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#1
第142回国会 法務委員会 第18号
平成十年五月二十二日(金曜日)
    午前十時二分開議
出席委員
  委員長 笹川  堯君
   理事 太田 誠一君 理事 橘 康太郎君
   理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君
   理事 北村 哲男君 理事 上田  勇君
   理事 達増 拓也君
      奥野 誠亮君    鴨下 一郎君
      木村 義雄君    下村 博文君
      菅  義偉君    谷川 和穗君
      谷畑  孝君    渡辺 喜美君
      枝野 幸男君    佐々木秀典君
      福岡 宗也君    漆原 良夫君
      安倍 基雄君    木島日出夫君
      保坂 展人君    左藤  恵君
      笹山 登生君
出席国務大臣
        法 務 大 臣 下稲葉耕吉君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 但木 敬一君
        法務大臣官房審
        議官      古田 佑紀君
        法務省刑事局長 原田 明夫君
 委員外の出席者
        警察庁長官官房
        審議官     五十嵐忠行君
        警察庁生活安全
        局薬物対策課長 樋口 建史君
        法務委員会専門
        員       海老原良宗君
    ―――――――――――――
五月二十一日
 民法改正による選択的夫婦別姓制度の導入に関
 する請願(池坊保子君紹介)(第二六九一号)
 同(保坂展人君紹介)(第二六九二号)
 組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(木島
 日出夫君紹介)(第二七二九号)
 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請
 願(木島日出夫君紹介)(第二七三〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関
 する法律案(内閣提出第九二号)
 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(内
 閣提出第九三号)
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九四号)
     ――――◇―――――
#2
○笹川委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。
#3
○下村委員 おはようございます。自由民主党の下村博文でございます。
 大変に重要な法案、また国民にとっても関心のある法案でございます。そして、今国際社会の中で、大変に高度化、複雑化し、それに沿って通信等もどんどん進んでいる中で、今各国にとっても組織的な犯罪というのは大変に頭の痛い問題になっているというふうに思います。これから時間をかけて審議するということでもございます。
 きょうは、私は、特に、そういう国際的な視点の中で、この組織犯罪に今どのように各国において対応しているのか、また我が国においては、国際社会における組織犯罪、今回の三法案がどんな位置づけを占めるのか、こういう観点から、絞って質問をさせていただきたいと思います。
 そういう意味で、特に最近、どんな会合でも、国際会議の中でこの問題が必ず出されます。国際連合の会議で数次にわたって議論をされておりますし、また、今回のバーミンガム・サミットにおいても重要な議題として議論されているというふうに聞いております。必ずこのような先進国首脳会議において継続的に重要な課題として取り上げられているわけでありますが、特に、国連や先進国首脳会議等において、これまで組織的な犯罪問題についてどのような議論が行われてきたかということについて、まず総括的にお伺いしたいと存じます。
#4
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、この問題は、先進国首脳会議や国際連合の会議等におきまして、各国共通の最も重要な課題の一つとして継続的に取り上げられております。
 若干煩瑣にわたる面がございますが、総体的な状況について御説明させていただきたいと思います。
 まず、平成元年、一九八九年に行われましたアルシュのサミットにおきます経済宣言におきまして、マネーロンダリング、一般的には資金洗浄と言われておりますけれども、犯罪行為によって得られた収益が、その後、金融機関等を経て洗浄、ロンダリング、洗濯でございますが、そういう一定の機能を経て、いわば表の金に装いを変えて出てきて、いろいろな形でそれが使われる。その問題についての関心が大変強くなってまいりまして、資金洗浄に関する金融活動作業部会、ファイナンシャル・アクション・タスク・フォース、これはFATFとよく新聞等でも言われますので、FATFということで略称させていただく場合がございますけれども、金融活動作業部会というものが設けられたのでございます。
 このFATFは、現在、OECDに事務局を置きまして、二十六カ国及び二つの機関が参加して、資金洗浄に関する包括的な検討を行っているところでございます。
 平成八年に、資金洗浄罪の前提犯罪、これは従来、主として薬物の取引に関する収益とされていたのでございますけれども、それから、いわば組織的な犯罪というのがビジネスとして犯罪を行うということになってきますと、薬物犯罪だけでなく、犯罪を選ばないという側面を持っているというところに着目がされるようになりまして、その前提犯罪を薬物犯罪から重大な犯罪に拡大することを内容とする勧告が出されました。これがその後のサミットや国連の会議等において支持されているわけでございます。
 FATFでは、これらの勧告につきましての、加盟国が立法化、法制化でどのような進捗状況にあるかといういわば履行状況審査のために、各国ごとに順次子細な相互審査を行っているところでございまして、昨年の秋には、日本におきましても各国の専門家による予備審査が行われました。そして、来月、六月でございますが、対日審査が関係国の専門家によって行われる予定となっております。その機会には、ただいま御審議いただいております資金洗浄等に関する今回の法案の中身についても相当詳しく説明するということになろうかと思います。
 一方、平成六年、一九九四年でございますが、ナポリで開催されました国連主催の国際組織犯罪に関する世界閣僚級会議におきまして、国際的な組織犯罪を防止し、これと闘うことを宣言いたしました。そして、通信傍受等の電子的な監視の手続、証人保護等の措置の検討を含む立法その他の
措置の一般的なガイドライン、国際協力、そして資金洗浄及び犯罪収益の防止及び規制等についての世界行動計画が提唱されまして、これは、この年一平成六年の国連総会で承認されたのでございます。
 さらに、翌平成七年のハリファクス・サミットにおきましては、国際犯罪組織に対抗するための措置を検討するための上級専門家グループの設置が決められまして、その検討の結果、平成八年、翌年でございますが、国際組織犯罪に効果的に対抗するための各国の法制の実情等の改善、国際協力の推進、通信傍受を含む電子的監視等の手法の効果の強調、また薬物取引その他の重大犯罪における収益の没収、そしてその保全を行うための立法措置の考慮などを内容といたします四十項目にわたる勧告がなされました。これがこの年のリヨン・サミットにおいて支持されたのでございます。
 また一方、平成四年から毎年開催されております国際連合の経済社会理事会の下部委員会の一つでございます国連犯罪防止刑事司法委員会におきましては、平成七年以降、国連の国際組織犯罪対策のための条約をつくろうという問題が継続して議論されてきております。
 本年二月に開催されましたこの専門家会合におきまして、条約化に向けて議論が大きく進展いたしました。去る四月に開催された第七回委員会におきましては、この条約の起草に向けた作業を行う旨の決議が採択されております。
 そして、先般開催されましたイギリスのバーミンガムにおけるサミットにおきましては、国際組織犯罪、そのこと自体が直接市民及び社会に対する脅威となっているのみならず、そのような犯罪によって得られた不法な資金の投資、あるいは腐敗的な構造、それから制度の弱体化、それから法の支配に対する一般の信頼の喪失というような事態を通じまして、社会の民主的及び経済的な基盤を損ないかねない世界的な脅威となっているということが共通の認識とされ、この脅威と闘うためには国際的な協力が不可欠であることを確認したのでございます。
 そして、国連の国際組織犯罪対策条約の交渉のための努力を完全に支持いたしますとともに、犯罪収益の規制の強化あるいは通信傍受等の電子的監視の活用に関するこれまでの合意を踏まえてさらなる対策をとっていくことが合意され、さらに先ほど申し上げましたFATFにおけるマネーロンダリング、資金洗浄対策の活動を歓迎し、これを支持することとされたのでございまして、最近に至るまで、委員御指摘のとおり、国際的には大きな流れとして、いわばサミットにおけるさまざまな議論、それと国連における各種委員会の議論、二つの大きな流れ、それが時に応じて相互に補完し合いながら、世界的な潮流となっているというふうに考えます。
#5
○下村委員 よく経済ではグローバルスタンダードという言葉が出てきて、今我が国もそれに向け、また橋本内閣においても六つの改革を進めているわけでありますけれども、犯罪においても、今のお話のように、まさにグローバルスタンダードというか国際的な協調の中で、犯罪組織がそれだけ大変に、一国の中でとらえられなくなったどいう中での対応を進めなければいけない、そういう話であったというふうに思います。
 それだけ国際的に重要な問題であるわけですから、同時に我が国としてもそういう意味では協調した対応が求められているというふうに思いますし、またそうしなければいけないというふうに思うわけでありますけれども、既に先進主要国においては法制度の整備が進んでいるというふうに聞いております。
 そこで、実際に主要国においてどのような措置についてどの程度法整備が進んでいるのかどうかについてお尋ねしたいと思います。
 まず、今回提案されております三法案におきまして、大きく三つに分けて、組織的な犯罪に対する刑の加重、犯罪収益の規制、犯罪捜査のための通信傍受、証人等の住居等に関する配慮について法整備をしょうとしているわけでございますけれども、これについて、主要国においてはこれらの制度に対する法整備が既に行われているのかどうか、またいつごろから行われるようになったのかについてお聞きしたいと存じます。
#6
○原田(明)政府委員 組織的な犯罪に対するまず刑の加重につきましては、主要国におきましては、組織的な犯罪の悪質性にかんがみまして、その処罰を強化するための法整備が既になされているわけでございます。
 例えばアメリカでは、まず薬物犯罪に関しまして、継続的な犯罪的エンタープライズ、CCEと言っておりますが、いわば継続的に犯罪的な行為を行うエンタープライズ、エンタープライズというのは企業と訳されることもございますが、ある人の活動のつながりを持った組織というふうに考えられて、それは必ずしも企業、法人とかそういう形で明確になっているものばかりではない、一つのある種の人の結合体というふうに考えられる概念のようでございますが、そういう一定の組織的な形態で行われる犯罪、またそのような犯罪組織と一定の関係を持って行われる殺人等につきまして刑の加重がなされているわけでございます。
 またドイツでは、一定の犯罪的な類型の窃盗など、あるいは盗品等を譲り受けるというような犯罪につきまして加重がなされております。
 フランスでは、一定の組織的な類型におきます窃盗、放火、麻薬の違法製造、強盗、詐欺等についても刑の加重処罰規定が設けられているものと承知しております。
 また、犯罪収益の規制でございますが、アメリカでは法律で定められた多数の特定の犯罪。イギリスでは正式起訴される犯罪一般、これは一般的には重罪と言われておりますが、そのような犯罪一般についてを前提とする。またフランスではすべての重罪及び軽罪を対象とし、ドイツでは重罪のほか団体の構成員によって職業的に行われた一定の犯罪等を前提犯罪とするなど、主要国では麻薬犯罪以外の犯罪が広くその前提犯罪とされております。
 これは、先ほど御質問の中でお答えいたしました国際的な潮流と申しますか、薬物犯罪から前提犯罪を拡大していこうという大きな国際的な流れを踏まえたものと思うわけでございます。
 そのような規制の対象とされたものにつきまして犯罪収益を隠匿する行為、その収益の運用に加担し、またはこれを運用する行為等を直接規制の対象とする。そのほか、犯罪収益の幅広い没収制度、犯罪収益にかかわる疑わしい取引の届け出制度等が設けられているというふうに承知しております。
 また、犯罪捜査のための通信傍受でございますが、これは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリアなど、いわゆる主要先進諸国のほぼすべてにおいて、傍受の対象とすることができる犯罪、傍受の要件、傍受を行うことを許可あるいは命令する権限を有する者、傍受の期間等を定めました犯罪捜査のための通信傍受制度に関する法律がそれぞれ整備されているものと承知しております。
 証人等の住居等に関する配慮につきましては、ドイツ、フランスにおいては証人の住所の秘匿に関して法律に規定を設けているものと承知しております。
 なお、その整備されている状況でございますが、各国においてその時期は区々でございます。アメリカには相当前から、例えば資金洗浄に関する法制が非常に強く設けられておりますが、各国とも、先ほど申し上げましたようなサミット、国連の活動に合わせて順次その法整備をやっているというのが実情であろうと考えます。
#7
○下村委員 具体的に、九〇年代ぐらいに入ってからなのでしょうか、その大体の潮流といいますか、各国での対応の流れというのがいつごろから加速度的に先進国でこのような法案ができたのか、もうちょっと具体的にわかればお話をお願いしたいと思います。
#8
○原田(明)政府委員 まず刑の加重ということで
ございますが、アメリカでは一九七〇年代から主として薬物犯罪についてそのような法制が整備されてきております。ドイツにおきましては、先ほど申し上げました、一定の組織的な犯罪の類型に対する一定の罪についての加重は一九九二年以降のようでございます。またフランスにおきましてもやはり麻薬の違法製造、強盗、詐欺等について設けられてきたのは一九九二年以降のことのようでございます。
 それから、犯罪収益の規制でございますが、アメリカでは一九八六年ごろから順次規定が整備され、イギリスでは一九九三年に正式起訴犯罪一般に拡大され、フランスでも一九九六年以降すべての重罪及び軽罪に拡大された。ドイツでは一九九二年以降先ほど申し上げましたような法規制が整備されていった。
 それから、通信傍受でございますが、アメリカでは一九六八年以降法整備がなされている、イギリスでは一九八五年以降、ドイツでは一九六八年以降、フランスでは一九九一年以降ということで、各国とも跛行的でございますが、双方の経験を深めながら行っている。
 我が国の場合、それらの各国の法制を詳細に研究させていただきました。そして、基本的にはこの問題について、かなり経験を持ちつつ、そして実務面でも非常にいわばチェックが行われている状況が参考になるということで、アメリカにおける実務を相当程度参考にさせていただいているというのが実情でございます。
 それから、証人等の規制については、現在、具体的な年限はわかりませんが、やはり組織犯罪対策ということで、一九八〇年代、九〇年代にわたって各国でそれぞれ実務的に行われていたものが、一部法規制にあらわれているということだろうと思います。
#9
○下村委員 アメリカでは、大分早くから取り組みが行われていたようでございますけれども、今のお話ですと、各国とも、特に最近あるいはこの数年間でそのような潮流が出ているというふうな答弁だったと思います。
 我が国において、今回、組織的な犯罪に対処するための措置として、この三法案で整備しようということで提案されているわけでありますが、そのほかにも、それ以外のいろいろな組織的な犯罪に対する措置というのが先進主要国においてあるということを聞いておりますけれども、この三法案で整備することとしている措置以外の措置で、他の国で実際に整備されているものが、あるいは法案として実現しているものがあるのかどうかについて、お伺いしたいと存じます。
#10
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 主要諸外国におきましても、まさに御指摘のとおり、組織的な犯罪に対する対策は、各国の歴史的な事情とか法制度の伝統等に応じまして、そのアプローチは異なっている面がございますが、できるだけ世界的な潮流として、それぞれの実情に応じた対策をとってきているというふうに考えられます。
 その法整備が行われている措置のうち、主なものについて御紹介させていただきますが、ドイツ、フランス、イタリア、ヨーロッパ大陸の主要国におきましては、犯罪行為を行うことを目的とする結社を結成すること、またはそのような結社に参加すること自体を犯罪とする罪が設けられております。
 また、アメリカやイギリスでは、これはコモンロー系統ということになりますが、犯罪行為を行う合意を二人以上の間ですれば目的とする犯罪行為が実際に実現されなくても合意をしたこと自体が独立の犯罪とされるコンスピラシーの罪がございます。これは独立陰謀罪というふうに訳される場合もございますが、いわば犯罪を謀議で行っていく場合の、その謀議段階でとらえるという一つの考え方でございます。
 また、アメリカ、ドイツ、カナダ、イタリアにおきましては、通信傍受の関係で申し上げますと、今回の法案で対象とさせていただくように提案させていただいております電気通信のほか、犯罪捜査のためならば、室内等で口頭で行われる会話も傍受する制度が認められているということでございます。
 さらに、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアにおきましては、犯罪の捜査のためにやはり関係者の真実の供述を得る必要があるということで、免責を付与することによって、いわゆる黙秘権といいますか、自己負罪拒否特権を消滅させて供述を強制するいわゆる刑事免責制度を持っておりますほか、捜査に協力して、共犯者等に関しても、供述をした者の訴追を免除する、あるいは刑を減軽または免除する制度ということで、いわゆるクラウンウイットネスといいますか、王冠証人制度というものが整備されております。
 また、被告人や弁護人に氏名を秘匿したままで証人が証言することを認めることなど、今回の法案の措置よりも強力な証人保護のための措置が、ドイツ、アメリカ、イギリスにおいても設けられております。
 これらの問題につきましては、私どもといたしましても、立案過程で研究はさせていただきました。しかし、さまざまな議論を踏まえまして、これを我が国の実情、刑事司法の中で導入するにはなお検討すべきさまざまな問題点があるだろうということで、今回の法案には盛り込ませていただいていないものでございます。
#11
○下村委員 今御答弁いただきましたように、ほかの国で制定されているものを、我が国の今の法制度で対応できるのであれば必ずしも新設をする必要はないというふうに思いますが、この結社罪とか、それから今おっしゃったアメリカのコンスピラシーという罪、それからあと、話としてよく出てくるのは口頭会話の傍受、これについて今回我が国において導入しないということの理由について、一応確認のためにお聞きいたします。
#12
○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。
 まず、結社罪あるいはコンスピラシーの罪の関係でございますが、陰謀等を処罰する例は我が国におきましても若干はございますが、一般的には、犯罪を共謀した者の少なくとも一人が具体的な犯罪行為に着手した場合に、初めて他の共謀者をも処罰するという考え方が伝統的な我が国の刑事司法の考え方でございます。そして、結社罪あるいはコンスピラシーと申すものは、現実の特定の犯罪の実行のための行為とは言えないもの、あるいは具体的な犯罪行為に着手されない段階での共謀を処罰するというものでございますので、なお、その導入については慎重な検討を要すると考えられたわけでございます。
 さらに、お尋ねの口頭会話の傍受の制度についてでございますが、いわゆる室内会話その他の口頭の会話の傍受につきましては、通信傍受に比べまして、個人の住居内の会話など、プライバシーの利益の制約の程度が必然的に高くなる可能性があるという問題がございます。その導入につきましては、一層慎重な検討が必要と考えられたことによるものでございます。
 すなわち、口頭による会話の傍受は、傍受の対象とする特定の電話回線が用いられている間に限り傍受ができるにとどまる電話の傍受と異なりまして、傍受装置を設置した場所で行われるすべての会話を傍受することになるほか、そこでのその他の物音も傍受することができるという違いで、やはり基本的にプライバシーにかかわる程度が違うのではないかという議論がございます。
 また、口頭による会話の傍受の場合は、傍受装置を設置するために、捜査機関等が他人の占有する空間に、いわば秘密裏に立ち入る必要が生じるということがございますので、それもやはりプライバシーの面で違いがあろうという観点から、より慎重な検討が必要であるというふうに考えられたと承知しております。
#13
○下村委員 今のお答えの中で、通信傍受等の問題が出てまいりました。やはり通信傍受においても、プライバシーの問題ということで、これについてはかなりきちっとした対応をしないと大変な問題になる可能性があるのではないかどいうこと
を危惧いたします。
 しかし、先進主要国においては、犯罪捜査のための通信傍受については法制度がもう整備されているということを聞いておりますので、今回の提案されているこの法案と比べて諸外国の法制度が通信傍受についてどうなっているのかということについて、少し詳しくお尋ねしたいと存じます。
 まず、この傍受が許される犯罪でありますけれども、通信の傍受は、必要最小限の範囲でのみ許されるということで、傍受が許される犯罪として、法案の別表に掲げられている罪についても、今国会で審議において十分にさらに吟味する必要があるというふうに考えておりますけれども、この点、今回の法案で傍受が許される罪の範囲は諸外国と比べて広いのか狭いのか、その辺についてお聞きしたいと存じます。
#14
○原田(明)政府委員 傍受が許される犯罪につきましては、今回の法案において対象としている犯罪におおむね相当するものに加えまして、アメリカの連邦法におきましては、例えば電話等と口頭会話、双方でございますが、恐喝、郵便を用いた詐欺、盗品の輸送、マネーロンダリングなど幅広い犯罪を掲げているほか、コンピューター通信等につきましては、長期一年を超える拘禁刑が定められた罪を一般に対象としております。ドイツにおきましても、有価証券の偽造、恐喝、集団による窃盗等が含まれております。フランスでは、短期十年以上の懲役刑または禁錮刑で罰せられる罪である重罪のほか、長期十年以下の拘禁刑で罰せられる罪のうち二年以上の拘禁刑の軽罪について、一般に傍受を行い得るものといたしております。
 したがいまして、今回の法案で傍受が許される罪ということで掲げさせていただいているものの範囲は、諸外国の立法例と比べましても十分に限定されているのではないかと考えます。
#15
○下村委員 次に、傍受が許される要件のうちで、犯罪の嫌疑に関する要件でありますけれども、この点は諸外国と比べて厳しいのかどうか、これについてはいかがでしょうか。
#16
○原田(明)政府委員 傍受の要件としての犯罪の嫌疑に関します要件につきましては、アメリカの連邦法におきましては、傍受を行うことができる犯罪が行われた、あるいは行われつつある、または行われようとしていると信じるに足りる相当な理由があることとされておりまして、その嫌疑の程度としては、被疑者の逮捕と同程度のものとされております。ドイツでは、傍受を行うことができる罪を犯し、または犯罪行為によってその罪を準備した者があるという疑いが、ある事実により根拠づけられることが要件とされております。フランスでは、予審判事が予審手続上必要と認めることが要件ということで、かなり予審判事の裁量に任せるということとされております。
 今回の法案の犯罪の嫌疑に関する要件といたしましては、十分な理由を要するものとして、逮捕の要件である相当な理由よりも厳格なものとしております。この点でも、諸外国と比べまして十分に厳格な内容となっているものと考えます。
#17
○下村委員 今の十分な理由と相当な理由というのは、違いがよくわからないんですが、もうちょっとわかりやすく説明していただけますでしょうか。
#18
○原田(明)政府委員 これは、一般的に犯罪が行われた相当な理由ということになりますと、犯罪行為を捜査していく取っかかりということで、犯罪が行われたことを疑うに足りる相当な理由があってということになりますと、通常、例えば逮捕する場合でございますとか、その他の一般的な捜査行為に着手するという場合の要件と考えられています。
 十分な要件となりますと、恐らく犯罪に関する嫌疑が相当程度煮詰まって、いわば犯罪行為が行われたということに関してはほぼ合理的な疑いを入れる余地がないというような感じになるかと思います。その点につきましても、やはりこれは、法律手続の実務的な語感としては、かなり違うものというふうに考えられている概念だろうと思います。
#19
○下村委員 それから、傍受ができる期間、これについては、諸外国ではどうなっているでしょうか。
#20
○原田(明)政府委員 諸外国の立法例における傍受ができる期間につきましては、例えば、アメリカの連邦法では三十日以内、イギリスでは二カ月以内、ドイツでは三カ月以内、フランスでは四カ月以内とされて、まずとりあえずの期間ということで、かなり長いものとされております。
 また、その期間の延長あるいは更新については、アメリカの連邦法では、延長の期間はさらに三十日以内でございますけれども、延長の回数には制限がないとされております。イギリスでは、国家の利益のため、または連合王国の経済の安定のために必要であるとされたときは六カ月、それ以外のときは一カ月の期間令状の更新が可能でございます。ドイツでは、延長の期間は三カ月でございますが、延長の回数には制限がございません。フランスでは、四カ月を限度として更新ができ、更新回数にはやはり制限はございません。
 これに対しまして、今回の法案におきましては、傍受ができる期間は十日以内とし、十日以内の期間で延長ができるものとしておりますが、最初の期間を含めて最大限で三十日を超えることはできないものとされております。このように、今回の法案につきましては、期間の面におきましても、諸外国の立法例よりも期間をさらに限定しているというふうに御理解をいただければと存じます。
#21
○下村委員 一番短いということですよね。
 今回の法案について、この通信傍受について、傍受すべき通信に該当するかどうか、これが明らかでない通信については該当性を判断するための傍受をすることができるとされているということは、よくわからないわけですけれども、このような該当性判断のための傍受は必要最小限度の範囲内に限るということでありますけれども、ちょっと詳しく一外国の法律ではこれについてどのような取り扱いをしているかについてお尋ねしたいと思います。
#22
○原田(明)政府委員 御指摘のとおり、今回の法案におきましては、傍受すべき通信に該当するか否かが明らかでない場合は、該当性判断に必要最小限の範囲で通信の傍受を行うことができることとしております。この点に関しましては、関連性がないと思われる通信については傍受を中断するアメリカの方法と、とりあえずすべての通信を機械的に記録してその中から関連性があると思われるものだけを事後的に取り出すドイツ、フランスなどのヨーロッパ大陸国系の方法がございますが、通信の秘密の侵害をできるだけ少なくするためには、アメリカと同様の方法によることが適当と考えたわけでございます。
 なお、すべてを記録するドイツ、フランスの場合、関連性の有無の判断は、ドイツにおいては検察官または警察官、フランスにおいては警察官が行っているのが通常と承知しております。
#23
○下村委員 アメリカ方式ということでありますけれども、アメリカにおいて、関連性がないと思われる通信については傍受を中断する方法ということでありますけれども、例えば電話の傍受の場合、具体的にどのようにアメリカでは中断等をしているのかどうかについて、ちょっと具体的にお聞きしたいと存じます。
#24
○原田(明)政府委員 アメリカにおきましては、連邦法の規定上、本来は傍受の対象ではない通信の傍受は最小限となるような方法で傍受を行わなければならないものとされております。これは、いわゆる最小限法則というふうに理解されているものでございますが、具体的には、これから申し上げますような方法で該当性判断のための傍受を実際に行っているものと承知しております。
 まず、対象とする特定の電話番号の電話あてに電話がかかってきたとき、あるいは当該電話から電話がかけられたときには、その通話が傍受すべき通信に該当するかどうか明らかでなければ、当該通話の最初の部分を傍受し、傍受すべき通信に
該当するかどうかを判断するわけでございます。一定の時間傍受した結果、それが傍受すべき犯罪に該当しないときは直ちに傍受を中断する、傍受すべき通信に該当するときはそのまま傍受を継続するというやり方でございます。
 一たん傍受を中断いたしましたが、その後もさらに一定の時間当該通話が続いているという場合には、話題あるいは通話の当事者が変わり、傍受すべき通信に該当するに至っている可能性が生じ、再び傍受すべき通信に該当するか否かが明らかではなくなるので、その判断のために再度傍受を開始するという手続がとられます。
 傍受すべき通信に該当することから傍受を継続した場合でも、話題が変わるなどして傍受すべき通信に該当しなくなった場合には直ちに傍受を中断しなければならないとされております。当該通話が継続する限り、傍受すべき通信に該当するか否かを判断するためには、このような傍受の開始、中断を繰り返すというやり方がとられていると承知しております。
 今回の法案におきましては、必要な最小限度の範囲に限りまして該当性判断のための傍受をすることが許されるものとしておりまして、アメリカの先例に倣いまして、できるだけ該当性のない通話についてはこれを実際に傍受しないようにするという最小化の法則に倣うように考えられたものでございます。
#25
○下村委員 なかなかシステムとしてはきちっとされているようですが、これは、果たしてそのとおり対応できるのかどうかということになると、なかなか難しい部分があるのではないかというようにちょっと危惧いたします。
 このアメリカのやり方ということで、今回の法案について、傍受の開始とか中断を繰り返す、我が国においてもそういう方法をとるということでありますけれども、実際に犯罪と関連する通信というのはいつ行われるかというのはわかりませんから、実際に、捜査官という立場からすれば、中断している間に犯罪と関連する通信が行われては困るという立場でいえば、結果的には通信全体を常に傍受するということになりかねないのではないかというふうに思うわけですし、また、そうすることによって、逆に言えば、捜査官としては自分の職務をきちっと全うするということに立場からいえばそうなる、そうするとプライバシーが今度は侵害される、こういう問題が出てくるというふうに思うんですが、この今回の法案については、その点に関してはどのようにそうならないように手当てをしているか、対応しているか、お聞きしたいと存じます。
#26
○原田(明)政府委員 まさに委員が御指摘になった点は、今回の法案の立案過程、またさまざまな検討過程で、大きなと申しますか、いわば最大の論点と申しますか、配慮すべき事項の本質に触れる部分でございます。
 私どもは、基本的には、捜査官も定められた手続に厳格に従うということは当然で、いわば恣意的に行うことはない、そうしてはいけないということに立ちます。
 しかし、これにつきましては、基本的にそう信用するかどうかという点もございましょうし、また、そのことを後から検証できるようにしておくということがやはり大事ではないかという観点から、いろいろな装置をと申しますか、立法の手続上の手順と申しますか、チェック機能を設けようとしたものでございます。
 今回の法案で考えさせていただいておりますのは、まず、立会人が令状で求められている通信についてそれをきちっと作用させるという点について、いわばその手続を確保するために立ち会ってもらうわけでございますが、その実際に傍受をした通信の記録は必ずそのまま保管する。つまり、傍受をしていてそれが記録されないということにはならないようにするということでございます。それで、傍受を始めて、切ったら、その期間は必ず記録には残されるということをまず制度として考えております。
 そして、立会人は実際に行われた傍受の原記録については封印をしていただきます。そして、その封印された原記録は裁判官に保管してもらうことにしております。そして、傍受の実施状況を記録しています書面を裁判官へ提出して、いわばその傍受の状況についての実態についての手続を明確にしておくということが考えられております。
 そしてさらに、通信の当事者に対する事後の通知制度、それから、通信の当事者による記録の閲覧、聴取等、不服申し立て手続などについて詳細の規定を設けることといたしております。
 これらの規定によりまして、傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するための傍受がまさに必要最小限度の範囲で行われるように担保することができるものと考えているわけでございます。
 議論の中で、そうは言うものの、例えば、やはり興味本位で犯罪に関係ない会話が行われているものをつい聞いてしまうんじゃないか、聞いたままでそれを録音しないということだってあるではないかという議論までなされました。
 これにつきましては、機械、装置等の関係からいろいろな工夫をして、聞いたら必ず録音する、それをそのまま保管する、裁判官に預ける、後で問題があったらそれをチェックできるようにするということで対応させていただこうというのがこのいわばチェック機能の基本と考えております。
#27
○下村委員 ポイントですので一ちょっと重複しますが、もう一度お聞きしますけれども、捜査官の立場によってこの運用が大分変わるかなという感じを今受けたんですね。
 場所はどんな場所で、それから、立会人という人はどういう立場でこの捜査官に対してどの程度権限を持って対応できるのか。それから、傍受の原記録を封印して裁判官が保管するということですが、捜査官がそれ以前にみずからこれについて確認をするとかもう一度聞き直すとか、それ自体をコピーするなりして捜査官の手元に残すとかいうことは本当にできないのかどうか。それからあとは、通信の当事者に対してこの事後の通知を必ずするということになっているのか。
 それについてもうちょっと詳しくお答えを願います。
#28
○古田(佑)政府委員 お尋ねのポイントが多岐にわたっているわけでございますが、すべて記憶しているかどうかわかりませんので、足りないところはまたお願いいたします。
 まず最初に、後ろの方から申し上げますと、実際に典型的にどういう方法でこの記録をしていくのか、まずこのあたりを具体的に御説明申し上げたらよろしいかと思うわけです。
 これは、これまでの検証令状で傍受をしたものでも同様の措置をとっているわけですが、基本的には複数のテープレコーダーを同時に回すということになるわけでございます。したがいまして、傍受している記録というのは同時に二本できていくというのがまず非常に典型的な場合でございます。
 その場合に、テープレコーダーのテープでございますから、ある一定時間たつとそれがいっぱいになるわけですが、そういうテープを交換するというふうなときには、この法案では必ず立会人にいてもらうということにしております。したがいまして、立会人のいないところでテープなどを交換することはできないということになります。そのことによりまして、捜査官がみだりに、裁判所に預けるべきテープ、これをかえたりあるいはその複製をつくるというようなことができないような仕組みにしております。
 なぜ二本とるかと申し上げますと、一本は、傍受したものをすべてそのまま忠実に残すという必要性、もう一本は、これは捜査あるいはその後の刑事手続で使用するということが必要になりますので、そのもう一本の方からは、先ほど申し上げました、ただ該当性があるかどうかを判断するために聞いただけの通話、この部分は全部捜査官の方で削り落とすということにしております。したがいまして、捜査官の手元に残りますのは、裁判所に預けた、もともとの忠実に記録したものの中から、関連性がある通話を含んだ部分だけが残る
という仕組みにしております。
 なお、念のために申し上げますと、その立会人が封印するのは、先ほど申し上げましたとおり、テープなどの記録の媒体を交換するとき必ずいなければいけないわけで、そのとき速やかにやっていただくということにするということでございます。
 それから、通知の件でございますが、これは、その捜査官の手元にある関連性がある通話を含んだ部分、この通信の当事者、これにつきましては通知をするということにしております。一方、それ以外の削り落とした部分、これにつきましては通知は要しないということにしております。
 その理由を申し上げますと少し長くなるのですけれども、一つは、該当性判断のために一部を聞いただけのものということがまず大前提ございます。捜査機関としては、もうそれを事後的に利用といいますか、手元に置いて利用できないということで、いろんな利益の侵害の程度というのはかなり低いということが大前提になるわけです。
 それと、実際上の問題を考えますと、その関連性がないとして削り落とした部分というのは、実は関連性がある通信の当事者のした通信であることも非常に多いわけですね。と申しますのは、同じ電話でやるわけですので、いわば、犯人がまさに犯罪の実行に関連する電話をしたという場合とそうでない場合が当然含まれるわけで、そうなりますと、犯罪の実行に関連する通信の部分の当事者に通知をいたしますと、実はかなりの部分がほかの、その電話について傍受をしたということがわかるわけです。それ以外の人ももちろん利用される可能性はあるわけですが、そういう場合にも、同じ電話を使われる方ですから、大体非常に密接な関係を持つ方が多いはずである。そうすると、やはり捜査機関の手元に残した、その通信の当事者に対して通知をすれば、当然ながら知り得る立場になることが普通だろうということです。
 さらにもう一つ大きな問題がありますのは、実は、通信の内容だけから、だれに通知をしたらいいのか、これを特定が確実にできるような場面というのは非常に少ないということが予想されるわけです。そういたしますと、そういう方にも通知をしょうといたしますと、調査をしなければならない。そういたしますと、これはかえってその方たちのプライバシーの侵害という問題を引き起こしてしまう。
 そういうふうなことから、全体を考えまして、捜査官の手元に残している通信、これについてだけ通知をするということにしたということでございます。
 それから、どこで傍受をするのか、こういうお話でございますが、これは原則として通信事業者、例えばNTTでありますとか、そういう通信設備を設置している方の構内でするということを原則に考えております。
 これは一つには、大体、交換機のところで行うというのが最も適切だということと、やはりそういう人たちのいわば見えるところでやるということが、通信事業者の方の保護にもなりますし、また実施の適正を図る上でも重要だと考えたということでございます。
 立会人にはどういう人になってもらうかという点についてお答えを申し上げておりませんでした。
 立会人は、原則として通信事業者、通信設備を設置して人の用に供しているといいますか、そういう方を原則としております。そういう方の立ち会いが得られない事情があるときには、地方公共団体の職員でございます。
#29
○下村委員 時間がないので、ポイントだけもう一度確認します。
 そうすると、複数のテープと最初に言いましたけれども、二本のテープですか、まずそのテープは同時に何本とるのでしょう。
#30
○古田(佑)政府委員 テープは、非常に典型的な場合で申し上げているわけですが、最初に同時に二つのテープレコーダーを回すということです。ですから、要するに、傍受をしている間にその記録というのは同時に二本できるというふうな実際のやり方を想定しているということでございます。
#31
○下村委員 そうすると、捜査官としては、通信傍受を全部とっているテープが残って、それからもう一つは、その必要なところだけ残してあとは消したテープがもう一本ある、消したテープの方を裁判官の方に渡す、こういうことですか。
#32
○古田(佑)政府委員 それは逆でございます。全部忠実に録音したものを立会人に封印していただいて裁判所の方にお預けする、したがって、裁判官の方にお預けするものは、実際に傍受したものがすべて残っているものになるわけです。捜査官の手元の方は、簡単に申し上げますと、もう一本のテープから関係のない部分を削り落としたものが残るということになるわけです。
#33
○下村委員 ちょっと時間がないので、次に機会があればまた詳しくお聞きしたいと思いますが、いずれにしても、今回のこの法案については、この通信傍受というのはやはりポイントだというふうに思うのです。非常に危惧されるのは、これが結果的に濫用されて、捜査機関が無制限に傍受を行う、こういうことがあっては絶対ならないわけであります。
 今回のこの法案における通信傍受というのは、あくまでもそういう意味で犯罪捜査のためのものであるわけですけれども、これが結果的に拡大解釈されて濫用されたり、あるいは犯罪の嫌疑が特定できない、まだないのにもかかわらず、特定の人や団体に対する情報収集目的のために利用されるということが、結果的にないと言えるのかどうか。また、普通の人であっても、実際、軽犯罪ということを含めると、一生全く犯罪も犯さないで日常生活を送るということは難しいのではないかというふうに私は思うわけであります。
 そうすると、実際には全く別の目的で傍受するつもりであるのにもかかわらず、犯罪になる可能性のある行為を取り上げて、それで傍受令状を得て傍受をする、こういうふうな別件傍受、これが行われる可能性はないのかという危惧はやはり持つわけでございますけれども、これについてはいかがでしょうか。
#34
○原田(明)政府委員 委員御指摘の点も、まさにこの制度の中核と申しますか、やはり最大のポイントであろうと思います。
 今回の法案におきましては、傍受を行うことができる犯罪を別表に掲げました一定の重大な犯罪に限定しております。これらの犯罪は、まさに通常の市民の方々が日常的な生活の中では犯しがちな犯罪ではまずございません。今回の法案では、これらの犯罪の嫌疑が十分ある、他の捜査方法では、その犯罪の背景、その犯罪の持つ意味を十分に捜査することが著しく困難であるということなど、厳格な要件を満たす場合に、いわば代替性がないと申しますか、いわば最後の手段として、裁判官の事前の審査を経た上で、その犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信が行われる蓋然性のある特定の通信手段に限ってその通信の傍受を行うことができることとするものでございます。
 また、先ほどもその概要を申し上げさせていただきましたが、その実際の傍受の実施の手続、あるいは関係者に対しても十分な配慮をしておりまして、このような制度のもとにおきましては、捜査機関が無制限に傍受をしたり、あるいは重大な犯罪の存在と申しますか、そのことの嫌疑を離れて、情報収集目的あるいは別の事件の目的で傍受をする余地はなくて、法律に従って適正な運用がなされるものと考えておりますし、またそのようなことを行うために、私どもとしては最大限の努力を払っていかなければならないというふうに考えます。
#35
○下村委員 もう時間がございませんので、最後の質問にさせていただきたいと思うのです。
 今回の法整備をしよう、その一つのきっかけになったのは、やはりオウム真理教の無差別大量殺人事件、地下鉄サリン事件等この事件の影響というのは大変にあったというふうに思います。今回のこの法案が成立をすれば、例えば地下鉄サリン
事件のような事件あるいは松本の事件もございましたけれども、これについて、この法案があることにより、実際にどの程度効果が上げられるのかどうか、これは一般論ということになると思うのですが、どの程度未然に防げるということが、この法制度があるのとないのと違った結果になるということがある程度予想できるのかどうか、これについてお聞きしたいと存じます。
#36
○原田(明)政府委員 委員御指摘のとおり、一般論ということで申し上げさせていただくことになるかと思いますが、今回の法案において、組織的な殺人等、組織的な殺人等の予備、組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等に対する刑が加重されているということのほか、その組織的な犯罪がそのことによって抑止されるということ以外に、まさに通信の傍受によりまして、例えば複数の者が共謀の上で無差別に大量殺人を計画している、これに用いるサリン等の製造のための原料の購入など、既にその準備行為を行ったと疑うに足りる十分な理由があるという場合におきまして、その無差別大量殺人の実行、準備のために犯人間で電話による通話が特定の電話を用いて行われると疑うに足りる状況があるということになりますと、その通話を傍受することによりまして、犯行に関与した者あるいは今後の動きというものにつきまして特定することができ、早期に検挙することができるということは十分考えられるところと考えております。
#37
○下村委員 終わります。ありがとうございました。
#38
○笹川委員長 福岡宗也君。
#39
○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。私は、提出三法律案のうち、組織的犯罪について一律に法定刑を加重する、こういう法律について限定をして質問いたしたいと存じます。
 本法律案は、常習賭博、殺人など、一定の罪につきまして犯罪行為が団体の活動としてこれを実行するための組織によって行われたとき及び団体の不正な権益を維持拡大をする目的で行われたときには、その犯した罪、基本的な罪と申しますけれども、この法定刑を加重するということにしているわけでございます。すなわち、組織的ということを犯罪の成立要件である構成要件に加えようとしているわけでございます。
 しかしながら、我が国の刑法典はこのような構成は全くとっておりません。刑法典はその保護法益ごとに構成要件を包括的に規定をしているわけでございまして、組織的というような具体的態様ごとに刑罰刑を規定しているわけではございません。そうして、計画的になされたか組織的になされたかというようなことは、犯罪の成否とは関係がない、いわゆる情状論として裁判官の裁量に任されているということであります。したがいまして、例えば殺人なら殺人ということだけであります。「人を殺した者は、」こういう規定になっているだけでありますから、これが数人でなされ、それからさらには計画的になされたということとか偶発的に発生したか、そんなことは犯罪の成否とは一応関係がないというわけであります。アメリカの場合には、謀殺、故殺という類型による二つの罪がありまずけれども、それもしていないということであります。
 すなわち、我が国の刑法典は、第二編の「罪」という条項の中で、第二章の内乱に関する罪から第四十章の毀棄、隠匿の罪に至るまで、その刑罰が何を保護するかといういわゆる保護法益ごとに整理をして、包括的に規定をしておるわけでございます。そして、その包括的に規定をするということになると、その中には、計画的なものもあれば、悪質なものもあれば、かわいそうな事例もあるということの幅が多くありますので、具体的にその法定刑として定める刑は、非常に幅広い刑を定めているということになるわけでございます。
 例えば、先ほど申し上げました殺人などは、死刑から始まり、無期懲役、三年以上の懲役刑、それから財産犯である詐欺、恐喝、窃盗などは十年以下の懲役、こういう幅広い量刑を定めまして、単純に、他人の財物を窃取した者は窃盗罪として懲役十年に処する、こういう単純明快なことになりているわけであります。
 唯一例外と言われておるのは、大勢でしないと犯罪自体が成立しないという性質のものですね。騒乱罪、これは、多衆で集合して暴行または脅迫した者は騒乱罪の罪とする、こういうことになっているわけですけれども、それ以外はそんなことないのですね。しかも、その騒乱罪はどうなっているかといいますと、刑は、組織的ということで全員が同じその法定刑じゃないのです。首謀者はこういう罪、指揮者は、付和雷同、付随者というものと三つに分けてこの詳細な規定を設けた。これは刑の本質からであります。したがいまして、本法案のように、組織的というようなあいまいな概念で一律に、罪質の異なる財産犯から身体、生命の罪から何から一体として、包括的に構成要件としてこういうものを定めるというようなことはしていないわけであります。
 これはどういうことかといいますと、構成要件に入りますと、その構成要件、例えば今度の組織的というのも、人を殺したということは間違いないということで認定できても、組織的であるかどうかというのがわからないということになりますと、この罪は組織的殺人事件ということになりますから、そうするとこれは無罪を争うということになるわけであります。
 殺人という単純なものであれば、人を殺したか殺さないか、故意にしたかどうかということだけ判断すれば、有罪、こうなるわけですね。あと、どういうような態様でやったかということは、その悪質の程度は裁判官が見て、最高はできれば死刑にすればいい、こうなるのですから、犯罪の成否そのもの自体は極めて単純明快にできるということになるわけでありますから、有罪、無罪の判断というものを極めて容易にする、判断のいわゆる過ち、過誤を少なくする、こういう利点があるわけであります。
 そしてまた、具体的に量刑についても、有罪と認定した後に、それに対してどのような刑を盛るかどうかということについて、組織性だけじゃないですよ、計画性から、それから動機その他の置かれている立場と、その殺された人との身分関係とか、そういったものを含めて広く勘案をして、具体的、妥当な刑を科するということが可能になってくるわけであります。
 しかしながら、今回のように、組織的というようなものを構成要件に加えるということになりますと、組織的じゃないかどうかということについての判断が結構難しいことになりますから、無用な争いを生じますし、組織的だということについても情状の事実と違いまして厳格なる証明を要するということになりますから、極めて判断を困難にする。無用な争いですね。
 普通ならば、殺したことを認めれば、それでもう事件は半分片づいたようなものだということで裁判官も安心をする、後は情状についてということになりますけれども、これも、組織的というものが構成要件になれば、その点についても証拠も厳格なる証明で明確な立証活動をしなければ認定ができないということになるわけでありまして、極めて争いがふえてくるわけですね。全部で十一の罪がありますから、窃盗でも何でもみんなそういう組織的なというようなことの争いが多発をする。ということは、どういうことかといいますと、現在批判されておる裁判の長期化という点についてもこれはつながってくるという危険性も大であります。
 しかし、何よりも問題なのは、先ほど言ったように、包括的に規定をして法定刑の幅を広げて、そういう形の利点があるのでそういう刑法体系をとっておるのを、根本的にこれは刑法典の体系を崩してしまうということになるので、理論的にも結構問題は大きい、こういうふうに考えているわけでございますけれども、その点について、体系についての十分の討議、それから実際に長期化するとかいろいろな弊害があるということ自体について検討されたかどうか、所見を承りたいわけであります。
#40
○古田(佑)政府委員 多岐にわたる論点の御指摘でございますが、まず、このような加重規定を設けることが現在の刑法の体系に重大な変更を加えることになるかならないかという問題について、私どもの考え方を御説明いたしたいと存じます。
 御指摘のとおり、現行の刑法の罪に関しましても、一定の罪につきましては組織性または集団性を考慮していると構成要件上認められるものはございますが、そのほかの罪につきましては情状として考えられているわけでございます。
 ところで、法定刑というのは一体どういうものかということを考えてみますと、法律が定めます犯罪構成要件に該当する行為の有する違法性の評価を示す機能を有しているというふうに考えるのが通常だろうと思われるわけです。
 この法律案の第三条によります刑の加重は、現行の法定刑では違法性の評価が不十分で、その尺度の中では適切な量刑ができないのではないかと思われる罪につきまして、これらの規定に該当する場合の類型的な違法性の高さに着目し、その違法評価を明らかにする、そして適切な量刑に資するということと犯罪の抑止に資することを目的としているわけでございます。
 そのための方法としては、今委員御指摘のように、法定刑が非常に幅広くできていて、もしそういうものがあるとすれば法定刑を引き上げるというようなことがむしろ正道ではないかという御趣旨のことと思いますが、一般的に、法定刑を引き上げた場合には、その構成要件に該当する行為全体についての違法性の評価が異なってくるというおそれもあるわけでございまして、それぞれの立法目的に応じまして一定の類型の行為を取り出してその違法性、悪質性に着目し、加重類型を設ける、こういうことも合理的かつ適切な措置であると考えられるわけです。
 現にそのような例はこれまでにも多数存在しておりまして、例えば刑法におきましても、逃走罪などは、加重逃走ということで、二人が入っているとかあるいはいろいろな器具を使ったとか、そういうようなものを加重要件にしているような例もありますし、業務上横領と単純横領みたいに業務性を加重要素としているというふうなものなど多々あるわけでございます。
 したがいまして、刑法自体で見ましても、その体系を乱すというふうなことにはならないと思われますとともに、特別法の分野でも、暴力行為等処罰ニ関スル法律でありますとか盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律など、刑法の基本的な犯罪類型に対する特定の類型についての加重規定を設けたものは多々あるわけでございます。
 次に、これが組織性などが構成要件の要素となるということで無用の争いなどを生じさせないかというふうな御疑問でございますけれども、確かに加重類型として設けます以上は、加重類型に当たる事実はいわゆる加重的な部分の構成要件要素となるわけでございます。したがいまして、その意味で、それは当然ながら訴因に含まれるということになりまして、それも直接の審判の対象になるわけでございます。
 しかし、だからといいまして、その加重要素の部分が認められないということであれば無罪になるかというと、それはちょっと違うのではないか。一般に、ある基本的な構成要件を単に加重しただけにとどまるような場合には、その加重要素につきまして合理的な疑いを入れない程度の証明がない場合には、それは基本的な部分、構成要件に該当する部分で認定ができるということに考えられておりまして、この場合も同じことになると思われるわけです。
 無用な争いというふうなことでございますけれども、やはり非常に重要な量刑に影響を及ぼす事情でございますので、実際の訴訟におきましてもそういうものについては非常に慎重な審理が行われているというのが実情であると考えますし、また逆に、そういう法律上も刑を加重する要素ということを明確にいたして、それを訴因に掲げるということで、その点についても攻撃防御の対象とするという、逆の被告人の保護につながる面もあるわけでございます。そういうことを考えますと、無用の争いを招くことになるのではないかというふうな点については、私どもとしては御批判は当たらないのではないかというふうに考えているわけでございます。
#41
○福岡委員 今の御答弁の中で、刑法典の中にも、業務上であるとかというような要件を含めて、やはり加重要件が具体的にはいろいろある、そのとおりですね。ありますけれども、それは一括して刑法とかで殺人とか窃盗犯とか類型の違う十幾つもまとめてこういう規定をしているのじゃなくて、それぞれの罪で、過失罪がある場合に、特に運転なんかの場合の業務上過失とか業務上横領とかというようなものについては、その刑罰と同じ条文の中に一項、二項というような形で定められておるわけでありますから、その刑にくる特色からそういう必要性があって個別的に定められるということはあるわけですけれども、罪質も違うこれらの十幾つを締めくくって一括というような規定はどこにもないわけであります。
 さらに、先ほどの、前の質問者の方の答弁でありましたフランスとドイツの例、確かに組織的なというものが加重要件としてありますけれども、それも、特にドイツの場合なんかは密輸とか特殊な犯行の罪に限って、しかもその罪のところで一項、二項というような形で規定をしてあるのであって、それぞれの罪全体を包括して、十罪ぐらいを合わせて、組織的なことということで構成要件を定めているわけでは決してないのです、これは。だから、こんなような定め方ということは異例中の異例であるというふうに私は考えるわけでございます。それに対して答弁を求めても仕方がありませんので。
 そうなると、今のお答えの中にもありましたように、実際の量刑、裁判官が具体的な事件を取り扱って刑を科するときに、今の法定刑の範囲内では軽過ぎて、組織的だという犯罪に対応できるふさわしい刑罰を科することができないかどうかという点ですけれども、これについては、平成八年に、本件で要するに組織的な犯罪行為の加重を認めておる罪について調査がされていると思いますけれども、その調査結果をまずお示しいただきたいと思います。
#42
○古田(佑)政府委員 ただいまのお尋ねは、いわゆる量刑の統計についての御説明を申し上げるということでよろしいのでございましょうか。
#43
○福岡委員 それで結構です。平成八年だけで結構ですから。
#44
○古田(佑)政府委員 私どもの方で、最高裁判所の統計によりますと、まず、賭博開張図利につきましては、これは長期、五年でございますけれども、三年の刑で執行猶予は一名、それから二年以上が、実刑が二、執行猶予が二十三。これは詳細に申し上げますと非常に膨大になりますが……(福岡委員「簡単でいいです」と呼ぶ)
 次に、殺人につきましては、これは短期が問題でございますので、五年の線で申し上げますと、三年以下が、実刑四十六、執行猶予が百十四ということになっております。
 それから、逮捕及び監禁、これは五年以下が一、三年が二という数字になっております。
 それから、強要につきましては、二年以上が、執行猶予がついている者が二。
 これは平成八年に限った数字です。
#45
○福岡委員 時間が足りませんので、代表的なものだけちょっと説明していただきましたけれども、今の御説明にありましたように、各法定刑の最高のところで処罰されている例というのはまずほとんどないわけであります。すべてがこれは法定刑の中の下の方のところで集中的になっているわけであります。しかも、これは当然今までの組織的な犯罪で行われたものも含まれている統計なんです。仮に組織的な犯罪をもうちょっと重く処罰する必要があるとしても、現在の量刑をその法定刑の範囲内で裁判官が重くする可能性の幅は十分残っているわけであります。そういうときに、これを別の構成要件を定めて法定刑をさらに広げるという必要があるかどうかは極めて問題である
というふうに言わざるを得ません。
 ということは、むしろ逆に、具体的な刑の量刑を裁判でするときに今の法定刑では不都合だというのは、これはもう理由になっていないのですね。ほかの目的があるとしか思えないわけであります。
 そこで、構成要件の問題で先ほど若干お話がありましたものですから、質問をしておきますけれども、お答えの中にありました組織的に殺人を犯したという場合には、訴因の記載として、いわゆる犯罪を構成する事実の中に組織的なということが明確に記載をされて、そしてそれらが立証をされなかったときには、これは無罪になるのか、それとも殺人罪として処断されるのかということなんですけれども、この点についてもう一度ちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。
#46
○古田(佑)政府委員 組織的な殺人に該当するという訴因で起訴した場合に、団体の活動として殺人を実行するための組織によって行われたという点が立証されなければ、普通の殺人罪の訴因で有罪になるというふうに考えているということでございます。
#47
○福岡委員 大は小を兼ねる理論で、そのような見解もあるわけでありますけれども、実際には、その争点が組織的ということに限定をされておって争われている場合には、抜き打ち的にいきなり殺人で有罪にしてしまうということは問題があって、訴因を変える、すなわち予備的に殺人罪でも起訴するという形をとって、その上で殺人罪として有罪にするという形をとらざるを得ないというふうに私は思っているわけですが、その点について。
 それからさらに、例えば今の事例でもって、殺人について、例えば恐喝なら恐喝で、恐喝について有罪は認めるけれども、組織的になしたということだけは否認するという恐喝罪が仮にあったといたしまして、その場合に、刑事手続では簡易公判手続といって、事実関係を全部認めた場合には極めて簡便な手続、特に証拠能力についての制限を外して簡単な証拠採用ができるという手続がありまずけれども、それによって簡便に裁判を続行することができるという、その制度を適用することはできるのでしょうか。
#48
○古田(佑)政府委員 訴因のいわゆる縮小認定と呼ばれる問題について再度のお尋ねでございますが、御指摘のようなケースでは、ある者が殺意を持って人を殺したということ自体は恐らく認めていて争いはない場合で、それに加えて加重要件があるのかどうかが争いになっている、こういうふうなケースだろうと思われますので、そういう場合には、これは裁判例上、特に訴因変更の手続を要しないで、単純殺人で認定することも被告人に対する不意打ちとはならないというふうに考えられていると存じます。
 それから、簡易公判手続のお話でございますけれども、これは確かにこの法律案の三条に定める罪の中にも、法律上、簡易公判手続をとることができるものもございます。しかしながら、これらの罪につきまして実際にそのような手続がとられる例は必ずしも多くはないと考えられます上、この三条の加重要件は、現在でも共謀の有無、内容あるいは重要な犯情にかかわる事項になるものでございます。
 したがいまして、被告人がこの点を争う場合には、現在でも簡易公判手続によることにつきましては相当性にかなりの疑問があるものでございまして、むしろ簡易公判手続によるということはないのが普通ではなかろうかと考えているわけでございます。
#49
○福岡委員 そういう御答弁ですけれども、実際の実務の運営では財産犯、詐欺、恐喝、窃盗、特に窃盗なんか、これは数人で窃盗しても、これはみんな事実を認めれば簡易公判手続でやっているわけです。そういうようなことですから、やはり無用な争いといいますか、手間を要するという形になることは間違いないというふうに私は思います。
 それからもう一つ、国際的にこのような組織的犯罪が問題になっているということは、この提案理由の一つになっておりますけれども、衆議院の調査室から出ておる資料によりますと、こういう組織的という概念が国際的に問題になったのは、アメリカのマフィアの配下にある組織犯罪というものの対応ということでこういった概念が出てきたと書いてあるわけでありまして、しかもそれは、最初から組織的な犯罪から生ずる利益というもの、この経済的なものを剥奪する、特にそれによって経済支配をすることを不可能ならしめる対策が必要だというところから出てきた。特に、麻薬の不正取引による多額の経済利益、これが要するに経済界において大きな影響を与えることを問題にしたとされておるわけであります。そして、その後の国際条約、国際会議ということの内容も、まさにこの点が論議の対象になって条約なんかも締結され、宣言もなされている、こういうことであります。
 すなわち、まさにマネーロンダリングを認めないということ、温存して経済を支配されない、こういうところであるわけでありまして、組織犯罪自体を構成要件として一律に加重しようというようなことについては、ほとんど論議はされていないわけですね。
 それを、我が国の刑法典の伝統のあるものをあえてこのようなことをしておるというのは問題がある、そういうふうに私は思うわけでありますけれども、この点、国際的な流れというのは、中心が経済的な利益の剥奪、それからその利用による経済支配というところにあるかどうか。その辺、ちょっと法務省の見解をお伺いしたいわけであります。
#50
○原田(明)政府委員 組織的な犯罪についての刑の加重につきましては、例えばこれまでの国際会議等におきましても、組織的な犯罪に対処するための実体法の整備、それから既存の制度を強化することが指摘されております上、現在協議が行われております国連の国際組織犯罪対策条約に関しましても、この種犯罪の重大な性質を考慮した制裁を定めることも検討されているのでございます。
 既に主要国におきましても、その要件や対象となる犯罪の定め方はもとよりそれぞれの国の司法制度によってさまざまでございますけれども、組織的な犯罪の悪質性にかんがみて、その処罰を強化するための法整備がなされているということに
 ついては、十分認められるところでございます。
 もちろん、犯罪をペイさせない、犯罪によって得られた収益をそのままにしないということは重大な側面でございますけれども、国家として、組織的に犯罪をいわばビジネスとして行う、そういうことに対しては断固たる措置をとらなければならない。これは国家的な意思の表明として対応すべきであるというのは、一連の国際的な論議の中で十分指摘されているところであり、我が国もそのような潮流を踏まえて対処してまいりたいと考えているのが、その趣旨でございます。
#51
○福岡委員 時間が参りましたので、もう最後の、ちょっと御意見を申し上げておきたいと思うのでありますけれども、国際的に断固たる処分を求めている、したがって我が国でも断固たる態度で臨む、それは大いに結構であります。
 ただ、問題は、先ほどから指摘しているように、刑法典の体系を根本的に崩すということのほかに、実際に断固たる処分をするのにこの法定刑を上げるということ、それから組織的というような構成要件を付加しなければできないかということであります。これはできるのです。しかも、混乱するだけなんです。それから、時間がかかるだけなんです。したがって、そんなばかげたことはやめて、もし個別的に、例えば恐喝なら恐喝の法定刑の幅が低過ぎるというなら、今十年になっていますが、十五年にするとか、個別的に。そういうことで対応すればいいのであって、組織的にこんな十幾つもの犯罪を、こんなわけのわからぬ要件を加えて混乱させることは全くないというふうに思っております。
 そういう意味で、やはりその法体系というもの
は、人を刑罰に処するということですから、わかりやすく単純明快、この精神でもってやって、これは撤回していただいて、具体的な加重をするならば、組織的ということは用いてもいいですよ、例えば恐喝なら、恐喝罪についてはその第二項に組織的加重というものを設けて、もうちょっと構成要件を具体化して、そして変更するという形で対応していただきたい。
 こういうことを強く要求を申し上げて、質問を終わりたいと思いますけれども、大臣の所見を一言だけお願いします。一言だけでいいです、時間がありませんので。
#52
○下稲葉国務大臣 委員の御期待にこたえられる回答はできないのでございますが、現在の法体系を乱すものではない、このように私どもは思いますし、現在の組織的な犯罪の実情にかんがみまして、これらの行為の違法性の高さというところに着目し、それを明示し、適切な量刑をなし得るようにしょうということと同時に、もう一つは犯罪の抑止に資するということで法案を提出したわけでございます。
#53
○福岡委員 どうもありがとうございました。
#54
○笹川委員長 佐々木秀典君。
#55
○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木です。
 ただいまの同僚議員からお話がありました最後の点などは、私も共感をしているところでございます。今回、組織犯罪をめぐって、しばしばサミットを初めとする国際会議でも問題にされて、各国においてこうした組織的に行われる犯罪を根絶しなければならないという協議などが行われていることは、私どももよく承知をしております。そのことはそのこととして必要だとは思いますけれども、しかし、今回のこのような法律案をつくることによって、それに大きな効果が上げられるのかなということになると、いささか疑問なしとしないわけであります。
 先ほど同僚議員の御質問に対して、国際的な協力の実情などについてはかなり詳細に御報告があったわけです。しかし、いずれにいたしましてもこの種の事案というのが、提案理由の説明の中では、こうした組織的な犯罪が少なからず発生しておりと言うけれども、これは、別に最近になって急に多くなったというわけではなさそうですね、麻薬の関係にしても暴力団の関係にしても。
 警察庁でつくられている資料を拝見しても、例えば「暴力団犯罪の罪種別検挙人員の推移」という資料なども拝見いたしますと、平成四年から平成八年にかけての数字が挙がっておりますけれども、毎年それほど大きな変動があるとは思えない。総数において、これは暴力団犯罪ですけれども、平成四年で三万二千八百五十人、これが平成八年で三万三千二百七十人ですから、そんなに急激にここ一、二年の間に多くなったというわけではなさそうだ。それから、罪種別に見ても、やはり同じようなことが言えるのではないかと思うのですね。
    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
 だから、このために今直ちにこの法案をつくって、それで効果が上げられるということは、私はとても思えないようにも思うのですね。ただしかし、常にこれを抑え込み、少なくしよう、そして抑止をしょうという努力はしていかなければならないのだろうと思うのですが、しかし、この法案によって組織犯罪を罰則強化するだけでは効果は少ないと私は考えております。
 これは、例えば殺人罪と死刑との関係がしばしば問題になりますけれども、この間も、死刑問題について当委員会で論議が集中いたしました。そのときにも事例として挙げられた方があったと思いますけれども、それでは、死刑という刑罰がなくなれば殺人罪はもっと多く行われるのかということになるとそうではないのではないか、逆に、死刑という刑罰がなくても殺人罪を少なくするということもあるのではないかというような論議があったわけでありまして、私は、この刑罰の抑止力、特に、それを重罰化することによって抑止的な効果を期待するということは、どうも余り必然性がないのではないかと考えているわけであります。
 そのほかに、それでは、こういう組織犯罪抑止のために考えなければならない対策というのがあるのかどうか。私は、当然あるだろうと思っているのですが、しかもそれは総合的な対策として考えられなければならないだろうと思っているのですが、この辺について、この本法による重罰化のほかにどんな対策が立てられているのか、これを警察、法務省それぞれからお伺いをしたいと思います。
#56
○原田(明)政府委員 まず、法案を提出させていただきました私どもの立場から、今の実情についての端的な、何が心配なのかという点について概括的に申し上げさせていただきたいと思います。
 国際的に組織的な犯罪が問題にされていることは先ほどるる述べさせていただきましたが、従来、我が国の刑法典、刑事司法は、あくまで犯罪というものを個人のものとしてとらえてまいりました。そこでは、個人的ないろいろな動機もございましょう、背景もございましょう、それなりに対処してきたという点はございますが、最近の状況を見ますと、いわば一定の組織的な団体と申しますか、ある種の犯罪においては、犯罪をいわばビジネスとして行う、何らかの他の理由があって犯罪を犯すということではなくて、まさに利益を上げるために、しかもそのためには手段を選ばず犯罪行為に及ぶということが指摘されております。このことは、我が国だけではございません。既に先進各国を含めて国際会議でこれほど問題になっているそのことの背景には、やはり共通する認識として行われているのだと思います。
 それで、我が国ではどうなのかという点について申し上げますと、私どもは、これは私どもの努力が足りなかったという点はあるいはあるのかもしれませんが、いわば犯罪の背景となる事情、つまり、犯罪によって得られた利益がどうなっていくのか、それがどう処分されていくのか、そしてそれは何のためにそういうことが行われたのかということについての解明が十分行われてこなかったとかということは事実だと思います。これは、我が国の刑事司法の持つ一つの問題点として私どもは意識するに至っております。
 そういう観点から申し上げますと、現行のいろいろな手続の中でも、犯罪によって得られた利益がどう実現されてどう利用されていくのかということについてももう少し関心を持つべきだと思います。しかし、そのためのさまざまな立法的な手当てと申しますか装置が必要だということもぜひ御理解いただきたいと思います。
 その上で、現在行われている日本における犯罪の状況ということを考えました場合、私どももこれは刊行物の中で指摘させていただいておりますけれども、件数的に全般的に大変に犯罪が伸びているというのではございません。しかし、一つ一つの状況を見ますと、大変深刻な問題が出てきております。
 一つは、やはり殺人一つとってみましても、企業の経営者あるいは役員、相当な責任のある方々が銃器によって殺害されるあるいは刺殺されるというようなことが現実に起こっておりますが、その背景について十分な解明が行われないまま推移しております。このことは、実は、経済界を含めて、社会にとっては大変な問題として意識されているわけです。何か問題があった場合に本人の生命、身体に重大な侵害が及ぶことがある。しかもその背景には、わからない面が十分あるのでございますけれども、組織的な一つの影が見えるということは十分想定できることでございます。現実に、そういうことを背景としたいわばおどしと申しますか、そのような働きかけがあるということも多数あるわけでございます。
 そのことは、ひとりその犯罪の効果と申しますか、そのことに対する脅威にとどまらず、現在、いろいろ指摘されましたような、あるいは企業に対するさまざまな利益供与の要求、利益の提供というものの背景にもそういうことが行われている。つまり、世の中のさまざまな事象の中に暴力の影、しかもそのことが組織的に行われている影
がある。そのことが現在の社会にとって重大な問題になりつつあるという点がまずあろうと思います。
 それから、例えば薬物でございます。
 我が国は、いわゆるハードドラッグと言われておりますヘロインその他のいわば欧米で問題になっている薬物については、比較的その末端の使用者は少ないということがございます。これは、社会的にもさまざまな、長年にわたる教育的効果ということもございましょう、また、法執行のあり方にもよるのだと思います。
 しかし、覚せい剤につきましては、昭和二十年代の大変しょうけつをきわめた時代、これについては一たんは抑え込んだのでございますが、昭和五十年代の後半、第二のピークがありました。これについても若干おさまったのでございますが、さらに大きなピークを迎えつつございます。その背景は、やはり薬物を利用することによって、いわばビジネスとしてこれを取り扱っているある種の行為があるということは当然想定され、そのことについての解明は進んでいないというような状況でございます。このことは、私どもにとって放置できない日本の問題であるのではなかろうかと思います。
 しかも、そのような状況が、我が国単独で行われるというよりは、むしろ国際的な中で取り上げられているということでございます。委員も御指摘になりましたように、今の日本の状況が、世界的な水準でもって犯罪がとてつもない状況になって、このことが社会問題、政治問題の最大の焦点になっていないという点は本当にまだ幸いなことだと思います。しかし、その萌芽と申しますか芽は十分にあり得るというのが私どもの認識でございます。
 そういう観点から、これにつきまして、もうこの社会が犯罪に対して手が打てない、犯罪をビジネスとして考え、犯罪をペイするということが一般的に蔓延するようになってしまってからでは、それに対する対策はもう手おくれという事態も考えられるわけでございます。今のうちから諸外国の例に学び、そして諸外国と連携をとりながら、我が国としてできるだけのことをやっていきたい。
 しかし、我が国の司法制度の中では、許されることも許されないこともございましょう、また、いろいろ議論を尽くさなければならないこともたくさんあると思います。その中で、国として、国民の生命、身体を守るという法秩序維持のいわば基盤を守っていくために何が必要かということについて、慎重な議論を進めさせていただいた上で、これだけは緊急な課題としてやらせていただきたいということで現在提案をさせていただいていることの背景となったということについては、ぜひとも御理解を賜りたいと思います。
    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
#57
○五十嵐説明員 暴力団犯罪、薬物犯罪あるいは銃器犯罪、外国人組織犯罪、オウム真理教事件等の組織犯罪は我が国の治安に対する脅威となっておりまして、こうした組織犯罪に的確に対応することは警察の最重要課題の一つであると認識しております。
 このため、従来から警察におきましては、これらの組織犯罪に対処するため、取り締まり体制の強化や装備資機材の充実等を図り、組織犯罪の徹底した取り締まりに努めるとともに、法制度の整備、外国捜査機関との協力等の各種施策を強力に推進してきたところであります。
 このうち、暴力団対策につきましては、山口組、稲川会、住吉会を最重点対象といたしまして、組織の分断、解体、壊滅に向け、資金源犯罪その他の暴力団犯罪の徹底した取り締まりや暴力団対策法の効果的運用、暴力団排除活動を三本柱とする暴力団総合対策を推進しているところであります。
 また、薬物犯罪対策につきましても、密輸密売組織の摘発や末端濫用者の徹底検挙さらには薬物濫用防止のための積極的な広報啓発活動など、供給の遮断、需要の根絶及び不法収益対策を柱とした総合的な薬物対策を推進してきているところであります。
 さらに、銃器犯罪に対しましては、暴力団の武器庫の摘発や密輸密売事件の検挙を最重点とした総合的な銃器対策を推進してきたところであります。
 さらに、最近増加の著しい来日外国人組織犯罪対策につきましても、昨年四月、警察庁に来日外国人犯罪対策室を設置いたしまして、また全国の都道府県警察においても同様の体制をとり、犯罪組織の実態解明とその摘発を強力に推進するとともに、外国捜査機関との協力関係の強化等に努めているところであります。
 このほか、オウム真理教事件を教訓といたしまして、化学捜査体制の強化、情報収集体制の強化を図ったほか、広域組織犯罪に対処するための警察法の一部改正等が行われたところであります。
#58
○佐々木(秀)委員 もちろん、警察や法務省ですから、これは取り締まり的な観点と刑事司法的な観点からの対策ということにならざるを得ないのだろうと思いますけれども、そのほかに、さまざまな観点からの国としての総合的な対策というのは私はあってしかるべきだと思うのです。
 この資料の中でも「組織的な犯罪をめぐる主な事件等(平成五年〜九年)」というような紹介がある。特にその中で、平成八年、九年に挙げられているのは、例の住専絡みの末野興産事件だとか桃源社の事件だとか、あるいは野村、一勧、山一、日興、大和、KKCなどというような一連の金融・証券関係の事件ですね。これも組織的な犯罪として挙げられている。ということは、金融対策だとか経済対策だとか、こういうものも全部総合対策に入ってくるわけですね。
 それから、今双方から御指摘があったように、麻薬関係あるいは覚せい剤の蔓延についても、これは、最近非常に若い層、特に高校生などの覚せい剤の売買が非常に広がってきているというわけでしょう。そうするとこれは教育の問題ともかかわってくるわけです。これは非常に深い関係を持ってくると思うのですよ、単純に組織的な犯罪というよりも。そういう総合的な対策が、司法あるいは刑事の関係だけではなくて、それも含めて広く考えられなければならないと思うのです。
 この間、私、なるほどなと思ったのですけれども、北海道に中央農業試験場というのがあるのですが、そこの場長さん、相馬さんとおっしゃって、NHKのテレビなどにも何度か出たことがある農学博士の先生ですけれども、この人が、食べ物と子供たちの心理の問題だとか、もちろん体の発育の関係のことも言っている、それと少年犯罪との関係なんかについてもお話をされていたのですが、非常に密接な関係があるというのですね。
 しかも、何を食べているかということと、それからどんな食べ方をしているかということ、これが子供に対するさまざまな影響というのははかり知れないものがある。要するに、いわゆる加工食品などのようなものばかりを食べたり、あるいは、家族と一緒に団らんしながら食べるというのではなくて、一人だけで食べる孤食。最近では、家庭なんかでも、これで何か買って勝手に食べなさいと言ってお金だけ預けるというようなところが多いけれども、そういうようなことが子供たちの心身の発育に非常にマイナスの影響をもたらし、それが場合によると凶暴な性格をつくっていく。それから、孤独なというか、人との協調ができないというような性格もつくっていく。それがさまざまな少年犯罪にも発展していくのだなどということを指摘されておりました。
 きょうは時間がありませんから詳しく申し上げませんけれども、非常に私はなるほどなと思うところがあったのです。そのようなことを含めて、組織犯罪というものも、未成年者のことも考えながらやっていかなければならないんじゃないかな、私はしみじみそんなふうに思ったことでございました。
 それだけにどうも、今度の法案によって重罰化をするというだけでは組織犯罪抑止の効果もないだろうと私は思っておりますので、この辺のとこ
ろはまたみんなで議論をしていきたいところだと思います。
 時間が余りありませんから、次に行きます。
 今度のことについては、これはかなり幅広く対象を考えているようですけれども、しかし、そのうちの一つの重点として麻薬取り締まりの関係があるのは間違いありません。この麻薬関係については、さきに、平成三年だったと思いますけれども、麻薬特例法がつくられて、ここにいわゆる資金洗浄罪、マネーロンダリングについても規定を設けられているということであるわけです。しかし、この特例法がつくられてから、果たしてごれがどの程度の効果を上げてきたのかという運用実態が発表されていないのではないかという指摘があるわけです。
 そこで、まず警察庁にお伺いをしますけれども、この麻薬特例法が制定されてからの実態、そのうち、特に資金洗浄罪による検挙の数あるいは起訴の件数だとか、これをひとつ御紹介いただきたいと思うのですけれども、わかりますか。
#59
○樋口説明員 警察といたしましては、麻薬特例法の積極的な適用に努めているところでございますが、お尋ねの運用実態でございます。
 第八条、これは「業として行う不法輸入等」でございます。第九条「不法収益等隠匿」、それから第十条の「不法収益等収受」、この三カ条の適用事件の数を申し上げますと、平成七年には六事件でございました。うち八条関係が四事件、九条関係が二事件でございます。それから、翌平成八年には二十五事件でございました。うち八条関係が二十三事件、九条関係が二事件でございます。さらに昨年、平成九年には二十五事件でございまして、うち八条関係が二十四事件、十条関係が一事件でございました。着実にふえてまいっております。実務に定着をしてきておるという状況にございます。平成四年の法律施行から昨年末までの総数は六十四事件でございます。
 具体的な検挙事例でございますけれども、平成九年の九月、大阪府警におきまして、暴力団の幹部が他の暴力団員らが行った薬物密売の場所代として約一億五千万円を徴収していた事件を第十条違反で検挙した事例でございますとか、本年の一月、警視庁におきまして、イラン人の薬物密売グループが密売で得ました不法収益約五千三百万円を海外に送金していた事件を第九条違反で検挙した事例がございます。
#60
○佐々木(秀)委員 それでは、警察庁にもう一度これとの関連でお尋ねします。
 そういうようにして麻薬特例法で検挙した例を今お話しをいただいた、これが使われて効果が上がっているということなのですね。それがある上に、今度のこの組対法、これができるということになると、この関連というのはどういうことになるのかな。捜査当局であるあなた方としてはどういうように受けとめていくのですか、この特例法とそれから今度できょうとする組織犯罪法との関係といいますか。
#61
○古田(佑)政府委員 今回御提案申し上げております組織犯罪対策関連の法案と麻薬特例法の関係を整理して申し上げますが、麻薬特例法は、いわゆる麻薬新条約の施行法としてつくったものでございます。そこに盛り込まれておりますような措置がいわばかなりの部分、今回御提案申し上げております法律の中に入ってくるわけでございます。したがいまして、その共通する部分につきましては今回の法案の方に取り込むということになるわけです。共通しない部分、これは条約の施行との関係で若干残りますけれども、それは従来の麻薬特例法の中に残るということになるわけです。
 したがいまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、今までマネーロンダリング罪につきまして、薬物犯罪と、それと関連するごくわずかの犯罪が前提犯罪でありましたものが、他の犯罪にも拡大するというふうに御理解いただければよろしいかと考えております。
#62
○佐々木(秀)委員 この辺についてもいろいろ問題があると思うんです。きょうは時間がありませんから譲りますけれども、もう少しこの辺もしつかり論議をしていきたいと思っておりますので、その旨をお伝えしておきます。
 それから、時間がなくなってまいりましたので、通信傍受の方について若干お伺いしておきますけれども、これは、しばしば今までも話されてきましたけれども、現行法上も検証令状による盗聴というのが認められて実際に行われている。加えて新たに通信傍受法を必要とする理由というのは一体何なのかということですね。
 それと、これは、実は私どもの同僚の枝野議員がさきの本会議の際に質問をされていることなんですが、どうも御答弁がはっきりしなかったので、もう一回確認をしたいのですが、つまり、法の三条一項二号、三号で、引き続き罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合について通信傍受を認めている。つまり、これは、実際にはいまだ犯されていない犯罪の捜査を認めるということになるのではないか。そういうことになると、むしろ治安維持を目的にしたような行政警察機能と混同することになって、警察権限の濫用につながりかねないということを言っておられるわけですね。
 要するに、令状の発付の時点で、まだ発生していない将来の犯罪についても盗聴を認めることになるのじゃないかということなんですね。これは非常にゆゆしい問題ではないか、こういうことなのですが、この辺を含めて、時間がありませんから簡単にお答えください。
#63
○原田(明)政府委員 重大な問題でございますので、簡潔にでございますが、基本的には、現に重大な犯罪が行われていて、そのことに関連する範囲で現に行われつつあるもの、あるいは将来近接して行われることがそこで話された場合は、それについてとらえることができるということが基本的な考え方でございまして、重大な犯罪が犯されたということを前提としない情報収集目的のものは、これには含まれないということが明確にされておりますので、その点は、どうぞ御理解いただいた上で、ただ、具体的な中身につきましての御審議の中で十分明らかにさせていただきたいと存じます。
#64
○佐々木(秀)委員 時間が参りましたので、きょうはこれ以上お尋ねをいたしませんが、まだまだお尋ねをしたり、また議論をしていかなければならない問題がたくさんあると思います。次回に譲りまして、終わりたいと思います。
 なお、法務大臣にはお尋ねをいたしませんで、大変失礼いたしました。この次はぜひお答えをいただくように設問を用意したいと思います。
 ありがとうございました。
#65
○笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四分散会
ソース: 国立国会図書館
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