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#1
第142回国会 厚生委員会 第8号
平成十年四月十四日(火曜日)
    午前九時開議
出席委員
  委員長 柳沢 伯夫君
   理事 佐藤 剛男君 理事 長勢 甚遠君
   理事 根本  匠君 理事 船田  元君
   理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君
   理事 福島  豊君 理事 久保 哲司君
      安倍 晋三君    稲垣 実男君
      衛藤 晟一君    大村 秀章君
      木村 義雄君    佐藤 静雄君
      桜井 郁三君    鈴木 俊一君
      砂田 圭佑君    田村 憲久君
      戸井田 徹君    能勢 和子君
      桧田  仁君    松本  純君
      石毛 ^子君    城島 正光君
      土肥 隆一君    肥田美代子君
      松崎 公昭君    青山 二三君
      旭道山和泰君    武山百合子君
      藤井 裕久君    吉田 幸弘君
      児玉 健次君    瀬古由起子君
      中川 智子君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (香川県医師会
        会長)     形見 重男君
        参  考  人
        (中野総合病院
        長)      池澤 康郎君
        参  考  人
        (大阪府病院協
        会会長)    大道  學君
        参  考  人
        (神戸大学法学
        部教授)    阿部 泰隆君
        参  考  人
        (社会保険診療
        報酬支払基金理
        事長)     末次  彬君
        厚生委員会専門
        員       市川  喬君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十四日
 辞任        補欠選任
  江渡 聡徳君     砂田 圭佑君
  堀之内久男君     木村 義雄君
  家西  悟君     肥田美代子君
同日
 辞任        補欠選任
  木村 義雄君     堀之内久男君
  砂田 圭佑君     江渡 聡徳君
  肥田美代子君     家西  悟君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内
 閣提出第三一号)
     ――――◇―――――
#2
○柳沢委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国民健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として香川県医師会会長形見重男君、中野総合病院長池澤康郎君、大阪府病院協会会長大道學君、神戸大学法学部教授阿部泰隆君、社会保険診療報酬支払基金理事長末次彬君、以上五名の方々から御意見を承ることといたしております。
 参考人の方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず形見参考人にお願いいたします。
#3
○形見参考人 おはようございます。
 私は、地方の医師会であります香川県の医師会の会長をいたしております形見重男と申します。
 生まれて初めて国会というところに参りまして、それも参考人として出席を要請されましたので、本日は非常に緊張をいたしております。しかしまた、名誉なことであるとも思います。
 それでは、陳述をさせていただきます。
 医療計画制度は、昭和六十年の医療法改正で導入され、昭和六十二年から平成元年にかけて各都道府県で医療計画を作成し、公示され、現在に至っております。
 医療計画は、都道府県単位で作成されることにより、計画的な医療提供体制が確保、拡充され、秩序ある地域医療が進展するものであり、また、効率的な運用が図られており、国民にとっても医療計画は必要であると考えています。
 この医療計画では、当該地域で必要とされる病床数を設定し、既に必要病床数を超える病床過剰地域では新たな病院開設や増床を規制することも含まれておりますが、ようやく制度として定着したところであります。しかし、急性期のための病床と長期療養のために病床を分けて算出し、これらをトータルしたものを必要病床数とするなどの改革は必要ではあります。すなわち、現行の医療計画制度を堅持しつつ、内容についての検討が必要であると思っています。
 一方、この病床規制につきましては、憲法の保障する営業の自由という観点から、罰則を設ける等の強制力を持たせることには慎重でなければならず、都道府県医療審議会の意見を聞いて知事が病床過剰地域での病院の開設や増床をしないよう勧告するという現行制度はやむを得ないものと思っています。
 今まで我々は、この勧告を無視して病院の新設や増床をすれば地域には受け入れられないものと考え、各医療機関はみずから自制して、勧告を受けないようにしてきました。しかし、最近、一部の医療法人がこの勧告を無視して、病床過剰地域においても強引に病院の開設、増床を行うという事態が生じております。もしこれを社会的に認めるということになりますと、医療計画は全く形骸化され、法の精神は死滅してしまいます。何よりも、そのことによって不必要な過当競争が生ずる結果、今までかかりつけ医が担ってきた地域医療は崩壊してしまいますので、地域住民の保健医療に重大な影響を及ぼすことになります。
 また、医療計画による病床過剰地域における病床規制は、既得権の擁護になり新陳代謝を阻害するものではないかという意見もございましょうが、医療に一般社会による競争原理をそのまま持ち込むことは、利益追求を容認することにつながります。医療法でも、営利目的で病院、診療所を開設できないことになっております。
 国民医療費の伸び率を抑制しようとする現在の政策のもとでは、医療提供面においても、保険医療機関の指定等については都道府県知事と医療機関との契約と考えられておりますので、健康保険制度上もある程度の制限はやむを得ないものと考えており、国民にも理解を得られているものと考えております。むしろ、地域で必要とされる病床数の範囲内で、アメニティーの充実、病院の機能評価などを通じて、病院の質の向上を目指すべきではないかと思っております。
 だからといって、医療法で病院の新設や増床を全くできないように規制することは、先ほど申し上げましたとおり、憲法の保障する営業の自由を損なうことになります。そこで、医療法上は病院の開設や増床を許可するが、健康保険法で、都道府県知事は、病床過剰地域内の病院等について、医療法に基づく勧告に従わない場合には新たな病床の全部または一部について保険医療機関の指定等を行わないことができるものとすることは、以上の観点から妥当な方法であると考えています。
 今までも、勧告を無視して病院の新設、増床を行った場合には、通知で保険医療機関に指定しないという運用が行われてきました。今回の改正は、それを法律に直接規定するものであり、一層明確になりますので、賛成するものであります。
 また、今回の健康保険法の改正案では、都道府県知事は、既存の保険医療機関等を含め、指定の申請等のあった病院等について、医師、看護婦その他の従業者の人数が医療法に定める数を勘案して厚生大臣が定める基準に満たないときや、その他適正な入院医療の効率的な提供を図る上で保険医療機関等として著しく不適当と認められるときは、その病床の全部または一部について保険医療機関の指定等を行わないことができるものとすることを規定しようとしております。
 現在、医療法の人員配置につきましては、標準を定めたものであり、この標準に満たない、いわゆる標欠病院と言われる病院数も少なくありません。これは、医療費の抑制の結果、人件費が払えないために補充できない場合や、募集をしてもなかなか人員が集まらないなどの理由からであると考えております。
 したがいまして、厚生大臣が定める基準は、慎重に規定する必要があります。また、この規定を機械的に適用するのではなく、改善指導などを十分に行った後に、なお改善されない場合に適用するなど、地域医療の確保に支障を来さないように、その運用において慎重であるべきであると考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 終わります。(拍手)
#4
○柳沢委員長 どうもありがとうございました。
 次に、池澤参考人にお願いいたします。
#5
○池澤参考人 池澤でございます。
 お手元にレジュメをお配りをお願いしてあると思いますけれども、これに従いまして述べたいと思います。
 今回、私がここに呼ばれました主な問題点は、今回の国民健康保険法等の一部改正の中で、特に新たな病床の全部または一部について保険医療機関の指定を行わないことができるというくだりではないかというふうに思います。このことを中心にいたしまして、必要病床数ということについて中心に述べたいと思います。
 まず、御存じのように、必要病床数の計算方式というものがございまして、これはよく御存じのとおりであると思いますので省略いたします。
 この式の内容を見ますと、これは全国の一律の病床利用率で入院している患者数の割合を割っていくということでございまして、これは確かに、全国的に見ましてちょうど八三%、現在でいいますと八三%ということになりますけれども、これは、私の資料の最後から二枚目のところで、病床利用率というのが述べてある右から二番目の欄の一番下に全国平均の八三・〇というのがございまして、これで例えば割っていくということになるわけでございます。これと同じ数字の都道府県であるならば、これは確かに、それぞれの医療圏におきまして最低の必要な病床数というものを割り出すことができる。
 しかし、これはあくまでもミニマムであって、マキシマムな病床数ではございません。例えば全国の四十七都道府県の中で二十三の都道府県が全国平均を上回っております。つまり、そういったところではミニマムの数を下回るということになります。厚生省の今回の案では、必要病床数を基準として、それを上回れば過剰である、そうでなければ非過剰であるというようなことでもって、過剰医療圏において新たに病床をふやそうとすることに対して規制するというようなことになっております。
 これは確かに一つの考え方ではございますけれども、しかし、私がこだわりますのは、必要病床数ということに対しての問題点であります。必要病床数というのと十分病床数というのは違います。必要病床数というのは、この式から見て明らかなとおり、あくまでも最低必要な病床数ということでございまして、それで果たして国民医療に対して十分なサービスができるかということを考えますと、やはり大きな懸念を持たざるを得ない。
 つまり、十分な病床数を抱えていて、それで問題を論じていくということでないといけないのではないか。つまり、十分な病床数を超えているかどうかということが大切な問題であろうというふうに思います。厚生省の文章では、法律では、必要病床数という言葉でしかありません。もっとも、これは私がいただきました資料によりますと、「必要十分な病床数(必要病床数)」というふうに書いてあるところがございまして、これは言葉のあやかというふうにも思いますけれども、そういうくだりもございます。
 昭和二十三年に医療法が制定されましたときに、このときに既に医療計画ということが医療法の中に盛られておりました。しかし、これが現実に問題になりましたのは、昭和六十一年八月三十一日の各都道府県知事あてに出された厚生省健康政策局長通知、健政発第五十六号によってでございました。この中で初めて二次医療圏という問題点が出されたわけでございます。
 そのときに、この医療圏の設定の条件として、二ページに書いておきましたけれども、「自然的条件及び日常生活の需要の充足状態、交通事故等の社会的条件を考慮して一体の区域として病院における入院に係る医療を提供する体制の確保を図ることが相当であると認められるものを単位として認定する」ということでございます。
 そのようにして二次医療圏は設定されておりまして、先ほどの最後から二ページ目の資料の表の中で申し上げますと、左から三番目のところに二次医療圏数ということが書いてございます。例えば里京都では十三、二次医療圏があるということになっております。
 しかし、この昭和二十三年当時は、戦後の荒廃した医療の状況の中で、いかにして国民のニーズにこたえ得るだけのベッドを確保し得るかということでもって、必要病床数という言葉は確かにそのときにとっては大切な言葉でございました。その後、必要病床数をふやせということでもって、どんどん病床の増床が図られたわけでございます。
 しかし、これはあくまでも、その当時の地域の住民の人口の動きというものと関係して考えますと、それほど大きな人口の動態はなかった。しかし、昭和五十五年ごろを境といたしまして、御存じのとおり我が国の人口動態は非常に変化いたしました。特に、これは首都圏あるいは大きな政令都市の中及びその周辺において起こりました。
 すなわち、通勤圏は大体百キロというところにまで拡張いたしましたし、それからまた、割合大きなマーケットが、大きなデパートあるいは小売店等、チェーン店等がどんどん地方に進出していくということもありました。大学生が都心からは離れた八王子あるいはその他の周辺の地域に分散しているということは御承知のとおりであります。
 そういった中で、果たしてどのような医療圏というものを改めて設定すべきであるのか。昭和六十一年ごろの考え方というものは、現在においても果たしてまだ妥当であるのか。つまり、その後の十年以上の中で、さらに人口の動きというものはいろいろございまして、簡単に申し上げれば、例えば里京都で申し上げますと、私のおります中野区の近辺でも、独身者がふえておりまして、また老人がふえております。しかし、子連れの家庭というものは大体東京都の周辺部に行くというようなことでございます。
 そういったことから、二次医療圏というものについての考え方についても、かなり考え直す必要があるんじゃないだろうかというふうには思います。
 例えば、東京のある下町の区では、最近でございますけれども、八つあった病院が四つに減っております。ところが、その区は、皮肉なことに千床足りないと言われていたところです。千床足りないところでなお病院が減った。これはどういうことを意味するんだろうか。これは果たして、その二次医療圏というふうに定めた、必要病床数と定めた方式が間違っていたのか、あるいはそこでの医療サービスのネットワークづくりがうまくいかなかったのか、いろいろな問題が検討されなければならないと思いますが、必ずしも現在言われている二次医療圏というものが、また、そこでの必要病床数というものが妥当であるかということについては懸念を持つわけであります。
 それで、もう一度、最後の方から二ページの資料二のところを見ていただきますと、必要病床数というものが左から三番目の項目のところにございます。その一番下を見てみますと、全国でもって百二十万六千七百五十五床ということになっております。これは、平成九年三月末現在の数字でございます。右側の病床利用率というところを見ていただきますと、八三%ということになっておりまして、実働の病床数は百万ちょっとでございます。つまり、これは、必要病床数というよりも、言葉をかえて言えば、十分病床数なのではないかというふうに思うわけでございます。
 そのような意味をもちまして、私は、必要病床数を超えたからいけないというのではなくて、十分病床数を超えたかどうかということで判定するということをすべきである。
 それから、最後に申し上げますけれども、病院をつくるということについては、病院経営者はかなりしっかりした倫理観を持っていないといけない。そういった点について、今回の問題になっております、ある医療法人の問題についても意見を述べたいと思います。
 病院をつくるには、他の病院を譲り受ける、あるいは診療所をつくってこれを拡大する、それから署名等を求めていくというような方法が確かにあると思います。
 しかしながら、この署名を求めるというようなことは既に証明済みでございまして、例えば、国立の病院を統廃合していったときにさまざまな署名運動が行われましたけれども、いずれも無効でございました。いずれも、その病院がなくなってから、地域医療には全く問題なかったわけであります。しかも、署名というのは、あくまでも選挙その他の問題と関係して、地域の自治体を揺さぶるという問題をはらんでおりまして、必ずしも病院経営者がとるべき態度ではないというふうに私は思うわけでございます。
 しかし、問題としては、あくまでも国民の医療を守る、国民の医療にとって何がプラスかという観点に立って、その上で問題を論じるべきでございまして、その上で、いたずらに地域の既存の医療機関との間の摩擦をつくりながらその中で医療機関を設定していくということについては、誤っているというふうに私は考えておりまして、この点につきましては、あくまでも地域の十分な理解を求めるということをすべきである。
 ただし、厚生省案として述べられております、必要病床数ということで論じていくということは論理的に非常におかしい。むしろ、十分病床数というものを厚生省が作成していって、それにもとるかどうか、それを超えるかどうかで論ずるべきであるというふうに私は思います。
 以上、時間をオーバーしまして失礼いたしました。(拍手)
#6
○柳沢委員長 どうもありがとうございました。
 次に、大道参考人にお願いいたします。
#7
○大道参考人 大阪府病院協会会長の大道でございます。
 本日は、診療報酬の不正請求の防止に関する事項ということで申し上げたいと思います。
 昭和三十六年の国民皆保険制度達成以来、我が国の医療保険制度は国民の健康確保に大きく寄与いたしまして、着実な発展を遂げてまいりました。また、診療報酬に関する審査制度におきましても、診療側、支払い側、公益の三者構成によります審査委員会の適切な運営によりまして、公平性を保っております。
 一方、医療費の現状を見ますと、平成九年度に入りまして、対前年度伸び率は急激に落ち込みまして、特に、昨年九月の健康保険法等の改正による薬剤の二重負担を初めとする患者負担の増加によりまして、九月以降はマイナスに転じております。私ども大阪府病院協会の調査によりましても、病院の七割が、患者も減り、収入も減っておりますが、特に診療所、中小病院は一〇〇%、患者も減り、収入も大きく減少しておるわけであります。
 さらに、今月四月からの診療報酬改定は、御承知のようにマイナス改定でございます。
 このように、医療費の改定は、特に診療所、民間中小病院に極めて深刻な影響を与えておりまして、医業経営は逼迫した状況にあるということを御説明申し上げておきます。
 さて、今般の診療報酬の不正請求防止に関する措置として、罰則の強化、すなわち、保険医療機関の指定取り消し及び保険医の登録取り消しから再指定に係る期間を現行の最長二年から五年に改める件、また不正請求に係る返還金に対する加算金の割合を現行の一〇%から四〇%に改める件につきましては、極めて大きな罰則強化ではありますが、我々医療担当者といたしましては、不正行為は決して容認されるべきものではないという基本意識のもとに、この措置を受け入れることにはやぶさかではございません。
 しかし、これらの罰則強化が直接不正防止につながるものであるか。その前に、あわせて、現行の保険指導、医療監視等の見直しを図り、不正を未然に防ぐ措置を講ずることが肝要であるかと思っております。
 また、昨年は、医療費の不正請求の総額は年間九兆円にも上るという、全く根拠のない数字が一部のマスコミによって報道されました。この中には、療養担当規則に基づく診療報酬点数表の解釈が行政側と医療側で必ずしも一致してないために発生するものも相当含まれていると考えておりますし、また、審査・支払機関からの返戻レセプトにつきましても、被保険者証の記号番号の誤りなど、事務処理上の問題によるものが七割を超える現状であると聞いております。その背景には、診療報酬点数表の複雑化、点数表の持つ不合理性、被保険者証が世帯単位で交付されていること等の不便性によるものも多いかと思っております。
 これらの問題は、決して医療機関による不正行為ではなくて、制度そのものが抱える問題点として改善をしていくべきであると思っております。
 このように、不正請求というものに対する定義を明らかにするとともに、罰則強化に当たりましては、その適正な運用を強く求めるものでございます。
 最後に、医療担当者として、次の二点についてお願いをさせていただきたいと思います。
 冒頭に述べましたとおり、我が国の皆保険制度は、国の財産である国民の健康を守ってまいりましたが、近年の医療費抑制策によって、社会資本ともいうべき民間医療機関の経営は極めて厳しい状況にあります。ここに、医療保険制度に係る適切な財源確保のための方策の検討を心よりお願い申し上げる次第でございます。
 あわせて、現行の医療保険制度においては、診療報酬支払いまでに約三カ月間という期間がかかるという、医療機関にとっては極めて不合理な状況にあります。速やかな審査・支払制度への改善に向けて、制度の見直しを御検討いただきたく、お願いを申し上げます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
#8
○柳沢委員長 どうもありがとうございました。
 次に、阿部参考人にお願いいたします。
#9
○阿部参考人 神戸大学法学部の阿部でございます。
 本日は、私の話をお聞きいただきますことに、大変感謝しております。
 私は、法律の方からお話しいたします。十分間では詳しいお話ができませんので、お手元の資料をごらんください。こちらの要点をお話しします。
 現行医療法のもとにおける厚生省の解釈運用及び今回の健康保険法改正案には、何重にも違法、違憲の点があると私は思います。
 まず最初に、増床抑制の根拠はあるかということです。
 この改正案は、医療法の定める医療計画が、民間病院に関しても増床を制限する制度であるということを前提としています。
 しかし医療法は、一条では、「施設の整備を推進する」「医療を提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与することを目的とする。」としておりますし、医療計画も、「医療を提供する体制の確保に関する計画」と三十条の三に書いてあります。したがって、「無秩序な病院病床の増加のコントロールによる医療資源の地域的偏在の是正」を図るといった厚生省解説に見られるような文言は、この法律にはありません。
 したがって、医療計画は、民間病院に関する限り、法律を素直に読めば、医療過疎地域の医療体制の充実を図るというような医療機関整備計画法でありまして、医療機関が過剰な地域で医療機関の新設を抑制するというような医療機関抑制法という趣旨は読み取れません。このことは、公的病院に関する医療法七条の二と比べれば明らかであります。そうしますと、医療計画を民間病院の増床抑制に使うというのは法律上根拠がありませんので、厚生省の今やっている運用も、私は法治行政に反する異常な事態だと思います。
 次に二番目ですが、医療法三十条の七に基づく勧告と保険医療機関の指定拒否との関連について現行法を見ますと、これは通達で指定拒否をしてきたわけですが、この指定拒否の理由は、不適当という言葉の解釈に依存しています。しかしこれは、詳しいのはこの資料をごらんいただくしかないのですが、法律の解釈を誤ったもので根拠がありません。
 三番目、それで厚生省もこの解釈はまずいと思っていると私は推測しますが、法改正を提案してきたわけです。法律に書けばよいのかということですが、しかし、これも違憲の疑いが濃いと私は思います。
 まず、独占事業については、供給拒否をする場合には正当な理由が必要であります。現行制度では、国民皆保険で、保険を活用しない国民はまずありませんし、しかも、保険医療機関の指定拒否は県知事が一括して行うことになっています。県知事の指定を受けられなければ、どの保険組合の保険をも扱うことができません。この現状では、保険医療機関の指定を受けることなく、つまり自由診療で経営が成り立つ病院はまずありません。
 そうしますと、保険医療機関の指定拒否は、単に保険だけの問題ではなくて、憲法で保障された医療機関の開設の自由を法律的にも制限することになります。医療機関の新規参入を規制するだけでは、既存の医療機関は、既得権の上に安住し、しかも義務を負わないことになるので、患者への医療サービスは著しく劣化すると思われます。
 そこで、もし医療機関について新規参入を抑えたいというか需給調整を行いたいということになりますと、何か方法があるかということですが、現行法でこのような需給調整を行う仕組みは学問上は特許と言われる領域で存在します。例えば、ガス、電気、交通機関といったものです。最近は、それでも規制緩和の動きがあります。
 そこで、医療機関についてそのような需給調整を行うという特許システムを導入するとすれば、医療機関に対していろいろな義務を課することが必要であります。
 私の考えでは、例えば事業の継続義務、過疎地域で廃業するというのは許さないとか、休日、夜間、これは交代で診療しなければいけない。救急病院が足りなくて、救急車のたらい回しなんということは一切できない。そういうことがあるのだったらどんどん新しい病院を許す。そういうことがないようにきちんとした法整備をする。あるいは、学校医とか予防接種などを総辞退などということは許さない。これも全部協力する義務を課する。このような義務との裏腹で新規参入を拒否するという制度を導入することは、まあ許されるかもしれないという気がします。
 しかし、それでも既得権に安住するおそれがありますから、そこをきちんとやっているかどうかは、きちんとした仕組みで審査するということが必要です。そのためには、やはり患者も参加する、首長が参加するぐらいではとてもだめで、患者代表が参加するといった仕組みが必要であります。
 さらに、このように特許企業としての義務を医療機関に課せば、新規参入を規制することが許されるのかということになりますと、やはり若干疑問があります。新規参入への規制というのは、行政が需要と供給の状況をそれなりに適切に判断できるということが前提になっています。
 それで、先ほど池澤参考人は、十分な病床数の計算ということをおっしゃられました。これは、本格的な専門の話で、私の世界ではわかりませんが、ちょっと素人的に考えましても、医療の需要というのは、やはり診療科ごとに算定する必要がある。ところが、それは非常に難しいというか不可能だと思います。
 例えば、飲食店の総量規制が必要だと。この辺で外食する人は何人だから、飲食店の数は幾つと決めてみたところ、数は十分だったが、中華料理ばかりだったり、すし屋ばかりだったりということも起きます。それはおかしいのではないか。そういうことを役人が計算するのは不可能だ。やはりこれは、市場で決めていくしかない。そうなると、すし屋ばかりだとすれば、例えば極端なことを言えば、耳鼻科ばかりだったとすれば、これは、「医療を提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与する」という医療法の目的に背馳すると思います。
 次に、医療機関の指定拒否は単なる契約の拒否ではなくて、営業の自由を禁止するに等しいというふうに考えますと、その要件は明確でなければいけません。しかし、「医療計画の達成の推進のため」とか「特に必要がある」といった文言は、極めて不明確であります。
 さらに、この改正案四十三条ノ三の第四項の第三号は、「其ノ他適正ナル医療ノ効率的ナル提供ヲ図ル観点ヨリ」「保険医療機関トシテ著シク不適当ナル所アリト認ムルトキ」にも、保険医療機関の指定を拒否できるということになっていますが、これは余りにも抽象的で、行政の裁量が広過ぎて、これでは行政は医療機関を何とでもできる、生殺与奪の権限を握るということになります。これはいかにもひどいのではないかと思います。
 それから、この医療法の勧告に従わなかったからという理由で、医療法ではなくて健康保険法で不利益に扱うという制度は、江戸のかたきを長崎で討つ仕組みでありまして、行政手続法三十二条二項に反する仕組みであります。行政手続法を改正するのかということにもなります。どうも整合しないと思います。
 それから、医療計画は、かえって駆け込み需要を招来して、医療機関の抑制には必ずしも役立たなかったという問題もあります。
 あと、今病床が足りない地域で医療機関の進出の申請があった場合でも、その間に他の病院がいっぱい申請して、新しい申請を抑えるといった運用もあります。医療計画はこのような運用も惹起するので、病院の増床を必ずしも抑制していないと思います。
 それから、この手続ですが、「地方社会保険医療協議会ノ議ニ依ル」とか、弁明手続というのがありますが、これは悪いことをやった場合は役立つのですが、病床が多過ぎるかどうかというときにはほとんど役立たないと思います。余り権利保障の手続はないということになります。
 最後に、このように、現行法の仕組みと調和せず、かつ、違憲の疑いもある法案がなぜ法制局をそのままパスするのか、私は、法制局がここできちんと説明するということが必要だし、それについてしっかりした議論を踏まえた上で、国権の最高機関が判断されるということが必要だと思います。
 このままでいけば、後は裁判所が判断することになりますが、裁判所で違憲との批判を浴びないように、法律論をきちんとやった上で御判断いただきたいと思っています。
 以上で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
#10
○柳沢委員長 どうもありがとうございました。
 次に、末次参考人にお願いいたします。
#11
○末次参考人 御紹介いただきました社会保険診療報酬支払基金理事長の末次でございます。
 本日は、医療費適正化の観点から意見を述べよという趣旨と理解をいたしまして、健康保険法等の被用者保険制度におきまして審査・支払いの実務を担当しております支払基金の責任者といたしまして、審査を中心といたしました当基金の業務の状況と今後の課題について申し上げたいと存じます。
 まず初めに、当基金の概要について申し上げます。
 社会保険診療報酬支払基金は、昭和二十三年九月に社会保険診療報酬支払基金法に基づいて設立されまして、健康保険組合、共済組合などの保険者と医療機関等々の間に立ちまして、医療機関から請求された診療報酬請求明細書、つまりレセプトの審査と保険者等への診療報酬の請求とその医療機関等への支払い、これを業務の柱としております。
 本年九月で設立以来ちょうど五十年になるわけでございますが、この間、我が国の医療保険制度を初めとする医療保障制度の発展とともに基金の業務も拡大をいたしまして、現在では、先ほど申し上げました医療保険の医療費の審査・支払業務のほかに、老人保健法や生活保護法などの公費負担医療制度の医療費の審査・支払いの業務、さらには、老人保健制度及び退職者医療制度の創設に伴いまして、これら両制度に係る保険者からの拠出金の徴収、市町村に対する交付金の交付業務も行っております。さらに、昨年十二月に成立いたしました介護保険法によりまして、平成十二年からは、介護保険制度に係ります医療保険者からの納付金の徴収及び市町村に対する交付金の交付の業務も担当することになっております。
 次に、基金の業務の流れにつきまして御説明申し上げます。
 平成十年二月現在で十九万三千三百十カ所に及びます病院などの保険医療機関等で、投薬、注射、検査などの診療行為をレセプトという形で一カ月ごとにまとめまして、翌月十日までに都道府県に一カ所ずつございます当基金支部に提出をされます。その件数は、最近では月約六千万枚、年間で約七億枚に上っております。
 なお、老人保健のレセプトは、我が国全体で平成八年度におきましては約二億五千万枚、当基金におきましてはその約二七%の六千八百万枚を取り扱っております。
 こうして受け付けましたレセプトは、各支部で、患者、傷病名、請求先である保険者番号などの記載漏れがないか、また、投薬、注射、検査などの請求点数に誤りがないか等を調べまして、誤りのあるレセプトはこれを補正し、記載内容の漏れや不明な点のあるものにつきましては一たん医療機関に戻して確認を求めるなど、事務的な整備をいたします。
 また、請求内容に疑問があるレセプトにつきましては、事務局において、疑義附せんと称する疑問事項を記入した附せんを張ったり、投薬、注射、検査等がその月の何日に行われたかの経過等をレセプトから別の紙に一覧表の形で抜き書きをいたしまして、審査委員が審査を効率的に行うことができるような事前準備をいたします。これらの業務を、基金では事務点検及び審査事務共助と呼んでおります。
 こういう作業が終わりましたレセプトは、医療機関ごとにまとめて審査委員会に提出をいたします。
 審査委員会は、各都道府県の支払基金ごとに設置されておりますが、厚生大臣の定める一定点数以上の高額のレセプトにつきましては、別に基金本部に設置された特別審査委員会で審査をいたしております。審査委員は、平成九年度におきまして、特別審査委員会の委員を含めまして四千五百二十七名でございます。
 審査委員会は、通常、レセプトの提出されます毎月十日過ぎごろから始まりまして、支部の規模などによりましてそれぞれ期間は異なりますが、三日から一週間程度開催をされます。なお、審査委員会は、必要に応じまして、土曜日、日曜日にも開催をいたしております。
 審査委員会では、レセプトに記載されている診療内容が保険の療養担当規則等に適合しているかどうか、言葉をかえれば、保険ルール上適当なものかどうかについて審査をするわけでございます。そして、診療内容が適当でないと判断されるものにつきましては査定をいたしますし、また、診療行為の適否が判断しがたいもの等につきましては、医療機関に戻して回答を求めるか、あるいは診療担当者に基金事務所へ直接来所を求めまして面接懇談を行うなどの措置を講じております。
 なお、基金の審査は、制度上、レセプトに記載された診療行為は実際に行われたものとして、その診療行為が保険診療として適正かどうかを原則として書面により審査するものでございます。いわゆる架空請求あるいは水増しなどの不正請求を発見しあるいは確認するということは、支払基金の仕組みあるいは権限から見て本来予定されていないものであることを御理解いただきたいと存じます。
 こうして審査が終わりましたレセプトは、保険者が負担する費用を請求するために、今度は保険者ごとに分類をいたします。ちなみに、保険者等の数は平成十年二月現在で一万二千六百二十一でございます。
 なお、この作業は、従来は手作業で行っておりましたが、業務の合理化、効率化を図る観点から、コンピューターで作成されました紙レセプトにつきましては、記載された数字を光学的に読み取り、保険者ごとに分類し、あわせてデータの入力もできるレセプトOCR処理システムというものを順次各支部に導入しつつありますので、かなりのレセプトにつきましては、機械による分類と同時に保険者への請求額、医療機関への支払い額の集計が可能になります。それ以外のレセプトにつきましては、従来どおり、職員により個々に分類と計算作業を行っております。
 全国四十七支部事務所でのこれらのデータは、計算センターで全国レベルでの保険者別及び医療機関別に集計されまして、この結果をもとに、各支部から診療翌々月の五日までに各保険者に診療報酬を請求し、各保険者は請求されました額をその月の二十日までに払い込むことになっております。医療機関へは、診療しました月の翌々月の二十一日までに診療報酬が支払われます。
 平成八年度におきましては、レセプト件数で七億一千二百五十六万件余、金額で十一兆七千四百四十二億円余を取り扱っております。
 以上が、審査・支払業務の一連の流れでございますが、このサイクルを毎月一カ月という限られた期間内に滞りなく実施するように努力をしておるわけでございます。
 各県基金では、量的にレセプト枚数が増加し、また質的にも診療内容が高度化、複雑化するという状況下にありまして、基金職員、審査委員が限られた時間内に業務を処理するべく頑張っておりますが、依然として、機械作成のレセプトと手書きのレセプトが混在するという状況が続いております。また、昨年九月からの健保法改正により設けられました薬剤一部負担の確認等、各県基金では業務処理に大変苦労をしております。しかし、基金職員、審査委員は、基金に課せられました使命を自覚しまして、我が国の医療保険制度が円滑に運営されるように全力を挙げて取り組んでおります。
 とりわけ、当基金の審査は、医療保険制度の健全な運営を確保する上で欠くことのできない役割を担っていると認識しておりますが、特に近年、医療費適正化の観点から、関係方面から、より一層充実した審査について強い要望が寄せられております。
 このため、平成十年度におきましては、まず重点審査を推進する観点から、基金本部の高点数レセプトを対象とします特別審査委員会におきます審査対象レセプトを従来の四十五万点以上から四十二万点以上に引き下げます。また、支部の重点審査対象レセプトを従来の十万点以上から八万点以上に引き下げ、対象レセプトの拡大を図りました。あわせて、すべての老人保健分レセプト及び入院分レセプト等を重点審査対象としたところでございます。
 また、さきに述べましたレセプトOCR処理システムの導入による機械化、合理化によりまして、支払い業務部門の日程の短縮と審査部門への職員の投入が可能になりました。
 これに加えまして、今回、厚生省令の改正によりまして、懸案でございました審査委員会の審査期限が、従来の毎月二十日までという規定から月末までという規定に改められまして、必要に応じ繰り下げることが可能になりましたので、従来、必ずしも十分確保できなかった審査委員会開始前の事務点検、審査事務共助のための日程を確保することができることになりました。
 また、これに加えまして、現在、基金では、審査業務を一層充実させるべく、現在二十五日間で行っております医療機関からのレセプトの受け付けから保険者への診療報酬請求までの業務処理を、保険者の理解を得まして保険者への請求を五日間ずらすということによりまして、三十日間のサイクルで行う、いわゆる三十日方式の早期導入につきまして、関係方面と鋭意協議を行っているところでございます。これによりまして、さらに業務処理日程を全面的に見直し、審査委員会の会期を繰り下げ、事前の審査事務共助期間を十分確保し、過去の事例項目に即した疑義附せん貼付、高点数レセプトの診療内容の抜き書き等の充実強化を図りたいものと考えております。
 支払基金といたしましては、今後とも、先ほど述べましたレセプトOCR処理システムの導入、パソコン等のシステムの構築とその活用、これによりまして、業務処理の効率化、的確迅速な情報の処理とその活用を図るとともに、以上述べましたとおりの各般の施策を総合的かつ積極的に推進し、審査・支払機関としての責務と役割を全うしてまいりたいと考えております。
 今後とも、私ども基金に御理解を賜るようお願いいたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)
#12
○柳沢委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
#13
○柳沢委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長勢甚遠君。
#14
○長勢委員 参考人の先生方、どうも御苦労さまでございます。
 今回の病床規制に関する改正の論点は、いわゆる自由開業の原則というものと保険財政との均衡をどのように考えるかということが一番重要なのではないか、そして、そのことと医療計画との関係をどう考えるかということではないだろうかと私は思っております。参考人の方々の御意見の中に、いわゆる法律上の権利というようなお話ですとか医療秩序といったような話がありましたが、保険財政との関係について、余り御意見がなかったように思っております。
 自由開業の原則というのは当然重視をされなければならない問題でございますが、すべての支払いが自由診療という形で行われるのであればともかくとしまして、現在は大部分が保険診療を中心として国民皆保険制度を維持しておるわけでありますから、これをやっていくためには保険財政が安定的でなければならない、そういう観点から、保険医療機関というものは限定的に考えざるを得ない。特に、これからの国民の健康を守る上で、保険財政が大変危険な状況にある、これをどうやってやっていくかということが極めて大事な観点でありますから、このことを考えざるを得ないのではないか。
 そういう意味でいいますと、今現在は、医療計画は開業の自由についての制限というよりはむしろ保険医療機関とのかかわりで自主的に運用されておるという実態でありますし、現実にも開設許可というのは、自由開業の原則に基づいて、施設基準等に合致する限りは医療計画とかかわりなく認められるという運用になっておると思います。これがいいかどうかは私は疑問にも思っておりますが、そうなっております。保険医療機関は医療計画の範囲内で指定されるということが適当であって、現在の法律には若干の問題があったのじゃないかと思いますが、今回これを明らかにした。当然の法律であったし、現実の運用として、今回の改正があろうがなかろうがそうすべきところを今回明らかにしたということではないかと私自身は理解をしております。
 そこで、お伺いいたしますが、仮に、医療計画にかかわらず、開設許可を受けた医療機関を当然にすべて保険医療機関として指定すべきということになれば、医療水準あるいは保険財政ということにどういう影響を生ずることになると考えられるか、このことについて、形見先生及び阿部先生からお話を伺いたいと思います。
 病床供給が過剰になるということが当然に予想されるわけでありまして、入院患者の獲得のために過当な競争を生ずる、そういう意味で、医療水準その他、地域医療というものがどうなるかということが心配をされますし、それ以上に、保険財政が破綻をするという状況を生むということが当然のように想像されるわけでございます。
 こういう問題について、つまり、開設許可即保険医療機関と指定するということになるということであればどういうことになるかということについてどのように理解をされておられるか、両先生にお伺いをさせていただきます。
#15
○形見参考人 長勢先生の方から、保険医療機関というものが病床数を超えてでもたくさんできたときに、やはり日本の医療の経済、医療というものはやはり国家の財政があってそれに裏打ちされてこそ経営が立っていくもので、すべてが、各個人が自由に、保険を持っていないアメリカの国民のように自分のお金で出すのであれば、それは必要病床数の制限なんか要らないのですが。
 もっとも、アメリカと申しましても、アメリカでは保険を持っていない国民が四千万人おって、それ以外はそれぞれの収入の程度に応じて、一月何百万までの治療ができる保険、いい保険、それから中の三百万までとか、百万まで治療ができるとか、それぞれの個人の能力によって保険に入っているということは聞いておりますが、それすらもないというような人たちのために、アメリカは非常に苦労している。
 日本では皆保険制度という世界に冠たる制度がありますので、だれでも、どこでも好きなときに保険診療という、とにかく、それはアメリカ並みの高級な、最高の、幾ら金がかかってもいいというふうな治療は、それはできませんでしょうけれども、少なくとも現在の日本の医療で許されておる、保険で許されておる治療というものはすべての国民ができるわけで、それができなければ、生活保護とかいろいろな救済方法があります。
 そういうふうにして、年々医療費というものは枠が非常にふえておりますので、必要病床数というものをいわゆる医療計画でもって定めるということは、これはもう経済上当然のことであるというふうに考えておりますが、今さっき池澤さんからお話がありました必要病床数についての算定方法というものは、五年おきに見直すということになっております。やはり、その地域地域におきますところの人口動態、老人の数とか、それから病院に入院する人、入院の率とか、そういうものによって、地域地域によって変わってまいりますので、そのたびにそれを見直しするという作業を行っております。
 私は、個人的な意見でございますが、必要病床数というものは、これはその地域、医療圏において、ここまでは増床といいますか、病院を持ってもいいという上限を示すものであって、必ずしもそれを満杯にする必要はないというふうに考えております。
 ですから、いわゆる地域医療計画ができますときに、全国で駆け込み増床ということがありましたけれども、私の方の小さな県では、むやみやたらな駆け込み増床というものはそのときは自粛をするように申しまして、実際に必要な数というものを十分調べた上でそれを申請をしなさいというふうにしましたから、当然、必要病床数を満杯にするというところまでにはいっておりません。厚生省の統計とか何かにも、どの地区は必要病床数に満たないところがあるというふうなことを言われておりましたけれども、必要病床数が満たないところが地域の人たちに不親切であるというふうには考えておりません。その地域地域のかかりつけ医が、在宅ですと往診なんかして一生懸命患者さんを診察して、そうしますと、わざわざ入院しなくてもそれで十分やっていけるわけです。どうしても必要なときには、もちろんそれぞれのかかりつけ医の先生が病診連携あるいは有床診療所との連携をいたしまして、入院をしてもらうように措置しております。
 ですから、その地域地域に、どうしても必要なときには、そこからどうしてもふやしたいということが出ましたら、それはもちろん結構ですというふうにいたしております。ただ、いわゆる社会的入院というふうな、病室さえつくっておけば社会的入院の患者が幾らでも来るから、それで病室が満杯にできて経営が立っていくというような考えのところには、私の方はあえてそれを制限する、制限はいたしませんけれども、社会的入院で抱えておくようなのでなければ、もっとほかの特別養護老人ホームとか、そういう老人保健施設とかいうこともできてきておりますので、そういうところにお願いするというふうにしたらどうかと。
 社会的入院というのがこれだけ世間の批判を受けているときに、ただ入院させてほしいという要望だけで、医学的な入院治療を要する必要のない人を入れておくということは必要ありませんというふうにいたしておりますので、地方の私の方では、今まで病床が不足というところもございました。しかし、それは不足したから、必ずしも病院の地域住民に対するサービスの精神、またサービスの程度が悪かったというふうには考えておりません。
 だから、都会と地方におきましては、やはり病床数の算定方法というものも、今後厚生省、行政におかれましても、それぞれの地域における事情をよく、それは行政官、厚生省の医療課の職員だけがその地区へ行ってばっぱと調べてはとても、また書類上ではできませんので、やはり地域地域の医療関係の市町当局者、また我々じかに診療に携わっている地域の医師会にも十分御相談をいただく。
 そうしますと、確かに、どの地区では病床が足らないから、その地区の病院は病床をふやすべきだとか、そういうことをまた我々の方で的確に会員に指導はいたしますが、それも行政と一緒になって細かいことを調べませんと、なかなか各医療圏、医療圏といいましても広うございますので、同じ市でも中心部と最近発展してきたような郊外のところではまた事情が違いますし、そういうような細かな事情というものは、それぞれに御相談いただいたら、私たちの方で知恵を出して、必要病床数、どの地域にはどういう必要な特定病床が要るかということを相ともに考えたい、このようには思っております。
#16
○柳沢委員長 阿部参考人。
#17
○長勢委員 ちょっと委員長。
 大変恐縮ですが、質問時間が限られておりますので、答弁は簡潔にひとつよろしくお願いします。
#18
○阿部参考人 阿部でございます。
 お答えしたいことがたくさんあるので困っておりますが、今のお話は開業許可を受けた病院がすべて保険の指定を受けたら保険財政は破綻するのではないかということだと思います。
 それで、いずれにしても、いかなる政策でも、憲法の枠内あるいはほかの法律との整合性のとれる範囲内で考えるということが必要でありますが、先ほど申し上げましたとおり、この改正ではその点に大いに問題がある。そこで、この改正ではなくてほかの制度を考えるのだということになりますと、現行のほかの制度を前提として議論するのではなくて、他の制度に切りかえるという発想にいかなければいけない。
 そこで、先ほど一つ申し上げましたのは、新規参入を規制するのなら、まず病院にいろいろな義務を負わせるべきだ。一定地域で必ず救急病院があって、たらい回しはないということが保証されるとか、必要な科はすべてそろっているとか、そういうことが確保されるような仕組み、それで、それが足りないかどうかというのはきちんと患者が参加して点検するような仕組みが必要だと思います。
 それから、先ほど言われているのは、供給が需要を呼ぶではないかということですが、それは今の出来高払い制で供給が需要を呼ぶ仕組みになっているのが問題で、需要がなければ供給してもつぶれる仕組みに変えるという発想が必要であります。
 それは非常に難しいことで、私が今すぐ答えを出せるわけじゃないですが、私は昔から不思議だと思っているのは、お医者さんというのは値段を聞かないでどんどん商品を購入してもらえるというか、我々患者が値段を聞かないでどんどん購入して、支払いはと言ったら全部保険にツケ回しして、ほんのちょっとだけ自分で負担する。これだから買い主はどんどん買えるし、売り主はどんどん売れる。ひどい商売だねと思って、ちょっと悪口を言いますと、手間暇かけて結局は治療できない、いわゆると言っては失礼ですが、やぶ医者ほどもうかる仕組みと言ったらちょっと極端かもしれませんが、そういうふうに言いたくなるぐらいで、道を間違えて遠回りをするタクシーの運転手と同じではないかと言いたくなる。
 まず一つは、医師の評価システムをつくって、優秀なお医者さんほど高く取れる、ただしこれは技術料だけというふうにして、それほど力のないお医者さんはむしろもうからないというふうにいろいろな評価システムをつくっていくことが必要ではないか。
 それで、まことに不思議に思うのは、医学部入試というのは日本で一番難しいということになっていますが、あれほど難しい試験を突破した人たちの能力の評価が全部画一なんですね。どんな新米でも、どんな名医でも一緒、こんな社会はほかにはないのです。弁護士でも、一時間一万円と五万円ぐらいの差はあります。
 それで、お医者さんにも評価ができるという仕組みをつくるということが必要であります。そして、患者に対しては、国家は標準的なところだけ保障する、名医にかかるという保障は要らないということであります。
 それからもう一つ、過剰診療をして保険財政に負担を及ぼすではないかというのであれば、私は大変皆さんと意見が違うかもしれませんが、患者の自己負担をもっと上げるべきだ。今のままですと、結局国庫補助におんぶして、自主性がなくなった自治体と同じではないか。
 それで、患者の負担をどうするかといったら、例えば、今老人は結局最後に資産を残して子供に相続させる人が多いのですから、それなら最後にその金から払うとか、ほかにいろいろ工夫はあります。それから、老人医療費を、兵庫県あたりでも六十五歳から特別にまけていますが、ああいうのもおかしい。
 あと、過剰診療対策では、同じレントゲン撮影をあちこちでやるというのはおかしいので、カルテは必ず持っていかなければいけないようにするとか、出来高払いではなくて定額制だというのであれば、ドイツで経験しましたが、風邪だと一週間は寝ておれ、来るなと言われました。日本だといっぱい注射をしてくれます。
 それから、先ほど保険の不正請求がありましたが、税金も一緒ですが、あんなものは内部告発制度を設けて、本当に悪いやつは全部捕まる、そうするとみんな悪いことをしない、そのかわり、それが本当に悪いかどうかを適正に判断する仕組みをつくる、だから、僕はいろいろ工夫の余地があると思います。
 それでは、とりあえずそれだけお話しします。どうもありがとうございました。
#19
○長勢委員 今の阿部先生の御意見は、保険財政を確保するということが国民の健康を守る上で大変重要な観点でありますから、そういう意味で、自由診療でやられる病院等の開設許可についてはともかく、保険診療をやっていただくというものについては、そういう観点からの規制というか制限があることが当然公共の利益に資することではないかということを私が申し上げたわけでございますが、そのことについて私と同じ考えであるのか違うのかということをお伺いしたがったわけでありますので、再度そのことをお伺いしたいと思います。
 今の御答弁では、保険財政に問題があるとすれば、優勝劣敗で医療関係者の間で競争が行われる、その中でやられるか、あるいは保険財政に負担があるのであれば患者の自己負担を上げればいいのではないか、そういうことによって賄うべきである、こういう御意見のように伺いましたが、そのとおりであるかどうか、お答えをお願いします。
#20
○阿部参考人 阿部でございます。
 正確に聞いておりませんで恐縮なんですが、保険財政だけの観点では議論できない。一番基本は、日本では国民皆保険で、しかもお医者さんと保険組合との間の契約で保険契約を結ぶということができないで、県知事が一括して全部決めてしまう。県知事の指定を受けられなかったらすべて保険は扱えない。そうすると、日本では実際上、病院は開設できないので、保険制度によって開業の自由を奪うということになる。だから、単なる保険の問題ではない、営業の自由を制限するんだから、保険の制度という形で使うとしたって本当にできるのかしつかり議論すべきだということを申し上げて、保険財政の赤字対策を考えるという公共性はもちろん大事なことなんですが、そのためにはまだまだいろいろな議論をする余地があるということを申し上げた次第であります。
 それで、医療費の自己負担を上げるなというような議論はあると思いますが、ただ一般的に言いまして、自分の負担が非常に安ければ、じゃ、どんどん買おうかというのは、補助金が九割来れば一割の自己負担で何か施設をつくるかという自治体と同じだということ、やはりそれなりに負担がなければ適切な事業というのは、そうでないと過大な需要が発生する。
 それで、そのときに、じゃ、どんどん高くなるではないかと患者の方は言われるから、そうすると、医療費が適切かどうか、これをしかるべく評価する仕組みをつくる。非常に難しいことでありますが、フランスのホテルやレストランのような格付でもあるかもしれないし、いろいろな団体がいろいろな評価をすることは必要であるかもしれません。私たち大学教授を評価しろと今言われているわけですが、病院に入っても、いい看護婦さんと悪い看護婦さんと明らかに違うのですが、みんな給料も一緒だし、ひどいお医者さんにかかっても皆同じです。
 こういうことをいろいろな観点からやっていくことも必要ではないか。そうすると、患者も余計払うという気がするかもしれないし、それとも払わないと決めるかもしれないということを申し上げた次第であります。
#21
○長勢委員 営業の自由と保険財政を守るということとの均衡が今回の議論だということを、私の考えを申し上げたわけで、そういう意味で、医療法に基づく開設許可の話と、営業の自由を当然重視しなければならないというか万全にしなければならない、あわせて、保険財政との均衡の中で、健康保険法の体系との整合性がきちんとされることが日本の医療を守る上で必要ではないかということを申し上げたわけでありますが、先生の今のお話、意見がどの程度私とすれ違っているのかもよくわからないわけでありますが、再度御答弁をがあればいただきたいと思います。
 それと、文書でしたか御意見でしたか、水道事業法との関係のことなんかを先ほどおっしゃられたような気がいたしますけれども、もちろん、供給者が一つしかいない場合の話と、保険診療機関の場合は相当程度のボリュームで用意をされておるわけでありますから、その点は若干違うのではないか、同じように考えるべきことなのかどうか疑問があるように思います。
 また、保険者との関係もおっしゃいましたが、今回の改正でも、保険診療機関として認められない場合でも保険者との契約を結ぶことも、道を開いておる、これは私は余り賛成でない部分でございますが。
 そういうことも含めて、今回の改正は、営業の自由と特に目下一番緊急の課題であります保険財政との関係において必要な部分もあるのではないかなと思っておるのでございますが、再度御意見を伺いたいと思います。
#22
○阿部参考人 阿部ですが、後ろの方はよく理解できなかったので、最初の方ですと、水道法との関係で比喩で申し上げたのはこういうことです。
 水道法は、水道事業体が我々消費者との関係で独占的な地位に立つというわけですね。医療機関は、我々との関係で独占的な地位には立ちません。だけれども、保険医の指定をする県知事と保険医療機関との関係、あるいは保険組合との関係、これで見ますと、県がすべて一括して保険を認めた、認めないとかやるわけですから、それは国が保険を供給するということと同じだというふうに考えると、国が保険という仕組みを独占していると申し上げたわけであります。
 国が保険という仕組みを独占していれば、それを拒否する場合というのは相当な理由がなければいけないが、これは理由になっているのでしょうかということを申し上げたわけであります。
#23
○長勢委員 新規参入を既得権擁護というようなことで不合理に抑制をするというようなことはこれからの医療提供体制をとる上で適当でないということは、そのとおりだと思うのですね。そのことは大変大事なことなんですが、今回、過剰地域については更新等の際にそういう観点で少しでも新陳代謝を図ろうという部分がありますので一歩前進かなと思うのです。しかし、合理的に新陳代謝をうまくやっていく仕組みをつくるというのはなかなか実は難しいなという思いもしている。
 阿部先生から特定の義務を課して云々というような御意見があったわけであります。しかし、それも一つの案かなとは思いますが、あらゆる開設許可をなさる方々が、これもやります、あれもやりますということになれば、結局同じことになってしまうのではないか、つまり保険財政との均衡はとれないということになってしまうのではないかという疑問を持つわけであります。
 これは私はうわさで聞いている話でありますからどの程度真実かわかりませんが、現実に昨今、医療計画と無関係に医療機関を設立したいという動きが国内のみならず外国人の中にでもあるということを聞いておるわけで、こういう動きは当然、自由開業というものを根拠にして医療計画を無視していくことになりがちということになりますと、極端な言い方をしますと保険財源を食い物にすることにもなりかねないという心配すらあるわけで、新規参入を認める仕組みをつくると同時に、こういうことを放置するということは大変なことになるのではないか、このように心配をしておるわけであります。
 重ねて阿部先生にばかり聞いて恐縮でございますが、義務化をすればそういう仕組みがうまくいくのではないかというようなお話であったように聞きましたので、今私が申しました現実の心配も含めて、新陳代謝をうまくやっていく仕組みについて御提言があればお伺いさせていただきたいと思います。
#24
○阿部参考人 阿部です。
 大変難しい御質問を急に提示されて苦労しておりますが、新陳代謝を図る仕組みというので先ほどちょっと申し上げましたが、私がお話しした中で、改正案四十三条ノ三第四項三号で、「其ノ他適正ナル医療ノ効率的ナル提供ヲ図ル観点ヨリ」これこれこれと、「著シク不適当ナル所アリト認ムルトキ」というので、保険医療機関の指定を拒否するという点、これをどこまで使えるかということでありますが、先ほど申し上げましたように、これは極めて裁量が広すぎる、行政は非常に恣意的運用ができる、こういう仕組みはもうこれからやめるべきだ。今行政の裁量が広すぎるので接待汚職があるのだということを言われていますが、これをやめるべきだし、そもそもこれは、営業の自由や保険医療機関として指定を受ける地位を著しく侵害するか、極めて不安定にするもので問題だという気がします。
 そうすると、どうしたらいいかですが、一つの考えでは、これをもっと具体的にきちんとしたルールにすることが一つだと思います。それと、やはりむしろ市場原理を活用することでサービスの悪い医療機関は市場から撤退を迫られるように、その質をちゃんと庶民がわかるような仕組みをどんどん工夫していくこと。それがどこまでできるかという問題はありますが、医療機関が少し多くなれば、それで評判の悪いところはつぶれやすいということがあります。私の住んでいるところでも、お客が余り行かない、もうつぶれるのではないかという医療機関、少なくとも診療所ぐらいはあちこちにあります。
 それから、外国からいっぱい進出してくるではないか、それは保険財政を食い物にする、私もそういう危惧を抱いておりますが、それに対して、じゃ、今直ちにこの制度で新規参入を規制することが許されるかというと、憲法上問題が多過ぎる。
 そこで、憲法にひっかからない範囲で制度を工夫すべきだということを申し上げて、まず一つは、新規参入を規制するのなら既得権に安住することのないようにきちんとした義務を課することということが一つ。それから、保険財政の方も工夫して、とにかく、どんどん供給が需要を呼ぶ仕組みを変えていかなければいけないということを申し上げたわけであります。そちらの方の工夫をしないで、ただ単純に新規参入を規制すれば、既存のものが余りよいサービスを提供しなくても安住できるということになって、今の規制緩和の時代にもおよそ反するというふうに申し上げたわけであります。
 以上です。
#25
○長勢委員 それでは、時間が来ましたので終わらせていただきます。
#26
○柳沢委員長 土肥隆一君。
#27
○土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。
 きょうは、五人の先生方、本当に朝早くからお越しいただきましてありがとうございます。
 今、長勢先生が阿部先生にかなり食い下がっておられましたので、その辺から私も始めさせていただきたい、このように思うわけでございます。
 医学の世界というのは、やはり国民にとってよくわからない世界なんですね。かく言う厚生委員であります私も、医療の世界については、情報も少ないし、やたら規制が多くて、そして、選択が自由だ、幾つも診療機関があるから選択は自由だとおっしゃいますけれども、では、どのお医者さんがいいのかというとよくわからない、当たり外れというような言葉が適当かどうかちょっとわかりませんけれども。
 阿部先生の議論でいきますと、まず、法律上問題点があるというふうにおっしゃいました。法律上問題点があるという。法学者が、特に行政法に通じていらっしゃる阿部先生から言われますと、これからの厚生委員会の審議が非常に重大になってくるわけでございます。
 いろいろな新規参入といいましょうか、地域医療計画にそぐわないといいましょうか、そぐうのかそぐわないのかというのは、またこれは、この医療計画のあり方について池澤先生もおっしゃっているわけでありますが、後でお聞きいたしますけれども。この法律が通りますと、これは非常に強制力を持ってくる。今後、医療裁判、特に新規参入の病院と県知事との間の医療裁判などが行われたときにどのような影響が考えられるか、阿部先生からお答えいただきたいと思います。
#28
○阿部参考人 阿部です。
 この法律が通れば、次の舞台は裁判の方に移ります。というか、新規参入を申請したところ医療機関の開設の許可は得たが保険医療機関の指定を受けられなかった病院が、これについて取り消し訴訟を起こすということになりまして、この国会の場で議論されている問題を裁判所が審査することになります。
 私が先ほどから申し上げておりますように、これは単に保険の契約を拒否するというのではなくて、保険の国家独占制度を通じて営業の自由を侵害するという非常に大きな問題があり、営業の自由を制限するだけの合理的な根拠があるのか、合理的な手段をとっているのかということについて審査されます。しかし、それにしては、片方で独占を認め、片方では大した義務を課していない。患者の適切なサービスを受ける権利もどこまで保障されているかよくわからないということになりますと、保険財政というだけで、このような新しい仕組みを憲法上正当化できるかどうかについては私は非常に疑問を感じているということで、そういうことが論点になります。
 したがって、国会の場におかれましては、この問題は単に政策論として議論されるのではなくて、政府における法律の最高権威者である内閣法制局が、これについて裁判所を無事突破できるという十分な説明をされた上で、それで、国会の先生方は法律をつくられる専門家ですから、そこで判断された上で通される、その上でまた裁判所が審査するということになると思います。
#29
○土肥委員 池澤先生にも同じようなことをお聞きしたいのでありますが、池澤先生は、独自の視点から、いわゆる診療機関の総量規制のあり方について批判をされつつも、先生の御提言が一、二、三にわたっても提起されておるわけであります。この医療の世界、病院の世界というのは、一言で言えば競争の原理というのですけれども、なかなか競争の原理が働かない、しかし、財政的視点からいうといろいろな規制を行わざるを得ない、これはもう二律背反みたいな状況にあるのでありますが。やはり、病院をつくりたいという医療法人に、病院のつくり方をもう一度考えていただくというようなことも含めて、先生が、病院をつくる手段として、こういうものがあるから、こういうふうにいろいろやってごらんなさいということでございます。
 しかし、これで果たして、進出したい病院、非常に意欲のある医療法人と、地元の地域医療を担っていらっしゃる医師会等との間でうまく調整ができるのかどうか。それに加えまして、先生は国立病院または療養所の話もしていらっしゃいますけれども、数年前、三年ほど前ですが、国立病院・療養所のいわば統廃合にかかわる特別措置法をつくりまして、なるべく有利な条件で引き取ってもらおうという議論もいたしましたが、ほとんど進んでいない。こういう状況などを勘案して、今回のベッド規制だけで、果たして、日本の医療世界に生き生きとした診療体制、そしてある意味で競争も含めた医療体制が組めるのかどうか、お聞きしたいと思います。
#30
○池澤参考人 池澤でございます。
 ただいまの土肥先生の方からの御質問について、私なりに理解したことをお答えしたいと思います。
 まず一つは、医療の世界に現在競争原理がどのように働いているかということでございます。これは、現にそのような競争原理は働いているというふうに私は思っております。
 私が属しております中野区の医師会及びその二次医療圏と言われるところで言いますと、新宿、中野、杉並というところが二次医療圏になっております。二次医療圏の中には、もちろん、慶応病院、それから東京医大、東京女子医大といった三つの大学病院と、そのほかに社会保険中央病院その他の公的病院も存在しております。また、民間病院もかなりたくさんございます。また、それと同じように、さらに多くの診療所がございます。
 そういった中で、患者の動向ということを、実は私どもの中野総合病院がかつて提案いたしまして、中野、新宿あるいは一部練馬にかかりまして、杉並を含めましての病院長の懇談会というものをこれまでに約二十年間ほど、初めは毎月一回やっておりまして、最近は二、三カ月に一回開いております。かなり打ち解けた、しかもかなり秘密事項までお互いに知らせ合っての情報交換会をやっております。
 そういうことを通じてわかりますことは、それぞれの病院長の持っている考え方、また開設者の持っている考え方がいかにその病院を発展させ、あるいは失敗に導くかということをこの二十年間私はつぶさに見てまいりました。現実に、多くの診療所あるいは病院といったものが私どもの二次医療圏におきましてもこの二十年間において消長、あるいはなくなっていったというところまでございます。
 そういった中で、何がそういう原因となったのかといえば、ひとえに、どれだけ国民の、地域の住民のために本当に役立つ医療を行っているのかということだというふうに思います。それにどれだけ徹し得るかということが非常に大切である。
 これは、最近の地元の医師会は、最近のというのはちょっと語弊がありますけれども、地域医療ということに医師会がかなり熱心になっておりまして、いかにして地域医療のネットワークをつくるかということでかなり努力を続けております。
 例えば、たしか今年度中にできますけれども、それぞれの病院が現にどういう患者を診ており、各科においてどういう手術ができるのか、それの成功率はどの程度であるのかというデータを出してくれと。また一方、診療所では、例えば内科で開業していても実は専門は糖尿病である、あるいは耳鼻科で開業をしていても専門は自分は鼻であるというようなことがあるわけですね。そういったことから、自分は往診可能である、あるいは訪問医療にも協力できる、できないということについての情報を全部出して、そういうことによって地域のネットワークを病院と診療所で完全につくろう、完全に地元の住民のためにやっていこうということが計画されております。これは中野区のみならず、中野はむしろおくれている方で、台東区を初めかなり多くの都内の医師会が中心になってのそのようなネットワークづくりをやっておるというふうに聞いております。
 私はこれは大賛成でございまして、そのようなネットワークが完全にできていけば、本当の意味で、例えば内科で開業している診療所に行っても、自分の専門でないということであればお互いに紹介し合う、あるいは病院に紹介し合う、また病院の方から地元のだれに紹介するというようなネットワークができる。そういう本当の意味での地域の住民の医療を守ろうではないかと。
 それができていない場合に、新しく参入してそれに加わっていくということが確実に認められるならば、そういうこととして、これまでの欠点、どうしても補えなかった点を補えるならば、積極的にその新規参入は認めるべきであろうというふうに思うわけです。しかしながら、既にそういうネットワークが完成しているのに、あたかもそれが不完全であるかのような印象を与えながら新規参入をしていくことは決して望ましいことではないということを申し上げたい。
 参考までに申し上げますと、これは一つの例でございますけれども、これまでの二次医療圏ということで墓京都を例にとって申し上げますと、東京都は例えば十三に分かれておりますけれども、中央部と言われているところでは、住民がその二次医療圏の中で診療を受けている割合はわずかに四七・四%、半分でございます。あるいは、静岡県の熱海伊東地方では、四二・七%が二次医療圏の中でもって診療を受けているにすぎない。極端な例はもっといろいろございますけれども、そういうようなわけでございまして、高い例では、例えば仙台という二次医療圏では九六・五%がその中で診療を受けている。つまり、そこでの診療がいかに完結しているか、そういう度合いがございます。
 しかし、この数字は、先ほど私が初めに述べましたけれども、現在の二次医療圏というその規定の仕方が非常に不十分なために、お手元の資料の最後から二ページにあります表のように、さまざまな病床利用率の差がございます。そういうようなことで、まだまだ大体において全国で八〇%です。しかし、この八三%というのは非常にいい数字だと私は実は思っております。
 というのは、一般に、私どもの病院の場合にこの程度のベッドのあきがございますと、あらゆる救急患者を受け入れることができる。先ほど阿部先生がおっしゃいましたけれども、すし屋などのようなお話を申し上げましたけれども、病院あるいはベッドというものは、これはいわばデパート方式でございまして、ある科の患者がたくさん来れば、自由に利用をし得るという流動性を持っておりますから、これはすし屋がフランス料理をつくれないというのと話が違っております。その意味では、ベッドというものはトータルで、やはり全体の十分な量というものを決めて、それに応じてやっていくべきであろう。
 また、新規参入する側といたしましては、今申し上げましたような十分なネットワークというものを調べた上で、さらにそこにどういう問題点があるのかということを考えなければ、新しく参入してもそこで十分に経営できず、運営に失敗するということは目に見えているわけでございますから、そういったことについて十分な検討をしなければ、参入しても全くむだである。それによって、例えば社会的入院というようなものがふえるようなことが仮にあるとしたらば、それこそ保険財政をつぶすことにもなりかねない。
 いわんや、さらにそれを、私は、実は今回問題になっていると思われます特定医療法人の病院長にならないかということをかつて誘われたこともあったわけでございまして、そのときに私は断りましたけれども、そんな意味で、私はかなりこのいろいろな動きについては存じ上げているつもりでございます。
 私は、端的に申し上げまして、金もうけのために医療を行うというような考え方は絶対に慎むべきである、しかしながら、その地域におきまして、本当にどのネットワークのどの部分が足りないかということがあるならば、そこに新規参入していくということは積極的にお互いに進めるべきであろうというふうに思います。
 以上でございます。
#31
○土肥委員 今、池澤先生のお話を聞いておりましてつくづく思ったのは、単にベッド数を規制して、とるかとらないか、そこに参入するかしないかというふうな、ただベッドを求めて病院を建てるとか参入するとか、あるいはそれを防御するというふうな医療体制ではなくて、二次医療圏で結構ですけれども、その中にある医療資源を十分活用して、連絡し合って、そして有効な連携がとれれば、必要な病院があればそれは参入するだろうし、必要でない病院は当然参入しないだろうというふうな御意見でございます。ただし、二次医療圏という考え方、ベッド規制というものはもう一度中身を精査する必要があるのじゃないかという御意見かと思いました。
 それにしても、病床利用率が八〇%をあらわしているということはまことに微妙な数字でございまして、先生も、これはいい数字だとおっしゃったわけでございます。
 やはり世の中は、余り制度をいじらないでもうまくいくようになるのが世の中でございまして、この病床規制のことについては今後も検討してまいりますが、例えば、先生のおつくりになりました、二十七番目にあります大阪府は、必要病床数が七万六千で既存病床数が九万六千、二万床多いのですね。しかし、やはり病床利用率は八三%。極端に多いところでも大体平均の利用率になっている。それは、何か、多いから病院間で競争が激しくて、社会的入院みたいなものが続々発生しているとは私は思わないわけでございます。
 形見先生にちょっとお尋ねしたいのでありますが、先生は医師会長をしておられますが、地元の地方社会保険医療協議会の委員でいらっしゃるのでございましょうか。県の協議会の委員でいらっしゃいますか。
    〔委員長退席、根本委員長代理着席〕
#32
○形見参考人 はい、社会保険医療協議会の委員であります。
#33
○土肥委員 そうですね。どういう方が集まって、これまで、この一、二年どんなことをなさったか、教えていただけますでしょうか。
#34
○形見参考人 はい。社会保険医療協議会は三者構成、公益の代表の方と健康保険組合、保険者代表の方と、それから我々医療関係は、医者、歯科医師、薬剤師、そういう三者構成であります。
#35
○土肥委員 どういう協議をなさっていますか。
#36
○形見参考人 協議は、総会は年に二回。それから、小委員会は、その後は少人数で毎月例会を開きまして、いわゆる新規指定の保険医療機関の申請についての可否について小委員会で検討いたします。それで、小委員会で決定できないものは社会保険医療協議会の総会の場において出てまいります。
#37
○土肥委員 ついでにお尋ねしますが、何か、このベッド規制についての議論が行われたことがございましたでしょうか、香川県では。
#38
○形見参考人 香川県につきましては、ベッド規制についての議論というものは、社会保険医療協議会では、今まではそういう案件はございません。
#39
○土肥委員 ありがとうございます。
 大変うまくいっている協議会と言ったらいいのか、あるいは医療圏に余り問題がないと言ったらいいのか、ちょっと香川県の医療の世界を見てみないと何とも言えませんが、そのように思います。
 さて、一つ支払基金の末次さんにお聞きをいたしますが、膨大な事務量であることはよく承知をしておりまして、しかも、今回の財革法に絡む予算審議で、厚生省、特に医療面での大幅な削り落としといいましょうか、保険の業界では削り落としと言うのだそうでございますけれども、それが行われました。
 そして、今度は介護保険もやっていただくわけでございまして、そうした中で、神戸にもございますので、支払基金の事務所を一度見せていただこうと思っておりますけれども、例えば、政管健保におけるレセプト点検の充実強化というようなところで、レセプト点検従事者の増員等によるレセプト点検の体制の強化で、強化するとマイナス百三十億円です、レセプト審査の充実強化でマイナス六十億円です、先ほど御説明にありましたけれども、レセプトの範囲を現行の十万点から八万点に拡大するというようなことなどなどで数字が出ておりますけれども、今、支払基金の全体の予算はお幾らなんでしょうか。そして、百三十億とか五十億とか六十億とかいうのは、これはどういう計算で出てくるのでしょうか、お聞きしたいと思います。
#40
○末次参考人 お尋ねの趣旨の全体の予算というのが支払い額と理解してよろしいのでしたら、先ほど申し上げました……(土肥委員「支払い額で結構です」と呼ぶ)支払い額は、平成七年度の数字でございますが、請求金額として十二兆五千四百八十一億でございまして、そこから約千八百七十七億を引きました約十二兆三千億程度が支払い総額でございます。
#41
○土肥委員 そこで、末次さんはずっと厚生省にもおられた方でございますから予算のことについてお聞きしているのですが、今回の財革法に基づく医療費の削減についてはたくさん額が出てくるわけですね。しかも小さいのですよ、五十五億とか六十億とか。今お話にありましたように、十二兆からの支払いをしていらっしゃる業務の中で、レセプトの扱いを、審査の充実強化などと言われたって我々にはわからないわけですが、例えば、その支払基金の審査の充実強化などで五十五億円というのはどういうふうに考えていいか、教えていただけますか。
#42
○末次参考人 私どもの立場から申し上げますと、これはいわば結果の話ということになるわけでございまして、適正なレセプトが提出されますと、査定額というのは理論的にはゼロになる、こういうことでございます。ただ、経験的に行政当局の方でいろいろ試算をされまして、この程度ではなかろうかというようなことを推計されたというふうに私どもでは理解しております。
#43
○土肥委員 これは委員会でも聞いてみようと思っているのですが、支払基金の当事者であられる、理事長であられる末次さんもわからないというのでしょうか言えないというのでしょうか、私、八年間厚生委員会におりますけれども、こういう予算というのは初めて見たわけでございまして、こんなことを前からやっておられたのかなと思うと、ちょっと認識不足だったなと、私、反省をしておるわけでございます。やはり、どうしてこんな額が出たのですかということは一つ一つ聞かなければいけないというふうに思っております。
 きょうたまたま、大道先生の御用意いただきましたこの社会保険旬報の「「不正請求九兆円」を糺す」という文章を読ませていただきまして、終わりの方にこうあるのですね。要するに、不正請求があると言われるが、こういうふうにやられるのだと。
  保険医療の指導や監査は、厚生省と都道府県の保険課によって行われている。ここでは保険者や支払基金、国保連合会、その他内部告発など様々な情報を収集して、問題のある医療機関を選定する。そしてカルテの提出を求め、レセプトとの突合を実施し、医療担当者を呼び、対面で診療内容を話し合い、不正の疑いがあればさらに監査に移行する。
 私も、監査というのはどうやってやるのかなということをここで初めて知ったような思いですが、理事長としては、この文章を見てどう思われますか。――それでは、先に大道先生、この文章については、先生はお認めになるのですね。
#44
○大道参考人 現実にはこういう方法で行われていると思います。
#45
○土肥委員 私も少ない知識で、これに呼ばれますと、相当、お医者さんが震え上がるほど審査が行われて、何か、しばらく、一週間ほどは診療ができないぐらい痛めつけられるのだというような話も聞いておりますが、大道先生、そんなことはありますか。
#46
○大道参考人 私自身、指導監査を受けたことはございません。ただ、指導監査を受けた病院、その当事者の病院にとっては非常に重大な問題でありまして、おっしゃるように、震え上がるという表現は別としまして、非常に緊張して対応いたします。
 以上です。
#47
○土肥委員 ありがとうございました。
 ですから、審査というのはどうやってやるのかなと思うと、莫大なレセプトがあるわけですから難しいわけで、何かやはりテクニックがあるのだろうと思いますが、これを見ますとこういうことですけれども、支払基金の理事長の末次さんとしては、どのようにこれをお考えですか。
#48
○末次参考人 先ほども冒頭の説明で申し上げましたが、私どもの方の審査というのは、いわゆる架空ですとかあるいはつけ増しというような不正請求そのものを見つけるということを目的にしておるわけではございません。したがいまして、支払基金の審査の中でそれを発見するというのは事実上困難であろう、かように思っております。
 ただ、私ども、伺うところによりますと、やはり保険者のレセプトの点検、あるいは保険者と実際にかかりました患者さんとの間の情報交換等によりましてそういうものが発見されるということは間々あるというふうに聞いております。
#49
○土肥委員 どうもはっきりしないのですけれども。やはり審査機能というのは大変大事なものであることは十分認めますが、しかも、その審査のやり方が強権的だというので不正請求が許されるというわけでもございませんので、何かその中で合理的な方法はないものだろうかというふうに思うわけであります。
 支払基金の理事長として、これから介護保険も入るわけですけれども、これの審査がまた行われるというふうに思うわけでございまして、介護保険の事務量が入りますと、今の事務量から何割ぐらい事務量がふえて、そして審査機能はどういうふうになさるのか。まだ介護保険が出発しておりませんからちょっと先走った問いかけかもしれませんけれども、当然それは支払基金の側もお考えになっていると思いますが、意見をお聞かせください。
    〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
#50
○末次参考人 私、先ほど、介護保険が始まりまして、平成十二年度から介護保険の業務を担当するというふうに申し上げたわけでございますが、私どもで担当するのは保険者からの拠出金の徴収と市町村への配付といいますか、いわばお金の流れをコントロールするといいますか、そういう仕事を担当するというのが支払基金側の業務でございます。
 つまり、被用者保険サイドの保険者からお金を拠出していただいて市町村にそれを配付するというのが業務の内容でございまして、個々の介護保険の請求書、これを審査するのは国民健康保険団体連合会、こちらの方の業務というふうに整理をされております。
#51
○土肥委員 それはよくわかっているのです。
 では、大道先生、どうでしょうか。先ほどの文章によると、都道府県の保険課で支払基金も呼んで集まって審査をするわけですね。これは、介護保険でも当然こういうことが行われるわけですけれども。
 支払基金は、今末次さんの話だと関係ない、金を集めて配るだけだということですが、地元ではこの審査機関に入っているわけですから、その辺とのギャップはどうお考えですか。
#52
○大道参考人 まだやるかどうかわかっていないようであります。
 ただ、先ほどの指導監査に関してでございますが、非常に緊張すると申しました。かつて自殺者が出たぐらいの問題でありまして、私どもにとって、指導監査ということは非常に大きなダメージを与えます。
#53
○土肥委員 阿部先生にもう一回お尋ねいたしますけれども、この行政処分的な健康保険の制限というのは、独占的扱いであるからやはりそれなりの義務を課さなきゃならない、私は初めてそういう観点を教えていただいたわけでございまして、なるほど、そうだなと思うのですね。
 ところが、地方の医療の状況を見ますと、救急体制にいたしましても、一応電話等が指定されて、診療所であれば当番診療所の名前が出ておりますし、救急病院もあるわけでございます。しかし、本当に人間の健康というのは二十四時間、三百六十五日、いついかなるときに何が起こるかわからないわけでございまして、そういう義務を課していない制度である、こういうふうにおっしゃいました。
 私は、これだけ医療法及び健康保険法によって支えられている医療機関が果たしていただきたい義務の一つに、やはり、二十四時間国民の健康を維持していただくという制度が必要ではないか。救急に入りましても専門のお医者さんがいなかったりもするわけでありまして、私ども、そういうことは余り表立って議論をしたことがございませんでした。したがいまして、単に需給調整というような視点だけではなくて、お医者さんの責務というようなものを、もう一遍、医療法上もきっちりとうたわなきゃならないんじゃないかというふうに思っております。
 阿部先生は、こういう御指摘の中で、今後、どういう方法をもってやれば、こうした国民の健康、医療を守っていく診療所、医療機関ができてくるのかということについて、先生の御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
#54
○阿部参考人 阿部です。
 大変難しい質問をいただきました。
 まず最初に、今、独占的なものであれば逆に義務を課せという議論はここで余りやっていなかったというお話で、あれっと思いました。私どもの学問ではそれは常識だからであります。大変失礼なことを申し上げますが。
 それで、今、それでは独占的な業界でちゃんと義務が課されているかということで、病院を見ますと、私、患者の立場ですが、お正月とか盆とか木曜日とか日曜日、週末、不安なわけであります。
 もちろん、非常に重ければ、救急車が来てくれましてどこか運んでくれるであろうと思います。ただ、その救急車も、時々たらい回したとか、いたお医者さんが実は余り専門ではないということで適切な治療を受けられないということはありますが。それほど重くないとき、しかし、どうも変だな、少なくとも風邪ぐらいだと救急車をお願いするほどでない、家で寝ておれということでありますが、やはり心配だ、そういうときにお医者さん数軒に一軒はあいているという形にしていただけると非常に安心だ。それが、全部一、二の三で、木曜日なんか全部休んでいる。悪口言うと、何かゴルフ場に行っているんじゃないかとかと言う人がいるぐらい。そういうのは困る。とにかく、お医者さんは数軒に一軒は必ずやっているという形にしてほしいということであります。
 それで、先ほどお答えしたときにいろいろ申し上げたのに追加するだけの話をちょっとお話ししたいのですが、国保の財政の赤字をどうしてくれると言われた場合の一つの議論で、国保の保険料の徴収率が低いところがかなりあって、非常に苦労して取っている。
 あれについて、私は非常に理解できないのですが、税金というのはとにかく一〇〇%取る、現場でまけてはいけないというルールをつくるべきだ。一〇〇%取れないのはやむを得ないなんて言わないで、とにかくかけた以上は一〇〇%取る、しかし、かけるときに事情があれば減免する、そんなルールをきちんと明確にする、そうすべきではないか。今は、五年間据え置きをして、そのうち時効もかけているというわけです。
 それで、所得のない人はどうすると言うけれども、ルールとして納めるべきだったら納めていただいて、自宅を最終的に売ってもやむを得ない。そのとき、今持っている家を売れというのは気の毒だというのなら、また制度をつくって、持っている家を担保化してお金を貸して、最後に亡くなったときに清算するというリバースモーゲージとか、いろいろありますから、工夫の仕方があります。
 あと、社会的入院是正のためであれば、私は、やはり老人福祉施設を増設すればいいのだ。金がないと言われるけれども、保険への国庫支出がその分減るのですから、多少は回せるはずだという気はします。
 とりあえず、それだけお話しします。
#55
○土肥委員 ありがとうございます。
 そこで、では、医療側の形見先生、池澤先生それから大道先生お三人に、日本の医療の体制を、特にこれから健康保険の抜本改正を二年後にやろうというのです。そのときに現実的な話し合いに入ってまいりますので、その点も含めて、もうあと三分ほどしかありませんから、一分ずつぐらい、私が今言いました、医療圏あるいは医療法、健康保険法で守られている、支えられている医療制度が本当に国民の側に開かれたものになるために、そして、基本的には医者と国民の間の契約関係であって、保険制度というのはそれを補完するものであって、直接的ニーズに、国民のニーズに医療側がどうこたえているかというところが最大の問題点であって、制度を幾らいじって、財政だといったって、お金の話で決まれば、患者であり国民であるものと医療機関とはもうどうでもいいのかという話になりませんので、どうかその点で、抜本的改正の意図も含めながら、今の阿部先生の指摘についてどうお答えになるか、お願いいたします。
#56
○柳沢委員長 それでは、一分ずつお願いいたします。形見参考人。
#57
○形見参考人 的確なお答えになるかどうかわかりませんが、我々は、従来からも地域、患者のために自分の能力の範囲内で一生懸命努力してきましたし、自分の能力が及ばないというときには、もちろん病診連携で次の先生にお願いするというふうなことをやっておりましたけれども、それは自分たちの医者仲間で一生懸命やっておることでございますが、それを患者さん、また国民の皆さん方に広く開示と申しますか理解をしていただくという方向にこれからは進まないといけないと、今までもそうでしたけれども、思っておりますので、医療というものを広く国民の方に開示をして、それで御理解を得て、それで病気というものを治すのは我々とそれから御病人とが一緒の心にならないとうまくいきませんので、そういうふうな方向を進めていきたいというふうに私は思っております。
#58
○池澤参考人 一つの問題は、医療の側の立場の問題でございます。医療人は、あくまでも患者のニーズにこたえるサービスであるということに徹するべきであるというふうに思います。
 その上で、先ほど申し上げましたけれども、とにかく自分の専門性、あるいはその病院の性格というものを明確に出す。地域密着型であるか、それとも特定機能病院であるか、それとも療養型病床群として生き残るか、あるいは特殊なサービスを持ってやっていくか、そういうことでもって、それぞれの特徴を生かしながらネットワークをつくる。
 それから第二番目の問題としては、私は、老人医療というものを初めに無料にしたのは間違いであったというふうに思っております。これはあくまでも将来の展望を持たない、つまり、高齢化社会に向かうということの展望を持たなかったがために起こった現象でございまして、これは是正されるべきである。あくまでもすべての保険法におきまして定額ということでもって医療を行っていく、それによって財源問題も一つの解決の方向は見出し得るのではないかというふうに思います。
 以上でございます。
#59
○大道参考人 今一番求められているものは、やはり情報の公開だと思うのです。いわゆるインフォームド・コンセントといいますか、国民と医療側が本当に垣根なく話し合える状況をつくるということが大事だと思います。
 なお、やはり今、私、病院協会の立場で申しますと、私的の中小病院、またかかりつけ医が非常に衰弱してきているという事実があります。こういう点で、むしろ民間の病院または診療所に対して十分な理解を示していただきたい。日本の医療が、民の及ばざるところを官が補完するのか、また、このままいってしまうと官の及ばざるところを民が補完するのかというような状況であると思いますので、あくまで医療は、やはり地元に密着した民間医療機関を大切にしていただきたい、かように思っております。
#60
○土肥委員 ありがとうございました。終わります。
#61
○柳沢委員長 青山二三さん。
#62
○青山(二)委員 平和・改革の青山二三でございます。
 本日は、五人の参考人の皆様には大変お忙しい中を私たちのためにおいでいただきまして、また、いろいろと参考になる御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。
 今回の改正案でございますけれども、年々増加する医療費を何とか抑制しようというようなことで、病床規制をするというところが大きなポイントではなかろうかと思います。毎年一兆円も医療費がふえている。これは厚生省によりますと、病床数がふえると医療費がふえていく、このような前提のもとにいろいろと規制を加えていこうということではないかと思うのでございますけれども、ただいま、いろいろと参考人のお話を聞かせていただきまして、まず、形見参考人にお伺いをしたいと思うのでございます。
 現在、医療法で、病床過剰地域については、新たに病院の建設を行う場合には、都道府県知事が勧告をもって見合わせてもらうことができる。勧告がされたにもかかわらずその病院を建設したいというようなことで、各地でトラブルも起きているというようなことでございます。今回の改正は、こうしたケースに対応するために法律に明確に規定をするということで、新規参入を希望する医療機関に保険適用をしないというものでございます。
 既存医療機関を保護することを目的とした内容であるということで批判も当然あるわけでございます。また、今回の見直しによりまして、病床過剰地域では個々の病院の病床数が現在固定となっておりますので、発展しようとする意欲を持った病院も病床を拡大できずに、医療サービスの向上が図れないではないか、こういう意見。また、病院のサービス向上を図る上では新規参入による病院開設の競争が必要ではないか、このような考えがあるわけでございます。
 先ほどの形見参考人の御意見では、医療計画が崩れますとかかりつけ医が壊滅する、このようにおっしゃったと思います。そして、病床規制が必要である、また知事が勧告したにもかかわらず勧告に従わない場合には医療保険の適用はしないというようなことでございますが、先ほどの阿部先生のお話によりますと、医療法を健康保険法で規制するというのは、まるで江戸のかたきを長崎で討つのと同じようなものだ、このような御意見がございましたけれども、そういう点につきまして、何点かまとめて質問をしましたけれども、それぞれにお答え願いたいと思います。
#63
○形見参考人 お答えいたします。
 お答えしますと申しましても、小さな我が県におきます状況だけしかわかりませんので、それで御勘弁を願います。
 地方の医療審議会におきましては、各医療圏においての病院の新設とかあるいは病床につきましての検討をいたしておりますが、それは、それが必要であるとその審議会が認めたときには、既にそこが一応地方医療計画で病床がいっぱいでありましても、当県におきましては、それが救急のためにぜひとも必要だというようなとき、次の第二次の輪番制救急病院の確保のためにはどうしても病院、何床かが必要だということになりますと、それは医療審議会では、病床許可相当として返事をしております。
 そしてまた、それに続いて、何カ月か後に出てきます地方社会保険医療協議会におきましても、保険医療機関としての新規指定、病床の新規指定をいたしております。
#64
○青山(二)委員 それでは、池澤参考人にお伺いをしたいと思いますが、必要病床数の計算でございますけれども、必要病床数を上回れば過剰、下回りますと不足という、これが一つの考え方であるというような御意見でございます。
 過剰病床数なんでございますが、厚生省が問題としておりますのは、過剰病床数をどのように是正していくかというようなことで、大体実態が、先ほどのいただきました資料にも出ておりましたけれども、大阪府で約二万床が過剰である。そして、名古屋では約五千床ですね。高知県でも五千床ほど過剰になっている。四十七都道府県の中で二十三がもう全国平均を上回っているというようなことでございます。ですから、いまだに三倍近い地域間格差があるわけでございまして、今回の法律の改正で直ちにこの過剰病床数を是正するのではない、この前質問いたしましたときにもそのような御答弁をいただきましたけれども、せっかく改正するのであれば、やはりこの地域間格差がもっと是正されてもいいのではないかと思いますけれども、病床規制の実施自体が地域間格差の不均衡を存続させているという指摘もあるわけでございます。
 そこで、過剰地域とそれから不足地域、この整備についてはどのような対策が有効であるとお考えになっておられますのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
#65
○池澤参考人 御質問の点でございますけれども、私が申し述べたのは、必要病床数と言われているものが果たして現実に適応しているのかということについての疑問を出したいわけでございます。
 例えば、大阪で、必要病床数をはるかに二万床も上回っていて、しかしながら病床の稼働率は高いということは、裏を返せばそれだけその地域のニーズがあるということでございまして、したがってその数字が必要病床数という言葉の意味を不明確にしているというふうに思うわけです。
 むしろ私が提案したいのは、必要病床数というのはあくまでも戦後の復興の中で、これだけはもっともっとというふうにふやしていく、最低限ここまではというレベルまで数をふやしていくというところに意味があったのでございまして、現在のような段階にありましては十分医療機関もあるわけでございまして、その中で必要最低限、例えば、現在必要な病床数は上回るけれども、ここの地域では脳外科の病床数が足りないではないか、あるいは救急救命の病床が足りないではないかというようなことで、さまざまな補正を行っていくということをしなければ十分病床数とは言えない。
 その意味では、私は、ここに述べられている、今おっしゃいました高知だとか大阪の場合には、現にそこでそれだけ利用されているという点で、厚生省の考えた必要病床数の数字が間違いであった、補正すべきであるというふうに思っております。
#66
○青山(二)委員 それでは、必要病床数の適正な出し方、そのあたりを重ねてお伺いしたいと思います。
#67
○池澤参考人 もう一つの点でございますけれども、そのように必要な病床、必要といいますか、この場合の言葉で言えば必要病床数でやらしていただきますけれども、必要病床数ということが現実に合わないという場合に、これは二つの点がございます。
 つまり、それが、この表で、私の出しました資料で見ますと、実際の稼働ベッド数におきましても、例えば大阪におきましても高知におきましても、実稼働病床数が必要病床数を超えております。こういったところは、むしろ積極的に、稼働率を見た上で肯定すべき問題であるということが一つ。
 逆に、今度は足りないところにおいてはどうするかということでございます。必要病床数が足りないところにおいては、現に、その二次医療圏におきまして申請が出ますと、それについて審議された上でほとんど認められているようでございます。
 それからもう一つは、必要病床数の現在の考え方を変えないと、先ほど申し上げましたように、病院がありながら実際につぶれていって、八つある病院が四つになって、千床足りないところでもそういったことは起こる。その場合に問題になるのは、やはりその地域に合った、かなった医療サービス機関であったかどうかという点についての検討でございます。したがいまして、私はあくまでも、病院におきましても医療の質ということを十分に検討され尽くした上でベッドの上限というものは設定すべきであろうというふうに思います。
 しかしながら、あくまでもそれは必要病床数ではない、十分病床数ということで考えていかないと、医療機関と申しますのは、ほかの商品と違いまして、手にとって眺めてみて、お金も払わずにそこの医療を評価することはできない、一たんかかってみてお金を払った上でなければ、しばらくたってみなければ評価ができない、そういう性格のものでございますから、ちょっと食べてみて、これはまずいから別のものにしようというようなわけにはいかないものでございます。
 その意味では、あくまでも地域の十分なネットワークというものを医療者自身がつくる、それによってまた、必要病床数についてはそういったものの中で十分な検討がなされて、その上で十分な病床を確保していくということをやる。新しく参入するところは、そういったところのデータを十分に分析した上で、なお足りなければそれに参入していくというようなことでやっていく。相互の倫理が必要だろうというふうに思います。
#68
○青山(二)委員 それでは、知事が、過剰病床数に対しましては保険適用しないというようなことをするわけなんですけれども、私たち国民あるいは患者といたしましては、たくさんの病院があって、病床があって、病気になったときには心配なく医者にかかれる、こういうことが大変よろしいわけでございますので、もし、実際に必要な病床なのに保険が適用されないということになりますとおのずとかかれませんが、こういう規制に対しましてはどのようにお考えでしょうか。
#69
○池澤参考人 ただいまの御質問につきましては非常に当惑するわけでございますけれども、現在のところ、私の知る限りでは、みずから保険診療をしない、そういうことで保険診療を行っていない医療機関というものもございます。また、保険医療をするということで申請をした場合には、一般的には保険医療機関として認められておるわけでございます。
 そういう事態が仮に起こったらという点でございますけれども、この点につきましては、私は、今回の問題につきましては、どうして鶏をさばくのに牛刀を用いるんだろうかという感じがいたします。今までの保険法で十分に措置できるというふうに思います。つまり、医療内容としてそこが適切なものが果たして行えるかどうかということについて重大な疑義を持ったときに、今までのものでも、例えば安田病院事件等もございましたけれども、これと同じように、今までの法律においても十分適用し得るのじゃないか。
 むしろ、必要なことは、必要病床数という概念について、本当に現状に合った、現状に即した必要病床数ないしは十分病床数という考え方を厚生省自身が確立できるように、十分な調査というものを行うべきであろうというふうに思います。
#70
○青山(二)委員 それでは、阿部先生にお伺いしたいのでございますけれども、先生のお話は私たち国民の側に立ったお話のようでございまして、いろいろ問題提起をしていただきまして、なるほどなと思うことが随分ございました。本当に地域にたくさんの病院があって、いつでも病気になったときは心置きなく診てもらえる、こういうことが私たちにとっては大変よろしいわけでございます。
 そこで、いろいろと規制するに当たって、先生は市場原理に任せるのが大変いい方法だとお述べになられましたけれども、そうなった場合どのような結果が生まれるでしょうか。そのあたりをお伺いしたいと思います。
#71
○阿部参考人 市場原理に任せたらどうなるかということになりますが、保険という制度が絡んでいる限りは完全な市場原理に任せるわけにはいかないわけです。これで新規参入の規制をやめたらどうなるかということになると、どんどん新しい病院ができる、それで激しい競争が起きるということになりますが、ただ、それでも一つほかの場合と違うところがあります。
 ほかの商売ですと、新しく入ってくるものは、とりあえずダンピングをして競争業者を全部つぶして、次に独占事業者になって値段をつり上げるということが可能なわけですが、こちらの場合は保険で単価が決まっていますので、そういうような同業者をつぶすようなやり方はできない。それでも競争は激しくなりますね。そして、今の保険の仕組みのもとでは、あるいは医療費の仕組みのもとでは供給が需要を呼ぶということで、保険財政が非常に苦しくなるということも確かです。だから、競争を導入する場合でも、保険財政の方がそんなにひどい赤字にならない仕組み、先ほどからお話ししていますが、それを同時にかませた上でやっていく必要があるということです。
 それで、ただ、市場原理の話ですが、計画をつくればうまくいくかということですが、それで私が先ほど飲食店の話をしましたら、少し違うというお話をいただきました。確かにそうかもしれませんが、例えば、病院は百貨店ですから一通りそろうと言われても、耳鼻科のお医者さん、これは一つあったがどうもその方は余りうまくないというような場合、やはりお客の選択の権利は制限されるということで、やはりある程度余分にあった方がいいし、あと、先ほど申し上げるのを忘れましたが、重度障害者などを親切に診てくれるお医者さんって非常に少ないのですね。ただ、今のやり方ですと自由ですね。それを、やはりそういうのを地域できちんと診てくれるという仕組みを同時に確保されるということは必要で、今のような単なる新規参入規制だけでもだめだし、単なる市場原理だけでもだめで、ある程度競争を導入しながらある程度工夫をするということが必要だと申し上げているわけです。
 ただ、その工夫の仕方の中で、保険が赤字だから新規参入を規制するというだけではどうもだめだと言いたいわけです。それは、保険が大変だ、何とかしよう、この目的は妥当なんですが、法制度をつくるときは、目的に対して合理的に関連するうまい手法、ほかの手法と比べてより合理的な手法を選ぶということが必要なわけですが、今の新規参入規制というだけではうまい手法なんだろうか、ほかの手法を同時にいっぱい工夫していくことが必要ではないでしょうかと申し上げたわけです。
 あと、先ほど江戸のかたきを長崎で討つという話をされましたが、あれは医療法では公立病院については多ければ不許可だと書いてありますが、私立病院については多ければやめろと勧告するという条文になっていないのですね。それほどはっきりした規定がない。ところが、厚生省の解釈では、これはやめろという趣旨だというのですね。しかし、それなら最初から医療法に、医療機関が多過ぎたらやめろという勧告をしますとはっきり書く、しかもこれは保険の理由なんだということを書くということが必要なんですね。ところが、医療法には保険のホの字も出てこないわけです。それで、保険法の方では医療法の規定を引っ張ってきている。非常に不思議な、木に竹を接いだような規定で。それで、勧告というのは本来従わなくてもいいわけですから医療機関は許可にはなるのですが、全然違うところで保険はだめですねというので、江戸のかたきを長崎で討つような仕組みですねと。もしやる気があるのなら、正面から堂々とやったらいかがですかと。ただ、それは正面から堂々とやったら合憲になるかどうかというのはもう一度議論しますというふうに申し上げている次第であります。
#72
○青山(二)委員 大変ありがとうございました。時間になりましたので、終わらせていただきます。
#73
○柳沢委員長 吉田幸弘君。
#74
○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。
 本日は、参考人の先生方、御多忙のところ大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。時間の都合もありますので、早速ですが質問に入らせていただきたいと思います。
 今、先生方のお話を聞く中で、私が少し疑問というかもっと強く意見を述べられてもいいのじゃないかなということがございまして、ずばりお聞きしたい点がございます。実際、この医療費を下げなければいけないというときに、医療人、医療経営者側として、お医者さん、歯医者さん、またはその他関係の方々、ベッド数を規制することによって医療費を下げるんだ、実際こんなやり方ではなくて、ほかに何か手法があるのじゃないか。どうしてこんな、ベッド数を規制して、こういうやり方というか、いわばこれに納得しているのかどうか。この腹のうちをまず冒頭にお伺いをしたいというふうに思います。形見先生、池澤先生、大道先生、お願いいたします。
#75
○形見参考人 先生のおっしゃった意味は、患者負担を昨年の九月から保険の本人一割を二割にした、また、薬剤費を別途負担をしまして患者負担の増大を図ること、これによります影響は九月以降非常に大きいものがありますけれども、こういう患者負担増しによって医療費のいわゆる公的支出を控えるのがよろしいかということの御質問でございますか。
#76
○吉田(幸)委員 いや、ちょっと質問をはしょりまして申しわけございません。要は、去年の、医療費を上げたり患者負担を上げたり、今回のベッド規制をするなどして、結局患者さんが病院に来れなくする、来づらくするということによって医療費を下げようとする施策が今講じられていると思うのです。じゃ、医療関係者側として、実際そういう方法じゃなくてもほかに何か医療費を下げる方法がありますでしょうかと。
 例えば、カルテの問題あるいは患者離れの問題、通院回数の問題、もっといい方法があるのじゃないかなと私自身は思っているわけです。ですから、厚生省の方からこのような制度によって患者さんの数を減らしたり通院回数を減らしたり、総合的には医療費を下げなければいかぬ、こういう方法以外に何かお考えはありますでしょうかという質問でございます。
#77
○形見参考人 医療には必ず材料と申しますか、どんどん日進月歩の最近の医療技術についていくためには、次々と進歩する非常に高額な医療器械もそろえなければいけませんし、それから病気、疾病に対して次々と新しい薬ができてまいりますが、やはり新薬というのはどうしても高い薬価制度になっております。ですから、現在の医療技術を維持してそれに負けないように一生懸命我々がしょうと思えば、どうしても材料費が特に上がりますし、それからどうしても、ゆったりとした人員を確保するための人件費の問題、これはもう特に我々のところ、病院なんかにおきましてはいわゆる二十四時間とにかく夜間勤務というものが強いられますので、これに対する手当てというものは十分補てんしないととても人は集まってきてくれない。
 どうしても人件費とか材料費の高騰、これが自然増しでありますので、それを考えた上でさらにいわゆる医療費を少なくしなさいということは、やはり皆さんが病気にならないような予防的な措置、ふだんから健康に気をつけて大きな病気にならないように、そういうことを国民お一人お一人が将来のことを考えないといけないと思います。
 最近の子供たちは、小学校、幼稚園の早くから、スナック菓子だとかいろいろな嗜好品が変わりまして、小児のコレステロール値が非常に高くて、将来の成人病予備軍というのはもう子供のときからいっぱいおりますので、こういう人たちが将来糖尿病になるとか糖尿病腎症による人工透析にどうしても入らなければいけないとか、こうなりますと将来、非常に大きな医療費がかかります。
 我々は努力いたしておりますが、やはり国民が子供のときから健康で長生きできるような、はっきり申しましたら、医療費を食わなくてもいいような国民になれば、これが一番よろしいかと思いますが、そういうことは非常に難しいことだと思っております。
#78
○池澤参考人 まず第一点は、現在の日本の高齢化、高齢社会、超高齢社会に向かっていく流れの中にあっては、医療費というものはふえていくものだという前提はとらなければならないというふうに思うわけです。
 それから、第二番目の問題といたしましては、では、どのようにしてそれを財政的にコントロールできるのかという問題でございます。
 一つは、最近になって厚生省の方で進めております、急性期医療においても包括医療を行っていく、そのために、アメリカ等のDRG、PPSと言われている方法の検討が、厚生省が国立病院を中心として進める動きがございますけれども、そういったことを積極的にやりながら、しかしながら、あくまでも日本的なものとしてこれを検討していくということは私も賛成でございまして、これはある意味では、急性期診療も包括ということができればよろしい。そういう将来の方向を前提にいたしまして、先ほど定額ということを申し上げましたのは、そのようにマルメになったときに全体として定額ということでもって処理していくということが必要だろう。しかしながら、当面の問題として、あくまでも出来高払いであるならば、定率という問題になっていくというふうに思います。
 それから、我々の内部の問題としては、やはり、診療の中で特に検査と言われる部門ですね、部分、これが非常に重複が多い、そういうことをしみじみ感じます。
 つまり、診療所から紹介された患者さんが病院に来る。既にデータをお持ちです。それなのに、もう一回そこで検査しましょうというようなことになる。それが、時期的に例えば一カ月なり二カ月なりずれていれば、最近のことを知るという意味では必要であるけれども、それが数日であるのに、もう一回とるというようなことが、私の病院ではやっておりませんけれども、多くの病院では、少なからぬ病院でそういうことをやっている。特に大学病院でそれをやることか多い。これは、大学病院が変に学問的な厳密さということを強調する余り、必要でない、あるAの疾患以外のものではないということを証明するために余計な検査まで全部やるというようなこと、しかもそれを保険の財源を使ってやる、これは非常に不届きだというふうに思うわけです。
 私は、そもそも、大学病院の診療内容につきまして、ある病院長から聞きましたけれども、月六百万を超えるような診療行為というものはざらにある。そんなものの中で、本当にそれが必要だったのか、本当にそれだけの治療が必要だったのかと疑われるのが非常に多い。やはり、それは私も問題だというふうに思います。
 現在の保険財政の中で最も有効に限られた財源を使っていくということのためには、それぞれの医療機関が、自分たちは保険診療をしているのだという認識の上に立って、あくまでもその範囲内で、しかも検査が重複しないような努力ということをしていけば、数兆円の額は現在のレベルでも下がるというふうに思っております。そういうような内部努力が必要であろうというふうに思います。
#79
○大道参考人 先ほど形見参考人が申されましたように、医学医術の進歩、また高齢社会の到来で、当然医療費は上がってしかるべきだと思っております。それも、現状から見ますとまだまだ、今言っているような幅じゃなくて、かなり上げないと本当の需要は賄えない、こう思っております。また、国民のニーズも非常に変わってきております。
 私どもの日本の病院というのは、外国に比べまして面積も人員も三分の一というような状況でありまして、私の病院にもアメリカあたりから留学に来ている医者がおりますけれども、自分が病気になったら絶対に日本の病院に入らぬ、日本の病院は牢屋だというようなことを言っておるわけでありまして、まだまだ、日本の病院のアメニティーも非常に低いものだと思っています。それを効率的にするために恐らく地域医療計画はできておりますし、また、病診連携、医療機関の連携等が進んでいる一つの側面もあると私は思うわけですね。
 そういうことでありまして、今医療側も、またシステムとしても医療費を抑制するような方向に行っておりますけれども、これには限度がありまして、やはり医療費を上げていただきたいということをお願いいたしたいと思います。
#80
○吉田(幸)委員 では次に、レセプトの審査についてお伺いをいたします。
 不正請求云々という話になりますが、先ほど池澤先生がおっしゃいました、他病院で検査をしていて、大学病院等は、また来て、そこで検査をする。ただ、今の制度において、例えば具体的な例を示しますと、親知らずを抜くためにオルソパントモグラフという大型のレントゲンを撮ります。これを撮らずに埋まっている親知らずを抜きますと、点数がおりないのです。要は、親知らずを抜くためにはオルソというレントゲンを撮ってくださいねと。
 私が、それを撮らずにじゃなくて、父親の診療所にその大型レントゲンのフィルムがあったものですから、それを持って自分の診療所で抜いたわけです。そうすると、支払基金からすぐ呼ばれました。これは不正請求じゃないか、実際に抜いたのかと。これが、私ども医療関係者、医療に従事している者からしてみれば、一体、これを不正請求と言うのはいかがなものか。気分が悪いとは言いませんが、こういうことをしっかりやっていかなければ、今の検査の問題というのはやはり、病院側としてみてもとらざるを得ない。
 そこで、池澤先生にお伺いをいたします。
 今先生のおっしゃった中に、私はそういうことはないという話だったのです。ということは、すべての医療関係者おのおのはそう思っている。ですから、みんなが思っているにもかかわらず、どうしてこのレセプト審査の強化をしなければいけないのか、どうしてベッドの数を減らして、先ほどの話になりますけれども、医療費を下げなければいけないのか、ちょっとやり方が違うのじゃないかなというような気がしております。
 ですから、もっと簡単に、医療関係者の方々に対して、医療費もこれ以上膨れ上がるともう大変なんだ、どうにかしなければいけないんだ、では、そこに対して十分な協議がなされて、ほかの部分で、要は経済的な部分あるいは患者さんの来やすさはどうかという問題をコントロールをすることなく、現場の医療行為でコントロールをして医療費を下げる方法はないのでしょうか。
 先ほどの質問と関連しているようなんですが、私の意見として、要は、審査を強化して医療費を下げるというのは、ちょっと現場の人たちからしてみればよくないのではないかなという気がしております。
#81
○池澤参考人 私が先ほど申し上げたことと、いわゆる不正請求という問題と少し性格が違うというふうに私は今お聞きいたしました。と申しますのは、不正請求というのは、明らかにその疾患に対して適切でない診療行為が行われているということ、あるいはやらないのにやったというようなことがなされているということだと思います。
 私が先ほど申し上げたのは、現在の医療費の抑制の一つの問題として申し上げたいのは、ある検査がたとえその患者さんにとって必要であっても、それを繰り返し、何も紹介先の行く先々でやる必要はないだろう。現にそういったことが、それぞれの医療機関からレセプトとして行くために、結果的にはこれが重複しているかどうかということについての最終的なところを支払基金の方が見逃してしまうこともあるのじゃないだろうか。しかし、そういう重複検査というものは、その意味で、必要なものであってもやはり余分ではないかという意味で申し上げておるわけです。ただし、これは不正という概念で申し上げているわけではございません。
 不正請求ということについては、また一つ問題点もございます。不正請求だと言われていることの中には、保険適用でない薬の使い方ということがあります。保険ではこれしか使ってはいけないということに対して、しかしながら使ってしまうということになります。
 そういうことにつきましては、しかし、幾つかの問題がございまして、二つだけ申し上げますと、一つは、小児用バファリンという子供用に使う薬がございます。しかし、小児用バファリンというのは大半が大人が飲んでおります。これは御存じだと思いますけれども、脳梗塞予防のために飲んでいる方はこの先生方の中でも少なからずいらっしゃるのじゃないかと思いますけれども、これは小児用というふうに言われているものが大人に堂々と通っております。そういった薬の使い方もある。
 あるいはペルジピンという薬がございます。ペルジピンという薬は、脳外科の学会でもしばしば言われておりますけれども、脳外科の手術の後に一定期間、一定期間というのは、現在保険で認められている期間以上に使えば、患者の安全を守れて、したがって、重篤な状態を招いて医療費をさらにかさませるというようなことなく、当初に十分な期間使えばいいようになっております。しかしながら、それを保険請求の上では何日間以内ということになっておりまして使えないようになっている。そういうことによって、医療費はさらに膨大になっていくというような結果が起こります。
 そのような意味で、医療費を抑制するという効果の中には、今まで不正請求というふうに言われている問題でも、なおそういう問題は残しているということがございます。小児用バファリンについては保険の適用をそこまで認めるべきだというふうには思いますし、そのような意味で、私は、不正請求と言われている内容の個々について具体的に検討して、これは確かに不正だと、先ほど申しました、やっていないことをやっていると言ったり、そういうことは不正には間違いありませんけれども、不正請求というようなことの中には、現在十分に検討する問題も含まれているということを申し上げたいのです。
#82
○吉田(幸)委員 最後に、末次先生にお伺いをいたします。
 不正請求が発生する時点、これはレセプトに記入をする時点ではないと私は思っております。ですから、問診のところで病名をつけるときあるいは診療行為を行うときに不正が発生するのじゃないか、これをレセプトから実際にわかるのかなというようなことについて、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
#83
○末次参考人 先ほど来何度か申し上げましたが、私どもの方で審査をいたしております審査の基準というのは、結局は保険ルールにのっとっているかどうかということでございまして、その枠内であるかどうかを私どもの方で審査をする。したがいまして、診療行為そのものが不存在あるいはつけ増しというようないわゆる不正そのものは私どもの審査ではわからないというのが現実でございますし、また理論的にもそういうことだ、こういうふうに思っております。
 それでは、私どもの方でなぜそういう審査をやっているかということになりますと、これはやはり支払い側であります保険者の方から納得して払っていただけるような内容である必要がある。せんじ詰めれば、これは保険ルールの範囲内であるということを私どもの方でいわば認証する、保証するということによって保険者が納得して支払っていただけるのではないか、かように思っております。
 審査について、審査を強化するということについていろいろ御意見があるようでございますが、私どもの方としては、要は審査が公平に行われているかどうか。ある部分では審査が行き届き、ある部分では見落としがあるということでは全体としてやはり公平を欠くのではないか。そういう意味で、審査の精度を均一に保つということを申し上げているわけでございますので、十分御理解をいただきたいと思います。
#84
○吉田(幸)委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
#85
○柳沢委員長 瀬古由起子さん。
#86
○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 私、最初に、支払基金の末次さんにお聞きしたいと思うのですけれども、今お話がございましたように、レセプトの点検と不正請求、これは全く別の問題で、今の支払基金の審査ではそういう不正請求などは審査できない、あくまでもルールが守られているかどうかなんだというお話だったのですね。
 そこで、今厚生省は、医療費を削減するために、ともかくレセプト点検を強化して、例えば政管健保でいいますと一千億円削るのだとかいうように言っているわけです。目標を決めてどんどん削れというように言われると、支払基金としてはどういう点検の仕方になるでしょうか。
#87
○末次参考人 これも先ほどお答えをいたしましたが、私どもの審査というのは、今申し上げましたように、ルールにのっとって請求が行われているかどうか、診療が行われているかどうかということをチェックするわけでございます。したがいまして、全体のレセプトが非常に適正なものであるということになれば当然査定額としては下がってくる。逆でございますとこれは上がるということで、出されましたレセプトの内容によって左右されるということでございます。
#88
○瀬古委員 要するに、基準を決めて、金額を決めて、目標を決めて削りなさいと言われると、どういう立場でそれを見るということになりますかということなんです。そんなことできるでしょうか。
#89
○末次参考人 私どもはあくまで提出されましたレセプトを基準に審査をしておるわけでございますので、それ以上のことはないというふうに申し上げたいと思います。
#90
○瀬古委員 そうしますと、あくまでも基準に基づいて公平に審査をしていただくということになるわけですが、さらに厚生省は、診療報酬、レセプトの点検については査定率が問題なんだということを最近言い出しています。例えば、支払基金と国保連合会の査定率はどうか、各県の査定率は違う、これが余り違うのは問題だなどと言っていますけれども、これだって実際には、その中の不正請求と言われるものは当然あなたの方ではチェックできないわけですよね。
 そういう審査の中身でも、例えば資格喪失の問題だとか事務上のミスだとかいろいろありますよね。それをごちゃまぜにして、査定率を何とか平準化しなければいかぬとか、よその県と違っていては問題なんだというように厚生省が言っているということになりますと、その辺は基金としてはどのように受けとめられるでしょうか。
#91
○末次参考人 これは、地域によって診療のパターンなりケースの取り扱いに若干の差があるということは巷間言われております。事実そういうこともあろうというふうに思っております。
 それからさらに、保険ルールの問題で申し上げますと、保険ルールがどこまで周知徹底しているかということについても全国必ずしも均一ではないのじゃないかという気がいたしておりまして、そういうものを総合して、どういう数値といいますか、バランスであるべきかということについてはいまだ定説がないというのが実態ではないかというふうに思っております。
#92
○瀬古委員 要するに、ルールに基づいてちゃんとそれぞれやっているかどうかというのを見られるわけですから、それによってどれだけ削減するかなんという発想はもともとおかしいというふうに思うわけです。
 しかし、実際上は、そういう方針を掲げて今厚生省はやっています。そういうやり方で、例えば審査を受ける側、医療機関の側でいいますと、先ほど大道先生の方からお話ございましたように、いろいろな診療の審査の上で事務上の問題点があったり、それから解釈が一致していない問題だとか複雑な診療報酬表があったりして、大変困難な状況の中でそういう審査が行われている。こういう中で、さらにともかく審査を強化するぞという方向がどんどん打ち出されたら、診療機関、医療機関としてはどういう状態になっていくでしょうか。その点、大道先生にお伺いしたいと思います。
#93
○大道参考人 確かに、私どもが請求しますと減点通知が参ります。その中で事務上の記載不備による返戻もあります。事務上の点検につきましては、委員おっしゃいましたとおり、非常に複雑なものですから、一生懸命勉強したり、またコンピューターの打ちかえをしたりしましても当然出てまいるわけです。
 それについては、私どもの病院の中の事務局としては一番大きな悩みでございます。何とかこれはもうちょっと単純化されて、すきっとした請求ができればありがたいと思っております。
 以上です。
#94
○瀬古委員 必要な医療をみずから抑制するといいますか、ある意味では自己規制みたいなものが働くということがないでしょうか。
 それから、これはおかしいぞといってどんどん附せんがついてきたり、これは幾つかの請求間違いだと言われると、実際にはもう初めからそれをみずから自粛してしまう。そういう問題は出てきませんでしょうか。
#95
○大道参考人 医師も、そういういわゆる療担規則と申しますか、点数表の勉強をいたしましてそれぞれやっておりますけれども、その点数表は面倒くさいからいいように云々と、そういうことはございません。
#96
○瀬古委員 実務上の問題など、それから、点数表の大変複雑な内容などもぜひ改善しなければならないというふうに私たちも考えております。
 そこで、必要病床数の問題、中野病院の池澤先生にお聞きいたしますけれども、先ほど、地域の自主的なネットワークを中心にした、その地域に見合った医療体制の充実、これが大変大事なんだということを私も大変感銘深く聞かせていただきました。
 今厚生省が考えている二次医療圏、こういうものが地域や実態に合ったものになっていないという問題は先ほどから指摘されているとおりだと思うんですね。それで、実際に先生が先ほど指摘されました、例えば熱海伊東の医療圏なんかですと、熱海にたくさん病院が集中していて、伊東は足りない。しかし、同じ医療圏なのでなかなかそこの市民の皆さんが不便されて、市内の病院に行けずに医療圏外のところへ行ってしまうという、こういう大変おかしい問題もたくさん出てきております。
 ですから、私は、やはり地域の実情に合った医療圏の設定の仕方、それから、本当にここにどういう医療体制が必要なのかということをもっと自主的に、その実情に見合ったやり方というのを大事にするような医療圏の見直しということが大変大事だと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
#97
○池澤参考人 おっしゃるとおりでございまして、私は、厚生省のそれを担当する方々が、実を申せば、実際に病院医療なり地域医療なりをやりた人たちがそういう実情を十分に知って、その場に乗り込んでいって、その地域ごとのネットワークづくりというためにどういつだ範囲内でやっていくかということまで十分検討してやるべきだと思います。そういった努力をせずに机上の計算だけでもって出していくということでは、国民の医療を守るという立場からは大きく背馳していくというふうに思います。
#98
○瀬古委員 最後に、もう一点、質問します。
 池澤先生にお願いしたいんですけれども、今回、既存の病院についての医療従事者の確保が困難な場合は、保険医療の取り扱いの取り消しという問題がございます。過疎の地域だとか医療従事者の確保が困難だというところも実際に私はあると思うんですね。そういう場合に、一律的に取り上げということになりますと、病院などが実際にはなくなっていく、つぶれていく、こういう状況も考えられると思うんですけれども、国民皆保険制度を守るという立場から、この扱いというのはどのように考えてみえるでしょうか。最後にお伺いします。
#99
○池澤参考人 実は、私自身がその経験をしたことがございます。
 私自身の中野総合病院の分院が伊豆長岡にございました。ここで温泉病院をやっておりましたけれども、いわゆる標欠病院でございまして、十分にドクターを派遣できず、また、看護婦の体制も十分でないのに六十床の温泉病院、リハビリテーションの病院を経営しておりました。しかしながら、これはその地域の住民にとって決して好ましくないし、したがってまた、経営も赤字経営でございました。そういう意味では、これは国民の医療という地域医療のためにとってはプラスでないということで、現在、地元の有能な神経内科のドクターにお譲りいたしまして、そのドクターが地域の医療を、ネットワークをつくって、順天堂附属病院あるいは地域医師会との提携のもとに非常にうまくやっております。
 大切なことは、ドクターが不足するあるいは看護婦が不足する、その医療機関を守ることを中心に考えるのか、しかしそうではなくて、その地域の患者さんのニーズを大切にするのか、それは選択の問題だと思います。私自身の例で言えば、その病院は昭和三十四年だか五年だかにつくりました。それを三十年近く運営いたしましたけれども、私が行ってからはそれを廃止いたしました。やはり必要なことは、その地域の患者さんに果たしてこたえられる医療機関であるかどうかという判断を経営者側は医療の倫理として持つべきだろうと思います。
 以上です。
#100
○瀬古委員 ありがとうございました。
#101
○柳沢委員長 中川智子さん。
#102
○中川(智)委員 きょうは、お忙しい中を本当にありがとうございました。社会民主党・市民連合の中川智子と申します。
 私も、今回のこの法案が通りますと、ますます患者にとってよいサービス、医療が受けられなくなるのではないかという不安を持って、患者の立場から質問をさせていただきたいと思います。
 私の持ち時間は七分ということで、非常に悲しい七分だけなのですので、最初に質問をちゃっちゃっちゃっと何人かの方にお願いして、あとは少し御配慮をいただきながらのお話を聞かせていただきたいと思います。
 形見参考人にお伺いしたいんですけれども、私も、子供と、そして親の介護の中で、本当に二十四時間体制の病院がないことの悲しさ、そして、すぐに病院に行くときに、やはり夜だと救急車を使わざるを得ない。そして、救急車で二時間かかるところに連れていかれました。そして、夜中の二時ごろに小さな子供と私はほうり出されて、もうタクシーも拾うこともできない。もう本当に歩いて帰ることなんてもともとできないわけです。そういうことですとか、そしてまた、私の暮らしておりますところでは新しい医療機関ができないものですから、ついついやはり近所のところに行ってしまって、がんの発見なんかがとうとう末期状態までなって亡くなってしまって、もっといいサービスがきっちり受けられる、そしてインフォームド・コンセントもちゃんとできるような病院があればなということはもう日常会話としてされるんですが、今回のこの法改正は、形見参考人にとって、患者にとってどのようなメリットがあると思われますでしょうか。
 この法案がもしも通りますと、患者にとってのメリットは何かということをまずお伺いしたいと思います。
 そして次に、大道参考人にお伺いいたしますが、私は兵庫県に暮らしておりまして、私の知り合いも安田病院とか大和川病院のときに入っていて、そのときのさまざまな苦労話、そして、その後の悲惨な状況というのも今でも耳にいたします。やはりあのようなことが二度と起きないようにするために、今回の法案というのが通るとむしろ逆行するのではないかという懸念がございますが、これに対して、あの事件の反省を踏まえて御意見を伺いたいと思います。
 そして、阿部参考人にお伺いしたいんですが、阿部先生には、阪神・淡路大震災の被災者支援法も、たくさん私たちに参考になる論文を読ませていただいて、この場で改めて感謝したいんですが、今、患者にとってあるべき医療システムをつくるための法整備がもしできるならば、社民党は患者の権利法をずっと主張して、この間成立に向けて尽力しているんですが、患者の権利を守るために今法整備が必要ならば、どのような形でできる部分があるのか。いわゆる法曹界にいらっしゃる先生としての御意見を伺いたいと思います。(発言する者あり)
 委員長、ちょっと私語が多いみたいなので、御注意をお願いします。
#103
○形見参考人 今回の健康保険の改正案で、我々のところでは、いわゆる必要病床数を超えての病床数の申請に対する保険医療機関としての歯どめをかけたいということと、それからもう一つは、いわゆる不正請求、不正問題を防止する一つの策としてもっと厳しい処置、二年を五年にするということ、これをデメリットでなくてメリットというふうに考えるかということでございますか。そうじゃない……(中川(智)委員「この法律が患者にとってどのようなメリットのある法律になるだろうかということです、いわゆる病床規制ということが」と呼ぶ)病床規制ですか。病床を規制することは患者にとって必要かどうか。はい。
 患者さんにとって必要ということ、どんどん病院ができて、それで、ふえればそれだけ保険が使えれば便利だというふうな、そういうだけの考え方の患者さんに対しては、それを患者さんがメリットというふうにお感じになるという、これは我々は、やはり地域におきまして、患者さんと我々との間の対話がもう一つしっくりいっていないところではそういうことが起こるかと思いますが。
 先ほどの救急のお話でございますけれども、我々のところの田舎では、離島なんかにおきまして、離島で重症患者が発生したときに、それを対岸の病院へ運ぶために二時間かかるということはございますけれども、まあ、市内でそんなに十五分以上もかかるということは、まず今のところは私のところではございません。
#104
○大道参考人 安田病院のことをお尋ねでございますが、安田病院はこれはまさに犯罪者でありまして、我々大阪におる病院としては本当に残念なことだと思っております。
 病院協会でも、こういう倫理の高揚ということに関しましては、勉強会とかいろいろ機会を見つけてやるのでございますが、この安田病院関連三病院のうち一つだけ会員でありますけれども、全然出てこられないということで、全く別の世界の方でありまして、これを参考に、参考にというとおかしいですけれども、これを機会になお一層、私ども大阪府病院協会では倫理の高揚に一生懸命努めてまいりたいと思っております。
#105
○阿部参考人 患者にとってあるべき医療は何かというのは、まことにおっしゃるとおりで、先ほど申し上げましたように、障害者でも夜中に歯が痛くなっても、いつでも近くで診てもらえる仕組みというのが必要だと思います。ただし、何でも安ければよいというのはおかしいので、それなりの自己負担が要ると思います。
 それで、法整備はどうかというお話ですが、本格的な検討というのはここでぜひともやっていただきたい。それを抜きにして、ただ供給がふえては困る、保険財政が大変だというだけで議論されるのはどうも変だと思いますが。
 先ほどの、あるべき医療を受ける権利を保障するためには、供給制限はかえってマイナスだと思います。供給は少し多いぐらい、それで皆さん競争するぐらいがよい。ただ、供給がめちゃめちゃ多くなったらどうかという心配ありますが、それについて、とりあえず今できるだけやるべきことを考えるべきではないか。
 それで、出来高払いとか患者の自己負担とかという話が出ていますが、それから安田病院の件もありますが、あるいはレセプト審査で非常に難しいだろうと思いますが、私は、不正の通報制度というのはやはり税金も含め全部やるべきだ。ドイツあたりでも始めるらしいですが、不正を通報して、本当はその人の言うとおりであり、その証拠がちゃんとあったら、一%で割り戻すといったら、十億円の不正を見つけたらもう大変な金だということになります。
 じゃ、お医者さん、悪いやつだと思うかというのだけれども、悪いお医者さんだけが捕まって、よいお医者さんは捕まらないということであって、問題は、不正が何かということをあらかじめ明示することと、ちゃんとわかるようにしておくことが大事だと思います。最初から帳簿をごまかしているなんというのが捕まるだけであれば、ほかのお医者さんは心配する必要はないと思います。それで、よいお医者さん、腕のよいお医者さんがもうかるような情報公開、こういうことをいろいろやった上で、なおかつそれでも供給制限をすべきかどうか、そのときにまた考えたらいい。とりあえず、今は急ぎ過ぎだと思っています。
#106
○中川(智)委員 ありがとうございました。
#107
○柳沢委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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