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#1
第142回国会 本会議 第13号
平成十年二月十八日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  平成十年二月十八日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(伊藤宗一郎君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。羽田孜君。
    〔羽田孜君登壇〕
#4
○羽田孜君 私は、統一会派民友連を代表し、若干の所見を述べ、橋本総理の施政方針演説に関連し、景気、金融あるいは行革問題等、絞って質問をさせていただきたいと思います。
 また、私の郷里長野県では、愛と参加をテーマに平和の祭典、冬のオリンピックが開催されております。まず、総理初め閣僚の皆さんが開会式に出席していただいたことと、開催の運びに至るまで御理解と協力をいただきましたことにつきまして、長野県選出の議員と県民にかわってお礼を申し上げます。(拍手)
 この際、参加した各国からの選手、役員の多くの皆さんが大変喜んでくださっていることを御報告申し上げます。
 また、日本選手のメダル獲得や入賞者の数、それにも増して、若き選手たちが世界一流の選手に伍して、はつらつと、しかも堂々と競う姿に、多くの国民は感動にむせび、日本の今後に大きな夢と自信を与えられました。心から感謝をしたいと思います。
 さて、十六日の施政方針演説をお聞きし、なるほど、総理は今日の日本の置かれた状況を網羅的にとらえておられること、やらねばの思いもうかがえます。しかし現実には、状況判断のおくれにより対応が後手後手、小出しとなっており、景気、金融対策、行革など各対策のすべてがちぐはぐであることは、私が指摘するまでもありません。歯を食いしばって頑張っている多くの、やる気のある国民の中からは日増しに怨嗟の声が強くなっており、「明日への自信を持つ年」と呼びかける総理の言葉がむなしく聞こえたものと思います。
 この国も国民も、まだまだ力を持っているのです。この力を生かすことこそ政治であります。パフォーマンスではなく、正直に実態を訴え、政策変更、転換を大胆に行うことが、国民の不安を払拭し、アジアや世界にもよい影響を及ぼすことになろうと考えます。今日は、戦後の歴史の中でも最も大切なときであります。政治に真の覚悟が望まれているときと考えるわけであります。
 我が国は今、政治、経済、社会、すべてにわたり混迷や不安が続き、世紀末と言われる状況を呈しております。一連の官僚不祥事による行政への不信増大、金融機関の相次ぐ破綻による金融不安、一向に出口の見えない景気低迷などが要因となって、個人消費は北極のように底冷えし、雇用不安も広がっております。青少年らによる凶悪事件の多発など、社会が荒廃の度を増している現状は、まことに憂慮する事態であると言わねばなりません。
 希望を持てることが議会制民主主義の支柱であると述べたのはイギリスの高名な政治学者ハロルド・ラスキでありますが、現在の橋本政権は、国民に希望を与える処方せんを示しておりません。ニューヨーク・タイムズは、橋本内閣をブレインデス、すなわち脳死状態と表現しております。また、その他の国々の報道もさらに厳しく、橋本売り、日本売りの形で不信任を突きつけていると言えます。橋本政権が国民の前に明確な国家目標と具体的な解決策を示さないまま、いたずらに事態を悪化させ続けるならば、日本は荒波にもまれる木の葉のような存在になることは確実であります。
 政府が再生の切り札としてまとめを急いでいる行財政改革も、確固たる理念を見出すことができません。数合わせにも似た、場当たり的な感がぬぐえず、とても改革の名に値するものとは言えない内容であります。もうこれ以上、橋本政権にこの国を任せておくわけにいきません。我々民友連は、橋本政権にかわり政権を担当し、真の政治、行政、財政の改革によって、国民に安心と希望の持てる二十一世紀への国づくりのため、全力で取り組む覚悟であることを申し上げます。(拍手)
 質問に先立ち、榊原英資大蔵省財務官の、日本政府は既に政策転換を行っているという発言について伺います。
 榊原氏は、政策は転換した、それをもっと私が海外に行って説明しなければいけないと述べているのであります。しかし、橋本総理の口からは政策転換を行ったという発言は一度もなく、国民も、日本政府が政策転換を行ったとは思っておりません。こんな重要な経済運営の基本問題について、大蔵省の高官と総理の発言が異なっているとしたならば、余りにも不見識と言わざるを得ません。果たして榊原発言と橋本内閣とで、どちらが政府としての本当の見解なのでありましょうか。総理に政府としての統一見解を求めたいと考えます。
 私は、長年の政治活動を通じて、政治改革についてひときわ声を大にして訴えてまいりました。そもそも政治改革は、相次ぐ政界汚職や不祥事の発覚、権力維持のための課題の先送りなど、政治の停滞の反省に立ち取り組んできたものであります。しかしながら、現在も相変わらず政治家による汚職や不祥事が後を絶ちません。
 本来、民主政治は、政治家と政党がリーダーシップを発揮し、政権交代を伴う緊張感のある政治を実現し、国会の場で議員同士による真剣な議論によって政策決定を行うのがその姿であり、そのためには官僚依存型の政治からの脱却が不可欠であります。
 また、政治改革とは、我が国にとってすぐれた統治能力を備えた政治体制を模索することでもあり、政治家にとって終わることなく追求すべき永遠の課題であります。我々に求められているものは、その永遠の課題に取り組む際の持続する意志であり、長期的な視野を持ってさらに真剣に政治改革を進めていくことが求められていると考えます。総理の政治改革に対するお考えを伺います。
 二十一世紀に向けた改革を行っていく上で国民に痛みを求める以上は、政治家みずからが身を切る決意のもと、改革への姿勢を具体的な形で示さなければなりません。
 私たちは、まず、衆参両院の定員をそれぞれ二〇%削減すること、選挙年齢の十八歳への引き下げ、海外在住日本人への参政権の付与、比例と小選挙区という異なった制度双方に立候補できる重複立候補制度の見直し、参議院の改革、国会答弁における政府委員制度の廃止と副大臣制度の導入などの国会改革を直ちに進めることを再び提言いたしますが、総理のこれらに対する見解をお伺いいたします。
 今日の政治、行政を見るに、まことに憂慮すべき不祥事が相次ぎ、国民の政治、行政に対する信頼を損なっていることは、転換期のこのときであるだけに、ゆゆしきことであります。
 不正な株取引による不当な利益を得ていたという自民党の新井将敬氏の疑惑は現実のものとなり、現職の国会議員に逮捕状が出され、国会へ逮捕許諾請求が行われるというまことに憂慮する事態を迎えております。新井氏みずから進退を明らかにし、国会議員の職を辞するべきであります。今回の事態に対する総理の見解を伺いたいと思います。
 さらに、昨年来の国会の場で懸案になった泉井疑惑に関する自民党政調会長山崎拓氏に対する疑惑は何一つ解明されておりません。この疑惑を晴らすためには証人喚問をし、国民の政治に対する信頼回復を図ることは国会の責務であろうと考えます。
 また、金融財政運営の責任を負う大蔵省から逮捕者まで出したことは、大蔵省が金融財政にわたる強大な権限と裁量権を持つことに起因しているからにほかなりません。このような構造をつくり上げ、放置してきた責任は政治にあり、大臣の経験を持つ私も責任があります。特に、長く政権の座にあった自民党の責任こそ重大であります。国会において、この機会に十分に時間をかけ、大蔵省を初めとする政官財の癒着構造とシステムを徹底的に解明し、政治と行政に信頼を取り戻すことが日本の再生にとってどうしても必要なことであると信じます。(拍手)
 また、今回の一連の不祥事を受け大蔵大臣が辞任しましたが、大蔵大臣一人の辞任ですべてが済まされるわけではなく、我が国の行政をよみがえらせる覚悟で取り組むべき課題であろうと考えます。そうでないと多くの善良な職員も世論の批判に自信を失い萎縮してしまうことになり、ひいては行革の足を引っ張ることになってしまうことを憂います。総理の御見解及び決意を伺いたいと思います。
 一連の不祥事の構造は何も大蔵省に限ったことではなく、構造的な官僚の強大な権限から発した事件であります。平成八年に厚生省の岡光事務次官の事件が発生した際、公務員倫理法の制定の動きがあったにもかかわらず政府はあいまいにしてまいりました。今回ようやく政府は重い腰を上げて倫理法の策定に動き出しておりますが、二度と不祥事を起こさせないためにも、早急に法によって責任を問う公務員倫理法の成立を願うものであります。総理の見解を伺います。
 今日の日本経済は、金融システム不安と不況により大変深刻な状態にあります。日本発による世界規模の経済混乱の危険性が高まっております。言うまでもなく、この危機をもたらした原因は、橋本内閣が景気に対する見通しを誤り、適切な経済金融政策を講じなかったことによるもので、まさしく政策不況であると言えます。
 橋本内閣は、消費税の五%へのアップ、特別減税の打ち切り、さらに医療費の負担増により国民に約九兆円にも及ぶ負担を強い、空前の超低金利政策の継続によって預金者の得べかりし利息収入を奪い、加えてデフレ型の平成九年度予算を強行してまいりました。その結果、国民消費は完全に冷え込み、平成九年度の経済成長はほぼゼロ成長に近く、失業や倒産が増加し、企業も国民も、すべてが未来に不安を持ちながら日々の生活を送っています。発熱した患者を冷凍庫にほうり込むような内閣のこうした経済運営に対し、国民の不信は極限に達しておるということは言えましょう。
 私は、明らかに橋本内閣の失政によって今日の先の見えない平成不況がもたらされたと思うのであります。総理、御自身が行われた経済運営が誤りであったと正直にお認めになり、政策転換を明言することが最大の景気対策であります。総理の御答弁をお願いいたします。
 二月の月例経済報告において、政府は、景気判断を「足踏み」から「停滞」に後退させました。ようやく政府の景気判断が実体経済に少し追いついたと言えますが、既に景気は停滞から後退の局面に来ているのが実態であります。景気の悪化がだれの目にも明らかになった今でも、後退に目を背け、停滞と口を濁しています。政府が発表する月例経済報告に対して、国民はもうだれも信用しておりません。なぜ政府は景気が後退局面にあることを認めようとしないのか、総理の明快な答弁をお願いいたします。
 昨年の臨時国会で成立した財政構造改革法では、二〇〇三年度に赤字国債の発行をゼロにすることを目標に、毎年度の赤字国債発行額を前年度より減らすよう義務づけています。我々は、この条項が、今日の経済状況にあって機動的な財政運営を困難にすると再三にわたり主張してまいりました。我々の主張に反した結果、不況の深刻化をしり目に財政面で有効な手だても打てない現在のジレンマをもたらしているのであります。政府は、構造改革法の欠陥を国民の前に認め、財政構造改革法を改正し、総合的な経済金融対策を打ち出すべきであります。もちろん、財政構造改革や財政再建の必要性を否定するものではなく、財政再建と景気対策を両立させるものであると考えます。総理、大蔵大臣の明快な答弁をお願いいたします。
 総理、あなたは、財政再建を果たすため赤字国債による特別減税は行わないと再三、繰り返し発言されながら、突如、昨年十二月十七日に二兆円の特別減税を打ち出されました。いかにもあたふたした対応は、不信を生むばかりであります。しかもこの日の朝、与党三党合意により、減税を行わない旨、自民党幹部がテレビを通じて発言されたばかりでありました。こうした朝令暮改の典型とも言える対応は、内外の信頼をますます損なうものであります。
 今に至っての二兆円程度の、しかも特別減税の復活であります。本当に景気刺激効果があるのでありましょうか。また、なぜ今回に限って、いつも言われる税調の議を経ず、与党三党との相談もなく決断されたのでありますか。他国からの強い要望があったと言われますが、真実をお話しください。
 政府は、具体的な景気刺激効果対策として、二兆円の特別減税に加えて、我々が主張いたします所得税、住民税の三兆円の恒久減税、有価証券取引税、取引所税の廃止、土地住宅等の政策減税により、総額六兆円規模の減税を実施すべきであります。現在の消費の落ち込みが、増税や医療費負担増、そして利子収入の減によって家計から購買力を奪ったことを考えれば、消費者心理を明るくする大幅減税こそが景気対策の柱であります。アジアの経済不調と貿易収支黒字の現状からも、何といっても内需拡大を図ることが求められており、内需主導による景気回復を進めるべきであります。
 また、この機会に、日本人のライフスタイルを変え、ゆとりある生活実現のためにセカンドハウス取得を積極的に推進するべきであると考えます。これにより、GDPを三%以上押し上げる効果があるとも言われております。
 以上、総理の御見解を伺います。
 現在、国民は、政府も金融機関も信じることができず、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズといった外国の格付機関の方を信用するようになっております。格付に従って預金の預け先を変えています。
 また、郵便貯金の残高が、昨年の十二月だけで三兆三千四百十六億円も増加しています。年末年始の資金需要の旺盛な十二月にこのような状態でありました。一カ月の純増額としては過去最大であり、昨年の年間純増額が五兆九千六百五十五億円であることを考えると、その半分以上が十二月に集中したのであります。これは明らかに異常なことであります。
 しかも、たんす預金はふえるばかりで、金庫が飛ぶように売れておるということも聞きます。また、銀行から引き出したお金をその銀行の貸し金庫に入れるという、ブラックユーモアと言えるような現象さえ起こっているのであります。まさに、有効にお金が使われておらず、金融恐慌に近い経済の症状と判断することができます。総理、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
 平成十年度予算案は、予算の削減は実施しているものの、体質改革のための抜本的新制度の導入などについては目新しい内容はなく、財政構造改革、そして景気対策のいずれの要請にもこたえられない予算編成となっています。政策の優先順位がはっきりせず、効率的な資源配分は看板倒れで、依然として既得権益に切り込んでいません。構造改革元年の予算とはとても言えないものであります。
 そのような中にあって、平成十年度予算案の審議が始まる前から、与党の重要幹部である野中自民党幹事長代理から、平成十年度予算成立後、六兆円規模の大型補正予算を組むという発言があったことは、既に与党が平成十年度予算の不備を認めたことを意味しております。
 この発言によると、その財源は、二〇〇〇年ごろに満期を迎える大量の定期郵便貯金の金利課税を見込むということのようでありますが、数年先にあるかもしれない税収を当てにするのでは、単なる先食いでしかありません。
 また、他の幹部からも同様の声が聞こえ、さきの予算委員会でも、一月の額賀官房副長官、尾身経済企画庁長官の訪米で追加措置を約束してきたのではという追及に、総理初め各閣僚は否定していますが、本当に追加措置はやらないのでありますか。我々の主張する大型減税を含む予算の修正をしてでも、ぜひとも追加措置を行うべきであると考えますが、総理の見解を伺いたい。
 また、補正予算はあくまでも財政法二十九条に基づくものであり、野中発言は予算制度の根幹に反するものであります。それに加えまして、政府・与党の進めてきた経済失政と責任をあいまいにし、政策転換を既定の方針としようとするなし崩しの意図が見え隠れしております。
 今一番大切なのは、正直なこと、政策転換を明言することでありまして、それによって株価の回復がされるならば、金融機関の安定回復にも寄与し、政治への信頼を取り戻すことにつながると信じますが、総理の見解を承りたい。
 今日の日本経済の最大の課題は、今、日本を覆っている金融不安を早急に退治し、日本経済に対する世界のコンフィデンス、信認を回復することであります。
 昨年からの大型の金融破綻は、金融市場がいかに危機的状況に直面しているかを示しております。四月の早期是正措置の発動を前にした銀行の貸し渋り、資金回収は健全な企業まで経営危機に追いやっております。
 しかもこの金融システム不安は、アジアの通貨・金融危機と連動しています。アジア市場で約三分の一の融資額を持つ日本の銀行が資金回収を急げば、アジアの危機は加速し、日本経済の足をさらに引っ張ることになります。こうした中で、日本が金融安定化に取り組むのは国際的な責務であると考えます。総理、大蔵大臣はその覚悟と自覚をお持ちなのでありましょうか。
 三十兆円の公的資金の投入を柱とする金融システム安定化に関する二法において、十三兆円が金融機関の自己資本増強に充てられますが、その内容には数々の問題があります。
 まず、資本注入には透明な原則が必要であります。大蔵大臣、日銀総裁、金融監督官、民間有識者などによる審査委員会で厳正に審査するとしていますが、基準があいまいであり、従来の護送船団方式の裁量行政に陥るおそれが少なくありません。
 また、資本注入により、優良行は、今後、預金を受け入れて融資する伝統的な銀行業務からの脱却を図り、証券分野などへの参入をねらっており、融資の増加には慎重と見られています。逆に、経営の悪いところは、不良債権の償却に回すため貸し出しは必ずしもふえないという見方があり、どれだけの貸し渋り解消が期待できるのか、甚だ疑問と言わざるを得ません。
 さらに、原価法の容認や早期是正措置の猶予は、緊急避難とはいえ、国際基準との適合や競争促進を旗印にした日本版ビッグバンに逆行するものであると考えます。これらの点について、大蔵大臣の見解を伺います。
 速やかに強力な権限を持つ公的な債権回収機関、日本版のRTCを設立し、回収機関に公的資金を導入すると同時に、経営者、借り手の責任を追及する枠組みをつくるべきであります。
 また、これだけの公的資金、つまり国民の血税をつぎ込む以上、他産業に比べて高い賃金の是正を含むリストラ策を行い、公的資金を引き揚げた後でも健全な金融機関としてやっていける道筋をつける必要があると考えますが、大蔵大臣の見解を伺いたい。
 金融機関は、速やかに個別の自己査定結果を公表すべきであります。自己査定結果の公表を渋ることは、経営実態への不信を拡大することにつながります。金融機関に対する不信感を払拭するためにも、公表に踏み切るのが金融システムの再構築の近道であると考えますが、大蔵大臣の見解を伺います。
 先ごろ、大蔵省の榊原英資財務官が訪米した際、十九行、都銀、長信銀、信託銀はつぶさないと説明する一方で、橋本総理は、国会の場におきまして、破綻するしかない金融機関は破綻させると明言されました。この二つの発言は、外向けにはすべてを守るようなことを言い、内向きには銀行救済ではないという言い逃れに聞こえております。総理、どちらの発言が政府としての立場なのか、これも明確な答弁を願います。
 民間のシンクタンクの試算によると、一九九五年から三年間で、国民の得るべき利子所得が十三兆円減少したという結果が出ております。十三兆円もの利子所得の減少は、政府の公定歩合〇・五%という超低金利政策によるものであります。世界でもまれな超低金利にもかかわらず、企業の投資は拡大せず、個人の可処分所得は確実に減少しております。その反面、国民の得るべき金利収入が金融機関の不良債権処理に注ぎ込まれてまいりました。明らかに政府の現在の政策は、一般国民からの富の吸い上げ以外の何物でもありません。
 政府は、金融機関の不良債権の処理については順調に進んでおり、平成九年三月には二十八兆円まで減少したと発表しました。しかし、今回、政府が行う金融安定化策を前に発表された金融機関の自己査定による不良債権総額は七十六兆円にも達しております。低金利政策により国民に犠牲を強いているにもかかわらず、一向に不良債権の処理が進んでいないというのは、金融機関の国民に対する裏切りであります。政府・大蔵省も現在の不良債権を知っていたはずであり、この状態を放置していた政府・大蔵省の責任は重大であると言えます。総理及び大蔵大臣の明確な答弁を願います。
 一九九六年の都市銀行、長期信用銀行、信託銀行の主要二十一行は、約五兆円に上る過去最高の業務純益を上げたにもかかわらず、不良債権の処理という名をかりて無税償却を行った結果、法人税、住民税はわずか四千八百十一億円しか支払われておりません。これは、明らかに不良債権償却の無税扱いが形を変えた金融機関への補助金となっていることを意味しております。
 そういう中で、自民党に対しては、依然として借金返済という名のもとに多額の政治献金が事実上行われております。銀行業界は、当然のことながら政治献金は見合わせるべきであります。自民党は、銀行業界からの献金は断るべきであります。
 総理、また自民党総裁としての率直な御答弁を願います。
 行政改革の最終報告は、迷走の末、昨年十二月三日にまとまりました。各省庁の権益を守ろうとする激しい抵抗に遭って、その内容は中途半端で全く不十分なものとなりました。「行政改革の理念と目標」として、「肥大化し硬直化した政府組織を改革し、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素・効率的・透明な政府を実現する。」と言われたことは言葉だけに終わりかねないと危惧せざるを得ません。
 総理に改めて行革について伺います。
 第一に、中央省庁を現行の二十二から一府十二省庁に再編するとしておりますが、機構いじりだけで、スリム化、簡素化が明確になっておりません。このままでの省庁再編は、むしろ中央集権を進めることになり、世界の潮流、時代の要請に逆行するおそれすらあります。
 第二に、中央省庁再編基本法案では独立行政法人の対象が示されておらず、今後に持ち越されております。
 第三に、地方分権についての具体的な内容が極めて不十分であります。さきの臨時国会の代表質問でも申し上げたとおり、まず国と地方の役割を明確にすることによって必然的な省庁の再編を行うべきで、国の形を変えるという分権こそが行革の基本となるべきであります。
 第四に、権限や財源をどう地方に分権するのか具体策を示していただきたい。また、新年度予算では補助金がほとんど削減されておりませんが、補助金行政を本気で改善するつもりがおありでありましょうか。
 第五に、新しい国土交通省は政府の公共事業を一手に握る大利権官庁になり、政官業の癒着構造が温存されかねません。公共事業についても地方にゆだねるべきであります。
 第六に、大蔵省の金融、財政、国税の分離であります。
 第七に、行政の透明性について情報公開制度は欠かすことができません。我々も法案提出を準備しておりますが、今国会でぜひとも成立させるべきであると考えます。
 以上の点について、総理の具体的な方針及び見解を伺いたい。
 ガイドライン、沖縄問題、イラク情勢についてお伺いします。
 政府は、昨年九月の新ガイドライン、すなわち新たな日米防衛協力のための指針の最終報告を受けて、関連法案整備に着手し、本国会に法案の提出に向けた準備をされていると伺いますが、法案策定作業の中間報告では、周辺事態を想定した対米支援基本法による一括処理、有事版の日米物品役務相互協定の締結などによる個別立法の二案を示し、いずれの法案を選択するかは高度な政治判断が必要として、橋本総理の判断にゆだねられているとお聞きしております。総理自身はどちらを選択されるのか、また、いつごろ国会に法案が出されるのか、この点についてお聞きしたいと思います。
 二月六日、沖縄県の大田知事は、普天間飛行場の返還に伴う代替措置として、海上ヘリポート設置に反対することを表明されました。これによって、普天間の返還問題は事実上白紙に戻ったことになります。しかし、今回の名護市長選挙では岸本氏が僅差とはいえ当選したことは、名護市民が海上ヘリポート建設を必ずしも全面的に否定しているわけではないことを示しています。私は、現時点において、普天間飛行場の移転実現のためには、名護沖にこだわらず、海上ヘリポート建設が唯一の解決策であると考えます。
 平成八年四月十二日に普天間飛行場の返還が日米で合意され、橋本総理はその成果を誇らしげに胸を張って示されたのであります。しかし、このまま日本国内の調整がつかなければ、米国の普天間飛行場返還という決断も意味を持たなくなってしまいます。橋本総理の指導力を問う声が、国内はもとより米国からも既に出されておるのであります。
 総理は、普天間飛行場返還をどうされるのか、また、沖縄が現在の海上基地計画を受け入れられないのならば、代案があるのか。大田知事の考えを橋本総理は率直に聞けるぐらいの信頼関係をいま一度構築すべきであると考えます。日米安全保障条約の円滑な運用のためには沖縄県民の理解と協力が不可欠であり、大田知事の態度に反発しているだけでは何も問題の解決にはつながらないと考えます。総理の明快な答弁をお願いします。
 沖縄基地問題と振興策については、はっきりと切り離して議論すべきであります。代替ヘリポート基地建設と振興策を絡めるのは筋違いであり、過去の歴史に思いをいたすとともに、本土に比べて大幅におくれている沖縄の産業基盤を整備するため、特別自由貿易地域制度の創設や、思い切った財政支援なども講じることは緊急の課題であろうと考えます。
 イラク情勢について伺います。
 アメリカは、イラクが国連による大量破壊兵器査察を全面的に受け入れない限り、武力行使に踏み切る構えを見せておりますが、もし実際にアメリカが武力行使に踏み切った場合、日本政府として具体的にどのような対応を考えておられるのか。また、現在、日本政府としては、イラク問題解決のために、七年前の湾岸危機の教訓からも、どのような外交努力を行っておられるのか、総理の見解を伺いたいと思います。
 終わりに、日本は今重大な歴史的な岐路に立っております。ここ数年のかじ取り次第で、二十一世紀の日本が、まさに質の高い国になるのか、あるいは衰退の道をたどるのか、これが決まると言っても過言ではありません。今政治に求められているのは、今日の危機的状況を正しく分析し、機敏に決断、対応するリーダーシップを持った政治の復権であります。確固たる国家目標と、それを実現するために国民の理解を得、国民に安心と希望を持てる政策を実行していくことこそ我々政治家の使命であろうと考えます。
 しかるに、橋本内閣は、国民に安心と希望を与えるどころか、失望と不安を与えておるのみで、むしろ国民の深い憤りと不信感が高まっております。内閣の支持率は低下の一途をたどり、あなたが退陣することが日本の国を救う唯一の手段であるとまで言われております。みずからの御進退も含めて、総理の率直な見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 羽田議員にお答えを申し上げます。
 まず、財政構造改革に関する政策転換に関して、政府の見解を示せというお尋ねをいただきました。
 政府としては、財政構造改革の必要性は何ら変わるものではなく、同時に、経済金融情勢の変化に機敏に対応し、国際状況に応じて財政金融制度等の必要な措置を講じていく、税制等の必要な措置を講じていくことは当然のことだと考えております。いずれにせよ、両者は二者択一の問題ではなく、二〇〇三年までの中期的な目標と当面の対応という、タイムスパンの異なる問題であります。
 次に、政治改革への取り組み姿勢についてお尋ねがございました。
 政治改革につきましては、幅広い内容を持つものであり、これまでの改革にとどまらず、さらなる改革を引き続き推進していくことは、重要な課題であると思います。
 御承知のとおり、小選挙区比例代表並立制は、長期間にわたる政治改革の御論議の中から、選挙や政治活動を従来の個人中心の仕組みから、政党本位、政党中心の仕組みに転換することを目指して導入されたものであり、今後とも各党において改革の趣旨が十分生かされるよう努めていただくことが肝要であると思います。また、そのような観点から論議を深めることも重要なことだと考えております。
 また、政治家個人の倫理問題につきましては、昨年九月三十日の政治倫理等に関する三党確認に基づいて与党政治改革協議会が設置をされ、現在も引き続き鋭意検討を続けており、そこの議論を見守っていきたいと思います。
 また、政治改革について種々の御提言がございました。
 まず、衆参両院議員の定数削減あるいは重複立候補制度の見直しにつきましては、一昨年十月の与党三党の政策合意におきまして、議員定数の削減を前提とし、民意がよりよく国政に反映されるよう、早急に選挙制度の見直しを開始することとされており、与党三党の選挙制度協議会を中心にその検討を行っているところであります。
 次に、選挙権年齢の引き下げにつきましては、民法上の成人年齢や刑事法での取り扱いなど、法律体系全般との関連も十分考慮しながら検討しなければならないと思います。
 また、在外選挙につきましては、昨年の通常国会に在外選挙法案を御提案申し上げたところでありますが、当時、新進、太陽両党からも法案が提出され、両案とも今国会に継続審査とされているところと承知しており、今国会において御審議の上、早急に法律が成立するよう念願をいたしております。
 また、新井議員の逮捕許諾請求についてお触れになりました。
 本日、内閣は、東京地方裁判所裁判官から提出されました逮捕許諾請求要求書を受理した後、持ち回り閣議を経た上、先刻、衆議院に逮捕許諾を請求いたしました。今後、所定の手続を経た上、速やかに逮捕の許諾についての判断がなされることを期待いたしております。
 なお、新井議員に対しましては、党として、一度ならず事実上の離党勧告を行うなど、党としての考えは伝えているところであります。職を辞すかどうかについては議員個人の判断を待ちたいと思います。
 いずれにせよ、事実は司法の手によって明らかにされるものと考えております。
 次に、参議院の改革については、国会において各党各会派で御論議いただくべきことであると思います。
 さらに、政府委員制度の廃止につきましては、政府委員は、国会法に基づき、国務大臣を補佐する目的で両院議長の承認を得て任命しているものであり、現在の委員会の審査方式を前提とすれば、ある程度の任命はやむを得ないと認識しております。
 委員会審査を議員同士の討論方式に改めるという国会改革の問題については、各党各会派間で十分御議論をいただきたいと思います。
 また、副大臣制度の導入については、立法府と行政府との関係、政治と行政との関係、行政の中立性の要請などに十分留意しながら、慎重に検討されるべきものだと考えておりますが、これまでも、大臣を補佐する政務次官制度をより積極的に活用する観点から、閣僚経験を持つ方を政務次官に就任願うなどの取り組みも行っているところでありますが、さらに、政務次官を重要政策の決定過程に一層深く参画してもらうべく工夫するよう、各閣僚に指示しているところであります。
 以上、議員から政治改革について多くの御提案をいただきましたが、各党各会派で十分御論議をいただき、その結果を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
 次に、大蔵省を初めとする政官財の癒着構造とシステムを徹底的に解明し、政治と行政に自信を取り戻すことが必要ではないかというお尋ねをいただきました。
 公務員や特殊法人の役員の不祥事が相次いだことについては、厳粛に受けとめており、遺憾と申し上げる以外にない思いであります。
 これらの事件は、基本的には、まず当人の倫理観の欠如によるものでありますが、大蔵省として、今回の事件を深く反省し、綱紀の保持に努めることはもちろんのこととして、金融行政を明確なルールに沿った透明性の高いものに転換するなどの大改革が必要であります。職員一同、自覚を新たにし、一丸となって、国民に対する信頼の回復のために、松永大臣の指揮のもとに大蔵改革に取り組んでいかなければならないと考えております。
 私としても、皆様の御協力も賜りながら、行政の信頼回復に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 次に、公務員倫理法制定についてのお尋ねもございました。
 こうした状況の中で、公務員倫理法を制定しなければならないと判断をいたすに至りましたこと、まことに残念であり、遺憾であります。こうした状況の中で、先般、政府部内に公務員倫理問題に関する検討委員会を設け、いわゆる公務員倫理法の制定を期して鋭意検討を行っております。同じく本問題を検討しておられる与党三党とも連携して、早急に作業を進めてまいりたいと考えております。
 次に、経済運営について御指摘をいただきました。
 政府としては、既に実施している緊急経済対策、特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な執行に努めることとしており、こうした取り組みのすべてが相乗効果を持って、我が国の経済の力強い回復に寄与するものと考えております。今後とも責任を持って、適切な経済運営に努めてまいります。
 次に、景気の現状認識について御質問がございました。
 我が国では、昨年秋、北海道拓殖銀行など大手の金融機関が相次いで破綻をいたしました。これらの金融機関は、バブル当時安易な貸し付けを行うなど、それぞれに原因がありますが、こうした中で、金融システムに対する信頼感が低下し、また、貸し渋りと言われるように、資産を圧縮する動きも見られます。こうした状況のもとで、不安感をお持ちになる方々が消費に消極的になられたり、あるいは、企業によっては十分な資金を得られず、思うように事業の展開ができないといった現象があります。
 また、アジアでは、昨夏以降、幾つかの国で通貨・金融市場に大きな変動が生じ、その中で、各国それぞれに状況は異なるものの、経済状況が予想以上に深刻なものとなりました。
 こうしたことなどから、我が国の経済全般を見ましたときに、家計や企業の景況感の厳しさが個人消費や設備投資に影響を及ぼし、景気はこのところ停滞し、厳しい状況にあると認識をいたしております。
 次に、財政構造改革法と経済金融対策についてのお尋ねがございました。
 財政構造改革は、議員もお認めをいただきましたように、その必要性は何ら変わるものではありません。同時に、経済金融情勢の変化に応じて臨機応変の措置を講じ、景気の回復を図ることも当然であり、財政構造改革と景気対策は二者択一の問題ではございません。
 今般、関連法案を成立させていただきました特別減税、金融システム安定化対策を初めとする財政、金融両面にわたる幅広い措置は、こうした考え方のもと、強い対応を図ろうとするものでありまして、こうしたさまざまな取り組みのすべてが相乗効果を持って、我が国経済の力強い回復に寄与すると考えております。
 今回の特別減税についてもお尋ねがございました。なぜ税調の議を経ず、与党三党と何の相談もなく決断したのかという御指摘であります。
 私は、繰り返して申し上げるようですが、経済の実態や金融システムの状況などを考えながら臨機応変の措置をとることは、当然の責任だと思います。その上で、私は、アジア経済の状況も踏まえ、日本発の経済恐慌は決して起こさないという決意のもとに、国民の不安感を払拭することこそが国政を預かる者としての責務と考え、二兆円規模の特別減税を決断いたしました。
 また、総額六兆円規模の減税についての御意見をいただきました。
 これは、後世代への負担の先送りである特例公債の大量発行を伴う、そうした問題点もございます。また、我が国の租税負担率が欧州諸国に比してかなり低い水準にある中で、税負担のあり方としても問題があると思います。
 次に、大型減税を柱として、内需主導の景気回復を進めるべきであるという御指摘をいただきました。
 今申し上げてまいりましたようなさまざまな施策を、既に御承認をいただきましたものを含め、早急かつ的確な執行に努めてまいります。こうした取り組みは、例えば消費には金融システムの状況が影響しておりますし、減税も、金融システム安定化策による信頼回復と相まってより大きな効果をもたらし、我が国経済の内需主導の力強い回復に寄与するものと思います。
 また、セカンドハウスの取得を積極的に推進すべきではないかとの御意見をいただきました。
 豊かな住生活を実現するために、多様な住宅の選択の機会を提供することは重要であると考えており、先般の政府の緊急経済対策の一環として、セカンドハウスに対する融資を地域要件を設けずに実施するなど、住宅金融公庫融資の拡充を図っております。
 次に、我が国金融の現状についてお尋ねがありました。
 昨年秋以降、株価の低迷する中、金融機関の経営破綻が相次いで生じたことなどから、我が国金融システムに対する内外からの信頼はかつてないほど低下いたしました。こうした金融の危機的状況に対処し、我が国金融システムの安定を断固として図るために、政府としては、さきに成立をさせていただきました金融安定化二法などにより、預金者保護の徹底と金融システムの安定性の確保に万全を期してまいります。
 次に、十年度予算についての御指摘がございました。
 十年度予算は、九年度補正予算とともに、財政構造改革の推進と当面のアジアを初めとする内外の厳しい経済金融情勢に臨機応変に対応するというタイムスパンの異なる二つの課題にこたえるべく編成したものであります。
 また、先般成立した財政構造改革法におきましては、公共事業関係費や社会保障関係費など主要な経費ごとに、その性質に応じ、めり張りのきいた量的縮減目標を設定するとともに、歳出の中身についても各種の制度改革の検討を義務づけております。十年度予算におきましても、この法律に従って縮減目標を達成するとともに、歳出の中身について、公共事業の再評価システムの導入など各般の制度改革を含めた徹底的な見直しを行うなどにより、財政構造改革のさらなる第一歩を踏み出すことができたと考えております。
 予算の修正をしてでも追加措置を行うべきではないかという御指摘もございました。
 先般、平成九年度補正予算並びに予算関連法案を成立させていただいたところであり、今月からの給与所得者などに対する特別減税の実施に加え、災害復旧事業等公共事業の追加などについても鋭意執行に努めております。これらに加えて、平成十年度税制改正や金融システム安定化策など、財政、金融両面にわたる幅広い措置と相乗効果を持って、我が国経済の力強い回復に寄与するものと考えております。
 政府としては、引き続き、こうした諸施策を盛り込んだ十年度予算や予算関連法案を早期に成立させていただき、早期に実施に移すことこそが今何よりも必要と考えておりまして、これらの一日も早い成立に向けて、何とぞ御理解を賜りたいと考えております。
 政策転換を明言すべきと、繰り返しの御指摘がありましたが、先ほどお答えを申し上げましたように、財政構造改革の必要性は何ら変わっておりませんし、同時に、経済金融情勢の変化に応じ、金融あるいは国際的な状況の中で臨機応変の措置を講じ景気の回復を図ることも当然であり、先ほど来申し上げておりますような施策が組み合わせられ、相乗効果を持って効果を発揮していくものと考えております。
 次に、金融安定化への取り組みは国際的な責務ではないかとのお尋ねがありました。
 金融のグローバル化が進展する中において、我が国経済の根幹である金融システムの安定性を確保し、世界じゅうのマーケットの安定に貢献していくことは、政府に課せられた重要な責務であります。こうした認識のもとに、金融安定化二法などの措置により、預金者保護の徹底と金融システムの安定性確保に万全を期してまいります。
 また、金融機関の破綻処理について政府の立場についてのお尋ねがございました。
 政府としては、自己責任原則のもとに、本来破綻すべき金融機関についてはこれを救済することなく破綻させるとともに、その場合には、預金者の保護に万全を期すなど、信用秩序の維持を図ることを基本とし、適切な処理を行ってきているところであります。また、国際的に活発に活動している銀行については、その金融機能が損なわれ、内外の金融システムに大きな動揺が生ずることのないよう対処する旨述べてまいりました。
 いずれにせよ、政府としては、預金者保護の徹底を図るとともに、金融機能の維持に努めて、我が国金融システムの安定性確保に万全を期してまいります。
 また、金融機関の不良債権処理及び政府・大蔵省の責任について御意見をいただきました。
 金融機関の不良債権処理につきましては、現在、各金融機関は、経営合理化等により債権償却特別勘定への積極的な引き当てなどを行っており、個々の経営状況はさまざまでありますが、全体としては不良債権の早期処理のための努力が進められているものと思います。政府としては、引き続き金融機関に対し、最大限の自助努力により不良債権の早期処理を進めるよう促すとともに、預金者保護と金融システムの安定性確保に万全を期してまいります。
 銀行からの政治献金についてもお尋ねがございました。
 政治資金規正法においては、政治活動に関する寄附につき、特定の分野を対象とした規制は定めておりませんが、自由民主党は、金融システムの安定のために公的資金が投入されることにかんがみ、過去における借入金の返済に充当するものを除き、銀行業界からの政治献金を改めて自粛することといたしました。
 次に、行政改革について幾つかのお尋ねがございました。
 まず、省庁再編についてのお尋ねでありますが、今回の改革は、簡素で効率的な行政、機動的で効果的な政策遂行を実現するために、規制緩和や地方分権、官民分担を徹底し、国の権限と仕事の減量を進めた上で、二十一世紀において国家が担うべき機能、課題に的確に対応すべく省庁の再編を行おうとするものであります。
 次に、独立行政法人についてお尋ねがありました。
 基本法案では、改革を実施するために必要な基本的事項を定めてまいります。独立行政法人については、制度を設計する上での基本となる事項を規定しております。独立行政法人の対象などについては、法案の成立後設置される中央省庁等改革推進本部において検討されるものと考えます。
 また、地方分権につきましては、地方分権推進委員会の四次にわたる勧告を最大限尊重し、今国会中に政府の推進計画を作成し、確実に実施をいたします。権限や財源の地方への移譲については、機関委任事務を廃止し、また、都市計画の決定権限や農地転用の許可権限など、都道府県、市町村への権限移譲を推進いたしますとともに、国と地方の役割分担の見直しや、補助金などの整理合理化などに応じた地方税財源の充実確保を図ってまいります。さらに、地方への一層の事務権限の移譲などについても引き続き取り組んでまいります。
 また、補助金行政についてのお尋ねがございました。
 平成十年度予算におきましては、補助金等につきまして、対前年度千三百四十一億円減の十九兆六千五百一億円、昭和六十二年度以降十一年ぶりに削減を達成いたしました。
 次に、国土交通省について御意見をいただきましたが、国土交通省の設置に当たっては、行政改革が真に実を上げるためにも、地方分権の一層の推進、地方支分部局への権限委譲、民間委託の推進、さらには徹底的な規制緩和などにより、減量、効率化を図ることが重要だと考えております。
 次に、大蔵省の金融、財政、国税についての御意見をいただきました。
 財政と金融の分離の問題については、先般与党間で議論が尽くされ、その結果として合意が取りまとめられたところであります。また、国税庁については、行政改革会議最終報告において、財務省の外局と位置づけられるとともに、徴税の中立性、公正性の確保を図る観点から、税制の簡素化等の指摘がなされたところであります。政府としては、これら与党合意並びに行政改革会議最終報告の内容を忠実に盛り込んだ中央省庁等改革基本法を取りまとめ、国会に提出をさせていただいたところであります。
 次に、情報公開法案についての御意見をいただきました。
 この法律の制定は、主権者である国民の皆様に政策を評価し、吟味していただき、政治と行政への関心を高めていただくために極めて重要であると考えております。平成九年度内に情報公開法案を国会に提出できるよう現在詰めの作業を行っております。
 次に、新ガイドラインに基づく法整備についてのお尋ねがございました。
 新指針の実効性の確保に関しましては、現在、政府部内で法的な側面も含め、鋭意検討を行っているところでありまして、可能な限り速やかにその検討作業を取り進め、所要の措置を講ずることが必要であると考えておりますが、現時点において、法整備の内容、法案の提出時期等について具体的に定まっている状況ではございません。
 次に、普天間飛行場の返還問題についての御意見をいただきました。
 普天間飛行場は市街地にあり、危険な状況をほうっておけないとの思いから米側と返還合意にこぎつけたものでありまして、その代替施設につきましては、現在における最良の選択肢として海上へリポート案を提示したものであります。今後とも大田知事を初め地元の御理解と御協力をいただけるよう粘り強く取り組んでまいります。
 沖縄振興策については、基地の整理、統合、縮小に対応して、依存型経済から自立型経済への移行を図ろうという大きな県の考え方を重く受けとめながら、鋭意取り組んでまいりました。今後とも、基地の整理、統合、縮小の進展を踏まえながら最大限の努力を払ってまいります。
 次に、イラク情勢についてお尋ねがございました。
 今、議員からいろいろな御指摘をいただきましたけれども、どのような態様で行われるか、これが進むかが明確でない段階において断定的なことを申し上げることは困難でありますが、イラクが関連安保理決議に対する明白な違反を再三繰り返している、関連決議で規定された湾岸戦争の停戦の前提条件が充足されない状況が現出されつつあると思われます。
 このような中にあり、我が国は、外交的解決が最善であるという考え方に基づいて、イラクに対する働きかけや関係国との緊密な協議を初めとして、種々の外交努力を行っております。
 なお、ニューヨーク時間十七日夕刻、アナン国連事務総長は、二十日からイラクを訪問することを発表されましたが、我が国としては、事務総長の外交努力を評価し、その成功を期待しております。
 最後に、政治の復権について述べられながら、私の責任、進退についての御批判をいただきました。今日抱えている状況を何としても打破し、ことしをあすに向けて自信を持つ年とすることにより、私の責任を果たしたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣松永光君登壇〕
#6
○国務大臣(松永光君) 羽田議員に御答弁申し上げます。
 財政構造改革法と経済金融対策についてのお尋ねでしたが、この点については総理から詳細に御答弁がありました。私も同じ考え方でありまして、財政構造改革と景気対策とは二者択一のものではないと考えております。
 こうした考え方で、二兆円の特別減税、金融システム安定化対策を初めとする、財政、金融両面にわたる幅広い措置をとったわけでございます。こうしたさまざまな取り組みのすべてが相乗効果を持って、我が国経済の強い回復をもたらすものと考えております。
 次に、我が国の金融の現状についてのお尋ねでございましたが、この点についても総理から御答弁がございました。
 大蔵省としては、先般成立した金融安定化二法により、預金者保護の徹底と我が国金融システムの安定性を確保し、内外からの信頼確保を図ってまいる所存でございます。
 アジアの通貨・金融危機の中で、日本の金融安定への取り組みは国際的な責務ではないかとのお尋ねでございます。
 これも総理から答弁がありましたとおり、我が国の金融システムに対する不安感によってアジアのマーケットに深刻な影響を及ぼすような事態を未然に防ぐことが政府に課せられた重大な責任であると認識しております。このため、金融機関の融資対応力を確保すべく、早期是正措置の弾力的な運用等を行うこととしております。今般成立した金融安定化二法により、預金の全額保護の徹底を図るとともに、我が国金融システムの安定性を確保してまいる決意でございます。
 次に、金融安定化策についてのお尋ねでございましたが、今回の自己資本充実策においては、優先株等の引き受けに関し、公正、中立な審査委員会が法律上の枠組みに従ってみずから定める審査基準に基づいて厳正に判断を行い、さらに、透明性を高めるため議事録等を公開することとしておりまして、行政裁量や護送船団行政には決して陥らないように手当てがなされておるわけでございます。また、今回の対策によって金融機関の自己資本比率が上昇し、それに見合った融資対応力の増大が図られるために、いわゆる貸し渋りの解消等にも効果があるものと考えておる次第でございます。
 次に、早期是正措置の運用の弾力化や株式の評価方法の変更についてのお尋ねでございましたが、早期是正措置については、金融機関の融資対応力を強化するため一年間の弾力的な運用を行うものでありまして、制度そのものの導入をおくらせるものではありません。また、株式の評価方法についても、銀行経営の安定の観点から、ディスクロージャーの強化を図りつつ、商法の一般原則に戻り、原価法との選択を認めることとしたものであります。
 したがって、いずれの措置も、金融システム改革を見据えつつ金融システムの安定に資する観点から行うものであり、金融システム改革に逆行しておるという御批判は当たらないものと考えます。
 いわゆる日本版RTCを設立すべしとの御指摘でございました。
 今般の法改正により、預金保険機構または整理回収銀行が行う債権の回収について、罰則つき財産調査権を認め徹底的な債権回収を図ることとしており、さらに、預金保険機構に検事総長経験者、日弁連会長経験者、高裁長官経験者、警察庁長官経験者等、以上四名のその道の専門家を特別顧問とする責任解明委員会を設置したところであります。これにより米国RTC同様の強力な債権回収と厳格な責任追及が可能になるものと考えております。
 金融機関のリストラに関するお尋ねがありました。
 金融機関の合理化努力が十分でないとの厳しい見方があることは、これは真摯に受けとめる必要があると考えております。大蔵省としては、各金融機関の状況に応じ、一層の合理化努力を行うよう強く促していくとともに、預金者や国民の理解が得られるよう、その実施状況についてもさらに積極的に開示していくことをあわせて促してまいりたいと考えております。
 金融機関は自己査定結果を公表すべきではないかとのお尋ねでございますが、大蔵省としては、内外の市場の信頼を回復するため、我が国金融機関の国際的レベルでの経営の透明性を確保することが重要であることから、この三月期から米国SEC基準並みに不良債権のディスクロージャーを拡充するよう、鋭意促しているところであります。
 一方、自己査定は金融機関の内部において行われる償却引き当てのための予備的作業であり、その結果の公表については、個別金融機関の経営判断にゆだねるべき問題であると考えております。
 最後に、金融機関の不良債権の処理と政府・大蔵省の責任についてのお尋ねでございますが、これについても総理から答弁がございました。
 まず、大蔵省がこれまで半年ごとに公表してきた金融機関の不良債権総額と自己査定結果の集計額については、基準のとらえ方に違いがありますから、数字を単純に比較することは適当でないと考えます。
 いずれにせよ、金融機関の不良債権処理については、金融機関による最大限の自助努力によることが基本であり、これまでもその早期処理を促してきたところでありますが、現に金融機関は経営合理化を行い、積極的に引き当てなどを行っており、個々の経営状況はさまざまですが、全体としては不良債権の早期処理への取り組みが進められてきており、改善しているものと認識いたしております。
 なお、公定歩合等の金融政策は日本銀行の所管事項であります。日本銀行においては、景気動向、金融市場の状況など内外の経済情勢を注視しつつ、適切な対応がなされるものと考えております。
 以上、答弁を申し上げました。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(伊藤宗一郎君) 加藤紘一君。
    〔加藤紘一君登壇〕
#8
○加藤紘一君 私は、自由民主党を代表し、さきに行われた総理の施政方針演説に対し、幾つかの質問をさせていただきたいと存じます。
 質問に当たっては、現在の国民に最も関心のある景気対策、財政再建問題、イラク問題など、幾つかの具体的なテーマにつきお聞きしたいと思いましたけれども、これらのすべてのテーマは、与党の幹事長として総理と責任を共有しているテーマであります。したがって、あえてここではお尋ねせず、それぞれの問題の背後にある基本理念や考え方につき重点的にお尋ねしたいと存じます。
 総理、あなたは今度の施政方針演説の冒頭、「将来の我が国を展望した上で、現在をいかなる時代と認識し、何を優先課題とすべきかを考え、」と時代認識について触れられました。
 時代認識は、あらゆるリーダーが常に心しなければならない組織運営の基本です。それは、地方自治体の長でも、企業の長でも、国境を越えて組織された団体の長でも事情は同じです。リーダーの的確な時代認識こそ、組織の構成員に信頼感を与え、指導者の自信を支える源泉になると言っても過言ではないでしょう。
 まして、世界第二の経済大国のかじ取りに責任を負う総理としては、常にその時代認識を内外に明らかにしておく必要があります。国の最高首脳が歴史認識を明示することによって、国民は自分たちのあすを思い描くことができます。近隣諸国を初め世界の人々も日本の進むべき方向を知って、日本との協調の方途を考えることができます。
 そこで、総理がこれまでに述べられた言葉も含め、改めて総理の歴史認識をお尋ねしたいと存じます。
 総理、あなたは六大改革について、明治維新、終戦後の諸改革に次ぐ第三の改革にしなければならないと述べたことがあります。
 この第三の改革論には、その後さまざまな期待やイメージがつけ加えられ、今やひとり歩きを始めた感さえあります。
 ある人は、一連の改革を、バブル経済を清算し再び高い経済成長率を取り戻すためのものととらえ、ある人は逆に、経済成長優先のシステムから環境や人間を優先するシステムへの転換ととらえています。また、ある人は、一層の国際化を進めることが改革の目的でなければならないと考え、ある人は逆に、日本らしさを取り戻すことに期待を寄せています。さらに、官僚主導のシステムから政治主導、国民主導のシステムへの転換の必要性を訴えている人もいます。
 総理の問題提起を受けて、国民が自分たちの直面している問題を長い歴史の中で考え直すことは決して悪いことではありません。むしろ、自由濶達な議論は、私たちがつくり上げてきた社会の成果として誇ってもいいのでしょう。ただ、イメージだけが先行して、勝手に描いた期待に反したからといって政治に失望するという事態が生じるならば、それは、別の意味で不幸なことと言わなければなりません。
 戦後、急激な発展を遂げた日本が、今、一種の閉塞状況に陥っていることを私も率直に認めます。戦後システムが至るところで制度疲労を起こしていることも、総理と認識を共有しています。だが、その改革は、戦後的発展をもう一度取り戻すといった消極的なものにとどまっていてはなりません。
 二十一世紀はもうカウントダウンに入っています。当然のことながら、総理の目指す一連の改革も、二十一世紀に向けた価値の創造を伴わなければなりません。
 そこで、総理には、六大改革の持つ二十一世紀的意味について、最初にお伺いしたいと思います。この改革の向こうに二十世紀とは違うどのような未来を描いておられるのか、お考えを率直にお述べください。
 私は、今日本で進められなければならないのは、「第三の自由・民主改革」と思っております。
 明治維新で私たちは封建制を卒業し、近代国家への歩みを始めました。国民には普通教育が義務教育として施され、国民の職業選択の自由は飛躍的に拡大しました。個人の権利に対する自覚も高まり、男性だけに限られていたとはいえ、昭和初期には普通選挙も実施されました。これを「第一の自由・民主改革」とするならば、戦後の改革は、まさに「第二の自由・民主改革」でした。女性にも参政権が認められ、基本的人権が幅広く認められるようになりました。
 明治維新から百三十年の発展は世界の奇跡と言われますが、その原動力の一つが、個人の権利拡大に基礎を置く「自由・民主改革」だったことに異論を差し挟む人は少ないでしょう。
 だが、二十一世紀に向け日本が一層発展し、国民一人一人が真の豊かさを実感できる社会をつくるには、総理のおっしゃる、自立した個人に信頼を置く、さらなる「自由・民主改革」が必要だと思います。
 例えば、総理が熱心に取り組んでおられる規制緩和も、これまでは専ら経済効果の面からのみ論じられてまいりました。しかし、これも「自由・民主改革」のさらなる発展として考えてみる必要があります。
 経済活動にさまざまな規制が加わった原因はいろいろありましたが、最も深い底流にあったのは、経済活動を市場原理にゆだねれば、不法行為が横行し、貧富の格差が広がるという市場原理に対する根強い不信感でした。
 それは、普通選挙を導入するとき論じられた民主主義の弊害論と極めてよく似ています。普通選挙を導入するとき、反対論者は、無知な国民に平等の一票を与えたら国の方向を誤るとか、扇動的な候補者の弁舌に引っ張られ、冷静に国政を論ずる気風が失われるなどと主張しました。そこには国民に対する抜きがたい不信感がありました。だが、先人たちは国民の英知を信頼し、あえて普通選挙に踏み切りました。
 民主主義のその後の発展を見ると、さまざまな試行錯誤はあったものの、社会の緊張は緩和し、国民の政治的関心が国家の暴走を防いだこともありました。政党や政治家は有権者の審判の前に襟を正し、国民の活発な議論が、国や社会の指針を創造し、国民的合意づくりに大きな成果を上げてきました。
 イギリスのチャーチル元首相は、民主主義にはさまざまな弊害があるが、それ以外の制度に比べればまだましだと述べたことが有名ですけれども、有権者の判断の総和に依拠して政治運営する民主主義は、今や人類共通の原理となろうとしております。
 市場原理も私はこれに似ていると思います。経済活動の多くを市場原理にゆだねることに対しては、今でもさまざまな弊害論が出ています。だが、この原理に信頼を置き、その機能を最大限生かすことが、結局、商品やサービスの価格を引き下げ、品質を向上させ、国民に利益をもたらすのではないでしょうか。市場原理は、個々の消費者の判断の総和に信頼を置くシステムです。それは、有権者の判断の総和に信頼を置く自由民主主義原理の新たな発展と考えるべきでしょう。
 もちろん、市場原理に信頼を置くことと規制を一切なくすることは同じではありません。むしろ、市場原理を健全に機能させるためにはさまざまな規制が必要になります。それは、民主主義の原理を健全に機能させるために、誤った情報を流す行為や買収、選挙妨害などを取り締まっているのと同じであります。民法、商法、独占禁止法、それに消費者保護の関連法を積極的に活用することで初めて市場原理は健全に機能するのです。
 要は、官僚の経済支配のための規制から、消費者が自由で公正な選択ができるようにするための規制へと、規制の立脚点を転換することが求められております。
 マーケットの自由・民主化を進める上で忘れてはならないのは、消費者に正しい情報を提供し、賢い選択ができるシステムをつくり上げることです。情報開示は自由で民主的な市場の基本です。透明性の高い市場で、消費者が主体的な選択ができて、初めて市場原理はよさを発揮できるのです。
 市場原理に基礎を置く経済社会への移行に当たり、もう一つ注意しなければならないのは国際金融市場の問題であります。
 アジアの諸国の多くは、昨年、国際資本の急激な逃避によって通貨危機に陥りました。ある国では、一カ月足らずの間に一年の国民総生産に相当する価値が消えたと言われています。このため、アジア諸国では国際金融資本に対する強い反発が出ています。しかし、経済のグローバル化がこのまま進展すれば、今後もこうした事態がしばしば起こることが予想されます。
 日本でも、外国為替法の改正によって四月から金融市場の規制が大幅に緩和されます。規制をできるだけなくし、経済活動を活発にするのは時代の要請です。しかし、日本に先立って金融緩和したイギリスでは、外国資本が次々と進出し、現在残っているイギリスの証券会社は一社だけだと言われています。この現象は、競技場はイギリスにあるが活躍するプレーヤーは外国勢が目立つウインブルドン・テニスに例えられていますけれども、日本でも急激な外国資本の進出に国民が拒絶反応を起こすおそれがあります。そうなれば市場原理そのものへの疑念が広がりかねません。
 国際的投資家で知られているアメリカのジョージ・ソロス氏は、昨年、アトランティック・マンスリー誌に寄せた論文の中で、今後さらにレッセフェール、自由放任型資本主義が野放し同然に増殖を続け、人間生活のすべての領域で市場原理という名の価値が幅をきかすようになったら、我々の住む開かれた民主的な社会は絶滅の危機に瀕するのではないかと警告しています。
 我が国は、石油、鉄鉱石、ボーキサイトなどエネルギーと原材料のほとんどを海外に頼り、食糧自率は四三%を割っています。多くの商品が海外に輸出され、世界最大の債権国になっています。一年間に千七百万近い人々が海外に出かけ、世界の資本市場の四〇%余りは日本資本が占めています。まさに日本は自由貿易体制の最大の受益者と言っていいでしょう。もし国際資本の横暴によって自由貿易体制に対する疑念が広がれば、最も打撃を受けるのは日本と言っていいでしょう。
 当然、市場原理を健全に機能させるための規制の問題は、一国だけではなく、国際的にも取り組みが求められています。一昨年、フランスのリヨンで開かれた先進国首脳会議のテーマは、国際化の光と影でした。ここで問題点は大いに議論されたと聞いていますが、大きな成果を上げなかったことは、昨年のアジア通貨危機を防げなかったことで見ても明らかです。
 経済の一層の自由化、民主化のためには、市場原理を活用することが必要です。しかし、民主主義が今日でも制度上の試行錯誤を重ねているように、市場原理も健全に機能させる方法を人類はまだ見出していないのかもしれません。
 そこで、総理にお伺いいたします。
 市場原理は弱肉強食の社会をつくり出し、結果として社会に耐えがたい緊張を生み出すという意見がありますが、これをどうお考えでしょうか。市場の暴走という言葉がありますが、これについての御意見はいかがでしょうか。経済の国際化といいますが、一方では、それは外国システム、外国文化の安易な導入だという意見がありますが、どうお考えでしょうか。市場原理とその制御、規制との関係はどうあるべきでしょうか。総理の率直なお考えを伺いたいと存じます。
 「第三の自由・民主改革」に関連して次にお伺いしたいのは、政府と個人の役割、言いかえれば政府と国民の新しい関係についてであります。
 百三十年前の明治維新は、このままでは外国の植民地にされてしまうという強い危機感の中で始まった改革でありました。大胆な改革を国の隅々まで徹底し、外国に立ち向かうには、中央政府に権限を集中し、優秀な人材を中央に集める必要がありました。当時としては、この選択は正しかったのでしょう。官僚の強力な指導のもとに日本は急速な近代化をなし遂げました。そして太平洋戦争を前にした昭和十五年前後、政府の権限はいよいよ強まり、国家総動員体制のもとで戦争に突入していったことはよく知られたとおりです。
 戦後の民主化の中で、国民の権利は飛躍的に拡大されましたけれども、実はこの強力な官僚機構も基本的には温存されていました。連合軍の占領政策の徹底、戦後の復興、さらに高度経済成長政策の推進など、上から指導する発展には強力な官僚機構は何よりも都合がよかったのでしょう。事実、国が進むべき方向を定め、国民を同じ方向に誘導するシステムは、欧米に追いつき追い越すことを目標としていた時代には実に能率よく機能していました。
 だが、第二の経済大国になったころから、このシステムは諸外国から脅威と受けとめられるようになりました。最近の経済の足踏み状態の中で、国全体が同じ方向に突き進む体制がバブル経済の傷を深くし、回復をおくらせているという分析も出ています。
 外国からの指摘をまつまでもなく、国の指導のもとに国全体が同じ方向へ一斉に走るシステムの限界は、バブル経済とその後を見れば明らかです。あのとき、ほとんどの金融機関は貸し付け競争に狂奔いたしました。今、ほとんどの金融機関が国際決済銀行、BISの基準や早期是正措置の条件を満たそうと貸し渋りで足並みをそろえています。
 金融機関だけではありません。例えば電機業界でも、一部の企業がテレビの生産を始めれば、他の企業も一斉にテレビの生産に力を入れました。一部の企業が集積回路の生産を始めれば、一斉に集積回路の生産に走り、より集積率の高い製品の開発を競い合ってきました。
 諸外国では、企業の目的は利益と言われます。ところが日本では、利益よりシェアが重要視され、競争そのものが目標のような奇妙な状態に陥ってしまいました。
 教育の現場も同じです。一流大学を出て一流企業に就職する子供を育てることがいつの間にか教育の目標になり、子供たちにスポーツや芸術の才能があっても、まず学科の成績を上げることに親も教師も力を入れてきました。ここでも競争そのものが自己目的化してしまったと言っていいでしょう。
 総理、あなたは施政方針演説の中で、知恵や知識を身につけるための教育が、いつの日か、皆が同じようによい学校に入り、いい仕事につくための手段となり、私たちは、いわゆるよい子の型に子供たちをはめようとする親と教師になっていないでしょうかと、深い反省を込めて語りかけられました。実は、教育に限らず、私たちの社会全体が過度な規範に縛られて、自由に発想し、個性豊かに生きる気風を失っていると言わなければなりません。
 規範社会は、一たび規範から外れた人には強い疎外感を与えます。子供たちがナイフを振るったり覚せい剤に走るのも、高齢者の自殺がふえるのも、こうした過度な規範社会が生み出したものと言っていいでしょう。少年少女時代は、純粋で最も感性豊かなときです。それに、長寿は長い間の人類の夢でした。青少年や高齢者が強い疎外感を抱くようでは、真に自由で民主的な社会とは言えません。
 これに関連してお伺いしておきたいのは、高齢者雇用の問題です。高齢者といっても、今日、元気なお年寄りがふえています。ところが、六十歳定年制のもとでは、働きたくてもなかなか仕事がないのが実情です。人は、貧しいから生きる気力をなくすのではなく、自分が必要とされていないと感じるとき生きる力を失うと言われています。高齢者が、働いて社会に貢献し生きていることを実感したいというとき、その要望にこたえられないようでは、とても高齢化に対応した社会とは申せません。そこで給料の多い少ないは二の次の問題であります。定年制とは別に、お年寄りに生きがいを持ってもらうために高齢者雇用のシステムを考え出すときが来ていると思いますが、総理のお考えをお聞かせください。
 総理が指摘された戦後システムの行き詰まりとは、上から指導する発展システムの行き詰まりと言ってもいいと思います。この閉塞状況を打破するには、官僚が国民を指導、管理する大きい政府の転換を図らなければなりません。総理が行政改革、地方分権に取り組まれるのは、まさに時代の要請にこたえていっていると言えましょう。だが、そのためには、大きな政府で恩恵を受けてきた業界団体や労働組合、さらに官僚群の抵抗を乗り越えていかなければなりません。そのためには、野党にも協力を求め、未来のために力を合わせていかなければならないと思いますが、総理の率直なお考えをお伺いしたいと思います。
 総理、あなたは施政方針演説で、自立した個人が夢を実現するために創造性とチャレンジ精神を十分発揮できる国を目標の一つに掲げました。おっしゃられるように、自立した個人こそ二十一世紀のキーワードであります。それは、「第三の自由・民主改革」の目指す人間像でもあります。問題は、その自立した個人をどうやってつくっていくかであります。
 総理、あなたの六大改革のうち、教育改革はまだ明確な輪郭をあらわしていません。施政方針演説の教育のくだりも、正直に申し上げて抽象的な言及にとどまっています。それだけ問題は複雑だということなのかもしれません。
 そこで、総理にお尋ねいたします。自立した個人をどうやってつくっていかれるのか、率直なお考えをお聞かせください。
 「第三の自由・民主改革」を進めるには、官僚主導の大きな政府を小さくするだけでは十分ではありません。小さな政府の一方に、自立した個人が自発的に参加するNPOやNGOの発達を待たなければなりません。
 私たちは、この百三十年間大きな政府のもとで暮らしてまいりましたから、小さな政府への移行には戸惑いがあります。ところが、それ以前の江戸時代は、幕府も藩も実に小さな政府でありました。そこでは、地域社会に根差した住民のさまざまなネットワークが存在し、このネットワークを通じてかなり高度な自治を実践していました。最近江戸時代が再評価されている理由の一つは、このある種のNPO社会にあったのではないかと思います。
 現在、参議院ではNPO法案の審議が大詰めを迎えています。NPO、NGOに対する総理の認識をお伺いしたいと思っております。
 「第三の自由・民主改革」に関連して、もう一つ指摘しておかなければならないのは、情報公開の問題です。
 官僚がエリートとして国民の上に君臨できたのは、情報を独占し、官僚しか政策立案ができない構造をつくり上げてきたからであります。知らしむべからずこそ官僚の力の源泉でありました。
 だが、「第三の自由・民主改革」のためには、公の情報を国民が共有できる社会をつくらなければなりません。もちろん、個人情報や外交・防衛にかかわる情報は、これまで以上に管理を徹底していかなければなりません。しかし、基本は公開です。情報を共有できて初めて、国民は官僚と対等になり、国民同士の議論が広がり、国民主導の社会がつくれるのだと思います。
 この問題で、私たち自民党にも反省する点があります。それは、与党の皆さんだからお教えしますといった官僚のささやきを与党の特権のように思ってきたことであります。実は、こうした情報も官僚が取捨選択し、都合のいい必要最小限の情報しか提供しなかったにもかかわらず、国民の知らない情報を役人と共有していることに酔いしれていなかったでしょうか。
 これからは、情報をどんどん公開して、野党とも同じ土俵で堂々と論戦する風潮をつくり上げなければならないと思っております。幸いにして、我が自由民主党には、他党の追随を許さない優秀な人材がそろっております。豊富な経験の蓄積もあります。だから、同じ情報をもとにオープンな論戦が進めば進むほど、国民は我が党の力量を認識し、自由民主党に信頼を寄せることになることは間違いありません。(拍手)
 最後に、外交の問題について一言お伺いいたします。
 今度のアジアの通貨危機では、IMF、アメリカを初め、多くの国や機関が支援の手を差し伸べていますが、日本が最大の支援国であることは言うまでもありません。アメリカでは、アジアの通貨危機にアメリカ国民の税金を使うことに反対であるという声が出ています。そこで、再び危機に陥るかどうかは日本の態度次第だという意見も聞かれます。
 だが、日本がこの問題に主体的に取り組もうとすれば、当然のことながら、アジアを円通貨圏として日本が全責任を負う体制づくりが必要になってきます。
 ところが、こうした経済圏構想に従来の日本はどちらかというと消極的でした。アメリカへの気兼ね、さきの戦争の記憶など、理由はいろいろあるのでしょうが、危機に陥っているとき日本が前面に出なければ、アジアの真の信頼感をかち取ることはできません。この問題で日本が全責任を負う体制を考えるときが来ていると思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
 総理、二十一世紀は目前です。ところが、野党は離合集散を繰り返すだけで、とても政権を担当する態勢にはありません。改革の途上で、時には逃げ出したい誘惑に駆られるときもあると思います。でも、自由民主党に逃げることは許されません。苦しくても歯を食いしばって改革を進めることが自民党に課せられた使命であります。確固とした歴史認識を支えに「第三の自由・民主改革」に邁進されますことをお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 加藤議員にお答えを申し上げます。
 冒頭、歴史認識について、また、その歴史認識に基づいた上で二十一世紀の日本をどうしていきたいと考えているのか、その姿を示せという御質問がありました。
 議員からも御指摘をいただきましたように、私は現在を、明治維新、そして敗戦から敗戦の後の混乱期を乗り切るまでの日本、そして第三の大きな転換期ととらえている、これは議員御指摘のとおりであります。
 そして、その敗戦後の日本が、経済的な豊かさと繁栄を追求し、同時に自由民主主義というものを国の中心に据えて今日までの繁栄を築いてきた、これも私は議員の御指摘のとおりだと思います。
 しかし同時に、その豊かさを求める、そして自由民主主義という言葉のもとにいわば平等ということが強調され過ぎた余りに、我々の各システムが今制度疲労に陥り、これを切りかえなければならない時期に入っていることは間違いありません。そして、私自身が目指そうとするもの、それはまさにその壁を突き抜けて、自由で行動力のある、創造性の豊かな、本当に自立した国民というものを結集した国家でありたい、国としても、国際的に機動的に対応できる、責任を果たせる、そんな国になりたい、そのような思いを込めております。
 多少の時間をお許しをいただきたいと思うのでありますが、間違いなく、明治維新、開国というものは、鎖国という長い歴史の中から日本を外にほうり出したものでした。そして、これはまさに外圧の結果でありました。しかし同時に、その時点における日本は、これが正しかったか誤っていたかは別として、国際社会の中にモデルとすべきものを見出すことができました。
 第二次世界大戦の敗戦後の日本は、いわば占領行政のもとで、アメリカ型の民主主義というものを一つの手本とし、またアメリカの経済生活というものが、ある意味でのやはり我々のモデルとして、その目の前に存在していたと思います。
 今日は、残念ながらそういうモデルは存在をいたしません。それだけに、どのような図を描き、それに向かって挑戦していくかが問われることであり、私が六つの改革を申し上げ、いわば第三の開国という言葉を使いながらこの時代に直面していこうとしたのは、そのような思いからであります。
 そうした中で、議員は、市場原理というものが徹底した場合に社会に与える影響、あるいは市場原理と制御、その規制、そうした点についての意見を述べられ、また私にも求められました。
 私は、豊かな国民生活というものを実現していこうとするとき、規制の緩和、撤廃などを通じて市場原理が機能する範囲を拡大していく、そして経済的資源を効率的に利用していかなければならないと考えています。
 一方、経済活動を市場原理に完全にゆだねてしまう場合、格差の拡大が生じかねない危険性があることも承知をしております。しかし、社会全体が右肩上がりの成長を期待することが困難なそうした中において、極度に結果の平等というものに固執し、これを尊重する場合、社会全体の活力をそぎかねない危険性もあります。むしろ、格差の拡大という危険性があることを積極的に受けとめながら、国民が皆、夢やチャレンジ精神を抱ける、活力のある社会を実現していくことが重要だと思います。
 しかし、これは、議員の御指摘のとおり、市場原理が完全だということを意味するものではありません。独占支配の弊害など、市場の失敗と言われる事態も起こり得ます。また、セーフティーネットが適切に整備されていなければ国民の間にいたずらに不安感のみを増大させる、そして、そうした面から活力をそぐ危険性があることも承知しています。だからこそ、社会保障構造改革というものを実現していくことによって、将来ともに我が国の社会保障制度が国民生活のセーフティーネットとして存在し得る、そうしたものを確保していく必要性があるということは、今までも申し上げてまいりました。
 さらに、市場原理が有効に機能するためには、当然ながら、市場に参加する主体に関するその情報の適切な提供や、市場のルールが守られなければなりません。このため、市場原理が機能する範囲を拡大するために、規制緩和、撤廃と並んで、市場原理を健全に機能させていくための制度的なインフラ、これが積極的に整備を必要とするものとなってまいります。
 また、市場の暴走、経済の国際化という点についての御議論がありました。
 時として、市場が行き過ぎなどの結果、混乱を生ずることがあることも御指摘のとおりです。そして、金融システムがその信頼性を失いかねないといった場面においては、必要な緊急措置を講ずることによって金融システム安定化の確保あるいは貸し渋り問題への対応をしていくことも必要であります。
 さらに、経済が国際化している中で、こうした通貨や経済の変動に対して、むしろ、各国が適切なマクロ経済運営あるいは市場の信認回復に努めるだけではなく、国際的な枠組みのもとで、国際機関や関係各国と緊密に連携をとり、積極的に連携をしていく必要があることも御指摘のとおりであります。
 そうした認識の上で、経済の国際化という環境変化に対応しながら、高い教育水準、ハイテクを支えている我が国の技能、技術など、経済社会を支えているすばらしい点をどうすれば生かせるか、これを生かしながら創造性と起業家精神の発揮をはぐくむような新しい日本型のシステムをつくっていきたい、これに向けて努力をしている最中であります。また、それに一層努めてもまいります。
 次に、自立した個人をどうやってつくっていくのかという御質問がありました。
 まさに議員自身私に投げかけられましたように、極めて重要ですが、同時に、複雑で難しい問題です。しかし、教育という面では、少なくとも形式的な平等主義から脱却し、私たちは、個性を伸ばし、創造性やチャレンジ精神を重視した教育を実現する。そのために、知識をただ単に一方的に教え込む教育を変えていく。みずからの問題意識を持って自分なりの答えを出していく、その実現に向けて努力できる力や倫理観とか責任感、こうしたものを備えた人間を育てる教育への転換を目指さなければなりません。
 現在、例えば中高一貫教育とかあるいは飛び級とかいろいろなことが考えられておりますけれども、根本的には地域社会と教育現場と家庭をどう組み合わせていくか。私にも、これといって絶対のものを持つものではありませんが、全国的に活動を続けている各種の青少年団体等の構成員を見ましても、非常にすぐれた青少年がその中から育っていることは事実であります。
 こうしたことを考えますとき、狭い教育だけにとらわれるのではなく、家庭や地域においてどうやってそれぞれの子供の自立心をはぐくんでいくか。親としても、また人類の先輩の一人としても、お互いに日々心がけなければならないことだと思います。
 次に、NPOに関する認識と育成についてのお尋ねがございました。
 国際化や高齢化の進展などの環境変化の中において、政府部門、企業部門に次ぐ第三の部門とでもいうべき民間非営利部門によるボランティア活動を初めとする社会貢献活動が活発化してきていることは、私は大変喜ぶべきことだと思います。こうした活動は、我が国経済社会がこれからの時代に適切に対処していく上で重要な役割を果たすと考えられていますし、その促進のための環境整備が求められている状況にあると思います。
 現在議員立法として御検討が続いておりますいわゆるNPO法案、私どもは極めて重要なものと考えておりまして、できるだけ早く立法府から行政府の手にお渡しをいただきたいと願っております。
 最後に、アジアと日本についてのお尋ねがございました。議員の御指摘は、ただ単にこの通貨問題のみにかかわらず、根本的な問題を含むアジアと日本のかかわりであろうと思います。
 我が国は、確かに地理的にもアジアに位置しております。そして経済的にも、私はカリの群れが飛んでいくと形容したことを記憶いたしておりますが、まさにそのつながりは極めて密接であります。そして、その認識を常に忘れずに、経済、通貨などの面でも我々は行動していかなければなりません。
 また、今議員からは、アジアを円の通貨圏としてはどうかというお尋ねがありました。その言い方が適切かどうか、これはいろいろな御議論がありましょう。しかし、我が国としては、東京市場の市場としての利便性を高めることなどによって円を国際通貨としても利用しやすいものにしていくことは極めて重要なことだと考えておりますし、今後とも金融システム改革を着実に実施することにより、円の国際化の環境整備に一層努めてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
#10
○副議長(渡部恒三君) 小沢辰男君。
    〔小沢辰男君登壇〕
#11
○小沢辰男君 私は、統一会派平和・改革を代表し、橋本総理の施政方針演説に対し質問を行います。(拍手)
 我が改革クラブは、その原点は、政治とは至高の道徳であり、深い愛情を持って国民に奉仕する行為である、この認識にあるのであります。よりよき政治を求め、信頼と希望の旗を高く掲げて果敢な改革を実践し、もって天下を安んじめんとする政治理念を基本として政党を結成いたしました。
 現在は少数ではありますが、改革の思いを共有し、政治理念、方向性を同じくする勢力を糾合するための一里塚として、小さくとも赤々と燃えるたいまつとして、確たる存在感を発揮してまいりたいと存じております。こうした思いから、新党平和の諸君とともに院内統一会派を組んだのであります。
 新党平和もまたしかりであります。特に、新党平和は、これまで政治から置き去りにされてきた社会的に恵まれない人々のための施策に重点を置き、その分野において特筆すべき実績を積み重ねてこられました。また、資源なき加工貿易国家の宿命を持つ我が国の、国民生活の生々発展を保障するために不可欠な世界平和を希求しつつ、人々が安住でき、みずからが誇るに足る国づくりに邁進する政党たらんと宣言いたしておられるのであります。
 私は、国政に携わること三十九年にならんとしております。老齢をも顧みず本日の代表質問に立つのは、国政のあるべき姿に深い憂いをはせる一人として、やむにやまれぬ思いからであります。(拍手)
 私の志は、一貫して我が国政治の改革にありました。我が日本を、精神文化の面からも国土の面からも、内外に誇ることのできる平和で豊かな、生きていてよかったと実感のできる美しい国土として若い諸君に継ぎたい、受け渡したい、そのために残された生涯を燃焼する。その一点に尽きるのであります。私のこの志については、同じ思いを抱く諸君は、党派を超えて決して少なくないと確信するところであります。
 さて最初に、私は、政治指導者の理想、理念について総理にただしたいと思います。
 橋本総理、あなたは、一国の最高指導者として、いかなる理想、理念を持って、よく万人の心をみずからの心とし、天下を安んじようとされるのか。まず、質問の冒頭に当たり、あなたの基本的な政治理念、政治姿勢についてお伺いをいたします。
 かつて、荻生徂徠は、「弁道」という書の中で、「先王の道は天下を安んずるの道なり。その道は多難なりと雖も、要は天下を安んずるに帰す」と喝破いたしました。政治的指導者の責務とは、「能く万人を合して」「天下を安んずる」ことにあると言わなければなりません。これこそが、政治指導者が身をもって示す理想の道であると思います。
 基本理念と政策を全く異にしておった自社さ連立政権が、国民の厳しい批判をよそに突如誕生して既に三年を超えたのであります。政策の方向性をたがえるもの同士の原則なき妥協によって、この三年間、遺憾ながら有効な政策が打ち出されないままに、政権延命だけの政治が続いてきたのであります。(拍手)
 その象徴的な事例が、一昨年の国民の九割が反対する住専への税金投入であり、さらにはまた、昨秋の財政構造改革法に見る日本の経済の現状を無視した目先の財政赤字削減路線への固執であります。
 自社さ連立内閣に対する内外からの信頼は、既に地に落ちております。私の長い政治経験からいたしますと、既に政権末期の様相を呈していると思うのであります。
 総理、「信なくば立たず」であります。原則なき妥協を続ける自社さ連立政権の、その政治姿勢と政策の路線を一たん清算すべきでありましょう。私からの真摯の忠告と受けとめていただきたいと思います。(拍手)
 さて、アジアの経済危機の要因の一つは、中小企業を軽視し過ぎたそのツケであるとも言われております。
 先日、私は一日札幌に赴いて、平和・改革として全国で行っている実態調査の一環として、現地の方々から貸し渋りの深刻な実態を伺いました。あの北海道拓銀の倒産の影響を深刻に受けた状況をつぶさに伺ってまいりました。
 中小企業の方々が口々に言われましたのは、健全な経営を続けているにもかかわらず、メーンバンクがかわることによって、融資の打ち切りや、あるいは融資条件の厳格化、変更等でありました。そして、何より公的金融機関の審査の厳しさでありました。札幌における公的金融の実態は、まさに実質的に融資拒否に近い状況であったのであります。民間金融機関と変わらない、いや、それよりもさらに厳しい融資条件を求められておったのであります。
 札幌の貸し渋りの現状、これこそが、大手銀行はつぶさないと大見えを切ってきた護送船団行政の破綻の実態であります。約束は守らず、みずからの身を守る、これが政府の金融行政の現実であったのであります。(拍手)
 同じく実態調査を行った福岡においても、実情はほぼ同様でありました。
 政府は、昨年暮れに融資枠の拡大を行いました。しかし、政府が幾ら貸出枠をふやしましても、それは現実には絵にかいたもちに近いと言わなければなりません。公的金融機関もみずからの経営事情を優先させて、いわばみずからの保身のみを図っているために、民間が収縮しているときこそ官が出番で出ていかなければならないのに、貸し渋りをあるいは融資条件を非常に強くしておるわけであります。
 したがって、健全な中小企業は国の宝でもありますにかかわらず、貸し渋り対策の犠牲になっている例が方々に見られるのであります。アジア各国の経済危機を思うにつけ、そのことを非常に私は憂えるのであります。ちまたにある橋本内閣への怨嗟の声を、虚心に私は総理が聞いていただきたいと思うのであります。
 さて、官僚の不祥事はまことに憂慮にたえません。私は、公務員の綱紀の粛正は当然としても、加えて、他省庁と比較し、均衡を失って肥大化している大蔵省の権限の分散を講じ、真の政治主導の政府をつくる必要があると思います。私は、大蔵省の機能と権限を分割して、基本的な方向として、予算編成権を総理直轄の機関に移管し、財政と金融の分離を行うべきと考えますが、総理はいかがお考えでございますか。
 公務員の綱紀粛正のために、公務員倫理法の制定が強く求められております。我々平和・改革も、民友連、自由党とともに、三会派共同で法案を提出することにしております。しかし、公務員に綱紀粛正を求める一方で、政治家の側の倫理強化も避けて通るわけにはいきません。我々は、公務員倫理法とあわせて、国会議員の資産公開に関してもし虚偽の報告があれば、その罰則を強化することとしておりますが、この点、総理の御賛同をいただきたいと思うのであります。(拍手)
 総理、あなたは昨年、与党が税制大綱を決定した直後に、突如二兆円減税を指示されました。それはいかなる理由に基づくのでありましょうか。先ほども民友連から質問がありましたが、これはまさしく、私が思うのに、橋本内閣による政策の転換だと思うのであります。これまでの橋本内閣の経済財政の運営の誤りにあなたが気づかれてやったのか、あるいは、APEC等景気対策を求める各国からの強い要請、いわゆる外圧に抗しかねたからではないでしょうか。
 その後、自民党の責任ある執行部、あるいは政府高官、あるいは先輩諸氏から、大型財政出動の必要性や国債発行のあり方、減税の必要性等々、財政構造改革法にみずから反することを次々に表明されておるではありませんか。政治家としての信念、理念をどこに置いたのか、耳を疑うものばかりであります。これでは、もはや政府も与党も政党政治の体をなしていないと言わざるを得ません。(拍手)
 国民にもしあなた方が法律の遵奉を求めるならば、政府みずからが法律は守らなければなりません。政治は至高の道徳であるべきであります。ましてや、みずから守れない法律なら速やかに撤回すべきであり、その政治責任をみずから厳しく問うべきであります。
 かつて、我が国で赤字公債を最初に発行されたのはどなたと考えますか。大平正芳元大蔵大臣でありました。それは、オイルショック後の危機に陥った日本経済を救済するため、日本の経済を何とかオイルショックから立ち直らせたいという一心から、思い切って、初めて赤字公債を発行したのであります。これによって、日本経済は先進国の中で一番早くオイルショックから立ち直ったのであります。まことに高い見識に基づく大きな政治決断であったと思います。
 また、第二次中曽根内閣では、本予算成立後間もない五月に、円高が進み日本産業の輸出能力が急落することを心配した中曽根総理は、六兆円もの補正予算を直ちに組み、国会に提出をしたのであります。
 指導者たるもの、かくのごとくでなければならぬと存じます。
 翻って、橋本内閣は、明確に経済財政運営について路線変更を行ったにもかかわらず、あいまいで中途半端にごまかそうとしております。
 現在の日本の経済状況下では、積極的財政出動も必要であります。平成十年度本予算はデフレ予算であり、このままではますます景気は後退いたします。
 平成十年度予算は、財政構造改革法に縛られて機動的な財政出動が困難な緊縮型予算であります。二十一世紀の少子・高齢社会に備えるための社会資本の整備や社会保障関係費なども一律に削減され、さらには難病対策費の削減など、社会的弱者にしわ寄せが行われております。
 自民党の中からも、既に、大型の補正予算を組むべきである、財政構造改革法は凍結または一時延期すべきだという声も上がっているではありませんか。
 橋本総理、あなたは、現在提出の予算が本当に最善のものであり、内外からの声にもかかわらず、いかなる状況でも政治生命をかけて修正されるつもりはないと明確におっしゃいますか。
 総理、あなたは、先日の施政方針演説で、平成十年度の予算案は最善のものと演説をされました。ところが、その舌の根も乾かないその当日、何と、私はテレビを見て驚いた。その日のうちに、官邸に山崎政調会長を呼ばれまして、直ちに新たな景気対策を打ち出すよう検討を命じたではありませんか。
 不況にあえぐ国民は、一日も早い景気対策を待ち望んでいるのであります。補正予算による景気対策ではなく、直ちにこの本予算をもってその景気対策予算を織り込むべきであります。(拍手)
 それは少し恥ずかしいことでしょう。しかし、そんなことをためらってはいけません。国民のために政治家として一大決断をして、平成十年度予算を組み替え、国民のための景気対策を織り込んでいただきたいと思います。総理の明確な見解を承ります。
 総理、あなたの目指す国家像とは一体何なのでしょうか。昨年、あなたは、野党の反対を押し切って、財政構造改革法を強引に成立させました。二〇〇三年までに赤字国債の発行ゼロ、財政赤字の国内総生産比三%以内への圧縮という目標を掲げ、将来の子孫への負担を軽減しようという、そのこと自体、私は別に異論を申し上げません。
 しかし、この法律の致命的な欠陥は、初めに財政赤字の縮小ありきで、橋本内閣が日本という国をどうしたいのか、橋本内閣が目指す、少子・高齢社会を不安なく安心して暮らせる社会の仕組みとは一体何かという理念、哲学が全く入っていないのであります。
 社会保障は、戦後速やかに拡大し、整備されました。しかし、今財政を優先して一律に社会保障を削るほど、福祉はそんなに充実しておりましょうか。介護は、「保険あって介護なし」と懸念されるように、基盤整備は不十分であり、少子化問題も深刻で、抜本的な対策が不可欠であります。こうした状況の中で、本来早急に必要とされるべき対策が、財政面からだけの理由で後回しにされてよいのでしょうか。若い諸君はよく考えていただきたいと思います。
 私は、むしろ大切なことは、国民が望む社会保障のサービスの水準と、それを実現するための財政のあり方の抜本的見直し、そのための行政の徹底した効率化と情報公開であると考えます。また、社会保障のあり方については、国民共通の基礎的な社会保障ミニマムを設定しつつ、負担のあり方については応能負担をより強めることを検討すべきだと考えます。
 そうした構造改革も行わず、質的な改革もなく、ただやみくもに財政面、経済面の量的な側面だけで国民負担の問題や社会保障を論ずることは、国民生活を無視するものであり、本末転倒でありまして、極めて危険であると考えねばなりません。
 社会保障のあり方に関し、総理の考える国家像について、私はその御見解を承りたいと思います。
 さて、行政改革に全政治生命をかけると言明されている総理、今のような、あの省とこの省の合併といったような作業は決して行政改革ではありません。かつて新進党が提出した改革案、これは一回も審議をされませんでしたが、謙虚に一度見直してみてください。どうか、重複している行政を目的別に整理して、そして中央官庁の仕事をどうやって減らすかということをお互いに考えようではありませんか。
 また、中央省庁の行政改革は、地方分権と地方財源の充実強化と深くかかわっておることはもちろんであります。地方への補助金総額は、まだまだ、今十六兆強と言われております。これをなくさない限り、中央省庁の仕事と権限はなくならないことはもちろんであります。だから、総理は、先般の施政方針演説で、国と地方の役割分担に応じた地方税財源の充実確保、地方の課税自主権の拡大を図ると言われたではないですか。
 しかし、実は、その際に、国民にはその具体的な姿を明示しなかったのであります。一体、具体的にどのような税をもって地方自主財源とされるのか、総理の明確な答弁をここでお願いをいたしたいと思います。
 総理、このところ頻発する、総理も言われました青少年の犯罪、あるいは、金欲しさにいろいろな性的な犯罪を起こす少女、また、物の豊かさがあって心の豊かさがないような今日の現状、総理は施政方針演説でいろいろと述べられました。
 しかし、対策をとると言われましたが、あの日の施政方針では、具体的な対策をどのようにするのか、一つも言われなかったのであります。
 どうか、私はお願いをいたしますが、これらの問題は、今、我が国社会が抱える一番本質的な危機の問題だと思うのであります。だから、どうぞこの国会に、若い優秀な文部大臣もいることでございますから、よくひとつ相談をされまして、そして具体的な、この対策をどうするのかという点を国会に報告をして、お互い、与野党が議論をしようではありませんか。(拍手)
 私は、一つの提案としてこれを申し上げておきます。
 私は、一つの解決策として、戦後、時代精神としての国民共通の価値観の確立とその定着、さらには学歴至上社会を根底から改革しない限り、我が国社会の空洞化、形骸化の進行を防ぎ得ず、また、二十一世紀にわたる日本の人材を輩出することは幻に終わることは明らかだと思っております。
 ただ、中央教育審議会に象徴される戦後の教育体制、これは大幅に見直す必要があると考えます。その意味から、戦後、長く日本教育の憲法と称せられた教育基本法を改正し、中高一貫教育を明確に打ち出すことなどを含め、教育改革基本法を新しく制定すべきだと提案するものであります。(拍手)
 現在予定されている文部省の教育改革プログラム程度で、現在の青少年をめぐる問題や教育上の課題が解消されると考えられるとすれば、大いなる錯覚というべきであります。青少年をめぐる問題並びに教育改革に関し、総理は具体的にどのように対処し、対策を立てていくのか、明確にすべきであると思います。
 したがって、先ほどの私の提案を真摯に受けとめ、一回国会で、物の豊かさにおぼれて心の豊かさを忘れた日本国民をどうするのか、これをお互いに議論し合うことをここに提案いたします。(拍手)
 沖縄は、その地理的条件のゆえに、さきの大戦で国内唯一の戦闘地となることを余儀なくされ、普通に暮らす多くの人たちが無残に命を落とした不幸な歴史を持っております。その後も、沖縄は日本の安全確保のために多くの犠牲を払い、多大な貢献をしております。しかし、払った犠牲、なした貢献の大きさに比べ、沖縄が得たものはいかばかりだったかと思わざるを得ません。
 日米安保が日本やアジアの平和と安定に必要不可欠であるということと、沖縄の人々の願いを両立させるには、安保条約が沖縄にもたらす痛みを我々全国民で理解し、負担を分かち合うことがどうしても必要になると思います。
 普天間飛行場の返還などを盛り込んだ日米合意は、その意味で一歩前進であると評価できるものでありますが、しかし、国と県との間できちんとした詰めがなされないままずるずると今日に至ってしまい、結果として、大田県知事は海上ヘリポートの建設受け入れ反対を表明したのであります。総理は、この点に関するみずからの詰めの甘さについて責任をどう感じているのか、お伺いしたいと思います。
 また、政府は、沖縄振興策と基地問題を絡めたり、選挙の結果により振興策を左右するかのような発言を繰り返したりされております。つまり、沖縄県民の痛みを真に理解しているのか疑いたくなるような言動をとっていると判断せざるを得ません。言語道断であります。沖縄の自立と繁栄に向けてどう取り組む所存か、具体的な見解をお伺いいたします。
 さらに、普天間返還は凍結になるなどとの観測が報道されていますが、現状の固定化は沖縄県民の願いに背き、結果として日米安保体制そのものを足元から空洞化させることにつながりかねないと思います。
 総理、言うまでもなく、安全保障の確立には国が最終的に責任を負うものでありますから、みずからリーダーシップをとって、普天間基地の凍結ではなく、打開の道を探るために全力を尽くすべきであります。そして、これまでの名護市沖の海上へリポートという政府案を一歩も譲らないのではなく、場合によっては大胆な修正も念頭に置きながら前進できる道を模索すべきであると思いますが、いかがでございますか。(拍手)
 次に、イラクをめぐる情勢は、いよいよ緊迫の度を高めつつあります。憂慮にたえないところであります。
 大量破壊兵器の開発の可能性が濃厚であり、国連安保理決議を遵守せず査察拒否を続けるイラクの態度は、全く受け入れられないものであります。国際平和に真っ向から立ち向かい、国連の権威に挑戦を続けるイラクに対しては、国際社会が一致して、毅然とした態度で翻意を迫らなければならないことは言うまでもありません。
 そこで、我が国としても、積極的に主体性を持って外交努力を続けるべきであると考えますが、今まで総理や外務大臣はいかなる外交努力をし、また今後いかなる努力をされるのか、具体的に説明願いたいと思います。残念ながらイラクの態度が変わらず、米国が武力を行使した場合、我が国としてはどういう対応を具体的にされるのか、お伺いをいたします。
 また、米国が武力行使が可能として根拠に挙げる安保理決議の六百七十八などについて、いかなる見解を持つのか、総理の所見を承りたいと思います。
 中東和平を確立し、国際社会において日本が信頼を得ていくため、総理は、今回のイラク問題について、まさに責任ある立場をしっかりと果たしていただきたいということをこの際私は申し上げておきます。
 さて、我々、平和・改革を初めとする野党は、諸君も御存じのとおり、国民の四割を超える声を代表し、政府・与党の提案に、あしきは強く批判、反対し、よきことはためらわずに賛成してまいりました。かつての、国民が言われる、何でも反対の社会党とは違うのであります。
 諸君、最後に私は申し上げます。「政の興るは、民の心に順うにあり、政の廃するは民の心に逆らうにあり」とあります。総理、民の心は、世論調査を見ても既に現政権について六割以上逆らうに至っているのであります。(拍手)
 私が尊敬する安岡正篤先生は、「道徳的気魂の喪失、困難への直面を嫌う気風、対立する勢力間をうまく渡ろうとする打算、これが国家滅亡の前兆である」と言われております。
 現今の橋本政権の運営ぶりを見るに、国家国民のため、憂えざるを得ないのであります。
 「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ。賢者はその身の亡ぶを悲しまずして、その国の衰うるを憂う」と言うではありませんか。これは、かつて北宋の蘇洵という人の言葉であります。
 あなたは、総理、我が国において一国の存亡を左右する、まさにその「一人」であります。願わくは、総理、「賢者」たらんことを念じつつ、この北宋の蘇洵の言葉を提示して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 小沢議員にお答えを申し上げます。
 まず、冒頭、荻生徂徠を引用されながら、政治理念、政治姿勢についてお尋ねがございました。議員は、その荻生徂徠の言葉を引用され、「先王の道は天下を安んずるの道」と述べられました。私は、同じことを少し違った言い回しでお答えをすることになるのかもしれません。
 私の与えられた責任は、国民の信頼と負託にこたえることであり、それは、今日まで、敗戦という大きな痛手の中から我々の先輩がかち得た自由と民主主義というもの、市場経済というものを守りながら、その制度の行き詰まりを解消して、次の世代に活力のある社会を譲り渡していくこと、それが私の役割だと考えております。そのために自分なりに全力を尽くしてまいりたいと考えておることを冒頭に申し上げたいと思うのであります。
 次に、自民、社民、さきがけ連立政権について、清算せよというお言葉をいただきました。
 議員は、基本理念と政策を異にすると言われましたが、イデオロギーの終えんと言われる時代の中において、私が今申し上げました自由と民主主義あるいは市場経済といった価値観、さらに、これを基本理念として社会や文化、経済の各分野にわたって豊かな国をつくっていこう、国際社会の平和と繁栄に貢献していこうという大きな理念を共有していないとは私は考えておりません。確かに意見が異なることもあります。その違いを前提にしながら、民主的な協議の中で政策調整を行い、よりよい政策運営を行っていくことが連立政治のあり方ではないかと考えております。
 また、中小企業に対する貸し渋りの問題について、実際に実態調査をされたその御体験に基づいてのお尋ねがございました。
 政府は、中小企業者等を支援するために、総額約二十五兆円の資金を用意し、政府系金融機関などにおいて特別な相談窓口を設置し、中小企業の資金ニーズを適切に把握しながら、迅速かつ弾力的に対応しようと努力をいたしております。
 しかし、現実に調査をしてこられた議員の、その御調査の結果を踏まえた御意見を今いただきました。これも我々として参考にさせていただきながら、中小企業の実態に応じて、政府系金融機関の窓口での対応により万全を期すなど、対策の着実な実施に努めてまいりたいと考えており、御調査の結果もぜひ我々にも資料として使わせていただきたい、この場をかりてお願いを申し上げます。
 次に、予算編成権の移管、あるいは財政と金融の分離について御意見をいただきました。
 行政改革会議最終報告におきまして、内閣府のもとに経済財政諮問会議を置き、予算編成の基本方針などについて審議することとする、こうした指摘がなされております。また、財政と金融の分離につきましては、先般与党間で議論が尽くされ、その結果としての合意がまとめられました。政府としては、これら行政改革会議最終報告並びに与党合意の内容を忠実に盛り込んだ中央省庁等改革基本法案を取りまとめ、国会に提出をさせていただきました。
 次に、公務員倫理法制定についてのお尋ねをいただきました。
 このたび大蔵省職員が収賄容疑で逮捕、起訴されましたこと、本当に残念でありますし、まことに遺憾であります。こうした事態を踏まえ、先般政府部内に公務員倫理問題に関する検討委員会を設けて、いわゆる公務員倫理法の制定を期し、鋭意検討を行っており、同じく本問題を検討されている与党三党とも連携し、早急に作業を進めてまいりたいと考えております。
 また、その公務員倫理法との関連におきまして、野党三党が共同で提出を予定している、国会議員の資産公開について虚偽報告等の罰則強化という点についてのお尋ねがございました。
 現時点においてその御提案の内容を存じませんので明確に責任を持った答弁は差し控えさせていただきますが、各党各会派さらに各国会議員の間で十分御論議されるべき重要な課題だと思います。
 それから、与党が税制大綱を決定した直後に二兆円減税を指示した理由というお尋ねがございました。そして、今回の特別減税は政策転換ではないかという御指摘をいただきました。
 私は、経済の実態や金融システムの状況等を考えながら臨機応変の措置をとることは当然のことだと考えております。その上で、アジア経済の状況を踏まえ、日本発の経済恐慌は決して起こさないという決意のもとに、国民の不安感を払拭することこそ国政を預かる者の責任として考え、この特別減税を決断いたしました。
 また、財政構造改革を撤回すべきではないかというお尋ねをいただきました。
 しかし、財政構造改革は、危機的な状況にある我が国の財政を健全化すると同時に、安心して、豊かな福祉社会、健全で活力ある経済の実現などの課題に十分対応できる財政構造を実現するためのものであり、その必要性は何ら変わるものではありませんし、同時に、経済金融情勢の変化に機敏に対応し、あるいは国際状況に応じて財政、税制上の必要な措置を講じていくことは当然のことでありまして、両者は、二者択一の問題ではなく、タイムスパンの異なるものだと考えております。
 また、平成十年度予算を組み替えて再提出すべきであるという御指摘をいただきました。
 今般の特別減税や十年度税制改正と金融システム安定化策を初めとする財政、金融両面にわたる幅広い措置というものは、現下の状況に対し断固たる対応をとるものでありますし、こうしたそれぞれの取り組みのすべてが相乗効果を持って我が国経済の回復に資するもの、そう考えております。
 いずれにいたしましても、政府としては、こうした諸施策を盛り込みました平成十年度予算を最善のものであると考え、九年度補正予算に引き続きこれを早期に成立させていただき、実施に移すことこそが今何よりも必要だと考えておりまして、一刻も早い成立に向け、何とぞ御理解をいただきたいと考えております。
 次に、少子・高齢社会を不安なく安心して過ごせる社会の仕組みという点から、幾つかの御議論をいただきました。
 社会保障というものについては、議員熟知されておりますとおり、少子・高齢化が進行すればする中において、セーフティーネットとしての社会保障の役割は一層重要になっていくわけでありますし、国民が安心できる制度を構築することが必要であります。
 このため、制度の効率化を図るとともに、子育ての支援、介護など、少子・高齢社会における新たな国民の需要に適切に対応するという考え方に立ち、引き続き社会保障構造改革に取り組んでまいります。
 また、行政改革についての御意見もちょうだいをいたしました。
 今回の改革は、簡素で効率的な行政、機動的で効果的な政策遂行を実現するために、規制緩和や地方分権、官民分担を徹底し、国の権限と仕事の減量を進めた上で、二十一世紀において国家が担うべき機能、課題に的確に対応するように省庁の再編を行おうとするものでありまして、単なる省庁の合併ではございません。
 次に、地方税財源の充実確保等の具体的な方策に関するお尋ねがございました。
 国と地方の役割分担に応じた地方税財源の充実確保や地方公共団体の課税自主権の一層の拡大は、地方分権の推進にとって重要な課題であり、税源の偏在性の少なく、税収の安定性を備えた地方税の充実に努めていきたいと考えております。
 また、青少年をめぐる問題についても御意見をちょうだいいたしました。
 この問題につきましては、現在、各省庁の関係審議会がさまざまな検討を行っておりますが、むしろ政府を挙げ、あるいは社会全体で取り組むべき大きな問題だと思います。
 私としては、できるだけ早く青少年問題審議会、中央教育審議会あるいは中央児童福祉審議会など、関係する審議会の会長方にお集まりをいただくとともに、関係閣僚が加わり、幅広く議論の上、取り組みの方向を打ち出し、これをもとに関係審議会での審議を深め、対策を順次実施に移していきたいと思います。
 また、国会での議論をというお話をいただきました。国会で党派を超えて御議論をいただくことは当然重要なことであり、ぜひその中から将来に向けてのよい突破口を見出すことができますよう、心からお願いを申し上げます。
 また、中教審等の考えているようなことでは済まない、しかし教育改革も大事だ、そうした御指摘をいただきました。
 今後、子供たちに、生命を尊重する心や思いやり、あるいは倫理観や正義感などをどう育成していき、個性を大切にする教育へ転換をするか、極めて重要な問題であります。
 そして、家庭あるいは地域社会、学校が力を結集して、心の教育と言えるものを充実していかなければならない。また、子供たちの悩みを受けとめることのできる先生方を養成していかなければならない。自主性を尊重した学校づくりを実現しなければならない。教育改革を進める上でも、こうした意識を持ちながら反映させていかなければならないと考えております。
 次に、沖縄県との関連についてのお尋ねがございました。
 普天間返還問題に係る沖縄県との調整についてお尋ねがございましたが、政府としては、沖縄県も正式メンバーとして入っておられる沖縄米軍基地問題協議会や普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会の場において検討状況などを御説明し、御意見も伺いながら進めてきたところでありまして、私自身も大田知事とこれまで何回もお目にかかり、この問題について協議をしてまいりました。引き続き、県を初め地元の御理解が得られるよう、粘り強く取り組んでいきたいと考えております。
 また、普天間飛行場の返還についてもお尋ねがございました。
 その代替施設につきましては、自然環境、騒音、安全などいろいろな要素を考慮して、現在よりも大幅に規模を縮小し、必要がなくなった場合には撤去できるという、現在の時点における最良の選択肢としての案を我々は提示したと考えております。今後も、その実現に向けて、地元の御理解、御協力が得られるよう、粘り強く取り組んでいきたいと考えております。
 次に、イラク問題についてのお尋ねがございました。
 イラクが大量破壊兵器などの廃棄に関連した安保理決議に対する重大な違反を行っていることは、国際の平和と安全を脅かすものであることが、既に関連の安保理決議で認定されております。こうした中にありまして、日本としても、外交的解決が最善のもの、そう考え、イラクに対する働きかけを初め、さまざまな外交努力を行ってまいりました。
 議員から御指摘がありましたが、対イラクで武力が行使をされる、そういった状態になるといたしましても、どのような態様で行われるか定かでない段階で断定的なことを申し上げるのは大変困難であります。しかし、イラクが関連安保理決議に対する明白な違反を繰り返すことによって、関連決議で規定された湾岸戦争の停戦の前提条件が充足されていない状況が現出しつつあると思われます。
 しかし、いずれにいたしましても、我が国としては、この地域における国際の平和と安全のために、イラクをめぐる問題の解決に向け、今後とも、安保理の理事国としてすべての安保理理事国を含む関係国と緊密に協議しながら、最大限の努力を行っていきたいと考えております。
 なお、ニューヨーク時間の十七日夕刻、アナン国連事務総長が二十日からイラクを訪問することを発表されました。我が国としては、事務総長の外交努力を評価し、また、この成功を心から期待いたします。
 ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
#13
○田野瀬良太郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十九日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#14
○副議長(渡部恒三君) 田野瀬良太郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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