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#1
第142回国会 法務委員会 第7号
平成十年四月七日(火曜日)
    午後四時四分開議
出席委員
  委員長 笹川  堯君
   理事 鴨下 一郎君 理事 橘 康太郎君
   理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君
   理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君
   理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君
      太田 誠一君    奥野 誠亮君
      木村 義雄君    古賀  誠君
      下村 博文君    菅  義偉君
      谷川 和穗君    谷畑  孝君
      中川 秀直君    渡辺 喜美君
      枝野 幸男君    佐々木秀典君
      福岡 宗也君    漆原 良夫君
      安倍 基雄君    木島日出夫君
      保坂 展人君    園田 博之君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 下稲葉耕吉君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 但木 敬一君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 山崎  潮君
        法務省刑事局長 原田 明夫君
        法務省人権擁護
        局長      横山 匡輝君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総局総務局長  浜野  惺君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  堀籠 幸男君
        最高裁判所事務
        総局経理局長  竹崎 博允君
        法務委員会専門
        員       海老原良宗君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 五二号)
 司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第五三号)
     ――――◇―――――
#2
○笹川委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所浜野総務局長、堀籠人事局長、竹崎経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
#4
○笹川委員長 内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び司法試験法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 これより両案に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡宗也君。
#5
○福岡委員 民友連の福岡宗也でございます。
 裁判所法の一部を改正する法律案並びに司法試験法の一部を改正する法律案に関しまして、御質問を申し上げます。
 前者は、現在二年とされております司法修習期間を一年六月に短縮をしょうとするものであります。また、後者は、司法試験第二次試験の受験科目を、論文式では、従来、民事訴訟法と刑事訴訟法の一つを選択をすることになっていましたのを、両科目ともに必須科目とすること、その他の選択科目は全部これを廃止する、こうなりまして、受験科目としては憲法、民法、刑法、刑訴、民訴、それからさらに商法、この六科目ということになったわけでございます。
 この改正は、我が国の司法を担う法曹の養成制度にとりましては、その入り口の試験科目の変更、それから受験後におきます。その研修の期間の短縮という重要な内容の変更である。その妥当性については慎重に検討をされなければならぬと考えるものであります。
 我が国の社会経済の急速なる変化は、幾多の新しい法律問題を惹起しております。また、消費者被害、公害被害等、形を変えた人権被害ともいうべき被害も多発をしているわけでございます。
 さらには、行政の不祥事件の多発というのは本当に目に余るものがございます。大蔵省官僚を中心とする汚職事件の続発、不当な官官接待、空出張の横行、食糧費と称する何億もの使途不明金の蓄積というような問題であります。
 これらの事件について、国民のニーズにこたえまして、その紛争を解決し、人権を守る、また行政の不正にメスを入れてこれを正すという使命を有します司法の重要性というのはますます増大をしておると言って過言じゃないわけであります。国民の期待も非常に大きいわけでございます。
 したがいまして、このような司法に対する国民の負託にこたえるように司法を構築するということは、焦眉の急であると言わなければなりません。そのためには、やはり司法の人的、物的施設を早急に拡充強化をするということとともに、これを担うところの法曹、すなわち弁護士、裁判官、検事の質的な向上を図るということが、これは不可欠であるわけです。
 そこで、問題は、今法曹に求められておる資質は何かという点でございます。
 その第一は、主権者である国民の人権を守り、行政の不正を正すという使命を自覚する、民主的な理念というものを有しておる、倫理観を有しておるということであります。そして、この目的を達成するために、いかなる権力、これは国家権力も含めてでありますけれども、これに屈しない不屈の精神を有する法曹が望まれるわけだと考えるものであります。
 そうして、さらには、この使命を果たすために必要な法律的な知識というものを有しており、これを適切に適用、運用し得るということ、また事実の認定に関しても真実を見通す洞察力を兼ね備えるというのが本当の法曹としての実務能力であろうかというふうにも考えるわけであります。
 だから、理念と実務能力を兼ね備えた法曹を養成する必要があるわけです。
 したがって、このような法曹を養成するための養成制度というものは、どうしたらこのような資質を備えた法曹を養成できるかという観点から構築をされなければならぬわけであります。試験科目も修習期間の決定も、かような法曹養成の理念から十分に検討して決定をされなければならぬ、かように考えるわけであります。
 そこで、今回の改正もありますので、まず第一番に、あるべき法曹の姿、それからこれを養成する法曹の理念について、現在の裁判所、法務省はどのような考え方を持っておられるか、まず基本的なところを承りたいわけであります。それじゃ、裁判所の方からお願いいたします。
#6
○堀籠最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、法曹は国民の権利を実現する担い手でありますため、国民の負託にこたえ得るような法曹の養成を行う必要があると私どもも考えておるところでございます。
 そこで、司法修習制度につきましては、現行制度の目的とこの制度がこれまで果たしてきた役割を踏まえまして、法曹三者いずれの道に進む者についても、法曹として国民の負託にこたえ得る水準を充足する統一修習を行うという原則を維持するとともに、時代の要請に適応した法曹養成制度を構築するという観点から、社会に対する広い視野を持ち、高い見識と柔軟な思考力を備えた、二十一世紀を担うにふさわしい法曹を養成する必要があると考えておるところでございます。
#7
○下稲葉国務大臣 お答え申し上げます。
 法曹養成制度を構築するにつきましての委員の御指摘は私も同感でございます。今後、我が国の社会構造の変化、経済情勢の国際化等々、そういうふうなものに対応する法曹の責務というものはいよいよ重要になると思います。
 そこで、司法の機能を充実いたしまして国民の法的ニーズにこたえることは大変大切なことでございますし、そのためには、何よりもやはり法曹自体の質を高めること、そしてまた量をふやすこと、そういうふうな中で、一人一人の司法に携わる人たちが高い見識と広い視野を持って、二十一世紀を担うにふさわしい法曹を養成していくことが私どもとしては必要であると思います。
#8
○福岡委員 どうもありがとうございました。
 基本的には、法曹としての理念というものをしっかりと持ち、やはりそれにふさわしい資質もあるということでというふうにお伺いしまして、心強いというふうに思ったわけであります。
 そのような法曹養成の理念のもとに、今日司法試験科目を先ほどのように変更しなければならなかったというその理由、必要性と、それから司法修習の期間を短縮しておりますけれども、そうしなければならなかった理由、必要性がどこにあるのかということについてお答えをいただきたいというふうに思います。裁判所、法務省、それぞれに所轄の点を承りたいというふうに思います。
#9
○山崎(潮)政府委員 お答え申し上げます。
 まず、司法試験科目の変更についてでございます。
 これを変更するといたしましたのは、新しい司法修習制度の構築と相まって、今後の社会の法的ニーズにこたえることのできる法曹を的確に養成するという観点から見直したものでございます。
 すなわち、その内容といたしましては、法曹の基礎となります憲法と民事、刑事の実体法、手続法の両面につきまして総合的な素養を備える必要がある。不可欠な基本法であります六法、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法でございますけれども、これを確実に修得させまして、これらの科目を司法試験科目の必須科目としたわけでございます。このように、両訴訟法を必須化いたしましたことに伴いまして、受験生の負担、受験の負担、勉強の負担を軽減する観点から法律選択科目を廃止するというふうにしたものでございます。
 それから、修習期間の短縮の理由でございます。
 司法の機能を充実しまして社会の法的ニーズにこたえるために、法曹人口を増加させて、司法試験の合格者を速やかに千名程度に増加させるということは、現下喫緊の課題とされているわけでございます。しかしながら、司法修習制度の不可欠な一翼を担います実務修習につきまして、修習生の受け入れを行う各地方裁判所、検察庁における修習生の受け入れの現状を見ますと、その受け入れ能力はほぼ限界に達しているのが実情でございます。
 そこで、このような現状の人的、物的体制を前提といたしまして、適正な実務修習環境、これを確保し、かつ法曹人口を可及的速やかに増加をさせる。そうしていくためには少なくとも、現在二期分の修習生が同時に実務修習を行っている期間でございます、そのダブりの四カ月間は解消をする必要があるという点が第一点でございます。
 それから第二点といたしまして、法曹三者で検討をいたしたところでございますけれども、時代の要請に適応した法曹養成制度を構築するという観点から見ましても、例えば司法研修所におきます教育を例にとりますと、指導上のノウハウの蓄積がございます。こういうものを活用したり、あるいは時間割り編成の問題、これをいろいろ工夫したり合理化をする一こういうことによりまして効果的、効率的なカリキュラム編成を行うことが可能になるということから、一年六カ月の修習期間で十分に国民の負託にこたえ得る水準を充足しまして、将来を担う法曹にふさわしい人たちを養成することができる、こういう結論に達したということでございます。
#10
○堀籠最高裁判所長官代理者 まず、司法試験法の改正の関係についてお答え申し上げます。
 法曹三者、大学関係者及び学識経験者によって構成されております法曹養成制度等改革協議会では、四年余りにわたりまして協議を重ねまして、法曹三者に意見書を提出いたしましたが、この中で、司法修習制度の抜本的改革に伴い、民事訴訟法及び刑事訴訟法の両訴訟法を司法試験の必須科目とし、口述試験科目の見直しを行うことを内容とする司法試験制度の改革を行うべきであるとする意見が多数を占めていたところでございます。さらに、両訴訟法を必須科目とする場合には、受験者の負担が過重にならないよう十分な配慮を行う必要があるということも指摘されております。
 両訴訟法に関する知識は、法廷実務家の素養として委員御承知のとおり必要不可欠でございますので、それを法曹の入り口の試験である司法試験において必須科目とすることが相当であるというふうに考えられたものと思います。そして、修習生となる者が修習開始前に両訴訟法について基礎的な知識を修得し、それを前提として司法修習を行うことは、司法修習を大学教育と有機的な連携を保った効果的なものとすることができる。また、この観点から、口述試験についても科目編成について見直しを図るのが相当であるというようなところがら、司法試験法の改正がなされたものというふうに理解しております。
 また、修習期間を一年六カ月とする理由は何かという点につきましては、法務省の司法法制調査部長がお答えしたところと同様でございます。
#11
○福岡委員 ありがとうございました。
 民事訴訟法、刑事訴訟法を選択から必須科目にしたという点につきましては、法曹がその使命を果たすために、手続法について十分なる法律的知識を有するということは、これは不可欠なものでありますので、私自身もかねがね必須にすべきだという主張をしていたので、これは十分理解できるというふうに思うわけでございます。
 ただ、問題は、選択科目の全廃という点でございますけれども、現在執行されております選択科目は、行政法、破産法、労働法、国際私法それから国際公法等、主なものはそういうところですけれども、これらの科目というものは、一人前の法曹となって独立をしたときに当然に修得をしなければならない科目であると考えておりますし、大部分の法曹がこれを修得しているわけであります。
 したがって、そのうち一科目だけでも、自分の進路、興味を持っておる科目を受験生時代に修得しておくということは十分に意義のあることでありますし、それから、これはある意味では基本と違いまして、やはり自分の進路に応じてある程度の勉強をするというところでございますので、修習生にとってそれほどの、負担のあるというほどの科目ではない、こういうふうにも考えるわけであります。
 したがいまして、修習生の負担が多いとかなんとかというようなことは、修習生から意見をとっておるわけでも何でもないわけでありますので、私も調べましたけれども具体的な意見があるわけじゃない。そういう検討した資料もないのに、そういうことでこれを削るということは、これらの科目の軽視にもつながってくるおそれもあるということで、やはりこれは見直しをして、ある程度基本的なものにプラスアルファで、また準基本的な法律については、やはり一科目ぐらいは選択してこれを十分に学ぶという機会を与えるべきじゃないかなと。実際にほとんどこの五科目ぐらいはやるわけですから、そのうちの一つは得意科目としてやるということも必要じゃないかなというふうに思っておりますので、これも一遍検討をいただきたいというふうに思います。
 それから、修習期間を二年から一年半に短縮するという件の必要性は、いろいろ御説明がございましたけれども、つまるところ、司法試験の合格者を八百名にし、さらには千名に増加するということによって、司法の容量、人的施設をふやすということ。これによって、現在行われておる修習、裁判所、検察庁の修習、弁護士会の修習も、受け入れ体制が、千名になったらできないというものに備えた修習期間の短縮ということに尽きると思うのでございます。一応、現況のもとでは仕方がないと言われればそれまでみたいなことですけれども、これをよく考えてみますと、目的と手段の関係の問題として、これは本末転倒じゃないかなということです。
 すなわち、修習期間というのはどういうところで決まるかといえば、先ほども私申し上げました、国民の負託にこたえ得る資質を持った法曹を育成するためのカリキュラムというのはどういう内容かということをまず検討して、決定をする、それに最小限必要な期間というのはどれだけかという観点から決定をさるべきものであります。
 したがって、二年間の修習期間というものは、今まで、これはもう四十年以上になりますけれども、これはその間にいろいろ手直しをされたり研究をして、カリキュラムをそれぞれの庁、また弁護士会において努力をしてきたわけであります。私も日弁連の修習委員長をしたことがありますので、やはりその内容についてどうするかということを真剣に討議をしてまいりました。そして、決定をして、二年では少ないぐらいに思っていたわけであります。それにもかかわらず、このような観点からの検討が余りされずに、単純に、人員がふえて、指導者側の受け入れ能力が不足をしておるということで修習の期間を短縮するということは、まさに本末転倒である、また法曹養成の理念にも反すると言わざるを得ないわけでございます。
 だから、一人前の法曹の資質を備える法曹を養成するために二年が必要ならば、それは堅持をする、その上で受け入れ体制の整備について万全の準備を図るというのが本来のあるべき姿ではないかな、こういうふうに思うのですけれども、このような私の見解に対する所見といいますか、それから、八百にふやし、またさらに千名にふやすということについて、受け入れ体制をこういうふうにしたらいいじゃないかとか、具体的に検討するようなことがされたのか、されたとすればどのようなことがそこで話題になって検討されたのかということについて、法務省と裁判所の方にお伺いしたいわけであります。
 これは、弁護士会の方では、ちょっと聞きましたけれども、小さな弁護士会では、非常にたくさん来ると苦慮するけれども、それは何とかしてやりくりしょうという前提では考えていたようでありますけれども、検察庁と裁判所の方はそういった形について果たして検討されているかどうか、御意見をお伺いしたいと思います。
#12
○山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の点についてでございますが、まず、現行の実務修習の修習の理念は、裁判所を例にとりますと、基本的にはマンツーマンシステムで指導していくという体制をとらせていただいているわけです。これが一番実が上がるということでございます。また、検察庁におきましても、やはり指導する検事が大体見られる範囲の人数ということで、マンツーマンシステムに近いところでできる範囲でやろう、こういう理念を採用しているわけでございます。
 そういう観点からいきますと、現在その一番のネックは、例えば東京地方裁判所で考えますと、刑事十五カ部あるようでございますけれども、そこに、裁判官平均三名といたしますと、四十五名の修習生が一時期に修習を受けるということが可能になるわけでございます。今、五十名を一班として、大体基準として考えております。
 これで修習をしていくわけでございますが、もう委員御存じのように、弁護士会あるいは裁判所、刑事裁判、民事裁判、検察と回るわけでございます。これは一年四カ月かかるわけでございます。それで、二期分は、どうしても四カ月はダブるわけでございます。次の修習生が来るわけでございますむそこのところはやはり、指導者の多い弁護士会の方にお願いをいたしまして、二期共通で修習をさせていただいております。
 やはり、裁判所、検察庁の側は、二期分ダブるということは指導体制に問題がございます。それはできない、質の低下を来すということもございまして、一年で必ず回していただかないと、それができないということになります。そこで、現在は、その四カ月分は弁護士会にお願いしまして、残りの一年を三班に分けまして順次回っている、こういう状況にございます。これで、現在もう受け入れ体制は満杯でございます。そういう状況で、全国でいろいろお願いしております。
 もちろん、小さな裁判所、検察庁は別途のやり方をしておりますけれども、大きなところについてはこういう体制でやっております。
 こういう状況の中で、今、現下喫緊の課題として、法曹をふやしていかなければならない、これをどうやっていくかということになるわけでございますけれども、その点につきましては、やはり裁判所、検察庁はどうしても一年を超えることができないわけでございます。その中でふやしていくということになりますと、この一年間で、弁護の実務も含めまして四つに分かれますので、これを四班として四つでぐるぐる回していくという形しか現状としてはないわけでございます。
 それを考えますと、どうしても一つの修習が三カ月ということになりますが、現在東京で三班でございますから百五十名、五十掛ける三でございますけれども、今度は四班になりますので、五十掛ける四、二百、こういう形になるわけでございまして、こういう形で受け入れていこう。
 では、これを大幅にふやせるかという問題でございますが、これは指導する側の問題、指導者の問題、すぐに育つか、それが確保できるか、もちろん物的な問題もいろいろあろうかと思いますけれども、これを待っていてはいつになるかわからない。やはり現下喫緊の課題にきちっと対応していかざるを得ない、こういう選択をやむを得ずしたわけでございます。そういう関係から短縮の問題が起こっているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
#13
○堀籠最高裁判所長官代理者 まず、本来あるべき修習の期間についてのお尋ねに対してお答えいたしたいと思います。
 今回の法曹三者は、これまでの指導上のノウハウを活用し、民事系統それから刑事系統の各科目の中で共通カリキュラム化を推し進めるとともに、むだを排除して有機的な関連性を高めることなどによりまして、効率的なカリキュラムの編成を試み、さらに、司法研修所の施設を活用した班別カリキュラムも行ってより細かな指導をすること、及び多様な法分野に関する講義を取り入れ、多様な法的ニーズの基本的情報を提供するというようなことは、司法修習期間を短縮しながらもできるし、これによって国民の負託にこたえる法曹を養成することができるということが法曹三者の間で合意されたわけでありまして、これに基づいて御提案を申し上げているということでございます。
 それから次に、受け入れ体制の関係でございますが、実務修習における裁判修習の実態につきましては、裁判所においては、裁判実務修習の担当者、指導者に対してさまざまな観点から調査を行ったところでございます。また、司法研修所においては、指導担当者を集めて協議を行うなどの際に、さまざまな角度から実務修習の実情を踏まえた議論を行っております。また、実務修習の受け入れ体制につきましても、指導体制、事件の内容、数その他、さまざまな観点から受け入れ可能数を調査しているところでございます。
 それで、裁判所における実務修習の一番の問題点は、委員御承知のように、裁判所の場合、中規模の裁判所までは、刑事部は一カ部である、民事部は数カ部ございます、そうなりますと、刑事裁判の受け入れ体制というのがおのずから限られてくる。
 司法法制調査部長が申し上げましたように、現在が満杯で、現在のようなマンツーマン方式をとって二期ダブるということであれば、八百人を上回る程度が最大限であるということになっているわけでございます。
#14
○福岡委員 詳細な実情の受け入れ体制問題、それの対応について御回答いただきましてありがとうございました。その点の御努力は十分にわかりますし、そういう努力を引き続き続けていただきたいということをまたお願いをしたいと思うわけであります。
 ただ問題は、短縮をするということについては、やはり本当によほどの絶対な、短縮以外に選択する余地がないんだ、ほかの道はないんだというときのことだろうというふうに思うのです。例えば、マンツーマンということを言われまずけれども、実際に部に何名か配属をする、人員をふやすとかなんとかという形で多少の変更というものはできる余地もあるような気もするわけであります。これはやはり不断にそういった検討をしていただいて、できれば従来ぐらいの修習期間をとっていただきたいなということを要望だけにとどめておきます。
 それから次に、やはりこの修習期間の短縮に伴いまして、法曹養成制度全般についての法曹三者の中で論議されています中に、現行の統一修習制度というものを堅持していくという問題についていろいろ意見交換がなされ、確認をされたというふうに聞いております。したがいまして、現行の修習制度というものについて御質問をしたいわけであります。
 私の理解しておるところによりますと、この修習制度というのは、昭和二十二年に日本国憲法が施行されたことに伴いまして、司法が主権者である国民の人権を守る、行政のチェック作用も与えられるということで、これを担う法曹のいわゆる民主的な感覚というものと、使命というものを果たし得る実務能力の維持というものを目的として検討された制度であると言われていると聞いております。
 戦前の判検事、弁護士を分けた、民官を分けた二元的な制度を改めまして、法曹一元の精神、すなわち、ある程度弁護士経験を積んだ人から裁判官、検察官を選ぶ、こういう制度の精神でありますけれども、こういった精神のもとに法曹三者は国民の権利実現のために一体のものであって、その研修も、裁判官、検察官、弁護士、いずれの道に進む者も全部の分野について十分なプロフェッションとしての業務遂行のできる内容を修得する、こういう制度として発足をした。
 これによって、裁判官も検事も弁護士も、実際には弁護士になろうとする者も裁判官、検事の修習ができますから、裁判官としての法廷の事実の認定の仕方、さらには法の適用の仕方、それから捜査についても検察庁においてある程度学ぶことができる。また実際に、弁護士の事務所において判検事になろうとする人も、市民の一人一人に会って、生の事件について市民の声を聞いて、法的紛争のニーズについて直接聞く、こういうことによって初めて民主的な感覚を持った法曹が育成できる、こういうふうな形になったというふうに思うわけでございます。
 従来からこのような統一制度の理念というものはいろいろと論議をされてきたのでありますけれども、修習の期間の短縮に伴って、短縮をされた分、いわゆる法曹三者それぞれで、裁判官は裁判官としての修習をすればいい、検事は検事の修習をすればいいし、弁護士は弁護士でやればいいのだ、そういうような意見もあるやに聞いているわけですけれども、これは先ほどの憲法の求めておる法曹、あらゆる分野について十分に知識も持ち、民主的な感覚も持つという法曹を育てるという理念からは相反することだというふうに思っております。
 そのような意味で、今回、短縮に伴っていろいろ議論されましたのでしょうけれども、統一修習の理念というもの、これをどう思っておられるのかということと、これを堅持するという三者合意ができておりますけれども、これについては裁判所、法務省ともに絶対な重要要件だとして堅持をされるかどうかという点について、ちょっと御意見を承りたいわけであります。
#15
○下稲葉国務大臣 法曹三者いずれになろうとも、今御指摘のとおり、統一修習という形でやっているわけでございまして、弁護士になる方、裁判官になる方、検察官になる方、やはり一定の期間を将来の法曹を背負って立つ人たちがいろいろな角度で研修されるということはすばらしいことだと思いますし、御指摘のように、三者協議会の協議結果におきましても、「法曹として国民の負託にこたえ得る水準を充足する統一修習を行うとの原則を維持する」というふうなことにもなっております。
 法務省といたしましても、これは非常に重要で大切なことである、これは当然持続していくべきものだ、このように思います。
#16
○堀籠最高裁判所長官代理者 統一修習は、法曹三者のいずれの道に進む者にとりましても、法曹三者のそれぞれの実務と心構えを修得し、かつ、他の立場からの事件の見方を学ぶことによりまして、視野の広さを養い、物事をより客観的かつ公平に見ることができるようにする意義あるものと考えております。このような統一修習は、法曹養成制度の基本であり、質の高い司法を維持し、司法制度運営における法曹三者の平等の地位を保障するための制度であるというふうに私どもも理解しております。
 したがいまして、この制度は今後の法曹養成においても維持されるものと理解しております。
#17
○福岡委員 どうもありがとうございました。
 裁判所それから法務大臣の力強いお言葉でございますので、ぜひともこれは堅持をし、本当のいわゆる法曹の一体感というもの、信頼関係というもの、そして市民のための法曹、そういう立場を堅持するためにも頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。
 そこで、次の問題は、現行の司法修習制度というもの、これが、各現場の実務家、いわゆる指導担当者から見て、今まで述べてきました法曹養成の理念から見て完全なものであるのか、それともやはり問題もあるということなのかという点でございます。
 先ほど法務大臣の方からちょっとお言葉があったと思いますけれども、現行の制度は、前期といって、司法研修所で四カ月間基礎的な法律実務の理論を勉強するわけであります。そして、後、実務修習庁の方に行きまして、民事裁判四カ月、刑事裁判四カ月、検察四カ月、弁護士会四カ月、こういう形で実務修習をいたしまして、そして最後にその総決算的な仕上げの修習を四カ月行って、後期として終わるわけでございます。
 問題は、この実務庁における修習、これは四カ月ずっということであります。この期間が十分であるかどうかということと、十分になされているかどうかという問題であります。
 実際、指導官は、裁判所、検察庁それから弁護士会におきましても本当に真剣に熱意に燃えて皆さん方御指導をされておると思います。実際に私自身が直接携わったのは弁護士会ですけれども、裁判所、検察庁の指導官とも種々協議をしておりました。真剣にやっておられるということは間違いないことでありますけれども、何せ扱うのは、まず基本的な考え方、理念とか、それぞれ検察、裁判所、それから弁護士会でもそれは違うわけですね、多少。だから、基本的な考え方について各庁において御指導をされるという合同修習的なものというものがあるわけであります。
 そのほかに、個別の担当者、先ほどマンツーマンとおっしゃいましたけれども、まさにマンツーマンです。裁判所なら部に所属して、その裁判官についてやるということです。それからまた、検察庁も担当指導官がついて具体的な事件について処理をしていく。現実にそれについて相談をしながらというか、むしろ検討をしながら一緒に処理をしていくことによって、生の生きた事件というものを、国民のため、人権保護のために何がいいか、何が社会正義なのか、法のもとの正義かということを検討していく。こういう修習になるわけであります。したがって、これが一番本当は大事なんですね。弁護士会もそうです。私のところでも十五、六人ぐらい修習生を預かりましてやりましたけれども。
 ただ、生きた事件というのはいつ発生するかわからない、それから適切な事件がなかなかないということもありますし、あらかじめ用意しておいてやっていても、事件の入り口から完結するまでの間にある程度の期間がないと、なかなか全部指導が一貫してできないというようなこともあるわけであります。
 そういうことで苦労してやるわけですけれども、従来の四カ月でも、実際に指導をする担当者の側としては不足で、いいところまでは来たんだけれども、やはり最後の詰めというか、そこまではいけない。まず入り口のところである程度説明をして、中身で実際に、民事だったら訴状を書かせたり答弁書を書かせたりとかということと、考え方なんかのディスカッションをして、それに対するところの立証までしてというような形で、全部一貫してやっていくということになると、なかなかこれもうまくいかないというのが実情だと思うのです。
 まさに、私も何人も預かりましたけれども、実際にはなかなか一貫して十分だというような修習をしたことがないというぐらいに反省しておるぐらいであります。そういうような観点からしますと、今回の短縮というのは非常に問題があるところもあるのですね。
 そうすると、やはり場合によっては、修習生としては何か未完成で、ちょっとのぞいた程度で終わってしまったというような感想を漏らす人もおりますし、指導員としても、どうも十分にできなかったという人が結構多いわけであります。それで修習を終わっちゃいますと一人前の法曹として独立てきるのですよ。具体的な国民からの事件を受けて処理できるという資格になるわけでありますから、重要な国民の人権にかかわるような事件を処理する者としては、修習生が不安を持っておるようなことでもこれは困る、こういうことであるわけであります。
 そこで、問題は、先ほどいろいろと施設の面からは御意見があったわけですね。いろいろ検討して、受け入れの関係から、なかなかこれは修習生がふえたときに現行の四カ月を維持するのは難しいというふうにあったのですけれども、指導担当者の現場の人に、今までの四カ月の修習で、特に実務について十分だというふうに言っていたのか、それともやはり不十分であるという意見が多かったのかというようなことについて、調査をする、分析をするというようなことをされたことがあるかということと、それから修習生についても、これでもって十分実務修習を終えたと言えるほどの修習をしたと言えるのかという、この点の修習生の意見等の集約なんかもしたことがあるかどうか。アンケートのとり方もありましょうし、いろいろな調査の方法はあると思いますけれども、あればお伺いしたいわけであります。
#18
○堀籠最高裁判所長官代理者 委員御指摘の点について、直接的な意識調査を実施したことはございません。
 もっとも、司法研修所の教官は、随時実務修習地の指導官と実務修習の実情に関する意見交換を行っておりますし、実務地の裁判修習の裁判官の意向でありますとか考え方については十分把握しているところでございます。
 また、今回の法曹養成制度の改革問題の検討の過程では、裁判実務修習の実情、その将来のあり方等について、各高等裁判所管内ごとにさまざまな検討をしてもらっておりますし、また、そうした成果を踏まえて、最高裁において事務打ち合わせを持つ等の機会もあったわけでございます。
 そのような検討の結果、裁判所としては、現在提案されているような形で修習を行うことで十分であるという意見が形成されたものでございます。
#19
○山崎(潮)政府委員 検察庁におきましても受け入れ体制の実態調査をしたわけでございますけれども、それに伴いまして、各検察庁に、現在の実態、あるいはこの新しい理念に基づく一年六カ月の修習、これについて御意見を伺っております。その中で、一年六月の修習、実際には現地では四カ月が三カ月になるわけでございますけれども、これについて、支障があるという声はございませんでした。その中でやり方を工夫すれば十分会得させられるという意見でございました。
 また、委員御指摘の、修習生について調査をしたかという点でございますけれども、ちょっと突然の質問で資料はございませんが、三者協としてやったということはございません。ただ、何期の修習生でしたか、いろいろなアンケートをとって、それを集約したものを見た記憶はございます。さまざまな意見に分かれていたという記憶でございます。
#20
○福岡委員 どうもありがとうございました。
 そういった現場の意見というものの反映ということも、非常にこれは貴重な意見が多いわけでありますから、庁全体の都合ということよりもむしろそこら辺のところの意見を十分重視をして、また実際に修習を受けた直後の修習生等の意見も反映をして養成制度を構築するということが必要じゃないかなというふうに思いますので、そういった面の御努力もお願いをしたいというふうに思います。
 それから、先ほど法曹三者の協議の問題が出ましたけれども、三者協議におきまして、修習期間が短縮をされたことに伴いまして、修習の内容やその方法について配慮、工夫を行うという協議内容が合意されているわけでございますが、具体的に、実際に従来の修習の中でどの点をどういうぐあいに改善するのかということ、その協議の内容についてわかっておれば、お教えいただきたいというふうに思います。
#21
○山崎(潮)政府委員 私の方から、まだ具体的な内容については司法研修所の教官会議でいろいろお決めになることでございますが、大枠の考え方という点について御説明をいたします。
 今回の法曹三者の合意書にも盛られておりますけれども、先ほど申し上げましたように、統一修習、この理念は維持するという前提のもとに、やはり今後の法曹といたしまして、時代の要請に適応した養成制度を考える、特に、社会に対する広い視野を持った、また高い見識と柔軟な思考力、こういうものを備えた法曹を養成しようという観点を新たに取り入れていこうということでございます。基本的に建司法研修所におきます前期、後期、今度新しい理念で各三カ月になるわけでございますが、それにつきまして、従来の法律実務に関する指導を一応五科目やるということは基本に据えております。ただ、これも三者協議会でいろいろ議論をされたところでございますけれども、現在の修習はやはり法廷実務というところにかなりウエートがかかって、かなり技術的なものまでも教えるという点が指摘されているわけでございますけれども、その点については、なるべく基本的なものをきちっと理解していただこうというふうに少し重点を変えていこうという点が第一点でございます。
 それで、これが基本になりますけれども、これに加えまして、現実の社会に存在いたします多様な法的ニーズ、こういうものについて基本的な情報をきちっと提供しようということで、幅広い知識とそれからやはり視野、それから興味を持っていただく、こういうふうに指導するという理念を加えます。
 それから、従来からいろいろな点が法曹に対しては指摘がされているわけでございますけれども、法曹としての見識あるいは法曹の倫理、こういうものをきちっと植えつけるような教育をしていきたい、これを重点に加えていくということでございます。
 また、今度各地に散って実務修習を行うわけですけれども、これも、従来の教育に加えまして、法が対象としております社会の実態、実相、これに触れさせる機会を与えるということを加えるつもりでございます。
 例えばということで申し上げますけれども、やはり、今後法曹となる者につきましては、まず世の中のニーズがどういうことであるか実態をきちっと知ってもらおうという点と、それからやはり公共的な精神を養ってもらいたいという理念がございます。これを入れるわけでございますが、前者につきましては、例えば企業、行政官庁、研究機関等への見学、そういうところにどういう法的ニーズが実際にあるのか。それから、法律扶助協会が行う法律相談業務、こういうものにも関与させまして、一般国民にどういう法的なニーズがあるか、こういうことを知ってもらいたい。
 公共的な精神を養うためには、各実務庁でいろいろ御工夫はされると思いますけれども、例えば考えられるということといたして、ボランティア活動に参加させるとかそのほか手話だとか点字だとか、そういうものについても、一定の経験がもし得られるような機会がございましたらなるべくそういうものにも広く目を向けていただきたい、こういう視点を取り入れようというふうに考えているところでございます。
#22
○福岡委員 どうもありがとうございました。
 今、いろいろと基本的な考え方についてお話を伺ったわけであります。私もそれには全面的に賛成であります。限られた期間内においてそういった実際の多様なニーズについて勉強するための直接的な市民との接触やら勉強というのが本当に大切だろうというふうに思いますので、やはりそういった本当の生きた事件を通じての実務修習というものに力点を置いてもらいたいというふうに思うわけでございます。
 そこで次に、やはり法曹三者の合意の関係で、司法修習期間の六カ月短縮に伴いまして、法曹三者、判、検、弁護士全部についても、これは法曹資格を取って任官をした後に三庁会において合同の研修を行うということの合意がなされております。その内容についてはまだ具体的に余り決まってないわけですけれども、その方向づけと、どのような形で実施をしょうとしておるのかということについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
#23
○山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、今回の合意でこの問題が入ったわけでございますが、短縮に伴ってという動機ではないというふうに私は理解しております。やはり、今後のあるべき法曹三者という、その連携それから共通の意識、こういうものはやはり涵養していかなければならないだろうという観点から取り入れようとしたものでございます。
 特に、それぞれの道に進むわけでございますので、それぞれ、生活あるいは物の考え方がだんだん異なってくるのは現実でございます。しかし、それほど時期が経ない間に、一定の経験を持ちながら、共通の話題でお互いに討論したりいろいろなものを聞いたり事例研究をしたりということが、やはり法曹の一体感、それからお互いに高め合う、こういう点で非常に有意義だろうということから取り入れることにしたものでございます。
 具体的には、法曹となってから数年程度経た者が一堂に会しまして、実務の経験を共通のテーマにいたしまして話し合ったりディスカッションしたり、あるいは外部講師をお呼びしたり、そういうことで、そう長くない期間、職業を持って長期間という拘束はなかなかできませんので、一週間程度のことを予想しておりますけれども、一堂に会してやっていこうということでございます。特に、弁護士先生の方は、ある時期にと言われても、なかなか難しいようでございますから、ある年にだめだったら翌年とか、そういうことで、一定の範囲で選んでいただくというようなことも考えているわけでございます。
 いずれにしましても、こういう問題につきましては、法曹三者できちっと進めていかなければなりません。今回、一応合意書ができたわけですけれども、その内容というのですか、それをきちっと詰める段階にはいっておりません。法曹三者でなるべく早く協議はしたいというふうに考えておりますが、合意書の内容といたしましては、今回の新体制、一年六月千名体制、これの三期分の様子を見て、それを土台にして新しいシステムについて構築していこう、こういう合意ができておりまして、いずれにしましても、法曹三者が協力してやる、こういう内容でございます。
#24
○福岡委員 ありがとうございました。
 法曹資格取得後の研修というのは、私も、非常に意義のあることだろうというふうに思っております。
 しかし、その内容、それから実施期間、これが本当に大切だろうと思います。今、内容としてほぼ検討されております、三者によって共同で実施をする、これが本当に大事だろうと思うわけであります。そして、それぞれの分野から講師を出して、しっかりとした、理念も含めた教育をしていくということと、それからもう一つは、やはり参加を義務づけるということも必要だというふうに思うのですね。一週間程度ならば、定期的に、ある程度前もって予告をしておいて実施していくということであります。
 弁護士会では、法曹の理念、特に弁護士の倫理の問題等について、就任をした年とか、それから五年目ごととか、それぞれ義務づけて研修をしておるという制度もあるわけであります。
 したがいまして、不断にそういった意識を持ち続ける、そして、他の分野の問題点やら現在抱えておる法的問題、どう裁判所がこたえているか、検察庁がこたえているか、また弁護士会で取り組んでいるかということを互いに知り合うということも含めて、これは非常に大切だろうというふうに思っておりますので、ぜひともその二点は内容に盛り込んでいただきたいということを要望いたしたいというふうに思います。
 それから、次に、現在の司法試験の合格決定の方法は、三年の優遇枠内の合格者とそれ以外の無制限枠合格者というのに分けまして、そこに合格の点数の格差というものを設けているわけであります。
 通常、これは、法曹三者の中では丙案と言われているようでありますけれども、この案は、合格者の高齢化ということに歯どめをかける、それから、受験回数が多い人がふえてくるということによって司法試験離れが生じておるという現状を打開しようとする目的でこういう格差を設けられた、こう聞いているわけであります。
 しかしながら、入り口の合格のところにおいて差別を設けるということが、平等上、また、公正であるかどうかということも含めて、問題であるわけであります。それから、げた履きの、この優遇枠の人たちに点数を加算することになるわけですね、実質的には、これは四点ぐらい違うそうですけれども。そうすると、これによって質の低下をもたらすということも問題であるわけです。重要な人権を取り扱う法曹の法的知識というものについての低下ということは、非常に重要なことだというふうにも思いますし、また、実態を見ますと、実力がある三年未満の優待枠の合格者にとっては、優待枠の合格だなんというレッテルを張られたくもないというふうにも思うのですね。そういう点からして、これは余り褒めたやり方ではないというふうに思うわけであります。
 したがって、日弁連は、この三者協議の中で、やむを得ずこれについては合意をしたわけですけれども、現在は、合格者を千名にふやしたというときは即時撤廃をせよという提言をしているようであります。
 なぜかというと、千名にすると、これはもっと被害が拡大するのですね。千名にすること自体が質の低下になるわけですよ。我々の司法試験のときには二百八十名ぐらいでしたけれども、それが、今七百になって、千になって、それ自体がそうなっておるのに、また、その中で優遇枠をつけるということになると、これはどうなんだろうかなという、非常に問題があるわけです。要するに、これは司法を担う法曹の資質に関する国民の信頼を失いはしないのかな、これが非常に心配をするところであります。
 したがいまして、ちょっとこの事実、皆さん方、知らない先生方もおみえになるかもしれません。質問の一ですけれども、平成八年と九年、制限枠の合格者の数と、それから、無制限枠の合格者の総数との比率をちょっと教えてください。
#25
○但木政府委員 まず、平成八年度でございますが、これは合格者の数は七百六十八名でございます。うち、制限枠で合格いたしました者の数は二百二十六名でございます。平成九年度につきましては、実合格者の数は七百六十三名であります。うち、制限枠で合格いたしました者は二百二十六人でございます。
 この割合は、約五対二という割合でございます。
#26
○福岡委員 お答えいただきましたその数字で、そうしますと、優遇枠で合格した人、げた履きにしてもらった人が二百二十六名、こういう数字のようですが、この人たちは、無制限枠で五百何人をとって、残った二百二十六名を三年未満の人で拾ったということになるわけですから、実際に、その枠をつけずにこの人たちを全部順位で七百六十八番までに入れた場合に、この二百二十六名中に七百六十八番までに入っておる人は、これは何人ぐらいいるのですか。
#27
○但木政府委員 大変難しいお尋ねでございますが、一種のシミュレーションが必要です。そしてまた、合格点数というものが、一点で何人という数がおるものですから、できるだけ近似値で計算した結果を御報告申し上げます。
 平成八年度の場合、合格枠制がない場合の合格者は、一番近似値をとりますと、七百五十四名となります。その場合には、合格枠制により合格できた者、つまり、合格枠制がなかったら落ちた者ですね、これは百三十四名でございます。
 平成九年度で申しますと、合格枠制がない場合の合格者、近似値をとりますと、七百六十六人となります。このうちで、仮に、合格枠制がなかったならば落ちた者の数は、百四十一人となります。
 これがシミュレーションの結果でございます。
#28
○福岡委員 そうしますと、優遇枠で合格した二百二十六名と言うけれども、優遇枠があったために合格した人は百三十四名ということになると、それを引けば百名弱ぐらいの人ですけれども、これは優遇枠なんかなくても当然受かっておるわけですね。それからまた、やはり、九年も大体、それほど大した数字の差はないわけです。
 そうすると、先ほど私申し上げた、不公正だと言っている、また、優遇枠で合格したと言われているのだけれども、本当はそうじゃなくて、大部分の人は優遇枠なんかでなくて実力で合格しておるもので、それを優遇枠なんと言われては、これは本当に自分のプライドが傷つくということにもなるわけですよ。だから、七百何名ぐらいでこの程度の増加ということだとすると、こんなことは廃止した方が、百三十四人は合格しているけれども、そのうち半数ぐらいは翌年ぐらいには受かると思いますし、これは実際、若い人の増加ということのために失うことの方が大きいと思います一ね。特に法曹というのは公正、平等ということがなければならない、それを入り口のところで失う、こういうふうに考えられると思うのですね。
 それから、もう一つそれに関連して質問したいのですけれども、制限枠合格者とそれから無制限枠合格者のいわゆる最低点の順位ですね、一番から何番、これは何番ぐらいが最低点だということを、これは八年と九年両方、優遇枠の合格者の最低順位。
#29
○但木政府委員 平成八年度、平成九年度ともに千百番台でございました。
#30
○福岡委員 私の調べたところによると、順位は、通しで見て千百六十四と千百七番だったということだと思うのですね、今おっしゃったのは。そうしますと、これは七百七、八十名全部でとっていますから、三百人から四百人ぐらい自分より上位の人がいるのを一番最低の合格者の人が飛ばして合格をしておる、こういうことになるわけですね。これは実質的には五割ぐらい飛ばすことになりますかね、三百四、五十人ぐらい飛ばしてしまうわけですから。そうすると、やはりこの最低点の、救われた五十人か六十人ぐらいの一番終わりがけの人というのは、これはかなり資質的にも問題があるというふうに考えざるを得ないわけであります。
 したがって、先ほど私も言いましたように、この制度が不公正で、特に優遇を受けて入ったというようなコンプレックス的なものも生まれてくるとか、いろいろな弊害があるとすれば、実際に実力のある人は大部分、優遇枠の人でも実力で入れるということと相まって、この制度は、やはり日弁連の言うように、八百名、そして千名というふうに来た場合には、これは廃止をしなければ本当に信頼を失うと思うのですが、この点について、裁判所と法務省の方としては、見直しをするか、廃止をするか、御検討される気持ちがあるかどうか、お尋ねをいたしたいというふうに思います。
#31
○山崎(潮)政府委員 ただいまの御指摘の点、日弁連から強い提案があったわけでございます。最終的に三者で協議をいたしたわけでございますが、その合意書の中で、やはりこの問題をきっかけに、広く法曹選抜のあり方あるいは大学教育等のあり方、こういう問題も含めてきちっとした議論をしていこうということを約束したわけでございます。本来は、これは以前の法曹三者の合意で、平成十二年度の試験終了後に、存続させるか、撤廃するか、その他の方法をとるか協議をしょうということになっていたわけでございますが、それを前倒しいたしまして、なるべく速やかに、検証を続けながら、どうあるべきかの議論をしていこうということでございます。
 現在、法務省といたしましては、この合格枠制をあれしまして、相当な若返り等が図られているわけでございますし、また、受験生も、本年、申請者は史上最大になっているわけでございます。学生間にも一定の期待、あるいは学校にもそういうものもあるわけでございます。平成八年から導入したわけでございまして、これを直ちに撤廃するということは、やはり、そういう受験生の期待、大学の期待等を考えますと、それは制度としては無理であろう、しかしながらその検証を続けながらきちっとした議論はしていきたいということでございます。
#32
○堀籠最高裁判所長官代理者 丙案につきましては、日弁連の方から提案のありました平成十二年度限りでの廃止ということを協議の対象にすることを含めまして、法曹選抜、法曹養成のあり方について広く検討するという姿勢で協議に臨みたいと考えているところでございます。
#33
○福岡委員 十分検討はしていただけるようでありますけれども、これは、先ほど申し上げたような弊害が非常に大きいということ、さらに千名になればそれが拡大をするということもあるわけでございますので、早急な検討に入っていただきたいというふうに思います。
 それに、もう一つこの制度で問題でありますのは、確かに若い人を合格させるということはそれなりに意味のあることかもしれません。しかしながら、本当にいい法曹というのは何かという、先ほどの法曹のあるべき姿というものから見ますと、一たん就職をした、他の道を選んだけれども、そこで法律の世界に関与することによって、やはりそれを、自分が今まで学んできた、またいろいろな形で活動してきた、社会の諸悪とそれからまた不正義というものと戦うという法曹にあこがれて転向してくる人がいるのですね。結構有能な、そういう民主的な、法曹の求めておるまさに社会正義を実現しようと思って転向してくる人たちがいるわけですけれども、この人たちは働きながらということで二回や三回で合格ができないかもしれないけれども、その人たちの道を閉ざすということと、そもそも三回で切るということについての合理性もないと考えるわけであります。
 さような意味で、この制度は、先ほども言いましたように、司法の信頼を回復するためにもやはり早急に廃止の協議というものをしていただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。
 時間が参りましたので、最後にそれをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。
#34
○笹川委員長 枝野幸男君。
#35
○枝野委員 民主党の枝野でございます。
 争点がある程度は限られている法案でございますので、重複する部分もあろうかと思いますが、まずは裁判所法の修習期間の短縮問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 今、福岡先生の質問などにもありましたように、合格者の数は、福岡先生の時代は三百人弱、私の時代で五百人、今は八百人。単純には言えないと思いますけれども、合格者の数がふえているということは、それだけ楽に入れるという言い方が正しいかどうかは別問題として、その合格者の水準については、若干懐疑的にとらえなければならないようになってきていると思います。そうした中で、特に司法に対するニーズが非常に強まり、多様化をしているというのも否定できない事実であります。国際関係の問題あるいは特許などの問題、そして、社会全体が今までの事前指導型の社会からルールに基づいた事後チェック型の社会へと転換をしていかなければならないという流れの中で、司法全体に求められている質の高さというものはますます強まっているというふうに思います。
 そうだとすると、合格者もふえ、司法に対するニーズが高まっているという中では、合格者がしっかりとしたトレーニングを経た上で実際の司法の実務についてもらいたいという社会全体のニーズがあると言えると思います。そうだとすると、当然のことながら修習期間はむしろ延ばすというのならばよくわかりますけれども、そうした中で短縮をするということの意味は、今司法に求められている状況や司法試験の合格者の数の状況から見れば逆行であるというふうに常識的には考えられます。
 そうした視点を踏まえて、改めて、なぜ短縮をしなければならないのか、御回答をお願いいたします。
#36
○堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 司法の機能を充実し、社会の法的ニーズにこたえるため、法曹人口を速やかに増加させていくことが現下の喫緊の課題とされているところでございます。
 そして、司法修習制度につきましては、現行制度の目的とその制度がこれまで果たしてきた役割を踏まえまして、法曹三者いずれの道に進む者についても、法曹として国民の負託にこたえ得る水準を充足する統一修習を行うとの原則を維持するとともに、時代の要請に適応した法曹養成制度を構築するとの観点から、社会に対する広い視野を持ち、高い見識と柔軟な思考力を備えた二十一世紀を担うにふさわしい法曹を養成するための配慮と工夫を行う必要があると考えられているところでございます。
 このような観点に立ちまして、現下の喫緊の課題にこたえるための新たな修習制度というものを法曹三者が検討いたしましたところ、これまでの修習上のノウハウの活用、科目間の重複の回避、時間割り編成の工夫などによりまして、効率的、効果的なカリキュラムの編成を行うことが可能であることなどからいたしまして、一年六カ月の修習期間で十分に国民の負託にこたえ得る水準を充足し、時代の要請に適応した法曹養成を行うことができるという点に法曹三者の意見が一致したわけでございまして、したがいまして、一年六カ月に短縮してもいいのではないかと考えたわけでございます。
#37
○枝野委員 今の御答弁、二点ほど問題があるんですが、まず一点として、今のような御答弁ですと、要するに今までの修習は水増しだったということになるわけですね。
#38
○堀籠最高裁判所長官代理者 今までの修習が水増しであったというふうに考えるわけではありませんが、法曹三者がいろいろ知恵を出し合って、これまでの指導のノウハウの活用等工夫をすれば、一年六カ月の修習期間であっても国民の負託にこたえ得る法曹を養成することが可能であるという結論に達したわけでありまして、したがって、一年六カ月の司法修習期間ではどうであろうかというふうにして提案しているというわけでございます。
#39
○枝野委員 今までのノウハウを生かしたり云々というのは、司法研修所の教官の先生方は日々やってきたんじゃないんですか。今までやってこなかったんですか。今までの修習のノウハウを生かしていかに効率的にしっかりとした法曹養成をするかということは、今までもずっと積み重ねてきたんじゃないんですか。今までやっていなかったんですか。
#40
○堀籠最高裁判所長官代理者 今までも修習の過程でいろいろ工夫をしてきたことはそのとおりでございますが、さらにこれまでのやってきたことについて工夫を加えれば、司法研修所における前期の修習期間四カ月を三カ月に短縮したとしても十分国民の負託にこたえ得る法曹の養成が可能であるという結論に達したというわけでございます。
#41
○枝野委員 あともう一つ問題点があるんですが、合格者がふえている、合格者がふえているということは、長い目で見たときにはどうなるかいろんな見方がありますが、短期で見たときには、間違いなく合格者の少なくとも司法試験の答案を書く能力という意味での水準が下がっているのは間違いないわけですね。そうした中で期間を短縮した場合の影響、逆に言えば合格者をふやしてどれぐらいの水準の合格者が入ってくるのか。それで、その合格者について修習が終わった段階で従来の水準以上のものにするのにはどれぐらいのトレーニングが要るのかということについてのノウハウの蓄積、水準の蓄積というのは既にあるんですか。
#42
○堀籠最高裁判所長官代理者 丙案の実施による司法修習生は昨年度から採用され現に司法修習をやっているわけでございます。その丙案によって合格した人を含む現在の司法修習生について、従来の枠がない時代あるいは五百人時代に合格した人と比較してどうかという問題になろうかと思いますが、司法研修所の教官の話によりますと、合格者がふえたことによって司法修習生の能力が落ちるというようなことにはなっていないというふうに報告を受けているところでございます。
#43
○枝野委員 非常にお立場はよくわかるんですが、今の御回答だと、逆に言うと今の司法試験がおかしなことをやっているということですよ。五百番までしかとっていない場合と千何番までとった場合とで水準が変わらないんだったら、試験自体が不合理だということになりませんか。
#44
○堀籠最高裁判所長官代理者 試験の場合、合格点をどこで切るかという問題があるわけでございますが、現在のところは七百五十名ぐらいのところでございますが、その時点ではそれほど質的な差はないというふうに司法研修所の教官の意見を聞いているところでございまして、恐らく、合格者が千人にふえたということになった場合どうかという問題がありますが、若く、法曹に適した人がたくさん受けるというようなことになりますと、質の維持ということは可能ではないだろうかというふうに考えているところでございます。
#45
○枝野委員 常識的には、そうやって試験の制度を変えて合格者の数がふえて、そうした場合には水準が落ちないかどうかというのを検証して、その上で期間を短くできますねとかという話というのが普通は物事の順番ですよ。それを一緒にやろうとするからいろいろとややこしくなるんですよ。まずは合格者の数をふやすならふやすで、どれぐらいの水準でやれるのか、五年なら五年ぐらいやってみて、余り変わっていない、今までの修習の仕組みでも大丈夫だ、そうすると、修習の仕組みの合理化の中でいろんな工夫をすれば半年短くできますねとかという話が初めて出てくるんじゃないかというのが普通の考え方だと思うんです。
 それだけにこだわってやっていてもしようがないので、もう一点、先ほどの最初の方の答弁の中で、法曹人口をふやさなければならないということが修習期間短縮の議論の中の一番最初の出発点にあるようなんですが、法曹人口をふやさなきゃならない、修習生の数をふやさなきゃならない、合格者の数をふやさなきゃならないということと、修習期間を短縮するという話はどう結びつくんですか。
#46
○堀籠最高裁判所長官代理者 一つは、実務修習期間において二つの期がダブつた場合には受け入れ体制の問題があるというのは司法修習をやる場合の問題である、大幅にふやすためにはどうしても、実務修習の期間をダブらせるということになると、現在のような質を保った実務修習を行うことは困難になる、そういう関係にあるわけでございます。
#47
○枝野委員 そうした視点から、今回の修習制度短縮によって実務修習の期間を今までの一年四月から一年に短くされますね。その部分のところは確かに重なりがある。二期同じ裁判所にいたりするとそれはなかなか大変だというのはわからないではありません。では、実務修習期間はその分四カ月減らしましょうというところまではまだわかります。四カ月減らすと各修習が一カ月ずつ減るわけですね。だとすると、それをやる以上は当然のことながら、そのことによってどれぐらい修習の質が下がるか下がらないかまずはやってみよう。
 つまり、前期修習や後期修習については、現状を維持するとか、あるいは、むしろその実務修習が短くなる分について、前期修習や後期修習でどういつだフォローができるか、その足りなくなった部分をどうやって補えるかということのために、むしろふやそうと考えるのが私は常識的な考え方だと思います。実務修習を短くしなければならないのはよくわかります。そうしたら二年間にして、前期六カ月にして後期六カ月にして実務修習を一年間にしたら、これは二期の間が同じ裁判所なりで重なったりしません。どうしてこういうことを考えなかったのですか。
#48
○堀籠最高裁判所長官代理者 まず、実務修習期間を四カ月から各庁会について三カ月に減らすことにつきましては、裁判所の関係では、指導担当者の意見等を聞いて、これでも十分やっていけるという意見を踏まえたものでございます。それから、前期、後期の関係につきましては、現在行われております前期、後期の集中研修につきまして、いろいろなノウハウの蓄積、工夫をすれば各三カ月であっても従来と同様の質を保った修習ができるということでありますので、そうであれば、全体で一年六カ月であってもこれは国民の負託にこたえ得る法曹を養成することが可能ではないかというふうに考えたものでございます。
#49
○枝野委員 いいですか、正確にお聞きいただいて、正確にお答えください。
 実務修習について、一年四月を一年にしなければならないだろう、それは現場の事情というのはよくわかります。だとしたら、普通そのときに考えるのは、実務修習は重なってしまうとややこしいので一年に短くするにしても、前期修習、後期修習については、その実務修習の事情、重なってしまうと現場がもたないという事情だけ、事情をまず考えるのであるならば、そこで減るわけですから、それは影響ないだろうということは言えるかもしれないけれども、推測はつくかもしれないけれども、普通は、とりあえず前期と後期については、現状を維持するか、むしろ少しふやしておいて穴を埋めましょうと。思考回路としてはこういうふうに考えるのが普通じゃないですか。そういうことは考えなかったのですか。
#50
○堀籠最高裁判所長官代理者 その点につきましては、これまでの指導上のノウハウの活用でありますとか、科目間の重複の回避、時間割り編成の工夫などにより、効率的、効果的なカリキュラムを編成すれば、前期三カ月、後期三カ月であっても十分国民の負託にこたえ得る修習ができるということでありますので、現在の三カ月というものをあえて倍の六カ月にするまでの必要はないのではないかというふうに考えたものでございます。
#51
○枝野委員 事前に通告した順番とちょっと変わりますが、そこはお許しください。
 もう一方で、司法試験の受験科目を変えますね。そのことによって、行政法や労働法を司法試験のために勉強して受かってくる人間はだれもいなくなるわけです。場合によっては、一度も行政法も労働法も破産法も勉強したことないということで司法試験にみんな受かってくるわけですね。
 それで、例えば行政法だなんというのは、行政事件訴訟の手続とかそこに対する理論とかというものは、例えば民法や刑法あるいは民訴法や刑事訴訟法などとかなり違った理念というか原理があるわけですね。労働法なんかにもそういうことが言えると思います。私は国際私法でしたが、全然違う思想というか哲学に基づいている法体系ですね。こういったものを勉強してきた人間が、もしくはこういったものを全然勉強しなくても司法試験に受かってみんな来るようになるわけですね。そういったことによる穴を埋めなければいけないという思考はございませんか。
#52
○堀籠最高裁判所長官代理者 現在、司法研修所の前期における研修におきましては、民訴、刑訴の両方を受けて合格する人が約一割しかいないということで、前期におきましては、民事訴訟法の補講、刑事訴訟法の補講というものにかなり力を入れているわけでありますが、今回提案しておりますように、両訴訟法が必修ということになりますと、その部分は省くことが可能になろうかと思います。
 司法研修所といたしましては、法曹三者の合意を受けまして、現実の社会に存在する多様な法的ニーズにこたえ得る素養を身につけさせるために、基本的情報を提供するということから、行政法であるとかあるいは労働法についての基礎的な教養を身につけさせるということは、現在検討中でございます。
 なお、現在、司法研修所に現に合格して入ってくる修習生の中で、行政法あるいは労働法を選択しているのは六、七%ぐらいであるというふうに聞いております。
#53
○枝野委員 確かに行政法や労働法の履修、試験科目として履修してきている人の数が少ないのはよく知っています。だからといって、そういった人が、ゼロになるのと、数%ずつでもいるというのは、そういった人たちが毎年毎年蓄積されて法曹の三者に分かれていくわけですから、これは僕はやはり意味が違うのだと思うのです。全員が同じ科目しかやっていなくてそれ以外の多様な科目についてはやっているかどうか全然わからないというのと、それから、少数ずつかもしれないけれども必ずいる、毎期、行政法に詳しい人がいる、労働法に詳しい人がいるというのは、やはりちょっと意味が違うのだろうと私は思います。
 そうした中で、そういったものを外す以上は、せめて研修所の中でしっかりとその部分についてのフォローアップをしなければいけないだろう。しかも行政法、まあ行政法試験、受験者が少ないのはよくわかります。教科書が物すごく厚いです。勉強しなければならないことはたくさんあります。大学の授業だって、大学の単位ですら、行政法の単位だなんというのは、四単位の大学はほとんどないのじゃないか、少なくとも六単位、八単位。行政法をちゃんとやろうと思ったら、つまり、ある意味では、ゼロから勉強しようと思ったら相当なエネルギーが要る科目じゃないかなというふうに思います。
 そうしたことを本当に試験の科目から外して、研修所でベースはきちんとやりますということを検討されたとしても、前期三カ月、後期三カ月ぐらいのところで、ほかのこともさんざんやることがある、裁判の、実際実務にかかわるような勉強を基本的にはたくさんやらなければならない中でつけ足しみたいにやって、本当にそういった基礎的な素養がつくのかどうかということはかなり疑問であるというふうに申し上げておきたいと思います。
 若干話が飛びますが、先ほどから何度も出てきていますので、この点、御指摘をしておきたいと思いますが、法曹三者で合意をされたということを何度も繰り返されております。法曹三者である程度のコンセンサスがないものを強引に進めていくということが果たしていいのかどうか。特に利害関係が裁判所と検察庁と弁護士では違いますから、この三者の間で全然意見が違っているということについて、そういった制度を進めていくということは、かなり国会としては慎重にならなければならないことはあるだろうと思います。
 しかし、逆に、法曹以外のところがら見れば、内部社会、内側の社会の三者が一致をしたということは、場合によっては必要条件にはなるかもしれない、でも、十分条件には全然ならないというふうに僕は思うのですが、どうですか。
#54
○堀籠最高裁判所長官代理者 法曹三者の合意というのは、委員御指摘のように、必要条件であろうと思います。
 それで、私どもは、この合意した内容でもって国民の負託にこたえ得る法曹の養成を行うに十分であるということで、十分な内容について御説明申し上げているという関係に至っているわけでございます。
#55
○枝野委員 その法曹三者の合意自体も、最高裁は当事者でいらっしゃるわけですから、そこで最高裁がそういうお立場だとよくわかっているので、ですから、今申し上げたのは、三者で合意をしたからというのが、このことを正当化するような理由としておっしゃられるのは、ちょっと違うのじゃないでしょうか。法曹三者で合意をした、必要条件は満たした、それが本当に法曹以外の社会としていいと思うかどうかというのがこれからの判断なので、それはなぜ法曹三者でそれでいいと合意をしたのかということを御説明いただくのがこの場であって、法曹三者で合意をしたということをここでおっしゃることは余り意味がないのじゃないかなというふうに申し上げておきたいと思います。
 本題に戻りますが、労働法や行政法の勉強なども考えると、私は、基本的には、将来にわたって二年間絶対維持しなければならないのだなんということを申し上げるつもりはありません。短くて済むのだったら短くする方がいいに決まっています。
 だけれども、先ほど申し上げた合格者増によって水準がどうなっているのか、それは直観的に現場の研修所の先生方がどうお考えになっているかというよりも、その人たちが実際実務に出て、裁判官五年やる、弁護士五年やる、そういったものまで見ていかないと、実際に実務家の養成ですから、ペーパーテストの成績がよかったり起案の成績がよかったりすること全然意味がないわけですから、ある意味では。そういったところまで見た上で、ああ、これだったら今までのと基本的には変わらないなとかと、初めて結論が出るのじゃないですか。それから、試験科目の変更についての、行政法とか労働法とか、かなり幅広く知っていていただく人がしっかりと何人かはいてもらわなきやならない科目について、研修所でどれぐらい教育ができてどれぐらい成果が上がるのか、そういったこともろもろ見た上で、それで、短くするというのだったら短くすればいいというふうに思うのです。
 結局は、予算上の問題、金がないということでないか。つまり、合格者の数を、僕らのころ五百人だったわけですから、五百人が千人になれば、修習生には、あれは何といいましたか、歳費という言い方じゃなかったと思いますが、いわゆる毎月給料みたいなものが出ます。それは当然倍になります。それから、何やかんやのもろもろのお金も倍になるのでしょう。修習生一人当たり、全体で一つあればいいという部分もありますから単純に倍になるわけではないでしょうが、そういった部分は倍になるのでしょう。倍になるのもたくさんあるでしょう。結局は、そういったところの予算措置がとれるとれないということに私は行き着くのではないか。予算がしっかりとれるのだったら、二年間丸々やってもらっても、別に最高裁として困ることは基本的にはないのじゃないかなというふうに思うわけです。
 それと関連して、財政法の十七条では、最高裁判所の歳入歳出については見積書類を作製して内閣に送付をするということになっています。内閣がこの歳出を減額した場合には、そのことを予算に付記をして国会へ提出しなきゃならないということに財政法の十九条でなっています。こういった手続に至ったことというのは、過去、最高裁ができてからございますか。
#56
○竹崎最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 いわゆる二重予算手続がとられた例があるかというお尋ねでございますが、昭和二十七年度の予算におきまして、裁判所の要求いたしました営繕費について、裁判所の要求と内閣の決定との間に相当大きな隔たりがございました。調整がつかなかった結果、財政法十九条の二重予算の手続がとられた例がございます。ただ、このときには、ちょっと詳細はつまびらかではございませんが、その後、裁判所と財政当局との間に意見の調整が行われまして、裁判所の方がもとの要求を撤回いたしまして、二重予算の状態というのが事実上消滅した、こういう状態になっております。
#57
○枝野委員 ということは、こういった制度がありながら、最高裁と内閣との意見の違いについて国会が判断をしたというケースはないという理解でよろしいですね。
#58
○竹崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、最終的にはそこまで至らないままに終結した、こういうことでございます。
#59
○枝野委員 これは、最高裁の事務総局の皆さんも多分研修所の先輩ばかりなのだろうと思うので、法律論争、余り深入りするのはやりにくいのですが、これは財政法の趣旨に反しているのじゃないでしょうか。財政法には、最高裁事務総局と内閣との間で事前調整をしてずれがないようにするだなどという規定、どこにも書いてありませんね。内閣に対して、十七条一項で、見積もりの書類を作製して、内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付をしなければならないということを書いてあるわけです。それで、それに基づいて、その次出てくるのは、もしも減額をしたときにはそのことを付記して国会へ出さなきゃならない。
 最高裁は、最高裁の見識で自分たちの必要とする予算について、内閣に対して、国会に予算案を出すのは内閣ですから、国会を通じて出せと言って、内閣がそれをそのとおりだと思って出すか、いや、ほかの事情もあるからここは減らしたいのだと言って出すか、それは、内閣は内閣の判断で、その上で、どっちが正しいか、三権分立なわけですから国会が判断しますよ、これが三権分立のもとにおけるこの財政法の趣旨ではありませんか。事前に、予算の議決権を持っている国会をほったらかして、内閣と最高裁との間で調整をしてしまうというのは、財政法の趣旨に反していませんか。
#60
○竹崎最高裁判所長官代理者 必ずしもそのようには考えておりませんで、予算の要求というのは、もちろん私ども必要な予算を要求するわけでございますが、何分数字でございますから幅のある概念でございます。内閣は、いわば国全体の観点からそれを総合的に調整するわけでございまして、その総合的な調整の結果について、裁判所が当初の要求と数学的に違う点があったとしても、直ちにそれが二重予算権の問題にはつながらない、このように理解しております。
#61
○枝野委員 僕は、そのあたりのところが最高裁としてはしっかりと筋を通していただいた方がいいと思うのですよね。やはり内閣のもとにある各省庁は、行政府として歳入全体のことをいろいろ考えながら予算要求をして、うちは削らなきゃならないなとかという調整の中で削っていくというのはよくわかります。しかしながら、最高裁は内閣のもとにある機関ではないのですよ。内閣と横並びの機関なんですよ。
 そこのところで、予算としては、きちんとした司法を行うためには、例えばこういう人数が要りますとか、こういう設備が要ります、こういう備品が要ります、将来の裁判官を育てるためにこういう研修をしなきやなりませんということを、これが必要なのだと思ったら、それを最終的に裁判所だけで決めるわけにいきませんから、うまいぐあいに三権分立なので、内閣の方では、減らせ、減らしてもらわないと困るという意見を言ってもらい、その上で国会でどっちが正しいと思うか判断をする、こういう機会をむしろ国会としては与えていただいた方がわかりやすい。もし初めから、内閣から減らしてくれよと言われて減らせるような要求だったら、本来必要ない要求じゃないかという話になりますよ。そう思いませんか。
#62
○竹崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもは、予算要求します際には必要な要求をいたしますけれども、必要な要求というのは数学的に全く調整の余地がないというものではございませんで、財政法の制定の当初からこのような解釈がとられているというふうに理解しております。
#63
○枝野委員 最初に法律論みたいな話をしてしまいましたから、そういうお答えもあるかもしれませんが、そもそも、あるべきあり方論、特に、今最高裁、司法の充実ということが求められている時代の中で、確かに大蔵省のサイド、財政当局サイドは、今はいろいろ歳出削減していかなきやならない時期です。それは我々も求めています。しかし、そのことに、最高裁が変な折衝の中で、行政府の当局である大蔵省と司法の立場である裁判所が予算折衝をするということ自体が、これはある意味ではちょっとおかしいのじゃないか。
 それで、これは週刊誌的な言い方でありますが、法務省などもよく言われていますけれども、大蔵省が予算握っているから、大蔵省には検察庁も手を入れにくいのじゃないかなどとずっと長年言われ続けてきて、今回手を入れていただいたので、このまま妥協しないでいっていただければ、そういった不信は払拭されるでしょうが、しかし、大蔵省がやっていることは間違いだとかということ、場合によっては裁判所というのは判決出さなきゃならない立場ですよ。そこが、最高裁と大蔵省とで予算折衝をして、事前に調整をして、妥協をしたり要求をしたりとかやっているということ自体、ある意味では、部外の第三者から見たら、最高裁も予算で大蔵省に縛られているのですねという見方をされるというふうには思いませんか。
#64
○竹崎最高裁判所長官代理者 立法論としての御指摘であるということならば、私どもとして意見を申し上げるわけにはいかないわけでございますが、解釈論としては先ほど申し上げたとおりでございまして、かつ、私どもは、個々の予算折衝を行います際にも、基本的に言うならば、その要求というのがいかに合理的なものであるかということについて十分理解を得るように努めておるところでございますし、かつ、その折衝に当たりましては、先ほど申し上げましたような二重予算の制度があるということも十分認識した上で折衝しておるところでございます。
#65
○枝野委員 水かけ論やっていてもしようがないですから、そういった折衝をしてやるということについてはおかしいという指摘をしておきたいというふうに思います。
 そういったことともかかわるのですが、平成八年度に最高裁は定員削減計画を策定しましたね。これはなぜこんなもの策定したのですか。
#66
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 委員御指摘の定員削減計画でございますが、これは、具体的に言いますと、第九次の定員削減計画に対する裁判所が協力をするということに関しての御質問だというふうに伺います。
 裁判所は、行政機関でございませんので、政府の定員削減計画に直ちに拘束されるわけでないことは委員も御承知のとおりでございますが、国家機関として、事務の性質が他の行政官庁と類似する事務局部門につきましては、他官庁と同様の行政事務を行っているということから、こうした事務局部門に限って削減計画に協力をするということにしたものでございます。
#67
○枝野委員 これは御存じだと思いますけれども、行政庁の定員削減計画も、この削減計画で削減したものでそっくり公務員の総定数が減っているわけではないのです。平成九年度からの定員管理の計画を立てたときはまだ与党でしたので、さんざん総務庁ともやり合いましたけれども、そのときの趣旨としては、要するに、削減をする、各役所から無理やり毎年出させる。そこでキープをした数字があって、そのうちの一部は、実際にトータルの数が減る部分に回す。残りの部分というのは、各省庁から出させておいて、それをキープの分として、必要なところに振り分けていく。そういった意味を持たせているのだということを総務庁から聞いています。
 最高裁の場合は、そういったキープして減らすとかいうのと全然違うのです。確かに、行政府の方で、こういった時代ですから、特に事務方の経費を削減して人を減らしていくということについて、最高裁としても協力をしていきましょうという趣旨自体はわからないではないのですが、なぜ、同じ時期に、同じような年限の、同じような計画を立てて減らしていかなければならないのかということは、私はあのときにも申し上げましたけれども、さっぱり私にはわからない。実際に最高裁の裁判所職員の総数を減らしているのだったらわかるのですよ。実際には、その毎年の計画に基づいて、何人か減らして、何人かふやしてなんということをやっているわけですよ。だとしたら、全く、要するに行政庁に対するおつき合いですよ。
 裁判所としては、行政府がやっているように、毎年減らしていくということについてはしっかりやります。毎年毎年減らすべきところは減らして、ここのところで減らして、ここのところでふやして、トータルで結果的にプラス・マイナスこうですという話だけやっていればいいので、そこはまさに、やはり行政府と司法府は違うのですから、そこはしっかりと分けてやらないと、行政府におつき合いをしているように国民の目からは見えませんかというふうに思うのですが、いかがですか。
#68
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 裁判所におきましては、委員御案内のとおり、事務局部門と裁判所の裁判部門というのがございまして、そのうちの事務局部門につきましては、他の行政官庁と同様の行政事務があるということでございますので、これは国家機関として裁判所だけが定員削減に協力しないというわけにいきませんので、事務の効率化等必要な内部努力を行った上で定員削減に協力する、その必要があるというふうに考えているわけでございます。
 ただ一方、その定員削減につきましても、内閣全体の削減数とか削減率などを見ながら、事務の効率化による削減可能数を裁判所として自主的に考慮して、裁判所として相当と判断した人員について協力をするということにいたしているわけでございます。
 また他方、先ほど申し上げましたが、事務局部門とは別に、裁判所におきましては裁判部門があるわけでございまして、これは裁判所の本来の仕事の場でございます。これは定員削減計画の対象とはしないということでやりまして、むしろ、必要な人員については、事件動向等を踏まえまして、適正迅速な裁判の実現のために着実に増員を図る努力をしてきてまいっているということでございます。
#69
○枝野委員 では、一点だけ答えてください。
 この削減計画を立てるときに、総務庁と御相談していませんね。
#70
○浜野最高裁判所長官代理者 委員御案内のとおり、裁判所は内閣の傘下にあるというわけでございませんので、総務庁と調整、意見交換をしておりません。
#71
○枝野委員 それでは、その裁判官の増員の話とも関係したところを一点お伺いしておきたいのですが、最近、どこから最近と言うかによって、二百八十人という話までありましたので、例えば五百人という時代がかなり長かったですから、五百人の時代から、最近、七百、八百と合格者の数がふえています。司法研修所を出る人の数もそれに応じてふえています。それに応じた、つまり、例えば合格者の数が五百人から七百人になるということは、一・四倍になっています。その一・四倍に合格者がふえた修習生が出るときには、裁判官の採用数も一・四倍になっていますか。
#72
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 委員がお尋ねの裁判官の増員でございますが、これは給源の問題としての司法研修所の卒業生の数ということが増員の数の算定の基礎になるわけじゃございませんで、あくまでも第一次的には事件数の動向、これが裁判所のいわば仕事の量でございます。ですから、この事件数といいますか、仕事の量のふえ方、これがどれだけ必要な人員が出てくるのかということで決まるわけでございます。
 ただ、委員御指摘の給源の問題はないわけじゃございませんで、給源の状況が増員の一つの制約要因になっているわけでございます。これは、事件数あるいは仕事の量によって増員の数が決まって、お認めいただいた場合に、その充員ができませんとむだな定員になってしまうという観点から、仕事量によって増員数を決めたものについてちゃんと充員ができるという観点から、やはり給源の問題が増員の一つの要件になっているという観点で給源の問題が出てくるわけでございます。
 したがいまして、司法試験の合格者がふえて給源の状況が改善するということが直ちに、委員御指摘の比率の問題として、裁判官の増員の拡大に同じ比率でつながっていくというものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
 もっとも、大局的に見ますと、昨今では、やはり司法試験の合格者が増加したこともありまして、そういう意味では給源の母数の拡大によって、ここ数年、九十名から百名の間の裁判官の採用ができるようになりまして、増員の制約条件となっておりました給源の状況がおかげさまで改善が見られております。そういう意味では、事件数の動向に応じて、平成五年から平成九年までの五年間で六十四人の裁判官を増員し、さらに平成十年度も二十名の増員ができるようになっているということでございまして、そういう大局的な観点からは、委員御指摘のとおりになっているというふうに考えておるわけでございます。
#73
○枝野委員 最後に大局的にはという話はありましたが、基本的には、合格者の数をふやしたことによって裁判官の採用数をふやしてないというのが前半のお話なわけで、そこらと、私は、今回の、例えば司法修習期間の短縮についても、合格者の数をふやさなければならない、ニーズにこたえるためにはという話と全く矛盾すると思うのですよ。
 確かに弁護士の数も足りないと思います。私も弁護士ですが、これはどんどんふやしたらいいと思います。競争をしっかり激しくして、能力がない弁護士は食えないというようなところの競争にしなければいけないと思います。しかし、その条件、前提としてあるのは、今裁判が長過ぎる。裁判が長いことについては弁護士の側にもかなり責任があると思いますが、基本的に、裁判官が抱えている事件数は、今の水準をベースにして事件数がふえた減ったじゃなくて、今の一人当たり抱えている事件数を大幅に減らさないと、裁判の期間が大幅には短縮できるわけはありませんよ。
 こうした中で、弁護士の数だけふえる、つまり、合格者の数に比例して裁判官や検察官がふえたりしないで、弁護士の数だけふえていくとどういうことになるか。競争だけ過当になります。競争だけ過当になって、裁判の短縮というのはなかなか進みません。
 何が起こりますか。弁護士は、長期間かかっても金になる都合のいい事件だけどんどん受けて、食うように何とかしなければならないという話になっていって、なおかつ、そういった事件ばかり裁判所に持っていかれて、本当に裁判所が手を出さなければならない事件は、時間がかかってとても裁判所に持ち込んだのでは処理できないということになって、裁判所以外のところで物事が解決されていく。司法が機能を果たさない。裁判官の数を、キャパシティーをふやすということを最優先にしていきながら、法曹人口はどんどんふやして、必要なのはふやしていけばいい。そこのところについては、やはり私は、いろいろと言いわけをしておられますが、やはり大蔵当局が予算の関係でなかなかうんと言わないというところがひっかかっているんだというふうに思います。
 ぜひ最高裁はそういったところを、三権分立なので、最高裁は大蔵省の下にあるわけではないのですから、どんどん必要な裁判官の数をふやす、書記官の数をふやす、必要なんだということをどんどん言っていただきたい。そういうことがなければ、部分的に増員をするとか、こういった修習期間を短縮するとかということについては、うちの党や会派はどう判断するか知りませんが、私としては賛成できないということを申し上げて、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#74
○笹川委員長 木島日出夫君。
#75
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 最初に、今回の改正法案が提起されるに至ったきっかけであります法曹三者協議、そして法曹三者での合意の問題について、法務大臣と最高裁の御意見を賜っておきたいと思います。
 今回の裁判所法の一部改正によって、一つは、修習生の修習期間が二年から一年半に短縮することになる。これは、昭和二十二年、一九四七年に裁判所法ができて、司法研修制度が始まって以来の最初の大改正になるわけですね。
 今回の法改正は、昨年十月二十八日の法曹三者間の協議の結果なされた、いわゆる法曹三者合意、「司法試験制度と法曹養成制度に関する合意」によって提起されたものと理解しておるわけですが、私は、その出発点は平成三年、一九九一年四月の国会における司法試験法の改正にあったと思っております。そのときの司法試験法一部改正法案の審議に、私も当委員会におきまして参画した一人でありますが、平成三年三月十九日の当法務委員会で、これは全会一致で附帯決議をしているわけであります。
 きょう持ってきておりますので読みますと、「政府並びに最高裁判所は、司法試験制度及び法曹養成制度等の今後の在り方に関し、次の事項に十分に配慮すべきである。」四項目の附帯決議を挙げているのですが、今は第二項だけ挙げます。第二項、「法曹三者の合意に基づいて設置される法曹養成制度等改革協議会において、誠実かつ精力的に協議を行い、合意を得るよう努力すること。」法曹三者の合意がやはり一番基本だ、大事なんだということを国会においても位置づけた附帯決議でございます。
 法曹三者において昨年十月の合意を得るに至るまでは、裁判所また法務省、日弁連、それぞれ大変な努力が行われたと承知をしております。特に、日弁連は個々の独立した弁護士、法律家の集合体であります。また、全国各地の単位弁護士会の集合体でありますから、これは、官庁である裁判所や法務省と比べても、日弁連会内合意を得るには並大挺ではない大変な努力、エネルギーが費やされたと思うわけであります。
 特に、今回の改正の二つの柱、一つは修習期間を二年から一年半へという問題。そして、その背後にある司法試験の合格者を千名ほどに増加させるという、これは法曹人口の増加の問題でありますから、直接の利害にかかわる、そういう合意だけに、弁護士会においても会内合意を得ることが本当に容易でなかったということは察しがつくわけであります。
 そこで、法務大臣と最高裁から感想をお聞きしたいのです。
 私は、今回の法曹三者の合意、またその合意に至る努力というものを非常に高く評価をする一人でありますが、この三者が合意するに至ったことに対する評価、特に、日弁連で会内合意を得た上で今回の法曹三者の合意に至ったことについて、法務大臣また最高裁、どう評価されているのか、その所感をひとつお述べいただきたいと思います。
#76
○下稲葉国務大臣 法曹三者はそれぞれの立場がございます。それぞれの立場でいろいろな御意見を主張なさるわけですが、今回提案し、お願いいたしております法案につきましては、御指摘のとおり、法曹三者の本当に並々ならぬ御苦労の結果、合意を見ているわけでございまして、私ども、高く評価いたしているわけでございます。
 ちなみに、私の手元に若干の数字があるわけでございますが、委員御承知のとおりに、全国の市区町村は三千二百六十一と聞いております、その中で弁護士事務所のない市区町村が二千八百五十六ございます。ということは、わずか四百の市区町村にしか弁護士さんの事務所がない、大変偏在しているというのが実態でございます。特に、民事なんかになりますと、相対しておやりになるわけですから複数の弁護士さんが必要だろうと思いますが、一人の地区の弁護士さんというのが百二十六地区というふうな実態。ですから、大変な実態ではなかろうか。しかも、御指摘のように、国際情勢あるいは経済情勢、社会情勢の変化に基づいて一司法に対するニーズというのは高まってくるわけでございます。
 だから、私どもは、そういうふうな実態を踏まえて、やはり国民の司法に対するアクセスというものを容易にするというふうなことが大変に必要なことだと思いますし、喫緊な法案ではなかろうかというふうなことで、ぜひお力添えをいただいて、社会に対応できるような法曹の確立を図りたい、このように思います。
#77
○堀籠最高裁判所長官代理者 今回の合意は、法曹三者が法曹養成制度等改革協議会の意見書の要請を踏まえまして、我が国の社会の高度化、複雑多様化、国際化に伴いまして、国民の司法に対する期待がますます高まっていることに対し、的確に対応する必要があるとの認識のもとに成立したものでございまして、今後の二十一世紀の法曹養成の基盤の整備として不可欠のものであるというふうに考えているところでございます。
#78
○木島委員 私は、内容はともかくとして、法曹三者がねばり強い協議を経て合意に至った、それを評価したわけでありますが、法務省も法務大臣も最高裁も同一意見だと思います。
 そこで、次に、法務省にお尋ねしたいことがあるのです。
 この法曹三者が合意を得る過程におきまして、実は昨年九月五日、これは日弁連内で会内合意を得るために大変な苦労をしていた段階でありますが、その時期に、当時の松浦法務大臣は記者団との懇談の場で、「法曹三者なんて言い方はおかしい。(日弁連を除く)法曹二者で進めていけばいい。」こう発言したと報道をされております。これが事実とすれば、とんでもない暴言だと思います。
 日弁連は早速これに対して、侮辱であるということで、会長が抗議の談話を発したやに報道されておりますが、これは決して日弁連に対する侮辱だけではなくて、今私が指摘いたしました九一年、平成三年三月の当委員会の全会一致で採択した附帯決議そのものに対する冒涜にもなるのではないでしょうか。
 法務省にお聞きします。この松浦発言は事実でありますか。なぜこのような発言があの時期に飛び出してきたのでしょうか。
#79
○山崎(潮)政府委員 ただいま突然の御質問でございますので、手元に詳しいものは持っておりません。ただ、そのような趣旨を大臣が個人的に御発言になられたということは承知をしております。
#80
○木島委員 それは、さっきの私が最初に聞いた法務大臣の認識、今回法曹三者が本当に努力を重ねて合意を得た、これは非常に高く評価する、その評価とも違いますね。
 突然だというので、私、資料を持ってきました。昨年九月六日の朝日新聞と読売新聞、いずれもそんな発言をした旨が報道されているわけですよ。調べていないのですか、法務省。
#81
○山崎(潮)政府委員 突然の御質問で、具体的な内容のものは今持っていないという趣旨で申し上げたわけでございますけれども、そのような趣旨の発言が法務大臣からなされたということは承知はしております。
 私、個人的に大臣の御発言を、どういう趣旨で行われたかということは定かではございませんけれども、仄聞するところによりますと、法曹三者できちっとした議論をすることは必要であるという認識は当然あったわけでございまして、いろいろ協議していても何年も何年もかかるということではまずいという趣旨でございまして、意見を十分に闘わせたら、それは役所としてはある段階できちっと決断をすべきである、そういうふうな趣旨であるというふうに私どもは仄聞しております。
#82
○木島委員 昨年のこの九月五日の時期というのは、日弁連はこの三者合意を得るための努力の最後の大事な時期だったんじゃないですか、十月の総会を控えて。そういう大事な時期にこういう発言が飛び出してくる。
 これは、九月七日付の朝日新聞、そして読売新聞で、「法相の発言に日弁連が抗議」という記事でありますが、「日弁連の鬼追明夫会長は六日、」翌日、「「重大な侮辱で、時代錯誤の官尊民卑思想だ」と抗議する談話を発表した。」法曹三者が、まさに歴史的な法改正のための合意をするかどうか、修習期間二年を一年半にするかどうか、合格者を千名程度に引き上げるかどうか、本当に大変な、合意をするかどうかの最後の詰めの段階でこういう発言が飛び出したのですよ。日弁連会長が抗議するのは当たり前じゃないですか。報道されていますよ。法務省が知らぬはずはないでしょう。
 抗議を受けて法務省はどうしたのですか。
#83
○山崎(潮)政府委員 私ども、抗議を受けたわけでございますけれども、この点に関しましては、三者協議会の席上で日弁連から問われました。問われまして、私ども、法務省の立場、協議員の立場といたしましては、三者協が国民の課題にこたえるための方策を議論する重要な場であると認識している、今後ともこの三者協において協議をきちっと尽くしてまいりたいという認識を述べさせていただきまして、これで一応その問題は決着をしたという理解でございます。
#84
○木島委員 それでは、下稲葉現法務大臣の認識について一言だけお伺いして、この問題を締めます。
 司法制度また司法試験制度、法曹養成制度の今後のあり方等については、法曹三者間で合意を得るよう努力すべきだと、これまで再三再四にわたって衆参両院法務委員会では附帯決議がなされているわけであります。これを尊重して、今後、司法行政を進めていくに当たっては、最大限、法曹三者の合意というものはやはり尊重して法務行政をやっていく、司法制度に関する行政をやっていく、そういう意思があるかどうか、所見を承っておきたい。
#85
○下稲葉国務大臣 お答えいたします。
 今お話しのように、衆議院と参議院の法務委員会で法曹三者の合意を尊重しろというふうな附帯決議がそれぞれなされていることは私も承知いたしております。
 そこで、今るる私の前任者の問題についてお話がございましたけれども、私は、大臣に就任いたしまして、早速、日弁連の会長にお会いいたしました。そして、ひとつ法曹三者で気持ちを合わせていろいろやってまいりましょうというふうなことで、事務総長お立ち会いでございましたけれども、いろいろ賛意を得ました。そこで、問題になっておるようなことも実はいろいろ最初からお話しいたしました。
 例えば、少年法の問題等々につきましても、いろいろ記者会見を私がやりますと報道されます。ところが、必ずしも私の真意ではございません。そこで、大臣の記者会見というのはいつも録音をとってございますので、録音を起こしたやつを、日弁連の会長さんに電話しまして、いろいろ報道されていまずけれども、私の真意はこういうことですよ、御理解くださいというふうなことで、お届けいたしていることもございます。それは一つの例でございますけれども、るるそういうような形で連絡をとって、密にしてやってまいりたいと思いますし、本当に鬼追前会長にはそういうふうな意味でお骨折りをいただいているわけでございます。
 新しく会長もおかわりになりましたし、先般、新しい役員の方々とお会いいたしましたけれども、形式的にお会いするということじゃなくて、実質的にコミュニケーションの場を設けながらいろいろやってまいりたいと思いますし、同じような意味で、最高裁の長官とも具体的にいろいろな問題について話し合いを続けてまいりたい、このように思っております。
#86
○木島委員 ひとつそういう法曹三者の協議、合意というのを大事にして今後の法務行政、司法行政を進めていただきたいとお願いして、次の質問に移りたいと思います。
 修習期間の短縮の問題であります。
 先ほど同僚議員からも質問されておりました。私も二年間の司法修習を受けた一員として、本当にこの期間というものは大事な問題だと考えております。
 そこで、さっきの法務省と最高裁の答弁でありますが、こう聞いてよろしいですか。現在行われている司法修習の二年間でありますが、その実を下げない、実質を下げない、そして最大限効率を上げて実りある修習をやっていく、そのためには、容量のこともこれあり、勘案して、一年半がぎりぎりだ、そこで今回、法曹三者で‘年半の司法修習期間で合意をしたのだ、こう聞いてよろしいのでしょうかな、法務省、最高裁。
#87
○山崎(潮)政府委員 言葉の問題かもしれませんけれども、一年半でできるという確信を得たから提案をしたということでございます。
#88
○堀籠最高裁判所長官代理者 修習期間を一年六カ月にするという点につきましては、この一年六カ月の修習期間で十分に国民の負託にこたえ得る水準を充足し、時代の要請に適応した法曹養成を行うことができるという結論に達したということでございます。
#89
○木島委員 それでは、逆に聞きましょう。
 現在行われている司法修習の質は落とさないという決意と受けとめていいですか。
#90
○山崎(潮)政府委員 ただいま委員御指摘のとおりでございます。質は落とさないということを前提にやっております。
#91
○堀籠最高裁判所長官代理者 現在行われております修習の質は落とさないということは、私どもはそのとおり考えておりますし、これは弁護士会との合意の内容でもあるという理解でございます。
#92
○木島委員 それでは、法曹人口の問題についてお聞きいたします。
 今回の法改正の結果、これが成立をいたしますと、平成十一年度から司法試験の合格者は年間千人程度に増加することとなるわけでありますが、再三引用しております昨年十月二十八日の法曹三者の合意には、次のような一文が冒頭入っております。「我が国の社会の高度化、複雑多様化、国際化に伴い、国民の司法に対する期待がますます高まっており、これに対し、司法の機能を充実し、社会の法的ニーズにこたえるための方策を的確に講ずる必要があるとの認識において一致し」たという基本が書かれております。
 そうしますと、これは裏を返しますと、我が国の司法の現状が、今のままでは、特に法曹の質の問題もそうでしょうが、この員数、数の問題でも、国民の司法に対する期待の高まりにこたえることができないという認識で法曹三者が一致したということになるわけですね。そこで、法務省と最高裁に、それぞれお聞きしたいと思うのです。基本問題です。
 我が国における司法の役割を何と心得ているのか。そして、現在の状況で司法に対する国民の期待にこたえていないというその認識の具体的中身。どういう点が国民の司法に対する期待にこたえていないのだというその具体的中身をどう認識されているのか。これは基本にかかわる問題だと思うので、法務省と最高裁に認識を伺いたいと思います。
#93
○山崎(潮)政府委員 大変基本的な話でございまして、司法とは何かということでございますが、これはいつも言っていることでございますけれども、国民の権利を適正、的確かっ迅速に保全をする、あるいは種々の違法行為に的確に対処をしていく、これが司法の役割であるという認識でございます。          ・
 次に、法曹人口の増加でございます。
 確かに、抽象的に申し上げれば、世の中、社会の高度化、複雑多様化、国際化等に対応しなければいかぬということが第一点でございます。それからまた、昨今の規制緩和の問題、この進展に伴いまして、社会が事後監視型あるいは事後救済型へと転換していく中で、司法の果たす役割は極めて大きくなってくるという視点がございます。
 そういう点で、さまざまに起こる紛争について、裁判の場できちっとチェックをしていくという必要性が高まってまいります。それのみならず、すべてが裁判にいくということではなくて、裁判にいく前に円満に法的に解決をしていく、こういうニーズも当然高まってくるわけでございます。いわば予防司法という形になるわけでございます。こういうものを総合するという、抽象的に、はそういうことになるわけでございますので、若干具体的に申し上げますと、例えば弁護士についてでございます。
 先ほど大臣からもお話がございましたけれども、弁護士の地域的偏在、これはもう委員も十分御承知のことだろうと思いますけれども、こういうものにどうこたえていくかという点は残るわけでございます。やはり、どんなに人の少ないところであろうとも、法的ニーズはあるわけでございます。
 また、都会におきましても、一般的な市民を対象にいたしますと、医者であればホームドクターがいるわけでございますけれども、やはり最近の社会を考えればホームローヤー、こういうものの存在はどうしても必要になるのではないか。果たして現在の状態で一般の国民の方がホームローヤー的な方を実際持っているか。それは、まだそこまではいっていないかもしれない。しかし、ニーズは非常に高まりを見せている。特に親族関係の紛争等、財産の方ですけれども、そういう相談をしなければならないという需要は大変ふえているはずでございます。
 また、企業の立場から考えた場合でございますが、昨今のいろいろな社会的事象がありますように、コーポレートガバナンスということが大変重要な視点になってきているわけでございます。特に企業も何かをする場合に、利益だけを追求するのではなくて、法的にきちっとした対応をせざるを得ない。それは事前も事後も同じでございます。そういう点では、外部で法律家にお願いするというだけではなくて、企業そのものの中にやはり法律家を取り込む、こういうような要素も大変強いわけでございまして、経団連の意見でもその点を強く求めているわけでございます。
 そのほかも、例えば地方自治体でございますけれども、ちょっと前、昨年だったという記憶がございますけれども、外部監査制度が導入されているわけでございます。これは、地方自治体におきましても、やはり地方自治体の行ったこと、そういうことについてきちっと法的に検証していかなければならないということから求められたわけでございますが、こういう中にもぜひ法律家に入っていただきたいという声が上がっております。
 そのように、幾つかの例は申し上げたわけでございますけれども、具体的に問われたときに、幾つかこういう問題も挙がるわけでございます。そういう点から、やはり法曹人口はふやしていかなければならない、こういう認識に至ったわけでございます。
#94
○堀籠最高裁判所長官代理者 御質問は二点になろうかと思います。一つは、司法の役割をどう考えるか、もう一つは、法曹人口が現状では国民の期待にこたえていないと考えているのかという、二点かと思います。
 まず、司法の役割の関係でございますが、我が国の社会の高度化、複雑多様化、国際化に伴いまして、国民の司法に対する期待がますます高まっているというふうに認識しております。さらに、我が国におきましては、昨今の社会経済情勢や価値観の変容にかんがみますと、法的紛争を公正な法的手続で解決するという司法の役割は、今後一層その重要性を増すものというふうに考えております。裁判所といたしましては、このような事態に適切に対処し、法的な紛争の適正迅速な解決を図り、司法の使命を十分に果たしていくことが必要であるというふうに考えておりまして、そのためには、国民にとって真に利用しやすく、また、わかりやすい裁判というものを実現していかなければならないと考えているところでございます。
 次に、現状の法曹人口では国民の期待にこたえていないと考えているのかという御質問でございますが、委員御承知のとおり、法曹養成制度の抜本的改革等をテーマにいたしました法曹養成制度等改革協議会において、この点についても議論が重ねられたわけでありますが、そこでの議論の過程では、法社会学者あるいは企業の法務部担当者、あるいは消費者相談センターの職員の方々など、各界の有識者の方のヒアリングを行いましたが、ほとんどの方が、我が国の法曹が法的サービスに対する需要に十分こたえていないということを指摘しておりました。また、改革協で行いましたアンケート調査の結果におきましても、法律問題について困ったことがあるのに弁護士に依頼して解決をした人が少ないものになっておりました。
 また、改革協における法曹関係者以外の協議員からも、弁護士の敷居が高くて気軽に相談を持ちかけられないとか、経済的に見合わないという理由で弁護士が引き受けてくれないという指摘も出されておりました。さらに法曹関係者以外の協議員からは、我が国の社会情勢の変化、特に、国際化が進み、紛争を法的に解決しようとする合理的思考が強まるとの指摘を受けたところでございます。このような指摘につきましては、私どもとしても真摯に受けとめる必要があると考えているものであります。
 このような認識のもとで、司法が国民のニーズにこたえその使命を十分に果たせるようにするためには、所要の法曹人口の増加が必要であるというふうに考えているところでございます。
#95
○木島委員 法務省の方からは専ら弁護士が足りないという御指摘がありましたし、裁判所の方からは国民にとって利用しやすい裁判所づくりのために奮闘していきたいというお話がありました。
 私は率直に言って、今の日本の法曹を考えてみたときに、国民の期待にこたえられていないというのは、数の面でいっても決してひとり弁護士の問題だけではない、裁判官の数、検察官の数も同じではないかと。
 先ほど法務大臣から、日本の自治体の中で弁護士がいる自治体が四百ほど、少ないと言われましたが、では裁判所がある自治体はどうなんだ、検察庁のある自治体はどうなんだ。私の見聞するところでも、どんどんと簡易裁判所が統廃合になって、裁判所はなくなっているのです。本来三人いなければならない裁判所で裁判官が削られていって、合議体が組めないという裁判所がふえているのです。
 そういうことを考えますと、法曹人口の増加というのは、私は、決して弁護士だけではない、検察官、裁判官においても本気になって取り組んでいかなければならない課題ではないかと思うわけであります。
 昨年十月の合意の第二のところには、当面一千人にして「その後の司法試験合格者の年間千五百人程度への増加とこれを図る上での問題点について」という記述があるわけであります。特に法曹三者の協議の中では、法務省も最高裁も司法試験合格者を年間千五百人程度にふやすことに非常に積極的であったとお聞きをしております。
 それではお聞きしますが、法務省と最高裁はそれぞれ、現在の我が国において、今の、それから見通すことができる将来の国民の司法に対する期待、ニーズにこたえるには、裁判官及び検察官及び弁護士の員数はどの程度が望ましいと本気になって考えているのか、率直にお聞かせ願いたいのです。
#96
○山崎(潮)政府委員 総体として具体的にどの程度ということを、例えば弁護士、検察官についても具体的な数字を現在言えというのは、ちょっと御勘弁をいただきたいと思います。
 ただ、千名に増加をいたしまして、それで、この合意書にも書かれていると思いますけれども、やはりその間のいろいろな検証はして、あるいは法的ニーズ、こういうものもきちっと検証して、その都度、あるべき法曹人口はどのぐらいかということはきちっとフォローしてまいりたいというふうに考えております。
 それを現在の時点で、例えばこれから五十年先どうであるのか、そういうようなことになりますと、なかなかつかみ切れないということでございますので、その点は御勘弁をいただきたいと思います。
#97
○浜野最高裁判所長官代理者 裁判所の方の事務量と申しますのは、御案内のとおり、提起される各種事件の事件数に規制されるということでございまして、事件数が仕事の量ということになりますので、事件数を離れて、一般的に裁判官がどのぐらい必要であるかは言うことができないということでございまして、裁判官の必要数の検討に当たっては、仕事の量いわゆる事件数の動向を踏まえることが必要不可欠でございます。
 事件数の予測という観点で見ますと、民事事件については、昨今の事件数の推移、社会経済状況の変化等を踏まえますと、今後も増加していくという予測をすることも可能ではないかというふうに考えておりますが、裁判所全体の事件数の動向を長期的かつ具体的に予測するということは極めて困難であるわけでございます。
 また、裁判官の給源につきましても、このところ修習生の人数の増加が図られてきておりまして、この給源の問題もかなり改善をされてきておりまして、任官希望者数というのもある程度維持ができておりますが、希望者数も必ずしも修習生の人数と相関して安定的なものではなくて、過去の経験からいたしましても景気にも大きく影響を受けるという面もございまして、任官希望者数の動向を予測することも極めて困難な状況にあるわけでございます。
 このようなことからいたしますと、長期的なスパンで裁判官の人数がどの程度であるべきかを具体的な数字をもってお示しすることは難しいということを御理解いただきたいわけでございますが、ただ、短期的には、昨今の増加傾向にある民事事件の事件数の動向を踏まえまして、その事件処理に必要な人員を確保するという観点から、このところ着実に裁判官の増員を図ってきたところでございます。
 特に司法修習生の人数の増加が図られてきていることもございまして、平成五年から平成九年までの五年間で計六十四人の裁判官を増員いたし、平成十年度も裁判官二十人の増員を図ったところでございます。
 今後も、事件数の動向等を踏まえながら、適正迅速な裁判の実現を図るため、着実に裁判官の増員を図っていきたい、かように存じている次第でございます。
#98
○木島委員 どうも非常に無責任ではないか。現在の状況で裁判官が、検察官が、あるいは弁護士がどのぐらい足りているのか足りていないのか。それと、私は何も五十年先を言えと言ったわけではないのです。十年、二十年、見通せるところでどうなんだということをお聞きしたわけであります。
 いわゆる小さな司法、数が少なくて国民のニーズにこたえることができないという意味で小さな司法という言葉が使われるわけですが、この現状に対する批判は、学界を初め各方面からも指摘されています。それは、再三私が言うように、弁護士だけではなくて裁判官、検察官も含む法曹全体について指摘されているわけであります。
 私はここに、昨年出版された岩波講座現代の法第五巻「現代社会と司法システム」というのを持ってきております。京都大学の法学部の田中成明教授は次のように指摘しております。大変大事な指摘だと思うので、ちょっと引用したいのです。
    「小さな司法」の現況
  わが国の司法が、以上でみてきたように、そ
 の役割期待に十分に応えてきていない主因が、
 その容量が小さく基盤が脆弱なことにあること
 は、関係者の間ではっとに指摘されてきている
 ところである。とりわけ最近の社会の「法化」
 や国際化の進展とともに、社会経済的にも政治
 的にも、もはや看過できない事態となりつつあ
 る。
  わが国の法曹人口は、欧米諸国と比べてきわ
 めて少なく、法曹一人当たりの人口比でも相当
 の差がある。最近になって司法試験合格者数を
 増やしはじめたけれども、現在のペースでは、
 当分の間、この差は解消されそうにない。現在
 では、法曹全体の人口は約二万人であるが、戦
 前で最も多かった昭和初期の二倍強にすぎず、
 法曹一人当たり人口も、最も多かった大正初期
 と比べておよそ半分となったが、約七〇〇〇人
 に一人にすぎない。簡裁判事を除く裁判官定員
 は、明治二〇年代で約一五〇〇人であったが、
 現在でも約二〇〇〇人にすぎず、弁護士人口
 は、最も多かった昭和初期の約七〇〇〇人から
 約一万五〇〇〇人に増えているが、大多数が東
 京・大阪などの大都市に集中しており、地方に
 おける弁護士過疎は深刻である。よくここは聞いておいてください。
 また、国家予算における裁判所予算の占める割
 合も、昭和二三年に〇・四%で、昭和三〇年に
 〇・九%まで上昇したが、最近では〇・四%に
 減っており、主要行政機関の予算規模との差は
 歴然たるものである。さらに、法律扶助制度
 も、欧米諸国の制度と比べて、財政規模・活動
 内容ともに相当の開きがあり、貧弱である。弁護士だけじゃないのです。裁判官も検察官も少ないということではないのでしょうか。
 そこで、裁判官、検察官の増員は、直接に権限と責任を第一次的に持っているのは何といっても最高裁と法務省であります。
 そこで、お聞きしたいのです。これまで定員増にどのように努力をしてきたか。今後の目標は具体的にどうなんだ。調べてみますと、検察官の定員は数十年来動いていない。裁判官も、今御答弁、平成五年から平成九年までに六十四人ふやしたとありましたけれども、私調べますと、一九七九年、昭和五十四年以来この二十年間でふえたのは、判事九十二人、判事補九十六人、簡判、簡易裁判所判事十五人、合計二百三人のみ、そして、現在の裁判官総数は二千八百六十一人だ。これじゃ全然国民の期待にこたえることはできないと思う。
 そこで、法務省には、検察官は現状でいいと考えているのか、あるいは現状でもこのぐらいの数が必要なんだ、あるいは十年後はこのぐらい必要なんだ、その具体的な展望を示してくださいよ。最高裁にも、裁判官の数についての現状をどう見ているのかということと、どのくらい不足と考えているのか、十年後どうなんだ、率直にその数字をやはり出すということが責任ある態度じゃないでしょうか。
 そういう展望ある数字が出されて、それじゃ、それを生み出すのは司法試験で合格者をふやすしかないのだ、基本的には修習生じか裁判官や検察官になれないわけですから。そういう理屈立てがきちっとあって初めて私は司法試験を千名にすべきなんだ、千五百名にすべきなんだという理屈づけができると思うのです。そこを今、人数を言えといっても勘弁願いたいという、そんな答弁では国会のまともな審議はできないのじゃないかと思うのですよ。そこでお聞きしたい。
#99
○原田(明)政府委員 委員お尋ねの法曹人口全般の中における検事、この場合、検事定員ということでお答えさせていただきたいと思います。
 検事定員につきましては、先ほど委員も御指摘いただきましたように、昭和四十七年以来二十四年ぶりに、平成八年度で検事増員、定員の増員が三十五人認められました。その後、九年、十年とそれぞれ三十四人、三十二人ということで、平成十年度で御審議いただいております予算が通りますれば、三年間で合計百一人増加することができました。
 実は、私自身もかつて法務省の中の人事関係を担当したことがございまして、そのときに、平成二年でございますが史上最低で、検事の採用者が二十八人になったことがございました。大変な危機感を抱いたわけでございます。その間も業務量についてはさまざまな見方があったわけでございますが、実際に毎年新規採用させていただいても検事定員が充足できないということがずっと続いていたわけでございまして、そういう中で負担量の実感としては相当あったわけでございますが、そのような中で検事定員の増員をお願いするということすらできなかった、そういう時代が長く続いたわけでございます。
 しかし、そういう状態について、幸い国会においてもその間の事情をよく御理解いただき、司法試験の改革あるいは司法修習制度の改善、また裁判官、検察官を含めたさまざまな待遇面を含めた改善措置がなされてまいりまして、昨今では毎年七十名程度の検事の採用者を迎えることができるようになりました。これは、私自身考えてみましても、本当に昔のことが、大げさな意味でいえば夢のような時代になってまいりました。
 そして、この三年間の業務量を勘案した検事定員の増員ということも、法務省全体で見ますると、総定員法の中で国家公務員の定員を純減していくという中でこのような増員が図られるということは大変大きな意味があり、なおかつ、また関係当局の理解が得られた結果だというふうに考えております。
 そういうことを前提にいたしまして、前置きが大変長くなって恐縮なんですが、今後どの程度の検事を増員していったらいいかという点につきましては、まさにそういうことを真剣に考える基盤ができ上がってきたというふうに考えます。
 先ほど委員御指摘の、千五百人の法曹人口の将来展望における増員ということを御指摘になりましたが、当時私どもは法曹三者で議論している中で、少なくともこのぐらいの増員ということを将来見込んでいきませんと、国際化する社会、変転する社会の需要に法曹三者としてこたえていくことはできないのではないかということで、トータルとしてそのような数字が出されたというように私は考えております。
 そこで、さまざまな環境が整備されてまいりました。そして、現在における、検事でいえば、検察が国民の期待にこたえているかどうか、さまざまな見方があろうと思います。もっともっとやらなければならない面もあろうと思います。
 それと同時に、また新たな時代、行政改革が行われ、行政主導型の社会から事後的な規制、そして自由なルールのもとにおける社会を構築しようという大きな流れの中で、必ず、司法の占める位置、それを支える法律家の数、また能力ということが大変問題になってくる。ようやくそのような中でそのような基盤を踏まえて将来構想を考えていく基盤ができ上がりつつあるというふうに考えるわけです。
 この点はぜひ御理解賜りました上で、今後とも御支援また御理解いただき、そして真に国民の立場からこの程度の数が必要であるということが理解でき、そのような将来展望がとれるようにまた努力を続けさせていただきたいと考える次第でございます。
#100
○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 現状での裁判官がまず足りているかどうかという点からお答えいたしますと、平成三年以降でございますが、バブル経済の崩壊あるいは経済不況等の影響を受けまして、委員も御案内のとおり大都市部の裁判所を中心に民事事件が急増してまいりまして、その結果、例えば東京地方裁判所で民事の通常事件を処理している裁判官一人当たりの単独の手持ち件数が一時二百七十から二百八十件という相当重い件数になって負担が増加したわけでございます。
 そこで、裁判所といたしましては、このような民事事件の増加傾向を踏まえまして毎年裁判官の着実な増員ということをお願いしてまいったわけでございますが、先ほど御説明いたしましたように、平成五年から九年までの各五年間で六十四人の増員をしていただきまして、これを繁忙庁に手当てをして重点的に振り向けるということをしたわけでございます。その結果、東京地裁におきましても、裁判官一人当たりの民事通常事件の単独事件数の手持ち事件数が二百四十件程度に減った、数年前に比べてかなり改善されているという状況でございます。
 ただ、じゃ、これでもう十分なのかということになりますと、やはり単独事件の手持ち件数が二百四十件でもやはり相当繁忙感があるということは間違いないわけでございまして、大規模庁で民事事件を担当する裁判官の実感あるいは私のこれまでの実務経験からいいますと、二百件程度そこそこですと十分余裕があって事件を処理することができると思われるわけでございます。
 今後とも、こうした特に大規模庁における民事事件担当裁判官の負担の軽減を図るために、事件動向を踏まえながら着実に増員を確保していく必要があると考えておるわけでございますが、これまでの増員の努力ということでございますけれども、既に、委員御指摘のとおり、平成五年から九年までの五年間で六十四人でございますが、平成十年度は過去五年間の三分の一に当たる二十名、これを増員することができたというわけでございます。
 これが、今までできなかったものがようやく二十名の増員をお願いすることができるようになったというのは二つございまして、一つは、何よりも仕事の量といいますか事件数が、民事事件を中心にふえてきた。これが、少なくとも短期的な見通しては、ある程度の増員をお願いできる根拠になるということでございます。もう一つは、やはり司法修習生の給源を拡大するという御理解を賜りまして、何とか少しずつ給源を確保するということができたわけでございます。
 委員が再三おっしゃっております、では、五年とか十年のスパンでなぜ言えないのかということでございますが、裁判所の場合は、先ほども申しましたように、事件の訴え提起を待つという極めて受け身のことでございますので、仕事量の推測が長期的には立ちにくいということと、もう一つは、やはり事件数の予測が仮に立ったとしても、給源の問題として、何人裁判所に来ていただけるか予測が立ちにくいという点がございます。
 ただ、おかげさまで法曹三者の合意もいただきまして、何とか千名という母数の基盤を今おつくりいただいているということでございますので、この給源の問題につきましては比較的緩和をさせていただいて、私どもとしては、給源の問題あるいは充員の問題を余り考えないで、事件数の動向を踏まえて、そちらの方で増員をお願いできる時期が来るのではないかと、いわば期待を込めてこの制度の整備をお願いしているという趣旨でございます。
#101
○木島委員 私は、司法の役割は、基本的には国民の権利、基本的人権の擁護、そして、民事、刑事全体に共通するあらゆる紛争事件について、社会正義にかなった解決処理だと思うのですね。これは、難しい言葉では、法の支配の確保実現などと言われると思うのです。そうした点から見ますと、我が国の司法基盤の整備の現状はまだまだ、裁判所においても、裁判官においても、検察庁、検察官においても不足をしておる、また弁護士の数も不足している、そうは思います。
 この司法基盤の整備の現状の立ちおくれについて、速急に手を打ちたい問題はたくさんあるわけですが、もう時間があと六分しかありません。
 一つは法律扶助の現状、そして一つは、起訴前弁護といいますか被疑者国選弁護制度の創設問題は非常に大事で、これが充実できるかどうかは、弁護士の数ひいては裁判所の数にもかかわってくる問題で、時間の許す限り取り上げたいと思うのです。
 最初に、法律扶助の現状、特に国家予算等についての現状を、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、先進四カ国との比較なども交えて御報告いただけませんか。
#102
○横山政府委員 お答えします。
 法律扶助の予算面から見た現状でございますけれども、我が国の法律扶助制度は、財団法人法律扶助協会、民事に関する法律扶助事業に対しまして国庫から補助金を支出しておるわけでございます。これにつきましては、平成九年度で四億三千五百万円、平成十年度の政府予算案で四億七千六百万円ということになっております。
 今委員の方から求められました諸外国でいいますと、イギリスでは約一千百四十六億円、フランスでは百八十二億円、ドイツ三百六十三億円、スウェーデン四十七億円、アメリカ四百六十二億円等となっております。
 以上でございます。
#103
○木島委員 本当にこれは二けた違う。イギリスとは三けた違う。私、法務省からいろいろ資料をいただきまして、日本がいかにG5の国の先進四カ国とおくれているか、四つほど指摘したい。
 一つは、法律扶助のための法律が制定されているかどうか。制定されていないのは日本だけです。イギリス、フランス、ドイツ、アメリカは全部法律扶助のための法律がきちっと整備されています。
 二つ目の違い、利用者の負担がどうか。日本は原則償還制度です。金がなくて弁護士さん等に相談する。それで、事件を起こしてもらう、勝訴する。そうしたら基本的には返すのですね。原則償還制度。しかしこれは、アメリカは無償です。ドイツは資力に応じた負担金の支払い。イギリスも資力に応じた負担金の支払い。フランスは、最低賃金所得者の層は無償。基本的には、所得の少ない人からは、法律扶助ですからお金は取らない。そして相談も受け、裁判もやるのでしょう。これが決定的な日本と先進四カ国との違い。
 三つ目は事業規模。さっき言ったとおりであります。さっきは予算でありますが、日本は四億円台。イギリス千百四十六億ですか、フランス百八十二億ですからね、ドイツも三百六十三億ですか、アメリカ六百五十六億。予算も違うのですが、事業規模も全然違うのですね。二けた違う。事業規模が全く違う。
 それから四つ目は管理運営費。日本は財団法人法律扶助協会が所管しているわけであります。これは、アメリカも非営利法人が所管している。ドイツなどは裁判所がやっているのです。フランスは裁判所にある裁判扶助局というところがやっておる。イギリスは非政府法人がやっておるわけでありますが、管理運営費は、日本は国庫負担ゼロですよ。アメリカ、国庫負担あり。ドイツ、フランスは全額国庫負担。イギリスはほぼ全額国庫負担。もう決定的なおくれなのですね。とても先進法治国家と言えないような寂しい状況であります。
 そこで、法務大臣に、ぜひこれはもう速やかに、日本においても法律扶助に関する法律をつくる、そして国家予算を百倍ぐらいにする。それでようやく先進国に追いつくのですからね。そうですがらね。そういう決断をしていただきたい。最近、法律扶助制度研究会報告書なるものが出されたようでありますけれども、ひとつ決意のほどを。
#104
○下稲葉国務大臣 お答えいたします。
 先月の末に、法律扶助制度研究会から、いろいろ研究された答申の結果をいただきました。今、諸外国に比較してみて、その実態というのは、金額の面でいえばそういうようなことでございます。現在、七千名余の方を一年間法律扶助の対象としているようでございますが、対象はもっともっとふえるだろう、このように思います。
 したがいまして、そういうふうな研究会の答申を踏まえまして、まず法制化の問題と、それから予算の増額、これがポイントだろう、こういうふうに思います。ひとつ積極的に取り組んでまいりたい、このように思います。
#105
○木島委員 それでは、もう一つだけ、被疑者国選弁護の問題でありますが、これも日本が先進諸国に比べておくれた分野なのですが、国際法の分野では、もう既に被疑者国選弁護をつけなければいかぬということなのです。
 国連被拘禁者人権原則の十七の第二項ですと、拘禁された者が自己の選任する弁護人を持たない場合には、司法的正義のために必要なすべての事件において、資力のない場合には無料で裁判官等によって弁護人を選任してもらう権利を有すると定まっているのです。一九九〇年の国連犯罪防止会議においても、弁護士の役割に関する基本原則という規定がありまして、同様な規定になっているわけです。残念ながら日本はまだない。
 そこで、日弁連が奮聞いたしまして、一九九二年の十月には、すべての弁護士会で当番弁護士制度というのを実施いたしました。要するに起訴前弁護制度。みずからの力で弁護士会がやり始めたわけであります。現在、この登録者数は、一九九七年五月一日現在で全国六千九百十三人の弁護士、全会員の四二%がこれに従事している。当番弁護士の派遣事件数は、一九九六年一月から十二月の一年間、一万八千五百四十七件となり、通常事件の勾留請求件数の二割近くに当番弁護士が起訴前で弁護活動ができるようになってきた。同年中の受任件数四千六百九十七件、被疑者弁護援助件数二千三百二件に達している。そのために金がものすごいかかっていて、弁護士会は特別会費を徴収して年間二億数千万円の財産基盤で当番弁護士等緊急財政基金を設置して頑張っているのです。
 こういうところにやはり国の援助を基本的にやるべきだ。国際法の流れもある。どうでしょうか。もうこういうものもきっちりつくっていくという時期に来ているのじゃないか、少なくとも本気になって検討を開始する時期に入ってきているのじゃないかと思うのですが、これも法務大臣の決意のほどを。
#106
○下稲葉国務大臣 お答えいたします。
 起訴前の被疑者に対する国選弁護人の問題についての御質問でございます。
 私どもも重大な関心を持っていろいろ検討をいたしております。国の財政に与える問題でございますとか、それから先ほど申し上げましたように、弁護士さんが今偏在しておられるというふうな問題等々もあるわけでございまして、その種の問題等々も総合的にひとつ検討してまいりたいというのが現在の私どもの気持ちでございます。
#107
○木島委員 時間が来たから終わりますが、私は、本当に法治国にふさわしいこういう基盤をずっと整備していく、そういうことを背景にしつつ、ああ、これをやるには法曹人口が少ないのだ、だから司法試験の合格者をふやす必要があるのだ、そういうことがやはり必要なのじゃないかというふうに思います。最後に、私からも、司法試験は平等でなければいかぬと思いますので、特別枠制度というのはやはり廃止すべきだ。法のもとの平等をまず主張しているのは法律家なのですから、その法律家がこんな制度をつくったのではこれはいかぬというふうに思いますので、この廃止を決断していただきたいことを、これは要望だけ申し添えまして、答弁はいいです、きょうの質問を終わります。
#108
○笹川委員長 次回は、明八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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