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#1
第142回国会 法務委員会 第2号
平成十年三月十一日(水曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 笹川  堯君
   理事 鴨下 一郎君 理事 橘 康太郎君
   理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君
   理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君
   理事 上田  勇君 理事 権藤 恒夫君
      太田 誠一君    奥野 誠亮君
      木村 義雄君    谷川 和穗君
      谷畑  孝君    中川 秀直君
      中野 正志君    横内 正明君
      枝野 幸男君    左藤  恵君
      佐々木秀典君    福岡 宗也君
      漆原 良夫君    安倍 基雄君
      木島日出夫君    保坂 展人君
      園田 博之君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 下稲葉耕吉君
 出席政府委員
        法務政務次官  横内 正明君
        法務大臣官房長 但木 敬一君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 山崎  潮君
        法務省民事局長 森脇  勝君
        法務省刑事局長 原田 明夫君
        法務省矯正局長 坂井 一郎君
        法務省保護局長 本江 威憙君
        法務省人権擁護
        局長      横山 匡輝君
        公安調査庁長官 豊嶋 秀直君
委員外の出席者
        警察庁長官官房
        審議官     奥村萬壽雄君
        警察庁生活安全
        局少年課長   勝浦 敏行君
        総務庁青少年対
        策本部企画調整
        課長      竹林 義久君
        外務大臣官房外
        務参事官    樽井 澄夫君
        文部省初等中等
        教育局中学校課
        長       河村 潤子君
        最高裁判所事務
        総局掲示局長  白木  勇君
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  安倍 嘉人君
        法務委員会専門
        員       海老原良宗君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十一日
 辞任         補欠選任
  下村 博文君     中野 正志君
同日
 辞任         補欠選任
  中野 正志君     下村 博文君
    ―――――――――――――
二月十二日
 裁判所速記官制度の維持・充実に関する請願
 (木島日出夫君紹介)(第六七号)
 組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(木島
 日出夫君紹介)(第一〇六号)
同月二十日
 組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(松本
 善明君紹介)(第二八六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二八七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
二月十日
 民法における夫婦別姓制の導入反対に関する陳
 情書(静岡県周智郡森町森二一〇一の一森町議
 会内村松康彦)(第四号)
 裁判官及び検事の増員に関する陳情書(広島市
 中区上八丁堀二の六六倉田治)(第五号)
 法務局職員の増員に関する陳情書(栃木県鹿沼
 市今宮町一六八八の一鹿沼市議会内石島克吉)
 (第六号)
 組織的犯罪対策法の制定反対に関する陳情書
 (長野市東町一一六石坂貞人外十四名)(第七
 号)
 嫡出でない子の出生届に係る民法及び戸籍法等
 の改正に関する陳情書(東京都千代田区霞が関
 一の一の三鬼追明夫)(第五六号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国
 内治安、人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○笹川委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、法務行政等の当面する諸問題について、法務大臣から説明を聴取いたします。下稲葉法務大臣。
#3
○下稲葉国務大臣 委員長を初め委員の皆様には、平素から法務行政について格別の御尽力をくださり、厚く御礼を申し上げます。
 この機会に法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 我が国は今、新しい時代の創造に向けて変革のときを迎えております。このようなときに、法秩序の維持と国民の権利の保全を使命とする法務行政は、改革を支える基盤として、いよいよその役割が重大になるとともに、新しい時代の要請に迅速的確にこたえ、みずからを変革していくことが求められております。私は、このことを念頭に置き、全力を傾注して国民の期待する法務行政の推進に取り組んでまいる所存であります。
 以下、当面の重要施策について申し述べます。
 第一は、治安の確保及び法秩序の維持についてであります。
 最近の犯罪情勢を見ますと、殺人、強盗、誘拐等、国民生活の平穏を脅かす凶悪重大事犯が後を絶たない上、大手証券会社、銀行といわゆる総会屋との間の利益供与事犯、証券取引をめぐる不正事犯、中央省庁職員や公団理事らによる汚職事犯など、経済や行政の根幹にかかわる事犯が相次いで摘発されるに至っております。また、国際密航あっせん組織を背景とした集団密航事犯が頻発するなど、犯罪の国際化の傾向も一段と強まっております。
 私は、このような犯罪情勢を的確に把握しつつ、時代の要請にこたえ得る検察体制の一層の充実を図り、国民一人一人が安全で安心して生活できる公正な社会の構築に努めてまいります。
 さらに、近年、暴力団等の反社会的勢力による不正な利益を追求する犯罪、薬物・銃器事犯など種々の組織的な犯罪が発生しておりますが、これらの犯罪に適切に対処するための刑事法の整備が国内的にも国際的にも重要な課題であることにかんがみ、今国会に法案を提出したいと考えております。
 なお、オウム真理教に関しましては、組織の再建が進められ、殺人をも肯定する危険な教義を復活させるなどの動向が認められることから、公安調査庁において、今後も十分な調査を継続し、公共の安全確保に万全を期する必要があると考えております。第二は、犯罪者等に対する矯正処遇と更正保護についてであります。
 犯罪者の矯正処遇に関しましては、近年、被収容者の数が増加を続けている上、暴力団関係者、覚せい剤事犯者、外国人、高齢者など処遇に困難を伴う被収容者が依然として高い比率を占めております。また、非行少年の処遇に関しましても、凶悪な事件を犯す少年が急増しているとともに、個々の少年が抱える問題が多様化、複雑化しており、さまざまな困難が生じております。このような状況に対応するため、引き続き個々の被収容者の特性、犯罪傾向等に応じた適切な処遇に努めるとともに、特に少年につきましては、健全な成長を促すよう、個々の少年が抱える問題を的確に把握し、計画的かつ効果的な矯正教育の推進に努めてまいります。
 また、近時、社会の耳目を集める少年による凶悪事犯が発生し、これに関連して、少年法制に対して各般の意見が示されております。少年法につきましては、このような各般の意見にも十分配慮しつつ、少年に対し適切な処遇を実現するための基礎である事実認定の問題など少年事件手続のあり方について、真剣に検討を進めているところであります。
 更生保護に関しましても、近時、処遇困難な保護観察対象者が増加しております。一方、地域社会の熱意あふれる奉仕家が、犯罪者や非行少年を無報酬で補導援護する保護司制度は、極めて重要な役割を果たしてきておりますが、社会構造及び個人の価値観の変化に伴い、保護司適任者の確保が困難になりつつあります。そのため、保護司とその活動に対する一般国民や地域社会の理解及び組織的支援体制を強化する必要性が著しく高まっているところであり、保護司制度の充実強化を図るための法案を今国会に提出したところであります。
 第三は、民事法の改正、民事行政事務の充実及び訟務事件の適正円滑な処理等についてであります。
 民事法の改正に関し、新しい時代の要請にこたえた法整備を積極的に進めてまいります。
 まず、金融システム改革の重要な柱である債権の流動化を促進するため、債権譲渡の第三者対抗要件に関する民法の特例を定める法案を今国会に提出したところであります。
 また、公務員がその職務に関し保管する文書等を対象とする裁判所の文書提出命令の制度につきましては、行政情報公開制度に関する議論を踏まえて検討を進めており、今国会に法案を提出したいと考えております。
 さらに、近年、インターネット等を利用ずる電子取引が増加しておりますので、その安全を確保するための電子認証制度等について鋭意検討してまいります。
 民事行政事務に関しましては、登記事務のコンピューター化を平成十六年度までに完了させるなど、行政情報化を推進し、オンラインによる登記情報の提供等、国民のニーズにこたえる質の高い行政サービスの実現に努めてまいります。
 なお、登記事務のコンピューター化に関しては、その本格的展開に向けての移行作業が今後数年の間にピークを迎えます。そのため、これに伴う経費の増加が避けられないところであり、平成五年以来改定を見合わせてきた現行の登記手数料を改定することとしておりますので、御理解をいただきたいと考えております。
 訟務事件の処理に関しましては、本年は、訟務制度が創設されてから五十年目を迎えました。近年の情勢といたしましては、事件数が依然として高い水準にあるばかりでなく、その中には、沖縄の基地をめぐる訴訟のように、その帰趨が、国の政治、行政、国民生活等に重大な影響を及ぼすものも少なくありません。訟務制度は、国民と国家との法律上の紛争の適正な解決に資するなど法の支配の確立のため重要な役割を果たしてきたところであり、引き続き訟務事務処理体制の充実強化を図り、一層適正円滑な事件処理に努めてまいります。
 第四は、人権擁護行政についてであります。
 本年は、人権擁護委員制度が発足してから五十年目の記念すべき年であります。人権の擁護が憲法の重要な柱であり、民主政治の基本であることは言うまでもないところであり、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画の趣旨を踏まえ、きめ細かい啓発活動を行うとともに、人権に関する相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて、被害者の救済に努めてまいります。
 また、法律扶助制度は、憲法で認められた国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するための重要な制度でありますが、法務省内に設けました研究会の検討を踏まえ、一層の充実に努めてまいります。
 第五は、出入国管理行政の充実強化についてであります。
 国際化の著しい進展に伴い、我が国を訪れる外国人は、年間約四百六十万人を上回り、その活動内容もこれまで以上に多様化しております。他方、我が国には約二十八万人弱の不法残留者に加えて集団密航等により入国した不法入国者も存在し、そのほとんどが不法就労活動を行っているものと推定されます。また、これら不法滞在者による凶悪犯罪や薬物犯罪等も急増しており、不法滞在外国人に係る問題は深刻なものがあります。
 このような中、国際協調、国際交流の増進のため外国人の円滑な受け入れに努めることはもちろんでありますが、他面、ルールにのっとらない不法滞在外国人に対しては厳格な態度で臨み、その数を減ずるための効果的な対策を講ずるとともに、そのための要員の確保等の所要の体制整備及び職員研修の充実強化にも努めてまいります。
 また、昨年、委員各位の御協力を賜り、集団密航に係る罪の新設等を内容とする出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律が成立いたしましたが、この改正法の的確な運用と関係機関との連携強化により、内外のいわゆるブローカー組織や暴力団関係者が組織的に関与する集団密航事犯等にも厳しく対処してまいります。
 第六は、司法制度の整備についてであります。
 民主主義を基盤とする法治国家である我が国において、司法がその機能を十分に果たしていくことが、社会正義の実現と国民の権利擁護の観点から重要であることは言うまでもありません。しかも、近年の社会の急激な変化に伴い、さまざまの紛争・違法行為に対し、法に基づいて適正迅速に対応していく必要性は、極めて高くなっております。
 司法がこのような社会の要請にこたえていくためには、これを担うに足りる資質と能力を備えた法曹を十分に確保する必要があると思います。このたび、関係方面との協議結果を踏まえ、司法試験合格者の年間一千名程度への増加に伴い、新たな司法修習制度の実施、司法試験科目の見直し等を実現するため、裁判所法及び司法試験法について、その一部を改正する法案を今国会に提出したところであります。
 また、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事補等を増加することを内容とする法案を今国会に提出したところであります。
 次に、外国弁護士の受け入れ制度に関しましては、昭和六十二年の制度創設以来、適正な運用に努めるとともに、規制緩和のための所要の法改正を行ってきたところでありますが、行政改革委員会を初め内外から一層の規制緩和を求められております。それらを踏まえ、外国法事務弁護士となるための職務経験要件の緩和等を内容とする改正法案を今国会に提出したところであります。
 以上、法務行政の重要施策につきまして、所信の一端を申し述べましたが、今国会に提出し、御審議をお願いいたします法案の内容につきましては、今後逐次御説明申し上げますので、何とぞ十分な御審議をいただき、速やかな成立に至りますようお願い申し上げます。
 私は、政治、経済、社会が激動し、先行き不透明な昨今におきましてこそ、社会の基盤である法秩序の維持と国民の権利保全を使命とする法務行政がますます重要なものとなっていることを痛感しております。新しい時代の要請に迅速的確にこたえ、常に国民の視点を失うことのない法務行政を目指します。委員長を初め委員の皆様の一層の御指導、御鞭撻を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)
#4
○笹川委員長 平成十年度法務省関係予算及び平成十年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付いたしております関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承をお願いいたします。
    ―――――――――――――
#5
○笹川委員長 この際、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所白木刑事局長、安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
#7
○笹川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
#8
○鴨下委員 今、大臣の所信の中でも少年の犯罪がふえている、「社会の耳目を集める少年による凶悪事犯が発生」する、こういうふうなお話でありましたが、実際に今、きのうの新聞でもトップの記事になっておりますし、少年犯罪がふえているのか、果たして耳目を集めているのか、このことにつきまして、ある意味で我々は冷静、客観的に見ていく必要があるのだろうと思います。
 まず、警察に伺いたいのですが、このような少年犯罪について、今の現状といいますか、実際にふえてきているのか、それともたまたま注目すべき事犯が多いというようなことで耳目を集めているのか、このことについてお伺いをしたいと思います。
#9
○勝浦説明員 平成九年中に警察が刑法犯で補導いたしました少年の数は約十五万三千人でございます。これは前年に比べまして約一万九千人、率にいたしまして一四・四%増加をいたしております。
 中でも、ことしに入りまして、御指摘のありましたように、ナイフを使用した凶悪事件が相次いで発生をしていることに見られますように、少年非行の凶悪化の進展が顕著でございます。平成九年中に凶悪犯で補導いたしました少年は二千二百六十三人、これは前年に比べまして五割強の急増を示しております。さらに、昭和五十年以降の最悪の数字でございます。
 それから、このほかに、少年の間に覚せい剤の濫用が急速に拡大をいたしておりますし、この覚せい剤の濫用で平成九年中に補導した少年が一千五百九十六人、前年に比べまして一一・一%の増加、さらに中高校生の補導人員が二百六十二人ということで、これは二年連続して過去最悪を更新いたしております。また、このほか、女子の性非行の拡大もございますし、そういう意味で最近の少年非行は極めて深刻化しているということが言えようと思いますし、御説明いたしましたように、戦後の第四の上昇局面を迎えたものと認識をいたしております。
 そういうことで、少年非行の全般的な状況は今申し上げましたとおりでございますが、さらに特徴について見てみますと、何らかの問題行動があるにもかかわらず、あるいはあるものの、一見普通に見える少年が、欲望のコントロールがきかずに短絡的に重大な非行に走ったり、あるいは善悪の判断なく、例えば刃物の携帯が格好いいというような誤った認識を持って、ちょっとしたきっかけで凶悪な非行に走るなどの傾向が見られるところでございます。
#10
○鴨下委員 ことしに入って、我々が記憶に新しいところでも、例えば栃木県内における中学生によるバタフライナイフを使用して教師を殺害した事件、これが一月二十八日、それから東京都内における中学生による警察官に対するバタフライナイフ使用強盗殺人未遂事件、それからあとは、一月八日には高校生による実母の殺人事件、これは十七歳の女子高校生が四十九歳の実母を注意されたことから果物ナイフで刺して殺害した、こういう事件であります。
 それから、一月十四日には中学生による実母殺人事件、これは中学三年生十五歳が、以前から進路のことで実母四十二歳といさかいが絶えなかったことから、文化包丁で胸部を刺して殺害した。それから二月十七日、これは中学生による傷害致死事件で、これは非常に注目された事件でありましたけれども、中学三年生の女子、十四歳、十五歳が、無職六十九歳の男性が借金の返済に応じないことに激高し、顔面を手拳で殴打したり足げりにして暴行を加え、死に至らしめた、こういうような事件があるわけでありまして、警察の方の把握をしている中でも、明らかにふえている、こういうような話なわけであります。
 警察当局として、このような少年の凶悪事件が非常に増加してきた、この顕著に増加してきた意味合いというものについて、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
#11
○勝浦説明員 少年による凶悪犯罪が急増をいたしております背景といたしましては、少年を取り巻く社会環境の変化の問題でありますとか、それから、少年自身あるいは社会全体の価値観の変化などのさまざまな問題が考えられようかと思いますし、さらには、少年の間に非行に対する抵抗感を失わせている、そういう認識をいたしておりまして、この問題に対しましては、警察も含め社会全体で真剣に取り組んでいくことが何よりも重要であろうかというふうに考えております。
#12
○鴨下委員 先ほどのお答えの中で、例えば覚せい剤の話についても、ふえている、こういうような話でありましたけれども、文部省の体育局学校健康教育課の「児童生徒の覚せい剤等の薬物に対する意識等調査報告書」、これは平成九年十月に行われたものでありますが、覚せい剤などの薬物を使うことについて、一回なら構わない、個人の自由などと考える生徒が、高校三年生の男子では約二割に上る。薬物に関する知識や情報は年齢が上がるにつれふえるものの、一方でモラルは低下している実態が浮き彫りになっている。
 要するに、覚せい剤に関してのアンケートでありますけれども、罪悪感がなかったり、警察に捕まること、それからその後の自分の人生にどれだけの影響を及ぼすことになるのだということについての自覚がそもそも余りない、もしくは希薄だ、こういうようなことがこういうアンケート調査でも読み取れるわけでありますけれども、警察としては、この少年犯罪に対して、予防というような目的ではどういうような対策を考えていらっしゃいますか。
#13
○勝浦説明員 少年非行の凶悪化の問題に対処するために、警察といたしましては、悪質な少年非行に対しましては厳正に対処するということ、それとともに、街頭補導活動でありますとか、あるいは少年相談などの充実を図る、今後とも引き続きそういうことで努力をしてまいりたいと考えておりますが、具体的には、少年事件捜査や少年補導活動の強化、それから学校、家庭、地域との連携や、あるいはそれによります広報啓発活動の推進、少年を取り巻く環境の浄化活動の展開など、総合的な対策に積極的に取り組んでまいりたいど考えております。
#14
○鴨下委員 警察は積極的にいろいろと活動なさっていることは十分理解しておりますけれども、この予防といいますか対策については、多分警察は、事が起こったことを摘発したりなんかするのはお得意なんでしょうけれども、今回の少年事件をずっと拝見していますと、今までは何でもなかった子供が突然切れて事に及ぶ、こういうようなことのようでありまして、このことについては、なかなか警察がどうしょうもないような部分なんだろうというふうに思っております。
 さて、ここで法務省に伺いたいのですが、法務省でこの犯罪の低年齢化についてどのような認識をお持ちになっているかということが質問であります。三月十日に大臣が閣議後の記者会見で、最近の少年犯罪の多発を受けて、刑法が十四歳未満の少年を刑事処分の対象にしていないことについて、直ちに刑法改正までいくのがいいかどうか、そういうことも踏まえて議論をやってほしい、こういうような話をおっしゃっているというふうに報道もありました。
 法務省がお考えになっているこの犯罪の低年齢化について、どういうふうに今認識をしているか、このことについて伺いたいと思います。
#15
○原田(明)政府委員 犯罪の低年齢化ということに関するお尋ねでございますが、実は一正直申し上げまして、最近の実情をどう見るか、先ほど来の委員の広い立場からの御指摘にもございますように、今起こっている問題をどうとらえているかについては、いろいろな御意見があるのではなかろうかと思います。少年法を所管している刑事局の立場といたしまして大変関心はあるのでございますが、その実態については、確かに件数的な面あるいは中身について耳目を聳動ずる面がございますが、果たしてそれをどうとらえ、どう対処していったらいいのかという点については、必ずしも明確な意識を持ち得ない段階であるということを申し上げなければならないと思います。
 しかしながら、現在法務省といたしましては、少年法の基本的な、手続的な観点から鋭意検討作業を進めておりますが、大臣御指摘のとおり、余りにもさまざまな観点から、現在の少年をめぐる、特に低年齢化、いわば刑事未成年の少年を含めて、いろいろな問題が起こっている、この事態から目を背けることはできないだろう、その問題について何があるのかということをまずしっかり考えていこうという御指摘だと私どもは受けとめております。
 それをどう具現化するかという点については、現在鋭意考えさせていただいているところでございまして、例えば低年齢化につきまして、直ちに刑法改正の問題でございますとか、少年法の枠組みを変えていくという観点から直ちに取り上げるべきという一定方向でもって考えているのではなく、むしろその問題を含めて、果たして現在の枠組み全体がどうこたえられているのか、問題がないのかという観点について検討を進めていかなければならないというふうに考えている次第でございます。
#16
○鴨下委員 今局長おっしゃったように、私も、必ずしも少年法について、それをどうするというようなことが、今回の事件の言ってみれば予防もしくは抑止効果になるかどうかということについては、非常に疑問に感じているわけでありますけれども、ただ、国民の感覚といいますと、例えばその少年の、低年齢の子供たちの犯罪がふえたときには、さて法務省、何やっているの、少年法どうするの、こういうふうに非常に短絡的に、直結して物を考える方々も多いのだろうと思います。そのことで、国民に対して、これは少年法の意味というものとそれから今回の直接的な抑止という意味において、これが必ずしも結びつかないのかもわからないということについて、法務省なりの見解を教えていただきたいと思います。
#17
○原田(明)政府委員 そのまさに委員御指摘の点につきまして、ある一定の考え方を立てるという段階に至っていない、そのことについての御批判があるいはあるかもしれませんが、それがやはり現状だろうと思います。そして、各般、これは法務省の矯正の現場に当たる方々、教官の方々の意見、また裁判所において審判の過程でさまざまな関与をなさっている方、さらには第一線の現場でいろいろ苦労しながらこの問題に当たっている警察当局の方々、いろいろお考えがあると思います。
 そういう中で、私どもといたしましても、国民一般の広い関心と、ある面では、憂慮と申しますか、戸惑いと申しますか、そういう観点から、たくさんの意見があるのだろうと思います。そういうものにも十分耳を開いて、これを受けとめて、そして、私どもの分野で何ができるのかということを含めて検討させていただきたいと考えている次第でございます。
#18
○鴨下委員 今考えている話ではなくて、もう現実に行動しなければいけない時期であることは間違いないのだろうと思います。
 きのうの夕刊にも、中学生の刃物による犯罪が続出している、こういうのが一面のトップの記事であります。それこそ連日のようにあるわけでありますから、私は、先ほど申し上げたように、少年法について、それを改正する云々という議論が必ずしもこの抑止効果に結びつかないということは重々理解しているのですが、ただ、国民はそう思わない。法務省、何やっているんだというような話になるのだろうと思いますから、それなりのお答えを早く出していただきたい、そのためのアクションを起こしていただきたい、このことをお願いしているわけでありまして、今、情報収集をしているとか、それから、これからどうするんだ、いやこれからどうしていいかゆっくり考えましょう、こういう段階ではないのだと思う。
 一つ一つの事件は数からいったら少ないかもわかりませんけれども、ここの根底にある大きな問題というのは、我々が想像を絶するような形でもしかすると進行している大きな社会的な現象なのかもわかりませんから、それに前向きに対処していただきたい、こういうようなことなわけであります。
 法務大臣は、この少年法改正問題をめぐる最高裁、日弁連との法曹三者との意見交換会の中でも刑法改正も視野に入れて検討するよう求めた、こういうような話がありましたけれども、これは事実なんですか。
#19
○下稲葉国務大臣 必ずしも正確じゃございません。
 記者会見の際に話が出ましたのは、十三歳の子供が殺人事件をやったというふうなことについて、刑罰法令についての追及はできるのかできないのかというふうな、そういうふうな趣旨の話がございました。そこで、私は整理して申し上げましたのは、刑罰法令で追及できるのは、刑法によって十四歳未満の者にはできませんということですね。それから、少年法の適用ということにつきましては、十六歳以上二十歳未満の者につきましては、これは正確に申し上げますと、家裁が地検に逆送いたしまして、地検が起訴して、地方裁判所で刑事処罰を求めるというふうな手続になっている。
 最近の状況を見ますと、十三歳の年齢の人だとか十四歳、十五歳の子供の凶悪事件というものが起きている。したがって、少年法の改正の問題が一昨年の十一月から今日までいろいろ議論されているわけでございますが、少年法といいますか、少年法に基づく審理のあり方について一昨年の十一月から議論されまして、十一回ほどやって、大体問題が詰まったということで、ことしの一月から少年法改正を視野に入れてやろう。それはいわゆる審理の手続の問題が中心でございます。
 審判が単独の裁判官でいいかどうか。検察官の立ち会いが今の少年法の審判から申し上げますとできないわけでございますので、一般的な事件はともかくとして、凶悪な事件、重大な事件について検察官の立ち会いができない、裁判官が今単独でございますので、それでいいのかどうか。あるいは、審判の期間というのが非常に限定されております。だから、そういうようなことでいいのかどうか等々を議論いたしておるわけでございます。
 しかし、そういうふうな中で、今までは触れられておりませんでしたけれども、今、少年法適用の年齢の問題が議論されているということですから、そういうふうな審判手続の問題の議論ももちろん重要でございますし、これも進めてまいらぬといかぬけれども、少年法を議論する際において、年齢問題というのは避けて通れない問題だろう、今や。したがって、そういうふうな問題について法曹三者のそのような場でも議論していただこう。
 そこで、今委員御指摘のように、私は、少年に対する問題というのは、司法の問題というよりも、むしろ少年自身の心構えの問題、けじめの問題、それに関する家庭の問題、教育の問題、少年を取り巻く社会の問題、その辺のところを基本的にどういうふうに対処していくかということが基本だろうと思います。
 そういうふうな中の一環として、私ども司法の立場で、どういうふうにこういうふうな多発化し、凶悪化している少年問題にアプローチできるかというふうなことからすれば、今私の申し上げましたようなことではなかろうか。これについてはできるだけ、私自身きのうの記者会見でも申し上げましたのが、これが一般的な傾向なのか、あるいは一時的な突発的な事犯が重なっているのだろうかどうか、その辺のところも見据えなければなりません。
 先ほど、警察庁の課長からお話がございましたように、少年事犯というのは最近また上昇しつつございます。今まで過去三回大きな山があったと言われております。一つは昭和二十六年、一つは昭和三十九年、それから昭和五十八年。五十九年から下降状態にあったわけでございますね。ところが、平成七年をピークにして、また八年、九年と急上昇している。だから、第四のピークになるんじゃなかろうかと。なるのかならないのか、そういうふうなところをいろいろな角度から検討いたしまして、そして少年法自身も昭和二十三年に制定された法律でございます。もう五十年たっているわけですね。そういうふうな過程の中で、改正しようというふうなことでいろいろ議論されて、中間答申も出されたことが昭和五十二年にあるわけでございますが、しかし、それにもかかわらず、法律改正なりなんなりというのはその結果を受けてなされていない。
 ここまで重要な段階に来ていることでございますので、だからそういうような問題も、年齢の問題も避けて通れないというふうなことで、いろいろな形で議論していただいて、そういうような中で、いかに少年を取り巻く問題、あるいは少年の審判の問題等々、できるだけ速やかに衆知を集めて結論を出していただいて、そして、それに基づいて立法なりなんなりをしていく、改正していくということをたびたび申し上げているわけでございますけれども、刑法に触れる話をしますと、刑法改正を視野にしてとか何だかんだ言われていますが、私の真意はそういうふうなことでございます。
 とにかくもう、私どもの時代ではなくて、今問題になっているような人たちが、そういうふうな人たちが二十一世紀の日本を背負っていく、世界を背負っていくことは間違いないわけでございますから、健全育成を図るというのは私どもの責任ではなかろうかということが私の真意でございまして、そういうような考え方から一つ一つの問題を具体的に、できるだけ早く解決していきたいというふうに思っておる次第でございます。
#20
○鴨下委員 大臣、おっしゃるとおりでありまして、まさに専門家としての重みのある御意見なのだろうと思います。
 ただ、大臣、ちょっと伺いたいことは、現実には、教師が学校内で刺されたり、それから同級生がナイフによって殺傷されたり、こういうような事件があるわけでありまして、犯罪を犯した子供たちをどうするというような問題もさることながら、いわば教室で安全に安心して教えたり勉強したりするという環境そのものがやや損なわれつつあるわけであります。
 こういう中で法務省のできることは一体何なのだろうか、このことを私は議論したいというふうに思っておるのですけれども、何かそのことについてのお知恵がございましたら教えていただきたいと思います。
#21
○原田(明)政府委員 まず、現在進められていることについて、委員のお触れになりました少年法に関する法曹三者の意見交換会の中で緊急の問題として取り上げている、その点で私どもはどういう考えかということについて若干触れさせていただきたいと存じます。
 先ほども大臣から御答弁いただきましたが、現在起きている諸問題の中で、法曹三者、なかんずく現場で実際に審判に当たっている裁判官の方々を含めて大きな問題になっているのが、事実関係について、何が起こったのかということについての明確な手続のもとで十分機能しているかということについての問いかけでございます。
 現場の裁判官からは、むしろ今の手続よりもう少し厳格に事実関係をきちんと、関係者の利益と申しますか、権利保護も図りながら、しかし、一方では真実を求めるという角度がないと、いずれにしても、何が起こったのかわからないということを前提にしては、少年の保護また少年の教育ということも考えられないだろうという一つの訴えかけがございます。そういう点で、私どもも、果たして今の手続が十分なのかという観点から考えますと、いろいろ工夫する余地があるであろう。
 私どもは、この過程で問題になっておりますのは、今の少年たちの中で、かつては少年法の枠組みは、少年審判、それにたどり着くさまざまな捜査関係の中で、事実認定についてはある程度の理解のもとに事実がまず明らかになるということが、いわば法手続といいますか、その中で前提とされていたような気がいたします。しかしながら、最近の社会全般の状況でございますが、例えて言えば、自分がやってしまったことについてもさまざまな反応がございます。そういう中で、一たんこれを大人のいわば対審的な構造のような形で、いわば攻撃、防御というような形で、自分の罪を素直には認められない、これは本人の罪ばかりではないと私は思いますが、そういう状況の中で何を真実と確定していくかということをきちんとしなければ、いわば責任の所在と申しますか、何が起こったのかということを明確に追及する手続ということの必要性が強く叫ばれているわけです。
 これは社会の中で、その処遇は別でございます、どういうふうに対応していったかは別でございますが、何が起こったのか、その中での本人の役割は何なのかということをまず明確にするのがすべての物事の出発点になるのだろう。そういう点で、この事実関係を確定するための手続の合理化と申しますか、明確化と申しますか、そのための努力をやろうということについて法曹三者が基本的な合意をしたという点で、私は大変大きなステップがあったろうと思います。
 私どもといたしましては、少年法の運用の中でまずその点を明確にさせていただきたいということで努力を積み重ね、それはまさに委員御指摘の、少年犯罪の防止といいますか、抑止という面からも避けて通れない重要な問題であると考えております。
#22
○鴨下委員 局長おっしゃるのももっともなんですけれども、それで事実認定の話は、これは法曹三者の協議の中で行われているというようなことを私も承っていますけれども、ただ、今やらなければもう間に合わない部分があって、例えば今回の大臣の所信の中でも、適切な処遇を実現するための基礎である事実認定の問題、このことについての手続のあり方を検討したい。おっしゃるとおりなんですけれども、これはこれ。ただ、今現に起こっている問題についてどうするのかということについての緊急な対策、対応、そして国民に向けた法務省なりの考え方、これについて私は今伺っているわけであります。
 少年法の問題について法曹三者が非常に慎重に議論をなさる、このことについては全く異存はないわけであります。ただ、そのこととは別に、現に今起こっていることについて、いち早く何らかの考え、そして手を打っていかなければいけない。私は非常に切迫した気持ちで伺っているわけでありますので、そのことについてももう一度触れていただきたい。
#23
○原田(明)政府委員 ただいま委員御指摘の点は広く国民の皆さん方の関心のあるところだろうと重く受けとめさせていただきます。
 また、大臣からもいろいろ御指摘がございまして、実は法務省の中では、私ども刑事局、これは少年法を所管しているという立場と、検察官で関与できる限られた立場で物を見ていくわけでございますが、法務省の中には、例えば矯正局、あるいは保護局の中で、その管下の少年鑑別所あるいは少年院、少年刑務所、また保護観察に当たる専門家がおります。これらの方々の中で、どういう問題が現実に起こっているのかということは、従来も一カ月に一回程度相寄りまして、意見交換と申しますか、懇談の機会はあるのですが、ただいままさに委員の御指摘の点で、もう少し突っ込んで、少年審判については、基本的にはもう一つ一秘密性といいますか、いわば非公開性という要請がございますが、プライバシーの問題は別といたしまして、そこで、現実に起こっている中でそれぞれの専門家が何を考え、何をつかんでいるかということについては、もう少し大量的また個別的にも酌み取るべきものを酌み取って、そして、これをさらに省全体としても考えていただくようにこれから努力いたすわけでございますが、また、それを教育の現場あるいは社会のいろいろな立場に発信していくと申しますか、還元していくということについて、私どもとしては真剣に取り組むべきものということでやらせていただきたいと考えております。
#24
○下稲葉国務大臣 今刑事局長が答弁したとおりでございますが、一連のいろいろな事件をやってみまして、いろいろな国民の声が私の耳にも入るのですけれども。
 例えば、例の神戸の一連の事件がございました。これは審判にかかるわけでございますが、審判の内容というのは非公開でございます。だから、あの少年がどういうふうな性格だったのか、家庭環境がどうだったのか、社会環境はどうだったのか、教育はどうだったのか、よくわからない。それで、審判に当たった裁判官が、あれは異例でございますけれども、その内容を発表している。あれは大変参考にはなると思うのです。
 しかし、一般的に申し上げますと、ああいうふうな少年事件の審判の内容というのは非公開なんです。片や、今度は極端な事案が出まして、検事調書が公表されるとか何だかんだ、あるいはまた、それに関連いたしまして、被害者の人権侵害になるような問題まで発展してきた。
 私は、今刑事局長が申し上げましたことにも関連するのですけれども、やはりその辺のところを、どういうふうな形がいいか、今部内で検討するように指示いたしておるのですが、国民の参考になるような情報というものを、具体的なケースについてこうだこうだと言うのはなかなか申し上げにくいですけれども、一般的にその事件の傾向はこういうふうになっておりますよ、だから学校にはこういうような問題があるのじゃないでしょうか、家庭にはこういうような問題があるのじゃないでしょうか、あるいは社会にはこういうような問題があるのじゃないでしょうかというふうな、資料なりなんなりというものをできるだけ適宜適切にディスクローズするような仕組みというものが法務省でとれないかどうか、ひとつ検討してみようじゃないか。
 審判そのものは、それは非公開は非公開で結構なんですが、やはり国民はいろいろやってみたいと思うのだけれども、中身がわからないし、どういうふうなことをやったらいいのだろうかというふうな声もございますので、そういうふうなアプローチの仕方というものも考えてみたい、刑事局長の答弁を敷衍しますと、そういうようなことを私どもは考えておるわけでございます。
#25
○鴨下委員 確かに我々は断片的な知識は持っているのですが、それを総合してやっていくというすべがありませんので、この問題については隔靴掻痒の感があるわけであります。
 ですから、国民的な議論に資するという意味においても、余りにも情報がなさ過ぎる。一体、親子関係が問題があったのか、それとも社会環境があるのか、教育の問題なのか、それとも本人の性格的な問題なのか、それを培ってきた生育環境がどうなのか、あらゆることについてまだまだ情報不足なのだろうと思います。そういう意味での情報が一番集約されているところが、ある意味で法務省かもわかりませんので、後ほどそのことについてもう一度触れさせていただきたいと思います。
 それから、続いて、やはり避けて通れないのは教育の問題なんだろうと思いますけれども、文部省にお伺いをいたします。
 町村文部大臣は、十日に閣議後の会見で、命を奪われた人たちは二度と帰ってこない、ナイフを持ち歩くのはもうやめよう、こういうような意味の、命のとうとさを訴える異例の緊急アピールを発表しました。きょうの新聞、きのりの夕刊等にそれが取り上げられておりますけれども、こういう文部大臣みずからが家庭などに向けたアピールを出すというのは、いよいよ大変な事態になってきたんだなというようなことの認識なんだろうと思いますけれども、この緊急アピールについての文部省の趣旨についてお伺いをしたいと思います。
#26
○河村説明員 先ほど来先生からお話がございますように、最近、一連の刃物等を用いました中学生等による殺傷事件というものが多発しているわけでございます。この対策といたしまして文部省といたしましては、人の命がかけがえのないものであり、命を奪うようなことは絶対に許されないこと、それから刃物の携帯は法令で規制されていて、学校にナイフなどの凶器を持ち込むべきではない、この二点を子供一人一人に徹底させることが当面講ずるべき対応だというふうに考えまして取り組みを進めてまいりました。
 具体的には、先月、二月六日に都道府県、指定都市の教育委員会の生徒指導の担当の課長、それから社会教育の担当の課長を招集いたしまして、子供たちに命の重さ、大切さ、それから他人への思いやりや自己責任などの倫理観、規範意識を身につけさせてほしいということと、それから生徒との信頼関係が大切であることは言うまでもないけれども、時に学校として毅然たる措置を講ずる必要もあるであろう、あるいは家庭においても同様であろうということを学校それから各家庭に周知するということを強く要請したわけでございます。
 しかしながら、三月九日に再び中学生によるナイフでの刺殺事件が起きてしまったということを踏まえまして、改めてこの旨について訴えるということで、昨日、文部大臣の緊急アピールを発表いたしたわけでございます。このアピールは、教育行政を預かる立場にある文部大臣として、刃物を持ち歩かない、そして命の重さを知るという最も基本のところを当の子供たちとそれから周囲の大人たちに一度直接訴えかける必要があるということから、そのような形で投げかけることといたしたものでございます。
#27
○鴨下委員 私も、確かに、たとえ中学生たちの心に届かないにしても、言い続けるということは非常に重要なことなんだろうというふうに思います。ですから、このことは、ある意味で今後とも続けていただきたいことだというふうに考えていますが、今警察庁それから法務省の方からも、少年の犯罪もしくは中学生のナイフによる殺傷事件等がふえているんだという認識がありましたけれども、文部省の方ではその辺のところはどうなんでしょうか。現状の認識として、ここ数年で顕著にふえているのかどうかということについては文部省はどうお考えになっていますか。
#28
○河村説明員 文部省では毎年度、全国の公立中学校、高校におきます校内暴力の状況ということで調査をいたしております。
 この校内暴力の発生件数は、やはりここ数年来上昇傾向にございますが、特に平成八年度、昨年度の発生件数は、公立中高合わせまして約一万件に上りました。これは、前年度が八千件でありますので、伸び方としても非常に大きかったということもございますし、昭和五十八年度の調査開始以来最高の数ということで、大変憂慮すべき事態となったわけでございます。
 この校内暴力は、私ども、学生生活に起因して起こった暴力行為ということで調査をいたしておりますけれども、内容的には、対教師の暴力それから生徒間の暴力、それに学校の施設設備等の器物損壊という三つの形態がございます。これらのうち、発生件数が多いのは、従来から中学校、高校ともに生徒間の暴力でございましたが、七年度から八年度にかけて増加率が高いのは、中学校における対教師暴力、それから中学校、高校の両方の器物損壊でございまして、こういった傾向がまことに憂慮される事態だというふうに私ども受けとめている次第でございます。
#29
○鴨下委員 そうすると、文部省はこのふえてきたという事実認定はあるわけでありますから、ふえてきた理由についてはどういつだ分析をなさっていますか。
#30
○河村説明員 この増加の理由につきましては、私どもとしましては、教育委員会の関係者あるいは現場の教員などからさまざまな事情を聴取しているわけでございます。
 一つには、物質的、経済的に豊かになって、望むものが割に容易に手に入るようになった傾向の中で、子供たちの自制心や忍耐心が欠如して安易にほかの人や物に当たるというようなことがあろう。また、価値観の多様化などが強調される中で、正しいこと悪いことの区別があいまいになってまいりまして、悪いことを悪いというふうに認識する力が弱くなっている。さらに、少子化が進む中で、家庭の教育力が大変弱くなってきていることが憂慮されておりまして、家庭でしつけるべき子供の規範意識というものが十分に形成されていない。また、社会全体の風潮もありまして、子供たちが学校や教師を絶対視するというような過去の傾向が薄らいでいる。このような状況が相まって、校内暴力、なかんずく中学生による対教師暴力といったような状態がふえているのではないかというふうに私どもとしてはとらえているところでございます。
#31
○鴨下委員 今おっしゃったことは、ここ数年起こってきたことじゃなくて、もう既に十数年、もしくは数十年の時間的な経過で起こってきていることなんだろうと思います。
 ただ私は、ここでこういう少年もしくは生徒による学校内でのいろいろな暴力事件が起こるということが顕著になってきたというのは、いよいよ水面下に隠れていたものが表に噴き出してきた、非常に厳しい時期に差しかかってきてしまったのかなというふうに認識しているわけでありますけれども、文部省は、もちろん、文部大臣の緊急アピール、重要なことでありますし、それから各部署でそれぞれ言い続ける、このことは大変重要なことだと思いますが、根本的な対策としてはどういうことを考え、なおかつ検討をしていますか。
#32
○河村説明員 緊急、当面の対応といたしましては、先ほど御説明いたしましたように、都道府県、市町村を通じながら、各現場でのしっかりとした対応をしていただくということをお願いし続けているわけでございます。
 また、中長期的な対策といたしましては、やはりこれは心の問題、子供たちの心の問題ということでございますので、幼児期からの心の教育について、昨年夏から中央教育審議会で議論をいたしておりまして、その中間報告を今月中に公表の予定でございます。
 その中で、家庭に対してしっかり取り組んでいただくべきことを訴えかけるとともに、社会体験や自然体験などの地域における活動の充実、学校における道徳教育の充実あるいはカウンセリング活動の充実といったようなことが提言されるものというふうに見込んでおりまして、それを受けての施策を充実してまいりたいと思っております。
 また、児童生徒の問題行動ということに限定いたしました有識者の会議も設けて、現在検討中でございまして、この主な内容は、学校における体制の充実と、学校と関係機関との連携をさらに充実することを盛り込んでいく予定といたしておりまして、今月中の公表がこれも見込まれております。
 以上でございます。
#33
○鴨下委員 私は、今回の少年のさまざまな犯罪について、一体どこに根源的な問題があるのか、それをどういうふうに解決していくべきかということで、さまざまな省庁にいろいろな意見を伺ったのです。
 警察は摘発はします。そして起こったことについてきちんと取り締まりはします。法務省は、起こってしまって、犯罪を犯した子供についてはきちんと教育をし、そして更生をするための努力をいたします。文部省は教育の中で、そういうことはいけないよというようなことで善悪の教育をしていきます。それから、家庭に対して、教育力が低下した、教育力が低下したというのは結局親の問題でもあるかもわかりませんけれども、その親もある意味で社会の中の構成員であるわけでありますから、その親たちが一体どうしてそういうふうな親になってしまったのかということについては、なかなかぐるぐる堂々めぐりで答えが得られなかった。
 この問題についての、言ってみれば国としてのヘッドクオーターは一体どこにあるのだろうかということを探っていったところ、一つの考え方として、総務庁の青少年対策本部にたどり着いたわけであります。
 その総務庁へ伺いたいと思いますが、青少年対策本部における今回の少年犯罪等についての取り組みと、それから、私は今ヘッドクオーターと申し上げましたけれども、そういった位置づけで考えていいのかどうか、このことについての考えを伺いたいと思います。
#34
○竹林説明員 お答えいたします。
 将来の我が国社会を担うのは現在の青少年でありまして、その一部に刃物を用いた事件の増加等非行の問題行動が広がりつつあることは憂慮すべき状況であると認識しております。
 また、これらの問題行動の背景には、青少年を取り巻く家庭、学校、地域社会など、環境の変化や、青少年自身あるいは社会全体の価値観のさまざまな変化があるものと考えております。
 総務庁といたしましては、政府の青少年対策の総合的かつ効果的な推進を図るために、関係省庁の局長クラスで構成します青少年対策推進会議において青少年対策推進要綱というものをまとめまして、これに基づきまして、関係省庁連携をしながら青少年対策を推進しているところでございます。昨年七月にもこの推進要綱の改正を行いまして、当面特に取り組むべき課題として、凶悪粗暴な非行の増加への対策を取り上げまして、関係省庁が連携を図りつつ各種施策の充実に努めている中で、今般のような事件の続発の状況が生じているということは非常に残念に思っております。
 また、このナイフを、刃物を用いた事件に限って申し上げれば、今年に入ってからの事件の発生を受けまして、二月五日に急速、警察庁、文部省、自治省、総務庁の局長クラスが集まりまして、少年のナイフ等携帯問題に関する関係省庁連絡会議を開催し、それぞれ関係省庁の対策の状況等についての意見交換、さらには、今後もまた連携を深めて一層の対応を図るという確認をしたところでもございます。
 また、総務庁自身としましても、定例でございますが、二月の段階、二月三日に開催しました都道府県、政令市の青少年対策の主管課長会議におきまして、この種事犯を防止するための平素からの情報収集、実態調査あるいは地方における関係機関との連携につきまして依頼するとともに、二月六日付で、青少年対策本部次長名で、都道府県知事、政令市市長あて並びに社団法人で青少年育成国民会議というのがありまして、これは民間運動をされているところでございますけれども、そちらの会長に対しましても、これらの問題に関連した取り組みについて依頼しているところでございます。
 このように、応急的な対策につきましては、総務庁を初め、関係省庁においてそれなりの対策を講じていただいているところでございますけれども、より根本的な対応のあり方につきましては、現在、私どもの審議会で青少年問題審議会というのがございますけれども、昨年七月の段階で内閣総理大臣の諮問を受けまして、青少年の問題行動への対策を中心とした青少年の育成方策について現在調査審議を進めているところでございますし、また、三月六日には、急遽、総理大臣が主宰されました次代を担う青少年について考える有識者会議、これはメンバーとして、関係審議会の会長など、あるいは有識者の方、それから関係の閣僚にも参加していただいておりますけれども、そこにおきましても、青少年を取り巻くさまざまな問題についての議論が深められることになっております。
 総務庁といたしましては、これらの状況も踏まえながら、今後とも、関係省庁、地方公共団体、民間団体等と緊密な連携を保ちながら、社会全体の課題として、青少年の健全育成、非行防止に全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
#35
○鴨下委員 大変お上手な答弁でありまして、これで本当に少年の心をきちんととらえ、いやすことができるのかなというふうにつくづく考えるわけであります。
 時間がないものですから、教育等について深い話には触れることはできませんけれども、私も今まで、心療内科といいまして心を扱う医者をやっておりまして、言ってみれば、世間の中での敗戦処理のようなことについて、いろいろな方からいろいろなことを承ってきた仕事をしてまいりました。その中で、やはりこういうような問題というのは、一つのところではなかなか解決できない、あらゆるところが本気で取り組まなければいけない。ただ、今回の話については、いよいよ本当に善良な生徒が被害に遭う、こういうような事態にもなってきているわけでありまして、私は、もう一刻の猶予もならない、こういう事態に立ち至っているのだというふうに思うわけであります。
 村岡官房長官が九日の夜の記者会見で、埼玉県の東松山市の中学校でナイフを使ったけんかで生徒が死亡するということを受けての記者会見の中で、命の大切さ、物事の善悪の判断、基本的な倫理観が欠けている、こういうようなことを指摘しながら、文部省、そして学校、家庭、地域社会など各方面で状況改善のために何ができるか真剣に考えることが必要だ、こういうふうにおっしゃって、社会が一丸となって取り組む必要があるのだ、こういうようなことを訴えておりますけれども、まさしくそのとおりだろうというふうに思います。
 先ほど大臣お触れになりましたけれども、さまざまな犯罪を犯した方々の心のいろいろな問題、それから環境の問題、そういうようなことについて、法務省はある意味で情報をたくさん持っているわけでありますから、それを、国民の前にある意味で情報を開示して、そしてその中で、では、こういうような問題があるんだったらどういうふうな対応をみんなで考えようよ、こういうような、問題を明らかにするという意味においては法務省の役割は重要だろうというふうに私は思っております。
 例えば、具体的に言えば、保護観察下それから少年院において、犯罪を犯したような青少年が普遍的に持っている問題点や心理的病理現象,このことについては私はつまびらかにしていくということが重要なんだろうと思います。
 最後に、このことについて、ある意味で、きょうの段階でお話しできるようなことがありましたらお聞きしたいということと、この議論の全体をお聞きになって、大臣、要するに政府全体で取り組まなければいけないことなんだろうと思いますけれども、残念ながら、それぞれの部署では一生懸命やっているのですけれども、どうも総合的に取り組むというようなことについては何かもう一つしっくりこないところがございますので、御経験の深い大臣のお考えを最後にお伺いさせていただきたいと思います。
#36
○坂井政府委員 先ほど来先生から御指摘いろいろございますとおり、また刑事局長からもお答えいたしましたとおりです。
 我々矯正の現場にある者といたしましても、現在の事態は果たしていかがなものであろうか、従来とはかなり様相が変わってきているのではないかというふうな認識を持っております。
 したがいまして、先ほど刑事局長からお話もございましたように、もちろん全省的に取り組む問題ではございますけれども、矯正といたしましても、少年院ないしは少年鑑別所に非行少年に直接接触している教官が多数ございます。したがいまして、まず、とりあえずその教官の人たちに集まってもらって、一体、現在起きている事態はどういうことなんだろうかということを徹底的に討論してみようということで、ただいま計画しているところでございます。
 もしその結果がある程度まとまりましたならば、外に出す方法については、いろいろまたプライバシーの問題その他、法務省が果たしてそういうことを言っていいのかという問題がございますので、内部の雑誌に原稿を書くとか、あるいは冊子にまとめるとか、いろいろな方法はあろうかと思いますけれども、そういう形で、対社会といいますか、矯正以外のところにも我々の認識をお伝えするように努力いたしたいというふうに考えております。
#37
○下稲葉国務大臣 多岐にわたりまして、いろいろお話がございました。私も同感でございます。少年を取り巻く環境ということで、一言で言えばそれっきりでございますけれども。また、総務庁の方からいろいろお話がございました。これは、やられることはみんないいことだと思うのですが、やはり根についた総合的な対策でなくてはならない。
 今、少年で凶悪事犯がいろいろ言われておりますが、圧倒的に多いのは窃盗でございますね。これは万引きですよ。それから自転車盗。そういうふうなものが社会の問題ということで、道路へ行けばもう通れないみたいに自転車が、どうぞお使いください、とってくださいと。だから、そういうような社会環境を直していく、これは社会の問題だろうと思いますね。
 あるいは家庭にいたしましても、いろいろ経験いたしておりますが、裕福で何でもかんでも買って与えられるような家庭の子供が必ずしもいいとは限りません。それはもう本当に貧しいところでも、両親が一生懸命おれのために、自分のためにやってくれる、できるだけ手伝いをしなくてはいかぬな、本当にすばらしい子供もいっぱいいるわけでございます。
 だから、そういうふうな家庭の問題。家庭が、夫婦仲が悪くて、そしてかぎっ子だというふうなところにまた問題もある。そういうようなことを一つ一つ詰めていって、具体的な問題を取り上げて、一つ一つ対策をとっていかなくてはならない、私はそう思いますし、政府としても、総合的な対策ということで、今いろいろ場をつくってやってもらっているわけでございます。
 法務省といたしましても、先ほど来お話ししてございますように分野はたくさんございます。今、矯正局長が申し上げましたように、それは少年院なり鑑別所なり、いろいろなところで専門的な、先生の御専門だろうと思いますけれども、分析等々もしておりますので、何とか、社会にお役に立つような情報の公開と申しますか、そういうような形で御議論もしていただくというふうな形で努力してまいりたいと思います。
#38
○鴨下委員 法務省の中には、今後の予防に対しての情報が、ある意味で宝の山があるわけでありますから、ぜひそれを適宜適切に開示していただいて、参考にさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 どうもありがとうございました。
#39
○笹川委員長 漆原良夫君。
#40
○漆原委員 今、法務大臣の所信表明をお聞きいたしたわけでございますが、前法務大臣の松浦法務大臣の所信と際立った違いが一点だけございましたので、まずその点に関して御質問させていただきます。
 大臣の所信表明の中には、民法改正の選択的夫婦別姓の導入の問題、それから非嫡出子の相続分差別の撤廃、これを内容とする民法改正問題について全く今回触れられていない。その理由は一体どういうことなのか、お尋ねしたいと思います。
#41
○下稲葉国務大臣 民法の身分法に関する御質問だろうと思いますが、法制審で夫婦別姓等を内容とする審議の結果をいただいたのは事実でございます。これは、お一人お一人の国民に深くかかわる大切な問題でもございます。そういうふうなことで、国民の御意見を広く伺うべきじゃなかろうかということがございまして、それで総理府の方で世論調査をしていただいた経緯がございます。
 その結果によりますと、夫婦別姓に賛成の方が国民の半数に満たっていない、むしろ現状のままでいいんじゃないだろうかというふうな意見の方が多うございました。ということでございますので、その辺の動向をもう少し注意深く見守ったらどうだろうかというふうな気持ちが私どもございました。
 そういうふうなことで、今回、今国会にお願いする法律改正の問題として法務省といたしまして取り上げませんでしたので、私の所信の中にはなかったというのが経緯でございます。
#42
○漆原委員 私もあっちこっちでいろいろな質問をされまして一夫婦別姓というと、夫婦が必ず別々の姓になるんだというふうに意外と間違って理解がされている。選択的なんだ、どちらでもいいんですよということを説明しますと、ああそうですがというふうに納得される方が多いのですが、この問題につきましては、大臣おっしゃったように、法制審では既に二年前に答申が、積極的に導入すべし、それから非嫡の問題は平等にすべしという結論が出ておりまして、またさらに、国際人権規約委員会からも、やはり夫婦別姓を導入すべきだ、また非嫡の問題についても相続分は平等にすべきだというふうな指摘を受けております。
 私は、こういう人権に関する問題については、法務省がじっとして世論の盛り上がりを待っているということではなくて、ある意味では、先ほど申し上げましたように大変誤解をされている面もありますので、人権という観点から見れば、法務省が積極的に国民をリードして、啓発をして、啓蒙をしていくというふうな姿勢があってもいいのではないかなというふうに考えておるのですが、いかがでございましょうか。
#43
○下稲葉国務大臣 選択的夫婦別姓ということでございますので、別姓でなくてはならぬというわけでもない、それは御指摘のとおりでございます。
 というふうなことでございますので、結果としては、家庭の中で、ある家庭はお父さんとお母さんの名前が違う、ある家庭は同じだというふうな形になるわけでございますね。そういうふうなこと等も議論の中ではいろいろあったことだと思います。
 私としても、法制審の答申というのを大変重く受け取っておるわけでございますので、その辺は十分踏まえながら、ひとつ検討させていただきたい、このように思います。
#44
○漆原委員 その問題はそのぐらいにしておきます。
 最近の検察庁、大変頑張っているなというふうに私は思っております。殊に、金融とか証券業界と大蔵官僚の長年の腐敗構造にメスを入れたということは、国民も大変拍手喝采を送っているというふうに考えております。
 衆議院の逮捕許諾を目前にして、新井議員が自殺されました。これは、政治と株取引の不明朗な関係に本格的な捜査のメスが入るなという国民の期待があったわけですが、まことに残念な結末になってしまったと思います。
 私は、この新井氏の自殺が検察の姿勢に影響を及ぼして、矛先が鈍ったりあるいは大蔵汚職の捜査にブレーキがかかったりしゃしないかということを最も恐れております。検察は、今回の不幸な事件に決してひるむことなく、法と正義に基づいて淡々と捜査を尽くしてもらいたい、こう思います。そして、大蔵省と金融・証券業界との癒着だとか、日本道路公団など特殊法人の実態とか、あるいは政官業の癒着、政治家と株取引の実態、そういうもの、国民全体が知りたがっていることを、この事件全体の真相と構造を国民に明らかにしてもらいたい、こう思っておりますが、法務大臣の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
#45
○下稲葉国務大臣 検察当局といたしましては、今御指摘がございましたが、法と証拠に基づきまして、これは厳正に対処すべきものだと思いますし、今後もそういうふうにやってくれると思います。
#46
○漆原委員 新井氏の逮捕許諾要求を審査した衆議院の議院運営委員会における秘密会で、新井氏は何百人も私と同じようなことをやっている人がいるんだというふうに弁明をしたと報道されております。また、法務省も六百人ぐらいが新井氏と同じことをやっているということを報告されたというふうな報道がありますが、まず、そういう報道が事実かどうか。
 それから、報道されたのが事実であれば、どのような報告をされたのか、お聞かせ願いたいと思います。
#47
○原田(明)政府委員 秘密会における法務当局の発言内容でございますので、その趣旨にかんがみまして、私、法務当局から御答弁申し上げることは許されないことだろうと思うのでございます。
 しかしながら、ただいま委員お触れになりました、法務当局が、人数は別といたしまして、同じようなことについてあるんだというような趣旨の説明をしたということが確かに報じられました。そのことはございません。この点につきましては、衆議院予算委員会におきましても、法務大臣から明確に、そのようなことはなかったという趣旨の御答弁を申し上げているところでございますので、どうぞその点は御理解賜りたいと存じます。
#48
○漆原委員 そうすると、法務当局から、人数は別として、多くの人が新井氏と同じようなことをしているということを報告されたということはないというふうに聞いてよろしいわけですね。
#49
○原田(明)政府委員 そのとおりでございます。
#50
○漆原委員 たしか予算委員会で、鳩山議員でしたか、この問題を取り上げて、これはたしか法務大臣に彼が質問したのだと思いますが、この問題で氏名を公表すべきではないかというふうな質問をされたところ、大臣の方から、捜査中であるので氏名は公表できないというふうな答弁をされたという報道がありますが、そういう予算委員会でのやりとりはなかったでしょうか。
#51
○下稲葉国務大臣 予算委員会では、今局長が申し上げましたように、議運の秘密会におきまして百名単位の人の名前が法務当局から挙がっているみたいな発言があったのじゃないかという質問がございまして、私は、それはありませんということを返事いたしました。
 名前を云々というようなことは私、言ったことはないと思いますが、記憶ございません。
#52
○漆原委員 ちょっとその新聞記事を読んで確認したいと思うのですが、二月二十四日付の朝日新聞の夕刊でございます。「新井氏の逮捕許諾要求を審査した衆院議院運営委員会の秘密会で法務省が新井氏と同様の不正取引を「数百人がやっている」と言及したことを指摘。その名簿を公開するよう求めた。下稲葉耕吉法相は「名簿の公表については、捜査中なので慎重に検討する」と答えた。」というふうな記事があるのですが、いかがでしょうか。
#53
○下稲葉国務大臣 全くございません。
#54
○漆原委員 こういう事実はないということですね。
 政治家の株取引については、国民は厳しい疑惑の目で見ております。新聞報道ですが、ちょっと昔を振り返りますと、八八年のリクルート事件、当時の竹下首相だとか宮澤蔵相それから安倍晋太郎自民党幹事長、塚本三郎民社党委員長、多くの有力な国会議員の名前が取りざたされました。九〇年では、稲村元環境庁長官が株取引で十七億円を脱税したという事実も報道されました。九四年には細川元首相に義父名義のNTT株購入疑惑が持ち上がったり、あるいは九七年には野村証券のいわゆるVIP口座の存在が報道されたりして、政治家の株取引をめぐる事件と疑惑というのはずっと長い間続いているわけです。
 しかも、国会ではこの間、国会議員の株取引を規制する法律をつくることもなく、また資産公開でも株取引はその対象になっていない、こういう実態でありまして、政治に対する国民の疑惑、信頼というのは、私は、ますます疑惑が深くなって信頼が失われていくというふうに考えております。
 そこで、法務大臣の個人的な見解でよろしいのですが、お尋ねしたいと思います。
 まず、政治家の株取引についてでございますが、政治家というのは、特に与党の政治家はそうなんでしょうが、情報の源に、情報の中心に非常に近いということで、インサイダー取引の危険性があるというふうによく言われております。我々新党平和の議員も、今回、現職中は株取引を自粛しようという実は申し合わせをさせていただきました。そんなことで、まず、法務大臣は、国会議員は現職中株取引は禁止するべきではないか、こういう考えに対してはどういう御意見をお持ちでしょうか。
#55
○下稲葉国務大臣 個人的な見解でもいいということでございますが、私は、今までの経歴の関係もあるのか知りませんが、株は全然わかりません。やったこともございませんし、所持もいたしておりません。それから、閣僚になりましたときには、閣僚の申し合わせで、もし株を持っているとすればそれは信託しようということで、それはきちっと就任の最初の閣議でそういうようなことをやっておりますので、皆さんそういうふうになさっていると思います。
 そこで、国会議員の一般論について申し上げますと、これは私は、国会議員は株を持ってはいかぬというところまで規定するのは、いささかどうかなという感じがしないでもございません。ただし、やはりその中身をどういうような形にするか、それはやはり公表すべきであると、国民にわかるようにということぐらいかなという感じがいたしますが、今各党でそれぞれ御協議いただいているようでございますので、何か国会議員としてふさわしい形で結論が出てほしいな、このように思っております。
#56
○漆原委員 先ほど資産公開法のことを少し申し上げましたが、資産公開法では、その時点で持っているかどうかということでございまして、例えば、一年間通じて株取引があったかないかということは全くわからないわけですね。したがって、今各党でもいろいろなところで論議されているようでございますが、資産公開法の中で、場合によっては罰則つきで株取引の経過を公表するような、そういう制度を少なくともつくるべきではないかというふうに私は思っているのですが、大臣、いかがでございましょうか。
#57
○下稲葉国務大臣 これは基本的には、やはり政治家一人一人の倫理の問題になると私は思います。それを基礎としながら、やはりぎりぎりのところを、どこまでの規制が必要かなというふうな御議論だろうと思いますが、法務大臣として、それは罰則をつけた方がいいとか、その辺のところはどうだろうかなというふうなことは、今この公の場で申し上げるのはどうかと思います。公の場で申し上げられますのは、やはりそういうような株を仮に所持したとしても、その辺のところで何とか透明性ができるような仕組みを考えるべきではなかろうかな、このように思います。
#58
○漆原委員 話題を少年法の問題に少し移したいと思いますが、少年法の六十一条では、「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」こう規定しております。しかし、最近の月刊誌や週刊誌などを見ておりますと、この条文に真っ向から違反をしている事例が見受けられます。
 例を挙げますと、新潮社の「フォーカス」、これは神戸の連続児童殺傷事件の少年容疑者の顔写真を掲載しました。同じく新潮社の月刊誌「新潮45」、これは大阪府堺市での幼稚園児らの殺傷事件の少年容疑者の実名と顔写真を掲載しております。さらに「フォーカス」では、神戸の連続児童殺傷事件で医療少年院送致となった少年が書いたと見られる犯行ノートのコピーを掲載しております。最近、雑誌「文芸春秋」では、同じくこの神戸の連続児童殺傷事件で医療少年院送致となった少年の検察官調書七通を掲載している。これは、審判を非公開とするという少年法二十二条二項の精神にも反すると思うわけでございますが、こういう一連の行動に対して、法務省あるいは最高裁、今までどのような措置を講じてきたのか教えていただきたいと思います。
#59
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 私ども、今委員御指摘の各種の報道については、少年法の立場から見ますと大変問題が大きいという認識を持っているわけでございます。とりわけ今御指摘のありました文芸春秋社の検察官面前調書の掲載につきましては、少年法の掲げております審判非公開の原則に正面から抵触する問題であるという認識を持ちまして、この文芸春秋社に対しまして、私ども、その掲載についての再考をお願いしたとともに、その掲載について抗議の書面をお送りした次第でございます。
 以上でございます。
#60
○漆原委員 最高裁に続いてお尋ねしたいのですが、新聞報道ですと、その記事が掲載される前に強く掲載を中止すべきことを申し入れた、しかし文芸春秋社の方は全くこれを聞き入れず、十分検討したけれども中止はしないというふうな回答が来たというふうに聞いておるのですが、その点はいかがでしょうか。
#61
○安倍最高裁判所長官代理者 経過は今委員御指摘のとおりの経過でございます。
#62
○漆原委員 それでは法務省の方から、どんな経過なのか。
#63
○横山政府委員 お答えいたします。
 まず、昨年の七月に新潮社「フォーカス」に被疑少年の顔写真が掲げられた件ですが、これにつきましては、昨年七月に東京法務局長の方から新潮社に対しまして、人権侵犯事件調査処理規程に基づきまして、これは少年法六十一条で保障されております少年の人権を侵害するものであるということで、反省と再発防止策等の策定、さらに被害回復措置を講じるようにということで勧告をいたしております。
 それから次に、同じく新潮社の「新潮45」に被疑少年の実名、顔写真が掲載された件でございますが、これにつきましても同じく、本月三日に、やはり新潮社に対しまして、同様に東京法務局長から、反省と再発防止策の策定、並びに謝罪等の被害回復措置を講じるように勧告を行ったところであります。
 それから次に、「文芸春秋」三月号に被疑少年の供述書とされるものの内容が掲載された件につきましては、これにつきましても、やはり当該少年の人権擁護の見地から看過できない上、被害者の遺族等の心情の面から見ても人権擁護上大きな問題があると考えておりまして、本件に関しましては、現在、関係法務局におきまして事実関係について調査中であり、その調査の結果を踏まえ、人権侵害の事実が認められる場合には適切な措置を講ずる所存でおります。
 犯行ノートの件につきましても同様に考え、調査中でございます。
 以上でございます。
#64
○漆原委員 この勧告というのは法的拘束力を持たないということなんですが、少なくとも二度にわたって、新潮社に対しては勧告を出しているわけですね。それに対して何か新潮社の方から反論だとか考えだとかいうふうなものは来ているのでしょうか。
#65
○横山政府委員 お答えいたします。
 新潮社の方からは、二度の勧告に対しまして、それを受けとめるのは受けとめるけれども、見解の相違であるというような趣旨のことが勧告した場で口頭で回答をされております。
 以上でございます。
#66
○漆原委員 掲載した「新潮45」では、記事の末尾に、現行少年法が著しく現実と乖離している、こんなことを理由に挙げて、あえて少年法に抵触したというふうに記載をしているようでございます。また、「文芸春秋」では、最高裁の安倍家庭局長が事前に掲載を知って発売中止を強く申し入れましたが、同社は、十分検討した結果であって方針を変えるつもりはないというふうに回答をしているようでございます。さらにこの編集長は、少年法の精神とは少年の犯罪を理解することであり、秘匿することではないというふうに述べております。
 現に存在する法律が自分の意に沿わないからといって公然とこれを無視して違反するという考えは、私は法治国家においては断じて許してはならない考え方だと思うのですが、法務大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
#67
○下稲葉国務大臣 憲法に保障する報道の自由というのは尊重しなくてはなりません。これは大前提だろうと思います。したがいまして、第一義的には、そういうふうな出版物を出す当事者が少年法の精神なりなんなりを十分認識して、そしてそういうふうな趣旨のもとで出版されるということが望ましいことでございます。
 ところが、今御指摘のような事案が起きておる、しかも解釈を自分でなさって、そしておれの方はいいんだというふうなことは、やはり法治国家の中ではこれはよくない、このように思います。そして、そういうふうなことによって、やはり被害者の人権というものもこれは侵害されておるというふうな実態も私どもはあろうかと思います。
 今の少年法は、そういうふうなことで、六十一条の規定でございまして、罰則がございません。したがいまして、私どもとしては、勧告をするということでとどまっているわけでございますが、勧告が右の耳から左の耳へ通ってしまって、一切とまっていないというふうなことは大変よくないことだと思うのでございます。
 そこで、こういうふうな問題についていかに取り扱うべきか、いろいろな議論があろうと思います。もちろん被害者が現在の法体系でも訴訟を起こしまして、そして出版、発売の禁止だとか何だかんだということは、被害者の立場からは求めようとすれば求められないことはないわけでございますけれども、それはなかなか現実問題として難しいだろうと思います。
 そこで、じゃどういうふうな立場でどういうふうなことができるのか、立法的にどういうふうな問題があるだろうかということが問題だろうと思います。
 そこで、委員御承知のとおりに、一昨年の末に人権擁護施策推進法が制定されまして、五年の時限立法でございますけれども、それに基づきまして人権擁護推進審議会というものができまして、二つのテーマで議論するということに相なっておりました。同和問題等々の議論等も含めまして、そういうような議論があったのは御承知のとおりでございまして、その二番目の諮問の中に人権侵害の問題についても含めてやっているわけでございます。
 現在、第一番目の諮問事項につきまして、諮問は二つやりまして、今一番目の問題についてやっているわけでございますが、私といたしましては、その審議会にも近々お願いいたしまして、そういうふうな人権侵犯の問題について、特に被害者の人権擁護の問題等々も含めまして御議論していただいて、そして、そういうふうな結果を踏まえまして、今申し上げましたような立法の問題等々もあるいは出てくるのじゃなかろうかというふうなこと、これは審議の結果を待たなければわかりませんけれども、そういうふうな形で何とか対処してまいりたい、このように考えております。
#68
○漆原委員 ある意味では、これは確信犯みたいなところがあるのでしょうね。自分の解釈が正しい、少年法が間違っているのだ、こう言って、公言してはばからないわけですから。こういう人に対しては、何度勧告をしても、大臣のおっしゃるとおり右から左ということになると思います。
 今回「文芸春秋」で記載された被害者の談話が載っておるのですが、こんなことが書いてあります。「国民の知る権利のもとでは、残酷な殺害現場の一部始終を公開される立場の被害者の人権は、考えないのでしょうか。遺族はどこまで突き落とされればいいのでしょうか」。私は、この言葉は非常に重たい言葉だと思うのですね。確かに今、表現の自由、知る権利、言われておりますけれども、子供が本当に残虐な方法で殺された、それをあえて見せつけられる、一般の人にも知らされるという被害者の立場に立ったら、二重の苦しみを味わうことになると思うのですね。
 そういう意味で、やはりこういう確信犯に対しては、何らかの法的措置をとらないといけないのじゃないか。私は、メディアがこうやって公然と少年法の精神に反するような、挑戦するような行動をとるのであれば、場合によっては刑罰法規の新設も含めて検討すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
#69
○下稲葉国務大臣 委員御指摘の趣旨を含めまして検討してまいりたいと思います。
#70
○漆原委員 それでは、もう一つの問題でありますが、「文芸春秋」に少年の検察官面前調書が七つ掲載された。この事件について、どんな経緯でこれが流出したのか、当然調査をされておると思いますが、最高、法務省、両方から調査の結果について御報告願いたいと思います。
#71
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 私ども、現在の時点で、神戸家庭裁判所におきまして、所長を中心とした幹部スタッフによりまして、事件の記録に直接接触する可能性のあった職員、これは相当数あるわけでございますけれども、この職員すべてにつきまして、さらに幅広く事情聴取を進めている段階にございます。
 現在のところ、この調査の結果から見る限りにおきまして、不審な点があったということの報告は受けていない段階にございますけれども、さらに引き続きまして調査を進めてまいりたいと考えているところでございます。
#72
○原田(明)政府委員 委員御指摘の「文芸春秋」三月号に、被疑少年の検察官調書とされるものの内容が掲載されました。このことにつきましては、まさに御指摘のとおり、少年法または刑事訴訟法の規定、趣旨に反するものであり、私ども重大に考え、かつ遺憾に感じているところでございます。その意味で、どうしてこのような事態になったのかということに関しましては、私ども法務省の立場もそうでございますが、検察当局におきましても、関係当局と連携を緊密に進めながら、鋭意事実関係を解明すべく調査を行っているところでございます。
 その詳細については、なお捜査中でございますので、つまびらかにできないことをお許し願いたいのでございますが、まさにいかなる経緯で流出に至ったかということにつきましては、あらゆる可能性を含めまして鋭意捜査を進めてまいるものと考えておりますし、私どもも、そのためにできるだけのことをしたいと考えております。
#73
○漆原委員 新聞報道によりますと、革マル派のアジトから押収したフロッピーディスクに公表された検察官調書の内容が載っていた。それで、革マル派が調書を撮影して、それをもとにフロッピーディスクに記録したのではないか、こんなふうな報道がなされておりますが、そういう事実はあるのかないのか。
#74
○原田(明)政府委員 委員御指摘のとおり、警察当局が過激派のある拠点を捜索して押収された証拠物の中に、掲載された検察官調書とされるものの中身と考えられる、それに近いと申しますか、その関係を、実はこれまた捜査の中身でございますので御了承いただきたいのですけれども、そのようなものが含まれていたということが報じられて、そのことを私どもも承知しております。
 このグループと申しますか、この過激派とされている人たちの基本的な考えは、あの事件そのものが権力の謀略であったという立場から、かなり前から一定の行動をしているものでございまして、そういう関係も含めて、私ども、先ほども申し上げましたが、幅広い可能性、あらゆる観点から捜査を進めていくべきものということで、関係当局とも鋭意協力をしながらやらせていただきたいと考えております。
#75
○漆原委員 具体的に一点だけ聞きたいのですが、その件について、検察あるいは警察は動いていますか。
#76
○原田(明)政府委員 検察当局は、関係地検を含めて協議しながら、警察当局とも相協力をしていただきながら捜査を進めているものと考えております。
#77
○漆原委員 時間がなくなりまして、あと五分しかないので話題を変えます。
 法律扶助について聞きたいのですが、法律扶助制度研究会、これは本年三月二十三日に最終報告がなされるというふうに聞いております。先回の、先々回ですか、一月二十七日に開催された研究会において、どういう法人にこの法律扶助事業をやらせるかという問題ですけれども、法務省の方から突然、指定法人構想が発表された。従来は、いわゆる認可法人にやらせるということで、法務省、日弁連、扶助協会が合意してきて、その前提で話をしておったのだけれども、突然、竹下座長提案ということで指定法人構想が発表されたというふうに聞いておりますが、その辺は本当かどうか、教えてください。
#78
○横山政府委員 お答えいたします。
 法律扶助制度研究会におきましては、諸外国の実情、財団法人法律扶助協会が現在行っております事業内容等も踏まえながら、我が国の司法制度に適合した、法律扶助制度を担うにふさわしい運営主体につき調査研究をしてまいりました。
 研究会では、国及び弁護士、弁護士会が積極的に関与でき、それぞれの責務を十分果たし得る形態の運営主体が望ましいとの意見が出されまして、そのような運営主体の一つとして、いわゆる認可法人や指定法人にも研究が及んでおりまして、その点も含めて、今年度中には研究結果を得るべく鋭意努力しているところでございます。
#79
○漆原委員 認可法人と指定法人とでは扶助の内容に違いがあるのかどうか、これを教えてください。
#80
○横山政府委員 法律扶助の運営主体として、認可法人にした場合と指定法人にした場合とで、現在、民事法律扶助のことでございますけれども、それについて実質的な違いは生じてこない。ただ、組織面あるいは運営面等で、組織のつくり方等については違いを生じますけれども、法律扶助自体の問題としましては、両法人によって違いは生じないものと理解しております。
#81
○漆原委員 法律扶助の問題で大きな問題は、刑事被疑者弁護を含めるかどうか、それから少年保護事件の付添援助を含めるかどうか、今後大きな問題になってくると思うのです。聞き及ぶところによりますと、認可法人ではこの二つの問題は取り扱えないのだけれども、指定法人であればこの二つの問題を取り扱えるのだ、だから認可法人でなくて指定法人という構想を打ち出したのだというふうに聞いておりますが、いかがでしょうか。
#82
○横山政府委員 認可法人の場合には、やはり業務として法律に定めた業務のみを行うことができると一般に解されております。それに対しまして、指定法人の場合は、法律で定めました指定業務のほかに、当該法人が定めました定款あるいは寄附行為、それに定められた業務も行うことができると一般に解されております。
 そういうことで、その定款あるいは寄附行為の中にそういう他の自主事業、いわゆる自主事業も規定されておれば、それに基づきその業務を行うこともできる、そのように理解しております。
#83
○漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
#84
○笹川委員長 上田勇君。
#85
○上田(勇)委員 きょう伺いました大臣の所信の冒頭でも、今大変な話題となっております大蔵省の不祥事のことについても言及されておりますけれども、これは本当にもう連日、各種報道のトップを飾る大スキャンダルに発展しております。この間、特捜部を中心といたしましての御努力に対しまして本当に心から敬意を表するものでありますし、ぜひ今後とも、こうした一連の事件の徹底究明のために一層の努力を期待するものであります。
 しかし、国民の率直な気持ちといったことを申し上げれば、これまで四名の大蔵省の職員が逮捕されたのですが、室長、検査官、課長補佐といった役職であって、次官や局長といった幹部は一体どうなっているのだろうか。これはもう本当に率直な、偽らざる疑問だというふうに思います。もちろん検察は、先ほども大臣が述べられたように、法と証拠に基づいて対処しているわけでありまして、世論によって何でもどんどんやってもらってもこれはまた困ることなので、その辺のことはよくわかった上でお伺いしているのですけれども。
 これだけ大蔵省の最高幹部についてのいろいろな収賄だとか接待の疑惑が次々と報道され、当事者の方からも国会の場なんかでもある程度認められているような発言がある中で、どうしてどうにもならないのかなというのが国民の感情でありまして、そうした中で、もしかして検察と大蔵が通じているのじゃないか、そういった声も聞き及ぶわけであります。
 実はここに、これは去年の新聞なんですけれども、きのう法務省の方にもお渡ししたのですが、検察と大蔵の癒着問題というのを報じている新聞がございます。この記事の中で次のようなことが書かれているのですね。
 何点かあるのですが、一点目、国税と検察は、経済事件の追及のために常時非公式にいろいろ情報交換をしている、そういった検察OBの発言が引用されている。二点目に、大蔵省が、法務省や検察の最高幹部の再就職のあっせんをしている、そういった大蔵省の幹部の発言が載っている。三点目に、中島元主計局次長の事件のときに、検察の捜査情報が事前に大蔵省に伝わっていたというような趣旨の、当時の武村大蔵大臣の発言が引用されております。またさらに、四点目には、ある時期、検察と大蔵の幹部が定期的に酒宴を開いていて、時にはそこに住友銀行の役員が参加していたという銀行OBの発言、そういったものが、この記事の中にかなり詳細かつかぎ括弧つきで具体的に書かれております。
 こうしたことは絶対あってはならないことでありますし、まさかそういったことはないのだろうというふうには思うのですけれども、とても重大なことでもありますし、ぜひとも、国民の不信を払拭していただくためにも、大臣に確認をしたいと思うのですけれども、ただいま私が申し上げたような事柄というのは、これは事実でございますでしょうか。
#86
○原田(明)政府委員 委員の御質問の中で、まず事実関係と申しますか、御指摘の記事の中で触れられた点についてでございますので、まず事務当局からお答えさせていただきたいと存じます。
 まず一点は、法務あるいは検察当局と大蔵省あるいは国税庁の職員同士で情報交換といいますか会合を持たれていたという点でございますが、これは、一般に法務・検察当局の職員といたしましても、関係機関の職員と職務上の必要がある場合に、またその限度において、会合を持つことは十分あり得ることでございますし、また、それ以外に個人的な面識ができるということも考えられるところでございますけれども、それは、役所としていわば機関としてやっているというより、むしろ個人的な色彩の強いものである場合もございます。ですから、それらについてすべてを掌握しているわけではございません。
 ただ、一般的に申し上げますと、検察当局は、関係法執行機関を含めまして、いろいろな角度からさまざまな情報を交換し合い、あるいは具体的な事件の処理について相協議するということは必要でございますし、当然行われているというふうに考えます。
 それから、第二点目で御指摘がございました、大蔵省あるいは国税庁によって検察のOBの就職あっせんがなされているのではないかということでございます。就職あっせんという点につきまして、私ども、そのような存在を把握しているわけではございませんし、また、組織として、そういう検察官のOBにつきまして顧問先等を、あっせんを依頼しているというようなことでは私はないと思います。
 ただ、一般論として申し上げますと、弁護士が顧問先を得るに当たりまして、さまざまな知人、友人等の関係で御紹介を受けるということは、これはあり得るわけでございまして、御指摘の、委員はかぎ括弧というふうにおっしゃいましたけれども、そういうことで、国税庁の職員あるいは関係の方の御紹介があったということはなかったとは私は申し上げるつもりはございません。ただ、そういうものが、いわば機関として恒常的に行われているということではないのではないだろうかというふうに考えております。
 それからさらに、法務・検察当局の職員が、大蔵省あるいは国税庁の職員と何か宴席をともにして、しかも、銀行関係の方がおられたという点について、恒常的に接待を受けているというようなニュアンスで受けとめられるような記載があるという御趣旨でございますが、私の個人的な記憶で、かつて、先ほど申し上げましたような、法務、大蔵当局の職員と国税庁に勤務した、主としてこれは査察関係だと思いますが、そういう職務上相関係する職員の間で懇親会的なものが持たれたということがあるやに聞いております。私が、個人的にもそういうものに出たこともございます。しかし、それは会費を払ってというようなものでございましたし、ただ、そういうことについても、私、日にちがはっきりいたしませんが、もう何年も前から、そういうようなものについてもやはり自粛すべきだ、気をつけようということで、そのような会合を持つことも現在では行われていないのが実情でございます。
 ただ一点、委員も直接にはお触れになりませんでしたが、例えば検察官、特に脱税事件を取り扱う検察官と国税庁の査察を取り扱う職員の間では、実際的にどのような事件を摘発して、そして、それを告発を受けて捜査するかという点で相協力していかなければならないケースが多々ございます。
 そういう中で、職員相互で相研さんして、具体的な事例に基づいて協議を深めていく、そして、事実認定上の問題点、法規上の問題点を研究するということで、中央においては年に一回、また地方においてもそれぞれ協議会が開かれるというようなことはございます。それが終わった後に懇親の席が設けられるということがございますが、現在、それは私自身も経験しておりますが、もう費用は折半、それぞれの職員がみずから出してやるということでやっているのが実情でございますので、一般的に申し上げまして、御指摘のような御懸念、そういうものが新聞に報じられているようにあること、あることといいますか、そういう角度から見られるということは、私にとっても大変遺憾なことでございますし、現在、私はそういうことの御指摘は当たらないと思いますが、今後ともそういうことがないように心がけていくべきものと考えております。
#87
○下稲葉国務大臣 今刑事局長から話があったとおりでございますが、例えば脱税事件をやるという場合には、国税と検察がよく連絡してやっているのは御承知のとおりでございます。それから、最近の事件によりますと、証券取引等監視委員会と検察庁が連絡をとって、向こうの告発を受けて地検の特捜部が処理するというふうなことでございますので、そういうふうな人たちのコミュニケーションをよくするというのは、私はこれは自然なことだろうと思うし、今は飯を食うにしても、お互いに持ち寄ってやる。初めて名刺を出しまして、こうでございますということでは、なかなか難しい事件はうまくいかないと思います。それは、しかしもう職務関係は何もないわけでして、その辺のところはやはりけじめをつけて、効率の上がるようにやらなければいけないと思います。
 それから、事件のリークの話が出ました。私も最近の報道を見まして、大変苦々しく思うこともないわけじゃないのですけれども、仮にリークしたとして、検察官が得するかといいますと全然得しない、損するのですよ。証拠は隠滅されますし、捜査は難しくなりますし、事件をまとめようと思えば思うほど秘密を保持するというのが、これは捜査の原則でございまして、だから、その辺のところはもう大変心苦しい思いがいたすわけでございます。
 事件は事件というふうな形でけじめをつけなければいけないと思いますし、それはいつも申し上げますように、法と証拠に基づいて厳正に処理するわけでございまして、そういうようなことの結果がキャリアであったりノンキャリアであったり、結果としてそういうふうになるというふうに私ども理解いたしております。
#88
○上田(勇)委員 今、世間の注目を大変集めている事柄でもございますし、こういう報道もあるというのは、やはり国民に不信を招く原因にもなると思います。今お話を伺いまして、おおむね事実でないということでありますので、これはぜひとも、こういう報道に対しては抗議していただくなり、反論していただくなりしていただくと同時に、また、そういうような対応をしていただくことが、今非常に注目を集めている事件であるがゆえに、また同時に、先ほど刑事局長さんの方からもお話がありましたように、今後とも、ぜひその辺は綱紀に気をつけていただきまして、さらにこの事件の解明のために一層の努力を期待するものでございます。どうかよろしくお願いいたします。
 次に、もう一点、全く今度は違う話でございますが、大臣、所信の中で言及されております登記手数料の問題について若干お伺いしたいと思います。
 これは既に政令が改正され、ことしの四月一日から登記手数料額が、謄抄本が八百円から千円、また、閲覧、証明が四百円から五百円と、二五%ほど値上げになります。登記事務のコンピューター化が主な理由というふうに述べられておりますが、この登記のシステムというのは、私は、これは本当に国民共有の基礎的な行政サービスではないか、それを受益者のみに負担を持っていくような性格ではないのではないかというふうに考えるわけであります。もちろん、一回一回の交付、これに必要な経費というのは、これは受益者に求めるのは当然だとしても、それ以外の全体のコストというのは、単純に手数料の引き上げで対応する性格のものではないのではないかなという感じがいたします。
 また、今大変経済情勢が厳しい中で、土地の流動化を促進していこうといういろいろな、政府・与党においてもそういう政策について御提言があるわけでありますが、今回の値上げというのは、ちょっとこれに逆行するんじゃないのかという感じがするのです。そういう意味で、景気に対しても悪い影響があるのではないかというふうに懸念するのですけれども、その辺についてお考えを伺いたいというふうに思います。
#89
○森脇政府委員 このたびの登記手数料令の改正について御質問でございますので、お答え申し上げます。
 登記簿の謄抄本に係る登記手数料というもの、この収入によりまして登記情報管理に要する費用を賄うものとされているところでございます。これはそもそも、登記特別会計が導入された当時から、コンピューター化を導入すると将来的には多額の経費がかかる、その部分をだれに負担してもらうのか。一般会計としておいて国民全員の負担において行うのか、あるいは登記制度を利用する方、謄抄本利用者の負担ということにするかという議論の中で、それは受益者の負担としょうということで設けられたものでございます。
 そういった中で、今の登記手数料収入というものは、登記情報管理に要する費用を賄うもの、こういうことにされてきたわけでございます。そして、今先生御指摘のとおり、その登記情報管理に要する費用の中の登記事務のコンピューター化に要する経費というものが大きな部分を占めてきた、これが今後とも増大していく、現時点ではそういう状況にあるということでございます。
 各種の手数料はおおむね三年ごとに見直してきておるわけでございますが、この登記手数料につきましては平成五年一月一日に改正されたものでございまして、それからおおむね五年間維持してきたということでございます。
 これは、その間の一時期、事件増に恵まれたということもございますし、さらに、コンピューター機器を早期に切りかえるといったような経費節減努力の結果、約五年間持ちこたえてきたということでございますが、このところ、コンピューター化の進展に伴いまして、さらには高度の行政サービスを提供していくという観点からいたしますと、現在の経費ではこれ以上のコンピューター化、早期のコンピューター化の実現あるいは高度のサービスの提供ということが行いにくい状況になってきたということでございまして、それを踏まえまして、先ほど先生御指摘いただいたような形での改正を行ったというところでございます。
#90
○上田(勇)委員 もう時間ですので、最後に一つだけお伺いいたしますけれども、この登記手数料令の中には、国または地方公共団体に対する免除措置という規定がございます。その中に、国または公共団体という解釈の中には、これは別表がついていまして、日本道路公団、住宅・都市整備公団などの公団公社が約三十一含まれております。登記特別会計でやっているのでありますから、本来、国、地方公共団体もそうなんですけれども、特に公団公社等についても有料にすべきであるというふうに考えるわけでありますし、たしか随分以前に民事行政審議会の答申でもこれは有料にした方がいいのではないかというようなお話があったというふうに承知しております。どうしていまだに無料なのか、また、有料にすれば手数料の引き上げを多少なりとも少なくすることができたのではないかというふうに考えるのですけれども、その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。
#91
○森脇政府委員 登記の無料化の問題でございますが、これは他の官公署による各種の公的制度の利用の場合と同様に、それぞれの公益性あるいは官署間の相互協力ということを根拠として無料の取り扱いがなされているものでございます。
 ただ、先生御指摘のいわゆる特殊法人的なものと地方公共団体等のもの、あるいは国の機関である場合、そういったものが同一の取り扱いでいいのかといったような問題があろうかと思われますので、今後ともこの点については検討してまいりたいと思っておるところでございます。
 また、民行審の考え方でございますが、これは、コンピューター化された暁に費用等が民間の一般の方が請求する場合と同じかかり方をするのであるから有料化を考えるべきである、こういう意見であったということでございます。
 それから、特殊法人の場合と地方公共団体の場合でございますが、実態を申し上げますと、無料で利用している部分というのは、地方公共団体の数が圧倒的でございます。そういった点も御理解いただければと思っております。
#92
○上田(勇)委員 以上で終わります。
#93
○笹川委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
#94
○笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。福岡宗也君。
#95
○福岡委員 民友連の福岡宗也でございます。委員長の許可を得ましたので、着席のまま質問することをお許しいただきたいと存じます。
 本日は、国選弁護人制度の現状及び問題点という点から御質問をいたしたいと存じます。
 我が国は、昭和二十四年から、起訴後におきます被告人について、みずから弁護人を選任しない場合においては、国が弁護人を選任する国選弁護人制度を実施いたしております。この制度は憲法の規定、要請に基づいて実施をされたものでございます。
 憲法は、基本的人権の保障を三本の柱の一つとして、詳細な規定を置いております。中でも、国家の刑罰権行使に関する人権保障については、第三十一条から第四十条にかけて、詳細なる規定を置いているわけであります。これは、歴史上、国家は刑罰権行使に関する人権被害というものを多発してきたという事実があります。したがいまして、民主国家におきましては、これらの被害をなくすということが、国民主権、民主政治を遂行していくためにはなくてはならぬ重要な国民の権利であるということから、我が国においてもこの人権保障手続の規定が詳細に設けられたわけであります。
 すなわち、三十一条のデュープロセス、適正手続がなければ処罰されないとか、三十七条の第一項では、すべての刑事事件において、被告人は、公平なる裁判所の公開裁判を受ける権利がある、こういうふうに定めておりますが、さらに憲法は、第三十七条の第三項において、刑事被告人は、いかなる場合においても、資格を有する弁護人を依頼することができる。そしてさらに、被告人がみずからこれを依頼することができないときには、国でこれを付すると明確に定めているわけであります。いわゆる弁護人依頼権の実質的保障規定を置いているわけであります。
 これは、刑事裁判においては、被告人は犯罪の嫌疑をかけられておるという心理的な圧迫があるわけでありますし、その法律的知識も不十分ということであるから、裁判を受ける権利を実質的に保障するためには、やはり資格を有する弁護人に依頼をして、自分にかわって法律的知識をもって弁護してくれるということが不可欠なのだということで、結局は裁判を受ける権利の実質的保障ということですから、極めて重要なものであります。そこで、被告人が貧困その他の事情によって弁護人を選任ができないときには、国がかわってこれを付するという規定まで置いたわけであります。
 この規定を受けて刑事訴訟法は、起訴後の被告人について、被告人が弁護人を選任しない場合には国、すなわちこれは実際には裁判所でございますけれども、が弁護人を選任して弁護に当たらせるというこの国選弁護人制度を実施したわけであります。
 したがいまして、これは民主主義の根幹にかかわる重要な弁護人依頼権の保障ということであります。したがって、この権利は憲法上の権利であると同時に、民主主義の根幹をなしておるというふうに私は理解をしているわけであります。したがいまして、この制度の充実強化ということは、憲法上の国家の責務であるというふうに私は考えるわけであります。二そうして実際に、国民の刑事裁判における弁護人の選任状況というものを見ますと、昭和二十四年実施されて以来、国選弁護人の制度というものは、年々数としてはふえているわけでございます。そして現在では、その多くの部分が私選弁護ではなくて国が選任する国選弁護になっているということは事実であります。
 そこで、まず質問の第一でございますけれども、このような重要な国選弁護の普及状況ということを確認するために、平成七年度と八年度の第一審、地方裁判所、簡易裁判所の刑事裁判の事件数、それからその事件のうち国選弁護人と私選弁護人の数、それから国選弁護人の比率、パーセンテージがどれだけかということについてお答えをいただきたいと思います。最高裁判所の方でお願いします。
#96
○白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 平成七年度の全国の地方裁判所及び簡易裁判所の通常第一審における終局総人員は六万一千四百七十五人でございます。このうち、私選弁護人が選任された人員は一万七千六百六十八人でございまして、国選弁護人が選任されました人員は四万二千六百八十四人でございます。したがいまして、国選弁護人が選任されました事件の割合は約六九%となります。
 次に、平成八年度でございますが、同じく全国の地裁及び簡裁の通常第一審における終局総人員は六万四千四百二十一人でございまして、うち、私選弁護人が選任された人員は一万七千六百六十二人、国選弁護人が選任された人員は四万五千五百九十九人でございます。したがいまして、国選弁護人が選任された事件の割合は、平成八年度は約七一%となるわけでございます。
#97
○福岡委員 どうもありがとうございました。
 今の御報告によりますと、七年度が国選弁護率というのが六九%で、八年度は七一%ということで、平均すると、大体七〇%ぐらいが国選弁護人の事件、こういうふうに言えると思います。
 この数字から明らかなように、憲法が保障をする弁護人依頼権の実質的実現、これは裁判を受ける権利の確保ということにつながりますけれども、これは国選弁護人制度によって守られていると言っても過言ではないという数字だと思うわけであります。したがって、これを充実強化するということは、我が国の刑事裁判制度の中においては極めて重要であると言わなければならぬのであります。
 しかるに、国選弁護人が活動に対して支払われておる費用と報酬金というのは、私選弁護人のそれに比しまして極めて低廉であります。時には実費に満たないこともあると言われているわけであります。かく言う私も国選弁護を時々担当したこともありますけれども、やはり、実際に実費を払って計算をしますと、ほとんど手元に残らないというのが実情であったという記憶であります。
 もちろん、費用が少ないといっても、私選弁護人と同じ、依頼者の権利を守る責任の重大さは変わりません。やはり弁護人である以上は、それについて事件の態様ごとに最善を尽くさなければならぬわけでありますし、実際のほとんどの国選弁護人はそのような対応をいたしております。国選弁護人だといって手抜きをするというようなことはないというふうに私も確信はいたしておるわけでありますけれども、ただ、実際問題として、事件を担当してきた場合に、手抜きをする気はないにしても、費用が赤字のときに、やはり、これ以上の活動をするかしないかという問題について、できればそれは余り費用をかけたくないと思うのは人情でありますから、どうしても弁護活動の質的低下ということは防ぎようがないところもあるわけであります。
 実際にそういうことだと、費用の点からこれは防げないということになると、本来なすべき証人尋問とか照会手続とか実際に現場に赴いてという活動が少しでも鈍るというようなことがあれば、先ほど申し上げました弁護人依頼権の実質的な低下ということでございますので、人権上、これはゆゆしき問題であるわけであります。
 それから、実際のところは、これは各弁護士会において、裁判所からの御依頼を受けまして、弁護士会の方で国選弁護人を事実上推薦申し上げているというのが実態なんですね。そこで、弁護士会としては、個々的に、難しい事件ほど、やはり中堅以上の弁護士で、経験も豊富、しかも刑事事件にも堪能な人を選任いたしたいということでお願いをするということでありますけれども、なかなかこれがお引き受けをしてもらえないといって苦労をする場合もあるわけですね。
 特に問題なのは、今度のオウム事件もそうですけれども、日本国じゅう、またその地域において耳目を引くような事件、しかも凶悪な事件なんかがあります。社会的ないろいろな問題を起こした事件があります。そういった事件については、やはりその事件の内容にふさわしい人を選任したいということであります。したがって、その推薦をする場合に、そういう人を選んでやるわけですけれども、これは強制するわけにいきませんから、事前に十分打ち合わせをして、御承諾を得て推薦するという格好になりますが、なかなかこれが困難であります。
 だから、オウム真理教の事件なんかは、あれは九人選んでありますけれども、よくあれだけの人たち、しかも刑事弁護に堪能な人たちを選んで承認できたなと。また、それによって司法制度というのか刑事裁判制度の権威が保たれたのでしょうし、弁護士としてもその責務を十分果たしておると誇って言えるというふうに思うわけであります。
 現に私も、会長をしておった当時に凶悪な事件が起こりまして、具体的にこういう先生がいいと思って候補を挙げて頼みましたけれども、なかなか引き受けてもらえなかったけれども、最終的には、やはり刑事裁判、弁護制度の充実強化のために必要だということで、ある先生に引き受けていただいて、十分な弁護ができて、裁判の信用を保つことができたという経験もいたしております。
 そういうわけで、やはり中身は刑事弁護の依頼権の実質的保障、国民が安心してそういうことができるし、日本は法治国家として、そういうことをちゃんとやるんだ、極悪非道の人間でもきちっとした弁護をするんだ、そういう体制確立のためにも、やはり国選弁護の費用の、事件にふさわしい適切な支払いということはどうしてもなさねばならぬ課題であるというふうに思っております。
 ところが、実際には、この十数年でありますけれども、裁判所の方も御理解を願って増額の方向で御努力はいただいておりますけれども、やはり、大蔵省の方の予算折衝のための削りというのですか、削除というような形で、実際にはなかなか実現をしなくて今日に至っておるというのが現状であるわけです。
 そこで質問ですけれども、国選弁護人に対する旅費、日当、宿泊及び報酬、これについては刑事訴訟法三十八条第二項に規定がございます。これによりますと、「裁判所が相当と認めるところによる。」とされておりまして、その決定権は受訴裁判所の裁量にゆだねられている、法律的にはそうなっているわけです。
 ところが、実際には、最高裁判所におきまして全国的な一つの基準というのを設けて、あと特殊な事件の場合には若干修正はしますけれども、大体その基準によってなされているというふうに聞かされております。
 そこで、平成七年と八年の最高裁判所の全国の第一審、これは地裁の場合ですけれども、これの国選弁護人の、大体三開廷をめどとして開かれておる事件の、そういうのは簡易な事件ですけれども、裁判所の指導の基準というのは、金額はどれだけなのかということ。それから、その基準というのを全国的に適用しているのでしょうけれども、それはどういうような根拠、算定によってなされているのかをまずお聞きしたいわけであります。お願いします。
#98
○白木最高裁判所長官代理者 平成七年度におきます地方裁判所三開廷の支給基準は、七万七千二百円でございます。平成八年度の同じく支給基準は、七万九千百円となっております。
 支給基準をどのようにして定めておるのかというお尋ねでございますが、国選弁護人に支給いたします報酬額は、委員御指摘のとおり、個々の裁判所におきまして、具体的な事件に即しまして、例えば、開廷された回数であるとか、あるいは事案の困難性の程度、弁護人の訴訟活動、記録等の謄写に要した費用、その他、被告人との面接に要した交通費など、実費償還の要否等も含めまして、いろいろ事情をしんしゃくして決定されるわけでございます。最高裁判所の方から毎年、予算の適正な執行という面を考えまして、国選弁護人に支給する報酬額を決定する際の一応の目安と申しますか参考といたしまして、支給基準を定めた通達を各裁判所にお示ししているところでございます。
 この支給基準は、国選弁護人が付されている事件の中で、開廷回数、事案の難易等から見まして標準的と考えられる事件につきまして、これまでの支給基準でありますとか、各庁におきます支給の実情等、諸般の状況を勘案いたしました上で、国選弁護人の報酬としては一応この程度の額が標準的ではないかと思われる金額を示したものでございますが、具体的な額といたしましては、平成七年、八年は先ほど申し上げましたが、平成九年度で申しますと、地方裁判所三開廷の標準的な支給基準の額は八万一千百円というふうになっております。
 以上でございます。
#99
○福岡委員 そうしますと、最高裁判所が基準を設けているのは、結局のところは、大蔵省と折衝して決まったそれに対する予算というのがあるので、それに大体従って、事件数で割ってこんな程度という形であって、実際に弁護人がどれだけの費用を使い、どれだけの時間がかかっているかというような問題については、具体的に余り基準策定については考慮されていないということになりますか、どうでしょう。
#100
○白木最高裁判所長官代理者 最高裁判所で示しております基準額は、先ほど申し上げましたように、あくまで受訴裁判所が国選弁護人の報酬額を決定する際の一応の目安にすぎないわけでございまして、受訴裁判所では、事件の難易、弁護人の訴訟活動、開廷回数などを総合的に考慮いたしまして、相当な報酬額を決定いたしておるものと承知いたしております。
 なお、委員御指摘のように、弁護人がどこまでどのような活動をしたかということについて、事細かに弁護人の方から事情聴取するというようなことは必ずしも適当ではないというふうに思いますが、ただ、拘置所等に被告人に面接に行った回数であるとか、そういったようなことは、裁判所は実情を伺った上で決定をいたしておるものというふうに承知いたしております。
#101
○福岡委員 私の今した質問はそういうことではなくて、いろいろな諸要素を考慮して決めるという建前論はいいので、実際に、ある具体的事件についていろいろと、どれだけの時間をやったとか、拘置所へ行ったとか、どういう証拠を出したとかということの検討ではなくて、過去のそういった事例、大体実費がどれだけかかって、どの程度の時間がかかったのだというような実態調査をやはりある程度して弁護人を紹介するとか、そういったデータに基づいて、現実に日当計算からしてみても、実費から見ても、この程度の基準を設けることが必要だということで基準が決められているのか。もともと予算がなければそんなものは調査してもしようがないわけだから、これが十万円になっても二十万円になっても仕方がないので、予算オーバーならば割るということを重点に基準を決めているのか。そこのところは実態調査をされておるのですか。個々の弁護士というか、大勢の、抽出でもいいですけれども。
#102
○白木最高裁判所長官代理者 地方裁判所の三開廷の支給基準につきましては、過去の支給基準をもとにいたしまして、公務員の給与の改善率を勘案しながら決めているところでございます。
#103
○福岡委員 ということは、実態調査というのはされていないということですね。やはりそこが一番問題だと思うのですが、そうお聞きしていいのですね。
 要するに過去の、いわゆる弁護人がどの程度の事件を、平均三開廷の事件で、面会が一回か二回ぐらいやります、そして、これはあと証人が二名ぐらいはやると思いますよ。それに要するところの準備とかなんとかの時間、そういうもののアンケート調査とか抽出調査とかというものをされたことがあるのですか。
#104
○笹川委員長 白木刑事局長。
 質問に的確に答えて。
#105
○白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 過去の実態調査をしたことがあるかということにつきましては、具体的な調査をいたしたことはございません。ただ私ども、法廷においでになります弁護人の活動あるいは証人、被告人に対する質問の内容から、弁護人がどのような活動をなさったかということはある程度承知できると考えております。
#106
○福岡委員 わかりました。もうそれは資料的には調査していないということですよね。それで、最高裁の基準は、今言われましたように九年度で八万一千円の支給というのがわかりました。実際に払われている金額は、個々の事情によって大きく上回っているか下回っているか、一遍それを検証したいと思うのですが、平成七年度と八年度での刑事事件、これは簡裁と地裁も含めましての総数と、それから、それについて国選弁護人が選任された総数、そして、一人当たり国選弁護人に支払われた報酬金額、これをそれぞれちょっと説明していただきたいと思います。
#107
○白木最高裁判所長官代理者 平成七年度の地方裁判所における国選弁護人の報酬支給総額は、二十八億九千百万円でございます。国選弁護人の延べ数が三万四千八百人でございますので、これで割りますと、平均支給額は八万三千円ということになります。
 同じく平成八年度でございますが、報酬支給総額は三十一億四千七百万円でございます。国選弁護人の延べ数が三万七千八百人でございますので、これで割りますと、平均支給額は八万三千二百円ということになります。
#108
○福岡委員 ということになりますと、最高裁判所の基準、一応の基準だとおっしゃっているけれども、これが八万一千円。そして、実際に支払われているのは八万三千円で、二千円多いだけで、ほとんど最高裁判所の基準どおりと言ってもいいぐらいの数字が支払われているわけであります。中には、三開廷以上の難しい否認事件なんかもありますから、それも入れての平均ですから、結局は、八万一千円の最高裁判所の基準どおりの決定が各地裁でなされていると断言しても間違いないと私は思うのであります。
 そこで、このような低廉なところで基準を全国的に定められておるという国選弁護制度の実態というのが、いかにこれが弁護人の犠牲、善意だけによって支えられているものであるかということが明らかなのです。
 ちなみに、私選弁護人の報酬規定というのがどうなっているかということなのですけれども、日弁連の報酬の規定によりますと、これは全国的にこれを基準にして、それぞれの弁護士会では若干ずつ違いますけれども、ほぼこれに近いと思っていただいて間違いないのですが、着手金は二十万ないし五十万円。これも事実関係にも争いが余りなくて、公判廷二、三回程度ということですから、先ほどの最高裁判所の基準とほぼ同じような事件です。そして、報酬金についても、これはうまくいった場合、執行猶予とか無罪になった場合ですけれども、この場合も二十万円ないし五十万円、そういう事件、簡便な事件で定められているわけです。
 そして、実際の運用というのは中間的なところが多いと思うのですね。やはり着手金三十万円から三十五万円ぐらい。報酬も、執行猶予の場合だったならばやはり五十万円までいかなくて、三十万から四十万程度ぐらいでされているという事例が多いわけであります。
 したがって、これも着手金との比率から見ても、仮に着手金三十万円だとすると、報酬全部、国選弁護人は報酬は着手金もあれもございませんから、だから、約八万円と見て四分の一ぐらいですね、着手金の。報酬も入れれば八分の一程度というようなことになるわけであります。
 そして、実態としては、大部分の弁護士は、引き受けた以上は一生懸命ちゃんと責務を果たすように努力しております。また、それをしなければならぬ義務がありますし、手抜きをすれば当然懲戒問題になるわけです。ろくに証人も申請しない、事情も聞かない、接見もせずに弁護してしまったなんということになれば、それこそ職務の停止を含むいわゆる重要な懲戒処分も受けますし、弁護士としての自覚上そんなことはできないというふうに思うわけであります。したがって、お忙しい先生に無理に頼むということは、これでは本当に頼みにくいというのが実態であります。これを何とかしなきやならないということだろうというふうに思うわけであります。
 それから、今ちょっと話題に出ました国選弁護人の報酬八万一千円ぐらい、実際には重要な事件もありますから、平均でいえば八万三千円ぐらいですけれども、そういった事件を除きますと八万一千円ぐらいだと推定できるのですけれども、この数理というのが、昭和二十四年に国選弁護人制度が始まってから今日まで、国家予算的ないわゆる費用の増加というものとの比率から見ると、大体国家予算的にも百倍ぐらいと言われております。それからさらに、裁判所予算ではこの二十四年からの六十年ぐらいの間に七十倍、それから判事補の俸給の比較では五十倍ということのようです。さらには、国選弁護の倍率はたったの二十倍。
 ということはどういうことかというと、国家予算の中で、司法予算というのは、国民主権で人権上重要だと言われながら、裁判所自体がもうこれは三〇%減なのですね、国家予算の伸び率よりも。さらに、裁判所の俸給は五〇%でその半分で、国選弁護に至ってはまたその半分というのが実情である。
 これは日弁連の実は統計で出ておるわけですが、最高裁ではこの統計を御存じなのか、それからこの数字に間違いないかどうかちょっと御確認したいと思います。大体でいいですから。
#109
○白木最高裁判所長官代理者 おおむね委員御指摘のとおりと承知いたしておりますが、ただ、国選弁護人の報酬の方は、二十倍と仰せになられましたが、三十倍ではないかと思います。
#110
○福岡委員 済みません。僕の方が訂正します。三十倍です。失礼しました。今の御指摘のように、三十倍と言ったつもりでしたけれども、そういうことです。
 それで、というような実情にある。いわゆる人権、人権、非常に大切です。その中でも人権の象徴、これはフランス革命でのバスチィーユということわざがあるように、象徴的なものは刑事裁判であります。その中でも重要な弁護人依頼権の実質を保障する内容がこのようなことでは、諸外国に比べて我が国が人権が保障されている近代国家であるなどとは到底言い得ないというふうに思うわけであります。
 そこで、先ほどちょっと私触れましたけれども、この十数年、いわゆる物価の上昇に従って国家予算もふえていますから、それに従って二十四年当時ぐらいの比率に直そうという努力、具体的に最高裁としてどのようなことをされたか、まずお伺いをいたしたいわけであります。そして、その折衝の結果、なぜ今までこれは実現しなかったかという点もお聞きをいたしたいわけであります。
#111
○白木最高裁判所長官代理者 国選弁護人の重要性というのは私どもも十分認識しているつもりでございます。それから、国選弁護人の訴訟活動を充実させようとすれば、それなりの費用もまたかかるという御指摘もまことにそのとおりであるというふうに承知をいたしているつもりでございます。
 国選弁護人の報酬につきましては、財政事情が極めて厳しい中でも、刑事裁判におきます国選弁護の重要性にかんがみまして、私ども毎年公務員の給与の改定率を上回る基準額の引き上げを鋭意努力して行ってきているところでございます。委員御指摘のとおり、なかなか引き上げの方は困難な面もございますけれども、引き続き増額に向けて最大限努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#112
○福岡委員 結局のところは、裁判所の方としましては、従来からの伸び率が他の予算に比べて少ないということは御認識になって、他の公務員の、気がついたとき以降は、給与の伸び率以上の率を出して御努力はいただいておるようでありますけれども、やはり実態調査をして、実際にこれだけの時間がかかると、それを賃金の、時間給与に換算すれば、この程度のものはどうしても必要なのだという合理的な根拠も示して、それを大蔵当局にぶつけて、これは絶対に譲れない線だというものを出してもらうということ、そういう努力をしないといけない。
 また、場合によっては、不当な削減ということになれば、人権上にかかわる重要な問題ですから、これを訴えるというのは、これはもう世論にも訴えるぐらいの気概、新聞記者会見もやって、それからまた内閣の方にも直接強い申し入れもするというような、そういう形の努力といいますか、今までと違った質的努力をしなければこの問題は解決をしない。というよりも、本当に完全に行き詰まって、中堅の立派な先生方に頼もうと思ってもとてもそれはもう充足できない、いわゆる事実上国選弁護制度破綻だというようなことにならなければ、これは動かないようになってしまうのです。そうなっては大変なのですね。
 そこで、そのような新しい方策、それを検討し実施に移すということを検討されておるのかどうなのか。まだ現在着手していないならば、早急に着手をする意思があるのかどうかということ、これをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
#113
○白木最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたが、この厳しい財政事情の中で、重要な国選弁護人の報酬の引き上げということにつきましては、私ども最大限の意を用いてまいりたいというふうに考えております。ただ、先ほども申し上げましたような、国選弁護人の予算の要求ベースというものは昭和三十七年ころからずっと続けてまいったものでございまして、公務員のベースアップよりもとにかく大きなアップをということで続けてまいったわけでございます。
 これを別の手法ということになりますと、果たしてどういうものが考えられるかということは大変難しい問題がございますので、なお検討はさせていただきますけれども、昨今の厳しい財政事情の中で、私どもは最大限の努力を現にいたしておることは御理解を賜りたいと思うわけでございます。
#114
○福岡委員 どうも形式的な答弁で、実質的になっていないというふうに思うのです。
 どのような資料かおわかりにならないというけれども、先ほど言いましたように、国選弁護人のそれぞれの先生方は、みんなきちっとその日程は日程表についているわけですよ。準備についてもどれだけの準備をしたかということ、証拠は何を出したかということで。したがいまして、全国的にわたって無作為で抽出して、実際のかかった費用やら、それから要した特に時間ですね。準備行為、接見に要した時間、弁論、証人尋問に要した時間、きちっと計算をして実際の時間単位の給与計算をするという、これは実際に日弁連でもそういう体系があります、報酬体系が。
 そういうものできちっと出していけば、どの程度のものが実際に必要であったかということは客観的にわかるわけですね。そういうデータなしで、ある程度国選弁護人はこんなものだろうというような、形だけで、説得力のないもので交渉しておっても、これは仕方がないわけであります。しかも、その点については、日弁連も、各個人個人の国選弁護を担当されている先生方も喜んで協力するわけです。逆に言うと、材料はもう本当に馬に食べさせるほどあると思うのですよ、僕に言わせれば。だから、それを利用しないし、またそういうもので交渉するということ自体の姿勢に欠けているというふうに思うわけであります。
 我々は、弁護士のそういう問題だけじゃなくて、これは何も弁護士のためにやっているわけじゃないのですから。だから我々は、いつも日ごろ司法予算についても、人的、物的施設、今の増員では足りないのでもっと充実せよということを声高に言っているわけであります。そういう中で、やはり終審である最高裁判所としては、もっと自信を持って、やはり三権分立の一番かなめである、違憲立法審査権もある、そういう司法というものが本当の意味で充実強化をするという問題については断固たる姿勢で臨んでもらわなければ、いい国づくりというのはできないと私は思っております。
 したがって、時間も参りましたので最後にそれだけ申し上げて、今までどおりのそういう手法ではないことを真剣に考えて実施をしていただきたい。心から要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#115
○笹川委員長 北村哲男君。
#116
○北村(哲)委員 民友連の北村でございます。
 まず最初に、いわゆる文春事件についての質問をしたいと思います。
 月刊「文芸春秋」三月号に神戸少年殺人事件の検事調書が掲載された。非常に世の中を騒がせた事件でございます。本来公開されるべきでないものが何者かによって違法に漏えいされて、それが文春の記事となって公開されたということであります。
 この違法な漏えい行為と、それについて入手経路が違法であることを知りつつそれを公開した文春の出版行為、この二点についての大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。
#117
○下稲葉国務大臣 いわゆる文春事件、まことに遺憾でございます。問題は二つあると思います。
 一つは、今御指摘のように、中身自身が、内容自身が報道されたというふうなことが、これは刑事訴訟法でございますとか少年法の趣旨に反する内容でございまして、けさからいろいろ御審議いただきましたように、私どもとしては、極めて遺憾なことであり、出版会社等に対しまして勧告なりなんなりの処置をやるというふうなことでございます。
 もう一点は、どういうふうな経緯でああいうふうな内容が漏れたかということだろうと思います。この点につきましては、刑事局長からも答弁がございましたように、関係当局、さらにはまた警察、それから検察、検察も東京と神戸があるわけでございまして、それぞれの検察とも連携をとりながら、実態の解明に調査及び捜査を進めているという段階でございます。
#118
○北村(哲)委員 最高裁は、異例の抗議声明を出されました。本来最高裁は、判決では主張するけれども、他の事柄については、あるいは政治的な事柄については言を挟まないで黙っておられるのが普通だと思っておるし、普通であると一般の人も考えておる。それが、今回異例の抗議声明を出された。それはどういう意図でどういう内容の声明を出されたのか、それについてお伺いしたいと存じます。
#119
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 今回、検察官の面前調書、これにつきまして、文芸春秋社においてほぼ原文のままであるとしてこれを掲載するということを知ったことから、私どもといたしましては、この行為自身は、少年法の基本原則でございます非公開の原則、さらには少年事件の報道に対する一定の規制を考えている少年法六十一条の趣旨、これにもとるものであるということから、今回、文芸春秋社に対して抗議をした次第でございます。内容は、今申し上げたような観点から極めて遺憾であるという内容の抗議をした次第でございます。
  以上でございます。
#120
○北村(哲)委員 法務省当局にお伺いしますけれども、同じく「文芸春秋」に対して何らかの措置をとられたのかということを含めて、これは違法に漏えいされたという問題があります。違法に漏えいされたというのは、その漏えいされたものは違法なものといいますか、普通、臓物、例えが的確かどうかわかりませんけれども、盗まれた物は臓物として、それがどんないいものでも、恐らくそれを持った者もまた場合によっては犯罪行為になるわけですから、これは、それを知りつつもらった者は犯罪行為になるのが、いわゆる臓物罪ですね。
 同じような観点から、文芸春秋社も、わかっていてやった確信犯ですから、そういう意味の違法行為を行った者として捜査の対象になっているかどうか、あるいはその入手経路を含めて、その双方についての経緯と現状について御説明をお願いしたいと思います。
#121
○原田(明)政府委員 お答えを申し上げます。
 この「文芸春秋」三月号に掲載されました被疑者少年の検事調書とされるものの件につきましては、法務当局にとりましても大変衝撃的なことでございました。そこで、ただいま委員御指摘のとおり、去る二月十日でございますが、私、刑事局長と矯正局長それから人権擁護局長、三局長連名ということで、それぞれの立場を含めたこのケースについての所感といいますか、考え方を発表させていただきました。
 その要旨でございますが、このような文芸春秋社の行為は、少年審判の非公開等を定める少年法二十二条二項及び六十一条、並びに訴訟関係記録書類の非公開を定める刑事訴訟法四十七条の趣旨に反するものであり、まことに遺憾でありますという点と、また、当該少年の矯正及び人権擁護の見地から見て看過できない上、被害者の遺族の被害感情の面から見ましても、人権擁護上大きな問題があるという所見でございました。
 なお、ただいま大臣からも御答弁を申し上げましたように、この件は、調書とされるもの、それにまつわって、いかなる経緯でこのような事態になったかということは大変重要なことでございますので、現在検察当局、また警察を含めた関係当局とも密接に連携しながら、事実解明に努めているところでございます。
 その中身でございますが、まさに捜査の中身に触れることでございますので、現在の段階でつまびらかにできないことを御了解いただきたいと思うわけです。つまり、捜査当局といたしまして、どういう観点からどういう点を問題にして、またどういう捜査行為をしているかということ自体が、いわばいろいろな形で問題になっていくわけでございますので、その点は御容赦願いたいわけでございますが、ただいま委員御指摘のとおり、文芸春秋社のかかわり方についても、当然これは最終的に調査した上、あるいは捜査した上判断することになろうかと考えております。
#122
○北村(哲)委員 捜査の範囲というのは相当限られていると思うのですよ。検察あるいは弁護人あるいは鑑定人ですよね。それ以外から出る、あと多少あるかもしれませんが。それなのにいまだその程度の御報告しかないというのは、私はちょっと不可解であると思う。
 それから、最高裁が抗議を文春にされるのは、それはわかります。しかし、捜査権限を持っておられる法務当局が文春に抗議だけというのは、これは文部省じゃありませんから捜査権限を持っているし、しかもはっきりと自分でどこかから持ってきたことがわかっているわけですから、私は捜査の対象になると思うのですよ、文春も。そういうことをやったわけですから、共謀あるいはそういうものをもらったという。
 そういう点から見ると、そう難しい捜査ではないと思いますので、その点についてはもう少し果敢に原因究明をされるべきだと私は考えます。いかがですか。
#123
○原田(明)政府委員 ただいま私が三局長連名の所見を発表させていただいたことについて述べましたが、あるいは捜査当局としての行為というよりは、むしろ少年法を所管しております刑事局の所管局長としての立場、これは少年法二十二条、また六十一条の精神にかかわるものでございます。それから矯正局長は、まさに被疑少年、問題とされている少年の矯正に係る影響を考慮したものでございますし、人権擁護局長は、被害者の立場その他人権にかんがみて問題という観点から共同で所見を述べたわけでございます。
 捜査は別でございます。捜査に関しては、これは検察当局その他捜査当局がそれぞれまさに適正に捜査を遂げるというふうに考えております。
#124
○北村(哲)委員 この問題は、文春の四月号にまた同じように「少年A検事調書の衝撃」と書いて、多くの人は、出ている人はほとんど公開賛成というふうなことを言っておられるようですが、そういう意味では、恐らく世論を二分するような大きな問題だと思います。それから、全国の公営の図書館も、これを公開すべきかどうか大いに悩んでおったということも新聞紙上で言っております。
 そういう意味では、これは確かに簡単に片づける問題ではないかもしれませんけれども、その公営の図書館、例えば私が先ほど申しました例えのように、臓物であることがはっきりすれば公営の博物館は絶対に展示しないと思うのですよね、どんな立派なものでも。であるから、公営の図書館は、同じように明らかに違法であるものを公開していいかという点はあると思うのですけれども、そういう点について法務当局はどのようにお考えでしょうか。
#125
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 公営の図書館がどういう立場で委員御指摘のような対応に出たかという点につきましてつまびらかにしないのでございますが、文芸春秋社が文芸春秋誌上に検察官調書とされているものを掲載したということ自体が実際にどういうことだったのかということについて明らかになりませんと、それが、仮にその中ではもちろん違法行為あるいは犯罪を構成する事態があったかもしれません。しかし、それはあくまで厳格な証拠に基づいて、そこにかかわった人との関係で立証し尽くせませんと、これは捜査当局としては動きがとれない。
 委員御指摘のとおり、それはもう関係者が限られているからもっと簡単ではないかという御指摘、これは私どももいわば御督励の言葉として受け取らせていただきたいのですが、事柄はそのように簡単なものではない側面もあるわけでございまして、これはかかわり合いを持った人の数というのは相当ございますし、また、それについて聞いたら、はい、こうでしたと簡単に答えてくれるような性格のものではございません。
 そういう点で、しかも表現の自由ということで雑誌の掲載者がそれなりの覚悟を定めてやった行為ということになりますと、その実態を解明するということは、それ相応の並大抵でない努力が必要ではないだろうか。しかし、委員御指摘のとおり、そのことをきちんとしなければならないという点では全く考えを同じにしております。その点についてはきちんとした回答が出せるように努力させていただきたいと考えております。
#126
○下稲葉国務大臣 今刑事局長がるる御報告申し上げたとおりでございますが、私といたしましても、この事件を速やかに解決して、そして実はこういうようなことでございましたということをもとにして、ここでまた御議論いただく日ができるだけ近いことを目指して努力いたしたい、このように思います。
#127
○北村(哲)委員 ただいまの大臣の御答弁、本当に期待しておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと存じます。
 ところで、次の質問に移りますが、大臣は午前中の所信表明の中で、「登記事務のコンピューター化に関しては、その本格的展開に向けての移行作業が、今後数年の間にピークを迎えます。そのため、これに伴う経費の増加が避けられないところであり、平成五年以来改定を見合わせてきた現行の登記手数料を改定することとしておりますので、御理解をいただきたいと考えております。」というふうに言われました。私は、はっきり申しまして、御理解はできません。反対でございます。
 まず、その反対の理由を幾つか述べてまいりたいと思います。
 まず第一に、現状であっても他の公的な証明書と比較して著しくこれは高いわけでございます。現行の登記手数料は昭和六十年から二度にわたる改定によるものであるところ、ほかの公的証明書の手数料、例えば戸籍謄本が四百五十円であったり、除籍謄本七百五十円であったり、あるいは住民票は三百円であったりと相当低いわけですね。それと比較して著しくこれは高額な改定でございます。
 二番目に、登記手数料の算定に関する情報は国は開示していない。突然のことでありました。
 三番目に、値上げに関しての国会のチェックを受けていないということも私は問題であろうと思っております。
 また、四番目に、全国各地で登記所の統廃合が進行しております。当該地域住民の便益に多大の障害をもたらしているのに加えて、登記手数料を増額すれば、国民、特に統廃合の対象地域の住民に対しては二重の負担を強いることになります。このことは、昭和六十三年五月十日に衆議院法務委員会で採択された附帯決議の第三項で「登記手数料を適正に設定し、国民に過度の負担とならないようにすること。」という附帯決議の趣旨にも反すると思います。
 さらに、昭和六十二年の十月に民事行政審議会の答申の第六で有料化の答申等があるにもかかわらず、公社公団等に対する免除規定、すなわち登記手数料令第七条、これを廃止されていないという点でございます。
 もしこれが実現すれば相当な財源が得られるはずのところを、いまだその規定は廃止されず、廃止の方向で検討も進んでいないと聞いておりますが、手数料の増額負担を国民のみに課するのは私は不当であろうと思っております。
 最後に、もう一点つけ加えるならば、財政上の不足については、これは国の一般会計からてん補すべきであって利用者たる国民の負担によるべきではないというのが私の考えでありまして、以上の理由で私はこれについて反対し、これを本当にやり直すべきであると思っておりますので、以下、これから幾つかの点についてお聞きしたいと存じます。
 まず、過去五年間の事務量の推移あるいは人員の配置という点について、どのような変化があったのかについてお伺いしたいと存じます。
#128
○森脇政府委員 平成四年から平成八年までの事務量の推移、それから人員配置の推移の概略を御説明いたしますと、まず謄抄本の通数で申し上げますと、各年ともおおむね八千万から九千万通の謄抄本の処理がございます。詳しく申し上げますと、平成四年には八千二百万通、平成五年には七千九百万通、平成六年には八千二百万通、平成七年は八千六百万通、平成八年は九千万通でございます。
 それから、甲号事件の推移でございますが、平成四年から平成八年まで、いずれも四千万台の筆個数の処理をいたしております。平成四年度は四千百万件台でございます。平成八年度は四千四百万台でございます。
 それから、人員の方でございますが、これは法務局全体をとりますと、年々少しずつふえてはおりますが、おおむねこの五年間を通じて一万二千五百名、これが法務局全体の定員数でございます。そのうち、登記に従事している職員、これも少しずつでございますが、ふえております。ただ、概数を申し上げますと、この五年間を通じて約一万人ということでございます。その登記従事職員数のうちの乙号事務に従事している職員の数は年々減っていっておりまして、平成四年が二千九百七十人に対して平成八年は二千七百十六人ということで、約二百五十名この間に減少しているということでございます。
#129
○北村(哲)委員 ただいまのお話で、コンピューター化によっていわゆる合理化というか、それは徐々になされておるということはわかります。
 ところで、いわゆるコンピューター化を定めて後のそれぞれの事務形態、あるいはコンピューター化の進捗度についてはどのような状態になっておるのでしょうか。
#130
○森脇政府委員 事務処理形態が、ペーパーで行っていた時代とコンピューター化した後とでどのように違うかということであろうかと思いますが、従来は、紙で調製された登記用紙に登記事項を記入する、謄抄本の請求または閲覧の請求がありますとその登記用紙の原本を利用して謄抄本を作成する、あるいはそれを取り出してきて閲覧に供する、こういうことをいたしておったわけでございまして、この間では、謄抄本の作成に時間を要する、あるいは不心得な閲覧者が抜き取って改ざんするといったような事犯が後を絶たない状況であったわけでございます。
 コンピューター化後でございますが、これはいわば登記簿に記載されている登記事項の内容を電磁的記録に置きかえてコンピューターの有する機能を活用しよう、こういうことでございますので、例えば謄抄本の発行に時間が大幅に短縮されたというようなことでありますとか、その出された謄抄本が非常に読みやすくなったといったようなメリットがあるわけでございます。
 それから、閲覧に関して申しますと、閲覧の制度にかえまして登記事項要約書というものを交付するという形になりますので、申請者がいわば登記所でメモをするといったような時間、あるいは窓口での待ち時間短縮といったようなことが果たされた、既にコンピューター化されたところではそういうメリットが出てきておるということでございます。
#131
○北村(哲)委員 ただいまの進捗度というか、どのぐらいまで全国でコンピューター化されておるのかということについてはいかがでしょうか。
#132
○森脇政府委員 失礼いたしました。
 現時点におきましては、不動産の総筆個数、二億七千万筆個の約二六%が移行作業を完了いたしまして、コンピューター処理を行っているという状況でございます。今後の見通しといたしましては、平成十六年末までに全国の登記所の移行作業をでき得れば完了したいということで進めております。
#133
○北村(哲)委員 資料によりますと、バックアップセンターというものと、それから移動登記所ということが書いてあるのですけれども、これはどういうものなのですか。
#134
○森脇政府委員 バックアップセンターと申しますのは、各地方法務局ごとに、その登記をいたしたデータを蓄積いたします。それを各法務局単位で、その地方法務局単位の機器が壊れた場合、作動しない場合に、それを応援できるシステムといたしまして各法務局でバックアップするという形にいたしております。さらに、それを全国統合した形で船橋の登記情報センターでデータを確保する、こういう三階層で保全を図るという形になっております。そのうち、各地方法務局単位でデータを集積する、そのための場所をバックアップセンターと言っておるわけでございます。
 現在、コンピューターで処理をしている登記所、それをコンピューター稼働登記所と言っているということでございます。
#135
○北村(哲)委員 どうも失礼しました。読み違えました。
 現行の手数料、その謄抄本で八百円、閲覧あるいは証明で四百円で、これも決して安い額とはいえないのですけれども、現行手数料の算出の根拠はどのようなところがら出されておるのでしょうか。
#136
○森脇政府委員 まず、今回の改定手数料につきましては、平成十年から十二年までの三カ年間の登記事務のコンピューター化経費を中心といたします所要経費の総額を積算いたします。そして、これを当該三カ年間に申請されるであろう謄抄本あるいは閲覧の件数を推計いたしまして、それで除して手数料を定めたということでございます。この手法は、現行行われております八百円、四百円の算定の際にもこの手法が行われたところでございます。
#137
○北村(哲)委員 どれだけお金がかかるかというのは非常にイメージがわかないのですけれども、実際、このコンピューター化が、一体何がどのようにお金がかかるのかということ、まずそのあたりについて御説明願いたいと思います。
#138
○森脇政府委員 コンピューター化の増加の理由といたしましては、一つは、移行費用というのがございます。これは、現在紙に記されている登記の事項を電子データ化するということでございますが、これは現在生きている登記かどうかといった法律判断、あるいは持ち分の合計がきちんとになるかどうかといったような点もチェックして、言ってみれば専門的な観点からのチェックを加えた上で電子データ化するという作業でございます。
 それから、コンピューターに関してさらに費用を申し上げますと、コンピューター稼働による運営経費でございます。これはコンピューター化いたしますと、それについてのコンピューターの借料でありますとか、あるいはそれの運転経費といったようなものが生じますが、その二つを合わせて私どもはコンピューター化経費というふうに把握しておるところでございます。
#139
○北村(哲)委員 コンピューター化の費用を謄本などの交付手数料などで賄うということは、すなわち受益者負担だというふうな発想もあるかと思うのですけれども、登記の受益者というのは、本来、登記されている者あるいは登記権利者であって、謄本等を求める者ではないと思うのですけれども、そういう国の施策によってかかる費用が、一々謄本を求める者、これもやや義務的に必要なものがたくさんあるわけですね、証明のために。なぜそのあたりが最終消費者に転嫁されなければならないのかということが非常に私はわかりにくいと思うし、納得しづらいと思うのです。
 それこそ登記によって利益を得る、登録免許税をたくさんやはり国が取っているわけですから、それによって、国の施策として、登記事務の合理化のために必要だと思うのですけれども、そのあたりについて納得のできる御説明、なぜ最終消費者、あるいは最終的な証明を得たい者について、あるいは閲覧といっただ見るだけについても、これは閲覧については、今国で新しく法律化されようとしている情報公開法なんかについても、見る人の利便のために、なるべく費用は安く、利用しやすくということが求められていると思いますけれども、同じように、謄本等というのは、先ほど申しましたように、好きだからとるというのじゃなくて、必ず何かの添付書類とかなんとかということで、義務的に必要な場合が非常に多いわけですから、そういうものに対して、さらにその費用を負担させるということについては非常に疑問があると思いますので、そのあたりの御説明をお願いしたいと存じます。
#140
○森脇政府委員 実は、この登記特別会計というのが設定されましたのは昭和六十年でございますが、この時点で生じていたことと申しますと、登記の謄抄本をとるのに非常に待ち時間が長い、また出てくる謄抄本が必ずしもきれいでない、判読しにくいといったような問題があったわけでございます。こうした事務の停滞を何とか早い機会に処理しなければならないというところからコンピューター化ということが考えられたわけでございまして、これによって受益するのは主としてその登記制度を利用する者、なかんずく謄抄本あるいは閲覧の利用者である。
 では、登記簿に記載されておる権利者のような者、これは受益者ではないのかということでございますが、この点につきましては、コンピューター化いたしましても、申請を受け取って、それを法律的な立場からチェックして登記簿に載せる、この作業については、申請者は従来のペーパーに比べて特段の利益を得るものではない、こういう考え方をいたしたわけでございまして、その結果といたしまして、今後コンピューター化していくためには莫大な費用がかかってくる。この部分を国民から徴収する一般の税金から、つまり一般会計で賄うのか、あるいは登記の利用者からの手数料で賄うのか、そういう選択におきまして、受益者負担の考え方に立つのが合理的であろうという判断がなされたわけでございます。
 その結果といたしまして、手数料の現在の負担者も、謄抄本あるいは閲覧によって登記制度を利用する者だ、こういう考え方になっておるところでございます。
#141
○北村(哲)委員 今の御説明でも、当初、確かに数年前はこの登記簿謄本をとるのに非常に時間がかかる、なかなか間に合わないということがあったと私は思います。しかし、コンピューターを導入したときに特別会計によって一たん決めたものを、それは今となればやむを得ないかなと思うのですけれども、では、その途中までで、ここまで来ました、あとここまでやらなければいけない、あとこれだけあるのだ、だからまた値上げをするのだというふうにしてどんどん上げることについてはいかがなのですか。
#142
○森脇政府委員 六十年に特別会計が創設された段階と現段階では、メリットがどこに生じているかという観点から考えますと余り大きな変化がないと言えるのですが、将来の問題といたしましては、例えば申請事件をパソコンを使って申請ができるようになるとかそういった制度が採用できるときというのは、将来の問題としては来るだろうと思うのですね。こういった時点では、これは先生の御指摘になった登記簿に登載される者のメリットもコンピューター化によって出てきているではないか、こういう発想ができるのだろうと思うのです。その時点においては、それでは受益者というのはだれなのか、もう一度考え直してみる必要があるのだろうというふうに考えておるところでございます。
#143
○北村(哲)委員 私は、やはり登記簿謄本でも普通の証明書と余り変わらない認識を一般の国民は持っていると思いますが、それが、この段階で、これで終わるということも必ずしも保証できない。さらにコンピューター化、さらに複雑な機械化ということも、いろいろ電子化ということもあると思います。
 それで、それをそのたびにどんどん上げられると、非常にこの登記手数料だけがそのほかの公共料金よりも突出してしまうこともありますので、この考え方についてはいずれかの時点で私は直さなければならないと思っておるのですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
#144
○森脇政府委員 将来にわたることですので、正確に数字を挙げて御説明することは困難かと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、コンピューター化の完了目標は平成十六年度末に置いております。そこまでに、コンピューター化のうちの移行作業がどれだけふえていくかというのはおおむね見通しがついております。そこから計算いたしますと、コンピューター化を平成十六年度末に完了する時点までは、少なくとも再度の値上げをしないでもやっていけるのではないか、こういう見通しを持っておるところでございます。
#145
○北村(哲)委員 私は、最初に申し上げましたように、この手数料に関してはある地域の人たちに対して、特に、直接話を聞いているところによりますと北海道の人たちは、函館の付近では江差にあった登記所が統廃合でなくなって、函館市までとりに行かなくちゃいけない。そうすると、半日ないし一日がかりでとりに行かなくちゃいけない。そういう負担に加えて、この手数料が高くなることによるそういう二重の負担がかかってくる。これはまさに、昭和六十三年五月十日の法務委員会で採択された附帯決議の、登記手数料を適正に設定し、国民に過度の負担にならないようなことということに対して、これに明らかに反すると思いますので、今回の措置が撤回できるものならば私は撤回していただきたいと思いますし、そうでなければ別の形の負担の軽減を考えなくちゃいけないと私は思っております。
 もう一つの問題でありますが、これは午前中に同僚議員からも御質問があったと思うのですけれども、国、地方公共団体、公社公団等が登記手数料令第七条によって手数料を免除されることについて、昭和六十二年の十月五日の民事行政審議会は、「有料とするのが相当であって、その方向で検討すべき」ことと答申をしております。これについては一応の御説明はありましたけれども、この方向について私はここで明確に、これを検討するあるいは有料とするという方針を打ち出していただきたいと思います。
 その点については、当局とそれから大臣にもその辺についてのお考えをお聞きしておきたいと思っております。
#146
○森脇政府委員 まず一点目の、統廃合で廃止される出張所付近の住民の方にとっては、登記所が遠くなるという負担と手数料の改定による負担と二重の負担になるのではないかという御指摘でございました。その中で江差と言われたのは、恐らく、松前を函館の方に移すという事案を例に引かれたのだろうというふうに思っております。
 この点につきましては、統廃合いたしますと、それは廃止される各登記所付近の住民の方にはこれはどうしても一部御負担がかかる、これはそのとおりであろうと思っております。ただこれは、統廃合の推進というのは行政改革の一環でございまして、小規模の登記所が多数分散しておるという体制は、国全体にとりますと非常に非効率的な組織だ、これは何とか合理的にすべきだという御提言にもっともな面があるというふうに考えております。
 ただ、一方的に不利益になるということを避けるために、いろいろ、登記相談所を設置するとか、郵便による謄抄本の請求をしやすくするとかいった手だてはそれぞれに行っておるところでございますし、さらに、統廃合後、コンピューター化いたしますと、今、平成十一年度末には開始したいと思っておりますが、登記所とオンラインで、各家庭あるいは事務所のパソコンでつないでいただいて、そして最新の登記情報をいながらにしてごらんいただけるというようなシステムの開発を急いでおるところでございます。
 それから、手数料令の七条の無料部分についてでございます。
 これにつきましては、各官公署間で、ほかの事務につきましても各種の公的制度を利用し合う制度がございます。これは、その事務の公益性であるとか官公署間の相互協力といったことを根拠として、手数料令でも無料の取り扱いというものがなされておるところでございます。
 ただ、これらの理念との調整、さらにはこれを有料化いたしますと、一番負担がかかるのはこれは実は市町村でございまして、地方公共団体の経済的負担の増大ということが見えてまいりますので、現時点ではこの取り扱いを維持せざるを得ないのかなというように考えておりますが、今後とも、有料化について関係各方面の理解が得られるように努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#147
○北村(哲)委員 大臣、一言、しますと言ってください。
#148
○下稲葉国務大臣 今、民事局長から御説明があったとおりでございますが、まず手数料の問題でございます。
 これはもう、こういうふうな経済の厳しい状態で、手数料を上げるより上げない方がいいということは私もよくわかっているわけでございますが、一応平成十六年をめどにしてコンピューター化を進めようというふうな形でやっているわけでございまして、受益者負担の問題、それから本年度、十年度の予算でも、コンピューター化の予算がアバウト約百億ぐらいふえていると思います。そういうふうなこと等ございまして、なかなか御理解いただけなかったようでございますけれども、私としては、ぜひひとつ御理解いただきたい。
 そういうふうなめどが立った段階には、私は、手数料の問題とそれから人間の問題も出てくるだろうと思いますね。そういうふうな問題等々も含めて考えなくちゃならないな。あわせて、こういうふうな法務当局の仕事あるいは司法というふうなものが、今郵便局からも云々とか話が出ましたけれども、もっと身近にあるような、身近に司法があるような形で政策というものを積極的に推進すべきである、このように思います。
#149
○北村(哲)委員 時間がオーバーして大変申しわけありません。終わります。
#150
○笹川委員長 権藤恒夫君。
#151
○権藤委員 権藤恒夫でございます。
 大臣の所信表明の中で、新しい時代の創造に向けて変革のときを迎えております、この新しい時代の要請に迅速にこたえていかなきやならない、それはみずからを変革していくことである、こういうふうに見解を述べられております。法務大臣としては画期的な発想である、このように評価をしておるところでございます。
 そこで、お尋ねしたいことでございますが、法秩序の維持と国民の権利の保全という使命から、現代から世紀末にかけましてどのような時代となるのかという時代認識について、もう少し具体的にお聞かせを願いたいと思います。
#152
○下稲葉国務大臣 お答え申し上げます。
 ああいうふうな表現にしたわけでございますが、世の中といいますか、世界は大変激動いたしております。それは政治のみならず経済、社会、あらゆる分野についてでございます。そういうふうな中に私どもが生きて生活しているわけでございます。ビッグバンの状態になりますし、緩和が進むというふうな状態になりますと、いろいろな面で司法とのかかわり合い、国民とのかかわり合いというものがふえてまいると思います。
 そこで、法秩序の維持と国民の権利の保全ということを、私どもたこができるほど聞かされたり、また私自身言っているわけなんです。そこで、法秩序の維持ということが目的なのか何なのだろうかというふうなことを私なりに考えてみたことがあるわけでございます。
 法秩序の維持というのは、私は、目的ではなくて手段ではなかろうかという感じがするのです。じゃ、目的は何か。それはやはり、言葉は非常に古いですけれども、世のため人のために法秩序の維持があるのじゃないだろうか。世の中をよくするために法秩序の維持なり国民の権利の保全ということがあるのじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。
 というのは、それは一つ一つの法律を厳格に適用していきますと、人間一人の一日の行動の中で、法律に触れないで済む生活というのはなかなか難しいのじゃないかと思いますね。交通のスピードの問題一つにしましても、右側を歩く左側を歩く、いろいろ取り上げてみますと、経済活動においてもそうであろうと思うのです。
 したがいまして、そういうふうな法というものは、そしてまた法によって保たれている秩序というものは何だろうか。そうすれば、世の中の平和と安全、それが世のため人のため、そういうふうなことを基本にして、やはり法秩序の維持だとか国民の権利の保全というふうなことがあるのじゃないだろうか。そこを基本にいたしまして、将来の激動の時代を展望してみますと、おのずからその辺のところに方向が出てくるのじゃなかろうかというふうに考えまして、ああいうふうな表現をいたしました。
#153
○権藤委員 そのような御見解の中からもう一つお伺いしたいのですが、法というものは極めて自然であるわけでありますし、常識であるわけでありますが、この秩序を維持するための手段として、現在起こっております犯罪でございますね、その情勢の傾向、これをどのように見てどのように対応しようとされるのか。そのことについてまたお聞かせ願いたいと思います。
#154
○下稲葉国務大臣 最近の犯罪情勢、その傾向ということでございますが、全般的に申し上げますと、犯罪というのは増加傾向にある。なかんずく、先ほどからお話がございましたように、少年のみならず、やはり凶悪犯それから薬物事犯、これがふえております。
 それから国際的には、密航等々による不法在留者、それから国際犯罪といたしましては、やはり昨年いろいろ騒がして法律の改正をいただきましたように、蛇頭等によるああいうふうな国際的な犯罪組織による犯罪、これも昨年一年間で千数百名水際で検挙いたしておるような状況等もあるわけでございますし、そういうふうな意味で、凶悪化している。
 片や、昨年来いろいろ問題になりますように、大手証券会社、銀行等によるいわゆる総会屋に対する利益供与あるいは受供与事件、それから証券取引をめぐる不正事犯、あるいは中央省庁の職員あるいは公団理事等による汚職事件、ああいうふうな一連の事件というものは、やはり社会の構造的な問題が内在しているのじゃないだろうか。その辺のところを何とか正さぬといかぬな、その辺が基本にあるのじゃないかなという感じがいたしますが、そういうふうなものを許すような社会構造というふうなものがあるのじゃないだろうかと思います。
 さらに加えて申し上げますと、暴力団の事件、抗争、それから銃器問題というふうなことが多発いたしておるわけでございまして、今後の犯罪の動向には十分警戒を要するものがあるのじゃなかろうか、こういうふうに一般的に思います。
#155
○権藤委員 構造的な問題であるというふうに申されましたが、まさにそうだろうと思っております。
 そこで、もう少し具体的に対策を立てる必要があるのじゃないか。一般の庶民から見ますと、こういう表現が適切であるかどうかということは疑問がございますけれども、何となくある事件に関してトカゲのしっぽ切りと申しますか、肝心のところは押さえ切れない、そうしてうやむやになっていってしまう、そういうことに対する国民のもやもやというものが、非常に割り切れないものがあると思うのです。
 刑事局長、もう少し具体的に対応について、対策と申しますか、お考えがあればお示し願いたいと思います。
#156
○原田(明)政府委員 大変今の事象の根源に触れる御質問だと承りました。
 先ほど来大臣から御答弁いただいているような現在の犯罪動向の背景には、確かに現象的に、けん銃等の銃器や薬物の一般市民への拡散という事態、また社会、経済の急激な変化や国際化の進展等、さまざまな要因があるところでございますが、国民生活の安全を確保して公正な社会を構築するためには、やはり司法と申しますか、犯罪がきちんと捜査され、そして私はよくそういうことを仲間と、また後輩の諸君と話すのでございますが、胸に落ちる事件の解決ということが私はどうしても必要だろうというふうに考えます。
 そういう意味で、ただいま委員御指摘のとおり、これは恐らく特定の事件のみならず、いろいろな、大小を問わずのことだろうと思いますが、どうも事件の根源に触れるところまでメスが届いていない国民の立場からごらんになってももう一つだ、そしてそれが胸に落ちないという面が恐らくあるのではないだろうかと思います。
 さまざまな企業の役員の方々が白昼公然と射殺される、刺殺される、そういった場合でも、メスが届かない、未解決のまま残されているという点がございます。薬物犯罪、その他銃器犯罪をとりましても、当面の現行犯的に逮捕される者については何とか届くのでございますが、その背後にある組織、そして本当に手を伸ばさなければならない、手をつけなければならない組織の中核には届かないのではないかということが指摘されておりまして、そこがまさに今の問題だろう。
 まだ私は、世界的に見ても、この国は一般的な先進国の中では、刑事司法はよく闘っている面があろうかと思います。しかし、そうでない、危ない側面が出始めたことは、まさに委員御指摘のとおりだと思うわけです。
 そういう意味で、私どもといたしましては、関係当局と十分な連携をとりながらも、十分な捜査ときちんとした刑事司法をつくるという点で、刑事局の関係でいえば、検察体制をきちんとやっていく、そのための必要な御支援をいただくということが一つあろうかと思います。
 それから、やはり法的な整備でございます。刑事実体法それから手続法を問わず、現代のさまざまな問題に合わせた的確な対応をとっていく必要があるということを考えているわけでございます。現在、政府で提案をさせていただくように努力させていただいております組織的犯罪対策関連立法も、まずこのような観点から御理解を賜りたいということで、できるだけの努力を続けているところでございます。
 そのための所要の法整備、これからいろいろ考えていかなければなりません。その一つの大きな手順であるというふうに考えておりますので、そのような段階に至ることができますならば、ぜひとも御理解を賜りたい。そして、そのことを通じて広く国民の皆様方に理解をいただき、そしてまた足らざるところは補ってまいりたい。そのための努力を繰り返させていただきたいというのが私どもの気持ちでございます。
#157
○権藤委員 だから、組織犯罪法というように直接結びつけていくには、まだまだ疑問があると思うわけであります。
 新聞を見ましても、官僚による叙勲の申請でありますとか、あるいは国民の税金をどのようにして使うのだ、このようなことで国会が大変な議論をしておるさなかに、全く庶民のニュアンスとはかけ離れたような問題が官僚によって行われているということが、連日のように新聞やテレビで報道されております。
 また、社会のそれこそ中核となっていかなければならぬ、まさに模範となっていくべき立場にあるという人たちが、公然と不合理なことに手を突っ込んでおる。こういうようなことが行われた。いわゆる不正事犯というものが多発をしておるわけでありますが、その背景は一体何なのか。私は、教育にあるのではないかというふうに思っております。
 教育も、家庭教育もあれば、あるいは学校での教育もあります、社会における教育もあるわけでありますが、このことについて、何か御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
#158
○原田(明)政府委員 大変奥深いと申しますか、今のさまざま起こっておる事象の背景にあるものについての委員の御意見で、その問題の大きなかぎが教育だという御指摘で、この点は、私どもといたしましても、私自身、自戒を込めて、そういう面について考えていかなければならないという面はあろうかと思います。
 そして、さまざま現在起こっていることのいろいろな事象がございます。やはり戦後五十年かけて、この国は、いわば大変経済的に豊かな国に、我々の先輩の努力でしていただきました。荒廃の中から立ち上がって、世界有数な経済大国にしていただきました。その中で、しかも、これはさまざまな世論調査等もございますが、国民のほとんど大半の方々が、みずから中流階級と申しますか、中産階級と申しますか、経済的にはさほど不満のない、しかも平等な社会をつくり上げていったということがよく言われております。
 その中には、さまざまな施策の中で、いわば国全体として、この日本国という単位で考えた場合には、お互い助け合い、足らざるところを補い合い、そしてさまざまな配慮がなされてきた。そこには行政の機能、またはそれを取り巻く社会一般の機能がワークしていたという点は私はあろうかと思います。
 しかし、ある面では、このことについてかつて評した人がおるのでございますが、いわば社会主義で求められていた平等な社会が、日本のような国の中で実現した面があるという点が指摘されたことがございます。私も確かにそういう面があろうかと思うわけですが、その間に、確かに、平等な社会をつくっていくという中で、ある種の特権と申しますか、いわば内々に隠れたエリート意識といいますか、あるいは仕組みの中で特定の利益を得ていくというような仕組みがあったということが指摘されております。これは一つの分野だけではございません。あらゆる分野でそういうことがあるのじゃなかろうかと思います。
 しかし、この国際化を進めていかなければならない現在、このような仕組みはもはやもたないということが指摘されております。新しい時代には、これは先ほどの大臣の基本的な認識にございましたが、やはり規制が解除され、自由競争の中で、自己責任においてこれをやっていかなければならない世の中といった場合には、必ずそこでは、ほうっておきますと弱肉強食ということもございましょう、また、ルールに対する物の考え方が変わってくると思います。そうした中に、私どもとしては、司法もこれにこたえていかなければならないという気持ちを持ちつつ、しかし司法だけですべてのことが改善されるというふうには全く思いません。司法は下支えでございます。世の中に出てくるさまざまな問題について対症療法的にやっていくのが私どもの仕事でございます。
 やはり、世の中の基本的なことにつきましては、教育を含めたいわば上部構造と申しますか、物の考え方を含めた大きな改革がなされて、そしてそれを私ども司法の一翼を担う者が支えさせていただく、そのような社会がこれからの社会ではないだろうかと思うわけです。
 大変口幅つたい意見を申し上げてしまいまして、委員の教育という観点での御指摘に対して、果たしてどのような答えになるのかわかりませんが、お許しいただければと存じます。
#159
○権藤委員 去る十日ぐらい前の話でございますが、カナダの一女性の方と懇談をする機会がございました。この方は決して評論家でもなければ専門家でもないわけであります、一市民なんですが、その方が日本にお見えになりまして、そうしてある農村の実態を研究したいということで、ホームステイをなさって、直接田植えをしたり、あるいは稲を刈ったり、収穫をしたりというようなことを経験された。それだけではまだ勉強不足だということで、また漁村に行かれまして、そうして手こぎの舟から、あるいはまき網と申しますか、そういう日本の漁業の湾岸、沿岸漁業の実態というのを研究された。それを終えて、今度は教師として、語学の教師として今やっておられるわけであります。
 その方が非常に興味深いことを申されました。日本について言えばたくさんある、問題点が。自分が考える中での意見がたくさんあります。その中のナンバーワンはやはり農業である。食糧をどういうふうにして生産していくかということについての基本的な考え方について甘いのじゃないかというふうに外国人から見た場合は思います。
 二番目に挙げられたのが教育でございました。そのときに、こういうお話でした。国際化の中でいろいろと言われるけれども、今日、日本を建設してきたのは、やはり日本の文化に合った教育という制度が今日を築いてきたのじゃないか。だから外国人から見ると、日本人から見るとどうかわかりませんが、外国人の一市民として見た場合、もっと考えることがあるのじゃないかというふうに自分は考えている、まあ具体的なことは申されませんでした。私もそういうふうに思うところがございます。
 そこで、もう一つお尋ねしたいのですが、大臣は長い間警察官僚としておみえになる、また政治家として、大臣として今日指導しておられるわけでありますが、刑事局長からのお話がございましたが、大臣としての教育のあり方について御意見があればまたお聞かせいただきたいと思います。
#160
○下稲葉国務大臣 個人的な答弁で結構でございましょうか。私は長いこと警察におりまして、そして特に警視総監をやっておりましたときに、少年問題、相当頭を突っ込んでおるつもりでございます。そのとき言い出しましたのは、警察の直接の仕事じゃないかもしらぬけれども、少年の社会参加活動ということを主張いたしまして、警視庁の全警察官の協力を得て多くの社会の方々に御協力をいただいたことがございます。
 駅周辺に自転車がたくさん放置されております。あれは何とかならぬだろうか。具体的に申し上げますと、自転車窃盗、自転車の使用窃盗、これが非常に多い。それが犯罪になっているのですね。もう、とってくれ、とってくれと言わんばかりの状態。それを環境整備することによって、環境もよくなるし犯罪も少なくなるということで、まず子供に自転車の整理を協力願おうとやったわけです。そうしましたら、それを大人の人たちが見て、子供がやっているのならおれたちもほっておくわけにはいかぬなというふうな形になりました。
 それから、お年寄りを大切にしょうというふうなことで、おふろやさんに協力を願いまして、十月十日ですかなり、おふろ屋を開放してもらって、お年寄りにただで入っていただいて近所の子供が背中を流してくれる。あるいは東京でもまだ農地があるところもございまして、開放していただきまして、生産活動、サツマイモを植える、大根をつくる、あるいは稲を植える。そしてその植えた苦労、それからそれが収穫される喜び。たまたまそのときに大島の噴火がございました。それで、子供たちが収穫いたしましてその収穫したのを大島の子供に送ったことがございます。そういうふうな形で、これはやはり基本だろうと思うのです。
 それから、やはりまくらを高くして日本の家庭の人たちが寝られるというのは、夜も一生懸命警らしてくれるお巡りさんがいる。あそこに赤い電灯がついている。それで安心して行ける、そういうふうな気持ちの問題、教育の問題、これをどんどん広げていこう。
 先ほどもちょっと申し上げたのですが、一番犯罪が多いのは窃盗でございますけれども、今、物が豊富ですね、スーパーにしろ何にしろ。とってくれ、とってくれと、そこまでは言わないのかもしれませんが、そういうような雰囲気なのですね。そうしますと、一回そういうふうなところで味をしめますと、余り罪悪感を感じなくなってくる。それが悪に入る道なんだ。少年の非行というのは典型的にはそういうような形だったのですね。それを何とか未然に防止しようというふうな形でやりましたら、結果として検挙率が一〇%ぐらい上がったことがありまして、犯罪、少なくなりましてね。そういうふうなやり方も一つの方法かな。
 そして、地域の人たちも、スーパーの人たちも駐輪場をつくってくれとか、あるいは駅の駅長さんが一生懸命になって、そこに駐輪場だけじゃなく駐車場をつくってくれ、そういうような環境をつくる、そういうふうな活動というふうなものが私は底辺にあるのではないだろうかというふうな気持ちがするのです。
 今はこういうふうな立場でございますから、そういうふうな人たちの目線で私たちが見回して、ですから具体的に申し上げますと、司法というふうなものは国民と大変離れたところにあるような感じがするのですよね。事件が起きると、もう弁護士さん、どこにいるのだろうか、幾ら取られるのだろうか、頼んだはいいが、期間がかかっちゃって間に合うのだろうかとか、そういうふうな社会にどんどん進みますから、訴訟事件なりなんなりは別に。そういうふうな中で、じゃ司法というものは、弁護士さんの数だとか何だかんだ、どういうふうにすればいいのか。あるいは身近に感ずるためには、今弁護士さんたちも偏っていますから、全国的に適当にいらっしゃるというわけでもないのですから、そういうふうないろいろな問題が出てきます。
 今おっしゃるように、基本は私は教育の問題であり、心の問題で、さらにはしつけの問題だ、このように思います。
#161
○権藤委員 貴重な御意見をお伺いしてありがとうございました。
 牧口常三郎という先生が、やはり教育というものは実習も含めて人間形成に努めていかなければならぬだろうということを相当昔発表されたことがございますが、非常に興味深く学習したこともございます。
 今大臣が言われておりますように、教育というようなものが人間形成に役立つ、そういうような充実した教育でありたい。それと人間の基本、それからやはり、決してナショナリストじゃございませんけれども、日本は日本人としての基本があるはずであります。それは先ほど申し上げましたように、一外国の女性の目から見た日本の教育に対してもっと深く思索をする必要があるのじゃないかということに私は相通ずるものがあるのじゃないかと思う。
 と同時に、これだけ人の往来が激しくなってきますと、国境のない時代でございますから、人や物やあるいは文化というものが交流をしていくわけでございますから、国際社会の一員としての基本を身につけるような教育制度というものもやはり十分に考えていかなければならない。それともう一つは、教職員の資質を高めていく。低いとか高いとかという問題じゃございません。これ以上高めていくということも大事だろうと思うわけでございます。
 文部省来ていらっしゃいますか。何か感想がございましたら、お述べいただきたいと思います。
#162
○河村説明員 社会の基盤をつくっていく上での教育のあり方につきまして、先生から御説拝聴させていただきまして、ありがとうございました。
 文部省といたしましても、今、内閣の六大改革の一つである教育改革というのを推進しております最中にございます。
 考え方としましては、これからの社会を生きていく子供たちに生きる力を身につけてもらうんだということが今の一つの考え方になっておりまして、その生きる力というのは、知識を大量に詰め込むのではなくて、みずから考えみずから学んでいく力を身につけることでございますし、それから心豊かな人間性というものを身につけて、他者への思いやりあるいは命を大切にすることもきちんとできる人間になっていこうということでございます。それを支える健やかな心身というものも持っていきたい、そういうことで、いろいろな制度の弾力化あるいは教育内容の充実といったようなことに努めているところでございますので、今後とも施策の充実に力を傾けてまいりたいと思っております。
#163
○権藤委員 それから、所信の中で、「オウム真理教に関しましては、組織の再建が進められ、殺人をも肯定する危険な教義を復活させるなどの動向が」云々という、「殺人をも肯定する」というような非常にショッキングな表現でもってここで述べられておりますが、最近のオウム真理教につきまして、どのような状況にあるか説明をしていただきたいと思います。
#164
○豊嶋政府委員 お答え申し上げます。
 オウム真理教につきましては、昨年一月末に公安審査委員会の棄却決定が出ました以降も、公安調査庁の重要な調査事項の一つとして調査を継続してまいりましたが、教団は、公安審査委員会の決定以降も組織の充実と強化を図っておりまして、長老部と称する教団の意思決定機関を頂点とする中央の部署を、従来の四部署から十四部署に増設いたしました上、これに伴って中央部署の拠点施設や支部、道場を次々とふやしまして、現在、これらの教団関連施設は十八都道府県二十八カ所に及んでおります。
 本年一月現在におきまして、教団は五百人以上の出家信徒を擁しておりまして、在家信徒もこれに数倍する多数が活動中でございます。また、脱会信徒に対する復帰工作や新たな信徒獲得対策も活発に行っているところでございます。とりわけ、平成七年三月に発生した地下鉄サリン事件以降、警察などの捜査の努力によりまして四百二十名以上が逮捕、送検されておりますが、このうち、現在までに三百四十三人が釈放ないし服役を終えまして社会に出てきておりますが、このうちの百五十五名が教団施設に出入りするなどして教団に既に復帰している事実が確認されております。
 さらに、教団の活動資金の問題ですが、パソコン販売などを目的とする関連会社を数社有しておりまして、この営業活動も非常に活発でありまして、私どもの調査の結果によりますと、昨年一年間のこれらの事業による総売り上げは少なくとも四十億円を超えるものと推計されております。このほか、説法会というものを全国各地で頻繁に開催しておりまして、参加した信徒から多額のお布施を徴収するなどして活動資金を集めております。
 また、教団は、かつて教団の武装化や在家信徒を出家させるための口実としたハルマゲドン、世界最終戦争というものが間近に起きるんだということを再び強調し始めているほか、説法会におきましては、依然として、殺人をも積極的に肯定するタントラ・ヴァジラヤーナという教義がありますが、その正当性や麻原への絶対的帰依を強調しているところでございまして、その危険な体質は従前と大きな変化はないというふうに認められますので、公安庁といたしましては、今後とも重点的に調査を続けてまいる所存でございます。
#165
○権藤委員 わかりました。
 それから、時間がありませんので、少年法の改正の内容と国会提出の見通しにつきましてはどういうことでしょうか、お聞かせをいただきたい。
#166
○原田(明)政府委員 法務当局といたしましては、凶悪事犯を含みます少年事件の動向を踏まえまして、また、少年事件に関するさまざまな御意見にも注意を払いながら、適切な処遇を実現するための第一の基礎でございます少年審判における事実認定の問題など、少年手続のあり方につきまして、制度の見直しを含めた検討を真剣に進めているところでございます。
 この点に関しまして、現在、法曹三者の間の意見交換会で、事実認定手続を中心とする少年審判手続の現状と問題点について意見を交換しており、その中で、具体的には合議制の採用、検察官の審判への一定の関与、観護措置期間の伸長、検察官に一定の場合の抗告権を認めることなどが検討の対象とされているところでございます。
 改正の時期について現段階で具体的なことを申し上げるのはやや困難でございますが、非行の実情や少年法のあり方に対して示されている種々の議論にも留意しつつ、できる限り速やかに必要な改正を実現すべく今後とも努力してまいりたいと存じます。
#167
○権藤委員 この問題につきましては、後ほどまたゆっくり質問させてもらいます。
 最後に、司法制度の整備の問題につきまして、多少私の考えも含めてお尋ねをいたします。
 今までの我が国の国家社会の運営のあり方というものは、近代国家への道として、追いつけ追い越せということで事前チェック方式、いわゆる行政がリードしていくんだという方式をとってきたと思うわけであります。それが国際化の中で、この事前承認事項ということは社会の常識に合わないようになってきたというところにさまざまな破綻の原因があると思っておるわけであります。
 この社会情勢は、二十世紀というのは戦争と革命の時代ですから、すべてのものを国家に集中するという時代でありましたが、二十一世紀を目前にして、やはり平和と安定の時代に入ってくる、そうなったときには、人、文化、物、経済、政治、いや応なしに国際社会の中で対応していかざるを得ないわけであります。そうなりますと、やはり事後チェック方式ということになるのじゃないか。先ほど申されましたが、それは自由と自立と自己責任、そういう社会になると思います。となりますと、またある不心得者が出てくることもまた当然だろうと思うわけであります。
 そこで、法の支配による近代国家という原則論をとっていくのか、あるいは今までのこの日本のルール、自然のまあ談合といいますか、というものをとっていくのか、これはもう選択は一つしかないわけでありますが、だれが見てもその結論は明白であると思います。
 このような中で、司法解決ということが非常に大きな問題になってまいります。今でも判決が遅いというようなことで、訴訟経済コストの面からも、あるいは時代に合わないというようなことで大勢の不満を持つ人もいらっしゃるわけでありますが、現在の体制では対応し切れないわけでありますから、これから先、その整備を具体的にどのようになさろうとしておるのか、ここでお示し願えればと思っております。
#168
○下稲葉国務大臣 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおりに、今後、規制緩和等の改革が進みますと、国家の基礎を支える司法の果たすべき役割は一層重要になってくると思います。そこで、そういうふうな中で、司法といたしましてどういうふうに対応するか。
 御指摘のように、法曹人口、全体で二万人そこそこでございます。ということから検討を進めているわけでございますが、法曹人口の増加のために司法試験の合格者数をまずふやそう。現在七百名ぐらいでございますが、それを八百名、千名にしよう。そしてさらには、その後の推移を見て、千五百人ぐらいの体制も視野の中に入れようというふうなところでやってまいっておるわけでございまして、とりあえず、そういうふうなことから今国会に裁判所法及び司法試験法の一部を改正する法律案をお願いいたしているわけでございます。
 検察官につきましても、平成十年を含めまして二十数年ぶりに増加いたしておりまして、今回増員が認められますと、百一名三年間で増員するということでございまして、裁判官につきましてもお願いいたしておりますが、毎年判事補の増員をお願いしておるわけでございますし、今回は二十名というふうな形になっているわけでございます。
 そういうふうなこと等を踏まえながらも、今御指摘のとおりに、裁判がなかなか遅いじゃないかとかいろいろな御議論等々もございますが、あるべき司法を将来に見据えまして、毎日毎日検討してまいりたい、このように考えております。
#169
○権藤委員 それでは質問を終わります。ありがとうございました。
#170
○笹川委員長 木島日出夫君。
#171
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 最初に、所信にも述べられておりましたが、証券取引をめぐる不正事犯、中央省庁職員や公団理事らによる汚職事犯など、経済や行政の根幹にかかわる事犯が相次いで摘発されるに至っておる。せんだっての大蔵省のキャリア官僚に対する逮捕、これまでとかく各種の贈収賄事件についても、大蔵省は予算を握っているから検察は手が出せないのではないかとか、キャリア官僚には手が出せないのではないかとか、そういうことが言われ続けていた中で、それを吹き飛ばして、法と証拠によってきちっとした措置が今とられつつあるということを、私もそれとして高く評価をするわけであります。接待ということを贈賄としてとらえて、それにメスが入ったというのは非常に画期的ではないかなと思います。
 三月六日の読売新聞の記事にも「接待漬けになっていたのは、検査官や五日に逮捕された中堅幹部だけではないのだ。しかし、過剰な接待を受けた中で、一部の大蔵高官は捜査の対象から外れている。強大な影響力を持ちながら、個別の「職務権限」が明確でなく、接待の趣旨もはっきりしないためだ。捜査当局に追及されることもなく、組織の頂点に立とうとしているスーパーエリートたち。」こんな言葉が躍っているわけであります。
 ぜひそういう難しさをひとつ乗り越えて、日本の行政、政治に対する国民の信頼が根本から失わされている、多くの国民の中にはまだやはりそうはいってもトップまではいかないのじゃないかとかいろいろな見方もあろうときだけに、毅然とした捜査を法と証拠の名において続けられて、法務・検察が官僚の襟を正すというのは不幸なことでありますが、違法なことを野放しにしておくわけにはいきませんから、きちっと捜査をされることを望んで、最初に大臣の決意だけを伺っておきたいと思います。
#172
○下稲葉国務大臣 お話がございましたように、金じゃなくて接待から事件化したというのは余り今までなかったかもしれませんけれども、私どもは、違法行為がございますれば、それはもう法と証拠に基づいて厳格に適用して検察がやってくれるものだ、このように確信いたしておりますし、私はまた検察を信頼いたしております。結果としてキャリアだったりノンキャリアだったりということでございまして、そういうふうなことじゃなかろうか、このように思います。
#173
○木島委員 私は、きょうは法務省、法務大臣の一番大事な基本的な任務として、何といっても国民の今、財産、権利をしっかり守る、基本的人権を守るということだろうと思いますので、実は起きた時期は古い時期でありますが、一九七七年から七八年にかけて日本海海岸で頻発して発生した日本人拉致事件について、いまだに解決しておりませんので、最初にその問題についてお聞きをしたいと思います。
 最初に、警察庁をお呼びしております。昨年の警察白書で、警察庁は初めてこれら一連の日本人拉致事件を北朝鮮による拉致容疑として指摘をし、七件十名について触れております。その七件について、概要、そして警察白書以降の捜査その他の状況をまず御報告願いたい。
#174
○奥村説明員 お答えをいたします。
 北朝鮮による拉致の疑いのある事件は、これまでに御指摘のとおり七件十人でございまして、また、拉致が未遂であったと思われるものは一件二人であると判断しております。
 その内訳を申し上げますと、昭和五十二年九月に石川県警察が検挙いたしましたいわゆる宇出津事件、昭和五十二年十一月に新潟県の海岸付近で発生をいたしました少女行方不明事案、それから五十三年七月から八月にかけまして福井、新潟、鹿児島の海岸で連続発生をいたしました三件のアベック行方不明事案と、同じ年の八月に富山県の海岸で発生をいたしましたアベックの監禁致傷事件、昭和六十年に韓国で検挙されました辛光洙事件、それから李恩恵と呼ばれる日本人女性の拉致容疑事件、この七件十人と未遂の一件二人でございます。
 白書以降の捜査の状況でございますが、これらの一連の北朝鮮によります拉致の疑いのある事件につきましては、韓国当局との情報交換を含めまして、外務省等関係各機関と連携をしながら、新たな情報の収集、また各事件相互の関連性の調査等所要の捜査を行ってきておるところでございます。
#175
○木島委員 拉致容疑のある七件十人について、生存が確認されているかどうか。どうでしょうか。
#176
○奥村説明員 生存しているかどうかにつきましては鋭意確認中でございますが、この中で李恩恵と呼ばれる日本人女性でございます。これは、例の金賢姫が捕まりまして、金賢姫がその自供の中で李恩恵という者に過去日本語等を教えてもらったということを言っておりましたので、その当時は生存しておったのではないかというふうに思っております。
#177
○木島委員 ほかに生存確認は全然できていないのですか。今日じゃなくてもいいです。いつの時点でどういう生存が確認できたということでもいいです。
#178
○奥村説明員 ただいま申し上げましたほかに、現在の時点で生存確認しておるという者はございません。
#179
○木島委員 七七年の十一月に新潟で起きた少女拉致事件、横田めぐみさんでありますが、この件について、詳しい捜査の状況、そして今日まで警察として把握している状況を述べていただきたいのです。
#180
○奥村説明員 お答えします。
 昭和五十二年十一月に発生をいたしました少女行方不明事案でございますが、これは五十二年の十一月十五日の夕刻、当時十三歳の少女が、新潟市内におきまして、中学校から帰宅する途中で消息を絶ちまして、その後現在に至るまで行方不明となっておる事件でございます。
 本件につきましては、韓国当局との情報交換を含めまして、これまでの捜査結果を総合的に検討いたしました結果、平成九年に至りまして、北朝鮮による拉致の可能性があると判断するに至っておるところでございます。
#181
○木島委員 平成九年に至って北朝鮮による拉致容疑を判断した、それはどういう契機からそういう判断に至ったのでしょうか。
#182
○奥村説明員 これは、これまでの捜査結果を総合的かつ慎重に検討いたしました結果、平成九年に至りまして、北朝鮮による拉致の可能性があるというふうに総合的に判断するに至ったということでございます。
#183
○木島委員 現在、警察としては、この七件の事案についてどういう捜査体制をとっているのでしょうか。
#184
○奥村説明員 これら七件の事件、事案につきましては、関係府県警察におきまして、必要な体制をとりまして、鋭意捜査を行っておるということでございます。
#185
○木島委員 大分古い事件でありますが、法的にまだ時効は完成していないという立場で捜査を続行していると聞いていいのですか。
#186
○奥村説明員 これは北朝鮮による拉致事件ということでございますので、時効の停止、犯人が海外へ行っている間は時効は停止するという規定がございますので、時効が停止しているという前提のもとで捜査を行っておるということでございます。
#187
○木島委員 外務省、お呼びしているのでお聞きしたいのですが、この七件の事案、あるいは富山での未遂事案について、真相解明、被害者の生存の確認等、外交的にどんな努力をされているのか、御報告願いたい。
#188
○樽井説明員 御説明いたします。
 本件につきましては、我が国国民の生命の安全にかかわる大変重大な事件と心得ておりまして、これまでも、いろいろな北朝鮮側との接触を通じまして、私どもとしてはしっかり北朝鮮側と協議しているということでございます。
 ちなみに、昨年八月に行われました審議官級の予備交渉、引き続いて日朝間の赤十字連絡会議等ございまして、そういう場を通じましても、我が方は、北朝鮮に対しまして、本件の早期調査を強く申し入れている次第でございます。
#189
○木島委員 八月の審議官クラスの交渉について、もっと具体的に、日本側としてどういう要望を出したのか、相手方、北朝鮮側がどういう対応だったのか、詳しく報告してください。
#190
○樽井説明員 お答えいたします。
 昨年の審議官級予備交渉の主要なテーマは、日朝交渉の再開をどうするかということでございましたけれども、その協議の過程におきまして、本件拉致事件につきましても、我が国の大変重大な関心を先方に伝えまして、本件についての早期調査を強く求めたわけでございます。
 当時、北朝鮮側は本件拉致事件そのものを否定いたしておりまして、そのようなことはあり得ないという態度でございました。
 ただ、御承知のように、昨年十一月の与党の訪朝団が北朝鮮を訪問されまして、その結果、北朝鮮側も、一般の行方不明者として調査するということで回答いたしまして、以後、北朝鮮内部においても調査が進んでいるという理解でございます。
#191
○木島委員 八月の会談で、重大な関心を持っているということで、日本側から北朝鮮側に話をしたという答弁でありますが、もっと端的に、日本の警察は白書で、北朝鮮による拉致の疑いのある事案なんだ。時期、被害者、発生場所、はっきりと相手国に伝えて、捜査協力を依頼したのですか。
#192
○樽井説明員 御説明がちょっと足らなかったと思いますが、御指摘のとおりでございまして、我が方の持っております材料、すべて北朝鮮側に提示いたしまして、早急なる調査を要請しております。
#193
○木島委員 その材料というのは何ですか。
#194
○樽井説明員 先ほど来警察当局からも御説明のありましたような、我が方が持っております関連資料ということでございます。
#195
○木島委員 警察にお聞きしたいのですが、警察が今手持ちの、捜査によって得られた資料はすべて外務省に渡していますか。
#196
○奥村説明員 一連の北朝鮮による拉致の疑いのある事案につきましては、その事案の性質上、外務省等関係機関との連携をとることは、捜査を進める上でも必要不可欠であると考えておりまして、かかる観点から、外務省とは密接な情報交換を行っております。
#197
○木島委員 質問に答えていないのですが、全部出していますか、外務省に。
#198
○奥村説明員 必要な情報は全部出しております。
#199
○木島委員 何が必要か警察が判断しているので、八月の交渉のときには相手国政府は否定していたわけでしょう。そうですね、さっきの報告によると。
 その後、相手国の態度変化は見られたのですか、外務省。
#200
○樽井説明員 お答えいたします。
 先ほど御説明申し上げましたように、昨年の審議官級予備会談におきましては、北朝鮮側はそのような事実はないという答えでございました。
 他方、その後、昨年十一月の与党訪朝団が訪朝されまして、そこにおきます会談で、北朝鮮側から、一般の行方不明者として調査するという回答がございました。
 そのような経緯を経まして、私どもは引き続き北朝鮮側の早急な調査を強く申し入れているという状況でございます。
#201
○木島委員 昨年十一月の与党訪朝団が行った交渉、相手はどんなレベルのどういう人だったのですか。
#202
○樽井説明員 相手方は宋浩敬朝日友好親善協会の会長と承知しております。
#203
○木島委員 国柄でどうかわからないのですが、民間人ですか、それとも捜査に直接の権限等を持っている人なんでしょうか。どういう人なんでしょうか。
#204
○樽井説明員 御承知のとおり、この組織は北朝鮮労働党の関係機関でございますので、それなりの地位をお持ちの方であると承知しております。
#205
○木島委員 党と政府の関係はよくわかりませんが、政府機関の責任ある地位にある者が、一般の行方不明者という言葉で表現するかどうかはともかくとして、捜査、調査に協力しようという回答は、まだ正式には得られていないのですか。
#206
○樽井説明員 私ども政府の理解で申し上げますと、十一月の与党訪朝団と北朝鮮側との会談におきまして、北朝鮮側の極めて正式な回答があったというふうに理解しております。
#207
○木島委員 その後三カ月近くたつわけですが、そういう相手国、相手側の対応を受けて、ではその後どうなったのか。詰める場というのは持っておるのですか。
#208
○樽井説明員 お答えいたします。
 日朝間におきましては、日朝交渉再開という問題もございますので、極めて非公式ではございますけれども、政府レベルの大変非公式な接触を継続いたしております。私どもは、そういう非公式の接触の場を通じまして、この問題については非常に強く提起いたしておりますし、北朝鮮側の早期の調査及び回答を要請している状況でございます。
#209
○木島委員 その非公式の場でこの問題を持ち出した直近の時期というのは、いつなんでしょうか。そして、それに対して、そのとき日本の外務省側はどういう言い方をしたのか。非公式の場で、相手国の政府機関の代表が出てくるのだと思うのですが、どういう態度だったのか、明らかにしてほしい。
#210
○樽井説明員 お答え申し上げます。
 大変非公式な接触でございますので、具体的な時期、レベル等につきましては、大変恐縮でございますがコメントを差し控えさせていただきたいと思いますが、つい最近の交渉はことしに入ってからでございます。その場におきまして、本件につきましてもかなり突っ込んだやりとりをいたしましたが、結果的に、我が方として満足のできる結果は一切得られていないというのが現状でございます。
#211
○木島委員 どうも具体的にお話しいただけないのでよくわからぬわけですが、満足の得られる回答が得られなかったというお答えですが、どういう態度なんですか。
 要するに、日本が考えているように、こういう拉致事件、そんなのは知らぬという態度なんですか。それとも、与党訪朝団が交渉したときの相手の朝鮮労働党の代表が発言したような、まあ一般の行方不明者として捜そう、そういう態度なんですか。もうちょっと具体的に答弁してくださいよ。
#212
○樽井説明員 先方の態度でございますけれども、一般の行方不明者として調査する旨を与党訪朝団に約束したということを踏まえまして、そういう調査を継続しているという回答でございます。
 他方、先ほど来申し上げていますように、その結果につきまして、私どもとしては満足できる結果は得られていないということでございます。
#213
○木島委員 相手国政府は、与党訪朝団の折衝の場でも、今述べられた非公式の政府間の折衝の場でも、拉致事件というのは一貫して否認しているというふうにお伺いしていいですか。
#214
○樽井説明員 本件につきましては、与党訪朝団が訪朝されましたときに大変激しいやりとりがあったというふうに承知しておりますけれども、北朝鮮の立場といたしましては、拉致事件ということにつきましては、これを必ずしも受け入れているということではございませんけれども、先ほど来御説明申し上げていますように、一般の行方不明者として調査することはやりましょうということでございます。
#215
○木島委員 被拉致者の家族の皆さん、大変な思いでこの二十年間を過ごしています。全く情報がなかったわけであります。つい最近、一定の情報が得られて、横の連絡がとれるようになりまして、被拉致家族連絡会が組織されました。
 この家族の皆さん、昨年、政府に訴え状を出したと思うのです。ちょっと冒頭、読んでみます。
 「政府に訴えます。私達の息子や娘たちを返してください。昭和五十三年七〜八月私達の息子や娘達が、突然姿を消してしまいました。茫然自失の私達は、行方不明となった理由・原因について、ありとあらゆることを考え、また自分たちで出来るありとあらゆる方法で、その行方を探しましたが、全く手掛かりをつかむことは、出来ませんでした。」「私達の息子や娘たちが、消息を絶ってすでに二十年たちます。当時二十三才だった息子も現在四十三才であります。この間に失われた貴重な歳月は、永久に取り戻すことは、出来ません。またこの間二十年息子や娘たちの帰りを断腸の思いで待ち詫びていた私達家族の気持はとうていかんたんな言葉では言い表すことは出来ません。」
 相手は国交のない国であります。大変だと思うのです。国連の場を通じて努力はどうされているのでしょうか。
#216
○樽井説明員 お答え申し上げます。国連との関係につきましては、昨年、小渕外務大臣が総会出席のために国連に出席いたしました折に、当時の明石国連事務次長との会談の中で本件を提起いたしまして、ぜひ国連サイドでも御協力いただきたいという話をいたしております。
 その後、明石事務次長が訪日いたしましたときにも、本件につきましては国連としても非常に関心を持っておりますので、お手伝いが必要であれば考えたいということをおっしゃっておられたと承知しております。
#217
○木島委員 それで、その後詰めているのですか。
#218
○樽井説明員 その後、この協力につきましては、特に具体的な詰めば行っておりません。
#219
○木島委員 非常に外務省の対応は不十分だと思うのですね。こういう思いで二十年間、家族の皆さんは情報を求めているのですよ。日本の主権にかかわる事件ですよ。日本の国内で、何の責任もない若い男女が忽然と行方不明になった。日本の政府、警察庁は、北朝鮮による拉致事件だと正式に認定した。もっと毅然たる態度で臨んでほしい。
 そして、少なくとも外務省なり警察庁がつかんだ情報は、すべて家族に伝えてほしいのです。皆さん方、私に対してもほとんど情報を提供しません。警察、外務省、どうですか。あなた方がつかんでいるすべての情報を、ここでもほとんど先ほど述べませんでした。二十年待ち続けているのですよ。すべての皆さんが持っている情報を家族に渡してやってください、警察、外務省。
#220
○奥村説明員 警察といたしましては、拉致された疑いのある方々の両親と親族に対しましては適宜連絡をとらせていただいておりまして、今後とも、御指摘の点を踏まえつつ対処してまいりたいと考えております。(木島委員「情報は渡すんですか」と呼ぶ)ええ、情報はこれまでも必要なものはお渡しをしております。
#221
○樽井説明員 外務省といたしましても、本件の重みは十分踏まえて対処しているつもりでありますし、今後ともしっかりやりたいというふうに思っております。
 御家族への情報の提供につきましては、先ほど警察当局からお答えしたとおりでございます。
#222
○木島委員 これからも家族の方から警察、外務省にいろいろな情報の提供を求めると思うんです。その際には、隠さずにあらゆる情報を家族に提供してもらいたい。そして、力を合わせて一日も早くまず生存を確認し、救出し、そして事件の真相を解明するように引き続き努力されんことを求めていきたいと思います。
 法務省に聞きますが、この事案について法務省はどんな関与、かかわりを持ったんですか。
#223
○原田(明)政府委員 いわゆる一連の拉致事件ということで問題にされている事件につきましては、現在警察当局におきまして捜査中ということでございまして、検察当局といたしましても、その捜査の成り行きにつきまして関心を持って見守っていると承知しております。
#224
○木島委員 先ほど警察から報告があった七件の拉致疑惑容疑、そして一件の富山での拉致未遂事件、これについて、送致を受け、刑事訴訟法に基づく処分をした例はありますか。
#225
○原田(明)政府委員 一件、富山におけるアベック拉致事件につきまして、昭和六十年七月十五日に富山地方検察庁高岡支部におきまして、被疑者不詳のまま逮捕監禁致傷の罪名で送致を受けた。そして、それにつきましては、当時の状況で時効が完成しているということで、昭和六十年七月十九日に不起訴処分に付されたということを承知しております。
#226
○木島委員 氏名不詳のまま逮捕監禁容疑で送致を受けた、そして、時効完成で氏名不詳のまま不起訴処分をしたということですが、送致を受けたというわけですから、証拠を添えて送致を受けたと思うんです。そうですね。それで、不起訴処分をしたその一件証拠はどうされたんでしょう。
#227
○原田(明)政府委員 まず、本件一件記録でございますが、その保存期間は、記録の事務規程によりますと平成二年七月十八日までであったのでございますが、この不起訴記録、不起訴にいたしました後に、昭和六十二年十一月二十九日に発生いたしましたいわゆる大韓航空機事件を契機に、本件に北朝鮮工作員が関与している可能性が必ずしも否定しがたい状況に至ったということから、この規程によりまして現在も引き続き保存いたしております。
#228
○木島委員 この未遂事件の被疑者不詳ということですが、その後北朝鮮による拉致の疑いもあるということで記録は保存しておると。もし北朝鮮による拉致未遂事件だということになれば、これは時効はとまると考えていいんですか。
#229
○原田(明)政府委員 もし今後犯人が判明いたしまして、ある期間海外逃亡中であったという事実が認められますならば、その間の時効の進行は刑事訴訟法の二百五十五条によりまして停止いたしますため、その段階で改めて公訴時効の完成の有無が考慮される、検討されるということになるかと存じます。
#230
○木島委員 一連の事件については、家族にとって本当にほとんど情報がないという事案であります。たまたまわずかな情況証拠がかいま見れるのが今の富山の未遂事件。一件記録・証拠もある、そして、幸いにしてその証拠物件が保存されていると。ぜひこれは開示をして私にも見せてほしいんです。もう事件として明らかにした事件でありますから、刑訴法の規定によっても開示することが私は公益にかなうと思いますので、ぜひ記録を見せてほしい。また、ほかの事件の家族にも開示してほしい。
 そして、日本の主権が侵害された大変な事件でありますから、民間の力もかりて、これからでも遅くないわけですから、あらゆる情報を集約して、そして北朝鮮に迫るいうことが求められる事件だと思いますので、富山地検の高岡支部に眠り込ませておくのはいかぬと思うんですが、いかがでしょうか。開示をしてもらえませんか。
#231
○原田(明)政府委員 現在、この一件記録につきましては、なお捜査の継続する可能性があるということを前提に現在保存さしていただいているものというふうに承知しておるわけでございます。
 そういう点からいたしますと、委員御承知のとおり、刑事訴訟法四十七条の規定に基づきまして検察官が判断するということになろうかと思います。そして、現在そういう面では生きている可能性のある事件ということで、その取り扱いについては、その記録の状況につきまして、閲覧の目的、必要性、その他の事項を考慮して、勘案した上で決定されるというふうに考えるわけでございます。
 ただ、委員御指摘のとおり、一般的に公開という点についてはいかがかと存ずるのでございますけれども、しかし、関係者との関係で検察官において個別に判断することは可能であろうというふうに考える次第でございます。
 なお、先ほど私、申し上げるのが一点委員の御質問の関係で明確でなかった点がございますが、この一件記録そのものは保存されているんでございますが、これに附属されました遺留品としての証拠物につきましては、これにつきましては不起訴にした後廃棄されているという事情がございます。その点について私のお答えが不十分であり、委員の御質問の中に、一件記録及び証拠物という意味の御指摘が私の答弁の後の質問にあったものでございますから、念のためにお答えさしていただきます。失礼いたしました。
#232
○木島委員 その証拠物というのはどんなものだったんでしょうか。
#233
○原田(明)政府委員 証拠物は、寝袋用の袋、そのバンド、タオル、マスク、手錠、その連結金具、バスタオル、サンバイザー等であったと記録が残っております。
#234
○木島委員 何で廃棄処分しちゃったんでしょうか。
#235
○原田(明)政府委員 これは、当時の事情といたしまして、時効寸前にかかわるものということで送致され、被疑者不詳ということで廃棄されたものというふうに考えております。
#236
○木島委員 もう時間も迫ってきておりますので、検察、警察に最後の質問になりますが、今、この事件解決のために、国連というルート、あるいは国交のない北朝鮮とのいろいろなレベルの公式、非公式の会談、そういう二つのルートを先ほどお話がありました。それ以外に、国際刑事機構その他のそういう国際的な組織を通じて、国交のない国といえどもこの事件の解決のために努力させる、そういう道があるかと思うのですが、いかがでしょう。これは法務省あるいは警察、外務省。少しでも知恵を出して、この事案の解決のために総力を挙げる責任が日本政府はあると思うので、最後に聞きます。
#237
○奥村説明員 これら一連の事案につきましては、この事件の重大性にかんがみまして、あらゆるチャンネルを使って情報の収集等を行っておるところでございます。
#238
○木島委員 今の国際的な組織、どうなんですか。
#239
○奥村説明員 御指摘の国際刑事警察機構につきましても、必要な連絡はとっております。
#240
○原田(明)政府委員 委員の御指摘のこの一連の事件の背景ということを踏まえまして、確かに政府全体としてやらなければならないことはやらなければならないというふうに思いますし、法務省といたしましても、また検察の立場といたしましても、警察当局その他関係当局とお互いに連携をとりながら、やはりやるべきことがございますれば、それに対して協力してやっていかなければならない、そういうふうに考えます。
#241
○木島委員 ひとつあらゆる知恵と力を使ってこの事案の解決、まずは生存を確認して救出することだと思うのです。そして、真相を徹底的に明らかにすることだと思うので、そのために、法務大臣におかれましても、全力を尽くしていただきたいということをお願い申して、私の質問を終わらせていただきます。
#242
○笹川委員長 保坂展人君。
#243
○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 まず、昨年の神戸で起きた少年事件の被疑者の少年の顔写真が掲載された「フォーカス」の問題がございました。それ以降、立て続けに同種の雑誌報道が繰り返されているというふうに思うわけですが、法務省で把握をされているマスコミの雑誌報道は、昨年の夏の「フォーカス」以降、一体何件あったのか、それでその都度どのように対応されてきたのか、ちょっと簡潔に取りまとめてお願いしたいと思います。
#244
○横山政府委員 お答えいたします。
 まず、ただいま委員から御指摘のありました昨年七月の、フォーカス誌が神戸児童殺害事件の被疑少年の顔写真を掲載した、この件に関しましては、昨年七月四日に関係法務局長の方からこの出版社に対しまして、反省と再発防止策の策定、公表、回収等の被害の拡大防止及び回復措置等を求める勧告を行っております。
 それから次に、ことしの二月に同じく新潮社が「新潮45」という雑誌に、大阪府堺市で発生しましたいわゆる通り魔事件の被疑少年の実名及び顔写真を掲載した。これにつきましても、同様に今月三日に、反省と再発防止策の策定、公表等を求める勧告を関係法務局長からいたしております。
 それからまた、月刊誌文芸春秋の三月号に、神戸の児童殺害事件の被疑少年の検察官に対する供述調書とされるものの内容が掲載されました。この件に関しましては、これもやはり当該少年の人権擁護の見地から問題がある、また被害者の遺族等の心情の面から見ても、人権擁護上大きな問題があると考えておりまして、この件に関しましても、現在、関係法務局において事実関係について調査中でありまして、その調査の結果を踏まえて、人権侵害の事実が認められる場合には適切な措置を講じてまいりたい。
 また、やはり同じように、今月に入りましてフォーカス誌が、この神戸の児童殺害事件の被疑少年の犯行ノートなるものを掲載した。この件に関しましても、同様に関係法務局において現在調査中でございます。
 以上でございます。
#245
○保坂委員 今伺っていると、次々とこういった、いわば少年法の規定もあってなきがごとし、あるいは少年法のこの部分を実力で変えるべしといういわば既成事実の積み上げが行われている。しかも、検事調書の問題、同僚議員からもたびたび質問がありましたけれども、先ほど触れられた少年のノートですか、これは自宅から押収されたものの写しというふうに伝えられていますが、これは、刑事局長、間違いないですか。
#246
○原田(明)政府委員 恐らくその可能性が高いものだろう、その写しであろうと思われます。
#247
○保坂委員 最高裁に伺いたいのですが、現在、法曹三者による少年法についての議論が続いていると聞いております。現在進行形だと聞いているのですが、現在どのような進捗状況なのか、簡単にちょっとお願いしたいと思います。
#248
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 今委員御指摘の意見交換会でございますけれども、もともとこの意見交換会を持った趣旨でございますが、少年事件の中で、極めて限られた事案ではありますけれども、重大な事件において非行事実の存否が深刻に争われる、こういう事件があるということから、こういった場合に現在の少年法では十分機能しない問題があるという問題認識のもとに、三者の意見交換会を始めているわけでございます。
 そして、平成八年の十一月から十一回にわたりまして意見交換会を持ちまして、その中では、少年審判手続の現状認識についての意見交換をしたわけでございまして、その後、現在のところは、それを踏まえまして、さらに立法的手当てをどうするかということにつきまして意見交換会、いわば第二ラウンドになるわけでございますが、進めている段階にございます。
 この第二ラウンドの意見交換会は、二回ほど持たれた段階でございますが、ここで取り上げられている主な論点といいますか問題点は、一つは、少年審判に合議制を導入すべきかどうかという問題、そしてさらに二つ目には、検察官及び弁護士たる付添人双方が出席した審理を導入するかどうかの問題、さらには身柄を保全する観護措置の期間の伸長を認めるかどうかの問題、こういった問題を中心にして議論をされている段階にございます。
 以上でございます。
#249
○保坂委員 ただいまの最高裁の御説明によると、これは新聞あるいはマスコミで報道されている法務大臣の刑事罰の年齢引き下げということは、まだその議題になっていないというふうに理解するわけですけれども、本日の所信表明で大臣が触れられた、確かに凶悪な少年事件が続発をしている、少年法制に関して各般の意見が示されているところであると。さきに指摘しました雑誌による報道あるいは検事調書をめぐる波紋も含めて、そこの各般の意見の中にこれらの雑誌報道が含まれるのかどうなのか、そこについて法務大臣に御意見をいただきたいと思います。
#250
○下稲葉国務大臣 ちょっと違うと思うのです。今、最高裁の方からお話がございましたように、昨年の経緯を踏まえて十一回、そして立法を視野に入れて二回、その内容は今お話があったとおりです。
 私は、そういうふうな状態にありまずけれども、少年法を審議する場合には、最近の犯罪情勢に関連して、議論の中に年齢の問題を避けて通れないだろうと。今のままでいいのかどうか、そういうふうな議論をしてもらいたいということを法務省の刑事局長等々に指示いたしているわけでございますので、いずれそういうふうな場にそういうふうな議論が出てくる、そのような方向で進むと思います。
 それから、今委員御指摘の、人権擁護の問題に関連いたしました議論は、人権擁護推進審議会で二つの諮問事項がございまして、その二番目の諮問事項になっているわけでございまして、それはその場を中心として御議論いただこうということでございまして、しかも、第一の諮問事項を二年かけて、それから人権侵害問題を今やろうというようなことでは、若干タイミングもずれるものですから、その辺のところを今、事務的に審議会の場にうまく乗っけるような工夫をしてもらおうというようなことでやっているところでございます。
#251
○保坂委員 現在の少年法、重大な事実の争いがあるときにこれは十分でないという指摘はいろいろな立場であるわけで、私もこれを検討し考えることについては必要かと思いますが、ただし、そこには条件があると思います。これは冷静な議論ができる状況で行われるべきであると思います。
 そこで、もう一度法務省に伺いますけれども、これらの雑誌報道、しかも、あえて検事調書を出す、あえて押収されたノートを写真週刊誌に出していく、いわば挑発、挑戦が行われているわけで、こういったムード、こういう状況の中で、冷静な判断ができる状況なのかどうか。これらの、少年法のこの規定というのは事実工作動しないんだよという既成事実の積み上げについて、一体どういうふうな判断をしているのか。このあたりについて、もう一度刑事局長にお願いします。
#252
○原田(明)政府委員 いわゆる法曹三者協議の中で、手続規定と申しますか事実認定をめぐる諸問題について議論してまいったのは、何年か前のいわゆる山形マット事件でございますとか、事実認定がはっきりしないと。それがすべての始まりであるにもかかわらず、少年事件についてはそのような状況はないという現場の裁判官その他の関係者からの声がきっかけとなって進められてきた。その事情は委員も御承知のとおりでございますし、それについて冷静に検討しなければならないことはそのとおりだろうと思います。
 一方、最近起こった事件の中で、まさに委員御指摘のとおり、少年法の規定の趣旨といいますか、そういうものを正面から破ると言ったらおかしいのでございますが、挑戦をして、そこに穴をあけていこう、しかもそれを既成事実にしていこうという雰囲気が世の中に出てくる。この問題とは別に、私どもも、まさに冷静に、その状況はどうなのかと、そして一つ一つ対応していく。私どもの分野でございますれば、まさにその経過の中に犯罪を構成するような事情と申しますか事実があるならば、これに対して的確に、そのことを明確にして対応していくということが必要であるというふうに考えているわけでございます。それと少年法で現在進められている議論とは、一応切り離された問題というふうに考えていきたいと考えております。
#253
○保坂委員 ぜひ冷静な議論を前提にしていただきたい。各般の議論の中にこういった既成事実の積み上げというのは含まれていないというふうに、大臣にもぜひそういうふうにお願いをしたいと思います。
 組織的犯罪対策法について、実は与党三党の中で我が党は一貫してこれは疑問があるという立場で、実は非常に長時間、三党並びに法務省の皆さんと協議をし、説明を受け、幾つか議論をしてまいりました。
 時間が短いのでもう一点しか触れませんけれども、通信傍受に関して本日は触れたいと思います。
 この通信傍受について先週予算委員会で法務大臣にお尋ねをしまして、この組織的犯罪対策法そのものではなくて、その議論に入る前の、共産党の緒方氏宅盗聴事件、神奈川県警による盗聴事件というふうに私ども言いましたけれども、この事件について、大臣は、今回の立法と区別しながら、盗聴の事件というふうにお呼びになったことを確認したのです。それは間違いございませんか。だれがだれを盗聴したのか、それだけ簡潔にお願いしたいと思います。
#254
○下稲葉国務大臣 組織的犯罪対策法の通信の傍受とは全く別個の次元の話でございまして、神奈川県警の警備部の警察官による共産党の方に対する盗聴事件だ、こういうふうに認識いたしております。
#255
○保坂委員 そうしますと、予算委員会でも先週二回、実は警察の見解はどうかとただしているわけですけれども、警察は実行を認めていないという答弁です。きょうも来ていただいていますけれども、そこらについて加えて、つまり、法務大臣は今こういうふうにおっしゃった、このことを警察は認められるのかどうか。
 そして、九三年に国連規約人権委員会で小野警察庁長官官房留置管理官が、「起訴猶予をされた二人の警察官は、懲戒処分を受け、マスコミ報道による社会的制裁を受けております。」こういつた発言もされているかどうか。
 この二点について答弁いただきたいと思います。
#256
○奥村説明員 本件事案への警察官個人の関与につきましては、当時の神奈川県警における内部調査では確認できなかったという報告を受けているところであります。
 しかしながら、昭和六十二年当時、東京地検の捜査の結果、神奈川県警の警察官二名につきまして起訴猶予処分がなされ、警察活動の一部に疑惑を持たれるところとなったことは、警察といたしましても厳粛に受けとめておるところでございます。
 なお、警察といたしましては、その後十年余にわたりまして、より一層適正な職務執行に努めてまいったところでありまして、今後ともそのように努めてまいる所存でございます。
 それから、もう一点お尋ねの件は、平成五年十月にジュネーブで開催をされました国連規約人権委員会における日本政府による説明を指していると思われますが、今御指摘のような発言はあったというふうに承知しております。
#257
○保坂委員 私もいろいろ本を書いたりして、日本語を多少、仕事としてというか、伝わりやすい日本語ということで努力をして、特に子供に伝える言葉というのは簡明、簡素にしなければいけないのです。その上で今の御答弁を聞くと、どうでしょう、警察の組織的な関与はなかったというふうに聞こえる。しかし、検察の聴取を受けたことは遺憾だったと。もし関与がなかったのなら、遺憾なんということを言わずに疑惑を晴らせばいい、こういうふうに思うわけです。
 そこの点で、人事処分がなされたではないかということが定期異動であるというふうにこのところ答弁されているのですが、この定期異動、人心一新のための定期異動という表現ですね。これは通常、毎年毎年その人心一新のための定期異動が図られるのか、やはり何か不祥事あるいはあってはならないことがあったときに人心一新のための人事の刷新が図られるのか、それはどちらでしょうか。わかりやすい日本語でお願いします。
#258
○奥村説明員 お答えをします。
 御指摘の、事件後の人事異動につきましては、昭和六十二年当時、現職の警察官が検察庁の事情聴取を受けるという遺憾な事態を招いたことを踏まえまして、警察の行う情報収集活動につきまして、国民からいささかの疑惑も招いてはならないという立場に立ちまして、人心を一新して国民の期待にこたえる警察活動を展開すべく、定期異動におきまして必要な人事の刷新が行われたものであると理解をしております。
#259
○保坂委員 委員長、ちょっと少し言ってくださいよ。質問しているのですから。
 要するに遺憾な事態と言われているわけですね。遺憾な事態というのは、何もしていなかったのに嫌疑をかけられた、あるいは嫌疑をかけられたことによって疑惑を招いたことが遺憾だと。つまり、無実、潔白だから遺憾なのか、そうではなくて、嫌疑をかけられたことに相応の証拠や事実もあってそれで遺憾なのか、どちらか。それだけ答えてください。
#260
○奥村説明員 現職の警察官が検察庁の取り調べを受けたこと自体、警察の信用を失墜させるものであるとして遺憾な事態と申し上げたわけでございます。
#261
○保坂委員 これを一時間も繰り返す余裕がありませんので、ここで法務省にもう一度聞きたいのですが、私どもも二十数回の協議の中で、今日の実態解明が難しい組織犯罪ということについて、あるいは通信傍受という捜査手段が必要かもしれない、あるいは検討するべきときかもしれない。しかし、ただ前提として、少なくとも判決まで出たこういった事件に対して、その判決に従って、それこそ司法の判決に行政の組織が従って、そして二度とこういうことがないのだというのは、これは大前提だと思うのです。
 今回の与党三党の議論の中でも、これは警察のやったことは間違いないだろうというところで一致をしたわけですけれども、捜査機関が裁判所の令状に基づいて適正、適法な範囲でのみこういつたことを行い得るだろうかという前提の議論で、今のような答弁、これは法務省としてはいかが受けとめられるのか、はっきり言っていただきたいと思います。
#262
○原田(明)政府委員 ただいまの委員の御指摘の点、そしてるる御質問されている趣旨、これは従来私も大変時間をかけて委員と協議の場で議論させていただいた状況からいたしまして、その言わんとする趣旨はよくわかるわけでございます。
 しかし、あの十年前に起きた事件につきまして警察当局のとったその後の状況、そして検察庁がこれについて付した処分の中身、そしてこれについての民事賠償事件をめぐる国家賠償事件の結果、これらにつきましては改めて御説明する必要はないと思いますが、私どもといたしましては、警察当局はそれなりの努力をして、二度とああいう事件をいわば組織の中では起こさないということを明言し、そしてそのことをいろいろな角度で実施してこられたというふうなことを私どもは信じ、かつ信頼してまいりたいと思います。
 そして、委員がまさしくただいま御指摘いただきましたように、現在の組織的な犯罪の状況は極めて深刻でございます。そういうものに対して、いずれにいたしましても、先ほどの御質問にございましたが、組織的な犯罪の根源をつく捜査をいたしませんと犯罪の状況がわからないような状況があるということを踏まえまして、何とぞ法執行機関のあるべき姿ということにつきましても十分なチェックをし得る体制ということを考えてこの法案をぜひとも上程させていただきたいと考えておりますので、今後ともよろしく御理解いただきたいと存じます。
#263
○保坂委員 ちょっと一言、時間が過ぎていますので。
 ただいま我々は、議論の前提としてこういうことがきちっと処理されて、今原田局長言われましたけれども、二度とこういうことは起こさないと明言されたというほど明言されていないわけですね、この国会の場では、今。明言しないのですよ。それで、そうであるということは法務大臣は今またお認めになりました。
 これは、やはり政府の見解を統一していただいて、これはもう十年もたっていることですからきちんと整理していただきたいということを込めて、法務大臣、一言お願いします。
#264
○下稲葉国務大臣 今刑事局長が話しましたように、国内的にも凶悪犯罪が多発し、集団的な犯罪が多発し、国際的にも大変関心が持たれている重要な法案でございます。私どもはそういうようなことで、もう今さら申し上げませんが、委員御指摘のとおりに十分慎重に御議論いただいて、そして通信の傍受につきましてもいろいろな要件をつけてお願いしているわけでございます。十数年前のいわゆる盗聴事件みたいなものが今日のこのような社会の中で再び行われるようなことは、法務大臣としてもとても考えられません。また、そのようなことがあっては絶対よくございません。そういうようなことを申し上げておきます。
#265
○笹川委員長 奥村官房審議官、もう一遍答弁してください。
#266
○奥村説明員 警察といたしましては、昭和六十二年当時、現職の警察官が検察庁の事情聴取を受けるという大変遺憾な事態を招いたことを踏まえまして、国民の信頼回復に努めますとともに、その後十年余にわたり、より一層適切な職務執行に努めてまいったところでありますが、今後ともそのように努めてまいる所存でございます。
#267
○保坂委員 先ほどから同じ文書を読まれているだけなんですね、これは。もう時間は過ぎていますけれども、ちょっと注意していただけませんか。私は簡単な日本語で聞いたはずです。検察から事情聴取を受けるということは、その事実がないから不名誉なことなのか、あるいは証拠や事実があるから不名誉なことなのか、どちらなのかということだけ、はっきりイエスかノーで答えてください。
#268
○笹川委員長 奥村官房審議官に申し上げますが、刑事局長と法務大臣の答弁では、二度とこういうことを起こしてはいけないということを日本語で明確にされたので、そういう趣旨の御答弁を質問者は期待していると思いますが、もう少し、もう過ぎたことでありますが、将来のことを考えて、苦しいでしょうけれども、ひとつ答弁をしてください。
#269
○奥村説明員 先ほどの繰り返しになるわけでございますが、当時の神奈川県警における内部調査では、神奈川県警の組織的な関与、また個人の関与につきましても確認できなかったという報告を受けておるところでございます。
#270
○保坂委員 これは、確認できなかったということは、つまりその嫌疑がかけられたこと自体不名誉だ、そういう趣旨で理解していいですか、今の答弁。
#271
○奥村説明員 現職の警察官が違法な行為について嫌疑をかけられる、また事情聴取を受けるということ自体、大変不名誉で遺憾なことだというふうに考えております。
#272
○保坂委員 捜査に当たっている警察の、少なくとも幹部の方にこんなことを言うのはおかしいですけれども、嫌疑がかけられて無実の場合と、その嫌疑が妥当だった場合とあるわけですね。どちらだったのですか、はっきり答えてください。
#273
○奥村説明員 そういう意味も含めまして、当時はよくわからなかったということでございます。
#274
○保坂委員 やめます。大変残念ですが、以上のようなやりとりを踏まえると、やはり我が社会民主党は、今回の法案、特に通信傍受に関しては、議論の段階に入っていないということを主張して、残念ながら、時間をオーバーして申しわけありませんでしたけれども、質疑を終わりたいと思います。
#275
○笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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