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#1
第142回国会 本会議 第14号
平成十年二月十九日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第七号
  平成十年二月十九日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
 金融危機管理審査委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

    午後二時五分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続) 
#3
○議長(伊藤宗一郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。野田毅君。
    〔野田毅君登壇〕
#4
○野田毅君 私は、自由党を代表し、橋本総理の施政方針演説に対し、ポイントを絞って所感を述べつつ質問をいたします。
 間もなく、本院において新井将敬代議士に対する逮捕許諾請求が議題となります。大変残念な事態であります。我々は予算委員会において証人喚問を要求してきましたが、これを拒み続けてきた自民党の姿勢を厳しく問わなければなりません。
 我が党は、捜査に支障を及ぼさない形での証人喚問の実現を要求することを冒頭申し上げます。
 橋本総理は、六つの改革を国民に公約しています。今回の施政方針演説においても、改めてその決意を表明されました。しかしながら、総理の言われる改革は、日本を根本から立て直すという哲学も戦略もなく、対症療法でしかありません。
 財政構造改革は、赤字国債を減らすという目先の帳じり合わせのみにとらわれ、歳入歳出構造の改革にほとんど手をつけておられない。本来の行政改革とは、民間や地方の活動への過剰な介入を排除し、その活力が最大限に発揮できる環境をつくるということ、すなわち行政の中身を改革することでありますが、橋本行革は、単なる看板のかけかえや機構いじり、果ては役所の名前が長いか短いかという議論に終始しております。どこが改革でありますか。
 経済構造改革では、まず不良債権問題を解決し、次にビッグバンを成功させ、その上で財政再建を実現するという手順を踏むこともなく、不良債権問題も未解決のまま財政デフレ政策を強行し、我が国経済を先行き見通しの立たない深刻な状態に陥らせております。教育改革においても、その姿は全く見えず、教育の基本である何を教えるべきかという哲学も理念もありません。
 まさに、橋本内閣の六つの改革には、この国をどうするか、そのために何をやるべきかという理念も戦略も全くない、日本が抱える課題をただ単に羅列しているにすぎません。
 橋本内閣がおやりになっていることは、構造改革という言葉とは逆に、すべてばんそうこうとも言えるびほう策ばかりではないですか。建物に例えれば、骨格や基礎工事よりも外装や外観に気を奪われているばかりではないですか。このような建物はすぐに倒壊いたします。改革の名に値しないことなら、やらない方がまだましであることをまずもって指摘いたしておきます。
 自由党は、内外情勢激変の中で閉塞状況に陥っている今日のシステムを根本から変え、生き生きとした日本をよみがえらせるために、構造革命を断行することを提唱いたしております。それが日本再構築宣言であります。
 改革とは、どれ一つをとっても命がけであり、政治生命をかけて行うべきものであります。それなくして改革などできません。橋本総理がこの二年間おやりになってきたことは、性根を据えた改革路線とはほど遠い。言葉だけがむなしく響いております。橋本内閣が続けば続くほど日本がだめになっていくという懸念を持つのは私一人ではありますまい。(拍手)
 次は、経済問題についてであります。
 現下の経済情勢が深刻な不況にあることは今さら言うまでもありません。対応を誤れば大恐慌にさえなりかねない危険をはらんでおります。では、この状態はだれがもたらしたのか。今日の不況は、不可抗力、天災によるものではありません。
 我が国経済が立ち直りかけつつあった昨年、我々は、財政再建のためにもまず経済再建、そして、日本経済を回復軌道に乗せるための減税を主張しました。しかし、橋本総理がこれを否定した上で自信満々に行ってきた数々の施策の結果が、このありさまであります。まさに橋本不況であります。橋本総理の対応が正しければ倒産しなくてもいいはずの企業が倒産し、失業しなくてもいいはずの人が失業しているではないですか。この人たちの苦しみに何の反省もなく、単に臨機応変の措置という言葉をもてあそんでいることに、あなたは良心の呵責を覚えないのですか。
 具体的に申し述べます。
 橋本内閣は、目先の財政の帳じり合わせを強行し、消費税率の引き上げや特別減税の打ち切りなどで約九兆円もの負担増を国民に押しつけ、しゃにむに公共事業を削減する平成九年度予算を強行しました。しかも、そのデフレ効果を過小評価し、一・九%の経済成長見通しを発表したのであります。四月以降、個人消費、住宅投資、公共投資が落ち込んで景気が冷え込んでいるにもかかわらず、夏からは景気が再び回復すると主張しました。昨年秋の臨時国会冒頭の所信表明でも、足元の経済は弱いが、年度下期には景気回復が始まると強弁したのであります。しかし、結果はどうですか。本年度経済見通しは、あなた自身がゼロ%に下方修正したではありませんか。
 総理、あなたが口実に使っているアジアの通貨危機と国内の金融不安も不可抗力ではありません。総理自身の財政政策の失敗によって引き起こされた日本の景気後退が、大きな原因の一つになっています。アメリカのルービン財務長官も、日本の弱さがアジアの原因であると明確に指摘しております。しかるに、アジアの通貨危機を外生的ショックとして二兆円の特別減税復活の口実とし、また、三十兆円の金融システム対策によって桜の咲くころには景気が回復すると、またしてもあり得ない見通しを述べております。
 総理は、何回見通しを誤り、何回失敗を繰り返せば気が済むのですか。金融危機の悪化を防いでも、そのことだけで景気が回復に転じることはあり得ません。
 思えば、橋本内閣は、経済の見通しを繰り返し誤ったばかりではない、不良債権処理の見通しを誤り、本当の改革を避け続けてきました。昨年、我々が日本経済の再建、構造改革のために消費税の据え置きと特別減税の継続を強く求めた際、一顧だにしなかった橋本総理が、今さら特別減税の復活を決定するなどまことに支離滅裂であり、景気後退が始まった今、余りに遅過ぎ、余りに少な過ぎます。
 危機感の欠如は、来年度税制改正の至るところにもあらわれております。法人税減税も三%程度でお茶を濁し、地価税の凍結は遅きに失しております。有価証券取引税の半減に至っては、東京金融市場の空洞化を防ぎ、活性化を図るためであるならば、本来全廃とするべきところであります。法人税減税、特別減税にしても、望ましい税体系に対する理念も哲学もありません。すべては小手先のばらまき型経済対策の域を出ておりません。タイミングも誤っており、これでは経済の立て直しもできず、財政もますます悪化するのみであります。
 総理、あなたは税制の抜本改革について、どういうタイミングで、どういう内容のものをおやりになろうというのですか。財政構造改革法にとらわれている限り、向こう六年間、税制の抜本改革を放棄するということですか。お答えいただきたい。
 これと関連して、最近の政府・与党幹部による九八年度予算案成立直後の大型補正予算編成発言があります。あなたはこれらの発言を放置し、いわば容認し、役割分担によって国民の目をごまかそうというのですか。同じ国会において本予算成立後直ちに補正予算を編成するというならば、本予算を直ちに撤回し、再提出するのが筋であります。(拍手)それとも、当初予算案が最善だというのなら、災害などへの対応を除き補正はしないと確約をすべきであります。一体どっちですか。
 財政構造改革法等の審議に際し、総理並びに当時の三塚大蔵大臣は、歳出に対するキャップは、当初予算のみならず補正予算も縛ると明言したではないですか。この国会答弁はうそだったのですか。当初三年間は集中改革期間と称して、あくまで機械的に歳出を削減することに固執したのはあなた方であります。最終年度における目標についてはともかく、我々は機械的な削減には反対いたしました。機械的削減は今日のような事態を招く危険性があり、しかも、そうした場合に機動的な財政政策がとれなくなるからであります。
 本予算成立直後の大型補正は、あなた方が二カ月前に強引に成立させた財政構造改革法とは相入れない、真っ向から対立するではないですか。ごまかしは許されません。財政構造改革法を廃止するのか、修正するのか、それとも補正を行わないのか、はっきり明言していただきたい。(拍手)
 また、大蔵省首脳は、日本国政府は昨年十二月に政策転換をしたと明言している。さらに、このことを世界にしっかりアピールする必要があるとまで述べております。一方で総理は、国民と国会には政策転換したことを認めてはおりません。これではまさしく二枚舌ではないですか。
 橋本総理、政策転換をしたのでしょうか、していないのでしょうか。なぜ明確に路線転換をしたと言えないのでしょうか。お答えください。
 総理の過去の国会答弁と、これからやろうとしていることの食い違いは、金融システム対策についても明白であります。
 預金を取り扱わない住専の処理に六千八百五十億円の血税を投じ、国民の九割から厳しい批判を浴びた後、総理は繰り返し、信用組合の破綻以外は公的資金を使わない、不良債権の処理は順調に進んでいる、大銀行はつぶさないと昨年の秋まで明言してきました。しかし、結果はどうですか。不良債権処理の見通しは全く外れ、北海道拓殖銀行や山一証券が破綻し、その結果、十七兆円もの公的資金を信用組合以外の金融機関の不良債権処理にも使わざるを得なくなったではありませんか。わずか二、三カ月の間に百八十度違ったことを総理は言っているのであります。
 そればかりか、優先株の引き受けなど、預金者保護とは全く関係のない分野に、貸し渋り対策を隠れみのとして、金融機関救済のために十三兆円もの公的資金の投入を強引に決めたではありませんか。自己責任に基づく金融行政、護送船団行政からの脱却という方向性とは全く逆であります。これは将来の日本の金融システムに必ずや大きな禍根を残すことを指摘しておきたい。
 本来、金融機関の破綻は市場の選別を受けてのことであり、この市場メカニズムを尊重し、預金者保護、システミックリスクの回避に万全を期するのが正しい政策態度であり、行政介入を減らすことこそが透明性を高め、信頼を取り戻す唯一の方策なのであります。幾ら金融監督庁をつくっても、金融機関がMOF担を廃止しても、公務員倫理法を制定しても、抜本的解決にはなりません。
 また、貸し渋り対策は、これらの技術的小手先の手法では対応できません。根本的には、経済戦略そのものを明確に打ち立てて初めて解決する問題であります。総理は、小手先のびほう策によりますます事態を悪化させていることに思いが至らないのでありましょうか。
 我々は、まず第一に当面の不良債権処理を完全に乗り越えること、そして次に金融ビッグバンを成功させること、その上で財政再建を達成させる、この順序が極めて大切であると主張してまいりました。当面は財政デフレ政策を断じて行ってはならないのであります。今財政面で重点を置くべきは、公共事業の地方主権への転換など、まさに構造改革をビルトインすることであります。
 さらに、国民の怨嗟の的となっている超低金利を是正するためにも、経済の立て直しが不可欠です。低金利政策も、せいぜい一年ぐらいであればカンフル剤としての効果がありますが、もはや深刻な弊害をもたらしております。金利や年金に頼る人たちを圧迫し、年金基金を破綻させ、民間生保の経営を圧迫し、税収をも落ち込ませ、経済をゆがめております。一刻も早く是正しなければなりません。
 しかし、何もしないで金利だけを引き上げることはできません。大事なことは、金利を上げられる状況をつくることであります。財政デフレ政策を変更しない限り、実現できないのではないですか。目先の財政赤字削減を優先させ、景気対策をすべて金融政策にしわ寄せしている橋本内閣の偏った経済政策のもとでは、超低金利の持続を余儀なくされるのではないですか。いつまで待てば超低金利を是正できるのでしょうか。お答えいただきたい。
 自由党は日本再構築のための構造革命の断行を提唱しておりますが、そのためには、何よりも経済の立て直しとその構造改革を優先すべきであると考えます。
 具体的には、民間支出主導型の三%台の自律的な成長軌道に戻す政策の実現であります。超少子・高齢化社会にあっても民間活力が最大限に発揮できる社会が実現し、世界経済との調和も可能となります。
 つまり、一つ、所得税、住民税の最高限界税率を六五%から五〇%に引き下げ、税率の簡素化、フラット化を初めとした大幅減税を実施すること。一つ、法人税の実効税率を一〇%引き下げ、四〇%にすること。一つ、規制の大胆な撤廃と緩和により、事前指導型の裁量行政から、事後チェック型のルール行政への転換を図ることであります。
 同時に、有価証券取引税を初めとする証券関係税制の廃止、土地税制の軽減、簡素化、NPO寄附金の所得控除制度創設を含め十兆円、中長期的には十八兆円の減税が日本の再構築のためには不可欠であります。財源はあくまでも行財政の徹底した構造改革と経済再建による租税の増収で十分賄えます。
 老後の生活設計が成り立たないことに国民の深刻な不安があります。病気や老後の不安は、消費マインドとも密接な関係があり、九兆円国民負担増に含まれている医療費の増大が生活防衛意識を高め、景気を落ち込ませた要因となっております。さらに、来年は年金の再計算の年に当たっており、作業の始まる本年は昨年以上に厳しく消費マインドが落ち込むことも予想されます。
 また、高齢になれば医療にお世話になる機会が多くなるのは当然であり、少子化のもとでその負担を若い世代の負担にのみ求める今のシステムでは、社会経済の活力がなくなるのは目に見えております。社会保障制度を含めた経済財政構造改革は、すべてを一体として行わなければなりません。
 政府が行おうとしている社会保障改革は、ナショナルミニマムをどう確保するかではなく、社会保険制度をどのように維持するかという視点しかありません。国民に負担増を押しつけるのみで、抜本的改革を先送りし、その場しのぎの対応しかとらない政府の政策では、国民に老後の生活設計を立てろという方が無理であります。総理はあくまで現状の社会保険制度に固執するおつもりか。大切なのは、社会保険制度の維持にきゅうきゅうとするのではなく、社会保障のナショナルミニマムの確保であります。
 我々は、社会保険のみで少子・高齢化社会を支えるという発想を脱却し、高齢者福祉の基本である基礎年金、高齢者医療、介護サービスの主要財源については安定財源である消費税をもって充て、制度の安定を図るべきだと考えています。また、消費税の使途を特定し、社会保障の給付と負担の関係を明確にして、国民の信頼を得られる安定した社会保障制度を創造すべきであります。総理の見解を求めます。
 さて、近年の政治家と官僚をめぐる腐敗、汚職事件は目に余るものがあります。そのために我々は、公務員倫理法の制定を強く主張し、法案としてこれを国会に提出いたします。政府・与党は、さきの国会のように我々の案を審議もせず握りつぶすことなく、成立に協力すべきであります。
 しかし、これは官僚のみの問題ではありません。自民党の有力幹部は共和汚職事件や石油利権汚職の関係で疑惑を持たれていますが、みずから証人として身の潔白を証明することもなく逃げ回っております。その姿勢を改めることがまずもって必要であります。
 また、大事なポイントは、モラルの低下だけでなく、構造的な問題にあります。すなわち、肥大化した省庁の権限、財源に群がる政官業癒着の利権構造に最大の原因があり、それこそ自民党が長年にわたって築いてきた利益誘導政治そのものであります。まじめに努力した人より、政治家や役人に陳情したり、裏で手を回し働きかけた人が得をする陳情政治、陳情行政にこそ問題があります。この構造を改めない限り、政治家、官僚にまつわる不祥事は今後も後を絶ちません。
 その意味において、利益誘導政治をなくすることが、腐敗、汚職をなくす第一歩であり、行政改革の第一歩でなければなりません。
 ところが、橋本内閣の閣僚や与党の幹部が、陳情なきところには予算をつけないとか、自民党議員の少ない県は予算配分で不利益を受けるなどと公然と恫喝しているではありませんか。
 総理、あなたが本当に行政改革をやろうというのなら、まず、政府・与党幹部のかかる行動こそやめさせるべきであります。(拍手)それなくして、幾ら行政改革、腐敗防止と言っても、だれも信用しません。
 また、行政改革ほど戦略的手法を必要とする問題はありません。特に、規制緩和の問題は、長い間その規制によって守られてきた人には厳しい試練を課すことになります。行政改革を成功させるためには、これらの人々が対応しやすくするための経済環境が不可欠であります。この意味においても、財政デフレで経済を失速させていては成功するはずはありません。
 行政改革の目標は、陳情政治や利権政治の温床ともなっている今日の裁量行政の仕組みを土台からつくりかえることであります。フリー、フェア、オープン、すなわち、公明正大、正々堂々、透明度の高い社会をつくることであります。また、民間や地方への過剰な介入を排除すること、政治家や役人に取り入るのではなく、自立した個人が自己責任を持って正々堂々と胸を張って活動できる社会、地方自治体が自由で透明で効率的な行政を行える社会につくりかえることであります。それによって初めて、政官業の癒着を断ち切り、利権政治をなくすことができます。
 大きな政府か小さな政府かの判断基準は、財政の規模や公務員の数の大小によるのではなく、民間活動への介入の度合いが大きいか小さいかが判断の基準になるべきであります。その意味で、我々は小さな政府を目指します。
 橋本内閣の行政改革には、哲学も戦略もなく、単なる機構いじりや看板のかけかえにすぎません。そのような行革では逆に構造改革を妨げるのみであり、行わない方がまだましであります。巨大官庁の誕生により、ますます権限、財源が集中し、チェックも困難となり、政官業癒着の構造は今以上に強化されるおそれさえあります。総理の見解を伺います。
 青少年の犯罪が多発しているなど、教育問題が深刻な課題となっております。
 橋本内閣は教育改革を六つの改革の一つとして挙げられておりますが、私は、橋本内閣にその資格があるか、疑うものであります。なぜなら、橋本内閣は青少年のお手本になっていないからであります。
 総理の中国人女性に関する問題のみならず、経済政策の失敗にみずから責任をとらず、一連の不祥事に対しても、政治家は逃げ回り、官僚にのみ罪を押しつけております。
 また、安全保障という国の根幹にかかわる政策で対立する自社両党が、政権維持のみを目的として、その根幹をないがしろにしたまま連立政権を組織していること自体が、我が国を品格のない無責任な国家とし、道徳的な退廃をもたらしているものだと言わなければなりません。(拍手)政権維持のためには何でもありという、無原則、無節操の風潮を社会に蔓延させているのではないですか。
 子供は大人の背中を見て育つといいますが、橋本総理は、国のリーダーとして、良心の呵責を覚えませんか。率直なお気持ちをお聞かせいただきたいのであります。
 また、教育は何を教えるかが重要であります。私は、人間としての基本、日本人としての基本、国際社会の一員としての基本を教えることをその出発点とすべきであると考えます。互いの尊厳を認め合うこと、誇り高くあっても傲慢ではない、謙虚ではあっても卑屈ではない、弱い者をいじめることはひきょう者のすること、こういうような基本的なことが幼児のうちからしっかりと教えられていないことが今日の教育問題を生み出しているのであります。総理は教育基本法を見直す考えはありませんか。
 また、私は、学校教育の場において国歌・国旗をないがしろにしていることに危惧を覚えるものであります。世界のいかなる国においても、その国のみならず、他の国に対しても国歌・国旗を大事にし、敬意を払うことは当然であり、国際人としての常識であります。オリンピックの表彰式の姿を見て、この感を深くした次第であります。
 戦前への反省の余り、我々は日教組などの偏向教育のもとで国際常識を欠く教育をしてきたという思いを持ちませんか。総理の見解を伺います。
 次に、外交・安全保障に関して質問いたします。
 まず、現下の重要問題となっておりますイラク情勢についてであります。
 総理はさきの施政方針演説で、国連特別委員会の査察が即時、無条件に実施されることが必要であり、外交努力を続けながら、米国を初め関係国と協調して対処する方針であると述べられました。外交努力をしても問題が話し合いで解決しない場合、米国の武力行使を支持するのか、その場合、総理は米国の武力行使の正当性をいかなる国連決議あるいはいかなる法的根拠に求めるのか、また在日米軍基地の使用を含む後方支援を提供するのか、それとも、さきの湾岸戦争同様、資金援助だけで済ませるのか、資金援助の場合、どのような枠組みで行うのか、仮に国際社会による制裁行動が行われる場合、我が国もこれに加わるのか等々について、明確な方針を内外に明らかにしていただきたいのであります。
 次に、日米防衛協力のガイドラインについてであります。
 我が党の小沢党首は昨年秋の臨時国会で、ガイドラインという、条約でもなければ法律でもない、閣議決定もしなければ両国の署名もない、そういう形で武力行使とそれに関連する行動がなし崩しに拡大されていく手法は危険であり、きちんとした安全保障政策の考え方、明確な行動規範、行動基準、原理原則を打ち立てていただきたいと申し上げました。
 しかし、今日なお、政府からそうした考え方の基本が明らかにならないばかりか、意図的に不明瞭な用語を駆使して本質論議を避けていることはまことに遺憾であります。そのこと自体が、まさに日米間の信頼をも損なうものであると言わねばなりません。
 政府は、新ガイドラインに基づく日本周辺事態にかかわる法整備をなぜ速やかに提案しないのか。さらに、日本有事の際の法整備と日本周辺有事にかかわる法整備は一体として行うべきが当然のことでありながら、これを分離しようという動きがあるのは一体何ゆえなのか。安全保障という国の根幹にかかわる問題を行き当たりばったりで進めることで、国の安全保障に本当に責任を果たすことができるのか。総理の御所見をお伺いいたします。
 次に、沖縄の基地問題についてであります。
 普天間基地の代替ヘリポート建設問題について、総理は知事の判断が重要だと繰り返し発言し、一方、知事は反対の意思表示を明確にいたしました。このことは、沖縄県知事との間に県内移転受諾の確約のないままに、米国政府に普天間移転を約束したことの矛盾が露呈したものと考えざるを得ません。それとも総理は、大田知事の不誠実をなじる以上は、事前に知事との間に確約があったと言うのでしょうか。明確にお答えいただきたいのであります。
 安全保障の問題は国が果たすべき基本的責務であり、その権限と責任を知事に押しつけている今の法体系に根本的な問題があるのであって、国が責任を持つ法体系が必要である、これは、昨年の沖縄特措法改正に当たっての小沢党首と橋本総理との党首会談で確認したはずであります。しかるに橋本内閣は、新たな法体系をつくることもなく、米軍基地の重要性について沖縄県民の理解を求める努力を積極的に行うこともなく、また、沖縄の痛みを全国民が分かち合うという見地からの青写真を示すこともありませんでした。
 普天間基地の移転ができなくなることは米国に対する約束不履行であり、我が国の国際的信用を大きく失墜させるものであって、橋本内閣の責任は極めて重いと言わなければなりません。沖縄県民の感情からすれば、沖縄県以外の地に代替施設をつくってほしいというのは当然の気持ちであります。この際、県外移設をも含めた抜本策を再検討すべきであると考えますが、総理の御所見を承りたいのであります。
 質問の最後に、農業問題について伺います。
 世界の食糧需給が中長期的に逼迫することが懸念されている中で、我が国の食糧自給率が先進国の中でも著しく低くなってきており、一方では、農業労働力の高齢化、農産物の自由化の進展に伴い、農業・農村の活力が低下し、意欲のある若手農業従事者も我が国の農業に明るい展望を持てなくなっております。
 今後、農業・農村の健全な発展を図り、安全な食糧を安定的に供給してほしいとする国民の期待にこたえていくためにも、農政の一大改革が急務であります。総理は、農業基本法の改正に当たって、我が国農業のあり方についてどのような哲学を持って農政の改革に取り組む決意なのか伺いたい。
 また、次期のWTO交渉を前にして、我が国農業の現状を踏まえ、政府としていかなる方針で対応するのか伺いたい。
 最後に、私が心に刻んでいる言葉に、「万死を出て一生の計をかえりみず国難におもむく」という言葉があります。この決意があって初めて本当の改革をなし遂げることができます。また、この胆力があって初めて事は成ります。総理は、言葉巧みに本質論を避け、当面をしのぐことに専心しておられる。国民の心を揺り動かす響きがないのも当然であります。
 総選挙後、私たちの公約を後追いして、六つの改革を打ち出された当初は、総理が本気でおやりになるなら我々は協力を惜しまないと言ってきました。それから一年余り、全くの期待外れに終わり、まことに残念であります。この際、橋本内閣の退陣こそが景気回復の道であり、日本再構築の第一歩であることを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 野田議員にお答えを申し上げます。
 まず、皆さんが主張をされたその提言を無視した結果、倒産や失業に苦しむ方々が出た、これについて良心の呵責を覚えないのかという質問がございました。
 消費税の税率の引き上げ、あるいは財政構造改革の推進などの一連の改革というものは、少子・高齢化の進展といった経済社会の構造変化や危機的な財政状況に対応したものであります。いずれの政策についても、その影響について否定するものではありませんし、その影響を受けた方々に対して申しわけないという気持ちがないのかと言われれば、それはあります。しかし同時に、この国の将来を考えたとき、必要な政策であると考え、重要な改革であり、妥当な政策判断であると判断をいたしました。(拍手)
 また、経済の見通しに関する御質問がございました。
 昨年来の我が国の経済の動向を見ますとき、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減が、確かに私どもが予想していたより大きなものでありました。それに加え、アジアの通貨・金融不安や我が国の金融機関の破綻による金融システムへの信頼低下などの影響もある中において、家計や企業の景況感の厳しさが個人消費や設備投資に影響を及ぼしております。
 政府としては、既に実施している緊急経済対策、特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な執行に努力することとしており、こうした取り組みのすべてが相乗効果を持って、我が国経済の力強い回復に寄与するものと考えております。
 また、税制についても数々の御意見をいただきました。
 平成十年度税制改正におきましては、時代の潮流変化と、また各般の構造改革に合わせて、法人課税、金融関係税制、土地税制等について、広範かつ思い切った措置を講ずることとしております。
 今後とも税制については、公平、中立、簡素という租税の基本的な考え方に立ち、経済社会の構造変化に対応して適時適切に、より望ましい姿を考えていく必要があると考えております。
 次に、平成十年度予算を撤回して再提出すべきであるという御指摘をいただきましたが、政府としては、現在御提案申し上げております平成十年度予算が最善のものであると考えており、九年度補正予算に引き続いて、これを早期に成立させていただき実施に移すことが何より大切だと考えております。何とぞ御理解を得たいと思います。
 補正予算の取り扱いのお尋ねにつきましては、財政法二十九条の趣旨を厳正に判断し、適切に対処してまいります。
 また、財政構造改革法と補正予算の関係についてもお尋ねがございました。
 財政構造改革法に定められた財政健全化の目標は、いずれも実績の数値であり、この観点から補正予算についてもその対象となるということは申し上げてきたとおりであります。財政の状況を踏まえれば、構造改革の必要は何ら変わるものではありません。同時に、経済金融情勢の変化に機敏に対応すること、国際状況に応じて財政、税制上の措置を必要に応じて講じていくことも当然のことだと私は思います。いずれにしても、政府としては現在御提出申し上げている平成十年度予算が最善のものだと考えております。
 また、財政構造改革に関する政策転換というお尋ねがございました。
 今申し上げましたように、これは二者択一の問題ではありません。今般の特別減税も金融安定化対策を初めとする施策も、こうした考え方のもとに、現下の状況に応じ断固たる対応をしようとしているものであります。
 その金融安定化策についてお尋ねもございました。
 金融三法制定時におきまして、信用組合の破綻が相次いで発生しておりましたことなどを踏まえ、その破綻処理について政府保証を措置いたしましたが、その後一般の金融機関にまで相次いで破綻が発生し、我が国金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない事態にきちんとして対応する必要が生じましたために、政府の責務として、十七兆円の公的資金を活用した預金の全額保護の徹底のための対応を講じました。
 また、十三兆円の公的資金を活用した自己資本充実策につきましては、経営の悪化した金融機関については対象とせず、個別金融機関の救済にならないようにする一方、破綻金融機関については従来から、その存続を許さず、経営責任などについて厳格な追及を行うとの方針で対応しており、いわゆる護送船団行政には陥らないよう措置がなされているとともに、自己責任原則のもとに、市場の基盤もより強固なものになると考えております。
 また、いわゆる貸し渋りへの対応についてもいろいろな御指摘がございました。
 現下の金融経済情勢を踏まえれば、金融機関の融資対応力を強化し健全な事業を営む中小企業などへの資金供給の円滑化を図ることは、我が国経済の喫緊の課題であります。そのためには、金融機関の自己資本の強化や金融システムの安定が重要であり、政府としては、でき得る限りのあらゆる方策を措置していくことが必要だと考え、種々の施策を講じております。
 次に、低金利政策についてのお尋ねがございました。
 現在の経済状況のもとにおきまして、低い金利が設備投資や住宅投資を助けているという面もありますが、低金利のもとにおいて貯蓄に対する利子が少なくなり、その影響を受けておられる方々に対してはお気の毒な状況にあることは議員も御指摘のとおりであります。
 いずれにせよ、そうした状況を解消するためにも、既に実施している緊急経済対策、特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な執行に努めること、そして平成十年度予算を一日も早く成立させていただくことが、景気の回復を図る上に重要なことであると考えております。
 公定歩合の操作が日銀の専管事項であることは申し上げるまでもありません。
 次に、社会保障について、その財源についての御質問がありました。
 今後、高齢化の進行などに伴い、社会保障に要する費用の増大が避けられない中であります。その財源を安定的に賄う仕組みとして、給付と負担の関係が明確であり、国民の御理解を得やすい社会保険方式を今後とも基本としていくことが私は適当だと考えております。
 いずれにせよ、将来の世代の負担が過重にならないように、世代間の公平や経済の活力への影響を考慮しながら、社会保険料、税、自己負担を適切に組み合わせていく必要があると考えております。
 また、利益誘導政治をなくすべきではないかという御指摘がありました。
 国の予算の配分、執行は、その政策目的などに照らして厳正かつ公正に行われることは当然のことでありまして、今後ともこの考え方に基づいて適正な配分、執行を行ってまいります。
 また、行政改革の目標についてのお尋ねがございました。
 行政改革の目的は、国の権限と仕事を減量し、簡素で効率的な行政、機動的で効果的な政策遂行を実現することであります。このために、国の果たすべき役割を根本から見直し、規制の撤廃、緩和、官民の役割分担の徹底、地方分権の推進を着実に進めております。
 政府の大小という議員の御論議に対しましては、これはいろいろな観点からの議論があろうと思いますけれども、自己責任原則と市場原理に立つ、自由で公正な経済社会を目指し、民間活動への介入を必要最小限にするということは、御指摘のとおり極めて重要なことだと思います。
 また、今回の改革は、規制緩和や地方分権、官民分担を徹底し、国の権限と仕事の減量を進めた上で、二十一世紀において国家が担うべき機能、課題に的確に対応すべく省庁の再編を行おうとするものであることを改めて申し上げます。
 次に、教育改革を語る資格があるのかという厳しい御批判をいただきました。
 私自身、本当に学校の成績がよかった方ではありませんから、また、いたずら小僧でありましたから、あるいは議員の御指摘のような思いが全くないと言いません。しかし、議員もおっしゃったように、子供は大人の背中を見て育つという言葉はそのとおりなんです。そして、大人が今何かをしなければこの子供たちの状況に改革を進めていくことはできません。であればこそ、本院においても、皆さん全員一緒に考えていただきたいと私はお願いをいたしました。(拍手)言葉の遊びの問題ではないと私は思います。
 そして、問題が深刻であり、教育という面からは形式的な平等主義から脱却をすること、個性を伸ばして創造性やチャレンジ精神を重視した教育を実現すること、そのために、知識を一方的に教え込む教育を改めて、みずから問題をつくり出し、みずから解決をしていこうというそうした子供たち、あるいは倫理観、責任感などを備えた人間を育てる教育への転換を目指していく。同時に、これはただ単に教育という言葉で教育現場にのみ責任を負わせるのではなく、家族や地域においても、子供たちの悩みをどう受けとめ、そしてどう子供たちの自立心を育てていくかを、親としてもまた先達としても考えていかなければならないことだと私は思っております。
 そして、教育の基本についてもお尋ねがございました。
 知育や徳育、さまざまな言葉が教育に求められております。そして、知育に偏ることのない、子供たちに対して人間としての基本的な倫理観や規範意識を身につけさせていくこと、同時に、正義やあるいは公正さを重んじさせていくこと、そして、他者への思いやりや豊かな人間性を備えていくこと、そうした問題が大切であることは御指摘のとおりでありますし、これは家庭も地域も学校も、皆が手を携えて一層真剣に取り組んでいかなければなりません。
 また、これからの国際社会に生きていく国民の基礎的なまた基本的な資質として、我が国の国旗・国歌はもとより、諸外国の国旗・国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることが重要であり、今後とも学校教育における指導の充実に努めてまいります。
 なお、教育基本法は、現行憲法の制定を受け、私どもが小学生のころ、教育の基本理念及び基本原則を定めたものであります。その見直しについては国民的な議論も必要であり、慎重に行われなければならないものと考えております。
 次に、イラク問題についてお尋ねがございました。
 米国は、現時点において武力行使を決定したわけではないと承知をしております。仮に対イラク武力行使が行われることになりました場合でも、どのような態様で行われるかは定かでない状況の中で、議員が提起をされましたような諸点について、断定的なことを申し上げることは困難であります。
 いずれにせよ、我が国は、外交的解決が最善であるとの考え方に基づき、イラクに対する働きかけ、関係国との緊密な協議を初め種々の外交努力を行っており、今後とも事態の推移を注視しながら対応してまいりたいと思いますが、今朝もアナン国連事務総長と小渕外務大臣の間に、イラクを訪問される前のアナンさんとの電話の会談が持たれたことを御報告をいたしておきます。
 次に、新ガイドラインに基づく周辺事態について御論議がございました。
 新指針に基づく法整備につきましては、この実効性確保に関し、昨年九月二十九日の閣議決定の趣旨を踏まえて、現在政府部内で法的側面も含め鋭意検討を行っているところであり、可能な限り速やかに検討作業を取り進め、所要の措置を講ずることが必要と考えております。ただし、現時点で法整備の内容、法案の提出時期等について具体的に定まってはおりません。
 また、安全保障に関するお尋ねでありましたが、議員からは行き当たりばったりというお言葉をいただきましたけれども、国の安全と繁栄を維持し、国民の生命と財産を守ることは政府の最も重要な責務であると認識しており、我が国の安全保障体制を一層堅固なものとするための努力を今後とも引き続き払ってまいりたいと思います。
 また、普天間飛行場代替ヘリポートについてのお尋ねがございました。
 政府としては、沖縄県も正式メンバーでおられる沖縄米軍基地問題協議会、普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会の場におきまして、検討状況等を御説明し、意見も伺いながら進めてきたところでありますし、私自身も大田知事とこれまで何度もお目にかかり、この問題について協議をしてまいりました。
 議員からは、不誠実をなじるという言葉を使われましたが、私は大田知事を、不誠実というような言葉を使ったことはございませんので、これは申しわけありませんが、私自身こうした言葉を使っていない、いつでもお目にかかるということも申し上げていることをこの場で申し添えさせていただきます。引き続き、県を初め地元の御理解がいただけるよう粘り強く取り組んでまいりたいと思います。
 また、県外移設等についてお尋ねがありましたが、今申しましたようなプロセスを経て、普天間飛行場は沖縄に代替施設を建設することなどを条件に返還が合意されたものであります。これは米軍の能力、即応性等を維持しながら返還を実現するために不可欠のものでありまして、移設する先が関連する部隊や施設から余り離れてはならないなど、やむを得ない事情にあることは御理解をぜひいただきたいと存じます。
 次に、農政の改革についてのお尋ねがございました。
 社会情勢の変化や国際化の進展に対応し、農政の改革が必要となっており、現在、食料・農業・農村基本問題調査会におきまして幅広い議論が進められております。
 調査会としての論点のポイントは幾つかございますけれども、この御議論を踏まえ、国民的な合意の形成を図りながら、農業・農村の発展と国民生活の向上を図るための新たな農政の指針をつくり上げてまいりたいと考えております。
 また、次期のWTOにおける農業交渉に対する方針についてお尋ねがございました。
 次期農業交渉は二〇〇〇年に行われることとなっております。我が国においては、その時点における我が国農業の状況や農政の展開方向を踏まえ、対応する考えであります。
 その際、食糧安全保障や農業の持つ多面的な機能についての我が国の考え方を十分主張してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(伊藤宗一郎君) 中野寛成君。
    〔中野寛成君登壇〕
#7
○中野寛成君 新党友愛の中野寛成であります。
 私は、統一会派民友連を代表し、橋本内閣総理大臣の施政方針演説に対して、若干の私見を交えつつ、質問を行います。
 二十一世紀までのカウントダウンは三年を切りました。冷戦構造の崩壊、旧ソ連、東欧諸国の民主化がクライマックスを迎えた九〇年代初頭に比べると、未来への希望の光は何となく輝きを失ったかのように思われます。
 世界大戦の危機はなくなりましたが、民族、宗教戦争はとどまるところを知らず、南北問題も未解決のままであります。地球規模での環境汚染が進み、人類全体の存亡をかけた対策が問われています。物質的に豊かな国ほど、人間関係が希薄となり、人間の心がむしばまれています。
 振り返ってみますと、十九世紀の自由放任、市場崇拝主義を反面教師として、二十世紀は経済より政治が前面に出た時代となりました。政治の過度な介入は、イデオロギー対立の激化、左右の全体主義の台頭、二度の世界大戦をもたらしました。二十世紀とは、戦争と平和、民主主義と全体主義、恐慌と繁栄、技術進歩と人間疎外が交錯した世紀でした。現代は、いまだこの矛盾から脱し切れず、かえって不透明感が増し、閉塞状況に陥った時代だと言えます。
 また、あわせて千年単位でも新しい時代が訪れようとしています。
 欧州では、紀元後一〇〇〇年を境に人々は一層現世的に生きるようになりました。多くの都市基盤が確立したのも十一世紀のことであります。ルネサンスを経て、人類が近代化をまっしぐらに歩んだのが十一世紀から今日二十世紀までの千年紀でありました。
 大胆な割り切りをすると、紀元の始まりから一〇〇〇年までは、人間が自然を神とあがめ、それにおののき支配されてきた千年であり、その後二〇〇〇年までは、人間が自然を征服したかのごとき思い上がった千年だったと表現できます。
 これから始まる二〇〇一年からの千年は、人間と自然が共存する、共生、友愛の時代にしなければならないと存じます。(拍手)
 経済学においても、これまで意識されなかった環境対策、エコロジーや、障害者の社会参加、ノーマライゼーションの思想を当然のコストとして取り入れていかなくてはなりません。
 我が国においても大きな歴史のうねりが見られます。
 右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列、終身雇用制度が揺らぎ、未曾有の経済金融危機が起こっています。安心、安全な社会の神話も崩れ、少子・高齢社会、累増する財政赤字への対応もままならない状況で、国民は不安な毎日を送っております。こうした事態を打開するためにも、今こそ、政治が国民の期待にこたえ、リーダーシップを発揮し、希望に満ちた新世紀を切り開かなくてはなりません。
 我が国の戦後の政治を振り返ってみますと、いかに政党間の政策論争が不毛だったかが明らかになります。政権与党は単なる与党マシンに徹して利益誘導に狂奔し、一部の野党は不毛な防衛、憲法論議に酔いしれてきました。その反動か、今日の政党間の論争は、健全なイデオロギーや思想をめぐる論争が欠落し、まさに何でもありの様相を呈してきているのが実情です。こうした、理念も哲学もない、優先順位なき相対主義の政治こそが、重要問題を先送りし、今日の危機を悪化させていると言わざるを得ません。
 政党や会派は、色のついた価値観を有してこそ正しい姿であると考えます。「偏見」を英語ではプレジュディスといいますが、語源のラテン語では前もっての判断という意味であります。脱イデオロギーではなく、健全なイデオロギーの再構築こそが求められております。正しい「偏見」を持つ勇気こそが政党の存在理由を確固たるものにし、健全な議会政治を発展させることになると確信いたします。
 私たちは、自民党の多くの方々や野党の一部が標榜する自由放任、弱肉強食に通ずる社会を目指す動きとは一線を画したいと考えております。
 英国、米国、ニュージーランドなどで行われた大胆な経済改革は、なるほど不況克服、社会の活性化を実現しました。今、一番の好景気に沸いているのはこれらの国々であります。しかし、レーガン、サッチャー政権が推し進めたこの新古典派理論を基本とする諸政策は、光だけでなくて影をももたらしました。貧富の格差拡大、企業内のリストラ、福祉の切り捨てなどを加速させたことも事実であります。
 我々の経済政策も、市場原理を最優先することを前提としています。しかし、私たちは同時に、適正な富の配分、公正、透明な競争確保、環境との調和、完全雇用実現等に資するシステムの確立については、頑固なまでのこだわりを持ちたいと考えております。ルールなき競争は弱肉強食に終わります。安定した社会を築こうとするなら、友愛の精神を忘れた改革であってはなりません。
 外科医の座右の銘に「鬼手仏心」、鬼の手、仏の心という言葉があります。行政改革、規制緩和は進めなければなりませんが、変化のとき最も犠牲になるのが、中小零細企業者、労働者、年金生活者、障害者、子供などの弱い立場の人々です。改革は一種の外科手術です。手術は、患者を生かすため、そして体力をつけてからという心が必要です。鋭いメスと技術だけでなく、患者を生かす仏心がなければ手術は成功しません。このような漸進的な改革を追求する政治こそが、自由な個人と公正な社会が国民相互の友愛の心に支えられ、国民の安心と安全が保障される世の中を実現できると考えます。
 ここで、今からおよそ七十年前の世界大恐慌の中からいち早く立ち上がった北欧諸国の例を思い出します。社会保障制度、労使間の調整ルールを確立し、失業、老後、病気の不安を解消したことが消費を活性化させ、最終的には長期の経済的繁栄をもたらしたものと言えます。
 時代は移り、それらの国々も国民負担率が高くなり、大胆な改革を余儀なくされています。理想の国ともてはやされたスウェーデンも、今や、福祉のやり過ぎで活力を失った国との反面教師として言及される方が多くなっています。
 しかし、それでもなお私は、それら民主社会主義勢力が追求してきた路線にやはりこだわりを持ちたいと考えています。この際、二大政党制の一つの軸として、私が提示した民主、調和を重視するいわば民主友愛党が存在し、一方、保守路線を目指す勢力が自由競争による進歩を掲げていわば自由進歩党をつくることによって、政治をわかりやすいものにし、国民の政治に対する信頼を取り戻すことにつながると確信をいたします。
 総理は、世界と日本の一大転換期に当たり、いかなる理念を持って日本の危機を克服し、いかなる日本の未来を構築されようとしているのか、お述べいただきたいと存じます。
 橋本内閣が誕生して以来、二年以上の歳月が経過しました。この間を振り返って言えますことは、内閣が犯した数々の失政によって国民生活はどん底に陥り、橋本総理が宰相の地位に居座り続ければ国民がますます不幸になるだけだということであります。
 内閣の最大の失政は、未曾有の経済金融危機をもたらしたことです。
 橋本内閣は、庶民や民間企業の切実な声に一切耳を傾けず、景気は回復基調にあるとする官僚エコノミストの大本営発表を信じ込み、対策を後手後手に回してきただけでなく、国民に消費税アップを初めとする約九兆円の負担増をもたらすデフレ予算を強行し、ようやく出かかった景気回復の芽を摘み取り、経済危機を拡大してきました。
 また、橋本内閣は、バブル投資に狂奔し、預金者のいない住専に国民の税金を投入し、金融機関の不良債権の現状をひた隠しし、預金者保護、金融システムの抜本的改革という本来的課題を先送りし、いたずらに金融危機を拡大してきました。
 もはや、橋本内閣に日本経済のかじ取りを任せることはできません。本来なら、三塚蔵相だけでなく、総理こそ辞職するべきでありました。
 総理は、私がやめれば景気が回復し、株価が上昇し、すべてがよくなるなら即刻でもかわると答弁されておりますが、現に三塚蔵相辞任は、株式市場における買いの材料となりました。市場は正直です。橋本総理が退陣することこそ、最大の景気対策です。この場で、総理に総辞職を求めます。
 政府が九七年度補正予算とともに成立させた二兆円規模の所得税、住民税の特別減税だけでは、今日の経済金融危機を克服するには不十分であります。また、政府が、預金者保護だけでなく、金融機関のためにも公的資金を投入する処理策の成立を強行したことは、我が国の金融市場に対する信頼をかえって損ねるものと言わざるを得ません。
 自民党が近々決定する追加景気対策には、担保不動産の証券化商品を公的資金で買い取る施策が盛り込まれると報じられていますが、まさに安易なびほう策と言わざるを得ません。
 さらに、平成十年度予算案に関連して、自民党幹部、政府要人が大型補正予算編成にたびたび言及していることは、まさに無責任な政策転換そのものであり、本予算が欠陥予算であることを証明するものであり、平成十年度予算案は撤回し、根本的に修正して出し直すべきであります。早いにこしたことはありません。
 さて、今日の経済金融危機を解消し、中長期的に財政再建を進めるためには、経済政策と財政政策を有機的に結びつけた斬新な施策の断行が必要であります。そのためには、財政構造改革法を一時凍結し、目標二〇〇三年を数年ずらすとともに、今世紀の残された時期に経済再建を達成し、まず国民生活を立て直すべきです。
 経済立て直しのためには、あくまでも民間企業の競争力、個人消費の活力を引き出すことが先決です。最高税率の引き下げなど税率構造の簡素化を中心とした所得税、住民税減税で約三兆円、企業の国際的競争力を引き出すための法人関係税の減税で約二兆円、住宅などローン利子控除制度の導入や有価証券取引税の即時撤廃等で一兆円、まず、以上の総額六兆円規模の恒久減税の実施を求めます。
 また、公共事業については、洗いざらいメスを入れ、質、量ともに大胆に見直すことが不可欠です。かつては財政赤字に泣いた米国も、今や財政事情が好転し、早ければ九八年度中にも財政均衡を達成しそうであります。好景気による税収増に加え、冷戦終結による軍事費削減が追い風となっております。軍事大国の米国が軍事費削減によって財政再建を達成したとすれば、土建大国の我が国は、公共事業の大胆な見直しで財政健全化を図るべきです。
 政府が行っているような単なる予算の圧縮や事業の先送りではなく、中央の政治家や霞が関の役人までが一々地方の事業に口を挟む構図を見直し、公共事業の仕組みを丸ごと変えなければなりません。
 私は、民社党時代に第二交付税制度を提言いたしましたが、今こそ、この政策を実現するときだと考えます。国の公共事業の範囲を最小限度にし、地方自治体に公共事業関連の補助金を一括して交付すべきです。地方自治体は独自に計画を立てて、地域の実情に応じた事業に取り組む仕組みをつくります。これを実現すれば、陳情合戦、政官業癒着、財政経費膨張などの諸問題を解消することができます。また、地方分権の推進、新産業創造、雇用創出にもつながりましょう。このような努力なくして、国鉄長期債務処理法をつくり、民間会社JRに新たな負担を求めるなどは、断じて許されません。
 以上の我々の提言に政府はどうこたえるのか、総理の見解を求めます。
 次に、社会保障制度改革について伺います。
 今、国民は、老後の不安、病気になったときの不安、失業の不安におびえています。これらの不安を解消するには、国民生活のセーフティーネットとしての社会保障の役割と機能を確立し、二十一世紀の福祉社会の姿を明確に国民の前に示す必要があります。
 しかし、総理が今進めている医療保険制度改革のような、場当たり的で国民にのみ負担を押しつける改革では、生活の不安と制度に対する不信は増大するばかりです。
 去年九月に医療の保険料や自己負担が引き上げられて以来、診療取扱件数が落ち込み、受診率が大幅に低下しています。財政のつじつま合わせを優先させる政府は、してやったりと思っているかもしれません。しかし、医療は早期発見、早期治療が大原則であり、自己負担増により受診の意欲をなくさせ、疾病を悪化させてしまった場合は、最終的な治療には多くの費用がかかることを肝に銘じるべきです。また、身長が伸びない成長ホルモン分泌不全性低身長症への公費負担圧縮も、その一例であります。
 また、年金に対する国民の不安感も広がっています。ある世論調査によれば、年金制度を信頼していない人は過半数に達し、二十代では六七%にも上っております。国民年金についても、対象者のおよそ三割が未加入、免除となっております。国民皆年金の制度そのものが大きく揺らいでおります。
 さきにその成立が強行された財政構造改革法では、公共事業に補正予算という抜け道を残し、ひとり社会保障費を圧縮することが主目的になってしまっているのではありませんか。その昔、厚生族のドンと言われ、社会保障に強かったはずの橋本龍太郎先生は今やいずこ。総理、あなた自身の二十一世紀への社会保障ビジョンはどこにあるのでしょうか。明快な見解を求めます。(拍手)
 次に、雇用問題について伺います。
 今我が国の雇用情勢は深刻な状況に陥っています。昨年十二月でも、完全失業率は三・四%と過去最悪の水準にあり、政策不況による企業倒産が広がっています。昨年一年間で十三万人を超える人々が路頭に迷ってしまったのです。
 こうした事態を打開するためにも、新産業・雇用創出、職業訓練、情報提供の三点セットが有機的に結びついた雇用対策を実施しなければなりません。
 まず、エコロジーやノーマライゼーションを重視した経済システムの構築に資するよう、環境、エネルギー、住宅土地、情報通信、医薬品、流通、輸入などの分野に集中して、経済的規制撤廃や投資減税を実施し、新産業創造、雇用創出を促進するべきであります。
 同時にまた、これまでの我が国経済を支えてきた物づくり産業を育成することが不可欠です。ものづくり基盤技術振興基本法の早期制定を図り、我が国の基幹産業である製造業が強い牽引力となる内需主導の経済成長の達成に努めるべきです。
 さらに、新しい時代の要請にこたえるきめ細かな雇用対策が必要です。まず、公的職業訓練を拡充するとともに、雇用についての情報ネットワークを整備し、新卒者を含めた求人、求職が出会う多様な場を整備すべきです。また、技能育成、継承等を目的とした産業技能労働大学の創設、熟練技能者、技能検定合格者等を登録する熟練技能労働者バンク開設等を提唱いたします。
 また、女性が働きやすい職場づくりを推進するためにも、育児休業給付の拡充や、産前産後休暇の延長など、仕事と家庭が両立しやすい労働条件を確立すべきです。さらに、児童手当の拡充、延長保育など、多様な保育サービスを促進するエンゼルプランの着実な実行を図り、子育て支援のための公的支援策を拡充すべきであります。
 総理の見解を伺います。
 次に、深刻な教育問題についてお尋ねいたします。
 今、我が国の教育は大きな壁に直面しております。高校進学率は一〇〇%近くに達し、社会全体から見れば教育は国際的にも高い水準に達しています。しかし、受験戦争の激化、登校拒否やいじめの増加、家庭の崩壊など、子供たちをめぐる状況は日に日に悪化しているのが現状です。
 神戸の中学生による残虐な殺人事件の記憶もさめやらぬまま、少年によるナイフやエアガンを使った犯罪が多発しています。犯罪を犯す子供はもちろんのこと、普通の子供たちもストレスを感じ、悩み抜いております。
 また、学力ではトップの者を幹部に置いている大蔵省が汚職まみれになっていることも、偏差値教育の行き詰まりを示すものと言わざるを得ません。
 ドイツの哲学者カントが、教育は、人間に課することのできる最も大きい、かつ難しい問題であると述べているように、今日の我が国の教育問題を一朝一夕に解決できるような処方せんを見出すことは確かに困難であります。しかし、教育問題については、試行錯誤をしながらも、粘り強く取り組んでいく以外にありません。
 子供たちに明るい未来を約束する教育を進めるためには、五つの切り口があると考えます。
 一つは、多様な選択肢を認めるやわらかな教育システムの確立であります。中高一貫教育や社会人大学建設を推進するとともに、私学を学校教育の重要な柱と位置づけて、助成制度や奨学金を拡充することです。子供の得意分野や好きな分野を見つけて、それを伸ばすことに全力を注ぐべきです。
 二つは、過度な受験競争の見直しです。単に暗記能力を見るのではなく、自分なりの見解をまとめる能力を若いころから身につけさせる教育が必要です。画一的な履歴書ではなく、自由な履歴書を普及させて、採用先が学歴よりも個々人の能力や適性を評価できる環境整備も必要です。
 三つは、教師の質向上であります。社会から尊敬される教員の採用、養成、研修を図るためのシステムが不可欠です。教員を他の分野から中途で採用する仕組みも必要でありましょう。
 四つは、友愛の心を育て、人格の向上に資する教育の普及です。ボランティア、郷土芸能、環境問題などにかかわる教育に重点を置くことです。また、子供たちの悩みを聞いてあげる機会を多くつくらなければなりません。
 五つは、日本国やその歴史、文化に誇りを持たせる教育です。長野オリンピックに見られるように、君が代や日の丸も若い人たちは自然に受け入れております。健全な愛国心を涵養することは当然のことであります。自虐史観と言われるような自国の歴史の汚点ばかりに重点を置いた歴史観には賛同できません。過ちも犯したが、先代の日本人が立派に生てきたからこそ今日の日本があるのだということを子供たちに伝えるべきであります。
 総理の御所見を求めます。
 次に、行政改革についてお尋ねいたします。
 橋本総理は、火だるまになってでも行革を推進すると公約されましたが、政府が提案している中央省庁再編案は、文字どおりの単なる再編、看板のかけかえとしか言えないものであります。
 これからは、お役所が何でも面倒を見るという公助の時代を乗り越え、確立された個々人が競い合いながら生きる自助を支援しつつも、ともに他の存在と尊厳を認め、助け合っていくという共助の社会を築く必要があるのではないでしょうか。そのためにも、宗教や労働団体にも広がりを持つボランティア、NPOの育成が求められます。
 あわせて、しなやかな適正規模の中央政府をつくっていかなくてはなりません。同時に、中央が地方を完全にコントロールしてきた仕組みを改めなければなりません。道州制や基礎自治体制度を視野に入れた地方分権の確立もなく、中央省庁を組みかえるだけの政府案は全く意味がありません。
 また、相次ぐ金融不祥事、硬直的な財政運営を正すためにも、大蔵省の根本的解体を前提とした改革がなくてはなりません。政府は、単に大蔵省を財務省と名を変えて温存しようとしています。財政と金融の完全分離、内閣主導の予算編成体制の確立を盛り込んだ大蔵省改革の実現を求めます。
 さらに、今後、民の力を生かそうとするとき、避けて通れないのが情報公開であります。
 国民が行政の実態を知り、納得し、協力してこそ、持てる力が発揮されるものと考えます。今般の相次ぐ大蔵不祥事も、金融行政が不透明な中にあったからこそ起こったのであります。政府の進めようとしている情報公開は、その対象機関、文書等も極めて限定的です。政府は、国民に信頼を求める前に、まず国民を信頼すべきです。
 事実、大蔵省は、都市銀行など大手銀行、地方銀行、第二地方銀行の回収不能債権等の総額をおよそ七十七兆円と公表しましたが、そのとき、社会がパニックになりましたか。そのような現象は全く見られませんでした。国民は賢明であります。原則公開、例外非公開を基準とし、非公開情報もできるだけ一定期間の経過後に公開とする情報公開法を早期に成立させるべきだと考えます。
 総理の見解を伺います。
 次に、外交・安全保障問題についてお伺いいたします。
 日本の外交・安保政策を考えるに当たって、日本は海洋国家であるという地政学上の視点を無視するわけにはいきません。島国であることは、かつては閉鎖社会の原因となりましたが、今や、空や海、情報通信を通じて、それがかえって利点に変わっているのであります。
 作家の塩野七生氏は「海の都の物語」の中で、ベネチア共和国のような海洋国家は脆弱であり、こうした国家の繁栄を永続させるには、統治能力にすぐれた政治体制と国民の大いなる士気が必要だと説いています。
 翻って、我が国の実情はどうでしょうか。毎日のように報道される政官財トップのスキャンダル。統治能力にすぐれた政治体制とはほど遠い状況にあります。残念ながら、まさに亡国の感さえ禁じ得ません。
 しかしながら、冷戦終結から七年、我が国を取り巻く国際環境は大きく変化し、日本の外交・安全保障政策は大きな政策転換が迫られております。にもかかわらず、橋本総理の言動には、新たな時代に対応した外交・安全保障政策を構築しようという気概が全く見られません。
 その第一が、普天間代替ヘリポート問題の混迷です。
 そもそも普天間ヘリポート移転は、SACOにおいて橋本総理が率先して米国と公約したものであります。にもかかわらず、このような混乱を招いたのは、橋本総理の一国の総理として安全保障問題に対する無責任さを露呈したものであると断ぜざるを得ません。果たしてあれは単なるパフォーマンスだったのでしょうか。私は、このような総理の責任放棄ともとれる姿勢が日米間の信頼関係に深刻な影響を及ぼすことを危惧します。その真意をお聞かせいただきたい。
 また、普天間飛行場については、今後五年から七年以内に移設することとしておりますが、総理は何年をめどに移設しようとしているのか、具体的年次、期限をお示しいただきたい。
 この際、代替ヘリポートについては海上施設案を最善の策としておりますが、この案は沖縄県民の意向をどのように反映して総理は提言なさったのか、その証左はないのであります。その策定の経過と、海上施設案以外の可能性については今後全く検討する余地はないのか、総理の所見を伺います。
 第二に、日米防衛協力のための指針、いわゆる新ガイドラインが作成されたにもかかわらず、橋本総理の施政方針演説では、このガイドラインのもとでどのような法律を整備しようとしているのか、その法案の大枠さえも明示していないことであります。少なくともこの法案の骨子と日程は、今この場で示すべきです。
 新ガイドラインは、冷戦後の安全保障体制の構築を目指すとともに、九一年の湾岸戦争や九四年の北朝鮮のIAEAの脱退表明などを踏まえ、周辺事態という新たな概念が導入されております。当然ながら、新ガイドラインを実効あるものにするためには法整備が必要であります。この法律案をつくるには、周辺事態の概念を明確なものにしなければ、関係省庁での作業ができません。
 総理は、周辺事態とは地理的概念ではなく、事態の性質に着目した概念であると述べておりますが、事態の性質とは具体的にどのような事態を指しているのか。また、総理は、周辺事態の考え方について関係省庁にどのように指示し、立法作業を行っているのか、その具体的内容をお示しいただきたい。(拍手)
 第三に、イラク情勢と我が国の対応について伺います。
 新ガイドラインでは、周辺事態を「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」としておりますが、イラクが核ミサイル、生物・化学兵器の大量破壊兵器を開発し、隠し持っていること、それに対する査察を拒否していることに対する米軍等の攻撃が開始された場合、これは周辺事態なのかどうか、総理の見解を求めます。
 既に、ドイツやカナダなど多くの国がアメリカへの協力を表明する中、日本政府も外交的解決が最善の策としながらも、米国の武力行使を容認する姿勢を表明しております。しかしながら、武力行使が発生した際、政府はどのような協力を行うのかについては全く触れておりません。九一年の湾岸戦争において、政府の対応のおくれが、哲学のなさが国際社会における我が国の信用を損ねたことは周知の事実です。このような事態を再び起こさないためにも、総理は日本国としてできることは速やかに表明すべきであります。総理の所見を伺います。
 第四に、橋本総理の言動には、外交・安保問題について、超党派で国民的な議論を展開しようという誠意が全く見られない点です。
 外交・安保論争は水際までと言われます。安全保障政策を政争の具にした不幸な歴史が五五年体制であり、その中でいかに不毛な論議が繰り返されてきたか、いかに安全保障論議がグローバルスタンダードとはほど遠い空疎なものであったかは、内外の多くの人の知るところです。ガイドラインのような日本の安全保障の根幹にかかわる論議を、なぜ橋本総理は避けるのか。それとも、総理は、日本の安全保障政策より自社さ連立政権の安全保障を優先するというのでしょうか。
 第五に、ナショナルインタレスト、いわゆる国益の問題です。
 一般に国益には、安全保障、経済的繁栄、国家としての威信の三つがあると言われます。国家とは、経済的繁栄のみならず、その国の安全保障、国家としての威信を保持すべきものです。しかしながら、橋本総理の言動は、英国大衆紙への謝罪文掲載、北京市公安局女性との交際疑惑に見られるように、日本国の国家としての威信、矜持をおとしめるものです。国民の納得する説明を求めます。
 最後に、私は、政治家、官僚、財界における倫理観の欠如の問題について申し述べます。
 故高坂正尭氏は、その著書「文明が衰亡するとき」の中で、ローマ市の衰亡の一因を「道徳的、政治的活力の弱体化にあった」としています。
 しかるに、総理の行革、沖縄、ガイドライン、景気対策などを見ておりますと、すべて、頭で大きなことを言い、最後はすべてがしりすぼみになります。これでは、あなたの内閣は、橋本龍太郎内閣ではなく、まさに橋本龍頭蛇尾内閣であります。
 ましてや、わいろを受け取り有罪となった人物を大臣に任命したり、脱税、収賄容疑で起訴された人物からやみ献金をもらった閣僚や自民党幹部、さらには借名口座で不当に利益を得ていた自民党議員への責任追及、処断に何ら指導力を発揮しない人物が総理を続けることは許されません。我が国の衰亡を食いとめるため、倫理観と実行力を欠いた総理にはやめていただく以外にありません。
 また、その後も、自民党内のたらい回し政権であってはなりません。橋本総理退陣後、選挙管理内閣をつくって、国民に信を問うべく総選挙を実施すべきであります。
 国民に信頼され、世界から信頼される政党政治、品格ある国家、統治能力にすぐれた政治、大いなる国民の士気に満ちあふれた日本を実現するために全力を尽くして邁進する決意を述べ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 中野議員にお答えを申し上げます。
 冒頭、議員御自身のお考えを述べられながら、理念についてのお尋ねがございました。多少長くなることをお許しをいただき、あえてお答えを申し上げたいと思います。
 昨日も申し上げたことでありますが、私は現在を、明治維新、そして敗戦に続く第三の転換期と位置づけてまいりました。しかも、第一と第二の転換期には外圧というものがありましたけれども、今日、我々は手本を持たず、新たな展開を自分たちの手で切り開かなければなりません。
 我が国は、敗戦後、経済的な豊かさと繁栄を追求してまいりましたが、今日、そのような従来のシステムが社会経済のさまざまな局面でひずみや制度疲労を起こしております。そして、子供たちのさまざまな問題に見られるように、人の心、気持ちというものも大変難しくなっております。まさに、こうした、戦後続いてまいりました、いわば今日を築く基となりました社会経済システムを変革し、二十一世紀にふさわしいシステムへ展開をしていかなければなりません。
 他方、国際的には、冷戦後の国際構造、大きな国際秩序の変化が生じ、地球環境問題など新たな地球的規模の課題に対する対応も、我が国の国際的な地位にふさわしいものを求められるような状況になっております。いわば国内の状況も国際社会の中における日本の立場も、いずれにしても我々は大きな歴史的な転換点を迎える、そう申し上げて間違いがないものと思います。
 私は、豊かな国民生活を実現していくためには、規制の緩和や撤廃を通じて市場原理が機能する範囲を拡大していくこと、そして、経済的資源を効率的に利用していかなければならないと考えております。その一方で、経済活動を市場原理にゆだねた場合、格差の拡大が生じかねないことも事実であります。
 しかし、社会全体が右肩上がりの成長を期待することが困難なときにおいて、過度に結果の平等を尊重することは、ややもすると社会全体の活力の停滞につながりかねない危険もあります。むしろ格差の拡大というものを積極的に受けとめながら、そのためのセーフティーネットも用意をし、国民が皆、夢やチャレンジ精神を抱けるような活力ある社会を実現していくことが肝要だと思います。
 ただ、市場原理が完全というわけでは決してありません。独占の支配、その弊害は当然であります。そして、市場の失敗と言われる事態も起こり得るわけであります。先ほど申し上げましたように、セーフティーネットが適切に準備されていなければ、国民の間にいたずらに不安を招き、そうした危険性も我々は否定することはできません。だからこそ社会保障構造改革を進めて、今後ともにセーフティーネットがきちんとワークするような仕組みをつくっておかなければいけない、そう考えております。
 さらに、市場原理が有効に機能するためには、市場に参加する主体に対する情報の適切な提供、あるいは市場のルールが遵守されなければなりません。そのためにも、市場原理が機能する範囲を拡大するための規制の緩和、撤廃と並んで、市場原理を完全に機能させるための制度的インフラを積極的に整備していくことが必要だと思います。
 同時に、時として市場が行き過ぎなどによって混乱を生じさせることもあります。金融システムに対する信頼感が低下するといった状況のもとにおいては、必要な緊急措置を講ずることによって、システム安定化の確保、いわゆる貸し渋り問題への対応も必要になります。
 さらに、経済が国際化してきている今日、通貨や経済の変動に対して、各国が適切なマクロ経済運営や市場の信認回復に努力しているだけではなく、国際的な枠組みの中で国際機関や関係各国と積極的に連携していくことも従来以上に重要であります。
 私としては、こうした認識に基づいて、市場原理を尊重しながらも、議員が言われる単なる弱肉強食ではないシステム、高い教育水準、ハイテクを支えている技術、技能など、我が国の経済社会を今日まで支えてきているそのすばらしい点を生かしながら、創造性と企業家精神の発揮ができるような、これをはぐくむような日本のシステムをつくっていきたい、そのために努力をしたいと考えております。
 議員からは、総辞職のお勧めをいただきました。
 政府としては、既に実施しております緊急経済対策、特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な執行に努めることにしており、こうした取り組みのすべてが相乗効果を持って、我が国経済の力強い回復に寄与するものと考え、全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 また、十年度予算を修正して再提出すべきであるという御指摘もいただきました。
 今申し上げましたように、私たちは努力をしているさなかであります。その中におきまして、さまざまな施策を盛り込んでおります平成十年度予算を最善のものとして国会に御提示を申し上げており、九年度補正予算に引き続いて、これを早期に成立をさせていただき、予算の切れ目を生じないようにしていくことが何より今必要と考えておりまして、一刻も早い成立に向けて何とぞ御理解を賜りたいと思います。
 また、財政構造改革法を一時凍結し、国民生活の立て直しを急げという御指摘をいただきました。
 議員も財政構造改革の必要性は認めていただいており、その必要性が変わるものではありません。同時に、経済や金融情勢の変化に応じ、臨機応変の措置を講じて景気の回復を図る努力をすることも当然であり、二者択一の問題ではない、私はそう考えております。
 また、総額六兆円規模の減税についての御提言がございました。
 この実施には、後世代への負担の先送りである特例公債の大量発行を伴うという問題があります。また、我が国の租税負担率が欧州諸国に比べかなり低い水準にある中で、税負担のあり方としても問題があるように思います。
 次に、公共事業に関する補助金の一括交付について、かつて議員が主張されました第二交付税という制度、これに言及をされながら、一括交付についての御意見をちょうだいいたしました。
 すべての公共事業について、地方公共団体に財源を一括して交付をするというのは、多少私は問題があると思います。しかし、基本的には、国の事業を限定し、できる限り、個別の補助金などにかえ、適切な目的を付した統合的な補助金などとしていく必要があると考えております。
 次に、本来、社会保障とか福祉行政をおまえは専門にしていたではないか、社会保障構造改革をどうしようとするのかというお尋ねをいただきました。
 先ほども、大きく変わっていく社会の中で、国民の生活に対するセーフティーネットが必要だということを私は申し上げました。まさに社会保障の求めるもの、それは、少子・高齢化の進行に伴う国民の需要の変化に適切に対応すること、また、医療、年金、福祉などを通じて、給付と負担の均衡がとれ、かつ経済活動と両立し得る、効率的で安定した社会保障制度を確立することを改革の基本的な方向としてお示しをいたしております。こうした考え方に立って、引き続き、医療、年金など制度全般にわたる構造改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、一連の雇用についての御提言をいただきました。
 まず第一に、新産業創造、雇用創出についての御指摘でありますが、政府としては、既に運輸分野における需給調整規制を原則廃止することとし、電気通信料金を原則届け出制に移行するなど、御指摘の分野を含めまして、抜本的な規制緩和などを推進することを決定いたしました。さらに、各種の租税特別措置などによりまして、投資を促進する措置を講じておるところであります。
 また、ものづくり基盤振興基本法という御提言をいただきました。
 物づくり産業の育成は、議員御指摘のとおり極めて重要な問題と認識しており、政府としては、昨年施行されました特定産業集積の活性化に関する臨時措置法や地域雇用開発等促進法の活用や、優秀な技術者、技能者の確保育成のための施策の充実により、これに対応してまいります。
 また、公的職業訓練の拡充などにつきましては、公共職業能力開発施設における機動的な離職者、転職者の訓練の実施あるいは雇用情報提供機能を強化するためのネットワークの整備、理論と実践に通じマネジメントもできる人材の育成に向けての支援や、高度な熟練技能を継承するための事業などを行ってまいります。
 次に、仕事と家庭が両立しやすい労働条件についてのお尋ねがございました。
 これにつきましては、育児休業給付の活用促進に努めますとともに、多胎妊娠の場合の産前休業期間を延長するなど、今後とも、働く方が子育てをしながら安心して働くことのできる条件整備に積極的に取り組んでまいります。
 また、子育て支援につきましては、いわゆるエンゼルプラン、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」でありますが、この着実な推進を図っていくとともに、昨年改正されました児童福祉法に基づいて、子育てのしやすい環境の整備に努めてまいりたいと思います。
 なお、児童手当の拡充につきましては、さまざまな御意見があり、慎重な検討が必要であると考えております。
 政府としては、さまざまな規制緩和を初めとする経済構造改革や経済金融情勢に適切に対応するための施策を講じており、こうした取り組みが雇用状況の改善に資するものと考えております。
 また、子供たちの明るい未来のために、教育を五つの切り口から御提言をいただいております。
 多様な選択肢を認めるやわらかな教育システムの確立、これは今後、チャレンジ精神を持った子供たち、個性を伸ばし創造性を持った子供たちを育てていく教育の実現を図るためにも、学校制度の弾力化、多様化を進めていくということであろうと思います。
 中高一貫教育を導入し学校の選択肢を拡大していくとともに、社会人も高等教育にチャレンジできるようにする観点から、大学などにおける社会人の受け入れの促進、さらに私学助成や育英奨学事業の充実に取り組んでまいります。
 また、受験競争を見直して、入りやすく出にくい大学という御指摘をいただきました。各大学において、小論文、面接など、その能力、適性を適切に判定し得る選抜方法の多様化など入試の改善に既に努めておりますが、一層努力を願うとともに、進級、卒業に際しては厳格かつ適切な評価を行い、その教育機能を充実し大学としての責任を果たしていくよう取り組んでまいります。
 採用について、形式的な学歴にとらわれず、人物、能力本位の採用をしろ、これは企業にとっても合理的であり、子供たちが伸び伸びと育っていくためにも重要であり、積極的に取り組むよう企業側にも働きかけていきたいと思います。
 また、教員の資質向上につきましては、使命感を持ち、子供たちの悩みにこたえられるなど、現場の課題に適切に対応できる教員を養成する観点から、大学の養成カリキュラムの基準の改正を図りますとともに、人物重視の採用、あるいは指導力がある教員を育てるための研修の体系的な整備を一層推進をいたします。
 議員が特に指摘をされました中途採用につきましては、全く同感であり、すぐれた知識、技術を持つ社会人を教員に登用するための特別免許状制度の改善を図り、教育界への受け入れを進めたいと思います。
 人格の向上に資する教育、これは、豊かな人間性の形成は極めて重要な教育の一つであり、その育成に当たって、ボランティア活動あるいは環境に関する学習、スポーツ、さまざまな体験的な学習を重視していくことが大切だと思います。
 また、人間には強さや気高さだけではなく、弱さも醜さもあることを子供たちに伝え、悩みがあるときには安心して相談するよう、ふだんから語りかけるとともに、その悩みを親身に受けとめる環境をつくることも重要であり、ただ単に学校のみにとどまるものではないということを申し上げてきた一つのゆえんでもあります。
 歴史教育についても御提言がありました。
 子供たちが日本の歴史や文化を大切にし、郷土や国を愛し、日本人としての自覚と誇りを持って国際社会の中で生きていくことは極めて重要であることは御指摘のとおりであります。我が国の子供たちがしっかりとした歴史理解を持った日本人に育っていくよう、教育の充実に努めていきたいと考えております。
 我が国の将来を担う子供たちが、夢と希望を抱き、創造性やチャレンジ精神を発揮し、個性と能力を伸ばしていく、そのような社会をお互いに力を合わせてつくっていきたいものだと思います。
 次に、NPO育成についての御主張がございました。
 国際化や高齢化の進展など、我が国経済社会を取り巻く環境の変化に適切に対応していくためにNPOの活動が重要な役割を果たすものであることは御指摘のとおりであり、このためにも、現在参議院で御審議中のNPO法案が極めて重要なものでありまして、できるだけ早く立法府から行政府の手に渡していただけることを願っております。
 次に、省庁再編についてのお尋ねがございました。
 中央省庁等改革基本法案におきましては、中央省庁等の改革が地方分権の推進と密接に関係するものであるところから、地方分権の推進について、地方分権推進委員会の勧告を着実に実施するとともに、地方に関する行財政制度の改革についてもさらに本格的な検討を進めることとしており、中央省庁を組みかえるだけという御指摘は当たらないと考えております。
 また、財政と金融の完全分離、予算編成体制について御意見をいただきました。
 財政と金融の分離につきましては、先般、与党間で論議が尽くされ、その結果として合意が取りまとめられたところであります。
 また、予算編成体制の問題については、行政改革会議の最終報告におきまして、内閣のもとに経済財政諮問会議を置き、予算編成の基本方針等について審議するなどの指摘がなされております。
 政府としては、これら与党の合意並びに行政改革会議最終報告の内容を忠実に盛り込んだ中央省庁等改革基本法案を取りまとめ、国会に提出をさせていただいたところであります。
 また、情報公開法を早期に成立させるべきだという御意見をいただきました。
 この法律の制定は、主権者である国民の皆様に政策を評価、吟味をしていただく、政治と行政に関心を高めていただくためにも極めて重要なものでございます。政府は、平成九年度内に行政改革委員会意見に沿った情報公開法案を国会に提出できますよう、現在、詰めの作業を行っているところであります。
 次に、普天間代替ヘリポートについてのお尋ねがございました。
 普天間飛行場は、沖縄に代替施設を建設することなどを条件に返還が合意されたものであります。県内移設に御批判があることは承知をいたしておりますが、海上施設案は、沖縄県の負担をできる限り軽減しながら返還を実現するために日米間で最大限の努力を行った結果であり、地元の皆様の御理解と御協力を賜るように心から願っております。
 御指摘の期間、あるいはその他の御指摘がございましたが、御指摘の期間は、移転先地の選定、移設工事などに要する時間も念頭に設定をしたものでありまして、期間内の移設実現にこれからも引き続き努力をいたします。また、海上施設の追求を決めましたSACO最終報告の作成は、沖縄県を含む普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会などの場で、県の意見もお聞きをしながら進めたところでございます。
 自然環境、騒音、安全などさまざまなものを考慮し、現在の基地よりも大幅に規模を縮小し、しかも撤去可能な海上ヘリポート案、現時点における最良の選択肢と考え、今後とも地元の御理解と御協力を得るよう努力していきたいと考えております。
 次に、新ガイドラインに基づく法整備についてお尋ねがございました。
 指針の実効性確保に関しては、現在、関係省庁で法的側面も含めて鋭意検討を行っておりまして、可能な限り速やかに検討作業を取り進め、所要の措置を講じることが必要だと考えております。ただし、現時点におきまして、法整備の内容、法案等の提出時期等について、具体的に定まってはおりません。
 なお、周辺事態が、我が国の「平和と安全に重要な影響を与える事態である。」指針本文に記されているとおりであります。その周辺事態についてもお尋ねがございました。
 特定の事態が周辺事態に該当するかどうかは、事態の態様、規模などを総合的に勘案して判断すると従来からお答えを申し上げてまいりました。
 また、イラクに対する米軍の攻撃云々のお話がございました。これは仮定の問題としてお答えは控えたいと存じますが、いずれにしても周辺事態が、例えば中東やインド洋で発生することを現実の問題としては基本的に想定されておりません。
 イラク情勢に関連した協力についてのお尋ねもございました。
 米国としては、国連事務総長のイラク訪問を認めた立場の一カ国であり、現時点において武力行使を決定したわけではないと承知をしております。仮に、対イラク武力行使が行われることになったといたしましても、どのような態様で行われるか定かでない段階におきまして、御指摘の点につきまして断定的なことを申し上げるのは困難でありますが、いずれにせよ我が国は、外交的解決が最善との考え方に基づき、イラクに対する働きかけや関係国との緊密な協議を初め、さまざまな外交努力を続けてまいりました。今朝行われましたアナン国連事務総長と小渕外務大臣の電話会談もその一つであり、今後とも事態の推移を注視しながら適切に対処していこうと考えております。
 次に、安全保障論議についてお尋ねがございました。
 国の安全と繁栄を維持し、国民の生命財産を守ることは、政府の最も重要な責務だと認識しております。日米防衛協力のための指針のように、我が国の安全保障の根幹にかかわる重要な問題につきましては、これまでと同様、正確な状況認識を踏まえて議論を尽くしていただき、国民の御理解を得ながら必要な作業を進めていくことが重要だと考えております。
 次に、英国サン紙への私の寄稿について御意見をいただきました。
 これは、一月の日英首脳会談におきまして、ブレア首相から日英関係に関する寄稿を行ってはどうかという提案があり、サン紙が約四百万部という英国最大の発行部数を持つ影響力の大きい新聞であること、ブレア首相を初めとする与野党の政治家、閣僚も寄稿を行っておられることなどを考慮し、私自身の寄稿を行ったものであります。寄稿は、過去の問題も見据えながら、しかし、現在の良好な日英関係をさらに発展させること、さらには未来に向けた建設的な考え方を述べたものであります。
 次に、中国衛生部の通訳の方についてお尋ねがございました。
 私が中国に行き、また中国衛生部の要人が来日する機会に、中国衛生部の通訳として働いてもらいました。御苦労さんという意味で食事をごちそうしたことがございます。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
#9
○副議長(渡部恒三君) 不破哲三君。
    〔不破哲三君登壇〕
#10
○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、橋本首相に質問するものです。
 内閣支持率の低下が示すように、国民の間での政府不信の増大はとどまるところを知りません。これは決して偶然のことではありません。橋本内閣のこの二年間の失政、悪政の結果であります。
 あなたの内閣は、国民に何をしましたか。不況のもと、国民生活がただでも深刻な問題を抱えているときに、反対を押し切って消費税増税、医療制度改悪など九兆円もの新しい負担を国民に押しつけたのはあなたの内閣でした。その結果、わずかに見えていた経済情勢の回復の芽も断ち切られ、情勢は一挙に後退と悪化の道に引き込まれました。この状況を見て、全国から不況打開の声が沸き起こったが、あなた方は耳を傾けませんでした。
 ところが、金融業界に対する対応は全く違いました。拓銀、山一の破綻が起こったら、あなた方は、国民の税金三十兆円を投じて銀行を支援するという緊急対策をつくり、三日前、この関係法案を強行成立させました。国民の痛みに対する鈍感さと、金融業界の痛みに対する機敏さとは実に対照的ではありませんか。(拍手)
 今回の銀行業界支援策は、大企業、財界への奉仕ぶりをむき出しにした、過去に前例のないものです。関係法案が成立したからといって国民はこれを許すものではありません。しかも、この問題では、この一カ月間、あなたが言を左右にして答弁を避けた問題が三つあります。国民の前で改めて責任ある答弁を求めるものであります。
 第一は、銀行の救済に国民の税金は使わないとした一九九六年国会での公約の重みと、それを踏み破った責任をどう考えるかの問題であります。
 これは、その時々の情勢に左右される個別の政策での公約ではありませんでした。住専問題での国民の批判を踏まえて、今後の金融情勢の変動には金融業界の責任と負担で対応するというルールを公約したものでした。それを、必要なら幾らでも国民の税金を投入するという全く反対のルールに切りかえたのであります。この公約違反は特別に重大であります。
 この問題でのあなたの弁明は、その事実を認めず、情勢の変化、つまり予想しなかった金融危機がやってきたのだからやむを得ないというものでした。しかし、あなたが公約したのは、どんな状況でも税金は使わないというルールだったはずであります。それは政府自身が金融危機に対するアメリカの対応を先例として挙げたことからも明白ではありませんか。
 公約に反する政策転換が必要だと本当に思うのなら、そのことを正直に認めて、なぜ転換するかの理由を国会と国民に説明するのが民主政治のもとでの政府の義務であります。公約違反をしても政策転換をしても、その事実さえ認めないで済ますというのでは、だれが政治に信頼を寄せるでしょうか。明確な見解を求めるものであります。
 第二は、十分な体力を持つ金融業界への支援に、どうして国民の税金をつぎ込む必要があるかという問題であります。
 全国銀行協会の前会長は二カ月前に、年間の業務純益は八兆円ほどある、全体としては不良債権の償却は終わりに近づいていると言明しました。大蔵当局自身も一カ月前の予算委員会で、我が党の志位書記局長の質問に対し、金融機関は全体としては十分な償却財源を持っていると答弁したばかりであります。十分な体力があることを当事者も政府も認めている銀行業界に、なぜ国民の税金を投入する必要があるのでしょうか。
 しかも、銀行業界の経営ぶりの無法さと政府・大蔵省の深く底知れない関与とは、日ごとに国民をあきれさせております。その政府・大蔵省が、ほかならぬ腐敗と癒着の相手に三十兆円の税金をつぎ込むのですから、怒りの声が上がるのは当然ではありませんか。納税者である国民に対して納得できる答弁を求めるものであります。
 第三は、その銀行業界から、政権党である自民党が政治献金をもらい続けているという事実であります。
 派閥や個人を別として、自民党への銀行からの政治献金は、あなたが総裁になった最初の年、九六年でも三億六千万円、大蔵省と銀行業界との癒着が問題になっている九三年以後をとれば、四年間で四十三億九千万円にも及びます。
 今、銀行による接待漬けは国民の批判の的です。この腐敗を根絶するために、実効ある公務員倫理法をつくり、腐った癒着関係の入り込むすきのない、清潔で公正な秩序の支えとすることは、我が党はもちろん賛成であります。しかし、政府をつくっている政権党が銀行から献金を受けることは、接待と同じではありませんか。
 汚職で問題になっている接待は、現在検察が追及しているケースでは、それぞれ数百万円規模のものであります。ところが、自民党への献金は、その数百倍あるいは一千倍という規模に及びます。接待漬けとは、まさに自民党の現状そのものではありませんか。(拍手)公務員への接待は禁止するが、その公務員を指揮監督する立場の政権党が大規模な接待を平気で受ける、こんなことでどうして行政と業界の汚い関係を断ち切ることができるでしょうか。
 銀行業界だけではありません。公共事業ではゼネコン業界、薬害、薬価の問題では製薬業界など、いずれも行政との癒着が問題になりました。今でもこれらの業界は、九六年に、ゼネコン業界六億五千万円、製薬業界二億円と、自民党への政治献金の柱になっています。公務員への接待は行政をゆがめるが、政権党への接待は政治のゆがみとは関係ない、こんな理屈は、政府・自民党の周りでは通用したとしても、国民の間では絶対に通用しないことを肝に銘ずべきであります。
 言い逃れでごまかすのはやめ、企業・団体献金の禁止に踏み出すこと、その立法化に多少の時間がかかるとしたら、少なくとも行政との癒着が特に問題になってきた三業界、銀行、ゼネコン、製薬の三業界からの献金を直ちにみずから打ち切ること、これが民主政治の道理ではありませんか。その実行を強く首相に要求するものであります。
 あなたが銀行などの救援に専ら力を注いでいる間に、国民生活には重大な事態が進行してまいりました。最大の打撃を与えたものが橋本内閣の九兆円国民負担増の暴挙であったことは、今は議論の余地のない真実になっています。
 あなたがこの政策を提案した昨年一月の国会で、私は、歴代の自民党内閣でも一年に二兆円を超える負担増を国民に求めた内閣はただの一つもなかったことを示し、日本経済の今後に取り返しのつかない打撃を与えるだろうことも指摘して、消費税増税や医療制度改悪の撤回を求めました。
 あなたの答弁は、消費税率の引き上げなどにより年度前半は景気の足取りは緩やかとなるものの、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現され、持続的成長の道が開かれていくものと考えるというものでした。
 しかし、今起こっていることが、自律的回復や持続的成長などではなく、持続的悪化であることは明白であります。現時点に立って、九兆円負担増を実施したときの見通しが誤っていたことをはっきり認めるかどうか、まず伺いたいのであります。
 あなたは、施政方針演説で、景気悪化の原因をいろいろ挙げましたが、九兆円負担増が何をもたらしたか、政府の施策の総括だけは情勢分析から欠落させ、ただの一言もこの問題に触れませんでした。責任を問われることを恐れて、肝心の情勢認識を誤ることは、事態を一層深刻にするだけであります。
 今日の経済情勢の悪化に対して、最も直接的な、直撃ともいうべき影響を与えたのは、中でも消費税増税でした。政府の経済統計でも、個人消費支出は国民経済の規模の六〇%を占め、経済を動かす最大の力であります。国民生活を圧迫する政策はすべて消費支出を抑える方向に働きますが、中でも消費税の増税は、国民の毎日の売り買いに直接現場で響き、消費支出にブレーキをかける点で、まさに決定的でした。政府が見通しを誤ったのも、消費税増税の影響の重大さを見落とし、これを一過性のものと軽く見たところに大きな原因があったことは、既に明瞭ではありませんか。
 今、不況の進行の現状はまさに深刻であります。ここまで悪化した情勢を立て直すには、その引き金となった昨年の負担増以上の大きな力を出すことが必要であります。今こそ、冷え込んだ国民消費を上向かせるために、消費税率を三%に戻し、増税の負担を消費の現場から取り除くことを真剣に検討すべきときであります。私は、首相に対し、行きがかりにとらわれず、消費税引き下げを決断することを強く求めるものであります。(拍手)
 さらに、医療制度の改悪です。これが国民生活に及ぼした影響は、生命と健康にかかわる問題だけに、一段と深刻なものがありました。
 医療制度の面では、この十数年来、改悪また改悪の攻撃が続いてきました。中でも、昨年九月実施の改悪による国民の負担増は極めて大幅なものでした。健康保険の本人の負担は一挙に二倍に引き上げられました。通院患者の実態を現場で数字的に調べてみると、同じ治療を受けながら窓口での支払いが三倍以上、あるいは四倍以上になったという実例も数多くあります。
 重大なことは、そのために医療を必要としながら病院に行けないという受診抑制の傾向が広がり、そのことが全国的な医療統計にもはっきり出始めてきていることであります。全国の病院や診療所からは、治療中の患者が受診を中止したので訪問して診療を勧めたが、これ以上医療費は払えないと言って拒否されたとか、九月以後受診をためらっている間に病状が悪化して危険な事態になったなど、悲痛な訴えが私どものところにも無数に寄せられています。金のない者は医療にかかれない、こういう容易ならない事態が進んでいることを真剣に考えざるを得ません。
 私は、昨年、医療制度の面でも、国民への負担増という安易な道ではなく、製薬業界と厚生行政の癒着を断ち切り、医療費で大きな比重を占めている薬価の問題にも思い切ったメスを入れ、国民が安心して医療にかかれる医療体系の立て直しに当たることを強く求めました。昨年の改悪後の実態は、このことを一層切実な課題としています。
 首相は国民の多くが医療の高負担に苦しんでいる状況をどう考えているのか、首相が約束した薬価問題の検討の結果がどうなったかの問題も含め、医療制度の現状に対する明確な見解を伺いたいのであります。
 高齢者福祉でも福祉を後退させる大きな問題が起こっています。この分野でも、多くの方面からの努力で、これまでに一定の制度がつくられています。例えば、特別養護老人ホームには現在全国で約二十一万人の方が入所していますが、大多数は低所得の方で、一割の方は無料の入所になっています。在宅福祉では二十二万九千世帯がホームヘルパーのサービスを受けていますが、その八三%は無料になっています。これが高齢者福祉の現状であります。
 政府が介護問題に取り組むというので、多くの国民はこの現状がさらに充実拡大することを期待しました。ところが、介護保険法が成立してみたら、期待とは逆のことが起こってきました。これが実施されると、現在福祉で行われている措置もすべて一律に有料化され、所得のいかんにかかわらず、一律の利用料の徴収が義務づけられます。そうなれば、福祉の措置で特養ホームに入所している方がホームを出ざるを得なくなったり、利用料が払えずホームヘルパーのサービスを受けられなくなる方が続出することは目に見えており、多くの関係者を心配させています。
 所得なければ介護なし、この冷たい原理で福祉が一律に切り捨てられるということであります。各方面からの多くの努力で築き上げられ、福祉を現に支えている制度を、全国的な規模で上から後退させたり切り捨てたりするというのは、社会福祉の精神に反することであります。
 介護保険法にはなお多くの問題点がありますが、実施までにまだ多少の時間的な余裕があります。私たちは、改善のまとまった方策をやがて提案するつもりですが、法の実施以前に手を打つべき問題の一つとして、少なくとも現在行われている福祉の現状を後退させない措置をとることを要求するものであります。(拍手)
 今、幾つかの問題を挙げましたが、財政困難を理由に社会保障・福祉の切り下げを平気で行う風潮が横行しているのは、日本の今後にとって極めて重大な問題だと思います。
 医療、社会保障、福祉の制度は、すべて国民の生活を支える共通の土台ともいうべきものであります。日本の社会保障の水準は、ヨーロッパなどに比べてまだまだ低い状態にありますが、それでも多くの国民は、医療、年金、高齢者福祉など、この分野にはこれだけの制度が存在しているということを前提にして、いわゆる生涯設計を立ててきました。今政府がやっていることは、この土台をいきなり覆し、それにかわる見通しを何も国民に保障しないというやり方であります。年金についても、厚生省は、昨年暮れ、保険料の二倍値上げか、それが嫌なら年金の四割切り下げか、どっちを選んでも大幅改悪という選択を国民の前にいきなり持ち出してきました。もう生涯設計など問題にならないという声が期せずして全国に起こっています。
 この切り捨て政策が、今、日本経済にも大きな規模で影響を及ぼす段階に来ていることを正面から重視すべきではないでしょうか。国民の間で、収入を消費に充てず貯蓄に回す傾向が強まっていることは統計にも出ており、多くの経済専門家が、これを社会保障の土台の崩れと結びついた国民一人一人のいわば自衛作用のあらわれだと指摘しています。今や社会保障制度の再建は、経済を活性化していくためにも、大事な課題の一つとなっていると言わなければなりません。
 あなたは、六つの改革なるものの一つとして、社会保障構造改革をよく口にします。しかし、国民に高負担を押しつけるだけのことなら、社会保障改革の名には値しないのであります。各分野で国民にどれだけの保障を約束するのか、国民の生活の共通の土台をどのように構築するのか、国としてのその目標を責任を持って提案することこそ政府の責務ではありませんか。
 ところが、あなたの内閣は、この仕事をずっと棚上げにしてきました。二年前に発表したいわゆる橋本行革ビジョンでも、国民負担率の方は国民所得の五〇%までと、引き上げ目標を数字を挙げて打ち出しました。しかし、国民にどれだけの社会保障を提供するかという肝心の給付の方は、何の目標も示しませんでした。なお、当時政府機関が発表した国際比較では、社会保障給付費の国民所得対比の数字は、九三年度で一五・二%、ヨーロッパ諸国のおよそ二分の一という低水準でありました。
 それ以来既に二年。あなたの改革が本物なら、社会保障給付費を国民所得に対してどこまで引き上げるつもりなのか、政府の責任目標を国民に明確に示すべきであります。それとも、ヨーロッパの二分の一という低水準をさらに引き下げるのがあなた方の目標なのか、はっきり、正直に話していただきたい。
 また、制度の内容についても、国民負担増の改悪案を分野ごとに次々出して既成事実とするのはやめ、これが政府の責任ある目標だ、そういう社会保障の総合的な全体像を練り上げ、それを国民的な討論にかけることが本筋ではありませんか。そういう真剣な、責任ある取り組みをする意思があるかどうか、首相の見解をお聞きしたいのであります。
 あなた方は、負担増を国民に求めるとき、また国民の要求を断るとき、財政の危機的な状況を必ず理由にします。確かに、歴代の自民党政府が無責任に積み重ねてきた財政危機は、今、大変重大であります。しかし、問題は、何がこの危機を引き起こしたかを見定めるところにあります。昨年十二月の党首会談でもあなたに述べましたが、私は、危機の根源をつく方向性が今何よりも大事だということをここでも強調したいのであります。
 財政危機の最大の原因はどこにあるのか。それは、何よりもまず、ゼネコン型の公共事業に異常に傾斜した逆立ち財政にあります。実際、数字がそろう最も新しい年度、九四年度をとると、国と地方を合わせた公共事業への総投資額は四十七兆八千二百十億円に達するのに、社会保障の国、地方の負担額の合計は十九兆四千七百六十一億円、公共事業予算の約四割にしかなりません。これは、他の資本主義国と比べても、全く異常な数字であります。例えば、アメリカでは、社会保障費の方が公共事業費の四倍、ドイツでは同じく三倍、イギリスでは六倍と、全く状況が反対であります。首相、あなたは、日本の財政の現状を示すこの数字を異常だとは思いませんか。
 この逆立ち財政をそのままにしていたのでは、財政再建を幾ら叫んでも、国民に負担増を次から次へと求めるだけで、財政危機から脱出することもできません。逆立ちを是正すること、すなわち、財政の重心を社会保障など国民生活向けに大きく移し、公共事業はむだな部分の思い切った打ち切りなどで諸外国並みに圧縮するという大目標を定めること、そして、その転換の仕事を段階的に進めること、こういう方向性を明らかにした立場に立つなら、一方では減税、社会保障の充実、景気回復、他方では財政再建、この二つの仕事を両立させ、国民生活と日本経済に希望ある未来を開くことは、必ずできることであります。(拍手)
 昨年三月一日のニューヨーク・タイムズは、日本の破産への道は公共事業によって舗装されていると書きました。日本の財政のゼネコン傾斜とその異常さは、世界でも既に有名になっているのであります。五年前のゼネコン疑惑のとき、政府には、ここに根本からメスを入れる責任がありました。それにほおかむりをして従来型のやり方を続けてきたことが今日の危機を招いたことを今こそ真剣に考え、思い切った転換を図るべきではありませんか。
 あなたのやっていることは、しかし、全く逆向きであります。橋本内閣は、この二年間に、公共事業の十五ある長期計画のうち、十の分野で新しい計画を決定しました。それは、計画内容の再検討はほとんどなしに、五カ年計画を七カ年計画に引き延ばしただけのものでした。しかも、総予算は八十四兆六千億円、前回の五カ年計画の総予算が六十兆七千億円でしたから、何と一・四倍、十の計画だけで約二十四兆円もの増加であります。こうした公共事業中心主義こそ、財政再建のためにはまず改めなければならないものであります。
 現在の長期計画をすべて凍結し、内容の全面的な再検討を行い、むだな事業、不要不急の事業は大胆に中止し、国民生活の緊急の必要を最大の基準にして事業全体の再編を図る、こういう転換に踏み切るべきだと考えますが、いかがでありましょうか。
 橋本内閣にその転換をやる気がないというのなら、主権者である国民が自民党にかわる政治を求めるのは当然の結論になるということを申し上げて、逆立ち財政の転換についての首相の見解をただすものであります。
 対外関係の問題に進みます。
 今、イラク問題が、戦争か平和かのかかる世界の焦点になっています。イラクに国際社会の決定の実行を迫るのは当然でありますが、今日の最大の問題は、アメリカが独断で戦争による制裁を実行しようとしていることであります。世界のいかなる国家にも、国連にかわって世界の憲兵として制裁の武力行使を強行する権利は与えられていないし、また与えてはなりません。イラク問題の解決には、あくまで外交的努力を尽くすべきであります。
 この点で、あなた方が、二月十三日の日米共同発表で、イラク問題での選択肢について、アメリカと考えを共有すると明言したことは、極めて重要であります。これは、アメリカの武力行使に事前に支持を与えたものと国際的には受け取られています。アメリカが武力行使に踏み切る場合には無条件にこれを支持するというのが日本の政府の態度なのかどうか、伺いたい。
 また、アメリカ大統領の昨年十一月の新しい決定指令や、最近の一連の米政府高官の発言に見られるように、対イラク作戦の選択肢で先制的な核攻撃を排除していないことは、隠れもない事実であります。あなた方は、被爆国日本の政府でありながら、核攻撃の選択肢についてまで考えを共有して支持するのですか。答弁を求めるものであります。
 私は、この宣言を撤回し、武力行使に反対する意思表示を明瞭に行い、国際舞台で積極的にその努力を行うことを政府に厳しく求めるものであります。
 この問題にも関連して、今、世界の平和の秩序を考えるとき、何が柱となるかを思わざるを得ません。私は、中でも、次の二つの柱が重要だと考えます。
 一つは、世界のどの国も、国際社会の決定なしに勝手に武力行使を行う権限は持たない、例外は、自国または同盟国が武力攻撃を受けたときだけだという原則であります。これは国連憲章にも明記されています。
 もう一つは、各国の国民は自分の運命を自分で決める権利を持っており、国の内部問題に対する外からの介入、特に武力介入は許されないという原則、民族自決、内政不干渉の原則であります。
 これらの原則についてどういう考えを持つのかを、首相にまず伺いたいと思います。
 私がこの質問をするのは、イラク問題だけでなく、新ガイドライン問題について政府がとっている立場に、この原則が欠け落ちているという危惧を強く持つからであります。
 政府は、ガイドラインを周辺事態への対応だとしています。つまり、日本はもちろん、米国も攻撃を受けたわけではない状況のもとで、米国が武力行動に出、それを日本が支援するという情勢が想定されています。この想定自体が、国連憲章の精神に背くものではありませんか。周辺とは、日本や米国の領域の外にある地域です。一般的に言えば、他国の領域でどんな事態が起きようと、それはその国の内部問題であります。自分に都合が悪いからといって武力で介入するとすれば、それは、内政不干渉の原則に背く他国への内政干渉とならざるを得ないものであります。
 この周辺有事論の危険性をあからさまな形で示している焦点の一つが、台湾問題であります。
 「中国は一つ」の立場をとる以上、中国と台湾の統一問題は、国際的には中国の内政問題に属するものであります。我が党はもちろん、この問題が平和的に解決されること、その解決に当たって台湾住民の意思が尊重されることを強く希望するし、そのために必要な外交的努力も行うつもりであります。しかし、そのことと、外国がその問題に武力介入することとは、全く別個の問題であります。状況が自分の気に入らない形になったからといって武力で介入する権利は、世界のだれも持っていないのであります。
 歴史を振り返ると、二十世紀の初めに中国で、辛亥革命から北伐戦争へと、軍閥政治の打倒を目指す大きな動乱が起こりました。この動乱は、アジアと世界の情勢に少なくない影響を及ぼしましたが、中国の国内問題ですから、その影響を口実にして内政に介入しようという国は、帝国主義が最も盛んだった当時の世界でも一国もありませんでした。内政不干渉というのはそれほどの、当然過ぎるほど当然の世界の平和秩序の大原則であります。
 政府は、新ガイドラインで言う周辺に台湾地域が含まれるかどうかについて、いまだに答弁を避け続けています。しかし、この種の問題で明言を避けるということは、否定しないこと、事実上認めることだということは世界政治の常識であります。しかも、協定を結ぶ相手のアメリカは、国内法の台湾関係法で台湾防衛の義務を定め、台湾と事実上の軍事同盟を結んでいる世界でただ一つの国家であります。「中国は一つ」という立場がただの外交的方便でないのなら、新ガイドラインは台湾地域を発動の対象としないと世界に公約することが日本政府の最小限の国際的義務ではありませんか。
 アメリカの軍事介入に軍事的支援を与え、日本自身も軍事的な干渉者になるという危険は、新ガイドラインの中に周辺とされるアジア太平洋地域の全体にわたって含まれている問題であります。だからこそ、幾ら政府が言葉で心配するなと言っても、アジアの諸国の世論から不安、危惧、不信が消えないのであります。私は、周辺事態に対する軍事的な共同行動、これを目的にした日米間の協議を直ちに中止し、この問題ではアメリカとの間にいかなる協定も結ばない立場をとることを強く要求するものであります。(拍手)
 大体、他国の領域での武力行動やそれへの支援の是非を、間もなく二十一世紀になろうという時点で日本の国会で論議しなければならないこと自体、まことに異常なことであります。この異常さの根源は、第一に、アメリカが、自分の気に入らないことがあれば世界の公認の平和の秩序を侵しても介入するという米ソ対決時代以来の武力干渉主義をいまだに世界戦略としていること、そして第二に、日本がほかならぬその世界戦略のための海外遠征部隊に基地を提供している世界でただ一つの国だというところにあります。だからこそ、独立国であるはずの日本の国民が、沖縄のように米軍基地のはざまでの生活を余儀なくされるとか、本土でも、多くの地方で外国の軍用機の引き起こす騒音で日常の生活の平和を脅かされるとか、そういう目にも遭うのであります。
 この異常な事態は、五十三年前の日本の敗戦と米軍による軍事占領の遺産にほかなりません。日本が普通の国として世界の国々と普通のつき合いをしようというのなら、五十年以上も前からの異常な遺産はそろそろ取り片づけにかかるのが当然ではありませんか。いつまでもこの状態に甘んじるというのがあなた方の方針なのかどうか、二十一世紀を前にして、二十世紀の政権党である自民党の本心を聞きたいのであります。
 沖縄の基地問題はこの異常事態の中心点であります。三年前の暴行事件を起こしたのも、普天間で住民の生活を脅かし、名護で市民から基地移転を拒否されたのも、海外遠征部隊の主力である海兵隊でありました。その基地の県内移設計画に対してはこれを拒否するという名護市民の意思も、沖縄県民の意思も既に明白になりました。
 政府に民主主義を尊重する意思があるならば、この声にこたえて、問題の基地を撤去の方向で解決する交渉を改めてアメリカと行うのが当然の道筋ではありませんか。そしてそのことを第一歩に、外国の海外遠征部隊の基地という屈辱的な、そして危険の多い立場から日本が抜け出す道を探求すべきではありませんか。こういう努力が二十一世紀の世界的な平和の流れへの貢献となることは間違いないところであります。
 最後に、私は、現在の日本の内政、外交の現状は、橋本内閣にこのまま政治を任せておくことは許されないところにまで来ていると考えます。政治の現状について、日本の進路について、国民の審判を問い、二十一世紀への新しい道を開くために、直ちに国会を解散し、総選挙を行うことを強く求めて、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 不破議員にお答えを申し上げます。
 まず第一に、今回の金融安定化策は政策転換ではないかというお尋ねがありました。
 金融三法の制定当時におきましては、信用組合の破綻が相次いで発生していたことなどを踏まえ、信用組合の破綻処理について政府保証を措置いたしました。その後、一般の金融機関まで相次いで破綻が発生し、我が国の金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況に立ち至り、こうした金融の危機的状況に対処し、政府として預金者の保護と金融システム安定のためにしっかりとした対応をとることが我が国の国益にかない、また責務であると考え、今回の緊急対策を講じました。
 なぜ金融機関に公的資金を導入するのかというお尋ねでありますが、今回の緊急対策は、経済の動脈ともいうべき金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、日本発の金融恐慌を起こさないことを期するとともに、自由化、国際化時代に向けた金融システム改革を進めていく基盤をより強固なものにするために行うものであります。
 次に、企業・団体献金を禁止すべきという御指摘をいただきました。
 企業、労働組合などの団体献金につきましては、平成六年の政治改革における政治資金規正法の改正により規制が強化され、さらに改正法附則により、施行後五年を経過した場合には、団体献金のうち資金管理団体に対するものについては禁止する措置を講ずるとするとともに、政党及び政治資金団体に対するものについては、政治資金の個人による拠出の状況を踏まえ、政党財政の状況等を勘案してそのあり方の見直しを行うとされているところであります。
 政治資金規正法におきましては、政党活動に関する寄附について、特定の分野を対象とした規制は定められておりませんが、自由民主党は、住専問題等により都銀、地銀等からの献金を自粛していたところであり、先般改めて、金融システムの安定のため公的資金が投入されることにかんがみ、銀行業界からの政治資金を、過去の借入金の返済に充当するものを除き自粛することといたしました。
 次に、平成九年度の政府経済見通しに関する御質問がありましたが、昨年来の我が国の経済の動向を見ますと、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減が予想していたより大きなものでありました。それに加え、我が国の金融機関の破綻による金融システムへの信頼低下や、現在アジアや世界の経済に大きな影響を与えているアジアの通貨・金融不安の影響もある中で、家計や企業の景況感の厳しさが個人消費や設備投資に影響を及ぼしておりますが、政府としては、既に実施している緊急経済対策、特別減税、九年度補正予算に加え、金融システム安定化対策の迅速かつ的確な施行に努めることとしており、こうした取り組みのすべてが相乗効果を持って、我が国経済の力強い回復に寄与すると考えております。
 次に、消費税率の引き下げを求めるという御意見をいただきました。
 消費税率の引き上げを含む平成六年の税制改正は、少子・高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。したがって、消費税率の引き下げの考えはございません。
 また、医療保険制度改革についてもお尋ねをいただきました。
 昨年の九月の改正では、患者の一部負担の水準が無理のないものとなるように、きめの細かい配慮をいたしております。
 また、薬価制度については、薬が適正に使用され、またより安価な薬の使用が促進されるような制度にするために、現在、関係審議会で検討を行っております。
 次に、介護保険の利用料についても御意見をいただきました。
 利用者に無理なく負担していただけるよう、所得の低い方に対しては、高額介護サービス費制度や食費の標準負担において一般より低い額とするなどの配慮を行うこととしております。
 次に、社会保障給付についての御質問がありました。
 少子・高齢化の進展に伴い、社会保障の給付と負担が増大していく中において、必要な給付は確実に保障しながら活力ある経済社会を維持していくためには、国民負担率五〇%を超えられない、超えてはならないという目標を設定しました。こうした観点の中で構造改革を進めることにより、将来にわたってセーフティーネットとしての役割を果たすことのできる制度を構築できると考えております。
 次に、社会保障への取り組みについての総合的な全体像という御意見をいただきました。
 少子・高齢化の進行に伴う国民の需要の変化に適切に対応するとともに、制度間の整合性に配慮しながら、効率的で安定した制度をつくらなければなりません。こうした考え方に立って、引き続き国民的な御議論の中で、医療、年金等、制度全般にわたる構造改革に総合的に取り組んでまいります。
 次に、我が国の公共事業と社会保障の水準についてのお尋ねがありました。
 国民経済計算の体系における一般政府の公共投資の水準は、諸外国に比べれば高いものの、社会保障移転の約半分程度となっております。
 さらに、公共事業と社会保障のあり方についての御意見もいただきましたが、公共投資については、集中改革期間中にその水準をおおむね景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の適切な水準にまで引き下げることを目指すこととしており、社会保障については、高齢化の進展に伴い社会保障給付費の増加が見込まれる中で、社会保障構造改革を推進し、制度の効率化、合理化を進めながら必要な給付を確保していきたいと考えております。
 また、公共事業の内容を再検討しろという御意見をいただきました。
 公共事業予算につきましては、財政構造改革の趣旨を踏まえて、経済構造改革関連や生活関連の社会資本について重点化を図るほかに、事業の効率的な実施を図るため、社会経済情勢の変化などに対応した必要な見直しを行う新たな再評価システムを導入することといたしております。
 また、十年度予算におきましては、事業の徹底した見直しを行い、過去に例のない規模での事業の中止、休止などを行っております。
 次に、イラク情勢についてお尋ねがございました。
 我が国は、外交的解決が最優先であるとの基本的立場を維持しております。米国としても現在武力行使を決定したわけではない状況におきまして、議員御指摘のような全く仮定の問題につき断定的なことを申し上げることは困難であります。
 リチャードソン特使が来日した際、すべての選択肢をとる余地が残されているという米国の見方を共有すると表明をいたしましたのは、現下の情勢が深刻であるということ、国際社会が、イラクの大量破壊兵器の備蓄に対し、また査察を許さない態度に対し、極めて厳しい認識を示しているということをきちんとイラクに伝え、外交的解決を促すということにも大きな役割があったものであります。今後とも、事態の推移を注視しながら適時適切に対処してまいります。
 武力行使に係る原則及び民族自決、内政不干渉の原則、これらについてのお尋ねがございました。
 国連憲章上認められている武力の行使は、国連憲章に基づく集団的措置の場合または自衛権の行使の場合に限られます。政府としては、国連憲章等の文書に言及されているいわゆる自決の原則や内政不干渉の原則は尊重されるべきものだと考えております。
 新指針と国連憲章及び内政不干渉の原則との関係についてもお尋ねがございました。
 指針のもとでの日米両国の行為が、国際法の基本原則並びに国際連合憲章等の国際約束に合致するものであることは、指針でも明らかにされております。我が国は国際法上違法な武力行使には一貫して反対の立場をとってきており、また、米国が国際法上違法な武力行使を行うとは想定されておりません。
 次に、台湾についてお尋ねがございました。
 周辺事態は地理的な概念ではなく、事態の性質に着目した概念、特定の事態がこれに該当するか否かは、事態の態様、規模等を総合的に判断するもので、あらかじめ判断することはできないということは従来から申し上げてきたとおりであります。また、我が国が、台湾をめぐる問題につき、関係当事者の話し合いによる平和的解決を強く要望しておりますことも累次申し上げてきたとおりであります。
 周辺事態における日米協力についてのお尋ねでありますが、指針は、冷戦の終結後、アジア太平洋地域における平和と安定の維持が日本の安全のため一層重要になっているという新しい情勢にかんがみ、より効果的な日米防衛協力関係を構築するために策定されたものであります。政府としては、指針の実効性確保に関し、法的側面も含め所要の措置を講ずることが必要であると考えております。
 次に、在日米軍についてお尋ねがございました。
 国際社会に引き続き不安定要因が存在する中、在日米軍は我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に寄与しており、現時点でその削減や撤退を求めることは考えておりません。
 他方、日米安保共同宣言で確認されたとおり、国際情勢の変化に対応し、米国の兵力構成を含む軍事態勢につき米政府と協議を継続してまいります。
 ただ、議員の御主張の中で、米国に対し基地を提供しておる国は、私の知る限りは日本以外にあると存じます。その点だけは申し添えさせていただきます。
 次に、沖縄の海兵隊についてお尋ねがございました。
 今お答えを申し上げましたような考え方の中において、政府としては、米軍施設・区域の集中に伴う沖縄県民の方々の負担の軽減のために、SACO最終報告の内容の着実な実施に引き続き努力をしてまいります。
 最後に、解散・総選挙を求めるという御意見がございました。
 そのような政治の空白をつくることはできないと私は考えており、全力を尽くして努力をしていきたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。
    〔土井たか子君登壇〕
#13
○土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、橋本内閣総理大臣の施政方針演説に対して質問いたします。
 総理は、今回の演説で、政府施策の優先課題として、経済、教育、外交の三点をお挙げになりました。まことに政治はそれらの局面で重大な立場に置かれております。そうした課題意識そのものは、私たちも共有するものであり、素直に賛意を表したいと思います。(拍手)
 しかしながら、総理の演説を感慨深くお聞きしながらも、私が考えておりましたのは、こうした言葉の一つ一つが果たして人々の心にどれだけ届くであろうかということでありました。どれほど立派な言葉が並べられようと、国民はなかなかそれを信じられないほどの不安の時代となっているのであります。このことこそ、私たち政治に携わる者が共通して、最も深刻に受けとめて考えるべき事柄であろうと私は思います。
 一昨日、日銀月報では景気の停滞が続くと発表され、総務庁の調査では、一世帯当たりの消費支出が二カ月連続で減少、二十三年ぶりの大幅な落ち込みと言われております。同時に、可処分所得に占める預貯金の割合が過去最高を記録したと言われます。つまり、人々は生活の先行きが見えないのです。
 それは、例えばあすのお米が買えないとか服が買えないとか、そういうことではありません。最近、私が地方などを回りますと必ずと言ってよいほど聞きますのは、土井さん、今、年金保険を掛けていても将来きちんと支払ってもらえないのでしょうとか、あるいは、介護保険はできたけれど、保険料は取られても将来介護される保障はないのでしょう、こういう言葉です。将来についてこんなに不安が蔓延している中で、多少の減税があったとしても、物を買うことができないでいるのです。
 金融システム不安を全世界が見詰める中で、金融安定化を図る金融二法が成立しました。最大三十兆円という公的な資金が導入されようとしています。このお金は銀行への補助金となってはならないものですが、しかし、果たして銀行が抱える不良債権の実態はどれほどのものなのか、また公的資金の導入に際して、あれだけ問題になった経営のディスクロージャーは本当に進むのか、国民は不安の目を持っております。
 その銀行の経営実態や景気の動向について、人々が政府の言葉より外国の格付機関の言葉を信ずるようなことが取りざたされるほど、事態は深刻であります。そして、その銀行を監督していた大蔵官僚の、目を覆う腐敗です。
 人々は、先の見えない不安と不信の中で身をかたくしております。こういう閉塞感の中で、子供たちだけが健全に育つわけがないのであります。今、政治の最大の課題は、人々の不安と不信を解くことである、そう言っても過言ではありません。
 総理、このことをどのように受けとめられますか。年金や介護など先行きが見通せない不安に、具体的にどう対応されますか。そしてまた、現実は、国の経済が市場原理の中で効率と競争を優先すれば、弱い立場の人たちが追い込まれてしまうのは自然の成り行きではありませんか。
 その典型的な姿を、私は、阪神・淡路大震災後の被災地に見ています。
 市場経済をとる先進諸外国では、既に、災害被災者への生活再建のための公的支援の法制度が備わっておりますが、地震、台風災害国と言われる我が国にまだそれがないことは、自省を込めて、政治の不在であると言わねばなりません。
 私は、不安の時代であれば、それだけ不安の大きい、社会的に弱い立場にある人たちの後ろ盾になることこそ政治のあるべき姿と心得ねばならぬと思いますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
 この議会もまた、人々の不信とあきらめの上に立っています。この危機的状況を、与党、野党を問わず、厳しく認識する必要があると思います。
 まず、政治に携わる私たち自身が襟を正すこと、そしてさまざまな不信の温床を断ち、人々に将来への確信を取り戻してもらうことが私たちの責務であります。
 さて、きょうは一段と深刻な日です。事もあろうに、本日、この議場で逮捕許諾が問われていた同僚議員がみずから命を絶ったという知らせが入りました。詳細はまだわかりませんが、このようなことが二度とあってはならないと切に思います。
 昨秋から始まった与党政治改革協議会での、政治家みずからが腐敗を根絶し、みずからを正す議論は、こうした事件が続発する中で、一刻も早く結論を出さなければなりません。とりわけ、自民党が政治倫理の確立に向けた厳しい決意を実行に移されることを、総理に強く求めたいのでございます。
 さて、総理も施政方針の冒頭で憂慮されている子供たちの問題です。
 宗像誠也さんという教育学者は、教育とは人間の尊厳を確立する過程という言葉を残しています。
 多くの子供たちが家庭にも学校にも居場所を見つけられなくなっているのは、効率や競争原理を最優先しようという政治や経済や社会の運営のありように、根本原因が潜んでいるからではありませんか。それぞれの家庭は社会の真っただ中にあり、社会全体のひずみや不安定はすぐに忍び込んでくるのです。文部省や教育委員会、校長先生や教頭先生による上からの指導でこの問題を扱おうとするだけでは、とても解決できる問題ではありません。
 こんな場合、お上の関与を教育現場において強めることには、かえって有害でさえあると考えます。むしろ、国は、教育現場への関与は最小限にとどめて、学校や家庭や地域を初めとする現場の自主的な解決努力を見守るべきでしょう。私たちも、子供たちの危機のために何ができるか。難しい問題ですが、差し迫ったことでもあると考えております。
 そのためには、地域の学校と教育委員会、文部省を結んで機能してきた教育システムもまた制度疲労に陥っているのではないかということを、指摘する勇気が問われているのではないでしょうか。
 例えば、ことしの春に小学校に入学する新一年生の男の子がいます。僕は水色のランドセルがいいなと強く望んで、両親は実のところ困っています。男の子は例外なく黒のランドセルで通う学校で、水色は許されるだろうか。最近は自立した個人が語られるけれども、まず周囲と協調する必要があるのではないか、子供が孤立していじめられてしまうのではないかという心配です。
 また、小学校六年生の元気な女の子が、中学入学前に、私はスカートは嫌いだ、ズボンをはいて行きたいと心に決めています。男の子はズボン、女の子はスカートと長い間決められているので、両親は心配しています。
 総理、また文部大臣、彼の小学校、彼女の中学校の校長先生なら、どのような判断をなさいますか。
 つい最近の悲惨な事件を契機に、文部省が、事故防止の具体策として、各県教育委員会に所持品検査を検討させていることに一言申し上げたいと思います。
 子供たちがナイフやその他の凶器を学校に持ち込んでいる事態は、もちろん放置できるものではありません。持ち込まないようにという指導は大切なことだと思います。けれども、学校という場は、そもそも相互信頼を前提に運営されているのです。もし生徒を信頼できなければ、家庭科の調理実習も、技術科の木材加工も、美術の彫刻も取りやめにしなければなりません。所持品検査という対処策は、何とか子供たちとの関係を取り戻そうとしている先生にとっても、新たな苦悩の種ともなりかねません。
 文部省の発表で、日本全国に、三十日以上学校を休み続けている小中学生が十万人近くいます。実際の数は、この数字を大きく上回るのではないかとも指摘されています。もはや子供個人や家庭の問題だけではなく、教育、学校というシステムの問題です。高度経済成長の時代ははるか昔に終わり、私たちの社会は、二十一世紀の諸課題を直視しながら脱皮していかなければならないときを迎えています。現在の学校システムは、大量生産と消費の時代そのままに、休まずに動き続けてきたラインなのではありませんか。
 毎日の食卓で、教育は家庭共通の話題です。ここ数年、伝えられるニュースは暗く、また未来に大きな不安を投げるような事柄が続きました。今こそ、悩み苦しんでいる子供や先生、そして多くの親たちが安心して、これでやれる、大丈夫とうなずけるような具体策を総理に強く求めたいと思います。
 昨年十二月、社会民主党の大型減税の主張に対して、総理は、それまで難しい、難しいと言われ続けられたにもかかわらず、二兆円の特別減税を突然打ち出されました。私は、三与党党首会談で、小出しの上に出しおくれと言ったことをよく覚えています。しかし、このことは、一面、総理の決断で事は動くことをも示しています。
 経済情勢を考える上で、今一番大きい要素は消費の冷え込みです。個人消費はGDPの六割の比重を持っていると言われています。消費税の税率アップ、医療費の自己負担増、各種の公共料金の値上げ、公定歩合が限りなくゼロに近く、超低金利による家計部門の利子所得の目減りを加えると、十兆円を超す実質的負担増になった九七年度であります。
 さらには、年金、介護、医療の先行きが見通せない不安も広がり、消費者の財布のひもはかたくなる一方です。実は、政府の景気診断の決定的な誤りは、ここにあったと思います。その中でも、消費税の増税が消費冷え込みの元凶の一つであることを指摘せねばなりません。
 ここで、私は提案したいと思います。
 それは、飲食料品に対して小売段階を非課税とすることです。社会民主党は、現在、一九九六年の十月三十一日、消費税については改革に大胆に取り組むとした三党合意を現実のものにするため、改革案を検討しています。飲食料品の非課税は、一九九〇年、政府の消費税見直し案として提出されたことを覚えていらっしゃるでしょう。大蔵大臣は、ほかならぬ橋本総理、あなた御自身でした。私の提案に対して、総理の決断を促したいと存じますが、どうですか。
 また、普通預金の〇・一%、二年の定期預金でも〇・三%という超低金利は、定年後の高齢者の生活設計を狂わせています。今、貸し渋り解消策と同時に、思い切った金利の引き上げが考えられるべきだと思います。御存念をお聞かせください。
 金にまつわる政治スキャンダルに加え、このところ、大蔵官僚の接待漬けが表面化しています。大勢の職員の中に汚職をする者がいることは、無論よくないことではありますが、それだけなら厳正な司法手続にゆだねればよいことであります。
 しかし、今回の不祥事は、公務員が憲法十五条に言う「全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」基本がないがしろにされた省内一般の気風が土台になっていると見なければなりません。すなわち、権力を持つ機関のおごりが背景にあるのであります。公務員倫理法の制定は、避けて通れない緊急課題となっております。まず、今国会中の新規立法に向けた総理の決意をお伺いしたいと存じます。
 もっとも、それだけで済むわけがありません。私は、政界、官界、証券・金融界にまたがる腐敗の根は、もっと広く、深いと見ております。腐敗の温床になっているのは企業・団体からの政治献金です。税金から政党助成金をいただくようになった経過からしても、政治資金規正法附則に明記してある、五年後に禁止する措置を講ずるを前倒しする努力をして、企業・団体献金を早急に禁止すべきです。
 腐敗の根源を絶つには、もとより、政治家を初めとする権限者たちの良質な自覚に基づくことが先決ですが、それでも果たせない場合、権限や権力の過剰な集中を避けるように制度を改善する必要があります。日本の政界の現実を見渡すとき、悲しいことではありますが、国会議員の地位利用によるあっせん利得罪を盛り込んだ政治腐敗防止法の立法が不可欠だと言わざるを得ません。与党三党協議会の中間報告を乗り越える総理の決断を求めたいと存じます。
 私は、ちょうど十年前、十二月二十日、同じこの場所で、「議会の子」と言われた三木武夫元総理の追悼演説をいたしました。政治にとって最も大切なことは、軍備を整えることではなく、食糧を満足させることでもない、何よりも人々が政治に信をおくようでなければならないという論語の教え、「信なくば立たず」が先生の座右の銘であったことを今また鮮やかに思い起こすのであります。私自身、国民をさいなんでいる不安の根っこには政治不信の深まりがあると自戒しております。
 この際、私は、国民の間に広がるこうした政治不信を意識しつつ、橋本総理と自民党が政治倫理の問題をめぐる社会民主党の主張を決して侮られるようなことのないよう、改めて警告しておきたいと考えます。
 ペルシャ湾では、イラクに対するアメリカの武力行使の準備が進んでいます。私は、イラクは国連安保理決議を守って、国連による大量破壊兵器関連施設に関する査察を即時受け入れるべきだと思います。だからといって、どのような理由をつけても、アナン国連事務総長を初め各国の外交努力が続いている中で、米国の武力行使に賛成はできません。日本政府は、国際紛争の解決のための武力行使を否定した日本国憲法の精神を踏まえて、国連の努力を全面的に支援し、あくまで外交努力によって平和的な解決に全力を尽くすべきであります。
 総理は、米国を初め関係国と協調して対処する方針と述べられましたが、米国からはどんな通告を受けているのですか。まさか、戦争費用の分担を迫られているようなことはないでしょうね。そこは総理、はっきりさせてください。
 アナン国連事務総長を初め国連に対して、また各国の外交努力にどのような働きかけをされているのか。イラクにどのような働きかけをされているのか。外務大臣にお伺いいたします。
 最後に、沖縄の米軍基地についてお尋ねします。
 沖縄では、青く澄んだサンゴの海に巨大な海上ヘリポート基地を建設しようという企てがあり、住民の反発が高まっています。予定地とされる名護市における昨年十二月の住民投票、二月八日の市長選挙でも、圧倒的な保守地盤の地でありながら、多くの市民が海上基地の建設に反対の一票を投じました。
 総理は、新たな海上基地の建設を、普天間返還を可能にする最良の選択肢と言われましたが、果たしてそうでしょうか。私はこの際、地元振興策との露骨な取引で新たな基地の受け入れを迫るようなやり方では決して問題の解決につながらないことを指摘しつつ、受け入れを拒んだ大田昌秀沖縄県知事の苦悩の結論を尊重したいと申し上げます。
 米海兵隊普天間飛行場は、新たな基地建設を伴わない形で返還されるべきです。当面、それが難しいというのなら、次善の策として、新たな基地の建設に踏み込まない方法を考えるべきでしょう。基地の整理、統合、縮小が、政府の決められた基本的原則ではありませんか。そのためには、SACO協議も含め、日米政府間の協議が必要です。そのお心づもりを総理にお尋ねして、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 土井議員に御答弁を申し上げます。
 その前に、土井議員からお触れになりましたので、私から御報告をさせていただきます。
 平成十年二月十九日午後、東京都内のホテル室内において、新井将敬議員が死亡する事案が発生をいたしました。これ以上の詳細は控えたいと存じますが、どのような事情であれ、御冥福を祈りたいと思います。
 まず、土井議員から、冒頭、人々の不安と不信への対応ということについてのお尋ねがございました。
 少子・高齢化の進展に伴う国民の需要の変化に適切に対応するとともに、医療、年金、福祉などを通じ、給付と負担のバランスがとれ、なおかつ経済活動と両立し得る効率的で安定した社会保障制度を確立することを社会保障構造改革の基本的な方向としてお示ししてまいりました。こうした考え方に立ちながら、引き続き医療、年金制度全般にわたる構造改革に取り組んでまいりたいと思います。
 その際、効率と競争を優先すれば弱い人々の立場が追い込まれるのではないかという御意見もいただきました。
 確かに、経済活動を市場原理にゆだねる結果、格差の拡大が生じかねない、これも事実であります。しかし、社会全体が右肩上がりの成長を期待することが困難な中におきましては、過度に結果の平等を尊重することは社会全体の活力をそいでしまいかねないこともあります。むしろ、その格差の拡大というものを積極的に受けとめ、国民が皆、夢やチャレンジ精神を抱ける、活力のある社会を実現していくことが重要であると私は思います。
 ただし、そのためにもセーフティーネットとしての社会保障、その必要性はいささかも減じるものではありません。市場原理が完全なものでないのは独占支配の弊害など、市場の失敗と言われる事実においても示されておりますし、セーフティーネットが適切に整備されていなかったら、不安感のみが国民の中に増大しかねない、かえって活力をそぎかねないことも事実であります。だからこそ私は、社会保障構造改革を進めて、将来ともに社会保障というものがセーフティーネットたり得るようにしていかなければならないと考えております。
 次に、被災者に対する公的支援についてのお尋ねがございました。
 一般的に、自然災害により個人が被害を受けた場合には自助努力による回復を原則ということを申しながら、政府は災害救助法による救助を行いますとともに、各種の融資制度などの措置の現行制度の活用により、幅広く、かつきめ細かく被災者の生活再建を支援してまいりました。
 殊に、阪神・淡路大震災につきましては、政府はこれまでにも、公営住宅の大量供給とその家賃の大幅引き下げ、阪神・淡路復興基金を活用いたしました生活再建支援金の給付に対する地方財政措置など、さまざまな支援策を講じてまいりました。
 将来の災害被災者の支援につき、現在与党内において議論が進められていることを承知しており、これを注意深く見守っていきたいと考えております。
 次に、政治倫理の確立に向け、与党政治改革協議会での結論を急げ、とりわけ自民党が厳しい決意を実行に移せという御指摘をいただきました。
 昨年秋に発足した与党政治改革協議会は、議員も御承知のように、真剣かつ精力的に議論を行い、昨年十二月には一定の事項について合意を得、また、本年一月二十一日の三党首会談におきまして、政治腐敗の防止、議員の兼職禁止に係る行為規範などについて、今後三党間で鋭意検討し、三月末を目途に結論を得ることを確認いたしました。
 与党政治改革協議会及び与党政治改革プロジェクトチームの論議を見守り、適切に対処し、清潔で活力のある政治を求める国民の期待にこたえてまいりたいと考えております。
 次に、子供たちの問題について、幾つかの御指摘、御提言をいただきました。
 冒頭触れられましたのは、学校と教育委員会、文部省を結ぶ教育システムについてのお尋ねでありますが、それぞれの地域や学校が創意工夫を生かし、特色のある教育活動を行うことができるよう、地方教育行政システムと申し上げていいのだと思います、地方教育行政システムの見直しが必要であり、現在中央教育審議会において御審議をいただいておりますが、その審議を踏まえながら、主体的な地方教育行政を展開していくよう、国、都道府県、市町村間の関与のあり方を改善していく。また、校長先生がリーダーシップを発揮できるような、学校の自主性を確立していくことなどの改善を図ってまいりたいと思います。
 子供の持ち物、服装について、例示を挙げてのお尋ねをいただきました。これらについては、各学校それぞれの教育方針などに基づいて定めているのが一般的であります。
 おまえが校長先生だったらこういう場合どうするという御質問をいただきました。
 私は、仮に校長先生でありましても、現実に行われているのと同じように、保護者の方々の考え方あるいは地域の実態を十分踏まえたものにする必要があると考えますし、そうした点を踏まえて対応していくという以上に申し上げようがないと思います。
 次に、消費税の問題に関連し、かつて政府が提出をいたしました見直し案と言われますもの、これについてもう一度考えろ、すなわち、消費税の飲食料品小売段階非課税についてのお尋ねがございました。
 御指摘の政府見直し案、確かに、私が大蔵大臣のときに何とかしたいと考えて努力をしたものの一つでありますが、御党を初め立法府、さらに多方面から大変厳しい批判がなされましたことを改めて考えてみますとき、このような措置の導入は適当ではないと思います。
 しかし、いずれにしましても、飲食料品に対する消費税の特例措置の問題については、国会や与党間で行われてまいりましたこれまでの議論を踏まえ、今後の消費税を含む税体系の見直しの中で、将来的な課題として検討されるべきものと考えております。
 また、公定歩合についてお尋ねがございました。これは、公定歩合の操作などの金利政策が日本銀行の所管事項であるということをよく御承知の上でお尋ねのことだと思います。
 ですから、これ自体にはお答えのいたしようがありませんが、一般論として申し上げたとき、現行の経済情勢のもとで、低い金利が設備投資や住宅投資を助けている面もありますが、低金利のもとで貯蓄に対する利子が少なくなり、その影響を受けておられる方々に対して、お気の毒な状況にあると考えます。
 いずれにしても、今実施しつつある各種の施策により景気の回復を図ることが何より重要だと考えております。
 次に、公務員倫理法の制定についてお尋ねがございました。
 既に、議員御承知のように、与党三党においても鋭意この問題を検討していただいております。政府におきましても、政府部内に公務員倫理に関する検討委員会を設け、この倫理法の制定を期して鋭意検討を行っておりますが、与党三党とも連携し、早急に作業を進めてまいりたいと考えており、御協力をぜひ賜りたいと考えております。
 次に、企業・団体献金についてのお尋ねにつきましては、本年一月二十一日の与党三党首会談において、政治資金規正法附則第九条、すなわち、法人その他の団体の資金管理団体に対する寄附の取り扱いについては、政治腐敗の防止のための方策や議員の兼職禁止に係る行為規範の見直しなど、検討項目の結論を得た後、集中的に討議することを確認したと記憶しております。今後の与党政治改革協議会及び同プロジェクトチームの真剣な協議を踏まえ、私としては対応してまいります。
 また、いわゆるあっせん利得罪の創設についてお尋ねがございました。
 与党三党の党首会談におきまして、政治腐敗の防止のための立法措置について、今後三党間で鋭意検討し、三月末を目途に結論を得るものとする旨を確認しております。現在、与党政治改革プロジェクトチームにおいて検討が進められておるところであり、その議論の推移を見守りながら適切に対処していきたいと考えております。
 次に、イラク問題についてお尋ねがございました。
 米国は、現時点において武力行使を決定したわけではないと承知をしております。また、仮にイラク武力制裁が行われることになったとしても、どのような態様で行われることになるのか全く定かではない段階におきまして、御指摘の支援その他具体的な諸点に断定的なことを申し上げることは困難だと思います。
 そして、我が国は、いずれにしても外交的な解決が最善であるという考え方に基づき、イラクに対する働きかけや関係国との緊密な協議を初めとし、さまざまな外交努力を行ってまいりました。今後とも、事態の推移を注視しつつ、適切に対処していく考えであります。
 また、我が国は、国連を通じた外交努力を支持しており、本十九日、小渕外務大臣からアナン事務総長に対し、同総長のイラク訪問に対する評価と期待を伝えるなどの電話会談を行っております。
 次に、沖縄の普天間飛行場代替海上ヘリポートについて、最良の選択肢と言ったが、本当にそうかというお尋ねをいただきました。
 自然環境、騒音、あるいは安全、いろいろなものを考慮して、現在よりも規模を大幅に縮小し、必要がなくなった場合撤去できるという、現時点における最良の選択肢として海上へリポート案を提示いたしました。今後とも、その実現に向けて、地元の御協力と御理解が得られるよう、粘り強く努力をしていきたいと考えております。
 この返還についてのお尋ねもございましたが、普天間飛行場は、沖縄に代替基地を建設することなどを条件に返還が日米で合意をされたものであります。また、海上施設の追求を決めたSACOの最終報告の作成は、沖縄県を含む普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会などの場で、県の御意見もお聞きをしながら進めてまいったものでございます。
 この普天間飛行場を初め米軍施設・区域の整理、統合、縮小につきましては、SACO最終報告の着実な実施が沖縄県民の方々の御負担を軽減する最も確実な道であると考えておりまして、今後とも、その実施に向けて最大限努力を行っていきたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小渕恵三君登壇〕
#15
○国務大臣(小渕恵三君) イラク情勢についての我が国の外交努力につきましては、今総理からも御答弁がございました。
 我が国といたしましても、国連の安保理のメンバーに対しまして強くこのことを申し上げ、ともに協力をいたしてきたところでございます。
 ただ、ロシアあるいはフランス等と異なりまして特使を送るというようなことには相なりませんでしたが、今日までそれぞれの国々と連携を保ち、かつまた湾岸諸国関係国とも連携を密にしながら、事態の外交的解決のために努力をいたしてきたところでございます。
 イラクに対しましては、申し上げましたように直接イラクには参りませんでしたが、在京イラク臨時代理大使をしばしば招致をいたしまして、国連関連安保理決議を完全に履行するように再三にわたり求めてきたところでありまして、本日も柳井外務次官からこのことを強く行ったわけでございます。
 なお、今日、アナン国連事務総長が十九日にニューヨークを立って二十日にバグダッド入りされるということでございましたので、今朝九時に電話で会談をさせていただきまして、我が国の立場を強く主張したところでございます。事態解決のため、イラクが大統領関連施設を含むすべての施設の査察を無条件かつ完全に受け入れることが不可欠である、我が国のこの立場を強調いたしました。
 また、五常任理事国よりの助言についても、我が国としてはこれを支持していく。
 いずれにいたしましても、事務総長御みずからイラクに入られるということは大変重要なことだろうと思っておりますので、このことは、武力行使に至らず事態を解決するための残された最後の手段と言ってもいいことでございまして、ぜひこの事務総長の働きかけによりまして、これが、イラクが十分理解をされることによりまして成功されることを心から期待いたしている向き、お伝えをいたしました。
 事務総長といたしましても全力を挙げて努力をされるということのようでございましたので、我が国といたしましても事務総長の努力を多とし、心から成功を祈っておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣町村信孝君登壇〕
#16
○国務大臣(町村信孝君) 土井議員にお答えを申し上げます。
 最初に、戦後の教育システムが制度疲労に陥っているのではないかという御指摘がございました。
 我が国の初等中等教育は、戦後五十年にわたりまして教育委員会制度を中心に進められてまいりまして、それなりの成果を上げてきたと考えているわけでございますが、二十一世紀の日本の教育をつくり上げていくためには、教育改革の重要な一環といたしまして、地方分権の推進を進めるという観点からも、地方教育行政システムの全体の見直しを進めているところでございます。
 この問題は、総理からも御指摘のとおり、中央教育審議会において御審議をいただいておりますし、この夏前ごろまでには答申を得たいものだと考えております。
 その中では、特に教育委員会の学校への関与をできるだけ少なくすること、これによりまして校長がリーダーシップを発揮できるよう学校運営の自主性を確立することや、あるいは教育活動における地域住民との連携協力を強化すること、さらには主体的かつ積極的な地方教育行政が展開できるように文部省の関与もできるだけ少なくしていく、こういう方向で改善を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 子供の持ち物、服装につきましては、ただいま橋本総理が申し上げたのと私は同じでございます。(拍手)
#17
○副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
    〔副議長退席、議長着席〕
     ――――◇―――――
 金融危機管理審査委員会審議委員任命につき同意を求めるの件
#18
○議長(伊藤宗一郎君) お諮りいたします。
 内閣から、金融危機管理審査委員会審議委員に今井敬君、小堀樹君及び佐々波楊子君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#19
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
     ――――◇―――――
#20
○議長(伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十六分散会

ソース: 国立国会図書館
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