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#1
第142回国会 本会議 第18号
平成十年三月十七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第九号
  平成十年三月十七日
    午後一時開議
 第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案(鉢呂吉雄君外三名提出)の趣旨説明及び質疑
 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#3
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。厚生委員長柳沢伯夫君。
    〔柳沢伯夫君登壇〕
#4
○柳沢伯夫君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、戦傷病者戦没者遺族等の処遇の改善を図るため、障害年金、遺族年金等の額を恩給の額の引き上げに準じて平成十年四月分からそれぞれ引き上げるとともに、戦没者の父母等に対し、改めて特別給付金として額面百万円、五年償還の国債を支給しようとするものであります。
 本案は、去る三月十一日付託となり、同日小泉厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、同月十三日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#7
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第二、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長笹川堯君。
    〔笹川堯君登壇〕
#8
○笹川堯君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、下級裁判所における事件の適正、迅速な処理を図るため、判事補の員数を二十人、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十一人増加しようとするものであります。
 委員会においては、去る十三日下稲葉法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終了し、直ちに採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
#11
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第三、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。外務委員長中馬弘毅君。
    〔中馬弘毅君登壇〕
#12
○中馬弘毅君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、
 第一に、在ユーゴースラヴィア日本国大使館の名称を在ユーゴースラヴィア連邦共和国日本国大使館に、在西サモア日本国大使館の名称を在サモア日本国大使館に、在コンゴー日本国大使館の名称を在コンゴー共和国日本国大使館に、在ザイール日本国大使館の名称を在コンゴー民主共和国日本国大使館に改めるとともに、おのおのの位置の国名をユーゴースラヴィア連邦共和国、サモア、コンゴー共和国、コンゴー民主共和国に改めること、
 第二に、在デンヴァー日本国総領事館を新設するとともに、同総領事館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を定めること、
 第三に、既設の在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額及び研修員手当の額を改定すること
等を内容とするものであります。
 本案は、去る三月十一日に外務委員会に付託され、同日小渕外務大臣から提案理由の説明を聴取し、十三日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案(鉢呂吉雄君外三名提出)の趣旨説明
#15
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案及び鉢呂吉雄君外三名提出、道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。建設大臣瓦力君。
    〔国務大臣瓦力君登壇〕
#16
○国務大臣(瓦力君) 道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 現行の道路整備五カ年計画は平成九年度をもって終了することとなりますが、我が国の道路は、道路交通の進展に比べその整備のおくれが目立つなど、今なお質、量ともに不十分な状況にあります。今後とも、経済構造改革の支援、活力ある地域づくり、都市づくりの支援等を主要課題として、国民の道路整備への要請に的確にこたえつつ、緊急かつ計画的に道路整備を推進する必要があります。
 この法律案は、このような状況にかんがみ、平成十年度を初年度とする新たな道路整備五カ年計画の策定等の措置を講ずるものであります。
 次に、その要旨を御説明申し上げます。
 第一に、平成十年度を初年度とする新たな道路整備五カ年計画を策定することとしております。
 第二に、道路整備五カ年計画に合わせて、奥地等産業開発道路整備計画を策定するため、奥地等産業開発道路整備臨時措置法の有効期限を平成十五年三月三十一日まで延長することといたしております。
 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うことといたしております。
 以上が、道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(伊藤宗一郎君) 提出者鉢呂吉雄君。
    〔鉢呂吉雄君登壇〕
#18
○鉢呂吉雄君 民友連の鉢呂吉雄でございます。
 ただいま議題となりました道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案について、民友連を代表して、その趣旨を御説明いたします。
 道路は、車の利用者だけではなく、国民の社会経済生活全般と深くかかわりがあり、国民生活に不可欠な社会資本であります。この重要な道路を、国民の参加とその意見の反映によって整備を進めていくことが、この法律案の趣旨であります。
 一方で、従来より、政府案は改正を幾たびも重ねてまいりました。しかし、この政府提出の法律案に基づく五カ年計画は、行政にとっては便利な計画であっても、決して国民の意見を反映した計画とは言えないのであります。
 そもそも、道路が国民生活に大きな影響を与える社会資本であるからこそ、貴重な税金を年間に何兆円も投入して整備を進めているのであります。そうであるなら、道路整備に当たっては、あらゆる角度から国民の意見を聞き、これを実際の整備において反映させていくことは当然であります。しかし、実際には、立派な農道があるすぐ横に新たに国道を設置するなど、そのような事例が全国に散見され、税金の使い方に大きな疑問が出ているのであります。
 これを是正するためには、道路整備における計画の策定、実施、そして事後評価の各段階において情報公開を進め、さらには、国会が関与することによって、国民の意見を一層反映させていく制度をつくることが重要であります。
 この点については、政府の審議会でも同様の答申が行われておるのであります。昨年六月、道路審議会が政府に対して行った建議は、一つは、国民参加型の新しい方式の導入、また、道路政策の基本的な考え方の転換、効率的で透明な政策の進め方の提示を柱として、具体的には、パブリックインボルブメント、いわゆる住民参加の採用や評価システムの導入を提案しているのであります。しかし、今回の政府案にはこれらが取り上げられておらず、従来型を踏襲しているにすぎません。
 私たちがこの改正案によって提案していることは道路審議会の答申に沿ったものであり、同時に、時代の流れに沿ったものであると確信をしております。
 また、この道路審議会では、国民参加の初めての方法として、住民が望むこれからの道づくりの方向性という意見募集をいたしました。これに対し、全国三万五千人余の多くの方々から意見が寄せられました。
 意見の内容は、例えば、人、歩行者中心の道づくり、交通弱者や高齢者、また自然環境に配慮した道づくりといった、従来の、単なる効率性の向上を求める道づくりの視点とは異なったものが多く寄せられておるのであります。しかし、これらの意見が五カ年計画にどのように反映されたかは不明でございます。
 欧米では、このように全体計画への国民の参加は当然のこととなっており、日本でもこれらの意見を実際の道づくりに反映させることが重要であると私は思います。そのためには、国民の意見を聞くことを制度化するとともに、国会という国民の意見の集約の場で道路整備の方向性を決めていくことが必要であります。これがこの改正案の主たる提出理由であります。
 そこで、民友連提出の道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案について、その内容について御説明をいたします。
 第一に、政府が策定する道路整備五カ年計画を国会承認事項といたします。この計画を国会の場で議論することにより、道路整備の方向性を国民の前に明らかにするとともに、国権の最高機関たる国会の責任において税金の使い道について判断を行うことといたします。また、政府が国会に計画を提出する際には、国民各位から寄せられた意見をもあわせて提出することとした上で、国会の議論により国民各位の意見を計画に反映させるものであります。
 第二に、計画の策定過程を国民の前に明らかにすることであります。建設大臣が計画の原案を作成した際には、これを公告縦覧に付し、あわせて意見を有する者が意見書を提出できる機会を確保いたしました。この意見書は、その概要を国会に提出することとしております。また、道路審議会において計画を審議する際は、これをすべて公開することとし、さらには道路審議会に公聴会の開催を義務づけております。このように、計画の策定から国民に対して情報を提供することは当然であります。
 政府は、新たな五カ年計画の策定に当たり、国民から意見を募っております。私たちの改正案はこれに法律的な担保をするものであり、これは先ほど申し上げましたように、道路審議会の建議にも盛り込まれている事項であります。現代の政策形成過程において、国民に広く情報を公開し、国民から意見を聞くことは当然であり、政府提出の改正案が今もなお政府の内部において計画を策定しようとしていることは全く不思議であります。
 第三に、計画に対する事後評価の制度化であります。従来の計画あるいは予算は、これをつくる段階に余りにもエネルギーを注ぎ、その計画あるいは予算を実行した結果については軽視してきた面がありました。しかし、予算については周知のように衆議院に決算行政監視委員会が設置され、決算すなわち事後的なチェックの体制を整備いたしました。本改正案による事後評価システムもこれと同様の流れにあり、本改正案では計画が終了した年度の翌年度以内に、政府はこの計画に関する報告書を作成し、これを国会へ提出することを義務づけております。これにより、事業の成果あるいは進捗状況などが明らかになるとともに、税金の一層の効率的活用を図るよう、自後の計画に反映させていくことが可能となるのであります。
 道路は、国民にとって単なる移動の経路ではなく、あるときは交流の場であり、あるときは思索の場であり、結果的に思い出の場にもなり得る空間であると思います。このように国民生活にまさに密着した道路の整備を行うに当たっては、国民の前で正々堂々と議論を通じた計画が必要なのは明らかであります。
 ここまで御説明いたしましたように、本改正案は当たり前のことを規定しているだけであります。数十兆円に及ぶ税金の使い道を私たちが決めないで、一体だれが決めるのでありましょうか。何とぞ議員各位におかれましても、みずからが国民より負託された責任の大きさをかみしめ、本改正案の趣旨に御理解を賜りたいと存じます。
 以上で、本法案の趣旨の御説明とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案(鉢呂吉雄君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑
#19
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。山本譲司君。
    〔山本譲司君登壇〕
#20
○山本譲司君 私は、民友連を代表して、ただいま提案のありました民友連提出の、そして政府提出の、それぞれの道路整備緊急措置法及び奥地等産業開発道路整備臨時措置法の一部を改正する法律案について、一括して、提出議員各位及び橋本総理大臣に対して質問を行います。
 昭和二十年、終戦を迎えた我が国は、荒廃の焦土と化していました。主な都市は廃墟と化し、日々の食糧さえままならない状況に追い込まれた中にあって、国民にとって最も身近な社会資本である道路の整備状態も惨たんたるものでありました。戦争により、我が国道路の約四百五十八万平方メートル、当時の金額にしまして二億四千四百万円の損失をこうむったと言われております。もとより我が国は、古くから馬車などを使うことに道路使用が限定をされ、結果的に、戦後に迎えたモータリゼーションに適した道路は有しておりませんでした。その上戦争によるこのような被害を受けたのですから、社会資本としての貧弱さは目に余る状態だったことは容易に想像ができます。
 その状況は、政府の要請によりまして昭和三十一年に来日したワトキンス調査団の報告書でも明らかであります。この報告書の冒頭には、日本の道路は信じがたいほど悪い、工業国にしてこれほど完全にその道路網を無視した国は日本のほかにはないとかなり厳しい批判が書かれているわけであります。
 また、昭和三十一年の経済白書。この年の経済白書は「もはや日本は戦後ではない」と宣言したことで有名でありますが、この白書においても、最近の我が国の各種生産力の増大、その他経済活動の上昇から見て、交通問題の早急な検討と適切な対応が望まれると、貧弱な道路網が経済成長の障害になることを指摘いたしております。
 このようなさまざまな指摘を受けて、政府は、昭和三十二年に策定した新長期経済計画の中で、道路整備の重点策として、生産活動の隘路の重点整備、そして、都市間道路網及び高速自動車国道の整備ということを掲げまして、当時進行中だった第一次道路整備五カ年計画を発展的に解消させ、一次に比べて総投資額において四倍近い規模の第二次道路整備計画を策定しました。あわせて、既に施行されていた道路整備費の財源等に関する臨時措置法を廃止し、新たに道路整備緊急措置法を制定することによって、道路整備を支える基本的な法体系の整備を行いました。
 以来、我が国の道路は飛躍的に発展を遂げてまいりました。昭和三十八年七月には我が国初の高速道路である名神高速道路の一部開通、そして、現在我が国の大動脈である東名高速道路は、昭和四十三年に一部開通、翌昭和四十四年には全線が開通し、我が国の生産活動の基盤となって経済成長を支えてまいりました。現在では、いわゆる高速道路を含む高規格幹線道路七千二百六十五キロメートルが整備され、改良済み道路の延長は二十五万六千キロメートルに達しています。
 一方、我が国社会は、三十年代中ごろから乗用車が次第に普及し出し、また、経済活動の活発化によりトラック輸送が増大をいたしました。現在の国内自動車保有数は約六千七百万台となっており、昭和三十四年の三十六・一倍に達しています。
 このように、我が国の経済発展とあわせて進んできた道路整備でありますが、現在、さまざまな意味で大きな転換点を迎えております。
 その第一は、皆さん御承知のように、我が国の危機的な財政状況であります。道路は、国民に密着した重要な社会資本であるがゆえに、毎年度莫大な予算が投じられています。平成九年度補正後のベースで見ますと、国費の道路整備費が三兆六千億円、財政投融資では二兆六千億円の資金が投入をされています。このほかに自治体が投入をした資金が七兆四千億円と、合計しますと十三兆七千億円の莫大な資金が道路整備に投入をされています。国民の税金あるいは国民が背負うことになる借金をこれだけ投入をするのですから、道路整備に当たっては十分な国民の意見の反映と費用対効果の分析が必要であることは当然であります。
 先ほど触れました東名高速道路などは、建設が国民生活及び国民経済に大きなメリットをもたらしたことは明白であります。しかし、今後整備していく道路にはこのような全国に波及する効果は必ずしも期待できません。地域地域の道路整備の必要性を、国全体の視点から優先順位を設けていく必要があります。また、この整備を推進する際には、その情報を国民の前に明らかにし、国民が一定の負担を負うことも知っていただかなくてはなりません。
 そして、何よりも私たち国会がこの点について十分な議論を行う必要があると考えます。この点では、民友連提案の改正案においては、道路整備五カ年計画の国会承認を盛り込んでおり、時代に即した提案だと考えます。現在の財政状態を念頭に置いた上で、地域個別の必要性を国会の場で議論、調整することが今後の道路整備にとって不可欠であります。
 第二点は、国民のニーズに沿った道路整備への転換であります。
 我が国社会は、国民一丸となって欧米に追いつこうとしたキャッチアップの時代を過ぎ、国民一人一人がその個性に応じた豊かさを創造する時代に移行しつつあります。道路においても、単に産業の生産効率が上がるからとか移動時間が短くなるからというだけで単純に整備を進める時代ではなくなりつつあります。
 先ほど私が触れました昭和三十二年の新長期経済計画で示された生産活動の隘路の重点整備、そして都市間道路網及び高速自動車国道の整備ということに重きを置いたこれまでの道路整備計画からの転換をしていかなくてはならない時代になっているのです。道路は大変便利な社会資本でありますが、一方で、その整備において国民の生活基盤である環境を破壊する面は否めません。
 また、道路そのものの性格も、地域の住民がそこで触れ合い、語らうなど、コミュニティーという観点から考える必要もあります。高齢化社会の中で私たちが生活に豊かさを実感できるようになるために、ゆっくり散歩をできるような道路も不可欠であります。そのためには、従来の生産基盤を中心としてきた道路整備だけではなくて、生活者の視点を中心に、環境、福祉、文化などの面に配慮をした道路整備を進める必要性が拡大をしてきております。ここにおいても、やはり道路整備について情報公開を促進し、国民の意見を広く聞いていく必要があります。
 第三点は、都心の交通問題でもあります。
 地方の道路網整備の必要性は十分に認識をしておりますが、一方で、私も東京に住む都民の一人として、この東京の渋滞あるいは通勤ラッシュには悩まされております。特に、私の住む東京都西部は、南北方向に基幹道路が少ないことから、常に渋滞が発生しており、非常に不便を感じております。年間に数十兆円もの財政資金を投入している一方で、このように都心部の交通環境の改善が図られないことに対しては、東京のみならず都市部に住む多くの国民がいら立ちを感じていると思います。
 この解決のためには、単に道路整備を促進して渋滞の解消を図るという手段だけではなくて、都市政策の一環として道路整備を検討していかなくてはなりません。そのためには、やはり縦割りの役所の中だけでの道路整備計画ではなくて、総合的な議論の場である国会でその方向性を検討していくべきだと考えております。
 道路整備に関しては、まだまださまざまな問題点がありますが、以上のような問題点を踏まえて質問を行います。
 最初に総理にお伺いいたしますが、民友連提案の改正案では、道路整備五カ年計画の国会承認を義務づけていますが、総理は、この点についてどうお考えでしょうか。
 今まで私が申し上げましたように、このような莫大な資金を投入する政府投資の中身に対して議会が何ら関与しないということに関して、総理も国会議員のお一人としてどうお考えでしょうか。また同様に、民友連案では審議会の公開を規定いたしております。私はこれも当然の措置と考えますが、総理は審議会の公開についてどのようにお考えでしょうか。
 また、道路整備そのものについて、総理はどのようにあるべきとお考えでしょうか。総理が所信表明等で訴えられている総理の考える将来社会像と関連して、所信を伺いたいと思います。
 次に、民友連提案者各位に伺います。
 民友連提案の法案は、先ほど私が述べました道路整備に関するさまざまな問題点を解決する一つの方向性であると評価をいたしますが、ある意味では当然のことでもあります。数十兆円もの公共投資の方向性を決める計画が、国会とは全く関係のないところで決められているということ自体が異常であり、これを国会にかけるというのは当然のことであります。情報公開や事後評価システムにしても同様であると考えます。そこで、それぞれの内容について若干伺いたいと思います。
 まず第一に、道路整備五カ年計画に対する国会承認でありますが、従来の法解釈を前提にしますと、行政の策定する計画を国会が承認するということは、いわゆる行政権の侵害になるという見方もあります。私自身はこの解釈には反対ですが、この点について、提案者の法解釈を伺っておきたいと思います。また、国会の承認を義務づけるということは、国会が無制限に整備計画を膨らませるおそれもあると考えます。この点についての提案者のお考えをお聞きします。
 次に、計画策定過程における情報公開についてですが、従来から、審議会を完全公開にすると忌憚のない意見交換ができないなどという理由で、多くの審議会が非公開となっております。道路審議会は法定でこれを公開しようということでありますが、この点についてはどのようにお考えか伺います。
 次に、事後評価システムについて伺います。
 昨今の公共事業に対する批判の高まり、あるいは税金をより効率的に活用する必要性から、事後評価システムの導入はまさしく時宜を得たものと考えます。具体的にはどのようなシステムをお考えか、また、このシステムの導入の目的は何なのか、お伺いをいたします。
 最後に、改正案全体について伺いますが、この法案を通して道路整備に関する公共事業をどのように改革しようとしているのか、法案提出の背景にある思想を伺って、私の質問とさせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 山本議員にお答えを申し上げます。
 私については二点のお尋ねがありました。
 まず第一は、道路整備五カ年計画の国会承認などについてのお尋ねであります。
 五カ年計画は、計画的な事業の実施のためのいわば目安であります。直ちに具体の歳出を伴うものではないことから、むしろ毎年度の予算で国会の御審議を受けることが適当だと考えております。
 また、審議会の公開についてお尋ねがございました。既に、閣議決定に従い、審議会の判断により議事録を公開し、運営の透明性の確保に努めております。
 次に、将来社会のあり方との関連で、道路整備のあり方についてというお尋ねをいただきました。
 今後の国土政策を考えます場合、その基本は、阪神・淡路大震災の教訓を生かしながら多軸型の国土構造を形成していくこと、そして、その基盤として、生活に密着した道路から高規格幹線道路に至るまでの道路のネットワークというものは非常に重要だと考えております。今後とも、重点化、効率化を図りながら計画的に整備を進めていく必要があると考えております。(拍手)
    〔樽床伸二君登壇〕
#22
○樽床伸二君 提出者の樽床伸二でございます。
 山本議員の質問にお答えをいたします。
 私からは、議員が冒頭にお尋ねになられました国会承認について答弁をさせていただきたいと思います。
 まず、行政権との関係からでありますが、その侵害には当たらない、このように考えております。
 なぜならば、国権の最高機関である国会において決定されたものを、その目的達成を効率よく、しかも整合性を持って推進するためのものが行政計画である、このように考えるからであります。つまり、政治が方針を決め、行政がその方針のもとで目標達成を図るというのが本来のあるべき姿であります。さらに、計画というものは、立法行為でも行政行為でもなく、第三の国家行為であるとの見解が一般的でもあります。ゆえに、政治主導の国会運営を目指すならばなおさらのことである、このように考えるわけであります。
 したがって、計画承認を国会ができないという根拠はない、このように考えております。現に漁港法におきましても、漁港計画を初め議会の議決を要する計画が存在することも申し上げておきたいと思います。
 次に、国会が承認するということになれば、計画の規模は無制限に膨らむのではないか、このような御懸念でございますが、現在でも、議員から行政への公共事業に関する陳情はあるようにお伺いをいたしております。このような国民に見えない部分で、見えないところで公共事業が決まるのではなく、国会において各議員がその政治理念のもとに正々堂々と議論をした結果事業量がふえるという結果になるのであれば、それは当然のことと考えなければならないと思います。それが代議制民主主義であると考えておるわけであります。ゆえに、政治の責任はまことに大きいと言わねばならないわけであります。
 また、道路整備に関する意思決定の過程が公開され、国会の議論もすべて明らかになるわけでありますから、その後は国民の皆様方の判断であります。つまるところ、国民が今後の道路整備をどのように考えるか、そういったことが道路整備、広くは公共事業を規制するべきであり、税金を負担される国民の皆さん方が決めるのは当然のことである、このように考えるわけであります。
 この道路整備緊急措置法に基づき計画される道路整備五カ年計画は、十六本ある公共事業関係長期計画の中でも飛び抜けた事業規模となっておるわけでございます。御存じのとおりであろうと思います。本年一月に閣議決定されました新たな道路整備五カ年計画では、五年間の事業量が七十八兆円、このうち約二十兆円が国費によって投入されるということになっております。
 先ほど総理は、この五カ年計画は一つのめどであり、目安であり、単年度の予算の審議の過程の中でと、このような御答弁をされたわけでありますが、このような大規模な計画に対して、国民の代表者である国会がその中身を何ら議論しない。それは、単に毎年度の予算という形で道路整備を議論することは可能である、こういうお考えでありますが、予算は、御存じのように、さまざまな政府事業を一括して賛否を求められるものであります。ゆえに、道路のみを取り上げてきちんと議論を行うことが困難なのは議員各位も御存じのとおりでございます。
 したがって、五年間の道路整備の方向性の目安となる道路整備五カ年計画を国会におきまして個別に取り上げて議論を行うことは、私たち国会議員の当然の責務であると考えております。
 私たちは、この従来の状態を是正し、国会が国会の当然の役割を果たせるようにするために、本改正案を提案いたしておるわけでございます。ぜひとも議員各位の御賛同を賜りたいと存じます。
 以上をもちまして、私の答弁とさせていただきます。(拍手)
    〔平野博文君登壇〕
#23
○平野博文君 続きまして、情報公開と事後評価システムに関しまして、山本議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、情報公開、とりわけ道路審議会の全面公開についてでありますが、確かに、衆人環視のもとでみずからの意見を堂々と論じることは、我が国社会の傾向から見まして、困難がつきまとうことは予想ができます。しかし、政策形成過程の透明化は時代の必然であります。特に道路審議会の委員となられるような立派な方々は、この社会において一定の地位を得た方々ばかりであります。この方々が国民生活に密着した道路について議論を行うわけでありますから、公開というのは当然のことであります。それぞれの考え方があり、あるいはそれぞれの立場からの御発言があるかと思いますが、これらの考え方、利害を公の場で議論してこそ民主主義社会ではないでしょうか。道路審議会委員という公職につかれた以上、公開という形でみずからの発言に責任を持っていただくことが必要だと考えております。
 次に、事後評価システムについてでございますが、これは、道路整備五カ年計画の最終年度の翌年度におきまして、政府がこの計画に関する報告書を作成し、これを国会に提出するというシステムであります。
 政府がまとめる報告書の内容は、事業が社会に及ぼした影響についての総体的な評価を考えておりますが、同時に、現在も各地で生じております道路設置に関する周辺住民との関係等につきましても報告書に記載することとなりますので、これが国会に報告された際には、国会においてもいろいろな観点から議論することが可能となります。
 この事後評価を導入いたします目的は、まず第一に、税金の使い道の効率化であります。
 財政状態が緊迫し、一層の税金の効率的使用が課題となっている現在、投入した税金の効果を測定し、これをその後の事業に生かしていくことは必須であります。
 第二は、我が国の公共事業の傾向として、事業が非常に長期に及ぶことへの対応であります。
 この間の社会経済条件の変化に対応していくためには、一定期間ごとの事業の評価が必要であります。
 第三に、事業がもたらす国民生活、環境への影響の測定であります。
 事前測定は環境アセスメントで可能でありますが、それは実際に事業がもたらす影響を正確に測定したものではありません。このような点を含めて、総体的な事業の影響を評価することにより、一層国民生活に資する道路整備事業を行おうとするものでございます。
 事後評価システムについては、既に、「時のアセスメント」でも有名となった北海道を初め、全国で五道県で導入済みであります。情報公開同様、自治体から始まった行政の適正化の一つではありますが、このシステムに関しては、情報公開のときのように、すべての都道府県が導入してもなお国は行っていないということにならないようにしていきたいと考えております。
 以上で、私からの答弁を終了させていただきます。(拍手)
    〔松崎公昭君登壇〕
#24
○松崎公昭君 山本議員の提案者に対する最後の質問の部分につき御答弁を申し上げます。
 政府は、現在、財政再建の一環として公共事業の改革を行おうとしております。昨年成立しました財政構造改革法の基礎となった財政構造改革会議が提出した財政構造改革の推進方策によれば、「現行の長期計画の整備の基本的考え方は維持しつつ、財政構造改革の趣旨を踏まえ、計画期間を、十年間の計画である土地改良については四年、それ以外の長期計画についてはそれぞれ二年延長することとし、これにより投資規模の実質的な縮減を図る。計画期間の延長に際しては、必要に応じ、事業の重点化・効率化を図る等計画の見直しを行う。」としております。
 これは、計画期間を延長するだけで、計画の内容を抜本的に見直しを行おうというものではありません。すなわち、政府の行おうとしていることは、公共事業の単なる先送りであり、改革ではありません。
 さらに、現在、自民党首脳が言及している補正予算に至っては、ここで先送りした公共事業をまた前倒しをして行おうというものであり、結局、何ら変化がないということであります。
 我々の提案は、国民を交え、道路というものがどうあるべきなのかをもう一度語り合おうというものであります。より豊かさを実感できる社会を創造するために道路そのものの位置づけを考え直し、これをどのように活用していくかを考えていくことを提案しているのであります。
 そして、この国民の議論を集約する場として国会を想定しております。国会が国民から遊離したところで議論しているようであれば、国民は、その国会を変えればよいのです。こうすることによって、膨大な税金を投入する道路整備が国民の手に戻ることにつながるのだと考えております。私たちがこの法案を提出した目的はここにあります。
 国民の重要な資産であり、一方では、国民の膨大な税金を投入する投資でもある道路整備を国民の手に取り戻す、ここに本法案の真の目的があることを、山本議員初め各議員に御理解を求めまして、提案者の答弁を終了させていただきます。(拍手)
#25
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
    〔議長退席、副議長着席〕
     ――――◇―――――
 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#26
○副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣久間章生君。
    〔国務大臣久間章生君登壇〕
#27
○国務大臣(久間章生君) 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、防衛庁設置法、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部改正を内容としております。
 平成八年度以降に係る防衛計画の大綱を踏まえ、出動時以外においても自衛隊の統合運用が必要な場合には統合幕僚会議が長官を補佐し得るようその機能の充実を図り、陸上自衛隊の方面隊に師団に加えて新たに旅団を置くこととし、また、海上自衛隊における効率的な整備補給体制を確立するため海上自衛隊の機関として補給本部を置くことができることとし、並びに技術研究本部等への特にすぐれた研究者の招聘等を行い得るよう一般職の国家公務員と同様に任期付研究員の制度を導入するとともに、開発途上にある地域の政府からの委託を受けて防衛大学校等において教育訓練を実施している外国人に対し、教育訓練の履修を支援するための給付金を支給することができるようにする等、外国人の教育訓練の受託に関する制度を充実させ、あわせて、自衛官の定数及び即応予備自衛官の員数を改める必要があります。
 以上が、この法律案の提案理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。
 第一に、旅団の新編、師団の改編等に伴い陸上自衛官の定数を、政府専用機の運航安全に万全を期するため航空自衛官の定数をそれぞれ変更するとともに、統合幕僚会議の機能の充実及び情報本部の所要の要員を確保するため、自衛官の定数を変更するものであります。
 第二に、出動時以外においても自衛隊の統合運用が必要な場合において長官が定めるときには、統合幕僚会議が長官の補佐をし得るよう、統合幕僚会議の所掌事務を改めるものであります。
 第三に、統合幕僚会議に附置する機関における外国人の教育訓練の受託について定めるものであります。
 次に、自衛隊法の一部改正でございます。
 第一に、陸上自衛隊の方面隊の部隊として旅団の編成等を定めるとともに、第一三師団を第一三旅団に改編するものであります。また、陸上自衛隊の部隊の改編に伴い、即応予備自衛官の員数を改めるものであります。
 第二に、出動時以外に編成される二以上の自衛隊の部隊から成る特別の部隊について、その運用に係る長官の指揮は統合幕僚会議の議長を通じて行い得ること等とするものであります。
 第三に、海上自衛隊の機関として補給本部を置くことができることとし、その所掌事務を定めるとともに、自衛隊に置かれる補給処の事務を改めるものであります。
 第四に、新たに任期付研究員の制度を導入し、その任期、任用手続等を定めるものであります。
 第五に、開発途上にある地域の政府から教育訓練の委託を受けた場合において、当該外国人の教育訓練の履修を支援するための給付金を支給することができること等とするものであります。
 最後に、防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部改正でございます。
 これは、新たに導入される任期付研究員の給与に関し必要な事項を定めるものであります。
 以上が防衛庁設置法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#28
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。石井紘基君。
    〔石井紘基君登壇〕
#29
○石井紘基君 私は、統一会派民友連を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案につき、総理、外務大臣並びに防衛庁長官に質問をいたします。
 初めに、我が国の安全保障について、総理のお考えと決意を聞きたいと思います。
 世界は、八〇年代から九〇年代にかけての冷戦終結によって、圧倒的な軍事力を持つ超大国同士の世界的規模の衝突は、その可能性が大きく遠のいたと考えられております。同時に、その反面、地域紛争、あるいは核や大量破壊兵器の拡散、組織的テロ活動などが国際社会の平和を脅かす要素として顕在化してまいりました。
 我が国にとっても、直接的侵略の脅威は大幅に減少する一方、東アジア地域に残っている不安定要素、軍事技術革命や各国間の軍事バランスの変動によって生じ得る危機、オウム事件などのような組織的テロの危険が増しており、こうした事態に備える危機管理の整備が急務であると言えます。
 世界構造の変化につれて、各国はさまざまな形で戦略転換を図ってまいりました。
 NATOは、東西冷戦終結後の一九九一年に新戦略構想を策定し、多面的脅威に対処できる安全保障システムの構築を目指してきました。すなわち、安全保障機構を重層化し、抑止・防衛型から危機管理型への機能転換、対象地域も加盟国領域内から周辺地域へと拡大するなどであります。
 アメリカは、総兵力を二百十万から百五十万に縮小し、国防費の縮減を行っている。九〇年の東アジア戦略構想では、アジア太平洋地域における戦力の再編合理化を打ち出し、アジア十万人体制を掲げてきた。九五年の東アジア・太平洋地域における米国の安全保障戦略においては、二国間の安全保障関係を補完する多国間安保という規定を行っております。
 以上のような国際情勢の基本的な変化の中で、我が国の防衛戦略はいかにあるべきか。
 もとより我が国の防衛の基本的枠組みは日米安全保障条約であります。しかし、今日、この日米安保体制のもとにおける日米の協力の目的、具体的な協力のあり方は、当然国際情勢の大きな変化に対応した質的転換を伴うものでなければなりません。
 冷戦時代に設けられてきた広大な米軍の基地や演習場などが、従来どおり、将来ともそのまま我が国の領土になくてはならないものなのか。新しい時代背景のもとにおける日米安全保障のあり方、地位協定の実情、全般的軍縮などについて米国と率直な議論をすべきではないのか。将来にわたる日米の緊密なパートナーシップを考えるとき、アメリカに対して物言わぬ、使い走りのような橋本内閣の姿勢で、真の日米の友好と協力のきずなは育たないでありましょう。対米交渉に当たって、政策変更の権限を持たない外務官僚に任せていたのではらちが明きません。総理自身が首脳同士の議論を持ちかけるべきであります。その決意はあるのでしょうか。冷戦後の我が国の防衛戦略とともに、総理の具体的な御所見をいただきたい。
 今後の防衛政策遂行に当たっても、憲法の精神にのっとり、非核三原則及び専守防衛、武器輸出三原則、集団自衛権の不行使、大量破壊兵器の不保持、海外派兵の禁止、徴兵制の不採用、シビリアンコントロールなどの諸原則を引き続き遵守することが重要であることに変わりはありません。
 次に、我が国の防衛戦略について、法案との関係において触れてみたいと思います。
 我が国では、ヨーロッパにおくれること四年、約二十年ぶりに防衛計画の大綱が策定され、防衛力の合理化、コンパクト化が提唱されましたが、それらをどういう考えで、どういう方向で推し進めていくのかさっぱり見えてこないのであります。
 自衛隊の部隊配置や装備内容、人員、規模等は、それぞれどういう戦略に基づいて組み立てられているのか、あるいは組みかえられていくのか。本法案における旅団の創設、編成で機動性が高まると言うのですが、それに伴う装備はどう変わるのか。また、中期防見直しの中における三自衛隊の装備削減額はほとんど横並びになっているわけですけれども、防衛力の重点をどう位置づけていくのか。さきに申し上げました防衛力の質的転換という観点からいうならば、今日の我が国の防衛力展開は、陸上中心から海空中心型の装備や情報機能の強化への移行が必要ではないのか。防衛庁長官のお考えを伺いたいと思います。
 次に、本法案における統幕会議の機能強化についてでありますが、統幕会議に情報が一元化され、縦割りから横断的な体制ができることは、防衛力の質的向上にとってこれは必要であろうと思われます。
 さて、現行では、いわゆる日本有事の際の防衛出動、治安出動の場合にのみ認められている統幕会議の指揮命令権が、長官が定めるその他の場合にも適用されることになります。統幕会議の権限が新たに適用される事態は、大規模災害やPKO、国際救援活動で、複数の自衛隊が一緒に活動する場合を想定していると言われます。しかし、同時に、こうした事態に加えて、日米ガイドラインのもとで行われる平時や周辺事態における対米協力も、本法案によって統幕会議が権限を持つ事項になるのではないでしょうか。日米ガイドラインの最終報告が発表された昨年九月二十三日の直後に政府が安全保障会議で本法案の国会提出を決めたというのは、偶然だったとは思えないのであります。周辺事態及び平素からの対米協力においても統幕会議が対応することになるのか、総理及び防衛庁長官の考えを伺います。
 さらに、統幕会議は新たに統合警備計画の作成と調整も行うことになって、対象は大規模震災を想定していると言われます。しかし、私には、日米ガイドラインの周辺事態における協力項目として取り上げられている日本周囲の海域における捜索・救難活動、国内輸送経路上の警備、米軍施設・区域における周辺海域の警備や、いわゆる船舶の臨検は、この統合警備計画の対象となるのではないかと思えるわけであります。これについて防衛庁長官の御見解をお述べいただきたい。
 また、日米ガイドラインは、平素から行う防衛協力の一環として、包括メカニズムを構築し運営することを求めておりますが、この枠組みの中に統幕会議がどのようにかかわっていくのか、あわせてお尋ねをいたします。
 こう考えてまいりますと、統幕会議の運用される範囲が広がってまいりまして、機能が強化されるように思えるのであります。統幕会議の機能を強化するのであれば、それに相応したシビリアンコントロールを確立する必要がございます。自衛隊、統幕会議に対する監督権限者である総理と防衛庁長官は、統幕会議の内容について、今まではどのような方法で把握してきたのか、また今回の改正に伴いどのような方策を考えているのか、説明を求めます。
 次に、本法案に関連して、政府の日米ガイドライン問題への取り組み方について指摘をいたします。
 ガイドラインのもとで実施する対米協力は、まさに統幕会議の調整機能を生かすことによって円滑に進められることになるのではないでしょうか。また、そのことは政府においても想定されているのではありませんか。日米ガイドラインの最終報告が提出されてから半年以上たったわけでありますけれども、この間、ガイドライン関連の法整備作業の進捗状況について何度も伺ってまいりましたけれども、いつまでたっても鋭意検討中という返答しか返ってまいりません。
 さて、日米ガイドラインにおける周辺事態の定義につきまして、政府は、この「周辺」ということについて、これは地理的な概念ではない、事態の性質に着目した概念であると説明して、どのような事態が該当するのか特定することから逃げているわけでありますが、しからば、政府の言われる事態の性質というのは一体何なのか、その中に地理的な要素というものは入らないのか入るのか、入るとすればそれはどの範囲を指すのか、総理、明確なお答えをお願いします。
 ガイドラインで言う周辺事態の範囲が地理的にあいまいであるということになりますと、日米安全保障条約の適用範囲を事実上広げていくということになるのではないでしょうか。それならそれで、橋本総理、はっきりしていただきたい。
 また、日米ガイドラインの最終報告におきましては、周辺事態の対米協力を、いつ、どの時点で、だれが決定するのかが明確にされておりません。行政の独断と暴走を防ぎ、またシビリアンコントロールを維持するには国会にチェック機能を持たせるということが重要であると考えるわけです。対米協力事項のうち、市民生活に影響が大きいと思われる事項やあるいは危険を伴う事項については特に国会の承認の必要があり、その方法について議論を深めることが重要であります。国会の関与について、見解を総理と防衛庁長官にお尋ねをいたします。
 さて、今回の法案について、政府は、ガイドラインの対米協力を想定した法改正ではないとしているわけでありますけれども、実際には、ガイドラインとの関連は明らかにあるのであります。あたかもガイドラインとの関係を隠すような法案の出し方では、国民の政治への信頼を失墜させ、安全保障問題への理解を損なうことになります。ガイドラインに示されている周辺事態における協力項目は、市民生活に大きくかかわる事項ですから、政府は国民に誠意を持って説明し、開かれた議論をする責任があるのではないでしょうか。
 ここに改めて、総理、外務大臣、防衛庁長官に、ガイドラインの法整備について、現在検討されている案、そして、その作業がどこまで進んでいるのか、説明を求めます。
 最後に申し上げたいことは、防衛のよって立つ基盤は、何といっても国民の国防に対する意識であるということであります。
 国防意識というものは何か。それは、自衛隊が滅私奉公で頑張るということでもなければ、金をかけてすぐれた装備を備えるということでもない。それもよいが、何よりも大切なことは、この国はみんなの国なんだという国民の意識でありましょう。守るべき大切な価値のある国なんだという思いでありましょう。つまり、そういう思いを国民が持つことのできるような国でなければならないということであります。
 銀行や証券会社あるいは特殊法人などには税金をつぎ込んで手を差し伸べるけれども、一般の国民が路頭に迷っても知らぬ顔。総理大臣はさっぱり未来を語ってくれない。文化や人間の心を語らない。語らないどころか、国民の負担と未来へのツケを積み増しするばかり。
 政官財の不正が噴出をしている。中小企業がばたばたと倒れ、経済はついにマイナス成長に転落。若者は、いたたまれない境遇の中でもがき苦しんでいるではないか。右を向いても左を向いても真っ暗やみ。橋本総理にはこの最大の危機を打開する自信がおありなのかどうか、ぜひ聞いておかなければならないと思います。
 橋本総理、かつてあなたが打ち出された六大改革は、今や見る影もないけれども、火だるまになってやると言われたその気持ちをもう一度思い起こしてもらいたい。我が国の未来に少しでも希望が持てるようなリーダーシップを発揮されますように御祈念を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#30
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 石井議員にお答えを申し上げます。
 まず、冷戦後の我が国の安全保障についてお尋ねがございました。
 在日米軍は、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全に寄与しており、現時点でその削減や撤退を求めることを考えておりません。我が国は、今後とも、日米安保体制の堅持、節度ある防衛力の整備、軍縮を含め国際環境の安定確保のための日米間を含めた外交努力を安全保障政策の基本として堅持してまいります。既にARF等が動いておりますことは、議員御承知のとおりであります。
 次に、統幕会議の調整機能についてお尋ねがございました。また、指針と統幕会議の調整機能の関係ということであります。
 今回の統幕の機能の充実は、防衛大綱などを踏まえ、大規模災害等各種の事態への対応などの任務を迅速かつ効果的に遂行するためのものでありまして、指針のもとでの日米協力と直接関連するものではありません。しかし、日米協力の具体的内容に即し、適切な形で統幕がこれに関与することは当然あり得ると考えております。
 また、統幕の機能の充実とシビリアンコントロールというお尋ねがございました。
 統幕会議は、そもそも防衛庁長官を補佐する機関でありまして、文民である内閣総理大臣、防衛庁長官のもとで十分管理されるなど、シビリアンコントロールは確保されております。今回の改正におきましても、その位置づけに何ら変わりはございません。
 次に、周辺事態についてのお尋ねがございましたが、ある事態が周辺事態か否か、それは事態の態様、規模などを総合的に勘案して判断をいたします。したがって、周辺事態が生起し得る地域を地理的に一概に画することはできません。
 いずれにせよ、周辺事態における日米協力は、日米安全保障条約の目的に合致するものでありまして、この条約の適用範囲を広げるのではないかということは当たらないと思います。
 次に、周辺事態における国会の関与という御指摘をいただきました。
 指針の実効性確保に係る法的な措置につきましては、現在関係省庁が鋭意検討を行っております。現時点におきまして、法整備の内容等につき、具体的に定まってはおりませんが、御指摘の点を含め、今後具体的な案文の作成作業を精力的に進める中で判断してまいります。今申し上げましたように、この法的措置について、できる限り早く検討作業を進め、所要の措置を講ずることが必要だと考えております。
 最後に、国民の国防意識、経済、文化、不祥事など、さまざまな御指摘とともに、私への激励、そして改革への決意をお尋ねいただきました。
 私は、御激励にこたえて、あくまでもこの国の改革をやり遂げていきたいと思い、御協力を心からお願い申し上げます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小渕恵三君登壇〕
#31
○国務大臣(小渕恵三君) 指針の実効性確保についてのお尋ねでありますが、昨年九月二十九日の閣議決定の趣旨を踏まえまして、現在関係省庁間で、法的側面も含め、鋭意検討を行っておるところでございます。
 具体的には、捜索・救難、在外邦人等の輸送、船舶の検査等及び後方地域支援等に関し、必要な法的整備につきまして、可能な限り速やかに成果が得られるよう、現在検討作業を精力的に取り進めていくことが重要であると考えております。
 ただし、現時点におきましては、法的整備の内容等につきまして具体的に定まっているわけではなく、今後具体的な検討作業を進めていく中で判断いたしてまいりたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣久間章生君登壇〕
#32
○国務大臣(久間章生君) 自衛隊の部隊配置等の戦略についてのお尋ねでございますが、我が国としては、防衛大綱における、いわゆる基盤的防衛力構想に基づきまして、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めて、均衡のとれた態勢を保有することを主眼とし、我が国の地理的な特徴等に応じ、陸海空各自衛隊の部隊を引き続き適切に保持していく所存でございます。
 旅団の装備についてのお尋ねでございますが、本法案における旅団の編成、装備につきましては、地域の特性等に応じて、機動力など各種の機能をより充実させることとしたいと考えており、第一三旅団につきまして具体的に申し上げますと、小ぶりの部隊ながら多様な事態に軽快かつ機敏に対応するとの観点から、高機動車や多用途ヘリコプターなどを新たに導入することといたしております。
 中期防の見直しについてのお尋ねですが、見直しに当たっては、主要装備について、防衛大綱に定める防衛力水準を全体として適切に維持しつつ、より緩やかな形で整備を進めるとの観点から、計画に定める事業の実施を一部見送ることにしたところでございますが、この際にも、我が国の防衛上支障が生ずることのないよう、陸海空防衛力のバランスに十分配意したところであります。
 今後の防衛力のあり方についてのお尋ねですが、防衛大綱においては、我が国が保有すべき防衛力について、防衛上必要な各種の機能を備え、かつ警戒、情報及び指揮通信の態勢を含め、均衡のとれた組織及び配備態勢を保有することとしており、御指摘の情報機能の強化とともに、陸海空防衛力のバランスにも十分配意する必要があると考えております。
 統合警備計画の対象についてのお尋ねですが、統合警備計画は、大規模災害等への対処など、自衛隊が公共の秩序の維持に当たる際の自衛隊の対処構想、関係機関との協力、各自衛隊の任務及び協同その他の基本的事項について定めるものですが、その具体的内容については今後検討されるものであり、御指摘の点について現段階でお答えすることはできないわけであります。
 包括的なメカニズムと統幕会議のかかわりについてのお尋ねでございますが、指針のもとでの日米共同作業を実施するために構築された包括的なメカニズムにおきましては、統幕会議事務局から防衛協力小委員会に所要の者が参加するとともに、自衛隊と米軍との間の共同作業組織である共同計画検討委員会の日本側の共同委員長を出しているところであります。
 その他、日米ガイドラインの国会提出を決めたのは単なる偶然とは思えないということ、あるいはまたガイドラインの法整備についての現在の検討している状況、あるいは統幕機能の強化に関するシビリアンコントロールとの関係、さらには国会等の関与のあり方等について御質問がございましたが、これはいずれも総理並びに外務大臣から御答弁があったのと同じでございます。(拍手)
#33
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#34
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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