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#1
第142回国会 本会議 第3号
平成十年一月二十日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成十年一月二十日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


    午後一時四分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。
 永年在職議員として表彰された元議員原茂君は、昨年十二月一日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 原茂君に対する弔詞は、議長において去る一月十四日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに科学技術振興対策特別委員長の要職にあたられた従三位勲一等原茂君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
     ――――◇―――――
 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#4
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣三塚博君。
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
#5
○国務大臣(三塚博君) ただいま議題となりました預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国では、昨年秋以降、金融機関の破綻が相次いで発生いたしました。こうした中で、預金者に不安と動揺が広がるとともに我が国における金融の機能に対する内外の信頼が大きく低下し、信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に重大な支障が生ずることとなることが懸念される事態が生じております。
 こうした状況のもと、緊急の特例措置として、預金の全額保護の徹底を図る体制を整備するための措置及び金融機関の自己資本充実のための措置を講ずることにより、預金者の保護と信用秩序の維持を図るため、これらの法律案を提出することといたした次第であります。
 まず、預金保険法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、信用協同組合が破綻した際の受け皿として設立された整理回収銀行について、信用協同組合のみならず、一般金融機関の受け皿銀行としての機能も果たせるよう、その機能を拡充することといたしております。
 第二に、預金保険機構において、これまで旧住宅金融専門会社から承継された住宅金融債権管理機構の貸付債権の回収業務に限り認められていた罰則つき立入調査権を、破綻した金融機関から整理回収銀行に引き継がれた貸出債権の回収業務にも拡大するなど、預金保険機構の回収体制の強化を図ることといたしております。
 第三に、預金の全額保護の仕組みとして平成十三年三月末までの時限措置として設けられた預金保険機構の特別勘定について、一般金融機関と信用協同組合の区分を廃止し、すべての金融機関を対象とした一つの特例業務勘定に統合することといたしております。
 第四に、預金保険機構の財政基盤の強化を図るため、七兆円の国債を特例業務勘定に交付し、破綻処理に伴い発生する損失等について、国債の償還金を充てられることとしております。
 第五に、一般勘定及び特例業務勘定における資金調達が円滑に行われるよう、日銀等からの借り入れに加えまして債券発行機能を付与するとともに、借り入れなどに対し政府保証を付与することができるよう措置することとしております。
 次に、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、金融の危機的な状況に対処するための緊急措置として、預金保険機構に金融危機管理勘定を設置し、平成十三年三月末までの間、整理回収銀行に委託をして金融機関等が発行する優先株式等の引き受け等を行うことを可能としております。
 第二に、優先株式等の引き受け等が厳正に行われるよう、預金保険機構に公正な審査を図るための金融危機管理審査委員会を設置することとし、その構成員は、両議院の同意を得て内閣が任命する審議委員三名及び大蔵大臣、金融監督庁長官、日本銀行総裁、預金保険機構理事長の七名としております。
 優先株式等の引き受け等については、この審査委員会において厳正な審査基準を策定し、これに基づいて審査するとともに、引き受け等を申請する金融機関は、経営の健全性確保のための計画を審査委員会に提出しなければならないこととしております。
 また、審査委員会では、優先株式等の引き受け等について、全員の一致をもって議決することとするとともに、議決された案件については、閣議においてそれを承認するかどうか決定されることとしております。
 第三に、以上の措置を講ずるための財政上の措置として、金融危機管理勘定に三兆円の国債を交付し、優先株式等の引き受け等のための資金の貸し付けや優先株式等の処分等に伴い、損失が発生した場合の補てんなどについて、国債の償還金を充てられることとしております。また、金融危機管理勘定において、日銀等からの借り入れ及び債券発行が行えることとするとともに、これらの資金調達が円滑に行われるよう、借り入れなどに対して政府保証を付することができることとしております。
 以上、預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#6
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。松下忠洋君。
    〔松下忠洋君登壇〕
#7
○松下忠洋君 私は、自由民主党の松下忠洋であります。
 自由民主党、社会民主党・市民連合及び新党さきがけを代表いたしまして、預金保険法の一部を改正する法律案及び金融安定化のための緊急措置に関する法律案につきまして、橋本総理及び三塚大蔵大臣に質問を行うものであります。
 バブル崩壊以来、国民は不動産、そして株の下落でなけなしの資産を減らし、預金は超低金利で大変苦しい家計になっております。多くの国民は、銀行、証券会社、そして国に対して信頼感を失っております。特に最近、道路公団理事や警視庁警部の汚職容疑による逮捕など、公務を執行する者に不祥事が相次いでいることであります。法律をつくることも重要でありますけれども、法律を執行する側の高い識見、人格、倫理が極めて重要なことであることを、まず改めて強調しておきたいと存じます。
 金融の根幹は信頼であります。今回提案されました法律案につきましても、法を執行する側がまず国民の信頼を得られるように努力することが最も大切なことであり、そして必要なことであります。それとともに、国会と政府が一体となって我が国の金融システムを守り抜くんだという決意を示し、内外の信頼を回復することが、現在の危機的な状況を克服する上で欠くべからざることであると考えております。
 まず、総理にお伺いいたします。
 現在の我が国金融を取り巻く環境は、北海道拓殖銀行や徳陽シティ銀行など相次ぐ金融機関の破綻、それらを契機とした預金者の自分の預金は大丈夫だろうかという不安、内外の市場が我が国の金融システムに対して持っている不安、銀行の株価の下落、いわゆる貸し渋りなど、それらを通じた企業活動への影響など、単に金融の世界にとどまらない深刻な問題が発生しております。
 質問いたします。
 第一に、今回提出されました金融安定化二法が今何ゆえ必要なのか、また、このような問題に対してどのような効果を持つのかという点について、総理のお考えをお伺いいたします。
 第二に、今回の金融システム安定化のための緊急対策においては、十兆円の国債交付、二十兆円の政府保証限度枠の確保など、多額の公的な資金を活用することとしております。しかし、これらが経営に失敗した銀行の救済に使われることになれば、到底国民は納得いたしません。この点について総理はどのようにお考えでしょうか、お伺いをいたします。
 第三に、このような対策を講じるに当たっては、銀行の側においても適切な情報開示や徹底したリストラが欠くべからざることと考えます。なれ合いを排してそれらがきちんと実行されることにより、自己責任原則と市場規律が働くような透明かつ効率的な金融・資本市場、それができ上がると考えるのであります。この点について総理の御見解をいただきたいのでございます。
 次に、大蔵大臣にお伺いいたします。
 第一に、今回の預金保険法改正案は、銀行の破綻に際し預金の全額を保護するために不可欠のものと考えますけれども、これが個別銀行の救済のためではなく、まさに預金者のためのものであるということを国民に理解してもらうためには、守るべき基本的考え方を国民に示すことが必要であります。今後の金融機関の破綻処理に当たっての基本的考え方について、大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。
 第二に、銀行の自己資本というものは銀行の体力そのものであります。これを向上させることによって、我が国の銀行に対する内外の信頼を回復させ、金融の機能不全を防止するとともに、ひいては銀行の貸し出しの力を増加させ、貸し渋りの解消にも効果を発揮することが期待されるのであります。したがって、銀行優先株や劣後債を引き受けることによってその自己資本比率を向上させることは、まことに時宜を得た政策と考えます。ただし、その際、公正、厳正、透明な手続を経てこれを決定することが、国民の理解を得るためには極めて重要であります。この点につきまして、今回の金融安定化緊急措置法においてどのような工夫をしているのかお伺いをいたします。
 第三に、今回の対策では三十兆円の公的な資金を活用することとしておりますが、国民が不信、不安を感じているのは、これがすべて国民の負担になってしまうのではないかという点であります。この点につきまして、大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
 我が国の現状は、内外に懸案が山積して、非常に厳しいものがあります。金融システムにつきましても、非常に危険をはらんだ状況であると考えます。しかし、国会、政府一体となってこれに当たれば、必ずやこの難局を乗り切り、我が国経済は新たな発展への歩みを始めることができると確信しております。
 最後に、この難局を乗り切るに当たって、総理を初め関係大臣が果敢なリーダーシップを発揮することを期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 松下議員にお答えを申し上げます。
 まず、金融安定化二法の必要性及びその効果についてのお尋ねがございました。
 今回の法案は、我が国金融システムに対する信頼を回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐためのものであります。その着実な実施により、金融システムの安定化をもたらし、いわゆる貸し渋りの解消など円滑な資金供給にも資することが期待されるものであります。
 今回の対策における公的資金の使途につきまして、今回の対策は、我が国金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況を踏まえ、まず預金の全額保護に万全の準備をするため、また金融システムが機能不全に陥ることを防ぐために実施するものでありまして、破綻金融機関の救済のために使うものではございません。
 今回の対策を講じるに当たり、銀行の情報開示とリストラが不可欠ではないかというお尋ねをいただきました。
 内外の信頼回復のためにも、国際的なレベルでの銀行経営の透明性を確保することが必要であり、今回の対策について国民の御理解をいただきますためにも、銀行経営の一層の合理化、効率化が必要であり、今後もこうした真剣な努力と情報の開示を促してまいります。
 そのような観点から、先般、全国の銀行が試行的に自己査定した結果を集計し公表したところでありますし、また、不良債権について、可能な限り十年三月期から米国SEC基準並みに拡充するよう各金融機関に対し促しているところであります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
#9
○国務大臣(三塚博君) まず、今後の金融機関の破綻処理の考え方についてのお尋ねであります。
 これまでも、金融機関の破綻処理に際しましては、破綻金融機関は存在させないこと、経営者の厳格な責任追及が行われることなどの考え方、方針に従いまして一貫した対応を行ってきたところであります。今回の対策におきましても、決して破綻金融機関を救済することはなく、これまでの方針に変更はございません。
 次に、銀行の優先株等の引き受け手続に関するお尋ねであります。
 引き受けの際の審査基準は、引き受けが個別金融機関の救済や優遇とならないよう、また、審査が恣意に流れないよう、公正、中立な委員で構成される審査委員会が、法律上定められました基本的な枠組みに基づき、厳正に策定し、引き受けに先立って公表することといたしております。
 次は、今回の対策と国民の負担についてのお尋ねであります。
 今回の対策は、我が国金融システムに対する内外の信頼を確保するため、三十兆円の公的資金を活用できるよう用意したものであり、国民負担が生ずるか否か、どれだけの負担が生ずるかは、今後いかなる破綻が実際に生ずるか、また、優先株を売却した際にいかなる損失が生ずるかによって確定するものでございまして、三十兆円すべてが国民の負担につながるものでは決してございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(伊藤宗一郎君) 池田元久君。
    〔池田元久君登壇〕
#11
○池田元久君 私は、民友連を代表して、預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案について、総理及び大蔵大臣に質問をいたします。
 橋本総理大臣。都市銀行が破綻し、四大証券の一角が崩れて金融の危機的状況が広がって以来、あなたは、国民や市場にどんなメッセージを出してきましたか。去年の十一月十七日、拓銀が破綻し、二十一日には山一証券が自主廃業に追い込まれて金融不安が高まったとき、あなたはどのように対応されましたか。
 驚くべきことに、あなたは、「報告を受けていない、コメントのしようがない」と言い残して外国に出かけ、その後も金融不安解消策についてみずからの言葉で語ることはほとんどありませんでした。それどころか、この間、全般的な金融危機対策を打ち出すのではなく、大蔵官僚の言いなりになって、不良金融機関の延命に手をかす特定合併のための預金保険法の改正にこだわりました。危機に当たって、初動のおくれが致命的です。内外の識者が、「後手に回って遅過ぎる、ツー・レイト」と言うのもうなずけます。
 さらに、金融危機対策をバブルの発生の大きな原因をつくった宮澤元総理らにゆだね、さらに、梶山前官房長官の提案にも翻弄されたと言ってよいでしょう。トップリーダーでありながら、まさになすすべもなく、官僚頼み、人任せに終始いたしました。
 また、きのうの予算委員会で橋本総理大臣は、公的資金の投入と減税問題について政策を転換した理由として、アジアの金融不安を何度も挙げ、見通しの甘さと責任転嫁の姿勢を明らかにしました。
 財政では二兆円減税のように小出し、金融では後手、人任せ、現在の日本の経済的苦境を多くの人が「橋龍不況」と呼ぶのも当然です。
 橋本総理大臣は、今日の金融危機を招いたみずからの責任についてどのように自覚されているのか、まずお伺いをしたいと思います。(拍手)
 次に、三塚大蔵大臣。去年四月に、金融機関の不良債権について、「不良債権の処理は着実に進んでいる」と述べました。しかし、去年三月期でおよそ二十一兆八千億円としていた銀行の公表不良債権額は、実際には、最近発表した自己査定の結果による問題債権の総額で見ますと、およそ七十六兆七千億円にも上って、それまでの三・五倍にも膨れ上がりました。根拠のない発言をして不良債権の処理を放置したとすれば、大蔵大臣として極めて無責任と言わざるを得ません。
 また、大蔵大臣は、去年の春、「大手銀行二十行は一行もつぶさない」と言いました。しかし、拓銀が破綻した今、この発言の不明を恥じるべきです。
 おととい、大蔵省の初代金融検査部長も務めた井坂武彦日本道路公団理事が、収賄の疑いで逮捕されました。これについては、民友連の同僚の上田議員がこの後詳しく質問しますが、既に、現職大蔵官僚二人が、破綻した信用組合の理事長から、海外旅行の接待や料亭の接待を受けたのが明るみに出ております。また、官房金融検査部の幹部が検査対象の銀行から接待を受けた疑惑が浮上するなど、大蔵官僚の接待漬けが日常化していると言われております。監督対象の金融機関から利益供与を受けて金融行政が公正だと、だれが信用するでしょうか。これも信用危機です。
 三塚大蔵大臣は、隠ぺいと場当たりの金融行政の失敗と一連の大蔵関係者の腐敗、汚職について、監督責任を含めてその責任は極めて重大です。言語多量、意味不明瞭と言われている大臣、恐縮ですが、みずからの責任についてきょうは明瞭にお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 また、これについて任命権者の橋本総理大臣はどのように考えるのか、お伺いをしたいと存じます。
 さらに、大蔵省の小村事務次官は、新年の記者会見で、大蔵官僚の疑惑について、「実態調査はしない」と言っています。まさに、隠ぺい、責任逃れの体質があらわになったと言うべきです。
 大蔵大臣は、ようやくけさ、調査をする意向を示されたようですが、政府として、大蔵省に任せるのではなく、事実関係の調査を早急に厳正に行い、国民に説明すべきだと思います。政府の考えをお伺いしたいと思います。
 また、井坂理事の逮捕に関連し、贈賄側の野村証券に対して、ルール違反が明らかになれば、厳正な処分を行うべきだと考えますが、その方針を示していただきたいと思います。
 自民党の金融安定化対策の立案に事務局長として携わった大蔵省OBの新井将敬議員は、日興証券に借名口座を設けて利益供与を要求し、四千万円の利益を受けたと報道されております。国会の名誉にかけて、また国会の自浄能力を発揮するためにも、新井議員を予算委員会等で証人喚問すべきだと思います。橋本総理大臣は、国会任せにするのではなく、自民党の総裁として、進んで新井議員の喚問に応ずる考えを明らかにされるよう求めます。
 次に、金融危機対策をめぐる公的資金の投入について質問をいたします。
 公的資金を投入する場合は、あくまで名実ともに預金者の保護に限定しなければならないと考えます。その意味で、私たちは、破綻金融機関の預金者を保護するために、もともと資本不足でなかった受け皿金融機関が、破綻処理の結果自己資本が不足した場合、その発行する優先株などを公的資金で引き受ける必要があることは認めます。
 しかし、優良銀行にせよ、非効率な金融機関にせよ、一般の金融機関に対する資本増強のための公的資金の投入は、銀行の保護、救済であり、認めることはできません。
 そもそも金融機関の自己資本の増強は、金融機関が自己責任で市場を通じて行うべきものです。都市銀行を初め日本の金融機関は、今経営の効率化、リストラを迫られています。
 伝えられますように、公的資金を優良銀行の資本増強に使うのであれば、銀行を甘やかして経営の効率化をかえっておくらせ、逆に銀行の体力の低下を招くことは必至です。
 一方、非効率な金融機関に対して優先株等の引き受けによって公的資金を投入すれば、市場から退場すべき金融機関を延命させることになりまして、かえって金融不安を増幅させることになります。
 どちらにせよ、銀行の保護、救済策であることは明らかです。自己責任と市場原理に基づくビッグバンに逆行することになります。信用秩序の維持と預金者の保護に名をかりて、実態として金融機関を保護、救済するやり方はフェアではありません。
 また、国民から見れば、何ゆえ国民の莫大な負担で銀行を救済し、バブルのツケを払わなければならないのか、理解に苦しみます。国民にとって納得できる見解を総理大臣からお伺いしたいと思います。
 次に、公的資金で優先株等を引き受けて金融機関の自己資本を増強する目的は何か。それが自己資本比率自体の向上なのか、それとも貸し渋り対策なのか、極めて不明瞭です。自己資本の増強によって貸し出しを増加させれば、自己資本比率の向上にはなりません。一方、自己資本比率を高めれば、貸し出し増加、貸し渋り対策にはつながりません。
 現状では、金融機関が不良債権処理に回す可能性も大きく、自己資本比率の向上にも貸し渋り対策にもならないことになります。どこから見ても目的と効果は不明瞭です。
 公的資金を使う以上、目的をはっきりさせなければならないと思います。政府は一体何をやろうとするのですか。公的資金による優先株等の引き受けの目的について、総理大臣の明快な答弁を求めたいと思います。
 最後に、今回の政府・与党案では、九〇年代の金融危機をここまで放置してきた行政責任が全く不問に付されております。信用がここまで低下した根本の原因は政府への信頼の低下だということを、政府自身全く自覚しておりません。
 大蔵委員会でも引用いたしましたが、世界恐慌のとき、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は、「恐怖それ自体を恐れなければならない」と言いました。私としては、政府の信頼失墜を恐れざるを得ません。
 政府の長に立つ橋本総理大臣は、対策が後手になり、人任せにして政府への信頼を大きく失わせた責任をとって、みずから出処進退を明らかにされるよう求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 池田議員にお答えを申し上げます。
 まず、金融危機への対応と責任についてのお尋ねがございました。
 金融が我が国経済の根幹であり、政府は、預金者保護の徹底と金融システムの安定性確保に万全を期すことをこれまでも表明してきたところであります。今般の金融システム安定化策や特別減税を含む予算、税制措置など、財政、金融両面にわたるさまざまな措置を講ずることによって、強い決意を持って現下の危機的な金融情勢に全力で取り組んでまいります。
 次に、金融行政と大蔵省関係者の癒着についての御意見をいただきました。
 市場規律を基軸とした透明な金融行政への転換を進めていくことに今後とも全力を尽くさなければなりませんし、預金者の保護と金融システムの安定に万全を期すことが必要であり、同時に、御指摘のありましたように、公務員の綱紀粛正に対しても、今後とも厳しい態度で臨んでまいります。そして、三塚大蔵大臣には先頭に立ってこのような責任を果たしていただきたいと考えております。
 次に、道路公団の理事の件についても御意見をいただきました。
 逮捕という事態に立ち至ったこと、大変、私は情けないという言葉を申しましたけれども、遺憾なことであり、この際、特殊法人につきましても、業務形態に応じ、公務員に準じた倫理規程をつくるべく現在検討を行っております。
 大蔵省職員の綱紀粛正についても、重ねて御意見がございました。
 公務員の綱紀の保持につきましては、平成八年十二月、事務次官等会議申し合わせに基づいて各省庁が制定した公務員倫理規程の厳格な遵守を図るなどにより、その徹底を図っており、今後ともより一層厳しい態度で臨んでまいりたいと考えております。また、こうした点について、既に退職をされたOBの人たちにもその責任を自覚してもらいたいと考えております。
 次に、大蔵官僚の疑惑についての実態調査へのお尋ねがございました。
 伝えられておりますさまざまな報道があります。こうした金融当局の職員と金融機関等の役職員との間の疑惑につきましては、私は、捜査当局が、報道されておりますようなこと等も承知した上で、必要な捜査活動をされているものと理解しておりますし、政府としては、その捜査に全面的に協力をしていきたいと考えております。
 また、大蔵省においては、捜査に何らかの影響を与えないように留意しながら、みずから調査を行い、その結果に基づいて、問題があれば、厳正な行政処分を行うとしていると聞いており、私としても関心を持って見守ってまいります。
 次に、新井議員の証人喚問についてお尋ねがございました。
 法に違反するようなことがあれば、当局が厳正な対応をするものと考えておりますけれども、証人喚問につきましては、国会でお決めいただくべきものと理解をしておりますし、昨日、党の執行部に対し調査をするよう指示をいたしたことを申し添えます。
 次に、今回の公的資金投入というものにつきまして、銀行の保護、救済策ではないかという御批判を受けました。
 今回の対策は、個別金融機関のためではなく、我が国の金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねないこの状況を踏まえ、金融機関の内外の金融市場における資金調達が極めて困難な状況に至ることにより、我が国の金融の機能に著しい障害が生じる事態などを回避するためのものであり、日本発の金融恐慌を防ぐという断固たる政府の決意を示しているものでありますし、これは、国民の利益にもつながるものと考えております。
 また、優先株などの引き受けの目的についてもお尋ねがございました。
 今回の対策は、金融の危機的な状況に対処するための緊急措置として、金融機関の自己資本を充実させることにより金融システムの安定化を図るために行うものであります。また、金融機関の自己資本の充実は、自己資本比率の上昇につながり、いわゆる貸し渋り解消など円滑な資金供給にも資することが期待されます。
 最後に、私の進退についても御忠告をいただきました。
 中期的な目標を見定めながら、国際情勢あるいは為替市場の動向などによって変動する経済の実情に即し、機動的な政策運営を行うことは、政治として、政府として当然の責任であります。そして、政治に空白をつくることなく、一刻も早く金融システムの安定と景気の回復を図ることで私の責任を果たしてまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
#13
○国務大臣(三塚博君) 四問であります。
 金融機関の不良債権についてのお尋ねでございますが、大蔵省がこれまで半年ごとに公表してまいりました金融機関の不良債権総額と今回公表した金額の二つの数字の違いは、基準のとらえ方の違いによるものでございまして、これを単純に比較することは適当でないと考えております。
 いずれにせよ、不良債権問題については、可能な限り資料を提供する観点から公表したものでございまして、これにより国会における御議論が深まってまいりますことを期待を申し上げるものであります。
 大手銀行についてのお尋ねでありますが、政府としては、国際的に活発に活動しておる銀行の破綻により内外の金融システムに大きな動揺が生ずることのないように対処する旨述べてきておりますが、拓銀は既に海外業務を撤退し、もはや国際的に活動している銀行ではありませんでした。こうした中で、預金者保護や、特に北海道における金融機能自体の維持の観点から処理策を取りまとめたところでございます。
 次に、大蔵省職員の綱紀粛正についてのお尋ねであります。
 公務員の綱紀の保持につきましては、常々注意を喚起してきたところでございますが、職員の不祥事につきましても厳しく対応してきていたところであり、今後ともより一層厳しい態度で臨んでまいりたいと考えておるところであります。
 最後に、贈収賄の野村証券に対する行政処分についてのお尋ねであります。
 野村証券の元副社長等が贈賄容疑で逮捕されましたことはまことに遺憾であります。野村証券自体が証券取引法の規定に基づく行政処分の対象となるかどうかについては、捜査当局による今後の捜査を注視し、事実関係を踏まえ、慎重に検討してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(伊藤宗一郎君) 上田清司君。
    〔上田清司君登壇〕
#15
○上田清司君 私は、民友連を代表して、金融安定化緊急措置に関する法案並びに預金保険法の一部を改正する法案について、総理及び関係大臣に質問いたします。
 まず、一昨日逮捕された日本道路公団井坂理事は、橋本大蔵大臣時代に新設した官房金融検査部の初代部長でありました。このような前歴からすれば許しがたい犯罪になる可能性があります。私は、この二年前後の大蔵省高官そしてOBの不祥事または疑惑について触れてみたいと思います。
 東京二信組絡みの豪遊で名高い田谷さん、中島さん。泉井さんから四十万円ともいう絵画をもらった割に出世している涌井主計局長、福島リゾートで十五分の株主総会に出るだけで三千万円を六年間もらっておられる、まことに厚かましいと言われている吉瀬元事務次官、武富士や福島リゾート疑惑で有名な徳田元銀行局長、五億の豪邸疑惑の長野証券局長、新井将敬OBの利益供与疑惑など、大蔵省というのは、灰色高官のあるいは疑惑集団の養成所かと言いたくなるような状況であります。(拍手)公務員倫理法の制定が必要であると思いませんか。まことに恐縮ですが、大蔵大臣経験者であります橋本総理の御見解を承りたいと思います。
 さて、金融ビッグバンの第一弾である改正外為法の四月施行を前に、総理、大蔵大臣ともに金融の安定化のために御努力されていると思いますが、政府の金融安定化策は、住専処理と同じように、金融行政の原理原則にのっとったものではないと考えます。公的資金の投入は、あくまで預金者保護、契約者保護のための緊急行為と考えなければなりません。破綻した金融機関については、原則としてすべて清算すべきであります。金融機関の自己資金増強策は、一義的にはみずから市場に求めるべきではないでしょうか。総理の御見解を改めて伺いたいと思います。
 民間の金融機関の優先株等の引き受けによる自己資本の増強は、経営の優位な銀行への政府の保護にもなるし、市場から退場しなければならない銀行を温存することになり、市場原理に基づいたビッグバンの逆行になりかねません。
 そこで、金融安定化のため三十兆、特に預金保護のための十七兆、優先株引き受けに十三兆と分ける意味について、なぜそうするのかを総理に伺いたい。また、それぞれの積算根拠についてもお聞きいたします。
 次に、総理にお伺いいたしたいと思います。
 この法律案では、整理回収銀行が優先株等の引き受けに際して金融危機管理審査委員会の議決や承認を受けて決定しなければならないとありますが、そもそも審査委員会のメンバー七人によって優先株の引き受けにかかわる基準が作成できるのか。大蔵大臣や日銀総裁、金融監督庁長官、預金保険機構理事長の日程を合わせるだけでも大変ではないでしょうか。結局大蔵省出向の事務局にお任せになるのではないかと危惧いたします。まさに大蔵裁量行政の拡大ではありませんか。特に、重要事項については全会一致の原則などと言っていたら、緊急時に対応できるわけがありません。存在そのものが、逆に言えば意味がなくなってしまいます。
 優先株引き受けのやらせとして東京三菱銀行に名乗りを上げさせておりますが、もし木津信や兵庫銀行の場合であったらどうなるか。早速審査委員になったつもりで大蔵大臣に御答弁をお願いしたいと思います。(拍手)
 また、優先株引き受け等を申請する金融機関の合理化計画等が実行されなかった場合、責任はだれがとるのか。経営者か、大蔵大臣なのか。また、刑事罰はあるのかないのか。大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
 私の知る限りでは、住専国会あるいは昨年の通常国会で、しばしば総理や大蔵大臣は経営者の責任追及について力強く述べておられますが、実態をしつこく追及されておられるようにはとても思えません。
 そこで、法務大臣に伺います。
 最近の破綻金融機関における経営責任で、木津信と阪和銀行は経営者が背任罪等で起訴されていますが、他の兵庫銀行、太平洋銀行、京都共栄銀行、北海道拓殖銀行は刑事責任が問われていません。特に兵庫銀行は、破綻前の銀行検査では六百九億の不良債権が、破綻後一兆五千億の二十四倍になった銀行であります。どんな理由をつけようと、粉飾決算とか虚偽の報告であることは間違いありません。法務大臣も国会でしばしば、経営者の刑事責任の追及を徹底してやると言っておられますが、これらの銀行についてなぜ刑事責任が問われていないのか、御答弁をお願いいたします。
 総理、今挙げた銀行のうち木津信以外は、民事での起訴も今のところございません。国民から見れば釈然としません。なぜなのか、理由を御存じでしょうか。御所見を刑事、民事ともにお伺いしたいと思います。
 さらに、一月十九日付の「金融システムの安定化策の具体化に当たって」という文書がございますが、これについてお伺いいたします。
 私は一貫して、金融機関の不良債権の実態は、大蔵省発表の三十八兆や二十九兆あるいは二十一兆ではなく、八十兆、百兆あるのではないかと言ってまいりました。今ごろになって、国際的な比較可能性を確保した開示として七十六兆円を発表されました。なぜこの時期に発表したのか。公的資金導入のための布石ではないのか。とにかく大蔵省はこのことについて責任を明らかにすべきだと考えます。大蔵大臣の御見解を賜ります。
 「破綻金融機関の経営者や借り手に対し、これまで以上に厳正な民事・刑事上の責任解明・追及を行ってまいりたい。」とこの文書にありますが、これまでほとんどやっていないことを自己反省することがまず必要ではないか。なぜなら、まともな検査ができていれば、こんなに次から次に銀行がつぶれるわけがありません。まともな金融行政ができていれば、公的資金などを導入しなくても済むはずだったわけであります。大蔵省は全面的に責任をとるべきです。
 私の方から具体的に申し上げます。
 局長以上、大臣も含めて責任をとってやめる。過去十年にさかのぼって、局長以上のOBは公職から離れる。天下り先からも当然引き揚げる。以上を実行すれば、どのような対策よりも金融システムは安定し、本格的な行政改革も始まり、市場は好意的に反応し、日本を取り巻く閉塞感が取り除かれるスタートになることを断言いたします。総理の御所見を伺います。
 最後に、銀行のリストラについて述べておられますが、私は、十二月の大蔵委員会でも指摘させていただきましたが、責任ある役員の人が、給与がむしろ一般行員よりも引き下げておられず、長期信用銀行関係三行で二十人の退職者に合計四十五億円の退職金が支払われたこともございます。あくまで推定ですが、特に、その中の一人は二十五億円もらった可能性があります。もちろん、この銀行の業績はよくありません。
 このことを御承知でこのペーパーを提出されたとしたら、大蔵省の対応は余りにも遅いとしか言いようがありません。私たちは何度もこのことを申し上げてまいりました。総理の御見解を伺って、終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 上田議員にお答えを申し上げます。
 まず、大蔵省OBあるいは職員の綱紀粛正についてのお尋ねがありました。そして、大蔵省に対して大変厳しい御批判をちょうだいいたしました。
 私自身、かつて大蔵省に奉職をした父親を持っております。当時、大蔵省の一員であることを私の父親はみずからの誇りにしておりました。それだけに、その大蔵省が今のような御批判を浴びる状態になったことを私は本当に情けなく思います。
 また、今議員からもお触れになりましたように、証券・金融不祥事の後、私自身が今後の再発を防ぐ手段の一つとして設置して職を辞しました金融検査部長、その初代の人間が批判を浴びるそのもとになっております。このポストをつくりました私として本当に情けない思いでありますし、こうした不祥事に対して今後ともより一層厳しい態度で臨みたいと考えておりますし、退職後においてもモラルに対しては厳しくあってもらいたいと心から願わずにおられません。
 次に、破綻した金融機関はすべて清算すべきだという御指摘がございました。
 預金保険制度を発動する際には、預金者保護、信用秩序の維持を基本として、破綻金融機関は存続させない、その方針に従って今後とも対応を行ってまいります。
 また、優先株などの引き受けはビッグバンに逆行する、そうした御批判もちょうだいをいたしましたが、信用秩序と経済に重大な影響が懸念される危機的な事態に対処するため行うものであり、個別金融機関の救済とならないよう、公正、中立な審査機関の設置や透明性の確保などの措置を講ずることとしております。
 公的資金三十兆円の内訳についてもお尋ねをいただきました。
 現在の金融システムに対する不安を払拭するという観点から、全体の国債の交付額をまずもって十兆円として定め、そのうち、全金融機関の不良債権の要処理額等を踏まえまして、七兆円を預金の全額保護のために交付し、残りを銀行の自己資本充実のために交付をいたします。さらに、預金保険機構の資金繰りが円滑に行われるよう、それぞれ十兆円の政府保証枠を設定することといたしました。
 次に、金融危機管理審査委員会の体制その他についての御意見をいただきました。
 優先株等の引き受けに係る具体的な審査基準は、法律上、現在提案申し上げております法案が成立した後、審査委員会において真剣な検討を経て策定されることになると思います。
 また、引き受けに係る議決は、国民の財産である公的資金を活用するものであることにかんがみて、慎重を期す観点から、在任する委員の全員一致によることとし、欠席される委員がありました場合でも、その委員が適切な方法によって議決に参加できるよう措置をしてまいりたいと思います。
 次に、破綻金融機関における経営責任の問題についてお取り上げになりました。
 最近、銀行について経営破綻が相次いでおりますが、その経営責任の追及は、今後、債権回収が進む過程で経営実態が明らかになることにより、厳正に行われていくものと思います。
 なお、今回の預金保険法の改正により、預金保険機構に罰則つき調査権を付与いたしますとともに、組織、体制の整備を行い、厳正な責任追及が行い得る枠組みを設けることとしております。
 次に、大蔵省の金融行政の責任に関する御意見をいただきました。
 今後の金融行政のあり方として、当然ながら、市場規律を基軸とした透明性の高い金融行政を確立すること、厳正で実効性のある検査の実施によって預金者保護、金融システムの安全に万全を期していくことが行政に課せられた責務であり、これは大蔵省のみではなく、今後設置をされます金融監督庁においても、当然ながらその責任は受け継いでいくものになっていく、そう考えております。
 また、省庁の幹部職員でありました者が退職後いかなるポストにつこうとモラルには厳しくあるべき、これは議員の御意見のとおりであります。
 次に、銀行のリストラについての御意見がございました。
 各方面から大変こうした点について厳しい見方がありますことは、真摯に受けとめる必要があると考えておりますし、一月十九日、大蔵大臣が閣議で発言をされました中にもありますように、特に今般、金融システムの安定化策として公的資金を投入することとしていることから、この方策が国民の御理解をいただきますためにも、各銀行がみずからの社会的責任を再認識しながら一層の合理化努力を行うとともに、その実施状況を積極的に開示していく必要があると思います。
 近年、役員賞与や役員報酬などについても、過去に比べては減っていると聞いておりますけれども、さらに国民の理解が得られるものになることを期待いたします。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
#17
○国務大臣(三塚博君) 池田議員に答弁漏れがございましたから、冒頭、お許しをいただきまして申し上げます。
 私の責任いかんということであります。
 私は、預金者保護、システム安定のために全力を尽くしてまいりました。また、綱紀粛正等については、引き続き緊張感を持って職務に精励するように激励をしておるところでございます。
 引き続き、上田議員からの質問は四問であります。
 具体的な審査基準についてのお尋ねでありますが、優先株等の引き受けに係る審査基準については、法律上、その基本的な枠組みを明示しておりますが、今後、法案が成立した後、審査委員会が設置されます。そこでの検討を経て具体化が図られるものと考えております。
 いずれにせよ、今般の対策は基本的に、経営がきちっとした金融機関を対象としており、破綻した金融機関の発行する優先株等を引き受けることを予定いたしておりません。
 次に、金融機関が提出する経営の健全性確保のための計画についてのお尋ねであります。
 審査委員会は、優先株等の引き受けの承認がなされた場合において、原則としてこれを公表し、かつ、発行金融機関に対し、その履行状況について報告を求めることができるものといたしております。したがいまして、引き受けを受けた金融機関は、その計画に沿った業務運営がなされていくものと考えておる次第であります。
 次に、ディスクロージャーと自己査定の集計結果についてのお尋ねであります。
 ディスクロージャーについては、我が国金融システムの内外における信認を回復するため、とりわけ不良債権について、米国SECの基準並みに拡充するよういたしてまいります。各金融機関に要請しておるところであります。
 また、自己査定の集計結果については、今般の金融システム安定化策の前提となる不良債権問題について、可能な限り資料を提供する観点から公表いたしたものでございます。これによって、国会における御審議を深めていただきたいと考えております。
 最後に、金融破綻及び公的資金導入に関連した大蔵省の検査・監督に関する御質問でありますが、大蔵省としては、市場規律を基軸とした透明性の高い金融行政の確立及び厳正で実効性のある検査の実施により、我が国金融システムの安定性と内外からの信認を確保すべく、その職責を全力をもって尽くしてまいります。(拍手)
    〔国務大臣下稲葉耕吉君登壇〕
#18
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 上田議員にお答えを申し上げます。
 破綻した金融機関の関係者らの責任追及についての御質問でありました。
 御指摘のとおり、その責任が可能な限り明らかにされる必要があることは当然であります。
 刑事責任が問題になる事案につきましては、検察当局におきまして、御指摘の二金融機関のほかにも、平成七年以降、五金融機関について経営責任者等を起訴しており、関係機関と連絡の上、その解明と関係者の処罰につき、適切に対処してきたものと承知しております。
 今後とも、法と証拠に基づき、厳正に対処していくものと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(伊藤宗一郎君) 石井啓一君。
    〔石井啓一君登壇〕
#20
○石井啓一君 私は、平和・改革を代表し、ただいま趣旨説明のありました金融関係二法案について、橋本総理並びに三塚大蔵大臣に質問いたします。
 まず、金融システム安定化のための緊急対策をとらざるを得なくなった現在の経済状況に関し伺います。
 昨年来の我が国の経済は、未曾有と言ってもよい危機的状況を迎えております。戦後初めて上場の建設会社が相次いで倒産するなど、企業活動は史上最悪の倒産を記録し、金融機関はさきの北海道拓殖銀行や山一証券の破綻などが相次ぎ、金融不安の状況に陥っております。
 これは、平成九年度にデフレ予算を編成し、消費税率の引き上げ、特別減税の廃止、医療保険料の自己負担引き上げで国民に九兆円の負担増を強いたため、ようやく軌道に乗りかけてきた日本経済の景気回復の芽を完全に摘んだためであり、さらに、二〇〇三年度まで毎年赤字削減を義務づける財政構造改革法が経済の先行き感を一層暗くさせ、投資、消費の意欲を一段と萎縮させた結果であります。
 まず、総理には、現在の経済状況に陥った原因をどう認識されているのか、また経済財政政策の失敗を反省されているのかどうか、率直な見解を伺います。
 次に、財政再建と景気対策との整合性について伺います。
 さきの本会議で、橋本総理は、景気対策と財政構造改革は二者択一の問題ではなく、中期の目標と当面の対応というタイムスパンの異なる問題であると答弁をいたしました。しかしながら、今回の補正予算案では景気対策をとりながら、平成十年度当初予算案では緊縮予算を組んでおり、当面の対応として全く異なる対応をしようとしております。まさに、景気対策というアクセルを踏みながら、同時に緊縮予算というブレーキを踏もうとしており、橋本内閣の経済財政運営は全く混乱していると言わざるを得ません。
 橋本内閣は、当面、財政再建と景気対策とどちらを優先するのか、総理の明確な答弁を求めます。
 また、今回の補正予算の財源は大半は赤字国債であります。財政構造改革法の実施は来年度からであり、九年度の補正予算による赤字国債の増加は、形式的には財政構造改革法に抵触する形にはならないかもしれません。しかし、実質的には今年度の補正予算編成の政策姿勢をも縛るものであるということは、橋本総理や三塚大蔵大臣が昨年の臨時国会で繰り返し答弁してきたことであります。
 今回の補正予算は明らかに政策の方針転換であります。政策変更のけじめがなく、なし崩し的に政策の方針転換を行うことは無責任のきわみであります。総理の見解を伺います。
 さらに、最近、補正予算案に盛り込んだ景気対策実施後も景気回復の効果が上がらない場合は、四月にも追加の景気対策を実施する方針との報道があります。報道されているとおり、追加景気対策を実施する方針でしょうか。もし、追加景気対策があり得るとするならば、今回の補正予算についての政府の自信のなさのあらわれであります。総理の答弁を求めます。
 財政構造改革法の仕組みでは、前年度と比べて赤字国債発行額を減らすことを義務づけておりますが、今回の補正予算が成立し、平成九年度の赤字国債発行額がふえれば、来年度、そのふえた額の範囲内で赤字国債を財源とする補正予算を組んでも財政構造改革法上は可能であります。もし、財政構造改革法のつじつま合わせのために景気対策を小出しにしようとするのであれば、これこそ本末転倒であります。総理の見解を求めます。
 現在の深刻な経済状況、金融不安、いわば橋本内閣による政策不況をもたらした政治責任、けじめのない政策変更の責任は重大であり、それだけで退陣に値します。その上、財政構造改革法に縛られるばかりに、当面の経済財政運営として財政再建路線から景気対策路線への変更を明確にできないのであれば、橋本内閣の退陣こそが最大の景気対策と言わざるを得ません。総理の見解を求めます。
 次に、金融システム安定化策について伺います。
 政府は、今回三十兆円の公的資金を導入する状況の説明といたしまして、金融機関の相次ぐ破綻により預金者に不安と動揺が広がるとともに、我が国の金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況にある、このように説明をしております。
 そもそもこのような金融不安を招いた原因がどこにあると認識されていらっしゃいましょうか。それは、平成九年度の行き過ぎた景気抑制策にあります。デフレ予算により景気が悪化し、株価下落を生じ、金融不安を招いたのであります。景気を回復させれば株価が上昇し、銀行の含み益と自己資本比率が上昇するため不良債権処理と貸し渋りの解消が進み、金融不安は解消いたします。
 すなわち、金融システムを安定化させるための抜本的な対策は本格的な景気対策にあります。公的資金三十兆円は金融機関が破綻したときなどの危機管理対策であり、金融不安の抜本的な解決策にはなり得ません。政府としては、現在の緊縮財政政策を明確に変更し、景気回復を最優先させるべきであります。三十兆円もの公的資金を用意したとしても、一方で緊縮財政を続けていては本末転倒であり、政策的な矛盾であります。総理の見解を伺います。
 公的資金の導入の前提として、不良債権等の情報開示が正確に行われなければなりません。金融不安は、長年にわたり十分な情報開示がなかったために広がりました。この際、個々の金融機関の財務情報、特に不良債権の額をすべて開示することが必要であります。都合の悪い情報は伏せておくという不透明さ、密室行政が続く限り、内外の金融行政に対する不信、不安は晴れません。
 また、政府は最終的にどれだけの公的資金が必要になるのか国民に説明する責任がありますが、そのためには不良債権の正確な実態把握が前提となります。大蔵省は、一月の十二日に銀行の資産の自己査定の集計額を公表しましたが、不良債権及び問題とされる債権の総額は、七十六兆七千八十億円に達しております。これは銀行が公表している破綻先、延滞、金利減免を合わせた不良債権総額の二十一兆七千三百億円の約三・五倍に上ります。この銀行の自己査定の七十六兆円は、大蔵検査、日銀考査で既に把握していたのではないでしょうか。大蔵検査、日銀考査の結果を公表することを求めます。大蔵大臣の答弁を求めます。
 また、なぜ自己査定を現時点で公表するのか。もっと早い時点で把握していたが、国会の対応のために現時点で公表したとしか思えません。また、そもそも不良債権の正確な実態把握がなければ、公的資金投入額も決まらないはずであります。大蔵省は不良債権の実態をどのように把握しているのか、公的資金投入額三十兆円の根拠は何なのか、大蔵大臣の明確な説明を求めます。
 また、公的資金導入に際しては、破綻した金融機関の経営者の刑事、民事上の責任を厳しく追及することが国民の理解を得る前提になります。よく指摘されますように、アメリカの場合も、貯蓄貸付組合の破綻に際し、多額の税金を投入いたしましたが、一方で数千人規模の逮捕者を出しております。今回の金融システム安定化対策の枠組みの中で、経営破綻に関する責任追及が厳格に行われるのか、大蔵大臣の答弁を求めます。
 また、今回、預金保険機構の回収体制を強化するために、これまでは旧住専の債権回収業務に限り認められてきた罰則つき立入調査権を、破綻した金融機関の債権回収業務にも拡大するとしております。五十万円の罰則程度の調査権限で回収効率が高まるのか、大蔵大臣の見解を求めます。
 私どもがかねてから主張しておりますように、日本版RTC、不良債権整理公社を設立し、経営責任の追及と表裏一体となった債権回収、公的資金投入の枠組みをつくるべきと考えますが、総理の見解を伺います。(拍手)
 今回の金融システム安定化対策のうち、七兆円の交付国債と十兆円の政府保証、合わせて十七兆円の公的資金により預金保険機構の財政基盤を強化し、信用組合のみならず一般金融機関全体を対象として、すべての金融機関における預金の全額保護を図る対策は、まさに泥縄式の後手後手の対策であります。私どもは、住専処理の段階から、信用組合だけでなく、銀行も含めて国民の預金は国がすべてを保証すべきであり、そのための必要な資金は政府保証をつけて日銀から融資すべきであると主張してきました。
 今回の対策は、本来、一昨年の住専処理の際に決定すべきことであります。北海道拓殖銀行、山一証券等の経営破綻という危機的状況に至って初めて泥縄式に対応するという政府の後手後手の対応を、まず反省すべきであります。総理の見解を伺います。
 一方、政府は、従来、信用組合以外の金融機関には公的資金は導入しないと何回も繰り返し明言してきました。平成八年六月の参議院の金融問題特別委員会での銀行局長の答弁では、信用組合及び住専問題以外の分野におきましては税金の投入をお願いするということはない、金融システムの範囲内で、預金保険の範囲内で対処していくと明言しております。政府は、今回、従来の政策を百八十度変更しておりますが、この政策変更に当たって、従来の政策の誤りを率直に認め、反省すべきであります。けじめや責任をとらない政策変更は納得できませんし、国民の信頼を失うだけであります。総理の見解を伺います。
 今回の金融システム安定化対策では十兆円の交付国債を発行することとしていますが、交付国債は法律だけで手当てされており、補正予算には計上されておりません。これは、交付国債の財源である国債整理基金特会の残高の範囲内だけでの対応を想定しているものと思われます。国債整理基金特会の残高を超える交付国債の現金化要求があった場合の予算措置はどうなるのか、大蔵大臣の答弁を求めます。
 また、そもそも国債整理基金特会の運用の範囲内での対応を想定し、補正予算に計上しないならば、緊急性を要する補正関連法案としての意味はありません。緊急性を要するならば、赤字国債で予算計上すべきではなかったのでしょうか。赤字国債でなく交付国債としましたのは、交付国債の場合、枠の設定だけで済み、予算計上をしなくてもよいため、財政構造改革法との矛盾にさらされなくてもいいという御都合主義によるものではないでしょうか。総理の見解を伺います。
 私どもは、住専処理の段階から、銀行も含めて国民の預金はすべて保証すべきであると主張してきたように、公的資金導入そのものを否定しているわけではありません。問題は、公的資金導入の仕方であります。その点で、公的資金により一般金融機関の優先株等を購入することは、重大な問題点を多く含んでおります。
 我が国の金融機関に今求められているのは、厳しい自己規律とリストラの努力であります。製造業など世界的な競争の中で生き残りを図ってきた業界と比べると、多くの銀行が本格的なリストラに手をつけず、給与水準も依然高いままであります。公的資金、最終的には国民の税金の力をかりようとするならば、目に見えるような金融機関の自助努力が国民の理解を得るために不可欠であります。しかしながら、優先株等の政府引き受けは、経営に問題のある銀行まで実施されることになり、経営上のモラルハザードを引き起こします。この点について総理の見解を求めます。
 また、優先株等を購入する対象銀行をどこまでにするかという線引きが非常に難しくなります。対象銀行の基準は、法律上は漠然としております。具体的な基準をつくり審査を行うのは公正な審査機関とされておりますが、そのメンバーが大蔵大臣、金融監督庁長官、日本銀行総裁、預金保険機構の理事長、そのほか審議委員三人という構成であれば、審議委員の任命に国会の同意が必要であるといっても、結局のところ、政府、大蔵省の影響下で審議が行われるのは明らかであります。各種審議会が役所の隠れみのとして使われてきた例は枚挙にいとまがありません。結果として大蔵省の裁量権を拡大することになります。金融ビッグバンの流れは、大蔵省の裁量行政から脱却し、市場ルールに基づいた透明で公正な金融行政への転換であったはずですが、この金融ビッグバンの流れにも全く逆行いたします。総理の見解を求めます。
 さらに、自民党の幹部が、優先株等の購入は優良行から実施すべきだと発言をしておりますが、優良行から資本注入することは、体力の弱い銀行に優良行をつき合わせるという意味で、まさに護送船団方式の復活にほかなりません。総理の見解を伺います。
 また、裁量行政で財政の出動により金融を支援するという枠組みは、まさに大蔵省の財政と金融行政が一体となって実施していることであります。財政と金融の一体化のため、大蔵省に過度の権限が集中をし、数々の不祥事が生まれる温床になっております。一昨日、汚職容疑で逮捕された大蔵省OBの道路公団理事は、初代の金融検査部長を務め、その部長時代から業界の接待を受けてきた、このように報じられております。まさに言語道断の事件であり、このような人物を生んだ大蔵省という組織が、そしてその金融行政が、どうして内外から信頼されるでしょうか。大蔵大臣の答弁を求めます。
 また、今回の枠組みは、財政と金融の分離どころか、かえって財政と金融の結びつきを強める危惧があります。与党内においても、財政と金融の分離に関して、与党離脱の動きが報じられておりますが、総理はどう認識されているのか、見解を伺います。
 また、一般金融機関の優先株等の購入について、政府はあくまでも信用秩序の維持が目的であり、個別金融機関の救済を目的とするものではないとしておりますが、事実上の銀行救済になることは明らかであります。優先株等の引き受けについて、本来、優良行は資本注入の必要性がないはずであります。本当に資本充実が必要なのは、経営の破綻こそ見込まれないが経営が優良とは言えず、市場からの資金調達がやりにくい銀行のはずであります。結果として、経営の思わしくない銀行を救済することになることは明らかであります。総理の見解を伺います。
 最後に、金融機関に対する公的資金の導入は、あくまでも金融機関が破綻したときの預金者保護と金融システムの安定のために使われるべきであり、事実上の銀行救済になる一般金融機関の優先株等の購入は極めて問題であることを重ねて申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 石井議員にお答えを申し上げます。
 まず、経済情勢の原因認識、また経済政策と財政改革の効果についての御意見をいただきました。
 経済情勢につきましては、アジアの通貨不安や我が国の金融機関の経営破綻などを背景に厳しさが一層増している、そう認識をいたしております。政府としては、この景気の現状、さらに金融システムに対する信頼の低下という事態への対処も含めて、財政、金融両面にわたるさまざまな措置を講ずることとしており、これらすべてが相乗効果を持って我が国経済の力強い回復に資するものと考えております。
 次に、財政再建と景気対策のどちらを優先するのかというお尋ねがございましたが、財政構造改革の必要性は何ら変わるものではありませんが、経済の実態や金融システムの状況、さらにはアジアを初めとする世界経済の状況を考えながら、その時々の実情に応じて臨機応変の対策、措置をとっていくことは当然のことであり、財政構造改革と景気対策は二者択一の問題ではなく、中期の目標と当面の対応というタイムスパンの異なる問題だと考えます。
 今回の補正予算は、実質的に財政構造改革法に抵触するという御意見がございました。
 しかし、今申し上げましたように、必要な措置を講じていく。特別減税を含めた補正予算を初めとする諸施策は、こうした考え方のもとに断固たる対応を図ろうとするものであり、財政構造改革法に抵触するものではない、そう考えております。
 また、追加の景気対策を行う方針があるのか、そうお尋ねがございました。
 当面、平成九年度補正予算及び金融システムの安定化対策などの関連法案の早急な成立が何よりも大切であり、次に、平成十年度予算並びに関連する税制を含めた各法案を早目に成立をさせていただくことが何よりも大切なことだと考えておりますし、これにより、消費者、企業の経済の先行きに対する方向性、信頼感を回復することが我が国経済にとって不可欠なことだと考えております。
 また、法律とのつじつま合わせのために景気対策を小出しにする、そういう御指摘をいただきましたが、経済の実態や金融システムの状況、さらにはアジアを初めとする世界経済の状況を考えながら、その時々の実情に応じて財政、金融両面にわたる幅広い施策を講じてきたところで、御指摘は当たらないと思います。
 内閣の退陣が最大の景気対策だという御意見もいただきました。
 今国会に提出をいたしました補正予算、関連法案、次年度予算案及び関連する税法等を含めまして早期に成立させていただいて、早急に実施に移すことが肝要だと考えております。
 次に、金融システム安定化対策と財政政策の矛盾という御意見をいただきました。
 先刻来申し上げましたように、財政構造改革の必要性と、経済金融情勢の変化に機敏に対応し国際状況に応じて財政、税制上の必要な措置を講じていくことは当然でありまして、二者択一の問題ではない、繰り返してお答えを申し上げます。
 次に、経営責任の追及と債権回収などの枠組みをつくるべきであるという御指摘をいただきました。
 今回、公的資金を活用することにかんがみまして、いわゆる旧住専の債権と同様に、破綻金融機関の債権についても預金保険機構に罰則つき財産調査権を付与いたしますとともに、同機構内に責任追及のための組織、体制を整備することとしており、これにより、経営者や借り手の民事、刑事上の責任を一層厳正に追及していくことを期しております。
 また、泥縄的な対応という御指摘もいただきました。
 昨秋来、一般の金融機関におきましても大規模な破綻が相次いで発生をいたしましたことなどから、金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎ、信用秩序と経済に重大な影響が懸念されるという大きな事情の変化が生じました。こうした状況のもと、今般、一般の金融機関をも公的資金の投入の対象とし、いわば包括的な危機管理体制を示すことによって、国民の皆様に御安心いただくための緊急対策をとることにしたところであります。
 国債の交付についても御意見をいただきました。
 十兆円という金額は、金融不安を払拭する備えでありまして、一時に使用するものではなく、また、必要な資金の額は金融機関の状況等によって決まってまいります。このような資金を多額の金利を負担して公債発行で調達するのは、財政資金の効率的使用の観点から問題でありますため、要求払い債券を交付し、現金化は必要な都度行うことが適切と考えました。
 優先株などの引き受けがモラルハザードを起こすのではないかという御意見もいただきました。
 優先株などの引き受けに当たりましては、発行金融機関が破綻する蓋然性が高いと認められる場合は除かれ、また、発行する金融機関に対しては、将来に向けた責任ある経営が行われるよう、経営の健全性確保のための計画の提出を求めることとしておりまして、モラルハザード防止のための措置を講じております。
 優先株等の引き受けがビッグバンの流れに逆行する、護送船団方式の復活、そうした御指摘もいただきました。
 今回の自己資本充実策は、公正、中立な審査委員会が策定する審査基準にのっとって厳正に判断が行われ、透明性を高めるために議事録等も公開されることになっており、また、審査基準は法律上限定的に定められており、恣意的な運用は行われません。したがって、ビッグバンに逆行するようなこと、護送船団方式の復活になるようなことはない、そのように考えております。
 また、財政と金融に関する行政のあり方につきましては、既に日銀法改正による日本銀行の独立性を強化するとともに、金融監督庁の設置により金融機関に対する検査・監督を大蔵省から分離することとしており、さらに、この問題につき与党三党間で議論が行われ、一定の合意に達したものと承知をしております。
 最後に、優先株等の引き受けが銀行の経営救済になるのではないか、そうした御意見をもいただきました。
 今回の公的資金による自己資本充実策は、信用秩序と経済に重大な影響が懸念される危機的な事態に対処するために、時限的な緊急措置として行われるものであります。また、法律上も、公正、中立な審査委員会の設置や厳正な審査基準の策定、透明性の確保などの措置を講じており、個別金融機関の救済策あるいは優遇にはならないものと考えております。
 残余の御質問につきましては、関係大臣から御答弁をいたします。(拍手)
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
#22
○国務大臣(三塚博君) 私に対する質問は六問であります。
 まず、検査結果の公表についてのお尋ねであります。
 金融機関の検査結果を公表することは、金融機関等の取引先などに不測の損害を与えるおそれがございます。また、プライバシー侵害の問題が生ずることなどの理由から問題があり、米国、イギリス、フランス、ドイツ等の海外当局におきましても公表されておりません。
 次に、不良債権の実態把握と公的資金投入額の根拠についてのお尋ねであります。
 全銀協統一基準に基づく金融機関の不良債権総額は、平成九年九月期末において約二十八兆円となっております。また、先般、各銀行が試行的に行っている自己査定結果についても集計し、約七十七兆円となっているところでございます。第二分類の中に優良な債権もありますが、それぞれの査定銀行がリスクを明確にするということなどにおいてこの差が出ておるように分析をいたしております。
 いずれにしろ、今般の金融安定化策において、現在の金融システムに対する不安を払拭するとの観点から、いかなる事態にも対応できるよう、十兆円の国債交付をするとともに、十分な資金手当てを行うとの観点から、二十兆円の政府保証限度額を措置いたしたものであります。不安と不透明を解消するための万全の枠組みと言って過言でございません。
 破綻した金融機関の経営者の責任追及についてのお尋ねであります。
 これまで、経営者の責任を厳格に追及していくとの一貫した方針には何ら変更がございません。また、今回の預金保険機構に罰則つき立入調査権を認めるとともに、回収体制の強化を図ることにより、これまで以上に厳正な責任追及がなされるものと考えております。
 調査権限の強化による債権の回収効率についてのお尋ねであります。
 今般は、預金保険機構の調査権限に罰則が付されることにより、調査を忌避しようとすることへの抑止力となっていると考えられます。
 また、かなりの回収実績を上げている、いわゆる住専の事案と同額の罰金となることから、預金保険機構内に整備される責任追及のための組織、体制と相まちまして、十分な回収が図られるものと考えております。
 国債の現金化要求に関するお尋ねであります。
 今般の十兆円の国債の償還のための財源としては、NTT株式の今後の売り払い収入を優先して充てるほか、国債整理基金特別会計が保有する準備資金も償還財源として考えております。
 さらに、それらの財源に対応できない場合には、その時々の状況を踏まえながら、歳入歳出全般にわたる努力に加え、現金化に支障のないように適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
 財政と金融に関する行政のあり方については、既に金融監督庁の設置により、検査・監督を大蔵省から分離し、いわゆる金融業者行政から大蔵省は撤退することといたしております。
 さらに、この問題については与党三党間において議論が行われ、昨夜、一定の合意に達したものと承知いたしておりますが、大蔵省としてはこれを文言どおり重く受けとめてまいりたいと考えております。
 いずれにせよ、大蔵省職員各自が綱紀の保持に努めますとともに、日々の職務に精励することにより、国民各位の信頼が得られるよう今後も努力してまいりたいと考えておるところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
#23
○副議長(渡部恒三君) 小池百合子君。
    〔小池百合子君登壇〕
#24
○小池百合子君 私は、自由党を代表し、預金保険法の一部を改正する法律案、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案の二法について質問いたします。
 総理、今日、我が国が直面している経済、金融の危機的状況を称して、最近、日本の第二の敗戦とさえ言われているのを御存じでありましょうか。
 「山高ければ谷深し」の定石どおり、バブル崩壊によります住専、不良債権処理の誤りと橋本政権の経済のかじ取りの誤りが重なって、今金融システムが根幹から揺らぎ、日本経済は未曾有の窮地に立たされております。国民は自信を失い、それがまた経済の停滞を招いている。これが現状であります。
 原因は余りにも明白であります。政策の間違いです。政府の怠慢、大蔵省の傲慢と言えます。
 そもそも、バブルの崩壊から病み上がりの日本経済に、消費税五%への引き上げを初めとする合わせて九兆円の国民負担増を強い、かつデフレ予算を強行すれば、景気は自律的後退局面に入るのは自明の理でありました。我が国を混乱に陥れようとする第三国の陰謀ならともかく、これが我が国政府、橋本政権が胸を張ってみずからが実施した政策なのですから、いまだに信じることができません。(拍手)
 あれだけ、実施しない、その必要はないと強弁に徹してこられたはずの特別減税については、私たちの政策とはタイミングの大幅なずれや減税額に大きな問題を残しておりますが、総理は突如二兆円の減税の復活を決意されました。これまでの財政再建至上主義を脱したとしか思えない、どう言いわけされても、これは政策転換であります。それを何とか言いくるめようとするから市場が混乱するのであります。
 また、政策が混乱する中、昨年だけでも企業倒産は一万六千件を超え、負債総額は十四兆円にも上ります。金融機関の貸し渋りなどで倒産した企業も数多くあります。特に次代の新しい産業として期待されていたベンチャー企業が今次々と倒産または倒産の危機にあることを総理は御存じでありましょうか。政策のタイミングのずれがこれほどの犠牲を生んでいるのであります。何よりも、世界が抱いた日本への不信感は取り返しのつかない大きな国家的損失と申せましょう。また、その影響はアジア諸国にまで及び、アジアの通貨危機まで増幅させました。総理、この間の責任をどうお感じなのか、率直なお気持ちをあわせてお聞かせください。
 それにいたしましても、総理の二兆円特別減税への決意はワシントンからの圧力によるものと報道されております。日本の政党である私たちが減税政策をパッケージで示し、あれだけ国会で論議を重ねていながら、総理は、持ち前の意地と政権の維持を優先されて、すべてをはねのけてこられました。しかし、ここへ来ての政策転換であります。
 問題は、二兆円特別減税への決意がアメリカからの圧力によるものならば、これはまさしくGHQからの指令に屈したということであって、総理みずから第二の敗戦を招いたということにほかなりません。額賀官房副長官のワシントンでの発言報道も同様であります。総理、特別減税を決意した最大の要因が何であったのか、明確な答弁を求めさせていただきます。
 また、額賀副長官の四月大型補正予算については、極めて重大な問題であり、自由党として徹底追及してまいります。
 総理の金融政策は、隠ぺい、場当たり、先送りの連続でした。
 平成八年一月二十五日の本会議録にはこう記されております。「平成七年九月末における我が国金融機関の不良債権の総額は、各金融機関からの報告によると約三十八兆円となっております。」この時点で総理は、金融機関の不良債権を約三十八兆円と指摘されました。
 平成九年十一月十三日の本会議では、こうおっしゃいました。「現在、金融機関は、不良債権の早期処理に取り組んでおり、個々の経営状況はさまざまでありますが、全体の状況は改善しております。」これはつい二カ月前、昨年末の御発言でございます。金融機関の不良債権処理は全体として改善していたという認識を示されたのであります。
 そこで、先般、大蔵省が公表した「銀行の自己査定の集計額について」でございますが、問題債権は約七十六兆円と出てきました。これまでの破綻金融機関が、ふたをあけてみると莫大な不良債権を抱えていたケースは多々あります。さきに上田議員も指摘いたしましたように、兵庫銀行の場合、それまでの不良債権公表額が一行で六百九億円であったのに、破綻後は一気に一兆五千億、公表額の何と二十五倍にはね上がったケースがこれです。これまで、隠そう隠そうとする政府の情報の出し渋りで、既に疑心暗鬼となっている市場に、今さら七十六兆円という数字を出しても、また、それだけでは済まないだろうという反応しか出てまいりません。本当の数字は一体幾らなんでしょうか。
 アメリカの不良債権処理策はまず徹底したディスクロージャー、情報の開示、つまり、一体、不良債権、問題債権がどれほどあるのかという全体像をつかむことから始めたのは知られるところでございます。また、先日、来日したイギリスのブレア首相のスタッフに、ブレア政権の危機管理のポイントは何かと聞いてみました。まず情報を包み隠さず公開することだと、すかさず返ってまいりました。もちろん、金融機関の情報開示は極めて微妙なところはございます。
 では、大蔵大臣、なぜこれまで不良債権、問題債権の公表を先延ばししてこられたのか、なぜこの時期に問題債権額を発表することになったのか。大蔵省のOBがトップを務める金融機関がほとんどであるため、先輩の責任問題をあぶり出したくなかったのか、それとも、みずからの失政が招いたこの金融危機を泥縄的な公的資金の投入で解決するために、住専処理のときと同じ、いつものように、さあ大変だ、さあ大変だと国民を脅迫しようとして、そのために発表したのか。大臣、御説明ください。
 また、平成八年六月七日の本会議での総理の発言です。
 「住専に公的資金を導入したのは、」「国民の皆様の預金を守るとともに景気回復を確実なものとする等のための臨時異例の措置として決定されたものであります。 金融機関の破綻処理に当たっての公的支援については、本来、金融機関の破綻処理は金融機関システム内において賄うことが原則であります。」
 また、「今後の金融機関の破綻を現時点で予想することは困難でありますが、特別保険料の徴収及びその三年後の適切な見直し等にかんがみれば、仮に財政支出が必要となる場合でも多額にはならないのではないかと考えているところであります。」
 つまり、預金者のいない住専を処理し、景気の回復を確実にするために六千八百五十億円の税金を使うということですが、では、果たして景気はよくなったでありましょうか。その後の検証も十分行われてはおりません。また、公的資金は住専と信用組合の破綻にしか使わない、財政支出が必要となる場合でも多額にはならないともおっしゃったわけですが、では三十兆円は多額ではないのでしょうか。
 以上につきまして、総理の明快な答弁、特に不良債権の処理の見通しを誤った理由、政策変更に至った経緯を、国民、納税者にわかりやすく御説明をいただきます。
 次に、預金保険法についてお尋ねいたします。
 昨年の臨時国会において、与党は、特定合併を主な内容とする預金保険法の改正案を強行採決されました。預金保険機構は、預金者を保護するとりでであります。しかし、この継ぎはぎだらけの預金保険法で我が国の金融システムを守ることができるのでしょうか。相次ぐ金融機関の破綻と、それを後追いする制度の朝令暮改こそ、預金者に不安を与え、金融危機を助長しているのであります。
 一昨年の住専処理以来、つまり新進党の時代から、私たちは、金融機関の破綻処理は法的ルールにのっとって行うべきであり、預金者、貯金者保護のためには公的資金を使っても万全を期すべきであると主張しています。また、不良債権を早期に、強力に回収し、同時に、破綻金融機関の経営者の厳正なる責任追及のために日本版RTCを設立すべきと主張してまいったわけでございます。
 公的資金を大規模に投入する前提として、金融機関救済に使用せず預金者保護に限定するためには、破綻金融機関を整理する場合に解散するか継承するかの決定を、行政の裁量ではなく厳格な形で行う必要がありますが、今回の法改正ではその枠組みについて何ら言及がありません。債権回収機能の強化についても、今までと具体的にどのように違うのかが明確ではなく、破綻金融機関の経営者の追及についても不十分であります。受け皿銀行は大蔵省が強制的に名乗りを上げさせ、経営者は辞任して終わりということでは、公的資金導入に対する国民の理解は到底得られません。
 私たちの日本版RTC構想を換骨奪胎したのが今回の改正案であります。ですから、総理、意地を張らずにもっと早く日本版RTCを設立しておけば、このような泥縄かつ責任が不明確な法案を急ごしらえすることはなかったと言えます。違いますでしょうか。総理の御所見を伺います。
 次に、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律について伺います。
 総理は、六つの改革において金融システム改革を取り上げ、フリー、フェア、グローバルと三つのキーワードを高らかに掲げられました。市場原理を基軸とした透明な金融行政への転換を目指されていたはずであります。
 しかし、今回の優先株などの公的資金による引き受けは、フリー、フェア、グローバルのいずれにも該当いたしません。金融機関救済以外の何物でもないのです。護送船団行政を強化し、真っ向から金融ビッグバンに逆行するものではないでしょうか。
 そもそも各国がBIS規制をクリアするため公的資金を使って優先株を引き受けるような施策をとるようになれば、市場経済の意味そのものが失われてしまいます。また、優先株を公的資金により引き受けさせられる金融機関は、マーケットから資金調達が困難であるということを広く知らしめるようなものです。それによって格付が低下し、さらなる資金ショートを引き起こす、悪循環に陥るというわけでございます。健全な金融機関ならば、マーケットから資金を調達できますでしょう。経営内容を政府に監視されてまで、優先株を自発的に発行することは考えられません。
 一方、不健全な金融機関は、優先株の購入を断られた場合、それは死刑を宣告されたようなものです。審査委員会は優先株の購入を拒否できないわけで、事前審査による選別と該当金融機関に優先株を強制的に発行させる、お得意の行政指導が行われるのは目に見えております。
 現に、報道によれば、三和銀行、東京三菱銀行などが公的資金を受け入れるとされていますが、どんなに繕っても、大手都市銀行に無理やり同意をさせ、地方銀行を追随させようとする護送船団行政の体質が丸見えとなっているのです。なりふり構わずの何とかせにゃいかぬ法案と名前を変えた方がむしろ正直でわかりやすい。
 総理がよく口にされます市場原理ですが、どうやら私たちの考える市場原理と全く別のもののように思えます。総理は、この法案の成立によって日本じゅうの金融機関に資本参加し、時代に逆行する社会主義国家に逆戻りすることを目指しておられるのでありましょうか。
 安易な救済は、金融機関の経営努力を怠らせ、かえって国際競争力をそぐ結果となります。頻発する不祥事をなくし、他産業に比べてはるかに高い給与を是正し、都市のど真ん中にそびえ立つ本店ビルや店舗の合理化など金融機関にはまだまだ大胆なリストラの余地があるはずです。
 また、金融機関がマーケットで資金が調達できないからといって公的資金で救うというのは、一般企業に比べ余りにも不公平であります。みずから何の努力もせず、困ったら政府が助けてくれるということになれば、モラルハザードは銀行にとどまりません。
 一方で、震災から三年が過ぎても、生活再建の見通しがつかないまま仮設住宅暮らしを強いられている阪神・淡路大震災の被災者はどうなるのでしょう。自己責任原則が確立していると言われるアメリカでは、カリフォルニアでの大震災のその直後から、あのFEMAが被災者に対して小切手を提供したことは知られるところであります。アーリー・マネー・イズ・ライク・イースト、早期に手を打てば、小さなお金で大きな効果が得られるという意味です。
 我が国の場合、自己責任原則は建前で、結局政府が救済するという橋本内閣の政策は常に帳じり合わせのみを考え、上辺を取り繕うまさしくびほう策であります。これこそが官が民を指導、誘導する戦後日本の裁量行政の典型であり、適切な資源配分をゆがめ続けてきた裁量行政の典型ではないでしょうか。
 今行うべきこと、それは健全な金融機関と劣悪な金融機関をディスクロージャーにより峻別し、市場の信頼を取り戻すことにあります。
 以上、総理そして大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
 次に、三十兆円の公的資金について伺います。
 本来預金者保護に限定されなければならない公的資金が、いつの間にか貸し渋り対策と混同され、金融機関救済のために三十兆円もの資金が用意されようとしております。
 金融システム安定化のためと言いつつ、なぜ交付国債というようなわかりにくいスキームを用意するのでしょうか。しかも、二十兆円の日銀融資に対する政府保証は、日銀からの借り入れをなし崩し的に拡大していくおそれがあります。過度の日銀貸し出しは、日本銀行の財務体質の悪化、国際信用の失墜を招きかねません。
 致命的な問題もあります。預金保険機構が第二の国鉄清算事業団となるおそれです。今後、金融ビッグバンが進行する過程において破綻する銀行が続出して、金融不安が高まったり、あげくに引き受けた優先株や劣後債が値下がりして売却損が出たり、発行金融機関が破綻してデフォルトが発生した場合、この三十兆円はすべて財政赤字となるおそれをはらんでいるという覚悟はできているでしょうか。
 総理、今後、保証債務の状況を国会に逐一報告すべきではありませんか。これらの施策はまた、毎年財政赤字を縮小するというあの財政構造改革法に抵触しないのでしょうか。総理と大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
 総理がおっしゃいますように日本発世界恐慌を本気で回避するのであるならば、GDPの〇・四%程度の一時的増税予告つきの二兆円減税では甚だ不十分であります。総理は政策変更の責任を問われて、これからやろうとすることの大きさに比べて余りに小さいとおっしゃいました。しかし、余りに小さいのは総理の危機に対する認識と対応策の規模の方ではなかったでしょうか。(拍手)
 二十一世紀を目前にして、我が国が直面する危機的状況にあって、私は愛読書の一つであります「失敗の本質」という本に改めて目を通してみました。「日本軍の組織論的研究」というそのサブタイトルどおり、大東亜戦争における日本軍の戦略、戦術を組織論、意思決定論などの社会科学的アプローチで冷静に分析した名著であります。
 例えば、ノモンハン事件では、作戦目的があいまいだったり、情報に関してその受け取り方、解釈が独善的、戦闘では過度に精神主義が誇張されたと分析しています。ガダルカナルでは、情報の貧困と戦力の逐次投入、陸軍と海軍の縦割りの弊害が指摘され、また、沖縄戦では、大本営と現地軍との認識のずれや意思の不統一を挙げるなど、実際に戦地に赴かれました先輩諸氏には異論もあるでしょうが、戦後生まれの私にとりましては何かと参考になる一冊であります。
 この「失敗の本質」で挙げられている問題点は、今の日本にそっくりと当てはまります。後手後手の小出しの政策は兵力の逐次投入、景気は緩やかな回復基調にあると言い続けた経済企画庁の報告は大本営発表、省庁の縦割り組織の弊害は陸軍と海軍の関係であり、また、情緒的で人間関係を重視する人事しかり、絶対に日本発の世界恐慌は起こさないというスローガンは竹やりの精神主義と、結局日本は何も変わっていないのだと愕然とするところであります。
 最後に、我が国のリーダーとして、第二の敗戦の進行をこれ以上避けるためにも、この国の形をどう導いていこうとされるのかを問いまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 小池議員にお答えを申し上げます。
 まず、特別減税についてお尋ねがありました。
 私は、昨年十二月のASEAN首脳との会合におきまして、バンクーバーで直前に聞きましたとき以上に進行しているアジアの通貨・金融不安の影響の大きさ、その中における日本の役割というものを改めて感じ、また、秋以降の我が国の金融機関の経営問題等の影響による家計、企業の景況感の悪化が見られる中で、先ほど精神主義と言われましたが、日本発の経済恐慌を決して起こさないというのが精神主義だとは私は思いません。まさにそれは必要なことだと私は思います。
 そうした決意のもとに、国政を預かる者の責任として、二兆円規模の特別減税を決断いたしました。これは適切な措置であると考えておりますし、こうした措置と財政構造改革は二者択一の問題ではない、二〇〇三年までの中期の目標、当面の対応というタイムスパンの異なるものだと繰り返し申し上げたところであります。
 また、住専処理と景気という御指摘がございました。
 景気の変動要因というのはさまざまでありますし、一概には申し上げられませんけれども、もし、住専処理を行えず、実現していなかったとすれば、これは、私は、景気に大きな影響をもたらしたと思います。
 また、今般の三十兆円、これはいかなる事態が生じても対応できるような備えをしたものでありまして、国民の皆様に安心していただくための措置であります。
 また、さまざまな角度から厳しい御批判をいただきながら、不良債権の処理の見通しの誤りから政策変更に至ったのではないかという御指摘がありました。
 金融三法制定当時の状況を踏まえて、信用組合に限り政府保証を措置いたしましたが、昨年の秋以来、一般金融機関の大規模な破綻が相次いで発生し、我が国の金融システムに対する内外の信頼が揺らぎかねない大きな事情の変化があったことを踏まえ、今般の緊急対策をとることといたしました。
 また、預金保険法改正案につきまして、債権回収や責任追及、コストテスト等々のお尋ねがございました。
 これまで、個別金融機関の経営問題が発生しました場合には、預金者保護に万全を期すとともに、これがシステム全体に波及しないよう、その時々において最大限の努力を払ってまいりました。
 今回の改正により、預金保険機構に罰則つき調査権を付与いたしますとともに、組織面の強化を図り、強力な債権回収と責任追及が可能な枠組みを設けたところであります。
 今回の対策は護送船団行政ではないかという御指摘もございましたが、優先株などの引き受けに当たりましては、個別金融機関の救済とならないように、法律上、金融機関の申請を前提に、審査委員会が厳正な審査基準に基づいて審査の上決定をするものでありまして、特定の金融機関を念頭に置くわけではなく、護送船団行政などと考えてはおりません。
 なお、引き受けた優先株などについては、金融システムの安定化が図られるなど、目的が達成されました暁には、できるだけ早期に譲渡等の処分を行うことにしておりまして、金融機関への資本参加という御指摘は当たらないと思います。
 また、金融システム改革について、フリー、フェア、グローバルという理念のもとに改革を推し進めようとしている、そのとおりでありますが、金融システムというものが、時に、さまざまな理由によって信用不安が広がるという危険性を内在しております。現在のような金融危機の状況のもとでは、例外的な緊急措置ではありますけれども、金融システム安定化のため、断固たる対応をとる必要があると考えております。
 また、金融機関のリストラが不十分だという御指摘がございました。
 各方面からこのような厳しい見方がありますことは、真摯に受けとめる必要があると考えておりますし、特に、今般、金融システムの安定化策として公的資金を投入することといたしておりますことから、この方策が国民の御理解を得るためにも、一層合理化努力を行う必要があると思います。
 また、今回の対策は、モラルハザードを引き起こし、裁量行政になるという御批判もありました。
 しかし、今回の対策は、個別金融機関の救済のためではなくて、我が国の金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況を踏まえて、金融機関の内外の金融市場における資金調達が極めて困難な状況に陥ることなどによって我が国の金融機能に著しい障害が生じる、そうした事態を回避するためのものであります。日本発の金融恐慌を防ぐという強い政府の決意を示すものであることを重ねて申し上げます。
 また、阪神・淡路大震災関連のお尋ねがございました。
 政府は、これまでにも公営住宅の大量供給とその家賃の大幅な引き下げ、阪神・淡路復興基金を活用した生活再建支援金の給付に対する地方財政措置などさまざまな支援策を講じてまいりました。今後も、政府としては、被災者の生活再建に向け、これらの支援策を着実に推進してまいります。
 また、金融機関のディスクロージャーについて御意見がございました。
 ディスクロージャーについて、内外の市場の信頼を回復する上からも重要なことであります。このような観点から、先般、全国の銀行が試行的に自己査定いたしました結果を集計して公表したところでありますし、また、不良債権につき、可能な限り十年三月期から米国SEC基準並みに拡充するよう、各金融機関に対し促しているところであります。
 また、交付国債についてもお触れになりましたが、今回のスキームは、財政資金を一時に使用するものではなくて、必要な資金の額が金融機関の状況等によって決まってくるものであります。財政資金の効率的な使用という観点から、要求払い債券を交付することといたしました。
 また、保証債務の状況の国会への報告という御意見がございましたが、これは、従来より、財政法に基づきました、毎会計年度国会に提出している一般会計の国の債務に関する計算書において、保証債務負担額等を示していくことであります。
 次に、公的資金の投入と財政構造改革との関連についての御意見をいただきました。
 御指摘の三十兆円につきましては、丸々税金を投入するというわけでは決してありませんし、預金保険機構に対して交付されます国債の償還財源については、財政構造改革を進める中で、その時々の歳入歳出全般の状況を踏まえながら、その確保を図ってまいります。
 いずれにせよ、金融システムの安定化の実を上げつつ、極力新たな国民負担が小さくなるように努力をし、財政健全化の目標を達成するよう努めてまいります。
 最後に、私自身も非常に関心を引かれ、繰り返し読みました「失敗の本質」を引用され、厳しい御批判を受けました。私の尊敬する方々もこの中に執筆をしておられることであり、心して国政に当たりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
#26
○国務大臣(三塚博君) お答えを申し上げます。
 まず、金融機関の不良債権額についてのお尋ねでありますが、これまで公表してまいりました不良債権額は、各金融機関が客観的基準に基づき自主的に開示するなどした不良債権額を集計したものでありますが、これに対し、今回発表いたしました数字は、各金融機関が回収可能性に着目して試行的に行った自己査定結果について、比較可能性等の問題はありますものの、国会等での御論議の参考に資する観点から集計したものであります。
 この二つの数字の違いは、基準のとらえ方に違いがあります。
 いずれにせよ、金融機関は、不良債権の処理に積極的に取り組んできているところであります。
 次に、ディスクロージャーについてのお尋ねであります。
 内外の市場の信認を回復するため、国際的レベルの我が国金融機関の経営の透明性を確保することが必要であります。
 とりわけ不良債権については、可能な限り九八年三月期より米国SEC基準並みのディスクロージャーが行われるよう、各金融機関に対し鋭意促しておるところであります。
 二十兆円の借入枠が日銀の財務体質を悪化させるとの御指摘であります。
 今般の金融システム安定化のスキームについては、不良債権の買収や優先株等の引き受けに十分な資金手当てを行うとの観点から二十兆円という借入枠を確保したものでございまして、これについて、政府保証がついているものであることから、日本銀行の財務体質が悪化につながるという御批判は当たりません。
 預金保険機構が第二の国鉄清算事業団になるのではないかとの御懸念であります。
 日銀等からの政府保証借入金については、破綻金融機関からの資産の買い取りや優先株等の取得のために資金繰りとして用いるものでございまして、基本的に、当該資産の処分等を通じまして資金の回収が十分見込まれるものでございます。
 基本的に、ただいま申し上げたとおりでありますが、その預金の全額保護を行うための特例業務勘定においては、引き続き平成十二年までの間、特別保険料収入が入ってくることになっておりますことも付言させていただきます。
 次に、公的資金の投入と財政構造改革との関連についてのお尋ねであります。
 御指摘の三十兆円につきましては、丸々税金を投入するというわけでは決してございませんし、預金保険機構に対して交付される国債の償還財源については、財政構造改革を進める中で、その時々の歳入歳出全般の状況を踏まえながら、その確保を図ってまいる所存であります。
 いずれにいたしましても、金融システムの安定化の実を上げつつ、同時に、極力新たな国民負担が小さくなりますよう努力をし、財政健全化の当面の目標を達成するよう努めてまいる所存であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○副議長(渡部恒三君) 佐々木陸海君。
    〔佐々木陸海君登壇〕
#28
○佐々木陸海君 私は、日本共産党を代表して、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律案並びに預金保険法の一部を改正する法律案について、橋本首相に質問をいたします。
 この二つの法案は事実上一体のものであり、双方が相まって、国民の税金を使って三十兆円もの銀行業界支援計画を推し進めようとするものであります。
 一昨年、住専問題処理への六千八百五十億円の税金投入に当たって、政府は、金融機関の破綻処理に税金を投入するのはこれ限りだ、今後は信用組合の破綻処理以外に公的資金は使わないと繰り返し国民に約束をしてまいりました。三十兆円という、住専処理の数十倍もの莫大な公的支援の計画が、こうした公約を正面から覆す最も乱暴な公約違反であり、断じて許されないことは明白であります。(拍手)
 まず、預金保険法改正案について聞きます。
 法案では、信組も一般金融機関も一緒にした特例業務勘定なるものを設け、そこに実に十七兆円もの公的資金を投入することを定めています。政府は、預金者保護に万全を期すためと強調し、この十七兆円という巨大な公的資金の投入を合理化しようとしています。
 しかし、今起きている金融機関の破綻は、何よりもバブル経済の時期の金融機関自身の乱脈経営に端を発しているものです。それを処理する責任は、個々の金融機関、関係金融機関、そして金融業界全体で果たすべきものであり、公的資金の投入には何の道理もありません。
 総理自身、住専国会での本会議での私への答弁の中で、破綻金融機関の処理、預金者保護は「金融システム内の負担により賄われることが原則」と言いました。金融機関の破綻処理に際しては金融システムの中で処理する、別の言い方をするならば、預金保険料によって対処するという当時の銀行局長の答弁もあります。
 この原則に立つならば、預金者保護の財源は、税金ではなく、政府のこれまでの言明どおり、預金保険料の引き上げで賄えばいいではありませんか。銀行業界全体にそのための体力があるということも、政府自身が確認しているところではありませんか。
 総理、公約をなぜほごにするのですか。これまでの基本姿勢、原則をなぜ転換するのですか。金融機関に当面現在以上の負担は求めないというその理由は何ですか。はっきりさせていただきたいと思います。(拍手)
 今回の提案、法案には、どこを見ても銀行業界の責任を強化するという方向が全くありません。逆に、専ら公的資金、税金を投入する仕組みだけを具体化しています。これでは、銀行業界の責任を軽くするばかりで、原則への全くの逆行であります。
 破綻した金融機関の経営責任や関係金融機関、さらに金融業界全体の責任を明確にする原則を確立すること、当面の破綻処理を現在の預金保険機構の財源で賄い切れない場合には、必要な資金を借り入れ、将来の預金保険料で返済する方向を確立すること等々を含めて、金融業界の共同責任を発揮させる仕組みを抜本的に強化することこそが今必要なのであります。なぜ、そういう当たり前の、国民の納得が得られる方向を探求しないのですか。
 昨日、銀行局長は、銀行に新たな負担を求めない理由として、銀行の国際競争力の強化のためと言いました。総理、どうしてそのための費用を国民が負担しなければならないのですか。それは、結局、バブルの乱脈経営がつくった不良債権の処理とあわせて、大銀行本位の金融再編の過程で起こる金融破綻の処理を、本来責任を負うべき銀行業界の負担ではなく、国民に肩がわりさせようということであり、それがこの十七兆円ではありませんか。
 もう一つの法案、安定化法案は、預金保険機構の業務の特例として、機構の中に金融危機管理勘定を設け、そこに十三兆円もの公的資金を投入して、銀行の優先株、劣後債などの引き受けを実施することとしています。
 この十三兆円投入計画について、政府も与党も、個々の銀行への支援や救済ではなく、金融システムの安定化のためだと強調しています。しかし、これは、特定の銀行、個別の銀行の優先株などを個別に購入するという形でなされる具体的支援であり、まさしく個々の銀行への支援そのものではありませんか。国民の税金で個別銀行の体力増強を図るという理不尽を口先でごまかすことは、絶対に許されません。(拍手)
 この法案は、「経営の状況が著しく悪化している金融機関」には支援しないことを明確にし、結果として、優良銀行、大銀行を優先して支援する方向を明らかにしています。実際、加藤紘一自民党幹事長は、テレビの発言で、優良銀行から入れる、優良銀行、それから中くらいのところへ、不良銀行には入れてはいかぬと述べています。
 こういう与党の意を受けてのことでしょう、東京三菱、三和などトップクラスの大銀行数行が、法案が成立したら直ちに支援を申請する方向だ、そう伝えられています。
 そこで総理にお尋ねしたい。総理は、優先株などの取得による公的資金を、優良銀行、つまり大手都銀や大銀行から入れていくというお考えなのですか。
 ある地銀の頭取は、ことし初めの新聞紙上で、地銀レベルでの優先株購入は難しいだろう、優先株を購入してほしいと名乗りを上げると、あそこは苦しいと見られ、市場の評価が悪くなる危険性がある、うかつに手を挙げられない、優先株の購入は、国際基準が適用される大手金融機関向けの自己資本増強策だと受けとめていると言っています。
 まさにそのとおりではありませんか。しかも、その大銀行の自己資本増強策は、いわば国民が無理やりその銀行の株を買わされるという形で行われることになるわけであります。株が大きなリスクを伴うものであることは、もちろん常識であります。株が下がれば国民の税金が注がれることになります。国民は、そのリスクをいや応なしに負わされるのです。
 ところが法案は、金融機関の経営に不当な関与をしてはならないと定めており、大銀行に対して、金は出す、株は買ってやる、しかし口は出さないという方向をはっきりさせています。経営刷新を条件にするとだれも制度を利用しなくなるという大蔵省銀行局幹部の発言も報道されました。
 総理、そうすると、国民は、株を買わせられるが口は出せない、リスクだけは負わされるということになるのではありませんか。なぜ大銀行の体力増強に国民が一方的にリスクを負わせられなければならないのですか。
 総理、優良銀行の体力を強めてやるために公的資金を投入する、口も出さない、こんなひどいことをやっている、あるいはやったことのある国が世界にありますか。
 公的資金による銀行の優先株引き受けは、アメリカの先例に倣うものだと言われています。一九三〇年代の復興金融公社、RFCによる銀行の優先株購入がその先例です。しかし、このRFCの場合、RFCは銀行に対し援助もするが口も出しました。当該銀行に関する全事項に関するRFCの議決権の承認、これを当然相手銀行に要求し、そして経営陣の一部更迭なども実行いたしました。当たり前のことであります。今回のやり方は、これとは全く似て非なるものなのであります。
 日本の大銀行は、住専処理に見られるように、バブル期の乱脈経営の反省もせず、総会屋や暴力団との癒着体質などもあわせて、内外の大きな不信を招いています。そういう大銀行に対し、口は出さないで力はつけてやるというのですから、そういう体質を温存し、むしろ増進させかねないではありませんか。総理、公的資金を使用して銀行の身勝手を助長する、法案はこういうものになるのではありませんか。リスクは負わされる、銀行の体質は変わらない、国民にとってこんなばかな話はないではありませんか。明確に答弁をしていただきたいと思います。(拍手)
 金融システムの安定のためだから我慢しろ、そう言うのでしょうか。しかし、金融システムの安定に責任を持つのは、やはり第一義的に金融業界自身ではありませんか。その金融業界に全体として体力があるということは、昨日、銀行局長が認めたとおりであります。金融システムの危機管理に国民がこんな形の責任を負わされる理由はないではありませんか。我慢しなければならない理由は全くないではありませんか。いかがですか。
 総理、いずれにせよ、この法案の方向に沿って進めば、大銀行はますます強く大きくなり、中小銀行は一層窮地に立たされる、そういうことにならざるを得ないと思いますが、いかがですか。
 このように見てくると、この法案は、政府の目指すビッグバンなるものの中で、国際的な競争に生き残る銀行を選別し、莫大な公的資金を使ってそういう銀行、大銀行を支援していくというものであり、国民はそのリスクと被害だけを負担させられる、まさに新たな、最悪の護送船団行政を裏打ちする法案になる、こう言わざるを得ないのですが、総理、いかがお考えですか。(拍手)
 一昨日、大蔵省天下りの道路公団理事が逮捕され、政府・自民党の大銀行支援の根っこにある金融業界と行政の癒着の問題が改めて浮き彫りになりました。
 国民に九兆円の負担増を押しつけている政府が、そしてまた阪神・淡路大震災の被災者への公的支援を拒み続けている政府が、三十兆円もの公的資金を大銀行に注入する、これは癒着の構造がもたらすゆがみの最たるものであります。
 バブルに踊り、さんざん大もうけをした大銀行に対し、バブル崩壊後もその責任を問うことなく、超低金利政策によって国民から吸い上げた預金利子で銀行に巨大な利益を与え、その上で税金で一層の体力強化を図ってやる、ここには何の道理もありません。銀行業界から多額の政治献金を受けている自民党内では通用する議論ではあっても、国民の中で通用するものでは絶対にありません。
 私は、銀行業界の責任を不問にし、国民に莫大な負担を負わせようとする今回の金融関係二法案は撤回しかないこと、公約違反のそのような方向をどうしても進めようとするのであれば、まず国民の信を問うのが先決であることを強く主張して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#29
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 佐々木議員にお答えを申し上げます。
 まず第一に、今回の公的資金導入は基本姿勢の転換ではないかという御意見をいただきました。
 今回の公的資金の措置を含む金融システム安定化対策は、金融機関の相次ぐ破綻により、預金者に不安と動揺が広がるとともに、我が国の金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況に対して、預金の全額保護の徹底を図るとともに、金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐための時限的な緊急措置であります。
 預金保険の保険料負担を現在以上に求めないことや、銀行業界での共同責任で対処できないかという御意見をいただきましたが、預金保険の保険料率につきましては、平成八年度からそれまでの七倍に引き上げました。保険料負担につきましては、我が国金融機関の置かれている状況、国際的な信認との関係などにも留意しながら、中長期的な観点から検討すべきものと考えております。
 いずれにいたしましても、預金の全額保護に万全を期し、現下の金融システムへの信頼低下に対処するためには、公的資金の活用が必要だと考えております。
 次に、国際競争力と銀行の新たな負担の関係について御意見がありました。
 今申し上げましたとおり、保険料負担の利益に対する割合、これは米国のピーク時の水準も参考にしながら、平成八年度から引き上げを行ったばかりであります。
 次に、今回の公的資金の導入は大銀行本位の金融再編のコストを賄うもの、そういう御意見をいただきましたが、預金保険の財政基盤の強化のための十七兆円につきましては、預金の全額保護の徹底を図るために、いかなる事態が生じても対応できる備えをしたものであります。
 また、今回の公的資金による金融機関の自己資本充実策は、個別金融機関の救済を目的としたものではなく、我が国金融に対する内外の信頼低下により、信用秩序と国民経済に重大な支障が生じる懸念があるという緊急の事態に対応するものでありまして、こうした姿勢を示すことにより、我が国の金融システムの信頼と安定を確保して、日本発の金融恐慌を引き起こさないことを期すとともに、自由化、国際化新時代の基盤をより強固なものにすると思います。
 大銀行向けではないかという御批判をいただきましたが、優先株等の引き受けは、金融機関の申請を前提とし、審査委員会が厳正な審査基準に基づいて審査の上決定されるものでありまして、特定の金融機関を念頭に置いているわけではありません。
 また、自己資本増強策について御意見がございました。
 今回の公的資金による自己資本充実策は、経営が悪化した金融機関ではなく、基本的に健全な金融機関を対象としているほか、金融機関の経営が将来に向けて責任ある体制のもとで行われますように、審査機関は議決の前提として経営の健全性確保のための計画を提出させ、公表することとしておりまして、一方的にリスクを負うという御指摘は当たらないと思います。
 また、諸外国における自己資本拡充策の例についてのお尋ねがありました。
 例えば、米国ではRFCが優先株等の引き受けを行いましたが、健全な発行金融機関については、その経営に深く関与したわけではないと承知をしております。
 今回の対策におきましては、優先株等の発行金融機関は経営の健全性確保のための計画を提出しなければならず、必要な措置を講じております。
 また、銀行の横暴を助長する、そうした御意見もございました。
 優先株などの発行金融機関は、経営の合理化及び健全な経営体制の確保に関すること等を含む経営の健全性確保のための計画を提出しなければならず、審査機関はこれを適当と認める場合でなければ議決を行えないものとしており、引き受けが決定されましたときはこれを公表することとしており、御指摘のような心配はないと思います。
 また、今回の緊急対策は、金融機関の相次ぐ破綻により、預金者に不安と動揺が広がるとともに、我が国金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況に対して、経済の動脈ともいうべき金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐための時限的な緊急措置として行うものであります。
 また、繰り返し公的資金による優先株の引き受けについて御意見がございましたけれども、先ほど来申し上げてまいったような状況の中で、緊急措置として限定的に行われるものでありまして、大銀行か中小銀行かといった違いにより恣意的な運用が行われるものではないと考えております。
 また、いわゆる護送船団行政を裏打ちする法案というお話がまた最後にもございました。
 今回の公的資金を活用した金融機関の発行する優先株などの引き受けは、国際的な銀行を選別しようというものではありません。金融機関の自己資本を充実させることによって、内外の我が国の金融システムに対する信頼を確保すること、安定化を図ること、同時に、金融機関の融資対応力を強化して、いわゆる貸し渋りの解消など円滑な資金供給にも資することを目指したものであります。繰り返し、いわゆる護送船団行政の復活などは考えておりません。(拍手)
#30
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#31
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十九分散会


ソース: 国立国会図書館
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