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#1
第142回国会 法務委員会 第15号
平成十年五月十五日(金曜日)
   午前十時四分開議
出席委員
  委員長 笹川  堯君
   理事 太田 誠一君 理事 橘 康太郎君
   理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君
   理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君
   理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君
      安倍 晋三君    大石 秀政君
      奥野 誠亮君    鴨下 一郎君
      下村 博文君    菅  義偉君
      谷川 和穗君    谷畑  孝君
      渡辺 博道君    渡辺 喜美君
      枝野 幸男君    佐々木秀典君
      福岡 宗也君    漆原 良夫君
      安倍 基雄君    木島日出夫君
      保坂 展人君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 下稲葉耕吉君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 但木 敬一君
        法務大臣官房審
        議官      古田 佑紀君
        法務省民事局長 森脇  勝君
        法務省刑事局長 原田 明夫君
 委員外の出席者
        警察庁長官官房
        参事官     竹花  豊君
        警察庁交通局交
        通指導課長   渡邉  晃君
        法務大臣官房審
        議官      吉戒 修一君
        大蔵大臣官房企
        画官      片山さつき君
        大蔵省証券局証
        券市場課公社債
        市場室長    山崎 穰一君
        通商産業省産業
        政策局取引信用
        室長      今清水浩介君
        法務委員会専門
        員       海老原良宗君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十五日
 辞任         補欠選任
  菅  義偉君     渡辺 博道君
  中川 秀直君     安倍 晋三君
  渡辺 喜美君     大石 秀政君
同日
 辞任         補欠選任
  安倍 晋三君     中川 秀直君
  大石 秀政君     渡辺 喜美君
  渡辺 博道君     菅  義偉君
    ―――――――――――――
五月十四日
 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関
 する法律案(内閣提出第二六号)
同月十五日
 治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法
 制定に関する請願(畠山健治郎君紹介)(第二
 三二八号)
 同(肥田美代子君紹介)(第二三二九号)
 同(畠山健治郎君紹介)(第二四四〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第二四六四号)
 同(大森猛君紹介)(第二四六五号)
 同(金子満広君紹介)(第二四六六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第二四六七号)
 同(北沢清功君紹介)(第二四六八号)
 同(穀田恵二君紹介)(第二四六九号)
 同(児玉健次君紹介)(第二四七〇号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第二四七一号)
 同(佐々木陸海君紹介)(第二四七二号)
 同(志位和夫君紹介)(第二四七三号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二四七四号)
 同(辻第一君紹介)(第二四七五号)
 同(寺前巖君紹介)(第二四七六号)
 同(中路雅弘君紹介)(第二四七七号)
 同(中島武敏君紹介)(第二四七八号)
 同(中西績介君紹介)(第二四七九号)
 同(中林よし子君紹介)(第二四八〇号)
 同(濱田健一君紹介)(第二四八一号)
 同(春名直章君紹介)(第二四八二号)
 同(東中光雄君紹介)(第二四八三号)
 同(平賀高成君紹介)(第二四八四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二四八五号)
 同(藤田スミ君紹介)(第二四八六号)
 同(古堅実吉君紹介)(第二四八七号)
 同(不破哲三君紹介)(第二四八八号)
 同(松本善明君紹介)(第二四八九号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第二四九〇号)
 同(山原健二郎君紹介)(第二四九一号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二四九二号)
 婚姻制度等に関する民法改正に関する請願(村
 山富市君紹介)(第二四三九号)
 組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(木島
 日出夫君紹介)(第二四六二号)
 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請
 願(木島日出夫君紹介)(第二四六三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関
 する法律案(内閣提出第二六号)
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関
 する法律案(内閣提出第九二号)
 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(内
 閣提出第九三号)
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九四号)
     ――――◇―――――
#2
○笹川委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案を議題といたします。
 まず、趣旨の説明を聴取いたします。下稲葉法務大臣。
    ―――――――――――――
 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関
  する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○下稲葉国務大臣 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、債権流動化を初めとする法人の資金調達手段の多様化の状況にかんがみ、法人による債権譲渡を円滑にするため、債権譲渡の第三者対抗要件に関する民法の特例として、法人がする金銭債権の譲渡等につき登記による新たな対抗要件制度を創設するとともに、その登記手続を整備する等の措置を講じようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。
 第一に、法人が金銭債権を譲渡した場合には、債権譲渡登記ファイルに債権譲渡登記をすることによって、債務者以外の第三者に対する対抗要件が具備することを認めることとしております。
 第二に、債務者を保護するため、債権譲渡登記の効力を債務者に及ぼすためには、個別に債務者に対する通知または債務者の承諾を要することとしております。
 第三に、債権譲渡登記の手続や登記事項の開示方法等新たな債権譲渡登記制度に関する規定を設けることとしております。
 第四に、法人が金銭債権を目的として質権を設定した場合には、金銭債権の譲渡がされた場合と同様の手続によって対抗要件が具備することを認めることとしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#4
○笹川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#5
○笹川委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
#6
○枝野委員 おはようございます。
 債権譲渡の対抗要件に関する特例の法律ということで、まず幾つか御質問をさせていただきます。
 体系的な問題点については、この後、私どもの党の福岡議員の方からお尋ねをしてまいりますので、私の方からは、それに先立って具体的な問題点を挙げていきたいと思っております。
 まず、この法律によって対抗要件を具備する登記というのは、確認でございますが、届け出を受理した時点でしょうか、それとも、登記が完了した時点でしょうか。
#7
○森脇政府委員 登記が完了した時点というふうに考えております。
#8
○枝野委員 そういたしますと、一般の登記でありますと、登記の申請をしましてから実際に登記がなされるまでに日にちがずれることもないわけではありません。そういった心配はないのでしょうか。
#9
○森脇政府委員 今度創設いたします債権譲渡の登記につきましては、電子情報処理組織を用いて処理するということを予定しておりまして、これによりまして、申請の日に処理するということが可能になるというふうに考えております。
 また、登記の申請につきましても、フロッピーディスク等電子媒体を使用していただくということを予定しておりまして、多数の債権を譲渡する場合であっても即日処理が可能になるものと考えております。
#10
○枝野委員 言葉の揚げ足をとるつもりはないのですが、可能というのとそれをしますというのとではやはり全然違ってきますので、十五日に申請をして十六日に登記がされたというようなケースが出てきたりすると、他の対抗要件を具備した人間との関係で不利になったりということが出てまいります。運用上のルールとして、その日のうちに登記をするという理解でよろしいのでしょうか。
#11
○森脇政府委員 絶対にあり得ないかということを考えてみますと、コンピューターがシステムダウンしてしまって一日動かなかったというような場合を想定いたしますと、これは即日処理ということがかなわないという場合も考えられるところでございます。
#12
○枝野委員 例えば、最近ですと、阪神大震災などが起こったときの神戸の法務局、登記所のことを考えれば、そういったケースのところで原則どおりいくかどうか、こういった話はまた別問題だと思いますが、ちょっと今の話で心配なのは、コンピューターシステムということで、基本的にはバックアップシステムも当然のことながら用意されておられるのだろうと思いますので、基本的には、まさに阪神大震災のような場合、バックアップも含めてコンピューターがだめになるというほとんど考えられないケース以外は、即日に登記がされるという理解でよろしいでしょうか。
#13
○森脇政府委員 おっしゃるとおりに考えております。
#14
○枝野委員 そうしますと、今度はこの法律全部、登記の日付ということで条文ができ上がっております。例えば、ある方が朝十時に登記申請をした、ある方は同じ債権の譲渡について午後三時に登記の申請をした、こういった場合も同じ日に登記の日付がなされるわけですから、この優劣関係はどうなるでしょうか。
#15
○森脇政府委員 登記の受け付け番号が登記事項としてございますので、受け付け順によって登記の優先順位は決まるというふうになっております。
#16
○枝野委員 これは第五条の八号の登記番号ということの趣旨でございますか。
#17
○森脇政府委員 そのとおりでございます。
#18
○枝野委員 確認的にお尋ねをいたしますが、一般の登記の場合、それからこの場合、法務局がたくさんあるとかということで、番号だけではわからないというケースがないというのはどういう理由でございますか。登記の番号が必ず順番どおりになるというのは、法務局、登記所は日本じゆうにあるわけですから、普通ですと、A登記所での番号とB登記所の番号とでは違ってくるわけですね。この場合はそういう心配がないということについて御説明ください。
#19
○森脇政府委員 実は、このコンピューターシステムでどこの登記所でやるかというのは、この法律上は法務大臣の指定する登記所ということになっております。スタート時点といたしましては、これの利用頻度等まだ見えないものがございますし、たくさんの登記所に一挙にコンピューターシステムを導入するということも不可能でございますので、まずは東京法務局で全国の分を一括して登記するシステムを考えておるところでございます。ただ、利用度が多いということになつてまいりますれば、そういった状況を見ながら指定登記所をふやしていくということも考えております。
 ただ、ふやしていく場合のやり方でございますが、これは一つのファイルで管理するということを考えておりまして、どこの登記所で受け付けてもアクセスする先は一つのファイルであるというシステムを将来的には構築すべきものであろうというように考えておるところでございます。
#20
○枝野委員 さて、登記が二つなされた場合については今ので問題はないのかなというふうに思いますが、対抗要件を、いわゆる通知で備えた譲受人と、それから、本法による登記で備えた譲受人との対抗関係が問題になるケースがございます。例えば、朝、譲渡通知がなされたことを確認した、その上でその日の夕方になってから登記の申請で対抗要件を、第二譲受人と言うべきなのかが備えた、こういった場合の先後関係、優劣関係はどうなるのですか。
#21
○森脇政府委員 民法の通知による対抗要件、それから、本法が設ける登記による第三者に対する対抗要件、これの先後関係というのは、違った制度に基づくものでございますので困難な面がございますが、これの対比を可能にするために今内部的に詰めの作業を行っておるところでございます。登記事項証明書には登記事項とされております登記の年月日だけでなく登記の日時まで記載したものを発行することにできないだろうかということを検討しておるところで、これが可能ではないかという方向で今検討をいたしておるところでございます。
 したがいまして、これが可能になりますと、債権の二重譲渡があった、一方は民法による通知、一方は本法律案に記載されている登記ということになりますと、登記の方は少なくとも日時が記載されますので、対抗要件取得の時が明らかになる。通知の方につきましては債務者において知り得る事項でございますので、これとの対比によって先後関係が決まるという形にできるものというふうに考えております。
#22
○枝野委員 けさほどそういった御説明をいただいたのですが、登記の日付だけではなくて時刻まで入れるということがあれば、確かに通知と登記との関係での問題が生じる可能性はかなり少なくなるというのはよくわかります。逆に時刻を入れなければ、日付しかついていないと、その日の何時なのかということの証明ができないわけでありますから、通知がなされたのを知ってから登記をした場合と先後不明で同等になってしまうということは、これはやはり許されることではありません。
 だとすると、やはりこの法律上に、登記の日付ではなくて登記の日時という書き方を一つはするべきではないか。時間、時刻というものが、大きな意味が通知との関係では出てくる。理論上あり得るわけですから、登記事項自体を修正して、日付ではなくて登記の日時とすべきではないでしょうか。
#23
○森脇政府委員 原則論の方を申し上げますと、結局、登記の時と通知の時、これの先後関係をどちらが立証できるか、こういう立証テーマの問題になるのだろうと私どもは考えております。これは現に、通知が同日になされた場合でも、その先後の関係は譲受債権者同士の間では立証によって決まる、こういう形の最高裁判決になっております。その点からいきますと、民法上の通知の時と登記の時の前後関係をいかに立証できるか、こういう問題だろうというふうに考えております。
 そういたしますと、登記の時はいつでしたかということが登記所の方に問われるということ、またそれを一々問い合わせないと、今言ったような、同日付で通知と登記がなされたという、譲受人同士の間ではそういった問題が出てくるわけでございます。そういった点を配慮いたしまして、登記事項証明書にいわばサービスとして付加するものができないだろうかということで私ども検討を続けてきているところでございます。
 それならば、いっそ登記事項を登記の年月日時としたらどうかという御提案でございますが、これは、ほかの制度がすべて、例えば民法ですと確定日付ある通知という形になっております。こちらも、登記事項といたしましては、確定日付としての何月何日、こういうものでそろえてございます。ただ、先ほど申し上げましたとおり、最高裁の判例によりますと、同じ確定日付であっても、その先後関係を問うんだ、こういう形になってきておりますので、それに対応するものとしての登記事項証明書のあり方という観点で私どもは考えておるところでございます。
#24
○枝野委員 そこまではよくわかるのですが、そうすると、今度は一番最初の質問に戻ったところで矛盾が出ちゃうのじゃないかなと思うのです。
 というのは、対抗要件を備えるのは届け出受理の時点なのか、登記がなされた時点なのか。登記同士で優劣関係を決めるということについては、順番がしっかりついているから大丈夫ですという話になります。それから、同じ日になされるから大丈夫ですという話になっています。ところが、受理の時刻と登記がなされる時刻は、これはかなり、間違いなく食い違いが出るでしょう。
 どんなにコンピューターシステムでやったとしても、登記の申請を受け付けた、受理をした時刻と、それが実際に登記のファイルに記録をされた時刻と、ここには間違いなくずれが出ますね。それが、コンピューターシステムの運用で十五分なのか一時間なのか三時間なのか知りませんが、そこにずれが出ますね。これは、少なくとも当事者にはコントロール不可能な時刻のずれです。つまり、朝十時に届け出を出したのだけれども、登記がなされたのが、長ければ例えばその日の午後の一時だったとか、短ければ十時十分だったのか。これは、当事者にコントロールできない時刻のずれですね。
 これと確定日付ある通知、こちらは、一般的には内容証明郵便を使うというふうに思われていますが、先に公証人のところで確定日付をとっておいて、これは本人、自分のコントロールで、自分で持っていっても、これでも通知ですね。こちらは自分で、当事者のコントロールで時刻までコントロールすることができるのですが、登記の方は、自分の自由ではコントロールがききませんね。ずれが出ますね。おかしくならないですか。構わないのですか。
#25
○森脇政府委員 確かに、細かな時点が争点になるといったような事案について、今私どもが考えております方法で万全かどうかというのは、もう少し詰めさせていただきたいというように考えております。
#26
○枝野委員 もう一点、この制度の問題点は、債権債務関係が存在しているのかしていないのかにかかわらず、しかも、登記上債務者とされている人間の関知しないところで登記がなされて登記事項証明書が交付されることになります。
 AB間に債権債務関係が存在をしないのに、勝手に、Aさんが何億円の借金がありますということが登記をされ、それが譲渡されましたという登記事項証明書が交付をされるわけです。これは、もちろん登記には公信力がないということは法律家はわかっていますけれども、一般の人はそんなことは知りません。そうすると、法務局の判この押してある公文書で、AB間に何億円の借金があって、それが譲渡されています。そうすると、その借金を背負っている債務者は、ああ、この人は羽ぶりがよさそうに見えるけれども、こんな借金を負っているのかというふうなことを誤解をする人がたくさん出てくると思います。こうした人たちの利益を守らなくていいのか。経済上の関係などでは、このことによって不測の損害を受ける場合も出てきます。こうした人たちの保護を図らなくていいのでしょうか。
#27
○森脇政府委員 今回、この債権譲渡登記の制度を構築するに当たりまして、非常に悩ましい問題というものの一つが、今御指摘の債務者のプライバシーと申しますか、こういった問題でございます。
 債権譲渡登記制度を創設して、債権譲渡についての対抗要件を付与するという目的でございますので、対抗要件が付与されるということの前提といたしましては、債権譲渡の事実が公示される、これと対抗関係に入ろうとする者がいつでもその債権譲渡の事実を知り得るということが必要になるわけでございます。
 一方では、債権譲渡を登記しようとすれば、少なくとも、その債権を特定するために債務者の表示というのが登記事項にならざるを得ないという面がございまして、債務者の保護という部分と公示制度の役割というもの、言ってみれば二律背反的な要請をどう調整するかというのが重大な課題でございました。
 そのために、開示を求めることができる者及び開示の範囲を限定するということが考えられたわけでございまして、法律に書かれておりますとおり、登記事項の概要を開示する登記事項概要証明書というものをつくりまして、これには各債務者の情報というものは含まれない。この限度での開示を、対象者を限定とせずに認める。一方で、債務者に関する情報を含むすべての登記情報の開示を内容とする登記事項証明書を設ける。これについては利害関係のある者のみに交付するといった、二段階の公示の制度を設けることといたしまして、その調整を図ったところでございます。
#28
○枝野委員 配慮をしょうとされている努力はわかりますが、利害関係を有する者ということの中には、そもそも債権債務の関係ですから、当事者間でいろいろな利害関係が出てくるわけで、私は譲り受けましたという人は勝手に幾らでも出てくるわけですし、それから、その交付を受けた登記事項証明書がどこにどう出回るかということについてコントロールすることは法務局にはできないわけですから、やはり、存在しない債務が存在しているかのような登記事項証明書が出回って信用が損なわれるというケースは出るのじゃないですか。
#29
○森脇政府委員 この制度が予定しておりますのは、委員先ほどおっしゃっておられたとおり、確定日付のある証書による通知があったものとみなすという効果を与えるものでございまして、債権の存在や譲渡の真正を証明するものではないわけでございます。
 したがいまして、法律上債務者の利益が害されるということはないわけでございますが、今御指摘になられました、事実上登記事項証明書に債務者として表示されてしまう、このことは消えないわけでございまして、それをカバーするためには、この制度がそういった債権の存否等についての証明ではないのだ、債権譲渡の事実の証明なんだということの、言ってみればこの法案の趣旨、内容というものを国民に周知させるための方策が今度の場合には特に必要なのではないかというふうに考えておるところでございます。
#30
○枝野委員 要するに、公示力しかなくて公信力がない、特に債権の存在自体については公示力すらもないのでしょう、これは。それをきちんと登記事項証明書に書くということは最低限必要だと思いますが、しかし、よっぽどうまく書かないと素人はわからないと思います。なおかつ、そのこと自体は、債務者と表示される人の利益を考えたら、これは法律に書き込む事項じゃないかな。運用の中でそういったことを書きますというベースの話じゃないと私は思います。
 せめて附則のところにでもそういった配慮についての規定を入れ込む必要があるということを申し上げて、実はこの話について、この後福岡議員の方から引き続き体系的に問題点を指摘していただきます。
 一点、非常にタイムリーな話でぜひ御指摘をしておきたい問題があります。刑事局長にもおいでをいただいておりますが、五月十四日、昨日の毎日新聞に「検察へ「怒り」と「不信」が…」という大変ショッキングな見出しで新聞記事が出ております。
 これは、交通事故、ひき逃げ事犯での業務上過失致死等の事件について、警察がきちんと捜査をしてくれなかった、そして、検察がどうも捜査は途中で打ち切っていいなどという指示を出したらしい、それで検察審査会に申し立てをしなければいけないなというような話になっているようであります。
 この具体的な案件についていろいろお聞きをしても、個別案件でございますので、私自身事実関係も知りませんのでいいのですが、そもそも、特に交通事故のような事犯、事件について、被害者がいます、あるいは被害者の遺族がいます。それについて捜査をした結果、被疑者が当然不起訴になるような場合もあるでしょう。こうしたケースについて、被害者あるいは被害者の関係者に対してきちんと通知を行っているのかどうか。通知をきちんと行われていないケースが多々あるというふうに聞いています。したがって、いつの間にか自分の息子がひき逃げで殺されていた、だけれども犯人が見つかったという話も聞かないし、しばらくたってみたら実は不起訴で終わっていたというような話の当事者がたくさんいるようだ。
 この毎日新聞の記事も、交通事故で死んだ少年の両親、何で不起訴なんだということで、おかしいじゃないかとやっていたら、全国から同じようなケースでどうなっているかわからないうちに不起訴になっていたという声がたくさん上がって、それが検察への怒り、不信という話になっているという記事になっています。
 この被害者、関係者に対する処分の内容の通知をどのようにしているのか。これについては、私はやはり利害関係、法律上利害関係と言えるかどうか、刑事ですからわかりませんが、当事者として、自分に害を与えた犯人が、あるいは自分の家族の命を奪った犯人がどういつだ処分をされたのかということについて強い関心があります。これは行政として当然に尊重しなければならない思いだと思いますし、またこの処分、もちろん法律の絡む話でありますので、一般の感情と実際の処分とは食い違うということは当然あり得るとは思います。
 しかし、可能な限り、どうしてこういう処分になったのか、被害者側から見れば軽いじゃないかというような話のときには、特にその理由等をきちんと説明して理解をしてもらう、理解をしてもらえるように努力をするというようなことを行いませんと、こうした検察へ怒りと不信というような新聞記事が出るということは、検察にとっても不幸なことでありますし、現場の皆さんにとっては特に心外なことだというふうに思います。
 ぜひこの点、きちんとした対応をしていただきたいと思いますが、現状どうなっているのか、そしてどういう対応をしょうと思っているのか、お答えください。
#31
○原田(明)政府委員 御指摘の記事、私も拝見させていただきました。また、この事故自体につきましてもさまざまな反響がその処理をめぐってあるということも承知いたしております。
 一般的に、検察当局では、従来から交通業過事件に限りませんで、被害者等の希望があった場合など、相当と認められる場合には適宜の方法でその処分結果等をお知らせしているというふうに思いますが、ただ、それがやはり不十分である場合があったということは、このような事例に照らして認めざるを得ないと思います。
 現在、その通知のみならず、被害者に対する配慮と申しますか、国民の関心が大変高い点でございますので、実は最高検察庁においてもどのような対応をするかということでかなり詰めた議論をしている状況です。また、全国的にも、二十数庁の庁では現実にそれぞれの規定を持って、犯罪の被害者その他関係の方に希望がある場合等、状況に照らして必要な処分の結果について通知申し上げて、また必要に応じて説明するような取り扱いをしていると思います。
 しかし、現実に、ただいま御指摘のようなケースがあり、私自身も交通事故の被害者の方々とお会いする機会があって、確かにそういう点でもっともっと配慮しなければならない面があるというふうなことも私ども痛感しております。そういう点を踏まえまして、やはり刑事事件の捜査の結果でございますので、その通知のあり方についていろいろ考慮しなければならない面が別途ございます。
 しかし、さはさりながら、やはり被害者の立場ということを考えてできるだけの措置をとっていくということの必要は認めざるを得ないと思います。それに沿いまして、現在鋭意作業を進めさせていただきまして、規定の形にするのかあるいは運用の形にするのかあるいは基準を設けるのかという点を詰めて、早急に対応したいと考えております。
#32
○枝野委員 鋭意という部分に力を込めていただきました。ぜひ、急いでやっていただきたい、こういった声が出ているときでもありますので、お願いをしたいと思います。
 また、本案について、もうお答えは結構でございますが、検察審査会に不服申し立てをするようでございます。本案がどういう事案になっているのか具体的なことを存じませんので、強いことを申し上げませんが、もし可能であるならば、こういつたことについて内部で可能な調査をして、検察審査会を必ずしも待つ必要はないわけでありますから、必要があればそうした対応をすることも含めて御検討いただければと思います。
 ありがとうございました。
#33
○笹川委員長 福岡宗也君。
#34
○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。
 同僚の枝野委員の方から個別的な問題についてはいろいろと御質問を既にいただきましたけれども、私は、我が国の債権譲渡の対抗要件の全体の流れといいますか、構想というか、そういった点についてちょっと御質問をいたしたいというふうに思うわけでございます。
 今回の法律案によりまして、我が国の債権譲渡の対抗要件は、民法の定める譲渡人の通知、債務者の承諾、それから特定債権法によるところの公告、さらに本法案による登記という、いわば異質な三つの制度の組み合わせというような形になったわけでございます。したがいまして、本件の法案の可否を論ずるには、それぞれの法律の理念、目的、そしてその問題点というものを十分に検討して、さらにこの三つの制度というものの整合性についても十分な検討をしなければならないというふうに考えるわけでございます。
 御承知のとおり、債権は、物権のように直接物を支配するという関係ではなくて、人が人に対して一定の給付を請求するという権利でございまして、当事者の変更というのは権利そのものの変更となり得るというような考え方があるわけでございまして、従来は、古くは債権譲渡自体を禁止するという時代もあったわけです。しかし、近世の資本主義経済の発達というものは、債権という形で投資をいたしました資本というものを回収していくという必要が生ずるということで、その後、近代法においては債権譲渡は広く認められるようになってきたわけであります。
 しかしながら、債権は、先ほど言いましたように、人と人の関係によるものでございますから、その成立から存続、その過程においてそれぞれ個別性を有しておるわけでありまして、これは物権みたいな法定主義で内容が決まっているわけではございません。したがいまして、その個別性というものを尊重していかなければならぬわけであります。
 そうなりますと、当然、それを購入するというか、譲り受ける人たちの取引の安全性が問題になるわけでありますから、その安全性の保護という配慮も必要である。さらには、債務者自体が債権者が変わることによるところのいろいろな不利益というものもあるわけでございますので、債務者保護という形の面も十分に配慮されなければならない。こういういろいろな問題の調和点というのが必要になってきておるわけでございます。
 我が国は、民法施行当時から債権譲渡を認めておりますけれども、債権譲渡の対抗要件については、当然今私が申し上げましたような諸問題というものの調和という関係で対抗要件が定められているわけでございますので、まず一言で、現民法の対抗要件の概要、それからどのように調和が図られているかという点だけまず御説明をいただきたいと思います。これは法務当局の方にお願いします。
#35
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
 委員御案内のとおり、民法では、債権譲渡の対抗要件につきましては四百六十七条が規定いたしております。四百六十七条の一項は、譲渡人の債務者に対する通知または債務者の承諾を債務者の対抗要件という形にしております。それから、同条二項は、この通知または承諾を確定日付ある証書によってすることを第三者の対抗要件という形にしております。
 したがいまして、一項の方が対債務者の保護要件、それから、二項の方が取引の安全を考慮しているというふうな形で規定されているものと承知しております。
#36
○福岡委員 今御答弁いただきましたように、対抗要件の中身として、債務者に対して譲受人が主張できる対抗要件というのと、それからさらに、二重譲渡等の場合における第三者との間の対抗要件というものと、二つ規定があるわけでありますけれども、いずれもこれは、こういう規定にはなっておりますけれども、やはり問題点が多い規定であるということで、従来、非常に難しい法律判断が必要だということで、いろいろな判例が積み重ねられておるのは事実であります。
 若干これを申し上げますので、また御答弁いただきたいのです。従来からいろいろな問題点として指摘をされている、これは学者等によって指摘されておりますけれども、まず第一は、譲受人の安全性については、債務者が、予期し得ない抗弁を受けるおそれがあるわけであります。通知だけですと、通知までに生じた抗弁というのは、譲受人は知ることもなかなか困難でありますけれども、それは一応主張ができる。ということは、そこの債権が合成立していないとか、その後に弁済によって消滅したとか、相殺によって消滅したというようなことが、譲受人は知らないうちにそういうものがあって、抗弁を受けるということであります。
 さらに、二重譲渡等の関係についても、二重譲渡になるといけないから調査したいと思っても、なかなか調査がしにくいというようなことはございますし、それから、優先権を受けられる場合であっても、現実にもう債務者がそのことに気がつかずに事前に支払ったようなものについては支払いを免れるというようなことになりまして、やはり取引の安全上、問題が非常に多いというようなこと。
 それから、債務者保護については、問題点は、先ほどの裏返しにもなるわけでありますけれども、通知または承諾をするまでに生じた抗弁しか主張ができなくなってしまう、それ以後のことについてはもう一切主張ができなくなるということでありますので、通知後に瑕疵問題が発生をするというような場合であるとか、それから、相殺権の行使ができるかどうかというような問題については、かなり難しい問題があります。したがって、素人では判断がしにくいということ。
 それから、異議なく承諾をした場合には、これはすべての抗弁権を債務者は失ってしまうわけですね、どんな自分の言い分があっても。異議なき承諾というのは、我々専門家ならば、やはりこれは気をつけなければいけないということで判断するのですけれども、譲渡すること自体はいいですかと聞かれた場合に、それは結構だと言って、そのときに、格別こういうことがありますよ、例えば一部弁済されていますよとか、そういうような言い分というのを言わないということは素人の人は多いわけです。そういう場合に、全面的に債権譲渡をしたということだけでもってこれが喪失をしてしまうという問題もあるわけであります。
 それから、二重譲渡がされた場合の、いわゆるどちらが優先権者であるかということについての判断も、実際にいろいろな細かい裁判所の判例がございますけれども、この判断を素人にしろということは非常に困難だなということがあるわけであります。
 このような関係で、現行制度についての債権譲渡の対抗要件というものについても、これは十分に検討して手直しをする要素はあろうかというふうに思うのですが、今回の改正におきまして、今私が申し上げましたような問題点というものを是正をする、特に二重譲渡問題については、二つの対抗要件が三つにさらになって前後優劣が争われるということになるわけですけれども、その辺を含めて検討されたかどうか、まずお伺いをいたしたいわけであります。
#37
○吉戒説明員 二重譲渡の問題につきましては、本法案のもとでは、登記の先後によって優劣を決めるということにいたしております。また、民法の対抗要件との関係におきましては、通知の到達の時点と登記のされた時点、この先後によって優劣関係が決まるというように考えております。
#38
○福岡委員 今、私の質問したのとちょっと違うと思うのですね、お答えは。私の言うのは、現行の民法そのもの自体に先ほど言った問題点が非常にある、だからそういうもの自体をよりきちっと改定ができれば、本法案によって一つのまた新しい登記による対抗要件を定めても、そのいわゆる弊害といいますか、そういったものは縮小できるので、やはりこれは民法自体を体系的に見直すというような作業をしたかどうかということなんです。
#39
○吉戒説明員 民法の対抗要件につきましては、先ほど来から委員御指摘のとおり、債権の二重譲渡の問題につきまして、たくさんの判例がございます。
 いずれにいたしましても、最高裁の判例によりますと、二重譲渡の場合の優先関係は通知の到達の先後をもって決めるという形になっております。その通知の到達の先後につきましては、これは立証の問題になってまいります。そういうふうな隘路があるわけでございますので、ある意味では、今回の法案は、通知の到達という不明確な時点よりも登記のされた時点という形で、その時点を明らかにしたというふうに私ども考えておるところでございます。
#40
○福岡委員 例えば先ほど私指摘しました異議のない承諾については、公信力、つまり抗弁の対抗事態ができなくなるというようなことの制度なんかは、やはり先ほど言いましたように、債務者としては譲渡自体は文句ないよというようなことを言った場合に、抗弁権がもう完全になくなってしまう。切断どころかゼロになるという形なんかは非常に問題があると思うのです。
 そういった点を含めて、私の申し上げているのは、対抗要件制度全体として、例えば公告なら公告で全部してしまうとかなんとかというのならいいのですけれども、そういうような抜本的な検討がされたのかということ、それとも、単に今度の登記制度というものを設けるということだけの検討で終わっているのか、その辺を聞きたかったのですけれども、どうですか。
#41
○吉戒説明員 異議をとどめない承諾の関係につきましては、委員御指摘のとおり、これは積極的に異議をとどめないという表示は要りませんで、単に承諾をするということだけをもってしてその効力が発生するという形で、いささか問題のあるところでございますが、従来から通説、判例はそういうふうになっております。
 今回の法案が対象といたしますのは、法人のいたします債権の譲渡ということでございまして、債権譲渡一般について、別途の対抗要件制度を設けるものではございませんので、そういう限定された場面である。しかも、この制度を用いまして、今後その利用をされるのは、債権の流動化ということを念頭に置いておつくりしているものですから、民法の債権譲渡の体系そのものの抜本的な見直しということまでは、今回の法案では考えておりません。
#42
○福岡委員 確かに、流動化を図るために対抗要件として新しい登記というものをつけ加えただけの改正ということですけれども、結局、先ほど私が、民法の関係のいろいろな弊害といいますか、二重譲渡の問題、それから抗弁切断の問題とかありますけれども、それをより増幅させる作用というものが新しい登記制度を導入することになって出るわけでございますので、部分的な改正ということではなくて、本当は全体に対する体系の中から、果たしてそういうものを新たに設けていいだろうか、弊害はどういうふうにしたらいいだろうかという検討をすべきだという意見を私は申し上げておきたいと思うわけであります。
 それから引き続きまして、民法のそういう対抗要件の通知、承諾という原則の上に乗りながら、平成五年の六月に特定債権法という法律を施行しまして、民法の確定日付のある証書による通知にかえまして公告により対抗要件を具備できるものという制度をつくったわけでございますけれども、この法律の目的それから概要、大体どういうような内容なのか、まず御説明をいただきたいというふうに思います。
#43
○今清水説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、特定債権法が平成四年にできたわけでございますが、これはリースあるいはクレジット業者が資金調達の大層を銀行などの金融機関から借り入れる形で事業をしております。その資金調達がより円滑化され弾力化されることがやはり国民経済上大変有意義なことだということから、リース業者、クレジット業者が持っております消費者に対するあるいはお客さんに対する債権、これを流動化するというための仕組みをつくった法律でございまして、投資家の保護と消費者の保護と両方を目的としたものでございます。
 その中に公告制度といったものが出てくるわけでございますが、投資家保護のために、この法律では債権譲渡に当たって対抗要件を具備しろという義務づけをしておりまして、基本的には民法四百六十七条をおかりするという形になっておるのでございますが、実はそのリース債権なりあるいはクレジット債権というのは大変小口で数多うございます。まとまった資金量を確保するためには、例えば六万本とか三万本とかそういった小口債権をまとめまして、それを一括譲渡して資金化するという格好になるわけでございますが、それを四百六十七条の対抗要件のとり方でございますと、大変煩雑で事務的にも大変膨大な処理をしなくてはいけない、こういうことから、民法の特例といたしまして、日刊紙等による公告をすることによって四百六十七条の通知があったとみなすという特例をもうけさせていただいたということでございます。
#44
○福岡委員 結局、民法の通知または承諾という対抗要件の制度はそのまま維持をして、公告につきまして民法の今の通知、承諾と同じ対抗要件を有するものとするという二本立てみたいな形にしたというふうに思うのであります。そして、対抗ができる日、基準日といいますか、それは公告の日、こういうふうに定めたという新しい制度の創設であったというふうに思うわけでございますが、この点につきまして、やはり法務省側から今回の改正について提出されておりますところの法制研究会の報告書、二十ページそれから二十一ページにこういう批判がなされているのですね。
 第一のことは、まず書面の閲覧によって二重のアクセスが必要になる。いわゆる債務者の方としては、二本立てにすることによってそういう負担が非常にかかってくるというような形でやはり問題がある、そういうような批判がある。
 さらに第二番目は、公告手続を踏んだ債権の中に個別的に民法四百六十七条の対抗要件を具備した譲渡、差し押さえをされた債権がある場合、いずれが優先するかという問題を生ずることになって、それは同時に債務者に二重弁済の危険を負わせる危険性が大きくなる、この点について特定債権法は手当てはしていない。また、対抗要件の前後不明の場合の処理についても問題がある、これが第二点ですね。
 第三点目は、特定債権の公告制度のもとでは、債務者が知らない状態、要するに公告しましても実際にそれは通知されませんから、知らない状態においても対抗要件が具備をされてしまう。したがって、債務者として、もし公告がなければ通知が到達するまでに原債権者、これは譲渡人との間において生じた事由を譲受人に対抗できたはずなのに、こういう債権法に基づく公告がされた場合には抗弁事由を切断されて主張し得なくなる。
 大体こういう三点を批判しておりまして、結局こういったようなことが起こってくる原因としましては、いわゆる民法の債務者への通知という制度の上に公告という全く質の違う制度を重ね合わせたということに原因があるので、この辺のところの整合性をきちっとしなければ非常に問題があるということを指摘しているわけでございます。
 そこで、この点についての問題というのは、やはり今回の新しい登記制度をした場合にもさらにこの問題の批判というのが増大するというふうに思うのですけれども、この点について何らかの、本法案策定についての段階において十分に検討し、それをどこかの法文の中に盛り込まれているかどうか、これをお伺いしたいわけであります。
#45
○吉戒説明員 特定債権法の公告制度の問題点につきましては、今委員が御指摘のとおりでございまして、やはり公示の機能の十分性の問題あるいは債務者が知らない状態で対抗要件が備えられるというような問題、そういうふうな問題がございますので、この法案では、まず公示の点でございますけれども、これは登記制度を採用いたす、ついては、さらにその公示の方法といたしまして、登記事項の開示方法といたしまして登記事項証明書あるいは登記事項の概要証明書、そういうものを交付するという形で対処いたしております。
 それから二点目の、およそ債務者が知らない状態で債務者に対する対抗要件を具備することによります二重弁済の危険の回避あるいは債務者の抗弁事由が制限されてしまうというような問題につきましては、債務者の保護のために債務者に対して登記事項証明書を交付して通知をしないと債務者には対抗できないというふうにいたしておりますし、またその通知の時点以後に抗弁が主張できなくなるというような形で債務者の保護というものを図っております。
#46
○福岡委員 わかりました。そういうような配慮は一応されているということですが、今回の法律案でそういうことを配慮されておりますけれども、特定債権法そのもの自体は批判を受けた制度をそのまま残しておりますので、特定債権法自体の方も今回の改正に合わせて対抗要件の中身というものを変える、特に通知なんかの問題、今御指摘ありましたけれども、公告をするだけでなくて、公告したことについて直ちに債務者の方に通知をするとか、そういう民法制度、それからさらには特定債権法、それからさらに今回の登記というもの自体が、それぞれそういうまちまちという形ではなくて、全体を統一するというようなことは本来検討すべきだと思うのですね。
 だから、登記の時期で最終的には抗弁事由は切断せずに通知したときに切断するということだったら、公告でもそうしたらいいとか、そういう問題はあるのですよ。そこのところがなぜ検討して一緒にあわせてこれは修正されなかったか、その辺ちょっとお伺いをいたしたいわけであります。
#47
○吉戒説明員 お答えを申し上げます。
 特定債権法との調整の問題といいましょうか、どうするかということでございますが、一つには、特定債権法は大蔵省と通商産業省が所管している法律でございまして、平成四年につくられた法律だと、それで、その対象はリース・クレジット債権、特定の債権でございます。しかも、その譲渡業者あるいは譲受業者につきましては、特定債権法の中でかなり詳細な規制がかけられております。そういうふうな法律であると私ども承知いたしております。
 私どもの方のこの法案は、これはリース・クレジット債権に限りませんで、広く一般の金銭債権すべてについて登記制度のもとで債権の流動化を図りたいというような形でございまして、そこの役割分担といいましょうか、対象あるいはその目的の違いがあるというところで、こういうふうな形にしております。しかしながら、この法案の場合にはリース・クレジット債権も当然対象になりますので、特定債権法の対象債権は、この法案のもとでも、登記によって債権譲渡の対抗要件を具備することができるということになります。
 しかしながら、平成五年に特定債権法が施行された。私どものこの法案、ぜひ御成立をお願いしたいと思っておりますけれども、成立後どういうふうな利用状況になるのかということもよくよく見てみなければならないのではないかなというふうに考えておりまして、将来の課題といたしましては、委員御指摘のような形で何らかの調整が必要ではないかなというふうに考えておりますけれども、とりあえずは今後の利用の状況というものをよく見きわめてみたいというふうに考えております。
#48
○福岡委員 将来いろいろな検討をされるということで結構でございます。ただ、こういう立法の考え方の基本でございますけれども、確かに所管としましては、これは目的としまして、特定債権法の場合には、クレジット関係の要望に従ってそういう流動化を図るための基本的ないろいろなものを考えて、対抗要件制度はその一部なんだということは、もちろんそれは間違いありませんけれども、対象となる債権そのもの自体は、今御指摘にもありましたように、指名債権全体ということになれば、これは民法の適用も受けるわけですし、それから特定債権法の適用も受けるわけですし、今回の法律案の適用を受ける。三重に適用を受ける債権というのは相当数あるわけでございます。
 したがって、そのときに、それぞれの対抗要件、それに限定して法案を創設したり、それから変更したりするということは、三つの、全体の整合性の中でかえってふくそうしておかしくならないか。ここをこういうぐあいに規定するならば、前の法律はこういうふうに直すというところの検討をせずに限定的に法制度を整備してしまうということは、大きな矛盾が出てまいりますし、関係者の利益を大いに害する、判断が困難になるということがあるということだけをちょっと指摘しておきたいわけであります。
 ぜひともこれは、今後の法制度の改善の中では、必ず共通の問題については共通の利害というものは調整できるような形の整合性をはっきりとさせていただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、次に、本法律案の目的とその概要についてでございますけれども、これについては既に趣旨として御説明が成っておりますので、対抗要件で一番大切なところだけを概略的に説明をしていただきたいというふうに思います。
#49
○森脇政府委員 本法案の対抗要件についてでございますが、まず言えることは、従来、債権譲渡の対抗要件、対抗要件と言われておりますのは、委員がさきに御指摘になりましたとおり、対債務者との間の対抗要件、それから債務者以外の第三者との間の対抗要件という二つの部分があるわけでございます。今回の法案におきましては、これを二分して考えると。今までは、言ってみれば、確定日付ある通知を債務者にすることによって債務者対抗要件も第三者対抗要件もつながった、こういう点で、どちらかというと、わかりやすさというのは、その面であっただろうというふうに思われるわけであります。
 今回の法律は、いろいろな観点から考えまして、多量の債権の譲渡にもたえられるような、現代にマッチしたような形での対抗要件ということで登記制度を創設することにいたしまして、その登記がなされることによって第三者対抗要件はこれによって具備する、さらに、それだけで決めてしまいますと、また債務者の知らないうちに自分にその効力が及んでくるという債務者の不利益の部分がございますので、そこを配慮いたしまして、債務者を保護するために、債権譲渡登記の効力を債務者に及ぼすためには、登記事項証明書を交付して通知する、個別の通知が必要だ、ここの部分を残したという点が今回の法案の大きな特色であろうというふうに考えております。
#50
○福岡委員 今の御説明によりますと、対抗要件、二つある。第三者の優先順位の決定については、登記の日の前後によって決めるということですね。そして、債務者に対する対抗といたしましては、登記の日ではなくて、証明書を交付して通知をしたときの前後によって決まってくる。したがって、通知を受けた日前に生じたところのいろいろな抗弁的な事由というのはすべて対抗できるが、それ以後のものは対抗できない、こういう形になるわけですね。
 そうすると、特定債権法では、公告をした日が対抗要件となっていますが、これは、第三者であろうが、債務者に対する場合であろうが、一緒なんですね。その点、答弁してください。一緒ですか。それで、一緒であれば、なぜこれを合わせなかったかということですね。
#51
○森脇政府委員 言ってみれば、二つの要請があるわけでございまして、債務者保護をどういう形で図るかという観点を考えますと、何らかの形での債務者本人への通知、これは民法の、現行の債権譲渡規定のいい点だろうと思われるわけです。したがいまして、その点は、ぜひともこれに近いものを残したいという考え方でございます。その結果といたしまして、特別法によってはこれが一致し得たのに、通知というものと登記の前後というものと、これを分けざるを得なかった。その面ではそれだけ複雑な制度になったということは言えるかもしれませんが、債務者保護のためにはぜひともこういうシステムを構築する必要があったということでございます。
#52
○福岡委員 私自身も、公告制度で公告しつ放していいという制度、だから今回の場合は、登記をしたら登記しっ放しで通知せぬでもいいという制度、こういった制度はよろしくないので、やはり登記をしても証明書を交付して通知するという制度にした方がいいと思っているのですが、そうすると、対抗要件が特定債権法とこれとで違ってきちゃうということがあるのですよ。公告の日であった、片一方は通知を受けた日と。
 だから、やはりここを合わせるためには、この制度の方がいいと私は思いますから、これに従ってより明確にするためには、特定債権法の方もそういう同じような通知制度を設けて、通知のときまでのことは対抗できるというような制度にやはりしなければちょっとまずかったのだけれども、その辺のところの検討が今回の法案では十分じゃなかったのじゃないかな、こういうふうに考えるわけであります。これは今答えぬでも別によろしいので、だから今後は、やはりそういう点の検討を早急にしていただきたいということだけ要望しておきます。
 そこで、登記に対抗要件を与えるという形になったわけでございますけれども、先ほどの枝野議員の御質問にもありましたが、この登記というのは、法案によりますと、譲渡人及び譲受人の共同申請という形になっておりまして、商号であるとか本店、登記原因、それから債権を特定する事項というようなものを登記するということになっているようでありますけれども、債務者が何らかの形で、登記申請に当たりまして意見を述べるとか異議を言うとか、そういう関与する制度というものは、これは全然ないのでしょうか。ないとすればなぜそれを入れなかったか、ちょっとお聞かせを願いたいわけです。
#53
○吉戒説明員 お答え申し上げます。
 この債権譲渡登記の申請に債務者を関与させるべきではないかというお尋ねだと思いますが、実は、委員御承知のとおり、債権譲渡は、これは譲渡人と譲受人の契約でございます。この両者間の合意によって成立するというものでございますので、この場合には債務者はおよそ関与いたしません。それを登記の場面でも反映させているということになります。したがいまして、債権譲渡契約の当事者ではない債務者は債権譲渡登記の申請の申請人たり得ないというような考えで、こういう形にいたしております。
    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
#54
○福岡委員 不動産登記法による登記の場合には、特に制限的なことは、登記していないことについては対抗できないという問題がありますので、物権法定主義で、何も書いていなければ完全な権利として権利が確定しておるということになるわけでございますから、別にそれは問題はないのですけれども、今回、譲渡の対象になっているのが債権ということになると、債権の個別性で、いろいろな抗弁もあったりいろいろするということなんですから、その登記に原因として掲げられたものが真実であるかどうかということは、どういう抗弁があるか。実際は消滅しているとか、またいろいろなことの事由を瑕疵問題で主張される可能性があるとか、いろいろなことがあるのですよ、債権の場合は。したがって、譲り受ける場合も、これは登記を見れば信じてしまうということになるのですね。そうすると、取引の安全性も害する。
 それから、債務者の方からいたしましても、自分が弁済するとか支払いを拒絶する正当な事由があるから支払わないのに、債務者として当然支払い義務があるものとしてそれが登記に載せられる。債務者も譲受人の方も両方ともに、これはもう大きな損失をこうむる可能性のある、特に信用の問題も含めまして、事由があるのですね。
 したがって、利害関係人とかなんとかというのは、譲渡についてのことだけでなくてその全体を通じて、先ほど私が言いましたように、対抗要件は、債務者の保護という関係とそれからさらには譲受人の取引の安全性ということ、両方の配慮の規定を置くというのが原則なんですから、やはり当然に、これは債務者について何らかの形で、登記の申請のときにいろいろな意見を言う機会を与えるというような形を考えなきゃいかぬと思うのですけれども、その点、どうですか。
    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
#55
○吉戒説明員 先ほど委員の方から御指摘ございましたけれども、この債権譲渡の登記は何を証明するかといいますと、債権譲渡の事実を証明するというものでございまして、その債権の存在でありますとかあるいは債権が真正に成立したというようなことは、証明の対象ではございません。したがいまして、その限りにおいて債務者を登記の申請に関与させるのはいかがなものかなというふうに考えまして、登記の申請には関与いたさないという形でスキームをつくっておるわけでございます。
#56
○福岡委員 そういう考え方は一つの考え方ですけれども、しかしながら先ほど私が申し上げた、いわゆるそういうものを、これは大量に債権回収のために譲渡しようという前提なんですから、大衆投資家なんかもどんどん出るわけですから、そういう人たちのために、本当に大丈夫かどうかということの判断はできないのですよ、これは。登記してあればある程度、公信力はなくても安全だということならばいいのですけれども、これだと全く債務者からの意見を聞いていませんから、安全性が非常に問題になる。ある意味で消費者被害が出るのじゃないかということがあるのでそれに対する手当てなしというのは、私はこれはちょっと不備だというふうに思うわけでございます。
 それからもう一つ、この法律を見ますと、何人も登記事項の概要を証明する登記事項概要証明書の交付を請求することができる。いわゆる無制限に概要証明書を請求できるということになっているわけですけれども、先ほどの中でその内容を説明されましたけれども、債務者の名前というのは、これは絶対に出ないのですか。それから、債権の内容そのもの自体もどの程度書かれるか。ちょっと簡単に、それだけ答えてください。
#57
○森脇政府委員 お答えいたします。
 債権譲渡の登記概要証明書の方でございますが、これは、五条の六号の事項を除くものでございます。したがいまして、六号には「譲渡に係る債権の債務者その他の譲渡に係る債権を特定するために必要な事項で法務省令で定めるもの」、この部分が欠けているという、概要証明書の内容というものはそういうことになるわけでございます。
 したがいまして、どういうことがわかるかといいますと、譲渡人、それから譲受人、その譲渡に係る債権の総額、その債権譲渡の登記原因、それからその月日、登記の存続期間、登記番号、こういうものが示されるということでございますので、その中で個別の債務者がだれだれであるのかということは、この中では示されないというシステムを考えました。これによって債務者のプライバシーを可能な限度で保護しようという趣旨に出たものでございます。
#58
○福岡委員 その限りにおいては、この概要証明書によるところの債務者保護というのはある程度なされるということですね。
 それから、利害関係人が登記事項証明書の交付を請求できるというのは、先ほど御説明のございました登記において記載する事項全部についての証明書ということでお伺いはしてよろしいのですか。
#59
○森脇政府委員 そのとおりでございます。
#60
○福岡委員 そうしますと、まさにこれは枝野議員も御指摘のありましたように、利害関係人がそれを取得して、これをさらに謄写して広く流布するとか頒布するというような形で、特にこれは転売、転売を許すわけですから、その転売をするときに、譲受人が、例えば、さらにこういう債権が非常に有利だから買いなさいよというときに、何もなければわからないので、登記事項証明書を添付して新しい買い主を見つけるというようなことで頒布されるという可能性は非常に大きいと思うのですけれども、その点はどうなんですか。特に、今回の場合は流動性を確保するためですから、そういうことが非常に多いと思うのですね。
#61
○森脇政府委員 債権の流動性促進の観点から申し上げますと、今先生御指摘の場合が非常に多いということは言いにくいのではないかと思っております。
 と申しますのは、多数の債権を有している者が特別目的会社に対してこれを譲渡する、特別目的会社がこれを担保とする証券等を発行する、こういう体制が一番利用可能性の強いものとして想定されているわけでございまして、一たん譲り受けた債権をさらに他に譲渡するということは、必ずしも債権流動化の本来予想しているところがらは起きにくい話であろうとは思っております。
 とはいえ、今御指摘のような事例が起きることは間違いございません。したがいまして、債権譲渡の登記のされた債権をさらに譲り受けようとする者、その者はその債権の内容を知る必要がありますから、恐らく第二の譲渡人に対して登記事項証明書を持ってきてくださいと言うだろうと思います。
 したがいまして、そういう限りでは、先生御指摘になりました債務者のプライバシーと申しましょうか、債務者として表示されているこの限度での情報がその限度で知れることになる、これは公示制度というものをとる以上やむを得ないのかな、ここまでは表に出てしまうことはやむを得ないのかなというふうに思っております。
 ただ、それは再々申し上げておりますとおり、この登記は債権譲渡契約があった事実の登記なんですよ、債権があるないの登記ではないのですよ。ここの点を国民の方によく知っていただく必要があるだろうというふうに思っております。
#62
○福岡委員 ちょっと苦しい答弁だったと思いますけれども、結局、国民というのはどちらかといいますと一般大衆投資家みたいな人ですから、それを対象にしての流動化ということですから、どうしてもやはりきちっとしたそういう説明を十分にするというような手当てを何かするとか取り締まりをしないと、非常に問題があるところではないかなというふうに思うわけであります。
 そこで、先ほど、登記に際しまして、共同申請をするというその段階で債務者の関与を仮に認めないにしても、その後、債務者の方が通知を受けた、登記事項証明書の交付を受ける、その段階ぐらいで異議申し立てをするとか登記の抹消請求権を行使できるとか、そういうような制度にすればこれは弊害が半減すると思うのですが、そういった制度というものはなぜ検討しなかったのでしょうか。そういう制度がありませんね。まずそれを聞きましょう。そして、それがもしもないとすれば、どうしてそういうことをしなかったのか。
#63
○森脇政府委員 先ほど来申し上げておりますとおり、これは債権譲渡の事実の登記であるということに法律上は徹しているわけでございまして、そういった意味では、債務者には法律上の不利益というのは生じない。抗弁権の問題であるとか二重弁済の問題であるとか、そういった意味での不利益は生じない。
 ただ、今先生御指摘のとおりの、こういう形での不利益でございますので、この点はその限度ではやむを得ないのかなというある意味での割り切りでございます。
 ただ、ここにつきましては、例えば債権差し押さえ、仮差し押さえ等の場合にどうなっておるのかというような周辺の制度との並びの問題もございまして、そこでは必ずしも債権の存否ということは調査されずに命令が出されるというシステムにもなっているわけでございます。
#64
○福岡委員 わかりました。どんな制度でも、制定すればいろいろな不備な点とか盲点的なものが出るのはやむを得ないと思うのです。ただ、基本的な考え方としましては、こういう取引の安全とかそういう問題については非常に大きな被害も出る可能性のある事案でございますので、やはりそういったものの手当てというものを含めて、確かに譲渡という関係を証明するだけのものであって、直接的に権利内容を確定するものでないことは私も十分承知しております。だけれども、そういう観点だけから法制度を整備しては間違いがあるので、そういう点も含めた温かいといいますか、わかりやすいといいますか、そういった手当てというものを今後考えていただきたいということを、これは要望しておきます。
 それから次に、不動産登記についても公信力はありませんので、先ほどの御答弁の中にもありましたように、債権譲渡登記も公信力はない、だから、これは登記によって別に権利内容が確定するわけではないのだということ。これはこれでいいのですが、不動産登記においても事実上の、公信力はないが推定力があるということは判例でもあるわけでございまして、結局、債権譲渡登記をしますと、公的な法務局が取り扱うということだから、不動産登記と同じようにその登記内容、抗弁問題とかいろいろなものについても、やはり一定の推定力というのが働くのじゃないだろうか一そういう判例なんかも生まれる可能性があるのじゃないかなというふうにも思うわけですが、その点はどういうような検討をされましたのでしょうか。
#65
○森脇政府委員 これは、債権譲渡登記制度の目的、趣旨からいたしますと、債権の存在でありますとか譲渡の真正について何ら推定力を生ずる性質のものではないというふうに断言できるわけでございます。それでは、それで一致できてだれも疑わないかということでございますが、これはこの制度をきちんと御理解いただくということが前提でございますが、その上では推定力が働くというような議論は起こり得ないものだというふうに考えております。
#66
○福岡委員 法的な推定が働くかどうかは御答弁のとおりだと思うのですね。したがって、そういう場合に、制度の本質から見て、裁判所において推定力が働くというような形まではいかないでしょうけれども、かもしれないと思うのです。可能性は私はあると思うのです。仮にそうだといたしましても、これは枝野君も指摘をされておりましたけれども、社会的には、不動産登記についても公信力がないのだけれども、現実の取引においてはやはり登記事項を信用して、所有権者と書いてあれば、その前の段階でいろいろな売買等についての瑕疵があったって、そんなことは一致を考えずに登記を信用して取引をする。したがって、実際に債権譲渡登記も、そこに債務者としてだれだれが記載されて、金額とか具体的に書いてあれば、それはそれなりに安全だということでもって信じて取引するというのは当然のことだと思うのですね。
 だから、そういったものについての配慮というのが、そういう形式的論理だけでもって十分に配慮されていないということは、法制度としては極めて問題だろうというふうに思うわけであります。
 そこで次に、今回の法改正によりまして三つの対抗要件制度ができたわけであります。民法の通知、承諾、それから特定債権法の公告、それから今回の登記ということになったわけです。
 したがって、簡単に設例で一点だけお伺いしたいのですが、まず一番最初に本件の登記がなされた、年月別に見ると一番早くという意味ですね。ところが、実際に債務者への登記事項証明書をつけての通知がないまま、ずっとこれが放置されてきた。その放置されている間に、特定債権法による公告がなされた。二番目になされたのですよ。その公告がなされた日よりもその後に、民法の確定期目つきの通知がなされた。そして、その確定日付つきの通知がなされた後に、今度は、一番最初になした登記、これの債務者に対する登記事項証明つきの通知が一番最後になされたという場合における、この譲受人、第三者が三人いるわけですけれども、その三人の優先順位は一体どうなるのかということをちょっとお伺いしたいのです。これは非常に難しい問題だと思うのですけれども。
#67
○森脇政府委員 今度の制度を考えます場合には、先ほど来申し上げましたように、債務者以外の第三者の対抗要件の問題であるか、対債務者の問題であるか、この仕分けをまずしなければなりません。今の御質問は、第三者の対抗要件の問題でございます。
 そういたしまして、一番早い段階で本法案にある債権譲渡登記がなされた、次に公告がなされた、次に民法の確定日付の通知がなされた、こういうことでございますが、この段階で既に、登記の先後によって第三者の対抗要件は決めますよ、こういうことになっておりますので、それは登記を取得した者、これが優先するということは明らかでございまして、その点は、登記事項証明書を交付した通知がなされるかどうかということとはかかわりのない問題でございます。
#68
○福岡委員 対抗要件の順序の判断は、確かに今御説明のあったとおりで正解だというふうに思います。
 そこで、問題になるのはどういうことかといいますと、現在においてもすべて、登記事項の証明書の交付もなされているという完結したような状況ではそうなのですね。ところが、今の三つの、登記がなされたり、通知の関係とか、そういうものを総合的に見ると、債務者が免責されるかどうかという問題が一つあるわけですけれども、これはその時々の場面で違ってくるというふうに私は思っているわけであります。
 特に、登記の日付が一番早いのですけれども、この登記のことについても、全然これは通知がありません。それから、次の、公告をしたときも、公告者から通知がない。したがって、債務者としては、最後に来た民法上の債権譲渡の通知だけがなされた。こういう状況になりますと、債務者としては前の二つのことは知らぬわけですから、当然これは最後の民法上の通知をしてきた人へ払ってしまえば免責されてしまうということになるわけです。
 そうすると、登記をした人はどうなるかといいますと、本当は第三者同士の優先順位としては優先権があるけれども、既に消滅してしまっていて、それが債務者について責任がないということになれば、これは債務者に対して責任を追及することはできないということになりましょうし、それから、公告も、やはりそういう形で、むしろいわゆる譲渡人からの譲渡通知の前に公告しても、例えば登記は知らなかったけれども公告の方だけは債務者が知ったというような場合に、これを払ってしまったといった場合でもこれは有効な弁済になると考えざるを得ないのですが、この点はどうなんでしょうか。
#69
○森脇政府委員 今度は、対債務者との関係でございます。
 対債務者との関係では、本法案による登記がなされておっても、登記事項証明書の交付に伴う通知がない限りはこれを無視していていい、こういう関係になります。そういたしますと、登記事項証明書の交付があるまでは、債務者としては、二番目が公告したものであれば、二番目のものを権利者として認めざるを得ないということになってくるであろうということでございます。
 ところが、まだ弁済する前に登記事項証明書の交付があった、通知があったということを考えますと、今度は、この登記事項証明書の通知があることによって、一番早い段階で登記を経た者、これを債権者として認めざるを得ない、この者に弁済しなければならない、こういうことになってくるわけでございます。
 それから、ほかの債権者に弁済したことによって債務者が免責されるというか、債権が消滅してしまったという場合の取り扱いでございます。その場合には、確かに早い登記をしていても、登記事項証明書を交付していない債権者としては、もはや債務者に対する請求はできなくなるわけでございます。
 ただ、債権者同士では、対抗要件を持っておるのは、一番早い時点での登記をした者ということになります。したがいまして、その弁済を受けた者に対しまして不当利得の返還請求をするといったようなことは可能になってくる、こういうことでございます。
#70
○福岡委員 結局、私が言いましたことと同じことの答弁だというふうに思います。
 そうなりますと、どうなるかといいますと、確かに、客観的な、公告の日とか、登記についての通知をしたということとか、それから確定日付の通知が出た日、そういう三つの点がありますが、それではかればいいのですが、実際には、債務者がそういった事実をいつ知ったかということ、善意であったかどうかによって、弁済の効力ということが有効か無効か決まってくるのですね。
 そうすると、先順位で自分は安心だと思っていても、一日違いでもう既に払ってしまって消滅しているということになると、絶対の権利者だと思っていたのが、もう全然払ってももらえないという状況になるという形で、極めてその判断が難しいという状況は、現在の三つの制度の組み合わせでは出てくるということにはなるというふうに思うわけでございます。
 したがって、先ほどから私申し上げているのは、形式的には一応結論は出ましょうけれども、非常に迷う。これは事実調査も必要だし、煩雑だし。仮に私の事務所へ債務者が来て相談をする、それからまた、譲受人になろうとする人からいろいろ相談を受けたって、これは本当に確定的なことが言えるかどうか、極めて問題だと思うわけであります。弁護士のうち、専門的な優秀な人もおりましょうけれども、一般的な知識からすると不安を持たざるを得ないなというのが実情だろうと思うのであります。
 したがいまして、この制度、確かに流動化を認めて、経済的な効用というものがあることは認めますので、やはり取引の安全性の面からの問題と、それからさらには、やはり債務者の保護、抗弁権の切断についても、明確な形に一本化するといいますか、そういう形にして、やはり迷いがなく判断ができるというような制度にしないと、債権の対抗要件の制度としては不完全な制度と言わざるを得ないというふうに思うわけでございます。
 したがいまして、成立の経過、例えば流動化のため、この債権については特に必要だからということで継ぎはぎでやってきたということを仮によしとしても、このまま放置してはいけないので、それに対する、そういう問題点は指摘されているわけだ、学者の間でも、それから法制研究会でも。そういう面は早急に手当てをすべき必要があるというふうに考えるのですけれども、この点について、法務当局と、それから大臣の見解を求めたいというふうに思います。
#71
○森脇政府委員 新しい制度を構築するに当たりまして私ども非常な苦労をし、今こういう形での法案ということにやっと練り上げたところでございます。
 ただ、先ほど枝野先生から、ただいまも福岡先生から御指摘されているとおり、これが完全で一番わかりやすい制度だというようなことは、毛頭、私どもも考えておりません。確かに民法と今回の特例法と二つの対抗要件をつくることであっても、特に一般の債務者の方にとっては判断が困難な面が出がちであるという点は心しなければならないだろうと思っております。
 そういった点を基礎にしながら、また、この法案を通していただきまして実際に運用してみると、また問題点というのが明らかになってくる部分があるのかもしれません。そういった点も含めまして、私どもも検討を重ねてまいりたいというように考えておるところでございます。
#72
○下稲葉国務大臣 先ほど来るる御指摘があったとおりでございますが、今回の法律は、法人の債権譲渡の活性化を図るという立場からお願いいたしていることでございます。しかし、ただいまいろいろ御議論がございましたように、登記であるとか通知であるとか公告であるとか、あるいは時間の問題であるとか、いろいろな問題があるということは私ども承知いたしております。
 債権譲渡に関する制度が国民にとってわかりやすくなるということが必要でございまして、私どもはそういうふうな意味で、広報活動は広報活動として一生懸命やってまいりたい、このように思いますが、民事基本法を所管する法務省といたしまして、今御指摘のような点を常に十分関心を持って見てまいりまして、そして、総合的にどういうふうにすればいいかというふうな点につきましては、御指摘の点を踏まえまして引き続き検討してまいりたい、このように思います。
#73
○福岡委員 どうもありがとうございました。直ちに前向きに検討をしていただけるような御趣旨でございますので、ぜひそうお願いしたいと思います。
 特にこの問題は、具体的に被害が出たときには大きな被害も出る可能性がある、特に消費者問題的な被害もありますので、特に債権の内容について、そういう債権の内容というのは不確定な問題が結構あるから、大衆投資家の方としては十分注意すべきだということの喚起を十分にしなければいけませんし、それから、債務者の方も、自分の知らないうちに登記というような形は、これは非常に不利益をこうむるおそれがあるので、これもぜひとも、信用上からすればそれによって会社自体がパンクしてしまうかもしれませんという重大な被害も予測されるわけですから、この二点については早急に、具体的にどういう救済方法があるのか、制度の手直しをぜひとも図っていただきたいということを強く要望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#74
○笹川委員長 上田勇君。
#75
○上田(勇)委員 平和・改革の上田でございます。
 法案の中身については後ほど漆原委員の方から質問をさせていただきますので、私の方からは、この法案を含みます債権流動化のスキームと、それからそれに絡みます。辺的な事項につきまして、何点か質問させていただきたいというふうに思います。
 金融機関が今膨大な不良債権を抱えていて、不動産市場が低迷している。それをいかに解決していくかというところで、この不動産の証券化というのが非常に有力な手段であるというふうに、政府においても、昨年の金融制度調査会あるいは緊急経済対策等でもそういうような言及がされているわけであります。
 この法案は、今大蔵委員会の方でちょうど審議中でもあります特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律案、通称SPC法案というふうに言っているようですけれども、などとともに債権の流動化を進めていくという施策の一環として提案されているというふうに理解いたします。
 まず最初に、資産流動化の促進を図るために、債権譲渡の第三者対抗要件の具備を簡素化していく必要があるというふうに各種報告等、各方面からも言われているわけでありますが、この法案によってその点についてどのような効果を期待されているのか、法務省の方から御見解を伺いたいというふうに思います。
#76
○森脇政府委員 この法律の範囲だけではないわけでございますが、現在、債権流動化の典型的な方法としてどういうものが考えられるかということでございますが、資金調達をしょうとする企業が、自己が保有している多数の債権を一括して今委員御指摘になりましたSPCに譲渡する、SPCの方でこうした債権の信用を裏づけとして証券を発行する、これを投資家に販売する、こういうメカニズムでございます。言ってみれば、企業が有していた債権をSPCに譲渡することによって資金の調達が得られる。また、SPCの方もこれを証券化して投資家に販売することによって譲渡代金を回収するというような形が考えられておるわけでございます。
 その場合に、SPCに譲渡する債権というものが多数に及びます。したがいまして、これを民法上の第三者対抗要件である確定日付ある通知または承諾というものを各債務者について具備するということは、実務的には困難でございますし、また、これをやろうとすれば費用の負担も大変かかるというところでございまして、本法案は、一括して迅速かつ簡易に第三者対抗要件を具備することができる制度を創設しようとするものでございます。
 それで、個々の債務者に対して譲受債権を主張しようという場合には、登記事項証明書を交付してする通知が必要になるわけでございまして、ここではほとんど手続的に同じではないかということになるわけでございますが、実際、債権流動化の典型的な場合の方法といたしましては、もとの債権者、オリジネーターが債権譲渡をする、その後も債権の回収はもとの債権者が実はやっておる、それを、回収したものをSPCの方に交付する、こういう形のものが考えられておりまして、そういたしますと、債務者の方への通知というものは事実上なされずに済むという場合が通常の場合になるわけでございます。
 そういった典型的な債権流動化のシステムの中で、債務者に対する個別の登記事項証明書を交付してする通知が必要になる場合というのは、オリジネーターが破産するおそれがある場合でありますとか、差し押さえをされるおそれがあるといったような場合、あるいは二重譲渡をするおそれがある場合というのが、予測できるかどうかわかりませんけれども、そういったような場合に登記事項証明書を交付してする通知の必要が出てくるのだというふうに理解いたしております。
#77
○上田(勇)委員 この法案で第三者対抗要件の手続を簡素化するということで、SPCを使った債権の流動化が簡単に、容易になるのではないかということだったというふうに思いますけれども、この法案を含みます、先ほど述べましたSPC法案も含めまして、今いろいろな、これまでの政府の文書においては、これがとりわけ今不良債権問題で重要になっている不動産の流動化を進めるための一つ大きな目的というふうにされているのですけれども、不動産の証券化、流動化を促進することによりまして、今金融システムのこの不安の根底にあります不良債権問題、この問題にどのような効果が上がっていくのだろうか、不良債権の処理が果たしてどのぐらい進むのだろうか、その辺どのような効果を期待されているのか、お考えを伺いたいというふうに思います。
#78
○片山説明員 ただいま委員御指摘の、いわゆるSPC法案でございますが、特定目的会社、いわゆるSPCを活用いたしまして債権や不動産といった特定資産の流動化を促進する制度を確立するものでございますが、ボンド、債券だけではございませんで、エクイティー、株型の証券も発行できるようにしておりますし、広い意味でのディスクロージャー等の諸般の整備を行っておりまして、こういつたことによって、一般投資家によってもこういった資産への投資が容易になって、先生御指摘のように、不動産の流動化も促進され、さらに不良債権の流動化も進む、こういった効果が期待されているところでございます。
 さらに、先般の総合経済対策におきましても、不良債権問題を抜本的に処理するとの観点から、そのSPCの活用を含めまして、土地、債権の流動化、それから土地の有効利用を促進するための総合的なトータルプランというものが策定されたところでございまして、これも相まちまして、金融機関の不良債権処理に向けた従来からの取り組みとあわせまして処理が進むものと期待して、どのぐらいという定量的なところは非常に難しいのですけれども、かなり、一段と進むということを期待しているところでございます。
#79
○上田(勇)委員 不良債権の問題というのは、もう長い間にわたりまして我が国の金融システムの重要な問題として続いてきて、それの処理がなかなか進まないというのが今日まで残念ながら続いてきているわけであります。あらゆる手だてを考えていくというのは、むしろ遅きに失した面もあるかと思いますが、その重要性は私も非常に重要なことであるというふうに考えるわけであります。
 アメリカでは、不動産を証券化することによって、一般の小口投資家の資金によって不動産市場が活性化してきました。もちろん、このアメリカにおける例を見てみますと、この証券化されたものの、いわゆる証券の二次市場の整備が非常に進んでいる。そこが日本と、日本には今二次市場がないわけでありますけれども、当然、この今回の法案を含めます一連の法整備が、一次市場というのでしょうか、をつくり出すためには必要なことであるのは当然のことなんですけれども、不動産の証券化が本当に進んで、不良債権の回収が進むというためには、ABSが円滑に流通して取引されていくというような二次市場の整備がなければ、この一連の法案で一次市場を整備しても、二次市場の整備がなければ本格的には進まないというふうに思われますけれども、この点についてどのように考えられているのか、また、今後どのような方針で臨まれていくのか、その辺についてお考えを伺いたいと思います。
#80
○山崎説明員 不動産等の資産の証券化が進展していくために流通市場の発展が重要であるということにつきましては、委員の御指摘のとおりでございます。流通市場の発展のためには幾つかの条件がございまして、その証券のディスクロージャーがきちっと行われているということ、それから価格が公示されているということ、決済制度がきちっとしているということ、このようなことが重要かと思われます。
 先般の総合経済対策におきましても、不動産に係る情報のディスクロージャーの拡充、特定目的会社が発行する社債のうち、適切なものにつきまして、気配値の公表とオンライン決済の実現等の措置が盛り込まれたところでございます。今後、こうした措置を実施していくことを通じまして、ABSの流通市場が発展していくことを期待しているものでございます。
#81
○上田(勇)委員 よく不良債権の問題が議論されるときにこれまでも問題になってきたのが、暴力団等の関与があって、なかなか不良債権の回収が進まないということは、これはもう数年前になりますけれども、国会で住専の問題が議論されたときから提起されてきた問題であります。もちろへこのスキームで想定しているのは、冒頭御答弁いただいたように、SPCを使った債権流動化であって、暴力団等の関与というのが非常に想定しにくいということは当然承知でありますけれども、本法案によりまして、債権の譲渡が容易になるわけであります。
 そこで、債権がそういった暴力団関係者に譲渡されるということは考えられないのか。また、債務者の方からすると、暴力団から借りたつもりがないのが、知らないうちに、いつの間にか債権者の方が暴力団関係といった、そういう事態になることはないのか。また、仮にそうした事態に至った場合には、債務者の保護についてはどのように考えられているのか。そのあたりのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#82
○森脇政府委員 現在の民法による債権譲渡の制度下におきましても、債権譲り受けという形で暴力団が介入して、債務者に対して債権取り立てに名をかりて違法行為に及ぶというような事件が時々報道されるところでございます。今回の制度創設によりまして、先ほど御説明したような大量の債権の譲渡、これについての第三者対抗要件の取得、これは明らかに本制度によって容易になるわけでございます。
 ただ、今回の制度では、債権の譲受人が債務者に対して直接支払いを請求するという場面を考えてみますと、そのためには債権譲渡の登記を受けなければならない、さらに登記事項証明書を交付しての債権譲渡の通知をしなければならないということになっておりまして、今回の制度は、言ってみれば、単発的に債権譲渡を受けて債務者に請求するという前提に立ちますと、民法の現在の対抗要件と比べて手続上の負担がかえってふえているのではないかというふうに思っております。したがいまして、この制度ができることによって、さらに暴力団等が違法の債権取り立てを行うということは想定しにくいのではないかというふうに考えておるところでございます。
 この法律の制度を利用した暴力団の違法な取り立てが起こらないということはもちろん保証できないわけでございまして、そうした事案につきましては、それぞれの取り立て行為の違法行為、これをとらえて、刑罰の適用によって適正に解決されなければならない問題ではないかというふうに認識しておるところでございます。
#83
○上田(勇)委員 こうした暴力団の不良債権問題への関与というのは、今、もちろん国内でも非常に問題視されてきたわけでありますけれども、同時に海外でも非常に有名な話に、広く知れ渡っているような話になっているのが現状だというふうに思います。
 ことしに入ってから、アメリカやイギリスの不動産投資会社や投資銀行が、日本の不動産への投資意欲が非常に高まっているというような報道はずっとされているのですけれども、アメリカの大手不動産仲介会社であるとか不動産投資会社、大手の投資銀行、イギリスの会社など有力な企業による我が国の不動産への投資といったことが、連日新聞でも報道されているところであります。
 私は、こうした外国資本が入ることによって不動産市場が活性化する、これはいろいろな感情的な不安とかはそれぞれ国民の中にあるのかもしれませんが、基本的には歓迎すべきことであるというふうに思いますし、こうした投資というのは不動産の証券化を前提として考えているものが多いように考えられますので、今回の一連の法改正でそうした動きが加速されることを期待するのです。しかし、こうした外国企業が、国内の不良債権に暴力団絡みのものが多いということから、そういう懸念が広がって投資に二の足を踏んでいるというようなことも最近伺います。
 これは向こうの雑誌でありますが、USニューズ・アンド・ワールド・リポートというものがあります。それが「やくざ株式会社」という特集記事を組んでおりまして、この中に、ちょっと幾つか拾い読みをさせていただきますと、暴力団犯罪に詳しい日本の専門家によると、現在の邦銀の不良債権の約四〇%に何らかの形で暴力団がかかわっている、その金額はおよそ二千三百五十億ドルに上るというようなことが書かれておったり、例えば、アメリカの警備会社のある調査によると、四十九の債権で構成される不良債権のポートフォリオのうち、約四〇%に暴力団がかかわっていた、またその四〇%の部分の約四分の一の不動産が、強奪、窃盗等の犯罪が実際に起きた場所であったというような記述もありますし、また実際日本における破産処理の大部分は事件屋と呼ばれる暴力団関係者のフィクサーがかかわっている、また現実に日本の上場企業からも暴力団へ多額の資金が流れているというような記述もあります。
 さらに、これはまた警察の対応についても言及しているのです。警察は建前ではそれをバックアップする立場にあるけれども、それというのは債権の回収ということですが、現実には、日本の警察の民事に介入せずという戦後の伝統から、ほとんど不良債権の暴力団勢力の排除には関知していないというようなこともあります。
 また、そうした結果として、アメリカの投資家がこのような日本の暴力団とそれを取り締まらない無責任な警察が日常である日本の経済界で利益を追求することは容易ではないというようにまで言って、アメリカの資金が日本の裏の世界へ流れることを意味して、ひいては日本の金融システム改善の流れを逆行させることになるのではないか、これから日本の不良債権に投資するということは、やくざへの資金提供を余儀なくされるという潜在的なリスクを考えることなしには実行できないだろうと、かなり厳しい言い方をしております。
 これがすべて真実であるというふうには断定することはできませんけれども、少なくともこれに近い事態があるということは考えられるのではないかというふうに思います。
 そこで、こうした事態についてどのように考えられているのか、また、どのような対策を講じていくおつもりなのか、警察庁さんの方からひとつよろしく伺いたいと思います。
#84
○竹花説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘の報道の内容の真偽につきましては私どももそれがすべて真実だとは思っておりませんですけれども、私どもが捜査をしている過程で見ておりますと、暴力団等の反社会的勢力が金融機関の行う債権回収を妨害する事案が多数見られることは事実でございます。
 警察におきまして、債権回収の妨害に関連をして検挙いたしました事件は、平成五年から七年の三年間では二十三件でございましたが、平成八年には五十六件、平成九年には八十七件というふうになっておりまして、その大半は暴力団等によるものでございます。
 これらの妨害行為の態様についてでございますけれども、債権の担保物件であります土地や建物を不法に占有したり、これらの不動産に虚偽の賃借権や抵当権の登記を行ったり、あるいは担保物件の任意売却による担保の解除を強要したりすることによりまして、立ち退き料、登記抹消料、仲介手数料、担保物件を安値で購入した後の転売差益等を得ようとしているものが大半でございまして、警察におきましては、これらの行為について、競売入札妨害罪や公正証書原本不実記載罪等により検挙しているところでございます。
 また、妨害事案の捜査や金融機関から得た情報等によりますと、これまで私どもが検挙をいたしました事例以外にも多数の暴力団等による回収妨害事案があるものと推定されるところでございまして、警察といたしましては、暴力団等に多額の利益を得させないとの観点からも、これらの事案の把握等取り締まりに努めているところでございます。
 警察におきましては、平成八年一月に警察庁及び都道府県警察に金融・不良債権対策室を置くなど所要の体制を整備いたしまして、関連事犯の取り締まりを推進してきたところでございまして、今後とも引き続き警察の重点課題の一つとして一層の取り組みを推進することといたしております。
 そのため、回収を妨害されております債権者たる金融機関との連携を一層緊密にすることとしておりまして、預金保険機構、住宅金融債権管理機構等につきましては、既に平成八年以降の緊密な連携によりまして、多数の妨害事案から暴力団等を排除することに成功いたしております。
 その他の金融機関、例えば銀行、生保、信金、信組、農協、一部ノンバンク等につきましては、昨年十月以降、連携のための新たなシステムを構築いたしまして、金融機関が把握をいたしました妨害事案を警察に御連絡いただいております。それらの事案は既に二百件を超えておりまして、それらのうち、検挙を通じて妨害を排除いたしたものもございますし、また金融機関が暴力団等の威力にためらうことなく民事上の諸手続が進められるように、警察においてできる限りサポートをしておるところでございまして、この点でも既に相当の成果を生んでいるところでございます。
 今後、これら金融機関のほか、関係機関、団体とも協力を深めながら、暴力団等が不良債権の回収妨害により多額の利益を得ることのないよう努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#85
○上田(勇)委員 最後にちょっと、通告はしていないのですが、大臣の御所見を伺いたいと思うのです。
 今、この記事の内容などについて、私の友人でアメリカの投資銀行に勤めている者にちょっと聞いたところ、やはり彼も、不動産債権を買い取ったアメリカの企業が放火されただとか脅迫を受けたというようなニュースは実際に聞いているというふうに言っていましたし、実際、その暴力団の介在が、投資を行おうという意欲があっても、最大の障害の一つになっているということも述べておりました。また、彼は、やはり日本のこの低迷する景気を回復していくためには、もちろん財政政策も重要であるけれども、それよりむしろこの暴力団対策を強化していくということの方が有効なんじゃないかというようなことまで言っておりました。
 大変残念なことであるのですが、外国からこういうような形で見られているということ、またこれからどういうふうに対処をされていくのか、これまでの議論も踏まえまして、最後に大臣にひとつ御所見を例えればというふうに思います。
#86
○下稲葉国務大臣 今委員御指摘のレポートも私、読まさせていただきました、「やくざ株式会社」ですかという。
 今警察庁の方からも話がございましたように、御指摘のような事案の検挙件数というのは相当上がってきていると思います。実態も、まだ水面下で動いているやつもたくさんあるのだろうと思いますね。やはり私どもは、そういうふうな水面下の、アングラのいかがわしい勢力が日本の経済社会の中に浸透しているということ、しつつあるということは非常に遺憾なことでございますし、それこそ法と証拠に基づきまして重点的にやってまいりたい。これまでの一連の総会屋の事件等々との絡みにおきましても、やはりそういうふうな感じがするものですから、十分関心を持って、国際的にも間違いのないような警察のあり方というものを追求してまいりたい、このように思います。
#87
○上田(勇)委員 ひとつその点よろしくお願いしまして、質問を終わらせていただきます。
#88
○笹川委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十分開議
#89
○笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。漆原良夫君。
#90
○漆原委員 平和・改革の漆原でございます。
 まず、債権譲渡の登記というのは今回初めてのことなので、ちょっとお尋ねしたいのですが、不動産登記が物権ごとにつくられているのと違って、債権ごとの登記というのは不可能だと思います。したがって、同一の債権が二重に登記されるという可能性があると思います。
 そこで、本登記の手続の制度上、登記官によって二重登記を排除する等、そういう二重登記を防ぐ措置は新しい登記法上講じられるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
#91
○森脇政府委員 御指摘のとおり、債権と従来の物権の登記とでは大きく異なるところでございまして、本法律案は、債権が二重に譲渡され得るものであるということを前提といたしまして、そのような場合における譲受人間の優先関係を決定するための対抗要件、その特例を定めるものでございます。
 したがいまして、本法は、債権の二重譲渡を防止しようとする目的を有するものではございません。二重に債権譲渡の登記がされた場合であっても、その優先関係は登記の先後によって決まるということになりますので、特段の問題は生じないのではないかと考えているところでございます。
 ただ、では二重譲渡の防止はできないのかということでございますが、債権譲渡を受けようとする者、この者は譲渡人に対して当該債権が既に登記されているのではないか、されていないということを証明してください、これは要求できるわけでございまして、これは登記制度を使うことによって譲渡人は容易にその証明がとれるわけです。
 したがいまして、そういった観点からいうと、二重譲渡の防止がたやすくできる、こういう面はございます。
#92
○漆原委員 今証明書の発行という話が出たわけですが、この証明書を発行する指定法務局、これは現在幾つぐらいのことを考えられておるのか、また、どこに置くつもりなのか。それから、複数の指定法務局ができた場合には、その登記ファイルの原本、これは一体どこに置こうとお考えなのか。この辺をお尋ねしたいと思います。
#93
○吉戒説明員 制度の発足当初におきましては、今のところ、東京法務局のみを指定法務局といたすというふうに考えております。東京法務局が全国の債権譲渡登記に関する事務を所管するということになります。
 その後、この制度につきまして、相当円滑に利用されるというふうな状況がございますと、東京法務局以外の法務局におきましても追加して指定するというようなことを考えております。
 それから、将来的に、今私申し上げましたように、複数の法務局におきまして債権譲渡登記に関する事務を行うことになった場合にどうするかという問題でございますけれども、債権譲渡登記ファイル、これに登記をするわけでございますけれども、このファイルそのものを一カ所で集中管理する、一元的に管理をする。したがいまして、全国各地に所管する登記所がございましても、その登記所から一元的に集中管理しているところにアクセスしていただく、そのことによって重複の登記というようなものを防止するということでございますので、一つの法務局において債権譲渡登記ファイルを調査するということはできます。すべての法務局で同じように申請人の方が調査をしていただくというような必要性はございません。
#94
○漆原委員 わかりました。
 では次に、本法案の第七条は抹消登記の申請について規定しておりますが、この抹消登記の申請権者を譲渡人と譲受人としておりまして、債務者からの抹消登記の申請は認められておらない。そこで、仮に債務不存在の確定判決をもらったとか、あるいは裁判所の和解調書で、和解で債務不存在が確定したとか、こういう場合に、その確定判決あるいは和解調書を添付して直接債務者から抹消登記の申請を認めてもよいのではないかというふうに考えますが、この点はいかがでしょうか。
#95
○森脇政府委員 この点につきましては、この債権譲渡登記というものの性格に深くかかわってくる問題でございます。ここで公示しようとしている事項は、債権譲渡の事実を公示しようとしているものでございまして、したがいまして、当該譲渡された債権の中身、その債権が存在するかどうかといったような点は公示の対象にならないというふうに考えておるところでございます。
 こういった観点から、いかに登記を誤りのないものとするかという方法の一つといたしまして、それは債権譲渡登記によって利益を得るものを登記権利者とし、それによって権利を失うものを登記義務者とするという形で構成いたしまして、このことによって登記の真実性、つまり債権譲渡の事実ができるだけ真実のものが担保されるようにという制度を構築したところでございます。
 抹消の点についてお尋ねでございますが、これは今の考え方と全く同一でございまして、抹消の登記につきまして、その登記の利益がある者、それはもとの譲渡人、それからそれによって権利を失う者、それはもとの譲受人、こういうことになりますので、この両者が共同申請することによって登記の、すなわち債権譲渡事実の真実性を担保しよう、こういう考えに出たものでございまして、債務者はこの登記によって法律上の不利益は受けない、こういう考え方に立っているわけでございます。
 ただ、今先生から御指摘ございましたとおり、事実上債務者として表示されていることによる何らかの影響、こういうものはあってはならないというふうに考えておるところでございまして、この点については、よく周知を図っていかなければならない問題だというふうに認識いたしております。
#96
○漆原委員 確かに、法律上の不利益かどうかというと、幾ら存在しない債権が登記法上に表示されていたとしても、ないものはないわけですから、不利益はない。法律上のいわゆる不利益はないかもしれない。しかし、表示されていること自体、そしてまたその債権がさらに譲渡の対象になるということですから、また新たな債権者から請求されるという事実上の問題点は残るわけですね。
 債権の譲渡をしやすいようにしょうという法律の趣旨はわかるのですが、一方、債務者の保護ということも図っていかなければいけないのじゃないかな。何とかそういう確定判決、裁判所の和解調書がある場合には、債務者の方から抹消を求めるというふうな方法はとり得ないものなんでしょうか。重ねてお尋ねしたいと思うのです。
#97
○森脇政府委員 今委員御指摘になりました事実上の不利益というものが存在するということは、これは幾ら法の趣旨が徹底されても、なお誤解する人が出てくるという余地はあり得る問題であろうというふうに思っております。
 ただ、この問題は、いわば登記制度全体にかかわる問題でございますし、さらには、他の近接した制度、例えば、債権差し押さえ、仮差し押さえの場合、第三億務者というのがどういう扱いを受けているかというようなこととの整合でありますとか、種々の点を十分検討して対応すべき問題であろうという認識を持っております。
 先ほど申しましたとおり、事実上の不利益は絶対生じないという性格のものではございませんので、この点については多少お時間をいただいて検討させていただきたいというように考えております。
#98
○漆原委員 即座でなくても結構でございますが、どうかお考えいただいて、しかるべき方法をおとりいただければ大変ありがたい、こう思っております。
 それから、対抗要件についてお尋ねしますが、本法案ができることによりまして、対抗要件というのが三つになるわけですね、民法の対抗要件とそれから特定債権法による対抗要件、それから本法による登記による対抗要件。三つが競合し、併存するという関係になると思うのですね。
 そこで、債権の二重譲渡がなされて、登記の日付と特定債権法による公告の日付が異なった場合に、これはあり得ることだと思うのですね、この場合には、対抗要件としてはどちらが優先するのでしょうか。
#99
○森脇政府委員 この関係は、債権の譲渡の対抗要件というのは、対債務者との対抗要件の問題、第三者の間での対抗要件の問題、この二つがございます。これを区別してお答えさせていただきますと……(漆原委員「第三者でいいですよ」と呼ぶ)第三者間のときには、登記と公告、いずれか先になされた方が優先するという関係でございます。
 対債務者の対抗要件につきましては、登記の場合には債務者への通知ということが前提となりますが、それの上で登記の時期と公告の時期の先後による、こういう関係になるわけでございます。
#100
○漆原委員 いずれにしても、三つ併存している以上、どれでもいい、一番早い方で確定するんだ、こういうことになるわけですね。
 私が昔習った本には、対抗要件というのは食うか食われるかの関係だ、したがって一個しかないんだという話を聞いたのですが、これは三つもあるということになりますと、食うか食われるかの方法が三つもあるんだということで、非常に混乱するなという実感は持っておるのです。
 一般の不動産の登記は、受理してから登記まで結構何日かかかるわけですね、間隔があります。したがって、その間に二重譲渡されたり、その間にまた対抗要件を備えられたりする、そこで権利関係が錯綜するということで、不動産登記法では、これは受け付け番号の順番に従って登記するんだというふうなことで解決しているわけですね。
 だから、この本法案の登記による対抗要件でも、登記申請をした、即座に登記ができるというのがベストな状態だと思うのですね。そういう方法はお考えになっているのかどうか、そういう方法があるのかないのか、あれば教えてもらいたいなと思います。
#101
○吉戒説明員 先生御指摘のとおり、これは、債権譲渡の登記制度、特定債権法の公告それから民法の通知と、三種類の対抗要件制度がございまして、いずれもが早くしなければならない。したがいまして、債権譲渡登記もこれは非常に迅速な手続が要請されるというふうに考えております。
 したがいまして、この債権譲渡登記の申請がありました場合には、私どもといたしましては、原則として、申請の日に即日処理をするというふうに考えております。
 しからば、本当にできるのかということでございますけれども、即日処理を行うために、債権譲渡登記事務につきましては、法律案にも書いてございますけれども、電子情報処理組織により取り扱うことを予定しております。
 また、登記申請の方も、これはこれから政令等で書こうと思っておりますが、フロッピー等の電子媒体を利用した登記申請をしていただくように、そういうふうな形で規定を置きたい、そういうふうに考えております。
 したがいまして、相当多数の債権の譲渡についての登記の申請がございましても、即日処理は可能ではないかなというふうに考えております。
#102
○漆原委員 フロッピーによる処理をするとお聞きして少し僕は安心してしるのですけれども、例えば十六条で、登記事項は政令で定めるとなっていますね。この政令で定める際に、フロッピーを添付書類の一つとして出させるということぐらいの思い切った措置はとれないのでしょうか。
#103
○吉戒説明員 まさに御指摘のとおりでございまして、申請書としてフロッピーを扱うというような形で考えております。
#104
○漆原委員 そういう格好で登記ができれば一番早い、確実だな、対抗要件が三つあったとしても皆さんは自然と債権の登記を使うだろう、こう思うのですね。
 そうだとすると、逆に、特に特定債権法による債権譲渡の公告という点が法人がやる債権譲渡に競合すると思うのですけれども、この特定債権法による債権譲渡というのもやめて、もう登記に一本化したらどうか。民法の原則はこれはしようがありませんけれども、三つもあってはやはりなんだから、法人がやる場合は全部登記というふうに統一したらいかがでしょうか。
#105
○森脇政府委員 この点は大変難しい問題でございまして、特定債権法の方は既に施行され、恐らくはたくさんの公告についての経験、またそれを前提とする規制権限がいかに適正に行使されるかという問題と絡んで既に実施されているものでございます。その一部が公告制度である、こういうことでございます。
 私どもの法律は、確かに公告制度のいわば弱点として学者等によって批判されているところも踏まえまして今回の制度を構築したわけでございますが、何分にもこの点につきましてはまだ未経験の分野もあるわけでございまして、この法案が成立いたしました暁には、十分な国民への周知を図った上で実施し、私どもの扱っております登記制度としても、これに全力を挙げて、誤りのない法の執行を目指したい。そういういわば実績の上で、他省庁の所管の法律でございますが、見直した方がいいのではないかという評価がなされるようであれば、私どもの方から所管庁の方に協議をお願いする等、いろいろなチャンネルを使って調整を図る努力というのは、できる余地が出てくるのではないかというように考えておるところでございます。
#106
○漆原委員 次に移ります。
 本法案の二条の二項によれば、債務者に対する通知、これは債務者に対する対抗要件になるわけですが、これは譲渡人もしくは譲受人が行う、こう規定されております。民法の原則では譲渡人に限定しておるわけですね。したがって、譲受人が債務者に対して譲り受けの通知をしても、これは対抗要件にならない、こういう条文になっておるわけですが、まず、民法四百六十七条で譲受人による通知を認めない理由は、一体どうお考えなのかということと、本法案でこれを認めた理由はどういうことなのか、その辺を二つあわせてお尋ねしたいと思います。
#107
○吉戒説明員 民法の場合に、債権譲渡の通知を譲渡人それから譲受人、どちらがするのかという問題につきましては、既に最高裁の判例がございまして、譲渡人であるというふうにされております。これはなぜかといいますと、譲受人ができるというふうにいたしますと、これは仮装の債権譲渡に基づく通知があり得ますので、そういう事態を防止するということではなかろうかと思います。
 しかしながら、本法では、先生御指摘のとおり、譲渡人、それから譲受人、いずれも通知をすることができるというふうにしております。これはなぜかと申しますと、債権譲渡登記そのものが譲渡人と譲受人の共同申請でなされる。その上で、通知をする際には、登記事項証明書を交付して通知しろというふうになっております。ということは、その譲渡登記がなされたということは、登記所が公で公証をいたしておりますので、こういう場合には、そういう証明書を添付しての通知でございますから、譲渡人がやってもいいし、譲受人がやってもいい。まあいずれでもよろしいのではないかと。また、実務的にも、債権譲渡によって利益を得ますのは譲受人でございますので、譲受人の負担において登記事項証明書を交付した通知をさせるということも、これまた実際にかなっているのではないかなというふうに考えるわけでございます。
#108
○漆原委員 今のお話で、譲受人に認めさせる理由として、共同申請であるということが一つ、それから、登記所が発行した登記事項証明書を送る、この二つを理由として挙げられたわけですが、ただ、我が国の登記制度は、登記官に実質的な契約の有効性の審査権がないわけでして、形式上、書類が整っておれば、これは受理しなければならない義務がある。これは多分、債権譲渡登記も私は同じだと思うのですね。
 そうだとすると、やはり幾ら共同申請であっても、仮装の債権譲渡、仮装の登記ということは可能なわけですから、本当に譲渡人がオーケーしているかどうかなんということまで見られないわけですから、書類上、譲渡の意思があらわれていれば、登記官は受理しなければならない、登記しなければならない。それから、登記事項証明書といっても、登記されているということだけであって、決してそれは真実の証明ではないということになるわけでしょう。
 そうしますと、実質的審査権のない我が国の登記制度においては、共同申請ということと登記事項証明書があるからという理由は、ほとんど理由にならないんじゃないかと僕は思うのですが、いかがでしょうか。やはり仮装譲渡というのは行われ得ると思う。
#109
○吉戒説明員 先ほど来から御答弁させていただいておりますように、仮装の譲渡ということはあり得ます。
 ただ、これもちょっといささか法律論に帰しておりまして恐縮でございますけれども、この登記はあくまで債権譲渡の事実を登記するわけでございまして、債権の存在でありますとか、あるいは譲渡の真正というものを証明するものではないということでございますので、仮装の譲渡があり、それを受けて登記申請があって登記がなされて、さらに登記事項証明書が出されたという場合でも、その登記事項証明書は、まあ内容的にはほとんど無意味なものでございますので、債務者の方としては、それは無視していただいていいのではないかなというふうに思うわけでございます。
#110
○漆原委員 債務者としてみますと、だれに払わなければいかぬのかということは、大変なことですよね。債務者が債権譲渡で一番恐れるのは、二重支払いの危険性を負うというところが一番債務者に不利なところなわけですね。
 ある日突然、全く見たことも聞いたこともない会社から、あなたの債権を譲り受けました、ついては登記所が発行したこういう証明書があります、今後は私のこれこれこういう口座にお支払いくださいという連絡が来ると思うのです、通常は。
 そうすると、まあ、例えば、家のローンだ何だかんだで何十年も払わなければならない債権が譲渡された場合に、毎月毎月払っていかなければならぬわけでしょう。そうすると、多額の金を譲渡人に払うべきなのか、本当に譲渡が有効になされて譲受人が本当の権利者なのか。これは債務者にとってみればわからないことなんですね。その都度、譲渡人に確認をしなければならない。本当に債権譲渡をなされたのですかと。譲渡人がちゃらんぽらんな答えをしたら、全く真実の判断はつかない。しかし、二重支払いの危険性は必ず債務者か負う、こういう不利益を負っているわけですね。
 仮に、私、弁護士で相談が来た場合にどうするかというと、多分、供託しなさいよと。争いがある、どっちかわからぬ場合、供託しなさいよというふうに言うと思うのですよ。そうしますと、供託は毎月月末に行かなければならない。支払い日に毎月行く。お金も少しかかる。毎月、東京の大手町に足を運ぶ。月末はもう供託がいっぱいありまして、借地借家や家賃の供託がいっぱいありまして、一時間か二時間待たされるのです。
 法律上は不利益があるかどうか知らぬけれども、事実上、物すごく不利益があるのですね。そういうものを、幾ら債権譲渡を円滑にするという法律だとしても、関係のない債務者にそういう負担を負わせていいかどうかということを僕は心配するのですが、この点、いかがですか。
#111
○吉戒説明員 先生御指摘のとおり、債権を譲り受けていない者が債権者から、例えばだまし取った書類を使いまして登記の申請をする、そしてその上で登記事項証明書の交付を受けて、それを添付して通知をして、債務者に支払い請求するという事態は、およそあり得ないわけではございません。そういうふうな場合にどうするかということなんですね。
 これは一つの大きな法律問題でございますが、こういうふうな場合に、債務者が、やはりその通知は登記所が出したものだから真正であろうというふうに考えまして、信頼して、弁済したというような場合に、どういうふうな法律問題が起きるかということでございますが、弁済の有効性ということでございます。
 これは先生御承知のとおり、民法で四百七十八条という条文がございまして、これはいわゆる債権の準占有者に対する弁済の規定でございます。一般の取引観念に照らして、債権者であると信じさせるような外観を有する者、準占有者に対して弁済をした場合には、その弁済をした者が真の債権者であることを信じたことについて過失がなかったことを条件といたしまして、弁済は有効であるというふうにいたしまして、免責されます。
 それで、委員御指摘のような場合にどうかということでございますが、これはもちろんその個別具体的な事案によって違ってくると思いますけれども、私どもとしては、こういうふうに考えております。つまり、一般に登記事項証明書を交付して債務者に通知をしたいわゆる詐称譲受人が、詐称譲受人というのは、債権譲渡の登記それから登記事項証明書、そういうものの趣旨からいたしますと、多くの場合には民法四百七十八条に言う準占有者に該当するのではないか。したがいまして、そういうふうな場合には、これを真の債権者であると過失なくして信頼して弁済した債務者は、四百七十八条で免責されるというふうに考えます。
#112
○漆原委員 わかりました。時間がないので、済みません。
 先ほど来申し上げておりますように、登記事項証明書にそんなに力点を置いてもいいのか。これは登記されておるだけという証明書でしょう。登記官に審査権がないわけですから、何にもそこに有効性というのは含まれていないのです。
 ただ、それでも準占有者だということであれば、それは僕はいいのですよ、それならば裁判官が余計な判断をしないようにぜひ、それを持っている人は準占有者なんだ、したがって払えば免責されるのだという一項をこの条文で設けてもらいたいなと思っているのですが、どうでしょうか。
#113
○吉戒説明員 なかなか難しい御質問でございますけれども、私が申し上げましたのは、債務者の保護は民法の既存の規定で十分に足りるのではないかなと。したがいまして、今回の法案の中にはそのような規定を置く必要はないのではないかなというふうに考えておるわけでございます。
 参考までに申し上げますと、例えば、偽造の領収書を用いて代金の弁済を受けたという場合も債権の準占有者に当たるというふうに判例で言われておりますので、それに比べますと、登記所が出した証明書を信頼して支払った者については四百七十八条の準占有者に対する弁済ということで免責されるのではないかなというふうに考えるわけでございます。
#114
○漆原委員 残念ながら時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
#115
○笹川委員長 達増拓也君。
#116
○達増委員 自由党の達増拓也でございます。
 今国会、この法務委員会に規制緩和関連の法案がかなり出てきているわけでありますけれども、きょうのこの債権譲渡の対抗要件に関する民法特例法案、これもそういう規制緩和関連の法案ということでございます。
 債権流動化によりまして金融システム改革を進めていく、もともとそういう規制緩和という長期的課題にこたえるものであると同時に、今日、金融機関が不良債権を抱えて四苦八苦している、そちいう問題を解決して力強い経済を回復していこうという背景があるというふうに承知しております。
 今回のこの法案によって、例えば不良債権を抱えた銀行でも、優良債権部分について、特別目的会社を通じ債権を流動化させて少しでも有利な運用をして利益を得ていく、そういう仕組みが確保されるわけであります。
 万が一ということでありまして、余り考えたくない事態ではあるのですが、もともとの債権を持っていた銀行等金融機関がおかしくなって破綻したような場合に、債務者との関係においては、直接の関係はまだもとの金融機関等の債権者が持っている。そういう中で、特別目的会社を通じて証券化されてしまったその債権と債務者との間がつながりが絶たれてしまう、そういうことになって全体の仕組みが混乱してしまうのではないかという懸念が持たれるわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
#117
○吉戒説明員 債権譲渡の登記をした後に譲渡人が破産したというような事態を御想定だと思います。
 そういう場合に法律関係はどういうふうになるかということでございますが、債権譲渡の登記だけでございますので、対債務者との関係では債権譲渡の効力がございません、いわゆるSPCは自分が債権者であるというふうに主張することはできないという状態でございます。したがいまして、対債務者との関係では、もとの、原債権者が債権者である。
 そういう場合に、原債権者が破産宣告を受けたというような状態でありますと、債務者に対する債権が破産債権になっていくということになろうかと思います。あるいは、その前に既に弁済をしておるというようなことでありますと、当然、債務者はそれによって免責されるということでございますので、譲受人であるSPCと債務者との間で何か問題が起きるということは想定しがたいというふうに考えております。
#118
○達増委員 では次に、やはり不良債権という問題との絡みでなんですけれども、この特別目的会社を通じた証券化というのは、基本的に優良債権について想定されているわけでありますが、この法律、新しいスキームを利用して、優良債権ではなくて不良債権をいわば流動化させていく。これも正しい形で不良債権が流動化して処理されていくならいいのですけれども、例えば、暴力団のような団体が特別目的会社をつくって、非常に安くたたいて不良債権を引き受け、それを証券化してもうけながら、同時にもとの債務者に対しては暴力的な取り立てをするとか、そのように暴力団のような存在がこのスキームを利用して債務者に迷惑をかけつつもうける、そういうことは起こらないのかどうか、質問したいと思います。
#119
○吉戒説明員 制度をおつくりしました場合に、およそこれを悪用する者はいないということは保証の限りではございませんので、確かに委員御指摘のとおり、そういうふうな不法な集団が債権の譲渡を受けて取り立てをするということは考えられるところでございます。
 ただ、いささか繰り返しになりますけれども、この制度のもとでは、譲受人が債務者に対して自分が債権者であるということを主張するためには、債権譲渡の登記を受けるほかに、さらに登記事項証明書を交付して通知するということが必要でございます。この点からいいますと、民法の債権譲渡の対抗要件の具備よりもはるかに手続的には負担が大きいわけでございますので、おっしゃるような暴力団のようなものが二重の手間暇をかけてこういう制度を利用するのかなということは若干疑問なところでございます。
 ただ、この法案は、債務者を保護するために、例えば二重弁済の危険を防止する手当てをしたり、あるいは債務者のプライバシーの保護に配慮した情報開示のスキームをつくっておりますし、とにかく現在の民法上の対抗要件の制度よりも債務者が不利益を受けることがないようにしておるつもりでございます。したがいまして、この法案ができたからといって、およそ債務者が不利益を受けるというような事態はちょっと想定しがたいというふうに考えております。
 もっとも、最終的に、委員御指摘のようにそういう暴力団のようなものが債権回収を働く、その際に違法な行為をするというような場合でございますと、これはもちろん一般論でございますけれども、刑罰法規の適用によって厳正な解決が図られるのではないかなというふうに考えるところでございます。
#120
○達増委員 今回の法案、これによって不良債権問題が一気に解決したりとかという話ではないわけでありますけれども、今の日本経済の状況の中で、少しでも事態を改善していくために役立つような形で利用されていけばいいと思います。
 不良債権問題ですとか、またその背景にあります日本経済全体の低迷、さらにその背景にある行財政の問題等々、そういうところ全体が解決される中で、債権流動化というものが日本の金融を改革していくようになればいいと思いますけれども、民間、そういう金融業界の中からも非常に強く求められていることでもありますので、まず、対症療法的なところもありますが、一日も早く活用できるような格好になればいいんだというふうに思います。
 さて、今もこの法案の背景として、今の日本の経済状況や金融問題等に言及いたしましたけれども、ちょうどこの一年というのは、日本の銀行、証券会社等の体質、さらにそれを監督している大蔵省、日銀との関係、または大蔵省や日銀自体の体質、そして、そういう金融行政等を最終的に担保するといいますか最終的にチェックする政治家の体質、こういつたことが非常に問題になり、その改革が叫ばれてさまざまな制度改革が進められているわけでありますけれども、ちょうどそれと並行いたしまして、検察によりまして非常に劇的に捜査や逮捕が進展した、そういう一年であったと思います。
 昨年五月、総会屋の小池隆一氏逮捕以来、野村、山一、大和、日興という四大証券会社で逮捕者が相次ぎ、関連で第一勧銀からも逮捕者が出て、その総会屋問題に端を発した捜査、逮捕は、さらに大蔵省、日銀の接待疑惑ということでことし逮捕者が出て、野村、東京三菱、三和、住友、あさひ、興銀といったところに捜査、摘発が広がったわけであります。また、その間、新井将敬議員の逮捕許諾請求が出る等、銀行、証券会社、そして官僚、政治家と、今までに例がないような検察の活躍がありまして、そういう日本の金融にまつわる体質を変えていかなければならない、このままではだめだという認識が広まり、また、その改革も進んでいくというふうな方向に動いているんだと思います。
 ちょうど今国会、検察問題について本格的にまだ取り上げたことがなかったので、この機会に幾つか質問をしたいと思うんです。
 まず、こうした検察の活躍に対して、これは大変結構なことだ、特にこの金融関係、官僚の接待汚職も含めて、この際どんどんもっと捜査、逮捕してほしい、そういう国民の声もあるわけでありますけれども、そもそも検察による捜査、逮捕、これは、日本の銀行や証券会社の体質の改善ですとか、官僚、政治家の体質の改善ですとか、そういう効果を意識しながらやっていたのでありましょうか。
#121
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 検察の捜査と申しますか、検察官の職務に関するまことに基本的なあり方に対する質問でございますので、私どもとして、この問題につきましての基本的なあり方についての考え方を述べさせていただきたいと思います。
 検察官は常に、これはありきたりの言葉でございますけれども、法と証拠に基づきまして刑事事件を適切に捜査、処理すべき責務を負っており、その職責によって、個々の事件の捜査、処理に当たっているのでございまして、格別に何らかの意図を持って一定の捜査を進めていくということは私はないものと考えております。
 ただ、検察が警察からの送致事件を捜査、処理する場合、またみずから独自に捜査、処理する場合、いろいろございますけれども、いわゆる犯罪による被害者があって被害者から告発等々の申告がなされる場合を除きまして、いわば社会的なシステムの中での被害者のない犯罪というものがあるわけでございますが、そういうものにつきまして手をつけていくと申しますか、捜査活動をしていくという場合に、さまざまな端緒があろうかと思われます。
 その中で、やはり検察としては、ある一定の社会的な問題がそこにあると考えられた場合に、さまざまな関係から、そのような端緒について、いわば調査を進めてまいりまして、まさに証拠に基づいて、社会的な事実としてどういうことが認定できるかということを積み上げた上で、それに対して法の適用を考えていくということが基本であるわけでございまして、それが検察に課せられた責務であろうと考えるわけでございます。
#122
○達増委員 そうしますと、この一年間の一連の金融腐敗ですとか官僚汚職、腐敗問題等の捜査、逮捕の展開については、特に体制改革とかそういう意図でやったわけではなく、たまたま最初、小池氏に対する野村証券の利益供与の問題から始まったわけですけれども、そこで出てきた証拠に基づいて、いわば芋づる式に展開したという事情なわけでしょうか。
#123
○原田(明)政府委員 具体的な捜査の展開と申しますか、その過程に関することでございますので、答弁は差し控えさせていただかなければならないのでございますけれども、せっかくのお尋ねでございまして、一般的な物の考え方についてお答えを許していただくなら、やはり、一連の社会的な事象がある、それに対して検察が捜査また処理をしてまいる場合に、さまざまな事態がそこで発生してくる。その中で、例えばいろいろな形で情報が寄せられたり、あるいはその事態の中から、ある種の問題が出ていることがうかがわれるというようなことはあろうかと思います。そういう中で一つ一つの事実を丹念に積み上げていく中で、やはり放置できない、いわば国家の刑罰権を発動しなければならない事実が確定されていくという場合には、まさに厳正公平にそれに対処していくというのが検察の姿であろう、こう思います。
#124
○達増委員 私も、一般論の枠組みの中でもう少し関連の質問をさせていただきますけれども、一つ一つの事実を積み上げながら、法と証拠に基づいて捜査を展開、進めていくという場合、一度に大量のそういう事実が明らかになり、大量の証拠が出てきたときに、そこから一度にたくさんの立件の可能性が開けることがあると思うんですね。ですから、ステップ、ステップを踏んで順を追って先に進むということではなく、一度に、放射状にといいますかショットガン方式といいますか、たくさんの事件の方向に行くことができるように、そういう展開が見えてきた、その場合、行政として、検察も行政としてやっているわけですから、限られた人数や時間の中で、これをどういう優先順位をつけてやっていくか、そういう仕事上の問題が出てくると思うんですが、そういった場合、どのように進めているんでしょうか。
#125
○原田(明)政府委員 この問題も一般論としてお答えせざるを得ないのでございますけれども、委員御指摘のような、検察活動の中でさまざま事態が生じてくる中で、非常に数多くのと申しますか多方面にわたる事態が認識されるということはあろうかと思います。その場合に、やはり問題は、委員も御指摘のような人的資源それからその態勢等も考えながら、適切な形で捜査を遂げていく、そして、事案の真相を解明するということに徹するということが検察の一義的な責務であろうと思うわけです。
 個々の事件の着手時期ということになりますと、そのような職責を踏まえまして、その都度事案の性質、内容等に応じて検察は判断しているものと考える次第でございます。
#126
○達増委員 例えば、担当の人数をふやしたりしなければならなくなるとか、そういう捜査態勢の転換といいましょうか、そういうのを図らなければならないときがあると思うのですけれども、そういうタイミングはどのようにやっているのでしょうか。
#127
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 検察当局におきまして、まさに与えられた職責を果たしていくために、その時々の配置では賄えないという事態が生じてくるのは御指摘のとおりでございます。
 そうした場合に、かねて検察態勢といたしましては、一応の各庁の配置人員、これは検察官、検察事務官も含めたものでございますが、決めてそれぞれの状況に対応していくわけでございますけれども、場合によって地域的に偏在して、あるいはある庁に集中してある事態が生じてくるという場合には機動的に対応できるように、常にそのような措置がとれるようにということで配慮しながら態勢を整えているというのが実情でございます。
 そのために、ふだんは通常の事件を処理している中で、人員を割いて、若干待てるものは待つという形で人員を供出するということを、通常の場合ある庁の中でそういうことが行われることもございますし、例えば各地方検察庁の枠を超えて高等検察庁の管内で融通し合うということもございます。
 また、全国的な応援態勢というものを短時間で遂げてやっているということもございます。そちいう場合には、それぞれの庁のほか、それを統括していく高等検察庁、さらには最高検察庁において、その時々の実情に応じて人員のやりくりをしていく、そして事態が解決されればもとに復していくということで、いわば全国的な機動的な処理態勢のもとで職務を果たしているというのが実情でございます。
#128
○達増委員 今二つの質問で、非常に大規模な関連する事件が発生した場合にどういうふうに捜査に着手していくのか、またはそれを拡大していくのかという段取りについて質問したわけでありますけれども、捜査の着手拡大も大事なのですけれども、もう一つ非常に大事な問題で、いつ捜査をやめるか、どの段階で捜査をやめるかということがあると思います。
 世間的には、捜査が始まったということは新聞とかテレビで明らかになって、それでどうなるのかということで国民は注目するわけであります。問題は、まだいろいろ残っているのではないか、そういう世論がある中で捜査が終わってしまうということはよくあるわけでありますけれども、先ほど答弁の中にもありましたように、被害者による告発がない場合、隠された事件、犯人同士の関係の中で隠されているような事件についてどこまで捜査するのか、そういう判断をふだんどのように行っているのでしょうか。
#129
○原田(明)政府委員 お尋ねは大変重要なと申しますか、やはり検察活動に関する関心の向けられる点であろうと思うわけです。
 この問題につきましても、やはり検察といたしましては、あらゆる状況を判断して認められる事実がある場合に、それについてやはり刑政の目的、その他諸般の状況に照らして刑罰権を発動すべき事態があるという認識に立った場合には、それぞれ適切な措置をとっていくということに尽きるのだろうと思います。
 ただ、ある事態が終わったというようなことにつきまして、一連のことについて捜査が終結したということを事実上わかるような形で表明すべき場合もございますし、あるいは引き続きウォッチしていかなければならないという場合もあるわけでございまして、やはりあくまでそれぞれの事態に応じて検察が対応していくということに尽きてしまうのではないだろうかと考える次第でございます。
#130
○達増委員 この一年間の一連の金融不祥事や官僚不祥事についての捜査や逮捕、まだ終わったとは限らないわけで、今後もどんどん続いていく可能性もあるわけでありますけれども、これについて非常に世論の関心も高まりまして、かつてないくらい検察というものに対して世論の関心が高まったと思うのですね。それだけの報道もありましたし、量、質ともに非常に報道がなされた。世論の中でも、これはもっと徹底的にやるべきだ、官僚についてももっと徹底してやらなければだめだとか、政治家についてももっと徹底してやらなければだめだとか、そういう民意が沸き上がって形成されてくる、そういうことが今回あったと思うのですね。
 それで、国会議員として、国会の中にあってふだん民意に対して配慮し、必要に応じて仕事をやっていかなければならない、そういう観点から見ますと、世の中を変えていくために検察にもどんどん活躍してもらわなければならない民意というものは非常にこれは大事だと思うわけですね。
 ただ、先ほど検察に関する冒頭の質問に対して、そもそも法と証拠に基づいて職責を果たすのが役目だと。そういう中で、捜査をどの段階までやるのかという判断をする際に、世論ですとか国会の中で行われている議論ですとか、そういう民意というものを考慮してやるものなのでしょうか。
#131
○原田(明)政府委員 これまた大変難しい御質問であるわけでございますが、一般論ということでお許しいただきたいのでございますけれども、検察も、これは委員先ほども御指摘いただきましたように、行政の一環であることに変わりがございません。
 行政のあり方といたしまして、刑事責任を追及すべきものをどう考えていくのかということはそれなりに私は判断してまいるものと思います。それで、行政の立場と、うことになりますと やはり、例えば国権の最高機関である国会でどのようなことが取り上げられ、どのような関心が持たれているかということについては、十分関心は払われているものと私は思います。それは国民の声の代表としての国会の御意思でございますから、そういうものについて目を閉じるということは私はないと思います。
 また、マスコミと申しますか、報道の中でさまざまな形でいろいろな問題が取り上げられてまいる、そうした場合に、そういうものに対してもやはり幅広い関心を持ち、目を開いていくということは当然だろうと思います。
 ただ、一般的に民意と申しますか、ある事柄が起こったときにさまざまな声が出てまいります。そういうものに個別にいわば直接的に対応していくということはさまざまな問題が私はあろうかと思います。
 検察におきましても、その点は十分考慮しながら、しかしこの日本全体の国ということについての中でどのようなことが関心を持たれ、また論議されているかということに関して十分配慮をしながらその職責を果たしていくべきものであろう、またそのようにしているものと考える次第でございます。
#132
○達増委員 恐らく、検察の仕事は、世論や国会での議論に、直接その動向を見ながらやるという性質のものではなく、ただ、事件の重大性によって今何をどこまでやらなければならないかを判断する際に、民意というものが恐らくは間接的に配慮、考慮されなければならないことなのだと思います。
 そういう意味で、民意を的確にとらえながら仕事をするというのは大変難しいことではあると思うのですけれども、この一年間の動向を見ておりますと、まさにそういう民意というものと検察とのつき合い方、いろいろうまくいったところもあれば課題もある。その辺を踏まえて一層頑張っていただきたいところであると思います。
 さて、捜査について今ずっと質問をしてきたわけでありますが、証拠がそろってきてさあ立件という段階になり、ここで起訴するかしないか、また起訴するとしても、略式起訴にするのかあるいは在宅起訴か逮捕か、これは政治家にとっては非常に重要な問題ですが、起訴についても、いろいろ使い分けというか、いろいろなやり方が出てくるわけです。
 そこで、話題になっているのが、刑事訴訟法二百四十八条の「起訴便宜主義」ということですね。起訴するのかしないのか、起訴猶予にするのかどうか、そこを判断する権限を検察が持っていて、それが濫用されることによって、いろいろな不利益が出てくるのじゃないかという議論があるわけであります。
 まず、この刑事訴訟法二百四十八条でありますけれども、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」というふうに書いてあります。これをこのまま読めば、犯人について情状酌量の余地があるときにはおとがめなしで起訴猶予もあり得る、そういうことなんだと思いますけれども、この情状酌量をしていく際に、捜査への協力姿勢というものも含まれるのでしょうか。
 もし、捜査への協力姿勢次第で起訴するとかしないとか、そういうのを決めるとすれば、実質的に、アメリカで行われているという司法取引、白状すればこれだけ刑を減らすとか、そういう司法取引と同じようなことを認めることになると思うのですが、この点はいかがでしょう。
#133
○原田(明)政府委員 お尋ねの刑事訴訟法二百四十八条が定めているのは、まさしく日本の検察官に認められましたいわゆる起訴便宜主義を定めているものでございまして、その法の趣旨とするところは、検察官において、犯罪の嫌疑があれば必ず公訴の提起を要することとしていないわけでございます。
 犯罪の嫌疑があれば必ず起訴すべしというのが起訴法定主義と講学上言われておりまして、そういう制度をとっている国もございますが、我が国の場合は、法律により検察官に裁量が許されているわけでございまして、ただいま条文で委員がお読みいただきましたような各般の情状を総合的に考慮して訴追の要否を決定すべきものということで、いわばこれは実質的な公平と具体的な正義の実現を図るとともに、そのことによって犯罪の予防、これは、一般的にそのことによって犯罪の発生を予防していくという点がございますが、特別予防と申しますか、個別にその被疑者自体が二度と犯罪を犯さないように、そういうことができるための措置を含むものでございますが、そのような刑事政策の目的を十分に達成しようというのがその趣旨であろうと思います。
 その中身は、個々の具体的な事案ごとに、この趣旨に照らしまして適正に判断してまいらなければならないわけでございますが、委員御指摘の捜査への協力姿勢と申しますか、協力的な態度ということが具体的にどういうことを意味するかという点は、いろいろあろうかと思います。例えば、被疑者がまさしく本心からと申しますか、心から改悛の情を有しているということになりますと、そのことは供述の中身に反映されてくるわけでございまして、いわば事案の実体的な真実解明という点から、捜査官にとってはその点は協力的に映るという場合はあろうかと思います。
 しかし、その点は、まさしくそういう改悛の情があるということで情状として考慮されていくべき事柄であろうと思うわけです。一般的、抽象的に捜査へ協力するということが情状に該当するとまでは、恐らく言いがたいと思います。具体的事案におきまして被疑者に改悛の情が認められることが情状として考慮される場合にも、これは、あらかじめ被疑者側と申しますか、被疑者及び弁護人と検察官が、あるいは交渉いたしまして、被疑者の供述内容、どういうことを供述するかということと何か引きかえのように検察官がある種の寛大な措置をとるというようなことを合意するというものではないだろうと思います。
 そういう意味で、いわゆる御指摘のような、アメリカの刑事司法の中で行われているようないわば司法取引、いわゆる有罪の答弁、答弁の仕方によってその後の求刑も含めた措置を考えるということとは、本質的に違うものであろうというふうに考える次第でございます。
#134
○達増委員 いろいろな週刊誌に載っているような記事の中には、検察官が捜査の過程で、白状したら起訴猶予にしてやるから白状しろと言ったとか、あと、やはり検察官が、いろいろな資料の提出とか、協力しなければ逮捕するぞ、だから協力しろとか、起訴か起訴猶予かというのがかかっているような相手にそういうことを言っているというのが載っているわけですが、こういうことは許されないことということなんでしょうか。
#135
○原田(明)政府委員 まさしく御指摘のとおりであろうと思います。
 最高裁判所の判例によりましても、被疑者が、自白をすれば起訴猶予にするとの検察官の言葉を信じて、起訴猶予になることを期待していたような供述があったというような場合には、任意性に疑いがあるということで、いわば約束による自白ということで証拠能力は認められないと明確に判示しているところでございます。
 そのような判例をも踏まえまして、検察官におきましては、取り調べに当たりまして、そのような違法な取り調べを行わないように自白の任意性の確保に配慮しているものと思いますし、またそうすべきものと考えます。
#136
○達増委員 この起訴猶予について、いろいろな論文等で指摘されていることで、今の検察は確実に有罪にできる場合以外は起訴猶予にしている。確実に有罪にできる場合は起訴し、これはちょっと証拠の関係上確実に有罪にはできないのじゃないかなというときには不起訴、起訴猶予にして、その結果として、裁判で有罪になる確率が非常に高い、無罪になる確率は非常に低い。そういう指摘があるわけですが、刑事訴訟法二百四十八条の起訴便宜主義の趣旨が、それはあくまで情状酌量ということで、犯人の将来とかそういうことに着目して行われることであるとすれば、有罪にできそうかどうかという、いわば証拠の集まりぐあいとか裁判の見込みで起訴する不起訴にするというのを決めるのは、これは筋違いということになると思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。
#137
○原田(明)政府委員 大変重要な御指摘と申しますか、問題の提起だろうと思います。
 まず、検察官が捜査した結果、証拠によってどういう事実が認められるかということが積み上げられてまいります。そのときに、法律に照らして犯罪を構成することが十分立証できるという場合には、起訴するか起訴猶予にするかということがそこで問題になるわけですが、それ以前に、犯罪を構成することかどうかはっきりしない、これは嫌疑のない場合もございましょうし、嫌疑が不十分という場合もございます。検察官が先ほど御指摘の起訴に係ります裁量権を行使するという場合は、ほぼ確実に有罪が立証できるという心証を得た場合に、初めてそこで考慮になることでございます。
 ですから、その場合であっても、犯人の更生を願い、また、被害者に対する宥恕措置がとられたとか環境調整がとられたとか、さまざまな事情に照らして、起訴猶予にすることがむしろ本人にとっても、また周りにとってもよいという場合には起訴猶予にするわけでございまして、いわば起訴する場合には、ただいまの御質問の関係でいえば、ほぼ確実に有罪にできるという確信がなかったらそもそも起訴はしないという点は、ぜひ御理解いただきたいと思います。
 この点につきましては、実はさまざまな考え方がございます。そのような立場をとるものですから、日本の場合、検察官において有罪の心証がとれない場合に、しかし大変関心が高い、そういう場合でも裁判所の審判を仰ぐべきではないかというような議論がかってなされたこともございます
し、そのようなことが学界でも、またさまざまな角度から議論されたこともございます。しかし、現在の我が国の状況を見ますと、起訴することによって生ずる当事者の負担感ということを考えますと、そのような、いわばやってみるというような立場からの起訴は恐らく適切ではないのではないかということで、現在の実務が確立しているところでございます。
 なお、つけ加えて申しますと、民事訴訟の場合は、いわば立証責任の配分によりまして、いわばどちらかに傾いたらそちらが勝つという関係でございますけれども、刑事事件の場合は、基本的には、検察官がすべての事実につきまして合理的な疑いの余地がないまでに立証しなければ無罪、これは一疑わしきは被告人の利益にということでそのような判決がなされるものでございますので、その点については、検察官は極めて慎重な検討が必要というふうに考えるのでございます。
#138
○達増委員 起訴便宜主義ということの考え方、本質について、答弁によって大分すっきり整理されてきたと思いますが、いろいろな捜査を受けた体験、経験、それから裁判を通じた体験、経験等、いろいろ本に書かれていたり雑誌に載ったりするところで、起訴便宜主義というものが濫用されているんじゃないかという指摘が少なからずあるわけであります。そういうのを踏まえて、有識者から、やはり検察が見逃す権限とでも言うべき、そういうものを持っていることによって、その見逃す権限を行使する、しないで、かなりいろいろ圧力をかけたりすることができるという指摘もされております。
 ですから、いかに起訴便宜主義を本来の趣旨に従って運用していくのかという、裏からいえば、その濫用に歯どめをかけるのかというのは非常に重要だと思うのですけれども、この点、どのように行われているんでしょう。
#139
○原田(明)政府委員 御指摘の点も、検察官が現在の法律のもとで与えられている権限に関する基本的な問題であろうと思うわけです。最終的な公訴権を行使するかどうかという判断は一まさに個々の事件ごとに適正になされるべきものと承知しておりますが、その実際の適正な運用を確保するために幾つかの仕組みがつくられております。大きく分けて、まず三つあろうかと思います。
 一つは、日本の検察官は、いわば検察官独立の原則ということで、個々の検察官がその自己の責任において職責を果たしていくわけでございますが、検察官として一体として働くために、いわば決裁制度というものが設けられております。その庁によってその仕組みがどのような層になっているかということは、規模によっても違うわけでございますが、少なくとも何段階かの決裁ということが行われてまいります。部内における必要な決裁を通じまして十分な吟味を行う、いわば決裁官の助言と承認のもとに、検察としての一体として、不公正な措置がなされないようにというチェックが行われるというのが第一でございます。
 また法制面では、これは委員も御承知と存じますが一検察審査会法による検察審査会における審査がございます。これは、一般の衆議院の選挙権を有する方から無差別に抽出されました十一人の委員によって構成される審査会でございますが、各地方裁判所ごとに基本的には設けられておりまして、これは告訴、告発をした方とか犯罪の被害者であるとか、そういう事件についての関係者がそこに申し立てをする、そして検察官の不起訴について問題ありと感じた場合は、検察審査会の審査を求めることができます。
 そして、検察官の意見、検察官がどのような理由でこの件を不起訴にしたかという点について審査いたしまして、それについて異論があるという場合には、審査会の意見として、検察庁に対して、不起訴にしたことが不当であるとか、あるいは起訴すべきであるというようなことも含めて、意見を申し述べていただくことができるようになっておりまして、そのような決議がなされた場合には、各検察庁は、これを真摯に受けとめて、再捜査を行うなど適切な処理をしていくということがもう一つあるわけでございます。
 さらに、一定の犯罪、特に公務員の職権濫用にわたるような事件につきまして検察が不起訴にしたという場合には、裁判所において、直接その事件を刑事裁判所で審判すべきかどうかを決定する、いわゆる付審判手続というのがございまして、これは、準起訴手続とも呼ばれますが、そのような手続でもって検察官の不起訴処分の当否が判断されてまいる。
 この点は、先ほどの検察審査会の審査、それから付審判に係る手続は、個々の検察官にとっては大変ないわば関門でございまして、そこで取り上げられて、そこで問擬されるということについては、極めて敏感にそのことを考えていくということ、そして、当初に申し上げました部内での決裁手続を通じて十分吟味されていくというふうに考えている次第でございます。
#140
○達増委員 きょう私、委員会で検察問題を取り上げ、特に起訴便宜主義について質問をするつもりだということを、ある同僚議員にきょう話したら、ぜひ隼ちゃん問題を取り上げてくれというふうに言われました。質問通告になかったので、今わかる範囲でのお答えをいただければと思うのですが、いわゆる隼ちゃん事件、東京・世田谷区に住む片山隼君という小学生が昨年十一月にダンプカーにひかれて死亡した。ところが、その運転手がまさに起訴猶予、不起訴ということになっており、その遺族等関係者が納得できないということで、非常に報道でも取り上げられ、また特にインターネット等を通じて広く、また新しい形で世論の関心を呼んでいる事件であります。
 まず、先ほどから議論しているこの起訴便宜主義というもの、まさにこのケースの場合に濫用されてしまったのではないかという指摘があるわけですけれども、この点、いかがでしょう。
#141
○原田(明)政府委員 お尋ねの事件につきましては、先ほど私が御答弁させていただいた物の考え方でまいりますと、起訴猶予ということではなくて一いわば起訴すべきかどうか、つまり、犯罪を立証することがほぼ一〇〇%大丈夫だという確信が持てる段階で不起訴にしたということではなくて、いわば証拠の評価、検察官が証拠によって得られた事実からして、検祭官の当時の判断としてそこまでの自信が持てなかったということで、範疇からいいますと、証拠がいわば、嫌疑かと申しますか、嫌疑が十分ではなかったという判断に至ったというふうに聞いております。
 なお、具体的な事件のいかなる理由でそうなったかということにつきましては、現在問題になっている事件でございますので、なお慎重に見守りたいと考えております。
#142
○達増委員 今、答弁の最後、いかなる理由で不起訴になったかについては事態を見ながらということで、実はまさに、どうしてこうなったかということが、今非常に関係者の間で問題になり、世間的にも話題になっているわけであります。
 私も、この事件について、どうしてなのかということはこの場では質問しませんけれども、一般的に、不起訴になったときに、どうして不起訴になったのかということを、この場合は被害者、加害者がいるケースが多いと思うのですけれども、そういう場合の被害者側が、何でこんな事件が不起訴になるんだということで、憤慨し、また、事件の詳細について知りたいのに、不起訴になったがゆえに裁判にもかからないので、事件の詳細も知ることができない。
 そこで、不起訴にするのであれば、その理由を説明してほしい、そういうことを一般的に行うべきじゃないかという指摘があるわけですが、この点、どうお考えでしょうか。
#143
○原田(明)政府委員 ただいま委員御指摘の点は、一般的にそのとおりだろうと私は思います。そして、現在、検察の実務におきましては、かなりの程度そのような努力が払われていると承知しております。そして、幾つかの庁、二十を超える庁では、制度としてもそのようなものをつくり上げている。
 また 最高検察庁におきましては、最近におけるそういう被害者対策と申しますか、一般に、被害者に対して刑事司法はもう少し配慮すべき点があるんじゃないだろうか、その中の一つとして、被害者に対する説明ということも含めて取り上げられて、これについては、もう少し、基準を設けて一律にやってはどうかという意見も現実にございまして、その点を踏まえて、対策が早急に立てられていくだろうと私は考えます。
 そして、実は御指摘の件につきましても、報告によりますと、説明を求められた際にある程度の説明はなされたという報告を受けております。しかし、私は、それで十分だったということを申し上げるつもりはございません。現実に子供が亡くなり、その痛手を負った両親の立場からして、十分受け取れなかったということについては、私は素直に受けとめなければならないだろうと思います。
 ただ、交通事件一般に言いますと、目撃者の発見、また、その目撃者の方々がどのように協力していただけるかという点についてはさまざまな問題がございます。そしてまた、その方々についてすべてを明らかにしていくということはどうなのかという点もあろうかと思います。
 しかし、少なくとも、検察官といたしましては、どのような処分をしたかということについて責任を持つわけでございますから、関心を持つ、特に被害者の遺族の方々、重大な関心を持っている方には、できるだけその点について説明を尽くすための努力をすべきだという点については、私はそのとおりだろうと思います。
#144
○達増委員 こうした問題について、一般的に何らかの制度的な解決法を考えるということについては、またちょっと議論が必要だと思うのですけれども、今回のいわゆる隼ちゃん事件については、御遺族の方々を初めとする関係者や、特に御遺族の皆さんに対して、御本人たちが納得できるような説明、こういうのをやっていってほしいと思うわけですけれども、改めて、この点については、この事件について、政府の方でもきちっとやっていかれるということを確認したいと思います。
#145
○原田(明)政府委員 具体的な御指摘の件につきましては、いわば関係者の方から、先ほども申し述べましたが、検察審査会の審査を受けたいということで申し立てがなされることを承っております。
 私どもとしては、検察はそのような事態を踏まえて、事件についてどのような審査がなされるかということも念頭に置きながら、まさに適切に対応をしてくれるものと考えております。
#146
○下稲葉国務大臣 けさほどからその問題についてお話がございましたので、この際発言させていただきたいと思います。
 問題は二つあると思います。一つは、交通業過致死事件、この事件の処理の問題でございます。もう一つの問題は、被害者の遺族等々に対する検察のあり方の問題だろうと思います。
 第一番目の問題につきましては、検察としては、処分をしまして、その処分について今検察審査会の方へかかっている、そこで御議論があって、それに基づいてまたいろいろ処理できるだろうと思いますので、具体的な内容について申し上げるのは差し控えたいと思いますが、やはり検察行政の基本は、いつも国民の目線といいますか、国民の立場に立って、検察というのはいかにあるべきかということが非常に大事な問題ではなかろうか。そういうふうな点について、実は検討もいたしました。
 交通業過致死による起訴率というのは、略式も含めて毎年六〇%前後でございます。今回の場合はそれを外れているわけでございますが。刑事局長から話がございましたように、その点を踏まえまして、二十を超える検察庁では、検事正等々の指示みたいな形である程度の措置をされていることはございますけれども、全国的に、そういうようなものについてのやり方というものが必ずしもルール化されていないという側面があるのも事実でございます。
 やはり何といっても、そういうふうな被害者の立場に立って、御理解のいただけるような、御納得のいただけるような検察の行政でなければいけないというふうに思いますし、私といたしましても、こういうふうな事件を契機として、全国的なルール化づくり、そういうふうな面につきまして努力してまいりたい、このように思います。
#147
○達増委員 時間が参りました。
 検察の問題ということで、最初、日本全体の金融改革ですとか行政や政治家のあり方の改革、そういったものと連動する検察の活躍について取り上げ、また最後のところでは、一人の小学生の男の子の亡くなった事件というものを取り上げたわけですけれども、天下国家のことでも、一人の子供のことであろうと、法と証拠に基づいて真実を明らかにし、正義を実現するという意味では違いはないんだと思います。
 そういう検察行政、特に、国民にも注目されたこの一年の動きを念頭に置きつつ、今後どのようにやっていきたいと考えておられるか、大臣の所感を伺って、質問を終わりたいと思います。
#148
○下稲葉国務大臣 先ほど来、起訴便宜主義の問題だとか、あるいは検察一体の原則等々を踏まえた話が刑事局長との間でいろいろございました。それから、国会あるいは国民の世論というふうなものについてもお話がございました。
 そういうようなものを背景にいたしますが、検察というのは、やはり何といっても、法と証拠に基づいて仕事をやらなくてはなりませんし、これは申すまでもなく、厳正、公平、不偏不党でございます。肩を張る必要もございませんし、厳粛に淡々とその職責に邁進するものだというふうに思います。
#149
○達増委員 終わります。
#150
○笹川委員長 木島日出夫君。
#151
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 本法案は、法人の指名債権の譲渡について、民法四百六十七条の特例として、新しい対抗要件制度として登記制度を創設しようというものであります。
 先ほど法務大臣から、その改正理由として、債権流動化、法人の資金調達手段の多様化の状況のもとにあり、いわゆる法人による債権譲渡を円滑にするためだと述べられました。私が法務省からいただいた本法律案についての概要を見ますとその旨が書かれておりまして、債権流動化仕組みとしていろいろな絵がかかれております。
 そこで、まず法務大臣、法務省にお聞きしたいのですが、この仕組みの債権譲渡の受け皿会社として、法務省は、あるいは大蔵省でもいいかもしれません、いわゆる特別目的会社、SPC、こんなものなどを受け皿会社の一つとしては想定しているのは間違いないのでありますか。
#152
○森脇政府委員 これは、本提出中の法案、民法の一部を改正する法律案自体からいたしますと、受け皿会社と申しますか、譲受人はいかなる者であっても差し支えないわけでございまして、その限度で債権の流動化といいますか、債権をいわば資金調達手段として使うという限度では利用価値かあるものというふうに考えております。
 ただ、典型的な利用のされ方はどうかという観点からいたしますと、現在大蔵委員会の方でいわゆるSPC法案が審議中というふうに承っておりますが、そういうものも言ってみればこの民法の一部改正法案の上に乗っかったシステムであるというように理解いたしておりまして、それが一つり債権流動化の典型例として挙げるのが適当ではないかという観点からこの法務省の資料を作成したものでございます。
#153
○木島委員 民事法制ですから、それが一度つくられれば特別の場合だけではなくて広く一般的に一般化して使われるのは当たり前であります。私の質問は、どうして今こういう制度をつくらなくてはいかぬのかという経済的な背景、政治的な背景を聞いているわけでありまして、今御答弁になりました。
 それで、大蔵省をお呼びしておりますので、お聞きしておきます。
 まさに今、本国会に指名債権流動化のための債権譲渡の受け皿としての特定目的会社、SPCに関する法案、SPC法と言いますが、それが提出され、大蔵委員会でけさ審議され、きょうお昼にまさにこの法案が衆議院本会議で議決をされたところであります。私は大蔵省にその背景、目的、仕組みの概要を簡潔に答弁願いたいとお願いしておったのですが、時間の制約がありますから、もし私の質問時間が残れば後から詳しくお聞きをすることにして、時はしょりますが、やはり大蔵省としては、今日、不良債権対策、土地の流動化、債権の流動化が非常に喫緊の課題である、橋本内閣としても非常に重要な課題である、その一つの案として債権流動化のための対抗要件特例法もつくってもらいたい、そう考えていることは大蔵省の方としても間違いないのでしょう、関連法案としての位置づけでいいのでしょう。
#154
○片山説明員 お答えいたします。
 議員御指摘の債権流動化でございますが、ただいま法務省の方からも御説明がございましたように、今後の金融システム改革の中で、債権の流動化と申しますのは、金融機関のみならず、一般企業がリスクの適切な管理を行うとともに資金調達手段の多様化を図る上で非常に重要な手法であるというふうに私どもも認識しておりまして、そのための環境整備といたしまして、私どもの方では、いわゆる先生御指摘の受け皿会社ですかという形で証券化を促進する器として、特定目的会社、SPCを用いた資産の流動化を促進する法案を提出させていただいておるところでございます。
 また、他方、債権を譲渡いたします場合には民法の対抗要件を満たすということが必須でございますので、今般それが簡素化されるという法案が同時に国会に提出されているということで、その両方が相乗効果と申しますか、車の両輪としてさらに流動化が進むということではないかと理解しております。
#155
○木島委員 これは大蔵省に聞きましょうか。
 ことしの四月二十四日、橋本内閣から総合経済対策が打ち出されてまいりました。同僚委員からも指摘がありましたが、その一つに、「土地債権の流動化と土地の有効利用」という分野がございます。
 いろいろなテーマがありますが、証券化等のため、不動産並びに不動産担保つき債権等の譲渡が特定目的会社、SPC等に対し行われる場合に、不動産鑑定士によるいろいろな評価の問題、これもあります。
 債権回収と債権管理を行ういわゆるサービサーについては、不良債権等の処理の促進にも資するものであり、現在進められている立法化の動きも踏まえ、必要な検討を行うというのもあります。
 また、不動産投資情報の整備・拡充等による資産担保証券、先ほどもありましたがABS、これの市場整備という課題もあります。
 そしてまた、郵貯・簡保資金の運用対象を多様化し、こういうABSに対する運用について平成十一年度に向けて検討するというのもあります。
 それから引き続いて、特定目的会社、SPC発行社債のうち適切なものを店頭市場の基準気配銘柄に加え、さらに株式会社債券決済ネットワークに乗せてオンライン決済を行う。
 こういう一連の債権・土地の流動化法ががあっと出てきて、その受け皿会社のための法案がまさに今国会出され、そして大量な債権譲渡をしなければいかぬわけですから、民法の原則では間尺に合わぬということで、一括して債権流動化を簡便化ならしめる、そういう登記制度が位置づけられて出てきているのではないでしょうか。
 大きく言ってこの法案は、法務大臣に聞きます、橋本内閣が今進めている六大改革のうちの金融制度改革、いわゆる金融ビッグバンを推し進めるための法的整備づくりの一つだ、法務大臣、そう伺っていいのでしょう。当然、この仕組みができればそれだけではないです。一般の法人の持つ指名債権の譲渡については全部使えるのは当たり前です。そんなことを聞いているのではない。そういう大きな今の橋本内閣の金融ビッグバン推進のための一つの法制度、受け皿づくりだ、法務大臣、そう位置づけてこの法案を提案されてきているのでしょう。
#156
○下稲葉国務大臣 私どもは民法の特例法としてこの法案を提案いたしておりますわけでございまして、今委員おっしゃるようなことが結果としてそういうふうな側面があることもそうかな、こういうふうに思います。
#157
○木島委員 ここは大蔵委員会ではありませんから、これから私はこの債権譲渡円滑化、新たな対抗要件制度、登記制度がどういう問題を持っているかについて法的な質問をいたしますが、やはり基本はそういう大きな土地、債権流動化に資する法律であることは確かですよ。首をうなずいておりますから、それは間違いないです。
 そこで、先ほど、政府の四月二十四日の総合経済対策の一つに、こういう受け皿会社が証券発行するというのでしょう。証券発行するというのです。こういう債権を一斉に買い取ってそしてこれを国民に証券として売りさばくというわけでしょう。そういう場合に、郵貯・簡保資金の運用対象を多様化して入れるというのですから、そういうところにも郵貯、簡保の資金をぶち込んでいく、そういう大きな流れにあるのでしょう、大蔵省。そうすると、私はやはり、この法律ではないです、そういう大きな土地、債権流動化というのは、やはり何だかんだ言っても、公的資金をつぎ込む受け皿づくりではないかと思うのですが、大蔵省、どうでしょうか。
#158
○片山説明員 ただいま御指摘のありました四月の総合経済対策の中に、特定目的会社、SPCの発行社債のうち、適切なものを、郵貯・簡保資金の運用対象として、それを多様化し、郵貯、簡保の預金者、加入者の利益に資するため、安全、確実な資産担保証券、ABSに対して、平成十一年度に向けて運用について御検討になるという文言が盛り込まれておりますが、もちろん、これは私どもの判断というよりも、郵貯、簡保の運用を預かっておられる当該郵政省さんの御判断ではございますが、私どもが聞いております限りは、やはりそれは安全、確実ということで、運用の対象として適当ということで、投資活動として御判断なさったものに投資されるということだというふうに聞いております。
#159
○木島委員 これ以上は論争はとめますが、毎日新聞のことしの四月二十五日欄におもしろい記事があるのですね。この政府の総合経済対策が出たときの新聞ですが、「平成の徳政令」、こういう見出しで、「総合経済対策に土地・債権流動化促進策が盛り込まれたのは「景気低迷の元凶は不良債権化した土地が動かないから」という問題意識から。自民党の特別調査会(保岡興治会長)は、不動産が動き出すきっかけとなる公的資金投入や投資家に資産担保証券(ABS)を買ってもらうための公的信用保証にこだわった。」こういう記事があります。
 私は、この法案が果たす大きな役割というのは、やはり大銀行、大金融機関を救済するための仕組みづくりの一つだと言わざるを得ないということを指摘しまして、法律の問題点について、以下、質問していきたいと思います。
 まことに、そのこと自体が大手金融機関にとって虫のいい話なのですが、私は、この法案は、その大手金融機関の虫のよさを助けるために、明治以来の日本の民法の原則、これまでねじ曲げてしまっているということを、以下、幾つかの点で、質問で明らかにしていきたいと思います。
 最初の質問ですが、指名債権の特質の問題です。指名債権の特質は何かということを法務省にお答えいただきたい。
 金銭の支払いを目的とする債権には、もう御案内のように、今回問題になっている指名債権、あるいは指図債権というのもあります、無記名債権というのもあります。指名債権の特質は何でしょうか。民法四百六十七条が、指名債権についてのみ特別の債権譲渡の対抗要件を定めているその立法趣旨というのは、一体何だったのでしょうか。
#160
○森脇政府委員 当初から、債権者、債務者という形で特定されている債権でございます。そういう特色がございますところから、当事者が合意すれば債権譲渡の禁止の約束も有効になし得る。ただし、それの対抗要件の問題がありますけれども、そういう性格を持っているものというふうに理解いたしております。
#161
○木島委員 そうですね。債権者と債務者が特定されている。私も、それが指名債権の基本的な特質だと思うのです。指図債権というのは手形とか小切手。これはもう債務者は特定されないのです、転々と移転していきますね、債権者も移転していきますね。
 そうすると、やはり指名債権の特質というのは、わかりやすく言うと、私は、債権者と債務者とが特定されているということは、人間関係、要するに人的関係が債権者、債務者の関係で強固にあるということ、これが最大の特質だろう、法的な、経済的、社会的な特質だろうと思うのです。私は、言葉を使えば、要するに、いろいろある債権の中で、顔の見える債権、これが指名債権の特質ではないかな、俗っぽく言えば言えるのではないかというふうに思います、顔が見える債権だと。
 そうしますと、本改正法は、これを債権流動化の目的で、顔を見えなくする、人的関係を切断する、債権者、債務者という特別な関係を断ち切って、そして大量に債権を流動化する、そういう経済社会的な見方ですが、そういう役割を果たすということも間違いないと思うのですが、どうですか。
#162
○森脇政府委員 今委員が御指摘になったのは、やや指名債権の、重要な部分ではありますけれども、その部分の強調のし過ぎではないか。何となれば、これは債権譲渡が禁止がない限りできるのが当たり前でございます。それでまた、禁止されておっても、債権譲渡がされた場合に、善意の方には対抗できないという規定まで設けられているわけでございまして、こういった面からすると、一応、指名債権についても債権譲渡というものが予定されているのだ、少なくともここまでは言えるのではないかと思っております。
#163
○木島委員 それはそうなのですよ。指名債権も譲渡が予定されているし、そのために、民法は精微な仕組みをつくっているのですよ。債権譲渡の仕組み、対抗要件の仕組み、非常に精緻な、かたい仕組みをつくっているのですよ。
 さっきの私の質問に答えていないのですよ。指名債権については、なぜほかの指図債権、無記名債権と違って、特別に債権譲渡の対抗要件で非常にかたい、きっちりした仕組みを民法はつくっているのか。その立法目的は何なのか。そこを答えていないのですよ。では、答えてください。
#164
○吉戒説明員 委員御指摘のとおり、指名債権と指図債権がございまして、指図債権はこれは証券的な債権でございますので、証券の交付によって移転していく。指名債権の場合には、これは債権者、債務者の人的関係に基づく債権でございます。
 ただ、人的関係といいましても、非常に密接な人的関係のものと希薄なものとがございます。古い……(木島委員「指名債権と指図債権の違いを聞いているのです」と呼ぶ)はい。指名債権の場合には、譲渡の場合の対抗要件は、先ほど来から繰り返してございますけれども、通知、承諾でございます。指図債権の場合には証券の交付ということでございます。その点の差異がございます。
#165
○木島委員 私は、素直に聞いているのですから、素直に答えてください。要するに、指名債権というのは、人的関係が基本にあるから、債権譲渡はあるけれども、そのときにも、債権者保護とか債務者保護とかをしっかりしなさいよというので、指図債権と違って対抗要件など非常に厳格なのですよ。
 そこで聞きます。対抗要件制度、三制度併存問題についてお聞きします。
 先ほども同僚議員から再三指摘されておりました。本改正法が成立すると、リースとクレジット債権については、民法による債権譲渡、それから特定債権事業規制法、略称特債法による債権譲渡、それから本特例法による債権譲渡という三制度が併存状況になるわけであります。
 そして、まず基本を聞きます。債権者は、債権者会社、リース会社、クレジット会社は、この三つの併存する債権譲渡対抗要件制度のどの方法によってもいいのでありましょうか。いいのだと思うのですが、それは間違いないか。その際、この三つの制度の債権譲渡の優劣については、細かい話は後から聞きますが、一応、制度間では、三つの制度はどっちが強いとかどっちが弱いとか、そういう強弱、優劣は基本はないということだ、民法や特債法や本法を全部読んでも差はない、効力についての優劣の差はないと私は認識していますが、私の認識に間違いないでしょうか。
#166
○森脇政府委員 当然の前提だと思われますので、譲渡人が法人であるという前提を置かせていただきますと、譲渡債権がリース・クレジット債権である場合、この特定債権に当たる場合には、御指摘の三つの制度が併存することになりまして、債権者は、これのうちのどの方法によっても第三者対抗要件を備えることができる、こういうことになろうかと思います。
 特定債権法、それから本法案、これはいずれも、四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす、こういう形にいたしているとおり、第三者対抗要件としての効力については民法との間に優劣はない、そういうものでございます。
#167
○木島委員 そこで、ずばり聞きます。
 ある指名債権について、もちろんクレジット会社の持っている指名債権でありますが、この三制度がすべて適用になるある指名債権について、民法四百六十七条の通知と特債法七条による新聞公告と本法特例法による登記事項証明書の交付が、全く同じ日にそれぞれ異なった譲受人に対してなされてしまったという場合、債務者は一人であります。債務者は三万から責められるわけでありますが、一体だれに債務の支払いをすればいいんでしょうか。これは架空で、あり得ない想定ではないと私は思うんです。
 債権者であるクレジット会社が、破産寸前という状況になりますと、これは修羅場であります、戦国状態であります。私も弁護士としてそういう状況を何度も経験しております。いろいろな形で債権を引っ張り合いします、取り合いをします。ですから、こういう三つの制度が一遍に社内の何者かによって使われるということはあるわけであります。
 そこで、再度の質問であります。同じ日にこの三つの制度がそれぞれ実行されてしまって、三万の債権者が生まれてしまった場合に、債務者は一体だれに払うんでしょうか。
#168
○森脇政府委員 今御指摘になりました三つと言われましたのは、一つは、民法の四百六十七条の通知でございますね、それから一つは、特債法による公告、それからもう一つですが、これは登記事項証明書の交付が同じ日になされたということでございますね。そういたしますと、債務者といたしましては、登記事項証明書の交付を受けましたので、それによって登記の日時を知ることができる、こういう関係になります。これが民法の通知あるいは特債法の公告よりも前であるということになりますと、債務者は当然に、登記を了した者を債権者として扱わなければならない、こういう関係になります。恐らくは、その登記と登記事項証明書の交付も同じ日だと……(木島委員「いや、それは関係ない。交付がほかの制度と同じ日の場合です」と呼ぶ)今、そういうことになると……。
#169
○木島委員 今、答弁の中で、本法が成立した場場の登記の日時と言いましたが、時間は出ないんですよ、本法は。日しか出ないんですよ。さっき枝野議員の質問によって、時間まで特定しなければいかぬかどうか今検討しますという答弁ですよ。こんないいかげんな話はないんですよ。そこで、それは別ですから、おきます。
 同じ日に三つの制度が使われた。本法の場合は日しか特定できません。何月何日に交付されたという日しか出ないですね。時間を調べれば交付の時間は出ますかね、出ないですね、郵便物でやるとしたら。譲り受けた会社が登記事項証明書をもらってきて、登記所から発行を受けて債務者に渡すんでしょう、それが交付ですね。手渡しなら、本人は何時に行って渡したという時間は、自分は証明できるかもしらぬ。しかし、郵送でやったら、郵便局は時間を証明してくれません。何日というのは証明できるかもしれません。
 民法四百六十七条の通知について言いますと、私の弁護士としての経験からいうと、大体は内容証明郵便なんですよね。内容証明郵便だと、郵便局が証明できるのは、日付と、何時から何時までの間に配達されたというのは、受け取ったという証明ですね。夜の八時から午前何時までの間にこの郵便物が出されたことを証明しますよという期間があるんですよ。何時から何時までという期間があるんですよ、内容証明というのは。
 ですから、日にちは特定できるかもしらぬけれども、時間の特定は非常に不十分。ましてや通産省と大蔵省が所管している特債法七条による新聞公告なんというのは、そんな時間なんというのは、何にもないです。債務者だって見る可能性もないようないいかげんなものですよ、これは。日経新聞か朝日新聞に出るだけの話です。日にちは特定できるかもしれません。
 それぞれきずを持った三つの、債務者本人に対する対抗要件制度ですよ、今聞いているのは。これがかち合ってしまった、どっちが先かどっちが後かわからないわけですよ。証明できないです、それは。新聞なら朝の八時ごろ配達されるはずだなんという、そんないいかげんじゃだめですからね。
 そうすると、債務者にとっては先後関係で決まると先ほど再三、質問に対して民事局長は答えているんです。早い方が有効なんだと答えていましたね。理屈はそうでしょう。しかし、この三つの制度、現行制度と、新しくこの法案でつくろうとする制度を幾ら根掘り葉掘り調べてみたって時間は特定できないんですよ。そんな法律なんですよ、これは。そうすると、どうするんですか、債務者は。三つの債権者から全部責められて、払う義務が生じるんですか。
 私の争点は、債務者は一人ですよ。債権会社があって、もう倒産直前になって、ある会社の一人間が、特定の債務者に対する百万円の貸付金についてAさんに譲渡してしまった。そして、民法を使って内容証明郵便で送りつけて、債権譲渡が適法になされた。そういう場合と、一方では、破産になってはいかぬというので、会社がこの債権を丸ごとひっくるめてさっきのSPCなる会社に全部譲渡してしまった。そしてすぐ、急いで登記所に駆けつけて登記をさせて、登記させただけでは債務者からお金を取れませんから、すぐ登記事項証明書をとって、そして郵送した。その郵便物が債務者に着いたその日がたまたま同じだった。そしてもう一方、もっと時間をかけて通産大臣に計画を届け出て了解をとって、そして特債法の手続に沿って新聞公告にも出した。それはCという譲受人に譲渡するというので出してしまった。真ん中の本法を使うのはBさんだ。
 そうすると、譲受人であるAさんもBさんもCさんも適法に、一方では民法によって適法に譲り受けたんだ。Bさんは、本法によって適法に譲り受けて登記所から証明書をもらって渡したじゃないか。Cさんは、特債法を使って新聞に公告をちゃんと出したじゃないか。みんなそれぞれ立派な権利者ですわな。
 たまたま同じ日だったという場合に、時間の前後は証明できないんです。そうすると、債務者としてはどうなのか。三人全部に百万円払わなければいかぬのか、三百万払わなければいかぬのか。自分の好きな人に払っていいのか。最初に好きな人に百万払ったら、あとのB、Cにはもう払いませんよと勝手に債務者が決めることができるのか。優劣はあるのかというんですよ。
    〔委員長退席、八代委員長代理着席〕
#170
○吉戒説明員 ちょっと議論を整理いたしますと、先生は、A、B、Cと三人に債権が三重に譲渡されたということでございますね。その真ん中のBが本法の債権譲渡登記をした、その通知が同じ日に行ったという場合ですね。ただ、本法の場合には、対第三者の対抗要件の基準時は登記がされた日でございます。したがいまして、登記事項証明書が交付されて通知した、その日は対債務者に対する対抗要件の具備の日でございまして、A、B、C間の優劣を決めるのは民法通知、それから登記の日、そして公告の日ということでございます。
#171
○木島委員 同じ日でいいです。
 倒産直前で忙しいですから、登記所へ飛んでいって登記をまずさせて、そして登記事項証明書をもらって、すぐその足でぱっと債務者のところへ持ち込んだということでいいですよ。わざわざ複雑にあなたは言うから。それが同じ場合ですよ。すっきり答えてくださいよ、問題点わかっているでしょう。
#172
○吉戒説明員 同じ日に登記がされて通知もされた。この場合は、民法通知の場合には、先ほど先生おっしゃいましたように内容証明郵便でありますので、これは配達証明が返ってきます。配達証明の場合には、何月何日の、恐らく幅のある時間帯に配達したということしか証明できません。
 それから公告の場合は、これは日単位で公告されたというふうに見られております。
 それから登記の場合は、ちょっと先ほど局長申し上げましたように、登記事項証明書に登記がされた日時というものを記載する予定でございますので、登記の時点は特定できます。(木島委員「いや、そんなこと私、わかって質問しているんだから。どっちに払わなきゃいかぬのかという質問なんです」と呼ぶ)しかしながら、申し上げたいのですけれども、公告の日は一日単位でございますので、結局、公告と登記と通知が、どれが先後するのかということは不明であるという場合です。
 こういう場合にはどれもが優先しない、同順位であるというのが恐らく最高裁の現在の判例でございます。したがいまして、債務者の方からすると、A、B、Cのいずれかの譲受人に支払えば免責されるということになるのではないかと思います。
#173
○木島委員 その問題、解決できていないんですよね、この法案。
 私、時間があったら次に、第三者対抗要件で債権差し押さえの場合も聞こうと思ったのです。本法の債権譲渡登記と債権差し押さえが同日となってしまった場合、譲受人と差し押さえ債権者はどっちが権利を取得できるのか。
 おっしゃるような最高裁の判例、私は調べてきました。最高裁の昭和四十九年三月七日の判例では、日時の先後で決めるのだと。
 また、最高裁の昭和五十五年一月十一日の判決。同日の場合には、今おっしゃったとおりであります、債務者は弁済の責めを免れないのだ、だれから請求されても弁済の責任を免れないのだという最高の判例があります。払っちゃったら、後から請求に来たやつには、もうおれは百万、Aさんに払っちゃったんだからだめですよと言えるけれども、まだ払う前は、三者から請求されたら抗弁、ないのです、できないのです。大変なこと。
 それからさらに、平成五年の三月三十日の最高裁の判例ですと、国税の差し押さえと民法による債権譲渡の通知書が同日に到着してしまったという、国税の権利と債権を譲り受けた者がどっちが強いかというので争われた最高裁判例で、御承知でしょう、供託された場合。債務者は、もうだれに払っていいかわからないから供託すると。しょうがないからね。その供託された場合は案分するというような、まことに法の不備によって裁判所も苦労している、そういう判例があるんですよ、最高判例。こんな不確定な事案です。
 私は、さっき言いました、リース会社が倒産直前、大量の債権が一斉に横流しされる、そして債権関係がふくそうする、そのときに、どっちが優先権があるのかはっきりしなかったら、さっき大蔵省が言ったでしょう、SPCというのは安全確実な債権を譲り受けた場合にのみこの制度を使えますなんていうようなことをおっしゃっておる。しかし、その根本の肝心かなめのところで危なくてしょうがないのです、この制度は。債務者にとってはもう本当に三重に責め立てられる。
 この問題、答弁できないでしょう。A、B、C、どこが強いのか答弁できないのでしょう。しょうがないのでしょう。
#174
○森脇政府委員 そういう希有な事例の場合には、案分比例で配分する以外にないというのが最高の考え方でございます。
#175
○木島委員 そうすると、債務者が、何しろ怖いから、暴力団みたいなおっかない取り立て人のときに先に百万払っちゃった。それは有効ですか、無効ですか。
#176
○吉戒説明員 譲受人相互は、これはいずれも同順位でございますので、そのうちの一人に払えば免責されるということになります。
#177
○木島委員 有効ということですね。そうすると、本当に恐ろしい法律ですよね。法の欠陥によって、要するに力ずくで、やくざのような者を裏に従えて取り立てに来た者に、やはり債務者は怖いですから払ってしまうということになりかねない。それはなぜかというと欠陥を持っているからです、この法律が。
 時間が特定できない、先後関係、後先の関係が特定できない。最大の欠陥ですね、同日の場合。その欠陥を何とか補わなきゃいかぬというので、先ほど同僚議員の質問に対して、せめて本登記制度は、日、月しか法律にはないけれども、時までサービスとして入れようかなんていうことを今検討しておるなんていうのですから。そんなサービスなんていうものじゃないんですよ。その先後関係をきちっと法律で決めてやることが法的安定性を確立する道で、それをこの法案は怠っていると指摘せざるを得ないのですが、この指摘に対して民事局長、どう答えますか。
#178
○森脇政府委員 まず、法律の建前といたしましては確定日付によって決定する、これが基本でございます。したがいまして、確定日付というもので処理していくというのが今の法律の立て方でございます。
 ただ、そういう制度をとっておりますと、同日、例えば民法上の債権譲渡の通知が同日に到達したというときにどうするのかという問題が出てまいりまして、それは、その中で先だということを立証し得たものを優先させるのだ、こういうことが出てまいりますので、それに伴って、同日の場合の日時という問題が出てくる。そしてその中で、じゃ、登記の場合にはどうするか。これも恐らくはそれの前後というものが問題になってくる場合であろうというふうに考えられる。それに対しまして特債法の方では、これは日刊紙における公告ということでございますので、その時間を決めることは恐らく不可能であろうという、先ほど委員が述べられました意見が多数説のようでございますので、そういうものが一つかんでまいりますと、全体が三すくみの関係になって前後関係が決まらない場合が出てきてしまう、こういうことになっているのではないかと思っております。
#179
○木島委員 そうだと思うのです。制度の欠陥があるために先後関係が証明できないのです、仕組み上。その大きな欠陥が、例えば三つの法律のうちの特債法なんですね。
 私は、今述べた三つの法律、民法、特債法、本特例法、この債権譲渡対抗要件について、何で効力の調整規定を設けなかったのか。同一日になってしまったときに先後関係、証明できないのだから、そういうときにはどっちの方を優先するというような、そういう優先劣後関係の調整を何で設けなかったのか。重大な欠陥だ。何で調整しなかったのでしょうか。
 特に私、次の質問ではこう聞きます。
 大蔵、通産が所管している特債法は、対抗要件の規定は完全に、本特例法が成立いたしますと吸収されてしまうのです。というのは、クレジットでしょう、リースでしょう、大体これは法人でしょう、そこの債権譲渡の特例でしょう。そんなのはこの法律が成立すると完全に吸収されて、完璧に重なるんですよ。だから私は、特債法のうちの対抗要件の規定は何で廃止しなかったのでしょうか、法務省と通産省と大蔵省に聞きます。
 特に、特債法の対抗要件、特債法というのは、難しいかもしらぬですが、債務者対抗要件と第三者対抗要件、区別していないのです。しかもその方法は、今指摘したように新聞公告という大ざっぱなやつ。これでは債務者の知らぬところで譲渡と対抗要件が備わってしまう。学界からも再三、この仕組みはいかにもずさんで、だめだと指摘されている。本法が完全に吸収する、それなら何で法務大臣、この法律を国会へ出すときに、特債法のその条文を完全に廃止してこの法案に一本化するというのは、内閣で一致してできることを、何でやらないで放置したのですか。
#180
○森脇政府委員 これは、特債法の方は平成五年から動いておる、これに基づいて多数の債権の公告による対抗要件取得ということが経験されているという部分がございます。それに対しまして、私どもが今回つくり、考えてまいりましたこの登記による制度というものは、必ずしも外国にぴったり合う制度があるというわけではございません。そういった中で、非常な苦労の中で生まれてきた。
 果たしてこれが運用してうまく回るかどうかというようなものは、一応私どもとしては、それを見た上で対応策を考えるのがいいのではないかということから、確かに、委員の御指摘を受けますと、遅いのではないかという御批判があるかもしれませんが、これから早い機会をとらえて、私どもの所管法かどうかわかりませんが、仮に特債法を動かすということになりますと私どもの所管法ではございませんが、いろいろなチャンネルというものもございますので、その問題について協議をしていく、あるいは協議を求められればこれに応じていくという形で積極的に対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#181
○木島委員 今の答弁、私は納得できないのです。
 それは、法務省内に債権譲渡法制研究会というのがつくられて、ずっと研究しているのです。そして、平成九年四月二十五日に債権譲渡法制研究会報告書なるものが、大部な報告が出ているのですよ。そこで、この特債法と新たにつくり出すべき特例法とのいろいろな問題点、対抗要件はどうか、もう難しい問題が出てくるぞということを指摘しているのですよ。問題点の所在を全部知っているのですよ、法務省のこの報告書の研究官は。それなのに、せっかくこの法律をつくってくるなら、それを調整してからつくってくるべきでしょう、それなら。
 今、民事局長、大蔵、通産から呼びかけがあったら協議したいなんて言うけれども、逆ですよ。本来、この法案を国会に法務大臣が出すに当たって、事前に閣内で、通産省と大蔵省に話を持ちかけて、これはおかしな法だから、特債法はもうこの対抗要件制度はやめて、この登記制度に一本化してくれと頼むのが筋だったと思うのです。
 通産省と大蔵省、来ていますから聞きますが、この法案が出る前に、法務省から大蔵、通産は呼びかけを受けているのでしょうか。受けているにもかかわらず、いや、おれたちは特債法という法律を所管しているので、そんなものをやるわけにいかぬというので突っ張ったのでしょうか。お聞きします。
#182
○今清水説明員 お答え申し上げます。
 法務省から事前に御相談をいただいております。私ども、特債法を所管しておりますが、法務省さんのこの対抗要件の特例法と、趣旨において、簡易な対抗要件を具備するという点では軌を一にしているとは思いますが、公告制度とは、例えば対象債権が限定されていないとか、あるいは第三者対抗要件の具備のみ可能であるといったこと等で必ずしも一致していない点もあるわけでございます。
 また、公告制度は平成五年から運用をされておりまして、リース業者、クレジット会社にこの具備手続が浸透しておりまして、例えば社内のコンピューターのシステムもそれに対応しているといったことがございますので、公告制度と新たな登記制度との併用といったものを強く望んでいた点があることを申し添えておきます。
#183
○片山説明員 お答えいたします。
 ただいまの件でございますが、確かに通称特債法は通商産業大臣と大蔵大臣の共管の法律になってございますが、いわゆる譲り受けの公告についての条文につきましては、省令等も通商産業大臣の方でお定めになっておられまして、まことに率直に申し上げまして、本件につきまして、私どもの方には特段の御相談はございませんでしたので、率直にお答えをさせていただきます。
#184
○木島委員 通産省の答弁によると、法務省からは事前に相談があった。しかし、特債法は残したいという、望まれたので残した。おかしいのですね。
 全部廃止しろと私は言いません。特債法の中の債権譲渡の対抗要件、そこのところだけ、あんな新聞公告なんていうことはやめさせて、せっかくこんな立派な登記制度というなら、何で登記制度に合流できなかったのですか。新聞なんていいかげんなことを残そうという希望はどこから出たのですか。通産省ですか、業界ですか。
#185
○今清水説明員 私どもの判断といたしまして、いろいろ情報収集をいたしまして、また実態を踏まえて、そういうことを法務省さんの方に申し上げたということでございます。
#186
○木島委員 法務省、呼びかけたんじゃないですか。そうしたら、通産省が嫌だと言って断られた。何でそこできっちり、法制度の問題だということで、特債法のその部分をやめてくれ、登記制度に一本化した方が、それはもう絶対争いがなくなるわけですから、その部分だけは。民法と本法とは別ですけれども。何でそれを説得できなかったのですか、通産省を。だらしないじゃないですか、法務省。答弁してください。
#187
○吉戒説明員 当然、債権譲渡の対抗要件の新しい制度をつくるわけでございますので、既存の対抗要件制度を所管している官庁とは私ども協議をせざるを得ないわけでございまして、させていただいたわけでございます。
 先ほど通産省の方からも御説明がございましたように、特債法の場合には平成五年から法が施行されておる。聞きますところでは、平成八年度ベースで総額約一兆二千二百億円の債権の譲渡の公告があったというふうに聞いておりまして、これを利用されている業者も相当数いらっしゃるというようなことでございますので、私どもの方は一般の法人全部を相手にいたしておりまずけれども、特債法の場合にはリース・クレジット業者、しかも主務大臣の監督のもとにある業者ということでございますので、すみ分けができるのかな。
 それと、今後の利用状況の中で、債権の譲渡人の方が、いずれかの制度を選択していただくことになるのじゃないかなというふうに考えております。
#188
○木島委員 すみ分けていないから大問題になるのですよ。今のは私は納得できませんが、時間も迫っていますから、最後の一問だけ聞きます。
 債権譲渡の登記、本法による登記と債権者に対する破産宣告が同じ日にあったときに、譲受人と破産管財人はどっちが債権をとるのでしょうか。
#189
○森脇政府委員 同じ日でございますと、先ほどと同様に、どちらが対抗要件を先に取得したかという問題でございまして、破産宣告の日時及び登記の日で、日が同じ場合にはそれの時ということで決まるというように理解いたしております。
#190
○木島委員 破産宣告の方は時まで決まるのです。何日の何時という破産宣告です、必ずこれは。ですから、時まで特定できます。しかし、登記の方は、残念ながら本法では、まだ時まで決まらない。日ですね。
 そこで、もう私から言います。破産法五十三条二項に、破産の日の破産者の法律行為は破産宣告後なしたるものとみなす。みなす規定がありますから、登記の日と破産の日が同じときは破産管財人の方が勝つと、このみなす規定によってなるのです。しかし、このみなす規定は、みなすですから推定です。推定が覆れば、譲受人が勝つことがある。破産管財人は負けることがあるのです。その覆るかどうかは、まさにこの登記の時が特定できるかどうかにかかわるわけですから、登記の日だけじゃなくて時まで決めるかどうかが決定的に重要と。
 そこで、私、最後の質問を聞いて終わります、もう時間ですから。
 例えば、ある日の午前九時に債権譲渡の登記申請した。一方、午前十時に破産宣告がおりた。登記には時間がかかります。先ほど同僚委員からもたくさん質問されました。それは数時間かかるでしょう。その日のうちにやるというのが法務省のさっきの答弁ですが、その日のうちにやるように努力してもらうのはいいけれども、時間がかかる。それで、午前九時に登記申請が受け付けられたが、登記完了が午後一時になった。破産宣告は午前十時に東京地裁。そういうときに、どっちが勝つのですか、破産管財人と債権譲受人は。
#191
○吉戒説明員 破産法五十三条の二項、ちょっとお読み上げさせていただきます。「破産宣告後ニ之ヲ為シタルモノト推定ス」ということでございますので、推定を破ることは可能でございますが、ただいま委員御指摘のような設例で、九時に登記の申請をして、一時に登記が完了した、しかしながら破産宣告の時間は十時だったという場合には、それは破産宣告の方が優先いたします。そういうふうな関係になろうかと思います。
#192
○木島委員 そうすると、申請したのに、登記所がもたもたして登記がおくれた、例えば破産宣告が午後四時なんかの場合に、十時に登記申請したのに四時までに登記できなかったなんという場合、大問題なんですね。管財人に負けるわけです。これは、リース会社が倒産寸前、あるいは銀行が倒産寸前、山一が倒産寸前に、大量の債権を例えば労働組合に譲渡しますよ。やりますよ、そういうことは。特定の債権者に譲渡するでしょう。その譲渡が、破産宣告によって負ける、登記所の登記がおくれるために負けるということはあり得るということで、私は、そういういろいろな欠陥があるということを指摘をして、まだまだたくさんの質問をしたがったのですが、時間が終わりましたから、終わります。
#193
○八代委員長代理 以上で木島日出夫君の質疑は終わりました。
 続いて、保坂展人君。
#194
○保坂委員 社民党の保坂展人です。
 午前中からの質疑を通して、今回の法律案はやはりいろいろな問題点があるということを率直に言って感じております。悪徳サラ金が倒産をしていくというようなときに、良心的にやるかどうかというと、これは本当に修羅場になるわけでございまして、たちの悪い債権者というのがいるということを前提に立法を行っていかなければならないと思います。
 私は、きょう午前中からのこのやりとりをもし悪い人たちが聞いていたら、これは大変困ったことになるんじゃないかというふうにちょっと心配をするわけですね。今のような、たまたまそういう事例を使い抜いて、いわばうまく二重三重に債務者を責め立てるような経済犯罪が起こらないとも限らないというように思うのですけれども、なぜそういう不備な点をクリアしないで提出されたのか、そこから伺いたいと思います。
#195
○森脇政府委員 確かに、微細な点をとってまいりますと、一番の問題は、同日であると全部前後関係が決められなくなる要素が、この法律のためではなくて別の法律のために、この対抗要件の制度の中には一部前から存在した。その点は、民法の複数の通知と特債法の公告との関係でも既に生じている問題であるわけです。
 今回の改正法においては、非常に希有な事例ではありますけれども、そういう点についての、前に手を出してそこの部分をいじるという改正がなされていないという御指摘になろうかと思うわけです。そういう御指摘でございますれば、それは、そういう部分が一部存在するということは認めざるを得ないものだというふうに考えております。
#196
○保坂委員 これは、一部そういう部分が認められれば、やはり直していかなければいけないと思うのですけれども。
 ちょっと事務的なことを聞きたいと思うのです。確定日付のある通知に何か不都合な点、例えば事務的に非常に手間がかかるとか、あるいは内容証明のやり方では極めて料金がかさむんだというようなことがあるかと思います、推測ですけれども。そうすると、今度は、登記の証明書を、いわゆる登記料といいますか、これはコスト的に見てどのぐらいの差が生じてくるのか、いわゆるそういった会社にとってどの程度のコスト削減になるのかという試算をお示しいただきたいのです。
#197
○吉戒説明員 この制度の債権譲渡登記を申請いたします場合の登記の手数料の額でございますが、これは法案の十五条で、物価の状況、債権の個数及び債権譲渡登記の存続期間に応じた登記に要する実費並びに登記事項証明書の交付に要する実費等を考慮して政令で定めるというふうにいたしております。具体的な金額につきましては、現在検討いたしておりますけれども、利用者に過度の負担をかけることのないような適正な価格に設定したいというふうに考えております。
 他方、現在の民法上の内容証明郵便による債権譲渡の通知の場合でございますが、ちょっと細かくなりますけれども、内容証明料が一枚につき四百二十円、それから書留料が四百二十円、それから通常郵便物の料金が定形で二十五グラムまでのものについては八十円、そして配達証明料、これが三百円ということでございますので、通常は一千二百二十円というふうに言われております。
 したがいまして、委員が今御指摘の確定日付のある民法通知にぐあいの悪いというのはどういう点かというふうなお尋ねの点でございますが、一つは、多数の債権を一括して譲渡いたす、一本や二本ということではなくて、相当多数の債権の一括譲渡をする場合に、民法で対抗要件を具備いたしますためには、内容証明郵便による通知をいたす。一通が少なくとも一千二百二十円かかる。例えば、一万本の債権譲渡をいたします場合には、一千二百万かかるというようなことになります。しかもこれは、到達いたしませんと効力がございませんので、一万人も債務者の方がいらっしゃれば、中にはなかなか難しいという場合もございまして、そういうふうな手続的、それから費用的な負担が非常に重いということもありまして、債権の流動化を進めるためには、民法上の対抗要件とは別の形で制度設計できないかというのが、実務界の方から要望としてあったということでございます。
 したがいまして、今回、内容証明郵便による通知というものにかえて、少なくとも、第三者の対抗要件は登記という形で具備していただく。登記の場合には、先ほど私申し上げましたように、もちろん低廉な価格、低廉といいましょうか、相当程度低廉な価格というものをひとつ念頭に置いて検討してまいりたいと思っておりますので、この法案のもとでは、費用的にも、それから手続的にも、一万本の債権の譲渡でありましても、登記は一件でよろしゅうございますので、相当簡易化されるのではないかなと思います。
#198
○保坂委員 簡易化されても、やはり債務者保護ということは大事なわけで、内容証明郵便だと大体見ますよね。内容証明で来たといえば、何だろうといって見る。ただ、最近いろいろ郵便物多いですから。私なんかも、郵便が来ても、開いてもみないということもあるわけです。
 では、例えば内容証明を大量に発送する場合には、大幅に、相当なコストダウンをするという工夫もできたんじゃないですか。そういうことは検討されなかったのですか。
#199
○吉戒説明員 内容証明の手数料は法定されておりますので、これを合理化して何をいたすということは、これに伴う人件費等のコストは何かするかということは考えられますけれども、ちょっとそれ以上のことは、私ども、アイデアとしてはございませんでした。
#200
○保坂委員 ちょっと幾つかの例を、同僚議員も出しておられましたが、例えばこういう例でどうなるのかというのを出して聞いてみたいと思うのです。
 A、Bともに経営するサラ金会社が倒産をした。そして、会社そのものが分裂をして、取り合いというか火事場の騒ぎになって、Aは登記の方法でAという会社に債権を譲渡した。Bは通知の方法でBの会社に債権を譲渡して、それぞれ対抗要件を備えた。登記の方が日付が早くなされているが、債務者は、通知を受けたBの会社の方が取り立てが厳しいということで債務を支払ってしまった。その後、Aの会社の方が債務者に対して訴訟を提起した。そして、実際にはAは登記事項証明書を交付していないのに、送ったはずだというふうに主張をした。
 こういう場合には極めて債務者保護が難しい状況になるのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
#201
○吉戒説明員 非常に複雑な事例でございますので、すぐ私はわからなかったのですけれども、A、Bはいずれも債権者でございますか。(保坂委員「A、Bは共同で経営していた」と呼ぶ)共同で経営しておって、では債務者がCというふうにすると、A、Bが連帯債権者なわけですね。
 そういう場合には、それぞれ恐らく連帯債権でございますので債権譲渡はできると思いますけれども、ただ、今のような事例ですと、A、Bはそれぞれ破産したということでございますので、破産後の譲渡はできないということになるのではないかなと。
 破産は抜きにいたしましても、A、BがそれぞれA、Bに譲渡をいたしたという場合に、民法通知と登記があった場合には、それは、民法通知の到達の時点とそれから登記の時点でそれぞれ優先関係が決まってまいるというのが、この法案のもとでの優先関係ではないかなというふうに考えますが。
#202
○保坂委員 ですから、登記の方が実際には早いけれども、もう一つの通知の方が早く来てしまった、そっちへ払ってしまったという場合に、今度は、登記した側から訴訟が提起されて、実際には送っていないのだけれども送ったぞということで裁判を起こされたという場合に、難しいのではないかと。
#203
○吉戒説明員 登記が先であるけれども民法通知の方が先に行った、そして登記事項証明書をつけた通知が後に来たというケース……(保坂委員「いや、来ない、来ない」と呼ぶ)来ないケースですか。その場合には、債務者としては、譲受人は民法通知の譲受人という者を債権者と見て、その者に弁済すれば免責されるというふうになります。
 したがいまして、後に登記事項証明書を添付して通知があって、その者がおれは債権者だと言いましても、既に弁済して債権は消滅しておるというような主張は可能だと思います。
#204
○保坂委員 本当は、このあたりずっと、例えば、なぜ内容証明ということを合理化、簡素化のためになくしたかということにおいて生じてくる問題点を指摘したかったわけで、その点は重ね重ね指摘をされていると思います。
 やはり、いろいろなケースがあり得て、しかし、弱い立場の債務者が極めて困難な立場に追い込まれる事例が想定し得る。それはどのぐらいのパーセンテージで起きるか否かは、こうした議論をずっと聞いていくとちょっと心配になってくるという点を指摘いたしまして、ちょっと、きょう午前中から同僚議員からもお話のある、世田谷区内で起きた交通事故の件にテーマを移したいと思います。
 実は、この交通事故の現場、私ごとになりますけれども、私も、この現場から三キロぐらい離れたところの同じ通りで歩行中に車にはねられて、二カ月入院するという交通事故を体験しました。ですから、事故が一瞬にして起きて、ぎりぎりのところで命が助かったという思いが非常にするわけです。そして、この事故の現場というのは、私自身もほとんど毎日通る現場であります。
 実は、これも私ごとになりますが、レストランの前が現場なんです。その現場で食事をいたしまして、そして、テレビ局が何か道路を撮ったんですね。何を撮っているんだろうと思って見たらこの事件だったということで、本当にいたたまれない気持ちでおります。
 さて、午前中からのやりとりで、原田刑事局長は、率直に言って、この両親のどうなったのかという情報の求めに対して不適切な部分があったということを率直にお認めになっているように思いますけれども、しかし、ではなぜそんな対応が生まれたのか。もし不適切な対応があったら、要するに、自分の最愛の子供が亡くなった、その後はどう処理されたのかという求めに対して、その場の対応がやはり被害者の大きな精神的な心の痛手にも結びついていったというこの結果を踏まえて、具体的にどうしたらいいのか。
 例えば、被害者に対して、あるいはその遺族に対して、もし不適切な部分があるなら、率直におわびをして、もう一度信頼回復に努めるというようなことを踏み込んで考えられないのかということをちょっと伺いたいと思います。
#205
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます、
 今委員お尋ねのように、結果的に、最愛のと申しますか、子供を亡くされた御両親の気持ちを考えますと、十分な措置がなされたとは言えないということを私が申し上げたのはそのとおりでございます。
 私自身、実は、交通事故の遺族の会の方々に二回にわたってお話を聞かせていただく機会がありまして、それぞれ大変胸を打たれるお話でございました。
 一般的に、刑事事件の処理として、証拠上、公訴を提起するということが難しい場合、現実にはあるわけでございますけれども、その際に、やはり被害者の立場、特に、そういう肉親を亡くされた遺族の方々にできるだけ納得していただけるような説明をするために誠意を尽くすということは、私自身必要なことだなと痛感いたします。ただ、現実問題として、具体的な事案内容にわたりますと、さまざまな点でその点の納得をしていただけない面というものはあるいはあるかと思います。しかし、問題は、そのために最善の誠意を尽くすということが私は必要でないかと思います。
 そういうこともあり、現に検察におきましても、さまざまな庁によってニュアンスが違いますけれども、ある種のルールづくりをしてできるだけそういうことをやっていこうという動きがございますし、ただ、そのルールづくりには至らないまでも、現実問題としては、検察官はそのように努めてくれているものと私は思います。
 しかし、私が申し上げましたのは、現実にそれでもやはり納得していただけない部分がある、そういう場合には、それはそれとして私は認めまして、できるだけの措置を講じていくということが必要であるというふうに考えるわけです。
#206
○保坂委員 警察の方にも来ていただいていると思います。
 この事件の場合、トラックが、渋滞する世田谷通りを横断歩道に差しかかりながらという形でとまっていたそうですね。信号が青になった。子供は結局トラックの前を横切りながら、そしてトラックはどうも無線の会話中だったそうですね。それで発進してしまった。そして、なぜか左後輪でひかれてしまっているんですね。横断歩道から六、七メートル先がどうもその現場のようだということなんです。
 そして、その目撃をしていた人、これは、まさに遺族が必死になって捜して、そうやって渡ったという証言だとか、あるいはパッシングランプで運転手に知らせたという証言、いろいろお集めになったようです。実は、ひかれた現場というのはバス停の真ん前と言っていいぐらいのところなんですね。朝、世田谷通りは頻繁にバスが来ます。ですから、目撃者の方が多数おられたのではないかという状況なんです。
 警察の方に伺いたいんです。
 一般的に言って、こういった事件の場合、目撃者をなるべく捜し出して証言を得るということ、これは基本中の基本かと思いますが、その点はいかがなのかということと、本件について、個々具体的な捜査の点について触れられないまでも、十分な捜査ができたのかどうか、その二点について伺いたいと思います。
#207
○渡邉説明員 お答えいたします。
 交通事故捜査におきましては目撃者の確保というのが非常に重要なことでありまして、警察におきましては、現場付近での聞き込み、あるいは現場に立て看板等を設置して情報提供を呼びかけるというような、目撃者確保のために必要な捜査を行っているところでございます。
 本件におきましても、現場付近でのそういった目撃者確保のための聞き込み、あるいは実況見分、被疑者の取り調べ、そういった所要の捜査を遂げて、警察としては検察庁の方に事件を送致したところでございます。
#208
○保坂委員 それで、報道によると、これは今私が申し述べたような状況がありまして、そして警察の方が目撃者を捜す補充捜査を始めている段階で、東京地検の指示で捜査打ち切りということが図られて、そして不起訴ということになったというふうにあるのですが、これはやはり事実が解明されないうちに、そして、なぜ、子供がどういう状況で亡くなったのかもここはもう煮詰まらないうちに、こういう判定に納得できないという声が上がるのは当然だと思いますけれども、検察が警察の地道な捜査努力に打ち切りというようなことを言うことがあり得るのかどうか、この点について伺いたいと思います。
#209
○原田(明)政府委員 委員お尋ねのような報道と申しますか、そのニュアンスはいろいろとり方があると思いますが、そういう報道がなされていることは私も承知しております。
 具体的な捜査の経過に関することですのでお答えを差し控えるのが適当と思いますが、ただ、大変重要なことでございますので、一般的に、そのような警察が補充捜査をしている段階で、本件のような重大な事件で、検察官の立場でそれ以上捜査する必要がないということを指示するということは通常あり得ないと私は考えます。
#210
○保坂委員 それでは、一般論ということでお答えいただきたいのですけれども、今刑事局長はっきり、本件のような、こういうことで補充捜査中に打ち切りを通告することはあり得ない。もしあり得ないことが仮にあったとしたならば、一般論で結構です、やはりこれは直ちに是正されるべきと思いますが、いかがでしょうか。
#211
○原田(明)政府委員 本件につきましてさまざまな報道をなされる前から、遺族の方々またその弁護人の立場の方々といろいろと折衝があったようでございます。その状況についてつまびらかにすることは今後のことがございますので適当でないと思いますが、検察官は、直接担当した検察官ではございませんが、本件についてもし新たな証拠があればそれについて考慮することはできるということも申し述べた経過と承知しております。事柄の経過がいかようにあれ、証拠が新たにあり、そして全体として評価して検察として取り上げるべきものがあれば、これは私は率直に申し上げまして、きちんとした対応をしなければならないだろうと考えております。
#212
○保坂委員 これも五月に入ってから署名がわずかの間で二万人近く集まった。大変な関心を呼んでいるわけです。それは私自身も事故に遭いましたからわかるのです。交通事故は大変多いのです。そして、中には、人身事故を二回、そして死亡事故を二回、その二回目が自分の娘さんだったという方もいらっしゃいまして、全部不起訴ではないかと。これでは要するに交通事故が、厳しく交通ルールを守って、やはり人の命ということについて余りにも不公平ではないかという声が上がるのは当然だと思います。
 そこでお尋ねしたいのですけれども、検察審査会にさきに不服申し立てということをされたと思います。しかし、これはかなり時間がかかるということもあると思います。こういった件を迅速に、しかもこの事柄というのは多くの国民が注目しているわけです。つまり、恐らく身内にとか知人にそういうケースがあってふだんからおかしいなと思っている人たちが多いということのあらわれだと思いますが、迅速な処理ということをいかに早くできるか、その点についてお尋ねしたいと思います。
#213
○原田(明)政府委員 今委員御指摘のような形で、大変関心を集めたからというわけではございませんけれども、やはり人の生命に係る事案につきまして関係者から疑問の声が上がったということになりますれば、それに対して誠実にこたえていくというのは刑事司法に携わるすべての者の責任であると考えます。
#214
○保坂委員 法務大臣に伺います。
 この件についていろいろな要素があると先ほども同僚議員にお答えになったと思います。この事故、事件がどういう状況によって成り立ったかということは我々もまだわからない、あるいは目撃者もまだ確保されていないわけですから、十分に究明できない状態なのではないかと思うのです。
 しかし、そのこととは別に、そういう事故、事件でお子さんを失った親がこのことについて教えてほしいと言ったらいわば門前払いに遭ってしまったということについてはやはり重大である。本当に法に対する信頼、あるいは本当に交通事故の被害に遭って大けがをしたり現在入院中の方もたくさんおられると思いますが、しかし、こういう被害者、先般の死刑をめぐる質疑の中でも何度も大臣の言った被害者の立場、私もそう思います。その被害者の立場に立ったときに極めて問題があった。刑事局長もお答えになっていますが、この点について法務大臣どういうふうにお考えでしょうか。被害者が情報を求めたときに必ずしも適切な対応ではなかった、これについては教えられませんみたいな対応があったということが問題をさらに署名運動等広げていったと思うのです。その点について伺います。
#215
○下稲葉国務大臣 いつも申し上げておりますように、やはり事件はきちっと証拠なり事実関係に基づいて決めなければならないものですし、今委員御指摘のとおりに、本当にかけがえのないお子さんを亡くされたというふうなことでございます。私どもはやはりそういうふうな被害者の立場に立って、やはり納得のいくような検察行政というふうなものをやらなければならないと思います。
 ですから、その事実関係がきちっとした段階で、それは御納得いただけるかいただけないかはともかくとして、やはりこういうふうなことですというふうなことはお話をすべきである、このように思いますし、そして先ほども申し上げましたように、この事件を契機といたしまして、一般的に、全国的に何かそういうふうな方向に進めてまいりたいというふうに考えておりますし、既にそのような指示もいたしております。
#216
○保坂委員 大臣の今の御答弁は極めて明快だと思いますけれども、つまりもし対応に不適切な部分があり、その不適切な部分が逆のことも私考えるわけです。つまり、同じように交通事故で子供を失ったり愛する夫を失った遺族の心情、被害者の心情とともに、逆に、運転している側が、言ってみればこのぐらいの扱いなのかということが、もって、今ただでさえ道路状況危ない中でもう表に子供を出せなくなるような状況に悪化していくことを非常に心配をするわけです。
 ですから、最初に私が絞って一点お尋ねしたところに限ってでも、率直に大臣がお話しになって、もし不適切な点があったら、これはおわびをするということをしていただけるでしょうか。
#217
○下稲葉国務大臣 適切に処置いたします。
#218
○保坂委員 この問題、多分本当に氷山の一角で、これはもう自賠責の保険のことなんかにも絡んで、やはり命が失われていくということに対して、我々の社会が少し効率主義、まあ処理がそれこそ簡素化されていって、その中で、十分でない処理のされ方について、具体的な新しい証拠や目撃証言など出てきた場合には、やはり率直に、これまでの経緯にかたくなにこだわらずに改めていただきたいし、それが信頼回復にこたえる道だと思います。
 もう一言いただいて、おしまいにします。法務大臣。
#219
○下稲葉国務大臣 国民の信頼を得ながら、私たちは仕事をやってまいりたい、このように思います。
#220
○保坂委員 終わります。
#221
○八代委員長代理 以上で保坂展人君の質疑は終了いたしました。
 これにて質疑は終局いたしました。
     ――――◇―――――
#222
○八代委員長代理 次に、内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。
 これより三案に対する質議に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。与謝野馨君。
#223
○与謝野委員 組織犯罪に対する大変重要な法案が出たわけでございます。私は自由民主党に所属しておりますが、この問題は、やはり法務委員会で、国民の前でいろいろな問題点、考え方を明らかにして、広く国民の御理解をいただきながら、ぜひ、私は成立させたいと思っております。
 まず冒頭、法務大臣にお伺いしたいのですが、日本は従来から世界の先進諸国に比べて犯罪の発生率自体は低いとされてきておりますし、また、東京を見ましても、比較的法秩序が維持されている国だと私は思っております。
 しかしながら、いろいろな事案を見てみますと、覚せい剤が一般の市民の間まで広がっている。あるいは銃刀法の事件は後を絶たない。また、外国人組織あるいは暴力団による集団密航の手引き。事実、集団密航に関して手引きをして多額の金品を要求するとか、あるいは、昨年来問題になりました、大企業を舞台にした総会屋事件、こういうものは、私ども、組織的な犯罪だというふうに認識をしております。
 このような組織的犯罪を放置してまいりますと、じわじわと、我々のこのいい市民社会と申しますか、社会秩序というものが崩壊していくという危険を私は感じるわけでございます。こういう日本の社会の健全性あるいは経済全体に対する脅威というものは、やはりこれは放置してはいけない深刻な状況にあると思っております。
 大臣にお伺いしたいのは、法務大臣として、現在の日本のこういう組織による犯罪の情勢というものをどういうふうに認識をされているのか、そういう社会的な背景、犯罪の状況というものに対する考え方を、まず明らかにしていただきたいと思います。
#224
○下稲葉国務大臣 委員御指摘のとおりに、全体として見ますと、世界に比べまして日本の治安はいい、こういうふうに言われているわけでございます。
 しかしながら、最近の具体的な情勢について見てみますと、委員御指摘のとおりに、薬物や銃器等の不正取引が引き続き行われているわけでございますし、他面、暴力団の組織的な犯罪、不正な権益の獲得、維持を目的とするいろいろな犯罪のほか、私ども大変深刻な思いで受けたわけでございますけれども、オウム真理教事件のような大規模な組織的な犯罪、そういうようなことに加えて、最近の犯罪の国際化ということが言われております。薬物等々の問題、あるいは大量の密入国等々の問題、犯罪情勢は本当に我が国の平穏な生活を脅かすような事案というものが最近の傾向として憂うべきものがある。
 片や、犯罪捜査の手法というふうなものは非常に限られておりまして、国際的にも、そういう手法というふうなものは、国際的な連携をとる上においておくれている面もないわけでもない。
 そういうふうな意味で、今般の法律のお願いをするというような形になったわけでございますけれども、要するに、平穏ですばらしい社会生活を維持するために、このような悲惨な薬物、暴力団、国際犯罪あるいはオウムみたいな事件、そういうふうな問題があるわけでございまして、このような組織的な犯罪の防圧というものが喫緊の課題である、このように認識いたしております。
#225
○与謝野委員 法務大臣のお話の中にありましたように、覚せい剤事犯等は、最近は中学三年の女の子が学校で覚せい剤を打つというようなことも報じられておりますし、また先般は、学校の女性の先生が覚せい剤使用で有罪になっております。こういう善良な市民社会に覚せい剤等が広がっていく、この背後には組織がある、その組織をなかなか解明できない、これはもう我が国にとっても大変不幸なことでございまして、こういう法律に期待する国民の声というものは非常に強いものがあると私は思っております。
 そこで、今答弁の中にもございましたが、国際的な問題としてとらえなければならない側面もあると私は思っております。組織的な犯罪対策に関しましては、国際的にも、例えばマネーロンダリング、要するにお金をクリーニングすることに関しての処罰、あるいは犯罪収益に対してはそういうものを剥奪する、そういうことが強化されております。
 こういう面から考えますと、組織的な犯罪に対する規制に関する国際的な協力、この側面も、私どもは国として責任を持っていると思いますし、相次ぐサミットでもこういう問題が取り上げられて、国際的な犯罪に対する抑止の方策というものが探られているわけでございます。
 特に、我が日本においても、ただいま法務大臣がお触れになりましたように、国境を越えて犯罪が行われるというケースがございます。覚せい剤もそうでしょうし、銃刀法あるいは密入国、こういういろいろなものもございます。一方では、日本で得た犯罪収益を海外に持ち出して、これを投資して、これを隠すというような事例もあるのではないかと私は思っております。
 いろいろな海外の法制度を見ますと、海外では、今申し上げましたような、国境を越えるような犯罪、あるいは組織による犯罪、あるいは犯罪収益等々に関しましては、法整備が最近大変進んでおりまして、日本は相当立ちおくれているのではないかという印象を私は持つわけでございます。
 そこで、法務当局に伺いたいのは、このような組織的な犯罪に対する対策をめぐっての国際的な動向、あるいは国際協力の必要性について一体どう考えておられるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
#226
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘のとおり、組織的な犯罪の問題は、国際社会におきましても、各国の社会の安定や経済の維持発展に悪影響を及ぼすとともに、国境を越えた活動によって国際社会そのものにとっても脅威となることが懸念されております。最近の国際連合等における会議や引き続きますサミット等におきましても、この問題が最も重要な課題の一つとして取り上げられているのでございます。犯罪収益の規制措置など、国際的にも協調した対応をとらなければ対応できないということが主張されております。
 ただいま御指摘のとおり、主要国におきまして、は、既に法制度の整備が進んでいるところでございまして、また、国際的な交通、通信手段の発達や経済活動の大規模化に伴いまして、犯罪者が国境を越えて移動するのみならず、犯罪によって得られた収益が移動する。また、犯罪者間の連絡などが容易に国境を越えて行われるようになりまして、犯罪行為それ自体が国境を越えて行われる場合はもちろん、収益の利用などのさまざまな場面で、どの国も他国のこれらの犯罪の影響から免れることは困難な状況になっております。
 その意味で、各国と協調して法制度も整備いたしました上で協力して対応してまいる必要性は大きくなりつつあるものと考えます。
#227
○与謝野委員 組織的な犯罪に対処するための新たな立法の必要性に関しましては、現行の法律を十分活用すれば対処できるのではないかという意見もございますし、また、新たな立法措置は、日本の犯罪情勢が悪化した段階でその必要性を検討すればいいという意見もございます。
 しかし、暴力団などの組織ぐるみの事件や、組織的な背景があることがもう明らかな重大事件でありながら未解決の事件や、その全体が明らかにできなかった事件はたくさんあることは事実であると私は思います。組織的な犯罪の摘発が必ずしも容易ではないということばかりか、犯罪組織そのものを壊滅させるに足りる組織の中枢の検挙については、非常に困難な現状にあるように思います。
 したがって、組織的な犯罪と戦うための法的武器としては、現行の法律だけでは不十分な状態になっていると思っておりますが、この点に関する法務省の見解をお伺いしたいと思います。
#228
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 近年の我が国におきます組織的な犯罪の情勢及びこれに対する国際的な対応の必要性に対しまして、我が国の刑事実体法及び手続法の現状を見ますと、現行の法定刑ではその違法性が十分に評価されていないと思われるものがありますほか、没収とか追徴を含めまして、犯罪によって得られた収益の利用を規制するための刑事法上の措置が現在の経済システムの中での犯罪に関してはこれに合致しないなど、的確な対応ができなくなりつつあります。
 この面では、いわば個人的な犯罪と違いまして、犯罪をビジネスとしてとらえてこれを敢行する組織があるということは事実でございますので、そのような面から、犯罪をペイさせない社会というものに向けて、私どもとしても十分な対応をしていく必要があるのではなかろうかと考えます。
 犯罪活動の把握が困難となっている状況で行われます密行性の強い犯罪の捜査につきましては、従来の捜査方法だけでは効果的に対処してまいることが極めて困難な場合がございます。なかなか難しい問題もございますけれども、新たな捜査方法につきましても、これを考究して導入していく必要があるのではなかろうかと考える次第でございます。
 また、こうした犯罪に関係する、例えば被害者あるいは目撃者、その他の関係者等が証人として刑事司法に協力していただく必要がますます出てまいります。そうした場合に、捜査あるいは公判に協力することで自分自身または親族に危害を加えられる不安も強いわけでございます。そういう場合に、そのような証人等の保護に関しまして、刑事司法としてもできるだけの保護を図っていく、しかし、それも適正な手続保障との関連でバランスのとれたものにしていくという観点の配慮も必要でございまして、そのような措置を広く考えていく必要があるのではなかろうかと考えております。
#229
○与謝野委員 私が伺いましたのは、例えば覚せい剤事犯を見ましても、末端の使用者とか売人とかは捕まりますけれども、その背後にあります全国にそういう覚せい剤なんかを流通させる組織、あるいは海外からそういうものを密輸する組織というものはほとんどわからないということであって、やはりそういう意味では、そういう組織に対してメスを入れるための必要な手段というものを法的に用意する必要があると私は思っております。
 そこで、もう一方の意見では、暴力団に対する犯罪は、既にいわゆる暴力団対策法があるではないか、こういうものが制定されているのだから、それで対応できる。また、先般改正されました入管法では、組織的な集団密入国事犯などについて新たな規定が設けられたわけでございまして、そういう現行法の範囲で取り締まることができる、検挙できる、摘発できるのではないかという意見もございます。
 そこで、お伺いしたいのは、どういうことで新たな立法を必要とするというふうにお考えなのか、暴力団対策法等の法律ではなお不十分とお考えになっているのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
#230
○原田(明)政府委員 御指摘の暴力団対策法は、いわば行政的な手法によりまして暴力団の活動を抑止しようとする制度を中心とする法律でございます。犯罪行為への対応を定める今回の三法案とは、その手段また射程を異にするものでございます。
 また、出入国管理及び難民認定法は、いわゆる集団密航への対応を目的とした改正が行われたのでございますが、ここで新たに重く処罰することとされた犯罪に関しましても、その実態を解明するための新たな捜査手法の導入が必要であるということに関しましては、刑法の罪の場合と同様でございます。これらの罪は、一方でビジネスとして巨額の利益を得る目的で行われるのが通常でございまして、これらから得られた収益についても、他の犯罪と同様に規制を行う必要が高いと考えております。
 そのような意味で、本法案を提出させていただいている必要性は高いと考えているのでございます。
#231
○与謝野委員 そこで、法務省がこういう三つの法律を組織犯罪対策として出されたわけですが、その前段階として法務大臣が法制審議会に諮問をされました。
 その諮問はどういうことでなされたのか、審議経過はどうなったのか、また、最終的にこういう三つの法律に結実したその審議の経過というものを、簡単で結構でございますから、お述べをいただきたいと思っております。
#232
○原田(明)政府委員 我が国におきます組織的な犯罪発生の情勢、そして、ただいまも御指摘いただいているような組織的な犯罪の問題に対する国際的に協調した対応の必要性にかんがみまして、こうした犯罪に適切に対処するため、刑事の実体法及び手続法の分野において、当面緊急に対応する必要があると思われる事項に関しまして必要な法整備を図るべく、平成八年十月、法制審議会に法務大臣から諮問がなされたところでございます。
 法制審議会では、まず、その下部機関でございます刑事法部会で審議することとされ、この部会では、同年十月から平成九年七月までの間、十五回にわたりましてさまざまな角度から綿密かつ慎重な審議、調査が行われました。そして同年七月刑事法部会の結論が出たところがら、同年九月、法制審議会において刑事法部会の結論の報告を受けましてさらに審議が行われ、結局、組織的な犯罪に対処するための刑事法整備要綱骨子を内容とする答申がなされたものでございます。
 法務省といたしましては、この方針を踏まえまして、その後内閣法制局初め関係省庁との協議、検討を行いまして、本年三月十三日、組織的な犯罪に対処するための三法案という形で提出させていただくに至ったものでございます。
#233
○与謝野委員 そこで、法制審議会はほとんどの方が賛成、多数意見は多数意見として表に出てきているわけですが、少数意見も多分幾つかあったと思いますが、私は、いずれそういう少数意見についてもこの委員会で明らかにしていただいて、なぜ少数意見がとられなかったのだろうかということもまた考えてみる必要があるのではないかと思っております。
 そこで、例えばオウム真理教によります組織的な殺人あるいは誘拐等の一連の事件や、後を絶たない大規模な詐欺商法、自己の意思に従わない一般市民に対する暴力団の威力業務妨害等による圧迫などの実情にかんがみますと、その重大性に見合った量刑の確保及びこれらの犯罪の防止のため、組織的な犯罪に対する刑の加重が必要と考えておりますが、今回の法律案第三条による組織的な犯罪の刑の加重はどのような類型の犯罪を想定しているのか、またその加重処罰の根拠はどのように考えておられるのか、説明を願いたいと思います。
#234
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 本法律案第三条は二つの類型について刑の加重を規定しております。第一項は、犯罪に当たる行為が継続性、組織性の強い集団の活動としてこれを実行するための組織により行われる場合には、通常、計画性等が高度で、これに従って多数人が統一された意思のもとで指揮命令に基づいてあらかじめ定められた任務を分担して一体として犯罪を実行するということから、目的を実現する可能性が著しく高く、多数人に被害を及ぼすなど、重大な結果が生じやすい、あるいは莫大な不正な利益が生ずることが多いと考えられます。その典型的な例としては、いわゆる地下鉄サリン事件などのほか、暴力団対立抗争時に対立組織の首領を殺害するためのいわば実行部隊をつくってこれを実行したような場合、法人組織を利用した大規模ないわゆる詐欺商法の事案等が想定されるわけでございます。
 また、同条第二項に言う不正な権益とは、暴力団の例えば縄張り等のようなものを典型とするもので、団体の構成員による犯罪等の不正な行為により当該団体等が継続的に利益を得ることを容易にするような、団体の威力に基づく支配力のことでございまして、このような不正な利益を獲得することの源泉等となる団体の支配力の維持拡大を目的として行われる犯罪は、典型的な例としては、例えば縄張り内におけるいわゆるみかじめ料の獲得を資金源としている暴力団の組員が、その支払いを拒んだ者に対して恐喝等の犯行に及んだような場合や、縄張り争いのための殺人等の行為がございます。
 これらの犯罪は、その態様や結果、動機から見て、特に違法性、反社会性が高いと認められますことから、他の加重類型の有無をも考慮しつつ、現行法では法定刑が十分でないと思われる特定の犯罪について加重類型を設けさせていただきたいとしたものでございます。
#235
○与謝野委員 しかし、これに対しては、これらの罪に対する実際の裁判所での量刑を見てみると、法定刑の上限に集中しているわけではない、したがって、このような加重の必要性はないという意見がございます。しかし、刑を加重するということは、社会がこれらの犯罪が非常に反社会性が高いと厳しい評価をする、またそういう犯罪に対しては強い決意で臨む、そういう意思をあらわしているわけでございまして、そういう意思を、強い決意を明らかにすることによって犯罪の抑止を図るという面もございますので、量刑が上限に集中しているわけではないから加重の必要性がないという議論は、私は多分おかしいのではないかと思っておりますが、そのような批判に対してはどのようにお考えでしょうか。
#236
○原田(明)政府委員 御指摘のとおり、法定刑は法律が定める構成要件に該当する行為が持ちます違法性の評価を示す機能を持っております。その面では、まさに御指摘のとおり特定の犯罪類型に対する法定刑の姿というものは国家意思の表明であると考えます。実際の量刑は法定刑において定められた違法性の尺度の中で決められるものであります。したがいまして、構成要件に該当する行為として想定し得る最も高度の違法性を有していると判断される事案に対しまして、初めて法定刑の上限ないしこれに極めて接近した量刑がなされる、法定刑の上限の集中というのは本来的には生じ得ない、特に日本のような法定刑の幅が広く考えられている場合にはそのような事態になると思います。
 そこで、第三条の規定による刑の加重は、法定刑では違法性の評価が不十分と考えられる、その尺度の中では適切な量刑もなし得ないと思える罪につきまして、これらの規定に該当する場合の類型的な違法性の高さに着目いたしまして、その違法評価を明示し、適切な量刑をなし得るようにするとともに、先ほど申し上げましたような国家意思の表明として、かかる犯罪の抑止に資することを目的とするものでございます。
 したがいまして、本法律案が刑の加重を対象としている犯罪の中には、法定刑の上限に近い量刑がしばしば行われるものももちろん含まれているのでございますが、刑の加重はそのことを直接の理由とするものではないというふうに御理解賜ればと存じます。
#237
○与謝野委員 次に、マネーロンダリングについてお伺いしたいのですが、一般的にマネーロンダリングというのはどのような行為を指すのでしょうか。それについて簡単に御説明をいただければと思います。
#238
○古田(佑)政府委員 マネーロンダリングという言葉は概念がなかなかつかみにくいものでございますが、一般的に、国際的にどのような理解がなされているかということを申し上げますと、典型的なものが、犯罪によって得た利益をあたかも犯罪から得られたものではないように装うためにいろいろな工夫を凝らすこと、これが一つの典型的なものでございます。
 それに加えまして、例えばその犯罪収益をいろいろな金融制度を使って他国に移動するとか、そういう類型のものもアメリカ等では含んで考えております。
 それともう一点ございまして、その犯罪収益でもうけたお金をいわば運用する行為、これもマネーロンダリングの一部だというふうに考えられているところでございます。
#239
○与謝野委員 そうしますと、日本の経済構造や金融市場の健全性が私ども社会の大変重要な課題となっております今日、マネーロンダリング対策は、犯罪収益が正常な経済活動に浸透していく、そういうことを抑止するということは、日本の経済の健全性を確保し、またその信頼を確保する上で極めて重要であるということはわかるわけでございます。このようなマネーロンダリング対策の持つ意義に関しまして法務大臣はどのようにお考えになっておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
#240
○下稲葉国務大臣 マネーロンダリング規制は、犯罪収益が将来の犯罪活動に再投資されることや犯罪組織の維持拡大に利用されることを防止するだけではなくて、それを事業活動に投資されることによりまして合法的な経済活動への悪影響を防止するために必要かつ有効であり、そのことは現在国際的にも各国共通の理解となっているわけでございまして、各国とも犯罪収益が金融システムその他の経済活動に流れ込むことを大変強い関心を持って警戒いたしているところであります。
 その意味で、委員御指摘のとおり、我が国の経済の健全性と信頼の確保が国内的にも国際的にも急務となっている今日、マネーロンダリング対策というものは大変重要な意義を有するものである、このように認識いたしております。
#241
○与謝野委員 そこで、マネーロンダリングというのは必ずしも一国でやる話ではなくて、国境を越えてお金がどんどん移動していくということが容易に想像されるのですが、国際的にもこういうものに対していろいろな対策がとられておりますし、諸外国では多分そういうものに対しての法整備が進んでいると私は考えます。
 そこで、諸外国におきますマネーロンダリング対策について、典型的なものについて御紹介をいただければと思っております。
#242
○古田(佑)政府委員 世界各国個別に申し上げる前に、マネーロンダリング対策についての最も大きな国際的な動きについて御説明いたしておきたいと存じます。
 これは今から約十年ほど前のアルシュ・サミットの際に、金融活動作業部会というものをつくりまして、そこでマネーロンダリング対策を本格的に検討するという合意ができました。以後、この金融活動作業部会でマネーロンダリング対策を約十年にわたって検討してまいっている次第でございまして、現在はOECDの中に事務局を置いて活動し、二十六カ国が加盟している状態でございます。金融活動作業部会の活動を全世界的なものに広めるために、各地域におきまして、同様のいろいろな活動を行う地域的な会合が次々と設立されてきており、アジアにおきましても、ことしの三月に東京でその第一回会合が開かれた状況でございます。
 さて、このマネーロンダリング対策といたしまして、主な国でどのような法制になっているかということを簡単に申し上げますと、マネーロンダリング対策は、もともとは薬物犯罪について行われたものでございますが、既に多数の国で薬物犯罪以外の犯罪についてもその対象を広げております。
 その例を申し上げますと、例えばイギリスでは、正式起訴ができる犯罪、これはかなり重い罪といいますか、いわば軽罪と区別するような部分があるわけですが、刑法犯に当たるような罪というのは基本的にこの類型に属するわけです。それからフランスに室きましては、すべての重罪及び軽罪、これは軽犯罪法のような違警罪と申しますか、そういうものを除くすべての罪ということになるわけでございます。ドイツでは、重罪のほか特に個別的に列挙した複数の罪などがそれぞれ前提犯罪としてマネーロンダリングの対象ということになっているわけでございます。またアメリカにおきましても、これは個別に列挙されておりますが、非常に広範囲なものが前提犯罪として定められているわけでございます。
 その規制の内容につきましては、先ほど申し上げました点が主な点でございますが、一点申し落としましたのでつけ加えさせていただきますと、犯罪の収益であることを知って受け取る、こういうこともマネーロンダリングの典型の一つというふうになっているわけでございます。これは専ら刑事罰、あるいは刑事罰の面からの規制でございますけれども、それに加えまして犯罪収益の没収などにつきましても広くその範囲を拡大している状況でございます。そのほかに、例えば金融機関に対しましてマネーロンダリングの疑いがある取引、これにつきまして取引の報告義務を定めるということが各国において一般的なものになっております。
#243
○与謝野委員 そこで、今回の三法の中で賛否がいろいろございますものに、いわゆる通信傍受の問題がございます。よく読んでみますと、この通信傍受というのは大変厳格な手続で、もちろん裁判所の令状でこれを行うということになっているわけでございます。
 その手続の厳格性についてはまた別の機会にお伺いしたいと思いますが、現代の犯罪者というのはいろいろな通信手段を持っております。これは、電話ばかりでなく、パソコン通信もそういうものに含まれていると思います。特に、複数の者が役割分担をして犯罪を犯すというような組織的な犯罪においては、こういう通信手段を確保しながら極めてよく連絡をとりながら犯罪を犯していくというようなケースがたくさんございますし、そういう傾向があるわけでございます。
 具体的な犯罪に対処するためには、どういうものが犯罪であるか、そういう犯罪に対してどのような刑を用意するのか、そういう犯罪に対する処罰法規と申しますか、刑罰法規の方もきちんとしなければなりませんし、またそういう犯罪が起きましたときにそれを有効に検挙する、摘発するための手段、いわば手続法と申しますか、そういうものも我々の社会は私は必要としているのではないかと。今回の法律に盛り込まれている通信傍受の制度は、手続の面さえ厳格でしっかりしていれば大変有効な捜査の方法であり、犯罪を解明する上で大変重要なものであると私は思っております。
 そこで、法務大臣にお伺いしたいのは、犯罪捜査のための通信傍受の制度の必要性について、法務大臣は基本的なお考えをお持ちだと思いますので、それを明らかにしていただきたいと思っております。
#244
○下稲葉国務大臣 組織的な犯罪は、検挙を免れるために犯行自体が密行的に行われることは当たり前のことでございます。それから、犯行を犯した後におきましても、証拠隠滅工作でございますとか、あるいは犯人を隠す工作、そういうふうなことが行われることが少なくないわけでございます。犯行に関与いたした者の一部の者、特にその末端の組織の犯行者が検挙されましても、首謀者等の氏名やその関与の状況などについては供述を得ることはほとんど難しいのが現況でございまして、その真相を解明し、首謀者等、真に責任を有する者を検挙することが著しく困難となる場合が少なからず生じております。
 一方、電話等の電気通信は、これを利用すればお互いに顔を見合わせることもなくて、また第三者に知られずに、簡易迅速に連絡ができるわけでございまして、殺人、薬物及び銃器の不正取引に係る犯罪等の重大な犯罪の実行に関しまして、組織的、密行的に犯罪を実行するための手段としてしばしば悪用されているのが現状でございます。
 このようなことから、これらの犯罪の全貌を解明し、犯行に真に責任を有する者を検挙するためには、犯罪捜査のための通信傍受の制度を導入する必要があるものと、このように考えております。
#245
○与謝野委員 私の知っている限りでは、通信を傍受したことは過去にもあって、例えば、山梨県で行われた通信傍受というのは、刑事訴訟法に定める検証令状に基づいて電話局で行われたという例もありますし、またそのほかにも数例、そういう検証令状で通信傍受を行ったというケースがございます。
 したがいまして、こういう意見が出てまいります。現行法においても通信傍受は検証令状でできるではないか、なぜ新たな立法が必要なのかと。そこで、なぜ新たな立法が必要なのかということについての法務当局の考え方をお伺いしたいと思います。
#246
○原田(明)政府委員 御指摘のとおり、犯罪捜査のための通信傍受ということに関しましては、これまで、電話を利用した覚せい剤の密売事件につきまして、刑事訴訟法が定める検証許可状、裁判官の検証許可状によって電話の傍受を行いまして、密売に従事した者の検挙に成果を上げた例が幾つかございます。
 これらの事例におきましては、主として覚せい剤の密売に用いられている電話であることが実質的な要件の一つとされているなどの理由から、その背後にいる首謀者の特定等は困難でございまして、犯罪の全容を解明するという観点からは十分な効果が期待できないという側面がございます。また実際問題として、傍受の手続、要件等は、刑事訴訟法の検証に関する規定の解釈に頼っているところでございまして、これにつきまして、もう少し手続としてきちんとしたものを法律でもって定めて、それによって行っていくということが必要でないかということは、かねて学者からも指摘されていたところでございます。
 通信の傍受は、継続的に行われるという点で、関係者の権利保護につきましても、従来の強制処分と異なったさまざまな配慮が必要でございます。対象犯罪その他の要件を限定するとともに、必要と考えられます権利保護の手続を設ける必要もある。また諸外国の例にもかんがえまして、現在最もそういう点で慎重かつ多彩な手続規定を設けて、いろいろな角度から縛りをかげながら実行している諸外国の例を参考にしながら、今回の法律案を作成させていただいたというのが実情でございます。
#247
○与謝野委員 そこで今、厳格な令状主義による、こういうことですが、令状を請求する段階でわかっていなければならないということ、裁判所に令状を請求するための必要な疎明資料と申しますか、裁判所に令状を請求するための必要な前提条件というのは一体どういうことなのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
#248
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 さまざまな条件といいますか要件、手続規定で定めておりますが、お尋ねの、最も大事な要件は、いわば単なる情報を入手するということとは全く異なるものでございまして、この法案の別表に限定的に列挙された重大な犯罪あるいは社会的に危険な犯罪に関する高度な嫌疑があるということがまず第一でございます。それから、その犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信が行われる蓋然性が認められるということが二番目の要件。そして、他の方法によっては当該事案を解明することが著しく困難であると認められるときに、この通信傍受に関する令状を請求することができるわけでございまして、そして、その対象とする通信も、傍受すべき通信が行われる蓋然性のある特定の通信手段に限って許可請求がなされるというものとなっております。
#249
○与謝野委員 それは、例えば逮捕状なんかを請求するときの相当の理由というものと今回の通信傍受の令状を請求するときの条件とは、どっちが厳しいというふうにお考えでしょうか。
#250
○原田(明)政府委員 逮捕状請求の場合の要件より、かなり厳しい要件を必要とすると考えております。
#251
○与謝野委員 また、こういう実は反論がございます。通信傍受の制度を整備しても、犯罪者は、なかなか利口で、一枚上手で、電話では重要な話をしないことになるのではないか。捜査機関の捜査に対抗するために次々と新しい方法を考えてくるのではないか。したがって、通信傍受は組織的な犯罪に対処するための有効な措置に本当になり得るのか、こういうことをおっしゃる方がおりますが、それについての法務省の考え方をお伺いしたい。
#252
○原田(明)政府委員 御指摘のとおり、通信傍受の制度が整備されますと、犯罪を行う者としては、それを警戒いたしまして何らかの対応策をとろうとすることは当然考えられるところでございますが、薬物や銃器の密売等の場合、あるいは複数の者があらかじめ計画を定めて、役割を分担して組織的に犯罪を実行する場合など、犯行に関与する者の間では頻繁に連絡をとることは必要不可欠な事案がございます。そのような事案については、電気通信手段を用いないようにするということは事実上極めて難しいだろうと考えられます。したがいまして、通信の傍受が有効な措置たり得る、その効果は薄れないというふうに考えます。
 また、もともと捜査は、それぞれの事案におきまして有効適切な捜査手段を選択して進められていくべきもので、これがあるからすべてというわけではございません。しかし、組織的に行われる犯罪の中で、ある特定の段階で、ある人とある人の間でこのような会話がなされたということが客観的に固定されるということは、捜査手段にとっては大変ないわば材料になるわけでございます。そういう点で考えますと、通信手段が用いられることの多い組織的な犯罪の捜査を行う上で極めて有効な手段の一つであるというふうに考える次第でございまして、この点は、世界的に見ましても、各国でそのような制度が既に設けられて運用に移されているということから考えましても、十分納得していただけるのではないだろうかと考える次第でございます。
#253
○与謝野委員 諸外国は、犯罪捜査のための通信傍受を認めている国が多いのではないかと私は思っております。これはもうかなり以前から使われている捜査の手段で、国によっては既にそういう制度が定着をしている国もございますし、これが組織的な犯罪に対する有効な対抗手段となっていると私は理解しております。
 日本では通信傍受については、きちんとした制度は今までなかったわけでございます。犯罪者が自由に電話などの通信手段を利用しているのに比べまして、捜査手段の方は相当に立ちおくれていると言わざるを得ません。そういう意味では、私は、この法案というのは大変大事であって、なるべく早期に成立をさせたいと思っております。
 そこで、外国における通信傍受制度の整備の状況について法務省に伺いたいわけです。
 外国によっては、既に起きた犯罪を捜査するための通信傍受と、それとは別の系統の、いわば情報収集の手段としての通信傍受という二つの制度があるように聞いておりまして、例えば、アメリカでもそういう二系統の通信傍受の制度になっているし、またフランス等もそういうふうになっているのではないかと思っております。
 そこで、犯罪捜査のための通信傍受の制度は、一体、諸外国、先進諸国ではどうなっているのかということを明らかにしていただきたいと思います。
#254
○古田(佑)政府委員 諸外国におきます犯罪捜査のための通信傍受の制度は、これはもうほとんどの国で制度化しておりまして、その内容を細かく申し上げると相当な量になることは事実でございます。ただ、概略のことを申し上げますと、先ほどからお話のありました、アメリカでありますとかドイツ、フランス、カナダ、イタリー、こういつたいわゆる先進諸国等におきましては、これはもうかなり前からいろんな形で犯罪捜査のための通信の傍受が制度化されているわけでございます。
 そのいずれの国におきましても、罪名を限定するなりあるいは法定刑でその範囲を決めるなり、幾つかの、ほかの捜査手段とは違った要件をつくっているというのが実情ではございますけれども、現時点で各国がとっている制度は、相当広範囲の犯罪を対象にしているわけでございます。また、例えば傍受の期間等につきましても、アメリカでは、まず最初が三十日で、その後裁判官の許可を得て延長ができる、あるいはドイツ等では三カ月以内が最初の期間というふうな、かなり長期間のものを利用しているという状況でございます。
 なお、先ほどお話にありました、犯罪捜査以外の通信の傍受でございますが、これにつきましては、例えばフランスあるいはドイツでは、犯罪捜査とは別途の目的の一国防情報あるいは治安情報、こういうものの収集目的での傍受というのが別途法律で定められておりまして、例えばこれは内務大臣の判断で行うというふうな仕組みになっているわけでございます。
 そういうことで、各国とも、いわば刑事訴訟法の手続上の犯罪捜査のための傍受につきましては、今申し上げたような、罪名を限定するなりそれなりの工夫をして、プライバシーの侵害等も考慮しながら犯罪捜査の実を上げるという考えでできているというふうに承知しているわけです。
 私どもの今回提案させていただいております法案につきましては、こういうふうな外国のいろんな法制も十分検討した上、これらと比べましても十分に厳格な内容のものとして御提案をさせていただいているというふうに信じております。
#255
○与謝野委員 そこで、今回のこの通信傍受は、憲法の規定にございます通信の秘密、これを守らなきゃいけないという規定とどういう整合性を持つのかということは、数多くの方が関心を持ち、御意見を持っているわけでございます。私は、通信の秘密の絶対性というのは既にないということは、例えば、封書というものを、通信の一態様ですが、これを差し押さえることができるということからすれば、既に通信の秘密の絶対性というものは多分社会は認めていないんだろうと思いますが、今回は通信傍受ということで、より響きとしては憲法の規定に違反しているのではないかということを考えている方が何人もおられる。
 そこで、この法案と憲法との関係は、きちんとやはり整理しておく必要があるのではないかと思っておりますので、その点について、憲法とこの法律案との関係についてどのように整理し、考えているのかということを明らかにしていただきたいと思います。
#256
○原田(明)政府委員 お答えを申し上げます。
 憲法が保障しております各種の基本的人権は、それぞれに関する条文が制限の可能性を明示している場合も明示していない場合もございますけれども、憲法第十二条、第十三条の規定からいたしまして、その濫用は禁止され、公共の福祉の制限のもとに立つものでございまして、それ自体絶対無制限のものでないことは、最高裁判所の判決が判示するところでございます。
 憲法二十一条第二項後段に定められております通信の秘密の保障も、公共の福祉の要請に基づき必要最小限の範囲ではその制約が許される場合もあると考えられるところでございます。
 現に、ただいま委員御指摘の刑事訴訟法第百条は、一定の要件のもとに、通信事務を取り扱う官署等において取り扱い中の郵便物及び電信に関する書類についても差し押さえを認めているものでございまして、それがおよそ通信の秘密を侵害するものであるとしてこの条項を違憲とする見解は見当たりません。
 したがいまして、通信の傍受も、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づきまして必要最小限の範囲でこれを行うことは許されるものと考えます。
 また、通信の傍受の制度は、憲法三十一条が保障いたします適正手続の要請を満たすものでなければならないことは言うまでもございません。具体的には、憲法第三十五条が定める令状主義の趣旨に沿う要件と手続をきちんと定めるものでなければならないと考えます。
 本法案の通信の傍受の制度は、これらの要請をすべて満たすものでございまして、憲法上の問題はないと考えます。先ほど申し上げましたような厳しい要件のものとしており、通信の秘密、国民の私生活上の自由の制約は、必要やむを得ない範囲に限定されていると考えます。傍受の実施の際には、該当性判断のための傍受も許されるとされておりますが、これも傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するために必要な最小限度の範囲に限定されていると考えます。
 次に、憲法三十一条の適正手続の保障、また第三十五条の令状主義との関係につきましては、本法案におきましては、さきに述べましたような厳格な要件を満たす場合に裁判官の発する傍受すべき通信及び傍受の実施の対象とする通信手段を明示する令状によりまして通信の傍受が行い得るものとするものでございますので、憲法の定める適正手続の保障の要請を満たしており、令状主義の趣旨にも沿うものであると考える次第でございます。
#257
○与謝野委員 今は、携帯電話だけでも三千万台を超えるということで、中学生、高校生まで携帯電話を持つような世の中になって、電話での通信というのは国民生活にとってもう欠かすことのできないものになっております。これは、そういう日常性を持っておりますから、一般の市民からすれば、自分たちが大事な電話をするものが聞かれてしまうんではないかというおそれを持つわけです。この法律の名前を聞いただけで、自分たちのも聞かれるんじゃないですかという心配をする方がおります。
 これは、この委員会での審議を通じて、そういうことではないということは十分国民の皆様方に御理解をいただいて、もう既に発生した犯罪に対しての捜査、そういうものに限定されるんだということを明らかにしていかなければなりませんし、犯罪と関係のない一般の方の通信というのは傍受されることはないということについて、どういう仕組み、手続によってそういうものが確保されているのか、これは実際の令状を請求する段階、あるいは通信を電話局において立会人のもとで傍受すること、それから、今原田局長が触れられた、該当性判断の必要最小限の傍受、あるいはその後の裁判所と記録との関係、そういうものについて国民が、まあ、これだけの厳格な手続規定が入っていれば大丈夫だということはやはりわかっていただかなければならないわけです。
 そこで、全体として、一般の善良な市民が安心できるその手続というのは一体どういう仕組みになっているのかということを明らかにしていただきたい。
#258
○原田(明)政府委員 お尋ねの、まさに一般の、犯罪とは無縁な方々が考えて、大切な通信が傍受されることに関する不快感と申しますか不安感というものを除去するための手続は、大変重要であると思います。そのためには、これを逐一説明し始めると本当に長くなってしまうような、さまざまな手続を用意しております。
 まず、その請求自体についての要件については先ほども申し述べましたが、これにつきましては一定の、請求する側についても特に指定した者という形で制限してまいるほか、裁判所の裁判官の審査に基づく令状をいただく、そして、傍受の実施の手続につきましても、通信事業者等の立ち会い、これらの人に対します令状の提示、また、傍受をした通信をきちんと記録しておくこと、後で検証することができるようにすること、また、書面により裁判官へその実施状況を提出すること、また、通信の当事者に対して事後の通知制度を持っていること、また、通信の当事者による記録の閲覧、聴取等の手続、また、不服がある場合の申し立て手続を持っていること、毎年運用状況について公表いたしまして、国会へも報告させていただくことなど、また、今回、審議の過程で法制審議会の中でも議論がなされた結果、仮に本手続によらないで違法な通信傍受が行われたという場合には、現在でも犯罪を構成するわけでございますが、それらにつきまして仮に検察官が起訴しない場合にはいわゆる準起訴手続の対象とすることなど、さまざまな対応をつくらせていただいておるわけでございます。
 そういう点で、先ほども申し上げましたが、欧米主要国の法制と比較しましても十分厳格なものになっていると思います。それらにつきましても十分御説明させていただく機会が与えられればと存ずる次第でございまして、そのような制度のもとでは捜査機関が無差別的に電話等を傍受する余地は全くなく、法律に従って適切な運用がなされていくものと考える次第でございます。
#259
○与謝野委員 手続に関して、通信傍受に関しては、私は、この法律案を勉強しても、相当いいところまでいっている、考えられるほとんどベストの案ができていると思うのです。しかし、しょせん、その法律を運用するのは人間であり、人間と申しますより捜査機関そのものでございまして、その捜査機関の信頼性、これによるところが大変大きい。したがいまして、捜査機関に対する信頼の確保というものが特に私は重要であるというふうに思っておりますが、その点に関しての法務省の見解を伺いたい。
#260
○原田(明)政府委員 まさに御指摘のとおり、通信の傍受は、犯罪捜査という公共の福祉の実現のためとは申しながら、憲法が保障する通信の秘密等を制約するものでございますから、そのような重要な権限を託される捜査機関の責任は極めて大きいと考えます。犯罪検挙のためにこれを有効に活用することに努めるばかりでなく、いやしくも傍受が適正に実施されていないとのそしりを受けることがないよう、真摯な努力をしなければならないものと考えております。各捜査機関においては、このことを十分踏まえて運用に当たるものと考えます。
 捜査機関の信頼性に関しての種々の御意見があることは承知しております。自由で民主的な法治国家においては、捜査機関がまさに国民の信頼を得て適正にその職務を遂行してまいることが社会の基盤をなすものと考えております。我が国の各捜査機関は、このことを踏まえて、これまでも襟を正し、国民の信頼を裏切ることのないよう適正な職務執行に努めてきたものと存じますが、今後ともさらにそのような立場で事に処していき、十分な国民のチェックをいただきながらその責務を遂行してまいる必要があると考えます。
#261
○与謝野委員 今の件に関しましては、審議が進む中で、捜査機関の内部手続の問題等々、いろいろ明らかにしていただかなければならない問題も私はあると思っております。
 組織的な犯罪対策というのは大変重要でございまして、決してこの法律ができたからそれで済むというものではございません。この法律は、当面緊急なものに必要なことが書かれているわけでございまして、さらに私は必要な課題もあると思っております。このような法律ができましても、先ほど申し上げましたように、それを活用する体制を整備しまして、強い決意を持ってこれを執行しなければならないと考えております。今後の組織的な犯罪の摘発や犯罪組織自体の解明、検挙等に関する法務大臣の御決意をお伺いしたい。
#262
○下稲葉国務大臣 この三法案は、組織的な犯罪に適切に対処するため、刑事の実体法及び手続法の分野において、当面緊急に対応する必要があると思われる事項について法整備を行うものでありまして、必ずしも組織的な犯罪対策として法整備をすべき事項がこれで尽きているというものであるとは思いません。組織的な犯罪につきましては、刑事の実体法、手続法に限らず、各種の法制度においてそれぞれその防止の対策を検討する必要があると思いますし、まさしく言うなれば相手との知恵の戦いだ、そういうふうな感じがいたします。
 組織的な犯罪の摘発や解明、検挙は我が国の平穏な市民生活及び健全な経済活動を維持するために極めて重要でありますので、できる限り早期にこの三法案を成立させていただきまして、それを踏まえまして、私どもも体制を整備し、今後とも全力を尽くしてまいりたい、このように思います。
#263
○与謝野委員 以上で質問を終わりますが、私ども自由民主党は、これらの重要な法案につきましてさらに細部にわたって質問を積み重ね、国民的な論議のもとでこの法律を成立させたいと思っております。また、各党の皆様方もこれから質疑を始められるわけでございますけれども、そういう中で、この法律が持つ重要性、あるいはこの法律を運用する場合のいろいろ気をつけなければならない点というものが明らかにされることを強く望みまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
#264
○八代委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十九分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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