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#1
第142回国会 法務委員会 第3号
平成十年三月十三日(金曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 笹川  堯君
   理事 鴨下 一郎君 理事 橘 康太郎君
   理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君
   理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君
   理事 上田  勇君 理事 権藤 恒夫君
      大石 秀政君    太田 誠一君
      奥野 誠亮君    木村 義雄君
      下村 博文君    谷川 和穗君
      谷畑  孝君    中川 秀直君
      横内 正明君    枝野 幸男君
      左藤  恵君    佐々木秀典君
      福岡 宗也君    漆原 良夫君
      安倍 基雄君    木島日出夫君
      保坂 展人君    園田 博之君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 下稲葉耕吉君
 出席政府委員
        法務政務次官  横内 正明君
        法務大臣官房長 但木 敬一君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 山崎  潮君
        法務省刑事局長 原田 明夫君
        法務省矯正局長 坂井 一郎君
 委員外の出席者
        警察庁生活安全
        局少年課長   勝浦 敏行君
        警察庁刑事局捜
        査第二課長   縄田  修君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  浜野  惺君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  堀籠 幸男君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  石垣 君雄君
        法務委員会専門
        員       海老原良宗君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十三日
 辞任         補欠選任
  渡辺 喜美君     大石 秀政君
同日
 辞任         補欠選任
  大石 秀政君     渡辺 喜美君
    ―――――――――――――
三月十二日
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第二五号)
同月十三日
 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する
 法律の一部を改正する法律案(太田誠一君外七
 名提出、衆法第六号)
 土地の再評価に関する法律案(大原一三君外五
 名提出、衆法第七号)
同月十二日
 選択的夫婦別姓の導入、婚外子差別を廃止する
 民法改正に関する請願(松本龍君紹介)(第六
 〇四号)
 組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(木島
 日出夫君紹介)(第六〇五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第二五号)
     ――――◇―――――
#2
○笹川委員長 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所浜野総務局長、堀籠人事局長、石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
#4
○笹川委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、趣旨の説明を聴取いたします。下稲葉法務大臣。
    ―――――――――――――
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#5
○下稲葉国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下その要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官につき、判事補の員数を二十人増加しようとするものであります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図るために増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十一人増加しようとするものであります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所書記官を二百五十人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を簡素化し、効率化すること等に伴い、裁判所事務官等を二百二十九人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十一人増加しようとするものであります。
 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#6
○笹川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
#7
○笹川委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村哲男君。
#8
○北村(哲)委員 民友連の北村でございます。
 裁判所職員定員法の問題に入る前に、一点、法務大臣にお伺いしたいことがありますので、お願いしたいと思います。といいますのは、今も予算委員会で、日銀総裁が出席されて、この問題について論じられているところでありますけれども、この法務委員会におきましても、看過できない問題でありますので、一点、質問をしたいと思います。
 この十一日に日本銀行の幹部職員が収賄容疑で逮捕されました。先進国の中央銀行では初めての汚職事件であって、我が国の国際的名誉にかかわる重大事件であると考えます。松下総裁は既に辞意を表明しておりますけれども、それで事足りるものではないと思っております。
 昨日、私どもも日銀の幹部を呼んで事情を聞きましたけれども、単に、今後は外部との接待や相手持ちの交際は禁止したということで、内部調査につきましても、これを進めているという程度で、大蔵でも遅い遅いと言われているのですが、さらに遅いような感じを受けております。そうい
う意味では、日銀の内部的な解決機能は相当におくれているというふうに考えますし、その自浄能力はとても期待できないような感じを受けました。初めての不祥事というだけに、ただうろうろとして何をしてよいかわからないというふうな印象も受けたわけです。
 これは単に日本における金融システムだけの問題ではなくて、もう世界でもトップクラスの日本の金融の世界の問題でありますので、何とかこういう内部通達とかそういうことだけで事足りる問題ではないと思っておりますので、しかも、捕まった吉沢保幸氏一人の問題ではなくて、金融界の頂点に立つ日銀に蔓延する構造的な問題であるということも、これもだれが見ても明らかであります。昨日説明に来た日銀の理事さんに対しても、あなた自身ただ飲みとかただ食いをしたことはないと言えるのか、そういうきつい質問をしてみたら、やはりノーという明確な答えは来なかったということもあります。
 大臣は、先日の所信表明で、法と秩序の大切さを訴えられ、これに対して責任を持つという表明をされました。今回の日銀を頂点とするこの構造的な犯罪に対して、法務大臣としてどう対処されようとしておるのか、単に司直の捜査を待つというのではなくて、この構造的な汚職体質を正すにはどうすべきかという明確な指針を示していただきたいと存じます。
#9
○下稲葉国務大臣 御指摘のように、去る十一日に、日銀幹部が汚職容疑によって逮捕されたわけでございまして、今現在、捜査継続中でございます。
 具体的な事件でございますので、言及するのは差し控えたいと思いますが、かねがね申し上げておりますとおりに、私は検察を信頼いたしております。一般論として申し上げますれば、いつも申し上げておるのですが、法と証拠に基づきまして厳正に対処していくもの、このように確信いたしております。
#10
○北村(哲)委員 私は、確かにこの事件そのものについては、まさにおっしゃるとおり厳正に対処する、捜査を進めるということだと思うのですけれども、法と秩序を守るという意味の法務大臣としての、構造的な問題に対してどう対処をしていくべきかという指針はやはり持つべきだと思うのです。
 捜査の問題ではなくて、これは、あの吉沢さんという人については確かに一つの刑事事件でありますけれども、これはそれだけで納得している国民は一人もいないと思うのです。ほとんど、あ、これはみんなやっているな、あれは氷山の一角、頂点にすぎないんだなということは、新聞報道あるいはそのほかの情報を総合しても、だれもそう思っているわけですから、それに対するやはり法務大臣としての指針、対処というものはあってしかるべきだと思うのですけれども、その点についてはいかがなものでしょうか。
#11
○下稲葉国務大臣 総会屋をめぐる証券、銀行の事件以来今日まで、この種の事件が続いているわけでございます。やはり構造的な問題もあるのじゃなかろうかというふうなことをかねがね申し上げました。
 基本的には、そういうふうな立場にある人たちが自律自戒して、そしておのれを正してやっていただく、そしてまた、そのような組織に携わる人たちも、その任務を十分自覚してやっていただく。いつも申し上げておりますとおりに、やはり特に公務員等におきましては、国民のために仕事をやっているわけでございます。国民一人一人が幸せで平和で安全に住めるように、そして国際的にも日本というものがすばらしい国であるということが評価され、そしてそういうような中で我々が平和に生活できるように進めていく、そういうふうな目的に向けて仕事をやっているわけでございます。ところが、そういうふうな認識が薄れて、そして自分の、何といいますか、社会、公共のために尽くすという信念とは裏腹に、逆にそのような汚職の道に入る、これは本当に残念なことでございまして、この辺のところは基本的に正していかなければならない。
 私は、それはお話のように、私どもも検察の立場で厳重に、厳正にやってまいらなければなりませんが、やはり基本的には、今申し上げましたような組織なりあるいはまた個人なり、おのれを正していくということが基本にあると思いまして、検察の仕事は、そういうふうな方向について、何といいますか、お手伝いするといったら言葉がちょっと弱いですけれども、そういうふうな厳正な方向に進むように私どもも同じ立場から邁進している、こういうふうなことが基本的な姿勢ではなかろうか、このように思います。
#12
○北村(哲)委員 それでは次に、本日の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についての質問に移りたいと思います。
 まず、規制緩和などの進展が今後、今も進んでおるわけですけれども、自己責任と競争原理のもとに、事前チェック型の社会から、透明で公正なルールによる事後チェック型の社会への移行ということが言われております。裁判への期待も高まっておりますけれども、他方では、民事裁判を中心に裁判が遅いという批判が繰り返されております。
 そこで、まず民事裁判の現状について最高裁に質問をしたいと思いますが、裁判所に提起される民事訴訟事件の現状についてはどのようになっておるのでしょうか。
#13
○石垣最高裁判所長官代理者 裁判所におきます典型的な事件でございますが、地方裁判所における民事訴訟事件ということで申し上げたいと思います。
 訴訟事件の新受件数で見ますと、平成三年以降急増しておりまして、平成六年には過去最高の十五万七千三百九十五件となっております。平成八年の新受件数は、平成六年の新受件数を若干下回りますが、十五万二千九百三十六件となっておりまして、依然として高水準を維持しているというのが実情でございます。
#14
○北村(哲)委員 かなり高水準ということなんですが、それでは、民事訴訟事件の処理状況、すなわち審理期間というものについてはとても長いという批判が方々で聞かれるのですけれども、その点についてはどのようになっておるのでしょうか。
 あわせて、諸外国と比較して日本の民事裁判の審理期間についてはどうかということもお願いします。
 別々であれば別々で結構です。
#15
○石垣最高裁判所長官代理者 初めの方の御質問についてお答えいたします。
 平成八年の地方裁判所の民事第一審通常訴訟事件の既済事件の平均審理期間を見ますと、全体で十・二カ月でございます。昭和六十年以降、全体的に短縮化の傾向が見られると申し上げてよろしいと思います。
 また、平成八年の地裁の民事第一審通常訴訟事件の処理状況を審理期間別に見ますと、一年以内に終局している事件が全体の七四・六%でございます。ただし、約二五%の事件では終局までに一年を超える期間を要しているということになります。
#16
○浜野最高裁判所長官代理者 我が国の裁判の状況については先ほど民事局長からお答えしたとおりでございますが、諸外国との比較につきましては、統計資料が限られておりまして、制度や手続はもちろん、さまざまな条件が異なりますので、国によって、また裁判制度の仕組みによって違いがございます。そういうことで、一概に比較することはできない状況でございますが、大局的に見ますと、民事事件の平均の審理期間、外国ではおおむね九カ月程度から四十カ月程度というふうに幅がございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、アメリカの場合、ニューヨーク東部の連邦地方裁判所の民事第一審の審理期間が十カ月でございます。日本とほとんど変わらない。それから、イギリスの民事第一審の場合は二十カ月から四十カ月ぐらいのところであるという数字がございます。また、フラ
ンスにおきましては平均審理期間が九カ月となっておりますが、フランスにおきましては書面審理が中心でございまして、証人尋問の実施が極めてまれであるという手続の特色が反映されているのではないかというふうに考えております。
#17
○北村(哲)委員 ただいまの御説明で、一年以内で七四・六%ぐらいということですが、約四分の一ぐらいは一年以上かかっているようですけれども、現在の市民生活のテンポからすると、もっと短縮すべきではないかというふうな意見もあると思います。これらの裁判が遅延している原因はどのようなところにあるとお考えなんでしょうか。
#18
○石垣最高裁判所長官代理者 ただいま委員から御指摘のありましたとおり、大ざっぱに言いますと、一年を超える処理期間を要している事件が四分の一という状況でございます。今御指摘ありましたように、国民の間には迅速な処理を求める声が非常に強いということを私どもも十分認識をしているつもりでございまして、一年を超える事件についてもさらに迅速な解決を目指して努力をしていきたいというふうに思っております。
 そこで、審理期間が長くなっている原因でございますが、裁判所の事件処理体制の問題がもちろんないわけではございませんが、それ以外にも、大きく分けまして、一つは訴訟運営上の問題点、それから当事者側の問題点、さらには社会慣行等の問題点もあろうかと思いますので、若干触れさせていただければと思います。
 訴訟運営上の問題点と申しますのは、実は、従来、訴訟における審理のあり方というのは、書面の交換だけで終わる短時間の弁論を繰り返すということがございました。争点が明確でないまま証人尋問等の手続に入る、そして再度、書面交換のための弁論を繰り返すということで、御案内のとおり、五月雨式の審理と一般に言われてきたところでございます。
 それからもう一つ、次の問題ですが、当事者側の問題点としては、こういう五月雨審理が大きな原因ともなっていることではございますが、当事者が期日前の準備を必ずしも十分にしていない、そのために期日で十分な審理を行うことができないこと。
 それから、これは申し上げるのもどうかと思いますが、弁護士一人の個人事務所が非常に多数あるということ。そこで、個々の事件の訴訟活動の効率的あるいは集中的な処理ができない状況にある。したがって、また、裁判所が指定する期日、これにも支障を生じているというようなこともあろうかと思います。
 あるいはまた、依頼者が訴訟の引き延ばしを求める場合もありますし、弁護士にとっても訴訟が長引く方が場合によってはメリットがあり得るということ、こういうことは申し上げてどうかと思いますが、そういうことも考えられるところでございます。
 それから、社会慣行の問題もございまして、一つは、契約時に書面を作成しないというのが日本の長い伝統でございます。あるいは内容の異なった複数の書面が作成される、そういったことから契約内容自体が大きな争点となってしまう。これは諸外国と比べまして非常に特徴的な問題でございまして、社会における契約意識等の問題も無視できないものではなかろうかというふうに思っているところでございます。
#19
○北村(哲)委員 ただいま三つの原因に分けて分析されている点については、大変よくわかりました。
 それに加えて、大きな意味での、司法の枠を広げる、司法規模というものを大きくする、司法人口をふやすということがこの解決には必要だと私は思っております。きょうのこの改正案についても、去年、ことしと、今までの流れから見ると本当に二、三人から数人でしか増員がなかった、それが二十人というのは一つの進歩と思いますけれども、まだまだ抜本的な解決にはなっていないのではないかというふうに私は思っております。
 ところで、七十年ぶりに民訴法の大改正が行われました。ことし一月一日から施行されておりまずけれども、新民訴法のもとでは、裁判をどのように変えて迅速な裁判の実現を図ろうとしておられるのか、その点をわかりやすく御説明を願いたいと思います。
#20
○石垣最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたとおり、従来はいわゆる五月雨式の審理が行われて、これが時間がかかる一つの要因になっていたということでございます。そこで、裁判所としてはこれまでも運営改善の努力を続けてきたところでございますが、幸いにして、新しい民訴法をおつくりいただきました。
 この新民訴法下におきましては、期日前あるいは期日間に準備を十分に行って、新民訴法で設けられました争点整理手続において早期に争点を明確にして、争点に的を絞った証拠調べを集中的に行うといういわばめり張りのある充実した審理を行うことが原則になるかと思います。このような審理が行われることによりまして、期日の回数が減るなどして裁判の迅速化が図られるものと思っております。
 また、書記官が裁判官と十分に意思疎通を図った上で当事者に対して期日前あるいは期日間の準備を促すことが条文上明確化されておりますので、これを受けまして、これまで以上に書記官を積極的に活用していきたいというふうに思っております。
 さらに、裁判所の事務処理体制全体を改善するために、御案内のとおり、ラウンドテーブル法廷やテレビ会議システムあるいは電話会議システムなどの情報通信機器の整備を広げていきますとともに、事務処理の効率化のためのOA化も進めているところでございます。
 さらに、今後の逐語録需要に十分こたえるために導入した録音反訳方式も今後拡大をしていきたいと思っております。
 さらに、事件数の増加に対応して人的体制の増強も検討していく必要があるというふうに思っているところでございます。
 このように、裁判所側の種々の努力も続けていきたいと考えているわけでございますが、先ほども若干示唆しておきましたが、当事者主義をとる民事訴訟の構造上の問題として、裁判の迅速化のためには何よりも当事者側の積極的な訴訟活動が必要でございます。当事者側の訴訟準備体制の改善が裁判の迅速化のための必須の条件であるということも御理解をいただきたいと存じます。
 具体的に申し上げますと、当事者側が十分事実関係を調査し、証拠収集を十分に行わなければ、裁判所がどんなに努力をしても早期の争点の確定あるいは集中証拠調べができないということになるわけでございます。従来のような主張や証拠を小出しにするという慣行を改めるという当事者の意識改革も必要ではないかと思っているところでございます。
 さらには、弁護士事務所の体制のあり方というようなこともいろいろ検討をお願いしたいところでございます。
 さらに、契約等の慣行の問題もあるということもまた御理解をいただければと存じます。
#21
○北村(哲)委員 まだ始まったばかりで、今後、迅速な裁判の実現が民訴法の大改正によって図られることを期待しておるわけです。
 ところで、マスコミなどによりますと、長過ぎる裁判だとか、あるいは裁判官は忙し過ぎるとかの批判があるようです。日弁連の資料によりましても、「裁判官、検察官の大増員を!」というパンフレットがあったり、「忙しすぎる裁判官」というかなり詳しい分析をされた資料なんかがあります。
 というのは、何も日弁連が言う必要はないのですけれども、日弁連の言い分としては、裁判所が忙し過ぎるからふやしてほしいと言われれば本当はよろしいのにちっとも言ってくれない。長い間、四人だ五人だということで忙しいことはわかっているのに、裁判所自体が自主規制、自己規制をしているような感じで一つも言ってくれない。どうも現場の裁判官の声が最高裁まで届いて
いなくて、いたずらにノルマを課せられているのではないかというふうなことが、今までは余りよそのことには口を出さなかったのだけれども、だんだん見てはおれないという状態になっておるのではないかということで、日弁連あたりも、私もその一人なのですけれども、裁判官あるいは検察官の大増員。検察官だってそうだと思います。恐らく今の状態では徹夜のような形で、それこそ病人も出るような忙しい毎日を送っておられると思うのです。
 特に、外国と比較するのも問題なのですけれども、その資料によりましても、裁判官一人当たりの受け持つ人口が日本では四万三千六百十五人と出ているのに対して、アメリカならば九千人ぐらい、あるいはイギリスなら一万六千人ぐらい、あるいはドイツなら三千人ぐらい、あるいはフランスなら一万二千という、日本がもう圧倒的に数倍の多くの人たちの人口比率があるわけなのですけれども、現場の裁判官の声が本当に最高裁に届いて、最高裁がそれを受けて国に対して増員を要求する、あるいは世論に対して増員を要求するということがやられているのかどうか、どうも疑問があるということもあると思います。
 そういう意味で、その点について最高裁当局はどのように認識をしておられるのか、こういう見ておれないという各界の声に対してどうこたえていかれようとしているのかについて御説明を願いたいと存じます。
#22
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 まず、委員御指摘の裁判官の繁忙状況についてでございますけれども、繁忙の指標をどこら辺に求めたらいいのかという点も必ずしも簡単なことではございませんが、例えば裁判官一人当たりの手持ち件数という切り口をとって御説明をいたすということにしてみますと、この手持ち事件といいますのは庁によりまして各裁判官による事件の分担の仕方が区々でございまして、場合によっては民事事件、刑事事件、さらには家裁の事件も一人の裁判官がさまざまな比率であわせて担当しているという例もございます。
 そういうことでございますので、手持ち事件数を統計的に把握するということは技術的に大変難しく正確な数値をお示しすることはできないわけでございますが、例えば一般的に相当忙しいのではないかと言われております大都市の大規模庁の中で、典型的な東京地裁の例をとりますと、民事部に配属されている裁判官と申しますのは通常民事訴訟事件だけを担当しているわけでございますので、そこでは裁判官一人当たりの単独事件の手持ち事件数というのは最近の数字ですと二百四十件程度でございます。このほかに合議事件が部として八十件程度係属しているという実情でございます。
 大規模庁で民事事件を担当しております裁判官の平均的な感覚、あるいは先ごろまでの私自身の個人的な実務経験に照らしますと、二百件程度の手持ち事件数でございますとまあそれほど繁忙感もなく事件の処理が可能であるということですが、東京地裁におきましては、先ほど申しましたように単独事件数が二百四十件程度ということでございますので、やはり裁判官の負担が重くなっているということでございます。
 したがいまして、私どももこのような繁忙庁につきまして重点的に人員の手当てを行っているところでございまして、今後とも、先生御指摘のような事情を踏まえまして、人的な体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
#23
○北村(哲)委員 この資料によると、まさに「手持事件数約二百五十件」とありますから、今のお話と同じなんですけれども、「土曜、日曜とも仕事をしている裁判官が約六割。一日は休めたとする裁判官が約三割。家族の声妻「母子家庭と思って、夫には一切期待しなかった」 子供「いつ遊んでくれるの?」」そこまで書いてある。
 そういう資料がいっぱい、山ほどありますし、恐らくそこにいらっしゃる方もそういう生活を今までしてこられたのじゃないかと思いますけれども、やはり普通の市民と同じような生活というのもまた必要でないかと思っております。
 それから、若干重複になるかもしれませんけれども、この新民訴法の趣旨にかなった迅速な裁判の実現のために、裁判所としてはどのような施策を講じていらっしゃるのでしょうか。
#24
○石垣最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、この新民訴法は、早い段階で当事者間の主張の対立点を整理した上で、短期間で集中的に証拠調べを行うという形の審理方式の確立、そして審理の迅速化を図るということが主眼になっていると理解をしております。
 そういうことになりますので、今後、裁判所といたしましては、特に弁護士会側とも十分意見交換をしながら、この新民訴法の趣旨を踏まえた効率的な審理のあり方を確立していくように努力をしていく必要がある。この新民訴法の定着を図るということに最大の力を注ぎたいと思っているところでございます。
 こういった運用のあり方の改善という努力にあわせまして、物的、設備の面では、ラウンドテーブル法廷、電話会議システム、ファクシミリ等の整備等に努めてまいっておりますし、人的体制の充実強化についても、今お願いをしているように、努力を重ねていきたいと思っているところでございます。
#25
○北村(哲)委員 私は今、迅速な裁判ということばかりを言いましたけれども、迅速がゆえに裁判官に負担がかかり、ノルマ主義のようになったり、あるいは、結局はそのツケは国民というか、事件の適切な解決にならなくて、最近だと早く処理するために和解を押しつけられたり、あるいは中身について本当によく聞いてくれないというふうな声も聞かれますので、迅速も必要でありますけれども、片方、やはり国民のための裁判でございますので、解決が適切に行われない国は決して立派には発展しない、その処理がきちっと行われて国民は初めて納得するわけですから、そのあたりは十分に私どもも含めて気をつけていかなければならない問題だと思っております。
 次に、民事執行についてお伺いしたいと思います。
 権利者が実効的な救済を受けるためには、裁判の迅速化のみならず、執行手続の迅速化が求められているところであります。特に、住専管理機構から債権回収や金融機関等の不良債権処理をめぐって不動産執行事件の処理が適正に行われることが国民経済の観点から極めて重要であると思っております。現在、中坊さんあたりが非常に脚光を浴びて活躍をしておられますけれども、そういうことを踏まえて、民事執行事件、特に不動産執行事件の処理状況について最高裁にお伺いしたいと思います。
 まず、民事執行事件の申し立て状況あるいは処理状況についての概括的な御説明をお願いします。
#26
○石垣最高裁判所長官代理者 まず、申し立て状況で申し上げます。不動産執行事件の新受件数ですが、平成二年は全国で四万一千件でございました。ところが、平成三年以降急増いたしまして、平成八年には六万六千件台に達して、今、概数でございますが、平成九年には六万六千三百件とやや落ちつきを見せているかなという状況でございます。
 既済件数で言いますと、平成四年では約四万件でございましたが、その後増加傾向に転じて、平成九年には約七万件と増加をしているということでございます。
 未済件数ですが、新受件数の増加に伴って増加をしておりましたが、平成九年には前年をやや下回って十二万一千件、こういうことになっております。
 なお、現在、住宅金融債権管理機構からの不動産執行事件の申し立てが増加傾向にございまして、金融機関等の不良債権処理に関して不動産執行事件の申し立ても増加することが予想されますことから、その数を具体的に予測することは困難でありますが、今後も相当数増加するのではない
かと予想しております。
#27
○北村(哲)委員 この急増の原因は、恐らくバブルの後遺症といいますか、その処理に絡んでいるのだと思いますけれども、執行事件の処理には一体どのくらい期間がかかっているのかということについても、現実に携わっている人たちの話を聞くと、やはり一年から二年ぐらいかかって、その間、どうせ執行されないのだということでたかをくくって、その家賃なんかを、だれも持っていく人がいないわけですから、もう自分のところに手に入れてしまうとか、そういう一種の無法の期間といいますか、そういう期間がこの執行関係については相当問題になっているように思われますので、その点について現実にはどのくらいの時間がかかっているのか、あるいはそのあたりの問題点について御説明願いたいと思います。
#28
○石垣最高裁判所長官代理者 まず、不動産執行事件の処理に要しております期間でございますが、平成八年に終結をした不動産執行事件についての全国における平均的処理期間はほぼ二年程度でございます。
 ただし、例えば事件数の多い東京地裁あるいは大阪地裁について見ますと、これはポイントは売却までの期間がどの程度かかるかということでございますので、これで申し上げますと、逐次改善をされてきておりまして、平成九年に入ってから、申し立てから売却実施命令までの平均的期間は、東京地裁では九カ月、大阪地裁では十二カ月でございました。
 したがいまして、それでも結構かかってはおりますが、大分改善の動きが見えるということは申し上げてよろしいかと思います。
#29
○北村(哲)委員 確かに今のお話だと、私の感じでも随分改善されたというふうに思っております。
 それにしても、携わっている者については改善という感じは受けるのですけれども、一般の人から見れば、やはりこれは長いなという感じはまだぬぐえないと思いますので、その事件処理の遅延の原因は一体どういうところにあるのかということについて御説明を願いたいと思います。
#30
○石垣最高裁判所長官代理者 先ほど答弁を忘れまして申しわけありませんでした。
 遅延の原因でございますが、事件処理が長期化した主な原因として、私ども幾つか考えております。
 若干申し上げますが、一つは、バブル経済の崩壊とその後の経済不況の影響を受けまして、大都市部の裁判所を中心に事件数が急増した、これが一つでございます。それから、不動産市況の冷え込み等の影響を受けまして、売却率が低迷をしたこと。それから、バブル期の取引の影響から、競売物件の中には地上げ失敗を思わせる虫食い状態の多数筆の土地など権利関係が複雑に錯綜したものが少なくないために、現況調査、評価、物件明細書の作成に多大な労力と時間が必要とされ、さらに、競売物件に対してさまざまな態様の執行妨害が頻発をしていること。さらには、申し立て書などの不備の訂正あるいは開始決定等が不送達であるときの送達場所の調査を債権者が速やかに行わなかったり、目的不動産が特定困難であったり占有関係が複雑であるときに、債権者が保有している情報の活用が望まれるにもかかわらず債権者の協力がなかなか得られないなど、債権者の協力が十分に得られないという、こういう要因が考えられるかと思っております。
#31
○北村(哲)委員 裁判所としまして、今も言われましたけれども、不動産執行事件の適正かっ迅速な処理のためにさまざまな方策を講じてはおられると思いますけれども、裁判官あるいは書記官の増員とか、人的体制の充実、あるいは執行官を増員する、執行官について、執行官という現実に現場で動いている人たち、これについてはなかなか目が届かないという点もあるのではないかと思いますけれども、そのあたりの適正かっ迅速な処理のための方策についてはどう考えておられるのか、御説明を願いたいと思います。
#32
○石垣最高裁判所長官代理者 先ほど、事件処理が長期化している要因を申し上げました。その順序にほぼ従った形で、私どもが講じております対策というものを若干御説明させていただければと思います。
 まず、事件数の急増に対しましては、一つは、売却実施件数の増加や早期売却の実施に努めているところでございます。例えば、執行担当職員の増配置、あるいは執行官、評価人の増員、パソコンやファクシミリなどのOA機器の活用などによりまして、売却実施件数の増加を図って、早期売却の実施に努めるというところでございます。
 それからもう一つは、特別売却といいますか、入札あるいは競り売り以外の方法で売却をする、こういう特別売却の活用ということも行っているところでございます。
 次に、売却率の低下につきましては、基本的にはこの売却率というのは不動産市場に依存するものでございまして、市況が低迷している現状では大幅にこれを上げることはなかなか困難であると思います。しかしながら、供手傍観しているわけにはいきませんので、一つは最低売却価額の見直しでございますが、競売物件であることを理由として、市価よりもある程度減価をする、安くする。そして、売却されなかった物件について早期の価格の見直しを行うなど、市場のニーズに合った最低売却価額の決定に努めているところでございます。
 それからもう一つは、競売物件の情報提供の拡大ということにも努力をしておりまして、日刊新聞、住宅情報誌などの広告媒体を拡大したり、事件数の多い裁判所を中心として、競売物件の情報提供サービス、ファクシミリによりますサービスでございますが、これを行っております。
 それから、早期売却の実施によりまして売却価額が実情に合わなくなるのを防ぐように努力をしているところでございます。
 次に、執行妨害につきましては、平成八年の民事執行法の一部改正をしていただきました。これによりまして、保全処分、引き渡し命令が強化をされたわけでありまして、裁判所としても、三点セットの閲覧場所に監視カメラを設置したり、妨害行為に対しては、告発等を含めて厳正に対処するという方針でおります。しかし、裁判所がなし得ることにも限度がございまして、取り締まりの強化等の別途の方策に期待をせざるを得ないところもあるのが実情でございます。
 それから、債権者の不協力の問題につきましては、申し立て書や添付書類の不備の補正をするため、債権者側の担当者に対する教育訓練、資質の向上をお願いしたり、債務者の送達場所についての調査を依頼したり、競売物件の事実状態、権利状態に関する正確な資料提供を求めたりするなど、債権者の協力をお願いしているというところでございます。
 なお、今執行官の増員の問題、御指摘をいただきました。実は、執行官の人員につきましては、取扱事件数の変動に応じて必要な増減を実施してきているというのが実情でございまして、事件処理のそれぞれの処理機関の動向を見てみますと、執行官の人員が不足をしているために事務処理がおくれているということは考えておりません。
 執行といいますと執行官と結びつけやすいものでございますが、子細に検討してみますとそうではないようでございます。ただ、今後も事件数の動向等を踏まえて、適時適切な対応を続けていくことが必要であるというふうに肝に銘じているところでございます。
#33
○浜野最高裁判所長官代理者 執行事件の関係での人的体制の充実でございますけれども、先ほどの委員の御質問に対します、民事局長から御説明申し上げましたような事件の動向や事件の処理状況を踏まえまして、裁判所といたしましては、民事執行事件処理の充実強化を図るために、新受事件の急増した大都市所在の地裁を中心に、人的体制の整備に努めてまいってきたところでございます。
 例えば、平成三年の四月と平成九年の四月とを
比較いたしますと、東京地裁の場合、執行部の職員につきましては、裁判官が十一名、書記官等の裁判所職員が七十六名増配置いたしました。また、大阪地裁の場合は、執行部の職員につきましては、裁判官が四人、それから書記官等の裁判所職員が二十七人これまで増配置しております。
 民事執行事件は、委員御指摘のとおり増加傾向にあることに加えまして、金融機関等の不良債権処理に関して、不動産執行事件の申し立て件数が増加することが予測されるところでございますので、今後とも、申し立て事件数の動向を絶えず注視いたしまして、適正迅速な事件処理のために、人的体制の整備を含めました事件処理体制の充実強化を図っていきたいというふうに考えている次第でございます。
#34
○北村(哲)委員 それでは、民事執行についてはこの程度にします。
 次に、今回の一部改正において、平成十年度の増員について、裁判官二十人を増員する理由及び書記官二百五十人の増員をする理由、これを法務当局にお伺いしたいと存じます。
#35
○山崎(潮)政府委員 まず、裁判官の増員でございますけれども、地方裁判所におきます民事訴訟事件及び民事執行事件でございますが、これはかなり数が多いということは、先ほど最高裁の方から答弁がございました。それに加えまして、やはり複雑困難な事件も多くなっております。
 こういうものに対しまして適切に対処するという立場、その中でも特に、先ほど最高裁判所から話がございましたように、新民事訴訟法では、五月雨式の審理をやめて審理を集中するという方式をとっていく、こういうようなことを盛り込んでいるわけでございますが、この精神にのっとって迅速に裁判を進めていくというための増員でございます。
 また、書記官の増員二百五十名でございますけれども、これも一般的には民事訴訟事件、民事執行事件の対処ということでございますけれども、新しい民事訴訟法、これで書記官の役割が大変重要になってきております。特に、期日あるいは期日間における当事者との連絡等を含めましたコートマネジメント、この役割が増大しておりますので、そういうところを考えまして増員をする、こういうことでございます。
#36
○北村(哲)委員 最高裁にもお伺いしたいのですが、今の社会は大きく変革が進行しているところでございます。司法の機能充実に向けて思い切った増員、二十人が思い切ったのかもしれませんけれども、私はまだまだこれでは足りないと思っておりますので、その点については最高裁はどのようにお考えなのでしょうか。
#37
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 先ほど来委員の御指摘のような背景を踏まえまして、特に民事事件の急激な増加がございます、そういうのを受けまして、例えば裁判官の増員につきましては、裁判所としてはこのところ毎年裁判官を着実に増員してきておりまして、平成五年から九年までの五年間で計六十四名の増員を認めていただいております。
 また、十年度の予算案におきましても、二十人の裁判官の増員をお願いしているところでございます。単年度で二十名という裁判官の増員数は、民事部七カ部に相当するものでございまして、庁の規模に直して申し上げますと、例えば横浜地裁本庁あるいは名古屋地裁本庁規模の民事の裁判所をそっくり一つ新設するというのに匹敵する人数でございまして、相当の規模の増員がこれによって実現することになるというふうに考えている次第でございます。
 さらに書記官の増員につきましても、裁判官同様に、民事事件の急増を受けまして、このところ毎年増員をしてきているところでございますが、十年度の予算案におきましては、五十人の増員に加えまして、事務官等から書記官に二百人振りかえるということでございまして、合計二百五十人の大幅増員をお願いしているところでございます。
 いずれにしましても、委員御指摘のとおり、今後、経済の国際化あるいは規制緩和等が進むに伴いまして、法的な紛争を公正な手続で解決する手段としての司法に対する国民の期待というものが当然ますます増大してくることが予想されますので、裁判所といたしましても、今後とも事件動向等を十分見ながら、引き続き着実に増員を確保していきたいというふうに考えておる次第でございます。
#38
○北村(哲)委員 その点についてはまだまだ議論したいのですけれども、時間が来ましたので、最後に、法務大臣にお伺いしたい点がございます。
 これは司法制度改革全般についてでございますが、激変する国際情勢の中で、政治、経済、社会全般に大きな変革が求められております。司法の分野においても、新しい時代に対応して司法改革を行うことが必要であると考えます。
 これに対する法務大臣の御所見をお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。
#39
○下稲葉国務大臣 申し上げれば長くなりますので、簡潔に申し上げたいと思いますが、私は、今委員御指摘のとおりに、いろいろな国際情勢、国内情勢、なかんずく経済を中心とした変化によりまして、司法に対する国民のニーズというのは大変多くなってくると思います。
 そこで、現在の国民の司法に対する判断というものは大変遠いところにあるような感じではないだろうかと思うのです。これが好むと好まざるとにかかわらず、やはり近い存在にならなくてはいけない。だから、国民的なニーズと司法の常識的な判断が目線が合うかどうかということだろうと思うのです。これが合わなければ、やはり遠い存在になってしまうわけでございます。
 今、増員の問題等の話も出ましたけれども、今国会にも、司法試験の合格者をふやすことに伴います裁判所法その他の法律を御提案申し上げておるわけでございますし、一つ一つ具体的に詰め生じて、国民の御期待に沿うように、これはもう大変重要な問題であるというふうな認識で参りたい、このように思います。
#40
○北村(哲)委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
#41
○笹川委員長 上田勇君。
#42
○上田(勇)委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、何点か御質問させていただきます。
 よく今、日本の裁判制度というのは、先ほどからの議論もありますが、訴訟に余りにも時間がかかって余り役に立っていないんじゃないかというような批判がいろいろなところがら指摘されております。その原因の一つが、裁判官の人数が絶対的に不足しているのじゃないかというようなことも各方面から指摘されているわけでありますが、いろいろといただいた資料、また先ほどの議論を伺っている中で、やはり最近の裁判所の事件件数というのは増加傾向にあって、これは、やはり人員不足というのは、そういう意味ではまた一層深刻なものになっているのじゃないかというふうに考えるわけであります。
 裁判所の定員の増員というのは毎年この委員会で審議されて、増員が図られてくるのですが、いろいろなところがら圧倒的に足りないのだというふうに言われていることを考えると、毎年毎年、その場その場で人数を決めていくというよりも、もう少し、例えば十年とかのことを考えて、よく公共投資なんかにも長期計画というのがあります。そういった観点から、長期的な計画を立ててその中で人員を充足していく、人員をふやしていくという方がわかりやすいのじゃないかというふうに思うわけであります。
 もちろん、例えば裁判官の人数が足りないと言われても、それはいろいろ人事政策の面もあるでしょうし、だから一気に、この年に足りないからといって百人ふやすというようなわけにはいかないのでしょうから、そういう意味ではもうちょっと、毎年毎年ごとしは十五人だ二十人だというよ
りも、十年程度の長期計画を立てて、それに基づいて、裁判制度、司法制度は本来この程度の規模であるべきなんだということを考えた上で、計画的に人員をふやしていくという方がいいのではないかというふうに思うのですけれども、そういうようなお考えはないのでしょうか。
#43
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 裁判官の増員の目的というものでございますが、それはつまるところ、適正かつ迅速な裁判を実現するということにあるわけでございますが、審理の迅速化を図っていきますためには、訴訟関係人の準備活動や協力、それから審理方法の改善等、さまざまな方策を講じていくということが不可欠でございまして、裁判官の増員に当たりましては、こうした紛争解決機能の総合的な方策の進捗状況ということと、それから事件数の動向、これを踏まえながら検討していく必要があるわけでございます。
 特に、事件数の動向というものにも大変大きく左右されるわけでございます。裁判所といたしましては、昨今の事件の増加傾向を踏まえながら継続的に増員を図ってきたわけでございまして、先ほども御説明いたしましたように、平成五年から九年まで計六十四人の裁判官を増員し、さらに十年度に裁判官二十人の増員をお願いしているところでございまして、相当程度の規模の増員をお願いしておりまして、これが実現しますと、先ほどもお話ししましたように、横浜地裁本庁の民事部をそっくりそのままつくり上げるという程度のものでございます。
 事件数の動向の推測というのが実は大変難しゅうございまして、今後それがどういうふうに推移していくかということを推測するのは難しいわけでございますけれども、委員御指摘のとおり、昨今の経済情勢の変化の背景を踏まえまして、国民の司法に対する、紛争解決に対する要望というものがますます増大してくるということは予想されますので、より一層適正迅速な裁判の実現を図っていくためにも、今後、事件数の動向を踏まえながら、着実に増員を継続していきたい、かように考えておる次第でございます。
#44
○上田(勇)委員 先ほど来の議論を聞いておりまして、北村委員の質問の議論も含めまして、裁判官の人数が少な過ぎて皆さん忙し過ぎるという議論が行われました。
 ちょっと聞いていてよくわからないのは、裁判所の皆さんは、そうでもない、まあまあやっていると。ところが、関係者というんですか、弁護士の皆さんは、やっぱり圧倒的に足りなくてそれがネックになっている、裁判官は忙し過ぎて本当にかわいそうなぐらいだというのを、私もよくそういうのを日弁連の方々とかからお話も伺いますし、最近は経済界の方からも、やはり裁判をもっと迅速にやっていかなくちゃいけないし、今の裁判官は少な過ぎてやはり余りにも重い負担になっているんじゃないかというような意見も聞かれるんですが、これは普通は逆ですよね。
 私のところは大変で、こんなに仕事がいっぱいあって大変で、もっと人数をふやしてくれ。外の方からは、いやそうでもないだろう、だからあんたのところはもうちょっとこうやってこうやればこのぐらいの人数でできるんじゃないのかと。何かどうも話が逆転しているようで、その辺が、私は法曹でないからあれなのかもしれないんですが、よくわからないところなんですけれども。
 ちょっとこれは通告していないことなんですけれども、ひとつ今度は法務省の方。
 検事という立場から見たときに、今の裁判官の人数というのはやはりこれから圧倒的に絶対数が足りないのか、それとも、裁判所の方が言われているように、少しは大変だけれども計画的にふやしていけば済むというようなことなのか、ちょっと御意見があれば伺いたいと思うんです。
#45
○但木政府委員 法務省の立場で答えてくれというのは大変難しいことでありますが、法務省は司法法制調査部を持っておりまして、司法全体の改革についてもそれなりの責任を持っております。
 先ほど大臣からもるる答弁がありましたように、近時の社会、経済の大変革の中で、来るべき時代の司法は相当大きな国民からの期待を担わざるを得ないという状況にあろうかと思います。現在においても裁判所、特に大都市の民事部は非常に忙しいとお聞きしておりますが、将来展望という意味で申しますと、これからますます国民が司法に頼ってくる、そういう事件がふえていくのではないかというふうに思われるわけであります。
 したがいまして、先ほど最高裁の方からもお答えがありましたが、さまざまの何といいますか、訴訟法上の仕組みであるとか、あるいは訴訟関係人の増加とか、あるいは準備をしていただくとか、あるいは弁護士、現在一人一事務所という形態が相当多いわけですけれども、これを合同事務所にしていくとか、さまざまな、総合的な施策の中で、裁判官がどのくらいいることが望ましいんだろうかというようなことをやはり抜本的に考えてみる時期がそろそろ到来してきているのではないかというふうに考えております。
#46
○上田(勇)委員 現状は、やはり裁判にかなり時間がかかり、もっとそのキャパシティーをふやしていかなければならないというのは、これは事実だと思います。
 今回のこの人数が、国民の要請に十分にこたえられるものなのかどうかは私も判断しかねるところでありますけれども、とにかくふやしていこうということについては、これは反対するものではありませんので、ぜひとも今後、国民の需要、要求に十分こたえられるようなキャパシティーを確保していくように努力をしていただきたいというふうに思うわけであります。
 先日の新聞に、オリックスの宮内社長の司法改革についての御意見が掲載されておりまして、その中に次のような発言があるんです。「経済人から言うと、今の法律家というか、裁判官は経済のことを知らな過ぎる。社会から隔離される日常生活を強いられているからでしょうが、もっと社会の中に入って、社会人としての常識をわきまえて法律を運用しなければいけない。特に経済行為についてはびっくりするほど無知です。だから経済問題を司法に解決してもらうのは、非常に怖いのです。」というような意見があります。
 もっとも、最近のいろいろな出来事を見ていると、法律を知らない経営者というのも、あるいは守らない経営者というのも多いのかもしれませんけれども、一つのやはりこれは重要な提言だと思うのですね。非常に代表的な、規制緩和の委員会だとかの委員もされているようなこういう経済人が、経済問題を司法に解決してもらうのは非常に怖いと言っているということは、やはりどうしても司法システムが正常に機能してないという意見を持っている人も多いということなんだというふうに思います。
 そういうことを考えますと、この裁判官が経済を知らな過ぎるという批判をどのように受けとめられているのか、また、それをもっと、こういう経済問題についても、こういうことが言われないようにどういうような向上改善策を考えられているのか、御意見を伺いたいというふうに思います。
#47
○堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 現在のような複雑化する社会の要請にこたえまして適正な裁判を行っていくためには、裁判官各自が、経済問題を初めとする社会の実情、一般にも広く通じ、広い視野と高い見識を身につけるよう努力していく必要があるというふうに考えているところでございます。
 そのような自己研さんの一助とするために、裁判所といたしましては、かねてから裁判官の研修制度の充実に努めてきているところでございます。
 例えば、裁判所外の世界で生きた社会現象に接し、裁判所を外から見るという機会を与えるために、比較的若い裁判官を中心に、報道機関であり
ますとか民間企業等において研修を行い、あるいは行政官庁に出向させております。
 また、裁判官が日本を出て異なる文化に接し、多角的に日本の裁判のあり方を見つめ直す機会を持つことも極めて有益であるというふうに考えておりまして、毎年多くの裁判官を海外に派遣しているところでございます。
 また、裁判官の能力の向上のために、従来から、任官後の節目節目に、司法研修所において、実務と理論の両面にわたる能力の向上及び裁判官に求められるもろもろの知識の習得を目的とする、一貫した合同の実務研修の機会を設けておるわけでございますが、これに加えまして、適宜研究会を開催し、法律以外の問題点に関し、例えば日本経済の実情、東南アジアの経済問題、世界経済問題といった社会一般の問題に関し、勉強の機会を設けているところでございます。
 さらに、各庁におきましても、定期的に外部講師を招くなどして、関連諸科学の研究、裁判実務に有用な知識の吸収等の機会を設けているところでございます。
 今後とも、裁判官の視野を広げ見識を高めるために、委員御指摘の点を踏まえまして、経済や社会の実情に対する認識を深めることができるようさまざまな措置を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
#48
○上田(勇)委員 今、金融ビッグバンということが進んでおります。そうすると、アメリカからどんどん経済人が入ってくる。向こうは訴訟社会でしょうから、何かトラブルが出ればこれはもうどんどん裁判に訴えていくというようなケースがふえてくるというふうに思います。
 そういう意味で、ぜひとも、こういう批判も踏まえまして、今後とも、そういう経済事件の解決は、最終的には裁判所に持っていけば解決できるんだ、正義が保たれるんだというような信頼感が得られるようなこれからも御努力を切にお願いするものであります。どうかよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
#49
○笹川委員長 漆原良夫君。
#50
○漆原委員 平和・改革の漆原でございます。
 法務大臣にまずお伺いしたいんですが、新聞報道によりますと、法務大臣は、少年法の改正問題で、少年の年齢を引き下げるという方向での検討を事務当局に指示したというふうな報道がなされておるんですが、そういう事実がまずあるのかないのか。
#51
○下稲葉国務大臣 引き下げるということを前提として検討するように指示したことはございません。
 ただ、現在、少年による殺人等の凶悪事件が多発いたしております。その少年が年齢的にどういうようなものであるかというようなことも、委員もう既に御承知のとおりでございます。それが一時的なものであるか、あるいは全体の傾向としてそういうふうな方向に進むものであるかどうか、こういうふうな問題も私どもは冷静に検討しなければならないと思います。そういうふうな角度からいろいろ検討してみて、そして、現在の、昭和二十三年にできた少年法の年齢の規定というものが現状にマッチするのかどうか、そういうようなものをいろいろ多角的に検討してほしいという指示をいたしております。
 そういうことでございます。
#52
○漆原委員 そうすると、ニュートラルな立場で検討するということで、必ずしも引き下げという法改正の方向での指示ではないというふうに今のお話をお伺いさせていただきます。
 平成八年十一月から、最高裁、法務省、日弁連の法曹三者で、少年審判に関する意見交換会、これをずっと月一回のペースでやってこられまして、これがもうほぼ終わりで、今後は立法作業の検討に移っていくと聞いておるわけなんですが、この意見交換会では、基本的には、少年審判における事実認定手続、これを中心に検討してこられた。したがって、年齢の問題については全く触れられていない、年齢はこのままでいいんだという大前提での検討会が一年ちょっとなされてきたというふうにお伺いしているんですが、今回、法務省は、少年の年齢問題に触れられていたということは、この基本的方針を変更されたというふうに考えてよろしいのでしょうか。
#53
○下稲葉国務大臣 委員御承知のとおりに、少年法の年齢の問題は二十年ぐらい前も相当議論されまして、法制審の中間答申等々も出されているわけでございますが、中間答申ということになったのも、年齢の問題で必ずしも意見が一致しなかったというふうなことがあるわけでございます。したがいまして、年齢の問題は、言うなればタブーみたいな形で議論されてきていたのが現在までの状況でございます。
 最高裁、日弁連それから私どもの法曹三者における協議の場も、今委員御指摘のようなことで、審判手続について、現行少年法のままでいいかどうかというふうな議論があったわけでございます。そして、それが今日まで続いていることも事実でございます。
 ただ、私といたしましては、今、少年の凶悪事件がいわば続発して起きている段階において、果たして現在のような少年法の年齢でいいかどうかというふうなことを議論するということが法曹三者の場で避けられない問題ではなかろうかと。もうここまで今少年の凶悪化なりなんなりが進んでいて、年齢の問題が議論されているわけでございますから、今申し上げました、審判の手続を中心として議論が進められておりますけれども、そういうふうな中で、法務省サイドから今申し上げましたような検討について議論を提起するというふうなことを事務当局に私は指示いたしているというふうなことでございます。
#54
○漆原委員 少年法の中で、年齢の問題、いろいろなところで出てくるわけなのですが、一つは、まず、少年法五十一条で、行為時に十八歳未満の者は、本来死刑に当たる場合は無期刑だ、無期刑の場合は十年から十五年だ、こういう条文があります。この年齢を下げることによって、十六歳ないし十七歳の少年を死刑もしくは無期で処断する道を開く可能性があるわけですね。
 それからもう一つ、二十条で、逆送の年齢でございますけれども、これは、送致の時に十六歳未満の者は逆送できない、刑法の四十一条で、刑事未成年者、十四歳未満の者の行為は処罰しない、この関係上、この二十条を改正して、下げることによって、十四歳、十五歳の少年の逆送の道を開く方法があるわけですね。
 それからもう一つ、そもそも刑法四十一条の条文を改正して、あわせて少年法二十条の逆送年齢を引き下げする。すると、場合によっては十二ないし十三歳の少年に対する刑事処分も可能となるわけですね。
 法務大臣の胸のうちに、今、少年法の年齢を検討しなければならないとおっしゃった、この胸のうちにあるのは、この三つのうちどの辺のことをお考えになって、何とかしなければいかぬというふうにお考えになっているのか。その辺はいかがでしょうか。
#55
○下稲葉国務大臣 今、私はこの場で、それはどれですというふうなことはございません。
 ただ、五十年も前にできた少年法でございますし、少年に対する国民的な認識というものも当時といろいろな推移もあるのではなかろうか、このように思います。そしてまた、少年法の年齢ということも議論してみますと、それを取り巻く周辺のいろいろな法令の問題、いつも例えば選挙権の問題とかいろいろ申し上げているわけですが、その辺との整合性をどういうふうにするのか、あるいは、少年法の問題だけでいいのかどうか、そういうようなこともございますし、広くその辺のところをやはり議論してみる必要があるのではないかな、議論に値するのではないかなというふうなことで、問題を提起いたしておるわけでございます。
#56
○漆原委員 抽象的でよくわからないのですが、この前、予算委員会で深谷議員が大分強い口調で、十八歳未満は死刑にならない、こういう話、
それから、十六歳未満は逆送できない、こんな強い主張の話をされておりましたが、まさか十八歳未満の者の死刑の道を開くために検討するわけでもないでしょうし、今問題になっている十三歳という中学生の年齢、これはまさに刑事処分の対象にならないわけですね。
 したがって、法務大臣の頭の中にあるのは十三歳ぐらいの少年の刑事処分のことを考えていらっしゃるのかなというふうに思っているのですが、十三歳はともかく、今までの法律の中でも逆送という方法はあるわけですから、それを使って今まで解決をしてきたわけですね。新たな問題としては、十三歳ぐらいの少年をどうするかというのが最近急に出てきた問題なので、果たして十三歳ぐらいの少年に対して刑事処分を科していいのかな、逆送して刑務所に入れていいのかなという感じは持つのですが、大臣、いかがでしょうか。
#57
○下稲葉国務大臣 これは、国際的にもいろいろ外国例がどういうふうになっているかどうか私ども検討いたしておりまして、それは、十三歳適用している国もないわけではないと承知いたしております。だから、そういうふうな問題も含めまして、逆送の年齢が十六歳以上が果たしていいのかどうかというふうな問題。ただ、基本的には、やはり保護育成を中心とする現在の少年法の基本というものは間違いじゃない、私はこのように思います。
 だから、そういうふうな意味で、今委員御指摘のとおり、まあ死刑の年齢を下げていいとか何だかんだという、そこまではもう、御質問があって、法律知らぬわけではございませんけれども、そういうふうな思いまでしているわけじゃございませんが、広く時代の変化に伴い御議論していただきたい。そして、大変な議論の中でやはり方向が出てくるのなら、それはそれで改正すべきだ。現行のままでいいという意見なら、またそれはそれでもいいんじゃないかというふうな気持ちで、ただ、しかし議論はしていただきたいということでお願いしておるわけです。
#58
○漆原委員 今おっしゃったように、中学生の、低学年の事件が多く起きて、このところ社会問題になっているわけですね。我々の子供のころは、人を殺すなんということはとても考えられない、ナイフで刺すなんてことも予想もできなかったわけなんですが、今何件か例があって非常に社会問題になっておりますが、なぜ今の子供たちがそんな突拍子もないような行動をとるようになったのか。その原因について、法務省としては検討されているかどうか。もし検討されているのであれば、その原因をどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
#59
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 ただいまの委員の御質問は、特に最近、ここ一年と申しましょうか、さまざまな事象が報じられ、国民的な大変な関心が高まっているということをひしひしと私ども感じさせる中での御質問ということでございます。
 私どもといたしましては、従来、大臣が御答弁申し上げましたように、少年法の事実認定の問題で、基本的に、まず責任のあり場と申しますか事実をはっきりさせて、そして、どのようにそれを処分するかは別といたしましても、何が起こったのかということはきちんとすることがすべての始まりじゃないか。そこがおろそかになるようですと、やはり少年に与える影響もございますし、大変問題だという観点から議論が進められてまいりました。
 その過程で、議員御指摘のようなさまざまな問題が出てまいりまして、果たして、今の少年法制の基本的な枠組みについて、いいのかどうかという観点から問いかけが現実にあるわけでございます。そういうものに対して法務省としてどう答えていくかという問題は、真剣に議論はさせていただかなきやならないだろうと思います。これは単に法曹三者だけの問題でなく、本当にあらゆる観点から議論すべきことであろうと思います。
 それで、現在、特に最近起こっている問題の事象については、何が問題かということは当委員会でもさまざまな角度から御議論がございました。そういうことも踏まえまして真剣にこれから議論しなきやならないことでございますが、私どもといたしましては、検察官が関与している状況というのは限られているわけでございます。しかしながら、法務省の中には、矯正の現場で、少年鑑別の現場で、少年院の先生方がどう見ておられるかというようなこと、それから、さまざまな専門家がこの問題をどう見ているかということについても、改めて現在真剣に問い直そうとして、そのような手続を現在検討させていただいております。
 そういう中で、この問題について真剣に検討をまずさせていただく。一概に決めつけてこの原因がどうだということは言えないだろうというふうに考えております。それぞれで見方はございましょうが、改めて検討させていただきました上で、それについての法務省としての考えをまとめさせていただきたいというのが実態でございます。
#60
○漆原委員 そうすると、まだ具体的に検討機関というのはできていないということになるのでしょうか。
#61
○原田(明)政府委員 具体的にいつまでにということは決めているわけでございませんが、そのことも含めて、できるだけ早急に、どのような形で検討していくかということも含めて、現在鋭意考えているところというふうに御理解賜ればと思います。
#62
○漆原委員 法務省としては、刑罰を重くするということだけで事足りるというふうにお考えではよもやないというふうに考えておりますが、刑罰を重くするということは、ある意味では対症療法でございまして、事件の背景にあるさまざまな原因をしっかり見詰めて、法務省だけではなくて、ほかの省庁、この問題は縦割りで考えていくのではなくて、内閣全体としてこの問題を考えて、その上で総合的に検討した上で法改正すべきかどうか、そういう手順になっていかなくてはいけないのではないかというふうに私は考えております。
 この前も、鴨下委員の質問に答えておられましたが、価値観の多様化だとか、物質の豊かさによって何でも手に入ることによって忍耐力がなくなるとか、あるいは倫理観の低下、親子の情の希薄、受験競争、そんなことが相まって、今の少年というのはみずからの判断基準を失っているのじゃないかと。
 場合によっては、今こそ少年法の教育主義と保護主義というのが逆に要請されるときじゃないのかな。場合によっては子供が、ある意味では助けてほしいという、助けを求めているのかもしれない。それを安易に、刑罰を科するということで刑事処分にしてしまうという方法というのは、私は余りいい方法ではないのじゃないかなと思っておりますが、そんなことで、ぜひ総合的な検討の上に立った上で、やむを得ないという場合に限って少年法の年齢に触れていくという手順になるべきだと思いますが、最後に法務大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
#63
○下稲葉国務大臣 私も同感でございまして、御意思を十分体してやってまいりたいと思います。
#64
○漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
#65
○笹川委員長 安倍基雄君。
#66
○安倍(基)委員 時間が十五分しかございませんので、簡単にいろいろなことをお聞きしたいと思います。
 最初に、この定員法の法案ですけれども、今までいろいろ話もございましたし、私どもの権藤委員も、これからはいわゆる行政指導じゃなくて、いわば法律で争う話だ、法廷で争う話だという時代になってきていると。私は本当に、そういう時代に即応して、法務省が長期的な見通しを持っているのだろうかという感じがするのです。
 さっき、いろいろ訴訟案件の動向という話が出ましたけれども、訴訟案件というのも、これは裁
判が比較的早く終わるということをみんな知り始めれば、案件もふえる。やり出したら一年も二年もかかるとなると、争うべき案件も争わないという、一種の相関関係にあるのですね。でございますから、裁判に提訴するといつまでもかかるから、やめておこうというケースも随分ある。ただ、さっきから出ましたように、国際化してくると、どんどんと海外から訴訟が出てくる。そう考えますと、やはり我々は新しい時代に即応して法曹関係にどういう人数が要るのだろうか。特にアメリカなんかの場合には、ちょっと多過ぎて、かえって訴訟がそのために多くなり過ぎてしまうという懸念もあるわけでございますけれども。
 そこで、さっき手持ちが二百件とか二百四十件とかございましたけれども、各国において大体何件くらいを何人で処理しているのだろうかという種類のいわば調査はしてあるのかどうか。もっとも、ほかの国といっても、計数というのが、いろいろ難しいものから易しいものがございますから、これを一々横で比較できない要素もございますけれども、ただ、やはりトータルとして大体、日本は十カ月だけれどもほかの国は違うというふうな部分もございましたけれども、そういった海外との比較における裁判官一人当たりの処理件数というのは一応皆さん調べていらっしゃるのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
#67
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 委員が御指摘の裁判官の手持ち事件数と審理期間の相関関係というのは、実は我が国との関係におきましても非常に計数的に把握するのは難しゅうございますのですが、諸外国の制度や諸条件に大変な違いがございまして、今のところ諸外国との比較において裁判官の手持ち事件数と審理期間との相関関係についてはデータがございませんので、御容赦をお願いしたいというふうに思います。
#68
○安倍(基)委員 これは各国によっていろいろ内容的な差異もございましょうけれども、ただ、客観的に、さっき裁判官一人当たりに対して人口何名というようなデータがございましたけれども、それは一番基礎的な数字でございましょうけれども、この国際化時代に、我々は将来どのくらい司法関係の人間が要るのかというデータとしてそれなりの調査をやはりしておくべきではないか。さっき自分たちがもっと増員してもらいたいところをしないでもいいと言ってというような話が出ましたけれども、そういうところをこれから、これだけインターネットで国際情報が動くときに、それぞれの国が大体どの程度の案件を何人で処理しているのかというような程度の基礎データはやはり調べておいていただきたいと思います。いかがでございましょうか。
#69
○浜野最高裁判所長官代理者 まさに委員御指摘のとおりでございまして、私どもも、個々に具体的なそれぞれの統計的な処理をする前の粗いデータというのは報告をしたり調査をしたり、持っているわけでございますが、これを委員の御質問に対して手持ち件数と審理期間の関係がこういうふうになっているという統計処理がまだできていない状況でございます。まさに国際化の時代でございまして、委員の御指摘のとおりの状況にございますので、さらにそういう点の調査もしっかりやっていきたいというふうに思っております。
#70
○安倍(基)委員 さっきまたいろいろ答弁あたり聞きながら、いわば手持ち何件あると言うけれども、大体一人が一年間にどのくらい処理するかという要素も一つの、事の難易度がございますから一口には言えないのでございますけれども、それも含めて、ひとつそういった情報を得ていただきたいと思います。法務大臣、いかがでございますか。
#71
○下稲葉国務大臣 非常に大事なことでございまして、我々の議論の基礎になる問題でございますから、十分配慮してまいりたいと思います。
#72
○安倍(基)委員 今の定員法そのものについては私どもも賛成でございますけれども、こういうことを踏まえて、さっき上田委員から話がございました長期計画というか、これから大体どうなるのだろうという見通しのもとに、裁判官にしても弁護士にしても考えていく、そう簡単には見通しはできないにしても、大まかな方向を考えていただきたいと思います。
 法案につきまして、いろいろ聞けばございますけれども、時間が短いので、ちょっと少年法について、私は非常にこれは関心が深いのでございまして、たしか去年の十月、私が立ったときも、少年法を見直すべきじゃないかということを提案いたしまして、大臣から今検討中というか審議会で議論しているというお話がございました。その後また次々と、いろいろ案件が発生しております。これは本当に、今までそれこそ見えなかったのが一挙に出てきたという感じかと思います。
 私は、いろいろ議論があるかと思いますけれども、ちょっとほかの国との比較を、私もある程度知識はございますけれども、大まかな主要国について、さっきの年齢の問題につきましても、例えばアメリカは非常に低いとか、いろいろまた州によって違いますけれども、一応簡単な御説明をいただきたいと思います。
#73
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 諸外国の少年法制につきましてすべてを承知するわけではないのでございますが、例えばドイツでは十四歳以上十八歳未満の者が少年とされておりまして、刑事責任能力が認められます年齢、すなわち十四歳に達した少年による事件につきましても、少年事件を専門に扱う裁判所で取り扱われると承知しております。
 フランスでございますが、フランスでは十八歳未満の者が少年とされまして、十三歳以上の少年による凶悪事件につきましても、少年事件を専門に扱う裁判所で取り扱われると承知しております。
 アメリカにつきましては、州によって制度が異なっております。少年とされる年齢も、例えばニューヨーク州のように十六歳未満とする州、カリフォルニア州のように十八歳未満とする州などがございますが、凶悪事件の取り扱いにつきましても、ニューヨーク州のように、十三歳以上の少年による殺人事件等を成人と同じ刑事裁判所で取り扱うこととする州、また、カリフォルニア州のように、少年事件はすべて少年事件を専門に取り扱う裁判所に事件が係属しました上で、成人と同じ刑事裁判所で取り扱うのが相当とされた場合には刑事裁判所に移送することとされている州など、いろいろな面がございます。
 なお、イギリスにつきましては、十八歳に満たない者が少年とされ、成人とは異なる取り扱いを受けるのでございますが、その場合でも、刑事責任能力が認められます年齢、イギリスでは十歳とされておりますが、これに達した少年による殺人事件や十四歳以上の少年による強盗、強姦事件等の凶悪事件につきましては、成人の刑事事件と同じ裁判所で取り扱われるとなっております。
#74
○安倍(基)委員 警察庁にお聞きしたいのですけれども、来ておられますね。最近における中学生あるいは高校生の凶悪犯というのはどのくらいの件数があってどういうことになっているか、簡単に言ってください。
#75
○勝浦説明員 最近五年間の数字でお答えを……(安倍(基)委員「もう簡単でいい。一番最近のでいいです」と呼ぶ)わかりました。
 では、昨年、平成九年中の数字でお答え申し上げます。
 中学生による凶悪犯罪の補導人員は二百七十七人でございます。それから、高校生につきましては六百六人でございます。
#76
○安倍(基)委員 私もデータを見せてもらったのですけれども、中学生は殺人あり強盗あり、中学生で強姦もあるのですね。高校、中学のいわば凶悪が非常にふえている。
 私は、これはいろいろな意見がございましょうけれども、本当に最初、戦後の少年法のころというのは、たしかやはり終戦後の苦しい時代で、窃盗とかそういう種類のものが随分多かったのじゃ
ないかな。そういったものを更生させなくてはいけないという辺の趣旨が多かったのじゃないかなと思うのです。当時は生活が苦しかったわけですから。これを全部、ジャン・バルジャンのように一生追い回すのじゃもう本当にだめだ。その辺の趣旨があると思う。その辺の立法の趣旨あたりをもう一遍皆さんごらんいただいて、私は刑罰というのは一種の抑止力があると思うのですよ。要するに、おれたちは何をやったって死刑にならぬのだぞ、特に小さな子はそこまでの意識はわかりませんけれども、それがあれば親もやはり注意するし子供も注意する。
 私は、この点につきまして、確かに教育刑という、私は昔、教育刑のいわば原理なんかを大分たたき込まれましたけれども、やはりその反面、逆に、加害者の更生とは別に、被害者の人権はどうなるんだと。殺された者は戻ってこないよと。しかも自分自身がそれほどの過失がないにもかかわらずというようなことで、私もこの前の委員会でも申しましたけれども、余りにも加害者ばかりが大事にされて、被害者、しかもその被害者の父兄もあれば、潜在的被害者という概念があると思います。これは、いつ殺されるかわからないと。
 そう考えますと、私は、この情報化社会で、年齢が何歳未満は少年だというやり方でやるというのはやはり問題ではないかと。アメリカやイギリスあたりは大分下げておりますけれども、これがいつ下がったかというのを調べてもらおうと思っています。この辺をやはり大臣、それは、どっちかというと特に弁護士出身の方は人権の問題を強くやりますから反対が多いかと思いますけれども、私は行政官でおったわけでございますけれども、やはり刑罰の抑止能力、つまり人を殺したら本来殺されるべきなんだ、そう言っては悪いけれども。それが、要するに情状酌量されてもともとそこまでいかないんだという意識ですね。
 さっきもちょっと雑談で、東南アジアでは麻薬を持っていたらすぐ死刑だという話がございました。まあ、後進国かそれはわかりませんけれども、そこまでいかないにしても、やはり刑罰の抑止力というのを、子供もわかり、親もわかるというくらいのことが必要なのじゃないかと私は思います。
 この点、さっきの質問者は大分逆のような立場でございました。私は、何も党の意見じゃなくて個人的な意見でございますけれども、その辺について御感想をというか、私の見解についての御意見を法務大臣からお聞きしたいと思います。
#77
○下稲葉国務大臣 私は、基本的には少年自身の心構えの問題でございまして、それは、やはり家庭のしつけあるいは学校の教育それから社会環境、そういうふうなものが基本でございまして、ですから、刑罰による規制というものは本当はなくて済めば一番いいわけでございますが、現実には、今るる話題になっておりますような凶悪な事件が多発しておるわけでございます。
 ですから私は、そういうふうなものを踏まえまして、現行の少年法におけるいろいろな年齢の規定というふうなものが果たして時代に合っているのかどうか、そういうような角度から、今までどちらかというとタブーでございましたけれども、そういうようなことで、触れなくて済まされる時代ではないというふうな認識のもとでひとつ大いに議論してほしい、そういうような中から結論を見出していこうというふうな気持ちでいるわけでございます。
#78
○安倍(基)委員 もう時間が来ましたからやめますけれども、本当に、いろいろ今まであるタブーをもう一遍ゼロから出発して考えるという時代かと思います。そういう面におきまして、この少年の犯罪の問題につきましても、どうか、今までのタブーということじゃなくて、思い切ってゼロから出発して考えていただきたいと思います。
 これで終わります。
#79
○笹川委員長 木島日出夫君。
#80
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 今回の増員は、判事補が二十名、裁判所裁判官以外の職員二十一名、極めて不十分ではありますが、財政構造改革法のもとで政府全体で三千七百名に上る定員削減が強行されている中での純増でありますから、それとして評価したいと思います。
 しかし、裁判の遅延解消等のため、裁判所の人的、物的拡充の必要性はますます高まっておると思いますので、最高裁と法務省の一層の増員のための努力を求めたいと思います。時間が限られておりますから答弁は求めません。
 裁判所職員の増減の内訳を見ますと、新民事訴訟法施行に対処するため、書記官二百五十名の増員でありますが、他の職種からの振りかえが主であります。とりわけ速記官百名が減でありますが、これは、今年度から速記官の養成が中止される、速記にかえて外注委託の録音反訳方式が導入される、こういうこととあわせて大問題だと私は思います。
 最高裁は、最近、平成十年度の録音反訳方式の導入庁のうち十一庁について民間業者への委託方式を導入する予定と聞きますが、簡潔でいいです、どんな業者に委託するつもりなのか、お答えいただきたい。
#81
○浜野最高裁判所長官代理者 具体的な業者の名前は差し控えさせていただきまずけれども、委員が問題にしておられますいわば秘密保持の問題でございますが……(木島委員「どんな業者かだけでいいですよ」と呼ぶ)信頼の置ける、秘密保持の可能な、しかも一番大事なのは、録音反訳でございますので、証言そのものを正確に実際に反映できる、そういう技術的に信頼のできる業者を選択したいというふうに考えております。
#82
○木島委員 私は、問題点として、今もう答弁者が言っているんですが、まず、速記録の正確性をどう担保するんだ、プライバシーをどう保護するんだ。神戸家裁での少年事件の記録流出事件というゆゆしい事件もありました。そういう記録の流出防止をどう図るんだ、それを担保できる業者を見つけようとしているのか、そこを聞きたいわけで、今の答弁では全然私は納得できぬ。そういう担保をどう保障するつもりなんですか。
#83
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 まず、前提問題からお話しさせていただきますと、証言の録取と申しますのは、委員御案内のとおり、裁判の公開のもとで基本的に行われるということでございまして、そういう意味では秘密保持というのはそんなに出てこないところでございますが、しかし、やはり当事者のプライバシーという問題がございますので、十分な配慮をしていく必要があろうというふうに思っております。
 民間業界では秘密保持は企業の存立自体にかかわることでございますので、そのモラルは相当高いものと考えておりまして、また、具体的な運用に当たりましては、情報管理について特に信頼のできる業者に委託して、契約書にも守秘義務条項を盛り込みますほかに、業者に対して、秘密を保持するために必要な事項を契約に取り入れているところでございます。
 例えば、録音テープのダビング及び送付資料のコピーを禁じましたり、送付したテープ等は必ず返還させて、フロッピーからも削除させる等の措置を講じるつもりでございます。さらに、当事者のプライバシーに特に配慮する必要がある事件につきましては、裁判所の庁内で反訳を行う等の措置を講じることにしているわけでございます。また、実験期間中及び録音反訳導入後も、プライバシー保護等には問題があった例はございません。
 最高裁といたしましては、録音反訳方式の導入に当たりまして、日弁連等と多数回にわたり十分協議してきたわけでございますが、導入後も必要に応じて随時協議しているところでございます。最高裁といたしましても、委員御指摘の正確性の担保、プライバシーの保護について、なお一層運用上の工夫、改善に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。
#84
○木島委員 実験中問題がなかったという御答弁
がありましたが、わずか六カ月問の実験であります。ほんの一部の庁における実験を金科玉条とする態度は、私は慎んでいかなければならないと思います。
 現役の速記官から、これは週刊法律新聞の本年三月六日付に載っておりますが、現在、録音反訳を実際に担当しているのは司法協会だ、そこで作成された録音反訳書に対して、民間の場合、実験のときよりでき上がりが遅い、音がほとんど拾えていない、聞き間違いがある、テープに入っているのに抜けている等の正確性の問題、また、その反訳書を校正する書記官の負担も決して軽くない、こういう批判や指摘がされているということだけ、私はきょうは指摘をしておきます。
 そこで、私はこの問題、きょうはこの件に関して一点だけ聞きます。
 この件に関して、最高裁が、昭和三十二年十二月二十六日の「裁判所速記官による速記に関する事務の運用について」と題する事務総長通達をこのたび見直そうとしています。いろいろありますが、きょうは一点だけに絞ります。
 その中の第四の三、「速記録の訂正」、「速記録については、誤字、脱字または反訳の誤がある場合のほか、訂正をさせないものとすること。」要するに、裁判官が速記官に対して訂正を命ずることはできない、こういう大原則があるわけでありますが、それを書いたこの通達のこの部分を削除しようとしているわけであります。
 速記録の作成に関しては裁判官は介入することができないということを示しております。裁判所法六十条、六十条の二、この書記官と速記官の任務の違い、この二つの条文の規定の解釈からしても、この通達のこの部分を削ることはおかしいのじゃないかと私は思います。
 なぜ通達を見直して、この大事な部分を削除しようとしているのか、理由をお聞かせ願いたい。
#85
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、このたび速記に関する通達の改正を検討しているところでございますが、これらの通達は、委員御指摘のとおり、昭和三十年代にできたものでございまして、内容的にも非常に古くなっておりまして、実務の事態に合わなくなっている部分があるために、速記事務の改善を図るための改正を行おうとするものでございます。
 委員御指摘の速記録の訂正命令の部分につきましては、誤字、脱字及び反訳の誤りはともかくとして、内容の変更を伴うような変更ができないということは、証人の証言等をそのまま文字にする速記録の性質上、当然のこととして、実務に深く定着しているところでございます。したがって、今回の改正により、速記録の訂正命令に関するこれまでの運用は、いささかも変わるものではございません。
 また、録音テープに基づく録音反訳につきましても、訂正命令に関するこの部分の運用は全く同様であることを申し添えたいと思います。
 ちなみに、委員御指摘の訂正命令に関する事項でございますが、これは本来通達に親しむ事項とは言いがたいところでございますので、今回の改正では通達からは整理したいと考えているところでございますけれども、今申し上げましたように、誤字、脱字及び反訳の誤りは別にして、内容の変更を伴うような変更はできない、しないという運用は当然の事柄でございまして、実務の運用はいささかも変わるものではないということを申し添えたいと思います。
 なお、速記の訂正に関する運用のこれまでの運用が変わるものではないということにつきましては、書簡の形で周知徹底し、改めて確認をされるようにするとともに、なおかつ、各種の協議会等を通じまして、裁判実務の現場においてその趣旨が確認されるように措置を講じていきたい、かように存じております。
#86
○木島委員 運用は変えないと言うのなら、なぜこの通達のこの部分を抹消しなければいかぬのか、おかしいと私は思うのです。
 今、答弁の中に、通達が古い、四十年前だ、実務の実態に合わなくなっているという答弁がありましたが、私はとんでもないと思うのです。こういう通達が今でも生きて、そのとおりの運用が裁判所においてはなされているということを私は承知しているわけであります。逆に、通達に記載する事項としては適当でない、そんな答弁をしましたが、それなら四十年間そんな適当でないことを裁判所はやってきたということを自認するのですかということだけ指摘しておきます。
 速記官制度が創設されて以来、速記録というのは、まず機械的に記録されているのです。主観は入っていないのです、速記官の。客観的かつ正確な記録として公正な裁判の保障のために大きな役割を果たしてきています。訴訟手続を公証している記録に対する裁判官の個人的な干渉や介入を排除して、内容の改ざんを許さないことが公正な裁判を実現する制度的保障であります。特に、一審でないわけです、日本の訴訟制度が三審制をとっているわけですから、上級審はその記録だけを読むわけですから、速記録が裁判官の主観的な予断を排除して、機械的、客観的に作成されることの重要性は私は明白だと思います。
 実は私、速記官からいろいろな点をもう聞いているのです。どんなことがやられているか、そんな多いわけじゃありませんが、例えばこういう例があった。
 裁判官から現実に速記録に対する訂正命令が求められた事例として、刑事事件の証人尋問中の裁判官の発言に関連して、法廷で発言していない裁判官が、そういう内容を二、三行ほど入れてくれということがあったが、これはこの通達を根拠にして断った。当然であります。
 それから、こんな例もあった。
 同じく刑事事件の法廷で、裁判官が、自分が間違った発言をしたことに対して、被告人がそのことを指摘して応答した。そのまま尋問がどんどん進んでしまったため、後に速記録の訂正を求められたが、やはり訂正できないわけですね、こんなもの。訂正できないと断った。しかし、かなりしつこく訂正するように言われた。こういう例も聞いている。
 また、刑事事件で証人尋問中、訂正してくれと言われたが、法廷で速記官が耳で聞いて、速記原本にこのように打ってあるということで訂正できないと主張したが、なお言われたので、録音テープを聞いてもらって、確かにそうだということで裁判官に納得してもらって頑張った。
 こういうことが現にある。そんなにはないと思うのですが、現にある。しかし、速記官がそれはだめなんですよと言って裁判官の横暴な介入を拒絶する大きな根拠にこの通達があったのですね。
 この通達をなくして単なる書簡にしてしまうという、運用は変えないと答弁されましたが、速記官は誇りを持って、本当に正しい裁判の進行、そして裁判、司法に対する国民の信頼の増強のために頑張っているわけでありますから、そういうやり方はやめてほしいということを要望しておきます。
 もう時間でありますので、この通達全体を見ますと、やはり私は、今回の最高裁のこの通達改正の本当のねらいは速記官制度の廃止に結びついているんじゃないかと思わざるを得ません。それは裁判官の恣意的な訴訟指揮や運営を助長して、真実の発見という裁判制度の根幹を掘り崩す、そして、ひいては裁判に対する国民の信頼を失わせるものだと考えます。
 速記官の養成を今年度から中止してしまった、日弁連も反対していたのを中止してしまったということも大変けしからぬと思うのですが、私は最後に、速記官制度の一層の充実のために、最高裁は今とっている態度を根本から転換してもらいたいということを強く要請して、質問を終わらせていただきます。
#87
○笹川委員長 保坂展人君。
#88
○保坂委員 私は、司法の一層の充実とともに、
情報の公開を進めていただきたいということを一言申し上げて、今日重大と思われる二点について質問をしたいと思います。
 社民党の保坂展人です。
 昨年の野村証券に始まって、四大証券、第一勧業銀行、そして政界、官界に広がりを見せて、日本じゅうを驚愕に陥れた一総会屋によるこの事件、日本社会の暗いやみをかいま見せた、こういう事件だったと思いますけれども、実は昨年一月十日に野村証券新宿支店を舞台に起きたいわゆる鉄砲事件について伺いたいと思います。
 この鉄砲事件は、TDFという、これまた仕手筋と言われる、異常な高値でつり上げられた株を百七十万株、計七十億円の架空の買い注文を野村ほか八社に浴びせ、そして同時に、百三十一万株、五十五億円を売り抜けて、これを野村証券が実は弁済をしたという内容になっております。
 この事件は、今日問題になっている日本市場の透明性、公平性、そしてまたルールが適正に図られているかどうかということを見る意味では、昨年の総会屋による利益供与事件と比べて物すごく重要な事件だというふうに考えるわけですが、まず法務省に伺いたいと思います。
 この事件の重大性について見たときに、これは仕手筋の株です。そして、その注文を出した取引の相手というのもいわゆる仕手筋の、もう逮捕されていると思いますが、その方自身もその問題の人物である。こういうことをチェックできないはずがないわけで、野村証券の新宿支店の一窓口の判断でこれだけ巨額な取引が成立してしまうのか。証券会社はここで被害者ということでいいのか。ここの点を、事件の重大性とともに、現在は詐欺事件ということで、この事件はその金融会社の社長が逮捕されて幕引きかと報道関係者の中でささやかれているわけですけれども、そんなことはあってはならないと思います。この点について法務省当局に伺いたいと思います。
#89
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 委員御指摘の事件は、本年三月六日に、東京地方検察庁におきまして警視庁から詐欺の容疑事実で身柄つきの送致を受けまして、現在捜査をしている具体的事件にかかわることでございます。検察官は、所要の捜査を遂げた上で、まさに証拠によりましてどういう事実が認定できるかということを前提に、適正に処理するものと考えます。
#90
○保坂委員 もう一つ、法務省に伺いたいのですけれども、この事件は詐欺ということで立件をされているようなんですけれども、証取法の百五十七条の一で、不正手段、計画、技巧の禁止ということが明確にございますよね。果たして詐欺で立件ができる事柄の事件なのかどうか。その点について伺いたいと思います。
#91
○原田(明)政府委員 御指摘の具体的な事件にどのように法律を当てはめるかという点でございますので、やはり捜査の結果、証拠によって認定できる事実がどういうものかということを構成した上で擬律をする、法律の適用を考えるということになろうかと思います。
 委員御指摘の、御関心の点はわかるのでございますけれども、あくまでそれは証拠に基づいて判断すべきことということでございますので、その点につきましては法務当局としてお答えできないことでございますので、御理解いただきたいと思います。
#92
○保坂委員 それでは、同様のことを警察庁の方にお聞きをしたいと思います。
 既にその会社社長は逮捕されているわけですけれども、これが詐欺であったとしても、証券会社の関与なしにこの詐欺が成立するのかどうか。その点も含めて答弁いただきたいと思います。
#93
○縄田説明員 御指摘の事件につきましては、証券取引所における株式の売買につきまして、まさに仮想の買い注文を出して売買を成立させたということでありまして、証券取引自体の信頼を損ねる重大な事件だと受けとめております。
 ただいま警視庁において、全容の解明をすべく全力を挙げて捜査中でございます。法条の適用につきましては、関係者多数の供述あるいは証拠等に基づきまして十分検討の上、厳正に立件をしてまいりたい、このように考えております。
#94
○保坂委員 じゃ、法務大臣に伺いたいのですが、まさに株価をどうやって維持するのかということで、新聞紙面にも、さまざまなニュースや発言が、政治家の発言も多々出ておりますけれども、こういう不正が通るような国、あるいはそこがきちっと処罰を受けない、訴追を受けない国ということは、世界に対して信用を失墜させる行為であるということを踏まえて、法務大臣の見解、そして厳正な姿勢で向かっていただきたいという要望も含めて、一言お願いしたいと思います。
#95
○下稲葉国務大臣 お尋ねの事件は、警視庁から送付を受けまして、東京地検で今やっておる事案でございます。私は、具体的な事件でございますので、答弁は差し控えまずけれども、今お話がございましたような詐欺罪だけなのか、あるいはどうなのか。これはやはり法と証拠に基づいて擬律判断しなければならぬ問題でございますので、検察は厳正に、適正に対処してくれるものだ、このように思います。
#96
○保坂委員 それでは、一般的なことに移しますけれども、法務大臣に一言、先日逝去された故新井議員の問題でも借名口座ということが問題になりました。この際、政治家みずからが仮名、借名の口座そのものの取引をやめるということを問われていると思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
#97
○下稲葉国務大臣 借名口座はよくないと思います。
#98
○保坂委員 それでは、最後になりますが、死刑の執行の情報公開にかかわる問題なんですけれども、既に三度、質問主意書を出させていただき、また、その回答も既に二回いただいておるわけですけれども、アメリカのテキサス州で、世界的に話題になったカーラ・タッカー死刑確定者、この執行をめぐって世界じゅうの世論、マスコミも注目したわけですけれども、アメリカの情報公開に比べて日本の死刑執行にかかわる公開が極めて落差があるということについて、法務当局の見解を伺いたいと思います。
#99
○原田(明)政府委員 確かに、アメリカで最近行われた執行に関してのマスコミの取り上げ方、それに対するさまざまな反響ということを見ますと、私どもにとっても大変な事態だなという感じがいたします。
 現在、我が国におきましては、委員御承知のとおり、結局、国の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるということで、それを超えまして、国家機関が刑の執行の事実を殊さらに公表いたしまして、刑の執行を受けた者やその関係者に、それ以上の不利益や精神的苦痛を与えることは相当でないということから、死刑につきましては、その執行の都度、その事実を公表することについてはいたしていないという実情にございます。
 刑の言い渡しがなされた個々の事件の裁判の内容ということになりますと、これは裁判の公開の原則により明らかにされておりますゆえ、死刑執行の事実につきましては、毎年の統計においてその数を公表しているところでございまして、それ以上に、個々の執行の事実まで公表する必要はないと考えているところでございます。
#100
○保坂委員 時間になりましたが、一問だけ。
 世界で国連加盟国の過半数がもう死刑を廃止しております。そして、先進国では日本とアメリカのみ死刑が残っているわけです。この議論をきちっとしていく意味でも、この死刑執行のプロセスあるいは刑場、これを議員に公開する、あるいはそこをきちっと情報公開して、そして論議の材料にするということを、これは矯正局長にお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#101
○坂井政府委員 お答え申し上げます。
 先ほど刑事局長が申されたことと、基本的に私も意見が変わっているわけではございません。いろいろなことが、御議論はあろうかと思いますけれども、やはり国民性の問題であるとか文化の問
題であるとか歴史的な経過というようなものがございますので、その辺を見きわめながら、慎重に検討すべき問題かと考えております。
 以上でございます。
#102
○保坂委員 それでは、先ほどの法務大臣の、借名口座はよくないということを、ぜひ政治全体のものにしていくことを私ども進めてまいりたいと思います。
 これで終わります。
#103
○笹川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#104
○笹川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#105
○笹川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#106
○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#107
○笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十一分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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