどうか、チェックが十分監督官によって可能ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
 ただ、御理解いただきたいのは、今回、例えば三六協定等、労使で協定を結ぶという従来から労働基準法にある条項につきましても、審議会の意見に従いまして、労働基準法の施行規則で、そういった代表者の選定につきましては、選挙とかそういった民主的な手続によるべきこと、また、よく言われますような、例えば総務課長とかそういったいわば会社側に立つ人が従業員の代表になっているというふうなことを排除するルール等をあわせて整備することも予定しておりまして、そういったことを通じまして、中小企業等におきましてこの労使間の話し合いにゆだねられている部分が変な運用がされないように、私ども、十分留意していく考えでございます。
#10
○玉置委員 労働組合のある大きな企業は、労使が結構正常な話し合いを絶えずやっているという状況でありまして、労使にゆだねていく部分でかなり補えると思うのですが、中小零細企業、そういう中で、例えばとんでもないおやじさんが社長をやっていて、それで従業員がともかく冠婚葬祭からすべてを自分たちが同じように仕事以外でもやっているというのはよく見るのですよね。
 そういうところに労使委員会をつくれといってつくったら、本当にだれがっくるかといったら社長がつくるのですね、多分。社長がつくって、あなたが労働側の代表だ、みんなそれでいいかというので異議なしになるのですね。大体、普通そうなんですけれども。そういう状態の中で決めた人で話し合いをしても、結局、社長の一存でほとんどが決まるというのが、これは大部分だと思うのですよね。
 労働組合側のいろいろな不安感もそういう中にあると思うのです。いわゆる労使委員会というのが本当に正常に作用するのかということでございまして、それにゆだねるというのは非常に難しいのではないか。むしろ、法律で規定をして正々堂々と、中基審なりほかの委員会等で審議をするとか、あるいは国会の中でもっと論議をして基準を決めていくとかいう形をやらないと、余りにも今回、重要な部分での規定というものが漏れているというふうに思います。
 例えば、自由裁量に任せられた一つの例としまして、男女雇用均等法、この前女子保護規定のいわゆる撤廃がありましたけれども、その中の規定を外されたときに、各企業に自由裁量でそれぞれ、例えば介護休業法とかいろいろありまして、それぞれ基準をつくりなさいということになっているのですが、それがなかなか出てこないというのは、どこかがつくったらそれを参考にしようとか、それから、どうも本当にどの程度の基準でいいかがよくわからぬとかいうのが一つあるわけですね。
 それで、役所の方にお話をして、いろいろなところで聞いてみたら、それが一番困っているところだからやはりサンプルをつくらないとだめじゃないですかというお話を申し上げたのですが、結局、そういうふうに横並びになるとか、やはり役所の方を見るわけですね。あるいは、一番強い、ずっと走る人を見るという形になって、どうも自分たちが思っている、あるいは話し合いをして決めるというふうな雰囲気にはなってこないというようなことがあります。
 そういうことがありますので、これらのことを考えてみますと、やはり今回の法律改正に出ておりますような大臣の裁量とかいうことで物を決めていくのは非常に難しいのではないか、こういうふうに思います。その辺を本当に、ではこれだけの件数を労働省としてこなしていけるのかどうか、もう一回お答えをいただきたいと思います。
#11
○伊藤(庄)政府委員 今、二点御指摘あったかと思いますが、一つは、労使委員会等がいろいろな多くの企業がある中で正しく機能するかどうか、チェックが可能か、こういう御指摘かと思います。
 労使委員会につきましては、裁量労働制に関連して、その設置を必要要件として義務づけたものでございますが、この労使委員会の代表の選出につきましては、選挙あるいは挙手等によって民主的に選ばれた従業員の過半数を代表する者が労使委員会のメンバーを指名し、指名された者についてさらに従業員全体の過半数の信任を得るための選挙等の手続を経なければならない、こういう厳格な手続を課すことを予定いたしております。そういうことで、使用者側の一存で設置されるというふうな形については、万全の対応策を講じていくつもりでございます。
 さらに、この労使委員会の決定事項につきましては、法律上、本社等の中で、本当に全く裁量、仕事の段取り、進め方、時間配分等を任されている人に限るということを明記しております。
 各労働基準監督署におきましても、そういった地元の企業で、中小企業等からこういった裁量労働制を使いたいということの届け出がありましても、実際上、そういった労務管理の中で任されている人があるかないか、またその人の範囲が適切かどうか、地元の監督署においてはかなり明確に押さえ切れるものでございますので、そういった使い方があった場合には、これは厳正に指導し、もしそのまま使ったとしても、これは裁量労働制にはならない、労働基準法のもとの原則に戻るという取り扱いを徹底させてまいりますので、ひとつそこは御理解をいただきたいと思っております。
 それから、女子の保護規定の解消に伴いまして介護休業法等に基づく施策、恐らく先生御指摘の点は、例えば勤務時間の短縮等の措置を介護あるいは育児休業法で義務づけたり、あるいは努力義務を課しておりますが、これがいろいろな事業場の間で十分にそのための制度化等をこなし切れるのか、こういう問題かと存じます。
 この点につきましては、全国の各女性少年室が懸命に少子化対策等を念頭に置いて取り組んでおるところでございますが、ただ、今回の労働基準法の改正に当たりましては、そういった点も考慮いたしまして、労働基準法ベースの時間外労働の上限については、これは労働基準法に基づいて、具体的な数字ももって労働大臣が告示で基準を決める。したがって、それを超えることは許されない。
 したがいまして、窓口の方では、労働基準監督署が指導するということも法律にうたいまして、もし守らない場合には法律に基づく指導を再三行いまして、その基準内におさめていく、こういうことを徹底させる考えでございますので、御理解をいただきたいと思っております。
    〔委員長退席、鍵田委員長代理着席〕
#12
○玉置委員 今、中央省庁再編問題でいろいろと行革を目標に取り組みをやっておられまして、出先がどこまで残るのかわかりませんし、また厚生省との関係で整理をされていくということでございまして、今からそんな人手のかかる仕事を地方
に残していくこと自体が私は行政として間違いではないかと。できるだけ円満に解決するためには、やはり法律で規定をして、その規定に沿ってある程度できるようにするということと、企業内での話し合い、要するに使用者と労働者の話し合いにつきましては、ある程度本当に裁量に任せるなら向こうの裁量に任せるということで、もっと簡単に規定をすべきではないかというふうに思うのですね。
 そこで、規定のやり方が、まず、罰則はありとかなしとかいろいろな決め方はありますが、中間の答申のときも、罰則を伴う義務規定だけではなく、罰則なしの義務規定、努力義務規定、指導要綱といった方法ももっと考えるべきであるということもありますし、例えば、中小企業と大企業でやはり労働者に対する処遇も大分違いますし、賃金格差もありますし、それから労働時間が違うのですね。
 まず労働時間で、私がいろいろ企業に勤めた関係で考えてみますと、大企業と中小企業の給料が同じになった場合に、中小企業がすべて競争で負けるという可能性が非常に強いということです。
 というのは、要するに時間単位当たりの賃金、時間賃金と作業時間、これがいわゆる出来高のコストですけれども、そのコストを安くするためにどうしたらいいかというふうにいろいろ考えておられるのがそれぞれの企業なんですが、例えば労働時間を規定してしまうということでやります。それでやりますと、例えば企業間格差、設備投資できるところは機械で処理しますからある程度進むのですけれども、そうでないところは手作業で入るということになってくる。あるいは自動機が買えないで半自動みたいなものを使うということになりますと、人がたくさん要る。
 あるいは、もっと手間のかかることを、人手でやらなければいけないことを逆に中小企業が補っていくということで考えていくと、一律規制というのは非常に難しいと思うのですね、企業が生き残ろうとすれば。一律にやるということであれば、もっと企業間の格差をやはり認めて、それに対しての労働時間格差をつけるということも必要だと思います。
 それからもう一つは、例えば業種によって、この業種はもうやむを得ない、後で変形の時間制もありますけれども、そういうときに、グレーゾーンというのをやはり設けておいて、ここを超えたらだめですよ、それから普通はここですよという間、グレーゾーン、そういう規定の仕方もあるのではないか。いわゆる要注意信号ですね、そのときは届け出をする。今でもありますけれども、そういうふうなことをやる必要があるのではないかというふうに思うわけでありまして、まずその規定のやり方についてももうちょっと配慮をする必要があるかというふうに私は思います。
 時間がございませんので、一応指摘だけをします。
 それから、労働組合の連合の方から、今回の労働基準法の改正についていろいろと連合なりの考え方を示されたものが出ておりますが、この中でのやはり一番の問題点は、時間外労働の上限を定めていないということ。それから、裁量労働についてまだ話し合いの途中であるということで、これは逆に、みなし労働を取り入れられて労働賃金カットにつながる可能性があるという心配があります。それから、変形労働時間制につきましても、一年単位というのは長過ぎるのじゃないかということで、むしろこれについてもっといろいろな話し合いをする必要がある。要するに、一週間当たりの時間とかそういうものが十分な話し合いがされないままに決められてきた。それから、労働契約の三年についてというような問題もいろいろ指摘をされております。
 ということでありますが、まだこれから延々と審議をしていくようでございますから、私はその一部についてとりあえず質問をしてまいりたいというふうに思います。
 その中で、いわゆる時間外労働ということでございますが、この時間外労働というものは、これは労働大臣が定め、罰則なしということでございますが、まず大企業と中小企業の年間の総労働時間、この比較を、もし数字がわかればお伺いをしたいというふうに思います。
#13
○伊藤(庄)政府委員 年間の総実労働時間で規模別にお答え申し上げますと、五百人以上で年間の総実労働時間、平成九年が千九百八時間となっております。これが五百人未満百人以上になりますと千八百八十九時間、それから三十人から百人未満のところで千八百九十四時間、それから五人以上三十人未満のところが千人百七十七時間となっております。
 ちなみに、所定労働時間といわゆる残業の所定外の問題でございますが、五百人以上の場合は、所定労働時間が千七百二十八時間、所定外が百八十時間となっておりまして、これは五人から三十人未満のところのいわば中小企業で見ますと、所定が千七百八十七時間、所定外の残業が九十時間となっておりまして、中小企業ほど全体としての労働時間は短い。ただ、その中で、所定労働時間はむしろ大企業に比べて中小企業の方が長く、残業が短い、こういった傾向にあるかと思われます。
#14
○玉置委員 我々が予測したのと全然違うのですよ。間違いないですかね。だって、実態を見ていますと、朝から晩まで、土曜日と働いて、大企業が出る一日前には出ているというような状況が非常に多いのですね。だから、ちょっと統計が間違っているのじゃないかというような気がしますが、間違いないですか。
#15
○伊藤(庄)政府委員 大企業と中小企業の間で、全体としての労働時間が大企業ほどいわば労働時間短縮の課題が多く、しかも残業という点では大企業ほど長いというのは過去ずっと継続して見られる傾向でございまして、こういった傾向は間違いございません。
#16
○玉置委員 平均賃金は大企業と中小企業ではどういうふうに伺っていますか。
#17
○伊藤(庄)政府委員 毎月決まって支給される定期給与で見ますと、五百人以上の規模の事業所を一〇〇とした場合の数字を規模別に申し上げますと、五百人未満百人以上の事業所で、大企業の一〇〇に対しまして八四・八、それから三十人以上百人未満のところで七六・七、それから五人以上三十人未満のところで六七・一となっておりまして、賃金面ではただいま申し上げたような格差のある傾向が見られます。
#18
○玉置委員 両方を掛けると大体常識的な数字になるので、まあそうかなという気はしますが、私どもは実態は本当はもっと長いのじゃないかというような気がするのですね。というのは、結構遅くまでやっている方もおられますし、そういう時間把握が下に行くほどに不明確なのかなというような感じもするので、まさに労使委員会が正常に機能するかどうかという心配がまた出てくるわけですけれども、この辺をもう一回念のためにちょっと調査していただければというふうに思います。
 大企業は設備投資がやはりもともと金額が大きいですから、稼働率を高めていくために、要するに機械主体で時間を設定して、それに人をあてがっていくということになっているわけですから、おのずから投資した分だけ人が減る、時間も減るということになるわけですけれども、中小企業の場合は人を中心にいろいろ物を考えるわけですから、その辺でいきますと、時間は将来ともそう減っていかないだろうというふうに思うのですね。
 そういうことを考えていきますと、私どもずっといろいろな町工場の方をたくさん知っていますが、そういう雇用形態から見ても、労働時間を見ても実質的にはもっと悪いような気がするので、その辺の差がちょっと不思議なんですが、それは一応またお調べをいただくということでお願いを申し上げたいというふうに思います。
 そこで、今回この上限規定を大臣が定めるというふうになった理由ですが、前回は法的に規定をされていましたね、時間外労働の上限規定。これについて、前回は三百六十時間、女性は百五十時間というふうに規定されておりましたが、なぜこれが大臣が定めるとなったのか、またこれからどういう形でこの基準を決めていくのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
#19
○伊藤(庄)政府委員 今回、労働基準法に基づきまして新たに労働大臣が定めて労使の方に遵守していただくということにいたしました時間外労働の上限基準でございますが、これは、今までは法律に基づかない指導の目安として私ども用いていたものを、労働基準法に基づく基準として設定し、労働基準法上、労使の方に遵守義務を持っていただく、こういう形にいたしたところでございます。これは、来年の四月一日から開始をされますが、女性の方の保護規定の労働基準法上のものとはちょっと性格を異にしていたものでございます。
 今回新たに設定いたします時間外の上限基準につきましては労働大臣が定める、こういうふうになっておりまして、これはもちろん、労働大臣が定めるに当たりましては、今まで指導の目安として用いてまいりました三百六十というものは十分尊重されながら定められることに当然なるわけでございますが、個々に具体的な数字でなくて、労働大臣が定めることとした理由について申し上げれば、この三百六十というのは年間単位の数字を一応議論のために簡略化して使っている形になっておりまして、実際上は、一週単位の場合にはどうするか、あるいは四週単位の場合にはどうするか、あるいは一カ月、三カ月単位の場合にはどうするかということについても基準を定めていくことにいたしておるわけでございます。
 さらには、例えばトラック等の自動車運転手の方のように、こういった形での規制よりも、総運転時間、あるいはその間の休息時間等を規制する方が実情になじむようなケースの場合もございます。
 そういったいろいろ対応していかなければならない基準の内容を考えますと、どうしても法律上規定することは技術的に困難でございまして、労働大臣が告示をもって明確にかつ実情に合った詳細を規定する、こういう形にいたしたわけでございます。
#20
○伊吹国務大臣 玉置先生よく御存じの上で御議論をなすっていると思いますが、私は、少し議論を整理した方がいいと思うのです。
 というのは、先ほど、連合の要望をおっしゃって、上限が法律に書いていないということをおっしゃいました。しかし、先生の御議論の中では、私も先生の御議論に非常に近いのですが、また私自身も中小企業の経営者のうちに生まれておりますのでそういう感じを持っていると思いますが、やはり企業の形態によって勤務時間、給与等まちまちだろうと思います。
 先ほどの御指摘も、結局、週四十時間、今やっと約八〇%達成されました。しかし、なお達成できないところが中小零細企業にやはりあるのだと私は思います。そこが四十二時間、四十四時間という労働をとっていれば、それだけでもう二時間、四時間の超勤が出てしまうという現象はございます。
 そして、一律に決めてやっていくということが果たして、長い目で見て、中小企業に働く、額に汗する労働者一人一人の雇用を維持して、しかも上限を決めてしまうということが、実質的な可処分所得を保障してあげることができるだろうかということを考えると、我々はやはり、労働基準法にしろ憲法にしろ、労働者という書き方ですべて御承知のように始まっております、国民はという、一人一人の個人でございます、したがって、労働省がお預かりしているのは、その労働者一人一人をお預かりしているわけでございますから、この方々の長期的な雇用と実質的な可処分所得を落とさないような形で、経済成長をできるだけ労働者の方へ回していくという仕事をしなければならない。
 そうすると、例えば今三百六十時間というお話がございましたが、これは一律に労働省が指導をしておっただけのもので、法律的な根拠も何も率直に言ってございません。今回やっと指導の根拠を法律上に定めるということをしたわけでありまして、景気が回復して一先ほど来御指摘になっているような中小との格差が是正されていけば一番望ましいわけでございますけれども、まず、やはり中間段階としてある程度の実態に合ったことを労働大臣がやりませんと、一律的な、連合が、今先生が例示されたようなやり方をやるということは、本当に五千五百万人労働者のためになるかどうかということを常に実は私は心の中で煩悶をしながらこの問題に取り組んでいるわけでございます。
 先生から中小企業の実態等をるるお挙げいただいたということは、私は、私の考えと非常に近いという思いを持ちながらただいまの御議論を聞いていたということでございます。
#21
○玉置委員 大臣から非常にうれしい言葉を聞きました。
 もともと労働契約そのものは双務契約で、お互いが履行することを義務化されるわけですね。ということなんですが、今お話しのように、労働基準法そのものは使用者と労働者とのいわゆる協定、これを実行させるということで、それがうまくいかない場合には労働者側の保護に立つということが一応精神的な一つの流れになっておりますね。そういう意味で、今大臣がおっしゃったことはまさにそのとおりだというふうに思います。
 それから、大臣の家業の方も、非常に昔からしつけが厳しくて規律正しいということでは有名なところでございますから、そういう意味では労使の関係もうまくいっていると私は前から見ていたのですが、ただ、中小企業の例をとってみて、やはり親方の意向というのが子方といいますか従業員の皆さん方に厳しく伝わっておりまして、労働協約の中でも、労使委員会なんかでもいろいろな細部を決めていくときに、昔とは大分変わっていますが、そういう面でやはり使用者側の意見というものはかなり大きく影響するという心配もその中には一つあるわけで、そういうことで今のような全体の話を申し上げてきたわけでございます。
 まだまだ時間はいただきたいのですが、あと五分しかございませんので、一応今までのところのまとめとして、例えば時間外労働の場合に、来年四月から男女雇用平等、要するにそういう法律が施行されるということもありますし、今回の労働基準法がもし通過すればこの上限規定がなくなる、なくなるというか女子と男子が一括されて三百六十というか基準がつくられるわけですけれども、それになる。
 ということで、今一番全体として心配されているのは、女性の残業が急にふえまして一これについていけない人がいわゆる雇用解雇というような形になるのではないか、そういう心配が世の中にあるということでございます。こういう問題をもう既にお聞きだと思いますが、どういうふうに対処されるかということ、もし話があればお答えをいただきたい。
#22
○伊吹国務大臣 実は、労働委員会の経験は私よりはるかに玉置先生の方がお長いのですが、前回、男女の雇用均等法を当委員会で御審議、成立をされたときに、本来であれば女性の方々について、これは男女雇用均等でございますから、同じ性による母性保護ということは別にすれば、性による差別で昇進、昇級等に差が生じてはならないという権利を今までの日本の社会の流れを少し変えて女性の方にも認めるという法律ですから、私はこれはこれで一つ筋の通った法律だと思います。しかし、同じ権利を主張する場合は同じ義務を果たすということが社会の根底にあるわけですね。ただ、女性という、特別な母性保護という見地からの特例措置はやはり設けておかなければいけないと私は思うのですね。なぜ雇用均等法を通されたときにそれを措置をされなかったのかと一私は労働大臣になって率直にそう思いました。
 したがって、労働基準法が通らないまま男女雇用均等法が来年の四月一日から施行されると、今先生がおっしゃったような極めて女性にとって実態的には不利な形になるのではないか。そういうことにならないためにもこの労働基準法をできる
だけ早く御審議、御可決をいただいて、その中でさらに、労働大臣が定める上限以外に、当委員会の御審議の中で女性についての特例措置が設けられるかどうか、そういう建設的な御議論がここで重ねられることによってこの問題はやはり解決していただく、そういう方向ではないかと私は思っております。
#23
○玉置委員 今おっしゃったように、育児とか介護とかは女性でなければならないところもありますし、介護については両方いけるわけですから、そういう面でやはり本来のいわゆる正当なる理由ということであれば、そういうことをちゃんと明記されておくということが大事ではないかというふうに思いますが。
#24
○伊藤(庄)政府委員 今回提案しております労働基準法の改正の中で、先生御指摘の内容を盛り込んでいる点につきまして御説明をさせていただきます。
 今回の労働基準法の中では、先ほど来御議論ございましたように、新たに時間外労働の上限基準を労働大臣が定め、これを遵守していただく仕組みをつくるわけでございますが、とりわけ育児、介護などの家庭責任を有する女性労働者の方につきましては、経過措置といたしまして、一定期間この時間外労働基準を今までの生活設計に急激な変化が出ないように低いものに定める、こういう趣旨の規定を入れてございます。それに基づきまして、育児や介護等の家庭責任を持つ女性労働者の方が十分な時間的余裕を持って新しい能力を発揮するための働き方へ対応できるように措置いたしたいと思っております。
 さらに、今回の改正法案では、それに加えまして、ただいまの措置がいわゆる激変緩和措置と申し上げさしていただければ、この激変緩和措置の期間が終了するまでの間に、私ども政府の方におきまして、育児、介護等の家庭責任を有する男女の労働者につきましてさらに有効な時間外労働の抑制策につきまして検討して措置するということもこの改正法案の附則の中にうたわれておりまして、私どもそれを受けまして、法案を成立さしていただければ真剣な検討を開始いたしたいと思っておるところでございます。
#25
○玉置委員 時間が参りましたので終わりますが、一番最初に申し上げましたように、今回の労働基準法改正問題は、やはり中基審で何回も何回も論議されてきたわけでありますが、最終的には何かばたばたと進んだような、最後ですね、十一月末に決めなきゃいけないのがずれ込んで十二月になったということで、それも両論併記というような形になりました、そのままでともかく今国会に提出しなければいけないということでありましたということで出されたわけであります。
 終わりの日程から考えますと、これが今国会通るのは非常に難しいぐらいの厳しい日程でございますが、そういうことも踏まえて、そう焦らずにじっくり話し合いをしながらやられてはどうか。やはりいろいろな面での問題点を確かに指摘をされています。そういう面では非常に大きな大転換のチャンスでもあるわけですが、それだけに、国会審議をおざなりにして慌てて通してということのないように、十分これからまだ審議をするということを大臣に申し伝えまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#26
○鍵田委員長代理 次に、中桐伸五君。
#27
○中桐委員 民主党の中桐でございます。最初の第一回の審議に続きまして、継続して質疑を行いたいというふうに思います。
 第一回目の労働委員会におきまして私が申し上げたポイントをもう一度確認をして、質疑に入りたいというふうに思います。
 まず私が申し上げたことは、労基法五十周年、五十年を経過して行われる非常に幅広い分野の改革であるという認識をしておるわけですが、その際、国際的なG7の流れ、そういった中で行政改革というのが国際的に相当強力に行われてきている。その行政改革という観点から労働行政というものを見る。そして、その労働行政の基本になっている労働基本法という労働基準法の性格、そういったものを改めてこの際抜本的に見直す必要があるんではないかという観点から、一つは、いわゆる透明度の高い行政にする必要がある一そのために、基準法の中にできるだけわかりやすく、労働者や使用者が基本法を見れば基本的な規制のスタンダードがわかるという努力をするべきだ。そのためには、時間外労働にしろ深夜労働にしろ、その規制は基本的に数値を法の中に明記したわかりやすいものにしなければならないんではないかということが一点あったと思います。
 それからもう一つは、基準を決めたときに、その基準をいわゆるルールとしてどう社会が守っていけるのか。つまり労使がそのルールをどういうふうに守っていくのか。それは、企業内でのルールを守る方法と、それから地域、社会、企業外でそれをどうするのか。そして、そこに内閣のもとにある労働行政がどういう役割を果たすのか。そういう問題を議論をしたと思うわけであります。
 その中で、裁量労働はかなり議論を前回したんですが、残りの時間があれば裁量労働をもう一度議論したいと思うんですが、その前に、時間外労働と深夜労働の規制のあり方についてこれから質疑をしたいというふうに思います。
 先ほど申し上げましたように、今、例えばアメリカの一九九三年にできたGPRA法とか、クリントン、ゴアが制定をした、いわゆる行政改革の非常に参考になる法律、そういうものを見ましても、前回もちょっと議論しましたが、これまでの行政マンが仕事をした後の行政サービスの評価ということについて言えば、労働基準について、例えば時間外とかそういったものについての実態がどうなっているかという評価の仕方として、監督官が一年間に事業所をどれだけ回ったか、そして、そこにどれだけの違反があったかということが報告をされる。つまり、これがこれまでのベーシックな労働行政あるいは日本の行政の全般的な評価の仕方ではなかったかと思うんですね。
 それに対して、例えばアメリカのGPRA法では、沿岸警備隊の例が紹介をある本でされておりますが、同じようにアメリカでも従来型の評価というのは、沿岸警備隊が査察を何回行って、そして査察結果はどうであったという報告であったわけであります。しかし、GPRA法によって大幅な行政評価システムの変革を行って、例えば、海難事故による死傷者の数を一二%削減しますとかというふうな形で、つまり、沿岸警備隊にアメリカの国民が期待している、沿岸警備隊が何をどうやってくれるんだ、国民のためにどういうサービスをしようとしているのかというふうに変えたということですね。労働基準行政もそういうふうに変えるべきだ。
 そのためには、例えば時間外労働の問題から入りたいと思いますが、労働時間が年間千八百時間という達成目標、これは、前川レポートで二〇〇〇年という形で当初設定をされていたと思います。今その二〇〇〇年が直前に迫っておりますが、さて、その千八百労働時間一つとっても、その千八百労働時間に近づけるために何年までに何時間にします、その次の何年間でこうします、そういうことが必要なんではないか。つまり、そのために労働基準法はどういうふうな形で改正をするんだ、そういう考え方が必要だと思うんですね。
 この前の質疑の中でも取り上げましたけれども、アングロサクソン系はほかのG7のイタリアやカナダやドイツやフランスに比べて労働法制の体系が違います。労働時間を大幅に短縮をしているヨーロッパの国は、労働基本法の中に、労働時間の規制の数値、つまり時間外労働の規制の数値が入っておるわけなのです。アングロサクソン、つまりアメリカ、イギリスは入っていない。この前労働大臣は、いやそれはいろいろ相手があることだからそう簡単に数字をいきなり書けないのですよと言っているけれども、しかしここは、基本的な賃金と労働時間の問題も含めての話ですが、先ほどの質問者に対して、そんなことを言ったって労働時間だけ規制したら賃金が大変なことになるじゃないですかという、そこはもちろん念頭に
置かなければいけません、賃金と労働時間というのは総合的に考えなければいけない。
 しかし、問題はポリシーの方向性なのです。ポリシーの方向性だと思う。そこで、アメリカ・イギリス型を日本の労働行政はやっていくのですねということになるのじゃないですか。ここに数字を書く、つまり労働基本法に数字を書いている国は時短を達成しているじゃないですか。アメリカとかイギリスは、二千時間とか千九百時間台という形になっておる、歴然と。つまり、ここは基本的な労働行政のスタンスが違うのじゃないか、その点についてどうですか。
    〔鍵田委員長代理退席、委員長着席〕
#28
○伊吹国務大臣 先生とは何度もこの問題は議論をいたしておりますが、日本人は、とかくアメリカ型であるとかヨーロッパ型であるとかということを申しますし、また、今グローバルスタンダードなどというどうもわけのわからない言葉の中で、日本のよき伝統が私は壊されていることを若干憂います。
 率直に申し上げれば、今先生のおっしゃったアングロサクソン系と、ゲルマン、ローマン系の労働法制の御指摘は、法論理としてはそのとおりだと思います。私どもが今御提案しているのは、アメリカ型でもなくヨーロッパ型でもない、やはり労働大臣がその基準を決めながら実態に合わせて雇用と給与のバランスをとりながら労働者を守っていくという日本型を提案している、こういうことでございます。
#29
○中桐委員 いや、私は、日本型でいくということを別に否定をしているわけではありません。
 つまり問題は、行政改革というものをやろうとするときに、そのことが透明度が高くないといけないということはわかりますね、それは理解していただけますね。しかも評価ができるようにしようではないか。それで、行政サービスというのはなかなか評価できないのだ。それは会社で物をつくっている製造工程で、QC活動だとかTQC活動だとか、そういう形でやっているものについては評価しやすい。
 しかし、いわゆる行政が行っているようなサービスは非常に評価しにくいと言われていたのだけれども、アメリカやイギリスの行政改革や、あるいはニュージーランドやいろいろなところがやってきている経験を総合してみると、やはり基本的に数値やそういったものにできる範囲で努力をして、そういう数値目標を決めて、やれるところはどんどんやりましょう。もちろんそれは全部数字にできないところもあるわけです。しかし、労働時間というのは数字にできるわけじゃないですか。それをなぜやらないのですか。
#30
○伊吹国務大臣 労働時間も数字にできますし、それから失業率も数字にできますし、実質賃金も数字にできます。国の行政をお預かりしているということは、労働時間だけを短縮するならそれはそれでやり方はございます。
 しかし、それではやはり行政にはなりません。賃金と雇用と労働時間と、これをバランスしながら額に汗して働く方一人一人の、またその御家族の生活を守っていく、これが労働省の役割でございますから、労働時間だけの議論というのは、先ほど先生は、それは賃金は念頭に置かねばならないと、もうよくわかっておっしゃっているわけでございますから、そのことだけを行政の目的として掲げれば透明性が保てるというものでは私はないと思います。
#31
○中桐委員 ちょっと議論をそらされるので困るのですが、私は数字を幾らにしなさいと今具体的に言っているわけじゃない。つまり、基本法の中に、なぜいろいろな告示やいろいろなことで補完をしていってしまうのかということを言っているわけです。
 つまり、本当にミニマムスタンダードとして数値を書いていく、その数値のスタートが、現実的な賃金との関係やいろいろなものを考えて現実的なところからスタートするのもいいでしょう。しかし、別の観点からいえば、少子・高齢化社会という問題があるわけだから、少子・高齢化社会ということの中で、大都市圏が特に深刻なのだけれども、生活時間の構造が余りにもいびつになっているわけです。それはわかるでしょう。通勤時間は往復四時間近く、しかもサービス残業を入れて長時間労働がまだ依然としてある。しかもサービス産業化してくる中で、そのコントロールが非常にききにくい構造がある。そういうことをわかっていながら、何で少子・高齢化社会における生活時間の構造改革も念頭に置き、かつ賃金の問題も念頭に置いて妥当なコントロールしやすい透明度の高い法規制に持っていかないのですか。全く理解できないのですよ。
#32
○伊吹国務大臣 ちょっと、率直に言って議論が、私もかみ合わないという感じを持ちながらお伺いしておりました。
 確かに通勤時間や労働時間が長い。その中で家庭や地域、コミュニティー、こういうものの大切な機能が崩壊しているということはこの前も先生おっしゃいました。家庭や地域のコミュニティーが崩壊しているというのは私は先生と全く意見を異にはいたしません。
 しかし、そのことは通勤時間や労働時間が長いということだけに原因があるのでしょうか。終戦直後、あるいは昭和二十年代三十年代、労働時間はもっと長く、通勤時間はもっと大変だったと思いますけれども、家庭やコミュニティーは温かく、私は機能していたと思います。原因があるとすれば、権利を主張して義務を果たさないミーイズムみたいなものが日本に蔓延してきている中で地域やコミュニティーが崩壊してきているという、そこに一番大きな理由があると私は思います。
 時間短縮をすることは、私は何ら反対ではございません。先生と同じような情熱を持っておりますし、またそれが法律に定着しながら書ける、また罰則つきに書けるという経済をつくり上げるということからその仕事はやはりスタートしなければならないのではないでしょうか。
#33
○中桐委員 急に昔の長い労働時間のときにはいろいろなコミュニティーがあったじゃないかと。それは質的な変化というものがあるわけですから、そういう中で、これだけの大衆消費社会をつくってきたことの中からいろいろな問題、弊害が起こっているわけです。そういう中で、しかし生活時間というものがいびつになっているということも事実だし、教育の問題自体を取り上げても大変なことになっているわけでしょう。
 これは全部労働時間の問題だと私は言っているわけじゃないのだけれども、労働時間というか、つまり生活時間の中に職場にいる時間というのがだらだらと長いという構造というのは、やはりあるのじゃないか。そこが問題なので、その問題は数値で目標を書くだけでもだめなんで、裁量労働のところで問題になるけれども、労働契約のあり方とかそういったものも変えなければいけない。
 例えば、労働省が賃金・退職金制度研究会というものをおつくりになって検討しているじゃないですか。検討している中で、こんなことになっておるわけですよ、賃金制度を見直さなければいけない。労働時間のミニマムスタンダードをきちんと数値で明確にするということは賃金問題に極めて密接な関係が出てくるわけだから。そのときに、賃金制度は業績主義というものを導入しようとしているけれども、結局それは賞与に限るなどとして大幅な転換ができていないと書いてある。つまり基本的な賃金構造の改革はできていないと書いてある。それは、裁量労働にも関係するのだけれども、時間外の問題にも関係するわけです。
 つまり、労働時間というものにもう少しルールを設けて、どんな労働者でも最低これだけの生活時間を確保できるというふうなのが労働基準法なんだから、そうすると、そこはやはり数字を明確にして、賃金構造もその数字との関係できちんと考え直してくれということをやらないと、やはり景気調節弁で時間外労働が使われるのじゃないですか、そうでしょう。
 つまり、いつまでたっても、いつまでたってもといっても短くはなっているのだけれども、週四十時間という目標を立てたから短くなったので
しょう、そうでしょう。そうしたら時間外労働だって数字を導入すればいいじゃないですか。何でそこに抵抗するのですか。
#34
○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘のように、労働基準行政におきましても、今まで、目標を掲げ、いろいろ行政努力あるいは行政サービスによってその目標を達成していこうという手法は取り入れてきておりまして、その一つが御指摘ございました千八百時間でございまして、過去十年の間で二百二十時間を超える労働時間短縮をしてまいりまして、平成九年度ようやく千八百時間台に入ったわけでございます。あと有給休暇等頑張っていけば、さらに千八百時間台前半までいけるのではないかという見通しも私ども立ち始めてきている。
 さらに、例えば労働災害の問題につきましても、今般、新たに労働災害防止計画を閣議にも報告させていただいておりますが、死亡災害二千人を割ろう、こういう目標を掲げて、ここ五年間、業種ごとに、あるいはそういった労働者ごとに対応していこうという目標を定めて、各労働災害防止団体等とも連携をとっている。そういった手法を取り入れてきていることは、先生御理解いただいているとおりでございます。
 ただ、そういったものは、法律上の規制を持たない、いわば関係者間あるいは国民の皆さんとの間で一つのコンセンサスのもとにそういう目標に向かっていこう、こういう目標でございまして、その達成状況については逐次公表しながら、さらなる努力を全体の皆さんとともにしていくという性格でございます。
 ただ、先生御指摘ございました時間外労働につきまして、なぜ日本が、大臣が申し上げましたとおり第三の道を行かざるを得ないかということについて申し上げれば、労働基準法が、そういったいわば誘導的性格を持つ法律としては、罰則あるいはその時点で直ちに直さなければ是正勧告という性質の法律でございまして、将来の目標を決めてそこへ軟着陸していこうという性格のものではない。例えば四十時間につきましても施行させていただきました。私ども、これから二年間で完全定着を目指すという趣旨の目標は別の労働時間短縮促進法で手当てさせていただきまして、現実にかなりのペースでこの四十時間制の普及が進んだわけでございます。
 そういった意味で、時間外の数値規制というものは、いわば是正、罰則といったものと裏腹で考えていけば、そういった性格のものとかなり性格が違うという点をひとつ御理解いただきたいと思いますし、それから、日本の場合、ドイツの、例に出されました大陸の法制と違いまして、時間外労働につきましては、三六協定がなければできないという独特の規制の仕組みをとっております。したがいまして、時間規制をかけて労働基準法の中で罰則等で対応していくとすれば、これは、三六協定を結んだ当事者に対して罰則をどうするんだ、こういうことが出てくる非常に変な形になるわけでございまして、その辺の法制的問題も一つあることと、我が国の時間外労働というものが雇用調整の非常に重要な役割を果たして、諸外国のように人の変動で景気変動に対応するというよりも、時間の調整で対応してきている、それで雇用の安定につながっているという側面をやはりある意味では大事にしていかなくちゃいかぬ面もございます。
 そういったことを考えますと、やはり日本の時間外労働の規制というものは、アメリカ型でもない大陸型でもない、別の、第三の道の形を知恵を出していかざるを得ない。そういったところから、今回、労働基準法に基づく時間外労働の基準というものを労働大臣が定めて労使の方に遵守していただくという仕組みを御提案しているわけでございますので、そういった制度的な、あるいは実態上の問題があることを御理解をいただきたいと思っております。
#35
○中桐委員 行政改革というのは一体どうしたいわけですか、じゃ。私は、これまで官僚が全部権限を持って、もう官僚がすべて日本をだめにしたというようなことを言うつもりは全然ないんだけれども、裁量行政というものがいっぱいいろいろなところにあって、情報公開法もようやく今回法案が提出されるような段階であり、行政手続法だってつい数年前でしょう。つまり、行政というものの透明度が低いところに問題があるということは、これは社会的に認識されていることだと思うのだけれども、その点については、そうだということでしょう、どうなんですか。
#36
○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘のように、行政改革という意味合い、その一つが透明度を高めるということであるかと存じます。今回御提案しています、時間外労働基準を労働大臣が法律に基づいて定めるという仕組みも、今までは、法律に基づかない、事実上の指導の目安として私ども進めてきた、そういった手法を、法律に基づいてきちんと、どういう基準に基づいて指導するのかも法律に基づく告示で公表して法律に根拠を得た形で指導する、こういう形にいたしておるわけでございまして、透明度を高めるという意味では、いわば先生の御指摘の方向に沿って私ども知恵を出させていただいた内容ではないかと思いますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
#37
○中桐委員 そこまで言うんだったら、書くべきなんですよ、基本法につまり、その数字を幾らにするかというのをここで大議論すればいいじゃないですか。賃金の問題から雇用の問題から含めてやればいいんですよ。そこをはっきりしないと、大幅な新しい時代の転換にならないですよと言っているわけですよ、行政改革の。
 そして、一応千九百時間台に入ってきた。総労働時間が千八百時間台に今なった。今何時間ぐらいになっていますか、総労働時間。
#38
○伊藤(庄)政府委員 平成九年度、年度単位で千八百九十五時間、こういう数字になっております。
#39
○中桐委員 千八百時間台になること自体が大変大きな努力があったわけでしょう。それは数値目標があったからでしょう、週四十時間労働という。つまり、非常にわかりやすい、透明度の高い目標があるからでしょう。そうじゃないですか。
#40
○伊吹国務大臣 先ほどから先生の御質問に対して政府委員がお答えをしておりますように、労働基準法というのは、やはり最低限の働くルールを書き、そしてその人たちに対して、国が労働基準監督機関という一種の警察権を持ってその最低限の権利を保障していくという法律です。したがって、そこに平均的な数字を書くということはいかがかと私は思いますね。先ほど来申し上げているように、例えば千八百時間という時間短縮の目標は別途の法律でやっておるわけですよ。だから、基準法に平均的な数字を書いて、それを上回るものはすべて罰するという方向性では、やはり私はいけないんじゃないかと思います。
 先生がおっしゃっていること、私は反対じゃございません。別途何か法律をもって理想を書くということは決して反対ではございません。しかし、基準法という法律の中にそれを書いて、果たしてうまく動くでしょうか。先ほど御党の玉置委員がまさにおっしゃったように、私は、官公労とか自治労とか、これは率直に言って、利益、効率と賃金の関係は不明確だと思いますよ。それから、大企業はできるかもわかりません。しかし、中小企業、零細企業はできないということになれば、今の基準法の建前で、それではその人たちは罰せられるのかといえば、ちょっとそれはやはり私は難しいと思います。
 先生がおっしゃっているようなことを別途の法律で、国会の御判断で一つの目標としてお書きになるという御提案、あるいは政府がそういうものを提案させていただくということは、私はあり得ることだと思いますけれども、それを基準法の中に書くというのは、ちょっと私は無理があると思います。
#41
○中桐委員 労働基準法が制定された時点の話、私は、専門分野ではありませんから全部調べ尽くしたわけではありませんが、あのときでも、こんな法律が決まったら日本の経営はつぶれてしまうという話があったようですね。そのときに、いっぱい例外規定が導入されたのです。
 つまり、数値を書くということと例外規定というものとは、今さっきの大臣のお答えだと、何か知らないけれども、数値を書いたらもう絶対逃れられないものになってしまうのだと。そういうことを言っているのではないでしょう、私は。つまり、ミニマムスタンダードというものを決めたときに、この事業所については週四十時間制でも経過措置を設けて何年までに目標達成しなさいと言ってやっているではないですか。そういうことだっていいわけよ。つまり数字を書けと言っておるわけよ、僕は。上限の数字を書いた上で、そういうことをやるのならやればいいではないですか、それをなぜできないのだ。こんな五十年目の改革で、何でそんなことを渋るわけですか。
#42
○伊藤(庄)政府委員 先生、私ども、行政の目標として関係者間でコンセンサスをつくりながら、達成を目指すべき目標、これについては明快に数値を示して対応していくべきことはもちろんでございまして、そういった意味で、千八百時間という数字も御指摘のとおりの手法で進めてきているわけでございます。
 ただ、先生の御意見とやや違うのかもしれませんが、先生御指摘になっております時間外労働の規制の数値を目標として出すのか、この法律が施行と同時に皆さん方にその数値を絶対に守ってもらうべき数値として出すのか、その辺の受けとめ、私どもの理解の仕方が先生とやや違っているのかもしれませんが、時間外労働の数値を労働基準法でもし書くのであれば、やはり施行と同時にすべての事業主の方、あるいは三六協定の締結当事者に守っていただかなくてはいかぬ数値として理解せざるを得ない。もしそれがそういった数値ではなくて、将来にわたる何年か後に達成すべき目標としてそういった数値を出すのであれば、例えば私どもの法体系でいえば労働基準法というものではなくて、労働時間短縮促進法とか、そういった法制度を活用してそういったことを検討してはどうかという御指摘であれば、またそういった点につきましては、今回の法案に盛り込みまして提案させていただいている新しい時間外の基準等の実施状況を見ながら、審議会の方にも先生の御意見等は御紹介させていただいて、そういった御議論が審議会でできるかどうか、お諮りもしてみたいとは思っております。
#43
○中桐委員 わかりました。
 要するに、罰則つきで書く労働基準法の中に、そういう数値はとても今の状況では導入できないという御意見ですね。その数値というのは何時間かということを今私言っておるわけではないのだよ。つまり、実現可能性のある、努力をすれば数字が書けるという話の、その数字の話というのはまた別の話なんだ、私が今議論しているのは。千八百時間達成する目標年次を決めるという、ちょっと私の質疑もごちゃごちゃになっているところがあるから整理しますと、そういう目標年次を決めてやる行政の改革というのは別に必要だと私は言っているわけだけれども、そうではなくて、今の話は、基本法の中に数字を書く必要があると言っているわけよね。
 例えば、国によっては、罰則つきの法律ではなくてもちゃんと守られている国があるわけでしょう。罰則がなくても、社会的ルールだ、ミニマムスタンダードというのは。つまり、罰則がなければ守らないとかいうのは、言ってみればある種後進国型に近い構造じゃないですか。そうじゃなくて、生活時間を大きく規定する労働時間というものは、きちんとミニマムスタンダードを守らなければいけないのだ。社会のコミュニティーが、いろいろなその発展段階はあれ、さまざまなコミュニティーの中での大きな問題を抱えておるわけ、家庭的な問題を。それは労働時間が乱しているわけですよ、労働時間が一つの要因として。だから、そこを新しい二十一世紀の成熟社会に合った時間構造にしなければいけないでしょう、そのためにどういう決意で臨むのかという話なんですよね。そのときに数字を書きなさいと言っている。
 では罰則つきの法律だからという話もあるが、それはそれで重要な日本の歴史的伝統ですから、罰則がないと守らないというのは、これはお寒い話だと思うんだけれども、そうではない国だってあるわけでしょう。だから、そういう労働基準法が罰則つきの体系だからもうだめだという議論をしていたのではだめなので、つまり、日本の今の成熟型の社会を、どういうふうに生活時間の構造改革をするために労働時間のコントロールをするのかという決意を聞いておるわけです。そのときに数字が必要じゃないかと言っているわけです。
#44
○伊吹国務大臣 先生の御議論は、別に先生がおっしゃったように、ごちゃまぜにして御議論はなすっていないと私は思います。きちっと整理はされていると思います。
 一つの理想的な目標値を基準法という体系外に、何かみんなでコンセンサスをつくって目標値を書こうではないかということは、そういうコンセンサスができれば、我々は別に反対をしているわけではありません。ただ、罰則がなければ守らないというのでは日本社会も残念じゃないかという御議論は、それであるならば、労働大臣が定めたものを守らねばならないという規定を今度労働基準法の中に入れておるわけでございますから、労働大臣がお願いをしたその数字を皆ざんが守っていただいて、それが法律にできるようになる日本社会であれば、一番先生の御質問にかなっているのではないのですか。
#45
○中桐委員 いやいや、労働大臣が出すのではだめだと言っておるわけです。つまり、基本法の中に、透明度を高めなさいと言っているわけだから。その罰則の話はまた横に置いておいて、私の言いたいことはそういうことなんです。
 ちょっと時間がなくなってきたので、深夜労働についても少し、同じ観点でありますけれども、質疑をしておきたいのです。深夜労働の問題については、今日までに私も専門委員会ですか、看護職員の確保法案のときの委員会の委員として参加した経験もございますので、また深夜労働というものの研究もこれまで労働医学の分野でやってきたこともございますので、この問題について、少しそういう経験を踏まえて質疑をしてみたいと思うのです。
 一九九二年に看護婦等の人材確保の促進に関する法律という法律が制定されて、その法律の中に、指針という形で指針をつくりなさいということが決められ、その委員会に私は入って検討に加わったわけですが、そのときに、週四十時間労働、複数を主として月八回以内の夜勤体制ということを努力目標として、しかもこれは指針の中に入れる、入れないで相当もめて、結局指針の中に入らなかった。つまり、指針でも数字を書くのが嫌だった、そういう経過があるわけです。よほど数字を書くのが、どうも日本の行政は、特に労働時間という点については非常に抵抗が大きい。
 それは、どうも安易に景気調節弁に考え過ぎているんではないかという気もやや私はしているんですが、ここは、やはり深夜労働についても、ILO条約及び勧告、これも出されましたし、つまりこれは、これまでは女性の場合の深夜はすべて禁止するとか、そういうふうな国際的な流れから、男女共同参画社会という動きの中で、深夜労働というものについてもきちんとした条件を設定しながら、男女共同で参画できるようにしようじゃないかという流れがあったと思うんです。そういう流れもあるし、それから労働現場の労働強度も産業構造の変化で大きく変わってきた。そういうこともあるでしょうし、そういう中で男女が共通して職場に進出できる条件というのは、少なくとも相当高まってきている、そういう背景もあったと思いますね。
 そういう中で、ではILOの条約や勧告の基本的コンセプトは何かということを考えてみたときに、深夜労働のコントロールをするための考え方として、一つは、健康、安全という観点、それからもう一つは、労働生活を質的に向上させようという観点、この二つの観点から基本的に出されてきた問題ではないかと私は思うんですね。
 そのほか、母性保護の問題、つまり妊娠、出産にかかわる期間における深夜の労働のコントロール
とか、あるいは基本的に、少子・高齢化社会の中で、そういう者については十分な配慮が必要だよというふうな形で導入をされてきたものだというふうに私は理解しているわけです。
 さらに、それと相前後して、EUが、EC指令という形でより細かいコントロールをするための規制をしている。このEUの問題については、最近、アングロサクソン系のイギリスが、これはきつ過ぎるといって訴訟を起こしたらしいんですよね。そうしたら、その訴訟に負けちゃったわけですよ、イギリスは。いずれにしたって訴訟に負けたんだから、EUの指令を受けて国内を改革しなければいけない。イギリスも、従来型の労働時間規制から、EUの中で新しい挑戦をしなければいけないということになるだろうと思う。
 そういう中で、深夜の規制というのを考えたときに、平成十年に、労働省告示の第二十一号で、女性労働者の就業環境等の整備というのがありますよね、深夜の。それから、労働省告示第二十三号で、育児休業等の家庭責任に伴う深夜労働の問題が取り上げられていますね。しかし、深夜業に従事する女性労働者の就業環境ということにはなっているが、男女共通の深夜の規制には第二十一号はなっていないわけだけれども、しかもこの第二十一号には細かい数字が一つも、いわゆる深夜の、例えば看護婦確保法のときに、月八回以内とかいうふうな形で努力をするというふうな形でもう既に政府の指針の中に入っているものもあるわけだね。いや指針じゃない、告示だったか通達だったかであるけれども、公文書の中に入っているわけです。そういうものを労基法の中に書く決意があるのかどうかお聞きしたい。
#46
○伊藤(庄)政府委員 深夜業につきまして、先生から、健康あるいは家庭生活との関連等々の関係でいろいろ検討すべき課題があるんではないかという御指摘については、私どもも十分理解をさせていただいておるところでございます。
 中央労働基準審議会で、この法案の内容の審議に当たりましてまとめていただきました建議の中でも、この深夜業の問題については、健康管理あるいは就業環境の整備等について引き続き検討をしていこう、とりわけ過度の深夜業についてどのような対応が可能であるかについても引き続き検討をしていこう、こういう建議をいただいているところでございまして、私ども、そういった検討が円滑に進むように万全の措置をしていきたいというふうに思っているところでございます。
 ただ、先生、労働基準法にこの深夜業の規制について何らかの措置は今段階でできないかという御指摘かと存じますが、この深夜業の問題、交代制等を持ついわば製造業の分野におきましても、種々さまざまなシフト編成等によりましていろいろな形の、回数等についてもさまざまな形態がとられてきている。近年、グローバル化に伴いまして、世界の市場を相手にする金融その他の関連サービス業におきましても、深夜業等を必要とする経済活動の分野が広がっている。実際上、さらに、都市部等を中心にライフスタイルのいろいろな変化から深夜業等がどうしても必要となるビジネスというものもある。広範な分野で深夜業が行われているわけでございます。
 これに対して、今の段階で労働基準法の中で一つの基準というものを設定できるかということになりますと、これは慎重な検討を要することになるんではなかろうか。回数制限とかそういった一律的な規制という意味では、非常に慎重に、実態等も調査の上、どのような基準設定が可能かということを、ある程度の時間をちょうだいして検討しなければいかぬというふうに思います。
 ただ、もう一つの側面は、健康管理等の方で、例えば安全衛生法では、深夜業に従事する方については、一般の方と違って、半年に一回ずつの定期健康診断を事業主に義務づけたりいたしておりますが、こういったものについてさらに強化が必要なのかというような健康管理の問題等も別の側面からあろうかと思いますが、そういった点については、また労働基準法とは別に安全衛生法の問題でもあろうかと思います。
 いずれにしましても、最初に申し上げましたように、先生御指摘のような趣旨を踏まえて、中央労働基準審議会の中で速やかにこれらの検討が行われるように私ども措置をしてまいりたいと思っております。
#47
○中桐委員 今度連合が、対案というか修正案の中に、深夜の回数制限の問題を取り上げていますね。私も全世界をくまなく調べたわけじゃないんですが、オランダにそれに近い深夜労働の規制の法律があるということがわかりまして、これはもう担当の労働基準局監督課の方にもお渡しをしていますので、十分研究をしてもらいたいというふうに思うんです。
 つまり、二・八といって看護職員二人の看護体制、要するに、深夜仕事をするときに、サービスの低下を防ぐために二人で八回の夜勤だよということが人事院勧告で出されて、それが厚生省の今の指針のときに、これは通達になったか告示になったかは忘れましたが、要するに、指針の中に数字は入らなかったけれどもその直前まで行っているわけですから、全く日本の中で議論されてこなかった話じゃない。
 そのことを前提に今後深夜の数値的規制をやはり考えるべきだ。その場合に、例えばオランダがしているように四週では十回、十三週つまり三カ月程度の範囲で二十何回ですか、平均すると四週七・七回になるというふうな、つまり四週間は十回だけれども十三週では八回以内におさまるというふうな規制も考えておりますから、もちろんこれをそのまま日本に導入できるかどうかという問題もあるけれども、しかし、そのことは今後審議を詰めていきたいと思う。つまり、数値目標というのがやはりないと規制できないということだと私は思うのですね、また最初の議論に戻るけれども。
 そういう意味でいうと、時間外だって深夜だって、今まで、女性保護が撤廃されるから問題だという観点の議論と、もう一方では男女ともに規制しなきゃいけないじゃないかという観点があるわけだから、まだ欠陥がいっぱいあるわけでしょう、今の法体系に。その点について、時間外と深夜について、四月一日までにどういうことをやることをお考えなのか、労働省にお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
#48
○伊藤(庄)政府委員 深夜業につきまして数値目標という御指摘ございましたが、労働基準法といういわば法体系の中で措置すべきことなのかどうか、これはかなり慎重な検討を要するのではないかと思います。
 いずれにしましても、深夜業は、先ほど申し上げましたようにいろいろな業種、いろいろな業態の中であるわけでございまして、その態様も一様でない。例えば、先生御指摘ございましたように看護婦さんの方が、いろいろ労使間で懸命に、四週八回というようなことの実現を目指して努力されていることも承知いたしておりますが、そういう分野と、もし、そういう分野があることを構わず、例えばオランダにございますように四週十回というような数値を出せば、やはり看護婦さんたちから見ればその数値は甘過ぎるという御批判も受けるでしょうし、私ども、やはり業態業態をよく調査した上で、どういう手法でどういうやり方が可能なのか十分検討をさせていただかなくてはならないのではないかと思っております。
 ただ、深夜業の問題につきましては、昨年成立させていただきました雇用機会均等法等の関連の整備法の中で、育児・介護休業法の中で、いわば家庭責任を持つ方については免除を請求できる権利が認められておりますので、これのとりやすい環境をつくるとか、その的確な運用をまず目指すと同時に、一方では、先ほど申し上げましたように、中央労働基準審議会の中で、この深夜業の問題についてどのような対応が可能なのか、ひとつ労使間で議論をしていただくように、私どもも、速やかにそういった議論が展開されるための環境づくりに十分意を尽くしたいと思っております。
#49
○中桐委員 時間が来たので、終わります。
#50
○田中委員長 次に、河上覃雄君。
#51
○河上委員 前回議論をいたしまして、本日も、前お二方の議論を聞きながら、私からも初めに時間外労働の関係、そして次に裁量制、この二点に絞って、通告した量が非常に多かったそうですからどこまで進むかわかりません、それは次回に回させていただきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思っています。
 初めに、時間外の問題についてお尋ねをいたしますが、三六協定の届け出件数、平成八年度の実績で八十二万一千五百六十件、こういう実態になっております。この八十二万の中には当然、新規であるとか変更であるとか更新であるとか、これらも含まれておりますので、八十二万件の届け出がそのまま事業所数に当たるとは考えにくいわけでございまして、その意味では、全事業所、これは全体で六百七十万事業所あるそうですが、当然この中には商店であるとかあるいは寺院であるとか学校であるとか等々が含まれているそうでございまして、これを引いて、およそ大づかみに四百三十万程度の事業所があると考えてみますと、極めてこの三六協定の届け出件数は低い状況にあるわけであります。言いかえるならば、必要な手続をとらないで時間外労働が行われている実態等もあるのかな、私自身こう思っているわけでございます。
 そこで、監督署が、三六協定の締結や届け出の手続をとらないで時間外労働を行った事業所に対して、改善などの指導を実施した件数はどのぐらいおありになりますか。
#52
○伊藤(庄)政府委員 御指摘の、労働基準監督署が、三六協定について届け出がない、あるいは届け出がないのに残業をさせたというような三十六条の違反につきまして指摘した件数でございますが、平成九年において一万八千二百六十一件、こういった三十六条違反の関係で改善をさせております。また、平成八年が二万一千百五十七件となっておりまして、大体一万九千件が過去十年の平均でございますが、そういった件数で改善の指導を命じているところでございます。
#53
○河上委員 事業所の数は先ほど申し上げたとおりでございまして、指導いたしましたのが一万八千、二万一千、先ほど申し上げました届け出は八十二万。まだ随分差があるわけであります。当然、事業所の中には時間外をしない事業所等もあると思います。いずれにしても、実態はそうなっているというこれらの事情を踏まえながらこれから議論をいたしたいわけであります。
 ところで、今申し上げました例の場合、監督署は事業所に対してどのような対処方をするのでしょうか。そしてまた、その違反率について御説明ください。
#54
○伊藤(庄)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、三十六条違反、三六協定がなくて残業をさせている、あるいは届け出がない、こういった件数は約一万八千件から九千件、年によりまして二万件ということでございますが、その違反率は大体一二%台になります。
 こういった事業場に対しましては、もちろん中には常時残業をしていないというケースもございますが、ただ、ある程度の残業をする以上、三六協定の締結を早急にするように改善指導を命じて、期日を限りましてその是正を確認するということにいたしております。先ほど申し上げた件数につきましても、すべて確実に大体是正させてきているというふうに認識をいたしております。またその中で、従来、悪質な事案につきましては司法処分ということも行って、厳正な対応をいたしておるところでございます。
#55
○河上委員 今回の改正法は、これまでの適正化指針に法的な根拠を与え、時間外労働の上限に関する基準という形で実効性を担保する、このようにいたしております。仮に、今回の措置によって時間外労働の上限時間を三百六十時間、こう定めた場合の法的効果は、労基法三十六条中に三百六十時間と明記した場合と同等の法的効果、法的拘束力を持つと理解してよろしいですか。
#56
○伊藤(庄)政府委員 ただいま御提案申し上げております時間外労働の上限基準、これは、法律に基づく委任告示という形で労働大臣が定めますので、そこに書かれる上限は、告示で書きましても法律で書きましても、その法的効果については全く変わりございません。
#57
○河上委員 法的効果は全く変わりはない、こういう御答弁でございました。先ほどの大臣と同僚委員のやりとりもございました。今、私は法的側面から申し上げましたが、であるならば、労基法の条文に三百六十時間を明記することが私は可能だ、このように考えます。時間外労働の上限に関する基準という形で担保した理由は、それでは何でしょう。
#58
○伊藤(庄)政府委員 今御指摘ございましたこの三百六十という数字は、目下、私どもが事実上の、いわば単なる行政指導の目安として用いている数値の年間単位のものでございます。一つの議論のシンボリックなものとしてこの三百六十というものをお話し申し上げているわけでございますが、実際上の基準に当たりましては、三六協定の定め方に応じまして、一週間単位あるいは四週間単位、月でいえば一カ月、三カ月、それぞれの期間、短い期間で定める場合の基準をどうするかというようなことも、あわせて基準の中では織り込んでまいらなければなりません。
 また、こうした基準に対しまして、トラックの自動車運転手の方等のケースの場合には、やはり総運転時間あるいは休息時間というような形で規定する方が実情に合うというような形で、別の自動車運転手の労働時間の改善基準等を設けております。
 そういったものとのかかわり、さらには、この時間外の上限基準が、今回御提案申し上げている中にあります、家庭責任を持つ女性労働者の方の急激な生活上の変化を避けるための激変緩和措置等々にもこの基準を使っていく、そういう際にどうするか。こういういろいろな対応を考えなければならない性格のものでございまして、この三百六十というものだけを一律に法律に規定するというわけには技術的にまいらない法的な問題がございます。そういったことで、技術的に法律ですべてを書くことは困難であるので、労働大臣が委任告示という形で定める告示の中で明快かつ詳細に規定していく、こういうことにいたしておるところでございます。
#59
○河上委員 いろいろ御説明いただきましたが、最終的には技術的側面からの要請、こう受けとめます。いずれにいたしましても、法的な効果は同等である、こういう御見解でございました。
 具体的にこれから伺ってまいりたいと思いますが、これらの議論を踏まえ、あるいは監督署の三六協定の締結届け出の手続等の実態を踏まえました。大臣が定めます上限時間を超えて締結した三六協定、これは有効になるんですか、無効になるんでしょうか。
#60
○伊藤(庄)政府委員 ただいまの御指摘の問題につきましては、二つの側面から考える必要があるかと存じます。一つは、今回この法律を成立させていただければ、その施行の段階で、三六協定を結ぶ従業員の代表者の選出方法、あるいは適正な資格等につきまして、施行規則でルールを引いていく、こういうことにいたす考えでございます。そういった面から見て、届け出があった時点でチェックして、欠陥がある、こういうことになりますと、当然、そのこと自体で、手続に欠陥があるということで三六協定の効力が出てこない、受理できないということに相なるわけでございます。そういった側面が一つございます。
 それからもう一つは、そういった手続を踏んでいるにもかかわらず時間外上限基準を超えているという場合でございますが、こういった場合につきましては、労使が十分に話し合って、真に合理性のある状況のもとでそういった三六協定が締結されたかどうかを十分に吟味する必要が生じてまいります。そういった、十分話し合って、どうしてもやむを得ない、真に合理性があるという場合には、一概には無効にはならないというふうに思います。
#61
○河上委員 これまでの三六協定においても、目安、すなわち三百六十時間の範囲内で協定しているものが九一%になっている、これは前回の答弁でおっしゃっておりました。もし、今申し上げました上限を超えて締結された三六協定の届け出が有効ではないと判断した場合、監督署はどのように具体的に対処するんですか。
#62
○伊藤(庄)政府委員 先ほどお答え申し上げましたような考え方に沿いまして、もし、三六協定の届け出があり、それが上限基準を超えているような場合には、まずその三六協定の締結の当事者、特に従業員の過半数を代表する者、これが、新たに設定するルールに照らして、適正に選出された方と締結されているかどうかということをチェックいたします。それに、もし手続上の問題等があれば受理できない、こういうことになるわけでございます。
 その上で、そういった適正な手続が踏まれた上で新たに定めます上限基準を超えている内容であれば、まず労使、特に使用者側から、その間の事情を聞き、私どもも、特段の事情がない限り、再三にわたりましてその改善について指導を繰り返す、こういうことになるわけでございまして、何としても上限基準内におさめていくという対処をいたす所存でございます。
#63
○河上委員 三六協定の届け出は、届け出ですよね、あくまで。届け出なんです。したがって、郵送で送られても、入り口の段階ではわからない。だから、形式的な要件が整っていれば、届け出である限り監督署は受理せざるを得ない、こういうことになると思います。つまり、届け出ることによりまして三六協定の効力は発生すると私は理解するわけであります。労使が決定する上限時間を超えた三六協定の司法的効力を否定できない、このように新聞紙上でも中基審の会長のコメントがありますけれども、今御説明いただきました状況を通じて、結果として繰り返し指導を実施するしかないということでありますが、丹念に何度も指導を繰り返し、改善を求めていく、こういう手法しかないのでしょうか。
#64
○伊藤(庄)政府委員 まず一つは、先ほど来申し上げていますような三六協定の締結の当事者、従業員の過半数を代表する者の選出、あるいはその方の資格等について欠陥があれば、これは受理できない。したがいまして、もし時間外労働をそういった状況で行わせれば、それ自体が罰則を伴う労働基準法違反が出てくる、こういうことになるわけでございます。そういったことで、当然これは改善をさせる。
 それから、先ほど申し上げましたように、この上限基準を十分熟知した労使当事者が、いろいろ十分話し合って、真にやむを得ない合理的な理由があるというもとで時間外の上限基準を超える内容を締結してきたということであれば、私ども、今回は、法律に基づく指導を行う、こういうふうに法律上の規定がございますので、その指導を行う責務があるわけでございますので、そういった合理性について十分吟味し、それがないと認められる場合にはやはり改善について厳しく指導をしていく。これは、先生御指摘のように繰り返し指導するということになりますが、法律に基づく指導ということで行いますので、何としても上限基準内におさめていくという懸命の指導を行うことに相なります。
#65
○河上委員 結論としては、繰り返し指導するしかないということなんですが、今局長の答弁の中にも、法律に基づく行政指導になる、こういうお話が出てまいりました。前回の議論を通じましても、法律に基づく行政指導となるので実効性は高まる、このように言っておりました。そして、万全の成果が得られると考えておる、このようにも答弁されているわけでございます。
 今後は法律に基づく行政指導になるので実効性は高まるとされておりますけれども、届け出の実態はあくまでも届け出であること。あるいは届け出の実態というのは、現状のもとで、先ほど申し上げたような状況下にある。さらに行政指導の限界もあるということ等考えますと、なお行政指導の実効性に私は疑問が残っている。この点と、また、法律に基づく行政指導と法律に基づかない行政指導、では、これにどういう差異があるのでしょうか。
#66
○伊藤(庄)政府委員 まず、今回私ども、もしこの時間外上限基準が守られない場合の指導、繰り返し徹底した指導を行うというふうに申し上げておりますが、現在の事実上の行政指導として行っております時間外労働の上限設定につきましても、三百六十時間に対応するところで見れば、九一%がこの三百六十時間内におさまる三六協定に実際上してきておりますし、またさせてきておるわけでございます。法律に基づく行政指導ということで、労働基準監督署の監督官が懸命に繰り返し指導することによって、まずほとんどの事業場におきましてこの達成が可能であるかと思います。
 法律上の行政指導と法律に基づかない行政指導の違いということになりますと、やはり先ほど来御議論ありました、行政が指導する以上、それが透明度の高いもの、また法律に基づく指導であるということ等が要請されるわけでございますが、そういうものを明確にして事業場に対応してまいりますので、事業場の方が受ける重みというものは私ども相当に違いがあるはずだというふうに思っております。
 そういったことを十分労働基準監督官の方にも趣旨を徹底させて指導に臨むように、万全の配慮をしてまいりたいと思っております。
#67
○河上委員 今の御答弁で、指導においてほとんどの改善がなされている、このようにお話がございました。ほとんどなので全部ではないわけでして、だから、ほとんどと全部の間にはまだすき間がある。この残ったすき間、これが繰り返し指導しても改まらないということに私はなると思いますが、これはある意味では意図的であり、悪質であろう、私はそう考えます。
 これらの悪質な事例に対しては、行政指導を繰り返しても改善されないわけでございますので、何らかの法的措置が必要と私は考えるものでございまして、例えばでございますが、このような事例には公表制度の導入も有効な措置ではないのかと私自身は考えますが、御見解をいただきたいと思います。
#68
○伊藤(庄)政府委員 今も申し上げましたように、再三の懸命の指導にかかわらずなお問題の事業場が残った場合、恐らくそういった残った事業場の中には、悪質なもの、あるいは親企業とのいろいろ発注取引との関係等からどうしても対応が困難とか、いろいろなケースが含まれてきているのかと思います。
 そういった状況の中で、悪質なものというのは、労働基準監督署の懸命の指導で、今までの経験からすれば大半の、まず一〇〇%と言ってよろしいかと思いますが、事業主は改善に応じてくるというふうに思っております。
 ただ、そういった親企業との発注取引との関係等々につきましてはなかなか問題が残るケースもございますので、そういった場合には、こういった法律に基づく行政指導ということである以上、親企業とも場合によっては話し合うというようなケースもあろうかと思います。
 私どもそういった形を通じてこの時間外労働基準の徹底を期してまいりますので、先ほど来申し上げましたように、労使にこの基準の遵守というものは十分にしていただけるものと思っておりますが、先生御懸念のような事業場が残るとすれば、恐らくそれは中小零細事業場ではないかというようなことも思われます。そういったところにつきまして、公表制度というものが思うように抑制効果を持つかどうか、むしろ労働基準監督署の臨検等による再三の監督、指導の方が抑制効果として重みを持つのではないかというような気もいたしておりますので、まずそういったことで労働基準監督官の何としても改善させるという懸命の努力に期待していくことにいたしたいというふうに思っております。
#69
○河上委員 今御説明ありましたように、親企業
との関係、あるいはこの実態はむしろ中小零細、ここに多いのではないのか、こういう御指摘がありました。
 もちろん個別のものもとらえながら、これを速やかに対処すればいいという意味で、私はそれだけで申し上げているわけではないわけでありまして、大事な点は法を守るための実効性だと思いますし、その場合においての監督署の指導のあり方、この視点から申し上げているわけでございまして、これに実効性が伴わなければなかなか難しい。
 全般的に申し上げれば、協定を結ばないとか、届け出をしないとか、あるいは指導をしてもなかなか守らないとか、こういう状態は果たしていい状態かといえば、だれでもいい状態ではないと考えるのが当然でございまして、ぜひともこうした側面の監督署の指導のあり方につきましては、現行が果たしていいのかどうか、あるいは研究し、そして改善する余地はないのか、これらをぜひとも検討をしていただきまして回答は結構でございます、私は次の質問に移りたいと思います。
 建議は、使用者に基準の留意に対する責務や基準に関する必要な指導、助言、これらをできることといたし、一連の措置に関する規定を設けるとされておりました。
 労基法は本来使用者に対する規制であるべきであろう、私はこう理解しているものでございますが、しかし、今回の改正法は、基準の遵守は労使双方に、また行政官庁が行う助言、指導は労使双方に、このように変化をいたしております。
 建議では使用者に求められている責務が労使双方に変わった理由について御説明いただきたい。
#70
○伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、中央労働基準審議会の建議の段階では、時間外労働の上限基準につきましては、使用者がこれに留意すべきという留意義務、それと行政側の助言、指導等の規定でございました。
 私ども建議を受けましての法案策定の過程におきまして、労働側委員からはなおこの時間外上限基準についてより効果のある形を望んでいる声も非常にございました。また、与党内の調整の過程でもそういった規定の強化について工夫できないかというようなこともございました。私ども、そういったことを受けまして、単なる留意義務を、遵守するように適合するようにしなければならないという形にいたしまして強化をいたしたわけでございます。
 適合するようにしなければならないというふうに強化したことに伴いまして、この三六協定、従業員の過半数を代表する者と使用者がいわば対等の関係で締結する労使協定でございますから、それの遵守義務というのは制度上また法律上労使双方にかかる、こういうことから労使が適合するようにしなければならないという規定に法制上、法律上相なったわけでございます。
#71
○河上委員 その点はわかりました。
 一点、女子保護規定の撤廃に伴う女子労働者の激変緩和、特に現実的に家庭責任の負担を負っております実態などを考慮いたしますと、女子労働者の時間外労働の基準というものは百五十時間が一つの目安になろう、私はこう考えますが、この点の見解はいかがでございましょうか。
#72
○伊藤(庄)政府委員 御提案申し上げている改正法案の中で、女子の保護規定の解消に伴いまして育児、介護等の家庭責任を持つ女子労働者の方の生活に急激な変化が出ないようにということで経過措置を講ずることといたしております。その内容についての御指摘でございますが、これは文字どおり、今申し上げた制度の性格上、育児、介護等の家庭責任を持つ女性労働者の方に、生活上の急激な変化のために仕事をする上でのいろいろな困難が生じさせないように時間外労働基準をより短くする、こういう趣旨の経過措置でございますので、そういった制度の趣旨が十分に生きるように配慮しながら、具体的には中央労働基準審議会の方にお諮りして決定をさせていただきたいというふうに思っております。
#73
○河上委員 もう一点、時間外、休日、深夜の割り増し率の引き上げについてお尋ねをしたいわけですが、時短の促進や長時間労働の抑制の観点から、これらの点は有用かつ有効であると私は考えます。
 また、国際的に見ますと日本は低い水準にあるわけでございまして、今回の建議では、中小企業労使の自主的な取り組みによる引き上げの状況あるいは週四十時間制の定着状況を見きわめる必要から見送られたと考えております。本年度の第一・四半期に労働省としてはこれらの調査を進めるという御答弁がございましたし、この調査を踏まえ、そして週四十時間制の猶予が講じられています中小企業の指導期間、これが十一年の三月末時点で終了するわけでありまして、この平成十一年三月時点をとらえて、この調査の実態等を踏まえ、速やかに検討を開始して一定程度の期間に結論を得べきであろう、もうそこまで来ているのではないのか、私はこう考えておりますが、これに対する御見解をいただきたい。
#74
○伊藤(庄)政府委員 御指摘の中央労働基準審議会の建議の中でも、御指摘の時間外・休日労働の賃金の割り増し率につきまして、本年度間もなく実施いたします実態調査の結果を見た上で引き上げの検討を開始するということがうたわれております。その際、深夜業の賃金の割り増し率についてもあわせて検討するということが適当であるとされているところでございます。
 私ども、こういりた建議を受けまして、この法律案を成立させていただきましたならば、早急に施行関連の政省令等について審議会を開催し御審議を願うことになりますが、あわせてこの建議の趣旨に沿った割り増し率についての円滑な検討も進むようにお願いをいたしまして、その結論を待って適切に対応してまいりたいと思っております。
#75
○河上委員 時間外については、またさらに質問の機会を得ましたときに私の方からもさせていただきたいと思います。
 次に、裁量労働制につきまして何問かお尋ねをいたしたいと思います。
 労働省の平成八年の総合調査結果等々を見ますと、みなし労働時間制を採用している企業数割合が六・一%となっております。規模別では、千人を超える企業が一五・七、三百から九百九十九が一四・四、百から二百九十九が七・九、三十人から九十九人が四・三と、みなし労働時間制採用は大手が高く、規模の少ないところは低い、こういう実態になっております。
 これはみなし労働時間を採用している企業でございまして、ちなみに裁量労働のみなし労働時間制を採用している企業は〇・五%、極めて低い水準、一%に満たないわけでございます。これに対して、事業場外労働のみなし労働時間制を採用している企業は五・八。裁量労働のみなし労働時間制採用企業は、これらと比較いたしましても極めて低い水準、〇・五%という実態にある。もちろん、これまでの裁量労働制は業務の範囲や対象労働者が極めて限定されている、こういう実態に伴う低さなのでしょう。そういうことが一点考えられます。
 しかし、労働省が提出された昨年、一昨年等々のいろいろな法案を見ますと、やはり普及率というのがある程度の水準に達して法案化をされるような、そういうこともありました。これらを全般通して、今申し上げましたような裁量労働制に関する普及状況を労働省としてはどのように見詰めていらっしゃるのか。
#76
○伊藤(庄)政府委員 このみなし労働時間制につきましては、先生御指摘のように、事業場外のみなし労働と現在専門職等の方々についての裁量労働制があるわけでございますが、とりわけ専門職の方々等の裁量労働制につきまして利用率が低いという御指摘でございますが、現在の裁量労働制につきましても、やはり労使協定を必要といたしておりまして、いろいろな取り決めをしなくてはいけないことになっております。やはり専門職の方々で、いわばどちらかというとかなり売り手市場の労働市場の中にある方々も多いことから、そういったことでかなり慎重な取り組みがなされて
いる側面があるのかと思います。
 ただ、近年の実態数の届け出件数で見ますと、裁量労働制につきましては、平成五年に二百十六件の届け出がございましたが、平成六年に四百八十三件、平成七年が五百二件、平成八年が六百四十二件と次第に増加して、いわば浸透してきているという側面もございます。
 これらの背景には、やはり我が国のいろいろな経済活動等の構造変化の中で創造的な能力を発揮していくためには、こういった時間に縛られない、あるいは労働時間、仕事に対してもみずからが主人公になって取り組みたい、こういう意欲もあらわれてきている背景があるのかと存じております。
 ただ、これは御指摘になかったことでございますが、今回の新たに御提案申し上げている裁量労働制は、こういった専門職の方々と違いまして、非定型的な業務を中心にする方々で企業のいわば中枢部分で働いている方ということでございますので、我が国のいろいろな人事制度等も配慮しながら新たな厳格なルールを設定しておりますので、これが今までの裁量労働制の浸透状況と並行的になるかどうかは必ずしも予断を許さない、かなり慎重な取り組みがなされるものと思っております。
#77
○河上委員 今回の裁量制は〇・五なんということは絶対、多分あり得ない、逆に。ですから、これから一つずつ丹念にお伺いをしたいわけでございまして、まず、裁量労働制における使用者の業務遂行についての基本的指揮命令権限はあるのでしょうか。ここからお尋ねをいたしたいと思います。
#78
○伊藤(庄)政府委員 この新たな裁量労働制また今までの裁量労働制におきましても、当該業務の遂行手段、時間配分の決定等に関して、業務に従事する労働者に対して使用者が具体的な指示をしないこと、これが要件になっておるわけでございます。これらにつきましては、業務の遂行方法についてすべて労働者の裁量にゆだねること、すべてを要求しているわけではございませんで、基本的な、包括的な指揮命令権限というものは使用者側に残るということは、そのとおりでございます。
#79
○河上委員 より具体的にちょっとお尋ねしますが、例えば、使用者が業務の基本的内容の指示や、各段階での進捗状況の報告を義務づけるとか、またそれに類するようなこと、これは基本的な指示、こういう範嗜に入りますか。
#80
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制が適用される労働者につきまして、使用者が当該業務の遂行手段、時間配分の決定等に関しまして具体的な指示をしないということが要件でございますが、ただ、この場合でも、例えば仕事の開始時に基本的な内容を指示したり、あるいは各作業の終了時点での状況の報告を義務づけるといったことは、労働者みずからの裁量で仕事の遂行方法を決めるんだということ自体を阻害しない限りにおきまして認められるものというふうに考えております。
#81
○河上委員 さらに使用者の範囲の話で、裁量労働に従事する者の実際の労働時間、これを管理、把握する義務はありますか。
#82
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制の勤務状況の把握でございますが、今回御提案申し上げている裁量労働制の内容に即して申し上げれば、労使委員会で、業務範囲等のほかに、勤務状況に応じた健康管理の措置を全員一致で決議することも要件といたしております。この決議を履行するために、どういった場合にどのような健康管理上の措置を発動していくかということのために、使用者には勤務状況を把握する決議上の義務が出てくるということが一つございます。
 さらに、新たな裁量労働制、従来の裁量労働制も同様でございますが、休日あるいは深夜業に関する規定の適用は排除いたしておりませんので、使用者は、いわば休日労働については割り増し賃金、深夜業についても割り増し賃金等の支払い義務が残りますので、当然、そういった関係からも業務の遂行状況については把握しておく必要が生じるわけでございます。
#83
○河上委員 今、使用者の範囲について問うてまいりました。今度は反対に、裁量労働制に従事する労働者側の裁量の範囲を何点かお尋ねしておきたいと思いますが、裁量労働に従事する者には出勤義務はあるのでしょうか。
#84
○伊藤(庄)政府委員 新たな裁量労働制のもとでは、業務の遂行手段や時間配分に関しまして使用者が具体的な指示をしないことが要件でございますので、基本的には出退勤を拘束されることはないというのが原則でございます。ただ、必要に応じて出勤を義務づける、それが全体の裁量制を阻害しない限りで出勤を義務づけることまですべて否定する趣旨ではないというふうに考えております。
 もし出勤を義務づけていない場合にも、休日の確保ということは適用除外になっておりませんので、法定休日が確保されるように所定休日は定めて、所定の労働日はいつだというような定めはきちっとしておく必要がある、こういう制度の内容になっております。
#85
○河上委員 そうしますと、次の質問ですが、労基法八十九条は、始業終業時刻、これを就業規則に記載しなければならない、こう定められているわけであります。この裁量労働に従事する者の始業そして終業の時刻については通常の労働者と同じ扱いになるのか、あるいは裁量労働に従事する者がみずからの裁量で決められるのか、どちらでしょう。
#86
○伊藤(庄)政府委員 御指摘の、始業それから終業の時刻は、労働基準法の八十九条に基づきます就業規則の、必ず定めておくべき事項に該当いたします。したがいまして、裁量労働の適用労働者の場合には、就業規則の中で、例えば当該労働者が自主的に決定する旨の記述をしておくとか、あるいは一般的なパターンを書いておいて、あと自由を許す、こういったことになるのではないかということで、今までの裁量労働制についてもそのような指導を行ってきております。
#87
○河上委員 そうしますと、この法律が通りますと労使委員会ができますね。労使委員会によって、裁量労働に従事する労働者のみなし時間というものが決まる。この裁量労働に従事する者のみなし時間は、所定内労働時間と考えられますか。
#88
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制のもとでは、実際の労働時間配分については労働者が主体的に決定することが許されることになりますが、そういった状況で、実際の状況を勘案しながら、労使委員会において全員一致でみなし労働時間の時間数を決定することになります。このみなし労働時間数は、その時間数は必ず事業場内にいなければならない、あるいは働いていなければならないという時間ではございませんので、その意味でも所定労働時間ではございません。
 それから、もし、みなし労働時間数が八時間を超えた時間をみなしておく、こういうことの場合には、超えている部分につきましては当然割り増し賃金の支払いを行わなければならない、こういうことになります。逆に言えば、みなされた時間よりも早く帰る、仕事を終えるということがあっても、それは当然賃金のカット等の問題にはならない、こういうことになります。
#89
○河上委員 もう一点だけ。裁量労働に従事する者の一斉休憩というのは、これは適用除外になるんですね。
#90
○伊藤(庄)政府委員 一斉休憩の問題につきましては、裁量労働制につきましてはみなし労働時間制をとっておりまして、いわゆる適用除外の制度ではございませんので、一斉休憩についても法律上、適用があることになります。もし必要があれば事業主は、現行法のもとでは労働基準監督署の許可を得て外す、こういうことに相なっているわけでございます。
 また、現在提案申し上げている改正法の中では労使協定によってそこを除外できる、こういう内容で御提案を申し上げております。
#91
○河上委員 今、使用者とそして労働者の裁量制における権限あるいは範囲、これをずっと一つ一つお尋ねしてまいりました。きょうはお尋ねする
だけにとどめます。次回、これらをもう一遍議論をさせていただきたいと思っておりますし、ある意味では従来型、新型、二つの組み合わせになって動くわけでございますので、これらの問題、全体としてまた議論をさせていただく機会を得たいと思います。
 ところで、裁量労働に従事する者の時間外労働、これは、労使委員会で決定したみなし労働時間を超える場合、三六協定の締結、届け出の手続にのっとり割り増し賃金の支払いを受けることができるのか。そしてまた休日出勤、深夜業についてはどうなるのか、お答えいただきたいと思います。
#92
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制の適用対象労働者は、その時間配分等を自主的に本人が行うことができる制度でございます。したがいまして、労使委員会でみなしました労働時間数、これを超えて働いた場合にも、それ自体では割り増し賃金の支払い対象になることはない。また、逆に言えば、それよりも早い時間で仕事を終えても、これは賃金カット等の問題はない、こういうことになります。
 それから、休日、深夜業につきましては、先ほど申し上げましたように、この裁量労働制では、休日に関する規定、深夜業に関する規定は適用を除外いたしておりません。したがいまして、休日労働をさせる場合には当然三六協定が別途必要でございますし、割り増し賃金の支払いが必要になる。それから、深夜に従事した場合につきましては、これも割り増し賃金の支払いが必要になる。そういった意味では、時間の規制がかなり残った形の制度になっております。
    〔委員長退席、鍵田委員長代理着席〕
#93
○河上委員 もう一点、これはわかったらで結構なんですが、現行の裁量労働に従事していらっしゃる方々の賃金水準というのは、通常の労働者と比較をいたしまして、どのような状況になっていますか。
#94
○伊藤(庄)政府委員 現行の裁量労働制の適用対象労働者に限りましてその賃金水準を具体的に調査した統計等はございません。ただ、平成七年の三月に連合総合生活開発研究所が行いました労働者に対するアンケート調査結果を見ますと、裁量労働制導入後の賃金総額の変化につきまして、制度導入前と比較しまして、ふえたとするものが一九・六%、変わっていないとするものが六〇・九%、減ったというものが一三・〇%となっております。
#95
○河上委員 将来の新しい裁量制では賃金水準はどうなるかという質問は、今いたしません。現行だけ聞きとめておきたいと思います。
 もう一点、「裁量労働に関する協定届」、これは監督署に出されますね。この欄に、「一日の所定労働時間」と「協定で定める労働時間」、この二つしかない。週という単位の考え方がここには盛り込まれていない。週単位の協定を結ぶ必要がないとこの届け出書からは読めるわけでありますが、この理由はどうお考えなんでしょう。
#96
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制につきましては、現在の裁量労働制も新たな裁量労働制につきましても、適用労働者については休日に関する規定の適用がございます。したがいまして、休日を各事業場の就業規則で明らかにしておく必要がございます。したがいまして、通常は、一日のみなし労働時間を定めれば一週間についての算定も自動的に可能でございます。そういったことで、現行の制度のもとでの届け出の際には、一日のみなし労働時間を協定で定めて届ける、こういうことで足りるということにいたしているところでございます。
#97
○河上委員 今回の改正によりまして、先ほども若干触れましたが、従来の裁量労働制と新しい裁量労働制と二本立てになるわけであります。一元化しないで二本立てにした理由というのは何ですか。
#98
○伊藤(庄)政府委員 新たな裁量労働制は、企業の本社などの中枢部門で企画とか立案等の業務を総合的に担当している方が対象になるわけでございますが、こういった意味で、現在の裁量労働制の対象にしております研究開発職、あるいはデザイナーの方、コピーライターの方、あるいは弁護士、公認会計士の方等々といった、いわば企業の枠を超えた労働市場が形成されている場合が多いケース、あるいは業務遂行方法がある程度本人の能力に当然ゆだねられる、いわば社内請負的な性格のものと違いまして、業務自体がある程度非定型的な内容を含んでいる、しかも企業や事業場ごとに仕事の進め方、時間配分の裁量の度合い、それからそういった仕事が任されるところまで到達するいわば人事管理のルール、そういったものの違い、さらにはそういった能力評価、業績評価等々の制度も各企業ごとに異なる、そういった状況に対して的確に対応できる制度の内容でなければならない。
 こういうことから、新たな別の制度として、より厳正な、特に労働側がきちんと参加した上で裁量労働制のルールを決められる仕組みにする必要がある。こういった観点に立ちまして、御提案申し上げているような内容の、新たな裁量労働制の仕組みとして御審議をお願いしているところでございます。
#99
○河上委員 一つ一ついろいろと議論をしたい気分もどんどん出てくるのですが、きょうは基礎の基礎で、確認をしながら一点ずつ全部お伺いしていきたいと思っておりますが、もう一点の問題に、裁量労働制に関する研究会報告というのが平成七年に出ました。この裁量労働制の法律効果について、裁量労働制の本来の趣旨から考えれば、労働時間に関する規定について適用除外とすることが適当であると考えられるが、労働時間法制に大きな例外を設けることになり、なお検討を深めるべきと報告をしています。
 私は、この問題提起は非常に重要である、ある意味では裁量労働制の根幹にかかわるものと考えますが、今回の改正ではこの報告の趣旨についてどのようにとらえていらっしゃるのか。また、今後どのように対処する考えなのか。この二点について御説明ください。
#100
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制に関する研究会をお願いいたしまして、裁量労働制に関する検討を重ねてきておったわけでございますが、今回御提案申し上げている裁量労働制との大きな違いは、一つは、この裁量労働制研究会報告ではチェック機能、監視機能として提示されていた労使委員会制度を、すべていろいろなルールを決定する際の当事者として労使委員会制度を規定いたしまして、全会一致という原則を規定したこと。
 それからもう一つ大きいのが、先生御指摘ございました、適用除外とすることが適当であると考えるが労働時間法制に大きな例外を設けることになるのでさらに検討を深めるべきであるという裁量労働制研究会報告の指摘について、今回、制度化に当たって一つの結論を出さなくてはいけないということで、私ども慎重に検討した結果、みなし労働時間制を採用いたしまして、いわゆる適用除外制度は採用しなかったということでございます。
 その結果、休日や深夜業に関する規定が適用されまして、休日、深夜業については当然割り増し賃金の支払い等々が出てくる。したがって、事業主も勤務状況等について、そういった点も含めて把握しておかなければならない。このことが、裁量労働制の今回提案している中での一つのねらいでもあります、仕事のし過ぎからくる健康管理上の問題について、労使委員会で健康管理のルールを決めてほしいということにもつながる措置として、今回、適用除外の方式は採用せずにみなし労働時間制を採用した、こういうことでございます。
#101
○河上委員 もう時間が二、三分になってしまいまして、まだ随分残っておりますが、先ほどの関連とあわせまして、今回の法律に盛り込まれている趣旨の何点かをお尋ねしておきたいと思います。
 改正法では、今回労働者にゆだねられます裁量の範囲というものを、「当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等」、こういたしております。業務の遂行手段あるいは時間配分の決定、これは先
ほどの議論の中にも出てまいりましたが、特にここに加えて「等」とございます。そうしますと、これ以外にも労働者の裁量の範囲はあるんだと読めるわけでありますが、この「等」の具体的な中身は何でしょう。
#102
○伊藤(庄)政府委員 御指摘の「等」の部分でございますが、今回、裁量労働制を適用するに当たりまして、真に仕事を任されている裁量労働制であるかどうかの判断の二つの基準といたしましては、業務の遂行手段及び時間配分の決定、この二つを挙げておるわけですが、事業場によりましては、さらに、先ほども御議論ございました、例えば業務の結果報告についての仕方、あるいは施設管理上例えばコンピューター等の利用について時間制限がかかっている、そういうものを裁量労働者についてはフリーにするケース、いろいろなことを労使間で決議をしておいていただきたい、こういう趣旨でこの「等」を入れているものでございます。
#103
○河上委員 もうほとんど時間がなくなりましたが、もう一点だけ。
 この法律の中に使用者が具体的に指示しないことという裁量労働制に対する明示がございます。この場合の使用者の範囲を特定していただけますか。上は全部そうなるのか、この場合だれが使用者に当たるのか、この質問をいたしまして、時間が参りましたので、私の質問は終わります。
    〔鍵田委員長代理退席、委員長着席〕
#104
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制のもとにおきましても一般のケースにおきましても、使用者の考え方というものは、労働基準法上同様でございまして、労働基準法上の各条文の履行をする義務につきまして、その義務がある方たち、いわば事実上、包括的にせよ具体的にせよ指揮監督権限を持っている人たちでございまして、これは部長、課長等の形式にとらわれず、そういった権限と責任を有するかによって個々具体的に判断をいたすことにいたしております。
#105
○河上委員 ありがとうございました。
 大臣への質問が全くできないで、次回まとめて大臣と議論させていただきますので、よろしくお願いいたします。
#106
○田中委員長 次に、武山百合子君。
#107
○武山委員 武山百合子です。自由党を代表いたしまして、質問をいたします。
 今回の改正について、中央労働基準審議会の検討経緯、その辺ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#108
○伊藤(庄)政府委員 この法案を提出するに当たりましての中央労働基準審議会での検討の経緯でございますが、実は、これにつきまして、五十年目を迎える労働基準法について、時代の変化に合わせて、実効性を持たせる部分についてはさらに改善を加え、また見直すべき点があれば率直に見直していこうということで、見直しの議論が始まりましたのは、既に一昨年来でございます。
 本格的になりましたのが、検討すべき項目を定めて、昨年の二月以降、中央労働基準審議会の労働時間部会それから就業規則等部会で議論に入りまして、私ども、そういった議論を受けながら、途中、議論の整理をしていくために、例えばこういった考え方ではどうかというような試案を出しながら議論を進めまして、昨年の八月の段階で、一たん中間的な労使の方々の見解の整理をさせていただきました。その後、先ほど申し上げました両部会の合同の部会を設置いたしまして、全体として二十回を超える審議を重ねてきまして、昨年の十二月に建議という形でまとめていただいたわけでございます。
 この建議をまとめるに当たりましては、個々の検討項目ごとに労使間で、お互いによりよい姿を目指しましてかなりの議論が交わされ、対立もございました。そういった過程では、それぞれの意見をしんしゃくできるところはしんしゃくし、公益の先生方がリードしながら建議をまとめたという状況でございます。
 この建議の中で、なお労働側の意見とあるいは使用者側の意見等が残れば、それを付記しておく、こういう形がとられまして、私ども、そういった建議を受けまして、法案の策定作業に入ったわけでございます。法案の策定に当たりましては、そういった建議をまとめられるまでのいろいろな労使間の意見の交換の状況等もいろいろ勘案しながら、工夫できるところは工夫いたしまして、この一月に入りましてから、改めて法案要綱をお諮りし、答申をいただいて、今国会に提出をさせていただいたという流れでございます。
#109
○武山委員 そうしますと、労使公益委員会で、最終的に意見の相違があったわけですね。その意見の相違があった点を、主なものをちょっと挙げていただきたいと思います。
#110
○伊藤(庄)政府委員 最終的に労働側と使用者側の間でいろいろ意見の隔たりましたものは、一つは、やはり時間外労働の上限の基準というものを設定しようという考え方に対しまして、建議の段階では、労働側は、なお具体的な数値をもって罰則を伴う規制を求めておりました。使用者側としては、余り画一的な規制にならないようにというような意見もございました。
 それから、さらに時間の関係では、深夜業につきまして、労働側の方は、何らかの回数制限等を求める意見がございました。この点については、使用者側がかなり強く、産業界の実情から見て一律は無理だということで、これは引き続き検討する、こういうことで合意された経緯等がございます。
 また、裁量労働制につきましては、使用者側として、余り規制色の強いものにならないようにという御指摘もございました。労働側からは、さらに慎重な議論を望む声等もございました。そういった点、慎重な議論を望むということで、裁量労働制についてさらに詰めるべき点等を指摘する意見がございました。
 それから、もう一つは、一年単位の変形労働時間制につきまして、今回、一定日数以上の休日確保と、それから繁忙期における限度時間の幅を拡大するということが一連のものとして議論がされておりまして、使用者側から、この限度時間を延ばす部分についてはむしろ反対であるというような意見も出されました。この点については、公益委員が、そういった期間をどうするかということについて余り長くならないようにというまとめをしながら、建議をつくっていった経緯がございます。
 主な点を申し上げれば、大体以上のような経緯であろうと思います。
#111
○武山委員 それでは、その主な点について、法案ではどのように処理したのでしょうか。
#112
○伊藤(庄)政府委員 まず、時間外の上限基準等につきまして幾つかの点で労使の意見の対立があったわけですが、既に建議をまとめる段階でも労使の意見の対立があった部分について、労働側の意見、使用者側の意見、それぞれ建議の全会一致の中に織り込めるものはかなり織り込んできたという経緯が一つございます。
 なお、一〇〇%各側の意見が満たされていない部分については、なお意見を最終的に残した、こういう経緯がございますので、いろいろな段階段階で、それぞれ各側の意見をしんしゃくした内容になっているということは全体としてまず御理解を願いたいと思っております。
 その上で、最終建議の後、付された意見を私どもさらにしんしゃくした点といたしまして、時間外労働の上限基準につきましては、労働側はなお強い法的拘束力を持ったものと求めておりましたので、私ども、時間外労働の上限基準は使用者に留意義務というものを考えておりましたが、単なる留意義務ではなくて、適合するようにしなければならない、こういう遵守義務に強化したこと等がございます。
 それから、過度の深夜業等の問題についても意見が残りましたが、この点については、建議をまとめていただく段階で使用者側にもいろいろとお話し申し上げて、今後引き続き過度の深夜業等にどのような対応策が可能か等も含めて審議会で検
討する、こういうことを全会一致で了解し合って、この深夜業について引き続き検討しよう、こういうふうにいたしておりまして、法案等では特に対応がなされて、その検討結果を待つべきものといたしておるところでございます。
 それから、裁量労働制につきましては、やはりさらに議論を尽くすべきだという労働側の意見につきましては、業務範囲等が拡大すること等の懸念がございました。したがいまして、建議の作成過程では、労使委員会は全会一致でなければならないとか^既に労働側の意見をかなりしんしゃくした部分がございますが、さらに、業務範囲等の具体例を示す労働大臣の指針を法律に基づく指針にして実際の法律案を作成した、こういう経緯もございます。
 また、一年単位の変形労働時間制につきましては、労働側からその限度時間の引き上げ等について反発がございましたが、この点については、建議作成の段階でも、そういった限度時間いっぱいの時間が長期間に及ばないようにきちんとルールを設定する、こういう約束が全会一致で盛り込まれるようになりまして、私ども、これはいわば命令段階で、限度時間そのものが命令で規定することでございますので、この法律を成立させていただければ、その施行の段階で、そういった限度時間を延ばしたことによる問題が、懸念が大きく出ないように配慮していった措置をとることにいたしておるところでございます。
 概略でいろいろしんしゃくされた点を申し上げれば、以上でございます。
#113
○武山委員 今の中で、いわゆる時間外労働の上限に、遵守する、すなわち罰則をつけなかったわけですね。これは基準をあいまいにするという点で、私は、労働者保護基準そのものをあいまいにするのではないかと思いますけれども、なぜ罰則をつけなかったのでしょうか。
#114
○伊藤(庄)政府委員 時間外労働の上限基準を今回労働基準法に新たに設けて労働大臣が定め、その遵守義務を課しているわけでございますが、御指摘のように、罰則をもって規制するという形にはなっておりません。そのかわり法律に基づいた行政指導で徹底を期す、こういうことにいたしておるわけです。
 罰則をつけなかった理由でございますが、大きく言うと二つございます。一つは、我が国の時間外労働が、忙しいときには人をふやすのではなくて、まず時間外労働等でちょっとふやしながら、もし仕事が減った場合にも解雇することなしに時間外を減らすことによって対応するという、いわゆる雇用調整の非常に一般的な姿が定若をいたしております。これがレイオフ等を極力招かない我が国の雇用安定の仕組みを支えている側面があるわけでございますが、そういうことが、もしどのような局面でも例外なしに労働基準法上罰則をかけるということになりますと、公平の原則からかなり一律的なものでなければならないことになるわけですが、そういったことで実施が困難になるようなことになりますと、我が国の雇用安定の仕組みにいろいろ影響を来す。そういうことから、まずは今御提案申し上げているような仕組みにいたしたいという点。
 それから、我が国の時間外労働は諸外国とかなり規制の仕方が違っておりまして、三六協定制度で、労使協定がなければ時間外労働ができないという仕組みになっております。非常に独特の制度でございます。この三六協定制度は、やはり労使とも必要だという認識にこの改正論議の中でも立っておるわけでございました。
 そういった三六協定制度を前提に、一定時間を超える三六協定を結んだら罰則をかける、これはなかなか法制的に困難でございまして、もともと三六協定を超える残業命令をかければ現行労働基準法で労働基準法違反、罰則が伴うことになりますので、基準法上決めている限度時間を超えた三六協定を結ぶとなりますと、結んだ当事者の問題になりますので、責任のいわば求め方が大変法制上難しくなるというような課題もございます。そういうことから、私ども、現在御提案しているような仕組みでさせていただいているところでございます。
#115
○武山委員 それでは、もうちょっと突っ込みまして、休日労働及び深夜業に関する上限規制の意見もあったように聞いておりますけれども、その辺の審議の検討はどんな状態だったのでしょうか。
#116
○伊藤(庄)政府委員 まず、深夜業でございますが、正直、深夜業については、中央労働基準審議会で改正法案の議論が始まった段階で、検討対象として取り上げるべきかどうかで労使間でかなり対立があった問題でもございます。回数制限等の要望が労働側委員からもございました。使用者側につきましては、やはりいろいろな産業活動の中で、交代制等をもってある程度労使間でルール化されたシフト編成によって実施しているところから、金融業等のようにいろいろな世界の市場を相手に夜間仕事をする分野、あるいは都市部のコンビニやいろいろなレストラン等々のたぐい、あるいは食料品製造のように最近の消費者の好みに合わせまして朝つくってスーパーへ出すというような形態のものに至るまでたくさんある、そういった中で一律の回数制限は非常に産業活動を困難にする側面があるので幅広い検討が必要だ、今ここで早急には議論できないという使用者側の意見との対立が正直続いたままになっておりまして、私ども、最終的に、建議をまとめていただく段階で労使双方にお話をいたしまして、これは引き続き、過度の深夜業等に対してどのような対応策が可能か検討しましようということで、建議にも全会一致でその検討のいわば約束をしていただいた、こういう経緯でございます。
 それから、休日労働につきましては、これは労働側から、やはり一定の規制をすべきではないか、四週一回、こういう規制をすべきでないかという提案がございました。ただ、この場合は、例えば時間外労働につきましては、かねてより私ども行政指導として目安を決めて指導をいたしまして、その指導の目安内におさめるという積み重ねを相当やってきておりまして^今回の労働基準法に基づく時間外労働基準という強化につながったわけでございますが、休日労働については、正直そういう積み重ねがないわけでございまして、直ちに法律上の措置ということにできるかどうかについては意見の一致を見なかった、こういう状況にございます。
#117
○武山委員 審議会の検討状況、どうもありがとうございました。
 その次に、労働契約です。今御説明していただいた、その中で、今回の改正において措置することとなった事項及び今後残されている検討事項は何でしょうか。
#118
○伊藤(庄)政府委員 労働契約期間につきましては、現行の労働基準法では、契約期間を定める場合は一年を上限とする、こういう規定がございまして、どのような場合にも一年以内の契約期間を定める、こういうことになっておったわけでございます。
 審議会で御議論ありましたのは、日本の経済活動、産業活動がある程度キャッチアップの時期を終わって、いろいろな今まで経済活動を支えてきたものがある程度、世界のほかの国で大体つくれる、こういう段階になりまして、日本が新しい製品あるいは商品、新しい金融技術等を開発して事業展開をしていく必要がある。そのためには、社内にいない人材、研究者やエンジニアや金融の技術面に詳しい人たちを、外国からでも、内外にかかわらず採用して、そういった新しい事業展開のための開発や、新しい事業の立ち上げをやっていかなくてはいけない。そういう際に、一年ごとではそういった人材の採用がなかなか難しい。ある意味では、そういった開発等に要する期間を考慮してやってほしい、こういう思いもございまして、契約期間をそういう場合に限り三年ということの提案が審議会でもあったわけでございますが、この点につきましては、これが不安定雇用につながるかどうかという点についての御論議がございました。ただ、こう
いった方々については売り手市場の世界であるので、そういった方についてはむしろ複数年契約を認める方が人材の採用にいい、こういうことで御了解をいただいたところでございます。
 高年齢者については、別途の、雇用の安定の見地からやはり三年を認める、こういうことにさせていただきました。
 ただ、この点に関しましては、この契約期間の延長とは直接関係ございませんが、例えばパートの方等についてよくありますように、短期の、二カ月とか半年という契約期間を反復更新して、ある日突然契約の更新を一方的にとめる、こういうケースがございます。
 過去、こういったケースにつきまして裁判で争われたケースもございまして、例えば、そういう場合には解雇の予告等が必要なのではないか、こういうことで争われたケースもございます。そういったことをめぐっての判例もある程度の蓄積がされてきておりますので、そういった点についてどう判断すべきか十分検討すべきだ、こういう労働側の意見がございまして、この点につきましては、私ども、建議の中でも、学識者等の研究会を設けてこの問題について研究して結論を出していく、こういうことがうたわれましたので、その線に沿って、この法案を成立させていただいて、施行事務等を審議会にお願いしていく過程で、あわせてこの研究会の立ち上げも考えていきたいというふうに思っておるところでございます。
#119
○武山委員 それに関連してですけれども、それでは、今回改正することとなった事項についての労使の意見の相違点は、法案ではどのように対処しているのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
#120
○伊藤(庄)政府委員 先ほど申し上げましたように、私ども建議をまとめる過程で、できるだけ労使の方の意見を、しんしゃくできるところはしんしゃくしていただきたいということで、公益の先生方に、建議のまとめに当たってはできるだけ労使の意見を、もちろん意見を一〇〇%とはまいりませんが、それぞれ相当入れた形で共通の意見の部分をまとめていただきました。
 したがいまして、それに基づいて作成された法案自体が、かなり労使の意見を入れてきているという姿になっていることについては、冒頭申し上げましたように、まず御理解をいただきたいと思っております。
 その上でさらに、この建議を踏まえ与党内の調整等を経る過程で、例えば時間外労働の上限基準につきましては、事業主に、これに留意しなければならないという単なる留意義務から、適合しなければならないというような遵守義務へ強化していく。あるいは、裁量労働制につきましても、業務の範囲等の具体例を示す指針を、法律に基づく指針として改めて法律に書き込んでいった。法案の策定段階でのそういういろいろな工夫を重ねまして、最終的に審議会にもお諮りして国会へ提案をさせていただいたわけでございます。
 そのほか、先ほどの契約期間の問題とか一年単位の変形制の問題、そういう問題は、これから研究会の立ち上げなり、あるいは施行のための政省令の策定段階で、それぞれ出された意見が十分しんしゃくされながら議論が進むということになるわけでございます。
 また、深夜業については労働側から強い意見のあったところでございますが、これについても、先ほど申し上げましたように、審議会で引き続き検討する、こういうことになっておりますので、この法案を成立させていただきましたなら、施行業務をお諮りし、あわせてこの深夜業についての議論をどう立ち上げるか、速やかに議論が進むように、私どもとしては種々の環境整備に配慮していきたいと思っておるところでございます。
#121
○武山委員 審議会の審議を待ってということですけれども、この労働問題に関する責任は最終的にはだれがとるんでしょうか。審議会なんでしょうか。
#122
○伊藤(庄)政府委員 労働基準法のあり方につきましては、もちろん立法府、行政、それぞれいろいろな角度でやはりこの問題について対応すべき責任があろうかと思います。
 ただ、事労働条件という問題でございまして、労働条件、特に労働基準法上定める労働基準というのは、中小企業等を中心に、直接その企業の労働条件の内容を規定する、こういうことに相なりますので、やはり労使が相当鋭く対立する側面を持っております。したがいまして、労働省の審議会は常に三者構成、特に中央労働基準審議会も、労働側を代表する方、使用者を代表する方、そして公益委員の方というところで相当詰めた議論をしていただいて、労使間で受け入れ可能な労働条件のあり方というのはどういうものかについて、やはり私どもいろいろ意見を聞かなければならない場面が多いわけでございます。
 そういったことで、特に具体的な施行段階の細部に至れば至るほど、そういった労使間の調整をさせていただいて、そのことを両者納得して受け入れた限り、的確に労使双方それを遵守していくように、お互いにパートナーとして協力し合う関係もそこから生まれてくるかと思いますので、そういった進め方をすることにつきましては御理解をいただきたいと思っております。
#123
○武山委員 非常にあいまいでわかりにくいんですけれども、すなわち、どこが、だれがこの法案の責任を持つんでしょうか。
#124
○伊吹国務大臣 これは、もう先生は御承知のとおり、最終的なすべての権限は、国権の最高機関である、先生を含めての国会にございます。しかし、国会からお許しをいただいた法律の範囲内において労働行政を執行していく責任は当然内閣にありますし、私にもございます。
 しかしながら、今政府委員が御説明申し上げましたように、我が国の統治システムというのは、御承知のように議院内閣制、政党政治になっております。そして労使関係というのが、労働者、経営者、そしてその受益を間接的にお受けになる一般国民にあるわけでございますから、政党政治の赴くところ、どこかの政党がその党の判断によって法律案を国会に提出してもいいというものではございませんので、三者構成の審議会に一応のたたき台をお願いしている、こういう流れになっております。
#125
○武山委員 一応の流れになっているということはわかりました。要は、その辺を的確にはっきりと、やはりみんなに周知徹底しなければいけないという意味でちょっとお聞きいたしました。
 次に移ります。
 今回の改正による規制緩和の事項はどの点か、それからそれぞれの改正の趣旨、それは何かということをまずお聞きしたいと思います。
#126
○伊藤(庄)政府委員 今回の労働基準法の改正に至る中央労働基準審議会の議論の経緯等冒頭申し上げたとおり、実はこの見直しの論議は、例えば行政改革委員会等で規制緩和の論議が起こる前からいろいろ既に議論が開始されておりました。そういった中で議論が進行している過程におきまして、行政改革委員会の方で、規制緩和のありようとして労働基準法関連も取り上げられました。
 その項目を申し上げれば、一つは契約期間の上限の一年の延長、それから裁量労働制のホワイトカラーへの拡大、それから一年の変形労働時間制の限度時間の引き上げ、こういった点が中心でございました。そのほかに、割り増し賃金率の算定基礎から住宅手当等を除くこと等もございました。私ども議論の途上で、こういった行政改革委員会の見解がまとめられたわけでございます。
 私ども、そういった中で、労働基準法の改正は、あくまで時代の変化に合わせて、労働者保護のために実効性を上げるべきところは上げ、見直すべきところは見直す、こういう観点から対応すべきだという気持ちで対応してまいりました。したがいまして、行政改革委員会の方で規制緩和としてとらえられた部分につきましても、あくまで労働基準法が今の時代にふさわしい姿としてどうするべきか、こういう角度から議論されたということでございます。
 例えば契約期間の上限につきましても、行政改
革委員会のまとめたものとはかなり様相を異にいたしまして、そういった新製品、新技術の開発等の専門的な人材を新たに社外から雇い入れる場合というような非常に限定されたケース、形を加えたり、あるいは裁量労働制につきましても、ホワイトカラーに拡大するという抽象的な話ではなくて、私どもはあくまで労働者保護に重点を置いて、なおかつ十分に創造的な能力を発揮していただく仕組みとして、法律上、対象の業務範囲、労働者の範囲というものを規定した上で、労使委員会の設置を義務づけ、労使委員会で全会一致でなければならない、あるいは健康管理のルール等も全会一致でなければならない、いろいろな規制を逆に相当持ち込んだ形で最終のまとめがなされた経緯がございます。
 そういった経緯からいたしますと、規制緩和という内容になっているのか、むしろ労働者保護という観点から、時代の変化に合わせてまた新たな規制の持ち込まれた部分も相当多い、いわゆる今回の改正が規制緩和というようなことを念頭に置いて行ったものではない形になっている、こういうふうに私どもは理解をいたしております。
#127
○武山委員 それでは、規制緩和によって労働者の保護に生じる問題を防止する措置はどのように考えていますでしょうか。
#128
○伊藤(庄)政府委員 労働基準法上の規制緩和によって労働者にいろいろ出てくる問題、こういう御指摘かと存じます。
 先ほど来申し上げましたように、いわゆる規制緩和という観点からこの労働基準法の改正案を検討したものではないという御理解をいただいておることを前提に申し上げれば、例えば契約期間の今までの一年という制限を、例えばそういった新しい製品開発等に伴う事業展開等の一定の分野に限ってそういった能力を持つ人を新たに雇い入れる場合に三年、こういうふうにいたしましたが、そういった新たな事業立ち上げ等の際に、企業内にいなくてほかからでも持ってきたいという非常に異能の人材の方に限った。そういうことから、先生御指摘のような規制緩和による弊害というものは、私どもこの契約期間の上限の問題からは直接考えておりません。
 ただ、高年齢者についても三年というふうにいたした点につきましては、定年退職者等の方が一年更新ではなくてむしろまとめて雇われる、こういうことで雇用の安定上のメリットが出てくるのではなかろうか。
 それから、一年単位の変形労働時間制について、これは省令事項ですが、限度時間の引き上げをするという建議になっております。これは一日九時間を例えば十時間の限度に直すということでございますが、私どもはそれを年間の総実労働時間の短縮もできるような要件とセットにいたそうということで、一定日数以上の休日の確保、それから一年変形制の場合には時間外労働の上限基準を短くして残業を極力少な目に抑えていく、こういったこととあわせてやっておりますので、この点につきましても、先生御懸念のような点はなくて、むしろ、忙しいときにはある程度働くけれども、忙しくないときに連続休暇等々余裕を持つということが、めり張りがきいて、全体としての労働時間の短縮につながるような形になってきているというふうに考えております。
 それから、裁量労働制がやはり規制緩和委員会の提言とも重なっている部分でございますが、これにつきましても、行政改革委員会の提言とは大分違いまして、いろいろな工夫がなされた姿で今回御提案をさせていただいております。この新しい裁量労働制につきまして、業務範囲等を極力法律上限定した上で、さらに労使委員会の設置を義務づけ、そこで全会一致で業務の範囲あるいは健康管理のルール、苦情処理のシステム等を定めることにいたしておりますので、そういった形を通じて、労働時間にとらわれない、あるいはむしろ管理されるよりもみずからが仕事にも労働時間にも主人公になって腕を振るう、そういった自律した人材の輩出できる環境につながるのではないか。
 正しく運用されれば、そういうことを通じて、私ども、今の日本的ないろいろなシステムに対して不信の念が提起されることもございますが、そういった終身雇用等の中にも新たな活力を生むことにつながるのではないか、こういう気持ちを持って制度の設計をさせていただいて提案したつもりでございますので、提案の中で、いろいろな弊害の排除につきましてはいろいろ意を尽くしているというふうに私ども理解をいたしております。
#129
○武山委員 大変長くお答えいただきましたので、短く、ポイントだけお答えいただきたいと思います。
 それでは次に移ります。
 労使自治を理由に勤労条件の法律基準を緩和することですけれども、日本の労働者の四分の三は労働組合とは無縁であるというわけです。労働組合不在の労使自治は使用者の一方的決定でしかないのではないかと思います。この辺は労働組合に参加していない方々が本当にたくさんいらっしゃるわけです。使用者の一方的決定でしかないのではないかというおそれがありますけれども、その辺はどう考えておりますでしょうか。
#130
○伊藤(庄)政府委員 労使自治という御指摘ございました。いわば労働基準法のベースでいえば労使協定制度に当たると思いますが、その代表的なのが時間外労働を認めていく労使間の三六協定かと存じます。
 こういった協定、組合がない場合には従業員の過半数を代表する者を選ぶわけでございますが、今までそういった従業員の過半数を代表する者を事業主が一方的に指名していたりするケースも指摘されていたわけでございます。そういったことが今後ないように、今回の改正とあわせまして、成立させていただければその施行の段階で、そういった過半数を代表する者は選挙等の民主的な手続によって選ばれること、それから総務課長とか人事課長とか、会社側の人間はだめであること等々をルール化して、届け出の際にも、どういった形で選ばれ、どういう職名の人であるかをきちっとチェックしていくという形をとろう、こういうことにいたしておるわけでございます。したがいまして、先生御懸念のような労働組合のないケースでもそういったことが極力出ないように、私ども、意を尽くした施行のあり方を考えていくつもりでございます。
#131
○武山委員 労働省の指導が大変重要になると思いますけれども、選挙で選ぶということですね。それが透明で本当に公正な選出方法だと思いますけれども、それを実際にやはりきちっと行えるような環境をつくるということが大事じゃないかと思います。ぜひそういう細かい部分で詰めていただきたいと思います。
 それから、労働時間に関する規制に関して行われる労使協定や今回新設する裁量労働制に関する労使委員会の労働者代表の適正な選任方法ですけれども、今選挙でというお話をされましたけれども、それでは、選任方法に関する指導はどのようにするのか。細かい部分ちょっとお聞かせ願えますでしょうか。
#132
○伊藤(庄)政府委員 裁量労働制を実施する場合の要件として提案させていただいております労使委員会、これの労働者側の代表の選出につきましては、先ほど申し上げました三六協定等の場合よりもさらに厳格にいたす考えでございます。
 これもやはり労働基準法の施行規則でルール化いたしますが、まず、組合がない場合ですが、従業員の過半数を代表する者を選挙等の民主的な手続で選出をしていただく。その方が労使委員会の労働側の代表する者を指名していただく。その指名された者について重ねてやはり信任投票をして、過半数の信任を得ていただく。こういった仕組みを私ども予定をいたしておりまして、そういった手続で労使委員会の労働側代表というものがきちんと選ばれて、正しく機能するように配慮してまいりますし、この労使委員会の方で一定の決議をして裁量労働制を実施するということであれば、届け出を義務づけておりますので、届け出の際に、
そういったきちんとした手続を踏まえて、それにのっとって選ばれた者であるかどうかもチェックする仕組みにいたしていく考えでございます。
#133
○武山委員 今選任方法についてお答えいただきましたけれども、選任方法が一番大事なところだと思うのですね。それで、今まさに国民の民度イコール政治の民度、政治の民度イコール国民の民度と言われておるわけですけれども、この選任方法もやはり日本の国民の民度だと思うのですね。だれかあの人に投票してくれよとか、いろいろな不正な方法で選任というのは当然行われるわけでして、その辺、労働者一人一人の自律というか自覚というか、そういうものがないと、やはり一人一人が願っている人が選任されるとは限らないわけですね。ですから、その辺の指導というのは、本当にモデルケースなわけですから、このたびこういうように法改正になるわけですから、まず骨格をきちっとやはりつくるべきだということをお話ししたいと思います。
 それから、その中でいろいろ話し合われた労使協定や決議について、趣旨から著しく離れているようなことが決まることがある可能性がありますね。そのようなときにどう対応するのか。その辺ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
#134
○伊藤(庄)政府委員 一つは、三六協定等の問題でございますが、これも届け出が義務づけられておりまして、そういった従業員の過半数を代表する者の選任手続等が適正かどうかチェックすると同時に、その内容についても、時間外労働基準に照らしてきちんとなされて遵守されておるかどうかをチェックいたします。これも労働基準監督署のいわば最大の重点業務として対応していくことになろうかと思います。
 あわせて、やはり裁量労働制の場合につきましても、法律上、業務範囲、または労使委員会で必ず全会一致で決議すべき事項等かなり規定をいたしておりますが、それらの規定すべき内容等について、労働大臣がこの法律に基づいて指針を出して具体例等も明示していきます。したがいまして、法律、この指針に即してやはりおかしいという届け出があった場合には、その内容を十分チェックし、場合によっては現地において確認し、法律の内容、趣旨、指針に即すように万全の指導監督を実施していく。もし、そのまま法律の趣旨に反した形での決議が結ばれていましても、これは当然労働基準法の規定に照らして、裁量労働制を実施するための決議としての効力を持ちませんから、その場合には、裁量労働制等を実施すること自体問題でございまして、原点に戻って、通常の労働時間管理を求めていく、こういうことに相なるわけでございます。
#135
○武山委員 例えば、東京の人口は一千二百万ですか、それに対して現在労働基準監督署というのは何カ所ぐらいあるのでしょうか。私は人手不足じゃないかなと思っておるのですけれども、その辺、東京には何カ所ぐらい労働基準監督署というのがあるのでしょうか。
#136
○伊藤(庄)政府委員 全国では三百六十の監督署を持っておるわけですが、今東京自体で幾つあるか、ちょっと今正確な数を当たらせていただいております。
 労働基準監督官、私ども、厳しい行財政改革の中でございますが、毎年一定数の増員等を図って実現をさせてきているわけでございますが、先生御指摘のように、それで万全かと言われると、確かにまだまだこの労働基準法の実効性を上げていくためには相当頑張らないといけないという状況にあることは事実でございます。
 私どもこれからも、厳しい行財政状況の中でも、体制整備につきましては、いろいろと関係機関とも、実情を申し上げ、努力をいたしてまいりたいと思いますし、同時に、三六協定、あるいは労使委員会制度等も、私ども、大企業等の指導監督というものがいろいろな意味で限界がある中で、裁量労働制の導入とあわせて、重点監督として臨んでまいりますけれども、やはりこうした労使委員会等による労使間のチェック機能、それと行政側の労働基準監督官の懸命な努力とが相まってこそ本当に労働基準法の実効性も上がると思われますので、私ども引き続き、体制整備等を含めて、また健全な労使委員会等が機能するように、万全の努力をしてまいりたいと思います。
#137
○武山委員 私がちょっと聞いている数では、たしか東京の人口に対して十カ所程度と実は聞いていたのですけれども。埼玉で五カ所程度と聞いているのですね。私は埼玉出身なものですから、埼玉の約倍くらい東京は人口があるわけですね。それで、東京十カ所、それでは人員不足で、とても十分に機能しているとは私は思われないのですね。監督体制の強化という形では行政改革が必要じゃないかと私は思っております。その辺いかがでしょうか。
#138
○伊吹国務大臣 先生はアメリカの御経験も長いと思いますが、規制緩和、自由化というのは今の日本にある程度私は必要だと思いますけれども、自由競争の結果が必ずしも万能ではないことは、もうみんながよく知っているわけです。特に、規制緩和、自由化を進めれば進めるほど、競争のルールを厳しく管理する、アメリカで言えば司法省的な役所は、どんどん数をふやさなければなりません。
 今回の労働基準法の問題については、むしろ、規制緩和という観点よりも、国民の方がいろいろな働き方を期待されたいということに伴う付随的な労使自治というものがやはり起こってくるわけで、その労使自治の中で労働基準法に違反しているかしていないかということは、先生が御指摘のとおり、これからさらに厳しく見ていかねばなりません。
 したがって、行政改革の中でも、ふやさなければならない部分もあります。そして、どこか減らさなければならない部分があります。私は、これからは、労働基準行政というのは、むしろ、金融を自由化すれば金融監督検査官がもっと必要なように、ふやさねばならない分野だと思いますので、政府全体の人員をコントロールする中で、めり張りのきいた人員配置をしていかねばならないということは御指摘のとおりだと思います。
#139
○伊藤(庄)政府委員 先ほどお答えできなくて恐縮でございました。
 全体の労働基準監督署の数は、三百四十三でございます。東京が十七、ちなみに埼玉が九カ所設置をいたしております。
#140
○武山委員 どうもありがとうございました。
 局長さんのお答えが大変長かったものですから、私質問を消化することができませんで、また来週この続きはやりたいと思います。本当にとば口だけしかお聞きできなかったのですけれども、私の時間が来てしまいましたので、どうもありがとうございました。
#141
○田中委員長 次に、東中光雄君。
#142
○東中委員 私は、今回の新しい裁量労働制度の創設、あるいは変形労働時間制の要件緩和、この問題というのは、労働基準法の基本的な原則である八時間労働制そのものを崩していくような重大な改悪だと思っています。同時に今、ホワイトカラー層に多いわけですけれども、いわゆるサービス残業、これは企業による労働基準法違反の犯罪行為です。それを合法化してしまう、そういうことになりかねない非常に重要な許すべからざる改悪だというふうに思っておるのです。
 それで、まず我が国の現行法の八時間労働制というのは一体どういうことなのかということについて、お聞きしたいのです。
 労働基準法の三十二条は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」それから、「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」こういう規定、これが原則ですね。しかも、この三十二条に違反した場合は犯罪であるということが、百十九条で三十二条違反の罪として、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」、こう書いてあるのですね。
 だから、使用者は、労働者に一日八時間以上を超えて労働をさせてはならない。労働者が合意し
ておって、時には労働者が希望しておっても、使用者は、一日八時間を超えて労働させてはならない、違反した場合は六カ月以下の懲役。犯罪でしょう。一日八時間労働を超してやったら、使用者は犯罪者になるのだというのが原則なのです。
 なぜ一日八時間労働を超過させて労働をさせたら犯罪になるのですか。現行法について、どういうふうに労働省は考えていらっしゃいますか。
    〔委員長退席、鍵田委員長代理着席〕
#143
○伊藤(庄)政府委員 労働基準法の労働時間に関する法規制、いろいろな条文が有機的に関連し合って一つの労働時間管理のルールを設定いたしておるわけでございまして、先生のように、三十二条のみをもって、ほかの条文を一切視野に入れないで判断されると、その点につきましては、私どもちょっとお答えをいたしかねるわけでございます。
 一日八時間あるいは一週四十時間を超えて労働をさせてはならない。それは、三六協定制度あるいは災害時のもの等によって全体の労働時間管理のルールが設定されていますので、全体のルールの中でどれが犯罪行為になるかということであれば、私どもお答えを申し上げられるかと存じます。
#144
○東中委員 私が今言うたことそれ以外に何がありますか。私が今言うた三十二条に違反した者は、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」百十九条にそう書いてあるでしょう。三十二条に違反した場合は処罰されるのですよ。なぜかと聞いているのですよ。三十六条のことなんか言ってないですよ。
 三十六条のことをどうしても言いたいのだったら言えばいいですけれども、それは違法性を阻却する事由として、三十二条違反の罪に対して、三六協定を結んで残業させた場合には違法性を阻却するというふうに考えるのですね。これが当たり前ですよ。あなた方の頭は、もうまるっきり――労働基準行政の根幹になっている八時間労働制について、今私の言ったとおりに書いてあるでしょう、百十九条は。三十二条に違反した者は処罰すると書いてあるでしょう。三十二条は今言ったとおりのことを書いてあるのです。一日八時間以上労働をさせてはならぬと書いてあるのです。それですぐ犯罪になるかどうかというのは、実際のときはいろいろなことがあって、三六協定をやっておったら達法性が阻却されるから犯罪にならぬということがあっても、私が言うた規定自体はちゃんとあるのですよ。
 それで、なぜ処罰されるのかということについて、あなた方は自覚もしていない。そこが問題なのですよ。なぜ処罰されるのですか。何で犯罪になるのですか。労働基準法はそう書いてあるのですから、なぜ犯罪になるのか言ってごらんなさいよ。それがわからないのですか。
#145
○伊藤(庄)政府委員 労働基準法各条文相まって、最低基準としての労働時間管理のルールを設定いたしておるわけでございます。
 したがいまして、どういった場合に犯罪になるか、当然、各条文が相まって設定された労働時間管理のルールに違反している場合に労働基準法上の罰則が適用になるわけでございまして、御指摘の三十二条につきましても、すぐ後から出てくる条文で、例えば変形労働時間制があり、三六協定制度があり、災害時の緊急事態の場合の規定があり、それら全体で一定の労働時間管理のルールが構成されていますので、私ども、そういった労働基準法の体系上、最低基準として設定されている労働時間管理全体の枠組みの中でそれを逸脱したら、これは確かに罰則が適用される犯罪だというふうにお答えをできるわけでございます。
#146
○東中委員 労働大臣、この人はもう全然法律がわかっておらぬですね。
 労働基準行政の一番基本になる三十二条違反の罪というのがちゃんと法律に書いてあるわけですから、それはそのまま罪になるのだけれども、阻却事由というもの、いろいろな例外規定をたくさんつくったから、三十二条の二だとか三とか四だとかつくっていくから、あるいは三六協定なんかでつくるから、だから罪にならぬということがあり得るけれども、原形は、三十二条に違反した者は犯罪だということで、ちゃんと現行法でありますよ。
 だから、法律的思考能力のある労働大臣ですから、局長の言っているのは答弁になりませんね。どうですか。
#147
○伊吹国務大臣 私は法律家じゃございません。政治家でございますから、現実をやはり判断して御答弁を申し上げたいと思います。
 先生御指摘のとおり、三十二条というのは、基本的なルールを私はやはり規定しているものだと思います。しかし、基本的ルールで現実は動かないから、そこへ例えば三十六条を持ってきている。したがって、三十六条には、三十二条から三十二条の五までもしくは第四十条の労働時間または前条の休日に関する規定にかかわらず、三六協定を置いた場合には云々というのがあるわけですから、三十二条は、言うならば現行法の法体系としては、三六協定なしに三十二条をやれば当然罰則を受けるというふうに解釈するのが私は現実的だと思います。
#148
○東中委員 そのとおりです。だから、三六協定がある場合はというのは、それは三十六条に書いてあるんだね。三十二条は三六協定のことは何にも触れていないんです。三六協定なしにやった場合は犯罪になる、今大臣言われたとおりですよ。
 それではなぜ犯罪になるんですかと聞いているんです。三六協定なしにやったらなぜ犯罪になるんですか。犯罪だと言っているから犯罪になるんじゃないでしょう。犯罪になるについては犯罪の理由が要るでしょう。なぜ犯罪になるのかということを聞いているんですよ。それを、基準局長が基準法に書いてあることの説明ができないでどうしますねん。なぜですの。
#149
○伊吹国務大臣 ただいま政府委員がお答えしたのは、私が先生にお答えしたのと全く同じことを言ったと思います。三十六条抜きに三十二条のことをやれば当然それは犯罪になる。犯罪になるというのは、三十六条抜きに一方的に法律違反をすれば、日本国民はだれだって犯罪になりますよ、それは。
#150
○東中委員 法律違反をすればそれだけで犯罪にはならないんです。犯罪になるということを規定しているから犯罪になるんです。だから、なぜ一日八時間以上の労働をやったら犯罪になるのか。それはちゃんと基準法に書いてあるんですよ。この基準、一日八時間以上働かせてはいけないというこの基準は、一条に書いてあるでしょう。労働者が人たるに値する生活をする最低の基準なんだと書いてあるんですね。憲法二十五条には、健康にして文化的な生活を営む権利があると書いてあるんです。その健康にして文化的な生活を営む権利、人たるに値する生活をすることを保障するそういう基準、八時間労働というものを侵害するんだから、労働者が人たるに値する生活をする最低基準、それを侵害すれば生存権侵害で犯罪になるんですよ。財産権を侵害したら窃盗罪になるんです。労働基本権、生存権を侵害するから犯罪になる。この三十六条の規定というのはそういう意味を持っているんですよ、犯罪にするという意味は。そうじゃないんですか。どうです。
    〔鍵田委員長代理退席、委員長着席〕
#151
○伊藤(庄)政府委員 先ほど先生の御指摘の中で、三十六条による協定があれば犯罪にならないというふうにもおっしゃられましたので、その点は私どもの答弁をお認めいただいているのかと思いますが、そういったことを前提にお答えすれば、労働基準法第一条、人たるに値する労働条件を実現していくという趣旨のこともうたわれておるわけでございまして、これは労働基準法の各条文が本当に相まって全体として望ましい最低労働条件というものを形成していくわけでございまして、それによりまして、まさに人たるに値する、あるいは望ましい勤労者生活が実現できる労働条件というものを形成していくわけでございます。
 したがいまして、そういう意味では、三十二条の八時間労働も大変重要でございますし、節度ある三六協定というのも大変重要であるかと存じて
おります。
#152
○東中委員 何を言っているんだ、論理的でない人だね。
 一日八時間以上の労働をさせては犯罪になりますよ、なぜ犯罪になるのかといったら、一日八時間を超えないという基準は、それは人たるに値する生活を行うための最低の基準だ、一条にそう書いてあるわけですよ。ほかの条文のことを今言っているんじゃないんです。三十二条について言っているんです。使用者がそういう最低基準を侵害するから、だからそれで犯罪になるというのがこの法律の趣旨なんです。非常にぼやけた話だけれども、私の言っていることを全然否定していないんです。それは認めざるを得ないんですよ。
 これが強制的に労働させたということになったら、暴行、脅迫あるいは精神的な圧力を加えてやった場合は、一年以上十年以下の懲役でしょう、基準法に規定があります。それは非常に重い。これは重くはないけれども、しかし犯罪だということをちゃんと規定しているんだ。このことがわかっていないから全然だめなんです。
 それで、先ほどの答弁を聞いておって、私は思うたんです。こういうのがありましたね。三六協定なしの時間外労働をさせている数について、いろいろ調べてみてどれくらいあったかと言うたら、平成九年は一万八千二百六十一件、違反率は一二%という答弁を基準局長はさっき言われましたね。それで、三十六条違反で悪質なものは同法で処分する、こういう答弁をされましたよ、さっき。全く基準局長というのは何ということを言うんだと思いましたよ。
 三十六条違反というのは何ですか。ただし書きでしょう。百十九条にある三十六条違反というのはただし書きですよ。三十六条違反の罪なんてあらへんのです。三十六条協定なしにやれば三十二条違反なんですよ。そうでしょう。そうしたら、今言ったように処罰されるとあなたは言っているんですよ、三十六条がなかったら。当たってみたら一万八千二百六十一件もそんなものがあるんだ、それで行政指導しているとかなんとか言って、悪質なものだけは司法処分にすると言う。犯罪なんですから、犯罪だから全部司法処分しなきゃいかぬです。起訴猶予もあるでしょう。あるいは事情というのはいろいろある。しかし司法問題なんです、労働司法。
 八時間労働制というものについて、現行法上どうなっているかということについて担当の局長がしっかりつかんでいない。これは本当に嘆かわしい状態だと思います。
#153
○伊吹国務大臣 東中先生、なかなか御党はキャンペーンでうまくおっしゃいますので……(東中委員「何を言っているんだ」と呼ぶ)いやいや、ちょっと待ってください。我々政治家がよく答弁をしませんと、政府委員を一方的にお責めになると困るわけです。
 労働基準法の第一条は、先生、こういうふうに言っているんですよ。先生はもうすべて御承知のまま言っておられるんですから。労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない、この法律で定める労働条件は最低基準云々と。労働条件というのは労働時間だけではありません。これは御承知のとおりです。賃金、超勤の率、それから休日、すべてが総合して労働条件になるわけで、それをこの法律が規定しているわけですから、三十二条と三十六条の関係も、そこだけがすべての法律ではなくて、そこで超勤がどれだけもらえるか、あるいは基本給がどれだけであるかということをすべて規制しているのがこの法律ですから、今の八時間のところだけがこの法律のすべてではないということは先生よく御承知の上で御発言だと思いますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
#154
○東中委員 今八時間労働について言っているんです。三十二条について言っているんです。ほかのことについて言っているんじゃない。(発言する者あり)
 それじゃ聞きましょう。例えば三十七条、使用者が三十六条協定によって労働時間を延長して労働させた場合、その時間の労働について通常時間の二割五分の「割増賃金を支払わなければならない。」書いてありますね。だから、時間外労働をやったら二割五分の割り増し賃金を支払わなければならない。
 もし支払わなかったらどうなるんですか。
#155
○伊吹国務大臣 それは、先ほど先生がおっしゃったように、私は三十二条違反だと思いますよ。
 しかし、私が申し上げているのは、八時間労働のことをずっとおっしゃって、この法律は八時間が労働条件の基本だということをおっしゃったから、労働条件というのは他のいろいろなものがあって、それがすべて包括的にこの法律の中で規制されているということを申し上げているわけです。
#156
○東中委員 全然私の言っていることをあなたも理解していないですね。労働条件というのは、労働時間、賃金、それから働くときの、深夜か、そういうのが全部それぞれが労働条件なんです。だから今八時間労働制について言うた。今度は割り増し賃金について言うた。割り増し賃金を払わなかったらどうするんだと言うたら、そのときは三十二条違反だと今総理大臣−労働大臣言いましたね。まだ総理大臣になってませんわ。そんな答弁しておるんじゃだめですよ。
 割り増し賃金を払わなかったら何で三十二条違反なんですか。割り増し賃金を払わなかったら、百十九条で三十七条違反の罪、割り増し賃金不払いの罪というのがちゃんと基準法に書いてあるんです。だから、割り増し賃金を払わないということ自体がこれが犯罪なんですというふうにこの基準法は書いているんですよ。現行法ですよ。払わなかったら三十二条が出てくるんだ、これが悪質なんだというそういう感覚でおるというのは、百十九条を見ていないんですから。百十九条に三十七条というのは書いてあるでしょう。時間外割り増し賃金を払わない罪というのはちゃんと六月以下の懲役という、現行法がそうなっているんです。それが、払わなかったら三十二条が出てくるんだと。ばかなことを言っちゃいかぬです。暴論というよりも、それはもう全く初歩的な間違いですね。観点が違っているんです。
 割り増し賃金を払わなきゃなぜ犯罪になるのか。時間外労働は、協定を結んでおるからそれは違法性が阻却されて犯罪にならないけれども、しかし、割り増し賃金を払わなかったらそれは犯罪になりますよ。なぜそうしているのか。それは、人たるに値する生活を確保するためには八時間でやるべきだ。しかし、それ以上働かせるというのは非常に酷なことなんだから、その場合は賃金を特に払わなきゃいかぬよと。割り増し賃金を払う、そうしなきゃ人たるに値する基準にならないんだということであの規定があるんです。日本は二割五分というので非常に少ないけれどもね。五割というところもたくさんあります。そういうふうになっているんですよ、構造が。
 だから結局、労働者の生存権といいますか、あるいは人たるに値する生活を営む権利、健康にして文化的な生活を営む権利を割り増し賃金を払わなかったら侵害することになるんだ、だから犯罪になるんだ。八時間以上働かしたら、それは原則的に、それから基本的には犯罪になるんだ。特別な協定を結べばこれは違法性が阻却されると。こういう構造になっているんです。
 そのことさえおわかりないというのは、本当に基準行政が異常な状態になっているということを私は指摘しておきたい。
 それから、ついでに聞いておきます。八時間労働制を決めたのは一九一九年のILO条約第一号ですね。その八時間労働制の第一号をいまだに日本は批准していませんね。なぜですか。これをお聞きします。
#157
○伊藤(庄)政府委員 ILO第一号条約について批准していない理由でございますが、先生ただいま八時間労働という点を御指摘になりました。確かにILOの第一号条約は八時間労働制でございますが、同時に週四十八時間制を前提にした、私
どもから見ますと、やはり今のこの段階でまず批准すべきことになじむかどうかという観点。今、御案内のように日本では週四十時間制を実施いたしておるわけでございます。そのほか、細部についていろいろと我が国の法制とのやはり違いというものがございますので、批准される形にはなっておりません。
#158
○東中委員 いいかげんなことを言いなさんな、あなた。一九一九年ですよ、七十九年前じゃないの。そして、一号条約はなるほど四十八時間制だ。しかし、日本が四十時間制にしたのはほんの最近じゃないですか。ILO条約も四十時間制にまた変えているじゃないの。
 問題は四十八時間とかなんかじゃないんです。「使用せらるる者の労働時間は、一日八時間且一週四十時間を超ゆることを得ず。」ということ、これは、その後、この条約は後で四十時間になっていますね。あるいはその適用範囲が広げられています。商業にも広げられている。八時間労働制のこの基準、一番もとになった七十九年前の条約がなぜ今まで批准していないのか、日本は批准できないのかと言っているんです。
#159
○伊藤(庄)政府委員 ILO第一号条約でございますが、四十時間制、始まったばかりとおっしゃられておりますが、実は、昭和六十二年の労働基準法の改正で週四十時間というものを本則に掲げて、その実現に向けて進んできたわけでございまして、その段階で四十八時間制というものを我々取り入れるのではなくて、むしろ四十時間制に向かう期間であったということはまず御理解をいただきたいと思っております。
 この条約、確かに八時間というものも同時にうたっておるわけでございますが、ただ、批准できない一つの理由でもありますように、この条約では、同時に八時間を超える労働を認める変形労働時間制等も一定の条件のもとで許容しているわけでございまして、先生の言うように八時間だけに、それを超えるということを一切認めない体系を前提にしているものでないことだけは御理解をいただきたいと思います。
#160
○東中委員 基準局長、あなたまじめな顔をして言ってますけれども、一国の政府を代表しての発言とは到底思えませんね。でたらめだ。
 一九一九年にILO一号条約が決まった。そしてそれは、一九三五年に週四十時間条約というふうにもう規定されていますね。全体からいえば一九三五年です。昭和六十何年というのよりずっと前じゃないか。
 それから問題は、変形労働時間とあなた言いましたね。ところが、ここで言っているのは一日八時間労働制だ。しかし、一週間のうちに一日または数日、一日に八時間働かない場合があった場合、その場合に八時間労働を超すことができる、少なかった分だけほかの日に時間をふやすことができる、しかしその限度は一時間だ。だから、八時間働かない日が一日あった、七時間の日が一日あった、その場合は九時間働ける日を一日つくってもいい。しかし、働かない日が、七時間の日が二日あったからといって十時間というのはいかぬよ。九時間を二日することができる。そう書いてあるんです。
 ところが、日本の労働基準法はそうなっておらぬでしょう。八時間労働というふうになっておるけれども、三六協定つくったら何ぼでもやれる。際限なしになっているんです。だから、この第一号条約は批准できなかったんですよ、批准したらインチキになるから。これは世界の水準でしょう、第一号条約なんだから。
 それを、今日になって、もう二十世紀が終わろうというときにまだ批准せぬで、それでいいかげんな答弁ばかりしている。これはもう日本の労働行政というのはなっちゃせぬ、むちゃくちゃだと私ははっきり言いますよ。世界の基準からいっておかしい。どうですか。
#161
○伊藤(庄)政府委員 先ほど答弁申し上げましたのも、私どもが批准できない理由の一つとして変形労働時間制の採用している仕組みの違いを申し上げました。
 ただ、先生ずっと御指摘になっていますように、八時間労働を延ばしていくケースがあり得ることを制度自体の中に取り込んでいるものとして、ILOの第一号条約もやはりそういう性格を持っているということについて御理解をいただきたかった点でございます。
 それから、このILO条約につきましては、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、イギリス等大陸の国あるいはアングロサクソン系の国にかかわらず未批准の国が多いわけでございますが、なぜかと申しますと、ドイツにせよまたアメリカにせよ、やはり労働時間の短縮というものに取り組んできた経緯はございますが、労働時間の短縮と同時に、例えば労働時間の弾力制度、例えばそれは半年の制度あるいは一年単位の弾力制度、こういったものをあわせて導入しながら労働時間の短縮というものを進めてきた経緯がございます。
 そういった背景がある国におきましては、先ほど申し上げました、先生が御指摘になりました変形制の仕組みの違いというようなこともやはりいろいろ原因となって、こういった先進国においても批准がなされていないという状況でございます。
#162
○東中委員 時間がなくなってしまいましたのですが、私は、労働大臣、こんなことは、労働基準行政というのは何かということの一番基礎がわかってないと。現行法で、百十九条で三十二条違反の罪、三十七条違反の罪、犯罪だと書いてあること自体さえまで認めないからね。ILO条約一号を批准できない理由、本会議で総理が答弁したでしょう、それとも違うじゃないか、あなたが今昔っているのは。ILO条約で変形労働制を認めていることに御留意願いたい、ばかなこと言いなさんな。
 一日八時間を超してはいかぬ、超す場合は、一週間四十八時間で、減った部分があったときだけ超すことができる、超しても一時間しかいかない、減った分以上にはいかないというのがILO条約一号の八時間労働の内容なのです。そういうふうになっておるものを、日本の法律はそれに違反しておる一適合しない、だから批准してないのですよ。そのことさえも認めない。そして全くとんちんかんな、論理的には説明のできないばかげたことを言っている。
 そういうことで、今裁量労働制なんていったら、八時間を超そうが超すまいがみなし時間とみなしてしまって、超したって賃金を払わぬでもよろしいということにしてしまうわけでしょう、労使委員会で。労使委員会で決めたらいいというようなことは、どこに書いてありますか。憲法では二十七条に、労働時間、休息、賃金、これは法律で決めなければいかぬと書いてあるじゃないですか、基準は。憲法二十七条にそう書いておるのに、基準を労使委員会というようなことで、企業犯罪を起こす使用者と、労働者……
#163
○田中委員長 東中君に申し上げます。質疑時間が終了いたしましたので、結論をお急ぎください。
#164
○東中委員 はい、結論を急ぎます。
 だから、労使委員会でそういう労働時間を決めるような権限を与えるということはいけない。犯罪を犯すのは使用者なんだ。使用者は八時間以上やらせてはいけない、使用者は割り増し賃金を払わなければならぬ、全部犯罪適格者は使用者なんです。労働者じゃないのです。その使用者と労働者が一緒になって委員会をつくって基準をつくる。憲法ではちゃんと法律で決めなさいと二十七条に書いてあるじゃないですか。こういうことは断じて許せぬということを申し上げて、結論といたします。
#165
○伊吹国務大臣 先生おっしゃったとおり、三六協定を締結すれば、法理論としては上限なく超勤は確かにできます。しかしそこには、別途行政指導や、あるいは先ほど来中桐先生からも御提案があったように、別途の勤務時間短縮の法律をもって超勤の上限を制限するように行政をやってきた。
 しかし、その行政をやりながらも、率直に言えば、超過勤務手当または超過勤務ということが、
共産主義社会は存じませんけれども、資本主義社会においては雇用の維持ということのために必要なバッファー効果を果たしているわけですから、先ほど来おっしゃっていたように、一条の勤務条件という内容は、できるだけ八時間、時間制ということにさや寄せをして御質問になればそうなりますけれども、我々としては、長期的な雇用を安定させて、そして賃金を維持しながら、資本主義社会においては企業もつぶれないように労働者を守っていくということをしなければならないのでILO条約を批准できなかったということが、私は事実だと思います。
#166
○田中委員長 次に、濱田健一君。
#167
○濱田(健)委員 今回の労基法の改正案、きょうも既に四時間ぐらい各委員のお話を聞かせていただきましたが、やはり裁量労働制に話が集中をしているようでございます。私も、前回は質問を出した部分以外のことでお話を伺いましたので、きょうは質問にできるだけ沿って話を聞かせていただきたいと思います。
 去年の四月にいわゆる裁量労働制の六業務が新しく位置づけられたわけでございます。今回の法改正は、今までありました十一業務以外の新しい裁量労働制、働きぶりということでございます。いわゆる変形労働制等については、平成八年、平成九年、非常に詳しい調査をされて今回の改正案というものに臨まれたように私は感じるわけでございますが、現行の裁量労働制について、その実施状況等々についての追跡調査というものがあれば、どのようなものを調査され、どういう認識を持っていらっしゃるのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
#168
○伊藤(庄)政府委員 私ども労働基準法の施行状況につきましては、ここ数年、毎年一万数千の事業場につきまして労働基準監督官が訪問しながら実情を把握するということで調査を実施いたしておりまして、その中で、こういった裁量労働制の実施状況についても把握をいたしているところでございます。
 例えば、近年、東京の労働監督署におきまして、平成九年一月から十二月までに受理した裁量労働に関する協定届け三百三十八件というものがございますが、例えば新たに追加した業務に係るものがどういうものがあるかというようなことで、コピーライターの業務が十三件、そういった件数が非常に多くなっていること等、実情を把握しながら、この裁量労働制の実施状況を、その受理された内容の職種に応じて、実際の運用状況がどうなっているか等も調査の際にはつぶさに見る、こういう形で把握をいたしておるところでございます。
#169
○濱田(健)委員 はっきりした統計はないのかもしれませんが、いわゆる十一業務についてどのくらいの労使協定が届け出されているのか、そしてその労使協定の中身の典型的なものはどういうものなのか、おわかりだったら教えてください。
#170
○伊藤(庄)政府委員 今御指摘ありましたもの、資料を取り出せばあるわけでございますが、今用意していますもの、例えば業種別に、職種別にという点につきましては、平成九年四月一日以降新たに追加された六業務についての届け出状況、それを把握いたしております。それを見ますと、コピーライター関係が十三件、これは東京の管内だけで見た場合でございます。そのほか公認会計士、弁護士等はなくて、一級建築士のケースが二件ございます。それから不動産鑑定士、弁理士等についてはまだ出ていない、こういった状況でございます。
 それから、こういった全体の導入状況につきましては、企業数、労働者割合等を見ておりますが、ここ数年を見ますと、平成五年が二百十六件の届け出であったものが、平成六年には四百八十三件、それから平成七年には五百二件、平成八年には六百四十二件というふうにふえてきております。こういった件数の内容、いろいろ各企業ごとに実際の仕組みを見ておりますが、やはり一番多いのは、研究開発職のケースが多いという状況にございます。研究開発職につきまして、私どもいろいろ事例を特に集めたりいたしておりますが、大半の企業が、例えば主事、五年から十三年の勤務年数が例えば主事というようなランクになる、それ以上の者に限ることとしておったり、それから、場合によっては入社二年目から対象になる者、一年目から対象になるケース等がございまして、それぞれのもとに賃金関係等の整理をいたしておりますので、またその辺は、至急整理をいたしましてお示しをさせていただければと思っております。
#171
○濱田(健)委員 質問通告になかったわけですが、協定の内容で典型的なものの事例がございますかというふうにお聞きしたのです。もしあったら……。
#172
○伊藤(庄)政府委員 研究開発職が裁量労働制の目下一番ポピュラーな形になっておりますが、例えば電気器具製造業のケースで見ますと、元年二月にこの裁量労働制を導入いたしまして、研究開発それからデザインの業務について裁量労働制を導入しています。本人の希望に応じて実施することにいたしておりますが、大体五年ないし十三年の経験年数の者、こういう形にいたしておるようでございます。実際にみなされている労働時間と申しますのは、事業場によって異なりますが、八時間あるいは八時間半のみなし制をとっておるということでございます。
 それから、裁量労働制の対象労働者に限定して、裁量労働制の対象者について支給される手当制度でございますが、これは、一カ月の単位で払う定期給与の中では基礎月収の一五%を裁量労働手当として払い、特別業績給というものを業績に応じてボーナスの中で加算しているというようなこと、それから深夜・休日労働は自己申告をさせること等々の協約の内容になっております。
 ほかの研究開発職につきましても、こういった大体同じような仕組みで、数字についてそれぞれ違いはありますが、幾つかのそういった典型的なパターンについては把握をいたしておるところでございます。
#173
○濱田(健)委員 先ほどの河上委員の質問の中にも、現行裁量労働制の導入率というのは割合的に大企業の方が多いわけですけれども、実際に導入をされている割合というのは極端に低いという数字を出されて質問をされておられました。
 今私がお聞きしたのは、一年前に六業務導入をして、そしてまた今回新しい裁量労働制、二本立てのうちの、変形といったらいいか、形を変えた裁量労働制というものを導入されようとしている。その導入理由というのが、いわゆる建議の中で、「事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得るよう業務の遂行を労働者の裁量にゆだねていく必要性が高まっており、」「こうした労働者の中には自らの知識、技術や創造的な能力をいかし、労働時間の配分や仕事の進め方について自ら決定し、主体的に働きたいという者も増加している。」というふうにうたわれているわけですが、これらの建議が出てきた背景といいますか、どのような事実認識をもとにこういうふうな建議が出てきたととらえていらっしゃいますか。
#174
○伊藤(庄)政府委員 こういった本社等の機能の中枢部門で働く方々をめぐる労働時間管理のあり方については、かねてから御議論がございました。
 一つは、以前、平成五年の労働基準法改正時におきましても、学識者の中から、こういった部分で働いている方々の労働時間管理について、現在の労働基準法のままでは機能しにくくなっている、また機能していない面があるのではないか、そういった指摘もいただいて、労働時間管理のあり方としてどうすべきかということを当時の審議会の方でも議論した経緯がございます。
 ただ、そういった際に、そういった部分で働くホワイトカラーの方々の労働時間管理について、どういうふうにして働き過ぎというようなものを抑えていくかということについて、具体的な方策というようなものを、まだ労使の間でコンセンサスが得られるものが正直ございませんで、その後引き続き検討をしていこうというふうに扱われて
いた経緯が一つございます。
 また、近年の経済活動の状況変化の中で、やはり日本が、キャッチアップ時代を終わって、世界の経済のいわば先端の国として、世界の市場を相手に、いろいろな新しい価値ある製品、あるいは新しいサービス、新しいソフト等を世界に対して送り出して活動をしていく。そういった企業の本社等の中枢部分で、そういった人たちが日夜いわば活動している中で、今までにない新しい事業展開、そういうものを企画し計画し展開していくために、かなり創造的な能力の発揮を求められたり、またそれを発揮していくための仕事の過程をほとんど本人の才覚に実際上ゆだねられている形態というものが出てきている。
 そういったことに対して、いろいろな工夫が各企業で行われておりますが、ある意味では実質裁量労働制を先取りしているのではないかと思われるようなケースもございます。これらについて、私ども、やはりきちんとした、労使が参加する形のルール化を図っていかないといけない、そういう実情が生まれてきている。
 そういった認識もございまして、今回、労働基準法の改正の論議を始めるに当たりまして、審議会の中でどういった項目について基準法改正の議論を始めるかという検討項目の整理の際には、労使が一致してこの裁量労働制というものを項目の中に挙げたわけでございまして、それで議論が始まり、現在御提案しているような姿での提案というものにつながっている。こういうふうに認識をいたしております。
#175
○濱田(健)委員 労使が一致して検討項目の中に入れたということですが、実際にこの法律ができる前の、建議として出てくる前の中基審の具体的な論議の中では、労働側はどう言っているのですか、この導入に関して。
#176
○伊藤(庄)政府委員 この裁量労働制につきましては、中央労働基準審議会の審議、二十数回に及ぶ中で、やはりかなり論議のあった部分でございます。
 一つは、労使委員会によって具体的に法律の規定に照らして業務範囲を特定していく、こういう仕組みにいたしておるわけですが、この労使委員会というものをどう評価するかという点が一つございました。
 この労使委員会という制度につきましては、労働側の委員からも、労使委員会そのものについては評価するという声、意見も聞かれたところでございます。そういう上に立って、実際上、業務範囲を労使委員会で適正に決定していくための法律上の規定ぶり、またそれに基づく指針の策定の基本的な考え方等について議論を行われました。その段階では、労使一致して種々意見が出されて、積み上げた議論がなされたところでございますが、最終的に積み上がったところで、この業務範囲の特定等をどうするかという点に至りまして、もう少し議論をしたいという意見が労働側委員から出されまして、その点が最終の答申の中で、裁量労働制そのものを否定するのではないけれどもという前提で、やはりもう少し議論をさせてもらえないか、した方がいいのではないか、こういう趣旨で答申の中で労働側の意見が付された、こういう経緯に至っております。
#177
○濱田(健)委員 結果的に労働側は、新しい裁量労働制は時期尚早というような意見になった、そういう考え方に傾いていったということになるようでございます。
 先ほどから出ておりますとおりに、現行の十一業種、去年の四月から導入された六業種についても、役所の方が決してサボっているとかそういう意味じゃなくて、日常的な監督業務の中で、現行裁量労働制の実態というものも把握される努力というのはされておられるだろうというふうに思うわけですけれども、実際的にどういうふうな働きぶりであって、協定の内容がどうだというようなものが私たちの目に見えないのですね。私たちの目に見えない。
 いろいろ探してみまして、この裁量労働制に的を絞った調査というのが二つ見つかりました。九五年に社会経済生産性本割方行った「裁量労働制に関する調査」、そして最近自動車総連が行った調査結果が私の手元にあります。
 社会経済生産性本部の調査では、これは個人アンケートですが、総労働時間が短くなりましたかというのに、イエスが二六・四%、ノーが七三・五%。創造的な発想がしやすくなりましたかというのに、イエスが五〇、ノーが五〇、これは半分半分です。仕事が効率的になりましたかというので、イエスが五一・七%、ノーが四八・三%。こういう数字が出ております、私の持っている資料ですけれども。
 自動車総連がやった六つの観点、「仕事の面での裁量度(権限)が増して仕事がやりやすい」「仕事の成果が正当に評価される」「時間の自由度が増して、自分の時間が持てる」「業務の改廃(仕事の見直し)など効率化につながる」「長時間労働につながるので良くない」「手当相当分以上に働かざるを得ない」、こういう設問に対して「そう思う」から「そう思わない」というところまで五段階で答えているのですね。
 「仕事の面での裁量度が増して仕事がやりやすい」というので「あまりそう思わない」「そう思わない」というのが六二・九%。「仕事の成果が正当に評価される」というので「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」というのが八・一%、その逆が五七・二%。「時間の自由度が増して、自分の時間が持てる」というのが「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」が二六・九%、その逆が五九・八%というような数字がこの二つのアンケートでは出ているのですね。
 現実的に今の十一業務についている、わずか一つ、二つの団体の調査の結果なんですが、果たして、この結果から見ると、これから導入しようとしている裁量労働制についても、目的とする趣旨が、思いが生かせるのかなというふうに疑問に思ってしまうのですね。この辺どうでしょうか。
#178
○伊藤(庄)政府委員 今先生御指摘ありました数字につきまして、いろいろなデータ等も私ども集あております。今手元に用意していなくて大変恐縮でございますが、私ども、この裁量労働制を審議会で議論するに当たりましては、既に研究開発等の分野で実施している部門、あるいは本社等の中で、そういう類似の制度について労使で話し合い、ある程度の踏み出しをしている企業等々について、ヒアリングも実施いたしたわけでございます。
 そういった中で、やはりこれからの働き方、創造性を伸ばす働き方として、この裁量労働制ということを望む声はかなりあったことは事実でございます。そういった声も受けて審議会で種々議論があったという点につきましては、経過として御理解をいただきたいと思っております。
 また、社会経済生産性本部の方で調べている現行の裁量労働制に対する評価といたしまして、大変よかったが二一・一%、まあまあよかったが四五・九%、合わせると約六七%ぐらいの方がよかった、以前と余り変わらないというのが二三%でございますが、導入しない方がよかったというのは八・七%、こんな数字も出てきておる。
 私ども、この裁量労働制が本当に制度として今後機能し、効果を上げていくためには、とりわけこの提案させていただいております新しい裁量労働制は、企業の中枢で働いている方々のいわば存分な創造的能力の発揮につながる仕組みでなければいけないものでございますから、労使が真剣に労使委員会等を通じまして話し合っていただき、その実施に向けてどんなルールがいいか、どのような人たちを対象にすることがその能力を引き出すことにつながるのか、やはり議論を存分にしていただいて決めていく、こういうことが当然必要になるかと思います。
 今までの裁量労働制は、専門職ということもございまして、そういった労使委員会等のルールは設定いたしておりませんが、今度の企業の中枢の方の裁量労働制につきましては、そういう労使委員会で十分範囲またそのための必要のある分野というものを特定できる仕組みになっておりますの
で、ぜひこの裁量労働制が所期の効果が発揮できるような形での範囲の限定なりあるいは賃金、労働条件等の設定等をこの労使委員会でお願いしていければ、効果が上がってくるのではないかというふうに考えております。
#179
○濱田(健)委員 これだけやっておれませんので、次に行きますが、今の導入してよかったというのはどちらが言っているのですか。使用者側ですか、労働側ですか。それだけ簡単に。
#180
○伊藤(庄)政府委員 労働者に対する調査でございます。
#181
○濱田(健)委員 今回の裁量労働制ですけれども、いわゆる法案の趣旨に本社部門、重要な企画、立案等々というふうにうたわれておりますけれども、中小企業の場合には、本社であり営業所でありという形で単一の事業所しかないところもいっぱいあるというふうに思うのですが、こういう事業所にも今回の法の枠内であれば適用される対象になっていくのでしょうか。
#182
○伊藤(庄)政府委員 この裁量労働制の対象になります事業場は、事業運営上の重要事項を決定する事業場ということで、私ども、本社的機能を持っているところが対象であるというふうに理解をいたしておりますが、それはもちろん中小企業かどうかにかかわりませんので、また本社が単独事業場というケースもあろうかと思いますので、中小企業のそういった重要事項を決定する部分を包含している事業場があればそこも対象になることに制度的にはなります。
 ただ、一般論といたしまして、管理監督者がいて、その下で本当に仕事を任されている、創造的な能力発揮のために任されている、こういう人たちが中小企業の場合本当にその事業場でいるかどうかということは、やはり通常の場合非常に少ないケースが想定されますので、私ども、この新しい労使委員会等の設置、運営という要件とあわせて考えてみますと、中小企業の場合、利用できるのは相当範囲が限られてくるのではなかろうかというふうに思っておりますし、労働基準監督署の窓口におきましては、この届け出があった場合、ほぼその中小企業における労務管理の実情を主要企業であれば把握しておりますし、また実地に見ることも可能でございますので、本当に裁量が任されている範囲でなければ受理しないという実務上の扱いが行われることになろうかと思っております。
#183
○濱田(健)委員 法律の中に、対象業務について使用者が具体的な指示をしないというふうに、そういう業務につかせる場合が新しい裁量労働なんだというふうに言われておりますが、具体的な指示をしないという業務については、あくまでも使用者が主観的に判断をすればいいのでしょうか。それとも、つくられる労使委員会の中で、確かにそうだよねという協議を重ねるということを含んでいるのでしょうか。
#184
○伊藤(庄)政府委員 御指摘の点につきましては、その業務の性質上、当該業務を適切に遂行するためにはその遂行方法を大幅に当該業務に従事する労働者にゆだねる必要があることから使用者が具体的な指示をしないこととするという表現になっておりまして、したがいまして、使用者が具体的に指示をしないというふうに主観的に判断することではだめでございまして、その業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者にゆだねる必要があるという客観的要件がまず必要なことが一つございます。
 それから、使用者が具体的な指示をしないこととして、その範囲は労使委員会での決議という形になりますので、その決議に基づいて使用者は具体的な指示をできないということにもなるわけでございます。そういった二つのことがこの要件から効果としてあらわれてくるということになります。
#185
○濱田(健)委員 例えば、企画するセクションに、今局長がおっしゃったような、まさに法律にうたわれているような業務をやっている人もいるし、逆に、どう言ったらいいのでしょうか、その人の主な仕事がコピーをどんどんとるためにその企画の中にいるという人も仮におられる可能性はあると思います。そういうときに、企画という一つのセクションの中にいる労働者すべて包括的に使用者の方がこの具体的な指示をしないとする業務と見ることができるのか、その一人一人の労働者が持っている業務にかんがみてその対象とするのか、その辺の判断はどうなんでしょうか。
#186
○伊藤(庄)政府委員 今先生御指摘のあった点に即して言えば、あるセクションの中でも、そのセクション全体を包括的に裁量労働者の対象とするものではなくて、性格上、本当にその仕事を進める上で業務上の指示あるいは時間配分等を本人に全くゆだねられているかどうかのところが判断基準になりますから、あくまで個々にその労働者の範囲というものを決めて、これも同時に労使委員会の決議事項になるというふうに、法律上そういう仕組みにいたしております。
 例えば、企画という業務に即して言えば、中央労働基準審議会の建議の中でも、企画に必要な実態の把握、それから問題点の発見、それをどうこなしていくかというための案の策定、それを実際に文章にする等の形でまとめ上げていく、こういった一連の業務を、いわば部分的にではなくて、ある程度総合した形で実施する方がまずこの対象として考えられる。
 したがって、例えばいろいろな記録の整理、給与計算とかいろいろな保険事務とか、そういうことをやるいわゆるルーチンの業務になれば、これはもちろん対象には法律上ならない。あるいは、企画の業務のそのセクションの中に一体のものとして組み込まれている方でも、補助的業務というケースであれば、その補助的業務の方は裁量労働制の対象者としては入れられない。こういった法律上の仕組みにいたしておるところでございます。
#187
○濱田(健)委員 時間が来ましたので、終わります。
#188
○田中委員長 次に、土屋品子さん。
#189
○土屋委員 無所属の土屋品子でございます。無所属ですので、いつもだったら一分ということでございますが、きょうは二十分という時間をいただきましてありがとうございます。
 今回の労働基準法の改正については、随分私の事務所の方にも陳情が参っておりまして、特に女性からの陳情が多いようでございます。きょうは二、三質問させていただきますけれども、今のこのような経済情勢の中で、果たして労働基準法改正をする必要性というのはどうなんだろうかということで考えさせていただきたいと思います。
 政府の先日の発表によりますと、完全失業率が過去最高の三・九%、数にして二百七十七万人に上り、一カ月で〇・三ポイントもの急激な上昇でございます。有効求人倍率は〇・五八倍という大変ショッキングな数字になっています。私も、選挙区へ帰りましても、商売をやっている方とか、景気を何しろよくしてほしいという声が大きいわけでございまして、また、消費税の負担についても重いというような声が多いわけでございます。先行き不透明で、漠然とした不安感を皆さん感じているような気がしますけれども、失業ももう私たちの身近に、本当に若い方が失業しているような状況でございますので、このような経済状況で労働基準法の改正をするのは厳しい環境のような気がいたしてならないわけでございます。
 法案の趣旨を考えますと、グローバルスタンダードに立って、国内外の経済社会情勢の変化に応じた労働条件の整備ということではまさに今必要なのかなという気もいたしますが、今、何度も言っていますように、高失業率のもと、職の選べる状態ではないというのが現実なのではないかと思います。もっと景気がよくなって雇用状況が好転して、雇用者が労働者確保のための福利厚生に力を入れられるような状況、大臣が前にもおっしゃっていましたけれども、労働者が家庭と仕事の両立を可能にすべく労働条件を選択できるようになるのでしょうか。そこら辺をお伺いしたいと思います。
 現状では、結局今のままだとなかなか両立てき
るような状況にはならないのではないかと考えております。もう少し景気が回復するのを待ってからにしてはいかがでしょうか。大臣はよく、薬には効果と副作用があるとおっしゃっておられますが、今労働基準法を改正した場合のメリットとデメリットも含めて、この時期に法律を改正する必要性について、お伺いしたいと思います。
#190
○伊吹国務大臣 この法律の改正は、経済をということよりも、率直に言えば、いろいろな働き方を選びたいという方もいらっしゃいますし、今の御指摘の中でいえば、例えば、今回の法律の中でお願いをしております高齢者の労働契約の期間の変更とか、あるいはまた、男女雇用均等法はさきの国会で通ったわけでございます、そこに対して、現実問題としては、社会に出て働いておられる女性の方の肩にのしかかってくる育児、家事等の問題についての激変緩和の措置は、実は均等法では残念ながら後始末ができないままございます。
 いろいろ考えますと、確かにメリット、デメリットと申しますか、今回の基準法の改正の中には、雇用に対してプラスの面に働くものとマイナスの面に働くもの、それから長期的にプラスには働くけれども短期的に苦しい、それが今先生がおっしゃったことだと思いますが、そうではなくてむしろ長期でも短期でもプラスに働く部分、あるいはマイナスに働く部分もあるかもわかりません。しかし、私が、すべてはやはり効果と副作用があると申し上げているのは、あらゆることのいいとこ取りはできないということでございます。
 この国際的な流れの中で日本が生きていくということで、私はグローバルスタンダードというものは余り好きではありません、日本には日本のやり方がございます。しかし世界があるということも現実です。その中で、日本のよき伝統である終身雇用制を守りながら、どうしたら働く人一人一人、特に、組織労働者というだけではなくて、未組織の方々、中小企業の方々、女性の方々をも考えた場合に、どんな働き方、どんな生き方があるのかということをお示しをして、選択の自由の幅を広げるというのが今回の法律ではないかと私は思うのです。
 したがって、むしろ、私なりの感想を申し上げさせていただければ、この法律を国会でお許しをいただければ、もう少し雇用面でも活力のある社会になるのじゃないか、私はそんなふうに考えております。
#191
○土屋委員 私も、女性の立場として、議員になる前はいろいろな仕事をしてまいりましたので、自分でも、キャリアを持ってやりてきたということでは自立している。ですから、比較約何かに世話になるとかそういう感覚を持ち合わせていなかったわけですけれども、女性の立場からすると、子供がいて、家族があって、そしてなおかつ働いている共働きの方もいればパートタイムの方もいるし、またキャリアでばりばりと働いて男性と対等にしている方もいらっしゃる。そういう中で、なかなか一つのくくりにならないのかなというジレンマを私自身も非常に感じてきょうは御質問させていただいているわけで、なかなか答えが出ない部分がございます。
 ただ、今回の法律が、経済状態、要するにこれだけ失業率が高い中で、自分の職が選べない中では、多少なりとも実施時期を先送りすることによって理解が得られる、環境が整備されるのであれば、半年なり一年なり経済の動向を見て先送りできればいいのかなというようなことを感じたわけでございます。
 総理も、公約であった、やっとの思いで通しました財革法を二年先送りするというような決断をされたということでございまして、そういう意味では、これだけ経済状態とかいろいろ、速い速度で私たちの環境が変わっている時代でございますので、物によっては、決めたからこのまま突き進むというよりは、例えば実施時期を多少なりとも先に送ることによって理解を得るというような方法もあってもいいのかなと考えているところでございます。
 それから、社会の基盤整備についてお伺いしたいと思いますけれども、これは最初の話につながってしまうと思いますけれども、来年の四月から女子の保護規定の撤廃ということで、同時に施行される今回の労働基準法の改正について、この改正を実行した場合に、女子の労働市場はどのようになると思われますかということなんですけれども、夜間勤務が可能になるということで、女子の労働がふえるのではないかという予測も立ちますが、そこら辺はどのようにお考えになられるでしょうか。大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#192
○伊藤(庄)政府委員 今回の労働基準法の改正によりまして、女性の方の労働機会がどうふえ、どう実際に雇用者数がふえるかという推計はいたしておりませんので、実際数字を持ってお答えはしにくいと存じますが、今回の法改正は、経済情勢厳しい状況が続いている中で、やはり女性の方がその能力を存分に発揮していくことが雇用機会の増大や新しい雇用創出にもつながるということから、今までございました女子保護規定の撤廃等も来年の四月一日からすることに既に決まっておるわけでございますが、そういうことで能力発揮の機会をふやしていこうということで、そういった部分、その限りでは、新たな雇用機会を目指したり、あるいは能力発揮の機会がふえる女性もふえるかと存じます。
 ただ、先生御心配もされていますように、実際上育児や介護等の家庭責任を持っておられる方の場合、それが急激に新しい労務管理の中に組み込まれて、時間外とかそういった問題が発生した場合に、その急激な変化に対応できるかという課題もございます。
 今回の労働基準法の改正は、既に決まっている女子保護規定の解消ということもにらみまして、むしろそこに対しまして、育児、介護等の家庭責任を有する方につきましては、時間外労働の上限の基準を一般の方よりも短くして今までと大きい変化が出ないように措置していこう、こういった配慮をしたり、あわせまして、年次有給休暇の付与日数を増加させたり、あるいは、現在パート労働法に努力義務としてしか規定されておりません、例えば雇い入れの際の雇い入れの労働条件の通知、その中には残業の有無とか、そういった、働く方が家庭のことを考えながら働くための貴重な労働条件も記載されているわけでございますが、そういったことも新たに強制的な義務づけとするというような改正を織り込んでおります。
 そういうことを通じまして、いわば能力の発揮がふえると同時に、今まで家庭の責任をどちらかというと多くしょわざるを得ないという現実があった女性労働者の方も、引き続きあるいは新たに雇用を、安心して働いていける環境形成にはつながるのではないか、こういうふうには思っております。
#193
○土屋委員 日本の場合、女性の労働環境というのは諸外国に比べてまだまだ整備されていないと思うのです。努力は大分してきていると思いますけれども、その中で、五月三日に経済企画庁から、新国民生活指標というので、日本の女性の働きやすさに関する試算が公表されたわけですけれども、OECD加盟国で比較可能な二十三カ国中十九位という結果であったわけでございまして、これも、どういう中身で比較したかによって随分判断は違うとは思いますけれども、日本の女性にとっては労働環境はまだまだ整備途中であるということだと思います。
 確かに、一九八〇年の働きやすさを一〇〇とした場合に一九九六年は一一二・八二と上昇しているわけですけれども、おくればせながら徐々に女性の働く環境が整備されているといったところかなという感じがいたします。
 働きやすさといいましても、管理職に占める女性の割合と男女の給与の格差などを指標としてこれはっくられたわけだと思いますけれども、どちらかといえば、女性の社会進出の度合いをあらわしているのかなということなんです。そういう意味では、まだまだ女性自身がそういうところに行きたくないというのが、日本の場合現実なのかな
ということで、環境の整っていない理由もありますけれども、まだまだ、管理職で働くよりは、むしろみんなと一緒にまあまあの職業でいた方が楽だなという感覚もあるのかなという気はいたします。
 今いろいろなところで言われているのは、子育てをしながら無理なく働ける環境を整えてほしいということだと思うのですが、これが一番難しい問題で、もう一つは、少子化が非常に深刻な社会問題になっているといいながら、この施策がなかなか出てこないということだと思うのですね。今回の改正でも、子供を持つ女性の負担は軽くはならないのではないかなと思うわけです。少子化問題だけでなく、いずれ女性が働かないと日本の労働力というのは減少する一方でございまして、子供を持つ女性が働いていける環境を整えることは、単に女性が社会進出云々という問題ではなくて、これは国の将来を左右する大問題になるのだろうなと思っています。
 具体的に現在行っている施策としまして、また、今後、特に来年四月以降、法施行後、女子保護規定の撤廃に向けて検討している施策をお伺いしたいと思います。
#194
○太田(芳)政府委員 先生御指摘のように、少子化が進む中で、男女労働者が生涯を通じて充実した職業生活を送るために、仕事と育児の両立ということは非常に大きな課題であるというふうに認識しておるわけでございます。
 このため、労働省におきましては、仕事と育児の両立支援対策といたしまして、三つの柱を中心に施策を展開をしておるところでございます。
 第一は、育児休業の取得や職場復帰が容易な環境を整備するということでありまして、このために育児休業給付の支給などを行っております。そして二つ目が、子育てをしながら働き続けることのできる環境の整備ということでありまして、事業所内託児施設を設置する事業主とか、それから従業員の育児サービス利用料を補助する事業主に対する助成金の支給等を行っております。三つ目が、育児等のために退職した方に対する再就職の支援でございまして、再就職の準備のためのセミナーや情報提供を行っておるところでございます。
 こういう柱につきましては、今後とも積極的に充実をしていきたいというふうに考えております。
#195
○土屋委員 労働省や厚生省でさまざまな政策を行って努力されているということはよく伺っておりますけれども、また、今お話を伺って、いろいろ努力されているということは理解いたしましたけれども、介護保険の導入に伴いまして、女性の労働力がまさに期待されているわけでございまして、女性という未知の労働力を大切にして、良質の働き手を創出する政策を続けていただきたいと思います。
 例えば、私はよく聞くのですけれども、保育園に関してなんです。
 地方へ行きますと、十分に足りていて、むしろ余っているということなんですけれども、都市部に行きますと、待機者が多くて、特に乳幼児については定員に余裕が少ないようで、低年齢児保育や延長保育のニーズにこたえられていない。お金を幾ら出してもいいから預かってほしいという方がいるぐらいな状況でございます。
 私も前、厚生委員会に所属させてもらっていたのですけれども、保育園と幼稚園の問題というのが出てくると思います。保育園や幼稚園の運営については、労働省は女性の視点から、厚生省や文部省は子供の視点から見ているのかなというふうには考えるわけですけれども、その二つの視点を連携してミックスして、理想的で現実的な保育というのを考えていく必要があるのではないかということを考えます。
 これからの時代は、やはり省をまたいで相当この子供の問題、保育の問題というのを考えていきませんと、女性の働く場所の環境づくりというのはできないのかなということで考えていますので、一層の検討を期待いたしまして、もう一つだけ質問、をさせていただきたいと思います。
 実施に向けての準備、支援について、今回の改正に当たって労使間での話し合い、もう皆様が何度も質問をされていますので同じような話になるかとは思いますが、労働組合があって労使間の調整が行いやすい大企業に関しては対応しやすいのかなと思いますけれども、小さい、中小零細企業の労働者にとっては労使間の協定などに戸惑いを感じ、必ずしも適正に運用されるとは限らないように思われます。今まで経営者に対して余り物を言ったことがない人たちが何かを言うということの難しさというのも出てくるのではないかと思いますけれども、法律の改正の趣旨、目的を徹底させるためにはきめの細かい配慮が必要ではないかと思っています。
 東京都のケースでは、東京都労政事務所へ相談を持ちかけるのは、従業員三十人未満の企業が四〇%以上を占めていると聞いております。しかも、給与未払いや解雇というどうしようもない状況に陥った場合の話だということで、それよりももっと小さな問題、不満を持ちながらも労働基準監督署へ持ち込めないような、大げさでないような問題でも、やはり積み重なっていきますと大変な不満になっていきますので、身近に相談できる体制を整備することが大切だと思っています。
 労働条件相談コーナーの整備と労働条件管理アドバイザーの拡充を予定しておられるということなんですけれども、労使間の問題解決のための身近な窓口としてここが活用されるのでしょうか。そのことをお伺いしたいと思います。
#196
○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘のように、労働条件をめぐる相談、労働基準法違反としてのいわば正式の申告事案もふえておりますが、同時に、労働基準法違反ではないけれどもやはり事業主との間でのトラブルに関する相談というのはこのところかなりふえてきておるのが実情でございます。私ども、そういった状況に対応いたしまして、労働条件の相談員を配置して、その対応等を丁寧にやるように進めておるわけでございまして、今回さらにその拡充を図っていきたいというふうに思っております。
 具体的な内容といたしまして、今回、労働基準法の改正を御提案させていただいておりますが、その中に、労働基準局が、そういった労働基準法違反ではないけれども、解雇とか急に労働条件を下げられたとか、いろいろなそういった不満についての相談を受け、事実関係を整理してあげ、今までの判例理論等に照らしておかしければ早目早目に事業主に指導したりしていく、こういった仕組みを労働基準局の任務とするということをこの改正法案の中で同時に実施させていただくようにお願いを申し上げております。
 実際そういう個別の相談のシステムのパイプ役になりますのが労働条件相談員でございます。ここがそういった相談を受け、そういった解決のシステムとつないで早期解決を促す仕組みにいたしておりますので、こういったところも法案を成立させていただければ、この部分についてはことしの十月一日から施行を予定いたしておりまして、早目早目にこういった体制を整備して強化して、この厳しい経済情勢の中でいろいろな問題を抱える労働者の方にきめ細かく対応できるようにしていきたいと思っております。
#197
○土屋委員 ちょっと時間が押しましたけれども、今回の改正で抜本的な改革となるわけですけれども、当初予想もしていなかった問題が生じる可能性も出てくると思います。そういう中で、今の相談員の方たちでもいいかと思いますけれども、法律を改正した後のアフターケアといいますか、そういう意味でのアンケート調査とかそういうものをぜひ行っていただいて、その後を追うというような形をとっていただければありがたいと思います。
 これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#198
○田中委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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